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特表2022-542343スクロールハウジングを有するファン、および、このファンに用いるスクロールハウジング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-03
(54)【発明の名称】スクロールハウジングを有するファン、および、このファンに用いるスクロールハウジング
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/42 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
F04D29/42 L
F04D29/42 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500885
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(85)【翻訳文提出日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 DE2020200049
(87)【国際公開番号】W WO2021004589
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】102019210077.5
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510334790
【氏名又は名称】ジール・アベッグ エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レルヒャー、 フリーダー
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB45
3H130AB62
3H130BA66A
3H130CA05
3H130CA10
3H130CA21
3H130EA06A
3H130EA07A
3H130EA08A
3H130EB03A
3H130EC17A
(57)【要約】
後方湾曲ブレードを有するインペラを備え、スクロールハウジングを有するファンであって、スクロールハウジングの流路が、スクロールハウジングの螺旋状内輪郭部により構成され、流路が、インペラにより搬送された空気を出口部に向かってガイドする、ファンにおいて、その局所ピッチ角を有する螺旋状輪郭部が、インペラからの流出角に適合されていることを特徴とする、ファン。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方湾曲ブレードを有するインペラを備え、スクロールハウジングを有し、前記スクロールハウジングの流路が前記ハウジングの螺旋状輪郭部を含む内輪郭部により構成され、前記流路が前記インペラにより搬送された空気を出口部に向かってガイドする、ファンにおいて、
その局所的なピッチ角を有する前記螺旋状輪郭部が、前記インペラからの流出角に適合されていることを特徴とする、ファン。
【請求項2】
前記螺旋状輪郭部の前記局所的なピッチ角が、前記インペラの回転方向において、前記流路における最も幅狭の領域、好ましくは、舌部近傍または前記舌部を始点とし、前記舌部から離隔した出口輪郭部を有する出口部までのさらなる推移におけるよりも、大きい値から始まっていることを特徴とする、請求項1に記載のファン。
【請求項3】
周方向における前記局所的なピッチ角が、急速に再び、より小さい値まで減少していることを特徴とする、請求項2に記載のファン。
【請求項4】
前記最も幅狭の領域または前記舌部を始点とする、24°~55°の扇形領域にわたる前記局所的なピッチ角が、さらなる推移におけるよりも平均して著しく大きい値を有していることを特徴とする、請求項2または請求項3に記載のファン。
【請求項5】
前記舌部近傍の前記螺旋状輪郭部の開始点が、前記ハウジングの前記内輪郭部上の点として定義され、
前記点が、インペラ軸に最も近接しているか、または、前記インペラの回転方向に前記舌部から移動する場合、前記内輪郭部の曲率の符号が逆になっていることを特徴とする、請求項2~請求項4のいずれか1項に記載のファン。
【請求項6】
前記螺旋状輪郭部の開始点における、特に、前記流路における最も幅狭の領域または前記舌部における、曲率円の半径が、前記螺旋状輪郭部の延在領域の大部分にわたって曲率円の半径の推移と比較して小さく、
前記螺旋状輪郭部の開始点において前記螺旋状輪郭部の曲率円の半径が、極小であることを特徴とする、請求項2~請求項5のいずれか1項に記載のファン。
【請求項7】
前記螺旋状輪郭部の開始点における曲率円の半径が、前記インペラの最大半径よりも小さいことを特徴とする、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のファン。
【請求項8】
前記舌部と、前記インペラの最大半径、または、前記インペラの前記後方湾曲ブレードとの間には、前記インペラの最大半径の少なくとも6%または10%の間隔があることを特徴とする、請求項2~請求項7のいずれか1項に記載のファン。
【請求項9】
前記スクロールハウジングが、2つのハウジングハーフにより構成され、
流入ノズル側ハウジングハーフが、流入ノズルと、必要に応じて前記流入ノズルよりも大きい外径を有する前記流入ノズルの上流に位置する流入領域とを備え、
モータ側ハウジングハーフが、モータをステータに固定する固定手段を備えていることを特徴とする、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のファン。
【請求項10】
前記2つのハウジングハーフが、フランジ状連結領域を外縁領域として有し、
前記フランジ状連結領域表面または前記フランジ状連結領域内において前記2つのハウジングハーフが、ネジ、クリップ、リベット、または接着技術を用いて互いに連結されていることを特徴とする、請求項9に記載のファン。
【請求項11】
前記スクロールハウジングが、前記モータ側に略平坦または略平面の側部と、前記流入ノズル側に略平坦または略平面の側部と、巻き戻し可能な周部とを備えていることを特徴とする、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のファン。
【請求項12】
前記モータ側ハウジングハーフまたは前記モータ側の前記側部が、カバー部材を備えている検査用開口部を有していることを特徴とする、請求項9~請求項11のいずれか1項に記載のファン。
【請求項13】
前記ハウジングハーフまたはスクロールハウジングが、射出成形した合成樹脂部材または板金部材からなっていることを特徴とする、請求項9~請求項12のいずれか1項に記載のファン。
【請求項14】
前記スクロールハウジングが、前記出口部の領域において前記ファンを任意の構造体に取り付けるための取り付けフランジを有し、
前記取り付けフランジが、前記ハウジングハーフの構成部材であるか、または、前記スクロールハウジング用セパレート型部材であることを特徴とする、請求項1~請求項13のいずれか1項に記載のファン。
【請求項15】
請求項1~請求項14のいずれか1項に記載の前記ファンに用いるスクロールハウジング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後方湾曲ブレードを有するインペラを備え、スクロールハウジングを有するファンであって、スクロールハウジングの流路がハウジングの螺旋状内輪郭部により構成され、流路がインペラにより搬送された空気を出口部に向かってガイドする、ファンに関する。
また、本発明は、ファンに用いるスクロールハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
スクロールハウジングを有するファンは、前方湾曲ラジアルファンおよび斜流ファン用として、広く用いられている。
スクロールハウジングは、後方湾曲ファンに用いられることが増えている。
スクロールハウジングを用いることで、圧力がさらに上昇し、それに伴って、静圧効率が上昇することが、実施により示されている。
スクロールハウジングは、ファンインペラ下流の流出側空気をファン軸に対して略直交に延在する流路内に、例えば、円形状または四角形状の断面を有する管路内に、効率的にガイドするのに好適である。
【0003】
通常、後方湾曲インペラの場合、効率の上昇がやや小さいのは、流出角が、前方湾曲インペラの場合よりも、急峻となる(つまり、より径方向に優勢に方向付けられる)傾向があるためである。
特に、最小の流れ断面を有する流路領域、つまり、舌部領域において、後方湾曲ファンの流出側空気は、ハウジング輪郭部との迎角が大きく、このことは、静圧効率や低騒音性に関して基本的によいことではない。
【0004】
先行技術文献に関して、ほんの一例として、特許文献1を参照する。
この文献には、スクロールハウジングにおけるラジアルブロワにおいて、スクロールハウジングの周壁部が、ノズル壁部から円形状ベース部側の壁部に向かって径方向に拡幅する、ラジアルブロワが記載されている。
このスクロールハウジングは、前方湾曲インペラ用に構成されている。
内輪郭部の多少なりとも急峻な形状に関する最適化構成については、この文献から知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2005 012 815 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、後方湾曲ブレードを有するインペラにも好適なスクロールハウジングを有する上位概念のファンを構成することである。
特に、より高い効率性とより良好な音響特性が、後方湾曲インペラを有する、ラジアルファンまたは斜流ファンに関して、得られることになる。
【0007】
さらに、スクロールハウジングは、コンパクトであるべきである。
また、スクロールハウジングは、安価に製造できるような簡単な構成を有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、請求項1のファン、および、請求項15のスクロールハウジングに関して、解決される。
これによると、その局所ピッチ角を流路の延在領域において有する、スクロールハウジングの螺旋状輪郭部は、インペラからの流出角に適合されている。
【0009】
本発明によると、その局所ピッチ角を有する螺旋状輪郭部が、効率性および騒音に関して特に重要である。
このように、本発明によると、螺旋状輪郭部が、インペラからの流出角に適合され、コンパクトな構成を有している。
【0010】
本発明に係るファンと、これに用いられるスクロールハウジングの発展形態は、適合された内輪郭部を有する後方湾曲ラジアルファンまたは斜流ファンに関する。
螺旋状輪郭部の局所ピッチ角は、実質的にインペラの回転方向から見て、流路における最も幅狭の領域、好ましくは、舌部近傍または舌部から推移し、舌部から離隔した出口部輪郭部を有する出口部までのさらなる推移におけるよりも、大きい値から始まる。
最初に大きな局所ピッチ角は、周方向における流路のさらなる延在領域において、急速に再び、より小さい値まで減少することにより、スクロールハウジングがコンパクトであることが確実になる。
【0011】
一般に、流路の最も幅狭の領域または舌部を始点とする、特に、約24°~約55°の扇形領域にわたる、スクロールハウジングの内輪郭部の局所ピッチ角は、扇形領域に後続する、流路のさらなる延在領域におけるよりも、平均して著しく大きい値を有する。
【0012】
本発明に係る、流路における特定の点および領域を定義する構成が、いくつか考えられる。
例えば、舌部近傍の螺旋状輪郭部の開始点は、スクロールハウジングの内輪郭部上の点として定義されてよく、この点が、インペラ軸に最も近接しているか、または、この点において、インペラの回転方向に舌部から移動する場合、内輪郭部の曲率の符号が逆になる。
曲率円の半径は、螺旋状輪郭部の始点または開始点において、特に、流路における最も幅狭の領域において、螺旋状輪郭部の延在領域の大部分にわたって、曲率円の半径の推移と比較して小さい。
螺旋状輪郭部の曲率円の半径は、螺旋状輪郭部の始点近傍で、極小である。
【0013】
さらに、螺旋状輪郭部の開始点における曲率円の半径は、インペラの最大半径よりも、少なくともわずかに小さい。
つまり、開始点における曲率円の半径は、螺旋状輪郭部が一定の対数螺旋を有する先行技術よりも小さい。
これにより、本発明に係る後方湾曲インペラに用いるスクロールハウジングにおいて高効率性と低騒音性とが得られる。
【0014】
さらに、舌部と、インペラの最大半径またはインペラの後方湾曲ブレードとの間には、インペラの最大半径の少なくとも6%または10%の間隔があり、このことは、低騒音性に有利である。
【0015】
スクロールハウジングの簡単な構成に関して、スクロールハウジングが、2つのハウジングハーフにより構成され、1つの流入ノズル側ハウジングハーフが、流入ノズルと、任意で、流入ノズルよりも大きい外径を有する、流入ノズルの上流に位置する流入領域とを備える。
1つのモータ側ハウジングハーフは、モータをステータに取り付ける固定手段を備える。
これらの2つのハウジングハーフは、射出成形した合成樹脂部材からなってよい。
【0016】
上記説明によると、これらの2つのハウジングハーフは、ハウジング自体だけでなく、機能的部材、つまり、例えば、ファン動作中に周囲空気がインペラ内へと通る、一体化された流入ノズルを構成するか、または、備えている。
同様のことが、流入ノズルよりも大きい外径を有する上流の流入領域について適用される。
流入ノズルの径方向外側の流入領域は、平面または平坦な面として構成され、その外径が、流入ノズルの最大半径(外径)よりも、例えば、35%大きくてよい。
【0017】
モータをステータに固定する固定手段は、モータ側ハウジングハーフに設けられて一体化されてもよい。
【0018】
これら2つのハウジングハーフは、フランジ状連結領域で互いに連結され、フランジは、螺合連結用の穴部を備えてよい。
また、これら2つのハウジングハーフを、クリップ留め、リベット留め、または、接着により、連結することも考えられる。
【0019】
流路を通って搬送される空気が流出する、螺旋状ハウジングからの出口部の周辺領域において、取り付けフランジは、ハウジングハーフに直接形成されてよく、取り付けフランジを介して、ファン全体が、例えば、周辺構造体、つまり、通気システム、空気流路などに取り付けられる。
また、そこに穴部が設けられ、ネジ留めにより取り付けを行うことができる。
【0020】
動作中、ファンの内側、特に、流路の内側では、その周辺と比較して大きな超過圧力が生じる場合があるため、2つのハウジングハーフに補強部材、例えば、補強リブが設けられる。
これにより、高圧、特に、あらゆる圧力変動に耐え得る、より高い寸法安定性が達成される。
【0021】
上記ハウジング構成の代替として、スクロールハウジングは、モータ側に略平坦または略平面の側部と、流入ノズル側に略平坦または略平面の側部と、好ましくは、巻き戻し可能な周部とを備え、これら側部および周部が、板金部材からなる。
したがって、側部とは、側方板金部材である。
これに応じて、周部は、流路の内輪郭部を形成する、巻き戻し可能なスクロール板金部材として構成されてよい。
【0022】
モータとインペラへのアクセスを容易にするために、閉止可能なカバー部材を備える検査用開口部が、モータ側の側部に設けられてよい。
流入ノズルは、この流入ノズル側の側部に一体化されてよく、ワンピース型流入ノズルの実施形態、または、セパレート型の板金部材または合成樹脂部材としての流入ノズルの実施形態が考えられる。
例えば、四角形状または長方形状を有する空気の出口部を、側部によって形成してよい。
さらなる補強を目的として、取り付けフランジの機能を有する、さらなる補強板金部材を設け、それを流出側の側部に取り付ける。
例えば、取り付けフランジは、ファンを上位システム、例えば、空調システム、または外部流路に取り付けるための役割を果たす。
【0023】
ここで、本発明をさらに発展させる様々な形態が存在する。
この目的のために、請求項1に従属する請求項と図面を参照した本発明に係るファンの実施形態とが参照される。
図面に基づく本発明の説明に関して、実施形態および発展形態も、一般的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】インペラ軸の方向から見た、スクロールハウジングを有するファンをインペラ軸に対する横断面上の断面図。
図2図1による、スクロールハウジングを有するファンを流入ノズルおよび出口部を斜めから見た図。
図3図1および図2によるスクロールハウジングの内輪郭部の形状を、図1の見る方向に対応する方向から見た、インペラ軸に対する横断面視の概略図。
図4】インペラと同軸の最大内円と舌部近傍の螺旋状輪郭部の開始点における曲率円とを図3に記載した図。
図5】インペラを通る概略断面と舌部近傍の螺旋状輪郭部の開始点における曲率円とを図3に記載した図。
図6】内輪郭部上の点の方位角θとこれに対応する内輪郭部の局所ピッチ角αの定義とを図3に記載した図。
図7】板金部材からなる螺旋状ハウジングのさらなる構成を有するファンの斜視図。
図8】インペラ軸の方向から見た、図7によるスクロールハウジングを有するファンを、インペラ軸に対する横断面上の断面で示す図。
図9図7および図8によるスクロールハウジングの螺旋状輪郭部の形状を、図8の見る方向に対応する方向から見た、インペラ軸に対する横断面視の概略図。
図10図9にインペラと同軸の最大内円と、舌部近傍の螺旋状輪郭部の開始点における方位角位置とを示す図。
図11】螺旋状ハウジングにおけるインペラ軸からの螺旋状輪郭部の距離に関する2つの推移をグラフで示す図。
図12】螺旋状ハウジングにおける螺旋状輪郭部のピッチ角αに関する2つの推移を示す図。
図13】螺旋状ハウジングにおける螺旋状輪郭部の曲率κに関する2つの推移を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、インペラ軸の方向から見たスクロールハウジング2を有するファン1を、インペラ軸に対する横断面上の断面により示す。
この実施形態におけるスクロールハウジング2は、2つのハウジングハーフからなり(図2も参照)、ここで示す断面は、2つのハウジングハーフの平面の接合面を通っている。
軸方向から見た、ファン軸と直交する平面断面は、スクロールハウジング2の内輪郭部4と出口部5とにより囲まれた面が略最大である位置を通っている。
【0026】
ファン1は、スクロールハウジング2に加えて、断面図で示すロータ11とステータ12とを有するモータ10も備えている。
さらに、ファン1は、円形状ベース部7と断面図であるため不図示のカバーディスクとこれらの間に延在する後方湾曲ブレード8とにより構成される、インペラ3を備えている。
射出成形した合成樹脂部材からなるインペラ3は、その円形状ベース部7において、円形状板金部材13によって、駆動モータ10のロータ11に固定されている。
インペラ3は、ファン動作中、この図面で時計回りに回転する。
したがって、後方湾曲インペラ3、つまり、後方湾曲ブレード8を有するインペラ3である。
後方湾曲のインペラ3の場合、後方湾曲ブレード8のブレード圧力側44は、ファン動作中、インペラ3の回転方向において、この後方湾曲ブレード8のブレード吸込側43に先行し、凸形状を有する一方、ブレード吸込側43は、凹形状を有する。
特に、径方向内側から(前縁から)径方向外側に向かう(後縁に向かう)後方湾曲ブレード8の形状を考慮すると、後方湾曲ブレード8は、回転方向の反対方向に湾曲している。
【0027】
ファン動作中、搬送空気は、径方向外側に、インペラ3から、インペラ軸に関して略周方向に延在するスクロールハウジング2の流路45内へと流出する。
舌部9の領域における最も幅狭の領域から、流路45は、その形状が周方向に拡幅していることから、受け入れる空気流は、周方向においてスクロールハウジング2からの出口部5に向かうにつれて増加する。
本発明にとって本質的なことは、ファン1の効率性および音響特性に決定的な影響を及ぼす、内輪郭部4の構成および形状である。
この形状、および、その関連する特徴は、図5図8に示されている。
【0028】
図2は、図1に示すスクロールハウジング2を有するファン1の流入ノズル14および出口部5の斜視図である。
この実施形態において2つのハウジングハーフ2a,2bを備えるスクロールハウジング2の構造が、視覚的に明らかにされている。
これらハウジングハーフ2a,2bは、射出成形した合成樹脂部材からなる。
ファン動作中に周囲空気がインペラ3内へと通る流入ノズル14は、ノズル側ハウジングハーフ2aに一体化されている。
インペラ3の部材(後方湾曲ブレード8および円形状ベース部7)と、インペラ3が取り付けられているモータ10のロータ11は、流入ノズル14を通して見ることができる。
また、平坦な流入領域24は、流入ノズル14の径方向外側で流入側に形成されてよく、この流入領域24の外径は、ファン軸を中心とする、流入ノズル14の最大半径よりも、少なくとも35%大きい。
【0029】
モータ側ハウジングハーフ2bにおけるモータ10は、そのステータ12とともにこれに対応する固定装置に固定され、この固定装置は、モータ側ハウジングハーフ2bに一体化されている。
2つのハウジングハーフ2a,2bは、連結領域16において、互いに連結されている。
この実施形態では、穴部17bを有するフランジが示され、この穴部17bにおいて、ハウジングハーフ2a,2bをネジ留めにより互いに連結することができる。
他のタイプの連結手段、例えば、クリップ留め、リベット留め、および/または、接着によるものも考えられる。
【0030】
取り付けフランジ15は、スクロールハウジング2からの出口部5の周辺領域に形成され、この出口部5を通って空気が流出し、これに対応する形状を有するダクト内に流入する。
このフランジを用いて、ファン1全体が、周辺構造体、例えば、空調システムまたは空気ダクトに取り付けられる。
このため、ネジを取り付け可能な穴部17aが用いられる。
ファン動作中、スクロールハウジング2内部、その流路45において、外部環境よりも大きな超過圧力が生じる場合があるため、より高い寸法安定性を得るために、2つのハウジングハーフ2a,2bに、補強部材18、この場合、補強リブ18が設けられている。
【0031】
図3は、図1および図2のスクロールハウジング2の内輪郭部4の形状を、図1の見る方向に対応する方向から見た、インペラ軸に対する横断面視の概略図を示す。
インペラ軸25と直交する断面を見ることができ、例えば、軸方向から見た場合、内輪郭部4と出口部5とにより囲まれた領域が最大である断面、または、インペラ3の出口部5の中心の高さ、もしくは、流路45の略中心における断面である。
この概略図において、内輪郭部4が、この内輪郭部4が開口する出口部5を取り囲んでいることを見ることができる。
内輪郭部4は、舌部9側の出口部輪郭部27、舌部9、インペラ軸25を略中心として延在する螺旋状輪郭部26、および、舌部9から離隔した出口部輪郭部28に、さらに区分されてよい。
【0032】
図4は、インペラと同軸の最大内円29と、舌部近傍の、螺旋状輪郭部26の開始点30における曲率円32とを、図3にさらに記載した図を示す。
舌部近傍における螺旋状輪郭部26の開始点30は、インペラ軸25に最も近接している、内輪郭部の点として、または、インペラ3の回転方向に舌部9から移動する場合、内輪郭部4の曲率の符号が逆になる点として定義されてよい。
螺旋状輪郭部26の開始点30における曲率円32の半径は、螺旋状輪郭部26の延在領域の大部分にわたって、曲率円32の半径の推移と比較して小さく、開始点30における螺旋状輪郭部26の曲率円32の半径が、極小である。
【0033】
図5は、図4と同様に、インペラ3を通る概略断面と舌部近傍の螺旋状輪郭部26の開始点30における曲率円32とを、図3にさらに記載した図を示す。
この実施形態において、開始点における螺旋状輪郭部26の曲率円32の半径は、インペラ3の最大半径33よりも小さく、つまり、開始点30におけるこの曲率半径32は、螺旋状輪郭部を有する先行技術、例えば、対数螺旋よりも小さい。
これにより、後方湾曲インペラに用いるスクロールハウジング2において、高効率性と、低減した騒音放射とが達成される。
舌部9と、インペラ3の最大半径33、または、インペラ3の後方湾曲ブレード8との間には、インペラ3の最大半径33の少なくとも6%または10%の間隔があり、このことは、低騒音性に有利である。
【0034】
図6は、図4および図5と同様に、螺旋状輪郭部26上の点P(35)において流出角となる方位角θ(36)と、これに対応する螺旋状輪郭部26の局所的なピッチ角α(37)の定義とを、図3にさらに記載した図を示す。
螺旋状輪郭部26上の点P(35)の位置は、方位角θ(36)により定められる。
ここで、この流出角となる方位角θ(36)は、インペラ軸25から点P(35)までの線と、インペラ軸25と螺旋状輪郭部26の開始点30とを結ぶ基準線31と、の間の角である。
各点P(35)において、周方向(P(35)を通る、インペラと同軸の円34の接線)と、螺旋状輪郭部26、つまり、P(35)におけるその局所的な接線との間のピッチ角α(37)を定めることができる。
このピッチ角α(37)の推移が、高効率性と低騒音性を達成するために重要である。
特に、方位角θ(36)が0°~180°の範囲にある場合が検討されるが、舌部9近傍の推移が、重要である。
方位角θ(36)が0°~180°の範囲にある場合のピッチ角α(37)の推移に加えて、インペラ軸25からの螺旋状輪郭部26の距離rの推移も、また、この範囲において検討されてよく、または、点P(35)における、かつ、ある方位角θ(36)における、局所的な曲率半径の逆数である、曲率κの推移が検討されてもよい。
螺旋状輪郭部26は、これらの推移を特徴とし、図11図13は、本発明に係るスクロールハウジングに関する典型的な推移を示している。
【0035】
図11は、本発明のスクロールハウジングにおけるインペラ軸25からの螺旋状輪郭部26の距離rに関する2つの推移のグラフを示す。
図示されている両方の推移に関して、距離rは、舌部9における螺旋状輪郭部26の開始点30において、最小値をとり、少なくともθ=180°までは、螺旋状輪郭部26の延在領域において、実質的に増加する。
距離rは、θ=0°からθ=45°までの扇形領域において比較的急速に増加することが重要である。
例えば、三角形記号が付された曲線で示す螺旋状輪郭部に関する距離rは、θ=0°からθ=45°までの範囲において、163mmから224mmへと61mm増加し、この範囲における平均増加率が1.36mm/1°である一方、θ=45°からθ=180°までの範囲において、224mmから278mmへと54mm増加し、この範囲における平均増加率は、0.4mm/1°となる。
つまり、方位角θに対する半径の平均増加率は、θ=0°からθ=45°までの扇形領域において、θ=45°からθ=180°までの範囲におけるよりも3倍超ほど高いことになる。
【0036】
2番目の例において、四角形記号が付された曲線で示す螺旋状輪郭部に関する半径は、θ=0°からθ=45°までの範囲において、103mmから122mmへと19mm増加し、この範囲における平均増加率が0.42mm/°である一方、θ=45°からθ=180°までの範囲においてと122mmから152mmへと30mm増加し、この範囲における平均増加率は、0.22mm/°となる。
つまり、方位角θに対する半径の平均増加率は、θ=0°からθ=45°までの扇形領域において、θ=45°からθ=180°までの範囲におけるよりも、1.5倍超ほど高いことになる。
【0037】
図12は、本発明に係るスクロールハウジングにおける螺旋状輪郭部26のピッチ角αに関する2つの推移のグラフを示す。
両方の推移は、θ=0°からθ=45°までの扇形領域において比較的大きなピッチ角αを示している。
例えば、三角形記号が付された曲線で示す螺旋状輪郭部に関するピッチ角αは、θ=0°からθ=45°までの区間において、平均値が約21°である一方、θ=45°からθ=180°までの区間において、平均値が約5.5°である。
つまり、螺旋状輪郭部26の平均ピッチ角αは、θ=0°からθ=45°までの扇形領域において、θ=45°からθ=180°までの範囲におけるよりも、3倍超ほど大きいことになる。
【0038】
2番目の例において、四角形記号が付された曲線で示す螺旋状輪郭部に関するピッチ角αは、θ=0°からθ=45°までの区間においては、平均値が約12°である一方、θ=45°からθ=180°までの区間において、平均値が約5.5°である。
つまり、螺旋状輪郭部26の平均ピッチ角αは、θ=0°からθ=45°までの扇形領域において、θ=45°からθ=180°までの範囲におけるよりも、2倍超ほど大きいことになる。
【0039】
図13は、本発明に係るスクロールハウジングにおける、螺旋状輪郭部26の曲率κに関する2つの推移のグラフを示す。
両方の推移は、θ=0°からθ=45°までの扇形領域において比較的大きな曲率κを示している。
例えば、三角形記号が付された曲線で示す螺旋状輪郭部に関する曲率κは、θ=0°からθ=45°までの区間においては、平均値が約0.00621/mmである一方、θ=45°からθ=180°までの区間において、平均値が約0.00421/mmである。
つまり、螺旋状輪郭部26の平均曲率κは、θ=0°からθ=45°までの扇形領域において、θ=45°からθ=180°までの範囲におけるよりも、35%超ほど大きいことになる。
【0040】
2番目の例において、四角形記号が付された曲線で示す螺旋状輪郭部に関する曲率κは、θ=0°からθ=45°までの区間において、平均値が約0.011/mmである一方、θ=45°からθ=180°までの区間において、平均値が約0.00741/mmである。
つまり、螺旋状輪郭部26の平均曲率κは、θ=0°からθ=45°までの扇形領域において、θ=45°からθ=180°までの範囲と比較して、30%超ほど大きいことになる。
【0041】
また、図11図13の上記説明は、θ=0°からθ=45°までの扇形領域が、一例として選択されたものである。
同様に、別の実施形態において、別の扇形領域が、θ=0°からθ=24°までの扇形領域、および、θ=0°からθ=55°までの扇形領域から選択されてもよい。
【0042】
図7は、板金からなるスクロールハウジング2のさらなる構成を有するファン1の斜視図を示す。
この実施形態におけるスクロールハウジング2の主要な構成要素は、モータ側の略平面の側方板金部材39、流入ノズル側の略平面の側方板金部材40、および、スクロール板金部材41とも称され、インペラ軸と直交する平面上断面において、内輪郭部4を有する(図9参照)、巻き戻し可能な略周方向の側方板金部材41である。
この実施形態において、メンテナンス用カバー部材38も、モータ側の側方板金部材39に取り付けられ、モータ10とインペラ3へのアクセスが容易になる。
流入ノズル(不図示)が、ワンピースで、またはセパレート型の板金部材もしくは合成樹脂部材として取り付けられるかのいずれかで、流入ノズル側の側方板金部材40に一体化されている。
この実施形態における四角形状を有する空気出口部5は、側方板金部材39~側方板金部材41により形成され、さらなる板金部材が、さらなる補強を目的として取り付けられ、取り付けフランジ15として機能し、穴部17aが設けられ、スクロールハウジング2またはファン1の、上位システム、例えば、空調システム、または流路への取り付けを簡素化する。
【0043】
図8は、インペラ軸の方向から見た、図7によるスクロールハウジング2を有するファン1を、インペラ軸に対する横断面上の断面により示す。
流路45の縁部において内側に内輪郭部4を有する、周方向の側方板金部材41を、断面により見ることができる。
内部に設けたインペラ3は、後方湾曲ブレード8と円形状ベース部7とカバーディスク(不図示)とを有する後方湾曲インペラであり、ファン動作中のその回転方向は、時計回りである。
インペラ3は、モータ10により駆動され、インペラ3が取り付けられたモータ10のロータ11は、インペラ3の内側に見ることができる。
出口部5は、セパレート型板金部材として構成されている取り付けフランジ15により囲まれている。
この実施形態では、内輪郭部4の特別な構成に関する、特別な特徴が視覚化されている。
このように、舌部9近傍において大きな曲率を有する特別な形状を有する内輪郭部4の全体が、周方向の側方板金部材41により構成されるわけではない。
内輪郭部4の一部は、例えば、より薄い板厚部材からなってよい、さらなる内側舌部板金部材42により構成されている。
さらに、内側舌部板金部材42は、側方板金部材39~側方板金部材41とともに、さらなる安定性をスクロールハウジング2に付与することができる。
【0044】
図9は、図7および図8に示すスクロールハウジング2の内輪郭部4の形状を、図8の見る方向に対応する方向から見た、インペラ軸に対する横断面視の概略図により示す。
インペラ軸25と直交する断面を見ることができ、例えば、軸方向から見た場合、内輪郭部4と出口部5とにより囲まれた領域が最大である点における断面、または、インペラ3の出口部5の中心の高さ、もしくは、流路45の略中心における断面である。
この概略図において、内輪郭部4が、この内輪郭部4が開口する出口部5を取り囲んでいることを見ることができる。
内輪郭部4は、舌部側の出口部輪郭部27、舌部9、インペラ軸25を略中心として延在する螺旋状輪郭部26、舌部から離隔した出口部輪郭部28、および、舌部9と出口部輪郭部27との間の別個の移行輪郭部46に、さらに区分されてよい。
その他については、ここでも準用する図3図6の説明が、参照される。
【0045】
図10は、図9に、インペラと同軸の最大内円29と舌部9における螺旋状輪郭部26の開始点30の方位角の位置とを、さらに記載した図を示す。
この場合も、ここでも準用する図3図6の説明が参照される。
【0046】
本発明のさらに有利な形態に関しては、繰り返しを避けるため、本明細書の一般部分、および、添付の特許請求の範囲が参照される。
【0047】
最後に、本発明は、特許請求される特徴の実施形態に限定するものではない。
【符号の説明】
【0048】
1 ・・・ファン
2 ・・・スクロールハウジング
2a・・・ノズル側スクロールハウジングハーフ/ノズル側ハウジングハーフ
2b・・・モータ側スクロールハウジングハーフ/モータ側ハウジングハーフ
3 ・・・インペラ
4 ・・・内輪郭部/螺旋状輪郭部
5 ・・・出口部
6 ・・・移行領域
7 ・・・インペラの円形状ベース部
8 ・・・後方湾曲ブレード
9 ・・・舌部
10 ・・・モータ
11 ・・・モータロータ
12 ・・・モータステータ
13 ・・・円形状板金部材
14 ・・・流入ノズル
15 ・・・取り付けフランジ
16 ・・・連結領域
17a・・・穴部
17b・・・穴部
23 ・・・ハウジングハーフ連結領域
24 ・・・流入領域
25 ・・・インペラ軸
26 ・・・螺旋状輪郭部、輪郭部
27 ・・・舌部側の出口部輪郭部
28 ・・・舌部から離隔した出口部輪郭部
29 ・・・インペラと同軸の最大内円
30 ・・・螺旋状輪郭部の開始点
31 ・・・0°線、方位角を定めるための基準線
32 ・・・螺旋状輪郭部の最小曲率円、螺旋状輪郭部の開始点における曲率円
33 ・・・インペラの最大半径
34 ・・・インペラと同軸で、内輪郭部上の点Pを通る円
35 ・・・内輪郭部上の点P
36 ・・・内輪郭部の方位角θ
37 ・・・点Pにおける内輪郭部のピッチ角α
38 ・・・メンテナンス用カバー部材、検査用開口部
39 ・・・モータ側の側方板金部材
40 ・・・流入ノズル側の側方板部材金
41 ・・・周方向の側方板金部材、スクロール板金部材
42 ・・・内側舌部板金部材
43 ・・・ブレード吸込側
44 ・・・ブレード圧力側
45 ・・・スクロールハウジングの流路
46 ・・・移行輪郭部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】