IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルケマ フランスの特許一覧

特表2022-542357薄肉金型を使用して複合材料でできた部品を製造する方法
<>
  • 特表-薄肉金型を使用して複合材料でできた部品を製造する方法 図1
  • 特表-薄肉金型を使用して複合材料でできた部品を製造する方法 図2
  • 特表-薄肉金型を使用して複合材料でできた部品を製造する方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-03
(54)【発明の名称】薄肉金型を使用して複合材料でできた部品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/44 20060101AFI20220926BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20220926BHJP
   B29C 39/24 20060101ALI20220926BHJP
   B29C 70/48 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B29C39/44
B29C39/10
B29C39/24
B29C70/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504224
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(85)【翻訳文提出日】2022-03-17
(86)【国際出願番号】 FR2020051340
(87)【国際公開番号】W WO2021014100
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】1908297
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】オックステッテル, ジル
【テーマコード(参考)】
4F204
4F205
【Fターム(参考)】
4F204AA03
4F204AA21
4F204AA24
4F204AA29
4F204AA34
4F204AA40
4F204AC05
4F204AD16
4F204AR02
4F204AR20
4F204EA03
4F204EB01
4F204EB11
4F204EF27
4F204EK13
4F205AA03
4F205AA21
4F205AA24
4F205AA29
4F205AA34
4F205AA40
4F205AC05
4F205AD16
4F205HA12
4F205HA27
4F205HA34
4F205HA35
4F205HB01
4F205HB11
4F205HK04
(57)【要約】
本発明は、薄肉金型、並びに強化繊維及びポリマーマトリックスを含む複合材料でできた部品を製造する方法に関し、この方法は以下の連続的な工程:内部に強化繊維が配列されている閉じた薄肉金型を、プレス上に取り付けられたマトリックス中に設置する工程と;プレスを閉じる工程と;ポリマー、又は少なくとも1つのプレポリマー、少なくとも1つのモノマー、若しくはそれらの混合物を含む反応性組成物を、溶融状態で閉じた薄肉金型へ注入する工程と;反応性組成物を使用する場合、ポリマーマトリックスの重合のすべて又は一部においてプレスの閉鎖を維持する工程と;プレスを開け、前記金型内で0.7と10barの間、好ましくは0.7と5barの間の残圧を維持しながら、薄肉金型をプレスから取り出す工程と;前記残圧下で金型を冷却する工程とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維及びポリマーマトリックスを含む複合材料でできた部品を製造する方法であって、以下の連続的な工程:
- 内部に強化繊維が配列されている閉じた薄肉金型(11)を、プレス(12)上に取り付けたマトリックス中に設置する工程と、
- プレス(12)を閉じる工程と、
- ポリマー、又は少なくとも1つのプレポリマー、少なくとも1つのモノマー、若しくはそれらの混合物を含む反応性組成物を、溶融状態で閉じた薄肉金型(11)へ注入する工程と、
- 反応性組成物を使用する場合、ポリマーマトリックスの重合のすべて又は一部においてプレス(12)の閉鎖を維持する工程と、
- プレス(12)を開ける工程と、
- 前記金型(11)において0.7と10barの間、好ましくは0.7と5barの間の残圧を維持しながら、薄肉金型(11)をプレス(12)から取り出す工程と、
- 前記残圧下で金型(11)を冷却する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
薄肉金型(11)に、0.7bar~0.9barの圧力を容易にする真空充填システムが設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プレス(12)のマトリックスが250℃と320℃の間の一定の温度に維持されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
冷却工程が、薄肉を通した周囲の空気との熱伝導により、0.7と10barの間、好ましくは0.7と5barの間の残圧下において、形成されるポリマーの結晶化温度(Tc)よりも低い温度まで前記金型(11)を冷却することで構成されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
冷却工程が、0.7と10barの間、好ましくは0.7と5barの間の残圧下において、形成されるポリマーの結晶化温度以下の温度で調整されたいわゆる冷間成形装置(15)に薄肉金型(11)を置くことで構成されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
冷却工程後、薄肉金型(11)からの複合材料の離型工程を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
注入工程が反応性組成物により行われる場合、反応性組成物の重合が脱ガスの存在下で行われ、好ましくは、脱ガスが大気圧に対して0.010~0.950bar、好ましくは0.700~0.900barの範囲の真空を適用することにより行われることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
重合のすべて又は一部においてプレス(12)の閉鎖を維持するための工程が、好ましくは10~70bar、さらにより優先的には40~60barの範囲の圧力で、金型(11)の圧縮により行われることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ポリマーマトリックスが、ポリアミド、ポリエステル、ポリアミド-イミド、ポリアミド-エーテル、ポリアクリル、ポリオレフィン、フェニレンポリスルフィド、ポリエーテル-イミドマトリックス、好ましくはポリアミドマトリックスから選択されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記強化繊維が、無機繊維、好ましくはガラス、炭素、若しくは玄武岩繊維、特にガラス若しくは炭素繊維から、又は合成繊維、好ましくはアラミド繊維若しくはポリアリールエーテルケトン繊維から、又はそれらの混合物から選択され;及び/又は強化繊維が1,000を超える、好ましくは2,000を超えるL/D比を有し、Lが繊維の平均長さでありDがそれらの平均直径であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
組み立てることを意図した2つの部材を含む金型であって、金型が、
- 部材の縁全体にわたって溝を含む、第1の部材と、
- 部材の縁全体にわたって突出リブを含む、第2の部材と
から成り、
溝及びリブの位置は金型が閉位置にあるときに互いに適合するように選択され、
- 密封材が第1の部材の溝に配置され、
- 部材が、反応性組成物の注入温度における水の飽和蒸気圧よりも高い残留成形圧力に耐える厚さのものであり、
- 部材が熱伝導性を有する
ことを特徴とする、金型。
【請求項12】
残留成形圧力が、5bar以下、好ましくは0.7と5barの間であることを特徴とする、請求項11に記載の金型。
【請求項13】
金型を閉位置で維持することを可能にする真空充填システムを備えていることを特徴とする、請求項11又は12に記載の金型。
【請求項14】
0.7と10barの間、好ましくは0.7barと5barの間の残圧を適用することを可能にする機械的閉鎖システムを含むことを特徴とする、請求項11又は12に記載の金型。
【請求項15】
第1の部材の溝に配置された密封材を冷却することを可能にする冷却流路を備えていることを特徴とする、請求項11から14のいずれか一項に記載の金型。
【請求項16】
複合材料の製造のための、請求項11から15のいずれか一項に記載の金型の使用。
【請求項17】
同一形状のいくつかの貯蔵ゾーンを含む、回転の軸上に配置された円形デバイスであって、前記形状が金型の一部の形状と相補的である、円形デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性組成物から成形用繊維を含む強化複合材料でできた部品を製造する方法に関し、この方法は薄肉金型を実施する。本発明は、薄肉金型、及び複合材料を製造するためのその使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
成形による複合材料製品の製造が知られている。RTMとして知られる樹脂トランスファーによる成形法又は「樹脂トランスファー成形」、及びCRTMとして知られICM(射出圧縮成形)とも呼ばれる圧縮樹脂トランスファー成形法が一般に使用される。これらの方法は温度制御プレスを使用する。一般に、このタイプの成形法は等温である。これは特に熱硬化性樹脂の場合に当てはまる。しかし、熱可塑性物質樹脂の場合、反応性組成物又は使用されるポリマーの粘度を低下させて繊維を含浸することにより繊維の含浸を促進するために、非等温法を使用することが有利である場合がある。反応性の方法の場合、非等温サイクルは、成形法の温度を上昇させることにより重合の反応速度を加速させるのにも有用である。その場合強化繊維をプレスの金型内で配列させる。この金型を閉じ、予熱されていない場合は次いで温度を上昇させる。ポリマー又はこのポリマーの前駆体(複数可)に基づく反応性組成物を溶融状態で金型へ注入する。次に、冷却により金型の温度を低下させる。次いで、得られる部品を金型から取り出す。したがって、プレスは、一般に抵抗器又は高温流体システムを使用する加熱システム、及び一般に低温の水又は圧縮空気回路を使用する冷却システムを備えている。
【0003】
モノマーの組成物又はプレポリマーであっても注入することが可能である。十分な重量を有する1種又は数種のプレポリマーに基づく反応性組成物を使用することが有利となり得る。十分な重量とは、最終ポリマーの重量を得るのに必要な重合時間を短縮させることを可能にする、又は使用される鎖伸長化学が重合副生成物を放出する場合は重合副生成物の量を減少させることを可能にする、それらの重量を意味する。プレポリマーは半結晶性であってもよく、それらのモル質量が十分に高い場合、それらの融点は最終ポリマーの結晶化温度よりも高い。プレポリマーはアモルファスであってもよく、それらのモル質量が十分に高い場合、それらの実施温度は最終ポリマーのガラス転移温度よりも高い。これらの特定の事例において、金型から取り出すことを可能にするために、ポリマー又は反応性組成物の注入温度未満に複合材料を冷却するように熱サイクルを行うことが必要となる。例えば、ポリアミドの場合、重合は重縮合によって行うことができる。この重合の反応速度は比較的遅く、250℃を超える温度においてのみ1分に近い重合時間に遭遇する。
【0004】
したがって、反応性混合物の前駆体(複数可)を急速に、特に250℃を超える温度で、それらが半結晶性である場合は少なくともTmにより表される融点を超える温度で、それらがアモルファスである場合はTgにより表されるそれらのガラス転移温度を超える温度で重合させることを可能にするためには、場合により非等温成形サイクルを行うことも必要であり、次いで半結晶性ポリマーについてはTc又はアモルファスポリマーについてはTgによって表される結晶化温度未満の温度で金型から部品を取り外すことを可能にするために、金型を冷却する。
【0005】
生産速度を高めるために、これらの成形法の継続時間を短縮する現実的な必要性がある。したがって、意図した目的の1つは、金型の加熱工程の継続時間を短縮し、金型の冷却工程の継続時間を短縮することである。1分程度の成形サイクルが特に需要が高い。
【0006】
したがって、このタイプの方法のエネルギーコストを削減する現実的な必要性もある。
【0007】
プレス内の加熱回路の数及び冷却流路の数を増やすことによりこの問題を解決することが可能である。しかし、古いプレスを新しいより精巧なプレスで置き換えることは大きなコストを意味する。さらに、この解決策はこの方法の高いエネルギーコストの問題を解決しない。
【0008】
さらに、均一である組成を有する、良質な成形部品を得ることが重要である。
【発明の概要】
【0009】
この技術的な問題は薄肉を含む取り出し可能な金型を使用することにより解決される。強化繊維及びポリマーマトリックスを含む複合材料でできた部品を製造する方法が提供され、この方法は以下の連続的な工程:
- 内部に強化繊維が配列されている閉じた薄肉金型を、プレス上に取り付けたマトリックス中に設置する工程と、
- プレスを閉じる工程と、
- ポリマー、又は少なくとも1つのプレポリマー、少なくとも1つのモノマー、若しくはそれらの混合物を含む反応性組成物を、溶融状態で閉じた薄肉金型へ注入する工程と、
- 反応性組成物を使用する場合、ポリマーマトリックスの重合のすべて又は一部においてプレスの閉鎖を維持する工程と、
- プレスを開ける工程と、
- 前記金型において0.7と10barの間、好ましくは0.7と5barの間の残圧を維持しながら、薄肉金型をプレスから取り出す工程と、
- 前記残圧下で金型を冷却する工程と
を含む。
【0010】
本発明による方法は製造のエネルギーコストを削減する利点を有する。冷却工程がプレスの外側で行われるので、プレスに取り付けたマトリックスを一定の温度で維持することができる。本発明による方法にしたがって使用されるプレスはもはや温度上昇及び低下が行われなくなる。さらに、重合の一部として、プレスにおいて費やされる時間に相当する製造サイクル時間を大幅に短縮することができ、次いで潜在化した時間でプレスの外側で冷却が行われる。さらに、この方法により製造される部品は、部品全体にわたって同一である組成、特に結晶化度を示す。
【0011】
本発明は、本発明による方法で実施される薄肉金型、及び複合材料の製造のためのその使用にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による方法の特定の工程の略図である。
図2】本発明による薄肉金型の断面図である。
図3】実施例による成形部品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の他の特性、特徴、主題、及び利益は、以下の説明を読んだ後にさらにより明らかとなる。
【0014】
本発明の説明で使用される「...と...の間」及び「...~...」という表現は、示される限界値の各々を含むものとして理解されなければならないことがさらに示される。
【0015】
ここで本発明を以下の説明においてより詳細に、非限定的に説明することにする。
【0016】
本発明による方法は薄肉金型を実施する。薄肉金型とは、本発明の文脈において2つの相補的な形状を含む金型と理解される。壁の厚さは、金型が反応性組成物の注入温度での水の飽和蒸気圧よりも高い残留成形圧力に耐えるような厚さである。
【0017】
方法の工程
本発明による方法は、内部に強化繊維が配列されている閉位置の薄肉金型を、プレス上に取り付けたマトリックス中に設置する工程を含む。次いで、この金型を覆ってプレスを閉じる。プレスに取り付けたマトリックスの温度まで金型を加熱するように、プレスを十分な時間閉位置で維持する。一般に、金型はプレスに取り付けたマトリックスとの接触が金型の薄肉にその温度を迅速に与えるように設計されているので、金型の温度上昇の継続時間は短い。次いで反応性組成物又はポリマーを金型へ注入する。ポリマーマトリックスが強化繊維に含浸するのを可能にするように、プレスを閉位置で維持する。反応性組成物を使用する場合、薄肉金型がプレス内で維持されている時間内に重合のすべて又は一部を行ってもよい。この場合、この工程の継続時間は使用される反応性組成物によって決まる。次いでプレスを開けて金型の取り出しを可能にする。プレスから取り出した後、離型工程の前に金型を放冷する。
【0018】
この方法の工程の各々を以下に詳細に開示することにする。
【0019】
強化繊維のはめこみ
強化繊維は単純な置く作業により薄肉金型内に配列させるか、又はプリフォームの形態で配列させることができる。
【0020】
本発明の特定の実施形態によれば、強化繊維はプリフォームの形態で作ることができる。次いで強化繊維を、他の場合にはプリフォームバインダーとして知られる接着性樹脂と混合させ、次いで、プリフォームを製造するために場合により適切な金型内で又はさらには本発明による薄肉金型内で直接圧縮することにより、成形する。この後者は容易に操作されるという利点がある。次いでこのプリフォームがまだ薄肉金型内にない場合は薄肉金型内に容易に配列させることができる。
【0021】
使用される強化繊維に応じて、及びポリマーの性質又は成形に使用される反応性組成物の性質に応じて、予備成形工程は80℃と320℃の間の温度で行うことができる。プリフォームバインダーは、適用される注入温度に耐えるように選択される。
【0022】
この任意選択の予備成形工程は、回転の軸上に配置された円形デバイスにおいて行うことができる。好ましくは、円形デバイスの回転軸はプレスの回転軸と平行である。円形デバイスはプレスの近くに配置することができる。例えば、回転式コンベヤーを使用できる。
【0023】
本発明の特定の実施形態によれば、別の金型で行われている場合はロボットアームを使用してプリフォームを薄肉金型内で配列させることができる。
【0024】
成形法の全体を通して、すなわちプレス内の金型の設置から離型までにわたって、薄肉金型は閉位置で維持される。
【0025】
この閉位置での維持は、真空充填システムによって、又は従来の機械的閉鎖システムによって行われてもよい。
【0026】
好ましくは、薄肉金型は0.7と10barの間、好ましくは0.7barと5barの間の残圧を与える真空充填システムを備えている。有利には、前記残圧は0.7~0.9barである。
【0027】
有利には、残圧が0.7~0.9barである場合、重合は重付加により、又はラジカル重合により、又は求核置換により行われる。
【0028】
有利には、薄肉金型が機械的閉鎖システムを含む場合、前記残圧は0.9~10bar、優先的には0.9~5barである。
【0029】
プレス内へ金型を設置する前の任意選択の脱ガスの予備工程
本発明による方法は、プレス内へ金型を設置する工程の前に、薄肉金型における脱ガス工程を含んでいてもよい。これはプレス下での薄肉金型の移動の際に、薄肉金型の閉鎖を維持することを可能にする。これはまた薄肉金型において空気のすべて又は一部、及び/又は任意の他の物質を排除することも可能にし、その存在は複合材料部品の製造に対して悪影響を及ぼすことがある。実際に、閉じた薄肉金型における繊維の脱ガスは、ポリマー又は反応性組成物の注入を開始する前に行われ、気泡と関連する空隙率を減少させることを可能にする。
【0030】
本発明の特定の実施形態によれば、薄肉金型には、少なくとも1つのポンプ及び1つ又はいくつかの脱気孔を含む、金型の筐体に存在するガス抽出システムである脱ガスシステムが設けられている。重縮合による重合化学系を使用する場合、ポリマー又は反応性組成物が重合を制限する条件下で注入されるのを可能にするように真空充填システムを閉じる。これは、ポリマー又は反応性組成物が、脱ガスに使用される金型の脱気孔に導入され脱気孔をブロックするリスクがあるほど注入温度において十分に流体である場合にも当てはまる。
【0031】
脱ガスは、大気圧に対して0.010~0.950bar、好ましくは0.700~0.900barの範囲の真空で行われてもよい。
【0032】
プレス内への薄肉金型の設置
この方法は、内部に強化繊維が配列されている閉じた薄肉金型を、プレス上に取り付けたマトリックス中に設置する工程を含む。
【0033】
本発明の別の特定の実施形態によれば、ロボットアームを使用して成形プレスのマトリックス中に薄肉金型を配置することができる。回転式コンベヤー及びロボットアームの組み合わせも可能である。
【0034】
プレスの閉鎖
次いで、薄肉金型がプレスのマトリックス中に配置される、プレスが閉じられる。プレスのマトリックスがその温度を金型の壁に与えるように、プレスを閉位置で十分な時間維持する。金型の薄肉の厚さは、プレスのマトリックスと金型の壁との間の熱伝導が高くなるような厚さである。
【0035】
プレス内へ金型を設置した後の任意選択の脱ガスの予備工程
本発明による方法は、注入工程の前に薄肉金型における脱ガス工程を含んでいてもよい。この脱ガスの適用は、薄肉金型において空気のすべて又は一部、及び/又は任意の他の物質を排除することを可能にし、その存在は複合材料部品の製造に対して悪影響を及ぼすことがある。実際に、閉じた薄肉金型における繊維の脱ガスは、ポリマー又は反応性組成物の注入を開始する前に行われ、気泡と関連する空隙率を減少させることを可能にする。薄肉金型は、好ましくは、この脱ガスの実施を可能にする真空充填システムを備えている。金型の脱ガス後、ポリマー又は反応性組成物が注入されるのを可能にするために真空充填システムを閉じる。
【0036】
ポリマー又は反応性組成物の注入
次いで、本発明による方法は、ポリマー、又は少なくとも1つのプレポリマー、少なくとも1つのモノマー、若しくはそれらの混合物を含む反応性組成物を、溶融状態で閉じた薄肉金型へ注入する工程を含む。有利には、注入工程の継続時間は15秒未満である。好ましくは、この工程の継続時間は1~10秒となる。反応性組成物を使用する場合、短い注入時間は、この工程の間に反応性組成物が同時に又は後に続いて重合するのを制限することを可能にし、これは繊維の含浸を改善する。
【0037】
RTMに相当する特定の実施形態において、閉じた金型へのポリマー又は反応性組成物の注入、及び強化繊維の含浸は同時である。この実施形態において、任意選択の最初の脱ガスの後、脱ガスを行わずに注入及び含浸が行われる、すなわち脱ガスシステムの脱気孔において真空が適用されない。
【0038】
CRTMに相当する別の実施形態によれば、任意選択の最初の脱ガスの後、好ましくは注入の際に脱ガスを行わずに、開放圧縮チャンバーを含む金型へポリマー又は反応性組成物を注入し、次いで、圧縮チャンバーの閉鎖により生じる圧縮の間に、前記圧縮の際の脱ガスを行わずに、好ましくは10~70bar、さらにより優先的には40~60barの圧力を金型にかけて、反応性組成物による強化繊維の含浸を行う。この圧力は反応性組成物による繊維の含浸を改善する。
【0039】
反応性組成物を使用した特定の実施形態によれば、重合工程の際に金型に加えられる温度は、プレポリマーの融点Tmを超え、好ましくは少なくとも5℃を超える。
【0040】
反応性組成物を使用する別の実施形態によれば、重合温度は最高の融点を有するプレポリマーの融点を超え、好ましくは少なくとも5℃を超える。
【0041】
好ましくは、プレスのマトリックスを200と350℃の間、特に230と320℃の間、より詳細には250と320℃の間の一定の温度で維持する。
【0042】
金型の閉鎖を維持するための工程
使用される反応性組成物に応じて、プレスの閉鎖を維持するためのこの工程の継続時間は、プレポリマーからポリマーへ、又はモノマーからプレポリマーへ、次いでポリマーへの転化率によって決まることになる。好ましくは、この工程の継続時間は、プレポリマーの分子量を倍にするのに必要な時間に相当する。
【0043】
使用される反応性組成物に応じて、RTMの場合は注入の間、又は組成物のCRTMの場合は射出圧縮の間に重合が開始し、次いで冷却中に継続するという事実を想定することが可能である。この実施形態は、プレスに費やされる時間を短縮し、そのためコストを大幅に増大させることなく部品の生産速度を大幅に高めることを可能にする。
【0044】
維持工程の間、好ましくは5bar未満の圧力を維持して、脱ガスを行ってもよい。この脱ガスは、大気圧に対して0.010~0.950bar、好ましくは0.700~0.900barの範囲の真空を適用することにより行われてもよい。金型に配置されるシステムの脱気孔は十分に小さい直径を有し、反応性組成物は、脱気孔において反応性組成物が脱気孔を通過し金型から出るのを防ぐ圧力損失を生じさせるのに十分な粘性がある。
【0045】
プレスからの金型の取り出し
次いでプレスを開ける。次いで薄肉金型をプレスから取り出す。これらの2つの工程の間、薄肉金型は真空により閉位置を維持され0.700~0.900barの圧力を容易にする。
【0046】
プレスの外側で金型の閉鎖を維持し冷却する工程
次いでこの方法は、場合により反応性組成物からのポリマーマトリックスの重合を終了させるために、プレスの外側で金型の閉鎖を維持する工程を含む。この圧力は「保持圧力」とも呼ばれる。有利には、この圧力は含浸工程の間に適用される圧力よりも低い。特に好ましい様式において、この圧力は重縮合の場合には水の飽和蒸気圧よりも高い。「水の飽和蒸気圧」とは、前記重合が行われる温度における、反応性組成物の重合後に得られる複合材のマトリックス中の、溶解した水の飽和蒸気圧と理解される。水の飽和蒸気圧よりも高い保持圧力の適用は、複合材料の品質を劣化させることになる、重合中に副生成物として生成される水が泡を形成するのを防ぐ。好ましくは、閉鎖を維持する工程の間に適用される圧力は3~7bar、さらにより優先的には4~6barである。
【0047】
特定の実施形態によれば、脱ガスは、プレスの外側にある、金型の閉鎖を維持する工程の継続時間のほぼ全体にわたって適用される。しかし重合工程中に適用される圧力は、反応性組成物が脱ガスの適用中に脱気孔を通過しないように十分に低くなければならない。
【0048】
プレスの外側にある金型の閉鎖を維持する工程の継続時間は、反応性組成物の重合の反応速度によって決まる。この継続時間は好ましくは15分未満、好ましくは10分未満、より優先的には5分未満である。
【0049】
冷却
薄肉を通した周囲の空気との熱伝導により、低温の室内において、又はさらには冷間成形装置において、低温環境との熱伝導により、薄肉金型が放冷され、周囲温度は形成されるポリマーの結晶化温度(Tc)よりも低い温度に到達することが可能である。
【0050】
別の実施形態によれば、冷却は、0.7と10barの間、好ましく0.7barと5barの間の残圧下で、形成されるポリマーの結晶化温度Tc以下の温度で管理されるいわゆる冷間成形装置内に、薄肉金型を配置することから成る。
【0051】
有利には、冷却工程は冷間成形装置により行われる。
【0052】
金型からの取り出し
次いで複合材料部品をその薄肉金型から取り出す。
【0053】
取り付け及び取り出し
本発明の好ましい実施形態によれば、取り付け及び薄肉金型から取り出す工程は、ポリマー又は反応性組成物を注入する工程の前及び/又は後で、ロボットアームを使用して行われてもよい。実際に、プレスのマトリックスを比較的高い一定の温度で維持することを可能にする本発明による方法において、ロボットアームの使用はこれらの装置を扱うオペレーターを危険にさらすことを避ける。
【0054】
金型をプレス内へ置く前の工程に関しては、冷却工程のために金型をプレスから例えば冷間成形装置へ移動させるのを可能にする、回転の軸上に配置された円形デバイスを使用することが可能である。
【0055】
本発明の特定の実施形態によれば、強化繊維のみを含む金型(成形前)及び冷却しようとする複合材料を含む金型(成形後)が置かれることになる1つの円形デバイスを想定することが可能である。
【0056】
ポリマーマトリックス
複合材料は強化繊維及びポリマーマトリックスを含む。
【0057】
一実施形態によれば、ポリマーマトリックスは、
- 脂肪族、脂環式、又は半芳香族ポリアミド(PA)(ポリフタルアミド(PPA)とも呼ばれる)のファミリーに由来するポリマー及びコポリマー、
- ポリウレア、特に芳香族ポリウレア、
- ポリアクリレート、より詳細にはポリメチルメタクリレート(PMMA)又はその誘導体などの、アクリルのファミリーに由来するポリマー及びコポリマー、
- ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)のようなポリアリールエーテルケトン(PAEK)のファミリー、又はポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)のようなポリ(アリールエーテルケトンケトン)(PAEKK)、又はそれらの誘導体に由来するポリマー及びコポリマー、
- 芳香族ポリエーテルイミド(PEI)、
- ポリアリールスルフィド、特にポリフェニルスルフィド(PPS)、
- ポリアリールスルフィド、特にポリフェニレンスルホン(PPSU)、
- ポリオレフィン、特にポリプロピレン(PP);
- ポリ乳酸(PLA)、
- ポリビニルアルコール(PVA)、
- フッ素化ポリマー、特にポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、
並びにそれらの混合物
から選択することができる。
【0058】
好ましくは、ポリマーマトリックスは、ポリアミド、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリアミド-エーテル、ポリアクリル系、ポリオレフィン、フェニレンポリスルフィド、ポリエーテル-イミドマトリックスから選択される。
【0059】
1つの有利な実施形態によれば、ポリマーマトリックスはポリアミドマトリックスである。
【0060】
一実施形態によれば、ポリマーマトリックスは熱可塑性マトリックスである。
【0061】
特定の実施形態によれば、ポリマーマトリックスは半結晶性マトリックスである。半結晶性ポリマーは、アモルファスポリマーと比較して、大幅に改善された機械的性能、特に高温時に、耐クリープ性及び耐疲労性などを複合材料に与える。
【0062】
有利には、ポリマーマトリックスは少なくとも80℃、好ましくは少なくとも90℃、より優先的には少なくとも100℃、さらにより好ましくは少なくとも120℃のガラス転移温度Tgを有する。80℃以上のガラス転移温度は、使用の温度範囲全体にわたって、例えば風力に関しては90℃以下、自動車に関しては100℃以下、航空学に関しては120℃以下において複合材の良好な機械的特性を保証する。
【0063】
さらにより有利な実施形態によれば、ポリマーマトリックスは半結晶性であり、200℃を超える、好ましくは220℃を超える融点Tmを有する。200℃を超える融点は、特に自動車の産業において、電気泳動処理との適合性をもたらす。好ましくは、融点Tmは320℃以下、さらにより優先的には290℃未満である。320℃を超える融点はより高い温度での複合材料の使用を必要とし、これは成形用材料及び関連する加熱システムに制約を課し、エネルギーの過剰消費につながる。そのような高温での使用はポリマーの熱劣化のリスクを高め、最終的なマトリックスの特性、ひいては複合材料及び最終的な複合材部品の特性の劣化をもたらす。
【0064】
一実施形態によれば、ポリマーマトリックスは、マトリックスの融点Tmと結晶化温度Tcとの差Tm-Tcが60℃を超えない、好ましくは50℃を超えない、より詳細には40℃を超えないような結晶化温度Tcを有する。
【0065】
1つの変形形態によれば、ポリマーマトリックスの結晶化のエンタルピーは10~55J/gの間である。
【0066】
特定の変形形態によれば、ポリマーマトリックスの結晶化のエンタルピーは40J/g~55J/gの間、好ましくは20~35J/gである。
【0067】
複合材料の機械的性能又は高温機械強度は、常温(23℃)と100℃の間における繊維の方向の曲げ破断応力の変化(又は「0°での最大強度」)によって評価されてもよく、良好な高温機械強度は常温(23℃)を基準として破断応力に関して少なくとも75%の機械的性能を維持することに相当する。
【0068】
本発明の一実施形態によれば、ポリマーマトリックスは少なくとも1つのプレポリマー、少なくとも1つのモノマー、又はそれらの混合物を溶融状態で含む反応性組成物の塊状重合によって調製される。
【0069】
有利には、ポリマーマトリックスは、10000g/molを超える、好ましくは10000~40000g/mol、さらにより優先的には12000~30000g/molの数平均モル質量を有する。
【0070】
一実施形態によれば、ポリマーマトリックスは、以下のモノマー:テレフタル二酸、イソフタル二酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン酸、1,10-デカメチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン(MPMD)、2,2,4及び2,4,4-トリメチルヘキサンジアミン(TMD)の混合物、2-メチルオクタンジアミン(8M)、ノナンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン(PACM)m-キシリレンジアミン(MXD)、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3 BAC)、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4 BAC)、カプロラクタム、11-アミノウンデカン酸、12-アミノラウリン酸、及び/又はラウリルラクタムに由来する単位を含むポリアミドマトリックスである。
【0071】
有利な実施形態によれば、ポリマーマトリックスは、PA 11/10T、PA5T/10T、PA 11/5T/10T、PA 6T/10T、PA 11/6T/10T、PA MPMDT/10T、PA MDXT/10T、PA BACT/10T、PA 11/BACT、PA 11/BACT/10T、PA 6/6T、PA 66/6T、PA 6I/6T、PA MPMDT/6T、PA 6T/10T、PA 8MT/9T、PA TMDT/10T、PA PACM12、PA BACT/6T、PA 11/BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA MXD6、及びPA MXD10から選択されるポリアミドマトリックスであり、BACは有利には1,3 BACである。
【0072】
反応性組成物
反応性組成物は、上記で開示されるマトリックスが得られるように、単独で若しくは他のモノマーと反応しやすい1種若しくは数種のモノマー、又は重合工程の間に共に反応しやすい1種若しくは数種のプレポリマーを含む。
【0073】
有利な実施形態において、プレポリマー(複数可)はポリアミドプレポリマーである。
【0074】
各プレポリマーはそれ自体がポリマー(ホモポリマー又はコポリマー)であり、マトリックスよりも小さい数平均モル質量を示す。一実施形態によれば、反応性組成物中に含まれるプレポリマーは、500~10000g/mol、好ましくは750~6000g/mol、より優先的には750~3000g/molの数平均モル質量を有する。
【0075】
一実施形態によれば、少なくとも2種のプレポリマーを使用する場合、これらは実質的に同じ数平均モル質量を示す。「実質的に同じ数平均モル質量」とは、2つの質量の間の差が30%未満であることを意味する。
【0076】
第1の実施形態によれば、組成物は、2個のアミン官能基を有する少なくとも第1のポリアミドプレポリマーA1、及び第1のポリアミドプレポリマーのアミン官能基と共反応性である2個のカルボキシル官能基を有する少なくとも第2のポリアミドプレポリマーA2を含む。プレポリマーA1及びA2の骨格は、同じ性質であってもよく(すなわち繰返し単位中で同じ組成を有する)、又は異なる性質であってもよい。好ましくは、それらは同じ性質である。
【0077】
第2の実施形態によれば、組成物は、互いに共反応性である1個のアミン官能基及び1個のカルボキシ官能基を有する少なくとも1種のポリアミドプレポリマーA3を含む。この実施形態において、組成物は、互いに共反応性である1個のアミン官能基及びカルボキシル官能基を有する1種のポリアミドプレポリマーを含むことが可能であり、又は各々が1個のアミン官能基及び1個のカルボキシル官能基を有する数種の異なるプレポリマーであっても含むことが可能である。この後者の場合において、異なるプレポリマーA3の骨格は同じ性質であってもよく(そのため異なるプレポリマーA3は別個の数平均モル質量によってのみ区別される)、又は異なる性質であってもよい。
【0078】
第3の実施形態によれば、組成物は、2個のアミン官能基を有する少なくとも1種のプレポリマーA1(上記で開示される)、及び2個のカルボキシル官能基を有する少なくとも1種のポリアミドプレポリマーA2(上記で開示される)を含む。
【0079】
第4の実施形態によれば、組成物は、2個のアミン官能基を有する少なくとも1種のプレポリマーA1(上記で開示される)、又は2個のカルボキシル官能基を有する少なくとも1種のポリアミドプレポリマーA2(上記で開示される)、及び式Y-A’-Yの少なくとも1種の鎖延長剤を含み、式中、
- Yは、重付加又は重縮合により前記プレポリマーA1及び/又はA2の少なくとも1個の官能基と反応可能な官能基を有する基であり;
- A’は炭化水素ビラジカルである。
【0080】
プレポリマーが2個のNH官能基(アミン官能基)を有する場合:
- 鎖延長剤Y-A’-Yは、
-- Yがマレイミド、場合によりブロックされたイソシアネート、オキサジノン、及びオキサゾリノンの群から、好ましくはオキサジノン及びオキサゾリノンから選択され、
-- A’が、
---- Yがオキサジノン又はオキサゾリノン基である場合は2個の官能基(基)Yの間の共有結合、又は
---- 脂肪族炭化水素鎖、又は芳香族及び/若しくは脂環式炭化水素鎖であって、後者の2つは置換されていてもよい5個又は6個の炭素原子を有する少なくとも1つの環を含み、場合により前記脂肪族炭化水素鎖が14~200g.mol-1の分子量を有する、脂肪族炭化水素鎖、又は芳香族及び/若しくは脂環式炭化水素鎖
から選択される炭素スペーサー又は炭素基である
ような鎖延長剤であるか、
- 又は鎖延長剤Y-A’-Yは、Yがカプロラクタム基であり、A’がカルボニル基であってもよい鎖延長剤、例えばカルボニルビスカプロラクタムなど、又はA’がテレフタロイル若しくはイソフタロイル、又は置換されていてもよい脂肪族ジエポキシド、脂環式ジエポキシド、又は芳香族ジエポキシドから選択されるジエポキシドであってもよい鎖延長剤である。
【0081】
脂肪族ジエポキシドの例としては、脂肪族ジオールのジグリシジルエーテル、芳香族ジエポキシドとしては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)など、及び脂環式ジエポキシドとしては、脂環式ジオール又は水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルが挙げられる。より一般的には、本発明によるジエポキシドの適切な例としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)及びその水素化誘導体(脂環式)、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル又はヒドロキノンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、Mn<500のポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、Mn<500のポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、Mn<500のポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、Mn<500のビスフェノールAポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、Mn<500のビスフェノールAポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジカルボン酸ジグリシジルエステル、例えばテレフタル酸又はエポキシ化ジオレフィン(ジエン)又は二重エポキシ化エチレン性不飽和を有する脂肪酸のグリシジルエステルのようなもの、ジグリシジル1,2シクロヘキサンジカルボキシレート、及び前述のジエポキシドの混合物が挙げられる。
- 又は前記鎖延長剤Y-A’-Yは環状無水物基Yを有し、好ましくはこの延長剤は、カルボン酸の脂環式及び/又は芳香族二無水物から選択され、より優先的には、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ヘキサフルオロイソプロピリデンビスフタル酸二無水物、9,9-ビス(トリフルオロメチル)キサンテンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタ-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、又は混合物から選択され、A’は上記で定義されるような炭素スペーサー(ラジカル)である。
【0082】
プレポリマーが2個のCOOH官能基(カルボキシ官能基)を有する場合、前記鎖延長剤Y-A’-Yは:
- Yが、オキサゾリン、オキサジン、イミダゾリン、又はアジリジン、例えば1、1’-イソ-若しくはテレフタロイル-ビス(2-メチルアジリジン)のようなもの、又は置換されていてもよい脂肪族ジエポキシド、脂環式ジエポキシド、若しくは芳香族ジエポキシドから選択されるジエポキシドの群から選択されるような鎖延長剤である。脂肪族ジエポキシドの例としては、脂肪族ジオールのジグリシジルエーテル、芳香族ジエポキシドとしては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)など、及び脂環式ジエポキシドとしては、脂環式ジオール又は水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルが挙げられる。より一般的には、本発明によるジエポキシドの適切な例としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)及びその水素化誘導体(脂環式)、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル又はヒドロキノンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、Mn<500のポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、Mn<500のポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、Mn<500のポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、Mn<500のビスフェノールAポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、Mn<500のビスフェノールAポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジカルボン酸ジグリシジルエステル、例えばテレフタル酸又はエポキシ化ジオレフィン(ジエン)又は二重エポキシ化エチレン性不飽和を有する脂肪酸のグリシジルエステルのようなもの、ジグリシジル1,2シクロヘキサンジカルボキシレート、及び前述のジエポキシドの混合物が挙げられる。
- A’は上記で定義されるような炭素スペーサー(ラジカル)である。
【0083】
上記の記述のすべてにおいて、A’は特にアルキレンビラジカル、例えばmが1~14、好ましくは2~10の範囲である-(CH-など、又は置換若しくは非置換のシクロアルキレン及び/若しくはアリーレンビラジカル、例えばベンゼンアリーレンなど、例えばo-、m-、p-フェニレン若しくはナフタレン系アリーレンなどを表す場合がある。
【0084】
一実施形態によれば、反応性組成物は、少なくとも2種のプレポリマーを混合することにより調製される。
【0085】
好ましくは、この方法はプレポリマーの融点を超える温度までプレポリマー(複数可)を予備加熱する工程を含む。好ましくは、適用される加熱温度は200~350℃、特に230~320℃、より詳細には250~320℃である。
【0086】
好ましくは、少なくとも2種のプレポリマーが使用され、この場合この方法は、例えば金型へ注入されることを意図した組成物を形成するために、スタティックミキサー、ダイナミックミキサー、又はRIM(「反応射出成形」)型ミキサーによりプレポリマーを溶融状態で混合する工程を含む。
【0087】
プレポリマー(特にポリアミド)は、当業者に既知の様式でそれぞれのモノマーから重合により調製されてもよく、例えば水圧(反応の進行)及び/又はモノマーの量をチェックすることにより、所望のモル質量が得られたら、重合を中断させることができる。例えば過剰のジアミンモノマー、又は過剰の二塩基酸モノマーを使用して、2個のアミン官能基又は2個のカルボキシル終端官能基を有するプレポリマーA1及びA2を得ることができる。
【0088】
そのような反応性プレポリマーの製造は、例えば国際公開第2014/064375号に開示される。
【0089】
好ましくは、反応性組成物中に含有されるプレポリマー及び前記反応性組成物の重合により得られるポリマーマトリックスは、モノマーa)、b)、及び場合によりc)に由来する単位において同じ組成を有する。
【0090】
特定の実施形態によれば、プレポリマーA1及び/又はA2又はプレポリマーA3は、モノマー:a)テレフタル酸、b1)1,10-デカメチレンジアミン、及びb2)MPMD又はMXDに由来する単位を含む。
【0091】
別の特定の実施形態によれば、プレポリマーA1及び/又はA2又はプレポリマーA3は、モノマーs:a)テレフタル酸、b1)1,10-デカメチレンジアミン、及びb2)1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3 BAC)、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4 BAC)、又はそれらの混合物、特に1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3 BAC)に由来する単位を含む。
【0092】
別の特定の実施形態によれば、プレポリマーA1及び/又はA2又はプレポリマーA3は、モノマーc)に由来する単位を含み、この後者は11-アミノウンデカン酸、12-アミノラウリン酸、及びラウリルラクタムから選択される。
【0093】
別のより具体的な実施形態によれば、プレポリマーA1及び/又はA2又はプレポリマーA3は、モノマー:a)テレフタル酸、b1)1,10-デカメチレンジアミン、b2)1,6-ヘキサメチレンジアミン、又はMPMD、又はMXD、又は1,3 BAC、又は1,4 BAC、及びc)11-アミノウンデカン酸、又は12-アミノラウリン酸、又はラウリルラクタムに由来する単位を含む。
【0094】
さらにより具体的な実施形態によれば、プレポリマーA1及び/又はA2又はプレポリマーA3は、モノマー:a)テレフタル酸、b1)1,10-デカメチレンジアミン、b2)1,6-ヘキサメチレンジアミン、又はMPMD、又はMXD、又は1,3 BAC、又は1,4 BAC、及びc)11-アミノウンデカン酸に由来する単位を含む。
【0095】
さらにより具体的な実施形態によれば、プレポリマーA1及び/又はA2又はプレポリマーA3は、モノマー:a)テレフタル酸、b1)1,6-ヘキサメチレンジアミン、b2)MPMD、又はMXD、又は1,3 BAC、又は1,4 BAC、及びc)11-アミノウンデカン酸に由来する単位を含む。
【0096】
さらにより具体的な実施形態によれば、プレポリマーA1及び/又はA2又はプレポリマーA3は、モノマー:a)テレフタル酸、b1)1,10-デカメチレンジアミン、b2)1,6-ヘキサメチレンジアミン、及びc)11-アミノウンデカン酸に由来する単位を含む。
【0097】
別の特定の実施形態によれば、プレポリマーA1及び/又はA2又はプレポリマーA3は、モノマー:a)テレフタル酸、b1)1,10-デカメチレンジアミン、b2)1,6-ヘキサメチレンジアミン、及びc)ラウリルラクタムに由来する単位を含む。
【0098】
さらにより具体的な実施形態によれば、プレポリマーA1及び/又はA2又はプレポリマーA3は、モノマー:a)テレフタル酸、b1)1,6-ヘキサメチレンジアミン、b2)MPMD、又はMXD、又は1,3 BAC、又は1,4 BAC、及びc)ラウリルラクタムに由来する単位を含む。
【0099】
反応性組成物はモノマーも含んでいてもよく、前記モノマーは前述の前記プレポリマーの前駆体である。
【0100】
反応性組成物は少なくとも1つの炭素ナノフィラーを含んでいてもよい。好ましくは、ナノフィラーは、カーボンブラック、グラフェン、炭素ナノフィブリル、及びカーボンナノチューブから選択される。
【0101】
反応性組成物は1種又は数種の他の添加剤を含んでいてもよい。
【0102】
添加剤はUV、赤外線(IR)、マイクロ波、又は誘起放射線を吸収する添加剤であってもよい。そのような添加剤は、例えば相補的な変形操作、特にサーモスタンピング又はオーバーモールディングの前に、複合材料又はプリフォーム又は複合材料部品を再加熱するのに使用できる。
【0103】
添加剤はまた熱安定剤などの特定の添加剤であってもよく、特にこれらの安定剤は、熱可塑性マトリックス中のポリマーの熱酸化及び/又は光酸化に対する抗酸化剤であり、有機又は無機安定剤である。
【0104】
「有機安定剤」又はより一般的には「有機安定剤の組み合わせ」という表現は、フェノール型の一次酸化防止剤、ホスフィット型の二次酸化防止剤、例えばdoverphos(登録商標)型液体ホスフィット、さらには場合により他の安定剤、例えばヒンダードアミン系光安定剤(例えばCiba’s Tinuvin 770)を意味するHALSなど、抗UV剤(例えばCiba’s Tinuvin312)、フェノール安定剤又はリン系安定剤を表す。Crompton’s Naugard 445などのアミン抗酸化剤、又はさらにはClariant’s Nylostab S-EEDなどの多官能性安定剤も使用してもよい。
【0105】
存在する有機安定剤は、このリストに制限されることなく、
- フェノール抗酸化剤、例えばCiba’s Irganox 245、Irganox 1010、Irganox 1098、Ciba’s Irganox MD1024、Great Lakes’ Lowinox 44B25、Adeka Palmarole’s ADK Stab AO-80、
- リン系安定剤、例えばホスフィットなど、例えばCiba’s Irgafos 168、
- UV吸収剤、例えばCiba’s Tinuvin 312又は酸化チタンTiOなど、
- 上記のような、HALS、
- アミン型安定剤、例えばCrompton’s Naugard 445など、又はさらにはヒンダードアミン型、例えばCiba’s Tinuvin 770など、
- 多官能性安定剤、例えばClariant’s Nylostab S-EEDなど
から選択することができる。
【0106】
これらの有機安定剤の2個以上の混合物を当然想定してもよい。
【0107】
「無機安定剤」という表現は、米国特許第2008/0146717号の文書に開示されるような、銅又は金属酸化物を含有する安定剤を表す。無機安定剤の例としては、ハロゲン化銅及び酢酸銅、又は酸化鉄、例えばFeO、Fe、Feなど、又はそれらの混合物が挙げられる。第2に、銀などの他の金属を場合により検討することができるが、これらは効果が低いことが知られている。
【0108】
これらの無機安定剤は、より詳細には、構造が熱風中で、特に100℃以上、又はさらには120℃以上の温度において改善された長期の耐熱性を有していなければならない場合に採用され、なぜならそれらはポリマー鎖の破断を防ぐ傾向があるためである。
【0109】
より詳細には、「銅を含有する安定剤」は、特にイオン化可能な、又はイオンの形態である、例えば錯体の形態である、少なくとも1つの銅原子を含む化合物を意味すると理解される。
【0110】
銅を含有する安定剤は、塩化銅、塩化第一銅、臭化銅、臭化第一銅、ヨウ化銅、ヨウ化第一銅、酢酸銅、及び酢酸第一銅から選択することができる。銅を含有する安定剤と組み合わせた、銀などの他の金属のハロゲン化物、酢酸塩を挙げることができる。これらの銅系化合物は、典型的にはアルカリ金属ハロゲン化物、特にカリウムと併用される。良く知られる例は、CuI及びKIの混合物であり、CuI:KI比は典型的には1:5~1:15の間である。そのような安定剤の例は、Ciba’s Polyadd P201である。
【0111】
銅を含有する安定剤についてのさらなる詳細は米国特許第2,705,227号に見られる。さらに近年では、銅を含有する安定剤、例えば銅錯体など、例えばBrueggemann’s Brueggolen H3336、H3337、H3373などが登場した。
【0112】
有利には、銅系安定剤は、ハロゲン化銅、酢酸銅、少なくとも1つのアルカリ金属ハロゲン化物との混合物中のハロゲン化銅又は酢酸銅、及びそれらの混合物から選択され、好ましくはヨウ化銅及びヨウ化カリウム(CuI/KI)の混合物である。
【0113】
添加剤はまた、有利にはISO178規格に準拠して測定される100MPa未満の曲げ弾性率、及び0℃未満のガラス転移温度Tg(規格11357-2:2013に準拠してDSCサーモグラムの変曲点付近で測定される)を有するポリマー、特に、<200MPaの曲げ弾性率を有するPeba(ポリエーテルブロックアミド)と結合している又は結合していないポリオレフィンから成る、耐衝撃性改良剤であってもよい。
【0114】
耐衝撃性改良剤のポリオレフィンは、官能性又は非官能性であってもよく、又は少なくとも1つの官能化ポリオレフィン及び/若しくは少なくとも1つの非官能化ポリオレフィンの混合物であってもよい。
【0115】
添加剤はまた、無ハロゲン難燃剤、例えば米国特許第2008/0274355号に開示されるものなど、特にホスフィン酸の金属塩及びジホスフィン酸の金属塩、から選択される金属塩、ホスフィン酸の少なくとも1つの金属塩を含有するポリマー、ジホスフィン酸の少なくとも1つの金属塩を含有するポリマー、又は赤リン、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、又は金属ホウ酸塩、例えばホウ酸亜鉛など、又はメラミンピロホスフェート及びメラミンシアヌレートであってもよい。それらはまた、ハロゲン化難燃剤、例えば臭素化又はポリ臭化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート、又は臭素化フェノールなどであってもよい。
【0116】
有利には、添加剤は、抗酸化剤、熱安定剤、UV吸収剤、光安定剤、衝撃改質剤、潤滑剤、無機フィラー、難燃剤、核剤、特に無機フィラー、例えばタルクなど、及び着色剤から選択される。
【0117】
ナノフィラー及び添加剤を溶融状態のポリマー(複数可)又はプレポリマー(複数可)へ添加して金型へ注入する前のポリマー又は反応性組成物を得ることができる。
【0118】
強化繊維
本発明による方法で使用される強化繊維は、無機繊維、好ましくはガラス、炭素若しくは玄武岩繊維、特にガラス若しくは炭素繊維から、又は合成繊維、好ましくはアラミド繊維若しくはポリアリールエーテルケトン繊維、又はそれらの混合物から選択することができる。
【0119】
有利には、繊維はL/D比が1,000を超える、好ましくは2,000を超えるような長さを有し、Lは繊維の平均長さ、Dはそれらの平均直径であり、当業者に良く知られている方法により、特に顕微鏡法により測定される。
【0120】
繊維は複合材料の45~80体積%、好ましくは50~70%に相当していてもよい。
【0121】
薄肉金型
本発明の目的はまた、組み立てることを意図した、好ましくは相補的形状の2つの部材を含む金型でもあり、
- 部材の縁全体にわたって溝を含む、第1の部材と、
- 部材の縁全体にわたって突出リブを含む、第2の部材と
から成り、
溝及びリブの位置は金型が閉位置にあるときに互いに適合するように選択され、
- 部材の少なくとも1つが、部材の表面に垂直な軸を有する少なくとも1つの開口部を含み、
- 密封材が第1の部材の溝に配置され、
- 部材が、反応性組成物の注入温度における水の飽和蒸気圧よりも高い残留成形圧力に耐える厚さを有し、
- 部材が熱伝導性を有する
ことを特徴とする。
【0122】
好ましくは、部材が耐えられる残留成形圧力は0.7~5barの間である。
【0123】
金型は、部材の表面の垂直な軸を有する開口部を含む。これらの開口部は一般に注入点と呼ばれる。それらは溶融状態のポリマー又は反応性組成物を金型内に注入することを可能にする。金型の部材(1つ又は複数)における開口部の数は、部材(複数可)の表面積によって決まる。金型の2つの部材、すなわち下側部材及び上側部材は、少なくとも1つの注入点が設けられている。
【0124】
金型は、プレス内にない場合に金型を閉位置に維持することを可能にする、真空充填システムを備えていてもよい。好ましくは、真空充填システムは0.7bar~0.9barの圧力を可能にする。
【0125】
金型は、プレス内にない場合に金型を閉位置に維持するのを可能にする、機械システムを備えていてもよい。この機械システムは、0.7barと10barの間、好ましくは0.7barと5barの間の内圧に耐えることを可能にする。
【0126】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、薄肉金型には、少なくとも1つのポンプ、及び金型の筐体上の外側に向かって開放している1つ又はいくつかの脱気孔を含む、金型の筐体に存在するガス抽出システムである脱ガスシステムが設けられている。
【0127】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、溝及び密封材を含む第1の部材には、密封材を冷却することを可能にする冷却流路が備えられている。この冷却流路は低温の液体を含んでいてもよく、又はさらには低温の水若しくは圧縮空気を使用した冷却システムへ接続されていてもよい。
【0128】
好ましくは、薄肉金型は、プレスから溶融状態で金型に注入された反応性組成物へ最大の熱を伝導することを可能にする熱伝導性材料で作られている。
【0129】
好ましくは、壁の熱伝導率(λ)は10W.m-1.K-1以下、好ましくは0.1と10W.m-1.K-1の間、より詳細には0.3~1W.m-1.K-1の間である。
【0130】
材料の熱伝導率測定は、ISO 22007-2規格に記載されるものなどのホットディスク法にしたがって行われる。
【0131】
本発明の特定の実施形態によれば、薄肉金型は鋼で作られている。
【0132】
金型は、金型の簡単な扱いを容易にする、握る又はつかむための1つ又は複数の手段も含んでいてもよい。
【0133】
好ましくは、本発明による金型は、
- 部材の縁全体にわたる溝、溝に配置された密封材、及び第1の部材の溝に配置された密封材の冷却を可能にする冷却流路を含む、第1の部材と、
- 部材の縁全体にわたって突出リブを含む、第2の部材と
を含み、
溝及びリブの位置は金型が閉位置にあるときに互いに適合するように選択され、
- 部材の少なくとも1つが、部材の表面に垂直な軸を有する少なくとも1つの開口部を含み、
- 部材が、反応性組成物の注入温度における水の飽和蒸気圧よりも高い残留成形圧力に耐える厚さを有し、
- 部材が熱伝導性を有し、
金型には
- 脱ガスシステムと、
- 真空充填システム又は機械的閉鎖システムと
が設けられている。
【0134】
他の目的、利点、及び特徴は、純粋に説明的な例として示され添付の図面を参照する以下の説明から明らかとなる。
【0135】
図1は本発明による方法の特定の工程の略図である。ポリマー又は反応性組成物を注入する工程:工程1A、及び薄肉金型を冷却する工程:工程1Bをここで図示する。
【0136】
本発明による方法によれば、強化繊維を含有する薄肉金型をプレスに取り付けられたマトリックスに設置する。工程1Aは、加熱回路14及び反応性組成物を注入する手段13を含むプレス12を図示する。薄肉金型11は溶融状態の反応性組成物を受け入れる。プレスはポリマーマトリックスの重合のすべて又は一部において閉位置で維持される。次いでプレスを開ける。薄肉金型を取り出す。工程1Bでは、薄肉金型を冷却させるために冷却回路16を含む冷間成形装置15に配置する。次いで薄肉金型を取り出す。
【0137】
図2は本発明による薄肉金型の実施形態を示す。金型1は、金型1の上側部分を構成する部材2、及び金型1の下側部分を構成する部材3で構成される。部材2は、部材の縁全体にわたる突出リブ4を含む。部材2は2つの注入点5及び6も含み、これを通してポリマー又は反応性組成物が注入される。部材3は、部材3の縁全体に存在する溝7を含む。密封材8は溝7に配置されている。この密封材の目的は、金型1の密封を保証することである。部材3は溝7に置かれた密封材8の近くに冷却システムも含む。冷却システムは密封材の耐用期間を延ばすために使用される。開口部9により示される管は低温の水又は圧縮空気の循環を保証することを可能にする。
【0138】
本発明は、複合材料の製造に関して上記に開示されるような薄肉金型の使用にも関する。
【0139】
本発明は最終的に、同一形状のいくつかの貯蔵ゾーンを含む回転の軸上に配置された円形デバイスに関し、前記形状は金型の一部の形状と相補的である。
【0140】
本発明の他の目的及び利点は、限定的であることを意図していない以下の実施例から明らかとなる。
【実施例
【0141】
実施例1(比較):
繊維状プリフォームをプレス上に設置されたCRTM金型に導入し、金型に50barの圧力を適用することを可能にする。
【0142】
使用される反応性組成物は、酸終端を有するプレポリマーPA 11/10T/6Tとアミン終端を有するPA11/10T/6Tとの50/50比の混合物であり、モル質量が2,500g/mol、粘度が300℃で1Pa.sである。プレポリマーの融点は265℃であり、最終ポリマーの結晶化温度は230℃である。
【0143】
成形において使用される熱サイクルは220℃から300℃へと進み、したがってサイクルの温度振幅は80℃である。300℃で1分のプラトーが行われる。プレポリマーの注入は1分のプラトーの開始時に300℃で行われる。所望のサイクル時間は2分であり、これは2分ごとに部品が金型から取り出され新しいプリフォームが金型に挿入されることを意味する。
【0144】
言い換えれば、プレポリマーを300℃で注入し、温度を300℃で1分維持し、次いでプレスの温度は30秒かけて220℃まで低下する。部品を金型から取り出す。次いでプレスの温度は30秒かけて再び300℃まで上昇して別のサイクルを行う。
【0145】
部品は、その形状が図3に示され、2分での成形を可能にする加熱及び冷却システムを含むプレスにおいて設計されており、サイクルは80℃の温度振幅を有する。
【0146】
このサイクルを行うために加熱では250kW、冷却では160kWの電力が必要とされる。
【0147】
さらに、熱電対を取り付けたプリフォームを使用した成形試験は、金型の1つの点から別の点までの温度制御が非常に不十分であり、熱サイクルの間に金型の1つの点から他方の点まで20℃を超える差が見られたことを示した。そのため、金型において熱的定常状態には決して到達しない。さらに、熱サイクルは急速すぎるので熱的平衡に達しない。
【0148】
さらに、成形複合材部品の異なる位置で試料を採取し、NMRによりモル質量測定を行った(表1を参照)。
【0149】
図3は、実施例1による成形部品30の斜視図を図示する。位置31、32、及び33は、分析試料が採取された位置を表す。結果は、これらの異なる位置でモル質量が異なることを示す。したがって、金型の1つの点から他の点までに直面する温度変動がin situの重合反応の進行における差につながる。
【0150】
最終的に、複合材における樹脂の結晶化が完全ではないことが観測され、このことは、DSCにより測定される、完全に結晶化している場合のこのタイプのポリマーにおける32kJ/molと比較して、平均で17kJ/molの結晶化のエンタルピーをもたらす。結晶化エンタルピーの値のこの差は、2分のサイクル時間を重視することができるように、早すぎる冷却スピードが金型に適用されることによって説明することができる。さらに、金型の1つの点から別の点までの温度変動は樹脂の結晶化における変動をもたらす(表1を参照)。
【0151】
本発明による実施例2:
プレスの外側に置かれた3mm厚さの薄肉鋼CRTM金型へ繊維を導入する。次いでこの金型を閉じ、ポンプとプリフォームの全体に位置するいくつかの脱気孔につながったパイプとで構成される真空充填システムによって閉じたまま維持する。次いで薄肉金型を、プレス上に設置され300℃まで予熱されたマトリックスに移動させる。30秒の保持時間後、薄肉金型の温度は加熱マトリックスの温度に到達する。使用される反応性組成物は実施例1で開示されるものと同じである。次いで反応性組成物を5秒で薄肉金型の圧縮チャンバーへ注入する。プレスを使用して、50barの圧力を金型に適用し、これは5秒で前記圧縮チャンバーを閉じ繊維性プリフォームを含侵することを可能にする。
【0152】
圧縮段階の後、温度を300℃で1分間維持し、次いで圧力を5barまで減圧し真空を再構築する。プレスが開き、ロボットアームにより薄肉金型が加熱マトリックスから取り出され、次いで回転式コンベヤーに置かれ、これは、ガラス繊維プリフォームのみを含む第2の薄肉金型がプレスの近くに置かれ反応性組成物を受け入れるために第1の金型の代わりに加熱マトリックスに置かれるまで回転する。回転式コンベヤーは金型のための5つの場所を有する。
【0153】
サイクル時間は2分、すなわち、薄肉金型の30秒の加熱+プレスの重合時間及びガラス繊維の含浸を1分維持+金型を装入する及び降ろすための30秒の取り扱い時間である。
【0154】
次いで第1の薄肉金型をロボットアームにより回転式コンベヤーから取り出し、冷間成形装置に置く。この後者は220℃の温度で維持され、これは薄肉金型を冷却することを可能にする。この成形装置は5barの残圧を薄肉金型の冷却段階にわたって適用することを可能にする。10分の冷却時間の後、薄肉金型が220℃の温度に到達すると、薄肉金型は冷間成形装置から取り出され、次いで開けられ、複合材部品が金型から取り出される。
【0155】
実施例1に開示されサイクルに関して、この成形サイクルのエネルギーコストを10で割る。
【0156】
冷却の間の樹脂の結晶化時間は大幅に長くなり、一方で同様のサイクル時間が保たれ、これはより良好な重合及び樹脂のより良好な結晶化をもたらす(表1を参照)。
【0157】
金型の1つの点から他の点まで記録される温度、及び熱的計算は、+/-2℃の変動を示し、これは純粋に等温の金型において得られる変動に非常に近い。
【0158】
図3に示されるゾーン31、32、及び33で調製される複合材料の試料により、金型の任意の点における、重合反応に関して同様の進行:同様モル質量、並びに結晶化の良好な均質性を観測することが可能となる(表1を参照)。
[表1]:2種類の成形サイクルについての、部品のゾーン1、2、及び3における、NMRによるモル質量測定及びDSCによる結晶化。
図1
図2
図3
【国際調査報告】