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特表2022-542360ガスを輸送もしくは貯蔵するためのまたは海底の沖合石油鉱床を採掘するための多層構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-03
(54)【発明の名称】ガスを輸送もしくは貯蔵するためのまたは海底の沖合石油鉱床を採掘するための多層構造体
(51)【国際特許分類】
   B32B 1/08 20060101AFI20220926BHJP
   F17C 1/06 20060101ALI20220926BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20220926BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20220926BHJP
   F16L 11/10 20060101ALI20220926BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B32B1/08 B
F17C1/06
B32B5/28 Z
B32B27/34
F16L11/10 B
B29C70/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504517
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(85)【翻訳文提出日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 FR2020051385
(87)【国際公開番号】W WO2021019180
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】1908668
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】オックステッテル, ジル
【テーマコード(参考)】
3E172
3H111
4F100
4F205
【Fターム(参考)】
3E172AA05
3E172AB04
3E172BA01
3E172BC01
3E172BC04
3E172BD10
3E172DA36
3H111BA15
3H111BA26
3H111BA28
3H111BA32
3H111CC03
3H111CC07
3H111DA11
3H111DA12
3H111DB11
4F100AA37A
4F100AA37B
4F100AB01C
4F100AC00B
4F100AD11A
4F100AD11B
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4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK46A
4F100AK46B
4F100AK53B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DA11
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4F100JA05B
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4F100YY00B
4F205AA29
4F205AD16
4F205AG03
4F205AG08
4F205HA14
4F205HA19
4F205HA34
4F205HA37
4F205HT16
4F205HT26
(57)【要約】
本発明は、ガスを輸送もしくは貯蔵するためのまたは海底の石油もしくはガス鉱床を採掘するための多層構造体であって、内側から外側へ、少なくとも1つの密封層と少なくとも1つの複合補強層とを含み、前記最も内側の複合補強層は、前記最も外側の隣接する密封層に溶接され、前記密封層は、Tmが、ISO11357-3:2013に従って測定して、280℃未満、特に265℃未満である、少なくとも1種の半結晶性の熱可塑性ポリマーP1i(i=1~n、nは密封層の数である)を主に含む組成物からなり、各密封層の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーは、同じでも異なっていてもよく、前記複合補強層の少なくとも1つは、少なくとも1種の、特に半結晶性である熱可塑性ポリマーP2j(j=1~m、mは補強層の数である)を主に含む組成物が含浸された連続繊維の形態の繊維材料からなり、前記熱可塑性ポリマーP2jは、ISO11357-3:2013に従って測定して、前記構造体の最大使用温度(Tu)より高いTgを有し、Tg≧Tu+20℃であり、Tuは50℃より高く、特に100℃より高く、水素は、前記ガス輸送またはガス貯蔵から除外され、水素を輸送または貯蔵するための貯槽、パイプまたはチューブから選択される多層構造体は除外される、
多層構造体に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを輸送もしくは貯蔵するためのまたは海底の石油もしくはガス鉱床を採掘するための貯槽、パイプまたはチューブから選択される多層構造体であって、前記多層構造体が、内側から外側へ、少なくとも1つの密封層と少なくとも1つの複合補強層とを含み、
最も内側の複合補強層は、最も外側の隣接する密封層に溶接されており、
前記密封層は、Tmが、ISO11357-3:2013に従って測定して、280℃未満、特に265℃未満である、少なくとも1種の半結晶性の熱可塑性ポリマーP1i(i=1~n、nは密封層の数である)を主に含む組成物からなり、
各密封層の前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーは、同じでも異なっていてもよく、 前記複合補強層の少なくとも1つは、特に半結晶性の、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーP2j(j=1~m、mは補強層の数である)を主に含む組成物が含浸された連続繊維の形態の繊維材料からなり、前記熱可塑性ポリマーP2jは、ISO11357-3:2013に従って測定して、前記構造体の最大使用温度(Tu)より高いTgを有し、Tg≧Tu+20℃であり、Tuは50℃より高く、特に100℃より高く、
ガス輸送またはガス貯蔵から水素は除外され、水素を輸送または貯蔵するための貯槽、パイプまたはチューブから選択される多層構造体は除外される、
多層構造体。
【請求項2】
各密封層の各ポリマーP1iが、隣接層の各ポリマーP1iと部分的にまたは完全に混和性であり、各補強層の各ポリマーP2jが、隣接層の各ポリマーP2jと部分的にまたは完全に混和性であり、ポリマーP21が、それに隣接するポリマーP11と部分的にまたは完全に混和性であり、
前記ポリマーの完全または部分的な混和性は、混合以前の2つの樹脂のガラス転移温度の差に対する混合物中の2つの樹脂のガラス転移温度の差によって定義され、前記差が0に等しい場合、混和性が完全であり、前記差が0と異なる場合、混和性が部分的である、請求項1に記載の多層構造体。
【請求項3】
各密封層が、同じ種類のポリマー、特にポリアミドを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の多層構造体。
【請求項4】
各補強層が、同じ種類のポリマー、特にポリアミドを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の多層構造体。
【請求項5】
各密封層が、同じ種類のポリマー、特にポリアミドを含み、各補強層が、同じ種類のポリマー、特にポリアミドを含むことを特徴とする、請求項3または4に記載の多層構造体。
【請求項6】
単一の密封層および単一の補強層を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項7】
前記構造体が、可撓性パイプであることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項8】
前記ポリマーP1およびP2を含む前記組成物がまた、それらが溶接に好適な照射を吸収することを可能にするカーボンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)またはグラフェンなどの添加剤を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項9】
前記ポリマーP2jを含む前記組成物が、溶接に好適な照射に対して透過性であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項10】
溶接が、レーザー、IR加熱または誘導加熱から選択されるシステムによって実行されることを特徴とする、請求項8または9に記載の多層構造体。
【請求項11】
前記ポリマーP1iが、ポリアミドであることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項12】
前記ポリマーP2jが、ポリアミドであることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項13】
前記ポリマーP1iおよび前記ポリマーP2jが、ポリアミドであることを特徴とする、請求項11または12に記載の多層構造体。
【請求項14】
前記ポリマーP1iが、長鎖脂肪族ポリアミドであり、特にPA1010、PA1012、PA1212、PA11、PA12、特にPA11もしくはPA12、または半芳香族、特にPA11/5T、PA11/6TおよびPA11/10Tであることを特徴とする、請求項11または13に記載の多層構造体。
【請求項15】
前記ポリマーP2jが、半芳香族ポリアミドであり、PA MPMDT/6T、PA11/10T、PA11/BACT、PA5T/10T、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA11/BACT/6T、PA11/MPMDT/6T、PA11/MPMDT/10T、PA11/BACT/10T、PA11/MXDT/10T、PA11/5T/10Tから特に選択されることを特徴とする、請求項12または13に記載の多層構造体。
【請求項16】
前記ポリマーP1iが、長鎖脂肪族ポリアミドであり、特にPA1010、PA1012、PA1212、PA11、PA12、特にPA11もしくはPA12であり、または半芳香族、特にPA11/5T、もしくはPA11/6TもしくはPA11/10Tであり、前記ポリマーP2jが、半芳香族ポリアミドであり、PA MPMDT/6T、PA PA11/10T、PA11/BACT、PA5T/10T、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA11/BACT/6T、PA11/MPMDT/6T、PA11/MPMDT/10T、PA11/BACT/10T、PA11/MXDT/10T、PA11/5T/10Tから特に選択されることを特徴とする、請求項13から15のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項17】
耐減圧性および乾燥能力を有することを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項18】
前記構造体が、密封層内に位置する金属性カーカスをさらに含むことを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項19】
前記構造体が、少なくとも1つの外層、特に金属層をさらに含み、前記層が、前記多層構造体の最外層であることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項20】
前記繊維材料が、ガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維および玄武岩ベースの繊維から選択されることを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一項に規定の多層構造体を製造する方法であって、請求項1に記載の補強層を請求項1に記載の密封層に溶接する工程を含むことを特徴とする、方法。
【請求項22】
溶接工程が、レーザー、赤外線加熱または誘導加熱から選択されるシステムによって実行されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記密封層を金属カーカス上に押し出す工程と、補強層を密封層に溶接する工程とを含むことを特徴とする、請求項21または22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、ガスを輸送もしくは貯蔵するための、または海底の石油もしくはガス鉱床を採掘するための複合多層構造体、および前記構造体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海上に位置する石油鉱床の採掘は、使用される材料を極限条件にさらす。特にパイプは、プラットフォームの様々な水中装置を接続し、一般に高温高圧(例えば700bar)で輸送される採収された炭化水素を運搬する。
【0003】
したがって、施設の操作中、使用される材料の機械的強度ならびに耐熱性および耐薬品性の重大な問題がある。このようなパイプは、特に、高温の石油、ガス、水、およびこれらの生成物のうち少なくとも2種の混合物に最大20年間耐えなければならない。
【0004】
従来、これらのパイプは、ロックシームストリップ(feuillard agrafe)などのらせん状に巻き上げられた形状の金属ストリップによって形成された、金属非密封内層を含む。パイプにその形状を与えるこの金属内層は、一般に押出によって、密封を提供することを目的としたポリマー層で被覆されている。
【0005】
このシースは主に、
場合により内部カーカスの支持上に連続的に押し出し加工されることができなければならず、現場での可撓性パイプの製造、敷設、および使用の操作中に可撓性パイプに加えられる湾曲(使用場所を変更するための可撓性パイプの膨張または持ち上げによる動き)に対応するのに十分に可撓性でなければならず、
温度レベルによって悪化する圧縮力によるクリープ(クリープは、パイプラインが輸送された流出液によって加圧された場合に、シースが支える金属補強材(例えばZ字型のセルフロックシームまたはT字型のシーム)間のギャップ(空間または遊隙)で発生する)に耐えなければならず、
その機械的特性およびその密封が、可撓性パイプの寿命の間に致命的となるような方法で劣化しないために、十分に化学的に安定でなければならない。
【0006】
ガスの輸送もしくは貯蔵、または石油もしくはガス鉱床の採掘には、ライナーとも呼ばれるこの密封シース(パイプの密封ならびに耐薬品性および耐摩耗性を提供する)で構成され、複合パイプに十分な可撓性を提供するように、パイプの軸に対して1つまたは複数の方向角を持つ、ライナー上に連続した層に堆積される一方向(UD)テープから、フィラメントワインディングによって製造された、複合材料で作製された外側の接着層によって補強される複合パイプを使用することが有益である。複合補強材により、パイプは圧力(流体の内圧および深海で使用する場合の外圧)に耐えることができる。
【0007】
この技術は、Airborne社によって開発されたものであり、例えば文書FR2964173にある。
【0008】
より最近では、Technip(WO2012118379)は、現在の沖合可撓性パイプの内部カーカスを排除する目的で、金属外部補強材と組み合わせたこのパイプの概念に関心を示しており、金属補強材は、場合により圧力アーチを構成する。
【0009】
ただし、この種類の複合材料パイプで想定される解決策は、ライナーと複合材料の間の優れた耐久性のある接着を保証するために、ライナーおよび複合材料のマトリックスに同じポリマーを使用することに基づく。
【0010】
例えば、Airborneは、内部カーカスを持たず、複合補強材に接着した密封シースを備えた様々な可撓性パイプを開発しており、
PA11 FC複合材を備えたPA11ライナー(JIPが2011年に完成した)、またはPA12 FC複合材を備えたPA12ライナー、またはPVDF FC複合材を備えたPVDFライナー
を含む。しかしこれらの構造体はすべて、複合補強材のマトリックスが、パイプの使用温度Tuよりも低いガラス転移温度Tgを有するという欠点を有し、すなわちPA11またはPA12をベースとするパイプの場合、パイプの使用温度Tuの60~80℃の乾燥状態で50℃のTgであり、PVDFの場合、100℃より高くしばしば130℃に近い連続操作での使用温度に対し-40℃のTgである。PVDFの特殊な場合、そのTgより上の別の転移に達するまでマトリックスの剛性(モジュラス)は高く留まり、アルファ転移は約100℃で、それを超えるとその挙動は純粋にゴム状になる。したがって、TPマトリックス複合パイプの上記の工業用および市販のすべての場合において、複合補強材のマトリックスは、複合パイプの使用温度Tuで完全にゴム化状態にある。
【0011】
この問題を解決し、そのマトリックスがこの場合は130℃の使用温度でゴム化状態にならないように、最大使用温度よりも高いTgを有する複合補強材を有するために、また、Kutting&Total、次いでVitrexおよびMagmaは、PEEKマトリックスを有する複合材で補強されたPEEK密封シース(またはライナー)で構成されるソリューションを開発した。PEEKのTgは140℃であり、したがって、このTgは、最大使用温度よりも高いので、高剛性の要件を満たしている。不利益は、その結果として密封シース(ライナー)も非常に剛性であることであり、疲労耐性を制限しかねないので、可撓性パイプの製造にとって大きな不利益である。さらに、この種類の密封スリーブの加工温度は非常に高く(典型的には380~400℃)、チューブ押出である通常の変形プロセスの場合、これは、ツーリングおよびプロセス制御の面で大きな困難を提示する。
【0012】
さらに、Ticona(Celanese)は、Airborneと提携して、PPS FC補強材およびPPS密封シースを含む複合材料パイプを提供している。
【0013】
Tu>90℃の場合、この構造体は、PVDFベースのソリューションと同じ複合材マトリックスの問題を提示するが(すなわちTg<Tu)、さらに変形温度の問題を示す(PPSおよびPVDFの場合は、それぞれ典型的には350℃対250℃)。
【0014】
Tu<90℃の場合、PPSは複合材料のマトリックスに好適であるが、複合材料パイプの可撓性を制限するその高剛性の問題およびTuよりも高いTgによるその疲労耐性の低さの問題と同様に、密封シース(ライナー)の押出温度の問題が残る。
【0015】
したがって依然として、一方では、高温でのその機械的強度を最適化するように複合材のマトリックスを最適化し、他方では、密封ライナーへの複合補強材の接着性を低下させることなく、その用途温度を最適化するように密封ライナーを構成する材料を最適化すべきままである。したがって、複合材料のマトリックスとの少なくとも部分的な混和性を確保するために実行される密封シースを構成する材料の組成の場合による変更が、ポリアミドおよびPVDFで現在実施されているものと比較して、このライナーの押出温度の著しい上昇につながってはならない(すなわち<300℃、好ましくは<290℃、さらにより優先的には<250℃のまま)。
【0016】
これらの問題は、完全に結合された「二元材料」複合材料パイプであり、高強度複合補強材で構成される、特に比較的低温で事前に押し出されたライナー上のフィラメントワインディングによって堆積される、本発明の多層構造体および特に可撓性パイプを提供することによって解決される。複合材とライナーの間の接着性は非常に良好である。
【発明の概要】
【0017】
したがって本発明は、ガスを輸送もしくは貯蔵するためのまたは海底の石油もしくはガス鉱床を採掘するための貯槽、パイプまたはチューブから選択され、内側から外側へ、少なくとも1つの密封層と少なくとも1つの複合補強層とを含む多層構造体であって、
前記最も内側の複合補強層は、前記最も外側の隣接する密封層に溶接されており、
前記密封層は、Tmが、ISO11357-3:2013に従って測定して、280℃未満、特に265℃未満である、少なくとも1種の半結晶性の熱可塑性ポリマーP1i(i=1~n、nは密封層の数である)を主に含む組成物からなり、
各密封層の前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーは、同じでも異なっていてもよく、前記複合補強層の少なくとも1つは、特に半結晶性の、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーP2j(j=1~m、mは補強層の数である)を主に含む組成物が含浸された連続繊維の形態の繊維材料からなり、前記熱可塑性ポリマーP2jは、ISO11357-3:2013に従って測定して、前記構造体の最大使用温度(Tu)より高いTgを有し、Tg≧Tu+20℃であり、Tuは50℃より高く、特に100℃より高く、
水素は前記ガス輸送またはガス貯蔵から除外され、貯槽、パイプまたはチューブから選択される水素を輸送することを目的とした多層構造体は除外される、
多層構造体に関する。
【0018】
したがって、本発明者らは、複合材マトリックスおよびライナーに異なるポリマーを使用すること、特に、
複合補強材のマトリックスは、そのガラス状の領域に留まって高い剛性を有し、したがって複合材が高い機械的強度を有することを可能にするように、貯槽またはパイプの最大使用温度Tuより有意に高いTg(典型的にはTg>Tu+20℃)を有するポリマーで構成され、
ライナーを構成する半結晶性ポリマーは、低融点Tmを有し、これにより、場合によって、このポリマーのTmに関連して、280℃未満、好ましくは265℃未満である当業者に慣用される適度な温度で、押出、押出ブロー成形、回転成形、射出または純粋樹脂フィルムの巻き付けによって加工されることが可能となることを予期せず発見した。現在までに知られている低いTmの半結晶性ポリマーはまた低いTgを有し、ほとんどの場合、最大使用温度未満であろう。その結果、ライナーを構成するポリマーは、ゴム化された領域で作用するため、非常に可撓性で疲労に対して非常に耐性がある。その半結晶性は、化学的攻撃、摩耗およびクリープに対する良好な耐性を確保し、かつ
前述の2種のポリマー(複合材のマトリックスを構成するものおよびライナーを構成するもの)は、ライナーへの複合材の溶接性を確保し、その結果、ライナーと複合材の間の優れた接着性を確保するために、十分に混和性である。接着性の耐久性は、2種の材料の接触面、すなわち溶接された接合部での混合物を構成する材料の耐久性によって保証される。2種のポリマーの混和性は、好ましくは単一のTgによって、またはそうでない場合は、部分的に均一な混合物の特徴的なシグネチャーによって、例えば2種の純粋ポリマーのTgに対して中間の2つのTg値の存在によって表される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
2種のポリマーの非混和性は、別々に測定した純粋ポリマーのそれぞれのTgに対応する2種のポリマーの混合物における2つのTgの存在をもたらす。
【0020】
「多層構造体」とは、例えば、いくつかの層、特に2層を備えるかまたはそれらからなる貯槽、パイプまたはチューブを意味する。
【0021】
「ガス」という用語は、任意のガス、および特に海底採収ガス、特に水素を除く天然ガスを示す。
【0022】
密封層(一又は複数)は、最外層である複合補強層と比較して最も内側の層である。
【0023】
前記カーカスを形成するロックシームストリップなどのらせん状に巻き上げられた形状の金属ストリップによって形成された内側の、したがって最も内側の非密封金属層が存在し、その上に密封層が押出によって被覆されたとしても、密封層(一又は複数)は、ガスまたは海底で採収された石油およびガスに接触する。
【0024】
いくつかの密封層が存在する場合、最も内側の密封層だけが、ガスまたは海底で採収された石油およびガスと直接接触する。
【0025】
1つの密封層および1つの複合補強層のみが存在する場合、したがって2層の多層構造体となり、これら2つの層は溶接されて互いに直接接触して互いに接着される。
【0026】
いくつかの密封層および/またはいくつかの複合補強層が存在する場合、前記密封層の最外層、したがってガスまたは海底で採収された石油およびガスと接触する層の反対側の層は、前記複合補強層の最も内側の層に溶接され、したがって互いに直接接触して、互いに接着される。
【0027】
他の複合補強層はまた、ともに溶接される。
【0028】
他の密封層はまた、ともに溶接される。
【0029】
密封層および熱可塑性ポリマーP1iについて
1つまたは複数の密封層が存在してもよい。
【0030】
前記層のそれぞれは、iが存在する層数に対応する、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーP1iを主に含む組成物からなる。iは、1~10、特に1~5、特に1~3、優先的にはi=1である。
【0031】
「主に」という用語は、組成物の総重量に対して前記少なくとも1種のポリマーが50重量%を超えて存在することを意味する。
【0032】
有利には、前記少なくとも1種の主要なポリマーは、組成物の総重量に対して60重量%超、特に70重量%超、特に80重量%超、より詳細には90重量%以上で存在する。
【0033】
前記組成物は、衝撃改質剤および/または添加剤をさらに含んでもよい。
【0034】
添加剤は、抗酸化剤、熱安定剤、UV吸収剤、光安定剤、潤滑剤、無機充填剤、難燃剤、核剤、可塑剤、染料、カーボンブラック、および炭素質ナノ充填剤から選択することができる。
【0035】
有利には、前記組成物は、主に前記熱可塑性ポリマーP1i、0~5重量%の衝撃改質剤、0~5重量%の添加剤からなり、組成物の構成成分の合計は、100%に等しい(最大90%のP2iに対して。
【0036】
各層における前記少なくとも1種の主要なポリマーは、同じでも異なっていてもよい。
【0037】
一実施形態では、単一の主要なポリマーは、複合補強層に溶接された少なくとも密封層に存在する。
【0038】
熱可塑性ポリマーP1i
熱可塑性物質、または熱可塑性ポリマーとは、一般に常温で固体であり、温度上昇の間に、特にそのガラス転移温度(Tg)を通過した後に軟化し、その融点(Tm)と呼ばれるものを通過すると急激な転移を示す場合があり、温度がその結晶化温度を下回ると再び固体となる半結晶性材料を指す。
【0039】
Tg、Tc、およびTmは、それぞれ規格11357-2:2013および11357-3:2013に従って示差走査熱量測定法(DSC)によって決定する。
【0040】
前記熱可塑性ポリマーの数平均分子量Mnは、好ましくは10000~40000の範囲であり、好ましくは12000~30000の範囲である。これらのMn値は、規格ISO307:2007に従って、ただし溶媒を変えることによって(硫酸の代わりにm-クレゾールを使用し、温度は20℃である)m-クレゾールで決定される場合、0.8以上の固有の粘度に対応し得る。
【0041】
本発明における好適な半結晶性の熱可塑性ポリマーの例としては、
共重合体、例えばポリアミド-ポリエーテル共重合体、ポリエステル、PVDFおよびPVDFが主要なPVDF/PEIブレンドを含むポリアミドが挙げられる。
【0042】
半結晶性ポリマーの中でも特により好ましいのは、ポリアミドおよびそれらの半結晶共重合体である。
【0043】
ポリアミドを定義するために使用される命名法は、ISO規格1874-1:2011「Plastiques -- Materiaux polyamides(PA)pour moulage et extrusion -- Partie 1:Designation」、特に3頁(表1および2)に記載されており、当業者に周知である。
【0044】
ポリアミドは、ホモポリアミドもしくはコポリアミドまたはこれらの混合物でもよい。
【0045】
有利には、前記熱可塑性ポリマーは、長鎖脂肪族ポリアミドであり、すなわち8.5より大きく、好ましくは9よりも大きい窒素原子当たりの炭素原子の平均数を有するポリアミドである。
【0046】
特に、長鎖脂肪族ポリアミドは、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド1010(PA1010)、ポリアミド1012(PA1012)、ポリアミド1212(PA1012)、またはこれらの混合物もしくはこれらのコポリアミド、特にPA11およびPA12から選択される。
【0047】
有利には、前記熱可塑性ポリマーは、長鎖半芳香族ポリアミド、すなわち8.5より大きく、好ましくは9より大きい窒素原子当たりの炭素原子の平均数を有し、240から280℃の間の融点を有するポリアミドである。
【0048】
特に、長鎖半芳香族ポリアミドは、ポリアミド11/5Tまたは11/6Tまたは11/10Tから選択される。明らかにこの場合、前記ポリマーのTmが280℃未満、好ましくは265℃未満になるように、11の含有量を慎重に選択しなければならない。
【0049】
有利には、各密封層は、同じ種類のポリマー、特にポリアミドを含む組成物からなる。
【0050】
有利には、前記ポリマーP1iを含む前記組成物は、黒色で、溶接に好適な照射を吸収することができる。
【0051】
熱可塑性ポリマー部分を溶接する様々な方法がある。したがって、他方に対して溶接される一方の要素の接触または非接触加熱ブレード、超音波、赤外線、振動、回転またはレーザー溶接さえ使用され得る。
【0052】
特にレーザー溶接による熱可塑性ポリマー要素の溶接には、溶接される2つの要素が照射、特にレーザー照射に関して異なる性質を有することが必要であり、すなわち要素の一方は照射、特にレーザー照射に対して透過性でなければならず、他方は照射、特にレーザー照射を吸収しなければならない。特にレーザー照射の照射は透過性部分を通過し、次いで吸収要素に到達し、そこで熱に変換される。これにより、2つの要素間の接触領域が融解し、溶接が行われる。
【0053】
一部の適用では、レーザー照射に対して透過性である部分を含め、溶接される部分の両方が黒色であることが望ましい。
【0054】
それらを吸収性にするためには、例えばカーボンブラックを含む様々な添加剤を添加し、ポリマーに黒色を与え、溶接に好適な照射を吸収できることが公知である。
【0055】
一実施形態では、溶接は、レーザー、IR加熱または誘導加熱から選択されるシステムによって実施される。
【0056】
溶接がレーザー溶接によって実行される場合、組成物P1iは、非塊状または非凝集炭素質充填剤を含む。
【0057】
溶接が誘導によって実行される場合、組成物P1iは、金属粒子を含む。
【0058】
有利には、溶接はレーザーシステムによって実施される。
【0059】
複合補強層および熱可塑性ポリマーP2jについて
1つまたは複数の複合補強層が存在してもよい。
【0060】
前記層のそれぞれは、存在する層数にjが対応する少なくとも1種の熱可塑性ポリマーP2jを主に含む組成物からなる。
【0061】
jは1~10、特に1~5、特に1~3に含まれ、優先的にはj=1である。
【0062】
「主に」という用語は、組成物の総重量に対して前記少なくとも1種のポリマーが50重量%を超えて存在することを意味する。
【0063】
有利には、前記少なくとも1種の主要なポリマーは、組成物の総重量に対して60重量%超、特に70重量%超、特に80重量%超、より詳細には90重量%以上で存在する。
【0064】
前記組成物は、衝撃改質剤および/または添加剤をさらに含んでもよい。
【0065】
添加剤は、抗酸化剤、熱安定剤、UV吸収剤、光安定剤、潤滑剤、無機充填剤、難燃剤、核剤、可塑剤、および染料から選択することができる。
【0066】
有利には、前記組成物は、主に前記熱可塑性ポリマーP2j、0~5重量%の衝撃改質剤、0~5重量%の添加剤からなり、組成物の構成成分の合計は、100%に等しい(最大90%のP2jに対して。
【0067】
各層における前記少なくとも1種の主要なポリマーは、同じでも異なっていてもよい。
【0068】
一実施形態では、単一の主要なポリマーは、密封層に溶接された少なくとも複合補強層に存在する。
【0069】
一実施形態では、各補強層は、同じ種類のポリマー、特にポリアミドを含む。
【0070】
熱可塑性ポリマーP2j
熱可塑性物質、または熱可塑性ポリマーとは、一般に常温で固体であり、半結晶でもアモルファスでもよく、特に半結晶であり、温度上昇の間に、特にそのガラス転移温度(Tg)を通過した後に軟化し、アモルファスである場合により高い温度で流れるか、または、半結晶である場合にその融点(Tm)を通過すると正確な融解を示す場合があり、温度がその結晶化温度(半結晶の場合)未満、およびそのガラス転移温度(アモルファスの場合)未満に低下すると再び固体となる材料を意味することを意図している。
【0071】
Tg、Tc、およびTmは、それぞれ規格11357-2:2013および11357-3:2013に従って示差走査熱量測定法(DSC)によって決定する。
【0072】
前記複合補強層の少なくとも1つの組成物のポリマーP2jは、そのTgが前記構造体の最大使用温度(Tu)よりも高く、特にTg≧Tu+20℃であるようなものである。
【0073】
一実施形態では、ポリマーP2jは、前記補強層の位置に関係なくTg≧Tu+20℃を有する。
【0074】
別の実施形態では、Tg≧Tu+20℃を有するポリマーP2jを含む組成物からなる前記補強層は、前記密封層に溶接される層である。
【0075】
別の実施形態では、Tg≧Tu+20℃を有するポリマーP2jを含む組成物からなる前記補強層は、構造体の最も外側の補強層である。前記熱可塑性ポリマーの数平均分子量Mnは、好ましくは10000~40000の範囲であり、好ましくは12000~30000の範囲である。これらのMn値は、規格ISO307:2007に従って、ただし溶媒を変えることによって(硫酸の代わりにm-クレゾールを使用し、温度は20℃である)m-クレゾールで決定される場合、0.8以上の固有粘度に対応し得る。
【0076】
本発明における好適な半結晶性の熱可塑性ポリマーの例としては、
ポリアミド、特に、芳香族および/または脂環式構造を含み、例えばポリアミド-ポリエーテル共重合体のような共重合体を含む、
ポリエステル、
ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、
ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、
ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、
ポリイミド、特にポリエーテルイミド(PEI)またはポリアミド-イミド、
ポリスルホン(PSU)、特にポリフェニルスルホン(PPSU)などのポリアリールスルホン、
ポリエーテルスルホン(PES)
が挙げられる。
【0077】
半結晶性ポリマーが特により好ましく、特にポリアミドおよびこれらの半結晶性共重合体が好ましい。
【0078】
ポリアミドを定義するために使用される命名法は、ISO規格1874-1:2011「Plastiques -- Materiaux polyamides(PA)pour moulage et extrusion -- Partie 1:Designation」、特に3頁(表1および2)に記載されており、当業者に周知である。
【0079】
ポリアミドは、ホモポリアミドもしくはコポリアミドまたはこれらの混合物でもよい。
【0080】
有利には、半結晶性ポリアミドは、半芳香族ポリアミド、特にEP1505099に記載される式X/YArの半芳香族ポリアミドであり、特に式A/XTの半芳香族ポリアミドであって、式中、Aは、アミノ酸から得られる単位、ラクタムから得られる単位、ならびにaがジアミンの炭素原子数を表し、bが二酸の炭素原子数を表し、aおよびbがそれぞれ4から36の間、有利には9から18の間であり、単位(Caジアミン)は、直鎖または分岐脂肪族ジアミン、脂環式ジアミンおよびアルキル芳香族ジアミンから選択され、単位(Cb二酸)は、直鎖または分岐脂肪族二酸、脂環式二酸、芳香族二酸から選択される式(Caジアミン).(Cb二酸)に対応する単位から選択され、
【0081】
X.Tは、xがCxジアミンの炭素原子数を表し、xが6から36の間、有利には9から18の間であり、特に式A/6T、A/9T、A/10T、またはA/11Tのポリアミドであり、Aは上記で定義された通りであり、特に、PA MPMDT/6T、PA11/10T、PA 5T/10T、PA11/BACT、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA11/BACT/6T、PA11/MPMDT/6T、PA11/MPMDT/10T、PA11/BACT/10T、PA11/MXDT/10T、11/5T/10Tから選択されるポリアミドであるCxジアミンおよびテレフタル酸の重縮合から得られる単位を示す。
【0082】
Tはテレフタル酸に対応し、MXDはm-キシレンジアミンに対応し、MPMDはメチルペンタメチレンジアミンに対応し、BACはビス(アミノメチル)シクロヘキサンに対応する。
【0083】
有利には、各複合補強層は、同じ種類のポリマー、特にポリアミドを含む組成物からなる。
【0084】
有利には、前記ポリマーP2jを含む前記組成物は、溶接に好適な照射に対して透過性である。
【0085】
熱可塑性ポリマーは、溶接目的、特にレーザー溶接のために一般に透過性である。炭素質ナノ充填剤は、層のレーザー照射に対する透過性を維持しながら、熱可塑性ポリマーを含む組成物の前記層に黒色を付与することを可能にする。
【0086】
有利には、炭素質ナノ充填剤は、非塊状または非凝集である。
【0087】
有利には、炭素質ナノ充填剤は、100ppm~500ppm、好ましくは100ppm~250ppmの量で組成物に組み込まれる。
【0088】
有利には、炭素質ナノ充填剤は、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー、グラフェン、ナノスケールカーボンブラックおよびこれらの混合物から選択される。
【0089】
有利には、炭素質ナノ充填剤は、ナノメートルカーボンブラックを含まない。
【0090】
一実施形態では、溶接は、レーザー、IR加熱または誘導加熱から選択されるシステムによって実施される。
【0091】
有利には、溶接はレーザーシステムによって実施される。
【0092】
有利には、レーザー照射は、赤外線レーザー照射であり、好ましくは700nmから1200nmの間、および好ましくは800nmから1100nmの間の波長を有する。
【0093】
構造体について
前記多層構造体は、したがってともに溶接される少なくとも1つの密封層と、少なくとも1つの複合補強層とを含む。
【0094】
一実施形態では、前記多層構造体において、各密封層の各ポリマーP1iは、隣接層の各ポリマーP1iと部分的にまたは完全に混和性であり、各補強層の各ポリマーP2jは、隣接層の各ポリマーP2jと部分的にまたは完全に混和性であり、隣接する場合、各ポリマーP2jは、各ポリマーP1iと部分的にまたは完全に混和性であり、ポリマーP21は、それに隣接するポリマーP11と部分的にまたは完全に混和性であり、
前記ポリマーの完全または部分的な混和性は、混合物以前の2種の樹脂のガラス転移温度の差に対する混合物中の2種の樹脂のガラス転移温度の差によって定義され、前記差が0に等しい場合、混和性が完全であり、前記差が0と異なる場合、混和性が部分的であり、ポリマーP1iとのポリマーP2jの非混和性が除外される。
【0095】
前記ポリマーの混和性が部分的である場合、前記差は、前記混和性が大きいほど前記差が小さいものである。
【0096】
有利には、前記ポリマーの混和性が部分的である場合、絶対値で前記差は30%未満、優先的には20%未満である。
【0097】
一実施形態では、混合物のガラス転移温度(一又は複数)は、混和性が完全か部分的であるかに依存し、ブレンドする前の前記ポリマーのガラス転移温度の間にあり、かつ少なくとも5℃、好ましくは少なくとも10℃、それとは異なっていなければならない。
【0098】
「完全に混和性」という表現は、例えば、Tg1およびTg1をそれぞれ有する2種のポリマーP1およびP1が、2つの隣接する密封層または2つの隣接する補強層に存在する場合、2種のポリマーの混合物は、1つのTg1のみを有し、その値はTg1からTg1の間にあることを意味する。
【0099】
このTg1値は、したがってTg1より少なくとも5℃、特に少なくとも10℃高く、Tg1より少なくとも5℃、特に少なくとも10℃低い。
【0100】
「部分的に混和性」という表現は、例えば、Tg1およびTg1をそれぞれ有する2種のポリマーP1およびP1が、2つの隣接する密封層または2つの隣接する補強層にそれぞれ存在する場合、2種のポリマーの混合物が、Tg1<Tg’1<Tg’1<Tg1であるTg’1およびTg’1の2つのTgを有することを意味する。
【0101】
これらのTg’1およびTg’1値は、Tg1より少なくとも5℃、特に少なくとも10℃高く、Tg1より少なくとも5℃、特に少なくとも10℃低い。
【0102】
2種のポリマーの非混和性は、2種のポリマーの混合物において、別々に測定した純粋ポリマーのそれぞれのTgであるTg1およびTg1に対応するTg1およびTg1の2つのTgの存在をもたらす。
【0103】
有利には、前記溶接された密封層および補強層は、それぞれ異なるポリマーを含む組成物で作製される。
【0104】
それにもかかわらず、前記異なるポリマーは、同じ種類であってもよい。
【0105】
したがって、2つの溶接された複合補強層および密封層のうちの1つが脂肪族ポリアミドを含む組成物から作製される場合、他方の層は、複合補強材のマトリックスとして高Tgポリマーを有するように、脂肪族ではなく例えば半芳香族ポリアミドであるポリアミドを含む組成物で作製される。
【0106】
前記多層構造体は、10層までの密封層および10層までの複合補強層を含んでもよい。
【0107】
前記多層構造体は必ずしも対称的ではなく、したがって、複合層よりも多くの密封層を含んでもよく、その逆も同様であることが明らかである。
【0108】
有利には、前記多層構造体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10層の密封層および1、2、3、4、5、6、7、8、9または10層の複合補強層を含む。
【0109】
有利には、前記多層構造体は、1、2、3、4または5層の密封層および1、2、3、4または5層の複合補強層を含む。
【0110】
有利には、前記多層構造体は、1、2または3層の密封層および1、2、または3層の複合補強層を含む。
【0111】
有利には、これらはそれぞれ異なるポリマーを含む組成物からなる。
【0112】
有利には、これらは、それぞれポリアミドP1iおよびP2jに対応するポリアミドを含む組成物からなる。
【0113】
有利には、これらはそれぞれ異なるポリアミドを含む組成物からなる。
【0114】
一実施形態では、前記多層構造体は、単一の密封層といくつかの補強層とを含み、前記密封層は、前記隣接する補強層に溶接される。
【0115】
別の実施形態では、前記多層構造体は、単一の補強層といくつかの密封層とを含み、前記補強層は、前記隣接する密封層に溶接される。
【0116】
1つの有利な実施形態では、前記多層構造体は、溶接される単一の密封層と単一の複合補強層とを含む。
【0117】
したがってこれら2つの層のすべての組み合わせは、少なくとも前記最も内側の複合補強層が、前記最も外側の隣接する密封層に溶接されている限り、その他の層がともに溶接されていてもされていなくても本発明の範囲内にある。
【0118】
有利には、前記多層構造体において、各密封層は、同じ種類のポリマーP1i、特にポリアミドを含む組成物からなる。
【0119】
「同じ種類のポリマー」という表現は、例えば、層に応じて同じでも異なっていてもよいポリアミドであるポリアミドを意味する。
【0120】
有利には、前記ポリマーP1iはポリアミドであり、前記ポリマーP2jはポリアミドである。
【0121】
有利には、ポリアミドP1iは、すべての密封層について同じである。
【0122】
有利には、前記ポリマーP1iは、長鎖脂肪族ポリアミドであり、特にPA1010、PA1012、PA1212、PA11、PA12、特にPA11またはPA12である。
【0123】
有利には、ポリアミドP1iは、長鎖半芳香族ポリアミド、特にPA11/5T、PA11/6TまたはPA11/10Tである。明らかにこの場合、前記ポリマーのTmが280℃未満、特に265℃未満になるように、11の含有量を慎重に選択しなければならない。
【0124】
有利には、前記多層構造体において、各補強層は、同じ種類のポリマーP2j、特にポリアミドを含む組成物からなる。
【0125】
有利には、ポリアミドP2jは、すべての補強層について同じである。
【0126】
有利には、前記ポリマーP2jは、特にPA MXDT/6T、PA11/10T、PA11/BACT、PA5T/10T、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA11/BACT/6T、PA11/MPMDT/6T、PA11/MPMDT/10T、PA11/BACT/10T、PA11/MXDT/10TおよびPA5T/10Tから選択される半芳香族ポリアミドである。
【0127】
有利には、前記多層構造体において、ポリアミドP1iおよびP2jが異なる、すなわち、密封層が長鎖脂肪族ポリアミドを含む組成物からなる場合、密封層が、半芳香族ポリアミドを含む組成物からなる限り、各密封層は、同じ種類のポリマーP1i、特にポリアミドを含む組成物からなり、各補強層は同じ種類のポリマーP2j、特にポリアミドを含む組成物からなる。
【0128】
有利には、前記ポリマーP1iは、長鎖脂肪族ポリアミドであり、特にPA1010、PA1012、PA1212、PA11、PA12、特にPA11またはPA12であり、前記ポリマーP2jは、特にPA MPMDT/6T、PA PA11/10T、PA11/BACT、PA5T/10T、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA11/BACT/6T、PA11/MPMDT/6T、PA11/MPMDT/10T、PA11/BACT/10T、PA11/MXDT/10TおよびPA5T/10Tの中から選択される半芳香族ポリアミドである。
【0129】
有利には、前記多層構造体は、前記ポリマーP1iが長鎖脂肪族ポリアミドであり、特にPA1010、PA1012、PA1212、PA11、PA12、特にPA11またはPA12であり、前記ポリマーP2jが、特にPA MPMDT/6T、PA PA11/10T、PA11/BACT、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA11/BACT/6T、PA11/MPMDT/6T、PA11/MPMDT/10T、PA11/BACT/10T、PA11/MXDT/10Tから選択される半芳香族ポリアミドである単一の補強層および単一の密封層からなる。
【0130】
有利には、前記多層構造体は、可撓性パイプである。
【0131】
前記多層構造体の最大使用温度Tuは、50℃超、特に100℃超である。
【0132】
一実施形態では、上記で定義された前記多層構造体は、耐減圧性および乾燥能力を有する。
【0133】
実際、ガスを貯蔵または輸送する場合、輸送または貯蔵されたガスへの密封層の透過性により、前記ガスは、チューブまたは貯槽の内側から、最も外側の密封層と第1の複合補強層との間の接触面まで、密封層を通して拡散する可能性がある。この場所でのガスの蓄積は、チューブまたは貯槽の内圧が複合補強材との接触面の圧力よりも低い場合、密封層の崩壊につながる圧力を生成する可能性があり、特に、生産が停止して、ガスのポンピングもしくは輸送が停止し、数百バールの圧力が低下して大気圧となる場合、または貯蔵貯槽が空の場合に発生する可能性がある。同じことが貯槽の内部水圧試験の間にも当てはまり、この水は、複合補強材と最も外側の密封層の間の接触面で浸透によって移動する可能性が高く、その後除去するのが非常に困難になり、特に減圧下での前記貯蔵貯槽の長期かつ費用のかかる乾燥サイクルにつながる。
【0134】
別の実施形態では、上記で定義された前記多層構造体は、密封層内に位置する金属カーカスをさらに含む。
【0135】
この金属のカーカスは漏れ防止ではなく、最も内側の層である。
【0136】
有利には、前記多層構造体は、少なくとも1つの外層、特に金属層をさらに含み、前記層は、前記多層構造体の最外層である。
【0137】
前記外層は、第2の補強層であるが、金属であり、複合材ではない。
【0138】
また、構造体上にポリマー性保護層(最外層)があってもよく、これは摩耗防止の役割を有するか、または構造体上に銘刻を据えることを可能にする。
【0139】
繊維材料について
前記繊維材料を構成する繊維に関しては、これらは特に無機、有機または植物繊維である。
【0140】
有利には、前記繊維材料は、サイジングされていてもそうでなくてもよい。
【0141】
前記繊維材料は、したがって、サイジング剤と呼ばれる0.1重量%までの有機材料(熱硬化性または熱可塑性樹脂タイプ)を含むことができる。
【0142】
無機物由来の繊維の中で、例えば炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維または玄武岩ベースの繊維、シリカ繊維または炭化ケイ素繊維について言及することができる。有機繊維としては、例えば、半芳香族ポリアミド繊維、アラミド繊維またはポリオレフィン繊維などの熱可塑性または熱硬化性ポリマーベースの繊維が挙げられる。好ましくは、これらはアモルファス性熱可塑性ポリマーベースであり、ポリマーもしくは熱可塑性ポリマー混合物がアモルファスである場合、予備含浸マトリックスを構成するポリマーもしくは熱可塑性ポリマー混合物のガラス転移温度Tgより高いTgを有するか、またはポリマーもしくは熱可塑性ポリマー混合物が半結晶である場合、予備含浸マトリックスを構成するポリマーもしくは熱可塑性ポリマー混合物のTmよりも高いTgを有する。有利には、これらは半結晶性の熱可塑性ポリマーベースであり、ポリマーもしくは熱可塑性ポリマー混合物がアモルファスである場合、予備含浸マトリックスを構成するポリマーもしくは熱可塑性ポリマー混合物のTgより高い融解温度Tmを有するか、またはポリマーもしくは熱可塑性ポリマー混合物が半結晶である場合、予備含浸マトリックスを構成するポリマーもしくは熱可塑性ポリマーマトリックス混合物のTmよりも高いTmを有する。したがって、最終的な複合材の熱可塑性マトリックスによる含浸中に、繊維材料を構成する有機繊維の融解リスクはない。植物繊維としては、天然のリネン、アサ、リグニン、タケ、絹、特にクモ糸、シサル麻、および他のセルロース繊維、特にビスコースが挙げられる。これらの植物繊維は、熱可塑性ポリマーマトリックスの接着および含浸を容易にするために、純粋なまま、処理してまたはコーティング層で被覆して使用することができる。
【0143】
繊維材料はまた、繊維で織られた織物、組み紐であり得る。
【0144】
また、支持糸(fils de maintien)を有する繊維に対応することができる。
【0145】
これらの構成繊維は、単独で使用しても混合物として使用してもよい。したがって、有機繊維を、予備含浸しようとする熱可塑性ポリマー粉末と混合して、予備含浸繊維材料を形成することができる。
【0146】
有機繊維ストランドは、いくらかの坪量を有することができる。さらに、いくつかの幾何学的形状を有することができる。繊維材料の構成繊維は、異なる幾何学的形状を有するこれらの補強繊維の混合物の形態をさらに仮定することができる。
【0147】
繊維は、連続繊維である。
【0148】
繊維材料は、好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維および玄武岩ベースの繊維から選択される。
【0149】
より有利には、繊維材料は、炭素繊維、玄武岩繊維、および玄武岩ベースの繊維から選択される。
【0150】
それは、1つのロービングまたはいくつかのロービングの形で使用される。
【0151】
別の態様によれば、本発明は、上記で定義された多層構造体を製造する方法であって、上記で定義された補強層を上記で定義された密封層に溶接する工程を含むことを特徴とする、方法に関する。
【0152】
有利には、溶接工程は、レーザー、赤外線加熱または誘導加熱から選択されるシステムによって実施される。
【0153】
有利には、前記方法は、前記密封層を金属カーカス上に押し出す工程と、補強層を密封層に溶接する工程とを含む。
【0154】
別の態様によれば、本発明は、貯槽またはパイプもしくはチューブから選択され、内側から外側へ、上記で定義された少なくとも1つの密封層と上記で定義された少なくとも1つの複合補強層とを含む多層構造体の使用であって、
前記最も内側の複合補強層は、前記最も外側の隣接する密封層に溶接されており、
前記密封層は、Tmが、ISO11357-3:2013に従って測定して、280℃未満、特に265℃未満である、少なくとも1種の半結晶性の熱可塑性ポリマーP1i(i=1~n、nは密封層の数である)を主に含む組成物からなり、
各密封層の前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーは、同じでも異なっていてもよく、前記複合補強層の少なくとも1つは、特に半結晶性の、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーP2j(j=1~m、mは補強層の数である)を主に含む組成物が含浸された連続繊維の形態の繊維材料からなり、前記熱可塑性ポリマーP2jは、ISO11357-3:2013に従って測定して、前記構造体の最大使用温度(Tu)より高いTgを有し、Tg≧Tu+20℃、特にTg≧Tu+30℃であり、Tuは50℃より高く、特に100℃より高く、
ガスを輸送もしくは貯蔵するための、または海底の石油もしくはガス鉱床を採掘するための貯槽またはパイプもしくはチューブを準備するためのものであり、
水素の輸送または貯蔵は除外され、ガスを輸送または貯蔵するための貯槽またはパイプもしくはチューブであり、
水素を輸送または貯蔵するための貯槽、パイプまたはチューブから選択される多層構造体は除外される、
使用に関する。
【実施例
【0155】
すべての例において、使用する熱可塑性樹脂の性質に適合した温度で、ライナーの回転成形によって貯槽を得るが、すべての場合において280℃未満である。
【0156】
使用する熱可塑性樹脂の性質に適した温度で、ライナーを押し出すことによってチューブを得るが、すべての場合において280℃未満である。
【0157】
エポキシの場合、湿式フィラメントワインディング方法が使用され、ライナーの周りに繊維を巻くことからなり、繊維を液体エポキシバス中で予備含浸する。貯槽を次いでオーブンで2時間重合する。
【0158】
他のすべての場合において、熱可塑性樹脂(テープ)が予め含浸された繊維材料を使用する。このテープを、1500Wレーザーヒーターを備えたロボットを12m/分の速度で使用してフィラメントワインディングにより堆積する。
【0159】
例1(反例)
エポキシ(Tg130℃)-T700SC31E炭素繊維複合補強材およびHDPE密封層で構成される可撓性廃水輸送チューブ(沖合用途)。2つの樹脂の間に混和性はなく(表I参照)、繊維状補強材と密封層の間のいかなる溶接も妨げる。
【0160】
例2
BACT/10T-T700SC31E炭素繊維複合補強材およびPA6密封層で構成されるIV型またはV型ガス(天然ガス)貯蔵貯槽。2つの樹脂の間に良好な部分的混和性があり、繊維状補強材と密封層の間に良好な溶接を可能にする(表1参照)。
【0161】
例3
BACT/10T-T700SC31E炭素繊維複合補強材およびPA66密封層で構成されるIV型またはV型ガス(天然ガス)貯蔵貯槽。2つの樹脂の間に良好な部分的混和性があり、繊維状補強材と密封層の間に良好な溶接を可能にする(表1参照)。
【0162】
例4
BACT/10T-T700SC31E炭素繊維複合補強材および内側の金属カーカス上に堆積されたPA11密封層で構成される、石油のポンピングに使用される可撓性パイプ。2つの樹脂の間の部分的混和性が低く(表1を参照)、繊維状補強材と密封層の間の低質な溶接につながる。
【0163】
例5
11/BACT/10T-T700SC31E炭素繊維複合補強材および内側の金属カーカス上に堆積されたPA11密封層で構成される、石油のポンピングに使用される可撓性パイプ。2つの樹脂の間に良好な部分的混和性があり(表1を参照)、繊維状補強材と密封層の間の良好な溶接につながる。
【0164】
下記表1のすべての例において、樹脂の混和性を評価するために、混合物は、融解後1分の再循環時間を有するマイクロDSMで約150μmの粒径を有する粉末から製造した。220℃で作製したエポキシ-ポリエチレン混合物を除き、すべての混合物を300℃で作製した。
【0165】
混合プロセスの終わりに、混合物を型に注入し、DMAで特徴付けられる試験片を作製する。
混和性試験結果
- 縦列4:混合前の各樹脂のガラス転移温度
- 縦列5:混合物中の樹脂のガラス転移温度
- 縦列6:混合物中の樹脂のガラス転移温度の差と混合前の樹脂のガラス転移温度の差の比。
100%は、樹脂の非混和性を示し、
<80%は、低い混和性を示し、
<30%は、良好であるが部分的な混和性を示し、
0は、完全な混和性を示す。
【国際調査報告】