(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-03
(54)【発明の名称】流量測定のための改良された流路
(51)【国際特許分類】
G01F 1/692 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
G01F1/692
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504617
(86)(22)【出願日】2020-07-23
(85)【翻訳文提出日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 US2020043254
(87)【国際公開番号】W WO2021016446
(87)【国際公開日】2021-01-28
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417-1880, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ アール.ペティッセ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー マウル
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ティー.メッターズ
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035EA05
2F035EA08
(57)【要約】
高精度な流路断面によって、センサ較正をほとんどまたは全く使用せずに正確な投与量測定が行われることを可能にする、改良された流れセンサを提供する。流路は金属管として形成される。センサウィンドウが金属管の側壁に形成され、流れセンサがセンサウィンドウ内に取り付けられる。流れマニホルドが金属流路の周囲に形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インシュリンペンに接続するように成形された近位端であって、前記近位端から延在する穿刺部材を有する近位端と、
ペンニードルに接続するように成形され、隔壁を有する遠位端と、
前記近位端から前記遠位端へ延在し、センサウィンドウを有する金属流路と、
前記金属流路内を流れる流体の速度を感知し、前記センサウィンドウ内に配置された流れセンサと、
を含む、流れマニホルド、
を備える流れセンサ。
【請求項2】
前記金属流路は、円形断面を有する、請求項1に記載の流れセンサ。
【請求項3】
前記金属流路は、矩形断面を有する、請求項1に記載の流れセンサ。
【請求項4】
前記金属流路は、矩形断面および円形断面を有し、前記矩形断面と前記円形断面間で滑らかな遷移を有する、請求項1に記載の流れセンサ。
【請求項5】
所定の内部断面積を有する金属流路を形成するステップと、
前記金属流路の側壁にセンサウィンドウを形成するステップと、
前記金属流路の周囲に流れマニホルドを射出成形するステップと、
前記センサウィンドウ内に流れセンサを取り付けるステップと、
を備える、流れセンサを製造する方法。
【請求項6】
前記流れマニホルドを射出成形するステップは、
前記流れマニホルドの近位端で、インシュリンペンコネクタを形成するステップを含む、請求項5に記載の流れセンサを製造する方法。
【請求項7】
前記流れマニホルドを射出成形するステップは、
前記流れマニホルドの遠位端で、ねじペンニードルコネクタを形成するステップを含む、請求項5に記載の流れセンサを製造する方法。
【請求項8】
前記流れマニホルドの前記遠位端に隔壁を取り付けるステップをさらに含む、請求項7に記載の流れセンサを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤送達デバイスに関する。特に、本発明は、改良された流路内の流れセンサを利用して注入ペンなどから送達される投与量を測定するための改良されたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
インシュリン注入は、糖尿病に罹患した人々の生活において必要とされる日課である。インシュリン注入の動作は一見簡単な作業であるように思われるが、それはインシュリンを使用する患者に対して多くの危険性を伴う。患者は、インシュリン注入注射の時間および注入されたインシュリンの量を含む日誌への記入を持続することを日常的に要求される。そのような書面の日誌を持続することは、いくつかの混同する要因によって困難になる。インシュリン注入が行われる場合、患者は、会議に出席することまたは電話での会話に参加することなどの別の活動に予め占有され得、その活動により、日誌への記入が困難または不可能になる。さらに、糖尿病を有する人々が一般に経験する慢性高血糖の結果は認知機能障害であり、これにより、患者は、インシュリン投与がいつ行われたか、および/またはどの投与量が実際に注入されたかを覚えておくことが不可能になる。したがって、必要とされるのは、注入されたインシュリンの量およびインシュリンが注入された時間を自動的に測定するインシュリンペンへの取付け機構である。このような装置は、上述した書面の日誌への記入が不可能になることを解決し、このような日誌への記入を不要にする、または陳腐化させる。
【0003】
正確な投与量の測定は、任意の薬物療法の重要な構成要素であり、糖尿病患者のためのインシュリン療法の投与計画にとって特に重要である。最近、送達された投与量を測定し、自動的にデータロギングする目的で、数個の注入ペンおよびペン取付け機構、たとえば、どのくらいインシュリンが送達されたのかを決定するためにインシュリンリザーバ内のプランジャの位置を概算する動力付き注入ペンおよび取付け機構が開発された。しかしながら、現在のソリューションのいずれも十分でない。インシュリン投与量の手動記録は人為的な過失および怠慢により本質的に不正確であり、プランジャの測定は、手動記録を上回る改善はあるが、個々の投与量については依然として十分に正確なものでなく、投与量が送達された時間を記録しない。
【0004】
熱飛行時間(TTOF)センサは、流体の体積流量を測定するために、流体が既知の距離にわたって既知の横断面の流路を通って進行するにときに、移動する流体内に誘導される熱パルスの飛行時間を検出するために使用される。しかしながら、既存のTTOFセンサは、一般に、定常状態の流れシナリオにおいて使用され、インシュリンペンからのインシュリン注入などにおいて予想されているような流量の迅速で大きい変化を測定するために現在まで必要とされてこなかった。
【0005】
インシュリンペンから出てインシュリンペンニードルに入り、最終的にはインシュリンを使用する患者の皮下組織に入るインシュリンの流れを測定するためのチップが配置される射出成形プラスチック部品であるインシュリンペン取付け機構が開発されている。TTOFセンサを利用する例示的インシュリンペン取付け機構は、その内容全体が参照することによって本明細書に組み込まれる、特許文献1により詳細に説明されている。このようなセンサの精度は、センサが収容される流路の断面積の精度に依存する。射出成形部品は、指定された内径および真円度などの寸法を有するが、射出成形プロセスは、1つの成形部品から別の成形部品への正確な均一性を達成するその能力において制限される。経済的に達成可能な一般的な製造公差は、使用されるポリマーおよび充填剤のタイプに依存し、+/-0.005インチを容易に超えることが可能である。いくつかのポリマーでは、+/-0.005インチに近いより微細な公差を達成することが可能であるが、コストが大幅に増加する。そのようなばらつきは、インシュリンペン取付け機構の正確な測定性能を保証するために、インシュリンペン取付け機構とする前に各個々の取付け機構を較正する必要がある程度に及ぶ、インシュリンペン取付け機構の寸法のばらつきにつながる。各インシュリンペン取付け機構の個々の較正は、そのような取付け機構の製造業者にとって面倒なことであり、且つ費用がかかる。したがって、インシュリンペン取付け機構内に流量センサを収容し、精度を向上させ、較正に関する必要性および較正に関連するコストを下げるなどの改善された流路が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
当業者によって理解されるように、本発明の実施形態によって、上述の欠点が克服され、他の利点が実現される。本発明の例示的な実施形態は、インシュリンペンから出てインシュリンペンニードルに入り、次いで最終的に患者に入るときにインシュリンの流れを測定するための改善された液体チャネルアセンブリを提供する。本発明の実施形態では、射出成形によって形成されたプラスチックアセンブリを、金属カニューレまたは金属製細長いニードルに置き換える。金属カニューレまたは金属製ニードルには、流量測定チップが配置されるウィンドウが設けられている。金属カニューレまたは金属製細長いニードルは、有利には、金属シートからの溶接された管またはシームレス管から大量生産することが可能である。このようなプロセスは、有利には、+/-0.00075インチ未満の内径の公差を保持することが可能である。その結果、金属カニューレベースの流路は、各流路アセンブリの個々の較正に関する必要性を排除するために必要とされる十分な部品間の均一性を有して、低コストで製造されることが可能である。これにより、関連する製造プロセスが簡略化される。
【0008】
さらに、そのような金属ベースのインシュリン流路の内面は、射出成形部品の表面と比較して、それを通って流れるインシュリンに示される表面の優れた均一性を提供する。そのような改善された表面仕上げの均一性は、流路を通る流体の流れの部品間の均一性を改善する。このような流路を通って流れる流体は、本質的に層流または乱流のいずれかであることが可能であり、このことは、流れ感知チップの流れ感知測定能力の質に影響を与えることが可能である。
【0009】
流路の別の重要な属性は、流路の表面粗さによって影響されることが可能であるインシュリン適合性である。具体的には、流路表面のフラクタル長さは、インシュリンが流路を通って移行する際に、インシュリンの核形成または堆積のための部位を提供することが可能である。射出成形された表面と比較して最小のフラクタル長さを有する接触表面を提供する必要がある場合、金属ベースの流路は電解研磨されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明は、添付の図面に示されるその実施形態を参照することによって、より容易に理解される。
【
図1】本発明の例示的な実施形態による、投与量捕捉システムを示す図である。
【
図2】
図1の投与量測定システムのセミディスポーザブル部分を示す図である。
【
図3】
図1の投与量捕捉システムの耐久部分を示す図である。
【
図4】本発明の例示的な実施形態による、投与量捕捉システムのブロック図である。
【
図5】本発明の例示的な実施形態による、改善された流路を利用する投与量測定システムのセミディスポーザブル部分の断面図である。
【
図6】本発明の例示的な実施形態による、改善された流路の正面図および斜視図である。
【
図7】本発明の例示的な実施形態による、投与量測定システムのセミディスポーザブル部分を形成する方法を示すフローチャートである。
【
図8A】本発明の例示的実施形態による、投与量捕捉システムの例示的ユーザインターフェースを示す図である。
【
図8B】本発明の例示的実施形態による、投与量捕捉システムの例示的ユーザインターフェースを示す図である。
【
図8C】本発明の例示的実施形態による、投与量捕捉システムの例示的ユーザインターフェースを示す図である。
【
図9】本発明の例示的な実施形態による、投与量捕捉システムによって捕捉された投与量プロファイルを示す図である。
【
図10】流体が流れていないセンサ中の静的温度場の断面を示す図である。
【
図11】流体が流れるセンサ中の歪んだ温度場の断面を示す図である。
【
図12】本発明の例示的実施形態による、投与量体積を計算するために流れの読取りを積分する台形の総和方法を示す図である。
【
図13】本発明の例示的な実施形態による、投与量捕捉システムのダイナミックレンジを改善するために2つの流量センサを利用する本発明の代替の実施形態を示す図である。
【0011】
図面全体にわたって、同様の参照番号が、同様の要素、特徴および構造を指すことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の例示的な実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。
図1に、好ましくは従来のインシュリンペン102を一体化する例示的な投与量捕捉システム100を示す。この例示的な実施形態がインシュリンペンに関して示されているが、本発明の実施形態は、限定はしないが、パッチポンプ、静注ポンプ、固定投与量インジェクタ、自動インジェクタ、シリンジなどを含む任意の好適な薬剤デバイスとともに利用され得ることを諒解されたい。システム100は、流体マニホルドと熱飛行時間(TTOF)ハイブリッドセンサとを含むセミディスポーザブル流れセンサ104を含む。セミディスポーザブル流れセンサ104は、好ましくは、それが取り付けられるインシュリンペン102と同等の寿命を有する。システム100は、耐久部分106をさらに含み、これは、好ましくは、複数年の寿命を有する。耐久部分106は、流れセンサに電力供給し、センサ信号を読み取る電子回路と、投与量データを分析するためのマイクロプロセッサと、充電式バッテリと、温度ならびに動きおよび/または位置センサと、ワイヤレス通信回路とを含んでいるプラスチックエンクロージャからなる。耐久部分106はまた、好ましくは、セミディスポーザブル流れセンサを保護する、光からインシュリンを遮蔽する、意図しない針刺しから患者を保護する、ならびにキャップ146がそれぞれ耐久物から取り外されるかまたはそれの上に戻されるときに感知システムを活動化および非活動化させる電気接触クロージャのためのスイッチとして働く機能のうちの1つまたは複数を与えることが可能であるリムーバブルキャップ146を有する。耐久部分106は、好ましくは、USBポートなどの標準的なコネクタを介して、または、好ましくは、ワイヤレス充電システムを介して充電されるように適応される。好ましくは、スマートフォン108ベースのソフトウェアアプリケーションは、投与量情報を読み取り、記憶し、提示するために耐久部分106とワイヤレスに対話する。アプリケーションはまた、グルコース計、アクティビティおよびフィットネスメータ、または糖尿病ケアネットワークなどの他の電子デバイスおよびネットワークと相互作用することが可能である。ソフトウェアアプリケーションは、好ましくは、耐久部分106と1度だけペアリングされる。初期ペアリングの後に、ソフトウェアは、耐久部分106を自動的に認識し、自動的に耐久部分106からスマートフォンアプリケーションにデータを確実に転送することが可能である。本発明の代替実施形態では、他のペアリング構成が、適宜に必要に応じて行われ得ることを諒解されたい。
【0013】
図2に示されるように、セミディスポーザブル流れセンサ104は、好ましくは、標準的なインシュリンペンニードル110を受け入れるためのねじ部分114を有する。ペンニードル110は、好ましくは、従来通り各インシュリン投与量とともに変更される。
【0014】
セミディスポーザブル流れセンサ104について、
図2に関してさらに詳細に説明する。図示のように、セミディスポーザブル流れセンサ104の遠位端は、隔壁112とユニバーサルペンニードルねじ114とを含む。MEMS流れセンサチップ116は、キャリアプリント回路板上に取り付けられ、セミディスポーザブル流れセンサアセンブリ104に固定される。電気コネクタ118は、セミディスポーザブル流れセンサ部分104と耐久部分106との間で電気接続を行うために与えられる。セミディスポーザブル流れセンサ部分104の近位端は、入口カニューレ122をもつインシュリンペン接続120を含む。セミディスポーザブル物104はまた、好ましくは、耐久部分106内でセミディスポーザブル物104を位置合わせするためにハウジング上に位置合わせ特徴124を含む。セミディスポーザブル物は好ましくは、耐久部分106内でセミディスポーザブル物104を取外し可能にロックするために軸ロック126または同様の特徴を含む。図示のように、軸ロック126は、フレキシブル部材128と耐久部分106の対応する特徴にロックされるように適応されたロック部材130とを含む。
【0015】
次に、耐久部分106について、
図3および
図4を参照しながらさらに詳細に説明する。図示のように、耐久部分106は、充電ポート134のための開口部を好ましくは含む外部ハウジング132を含む。充電ポート134は、好ましくは、ミニUSBなどの標準的に採用された標準に準拠するが、専有接続を含む任意の好適な接続が利用され得る。代替的に、ワイヤレス充電構成が耐久ユニットに組み込まれることが可能である。耐久ユニットは、インシュリンペン102への取付け機構のための開口部138を含む近位端136を有する。耐久ユニットは、セミディスポーザブル部分104を受け入れるように適応された開口部142を含む遠位端140をさらに有する。耐久部分106は、好ましくは、リムーバブルキャップ146を受け入れるように輪郭形成され、それを行うために回り止め144または同様の特徴を含む。耐久部分106は、
図4に示すプリント回路板2000を含む。耐久PCB2000は、好ましくは、アナログフィルタ2004と、ロックイン/計器増幅器2006と、発振器2008とを与えるASIC2002を含む。ASIC2002は、アナログデジタル変換器(ADC)2010にデータを与える。ADC2010は、次に、Bluetooth(登録商標) ARMプロセッサ2012にデータを与える。耐久PCB2000は、マイクロUSBポートなどの通信ポート2014と、インターフェース/センサ2016と、バッテリ構成要素2018/2020をさらに含む。耐久PCB2000は、加熱器2024を与えるMEMSチップ2022およびセンサ要素2026とインターフェースする。
【0016】
図5は、セミディスポーザブル流れセンサ104の断面図である。
図5に、流れマニホルド1204内に露出したセンサ表面をもつPCB1202上に取り付けられたセンサチップ1200を示す。金属カニューレ1301は、流れマニホルド1204の内部に形成される。金属カニューレは、内径を含む、より正確な幾何学的形状で形成され得るので、センサの全体的な精度が改善される。金属カニューレまたは金属製細長いニードルは、有利には、金属シートからの溶接された管またはシームレス管から大量生産することが可能である。次いで、これらの管は、最終寸法が達成されるまで、いくつかの介在するアニーリング工程および延伸工程の使用することによって細くされる。有利なことに、そのように形成されたセンサの較正は、センサ間のばらつきが低減されるので、単純化または除外され得る。チップ1200は、UV硬化接着剤、グランド中の成形されたエラストマーシールまたはオーバーモールド成形されたエラストマーシールを含む任意の好適な手段によってマニホルド1204に取り付けられ、密封され得る。マニホルド1204の1つの端部は、穿刺カニューレ122を含んでおり、インシュリンペンのISO標準ハブに取り付けられる。穿刺カニューレ122は、金属カニューレ1301とは別体の部品である必要はなく、それと一体的に形成されてもよいことを理解されたい。ペン102にマニホルド1204を取り付けることは、インシュリンカートリッジ上のゴム隔壁を穿刺し、センサ1200にわたるインシュリン流路を確立する。マニホルド1204の反対側の端部は、インシュリンペンニードルのためのISO対応の接続を作成するねじとエラストマ隔壁とを含んでいる。マニホルド1204は、理想的には30マイクロリットル未満の最小残留(回収不能の)内部体積と理想的には25mm未満の最小付加長さとを有するように形成される。マニホルド1204は、層流がセンサ1200の面にわたって常に維持されるようにする断面積および滑らかな遷移で設計された金属流路1206を含む。センサ1200の面は、それが常にインシュリンの流れの剪断域中にあるようにチャネル壁に対して明確に配置される。センサ面の配置は、マニホルド壁に対して0mmから0.1mmの盛り上がりでなければならず、0.05mmが好ましい。マニホルド1204を通る金属流路1206は、好ましくは、流路1206を通るインシュリンの層流を促進するために入口カニューレ122からセンサ表面1200までペンニードル端に向かって実質的に直線で形成される。
【0017】
マニホルド1204は、好ましくは、挿入およびセットアップ中の耐久部分106に対するセミディスポーザブル部分104の適切な向きおよび配置を保証する位置合わせ特徴を有する。スナップ屈曲1208などの保持特徴は、使用中に耐久部分106およびインシュリンペン102にセミディスポーザブル部分104を固定し、ペン102が空のときにユーザがセミディスポーザブル物を開放し、取り除くことを可能にする。マニホルド1204上の電気コネクタ118は、好ましくは、入口カニューレ122と同じ方向に配向され、耐久部分106にセミディスポーザブル部分104を挿入するときに流路が確立されているのと同時に耐久部分106との電気接触を確立する。
図5に示す電気コネクタ118が導電ピンを有するが、導電性パッド、可撓性ケーブル、導電性フレクシャまたはピンなどの他の特徴も使用されることが可能である。
【0018】
知覚空間への既定の加熱器をもつ所与の感知チップでは、測定可能な流れの範囲は、流路断面を変更することによって調整されることが可能である。所与の流量では、より大きい断面は、チップによって観測される見かけの速度を小さくすることになり、センサ信号が飽和する前にチップがより高い流量を測定することを可能にする。より大きい断面は、低い流量での低減された精度という固有のトレードオフを有することになる。より小さい断面を、より大きい要素空間と組み合わせて、流路中に低減された内部容積をもつ等価な流れの範囲を測定することが可能である。
【0019】
セミディスポーザブル物104、より詳細には、流路1206を備える要素は、好ましくは、ペンインジェクタの全寿命、すなわち、最長少なくとも28日の間インシュリンと適合し、結合しない材料で設計される。そのような材料は、特に、ABSプラスチックと304シリーズのステンレス鋼とを含む。液体シリコーンゴムがPCBとマニホルドとの間のシールのために使用される場合、およびエラストマがインシュリンからの防腐剤を吸着する傾向を有するので、ゴムシールの露出表面は最小化される。マニホルド構成要素を接合するために、医療グレードの光硬化接着剤が使用される。これらは、好ましくは、フラッシュ硬化シアノアクリレートまたは光硬化アクリルを含む。
【0020】
インシュリン流路1204は、インシュリンタンパク質分子を潜在的に損傷することが可能である高剪断の任意のゾーンを回避するために漸進的な流れの遷移で設計される。マニホルドのねじハブ114は、好ましくは、ISO標準のインシュリンペンニードルを受容するように設計される。
【0021】
図4に示すセミディスポーザブル物104は、金属カニューレ1301の周囲に形成された射出成形された熱可塑性部品であることが好ましい。
図6は、穿刺部分1302および流路部分1303の両方を含む例示的な実施形態による金属カニューレ1301を示す。図示のように、センサウィンドウ1304が流路部分1303内に形成されている。流量センサは、センサウィンドウ1304内に配置され、流路内を流れる流体にアクセスする。セミディスポーザブル物104の流路1204の部分は、微細加工された金属、プラスチック、セラミック、または複合管1301で置き換えることが可能であり、上述の滑らかな流れの遷移を提供する。しかしながら、精度のために、センサウィンドウ1304が配置される流路の部分は金属カニューレで形成されることが好ましい。金属流路1206は、好ましくはインサート成形され、セミディスポーザブル物104に組み込まれるか、またはセミディスポーザブル物104のプラスチック部分が、金属流路の周りに射出成形される。
【0022】
インシュリンペンと共に使用する流れセンサを製造する方法を、
図7に関して説明する。ステップ701で、所定の断面積を有する金属流路が形成される。ニードル製造技術が、好ましくは、高精度直径を活用して使用される。金属流路の近位端は、任意選択的に穿刺部材を含む。ステップ702で、金属流路の端部間にセンサウィンドウが形成される。ステップ703で、流れマニホルド本体が金属流路の周りに射出成形される。流れマニホルド本体は、穿刺部材を露出させるように適合され、インシュリンペンに接続するように成形された近位端を含む。流れマニホルド遠位端は、ペンニードルを受け入れるように適合されたねじ外側部分を含み、その中に隔壁を受け入れるように成形される。ステップ704で、流れセンサが流路内のウィンドウに対して取り付けられる。
【0023】
次に、例示的な実施形態による投与量捕捉システムの動作について説明する。投与量捕捉システム100は、各新しいペンとのセットアップシーケンスの一部として、すなわち、典型的なユーザの場合3日から7日(名目上は5日)ごとにインシュリンペン102に取り付けられる。耐久部分106が最初にインシュリンペン102に取り付けられる。セミディスポーザブル物104が、次いで、耐久部分106の遠位開口部140に挿入される。ディスポーザブル部分104のカニューレ122がインシュリンペン102の遠位隔壁を貫通して、TTOF感知要素にわたる流路を作成する。セミディスポーザブル部分104が耐久部分106に挿入されるので、電気コネクタ118が耐久部分106内の対応する電気コネクタと嵌合されて、TTOFセンサ116への電気接続を作成する。ディスポーザブル部分104、したがって、ペンニードルカニューレが隔壁112を貫通する場合、ペンニードルは遠位のねじ端部114に螺合されて、インシュリンペンから流れセンサとペンニードルとを通る流体経路を完成する。組み合わされたインシュリンペンと投与量感知システムとは、次いで、閉じ込められた空気を取り除くために通常の方法でプライミングされる。
【0024】
本実施形態では、アセンブリシーケンスは、最初に耐久部分106、第2にセミディスポーザブル部分104であるが、当業者なら諒解するように、システムは逆転されたアセンブリ順序で設計され得る。このアセンブリシーケンスでは、耐久部分106は、遅効性のインシュリンをもつ1つのペンと速効性のインシュリンをもつ第2のペンとなど、異なるインシュリンペン上で使用されることが可能である。セミディスポーザブル部分104は、好ましくは、各インシュリンペン上で発見されるユニバーサルISO接続に取り付けられ、耐久部分106は、次いで、セミディスポーザブル部分104と、インシュリンペンの本体とに取り付けられることになる。耐久部分106がインシュリンと接触しないので、耐久部分106は、インシュリンの無菌性に影響を及ぼすことなしにユーザの治療の必要に応じて複数のペンの間であちこちに交換することが可能である。2つ以上のインシュリンまたは薬に関与する治療では、耐久物が取り付けられた追加の薬を認識する手段が提供される。たとえば、耐久ユニットがペンに取り付けられるとき、注入ペン上のバーコードを読み取るために耐久部分とペアリングされたスマートフォン上のカメラが使用される。
【0025】
耐久部分106は、好ましくは、上記で説明したように、スマートフォンアプリケーションとペアリングされる。ペアリングプロシージャは、好ましくは、所与の携帯電話108/耐久部分106のペアごとに1度行われる。初期ペアリングの後に、携帯電話108のアプリケーションは、好ましくは、ペアになった耐久部分106を自動的に認識し、それと通信する。
【0026】
インシュリンペン上に取り付けられると、例示的なシステムは、ユーザの通常の注入シーケンスの一部として投与量イベントを自動的に認識し、捕捉する。好ましくは、通常のインシュリンペンの注入のために必要なものを越えた追加の使用ステップが、ペン上での初期セットアップの後に投与量センサに必要とされない。投与量体積および時間は、耐久部分106によって計算される。耐久部分106は、好ましくは、多くのインシュリンペンの分の投与量データを記憶することが可能である。耐久部分106によって記録されたデータは、好ましくは、スマートフォン108と耐久部分106とが互いのブロードキャスト範囲内にあるときはいつでもスマートフォン108アプリケーションに転送される。スマートフォン108に転送される投与量データは、好ましくは、便利な、読み取りしやすいフォーマットでユーザに提示される。投与量情報はまた、さらなる処理および分析および患者のヘルスケアネットワーク中の他のステークホルダへの転送が望まれる場合は携帯電話から他の糖尿病管理デバイスに、またはクラウドベースのデータストレージサイトに転送され得る。
【0027】
インシュリンペン102が空になると、耐久部分106は取り除かれ、次の使用のために準備される。使いきったインシュリンペン102とセミディスポーザブル部分104との組合せは、従来の糖尿病ペンと同様に破棄される。耐久部分106またはセミディスポーザブル部分104は、好ましくは、別のインシュリンペン102上でのセミディスポーザブル部分104の再利用を妨げるための特徴を有する。
【0028】
次に、我々は、例示的なスマートフォン108のアプリケーションについて説明する。スマートフォンアプリケーションは、好ましくは、理解しやすいフォーマットでユーザに投与量データを表示する。
図8Aに、投与量概観ウィンドウを示し、ここで、最近の投与量測定値と時間ベースの平均値とを示すことが可能である。
図8Bは、精度のためにユーザによってレビューされることが可能であり、ノートおよび他のコンテキストベースのデータのロケーションを提供する投与量ログを有する。
図8Cに、ユーザに傾向洞察を与えることが可能であり、選択可能な時間範囲にわたる投与量測定値のグラフを示す。
【0029】
インシュリン注入のいくつかの態様は、正確な投与量を測定することに対する有意な課題を提示する。インシュリン投与量のサイズは、低くは3.3マイクロリットルから高くは800マイクロリットルまで大幅に変化することが可能である。投与量の送達時間は、投与量のサイズと、使用されている針の直径および長さと、インシュリンペンの摩擦および機械効率と、ユーザまたはペンのばね負荷の作動によって加えられた作動力とに基づいて1秒未満から10秒よりも長くまで大きく変化することが可能である。典型的なインシュリン注入の流れプロファイル500を
図9に示す。流れプロファイルは、注入の始めに流れの急激な、大きい増加502を有し、連続的に変動する流量504を有し、投与量の最後に比較的長い流れの減衰506を有する。正確な投与量を計算するために、流れセンサは、流れプロファイルのすべての部分に急速に正確に応答しなければならない。流れセンサは、流れの急激な変化に応答することが可能でなければならず、広範囲のユーザによって生成され得る流量の範囲にわたって正確でなければならない。有利には、本発明の実施形態は、時間にわたって流量測定値を積分することによって投与量を決定することが可能である。代替的に、いくつかの流量データ点または流れ曲線の全体的な形状が、たとえば、1ユニットから60ユニットまでの増分投与量などの投与量値の記憶されたテーブルに一致され得る。
【0030】
国際規格は、現在、インシュリンペンの最小分解能または投与量体積の+/-5%のいずれか多い方に等しい体積精度を要求している。たとえば、1Uのダイヤル分解能をもつ典型的なU-100ペンについて、200マイクロリットルよりも少ない投与量については+/-10マイクロリットル、200マイクロリットルよりも大きい投与量については+/-5%の精度が要求される。より高いインシュリン濃度は体積に対して反比例する。たとえば、1Uの分解能をもつU200インシュリンペンは、100マイクロリットルよりも少ない投与量については+/-5マイクロリットル、100マイクロリットルよりも大きい投与量については+/-2.5%の体積精度を要求することになる。
【0031】
インシュリン注入のために、一般に、比較的高い背圧を作成し得る小径の針が使用される。したがって、本発明の実施形態による流れセンサは、最大1メガパスカルの背圧を許容することが可能でなければならない。
【0032】
流れセンサがインシュリン送達経路中にあるので、それは、インシュリンに化学的に適合する材料から製造されなければならず、いかなる形でもインシュリンと反応しても破損してもならない。
【0033】
本発明の例示的な実施形態によれば、TTOF流れ感知は、オフセットされた熱感知要素とともに中央の加熱要素を使用する。各感知要素のオフセットは、必ずしもそうではないが、好ましくは、加熱要素の両側で対称的である。既知の振幅、周波数、形状および位相の時間変動する信号が中央の加熱器に印加される。熱信号は、センサに向かう流体を通して拡散し、ここで、それは、駆動信号に対して低減された振幅とシフトされた位相との両方で検出される。振幅信号は、熱量計感知に対応し、一方、位相シフト信号は、飛行時間感知に対応する。流れがなければ、
図10に示すように、加熱器の周りの熱伝導ゾーンは対称になる。耐久部分106中の電子回路は、上流および下流のセンサから平衡信号を感知する。電子回路によってフィルタ処理して除去された場合の両方のセンサが受ける共通信号および電子回路は、センサのための流れのない状態を計算する。流れがあれば、
図11に示すように、熱ゾーンは、流体対流によって歪む。熱信号は、不平衡であり、下流の感知要素で受ける電子信号は、入力に対しておよび上流のセンサに対して位相(時間)および振幅がシフトされる。有利には、上流および下流のセンサトレースの両方からのセンサ信号は、注入イベント中に予想される流れ範囲全体にわたってサンプリングされる。シフトインセンサ信号は、耐久部分106の電子回路によって読み取られ、記憶された較正曲線またはテーブルを参照することによってインシュリンの瞬時流量に変換される。正確な頻繁な時間間隔で瞬時流量をサンプリングすることによって、送達された総体積が、投与量イベントごとに計算されることが可能となる。
図12に、例示的な投与量イベントと、投与量の体積を計算するために流れセンサによって捕捉された関連データとを示す。
【0034】
いくつかの投与量追跡インシュリンペンが現在市場で入手可能である。これらのペンは、送達された投与量を決定するためにペン機構の動きを追跡および監視する。従来のペンは、最近の注入の意図された投与量体積を通信するために小さいディスプレイを使用する。いくつかのより新しいモデルはまた、スマートフォンへのワイヤレス通信を組み込む。ペンの機械化が、検出装置中の誤差への追加であり得る固有の誤差を有するので、ペン注入機構を追跡することは、ユーザによって受け取られる投与量を正しく監視することに失敗する可能性がある。さらに、投与量が組織に完全に送達される前に注入部位からペンを引き出すか、またはシステム構成要素の障害、たとえば、はさまれたか詰まったペンニードルを認識しないなどのユーザエラーが、意図された投与量を送達しないことにすべて寄与することが可能である。従来のインシュリンペンとは異なり、本発明の例示的な実施形態は、ペンから実際に送達された時間と変化するインシュリン流量プロファイルとを測定するためにTTOF感知を利用し、それにより、送達された実際の投与量についてより完全な正確な情報が可能になる。
【0035】
TTOFセンサは、センサを通過する流体の速度を測定する。したがって、流体速度を測定するためにTTOFを利用する流量センサを通過する流体の体積は、流体が流れる流路の断面積に依存する。上述したように、射出成形部品は、流路の幾何学的形状を如何に正確に作ることが可能であるか、および部品ごとに如何に可変であるかに限界がある。本発明の実施形態は、インシュリンペンとペンニードルとの間をインターフェースする上述のディスポーザブル部分を改善しインシュリンペンからディスポーザブル部分を通ってペンニードル内に入って患者に至る流れを測定する。金属管は、針および金属カニューレに関して知られているように、比較的安価に、且つ高精度の内径で製造することが可能である。本発明の実施形態は、流路として金属カニューレを有利に利用し、流路を通して流量測定および投与量記録のために流体が流れる。
【0036】
本発明の例示的な実施形態は、ガラス基板上にセンサを形成する。ガラス基板は、投与イベント中のセンサの変形を妨げるために低い熱伝導率および構造剛性を有する。ガラス基板上にセンサ表面を形成することは、好ましくは、1つのセンサ表面が流路内の薬剤に露出されるので、液体薬剤の流れの用途において好ましく、センサに加えられる圧力が問題にならない気体用途で使用される薄膜またはブリッジ構造に関して上記の制限を克服する。
【0037】
本発明の別の例示的な実施形態では、センサのダイナミックレンジを増加させるために、複数のセンサチップがタンデムで使用される。
図13に、第1のセンサ1802と第1のセンサ1802から下流の第2のセンサ1804とを有する代替流路1800を示す。流路1806には、2つのセンサチップに対応する2つの異なる断面ゾーンが設けられる。第1のセンサ1802は、流路1806内で比較的より大きい流れ断面1808に配置されることが可能である。このセンサは、比較的低い流量により、より高い流量でより良い分解能を有することになる。第2のセンサ1804は、より小さい断面1810を有する流路1806のエリア中で第1のセンサ1802の下流に配置される。第2のセンサ1804は、比較的より高い流量により、より低い流量においてより良い分解能を有することになる。もちろん、必要な場合ダイナミックレンジをさらに改善するために3つ以上のセンサが使用され得ることを、当業者は容易に諒解されよう。投与量感知アルゴリズムは、測定された流れ状態および傾向に基づいて信号に電力供給して、読み取るために適切なセンサペアを決定する。
【国際調査報告】