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特表2022-542368腫瘍溶解のための有効な治療用製剤としての、抗体を予め負荷したCD16+NK-92細胞
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-03
(54)【発明の名称】腫瘍溶解のための有効な治療用製剤としての、抗体を予め負荷したCD16+NK-92細胞
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20220926BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20220926BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220926BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220926BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220926BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20220926BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 36/062 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220926BHJP
【FI】
A61K35/17 Z
C12N5/0783
C12N5/10
C07K16/28
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K47/42
A61K31/706
A61K31/675
A61K31/4745
A61K31/7068
A61K31/513
A61K31/282
A61P35/00
A61K36/062
A61K35/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505208
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(85)【翻訳文提出日】2022-02-04
(86)【国際出願番号】 US2020043690
(87)【国際公開番号】W WO2021021705
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】62/879,111
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522031582
【氏名又は名称】ナントクウェスト,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サイモン,バリー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】サクセナ,マンジュ
(72)【発明者】
【氏名】アリ,ラザ
(72)【発明者】
【氏名】チボー,ジョセフ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BD39
4B065CA25
4B065CA44
4C076BB13
4C076BB17
4C076BB40
4C076CC27
4C076EE41
4C076FF70
4C084AA19
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC43
4C086CB22
4C086DA35
4C086EA02
4C086EA10
4C086EA17
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB43
4C087BB64
4C087BC11
4C087BC83
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206JB16
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZB26
4C206ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
本明細書には、薬学的に許容可能な担体と、組み合わせ製剤の形態の治療有効量の高親和性ナチュラルキラー(haNK)細胞及び治療用抗体とを含む医薬組成物が提供される。また、本明細書には、haNK細胞と治療用抗体とを含む医薬組成物を使用することによる癌の治療方法も提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に許容可能な担体と、組み合わせ製剤の形態の治療有効量の高親和性ナチュラルキラー(haNK)細胞及び治療用抗体とを含む医薬組成物。
【請求項2】
前記haNK細胞がNK-92細胞株誘導体である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記haNK細胞が組換えIL2を更に発現する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記haNK細胞が、少なくとも1つの抑制性受容体の発現が低下したものとなるように遺伝子操作されている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記haNK細胞が投与前に少なくとも500cGyの放射線量で照射される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記抗体が抗CD20抗体である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記抗CD20抗体がリツキシマブである、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記抗体が、アテゾリズマブ、オファツムマブ、イピリムマブ、ラムシルマブ、オララツマブ、エロツズマブ、ネシツムマブ、ダラツムマブ、ジヌツキシマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、トラスツズマブ、アレムツズマブ、ベバシズマブ、ペルツズマブ、オビヌツズマブ、リツキシマブ、及びセツキシマブからなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
凍結保存培地を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記凍結保存培地がCryoStor CS10である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記凍結保存培地が、前記haNK細胞への抗体結合を増加又は安定化させる、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物を作製する方法であって、
haNK細胞を治療用抗体と混合して組み合わせ製剤を作成すること;
前記組み合わせ製剤を凍結すること;及び
前記組み合わせ製剤を解凍すること
を含む方法。
【請求項13】
前記haNK細胞が、約5%アルブミンを含む培地中にある、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記haNK細胞と治療用抗体との混合物が、等容積の凍結保存培地と混合される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記組み合わせ製剤が、-80℃未満の温度に凍結される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記組み合わせ製剤が、-120℃未満の温度に凍結される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記haNK細胞の増殖能を障害するため、前記凍結された組み合わせ製剤に一定線量のX線照射が照射される、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記解凍ステップの後、前記組み合わせ製剤が氷上又は室温でインキュベートされる、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
癌を有する患者を治療する方法であって、(a)治療有効量の高親和性ナチュラルキラー(haNK)細胞と、(b)治療用抗体との組み合わせ製剤を含む医薬組成物を前記患者に投与することを含む方法。
【請求項20】
前記投与が輸注による、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記投与が腫瘍内投与である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記投与が静脈内投与である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
更なる癌治療を前記患者に投与するステップを更に含む、請求項19~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記更なる癌治療が免疫療法を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記免疫療法が、患者特異的且つ腫瘍特異的ネオエピトープを発現する組換え酵母又は組換えウイルスの投与を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記更なる癌治療が化学療法を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記化学療法が、アルドキソルビシン、シクロホスファミド、イリノテカン、ゲムシタビン、カペシタビン、5-FU、FOLFIRI、FOLFOX、及びオキシピアチン(oxipiatin)のうちの少なくとも1つの投与を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記更なる癌治療が放射線療法を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記更なる癌治療が、前記医薬組成物と別々に、逐次的に投与されるか、同時に共投与されるか、又はそれに先行して投与される、請求項19~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記haNK細胞が、5×10細胞/kg~5×10細胞/kgの投薬量で投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
癌の治療における使用のための、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
医薬組成物を含むキットであって、前記医薬組成物が、haNK細胞と、治療用抗体と、任意選択で凍結保存培地とを含む、キット。
【請求項33】
前記組成物が、-85℃未満での保存に好適なバッグ又はバイアルに包装される、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
電子的形態又は紙形態の情報を更に含み、前記情報が、前記医薬組成物の使用説明書を含む、請求項32又は33に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年7月26日に出願された本発明者らの同時係属中の米国仮特許出願第62/879,111号明細書に対する優先権を主張するものであり、この仮特許出願は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、癌を治療するための、詳細には、治療用抗体を予め負荷した高親和性ナチュラルキラー(haNK)細胞によって癌を治療するための組成物、キット、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景の説明には、本開示の理解に有用となり得る情報が含まれる。これは、本明細書に提供される情報のいずれかが、ここに特許請求される発明の先行技術である若しくはそれと関連性があること、又は具体的若しくは黙示的に参照されるいずれかの文献が先行技術であることを認めるものではない。
【0004】
本明細書における全ての刊行物及び特許出願は、各個別の刊行物又は特許出願が参照によって援用されることが具体的且つ個別的に指示されたものとみなすのと同程度に参照によって援用される。援用される参考文献中の用語の定義又は使用が、本明細書に提供されるその用語の定義と矛盾している又は相反する場合、本明細書に提供されるその用語の定義が適用され、参考文献中のその用語の定義は適用されない。
【0005】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、自然免疫の媒介、適応免疫応答の増強において役割を果たすことが公知であり、CD16がヒトIgG1抗体のFc領域と反応性があることにより、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を通じた抗腫瘍応答の媒介に関係があるとされている。幾つかのNK細胞株が、白血病及びリンパ腫を有する患者など、癌患者に治療効果を及ぼすことが公知である。NK細胞はまた、癌細胞死滅効果を増強するように更に操作され得る-かかる技法の一つは高親和性NK(haNK)細胞であり、これは、投与された抗体に結合する高結合親和性受容体を取り込んだNK細胞である。
【0006】
癌の治療のためのNK細胞と抗体との組み合わせ療法が公知である。PCT/US2018/032281号明細書は、抗EGFR抗体と高親和性NK細胞(haNK)との共投与による脊索腫の治療を開示している。この開示は、この抗体がCD16受容体の高親和性変異体に非共有結合的に結合すること、又はこの抗体がhaNK細胞の輸注前に投与され、そのようにして脊索腫細胞がhaNK細胞による細胞傷害性細胞死滅の標的となることを提供する。
【0007】
腫瘍学における大多数のモノクローナル抗体が、体の大きさに基づく投薬スケジュールで投与される。これは、薬物分布及び薬物消失の両方についての患者間のばらつきを部分的に抑制する。しかしながら、PCT/US2018/032281号明細書など、操作された細胞と治療用抗体との組み合わせが異なるプロトコルに従い投与される既存の細胞療法においては、用量設定が課題である。更に、反復ボーラスのため治療費が増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、当該技術分野では、細胞療法薬の生存能力及び有効性を制御するための新規組成物及び方法、並びに操作された細胞及び治療用抗体の用量設定が必要とされている。好ましくは、かかる組み合わせは、両方の成分を1つの投与プロトコルに組み合わせるものであり得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、治療用抗体が予め負荷されたCD16NK-92(haNK)細胞を含む凍結保存製剤を作り出すことが可能な組成物、方法、及び装置を発見した。有利には、及び予想外にも、本明細書に開示される組成物は、反復ボーラスに伴う治療費の増加を解消し、患者に効果的な薬物分布を生じさせる。
【0010】
本発明の主題の一態様において、本発明者らは、薬学的に許容可能な担体と、組み合わせ製剤の形態の治療有効量の高親和性ナチュラルキラー(haNK)細胞及び治療用抗体とを含む医薬組成物を企図する。
【0011】
企図されるhaNK細胞は、好ましくは5×10細胞/kg~5×10細胞/kgの投薬量で投与され、更に、haNK細胞はNK92誘導体であり、及び/又は典型的には細胞内で組換えIL2を発現することが好ましい。その上、概して、haNK細胞は、少なくとも1つの抑制性受容体の発現が低下したものとなるように遺伝子操作されていること、及び/又はhaNK細胞は、CD16 158V変異体を発現するように遺伝子操作されていることが好ましい。その上、haNK細胞は、投与前に少なくとも500cGyの放射線量で照射されてもよい。
【0012】
本明細書で企図される抗体は、任意の治療用抗体であり得る。例えば、抗体は、抗VEGF、抗HER2、抗EGFR、抗CTLA4、抗CD20、抗CD54、抗CD33、抗CD16、及び/又は抗CD30抗体であってもよい。抗体はまた、アテゾリズマブ、オファツムマブ、イピリムマブ、ラムシルマブ、オララツマブ、エロツズマブ、ネシツムマブ、ダラツムマブ、ジヌツキシマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、トラスツズマブ、アレムツズマブ、ベバシズマブ、ペルツズマブ、オビヌツズマブ、リツキシマブ、及びセツキシマブからなる群から選択されてもよい。
【0013】
一部の好ましい実施形態では、haNK細胞と抗体とは、例えばクリック化学によって化学的にコンジュゲートされる。
【0014】
その上、本医薬組成物は、CryoStor CS10などの凍結保存培地を更に含み得る。理想的には、凍結保存培地は、それがhaNK細胞との抗体結合に有利に働くように選択される。
【0015】
また、本明細書には、(a)haNK細胞を治療用抗体と混合して組み合わせ製剤を作製するステップ;(b)組み合わせ製剤を凍結するステップ;及び(c)組み合わせ製剤を解凍するステップにより、組成物を作製する方法も開示される。ある場合には、haNK細胞は、約5%ヒトアルブミンを含む培地中にある。好ましくは、haNK細胞と治療用抗体との混合物は、等容積の凍結保存培地と混合される。haNK細胞と治療用抗体との組み合わせ製剤は、-80℃未満の温度、又はある場合には-120℃未満の温度に凍結されてもよい。凍結された組み合わせ製剤は、haNK細胞の増殖能を障害するため、一定線量のX線照射が照射される。一部の実施形態において、解凍ステップの後、組み合わせ製剤は氷上又は室温でインキュベートされる。
【0016】
別の態様において、本明細書には、癌を有する患者を治療する方法であって、治療有効量の高親和性ナチュラルキラー(haNK)細胞と治療用抗体とを有する組み合わせ製剤を含む、患者に投与することを含む方法が開示される。本組成物は、静脈内に、腫瘍内に、又は輸注により投与されてもよい。
【0017】
ある場合には、本方法はまた、更なる癌治療を患者に投与するステップも含み得る。更なる癌治療は、免疫療法、化学療法、又は放射線療法であってもよい。免疫療法は、患者特異的且つ腫瘍特異的ネオエピトープを発現する組換え酵母又は組換えウイルス(vim)の投与を含む。化学療法は、アルドキソルビシン、シクロホスファミド、イリノテカン、ゲムシタビン、カペシタビン、5-FU、FOLFIRL FOLFOX、及びオキシピアチン(oxipiatin)のうちの少なくとも1つの投与を含み得る。更なる癌治療は、本明細書に開示されるとおりのhaNK細胞と抗体との組成物と別々に、逐次的に投与されるか、同時に共投与されるか、又はそれに先行して投与される。
【0018】
本発明の主題の別の態様において、本明細書には、医薬組成物を含むキットが開示され、ここで医薬組成物は、haNK細胞と、治療用抗体と、任意選択で凍結保存培地とを含む。このキットにおいて、本組成物は、-85℃未満での保存に好適なバッグ又はバイアルに包装されてもよい。最後に、本キットはまた、医薬組成物の使用説明書を含めた、電子的形態又は紙形態の情報も含み得る。
【0019】
添付の図面と共に、以下の好ましい実施形態についての詳細な説明から、様々な目的、特徴、態様、及び利点が一層明らかになるであろう。図面では、同様の符号は同様の成分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】解凍し、氷上で30分間インキュベートして試験したhaNK(抗体を予め負荷した及び負荷のない)細胞の例示的ADCC活性を示す。
図2A】解凍し、解凍後インキュベーションなしに試験した、抗体を予め負荷したhaNK細胞の例示的ADCC活性を示す。
図2B】解凍し、氷上で30分間インキュベートして試験した、抗体を予め負荷したhaNK細胞の例示的ADCC活性を示す。
図2C】解凍し、氷上又は室温で30分間インキュベートして試験した、抗体を予め負荷したhaNK細胞の例示的ADCC活性を示す。
図3A】氷上で30分間解凍し、続いて洗浄して又は洗浄ステップなしで試験した、抗体を予め負荷したhaNK細胞の例示的ADCC活性を示す。
図3B】氷上で30分間解凍し、続いて洗浄して又は洗浄ステップなしで、外因性リツキサンの存在下で試験したhaNK細胞の例示的ADCC活性を示す。
図4A】異なる培地で調製し、氷上で30分間インキュベートし、続いて洗浄して又は洗浄ステップなしで試験した、抗体を予め負荷したhaNK細胞の例示的ADCC活性を示す。
図4B】氷上で30分間解凍し、続いて洗浄して又は洗浄ステップなしで、外因性リツキサンの存在下で試験したhaNK細胞の例示的ADCC活性を示す。
図4C】培地及び洗浄ステップに応じたADCC活性の変化の例示的結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
癌の治療における細胞ベースの療法では、ますます多様な抗体が利用されるようになっている。現行の治療レジメンは、NK細胞とモノクローナル抗体とを別々に注入することからなる。しかしながら、これは、用量設定の問題、及び反復ボーラス、ひいては治療コストの増加の問題につながる。本発明者らは、haNK細胞と抗体との医薬組成物を組み合わせ製剤として作製することにより、この問題の解決法を見出した。例えば、本発明者らは、リツキサンなどの治療用モノクローナル抗体とhaNK細胞とを5%ヒトアルブミン中に予め混合し、続いてCS-10と(1:1)混合することによってこの組成物を作製したとともに、解凍後に注入製剤として使用する段になるまで、速度制御フリーザー及び気相LNフリーザーでの貯蔵を用いて凍結保存した。この予め混合した組み合わせ製剤は、癌細胞の死滅に有効で、効果があることが示された。アッセイでは、凍結保存したhaNK細胞に抗体を外因的に加えた場合にも、同等の死滅活性が観察された。
【0022】
抗体は、NK細胞と一緒に注入することもできた。しかしながら、その場合、両方が独立した薬物であり、薬物として使用される抗体の量も増す。他方で、ここに開示する予め混合した組み合わせ製剤の利点は、細胞と一緒であれば、より低い濃度の抗体が死滅に有効となる点である。その上、haNK細胞が抗体とのコンボとなれば、頻回注射でなく、むしろ1回注入としての市販品の薬物として使用し得る。
【0023】
腫瘍学における大多数のモノクローナル抗体が、体の大きさに基づく投薬スケジュールで投与される。これは、薬物分布及び薬物消失の両方についての患者間のばらつきを部分的に抑制する。しかしながら、操作された細胞と治療用抗体との組み合わせが異なるプロトコルに従い投与される細胞療法においては、用量設定が課題である。更に、反復ボーラスで治療費が増加する。従って、両方の成分を1つの投与プロトコルに組み合わせることが、求められる解決法である。
【0024】
ここで本発明者らは、CD16NK-92(haNK)細胞に治療用抗体などの抗体を予め負荷するための様々な組成物、方法及びキットを発見した。本明細書に開示される組成物、方法及びキットは、新規の、有効性が一層高い腫瘍溶解手法であることが企図される。好ましくは、haNK細胞と抗体とを含む本組成物は組み合わせ製剤の形態であり、この組み合わせ製剤は、使用する段になるまで凍結保存されることが多い。
【0025】
NK細胞はFc受容体を発現し、これは免疫グロブリンのFc部分に結合して、NK細胞内に細胞シグナルを生じさせることができる。NK細胞は、腫瘍標的に結合した抗体によってFc受容体を介して活性化されると、標的溶解を誘導することができる。標的細胞のこの抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)が、癌治療に用いられる。haNK細胞は、高親和性CD16受容体(FcγRIIIA)を発現してADCCの媒介による腫瘍細胞溶解を促進するように操作されているNK-92細胞である。高親和性CD16受容体は、可溶性IgGにドッキングすることができる。しかしながら、これまでのところ、結合強度/親和性並びに可溶性抗体がNK活性化を誘導する能力については、試験されていない。NK-92細胞は、当該技術分野において周知である(例えば、Clin Cancer Res.1998 Nov;4(11):2859-68を参照のこと、また、NantKwest,San Diego,CAからも市販されている)
【0026】
ここで本発明者らは、予想外にも、凍結保存したhaNK細胞上の高親和性CD16受容体が可溶性治療用抗体のドッキングプラットフォームとして働くことができ、腫瘍標的細胞とコインキュベートしたときADCCを誘導し得ることを見出した。従って、本明細書に開示される発明概念は、薬学的に許容可能な担体と、組み合わせ製剤の形態の治療有効量の高親和性ナチュラルキラー(haNK)細胞及び治療用抗体とを含む医薬組成物に関する。
【0027】
好ましくは、本明細書で企図される治療用抗体は、癌細胞の壊死又はアポトーシスを引き起こすものである。一実施形態において、本明細書で企図される治療用抗体は、TAA(腫瘍関連抗原)に対する抗体、癌特異抗原に対する抗体、及び患者特異的且つ腫瘍特異的エピトープ(ネオエピトープ)に対する抗体であってもよい。任意選択で、又は加えて、本明細書で企図される治療用抗体は、壊死細胞及びアポトーシス細胞に見られる抗原に対する抗体であってもよい。
【0028】
本明細書で企図される抗体の非限定的な例は、アテゾリズマブ、オファツムマブ、イピリムマブ、ラムシルマブ、オララツマブ、エロツズマブ、ネシツムマブ、ダラツムマブ、ジヌツキシマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、トラスツズマブ、アレムツズマブ、ベバシズマブ、ペルツズマブ、オビヌツズマブ、リツキシマブ、及びセツキシマブ、及び/又はIgG Fc部分を有する様々な治療用又は診断用抗体を含む。例えば、好適な抗体としては、(a)ADCC及びHER2シグナル伝達の阻害によってHER2(ErbB2)を標的化する、HER2陽性乳癌、HER2陽性胃癌又は胃食道接合部癌の治療用に承認されているトラスツズマブ(Herceptin(ハーセプチン));(b)VEGFシグナル伝達の阻害によってVEGFを標的化する、結腸直腸癌、非扁平上皮非小細胞肺癌、膠芽腫、又は腎細胞癌の治療用に承認されているベバシズマブ(Avastin(アバスチン));(c)ADCC及びEGFRシグナル伝達の阻害によってEGFR(ErbB1)を標的化する、扁平上皮細胞頭頸部癌(SCCHN)の治療用に承認されているセツキシマブ(Erbitux(アービタックス));(d)EGFRシグナル伝達の阻害によってEGFR(ErbB1)を標的化する、転移性結腸直腸癌の治療用に承認されているパニツムマブ(Vectibix(ベクティビックス));(e)CTLA-4シグナル伝達の阻害によってCTLA-4を標的化する、切除不能又は転移性黒色腫の治療用に承認されているイピリムマブ(Yervoy(ヤーボイ));(f)ADCC、直接的なアポトーシス誘導及びCDCによってCD20を標的化する、CD20陽性B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)及び慢性リンパ球性白血病(CLL)の治療用に承認されているリツキシマブ(Rituxan(リツキサン));(g)直接的なアポトーシス誘導及びCDCによってCD52を標的化する、B細胞CLLの治療用に承認されているアレムツズマブ(Campath(キャンパス));(h)ADCC、及びCDCによってCD20を標的化する、CLL患者の治療用に承認されているオファツムマブ(Arzerra(アーゼラ));(i)毒性ペイロードの送達によってCD33を標的化する、CD33陽性急性骨髄性白血病患者の治療用に承認されているゲムツズマブオゾガマイシン(Mylotarg(マイロターグ));(l)ADCC、アポトーシス誘導によって、及び放射性同位体ヨウ素-131の送達によってCD20を標的化する、CD20抗原発現再発性又は難治性低悪性度、濾胞性、又は形質転換NHLを有する患者の治療用に承認されている131I-トシツモマブ(Bexxar(ベキサール))が挙げられる。当業者は、本発明概念を実施するため、本明細書に開示される組成物に任意の他の治療用抗体が用いられてもよいことを認識するであろう。
【0029】
好ましくは、本明細書に開示されるとおりのhaNK細胞は、NK-92細胞株誘導体である。更に、haNK細胞は組換えIL2を発現することが好ましい。その上、概して、haNK細胞は、少なくとも1つの抑制性受容体の発現が低下したものとなるように遺伝子操作されていること、及び/又はhaNK細胞は、CD16 158V変異体を発現するように遺伝子操作されていることが好ましい。一部の望ましい実施形態において、haNK細胞は、少なくとも1つの抑制性受容体の発現が低下したものとなるように遺伝子操作されている。
【0030】
その上、更に企図される実施形態において、NK細胞は、細胞分裂が続くことを防ぐため、輸注前に照射される。発明の主題を限定するものではないが、細胞の照射は、典型的には、細胞分裂を抑止するが、高速の代謝活性、及びNK細胞機能、特に細胞傷害性細胞殺傷はなおも許容するものとなる。従って、NK細胞に好適な放射線量は、50cGy~2,000cGyである。好ましい実施形態において、haNK細胞は、投与前に少なくとも500cGyの放射線量で照射されてもよい。
【0031】
一部の実施形態において、抗体は、抗CD20抗体(リツキシマブ、オファツムマブ、及び/又は131I-トシツモマブなど)、又はMB311などの抗CD16抗体である。用語「MB311」は、本明細書で使用されるとき、腫瘍関連抗原ルイスYを認識する完全ヒト化モノクローナル抗体を企図する。この糖鎖抗原は、あらゆる上皮癌の60~90%に発現するが、正常組織上では限られた発現しかなく、従って癌免疫療法の魅力的な標的に相当する。
【0032】
ある場合には、haNK細胞及び抗体は化学的にコンジュゲートされる。化学的コンジュゲーションは、当業者である化学者に公知の任意の方法によって行われてもよい。1つの好ましい化学的コンジュゲーション方法は、H.C.Kolb;M.G.Finn;K.B.Sharpless(2001).「クリック化学:幾つかの良好な反応からの多様な化学的機能(Click Chemistry:Diverse Chemical Function from a Few Good Reactions)」.Angewandte Chemie International Edition.40(11):2004-2021に開示されるとおりのヒュスゲン1,3-双極子環化付加反応(「クリック化学」)である。従って用語「クリック化学」は、本明細書で使用されるとき、かかる環化付加反応、詳細には、アジドとアルキンとの付加環化-一部の実施形態では、Cu(I)の触媒作用下又はマイクロ波への曝露下で行われ得る反応を指す。クリック反応はワンポットで起こり、水が邪魔にならず、生じる副産物が最小限で無害であり、及びばね仕掛けである-それを迅速且つ不可逆的に高収率の単一の反応産物へと駆動する高い熱力学的駆動力によって特徴付けられる。これらの資質ゆえに、クリック反応は、複雑な生物学的環境中の分子を単離及び標的化する問題に特に好適である。
【0033】
本明細書に開示される医薬組成物は、凍結保存培地を更に含み得る。凍結保存培地は、細胞特異的な、最適化された凍結培地であることが企図され、これは細胞を極低温環境(-70℃~120℃)に調製及び維持するように設計されているものである。更に、凍結保存培地は、凍結、貯蔵、及び解凍過程で細胞及び組織に安全な保護環境を提供し、且つ、血清、タンパク質又は高レベルの細胞傷害性薬剤の必要性を解消しながらも、細胞生存度及び機能性の亢進を提供することが企図される。好ましい一実施形態において、凍結保存培地は、CryoStor CS10である。更に、凍結保存培地は、それがhaNK細胞への抗体結合に有利に働くように選択される。
【0034】
発明の主題の別の態様において、本発明者らは、癌を有する患者を治療する方法であって、治療有効量の高親和性ナチュラルキラー(haNK)細胞と治療用抗体とを有する組み合わせ製剤を患者に投与することを含む方法を開示している。本明細書に開示される組成物及び方法を使用することにより、あらゆる種類の癌性細胞を治療し得る。従って、本明細書に開示される方法は、癌腫、肉腫、骨髄腫、白血病(液状癌又は血液癌)、リンパ腫(固形癌)、又は腺扁平上皮癌、中胚葉性混合腫瘍、癌肉腫、及び奇形腫(teratorcarcinoma)などの混合型の癌の治療に好適である。
【0035】
好ましくは、本明細書に開示される医薬組成物及び方法は、任意の投与経路による患者への送達用に製剤化されてもよい。「投与経路」とは、限定はされないが、エアロゾル、経鼻、経口、経粘膜、経皮又は非経口を含めた、当該技術分野において公知の任意の投与経路を指し得る。好ましい投与経路は、吸入、眼球投与、点鼻注入、非経口投与、皮膚投与、経皮投与、頬側投与、直腸投与、舌下投与、経舌(perilingual)投与、経鼻投与、局所投与又は経口投与を含む。「非経口」は、眼窩内、注入、動脈内、嚢内、心臓内、皮内、筋肉内、腹腔内、肺内、脊髄内、胸骨内、髄腔内、子宮内、静脈内、くも膜下、被膜下、皮下、経粘膜、又は経気管を含めた、概して注射に関連する投与経路を指す。非経口経路によるとき、本組成物は、注入用又は注射用の溶液又は懸濁液の形態であり得る。一部の特に好ましい実施形態において、本組成物はまた、腫瘍の中へと局所的に直接注射されてもよい(腫瘍内投与)。
【0036】
任意選択で、本明細書に開示されるとおりの癌を治療する方法は、更なる癌治療を患者に投与するステップを含み得る。更なる癌治療は、免疫療法、化学療法、又は放射線療法を含む。免疫療法が更なる癌治療であるとき、それは、患者特異的且つ腫瘍特異的ネオエピトープを発現する組換え酵母又は組換えウイルスの投与を含む。化学療法は、アルドキソルビシン、シクロホスファミド、イリノテカン、ゲムシタビン、カペシタビン、5-FU(5-フルオロウラシル)、FOLFIRI(フォリン酸、フルオロウラシル及びイリノテカン)、FOLFOX(オキサリプラチン、フルオロウラシル及びロイコボリン)、及びオキシピアチン(oxipiatin)のうちの少なくとも1つの投与を含み得る。更なる癌治療は、本明細書に開示されるhaNK細胞と治療用抗体とを含む組成物と別々に、逐次的に投与されるか、同時に共投与されるか、又はそれに先行して投与されてもよい。
【0037】
本開示の医薬組成物は、好ましくは、治療有効量で送達される。正確な治療有効量は、所与の対象において癌治療の有効性の点で最も有効な結果を生み出すであろう組成物の量である。この量は、限定はされないが、haNK細胞、抗体、培地組成物等の特性、並びに対象の生理的条件(年齢、性別、疾患の種類及びステージ、全般的な健康状態、所与の投薬量に対する反応性、及び薬物療法の種類を含む)を含めた種々の要因に応じて異なり得る。臨床及び薬理学分野の当業者は、ルーチンの実験を通じて、例えば、医薬組成物の投与に対する対象の反応をモニタして、それに従い投薬量を調整することにより、治療有効量を決定することが可能であろう。好ましい実施形態において、haNK細胞は、5×10細胞/kg~5×10細胞/kgの投薬量で投与されることが企図される。
【0038】
本明細書に開示される組成物は、種々の技法によって作製され得る。一つの好ましい方法では、haNK細胞が治療用抗体と混合されることにより、組み合わせ製剤が作製される。次に組み合わせ製剤が凍結され、続いて使用前に解凍される。好ましくは、haNK細胞は、約10%アルブミン、又は少なくとも8%アルブミン、又は少なくとも6%アルブミン、又は少なくとも5%アルブミン、又は少なくとも3%アルブミン、又は少なくとも1%アルブミンを含む培地中にある。haNK細胞と治療用抗体との混合物は、凍結保存培地と混合される。組み合わせ製剤と凍結保存培地との比は、少なくとも3:1、又は少なくとも2:1、又は少なくとも1:1、又は少なくとも1:2、又は少なくとも1:3であり得る。
【0039】
本組成物は、-50℃~-100℃の温度に凍結される。細胞が-50℃~-100℃の温度に達したところで、細胞を液体窒素に入れることにより、それが更に一層、例えば-120℃と比べた温度にまで冷却される。組み合わせ製剤は、使用する段になるまで、又はある場合には、少なくとも1ヵ月、又は少なくとも2週間、又は少なくとも1週間、又は少なくとも5日、又は少なくとも3日、又は少なくとも1日、又は少なくとも12時間、又は少なくとも6時間、又は少なくとも2時間、又は少なくとも1時間凍結される。一部の好ましい実施形態では、凍結された組み合わせ製剤は、haNK細胞の増殖能を障害するため、一定線量のX線照射が照射される。解凍ステップの後、組み合わせ製剤は氷上又は室温でインキュベートされる。解凍ステップは、氷中又は室温、又は0℃~100℃の間、又はより好ましくは0℃~40℃の間、又は更により好ましくは0℃~25℃の間の任意の他の温度であり得る。組成物が解凍されると、それは氷中又は室温(0℃~25℃)で少なくとも5時間、又はより好ましくは少なくとも4時間、又は少なくとも3時間、又は少なくとも2時間、又は少なくとも1時間、又は少なくとも30分間、又は少なくとも15分間、又は少なくとも10分間インキュベートしておかれる。
【0040】
本開示の別の態様において、発明概念は、haNK細胞と治療用抗体との医薬組成物を含むキットの調製及び使用に関する。任意選択で、キット中の医薬組成物はまた、凍結保存培地も含み得る。本キットは、癌又は腫瘍を治療する本発明の方法の実施に有用である。本キットは、本開示全体を通じて記載されるとおりの本発明の組成物のうちの少なくとも1つを含む、材料又は構成成分の集合体である。
【0041】
本発明のキットに構成される構成成分の正確な性質は、その意図される目的に依存する。例えば、一部の実施形態は、腫瘍及び/又は癌を治療する目的で構成される。その場合、使用される抗体は、乳癌に対するトラスツズマブなど、その癌に特異的である。その上、本組成物は、トラスツズマブによるhaNK細胞への結合に有利に働く薬学的に許容可能な担体を更に含み得る。
【0042】
一実施形態において、本キットは、特に、哺乳類対象を治療する目的で構成される。別の実施形態において、本キットは、特に、ヒト対象を治療する目的で構成される。更なる実施形態において、本キットは、限定はされないが、農場動物、家庭飼育動物、及び実験動物などの対象を治療する獣医学的適用向けに構成される。
【0043】
本キットには、使用説明書が含まれ得る。「使用説明書」は、典型的には、腫瘍を減少させる又は死滅させるなど、所望の結果を達成するために本キットの構成成分を使用する際に用いられるべき技法を表す有形の表現を含む。任意選択で、本キットにはまた、希釈剤、緩衝液、薬学的に許容可能な担体、シリンジ、カテーテル、アプリケーター、ピペット操作又は計量用器具、包帯材料又は当業者が容易に認識するであろう他の有用な付属品など、他の有用な構成成分も入っている。
【0044】
本キットにまとめられた材料又は構成成分は、実施者に提供され、その操作性及び有用性を確保する任意の好都合で好適な方法で保存され得る。例えば、本明細書で企図されるとおり、構成成分は、より好ましくは凍結温度、典型的には-85℃未満で提供される。構成成分は、典型的には好適な1つ又は複数の包装材料に収容される。本明細書で用いられるとき、語句「包装材料」は、本発明の組成物など、キットの内容物を収納するために使用される1つ以上の物理的構造体を指す。包装材料は、好ましくは無菌で汚染のない環境を提供するように、周知の方法によって組み立てられる。本明細書で使用されるとき、用語「包装」は、ガラス、プラスチック、紙、フォイルなど、個々のキット構成成分を保持する能力のある好適な固体マトリックス又は材料を指す。包装材料は、概して、本キット及び/又はその構成成分の内容物及び/又は目的を指示する外部表示を有する。
【0045】
以下の例に、本開示の実施形態を更に説明する。これらの例は単に例示に過ぎず、特許請求されるとおりの本発明の範囲をいかなる形であれ限定するものではない。
【実施例
【0046】
実施例1
一例示的実施形態において、本発明者らは、5%アルブミン(ヒト)中のhaNK細胞(NantKwest,San Diegoから市販されている)を抗CD20抗体(リツキサン)と混合した。続いて、等容積(1:1)のCryoStor10(CS10)を加え、この混合物をCellFreeze注入バッグ及びバイアルに移し入れた。本研究には、陰性対照として、抗体を持たないhaNK細胞も含めた。続いて、充填した注入バッグ及びバイアルを、速度制御フリーザーを使用して-85℃以下に凍結保存した。次に凍結保存した製剤を保存のため液体窒素気相(-120℃以下)フリーザーに移した。この凍結製剤を一定線量のX線照射で照射して、haNK細胞の増殖能を障害した。解凍後、CD20を発現するカルセイン標識Ramos(標的)細胞と共に細胞をインキュベートし、カルセイン遊離アッセイを用いて溶解を評価した。
【0047】
解凍後のhaNK細胞のADCC活性を描く図1に示されるとおり、haNK細胞単独によっては誘導されなかったRamos溶解が、リツキサンを予め負荷したhaNK細胞によって強力に誘導された。ここで、haNK細胞は、1μg/mLのリツキサン抗体を予め負荷してから凍結保存したか、又は予め負荷することなく凍結保存したかのいずれかであった。次に凍結保存された細胞をRS-2000 X線照射器を使用して15Gyで照射した。細胞を解凍し、氷上で30分間インキュベートし、アッセイプレートに直接加えた。標準的なカルセイン遊離アッセイを用いてRamos溶解率を評価した。
【0048】
更なる例において、本発明者らは、解凍後のADCCのタイミングを調べた。興味深いことに、本発明者らは、氷上又は室温での10~30分の(又は一部の例では更に長い)解凍後保持時間が、haNK細胞のADCC機能の効力に有意な影響を与えることを発見した。例えば、haNK細胞を1~2μg/mLのリツキサン抗体と混合して、又は混合せずに凍結保存した。凍結保存された細胞をRS-2000 X線照射器を使用して15Gyで照射した。次に以下のとおりの様々なプロトコルで解凍を行った:図2Aは、解凍し、洗浄して試験した、解凍後インキュベーション時間が全くない細胞の結果を示し、実質的にADCCに基づく細胞死滅は認められなかった。対照的に、細胞を解凍して氷上で(図2B)又は室温(RT)若しくは氷上で(図2C)30分間インキュベートしたとき、ADCC細胞傷害の実質的な改善が認められた。かかる活性はまた、未結合のリツキシマブを除去することを意図した洗浄ステップの後にも観察された。再び、図2A図2Cにおいて、標準的なカルセイン遊離アッセイを用いて%Ramos溶解率を評価した。
【0049】
更に別の例において、本発明者らはまた、解凍したhaNK製剤における遊離抗体の寄与も評価した。そのため、抗体を予め負荷した細胞を解凍後に336×g(1200RPM)で5分間遠心することにより1回洗浄し、続いてADCCアッセイを行った。図3A図3Bに図示されるとおり、haNK細胞を1μg/mLのリツキサン抗体と混合して、又は混合せずに凍結保存した。凍結保存した細胞をRS-2000 X線照射器を使用して15Gyで照射した。図3Aは、解凍後のADCCの結果を図示する。ここで、リツキサンを予め負荷したhaNK細胞は、洗浄するか、又は洗浄ステップなしにアッセイプレートに直接加えるかのいずれかであった。比較のため、解凍後、haNK細胞(抗体が予め負荷されていない)を洗浄するか、又はリツキサン結合Ramos細胞が入ったアッセイプレートに直接加えるかのいずれかとした。結果は図3Bに図示する。容易に分かるとおり、細胞に抗体を予め負荷しなかったとき、洗浄ステップはそれ自体細胞に影響を及ぼさなかった。
【0050】
なおも更なる実験において、リツキサンを予め負荷したhaNK製剤における凍結用培地の成分の寄与を評価するため、凍結前にADCCを誘導するように細胞を試験した。完全成長培地(CGM)又はアルブミン(ヒト)に懸濁した新鮮haNK細胞を1μg/mLのリツキサン抗体と混合し、又は混合しなかった。図4Aは、洗浄ステップ有り又は無しでの新鮮製剤の活性を示す。同様に、図4Bは、解凍後にhaNK細胞を洗浄するか、又はアッセイプレートに直接加えるかのいずれかであった結果を示す。図4Cは、細胞をアルブミン(HA)に懸濁したときと、完全成長培地に懸濁したときの、%ADCC活性の変化率の低下を示す。興味深いことに、これらの結果は、haNK細胞への抗体の結合の向上に、培地の種類(ここでは:完全成長培地及びヒトアルブミン培地)が有益に寄与したことを示している。
【0051】
実施例2
更なる例において、本発明者らは、腫瘍細胞が異常な糖鎖グリコシル化を有し、そうした構造、即ちルイス系抗原を用いてmAbを特異的に標的化できるという前提に基づき、新規技術を開発した。この方法では、コケ発現系を使用して、FcR親和性が増加したmAbを作成した。現在、NK細胞に対してより高い親和性で結合する修飾されたFcRを有するmAbの作製に焦点を置く技術が幾つかあり、本明細書で用いるべき好適な技術は、ヒトにおいて安全且つ有効なものである。
【0052】
好ましくは、mAb製剤は、全身性CD-16発現NK-92細胞注入と組み合わされる(二剤療法)。注目すべき点は、治療用mAbがNK細胞に結合できないうちに、NK細胞Fc受容体の一部がヒト血清IgGによって占められるであろうことである。NK細胞を投与前にMB311と予め結合すれば、解決法となる可能性がある。このような構築物であれば、十分に大きいため、末梢静脈に投与したときに肺毛細血管床に留まるようになる可能性がある。動脈経路で投与した場合にも、同様のことが予想され得る。MB311は、腫瘍関連抗原ルイスYを認識する完全ヒト化モノクローナル抗体である。
【0053】
別の観点では、そのCD16受容体がMB311又は他の同様のmAbで飽和した、予め結合したNK92複合体は、容易に解離して血漿IgGと再結合するという制限があり得る。概して、Fc親和性は、176Vを発現するNK92細胞上であっても、それほど高くない。ひいては抗体は、恐らく毒性を自由に引き出すことができるようになり得る。これは、一部には、Abが結合したまま残る可能性が高くなるため、コケ反応器で成長したMB311を利用することによって対処し得る(Fcに対する親和性がMB311の最大40倍になる)。
【0054】
投与経路は、局所投与(転移性癌の胸膜/腹部浸出)又は腫瘍内への局所注射であってもよい。局所注射の場合、腫瘍浸潤が懸念となり得るが、これは、浸透/到達の向上のため、「硬い」腫瘍を機械的に壊すコラゲナーゼ/プロテイナーゼを含めることによって対処し得る。
【0055】
血液型関連抗原とは、糖脂質及び糖タンパク質の両方が担持する一群の糖鎖決定基を表す。これは通常はムチン型であり、赤血球、特定の上皮細胞、及び特定の個体の分泌物に検出される。この抗原群には、A、B、H、ルイスa、ルイスb、ルイスx、ルイスy、及び前駆体1型鎖抗原を含め、16個の遺伝的及び生合成的に個別の、しかし互いに関係する特異性が属する。ルイスy(2型鎖)抗原は、糖脂質及び糖タンパク質の2型血液型オリゴ糖に見られるジフコシル化四糖である。これは大腸腫瘍及び結腸直腸癌で発現する。ルイスy抗原はまた、胆管癌、肝細胞癌及び乳癌の診断及び予後判定のための臨床マーカーとしても働き得る。
【0056】
実施例3
一実施形態では、ルイスY特異的モノクローナル抗体IGN311の第I/II相非盲検試験により、悪性浸出を有する患者における安全性及び有効性を評価した。端的には、糖鎖ルイスYを標的化するヒト化mAb IGN311でCRC患者を治療すると、血中の循環腫瘍細胞が除去され、それによって、乳癌患者の骨髄にあるルイスY及びサイトケラチン陽性細胞の除去を示す親マウス抗体ABL364の臨床プロファイルが確認された。
【0057】
悪性浸出(腹水又は胸水)を有する患者におけるIGN311の非盲検単一治療群非対照試験(1回の投与当たり100mg、1及び7日目に静脈内)が実施中であり、これは安全性及び忍容性を調べることを主要目的としている。副次目的は、悪性浸出の容積測定、及び幾つかの免疫学的パラメータに関するデータを取得することである。
【0058】
2005年12月まで、4例の患者(2例は胃癌及び悪性腹水を有する患者、2例は乳癌及び悪性胸水/腹水を有する患者)が本研究を完了している。IGN311は良好に忍容され、1例の患者のみが、1回目の適用後に最高でグレード2の悪心、嘔吐及び皮膚発疹を副作用として示したが、これは容易に管理された。全ての患者で有意なレベルのIGN311が測定され、続いて浸出液中のCD45陽性細胞の増加を伴った。ルイスYを発現する腫瘍細胞のレベルが最も高かった患者は、治療中に浸出液容積の減少を示した。
【0059】
従って、これらの実験から、IGN311が良好に忍容され、悪性浸出液中に浸透し、免疫細胞を引き付け、浸出液中の腫瘍細胞数の低下につながったことが示された。浸出液中の悪性細胞の強力なルイスY発現の場合に、浸出液容積の減少を実証することができた。
【0060】
本明細書で使用されるとき、医薬組成物又は薬物を「投与すること」という用語は、医薬組成物又は薬物の直接投与及び間接的な投与の両方を指し、ここで医薬組成物又は薬物の直接投与は、典型的には医療専門家(例えば、医師、看護師等)により実施され、及び間接的な投与には、直接投与(例えば、注射、注入、経口送達、局所送達による等)のため医療専門家に医薬組成物又は薬物を提供するステップ又はそれが利用可能となるようにするステップが含まれる。最も好ましくは、細胞又はエキソソームは、皮下又は真皮下注射によって投与される。しかしながら、他の企図される態様では、投与はまた、静脈内注射であってもよい。それに代えて又は加えて、抗原提示細胞は、インビトロで感染させた患者の細胞から単離するか、又は成長させて、次に患者に輸注してもよい。従って、企図されるシステム及び方法は、高度に個別化された癌治療に向けた完全な創薬システム(例えば、創薬、治療プロトコル、バリデーション等)と見なされ得ることが理解されなければならない。
【0061】
本明細書における値の範囲の記載は、単に、その範囲内に含まれる各個別の値に個々に言及するのを省略した方法として役立つことが意図される。本明細書に特に指示されない限り、各個別の値は、それが本明細書に個々に記載されたものとして本明細書に援用される。本明細書に記載される方法は全て、本明細書に特に指示されない限り、又は文脈上特に明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書における特定の実施形態に関して提供されるあらゆる例、又は例示的文言(例えば、「など」)の使用は、単に、本開示の完全な範囲をより良く描き出すことが意図され、本来特許請求される本発明の範囲に制限を課すものではない。本明細書中のいかなる文言も、特許請求される発明の実施に不可欠な何らかの特許請求されていない要素を示していると解釈されてはならない。
【0062】
当業者には、既に記載されたものの他にも、本明細書に開示される概念の完全な範囲から逸脱することなく更に多くの変形例が可能であることが明らかなはずである。従って、開示される主題は、添付の特許請求の範囲を除き、制限されてはならない。その上、本明細書及び特許請求の範囲の両方の解釈において、用語は全て、文脈と整合する中で可能な限り最も広義に解釈されなければならない。詳細には、用語「~を含む(comprises)」及び「~を含んでいる(comprising)」は、非排他的に要素、成分、又はステップを指すと解釈されなければならず、言及される要素、成分、又はステップが存在してもよく、若しくは利用されてもよく、又は明示的に言及されない他の要素、成分、又はステップと組み合わされてもよいことを示している。本明細書の特許請求の範囲が、A、B、C・・・、及びNからなる群から選択されるもののうちの少なくとも1つを指す場合、その文は、A+N、又はB+N等ではなく、その群からの1つの要素のみを要求していると解釈されなければならない。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
【国際調査報告】