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特表2022-542370モリブデン酸ビスマス系触媒、その製造方法及びプロペンをアクロレインとする酸化におけるこの触媒の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-03
(54)【発明の名称】モリブデン酸ビスマス系触媒、その製造方法及びプロペンをアクロレインとする酸化におけるこの触媒の使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/34 20060101AFI20220926BHJP
   C07C 45/35 20060101ALI20220926BHJP
   C07C 47/22 20060101ALI20220926BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20220926BHJP
   B01J 23/887 20060101ALI20220926BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220926BHJP
【FI】
B01J37/34
C07C45/35
C07C47/22 A
B01J37/10
B01J23/887 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505270
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(85)【翻訳文提出日】2022-02-15
(86)【国際出願番号】 FR2020051408
(87)【国際公開番号】W WO2021019188
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】19189424.5
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19/11836
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】507200961
【氏名又は名称】アディッソ・フランス・エス.エー.エス.
【氏名又は名称原語表記】ADISSEO FRANCE S.A.S.
(71)【出願人】
【識別番号】508071375
【氏名又は名称】ソントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・サイエンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】508019311
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ クロード ベルナール リヨン 1
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベリエール-バカ ビルジニー
(72)【発明者】
【氏名】ミレ ジャン-マルク
(72)【発明者】
【氏名】シェリフィ アズィズ
(72)【発明者】
【氏名】ロシャ カタリナ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA14
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC01A
4G169BC03A
4G169BC03B
4G169BC25A
4G169BC25B
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169CB10
4G169CB20
4G169CB54
4G169DA05
4G169EA01Y
4G169FA01
4G169FB05
4G169FB10
4G169FB58
4G169FB78
4G169FC07
4G169FC08
4G169FC09
4H006AA02
4H006AC45
4H006BA13
4H006BA14
4H006BA20
4H006BA21
4H006BA30
4H006BB61
4H006BC13
4H006BE30
4H039CA62
4H039CC30
(57)【要約】
本発明は、モリブデン酸ビスマス系の少なくとも1つの活性相と、モリブデン酸鉄系の少なくとも1つの共触媒と、コバルト及びニッケルである2つの元素のうち少なくとも一方と、を含む多相混合酸化物触媒の製造方法に関する。当該方法は、以下の工程、つまり、混合酸化物の前駆体混合物を溶媒中に調製する工程、マイクロ波支援水熱反応によって前駆体を反応させる工程、混合酸化物を単離して触媒を得る工程を含む。この方法にて調整された触媒及び触媒系は、本触媒及び触媒系を使用すること、特に、プロペンをアクロレインとする酸化と共に本発明に含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデン酸ビスマス系の少なくとも1つの活性相と、モリブデン酸鉄系の少なくとも1つの共触媒と、コバルト及びニッケルである2つの元素のうち少なくとも一方と、を含む多相混合酸化物触媒の製造方法において、
前記方法は、以下の工程、つまり、
混合酸化物の前駆体混合物を溶媒中に調製する工程、
マイクロ波支援水熱反応によって前記前駆体を反応させる工程、
前記混合酸化物を単離して前記触媒を得る工程、を含むことを特徴とする多相混合酸化物触媒の製造方法。
【請求項2】
請求項1の製造方法において、
前記前駆体は、2つの工程のマイクロ波支援水熱反応、第1のマイクロ波支援水熱反応及び第2のマイクロ波支援水熱反応によって反応させ、2つの工程の間において、前記第1のマイクロ波支援水熱反応によって得られた反応混合物のpHを8~8.5に設定することを特徴とする製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2の製造方法において、
前記触媒は、酸化モリブデンを含むことを特徴とする製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つの製造方法において、
前記触媒は担持されており、前記方法は、前記マイクロ波支援水熱反応の前に、1つ又は複数の担体材料を添加することを含むことを特徴とする製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つの製造方法において、
前記マイクロ波支援水熱反応は、150℃から240℃までの温度にて行われることを特徴とする製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つの製造方法において、
前記マイクロ波支援水熱反応は、2分から10時間までの時間に亘って行われることを特徴とする製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つの製造方法において、
前記触媒の活性相は、次の化学量論BixMoyOzを満たし、2>x/y>0.5で且つzは6と12との間であり、より好ましくは、この化学量論は、Bi2Mo3O12、Bi2Mo2O9 及び Bi2MoO6から選ばれることを特徴とする製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つの製造方法において、
前記触媒の活性相は、少なくとも1つのアルカリ金属、好ましくは少なくともカリウムによって活性化されることを特徴とする製造方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つの製造方法において、
前記共触媒は、次の化学量論FexCo1-xMoO4を満たし、xは0<x<1、好ましくは0.5≦x≦0.9の小数であることを特徴とする製造方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1つの製造方法において、
前記触媒は、MomConNipFeqBirMsの式を満たし、Mはアルカリ金属であり、m、n、p、q、r及びsは自然数又は小数であって、mは1から5までの値を取り、n及びpは互いに独立して0から1までの値を取り、n+pは0ではなく、0<q≦1、0<r≦3且つ0<q≦0.2であることを特徴とする製造方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1つの製造方法において、
一方で、溶媒中に前記活性相の前駆体の混合物が調製され、他方で、同じ溶媒中又は別の溶媒中に前記共触媒の前駆体の混合物が調製されること、
前記活性相の前駆体及び前記共触媒の前駆体は、マイクロ波支援水熱反応を通じて別々に反応されること、
前記活性相及び前記共触媒がそれぞれ単離されること、及び、
前記活性相と前記共触媒とが組み立てられ、前記触媒が得られること、を特徴とする製造方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1つの製造方法において、
前記混合酸化物の前駆体の混合物は、水、有機溶媒、及び、前記有機溶媒の任意の組み合わせ又は水との組み合わせから選択される1つ又は複数の溶媒中で得られることを特徴とする製造方法。
【請求項13】
請求項11又は12の製造方法において、
前記触媒は担持され、
前記方法は、1つ又は複数の担体材料の追加を含み、且つ/又は、前記触媒は酸化モリブデンを含み、前記方法は酸化モリブデンの追加を含み、前記担体材料及び/又は酸化モリブデンの追加は、前記触媒を得るための前記及び前記共触媒の合成又は組み立ての間に行われることを特徴とする製造方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1つの製造方法において、
以下の反応、つまり、プロペンをアクロレインとする酸化、ブテンをブタジエンとする酸化的脱水素、イソブチレンをメタクロレインとする酸化、プロペンをアクリロニトリルとするアンモ酸化、及び、イソブチレンをメタクリロニトリルとするアンモ酸化、の少なくとも1つに用いることを意図した多相混合酸化物触媒の製造方法。
【請求項15】
モリブデン酸ビスマス系の少なくとも1つの活性相と、モリブデン酸鉄系の少なくとも1つの共触媒と、コバルト及びニッケルの少なくとも一方とを個別に含む触媒系。
【請求項16】
請求項15の触媒系において、
前記活性相は、次の化学量論BixMoyOzを満たし、2>x・y>0.5で且つzは6から12の間であり、好ましくは、この化学量論Bi2Mo3O12、Bi2Mo2O9、Bi2MoO6から選ばれることを特徴とする触媒系。
【請求項17】
請求項15又は16の触媒系において、
前記活性相は、少なくとも1つのアルカリ金属、好ましくは少なくともカリウムによって活性化されることを特徴とする触媒系。
【請求項18】
請求項15から17のいずれか1つの触媒系において、
前記共触媒は、次の化学量論FexCo1-xMoO4を満たし、xは0<x<1、好ましくは0.5≦x≦0.9の小数であることを特徴とする触媒系。
【請求項19】
請求項15から18のいずれか1つの触媒系において、
前記活性相の含有量は、前記触媒系の重量に対して50重量%以下であり、好ましくは10%から45%の値であることを特徴とする触媒系。
【請求項20】
請求項15から19のいずれか1つの触媒系において、以下の触媒反応、つまり、プロペンをアクロレインとする酸化、ブテンをブタジエンとする酸化的脱水素、イソブチレンをメタクロレインとする酸化、プロペンをアクリロニトリルとするアンモ酸化、及び、イソブチレンをメタクリロニトリルとするアンモ酸化の少なくとも1つに用いる触媒系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モリブデン酸ビスマス系の多相混合酸化物触媒の製造方法、この方法により得られる触媒及び触媒系、並びに種々の酸化反応におけるこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明による触媒又は触媒系の性能は、以下、プロペンのアクロレインへの制御された酸化反応において示される。これらに限定されるわけではないが、ブテンをブタジエンとする酸化的脱水素、イソブチレンをメタクロレインとする酸化、プロペンをアクリロニトリルとするアンモ酸化、及び、イソブチレンをメタクリロニトリルとするアンモ酸価において、特に関心がもたれる。これらの周知の反応は、有機合成において必須である多くのポリマー及び前駆体の製造のためのソースモノマーを供給するので、いずれも工業的規模にて実施される。この理由から、これらに関し、性能の向上と生態系への影響の低減を目指した研究が継続的に行われている。
【0003】
以下に示すプロペンの制御された酸化はアクロレインを誘導し、これは、メチオニン及びその誘導体を合成するための中間体であって、動物栄養において広く使われる。
【0004】
【化1】
【0005】
これは、多相混合酸化物触媒の存在下にて行われ、当該触媒は、少なくとも4つの金属元素:モリブデン酸ビスマスの選択的な相を構成するモリブデン及びビスマスと、触媒の再酸化を促進して触媒活性を大きく増強する相を形成する酸化状態+2の金属(一般にNi又はCo)、酸化状態+3の金属(一般に鉄)及びモリブデンの組み合わせとを含む。従って、それは最小の式Mo(Co/Ni)FeBiOを満たし、ドーピング元素として、及び/又は、酸化物若しくはモリブデン酸塩として存在して選択性、熱的安定性、機械的安定性等の触媒特性を改善する様々な元素により完成される。
【0006】
米国出願US2019/076829A1には、このような触媒と、特に、次の式を満たす触媒と、
Mo12Bi1-4Co4-10Fe1-4Ni0-4K0-2Ox
以下の工程を含むこれを調整するための方法とが記載されている:
触媒の元素の前駆体の水系混合物を適切な含有量により化学量論に達するように調製し、混合物のpHを5.5~8.5に設定する。この後、前記前駆体をオートクレーブ内にて100℃から600℃の温度で5.5時間から48.5時間、水熱反応を通して反応させる。その後、触媒を回収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/076829号明細書
【発明の概要】
【0008】
このような調製は長い反応時間を必要とする。筆者らは、前記の水熱反応をマイクロ波支援水熱反応にて置き換えることによって、前記のタイプの触媒を製造する方法を開発した。筆者らは、反応時間を大幅に短縮することが可能になる一方で、得られた触媒は予想外の特性を有し、より良好な特性、特に、より高い反応性を有することを発見した。
【0009】
従って、本発明は、モリブデン酸ビスマス系の少なくとも1つの活性相と、モリブデン酸鉄系の少なくとも1つの共触媒と、コバルト及びニッケルである2つの元素の少なくとも一方とを含む多相混合酸化物触媒を製造するための方法に関し、前記方法は、以下の工程を含む:
前記混合酸化物の前駆体の混合物を溶媒中にて調製する、
マイクロ波支援水熱反応によって前記前駆体を反応させる、
混合酸化物を単離して触媒を得る。
【0010】
本発明によるマイクロ波とは、赤外線とラジオ波との間の中間放射、つまり、周波数が800から3000MHzの間であるものと解される。実質的には、全ての波長が許されているわけではないので、本発明がこれに限定されることはないが、真空波長が約12cm、つまり周波数が約2450MHzであり工業的用途に使用される家庭用マイクロ波、真空波長が3cm、つまり周波数が約915MHzであり原則的に工業用途に使用されるマイクロ波が好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本方法は、以下により詳細に記載されるが、以下の特徴は、個別に又は任意の組み合わせにて考慮され得る。
【0012】
本発明の方法の特定の実施によると、前記前駆体は、マイクロ波支援水熱反応を通して2つの工程により反応する。つまり、第1のマイクロ波支援水熱反応及び第2のマイクロ波支援水熱反応であって、その間に、第1のマイクロ波支援水熱反応から得られる反応混合物のpHが8~8.5に設定される。
【0013】
より具体的には、第1の合成工程において、前記前駆体を添加し、第1のマイクロ波支援水熱反応を通して反応させる。更に、第2の合成工程において、反応媒体のpHを望ましくは8-8.5の値に設定し、第2のマイクロ波支援水熱反応を行った後、マイクロ波触媒が単離される。
【0014】
マイクロ波支援水熱反応は、好ましくは300℃を超えない温度、有利には150℃~240℃にて行われる。
【0015】
前記の通り、反応時間は著しく短縮され、仮にマイクロ波支援水熱反応が2分から10時間にわたって行われるとすると、数時間以内に、更には数分以内でさえも、反応がほぼ完了しうる。
【0016】
任意の事項として、本発明の方法に従って製造された触媒は、以下の特徴を有する。これらは、個別に又は任意の組み合わせとして考慮に入れることができる:
酸化モリブデンを更に含む;
担持される;本発明の方法において、シリカ、アルミナ、これらの混合物等の1つ又は複数の担体材料の追加を、マイクロ波支援水熱反応の前に行うことが有利である;無論、本発明の方法によって得られる担持されない触媒は、当業者に知られる任意の技術に従って担持されうる;
触媒の活性相は、次の化学量論BixMoyOzを満たし、2>x/y>0.5で且つzは6と12との間である;より好ましくは、この化学量論は、Bi2Mo3O12、Bi2Mo2O9及び Bi2MoO6から選ばれる;
触媒の活性相は、少なくとも1つのアルカリ金属、好ましくは少なくともカリウムによって活性化される;望ましい製造方法では、触媒の活性相のみが1つ又は複数のカリウムのようなアルカリ金属によって活性化される;
共触媒は、次の化学量論FexCo1-xMoO4を満たす。ここで、xは0<x<1、好ましくは0.5≦x≦0.9の小数である;
触媒は、MomConNipFeqBirMsの式を満たす。ここで、Mはアルカリ金属であり、m、n、p、q、r及びsは自然数又は小数であって、mは1から5までの値を取り、n及びpは互いに独立して0から1までの値を取り、n+pは0ではなく、0<q≦1、0<r≦3且つ0<q≦0.2である。
【0017】
本発明はまた、このようにして得られた触媒に関する。
【0018】
本発明の方法の特定の実施において:
一方で、溶媒中に活性相の前駆体の混合物が調製され、他方で、同じ溶媒中又は別の溶媒中に共触媒の前駆体の混合物が調製される;
活性相の前駆体及び共触媒の前駆体は、マイクロ波支援水熱反応を通じて別々に反応される;
活性相及び共触媒がそれぞれ単離される;及び、
活性相と共触媒とが組み立てられ、触媒が得られる。
【0019】
好ましくは、混合酸化物の前駆体の混合物は、水、有機溶媒、及び、前記有機溶媒の任意の組み合わせ又は水との組み合わせから選択される1つ又は複数の溶媒中で得られる。
【0020】
この実施例によると、触媒を担持することができ、その上、前記方法は1つ又は複数の担体材料の追加を含み、且つ/又は、触媒は酸化モリブデンを含むことができ、前記方法も酸化モリブデンの追加を含み、前記担体材料及び/又は酸化モリブデンの追加は、触媒を得るための活性相及び共触媒の合成又は組み立ての間に行われる。酸化モリブデンは、一方では、モリブデンの気化による経時的な損失を補填して活性相及び共触媒を最適状体に維持し、他方では、活性相を湿潤させると共に非選択部位を抑制することを可能とする。無論、触媒の特性を改善できる任意の他の相を追加することもできる。
【0021】
先に述べたいずれかの相を含み得る活性相及び共触媒のそれぞれは、一般に粉末の形で得られる。触媒を得るためのその組み立ては、可能な限り完全な混合を可能とする任意の方法で行われて良い。従って、共粉砕又は他の任意の配合技術によって行われて良い。また、この工程では、任意の他の相、又は、1つ又は複数の担体材料が追加されても良い。
【0022】
先に示したように、この方法は、混合及び多相の触媒の製造を可能とし、当該触媒は、プロペンをアクロレインとする酸化、ブテンをブタジエンとする酸化的脱水素、イソブチレンをメタクロレインとする酸化、プロペンをアクリロニトリルとするアンモ酸化、及び、イソブチレンをメタクリロニトリルとするアンモ酸化を含む多くの触媒反応に効果的であることが実証されている。
【0023】
本発明はまた、モリブデン酸ビスマス系の少なくとも1つの活性相と、モリブデン酸鉄系の1つの共触媒とを個別に含み、コバルト及びニッケルの少なくとも1つを含む触媒系に関する。使用されるために、分離された相は、先に示したように、例えば共粉砕によって組み立てられる。
【0024】
上記の方法によって得られるこの触媒系は、個別に又は任意の組み合わせとして考慮される、以下の有利な特徴を含む:
活性相は、次の化学量論BixMoyOzを満たす。ここで、2>x/y>0.5で且つzは6から12の間であり、好ましくは、この化学量論は次の中から選ばれる:Bi2Mo3O12、Bi2Mo2O9、Bi2MoO6
活性相は、少なくとも1つのアルカリ金属、好ましくは少なくともカリウムによって活性化され、有利には、この相のみがアルカリ金属によって活性化される;
共触媒は、次の化学量論FexCo1-xMoO4を満たす。ここで、xは0<x<1、好ましくは0.5≦x≦0.9の小数である;
活性相の含有量は、触媒系の重量に対して50重量%以下であり、好ましくは10%から45%の値である。
【0025】
本発明はまた、これまでに定義された触媒系の使用に関し、特に、以下の触媒反応のうち少なくとも1つの使用に関する:プロペンをアクロレインとする酸化、ブテンをブタジエンとする酸化的脱水素、イソブチレンをメタクロレインとする酸化、プロペンをアクリロニトリルとするアンモ酸化、及び、イソブチレンをメタクリロニトリルとするアンモ酸化。
【0026】
本発明の異なる目的を説明するために、行くかの用語/表現を定義する。
【0027】
溶媒中の混合酸化物の前駆体混合物とは、特に、当該溶媒における前記前駆体の溶液又は懸濁液と理解されるべきである。
【0028】
触媒、又はそのいずれかの相、特に活性相又は共触媒の単離とは、触媒反応において使用するための当業者に周知のあらゆる処理操作と理解されるべきであり、例えば液体水熱反応媒体からの回収、洗浄、乾燥、及び、触媒及びそのいずれかの相の分離に繋がる他の処理である。
【0029】
以下の例において、本発明の触媒及び本発明の触媒系の活性は、いわゆる工業用触媒、つまり焼成(calcination)によって調製されたものと比較される。その製造方法は以下の通りであった:
ヘプタモリブデン酸アンモニウム(NH4)6Mo7O24がモリブデン前駆体として使用され、カチオン以外の全ての金属は硝酸塩の形で追加されている。当該前駆体の水に対する溶解度は非常に高いので、望ましい濃度範囲は容易に得られた。また、硝酸ビスマスは直ちに加水分解され、水に溶けないオキシ硝酸ビスマスBi5O(OH)9(NO3)4になるので、また、ほとんど水に溶けないビスマスの完全な溶解を促進するために、硝酸1.5ml(65%)により予め酸性化された100mlの脱塩水に、酒石酸2gを溶解することで第1の溶液が調製された。硝酸ビスマスを追加した後、溶液を60℃に加熱し、無色透明の溶液が得られるまで30分間、攪拌した。硝酸塩の形での鉄、コバルト及びカリウムの添加は、この順に行われ、それぞれの新しい塩は前のものが完全に溶解した後に行われた。最後に、溶液1及び2が攪拌下で混合され、60℃で3時間、保持した。得られた懸濁液を120℃の炉の中で完全にエバポレートを行った。最後に、得られた生成物を350℃で2時間焼成して残留硝酸塩を分解した後、5℃/分の速度で500℃に加熱し、この温度に2時間保持した。
【0030】
(例1:マイクロ波支援水熱反応による本発明の触媒の合成)
調製された触媒は、式BiMoFeCoKを満たすものであり、以下のようにして製造された:
酢酸(又は硝酸)ビスマス、硝酸鉄及び硝酸コバルト(又はニッケル)を10mlのHOに溶解して、溶液1を形成した。次に、化学量論量のヘプタモリブデン酸アンモニウムを10mlのHOに溶解して、溶液2を形成した。その後、溶液1を溶液2にゆっくりと加えて懸濁液を形成し、これを1時間攪拌下に保持した。補助的なHNO又はNHOHにより、混合物のpHは1.8に設定された。その後、第1の工程としてマイクロ波の照射により懸濁液を150℃まで加熱し、この温度に10分間保持した。第1の工程が完了したら、KOHを加え、更に32%アンモニアを加えてpH8.5に塩基性化した。その後、マイクロ波の照射により200℃まで加熱し、この温度に30分間保持した。得られた固体を遠心分離により回収し、10mlのHOにより2回、10mlのエタノールにより1回、洗浄し、最後に120℃で16時間、乾燥した。
【0031】
以下の変数について試験した:溶媒、pH、反応時間(2分から96時間まで)、照射温度(150~240℃)、BixFeyCozNicMobKa の化学量論、ここで0≦a、b、c、d、x、y、z、≦15である。
【0032】
この方法の実施内容は表1に示されている。
【0033】
【表1】
【0034】
(例2:マイクロ波支援水熱反応による本発明の触媒系の合成)
現在、産業用触媒は、MoO3、Bi2Mo3012、Fe2(MoO4)3、FexCo1-xMoO4、NiMoO4、Bi2Mo2O9のような幾つかの一般的な相を含む。
【0035】
最も有用な2つの相は、FexCo1-xMoO4及びBi2Mo3012である。鉄/コバルト/モリブデン混合相は、鉄(II)が鉄(III)に酸化するので、沈殿法/焼成法により合成することが非常に難しく、工業規模でこの相を合成することは考慮できない。実際、常にFe2(MoO4)3が形成される。
【0036】
マイクロ波支援水熱反応合成を含む本発明の方法により、鉄の酸化を排除できるので、この2つの相を合成することができた。これは以下のプロトコルによる:
Bi2Mo3012
硝酸ビスマス及び硝酸を150mlの再蒸留水に溶解した。ヘプタモリブデン酸アンモニウムを100mlの再蒸留水に溶解して、第2の溶液を調製した。その後、2つの溶液を混合し、得られた混合液を300rpmで10分間の攪拌下に保持し、水酸化アンモニウムの添加によりpHを1に設定し、マイクロ波照射のために1Lのテフロン瓶に移した。
【0037】
マイクロ波支援水熱反応合成を、150℃で10分間行った。マイクロ波処理の後、集めた生成物は3000rpmの遠心分離により回収し、脱イオン水及びエタノールで2度洗浄した。最後に、90℃で8時間、乾燥した。
【0038】
FexCo1-xMoO4、ここで0.5<x<0.9
モリブデン酸ナトリウムの第1の溶液は、250mlの再蒸留HOに溶解して得た。その後、塩化鉄(II)及び硝酸コバルト六水和物を250mlのトリエチレングリコールに溶解した。2つの溶液を混合して、得られた溶液を300rpm、10分間の攪拌下に保持した。その後、溶液は、マイクロ波照射のために1Lのテフロン瓶に移された。マイクロ波支援水熱反応合成は、150℃で10分間行った。マイクロ波処理の後、集められた生成物は3000rpmの遠心分離により回収され、水及びエタノールにより2度洗浄した。最後に、90℃で8時間、乾燥した。
【0039】
(例3)
この例では、マイクロ波により調製された触媒を、プロペンをアクロレインとする制御された酸化反応において試験し、焼成によって調製された産業用触媒と等質量での比較を行った。触媒の化学量論は、Mo12Co7.12Fe1.8Bi0.65Kxである。
【0040】
試験は、ガスの構成がC3H6/O2/N2: 1/1.5/8.6であり、総流量が60ml/分であるガスの流れ中において、250mgの触媒により350℃で行った。以下の表2に、48時間後、ガスの流れ中におけるプロペンの転化率とアクロレインの選択性を示す。
【0041】
【表2】
【0042】
(例4)
この例では、マイクロ波により調製され、Moについて異なる化学量論を有する触媒を、プロペンをアクロレインとする制御された酸化反応において互いに比較した。
【0043】
試験は、ガスの構成がC3H6/O2/N2: 1/1.5/8.6であり、総流量が60ml/分であるガスの流れ中において、250mgの触媒により350℃で行った。以下の表3に、48時間後、ガスの流れ中におけるプロペンの転化率とアクロレインの選択性を示す。
【0044】
【表3】
【0045】
(例5)
この例では、マイクロ波により調製され、Biについて異なる化学量論を有する触媒を、プロペンをアクロレインとする制御された酸化反応において互いに比較した。
【0046】
試験は、ガスの構成がC3H6/O2/N2: 1/1.5/8.6であり、総流量が60ml/分であるガスの流れ中において、250mgの触媒により350℃で行った。以下の表4に、48時間後、ガスの流れ中におけるプロペンの転化率とアクロレインの選択性を示す。
【0047】
【表4】
【0048】
(例6)
この例では、マイクロ波により調製された触媒を、プロペンをアクロレインとする制御された酸化反応において試験した。触媒MWの化学量論は、Mo12Co7.12Fe1.8Bi0.65Kxである。
【0049】
試験は、ガスの構成がC3H6/O2/N2: 1/1.5/8.6であり、総流量が60ml/分であるガスの流れ中において、250mgの触媒により350℃で行った。以下の表5に、358時間後、ガスの流れ中におけるプロペンの転化率とアクロレインの選択性を示す。
【0050】
【表5】
【0051】
(例7)
この例では、マイクロ波により調製され、ニッケルを用いる触媒を、プロペンをアクロレインとする制御された酸化反応において試験した。この触媒の化学量論は、Mo12Co4Ni3.12Fe1.8Bi0.65Kxである。
【0052】
試験は、ガスの構成がC3H6/O2/N2: 1/1.5/8.6であり、総流量が60ml/分であるガスの流れ中において、250mgの触媒により350℃で行った。以下の表6に、48時間後、ガスの流れ中におけるプロペンの転化率とアクロレインの選択性を示す。
【0053】
【表6】
【0054】
(例8)
この例では、マイクロ波により調製され、有効な相FexCo1-xMoO4及び Bi2Mo3012
を機械的に混合して調製された触媒。
【0055】
【表7】
【0056】
試験は、ガスの構成がC3H6/O2/N2: 1/1.5/8.6であり、総流量が60ml/分であるガスの流れ中において、250mgの触媒により350℃で行った。以下の表7に、48時間後、ガスの流れ中におけるプロペンの転化率とアクロレインの選択性を示す。
【国際調査報告】