(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-03
(54)【発明の名称】拘束された脂質を含むナノ材料およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07C 219/16 20060101AFI20220926BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20220926BHJP
C07D 295/088 20060101ALI20220926BHJP
C07D 513/04 20060101ALI20220926BHJP
C07D 231/56 20060101ALI20220926BHJP
C07D 239/42 20060101ALI20220926BHJP
C07D 241/24 20060101ALI20220926BHJP
C07D 241/42 20060101ALI20220926BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20220926BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220926BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20220926BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20220926BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220926BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20220926BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20220926BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220926BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220926BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220926BHJP
C12N 15/55 20060101ALN20220926BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20220926BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20220926BHJP
C12N 5/0784 20100101ALN20220926BHJP
C12N 5/0786 20100101ALN20220926BHJP
C12N 5/0781 20100101ALN20220926BHJP
【FI】
C07C219/16
C12N15/09 110
C07D295/088 CSP
C07D513/04 331
C07D231/56 C
C07D239/42 Z
C07D241/24
C07D241/42
A61K9/51
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/24
A61K47/10
A61K47/28
A61K31/7088
A61K48/00
A61P43/00 105
A61P37/02
C12N15/55 ZNA
C12N15/113 Z
C12N5/0783
C12N5/0784
C12N5/0786
C12N5/0781
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506087
(86)(22)【出願日】2020-07-24
(85)【翻訳文提出日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 US2020043512
(87)【国際公開番号】W WO2021021634
(87)【国際公開日】2021-02-04
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】504466834
【氏名又は名称】ジョージア テック リサーチ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【氏名又は名称】杉山 共永
(72)【発明者】
【氏名】ダールマン,ジェームズ エバレット
(72)【発明者】
【氏名】サゴ,コリー デーン
(72)【発明者】
【氏名】ガン,ズバオ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C072
4C076
4C084
4C086
4H006
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065BA05
4B065CA31
4B065CA44
4C072AA01
4C072BB02
4C072CC02
4C072CC16
4C072EE13
4C072FF05
4C072GG09
4C072HH01
4C072UU01
4C076AA65
4C076AA67
4C076AA95
4C076CC50
4C076DD09F
4C076DD15F
4C076DD49F
4C076DD60F
4C076DD63F
4C076DD70F
4C076EE23F
4C076FF16
4C076FF32
4C076FF43
4C084AA13
4C084MA05
4C084MA24
4C084MA38
4C084NA12
4C084NA13
4C084ZB021
4C084ZB071
4C084ZB211
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA24
4C086MA38
4C086NA12
4C086NA13
4C086ZB02
4C086ZB07
4C086ZB21
4H006AA01
4H006AB20
4H006BJ20
4H006BT12
4H006BU32
(57)【要約】
細胞または組織の微小環境に核酸を送達するための組成物が提供される。一実施形態では、この組成物は、脾臓および肝臓でのクリアランスを減少させるように配合されている脂質ナノ粒子組成物である。脂質ナノ粒子の化学組成は脂質ナノ粒子の自然な輸送に有意に影響を及ぼすことが発見された。より具体的には、立体構造的に拘束されているイオン性脂質は、ターゲティングリガンドを必要とすることなく、脂質ナノ粒子の指向性およびクリアランスプロファイルを修飾し得ることが発見された。本開示の脂質ナノ粒子の指向性がサイズ依存的であることも発見された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
の化合物であって、
式中、
R
1は、
【化2】
であり、
R
2は、
【化3】
であり、式中、Xは、
【化4】
であり、R
3およびR
4は、それぞれ独立して、
【化5】
である、
化合物。
【請求項2】
式(III):
【化6】
の化合物であって、
式中、
R
8は、-Hまたは
【化7】
であり、
R
5、R
6、R
7、およびR
8は、それぞれ独立して、-C
8H
17、-C
10H
21、-C
12H
25、-C
13H
27、-C
14H
29、C
16H
33、またはアダマンタニルであり、
mおよびnは、それぞれ独立して、0、1、2、3、または4であり、
Aは、
【化8】
、-O-、
【化9】
、-S-、
【化10】
であり、
R
10およびR
11は、それぞれ独立して、-Hまたは
【化11】
であり、
R
12は、-C
10H
21である、
化合物。
【請求項3】
R
2は、
【化12】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
立体構造的に拘束されているイオン性脂質、
リン脂質、
ポリエチレングリコール-脂質、
コレステロール、および任意選択で
核酸
を含む脂質ナノ粒子組成物。
【請求項5】
前記立体構造的に拘束されているイオン性脂質は、請求項1または2に記載の構造を含む、請求項4に記載の脂質ナノ粒子組成物。
【請求項6】
存在する立体構造的に拘束されているイオン性脂質の量は、総モル数を基準として約35~約65モルパーセントの範囲である、請求項4または5に記載の脂質ナノ粒子組成物。
【請求項7】
前記立体構造的に拘束されているイオン性脂質は、
【化13】
に従う構造を有する、請求項4~6のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子組成物。
【請求項8】
前記立体構造的に拘束されているイオン性脂質は、
【化14】
に従う構造を有する、請求項4~6のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子組成物。
【請求項9】
前記リン脂質は、1-2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)である、請求項4~8のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子組成物。
【請求項10】
前記ポリエチレングリコール-脂質は、C
14PEG
2000またはC
18PEG
2000である、請求項4~9のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子組成物。
【請求項11】
前記組成物は、約30mol%~約70mol%の立体構造的に拘束されているイオン性脂質、約5mol%~約25mol%のリン脂質、約25mol%~約45mol%のコレステロール、および約0.1mol%~約5mol%のポリエチレングリコール-脂質を含む、請求項4、5、または7~10のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子組成物。
【請求項12】
前記核酸は、RNA、DNA、一本鎖RNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、二本鎖DNA、三本鎖DNA、siRNA、shRNA、sgRNA、mRNA、miRNA、アンチセンスDNA、またはこれらの組合せを含む、請求項4~11のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子組成物。
【請求項13】
前記核酸はタンパク質をコードする、請求項4~12のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子組成物。
【請求項14】
前記核酸は、RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼをコードする、請求項4~13のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子組成物。
【請求項15】
前記RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼは、Cas9、CasX、CasY、Cas13、またはCpf1である、請求項14に記載の脂質ナノ粒子組成物。
【請求項16】
前記脂質ナノ粒子は、流体力学的直径が約30nm~約170nmの範囲である、請求項4~12のいずれか一項に記載のナノ粒子組成物。
【請求項17】
アダマンタンテイルを含む立体構造的に拘束されているイオン性脂質、
1-2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、
C
14PEG
2000、
コレステロール、
および
siRNA
を含む脂質ナノ粒子組成物。
【請求項18】
前記立体構造的に拘束されているイオン性脂質は、3-[(1-アダマンタニル)アセトキシ]-2-{[3-(ジエチルアミノ)プロポキシカルボニルオキシ]メチル}プロピル(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエノエートである、請求項17に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項19】
C
14PEG
2000は、約2.0~約3.0モルパーセントで存在し、DSPCは、約15~約17モルパーセントで存在し、コレステロールは、約45~約47モルパーセントで存在し、前記立体構造的に拘束されているイオン性脂質は、約33~約36モルパーセントで存在し、前記siRNAは、siRNAに対する5~20質量比の総脂質で存在する、請求項17または18に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項20】
C
14PEG
2000は、約2.5モルパーセントで存在し、DSPCは、約16モルパーセントで存在し、コレステロールは、約46.5モルパーセントで存在し、前記立体構造的に拘束されているイオン性脂質は、約35モルパーセントで存在する、請求項17~19のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項21】
請求項4~20のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子組成物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項22】
それを必要とする対象に核酸を送達する方法であって、前記対象に、請求項4~20のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子組成物または請求項21に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項23】
前記対象に別の治療薬を投与することをさらに含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
それを必要とする対象の免疫細胞に核酸を送達する方法であって、
前記対象に、
3-[(1-アダマンタニル)アセトキシ]-2-{[3-(ジエチルアミノ)プロポキシカルボニルオキシ]メチル}プロピル(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエノエート、
DSPC、
ポリエチレングリコール-脂質、
コレステロール、
および
核酸
からなる脂質ナノ粒子組成物を投与することを含み、
前記脂質ナノ粒子組成物は、前記対象の前記免疫細胞に前記核酸を送達する、方法。
【請求項25】
前記脂質ナノ粒子組成物は、前記脂質ナノ粒子組成物の標的を前記免疫細胞に定めるターゲティングリガンドを含まない、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記免疫細胞はT細胞である、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記T細胞はCD8+ T細胞である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記T細胞はT調節性細胞である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記T細胞はCD4+である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記免疫細胞は、マクロファージ、樹状細胞、または肝臓免疫細胞である、請求項24または25に記載の方法。
【請求項31】
ナノ粒子組成物の脾臓または肝臓でのクリアランスを減少させる方法であって、対象に投与された場合に前記ナノ粒子組成物の脾臓または肝臓でのクリアランスを減少させるかまたは阻害するのに有効な、立体構造的に拘束されているイオン性脂質の量を含むナノ粒子組成物を配合することを含む方法。
【請求項32】
前記立体構造的に拘束されているイオン性脂質は、請求項1または2に記載の構造を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
対象の非肝細胞へのナノ粒子組成物の送達を増加させる方法であって、前記対象に投与された場合に非肝細胞への前記ナノ粒子組成物の送達を増加させるのに有効な、立体構造的に拘束されているイオン性脂質の量を含むように前記ナノ粒子組成物を配合することを含む方法。
【請求項34】
前記立体構造的に拘束されているイオン性脂質は、請求項1または2に記載の構造を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ナノ粒子組成物は、脂質ナノ粒子医薬組成物である、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記脂質ナノ粒子医薬組成物は、リン脂質、ポリエチレングリコール-脂質、コレステロール、および任意選択で第1の核酸を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記非肝細胞は、脾臓B細胞、脾臓T細胞、肺内皮細胞、および肝臓免疫細胞の内の少なくとも1つである、請求項33~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記ナノ粒子組成物は、約0.5mg/kg~約2.0mg/kgの範囲の量で前記対象に送達される第2の核酸をさらに含む、請求項33~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記対象に送達される前記第2の核酸の量は、約1.0mg/kg未満である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
それを必要とする対象の免疫細胞中での遺伝子発現を減少させる方法であって、
前記対象に、
3-[(1-アダマンタニル)アセトキシ]-2-{[3-(ジエチルアミノ)プロポキシカルボニルオキシ]メチル}プロピル(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエノエート、
DSPC、
ポリエチレングリコール-脂質、
コレステロール、
および
阻害性核酸
からなる脂質ナノ粒子組成物を投与することを含み、
前記脂質ナノ粒子組成物は、前記対象の前記免疫細胞に前記阻害性核酸を送達する、方法。
【請求項41】
前記阻害性核酸は、siRNAである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記対象に投与される前記阻害性核酸の量は、約1.0mg/kg未満である、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
前記対象に投与される阻害性核酸の量は、約0.5mg/kgである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
それを必要とする対象の免疫細胞中で遺伝子を編集する方法であって、
前記対象に、脂質ナノ粒子の第1の集団および第2の集団を含む脂質ナノ粒子組成物を投与することを含み、
前記脂質ナノ粒子の第1の集団は、3-[(1-アダマンタニル)アセトキシ]-2-{[3-(ジエチルアミノ)プロポキシカルボニルオキシ]メチル}プロピル(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエノエート、DSPC、ポリエチレングリコール-脂質、コレステロール、および前記遺伝子に特異的なsgRNAからなり、
前記脂質ナノ粒子の第2の集団は、3-[(1-アダマンタニル)アセトキシ]-2-{[3-(ジエチルアミノ)プロポキシカルボニルオキシ]メチル}プロピル(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエノエート、DSPC、ポリエチレングリコール-脂質、コレステロール、およびRNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼをコードするmRNAからなる、
方法。
【請求項45】
前記RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼは、Cas9、CasX、CasY、Cas13、およびCpf1からなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記対象に投与される前記sgRNAおよびmRNAの一方または両方の量は、約1.0mg/kg未満である、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
前記対象に投与される前記sgRNAおよびmRNAの一方または両方の量は、約0.5mg/kgである、請求項46に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
あらゆる優先権主張出願に対する参照による組込み
本出願は、2019年7月29日に出願された、「NANOMATERIALS CONTAINING CONSTRAINED LIPIDS AND USES THEREOF」という表題の米国仮出願第62/879,731号明細書の利益を主張しており、この明細書は、その全体が参照により組み込まれる。
【0002】
分野
本明細書で説明されている主題は、全体として、薬物送達システムおよびその使用方法に関する。
【0003】
配列表への言及
本出願は、電子配列表と一緒に出願されている。この電子配列表は、2020年7月4日に作成されて最終的に修正されている、GUIDE005WO.txtという表題のファイル(サイズは6,977バイトである)として提供されている。この電子配列表の電子フォーマットでの情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
Tリンパ球は免疫反応を調節しており、そのため、新薬開発の重要な薬物標的となっている。例えば、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)、またはPD1リガンド1(PDL1)シグナル伝達をブロックする抗体療法は、強力な抗腫瘍反応を引き起こしている(Khalil, D.N., et al., Nat Rev Clin Oncol, 13:273-290 (2016); Sharma, P. & Allison, J. P., Science, 348:56-61 (2015))。しかしながら、多数の患者はこれらの薬剤に反応せず、反応する患者の多くは、最終的には再発する(Jenkins, T, et al., BJC, 118:9-16 (2018))。加えて、抗体療法は、「創薬可能な」タンパク質の活性のみを阻害し得、このタンパク質は、ゲノムをコードする全タンパク質の約15%を占めると考えられている(Dixon, S. and Stockwell, B., Curr Opin Chem Biol, 13(5-6):549-555 (2009))。
【0005】
疾患の病理で重要な役割を果たす一部のタンパク質は、「創薬不能」である。「創薬不能」という用語は、薬理学的に標的とされ得ないタンパク質を説明するための造語であった(Cang, C.V., et al., Nature Reviews Cancer, 17:502-508 (2017))。現在、創薬不能と考えられる癌標的が数多く存在する(Cang, C.V., et al., Nature Reviews Cancer, 17:502-508 (2017))。創薬不能なタンパク質の例として、細胞内タンパク質、および低分子薬物が容易に結合するドメインを欠いているタンパク質が挙げられる。
【0006】
抗体療法は創薬可能なタンパク質に限定されており、なぜならば、抗体は、その治療効果を発揮するためにはタンパク質に結合し得なければならないからである。siRNAを使用して、創薬不能なタンパク質をコードする遺伝子等の任意の遺伝子の翻訳を阻害し得る。T細胞活性では、いくつかの創薬不能なタンパク質標的が同定されている。そのため、siRNAは、T細胞が関与する疾患等の「創薬不能な」タンパク質により引き起こされる多数の疾患を処置するのに有用であり得る。残念ながら、肝細胞以外の細胞への臨床的に適切なsiRNA送達(Adams, D., et al., N Engl J Med, 379:11-21 (2018))は、依然として困難である(Lorenzar, C., et al., J Control Release, 203:1-15 (2015))。T細胞siRNA送達ではいくつかの進歩が見られるが、いくつかの障害が残っている。例えば、siRNAは、正電荷を持つペプチドに連結された一本鎖抗体を使用してT細胞に送達され、これにより、5mg/kgという高投与量で標的遺伝子のサイレンシングが引き起こされた(Kumar, P., et al., Cell, 134:577-586 (2008))。別の例では、ナノ粒子が抗CD4抗体でコーティングされ、1mg/kgの用量で20%のインビボでの標的遺伝子のサイレンシングが引き起こされた(Ramishetti, S., et al., ACS Nano, 9:6706-6716 (2015))。より最近では、肝細胞を標的とする脂質ナノ粒子(LNP)を、これをCD4抗体でコーティングすることによりT細胞に再標的化させ、これにより、6mg/kgの用量で50%のインビボでのT細胞遺伝子のサイレンシングが引き起こされた(Kedmi, R., et al., Nat Nanotechnol, 13:214-219 (2018))。これら全ての治療には、2つの重要な共通点がある。第1に、50%の遺伝子サイレンシングを達成するためには1mg/kgを超えるsiRNAが必要であり、これは、ヒトでの使用が承認されている現在のsiRNA用量を超えている(Adams, D., et al., N Engl J Med, 379:11-21 (2018))。第2に、これらの治療は、ペプチドベースか、タンパク質ベースか、またはアプタマーベースのターテゲィングリガンドを使用してT細胞送達を実現する。
【0007】
ナノ医療は、ターゲティングリガンドを使用して細胞内に輸送されることが多い(Cheng, S., et al., Science, 338:903-910 (2012))。しかしながら、FDAにより承認された唯一のRNAナノ粒子療法は、肝細胞に自然に輸送される脂質の単純な混合物を利用する(Adams, D., et al., N Engl J Med, 379:11-21 (2018))。自然な輸送は、免疫細胞へのナノ粒子の送達を促進することは示されていない。T細胞へのナノ粒子送達のための現在の選択肢は、遺伝子サイレンシングを達成するために高用量の核酸を必要とし、細胞送達に関してターゲティングリガンドに依存していることから、T細胞への送達のための改善されたナノ粒子組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、免疫細胞に核酸を送達し得る送達ビヒクルおよびその使用方法を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、免疫細胞の機能をモジュレートする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
特定の細胞または組織の微小環境に核酸を送達するための組成物が提供される。一実施形態では、この組成物は、脾臓および肝臓でのクリアランスを減少させるように配合されている脂質ナノ粒子組成物である。脂質ナノ粒子の化学組成は脂質ナノ粒子の自然な輸送に有意に影響を及ぼすことが発見された。より具体的には、立体構造的に拘束されているイオン性脂質(conformationally constrained ionizable lipid)は、ターゲティングリガンドを必要とすることなく、脂質ナノ粒子の指向性およびクリアランスプロファイルを修飾し得ることが発見された。本開示の脂質ナノ粒子の指向性がサイズ依存的であることも発見された。
【0011】
一実施形態は、立体構造的に拘束されているイオン性脂質、リン脂質、ポリエチレングリコール-脂質、コレステロール、および任意選択で、核酸を有するイオン性脂質ナノ粒子を提供する。一実施形態では、この拘束されているイオン性脂質は、式I:
【0012】
【化1】
に従う構造を有しており、
式中、
R
1は、
【0013】
【0014】
【0015】
別の実施形態では、拘束されているイオン性脂質は、アダマンタンテイル(adamantane tail)を含む。一部の実施形態では、拘束されているイオン性脂質は、3-[(1-アダマンタニル)アセトキシ]-2-{[3-(ジエチルアミノ)プロポキシカルボニルオキシ]メチル}プロピル(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエノエートである。一部の実施形態では、リン脂質は、1-2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)または1-2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)である。一部の実施形態では、PEG-脂質は、C14PEG2000またはC18PEG2000である。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子はステロールを含む。一部の実施形態では、ステロールはコレステロールである。核酸は、RNA、DNA、一本鎖RNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、二本鎖DNA、三本鎖DNA、siRNA、shRNA、sgRNA、mRNA、miRNA、アンチセンスDNA、またはこれらの組合せであり得る。
【0016】
一部の実施形態では、核酸は、RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ(RNA-guided DNA endonuclease)をコードし、このRNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼとして、Cas9、CasX、CasY、Cas13、またはCpf1が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
一実施形態では、脂質ナノ粒子は、約30mol%~約70mol%の立体構造的に拘束されているイオン性脂質、約5mol%~約25mol%のリン脂質、約25mol%~約45mol%のコレステロール、および約0.1mol%~約5mol%のPEG-脂質を含む。他の実施形態では、立体構造的に拘束されているイオン性脂質は、35、45、50、または65モルパーセントで存在し得る。
【0018】
一部の実施形態では、ナノ粒子は、流体力学的直径が約30nm~約170nmである。別の実施形態では、脂質ナノ粒子は、平均直径が50nm~100nmである。
【0019】
本開示の脂質ナノ粒子は、薬学的に許容される賦形剤または薬学的に許容される担体を任意選択で含む医薬組成物として配合され得る。
【0020】
一実施形態は、脂質ナノ粒子であって、C14PEG2000が2.0~3.0モルパーセントで存在し、DSPCが15~17モルパーセントで存在し、コレステロールが45~47モルパーセントで存在し、拘束されている脂質が33~36モルパーセントで存在する、脂質ナノ粒子を提供する。
【0021】
さらに別の実施形態は、それを必要とする対象に、治療用核酸(例えば、治療用タンパク質をコードする核酸)、または阻害性核酸もしくは酵素性核酸を含む本開示の脂質ナノ粒子組成物の内の1つまたは複数を投与することにより対象に治療薬または予防薬を送達する方法を提供する。この方法は、別の治療薬を投与することをさらに含み得る。一実施形態では、ナノ粒子は、免疫細胞にカーゴを優先的に送達する。免疫細胞は、T細胞であり得、例えば、CD8+ T細胞、CD4+ T細胞、またはT調節性細胞であり得る。免疫細胞はまた、マクロファージまたは樹状細胞でもあり得る。
【0022】
一実施形態は、ナノ粒子の脾臓または肝臓でのクリアランスを減少させるかまたは阻害するために、ナノ粒子と、立体構造的に拘束されているイオン性脂質の有効量とを配合することにより、ナノ粒子組成物の脾臓または肝臓でのクリアランスを減少させる方法を提供する。
【0023】
別の実施形態は、それを必要とする対象に、3-[(1-アダマンタニル)アセトキシ]-2-{[3-(ジエチルアミノ)プロポキシカルボニルオキシ]メチル}プロピル(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエノエート、DSPC、ポリエチレングリコ-ル-脂質、コレステロール、および核酸からなる脂質ナノ粒子を投与することにより対象の免疫細胞に核酸を送達する方法であって、脂質ナノ粒子組成物は、任意選択でターゲティングリガンドの非存在下で、対象の免疫細胞に核酸を送達する、方法を提供する。一実施形態では、T細胞は、CD8+ T細胞である。
【0024】
さらに別の実施形態は、それを必要とする対象に、3-[(1-アダマンタニル)アセトキシ]-2-{[3-(ジエチルアミノ)プロポキシカルボニルオキシ]メチル}プロピル(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエノエート、DSPC、ポリエチレングリコ-ル-脂質、コレステロール、および阻害性核酸からなる脂質ナノ粒子組成物を投与することにより対象の免疫細胞中での遺伝子発現を減少させる方法であって、この脂質ナノ粒子組成物は、対象の免疫細胞に阻害性核酸を送達する、方法を提供する。
【0025】
別の実施形態は、それを必要とする対象に、脂質ナノ粒子の第1の集団および第2の集団を含む脂質ナノ粒子組成物を投与することにより対象の免疫細胞中で遺伝子を編集する方法であって、脂質ナノ粒子の第1の集団は、3-[(1-アダマンタニル)アセトキシ]-2-{[3-(ジエチルアミノ)プロポキシカルボニルオキシ]メチル}プロピル(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエノエート、DSPC、ポリエチレングリコール-脂質、コレステロール、およびこの遺伝子に特異的なsgRNAからなり、脂質ナノ粒子の第2の集団は、3-[(1-アダマンタニル)アセトキシ]-2-{[3-(ジエチルアミノ)プロポキシカルボニルオキシ]メチル}プロピル(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエノエート、DSPC、ポリエチレングリコール-脂質、コレステロール、およびRNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼをコードするmRNAからなる、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1-1】
図1Aは、イオン性脂質の骨格であって、テイルバリアント(構造を
図1Bに示す)およびヘッド基バリアント(構造を
図1Cに示す)が付加された骨格の構造である。
【
図1-2】
図1Dは、104種の異なるLNPを配合するために使用されるイオン性脂質、コレステロール、脂質-PEG、およびDSPCまたはDOPEのいずれかの4つのモル比を示す概略図である。
【
図1-3】
図1Eは、個々に測定した、配合した全てのLNPの流体力学的直径(nm)を示すドットプロットである。
図1Fは、個々に測定した、配合した全てのLNPの多分散性指数を示すドットプロットである。
【
図1-4】
図1G~1Iは、イオン性脂質のタイプ(
図1G)、イオン性脂質のモルパーセント(
図1H)、およびリン脂質のタイプ(
図1I)の関数としてプロットされたLNPの流体力学的直径を示す棒グラフである。
【
図2-1】
図2Aは、様々なDNAバーコードおよびsiGFPを担持するように配合されたナノ粒子を示す概略図である。
【
図2-2】
図2Bは、100個の安定したLNPを一緒にプールする工程、これらを、GFPを発現するマウスに投与する工程、3日後にGFP
Low細胞を単離する工程、およびこの集団内のDNAバーコードを配列決定する工程を含む実験ワークフローを示す概略図である。
【
図2-3】
図2Cは、9種の細胞タイプでのGFP
Low細胞の割合を示す棒グラフである。
図2Dは、9種の細胞タイプでのGFP MFIの割合を示す棒グラフである。
【
図2-4】
図2Eは、肺内皮細胞、脾臓のB細胞およびT細胞、ならびに肝臓免疫細胞における正規化DNA送達を示すドットプロットである。
【
図2-5】
図2Fは、脾臓のT細胞におけるDSPC含有LNPの富化を示す概略図である。
【
図2-6】
図2Gは、リン脂質の関数としてプロットされたLNPの正規化DNA送達を示すドットプロットである。二元配置T検定、
**P<0.01。
図2Hは、DSPCまたはDOPEを含むLNPの正規化DNA送達の対応のある解析である。対応のある二元配置T検定、
*P<0.05。
【
図2-7】
図2Iは、13種のイオン性脂質のそれぞれに関する富化を示す棒グラフである。
【
図2-8】
図2Jは、ヘッド基11およびテイルL、S、またはAと共に配合されたLNPの正規化DNA送達を示す棒グラフである。一元配置ANOVA、
*P<0.05、
**P<0.01。
【
図3-1】
図3Aは、イオン性脂質11-Aの構造を示す。
【
図3-2】
図3Bは、最高性能のcLNPのモル組成を示す。
図3Cは、1.5mg/kgの用量での、siLucを担持するcLNPの処置または0.5mg/kgおよび1.5mg/kgの用量での、siGFPを担持しているcLNPの処置の72時間後での脾臓CD3
+ T細胞中におけるGFP発現を示すフローサイトメトリヒストグラムである。
【
図3-3】
図3Dは、様々な用量での、siLucまたはsiGFPを担持するcLNPによる処置の72時間後での脾臓CD3+ T細胞中における正規化GFP MFIを示す棒グラフである。
図3Eは、2.0mg/kgの用量での、siGFPを担持するcLNPの処置の72時間後での脾臓CD8+およびCD4+ T細胞中における正規化GFP MFIを示す棒グラフである。
【
図3-4】
図3Fは、2.0mg/kgの用量での、sgRNAを担持するcLNPの処置後の脾臓CD3+ T細胞ならびにCD8+およびCD4+ T細胞中における正規化GFP MFIを示す棒グラフである。
図3Gは、2.0mg/kgの用量での、sgRNAを担持するcLNPの処置後のGFP
LowCD8+ T細胞の割合を示す棒グラフである。
【
図4-1】
図4Aは、イオン性脂質のヘッド基の分子量と、T細胞中での富化とを関連付けるグラフを示す。
図4Bは、イオン性脂質のヘッド基のLogPと、T細胞中での富化とを関連付けるグラフを示す。
【
図4-2】
図4Cは、イオン性脂質上のヘッド基の極性表面積のLogPと、T細胞中での富化とを関連付けるグラフを示す。
図4Dは、DSPCと、1つのテイルのみが異なるイオン性脂質とを含むLNPの対応のある解析を示す。
【
図4-3】
図4Eは、正規化DNA送達とLNP直径との比較を示す。
【
図5-1】
図5Aは、PBS処理マウス、ならびに肝細胞、肝臓免疫細胞、肝臓クッパー細胞、肝臓内皮細胞、脾臓単球、および脾臓B細胞にsiルシフェラーゼおよびsiGFPを送達する拘束された脂質を含むLNP(1.5mg/kgおよび0.5mg/kg)を投与したものでの正規化GFPタンパク質MFIである。
【
図5-2】
図5B~Cは、PBS処理マウス、ならびに肝細胞、肝臓免疫細胞、肝臓クッパー細胞、肝臓内皮細胞、脾臓単球、および脾臓B細胞にsiルシフェラーゼおよびsiGFPを送達する拘束された脂質を含むLNP(1.5mg/kgおよび0.5mg/kg)を投与したものでの正規化GFPタンパク質MFIである。
【
図5-3】
図5D~Eは、PBS処理マウス、ならびに肝細胞、肝臓免疫細胞、肝臓クッパー細胞、肝臓内皮細胞、脾臓単球、および脾臓B細胞にsiルシフェラーゼおよびsiGFPを送達する拘束された脂質を含むLNP(1.5mg/kgおよび0.5mg/kg)を投与したものでの正規化GFPタンパク質MFIである。
【
図5-4】
図5Fは、PBS処理マウス、ならびに肝細胞、肝臓免疫細胞、肝臓クッパー細胞、肝臓内皮細胞、脾臓単球、および脾臓B細胞にsiルシフェラーゼおよびsiGFPを送達する拘束された脂質を含むLNP(1.5mg/kgおよび0.5mg/kg)を投与したものでの正規化GFPタンパク質MFIである。
図5Gは、sgGFPの配列および化学的修飾である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
I.定義
本開示は、本明細書で説明されている組成物および方法ならびに説明されている実験条件に限定されず、それ自体が変動し得ることを理解すべきである。本明細書で使用されている用語法は、ある特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することは意図されておらず、なぜならば、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲のみにより限定されるからであることも理解しなければならない。
【0028】
別途定義されない限り、本明細書で使用されている全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。しかしながら、本明細書で説明されているものと類似のまたは等価のあらゆる組成物、方法、および材料を、本発明の実施または試験で使用し得る。言及されている全ての刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
現在特許請求されている発明を説明する文脈(特に、特許請求の範囲の文脈)での「a」、「an」、「the」という用語、および類似の指示物の使用は、別途本明細書で示されているかまたは文脈と明確に矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含するように解釈されるものとする。
【0030】
1つまたは複数のキラル中心を有する、本明細書で説明されているあらゆる化合物において、絶対的な立体化学が明確に示されていない場合には、各中心は、独立して、R-立体配置もしくはS-立体配置またはこれらの混合物であり得ることが理解される。そのため、本明細書で提供される化合物は、鏡像異性的に純粋であってもよいし、鏡像異性的に富化されていてもよいし、ラセミ混合物であってもよいし、ジアステレオマー的に純粋であってもよいし、ジアステレオマー的に富化されていてもよいし、立体異性混合物であってもよい。加えて、EまたはZと定義され得る幾何学的異性体を生成する1つまたは複数の二重結合を有する、本明細書で説明されている任意の化合物において、各二重結合は、独立して、Eであってもよいし、Zであってもよいし、これらの混合物であってもよいことが理解される。
【0031】
本明細書における値の範囲の列挙は、別途本明細書で示されない限り、この範囲内の各個々の値を独立して言及するための速記法として役立つことが意図されているのみであり、各個別の値は、本明細書で独立して列挙されていたかのように本明細書に組み込まれる。
【0032】
「約」という用語の使用は、約±10%の範囲で、記載された値の上または下のいずれかの値を説明することが意図されており、他の実施形態では、この値は、約±5%の範囲で、記載された値の上または下のいずれかの値の範囲であり得、他の実施形態では、この値は、約±2%の範囲で、記載された値の上または下のいずれかの値の範囲であり得、他の実施形態では、この値は、約±1%の範囲で、記載された値の上または下のいずれかの値の範囲であり得る。前述の範囲は、文脈により明確になることが意図されており、さらなる限定が暗示されているものではない。別途本明細書で示されない限り、または別途文脈と明確に矛盾しない限り、本明細書で説明されている全ての方法を、任意の適切な順序で実施し得る。本明細書で提供されるありとあらゆる例、または例示的な文言(例えば「等」)の使用は、本発明をよりよく明らかにすることが意図されているのみであり、別途特許請求されない限り本発明の範囲に制限をもたらすものではない。本明細書中のいかなる文言も、特許請求されていないあらゆる要素が本発明の実施に必須であることを示すと解釈すべきではない。
【0033】
本明細書で使用される場合、「RNA」は、天然に存在してもよいし天然に存在していなくてもよいリボ核酸を指す。例えば、RNAは、修飾されたおよび/または天然に存在しない成分(例えば、1つまたは複数の核酸塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド、またはリンカー)を含み得る。RNAは、キャップ構造、鎖終結ヌクレオシド、ステプループ、ポリA配列、および/またはポリアデニル化シグナルを含み得る。RNAは、目的のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有し得る。例えば、RNAは、メッセンジャーRNA(mRNA)であり得る。特定のポリペプチドをコードするmRNAの翻訳(例えば、哺乳類細胞内でのmRNAのインビボでの翻訳)により、コードされたポリペプチドが産生され得る。RNAは、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、ダイサー基質RNA(dsRNA)、小ヘアピンRNA(shRNA)、mRNA、単一誘導型RNA(sgRNA)、cas9 mRNA、およびこれらの混合物からなる非限定的な群から選択され得る。
【0034】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、ペプチド結合により互いに連結された少なくとも3個のアミノ酸の文字列を指すために互換的に使用され得る。ペプチドは、個々のペプチドまたはペプチドの集団を指す場合がある。ペプチドは、天然アミノ酸、非天然アミノ酸(即ち、自然界には存在しないがポリペプチド鎖に組み込まれ得る化合物)、および/またはアミノ酸類似体を含み得る。同様に、ペプチド中のアミノ酸の1つまたは複数が、例えば、化学物質(例えば、炭水化物基、リン酸基、ファルネシル基、イソファルネシル基、脂肪酸基、コンジュゲーション、官能化、または他の修飾のためのリンカー等)の付加により修飾されている場合がある。修飾として、ペプチドの環化、Dアミノ酸の組込み等が挙げられ得る。
【0035】
本明細書で使用される場合、「処置する」、「処置すること」、「処置」、および「治療的使用」という用語は、疾患または障害の1種または複数種の症状の除去、軽減、または軽快を指す。本明細書で使用される場合、「治療上有効な量」は、そのような症状の臨床的に適切な除去、軽減、または軽快を媒介するのに十分な治療薬の量を指す。効果の大きさがレシピエント対象の健康または予後に影響を及ぼすのに十分な場合には、この効果は臨床的に適切である。治療上有効な量は、疾患の発症を遅延させるかまたは最小限に抑える(例えば、がんの広がりを遅延させるかまたは最小限に抑える)のに十分な治療薬の量を指す場合がある。治療上有効な量はまた、疾患の処置または管理において治療上の利益をもたらす治療薬の量を指す場合もある。
【0036】
本明細書で使用される場合、「予防薬」という用語は、ある障害または疾患の任意の症状の検出前に、そのような障害または疾患の予防で使用され得る薬剤を指す。「予防的に有効な」量とは、そのような保護を媒介するのに十分な予防薬の量のことである。予防的に有効な量はまた、疾患の予防において予防的な利益をもたらす予防薬の量を指す場合もある。
【0037】
本明細書で使用される場合、「個体」、「宿主」、「対象」、および「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用され、哺乳類(例えば、限定されないが、ヒト、齧歯類、例えばマウスおよびラット、ならびに他の実験動物)を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、あらゆる標準的な医薬担体(例えば、リン酸緩衝生理食塩水、水、およびエマルション(例えば、油/水エマルションまたは水/油エマルション)、ならびに様々なタイプの湿潤剤)を包含する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「立体構造的に拘束されている脂質」という用語は、分子構造が主に1つの構造である脂質(例えば、形状が「アームチェア」に似ているアダマンタン)を指す。
【0040】
「PEG-脂質」という用語は、ポリエチレングルコールで修飾されている脂質を指す。例示的なPEG-脂質として、C14PEG350、C14PEG1000、C14PEG2000、C14PEG3000、およびC18PEG2000が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、比較的少数のヌクレオチドを含む短いDNA、RNA、またはDNA/RNA分子もしくはオリゴマーを指す。
【0042】
本明細書で説明されている一部の実施形態は、式(I):
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【化7】
であり、R
3およびR
4は、それぞれ独立して、
【0047】
【0048】
一部の実施形態は、式(III):
【0049】
【化9】
の化合物であって、
式中、
R
8は、-Hまたは
【0050】
【化10】
であり、
R
5、R
6、R
7,およびR
9は、それぞれ独立して、-C
8H
17、-C
10H
21、-C
12H
25、-C
13H
27、-C
14H
29、C
16H
33、またはアダマンタニルであり、
mおよびnは、それぞれ独立して、0、1、2、3、または4であり、
Aは、
【0051】
【0052】
【0053】
【化13】
であり、
R
10およびR
11は、それぞれ独立して、-Hまたは
【0054】
【化14】
であり、
R
12は、-C
10H
21である、
化合物に関する。
【0055】
一部の実施形態は、R2が
【0056】
【0057】
一部の実施形態は、立体構造的に拘束されているイオン性脂質、リン脂質、ポリエチレングリコール-脂質、コレステロール、および任意選択で核酸を含む脂質ナノ粒子組成物に関する。一部の実施形態は、脂質ナノ粒子であって、立体構造的に拘束されているイオン性脂質が、本明細書で説明されている構造に従う構造を含む脂質ナノ粒子に関する。一部の実施形態は、脂質ナノ粒子組成物であって、存在する立体構造的に拘束されているイオン性脂質の量が、総モル数を基準として約35~約65モルパーセントの範囲である、脂質ナノ粒子組成物に関する。
【0058】
一部の実施形態は、脂質ナノ粒子組成物であって、立体構造的に拘束されているイオン性脂質が、
【0059】
【化16】
に従う構造を有する、脂質ナノ粒子組成物に関する。
【0060】
一部の実施形態は、脂質ナノ粒子組成物であって、立体構造的に拘束されているイオン性脂質が、
【0061】
【化17】
に従う構造を有する、脂質ナノ粒子組成物に関する。
【0062】
一部の実施形態は、脂質ナノ粒子組成物であって、リン脂質が、1-2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)である、脂質ナノ粒子組成物に関する。一部の実施形態は、脂質ナノ粒子組成物であって、ポリエチレングリコール-脂質が、C14PEG2000またはC18PEG2000である、脂質ナノ粒子組成物に関する。
【0063】
一部の実施形態は、脂質ナノ粒子組成物であって、約30mol%~約70mol%の立体構造的に拘束されているイオン性脂質、約5mol%~約25mol%のリン脂質、約25mol%~約45mol%のコレステロール、および約0.1mol%~約5mol%のポリエチレングリコール-脂質を含む脂質ナノ粒子組成物に関する。
【0064】
一部の実施形態は、脂質ナノ粒子組成物であって、核酸は、RAN、DNA、一本鎖RNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、二本鎖DNA、三本鎖DNA、siRNA、shRNA、sgRNA、mRNA、miRNA、アンチセンスDNA、またはこれらの組合せを含む、脂質ナノ粒子組成物に関する。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子組成物は、核酸がタンパク質をコードする、組成物である。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子組成物は、核酸がRNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼをコードする、組成物である。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子組成物は、RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼが、Cas9、CasX、CasY、Cax13、またはCpf1である、組成物である。
【0065】
一部の実施形態では、ナノ粒子組成物は、脂質ナノ粒子の流体力学的直径が約30nm~約170nmの範囲である、組成物である。
【0066】
一部の実施形態では、脂質ナノ粒子組成物は、アダマンタンテイルを含む立体構造的に拘束されているイオン性脂質、1-2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、C14PEG2000、コレステロール、およびsiRNAを含む。脂質ナノ粒子の一部の実施形態では、立体構造的に拘束されているイオン性脂質は、3-[(1-アダマンタニル)アセトキシ]-2-{[3-(ジエチルアミノ)プロポキシカルボニルオキシ]メチル}プロピル(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエノエートである。
【0067】
脂質ナノ粒子の一部の実施形態では、C14PEG2000は、約2.0~約3.0モルパーセントで存在し、DSPCは、約15~約17モルパーセントで存在し、コレステロールは、約45~約47モルパーセントで存在し、立体構造的に拘束されているイオン性脂質は、約33~約36モルパーセントで存在し、siRNAは、siRNAに対する5~20質量比の総脂質で存在する。一部の実施形態では、C14PEG2000は、約2.5モルパーセントで存在し、DSPCは、約16モルパーセントで存在し、コレステロールは、約46.5モルパーセントで存在し、立体構造的に拘束されているイオン性脂質は、約35モルパーセントで存在する。
【0068】
一部の実施形態は、本明細書で説明されている脂質ナノ粒子組成物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0069】
一部の実施形態は、それを必要とする対象に核酸を送達する方法であって、この対象に、本明細書で説明されている脂質ナノ粒子組成物または医薬組成物を投与することを含む方法に関する。一部の実施形態は、この対象に別の治療薬を投与することをさらに含む。
【0070】
一部の実施形態は、それを必要とする対象の免疫細胞に核酸を送達する方法であって、この対象に、3-[(1-アダマンタニル)アセトキシ]-2-{[3-(ジエチルアミノ)プロポキシカルボニルオキシ]メチル}プロピル(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエノエート、DSPC、ポリエチレングリコール-脂質、コレステロール、および核酸からなる脂質ナノ粒子組成物を投与することを含み、この脂質ナノ粒子組成物は、この対象の免疫細胞に核酸を送達する、方法に関する。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子組成物は、この脂質ナノ粒子組成物の標的を免疫細胞に定めるターゲティングリガンドを含まない。一部の実施形態では、免疫細胞はT細胞である。一部の実施形態では、T細胞はCD8+ T細胞である。一部の実施形態では、T細胞はT調節性細胞である。一部の実施形態では、T細胞はCD4+である。一部の実施形態では、免疫細胞は、マクロファージ、樹状細胞、または肝臓免疫細胞である。
【0071】
一部の実施形態は、ナノ粒子組成物の脾臓または肝臓でのクリアランスを減少させる方法であって、対象に投与された場合に、このナノ粒子組成物の脾臓または肝臓でのクリアランスを減少させるかまたは阻害するのに有効な、立体構造的に拘束されているイオン性脂質の量を含むナノ粒子組成物を配合することを含む方法に関する。一部の実施形態では、立体構造的に拘束されているイオン性脂質は、本明細書で説明されている構造を含む。
【0072】
一部の実施形態は、対象の非肝細胞へのナノ粒子組成物の送達を増加させる方法であって、この対象に投与された場合に非肝細胞へのこのナノ粒子組成物の送達を増加させるのに有効な、立体構造的に拘束されているイオン性脂質の量を含むようにナノ粒子組成物を配合することを含む方法に関する。一部の実施形態では、立体構造的に拘束されているイオン性脂質は、本明細書で説明されている構造を含む。一部の実施形態では、ナノ粒子組成物は、脂質ナノ粒子医薬組成物である。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子医薬組成物は、リン脂質、ポリエチレングリコール-脂質、コレステロール、および任意選択で第1の核酸を含む。一部の実施形態では、非肝細胞は、脾臓B細胞、脾臓T細胞、肺内皮細胞、および肝臓免疫細胞の内の少なくとも1つである。一部の実施形態では、ナノ粒子組成物は、約0.5mg/kg~約2.0mg/kgの範囲の量で対象に送達される第2の核酸をさらに含む。一部の実施形態では、対象に送達される第2の核酸の量は、約1.0mg/kg未満である。
【0073】
一部の実施形態は、それを必要とする対象の免疫細胞中での遺伝子発現を減少させる方法であって、この対象に、3-[(1-アダマンタニル)アセトキシ]-2-{[3-(ジエチルアミノ)プロポキシカルボニルオキシ]メチル}プロピル(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエノエート、DSPC、ポリエチレングリコール-脂質、コレステロール、および阻害性核酸からなる脂質ナノ粒子組成物を投与することを含み、この脂質ナノ粒子組成物は、この対象の免疫細胞に阻害性核酸を送達する、方法に関する。一部の実施形態では、阻害性核酸は、siRNAである。一部の実施形態では、対象に投与される阻害性核酸の量は、約1.0mg/kg未満である。一部の実施形態では、対象に投与される阻害性核酸の量は、約0.5mg/kgである。
【0074】
一部の実施形態は、それを必要とする対象の免疫細胞中で遺伝子を編集する方法であって、この対象に、脂質ナノ粒子の第1の集団および第2の集団を含む脂質ナノ粒子組成物を投与することを含み、脂質ナノ粒子の第1の集団は、3-[(1-アダマンタニル)アセトキシ]-2-{[3-(ジエチルアミノ)プロポキシカルボニルオキシ]メチル}プロピル(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエノエート、DSPC、ポリエチレングリコール-脂質、コレステロール、およびこの遺伝子に特異的なsgRNAからなり、脂質ナノ粒子の第2の集団は、3-[(1-アダマンタニル)アセトキシ]-2-{[3-(ジエチルアミノ)プロポキシカルボニルオキシ]メチル}プロピル(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエノエート、DSPC、ポリエチレングリコール-脂質、コレステロール、およびRNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼをコードするmRNAからなる、方法に関する。一部の実施形態では、RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼは、Cas9、CasX、CasY、Cas13、およびCpf1からなる群から選択される。一部の実施形態では、対象に投与されるsgRNAおよびmRNAの一方または両方の量は、約1.0mg/kg未満である。一部の実施形態では、対象に投与されるsgRNAおよびmRNAの一方または両方の量は、約0.5mg/kgである。
【0075】
II.脂質ナノ粒子
生物学的に活性な物質(例えば、低分子薬物、タンパク質、および核酸)の効果的な標的送達は、医薬品の分野での継続的な課題である。核酸は比較的不安定でありかつ細胞透過性が低いことから、核酸の特異的な送達は困難である。拘束された脂質を有する脂質ナノ粒子は、身体中の特定の組織に、核酸をより効果的に送達し得ることが発見された。一実施形態では、脂質ナノ粒子は、核酸と、立体構造的に拘束されているイオン性脂質、PEG-脂質、リン脂質、コレステロール、および任意選択で核酸とを混合することにより配合され得る。例示的な脂質ナノ粒子配合物として、立体構造的に拘束されているイオン性脂質である3-[(1-アダマンタニル)アセトキシ]-2-{[3-(ジエチルアミノ)プロポキシカルボニルオキシ]メチル}プロピル(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエノエート、PEG-脂質、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、およびコレステロールが挙げられる。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、ターゲティングリガンドを含まない。一部の実施形態では、本開示の脂質ナノ粒子は、ターゲティングリガンドの非存在下で、肝細胞よりもT細胞を優先的に標的とする。
【0076】
脂質ナノ粒子のサイズは様々である。一実施形態では、脂質ナノ粒子は、流体直径が約30~約170nmのであり得る。脂質ナノ粒子は、直径が約30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、105nm、110nm、115nm、120nm、125nm、130nm、135nm、140nm、145nm、150nm、155nm、160nm、165nm、または170nmであり得る。別の実施形態では、ナノ粒子は、直径が50nm~100nmである。
【0077】
A.イオン性脂質
一実施形態では、本開示の脂質ナノ粒子は、イオン性脂質を含む。このイオン性脂質は、典型的には、ヘッド基上でアミン含有を含む。一実施形態では、このイオン性脂質は、立体構造的に拘束されているイオン性脂質である。一部の実施形態では、この立体構造的に拘束されている脂質は、35、45、50、または65モルパーセントで存在する。別の実施形態では、この立体構造的に拘束されている脂質は、約33mol%~約36mol%で存在する。さらに別の実施形態では、この立体構造的に拘束されている脂質は、35mol%で存在する。一実施形態は、式I:
【0078】
【化18】
に従う構造を有する脂質を含むLNPであって、
式中、
R
1は、
【0079】
【化19】
からなる群から選択される脂質テイルであり、
R
2は、
【0080】
【化20】
からなる群から選択されるヘッド基である、
LNPを提供する。
【0081】
別の実施形態は、式II:
【0082】
【化21】
に従う構造を有するイオン性脂質である3-[(1-アダマンタニル)アセトキシ]-2-{[3-(ジエチルアミノ)プロポキシカルボニルオキシ]メチル}プロピル(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエノエート、または式IIのイオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0083】
別の実施形態は、式Iに従うイオン性脂質であって、R1はテイルLであり、R2は化合物(1)である、イオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0084】
さらに別の実施形態は、式Iに従うイオン性脂質であって、R1はテイルLであり、R2は化合物(2)である、イオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0085】
一実施形態は、下記の構造:
【0086】
【化22】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0087】
一実施形態は、下記の構造:
【0088】
【化23】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0089】
一実施形態は、下記の構造:
【0090】
【化24】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0091】
一実施形態は、下記の構造:
【0092】
【化25】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0093】
一実施形態は、下記の構造:
【0094】
【化26】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0095】
一実施形態は、下記の構造:
【0096】
【化27】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0097】
一実施形態は、下記の構造:
【0098】
【化28】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0099】
一実施形態は、下記の構造:
【0100】
【化29】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0101】
一実施形態は、下記の構造:
【0102】
【化30】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0103】
一実施形態は、下記の構造:
【0104】
【化31】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0105】
一実施形態は、下記の構造:
【0106】
【化32】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0107】
一実施形態は、下記の構造:
【0108】
【化33】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0109】
一実施形態は、下記の構造:
【0110】
【化34】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0111】
一実施形態は、下記の構造:
【0112】
【化35】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0113】
一実施形態は、下記の構造:
【0114】
【化36】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0115】
一実施形態は、下記の構造:
【0116】
【化37】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0117】
一実施形態は、下記の構造:
【0118】
【化38】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0119】
一実施形態は、下記の構造:
【0120】
【化39】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0121】
一実施形態は、下記の構造:
【0122】
【化40】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0123】
一実施形態は、下記の構造:
【0124】
【化41】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0125】
一実施形態は、下記の構造:
【0126】
【化42】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0127】
一実施形態は、下記の構造:
【0128】
【化43】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0129】
一実施形態は、下記の構造:
【0130】
【化44】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0131】
一実施形態は、下記の構造:
【0132】
【化45】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0133】
一実施形態は、下記の構造:
【0134】
【化46】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0135】
一実施形態は、下記の構造:
【0136】
【化47】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0137】
一実施形態は、下記の構造:
【0138】
【化48】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0139】
一実施形態は、下記の構造:
【0140】
【化49】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0141】
一実施形態は、下記の構造:
【0142】
【化50】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0143】
一実施形態は、下記の構造:
【0144】
【化51】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0145】
一実施形態は、下記の構造:
【0146】
【化52】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0147】
一実施形態は、下記の構造:
【0148】
【化53】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0149】
一実施形態は、下記の構造:
【0150】
【化54】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0151】
一実施形態は、下記の構造:
【0152】
【化55】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0153】
一実施形態は、下記の構造:
【0154】
【化56】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0155】
一実施形態は、下記の構造:
【0156】
【化57】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0157】
一実施形態は、下記の構造:
【0158】
【化58】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0159】
一実施形態は、下記の構造:
【0160】
【化59】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0161】
一実施形態は、下記の構造:
【0162】
【化60】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0163】
一実施形態は、下記の構造:
【0164】
【化61】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0165】
一実施形態は、下記の構造:
【0166】
【化62】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0167】
一実施形態は、下記の構造:
【0168】
【化63】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0169】
一実施形態は、下記の構造:
【0170】
【化64】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0171】
一実施形態は、下記の構造:
【0172】
【化65】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0173】
一実施形態は、下記の構造:
【0174】
【化66】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0175】
一実施形態は、下記の構造:
【0176】
【化67】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0177】
一実施形態は、下記の構造:
【0178】
【化68】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0179】
一実施形態は、下記の構造:
【0180】
【化69】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0181】
一実施形態は、下記の構造:
【0182】
【化70】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0183】
一実施形態は、下記の構造:
【0184】
【化71】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0185】
一実施形態は、下記の構造:
【0186】
【化72】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0187】
一実施形態は、下記の構造:
【0188】
【化73】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0189】
一実施形態は、下記の構造:
【0190】
【化74】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0191】
一実施形態は、下記の構造:
【0192】
【化75】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0193】
一実施形態は、下記の構造:
【0194】
【化76】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0195】
一実施形態は、下記の構造:
【0196】
【化77】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0197】
一実施形態は、下記の構造:
【0198】
【化78】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0199】
一実施形態は、下記の構造:
【0200】
【化79】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0201】
一実施形態は、下記の構造:
【0202】
【化80】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0203】
一実施形態は、下記の構造:
【0204】
【化81】
に従うイオン性脂質、または前記イオン性脂質を含むLNPを提供する。
【0205】
B.ステロール
一部の実施形態では、本開示の脂質ナノ粒子は、1種または複数種のステロールを含む。一実施形態では、このステロールは、コレステロール、またはそのバリアントもしくは誘導体である。一部の実施形態では、このコレステロールは修飾されており、例えば酸化されている。未修飾コレステロールは、酵素が作用して、側鎖または環が酸化されているバリアントを形成し得る。このコレステロールは、ベータ環構造上で酸化され得るか、または炭化水素テイル構造上で酸化され得る。本開示の脂質ナノ粒子での使用が考慮される例示的なコレステロールとして下記が挙げられるが、これらに限定されない:25-ヒドロキシコレステロール(25-OH)、20α-ヒドロキシコレステロール(20α-OH)、27-ヒドロキシコレステロール、6-ケト-5α-ヒドロキシコレステロール、7-ケトコレステロール、7β-ヒドロキシコレステロール、7α-ヒドロキシコレステロール、7β-25-ジヒドロキシコレステロール、ベータ-シトステロール、スチグマステロール、またはこれらの組合せ。一実施形態では、側鎖が酸化されているコレステロールは、他のコレステロールバリアントと比較してカーゴの送達を増強し得る。一実施形態では、このコレステロールは、未修飾コレステロールである。
【0206】
C.PEG-脂質
一部の実施形態では、本開示のナノ粒子組成物は、また1種もしくは複数種のPEGまたはPEG修飾脂質も含む。そのような種はまた、PEG化脂質またはPEG-脂質とも称され得る。PEG化脂質の含有を使用して、インビトロでの脂質ナノ粒子のコロイド安定性を増強し得、かつインビボでの循環時間を増強し得る。一部の実施形態では、PEG化は、PEG部分が血液循環中に徐々に放出されるという点で可逆的である。例示的なPEG-脂質として、長さがC6~C20である飽和アルキル鎖または不飽和アルキル鎖にコンジュゲートしたPEG挙げられるが、これらに限定されない。PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド(PEG-CER)、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール(PEG-DAG)、PEG修飾ジアルキルグリセロール、およびこれらの混合物。例えば、PEG脂質は、PEG-c-DOMG、PEG-DMG、PEG-DLPE、PEG-DMPE、PEG-DPPE、PEG-DSG、またはPEG-DSPE脂質であり得る。
【0207】
一実施形態では、PEG脂質は、DMPE-PEG2000またはDSPE-PEG2000である。
【0208】
D.リン脂質
ナノ粒子のリン脂質成分として、1種または複数種のリン脂質が挙げられ得、例えば、1種または複数種の(ポリ)不飽和脂質が挙げられ得る。このリン脂質は、1つまたは複数の脂質二重層を構築し得る。一部の実施形態では、このリン脂質は、リン脂質分と、1つまたは複数の脂肪酸部分とを含み得る。
【0209】
一部の実施形態では、リン脂質部分として下記が挙げられるが、これらに限定されない:ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、2-リゾホスファチジルコリン、およびスフィンゴミエリン。一部の実施形態では、脂肪酸部分として下記が挙げられるが、これらに限定されない:ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アルファ-リノレン酸、エルカ酸、フィタン酸、アラキン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸、ドコサペンタエン酸、およびドコサヘキサエン酸。分枝、酸化、環化、およびアルキレン等の修飾および置換が行なわれている天然種を含む非天然種も企図されている。例えば、リン脂質は、1つまたは複数のアルキレン(例えば、1つまたは複数の二重結合が三重結合に置き換えられているアルケニル基)で官能化され得るか、またはこのアルキレンと架橋され得る。適切な反応条件下では、アルキレン基は、アジドへの曝露時に銅触媒による環化付加を受け得る。そのような反応は、膜透過もしくは細胞認識を促進するためのナノ粒子組成物の脂質二重層の官能化において有用であり得るか、またはナノ粒子組成物の、ターゲティング部分もしくはイメージング部分(例えば色素)等の有用な成分へのコンジュゲートすることにおいて有用であり得る。
【0210】
例示的なリン脂質として下記が挙げられるが、これらに限定されない:1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DUPC)、l-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-0-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0 Diether PC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミスクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME 16.0 PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジステアロイル-ホスファチリジル-エタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルコリン(SOPC)、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)。好ましい実施形態では、リン脂質はDSPCである。
【0211】
E.カーゴ
一実施形態では、本開示の脂質ナノ粒子組成物は、対象に対する治療薬または予防薬を含む。一部の実施形態では、この治療薬または予防薬は、脂質ナノ粒子に封入されている。一実施形態では、この脂質ナノ粒子は、1種または複数種の核酸を含む。
【0212】
代表的な核酸として下記が挙げられるが、これらに限定されない:デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)RNA、DNA、一本鎖RNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、二本鎖DNA、三本鎖DNA、siRNA、shRNA、sgRNA、mRNA、miRNA、およびアンチセンスDNA。
【0213】
CRISPR(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート)ベースの遺伝子編集には、誘導型RNAまたはCRISPR関連エンドヌクレアーゼタンパク質(Cas)の2種の構成成分が必要である。誘導型RNAは、Casヌクレアーゼを特定の標的DNA配列に誘導する。次いで、Casは、この部位でDNA中に二本鎖切断を作る。一実施形態では、本開示の脂質ナノ粒子を使用して、CRISPRベースの遺伝子編集に必要な構成成分を運び得る。ある脂質ナノ粒子では、核酸カーゴは誘導型RNAである。そのような実施形態では、別の脂質ナノ粒子は、RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸カーゴを含み得る。これら2種の脂質ナノ粒子を一緒に投与し得る。例示的なRNA誘導型エンドヌクレアーゼとして、Cas9、CasX、CasY、Cas13、またはCpf1が挙げられるが、これらに限定されない。
【0214】
一実施形態では、カーゴはsiRNAである。低分子干渉RNA(siRNA)は、配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングを誘発し得る二本鎖DNAであり、これにより遺伝子発現が減少するかさらには阻害される。一例では、siRNAは、siRNAと標的RNAとの両方の間の配列同一性の領域内で、相同なRNA分子(例えばmRNA)の特異的分解を誘発する。例えば、国際公開第02/44321号パンフレットでは、3’突出末端と塩基対を形成した場合に標的mRANを配列特異的に分解し得るsiRNAが開示されており、このパンフレットは、このsiRNAを製造する方法に関して参照により本明細書に組み込まれる。配列特異的な遺伝子サイレンシングを、酵素ダイサーにより産生されるsiRNAを模倣する合成短二本鎖RNAを使用して、哺乳類細胞中で達成し得る(Elbashir, et al. (2001) Nature, 411:494 498) (Ui-Tei, et al. (2000) FEBS Lett 479:79-82。
【0215】
一実施形態では、脂質ナノ粒子は、1.0mg/kg未満の阻害性核酸を含む。このナノ粒子は、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、または0.5mg/kgの阻害性核酸を含み得る。別の実施形態では、脂質ナノ粒子は、0.5mg/kgの阻害性核酸を含む。これは、遺伝子サイレンシングを達成するために、ヒトでの送達に承認されていない用量である高用量の核酸(>1mg/kg)をナノ粒子が必要とする現在の技術に優る利点である。本開示の技術は、ターゲティングリガンドを含まない脂質ナノ粒子中で0.5mg/kgの阻害性核酸を使用して、遺伝子サイレンシングを達成し得る。
【0216】
一部の実施形態では、核酸(例えば、限定されないが、オリゴヌクレオチド)は、安定性、半減期、およびヌクレアーゼ感受性を増加させるために修飾されているかまたは1つもしくは複数の修飾されたヌクレオチドを含む。ヌクレアーゼ感受性を制限するために、天然ホスホジエステルオリゴデオキシリボヌクレオチド、天然ホスホジエステルオリゴリボヌクレオチド、リボヌクレオチドポリマー、およびデオキシリボヌクレオチドポリマーは、1つまたは複数の異なる修飾を含み得る。例示的な修飾として下記が挙げられるが、これらに限定されない:ホスホロチオエート(phosphorothioate)(PS)結合、2’’-Oメチル(2’OMe)、2’フルオロ塩基、逆dTおよびddT、オリゴヌクレオチドの3’末端のリン酸化、ロック核酸、およびホスホラミダイトC3スペーサーの含有。
【0217】
ホスホロチオエート(phosphorothioate)結合により、オリゴヌクレオチドのリン酸塩骨格中において、硫黄原子が非架橋酸素に置換される。約50%の確率で(結果として2種の立体異性体が形成され得るため)、PS修飾により、ヌクレオチド内結合がヌクレアーゼ分解に対してより耐性を示すようになる。一部の実施形態では、核酸は、エキソヌクレアーゼ分解を阻害するために、1つまたは複数のPS結合を含み、例えば、5’および3’オリゴヌクレオチド末端で少なくとも3つのPS結合を含む。一部の核酸は、同様にエンドヌクレアーゼによる攻撃を減少させるのに役立つオリゴヌクレオチド全体わたりPS結合を含む。
【0218】
RNAの天然に存在する転写後修飾である2’OMeは、tRNAおよび他の低分子RNAで見出される。一部の実施形態では、核酸またはオリゴヌクレオチドは、2’OMeを含むように直接合成される。この修飾により、RNA:RNA二本鎖のTmが増加するが、RNA:DNA安定性の変化はごくわずかである。これにより、一本鎖エンドヌクレアーゼによる攻撃が防止されるが、エキソヌクレアーゼによる消化は防止されない。一部の実施形態では、これらの核酸またはオリゴヌクレオチドはまた、末端もブロックされる。この修飾を含むDNAオリゴヌクレオチドは、典型的には、未修飾DNAと比べてDNアーゼに対する感受性が5~10倍低い。2’OMe修飾は、安定性および標的転写産物に対する結合親和性を増加させるための手段として、アンチセンスオリゴヌクレオチドで一般に使用される。
【0219】
2’-フルオロ塩基は、フッ素修飾リボースを有し、このリボースにより、結合親和性(Tm)が増加し、かつ天然RNAと比較してある程度の相対的ヌクレアーゼ耐性も付与される。一部の実施形態では、核酸またはオリゴヌクレオチドは、PS修飾結合と共に2’フルオロ塩基を含む。
【0220】
逆dTは、オリゴヌクレオチドの3’末端で組み込まれ得、3’エキソヌクレーゼによる分解およびDNAポリメラーゼによる伸長を阻害する3’-3’結合が生じる。加えて、オリゴヌクレオチドの5’末端に逆2’,3’ジデオキシ-dT塩基(5’逆ddT)が配置されると、疑似ライゲーションが防止され、いくつかの形態の酵素的分解に対して保護され得る。
【0221】
いくつかの実施形態は、ホスホラミダイトC3スペーサーを含む核酸またはオリゴヌクレオチドを提供する。ホスホラミダイトC3スペーサーを、オリゴの内部またはいずれかの末端で組み込んで、フルオロフォアまたは他のペンダント基の付着のための長い親水性スペーサーアームを導入し得る。このC3スペーサーを使用して、3’エキソヌクレアーゼによる分解も阻害し得る。
【0222】
一部の実施形態では、核酸またはオリゴヌクレオチドは、ロック核酸を含む。ロック核酸として、リボースの2’-O原子および4’-C原子がメチレン架橋を介して結合している修飾RNAヌクレオチドが挙げられる。この追加の架橋により、通常は環に関連する柔軟性が制限され、構造が強固な立体構造に本質的にロックされる。
【0223】
LNAは、RNAオリゴヌクレオチドおよびDNAオリゴヌクレオチドの両方に挿入され得る。
【0224】
本開示のナノ粒子により送達され得る他のタイプのカーゴとして、化学療法剤、細胞毒性剤、放射性イオン、低分子、タンパク質、ポリヌクレオチド、および核酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0225】
代表的な化学療法剤として下記が挙げられるが、これらに限定されない:アムサクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、クリサンタスパーゼ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロイコボリン、リポソームドキソルビシン、リポソームダウノルビシン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ペントスタチン、プロカルバジン、ラルチトレキセド、サトラプラチン、ストレプトゾシン、テガフール-ウラシル、テモゾロミド、テニポシド、チオテパ、チオグアニン、トポテカン、トレオスルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、またはこれらの組合せ。代表的なアポトーシス促進剤として下記が挙げられるが、これらに限定されない:フルダラビンタウロスポリン(fludarabinetaurosporine)、シクロヘキシミド、アクチノマイシンD、ラクトシルセラミド、15d-PGJ(2)、およびこれらの組合せ。
【0226】
F.例示的な脂質ナノ粒子配合物
一実施形態では、脂質ナノ粒子配合物は、約30mol%~約70mol%の立体構造的に拘束されているイオン性脂質、約5mol%~約25mol%のリン脂質、約25mol%~約45mol%のコレステロール、および約0mol%~約5mol%のPEG-脂質を含む。別の実施形態では、脂質ナノ粒子配合物は、約35mol%の立体構造的に拘束されているイオン性脂質、約16mol%のリン脂質、約46.5mol%のコレステロール、および約2.5mol%のPEG-脂質を含む。別の実施形態では、脂質ナノ粒子配合物は、約50mol%の立体構造的に拘束されているイオン性脂質、約10mol%のリン脂質、約38.5mol%のコレステロール、および約1.5mol%のPEG-脂質を含む。
【0227】
一実施形態は、約33mol%~約36mol%の、アダマンタンテイルを含む立体構造的に拘束されているイオン性脂質、約15mol%~約17mol%の1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、約2mol%~約3mol%のC14PEG2000、および約45mol%~約47mol%のコレステロールを、これら4種の成分の総モル数を基準として含む脂質ナノ粒子配合物を提供する。
【0228】
別の実施形態は、35mol%の、アダマンタンテイルを含む立体構造的に拘束されているイオン性脂質、16mol%の1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、および2.5mol%のC14PEG2000、46mol%のコレステロールを、これら4種の成分の総モル数を基準として含む脂質ナノ粒子配合物を提供する。
【0229】
別の実施形態は、(イオン性脂質、コレステロール、脂質-PEG、およびリン脂質):siRNAの質量比が約2:1~20:1である脂質ナノ粒子配合物を提供する。
【0230】
さらに別の実施形態では、脂質ナノ粒子配合物は、3-[(1-アダマンタニル)アセトキシ]-2-{[3-(ジエチルアミノ)プロポキシカルボニルオキシ]メチル}プロピル(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエノエート、DSPC、ポリエチレングリコール-脂質、コレステロール、および阻害性核酸を含む。
【0231】
一実施形態は、3-[(1-アダマンタニル)アセトキシ]-2-{[3-(ジエチルアミノ)プロポキシカルボニルオキシ]メチル}プロピル(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエノエート、DSPC、ポリエチレングリコール-脂質、コレステロール、および遺伝子に特異的なsgRNAを含む脂質ナノ粒子組成物を提供する。別の実施形態は、3-[(1-アダマンタニル)アセトキシ]-2-{[3-(ジエチルアミノ)プロポキシカルボニルオキシ]メチル}プロピル(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエノエート、DSPC、ポリエチレングリコール-脂質、コレステロール、およびRNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼをコードするmRNAを含む脂質ナノ粒子を提供する。
【0232】
G.医薬組成物
本開示の脂質ナノ粒子を含む医薬組成物が提供される。脂質ナノ粒子組成物の全部または一部を、医薬組成部として配合し得る。医薬組成物は、1種または複数種のナノ粒子組成物を含み得る。例えば、医薬組成物は、例えば様々なタイプの1種もしくは複数種の核酸を含むがこれらに限定されないかまたは様々な薬剤をコードする1種または複数種の異なる治療薬および/または予防薬を含む1種または複数種のナノ粒子組成物を含み得る。一部の実施形態では、医薬組成物は、1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤または副成分(例えば、限定されないが、薬学的に許容される担体)を含む。
【0233】
ナノ粒子を含む医薬組成物を、非経口(筋肉内注射、腹腔内注射、静脈内(IV)注射、もしくは皮下注射)、経皮(受動的、またはイオン泳動もしくはエレクトロポレーションを使用する)、または経粘膜(鼻、膣、直腸、舌下)投与経路による投与用に製剤化し得るか、または生体分解可能な挿入物を使用する投与用に製剤化し得、かつ各投与経路に適した剤形で製剤化し得る。
【0234】
一部のインビボアプローチでは、本明細書で開示されているナノ粒子組成物を、治療上有効な量で対象に投与する。本明細書で使用される場合、「有効な量」または「治療上有効な量」という用語は、処置される障害の1つもしくは複数の症状を処置するか、阻害するか、もしくは軽減するか、または他の方法で所望の薬理効果および/もしくは生理効果を提供するのに十分な投与量を意味する。正確な投与量は、対象に依存する可変要素(例えば、年齢、免疫系の健康等)、疾患、および成し遂げられる処置等の様々な要因に従って変化する。
【0235】
本開示のナノ粒子に関して、さらなる研究が行なわれるにつれて、様々な患者での様々な状態の処置に対する適切な投与量レベルに関する情報が得られ、当業者は、レシピエントの治療状況、年齢、および全体的な健康を考慮して、適切な投与量を特定し得るだろう。選択される投与量は、所望の治療効果、投与経路、および所望の処置期間に依存する。本開示のナノ粒子に関して、1日当たり体重1kg当たり0.001mg~5mgの核酸の一般的な投与量レベルを、哺乳類に投与する。より具体的には、本開示のナノ粒子の優先的な用量は、0.01mg/kg~0.25mg/kgである。本開示のナノ粒子に関して、0.2mg~100mgの4種の成分(イオン性脂質、コレステロール、PEG-脂質、およびリン脂質)/体重1kgの一般的な投与量レベルを、哺乳類に投与する。より具体的には、本開示のナノ粒子の優先的な用量は、0.05mg/kg~0.5mg/kgの4種の成分/体重1kgである。
【0236】
ある特定の実施形態では、脂質ナノ粒子組成物を、例えば処置する部位への直接注射により、局所投与する。典型的には、この注射により、脂質ナノ粒子組成物の局所的な濃度は、全身投与により達成され得る濃度と比べて高くなる。この脂質ナノ粒子組成物を、上記で説明されているマトリックスと組み合わせて、処置する部位からのポリペプチドの受動拡散を低減することにより、ポリペプチド組成物の局所的な濃度の上昇の一助となり得る。
【0237】
1.非経口投与用の製剤
一部の実施形態では、本明細書で開示されているナノ粒子組成物(例えば、脂質ナノ粒子を含むもの)を、非経口注射により水溶液で投与する。この製剤はまた、懸濁液または乳濁液の形態でもあり得る。一般的に、有効量の脂質ナノ粒子を含み、任意選択で、薬学的に許容される希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、および/または担体を含む医薬組成物が提供される。そのような組成物は、任意選択で、下記の内の1つまたは複数を含む:希釈剤、滅菌水、様々な緩衝液内容物(例えば、Tris-HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pH、およびイオン強度の緩衝生理食塩水;ならびに添加剤、例えば、洗浄剤および可溶化剤(例えば、TWEEN 20(ポリソルベート-20)、TWEEN 80(ポリソルベート-80))、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、二亜硫酸ナトリウム)、ならびに保存剤(例えば、Thimersol、ベンジルアルコール)、ならびに増量物質(例えば、ラクトース、マンニトール)。非水性の溶媒またはビヒクルの例は、下記である:プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えば、オリーブ油およびトウモロコシ油、ゼラチン、ならびに注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチル。この製剤を凍結乾燥させ、使用直前に再溶解/再懸濁させ得る。この製剤を、例えば、保菌フィルターに通すろ過により滅菌し得るか、組成物への滅菌剤の組込みにより滅菌し得るか、組成物に放射線を照射することにより滅菌し得るか、または組成物を加熱することにより滅菌し得る。
【0238】
2.ポリマーマトリックスの制御された送達
本明細書で開示されている脂質ナノ粒子をまた、制御放出製剤でも投与し得る。制御放出ポリマーデバイスを、ポリマーデバイス(ロッド、シリンダ、フィルム、ディスク)の移植または注射(微粒子)の後に全身に長期放出するために製造し得る。このマトリックスは、微粒子(例えばマイクロスフィア)の形態であって、薬剤が固体ポリマーマトリックスまたはマイクロカプセル内に分散しており、コアがポリマーシェルとは異なる材料であり、ペプチドがコア中に分散しているかまたは懸濁されており、このコアは本質的に液体であってもよいし固体であってもよい、形態であり得る。本明細書で具体的に定義されない限り、微粒子、マイクロスフィア、およびマイクロカプセルは、互換的に使用される。或いは、このポリマーを、ナノメートルから4センチメートルの範囲の薄いスラブまたはフィルム、粉砕または他の標準的な技術より製造される粉末、さらにはヒドロゲル等のゲルとしてキャストし得る。
【0239】
非生分解性マトリックスまたは生分解性マトリックスのいずれかを脂質ナノ粒子の送達に使用し得るが、一部の実施形態では、生分解性マトリックスが好ましい。これらは天然ポリマーであってもよいし合成ポリマーであってもよいが、分解および放出プロファイルのより良好な特性評価に起因して、一部の実施形態では合成ポリマーが好ましい。このポリマーは、放出が望ましい期間に基づいて選択される。場合によっては、線形放出が最も有用であり得るが、他では、パルス放出または「バルク放出」が、より効果的な結果をもたらし得る。このポリマーは、(典型的には、最大約90重量%の水の吸収において)ヒドロゲルの形態であり得、かつ任意選択で多価イオンまたはポリマーと架橋され得る。
【0240】
マトリックスを、溶媒蒸発、噴霧乾燥、溶媒抽出、および当業者に既知の他の方法により形成し得る。生分解性マイクロスフィアを、例えば、Mathiowitz and Langer, J. Controlled Release, 5:13-22 (1987);Mathiowitz, et al., Reactive Polymers, 6:275-283 (1987);およびMathiowitz, et al., J. Appl. Polymer Sci., 35:755-774 (1988)により説明されているように、薬物送達用のマイクロスフィアの製造用に開発された方法の内のいずれかを使用して調製し得る。
【0241】
デバイスを、移植または注射(典型的には、全身の処置用の投与量と比べてはるかに少ない投与量を送達する)の領域を処置するために局所放出用に製剤化し得るか、または全身送達用に製剤化し得る。このデバイスを、皮下に、筋肉、脂肪中に移植し得るかもしくは注射し得えるか、または嚥下し得る。
【0242】
III.脂質ナノ粒子を製造する方法
脂質ナノ粒子を製造する方法は、当該技術分野で既知である。一実施形態では、本開示の脂質ナノ粒子を、マイクロフルイディクスを使用して製造する。脂質ナノ粒子を形成するためにマイクロフルイディクス使用する例示的な方法に関して、Leung, A.K.K, et al., J Phys Chem, 116:18440-18450 (2012)、Chen, D., et al., J Am Chem Soc, 134:6947-6951 (2012)、およびBelliveau, N.M., et al., Molecular Therapy-Nucleic Acids, 1: e37 (2012)を参照されたい。簡潔に説明すると、オリゴヌクレオチドまたはsiRNA等のカーゴを、ある緩衝液中で調製する。他の脂質ナノ粒子成分(イオン性脂質、PEG-脂質、コレステロール、およびDSPC)を、別の緩衝液中で調製する。シリンジポンプにより、これら2種の溶液をマイクロ流体デバイスに導入する。これら2種の溶液がマイクロ流体デバイス内で接触して、カーゴが封入されている脂質ナノ粒子が形成される。
【0243】
本開示の脂質ナノ粒子をスクリーニングする方法は、全体が参照により組み込まれている国際特許出願第PCT/US/2018/058171号で論じられている。このスクリーニング方法によりビヒクル送達製剤が特性評価されて、所望の指向性を有し且つ機能性カーゴを特定の細胞の細胞質に送達する製剤が同定される。このスクリーニング方法では、細胞に送達された場合に検出され得る機能性を有するレポーターを使用する。細胞中のレポーターの機能を検出することにより、送達ビヒクルの製剤が細胞に機能性カーゴを送達することが示される。化学組成の識別子は、異なる各送達ビヒクル製剤に特異的な化学組成を追跡し続けるために、異なる各送達ビヒクル製剤に含まれる。一実施形態では、化学組成の識別子は、核酸バーコードである。核酸バーコードの配列は、これを含む送達ビヒクルを製剤化するために使用される化学成分と対を形成しており、核酸バーコードが配列決定された場合には、このバーコードを送達した送達ビヒクルの化学組成が同定される。代表的なレポーターとして下記が挙げられるが、これらに限定されない:siRNA、mRNA、ヌクレアーゼタンパク質、ヌクレアーゼmRNA、低分子、エピジェネティックモディファイア、および表現型モディファイア。
【0244】
IV.使用方法
本明細書では、特定の細胞または臓器にカーゴ(例えば核酸)を送達するために本開示の脂質ナノ粒子を使用する方法が開示されている。一部の実施形態では、このナノ粒子は、ターゲティングリガンドの非存在下で、それを必要とする対象の特定の細胞または臓器に治療薬または予防薬を送達する。別の実施形態では、本開示の脂質ナノ粒子は、それを必要とする対象の疾患を処置するかまたは予防するのに有用である。
【0245】
一部の実施形態では、本開示のナノ粒子を対象に直接送達する。他の実施形態では、脂質ナノ粒子をエクスビボで細胞と接触させ、この処置された細胞を対象に投与する。この細胞は自家細胞であり得、例えば免疫細胞(例えば、限定されないが、T細胞、またはT細胞へと分化する細胞)であり得る。一部の実施形態では、本開示の脂質ナノ粒子を、養子細胞移植のためのビヒクルとして使用し得る。
【0246】
A.細胞にカーゴを送達する方法
本明細書では、それを必要とする対象に治療用および/または予防用の核酸を送達する方法が提供される。
【0247】
一部の実施形態では、本開示の脂質ナノ粒子組成物は、特定のタイプまたはクラスの細胞(例えば、特定の臓器またはその系の細胞)を標的とする。例えば、目的の治療薬および/または予防薬を含むナノ粒子組成物を、対象の免疫細胞に特異的に送達し得る。例示的な免疫細胞としてCD8+細胞、CD4+細胞、またはCD8+CD4+細胞が挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態では、脂質ナノ粒子を、哺乳類の肝臓免疫細胞、脾臓T細胞、または肺内皮細胞に、ターゲティングリガンドの非存在下で送達されるように製剤化し得る。特定のクラスまたはタイプの細胞への特異的な送達は、脂質ナノ粒子のより高い割合が標的のタイプまたはクラスの細胞に送達されることを示す。一部の実施形態では、特異的な送達により、標的となる目的地の組織1g当たりの治療薬および/または予防薬の量が、2倍、5倍、10倍、15倍、または20倍超に増加し得る。
【0248】
B.遺伝子調節方法
本明細書では、遺伝子調節のために本開示の脂質ナノ粒子を使用する方法が提供される。一実施形態では、この脂質ナノ粒子を使用して、それを必要とする対象の標的細胞中での遺伝子発現を減少させ得る。そのような実施形態では、対象に、脂質ナノ粒子組成物であって、3-[(1-アダマンタニル)アセトキシ]-2-{[3-(ジエチルアミノ)プロポキシカルボニルオキシ]メチル}プロピル(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエノエート、DSPC、ポリエチレングリコール-脂質、コレステロール、および阻害性核酸からなる脂質ナノ粒子組成物を投与する。脂質ナノ粒子は、ターゲティングリガンドを使用することなく対象の標的細胞に阻害性核酸を送達し得る。この阻害性核酸は、siRNAであり得る。
【0249】
別の実施形態は、それを必要とする対象の細胞中で遺伝子を編集するために本開示の脂質ナノ粒子を使用する方法を提供する。そのような実施形態では、対象に、脂質ナノ粒子の2種の集団を投与する。第1の集団は、アダマンタニル)アセトキシ]-2-{[3-(ジエチルアミノ)プロポキシカルボニルオキシ]メチル}プロピル(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエノエート、DSPC、ポリエチレングリコール-脂質、コレステロール、および標的とされる遺伝子に特異的なsgRNAを含む配合を有する脂質ナノ粒子を含む。脂質ナノ粒子の第2の集団は、アダマンタニル)アセトキシ]-2-{[3-(ジエチルアミノ)プロポキシカルボニルオキシ]メチル}プロピル(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエノエート、DSPC、ポリエチレングリコール-脂質、コレステロール、およびRNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼをコードするmRNAを含む配合を有する脂質ナノ粒子を含む。このRNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼは、Cas9、CasX、CasY、Cas13、またはCpf1であり得る。
【0250】
一実施形態では、遺伝子調節の標的とされる細胞は、免疫細胞である。この免疫細胞はT細胞であり得、例えば、CD8+ T細胞、CD4+ T細胞、またはT調節性細胞であり得る。遺伝子編集のための他の例示的な免疫細胞として、マクロファージ、樹状細胞、または肝臓免疫細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0251】
標的とされ得る例示的な遺伝子として下記が挙げられるが、これらに限定されない:T細胞受容体、B細胞受容体、CTLA4、PD1、FOXO1、FOXO3、AKTs、CCR5、CXCR4、LAG3、TIM3、キラー免疫グロブリン様受容体、GITR、BTLA、LFA-4、T4、LFA-1、Bp35、CD27L受容体、TNFRSF8、TNFRSF5、CD47、CD52、ICAM-1、LFA-3、L-セレクチン、Ki-24、MB1、B7、B70、M-CSFR、TNFR-II、IL-7R、OX-40、CD137、CD137L、CD30L、CD40L、FasL、TRAIL、CD257、LIGHT、TRAIL-R1、TRAILR2、TRAIL-R4、TWEAK-R、TNFR、BCMA、B7DC、BTLA、B7-H1、B7-H2、B7-H3、ICOS、VEGFR2、NKG2D、JAG1、GITR、CD4、CCR5、GATA-3、MTORC1、MTORC2、RAPTOR、GATOR、FOXP3、NFAT、IL2R、およびIL7。
【0252】
T細胞により認識され得かつ標的とされることが企図されている例示的な腫瘍関連抗原として下記が挙げられるが、これらに限定されない:MAGE1、MAGE3、MAGE6、BAGE、GAGE、NYESO-1、MART1/Melan A、MC1R、GP100、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、PSA、CEA、Cyp-B、Her2/Neu、hTERT、MUC1、PRAME、WT1、RAS、CDK-4、MUM-1、KRAS、MSLN、およびβ-カテニン。
【0253】
C.処置される対象
一部の実施形態では、処置される対象は、哺乳類であって、がん、自己免疫疾患、感染症、臓器移植、臓器不全、またはこれらの組合せを経験している哺乳類である。一部の実施形態では、本明細書で説明されている方法は、がんまたは自己免疫疾患の処置のためにT細胞に特定の抗原を提示させ得る。一部の実施形態では、本明細書で説明されている方法を、T細胞プライミングに使用し得る。一部の実施形態では、本明細書で説明されている方法を使用して、T細胞にMHCペプチド複合体を提示させるDNAまたはmRNAを送達し得る。一部の実施形態では、本明細書で説明されている方法を使用して、DNA、siRNA、またはmRNAの内の1つまたは複数をT細胞に送達してアネルギーを回避し得る。
【実施例】
【0254】
[実施例1.拘束されている脂質の調製]
【0255】
【0256】
無水CH2Cl2(40mL)中のリノール酸1(4.0g、14.2mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.4g、2.9mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(3.7mL、20.5mmol)、および2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール(1.5g、14.2mmol)の溶液に、窒素雰囲気下において25℃で、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミドヒドロクロリド(EDCI)(4.1g、20.5mmol)を添加した。この反応混合物を一晩室温で撹拌し、TLCによりモニタリングしたようにリノール酸1が完全に消費された。次いで、この反応混合物を、減圧下で直接濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(勾配溶離液:1~30%のEtOAc/ヘキサン)による粗残留物の精製により、無色油状物として化合物2(2.3g、44%収率)および化合物3(1.7g、30%収率)を得た。
【0257】
無水CH2Cl2(2mL)中の化合物2(150mg、0.41mmol)、DMAP(10mg、0.1mmol)、DIPEA(0.1mL、0.6mmol)、およびアダマンタン(79mg、0.41mmol)の溶液に、窒素雰囲気下で、EDCI(114mg、0.6mmol)を添加した。この反応混合物を一晩室温で撹拌し、TLCによりモニタリングしたように化合物2が完全に消費された。次いで、この反応混合物を、減圧下で直接濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(勾配溶離液:0~20%のEtOAc/ヘキサン)による粗残留物の精製により、無色油状物として化合物4(103mg、53%収率)を得た。
【0258】
無水CH2Cl2(2mL)中の化合物4(76mg、0.16mmol)およびDMAP(45mg、0.37mmol)の溶液に、窒素雰囲気下で、4-ニトロフェニルクロロホルメート(4-nitrophenylchloroformate)(65mg、0.32mmol)を添加した。1時間にわたる室温での撹拌後、この反応混合物に3-ジエチルアミノ-1-プロパノール(0.44mL、0.96mmol)を添加し、次いで1時間にわたり室温で撹拌した。この反応混合物を、減圧下で直接濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(勾配溶離液:0~4%のMeOH/DCM)による粗残留物の精製により、無色油状物として化合物1-1(32mg、29%収率)を得た。HRMS(ESI,m/z)C42H72NO7の計算値[M+H]+:702.5303、実測値702.5277。
【0259】
他の脂質を、この実施例で説明されている工程と類似の方法により調製した。
【0260】
[実施例2.立体構造的に拘束されている脂質を含む脂質ナノ粒子は、安定したLNPを形成し得る]
材料および方法:
ナノ粒子配合物.ナノ粒子を、既に説明されているマイクロ流体デバイスを使用して配合した。簡潔に説明すると、核酸(siRNAおよびDNAバーコード)を、クエン酸緩衝液で希釈し、脂質-アミン化合物、アルキルテイルPEG、コレステロール、およびDSPCを、エタノールで希釈した。PEG、コレステロール、およびDSPCを、Avanti Lipidsから購入した。クエン酸相およびエタノール相を、シリンジポンプによりマイクロ流体デバイス中で合わせた。
【0261】
ナノ粒子の特性評価.プレートリーダー形式の動的光散乱装置(Wyatt)を使用して、LNPの流体力学的直径を測定した。LNPを、滅菌1×PBSで約0.06μg/mLの濃度まで希釈して分析した。LNPは、直径20~200nmの単分散集団を形成しているもののみを含めた。この基準を満たす粒子を、1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS、Invitrogen)で透析し、0.22μmフィルターで滅菌ろ過した。
【0262】
結果:
アミンを含む13種の化学的に多様な脂質を合成した。このライブラリを、(i)アミンと(ii)脂質テイルの構造が送達に影響を及ぼすかどうかを調べるために構築した。不飽和脂質であるリノール酸と2つのエステル結合とを含む「骨格」脂質を精製した(
図1A)。この骨格は、いかなるアミンも有しなかった。反応部位にアミンバリアントを付着させて、化学的多様性を作り出した(
図1A)。反応部位1では、構造が多様な3個の脂質テイル(
図1B)が、エステル化により付加されていた。コントロールテイルLは、2つの同一の脂質テイルを有する構築物を作製するリノール酸であった。脂質Sは2つの脂質テイルを含んでおり、テイルの総数は3となった。最後に、テイルAは、「アームチェア」構造と定義された拘束されている脂質であるアダマンタンを含んだ。反応部位2では、11個のアミン含有ヘッド基がエステル化により付加されており、それぞれエステル結合またはカーボネート結合により連結されたヘッド基を生じた。ヘッド基を、構造が類似している低分子が生物学的活性を有するという過去の報告に基づいて選択した。合成後、13種全ての脂質の化学構造を、高分解能質量分析または1H-NMRを使用して確認した。明確にするために、各イオン性脂質を、ヘッド基の番号-テイル文字という命名法で命名した(例えば、1-L、11-A)。
【0263】
13種のイオン性脂質の安定したLNPを形成する能力(
図1A~C)を調べた。化学的に修飾されたsiRNAターゲティングGFP(siGFP)(Paunovska, et al., ACS Nano, 12:8341-8349 (2018))およびDNAバーコード(Sago et al., Nano Lett, (2018))を担持するLNPの流体力学的直径を測定した。LNPを、マイクロ流体を使用して配合した(Chen, D., et al., J Am Chem Soc, 134:6948-6951 (2012))。既に検証されている化合物を添加して、LNPに添加される他の成分の影響を結果が受ける可能性を低下させた。既に検証されている化合物は、C14PEG2000、非修飾コレステロール、および1-2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)または1-2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)のいずれか(
図1D)であった。4種の成分のモル比による影響を結果が受けてないことを確認するためのコントロールとして、各脂質を、合計104種のLNPに関して2種のリン脂質と4種のモル比とで配合した(
図1D)。特に、LNPの内の100種は、流体力学的直径および多分散性指数の両方により証明されるように、小さい単分散集団を形成した。個々のLNPの直径は30~170nmで変動し、平均は76nmであり(
図1E)、平均PDIは0.15であった(
図1F)。流体力学的直径を、イオン性脂質(
図1G)、4種の成分のモル比(
図1H)、および配合物に添加されるリン脂質のタイプ(DSPC/DOPE)(
図1I)の関数として分析した。いずれの場合でも、平均直径は50~100nmで変動した。これらのデータから、非伝統的な脂質が、流体力学的直径がリポタンパク質および天然ウイルスと類似しているLNPを形成したことが示される。
【0264】
[実施例3.インビボでの活性レベルに関するハイスループットsiRNAスクリーニングにより、拘束されている脂質を有するLNPはT細胞中において生物活性を有することが明らかとなる]
材料および方法:
DNAバーコード付与.化学的に異なる各LNPを、それぞれ固有のDNAバーコードおよびsiRNAを担持するように配合した。例えば、LNP1はDNAバーコード1およびsiICAM2を担持し、化学的に異なるLNP2はDNAバーコード2およびsiGFPを担持した。一本鎖DNA配列を、Integrated DNA Technologies(IDT)から購入した。各配列を確実に均等に増幅するために、本発明者らは、ユニバーサルフォワードプライマー領域およびユニバーサルリバースプライマー領域を含めた。各バーコードを、固有の8ヌクレオチド配列を使用して区別した。8ヌクレオチド配列は、65,536種の異なるバーコードを生成し得る。Illumina MiniSeq配列決定装置による配列「ブリーチング(bleaching)」を防止するように設計された156種の異なる配列を使用した。
【0265】
動物実験.全ての動物実験を、Georgia Institute of Technology’s IACUCに従って実施した。C57BL/6J(#000664)、GFP(#003291)、および構成的SpCas9(#026179)マウスを、The Jackson Laboratoryから購入し、5~12週齢で使用した。全ての実験において、N=3~5のマウス/群を使用した。マウスに、側部尾静脈から静脈内注射した。ナノ粒子濃度を、NanoDrop(Thermo Scientific)を使用して決定した。
【0266】
細胞の単離&染色.別途注記しない限り、細胞を、LNPの注射後72時間で単離したか(スクリーニング用)、または120時間で単離した(インビボでの遺伝子編集用)。マウスに、右心房から20mLの1×PBSを灌流した。既に説明されているように(Dahlman, et al., Nat Nano, 9:648-655 (2014); Paunovska, K., et al., Nano Lett, 18:2148-2157 (2018))、組織を切断し、45分にわたり37℃で、I型コラーゲン(Sigma Aldrich)、コラーゲンXI(Sigma Aldrich)、およびヒアルロニダーゼ(Sigma Aldrich)を含む消化酵素溶液に入れた。心臓の消化酵素は、コラーゲンIXを含んだ。細胞懸濁液を70μmメッシュに通してろ過し、赤血球を溶解させた。細胞を染色して集団を同定し、インビボ実験に関してGeorgia Institute of Technology Cellular Analysis CoreのBD FacsFusionを使用して選別した。下記の抗体クローンを使用した:抗CD31(390,BioLegend)、抗CD45.2(104,BioLegend)、抗CD19(6D5,Biolegend)、抗CD3(17A2,Biolegend)、抗CD8a(53-6.7,Biolegend)、および抗CD4(GK1.5,Biolegend)。
【0267】
Illumina配列決定用のPCR増幅.全てのサンプルを、入れ子PCRを使用して、配列決定のために増幅させて調製した。Kapa HiFi 2Xマスターミックス 5μLにプライマー 2μLを添加し、テンプレートDNA/水 3μLを添加した。2回目のPCRでは、Nextera XTケミストリー、インデックス、およびi5/i7アダプター領域を添加した。二重指標サンプルを2%アガロースゲル上で泳動させて、PCR反応が起きたことを確認した後に、プールし、ゲル精製した。
【0268】
ディープ配列決定.Illumina配列決定を、Georgia Institute of Technology’s Molecular Evolution coreで実行した。llumina Miniseqでランを実施した。プライマーを、Nextera XTアダプター配列に基づいて設計した。
【0269】
バーコード配列決定正規化.各粒子の数を、細胞タイプ毎に、細胞にアプライされたかまたはマウスに注射されたバーコード付LNP混合物に対して正規化した。
【0270】
TNSアッセイ.7C1およびBM1のpKaを、既に説明されているように測定した(Dahlman, J.E., et al., Nat Nano, 9:648-655 (2014))。簡潔に説明すると、10mM HEPES(Sigma)、10mM MES(Sigma)、10mM 酢酸ナトリウム(Sigma)、および140nM 塩化ナトリウム(Sigma)のストック溶液を調製し、塩化水素および水酸化ナトリウムによりpH4~10の範囲にpHを調整した。各pHで各ナノ粒子に関して4回の反復を使用して、pH調整済緩衝液 140μLを96ウェルプレートに添加し、続いて、2-(p-トルイジノ)-6-ナフタレンスルホン酸(60μg/mL) 5μLを添加した。各ウェルに、各ナノ粒子 5uLを添加した。緩やかに振盪しながらの5分間のインキュベーション後、励起波長325nmおよび発光波長435nmを使用して蛍光吸光度を測定した。
【0271】
RNA干渉.siRNAは、2’位で化学的に修飾されて、安定性が増加しており、かつ免疫活性化が無効されていた。注射後72時間で組織を単離し、タンパク質発現をフローサイトメトリーにより決定した。PBS処置マウスでのGFP平均蛍光強度を、100パーセントに対して正規化した。
【0272】
インビボでのCas9編集.SpCas9を構成的に発現しているマウスに、2mg/kgのsgGFPを担持するcLNPを注射した。注射後5日で、細胞をFACSにより単離した。インデルを、TIDESにより測定した。
【0273】
結果:
インビボでの標的細胞(この場合はTリンパ球)および8種のオフターゲット細胞へのsiRNAのLNP送達を評価した。免疫刺激を減少させるようにおよび優先的なアンチセンスRISCローディングによるオンターゲットサイレンシングを増強するように化学的に修飾されているsiGFP(
図2A)を使用した。1つの群当たり1つのNLPを研究し、かつ5匹のマウス/群を使用すると、このスクリーニングには、500匹超のマウスと、相当な時間/フローサイトメトリー資源とが必要となる。したがって、どのように100種超のLNPが単一のマウスでの標的細胞の任意の組合せにおいてsiGFPを機能的に送達するかを評価するために、DNAバーコードベースのスクリーニングを開発した(
図2A)。化学構造1を有するLNP-1を、siGFPおよびDNAバーコード1を担持するように配合した。化学構造Nを有するLNP-Nを、siGFPおよびDNAバーコードNを担持するように別途配合した。実験コントロールとして裸のバーコードも含め(Paunovska, K., et al., Nano Lett, 18:2148-2157 (2018))、なぜならば、DNAは細胞二重層を容易に横断しないからである。これらのLNPを一緒にプールし、CAGプロモーター下でGFPを構成的に発現するマウスに静脈内注射した(
図2B)。GFPは、機能的送達リードアウトとして機能した。細胞質中にsiGFPを機能的に送達するLNPはGFPタンパク質発現がより低いだろうと仮定した。そのため、マウスへの注射後3日で、蛍光活性化セルソーティング(FACS)を使用してGFP
Low細胞を単離し、ディープ配列決定を行なって、全てのN LNPが細胞中にバーコードを送達する効率を定量した。正規化送達(即ち、サンプル内のバーコードカウントの総数で正規化された、各個々のバーコードに関するバーコードの数)を使用した。正規化送達は、バーコード付LNPデータセットを解析するのに使用っすることができ、RNAseq実験における百万当たりの数と類似する(Lokugamage, M.P., et al., Current Opinion in Biomedical Engineering, 7:1-8 (2018))。GFPは全ての細胞タイプで発現されることから、このアッセイは、全て単一動物において、(i)オン/オフターゲット細胞の任意の組合せにおけるGFPノックダウンを比較し得、かつ(ii)GFPLow細胞中で共局在化したLNPを迅速に同定し得る。
【0274】
マウスへの1.5mg/kgの総用量(100種の異なるLNP、平均して0.015mg/kg/粒子)の注射後3日で、9種の細胞タイプにおいてGFPサイレンシングを定量した。PBS処置マウスと比較して、GFP
Low脾臓B細胞および脾臓T細胞の数が増加した(
図2C)。平均蛍光強度により定量した平均GFPタンパク質サイレンシングは、脾臓T細胞で最も高く、肝臓免疫細胞、脾臓B細胞、および肺内皮細胞が続いた(
図2D)。驚くべきことに、ほとんどのLNPにより優先的に標的とされる細胞タイプである肝細胞では、サイレンシングの証拠は見出されなかった(
図2C、D)。このデータセットの品質を確認するために、GFP
Low肺脾臓T細胞を配列決定し、さらなる確認として、肺内皮細胞、脾臓B細胞、および肝臓免疫細胞も配列決定した。4種全ての細胞タイプにおいて、両方の陰性コントロール(裸のバーコード)の正規化送達は、予想したように、LNPにより送達されたバーコードと比べて低かった(
図2E)。
【0275】
次いで、DNA配列決定データを使用する大規模なインビボ構造機能解析を実施して、どのナノ粒子の材料特性が脾臓T細胞への送達を促進するかどうかを評価した。様々なナノ粒子特性の富化を算出した。富化とは、特定の特性を有するナノ粒子が、(i)性能が上位10%の粒子で偶然現れる可能性のことであり、これとは別に、(ii)性能が下位10%である粒子を算出した。DSPCが配合されたナノ粒子は、有効な粒子において冨化されていたが、DOPEが配合されたナノ粒子は、性能が低い粒子において冨化されていた(
図2F)。これらの結果を確認するために、DSPCおよびDOPEそれぞれが配合された全てのLNPに関する正規化送達を比較した。DSPC含有LNPは、DOPE含有LNPよりも性能が優れていた(
図2G)。最後に、「対応のある」LNP(即ち、同一のモル比およびイオン性脂質を有する(ただし、リン脂質が異なる)LNP)の正規化送達を算出した。これら対応のあるDOPE含有LNPよりも性能が優位に優れていた特定のDSPC LNPを同定した(
図2H)。これらのデータに基づいて、LNPに含まれるリン脂質が脾臓T細胞送達に影響を及ぼすと結論付けた。リン脂質の影響を観察したことから、今後の化学分析をDSPC含有配合物に限定した。
【0276】
同一の富化分析を、脂質テイルおよびヘッド基の両方に関して13種のイオン性脂質で実施した。3種のイオン性脂質が富化された(
図2I)。イオン性脂質のヘッド基が富化に影響を及ぼしたかどうかを明らかにするために、ヘッド基の分子量、疎水性(LogP)、および極性表面積に対して各ヘッド基の富化をプロットした(
図4A~4C、表1)。これらの化学的形質と富化との間に相関を観察しなかった。最も富化された脂質11-Aは、立体構造的に拘束されているアダマンタンテイルを含んでいた。11-Aの富化を、同一のヘッド基(11)を有するが異なる第2の脂質テイルを有する2種の脂質である11-Lおよび11-Sと比較した。富化の差違が第2の脂質テイルの構造変換に起因したかどうかを決定するために、各脂質の正規化DNA送達を分析した。11-Aは、11-Lおよび11-Sと比べて有意に多く送達した(
図2J)。モル比が同一である化合物を使用して、対応のある解析を実施した。アダマンタン含有テイルは、他のテイル構造よりも性能が優れていた(
図4D)。LNPサイズに対して正規化T細胞送達をプロットし、関係が見出されなかった(
図4E)。まとめると、これらのデータから、流体力学的直径が30~170nmである単分散LNPの場合には、LNPの化学構造がサイズよりも送達に影響を及ぼすことが示唆される。
【0277】
【0278】
[実施例4.cLNPは、CD8+ T細胞中での遺伝子発現を変化させる低分子RNAを送達する]
材料および方法:
上記セクションの材料および方法を参照されたい。
【0279】
結果:
全てのハイスループットスクリーニングシステムと同様に、siGFP/DNAバーコードアッセイの価値は、その予測を行なう能力と関連している。配列決定データに基づいて、さらなる調査のためにナノ粒子を選択した(
図3A~3B)。富化分析に基づいて、このcLNPは、拘束されている脂質およびDSPCを含んでいた。数回の実験にわたり、LNPに、ルシフェラーゼ(siLuc)またはsiGFPを標的とするコントロ-ルsiRNAを配合し、0.5mg/kg~2.0mg/kgの用量でマウスに静脈内注射した(
図3C、D)。PBSまたはsiLucで処置したマウスから単離したT細胞と比較して、siGFPで処置したマウスから単離したT細胞は、GFP発現が減少していた。特に、0.5mg/kgまで低い用量では、頑強なタンパク質サイレンシングを観察した(
図3C、D)。T細胞のサブセット(特にCD4+およびCD8+)でGFPタンパク質発現を測定し、CD8+ T細胞ではより強力なタンパク質サイレンシングを観察した(
図3E)。加えて、肝臓および脾臓中の6種のオフターゲット細胞タイプにおいてGFPサイレンシングを定量した。0.5mg/kgおよび1.5mg/kgの用量では有意なサイレンシングが観察されず(
図4A~F)、このことは、これらのcLNPによる脾臓CD8+ T細胞中での優先的な遺伝子サイレンシングを示唆する。
【0280】
遺伝子編集ペイロードを有する新規のcLNPの有効性を確認するために、GFPを標的とするsgRNAを担持するリードcLNPを、2.0mg/kgの用量で、Cas9およびGFPを構成的に発現するマウス(Platt, R.J., et al., Cell, 159:440-445 (2014))に注射した。5日後、CD3+ T細胞、ならびにCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞において、GFP発現を測定した。siRNAで観察されたCD8+指向性と同様に、CD4+ T細胞と比べて、CD8+において強力なタンパク質サイレンシングを観察した(
図3F)。加えて、このGFP発現の減少は、GFP
Low CD8+ T細胞の%の増加と関連した(
図3G)。まとめると、これらのデータから、ターゲティングリガンドを有しないcLNPは1mg/kg未満の用量で脾臓T細胞にsiRNAを送達し得るという結論が導き出された。cLNPは、投与後24時間で体重減少が観察されないことで示されるように、全ての実験においてsiRNAおよびsgRNAの用量で良好な耐容性を示した。
【0281】
非肝細胞を標的とするナノ粒子は、設計することが難しいことで有名であり(Lorenzer, C., et al., J Control Release, 203:1-15 (2015))、この理由は主に、インビボでナノ粒子siRNA送達を研究するためのハイスループット方法が存在しないことである。ナノ医療でのこの普遍的な問題は全てのRNA療法の開発を遅延させており、なぜならば、細胞培養が、インビボでの送達に影響を及ぼす全ての要因(異種血管系(Augustin, H.G., et al., Science, 357 (2017)、複雑な微小環境(MacParland, S.A., et al., ACS Nano, 11:2428-2443 (2017)、オフターゲット細胞(Tavares, A.J., et al., PNAS, 114:E10871-e10880 (2017)、差次的な血流量(Tsoi, K.M. et al., Nat Mater, 15:1212-1221 (2016))を再現しないにもかかわらず、科学者は、インビトロでのハイスループットナノ粒子アッセイを実施しなければならないからである。特に、スクリーニングの結果から、優先的なT細胞送達が起こるとことが予想され、これらのデータは、ライブラリから選択されたLNPにより確認された。これらのデータは、ハイスループットインビボsiRNAスクリーニングにより新規の指向性を有するナノ粒子を迅速に同定し得るという説得力のある証拠を提供する。
【0282】
上記の明細書では、本発明がそのある特定の実施形態に関連して説明されおり、多くの詳細が説明のために示されているが、本発明がさらなる実施形態の影響を受けやすいこと、および本明細書で説明されているある特定の詳細は、本発明の基本原理から逸脱することなく大幅に変更され得ることは、当業者に明らかであるだろう。
【0283】
本明細書で引用されている全ての参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。本明細書で説明されている主題は、その趣旨または本質的な属性から逸脱することなく他の特定の形態で具体化され得、したがって、本明細書で説明されている主題の範囲を示すものとして、上述の明細書ではなく添付の特許請求の範囲を参照すべきである。
【配列表】
【国際調査報告】