(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-03
(54)【発明の名称】医薬開発
(51)【国際特許分類】
A61K 9/19 20060101AFI20220926BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20220926BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220926BHJP
A61K 31/7072 20060101ALI20220926BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
A61K9/19
A61K38/12
A61P31/04
A61K31/7072
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506140
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(85)【翻訳文提出日】2022-03-25
(86)【国際出願番号】 GB2020051810
(87)【国際公開番号】W WO2021019234
(87)【国際公開日】2021-02-04
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512252250
【氏名又は名称】ヘルパービー セラピューティクス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Helperby Therapeutics Limited
【住所又は居所原語表記】66 Lincoln’s Inn Fields,London WC2A 3LH United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110002206
【氏名又は名称】弁理士法人せとうち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コーツ,アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】フー,ヤンミン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076BB11
4C076CC32
4C076FF63
4C076GG06
4C084AA01
4C084AA02
4C084DA43
4C084MA02
4C084MA44
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA03
4C084NA05
4C084ZB35
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA17
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4C086NA03
4C086NA05
4C086ZB35
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、貯蔵安定性凍結乾燥物の形態の医薬品、又は非経口投与のための無菌溶液の形態の医薬製剤に関するものである。凍結乾燥物及び溶液のいずれも、ポリミキシンE、ポリミキシンB又はそれらの薬学的に許容される誘導体から選択されるポリミキシン、及びジドブジン又はその薬学的に許容される誘導体から本質的になる。溶液はさらに、水性担体を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵安定性凍結乾燥物の形態の医薬品であって、前記凍結乾燥物が、ポリミキシンE、ポリミキシンB又はそれらの薬学的に許容される誘導体から選択されるポリミキシン、ジドブジン又はその薬学的に許容される誘導体、及び任意に1以上の緩衝剤から本質的になる、医薬品。
【請求項2】
前記凍結乾燥物がポリミキシン及びジドブジンからなる、請求項1に記載の医薬品。
【請求項3】
非経口投与用の無菌溶液の形態の医薬製剤であって、前記溶液が、治療上有効量のポリミキシンE、ポリミキシンB又はそれらの薬学的に許容される誘導体から選択されるポリミキシン、治療上有効量のジドブジン又はその薬学的に許容される誘導体、水性担体、及び任意に1以上の緩衝剤から本質的になる、医薬製剤。
【請求項4】
前記ポリミキシンが、ポリミキシンE又はその薬学的に許容される誘導体であり、好ましくは、前記ポリミキシンE又はその薬学的に許容される誘導体が、コリスチン硫酸塩、コリスチンメタンスルホネート又はコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項1若しくは請求項2に記載の医薬品、又は請求項3に記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記ポリミキシン又はその薬学的に許容される誘導体の治療上有効量が、約0.5M.I.U.~約14M.I.U.、好ましくは約1M.I.U.~約M12.I.U.、より好ましくは約2M.I.U.~9M.I.U.である、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬品又は医薬製剤。
【請求項6】
ジドブジンの治療上有効量が、約50mg~約1500mg、好ましくは約100mg~約1000mg、より好ましくは約150mg~約800mgである、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬品又は医薬製剤。
【請求項7】
ポリミキシンが、重量基準で、ジドブジンの量よりも多い量で存在する、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬品又は医薬製剤。
【請求項8】
ポリミキシンとジドブジンの重量比が約8:1~約11:10、好ましくは約2:1である、請求項7に記載の医薬品又は医薬製剤。
【請求項9】
グラム陰性菌感染症の治療に使用するための、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬品又は医薬製剤。
【請求項10】
前記グラム陰性菌感染症が、腸内細菌科、エンテロバクター属、シュードモナス属又はアシネトバクター属、好ましくは腸内細菌科又はエンテロバクター属によって引き起こされる、請求項9に記載の使用のための医薬品又は医薬製剤。
【請求項11】
前記感染症が細菌の(多)薬剤耐性株によって引き起こされる、請求項9又は請求項10に記載の使用のための医薬品又は医薬製剤。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬品又は医薬製剤を、処置を必要とする対象に投与することを含む、グラム陰性菌感染症の治療方法。
【請求項13】
前記細菌感染症が、腸内細菌科、エンテロバクター属、シュードモナス属又はアシネトバクター属、好ましくは腸内細菌科又はエンテロバクター属によって引き起こされる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記感染症が細菌の(多)薬剤耐性株によって引き起こされる、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬品又は医薬製剤を含む密封バイアル。
【請求項16】
貯蔵安定性凍結乾燥物の形態の医薬品の製造方法であって、治療上有効量のポリミキシンE、ポリミキシンB又はそれらの薬学的に許容される誘導体から選択されるポリミキシン、治療上有効量のジドブジン又はその薬学的に許容される誘導体、及び水性担体を混合して無菌溶液を作製すること、前記溶液を無菌濾過すること、前記濾過された溶液をバイアルに充填すること、並びに前記充填されたバイアルを凍結乾燥させることを含む方法。
【請求項17】
前記ポリミキシンが、ポリミキシンE又はその薬学的に許容される誘導体であり、好ましくは前記ポリミキシンE又はその薬学的に許容される誘導体が、コリスチン硫酸塩、コリスチンメタンスルホネート、又はコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリミキシン又はその薬学的に許容される誘導体の治療上有効量が、約0.5M.I.U.~約14M.I.U.、好ましくは約1M.I.U.~約12M.I.U.、より好ましくは約2M.I.U.~9M.I.U.である、請求項16又は請求項17に記載の方法。
【請求項19】
バイアルあたりの充填量が約10mL~約20mLである、請求項16~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
ジドブジンの治療上有効量が、約50mg~約1500mg、好ましくは約100mg~約1000mg、より好ましくは約150mg~約800mgである、請求項16~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリミキシンを、前記ジドブジンの添加前に前記水性担体と混合する、請求項16~20のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵安定性のある凍結乾燥物の形態の医薬品及び非経口投与用の無菌溶液の形態の医薬製剤に関するものである。いずれも、ポリミキシンとジドブジン、又はそれらの薬学的に許容される誘導体を含み、グラム陰性菌感染症、例えば腸内細菌科又はエンテロバクター属による感染症の治療に有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
院内感染の原因となる多剤耐性グラム陰性菌の出現は、世界的な問題となりつつある。実際、米国では院内感染を引き起こす細菌の70%以上が、感染症対策として代表的に使用されている主要な抗微生物剤の少なくとも一つに耐性を示している(Nature Reviews, Drug Discovery, 1, 895-910(2002))。
【0003】
このように治療法が限られていることから、いずれも50年以上前に開発されたポリミキシン系抗生物質であるコリスチンやポリミキシンBの臨床使用が増えているが、これらの化合物は他の多くの抗微生物剤と異なり、多くの多剤耐性病原体に対して活性を維持しているからである。これは恐らくは、臨床での使用が限られていたためである。例えば、コリスチンの非経口製剤は、1960年代に認可された後、他にもっと適した治療選択肢があったため、すぐに使用されなくなった。とはいえ、ポリミキシンは現在、極めて重要な抗微生物剤に挙げられており、幅広い関心を集め、研究が行われている。
【0004】
ポリミキシン類は、芽胞を形成する土壌細菌パエニバチルス・ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)(正式名称:バチルス・ポリミキサvar.コリスチヌス(Bacillus polymyxa var. colistinus))の特定の菌株によって産生される、天然の多成分環状ポリペプチド抗生物質の群である。この群では5つの主要な化学的に異なる構成員が認められており、ポリミキシンA、B、C、D、Eと呼ばれており、そのうちのBとEは市販されており、米国及び欧州で承認されている。ポリミキシンBは局所使用に承認されており、ポリミキシンEは、通常コリスチンと呼ばれ、経口、非経口及び吸入用に承認されている。二つの形態のコリスチンが臨床的に使用されており、経口投与用のコリスチン硫酸塩と、非経口及び吸入投与用のそれのプロドラッグであるコリスチメテートナトリウム(CMS)である。Liら(Li et al., Lancet Infect Dis. 2006 Sep;6(9):589-601)は、コリスチンを「多剤耐性グラム陰性菌感染症に対する再登場の抗生物質」と記載している。
【0005】
しかしながら、ポリミキシンに対する耐性は増加傾向にあり、単独療法ではポリミキシンに対する耐性が出現する可能性があることを示唆する証拠が増えている。この問題を解決する方法として、ポリミキシン併用療法があり、そのような療法は、細菌の殺滅を改善し、耐性の出現を防ぐことが実証されている。Huら(Hu et al., Antimicrob Agents Chemother. 2018 Dec 21;63(1))は、アジドチミジンがコリスチンと併用して、いかにして抗生物質耐性の腸内細菌科に対して相乗的な活性を示すかを説明している。
【0006】
アジドチミン(AZT)は、ジドブジンとしても知られ、ヌクレオシド類縁体逆転写酵素阻害剤であり、欧米ではHIV/AIDs感染の治療に承認されている一種の抗レトロウイルス剤である。HIVに対する抗レトロウイルス活性だけでなく、ジドブジンの抗細菌効果が、イン・ビトロ及びイン・ビボの両方でグラム陰性菌感染の実験モデルで実証されている(Hermannet al., Antimicrob Agents Chemther. 1992 May;36(5):1081-1085)。
【0007】
ポリミキシンとジドブジンの間の相乗効果は、本発明者らによって最初に発見され、WO2014/147405A1として公開された国際特許出願PCT/GB2014/050878に記載されている。ジドブジンとコリスチンの比率についてのさらなる実験も本発明者らによって行われ、これらはWO2017/098274A1として公開された国際特許出願PCT/GB2016/053901に記載されている。
【0008】
しかしながら、治療上有効な量のジドブジンと組み合わせた治療上有効な量のポリミキシンの非経口投与を奏功させるための医薬製剤又は医薬品を製造する方法については、当技術分野では開示も教示もない。これらの化合物のそれぞれは、単剤療法製品としてのみ市販されており、WO2014/147405A1及びWO2017/098274A1は、その組み合わせを含む医薬組成物を調製する可能性とともに、その組み合わせ自体を開示しているが、これらの先行出願のいずれにも、治療有効量の両化合物を、処置を必要とする対象者に非経口的に投与するのに使用することができる組み合わせを含む医薬品を調製する方法についての実現可能な開示はない。これらの先行開示では、イン・ビトロ環境でのその二つの活性物質間の相乗効果に焦点が当てられている。注射用液の効果的かつ信頼性のある調製を可能とすると考えられる、この組み合わせの適切に保存安定な形態の開示もない。
【0009】
したがって、ポリミキシン(例えば、コリスチン)とジドブジンの組み合わせを商業的に利用するには、貯蔵安定性や調製の容易さの点で許容される製剤を開発する必要がある。しかしながら、その二つの化合物間には相乗的関係があるため、許容できる医薬品又は医薬製剤の製剤化は簡単ではなく、個々の化合物を製剤化する際には遭遇しないような課題がある。特に、この関係が各化合物の有機溶媒やその他の溶媒への溶解度にどのように影響するか、及び/又は製品が貯蔵安定性であるか否かを予測することができない。
【0010】
本発明の目的は、ポリミキシンとジドブジンの薬学的に有用な製剤、特に、ポリミキシンE、ポリミキシンB又はそれらの薬学的に許容される誘導体から選択されるポリミキシンと、ジドブジン又はその薬学的に許容される誘導体を有効成分として含む製剤を提供することである。
【発明の概要】
【0011】
第1の態様において、本発明は、凍結乾燥物の形態の医薬品であって、その凍結乾燥物が、治療上有効量のポリミキシンE、ポリミキシンB又はそれらの薬学的に許容される誘導体から選択されるポリミキシン、治療上有効量のジドブジン又はその薬学的に許容される誘導体、及び任意に1以上の緩衝剤から本質的になる医薬品を提供する。凍結乾燥物は貯蔵安定性に優れており、バイアル又はカートリッジに保存して、水性担体(例えば、水又は緩衝水溶液)で復元して、非経口投与用の無菌溶液を作製するようになっている。
【0012】
したがって、第2の態様において、本発明は、非経口投与用の無菌溶液の形態の医薬製剤であって、その溶液が、治療上有効量のポリミキシンE、ポリミキシンB又はそれらの薬学的に許容される誘導体から選択されるポリミキシン、治療上有効量のジドブジン又はその薬学的に許容される誘導体、水性担体、及び任意に1以上の緩衝剤から本質的になる、医薬製剤を提供する。
【0013】
第1及び第2の態様の利点には、薬学的に有用な製剤、すなわち非経口投与用無菌溶液の効果的かつ高信頼性で調製することを可能にする組み合わせの貯蔵安定型の調製などがある。この無菌溶液は、以下に詳細に説明するように、貯蔵安定性でもある。
【0014】
第3の態様において、本発明は、グラム陰性細菌感染症の治療に使用するための、本明細書で定義の医薬品又は医薬製剤を提供する。好ましくは、グラム陰性細菌感染症は、腸内細菌科、エンテロバクター属、シュードモナス属及びアシネトバクター属から選択される細菌、例えば、腸内細菌科又はエンテロバクター属によって引き起こされる。各種実施形態において、感染は、細菌の(多)薬剤耐性株によって引き起こされる。
【0015】
第4の態様において、本発明は、本明細書で定義の医薬品又は医薬製剤を、処置を必要とする対象に投与することを含む、グラム陰性細菌感染症の治療方法を提供する。好ましくは、グラム陰性細菌感染症は、腸内細菌科、エンテロバクター属、シュードモナス属及びアシネトバクター属から選択される細菌、例えば腸内細菌科又はエンテロバクター属によって引き起こされる。各種実施形態において、感染症は、細菌の(多)薬剤耐性株によって引き起こされる。
【0016】
第5の態様において、本発明は、本明細書で定義の医薬品又は医薬製剤を含む密封バイアルを提供する。
【0017】
第6の態様において、本発明は、貯蔵安定性のある凍結乾燥物の形態の医薬品の製造方法であって、治療上有効量のポリミキシンE、ポリミキシンB、又はそれらの薬学的に許容される誘導体から選択されるポリミキシン、治療上有効量のジドブジン又はその薬学的に許容される誘導体、及び水性担体を混合して溶液を作製すること、当該溶液を無菌濾過すること、前記濾過された無菌溶液を1以上のバイアルに充填すること、並びに前記充填されたバイアルを凍結乾燥させることを含む方法を提供する。各個々のバイアルの充填量は、約10mL~約20mLである。緩衝剤が存在していても良い。
【0018】
本発明の各種実施形態において、ポリミキシンは、ポリミキシンE又はその薬学的に許容される誘導体である。例えば、ポリミキシンE又はその薬学的に許容される誘導体は、コリスチン硫酸塩、コリスチンメタンスルホネート、又はコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムからなる群から選択されることができる。
【0019】
本発明の各種実施形態において、治療上有効量のポリミキシンは、約0.5百万国際単位(MIU)~約14百万国際単位(MIU)である。好ましくは、ポリミキシンの量は、約1MIU~約12MIUであり、より好ましくは、ポリミキシンの量は、約2MIU~約9MIUである。ポリミキシンの用量に使用される単位について、以下でより詳細に議論する。
【0020】
本発明の各種実施形態において、ジドブジンの治療上有効量は、約50mg~約1500mgである。好ましくは、ジドブジンの量は、約100mg~約1000mgであり、より好ましくは約150mg~約800mgであり、最も好ましくは約150mg~約500mgである。
【0021】
本発明の各種実施形態において、医薬品又は医薬製剤は、重量基準で、ジドブジンと比較してより多くの量のポリミキシンを含む。例えば、ポリミキシンとジドブジンの重量比は、約8:1~約11:10、例えば、約2:1であることができる。
【0022】
本発明の方法の各種実施形態において、ポリミキシンは、ジドブジンと混合する前に、水性担体と混合される。
【0023】
これらの態様及び実施形態は、添付の独立請求項及び従属請求項に記載されている。従属請求項の特徴は、特許請求の範囲に明示的に記載されているもの以外の組み合わせで、互いに、そして独立請求項の特徴と組み合わせることができることは理解されよう。さらに、本明細書に記載の手法は、以下に記載の具体的な実施形態に限定されるものではなく、本明細書に記載されている特徴の適切な組み合わせを含んでおり、それを想定している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
次に、本発明の実施形態を、例示としてのみ、添付の図面を参照して説明する。
【0025】
【
図1】実施例1Aで得られた安定性試験時のCMSピークパターンを重ね合わせたものであり、グラフの下から上に向かって、パターンは、CMS原薬材料、T0でのサンプル、5℃で24時間後のサンプル、及び25℃で24時間後のサンプルについてのものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書では、特定の実施例及び実施形態の態様及び特徴について議論及び説明する。特定の実施例及び実施形態の一部の態様及び特徴は、従来通りに実施されてもよく、これらは、簡潔さのために詳細に議論及び説明しない。したがって、詳細に説明されていない本明細書で議論される装置及び方法の態様及び特徴は、そのような態様及び特徴を実施するための従来技術に従って実施してもよいことが理解されよう。
【0027】
本明細書で述べたように、本発明は、制御された室温及び加速条件の両方で貯蔵安定性を示すポリミキシン及びジドブジンの医薬品に関する。驚くべきことに、この医薬品は、本質的に前記二つの有効成分及び任意に1以上の緩衝剤(複数可)からなる凍結乾燥物である。好ましい実施形態では、凍結乾燥物は二つの有効成分からなる。言い換えれば、凍結乾燥物は、可溶化剤や安定化剤など、凍結乾燥物の安定性や活性物質の溶解性に重大な影響を与える添加剤を含まない。これは、コリスチンとジドブジンの相乗的組み合わせのための安定した医薬品を開発するという問題に対する驚くべき解決策である。なぜなら、凍結乾燥プロセスは代表的には、選択される添加剤に依存するものであり、凍結乾燥物はほとんどの場合、その中に含まれる活性剤を安定させるためにポリオール系安定剤などの1以上の添加剤を含むからである。したがって、本発明者らは、ポリミキシンとジドブジンの組み合わせが、貯蔵安定性のある凍結乾燥物を調製するために、安定化又は可溶化のための添加剤を必要とせず、その安定な凍結乾燥物が、非経口投与のための無菌溶液を調製するために、水性担体(例えば、水)による復元にさらに適していることを発見して驚いた。この溶液は、復元後に投与してもよいし、輸液と組み合わせてから投与してもよい。本発明者らは、驚くべきことに、本発明の無菌溶液を含む輸液が、周囲及び貯蔵の両方の条件下で、例えば2~8℃で安定であることを見出した。
【0028】
本発明者らはまた、ポリミキシンとジドブジンからなる医薬製剤用の担体が水性であることを発見して驚いた。ジドブジンは水にはほとんど溶解しないが、ポリミキシン、特にCMSの存在がジドブジンの溶解性を高めることで、水性溶媒系を用いることができることがわかった。
【0029】
定義
本明細書で使用される場合、「本質的に~からなる(consists essentially of)」又は「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という表現は、製品又は製剤が、記載されている必須成分に加えて、組成物の本質的な特性に重大な影響を与えない他の成分、例えば微量の不純物を含むことを意味している。注目すべき点として、「本質的に~からなる(consists essentially of)」又は「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という表現は、凍結乾燥物の安定性及び/又は水性担体での活性物質の溶解性に重大な効果を有する添加剤を排除するものである。本発明は、ポリミキシン及びジドブジンを、安定剤を一切添加する必要なく凍結乾燥して安定な凍結乾燥物とし、さらに可溶化剤を必要とせずに非経口投与に適した水性溶媒系中で製剤できるという発見に基づくものである。
【0030】
任意の緩衝剤を除いて、本明細書では、「添加剤」という用語は、国際医薬品添加剤協会(The International Pharmaceutical Excipients Council)の定義に従って、「製造工程に含まれる、又は完成した医薬品剤形に含有される、薬理的に活性な薬物又はプロドラッグ以外の物質」を指すために使用される。したがって、添加剤という用語は、糖類、アミノ酸、ポリマーなどの増量剤、錯化剤、界面活性剤及び共溶媒などの可溶化剤、等張化剤、追加の抗微生物剤及び崩壊温度調整剤を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
本明細書で使用される場合、「からなる(consists of)」又は「からなる(consisting of)」という表現は、その製品又は製剤が記載された必須成分のみを含むことを意味する。
【0032】
本明細書において、「貯蔵安定性(のある)」という用語は、製品又は製剤が、所定の条件、例えば5℃±3℃又は室温(25℃)で、所定の期間にわたり、例えば6~30時間にわたり保存した場合に安定であることを意味する。安定性は、当技術分野で知られている方法で測定することができ、ジドブジンやポリミキシンの量又は不純物のレベルの変化について、貯蔵後の製剤を分析することを含むことができる。これらの変化は、当技術分野で既知の技術を用いて測定することができる。例えば、そのような技術には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、及び逆相HPLC(RP-HPLC)のようなそれの変形型などがある。
【0033】
HPLCは、通常、固定相を含むカラムに移動相を浸透させるために圧力を用いており、当業者であれば、製剤の安定性を測定するためにHPLC及びRP-HPLCをどのように行うかは理解しているものと考えられる。HPLCを用いて、例えば、生成された不純物プロファイルを分析することにより、安定性を評価することができる。例えば、一つの尺度は、HPLCによって検出された不純物のピーク面積%、又はHPLCで検出されたすべての全不純物の合計ピーク面積%である。これらの測定値を、貯蔵前の製剤の測定値と比較してもよく、又は製剤標準の測定値と比較してもよい。
【0034】
本発明の各種実施形態において、製剤は、所定期間にわたってジドブジン、ポリミキシン及び/又は不純物のレベルに有意な変化がないことから、貯蔵安定性がある。有意性とは、当技術分野で通常決定される統計的有意性を意味する。
【0035】
安定性に関する好適な測定方法も実施例に記載されている。それには、例えば5℃±3℃又は室温(約25℃)で6時間、12時間、24時間又は30時間貯蔵する前と後に、ジドブジンとCMSの純度と量を同時に定量するためのハイブリッドRP-HPLC法などがある。このハイブリッド法は、Bai et al., A simple HPLC method for separation of Colistimethate Sodium and Colistin sulphate, J Chromatograph Separat Techniq 2011:2(1)に記載されているCMSについてのRP-HPLC法を改良したものである。Baiらによる方法(この方法は参照により本明細書に組み込まれる)は、CMSを定量するために実施され、次いでジドブジンを定量するために改良することができる。その改良には、分離能を高めてジドブジンの主ピークから不純物を分離するために、勾配を3%/分から1.5%/分に下げ、検出波長を214nmから265nmに上げることなどがある。クロマトグラフィー条件は、実施例1に記載されている。
【0036】
CMS及びジドブジンの安定性は、欧州薬局方(Ph.Eur.)の方法に従って評価することもできる。そのような方法は参照により本明細書に組み込まれ、欧州薬局方9.5(07/2017:0319)によるCMS-Naの関連物質についてのRP-HPLC法;欧州薬局方9.5(07/2017:0319)による遊離コリスチンの測定法;モノグラフ欧州薬局方9.5(01/2017:1059)によるジドブジンについてのRP-HPLC法などがある。
【0037】
コリスチメテートナトリウムの分析やCMSの各種成分の同定に適した他の方法には、WO2014/195405A1(Xellia Pharmaceuticals APS)に記載されているHPLC法や、Li et al. Antimicro. Agents. Chemo (2003) 47, 4に記載されている水中HPLC法などがある。相乗的な抗微生物剤組み合わせにおけるコリスチメテートナトリウム(CMS)のポテンシーを求めるための分析方法は、同時係属の出願GB1910777.0に開示されている。この方法は、参照により本明細書に組み込まれ、CMSとジドブジンの組み合わせについては、組み合わせにおけるCMSのポテンシーは、寒天拡散アッセイにおいてシュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas Aeruginosa)を使用することにより求めることができる。
【0038】
「凍結乾燥物」という用語は、本明細書では、凍結乾燥又はフリーズドライプロセスによって製造された材料を指すのに用いられる。フリーズドライに用いられる具体的な条件に限定はなく、当業者であれば、本発明による凍結乾燥物を得るのに好適な条件を容易に決定することができるものと考えられる。
【0039】
「無菌」という用語は、本明細書では、医学的な文脈において、無菌であること、又は細菌その他の生きた微生物が存在しないことを意味するのに用いられる。本発明による医薬製剤は、処置を必要とする対象者に非経口的に投与することができるという意味で無菌溶液である。
【0040】
「薬学的に許容される誘導体」という表現は、本明細書では、特定の化合物の薬学的に許容されるプロドラッグ、塩又はエステルを指すのに使用される。本発明の化合物の薬学的に許容される塩には、それの好適な酸付加塩又は塩基塩が含まれる。好適な薬学的塩についての総覧が、Berge et al, J Pharm Sci, 66, 1-19(1977)にある。塩は、例えば、硫酸,リン酸又はヒドロハロゲン酸などの鉱酸のような強無機酸と;非置換又は(例えば、ハロゲンで)置換された炭素原子数1~4のアルカンカルボン酸のような強有機カルボン酸と;飽和又は不飽和のジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸又はテトラフタル酸と;ヒドロキシカルボン酸、例えばアスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸又はクエン酸と;アミノ酸、例えばアスパラギン酸又はグルタミン酸と;安息香酸と;又は有機スルホン酸、例えば非置換又は(例えば、ハロゲンによって)置換された(C1-C4)アルキル又はアリールスルホン酸、例えばメタンスルホン酸又はp-トルエンスルホン酸と形成される。
【0041】
エステルは、エステル化される官能基に応じて、有機酸又はアルコール/水酸化物を用いて形成される。有機酸には、非置換又は(例えば、ハロゲンによって)置換されている炭素原子数1~12のアルカンカルボン酸などのカルボン酸、例えば酢酸;飽和又は不飽和のジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸又はテトラフタル酸;ヒドロキシカルボン酸、例えばアスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸又はクエン酸;アミノ酸、例えばアスパラギン酸又はグルタミン酸;安息香酸;又は有機スルホン酸、例えば非置換又は(例えば、ハロゲンによって)置換された(C1-C4)アルキル又はアリールスルホン酸、例えばメタンスルホン酸又はp-トルエンスルホン酸などがある。好適な水酸化物には、無機水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどがある。アルコールには、炭素原子数1~12のアルカン-アルコールなどがあり、それらは非置換でも(例えば、ハロゲンによって)置換されていてもよい。
【0042】
本発明は、化合物の溶媒和物形態も含む。
【0043】
「治療上有効量」という用語は、本明細書では、医学的文脈で有用な量に関連して使用される。調製物に配合される各活性物質の特定の量は、その活性物質及び調製物の所期の最終用途に基づいて決定することができる。ポリミキシンE、ポリミキシンB及びそれらの薬学的誘導体の治療上有効量は、当技術分野では代表的には、単位「I.U.」、「IU」、「M.I.U.」又は「MIU」で表される。これらの頭文字は、「国際単位」又は「百万国際単位」を意味する。本明細書では、同じ命名法を使用している。
【0044】
ポリミキシンB及びポリミキシンB硫酸塩などのその薬学的に許容される誘導体については、1mgが約10,000IUと等価であることが当業界では一般的に認められている。それは、5MIUが500mgに等しいと考えられることを意味する(10,000×500=5,000,000)。
【0045】
ポリミキシンE及びその製薬上許容される誘導体、例えばコリスチン硫酸塩、コリスチンメタンスルホネート及びコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムの場合、1MIUの意味は使用する化合物及びそれのポテンシーによって決まる。例えば、コリスチンベースは約30,000IU/mgのポテンシーを有するが、コリスチン硫酸塩は約20,500IU/mgのポテンシーを有し、CMSは約12,500IU/mgのポテンシーを有する。これは、ポテンシー120,500IU/mgを有する5MIUのコリスチン硫酸塩は約244mgの量に相当し、ポテンシー2,500IU/mgを有する5MIUのCMSは400mgの量に相当することを意味する。
【0046】
ポリミキシンE又はそれの誘導体のポテンシーは、欧州薬局方の抗生物質の微生物学的アッセイ:欧州薬局方2.7.2に従って決定される。このアッセイは、参照により本明細書に組み込まれており、3用量の参照物質及び3用量の検査対象の抗生物質によって産生される感受性微生物の成長の阻害を比較することによって、抗生物質の活性を決定するために使用される。当業者であれば、本明細書におけるIU又はMIU単位を、使用する抗生物質のmg単位の量に容易に変換することができることは、当該技術分野において十分に認識され、理解されている。上述のように、ジドブジンとの相乗的組み合わせにおけるCMSのポテンシーは、同時係属出願GB1910777.0に開示の方法によって決定することができる。
【0047】
また、コリスチンベースの製品についての投与量ラベル表示は米国と欧州で異なることも知られている。米国では、CMSは、コリスチン基準活性(CBA)のミリグラムに従ってラベル表示され、投与される。CBAは国際単位に基づいて計算され、多くの場合、製造者はCBAとIU又はMIUの両方の値を報告する。欧州では、CMSはCMSの国際単位に従ってラベル表示され、投与される。コロマイシンの欧州SmPCには、下記の概算CMS換算表があり、本明細書ではこの換算を用いる。
【0048】
【0049】
組み合わせ製品
本発明の医薬品及び医薬製剤は、ポリミキシンとジドブジンの治療用組み合わせ製品である。ポリミキシンは、ポリミキシンE、ポリミキシンB又はそれらの薬学的に許容される誘導体から選択され、ジドブジンは、化合物それ自体又はその薬学的に許容される誘導体である。
【0050】
ポリミキシンE、ポリミキシンB及びジドブジンは、当技術分野ではよく知られており、簡潔にするために、本明細書では詳細に説明しない。ポリミキシンEはコリスチンとしても知られており、コリスチン硫酸塩、コリスチンメタンスルホネート及びコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムなどのその薬学的に許容される誘導体とともにこの化合物並びにポリミキシンB又はその薬学的に許容される誘導体(例えばポリミキシンB硫酸塩)は、商業的供給源から得ることができるか、公知の方法で得ることができる。CMSは、例えば、抗生物質の混合物であるコリスチンの化学修飾によって製造することができる。特に、コリスチンの1級アミノ基をメチルスルホン酸基に変換する(Barnette et al., Brit. J. Pharmacol. (1964), 23, 552)。ポリミキシン活性物質の商業的供給源としては、Sigma-Aldrich、Livzon Pharmaceutical Group(中国)及びXellia Pharmaceuticals ApS(デンマーク)などがある。
【0051】
ジドブジンは、公知の方法によって、又はSigma-Aldrich, Hetero Labs Ltd.(インド)、又はEDQM(European Directorate for the Quality of Medicines & Healthcare)などの商業的供給源から入手することができる。
【0052】
ポリミキシンE及びポリミキシンBの薬学的に許容される誘導体は、当技術分野で公知であり、公知のプロドラッグであるコリスチンメタンスルホネート、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムなどがある。また、ポリミキシンE及びポリミキシンBの薬学的に許容される塩、例えばコリスチン硫酸塩及びポリミキシンB硫酸塩なども含まれる。
【0053】
本発明の医薬品及び製剤は、ポリミキシン及びジドブジンをそれぞれの治療上有効な量で含む。「治療上有効量」という用語は上記で定義されている。
【0054】
各種実施形態において、当該医薬品又は医薬製剤は、治療目的で利用される。特に、グラム陰性細菌感染症の治療に使用され、これらの感染症は、細菌の薬剤耐性株によって引き起こされ得る、及び/又は、例えば、腸内細菌科、エンテロバクター属、シュードモナス属又はアシネトバクター属から選択される細菌によって引き起こされ得る。この使用は、処方された治療法を反映した用量の注射によって、復元した凍結乾燥物を非経口的に投与することを必要とする。
【0055】
各種実施形態において、治療上有効量のジドブジンは、約50mg~約1500mgである。好ましくは、ジドブジンの量は、約100mg~約1000mgであり、より好ましくは約150mg~約800mgであり、最も好ましくは約150mg~500mgである。これらの重量範囲は、後述する治療上有効量のポリミキシンと組み合わせ可能であることが理解されるであろう。また、これらの重量範囲は、例えば、ポリミキシンとジドブジンの重量比など、本明細書で述べた本発明の他の特徴と組み合わせ可能であることも理解されるであろう。
【0056】
例えば約20mLの注射容量として投与する場合、上記のジドブジンの量は、約2.5mg/mL~約75mg/mL、好ましくは約5mg/mL~約50mg/mL、より好ましくは約7.5mg/mL~約40mg/mL、最も好ましくは約7.5mg/mL~約25mg/mLの濃度範囲に相当する。他の注射量も当然のことながら可能であり、当業者であれば、mg単位での必要な治療上有効量のジドブジンをmg/mLの濃度に変換することが容易にできる。
【0057】
上で説明したように、ポリミキシン抗生物質の量は、従来、国際単位又は百万国際単位で報告される。各種実施形態において、ポリミキシン又はその薬学的に許容される誘導体の治療上有効量は、約5000IU~約14MIUである。好ましくは、約5000IU~約12MIUであり、より好ましくは、約5000IU~約9MIUである。
【0058】
ポリミキシンがポリミキシンB又はその薬学的に許容される誘導体(例えばポリミキシンB硫酸塩)である場合、本発明の医薬品又は医薬製剤中のポリミキシンの治療上有効量は、約5000IU~約5MIUである。好ましくは、約5000IU~約4MIUであり、より好ましくは、約5000IU~約1MIUである。
【0059】
ポリミキシンがポリミキシンE又はその薬学的に許容される誘導体(例えば、コリスチン硫酸塩、コリスチンメタンスルホネート又はコリスチンメタンスルホン酸ナトリウム)である場合、本発明の医薬品又は医薬製剤におけるポリミキシンの治療上有効量は、約0.5MIU~約14MIUである。好ましくは、約1MIU~約12MIU、より好ましくは、約2MIU~約9MIU、最も好ましくは、約2MIU~約5MIUである。
【0060】
ポリミキシンがポテンシー12,500IU/mgを有するCMSの場合、これらの値は、約40mg~約1,120mg、好ましくは約80mg~約960mg、より好ましくは約160mg~約720mg、最も好ましくは約160mg~約400mgの量に相当する。
【0061】
本発明の各種実施形態では、医薬品又は製剤は、ポリミキシンB又はその薬学的に許容される誘導体を約5000IU~約5MIUの量で含み、ジドブジン又はその薬学的に許容される誘導体を約50mg~約1500mgの量で含む。好ましくは、ジドブジンは、約100mg~約1000mg、より好ましくは約150mg~800mg、最も好ましくは約150mg~約500mgの量で存在する。
【0062】
本発明の各種実施形態では、医薬品又は製剤は、ポリミキシンB又はその薬学的に許容される誘導体を約5000IU~約4MIUの量で含み、ジドブジン又はその薬学的に許容される誘導体を約50mg~約1500mgの量で含む。好ましくは、ジドブジンは、約100mg~約1000mg、より好ましくは約150mg~約800mg、最も好ましくは約150mg~約500mgの量で存在する。
【0063】
本発明の各種実施形態では、医薬品又は製剤は、ポリミキシンB又はその薬学的に許容される誘導体を、約5000IU~約1MIUの量で含み、ジドブジン又はその薬学的に許容される誘導体を、約50mg~約1500mgの量で含む。好ましくは、ジドブジンは、約100mg~約1000mg、より好ましくは約150mg~約800mg、最も好ましくは約150mg~約500mgの量で存在する。
【0064】
本発明の各種実施形態では、医薬品又は製剤は、ポリミキシンE又はその薬学的に許容される誘導体を約0.5MIU~約14MIUの量で含み、ジドブジン又はその薬学的に許容される誘導体を約50mg~約1500mgの量で含む。好ましくは、ジドブジンは、約100mg~約1000mg、より好ましくは約150mg~約800mg、最も好ましくは約150mg~約500mgの量で存在する。
【0065】
本発明の各種実施形態では、医薬品又は製剤は、ポリミキシンE又はその薬学的に許容される誘導体を約1MIU~約12MIUの量で含み、ジドブジン又はその薬学的に許容される誘導体を約50mg~約1500mgの量で含む。好ましくは、ジドブジンは、約100mg~約1000mg、より好ましくは約150mg~約800mg、最も好ましくは約150mg~約500mgの量で存在する。
【0066】
本発明の各種実施形態では、医薬品又は製剤は、ポリミキシンE又はその薬学的に許容される誘導体を約2MIU~約9MIUの量で、ジドブジン又はその薬学的に許容される誘導体を約50mg~約1500mgの量で含む。好ましくは、ジドブジンは、約100mg~約1000mg、より好ましくは約150mg~約800mg、最も好ましくは約150mg~約500mgの量で存在する。
【0067】
本発明の各種実施形態では、医薬品又は製剤は、ポリミキシンE又はその薬学的に許容される誘導体を約2MIU~約5MIUの量で、ジドブジン又はその薬学的に許容される誘導体を約50mg~約1500mgの量で含む。好ましくは、ジドブジンは、約100mg~約1000mg、より好ましくは約150mg~約800mg、最も好ましくは約150mg~約500mgの量で存在する。
【0068】
本願の実施例から、いかにして好ましい実施形態が、ポリミキシンを、重量基準で、ジドブジンの量よりも多い量で含むかがわかる。特に、IU又はMIU単位でのポリミキシンの量をXmgの重量に変換し、ジドブジンがYmgの重量で含まれる場合、X>Yとなる。より好ましい実施形態では、ポリミキシンとジドブジンの重量比を定義することができる。ポリミキシンとジドブジンの好適な重量比は、WO2017/098274A1に開示されており、これらの重量比は参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、より好ましい重量比は、約8:1~約11:10(ポリミキシン:ジドブジン)である。
【0069】
したがって、本発明の各種実施形態では、ポリミキシンとジドブジンの重量比は約8:1~約11:10である。好ましくは、約6:1~約9:7、より好ましくは、約5:1~約6:4、最も好ましくは、約3:1~約2:1である。
【0070】
上述したように、好ましい実施形態では、本発明の医薬品及び医薬製剤は、任意の緩衝剤(複数可)以外の添加剤を含まない。本明細書では、「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という用語は、他の定義されていない添加剤が除外されるよう、医薬品及び医薬製剤を定義するために使用される。このような添加剤は、当技術分野ではよく知られており、非経口投与を目的としていることから規制当局に認められているものを含む。例としては、増量剤、可溶化剤、等張剤又は調整剤、追加の抗微生物剤及び崩壊温度調整剤がある。
【0071】
増量剤は、その名が示唆する通り、凍結乾燥物の体積を形成し、ケーキに十分な構造を与える。それは本明細書においては安定化剤とも称され、マンニトール、ラクトース、スクロース、トレハロース、ソルビトール、グルコース及びラフィノースなどの糖類、アルギニン、グリシン、ヒスチジンなどのアミノ酸類、又はデキストラン及びポリエチレングリコールなどのポリマー類があり得る。マンニトール、グリシンが最も一般的に使用される増量剤であり、次いでグルコース、スクロース、ラクトース、トレハロース及びデキストランがある。
【0072】
可溶化剤は、薬物の溶解度が低い場合や、薬物が結晶性で、凍結乾燥しても非晶質のままであるか、結晶化が困難な場合に添加される。それは、EDTAやシクロデキストリンなどの錯化剤、ポリソルベート(例:ポリソルベート80)などの界面活性剤、又はtert-ブチルアルコール、イソ-プロピルアルコール、ジクロロメタン、エタノール、アセトン、グリセロールなどの共溶媒であることができる。界面活性剤は代表的には、表面吸着による損失を最小限に抑えるために、低用量製品に添加する。共溶媒は、昇華速度を上げることによる一次乾燥速度の上昇、製品の安定性の向上、薬物の濡れ性や溶解性の向上による復元時間の短縮、さらにはサンプル溶液の無菌性保証の向上のために使用され得る。
【0073】
等張剤又は調整剤は、非経口製剤がヒトの血漿と等張になるように添加される。例としては、塩化ナトリウム、ショ糖、マンニトール及びブドウ糖などがあるが、ブドウ糖が最も一般的に使用される。製品が複数の用途に使用される場合、及び/又は貯蔵期間中の微生物の増殖を防ぐためである場合、追加の抗微生物剤を加えることができる。例としては、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、メチルパラベン、エチルパラベン、及びこれらの混合物などがある。
【0074】
非晶質物質の凍結乾燥には、一次乾燥温度を製剤の崩壊温度以下に保つ必要がある。しかしながら、非晶質状態の一部の添加剤は、非常に低い崩壊温度を有することから、一次乾燥期間が大幅に長くなってしまう。このような場合には、崩壊温度調整剤を使用して全体の崩壊温度を高くすることで、製品の品質を損なうことなく一次乾燥のサイクルを短縮することができる。例としては、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン、Ficoll(登録商標)及びゼラチンなどがある。
【0075】
任意の1以上の緩衝剤は、特定のpHが望まれる場合に含まれてもよく、薬学的に許容され、溶液を特定のpH範囲に維持することができる任意の酸又は塩の組み合わせ、例えば、酢酸塩、酒石酸塩又はクエン酸塩源であることができる。緩衝剤は、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酒石酸、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0076】
各種実施形態において、医薬品又は医薬製剤は、増量剤を含まない。各種実施形態において、医薬品又は医薬製剤は、糖、アミノ酸及びポリマーから選択される増量剤を含まない。
【0077】
本発明の医薬製剤は、非経口投与に適している。本明細書で使用される場合、非経口投与とは、皮膚及び粘膜を迂回して体内に直接注射することを指す。各種実施形態において、非経口投与は、皮内、腹腔内、筋肉、皮下及び静脈投与を指す。好ましくは、本発明の医薬製剤は、静脈内投与に適している。従って、本発明の医薬製剤は、水性担体が存在するために、溶液、特に無菌溶液の形態である。
【0078】
各種実施形態において、本発明の医薬製剤は、輸液での希釈用の単一バイアル内の無菌液である単一バイアル注射用濃縮液である。他の実施形態では、当該医薬製剤は、輸液でさらに希釈できるようにする前に、希釈剤と混合する必要がある二重バイアル注射用濃縮液、又は輸液によるさらなる希釈用の、希釈剤と混合された二重バイアル注射用濃縮液である希釈注射用濃縮液である。あるいは、当該医薬製剤は、輸液と組み合わせた、投与用の単一バイアル注射用濃縮液又は希釈注射用濃縮液である輸液用最終希釈液である。
【0079】
したがって、本発明の医薬製剤に含まれる水性担体は、単一バイアル注射用濃縮液、希釈剤及び/又は輸液を調製するのに使用される液体を指すことができる。輸液とは、代表的には、患者に投与するために濃縮注射剤を希釈するのに使用される無菌等張液である。これに基づくと、水性担体は、主溶媒として水を含む、薬学的に許容される液体と定義することができる。各種実施形態において、水性担体は、少なくとも約75重量%の水からなる。各種実施形態において、水性担体は、少なくとも約80重量%の水、好ましくは少なくとも約85重量%の水、より好ましくは少なくとも約90重量%の水、最も好ましくは少なくとも約95重量%の水からなる。
【0080】
各種実施形態において、水性担体はさらに、水、生理食塩水、及び糖液、例えばグルコース又はデキストロース溶液からなる群から選択されてもよい。例えば、水性担体は、0.9重量%生理食塩水(塩化ナトリウム)溶液、5重量%グルコース溶液、又は5重量%デキストロース溶液であってもよい。しかしながら、本発明はこれらの具体例に限定されるものではなく、他の薬学的に許容される水性担体が当技術分野で知られており、本明細書で使用することができる。
【0081】
各種実施形態では、水性担体は有機溶媒を全く含まない。
【0082】
医療用途
本発明はさらに、グラム陰性細菌感染症の治療での使用のための、本明細書で定義の医薬品及び医薬製剤を提供する。本発明は、本明細書で定義の医薬品又は医薬製剤を、処置を必要とする対象者に投与することを含む、グラム陰性細菌感染症を治療する方法も提供する。
【0083】
特に、この医薬品又は医薬製剤は、グラム陰性菌感染症に関連する増殖性細菌及び/又は臨床的に潜伏性の細菌を死滅させるのに使用することができる。したがって、本明細書において、細菌感染症の治療に言及することは、そのような感染症に関連する増殖性細菌及び/又は臨床的に潜伏性の細菌を死滅させることを含む。好ましくは、本発明の製品及び製剤は、グラム陰性細菌感染症に関連する臨床的に潜伏性の細菌を死滅させるのに使用される。
【0084】
本明細書で使用される場合、「死滅させる」とは、代謝活性の欠如によって評価される生存能力喪失を意味する。
【0085】
本明細書で使用される場合、「臨床的に潜伏性の細菌」とは、代謝的に活性であるが感染症発現の閾値以下の成長速度を有する細菌を意味する。感染症発現の閾値はそれ以下では宿主における感染症の症状がない成長速度閾値を指す。臨床的に潜伏性の細菌の代謝活性は、当業者には公知のいくつかの方法によって測定することができ、例えば細菌におけるmRNAレベルを測定することで、又は微生物のウリジン取り込み速度を測定することで行う。この点において、対数増殖条件下(in vitro又はin vivo)の細菌と比較して、臨床的に潜伏性の細菌は、低いがなおも有意な、
(i)mRNAレベル(例:mRNAのレベルの0.0001から50%、例えば1から30%、5から25%又は10から20%);及び/又は
(ii)ウリジン(例えば[3H]ウリジン)取り込みレベル(例:[3H]ウリジン取り込みのレベルの0.0005から50%、例えば1から40%、15から35%又は20から30%)
を有する。
【0086】
臨床的に潜伏性の細菌は代表的には、多くの識別可能な特徴を有する。例えば、それは生存しているが培養不能である場合がある。すなわち、その微生物は通常は標準的な培養技術によって検出できないが、液体希釈カウンティング、顕微鏡観察又はポリメラーゼ連鎖反応などの分子技術などの技術によって検出可能かつ定量可能である。さらに、臨床的に潜伏性の細菌は、表現型的に耐性であることから、従来の抗微生物剤の静菌効果に対して感受性(対数期において)である(すなわち、従来の抗微生物剤の最小阻害濃度(MIC)が実質的に変わらない細菌)であるが、薬剤誘発の死滅に対する感受性が大きく低下している(例えば、いずれか所定の従来の抗微生物剤で、最小殺微生物剤濃度(例えば最小殺菌剤濃度、MBC)のMICに対する比率が10以上である細菌)。
【0087】
本明細書で使用される場合、「細菌」(及び「細菌感染」などのそれの派生語)という用語は、下記の分類及び特定の種類の生物(又は生物による感染)についての言及を含むが、それに限定されるものではない。
【0088】
グラム陰性球菌、例えば、
ナイセリア・ゴノロア(Neisseria gonorrhoeae)、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis)、ナイセリア・シネレア(Neisseria cinerea)、ナイセリア・エロンガタ(Neisseria elongata)、ナイセリア・フラベセンス(Neisseria flavescens)、ナイセリア・ラクタミカ(Neisseria lactamica)、ナイセリア・ムコサ(Neisseria mucosa)、ナイセリア・シッカ(Neisseria sicca)、ナイセリア・スブフラバ(Neisseria subflava)及びナイセリア・ウェアベリ(Neisseria weaveri);腸内細菌科、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、エンテロバクター属(例えば、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)及びエンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae))、シトロバクター属(シトロバクター・フレウンジ(Citrob. freundii)及びシトロバクター・ジベルニス(Citrob. divernis)など)、ハフニア属(例えば、ハフニア・アルベイ(Hafnia alvei))、エルウィニア属(例えば、エルウィニア・ペルシシヌス(Erwinia persicinus))、モルガネラ・モルガニ(Morganella morganii)、サルモネラ菌(サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)及びサルモネラ・チフィ(Salmonella typhi))、シゲラ菌(例えば、シゲラ・ジセンテリア(Shigella dysenteriae)、シゲラ・フレクスネリ(Shigella flexneri)、シゲラ・ボイジ(Shigella boydii)及びシゲラ・ソネイ(Shigella sonnei))、クレブシエラ菌(例えば、クレブシエラ・ニューモニア(Klebs. pneumoniae)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebs. oxytoca)、クレブシエラ・オルニトリティカ(Klebs. ornitholytica)、クレブシエラ・プランチコラ(Klebs. planticola)、クレブシエラ・オザナエ(Klebs. ozaenae)、クレブシエラ・テリゲナ(Klebs. terrigena)、クレブシエラ・グラヌロマティス(Klebs. granulomatis)(カリマトバクテリウム・グラヌロマティス(Calymmatobacterium granulomatis))及びクレブシエラ・リノスクレロマティス(Klebs. rhinoscleromatis))、プロテウス属(例えば、プロテウス・ミラビリス(Pr. mirabilis)、プロテウス・レトゲリ(Pr. rettgeri)及びプロテウス・バルガリス(Pr. vulgaris))、プロビデンシア属(例えば、プロビデンシア・アルカリファシエンス(Providencia alcalifaciens)、プロビデンシア・レトゲリ(Providencia rettgeri)及びプロビデンシア・スツアルティ(Providencia stuartii))、セラチア属(例えば、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)及びセラチア・リキファシエンス(Serratia liquifaciens))並びにエルシニア属(例えば、エルシニア・エンテロコリティカ(Yersinia enterocolitica)、エルシニア・ペスティス(Yersinia pestis)、エルシニア・シュードツベルクロシス(Yersinia pseudotuberculosis));ヘリコバクター属(例えば、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、ヘリコバクター・シナエジ(Helicobacter cinaedi)及びヘリコバクター・フェネリア(Helicobacter fennelliae));アシネトバクター属(例えば、アシネトバクター・バウマニ(A. baumanii)、アシネトバクター・カルコアセチカス(A. calcoaceticus)、アシネトバクター・ヘモリティカス(A. haemolyticus)、アシネトバクター・ジョンソニ(A. johnsonii)、アシネトバクター・ジュニ(A. junii)、アシネトバクター・ルウォフィ(A. lwoffi)及びアシネトバクター・ラジオレシステンス(A. radioresistens));シュードモナス属(例えば、シュードモナス・エルギノーサ(Ps. aeruginosa)、シュードモナス・マルトフィリア(Ps. maltophilia)(ステノトロフォモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia))、シュードモナス・アルカリジェネス(Ps. alcaligenes)、シュードモナス・クロロラフィス(Ps. chlororaphis)、シュードモナス・フルオレセンス(Ps. fluorescens)、シュードモナス・ルテオラ(Ps. luteola)、シュードモナス・メンドシナ(Ps. mendocina)、シュードモナス・モンテイリ(Ps. monteilii)、シュードモナス・オリジハビタンス(Ps. oryzihabitans)、シュードモナス・ペルトシノゲナ(Ps. pertocinogena)、シュードモナス・シューダルカリジェネス(Ps. pseudalcaligenes)、シュードモナス・プチダ(Ps. putida)及びシュードモナス・スツゼリ(Ps. stutzeri));バクテリオイデス・フラギリス(Bacteriodes fragilis);ヘモフィルス属(例えば、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)、ヘモフィルス・デュクレイ(Haemophilus ducreyi)、ヘモフィルス・エジプチウス(Haemophilus aegyptius)、ヘモフィルス・パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)、ヘモフィルス・ヘモリティカス(Haemophilus haemolyticus)及びヘモフィルス・パラヘモリティカス(Haemophilus parahaemolyticus));アクチノバチルス属(例えば、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、アクチノバチルス・エクリ(Actinobacillus equuli)、アクチノバチルス・ホミニス(Actinobacillus hominis)、アクチノバチルス・リグニエレシ(Actinobacillus lignieresii)、アクチノバチルス・スイス(Actinobacillus suis)及びアクチノバチルス・ウレア(Actinobacillus ureae));ブルセラ菌(例えば、ブルセラ・アボルタス(Brucella abortus)、ブルセラ・カニス(Brucella canis)、ブルセラ・メリンテンシス(Brucella melintensis)及びブルセラ・スイス(Brucella suis));カンピロバクター属(例えば、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)、カンピロバクター・ラリ(Campylobacter lari)及びカンピロバクター・フェタス(Campylobacter fetus));ビブリオ属(例えば、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)及びビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)、ビブリオ・アルギノリティカス(Vibrio alginolyticus)、ビブリオ・カルチャリア(Vibrio carchariae)、ビブリオ・フルビアリス(Vibrio fluvialis)、ビブリオ・フルニシ(Vibrio furnissii)、ビブリオ・ホリサエ(Vibrio hollisae)、ビブリオ・メトシュニコビ(Vibrio metschnikovii)、ビブリオ・ミミカス(Vibrio mimicus)及びビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus));スピロヘータ科、例えば、ボレリア属(例えば、ボレリア・レクレンティス(Borrelia recurrentis)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボレリア・アフゼリ(Borrelia afzelii)、ボレリア・アンダーソニ(Borrelia andersonii)、ボレリア・ビセッティ(Borrelia bissettii)、ボレリア・ガリニ(Borrelia garinii)、ボレリア・ジャポニカ(Borrelia japonica)、ボレリア・ルシタニエ(Borrelia lusitaniae)、ボレリア・タヌキ(Borrelia tanukii)、ボレリア・タルジ(Borrelia turdi)、ボレリア・バライシアナ(Borrelia valaisiana)、ボレリア・カウカシカ(Borrelia caucasica)、ボレリア・クロシデュラエ(Borrelia crocidurae)、ボレリア・デュトニ(Borrelia duttoni)、ボレリア・グラインゲリ(Borrelia graingeri)、ボレリア・ヘルムシ(Borrelia hermsii)、ボレリア・ヒスパニカ(Borrelia hispanica)、ボレリア・ラチシェウィ(Borrelia latyschewii)、ボレリア・マゾッティ(Borrelia mazzottii)、ボレリア・パルケリ(Borrelia parkeri)、ボレリア・ペルシカ(Borrelia persica)、ボレリア・ツリカタエ(Borrelia turicatae)及びボレリア・ベネズエレンシス(Borrelia venezuelensis))並びにトレポネマ属(トレポネマ・パリダム種パリダム(Treponema pallidum ssp. pallidum)、トレポネマ・パリダム種エンデミカム(Treponema pallidum ssp. endemicum)、トレポネマ・パリダム種ペルテヌ(Treponema pallidum ssp. pertenue)及びトリポネマ・カラテウム(Treponema carateum));パスツレラ属(例えば、パスツレラ・アエロジェネス(Pasteurella aerogenes)、パスツレラ・ベチアエ(Pasteurella bettyae)、パスツレラ・カニス(Pasteurella canis)、パスツレラ・ダグマティス(Pasteurella dagmatis)、パスツレラ・ガリナルム(Pasteurella gallinarum)、パスツレラ・ヘモリティカ(Pasteurella haemolytica)、パスツレラ・マルトシダ・マルトシダ(Pasteurella multocida multocida)、パスツレラ・マルトシダ・ガリシダ(Pasteurella multocida gallicida)、パスツレラ・マルトシダ・セプティカ(Pasteurella multocida septica)、パスツレラ・ニューモトロピカ(Pasteurella pneumotropica)及びパスツレラ・ストマティス(Pasteurella stomatis));リケッチア属(例えば、リクセトシ(Ricksettsii)もしくはコキシエラ・ブルネチ(Coxiella burnetii));レジオネラ属(例えば、レジオネラ・アニサ(Legionalla anisa)、レジオネラ・ビルミンガメンシス(Legionalla birminghamensis)、レジオネラ・ボゼマニ(Legionalla bozemanii)、レジオネラ・シンシナチエンシス(Legionalla cincinnatiensis)、レジオネラ・デュモフィ(Legionalla dumoffii)、レジオネラ・フィーレイ(Legionalla feeleii)、レジオネラ・ゴルマニ(Legionalla gormanii)、レジオネラ・ハケリア(Legionalla hackeliae)、レジオネラ・イスラエレンシス(Legionalla israelensis)、レジオネラ・ジョルダニス(Legionalla jordanis)、レジオネラ・ランシンジェンシス(Legionalla lansingensis)、レジオネラ・ロングビーチェ(Legionalla longbeachae)、レジオネラ・マセアチェルニ(Legionalla maceachernii)、レジオネラ・ミクダデイ(Legionalla micdadei)、レジオネラ・オークリッジェンシス(Legionalla oakridgensis)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionalla pneumophila)、レジオネラ・サインテレンシ(Legionalla sainthelensi)、レジオネラ・タクソネンシス(Legionalla tucsonensis)及びレジオネラ・ワドワーシ(Legionalla wadsworthii));モラクセラ・カタラリス(Moraxella catarrhalis);ステノトロフォモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia);ブルクホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia);ブルクホルデリア・マレイ(Burkholderia mallei)及びブルクホルデリア・シュードマレイ(Burkholderia pseudomallei);フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis);カルドネレラ属(例えば、ガルドネレラ・バギナリス(Gardneralla vaginalis)及びガルドネレラ・モビルンカス(Gardneralla mobiluncus));ストレプトバチルス・モニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis);フラボバクテリア科、例えば、カプノサイトファガ属(例えば、カプノサイトファガ・カニモルサス(Capnocytophaga canimorsus)、カプノサイトファガ・シノデグミ(Capnocytophaga cynodegmi)、カプノサイトファガ・ギンギバリス(Capnocytophaga gingivalis)、カプノサイトファガ・グラヌロサ(Capnocytophaga granulosa)、カプノサイトファガ・ヘモリティカ(Capnocytophaga haemolytica)、カプノサイトファガ・オクラセア(Capnocytophaga ochracea)及びカプノサイトファガ・スプチゲナ(Capnocytophaga sputigena));バルトネラ属(バルトネラ・バシリフォルミス(Bartonella bacilliformis)、バルトネラ・クラリッジア(Bartonella clarridgeiae)、バルトネラ・エリザベータ(Bartonella elizabethae)、バルトネラ・ヘンセラ(Bartonella henselae)、バルトネラ・キンタナ(Bartonella quintana)及びバルトネラ・ビンソニ・アルペンシス(Bartonella vinsonii arupensis));レプトスピラ属(例えば、レプトスピラ・ビフレキサ(Leptospira biflexa)、レプトスピラ・ボルグペテルセニ(Leptospira borgpetersenii)、レプトスピラ・イナダイ(Leptospira inadai)、レプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans)、レプトスピラ・キルシュネリ(Leptospira kirschneri)、レプトスピラ・ノグチ
(Leptospira noguchii)、レプトスピラ・サンタロサイ(Leptospira santarosai)及びレプトスピラ・ウェイリ(Leptospira weilii));スピリリウム(例えば、スピリリウム・ミヌス(Spirillum minus));バクテロイデス属(例えば、バクテロイデス・カッカエ(Bacteroides caccae)、バクテロイデス・カピロサス(Bacteroides capillosus)、バクテロイデス・コアグランス(Bacteroides coagulans)、バクテロイデス・ジスタソニス(Bacteroides distasonis)、バクテロイデス・エゲルチ(Bacteroides eggerthii)、バクテロイデス・フォルシタス(Bacteroides forsythus)、バクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)、バクテロイデス・メルダエ(Bacteroides merdae)、バクテロイデス・オバタス(Bacteroides ovatus)、バクテロイデス・プトレジニス(Bacteroides putredinis)、バクテロイデス・ピオジェネス(Bacteroides pyogenes)、バクテロイデス・スプランチニカス(Bacteroides splanchinicus)、バクテロイデス・ステルコリス(Bacteroides stercoris)、バクテロイデス・テクタス(Bacteroides tectus)、バクテロイデス・テタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)、バクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)、バクテロイデス・ウレオリティカス(Bacteroides ureolyticus)及びバクテロイデス・バルガタス(Bacteroides vulgatus));プレボテラ属(例えば、プレボテラ・ビビア(Prevotella bivia)、プレボテラ・ブッカエ(Prevotella buccae)、プレボテラ・コルポリス(Prevotella corporis)、プレボテラ・デンタリス(Prevotella dentalis)(ミツオケラ・デンタリス(Mitsuokella dentalis))、プレボテラ・デンチコラ(Prevotella denticola)、プレボテラ・ディシエンス(Prevotella disiens)、プレボテラ・エノエカ(Prevotella enoeca)、プレボテラ・ヘパリノリティカ(Prevotella heparinolytica)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、プレボテラ・ロエシ(Prevotella loeschii)、プレボテラ・メラニノゲニカ(Prevotella melaninogenica)、プレボテラ・ニグレセンス(Prevotella nigrescens)、プレボテラ・オラリス(Prevotella oralis)、プレボテラ・オリス(Prevotella oris)、プレボテラ・オーロラ(Prevotella oulora)、プレボテラ・タネラエ(Prevotella tannerae)、プレボテラ・ベノラリス(Prevotella venoralis)及びプレボテラ・ズーグレオフォルミス(Prevotella zoogleoformans));ポルフィロモナス属(例えば、ポルフィロモナス・アサカロリティカ(Porphyromonas asaccharolytica)、ポルフィロモナス・カンギンギバリス(Porphyromonas cangingivalis)、ポルフィロモナス・カノリス(Porphyromonas canoris)、ポルフィロモナス・カンサルシ(Porphyromonas cansulci)、ポルフィロモナス・カトニエ(Porphyromonas catoniae)、ポルフィロモナス・サーカムデンタリア(Porphyromonas circumdentaria)、ポルフィロモナス・クレビオリカニス(Porphyromonas crevioricanis)、ポルフィロモナス・エンドドンタリス(Porphyromonas endodontalis)、ポルフィロモナス・ギンギバリス(Porphyromonas gingivalis)、ポルフィロモナス・ギンギビカニス(Porphyromonas gingivicanis)、ポルフィロモナス・レビ(Porphyromonas levii)及びポルフィロモナス・マカカエ(Porphyromonas macacae));フソバクテリウム属(例えば、フソバクテリウム・ゴナディアフォルマンス(F. gonadiaformans)、フソバクテリウム・モルチフェラム(F. mortiferum)、フソバクテリウム・ナビフォルム(F. naviforme)、フソバクテリウム・ネクロジェネス(F. necrogenes)、フソバクテリウム・ネクロフォラム(F. necrophorum necrophorum)、フソバクテリウム・ネクロフォラム・ファンジリフォルム(F. necrophorum fundiliforme)、フソバクテリウム・ヌクレアタム・ヌクレアタム(F. nucleatum nucleatum)、フソバクテリウム・ヌクレアタム・フシフォルム(F. nucleatum fusiforme)、フソバクテリウム・ヌクレアタム・ポリモルファム(F. nucleatum polymorphum)、フソバクテリウム・ヌクレアタム・ビンセンチ(F. nucleatum vincentii)、フソバクテリウム・ペリオドンチカム(F. periodonticum)、フソバクテリウム・ルシ(F. russii)、フソバクテリウム・ウルセランス(F. ulcerans)及びフソバクテリウム・バリウム(F. varium));クラミジア属(例えば、クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis));クラミドフィラ属(例えば、クラミドフィラ・アボルタス(Chlamydophila abortus)(クラミジア・プシタシ(Chlamydia psittaci))、クラミドフィラ・ニューモニア(Chlamydophila pneumoniae)、クラミジア・ニューモニア(Chlamydia pneumoniae))及びクラミドフィラ・プシタシ(Chlamydophila psittaci)(クラミジア・プシタシ(Chlamydia psittaci)));ロイコノストク属(例えば、ロイコノストク・シトレウム(Leuconostoc citreum)、ロイコノストク・クレモリス(Leuconostoc cremoris)、ロイコノストク・デキストラニカム(Leuconostoc dextranicum)、ロイコノストク・ラクティス(Leuconostoc lactis)、ロイコノストク・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)及びロイコノストク・シュードメセンテロイデス(Leuconostoc pseudomesenteroides));及びゲメラ属(例えば、ゲメラ・ベルゲリ(Gemella bergeri)、ゲメラ・ヘモリサンス(Gemella haemolysans)、ゲメラ・モルビロラム(Gemella morbillorum)及びゲメラ・サンギニス(Gemella sanguinis))である。
【0089】
本発明の製品又は製剤を用いて処理することができる特定の細菌には、大腸菌(Escherichia coli)、クレブシエラ(Klebsiella)(例えば、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebs. pneumoniae)及びクレブシエラ・オキシトカ(Klebs. oxytoca))並びにプロテウス(Proteus)(例えば、プロテウス・ミラビリス(Pr. mirabilis)、プロテウス・レトゲリ(Pr. rettgeri)及びプロテウス・バルガリス(Pr. vulgaris))などの腸内細菌;エンテロバクター属、シュードモナス属及びアシネトバクター属などがある。好ましくは、その細菌は、大腸菌(Escherichia coli)、クレブシエラ(Klebsiella)(例えば、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebs. pneumoniae)及びクレブシエラ・オキシトカ(Klebs. oxytoca))並びにプロテウス(Proteus)(例えば、プロテウス・ミラビリス(Pr. mirabilis)、プロテウス・レトゲリ(Pr. rettgeri)及びプロテウス・バルガリス(Pr. vulgaris))などの腸内細菌、又はエンテロバクター属である。最も好ましくは、治療される細菌感染症は、大腸菌(Escherichia coli)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebs. pneumoniae)又はエンテロバクター属のうちの1以上によって引き起こされる感染症である。すべての実施形態において、併用療法は、単独摂取の組み合わせ成分の投与と比較して、相乗的である。
【0090】
本発明の医薬品及び医薬製剤は、(多)薬剤抵抗性((M)DR)細菌の治療において特に有用である。腸内細菌科に関しては、薬剤抵抗性は最も多くの場合、カルバペネマーゼに対して高められる。すなわちカルバペネマーゼ抵抗性株及び「拡張スペクトルβ-ラクタマーゼ」(ESBL)株、例えばニューデリー・メタロ-β-ラクタマーゼ-1(NDM-1)抵抗性クレブシエラ・ニューモニエ(Klebs. Pneumoniae)である。留意すべき点として、特許請求された組み合わせは最初に、(M)DR株の治療において機能的であることを示すことができるが、それらは次に非抵抗性株の治療でも用いることが可能である。これは、腸内細菌科の一次療法が、特許で保護されている高価な抗微生物薬であることから、本願で特許請求された組み合わせの趣旨が特に有益である。そのような「処方」薬を「ジェネリック」抗生物質の組み合わせに代えることは、治療的観点から、並びに政府が医療費削減を求めている時には財政的/経済的観点から有用であると考えられる。
【0091】
本発明の医薬品又は医薬製剤を用いて治療することができる特定の疾患には、膿瘍、骨・関節感染症、熱傷、膀胱炎、蓄膿症、心内膜炎、腸チフス、精巣上体炎、眼感染症、フルンケル、性器感染症、鼠径部肉芽腫、感染した火傷、歯科手術後の感染症、補綴具関連の感染症、腹腔内膿瘍、肝膿瘍、乳様突起炎、神経系の感染症、骨髄炎、睾丸炎、膵炎、骨盤腹膜炎、腹膜炎、虫垂炎に伴う腹膜炎、胸水、術後の創傷感染症、前立腺炎、腎盂腎炎、膿皮症(例えば、膿痂疹)、サルモネラ症、唾液腺炎、敗血症性関節炎、腸チフス、及び創傷感染症;又は大腸菌(Escherichia coli)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebs. pneumoniae)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebs. oxytoca)、プロテウス・ミラビリス(Pr. mirabilis)、プロテウス・レトゲリ(Pr. rettgeri)、プロテウス・バルガリス(Pr. vulgaris)による感染症などがある。
【0092】
本明細書において「治療」に言及する場合、それは既存の疾患若しくは症状の治療だけでなく、予防にも拡大して適用されることは明らかであろう。
【0093】
本発明の医薬品又は医薬製剤は、単位剤形で提供することができ、例えば“Remington: The Science and Practice of Pharmacy”, Lippincott Williams and Wilkins, 21st Edition, (2005)に記載のような製薬業界で公知のいずれかの方法によって調製することができる。好ましい実施形態では、医薬品は、本明細書に記載された本発明のプロセスに従って調製される。
【0094】
製造方法
本発明の各種実施形態において、本発明の医薬品は、本発明の方法に従って調製される。この方法では、上記で定義の治療上有効量のポリミキシン、上記で定義の治療上有効量のジドブジン、及び上記で定義の水性担体を混合して、溶液を作製する。この溶液を無菌濾過し、1以上のバイアルに移し、充填したバイアルを凍結乾燥させる。個々のバイアルの充填容量は、約10mL~約20mLである。
【0095】
成分(すなわち、ポリミキシン、ジドブジン及び水性担体)の添加は、当技術分野で公知の方法によって行うことができる。例えば、1以上の成分を互いに添加した後、混合のために共通の容器に入れることができるか、成分を特定の順序で共通の容器に添加することができるか、成分を同時に共通の容器に添加することができる。各種実施形態では、水性担体を容器に加えた後に、ポリミキシン及びジドブジンを加えることができる。各種実施形態では、ポリミキシンとジドブジンとを同時に添加する。他の実施形態では、ポリミキシンを最初に添加し、次いでジドブジンを添加する。
【0096】
成分はさらに、当技術分野で知られている方法で混合してもよい。例えば、成分は単純な混合によって混合することができるか、混合装置を用いて連続的、周期的、又はそれらの組み合わせで混合してもよい。混合装置には、磁気攪拌子、振盪機、パドルミキサー、ホモジナイザー、及びそれらの任意の組み合わせなどがあるが、これらに限定されるものではない。1以上の成分の添加及び混合は、制御された条件下で行うことができる。例えば、成分の添加及び混合は、窒素下や特定の湿度などの条件下で行うことができ、又は、添加及び混合は特定の温度下で行っても良い。特定の実施形態では、添加及び混合は、約5℃~約40℃の温度条件下で行うことができる。さらに、添加及び混合は、黄色光のような制御された光照射下で、又は光への直接曝露からの保護下で行うことができる。
【0097】
溶液を調製した後、滅菌又は無菌濾過によって滅菌する。例えば、0.2μm使い捨て滅菌済み膜フィルターその他の当業界で公知の好適なフィルターを用いて濾過することができる。滅菌溶液を1以上のあらかじめ滅菌されたバイアルに充填し、無菌的に栓を施した後、凍結乾燥する。
【0098】
凍結乾燥は、当技術分野でよく特徴付けられたフリーズドライプロセスである。それは、水が凍結し、代表的には2段階でサンプルから除去されるプロセスである。初めに、「一次乾燥」と呼ばれる工程では昇華が行われ、2番目に「二次乾燥」と呼ばれる工程では脱着が行われる。凍結乾燥製剤の大半で、凍結乾燥製品の機能的特性と安定性を向上させるために添加剤が含まれる。しかしながら、本発明では、そのような添加剤の使用は行わない。本発明のプロセスの一部として実施される凍結乾燥プロセスには、特に制限はなく、当業者が容易に決定できると考えられる。凍結乾燥されたら、バイアルは、約2℃~約10℃の温度で保存することができる。
【0099】
ここで、以下の非限定的実施例を参照して、本開示の例示を行う。
【実施例】
【0100】
実施例1:溶解度試験
実施例1の目的は、CMS又はコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムとジドブジンを含む混合製剤を提供することであった。CMSは不活性プロドラッグであり、非経口投与後に抗微生物剤ポリミキシンEの塩であるコリスチン硫酸塩に酵素的に加水分解される。抗レトロウイルス剤ジドブジンもプロドラッグであり、効果を発揮するためには三リン酸化される必要があり、抗生物質耐性破壊剤(ARB)として作用する。コリスチン硫酸塩とジドブジンは二つの登録薬であり、これらを組み合わせて一つの抗生物質配合剤とする必要がある。しかしながら、これは過去に例が全くなく、二つの活性物質の間に溶解性の不一致がある可能性を排除できないため、本発明者らは詳細な溶解性及び安定性試験を実施して、共通の相溶性のある溶媒を特定した。
【0101】
A)水性溶媒系中の溶解性及び安定性
両作用物質に共通する適合性の溶媒を特定するために、CMS、ジドブジン及びその組み合わせのスクリーニングを水性溶媒系で行った。酢酸塩及びリン酸塩からなる2成分緩衝液系(5mM酢酸塩及び5mMリン酸塩)を用いて、約4.5~7.5のpH範囲をカバーした。固体が完全に溶解した後、塩酸を用いてpHを所望のpH値に調節した。
【0102】
目標用量を、1バイアルあたりCMS400mg及びジドブジン200mgとし、凍結乾燥に適した適切な溶媒体積:10mL~20mLで物質を溶解した。目標濃度は、40mg/mL CMS(400mg/10mL)、20mg/mLジドブジン(200mg/10mL)とした。目標濃度で固体が溶解しない場合は、追加の緩衝液を加えて、20mg/mLCMS及び10mg/mLジドブジンの濃度を達成した。
【0103】
表1に示すように、サンプルを2~8℃及び25℃で24時間保存した時の、溶液中の活性物質の安定性について試験した。サンプルを、保存前及び保存後に、以下に記載のハイブリッドRP-HPLC法で分析した。
【0104】
【0105】
材料及び方法
実施例1Aで使用した材料を表2に列挙している。いずれも、商業的入手先から得たものである。
【0106】
【0107】
ジドブジン及びCMSの純度及び量を同時に定量するために、ハイブリッドRP-HPLC法を使用した。このハイブリッド法は、Baiらの報告(Bai et al., A simple HPLC method for separation ofColistimethate Sodium and Colistin sulphate, J Chromatograph Separat Techniq 2011:2(1))に記載されているCMSについてのRP-HPLC法を改良したものであった。この方法を、Baiら(その方法は参照により本明細書に組み込まれる)に従って行ってCMSを定量し、その後、ジドブジンを定量するために改良した。変更点は、分離能を高めてジドブジンの主ピークから不純物を分離するために、勾配を3%/分から1.5%/分に下げること、そして検出波長を214nmから265nmに上げることであった。下記のクロマトグラフィー条件を用いた。
【0108】
【0109】
移動相Aは、精製水1000mLにTFA 0.5mLを加えることで調製した。移動相Bは、ACN 1000mLにTFA 0.5mLを加えて調製した。サンプル及び原薬を、CMSについては2mg/mLで、ジドブジンについては1mg/mLで移動相Aに溶かした。
【0110】
結果及び結論
両方の活性剤を、すべてのpH値の水性溶媒系に溶かした。CMSを含むすべての溶液がpH7.1~7.8であったことから、CMSも、中性からやや塩基性のpH値で強い緩衝能力を示すことがわかった。ジドブジンは、溶液のpH値に影響を与えなかった。
【0111】
安定性スクリーニング時には、ジドブジンの分解生成物は全く認められなかった。ジドブジンは、水溶液中ではpH(4.5~7.5)とは無関係に安定であると思われる。25℃で24時間後にピークパターンがCMSバルク材料に相当することが認められた(
図1参照)ことから、CMSはpH7.5で最も安定であった。
【0112】
したがって、充填体積20mLの水性溶媒系は、CMS及びジドブジンの医薬製剤の有望な候補である。
【0113】
B)有機溶媒系での溶解性及び安定性
実施例1Aの結果を受けて、有機溶媒系でさらなるスクリーニングを行った。有機溶媒tert-ブタノール(TBA)の濃度を変化させることで、C、Z、及びC+Zのスクリーニングを行った。目標用量を、1バイアルあたりCMS240mg及びジドブジン200mgに設定した。有機溶媒に基づく系の使用を正当化するのに適した容量に物質を溶解した(バイアルあたりの充填量を4分の1に減らし、有機溶媒に基づく系では~5mLまでの充填容量)。サンプルについて、2~8℃及び25℃で24時間保存した場合の溶液でのAPIの安定性の試験を行い、上記のハイブリッドRP-HPLC法により、貯蔵前及び貯蔵後でサンプルを分析した。クロマトグラフィー条件は、実施例1Aについて上述のものと同じであった。
【0114】
材料
下記の材料を用いた(表3)。いずれの材料も、商業的入手先から得た。
【表5】
【0115】
結果及び結論
溶解性試験で、TBA濃度を20%(重量)~60%(重量)で4段階に変化させた。目標濃度は、48mg/mL CMS(240mg/5mL)及び40mg/mLジドブジン(200mg/5mL)であった。
【0116】
CMSは、5mLですべてのTBA濃度で溶解することが認められた。固体は数分以内で溶解した。ジドブジンは、20%TBA溶液5mLには溶解しなかったが(撹拌下で30分間固体を溶解させた)、30%、50%及び60%TBA 5mLには溶解した。CMSとジドブジンの混合物についても、ジドブジン単独の場合と同様の結果が認められた(30%、50%及び60%のTBA 5mLにすべての固体が完全に溶解した)。
【0117】
安定性試験では、TBA含有量が30%、50%、60%TBAのC+Z溶液を、調製後、それぞれ常温及び5℃で24時間保存した後にモニタリングした。混合C+Z溶液の安定性スクリーニング時に25℃及び5℃のいずれにおいても、ジドブジンの分解生成物は観察されなかった。30%TBAで、5℃での若干の沈殿がバイアル内で肉眼で観察された。しかしながら、ジドブジン及びCMSのピーク面積は、ハイブリッドRP-HPLCでは変化しなかった。最も可能性が高いのは、低温での30%TBA中の溶解度が相対的に低いために、ジドブジンが沈殿したというものである。沈殿したジドブジンの量が非常に少ないため、RP-HPLCで定量できなかった。
【0118】
残念ながら、TBAベースの溶媒系に溶解した混合C+Z DP中のCMSからのピークパターンは、水に溶解したCMS基準との相違を示した。TBAベースの溶媒系に溶かしたCMSのピークパターンが異なる理由は、TBA中では水中とは異なるメタンスルホン酸誘導体が生成/存在することにあると考えられたが、これは明確ではなく、さらにピーク評価を行っても検証はできなかった。
【0119】
実施例2:有機溶媒系による凍結乾燥
有機溶媒系がC+Zの凍結乾燥物の製造に適しているか否かを判断するために、TBA/水混合液に溶かしたC+Zの組み合わせについて凍結乾燥試験を行った。表4に記載の製剤を凍結乾燥した。
【0120】
【0121】
製剤を混ぜ合わせ、洗浄及び加熱滅菌した20Rガラスバイアルに充填した。充填したバイアルを、オートクレーブ処理及び乾燥させた凍結乾燥ストッパーで栓を施し、凍結乾燥バッグに入れて密封し、凍結乾燥機に入れた。サンプルを、適切な凍結乾燥サイクルを用いて凍結乾燥した。各バリアントにつき10個のバイアルを用意した。チャンバ圧力を、オンラインデータ取得を介してモニタリング及び記録して、昇華の終了を検出した。その後、凍結乾燥直後に(T0)、分解プロファイルによってサンプルを分析した。
【0122】
材料
表5に、実施例2で使用した材料を列記している。いずれも商業的入手先から得たものである。
【0123】
【0124】
方法
遊離コリスチンの測定:
遊離コリスチンの測定は、欧州薬局方9.5(07/2017:0319)に従って行った。
【0125】
硫酸ヒドラジン溶液の調製:
硫酸ヒドラジン1.0gを精製水に溶解し、同じ溶媒で希釈して100.0mLとし、4~6時間放置した。
【0126】
ヘキサメチレンテトラミン溶液の調製:
ヘキサメチレンテトラミン2.5gを精製水25.0mLに溶かし、100mLガラス栓付きメスフラスコに入れた。
【0127】
一次乳白色懸濁液の調製:
メスフラスコ中のヘキサメチレンテトラミン溶液に硫酸ヒドラジン溶液25.0mLを加えて混合し、24時間放置した。
【0128】
乳白色に関する標準の調製:
一次乳白色懸濁液15.0mLを精製水で希釈して1000.0mLとした。この懸濁液を新たに調製し、最長24時間保存した。
【0129】
基準懸濁液の調製:
濁度計の校正のために、表6にしたがって基準懸濁液を調製した。
【0130】
【0131】
欧州薬局方9.5による遊離コリスチンのアッセイ:
CMS 240mgを含む凍結乾燥物1個を精製水10mLに溶かした。CMS BDS 80mgを精製水3mLに溶解することでCMS BDSを分析した。完全に溶解した後、100g/mLタングストケイ酸0.1mLを試験サンプル(復元凍結乾燥物又は溶解したBDS)3mLに加えた。試料の濁度を10秒~20秒後に記録した。溶液は、濁度は乳白色IIの標準より著しく高くてはならない。
【0132】
フリーズドライ手順:
精製水でバイアルを洗浄した。その後、バイアルを乾燥させ、熱処理したストッパーをオートクレーブ処理し、その後乾燥した。製剤したバルク溶液を上記の表4に従って配合した。CMS及びジドブジンをビーカーに入れて秤取した。TBA/水の混合物を加えた。完全な溶解が観察されるまで、溶液を周囲温度で撹拌した。バイアルに、ピペットによって製剤バルク溶液5gを充填した。ストッパーを手動で凍結乾燥位置に置いた。製品バイアルをステンレス製ラック上に置き、凍結乾燥バッグに入れて密封し、凍結乾燥機に入れた。ドーシングバルブ及び真空バルブを用いる圧力計を介して圧制御を行った。表7に記載したフリーズドライサイクルを行った。
【0133】
【0134】
凍結乾燥サイクルの完了後、凍結乾燥チャンバを窒素で750mbarまで排気し、リオシェルフ(lyo-shelves)を互いに折り畳むことでバイアルを閉じた。大気圧まで排気した後、バイアルを取り出し、キャップを施し、5℃で保存した。
【0135】
結果
有機溶媒系中の試験凍結乾燥の凍結乾燥物を、遊離コリスチンについて分析した。表8に、得られた結果の概要を示す。
【0136】
【0137】
どちらの凍結乾燥物も(50%TBA及び60%TBA)、かなりの量の遊離コリスチンを含んでおり、それは、どちらも商業的に使用できる安定した製品ではないことを意味している。
【0138】
結論
有機溶媒ベースの凍結乾燥物における遊離コリスチンのレベルは許容できないものであった。従って、TBA溶媒系は組み合わせ医薬品には適さない。
【0139】
CMSは、3.5mM(約5.7mg/mL)以上の水溶液中でミセルを形成するため、加水分解に対して安定であることが当業者に知られている(Wallace SJ, Li J, Nation RL, Prankerd RJ, Velkov T, Boyd BJ.Colistin and its prodrug Colistin Methansulfonate, Self-Assembly behavior of Colistin and its prodrug Colistin Methansulfonate: Implications for solution stability and solubilization, J Phy. Chem B, 2010; 114, p.23.Chem B, 2010; 114, p.4836-4840)。この濃度以下では、CMSのコリスチンへの急速な加水分解が観察されている(Wallace SJ, Li J, Rayner CR, Coulthard K, Nation RL. Wallace SJ, Li J, Rayner CR, Coulthard K, Nation RL. Stability of Colistin Methanesulfonate in Pharmaceutical Products and Solutions for Administration to Patients. Antimicrob. Agents Chemother, 2008, p. 3047-3051)。
【0140】
いずれかの理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、凍結乾燥溶液に含まれる有機溶媒TBAが、CMSの臨界ミセル濃度(CMC)をより高濃度に切り替え、その結果、有機凍結乾燥溶液中のCMSが48mg/mLの使用濃度で加水分解に対して不安定になると考えた。50%TBA/水及び60%TBA/水の混合液について得られたデータに基づき、有機溶媒ベースの凍結乾燥溶液を使用して医薬を含むCMSを凍結乾燥することはできない。
【0141】
実施例3:水性溶媒系を用いる凍結乾燥
実施例3では、水性ベースの溶媒システムを用いた混合医薬品のフリーズドライ品の可能性を検討した。製剤を配合し、洗浄及び加熱殺菌した30Rガラスバイアルに充填した。充填したバイアルを、オートクレーブ処理及び乾燥させた凍結乾燥ストッパーで栓を施し、凍結乾燥バッグに入れて密封し、凍結乾燥機に入れた。サンプルを、実施例2と同じ凍結乾燥サイクルを用いて凍結乾燥した。各バリアントにつき10個のバイアルを用意した。チャンバ圧力を、オンラインデータ取得を介してモニタリング及び記録して、昇華の終了を検出した。凍結乾燥直後に(T0)、復元速度及び挙動;CMSとジドブジンの欧州薬局方による分解プロファイル;及び一般的なカールフィッシャーオーブン法による残留水分量について、サンプルの分析を行った。
【0142】
材料
表9に、実施例3で使用した材料を列記している。いずれの材料も、商業的入手先からのものであった。
【0143】
【0144】
方法
CMS-Naの関連物質のRP-HPLC:
CMS-Naの関連物質のRP-HPLC法を、欧州薬局方9.5(07/2017:0319)に従って実施した。以下のクロマトグラフィー条件を用いた。
【0145】
【0146】
0.05Mリン酸緩衝液pH6.5の調製:
リン酸二水素ナトリウム・2水和物7.8gを精製水約900mLに溶かした。15%水酸化ナトリウム水溶液でpHを6.5に調節した。最後に、溶液を精製水で1000mLまで満たし、0.22μm膜フィルターで濾過した。
【0147】
移動相Aの調製:
アセトニトリル25mLを0.05Mリン酸緩衝液pH6.5 475mLに加えた。
【0148】
移動相Bの調製:
アセトニトリル250mLを0.05Mリン酸緩衝液pH6.5 250mLに加えた。
【0149】
サンプル液及び基準液の調製:
CMS-Na 24mgを精製水1mLに溶かし、サンプル液と基準液を調製した。溶解直後に、溶液をメタノールで2mg/mLに希釈した。
【0150】
遊離コリスチンの測定:
遊離コリスチンの測定は、欧州薬局方9.5(07/2017:0319)に従って行った。硫酸ヒドラジン溶液、ヘキサメチレンテトラミン溶液、一次乳白色懸濁液、乳白色の標準、及び基準懸濁液を実施例2に記載の方法に従って調製した。また、遊離コリスチンのアッセイも、実施例2に準じて準備した。
【0151】
ジドブジンのRP-HPLC法:
ジドブジンの量及び純度についてのRP-HPLCクロマトグラフィーを、モノグラフ欧州薬局方9.5(01/2017:1059)に従って実施した。分析には以下のクロマトグラフィー条件を用いた。
【0152】
【0153】
移動相Aの調製:
移動相Aを、酢酸アンモニウム2gを精製水800mLに溶解して調製し、酢酸でpHを6.8に調節した。この溶液を精製水で1リットルとした。
【0154】
希釈液の調製:
移動相A 76mLにACN 4mLとメタノール20mLを混合することで希釈液を調製した。
【0155】
サンプル液及び基準液の調製:
試料溶液を、ジドブジン1mgを希釈液1mLに溶解して調製した。基準液A:不純物C 2mgと不純物B 2mgを希釈液50mLに溶かした。この溶液1mLを希釈液19mLで希釈した。系適合性溶液:SST用ジドブジン5mg(不純物A、不純物G、不純物Hを含む)を基準液A 5mLに溶かした。
【0156】
カールフィッシャー滴定:
対応する凍結乾燥物50~150mgをガラスバイアル中に秤取し、それをクリンプキャップで密封した。この試料を、100℃に加熱したカールフィッシャー電量計(756/774、Metrohm)のオーブンに移した。キャップの隔壁を注射針で貫通させ、発生した水蒸気を、乾燥窒素を介して、カールフィッシャー電量計の滴定チャンバに直接移し入れた。1バリアント当たり2個のバイアルを用いて、バイアル当たり2個のサンプルを分析した。空のガラスバイアルを、ブランク補正に用いた。
【0157】
復元挙動:
精製水10mL/20mLを加えることで、凍結乾燥物の溶解挙動をモニタリングした。復元プロセスを、溶解時間及び挙動についてモニタリングした。
【0158】
フリーズドライ手順:
精製水でバイアルを洗浄した。その後、バイアルを乾燥させ、加熱処理した。ストッパーをオートクレーブ処理し、その後乾燥させた。製剤バルク溶液は、表10に従って配合した。CMS及びジドブジンをビーカーで秤取した。水を加えた。溶液を、完全な溶解が観察されるまで常温で撹拌した。
【0159】
【0160】
バイアルに、製剤バルク液20mLをピペットで充填した。ストッパーを、手動で凍結乾燥位置に設置した。製品バイアルをステンレス製ラック上に置き、凍結乾燥バッグに密封し、凍結乾燥機に入れた。圧力制御を行った後、昇華終了後に一次乾燥を終了したことを除いて、実施例2と同じ凍結乾燥サイクルを行った。凍結乾燥サイクルの終了後、フリーズドライチャンバを窒素で750mbarまで排気し、バイアルを閉じた。大気圧まで排気した後、バイアルを取り出し、キャップを施し、5℃で保存した。
【0161】
結果
残留水分
表11は、凍結乾燥物の残留水分量の概要を示している。
【0162】
【0163】
水サンプルは、1.0%以下の非常に低い水分量を示した。
【0164】
復元挙動
透明溶液を得るためには、復元容量20mLが必要であった。
【0165】
欧州薬局方の方法を用いる凍結乾燥物の分析
(i)ジドブジンの関連物質
凍結乾燥水溶液中の試験凍結乾燥の凍結乾燥物を、ジドブジンの関連物質についての方法を用いて分析した。得られた結果を示す。
【0166】
【0167】
凍結乾燥したジドブジンの純度は、基準標準と同等である。これは、凍結乾燥プロセスの際にジドブジンが安定していることを示している。
【0168】
(ii)CMSの関連物質及び組成物
凍結乾燥水溶液中の試験凍結乾燥の凍結乾燥物を、CMS-Naの関連物質及び組成物についての方法を用いて分析した。凍結乾燥中、ピークパターンは変化しないままであった。
【0169】
(iii)凍結乾燥物中の遊離コリスチン
水性系での試験凍結乾燥の凍結乾燥物を、遊離コリスチンについて分析した。表には、得られた結果の概要が示している。
【0170】
【0171】
表13は、凍結乾燥物がいかに少量の遊離コリスチンを含むかを示しているが、これらの量は乳白色IIの標準をわずかに上回る程度であり、実施例2の有機溶媒系に比べて著しく低下している。これは、水性溶媒系が有機溶媒系と比較して改善されており、CMS及びジドブジンの有用な調製物を提供することを示している。
【0172】
結論
驚くべきことに、本発明者らは、水性溶媒系を用いてCMSとジドブジンの組み合わせ剤を調製することができ、この溶媒系は有機溶媒系に比べて遊離コリスチンレベルが向上したことを見出した。水性溶媒系からの得られた凍結乾燥物の品質特性はすべて満足できるものであり、遊離コリスチンアッセイは、有機溶媒系に勝る大幅な改善を示した。
【0173】
実施例4:凍結乾燥物安定性試験
凍結乾燥物の貯蔵安定性を測定するために、実施例3の凍結乾燥物に対して以下のプロトコールを実施した。
【0174】
【0175】
Aによって示される各時点での試験には、溶解度、可視粒子、Zの同定、Zのアッセイ、CMSの同定及びCMSのアッセイを含んでいた。Bによって示される各時点で、時間点Aについて示された特性に加えて、次の特性:pH、及び滅菌性を評価した。25℃±2℃及び60%±5%RHで3ヵ月後、凍結乾燥物は水に容易に可溶であり復元時間は29秒で、目に見える粒子は含まれていなかった。HPLC及びアッセイの結果を表15~16に示す。
【0176】
【0177】
【0178】
安定性データによると、本医薬品は、制御された室温(25℃)及び加速条件(40℃)で少なくとも3ヶ月間にわたり規格内であることが予想される。
【0179】
実施例5:輸液安定性試験
実施例5は、復元及び輸液による希釈後の凍結乾燥物の安定性を調べるものである。2つの輸液(0.9%NaCl及び5%グルコース)、2つの保存条件(+2~+8℃及び+20℃~+25℃)、及び4つの時間点(0時間(T0)、6時間(T1)、24時間(T2)、30時間(T3))の試験を行った。輸液を調製するために、最初に、実施例2からの凍結乾燥物を滅菌水20mLで復元した。その後、その溶液をそれぞれの輸液に加えた。詳細は以下の通りである。
【0180】
同時係属出願GB1910777.0に開示されている微生物アッセイ方法を用いることで安定性をモニタリングした。アッセイ設計のために、無作為化ブロック設計を用いて、6個のシャーレのそれぞれで試験サンプル及び標準の3回処理を行った。平行線モデルを用いる欧州薬局方5.3(Statistical Analysis of Results of Biological Assays and Tests)を用いて、データ評価を行った。一般的に、アッセイに使用される試験溶液中のCMS活性は、標準溶液中のCMS活性と同じでなければならない。そのアッセイ用の微生物はシュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)ATCC27853であった。標準液はコリスチメテートナトリウムCRSであった。
【0181】
得られた溶液中のCMSの予想される活性は、100mL中3,075,000IU=30,750IU/mLであった。微生物アッセイに使用された溶液T3中のCMSの活性は12,300IU/mLでなければならないことから、輸液を希釈した。この希釈には、リン酸二水素一カリウム、水酸化ナトリウム及び滅菌水から調製したpH6.0の緩衝液を使用した。すべての溶液(T3、T2、T1)について溶媒を同じにするために、水、輸液、緩衝液pH6.0の同じ混合液を用いて、さらなる希釈段階を実施した(以下、「連続希釈液」と呼ぶ)。詳細は以下の通りである。
【0182】
原液及び基準液/標準液の調製
標準原液(SL-S)を調製するため、1バイアルのコリスチメテートナトリウムの全内容物を滅菌水2.0mLに完全に溶解した。IU/バイアル単位の認証された活性は285,000IU/バイアルであり、これは、この溶液が約142,500IU/mLのCMSを含んでいたことを意味する。標準原液は、各時間点について新鮮に調製した。
【0183】
標準溶液S0は、SL-S 0.9mLと輸液3.6mL(0.9%NaCl又は5%グルコースのいずれか)を混合して調製した。S0の期待活性は約28,500IU/mLのCMSであった。S0溶液2.2mLを緩衝液pH6.0を用いて5.0mLに希釈することで、標準溶液S3を調製した。得られた溶液S3は、約12,540IU/mLのCMSを含んでいた。標準溶液S2は、S3溶液2.0mLと連続希釈用溶液2.0mLを混合することで調製して、期待活性6,270IU/mL CMSを得た。標準溶液S1は、溶液S2 2.0mLと連続希釈用溶液2.0mLを混合することで調製して、期待活性3,135IU/mL CMSを得た。
【0184】
輸液の調製
試験液T0は、凍結乾燥形態の組み合わせ品を含む4本のバイアルに滅菌水20mLを加えることで調製した。組み合わせ品は、CMSとジドブジンからなるものであった。内容物を溶解した後、期待活性153,750IU/mL CMSを有する復元溶液を得た。
【0185】
復元溶液20mLをそれぞれのバイアルから取り出し、滅菌NaCl輸液80mL又は滅菌5%グルコース輸液80mLのいずれかに加えた。得られた溶液T0の期待活性は、約30,750IU/mL CMSであった。
【0186】
輸液の調製後直ちに、各バイアルから約10mLを取り出し、後述の4種類の試験液の調製に使用した。輸液の他の部分は、2~8℃又は20~25℃のいずれかで保存した。輸液の調製から6時間後、24時間後及び30時間後に、保存溶液から約10mLを取り出し、後述の試験溶液の調製に使用した。
【0187】
組み合わせ品の試験液の調製
四つのT0溶液(又は6、24又は30時間後にサンプリングした溶液)のそれぞれ4.0mLを、緩衝液pH6.0を用いて希釈して10.0mLとした。得られた溶液T3の期待活性は、約12,300IU/mL CMSであった。
【0188】
溶液T2は、T3溶液3.0mLと連続希釈用溶液3.0mLを混合して調製して、期待活性約6,150IU/mLを有する溶液を得た。溶液T1は、溶液T2 2.0mLと連続希釈用溶液2.0mLを混合することで調製して、期待活性約3,075IU/mLを有する溶液を得た。
【0189】
試験微生物の接種液の調製
P.エルギノーザ(P. Aeruginosa)ATCC27853グリセロール原液100μLをCasoブイヨン5mLに接種し、30~35℃で18~24時間終夜培養した。終夜培養液の微生物カウントを、混釈平板法を用いて同定した。終夜培養液から一連の10倍希釈液を調製し、これらの希釈液から10-6及び10-7 100μLを取り、それぞれを滅菌シャーレに入れた。溶融した冷却寒天をシャーレに注ぎ、混合した。寒天の固化後、プレートを反転させ、30~35℃で24~72時間インキュベートした。その間、終夜培養物を2~8℃で保存した。培養後、微生物カウントを測定し、終夜培養物から微生物カウントほぼ1×107CFU/mLの接種液を調製した。
【0190】
寒天プレートの準備
1日当たり、二つの時間点(0時間と6時間、並びに24時間と30時間)、二つの輸液(各試験点及についてそれぞれ0.9%NaCl及びグルコース)、及び二つの培養温度(各試験点及び輸液について2~8℃と20~25℃)を試験した。各条件で、6枚のプレート(φ14.5cm)が必要であり、これにより、1日あたり48枚プレートとなった(試験全体では96枚のプレート)。
【0191】
培地Caso-寒天を、当技術分野で知られている方法に従って調製した。固体培養物の入ったフラスコを液化し、45~55℃で温調した。P.エルギノーザ(P. Aeruginosa)の接種物(約1×107CFU/mL)2mLを、温調した培地の各フラスコにピペットで入れ、十分に混合した。寒天プレートの準備のために、液化して接種された培地57mLを測定し、48個のシャーレのそれぞれに移した。すべてのプレートを室温で少なくとも1時間正確に水平にして、寒天を固化させた。滅菌したバイオプシーパンチを用いて、48枚の寒天プレートそれぞれに直径6mmの空洞を七つ作り、プレートを翌日まで2~8℃で保存した。
【0192】
手順
各時点(0hを含む)について、サンプル溶液T1、T2、T3 50μL並びに標準溶液S1、S2、S3 50μLを24枚の寒天プレートそれぞれの空洞にピペットで入れた。各プレートの中央の空洞には、緩衝液50μLをピペットで入れた。前拡散のために、プレートを室温で3時間にわたり正確に水平にした。その後、すべての寒天プレートを30℃~35℃で18時間培養した。インキュベーション後、阻害ゾーンをmm単位で最も近い0.1mmまで測定し、欧州薬局方5.3.に従って評価した。
【0193】
結果
サンプルの微生物活性の計算を、平行線モデルを用いて欧州薬局方5.3に記載されている生物アッセイの結果の統計解析に基づいて行い、アッセイのブロック設計を無作為化した。これらの結果を、下記の表17~20で、有効数字3桁まで示す。
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
これらの結果は、冷蔵であるか室温であるかに関わらず、すべての溶液が6時間まで安定であったことを示している。冷蔵溶液はまた、30時間まで安定であった。室温サンプルは24時間まで安定であった。この安定性は、CMS単独の場合と同等であり、それは、保存は室温条件で6時間以内、冷蔵条件で24時間以内とするという説明書を輸液に添付すべきであることを意味している。
【0199】
本発明の範囲及び主旨から逸脱しない限りにおいて、本発明の様々な改変及び変形形態が、当業者に明らかであろう。本発明を特定の好ましい実施形態に関連づけて説明してきたが、特許請求される発明はそのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことは理解されるべきである。実際、化学又は関連する分野の当業者にとって明らかな、記載された本発明を実施するための態様の様々な改変は、添付の特許請求の範囲に包含されるものである。
【0200】
略称
ACN:アセトニトリル
ARB:抗生物質耐性破壊剤
API:医薬有効成分
BDS:医薬原体
CMC:臨界ミセル濃度
CMS:コリスチメテートナトリウム
C:CMS/コリスチメテートナトリウム
DP:医薬品
DS:医薬物質
EMA:欧州医薬品庁
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
HS-GC:ヘッドスペースガスクロマトグラフ
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
LC-MS:液体クロマトグラフィー-質量分析
RP-HPLC:逆相高速液体クロマトグラフィー
RT:保持時間
SD:標準偏差
TBA:tert-ブタノール
TFA:トリフルオロ酢酸
USP:米国薬局方
Z:ジドブジン
【国際調査報告】