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特表2022-542401光硬化性組成物をベースとするネイルコーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-03
(54)【発明の名称】光硬化性組成物をベースとするネイルコーティング
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20220926BHJP
   C08F 285/00 20060101ALI20220926BHJP
   A61Q 3/02 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C08F290/06
C08F285/00
A61Q3/02
A61K8/81
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506218
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(85)【翻訳文提出日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 IB2020000654
(87)【国際公開番号】W WO2021019306
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】62/880,684
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・マクニール
(72)【発明者】
【氏名】リン・リ
【テーマコード(参考)】
4C083
4J026
4J127
【Fターム(参考)】
4C083AC892
4C083AD072
4C083AD091
4C083AD092
4C083CC28
4J026AA45
4J026AA68
4J026AC15
4J026AC31
4J026AC32
4J026AC34
4J026BA27
4J026BA28
4J026BA30
4J026BA50
4J026BB02
4J026DB06
4J026DB36
4J026FA05
4J127AA03
4J127BB031
4J127BB091
4J127BB221
4J127BC021
4J127BD411
4J127BG271
4J127BG27Y
4J127CB151
4J127CB152
4J127CB343
4J127CC021
4J127CC092
4J127DA48
4J127EA13
4J127FA46
(57)【要約】
a)少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化モノマー、b)少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化オリゴマー、c)少なくとも1種のコア/シェルコポリマーの粒子及びd)少なくとも1種の光開始剤を含む光硬化性組成物は、爪に耐久性のある耐衝撃性コーティングを形成するのに有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪のコーティングであって、前記コーティングが、光硬化性組成物の光硬化物であり、前記光硬化性組成物が、
a).少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化モノマーと、
b).少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化オリゴマーと、
c).少なくとも1種のコア/シェルコポリマーの粒子と、
d).少なくとも1種の光開始剤と
を含む、爪のコーティング。
【請求項2】
前記コア/シェルコポリマーが、0℃未満のガラス転移温度を有するエラストマー性ポリマーを含むコアと、少なくとも30℃のガラス転移温度を有する非エラストマー性ポリマーを含む少なくとも1つのシェルとで構成される、請求項1に記載のコーティング。
【請求項3】
前記少なくとも1種のコア/シェルコポリマーの粒子が、a)及びb)で構成される液体マトリックス中に懸濁されている、請求項1又は2に記載のコーティング。
【請求項4】
前記少なくとも1種のコア/シェルコポリマーの粒子が、25~900nmの平均粒径を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項5】
前記光硬化性組成物が、前記光硬化性組成物の質量に対して、合計で0~20質量%の少なくとも1種の非反応性溶媒で構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項6】
前記光硬化性組成物が、前記光硬化性組成物の総質量に対して、1~60質量%、5~55質量%、又は10~50質量%の前記少なくとも1種のコア/シェルコポリマーの粒子で構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項7】
前記少なくとも1つのシェルが、重合した形態で、C1~C12アルキル鎖を有するメタクリル酸アルキル、C6~C12ビニル芳香族有機化合物、アクリロニトリル及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含み、前記シェルが、架橋されていてもよい、請求項1から6のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項8】
前記少なくとも1つのシェルが、重合した形態で、メタクリル酸メチルを含み、前記シェルが、架橋されていてもよい、請求項1から7のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項9】
前記コアが、重合した形態で、C4~C12共役ジエン及びC1~C12アクリル酸アルキルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項10】
前記コア/シェルコポリマーが、
a)重合した形態のアクリル酸ブチルで構成されるコアと、重合した形態のメタクリル酸メチルで構成されるシェルとを含むコア/シェルコポリマー、並びに
b)共重合した形態のスチレン及びブタジエンで構成されるコアと、重合した形態のメタクリル酸メチルで構成されるシェルとを含むコア/シェルコポリマー
からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項11】
前記コアが、前記コア/シェルコポリマーの総質量の60質量%~95質量%である、請求項1から10のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項12】
前記少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化モノマーが、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、メタクリル酸イソボルニル、ポリエチレングリコールジメタクリレート及びトリメチロールプロパントリメタクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項13】
前記少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化オリゴマーが、少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化ウレタンオリゴマーを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項14】
前記少なくとも1種又は複数の光開始剤が、光硬化性組成物の総質量に対して、0.1~5%の総量で存在する、請求項1から13のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項15】
前記光硬化性組成物が、25℃で100~5,000,000cpsの粘度を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項16】
前記光硬化性組成物が、コア/シェルコポリマーではない少なくとも1種の(メタ)アクリルポリマーで更に構成される、請求項1から15のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項17】
面積当たりのエネルギー損失によって測定される25℃で少なくとも15J/mの衝撃強さを有する、請求項1から16のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項18】
爪が、ヒトの指の爪又は足指の爪である、請求項1から17のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項19】
a)光硬化性組成物を爪の表面に配置する工程と、
b)光硬化性組成物を紫外光又は可視光に曝露する工程と
を含む、爪にコーティングを形成する方法であって、
前記光硬化性組成物が、少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化モノマー、少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化オリゴマー、少なくとも1種のコア/シェルコポリマーの粒子、及び少なくとも1種の光開始剤を含む、方法。
【請求項20】
前記光硬化性組成物が、爪の表面に配置され、光硬化される前に連続層に形成される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
容器及び容器内に配置された光硬化性組成物を含む包装物品であって、前記包装物品が、容器から光硬化性組成物を分注することができる分注部品を有し、前記光硬化性組成物が、少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化モノマー、少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化オリゴマー、少なくとも1種のコア/シェルコポリマーの粒子、及び少なくとも1種の光開始剤を含む、包装物品。
【請求項22】
前記容器が、チューブ、瓶又はシリンジである、請求項21に記載の包装物品。
【請求項23】
前記分注部品が、ブラシ、フォームアプリケータ、芯、ノズル、ローラー、針又はアパーチャである、請求項21又は22に記載の包装物品。
【請求項24】
容器及び容器内に配置された光硬化性組成物を含む包装物品と、少なくとも1つの塗布器具と、前記光硬化性組成物を分注、塗布、及び硬化してネイルコーティングを提供するための使用説明書とを含むキットであって、前記光硬化性組成物が、少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化モノマー、少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化オリゴマー、少なくとも1種のコア/シェルコポリマーの粒子、及び少なくとも1種の光開始剤を含む、キット。
【請求項25】
前記少なくとも1つの塗布器具が、ブラシ、プッシャー、又はスパチュラのうちの少なくとも1つを含む、請求項24に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃改質コア/シェルコポリマーを含み、強化された機械的特性及び耐久性を有する特定の光硬化性組成物から得られるネイルコーティング、そのような光硬化性組成物からネイルコーティングを形成する方法、そのような光硬化性組成物が含まれる容器を含む物品、並びに包装された光硬化性組成物及びそれからネイルコーティングを作製するための使用説明書を含むキットに関する。
【背景技術】
【0002】
アクリルネイル配合物は周知であり、ユーザーが配合物を様々な形状に成形できるようにすることで、爪(例えば、ヒトの指の爪や足指の爪)の外観を向上させるのに役立つことができる。従来のアクリルネイル配合物は、1)光架橋性液体モノマー及び2)活性剤/開始剤を含むアクリルポリマー粉末の2つの部分で構成されている。2つの成分は、共に混合されて爪に塗布され、様々な道具を使用してネイリストによって成形及び彫刻される。このような従来の配合物で作られたアクリルネイルは、もろく、衝撃強さが低い場合がある。消費者は、アクリルネイルに対して耐久性があり、ひび割れ、破損、欠け、又はさもなければ外観の劣化なしに長期間外力に耐えることができることを期待しているため、耐衝撃性は、ネイル装飾の状況では重要である。
【0003】
近年、光硬化性オリゴマー、光硬化性モノマー、顔料、及び場合によっては1つ又は複数の他の添加剤を含む1液系である新しい種類のネイル配合物が開発された。このような配合物は、通常、従来のマニキュア液と同様の粘度を有し、従来のマニキュア液とほぼ同じ方法で爪の表面に塗布し、紫外(UV)線を使用してその場で硬化させ、一般的に14日まで継続することができる保護/装飾コーティングを施すことができる。このような配合物は、「UVジェルポリッシュ」と呼ぶことができ、例えば、米国特許第8901199(B2)号、米国特許第8367742(B2)号、及び米国特許第9084738(B2)号に記載されている。UVジェルポリッシュ及び従来のアクリルネイル配合物をベースとするハイブリッド変形形態が開示されており、該UVジェルポリッシュ配合物は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)をベースとする粉末等のポリマー粉末によって補足される。このような粉末は、少なくとも1ミクロン(すなわち、少なくとも1000nm)の粒径を有する。例えば、米国特許第6244274(B2)号、米国特許出願公開第2018/0092827(A1)号及びWO2017/217983A1を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8901199(B2)号
【特許文献2】米国特許第8367742(B2)号
【特許文献3】米国特許第9084738(B2)号
【特許文献4】米国特許第6244274(B2)号
【特許文献5】米国特許出願公開第2018/0092827(A1)号
【特許文献6】WO2017/217983A1
【特許文献7】米国特許第4,180,494号
【特許文献8】米国特許第3,808,180号
【特許文献9】米国特許第4,096,202号
【特許文献10】米国特許第4,260,693号
【特許文献11】米国特許第3,287,443号
【特許文献12】米国特許第3,657,391号
【特許文献13】米国特許第4,299,928号
【特許文献14】米国特許第3,985,704号
【特許文献15】米国特許第5,773,520号
【特許文献16】WO 2016/102666
【特許文献17】US 2017/0369696
【特許文献18】WO 2017/121749
【特許文献19】WO 2017/121750
【特許文献20】WO 2017/220791
【特許文献21】WO 2018/002259
【特許文献22】WO 2018/002260
【特許文献23】WO 2018/002273
【特許文献24】FR 17 56649
【特許文献25】FR 17 56647
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ネイルコーティング技術のそのような進歩にもかかわらず、硬化した際に、強化された耐久性及び衝撃力等の外力に対する抵抗性をネイルコーティングに提供する改良された配合物が、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも以下の成分、
a).少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化モノマーと、
b).少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化オリゴマーと、
c).少なくとも1種のコア/シェルコポリマーの粒子と、
d).少なくとも1種の光開始剤と
を含む光硬化性組成物を利用する。
【0007】
このような組成物は、透明でも着色されていてもよく、1液系として使用できるように配合されており、すなわち、第1の成分を第2の成分と混合させる必要なしに、配合物が爪の表面に塗布され、次いで化学線放射(例えば、UV光又は可視光)への曝露によって硬化され得る。光硬化性組成物にコア/シェルコポリマー粒子を含めることにより、得られるネイルコーティングの機械的特性及び耐久性は、そのようなコア/シェルコポリマー粒子を含まない類似の配合物を使用して調製された硬化ネイルコーティングと比較して、大幅に改善され得る。更に、これらのサイズが小さいため、これらの衝撃改質コア/シェルコポリマー粒子は、硬化物の光学的透明性にほとんど又はまったく影響を有さず、サイズが1ミクロンより大きいPMMAベースの粒子ではあり得ないことである。
【0008】
光硬化性組成物は、以下のさらなる属性又は特性を有するように配合することができる。
1).組成物を爪の表面に容易に塗布し、光硬化する前に、流れたり滴り落ちたりすることなく、有意な厚さの所望の形状に成形することを可能にする比較的高い粘度及び液体稠度、
2).塗布及び硬化の前に他の成分と混合する必要がない、
3).高度の均一性及び物理的安定性(例えば、長期保存に際しても、組成物の成分が分離する傾向がほとんど又はまったくない)、
4).長いオープンタイム(爪に彫刻できる長い期間を可能にする)、
5).低臭気、
6).硬化時の収縮が少ない、
7).硬化時の透明度が高い、及び/又は
8).揮発性物質の含有量が少ない(すなわち、非反応性溶媒がほとんど又はまったくない)。
【0009】
本発明は、爪にコーティングを提供し、該コーティングは、そのような光硬化性組成物の光硬化物である。
【0010】
また、爪にコーティングを形成する方法であって、
a)本明細書に記載の光硬化性組成物を爪の表面に配置する工程と、
b)光硬化性組成物を化学線放射、特に紫外光又は可視光に曝露する工程と
を含む方法が本発明によって提供される。
【0011】
また、本発明によって包装物品が提供され、該包装物品は、容器及び容器内に配置された本明細書に記載の光硬化性組成物を含み、該包装物品は、容器から光硬化性組成物を分注することができる分注部品を有する。
【0012】
本発明は更に、容器及び容器内に配置された本明細書に記載の光硬化性組成物を含む包装物品と、少なくとも1つの塗布器具と、光硬化性組成物を分注、塗布、及び硬化してネイルコーティングを提供するための使用説明書とを含むキットを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、
a)少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化モノマーと、
b)少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化オリゴマーと、
c)少なくとも1種のコア/シェルコポリマーの粒子と、
d)少なくとも1種の光開始剤と
を含む、本質的にそれらからなる、又はそれらからなる光硬化性組成物を使用する。
【0014】
1つ又は複数のさらなる成分、特に顔料及び/又は着色剤、並びに場合によっては、これから詳細に記載する(メタ)アクリルポリマーが更に存在してもよい。光硬化性組成物は、爪の化粧用コーティングを形成するために使用され、光硬化性組成物を爪の表面(すなわち、爪甲)に塗布し、次いでネイリスト又は他のオペレーターによって爪の表面に所望の形状に容易に成形(彫刻)した後、紫外(UV)光又は他の化学線放射に曝露し、成形された光硬化性組成物を光重合させて、硬く、耐久性があり、耐衝撃性のネイルコーティングを形成することを可能にする、室温で比較的高い粘度を有する液体であり得る。代替として、光硬化性組成物は、光硬化性組成物を薄層として爪の表面(すなわち、爪甲)に容易に塗布した後、紫外(UV)光又は他の化学線放射に曝露し、光硬化性組成物の薄層を光重合させて、硬く、耐久性があり、耐衝撃性のネイルコーティングを形成することを可能にする、室温で比較的低い粘度を有する液体であり得る。特に、コア/シェルコポリマー粒子の存在は、良好な光学的透明性及び高光沢を長期間維持しながら、硬化したコーティングの衝撃特性(すなわち、欠け、破損、スカッフィングに対する抵抗性)を大幅に改善するのに役立つ。
【0015】
コア/シェルコポリマー
本発明の文脈において有用なコア/シェルコポリマーは、概して、第1のポリマー(「コアポリマー」)で構成されるコア(内側部分)と、第2のポリマー(「シェルポリマー」)で構成されるコアを実質的又は完全に取り囲む少なくとも1つのシェル(外側部分)とで構成される、典型的には粒状(粒子形態)のポリマー物質として記載することができる。典型的には、シェルポリマーは、コアポリマーのガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有する。コア/シェルコポリマーのポリマーのガラス転移温度は、規格ISO 11357-2:199に従って測定することができる。一般的に言えば、コアポリマーのガラス転移温度は、優先的には、20℃未満、10℃未満、又は0℃未満、例えば、-140℃から0℃の間である。優先的には、シェルポリマーのガラス転移温度は、20℃超又は30℃超、例えば、30℃から250℃の間である。本発明の様々な実施形態によれば、コアポリマー及びシェルポリマーのガラス転移温度の差は、少なくとも10℃、少なくとも20℃、又は少なくとも30℃であり得る。したがって、コアポリマーは、「軟質」ポリマーと考えることができ(且つ事実上エラストマー性又はゴム状であることができ)、シェルポリマーは、「硬質」(非エラストマー性)ポリマーと考えることができる。
【0016】
コア/シェルコポリマーのシェル部分は、重合した形態で、アルキル鎖が1~12個の炭素原子(すなわち、C1~C12メタクリル酸アルキル)、及び好ましくは1~4個の炭素原子を含むメタクリル酸アルキル、例えばメタクリル酸メチル、及び/又は6~12個の炭素原子を含むビニル芳香族有機化合物、例えばスチレン、及び/又はアクリロニトリルを優先的には含み得る。コア/シェルコポリマーのシェル部分は、架橋されていてもされていなくてもよい。
【0017】
コア/シェルコポリマーのコア部分は、重合した形態で、4~12個、及び好ましくは4~8個の炭素原子を含む共役ジエン(ブタジエン等)、又は、アルキル鎖が1~12個、及び好ましくは1~8個の炭素原子を含むアクリル酸アルキル(アクリル酸ブチル等)を有利には含む。アルキル鎖は、直鎖アルキル鎖でも分枝アルキル鎖でもよい。
【0018】
コア/シェルコポリマーは、例えば、ブタジエンを(重合した形態で)含むコアと、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸及び/若しくはスチレンを(重合した形態で)含むシェルとを有するコア/シェルコポリマー;アクリル酸ブチル、n-オクチルアクリレート及び/若しくは2-エチルヘキシルアクリレートを(重合した形態で)含むコアと、メタクリル酸メチルを(重合した形態で)含むシェルとを有するコア/シェルコポリマー;又は、ブタジエンを(重合した形態で)含むコアと、アクリロニトリル及びスチレンの混合物を(重合した形態で)含むシェルとを有するコア/シェルコポリマーから選択されてもよい。前述の実施形態では、コアを構成するブタジエンは、スチレンと共重合してもよい。
【0019】
以下の種類のコア/シェルコポリマーは、本発明での使用に特に好適なコア/シェルコポリマーの例である。
a).重合した形態のアクリル酸ブチル(例えば、アクリル酸ブチルのホモポリマー又はアクリル酸ブチルと少なくとも1種のコモノマーとのコポリマーであり、該コポリマーは、少なくとも80質量%、少なくとも85質量%、少なくとも90質量%、少なくとも95質量%、又は少なくとも99質量%の重合した形態のアクリル酸ブチルを含む)で構成される、本質的にそれらからなる、又はそれらからなるコアと、重合した形態のメタクリル酸メチル(例えば、メタクリル酸メチルのホモポリマー又はメタクリル酸メチルと少なくとも1種のコモノマーとのコポリマーであり、該コポリマーは、少なくとも80質量%、少なくとも85質量%、少なくとも90質量%、少なくとも95質量%、又は少なくとも99質量%のメタクリル酸メチルを重合した形態で含む)で構成される、本質的にそれらからなる、又はそれらからなるシェルとを含む、本質的にそれらからなる、又はそれらからなるコア/シェルコポリマー、及び
b).共重合した形態のスチレン及びブタジエン(例えば、コポリマーの質量に対して、10質量%までの量で、少なくとも1種のさらなるコモノマーと共重合していてもよい、ブタジエン及びスチレンのコポリマー)で構成される、本質的にそれらからなる、又はそれらからなるコアと、重合した形態のメタクリル酸メチル(例えば、メタクリル酸メチルのホモポリマー又はメタクリル酸メチルと少なくとも1種のコモノマーとのコポリマーであり、該コポリマーは、重合した形態で少なくとも80質量%、少なくとも85質量%、少なくとも90質量%、少なくとも95質量%、又は少なくとも99質量%のメタクリル酸メチルを重合した形態で含む)で構成される、本質的にそれらからなる、又はそれらからなるシェルとを含む、本質的にそれらからなる、又はそれらからなるコア/シェルコポリマー。
【0020】
コアの質量量は、有利には、コア/シェルコポリマーの総質量の10%~99%、例えば、60%~95%の範囲内にある。コア/シェルコポリマーの粒径は、1000nm未満であり、有利には、10から900nmの間、25から700nmの間、又は40から600nmの間である。
【0021】
言及され得るコアポリマーの例としては、ゴム;ポリシロキサン;ブタジエン、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、2-エチルヘキシルアクリレート、及び/又はアクリル酸ブチルのホモポリマー及びコポリマー;イソプレンホモポリマー;イソプレン-ブタジエンコポリマー;98質量%以下のビニルモノマーとイソプレンとのコポリマー;並びに98質量%以下のビニルモノマーとブタジエンとのコポリマーが挙げられる。ビニルモノマーは、スチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリル、アルキル(メタ)アクリレート、アクリル酸アルキル、ブタジエン又はイソプレンでもよい。コアポリマーはまた、アクリル酸アルキルと共重合していてもよいシロキサンを含んでもよい。コア/シェルコポリマーのコアは、完全に又は部分的に架橋していてもよい。架橋を達成するために、コアの調製中に少なくとも二官能性モノマーを添加することができ、これらのモノマーは、ブチレンジ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパントリメタクリレート等のポリオールのポリ(メタ)アクリル酸エステルから選択することができる。他の多官能性モノマーは、例えば、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、アクリル酸ビニル及びメタクリル酸ビニル、並びにシアヌル酸トリアリルである。コアはまた、その中に、グラフト化によって、又は重合中にコモノマーとして、不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸及び不飽和エポキシド等の不飽和官能性モノマーを導入することによって架橋することができる。言及され得る例としては、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸及びグリシジルメタクリレートが挙げられる。架橋はまた、モノマー、例えばジエンの固有の反応性を使用して実施することができる。
【0022】
コア/シェルコポリマーは、単一のシェル又は複数のシェル(すなわち、それらのモノマー組成、分子量、架橋度又は他の特徴に関して異なる場合がある、2つ以上のシェル)を含んでもよい。コア/シェルコポリマーのシェルは、例えば、スチレン、アルキルスチレン、C1~C4アルキル(メタ)アクリレート、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチルのホモポリマー若しくはコポリマー、又は少なくとも70質量%の前述のモノマーの1種と、もう1種の前述のモノマー、別のアルキル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル及びアクリロニトリルから選択される少なくとも1種のコモノマーとを含むコポリマーでもよい。シェルは、その中に、グラフト化によって、又は重合中にコモノマーとして、不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸及び不飽和エポキシド等の不飽和官能性モノマーを導入することによって官能化することができる。言及され得る例としては、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート及びアルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。言及され得る例としては、ポリスチレンで作製したシェルを有するコア/シェルコポリマー、及びPMMAで作製したシェルを有するコア/シェルコポリマーが挙げられる。シェルはまた、マレイミドとの共重合、又はPMMAの第一級アミンによる化学修飾のいずれかによって、イミド官能基を含んでもよい。有利には、イミド官能基のモルパーセントは、(シェル全体に対して)30%~60%である。一方のシェルがポリスチレンで作製され、外側のもう一方のシェルがPMMAで作製されている、2つのシェルを含むコア/シェルコポリマーを使用することもできる。コア/シェルコポリマー及びそれらを調製する方法の例は、米国特許第4,180,494号、米国特許第3,808,180号、米国特許第4,096,202号、米国特許第4,260,693号、米国特許第3,287,443号、米国特許第3,657,391号、米国特許第4,299,928号、米国特許第3,985,704号、米国特許第5,773,520号の特許に記載されており、それらのそれぞれは、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
特定の実施形態によれば、コアは、コア/シェルコポリマーの5質量%~95質量%、50質量%~95質量%、又は60質量%~90質量%を占めることができ、シェルは、コア/シェルコポリマーの95質量%~5質量%、50質量%~5質量%、又は40質量%~10質量%を占めることができる。
【0024】
当該分野で「多段ポリマー」と呼ばれるポリマーは、本発明の光硬化性組成物のコア/シェルコポリマー成分としても有用である。多段ポリマーは、例えば、WO 2016/102666、US 2017/0369696、WO 2017/121749、WO 2017/121750、WO 2017/220791、WO 2018/002259、WO 2018/002260、WO 2018/002273、FR 17 56649、及びFR 17 56647の公開された出願に記載されており、これらのそれぞれは、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
光硬化性組成物に含まれるコア/シェルコポリマーの量は、他の可能性のある要因の中でも、使用されるコア/シェルコポリマーの種類、硬化ネイルコーティングにおいて対象とされる属性、及び使用される重合有機物質の種類に応じて、所望に応じて変えることができる。本発明の様々な態様によれば、光硬化性組成物は、光硬化性組成物の総質量に対して、少なくとも1質量%、少なくとも5質量%、又は少なくとも10質量%のコア/シェルコポリマーを含むことができる。他の態様では、光硬化性組成物は、光硬化性組成物の総質量に対して、50質量%以下、45質量%以下、又は40質量%以下のコア/シェルコポリマーを含むことができる。したがって、光硬化性組成物は、例えば、光硬化性組成物の総質量に対して、1~50質量%、5~45質量%、又は10~40質量%の少なくとも1種のコア/シェルコポリマーの粒子で構成され得る。
【0026】
特定の実施形態によれば、光硬化性組成物は、重合有機物質の総質量(例えば重合モノマー+重合オリゴマーの総質量)の100質量部あたり1~200、5~100、又は15~70質量部のコア/シェルコポリマーを含んでもよい。
【0027】
本発明での使用に好適なコア/シェルコポリマーには、Arkema社によってBiostrength(登録商標)、Durastrength(登録商標)、及びClearstrength(登録商標)のブランド名で販売されているコア/シェルコポリマーが含まれる。
【0028】
上記のコア/シェルコポリマーの使用によって達成される重要な利点は、そのようなコア/シェルコポリマーが、本発明に従って光硬化性組成物から調製された硬化ネイルコーティングに曇りを与える傾向をほとんど又はまったく示さないことである。したがって、コア/シェルコポリマーの比較的高い配合量においてさえ、光硬化された際に非常に透明な硬化ネイルコーティングを提供することができるそのようなコア/シェルコポリマー粒子を含む光硬化性組成物を配合することが可能である。
【0029】
(メタ)アクリルポリマー
本発明の光硬化性組成物は、任意選択的に、1つ又は複数の(メタ)アクリルポリマーを含んでもよい。しかしながら、そのような(メタ)アクリルポリマーは不可欠ではなく、(メタ)アクリルポリマーを含まない光硬化性組成物もまた、本発明によって企図される。本明細書では、「(メタ)アクリルポリマー」という用語は、コア/シェル構造を有さず、1つ又は複数の(メタ)アクリルモノマーを(重合した形態で)含み、該(メタ)アクリルモノマーが、(メタ)アクリルポリマーの50質量%以上を構成するポリマーを意味する。本明細書では、「(メタ)アクリルモノマー」という用語は、1つ又は複数のアクリル及び/又はメタクリル官能基を含む任意の種類の重合性モノマーを意味する。
【0030】
光硬化性組成物中の(メタ)アクリルポリマーの存在は、光硬化性組成物及びそれから調製される硬化物品の両方において、コア/シェルコポリマーの分散及び安定化を容易にするのを助けることができる。(メタ)アクリルポリマーが存在しない場合、典型的には粒子の形態であるコア/シェルコポリマーは、凝集して光硬化性組成物から沈降する傾向があり得る(光硬化性組成物を不均一にする)。したがって、(メタ)アクリルポリマーを含めると、光硬化性組成物中にコア/シェルコポリマーが均一に分散することができ、これにより、光硬化性組成物を硬化することによって調製される均一な硬化物品の形成が容易になる。マトリックス中のコア/シェルコポリマーの理想的な均一分散体は、コア/シェルコポリマーがモノマー及びオリゴマー(概して「重合有機物質」と呼ばれる場合がある)と組み合わされた後、凝集物を有さない。したがって、(メタ)アクリルポリマー、コア/シェルコポリマー、及び重合有機物質を含む液体光硬化性組成物は、(メタ)アクリルポリマーを含まない類似の組成物よりもコア/シェルコポリマーのより良い分散を有するか又は示し得る。更に、(メタ)アクリルポリマー、コア/シェルコポリマー、及び重合性有機物質を含む液体光硬化性組成物は、(メタ)アクリルポリマーを含まない類似の組成物よりも粘度が低い場合がある。
【0031】
(メタ)アクリルポリマーの分子量は特に限定されず、光硬化性組成物及び/又はそれから調製される硬化物品に特定の特徴又は特性を付与するために、必要又は所望に応じて変化させることができる。(メタ)アクリルポリマーは、例えば、2000g/mol~1,000,000g/molの質量平均分子量を有してもよい。
【0032】
第1の実施形態では、(メタ)アクリルポリマーは、少なくとも100,000g/mol、100,000g/mol超、105,000g/mol超、110,000g/mol超、120,000g/mol超、130,000g/mol超、又は140,000g/mol超の質量平均分子量(Mw)を有してもよい。
【0033】
(メタ)アクリルポリマーは、1,000,000g/mol未満、900,000g/mol未満、800,000g/mol未満、700,000g/mol未満、600,000g/mol未満、550,000g/mol未満、500,000g/mol未満、又は450,000g/mol未満の質量平均分子量(Mw)を有してもよい。
【0034】
例えば、(メタ)アクリルポリマー(PI)の質量平均分子量(Mw)は、第1の好ましい実施形態によれば、好ましくは100,000g/molから1,000,000g/molの間、好ましくは105,000g/molから900,000g/molの間、より好ましくは110,000g/molから800,000g/molの間、有利には120,000g/molから700,000g/molの間、より有利には130,000g/molから600,000g/molの間、及び最も有利には140,000g/molから500,000g/molの間である。
【0035】
第2の実施形態では、(メタ)アクリルポリマーは、100,000g/mol未満、90,000g/mol未満、80,000g/mol未満、70,000g/mol未満、60,000g/mol、50,000g/mol未満、又は40,000g/mol未満の質量平均分子量Mwを有する。
【0036】
第2の実施形態では、(メタ)アクリルポリマーは、2000g/mol超、3000g/mol超、4000g/mol超、5000g/mol超、6000g/mol超、6500g/mol超、7000g/mol超、10,000g/mol超、又は12,000g/mol超の質量平均分子量(Mw)を有してもよい。
【0037】
第2の実施形態における(メタ)アクリルポリマーの質量平均分子量(Mw)は、2000g/molから100,000g/molの間、3000g/molから90,000g/molの間、4000g/molから80,000g/molの間、5000g/molから70,000g/molの間、6000g/molから50,000g/molの間、又は10,000g/molから40,000g/molの間であってもよい。
【0038】
本発明の特定の実施形態によれば、(メタ)アクリルポリマーは、C1~C12のアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1つ又は複数のモノマーの少なくとも50質量%、少なくとも60質量%、又は少なくとも70質量%を含んでもよい。例えば、(メタ)アクリルポリマーは、C1~C4のメタクリル酸アルキルモノマー、C1~C8アクリル酸アルキルモノマー及びそれらの混合物から選択される1つ又は複数のモノマーの少なくとも50質量%、少なくとも60質量%、少なくとも70質量%又は少なくとも80質量%を含んでもよい。
【0039】
特定の実施形態では、(メタ)アクリルポリマーのガラス転移温度(Tg)は、30℃以上、例えば、30℃から150℃の間である。(メタ)アクリルポリマー(PI)のガラス転移温度は、例えば、40℃から150℃の間、45℃から150℃の間、又は50℃から150℃の間であってもよい。
【0040】
特定の実施形態によれば、(メタ)アクリルポリマーは、架橋されていない。他の実施形態によれば、(メタ)アクリルポリマーは、熱可塑性ポリマーである。(メタ)アクリルポリマーは、ホモポリマーでもコポリマーでもよく、「コポリマー」は、重合した形態で2つ以上の異なるモノマーを含むポリマーを指す。本明細書では、「熱可塑性ポリマー」という用語は、加熱されると液体に変わるか、又はより液体になるか、又はより粘性が低くなり、熱及び圧力の適用によって新しい形状をとることができるポリマーを意味する。(メタ)アクリルポリマーは、特定の実施形態では、他の任意のポリマーにグラフトされていないか、又は(メタ)アクリルポリマーの少なくとも一部が他の任意のポリマーにグラフトされていない。
【0041】
第1の実施形態では、(メタ)アクリルポリマーは、(重合した形態で)50質量%~100質量%のメタクリル酸メチル、80質量%~100質量%のメタクリル酸メチル、又は80質量%~99.8質量%のメタクリル酸メチル、及び0.2質量%から20質量%のC1~C8アクリル酸アルキルモノマーを含む。C1~C8アクリル酸アルキルモノマーは、特定の非限定的な実施形態によれば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル及びアクリル酸ブチルからなる群から選択されてもよい。
【0042】
第2の実施形態では、(メタ)アクリルポリマーは、(重合した形態で)0質量%から50質量%の間の1つ又は複数の官能性モノマーを含む。例えば、(メタ)アクリルポリマーは、0質量%から30質量%の間、1質量%から30質量%の間、2質量%から30質量%の間、3質量%から30質量%の間、5質量%から30質量%の間、又は5質量%から30質量%の間の官能性モノマーを含んでもよい。
【0043】
第2の好ましい実施形態の官能性モノマーは、(メタ)アクリルモノマーであり得る。官能性モノマーは、式(1)又は(2):
【0044】
【化1】
【0045】
[式中、式(1)及び(2)の両方において、R1は、H又はCH3から選択され、式(1)において、YはOであり、R5はHであるか、又はC若しくはHではない少なくとも1個の原子を有する脂肪族若しくは芳香族基であり、式(2)において、YはNであり、R4及びR3は、H又は脂肪族若しくは芳香族基から独立して選択される]
を有することができる。
【0046】
好ましくは、官能性モノマーは、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、例えばジメチルアクリルアミド、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-アミノエチル(メタ)アクリレート(任意選択的に四級化されていてもよい)、ホスホネート又はリン酸基を含む(メタ)アクリレートモノマー、アルキルイミダゾリジオン(メタ)アクリレート、及びポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、並びにそれらの組合せからなる群から選択される。好ましくは、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートのポリエチレングリコール基は、400g/mol~10,000g/molの範囲の数平均分子量を有する。
【0047】
本発明の特定の実施形態によれば、(メタ)アクリルポリマーは、光硬化性組成物が硬化する際に起こる硬化/重合に関与することができる任意の官能基を含まない。このような実施形態では、(メタ)アクリルポリマーは、非反応性であると考えることができる。
【0048】
本発明の特定の実施形態によれば、(メタ)アクリルポリマーは、25℃で有機重合物質(光硬化性組成物中に存在するモノマー及びオリゴマーの混合物)に可溶性であり得る。すなわち、有機重合物質は、(メタ)アクリルポリマーの溶媒として機能する。したがって、(メタ)アクリルポリマー、モノマー、オリゴマーの組合せは、25℃で均一な(単相)液体であることができる。「可溶性」とは、一定の時間内に、(メタ)アクリルポリマーが重合有機物質と接触した際に溶解し、重合有機物質中の(メタ)アクリルポリマーの溶液が得られることを意味する。重合有機物質中の(メタ)アクリルポリマーの溶解度は、撹拌しながら25℃で材料を混合し、混合物を目視で検査することによって、簡単に試験することができる。
【0049】
光硬化性組成物中に存在する場合、光硬化性組成物の総質量に対して、(メタ)アクリルポリマーは、80質量%まで、70質量%まで、60質量%まで、50質量%まで、40質量%まで、30質量%まで、20質量%まで、10質量%まで、又は5質量%まで等の任意の好適な量で含まれ得る。
【0050】
重合有機物質
本発明で利用される光硬化性組成物は、重合有機物質で構成される。本明細書では、「重合」という用語は、重合又は硬化反応に関与してポリマー構造を形成することができることを意味する。重合有機物質は、構造中でモノマー及び/又はオリゴマーであり、分子当たり1つ、2つ、3つ以上の重合官能基を含むものとして特徴付けることができる。好適な重合官能基は、特に、連鎖成長及び開環重合機構に関与することができる官能基、例えば、エチレン性及びエチン性不飽和官能基(例えば、(メタ)アクリロイル、ビニル、オレフィン及びアルキン官能基)並びに複素環式官能基(例えば、エポキシド及びオキセタン官能基)を含む。フリーラジカル及び/又はカチオン機構を介して重合する重合官能基が特に好ましい。重合有機物質は、複数の種類の重合官能基を含んでもよい。好適な重合有機物質の分子量は特に限定されないが、例えば、120~50,000g/mol又は150~25,000g/mol(重合有機物質がオリゴマーである場合、「分子量」は、ポリスチレン校正標準を使用したゲル浸透クロマトグラフィーによって決定された数平均分子量を指す)であってもよい。様々な重合有機物質の組合せは、本発明の光硬化性組成物に使用される。特に、光硬化性組成物は、少なくとも1種の重合モノマー及び少なくとも1種の重合オリゴマーを含む。
【0051】
特定の実施形態によれば、光硬化性組成物中のオリゴマーの総質量は、少なくともモノマーの総質量と同程度である。例えば、重合オリゴマー:重合モノマーの質量比は、50:50~90:10であり得る。
【0052】
他の実施形態によれば、光硬化性組成物中のモノマーの総質量は、少なくともオリゴマーの総質量と同程度である。例えば、重合モノマー:重合オリゴマーの質量比は、50:50~90:10であり得る。
【0053】
好ましくは、重合有機物質は、光硬化性組成物中に存在するように組み合わせて、組合せが、少なくとも0℃から60℃の間の温度範囲で液体であるように選択される。
【0054】
言及され得る重合有機物質の好適な例示的種類には、それらに限定されないが、エポキシド(オキシラン)、オキセタン、オキソラン、環状アセタール、及び他の環状エーテル、環状ラクトン、ビニル化合物(脂肪族及び芳香族の両方)、シアノアクリレート、(メタ)アクリルアミド、並びに(メタ)アクリレート(これらは特に好ましい)が含まれる。本明細書では、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート(-O-C(=O)-CH=CH2)及びメタクリレート(-O-C(=O)-C(CH3)=CH2)の両方の官能基を指す。
【0055】
重合有機物質は、重合又は硬化反応に関与することができる少なくとも1つの部分を含み、それによって複数の重合有機物質分子が互いに共有結合してポリマー構造を形成する。好適な反応部分には、エチレン不飽和の部位(すなわち、炭素-炭素二重結合、C=C)が含まれる。このようなエチレン不飽和の部位は、例えば(メタ)アクリロイル、マレイル、アリル、プロペニル、及び/又はビニル基により提供することができる。本明細書では、「(メタ)アクリロイル」という用語は、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドに見られるように、メタクリロイル及びアクリロイルの両方を含むことを意図している。
【0056】
前述のように、光硬化性組成物の重合有機物質に使用するのに好適なエチレン性不飽和官能基には、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合、特に炭素-炭素二重結合の少なくとも1つの炭素が、第2の分子内の原子、特に炭素原子に共有結合する反応(例えば、フリーラジカル反応)に関与することができる炭素-炭素二重結合を含む基が含まれる。このような反応は、それにより1つ又は複数のエチレン性不飽和官能基を含む有機物質が、重合マトリックス又はポリマー鎖の一部となる重合又は硬化をもたらすことができる。炭素-炭素二重結合は、例えば、α、β-不飽和カルボニル部分、例えば、アクリレート官能基(H2C=CH-C(=O)O-)又はメタクリレート官能基(H2C=C(CH3)-C(=O)O-)のようなα,β-不飽和エステル部分の一部として存在することができる。炭素-炭素二重結合はまた、ビニル基-CH=CH2又はアリル基-CH2-CH=CH2の形態でエチレン性不飽和官能基に存在することができる。
【0057】
特定の実施形態では、本発明で使用される光硬化性組成物は、少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化有機物質を含むことを特徴とする。(メタ)アクリレート官能化有機物質は、分子当たり1つ又は複数の(メタ)アクリレート官能基を担う有機物質として記載することができる。本明細書では、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート及びメタクリレート官能基の両方を指す。本発明での使用に好適な(メタ)アクリレート官能化有機物質は、概して、エステル基に対する少なくとも1つの炭素-炭素二重結合アルファ、特にフリーラジカル反応、特に紫外放射又は電子ビーム放射によって開始される反応に関与することができる炭素-炭素二重結合を含むエチレン性不飽和有機物質(少なくとも1つのα,β-不飽和エステル部分を含む化合物)として記載することができる。このような反応は、それにより(メタ)アクリレート官能化有機物質が、重合マトリックス又はポリマー鎖の一部となる重合又は硬化をもたらすことができる。本発明の様々な実施形態では、(メタ)アクリレート官能化有機物質は、分子あたり1つ、2つ、3つ、4つ、5つ以上の(メタ)アクリレート官能基を含むことができる。様々な数の(メタ)アクリレート基を含む複数の(メタ)アクリレート官能化有機物質の組合せは、本発明の光硬化性組成物において利用することができる。
【0058】
したがって、本発明で使用される光硬化性組成物は、化学線放射(例えば、紫外光)又は電子ビーム放射への曝露によって開始されるフリーラジカル重合(硬化)を受けることができる1つ又は複数の(メタ)アクリレート官能化有機物質を含むことができる。(メタ)アクリレート官能化有機物質は、オリゴマー若しくはモノマー、又は好ましくは、オリゴマー及びモノマーの組合せであってもよい。
【0059】
以下の種類の(メタ)アクリレート官能化有機物質のいずれかは、例えば、本発明の光硬化性組成物において、場合によっては又は任意選択的に、共反応物としての1つ又は複数の他の種類の重合有機物質と組み合わせて使用され得る:脂肪族モノアルコールの(メタ)アクリレートエステル、アルコキシル化脂肪族モノアルコールの(メタ)アクリレートエステル、脂肪族ポリオールの(メタ)アクリレートエステル、アルコキシル化脂肪族ポリオールの(メタ)アクリレートエステル、芳香環含有アルコールの(メタ)アクリレートエステル等のモノマー;及びアルコキシル化芳香環含有アルコールの(メタ)アクリレートエステル;及びエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート(それらのアミン及び硫化物修飾誘導体を含む)等のオリゴマー;並びにそれらの組合せ。
【0060】
本発明の一態様によれば、光硬化性組成物は、ヒドロキシエチルメタクリレート及び/又はヒドロキシプロピルメタクリレート等の少なくとも1種のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含む。例えば、光硬化性組成物は、光硬化性組成物中の重合有機物質の総質量に対して、合計で5~30質量%のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含んでもよい。ただし、他の実施形態では、少なくともいくつかのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが増感特性を有するため、光硬化性組成物は、ほとんど又はまったくヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含まない場合がある(例えば、重合有機物質の総質量に対して、5質量%未満又は0質量%未満)。
【0061】
本発明の別の態様によれば、光硬化性組成物は、少なくとも1種のシクロアルキル(メタ)アクリレート、特にイソボルニル(メタ)アクリレートを含む。例えば、光硬化性組成物は、光硬化性組成物中の重合有機物質の総質量に対して、1~25又は5~15質量%のシクロアルキル(メタ)アクリレート(例えば、メタクリル酸イソボルニル)を含んでもよい。シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、及び環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレートは、本発明で有用な他の種類のシクロアルキル(メタ)アクリレートを表す。
【0062】
本発明の別の態様によれば、光硬化性組成物は、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート等の、少なくとも1種のエチレングリコール又はポリ(エチレングリコール)ベースの(メタ)アクリレートを含む。このような物質は、エチレングリコール及びポリ(エチレングリコール)の(メタ)アクリレートと記載される場合があり、ポリエチレングリコールは、分子当たりエチレンオキシドに由来する2つ以上のオキシエチレン単位を含み得る。特定の実施形態では、該物質は、約100g/mol~約1000g/molの数平均分子量を有するエチレングリコールセグメント又はポリエチレングリコールセグメントを含む。このようなセグメントは、nが平均で2~25である、構造式-(CH2CH2O)n-に一致し得る。例えば、光硬化性組成物は、光硬化性組成物中の重合有機物質の総質量に対して、1~80又は5~60質量%のポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートを含んでもよい。エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、PEG-9ジ(メタ)アクリレート(分子当たり、平均約9個のオキシエチレン単位を含む)、PEG200ジ(メタ)アクリレート(約200g/molの数平均分子量を有するポリエチレングリコールセグメントを含む)及びPEG600ジ(メタ)アクリレート(約600g/molの数平均分子量を有するポリエチレングリコールセグメントを含む)は、本発明において有用である他の種類のエチレングリコール又はポリ(エチレングリコール)ベースの(メタ)アクリレートを表す。光硬化性組成物におけるこのようなエチレングリコール又はポリ(エチレングリコール)ベースの(メタ)アクリレートの使用は、他の特定の種類の(メタ)アクリレート官能化モノマーとは異なり、このような物質が、概して低増感性から非増感性であるという点で有利である。
【0063】
本発明の更に別の態様では、光硬化性組成物は、分子当たり3つ以上の(メタ)アクリレート官能基を含む少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化モノマー、特に分子当たり3つ以上のヒドロキシル基を含むポリオールの(メタ)アクリレート、及びそれらのアルコキシル化誘導体、例えばグリセロール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリエチロールプロパン並びにポリオールが、ポリオールの1モル当たり1~10モルのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドと反応する、それらのエトキシル化及び/又はプロポキシル化誘導体を含む。例えば、光硬化性組成物は、合計で0.1~20又は0.5~10質量%の、分子あたり3つ以上の(メタ)アクリレート官能基を含むそのような(メタ)アクリレート官能化モノマー(例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート)を含んでもよい。
【0064】
好適な(メタ)アクリレート官能化オリゴマーには、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(ポリウレタン(メタ)アクリレート又はウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとも呼ばれる)及びそれらの組合せ、並びにそれらのアミン修飾及び硫化物修飾の変形形態が含まれる。これらの(メタ)アクリレート官能化オリゴマーのいくつかは、光硬化性組成物の硬化によって得られる硬化物品において軟化剤として機能することができ、すなわち、それらの包含は、それらから調製された硬化物品の柔軟性を高めるのに役立つ。
【0065】
例示的なポリエステル(メタ)アクリレートとしては、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はそれらのヒドロキシル基末端ポリエステルポリオールとの混合物の反応生成物が挙げられる。反応プロセスは、ポリエステル(メタ)アクリレート中に有意な濃度の残留ヒドロキシル基が残留するように行われるか、又はポリエステルポリオールのすべての若しくは本質的にすべてのヒドロキシル基が、(メタ)アクリル化されるように行われてもよい。ポリエステルポリオールは、ポリヒドロキシル官能成分(特に、ジオール)とポリカルボン酸官能化合物(特に、ジカルボン酸及び無水物)との重縮合反応によって製造することができる。ポリエステル(メタ)アクリレートを調製するために、ポリエステルポリオールのヒドロキシル基を、次いで(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルクロリド、(メタ)アクリル酸無水物等と反応させることによって部分的又は完全にエステル化する。ポリエステル(メタ)アクリレートはまた、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート)等のヒドロキシル含有(メタ)アクリレートをポリカルボン酸と反応させることによって合成してもよい。ポリヒドロキシル官能及びポリカルボン酸官能成分は、それぞれ直鎖、分岐、脂環式又は芳香族構造を有することができ、個別に又は混合物として使用することができる。
【0066】
好適なエポキシ(メタ)アクリレートの例としては、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はそれらの混合物とグリシジルエーテル若しくはエステルとの反応生成物が挙げられる。
【0067】
例示的なポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、それらに限定されないが、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はそれらの混合物とポリエーテルポリオールであるポリエーテロールとの縮合反応生成物が挙げられる。好適なポリエーテロールは、エーテル結合及び末端ヒドロキシル基を含む直鎖又は分岐物質であり得る。ポリエーテロールは、エポキシド及び他の酸素含有複素環式化合物(例えば、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、ブテンオキシド、テトラヒドロフラン及びそれらの組合せ)とスターター分子との開環重合によって調製することができる。好適なスターター分子には、水、ヒドロキシル官能性材料、ポリエステルポリオール及びアミンが含まれる。ポリエーテロールはまた、グリコール等のジオールの縮合によって得ることができる。
【0068】
本発明の光硬化性組成物に使用することができるウレタン(メタ)アクリレート(「ポリウレタン(メタ)アクリレート」又は「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」とも呼ばれる)には、脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリカーボネートポリオール、並びに(メタ)アクリレート末端基でキャップされた脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルジイソシアネート及びポリエーテルジイソシアネートをベースとするウレタンが含まれる。
【0069】
様々な実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレートは、脂肪族及び/又は芳香族ポリイソシアネート(例えば、ジイソシアネート、トリイソシアネート)とOH基末端ポリエステルポリオール(芳香族、脂肪族及び混合脂肪族/芳香族ポリエステルポリオール)、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリジメチシロキサンポリオール、若しくはポリブタジエンポリオール、又はそれらの組合せを反応させ、次いでヒドロキシル官能化(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと反応して末端(メタ)アクリレート基を提供するイソシアネート官能化オリゴマーを形成することによって調製され得る。例えば、ウレタン(メタ)アクリレートは、分子当たり2つ、3つ、4つ以上の(メタ)アクリレート官能基を含んでいてもよい。添加の他の順番はまた、当該分野で公知であるようにポリウレタン(メタ)アクリレートを調製するために実行されてもよい。例えば、ヒドロキシル官能化(メタ)アクリレートを最初にポリイソシアネートと反応させてイソシアネート官能化(メタ)アクリレートを得ることができ、次いでこれをOH基末端ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリジメチルシロキサンポリオール、ポリブタジエンポリオール、又はそれらの組合せと反応させることができる。更に別の実施形態では、ポリイソシアネートは、前述の種類のポリオールのいずれかを含むポリオールと最初に反応してイソシアネート官能化ポリオールを得て、その後、これをヒドロキシル官能化(メタ)アクリレートと反応させてポリウレタン(メタ)アクリレートを生成する。代替として、すべての成分を同時に組み合わせて反応させてもよい。
【0070】
上述の種類のオリゴマーのいずれも、アミン又は硫化物(例えば、チオール)で修飾されてもよく、当該分野で公知の手順に従う。このようなアミン及び硫化物修飾オリゴマーは、例えば、ベースオリゴマーに存在する(メタ)アクリレート官能基の比較的小さな部分(例えば、2~15%)をアミン(例えば、第二級アミン)又は硫化物(例えば、チオール)と反応させることによって調製することができ、この修飾化合物は、マイケル付加反応において(メタ)アクリレートの炭素-炭素二重結合に付加する。
【0071】
好適なモノマー性(メタ)アクリレート官能化有機物質の例示的な例としては、(メタ)アクリル化モノ及びポリオール(ポリアルコール)並びに(メタ)アクリル化アルコキシル化モノアルコール及びポリオールが挙げられる。モノアルコール及びポリオールは、脂肪族(1つ又は複数の脂環式環を含む)でもよく、又は1つ又は複数の芳香環(フェノール又はビスフェノールAの場合のように)を含んでいてもよい。「アルコキシル化」とは、エステル化に先立って1つ又は複数のエーテル部分(例えば、-CH2CH2-O-)をモノアルコール又はポリオールの1つ又は複数のヒドロキシル基に導入し、1つ又は複数の(メタ)アクリレート官能基を導入するように、ベースモノアルコール又はポリオールが、1つ又は複数のエポキシド、例えばエチレンオキシド、及び/又はプロピレンオキシドと反応したことを意味する。例えば、モノアルコール又はポリオールと反応するエポキシドの量は、モノアルコール又はポリオール1モルあたり約1~約30モルのエポキシドであってもよい。好適なモノアルコールの例としては、それらに限定されないが、直鎖、分岐及び環状C1~C54モノアルコール(第一級、第二級又は第三級アルコールであってもよい)が挙げられる。例えば、モノアルコールは、C1~C7脂肪族モノアルコールであってもよい。別の実施形態では、モノアルコールは、C8~C24脂肪族モノアルコール(例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール)であってもよい。好適なポリオールの例としては、分子あたり2つ、3つ、4つ以上のヒドロキシル基を含む有機化合物、例えばグリコール(ジオール)、例えば、エチレングリコール、1,2-若しくは1,3-プロピレングリコール、又は1,2-、1,3-若しくは1,4-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリエチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール等が挙げられる。
【0072】
好適なモノマー性(メタ)アクリレート官能化化合物の代表的な例としては、それらに限定されないが、以下:1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、長鎖脂肪族ジ(メタ)アクリレート(一般的に、R及びR'が独立してH又はメチルであり、mが8~24の整数である、式H2C=CRC(=O)-O-(CH2)m-O-C(=O)CR'=CH2に対応するもの等)、アルコキシル化(例えば、エトキシル化、プロポキシル化)ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化、プロポキシル化)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ドデシルジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化、プロポキシル化)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化、プロポキシル化)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化、プロポキシル化)トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化、プロポキシル化)グリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、2(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アルコキシル化ラウリル(メタ)アクリレート、アルコキシル化フェノール(メタ)アクリレート、アルコキシル化テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化、プロポキシル化)ノニルフェノール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクチルデシル(メタ)アクリレート(ステアリル(メタ)アクリレートとしても公知である)、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールエチルエーテル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジ(メタ)アクリレート、フェノキシエタノール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、テトラジル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールブチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化、プロポキシル化)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化、プロポキシル化)グリセリルトリ(メタ)アクリレート、及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、並びにそれらの組合せが挙げられる。
【0073】
本発明の光硬化性組成物に使用するのに好適なエチレン性不飽和官能基を含む他の種類の重合有機物質には、シアノアクリレート、ビニルエステル、1,1-ジエステル-1-アルケン、1,1-ジケト-1-アルケン、1-エステル-1-ケト-1-アルケン並びにとメチレンマロネート及び/又はメチレンベータ-ジケトンを含むイタコネートが含まれる。
【0074】
(メタ)アクリレート官能化オリゴマーの量は、オリゴマーの粘度又は硬化時の光硬化性組成物に所望される引張特性に基づいて変えることができる。例えば、光硬化性組成物は、光硬化性組成物中の重合有機物質の総質量に対して、1~80又は5~60質量%の(メタ)アクリレート官能化オリゴマーを含んでもよい。好適な(メタ)アクリレート官能化オリゴマーは、ジHEMAトリメチルヘキシルジカルバメート(UDMA)であり得る。
【0075】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、光硬化性組成物の成分a)及びb)を構成する重合有機物質は、光硬化性組成物中にも存在するコア/シェルコポリマーと融和性があるように選択される。本明細書では、「融和性」という用語は、光硬化性組成物の成分が組み合わされた場合に、光硬化性組成物が許容できない程度までゲル化又は粘度を増加させないことを意味する(すなわち、光硬化性組成物は、実用可能なままである、すなわち、意図された最終用途に応じて塗布及び成形可能である)。
【0076】
光開始剤
本明細書に記載の光硬化性組成物は、少なくとも1種の光開始剤を含み、放射エネルギー(化学線放射)で硬化可能である。光開始剤は、放射(例えば、化学線放射)に曝露されると、モノマー性重合有機物質及びオリゴマー性重合有機物質等の、光硬化性組成物中に存在する重合有機物質の反応及び硬化を開始する種を形成する、任意の種類の物質と考えることができる。好適な光開始剤には、フリーラジカル光開始剤及びカチオン性光開始剤並びにそれらの組合せの両方が含まれる。光開始剤は、光硬化性組成物を硬化するために使用することを意図した化学線放射に関連する波長の光子による活性化を受けやすいように選択されるべきである。好ましくは、光開始剤又は光開始剤の組合せは、一般的に又は従来ネイルサロンで見られるランプによって放出される紫外光の波長で活性されるべきである。
【0077】
フリーラジカル重合開始剤は、照射されるとフリーラジカルを形成する物質である。
【0078】
光硬化性組成物が、(メタ)アクリレート官能基等の重合(反応性)エチレン性不飽和官能基を含む重合有機物質を含む場合、フリーラジカル光開始剤の使用が特に好ましい。本発明の光硬化性組成物での使用に好適なフリーラジカル光開始剤の非限定的な種類には、例えば、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル、アセトフェノン、ベンジル、ベンジルケタール、アントラキノン、ホスフィンオキシド、α-ヒドロキシケトン、フェニルグリオキシレート、α-アミノケトン、ベンゾフェノン、チオキサントン、キサントン、アクリジン誘導体、フェナゼン(phenazene)誘導体、キノキサリン誘導体及びトリアジン化合物が含まれる。特に好適なフリーラジカル光開始剤の例としては、それらに限定されないが、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン、2-ベンジアントラキノン(benzyanthraquinone)、2-t-ブチルアントラキノン、1,2-ベンゾ-9,10-アントラキノン、ベンジル、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アルファ-メチルベンゾイン、アルファ-フェニルベンゾイン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、例えば2,2-ジアルコキシベンゾフェノン及び1-ヒドロキシフェニルケトン、ベンゾフェノン、4,4'-ビス-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、アセトフェノン、2,2-ジエチルオキシアセトフェノン、ジエチルオキシアセトフェノン、2-イソプロピルチオキサントン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、1,5-アセトナフチレン、エチル-p-ジメチルアミノベンゾエート、ベンジルケトン、α-ヒドロキシケト,2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンジルジメチルケタール,2,2-ジメトキシ1,2-ジフェニルエタノン、1-ヒドロキシシルクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1,2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパノン、オリゴマー性α-ヒドロキシケトン、ベンゾイルホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、アニソイン、アントラキノン、アントラキノン-2-スルホン酸、ナトリウム塩一水和物、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、ベンジル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン/1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、50/50ブレンド、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4-ベンゾイルビフェニル、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4'-モルホリノブチロフェノン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、カンファーキノン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、ジベンゾスベレノン、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'-ジメチルベンジル、2,5-ジメチルベンゾフェノン、3,4-ジメチルベンゾフェノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、50/50ブレンド、4'-エトキシアセトフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェロセン、3'-ヒドロキシアセトフェノン、4'-ヒドロキシアセトフェノン、3-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、メチルベンゾイルホルメート、2-メチル-4'-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン、フェナントレンキノン、4'-フェノキシアセトフェノン、(クメン)シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、9,10-ジエトキシ及び9,10-ジブトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、チオキサンテン-9-オン並びにそれらの組合せが挙げられる。
【0079】
好適なカチオン性光開始剤には、化学線放射等の放射に曝露されると、光硬化性組成物中のモノマー性及び(存在する場合)オリゴマー性重合有機物質の反応を開始するカチオン(例えば、ブレンステッド酸又はルイス酸)を形成する任意の種類の光開始剤が含まれる。例えば、カチオン性光開始剤は、カチオン性部分及びアニオン性部分で構成され得る。光開始剤分子のカチオン性部分は、UV照射の吸収を担うことができ、分子のアニオン性部分は、UV吸収後に強酸になる。好適なカチオン性光開始剤には、例えば、弱い求核性のアニオンを有するオニウム塩、例えば、ハロニウム塩、ヨードニウム塩(例えば、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムペルフルオロ-1-ブタンスルホネート等のジアリールヨードニウム塩)又はスルホニウム塩(例えば、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩等のトリアリールスルホニウム塩)、スルホキソニウム塩及びジアゾニウム塩が含まれる。メタロセン塩は、別の種類の好適なカチオン性光開始剤である。
【0080】
光開始剤の量は、他の要因の中でも、選択した光開始剤、光硬化性組成物中に存在する重合有機物質(モノマー性及びオリゴマー性)の量及び種類、放射源並びに使用される放射条件に応じて適宜変えてもよい。しかしながら、典型的には、光開始剤の量は、光硬化性組成物の総質量に対して、0.05質量%~5質量%、好ましくは0.1質量%~2質量%であり得る。
【0081】
他の添加剤/成分
本発明の光硬化性組成物は、任意選択的に、上述の成分の代わりに、又はそれらに加えて、1つ又は複数の添加剤を含んでもよい。このような添加剤には、それらに限定されないが、酸化防止剤/光安定剤、光遮断剤/吸収剤、重合阻害剤、泡止め剤、流動化剤又はレベリング剤、着色剤、顔料、分散剤(湿潤剤、界面活性剤)、スリップ添加剤、充填剤、連鎖移動剤、チキソトロピー剤、レオロジー改質剤、艶消し剤、耐衝撃性改良剤(既に述べたコア/シェルコポリマー及びオリゴマー性重合有機物質を除く)、ワックス又は、ネイルコーティング分野で従来利用されている添加剤のいずれかを含む他の様々な添加剤が含まれる。
【0082】
特に酸素又は他の酸化剤の存在下での光硬化性組成物の早期のゲル化又は硬化から保護するために、1つ又は複数の酸化防止剤が光硬化性組成物に含まれていてもよい。例えばフェノールベースの酸化防止剤、リンベースの酸化防止剤、キノン型酸化防止剤及びそれらの組合せを含む、当該分野で公知の酸化防止剤のいずれも利用され得る。
【0083】
好適なフェノールベースの酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール型酸化防止剤、例えばヘキサメチレンビス[(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド]、4,4'-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、2,2'-メチレンビス(4-メチル-5-tert-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス[3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)酪酸]グリコールエステル、2,2'-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2'-エチリデンビス(4-sec-ブチル-6-tert-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル-6-[2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル]フェニル]テレフタラート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリス[(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-アクリロイルオキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェノール、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-{(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、及びn-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-tert-ブチルフェニル)ブタンが挙げられる。ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)は、好ましい酸化防止剤の一例である。
【0084】
好適なリンベースの酸化防止剤の例としては、ホスファイト、ホスホナイト等、例えばトリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス[2-tert-ブチル-4-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル]ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリールペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4'-n-ブチリデンビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェニル)-2-エチルヘキシルホスファイト、及び4-[3-[(2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン)-6-イルオキシ]プロピル]-2-メチル-6-tert-ブチルフェノールが挙げられる。
【0085】
キノン型酸化防止剤、例えばヒドロキノンのモノメチルエーテル(MEHQ)も使用されてもよい。フェノチアジン(RTZ)及びビタミンEは、本発明において有用な他の好適な酸化防止剤の例である。
【0086】
典型的には、1つ又は複数の酸化防止剤が、光硬化性組成物の質量に対して、4質量%まで、例えば、0.05~2質量%の総量で光硬化性組成物に含まれることができる。
【0087】
有利には、本発明で利用される光硬化性組成物は、無溶媒、すなわち非反応性揮発性物質(大気圧で150℃以下の沸点を有する物質)を含まないように配合され得る。例えば、光硬化性組成物は、光硬化性組成物の総質量に対して、非反応性溶媒をほとんど又はまったく含まなくてもよく、例えば非反応性溶媒は、10%未満又は5%未満又は1%未満又は0%である。本発明の文脈において、「非反応性」は、化学線放射に曝露された際に反応しない物質、すなわち、非重合性物質を指す。このような無溶媒又は低溶媒組成物は、例えば、溶媒が存在しなくても、光硬化性組成物を十分低粘度にし、光硬化性組成物が、好適な塗布温度で、対象の爪の表面等の基材表面に容易に塗布できるように選択される、低粘度反応性希釈剤(モノマー性重合有機物質等)を含む様々な成分を使用して配合することができる。
【0088】
しかし、他の実施形態では、使用される光硬化性組成物は、ある程度の量の非反応性溶媒、特にある程度の量の揮発性非反応性溶媒(大気圧で150℃以下の沸点を有する)を含む。一例として、光硬化性組成物が比較的低粘度のトップコート、ベースコート、カラーコート又はマニキュア液として使用するために配合される場合、1つ又は複数の非反応性溶媒が含まれてもよい。例えば、光硬化性組成物は、光硬化性組成物の総質量に対して、少なくとも0.5質量%、少なくとも1質量%、少なくとも5質量%、又は少なくとも10質量%の非反応性溶媒で構成されてもよい。光硬化性組成物は、光硬化性組成物の総質量に対して、50質量%以下、25質量%以下、又は15質量%以下の非反応性溶媒を含むことができる。非反応性溶媒は、概して光硬化性組成物の粘度を低下させるので、非反応性溶媒の量は、目的の粘度値を達成するように調整され得る。2つ以上の非反応性溶媒を組み合わせて使用してもよい。好適な非反応性溶媒には、エステル(酢酸エチル及び酢酸ブチル等)、エーテル、ケトン、グリコールエーテル、アルコール、炭化水素、及びそれらの組合せが含まれる。
【0089】
本発明の特定の実施形態では、光硬化性組成物は、25℃で液体である。例えば、光硬化性組成物は、25℃で流動性及び/又はセルフレベリング性液体であってもよい。ただし、他の実施形態では、光硬化性組成物は、25℃でゲルである場合がある。このようなゲルは、流動性が無い可能性がある。
【0090】
25℃での光硬化性組成物の粘度は、以下でより詳細に論じられるように、意図される最終用途に応じて、大きく変化する可能性がある。例えば、25℃での光硬化性組成物の粘度は、100cps~5,000,000cpsの範囲であってもよい。
【0091】
本発明の様々な実施形態(例えば、光硬化性組成物が、UVジェルポリッシュ、ベースコート、カラーコート又はトップコートとしての使用を意図する場合)では、本明細書に記載の光硬化性組成物は、室温又は常温で比較的低粘度を有するように配合される。例えば、光硬化性組成物の粘度は、存在する成分及びそれらの相対比を変化させることによって選択又は調整され、Brookfield DV3T Cone and Plate Rheometerで測定し、CPE-52Zコーンを使用して0.5mLの試料で25℃で測定を行う場合、100,000cps以下、50,000cps以下、25,000cps以下、又は10,000cps以下の25℃での粘度を提供することができる。25℃での粘度は、例えば少なくとも100cps、又は少なくとも500cpsであることができる。
【0092】
ただし、本発明の他の実施形態では、本明細書に記載の光硬化性組成物は、室温又は常温で比較的高い粘度を有するように配合される。このような高粘度の光硬化性組成物は、爪表面に塗布し、その後彫刻(すなわち、ビルダージェル、スカルプチュアジェル、又は爪の延長)されることを意図している場合に興味深い場合がある。例えば、光硬化性組成物の粘度は、存在する成分及びそれらの相対比を変化させることによって選択又は調整され、Brookfield DV3T Cone and Plate Rheometerで測定し、CPE-52Zコーンを使用して0.5mLの試料で25℃で測定を行う場合、少なくとも200,000cps、少なくとも300,000cps、又は少なくとも400,000cpsの25℃での粘度を提供することができる。同時に、粘度は、光硬化性組成物を爪の表面に塗布及び/又は成形するのが困難になるほど高くあるべきではない。25℃での粘度は、例えば、5,000,000cps以下又は4,000,000cps以下であることができる。
【0093】
光硬化性組成物の粘度及び他のレオロジー特性は、光硬化性組成物の部分が爪の表面に塗布される場合に、ネイリストの道具、例えばブラシ、プッシャー、及び/又はスパチュラによって所望の形状に押し出される(彫刻される)まで容易に動かないように選択することができる。光硬化性組成物を所望の形状に押し出し、かつ彫刻することは、無溶媒で行うか、又は少なくとも局所的には、光硬化性組成物の粘度を下げる低粘度液体(例えば非反応性溶媒及び/若しくは反応性希釈剤、例えば(メタ)アクリレート官能化モノマー)の助けを借りて行うことができる。本発明の有利な実施形態によれば、光硬化性組成物が、無溶媒形態であるか、又はそのような液体と(限られた量で)混合される場合、光硬化性組成物は硬いまま(しかしながら成形可能)であり、流れない。ネイリスト等のオペレーターは、そのような好適な液体の塗布を通じて、任意選択的に粘度を制御することができ、これは、光硬化性組成物が化学線放射(例えば、UV光)への曝露によって硬化するまで、爪表面の光硬化性組成物の部分の選択された領域でのみ行うことができる。
【0094】
一実施形態では、光硬化性組成物の単一の部分のみが、光硬化工程の前に個々の爪に塗布されるが、複数の光硬化性組成物の部分が塗布されることも、本発明の他の実施形態では可能である。例えば、第1の光硬化性組成物の部分を塗布して成形した後に、第2の光硬化性組成物(第1の光硬化性組成物とは異なって着色又は彩色されるか、又は他の方法で組成が異なる可能性がある)の部分を塗布して成形することができ、この第2の光硬化性組成物部分は、両方の部分が光硬化され、硬化したネイルコーティングを提供する前に成形される。
【0095】
光硬化性組成物の配合
成分(a)(少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化モノマー)、成分(b)(少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化オリゴマー)、成分(c)(少なくとも1種のコア/シェルコポリマーの粒子)及び成分(d)(少なくとも1種の光開始剤)の相対質量比は、特に重要ではないと考えられており、選択された特定の成分、光硬化性組成物及びそれから得られる硬化物品に求められる特徴に基づいて、所望に応じて変えることができる。例えば、特定の実施形態における光硬化性組成物は、5~45質量%の成分(a)、5~60質量%の成分(b)、10~60質量%の成分(c)、及び0.1~10質量%の成分(d)を含んでもよく、(a)、(b)、(c)及び(d)の質量は、合計で100%に等しい(これは、前述の(a)、(b)、(c)及び(d)のそれぞれの質量%の範囲が、(a)、(b)、(c)、及び(d)の他に成分を含む可能性のある光硬化性組成物の総質量ではなく、これらの成分を組み合わせた質量に基づくことを意味する)。
【0096】
好ましい実施形態によれば、光硬化性組成物の成分は、光硬化性組成物が少なくとも0℃から60℃の間の温度範囲で液体であるように選択される。この文脈で使用される場合、「液体」という用語は、光硬化性組成物(特にコア/シェルコポリマー)の部分が、普通なら液体のマトリックス内に小型の、よく分散した粒子の形態で存在する可能性を排除しない。
【0097】
一般的に言えば、本発明による光硬化性組成物は、個々の成分を組み合わせることによって調製することができる。(メタ)アクリルポリマーが光硬化性組成物の成分である場合、コア/シェルコポリマー及び(メタ)アクリルポリマーは、光硬化性組成物に別々に、又は、例えば、(メタ)アクリルポリマーが、その段階の1つとして調製される、コア/シェル共重合プロセスを介して得られるポリマー組成物の一部として一緒に供給されてもよい。光硬化性組成物はまた、コア/シェルコポリマー、(メタ)アクリルポリマー及び比較的少量の重合有機物質で構成されるマスターバッチを最初に調製し、後にさらなる重合有機物質及び場合によっては他の成分(光開始剤等)と組み合わせて、硬化ネイルコーティングの作製に使用される最終的な光硬化性組成物を生成するマスターバッチ方法を用いて製造することができる。
【0098】
ネイルコーティング形成における光硬化性組成物の使用
本発明で利用される光硬化性組成物は、光硬化される(すなわち、光、特に可視光又はUV光等の化学線放射への曝露によって硬化される)。しかしながら、このような光硬化は、光硬化性組成物が爪の表面に塗布され、かつ特定の実施形態では、所望の形状に成形される後まで行われない。例えば、化粧用ネイルコーティングを形成する方法は、対象の爪に上記の光硬化性組成物を配置する工程と、任意選択的に光硬化性組成物を成形する工程と、光硬化性組成物をUV光に曝露する工程とを含む。
【0099】
光硬化性組成物の部分(ビーズ等)の配置は、オペレーター(ネイリスト又は爪がコーティングされている個人であってもよい)がチューブ容器から絞るか、又はプランジャー付きのシリンジから爪又は塗布用具に押し出すことによって直接行われてもよい。代替として、光硬化性組成物の塗布は、アクリルブラシ若しくはジェルブラシ、プッシャー及び/若しくはスパチュラ等の塗布用具、又はネイルコーティング製品を塗布するために従来使用されている他のそのような道具の助けを借りて完了してもよい。
【0100】
爪に光重合性組成物のビーズを配置した後、オペレーターは、光硬化性組成物を操作して、所望の位置にそれを移動し、ネイルフォームの使用を伴って又は伴わずに所望の形状に形成することができる。また、ネイルモールドを使用することができ、光硬化性組成物(好ましくは、高粘度液体又はゲルの形態)の部分をネイルモールドの表面に塗布し、光硬化性組成物を塗布した部分は、ネイルモールド内で成形され、光硬化性組成物の成形された部分を含むネイルモールドは、対象の爪に塗布され(光硬化性組成物の成形された部分を有する表面を、爪の表面に接触させる)、光硬化性組成物は、化学線放射への暴露によって硬化され、硬化したネイルコーティングを提供し、その後、ネイルモールドは、硬化したネイルコーティングから分離される。
【0101】
光硬化性組成物が爪の表面に塗布され、任意選択的に成形又は形成された後、光硬化性組成物が配置された爪は、光硬化性組成物を硬化するのに有効な条件下で、UV光等の化学線放射に曝露される。UV光の好適な源は、一般的にネイルサロンで使用されているUVランプのようなUVランプでもよい。このようなUVランプは、320nmから420nmの間等、光硬化性組成物を硬化させるのに必要な任意の波長で動作することができる。曝露時間は、光硬化性組成物の硬化を達成するのに十分な長さであるべきである。例えばこれは、5秒~6分であり得る。
【0102】
「UVランプ」という用語は、広く解釈されることを意味する。これは、本発明で使用される光硬化性組成物を硬化させるのに十分な強度で、320nm~420nmの範囲で光を呈する電磁放射の任意の源を指す。「UVランプ」という用語は、上記の範囲のUV光を発するコンパクトな蛍光灯等の蛍光灯を含む従来のUVランプを含む。「UVランプ」という用語はまた、光硬化性組成物を硬化させるのに十分な強度で、320nm~420nmの範囲でUV光を含む電磁放射を放出する発光ダイオードランプ(一般に「LEDランプ」と呼ばれる)等の新しい光源又はUV照射を指す。「UVランプ」という用語はまた、光硬化性組成物を硬化させるのに十分な強度で、320nm~420nmの範囲でUV光を含む他の任意の種類の光源を指す。
【0103】
硬化工程に続いて、硬化したネイルコーティングは、トリミング、サンディング、バッフィング、ポリッシング、装飾等の1つ又は複数のさらなる手順に供され得る。また、爪の表面に光硬化コーティングの複数の層を形成することが可能であり、光硬化性組成物の第1層を爪の表面に塗布し、任意選択的に成形して硬化し、その後、光硬化性組成物の少なくとも1つのさらなる層を第1の硬化層の上部に塗布し、任意選択的に成形して硬化させる。
【0104】
光硬化性組成物を含む包装物品
上記の光硬化性組成物は、好適な容器に包装され、光硬化性組成物を硬化ネイルコーティングに形成する際に使用する前に貯蔵及び/又は輸送され得る。したがって、包装物品は、容器及び容器内に配置された光硬化性組成物を含むことができ、該包装物品は、容器から光硬化性組成物を分注することができる分注部品を有する。好適な種類の容器には、チューブ、瓶(広口瓶又はポットを含む)、及びシリンジ(プランジャーを装備)が含まれる。容器は、剛性でも柔軟性でもよく、例えば、容器は、容器内のアパーチャを通して光硬化性組成物の分注を容易にするために、ユーザーが容器を絞ることを可能にする柔軟なチューブ又は瓶であってもよい。容器には、使用されていない時に容器の内容物を保護するために密封するか、又は偶発的な放出に対して密封することを可能にするねじ蓋若しくはプレスオンキャップ又はフラップ等の開放可能な封止を取り付けることができる。このような開放可能な封止は、ブラシ等の塗布用具を含んでもよい。容器に含まれる光硬化性組成物の貯蔵安定性を高めるために、容器は一般に不透明であることが好ましいであろう。分注部品は、例えば、ブラシ、フォームアプリケータ、芯、ノズル、ローラー、針又はアパーチャ(オリフィス)等であることができる。一例として、分注部品は、ビーズ等の、光硬化性組成物の所望の部分を、爪表面に直接、又は後に光硬化性組成物の部分を爪表面に移すために使用されるアプリケーター(塗布器具)、例えばブラシ、プッシャー又はスパチュラに直接送り出すように構成されたアパーチャである。
【0105】
また本発明によって企図されるのは、容器及び容器内に配置された光硬化性組成物を含む包装物品、少なくとも1つの塗布器具、並びに光硬化性組成物を分注、塗布、及び硬化してネイルコーティングを提供するための使用説明書で構成されるキットである。包装物品は、前に記載したように分注部品を有することができる。使用説明書は、指示シートの形で提供され、及び/又はキットの構成要素を含む包装容器に印刷されてもよい。
【0106】
発明の態様
本発明の特定の例示的で非限定的な態様は、以下のように要約することができる。
【0107】
態様1:爪のコーティングであって、該コーティングが、光硬化性組成物の光硬化物であり、該光硬化性組成物が、
a).少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化モノマーと、
b).少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化オリゴマーと、
c).少なくとも1種のコア/シェルコポリマーの粒子と、
d).少なくとも1種の光開始剤と
を含む、爪のコーティング。
【0108】
態様2:コア/シェルコポリマーが、0℃未満のガラス転移温度を有するエラストマー性ポリマーを含むコアと、少なくとも30℃のガラス転移温度を有する非エラストマー性ポリマーを含む少なくとも1つのシェルとで構成される、態様1のコーティング。
【0109】
態様3:少なくとも1種のコア/シェルコポリマーの粒子が、a)及びb)で構成される液体マトリックス中に懸濁されている、態様1又は2のコーティング。
【0110】
態様4:少なくとも1種のコア/シェルコポリマーの粒子が、25~900nmの平均粒径を有する、態様1から3のいずれか1つに記載のコーティング。
【0111】
態様5:光硬化性組成物が、光硬化性組成物の質量に対して、合計で0~20質量%の少なくとも1種の非反応性溶媒で構成される、態様1から4のいずれか1つに記載のコーティング。
【0112】
態様6:光硬化性組成物が、光硬化性組成物の総質量に対して、1~60質量%、5~55質量%、又は10~50質量%の少なくとも1種のコア/シェルコポリマーの粒子で構成される、態様1から5のいずれか1つに記載のコーティング。
【0113】
態様7:少なくとも1つのシェルが、重合した形態で、C1~C12アルキル鎖を有するメタクリル酸アルキル、C6~C12ビニル芳香族有機化合物、アクリロニトリル及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含み、該シェルが架橋されていてもよい、態様1から6のいずれか1つに記載のコーティング。
【0114】
態様8:少なくとも1つのシェルが、重合した形態で、メタクリル酸メチルを含み、該シェルが架橋されていてもよい、態様1から7のいずれか1つに記載のコーティング。
【0115】
態様9:コアが、重合した形態で、C4~C12共役ジエン及びC1~C12アクリル酸アルキルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む、態様1から8のいずれか1つに記載のコーティング。
【0116】
態様10:コア/シェルコポリマーが、
a).重合した形態のアクリル酸ブチルで構成されるコアと、重合した形態のメタクリル酸メチルで構成されるシェルとを含むコア/シェルコポリマー、並びに
b).共重合した形態のスチレン及びブタジエンで構成されるコアと、重合した形態のメタクリル酸メチルで構成されるシェルとを含むコア/シェルコポリマー
からなる群から選択される、態様1から9のいずれか1つに記載のコーティング。
【0117】
態様11:コアが、コア/シェルコポリマーの総質量の60質量%~95質量%である、態様1から10のいずれか1つに記載のコーティング。
【0118】
態様12:少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化モノマーが、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、メタクリル酸イソボルニル、ポリエチレングリコールジメタクリレート及びトリメチロールプロパントリメタクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む、態様1から11のいずれか1つに記載のコーティング。
【0119】
態様13:少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化オリゴマーが、少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化ウレタンオリゴマーを含む、態様1から12のいずれか1つに記載のコーティング。
【0120】
態様14:少なくとも1種又は複数の光開始剤が、光硬化性組成物の総質量に対して0.1~5%の総量で存在する、態様1から13のいずれか1つに記載のコーティング。
【0121】
態様15:光硬化性組成物が、25℃で100~5,000,000cpsの粘度を有する、態様1から14のいずれか1つに記載のコーティング。
【0122】
態様16:光硬化性組成物が、コア/シェルコポリマーではない少なくとも1種の(メタ)アクリルポリマーで更に構成される、態様1から15のいずれか1つに記載のコーティング。
【0123】
態様17:面積当たりのエネルギー損失によって測定される25℃で少なくとも15J/mから少なくとも20J/mの衝撃強さを有する、態様1から16のいずれか1つに記載のコーティング。
【0124】
態様18:爪が、ヒトの指の爪又は足指の爪である、態様1から17のいずれか1つに記載のコーティング。
【0125】
態様19:
a)光硬化性組成物を爪の表面に配置する工程と、
b)光硬化性組成物を紫外光又は可視光に曝露する工程と
を含む、爪にコーティングを形成する方法であって、
該光硬化性組成物が、少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化モノマー、少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化オリゴマー、少なくとも1種のコア/シェルコポリマーの粒子及び少なくとも1種の光開始剤を含むか、又は態様1から18のいずれか1つに記載の光硬化性組成物と一致している、方法。
【0126】
態様20:光硬化性組成物が、爪の表面に配置され、光硬化される前に連続層に形成される、態様19に記載の方法。
【0127】
態様21:容器及び容器内に配置された光硬化性組成物を含む包装物品であって、該包装物品が、容器から光硬化性組成物を分注することができる分注部品を有し、該光硬化性組成物が、少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化モノマー、少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化オリゴマー、少なくとも1種のコア/シェルコポリマーの粒子、及び少なくとも1種の光開始剤を含むか、又は態様1から18のいずれか1つに記載の光硬化性組成物と一致している、包装物品。
【0128】
態様22:容器が、チューブ、瓶又はシリンジである、態様21に記載の包装物品。
【0129】
態様23:分注部品が、ブラシ、フォームアプリケータ、芯、ノズル、ローラー、針又はアパーチャである、態様21又は22に記載の包装物品。
【0130】
態様24:容器及び容器内に配置された光硬化性組成物を含む包装物品と、少なくとも1つの塗布器具と、該光硬化性組成物を分注、塗布、及び硬化してネイルコーティングを提供するための使用説明書とを含むキットであって、該光硬化性組成物が、少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化モノマー、少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化オリゴマー、少なくとも1種のコア/シェルコポリマーの粒子、及び少なくとも1種の光開始剤を含むか、又は態様1から18のいずれか1つに記載の光硬化性組成物と一致している、キット。
【0131】
態様25:少なくとも1つの塗布器具が、ブラシ、プッシャー、又はスパチュラのうちの少なくとも1つを含む、態様24に記載のキット。
【0132】
本明細書の中で、実施形態は、明確かつ簡潔な明細書を書くことを可能にする方法で記載されているが、本発明から逸脱することなく、実施形態が種々組み合わされ、又は分離され得ることが意図されており、理解されるであろう。例えば、本明細書に記載されるすべての好ましい特質は、本明細書に記載される発明のすべての態様に適用可能であることが理解されるであろう。
【0133】
いくつかの実施形態では、本明細書における発明は、本発明の基本的及び新規の特徴に著しく影響を及ぼさない任意の要素又は方法工程を除外するものとして解釈することができる。更に、いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書で指定されていない任意の要素又は方法工程を除外するものとして解釈することができる。
【0134】
本発明は、特定の実施形態を参照して本明細書に例示及び記載されているが、本発明は、示されている詳細に限定されることを意図するものではない。むしろ種々の改変は、特許請求の範囲の均等物の領域及び範囲内で、本発明から逸脱することなく細部において行われてもよい。
【実施例
【0135】
Table 1(表1)に列挙されている成分を使用して、2つのベース光硬化性組成物(ベース配合物1及び2)を調製した。列挙されている量は、質量部である。すべての成分(ウレタンオリゴマーを除く)を4オンスの琥珀色の広口ガラス瓶に加え、次いでローラーで、60℃で30分間混合した。次いでウレタンオリゴマーを広口瓶に加え、配合物をローラーで60℃で更に1.5時間更に混合して、透明な粘性溶液を得た。
【0136】
【表1】
【0137】
6つの異なるポリマー粉末を、各ベース配合物1及び2に様々な割合でブレンドした(ベース配合物+ポリマー粉末の総質量に対して、10~40質量%)。
【0138】
使用したポリマー粉末は、Table 2(表2)に記載した通りであった。Plastistrength(登録商標)、Durastrength(登録商標)、及びClearstrength(登録商標)は、すべてArkema社の登録商標である。
【0139】
【表2】
【0140】
硬化性組成物を、以下の手順に従って、ベース配合物及びポリマー粉末から調製した。Flacktek(登録商標)高速ミキサーカップに、ベース配合物1又はベース配合物2のいずれか20gを添加した。指定のポリマー粉末5グラムを添加し、混合物を3000 RPMで4分間高速混合した。ある場合には、若干濁った低粘度液体が得られ、他の場合には、若干濁った高粘度ゲルが得られた。稠度の違いは、モノマーの量及びオリゴマーの量並びに/又はコア/シェル粒子の量及び種類に依存する。
【0141】
Brookfield DV3T Cone and Plate Rheometerを使用して、得られた光硬化性組成物のそれぞれの粘度を測定した。すべての測定は、CPE-52Zコーンを使用して0.5mLの試料で25℃で行った。剪断速度を測定し、Rheocalcソフトウェアを使用してデータを収集及び分析した。測定された粘度は、Table 3(表3)に報告される。比較として、市販のアクリルネイルビルダー/スカルプチュアジェル製品は、2,500,000cpsの粘度を有することがわかっている。
【0142】
【表3】
【0143】
光硬化性組成物に対する衝撃試験は、以下の手順に従って実施した。各光硬化性組成物の3つの試料を、60℃のオーブンで温め、シリコーン型に塗布し、395nm及び30fpmでPhoseon LED硬化ランプを使用して硬化させた。得られた硬化ブリックを切り欠きして、50% RHで一晩平衡化させた後にそれらの衝撃強さを測定した。Zwick/Roell HIT5.5P Izod衝撃試験機を使用して、ブリックの衝撃強さを測定した。得られた結果をTable 4(表4)に示す。アクリルコポリマー(ポリマーA)を含む高分子量ポリマー粉末を使用する場合、衝撃強さは非常に低い(8.8J/m)。しかしながら、ゴム状コアを有するコア/シェルアクリル耐衝撃性改良剤(Durastrength(登録商標)440)を含む光硬化性組成物は、該硬化物の2~3倍の衝撃強さの増加を示す(ベース配合物に応じて19.6及び28.7J/m)。Durastrength(登録商標)350とDurastrength(登録商標)440の間の差は、ゴム状コアの大きさである。Durastrength(登録商標)440を用いて達成される衝撃強さは、Durastrength(登録商標)350を用いて観察されるものよりも高い。両方のベース配合物においてClearstrength(登録商標)XT-100を含む光硬化性組成物は、硬化すると、それぞれ29.8J/m及び39.3J/mの衝撃強さを有する。比較として、市販のアクリル性ネイルビルダー/スカルプチュアジェル製品は、同じ方法で硬化し、試験した場合に12.7J/mの面積当たりの平均エネルギー損失を有することがわかっている。
【0144】
【表4】
【国際調査報告】