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▶ ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツドの特許一覧

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  • 特表-FCRN抗体およびその使用の方法 図1
  • 特表-FCRN抗体およびその使用の方法 図2
  • 特表-FCRN抗体およびその使用の方法 図3
  • 特表-FCRN抗体およびその使用の方法 図4A-4C
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-03
(54)【発明の名称】FCRN抗体およびその使用の方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220926BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220926BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20220926BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20220926BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220926BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220926BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20220926BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220926BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20220926BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220926BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20220926BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220926BHJP
【FI】
A61K39/395 W
A61P37/06
A61K39/395 Y
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P7/04
A61P7/00
A61P19/02
A61P21/00
A61P7/06
A61P17/00
A61P5/14
A61P3/10
A61K47/02
A61K47/26
A61K47/14
A61K9/08
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506356
(86)(22)【出願日】2020-08-03
(85)【翻訳文提出日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 US2020044731
(87)【国際公開番号】W WO2021022249
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】62/881,897
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】アロヨ,サンティアゴ
(72)【発明者】
【氏名】デニー,ウィリアム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB13
4C076CC07
4C076CC09
4C076DD08
4C076DD23
4C076DD26
4C076DD46
4C076DD67
4C076EE23
4C076FF11
4C076FF68
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA33
4C085CC02
4C085CC03
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE07
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
ヒト新生児Fc受容体(FcRn)に対する抗体を静脈内投薬するための方法が、記載される。抗FcRn抗体は、例えば、対象における自己抗体のクリアランスを促進するため、対象における抗原提示を抑制するため、免疫応答を遮断するため、例えば、対象における免疫複合体に基づく免疫応答の活性化を遮断するため、または対象における免疫学的疾患(例えば、自己免疫疾患)を処置するために、有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同種免疫および/または自己免疫障害を処置する方法であって、対象への5~60mg/kgの用量の抗FcRn抗体の静脈内注入を含み、前記静脈内注入が、90分間またはそれ未満にわたって行われ、前記抗FcRn抗体が、(1)CDR L1、CDR L2、およびCDR L3を含む軽鎖可変領域、ならびに(2)CDR H1、CDR H2、およびCDR H3を含む重鎖可変領域を含み、
前記CDR L1が、TGTGSDVGSYNLVS(配列番号1)の配列に対して2つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、
前記CDR L2が、GDSERPS(配列番号2)の配列に対して1つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、
前記CDR L3が、SSYAGSGIYV(配列番号3)の配列に対して1つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、
前記CDR H1が、TYAMG(配列番号4)、DYAMG(配列番号5)、またはNYAMG(配列番号6)の配列に対して1つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、
前記CDR H2が、SIGSSGAQTRYADS(配列番号7)、SIGASGSQTRYADS(配列番号8)、SIGASGAQTRYADS(配列番号9)、またはSIGASGGQTRYADS(配列番号10)の配列に対して2つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、
前記CDR H3が、LAIGDSY(配列番号11)の配列に対して1つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含む、
前記方法。
【請求項2】
前記CDR L1が、配列TGTGSDVGSYNLVS(配列番号1)を含み、
前記CDR L2が、配列GDSERPS(配列番号2)を含み、
前記CDR L3が、配列SSYAGSGIYV(配列番号3)を含み、
前記CDR H1が、配列TYAMG(配列番号4)を含み、
前記CDR H2が、配列SIGASGSQTRYADS(配列番号8)を含み、
前記CDR H3が、配列LAIGDSY(配列番号11)を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記注入が、7~90分間、7~60分間、7~45分間、7~30分間、10~90分間、10~60分間、10~45分間、10~30分間、または15~30分間にわたって行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体のFcドメインが、フコシル化されていない、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体のFcドメインが、グリコシル化されていない、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体が、IgG1抗体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体が、完全ヒト抗体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記同種免疫および/または自己免疫障害が、胎児および新生児同種免疫性血小板減少症、胎児および新生児の溶血性疾患、同種免疫性汎血小板減少症、先天性心ブロック、胎児関節拘縮症、新生児重症筋無力症、新生児自己免疫性溶血性貧血、新生児抗リン脂質症候群、新生児多発性筋炎、皮膚筋炎、新生児ループス、新生児強皮症、ベーチェット病、新生児グレーブス病、新生児川崎病、新生児自己免疫性甲状腺疾患、ならびに新生児I型真性糖尿病からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記同種免疫および/または自己免疫障害が、血小板減少症、汎血小板減少症、先天性心ブロック、関節拘縮症、重症筋無力症、自己免疫性溶血性貧血、温式自己免疫性溶血性貧血、抗リン脂質症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、ループス、強皮症、ベーチェット病、グレーブス病、川崎病、自己免疫性甲状腺疾患、およびI型真性糖尿病からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記注入が、5~60mg/mlの前記抗体を含む組成物の注入である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記注入が、30、45、または60mg/mlの前記抗体を含む組成物の注入である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記重鎖が、配列番号20~24のうちのいずれか1つの配列に対して少なくとも95%、97%、99%、または100%の同一性を有する配列を含み、前記軽鎖が、配列番号19の配列に対して少なくとも95%、97%、99%、または100%の同一性を有する配列を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体重鎖が、配列番号20~24の296位にN以外のアミノ酸を有する配列番号20~24のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記注入が、10~60mg/mlの前記抗体、20~30mMのリン酸ナトリウム、20~30mMの塩化ナトリウム、80~100mg/mlのトレハロース、および0.1~0.005%重量/体積のポリソルベート80を含む組成物の注入である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体重鎖が、配列番号24の配列に対して以下のアミノ酸置換:A23V、S30R、L80V、A84T、E85D、A93Vのうちの1つまたは複数を有する配列番号24のアミノ酸配列を含み、前記抗体軽鎖が、配列番号19の配列に対して以下のアミノ酸置換:Q38H、V58I、およびG99Dのうちの1つまたは複数を有する配列番号19のアミノ酸配列を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体重鎖が、C末端リジンを含有しない、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記投与される抗体が、配列番号19を含む軽鎖、および配列番号24または296位のアミノ酸がN以外である配列番号24のバリアントを含む重鎖を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体が、5~30mg/kgで投与される、請求項1~10および12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体が、30~60mg/kgで投与される、請求項1~10、12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記静脈内注入における抗体の濃度が、10mg/ml~30mg/mlである、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が、妊娠中の女性である、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記用量が、初回投薬の時点における前記妊娠中の女性の体重に基づき、前記妊娠中の女性の体重増加に基づいて上方調節されない、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記用量が、投与1回当たりの用量であり、初回投薬の時点における前記妊娠中の女性の体重に基づき、前記妊娠中の女性の体重増加に基づいて上方調節される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が、少なくとも隔週で投与される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が、隔週で投与される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物が、少なくとも毎週投与される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記組成物が、毎週投与される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記対象が、妊娠中の女性であり、初回注入が、妊娠の初期3カ月間の間に投与される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記対象が、妊娠中の女性であり、初回注入が、妊娠の中期3カ月間の間に投与される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記対象が、妊娠中の女性であり、初回注入が、妊娠の後期3カ月間の間に投与される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記対象が、妊娠中の女性であり、前記妊娠中の女性が、重度の胎児貧血の産科歴を有する、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記対象が、妊娠中の女性であり、前記妊娠中の女性が、胎児および新生児の溶血性疾患の産科歴を有する、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記対象が、妊娠中の女性であり、前記妊娠中の女性が、上昇した抗RhD、抗Rhc、または抗Kell免疫グロブリン同種抗体力価を有する、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記対象が、妊娠中の女性であり、前記妊娠中の女性が、上昇した抗Rhcまたは抗Kell免疫グロブリン同種抗体力価を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記対象が、妊娠中の女性であり、前記妊娠中の女性が、抗Lu、Lu、Bg、Kn、Yt、E、c、K、C、Fy、cE、ce、D、Ce、cE、K、Kp、Kp、Fy、M、N、S、Le、Le、Fy、Jk、Diego、P、およびMi/Murからなる群から選択される1つまたは複数の抗体について、上昇した免疫グロブリン同種抗体力価を有する、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記対象が、妊娠中の女性であり、前記妊娠中の女性が、重度の胎児貧血または在胎24週以内での死産の産科歴、ならびに上昇した抗Dまたは抗Kell IgG同種抗体力価を有し、抗原陽性の胎児を妊娠中である、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記対象が、妊娠中の女性であり、初回注入が、妊娠12~16週目である、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記対象が、妊娠中の女性であり、初回注入が、妊娠の14週目の間である、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記注入時間が、同一であり、90分間もしくはそれ未満、60分間もしくはそれ未満、45分間もしくはそれ未満、30分間もしくはそれ未満、15分間もしくはそれ未満、または7分間もしくはそれ未満にわたって行われる、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
初回注入が、90分間もしくはそれ未満、60分間もしくはそれ未満、45分間もしくはそれ未満、30分間もしくはそれ未満、15分間もしくはそれ未満にわたって行われ、後続の注入時間が、低減される、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
第2の注入および第3の注入の時間が、同一であり、60分間もしくはそれ未満、45分間もしくはそれ未満、30分間もしくはそれ未満、15分間もしくはそれ未満、または7分間もしくはそれ未満にわたって行われ、後続の注入時間が、低減される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
初回注入および第2の注入の時間が、同一であり、90分間もしくはそれ未満、60分間もしくはそれ未満、45分間もしくはそれ未満、30分間もしくはそれ未満、15分間もしくはそれ未満にわたって行われ、後続の注入時間が、低減される、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
初回注入が、60分間にわたって行われ、後続の注入が、45分間もしくはそれ未満、30分間もしくはそれ未満、または15分間もしくはそれ未満にわたって行われるか、あるいは初回注入が、45分間にわたって行われ、後続の注入が、30分間もしくはそれ未満、または15分間もしくはそれ未満にわたって行われるか、あるいは初回注入が、30分間にわたって行われ、後続の注入が、15分間もしくはそれ未満にわたって行われる、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
初回注入および第2の注入が、いずれも60分間にわたって行われ、後続の注入が、45分間もしくはそれ未満、30分間もしくはそれ未満、または15分間もしくはそれ未満にわたって行われるか、あるいは初回注入および第2の注入が、いずれも45分間にわたって行われ、後続の注入が、30分間もしくはそれ未満、または15分間もしくはそれ未満にわたって行われるか、あるいは初回注入および第2の注入が、いずれも30分間にわたって行われ、後続の注入が、15分間もしくはそれ未満にわたって行われる、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
抗FcRn抗体を対象に投与する方法であって、対象への5~60mg/kgの用量の前記抗FcRn抗体の静脈内注入を含み、前記静脈内注入が、90分間またはそれ未満にわたって行われ、前記抗FcRn抗体が、(1)CDR L1、CDR L2、およびCDR L3を含む軽鎖可変領域、ならびに(2)CDR H1、CDR H2、およびCDR H3を含む重鎖可変領域を含み、
前記CDR L1が、TGTGSDVGSYNLVS(配列番号1)の配列に対して2つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、
前記CDR L2が、GDSERPS(配列番号2)の配列に対して1つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、
前記CDR L3が、SSYAGSGIYV(配列番号3)の配列に対して1つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、
前記CDR H1が、TYAMG(配列番号4)、DYAMG(配列番号5)、またはNYAMG(配列番号6)の配列に対して1つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、
前記CDR H2が、SIGSSGAQTRYADS(配列番号7)、SIGASGSQTRYADS(配列番号8)、SIGASGAQTRYADS(配列番号9)、またはSIGASGGQTRYADS(配列番号10)の配列に対して2つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、
前記CDR H3が、LAIGDSY(配列番号11)の配列に対して1つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含む、
前記方法。
【請求項46】
前記CDR L1が、配列TGTGSDVGSYNLVS(配列番号1)を含み、
前記CDR L2が、配列GDSERPS(配列番号2)を含み、
前記CDR L3が、配列SSYAGSGIYV(配列番号3)を含み、
前記CDR H1が、配列TYAMG(配列番号4)を含み、
前記CDR H2が、配列SIGASGSQTRYADS(配列番号8)を含み、
前記CDR H3が、配列LAIGDSY(配列番号11)を含む、
請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記注入が、7~90分間、7~60分間、7~45分間、7~30分間、10~90分間、10~60分間、10~45分間、10~30分間、または15~30分間にわたって行われる、請求項45または46に記載の方法。
【請求項48】
前記抗体のFcドメインが、フコシル化されていない、請求項45~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記抗体のFcドメインが、グリコシル化されていない、請求項45~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記抗体が、IgG1抗体である、請求項45~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記抗体が、完全ヒト抗体である、請求項45~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記対象が、胎児および新生児同種免疫性血小板減少症、胎児および新生児の溶血性疾患、同種免疫性汎血小板減少症、先天性心ブロック、胎児関節拘縮症、新生児重症筋無力症、新生児自己免疫性溶血性貧血、新生児抗リン脂質症候群、新生児多発性筋炎、皮膚筋炎、新生児ループス、新生児強皮症、ベーチェット病、新生児グレーブス病、新生児川崎病、新生児自己免疫性甲状腺疾患、ならびに新生児I型真性糖尿病からなる群から選択される同種免疫および/または自己免疫障害を有する、請求項45~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記対象が、血小板減少症、汎血小板減少症、先天性心ブロック、関節拘縮症、重症筋無力症、自己免疫性溶血性貧血、温式自己免疫性溶血性貧血、抗リン脂質症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、ループス、強皮症、ベーチェット病、グレーブス病、川崎病、自己免疫性甲状腺疾患、およびI型真性糖尿病からなる群から選択される同種免疫および/または自己免疫障害を有する、請求項45~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記注入が、5~60mg/mlの前記抗体を含む組成物の注入である、請求項45~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記注入が、30、45、または60mg/mlの前記抗体を含む組成物の注入である、請求項45~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記重鎖が、配列番号20~24のうちのいずれか1つの配列に対して少なくとも95%、97%、99%、または100%の同一性を有する配列を含み、前記軽鎖が、配列番号19の配列に対して少なくとも95%、97%、99%、または100%の同一性を有する配列を含む、請求項45~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記抗体重鎖が、配列番号20~24の296位にN以外のアミノ酸を有する配列番号20~24のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む、請求項45~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記注入が、10~60mg/mlの前記抗体、20~30mMのリン酸ナトリウム、20~30mMの塩化ナトリウム、80~100mg/mlのトレハロース、および0.1~0.005%重量/体積のポリソルベート80を含む組成物の注入である、請求項45~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記抗体重鎖が、配列番号24の配列に対して以下のアミノ酸置換:A23V、S30R、L80V、A84T、E85D、A93Vのうちの1つまたは複数を有する配列番号24のアミノ酸配列を含み、前記抗体軽鎖が、配列番号19の配列に対して以下のアミノ酸置換:Q38H、V58I、およびG99Dのうちの1つまたは複数を有する配列番号19のアミノ酸配列を含む、請求項45~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記抗体重鎖が、C末端リジンを含有しない、請求項45~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記投与される抗体が、配列番号19を含む軽鎖、および配列番号24または296位のアミノ酸がN以外である配列番号24のバリアントを含む重鎖を含む、請求項45~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記抗体が、5~30mg/kgで投与される、請求項45~54および56~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記抗体が、30~60mg/kgで投与される、請求項45~54および56~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記静脈内注入における抗体の濃度が、10mg/ml~30mg/mlである、請求項45~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記対象が、妊娠中の女性である、請求項45~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記用量が、初回投薬の時点における前記妊娠中の女性の体重に基づき、前記妊娠中の女性の体重増加に基づいて上方調節されない、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記用量が、投与1回当たりの用量であり、初回投薬の時点における前記妊娠中の女性の体重に基づき、前記妊娠中の女性の体重増加に基づいて上方調節される、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記組成物が、少なくとも隔週で投与される、請求項45~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記組成物が、隔週で投与される、請求項45~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記組成物が、少なくとも毎週投与される、請求項45~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記組成物が、毎週投与される、請求項45~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記対象が、妊娠中の女性であり、初回注入が、妊娠の初期3カ月間の間に投与される、請求項45~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記対象が、妊娠中の女性であり、初回注入が、妊娠の中期3カ月間の間に投与される、請求項45~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記対象が、妊娠中の女性であり、初回注入が、妊娠の後期3カ月間の間に投与される、請求項45~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記対象が、妊娠中の女性であり、前記妊娠中の女性が、重度の胎児貧血の産科歴を有する、請求項45~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記対象が、妊娠中の女性であり、前記妊娠中の女性が、胎児および新生児の溶血性疾患の産科歴を有する、請求項45~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記対象が、妊娠中の女性であり、前記妊娠中の女性が、上昇した抗RhD、抗Rhc、または抗Kell免疫グロブリン同種抗体力価を有する、請求項45~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記対象が、妊娠中の女性であり、前記妊娠中の女性が、上昇した抗Rhcまたは抗Kell免疫グロブリン同種抗体力価を有する、請求項45~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記対象が、妊娠中の女性であり、前記妊娠中の女性が、抗Lu、Lu、Bg、Kn、Yt、E、c、K、C、Fy、cE、ce、D、Ce、cE、K、Kp、Kp、Fy、M、N、S、Le、Le、Fy、Jk、Diego、P、およびMi/Murからなる群から選択される1つまたは複数の抗体について、上昇した免疫グロブリン同種抗体力価を有する、請求項45~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記対象が、妊娠中の女性であり、前記妊娠中の女性が、重度の胎児貧血または在胎24週以内での死産の産科歴、ならびに上昇した抗Dまたは抗Kell IgG同種抗体力価を有し、抗原陽性の胎児を妊娠中である、請求項45~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記対象が、妊娠中の女性であり、初回注入が、妊娠12~16週目である、請求項45~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記対象が、妊娠中の女性であり、初回注入が、妊娠の14週目の間である、請求項45~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記注入時間が、同一であり、90分間もしくはそれ未満、60分間もしくはそれ未満、45分間もしくはそれ未満、30分間もしくはそれ未満、15分間もしくはそれ未満、または7分間もしくはそれ未満にわたって行われる、請求項45~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
初回注入が、90分間もしくはそれ未満、60分間もしくはそれ未満、45分間もしくはそれ未満、30分間もしくはそれ未満、15分間もしくはそれ未満にわたって行われ、後続の注入時間が、低減される、請求項45~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
第2の注入および第3の注入の時間が、同一であり、60分間もしくはそれ未満、45分間もしくはそれ未満、30分間もしくはそれ未満、15分間もしくはそれ未満、または7分間もしくはそれ未満にわたって行われ、後続の注入時間が、低減される、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
初回注入および第2の注入の時間が、同一であり、90分間もしくはそれ未満、60分間もしくはそれ未満、45分間もしくはそれ未満、30分間もしくはそれ未満、15分間もしくはそれ未満にわたって行われ、後続の注入時間が、低減される、請求項45~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
初回注入が、60分間にわたって行われ、後続の注入が、45分間もしくはそれ未満、30分間もしくはそれ未満、または15分間もしくはそれ未満にわたって行われるか、あるいは初回注入が、45分間にわたって行われ、後続の注入が、30分間もしくはそれ未満、または15分間もしくはそれ未満にわたって行われるか、あるいは初回注入が、30分間にわたって行われ、後続の注入が、15分間もしくはそれ未満にわたって行われる、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
初回注入および第2の注入が、いずれも60分間にわたって行われ、後続の注入が、45分間もしくはそれ未満、30分間もしくはそれ未満、または15分間もしくはそれ未満にわたって行われるか、あるいは初回注入および第2の注入が、いずれも45分間にわたって行われ、後続の注入が、30分間もしくはそれ未満、または15分間もしくはそれ未満にわたって行われるか、あるいは初回注入および第2の注入が、いずれも30分間にわたって行われ、後続の注入が、15分間もしくはそれ未満にわたって行われる、請求項86に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2019年8月1日に出願された米国仮特許出願第62/881,897号の利益を主張する。その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
治療用タンパク質、例えば、治療用抗体は、急速に、免疫学的疾患を有する患者にとって臨床的に重要な薬物クラスとなった。多数の自己免疫および同種免疫疾患は、病原性抗体によって媒介される。免疫学的疾患を処置する新規な方法に対する必要性が存在している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)に対する抗体の静脈内投薬のための方法を特徴とする。抗FcRn抗体は、例えば、対象における自己抗体のクリアランスを促進するため、対象における抗原提示を抑制するため、免疫応答を遮断するため、例えば、対象における免疫複合体に基づく免疫応答の活性化を遮断するため、または対象における免疫学的疾患(例えば、自己免疫疾患)を処置するために、有用である。
【0004】
同種免疫および/または自己免疫障害を処置する方法であって、対象への5~60または30~60mg/kgの用量の抗FcRn抗体の静脈内注入を含み、静脈内注入が、90分間またはそれ未満にわたって行われ、抗FcRn抗体が、(1)CDR L1、CDR L2、およびCDR L3を含む軽鎖可変領域、ならびに(2)CDR H1、CDR H2、およびCDR H3を含む重鎖可変領域を含み、CDR L1が、TGTGSDVGSYNLVS(配列番号1)の配列に対して2つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、CDR L2が、GDSERPS(配列番号2)の配列に対して1つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、CDR L3が、SSYAGSGIYV(配列番号3)の配列に対して1つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、CDR H1が、TYAMG(配列番号4)、DYAMG(配列番号5)、またはNYAMG(配列番号6)の配列に対して1つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、CDR H2が、SIGSSGAQTRYADS(配列番号7)、SIGASGSQTRYADS(配列番号8)、SIGASGAQTRYADS(配列番号9)、またはSIGASGGQTRYADS(配列番号10)の配列に対して2つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、CDR H3が、LAIGDSY(配列番号11)の配列に対して1つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0005】
様々な実施形態において、CDR L1は、配列TGTGSDVGSYNLVS(配列番号1)を含み、CDR L2は、配列GDSERPS(配列番号2)を含み、CDR L3は、配列SSYAGSGIYV(配列番号3)を含み、CDR H1は、配列TYAMG(配列番号4)を含み、CDR H2は、配列SIGASGSQTRYADS(配列番号8)を含み、CDR H3は、配列LAIGDSY(配列番号11)を含む;注入は、7~90分間、7~60分間、7~45分間、7~30分間、10~90分間、10~60分間、10~45分間、10~30分間、または15~30分間にわたって行われる;抗体のFcドメインは、フコシル化されていない;抗体のFcドメインは、グリコシル化されていない;同種免疫および/または自己免疫障害は、胎児および新生児同種免疫性血小板減少症、胎児および新生児の溶血性疾患、同種免疫性汎血小板減少症、先天性心ブロック、胎児関節拘縮症、新生児重症筋無力症、新生児自己免疫性溶血性貧血、新生児抗リン脂質症候群、新生児多発性筋炎、皮膚筋炎、新生児ループス、新生児強皮症、ベーチェット病、新生児グレーブス病、新生児川崎病、新生児自己免疫性甲状腺疾患、ならびに新生児I型真性糖尿病からなる群から選択される。
【0006】
様々な実施形態において、同種免疫および/または自己免疫障害は、血小板減少症、汎血小板減少症、先天性心ブロック、関節拘縮症、重症筋無力症、自己免疫性溶血性貧血、温式自己免疫性溶血性貧血、抗リン脂質症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、ループス、強皮症、ベーチェット病、グレーブス病、川崎病、自己免疫性甲状腺疾患、およびI型真性糖尿病からなる群から選択される。
【0007】
様々な実施形態において、注入は、5~60mg/mlの抗体を含む組成物の注入である;注入は、30mg/mlの抗体を含む組成物の注入である;重鎖は、配列番号20~24のうちのいずれか1つの配列に対して少なくとも95%、97%、99%、または100%の同一性を有する配列を含み、軽鎖は、配列番号19の配列に対して少なくとも95%、97%、99%、または100%の同一性を有する配列を含む;抗体重鎖は、配列番号20~24の296位にN以外のアミノ酸を有する配列番号20~24のうちのいずれかのアミノ酸配列を含み;注入は、10~60mg/mlの抗体、20~30mMのリン酸ナトリウム、20~30mMの塩化ナトリウム、80~100、および0.1~0.005%重量/体積のポリソルベート80を含む組成物の注入である;抗体重鎖は、配列番号24の配列に対して以下のアミノ酸置換:A23V、S30R、L80V、A84T、E85D、A93Vのうちの1つまたは複数を有する配列番号24のアミノ酸配列を含み、抗体軽鎖は、配列番号19の配列に対して以下のアミノ酸置換:Q38H、V58I、およびG99Dのうちの1つまたは複数を有する配列番号19のアミノ酸配列を含む;抗体重鎖は、C末端リジンを含有しない;投与される抗体は、配列番号19を含む軽鎖、および配列番号24または296位のアミノ酸がN以外である配列番号24のバリアントを含む重鎖を含む;抗体は、5~30mg/kgで投与される;静脈内注入における抗体の濃度は、10mg/ml~30mg/mlである。
【0008】
様々な実施形態において、対象は、妊娠中の女性である;用量は、初回投薬の時点における妊娠中の女性の体重に基づき、妊娠中の女性の体重増加に基づいて上方調節されない;用量は、投与1回当たりの用量であり、初回投薬の時点における妊娠中の女性の体重に基づき、妊娠中の女性の体重増加に基づいて上方調節される;用量は、少なくとも隔週で投与される;用量は、隔週で投与される;用量は、少なくとも毎週投与される;用量は、毎週投与される;対象は、妊娠中の女性であり、初回用量は、妊娠の初期3カ月間の間に投与される;対象は、妊娠中の女性であり、初回用量は妊娠の中期3カ月間の間に投与される;対象は、妊娠中の女性であり、初回用量は、妊娠の後期3カ月間の間に投与される;対象は、妊娠中の女性であり、この妊娠中の女性は、重度の胎児貧血の産科歴を有する;対象は、妊娠中の女性であり、この妊娠中の女性は、胎児および新生児の溶血性疾患の産科歴を有する;対象は、妊娠中の女性であり、この妊娠中の女性は、上昇した抗RhD、抗Rhc、または抗Kell免疫グロブリン同種抗体力価を有する;対象は、妊娠中の女性であり、この妊娠中の女性は、上昇した抗Rhcまたは抗Kell免疫グロブリン同種抗体力価を有する;対象は、妊娠中の女性であり、この妊娠中の女性は、抗Lua、Lub、Bg、Kna、Yta、E、c、K、Cw、Fya、cE、ce、D、Ce、cE、K、Kpa、Kpb、Fya、M、N、S、Lea、Leb、Fy、Jka、Diego、P、およびMia/Murからなる群から選択される1つまたは複数の抗体について、上昇した免疫グロブリン同種抗体力価を有する;対象は、妊娠中の女性であり、この妊娠中の女性は、重度の胎児貧血または在胎24週以内での死産の産科歴、ならびに上昇した抗Dまたは抗Kell IgG同種抗体力価を有し、抗原陽性の胎児を妊娠中である;対象は、妊娠中の女性であり、初回投薬は、妊娠12~16週目である;ならびに対象は、妊娠中の女性であり、初回投薬は、妊娠14週目の間である。
【0009】
一態様において、単離された抗体は、(1)CDR L1、CDR L2、およびCDR L3を含む軽鎖可変領域、ならびに(2)CDR H1、CDR H2、およびCDR H3を含む重鎖可変領域を含有し、CDR L1は、TGTGSDVGSYNLVS(配列番号1)の配列に対して2つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、CDR L2は、GDSERPS(配列番号2)の配列に対して1つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、CDR L3は、SSYAGSGIYV(配列番号3)の配列に対して1つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、CDR H1は、TYAMG(配列番号4)、DYAMG(配列番号5)、またはNYAMG(配列番号6)の配列に対して1つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、CDR H2は、SIGSSGAQTRYADS(配列番号7)、SIGASGSQTRYADS(配列番号8)、SIGASGAQTRYADS(配列番号9)、またはSIGASGGQTRYADS(配列番号10)の配列に対して2つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、CDR H3は、LAIGDSY(配列番号11)の配列に対して1つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、抗体は、200pM未満、150pM未満、100pM未満、50pM未満、または40pM未満のKで、ヒトFcRnに結合する。
【0011】
いくつかの実施形態において、単離された抗体は、TGTGSDVGSYNLVS(配列番号1)の配列を有するCDR L1、GDSERPS(配列番号2)の配列を有するCDR L2、SSYAGSGIYV(配列番号3)の配列を有するCDR L3、TYAMG(配列番号4)の配列を有するCDR H1、SIGSSGAQTRYADS(配列番号7)の配列を有するCDR H2、およびLAIGDSY(配列番号11)の配列を有するCDR H3を含有する。
【0012】
いくつかの実施形態において、単離された抗体は、TGTGSDVGSYNLVS(配列番号1)の配列を有するCDR L1、GDSERPS(配列番号2)の配列を有するCDR L2、SSYAGSGIYV(配列番号3)の配列を有するCDR L3、DYAMG(配列番号5)の配列を有するCDR H1、SIGASGSQTRYADS(配列番号8)の配列を有するCDR H2、およびLAIGDSY(配列番号11)の配列を有するCDR H3を含有する。
【0013】
いくつかの実施形態において、単離された抗体は、TGTGSDVGSYNLVS(配列番号1)の配列を有するCDR L1、GDSERPS(配列番号2)の配列を有するCDR L2、SSYAGSGIYV(配列番号3)の配列を有するCDR L3、NYAMG(配列番号6)の配列を有するCDR H1、SIGASGAQTRYADS(配列番号9)の配列を有するCDR H2、およびLAIGDSY(配列番号11)の配列を有するCDR H3を含有する。
【0014】
他の実施形態において、単離された抗体は、TGTGSDVGSYNLVS(配列番号1)の配列を有するCDR L1、GDSERPS(配列番号2)の配列を有するCDR L2、SSYAGSGIYV(配列番号3)の配列を有するCDR L3、TYAMG(配列番号4)の配列を有するCDR H1、SIGASGGQTRYADS(配列番号10)の配列を有するCDR H2、およびLAIGDSY(配列番号11)の配列を有するCDR H3を含有する。
【0015】
さらに他の実施形態において、単離された抗体は、TGTGSDVGSYNLVS(配列番号1)の配列を有するCDR L1、GDSERPS(配列番号2)の配列を有するCDR L2、SSYAGSGIYV(配列番号3)の配列を有するCDR L3、TYAMG(配列番号4)の配列を有するCDR H1、SIGASGSQTRYADS(配列番号8)の配列を有するCDR H2、およびLAIGDSY(配列番号11)の配列を有するCDR H3を含有する。
【0016】
いくつかの実施形態において、単離された抗体の軽鎖は、
QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTGSDVGSYNLVSWYQQHPGKAPKLMIYGDSERPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYAGSGIYVFGTGTKVTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHKSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号19)の配列に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、単離された抗体の重鎖は、
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYAMGWVRQAPGKGLEWVSSIGSSGAQTRYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARLAIGDSYWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号20)
の配列に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。
【0018】
他の実施形態において、単離された抗体の重鎖は、
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDYAMGWVRQAPGKGLEWVSSIGASGSQTRYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARLAIGDSYWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号21)
の配列に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。
【0019】
他の実施形態において、単離された抗体の重鎖は、
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYAMGWVRQAPGKGLEWVSSIGASGAQTRYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARLAIGDSYWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号22)
の配列に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、単離された抗体の重鎖は、
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYAMGWVRQAPGKGLEWVSSIGASGGQTRYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARLAIGDSYWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号23)
の配列に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。
【0021】
他の実施形態において、単離された抗体の重鎖は、
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYAMGWVRQAPGKGLEWVSSIGASGSQTRYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARLAIGDSYWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号24)
の配列に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。
【0022】
別の態様において、単離された抗体は、軽鎖および重鎖を有し、軽鎖は、
QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTGSDVGSYNLVSWYQQHPGKAPKLMIYGDSERPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYAGSGIYVFGTGTKVTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHKSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号19)の配列に対して少なくとも90%、95%、98%、または99%の同一性を有する配列を含み、重鎖は、
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYAMGWVRQAPGKGLEWVSSIGSSGAQTRYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARLAIGDSYWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号20)
の配列に対して少なくとも90%、95%、98%、または99%の同一性を有する配列を含む。
【0023】
別の態様において、単離された抗体は、軽鎖および重鎖を有し、軽鎖は、
QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTGSDVGSYNLVSWYQQHPGKAPKLMIYGDSERPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYAGSGIYVFGTGTKVTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHKSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号19)
の配列に対して少なくとも90%、95%、98%、または99%の同一性を有する配列を含み、重鎖は、
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDYAMGWVRQAPGKGLEWVSSIGASGSQTRYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARLAIGDSYWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号21)
の配列に対して少なくとも90%、95%、98%、または99%の同一性を有する配列を含む。
【0024】
別の態様において、単離された抗体は、軽鎖および重鎖を有し、軽鎖は、
QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTGSDVGSYNLVSWYQQHPGKAPKLMIYGDSERPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYAGSGIYVFGTGTKVTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHKSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号19)
の配列に対して少なくとも90%、95%、98%、または99%の同一性を有する配列を含み、重鎖は、
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYAMGWVRQAPGKGLEWVSSIGASGAQTRYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARLAIGDSYWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号22)
の配列に対して少なくとも90%、95%、98%、または99%の同一性を有する配列を含む。
【0025】
別の態様において、単離された抗体は、軽鎖および重鎖を有し、軽鎖は、
QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTGSDVGSYNLVSWYQQHPGKAPKLMIYGDSERPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYAGSGIYVFGTGTKVTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHKSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号19)
の配列に対して少なくとも90%、95%、98%、または99%の同一性を有する配列を含み、重鎖は、
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYAMGWVRQAPGKGLEWVSSIGASGGQTRYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARLAIGDSYWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号23)
の配列に対して少なくとも90%、95%、98%、または99%の同一性を有する配列を含む。
【0026】
さらに別の態様において、単離された抗体は、軽鎖および重鎖を有し、軽鎖は、
QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTGSDVGSYNLVSWYQQHPGKAPKLMIYGDSERPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYAGSGIYVFGTGTKVTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHKSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号19)
の配列に対して少なくとも90%、95%、98%、または99%の同一性を有する配列を含み、重鎖は、
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYAMGWVRQAPGKGLEWVSSIGASGSQTRYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARLAIGDSYWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号24)
の配列に対して少なくとも90%、95%、98%、または99%の同一性を有する配列を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記抗体は、QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTGSDVGSYNLVSWYQQHPGKAPKLMIYGDSERPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYAGSGIYVFGTGTKVTVL(配列番号X)に対して少なくとも95%、97%、99%、または100%の同一性を有するであるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
いくつかの実施形態において、軽鎖可変領域は、TGTGSDVGSYNLVS(配列番号1)の配列を有するCDR L1、GDSERPS(配列番号2)の配列を有するCDR L2、SSYAGSGIYV(配列番号3)の配列を有するCDR L3を含有する。いくつかの実施形態において、前記抗体は、EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYAMGWVRQAPGKGLEWVSSIGASGSQTRYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARLAIGDSYWGQGTMVTVSS(配列番号Y)に対して少なくとも95%、97%、99%、または100%の同一性を有するであるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
いくつかの実施形態において、重鎖可変領域は、TYAMG(配列番号4)の配列を有するCDR H1、SIGASGSQTRYADS(配列番号8)の配列を有するCDR H2、およびLAIGDSY(配列番号11)の配列を有するCDR H3を含有する。
【0028】
いくつかの実施形態において、単離された抗体の重鎖は、配列番号20~24のうちのいずれか1つの配列に対して少なくとも95%、97%、99%、または100%の同一性を有する配列を含む。他の実施形態において、単離された抗体の軽鎖は、配列番号19の配列に対して少なくとも95%、97%、99%、または100%の同一性を有する配列を含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、単離された抗体の重鎖は、配列番号20~24のうちのいずれか1つのアミノ酸配列に対して5つを上回らない、4つを上回らない、3つを上回らない、2つを上回らない、または1つを上回らない単一のアミノ酸置換を有する配列を含む。いくつかの実施形態において、単離された抗体の軽鎖は、配列番号19の配列に対して5つを上回らない、4つを上回らない、3つを上回らない、2つを上回らない、または1つを上回らない単一のアミノ酸置換を有する配列を含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、単離された抗体は、配列番号20~24のうちのいずれか1つの配列に対してアミノ酸置換N297Aをさらに含む(EU番号付けによる)。
【0031】
他の実施形態において、単離された抗体は、配列番号20~24のうちのいずれか1つの配列に対してアミノ酸置換D355EおよびL357Mをさらに含む(EU番号付けによる)。
【0032】
他の実施形態において、単離された抗体は、以下のアミノ酸置換:配列番号20~24のうちのいずれか1つの配列に対してA23V、S30R、L80V、A84T、E85D、A93V(EU番号付けによる)、ならびに配列番号19の配列に対してQ38H、V58I、およびG99D(EU番号付けによる)のうちのいずれか1つまたは複数をさらに含む。
【0033】
さらに他の実施形態において、単離された抗体は、配列番号20~24のうちのいずれか1つの配列に対して、残基446にC末端リジンを含有しない。
【0034】
いくつかの実施形態において、上述の態様のうちのいずれかの抗体は、N022、N023、N024、N026、またはN027の軽鎖可変領域および重鎖可変領域を有し、比較されている抗体のものと同じFc領域も有する抗体のものよりも低いかまたはそれに等しいKで、ヒトFcRnに結合する。例えば、特定のKアッセイにおいて、抗体のKは、200pM未満、150pM未満、100pM未満、50pM未満、または40pM未満である。
【0035】
本明細書に記載される任意の単離された抗体の相補性決定領域(CDR)およびフレームワーク領域(FR)に割り当てられるアミノ酸位置は、KabatのEUインデックス(Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))に従って定義される。Fc領域配列の位置は、EU番号付け(Edelman et al., Proc Natl Acad USA, 63:78-85 (1969)に従う。
【0036】
別の態様において、単離された抗体は、軽鎖および重鎖を有し、軽鎖は、
QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTGSDVGSYNLVSWYQQHPGKAPKLMIYGDSERPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYAGSGIYVFGTGTKVTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHKSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号19)の配列を含むかまたはそれからなり、重鎖は、EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYAMGWVRQAPGKGLEWVSSIGSSGAQTRYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARLAIGDSYWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号20)
の配列を含むかまたはそれからなる。
【0037】
別の態様において、単離された抗体は、軽鎖および重鎖を有し、軽鎖は、
QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTGSDVGSYNLVSWYQQHPGKAPKLMIYGDSERPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYAGSGIYVFGTGTKVTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHKSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号19)の配列を含むかまたはそれからなり、重鎖は、EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDYAMGWVRQAPGKGLEWVSSIGASGSQTRYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARLAIGDSYWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号21)
の配列を含むかまたはそれからなる。
【0038】
別の態様において、単離された抗体は、軽鎖および重鎖を有し、軽鎖は、
QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTGSDVGSYNLVSWYQQHPGKAPKLMIYGDSERPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYAGSGIYVFGTGTKVTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHKSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号19)の配列を含み、重鎖は、EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYAMGWVRQAPGKGLEWVSSIGASGAQTRYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARLAIGDSYWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号22)
の配列を含むかまたはそれからなる。
【0039】
別の態様において、単離された抗体は、軽鎖および重鎖を有し、軽鎖は、
QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTGSDVGSYNLVSWYQQHPGKAPKLMIYGDSERPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYAGSGIYVFGTGTKVTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHKSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号19)の配列を含むかまたはそれからなり、重鎖は、EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYAMGWVRQAPGKGLEWVSSIGASGGQTRYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARLAIGDSYWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号23)
の配列を含むかまたはそれからなる。
【0040】
さらに別の態様において、単離された抗体は、軽鎖および重鎖を有し、軽鎖は、
QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTGSDVGSYNLVSWYQQHPGKAPKLMIYGDSERPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYAGSGIYVFGTGTKVTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHKSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号19)の配列を含むかまたはそれからなり、重鎖は、EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYAMGWVRQAPGKGLEWVSSIGASGSQTRYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARLAIGDSYWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号24)
の配列を含むかまたはそれからなる。
【0041】
別の態様において、本開示は、対象におけるIgGの異化を増加させる方法を特徴とする。別の態様において、本開示は、対象における自己抗体を低減させる方法を特徴とする。さらに別の態様において、本開示は、対象における免疫複合体に基づく免疫応答の活性化を処置または低減させる方法を特徴とする。本方法は、対象に、本明細書に記載される任意の単離された抗体または本明細書に記載される任意の単離された抗体を含む医薬組成物を投与することを含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、対象における免疫応答は、急性または慢性免疫応答である。
【0043】
いくつかの実施形態において、尋常性天疱瘡、ループス腎炎、重症筋無力症、ギラン・バレー症候群、抗体に媒介される拒絶、劇症型抗リン脂質抗体症候群、免疫複合体に媒介される脈管炎、糸球体炎、チャネル病、視神経脊髄炎、自己免疫性難聴、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、免疫性好中球減少症、拡張型心筋症、および血清病からなる群から選択される医学的状態を対象は有するか、または急性免疫応答は、それによって活性化される。
【0044】
いくつかの実施形態において、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパチー(CIDP)、全身性ループス、急性処置が適応される障害の慢性形態、反応性関節症、原発性胆汁性肝硬変、潰瘍性大腸炎、および抗好中球性細胞質抗体(ANCA)関連脈管炎からなる群から選択される医学的状態を対象は有するか、または慢性免疫応答は、それによって活性化される。
【0045】
いくつかの実施形態において、対象は、自己免疫疾患を有するか、免疫応答がそれによって活性化される。具体的には、自己免疫疾患は、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、アジソン病、溶血性貧血、自己免疫性肝炎、肝炎、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労性免疫不全症候群、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパチー、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、限局型強皮症(CREST症候群)、寒冷凝集素病、クローン病、皮膚筋炎、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛症、線維筋炎、グレーブス病、橋本甲状腺炎、甲状腺機能低下症、炎症性腸疾患、自己免疫性リンパ球増殖症候群、特発性肺線維症、IgA腎症、インスリン依存性糖尿病、若年性関節炎、扁平苔癬、ループス、メニエール病、混合型結合組織疾患、多発性硬化症、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、リウマチ性関節炎、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑症、およびウェゲナー肉芽腫症からなる群から選択される。
【0046】
別の態様において、本開示は、胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害を処置する方法であって、妊娠中の対象への本明細書に記載される抗体のIV投与を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる方法を特徴とする。
【0047】
すべての態様のいくつかの実施形態において、対象は、以前の胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害を有していた病歴を有する。例えば、いくつかの実施形態において、妊娠中の対象は、以前に妊娠したことがあり、その胎児または新生児が、胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害を有していた。すべての態様のいくつかの実施形態において、対象は、胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害を有する危険性がある。
【0048】
すべての態様のいくつかの実施形態において、胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害は、胎児および新生児同種免疫性血小板減少症、胎児および新生児の溶血性疾患、同種免疫性汎血小板減少症、先天性心ブロック、胎児関節拘縮症、新生児重症筋無力症、新生児自己免疫性溶血性貧血、新生児抗リン脂質症候群、新生児多発性筋炎、皮膚筋炎、新生児ループス、新生児強皮症、ベーチェット病、新生児グレーブス病、新生児川崎病、新生児自己免疫性甲状腺疾患、ならびに新生児I型真性糖尿病からなる群から選択される。すべての態様のいくつかの実施形態において、胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害は、胎児および新生児の溶血性疾患である。すべての態様のいくつかの実施形態において、胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害は、胎児および新生児同種免疫性血小板減少症である。すべての態様のいくつかの実施形態において、胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害は、先天性心ブロックである。
【0049】
すべての態様のいくつかの実施形態において、処置は、流産の危険性を低減させる。
【0050】
すべての態様のいくつかの実施形態において、対象は、以前の胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害を有していた病歴を有する。例えば、いくつかの実施形態において、妊娠中の対象は、以前に妊娠したことがあり、その胎児または新生児が、胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害を有していた。すべての態様のいくつかの実施形態において、対象は、胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害を有する危険性がある。
【0051】
すべての態様のいくつかの実施形態において、胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害は、胎児および新生児同種免疫性血小板減少症、胎児および新生児の溶血性疾患、同種免疫性汎血小板減少症、先天性心ブロック、胎児関節拘縮症、新生児重症筋無力症、新生児自己免疫性溶血性貧血、新生児抗リン脂質症候群、新生児多発性筋炎、皮膚筋炎、新生児ループス、新生児強皮症、ベーチェット病、新生児グレーブス病、新生児川崎病、新生児自己免疫性甲状腺疾患、ならびに新生児I型真性糖尿病からなる群から選択される。すべての態様のいくつかの実施形態において、胎児および新生児自己免疫および/または自己免疫障害は、胎児および新生児の溶血性疾患である。すべての態様のいくつかの実施形態において、胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害は、胎児および新生児同種免疫性血小板減少症である。すべての態様のいくつかの実施形態において、胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害は、先天性心ブロックである。すべての態様のいくつかの実施形態において、処置は、流産の危険性を低減させる。
【0052】
すべての態様のいくつかの実施形態において、本方法は、妊娠中の対象、妊娠中の対象の胎児、および/またはそれらの組合せを処置する。
【0053】
すべての態様のいくつかの実施形態において、自己免疫障害は、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、アジソン病、溶血性貧血、自己免疫性肝炎、肝炎、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労性免疫不全症候群、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパチー、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、限局型強皮症(CREST症候群)、寒冷凝集素病、クローン病、皮膚筋炎、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛症、線維筋炎、グレーブス病、橋本甲状腺炎、甲状腺機能低下症、炎症性腸疾患、自己免疫性リンパ球増殖症候群、特発性肺線維症、IgA腎症、インスリン依存性糖尿病、若年性関節炎、扁平苔癬、ループス、メニエール病、混合型結合組織疾患、多発性硬化症、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、リウマチ性関節炎、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑症、またはウェゲナー肉芽腫症からなる群から選択される。
【0054】
自己免疫または同種免疫障害の危険性を低減させるかまたはそれが発生する危険性を低減させる方法であって、妊娠中の対象への本明細書に記載されるFcRn抗体のIV投与を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる方法もまた、記載される。
【0055】
別の態様において、本開示は、対象における抗体の異化を増加させる方法であって、妊娠中の対象への本明細書に記載される抗体のIV投与を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる方法を特徴とする。
【0056】
すべての態様のいくつかの実施形態において、抗体の異化を増加させることは、病原性抗体の異化を増加させることを含む。すべての態様のいくつかの実施形態において、病原性抗体は、母親、胎児、または母親および胎児の両方に対して病原性である。すべての態様のいくつかの実施形態において、病原性抗体は、IgG抗体である。すべての態様のいくつかの実施形態において、抗体は、妊娠中の対象の胎児において、胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害を引き起こす。
【0057】
すべての態様のいくつかの実施形態において、胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害は、胎児および新生児同種免疫性血小板減少症、胎児および新生児の溶血性疾患、同種免疫性汎血小板減少症、先天性心ブロック、胎児関節拘縮症、新生児重症筋無力症、新生児自己免疫性溶血性貧血、新生児抗リン脂質症候群、新生児多発性筋炎、皮膚筋炎、新生児ループス、新生児強皮症、ベーチェット病、新生児グレーブス病、新生児川崎病、新生児自己免疫性甲状腺疾患、ならびに新生児I型真性糖尿病からなる群から選択される。
【0058】
別の態様において、本開示は、対象における自己抗体を低減させる方法であって、妊娠中の対象に、本明細書に記載される抗体を投与することを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる方法を特徴とする。
【0059】
すべての態様のいくつかの実施形態において、免疫応答は、対象における急性または慢性免疫応答である。
【0060】
すべての態様のいくつかの実施形態において、急性免疫応答は、尋常性天疱瘡、ループス腎炎、重症筋無力症、ギラン・バレー症候群、抗体に媒介される拒絶、劇症型抗リン脂質抗体症候群、免疫複合体に媒介される脈管炎、糸球体炎、チャネル病、視神経脊髄炎、自己免疫性難聴、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、免疫性好中球減少症、拡張型心筋症、および血清病からなる群から選択される医学的状態によって活性化される。例えば、いくつかの実施形態において、急性免疫応答は、妊娠中の対象における医学的状態によって活性化される。例えば、いくつかの実施形態において、急性免疫応答は、妊娠中の対象における医学的状態によって、胎児または新生児において活性化される。すべての態様のいくつかの実施形態において、急性免疫応答は、妊娠中の対象における医学的状態によって活性化される。すべての態様のいくつかの実施形態において、急性免疫応答は、妊娠中の対象における医学的状態によって、胎児または新生児において活性化される。すべての態様のいくつかの実施形態において、急性免疫応答は、特発性血小板減少性紫斑病によって活性化される。すべての態様のいくつかの実施形態において、急性免疫応答は、尋常性天疱瘡によって活性化される。すべての態様のいくつかの実施形態において、急性免疫応答は、劇症型抗リン脂質抗体症候群によって活性化される。すべての態様のいくつかの実施形態において、急性免疫応答は、視神経脊髄炎によって活性化される。すべての態様のいくつかの実施形態において、急性免疫応答は、抗体に媒介される拒絶によって活性化される。すべての態様のいくつかの実施形態において、急性免疫応答は、重症筋無力症によって活性化される。
【0061】
胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害を処置する方法であって、対象、例えば、妊娠中の対象に、M281、例えば、配列番号19の軽鎖配列および配列番号24(またはそのバリアント(例えば、配列番号24の296位のアミノ酸がN以外であるバリアント)の重鎖配列を有する抗体を、例えば、15mg/kgまたは30mg/kg(例えば、週間用量)で投与することを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる方法もまた、本明細書に記載される。いくつかの場合において、本方法は、対象が、低アルブミン血症(例えば、30g/l未満、25g/l未満、20g/l未満の血清アルブミンレベル)を示す場合に、投与を中止することを含む。胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害を処置することを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる方法であって、妊娠中の対象に、本明細書に記載される抗体を投与すること(例えば、15mg/kgまたは30mg/kgの用量、例えば、週間用量で)、および対象が低アルブミン血症(例えば、30g/l未満、25g/l未満、20g/l未満の血清アルブミンレベル)を示す場合にアルブミンを投与することを含む方法もまた、記載される。胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害を処置することを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる方法であって、妊娠中の対象に、本明細書に記載される抗体を投与すること(例えば、15mg/kgまたは30mg/kgの用量、例えば、週間用量で)、および対象が低アルブミン血症(例えば、30g/l未満、25g/l未満、20g/l未満の血清アルブミンレベル)を示す場合に高浸透圧溶液(例えば、マンニトールまたは当該技術分野において公知の他の溶液)を投与することを含む方法もまた、記載される。胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害を処置することを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる方法であって、妊娠中の対象に、M281を投与すること(例えば、15mg/kgまたは30mg/kgの用量、例えば、週間用量で)、およびM281の投与の前または後に少なくとも1回、対象の血清アルブミンレベルを試験することを含む方法もまた、記載される。この方法のいくつかの場合において、M281の投与は、継続されてもよく、または継続されなくてもよい。
【0062】
すべての態様のいくつかの実施形態において、慢性免疫応答は、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパチー(CIDP)、全身性ループス、反応性関節症、原発性胆汁性肝硬変、潰瘍性大腸炎、および抗好中球性細胞質抗体関連脈管炎からなる群から選択される医学的状態によって活性化される。すべての態様のいくつかの実施形態において、慢性免疫応答は、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパチーによって活性化される。
【0063】
すべての態様のいくつかの実施形態において、対象は、自己免疫疾患を有する。すべての態様のいくつかの実施形態において、自己免疫疾患は、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、アジソン病、溶血性貧血、温式自己免疫性溶血性貧血、抗因子抗体、ヘパリン誘発性血小板減少症、感作移植、自己免疫性肝炎、肝炎、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労性免疫不全症候群、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパチー、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、限局型強皮症(CREST症候群)、寒冷凝集素病、クローン病、皮膚筋炎、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛症、線維筋炎、グレーブス病、橋本甲状腺炎、甲状腺機能低下症、炎症性腸疾患、自己免疫性リンパ球増殖症候群、特発性肺線維症、IgA腎症、インスリン依存性糖尿病、若年性関節炎、扁平苔癬、ループス、メニエール病、混合型結合組織疾患、多発性硬化症、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、リウマチ性関節炎、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑症、およびウェゲナー肉芽腫症からなる群から選択される。すべての態様のいくつかの実施形態において、自己免疫疾患は、温式自己免疫性溶血性貧血である。すべての態様のいくつかの実施形態において、自己免疫疾患は、抗因子抗体である。すべての態様のいくつかの実施形態において、自己免疫疾患は、ヘパリン誘発性血小板減少症である。すべての態様のいくつかの実施形態において、自己免疫疾患は、感作移植である。
【0064】
別の態様において、本開示は、妊娠中の対象の胎盤を通じた抗体のトランスポートを減少させる方法であって、以下を含む、それからなる方法を特徴とする。
【0065】
別の態様において、本開示は、胎児または新生児における抗体に媒介されるウイルス性疾患の増強を処置する方法であって、妊娠中の対象に、抗体を投与することを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になり、抗体が、軽鎖および重鎖を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になり、軽鎖が、配列番号19の配列に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になり、重鎖が、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、および配列番号24からなる群から選択される配列に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる、方法を特徴とする。
【0066】
別の態様において、本開示は、胎児または新生児における抗体に媒介されるウイルス性疾患の増強を処置する方法であって、妊娠中の対象に、抗体を投与することを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になり、抗体が、軽鎖および重鎖を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になり、軽鎖が、配列番号19の配列を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になり、重鎖が、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、および配列番号24からなる群から選択される配列を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる、方法を特徴とする。
【0067】
すべての態様のいくつかの実施形態において、ウイルス性疾患は、アルファウイルス感染、フラビウイルス感染、ジカウイルス感染、チクングニアウイルス感染、ロスリバーウイルス感染、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染、中東呼吸器症候群、鳥インフルエンザ感染、インフルエンザウイルス感染、ヒト呼吸器合胞体ウイルス感染、エボラウイルス感染、黄熱病ウイルス感染、デングウイルス感染、ヒト免疫不全ウイルス感染、呼吸器合胞体ウイルス感染、ハンタウイルス感染、ゲタウイルス感染、シンドビスウイルス感染、ブニヤムウェラウイルス感染、西ナイルウイルス感染、日本脳炎ウイルスB感染、ウサギ痘ウイルス感染、乳酸デヒドロゲナーゼ上昇ウイルス感染、レオウイルス感染、狂犬病ウイルス感染、手足口病ウイルス感染、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス感染、サル出血熱ウイルス感染、ウマ伝染性貧血ウイルス感染、ヤギ関節炎ウイルス感染、アフリカブタ熱ウイルス感染、レンチウイルス感染、BKパポバウイルス感染、マレー渓谷脳炎ウイルス感染、エンテロウイルス感染、サイトメガロウイルス感染、ニューモウイルス感染、モルビリウイルス感染、および麻疹ウイルス感染からなる群から選択されるウイルスによって引き起こされる。
【0068】
すべての態様のいくつかの実施形態において、妊娠中の対象は、妊娠中の対象における免疫応答を活性化する医学的状態を有するか、またはそれを有する危険性がある。すべての態様のいくつかの実施形態において、医学的状態は、尋常性天疱瘡、ループス腎炎、重症筋無力症、ギラン・バレー症候群、抗体に媒介される拒絶、劇症型抗リン脂質抗体症候群、免疫複合体に媒介される脈管炎、糸球体炎、チャネル病、視神経脊髄炎、自己免疫性難聴、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、免疫性好中球減少症、拡張型心筋症(dialated cardiomyopathy)、血清病、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパチー、全身性ループス、反応性関節症、原発性胆汁性肝硬変、潰瘍性大腸炎、抗好中球性細胞質抗体(ANCA)関連脈管炎、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、アジソン病、溶血性貧血、自己免疫性肝炎、肝炎、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労性免疫不全症候群、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパチー、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、限局型強皮症(CREST症候群)、寒冷凝集素病、クローン病、皮膚筋炎、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛症、線維筋炎、グレーブス病、橋本甲状腺炎、甲状腺機能低下症、炎症性腸疾患、自己免疫性リンパ球増殖症候群、特発性肺線維症、IgA腎症、インスリン依存性糖尿病、若年性関節炎、扁平苔癬、ループス、メニエール病、混合型結合組織疾患、多発性硬化症、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、リウマチ性関節炎、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑症、およびウェゲナー肉芽腫症である。
【0069】
すべての態様のいくつかの実施形態において、妊娠中の対象は、以前に有した胎児または新生児が胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害を有していた病歴を有する。例えば、いくつかの実施形態において、妊娠中の対象は、以前に妊娠したことがあり、その胎児または新生児が、胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害を有していた。
【0070】
すべての態様のいくつかの実施形態において、免疫疾患と関連する抗体が、妊娠中の対象から得られた生物学的サンプルにおいて検出される。すべての態様のいくつかの実施形態において、生物学的サンプルは、血液または尿サンプルである。すべての態様のいくつかの実施形態において、生物学的サンプルは、血液サンプルである。
【0071】
別の態様において、本開示は、胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害を処置するか、またはそれが発生する危険性を低減させるための方法であって、妊娠中の女性への、配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖および配列番号24のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗体(M281)を含む組成物のIV投与を含み、M281の投与が、在胎期間34週目の後に中止される、方法を特徴とする。
【0072】
別の態様において、本開示は、胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害を処置するか、またはそれが発生する危険性を低減させるための方法であって、妊娠中の女性に、配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖および配列番号24のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗体(M281)を含む組成物を投与することを含み、M281の投与が、出産の少なくとも1週間前に中止される、方法を特徴とする。
【0073】
すべての方法の様々な態様において、本方法は、M281の投与の中止後、および出産の前(例えば、出産の40~100時間前または1~15日前)に、妊娠中の女性に、IVIGを投与することを含む;M281の投与は、在胎35週目の後に中止される;M281の投与は、在胎36週目、37週目、または38週目の前に中止される;IVIGは、妊娠中の女性の体重に基づいて、200mg/kg~1000mg/kgで投与される;M281は、妊娠中の女性の体重に基づいて、30mg/kgで投与される;M281は、妊娠中の女性の体重に基づいて、15mg/kgで投与される;用量は、投与1回当たりの用量であり、初回投薬の時点における妊娠中の女性の体重に基づき、妊娠中の女性の体重増加に基づいて上方調節されない;用量は、投与1回当たりの用量であり、初回投薬の時点における妊娠中の女性の体重に基づき、妊娠中の女性の体重増加に基づいて上方調節される;組成物は、少なくとも隔週で投与される;組成物は、隔週で投与される;組成物は、少なくとも毎週投与される;組成物は、毎週投与される;投与は、妊娠の初期3カ月間の間に開始される;投与は、妊娠の中期3カ月間の間に開始される;投与は、妊娠の後期3カ月間の間に開始される;投与の経路は、静脈内である;妊娠中の女性は、重度の胎児貧血の産科歴を有する;妊娠中の女性は、上昇した抗RhD、抗Rhc、または抗Kell免疫グロブリン同種抗体力価を有する;妊娠中の女性は、上昇した抗Rhcまたは抗Kell免疫グロブリン同種抗体力価を有する;妊娠中の女性は、抗Lua、Lub、Bg、Kna、Yta、E、c、K、Cw、Fya、cE、ce、D、Ce、cE、K、Kpa、Kpb、Fya、M、N、S、Lea、Leb、Fy、Jka、Diego、P、およびMia/Murからなる群から選択される1つまたは複数の抗体について、上昇した免疫グロブリン同種抗体力価を有する;妊娠中の女性は、重度の胎児貧血または在胎24週以内での死産の産科歴を有し、上昇した抗Dまたは抗Kell IgG同種抗体力価を有し、抗原陽性の胎児を妊娠中である;初回投薬は、妊娠12~16週目である;初回投薬は、妊娠14週目である;ならびに投与は、妊娠の初期3カ月間の間に開始される。
【0074】
すべての方法の様々な態様において、注入時間は、同一であり、90分間もしくはそれ未満、60分間もしくはそれ未満、45分間もしくはそれ未満、30分間もしくはそれ未満、15分間もしくはそれ未満、または7分間もしくはそれ未満にわたって行われる。すべての方法の様々な態様において、初回注入は、90分間もしくはそれ未満、60分間もしくはそれ未満、45分間もしくはそれ未満、30分間もしくはそれ未満、15分間もしくはそれ未満にわたって行われ、後続の注入時間は、低減される。いくつかの実施形態において、第2の注入および第3の注入の時間は、同一であり、60分間もしくはそれ未満、45分間もしくはそれ未満、30分間もしくはそれ未満、15分間もしくはそれ未満、または7分間もしくはそれ未満にわたって行われ、後続の注入時間は、低減される。すべての方法の様々な態様において、初回注入および第2の注入の時間は、同一であり、90分間もしくはそれ未満、60分間もしくはそれ未満、45分間もしくはそれ未満、30分間もしくはそれ未満、15分間もしくはそれ未満にわたって行われ、後続の注入時間は、低減される。すべての方法の様々な態様において、初回注入が、60分間にわたって行われ、後続の注入は、45分間もしくはそれ未満、30分間もしくはそれ未満、または15分間もしくはそれ未満にわたって行われるか、あるいは初回注入が、45分間にわたって行われ、後続の注入は、30分間もしくはそれ未満、または15分間もしくはそれ未満にわたって行われるか、あるいは初回注入が、30分間にわたって行われ、後続の注入は、15分間もしくはそれ未満にわたって行われる。すべての方法の様々な態様において、初回注入および第2の注入が、いずれも60分間にわたって行われ、後続の注入は、45分間もしくはそれ未満、30分間もしくはそれ未満、または15分間もしくはそれ未満にわたって行われるか、あるいは初回注入および第2の注入が、いずれも45分間にわたって行われ、後続の注入は、30分間もしくはそれ未満、または15分間もしくはそれ未満にわたって行われるか、あるいは初回注入および第2の注入が、いずれも30分間にわたって行われ、後続の注入は、15分間もしくはそれ未満にわたって行われる。
【0075】
とりわけ、抗FcRn抗体を対象に投与する方法であって、対象への5~60mg/kgの用量の抗FcRn抗体の静脈内注入を含み、静脈内注入が、90分間またはそれ未満にわたって行われ、抗FcRn抗体が、(1)CDR L1、CDR L2、およびCDR L3を含む軽鎖可変領域、ならびに(2)CDR H1、CDR H2、およびCDR H3を含む重鎖可変領域を含み、
CDR L1が、TGTGSDVGSYNLVS(配列番号1)の配列に対して2つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、
CDR L2が、GDSERPS(配列番号2)の配列に対して1つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、
CDR L3が、SSYAGSGIYV(配列番号3)の配列に対して1つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、
CDR H1が、TYAMG(配列番号4)、DYAMG(配列番号5)、またはNYAMG(配列番号6)の配列に対して1つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、
CDR H2が、SIGSSGAQTRYADS(配列番号7)、SIGASGSQTRYADS(配列番号8)、SIGASGAQTRYADS(配列番号9)、またはSIGASGGQTRYADS(配列番号10)の配列に対して2つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、
CDR H3が、LAIGDSY(配列番号11)の配列に対して1つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含む、
方法が、本明細書に記載される。
【0076】
いくつかの実施形態において、
CDR L1は、配列TGTGSDVGSYNLVS(配列番号1)を含み、
CDR L2は、配列GDSERPS(配列番号2)を含み、
CDR L3は、配列SSYAGSGIYV(配列番号3)を含み、
CDR H1は、配列TYAMG(配列番号4)を含み、
CDR H2は、配列SIGASGSQTRYADS(配列番号8)を含み、
CDR H3は、配列LAIGDSY(配列番号11)を含む。
【0077】
本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、注入は、7~90分間、7~60分間、7~45分間、7~30分間、10~90分間、10~60分間、10~45分間、10~30分間、または15~30分間にわたって行われる。
【0078】
本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、抗体のFcドメインは、フコシル化されていない。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、抗体のFcドメインは、グリコシル化されていない。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、抗体は、IgG1抗体である。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、抗体は、完全ヒト抗体である。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、対象は、胎児および新生児同種免疫性血小板減少症、胎児および新生児の溶血性疾患、同種免疫性汎血小板減少症、先天性心ブロック、胎児関節拘縮症、新生児重症筋無力症、新生児自己免疫性溶血性貧血、新生児抗リン脂質症候群、新生児多発性筋炎、皮膚筋炎、新生児ループス、新生児強皮症、ベーチェット病、新生児グレーブス病、新生児川崎病、新生児自己免疫性甲状腺疾患、ならびに新生児I型真性糖尿病からなる群から選択される同種免疫および/または自己免疫障害を有する。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、対象は、血小板減少症、汎血小板減少症、先天性心ブロック、関節拘縮症、重症筋無力症、自己免疫性溶血性貧血、温式自己免疫性溶血性貧血、抗リン脂質症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、ループス、強皮症、ベーチェット病、グレーブス病、川崎病、自己免疫性甲状腺疾患、およびI型真性糖尿病からなる群から選択される同種免疫および/または自己免疫障害を有する。
【0079】
本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、注入は、5~60mg/mlの抗体を含む組成物の注入である。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、注入は、30、45、または60mg/mlの抗体を含む組成物の注入である。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、重鎖は、配列番号20~24のうちのいずれか1つの配列に対して少なくとも95%、97%、99%、または100%の同一性を有する配列を含み、軽鎖は、配列番号19の配列に対して少なくとも95%、97%、99%、または100%の同一性を有する配列を含む。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、抗体重鎖は、配列番号20~24の296位にN以外のアミノ酸を有する配列番号20~24のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む。
【0080】
本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、注入は、pH6.5の、10~60mg/ml(または10、20、もしくは30mg/ml)の抗体、20~30mMのリン酸ナトリウム、20~30のmMの塩化ナトリウム、80~100mg/mlのトレハロース、および0.1~0.005%重量/体積のポリソルベート80を含む組成物の注入である。
【0081】
本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、抗体重鎖は、配列番号24の配列に対して以下のアミノ酸置換:A23V、S30R、L80V、A84T、E85D、A93Vのうちの1つまたは複数を有する配列番号24のアミノ酸配列を含み、抗体軽鎖は、配列番号19の配列に対して以下のアミノ酸置換:Q38H、V58I、およびG99Dのうちの1つまたは複数を有する配列番号19のアミノ酸配列を含む。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、抗体重鎖は、C末端リジンを含有しない。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、投与される抗体は、配列番号19を含む軽鎖、および配列番号24または296位のアミノ酸がN以外である配列番号24のバリアントを含む重鎖を含む。
【0082】
本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、抗体は、5~30mg/kgで投与される。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、抗体は、30~60mg/kgで投与される。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、静脈内注入における抗体の濃度は、10mg/ml~30mg/mlである。
本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、対象は、妊娠中の女性である。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、用量は、初回投薬の時点における妊娠中の女性の体重に基づき、妊娠中の女性の体重増加に基づいて上方調節されない。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、用量は、投与1回当たりの用量であり、初回投薬の時点における妊娠中の女性の体重に基づき、妊娠中の女性の体重増加に基づいて上方調節される。
【0083】
本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも隔週で投与される。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、組成物は、隔週で投与される。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも毎週投与される。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、組成物は、毎週投与される。
【0084】
本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、対象は、妊娠中の女性であり、初回注入は、妊娠の初期3カ月間の間に投与される。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、対象は、妊娠中の女性であり、初回注入は、妊娠の中期3カ月間の間に投与される。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、対象は、妊娠中の女性であり、初回注入は、妊娠の後期3カ月間の間に投与される。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、対象は、妊娠中の女性であり、この妊娠中の女性は、重度の胎児貧血の産科歴を有する。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、対象は、妊娠中の女性であり、この妊娠中の女性は、胎児および新生児の溶血性疾患の産科歴を有する。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、対象は、妊娠中の女性であり、この妊娠中の女性は、上昇した抗RhD、抗Rhc、または抗Kell免疫グロブリン同種抗体力価を有する。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、対象は、妊娠中の女性であり、この妊娠中の女性は、上昇した抗Rhcまたは抗Kell免疫グロブリン同種抗体力価を有する。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、対象は、妊娠中の女性であり、この妊娠中の女性は、抗Lu、Lu、Bg、Kn、Yt、E、c、K、C、Fy、cE、ce、D、Ce、cE、K、Kp、Kp、Fy、M、N、S、Le、Le、Fy、Jk、Diego、P、およびMi/Murからなる群から選択される1つまたは複数の抗体について、上昇した免疫グロブリン同種抗体力価を有する。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、対象は、妊娠中の女性であり、この妊娠中の女性は、重度の胎児貧血または在胎24週以内での死産の産科歴、ならびに上昇した抗Dまたは抗Kell IgG同種抗体力価を有し、抗原陽性の胎児を妊娠中である。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、対象は、妊娠中の女性であり、初回注入は、妊娠12~16週目である。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、対象は、妊娠中の女性であり、初回注入は、妊娠14週目の間である。
本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、注入時間は、同一であり、90分間もしくはそれ未満、60分間もしくはそれ未満、45分間もしくはそれ未満、30分間もしくはそれ未満、15分間もしくはそれ未満、または7分間もしくはそれ未満にわたって行われる。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、初回注入は、90分間もしくはそれ未満、60分間もしくはそれ未満、45分間もしくはそれ未満、30分間もしくはそれ未満、15分間もしくはそれ未満にわたって行われ、後続の注入時間は、低減される。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、初回注入が、60分間にわたって行われ、後続の注入は、45分間もしくはそれ未満、30分間もしくはそれ未満、または15分間もしくはそれ未満にわたって行われるか、あるいは初回注入が、45分間にわたって行われ、後続の注入は、30分間もしくはそれ未満、または15分間もしくはそれ未満にわたって行われるか、あるいは初回注入が、30分間にわたって行われ、後続の注入は、15分間もしくはそれ未満にわたって行われる。
【0085】
本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、第2の注入および第3の注入の時間は、同一であり、60分間もしくはそれ未満、45分間もしくはそれ未満、30分間もしくはそれ未満、15分間もしくはそれ未満、または7分間もしくはそれ未満にわたって行われ、後続の注入時間は、低減される。
【0086】
本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、初回注入および第2の注入の時間は、同一であり、90分間もしくはそれ未満、60分間もしくはそれ未満、45分間もしくはそれ未満、30分間もしくはそれ未満、15分間もしくはそれ未満にわたって行われ、後続の注入時間は、低減される。本明細書に記載されるすべての方法のいくつかの実施形態において、初回注入および第2の注入が、いずれも60分間にわたって行われ、後続の注入は、45分間もしくはそれ未満、30分間もしくはそれ未満、または15分間もしくはそれ未満にわたって行われるか、あるいは初回注入および第2の注入が、いずれも45分間にわたって行われ、後続の注入は、30分間もしくはそれ未満、または15分間もしくはそれ未満にわたって行われるか、あるいは初回注入および第2の注入が、いずれも30分間にわたって行われ、後続の注入は、15分間もしくはそれ未満にわたって行われる。
【0087】
製剤
静脈内注入のための組成物は、生理学的に適合性のある水溶性組成物である(例えば、生理学的pHに緩衝化されており、実質的に等張性である)。組成物は、例えば、塩化ナトリウム、トレハロース、および界面活性剤ポリソルベート(PS)80、および緩衝化剤を含み得る。組成物は、イオン性浸透圧調節物質安定化剤(塩化ナトリウム)および非イオン性浸透圧調節物質安定化剤(トレハロース)の両方を含み得る。
好適な製剤は、(1)25mMのリン酸ナトリウム、25mMの塩化ナトリウム、90.5mg ml-1のトレハロース、0.01%のポリソルベート(PS)80、およびpH6.5に緩衝化された、10または30mg ml-1の抗体、ならびに(2)25mMのコハク酸ナトリウム、25mMの塩化ナトリウム、90.5mg mlのトレハロース、0.01%のポリソルベート(PS)80、およびpH6.6またはpH6.5に緩衝化された、10または30mg ml-1の抗体を含む。
【0088】
定義
本明細書において「抗体」という用語は、広義に使用され、FcRn抗原結合活性を呈する限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体フラグメントを含むがこれらに限定されない様々な抗体構造体を包含する。
【0089】
「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体の一部分、好ましくは、インタクトな抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFvフラグメント、ダイアボディ、線形抗体、一本鎖抗体分子、および多重特異性抗体が挙げられる。
【0090】
本明細書において使用されるとき、「単離された抗体」という用語は、それを製造する宿主細胞環境の成分から分離および/または回収されている抗体を指す。それを製造する宿主細胞環境の混入成分は、抗体の研究、診断、または治療的使用を妨げるであろう材料である。混入成分としては、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を挙げることができる。いくつかの実施形態において、抗体は、(1)例えば、ローリー法によって判定される場合に、抗体の95重量%を上回って、またいくつかの実施形態においては99重量%を上回って、(2)例えば、スピニングカップシークエネーター(spinning cup sequenator)の使用によって、N末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度に、または(3)例えば、クーマシーブルー染色もしくは銀染色を使用して還元もしくは非還元条件下において、SDS-PAGEにより均質性となるまで、精製される。単離された抗体は、組換え細胞内のインサイチュの抗体を含む。通常は、しかしながら、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製されるであろう。単離された抗体の医薬調製物は、典型的に、FDAの「Guidance for Industry」の文書によって推奨されるように行われるELISAに基づくHCPアッセイによって判定される場合、250ppm未満(例えば、200ppm未満、150ppm未満、100ppm未満)の宿主細胞タンパク質(HCP)を有する。
【0091】
本明細書において使用されるとき、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質な抗体集団から得られた抗体を指す、すなわち、集団内の個々の抗体は、わずかな量で存在し得る可能性のある天然に存在する突然変異を除き、同じ一次配列を有する。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原性部位(すなわち、ヒトFcRn上のエピトープ)に指向される。典型的には異なるエピトープに指向される異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、それぞれのモノクローナル抗体は、抗原上の単一のエピトープに指向される。「モノクローナル」という修飾語は、抗体が、実質的に均質な抗体集団から得られているという特徴を示すものであり、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるものではない。
【0092】
本明細書において使用されるとき、「可変領域」および「可変ドメイン」という用語は、相補性決定領域(CDR、たとえば、CDR L1、CDR L2、CDR L3、CDR H1、CDR H2、およびCDR H3)ならびにフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列を含む、抗体の軽鎖および重鎖の部分を指す。本開示において使用される方法によると、CDRおよびFRに割り当てられるアミノ酸位は、Kabat(Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))に従って定義される。この番号付けシステムを使用すると、実際の線形アミノ酸配列は、可変領域のCDR(本明細書においてさらに定義される)またはFR(本明細書においてさらに定義される)の短縮形に相当するより少ないアミノ酸、またはそれへの挿入に相当する追加のアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変領域は、CDR H2の残基52の後に、単一の挿入された残基(すなわち、Kabatによる残基52a)、および重鎖FRの残基82の後に、挿入された残基(すなわち、Kabatによる残基82a、82b、82cなど)を含み得る。Kabatの残基番号付けは、所与の抗体に関して、その抗体の配列の相同性の領域における、「標準の」Kabatの番号付けを行った配列とのアライメントによって、決定され得る。
【0093】
本明細書において使用されるとき、「相補性決定領域」および「CDR」という用語は、配列が超可変性であり、かつ/または構造的に定義されたループを形成する、抗体可変ドメインまたは可変領域の領域を指す。CDRはまた、超可変領域としても知られている。軽鎖および重鎖可変領域は、それぞれ、3つのCDRを有する。軽鎖可変領域は、CDR L1、CDR L2、およびCDR L3を含有する。重鎖可変領域は、CDR H1、CDR H2、およびCDR H3を含有する。それぞれのCDRは、Kabatによって定義される相補性決定領域に由来するアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変領域におけるおよそで残基24~34(CDR L1)、50~56(CDR L2)、および89~97(CDR L3)、ならびに重鎖可変領域におけるおよそで残基31~35(CDR H1)、50~65(CDR H2)、および95~102(CDR H3))を含み得る。
【0094】
本明細書において使用されるとき、「FcRn」という用語は、IgG抗体、例えば、IgG1抗体のFc領域に結合する、新生児Fc受容体を指す。例示的なFcRnは、UniProt識別番号P55899を有するヒトFcRnである。ヒトFcRnは、Igのリサイクルのために、構成的に内部移行されたIgGに結合し、それを細胞表面へと輸送して戻すことによって、IgGの半減期の維持を担うと考えられている。
【0095】
本明細書において使用されるとき、「親和性」および「結合親和性」という用語は、2つの分子の間の結合相互作用の強度を指す。一般に、結合親和性は、分子の単一の結合部位とその結合パートナーとの間、例えば、単離された抗体とその標的との間(例えば、単離された抗FcRn抗体とヒトFcRnとの間)の非共有結合的相互作用の総計の強度を指す。別途示されない限り、結合親和性は、結合ペアのメンバー間での1:1の相互作用を反映する、本質的な結合親和性を指す。2つの分子の間の結合親和性は、一般に、解離定数(K)または親和性定数(K)で記載される。互いに低い結合親和性を有する2つの分子は、一般に、ゆっくりと結合し、容易に解離する傾向にあり、大きなKを呈す。互いに高い親和性を有する2つの分子は、一般に、容易に結合し、より長く結合したままとなる傾向にあり、小さなKを呈す。抗体のヒトFcRnに対するKを判定するための1つの方法は、実施例2に記載されている(「SPR方法」)。この方法を使用すると、N022、N023、N024、N026、およびN027のKは、それぞれ、31、31.4、35.5、36.5、および19.3pMであった。
【0096】
本明細書において使用されるとき、「FcRnへのIgGの結合を阻害する」という用語は、ヒトFcRnへのIgG(例えば、IgG1)の結合を遮断または阻害する抗FcRn抗体の能力を指す。いくつかの実施形態において、抗FcRn抗体は、例えば、IgGが結合するヒトFcRn上の部位で、FcRnに結合する。したがって、抗FcRn抗体は、FcRnへのIgG(例えば、対象の自己抗体)の結合を阻害することができる。いくつかの実施形態において、分子(例えば、本開示の抗FcRn抗体)は、IgGへの結合を実質的または完全に阻害する。いくつかの実施形態において、IgGの結合は、10%、20%、30%、50%、70%、80%、90%、95%、またはさらには100%低減される。
【0097】
本明細書において使用されるとき、「FcRnへの病原性抗体の結合を阻害する」という用語は、ヒトFcRnへの病原性抗体(例えば、病原性IgG抗体)の結合を遮断または阻害する抗FcRn抗体の能力を指す。いくつかの実施形態において、抗FcRn抗体は、例えば、病原性抗体が結合するヒトFcRn上の部位で、FcRnに結合する。したがって、抗FcRn抗体は、FcRnへの病原性抗体(例えば、病原性IgG抗体)の結合を阻害することができる。いくつかの実施形態において、分子(例えば、抗FcRn抗体)は、病原性抗体への結合を実質的または完全に阻害する。いくつかの実施形態において、FcRnへの病原性抗体の結合は、10%、20%、30%、50%、70%、80%、90%、95%、またはさらには100%低減される。
【0098】
本明細書において使用されるとき、「疎水性アミノ酸」という用語は、比較的低い水溶性を有するアミノ酸を指す。疎水性アミノ酸としては、ロイシン、イソロイシン、アラニン、フェニルアラニン、バリン、およびプロリンが挙げられるが、これらに限定されない。本開示において特に好ましい疎水性アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、およびバリンである。
【0099】
本明細書において使用されるとき、「極性アミノ酸」という用語は、異なる電気陰性度を有する原子によって誘導される、その側鎖において化学的極性を有するアミノ酸を指す。極性アミノ酸の極性は、アミノ酸の側鎖における原子間の電気陰性度および側鎖の構造の不斉性に依存する。極性アミノ酸としては、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン、およびグルタミンが挙げられるが、これらに限定されない。本開示において特に好ましい極性アミノ酸は、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、およびチロシンである。
【0100】
本明細書において使用されるとき、「酸性アミノ酸」という用語は、側鎖が、3.5~4.5のpKaを有するカルボン酸基を含有する、アミノ酸を指す。いくつかの実施形態において、酸性アミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸である。
【0101】
本明細書において使用されるとき、「塩基性アミノ酸」という用語は、側鎖が9.5~13のpKaを有するアミノ基を含有する、アミノ酸を指す。いくつかの実施形態において、塩基性アミノ酸は、ヒスチジン、リジン、およびアルギニンである。
【0102】
本明細書において使用されるとき、「同一性パーセント(%)」という用語は、配列をアライメントし、最大の同一性パーセントを達成するために必要に応じてギャップを導入した後に(すなわち、ギャップは、最適なアライメントのために、候補配列および参照配列のうちの一方または両方に導入することができ、非相同配列は、比較目的で無視することができる)、参照配列、例えば、野生型抗FcRn抗体のアミノ酸(または核酸)残基と同一である、候補配列、例えば、本開示の抗FcRn抗体のアミノ酸(または核酸)残基のパーセンテージを指す。同一性パーセントを決定する目的のアライメントは、当業者の技能の範囲内である様々な手段で、例えば、BLAST、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して、達成することができる。当業者であれば、比較されている配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含む、アライメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。いくつかの実施形態において、所与の候補配列の、所与の参照配列への、それとの、またはそれに対するアミノ酸(または核酸)配列同一性パーセント(これは、代替として、所与の参照配列への、それとの、またはそれに対するある特定のアミノ酸(または核酸)配列同一性パーセントを有するかまたは含む所与の候補配列と表現され得る)は、次のように計算される:
100×(分数A/B)
式中、Aは、候補配列および参照配列のアライメントにおいて同一であるとスコア付けされたアミノ酸(または核酸)残基の数であり、Bは、参照配列におけるアミノ酸(または核酸)残基の総数である。候補配列の長さが参照配列の長さと等しくないいくつかの実施形態において、参照配列に対する候補配列のアミノ酸(または核酸)配列同一性パーセントは、候補配列に対する参照配列のアミノ酸(または核酸)配列同一性パーセントと等しくならないであろう。
【0103】
特定の実施形態において、候補配列との比較のためにアライメントされる参照配列は、候補配列が、候補配列の全長または候補配列の選択された連続したアミノ酸(または核酸)残基の部分にわたって、50%~100%の同一性を呈すことを示し得る。比較目的でアライメントされる候補配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%である。候補配列における1つの位置が、参照配列の対応する位置において同じアミノ酸(または核酸)残基で占有されている場合、この分子は、その位置において同一である。位置は、置換、欠失、または挿入によって変更され得る。置換、欠失、または挿入は、ある特定の数のアミノ酸(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、またはそれ以上)を含み得る。n個を上回らないアミノ酸の置換、欠失、または挿入について説明する場合、これは、置換、欠失、または挿入が、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、またはn個のアミノ酸を含むことを意味する。置換、欠失、または挿入の数は、配列全体に対してあるパーセント(例えば、1%、5%、10%、15%、20%、またはそれ以上)を構成し得、置換、欠失、または挿入の数は、配列全体におけるアミノ酸の5%、10%、15%、20%、またはそれ以上を変更する。
【0104】
本明細書において使用されるとき、「胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害」という用語は、胎児および/または新生児抗原に対して指向される母体由来抗体(例えば、病原性母体由来抗体)の経胎盤移行によって引き起こされる、胎児および/または新生児における免疫障害を指す。例えば、妊娠中の対象の抗体(例えば、病原性抗体)は、胎児における抗原(例えば、胎児が胎児の父親から受け継いだ抗原)に対して反応し得る。胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害の例は、本明細書に提供されている。
【0105】
本明細書において使用されるとき、「病原性抗体」という用語は、対象(例えば、妊娠中の対象)、妊娠中の対象の胎児、および/または新生児において1つまたは複数の免疫疾患または障害を引き起こす抗体を指す。いくつかの実施形態において、病原性抗体は、対象自身のタンパク質のうちの1つまたは複数に対して対象(例えば、妊娠中の対象)において産生された自己抗体であり、したがって、対象において自己免疫疾患または障害を引き起こす。いくつかの実施形態において、妊娠中の対象における病原性抗体は、胎盤を通じて、胎児へと移行し得、胎児に由来する抗原(例えば、胎児が胎児の父親から受け継いだ抗原)に対して反応し得、したがって、例えば、胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害を引き起こし得る。
【0106】
本明細書において使用されるとき、「抗体に媒介されるウイルス性疾患の増強」という用語は、抗体が、宿主細胞へのウイルスの侵入を促進し得、したがって、細胞において増加または増強された感染性をもたらし得るウイルス性疾患を指す。いくつかの実施形態において、抗体は、ウイルス表面タンパク質に結合し得、抗体/ウイルス複合体は、抗体と受容体との間の相互作用を通じて細胞表面上のFcRn受容体に結合し得る。続いて、抗体/ウイルス複合体は、細胞に内部移行され得る。
【0107】
本明細書において使用されるとき、「在胎期間」という用語は、妊娠期間がどのくらいかを説明する。在胎期間は、週数で記載され得る。在胎期間を判定する方法は、当該技術分野において公知である(例えば、Committee on Obstetric Practice American Institute of Ultrasound in Medicine Society for Maternal-Fetal Medicine, Committee Opinion. Number 700. May 2017、これは、その全体が本明細書に組み込まれる)。いくつかの事例において、在胎期間は、超音波、最後の月経期間(LMP)の最初の日からの週数、またはこれらの組合せによって判定することができる。
【0108】
本明細書において使用されるとき、「医薬組成物」という用語は、活性成分、ならびに活性成分を投与の方法に好適なものにすることができる1つまたは複数の賦形剤および希釈剤を含有する医学または医薬製剤を指す。本開示の医薬組成物は、抗FcRn抗体と適合性がある薬学的に許容される成分を含む。医薬組成物は、静脈内もしくは皮下投与のために水溶性形態であってもよく、または経口投与のために錠剤もしくはカプセルの形態であってもよい。
【0109】
本明細書において使用されるとき、「薬学的に許容される担体」という用語は、医薬組成物における賦形剤または希釈剤を指す。薬学的に許容される担体は、製剤中の他の成分と適合性がなければならず、レシピエントによって有害であってはならない。本開示において、薬学的に許容される担体は、Fcコンストラクトに適切な薬学的安定性を提供すべきである。担体の性質は、投与の様式で異なる。例えば、静脈内投与については、水溶液担体が、一般的に使用され、経口投与については、固体担体が、好ましい。
【0110】
本明細書において使用されるとき、「治療有効量」という用語は、対象もしくは患者において所望される生物学的作用を誘導すること、または本明細書に記載される状態もしくは障害を有する患者を処置することにおいて有効である量、例えば、薬学的用量を指す。「治療有効量」は、1回の用量または任意の投薬量もしくは経路で摂取され、単独または他の治療剤と組み合わせて摂取される、所望される治療作用をもたらす量として解釈され得ることもまた、本明細書において理解される。
【0111】
本明細書において使用されるとき、「を上回らない」という用語は、同等よりも少ない量を指す。これは、整数量であってもよい。例えば、2つを上回らない置換は、0、1、または2つの置換を指し得る。
【0112】
本明細書において使用されるとき、「処置」または「処置すること」という用語は、特定の疾患または状態を低減させること、それを減少させること、その危険性を減少させること、またはその副作用を減少させることを指す。低減させる、減少させる、その危険性を減少させる、またはその副作用を減少させるとは、処置を受けていない対象、例えば、対照、ベースライン、または公知の対照レベルもしくは測定値に対するものである。
【図面の簡単な説明】
【0113】
図1】pH6.0におけるヒトまたはカニクイザルFcRnへの抗体N022~N024、N026、およびN027のIgGの競合的結合を示す、2つのグラフおよび表である。
図2】マウスにおけるIgGの異化に対する抗体N023、N024、N026、およびN027の作用を示すグラフである。
図3】マウスにおけるIgGレベルに対する抗体N027の用量依存的作用および標的占有率を示すグラフである。
図4A-4C】異なる用量の抗体N027の投与後のカニクイザルにおけるIgGの異化の選択的な誘導および標的占有率を示すグラフである。
図5】マウス慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)モデルにおけるN027の有効性を示す実験のタイムラインおよび2つのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0114】
抗FcRn抗体の静脈内(IV)投与の方法が、本明細書に記載される。IV投与は、比較的高速であるが、安全に行われ得る。
【0115】
I.抗FcRn抗体
一般に、本開示は、高い親和性でヒトFcRnに結合するある特定の単離された抗体の静脈内投与を特徴とする。抗FcRn抗体は、ヒトFcRnに結合し、FcRnへのIgG(例えば、IgG自己抗体)の結合を阻害し得る抗体を指す。
【0116】
一態様において、本開示は、ヒトFcRnに結合することができる単離された抗体の静脈内投与を特徴とする。いくつかの実施形態において、単離された抗体は、(1)CDR L1、CDR L2、およびCDR L3を含む軽鎖可変領域、ならびに(2)CDR H1、CDR H2、およびCDR H3を含む重鎖可変領域を含有し、CDR L1は、TGTGSDVGSYNLVS(配列番号1)を含み、CDR L2は、GDSERPS(配列番号2)を含み、CDR L3は、SSYAGSGIYV(配列番号3)を含み、CDR H1は、TYAMG(配列番号4)、DYAMG(配列番号5)、またはNYAMG(配列番号6)を含み、CDR H2は、SIGSSGAQTRYADS(配列番号7)、SIGASGSQTRYADS(配列番号8)、SIGASGAQTRYADS(配列番号9)、またはSIGASGGQTRYADS(配列番号10)を含み、CDR H3は、LAIGDSY(配列番号11)を含む。いくつかの実施形態において、抗体は、配列番号20~24のうちのいずれか1つの配列に対して少なくとも95%、97%、99%、または100%の同一性を有する配列を含む重鎖と、配列番号19の配列に対して少なくとも95%、97%、99%、または100%の同一性を有する配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体重鎖は、配列番号20~24の296位にN以外のアミノ酸を有する配列番号20~24のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗体重鎖は、配列番号24の配列に対して以下のアミノ酸置換:A23V、S30R、L80V、A84T、E85D、A93Vのうちの1つまたは複数を有する配列番号24のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗体軽鎖は、配列番号19の配列に対して、以下のアミノ酸置換:Q38H、V58I、およびG99Dのうちの1つまたは複数を有する配列番号19のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗体重鎖は、C末端リジンを含有しない。いくつかの実施形態において、重鎖は、配列番号24または296位のアミノ酸がN以外である配列番号24のバリアントを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、200pM未満、150pM未満、100pM未満、50pM未満、または40pM未満のKで、ヒトFcRnに結合する。いくつかの実施形態において、抗体は、N022、N023、N024、N026、またはN027の軽鎖可変領域および重鎖可変領域を有し、比較されている抗体と同じFc領域をさらに有する抗体のものよりも低いかまたはそれに等しいKで、ヒトFcRnに結合する。いくつかの実施形態において、抗体は、IgG1アイソタイプである。いくつかの実施形態において、抗体は、完全ヒトである。いくつかの実施形態において、抗体は、EU番号付けによるN297位において、グリコシル化されていない。いくつかの場合において、投与される抗体組成物は、Fcドメイン上でグリコシル化されている抗体が20%未満、10%未満、または5%未満重量/重量である。
【0117】
表1は、本開示のいくつかの例示的な抗FcRn抗体の軽鎖および重鎖相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を示す。
【0118】
【表1】
表2は、本開示のこれらの例示的な抗FcRn抗体の軽鎖および重鎖の配列番号を示す。
【0119】
【表2】
【0120】
さらに、本明細書に記載される抗FcRn抗体のいずれにおいても、抗体の重鎖は、配列番号20~24のうちのいずれか1つの配列に対して少なくとも95%、97%、99%、または100%の同一性を有する配列を含む。本明細書に記載される抗FcRn抗体のいずれにおいても、軽鎖は、配列番号19の配列に対して少なくとも95%、97%、99%、または100%の同一性を有する配列を含む。本明細書に記載される抗FcRn抗体のいずれにおいても、抗体の重鎖可変領域は、配列番号20~24のうちのいずれか1つを含む。本明細書に記載される抗FcRn抗体のいずれにおいても、抗体の軽鎖可変領域は、配列番号19を含む。いくつかの実施形態において、抗体は、配列番号20~24のうちのいずれか1つの配列に対して少なくとも95%、97%、99%、または100%の同一性を有する配列を含む重鎖を含み、軽鎖は、配列番号19の配列に対して少なくとも95%、97%、99%、または100%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態において、抗体重鎖は、配列番号20~24の296位にN以外のアミノ酸を有する配列番号20~24のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗体重鎖は、配列番号24の配列に対して以下のアミノ酸置換:A23V、S30R、L80V、A84T、E85D、A93Vのうちの1つまたは複数を有する配列番号24のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗体軽鎖は、配列番号19の配列に対して、以下のアミノ酸置換:Q38H、V58I、およびG99Dのうちの1つまたは複数を有する配列番号19のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗体重鎖は、C末端リジンを含有しない。いくつかの実施形態において、重鎖は、配列番号24または296位のアミノ酸がN以外である配列番号24のバリアントを含む。
【0121】
いくつかの実施形態において、軽鎖可変領域は、CDR L1、CDR L2、およびCDR L3を含み、重鎖可変領域は、CDR H1、CDR H2、およびCDR H3を含み、CDR L1は、TGTGSDVGSYNLVS(配列番号1)の配列に対して2つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、CDR L2は、GDSERPS(配列番号2)の配列に対して1つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、CDR L3は、SSYAGSGIYV(配列番号3)の配列に対して1つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、CDR H1は、TYAMG(配列番号4)、DYAMG(配列番号5)、またはNYAMG(配列番号6)の配列に対して1つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、CDR H2は、SIGSSGAQTRYADS(配列番号7)、SIGASGSQTRYADS(配列番号8)、SIGASGAQTRYADS(配列番号9)、またはSIGASGGQTRYADS(配列番号10)の配列に対して2つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含み、CDR H3は、LAIGDSY(配列番号11)の配列に対して1つを上回らないアミノ酸置換を有する配列を含む。
【0122】
抗体は、CDR外(すなわち、フレームワーク領域(FR))におけるアミノ酸置換、付加、および/または欠失をさらに含有し得る。いくつかの実施形態において、抗体は、以下のアミノ酸置換:配列番号20~24のうちのいずれか1つの配列に対してA23V、S30R、L80V、A84T、E85D、A93V、ならびに配列番号19の配列に対してQ38H、V58I、およびG99D(EUシステムによる番号付け)のうちのいずれか1つまたは複数をさらに含み得る。
【0123】
抗体は、CDR外(すなわち、フレームワーク領域(FR))におけるアミノ酸置換、付加、および/または欠失をさらに含有し得る。アミノ酸置換、付加、および/または欠失は、1つまたは複数のアミノ酸(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、またはそれ以上)の置換、付加、および/または欠失であり得る。アミノ酸置換、付加、および/または欠失は、8個もしくはそれ未満、7個もしくはそれ未満、6個もしくはそれ未満、5個もしくはそれ未満、4個もしくはそれ未満、3個もしくはそれ未満、または2個もしくはそれ未満の単一アミノ酸の置換、付加、および/または欠失であり得る。いくつかの実施形態において、抗体は、以下のアミノ酸置換:配列番号20~24のうちのいずれか1つの配列に対してA23V、S30R、L80V、A84T、E85D、A93V、ならびに配列番号19の配列に対してQ38H、V58I、およびG99D(EUシステムによる番号付け)のうちのいずれか1つまたは複数をさらに含み得る。
【0124】
いくつかの実施形態において、抗体は、例えば、減少したエフェクター機能、例えば、減少した補体依存性細胞溶解(CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞溶解(ADCC)、および/もしくは抗体依存性細胞媒介性ファゴサイトーシス(ADCP)、ならびに/または減少したB細胞殺滅をもたらす、抗体の定常領域(例えば、Fc領域)におけるアミノ酸置換、付加、および/または欠失を含み得る。定常領域は、抗体のその標的への結合に直接的に関与しないが、抗体依存性細胞毒性における抗体の関与など、様々なエフェクター機能を呈す。いくつかの実施形態において、抗体は、ヒト補体因子C1qおよび/またはナチュラルキラー(NK)細胞上のヒトFc受容体に対する減少した結合(すなわち、結合の不在)によって特徴付けられる。他の実施形態において、抗体は、ヒトFcγRI、FcγRIIA、および/またはFcγRIIIAへの減少した結合(すなわち、結合の不在)によって特徴付けられる。抗体依存性エフェクター機能、例えば、CDC、ADCC、ADCP、および/またはB細胞殺滅を変更または低減させるために、抗体は、IgGクラスのものであり得、1つまたは複数のアミノ酸置換E233、L234、G236、D265、D270、N297、E318、K320、K322、A327、A330、P331、および/またはP329(EUシステムによる番号付け)を含有し得る。いくつかの実施形態において、抗体は、突然変異L234A/L235AまたはD265A/N297Aを含有する。いくつかの場合において、抗FcRn抗体は、297位においてグリコシル化されていない。いくつかの場合において、抗FcRn抗体は、抗体が配列番号20~24のうちのいずれか1つの297位(EU番号付け)においてグリコシル化されていない状態となるように、その位置にNを有さない。いくつかの場合において、抗FcRn抗体は、297位(EU番号付け)におけるNがグリコシル化されていない状態となるように、改変された配列を有する。結果として得られるエフェクターレス抗体は、補体またはFc受容体への結合(すなわち、補体C1q結合)をほとんど示さず、これは、CDC能力の低下を示す。
【0125】
他の実施形態において、抗体には、抗体の安定性を改善する特定のアミノ酸変化を有するものが含まれ得る。
【0126】
さらに、他の実施形態において、免疫原性の可能性を最小限にするために、本開示のいくつかの抗体、例えば、N024、N026、およびN027は、アミノ酸D355およびL357(配列番号20~24のうちのいずれか1つの配列に対して)を、それぞれ、グルタミン酸およびメチオニンに置換することによって、G1m17.1からG1m17へのアロタイプ変更を受けてもよい。
【0127】
他の実施形態において、本開示の抗体、例えば、N022~N024、N026、およびN027は、配列番号20~24のうちのいずれか1つの配列に対して、残基446にC末端リジンを含有しない。
【0128】
理論によって束縛されるものではないが、抗FcRn抗体は、IgGと競合し、ヒトFcRnへのIgGの結合を阻害すると考えられている。抗体の水素-重水素交換によるエピトープマッピングは、抗体が、Fc-FcRn相互作用界面に位置するおよび/またはそれに隣接するFcRn上のエピトープに結合することを示し、これによって、抗体が、直接阻害によって、FcRnへのIgGの結合を遮断することが示唆される。さらに、エピトープマッピングされた結合部位は、FcRnのアルブミン結合部位から遠位にある。したがって、血清アルブミン結合は、阻害されるものではなく、血清アルブミンレベルは、減少されるものではない。実際、実験的な証拠により、抗FcRn抗体の投与の後に、マウスアルブミンレベルは一定にとどまっており、アルブミンのリサイクルが、FcRnへの抗体の結合によって妨害されないことが示される。
【0129】
II.FcRn阻害
FcRnは、IgGおよび血清アルブミンに結合する細胞内小胞輸送タンパク質として機能するI型膜貫通タンパク質である。FcRnは、内皮細胞、管腔上皮細胞、肝細胞、有足細胞、顆粒球、単球、マクロファージ、樹状細胞、およびNK細胞に発現するが、B細胞にもT細胞にも発現されない。FcRnは、構成的に内部移行されたIgGに結合し、それを細胞表面へと輸送して戻すことによって、IgGの半減期を維持する。FcRnによるFcおよび血清アルブミンの両方の結合が、pH6.0で初期エンドソームにおいて生じ、続いて、FcRnが小胞に分取され、それが、FcRnに結合したIgGまたはアルブミンを細胞表面へと輸送して戻し、そこで、FcRnは、pH7.4でIgGまたはアルブミンを急速に放出する。この輸送サイクルは、IgGおよびアルブミンの両方を循環へとリサイクルし、分解のためにリソソームへと輸送されるのを防止することによって、それらの半減期を維持する。FcRnはまた、上皮細胞において内部移行されたIgG Fcを捕捉し、それらを対向する頂端膜または基底膜の双方向にトランスポートする。この機能により、IgGが器官の管腔、例えば、消化管へと輸送すること、または管腔から脈管構造もしくは間質層内のリンパ組織へのIgGもしくはIgG-抗原複合体のトランスポートが可能となる。
【0130】
IgG恒常性に対するFcRnの寄与を研究するために、マウスを、FcRnタンパク質が発現されないようにFcRnの軽鎖および重鎖の部分を「ノックアウト」するように操作した(Junghans et al., Proc Natl Acad Sci USA 93:5512, 1996)。これらのマウスにおいて、IgGの血清半減期および濃度は、劇的に低減され、IgG恒常性のFcRn依存性機序が示唆された。げっ歯動物モデルにおける研究、例えば、上記で考察されたものにより、FcRnの遮断が、病原性自己抗体のものを含め、IgGの異化を増加させ、それによって、疾患(例えば、自己免疫疾患)の発生を阻害し得ることが示唆される。FcRnはまた、抗原分解およびMHCローディングコンパートメントへの免疫複合体の輸送を通じて抗原提示に寄与し得る。
【0131】
本開示は、高い親和性でヒトFcRnに結合する単離された抗FcRn抗体を提供する。抗FcRn抗体は、他の抗FcRn抗体(例えば、IgG、IgG自己抗体)と競合し、FcRnへのそれらの結合を効果的に阻害し、それによって、他の抗FcRn抗体(例えば、IgG、IgG自己抗体)の異化を増加させ、その半減期を減少させる。抗FcRn抗体は、対象における免疫複合体に基づく免疫応答、例えば、自己免疫疾患において自己抗体によって引き起こされる免疫応答の活性化を処置または低減させる方法において使用され得る。
【0132】
母体由来IgG抗体の胎児への経胎盤移行は、新生児の体液性応答が役に立たない間、新生児に保護を提供する重要なFcRn依存性機序である。胎児期の間、胎盤の合胞体栄養細胞層内のFcRnが、胎児への母体由来IgG抗体の移行を担う。病原性母体由来抗体(例えば、病原性母体由来IgG抗体)はまた、FcRnに結合することによって胎盤を越えることができ、胎児および新生児において同種免疫障害および/または自己免疫障害を引き起こし得る。いくつかの実施形態において、妊娠中の対象における病原性抗体は、妊娠中の対象の胎児において胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害を引き起こす。本明細書に記載される抗FcRn抗体(例えば、N022~N024、N026、およびN027、好ましくはN027および/またはN024)は、母体由来病原性抗体(例えば、母体由来病原性IgG抗体)と競合し、FcRnへのそれらの結合を阻害し、それによって、これらの病原性抗体の異化を増加させ、その半減期を減少させることができる。
【0133】
本開示は、ヒトFcRnに結合する単離された抗FcRn抗体を提供する。抗FcRn抗体は、他の抗FcRn抗体(例えば、IgG、IgG自己抗体)と競合し、FcRnへのそれらの結合を阻害し、それによって、他の抗FcRn抗体(例えば、IgG、IgG自己抗体)の異化を増加させ、その半減期を減少させることができる。抗FcRn抗体は、対象における免疫複合体に基づく免疫応答、例えば、自己免疫疾患において自己抗体によって引き起こされる免疫応答の活性化を処置または低減させる方法において使用され得る。免疫応答の低減は、処置を受けていない対象(例えば、対照対象)と比べた免疫応答の低減として説明することができる。抗FcRn抗体はまた、妊娠中の対象にヒトFcRnに結合する単離された抗体を投与することによる、妊娠中の対象の胎盤を通じた病原性抗体のトランスポート(例えば、病原性母体由来IgG抗体のトランスポート)を減少させ、妊娠中の対象における病原性抗体の異化を増加させ、胎児または新生児における抗体に媒介されるウイルス性疾患の増強を処置する方法において、使用され得る。妊娠中の対象の胎盤を通じた病原性抗体のトランスポートの減少は、処置を受けていない対象(例えば、対照対象)と比べた病原性抗体のトランスポートの減少として説明することができる。
【0134】
III.ベクター、宿主細胞、および抗体産生
抗FcRn抗体は、宿主細胞から産生させることができる。宿主細胞は、本明細書に記載されるポリペプチドおよびコンストラクトをそれらの対応する核酸から発現させるために必要とされる必須細胞成分、例えばオルガネラを含むビヒクルを指す。核酸は、当該技術分野において公知の従来的な技法(例えば、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈降、直接マイクロインジェクション、感染など)によって宿主細胞に導入することができる核酸ベクターに含まれ得る。核酸ベクターの選択肢は、使用される宿主細胞に部分的に依存する。一般に、好ましい宿主細胞は、原核生物(例えば、細菌)または真核生物(例えば、哺乳動物)起源のものである。
【0135】
核酸ベクターの構築および宿主細胞
【0136】
抗FcRn抗体のアミノ酸配列をコードする核酸配列は、当該技術分野において公知の様々な方法によって調製することができる。これらの方法としては、オリゴヌクレオチドに媒介される(または部位指向性)突然変異生成およびPCR突然変異生成が挙げられるが、これらに限定されない。抗FcRn抗体をコードする核酸分子は、標準的な技法、例えば、遺伝子合成を使用して得ることができる。あるいは、野生型抗FcRn抗体をコードする核酸分子を、当該技術分野における標準的な技法、例えば、QuikChange(商標)突然変異生成を使用して、特定のアミノ酸置換を含有するように突然変異させてもよい。核酸分子は、ヌクレオチド合成装置またはPCR技法を使用して合成することができる。
【0137】
抗FcRn抗体をコードする核酸配列は、原核生物または真核生物宿主細胞において核酸分子を複製および発現させることができるベクターに、挿入され得る。多数のベクターが、当該技術分野において利用可能であり、本開示の目的で使用することができる。それぞれのベクターは、特定の宿主細胞との適合性のために調節および最適化することができる様々な構成成分を含有し得る。例えば、ベクター構成成分としては、複製起点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位、シグナル配列、目的とされるタンパク質をコードする核酸配列、および転写終結配列が挙げることができるが、これらに限定されない。
【0138】
いくつかの実施形態において、哺乳動物細胞が、本開示の宿主細胞として使用される。哺乳動物細胞型の例としては、ヒト胎児腎臓(HEK)(例えば、HEK293、HEK 293F)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa、COS、PC3、Vero、MC3T3、NS0、Sp2/0、VERY、BHK、MDCK、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT20、T47D、NS0(いずれの免疫グロブリン鎖も内因的に産生しないマウス骨髄腫細胞株)、CRL7O3O、およびHsS78Bst細胞が挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態において、大腸菌(E. coli)細胞が、本開示の宿主細胞として使用される。大腸菌(E. coli)株の例としては、大腸菌(E. coli)294(ATCC(登録商標)31,446)、大腸菌(E. coli)λ 1776(ATCC(登録商標)31,537)、大腸菌(E. coli)BL21(DE3)(ATCC(登録商標)BAA-1025)、および大腸菌(E. coli)RV308(ATCC(登録商標)31,608)が挙げられるが、これらに限定されない。異なる宿主細胞は、タンパク質産物の翻訳後プロセシングおよび改変のための特徴および特定の機序を有する。発現される抗FcRn抗体の正しい改変およびプロセシングを確実にするために、適切な細胞株または宿主系を選択することができる。上述の発現ベクターは、当該技術分野における従来的な技法、例えば、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈降、および直接マイクロインジェクションを使用して、適切な宿主細胞に導入することができる。ベクターを、タンパク質産生のために宿主細胞に導入した後、宿主細胞を、プロモーターを誘導するか、形質転換体を選択するか、または所望される配列をコードする遺伝子を増幅させるように適宜改変した従来的な栄養培地において、培養する。治療用タンパク質の発現のための方法は、当該技術分野において公知であり、例えば、Paulina Balbas, Argelia Lorence (eds.) Recombinant Gene Expression: Reviews and Protocols (Methods in Molecular Biology), Humana Press; 2nd ed. 2004 (July 20, 2004)およびVladimir Voynov and Justin A. Caravella (eds.) Therapeutic Proteins: Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology) Humana Press; 2nd ed. 2012 (June 28, 2012)を参照されたい。
【0139】
タンパク質の産生、回収、および精製
抗FcRn抗体を産生させるために使用される宿主細胞は、当該技術分野において公知であり選択された宿主細胞の培養に好適である培地において、増殖させてもよい。哺乳動物宿主細胞に好適な培地の例としては、最小必須培地(MEM)、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、Expi293(商標)発現培地、ウシ胎児血清(FBS)を補充したDMEM、およびRPMI-1640が挙げられる。細菌宿主細胞に好適な培地の例としては、ルリア培地(LB)に必要な補充物質、例えば、選択剤、例えば、アンピシリンを加えたものが挙げられる。宿主細胞を、好適な温度、例えば、約20℃~約39℃、例えば、25℃~約37℃、好ましくは37℃、およびCOレベル、例えば、5~10%(好ましくは8%)において培養する。培地のpHは、一般に、主として宿主生物に応じて、約6.8~7.4、例えば、7.0である。誘導的プロモーターが、本開示の発現ベクターにおいて使用される場合、タンパク質の発現は、プロモーターの活性化に好適な条件下において誘導される。
【0140】
タンパク質の回収は、典型的に、一般に、浸透圧ショック、超音波処理、または溶解などの手段によって、宿主細胞を破壊することを伴う。細胞が破壊されると、細胞残屑を、遠心分離または濾過によって除去することができる。タンパク質を、さらに精製してもよい。抗FcRn抗体は、タンパク質精製に関する当該技術分野において公知の任意の方法によって、例えば、プロテインA親和性、他のクロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、およびサイズ排除カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差可溶性、またはタンパク質の精製に関する任意の他の標準的な技法によって、精製することができる。(Process Scale Purification of Antibodies, Uwe Gottschalk (ed.) John Wiley & Sons, Inc., 2009を参照されたい)。いくつかの事例において、抗FcRn抗体は、マーカー配列、例えば、精製を促進するペプチドに、コンジュゲートされていてもよい。マーカーアミノ酸配列の例は、ヘキサ-ヒスチジンペプチド(Hisタグ)であり、これは、マイクロモルの親和性で、ニッケル官能化アガロース親和性カラムに結合する。精製に有用な他のペプチドタグとしては、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質に由来するエピトープに対応するヘマグルチニン「HA」タグが挙げられるが、これらに限定されない。
【0141】
あるいは、抗FcRn抗体は、本開示の抗FcRn抗体をコードする核酸分子を含有するベクター(例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルスベクター、例えば、改変ワクシニアアンカラ(Modified Vaccinia Ankara)(MVA))、アデノ随伴ウイルスベクター、およびアルファウイルスベクター)を投与することによって、例えば、治療の文脈において、対象(例えば、ヒト)の細胞によって産生させることができる。ベクターは、対象の細胞内に入ると(例えば、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈降、直接マイクロインジェクション、感染などによって)、抗FcRn抗体の発現を促進し、それが、次いで、細胞から分泌される。疾患または障害の処置が、所望される結果である場合、さらなる動作は必要ない場合がある。タンパク質の回収が所望される場合、血液を対象から回収してもよく、タンパク質は、当該技術分野において公知の方法によって血液から精製される。
【0142】
IV.医薬組成物および調製物
本開示は、1つまたは複数の本明細書に記載される抗FcRn抗体を含む、医薬組成物を特徴とする。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、1つまたは複数の本開示の抗体、例えば、N022~N024、N026、およびN027を、治療用タンパク質として含有する。他の実施形態において、1つまたは複数の本開示の抗体、例えば、N022~N024、N026、およびN027を含有する医薬組成物は、治療において他の薬剤(例えば、治療用生物製剤および/もしくは小分子)または組成物と組み合わせて使用されてもよい。治療有効量の抗体に加えて、医薬組成物は、当業者に公知の方法によって製剤化され得る1つまたは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤を含有し得る。
【0143】
医薬組成物中の許容される担体および賦形剤は、用いられる投薬量および濃度で、レシピエントにとって非毒性である。許容される担体および賦形剤としては、緩衝液、抗酸化剤、保存剤、ポリマー、アミノ酸、および炭水化物が挙げられ得る。医薬組成物は、注射可能な製剤の形態で、非経口投与することができる。注射(すなわち、静脈内注射)用の医薬組成物は、滅菌溶液または任意の薬学的に許容される液体をビヒクルとして使用して製剤化することができる。薬学的に許容されるビヒクルとしては、滅菌水、生理食塩水、および細胞培養培地(例えば、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、α変法イーグル培地(α-MEM)、F-12培地)が挙げられるが、これらに限定されない。製剤化方法は、当該技術分野において公知であり、例えば、Banga (ed.) Therapeutic Peptides and Proteins: Formulation, Processing and Delivery Systems (2nd ed.) Taylor & Francis Group, CRC Press (2006)を参照されたい。
【0144】
医薬組成物は、必要に応じて単位用量形態で形成されてもよい。医薬調製物に含まれる活性成分、例えば、1つまたは複数の抗FcRn抗体(例えば、N022~N024、N026、およびN027、好ましくはN027および/またはN024)の量は、指定される範囲内の好適な用量(例えば、0.01~500mg/体重kgの範囲内の用量)が提供されるようなものである。
【0145】
いくつかの実施形態において、製剤は、異なる濃度の塩化ナトリウム、トレハロース、および界面活性剤ポリソルベート(PS)80、緩衝化剤を用いて調製され得、異なるpH(pH5~8)に緩衝化されていてもよい。いくつかの実施形態において、組成物は、イオン性浸透圧調節物質安定化剤(塩化ナトリウム)および非イオン性浸透圧調節物質安定化剤(トレハロース)の両方を含む。製剤および組成物の安定性は、外観、pH、タンパク質濃度、サイズ純度、電荷分布、および熱安定性によって、経時的に評価することができる。これらの安定性パラメーターは、pH、UV-Vis、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、CE-SDS、および示差走査熱量測定を含む、解析技法によって測定することができる。
【0146】
様々な実施形態において、製剤は、(1)25mMのリン酸ナトリウム、25mMの塩化ナトリウム、90.5mg ml-1のトレハロース、0.01%のポリソルベート(PS)80、およびpH6.5に緩衝化された、10または30mg ml-1の本明細書に開示される抗体、ならびに(2)25mMのコハク酸ナトリウム、25mMの塩化ナトリウム、90.5mg ml-1のトレハロース、0.01%のポリソルベート(PS)80、およびpH6.6に緩衝化された、10または30 mg ml-1の本明細書に開示される抗体を含み得る。前述の2つの製剤の安定性は、機械的、熱的、および化学的ストレスの存在下においてさらに試験することができる。いくつかの実施形態において、組成物の安定性は、製剤(1)25mMのリン酸ナトリウム、25mMの塩化ナトリウム、90.5mg ml-1のトレハロース、0.01%のポリソルベート(PS)80、およびpH6.5に緩衝化された10または30mg ml-1の抗体については、30カ月を上回って維持され得る。様々な実施形態において、製剤は、25mMのリン酸ナトリウム、25mMの塩化ナトリウム、90.5mg ml-1のトレハロース、およびpH6.5に緩衝化された本明細書に開示された抗体を、異なる量のポリソルベート80とともに含み得る。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、最大5個の単一アミノ酸の挿入、置換、または欠失を有する、10または30mg/mlの本明細書に開示される抗体、20~30mMのリン酸ナトリウム、20~30mMの塩化ナトリウム、80~100mg/mlのトレハロース、および0.10~0.005%重量/体積のポリソルベート80を含み、pH6.5に緩衝化されている。
【0147】
V.経路、投薬量、および投与
1つまたは複数の抗FcRn抗体(例えば、N022~N024、N026、およびN027、好ましくはN027および/またはN024)を治療用タンパク質として含有する医薬組成物は、静脈内投与用に製剤化することができる。
【0148】
医薬組成物の投薬量は、投与の経路、処置しようとする疾患、対象の身体的特徴、例えば、年齢、体重、全般的な健康状態を含む因子に依存する。典型的には、単一の用量内に含有される抗FcRn抗体(例えば、N022~N024、N026、およびN027のうちのいずれか1つ、好ましくはN027またはN024)の量は、著しい毒性を誘導することなく疾患を効果的に予防、遅延、または処置する量であり得る。医薬組成物は、0.01~500mg/kg(例えば、0.01、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、100、150、200、250、300、350、400、450、または500mg/kg)、より具体的な実施形態では、約1~約100mg/kg、より具体的な実施形態では、約1~約50mg/kg、別の実施形態では、約30~60mg/kgの範囲の投薬量の抗FcRn抗体を含み得る。投薬量は、従来的な因子、例えば、疾患の程度および対象の異なるパラメーターに応じて、医師によって適合され得る。加えて、投薬量は、因子、例えば、在胎期間、出産準備、女性の体重増加、および/または妊娠の長さに応じて、医師によって適合されてもよい。
【0149】
いくつかの場合において、本明細書に記載される組成物および医薬組成物は、妊娠の間中、妊娠中の女性に投与される。いくつかの場合において、本明細書に記載される組成物および医薬組成物は、妊娠のおよそ5~25週間の間(例えば、およそ5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、21週間、22週間、23週間、24週間、または25週間)、妊娠中の女性に投与される。いくつかの事例において、組成物および医薬組成物の投与は、在胎期間およそ34(34週目)の後(例えば、34週目、35週目、36週目、または37週目の後)に、中止される。いくつかの事例において、IVIGは、組成物および医薬組成物の投与の中止後に、妊娠中の女性に投与される。いくつかの事例において、IVIGは、組成物および医薬組成物の投与を中止後およそ3~15日(例えば、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、または15日)の間に、投与される。いくつかの場合において、組成物および医薬組成物の投与の中止後のIVIG投与の時期は、女性の体重増加などの因子に応じて適合される。いくつかの事例において、本明細書に記載される組成物および医薬組成物は、在胎期間12の後(例えば、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30の後)に初めて投与される。いくつかの場合において、それらは、在胎期間14~26(例えば、14~25、15~25、または15~26など)の妊娠の間に、投与される。いくつかの場合において、それらは、在胎期間12~36(例えば、12~36、12~35、12~34、13~36、13~35、13~34、14~36、14~35、14~34、15~36、15~35、15~34、16~36、16~35、または16~34など)の妊娠の間に、投与される。
【0150】
医薬組成物は、投薬製剤と適合性のある様式で、症状の改善または緩和をもたらすのに治療的に有効な量で、投与される。抗FcRn抗体(例えば、N022~N024、N026、およびN027のうちのいずれか1つ、好ましくはN027またはN024)を含有する医薬組成物は、それを必要とする対象に、例えば、毎日、毎週、2週間ごと、4週間ごと、1カ月ごと、1カ月に2回、1年に2回、毎年、または医学的に必要に応じて、1回または複数回(例えば、1~10回、またはそれ以上)投与され得る。投薬量は、単回または複数回のいずれかの投薬レジメンで提供され得る。投与間のタイミングは、医学的状態が改善すると減少し得、患者の健康状態が低下すると増加し得る。
【0151】
医薬組成物は、投薬製剤と適合性のある様式および速度で、投与される。いくつかの場合において、対象は、90分間またはそれ未満にわたって、30または60mg/kgの単回用量の抗体を静脈内注入によって受容する。いくつかの場合において、静脈内注入は、60分間もしくはそれ未満、45分間もしくはそれ未満、30分間もしくはそれ未満、15分間もしくはそれ未満、または7分間もしくはそれ未満にわたって行われる。
【0152】
いくつかの実施形態において、対象は、15分間にわたって、30mg/kgの用量の抗体を静脈内注入によって受容する。いくつかの実施形態において、対象は、30分間にわたって、30mg/kgの用量の抗体を静脈内注入によって受容する。いくつかの実施形態において、対象は、15分間にわたって、45mg/kgの用量の抗体を静脈内注入によって受容する。いくつかの実施形態において、対象は、30分間にわたって、45mg/kgの用量の抗体を静脈内注入によって受容する。いくつかの実施形態において、対象は、30分間にわたって、60mg/kgの用量の抗体を静脈内注入によって受容する。いくつかの実施形態において、対象は、60分間にわたって、30mg/kgの用量の抗体を静脈内注入によって受容する。いくつかの実施形態において、対象は、初回注入については第1の期間および第2の注入については第2の期間にわたって、30~60mg/kgの用量を静脈内注入によって受容する。いくつかの場合において、第1の期間は、第2の期間よりも長い。いくつかの場合において、第2の注入は、抗体の第2の投与である。いくつかの場合において、第2の注入は、抗体の第3の投与である。いくつかの場合において、対象は、初回注入の第1の期間については30分間にわたって、および第2の注入の第2の期間については15分間にわたって、30mg/kgの用量を、静脈内注入によって受容する。いくつかの場合において、対象は、初回注入の第1の期間については30分間にわたって、および第2の注入の第2の期間については15分間にわたって、45mg/kgの用量を、静脈内注入によって受容する。いくつかの場合において、対象は、初回注入の第1の期間については60分間にわたって、および第2の注入の第2の期間については30分間にわたって、60mg/kgの用量を、静脈内注入によって受容する。医薬組成物の投薬量および投与の速度は、対象の事前処置、処置しようとする疾患、対象の身体的特徴、例えば、年齢、体重、全般的な健康状態を含む因子に依存する。
【0153】
【表3】
【0154】
【表4】
【0155】
いくつかの実施形態において、抗FcRn抗体は、対象が重度の有害事象または反応を経験することなく、本明細書に開示される速度で投与される。
【0156】
VI.処置の方法および適応症
抗FcRn抗体によるヒトFcRnの遮断は、IgG自己抗体によって作動される疾患において治療的に有用であり得る。血清アルブミン、小さな循環代謝産物、またはリポタンパク質を乱すことなく全体的なIgGの異化および複数種の自己抗体の除去を誘導するFcRn遮断の能力は、自己抗体により作動される自己免疫疾患病態を有する患者に、自己抗体除去戦略の有用性および利用可能性を拡大する方法を提供する。本開示は理論によって束縛されるものではないが、抗FcRn抗体の主要な作用機序は、循環中の病原性自己抗体の異化を増加させ、罹患した組織における自己抗体および免疫複合体の蓄積を減少させることであり得る。
【0157】
1つまたは複数の抗FcRn抗体(例えば、N022~N024、N026、およびN027、好ましくはN027および/またはN024)を含有する医薬組成物および方法は、対象における病原性抗体、例えば、IgGおよびIgG自己抗体の異化およびクリアランスを促進すること、免疫応答を低減させること、例えば、対象における免疫複合体に基づく免疫応答の活性化を遮断すること、ならびに対象における免疫学的状態または疾患を処置することに有用である。具体的には、医薬組成物および方法は、免疫複合体に基づく急性または慢性免疫応答の活性化を低減または処置するのに有用である。急性免疫応答は、尋常性天疱瘡、ループス腎炎、重症筋無力症、ギラン・バレー症候群、抗体に媒介される拒絶、劇症型抗リン脂質抗体症候群、免疫複合体に媒介される脈管炎、糸球体炎、チャネル病、視神経脊髄炎、自己免疫性難聴、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、免疫性好中球減少症、拡張型心筋症、および血清病からなる群から選択される医学的状態によって活性化され得る。慢性免疫応答は、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパチー(CIDP)、全身性ループス、急性処置が適応される障害の慢性形態、反応性関節症、原発性胆汁性肝硬変、潰瘍性大腸炎、および抗好中球性細胞質抗体(ANCA)関連脈管炎からなる群から選択される医学的状態によって活性化され得る。
【0158】
いくつかの実施形態において、医薬組成物および方法は、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、アジソン病、温式自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、溶血性貧血、自己免疫性肝炎、肝炎、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労性免疫不全症候群、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパチー、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、限局型強皮症(CREST症候群)、寒冷凝集素病、クローン病、皮膚筋炎、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛症、線維筋炎、グレーブス病、橋本甲状腺炎、甲状腺機能低下症、炎症性腸疾患、自己免疫性リンパ球増殖症候群、特発性肺線維症、IgA腎症、インスリン依存性糖尿病、若年性関節炎、扁平苔癬、ループス、メニエール病、混合型結合組織疾患、多発性硬化症、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、リウマチ性関節炎、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑症、膜性糸球体腎炎、重症筋無力症、胎児および新生児の溶血性疾患(HDFN)、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパチー(CIDP)、膜性腎症、グッドパスチャー、多発性筋炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP、「免疫性血小板減少症」とも呼ばれる)、強皮症、回帰性リウマチ、グレーブス病、自己免疫性甲状腺炎、多腺性自己免疫症候群、糸球体腎炎、ループス腎炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、1型糖尿病、およびウェゲナー肉芽腫からなる群から選択される障害を低減または処置するのに有用である。
【0159】
具体的には、医薬組成物および方法は、全身性エリテマトーデス、抗リン脂質症候群、尋常性天疱瘡/水疱性類天疱瘡、抗好中球性細胞質抗体(ANCA)関連脈管炎、重症筋無力症、または視神経脊髄炎によって活性化される免疫応答を低減または処置するのに有用である。
【0160】
いくつかの実施形態において、医薬組成物および方法は、胎児において貧血の危険性を減少させるかまたはその発生の危険性を減少させるのに有用である。いくつかの実施形態において、医薬組成物および方法は、IUT(子宮内輸血)の必要性を減少または除去するのに有用である。いくつかの実施形態において、医薬組成物および方法は、出生前PP+IVIg、出生後輸血、IVIg、および/または光線療法の必要性を減少または除去するのに有用である。
【0161】
いくつかの実施形態において、医薬組成物および方法は、自己免疫疾患によって活性化される免疫応答を低減または処置するのに有用である。自己免疫疾患は、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群(例えば、抗リン脂質抗体症候群)、アジソン病、溶血性貧血(例えば、温式自己免疫性溶血性貧血)、自己免疫性肝炎、肝炎、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労性免疫不全症候群、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパチー、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、限局型強皮症(CREST症候群)、寒冷凝集素病、クローン病、皮膚筋炎、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、表皮水疱症、線維筋痛症、線維筋炎、グレーブス病、橋本甲状腺炎、甲状腺機能低下症、炎症性腸疾患、自己免疫性リンパ球増殖症候群、特発性肺線維症、IgA腎症、インスリン依存性糖尿病、若年性関節炎、扁平苔癬、ループス、膜性腎症、メニエール病、混合型結合組織疾患、多発性硬化症、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、リウマチ性関節炎、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑症、およびウェゲナー肉芽腫からなる群から選択され得る。いくつかの実施形態において、医薬組成物および方法は、胎児または新生児における免疫応答を低減または処置するのに有用である。いくつかの実施形態において、医薬組成物および方法は、妊娠中の母親における自己免疫疾患によって活性化される胎児または新生児における免疫応答を低減または処置するのに有用である。
【0162】
具体的には、医薬組成物および方法は、全身性エリテマトーデス、抗リン脂質症候群、尋常性天疱瘡/水疱性類天疱瘡、抗好中球性細胞質抗体(ANCA)関連脈管炎、重症筋無力症、または視神経脊髄炎によって活性化される免疫応答を低減または処置するのに有用である。いくつかの実施形態において、医薬組成物および方法は、胎児または新生児における免疫応答を低減または処置するのに有用である。いくつかの実施形態において、医薬組成物および方法は、妊娠中の母親における全身性エリテマトーデス、抗リン脂質症候群、尋常性天疱瘡/水疱性類天疱瘡、抗好中球性細胞質抗体(ANCA)関連脈管炎、重症筋無力症、または視神経脊髄炎によって活性化される免疫応答を低減または処置するのに有用である。
【0163】
医薬組成物および方法は、妊娠中の対象にヒトFcRnに結合する単離された抗体を投与することによる、妊娠中の対象の胎盤を通じた病原性抗体のトランスポート(例えば、病原性母体由来IgG抗体のトランスポート)を減少させ、妊娠中の対象における病原性抗体の異化を増加させ、胎児または新生児における抗体に媒介されるウイルス性疾患の増強を処置する方法において、有用である。本明細書に記載される単離された抗FcRn抗体(例えば、N022~N024、N026、およびN027、好ましくはN027および/またはN024)によるFcRn阻害から利益を得ることができる疾患および障害には、妊娠中の対象から胎児および/または新生児への胎盤を通じた母体由来病原性抗体(例えば、母体由来病原性IgG抗体)の移行によって引き起こされる胎児および/または新生児における疾患および障害が含まれる。
【0164】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される単離された抗FcRn抗体(例えば、N022~N024、N026、およびN027、好ましくはN027および/またはN024)によるFcRnの阻害によって利益を得ることができる疾患および障害は、胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害である。胎児および新生児同種免疫障害は、妊娠中の対象における病原性抗体によって引き起こされる胎児および/または新生児における障害である。妊娠中の対象における病原性抗体は、胎児の抗原(例えば、胎児が胎児の父親から受け継いた抗原)を攻撃し、胎児および新生児が胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害を有することを引き起こし得る。
【0165】
本明細書に記載される方法によって処置することができる胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害の例としては、胎児および新生児同種免疫性血小板減少症(FNAIT)、胎児および新生児の溶血性疾患(HDFN)、同種免疫性汎血小板減少症、先天性心ブロック、胎児関節拘縮症、新生児重症筋無力症、新生児自己免疫性溶血性貧血、新生児抗リン脂質症候群、新生児多発性筋炎、皮膚筋炎、新生児ループス、新生児強皮症、ベーチェット病、新生児グレーブス病、新生児川崎病、新生児自己免疫性甲状腺疾患、および新生児I型真性糖尿病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0166】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される単離された抗FcRn抗体(例えば、N022~N024、N026、およびN027、好ましくはN027および/またはN024)によるFcRn阻害によって利益を得ることができる疾患および障害は、抗体が宿主細胞内へのウイルス侵入を促進し、細胞における感染性の増加または増強、例えば、抗体に媒介されるウイルス疾患の増強をもたらす、ウイルス性疾患である。いくつかの実施形態において、抗体は、ウイルス表面タンパク質に結合し得、抗体/ウイルス複合体は、抗体と受容体との間の相互作用を通じて細胞表面上のFcRnに結合し得る。続いて、抗体/ウイルス複合体は、細胞に内部移行され得る。例えば、ウイルスは、母体由来IgG抗体との複合体を形成することを通じて、胎児の細胞および/または組織への侵入を獲得し得る。母体由来IgG抗体は、ウイルス表面タンパク質に結合し得、IgG/ウイルス複合体は、胎盤の合胞体栄養細胞におけるFcRnに結合し、これが、次いで、複合体を胎児に移行させ得る。
【0167】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法は、抗体に媒介されるウイルス性疾患の増強を処置するために使用することができる。いくつかの実施形態において、病原性抗体(例えば、病原性IgG抗体)によって増強されるウイルス性疾患としては、アルファウイルス感染、フラビウイルス感染、ジカウイルス感染、チクングニアウイルス感染、ロスリバーウイルス感染、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染、中東呼吸器症候群、鳥インフルエンザ感染、インフルエンザウイルス感染、ヒト呼吸器合胞体ウイルス感染、エボラウイルス感染、黄熱病ウイルス感染、デングウイルス感染、ヒト免疫不全ウイルス感染、呼吸器合胞体ウイルス感染、ハンタウイルス感染、ゲタウイルス感染、シンビスウイルス感染、ブニヤムウェラウイルス感染、西ナイルウイルス感染、日本脳炎ウイルスB感染、ウサギ痘ウイルス感染、乳酸デヒドロゲナーゼ上昇ウイルス感染、レオウイルス感染、狂犬病ウイルス感染、手足口病ウイルス感染、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス感染、サル出血熱ウイルス感染、ウマ伝染性貧血ウイルス感染、ヤギ関節炎ウイルス感染、アフリカブタ熱ウイルス感染、レンチウイルス感染、BKパポバウイルス感染、マレー渓谷脳炎ウイルス感染、エンテロウイルス感染、サイトメガロウイルス感染、ニューモウイルス感染、モルビリウイルス感染、および麻疹ウイルス感染によって引き起こされるウイルス性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0168】
抗FcRn抗体によるヒトFcRnの遮断は、病原性抗体(例えば、病原性IgG抗体)によって作動される疾患において治療的に有用であり得る。全体的な病原性抗体の異化、および複数種の病原性抗体、小さな循環代謝産物、またはリポタンパク質の除去を誘導するFcRn遮断の能力は、病原性抗体により作動される自己免疫疾患病態を有する患者に、病原性抗体除去戦略の有用性および利用可能性を拡大する方法を提供する。理論によって束縛されるものではないが、抗FcRn抗体の主要な作用機序は、循環中の病原性抗体の異化を増加させ、罹患した組織における病原性抗体および免疫複合体の蓄積を減少させることであり得る。
【0169】
本明細書に記載される抗FcRn抗体(例えば、N022~N024、N026、およびN027、好ましくはN027および/またはN024)は、妊娠中の対象における免疫応答を活性化する医学的状態を有するか、またはそれを有する危険性がある、妊娠中の対象に投与され得る。いくつかの実施形態において、妊娠中の対象は、過去に、妊娠中の対象における免疫応答を活性化する医学的状態を有していた可能性がある。いくつかの実施形態において、妊娠中の対象は、以前に有した胎児または新生児が胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害を有していた病歴を有する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗FcRn抗体は、免疫疾患と関連する病原性抗体が、妊娠中の対象から得られた生物学的サンプル(例えば、血液または尿サンプル)において検出された場合に、妊娠中の対象に投与され得る。いくつかの実施形態において、妊娠中の対象の生物学的サンプルにおいて検出される病原性抗体は、妊娠中の対象の胎児に由来する抗原(例えば、胎児が胎児の父親から受け継いだ抗原)に結合することが知られている。
【0170】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗FcRn抗体(例えば、N022~N024、N026、およびN027、好ましくはN027および/またはN024)は、妊娠を計画しており、妊娠中の対象における免疫応答を活性化する医学的状態を有するかもしくはそれを有する危険性があり、かつ/または過去に、妊娠中の対象における免疫応答を活性化する医学的状態を有していた対象に投与され得る。いくつかの実施形態において、対象は、妊娠を計画しており、以前に有した胎児または新生児が胎児および新生児同種免疫および/または自己免疫障害を有していた病歴を有する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗FcRn抗体は、妊娠を計画しており、その生物学的サンプルが免疫疾患と関連する病原性抗体を含有する、対象に投与され得る。
【0171】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗FcRn抗体は、対象における免疫複合体に基づく急性または慢性免疫応答の活性化を低減または処置するために、対象(例えば、妊娠中の対象)に投与され得る。急性免疫応答は、医学的状態(例えば、尋常性天疱瘡、ループス腎炎、重症筋無力症、ギラン・バレー症候群、抗体に媒介される拒絶、劇症型抗リン脂質抗体症候群、免疫複合体に媒介される脈管炎、糸球体炎、チャネル病、視神経脊髄炎、自己免疫性難聴、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、免疫性好中球減少症、拡張型心筋症、血清病、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパチー、全身性ループス、反応性関節症、原発性胆汁性肝硬変、潰瘍性大腸炎、または抗好中球性細胞質抗体(ANCA)関連脈管炎)によって活性化され得る。
【0172】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗FcRn抗体は、自己免疫疾患によって活性化される免疫応答を低減または処置するために、対象(例えば、妊娠中の対象)に投与され得る。自己免疫疾患は、例えば、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、アジソン病、溶血性貧血、温式自己免疫性溶血性貧血(wAIHA)、抗因子抗体、ヘパリン誘発性血小板減少症(HICT)、感作移植、自己免疫性肝炎、肝炎、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労性免疫不全症候群、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパチー、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、限局型強皮症(CREST症候群)、寒冷凝集素病、クローン病、皮膚筋炎、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛症、線維筋炎、グレーブス病、橋本甲状腺炎、甲状腺機能低下症、炎症性腸疾患、自己免疫性リンパ球増殖症候群、特発性肺線維症、IgA腎症、インスリン依存性糖尿病、若年性関節炎、扁平苔癬、ループス、メニエール病、混合型結合組織疾患、多発性硬化症、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、リウマチ性関節炎、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑症、またはウェゲナー肉芽腫症であり得る。
【実施例
【0173】
本明細書に記載される様々なFcRn抗体およびそれらの特性は、国際公開第2019/118791号(PCT/US2018/065568)に詳述されている。
【0174】
[実施例1]
IgG競合
ヒトまたはカニクイザルFcRnへの結合についてIgGと競合する抗FcRn抗体の能力を、細胞表面にグリコホスファチジルイノシトール(GPI)連結FcRnを異所的に発現するヒト胎児腎臓(HEK)293細胞において評価した。ヒトおよびカニクイザルFcRnアルファアミノ酸配列は、97.5%の配列同一性を呈する。ヒトおよびカニクイザルFcRnアルファの間では、355個中9個のアミノ酸残基が異なるが、エピトープマッピングされる結合領域内にあるものはない。細胞に結合したIgGのレベルを、66nMの蛍光プローブ標識した非特異的IgGを使用して判定した。細胞表面FcRnへのIgGの結合は、IgGのFc部分がFcRnと相互作用することが可能となるpH6.0で行った。図1に示されるように、細胞に結合したIgGの量は、抗FcRn抗体(N022~N024、N026、またはN027)の濃度が増加するにつれて、有意に減少した。IgGの結合は、本開示の5つの例示的な抗FcRn抗体のそれぞれによって、濃度および飽和依存性様式で阻害され、pH6.0において、IgGと効果的に競合し、FcRnへのIgGの結合を阻害する抗FcRn抗体N022~N024、N026、およびN027の能力が示された。抗体のEC50値は、2~6nMの範囲であった。
【0175】
[実施例2]
マウスにおけるIgGの異化に対する抗FcRn抗体の作用
インビボにおけるIgGの異化に対する抗FcRn抗体の作用を測定するために、マウスFcRnが欠如しているが、内因性マウスおよびヒトFcRnと類似の組織分布でヒトFcRnを発現するヒトFcRnトランスジェニックマウス株FcRn-/-hFcRn(32)Tgマウスを使用した。0日目に500mg/kgのヒトIgGを注射したFcRn-/-hFcRn(32)Tgマウスに、1日目および4日目に、単回用量の抗FcRn抗体を10mg/kgで投与した。図2に示されるように、IgGの異化は、抗FcRn抗体で処置したマウスにおいて経時的に測定された低いレベルのIgGによって確認されるように、抗FcRn抗体の投与によって増加した。N024(K=35.5pM)、N026(K=36.5pM)、およびN027(K=19.4pM)の活性は、10mg/kgにおいて同等であると見られた。
【0176】
[実施例3]
抗FcRn抗体のインビトロおよびインビボにおける機能的特徴付け
インビトロ
抗体の細胞結合親和性を、細胞表面にグリコホスファチジルイノシトール(GPI)連結ヒトまたはカニクイザルFcRnを異所的に発現するヒト胎児腎臓(HEK)293細胞において測定した。FcRnは、I型膜貫通タンパク質であり、IgGおよびアルブミン結合ドメインが、エンドソーム膜の管腔側に配向されているか、または形質膜にトランスポートされた場合は細胞表面に配向されている。pH7.4におけるHEK293細胞上の細胞表面の膜結合型FcRnへの抗FcRn抗体の結合は、生理学的に関連する環境における結合を模倣し、そのpHでは、抗体のFcドメインではなくFabドメインのみがFcRnと相互作用する。FcRn細胞外ドメインを、C末端操作GPI連結を通じて高い密度で細胞表面上に提示した。抗FcRn抗体を、蛍光プローブで標識した。抗体を、氷上で30分間結合させた。細胞を、次いで、4℃で洗浄し、結合した抗体を、蛍光標識した二次抗体、例えば、ヤギ抗ヒトIgG F(ab)を使用して検出した。ヒトFcRnへの結合は、濃度依存性であり、抗体は、4~7nMの範囲のEC50値を提示した。
【0177】
また、抗体の細胞結合親和性を、内因的に発現されるヒトFcRnにおいても測定した。単球は、もっとも高いレベルのFcRnを発現し、マウスおよびヒト血液におけるFcRn発現について、もっとも高い陽性パーセントを示す。単球細胞株THP-1を使用して、pH7.4において内因性ヒトFcRnへの抗FcRn抗体の結合を評価した。内因性FcRnは、主として、THP-1細胞において細胞内エンドソーム小胞内にあるため、細胞を、まず、軽度な界面活性剤で透過処理し、固定した後、ウシ血清の存在下において抗FcRn抗体とともに4℃で30分間インキュベートして、非特異的Fc受容体結合を遮断した。このアッセイは、内因性ヒトFcRnへのより良好な結合を有する抗体を区別することが可能であった。THP-1細胞への抗FcRn抗体の結合は、濃度依存性である。本開示のすべての抗体、例えば、N022~N024、N026、およびN027は、IgG1よりも良好な結合親和性を示した。抗体N027が、3.0nMのEC50値で、もっとも高い結合親和性を提示した。
【0178】
ヒトまたはカニクイザルFcRnへの結合についてIgGと競合する抗FcRn抗体の能力を、細胞表面にGPI連結FcRnを異所的に発現するヒト胎児腎臓(HEK)293細胞において評価した。細胞に結合したIgGのレベルを、蛍光プローブ標識した非特異的IgGを使用して判定した。細胞表面FcRnへのIgGの結合は、IgGのFc部分がFcRnと相互作用することが可能となるpH6.0で行った。実施例3および図1に示されるように、細胞に結合したIgGの量は、抗FcRn抗体の濃度が増加するにつれて、有意に減少した。IgGの結合は、本開示の5つの例示的な抗FcRn抗体、例えば、N022~N024、N026、およびN027のそれぞれによって、濃度および飽和依存性様式で阻害され、pH6.0において、IgGと効果的に競合し、FcRnへのIgGの結合を阻害する抗FcRn抗体の能力が示された。抗体のEC50値は、2~6nMの範囲であった。
【0179】
抗体の水素-重水素交換によるエピトープマッピングは、抗体が、Fc-FcRn相互作用界面に位置するおよび/またはそれに隣接するヒトFcRn上のエピトープに結合することを示しており、これによって、抗体が、直接阻害によって、FcRnへのIgGの結合を遮断することが示唆される。さらに、エピトープマッピングされた結合部位は、FcRnのアルブミン結合部位から遠位にある。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して、抗体が、FcRnへの血清アルブミンの結合を阻害しないことを確認した。ヒトFcRnの可溶性Hisタグ化細胞外ドメインを、プレート表面に結合させ、pH6.0において、漸増濃度の抗FcRn抗体とともに事前インキュベートした。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)をコンジュゲートしたヒト血清アルブミンを、可溶性Hisタグ化FcRnに結合させた。抗体のいずれも、FcRnへのアルブミンの結合を阻害しなかった。さらに、インビボでの実験的な証拠により、抗FcRn抗体の投与の後に、マウスアルブミンレベルは一定にとどまっており、アルブミンのリサイクルが、FcRnへの抗体の結合によって妨害されなかったことも示された。
【0180】
インビボ
インビボにおけるIgGの異化に対する抗FcRn抗体の作用を試験するために、マウスFcRnが欠如しているが、内因性マウスおよびヒトFcRnのものと類似の組織分布でヒトFcRnを発現するヒトFcRnトランスジェニックマウス株FcRn-/-hFcRn(32)Tgマウスを使用した。0日目にヒトIgGを注射したFcRn-/-hFcRn(32)Tgマウスに、1日目および4日目に、単回用量の抗FcRn抗体を10mg/kgで投与した。図2に示されるように、IgGの異化は、抗FcRn抗体で処置したマウスにおいて経時的に測定された低いレベルのIgGによって確認されるように、抗FcRn抗体の投与によって増加した。N024(K=35.5pM)、N026(K=36.5pM)、およびN027(K=19.4pM)の活性は、10mg/kgにおいて同等であると見られた。
【0181】
[実施例4]
マウスにおけるIgGレベルに対する抗FcRn抗体の作用および標的占有率
Tg32ヒトFcRn(hFCGRT)トランスジェニックのマウスFcRn (mFCGRT)ノックアウトマウスに、500mg/kgのIVIg(トレーサー)の投与の24時間後に、N027を静脈内(i.v.)投薬した。循環ヒトIgGを、毎日、ELISAによって検出した。細胞を、免疫表現型を決定する細胞表面マーカーとともにインキュベートし、続いて固定および透過処理を行った後に、蛍光活性化細胞分取(FACS)によって溶解した全血に由来する単球において、標的占有率を毎日測定した。占有されていないFcRnを、Dy650で標識したN027での染色によって測定した(n=1群当たり4匹の雄)。図3に示されるように、IgGレベルおよび占有されていないFcRnのパーセンテージは、N027の投与によって、用量依存性様式で減少した。
【0182】
[実施例5]
カニクイザルにおけるIgGの異化の選択的誘導および標的占有率
N027を、t=0の時点で、カニクイザルに静脈内投薬した。循環内因性IgGおよびアルブミンを、ELISAによって検出した。細胞を、免疫表現型を決定する細胞表面マーカーとともにインキュベートし、続いて固定および透過処理を行った後に、FACSによって溶解した全血に由来する単球において、標的占有率を測定した。占有されていないFcRnを、Dy650で標識したN027での染色によって測定した。(n=1群当たり3匹の雄)。図4に示されるように、IgGレベルおよび占有されていないFcRnのパーセンテージは、N027の投与によって、用量依存性様式で減少したが、血漿アルブミンレベルは、変化しないままであった。
【0183】
[実施例6]
マウス慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)におけるN027の有効性
Tg32ヒトFcRn(hFCGRT)トランスジェニックのマウスFcRn(mFCGRT)ノックアウトマウスにおいて、抗血小板抗体(抗CD41、MWReg30)の皮下(s.c.)ミニ浸透圧ポンプでの連続的な注入によって、血小板減少症を誘導した。循環血小板レベルは、ポンプ埋め込み後72時間(3日目)までに、300×10/Lまたはそれ未満に減少した。N027を、ポンプ埋め込みの72時間後(3日目)および120時間後(5日目)に、静脈内に治療的に投薬した(A、n=1群当たり4匹;B、n=1群当たり7匹)。図5は、血小板減少症を有するマウスにおける血小板レベルに対するN027の作用を示す。
【0184】
[実施例7]
抗FcRn抗体の静脈内注入の安全性および耐容性
単回用量、逐次的、ランダム化、二重盲検(スポンサー非盲検)、プラセボ対照、漸増用量、および漸増注入速度での、配列番号19の軽鎖および配列番号24の重鎖配列を有する抗体(N027、M281)の研究を、実行した。対象を、ランダム化して、1日目に、静脈内注入によって、30もしくは60mg/kgの抗体またはプラセボの単回用量を受容させた。5つのコホートのそれぞれは、抗体を受容する6人の対象およびプラセボを受容する2人の対象からなっており、合計40人の対象であった。5つのコホートに、30mg/kgの抗体を60分間にわたって(6人の対象)またはプラセボ(2人の対象)を投与し、30mg/kgの抗体を30分間にわたって(6人の対象)またはプラセボ(2人の対象)を投与し、30mg/kgの抗体を15分間にわたって(6人の対象)またはプラセボ(2人の対象)を投与し、30mg/kgの抗体を7.5分間にわたって(6人の対象)またはプラセボ(2人の対象)を投与し、60mg/kgの抗体を15分間にわたって(6人の対象)またはプラセボ(2人の対象)を投与した。静脈内注入における抗体の濃度は、30mg/mlであった。
【0185】
死亡も、重度の有害事象(SAE)も、研究からの対象の離脱をもたらす有害事象もなかった。もっとも一般的に報告された処置により生じた有害事象は、次の通りであった:
頭痛が、活性処置群の6人(20%)の対象およびプラセボを受容した1人(10%)の対象によって報告され、吐き気が、活性処置を受容した3人(10%)の対象によって報告された。7.5分間で30mg/Kgの注入および15分間で60mg/Kgの注入のいずれも、耐容されたが、低い注入速度よりも高い率の頭痛および吐き気があると見られた。
【0186】
他の実施形態
本開示を、その特定の実施形態に関連して説明してきたが、さらなる修正が可能であり、本出願は、一般に、原理に従った、本開示が属する技術分野における公知または慣例の範囲内で生じる本明細書において前述されている本質的な特徴に適用することができる本開示からの逸脱を含む任意の変化形態、使用、または適応形態を包含することを意図することが理解される。
【0187】
すべての刊行物、特許、および特許出願は、それぞれ個別の刊行物、特許、または特許出願が具体的かつ個別に参照によりその全体が組み込まれると示されるのと同程度に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0188】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内である。
図1
図2
図3
図4A-4C】
図5
【配列表】
2022542430000001.app
【国際調査報告】