(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-03
(54)【発明の名称】医薬剤形のラマン分析
(51)【国際特許分類】
G01N 21/65 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
G01N21/65
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506397
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(85)【翻訳文提出日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 GB2020051751
(87)【国際公開番号】W WO2021019208
(87)【国際公開日】2021-02-04
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522040377
【氏名又は名称】アジレント・テクノロジーズ・エルディーエイ・ユーケイ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES LDA UK LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】テラ,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ピーターズ,クレイグ
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA14
2G043CA06
2G043DA05
2G043EA03
2G043EA13
2G043FA01
2G043GA04
2G043GA08
2G043LA01
2G043LA03
2G043NA01
(57)【要約】
医薬剤形の自動分析の方法及び装置が開示されている。いくつかの態様では、剤形を検査ロケーションに運び、送達光学素子と集光光学素子との間で剤形を複数の異なるアライメントで提示するのに使用されるグリッパによって、剤形を把持することができる。剤形を通って散乱されたプローブ光が、各アライメント中に集光される。複数のアライメントの集光されたプローブ光は、その後、剤形のラマンスペクトル分析に使用される。他の態様では、回転ステージが、剤形を、グリッパによって把持される前にステージ上で好ましいアライメントに回転させるのに使用される。グリッパは、その後、剤形を光学的分析のために検査ロケーションに搬送するのに使用される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬剤形の自動分析の方法であって、
グリッパを使用して前記剤形を把持することと、
プローブ光を前記剤形の第1の表面領域に誘導するように構成される送達光学素子と、前記剤形を通じた散乱後に前記剤形の第2の表面領域からプローブを受信するように構成される集光光学素子との間の検査ロケーションに前記剤形を運ぶように前記グリッパを移動させることと、
前記グリッパを移動させて、前記送達光学素子と前記集光光学素子との間の複数のアライメントにおいて前記剤形を提示し、それぞれのアライメントごとに、前記第2の表面からプローブ光を集光することと、
前記複数のアライメントのそれぞれについて受信されたプローブ光のラマンスペクトル特徴部を検出することと
を含む方法。
【請求項2】
前記アライメントのうちのいくつか又は全ての間に検出された前記ラマンスペクトル特徴部を使用して前記剤形の特性を求めることを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記特性は、前記アライメントの全ての間に検出されたラマンスペクトル特徴部を使用して求められた前記剤形の平均特性である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記剤形の2つ以上の部分のそれぞれの前記特性の異なる値は、前記第1の表面領域及び前記第2の表面領域が前記剤形のそのような各部分において見つけられる1つ以上のアライメントの間に収集されるラマンスペクトル特徴部を使用して求められる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記錠剤の前記2つ以上の部分は、前記錠剤の表面に設けられた分割線によって画定される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記剤形における前記第1の表面領域の前記位置及び前記剤形における前記第2の表面領域の前記位置のうちの少なくとも一方は、各アライメント間で変化する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
各アライメント間で、前記グリッパは、並進及び回転のうちの一方又は双方によって前記剤形を移動させる、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記アライメントのうちの少なくともいくつかは、前記ラマンスペクトル特徴部が前記受信されたプローブ光において検出される前記剤形の移動中のアライメントの1つ以上の連続範囲を形成する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の表面領域は、前記第1の表面領域から前記剤形の反対側にある、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記医薬剤形は、錠剤、コーティング錠、カプセル、ゲルカプセル、固体剤形、及び経口剤形のうちの1つ以上である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記剤形を移動させて前記複数のアライメントを提供することは、少なくとも2mmの距離にわたる前記剤形の並進と、少なくとも10度にかけての前記剤形の回転とのうちの少なくとも一方を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
医薬剤形の自動分析の装置であって、
前記剤形を把持するように構成される機械式グリッパと、
検査ロケーションを有し、該検査ロケーションに位置決めされているときに前記剤形内で散乱されたプローブ光においてラマンスペクトル特徴部を検出するように構成されるラマン分析ステーションと、
前記検査ロケーション内の複数のアライメントにおいて前記剤形を提示するように前記グリッパを制御するとともに、前記アライメントのそれぞれにおいて、前記剤形内で散乱されたプローブ光を集光し、該集光されたプローブ光においてラマンスペクトル特徴部を検出するように前記ラマン分析ステーションを制御するように構成されるコントローラと、
前記検出されたラマンスペクトル特徴部から前記剤形の1つ以上の特性を求めるように構成される分析器と
を備える装置。
【請求項13】
前記ラマン分析ステーションは、前記剤形が前記検査ロケーション内に提示されているときに、プローブ光を前記剤形の第1の表面領域に誘導するように構成される送達光学素子と、前記剤形を通じた前方散乱の後にプローブを前記剤形の第2の表面領域から受信するように構成される集光光学素子とを備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記剤形における前記第1の表面領域の前記位置及び前記剤形における前記第2の表面領域の前記位置のうちの少なくとも一方は、その後のアライメント間で移動する、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記コントローラは、各アライメント間で前記剤形を回転及び/又は並進させるように前記グリッパを制御するように構成される、請求項12~14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記アライメントのうちの少なくともいくつかは、前記ラマンスペクトル特徴部が前記受信されたプローブ光において検出され、前記剤形の1つ以上の特性を求めるのに使用される前記剤形の移動中のアライメントの1つ以上の連続範囲を形成する、請求項12~15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記1つ以上の求められた特性のうちの少なくとも1つは、前記アライメントの全てからの前記検出されたラマンスペクトル特徴部を使用して求められた前記剤形の平均特性である、請求項12~16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記プローブ光が前記剤形の2つ以上の部分のそれぞれを通じて大部分散乱する1つ以上のアライメントを使用して、前記剤形のそのような各部分の前記特性のうちの1つの異なる値を求めるように構成される、請求項12~17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
剤形を受け取るように構成される回転ステージ表面を有する回転ステージと、
前記剤形を把持するように構成されるグリッパと、
検査ロケーションを有し、該検査ロケーションに位置決めされているときに前記剤形内で散乱されたプローブ光においてラマンスペクトル特徴部を検出するように構成されるラマン分析ステーションと、
前記ステージ表面にあるときに前記剤形を好ましいアライメントに回転させるように前記回転ステージの回転を制御し、前記好ましいアライメントにおいて前記剤形を把持するように前記グリッパを制御し、前記把持された剤形をラマン分析のために前記検査ロケーションに搬送するように前記グリッパを制御するように構成されるコントローラと
を備える、医薬剤形を分析する装置。
【請求項20】
前記ラマン分析ステーションは、
前記検査ロケーションに配置されているときに前記剤形の第1の表面領域にプローブ光を誘導するように構成される送達光学素子と、
前記剤形の第2の表面領域から前記散乱されたプローブ光を受信するように構成される集光光学素子であって、前記第2の表面領域は前記第1の表面領域から間隔を空けて配置されている、集光光学素子と、
前記受信されたプローブ光において前記ラマンスペクトル特徴部を検出するように構成される検出器と
を備える、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記第2の表面領域は、前記第1の表面領域から前記剤形の反対側にある、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記グリッパが、前記送達光学素子と前記集光光学素子との間に他の構造物を有することなく、ラマン分析のために前記検査ロケーションにおいて前記剤形を保持するように構成される、請求項20又は21に記載の装置。
【請求項23】
前記検出されたラマンスペクトル特徴部から前記剤形の1つ以上の特性を求めるように構成される分析器を更に備える、請求項19~22のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
前記剤形を前記好ましいアライメントに回転させるように前記回転ステージの回転を制御するために、前記回転ステージ表面上にあるときに前記剤形のアライメントを検出し、該剤形の該検出されたアライメントを前記コントローラに渡すように構成されるマシンビジョンシステムを更に備える、請求項19~23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
前記マシンビジョンシステムは、前記剤形の既定の剤形軸のアライメントを検出するように構成され、前記好ましいアライメントは、前記剤形軸の好ましいアライメントを含む、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記グリッパは、把持された剤形をグリッパ回転軸の回りに回転させるように更に構成され、前記コントローラは、前記剤形を把持している間に前記剤形を前記グリッパ回転軸の回りで好ましい回転の向きに回転させるように前記グリッパを制御するように構成される、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記グリッパ回転軸は、前記回転ステージ表面に平行である、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記グリッパ回転軸は、前記剤形軸の前記好ましいアライメントに平行である、請求項26又は27に記載の装置。
【請求項29】
前記マシンビジョンシステムは、前記剤形を前記好ましい回転の向きに回転させるときに前記グリッパを制御するために、前記グリッパ回転軸の回りの前記剤形の前記回転の向きを検出し、該検出された回転の向きを前記コントローラに渡すようにも構成される、請求項26~28のいずれか1項に記載の装置。
【請求項30】
前記マシンビジョンシステムは、検出された横方向位置において前記剤形を把持するように前記グリッパを制御するために、前記回転ステージ表面上における前記剤形の横方向位置を検出し、該検出された横方向位置を前記コントローラに渡すようにも構成される、請求項24~29のいずれか1項に記載の装置。
【請求項31】
前記マシンビジョンシステムは、前記剤形の1つ以上の寸法を求めるように更に構成される、請求項24~30のいずれか1項に記載の装置。
【請求項32】
前記コントローラは、前記剤形を回転させて前記剤形のエッジを前記マシンビジョンシステムに提示するように前記グリッパを制御するように構成され、前記マシンビジョンシステムは、前記提示されたエッジから前記剤形の厚さを求めるように構成される、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記コントローラは、前記マシンビジョンシステムによって前記剤形の厚さを求めるために、前記剤形を前記回転ステージ上にエッジを下にして置くように前記グリッパを制御するように構成される、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記グリッパは、対向するあご部であって、該あご部の間に前記剤形を把持するように構成される、対向するあご部を備える、請求項19~33のいずれか1項に記載の装置。
【請求項35】
前記対向するあご部は、前記回転ステージ表面に平行な軸と、前記グリッパ回転軸に沿った軸とのうちの少なくとも一方に沿って前記剤形を握持することによって前記剤形を把持するように構成される、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記グリッパは、前記剤形が、ラマン分析のために前記検査ロケーションにおいて保持されるとき、前記好ましいアライメントに留まるように構成される、請求項19~35のいずれか1項に記載の装置。
【請求項37】
前記グリッパの各あご部は、該あご部が前記剤形を握持するときに前記剤形を把持するために前記剤形に提示される凹面を備える、請求項19~36のいずれか1項に記載の装置。
【請求項38】
前記コントローラは、前記検査ロケーションに位置決めされているときに前記剤形内で散乱されたプローブ光においてラマンスペクトル特徴部を検出した後に、排出トレイの所定のセルに前記剤形を置くように前記グリッパを制御するように構成される、請求項19~37のいずれか1項に記載の装置。
【請求項39】
前記回転ステージ表面は、ハンドリングテーブルのテーブル表面の一部を形成する、請求項19~38のいずれか1項に記載の装置。
【請求項40】
前記テーブル表面の一部を形成する計量器表面を有し、該計量器表面上に位置決めされているときに剤形を計量するように構成される計量器を更に備える、請求項39に記載の装置。
【請求項41】
前記テーブル表面の投下ゾーンに剤形を置くように構成される剤形源を更に備え、前記投下ゾーンは、前記計量器から分離しているとともに、任意選択的に前記回転ステージ表面から分離している、請求項39又は40に記載の装置。
【請求項42】
前記コントローラの制御下で前記テーブル表面を横切って剤形を摺動するように構成されるスライダを更に備え、前記コントローラは、計量のために前記剤形を前記投下ゾーンから前記計量器表面に摺動させるとともに、前記計量器表面から前記回転ステージ表面に前記剤形を摺動させるように前記スライダを制御するように構成される、請求項41に記載の装置。
【請求項43】
前記スライダは、前記テーブル表面を横切って摺動するために剤形を取り囲むように構成されるボックススライダである、請求項42に記載の装置。
【請求項44】
前記コントローラは、前記剤形源が剤形を前記投下ゾーンにおいて前記ボックススライダ内に置くように前記スライダ及び前記剤形源を制御するように構成される、請求項43に記載の装置。
【請求項45】
前記グリッパ及び前記スライダはともに多軸ステージングに結合され、該多軸ステージングは、前記コントローラの制御下でプロセス軸に沿った動きを提供し、それによって、前記投下ゾーン、前記計量器表面、及び前記回転ステージ表面の間で前記スライダを移動させ、前記回転ステージ表面と前記ラマン分析ステーションの前記検査ロケーションとの間で前記グリッパを移動させる、請求項42~44のいずれか1項に記載の装置。
【請求項46】
ラマン分析のために前記グリッパを使用して、前記検査ロケーションにおいて前記剤形の並進及び回転のうちの一方又は双方を通じて複数の異なるアライメントで前記剤形を提示するように更に構成される、請求項19~45のいずれか1項に記載の装置。
【請求項47】
マシンビジョンシステムによる剤形の検出に応答して、前記剤形を好ましい回転状態にするように構成される剤形ハンドラと、
前記好ましい回転状態において前記剤形を検査する光学的分析ステーションと
を備える、医薬剤形を分析する装置。
【請求項48】
前記剤形ハンドラは、前記マシンビジョンシステムに応答して前記剤形を回転させるように構成される回転ステージを備える、請求項47に記載の装置。
【請求項49】
前記剤形ハンドラは、前記マシンビジョンシステムに応答した前記剤形の回転と、前記剤形を検査のために前記光学的分析ステーションに搬送することとのうちの1つ以上を行うように構成されるマニピュレータを備える、請求項47又は48に記載の装置。
【請求項50】
前記医薬剤形は、錠剤、コーティング錠、カプセル、ゲルカプセル、固体剤形、及び経口剤形のうちの1つ以上である、請求項19~49のいずれか1項に記載の装置。
【請求項51】
前記医薬剤形は、表面マーキング、デボス加工、エンボス加工、異なる色をそれぞれ有する複数の表面領域、及び印刷されたマーキングのうちの1つ以上を備える、請求項19~50のいずれか1項に記載の装置。
【請求項52】
医薬剤形を自動的に分析する方法であって、
回転ステージ上に前記剤形を受け取ることと、
前記剤形を回転ステージ軸の回りで好ましいアライメントに回転させるように前記回転ステージを回転させることと、
前記剤形を前記回転ステージからスペクトル分析ステーションの検査ロケーションに搬送することと、
前記検査ロケーションにおいて前記剤形の光学的インタロゲーションを行うことと
を含む方法。
【請求項53】
前記光学的インタロゲーションは、前記剤形のスペクトルインタロゲーションを含み、前記方法は、前記スペクトルインタロゲーションの結果から前記剤形の1つ以上の特性を求めることを更に含む、請求項53に記載の方法。
【請求項54】
スペクトルインタロゲーションを行うことは、レーザプローブ光を前記剤形の第1の表面領域に誘導することと、前記剤形内で散乱された前記レーザプローブ光の成分を、前記第1の表面領域から前記剤形の反対側にある前記剤形の第2の表面領域から集光することと、前記集光された光においてラマンスペクトル特徴部を検出することとを含む、請求項53又は54に記載の方法。
【請求項55】
前記搬送することは、グリッパを使用して、前記好ましいアライメントにあるときに前記剤形を把持することと、前記グリッパを使用して、前記把持された剤形を前記検査ロケーションに搬送することと、前記把持された剤形のスペクトルインタロゲーションを行うことと、前記グリッパの前記把持から前記剤形を解放することとによって行われる、請求項52~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記グリッパを使用して、前記剤形をグリッパ回転軸の回りで好ましい向きに回転させることを更に含む、請求項52~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記グリッパ回転軸の回りにおける前記剤形の回転は、前記回転ステージを使用した前記回転ステージ軸の回りにおける前記剤形の回転の後に行われる、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記回転ステージ軸及び前記グリッパ回転軸は、互いに実質的に直角をなす、請求項56又は57に記載の方法。
【請求項59】
ハンドリングテーブルの投下ゾーンにおいて前記剤形を受け取ることであって、前記ハンドリングテーブルは計量器及び前記回転ステージも備えることと、前記ハンドリングテーブルを横切って前記投下ゾーンから前記計量器に前記剤形を摺動させることと、前記計量器を使用して前記剤形を計量することと、前記ハンドリングテーブルを横切って前記計量器から前記回転ステージに前記剤形を摺動させ、前記好ましいアライメントに回転させ、その後、前記検査ロケーションに搬送することとを更に含む、請求項52~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記検査ロケーションにおいて前記剤形の光学的インタロゲーションを行うことは、複数の異なるアライメントで前記検査ロケーションにおいて前記剤形の光学的インタロゲーションを行うことを含む、請求項52~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
医薬剤形のハンドリング及び光学的インタロゲーションの変動を求める方法であって、
複数の前記光学的インタロゲーションを行うために、請求項52~60のいずれか1項の前記ステップを単一の剤形又は同じタイプの複数の剤形のいずれかに対して繰り返すことと、
前記複数の光学的インタロゲーションの結果を比較して、前記剤形の前記ハンドリング及び前記光学的インタロゲーションの変動の少なくとも1つの尺度を求めることと
を含む方法。
【請求項62】
複数の剤形タイプのそれぞれの複数の剤形を装填することであって、各タイプの前記剤形は、個別のホッパに装填されることと、
各剤形について請求項52~61のいずれか1項の前記ステップを実行することと
を含み、
前記回転ステージ上に特定の剤形を受け取ることは、前記剤形が装填された前記ホッパから前記剤形を受け取ることを含む、複数の医薬剤形を自動的に分析する方法。
【請求項63】
医薬剤形を分析する方法であって、
マシンビジョンシステムによる剤形の検出に応答して、剤形ハンドラを使用して前記剤形を好ましいアライメント及び/又は向きにすることと、
光学的分析ステーション内において前記好ましいアライメント及び/又は向きで前記剤形を検査することと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤又はカプセル等の経口固体剤形(oral solid dosage form)を含む医薬剤形(pharmaceutical dosage form)のラマン分析又は他の光学的分析若しくは分光分析を行う装置及び方法に関する。例えば、そのような剤形は、ラマン分光法(Raman spectroscopy)を透過構成で使用して分析することができる。
【背景技術】
【0002】
生産ラインサンプリング等の様々な状況において、医薬剤形を検査して、特定の規格に準拠していることを確かめることが望ましいか又は必要である。そのような規格は、1つ以上の医薬品有効成分(API:active pharmaceutical ingredient)の絶対量に加えて、剤形(dosage form)の形状、サイズ、及び他の化学成分の含有量並びに化学的特性等の他の態様の狭い許容範囲を規定することができる。
【0003】
そのような量及び化学的特性を求める1つの方法は、各サンプル剤形を個別に粉砕して粉末にし、溶剤に溶かし、液体クロマトグラフ、質量分析計又は同様の装置に投入することである。しかしながら、多数の剤形を個々に検査する必要があるとき、このプロセスは時間がかかる可能性があり、効果的に自動化するのは困難である可能性がある。そのような分析プロセスを通して各剤形サンプルの同一性を正確に追跡することが困難となり、元の剤形の物理特性及びマーキングの識別がプロセスにおいて失われる。
【0004】
定量分析のための医薬剤形の分光検査が、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されている。剤形は、錠剤、カプセル及び他の製剤薬の形態を取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際特許出願第PCT/SE96/01637号
【特許文献2】国際公開第2007/113566号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、関連した従来技術の問題及び限界に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、最小又はゼロのオペレータ入力を用いて、光学的分析のための剤形(dosage form)サンプルを自動的にハンドリング及び提示する装置及び方法を提供し、多くの異なるサイズ及び形状の剤形をハンドリングし、ユーザ入力なしで異なるサンプル又は剤形タイプを切り替え、例えば、ユーザ介入なしで異なるホッパに格納された異なるタイプの剤形を自動的に処理するように構成することができる。剤形は、ハンドリング誤差又は誤ったサンプルの装填(loading)について最小又はゼロの範囲を有するハンドリング及び分析プロセスを通じて追跡及び管理することができる。剤形の物理寸法及びマーキングを求め、予想値及びパターンと照合することができる。
【0008】
本発明の態様は、個々の剤形を正確に計量することも可能にする。透過構成ラマン技術等の光学的分析は、通常、医薬品有効成分のパーセンテージ含有量(%API)等の比例含有量測定値を提供するので、投薬量の重さを有することは、検査対象サンプルについてAPI投薬量のより正確な絶対尺度を求めることを可能にする。
【0009】
本発明の態様は、光学的分析中のサンプルの提示の改善された一貫性によって、光学的分析の結果の不一致を回避することができるように、個々の剤形を柔軟に操作することも可能にする。
【0010】
各医薬剤形は、錠剤、コーティング錠、カプセル、ゲルカプセル、又は様々な他の形態のうちの任意のものとすることができる。そのような剤形は、固体剤形として記載される場合があり、いくつかのそのような固体剤形は、それらの内部に液体又はゲルを含む場合があるが、固定剤形は、機械式グリッパ(mechanical gripper)等によって個々に操作することができる。そのような剤形は、飲み込み(swallowing)による摂取を目的とした経口剤形として記載される場合もある。
【0011】
上記方法及び上記装置によって処理される剤形は、表面マーキング、デボス加工(例えば製造中に剤形にプレス加工された特徴部)、エンボス加工(剤形の盛り上がった特徴部)、異なる色をそれぞれ有する複数の表面領域、印刷されたマーキング等のうちの1つ以上を表示する場合がある。そのような特徴部の存在は、そのような剤形の光学的分析、特にスペクトル分析の結果に影響を及ぼす可能性があり、そのため、剤形の定量分析の一貫性を達成するには、光学的インタロゲーションの提示の一貫性が望ましいことが分かっている。
【0012】
特に、本発明の態様は、医薬剤形を分析する装置であって、マシンビジョンシステムによる剤形の検出に応答して、剤形を所定の且つ好ましい回転状態又は向き(orientation)(剤形の規定の軸(defined axis)の、その軸の回りの剤形の好ましい方向及び/又は向きへのアライメント等)にするように構成される剤形ハンドラ(dosage handler)と、剤形を検査する光学的分析ステーションとを備える、装置を提供する。剤形が、検査のために光学的分析ステーションに提示されているときに好ましい回転状態又は向きに留まることを確保する様々な構成を提供することができるが、既知の回転又はアライメントの他の変更が、剤形を光学的分析ステーションに移動させるとき及びその後に光学的分析ステーション内で必要に応じて行われる場合がある。
【0013】
剤形ハンドラは、例えば、ステージに位置する剤形を回転させるように構成される回転ステージ又はターンテーブルを備えることができる。回転は、マシンビジョンシステムから受信されるデータに応答して制御される。回転ステージは、剤形が位置する、実質的に水平又は平坦の、通常は円形の上側表面を提供することができ、したがって、鉛直軸の回りに剤形を回転させるのに使用することができる。剤形ハンドラは、加えて又は代わりに、例えば回転ステージの回転の軸に対して傾斜した又は垂直な軸、そのため通常は水平軸の回りの、マシンビジョンシステムに応答した剤形の回転と、検査のための光学的分析ステーションへの剤形の搬送とのうちの1つ以上を行うように構成される機械式グリッパ又は他のマニピュレータを備えることができる。剤形ハンドラは、計量器(weighing scale)に位置する剤形を、通常は上述したような回転及び/又は操作よりも前に計量するように構成される計量器も備えることができる。そのような計量器は、例えば、回転ステージ及び計量器の双方がハンドリングテーブルの表面に設けられることによって、回転ステージに隣接して設けることができる。
【0014】
光学的分析ステーションは、通常、剤形のラマンスペクトルインタロゲーション(interrogation)を、例えば透過構成で行うように構成することができ、これは、回転ステージ又は剤形ハンドラの他の部分からの集光の後に機械式グリッパ又は他のマニピュレータによってまだ保持されている間に行うことができる。
【0015】
本発明の他の態様は、剤形を受け取るように構成される回転ステージ表面を有する回転ステージと、剤形を把持するように構成されるグリッパ又はマニピュレータと、検査ロケーションを有し、検査ロケーションに位置決めされているときに剤形内で散乱されたプローブ光においてスペクトル特徴部を検出するように構成される光学的分析ステーションと、ステージ表面上にあるときに剤形を好ましいアライメント、向き又は回転の状態に回転させるように回転ステージの回転を制御し、好ましいアライメント、向き又は回転の状態にある剤形を把持するようにグリッパを制御し、把持された剤形をスペクトルインタロゲーション及び分析のために検査ロケーションに搬送するようにグリッパを制御するように構成されるコントローラとを備える、医薬剤形を分析する装置を提供する。
【0016】
これは、一貫した且つ好ましいアライメント、向き、又は回転の状態を用いて各剤形を光学的分析ステーションにおいて提示し、それによって、別の状況では、特に剤形が色付きエリア、デボス加工等の顕著な非対称性又はマーキングを有するときに光学的分析の結果に顕著なばらつきをもたらす可能性がある提示の偏りを低減することを可能にする。回転ステージ表面は、通常は円形とすることができ、剤形が表面の上方に配置されるために静置する、実質的に平坦で水平な表面の形態にすることができる。
【0017】
光学的分析ステーションは、特に、検査された剤形のラマンスペクトル特徴部を検出するように構成されるラマン分析ステーションとすることができる。ラマン分析ステーションは、検査ロケーションに配置されているときに剤形の第1の表面領域にプローブ光を誘導するように構成される送達光学素子と、剤形の第2の表面領域から上記散乱されたプローブ光を受信するように構成される集光光学素子であって、第2の表面領域は第1の表面領域から間隔を空けて配置されている、集光光学素子と、受信されたプローブ光においてラマンスペクトル特徴部を検出するように構成される検出器とを備えることができる。ラマン分析ステーションは、それによって、例えば特許文献2に記載されているように、透過配置(transmission geometry:透過ジオメトリ)を使用して剤形をインタロゲートし、剤形のバルクを表すスペクトル測定値を取得することができる。
【0018】
第2の表面領域は、スペクトル分析の結果によって表される剤形の体積を最大にすることを助けるために、第1の表面領域から剤形の反対側にある領域とすることができる。
【0019】
上記装置は、グリッパが、例えば、ラマン分析ステーションの一部として設けられるキャリア、又は送達光学素子と集光光学素子との間の光バッフル(optical baffle)等の他の構造物を伴わずに、自由空間におけるラマン分析のための検査ロケーションに剤形を保持するように構成することができる。その上、ラマン技法は、検出されるスペクトル特徴部が基本レーザ周波数からスペクトル的に隔てられている分析に使用されるため、例えば弾性屈曲材料又はより硬質のホルダ若しくはマウントの形態の遮光バッフルをグリッパに設ける必要はない。
【0020】
より詳細には、レーザ光が剤形の周囲で散乱すること又は剤形を通過することを阻止するために、検査ロケーションにおいて剤形の周囲に隙間のない嵌合を提供するホルダ又はマウントを設ける必要はない。また、剤形が、そのような隙間のない嵌合ホルダ又はマウント内に静置又は配置される必要もない。ただし、それでもなお、そのようなホルダ又はマウントを必要に応じて設けてもよい。
【0021】
上記装置は、医薬品有効成分(API)のパーセンテージ含有量、他の化学成分の比例含有量等の剤形の1つ以上の特性を、検出されたラマンスペクトル特徴部から求めるように構成される分析器を更に備えることができる。そのような比例尺度は、以下で論述するような装置の計量器を使用して得ることができる剤形の求められた重さと組み合わせることによって、絶対量尺度(absolute content measure)、例えばAPIの量を求めるのに使用することができる。
【0022】
上記装置は、剤形を好ましいアライメントに回転させるように回転ステージの回転を制御するために、回転ステージ表面上にあるときに剤形のアライメントを検出し、剤形の検出されたアライメントをコントローラに渡すように構成されるマシンビジョンシステムを更に備えることができる。例えば、マシンビジョンシステムは、剤形の既定の剤形軸(dosage axis)のアライメント又は向きを検出するように構成することができ、好ましいアライメント又は向きは、剤形軸の好ましいアライメント又は向きを含む。このために、マシンビジョンシステムには、操作される剤形の幾何学的な詳細及び任意選択的に表面マーキングの詳細を事前に提供することができ、これらの詳細は、そのような既定の剤形軸を明示的又は暗黙的に含むことができる。
【0023】
グリッパ又はマニピュレータは、把持された剤形をグリッパ回転軸の回りに回転させるように構成することができ、コントローラは、その後、剤形を把持している間に剤形をグリッパ回転軸の回りで好ましい回転の向きに回転させるようにグリッパを制御するように構成される。剤形が、回転ステージによって既に好ましいアライメントに回転されている場合には、グリッパ回転軸は、剤形軸の好ましいアライメントに平行なものとすることができる。通常、グリッパ回転軸は、回転ステージ表面に平行なものとすることができ、したがって、通常、回転ステージの回転の軸に垂直でもある。グリッパによるこの回転も、通常、マシンビジョンシステムからのデータを使用して行われる。このため、マシンビジョンシステムは、剤形を好ましい回転の向きに回転させるときにグリッパを制御するために、グリッパ回転軸の回りの剤形の回転の向きを検出し、検出された回転の向きをコントローラに渡すようにも構成することができる。
【0024】
マシンビジョンシステムは、検出された横方向位置において剤形を把持するようにグリッパを制御するために、回転ステージ表面上における剤形の横方向位置を検出し、検出された横方向位置をコントローラに渡すようにも構成することができる。
【0025】
マシンビジョンシステムは、回転ステージ上に位置しているときに平面視における剤形の長さ、幅、直径又は他の寸法等の剤形の1つ以上の寸法を求めるように更に構成することができる。剤形が、エッジ面によって隔てられた対向する主面を有する場合には、対向する主面の間の剤形の厚さを求めるために、コントローラは、主面ではなく、剤形を回転させて剤形のエッジをマシンビジョンシステムに平面視で提示するようにグリッパを制御するように構成することができ、マシンビジョンシステムは、その後、提示されたエッジの平面視から剤形の厚さを求めるように構成される。
【0026】
いくつかの例では、マシンビジョンシステムによるエッジ面の検出は、剤形がグリッパによって保持されている間に達成することができる。ただし、他の例では、コントローラは、マシンビジョンシステムによって剤形の厚さを求めるために、剤形をエッジを下にして回転ステージ上に置き、その位置で剤形を解放するようにグリッパを制御するように構成することができる。これは、例えば、グリッパが、別の方法ではマシンビジョンシステムのエッジの視界を覆い隠すときに有用であり得る。
【0027】
グリッパを使用して剤形をマシンビジョンシステムに対してエッジの向きに提示することは、マシンビジョンシステムが、回転ステージを見下ろす1つ以上の下向きカメラを使用するが、原則として剤形の厚さを検出することができるが費用及び複雑さをシステムに追加することになる、回転ステージにわたって横方向視するカメラが設けられないときに特に使用することができる。
【0028】
異なるタイプのマニピュレータ又はグリッパを使用してもよいが、グリッパは、対向するあご部(jaw)を備えることができ、当該あご部の間に剤形を把持するように構成される。対向するあご部は、剤形に対して回転ステージ表面に平行な軸及びグリッパ回転軸に沿った軸のうちの少なくとも一方に沿って閉じることによって剤形を把持するように構成することができる。特に、グリッパには、通常、移動の3つの並進軸が設けられるが、グリッパ回転軸の方向は固定することができ、それによって、装置の構築を簡単にすることができる。
【0029】
グリッパは、剤形がラマン分析のために検査ロケーションにおいて保持されているときに、好ましいアライメントに留まるように構成することができる。回転ステージを使用して達成されるような好ましいアライメントの方向は、その変化が既知であり、正確に制御可能である限り、検査ロケーションにおいて保持されているときに異なる方向に変化することができることに留意されたい。
【0030】
グリッパの各あご部は、あご部が剤形を握持するときに剤形を把持するために剤形に提示される凹面を備えることができる。
【0031】
コントローラは、検査ロケーションに位置決めされているときに剤形内で散乱されたプローブ光におけるラマンスペクトル特徴部の検出の後に、排出トレイ(output tray)の所定のセル又は他の排出構造物若しくは装置に剤形を置くようにグリッパ又はマニピュレータを制御するように構成することができる。
【0032】
上記装置は、各剤形の操作及び他の検査において使用されるハンドリングテーブルを備えることができる。例えば、回転ステージ表面は、ハンドリングテーブルのテーブル表面の一部を形成することができる。上記装置は、テーブル表面の一部を形成する計量器表面を有し、計量器表面上に位置決めされているときに剤形を計量するように構成される計量器を備えることができる。剤形の重さをスペクトル分析からの結果と組み合わせて、剤形の含有量の1つ以上の絶対尺度、例えばAPIの重さの尺度又は他の絶対量を求めて出力することができる。
【0033】
上記装置は、剤形源(dosage form source)を更に備えることができ、剤形源は、剤形をテーブル表面の投下ゾーン(drop zone)に置くように構成される。計量器の精度の一時的な低下を回避するために、投下ゾーンは、通常、計量器から分離することができ、任意選択的に回転ステージ表面から分離してもよい。剤形源は、複数のホッパを備えることができ、上記装置は、分析のために特定のホッパから剤形を選択するように構成される。このように、異なるタイプ又は規格の剤形をユーザによって各ホッパ内に装填することができ、その後、上記装置は、複数の異なるタイプの剤形の必要とされるハンドリング及び光学的分析を、更なるユーザの介入なく自動的に行うことができる。
【0034】
上記装置は、コントローラの制御下でテーブル表面を横切って剤形を摺動(slide)させるように構成されるスライダを更に備えることができる。例えば、コントローラは、剤形を計量のために投下ゾーンから計量器表面に、並びにアライメント及び他の任意の必要とされる向きのために計量器表面から回転ステージ表面に摺動させるようにスライダを制御するように構成することができる。
【0035】
スライダは、テーブル表面を横切って摺動するために剤形を取り囲むように構成されるボックススライダとすることができる。例えば長方形又は正方形の構成の剤形を取り囲むスライダ壁を設けることで、例えば剤形が剤形源からテーブル表面上に投下されるときに、装置による制御からの剤形の損失を回避することができる。スライダには、通常、剤形をテーブル表面上で不動のまま放置してスライダを遠ざけることができるように、スライダが剤形の高さよりも上に上昇することを可能にする鉛直軸を含めて、並進移動(translational movement)の3軸が設けられる。
【0036】
グリッパ及びスライダは、グリッパ及びスライダの双方に共通の動きを提供する多軸ステージング(multi-axis staging)に双方ともに結合することができる。例えば、多軸ステージングは、コントローラの制御下でプロセス軸に沿った移動を提供し、それによって、スライダを投下ゾーン、計量器表面、及び回転ステージ表面の間で移動させ、ラマン分析ステーションの回転ステージ表面と検査ロケーションとの間でグリッパを移動させることができる。
【0037】
本発明は、本明細書において説明される装置の態様を制御する方法を含めて、剤形のハンドリングの方法、操作の方法、検査の方法、光学的インタロゲーションの方法、分析の方法、及び定量分析の方法等の方法も提供する。
【0038】
1つの態様によれば、本発明は、医薬剤形を自動的に分析する方法であって、回転ステージ上に剤形を受け取ることと、剤形を回転ステージ軸の回りで好ましいアライメント又は向きに回転させるように回転ステージを回転させることと、剤形を回転ステージからスペクトル分析ステーションの検査ロケーションに搬送することと、検査ロケーションにおいて剤形の光学的インタロゲーションを行うこととを含む方法を提供する。
【0039】
光学的インタロゲーションは、例えば剤形を用いて散乱された光の1つ以上のラマンスペクトル特徴部を検出する剤形のスペクトルインタロゲーションを含むことができ、上記方法は、スペクトルインタロゲーションの結果から、化学成分の定量的特性等の剤形の1つ以上の特性を求めることを更に含むことができる。
【0040】
スペクトルインタロゲーションを行うことは、透過配置(transmission geometry:透過ジオメトリ)を使用することを含むことができ、例えば、レーザプローブ光を剤形の第1の表面領域に誘導し、剤形内で散乱されたレーザプローブ光の成分を、第1の表面領域から剤形の反対側にある剤形の第2の表面領域から集光し、集光された光においてラマンスペクトル特徴部を検出することを含むことができる。
【0041】
搬送することは、好ましいアライメント又は向きにあるときにグリッパ又は他のマニピュレータを使用して剤形を把持することと、グリッパを使用して、把持された剤形を検査ロケーションに搬送することと、把持された剤形のスペクトルインタロゲーションを行うことと、この後にのみ、グリッパの把持から剤形を解放することとによって行うことができる。
【0042】
グリッパは、グリッパ回転軸の回りに剤形をその軸の回りの好ましい向きに回転させ、それによって、光学的インタロゲーション中の剤形の提示の偏りを更に低減するのに使用することもできる。グリッパ回転軸の回りの剤形の回転は、通常、剤形がグリッパによる把持に望ましいアライメントに既にあるように、回転ステージを使用した回転ステージ軸の回りの剤形の回転後に行うことができるが、回転ステージを使用した回転の2つ以上のステップを、例えばグリッパによる回転の前後の双方で使用することができる。
【0043】
上記方法は、ハンドリングテーブルの投下ゾーンにおいて剤形を受け取ることであって、ハンドリングテーブルは計量器及び回転ステージも備えることと、ハンドリングテーブルを横切って投下ゾーンから計量器に剤形を摺動させることと、計量器を使用して剤形を計量することと、ハンドリングテーブルを横切って計量器から回転ステージに剤形を摺動させ、好ましいアライメント又は向きに回転させ、その後、検査ロケーションに搬送することとを更に含むことができる。
【0044】
剤形のハンドリング及び光学的インタロゲーションの変動等の態様を、例えば、複数の上記光学的インタロゲーションを行うために上記ステップを単一の剤形又は同じタイプの複数の剤形に対して繰り返すことと、複数の光学的インタロゲーションの結果を比較して、剤形のハンドリング及び光学的インタロゲーションの変動の少なくとも1つの尺度を求めることとによって求める方法も提供される。
【0045】
複数の医薬剤形を自動的に分析する方法は、複数の剤形タイプのそれぞれの複数の剤形を装填することであって、各タイプの剤形は個別のホッパに装填されることと、各剤形の記載の操作及び光学的分析を行うこととを含むこともでき、回転ステージ又は剤形ハンドラの他の部分において特定の剤形を受け取ることは、剤形が装填されているホッパから剤形を受け取ることを含む。
【0046】
本発明は、例えば、ラマン分析ステーション又は他の検査ロケーションにおけるグリッパ又は他のハンドリング要素による提示中の剤形の改良された光学的検査の方法及び装置も提供する。剤形の並進及び/又は回転を含む剤形のアライメントの範囲についてラマンスペクトル特徴部を求めるために剤形のそのようなアライメントを調整することによって、剤形の改善されたサンプリングを達成することができる。これは、処方物(dosage formulation)の全体としてのより代表的な処方物の特性を求めるために、そのようなアライメントの範囲のラマンスペクトル特徴部を検出することを伴うことができ、及び/又は、錠剤の分割可能なサブ用量等の同じ処方物の異なる部分の特性の値を求めることを伴うことができる。
【0047】
複数のそのようなアライメントは、プローブ光が剤形をよけてプローブ光集光光学素子に向かうことを強力に防止する光バッフルも他の装置もなく、剤形を検査ロケーションにおいて保持することを可能にするラマン分光法を使用するので、記載の構成を使用してより容易に達成することができる。これは、剤形の周囲におけるプローブ光の漏れがはるかに大きく懸念され、そのため、アライメント(並進及び/又は回転)の範囲にわたる剤形の光学的検査がはるかに困難である赤外線吸収分光法の使用と対照的である。
【0048】
このために、本発明は、医薬剤形の自動分析の方法であって、グリッパを使用して剤形を把持することと、プローブ光を剤形の第1の表面領域に誘導するように構成される送達光学素子と、上記剤形を通じた散乱後に剤形の第2の表面領域からプローブを受信するように構成される集光光学素子との間の検査ロケーションに剤形を運ぶようにグリッパを移動させることと、グリッパを移動させて、送達光学素子と集光光学素子との間の複数のアライメントにおいて剤形を提示し、アライメントごとに、上記第2の表面からプローブ光を集光することと、複数のアライメントのそれぞれについて受信されたプローブ光のラマンスペクトル特徴部を検出することとを含む方法を提供する。
【0049】
その後、医薬品有効成分の相対濃度等の剤形の1つ以上の特性を、アライメントの一部又は全ての間に検出されたラマンスペクトル特徴部を使用して求めることができる。アライメントの全てからのラマンスペクトル特徴部は、例えば、処方物の全体としての改善された平均特性を求めるのに使用することができる。ただし、他の実施形態において、剤形の2つ以上の部分のそれぞれについて、剤形のそのような各部分に対応する1つ以上のアライメントを使用して特定の特性の異なる値を求めることができる。この技法は、錠剤の2つ以上の部分を錠剤の表面に設けられた分割線によって通常画定される場合がある剤形の複数の折壊可能な(frangible)部分のそれぞれの特性の値を求めるのに有用であり得る。
【0050】
剤形の複数のアライメントは、各アライメント間で、剤形上の第1の表面領域の位置及び剤形上の第2の表面領域の位置のうちの少なくとも一方の変更を提供することと理解することができる。このために、各アライメント間で、グリッパは、並進及び回転の一方又は双方を通じて剤形を移動させることができる。ただし、アライメントの1つ以上の範囲を通した離散的なアライメント及び連続的な移動の一方又は双方を使用することができることに留意されたい。このため、アライメントのうちの少なくともいくつかは、ラマンスペクトル特徴部が受信されたプローブ光において検出される剤形の移動中のアライメントの1つ以上の連続範囲を形成することができる。
【0051】
光学的検査は、第2の表面領域が第1の表面領域から剤形の反対側にある透過構成を使用することができる。他の箇所で述べたように、医薬剤形は、錠剤、コーティング錠、カプセル、ゲルカプセル、固体剤形、及び経口剤形のうちの1つ以上とすることができる。複数のアライメントを提供するときの剤形の移動の範囲は、少なくとも2mmの距離にわたる剤形の並進と、少なくとも10度にかけての剤形の回転とのうちの少なくとも一方を含むことができる。
【0052】
本発明は、医薬剤形の自動分析の装置等の、複数のアライメントを使用して剤形の光学的検査を提供する対応する装置であって、剤形を把持するように構成される機械式グリッパと、検査ロケーションを有し、検査ロケーションに位置決めされているときに剤形内で散乱されたプローブ光においてラマンスペクトル特徴部を検出するように構成されるラマン分析ステーションと、検査ロケーション内において複数のアライメントで剤形を提示するようにグリッパを制御し、アライメントのそれぞれにおいて剤形内で散乱されたプローブ光を集光し、集光されたプローブ光においてラマンスペクトル特徴部を検出するようにラマン分析ステーションを制御するように構成されるコントローラと、検出されたラマンスペクトル特徴部から剤形の1つ以上の特性を求めるように構成される分析器とを備える装置を提供する。
【0053】
本発明は、本明細書に記載されているような方法ステップを実行するように構成されるコンピュータプログラムコードを備えるコントローラ及び/又は1つ以上の他のコンピュータシステムも提供するとともに、そのようなコンピュータプログラムコードと、そのようなコンピュータプログラムコードを保持する1つ以上のコンピュータ可読媒体とを提供する。
【0054】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】複数の医薬剤形のハンドリング並びに光学的インタロゲーション及び光学的分析の装置を概略的に示す図である。
【
図2】
図1の剤形ハンドラのいくつかの態様をより詳細に示す図である。
【
図3a】
図1及び
図2の装置を使用してハンドリング及び分析することができる剤形と、装置のマシンビジョンシステムによって特定することができる関連した剤形軸とを示す図である。
【
図3b】
図1及び
図2の装置を使用してハンドリング及び分析することができる剤形と、装置のマシンビジョンシステムによって特定することができる関連した剤形軸とを示す図である。
【
図7】アライメントの範囲を有する
図1及び
図2のラマン分析ステーションの検査ロケーションにおいて剤形をどのように提示することができるのかを示す図であり、アライメントは剤形の並進及び/又は回転が異なっている。
【
図8】アライメントの範囲を有する
図1及び
図2のラマン分析ステーションの検査ロケーションにおいて剤形をどのように提示することができるのかを示す図であり、アライメントは剤形の並進及び/又は回転が異なっている。
【
図9】通常は表面溝又は他の分割線によって分離される単一の剤形の2つのサブ用量(sub-dose)部分のそれぞれの特性の値をどのようにして求めることができるのかを示す図である。
【
図10】
図1及び
図2の装置をどのように実装することができるのかのいくつかの技術の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1を参照すると、医薬剤形12、特に錠剤又はカプセル等の経口固体剤形のスペクトル分析又は他の光学的分析の装置10が概略的に示されている。ただし、他のタイプの剤形又は更に言えば他の種類の物体を、この装置を使用して分析してもよい。
【0057】
装置10は、実質的に同一であることが意図されたそのような剤形のバッチ(batch)にわたるスペクトル分析又は他の光学的分析の改善された一貫性を提供するように構成及び動作される。バッチの剤形は、通常は、例えば形状、サイズ及び組成の点で表面的に同一であるか又は非常に類似している場合があるが、それでもなお、特に内部の化学物質含有量及び組成に欠陥及び/又はばらつきを含む場合がある。そのような欠陥及びばらつきを製造プロセス又は他の検査シナリオの一部として検出することが重要であり得る。
【0058】
医薬錠剤は、多様な形状、サイズ及び色で製造される。いくつかの錠剤は、複数の異なる色を有する場合がある。錠剤形状には、多くの場合に面取りエッジを有する円柱形又は楕円角柱形、球形、卵形、菱形等がある。錠剤には、英数字コード及び他のシンボル等のマーキング、複数の部分への分割を助けるスロット、及び他の表面特徴部がエンボス加工又はデボス加工されることが多い。いくつかの錠剤は、例えば英数字コード及び他のシンボルを含む印刷された表面マーキングを保持する。錠剤は、表面層が下層の錠剤コアに対して異なる成分を含むコーティングされた形態と、コーティングされていない形態との双方で製造される。
【0059】
医薬カプセルは、その1つの特定の形態がゲルカプセルであり、通常、医薬粉末又は時にゲル若しくは流体を含むカプセル化スリーブ(encapsulating sleeve)を備える。カプセルの通常の形状は、丸みのある端部を有する円柱形であるが、他のジオメトリ、例えば平坦化された円柱形形態が時に使用される。カプセル化スリーブは、通常、異なる色を有することが多い2つの対向する端部面を接合することによって形成される。カプセルには、多くの場合に、英数字コード及び他のシンボル等の表面マーキングが印刷される。
【0060】
本発明者らは、同じタイプ又はバッチの複数のそのような剤形が表面的には同一であっても、上述したような剤形の様々な物理的特徴が、それらの剤形の間の光学的分析の結果の一貫性に影響を及ぼす可能性があることを見出した。例えば、そのような剤形が、光学的分析機器に対してそれらの特徴部の異なる向き又は回転状態で光学的分析に提示された場合に、一貫性が低減される場合があることが分かった。いくつかの剤形は、回転対称の1つの軸の回りの剤形の回転を例えばマシンビジョンシステムによって少なくとも視覚的に検出するのが困難なほど、その軸の回りに十分な対称性を有する場合があり、その場合に、この軸の回りの回転は、その後の光学的分析のハンドリング中の剤形の回転状態を考慮することに全く効果的に貢献しないが、光学的に分析することが望ましい場合がある剤形であって、上記のような特徴部又は非対称性を本質的に備えていないものはほとんどない。
【0061】
図1に示すような装置は、光学的分析の改善された一貫性を有する、複数のそのような表面的に同一又は同様の剤形の自動且つ逐次的な光学的分析を提供するのに使用することができる。
【0062】
典型的な適用分野は、生産ライン又は他の製造プロセスからサンプリングされた剤形の化学組成を監視する分野とすることができる。剤形の求められる特性は、1つ以上の有効成分又は他の成分の測定値又は濃度若しくは量と、1つ以上のそのような有効成分又は成分の多形形態、水和形態、溶媒和形態、塩形態、及び結晶化度の測定値又は濃度若しくは量とを含むことができる。不純物の存在又は濃度も同様に検出することができる。
【0063】
図1に示す装置は、剤形12のラマンスペクトル分析を行うように特に構成される。ただし、他のタイプのスペクトル分析又はより一般的には光学的分析を加えて又は代わりに実施することができる。このために、装置は、ラマン分析ステーション20を備え、このラマン分析ステーションは、剤形12が当該ステーションの検査ロケーション22に位置決めされているときに剤形12内で散乱されたプローブ光においてラマンスペクトル特徴部33を検出するように構成される。
【0064】
図1のラマン分析ステーション20は、通常は赤外光であるプローブ光のレーザビームを生成するように構成されるレーザ源24と、検査ロケーション22にある剤形12にプローブ光を誘導するように構成される送達光学素子26と、剤形12内のラマン散乱を含む散乱の後のプローブ光を受信するように構成される集光光学素子30と、散乱されたプローブ光に存在する剤形のラマンスペクトル特徴部33を検出するように構成される検出器32とを備える。
【0065】
通常、レーザ源24は、近赤外において、例えば約700nm~1000nmにおいて連続波源又はパルス源のいずれかとして動作することができる。剤形12に送達される、適した平均光出力電力は、約50mW~1200mWとすることができ、剤形12におけるプローブ光ビームの適したスポット直径は、約1mm~10mmの領域とすることができる。特に小さなスポットサイズは、検査対象剤形への熱損傷の危険性によって回避される場合がある。
【0066】
ラマンスペクトル技法を実施するとき、集光光学素子30及び/又は検出器32は、通例、レーザ源24によって放出されるようなプローブ光の波長帯(すなわち基本波長)の非常に良好な抑制を組み込むように設計される。ラマン散乱断面は非常に小さく、そのため、そのような抑制がない場合に、ラマンスペクトル特徴部の波長が、レーザ波帯から数十ナノメートル以上の間隔が空いている場合があっても、基本波長は、ラマンスペクトル特徴部の正確な検出に悪影響を及ぼす可能性が高い。この抑制は、集光光学素子30内のホログラフィックノッチフィルタ等の1つ以上の光学フィルタを使用して、検査対象の医薬固体剤形を通じて又はその周囲で弾性的に散乱されたレーザ波帯光を抑制することで達成することができる。
【0067】
ラマンスペクトル特徴部33を検出するときに集光光学素子30においてレーザ波帯光を抑制することによって、赤外線吸収分光法及びいくつかの他の分光技法を使用する場合に通常ならば必要となるような、剤形12の周囲において集光光学素子内に反射又は散乱するプローブの迷光を回避する必要性が低減される。その結果、そのような迷光を防止するために、送達光学素子26と集光光学素子30との間において剤形の側面の周囲に光学シールを提供するキャリア又は他の構造物を特に必要とすることなく、検査対象の剤形を検査ロケーション22において吊り下げることができる。剤形は、したがって、何らかのホルダ又はキャリア内に着座させる必要なく送達光学素子と集光光学素子との間に吊り下げることができる。
【0068】
したがって、剤形12は、剤形の周囲に特定の光学的バリアも光学的封止も必要とすることなく、「自由空間」構成で検査ロケーション22に保持することができる。さらに、これによって、以下でより詳細に論述するように、剤形を検査ロケーション22に搬送する方法、剤形を検査ロケーション22に保持する方法、及び剤形を検査ロケーション22から除去する方法において、例えばこれらのステップの全てを通じて剤形を保持する機械式グリッパを使用して設計柔軟性を幾分高めることが可能になる。同様に、以下で論述する機械式グリッパには、例えば弾性屈曲材料の形態の遮光バッフルを設ける必要はない。
【0069】
剤形12は、光学的検査の期間中、検査ロケーション22において特定の固定位置及び回転状態(向き/アライメント)に提示することもできるし、複数の離散的な位置の間で移動/回転させ、各離散的な位置において光学的検査を行うこともできるし、及び/又は走査動作のように移動させて(並進移動及び回転のいずれか又は双方を含む)、その移動の過程で光学的検査を行うこともできる。そのような移動は、例えば、グリッパ90を使用して検査ロケーション内に剤形を移動させることによって、以下でより詳細に説明される剤形ハンドラを使用して実施することができる。ただし、光学的分析のこの配置は、代わりに又は加えて、離散的な検査配置間で、及び/又はプローブ光を剤形に送達するのに使用されるラマン分析ステーションの送達光学素子26及び/又は剤形からの散乱光を集光するのに使用されるラマン分析ステーションの集光光学素子30の移動又は調整によって使用する走査によって、又はこれらの態様の組み合わせによって変更してもよい。
【0070】
特定の剤形の提示中にそのような方法で取得される複数の光学的測定値は、剤形のより代表的な光学的測定値を取得するために例えば組み合わせることができる。例えば、レーザスポットを複数の異なるロケーションに誘導して及び/又は或る範囲のロケーションにわたって走査させて特定の剤形を検査することによって、光学的測定値は、剤形のバルク全体をより良く表すことができる。そのような技法は、使用される剤形上のより小さな及び/又はより一貫したレーザスポットサイズも可能にすることができる。
【0071】
検出器32は、様々な方法で実施することができ、例えば、所望のラマンスペクトル特徴部33を検出するのに適した波帯をカバーする分光計、例えばKaiser Optical Technologies Holospecデバイスとして実施することができる。レーザ源24から送達光学素子26へのレーザ光の結合及び集光光学素子30と検出器32との間のレーザ光の結合は、通常、光ファイバを使用して実現することができる。ただし、自由空間伝送構成を加えて又は代わりに使用することができる。
【0072】
検出されたラマンスペクトル特徴部33の少なくとも態様を示すスペクトルデータは、検出器32から分析器34に渡すことができ、分析器34は、上述した様々な化学的特性等の剤形の特性をスペクトルデータから求めるように構成される。スペクトルデータは、通常、CCD又は検出器32の他の撮像構成要素からの読み出しデータの形態を取ることができ、分析器34は、その後、特定のラマンスペクトルピーク及び検査対象剤形において予想又は予期される特定の化学成分を表す他の特徴部の大きさ、そのような成分のスペクトル又は複数のスペクトル特徴部とのより広いスペクトルマッチ等の態様を、例えば、そのような成分の予想されるスペクトル及び/又は特定のスペクトル特徴部を規定する1つ以上のデータライブラリを参照して検出するように構成することができる。
【0073】
検査された剤形のスペクトルデータ及び/又は求められた特性は、様々な方法で使用することができ、例えば、ローカル及び/又はリモートでの記憶、ネットワークにわたる送信、更なる分析、検査対象剤形を作製するのに使用される製造プロセス等のプロセスを制御するための使用等が行われる。
図1では、ローカルパーソナルコンピュータ36が、求められた特性を受信するように示され、例えば求められた特性の態様の出力を、例えば求められた特性の予想値からのずれの表示、装置10を監視する人物の注意を十分大きなずれに向けさせる可聴アラート又は可視アラート等の形態で、そのような人物に提供することができる。
【0074】
通常、プローブ光は、検査ロケーション22に配置された剤形12の第1の表面40に送達光学素子26によって誘導することができ、剤形内で散乱されたプローブ光は、その後、第1の表面から間隔を空けて配置された第2の表面41から集光することができる。このように、集光されたプローブ光は、検査対象剤形12内の深部において散乱されていることになり、検出されたラマンスペクトル特徴部33は、剤形のバルク特性を表すことになる。
【0075】
一般に、第2の表面41は、剤形が透過散乱配置(transmission scattering geometry)又は前方散乱配置(forward scattering geometry)で分析されるように、プローブ光のラマン散乱要素の前方散乱が第2の表面に透過されて集光及び検出されるように第1の表面40から間隔を空けて配置することができる。異なる構成が可能であるが、通常、第2の表面41は、第1の表面40に対して剤形の反対側にすることができる。この一例が、
図1における拡大図に示された錠剤剤形12’について示されている。この拡大図では、第1の表面40は、錠剤剤形12’の第1の平坦面であり、第2の表面41は、第1の表面40の反対側にある錠剤剤形12’の第2の平坦面である。いくつかの剤形について、より一般的には錠剤形態について、第1の表面及び第2の表面のそれぞれは、実質的に平行とすることができ、多くの場合に円形とすることができ、側壁によって互いに間隔を空けて配置することができる。
【0076】
そのような透過散乱配置又は前方散乱配置を使用して分析を実施するようにラマン分析ステーション20を構成し動作させることができるいくつかの方法は、特許文献2に記載されている。この国際公開の内容は、全ての目的において引用することによって本明細書の一部をなすものとする。
【0077】
いくつかの他の構成では、ラマン分析ステーション20は、加えて又は代わりに、例えば空間オフセットラマン分光法(SORS:spatially offset Raman spectroscopy)動作モードを使用する他の配置及びモードにおいて、剤形12のラマンスペクトル測定を行うように構成してもよい。そのようなモードでは、プローブ光は、送達光学素子26によって剤形12の1つ以上の入射表面領域に送達され、集光光学素子30は、入射領域(複数の場合もある)から横方向に間隔を空けて配置された1つ以上の集光表面領域から散乱プローブ光を集光するのに使用される。ラマンスペクトル特徴部13は、その後、集光された光において検出器32によって検出される。
【0078】
集光された光におけるラマンスペクトル特徴部13をもたらすラマン散乱の深さプロファイルは、その場合、横方向間隔に依存する。入射表面領域と集光表面領域との間で単一の間隔を使用することもできるし、複数の間隔からのラマンスペクトル特徴部を組み合わせて、より詳細な深さ依存測定、例えば、剤形内の深さの関数としてのラマン散乱のプロファイル及び結果として得られるスペクトル特徴部を提供することができる。この技術及び様々な実施態様の詳細は、例えば国際公開第2006/061565号及び英国出願公開第2541110号において論述されている。これらの国際公開及び英国出願公開の内容は、全ての目的においてそれらの全内容が引用することによって本明細書の一部をなすものとする。
【0079】
ラマン分析ステーション10は、加えて又は代わりに、他の配置、構成又は技法を使用して剤形のラマン分析を実施するように構成してもよく、いくつかの実施形態において、紫外、可視、又は赤外の吸収スペクトル技法又は反射スペクトル技法、蛍光技法等の他のスペクトル技法をラマン分光法に加えて又はこの代わりに使用してもよい。光学的分析のいくつかのそのようなモードでは、送達光学素子及び集光光学素子は、個別のものとすることもできるし、組み合わせることもできるし、後方散乱若しくは透過を有するか又は他のタイプの配置が使用される他のより複雑な形態で提供することもできる。
【0080】
既に上述したように、全体的な形状、表面、色彩特徴部、デボス加工部及びエンボス加工部、並びに印刷されたマーキング等の検査対象剤形(dosage form under test)の様々な非対称部及び特徴部は、光学的分析の結果に影響を及ぼす可能性があり、光学的に分析することが望ましい場合がある剤形であって、そのような非対称部及び特徴部を本質的に備えていない剤形はほとんどない。
【0081】
例えば透過配置を実施する上述したラマン分析ステーション20を使用して剤形12の光学的分析を行うとき、検査ロケーション22内における剤形の向き及び位置のばらつきは、検出されたラマンスペクトル特徴部33のばらつき及び誤差を引き起こし、したがって、検査対象剤形の検出された特性のばらつき及び誤差も引き起こすことが分かっている。検査対象剤形の向きのばらつきは、集光された光の輝度の全体的な変化だけでなく、例えば、送達光学素子、集光光学素子、及び検出器の配置及び特性との相互作用に起因した様々なスペクトル特徴部の相対的な強度及び見かけの波長のばらつきも引き起こす可能性がある。剤形の向きが異なると、剤形の体積部内での弾性散乱及びラマン散乱の双方の分布も異なる可能性がある。
【0082】
同様の剤形又は本質的に同一の剤形の間の光学的分析のより一貫した結果を達成するには、光学的分析用のそのような各剤形を同じ向きで提示することが有益であることが判明した。いくつかの特定の例示の状況は、以下のとおりである。
- 剤形のバッチが、1つの平坦な面に特定のデボス加工若しくは印刷又は他のマーキングを有する錠剤を含む場合には、それらのマーキングは、検査のために、一貫した向きにされるべきであり、例えば、常に上向き又は常に下向きにされるとともに水平面において同じ向きに常に回転されるべきである。
- 剤形のバッチが、異なる色の2つの端部をそれぞれ有するカプセルを含む場合には、それらの端部は、同じ方法で一貫した向きにされるべきである。並びに
- 剤形のバッチが、円柱形側壁に沿った印刷を有するカプセルを含む場合には、その印刷は一貫した向きにされるべきである。
【0083】
図1の装置は、剤形を剤形ハンドラ60に提供するように構成される剤形源(dosage source)42を備える。例えば、この剤形源は、1つ以上のシンギュレータホッパ(singulator hopper)43を備えることもできるし、1つ以上のシンギュレータホッパを受け入れるように構成することもでき、各シンギュレータホッパは、コントローラ50の制御下で一時に1つの剤形を放出するように構成される。このように、剤形の複数のバッチを、おそらく数十個~数百個のそのような剤形を収容する個別のシンギュレータホッパ43にそれぞれ分析のために装填することができ、コントローラは、その後、これらのバッチのスケジューリングされた自動処理を提供することができる。そのような各バッチ、又はシンギュレータホッパの2つ以上のそれぞれは、好都合には、異なるタイプの剤形、例えば、ジオメトリ(サイズ、形状等)、医薬含有量、マーキング、色等のうちのいずれかに関して異なる剤形を収容することができる。記載されている装置は、ユーザの介入なく単一の動作セッションにおいて剤形の複数の異なるバッチを処理することができるように、装置に対する特定の物理的な変形も変更もなくそのような異なるタイプの剤形をハンドリングすることができるという点で特に有益である。
【0084】
単数又は複数のシンギュレータホッパは、各剤形を供給機構44に送達するように構成することができる。供給機構44は、例えば、1つのそのような剤形12をそれぞれ受け取る複数の周辺部のアパーチャ(peripheral aperture)を有するカルーセル(carousel)を備えることができ、このカルーセルは回転し、受け取った剤形を剤形源42から剤形ハンドラ60に一時に1つ放出するように転送する。
【0085】
剤形ハンドラ60は、同じタイプ又はバッチの一連の剤形を剤形源42から受け取り、その後、ラマン分析ステーション20の検査ロケーション22において提示するためにそのような各剤形の回転状態(例えば、剤形の剤形軸の回りの剤形の好ましい方向及び/又は向きへのその剤形軸のアライメント)の少なくともいくつかの態様を一貫して設定するようにコントローラ50によって自動的に動作される。このように、通常ならば検査ロケーション22における回転状態の不一致に起因して生じる可能性がある剤形の検出された特性の潜在的な誤差及びばらつきを最小化又は削減することができる。このために、コントローラは、以下でより詳細に説明するように使用するために剤形源によって剤形ハンドラ60に送達することができる各タイプ又は各バッチの剤形のアライメント及び/又は向き等の既定の回転状態又は好ましい回転状態を規定するアライメント/向きデータ52を含むこともできるし、その提供を受けることもできる。
【0086】
光学的分析の後、剤形ハンドラ60は排出動作を行う。通常、排出動作は、光学的に検査された各剤形を可能な更なる検査又は分析のために一意に且つ正確に特定又は識別することを可能にするべきである。このために、剤形ハンドラ60は、検査された各剤形を、手動によって又は更なる自動プロセスの一部としてその特定の剤形に使用されるセルを後に識別することができる方法で、排出トレイ45の異なるセルに置くことができる。
【0087】
図2は、単一のタイプ又はバッチの複数の剤形の光学的分析におけるアライメント及び/又は向きの所望の改善された一貫性を提供するために
図1の剤形ハンドラ60をどのように実施することができるのかを概略的に示している。剤形ハンドラ60は、剤形源42から送達された各剤形12を操作することができるテーブル表面72を提供するハンドリングテーブル70を備える。テーブル表面72は、好ましくは平らなもの、すなわち実質的に水平のものとすることができる。テーブル表面72は、1つ以上の領域において又はテーブル表面72全体にわたって、平滑なものとすることもできるし、或る方法でテクスチャ(texture)を持たせることもできる。例えば、剤形12をテーブル表面72にわたって押動又は摺動させることを可能にするが、剤形の望まれないローリング又は他の運動を防止又は低減する表面テクスチャを設けることができる。適した表面テクスチャは、例えば、ピラミッド形態又は円錐形態等の小さな突起の繰り返し、小さな陥凹又はくぼみの繰り返し等を含むことができる。そのような特徴部は、例えば、約1mm未満の高さ又は深さと繰り返し周期とを有することができる。
【0088】
図2に示す剤形ハンドラ60は、その後のラマン分析ステーション20への搬送のための把持及びラマン分析ステーション20による分析のために、剤形12を受け取って、所定の好ましいアライメントに回転させるように構成される回転ステージ表面75を有する回転ステージ74を備える。回転ステージ表面75は、以下でより詳細に論述するように、剤形12をテーブル表面72にわたって及び回転ステージ表面75上へ押動することを可能にするために、通常、ハンドリングテーブルのテーブル表面72と同じ高さであるか又はその一部を形成することができる(したがって、通常は同様に平らであるか又は実質的に水平である)。回転ステージ表面75は、回転ステージ軸77の回りに回転するように構成される。この回転ステージ軸は、回転ステージ表面及びテーブル表面に実質的に垂直であり、そのため、テーブル表面がほぼ水平である場合には、通常はほぼ鉛直である。換言すれば、通常は鉛直である軸の回りに剤形を回転させるのに使用される回転ステージは、その軸の回りに所望の回転アライメントを実現する。
【0089】
好ましいアライメントを実現するために、剤形ハンドラ60は、回転ステージモータ76(このモータは、いくつかの実施形態において、回転ステージ74に備えられていると考えることができる)の適した制御によって回転ステージ74を回転させることによって剤形の好ましいアライメントを達成することができるように、例えば回転ステージ表面75上に存在するときの剤形の回転状態の少なくともいくつかの態様を検出し、検出された態様をコントローラ50に渡すマシンビジョンシステム80も備える。例えば、マシンビジョンシステム80は、回転ステージ表面上の剤形の開始アライメントを検出し、この開始アライメントをコントローラに渡すことができ、コントローラは、その後、剤形を好ましいアライメントにするように回転ステージを回転させる。他の実施形態において、マシンビジョンシステムは、回転ステージが回転されているときに剤形のアライメントを監視することができ、コントローラは、その場合、好ましいアライメントが達成されたときに回転を停止するように構成される。
【0090】
マシンビジョンシステム80は、通常は回転ステージにおいて下方に向けられて回転ステージ表面75の少なくとも一部を含む視野を有する少なくとも1つのカメラ82と、回転ステージ表面上に配置された剤形12の1つ以上の画像を受信し、アライメント及び向き等の回転状態の態様を含む剤形12の所望の特性をこれらの画像から検出するように構成されるマシンビジョンプロセッサ84とを備えることができる。マシンビジョンプロセッサ84は、
図2では別個の実体として描かれているが、必要に応じてコントローラ50の一部として設けてもよい。
【0091】
マシンビジョンプロセッサ84は、例えば、形状、サイズ、印刷されたマーキング、表面エンボス加工マーキング及び表面デボス加工マーキング、カラーエリア等を含むことができる上述したような特徴部を使用して、回転状態の態様に加えて剤形12の他の特性、例えば、回転ステージ表面75上の剤形のロケーション、及び特定のタイプのものであるとして又は特定のバッチからのものであるとしての剤形の肯定的又は否定的な識別を検出することができ、そのような検出された特性をコントローラ50、分析器34、パーソナルコンピュータ36又は他の適した要素に渡すことができる。例えば、コントローラ50は、剤形のどのタイプが検出されたかに応じて剤形を異なってハンドリングし、例えば、光学的分析のために剤形をそのタイプに固有の方法で向きを定めるように剤形ハンドラ60を制御することができる。
【0092】
マシンビジョンシステム80は、円形平面視の剤形の直径、又は楕円形態、方形形態、若しくはカプセル形態等の他の平面形態の剤形のより具体的な長さ寸法及び幅寸法等の剤形の寸法を求めるのに使用することもできる(剤形の寸法を所望の寸法と照合することが必要とされる場合がある)。他の適した尺度は、平面視の表面積を含むことができる。錠剤の厚さ等の2つの概ね平面の対向する表面の間の剤形の厚さもマシンビジョンシステムによって求めることができるが、これには、剤形のエッジをカメラ82に適切に提示することを確保するために、剤形の或る特定の操作が必要とされ得る。いくつかの場合には、マシンビジョンシステムは、剤形の体積の計算を可能にするために、十分な寸法測定及び/又は面積測定を行うことができる。
【0093】
剤形の特定のタイプ又はバッチについて、好ましいアライメントを剤形の剤形軸に関して(例えば、コントローラに利用可能なアライメント/向きデータ52に)規定することができる。剤形の剤形軸は、予め規定することができ、マシンビジョンシステム80を使用してそのような剤形の画像類から少なくとも暗黙的に認識することができる。回転ステージ上での好ましいアライメントへの剤形の回転は、その場合、回転ステージ表面と平行な目標軸とのアライメントへの剤形の既定の剤形軸の回転と同じである。ここで、目標軸は、通常、剤形ハンドラ60又は装置10の1つ以上の他の部分に対して固定することができる。
【0094】
図3aは、剤形の剤形軸13と、したがって、剤形の好ましいアライメント(すなわち回転の向き)とをどのように規定することができるのかを示している。この場合に、本質的に円柱形のカプセル12’’が、この場合に円柱の回転対称軸に対応する剤形軸13を有するものとして示されている。このカプセルの好ましいアライメントは、剤形軸13が目標軸(この図に図示せず)と平行であるときとすることができる。カプセル12’’又は他の剤形が、この剤形軸に沿った方向の反転又は反射に対して対称でない場合、例えば、異なる色を有する端部又はこの図に示すような他の非対称の特徴部を有する場合には、好ましいアライメントは、剤形軸が目標軸と特に平行又は逆平行であることを必要とし得る。
【0095】
回転ステージ上の剤形のアライメントは、検査ロケーションに搬送するために剤形をどのように把持するのかを決定することができるので、剤形軸の選択は、この軸に沿って又はこの軸に対して規定される向きに把持されるときのグリッパによる保持の予想される安定性も考慮することができる。
【0096】
さらに、カプセル12’’が、図に示す印刷された文字等の、剤形軸13の回りの回転においてカプセルを非対称にする特徴部を含む場合には、剤形軸を好ましいアライメントに回転させることに加えて、例えば、以下でより詳細に説明されるグリッパを使用して、剤形軸又は回転ステージの表面と実質的に平行な別の軸の回りに剤形を好ましい回転の向きに回転させることが望ましい場合がある。
【0097】
図3bは、この場合には、錠剤12’’’の剤形軸13をどのように規定することができるのかの別の例を示している。錠剤12’’’は、当該錠剤12’’’の2つの対向する円形表面のうちの一方にデボス加工されたスナップ線特徴部又は分割線14を有する。この場合に、剤形軸の回りの好ましい回転の向きは、スナップ線が特定の方向、例えば上方若しくは下方のいずれか、又は場合によっては図における左若しくは右のいずれかに向いている向きとすることができる。
【0098】
図2を再び参照すると、剤形ハンドラ60は、回転された剤形を検査ロケーションに移動させる要素も備える。
図2では、この要素は、回転ステージを使用した好ましいアライメントへの回転後に剤形12を把持し、把持された剤形をラマン分析ステーション20の検査ロケーション22に搬送するように構成されるグリッパ90によって提供される。これらの動作は、コントローラ50による制御下で行われる。
【0099】
回転ステージ上の剤形がグリッパによって把持される位置から、剤形が検査ロケーション22における分析のために提示される位置に搬送されているとき、剤形のアライメント及び任意選択として剤形の向きの他の態様は、固定されたままとすることもできるし、検査ロケーションにおいて剤形の一貫したアライメント及び/又は向きを実現するために、制御された既知の方法で変更することもできる。一方、光学的分析の後、通例、その後の排出動作の間は、剤形の既知の又は正確なアライメント又は向きを維持する必要はほとんど又は全くない。
【0100】
グリッパ90は、把持された剤形をグリッパ回転軸96の回りで好ましい回転の向きに回転させるように構成することもできる。このグリッパ回転軸は、例えば、回転ステージ表面75に平行な軸(そのため、通常は水平軸)とすることができる。これは、グリッパを使用して剤形を把持し、剤形を回転ステージ表面75の上方に持ち上げ、剤形を回転させ、剤形を回転ステージ表面75に戻し、剤形を解放することによって達成することができる。そのようなシーケンスは、グリッパが、剤形を検査ロケーションに搬送するために再び把持する前に、別の回転状態及び/又は並進状態に戻ることが好ましい場合に使用することができる。或いは、グリッパは、把持及び持ち上げの後に、剤形を回転ステージ表面上に再び置くことなく、例えば剤形を検査ロケーションに搬送する移動の一部として剤形を回転させることもできるし、更に言えば、検査ロケーションにおいて剤形を回転させることもできる。別の代替形態として、グリッパによる剤形のそのような持ち上げ及び/又は元に戻すことは、回転ステージから離れたテーブル表面の1つ以上の他の部分において行うことができ、いくつかの構成又は動作において、例えば、回転が円柱形態の対称軸の回りで行われる場合には、回転を行う前に剤形を持ち上げる必要をなくすことができる。
【0101】
通常、グリッパ90は、剤形に接触するまで互いに向けて閉じ、それによって、剤形を把持するように構成される対向するあご部92、94を備えることができる。剤形軸は、上記で論述したように、回転ステージを使用した好ましいアライメントへの回転の要件を満たすように様々な方法で規定することができるが、剤形軸は、好都合には、グリッパあご部が剤形を把持して検査ロケーションに搬送するために剤形に接触するまで閉じるように接近する際に沿う軸と規定することができる。
【0102】
図2に示すように、グリッパ回転軸96は、グリッパあご部が閉じる際に沿う軸にも平行とすることもでき、したがって、剤形が回転ステージ74上で好ましいアライメントにあるときの剤形軸と同じである上述した目標軸にも平行とすることもできる。
【0103】
各グリッパあご部92、94は、任意の特定の剤形又は剤形のクラス向けに形状をカスタマイズする必要もなく、グリッパあご部を変更する必要もなく、予想される全ての剤形に満足のいく方法で機能するように設計することができる。このために、各グリッパあご部は、凹面98を備えることができ、これらの凹面は、互いに向き合い、あご部が互いに接近すると剤形を把持するために剤形に提示される。各凹面は、ハンドリングされる通常の剤形のより安定した把持を提供するために適した曲率半径を有することができ、例えば、曲率半径は約3mm~10mmである。
【0104】
より一般的には、この装置を動作させる方法は、剤形ハンドラが第1のジオメトリ(例えば形状、サイズ等)の複数の剤形のそれぞれを光学的分析のために検査ロケーションに送達することと、その後に、グリッパあご部の変形も変更もなく、第2の異なるジオメトリの複数の剤形のそれぞれを光学的分析のために検査ロケーションに送達することとを含むことができる。
【0105】
例えばアライメント/向きデータ52によって規定されるような好ましい回転の向きに剤形を回転させるようにグリッパを制御するために、マシンビジョンシステム80は、例えばグリッパ回転軸及び/又は剤形軸の回りの剤形の回転の向きを検出し、この検出された向きをコントローラに渡すようにも構成される。これは、コントローラが必要とされるグリッパ回転量をその向きから求めることができる開始向きとして行うこともできるし、グリッパ回転が行われているときの進行中の向きの検出として行うこともできるし、他の方法で行うこともできる。
【0106】
グリッパ90の全体としての並進移動は、多軸ステージング100によって提供され、この多軸ステージングは、グリッパが剤形を把持するテーブル上の位置に移動することと、剤形をテーブルから持ち上げることと、剤形を検査ロケーション22に搬送することと、排出動作を完了することとを可能にするために、通常は3つの並進軸を有する。このために、マシンビジョンシステム80は、回転ステージ上における剤形の横方向位置を検出し、多軸ステージング100及びグリッパあご部92、94の双方の適した制御によって、検出された横方向位置において剤形を把持するようにグリッパを制御するために、検出された横方向位置をコントローラに渡すようにも構成される。
【0107】
グリッパは、あご部が互いに向けて閉じるとき、双方のグリッパあご部が多軸ステージング100に対して移動するように構成することができる。或いは、一方のあご部(例えば、
図2においてステージング100から遠い側にある遠位あご部92)はステージング100に対して静止させることができる一方、他方のあご部(例えば、
図2においてステージング100に近い側にある近位あご部94)は、ステージングに対して並進するように構成される。
【0108】
回転ステージ74及び回転ステージ表面75に加えて、ハンドリングテーブル70は、剤形のハンドリング、分析及びそれ以外の処理のための他の構造物及びエリアを備えてもよい。例えば、
図2に示すように、ハンドリングテーブル70は、計量器表面112を備える計量器110も備えることができる。計量器表面112は、好ましくは、テーブル表面72にわたって及び計量器表面112上へ剤形を摺動又は押動させることができるように、テーブル表面72と同じ高さであるか又はその一部を形成する。計量器は、剤形の重さを、例えばパーソナルコンピュータ36又は装置の他の部分に報告するために、計量器から受信することができるようにコントローラ50に結合される。剤形の求められた重さは、例えば、剤形が特定の所要の規格を満たしているか否かの判断を助けるために、又は、剤形が予想されたタイプのものであるか否か若しくは正しいバッチからのものであるか否かの判断を助けるために、マシンビジョンシステム及び/又は分析器34によって求められた他の特性とともに使用することができる。
【0109】
計量器は、
図2では別個のものとして描かれているが、いくつかの実施形態において、回転ステージ内に組み込んでもよい。
【0110】
図2に示すようなハンドリングテーブル表面72は、投下ゾーン120も備える。この投下ゾーンは、剤形源が操作及び分析のために剤形を置くように構成されるテーブル表面72の領域である。計量器表面から分離したそのような投下ゾーン120を設けることは、投下ゾーン120への剤形投下の衝撃が計量器の精度に悪影響を及ぼさないことを意味する。剤形が剤形源によって投下ゾーン120に投下されると、計量器110によるその後の計量のために、この剤形を例えば摺動又は押動によって移動させることができる。
【0111】
回転ステージ表面75の一部又は全ては、原則として投下ゾーンとして使用することができるが、ロボットレイアウト及びワークフローを考慮すると、これらのエリアを分離しておくことが有利である。
【0112】
剤形ハンドラ60は、テーブル表面72にわたって剤形を押動する又は摺動させる要素も備えることができる。
図2では、これは、剤形を押動する又は摺動させる適切な位置にあるとき又は押動している又は摺動させている過程にあるときにテーブル表面72の平面内において又は上方視点から剤形を取り囲むボックススライダ130として示されているが、剤形を必ずしも取り囲まない他の形態のスライダも使用することができる。
図2に示されている例示のボックススライダ130は、移動される剤形の周囲の閉じた方形の外周を提供するが、スライダがテーブル表面72上で必要とされる場合に剤形の正確な位置決めに有用であることを条件として、他の形態を使用することもできる。
図2のボックススライダは、各側面に沿って約30mm~60mmの横方向寸法を有する。
【0113】
特にボックススライダ130は、剤形源42からボックススライダ130内に剤形を受け取るために投下ゾーン120に移動するようにコントローラ50によって制御することができる。ボックススライダは、その後、受け取った剤形を計量のために計量器表面112に移動させ、その後、グリッパ90によって検査ロケーション22に移送される前にアライメント及び/又は向きのために回転ステージ表面75に移動させるように制御される。
【0114】
剤形を回転ステージ表面73に置いておくために、ボックススライダ130には、ボックススライドを十分に持ち上げて剤形を取り除くことができるように、テーブル表面72に垂直な並進軸が通常は鉛直方向に設けられる。加えて、ボックススライダ130には、通常、実行される操作プロセスによって必要とされる場合があるときにテーブル表面72上の様々なロケーションに剤形を移動させることができるように、2つの並進軸が設けられる。
【0115】
好都合には、ボックススライダは、グリッパ90と同じ多軸ステージング100に取り付けることができる。構造的な効率性及び使用のために、剤形ハンドラ60は、その場合に、投下ゾーン120、計量器表面112、及び回転ステージ表面75が、一般的には、
図2に全体的に示されている剤形ハンドラ60のプロセス軸125に沿ってその順序で配置されるように構成することができ、ラマン分析ステーションの検査ロケーション22も、その場合に、一般的には、回転ステージ表面75から同じプロセス軸125に沿ってより遠くに配置することができる。グリッパ90の位置を移動させるのに使用される多軸ステージング100は、投下ゾーン120、計量器110及び回転ステージ74の間のプロセス軸125に沿ったボックススライダ130の必要とされる移動も提供することができる。
【0116】
プロセス軸125は、例えば、プロセス軸125に沿って又はこれに平行に延在するレール102又は同様の構造物に沿った多軸ステージングの移動による多軸ステージング100の運動の主軸に対応することができる。実際には、3つの個別の運動の軸を、多軸ステージングによってグリッパ及びボックススライダの双方に共通に提供することができる。
図2の構成では、これらの軸は、テーブル表面にわたる垂直な深さ方向及び鉛直にプロセス軸に沿った移動を提供する。ただし、いくつかの構成では、グリッパ90及びボックススライダ130のそれぞれに対してこれらの軸のうちの1つ以上を個別に設けることができ、例えば、グリッパ及びボックススライダのそれぞれには、個別の垂直制御軸又は個別の深さ制御軸が設けられる。
【0117】
図4a、
図4b及び
図5は、ラマン分析ステーション20又は他のスペクトル分析装置若しくは光学的分析装置の検査ロケーション22においてアライメント及び/又は向き等の一貫した回転状態で剤形を提示するために、例えばコントローラ50によって上述した装置を自動的に動作させることができるいくつかの方法を、フロー図を使用して示している。プロセスステップの特定のシーケンスが図示及び論述されるが、これらのステップのサブセットを、他のステップの全てを伴わずに使用することができ、ステップは、必ずしも説明及び図示する順序で使用される必要はない。
【0118】
図4aのステップ410において、剤形が回転ステージ74上で受け取られる。剤形は、例えば上記で論述したように、及び、
図5に関して以下で論述するように、回転ステージ上において様々な方法で受け取ることができる。
【0119】
ステップ415において、通常は垂直又は実質的に垂直な軸である回転ステージの回転軸77の回りに剤形をその軸の回りの好ましいアライメント又は向きに回転させるために、回転ステージが回転される。上記で論述したように、好ましい剤形のアライメントを達成するのに必要とされる回転量は、回転ステージ74の一部又は全てを含む視野を有するカメラを備えるマシンビジョンシステム80を使用して求めることができる。好ましい剤形のアライメントは、マシンビジョンシステムを使用して識別することができる剤形の既定の剤形軸13を、通常はマシンビジョンシステム等の装置の動かない部分に対して固定された目標軸と位置合わせすることによって達成することができる。
【0120】
剤形は、その後、ステップ418において、好ましいアライメントにおいてグリッパ90を使用して把持され、回転ステージからピックアップされる。剤形は、その後、ステップ425において、ステップ430における光学的分析のために、グリッパ90によって光学的分析ステーションの検査ロケーション22に搬送される。
図4aにステップ420として示される任意選択のステップも、回転ステージを使用した好ましいアライメントへの剤形の回転の後、又はいくつかの場合には回転の前に実行してもよい。この追加のステップは、グリッパ90を使用して剤形をグリッパ回転軸92の回りで好ましい向きに回転させることを含む。グリッパ回転軸92は、通常、回転ステージ軸77に対して傾斜しているか又は実質的に垂直であり、そのため、通常、剤形が支持される回転ステージの表面72に対して水平若しくは実質的に水平、及び/又は平行とすることができる。
【0121】
好ましい向きへの回転は、例えば、
図4aに3つの代替の時点(a)、(b)及び(c)によって例示されるように、剤形がまだ回転ステージ上若しくはその真上上方にある間、及び/又は検査ロケーションへの移動中に、及び/又は検査ロケーションに到着するとすぐに、部分的に又は全てにわたって行うことができる。
【0122】
このように、好ましい剤形のアライメント及び/又は向きは、グリッパの制御された移動に起因したいずれの既知のその後の回転にもかかわらず、検査ロケーションにおける光学的インタロゲーションが完了するまで保存される。その後、剤形は、グリッパの把持から解放することができる。
【0123】
剤形の光学的インタロゲーションは、ステップ430において行われ、特に、これは、ラマンスペクトル特徴部を求めるラマンインタロゲーション、又は本明細書の他の箇所で論述するような他のタイプのスペクトル分析若しくは光学的分析とすることができる。光学的インタロゲーションは、特に透過構成において行うことができ、例えば、レーザプローブ光を剤形の第1の表面領域に誘導し、剤形内で散乱されたレーザプローブ光の成分を第1の表面領域から剤形の反対側にある剤形の第2の表面領域から集光し、集光された光においてラマンスペクトル特徴部又は他のスペクトル特徴部を検出することによって行うことができる。
【0124】
上記で既述したように、剤形は、光学的検査の期間中に、検査ロケーション22において特定の固定位置及び回転状態(向き/アライメント)でグリッパを使用して提示することもできるし、複数の離散的な位置の間で移動/回転させ、各離散的な位置において光学的検査を行うこともできるし、及び/又は走査動作のように移動させて(並進移動及び回転のいずれか又は双方を含む)、その移動の過程で光学的検査を行うこともできる。
【0125】
最後に、剤形の特性が、ステップ435において求められる。そのような特性は、特定の化学種又は化学形態の存在又は割合等の剤形の化学的特性とすることができ、そのような特性は、検出されたラマンスペクトル特徴部又は他のスペクトル特徴部から求めることができる。その後、装置のオペレータの注意喚起用の様々な通知及び/又はアラートを自動的に生成することができ、例えば、1つ以上の剤形の特性が好ましい範囲の外部にあることを示すアラートがある。
【0126】
透過配置を使用することと、ラマンスペクトル分析を使用することとによって、剤形の表面領域からだけではなく、内部のバルクの様々な有用な化学特性及び構成上の特性を求めることができる。しかしながら、そのような透過分析は、検査ロケーション22における剤形のアライメント/向き等の精密な回転状態の影響を受ける可能性があり、回転ステージ及び/又はグリッパを使用して適したアライメント/向きを行うことと、(その後の既知の回転を伴うにもかかわらず)グリッパを使用してその回転状態を保存することとによって、ラマンスペクトル分析のより一貫した結果を達成することができる。
【0127】
グリッパは、上述した
図4aに示すものに加えて、他の操作及び動作に使用してもよい。例えば、剤形が好ましいアライメントに回転される前又は回転された後のいずれかで、剤形の好ましい面が上方及びカメラ82の方を向くように、剤形を「裏返す(flip)」ことが必要とされる場合がある。そのような操作は、例えば、適したマーキングが剤形の一方の主面にしか見られない場合に、マシンビジョンシステム80が、剤形の正しいアライメントをより十分に求めるか又は制御することを可能にすることができ、その場合に、そのような裏返し操作は、回転ステージ動作の前にグリッパによって着手することができる。以下で論述するような別の例では、グリッパは、剤形の厚さを求めることを助けるために、剤形のエッジをマシンビジョンシステムに提示する際に使用することができる。
【0128】
マシンビジョンシステム80は、剤形が回転ステージ上に位置し、及び/又はグリッパによって保持されているときに、剤形の様々な寸法測定値を取得するのに使用することができる。通常、マシンビジョンシステムは、
図2に示すように、回転ステージ上への下方視界を有するカメラ82を備えることができる。錠剤及びいくつかの他の形態では一般的であるように剤形が2つの対向する主面を有する場合に、そのような主面が回転ステージに接して剤形が横たわっているときは、下方視界カメラを使用して平面視寸法を容易に取得することができるが、マシンビジョンシステム80は、2つの対向する主面の間の厚さを求めることが望まれる場合もあり、この寸法は、そのような視界ではカメラから見えない。そのような剤形は、通常、2つの対向する円形面を備え、これらの面の間に延在するほぼ一定幅の側壁を有する錠剤又は同様のものとすることができるが、他の面形状及びジオメトリも使用してもよい。
【0129】
このために、グリッパ90は、剤形の厚さを例えばマシンビジョンプロセッサ84によって求めることができるように、コントローラの制御下で、マシンビジョンシステム80を使用して、剤形のエッジ面又は側壁をマシンビジョンシステム80のカメラ82に提示するのに使用することもできる。これは、例えば、剤形をグリッパによってピックアップするのに剤形の特定の回転状態が必要であるか否かに応じて、
図4aにおけるステップ415の前又は後に行うことができる。
【0130】
いくつかの例では、グリッパは、剤形を持ち上げて、例えば90度回転させてから剤形をエッジを下にして回転ステージ上に戻すのに使用することができる。グリッパは、その後、剤形を解放し、剤形のより明瞭な視界をマシンビジョンシステムに提供するために、邪魔にならない場所に移動することもできる。他の例では、グリッパは、剤形の把持を維持しながら、剤形をエッジを下にして回転ステージ上に置くことなく、剤形を例えば90度回転させて、エッジ図をマシンビジョンシステムに提示することができる。グリッパ90のいくつかの設計について、剤形エッジの十分明瞭な視界が引き続き取得されることを確保するために、特定の回転が必要とされる場合がある。
【0131】
いずれの場合にも、マシンビジョンシステムは、その後、剤形の厚さを求めるために、エッジ図から剤形の適した寸法データを取得して出力するのに使用される。
【0132】
剤形が、
図4aの回転ステップ415の後に厚さを求めるために、エッジを下にして回転ステージ上に置かれる場合には、グリッパを使用して剤形をこの位置から再びピックアップし、
図4aのステップ425、430及び435に進み、任意選択的にステップ420にも進むことが可能であり得る。しかしながら、剤形をエッジを下にして置くプロセスは、代わりに、グリッパを使用して直接ハンドリングすることによって又は剤形を或る方法でひっくり返すことによって、主面がステージ上に横たわる状態に剤形を回転ステージ上で戻すことを必要とする場合があり、そのため、エッジの厚さを求めた後にステップ415に基づくステージの回転を繰り返すことが必要となり得る。
【0133】
上記寸法測定を実施することができるいくつかの方法が
図4bに示されている。ステップ450において、エッジ面によって隔てられた対向する主面を有する剤形が、マシンビジョンシステムカメラ82の真下で受け取られる。これは、
図4aの場合には、剤形が回転ステージ上で受け取られるステップ410とすることができるが、剤形は、他の或る表面上又はハンドリングテーブル70の一部の上で受け取られてもよい。ステップ455において、マシンビジョンシステムカメラ82を使用して、カメラの真下の平面視における剤形の主面の寸法が検出される。そのような寸法は、円形の剤形の直径、楕円形又は方形の錠剤の長さ寸法及び幅寸法、平面視表面積等とすることができる。剤形が
図4a等の方式によっても操作されている場合には、ステップ455は、剤形を好ましいアライメントに回転させるステップ415の前又は後に行うことができる。
【0134】
ステップ460において、グリッパ90を使用して、剤形が把持され、剤形が回転されて、エッジ面がマシンビジョンシステムカメラ82に提示される。例えば、カメラに最も近いエッジ面の部分を実質的に水平になるように回転させることができるが、十分な測定精度を与える、カメラに対する他の提示角度も使用することができる。グリッパは、その後、剤形をエッジを下にして下ろし、マシンビジョンシステムに剤形の明瞭な視界を与えるために離れることもできるし、剤形の握持を維持していても十分明瞭な視界が依然として提供される場合には、剤形の握持を維持することもできる。ステップ465において、マシンビジョンシステムを使用して、剤形の厚さが、エッジ面の可視幅を使用して検出される。剤形が
図4a等の方式によっても操作されている場合には、ステップ460の後に、回転ステップ415を実行する前に主面を下にして配置するように剤形を再位置決めすることを続けることもできるし、必要な場合には回転ステップ415を再度実行することを続けることもでき、或いは、ステップ465の後に、必ずしも剤形をグリッパによって再び回転ステージ上に置くことを必要とすることなく、剤形が検査ロケーションに搬送されるステップ425(及び任意選択的にステップ420)を続けることもできる。
【0135】
図5は、
図4a等の方法を実行することができるように剤形を回転ステージ74に提供するために、例えばコントローラ50の制御下で自動的に実施することができるステップを示している。
【0136】
ステップ510において、剤形が、回転ステージ74も備えるハンドリングテーブル70の投下ゾーン120において受け取られる。ハンドリングテーブル70は、計量器110も備えることができ、回転ステージ及び計量器は、剤形をこれらのステーションの間でハンドリングテーブルにわたって押動又は摺動させることができるようにハンドリングテーブルと同じ高さにすることもできるし、その一部を形成することもできる。投下ゾーンは、計量器が設けられる場合には、ハンドリングテーブル上への剤形の投下が計量器のその後の性能に影響を及ぼさないように、ハンドリングテーブル70上で計量器に対して分離して設けられる。剤形が計量器に直接投下されると、計量器は、平衡状態に戻るまでに或る時間を要する可能性があり、それによって、ハンドリング及び光学的分析プロセスが低速化する。
【0137】
剤形は、本明細書の他の箇所で説明したような剤形源42によって投下ゾーン120に送達することができ、剤形源42は、それ自体が1つ以上のシンギュレータホッパ43を備えることもできるし、1つ以上のシンギュレータホッパ43を受け入れるように構成することもでき、各シンギュレータホッパは、同じタイプの同じ方法で検査される数十個又は数百個の剤形のバッチを保持することが可能であり、一時に1つのそのような剤形を投下ゾーンに送達することが可能である。
【0138】
ステップ515において、投下ゾーンにおいて受け取られた剤形は、計量器110が設けられる場合には計量器110上へハンドリングテーブルを横切って摺動又は押動させることによって移動される。剤形は、その後、ステップ520において計量され、その後、ステップ525において、回転ステージ上へハンドリングテーブルを横切って摺動又は押動させることによって移動される。この時点で、
図4aのステップを次に実行することができる。
【0139】
ハンドリングテーブルを横切る剤形の摺動又は押動は、スライダ要素、例えば
図2に示すボックススライダ130によって行うことができる。全ての水平方向において剤形を取り囲むそのようなボックススライダは、剤形が跳ね返って予想ロケーションから離れる危険性又はハンドリングテーブルから完全に離れる危険性を伴わずに、ステップ510において剤形を剤形源42によって投下することを可能にする。ボックススライダは、その後、コントローラ50の制御下で剤形を任意の水平方向に任意の所望の位置、例えば計量器の中心又は回転ステージの中心まで正確に移動させることも可能にする。
【0140】
記載されている装置は、同じ剤形又は同じタイプの一連の剤形に対して自動化された一連の検査を行うのに使用することもできる。そのような一連の検査は、例えば、検査ロケーション22における剤形の提示の精度及び再現性、したがって、そのようなタイプの剤形の結果として得られる光学的分析及び求められた特性の精度及び再現性等の装置の動作特性を求めるのに使用することができる。このために、記載されている装置は、例えば、
図6に略述されるような方法を実行するのに使用することができる。
【0141】
図6において、剤形が、ステップ610において、ハンドリングテーブル70、例えばハンドリングテーブルの投下ゾーン120において受け取られる。剤形は、その後、ステップ620において、例えば上述したようなボックススライダ130、計量器110、回転ステージ74、グリッパ90、及び多軸ステージング100のうちの1つ以上の使用を含む剤形ハンドラ装置を使用して操作される。剤形は、その後、ステップ630において、ラマン分析ステーション20を使用したラマンスペクトル特徴部の検出による光学的インタロゲーションのために、グリッパ90によって1つ以上の好ましい回転状態(必要に応じて向き及びアライメントの組み合わせ)及び/又は並進位置で検査ロケーション22において提示される。上記で論述したように、そのような回転状態及び/又は位置は、そのような回転状態及び位置を1つだけ含むか、又は光学的分析がそのような各構成において行われ及び/又は走査動作の形態でそのような移動の間に連続的に行われる複数のそのような構成間の移動を含むことができる。
【0142】
判定ポイント640において、一連の検査が完了した場合には、ステップ650において、一連の光学的インタロゲーションから受信されたデータを分析し、ハンドリング、提示及び分析プロセスの1つ以上のパラメータを求めることができるが、完了していない場合には、ステップ660において、例えばグリッパ90を使用して剤形を投下ゾーン120に戻すことで、剤形をハンドリングテーブル70に戻すことができ、その後に、操作及びラマン分析ステーション20への提示のステップが、同じ剤形を使用して繰り返される。
【0143】
毎回同じ剤形をハンドリングし、ラマン分析ステーション20に提示するのではなく、提示された剤形を廃棄し、同じタイプの新たな剤形を
図6の次の検査シーケンスに使用することができる。毎回同じ向き、アライメント及び位置で剤形を提示するのではなく、剤形ハンドラは、その代わりに、異なるそのような構成の範囲で剤形を提示することができる。
【0144】
ハンドリング、提示、及び分析プロセスのパラメータを求めるステップ650は、様々な形態を取ることができる。剤形が毎回同一の回転状態、アライメント及び位置を使用すると仮定してラマン分析ステーション20において提示される場合には、パラメータは、これらの同一の構成であるとの仮定の下での医薬品有効成分の絶対量等の剤形の特性の変動の尺度を表す1つ以上のパラメータを含むことができる。
【0145】
光学的インタロゲーション時の剤形の回転状態及び位置等の態様が、そのような態様の範囲を検査するために提示ごとに変更される場合には、ステップ650において求められたパラメータは、そのような態様の調整が光学的分析の結果にどのような影響を及ぼすのかを表すことができる。そのようなパラメータ又は結果は、その後、検査ロケーション22において同じ又は同様のタイプの剤形を提示するための改良又は最適化された方式を設計するのに使用することができる。
【0146】
したがって、記載されている装置は、変動の影響を検査し、剤形のハンドリング及び提示の変動並びに光学的測定における変動を含む様々な異なる要因に起因した光学的測定の結果の精度を求めるのに使用することができる。記載されている装置は、改良若しくは最適化された方式又は剤形のハンドリング及び提示を確立するのに使用することもできる。
【0147】
論述したように医薬剤形のハンドリング及び分析を行うように構成される上記に記載の装置10は、通常、単一の剤形のラマンスペクトルインタロゲーションを約数秒~数十秒で行うことを可能とすることができ、この期間は、ラマンスペクトル特徴部の検出に必要とされる信号対雑音比及び求められる化学的特性の結果の精度と、各剤形のレーザビーム照射のどの電力レベルが許容可能であるかと、使用される光学素子及び光学検出器のタイプ等の他の要因とに依存する。その結果、剤形ハンドラは、同じ速度で又は光学的分析器を最大限に利用するためにより高速に一連の剤形をハンドリングするように構成されるべきである。例えば、それぞれが100個の剤形を搬送する10個のシンギュレータホッパを剤形源に搭載することができる場合に、上記で論述した本発明の態様から得られる光学的分析の改善された精度を用いて、約1000個の剤形を数時間内に完全自動で容易に分析することができる。
【0148】
記載の装置及び方法のいくつかの態様は、1つ以上の適したコンピュータシステム上で実行されるコンピュータプログラムコードを使用して実施することができる。そのようなコンピュータシステムは、通常、そのようなコンピュータプログラムコードを実行する1つ以上のマイクロプロセッサと、そのようなプログラム及び関連データを記憶するメモリと、例えば有線データ接続又は無線データ接続、不揮発性記憶装置、視覚ディスプレイ、並びにキーボード及びマウス等の入力デバイスを含む、適した入出力設備とを備える。
【0149】
コントローラ50は、例えば、マシンビジョンシステム、計量器、分析器、及び他のソースから受信されるデータに応答した剤形源、グリッパ、回転ステージ、多軸ステージング及び他の構成要素の制御によって、説明した動作を実行するようにプログラミングされる1つ以上の適したコンピュータシステムを含むことができる。マシンビジョンシステムの画像及びデータの処理態様の一部又は全ては、別個のコンピュータシステムにおいて実施することもできるし、コントローラ50の必要とされるデータ処理を提供するのに使用されるものと同じ単数又は複数のコンピュータシステム内で実施することもできる。いくつかの実施形態において、マシンビジョンシステムは、テキサス州オースティンのNational Instruments社によって提供されているLabVIEWソフトウェア(ラボラトリ仮想計測器エンジニアリングワークベンチ:Laboratory Virtual Instrument Engineering Workbench)を利用して、特定のタイプの剤形の識別等の態様並びに剤形の位置及び向きの様々な態様を実施することができる。
【0150】
分析器は、検出器32からスペクトルデータ信号を受信し、そのスペクトルデータ信号を様々な方法で分析及び処理して例えば雑音を低減し、所望の形態に変換し、特定のスペクトル特徴部を求めるか又は測定し、検出されたスペクトル特徴部を検査対象剤形の既知の又は予想される成分又は特性の特徴部と照合する、適したソフトウェアを使用する1つ以上のコンピュータシステムを使用して同様に実施することができる。そのような比較に使用することができるスペクトル特徴部のライブラリは、例えばS.T. Japan社又はSigma-Aldrich社から入手可能である。
【0151】
検査ロケーションにおける提示中に、剤形のより代表的な光学的測定値を得るために、剤形のアライメント(並進位置及び/又は回転向きの変化)の範囲にわたって複数の光学的測定を行いながら剤形12を移動させるために、グリッパ90をどのように使用することができるのかを上記で論述してきた。このために、
図7は、例えば回転ステージ74又はハンドリングテーブル表面72の他の部分にいる間にグリッパによって把持され、ラマン分析ステーション20内に設けられた検査ロケーション22にグリッパ90によって搬送された剤形12を示している。グリッパ90によるこれらの動作及び運動並びに他の動作及び運動は、
図2に描かれた多軸ステージング等の適した運動を提供する要素と組み合わせて
図1及び
図2に描かれたコントローラ50等のコントローラによって行うことができる。
【0152】
より詳細には、
図7は、既に上記で説明した送達光学素子26及び集光光学素子30を示し、剤形12はこれらの2つのものの間の検査ロケーション22に配置される。送達光学素子26は、その場合に、プローブ光のビーム27を剤形の第1の表面領域710に誘導するように構成され、集光光学素子30は、第1の表面領域から第2の表面領域に剤形12を通過した、散乱又はより詳細には前方散乱の後のプローブ光を剤形の第2の表面領域712から受信するように構成される。
【0153】
特に、第1の表面領域710及び第2の表面領域712は、剤形が前方散乱構成又は透過構成を使用して検査されるように、剤形12の反対側又は反対面上にあるもの、例えば
図1に既に示したようなそれぞれの第1の表面40及び第2の表面41上にあるものとすることができる。ただし、上記で論述した他の構成等の他の構成を使用してもよい。
【0154】
図1に既に示し、上記で論述した検出器32は、集光されたプローブ光を集光光学素子30から受信し、集光されたプローブ光においてラマンスペクトル特徴部、例えば複数のラマンスペクトルピークの大きさを表すラマンスペクトル特徴部、又はより一般的には波数又は波長の関数としての検出された輝度又は電力を表すフルラマンスペクトルを検出するように構成される。このデータは、その後、同じく上記で論述した分析器34に渡される。分析器は、ラマンスペクトル特徴部を使用して、医薬品有効成分等の特定の対象構成物質の相対濃度等の検査対象剤形の1つ以上の特性を求めるように構成される。
【0155】
いくつかの実施形態において、ラマンスペクトル特徴部が測定されている間、特定の剤形12が検査ロケーションに位置決めされ、送達光学素子と集光光学素子との間で単一の構成又はアライメントで静止して保持され、その単一のアライメントのラマンスペクトル特徴部が、その後、剤形の1つ以上の特性を求めるのに使用される。しかしながら、本発明者らは、ラマンスペクトル特徴部が複数の異なるそのようなアライメント又は構成について検出されるように、検査を受けている間、検査ロケーション内で剤形を移動させることにいくつかの利点が存在し得ることに気付いた。ラマンスペクトル特徴部のそのような測定は、剤形の1つ以上の移動中に又は2つのものを組み合わせて、複数の離散的で通常は静止したアライメントのそれぞれにおいて行うことができる。通常、そのような全てのアライメントは、剤形を検査ロケーションから除去することなく、ラマンスペクトル特徴部を取得するのに使用することができるが、いくつかの実施形態において、いくつかのアライメント又はアライメントのいくつかの群の間において検査ロケーションから剤形を除去することが望ましいか又は適切である場合がある。1つのそのような状況は、1つ以上のアライメントの使用後に、1つ以上の更なるアライメントを使用するために、グリッパを回転させるために剤形をテーブル表面72等の表面に戻し、回転された位置にあるグリッパを用いて剤形を再びピックアップし、グリッパを使用して剤形を反転させ、剤形を反転された(上下反対の)状態で検査ロケーションにおいて提示することとすることができる。
【0156】
検査ロケーション22における剤形の異なるアライメント又は構成は、離散的なそのようなアライメントであるか、又はそのようなアライメントの範囲にわたる連続的な移動であるかを問わず、特に剤形の1つ以上の選ばれた軸の回りの回転、1つ以上の方向における並進、又は両者の組み合わせによって提供することができる。検査ロケーションにおける剤形のアライメントのそのような変化は、第1の表面領域710及び第2の表面領域712の一方又は双方の剤形上の位置の対応する変化をもたらし、したがって、第1の表面領域と第2の表面領域との間のプローブ光の散乱経路の変化をもたらし、したがって、各アライメントにおいて検査される剤形の代表的な体積の変化ももたらす。
【0157】
送達光学素子と集光光学素子との間で複数のアライメントにおいて剤形を提示するようにグリッパを移動させ、アライメントごとに、上記第2の表面からプローブ光を集光することは、したがって、異なる散乱配置の範囲及び検査対象の剤形の代表的な体積を可能にする。分析器は、その後、様々なアライメントからのラマンスペクトル特徴部を複数の方法で使用し、アライメントのうちのいくつか又は全ての間に検出されたラマンスペクトル特徴部を使用して剤形の1つ以上の特性を求めることができる。
【0158】
例えば、1つの動作モードでは、分析器は、各アライメント又はアライメントの複数の群若しくは範囲のそれぞれについて、検出されたラマンスペクトル特徴部を処理してそのような各アライメント、群、又は範囲の個別の剤形特性を導出し、その後、取得された剤形特性を平均するか又は組み合わせて、全体の剤形のより代表的な単一の平均剤形特性を取得することができる。
【0159】
別の動作モードでは、分析器は、代わりに、各アライメント又はアライメントの複数の群若しくは範囲のそれぞれからのラマンスペクトル特徴部を平均するか又は別の方法で互いに組み合わせて、全体の剤形のラマンスペクトル特徴部のより代表的なセットを求めることができ、この代表的なセットから、全体の剤形のより代表的な剤形特性を導出することができる。
【0160】
他の動作モードでは、例えば、剤形の2つ以上の異なる部分のそれぞれについて剤形の特性の個別の値を求めるために、複数の異なるアライメント、又はアライメントの群若しくは範囲のそれぞれについて、剤形の特性の個別の値を求めることができる。例えば、そのような動作モードは、例えば、典型的には
図3bに見られるデボス加工されたスナップ線特徴部等の錠剤の1つ以上の面における1つ以上の分割線14又は溝によって画定される医薬錠剤の2つ以上の折壊可能に分離することができる部分のそれぞれについて、個別の値を検出するのに使用することができる。
【0161】
検査ロケーションにおける剤形の複数のアライメントは、プローブ光が剤形をよけてプローブ光集光光学素子に向かうことを強力に防止する光バッフルも他の装置も必要とすることなく、剤形を検査ロケーションにおいて保持することを可能にするラマン分光法を使用するので、記載の構成を使用してより容易に達成することができる。これは、剤形の周囲におけるプローブ光の漏れがはるかに大きく懸念され、通例、或る種の光が入り込めない周囲環境の中に剤形を保持する必要があることから、アライメント(並進及び/又は回転)の範囲にわたる剤形のそのタイプの光学的検査をより困難にする赤外線吸収分光法の使用と対照的である。このために、他の箇所で論述したように、本実施形態において使用されるグリッパは、バッフルも他の特定の遮光構造物も必要とすることなく、ラマン分析ステーションの送達光学素子と集光光学素子との間において基本的に自由空間に剤形を吊り下げるように構成することができる。
【0162】
図7を再び参照すると、機械式グリッパ(対向するあご部94を通る断面によって表されている)は、第1の表面領域710が剤形12の上側表面40を横切って並進すると同時に、第2の表面領域712が剤形の下側表面41を横切って並進するように、送達光学素子と集光光学素子との間で剤形12を横方向に並進させるように制御される。剤形を2つ以上の特定のそのようなアライメントのそれぞれにおいて静止して保持し、ラマンスペクトル特徴部をそのような各離散的なアライメントについて検出することができ、及び/又はラマンスペクトル特徴部を、剤形12の連続的な移動の1つ以上のエピソードの間に検出することができる。
【0163】
描かれた横方向並進は、光学的に一貫した方法で提供することがより容易であり得る適度な直径のプローブ光ビーム27(したがって、第1の表面領域710)の使用を維持するとともに、集光の一貫性も改善することができる適度な直径の第2の表面領域を使用しながら、剤形のより大きな体積をサンプリングすることを可能にする。プローブ光の送達及び集光の一貫性を改善するために、剤形12上の固定されたプローブ光スポットサイズ及び固定された集光スポットサイズを有する光学素子を使用し、望遠鏡又は他の移動光学素子構成を回避することが好ましい場合がある。例えば、望ましい第1の表面領域710又は送達光スポットサイズは、直径が約3mm未満又は約2mm未満とすることができる。
【0164】
2つ以上の位置の間の基本的に横方向の並進が
図7に描かれているが、これらの位置は、様々な方法、例えば、剤形を横切る直線、螺旋形、等間隔のサンプリング点の2次元アレイの使用等で分散させることができる。
図7における並進は横方向として描かれているが、例えば、第2の表面領域が集光光学素子から実質的に一定距離に維持されることを確保するために、或る垂直な移動(送達光学素子/集光光学素子との間の接近/離遠)も望ましい場合がある。これは、一定の集光特性を維持するために第2の表面領域を集光光学素子から適した焦点距離に維持するために特に望ましいものとすることができる。
【0165】
図8では、グリッパが1つ以上の軸の回りに剤形12を回転させるように制御される様子が見られる。1つ以上の軸は、
図8に示すような送達光学素子及び集光光学素子の光軸に直角をなすこともできるし、他の軸とすることもできるし、他の軸を含むこともできる。
図7に関して、剤形を2つ以上の特定のそのようなアライメントのそれぞれにおいて静止して保持し、ラマンスペクトル特徴部をそのような離散的な各アライメントについて検出することができ、及び/又はラマンスペクトル特徴部を、剤形12の連続的な移動の1つ以上のエピソードの間に検出することができる。
図7では、回転角度が約30度に描かれているが、はるかに小さな角度範囲又はより大きな角度範囲にわたるアライメントの範囲を使用してもよい。いくつかの実施形態において、1つ以上のアライメントが、プローブ光が一方の方向でサンプルを通って散乱することを伴い、1つ以上のアライメントが、プローブ光が他方の方向でサンプルを通って散乱することを伴うように、アライメント間で剤形を完全に反転させるか又は上下反対にすることができる。
【0166】
1つ以上のそのような回転移動は、1つ以上の並進移動(例えば
図7に示すようなもの)と組み合わせて、複数の異なるアライメントを提供することができ、これらのアライメントのそれぞれにおいて、剤形上の第1の表面領域の位置及び剤形上の第2の表面領域の位置のうちの少なくとも一方は異なり、それによって、上記で論述したように、分析のためのサンプルを通るプローブ光の散乱の異なる光路がもたらされる。
【0167】
並進が使用される場合に、複数のアライメントを提供することに伴う剤形の並進の範囲は、通常、数mm程度、例えば少なくとも2mmとすることができる。回転が使用される場合に、複数のアライメントを提供することに伴う剤形の回転の範囲は、広く変動する場合があり、例えば少なくとも数度又は少なくとも10度である。剤形の1つ以上の完全な反転は、約180度又は約360度の回転の範囲を伴うことができる。
【0168】
図9は、
図7及び
図8と同様であるが、剤形を2つの半分の服用量等の2つの部分に分割することを容易にするために、剤形の表面を横切る分割線14又はデボス加工されたスナップ線特徴部が設けられた
図3bの剤形と同様の剤形12’’’の並進を描いている。この場合に、ラマンスペクトル特徴部が測定される1つ以上のアライメントは、一方の半分の服用量における第1の表面領域及び第2の表面領域を提供し、ラマンスペクトル特徴部が測定される1つ以上のアライメントは、他方の半分の服用量における第1の表面領域及び第2の表面領域を提供する。このように、剤形の1つ以上の特性を、各半分の服用量について個別に求めることができる。もちろん、いくつかの剤形は、3つ以上の個別の服用量に分割するように同様に構造化される場合があり、そのような各服用量に対応する1つ以上のアライメントを、そのような各服用量の1つ以上の特性を求めるのに使用することができる。
【0169】
図10は、
図1及び
図2に示される剤形ハンドラ60及びいくつかの他の態様を実施する装置の詳細な図面を斜視図で提供している。ただし、明確化及び便宜のため、
図10は、これまでの図に見られる剤形源42、コントローラ50、分析器34、及びパーソナルコンピュータ36のいずれも明示していない。
【0170】
剤形ハンドラは、60のラベルが付けられた破線のバルーン内に全体的に描かれている。破線のバルーン100内に全体的に描かれた多軸ステージングは、ハンドリングテーブル70に関して上述したハンドリングプロセスを実施するために必要に応じて、グリッパ90及びボックススライダ130の移動を提供する。ハンドリングテーブル70の水平のテーブル表面72は、剤形源(図示せず)が剤形をボックススライダ130内に投下する投下ゾーン120と、ボックススライダ130が剤形を計量のために移動させる計量器110の計量器表面112と、ボックススライダ130が計量後に剤形を移動させる回転ステージ74の回転ステージ表面75とを備える。回転ステージ74は、回転ステージモータ76によって駆動される。
【0171】
マシンビジョンシステムが、剤形を回転テーブルの回転によって好ましいアライメントに位置合わせすることができるようなハンドリングテーブル表面の平面に位置している剤形の少なくともアライメントを検出することができるように、マシンビジョンシステムは、マシンビジョンミラー83によって回転ステージ表面75の一部又は全てをカバーする視野を有するマシンビジョンカメラ82を備える。マシンビジョンシステムは、好ましくは、グリッパ90によって剤形をグリッパ回転軸92の回りで所望の回転の向きに回転させることができるように、剤形の更なる向き情報も検出する。グリッパ軸は、テーブル表面72に平行である。
図10では、グリッパの回転は、グリッパ回転モータ99によってベルト駆動を通じて駆動される。
【0172】
ラマン分析ステーションは、破線のバルーン20内に全体的に描かれ、レーザ光のプローブビーム27を生成するレーザ源24と、送達光学素子26と、集光光学素子30と、検出器32とを備える。
図10における検査ロケーション22は、ハンドリングテーブル70の上方の近くに配置される。投下ゾーン120、計量器表面112、及び回転ステージ表面75は、プロセス軸125に沿って概ね分散され、検査ロケーション22は、好都合には、同じ軸に沿って回転ステージ表面75の向こうに配置される。レーザ光のプローブビーム27は、送達光学素子26によって、ハンドリングテーブル70を通るアパーチャ73の上方にある検査ロケーション22に向けて下方に誘導される。剤形は、アパーチャ73の上方の検査ロケーションにおける光学的分析のためにグリッパ90によって保持され、ハンドリングテーブルの下に部分的に配置された集光光学素子70は、保持された剤形内で散乱されたプローブ光をアパーチャ73を通して受信し、それによって、光学的分析の透過構成が実現される。
【0173】
多軸ステージング100は、ボックススライダ130による投下ゾーン120、計量器表面112及び回転ステージ表面75への必要とされるアクセスと、グリッパ90による回転ステージ表面75及び検査ロケーション22への必要とされるアクセスとを提供するために、プロセス軸125に平行なレール102に沿って進むように構成される。グリッパ90及びボックススライダ130の垂直運動は、多軸ステージング100の共通の垂直軸機構によって提供され、プロセス軸125に直角をなすテーブル表面にわたる深さ運動は、多軸ステージングの共通の深さ軸機構によって提供される。
【0174】
本発明の特定の実施形態について図面を参照して説明してきたが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなくこれらの実施形態に様々な変更及び変形を行うことができることを認識しているであろう。
【国際調査報告】