(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-03
(54)【発明の名称】電子ビーム誘導精錬鋳造技術に基づく高純度ニッケル基高温合金の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22D 21/00 20060101AFI20220926BHJP
C22C 1/02 20060101ALI20220926BHJP
B22D 27/02 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B22D21/00 C
C22C1/02 503G
B22D27/02 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506526
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(85)【翻訳文提出日】2022-03-29
(86)【国際出願番号】 CN2020095726
(87)【国際公開番号】W WO2021017661
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】201910706116.X
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513324321
【氏名又は名称】大連理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】譚 毅
(72)【発明者】
【氏名】庄 辛鵬
(72)【発明者】
【氏名】趙 龍海
(72)【発明者】
【氏名】遊 小剛
(72)【発明者】
【氏名】李 鵬廷
(72)【発明者】
【氏名】王 軼農
(57)【要約】
本発明は、電子ビーム誘導精錬鋳造技術に基づく高純度ニッケル基高温合金の製造方法を開示し、電子銃の予熱が完了した後、第1水冷銅坩堝内の小円柱に対して電子ビームによる溶解を行い、電子ビームをインゴットの一側の縁部に収束する工程と、インゴットがすべて凝固した後再び電子銃をオンにし、インゴットにおける最終ビーム収束領域に対向する一側からインゴットのにおける最終ビーム収束領域に向けて、電子ビームスポットが走査した位置の合金がすべて溶解されるように電子ビームスポットでインゴット表面を均一且つ緩慢に走査し、インゴットにおける最終ビーム収束領域の近傍まで走査したら走査を停止する工程と、溶融合金を第1水冷銅坩堝から第2水冷銅坩堝に鋳造する工程と、電子ビーム溶解炉が冷却した後、精錬されたニッケル基高温合金を取り出す工程と、を含む。本発明は、電子ビームによりニッケル基超合金の精錬を行うことに基づき、高純度合金溶融体と不純物の有効な分離を可能とし、電子ビーム誘導精錬と鋳造を組み合わせ、ニッケル基高温合金インゴットの製造周期を短縮し、インゴットの純度と冶金品質を向上させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状のニッケル基高温合金を小円柱になるように切断してクリーンアップする工程S1と、
電子ビーム溶解炉の炉体、第1水冷銅坩堝の表面、及び、第2水冷銅坩堝の表面をクリーンアップする工程S2と、
クリーンアップ済の小円柱を第1水冷銅坩堝の底部の中央に配置し、電子ビーム溶解炉の炉体を再びクリーンアップした後、電子ビーム溶解炉の炉ドアを閉じる工程S3と、
電子ビーム溶解炉に対して真空操作を行い、真空基準に達した後、電子銃を予熱する工程S4と、
電子銃の予熱が完了した後、第1水冷銅坩堝内の小円柱に対して電子ビームによる溶解を行い、インゴットの一側の縁部に収束する工程S5と、
インゴットがすべて凝固した後再び電子銃をオンにし、インゴットにおける最終ビーム収束領域に対向する一側からインゴットにおける最終ビーム収束領域に向けて、電子ビームスポットが走査した位置の合金がすべて溶解されるように電子ビームスポットでインゴット表面を均一且つ緩慢に走査し、インゴットにおける最終ビーム収束領域の近傍まで走査したら走査を停止する工程S6と、
工程S6で得られた溶融合金を第1水冷銅坩堝から第2水冷銅坩堝に鋳造する工程S7と、
電子ビーム溶解炉が冷却した後、精錬されたニッケル基高温合金を取り出す工程S8と、を含む、
ことを特徴とする電子ビーム誘導精錬鋳造技術に基づく高純度ニッケル基高温合金の製造方法。
【請求項2】
前記工程S1において、前記クリーンアップとは、研磨機で小円柱の表面をきれいに研磨し、研磨後の小円柱をそれぞれ脱イオン水とアルコールで洗浄してから超音波洗浄機を用いてきれいに洗浄し、ドライヤーで小円柱を乾かすことである、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム誘導精錬鋳造技術に基づく高純度ニッケル基高温合金の製造方法。
【請求項3】
前記工程S2及び前記工程S3において、前記電子ビーム溶解炉の炉体を、ダスト除去処理によりクリーンアップする、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム誘導精錬鋳造技術に基づく高純度ニッケル基高温合金の製造方法。
【請求項4】
前記工程S2において、2000#サンドペーパーを用いて前記第1水冷銅坩堝の表面及び前記第2水冷銅坩堝の表面を滑らかに研磨した後、アルコールに浸漬した綿布で拭き取ってクリーンアップする、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム誘導精錬鋳造技術に基づく高純度ニッケル基高温合金の製造方法。
【請求項5】
前記工程S4において、前記真空基準は、電子ビーム溶解炉の炉体の真空度が5×10
-2Pa以下で、電子銃室の真空度が5×10
-3Pa以下であり、
電子銃をオンにし、ビーム電流が120mAになるようにゆっくり調整し、12min予熱することにより電子銃を予熱する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム誘導精錬鋳造技術に基づく高純度ニッケル基高温合金の製造方法。
【請求項6】
前記工程S5において、電子銃の予熱が完了した後、ビーム電流を0mAに下げ、高圧をオンにし、電圧が30kVに達した後1min安定させ、2min以内にビーム電流を400mAにまで緩慢に上げ、電子ビームスポット半径を10×10とし、溶解出力を変えずに、電子ビームスポットの走査経路を調整することで第1水冷銅坩堝内の小円柱を徐々に溶解させ、
10min精錬を行った後、5min以内にビーム電流が400mAから0mAに、電子ビームスポット半径が10×10から0×0になるように緩やかなビーム減少によってビーム電流を徐々に低下させながら電子ビームスポットの半径を徐々に縮小させて、インゴットの一側の縁部に収束する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム誘導精錬鋳造技術に基づく高純度ニッケル基高温合金の製造方法。
【請求項7】
前記工程S6において、電子銃をオンにした後、ビーム電流を400mAにまで上げ、電子ビームスポットの半径は5×5とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム誘導精錬鋳造技術に基づく高純度ニッケル基高温合金の製造方法。
【請求項8】
前記工程S6において、インゴットにおける最終ビーム収束領域の近傍まで走査したら走査を停止するとは、インゴットにおける最終ビーム収束領域から1cm離れたところまで走査したら走査を停止することである、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム誘導精錬鋳造技術に基づく高純度ニッケル基高温合金の製造方法。
【請求項9】
前記工程S8において、電子ビーム溶解炉を40min冷却した後、電子ビーム溶解炉の炉体にアルゴンガスを通入して抽出し、その後、再びアルゴンガスを電子ビーム溶解炉の炉体に通入して抽出することで、電子ビーム溶解炉の炉体が完全に冷却されるまで電子ビーム溶解炉の炉体に対する冷却を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム誘導精錬鋳造技術に基づく高純度ニッケル基高温合金の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合金の製造方法に関し、特に電子ビーム誘導精錬鋳造技術に基づく高純度ニッケル基高温合金の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル基高温合金は、良好な高温強度、高温クレープ性能、優れた抗酸化腐食、高温疲労性能、及び、良好の長期的な組織安定性を有するため、航空、宇宙、エネルギー、化学工業などの工業分野での使用がますます重要になっている。
【0003】
現在のニッケル基高温合金の伝統的な溶解手段は、真空誘導溶解とアーク再溶解、真空誘導溶解とエレクトロスラグ再溶解などの二連プロセス、真空誘導溶融とエレクトロスラグ再溶解とアーク再溶解、真空誘導溶融と真空アーク再溶解とエレクトロスラグ再溶解などの三連プロセス、プラズマ再溶解、粉末冶金、電子ビーム快速成形、レーザー溶着成形などの技術がある。多連のプロセス、粉末冶金プロセス、電子ビーム快速成形及びレーザー溶着プロセスは、合金の冶金品質を向上させ、インゴットの偏析を低減することができるが、エネルギー消費が大きく、合金制造コストを増加させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のような技術的問題に鑑みてなされたものであって、電子ビーム誘導精錬鋳造技術に基づく高純度ニッケル基高温合金の製造方法を提供する。電子ビーム精錬プロセスは、高エネルギーの電子ビームを材料の表面に衝突させて材料を溶解する溶解手段であり、表面加熱、エネルギー密度が高いなどの特徴がある。また、溶解を行う時、水冷銅坩堝を使用するので、合金への坩堝の汚染を防止することができる。この技術は、高融点の耐熱金属及びその合金、ソーラーグレードポリシリコン、チタン及びチタン合金の溶解及び精製に広く用いられている。電子ビームを利用して精錬を行う時、溶解出力、電子ビームスポットの大きさ、電子ビーム走査経路などのパラメータを調整することで、合金溶融体の表面が高い溶融温度を保つようし、高温高真空環境下で、合金中の不純物元素を効果的に除去することができる。金属溶融体の底部は水冷銅坩堝に接触しており、高い冷却速度は合金の偏析を低下させることができる。溶融末期に、電子ビームスポットの大きさ及び溶融出力を低減することによって、溶融体中の不純物を合金の表面に濃縮させることができ、溶融体を凝固冷却した後、研磨によりインゴットの表面層を除去することにより不純物を除去する目的が実現できる。本発明は、電子ビームによる溶融末期に、不純物を合金の縁部における最終ビーム収束区に濃縮させ、その後、不純物がない純粋溶体を熔解して水冷銅坩堝に鋳造することにより、高純度ニッケル基高温合金を制造する目的を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の技術的手段は以下の通りである。
本発明の一態様である電子ビーム誘導精錬鋳造技術に基づく高純度ニッケル基高温合金の製造方法は、以下の工程を備える。
棒状のニッケル基高温合金を小円柱になるように切断してクリーンアップする工程S1と、
電子ビーム溶解炉の炉体、第1水冷銅坩堝の表面、及び第2水冷銅坩堝の表面をクリーンアップする工程S2と、
クリーンアップ済の小円柱を第1水冷銅坩堝の底部の中央に配置し、電子ビーム溶解炉の炉体を再びクリーンアップした後、電子ビーム溶解炉の炉ドアを閉じる工程S3と、
電子ビーム溶解炉に対して真空操作を行い、真空基準に達した後、電子銃を予熱する工程S4と、
電子銃の予熱が完了した後、第1水冷銅坩堝内の小円柱に対して電子ビームによる溶解を行い、インゴットの一側の縁部に収束させる工程S5と、
インゴットがすべて凝固した後再び電子銃をオンにし、インゴットにおける最終ビーム収束領域に対向する一側からインゴットにおける最終ビーム収束領域に向けて、電子ビームスポットが走査した位置の合金がすべて溶解されるように電子ビームスポットでインゴット表面を均一且つ緩慢に走査し、インゴットにおける最終ビーム収束領域の近傍まで走査したら走査を停止する工程S6と、
工程S6で得られた溶融合金を第1水冷銅坩堝から第2水冷銅坩堝に鋳造し、最終ビーム収束領域に大量の不純物を含む凝固合金が依然として第1水冷銅坩堝に残されるので、高純度の溶融体と不純物との有効の分離が可能である、工程S7と、
電子ビーム溶解炉が冷却した後、精錬されたニッケル基高温合金を取り出す工程S8と、を含む。
【0006】
さらに、工程S1において、クリーンアップとは、研磨機で小円柱の表面をきれいに研磨して表面の汚れ及び酸化スケール除去し、研磨後の小円柱をそれぞれ脱イオン水とアルコールで洗浄してから超音波洗浄機を用いてきれいに洗浄し、ドライヤーで小円柱を乾かすことである。
【0007】
さらに、工程S2及び工程S3において、電子ビーム溶解炉の炉体を、ダスト除去処理によりクリーンアップする。
【0008】
さらに、前記工程S2において、2000#サンドペーパーを用いて前記第1水冷銅坩堝の表面及び前記第2水冷銅坩堝の表面を滑らかに研磨した後、アルコールに浸漬した綿布で拭き取ってクリーンアップすることで、水冷銅坩堝の清潔と無汚染を確保する。
【0009】
さらに、工程S4において、前記真空基準は、電子ビーム溶解炉の炉体の真空度が5×10-2Pa以下で、電子銃室の真空度が5×10-3Pa以下であり、
電子銃をオンにし、ビーム電流が120mAになるようにゆっくり調整し、12min予熱することにより電子銃を予熱する。
【0010】
さらに、工程S5において、電子銃の予熱が完了した後、ビーム電流を0mAに下げ、高圧をオンにし、電圧が30kVに達した後1min安定させ、2min以内にビーム電流を400mAにまで緩慢に上げ、電子ビームスポット半径を10×10(設備パラメータ)とし、溶解出力を変えずに、電子ビームスポットの走査経路を調整することで第1水冷銅坩堝内の小円柱を徐々に溶解させ、
10min精錬を行った後、5min以内にビーム電流が400mAから0mAに、電子ビームスポット半径が10×10から0×0になるように、緩やかなビーム減少によってビーム電流を徐々に低下させながら電子ビームスポットの半径を徐々に縮小し、インゴットの一側の縁部にビームを収束する。
【0011】
さらに、工程S6において、電子銃をオンにした後、ビーム電流を400mAにまで上げ、電子ビームスポットの半径は5×5とする。
【0012】
さらに、工程S6において、インゴットにおける最終ビーム収束領域の近傍まで走査したら走査を停止するとは、インゴットにおける最終ビーム収束領域から1cm離れたところまで走査したら走査を停止することである。
【0013】
さらに、工程S8において、電子ビーム溶解炉を40min冷却した後、電子ビーム溶解炉の炉体にアルゴンガスを通入して抽出し、その後、再びアルゴンガスを電子ビーム溶解炉の炉体に通入して抽出することで、電子ビーム溶解炉の炉体が完全に冷却されるまで電子ビーム溶解炉の炉体に対する冷却を行って電子ビーム溶解炉を冷却する。アルゴンガスを通入することでインゴットの冷却を早めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下の利点を有する。
本発明は、電子ビームによりニッケル基超合金の精錬を行うことに基づき、高純度合金溶融体と不純物の有効な分離を可能とし、電子ビーム誘導精錬と鋳造を組み合わせて、ニッケル基高温合金インゴットの製造周期を短縮し、さらにインゴットの純度と冶金品質を向上させる。合金の製品率は従来の60%から85%以上に向上した。
上記の理由により、本発明は、合金製造等の分野において広く普及することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下、本発明の実施例又は先行技術における技術的手段をより明確に説明するために、以下、実施例又は従来技術の記述に必要とされる添付の図面を簡単に紹介するが、下記の添付の図面が本発明の一部の実施例であり、当業者であれば、創造的労動を行わずに更にこれらの添付の図面によって他の添付の図面を得るのができることはいうまでもない。
【0016】
【
図1】本発明の具体的な実施形態における電子ビーム誘導精錬鋳造技術により高純度ニッケル基高温合金を製造するための装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例の目的、技術的手段及びメリットをより明らかにするために、以下、本発明の実施例における添付の図面と関連付けて、本発明の実施例における技術的解決手段をより明らか且つ完全に記述するが、記述される実施例が全部の実施例ではなく本発明の一部の実施例に過ぎないことはいうまでもない。当業者が本発明における実施例に基づいて創造的労動を行わずに得る他の実施例は全て本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【0018】
図1に示すように、電子ビーム誘導精錬鋳造技術により高純度ニッケル基高温合金を製造するための装置は、電子銃1、拡散ポンプ2、空気作動弁3、機械ポンプ4、第1水冷銅坩堝6、ルーツポンプ7、第2水冷銅坩堝8、坩堝支柱9、及び冷却水パイプ10を備え、
図1においては、さらに電子ビーム5及び合金溶融池11を備える。
【0019】
電子ビーム誘導精錬鋳造技術に基づく高純度ニッケル基高温合金の製造方法は、以下の工程を備える。
【0020】
一.原材料の前処理
(1)本実施例において、棒状ニッケル基高温合金は棒状の718合金であり、直径は20-50mmである。
(2)棒状の718合金を直径8mm、長さ100mmのΦ8mm×100mmの小円柱になるように切断し、研磨機で小円柱の表面をきれいに研磨して、表面の汚れ及び酸化スケールを除去する。
(3)研磨後の小円柱をそれぞれ脱イオン水とアルコールで洗浄し且つ超音波洗浄機を用いてきれいに洗浄し、ドライヤーで小円柱を乾かし、電子ビーム溶解に用いる。
【0021】
二.電子ビーム誘導精錬
(1)電子ビーム溶解炉の炉体に対してダスト除去処理を行い、2000#サンドペーパーを用いて第1水冷銅坩堝6の表面及び第2水冷銅坩堝8の表面を滑らかに研磨した後、アルコールに浸漬した綿布で拭き取って、水冷銅坩堝の清潔と無汚染を確保する。
(2)きれいに洗浄した小円柱を第1水冷銅坩堝6の底部の真ん中に配置し、電子ビーム溶解炉の炉体に対してダスト除去処理を再度行い、清潔であることを確認した後炉ドアを閉じる。
(3)冷却水、空気圧縮機、電子ビーム精錬設備の電源スイッチをオンにし、電子ビーム溶解炉に対して高真空操作を行って、電子ビーム溶解炉の炉体の真空度が5×10-2Pa以下、電子銃室の真空度が5×10-3Pa以下になるようにし、真空基準に達した後、電子銃1をオンにし、ビーム電流をゆっくり調整して120mAになるようにした後、12min予熱する。
(4)電子銃の予熱が完了した後、ビーム電流を0mAにまで下げ、高圧をオンにし、電圧が30kVに達した後1min安定させ、2min以内にビーム電流を400mAにまで緩慢に上げ、電子ビームスポットの半径を10×10(設備パラメータ)とし、溶解出力を変えずに、電子ビームスポットの走査経路を調整することで第1水冷銅坩堝6内の小円柱を徐々に溶解させる。
(5)10min精錬を行った後、5min以内にビーム電流が400mAから0mAに、電子ビームスポット半径が10×10から0×0になるように緩やかなビーム減少によってビーム電流を徐々に低下させながら電子ビームスポットの半径を徐々に縮小させ、且つインゴットの右側の縁部(最終ビーム収束領域)に収束する。
【0022】
三.合金鋳造
(1)インゴットがすべて凝固した後再び電子銃をオンにし、ビーム電流を400mAにまで上げ、電子ビームスポットの半径は5×5とし、インゴットの左側から右側に向けて、電子ビームスポットでインゴット表面を均一且つ緩慢に走査し、その中、電子ビームスポットが走査した位置の合金がすべて溶解することを確保し、インゴットにおける最終ビーム収束領域から1cm離れた位置まで走査したら走査を停止する。
(2)第1水冷銅坩堝6中の溶融合金を第2水冷銅坩堝8に鋳造、その中、第1水冷銅坩堝6には、最終ビーム収束領域に大量の不純物を含む凝固合金が依然として残されるので、高純度の溶融体と不純物の有効の分離が実現できる。
(3)鋳造が完了した後、第1水冷銅坩堝6を元の位置に戻し、電子銃1の高圧をオフし、ビーム電流を0mAにまで下げた後、電子銃1をオフにする。
(4)電子ビーム溶解炉を40min冷却した後、電子ビーム溶解炉の炉体にアルゴンガスを通入して抽出し、その後、再びアルゴンガスを電子ビーム溶解炉の炉体に通入して抽出することで、電子ビーム溶解炉の炉体が完全に冷却されるまで電子ビーム溶解炉の炉体に対する冷却を行い、精錬された718合金を取り出す。
【0023】
最後に以下のことを説明すべきである。以上の各実施例は本発明の技術的解決手段を説明するためのものに過ぎなく、それを限定することがなく、上記の各実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、上記の各実施例に記載の技術的解決手段に修正を施したり、その一部又は全部の技術的特徴に対して同等な取り替えを行ったりすることも可能であるのが当業者に理解されるべきであり、対応する技術的解決手段の本質はこれらの修正又は取り替えによって本発明の各実施例の技術的解決手段の範囲を逸脱することがない。
【0024】
(付記)
(付記1)
棒状のニッケル基高温合金を小円柱になるように切断してクリーンアップする工程S1と、
電子ビーム溶解炉の炉体、第1水冷銅坩堝の表面、及び、第2水冷銅坩堝の表面をクリーンアップする工程S2と、
クリーンアップ済の小円柱を第1水冷銅坩堝の底部の中央に配置し、電子ビーム溶解炉の炉体を再びクリーンアップした後、電子ビーム溶解炉の炉ドアを閉じる工程S3と、
電子ビーム溶解炉に対して真空操作を行い、真空基準に達した後、電子銃を予熱する工程S4と、
電子銃の予熱が完了した後、第1水冷銅坩堝内の小円柱に対して電子ビームによる溶解を行い、インゴットの一側の縁部に収束する工程S5と、
インゴットがすべて凝固した後再び電子銃をオンにし、インゴットにおける最終ビーム収束領域に対向する一側からインゴットにおける最終ビーム収束領域に向けて、電子ビームスポットが走査した位置の合金がすべて溶解されるように電子ビームスポットでインゴット表面を均一且つ緩慢に走査し、インゴットにおける最終ビーム収束領域の近傍まで走査したら走査を停止する工程S6と、
工程S6で得られた溶融合金を第1水冷銅坩堝から第2水冷銅坩堝に鋳造する工程S7と、
電子ビーム溶解炉が冷却した後、精錬されたニッケル基高温合金を取り出す工程S8と、を含む、
ことを特徴とする電子ビーム誘導精錬鋳造技術に基づく高純度ニッケル基高温合金の製造方法。
【0025】
(付記2)
前記工程S1において、前記クリーンアップとは、研磨機で小円柱の表面をきれいに研磨し、研磨後の小円柱をそれぞれ脱イオン水とアルコールで洗浄してから超音波洗浄機を用いてきれいに洗浄し、ドライヤーで小円柱を乾かすことである、
ことを特徴とする付記1に記載の電子ビーム誘導精錬鋳造技術に基づく高純度ニッケル基高温合金の製造方法。
【0026】
(付記3)
前記工程S2及び前記工程S3において、前記電子ビーム溶解炉の炉体を、ダスト除去処理によりクリーンアップする、
ことを特徴とする付記1に記載の電子ビーム誘導精錬鋳造技術に基づく高純度ニッケル基高温合金の製造方法。
【0027】
(付記4)
前記工程S2において、2000#サンドペーパーを用いて前記第1水冷銅坩堝の表面及び前記第2水冷銅坩堝の表面を滑らかに研磨した後、アルコールに浸漬した綿布で拭き取ってクリーンアップする、
ことを特徴とする付記1に記載の電子ビーム誘導精錬鋳造技術に基づく高純度ニッケル基高温合金の製造方法。
【0028】
(付記5)
前記工程S4において、前記真空基準は、電子ビーム溶解炉の炉体の真空度が5×10-2Pa以下で、電子銃室の真空度が5×10-3Pa以下であり、
電子銃をオンにし、ビーム電流が120mAになるようにゆっくり調整し、12min予熱することにより電子銃を予熱する、
ことを特徴とする付記1に記載の電子ビーム誘導精錬鋳造技術に基づく高純度ニッケル基高温合金の製造方法。
【0029】
(付記6)
前記工程S5において、電子銃の予熱が完了した後、ビーム電流を0mAに下げ、高圧をオンにし、電圧が30kVに達した後1min安定させ、2min以内にビーム電流を400mAにまで緩慢に上げ、電子ビームスポット半径を10×10とし、溶解出力を変えずに、電子ビームスポットの走査経路を調整することで第1水冷銅坩堝内の小円柱を徐々に溶解させ、
10min精錬を行った後、5min以内にビーム電流が400mAから0mAに、電子ビームスポット半径が10×10から0×0になるように緩やかなビーム減少によってビーム電流を徐々に低下させながら電子ビームスポットの半径を徐々に縮小させて、インゴットの一側の縁部に収束する、
ことを特徴とする付記1に記載の電子ビーム誘導精錬鋳造技術に基づく高純度ニッケル基高温合金の製造方法。
【0030】
(付記7)
前記工程S6において、電子銃をオンにした後、ビーム電流を400mAにまで上げ、電子ビームスポットの半径は5×5とする、
ことを特徴とする付記1に記載の電子ビーム誘導精錬鋳造技術に基づく高純度ニッケル基高温合金の製造方法。
【0031】
(付記8)
前記工程S6において、インゴットにおける最終ビーム収束領域の近傍まで走査したら走査を停止するとは、インゴットにおける最終ビーム収束領域から1cm離れたところまで走査したら走査を停止することである、
ことを特徴とする付記1に記載の電子ビーム誘導精錬鋳造技術に基づく高純度ニッケル基高温合金の製造方法。
【0032】
(付記9)
前記工程S8において、電子ビーム溶解炉を40min冷却した後、電子ビーム溶解炉の炉体にアルゴンガスを通入して抽出し、その後、再びアルゴンガスを電子ビーム溶解炉の炉体に通入して抽出することで、電子ビーム溶解炉の炉体が完全に冷却されるまで電子ビーム溶解炉の炉体に対する冷却を行う、
ことを特徴とする付記1に記載の電子ビーム誘導精錬鋳造技術に基づく高純度ニッケル基高温合金の製造方法。
【符号の説明】
【0033】
1 電子銃
2 拡散ポンプ
3 空気作動弁
4 機械ポンプ
5 電子ビーム
6 第1水冷銅坩堝
7 ルーツポンプ
8 第2水冷銅坩堝
9 坩堝支柱
10 冷却水パイプ
11 合金溶融池
【国際調査報告】