(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-03
(54)【発明の名称】抗SIGLEC-8抗体および副腎皮質ステロイド薬を投与する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220926BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220926BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20220926BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220926BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20220926BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220926BHJP
A61P 27/14 20060101ALI20220926BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20220926BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220926BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20220926BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220926BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220926BHJP
A61P 7/10 20060101ALI20220926BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220926BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220926BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20220926BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20220926BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20220926BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220926BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220926BHJP
A61K 31/495 20060101ALI20220926BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20220926BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20220926BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220926BHJP
【FI】
A61K39/395 U
A61P43/00 121
A61P11/02
A61P11/00
A61P11/06
A61P43/00 105
A61P1/04
A61P27/14
A61P17/04
A61P35/00
A61P1/14
A61P37/08
A61P17/00
A61P7/10
A61P9/00
A61P21/00
A61P7/00
A61K39/395 G
A61K31/573
A61P37/00
A61K45/00
A61P29/00
A61K31/495
A61K31/167
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506612
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(85)【翻訳文提出日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 US2020044583
(87)【国際公開番号】W WO2021026021
(87)【国際公開日】2021-02-11
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516166030
【氏名又は名称】アラコス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シン, ブピンダー
(72)【発明者】
【氏名】ラスムッセン, ヘンリク
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA22
4C084MA52
4C084NA06
4C084ZA072
4C084ZA331
4C084ZA341
4C084ZA511
4C084ZA591
4C084ZA661
4C084ZA691
4C084ZA831
4C084ZA891
4C084ZA941
4C084ZB051
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB131
4C084ZB211
4C084ZB261
4C084ZC422
4C084ZC751
4C085AA13
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4C206ZA59
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4C206ZA69
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4C206ZC75
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む組成物の、例えばそれを必要とするヒト個体への、投与に好適な方法およびキットを提供する。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬が、個体に、抗Siglec-8抗体を含む組成物の第1の用量の少なくとも6時間、少なくとも12時間、または12~24時間前に投与される。したがって、本開示のある特定の態様は、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む組成物を、それを必要とする個体に投与するための方法に関する。一部の実施形態では、方法は、副腎皮質ステロイド薬を個体に投与するステップ、および個体への副腎皮質ステロイド薬の投与の少なくとも6時間後に、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む組成物の第1の用量を投与するステップを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む組成物を、それを必要とする個体に投与するための方法であって、
前記個体に副腎皮質ステロイド薬を投与するステップ、および
前記副腎皮質ステロイド薬を投与するステップの少なくとも6時間後に前記個体に前記組成物の第1の用量を投与するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む組成物を、それを必要とする個体に投与するための方法であって、
前記個体に前記組成物の第1の用量を投与するステップを含み、
副腎皮質ステロイド薬が、前記個体に前記第1の用量の投与の少なくとも6時間前に投与される、方法。
【請求項3】
ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む組成物を、それを必要とする個体に投与するための方法であって、前記個体に前記組成物の第1の用量を投与するステップを含み、前記組成物の前記第1の用量が、前記個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される、方法。
【請求項4】
副腎皮質ステロイド薬を前記個体に、前記第1の用量の投与の少なくとも6時間前に投与するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記副腎皮質ステロイド薬が、前記個体に前記第1の用量の投与の少なくとも12時間前に投与される、請求項1、2および4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記副腎皮質ステロイド薬が、前記個体に前記第1の用量の投与前24時間以内に投与される、請求項1、2、4および5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記副腎皮質ステロイド薬が、プレドニゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、またはプレドニゾロンである、請求項1、2、および4から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
80mgのまたは0.5mg/kgより多くのプレドニゾンが、前記個体に前記第1の用量の投与の少なくとも6時間前に投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
80mgのプレドニゾンが、前記個体に前記第1の用量の投与の少なくとも12時間前かつ投与前24時間未満に投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記副腎皮質ステロイド薬が、前記個体により自己投与される、請求項1、2、および4から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記副腎皮質ステロイド薬が、前記個体に経口投与される、請求項1、2、および4から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物の前記第1の用量が、前記個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の用量の総体積の50%未満が、前記個体に前記注入の最初の2時間で投与される、請求項3から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の用量の総体積の30%未満が、前記個体に前記注入の最初の2時間で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の用量が、前記個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:15分間1mL/時、15分間5mL/時、30分間10mL/時、30分間15mL/時、30分間25mL/時、30分間30mL/時、30分間35mL/時、および62分間40mL/時に従って投与される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
ヒトSiglec-8に結合する前記抗体が、前記個体に前記第1の用量において0.1mg/kg~10mg/kgの間で投与される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ヒトSiglec-8に結合する前記抗体が、前記個体に前記第1の用量において約1mg/kg~約3mg/kgの間で投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ヒトSiglec-8に結合する前記抗体が、前記個体に前記第1の用量において1mg/kgまたは3mg/kgで投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の用量の投与の少なくとも6時間前の前記副腎皮質ステロイド薬の投与が、少なくとも6時間前の前記副腎皮質ステロイド薬の投与を伴わない前記第1の用量の投与と比較して、前記個体における注入に伴う反応(IRR)のリスクを低減させる、請求項1、2、および4から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の用量の投与の少なくとも6時間前の前記副腎皮質ステロイド薬の投与が、少なくとも6時間前の前記副腎皮質ステロイド薬の投与を伴わない前記第1の用量の投与と比較して、前記個体における注入に伴う反応(IRR)の重症度を低減させる、請求項1、2、および4から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
約4時間にわたっての静脈内注入による前記組成物の前記第1の用量の投与が、約4時間未満である期間にわたっての静脈内注入による前記第1の用量の投与と比較して、前記個体における注入に伴う反応(IRR)のリスクを低減させる、請求項3から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
約4時間にわたっての静脈内注入による前記組成物の前記第1の用量の投与が、約4時間未満である期間にわたっての静脈内注入による前記第1の用量の投与と比較して、前記個体における注入に伴う反応(IRR)の重症度を低減させる、請求項3から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
副腎皮質ステロイド薬を前記個体に、前記第1の用量の投与の1~2時間前に投与するステップをさらに含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の用量の投与の1~2時間前に前記個体に投与される前記副腎皮質ステロイド薬が、プレドニゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、またはプレドニゾロンである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
80mgのまたは0.5mg/kgより多くのプレドニゾンが、前記個体に前記第1の用量の投与の1~2時間前に投与される、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の用量の投与の1~2時間前に前記個体に投与される前記副腎皮質ステロイド薬が、メチルプレドニゾロンである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
100mgのメチルプレドニゾロンが、前記個体に前記第1の用量の投与の1~2時間前に投与される、請求項23または26に記載の方法。
【請求項28】
抗ヒスタミン薬を前記個体に、前記第1の用量の投与の1~2時間前に投与するステップをさらに含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記抗ヒスタミン薬が、セチリジンである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
10mgのセチリジンが、前記個体に前記第1の用量の投与の1~2時間前に投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
10mgのセチリジンが、前記個体に前記第1の用量の投与の40分~180分前に投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記抗ヒスタミン薬が、前記個体に経口投与される、請求項28から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記個体に前記第1の用量の投与の1~2時間前に解熱薬または非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を投与するステップをさらに含む、請求項1から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記解熱薬が、アセトアミノフェンである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
975~1000mgのアセトアミノフェンが、前記個体に前記第1の用量の投与の1~2時間前に投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
975~1000mgのアセトアミノフェンが、前記個体に前記第1の用量の投与の180分前以降かつ40分前以前に投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記解熱薬またはNSAIDが、前記個体に経口投与される、請求項33から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記個体に、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む組成物の第2の用量を投与するステップをさらに含み、前記第2の用量が、前記個体に前記第1の用量の約28日または約4週間後に投与される、請求項1から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記第2の用量が、前記第2の用量の投与の6~24時間前に前記個体に副腎皮質ステロイド薬を投与することなく、前記個体に投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
副腎皮質ステロイド薬が、前記個体に前記第2の用量の投与の少なくとも6時間前に投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記組成物の前記第2の用量が、前記個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される、請求項38から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記第2の用量の総体積の50%未満が、前記個体に前記注入の最初の2時間で投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記第2の用量の総体積の30%未満が、前記個体に前記注入の最初の2時間で投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記第2の用量が、前記個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:15分間1mL/時、15分間5mL/時、30分間10mL/時、30分間15mL/時、30分間25mL/時、30分間30mL/時、30分間35mL/時、および62分間40mL/時に従って投与される、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
ヒトSiglec-8に結合する前記抗体が、前記個体に前記第2の用量において0.1mg/kg~10mg/kgの間で投与される、請求項38から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
ヒトSiglec-8に結合する前記抗体が、前記個体に前記第2の用量において約1mg/kg~約3mg/kgの間で投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
ヒトSiglec-8に結合する前記抗体が、前記個体に前記第2の用量において1mg/kgまたは3mg/kgで投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
ヒトSiglec-8に結合する前記抗体が、前記個体に前記第1の用量において1mg/kgでおよび前記第2の用量において3mg/kgで投与される、請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
副腎皮質ステロイド薬を前記個体に、前記第2の用量の投与の1~2時間前に投与するステップをさらに含む、請求項38から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記第2の用量の投与の1~2時間前に前記個体に投与される前記副腎皮質ステロイド薬が、プレドニゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、またはプレドニゾロンである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
100mgのメチルプレドニゾロンが、前記個体に前記第2の用量の投与の1~2時間前に投与される、請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
抗ヒスタミン薬を前記個体に、前記第2の用量の投与の1~2時間前に投与するステップをさらに含む、請求項38から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記抗ヒスタミン薬が、セチリジンである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
10mgのセチリジンが、前記個体に前記第2の用量の投与の1~2時間前に投与される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記抗ヒスタミン薬が、前記個体に経口投与される、請求項52から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記個体に前記第2の用量の投与の1~2時間前に解熱薬または非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を投与するステップをさらに含む、請求項38から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記解熱薬が、アセトアミノフェンである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
975~1000mgのアセトアミノフェンが、前記個体に前記第2の用量の投与の1~2時間前に投与される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記解熱薬またはNSAIDが、前記個体に経口投与される、請求項56から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記個体に、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む組成物の第3の用量を投与するステップをさらに含み、前記第3の用量が、前記個体に前記第2の用量の約28日または約4週間後に投与される、請求項38から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記第3の用量が、前記第3の用量の投与の6~24時間前に前記個体に副腎皮質ステロイド薬を投与することなく、前記個体に投与される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
副腎皮質ステロイド薬が、前記個体に前記第3の用量の投与の少なくとも6時間前に投与される、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記組成物の前記第3の用量が、前記個体に静脈内注入により約2時間~約4時間にわたって投与される、請求項60から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記組成物の前記第3の用量が、前記個体に静脈内注入により約2時間にわたって投与される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記第3の用量が、前記個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:30分間10mL/時、15分間25mL/時、15分間40mL/時、15分間55mL/時、15分間70mL/時、15分間85mL/時、および16分間100mL/時に従って投与される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記組成物の前記第3の用量が、前記個体に静脈内注入により約3時間にわたって投与される、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記第3の用量が、前記個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:30分間2mL/時、30分間10mL/時、30分間20mL/時、30分間40mL/時、および64分間60mL/時に従って投与される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記組成物の前記第3の用量が、前記個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される、請求項63に記載の方法。
【請求項69】
前記第3の用量が、前記個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:15分間1mL/時、15分間5mL/時、30分間10mL/時、30分間15mL/時、30分間25mL/時、30分間30mL/時、30分間35mL/時、および62分間40mL/時に従って投与される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記組成物の前記第3の用量が、前記個体に静脈内注入により約1時間にわたって投与される、請求項60から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記第3の用量が、前記個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:15分間24mL/時、および45分間125.3mL/時に従って投与される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記個体に前記組成物の第1の用量を1日目に投与するステップであって、前記組成物の前記第1の用量が、前記個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される、ステップ;
前記個体に前記組成物の第2の用量を29日目に投与するステップであって、前記組成物の前記第2の用量が、前記個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される、ステップ;および
前記個体に前記組成物の第3の用量を57日目に投与するステップであって、前記組成物の前記第3の用量が、前記個体に静脈内注入により約1時間~約4時間にわたって投与されるステップ
を含む、請求項1から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
副腎皮質ステロイド薬を前記個体に、前記第1の用量の投与の少なくとも6時間前に投与するステップをさらに含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記個体が、活性化好酸球の増加、Siglec-8を発現する肥満細胞の活性増大、好酸球および/もしくは肥満細胞の増加、または好酸球および/もしくは肥満細胞の活性化増加のうちの1つもしくは複数によって特徴付けられる疾患または障害を有するか、またはそのような疾患もしくは障害であると診断された、請求項1から73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記個体が、喘息を合併した慢性鼻副鼻腔炎、アスピリンによって悪化した呼吸器疾患、副鼻腔疾患を伴う成人発症の非アトピー型喘息、慢性閉塞性肺疾患、線維性疾患、前線維性疾患、進行全身性肥満細胞症、無痛性全身性肥満細胞症(ISM)、炎症性腸疾患(IBD)、好酸球性食道炎(EOE)、好酸球性胃炎(EG)、好酸球性胃腸炎(EGE)、好酸球性大腸炎(EOC)、好酸球性十二指腸炎、肥満細胞胃炎または肥満細胞胃腸炎、肥満細胞上昇に伴う胃炎もしくは胃腸炎、肥満細胞上昇に伴う過敏性腸症候群、機能性胃腸疾患、アレルギー性結膜炎、巨大乳頭性結膜炎、慢性じんま疹、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、アレルギー性喘息、好酸球性表現型もしくは肥満細胞表現型を有する喘息、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)、セリアック病、胃不全麻痺、好酸球増多症候群、アトピー性皮膚炎、アナフィラキシー、血管性浮腫、肥満細胞活性化症候群/障害、および好酸球性筋膜炎からなる群より選択される疾患もしくは障害を有するか、またはそのような疾患もしくは障害であると診断された、請求項1から73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
喘息を合併した慢性鼻副鼻腔炎、アスピリンによって悪化した呼吸器疾患、副鼻腔疾患を伴う成人発症の非アトピー型喘息、慢性閉塞性肺疾患、線維性疾患、前線維性疾患、進行全身性肥満細胞症、無痛性全身性肥満細胞症(ISM)、炎症性腸疾患(IBD)、好酸球性食道炎(EOE)、好酸球性胃炎(EG)、好酸球性胃腸炎(EGE)、好酸球性大腸炎(EOC)、好酸球性十二指腸炎、肥満細胞胃炎もしくは肥満細胞胃腸炎、肥満細胞上昇に伴う胃炎もしくは胃腸炎、肥満細胞上昇に伴う過敏性腸症候群、機能性胃腸疾患、アレルギー性結膜炎、巨大乳頭性結膜炎、慢性じんま疹、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、アレルギー性喘息、好酸球性表現型もしくは肥満細胞表現型を有する喘息、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)、セリアック病、胃不全麻痺、好酸球増多症候群、アトピー性皮膚炎、アナフィラキシー、血管性浮腫、肥満細胞活性化症候群/障害、および好酸球性筋膜炎からなる群より選択される疾患もしくは障害を有するかまたはそのような疾患もしくは障害であると診断された個体を処置するために使用される、請求項1から73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記抗体が、Fc領域と、前記Fc領域に連結されたN-グリコシド結合型炭水化物鎖とを含み、前記組成物中の前記抗体の前記N-グリコシド結合型炭水化物鎖の50%未満が、フコース残基を含有する、請求項1から76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記組成物中の前記抗体の前記N-グリコシド結合型炭水化物鎖の実質的にいずれも、フコース残基を含有しない、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む、および/または前記軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む、請求項1から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(iii)配列番号67~70から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む、および/または前記軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(iii)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む、請求項1から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記抗体が、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記抗体が、配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号76のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記抗体が、配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号77のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記抗体が、配列番号11~14から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号23~24から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記抗体が、配列番号2~14から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16~24から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記抗体が、配列番号2~10から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16~22から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記抗体が、
(a)
(1)配列番号26~29から選択されるアミノ酸配列を含むHC-FR1と、
(2)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(3)配列番号31~36から選択されるアミノ酸配列を含むHC-FR2と、
(4)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(5)配列番号38~43から選択されるアミノ酸配列を含むHC-FR3と、
(6)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3と、
(7)配列番号45~46から選択されるアミノ酸配列を含むHC-FR4と
を含む重鎖可変領域、および/または
(b)
(1)配列番号48~49から選択されるアミノ酸配列を含むLC-FR1と、
(2)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(3)配列番号51~53から選択されるアミノ酸配列を含むLC-FR2と、
(4)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(5)配列番号55~58から選択されるアミノ酸配列を含むLC-FR3と、
(6)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR-L3と、
(7)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC-FR4と
を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項1から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記抗体が、
(a)
(1)配列番号26のアミノ酸配列を含むHC-FR1と、
(2)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(3)配列番号34のアミノ酸配列を含むHC-FR2と、
(4)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(5)配列番号38のアミノ酸配列を含むHC-FR3と、
(6)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3と、
(7)配列番号45のアミノ酸配列を含むHC-FR4と
を含む重鎖可変領域、および/または
(b)
(1)配列番号48のアミノ酸配列を含むLC-FR1と、
(2)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(3)配列番号51のアミノ酸配列を含むLC-FR2と、
(4)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(5)配列番号55のアミノ酸配列を含むLC-FR3と、
(6)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR-L3と、
(7)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC-FR4と
を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項1から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記抗体が、
(a)
(1)配列番号26のアミノ酸配列を含むHC-FR1と、
(2)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(3)配列番号34のアミノ酸配列を含むHC-FR2と、
(4)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(5)配列番号38のアミノ酸配列を含むHC-FR3と、
(6)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3と、
(7)配列番号45のアミノ酸配列を含むHC-FR4と
を含む重鎖可変領域、および/または
(b)
(1)配列番号48のアミノ酸配列を含むLC-FR1と、
(2)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(3)配列番号51のアミノ酸配列を含むLC-FR2と、
(4)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(5)配列番号58のアミノ酸配列を含むLC-FR3と、
(6)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR-L3と、
(7)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC-FR4と
を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項1から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記抗体が、
(i)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(ii)配列番号91のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(iii)配列番号94のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む重鎖可変領域;および/もしくは(i)配列番号97のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(ii)配列番号100のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(iii)配列番号103のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む軽鎖可変領域;
(i)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(ii)配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(iii)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む重鎖可変領域;および/もしくは(i)配列番号98のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(ii)配列番号101のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(iii)配列番号104のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む軽鎖可変領域;または
(i)配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(ii)配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(iii)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む重鎖可変領域;および/もしくは(i)配列番号99のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(ii)配列番号102のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(iii)配列番号105のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む軽鎖可変領域
を含む、請求項1から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記抗体が、
配列番号106のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および/もしくは配列番号109のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
配列番号107のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および/もしくは配列番号110のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
配列番号108のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および/もしくは配列番号111のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項1から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である、請求項79から91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
前記抗体が、血中好酸球を枯渇させ、肥満細胞活性化を阻害する、請求項79から92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記抗体が、ヒトIgG Fc領域を含む重鎖Fc領域を含む、請求項79から93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記ヒトIgG Fc領域が、ヒトIgG1 Fc領域を含む、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記ヒトIgG1 Fc領域が、フコシル化されていない、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記ヒトIgG Fc領域が、ヒトIgG4 Fc領域を含む、請求項94に記載の方法。
【請求項98】
前記ヒトIgG4 Fc領域が、アミノ酸置換S228Pを含み、アミノ酸残基が、KabatにみられるEUインデックスに従って番号付けされている、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記抗体が、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を向上させるように操作された、請求項79から93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記抗体が、前記Fc領域に、ADCC活性を向上させる少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記抗体の前記重鎖の少なくとも1つまたは2つが、フコシル化されていない、請求項79から93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項1から101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
前記個体が、ヒトである、請求項1から102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
前記組成物が、前記抗体および薬学的に許容される担体を含む、請求項1から103のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む組成物を含む医薬と、請求項1から104のいずれか一項にしたがって、それを必要とする個体における前記医薬の投与のための指示を含む添付文書とを含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2019年8月2日に出願した米国仮出願第62/882,330号の優先権を主張する。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる:コンピュータ読み取り可能な形式(CRF)の配列表(ファイル名:701712001240SEQLIST.TXT、記録日:2020年7月20日、サイズ:113KB)。
【0003】
発明の分野
本開示は、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む組成物の、例えばそれを必要とするヒトへの投与に好適な方法およびキットに関する。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、抗Siglec-8抗体を含む組成物の第1の用量の少なくとも6時間、少なくとも12時間、または12~24時間前に投与される。
【背景技術】
【0004】
背景
Siglec(シアル酸結合免疫グロブリン様レクチン)は、主に白血球上に見られる1回膜貫通細胞表面タンパク質であり、細胞表面複合糖質に結合しているシアル酸に対するそれらの特異性を特徴とする。Siglecファミリーは、哺乳動物に見られる少なくとも15のメンバーを有する(Pillai et al., Annu Rev Immunol., 2012, 30:357-392)。これらのメンバーは、シアロアドヘシン(Siglec-1)、CD22(Siglec-2)、CD33(Siglec-3)、ミエリン関連糖タンパク質(Siglec-4)、Siglec-5、OBBP1(Siglec-6)、AIRM1(Siglec-7)、SAF-2(Siglec-8)、およびCD329(Siglec-9)を含む。ヒトには発現されるがマウスには発現されないメンバーであるSiglec-8は、そもそも、新規ヒト好酸球タンパク質を同定するための努力の一環として発見された。好酸球による発現に加えて、Siglec-8は、肥満細胞および好塩基球によっても発現される。Siglec-8は、硫酸化グリカン、すなわち、6’-スルホ-シアリルLewis Xまたは6’-スルホ-シアリル-N-アセチル-S-ラクトサミンを認識し、肥満細胞機能を阻害することが示されている細胞内免疫受容体抑制性チロシンモチーフ(ITIM)ドメインを含有する。
【0005】
肥満細胞とともに、好酸球は、特定の組織部位における感染を制御することなどの有益な機能的役割を果たす炎症応答を促進することができる。炎症応答中、好酸球のアポトーシスは、IL-3およびGM-CSFなどの生存促進性サイトカインの活性によって阻害され得る。しかし、アポトーシスによって迅速に除去されない活性化好酸球の増加は、既に炎症している部位において好酸球顆粒タンパク質の放出を生じさせることになり得、この放出は、組織を損傷させ、炎症をさらに悪化させ得る。いくつかの疾患、例えば、チャーグ・ストラウス症候群、関節リウマチ、およびアレルギー性喘息は、好酸球活性化に関連していることが示されている(Wechsler et al., J Allergy Clin Immunol., 2012, 130(3):563-71)。好酸球および肥満細胞の活性などの、炎症に関与する免疫細胞の活性を制御することができる治療法が、目下、必要とされている。
【0006】
以前の研究は、Siglec-8が、Siglec-8の細胞外部分に対して産生された特異的マウス抗体で架橋されると、好酸球がアポトーシスを遂げることを実証した(Nutku et al., Blood, 2003, 336:918-24)。これらの抗体は、米国特許第8,207,305号、米国特許第8,197,811号、米国特許第7,871,612号、および米国特許第7,557,191号に記載されている。ヒト化抗Siglec-8抗体は、米国特許第9,546,215号に記載されている。
【0007】
ヒトSiglec-8に結合する抗体は、健康なボランティア、ならびに無痛性全身性肥満細胞症(ISM)患者、慢性じんま疹患者、およびアレルギー性結膜炎患者において臨床試験中である。これまでのところ、抗Siglec-8抗体処置は耐容性良好であり、最もよく見られた有害事象は、注入に伴う反応(IRR)である。大部分のIRRは、軽度から中等度であったが、抗Siglec-8抗体処置を、例えば、IRRを予防することおよび/またはIRRの重症度を軽減することにより、改善する方法が、依然として必要とされている。
特許出願、特許公報および科学文献を含む、本明細書で言及されるすべての参考文献は、個々の参考文献各々が参照により組み込まれると具体的かつ個々に示されているかのごとく、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第8,207,305号明細書
【特許文献2】米国特許第8,197,811号明細書
【特許文献3】米国特許第7,871,612号明細書
【特許文献4】米国特許第7,557,191号明細書
【特許文献5】米国特許第9,546,215号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
簡単な概要
この必要および他の必要を満たすために、本開示は、とりわけ、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む組成物を投与する方法に関する。
【0010】
したがって、本開示のある特定の態様は、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む組成物を、それを必要とする個体に投与するための方法に関する。一部の実施形態では、方法は、副腎皮質ステロイド薬を個体に投与するステップ、および個体への副腎皮質ステロイド薬の投与の少なくとも6時間後に、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む組成物の第1の用量を投与するステップを含む。一部の実施形態では、方法は、個体に、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む組成物の第1の用量を投与するステップを含み、副腎皮質ステロイド薬は、個体に、第1の用量の投与の少なくとも6時間前に投与される。一部の実施形態では、方法は、個体に組成物の第1の用量を投与するステップを含み、組成物の第1の用量は、個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、個体に第1の用量の投与の少なくとも6時間前に投与される。一部の実施形態では、個体は、ヒトである。
【0011】
一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、個体に第1の用量の投与の少なくとも12時間前に投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、個体に第1の用量の投与前24時間以内に投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、個体に第1の用量の投与の12~24時間前に投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、プレドニゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、またはプレドニゾロンである。一部の実施形態では、0.5mg/kgより多くのプレドニゾンが、個体に第1の用量の投与の少なくとも6時間前(および必要に応じて24時間以内)、少なくとも12時間前(および必要に応じて24時間以内)、または12~24時間前に投与される。一部の実施形態では、0.5mg/kg~1mg/kgのプレドニゾンが、個体に第1の用量の投与の少なくとも6時間前(および必要に応じて24時間以内)、少なくとも12時間前(および必要に応じて24時間以内)、または12~24時間前に投与される。一部の実施形態では、1mg/kgのプレドニゾンが、個体に第1の用量の投与の少なくとも6時間前(および必要に応じて24時間以内)、少なくとも12時間前(および必要に応じて24時間以内)、または12~24時間前に投与される。一部の実施形態では、80mgのプレドニゾンが、個体に第1の用量の投与の少なくとも6時間前(および必要に応じて24時間以内)、少なくとも12時間前(および必要に応じて24時間以内)、または12~24時間前に投与される。一部の実施形態では、60mgのプレドニゾンが、個体に第1の用量の投与の少なくとも6時間前(および必要に応じて24時間以内)、少なくとも12時間前(および必要に応じて24時間以内)、または12~24時間前に投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、個体により自己投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、個体に経口投与される。一部の実施形態では、第1の用量の投与の少なくとも6時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与は、少なくとも6時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与を伴わない第1の用量の投与と比較して、個体における注入に伴う反応(IRR)のリスクおよび/または重症度を低減させる。一部の実施形態では、第1の用量の投与の少なくとも12時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与は、少なくとも12時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与を伴わない第1の用量の投与と比較して、個体における注入に伴う反応(IRR)のリスクおよび/または重症度を低減させる。一部の実施形態では、第1の用量の投与の12~24時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与は、12~24時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与を伴わない第1の用量の投与と比較して、個体における注入に伴う反応(IRR)のリスクおよび/または重症度を低減させる。
【0012】
本明細書に記載の実施形態のいずれかによる一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第1の用量において0.1mg/kg~10mg/kgの間で投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第1の用量において約1mg/kg~約3mg/kgの間で投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第1の用量において1mg/kgまたは3mg/kgで投与される。一部の実施形態では、組成物の第1の用量は、個体に静脈内投与される。一部の実施形態では、組成物の第1の用量は、個体に皮下投与される。
【0013】
一部の実施形態では、組成物の第1の用量は、個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される。一部の実施形態では、第1の用量の総体積の50%未満は、個体に注入の最初の2時間で投与される。一部の実施形態では、第1の用量の総体積の30%未満は、個体に注入の最初の2時間で投与される。一部の実施形態では、第1の用量は、個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:15分間1mL/時、15分間5mL/時、30分間10mL/時、30分間15mL/時、30分間25mL/時、30分間30mL/時、30分間35mL/時、および62分間40mL/時に従って投与される。一部の実施形態では、約4時間にわたっての静脈内注入による組成物の第1の用量の投与は、約4時間未満である期間にわたっての静脈内注入による第1の用量の投与と比較して、個体における注入に伴う反応(IRR)のリスクを低減させる。一部の実施形態では、約4時間にわたっての静脈内注入による組成物の第1の用量の投与は、約4時間未満である期間にわたっての静脈内注入による第1の用量の投与と比較して、個体における注入に伴う反応(IRR)の重症度を低減させる。
【0014】
本明細書に記載の実施形態のいずれかによる一部の実施形態では、方法は、副腎皮質ステロイド薬を、個体に第1の用量の投与の1~2時間前に投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、第1の用量の投与の1~2時間前に個体に投与される副腎皮質ステロイド薬は、プレドニゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、またはプレドニゾロンである。一部の実施形態では、0.5mg/kgより多くのプレドニゾンが、個体に第1の用量の投与の1~2時間前に投与される。一部の実施形態では、0.5mg/kg~1mg/kgのプレドニゾンが、個体に第1の用量の投与の1~2時間前に投与される。一部の実施形態では、1mg/kgより多くのプレドニゾンが、個体に第1の用量の投与の1~2時間前に投与される。一部の実施形態では、60mgまたは80mgのプレドニゾンが、個体に第1の用量の投与の1~2時間前に投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、個体に経口投与される。一部の実施形態では、第1の用量の投与の1~2時間前に個体に投与される副腎皮質ステロイド薬は、メチルプレドニゾロンである。一部の実施形態では、100mgのメチルプレドニゾロンが、個体に第1の用量の投与の1~2時間前に投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、個体に静脈内投与される。一部の実施形態では、方法は、個体に第1の用量の投与の1~2時間前に抗ヒスタミン薬を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、抗ヒスタミン薬は、セチリジンである。一部の実施形態では、10mgのセチリジンが、個体に第1の用量の投与の1~2時間前に投与される。一部の実施形態では、10mgのセチリジンが、個体に第1の用量の投与の180分前以降かつ40分前以前に投与される。一部の実施形態では、10mgのセチリジンが、個体に第1の用量の投与の40分~180分(例えば、40分および180分を含めて)前に投与される。一部の実施形態では、抗ヒスタミン薬は、個体に経口投与される。一部の実施形態では、方法は、個体に第1の用量の投与の1~2時間前に解熱薬または非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、解熱薬は、アセトアミノフェンである。一部の実施形態では、975~1000mgのアセトアミノフェンが、個体に第1の用量の投与の1~2時間前に投与される。一部の実施形態では、975~1000mgのアセトアミノフェンが、個体に第1の用量の投与の180分前以降かつ40分前以前に投与される。一部の実施形態では、解熱薬またはNSAIDは、個体に経口投与される。
【0015】
本明細書に記載の実施形態のいずれかによる一部の実施形態では、方法は、個体に、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む組成物の第2の用量を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、第2の用量は、個体に第1の用量の約28日後に投与される。一部の実施形態では、第2の用量は、個体に第1の用量の約4週間後に投与される。一部の実施形態では、組成物の第2の用量は、個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される。一部の実施形態では、第2の用量の総体積の50%未満は、個体に注入の最初の2時間で投与される。一部の実施形態では、第2の用量の総体積の30%未満は、個体に注入の最初の2時間で投与される。一部の実施形態では、第2の用量は、個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:15分間1mL/時、15分間5mL/時、30分間10mL/時、30分間15mL/時、30分間25mL/時、30分間30mL/時、30分間35mL/時、および62分間40mL/時に従って投与される。一部の実施形態では、第2の用量は、第2の用量の投与の少なくとも6時間、少なくとも12時間、6~24時間、または12~24時間前に個体に副腎皮質ステロイド薬を投与することなく、個体に投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、個体に第2の用量の投与の1~2時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、6~24時間、または12~24時間前に投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、個体に第2の用量の投与の少なくとも6時間、少なくとも12時間、6~24時間、または12~24時間前に投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、プレドニゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、またはプレドニゾロンである。一部の実施形態では、0.5mg/kgより多くのプレドニゾンが、個体に第2の用量の投与の少なくとも6時間前(および必要に応じて24時間以内)、少なくとも12時間前(および必要に応じて24時間以内)、または12~24時間前に投与される。一部の実施形態では、1mg/kgのプレドニゾンが、個体に第2の用量の投与の少なくとも6時間前(および必要に応じて24時間以内)、少なくとも12時間前(および必要に応じて24時間以内)、または12~24時間前に投与される。一部の実施形態では、80mgのプレドニゾンが、個体に第2の用量の投与の少なくとも6時間前(および必要に応じて24時間以内)、少なくとも12時間前(および必要に応じて24時間以内)、または12~24時間前に投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、個体により自己投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、個体に経口投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第2の用量において約0.1mg/kg~約10mg/kgの間で投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第2の用量において約1mg/kg~約3mg/kgの間で投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第2の用量において1mg/kgまたは3mg/kgで投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第1の用量において1mg/kgでおよび第2の用量において3mg/kgで投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第1の用量において3mg/kgでおよび第2の用量において10mg/kgで投与される。一部の実施形態では、組成物の第2の用量は、個体に静脈内投与される。一部の実施形態では、組成物の第2の用量は、個体に皮下投与される。一部の実施形態では、方法は、個体に第2の用量の投与の1~2時間前に副腎皮質ステロイド薬を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、第2の用量の投与の1~2時間前に個体に投与される副腎皮質ステロイド薬は、メチルプレドニゾロンである。一部の実施形態では、100mgのメチルプレドニゾロンが、個体に第2の用量の投与の1~2時間前に投与される。一部の実施形態では、方法は、個体に第2の用量の投与の1~2時間前に抗ヒスタミン薬を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、10mgのセチリジンが、個体に第2の用量の投与の1~2時間前に投与される。一部の実施形態では、抗ヒスタミン薬は、個体に経口投与される。一部の実施形態では、方法は、個体に第2の用量の投与の1~2時間前に解熱薬または非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、解熱薬は、アセトアミノフェンである。一部の実施形態では、975~1000mgのアセトアミノフェンが、個体に第2の用量の投与の1~2時間前に投与される。一部の実施形態では、解熱薬またはNSAIDは、個体に経口投与される。
【0016】
本明細書に記載の実施形態のいずれかによる一部の実施形態では、方法は、個体に、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む組成物の第3の用量を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、第3の用量は、個体に第2の用量の約28日後に投与される。一部の実施形態では、第3の用量は、個体に第2の用量の約4週間後に投与される。一部の実施形態では、第3の用量は、個体に第1の用量の約56日後に投与される。一部の実施形態では、第3の用量は、個体に第1の用量の約8週間後に投与される。一部の実施形態では、組成物の第3の用量は、個体に静脈内注入により約2時間~約4時間にわたって投与される。一部の実施形態では、組成物の第3の用量は、個体に静脈内注入により約1時間~約4時間にわたって投与される。一部の実施形態では、組成物の第3の用量は、個体に静脈内注入により約2時間にわたって投与される。一部の実施形態では、第3の用量は、個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:30分間10mL/時、15分間25mL/時、15分間40mL/時、15分間55mL/時、15分間70mL/時、15分間85mL/時、および16分間100mL/時に従って投与される。一部の実施形態では、組成物の第3の用量は、個体に静脈内注入により約3時間にわたって投与される。一部の実施形態では、第3の用量は、個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:30分間2mL/時、30分間10mL/時、30分間20mL/時、30分間40mL/時、および64分間60mL/時に従って投与される。一部の実施形態では、組成物の第3の用量は、個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される。一部の実施形態では、第3の用量は、個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:15分間1mL/時、15分間5mL/時、30分間10mL/時、30分間15mL/時、30分間25mL/時、30分間30mL/時、30分間35mL/時、および62分間40mL/時に従って投与される。一部の実施形態では、組成物の第3の用量は、個体に静脈内注入により約1時間にわたって投与される。一部の実施形態では、第3の用量は、個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:15分間24mL/時、および45分間125.3mL/時に従って投与される。一部の実施形態では、第3の用量は、第3の用量の投与の少なくとも6時間、少なくとも12時間、6~24時間、または12~24時間前に個体に副腎皮質ステロイド薬を投与することなく、個体に投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、個体に第3の用量の投与の1~2時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、6~24時間、または12~24時間前に投与される。一部の実施形態では、方法は、個体に組成物の第1の用量を1日目に投与するステップであって、組成物の第1の用量が個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される(必要に応じて、副腎皮質ステロイド薬が個体に第1の用量の投与の少なくとも6時間前に投与される)、ステップ;個体に組成物の第2の用量を29日目(±3日)に投与するステップであって、組成物の第2の用量が個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される、ステップ;および個体に組成物の第3の用量を57日目(±3日)に投与するステップであって、組成物の第3の用量が個体に静脈内注入により約1時間~約4時間、約2時間~約4時間、または約1時間、約2時間もしくは約4時間のいずれかにわたって(例えば、本明細書に記載されるように)投与される、ステップを含む。一部の実施形態では、方法は、個体に組成物の第1の用量を1週目に投与するステップであって、組成物の第1の用量が個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される(必要に応じて、副腎皮質ステロイド薬が個体に第1の用量の投与の少なくとも6時間前に投与される)、ステップ;個体に組成物の第2の用量を4週目(±3日)に投与するステップであって、組成物の第2の用量が個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される、ステップ;および個体に組成物の第3の用量を8週目(±3日)に投与するステップであって、組成物の第3の用量が個体に静脈内注入により約1時間~約4時間、約2時間~約4時間、または約1時間、約2時間もしくは約4時間のいずれかにわたって(例えば、本明細書に記載されるように)投与される、ステップを含む。
【0017】
本明細書に記載の実施形態のいずれかによる一部の実施形態では、方法は、個体に、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む組成物の第4の用量を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、第4の用量は、個体に第3の用量の約28日後に投与される。一部の実施形態では、第4の用量は、個体に第3の用量の約4週間後に投与される。一部の実施形態では、第4の用量は、個体に第2の用量の約56日後に投与される。一部の実施形態では、第4の用量は、個体に第2の用量の約8週間後に投与される。一部の実施形態では、第4の用量は、個体に第1の用量の約84日後に投与される。一部の実施形態では、第4の用量は、個体に第1の用量の約12週間後に投与される。一部の実施形態では、組成物の第4の用量は、個体に静脈内注入により約2時間~約4時間にわたって投与される。一部の実施形態では、組成物の第4の用量は、個体に静脈内注入により約1時間~約4時間にわたって投与される。一部の実施形態では、組成物の第4の用量は、個体に静脈内注入により約2時間にわたって投与される。一部の実施形態では、第4の用量は、個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:30分間10mL/時、15分間25mL/時、15分間40mL/時、15分間55mL/時、15分間70mL/時、15分間85mL/時、および16分間100mL/時に従って投与される。一部の実施形態では、組成物の第4の用量は、個体に静脈内注入により約3時間にわたって投与される。一部の実施形態では、第4の用量は、個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:30分間2mL/時、30分間10mL/時、30分間20mL/時、30分間40mL/時、および64分間60mL/時に従って投与される。一部の実施形態では、組成物の第4の用量は、個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される。一部の実施形態では、第4の用量は、個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:15分間1mL/時、15分間5mL/時、30分間10mL/時、30分間15mL/時、30分間25mL/時、30分間30mL/時、30分間35mL/時、および62分間40mL/時に従って投与される。一部の実施形態では、組成物の第4の用量は、個体に静脈内注入により約1時間にわたって投与される。一部の実施形態では、第4の用量は、個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:15分間24mL/時、および45分間125.3mL/時に従って投与される。一部の実施形態では、方法は、個体に組成物の第1の用量を1日目に投与するステップであって、組成物の第1の用量が個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される(必要に応じて、副腎皮質ステロイド薬が個体に第1の用量の投与の少なくとも6時間前に投与される)、ステップ;個体に組成物の第2の用量を29日目(±3日)に投与するステップであって、組成物の第2の用量が個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される、ステップ;個体に組成物の第3の用量を57日目(±3日)に投与するステップであって、組成物の第3の用量が個体に静脈内注入により約1時間~約4時間、約2時間~約4時間、または約1時間、約2時間もしくは約4時間のいずれかにわたって(例えば、本明細書に記載されるように)投与される、ステップ;および個体に組成物の第4の用量を85日目(±3日)に投与するステップであって、組成物の第4の用量が個体に静脈内注入により約1時間~約4時間、約2時間~約4時間、または約1時間、約2時間もしくは約4時間のいずれかにわたって(例えば、本明細書に記載されるように)投与される、ステップを含む。一部の実施形態では、方法は、個体に組成物の第1の用量を1週目に投与するステップであって、組成物の第1の用量が個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される(必要に応じて、副腎皮質ステロイド薬が個体に第1の用量の投与の少なくとも6時間前に投与される)、ステップ;個体に組成物の第2の用量を4週目(±3日)に投与するステップであって、組成物の第2の用量が個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される、ステップ;個体に組成物の第3の用量を8週目(±3日)に投与するステップであって、組成物の第3の用量が個体に静脈内注入により約1時間~約4時間、約2時間~約4時間、または約1時間、約2時間もしくは約4時間のいずれかにわたって(例えば、本明細書に記載されるように)投与される、ステップ;および個体に組成物の第4の用量を12週目(±3日)に投与するステップであって、組成物の第4の用量が個体に静脈内注入により約1時間~約4時間、約2時間~約4時間、または約1時間、約2時間もしくは約4時間のいずれかにわたって(例えば、本明細書に記載されるように)投与される、ステップを含む。一部の実施形態では、方法は、個体に組成物の第1の用量を1日目に投与するステップであって、組成物の第1の用量が個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される(必要に応じて、副腎皮質ステロイド薬が個体に第1の用量の投与の少なくとも6時間前に投与される)、ステップ;個体に組成物の第2の用量を29日目(±3日)に投与するステップであって、組成物の第2の用量が個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される、ステップ;個体に組成物の第3の用量を57日目(±3日)に投与するステップであって、組成物の第3の用量が個体に静脈内注入により約1時間~約4時間、約2時間~約4時間、または約1時間、約2時間もしくは約4時間のいずれかにわたって(例えば、本明細書に記載されるように)投与される、ステップ;個体に組成物の第4の用量を85日目(±3日)に投与するステップであって、組成物の第4の用量が個体に静脈内注入により約1時間~約4時間、約2時間~約4時間、または約1時間、約2時間もしくは約4時間のいずれかにわたって(例えば、本明細書に記載されるように)投与される、ステップ;個体に組成物の第5の用量を113日目(±3日)に投与するステップであって、組成物の第5の用量が個体に静脈内注入により約1時間~約4時間、約2時間~約4時間、または約1時間、約2時間もしくは約4時間のいずれかにわたって(例えば、本明細書に記載されるように)投与される、ステップ;および個体に組成物の第6の用量を141日目(±3日)に投与するステップであって、組成物の第6の用量が個体に静脈内注入により約1時間~約4時間、約2時間~約4時間、または約1時間、約2時間もしくは約4時間のいずれかにわたって(例えば、本明細書に記載されるように)投与される、ステップを含む。一部の実施形態では、方法は、個体に組成物の第1の用量を1週目に投与するステップであって、組成物の第1の用量が個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される(必要に応じて、副腎皮質ステロイド薬が個体に第1の用量の投与の少なくとも6時間前に投与される)、ステップ;個体に組成物の第2の用量を4週目(±3日)に投与するステップであって、組成物の第2の用量が個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される、ステップ;個体に組成物の第3の用量を8週目(±3日)に投与するステップであって、組成物の第3の用量が個体に静脈内注入により約1時間~約4時間、約2時間~約4時間、または約1時間、約2時間もしくは約4時間のいずれかにわたって(例えば、本明細書に記載されるように)投与される、ステップ;個体に組成物の第4の用量を12週目(±3日)に投与するステップであって、組成物の第4の用量が個体に静脈内注入により約1時間~約4時間、約2時間~約4時間、または約1時間、約2時間もしくは約4時間のいずれかにわたって(例えば、本明細書に記載されるように)投与される、ステップ;個体に組成物の第5の用量を16週日目(±3日)に投与するステップであって、組成物の第5の用量が個体に静脈内注入により約1時間~約4時間、約2時間~約4時間、または約1時間、約2時間もしくは約4時間のいずれかにわたって(例えば、本明細書に記載されるように)投与される、ステップ;および個体に組成物の第6の用量を20週間目(±3日)に投与するステップであって、組成物の第6の用量が個体に静脈内注入により約1時間~約4時間、約2時間~約4時間、または約1時間、約2時間もしくは約4時間のいずれかにわたって(例えば、本明細書に記載されるように)投与される、ステップを含む。
【0018】
本明細書に記載の実施形態のいずれかによる一部の実施形態では、個体は、活性化好酸球の増加、Siglec-8を発現する肥満細胞の活性増大、好酸球および/もしくは肥満細胞の増加、または好酸球および/もしくは肥満細胞の活性化増加のうちの1つもしくは複数によって特徴付けられる疾患もしくは障害を有するか、またはそのような疾患もしくは障害であると診断されている。一部の実施形態では、個体は、喘息を合併した慢性鼻副鼻腔炎、アスピリンによって悪化した呼吸器疾患、副鼻腔疾患を伴う成人発症の非アトピー型喘息、慢性閉塞性肺疾患、線維性疾患、前線維性疾患(pre-fibrotic disease)、進行全身性肥満細胞症、無痛性全身性肥満細胞症(ISM)、炎症性腸疾患(IBD)、好酸球性食道炎(EOE)、好酸球性胃炎(EG)、好酸球性胃腸炎(EGE)、好酸球性十二指腸炎、好酸球性大腸炎(EOC)、肥満細胞胃炎もしくは肥満細胞胃腸炎、肥満細胞上昇に伴う胃炎もしくは胃腸炎、肥満細胞上昇に伴う過敏性腸症候群、機能性胃腸疾患(functional gastrointestinal disease)、アレルギー性結膜炎、巨大乳頭性結膜炎、慢性じんま疹、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、アレルギー性喘息、好酸球性表現型もしくは肥満細胞表現型を有する喘息、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)、セリアック病、胃不全麻痺、好酸球増多症候群、アトピー性皮膚炎、アナフィラキシー、血管性浮腫、肥満細胞活性化症候群/障害、および好酸球性筋膜炎からなる群より選択される疾患もしくは障害を有するか、またはそのような疾患もしくは障害であると診断されている。一部の実施形態では、本開示の方法は、喘息を合併した慢性鼻副鼻腔炎、アスピリンによって悪化した呼吸器疾患、副鼻腔疾患を伴う成人発症の非アトピー型喘息、慢性閉塞性肺疾患、線維性疾患、前線維性疾患、進行全身性肥満細胞症、無痛性全身性肥満細胞症(ISM)、炎症性腸疾患(IBD)、好酸球性食道炎(EOE)、好酸球性胃炎(EG)、好酸球性胃腸炎(EGE)、好酸球性大腸炎(EOC)、好酸球性十二指腸炎、肥満細胞胃炎もしくは肥満細胞胃腸炎、肥満細胞上昇に伴う胃炎もしくは胃腸炎、肥満細胞上昇に伴う過敏性腸症候群、機能性胃腸疾患、アレルギー性結膜炎、巨大乳頭性結膜炎、慢性じんま疹、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、アレルギー性喘息、好酸球性表現型もしくは肥満細胞表現型を有する喘息、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)、セリアック病、胃不全麻痺、好酸球増多症候群、アトピー性皮膚炎、アナフィラキシー、血管性浮腫、肥満細胞活性化症候群/障害、および好酸球性筋膜炎からなる群より選択される疾患もしくは障害を有するかまたはそのような疾患もしくは障害であると診断されている個体を処置するために使用される。一部の実施形態では、個体は、ヒトである。一部の実施形態では、組成物の投与の前に、個体には、上記の適応症(例えば、EG、EGE、またはEoE)のうちの1つまたは複数のための過去の処置(例えば、標準的な治療処置)が奏効しなかった。一部の実施形態では、組成物の投与の前に、個体には、上記の適応症(例えば、EG、EGE、またはEoE)のうちの1つまたは複数に対する過去の処置(例えば、標準的な治療処置)によって適切に制御されない疾患症状があった。過去の処置の非限定的な例としては、とりわけ、プロトンポンプ阻害剤(PPI)、全身性もしくは局所副腎皮質ステロイド薬、および/または治療食が挙げられる。
【0019】
本明細書に記載の実施形態のいずれかによる一部の実施形態では、方法は、例えば、個体から得られた生検試料において(組織好酸球数について)または末梢血において(例えば、血中好酸球数について)、組成物の投与前の好酸球数と比較して好酸球数の減少をもたらす。例えば、個体は、EG、EGEおよび/またはEoEを有する可能性があり、生検試料は、胃粘膜または十二指腸粘膜からのものである。一部の実施形態では、方法は、例えば、EG、EGEおよび/またはEoEを有する個体から得られた生検試料(例えば、食道、胃粘膜または十二指腸粘膜からの)において、組成物の投与前の組織好酸球数と比較して組織好酸球数の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%の減少をもたらす。一部の実施形態では、方法は、組成物の投与前の個体における1つまたは複数の症状(例えば、EG、EGEおよび/またはEoEを有する個体における腹痛、悪心、下痢、嘔吐、食事を終える前の満腹感、食欲喪失、腹部痙攣、および腹部膨満のうちの1つまたは複数)と比較して、個体における1つまたは複数の症状の減少をもたらす。一部の実施形態では、方法は、組成物の投与前の個体における1つまたは複数の症状(例えば、EG、EGEおよび/またはEoEを有する個体における腹痛、悪心、下痢、嘔吐、食事を終える前の満腹感(fullness)、食欲喪失、腹部痙攣、および腹部膨満のうちの1つまたは複数)と比較して、個体における1つまたは複数の症状の重症度および/または頻度の少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%の低下をもたらす。一部の実施形態では、方法は、例えばEG、EGEおよび/またはEoEを有する個体において、少なくとも50%、少なくとも60%または少なくとも70%の奏効率をもたらす。一部の実施形態では、奏効率は、組成物の投与前と比較して、組織生検好酸球数が低減した、および/または症状が低減した、個体のパーセンテージを反映する。一部の実施形態では、方法は、組成物の投与前の個体における(例えば、EG、EGEおよび/またはEoEを有する個体における)嚥下障害の重症度と比較して、個体における嚥下障害の重症度の少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、または少なくとも50%の低下をもたらす。
【0020】
本明細書に記載の実施形態のいずれかによる一部の実施形態では、抗体は、Fc領域と、Fc領域に連結されたN-グリコシド結合型炭水化物鎖とを含み、組成物中の抗体のN-グリコシド結合型炭水化物鎖の50%未満は、フコース残基を含有する。一部の実施形態では、組成物中の抗体のN-グリコシド結合型炭水化物鎖の実質的にいずれも、フコース残基を含有しない。一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む、および/または軽鎖可変領域は、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む。一部の実施形態では、抗体は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(iii)配列番号67~70から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む、および/または軽鎖可変領域は、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(iii)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号11~14から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号23~24から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号2~14から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16~24から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号2~10から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16~22から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、(a)(1)配列番号26~29から選択されるアミノ酸配列を含むHC-FR1と、(2)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(3)配列番号31~36から選択されるアミノ酸配列を含むHC-FR2と、(4)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(5)配列番号38~43から選択されるアミノ酸配列を含むHC-FR3と、(6)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3と、(7)配列番号45~46から選択されるアミノ酸配列を含むHC-FR4とを含む重鎖可変領域、および/または(b)(1)配列番号48~49から選択されるアミノ酸配列を含むLC-FR1と、(2)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(3)配列番号51~53から選択されるアミノ酸配列を含むLC-FR2と、(4)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(5)配列番号55~58から選択されるアミノ酸配列を含むLC-FR3と、(6)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR-L3と、(7)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC-FR4とを含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、(a)(1)配列番号26のアミノ酸配列を含むHC-FR1と、(2)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(3)配列番号34のアミノ酸配列を含むHC-FR2と、(4)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(5)配列番号38のアミノ酸配列を含むHC-FR3と、(6)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3と、(7)配列番号45のアミノ酸配列を含むHC-FR4とを含む重鎖可変領域、および/または(b)(1)配列番号48のアミノ酸配列を含むLC-FR1と、(2)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(3)配列番号51のアミノ酸配列を含むLC-FR2と、(4)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(5)配列番号55のアミノ酸配列を含むLC-FR3と、(6)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR-L3と、(7)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC-FR4とを含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、(a)(1)配列番号26のアミノ酸配列を含むHC-FR1と、(2)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(3)配列番号34のアミノ酸配列を含むHC-FR2と、(4)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(5)配列番号38のアミノ酸配列を含むHC-FR3と、(6)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3と、(7)配列番号45のアミノ酸配列を含むHC-FR4とを含む重鎖可変領域;および/または(b)(1)配列番号48のアミノ酸配列を含むLC-FR1と、(2)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(3)配列番号51のアミノ酸配列を含むLC-FR2と、(4)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(5)配列番号58のアミノ酸配列を含むLC-FR3と、(6)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR-L3と、(7)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC-FR4とを含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、(i)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(ii)配列番号91のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(iii)配列番号94のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む重鎖可変領域;および/もしくは(i)配列番号97のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(ii)配列番号100のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(iii)配列番号103のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む軽鎖可変領域;(i)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(ii)配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(iii)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む重鎖可変領域;および/もしくは(i)配列番号98のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(ii)配列番号101のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(iii)配列番号104のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む軽鎖可変領域;または(i)配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(ii)配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(iii)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む重鎖可変領域;および/もしくは(i)配列番号99のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(ii)配列番号102のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(iii)配列番号105のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号106のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および/もしくは配列番号109のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;配列番号107のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および/もしくは配列番号110のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または配列番号108のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および/もしくは配列番号111のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、ヒトSiglec-8、および非ヒト霊長類Siglec-8に結合する。一部の実施形態では、非ヒト霊長類は、ヒヒである。一部の実施形態では、抗体は、ヒトSiglec-8のドメイン1におけるエピトープに結合し、ドメイン1は、配列番号112のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗体は、ヒトSiglec-8のドメイン3におけるエピトープに結合し、ドメイン3は、配列番号114のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗体は、抗体4F11と同じエピトープに結合する。一部の実施形態では、抗体は、ヒトSiglec-8のドメイン2またはドメイン3におけるエピトープに結合する。一部の実施形態では、ドメイン2は、配列番号113のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗体は、抗体1C3と同じエピトープに結合する。一部の実施形態では、ドメイン3は、配列番号114のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗体は、抗体1H10と同じエピトープに結合する。一部の実施形態では、抗体は、ヒトSiglec-8のドメイン1におけるエピトープに結合し、抗体4F11とSiglec-8への結合について競合する。一部の実施形態では、抗体は、抗体2E2とSiglec-8への結合について競合しない。一部の実施形態では、抗体は、抗体2E2ではない。一部の実施形態では、ドメイン1は、配列番号112のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である。一部の実施形態では、抗体は、ヒトIgG Fc領域を含む重鎖Fc領域を含む。一部の実施形態では、ヒトIgG Fc領域は、ヒトIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、ヒトIgG1 Fc領域は、フコシル化されていない。一部の実施形態では、ヒトIgG Fc領域は、ヒトIgG4 Fc領域を含む。一部の実施形態では、ヒトIgG4 Fc領域は、アミノ酸置換S228Pを含み、アミノ酸残基は、KabatにみられるEUインデックスに従って番号付けされている。一部の実施形態では、抗体は、血中好酸球を枯渇させる、および/または肥満細胞活性化を阻害する。一部の実施形態では、抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を向上させるように操作された。一部の実施形態では、抗体は、Fc領域に、ADCC活性を向上させる少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、抗体の重鎖の少なくとも1つまたは2つは、フコシル化されていない。一部の実施形態では、抗体は、配列番号75のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号76もしくは77から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、リレンテリマブである。一部の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、組成物は、抗体および薬学的に許容される担体を含む。
【0021】
ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む組成物を含む医薬と、上記実施形態のいずれか1つによるそれを必要とする個体における医薬の投与のための指示を含む添付文書とを含むキットまたは製品が、本明細書でさらに提供される。
【0022】
本明細書に記載の様々な実施形態の特性の1つ、一部またはすべてを組み合わせて本開示の他の実施形態を形成することができることは理解されよう。本開示のこれらのおよび他の態様は、当業者に明らかになる。本開示のこれらのおよび他の実施形態は、後続の詳細な説明によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、抗Siglec-8抗体を使用するEGおよび/またはEGEを有する患者の処置を調査する第2相研究の主要評価項目をすべての処置群が満たしたことを示す。
【0024】
【
図2】
図2は、第2相研究の総合症状スコア(total symptom score)(TSS)副次評価項目をすべての処置群が満たしたことを示す。
【0025】
【
図3】
図3は、抗Siglec-8抗体での処置に関して測定されたすべての症状にわたっての改善を示す。
【0026】
【
図4】
図4は、第2相研究のレスポンダー副次評価項目をすべての処置群が満たしたことを示す。処置レスポンダーを、13~14週目での組織生検好酸球数の>75%低減および症状(TSS)の>30%低減と定義した。
【0027】
【
図5】
図5は、好酸球性食道炎(EoE)を有する患者における有意な好酸球低減を示す。
【0028】
【
図6】
図6は、EoEを有する患者における嚥下障害の大幅な改善を示す。
【0029】
【
図7】
図7は、第2相研究からの安全性の結果を示す。注目すべきことに、抗Siglec-8抗体での処置を受けた患者の61%より多くが、プラセボでの23%と比較して、注入に伴う反応(IRR)を示した。しかし、IRRの95%は、軽度から中等度であり、他の有意な有害事象(AE)は観察されなかった。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
I.定義
本開示が特定の組成物にも生物システムにも限定されず、そのような組成物または生物システムは、当然のことながら変わることがあることを理解されるべきである。本明細書で使用される専門用語が特定の実施形態の説明を目的にしたものに過ぎず、限定を意図したものでないことも理解されたい。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、内容によるそうでない旨の明白な指示がない限り、複数の言及対象を含む。したがって、例えば、「1つの分子(a molecule)」への言及は、必要に応じて、2つまたはそれより多くのそのような分子の組合せ、およびこれに類するものを含む。
【0031】
用語「約」は、本明細書で使用される場合、本技術分野における当業者には容易に分かるそれぞれの値についての通常の誤差範囲を指す。本明細書での「約」ある値またはパラメーターへの言及は、その値またはパラメーター自体に関する実施形態を含む(および記載する)。
【0032】
本開示の態様および実施形態が、態様および実施形態を「含むこと」、それら「からなること」、およびそれら「から本質的になること」を包含することは理解されよう。
【0033】
用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する完全長抗体を含む)、多重エピトープ特異性を有する抗体組成物、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、ダイアボディ(diabody)、および一本鎖分子)、および抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)2、およびFv)を含む。用語「免疫グロブリン」(Ig)は、本明細書では「抗体」と同義で使用される。
【0034】
基本4本鎖抗体単位は、2本の同一の軽(L)鎖および2本の同一の重(H)鎖で構成されているヘテロ四量体糖タンパク質である。IgM抗体は、J鎖と呼ばれる追加のポリペプチドとともに5つの基本ヘテロ四量体単位からなり、10の抗原結合部位を含有するが、IgA抗体は、J鎖と組み合わせて多価集合体を形成するように重合し得る2~5つの基本4鎖単位を含む。IgGの場合、4鎖単位は、一般に、約150,000ダルトンである。各L鎖は、1つの共有結合性ジスルフィド結合によりH鎖に連結されており、一方、2本のH鎖は、H鎖アイソタイプに依存して1つまたは複数のジスルフィド結合により互いに連結されている。H鎖およびL鎖各々は、規則的な間隔で配置された鎖間ジスルフィド架橋も有する。各H鎖は、N末端に可変ドメイン(VH)を有し、このドメインに、αおよびγ鎖の各々については3つの定常ドメイン(CH)、μおよびεアイソタイプについては4つのCHドメインが続く。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(VL)を有し、このドメインの反対側の末端に定常ドメインが続く。VLは、VHと整列しており、CLは、重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖可変ドメインと重鎖の可変ドメインとの間の界面を形成すると考えられている。VHおよびVLが一緒に対合することにより、単一の抗原結合部位が形成される。異なる抗体クラスの構造および特性については、例えば、Basic and Clinical Immunology, 8th Edition, Daniel P. Sties, Abba I. Terr and Tristram G. Parsolw (eds), Appleton & Lange, Norwalk, CT, 1994, page 71 and Chapter 6を参照されたい。
【0035】
任意の脊椎動物種からのL鎖を、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパおよびラムダと呼ばれる2つの明確に異なるタイプの一方に割り当てることができる。それらの重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンを異なるクラスまたはアイソタイプに割り当てることができる。免疫グロブリンには、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる重鎖をそれぞれ有する、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMという5つのクラスがある。γおよびαクラスは、CHの配列および機能の比較的わずかな差異に基づいてサブクラスにさらに分けられ、例えば、ヒトは、次のサブクラスを発現する:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2。IgG1抗体は、アロタイプと呼ばれる複数の多型バリアントで存在することができ(Jefferis and Lefranc 2009. mAbs Vol 1 Issue 4 1-7において概説されている)、これらのバリアントのいずれも、本開示における使用に好適である。ヒト集団における一般的なアロタイプバリアントは、文字a、f、n、zで表記されるものである。
【0036】
「単離された」抗体は、その産生環境の成分から(例えば、天然にまたは組換えにより)同定、分離および/または回収されたものである。一部の実施形態では、単離されたポリペプチドには、その産生環境からの他の成分が一切付随していない。その産生環境の夾雑成分、例えば、組換えトランスフェクト細胞に起因する夾雑成分は、抗体の研究での使用、診断上の使用、または治療上の使用に概して干渉することになる物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質様または非タンパク質様溶質を含み得る。一部の実施形態では、ポリペプチドは、(1)例えばローリー法により決定して抗体の95重量%より高くまで、一部の実施形態では99重量%より高くまで、(1)スピニングカップシークエネーター(spinning cup sequenator)の使用によりN末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度に、または(3)クーマシーブルー染色もしくは銀染色を使用する非還元もしくは還元条件下でのSDS-PAGEにより均一になるまで、精製される。単離された抗体は、その抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないことになるため、組換え細胞内のin situの抗体を含む。しかし、通常は、単離されたポリペプチドまたは抗体は、少なくとも1つの精製ステップにより調製される。
【0037】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書において使用される場合、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、わずかな量で存在し得る天然で生じる変異および/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除いて、同一である。一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖にC末端切断を有する。例えば、1、2、3、4または5アミノ酸残基が、重鎖および/または軽鎖のC末端で切断されている。一部の実施形態では、C末端切断により、重鎖からC末端リシンが除去される。一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖にN末端切断を有する。例えば、1、2、3、4または5アミノ酸残基が、重鎖および/または軽鎖のN末端で切断されている。一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、複数の抗原部位に対するもの(例えば、二重特異性抗体または多重特異性抗体)である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られる場合の抗体の特徴を示すものであり、この修飾語を、いずれかの特定の方法による抗体の産生を求めるものと解釈すべきではない。例えば、本開示に従って使用されるモノクローナル抗体を様々な技法により作製することができ、そのような技法には、例えば、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ技術、およびヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座または遺伝子の一部またはすべてを有するヒト抗体またはヒト様抗体を動物において産生するための技術が含まれる。
【0038】
用語「ネイキッド抗体」は、細胞傷害性部分または放射性標識にコンジュゲートされていない抗体を指す。
【0039】
用語「全長抗体」、「インタクト抗体」、または「抗体全体」は、抗体断片とは対照的に、その実質的にインタクトな形態の抗体を指すために同義で使用される。具体的には、抗体全体は、Fc領域を含む重鎖および軽鎖を有するものを含む。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列バリアントであり得る。一部の場合には、インタクト抗体は、1つまたは複数のエフェクター機能を有し得る。
【0040】
「抗体断片」は、インタクト抗体の一部分、インタクト抗体の抗原結合領域および/または可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFv断片;ダイアボディ;線状抗体(米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapata et al., Protein Eng. 8(10): 1057-1062 [1995]を参照されたい);抗体断片から形成される一本鎖抗体分子および多重特異性抗体が挙げられる。
【0041】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合性断片と、残りの「Fc」断片(この名称は、容易に結晶化できることを表す)とを生じさせた。Fab断片は、全L鎖に加えてH鎖の可変領域ドメイン(VH)および一方の重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)からなる。各Fab断片は、抗原結合に関して一価であり、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理は、単一の大きなF(ab’)2断片を生じさせ、この断片は、ジスルフィドにより連結された異なる抗原結合活性を有する2つのFab断片にほぼ相当し、依然として抗原を架橋させることができる。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含む少数の追加の残基をCH1ドメインのカルボキシ末端に有することによって、Fab断片と異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’についての本明細書での名称である。F(ab’)2抗体断片は、その間にヒンジシステインを有する対のFab’断片として、そもそも生成された。抗体断片の他の化学的カップリングもまた公知である。
【0042】
Fc断片は、ジスルフィドにより一緒に保持されている両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域における配列によって決定され、この領域もまた、ある特定のタイプの細胞上に見られるFc受容体(FcR)により認識される。
【0043】
「Fv」は、完全抗原認識および結合部位を含有する最小抗体断片である。この断片は、1つの重鎖可変領域ドメインと1つの軽鎖可変領域ドメインとが密接に非共有結合的に会合している二量体からなる。これら2つのドメインのフォールディングから6つの超可変ループ(H鎖およびL鎖から各々3つのループ)が生じ、これらの超可変ループが、抗原結合のためのアミノ酸残基を提供し、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)であっても、結合部位全体よりは低い親和性でだが、抗原を認識し、抗原に結合する能力を有する。
【0044】
「sFv」または「scFv」と略記されもする「一本鎖Fv」は、接続されて単一ポリペプチド鎖になっているVHおよびVL抗体ドメインを含む抗体断片である。一部の実施形態では、sFvポリペプチドは、sFvが抗原結合に望ましい構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーをVHドメインとVLドメインとの間にさらに含む。sFvの概説については、PluckthunのThe Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照されたい。
【0045】
本開示の抗体の「機能性断片」は、インタクト抗体の抗原結合領域もしくは可変領域を一般に含むインタクト抗体の一部分を含むか、または改良されたFcR結合能力を保持するもしくは有する抗体のFv領域を含む。抗体断片の例としては、線状抗体、抗体断片から形成される一本鎖抗体分子および多重特異性抗体が挙げられる。
【0046】
本明細書におけるモノクローナル抗体には、具体的には、重鎖および/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同であるが、鎖の残部が、別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)および、そのような抗体の断片も、それらが所望される生物学的活性を呈するのであれば、含まれる(米国特許第4,816,567号;Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984))。本明細書における目的のキメラ抗体は、抗体の抗原結合領域が、例えば、マカクザルを目的の抗原で免疫化することにより産生された抗体に由来する、PRIMATIZED(登録商標)抗体を含む。本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体」は、「キメラ抗体」のサブセットとして使用される。
【0047】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVRからの残基が、所望の特異性、親和性および/または能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)のHVRからの残基に置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の事例では、ヒト免疫グロブリンのFR残基が、対応する非ヒト残基に置き換えられている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含むことがある。これらの修飾は、結合親和性などの抗体の性能をさらに洗練するために行われ得る。一般に、ヒト化抗体は、超可変ループのすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリン配列のものに対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のものに対応するが、FR領域が、抗体の性能、例えば、結合親和性、異性化、免疫原性などを改善する1つまたは複数の個々のFR残基置換を含み得る、少なくとも1つの、および典型的には2つの、可変ドメインの実質的にすべてを含むことになる。一部の実施形態では、FRにおけるこれらのアミノ酸置換の数は、H鎖内に6以下、およびL鎖内に3以下である。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンのものも、必要に応じて含むことになる。さらなる詳細については、例えば、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986);Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596 (1992)を参照されたい。例えば、Vaswani and Hamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115 (1998);Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995);Hurle and Gross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994);ならびに米国特許第6,982,321号および同第7,087,409号も参照されたい。一部の実施形態では、ヒト化抗体は、単一の抗原部位に対するものである。一部の実施形態では、ヒト化抗体は、複数の抗原部位に対するものである。代替ヒト化方法は、米国特許第7,981,843号および米国特許出願公開第2006/0134098号に記載されている。
【0048】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖および軽鎖の可変ドメインは、それぞれ、「VH」および「VL」と呼ばれ得る。これらのドメインは、一般に、抗体の最も可変性の高い部分であり(同じクラスの他の抗体と比較して)、抗原結合部位を含有する。
【0049】
用語「超可変領域」、「HVR」、または「HV」は、本明細書で使用される場合、配列が超可変性である、および/または構造的に定義されるループを形成する、抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は、VHに3つ(H1、H2、H3)およびVLに3つ(L1、L2、L3)の、6つのHVRを含む。天然抗体の場合、H3およびL3は、6つのHVRの中で最も大きい多様性を示し、H3は、特に、抗体に対する優れた特異性を付与する固有の役割を果たすと考えられている。例えば、Xu et al. Immunity 13:37-45 (2000);Johnson and Wu in Methods in Molecular Biology 248:1-25 (Lo, ed., Human Press, Totowa, NJ, 2003)を参照されたい。実際に、重鎖のみからなる天然に存在するラクダ科動物抗体は、軽鎖の非存在下でも機能的であり、安定している。例えば、Hamers-Casterman et al., Nature 363:446-448 (1993)およびSheriff et al., Nature Struct.Biol.3:733-736 (1996)を参照されたい。
【0050】
いくつかのHVR描写が使用されており、本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)であるHVRは、配列可変性に基づくものであり、最も一般的に使用されている(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5
th Ed. Public Health Service, National Institute of Health, Bethesda, MD (1991))。Chothia HVRは、その代わりに、構造的ループの位置を参照する(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。「contact」HVRは、入手可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらのHVRの各々からの残基が下に記述される。
【表6】
【0051】
別段の指示がない限り、可変ドメインの残基(HVR残基およびフレームワーク領域の残基)は、上掲のKabatらに従って番号付けされている。
【0052】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書で定義されたHVR残基以外の可変ドメインの残基である。
【0053】
「Kabatにおける可変ドメイン残基番号付け」または「Kabatにおけるアミノ酸位置番号付け」という表現、およびこれらの変形表現は、上掲のKabatらにおける抗体の編集の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用された番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用すると、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはHVRの短縮または可変ドメインのFRもしくはHVRへの挿入に対応する、より少ないまたは追加のアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸インサート(Kabatによれば残基52a)、および重鎖FR残基82の後に挿入残基(例えば、Kabatによれば残基82a、82bおよび82cなど)を含み得る。残基のKabat番号付けは、所与の抗体について、その抗体の配列と「標準」Kabat番号付け配列との相同領域でのアラインメントにより決定され得る。
【0054】
「アクセプターヒトフレームワーク」は、本明細書では、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来するVLまたはVHフレームワークのアミノ酸配列を含む、フレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークもしくはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含むこともあり、または既存のアミノ酸配列変化を含有することもある。一部の実施形態では、既存のアミノ酸変化の数は、10もしくはそれ未満、9もしくはそれ未満、8もしくはそれ未満、7もしくはそれ未満、6もしくはそれ未満、5もしくはそれ未満、4もしくはそれ未満、3もしくはそれ未満、または2もしくはそれ未満である。
【0055】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列をアラインし、必要に応じて、最大配列同一性パーセントを達成するようにギャップを導入した後の、いずれの保存的置換も配列同一性の一部と見なさない、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージと定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアラインメントは、当技術分野における技能の範囲内である様々な手法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアラインメントするための適切なパラメーターを決定することができる。例えば、所与のアミノ酸配列Bに対する(to)、所与のアミノ酸配列Bとの、または所与のアミノ酸配列Bを対照とする(against)、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(その代わりに、所与のアミノ酸配列Bに対する(to)、所与のアミノ酸配列Bとの、または所与のアミノ酸配列Bを対照とする(against)、ある特定のアミノ酸配列同一性%を有するまたは含む、所与のアミノ酸配列Aと、表現されることもある)は、以下:
100×分数X/Y
(式中、Xは、そのプログラムのアラインメントで配列によるAとBとの同一マッチとしてのスコアを獲得したアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である)として算出される。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性%が、BのAに対するアミノ酸配列同一性%と等しくならないことは、理解されるであろう。
【0056】
特定のポリペプチドにまたは特定のポリペプチド上のエピトープ「に結合する」、「に特異的に結合する」、または「に特異的である」抗体は、いずれの他のポリペプチドにも、いずれの他のポリペプチドエピトープにも、実質的に結合することなく、その特定のポリペプチドにまたは特定のポリペプチド上のエピトープに結合するものである。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)の、無関係の非Siglec-8ポリペプチドへの結合は、当技術分野において公知の方法(例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA))により測定して、抗体のSiglec-8への結合の約10%未満である。一部の実施形態では、Siglec-8に結合する抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦2nM、≦1nM、≦0.7nM、≦0.6nM、≦0.5nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10-8Mまたはそれ未満、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0057】
用語「抗Siglec-8抗体」または「ヒトSiglec-8に結合する抗体」は、いずれの他のポリペプチドにも、無関係の非Siglec-8ポリペプチドのエピトープにも、実質的に結合することなく、ヒトSiglec-8のポリペプチドまたはエピトープに結合する抗体を指す。
【0058】
用語「Siglec-8」は、本明細書で使用される場合、ヒトSiglec-8タンパク質を指す。この用語は、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントをはじめとする、Siglec-8の天然に存在するバリアントも含む。例示的なヒトSiglec-8のアミノ酸配列は、配列番号72で示される。別の例示的なヒトSiglec-8のアミノ酸配列は、配列番号73で示される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8タンパク質は、免疫グロブリンFc領域に融合されたヒトSiglec-8細胞外ドメインを含む。免疫グロブリンFc領域に融合された例示的なヒトSiglec-8細胞外ドメインのアミノ酸配列は、配列番号74で示される。配列番号74における下線付きのアミノ酸配列は、Siglec-8 Fc融合タンパク質アミノ酸配列のFc領域を示す。
ヒトSiglec-8アミノ酸配列
【化1】
ヒトSiglec-8アミノ酸配列
【化2】
Siglec-8 Fc融合タンパク質アミノ酸配列
【化3】
【0059】
「アポトーシスを誘導する」抗体または「アポトーシス性」である抗体は、標準的なアポトーシスアッセイ、例えば、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の膨張、細胞断片化、および/または膜小胞(アポトーシス小体と呼ばれる)の形成により決定される、プログラム細胞死を誘導するものである。例えば、本開示の抗Siglec-8抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)のアポトーシス活性を、細胞をアネキシンVで染色することにより示すことができる。
【0060】
抗体の「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列バリアントFc領域)に起因するその生物活性を指し、抗体のアイソタイプによって異なる。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合および補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);ファゴサイトーシス;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;およびB細胞活性化が挙げられる。
【0061】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」または「ADCC」とは、ある特定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に結合している分泌されたIgが、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原担持標的細胞に特異的に結合すること、およびその後に、その標的細胞を細胞毒素で死滅させることを可能にする、細胞傷害の一形態を指す。抗体は、細胞傷害性細胞に「武器を持たせる」ものであり、この機序により標的細胞を死滅させるために必要である。ADCCを媒介するための主要な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。造血細胞上でのFc発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9: 457-92 (1991)の464頁の表3にまとめられている。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)は、ADCCを増強する。目的の分子のADCC活性を評価するために、in vitro ADCCアッセイ、例えば、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されているものを、行うことができる。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、または加えて、目的の分子のADCC活性を、in vivoで、例えば、Clynes et al., PNAS USA 95:652-656 (1998)で開示されているものなどの動物モデルにおいて、評価することができる。ADCC活性および他の抗体特性を変える他のFcバリアントとしては、Ghetie et al., Nat Biotech.15:637-40, 1997;Duncan et al, Nature 332:563-564, 1988;Lund et al., J. Immunol 147:2657-2662, 1991;Lund et al, Mol Immunol 29:53-59, 1992;Alegre et al, Transplantation 57:1537-1543, 1994;Hutchins et al., Proc Natl. Acad Sci USA 92:11980-11984, 1995;Jefferis et al, Immunol Lett.44:111-117, 1995;Lund et al., FASEB J9:115-119, 1995;Jefferis et al, Immunol Lett 54:101-104, 1996;Lund et al, J Immunol 157:4963-4969, 1996;Armour et al., Eur J Immunol 29:2613-2624, 1999;Idusogie et al, J Immunol 164:4178-4184, 200;Reddy et al, J Immunol 164:1925-1933, 2000;Xu et al., Cell Immunol 200:16-26, 2000;Idusogie et al, J Immunol 166:2571-2575, 2001;Shields et al., J Biol Chem 276:6591-6604, 2001;Jefferis et al, Immunol Lett 82:57-65.2002;Presta et al., Biochem Soc Trans 30:487-490, 2002;Lazar et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103:4005-4010, 2006;米国特許第5,624,821号、同第5,885,573号、同第5,677,425号、同第6,165,745号、同第6,277,375号、同第5,869,046号、同第6,121,022号、同第5,624,821号、同第5,648,260号、同第6,194,551号、同第6,737,056号、同第6,821,505号、同第6,277,375号、同第7,335,742号、および同第7,317,091号により開示されているものが挙げられる。
【0062】
用語「Fc領域」は、本明細書では、天然配列Fc領域およびバリアントFc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は様々であり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226位のアミノ酸残基から、またはPro230から、そのカルボキシル末端に及ぶように通常は定義される。本開示の抗体における使用に好適な天然配列Fc領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む。組換えIgG4抗体において観察される不均一性をなくすために、単一のアミノ酸置換(Kabatの番号付けによればS228P;IgG4Proと呼ばれる)を導入することができる。Angal, S. et al.(1993) Mol Immunol 30, 105-108を参照されたい。
【0063】
「非フコシル化」抗体または「フコース欠損」抗体は、Fc領域に結合している炭水化物構造のフコースが低減されたか、またはフコースが欠如している、Fc領域を含む、グリコシル化抗体バリアントを指す。一部の実施形態では、フコースが低減されたか、またはフコースが欠如している抗体は、改善されたADCC機能を有する。非フコシル化抗体またはフコース欠損抗体は、細胞系において産生された同じ抗体におけるフコースの量と比較してフコースが低減されている。一部の実施形態では、本明細書で企図される非フコシル化抗体組成物またはフコース欠損抗体組成物は、組成物中の抗体のFc領域に結合しているN結合型グリカンの約50%未満がフコースを含む、組成物である。
【0064】
用語「フコシル化」または「フコシル化された」は、抗体のペプチド骨格に結合しているオリゴ糖内にフコース残基が存在することを指す。具体的には、フコシル化抗体は、抗体Fc領域に結合しているN結合型オリゴ糖の一方または両方における最も内側のN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基に、例えば、ヒトIgG1 FcドメインのAsn297位(Fc領域残基のEU番号付け)に、α(1,6)結合型フコースを含む。Asn297は、免疫グロブリンのわずかな配列変動に起因して、297位の約+3アミノ酸上流または下流に、すなわち、294~300位の間に、位置することもある。
【0065】
「フコシル化度(degree of fucosylation)」は、当技術分野において公知の方法によって特定される、例えば、マトリックス支援レーザー脱離-イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)により評価されるN-グリコシダーゼFで処理された抗体組成物中の、すべてのオリゴ糖に対するフコシル化オリゴ糖のパーセンテージである。「完全フコシル化抗体」の組成物では、本質的にすべてのオリゴ糖が、フコース残基を含む、すなわち、フコシル化されている。一部の実施形態では、完全フコシル化抗体の組成物は、少なくとも約90%のフコシル化度を有する。したがって、そのような組成物中の個々の抗体は、Fc領域内の2つのN結合型オリゴ糖の各々にフコース残基を概して含む。逆に、「完全非フコシル化」抗体の組成物には、フコシル化されているオリゴ糖が本質的になく、そのような組成物中の個々の抗体は、Fc領域内の2つのN結合型オリゴ糖のいずれにもフコース残基を含有しない。一部の実施形態では、完全非フコシル化抗体の組成物は、約10%未満のフコシル化度を有する。「部分フコシル化抗体」の組成物では、オリゴ糖の一部のみがフコースを含む。そのような組成物中の個々の抗体は、フコース残基を、Fc領域内のN結合型オリゴ糖のいずれにも含まないこともあり、Fc領域内のN結合型オリゴ糖の一方または両方に含むこともあるが、ただし、組成物が、Fc領域内のN結合型オリゴ糖内のフコース残基が欠如している本質的にすべての個々の抗体を含むわけでも、Fc領域内の両方のN結合型オリゴ糖の両方にフコース残基を含有する本質的にすべての個々の抗体を含むわけでもないことを条件とする。一実施形態では、部分フコシル化抗体の組成物は、約10%~約80%(例えば、約50%~約80%、約60%~約80%、または約70%~約80%)のフコシル化度を有する。
【0066】
「結合親和性」は、本明細書で使用される場合、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合性相互作用の強度を指す。一部の実施形態では、Siglec-8(これは、本明細書に記載のSiglec-8-Fc融合タンパク質などの、二量体であることもある)に対する抗体の結合親和性は、一般に、解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載のものを含む、当技術分野において公知の一般的な方法により測定することができる。
【0067】
「結合アビディティー」は、本明細書で使用される場合、分子(例えば、抗体)の複数の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との結合強度を指す。
【0068】
本明細書における抗体をコードする「単離された」核酸分子は、同定され、それが産生された環境では通常それに付随している少なくとも1つの夾雑核酸分子から分離されている、核酸分子である。一部の実施形態では、単離された核酸には、産生環境に付随するいかなる成分も付随していない。本明細書におけるポリペプチドおよび抗体コードする単離された核酸分子は、それが自然界に見られる形態または状況のもの以外の形態のものである。したがって、単離された核酸分子は、細胞内に天然に存在する本明細書におけるポリペプチドおよび抗体をコードする核酸と区別される。
【0069】
用語「医薬製剤」は、活性成分の生物活性が有効であることを可能にするような形態である調製物であって、製剤が投与されることになる個体にとって許容できないほど毒性である追加の成分を含有しない調製物を指す。そのような製剤は、無菌である。
【0070】
「担体」は、本明細書で使用される場合、用いられる投薬量および濃度でそれに曝露される細胞または哺乳動物にとって非毒性である、薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤を含む。多くの場合、生理学的に許容される担体は、pH緩衝水溶液である。生理学的に許容される担体の例としては、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸および他の有機酸;抗酸化剤(アスコルビン酸を含む);低分子量(例えば、約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンもしくはリシン;単糖類、二糖類および他の炭水化物(グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む);キレート剤、例えば、EDTA;糖アルコール、例えば、マンニトールまたはソルビトール;塩形成性対イオン、例えば、ナトリウム;ならびに/または非イオン性表面活性剤、例えば、TWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)およびPLURONICS(登録商標)が挙げられる。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「処置」または「処置すること」は、臨床病理の過程で処置を受けている個体または細胞の自然経過を変えるように計画された臨床介入を指す。処置の望ましい効果としては、疾患進行速度の低下、病状の改善または緩和、および寛解または予後の改善が挙げられる。例えば、疾患に関連する1つまたは複数の症状が軽減または消失した場合、個体は、成功裏に「処置」されている。例えば、処置が、罹患者の生活の質の向上、疾患を処置するために必要とされる他の投与薬の用量の減少、疾患の再発頻度の低減、疾患の重症度の低下、疾患の発症もしくは進行の遅延、および/または個体の生存の延長をもたらした場合、個体は、成功裏に「処置」されている。
【0072】
本明細書で使用される場合、「と併せて」または「と組み合わせて」は、1つの処置モダリティを別の処置モダリティに加えて投与することを指す。したがって、「と併せて」または「と組み合わせて」は、1つの処置モダリティを、他の処置モダリティの個体への投与前、投与中または投与後に投与することを指す。
【0073】
本明細書で使用される場合、用語「予防」または「予防すること」は、個体における疾患の発生または再発に対する予防法を提供することを含む。個体は、疾患があるとまだ診断されていないが、疾患にかかりやすい素因を有すること、疾患に罹患しやすいこと、または疾患を発症するリスクがあることがある。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)は、疾患の発症を遅延させるために使用される。
【0074】
本明細書で使用される場合、疾患を発症する「リスクがある」個体には検出可能な疾患もしくは疾患の症状があっても、なくてもよく、そのような個体は、本明細書に記載の処置方法の前に検出可能な疾患または疾患の症状を示していたことがあっても、示していたことがなくてもよい。「リスクがある」は、個体が、当技術分野において公知であるような、疾患の発症と相関する測定可能なパラメーターである、1つまたは複数のリスク因子を有することを示す。これらのリスク因子の1つまたは複数を有する個体は、疾患を発症する確率が、これらのリスク因子の1つまたは複数を有さない個体よりも高い。
【0075】
「有効量」は、少なくとも、治療的または予防的結果を含む所望のまたは示される効果を必要な投薬量で必要な期間にわたって得るために有効な量を指す。有効量を1回または複数の投与で提供することができる。「治療有効量」は、少なくとも、特定の疾患の測定可能な改善を果たすのに必要な最低濃度である。本明細書における治療有効量は、患者の病状、年齢、性別および体重、ならびに個体において所望の応答を誘起する抗体の能力などの、因子によって変わり得る。治療有効量は、抗体のいかなる毒性または有害効果よりも、治療に有益な効果のほうが上回る量でもあり得る。「予防有効量」は、必要な投薬量で必要な期間にわたって所望の予防的結果を達成するのに有効な量を指す。必ずしもそうとは限らないが、通常は、予防用量は疾患の前にまたはより早期に個体に使用されるので、予防有効量は、治療有効量より少ない量であり得る。
【0076】
「慢性」投与は、初期の治療効果(活性)を長期間にわたって維持するような、急性方式とは対照的な連続方式での医薬の投与を指す。「間欠」投与は、中断することなく連続的に行われる処置ではなく、むしろ事実上周期的である処置である。
【0077】
用語「添付文書」は、治療製品の市販のパッケージ内に通例含まれている指示であって、そのような治療製品の使用に関する適応症、用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌および/または警告についての情報を含む指示を指すために使用される。
【0078】
本明細書で使用される場合、「個体」または「被験体」は、哺乳動物である。処置を目的として「哺乳動物」は、ヒト、飼育動物および家畜、ならびに動物園、競技用または愛玩用の動物、例えば、イヌ、ウマ、ウサギ、ウシ、ブタ、ハムスター、アレチネズミ、マウス、フェレット、ラット、ネコなどを含む。一部の実施形態では、個体または被験体は、ヒトである。
【0079】
II.方法
個体に、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む組成物を投与するための方法であって、副腎皮質ステロイド薬が個体に組成物(すなわち、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む)の第1の用量の投与の少なくとも6時間前に投与される、方法が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、方法は、個体に副腎皮質ステロイド薬を投与するステップ、次いで、副腎皮質ステロイド薬の投与の少なくとも6時間後に組成物(すなわち、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む)の第1の用量を投与するステップを含む。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、個体に組成物の投与の少なくとも12時間前に投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、個体に組成物の投与前24時間以内に、例えば、投与の6~24時間前または12~24時間前に、投与される。理論に拘束されることを望まないが、副腎皮質ステロイド薬の投与は、抗Siglec-8抗体の投与に関連するIRRのリスクおよび/または重症度を軽減するのに役立ち得ると考えられる。一部の実施形態では、個体は、ヒトである。
【0080】
個体に、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む組成物を投与するための方法であって、組成物の第1の用量が個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される、方法が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、個体に組成物(すなわち、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む)の第1の用量の投与の少なくとも6時間前に投与される。一部の実施形態では、方法は、個体に副腎皮質ステロイド薬を投与するステップ、次いで、個体に副腎皮質ステロイド薬の投与の少なくとも6時間後に組成物(すなわち、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む)の第1の用量を投与するステップを含み、組成物の第1の用量は、個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される。理論に拘束されることを望まないが、第1の用量のより長い注入時間および/またはより緩徐な注入速度は、抗Siglec-8抗体の投与に関連するIRRのリスクおよび/または重症度を軽減するのに役立ち得ると考えられる。一部の実施形態では、個体は、ヒトである。
【0081】
一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、プレドニゾンである。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、またはデキサメタゾンである。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、プレドニゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、またはプレドニゾロンである。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、抗Siglec-8抗体での処置を受けている個体により自己投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、経口投与される。
【0082】
一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬(例えば、プレドニゾン)は、0.5mg/kgより多い用量、または約1mg/kgで投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬(例えば、プレドニゾン)は、80mgの用量で投与される。例えば、一部の実施形態では、方法は、個体に、0.5mg/kgより多いプレドニゾンを、抗Siglec-8抗体の第1の用量の投与の少なくとも6時間前(および必要に応じて24時間以内)、少なくとも12時間前(および必要に応じて24時間以内)、6~24時間前、または12~24時間前に投与するステップを含む。一部の実施形態では、方法は、個体に、0.5mg/kg~1mg/kgのプレドニゾンを、抗Siglec-8抗体の第1の用量の投与の少なくとも6時間前(および必要に応じて24時間以内)、少なくとも12時間前(および必要に応じて24時間以内)、6~24時間前、または12~24時間前に投与するステップを含む。一部の実施形態では、方法は、個体に1mg/kgのプレドニゾンを、抗Siglec-8抗体の第1の用量の投与の少なくとも6時間前(および必要に応じて24時間以内)、少なくとも12時間前(および必要に応じて24時間以内)、6~24時間前、または12~24時間前に投与するステップを含む。一部の実施形態では、方法は、個体に、60mgまたは80mgのプレドニゾンを、抗Siglec-8抗体の第1の用量の投与の少なくとも6時間前(および必要に応じて24時間以内)、少なくとも12時間前(および必要に応じて24時間以内)、6~24時間前、または12~24時間前に投与するステップを含む。
【0083】
一部の実施形態では、第1の用量の投与の少なくとも6時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与は、少なくとも6時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与を伴わない第1の用量の投与と比較して、個体における注入に伴う反応(IRR)のリスクを低減させる。一部の実施形態では、第1の用量の投与の少なくとも12時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与は、少なくとも12時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与を伴わない第1の用量の投与と比較して、個体における注入に伴う反応(IRR)のリスクを低減させる。一部の実施形態では、第1の用量の投与の12~24時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与は、12~24時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与を伴わない第1の用量の投与と比較して、個体における注入に伴う反応(IRR)のリスクを低減させる。一部の実施形態では、第1の用量の投与の少なくとも6時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与は、少なくとも6時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与を伴わない第1の用量の投与と比較して、個体における注入に伴う反応(IRR)の重症度を低減させる。一部の実施形態では、第1の用量の投与の少なくとも12時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与は、少なくとも12時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与を伴わない第1の用量の投与と比較して、個体における注入に伴う反応(IRR)の重症度を低減させる。一部の実施形態では、第1の用量の投与の12~24時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与は、12~24時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与を伴わない第1の用量の投与と比較して、個体における注入に伴う反応(IRR)の重症度を低減させる。
【0084】
一部の実施形態では、組成物の第1の用量は、個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される。一部の実施形態では、第1の用量の総体積の50%未満は、個体に注入の最初の2時間で投与される。一部の実施形態では、第1の用量の総体積の30%未満は、個体に注入の最初の2時間で投与される。一部の実施形態では、第1の用量は、個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:15分間1mL/時、15分間5mL/時、30分間10mL/時、30分間15mL/時、30分間25mL/時、30分間30mL/時、30分間35mL/時、および62分間40mL/時に従って投与される。一部の実施形態では、第1の用量は、個体に、静脈内注入により、表Aに示されているスケジュールに従って投与される。
【表A】
【0085】
一部の実施形態では、約4時間にわたっての静脈内注入による組成物の第1の用量の投与は、約4時間未満である期間にわたっての静脈内注入による第1の用量の投与と比較して、個体における注入に伴う反応(IRR)のリスクを低減させる。一部の実施形態では、約4時間にわたっての静脈内注入による組成物の第1の用量の投与は、約4時間未満である期間にわたっての静脈内注入による第1の用量の投与と比較して、個体における注入に伴う反応(IRR)の重症度を低減させる。
【0086】
一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第1の用量において0.1mg/kg~10mg/kgの間で投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第1の用量において1mg/kg~10mg/kgの間で投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第1の用量において0.1mg/kg~3mg/kgの間で投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第1の用量において0.1mg/kg~1mg/kgの間で投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第1の用量において約1mg/kg~約3mg/kgの間で投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第1の用量において1mg/kgで投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第1の用量において3mg/kgで投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第1の用量において約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1.0mg/kg、約1.5mg/kg、約2.0mg/kg、約2.5mg/kg、約3.0mg/kg、約3.5mg/kg、約4.0mg/kg、約4.5mg/kg、約5.0mg/kg、約5.5mg/kg、約6.0mg/kg、約6.5mg/kg、約7.0mg/kg、約7.5mg/kg、約8.0mg/kg、約8.5mg/kg、約9.0mg/kg、約9.5mg/kg、または約10.0mg/kgのいずれかで投与される。
【0087】
一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第1の用量で静脈内または皮下経路によって投与される。
【0088】
一部の実施形態では、方法は、個体に第1の用量の投与の1~2時間前に副腎皮質ステロイド薬を投与するステップをさらに含む。すなわち、方法は、第1の用量の投与の少なくとも6時間前(および必要に応じて24時間以内)、少なくとも12時間前(および必要に応じて24時間以内)、6~24時間前、または12~24時間前に副腎皮質ステロイド薬を投与するステップ、および第1の用量の投与前1時間以内、投与の約1時間前、投与前2時間以内、投与の約2時間前、または投与の1~2時間前に副腎皮質ステロイド薬を投与するステップを含み得る。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、プレドニゾンである。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、メチルプレドニゾロンである。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、ヒドロコルチゾン、またはデキサメタゾンである。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、経口投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、静脈内投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬(例えば、プレドニゾン)は、0.5mg/kgより多い用量で、第1の用量の投与前1時間以内、投与の約1時間前、投与前2時間以内、投与の約2時間前、または投与の1~2時間前に投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬(例えば、プレドニゾン)は、約1mg/kgの用量で、第1の用量の投与前1時間以内、投与の約1時間前、投与前2時間以内、投与の約2時間前、または投与の1~2時間前に投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬(例えば、プレドニゾン)は、80mgの用量で、第1の用量の投与前1時間以内、投与の約1時間前、投与前2時間以内、投与の約2時間前、または投与の1~2時間前に投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬(例えば、メチルプレドニゾロン)は、100mgの用量で、第1の用量の投与前1時間以内、投与の約1時間前、投与前2時間以内、投与の約2時間前、または投与の1~2時間前に投与される。
【0089】
一部の実施形態では、方法は、個体に第1の用量の投与の1~2時間前に抗ヒスタミン薬を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、第1の用量の投与前1時間以内、投与の約1時間前、投与前2時間以内、投与の約2時間前、または投与の1~2時間前に抗ヒスタミン薬を投与するステップを含み得る。一部の実施形態では、抗ヒスタミン薬は、セチリジンである。一部の実施形態では、抗ヒスタミン薬は、経口投与される。一部の実施形態では、抗ヒスタミン薬(例えば、セチリジン)は、10mgの用量で、第1の用量の投与前1時間以内、投与の約1時間前、投与前2時間以内、投与の約2時間前、または投与の1~2時間前に投与される。一部の実施形態では、抗ヒスタミン薬(例えば、セチリジン)は、10mgの用量で、第1の用量の投与の40分~180分前に投与される。
【0090】
一部の実施形態では、方法は、個体に第1の用量の投与の1~2時間前に解熱薬または非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、第1の用量の投与前1時間以内、投与の約1時間前、投与前2時間以内、投与の約2時間前、または投与の1~2時間前に解熱薬またはNSAIDを投与するステップを含み得る。一部の実施形態では、解熱薬またはNSAIDは、アセトアミノフェンである。一部の実施形態では、解熱薬またはNSAIDは、経口投与される。一部の実施形態では、解熱薬またはNSAID(例えば、アセトアミノフェン)は、975~1000mgの用量で、第1の用量の投与前1時間以内、投与の約1時間前、投与前2時間以内、投与の約2時間前、または投与の1~2時間前に投与される。
【0091】
本明細書に記載の実施形態のいずれかによる一部の実施形態では、方法は、個体に、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む組成物の第2の用量を投与するステップをさらに含む。例えば、第2の用量を、第1の用量の投与の約28日、約4週間または約1カ月後に投与することができる。一部の実施形態では、第2の用量は、第2の用量の投与の少なくとも6時間、少なくとも12時間、6~24時間、または12~24時間前に個体に副腎皮質ステロイド薬を投与することなく、個体に投与される。すなわち、一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、抗Siglec-8抗体の、後続の用量ではなく、第1の用量のみの投与の少なくとも6時間、少なくとも12時間、6~24時間、または12~24時間前に、個体に投与される。
【0092】
一部の実施形態では、組成物の第2の用量は、個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される。一部の実施形態では、第2の用量の総体積の50%未満は、個体に注入の最初の2時間で投与される。一部の実施形態では、第2の用量の総体積の30%未満は、個体に注入の最初の2時間で投与される。一部の実施形態では、第2の用量は、個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:15分間1mL/時、15分間5mL/時、30分間10mL/時、30分間15mL/時、30分間25mL/時、30分間30mL/時、30分間35mL/時、および62分間40mL/時に従って投与される。一部の実施形態では、第2の用量は、個体に、静脈内注入により、表Aに示されているスケジュールに従って投与される。一部の実施形態では、第1および第2の用量は、個体に、静脈内注入により、表Aに示されているスケジュールに従って投与される。
【0093】
一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第2の用量(および必要に応じて任意の後続の用量)において0.1mg/kg~10mg/kgの間で投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第2の用量(および必要に応じて任意の後続の用量)において1mg/kg~10mg/kgの間で投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第2の用量(および必要に応じて任意の後続の用量)において0.1mg/kg~3mg/kgの間で投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第2の用量(および必要に応じて任意の後続の用量)において0.1mg/kg~1mg/kgの間で投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第2の用量(および必要に応じて任意の後続の用量)において約1mg/kg~約3mg/kgの間で投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第2の用量(および必要に応じて任意の後続の用量)において1mg/kgで投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第2の用量(および必要に応じて任意の後続の用量)において3mg/kgで投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第2の用量(および必要に応じて任意の後続の用量)において約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1.0mg/kg、約1.5mg/kg、約2.0mg/kg、約2.5mg/kg、約3.0mg/kg、約3.5mg/kg、約4.0mg/kg、約4.5mg/kg、約5.0mg/kg、約5.5mg/kg、約6.0mg/kg、約6.5mg/kg、約7.0mg/kg、約7.5mg/kg、約8.0mg/kg、約8.5mg/kg、約9.0mg/kg、約9.5mg/kg、または約10.0mg/kgのいずれかで投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第1の用量において約0.1mg/kg~約1mg/kgの間でおよび第2の用量において約3mg/kg~約10mg/kgの間で投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第1の用量において約1mg/kg~約3mg/kgの間でおよび第2の用量において約1mg/kg~約3mg/kgの間で投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第1の用量において1mg/kgでおよび第2の用量において3mg/kgで投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第1の用量において3mg/kgでおよび第2の用量において10mg/kgで投与される。
【0094】
一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第2の用量(および必要に応じて任意の後続の用量)で静脈内または皮下経路によって投与される。
【0095】
一部の実施形態では、第2の用量は、第2の用量の投与の少なくとも6時間前、投与の少なくとも12時間前、投与前24時間以内、投与の6~24時間前、または投与の12~24時間前に副腎皮質ステロイド薬を投与することなく、投与される。他の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、個体に第2の用量の投与の少なくとも6時間前、投与の少なくとも12時間前、投与前24時間以内、投与の6~24時間前、または投与の12~24時間前に投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、プレドニゾンである。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、またはデキサメタゾンである。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、抗Siglec-8抗体での処置を受けている個体により自己投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、経口投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬(例えば、プレドニゾン)は、0.5mg/kgより多い用量、または約1mg/kgで投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬(例えば、プレドニゾン)は、80mgの用量で投与される。例えば、一部の実施形態では、方法は、個体に、0.5mg/kgより多いプレドニゾンを、抗Siglec-8抗体の第2の用量の投与の少なくとも6時間前(および必要に応じて24時間以内)、少なくとも12時間前(および必要に応じて24時間以内)、6~24時間前、または12~24時間前に投与するステップを含む。一部の実施形態では、方法は、個体に1mg/kgのプレドニゾンを、抗Siglec-8抗体の第2の用量の投与の少なくとも6時間前(および必要に応じて24時間以内)、少なくとも12時間前(および必要に応じて24時間以内)、6~24時間前、または12~24時間前に投与するステップを含む。一部の実施形態では、方法は、個体に80mgのプレドニゾンを、抗Siglec-8抗体の第2の用量の投与の少なくとも6時間前(および必要に応じて24時間以内)、少なくとも12時間前(および必要に応じて24時間以内)、6~24時間前、または12~24時間前に投与するステップを含む。一部の実施形態では、第2の用量の投与の少なくとも6時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与は、少なくとも6時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与を伴わない第2の用量の投与と比較して、個体における注入に伴う反応(IRR)のリスクを低減させる。一部の実施形態では、第2の用量の投与の少なくとも12時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与は、少なくとも12時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与を伴わない第2の用量の投与と比較して、個体における注入に伴う反応(IRR)のリスクを低減させる。一部の実施形態では、第2の用量の投与の12~24時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与は、12~24時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与を伴わない第2の用量の投与と比較して、個体における注入に伴う反応(IRR)のリスクを低減させる。一部の実施形態では、第2の用量の投与の少なくとも6時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与は、少なくとも6時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与を伴わない第2の用量の投与と比較して、個体における注入に伴う反応(IRR)の重症度を低減させる。一部の実施形態では、第2の用量の投与の少なくとも12時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与は、少なくとも12時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与を伴わない第2の用量の投与と比較して、個体における注入に伴う反応(IRR)の重症度を低減させる。一部の実施形態では、第2の用量の投与の12~24時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与は、12~24時間前の副腎皮質ステロイド薬の投与を伴わない第2の用量の投与と比較して、個体における注入に伴う反応(IRR)の重症度を低減させる。一部実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、個体に第1および第2の用量の投与の少なくとも6時間前、投与の少なくとも12時間前、投与前24時間以内、投与の6~24時間前、または投与の12~24時間前に投与される。一部の実施形態では、副腎皮質ステロイド薬は、個体に抗Siglec-8抗体の第1および第2の用量の投与の少なくとも6時間前、投与の少なくとも12時間前、投与前24時間以内、投与の6~24時間前、または投与の12~24時間前に投与されるが、抗Siglec-8抗体の後続のいずれの用量の前にも投与されない。
【0096】
一部の実施形態では、方法は、個体に第2の用量(および必要に応じて任意の後続の用量)の投与の1~2時間前に副腎皮質ステロイド薬を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、第1の用量の投与の1~2時間前に個体に投与される副腎皮質ステロイド薬は、メチルプレドニゾロンである。一部の実施形態では、100mgのメチルプレドニゾロンは、個体に第1の用量の(例えば、静脈内)投与前1時間以内、投与の約1時間前、投与前2時間以内、投与の約2時間前、または投与の1~2時間前に投与される。
【0097】
一部の実施形態では、方法は、個体に第2の用量(および必要に応じて任意の後続の用量)の投与の1~2時間前に抗ヒスタミン薬を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、第2の用量(および必要に応じて任意の後続の用量)の投与前1時間以内、投与の約1時間前、投与前2時間以内、投与の約2時間前、または投与の1~2時間前に抗ヒスタミン薬を投与するステップを含み得る。一部の実施形態では、抗ヒスタミン薬は、セチリジンである。一部の実施形態では、抗ヒスタミン薬は、経口投与される。一部の実施形態では、抗ヒスタミン薬(例えば、セチリジン)は、10mgの用量で、第2の用量(および必要に応じて任意の後続の用量)の投与前1時間以内、投与の約1時間前、投与前2時間以内、投与の約2時間前、または投与の1~2時間前に投与される。
【0098】
一部の実施形態では、方法は、個体に第2の用量(および必要に応じて任意の後続の用量)の投与の1~2時間前に解熱薬または非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、第2の用量(および必要に応じて任意の後続の用量)の投与前1時間以内、投与の約1時間前、投与前2時間以内、投与の約2時間前、または投与の1~2時間前に解熱薬またはNSAIDを投与するステップを含み得る。一部の実施形態では、解熱薬またはNSAIDは、アセトアミノフェンである。一部の実施形態では、解熱薬またはNSAIDは、経口投与される。一部の実施形態では、解熱薬またはNSAID(例えば、アセトアミノフェン)は、975~1000mgの用量で、第2の用量(および必要に応じて任意の後続の用量)の投与前1時間以内、投与の約1時間前、投与前2時間以内、投与の約2時間前、または投与の1~2時間前に投与される。
【0099】
本明細書に記載の実施形態のいずれかによる一部の実施形態では、方法は、個体に、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む組成物の第3の用量を(例えば、本明細書に記載されるような第2の用量の投与の後に)投与するステップをさらに含む。例えば、第3の用量を、第2の用量の投与の約28日、約4週間もしくは約1カ月後に、および/または第1の用量の投与の約56日、約8週間もしくは約2カ月後に、投与することができる。一部の実施形態では、第3の用量は、第3の用量の投与の少なくとも6時間、少なくとも12時間、6~24時間、または12~24時間前に個体に副腎皮質ステロイド薬を投与することなく、個体に投与される。
【0100】
一部の実施形態では、組成物の第3の用量は、個体に静脈内注入により約2時間~約4時間にわたって投与される。一部の実施形態では、組成物の第3の用量は、個体に静脈内注入により約1時間~約4時間にわたって投与される。一部の実施形態では、組成物の第3の用量は、個体に静脈内注入により約2時間にわたって投与される。一部の実施形態では、第3の用量は、個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:30分間10mL/時、15分間25mL/時、15分間40mL/時、15分間55mL/時、15分間70mL/時、15分間85mL/時、および16分間100mL/時に従って投与される。一部の実施形態では、第3の用量は、個体に、静脈内注入により、表Bに示されているスケジュールに従って投与される。一部の実施形態では、組成物の第3の用量は、個体に静脈内注入により約3時間にわたって投与される。一部の実施形態では、第3の用量は、個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:30分間2mL/時、30分間10mL/時、30分間20mL/時、30分間40mL/時、および64分間60mL/時に従って投与される。一部の実施形態では、第3の用量は、個体に、静脈内注入により、表Cに示されているスケジュールに従って投与される。一部の実施形態では、組成物の第3の用量は、個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される。一部の実施形態では、第3の用量は、個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:15分間1mL/時、15分間5mL/時、30分間10mL/時、30分間15mL/時、30分間25mL/時、30分間30mL/時、30分間35mL/時、および62分間40mL/時に従って投与される。一部の実施形態では、第3の用量は、個体に、静脈内注入により、表Aに示されているスケジュールに従って投与される。一部の実施形態では、組成物の第3の用量は、個体に静脈内注入により約1時間にわたって投与される。一部の実施形態では、第3の用量は、個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:15分間24mL/時、および45分間125.3mL/時に従って投与される。一部の実施形態では、第3の用量は、個体に、静脈内注入により、表Dに示されているスケジュールに従って投与される。
【表B】
【表C】
【表D】
【0101】
一部の実施形態では、組成物の第1および第2の用量は、個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与され、組成物の第3の用量は、個体に静脈内注入により約1時間~約4時間にわたって投与される。例えば、一部の実施形態では、第1、第2および第3の用量は、個体に静脈内注入により約4時間にわたって、例えば表Aに従って投与される。一部の実施形態では、第1および第2の用量は、個体に静脈内注入により約4時間にわたって、例えば表Aに従って投与され、第3の用量は、個体に静脈内注入により約3時間にわたって、例えば表Cに従って投与される。一部の実施形態では、第1および第2の用量は、個体に静脈内注入により約4時間にわたって、例えば表Aに従って投与され、第3の用量は、個体に静脈内注入により約2時間にわたって、例えば表Bに従って投与される。一部の実施形態では、第1および第2の用量は、個体に静脈内注入により約4時間にわたって、例えば表Aに従って投与され、第3の用量は、個体に静脈内注入により約1時間にわたって、例えば表Dに従って投与される。例えば、第3の用量は、第1および/または第2の用量の投与後に起きる注入に伴う反応がないかまたはそれが軽度である場合、例えば医師の判断に従って、より短い注入時間にわたって個体に投与され得る。
【0102】
一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第3の用量において0.1mg/kg~10mg/kgの間で投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第3の用量において1mg/kg~10mg/kgの間で投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第3の用量において3mg/kgで投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第3の用量において1mg/kgで投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第1の用量において1mg/kgで、続いて第2および第3の用量において3mg/kgで投与される。
【0103】
本明細書に記載の実施形態のいずれかによる一部の実施形態では、方法は、個体に、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む組成物の第4の用量を(例えば、本明細書に記載されるような第3の用量の投与の後に)投与するステップをさらに含む。例えば、第4の用量を、第3の用量の投与の約28日、約4週間もしくは約1カ月後に、第2の用量の投与の約56日、約8週間もしくは約2カ月後に、および/または第1の用量の投与の約84日、約12週間もしくは約3カ月後に、投与することができる。一部の実施形態では、第4の用量は、第3の用量の投与の少なくとも6時間、少なくとも12時間、6~24時間、または12~24時間前に個体に副腎皮質ステロイド薬を投与することなく、個体に投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む組成物の6用量またはそれより多くが個体に投与される(例えば、28日ごとに、4週間ごとに、または毎月投与される)。
【0104】
一部の実施形態では、組成物の第4および/または後続の用量は、個体に静脈内注入により約2時間~約4時間にわたって投与される。一部の実施形態では、組成物の第4および/または後続の用量は、個体に静脈内注入により約1時間~約4時間にわたって投与される。一部の実施形態では、組成物の第4および/または後続の用量は、個体に静脈内注入により約2時間にわたって投与される。一部の実施形態では、組成物の第4および/または後続の用量は、個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:30分間10mL/時、15分間25mL/時、15分間40mL/時、15分間55mL/時、15分間70mL/時、15分間85mL/時、および16分間100mL/時に従って投与される。一部の実施形態では、組成物の第4および/または後続の用量は、個体に、静脈内注入により、表Bに示されているスケジュールに従って投与される。一部の実施形態では、組成物の第4および/または後続の用量は、個体に静脈内注入により約3時間にわたって投与される。一部の実施形態では、組成物の第4および/または後続の用量は、個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:30分間2mL/時、30分間10mL/時、30分間20mL/時、30分間40mL/時、および64分間60mL/時に従って投与される。一部の実施形態では、組成物の第4および/または後続の用量は、個体に、静脈内注入により、表Cに示されているスケジュールに従って投与される。一部の実施形態では、組成物の第4および/または後続の用量は、個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与される。一部の実施形態では、組成物の第4および/または後続の用量は、個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:15分間1mL/時、15分間5mL/時、30分間10mL/時、30分間15mL/時、30分間25mL/時、30分間30mL/時、30分間35mL/時、および62分間40mL/時に従って投与される。一部の実施形態では、組成物の第4および/または後続の用量は、個体に、静脈内注入により、表Aに示されているスケジュールに従って投与される。一部の実施形態では、組成物の第4および/または後続の用量は、個体に静脈内注入により約1時間にわたって投与される。一部の実施形態では、組成物の第4および/または後続の用量は、個体に、静脈内注入により、時系列で、以下のスケジュール:15分間24mL/時、および45分間125.3mL/時に従って投与される。一部の実施形態では、組成物の第4および/または後続の用量は、個体に、静脈内注入により、表Dに示されているスケジュールに従って投与される。
【0105】
一部の実施形態では、組成物の第1および第2の用量は、個体に静脈内注入により約4時間にわたって投与され、組成物の第3および第4の用量は、個体に静脈内注入により約1時間~約4時間にわたって投与される。例えば、一部の実施形態では、第1、第2、第3および第4の用量は、個体に静脈内注入により約4時間にわたって、例えば表Aに従って投与される。一部の実施形態では、第1および第2の用量は、個体に静脈内注入により約4時間にわたって、例えば表Aに従って投与され、第3および/または第4の用量は、個体に静脈内注入により約3時間にわたって、例えば表Cに従って投与される。一部の実施形態では、第1および第2の用量は、個体に静脈内注入により約4時間にわたって、例えば表Aに従って投与され、第3および/または第4の用量は、個体に静脈内注入により約2時間にわたって、例えば表Bに従って投与される。一部の実施形態では、第1および第2の用量は、個体に静脈内注入により約4時間にわたって、例えば表Aに従って投与され、第3および/または第4の用量は、個体に静脈内注入により約1時間にわたって、例えば表Dに従って投与される。一部の実施形態では、第1および第2の用量は、個体に静脈内注入により約4時間にわたって(例えば表Aに従って)投与され、続いて、後続の4用量(例えば、28日ごとに、4週間ごとに、または毎月投与される)が個体に静脈内注入により約1時間~約4にわたって(例えば、表B、CまたはDに従って)投与される。例えば、第3、第4および/または後続の用量は、第1および/または第2、第3の用量の投与後に起きる注入に伴う反応がないかまたはそれが軽度である場合、例えば医師の判断に従って、より短い注入時間にわたって個体に投与され得る。
【0106】
一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第4の用量において0.1mg/kg~10mg/kgの間で投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第4の用量において1mg/kg~10mg/kgの間で投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第4の用量において3mg/kgで投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第4の用量において1mg/kgで投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第1の用量において1mg/kgで、続いて第2、第3および第4の用量において3mg/kgで投与される。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、個体に第1の用量において1mg/kgで、続いて、後続の5用量が3mg/kgで投与される(例えば、28日ごとに、4週間ごとに、または毎月投与される)。
【0107】
ヒトSiglec-8に結合する本明細書に記載の抗体を、本明細書に記載の方法において、単独で、または他の薬剤と組み合わせて使用することができる。上述のそのような併用療法は、併用投与(この場合、2つまたはそれより多くの治療剤が同じまたは別個の製剤に含まれている)および別個の投与を包含し、別個の投与の場合、本開示の抗体の投与を、1つまたは複数の追加の治療剤の投与の前に、その投与と同時に、および/またはその投与の後に行うことができる。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体の投与、および1つまたは複数の追加の治療剤の投与は、互いに約1カ月、約2カ月、約3カ月、約4カ月、約5カ月または約6カ月以内に行われる。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体の投与、および1つまたは複数の追加の治療剤の投与は、互いに約1週間、約2週間または約3週間以内に行われる。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体の投与、および1つまたは複数の追加の治療剤の投与は、互いに約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、または約6日以内に行われる。
【0108】
本開示の方法を様々な適応症に、例えば、好酸球関連および/または肥満細胞関連疾患または障害の処置に、使用することができる。一部の実施形態では、本開示の方法に従って処置される個体は、活性化好酸球の増加、Siglec-8を発現する肥満細胞の活性増大、好酸球および/もしくは肥満細胞の増加、または好酸球および/もしくは肥満細胞の活性化増加のうちの1つもしくは複数を特徴とする疾患もしくは障害を有するか、またはそのような疾患もしくは障害であると診断されている。一部の実施形態では、本開示の方法に従って処置される個体は、喘息を合併した慢性鼻副鼻腔炎、アスピリンによって悪化した呼吸器疾患、副鼻腔疾患を伴う成人発症の非アトピー型喘息、慢性閉塞性肺疾患、線維性疾患、前線維性疾患、進行全身性肥満細胞症、無痛性全身性肥満細胞症(ISM)、炎症性腸疾患(IBD)、好酸球性食道炎(EOE)、好酸球性胃炎(EG)、好酸球性胃腸炎(EGE)、好酸球性大腸炎(EOC)、好酸球性十二指腸炎、肥満細胞胃炎もしくは肥満細胞胃腸炎、肥満細胞上昇に伴う胃炎もしくは胃腸炎、肥満細胞上昇に伴う過敏性腸症候群、機能性胃腸疾患、アレルギー性結膜炎、巨大乳頭性結膜炎、慢性じんま疹、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、アレルギー性喘息、好酸球性表現型もしくは肥満細胞表現型を有する喘息、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)、セリアック病、胃不全麻痺、好酸球増多症候群、アトピー性皮膚炎、アナフィラキシー、血管性浮腫、肥満細胞活性化症候群/障害、および好酸球性筋膜炎からなる群より選択される1つもしくは複数の疾患もしくは障害を有するか、またはそのような疾患もしくは障害であると診断されている。一部の実施形態では、本開示の方法に従って処置される個体は、ヒトである。一部の実施形態では、組成物の投与の前に、個体には、上記の適応症(例えば、EG、EGE、またはEoE)のうちの1つまたは複数に対する過去の処置(例えば、標準的な治療処置)が奏効しなかった。一部の実施形態では、組成物の投与の前に、個体には、上記の適応症(例えば、EG、EGE、またはEoE)のうちの1つまたは複数のための過去の処置(例えば、標準的な治療処置)によって適切に制御されない疾患症状があった。過去の処置の非限定的な例としては、とりわけ、プロトンポンプ阻害剤(PPI)、全身性もしくは局所副腎皮質ステロイド薬、および/または治療食が挙げられる。
【0109】
本明細書に記載の実施形態のいずれかによる一部の実施形態では、方法は、例えば、個体から得られた生検試料において(組織好酸球数について)または末梢血において(血中好酸球数について)、組成物の投与前の好酸球数と比較して好酸球数の減少をもたらす。例えば、個体は、EG、EGEおよび/またはEoEに罹患している可能性があり、生検試料は、胃粘膜または十二指腸粘膜からのものである。一部の実施形態では、方法は、例えば、EG、EGEおよび/またはEoEを有する個体から得られた生検試料(例えば、食道、胃粘膜または十二指腸粘膜からの)において、組成物の投与前の組織好酸球数と比較して組織好酸球数の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%の減少をもたらす。一部の実施形態では、方法は、組成物の投与前の個体における1つまたは複数の症状(例えば、EG、EGEおよび/またはEoEを有する個体における腹痛、悪心、下痢、嘔吐、食事を終える前の満腹感、食欲喪失、腹部痙攣、および腹部膨満のうちの1つまたは複数)と比較して、個体における1つまたは複数の症状の減少をもたらす。一部の実施形態では、方法は、組成物の投与前の個体における1つまたは複数の症状(例えば、EG、EGEおよび/またはEoEを有する個体における腹痛、悪心、下痢、嘔吐、食事を終える前の満腹感、食欲喪失、腹部痙攣、および腹部膨満のうちの1つまたは複数)と比較して、個体における1つまたは複数の症状の重症度および/または頻度の少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%の低下をもたらす。一部の実施形態では、方法は、例えばEG、EGEおよび/またはEoEを有する個体において、少なくとも50%、少なくとも60%または少なくとも70%の奏効率をもたらす。一部の実施形態では、奏効率は、組成物の投与前と比較して、組織生検好酸球数が低減した、および/または症状が低減した、個体のパーセンテージを反映する。一部の実施形態では、奏効率は、組成物の投与前と比較して、組織生検好酸球数が>75%低減した、および症状が>30%低減した、個体のパーセンテージを反映する。一部の実施形態では、方法は、組成物の投与前の個体における(例えば、EG、EGEおよび/またはEoEを有する個体における)嚥下障害の重症度と比較して、個体における嚥下障害の重症度の少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、または少なくとも50%の低下をもたらす。
【0110】
抗体
本開示のある特定の態様は、ヒトSiglec-8に結合する単離された抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合するアゴニスト抗体)を提供する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec-8抗体は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を有する:(1)ヒトSiglec-8に結合する、(2)ヒトSiglec-8の細胞外ドメインに結合する、(3)ヒトSiglec-8に、マウス抗体2E2および/またはマウス抗体2C4よりも高い親和性で結合する、(4)ヒトSiglec-8に、マウス抗体2E2および/またはマウス抗体2C4よりも高いアビディティーで結合する、(5)サーマルシフトアッセイで約70℃~72℃またはそれよりも高いTmを有する、(6)低減したフコシル化度を有するか、またはフコシル化されていない、(7)好酸球上に発現されたヒトSiglec-8に結合し、好酸球のアポトーシスを誘導する、(8)肥満細胞上に発現されるヒトSiglec-8に結合し、肥満細胞を枯渇させるかまたは肥満細胞の数を低減させる、(9)肥満細胞上に発現されるヒトSiglec-8に結合し、肥満細胞のFcεRI依存性活性(例えば、ヒスタミン放出、PGD2放出、Ca2+フラックス、および/またはβ-ヘキソサミニダーゼ放出など)を阻害する、(10)ADCC活性を向上させるように操作されている、(11)肥満細胞上に発現されるヒトSiglec-8に結合し、ADCC活性(in vitroおよび/またはin vivo)により肥満細胞を死滅させる、(12)ヒトおよび非ヒト霊長類のSiglec-8に結合する、(13)ヒトSiglec-8のドメイン1、ドメイン2、および/もしくはドメイン3に結合するか、またはヒトSiglec-8のドメイン1、ドメイン2、および/もしくはドメイン3を含むSiglec-8ポリペプチド(例えば、本明細書に記載の融合タンパク質)に結合する、ならびに(14)活性化好酸球をマウス抗体2E2または2C4のEC50よりも低いEC50で枯渇させる。米国特許第9,546,215号および/またはWO2015089117に記載されている抗体のいずれも、本明細書で提供される方法、組成物、およびキットにおいての使用が見出され得る。
【0111】
一態様では、本開示は、ヒトSiglec-8に結合する抗体を提供する。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8は、配列番号72のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8は、配列番号73のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、肥満細胞上に発現されるヒトSiglec-8に結合し、肥満細胞を枯渇させるかまたは肥満細胞の数を低減させる。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、肥満細胞上に発現されるヒトSiglec-8に結合し、肥満細胞媒介活性を阻害する。
【0112】
一態様では、本発明は、ヒトSiglec-8に結合する抗体を提供する。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8は、配列番号72のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8は、配列番号73のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、ヒトSiglec-8のドメイン1におけるエピトープに結合し、ドメイン1は、配列番号112のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、ヒトSiglec-8のドメイン2におけるエピトープに結合し、ドメイン2は、配列番号113のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、ヒトSiglec-8のドメイン3におけるエピトープに結合し、ドメイン3は、配列番号114のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、配列番号116のアミノ酸を含む融合タンパク質に結合するが、配列番号115のアミノ酸を含む融合タンパク質には結合しない。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、配列番号117のアミノ酸を含む融合タンパク質に結合するが、配列番号115のアミノ酸を含む融合タンパク質には結合しない。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、配列番号117のアミノ酸を含む融合タンパク質に結合するが、配列番号116のアミノ酸を含む融合タンパク質には結合しない。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、ヒトSiglec-8の細胞外ドメインにおける線状エピトープに結合する。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、ヒトSiglec-8の細胞外ドメインにおけるコンフォメーションエピトープに結合する。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、好酸球上に発現されるヒトSiglec-8に結合し、好酸球のアポトーシスを誘導する。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、肥満細胞上に発現されるヒトSiglec-8に結合し、肥満細胞を枯渇させる。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、肥満細胞上に発現されるヒトSiglec-8に結合し、肥満細胞媒介活性を阻害する。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、肥満細胞上に発現されるヒトSiglec-8に結合し、肥満細胞をADCC活性により死滅させる。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、肥満細胞を枯渇させ、肥満細胞活性化を阻害する。一部の実施形態では、本明細書における抗体は、活性化好酸球を枯渇させ、肥満細胞活性化を阻害する。一部の実施形態では、本明細書における抗体(例えば、非フコシル化抗Siglec-8抗体)は、血中好酸球を枯渇させ、肥満細胞活性化を阻害する。一部の実施形態では、本明細書における抗体(例えば、非フコシル化抗Siglec-8抗体)は、末梢血から好酸球を枯渇させ、肥満細胞活性化を阻害する。
【0113】
ヒトSiglec-8および非ヒト霊長類Siglec-8に結合する、単離された抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。霊長類交差反応性を有する抗体の同定は、非ヒト霊長類における抗Siglec-8抗体の前臨床試験に有用であろう。一態様では、本発明は、非ヒト霊長類Siglec-8に結合する抗体を提供する。一態様では、本発明は、ヒトSiglec-8および非ヒト霊長類Siglec-8に結合する、抗体を提供する。一部の実施形態では、非ヒト霊長類Siglec-8は、配列番号118のアミノ酸配列またはその一部分を含む。一部の実施形態では、非ヒト霊長類Siglec-8は、配列番号119のアミノ酸配列またはその一部分を含む。一部の実施形態では、非ヒト霊長類は、ヒヒ(例えば、Papio Anubis)である。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8および非ヒト霊長類Siglec-8に結合する抗体は、ヒトSiglec-8のドメイン1におけるエピトープに結合する。さらなる実施形態では、ヒトSiglec-8のドメイン1は、配列番号112のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8および非ヒト霊長類Siglec-8に結合する抗体は、ヒトSiglec-8のドメイン3におけるエピトープに結合する。さらなる実施形態では、ヒトSiglec-8のドメイン3は、配列番号114のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8および非ヒト霊長類Siglec-8に結合する抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはヒト抗体である。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8および非ヒト霊長類Siglec-8に結合する抗体は、マウス抗体である。一部の実施形態では、ヒトSiglec-8および非ヒト霊長類Siglec-8に結合する抗体は、ヒトIgG1抗体である。
【0114】
一態様では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体は、モノクローナル抗体である。一態様では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体は、抗体断片(抗原結合性断片を含む)、例えば、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、または(Fab’)2断片である。一態様では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体は、抗体断片(抗原結合性断片を含む)、例えば、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、または(Fab’)2断片を含む。一態様では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体は、キメラ、ヒト化またはヒト抗体である。一態様では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体のいずれも、精製されている。
【0115】
一態様では、Siglec-8に結合するマウス2E2抗体およびマウス2C4抗体と競合する抗Siglec-8抗体が、提供される。マウス2E2抗体およびマウス2C4抗体と同じエピトープに結合する抗Siglec-8抗体も提供される。Siglec-8に対するマウス抗体である、2E2抗体および2C4抗体は、米国特許第8,207,305号、米国特許第8,197,811号、米国特許第7,871,612号、および米国特許第7,557,191号に記載されている。
【0116】
一態様では、本明細書に記載の任意の抗Siglec-8抗体(例えば、HEKA、HEKF、1C3、1H10、4F11、2C4、2E2)とSiglec-8への結合について競合する抗Siglec-8抗体が、提供される。本明細書に記載の任意の抗Siglec-8抗体(例えば、HEKA、HEKF、1C3、1H10、4F11、2C4、2E2)と同じエピトープに結合する抗Siglec-8抗体も、提供される。
【0117】
本開示の一態様では、抗Siglec-8抗体をコードするポリヌクレオチドが、提供される。ある特定の実施形態では、抗Siglec-8抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターが、提供される。ある特定の実施形態では、そのようなベクターを含む宿主細胞が、提供される。本開示の別の態様では、抗Siglec-8抗体を含む組成物、または抗Siglec-8抗体をコードするポリヌクレオチドを含む組成物が、提供される。ある特定の実施形態では、本開示の組成物は、本開示の好酸球関連または肥満細胞関連疾患または障害の処置のための医薬製剤である。
【0118】
一態様では、マウス抗体2C4のHVR配列のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。一態様では、マウス抗体2E2のHVR配列のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、HVRは、Kabat CDRまたはChothia CDRである。
【0119】
一態様では、マウス抗体1C3のHVR配列のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。一態様では、マウス抗体4F11のHVR配列のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。一態様では、マウス抗体1H10のHVR配列のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、HVRは、Kabat CDRまたはChothia CDRである。
【0120】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、ヒトSiglec-8のドメイン1におけるエピトープに結合し、ドメイン1は、配列番号112のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、ヒトSiglec-8のドメイン2におけるエピトープに結合し、ドメイン2は、配列番号113のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、ヒトSiglec-8のドメイン3におけるエピトープに結合し、ドメイン3は、配列番号114のアミノ酸配列を含む。
【0121】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、配列番号116のアミノ酸を含む融合タンパク質に結合するが、配列番号115のアミノ酸を含む融合タンパク質には結合しない。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、配列番号117のアミノ酸を含む融合タンパク質に結合するが、配列番号115のアミノ酸を含む融合タンパク質には結合しない。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、配列番号117のアミノ酸を含む融合タンパク質に結合するが、配列番号116のアミノ酸を含む融合タンパク質には結合しない。
【0122】
別の態様では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗Siglec-8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(ii)配列番号91のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(iii)配列番号94のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む、および/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号97のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(ii)配列番号100のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(iii)配列番号103のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、ヒトSiglec-8のドメイン2におけるエピトープに結合し、ドメイン2は、配列番号113のアミノ酸配列を含む。
【0123】
別の態様では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗Siglec-8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(ii)配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(iii)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む、および/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号98のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(ii)配列番号101のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(iii)配列番号104のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、ヒトSiglec-8のドメイン3におけるエピトープに結合し、ドメイン3は、配列番号114のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、ヒトSiglec-8および非ヒト霊長類Siglec-8に結合する。
【0124】
別の態様では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗Siglec-8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(ii)配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(iii)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む、および/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号99のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(ii)配列番号102のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(iii)配列番号105のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、ヒトSiglec-8のドメイン1におけるエピトープに結合し、ドメイン1は、配列番号112のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、ヒトSiglec-8および非ヒト霊長類Siglec-8に結合する。
【0125】
一態様では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗Siglec-8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む、および/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。
【0126】
一態様では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗Siglec-8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(iii)配列番号67~70から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む、および/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。
【0127】
一態様では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗Siglec-8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む、および/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(iii)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。
【0128】
別の態様では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗Siglec-8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(iii)配列番号67~70から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む、および/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(iii)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。
【0129】
別の態様では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗Siglec-8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(ii)配列番号91のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(iii)配列番号94のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む、および/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号97のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(ii)配列番号100のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(iii)配列番号103のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。
【0130】
別の態様では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗Siglec-8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(ii)配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(iii)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む、および/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号98のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(ii)配列番号101のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(iii)配列番号104のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。
【0131】
別の態様では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗Siglec-8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(ii)配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(iii)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む、および/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号99のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(ii)配列番号102のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(iii)配列番号105のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。
【0132】
本明細書に記載の抗Siglec-8抗体は、任意の好適なフレームワーク可変ドメイン配列を含んでいてもよいが、ただし、抗体が、ヒトSiglec-8に結合する能力を保持することを条件とする。本明細書で使用される場合、重鎖フレームワーク領域は、「HC-FR1~FR4」と呼ばれ、軽鎖フレームワーク領域は、「LC-FR1~FR4」と呼ばれる。一部の実施形態では、抗Siglec-8抗体は、配列番号26、34、38および45の重鎖可変ドメインフレームワーク配列(それぞれ、HC-FR1、HC-FR2、HC-FR3、およびHC-FR4)を含む。一部の実施形態では、抗Siglec-8抗体は、配列番号48、51、55および60の軽鎖可変ドメインフレームワーク配列(それぞれ、LC-FR1、LC-FR2、LC-FR3、およびLC-FR4)を含む。一部の実施形態では、抗Siglec-8抗体は、配列番号48、51、58および60の軽鎖可変ドメインフレームワーク配列(それぞれ、LC-FR1、LC-FR2、LC-FR3、およびLC-FR4)を含む。
【0133】
一実施形態では、抗Siglec-8抗体は、フレームワーク配列と超可変領域とを含む重鎖可変ドメインを含み、フレームワーク配列は、HC-FR1~HC-FR4配列、それぞれ、配列番号26~29(HC-FR1)、配列番号31~36(HC-FR2)、配列番号38~43(HC-FR3)、および配列番号45または46(HC-FR4)を含み、HVR-H1は、配列番号61のアミノ酸配列を含み、HVR-H2は、配列番号62のアミノ酸配列を含み、HVR-H3は、配列番号63のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、抗Siglec-8抗体は、フレームワーク配列と超可変領域とを含む重鎖可変ドメインを含み、フレームワーク配列は、HC-FR1~HC-FR4配列、それぞれ、配列番号26~29(HC-FR1)、配列番号31~36(HC-FR2)、配列番号38~43(HC-FR3)、および配列番号45または46(HC-FR4)を含み、HVR-H1は、配列番号61のアミノ酸配列を含み、HVR-H2は、配列番号62のアミノ酸配列を含み、HVR-H3は、配列番号67~70から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、抗Siglec-8抗体は、フレームワーク配列と超可変領域とを含む軽鎖可変ドメインを含み、フレームワーク配列は、LC-FR1~LC-FR4配列、それぞれ、配列番号48または49(LC-FR1)、配列番号51~53(LC-FR2)、配列番号55~58(LC-FR3)および配列番号60(LC-FR4)を含み、HVR-L1は、配列番号64のアミノ酸配列を含み、HVR-L2は、配列番号65のアミノ酸配列を含み、HVR-L3は、配列番号66のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、抗Siglec-8抗体は、フレームワーク配列と超可変領域とを含む軽鎖可変ドメインを含み、フレームワーク配列は、LC-FR1~LC-FR4配列、それぞれ、配列番号48または49(LC-FR1)、配列番号51~53(LC-FR2)、配列番号55~58(LC-FR3)および配列番号60(LC-FR4)を含み、HVR-L1は、配列番号64のアミノ酸配列を含み、HVR-L2は、配列番号65のアミノ酸配列を含み、HVR-L3は、配列番号71のアミノ酸配列を含む。これらの抗体の一実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号2~10から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号16~22から選択されるアミノ酸配列を含む。これらの抗体の一実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号2~10から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号23または24から選択されるアミノ酸配列を含む。これらの抗体の一実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号11~14から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号16~22から選択されるアミノ酸配列を含む。これらの抗体の一実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号11~14から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号23または24から選択されるアミノ酸配列を含む。これらの抗体の一実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号6のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号16のアミノ酸配列を含む。これらの抗体の一実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号6のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号21のアミノ酸配列を含む。
【0134】
一部の実施形態では、重鎖HVR配列は、
a)HVR-H1(IYGAH(配列番号61));
b)HVR-H2(VIWAGGSTNYNSALMS(配列番号62));および
c)HVR-H3(DGSSPYYYSMEY(配列番号63)、DGSSPYYYGMEY(配列番号67)、DGSSPYYYSMDY(配列番号68)、DGSSPYYYSMEV(配列番号69)、またはDGSSPYYYGMDV(配列番号70))
を含む。
【0135】
一部の実施形態では、重鎖HVR配列は、
a)HVR-H1(SYAMS(配列番号88)、DYYMY(配列番号89)、またはSSWMN(配列番号90));
b)HVR-H2(IISSGGSYTYYSDSVKG(配列番号91)、RIAPEDGDTEYAPKFQG(配列番号92)、またはQIYPGDDYTNYNGKFKG(配列番号93));および
c)HVR-H3(HETAQAAWFAY(配列番号94)、EGNYYGSSILDY(配列番号95)、またはLGPYGPFAD(配列番号96))
を含む。
【0136】
一部の実施形態では、重鎖FR配列は、
a)HC-FR1(EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFSLT(配列番号26)、EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAVSGFSLT(配列番号27)、QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSIS(配列番号28)、またはQVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGFSLT(配列番号29));
b)HC-FR2(WVRQAPGKGLEWVS(配列番号31)、WVRQAPGKGLEWLG(配列番号32)、WVRQAPGKGLEWLS(配列番号33)、WVRQAPGKGLEWVG(配列番号34)、WIRQPPGKGLEWIG(配列番号35)、またはWVRQPPGKGLEWLG(配列番号36));
c)HC-FR3(RFTISKDNSKNTVYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号38)、RLSISKDNSKNTVYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号39)、RLTISKDNSKNTVYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号40)、RFSISKDNSKNTVYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号41)、RVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCAR(配列番号42)、またはRLSISKDNSKNQVSLKLSSVTAADTAVYYCAR(配列番号43));および
d)HC-FR4(WGQGTTVTVSS(配列番号45)、またはWGQGTLVTVSS(配列番号46))
を含む。
【0137】
一部の実施形態では、軽鎖HVR配列は、
a)HVR-L1(SATSSVSYMH(配列番号64));
b)HVR-L2(STSNLAS(配列番号65));および
c)HVR-L3(QQRSSYPFT(配列番号66)、またはQQRSSYPYT(配列番号71))
を含む。
【0138】
一部の実施形態では、軽鎖HVR配列は、
a)HVR-L1(SASSSVSYMH(配列番号97)、RASQDITNYLN(配列番号98)、またはSASSSVSYMY(配列番号99));
b)HVR-L2(DTSKLAY(配列番号100)、FTSRLHS(配列番号101)、またはDTSSLAS(配列番号102));および
c)HVR-L3(QQWSSNPPT(配列番号103)、QQGNTLPWT(配列番号104)、またはQQWNSDPYT(配列番号105))
を含む。
【0139】
一部の実施形態では、抗体は、
(i)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(ii)配列番号91のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(iii)配列番号94のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む重鎖可変領域、および/もしくは(i)配列番号97のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(ii)配列番号100のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(iii)配列番号103のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む軽鎖可変領域;
(i)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(ii)配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(iii)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む重鎖可変領域、および/もしくは(i)配列番号98のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(ii)配列番号101のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(iii)配列番号104のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む軽鎖可変領域;または
(i)配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、(ii)配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、(iii)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む重鎖可変領域、および/もしくは(i)配列番号99のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、(ii)配列番号102のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、(iii)配列番号105のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む軽鎖可変領域
を含む。
【0140】
一部の実施形態では、軽鎖FR配列は、
a) LC-FR1(EIVLTQSPATLSLSPGERATLSC(配列番号48)、またはEIILTQSPATLSLSPGERATLSC(配列番号49));
b)LC-FR2(WFQQKPGQAPRLLIY(配列番号51)、WFQQKPGQAPRLWIY(配列番号52)、またはWYQQKPGQAPRLLIY(配列番号53));
c)LC-FR3(GIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYC(配列番号55)、GVPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDFAVYYC(配列番号56)、GVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYC(配列番号57)、またはGIPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDFAVYYC(配列番号58));および
d)LC-FR4(FGPGTKLDIK(配列番号60))
を含む。
【0141】
一部の実施形態では、ヒトSiglec-8に結合する抗Siglec-8抗体(例えば、ヒト化抗Siglec-8抗体)であって、抗体が重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、抗体が、
(a)
(1)配列番号26~29から選択されるアミノ酸配列を含むHC-FR1と、
(2)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(3)配列番号31~36から選択されるアミノ酸配列を含むHC-FR2と、
(4)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(5)配列番号38~43から選択されるアミノ酸配列を含むHC-FR3と、
(6)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3と、
(7)配列番号45~46から選択されるアミノ酸配列を含むHC-FR4と
を含む重鎖可変ドメイン、および/または
(b)
(1)配列番号48~49から選択されるアミノ酸配列を含むLC-FR1と、
(2)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(3)配列番号51~53から選択されるアミノ酸配列を含むLC-FR2と、
(4)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(5)配列番号55~58から選択されるアミノ酸配列を含むLC-FR3と、
(6)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR-L3と、
(7)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC-FR4と
を含む軽鎖可変ドメイン
を含む、抗体が本明細書で提供される。
【0142】
一態様では、配列番号2~10から選択される重鎖可変ドメインを含む、および/または配列番号16~22から選択される軽鎖可変ドメインを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。一態様では、配列番号2~14から選択される重鎖可変ドメインを含む、および/または配列番号16~24から選択される軽鎖可変ドメインを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。一態様では、配列番号2~10から選択される重鎖可変ドメインを含む、および/または配列番号23もしくは24から選択される軽鎖可変ドメインを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。一態様では、配列番号11~14から選択される重鎖可変ドメインを含む、および/または配列番号16~22から選択される軽鎖可変ドメインを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。一態様では、配列番号11~14から選択される重鎖可変ドメインを含む、および/または配列番号23もしくは24から選択される軽鎖可変ドメインを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。一態様では、配列番号6の重鎖可変ドメインを含む、および/または配列番号16もしくは21から選択される軽鎖可変ドメインを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。
【0143】
一態様では、配列番号106~108から選択される重鎖可変ドメインを含む、および/または配列番号109~111から選択される軽鎖可変ドメインを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。一態様では、配列番号106の重鎖可変ドメインを含む、および/または配列番号109の軽鎖可変ドメインを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。一態様では、配列番号107の重鎖可変ドメインを含む、および/または配列番号110の軽鎖可変ドメインを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。一態様では、配列番号108の重鎖可変ドメインを含む、および/または配列番号111の軽鎖可変ドメインを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。
【0144】
一部の実施形態では、配列番号2~14から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、配列番号106~108から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列は、参照配列と比較して置換、挿入または欠失を含有するが、そのアミノ酸配列を含む抗体は、ヒトSiglec-8に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失(例えば、1、2、3、4または5アミノ酸)は、HVRの外側の領域において(すなわち、FR内で)生じる。一部の実施形態では、抗Siglec-8抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗Siglec-8抗体は、配列番号106~108から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0145】
一部の実施形態では、配列番号16~24から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、配列番号109~111から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列は、参照配列と比較して置換、挿入または欠失を含有するが、そのアミノ酸配列を含む抗体は、ヒトSiglec-8に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失(例えば、1、2、3、4または5アミノ酸)は、HVRの外側の領域において(すなわち、FR内で)生じる。一部の実施形態では、抗Siglec-8抗体は、配列番号16または21のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗Siglec-8抗体は、配列番号109~111から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0146】
一態様では、本開示は、(a)表1で示されるものから選択される1つ、2つ、もしくは3つのVH HVR、および/または(b)表1で示されるものから選択される1つ、2つ、もしくは3つのVL HVRを含む、抗Siglec-8抗体を提供する。
【0147】
一態様では、本開示は、(a)表2で示されるものから選択される1つ、2つ、もしくは3つのVH HVR、および/または(b)表2で示されるものから選択される1つ、2つ、もしくは3つのVL HVRを含む、抗Siglec-8抗体を提供する。
【0148】
一態様では、本開示は、(a)表3で示されるものから選択される1つ、2つ、3つもしくは4つのVH FR、および/または(b)表3で示されるものから選択される1つ、2つ、3つもしくは4つのVL FRを含む、抗Siglec-8抗体を提供する。
【0149】
一部の実施形態では、表4で示される抗体、例えば、HAKA抗体、HAKB抗体、HAKC抗体などの、重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインを含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。
【表1-1】
【表1-2】
【表2】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【0150】
免疫グロブリンには、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる重鎖をそれぞれ有する、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMという5つのクラスがある。γおよびαクラスは、サブクラスにさらに分けられ、例えば、ヒトは、次のサブクラスを発現する:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2。IgG1抗体は、アロタイプと呼ばれる複数の多型バリアントで存在することができ(Jefferis and Lefranc 2009. mAbs Vol 1 Issue 4 1-7において概説されている)、これらのバリアントのいずれも、本明細書の実施形態の一部における使用に好適である。ヒト集団における一般的なアロタイプバリアントは、文字a、f、n、zまたはこれらの組合せで表記されるものである。本明細書における実施形態のいずれにおいても、抗体は、ヒトIgG Fc領域を含む重鎖Fc領域を含み得る。さらなる実施形態では、ヒトIgG Fc領域は、ヒトIgG1またはIgG4を含む。一部の実施形態では、抗体は、IgG1抗体である。一部の実施形態では、抗体は、IgG4抗体である。一部の実施形態では、ヒトIgG4は、アミノ酸置換S228Pを含み、アミノ酸残基は、KabatにみられるEUインデックスに従って番号付けされている。一部の実施形態では、ヒトIgG1は、配列番号78のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ヒトIgG4は、配列番号79のアミノ酸配列を含む。
【0151】
一部の実施形態では、配列番号75のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号76もしくは77から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、抗Siglec-8抗体が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、抗体は、配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号76のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み得る。一部の実施形態では、抗Siglec-8抗体は、リレンテリマブである。一部の実施形態では、抗Siglec-8抗体は、活性化好酸球のアポトーシスを誘導する。一部の実施形態では、抗Siglec-8抗体は、休止好酸球のアポトーシスを誘導する。一部の実施形態では、抗Siglec-8抗体は、活性化好酸球を枯渇させ、肥満細胞活性化を阻害する。一部の実施形態では、抗Siglec-8抗体は、肥満細胞を枯渇させるかまたは低減させ、肥満細胞活性化を阻害する。一部の実施形態では、抗Siglec-8抗体は、肥満細胞を枯渇させるかまたは肥満細胞の数を低減させる。一部の実施形態では、抗Siglec-8抗体は、肥満細胞をADCC活性により死滅させる。一部の実施形態では、抗体は、組織内のSiglec-8を発現する肥満細胞を枯渇させるかまたは低減させる。一部の実施形態では、抗体は、生体液中のSiglec-8を発現する肥満細胞を枯渇させるかまたは低減させる。
【0152】
1.抗体親和性
一部の態様では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体は、マウス抗体2E2および/またはマウス抗体2C4と比較して、ほぼ同じまたはより高い親和性および/またはより高いアビディティーで、ヒトSiglec-8に結合する。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗Siglec-8抗体は、≦1μM、≦150nM、≦100nM、≦50nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10-8Mまたはそれ未満、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体は、マウス抗体2E2および/またはマウス抗体2C4より約1.5倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍または約10倍高い親和性で、ヒトSiglec-8に結合する。一部の実施形態では、抗Siglec-8抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0153】
一実施形態では、抗Siglec-8抗体の結合親和性は、表面プラズモン共鳴アッセイにより決定することができる。例えば、KdまたはKd値は、25℃で固定化抗原CM5チップを用いて約10応答単位(RU)でBIAcore(商標)-2000またはBIAcore(商標)-3000(BIAcore,Inc.、Piscataway、N.J.)を使用することにより、測定することができる。簡単に言うと、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore(登録商標)Inc.)を、供給業者の指示に従ってN-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。捕捉抗体(例えば、抗ヒトFc)を10mM酢酸ナトリウム、pH4.8で希釈した後、30μl/分の流量で注入し、さらに、抗Siglec-8抗体を固定化する。動態測定のために、二量体Siglec-8の2倍段階希釈物を、0.05% Tween(登録商標)20(PBST)を含有するPBSに、25℃で、おおよそ25μl/分の流量で注入する。単純1対1ラングミュア結合モデル(BIAcore(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して、結合および解離センソグラムの同時フィッティングにより、結合速度(kon)および解離速度(koff)を算出する。平衡解離定数(Kd)をkoff/kon比として算出する。例えば、Chen, Y., et al., (1999) J. Mol. Biol. 293:865-881を参照されたい。
【0154】
別の実施形態では、バイオレイヤー干渉法を使用して、Siglec-8に対する抗Siglec-8抗体の親和性を決定することができる。例示的なアッセイでは、Siglec-8-Fcタグ付きタンパク質を、抗ヒト捕捉センサー上に固定化し、漸増濃度のマウス、キメラ、またはヒト化抗Siglec-8 Fab断片とともにインキュベートして、例えばOctet Red 384 System(ForteBio)などの計器を使用して親和性測定値を得る。
【0155】
抗Siglec-8抗体の結合親和性は、例えば、関連技術分野では周知の標準的な技法を使用してMunson et al., Anal. Biochem., 107:220 (1980) に記載されているスキャッチャード解析により、決定することもできる。Scatchard, G., Ann. N.Y. Acad. Sci. 51:660 (1947)も参照されたい。
【0156】
2.抗体アビディティー
一部の実施形態では、抗Siglec-8抗体の結合アビディティーは、表面プラズモン共鳴アッセイにより決定することができる。例えば、BIAcore T100を使用することによりKdまたはKd値を測定することができる。捕捉抗体(例えば、ヤギ抗ヒトFcおよびヤギ抗マウスFc)をCM5チップ上に固定化する。フローセルに抗ヒト抗体または抗マウス抗体を固定化することができる。ある特定の温度および流量、例えば、25℃で、30μl/分の流量で、アッセイを行う。二量体Siglec-8を、アッセイ緩衝液中、様々な濃度で、例えば、15nM~1.88pMの範囲の濃度で希釈する。抗体を捕捉し、高性能注入を行い、それに続いて解離が起こる。フローセルを、緩衝液、例えば50mMグリシン、pH1.5で、再生させる。結果を空の参照セルおよび複数回のアッセイ緩衝液注入でブランク化し、1:1グローバルフィットパラメーターを用いて解析する。
【0157】
3.競合アッセイ
競合アッセイを使用して、2つの抗体が、同一のもしくは立体的にオーバーラップしているエピトープを認識することにより同じエピトープに結合するか、または一方の抗体が、別の抗体の抗原への結合を競合的に阻害するかを決定することができる。これらのアッセイは、当技術分野において公知である。典型的には、抗原または抗原発現細胞をマルチウェルプレート上に固定化し、標識抗体の結合を遮断する非標識抗体の能力を測定する。そのような競合アッセイの一般的な標識は、放射性標識または酵素標識である。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体は、細胞(たとえば、肥満細胞)の細胞表面に存在するエピトープへの結合について、本明細書に記載の2E2抗体と競合する。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体は、細胞(例えば、肥満細胞)の細胞表面に存在するエピトープへの結合について、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体と競合する。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体は、細胞(例えば、肥満細胞)の細胞表面に存在するエピトープへの結合について、本明細書に記載の2C4抗体と競合する。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体は、細胞(例えば、肥満細胞)の細胞表面に存在するエピトープへの結合について、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(米国特許第8,207,305号において見出されるような)と配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(米国特許第8,207,305号において見出されるような)とを含む抗体と競合する。
【0158】
4.熱安定性
一部の態様では、本明細書に記載の抗Siglec-8は、サーマルシフトアッセイにおいて少なくとも約70℃、少なくとも約71℃、または少なくとも約72℃の融解温度(Tm)を有する。例示的なサーマルシフトアッセイでは、ヒト化抗Siglec-8抗体を含む試料を、qPCRサーマルサイクラーにおいてサイクルごとに1℃上昇させて71サイクルにわたって蛍光色素(Sypro Orange)とともにインキュベートして、Tmを決定する。一部の実施形態では、抗Siglec-8抗体は、マウス2E2抗体および/またはマウス2C4抗体と比較して、同様のまたはより高いTmを有する。一部の実施形態では、抗Siglec-8抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗Siglec-8抗体は、キメラ2C4抗体と比較して、同様のまたはより高いTmを有する。一部の実施形態では、抗Siglec-8抗体は、配列番号84のアミノ酸配列を含む重鎖と配列番号85のアミノ酸配列を含む軽鎖とを有する抗体と比較して、同じまたはより高いTmを有する。
【0159】
5.生物活性アッセイ
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体は、好酸球を枯渇させ、肥満細胞を阻害する。細胞のアポトーシスを評価するためのアッセイ、例えば、アネキシンVでの染色およびTUNNELアッセイは、当技術分野において周知である。
【0160】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体は、ADCC活性を誘導する。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体は、Siglec-8を発現する好酸球をADCC活性により死滅させる。一部の実施形態では、組成物は、非フコシル化(すなわち、脱フコシル化)抗Siglec-8抗体を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の非フコシル化抗Siglec-8抗体を含む組成物は、部分フコシル化抗Siglec-8抗体を含む組成物と比較して、Siglec-8発現好酸球に対するADCC活性を増強する。ADCC活性を評価するためのアッセイは、当技術分野において周知であり、本明細書に記載される。例示的なアッセイでは、ADCC活性を測定するために、エフェクター細胞および標的細胞が使用される。エフェクター細胞の例としては、ナチュラルキラー(NK)細胞、大顆粒リンパ球(LGL)、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、ならびにNKおよびLGLを含むPBMC、または細胞表面にFc受容体を有する白血球、例えば、好中球、好酸球およびマクロファージが挙げられる。エフェクター細胞は、目的の疾患を有する個体を含む任意の供給源から単離することができる。標的細胞は、評価すべき抗体が認識し得る抗原を細胞表面に発現する任意の細胞である。そのような標的細胞の例は、細胞表面にSiglec-8を発現する好酸球である。そのような標的細胞の別の例は、細胞表面にSiglec-8を発現する細胞系(例えば、Ramos細胞系)(例えば、Ramos 2C10)である。標的細胞を、細胞溶解の検出を可能にする試薬で標識することができる。標識用の試薬の例としては、放射性物質、例えば、クロム酸ナトリウム(Na2
51CrO4)が挙げられる。例えば、Immunology, 14, 181 (1968);J. Immunol. Methods., 172, 227 (1994);およびJ. Immunol. Methods., 184, 29 (1995)を参照されたい。
【0161】
肥満細胞に対する抗Siglec-8抗体のADCCおよびアポトーシス活性を評価するための例示的なアッセイでは、ヒト肥満細胞を、公開されているプロトコール(Guhl et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 2011, 75:382-384;Kulka et al., In Current Protocols in Immunology, 2001, (John Wiley & Sons, Inc.))に従ってヒト組織もしくは生体液から単離するか、または例えば、Yokoi et al., J Allergy Clin Immunol., 2008, 121:499-505により記載されたように、ヒト造血幹細胞から分化させる。精製肥満細胞を滅菌96ウェルU底プレート中の完全RPMI培地に再懸濁させ、抗Siglec-8抗体の存在または非存在下で30分間、0.0001ng/ml~10μg/mlの間の範囲の濃度でインキュベートする。試料をさらに4~48時間、精製ナチュラルキラー(NK)細胞または新鮮なPBLとともにおよび伴わずにインキュベートして、ADCCを誘導する。肥満細胞を検出するために蛍光コンジュゲート抗体(CD117およびFcεR1)を使用して、ならびに生細胞と死細胞または死にゆく細胞とを区別するためにアネキシン-Vおよび7AADを使用して、フローサイトメトリーによりアポトーシスまたはADCCによる細胞死滅を解析する。アネキシン-Vおよび7AADでの染色は、製造業者の指示に従って行う。
【0162】
一部の態様では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体は、肥満細胞により媒介される活性を阻害する。肥満細胞トリプターゼは、総肥満細胞数および活性化のバイオマーカーとして使用されている。例えば、総トリプターゼおよび活性トリプターゼ、ならびにヒスタミン、N-メチルヒスタミンおよび11-ベータ-プロスタグランジンF2を、血液または尿において測定して、肥満細胞の低減を評価することができる。例示的な肥満細胞活性アッセイについては、例えば米国特許出願公開番号US20110293631を参照されたい。
【0163】
E.抗体調製
本明細書に記載の抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)は、抗体を生成するための当技術分野で利用可能な技法を使用して調製され、その例示的な方法は、より詳細に以下の節で説明される。
【0164】
1.抗体断片
本開示は、抗体断片を包含する。抗体断片は、酵素消化などの旧来の手段により、または組換え技術により、生成することができる。ある特定の状況では、抗体全体ではなく、抗体断片を使用することに利点がある。ある特定の抗体断片の総説については、Hudson et al. (2003) Nat. Med. 9:129-134を参照されたい。
【0165】
様々な技法が、抗体断片の産生のために開発されてきた。伝統的には、これらの断片は、インタクト抗体のタンパク質分解性消化によって得られた(例えば、Morimoto et al., Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992);およびBrennan et al., Science, 229:81 (1985)を参照されたい)。しかし、これらの断片を今では組換え宿主細胞により直接的に産生することができる。Fab、FvおよびScFv抗体断片は、すべて、E.coliにおいて発現され得、E.coliから分泌され得るため、大量のこれらの断片の容易な産生が可能である。抗体断片を上述の抗体ファージライブラリーから単離することができる。あるいは、Fab’-SH断片を、E.coliから直接的に回収し、化学的にカップリングしてF(ab’)2断片を形成することができる(Carter et al., Bio/Technology 10: 163-167 (1992))。別のアプローチによれば、F(ab’)2断片を組換え宿主細胞培養物から直接的に単離することができる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含む、in vivo半減期が延長されたFabおよびF(ab’)2断片は、米国特許第5,869,046号に記載されている。抗体断片の産生のための他の技法は、当業者には明らかであろう。ある特定の実施形態では、抗体は、一本鎖Fv断片(scFv)である。WO93/16185、米国特許第5,571,894号および同第5,587,458号を参照されたい。FvおよびscFvは、定常領域がないインタクト結合部位を有する唯一の種であり、したがって、これらは、in vivoでの使用中の非特異的結合の低減に好適であり得る。scFvのアミノ末端またはカルボキシ末端のどちらかでエフェクタータンパク質の融合を生じさせるように、scFv融合タンパク質を構築することができる。例えば、上掲のAntibody Engineering, ed. Borrebaeckを参照されたい。抗体断片は、例えば、米国特許第5,641,870号に例えば記載されているような、「線状抗体」であることもある。そのような線状抗体は、単一特異性であることもあり、または二重特異性であることもある。
【0166】
2.ヒト化抗体
本開示は、ヒト化抗体を包含する。非ヒト抗体をヒト化するための様々な方法は、当技術分野において公知である。例えば、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有することができる。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合、「移入」残基と呼ばれ、これらの残基は、通常は「移入」可変ドメインから得られる。ヒト化は、本質的には、Winterの方法(Jones et al. (1986) Nature 321:522-525;Riechmann et al. (1988) Nature 332:323-327;Verhoeyen et al. (1988) Science 239:1534-1536)に従って、超可変領域配列でヒト抗体の対応する配列を置換することにより、行うことができる。したがって、そのような「ヒト化」抗体は、インタクトなヒト可変ドメインより実質的に少ない可変ドメインが非ヒト種からの対応する配列により置換されている、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は、通常は、一部の超可変領域残基およびことによると一部のFR残基がげっ歯類抗体の類似の部位からの残基により置換されたヒト抗体である。
【0167】
ヒト化抗体の作製に使用されることになる、軽鎖および重鎖両方のヒト可変ドメインの選択は、抗原性を低減させるために重要であり得る。いわゆる「ベストフィット」法に従って、げっ歯類(例えば、マウス)抗体の可変ドメインの配列を公知ヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに対してスクリーニングする。次に、げっ歯類のものに最も近いヒト配列を、ヒト化抗体のためのヒトフレームワークとして受入れる(Sims et al.(1993) J. Immunol. 151:2296;Chothia et al.(1987) J. Mol. Biol. 196:901)。別の方法は、軽鎖または重鎖の特定のサブグループのすべてのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用することができる(Carter et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285;Presta et al. (1993) J. Immunol., 151:2623)。
【0168】
さらに、一般に、抗原に対する高度な親和性および他の好ましい生物学的特性を保持したまま抗体をヒト化することが望ましい。この目標を達成するために、1つの方法によれば、ヒト化抗体は、親配列およびヒト化配列の三次元モデルを使用する親配列および様々な概念上のヒト化産物の解析の過程によって調製される。三次元免疫グロブリンモデルは、一般に利用可能であり、当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推定三次元コンフォメーション構造を図示および表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示の調査により、候補免疫グロブリン配列が機能する上での残基の可能性の高い役割の解析、すなわち、候補免疫グロブリンのその抗原への結合能力に影響を与える残基の解析が、可能になる。このようにして、所望の抗体特性、例えば標的抗原に対する親和性増加が達成されるように、FR残基をレシピエント配列および移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般に、抗原結合に影響を与えることに直接かつ最も大きく関与するのは、超可変領域残基である。
【0169】
3.ヒト抗体
本開示のヒト抗Siglec-8抗体は、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を公知のヒト定常ドメイン配列と組み合わせることにより構築することができる。あるいは、本開示のヒトモノクローナル抗Siglec-8抗体をハイブリドーマ法により作製することができる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫およびマウス-ヒトヘテロミエローマ細胞系は、例えば、Kozbor J. Immunol., 133: 3001 (1984);Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987);およびBoerner et al., J. Immunol., 147: 86 (1991)により記載されている。
【0170】
免疫化によって内因性免疫グロブリン産生の非存在下でヒト抗体の全レパートリーを産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を、産生することができる。例えば、キメラおよび生殖細胞系変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子のホモ接合性欠失は、内因性抗体産生の完全阻害をもたらすことが記載されている。そのような生殖細胞系変異体マウスへのヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子アレイの移入は、抗原チャレンジ時にヒト抗体の産生を生じる。例えば、Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 2551 (1993);Jakobovits et al., Nature, 362: 255 (1993);Bruggermann et al., Year in Immunol., 7: 33 (1993)を参照されたい。
【0171】
遺伝子シャフリングを使用して、非ヒト(例えば、げっ歯類)抗体からヒト抗体を得ることができ、このヒト抗体は、出発非ヒト抗体に類似した親和性および特異性を有する。「エピトープインプリンティング」とも呼ばれるこの方法に従って、本明細書に記載されるようにファージディスプレイ法により得られた非ヒト抗体断片の重鎖可変領域または軽鎖可変領域のどちらかをヒトVドメイン遺伝子のレパートリーで置き換え、それによって、非ヒト鎖/ヒト鎖のscFvまたはFabキメラの集団を作出する。抗原での選択によって、ヒト鎖が、一次ファージディスプレイクローンにおける対応する非ヒト鎖が除去されて破壊された抗原結合部位を修復する非ヒト鎖/ヒト鎖のキメラscFvまたはFabが単離されることになる、すなわち、エピトープがヒト鎖パートナーの選択を支配する。残存する非ヒト鎖を置き換えるためにこのプロセスを繰り返すと、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日に公開されたPCT WO93/06213を参照されたい)。CDRグラフティングによる非ヒト抗体の旧来のヒト化とは異なり、この技法により、非ヒト起源のFR残基もCDR残基も有さない完全ヒト抗体が得られる。
【0172】
4.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある特定の実施形態では、二重特異性抗体は、ヒトまたはヒト化抗体である。ある特定の実施形態では、結合特異性の一方は、Siglec-8に対するものであり、他方は、任意の他の抗原に対するものである。ある特定の実施形態では、二重特異性抗体は、Siglec-8の2つの異なるエピトープと結合することができる。二重特異性抗体を使用して、Siglec-8を発現する細胞に細胞傷害性剤を局在させることもできる。二重特異性抗体を完全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)として調製することができる。
【0173】
二重特異性抗体を作製するための方法は、当技術分野において公知である。Milstein and Cuello, Nature, 305: 537 (1983)、1993年5月13日に公開されたWO93/08829、およびTraunecker et al., EMBO J., 10: 3655 (1991)を参照されたい。二重特異性抗体の生成に関するさらなる詳細については、例えば、Suresh et al., Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照されたい。二重特異性抗体は、架橋抗体または「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲートにおける抗体の一方をアビジンとカップリングさせることができ、他方をビオチンとカップリングさせることができる。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の好都合な架橋方法を使用して作製することができる。好適な架橋剤は、当技術分野において周知であり、いくつかの架橋技法とともに米国特許第4,676,980号において開示されている。
【0174】
5.単一ドメイン抗体
一部の実施形態では、本開示の抗体は、単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分または軽鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分を含む、単一のポリペプチド鎖である。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.、Waltham、Mass.;例えば、米国特許第6,248,516B1号を参照されたい)。一実施形態では、単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてまたは一部分からなる。
【0175】
6.抗体バリアント
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体のアミノ酸配列の改変が企図される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することが望ましいことがある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な変化を導入することにより、またはペプチド合成により、調製することができる。そのような改変としては、例えば、抗体のアミノ酸配列からの残基の欠失、および/または抗体のアミノ酸配列への残基の挿入、および/または抗体のアミノ酸配列内の残基の置換が挙げられる。最終構築物に達するために欠失と挿入と置換とのいかなる組合せを行ってもよいが、ただし、最終構築物が、所望の特性を有することを条件とする。アミノ酸の変更を、配列を作製する時点で対象抗体のアミノ酸配列に導入してもよい。
【0176】
変異誘発に好ましい位置である、抗体のある特定の残基または領域の同定に有用な方法は、Cunningham and Wells (1989) Science, 244:1081-1085により記載されているように、「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。この方法では、残基、または標的残基の群(例えば、荷電残基、例えば、arg、asp、his、lys、およびglu)が同定され、アミノ酸と抗原との相互作用に影響を及ぼすために中性または負荷電アミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)に置き換えられる。次いで、置換に対する機能的感受性を示すこれらのアミノ酸の位置が、置換部位でのまたは置換部位に対するさらなるまたは他のバリアントの導入により洗練される。このようにして、アミノ酸配列変動を導入するための部位は事前に決定されるが、変異自体の性質を事前に決定する必要はない。例えば、所与の部位における変異の性能を解析するために、アラニンスキャニングまたはランダム変異誘発が標的コドンまたは領域において行われ、発現された免疫グロブリンが所望される活性についてスクリーニングされる。
【0177】
アミノ酸配列挿入は、単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入ばかりでなく、1残基から100またはそれより多くの残基を含有するポリペプチドまで長さに幅があるアミノ末端および/またはカルボキシル末端融合も含む。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントは、抗体のNまたはC末端に、抗体の血清半減期を延長させる酵素またはポリペプチドが融合したものを含む。
【0178】
一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖にC末端切断を有する。例えば、1、2、3、4または5アミノ酸残基が、重鎖および/または軽鎖のC末端で切断されている。一部の実施形態では、C末端切断により、重鎖からC末端リシンが除去される。一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖にN末端切断を有する。例えば、1、2、3、4または5アミノ酸残基が、重鎖および/または軽鎖のN末端で切断されている。一部の実施形態では、モノクローナル抗体の短縮形態を組換え技術により作製することができる。
【0179】
ある特定の実施態様では、本開示の抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少させるように変更される。ポリペプチドのグリコシル化は、通常は、N結合型またはO結合型のどちらかである。N結合型は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-トレオニン(ここで、Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド内のこれらのどちらかのトリペプチド配列の存在は、潜在的グリコシル化部位を生じさせる。O結合型グリコシル化は、糖であるN-アセチルガラクトサミン(N-aceylgalactosamine)、ガラクトースまたはキシロースのうちの1つの、ヒドロキシアミノ酸への結合を指し、ヒドロキシアミノ酸は、最も一般的にはセリンまたはトレオニンであるが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリシンが使用されることもある。
【0180】
抗体に対するグリコシル化部位の付加または欠失は、上記トリペプチド配列(N結合型グリコシル化部位についての)の1つまたは複数が作製または除去されるようにアミノ酸配列を変更することにより、好都合に果たされる。元の抗体の(O結合型グリコシル化部位についての)配列に対する1つまたは複数のセリンまたはトレオニン残基の付加、欠失、または置換により、変更を加えることもできる。
【0181】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合されている炭水化物を変更することができる。例えば、フコースが欠如している成熟炭水化物構造が抗体のFc領域に結合されている抗体が、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta,L.)に記載されている。US2004/0093621号(協和発酵工業株式会社)も参照されたい。抗体のFc領域に結合された炭水化物内にバイセクティングN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)がある抗体は、Jean-MairetらのWO2003/011878およびUmanaらの米国特許第6,602,684号において言及されている。抗体のFc領域に結合されたオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基がある抗体は、PatelらのWO1997/30087において報告されている。変更された炭水化物がそのFc領域に結合されている抗体に関するWO1998/58964(Raju,S.)およびWO1999/22764(Raju,S.)も、参照されたい。改変されたグリコシル化を有する抗原結合分子についてのUS2005/0123546(Umanaら)も、参照されたい。
【0182】
ある特定の実施形態では、グリコシル化バリアントは、Fc領域を含み、このFc領域に結合している炭水化物構造は、フコースが欠如している。そのようなバリアントは、改善されたADCC機能を有する。必要に応じて、Fc領域は、ADCCをさらに改善する1つまたは複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298位、333位および/または334位(残基のEu番号付け)における置換をさらに含む。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体に関する刊行物の例としては、米国特許出願公開第2003/0157108号、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614号、同第2002/0164328号、同第2004/0093621号、同第2004/0132140号、同第2004/0110704号、同第2004/0110282号、同第2004/0109865号、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742;Okazaki et al. J. Mol. Biol. 336:1239-1249 (2004);Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生する細胞系の例としては、タンパク質フコシル化が欠損しているLec13 CHO細胞(Ripka et al. Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);Presta,Lの米国特許出願公開第2003/0157108A1号;およびAdamsらのWO2004/056312A1、特に、実施例11)、およびノックアウト細胞系、例えば、アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004))、ならびにβ1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(acetylglycosminyltransferase)III(GnT-III)およびゴルジμ-マンノシダーゼII(ManII)を過剰発現する細胞が挙げられる。
【0183】
野生型CHO細胞において産生される同じ抗体上のフコースの量と比較して低減されたフコースを有する抗体が、本明細書で企図される。例えば、抗体は、天然CHO細胞(例えば、天然グリコシル化パターンを生じさせるCHO細胞、例えば、天然FUT8遺伝子を含有するCHO細胞)により他に産生された場合に有することになる量よりも少ない量のフコースを有する。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗Siglec-8抗体は、抗体上のN結合型グリカンの約50%、40%、30%、20%、10%、5%または1%未満がフコースを含む、抗体である。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗Siglec-8抗体は、抗体上のいずれのN結合型グリカンもフコースを含まない抗体、すなわち、抗体は、完全にフコースなしであるか、またはフコースを有さないか、またはフコシル化されていないか、または脱フコシル化されている。フコースの量は、例えばWO2008/077546に記載されているように、MALDI-TOF質量分析により測定してAsn297に結合されているすべての糖構造(例えば、複合構造、ハイブリッド構造、または高マンノース構造)の総和に対する、糖鎖内のAsn297におけるフコースの平均量を算出することにより決定することができる。Asn297は、Fc領域内の約297位(Fc領域残基のEu番号付け)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297は、抗体のわずかな配列変動に起因して297位の約±3アミノ酸上流または下流に、すなわち、294~300位の間に位置することもある。一部の実施形態では、抗体の重鎖の少なくとも1つまたは2つは、フコシル化されていない。
【0184】
一実施形態では、抗体は、その血清半減期を改善するために変更される。抗体の血清半減期を延長させるために、例えば米国特許第5,739,277号に記載されるように、サルベージ受容体結合エピトープを抗体(特に、抗体断片)に組み込むことができる。本明細書で使用される場合、用語「サルベージ受容体結合エピトープ」は、IgG分子のin vivo血清半減期の延長を担う、IgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)のFc領域のエピトープを指す(US2003/0190311、米国特許第6,821,505号、米国特許第6,165,745号、米国特許第5,624,821号、米国特許第5,648,260号、米国特許第6,165,745号、米国特許第5,834,597号)。
【0185】
別のタイプのバリアントは、アミノ酸置換バリアントである。これらのバリアントは、抗体分子中の少なくとも1つのアミノ酸残基が、異なる残基に置き換えられている。置換変異誘発のための目的の部位は、超可変領域を含むが、FR変更も企図される。保存的置換は、表5に「好ましい置換」という見出しで示される。そのような置換が生物活性の望ましい変化をもたらす場合には、表5で「例示的置換」と表示される、またはアミノ酸クラスに関連して下記でさらに説明されるような、より実質的な変化を導入することができ、その産物をスクリーニングすることができる。
【表5】
【0186】
抗体の生物学的特性の実質的な改変は、(a)置換領域におけるポリペプチド骨格の構造、例えば、シートもしくはヘリックスコンフォメーションのような構造の維持、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性の維持、またはc)側鎖の嵩の維持に対するそれらの効果が有意に異なる置換を選択することにより、果たされる。アミノ酸は、それらの側鎖の特性の類似性によって分類することができる(A. L. Lehninger, in Biochemistry, second ed., pp. 73-75, Worth Publishers, New York (1975)において):
(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)
(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q)
(3)酸性:Asp(D)、Glu(E)
(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)
【0187】
あるいは、天然に存在する残基を、共通の側鎖特性に基づいて群に分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0188】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのクラスのメンバーを別のクラスと交換することを必然的に伴うことになる。そのように置換された残基を、保存的置換部位に、または残りの(非保存)部位に導入することもできる。
【0189】
1つのタイプの置換バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化またはヒト抗体)の1つまたは複数の超可変領域残基の置換を含む。一般に、さらなる開発に選択される、結果として生じるバリアントは、それらが生成される親抗体と比較して改変された(例えば、改善された)生物学的特性を有することになる。そのような置換バリアントを生成するための好都合な手法は、ファージディスプレイを使用する親和性成熟を含む。手短に述べると、いくつかの超可変領域部位(例えば、6~7部位)を変異させて、可能なあらゆるアミノ酸置換を部位ごとに生じさせる。このようにして生成された抗体は、各粒子内にパッケージングされたファージコーティングタンパク質(例えば、M13の遺伝子III産物)の少なくとも一部との融合体として、繊維状ファージ粒子により提示される。次いで、ファージにより提示されたバリアントを、それらの生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。改変のための候補超可変領域部位を特定するために、スキャニング変異誘発(例えば、アラニンスキャニング)を行って、抗原結合に有意に寄与する超可変領域残基を同定することができる。あるいは、または加えて、抗体と抗原との間の接点を特定するために抗原-抗体複合体の結晶構造を分析することは有益であり得る。そのような接触残基および隣接残基は、本明細書で詳述されるものをはじめとする当技術分野において公知の技法による置換の候補である。そのようなバリアントが生成されたら、バリアントのパネルを、本明細書に記載のものを含む当技術分野において公知の技法を使用するスクリーニングに供し、1つまたは複数の関連するアッセイにおいて優れた特性を有した抗体を、さらなる開発のために選択することができる。
【0190】
抗体のアミノ酸配列バリアントをコードする核酸分子は、当技術分野において公知の様々な方法により調製される。これらの方法としては、天然供給源(天然に存在するアミノ酸配列バリアントの場合)からの単離;または抗体の前に調製されたバリアントもしくは非バリアントバージョンのオリゴヌクレオチド媒介(または部位特異的)変異誘発、PCR変異誘発およびカセット変異誘発による調製が挙げられるが、これらに限定されない。
【0191】
本開示の抗体のFc領域に1つまたは複数のアミノ酸修飾を導入することによって、Fc領域バリアントを生成することが、望ましいことがある。Fc領域バリアントは、ヒンジシステインの修飾を含む1つまたは複数のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含み得る。一部の実施形態では、Fc領域バリアントは、ヒトIgG4 Fc領域を含む。さらなる実施形態では、ヒトIgG4 Fc領域は、アミノ酸置換S228Pを含み、このアミノ酸残基は、KabatにみられるEUインデックスに従って番号付けされている。
【0192】
この説明、および当技術の教示に従って、一部の実施形態では、本開示の抗体は、野生型対応物抗体と比較して、例えばFc領域に、1つまたは複数の変更を含み得ると考えられる。それにもかかわらず、これらの抗体は、それらの野生型対応物と比較して、治療的有用性のために求められる同じ特性を実質的に保持することになる。例えば、WO99/51642に例えば記載されているように、C1q結合および/または補体依存性細胞傷害(CDC)の変更(すなわち、改善または減少のどちらか)をもたらすことになる、ある特定の変更をFc領域に行うことができると考えられる。Fc領域バリアントの他の例に関しては、Duncan & Winter Nature 322:738-40 (1988)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号、およびWO94/29351も参照されたい。WO00/42072(Presta)およびWO2004/056312(Lowman)には、FcRへの結合が改善または減少した抗体バリアントが記載されている。これらの特許公報の内容は、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。例えば、Shields et al. J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)も参照されたい。半減期が延長された抗体、および胎児への母性IgGの伝達を担う新生児型Fc受容体(FcRn)(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976)、およびKim et al., J. Immunol. 24:249 (1994))への結合が改善された抗体が、US2005/0014934A1(Hintonら)に記載されている。これらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善する1つまたは複数の置換を有するFc領域を含む。Fc領域アミノ酸配列が変更されたおよびC1q結合能力が増加または減少されたポリペプチドバリアントは、米国特許第6,194,551B1号、WO99/51642に記載されている。これらの特許公報の内容は、特に、参照により本明細書に組み込まれる。Idusogie et al. J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)も参照されたい。
【0193】
7.ベクター、宿主細胞、および組換え方法
本開示の抗体の組換え産生のために、本開示の抗体をコードする核酸が単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)のためにまたは発現のために複製可能なベクターに挿入される。抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)、容易に単離され、シーケンシングされる。多くのベクターが利用可能である。ベクターの選択は、一部では、使用される宿主細胞に依存する。一般に、宿主細胞は、原核生物または真核生物(一般に、哺乳動物)のどちらかの起源である。IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE定常領域を含む、任意のアイソタイプの定常領域を、このために使用することができること、ならびにそのような定常領域を任意のヒトまたは動物種から得ることができることは、理解されるであろう。
【0194】
原核生物宿主細胞を使用する抗体の生成
a)ベクター構築
本開示の抗体のポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチド配列は、標準的な組換え技術を使用して得ることができる。所望のポリヌクレオチド配列をハイブリドーマ細胞などの抗体産生細胞から単離し、シーケンシングすることができる。あるいは、ポリヌクレオチドを、ヌクレオチド合成装置またはPCR技法を使用して合成することができる。得られたら、ポリペプチドをコードする配列は、原核生物宿主において異種ポリヌクレオチドを複製することおよび発現することができる組換えベクターに挿入される。当技術分野において利用可能かつ公知である多数のベクターを、本開示のために使用することができる。適切なベクターの選択は、主として、ベクターに挿入される核酸のサイズ、およびベクターで形質転換される特定の宿主細胞に依存することになる。各ベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅もしくは発現、または両方)、およびそれが存在する特定の宿主細胞との適合性に依存して、様々な成分を含有する。ベクター成分としては、一般に、複製起点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種核酸インサート、および転写終結配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0195】
一般に、宿主細胞に適合する種に由来するレプリコンおよび制御配列を含有するプラスミドベクターが、これらの宿主に関連して使用される。ベクターは、通常、複製部位、および形質転換された細胞において表現型選択を生じさせることができるマーキング配列も有する。例えば、E.coliは、典型的には、E.coli種に由来するプラスミドであるpBR322を使用して形質転換される。pBR322は、アンピシリン(Amp)およびテトラサイクリン(Tet)耐性をコードする遺伝子を含有し、したがって、形質転換細胞を同定するための容易な手段を提供する。pBR322、その誘導体、または他の微生物プラスミドもしくはバクテリオファージはまた、微生物により内在性タンパク質の発現のために使用され得るプロモーターを含有し得るか、またはそのようなプロモーターを含有するように改変され得る。特定の抗体の発現に使用されるpBR322誘導体の例は、Carterらの米国特許第5,648,237号に詳細に記載されている。
【0196】
加えて、宿主微生物に適合するレプリコンおよび制御配列を含有するファージベクターを、これらの宿主に関連して形質転換ベクターとして使用することができる。例えば、λGEM.TM.-11などのバクテリオファージは、E.coli LE392などの感受性宿主細胞を形質転換するために使用することができる組換えベクターの作製に利用され得る。
【0197】
本開示の発現ベクターは、ポリペプチド成分の各々をコードする2つまたはそれより多くのプロモーター-シストロン対を含み得る。プロモーターは、シストロンに対して上流(5’)に位置し、その発現をモジュレートする非翻訳制御配列である。原核生物プロモーターは、典型的には、誘導性プロモーターおよび構成プロモーターという2つのクラスに分類される。誘導性プロモーターは、その制御下にあるシストロンの転写を培養条件の変化、例えば、栄養素の存在もしくは非存在または温度の変化に応じて増加したレベルで開始させる、プロモーターである。
【0198】
可能性のある様々な宿主細胞により認識される多数のプロモーターが周知である。選択されたプロモーターを、軽鎖または重鎖をコードするシストロンDNAに、制限酵素消化によって供給源のDNAからプロモーターを除去することおよび単離されたプロモーター配列を本開示のベクターに挿入することにより、作動可能に連結させることができる。天然プロモーター配列も、多数の異種プロモーターも、標的遺伝子の増幅および/または発現を導くために使用することができる。一部の実施形態では、異種プロモーターは、一般に、天然標的ポリペプチドプロモーターと比較して発現標的遺伝子のより多くの転写、およびより高い収量を可能にするので、異種プロモーターが利用される。
【0199】
原核生物宿主での使用に好適なプロモーターとしては、PhoAプロモーター、β-ガラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、ならびにハイブリッドプロモーター、例えば、tacまたはtrcプロモーターが挙げられる。しかし、細菌において機能する他のプロモーター(例えば、他の公知の細菌プロモーターまたはファージプロモーター)もまた好適である。それらのヌクレオチド配列は、公開されており、それによって、当業者は、それらを、標的軽鎖および重鎖をコードするシストロンに、任意の必要な制限部位を供給するためにリンカーまたはアダプターを使用して作動可能にライゲーションすることができる(Siebenlist et al. (1980) Cell 20: 269)。
【0200】
本開示の一態様では、組換えベクター内の各シストロンは、膜を横断する発現されたポリペプチドのトランスロケーションを導く分泌シグナル配列成分を含む。一般に、シグナル配列は、ベクターの成分であり得るか、またはシグナル配列は、ベクターに挿入される標的ポリペプチドDNAの一部であり得る。本開示のために選択されるシグナル配列は、宿主細胞により認識され、プロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼにより切断される)ものでなければならない。異種ポリペプチドに本来備わっているシグナル配列を認識およびプロセシングしない原核生物宿主細胞については、シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、または熱安定性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpAおよびMBPからなる群より選択される、原核生物シグナル配列により置換される。本開示の一実施形態では、発現系の両方のシストロンにおいて使用されるシグナル配列は、STIIシグナル配列またはそのバリアントである。
【0201】
別の態様では、本開示による免疫グロブリンの産生は、宿主細胞の細胞質において起こり得るものであり、したがって、各シストロン内の分泌シグナル配列の存在を必要としない。その関連で、免疫グロブリン軽鎖および重鎖は、細胞質内で、発現され、フォールディングされ、組み立てられて、機能性免疫グロブリンが形成される。ある特定の宿主株(例えば、E.coli trxB株)は、ジスルフィド結合の形成に好ましい細胞質条件を提供し、それによって、発現されたタンパク質サブユニットの正しいフォールディングおよび組立てを可能にする。Proba and Pluckthun Gene, 159:203 (1995)。
【0202】
本開示の、分泌され正しく組み立てられた抗体の収量を最大にするために、発現されるポリペプチド成分の定量的な比をモジュレートすることができる発現系を使用することにより、本開示の抗体を産生することもできる。そのようなモジュレーションは、少なくとも一部において、ポリペプチド成分の翻訳強度を同時にモジュレートすることにより果たされる。
【0203】
翻訳強度をモジュレートするための1つの技法は、Simmonsらの米国特許第5,840,523号において開示されている。この技法は、シストロン内の翻訳開始領域(TIR)のバリアントを利用する。所与のTIRについて、一連のアミノ酸または核酸配列バリアントをある範囲の翻訳強度で作出することができ、それによって、この因子を特定の鎖の所望の発現レベルに調整するための好都合な手段が得られる。TIRバリアントは、アミノ酸配列を変更し得るコドン変化を生じさせる結果となる従来の変異誘発技術により生成することができる。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列の変化は、サイレントである。TIRの変更は、例えば、シャイン・ダルガーノ配列の数または間隔の変更に加えてシグナル配列の変更も含み得る。変異体シグナル配列を生成するための1つの方法は、シグナル配列のアミノ酸配列を変化させない(すなわち、変化がサイレントである)、コード配列の出発点における「コドンバンク」の生成である。この方法は、各コドンの3番目のヌクレオチド位置を変化させることにより遂行され得る。加えて、一部のアミノ酸、例えば、ロイシン、セリンおよびアルギニンには、複数の1番目および2番目の位置を有し、このことがバンク作製に複雑性を追加し得る。この変異誘発方法は、Yansura et al. (1992) METHODS: A Companion to Methods in Enzymol. 4:151-158に詳細に記載されている。
【0204】
一実施形態では、ベクター内の各シストロンに対してある範囲のTIR強度を有する、1セットのベクターが、生成される。この限られたセットにより、各鎖の発現レベルの比較、および様々なTIR強度の組合せのもとで所望の抗体産物の収量ももたらす。TIR強度は、Simmonsらの米国特許第5,840,523号に詳細に記載されているようにレポーター遺伝子の発現レベルを定量することにより決定することができる。翻訳強度の比較に基づいて、所望の個々のTIRを選択して、本開示の発現ベクター構築物において組み合わせる。
【0205】
本開示の抗体の発現に好適な原核生物宿主細胞は、古細菌および真正細菌、例えば、グラム陰性またはグラム陽性生物を含む。有用な細菌の例としては、Escherichia(例えば、E.coli)、Bacilli(例えば、B.subtilis)、Enterobacteria、Pseudomonas種(例えば、P.aeruginosa)、Salmonella typhimurium、Serratia marcescans、Klebsiella、Proteus、Shigella、Rhizobia、Vitreoscilla、またはParacoccusが挙げられる。一実施形態では、グラム陰性細胞が使用される。一実施形態では、E.coli細胞が、本開示のための宿主として使用される。E.coli株の例としては、W3110株(Bachmann, Cellular and Molecular Biology, vol. 2 (Washington, D.C.: American Society for Microbiology, 1987), pp. 1190-1219;ATCC Deposit No. 27,325)およびその派生株が挙げられ、派生株には、遺伝子型W3110 ΔfhuA(ΔtonA)ptr3 lac Iq lacL8 ΔompTΔ(nmpc-fepE)degP41 kanRを有する33D3株(米国特許第5,639,635号)が含まれる。他の株およびそれらの派生株、例えば、E.coli 294(ATCC 31,446)、E.coli B、E.coliλ 1776(ATCC 31,537)、およびE.coli RV308(ATCC 31,608)も、好適である。これらの例は、制限するものではなく例示的なものである。定義された遺伝子型を有する上述の細菌のいずれかについての派生株を構築するための方法は、当技術分野において公知であり、例えば、Bass et al., Proteins, 8:309-314 (1990)に記載されている。一般に、細菌の細胞におけるレプリコンの複製能を考慮に入れて適切な細菌を選択する必要がある。例えば、pBR322、pBR325、pACYC177またはpKN410などの周知のプラスミドを使用してレプリコンを供給する際には、E.coli、Serratia、またはSalmonella種を宿主として好適に使用することができる。通常は、宿主細胞は、分泌するタンパク質分解酵素の量が最小限であるべきであり、追加のプロテアーゼ阻害剤が、望ましくは細胞培養に組み込まれ得る。
【0206】
b)抗体産生
宿主細胞は、上記の発現ベクターで形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適宜改変された従来の栄養培地で培養される。
【0207】
形質転換とは、染色体外エレメントとしてまたは染色体組込み体によりDNAを複製できるように、DNAを原核生物宿主に導入することを意味する。使用される宿主細胞に依存して、形質転換は、そのような細胞に適した標準的な技法を使用して行われる。実質的な細胞壁バリアを含有する細菌細胞には、一般に、塩化カルシウムを用いるカルシウム処置が使用される。形質転換のための別の方法は、ポリエチレングリコール/DMSOを用いる。使用されるさらに別の技法は、電気穿孔である。
【0208】
本開示のポリペプチドを産生するために使用される原核生物細胞は、当技術分野において公知であり、選択された宿主細胞の培養に好適な培地で増殖される。好適な培地の例としては、必要な栄養サプリメントを加えたルリアブロス(LB)が挙げられる。一部の実施形態では、培地は、発現ベクターを含有する原核生物細胞の増殖を選択的に可能にするために発現ベクターの構築に基づいて選ばれた選択剤も含有する。例えば、アンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞の増殖のために、アンピシリンが培地に添加される。
【0209】
炭素、窒素および無機リン酸塩供給源の他に、任意の必要なサプリメントも、単独で導入して、または複合窒素供給源などの別のサプリメントもしくは培地との混合物として導入して、適切な濃度で含まれ得る。必要に応じて、培養培地は、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリトリトールおよびジチオトレイトールからなる群より選択される1つまたは複数の還元剤を含有することができる。
【0210】
原核生物宿主細胞は、好適な温度で培養される。ある特定の実施形態では、E.coli増殖について、増殖温度は、約20℃~約39℃、約25℃~約37℃、または約30℃の範囲である。培地のpHは、主として宿主生物に依存して、約5~約9の範囲の任意のpHであり得る。ある特定の実施形態では、E.coliについて、pHは、約6.8~約7.4、または約7.0である。
【0211】
誘導性プロモーターが本開示の発現ベクターにおいて使用される場合、タンパク質の発現は、プロモーターの活性化に好適な条件下で誘導される。本開示の一態様では、ポリペプチドの転写を制御するためにPhoAプロモーターが使用される。したがって、形質転換宿主細胞は、誘導のためにリン酸制限培地で培養される。ある特定の実施形態では、リン酸制限培地は、C.R.A.P.培地である(例えば、Simmons et al., J. Immunol. Methods (2002), 263:133-147を参照されたい)。当技術分野において公知であるように、用いられるベクター構築物に応じて、様々な他の誘導因子を使用することができる。
【0212】
一実施形態では、本開示の発現されたポリペプチドは、宿主細胞のペリプラズムに分泌され、そのペリプラズムから回収される。タンパク質回収は、一般に浸透圧ショック、超音波処理または溶解などの手段により、微生物を破壊することを典型的には伴う。細胞が破壊されると、細胞デブリまたは細胞全体を遠心分離または濾過により除去することができる。タンパク質を、例えば親和性樹脂クロマトグラフィーにより、さらに精製することができる。あるいは、タンパク質は、培養培地に輸送し、それをそこで単離することができる。細胞を培養物から除去し、産生されたタンパク質のさらなる精製のために培養上清を濾過し、濃縮することができる。発現されたポリペプチドを、一般に公知の方法、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)およびウェスタンブロットアッセイを使用して、さらに単離し、同定することができる。
【0213】
本開示の一態様では、抗体の産生は、発酵プロセスにより大量に行われる。様々な大規模流加発酵手順が、組換えタンパク質の産生に利用可能である。大規模発酵は、少なくとも1000リットルの容量を有し、ある特定の実施形態では、約1,000~100,000リットルの容量を有する。これらの発酵槽は、酸素および栄養素、特にグルコース、を分配するために攪拌翼を使用する。小規模発酵は、容積容量(volumetric capacity)がおおよそ100リットル以下であり、約1リットル~約100リットルの範囲であり得る発酵槽における、発酵を一般に指す。
【0214】
発酵プロセスでは、タンパク質発現の誘導は、細胞が好適な条件下で所望の密度、例えば約180~220のOD550まで増殖した後に典型的には開始され、この段階で、細胞は、初期定常期にある。当技術分野において公知であるように、および上記の通り、利用されるベクター構築物に応じて、様々な誘導因子を使用することができる。誘導前に細胞を増殖させる期間は、より短くてもよい。細胞を通常は約12~50時間誘導するが、より長いまたは短い誘導時間を使用してもよい。
【0215】
本開示のポリペプチドの産生収量および品質を改善するために、様々な発酵条件を修正することができる。例えば、分泌される抗体ポリペプチドの正しい組立ておよびフォールディングを改善するために、シャペロンタンパク質、例えば、Dsbタンパク質(DsbA、DsbB、DsbC、DsbD、および/またはDsbG)、またはFkpA(シャペロン活性を有するペプチジルプロリルシス,トランスイソメラーゼ)を過剰発現する追加のベクターを使用して、宿主原核生物細胞を同時形質転換することができる。シャペロンタンパク質は、細菌宿主細胞において産生される異種タンパク質の正しいフォールディングおよび溶解度を助長することが実証されている。Chen et al. (1999) J. Biol. Chem. 274:19601-19605;Georgiouらの米国特許第6,083,715号;Georgiouらの米国特許第6,027,888号;Bothmann and Pluckthun (2000) J. Biol. Chem. 275:17100-17105;Ramm and Pluckthun (2000) J. Biol. Chem. 275:17106-17113;Arie et al. (2001) Mol. Microbiol. 39:199-210。
【0216】
発現された異種タンパク質(特に、タンパク質分解感受性のもの)のタンパク質分解を最小限に抑えるために、タンパク質分解酵素が欠損しているある特定の宿主株を本開示に使用することができる。例えば、宿主細胞株を、公知の細菌プロテアーゼ、例えば、プロテアーゼIII、OmpT、DegP、Tsp、プロテアーゼI、プロテアーゼMi、プロテアーゼV、プロテアーゼVIおよびこれらの組合せをコードする遺伝子の遺伝的変異を生じさせるように、改変することができる。一部のE.coliプロテアーゼ欠損株が利用可能であり、例えば、上掲のJoly et al. (1998);Georgiouらの米国特許第5,264,365号;Georgiouらの米国特許第5,508,192号;Hara et al., Microbial Drug Resistance, 2:63-72 (1996)に記載されている。
【0217】
一実施形態では、タンパク質分解酵素が欠損しており、1つまたは複数のシャペロンタンパク質を過剰発現するプラスミドで形質転換されたE.coli株が、本開示の発現系において宿主細胞として使用される。
【0218】
c)抗体精製
一実施形態では、本明細書において産生される抗体タンパク質は、さらなるアッセイおよび使用のための実質的に均一である調製物を得るために、さらに精製される。当技術分野において公知の標準的なタンパク質精製方法を用いることができる。以下の手順は、好適な精製手順の例示となるものである:免疫親和性カラムまたはイオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿法、逆相HPLC、シリカでの、またはカチオン交換樹脂、例えばDEAEでのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、硫酸アンモニウム沈殿法、および例えばSephadex G-75を使用するゲル濾過。
【0219】
一態様では、固相に固定化されたプロテインAが、本開示の抗体産物の免疫親和性精製に使用される。プロテインAは、抗体のFc領域に高い親和性で結合する、Staphylococcus aureasからの41kD細胞壁タンパク質である。Lindmark et al (1983) J. Immunol. Meth. 62:1-13。プロテインAが固定化される固相は、ガラスもしくはシリカ表面を含むカラム、または制御細孔ガラス(controlled pore glass)カラム、またはケイ酸カラムであり得る。一部の適用では、カラムは、ことによると夾雑物の非特異的な付着を防止するために、グリセロールなどの試薬でコーティングされる。
【0220】
精製の第1のステップとして、上記の細胞培養に由来する調製物を、プロテインAが固定化された固相に適用して、目的の抗体をプロテインAに特異的に結合させる。次いで、固相を洗浄して、固相に非特異的に結合した夾雑物を除去する。最後に、目的の抗体を、溶出により固相から回収する。
【0221】
真核生物宿主細胞を使用する抗体の生成:
真核生物宿主細胞において使用するためのベクターは、一般に、次の非限定的な成分の1つまたは複数を含む:シグナル配列、複製起点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終結配列。
【0222】
a)シグナル配列成分
真核生物宿主細胞において使用するためのベクターは、成熟タンパク質または目的のポリペプチドのN末端に特定の切断部位を有する、シグナル配列または他のポリペプチドも含有し得る。選択される異種シグナル配列は、宿主細胞により認識され、プロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼにより切断される)ものであり得る。哺乳動物細胞における発現では、哺乳動物シグナル配列、およびウイルス分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスgDシグナルも、利用可能である。そのような前駆体領域のDNAは、リーディングフレーム内で、抗体をコードするDNAにライゲーションされる。
【0223】
b)複製起点
一般に、複製起点成分は、哺乳動物発現ベクターには必要ない。例えば、SV40起点は、単に初期プロモーターを含有するという理由で、典型的には使用され得る。
【0224】
c)選択遺伝子成分
発現およびクローニングベクターは、選択可能なマーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含有し得る。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質もしくは他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサートもしくはテトラサイクリンに対する耐性を付与するタンパク質、(b)関連する場合、栄養要求性欠損を補完するタンパク質、または(c)複合培地から入手できない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
【0225】
選択スキームの一例は、宿主細胞の増殖を停止する薬物を利用する。異種遺伝子で成功裏に形質転換される細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を産生し、したがって選択レジメンに生き残る。そのような優性選択の例は、薬物ネオマイシン、ミコフェノール酸およびハイグロマイシンを使用する。
【0226】
哺乳動物細胞の好適な選択可能マーカーの別の例は、抗体核酸を取り込む能力のある細胞の同定を可能にするもの、例えば、DHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン-IおよびII、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼなどである。
【0227】
例えば、一部の実施形態では、DHFR選択遺伝子で形質転換された細胞が、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトレキサート(Mtx)を含有する培養培地においてすべての形質転換体を培養することにより、先ず同定される。一部の実施形態では、野生型DHFRが用いられる場合に適切な宿主細胞は、DHFR活性が欠損したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系(例えば、ATCC CRL-9096)である。
【0228】
あるいは、抗体、野生型DHFRタンパク質、および別の選択可能なマーカー、例えばアミノグリコシド3’-ホスホトランスフェラーゼ(APH)をコードするDNA配列で形質転換または同時形質転換された宿主細胞(特に、内在性DHFRを含有する野生型宿主)を、選択可能なマーカーの選択剤、例えば、アミノグリコシド系抗生物質、例えばカナマイシン、ネオマイシンまたはG418を含有する培地における細胞増殖により、選択することができる。米国特許第4,965,199号を参照されたい。宿主細胞としては、NS0、CHOK1、CHOK1SVまたは派生株を挙げることができ、派生株には、グルタミンシンテターゼ(GS)が欠損した細胞系が含まれる。哺乳動物細胞のために選択可能なマーカーとしてGSを使用するための方法は、米国特許第5,122,464号および米国特許第5,891,693号に記載されている。
【0229】
d)プロモーター成分
発現ベクターおよびクローニングベクターは、宿主生物により認識され、目的のポリペプチド(例えば、抗体)をコードする核酸に作動可能に連結されているプロモーターを、通常含有する。真核生物についてのプロモーター配列は公知である。例えば、事実上すべての真核生物遺伝子は、転写が開始される部位からおおよそ25~30塩基上流に位置するATリッチ領域を有する。多くの遺伝子の転写の開始部から70~80塩基上流に見出される別の配列は、CNCAAT領域(ここで、Nは任意のヌクレオチドであり得る)である。ほとんどの真核生物遺伝子の3’末端には、AATAAA配列があり、この配列は、コーディング配列の3’末端へのポリA尾部の付加のためのシグナルであり得る。ある特定の実施形態では、これらの配列のいずれかまたはすべてを、真核生物発現ベクターに好適に挿入することができる。
【0230】
哺乳動物宿主細胞におけるベクターからの転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス2)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスおよびシミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから、異種哺乳動物プロモーター、例えば、アクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーターから、熱ショックプロモーターから得られるプロモーターにより制御されるが、ただし、このようなプロモーターが、宿主細胞系に適合することを条件とする。
【0231】
SV40ウイルスの初期および後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点も含有するSV40制限断片として好都合に得られる。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターは、HindIII E制限断片として好都合に得られる。ウシパピローマウイルスをベクターとして使用して哺乳動物宿主においてDNAを発現させるための系は、米国特許第4,419,446号において開示されている。この系の改変は、米国特許第4,601,978号に記載されている。単純ヘルペスウイルスからのチミジンキナーゼプロモーターの制御下でのマウス細胞におけるヒトβ-インターフェロンcDNAの発現を記載しているReyes et al., Nature 297:598-601 (1982)も、参照されたい。あるいは、ラウス肉腫ウイルスの長い末端反復配列を、プロモーターとして使用することができる。
【0232】
e)エンハンサーエレメント成分
高等真核生物による本開示の抗体をコードするDNAの転写は、多くの場合、エンハンサー配列をベクターに挿入することにより増加される。哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン、およびインスリン)からの多くのエンハンサー配列が、今では公知である。しかし、典型的には、真核生物細胞ウイルスからのエンハンサーを使用することになる。例としては、複製起点の後期側(塩基対100~270)のSV40エンハンサー、ヒトサイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、マウスサイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。真核生物プロモーターの活性化のためのエンハンサーエレメントを記載しているYaniv, Nature 297:17-18 (1982)も、参照されたい。エンハンサーは、ベクター内の抗体ポリペプチドをコードする配列の5’または3’側の位置にスプライシングされ得るが、一般的にプロモーターから5’側の部位に位置する。
【0233】
f)転写終結成分
真核生物宿主細胞において使用される発現ベクターは、転写に終結のためにおよびmRNAを安定させるために必要な配列も含有し得る。そのような配列は、一般に、真核生物またはウイルスDNAまたはcDNAの5’非翻訳領域から、および低頻度に3’非翻訳領域から入手可能である。これらの領域は、抗体をコードするmRNAの非翻訳部分に、ポリアデニル化断片として転写されたヌクレオチドセグメントを含有する。1つの有用な転写終結成分は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO94/11026およびそこで開示されている発現ベクターを参照されたい。
【0234】
g)宿主細胞の選択および形質転換
本明細書におけるベクターでのDNAのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞は、脊椎動物宿主細胞を含む本明細書に記載の高等真核生物細胞を含む。培養(組織培養)での脊椎動物細胞の増殖は、慣例的な手順となっている。有用な哺乳動物宿主細胞系の例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1系統(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胚性腎臓系統(293細胞、もしくは懸濁培養での増殖のためにサブクローニングされた293細胞、Graham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982));MRC 5細胞;FS4細胞;CHOK1細胞、CHOK1SV細胞または派生株、およびヒト肝細胞癌系統(Hep G2)である。
【0235】
宿主細胞は、抗体産生のために上記発現またはクローニングベクターで形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適宜改変された従来の栄養培地で培養される。
【0236】
h)宿主細胞の培養
本開示の抗体を産生するために使用される宿主細胞は、様々な培地で培養することができる。市販の培地、例えば、ハムF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、およびダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)は、宿主細胞の培養に好適である。加えて、Ham et al., Meth. Enz. 58:44 (1979)、Barnes et al., Anal. Biochem. 102:255 (1980)、米国特許第4,767,704号、同第4,657,866号、同第4,927,762号、同第4,560,655号もしくは同第5,122,469号、WO90/03430、WO87/00195、または米国特許再発行第30,985号に記載されている培地のいずれかを、宿主細胞の培養培地として使用することができる。これらのいずれの培地にも、ホルモンおよび/または他の増殖因子(例えば、インスリン、トランスフェリン、または上皮増殖因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩)、緩衝液(例えば、HEPES)、ヌクレオチド(例えば、アデノシンおよびチミジン)、抗生物質(例えば、GENTAMYCIN(商標)薬)、微量元素(マイクロモル濃度範囲の最終濃度で通常は存在する無機化合物と定義される)、ならびにグルコースまたは同等のエネルギー源を、必要に応じて追加補充することができる。任意の他のサプリメントも、当業者には公知であろう適切な濃度で含まれ得る。培養条件、例えば、温度、pHおよび同様のものは、発現に選択される宿主細胞に関して以前に使用されたものであり、当業者には明らかであろう。
【0237】
i)抗体の精製
組換え技術を使用する場合、抗体は、細胞内で産生され得るか、または培地内に直接的に分泌され得る。抗体が細胞内で産生された場合、第一のステップとして、宿主細胞または溶解断片のどちらかである微粒子状デブリを、例えば遠心分離または限外濾過により、除去することができる。抗体が培地内に分泌された場合、そのような発現系からの上清を、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pelliconの限外濾過ユニットを使用して、先ず濃縮することができる。前述のステップのいずれかにタンパク質分解を阻害するためにPMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を含めることができ、偶発的な夾雑物の増殖を防止するために抗生物質を含めることができる。
【0238】
細胞から調製された抗体組成物を、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、および親和性クロマトグラフィーを使用して精製することができ、親和性クロマトグラフィーが好都合な技法である。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依存する。プロテインAを使用して、ヒトγ1、γ2、またはγ4重鎖に基づく抗体を精製することができる(Lindmark et al., J. Immunol. Methods 62:1-13 (1983))。プロテインGは、すべてのマウスアイソタイプにおよびヒトγ3に推奨されている(Guss et al., EMBO J. 5:15671575 (1986))。親和性リガンドが結合されるマトリックスは、アガロースであり得るが、他のマトリックスも利用可能である。機械的に安定なマトリックス、例えば、制御細孔ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンは、アガロースで達成され得るものより速い流量およびより短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker、Phillipsburg、N.J.)が精製に有用である。タンパク質精製のための他の技法、例えば、イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿法、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンでのクロマトグラフィー、アニオン交換樹脂またはカチオン交換樹脂(例えば、ポリアスパラギン酸カラム)でのSEPHAROSE(商標)クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、および硫酸アンモニウム沈殿法も、回収すべき抗体に依存して利用可能である。
【0239】
任意の予備的な精製ステップの後、目的の抗体と夾雑物とを含む混合物を、例えば、低い塩濃度(例えば、約0~0.25Mの塩)で行われる、約2.5~4.5の間のpHの溶出緩衝液を使用する低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーによる、さらなる精製に供すことができる。
【0240】
一般に、上記の方法論と整合する、および/または当業者により目的の特定の抗体に適切であると判断されるような、研究、試験および臨床用途に使用される抗体を調製するための様々な方法論は、当技術分野において十分に確立されている。
【0241】
非フコシル化抗体の産生
低減したフコシル化度を有する抗体を調製するための方法が、本明細書で提供される。例えば、本明細書で企図される方法としては、タンパク質フコシル化が欠損している細胞系(例えば、Lec13 CHO細胞、アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子ノックアウトCHO細胞、β1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIIを過剰発現し、さらにゴルジμ-マンノシダーゼIIを過剰発現する細胞など)の使用、および抗体の産生に使用される細胞培養培地におけるフコースアナログの添加が挙げられるが、これらに限定されない。Ripka et al. Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);Presta,Lの米国特許出願第2003/0157108A1号;WO2004/056312 A1;Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004);および米国特許第8,574,907号を参照されたい。抗体のフコース含有量を低減させるためのさらなる技法は、米国特許出願公開第2012/0214975号に記載されているGlymaxx技術を含む。抗体のフコース含有量を低減させるためのさらなる技法は、抗体の産生に使用される細胞培養培地における1つまたは複数のグリコシダーゼ阻害剤の添加も含む。グリコシダーゼ阻害剤としては、α-グルコシダーゼI、α-グルコシダーゼII、およびα-マンノシダーゼIが挙げられる。一部の実施形態では、グリコシダーゼ阻害剤は、α-マンノシダーゼIの阻害剤(例えば、キフネンシン)である。
【0242】
本明細書で使用される場合、「コアフコシル化」は、N結合型グリカンの還元末端におけるN-アセチルグルコサミン(「GlcNAc」)へのフコースの付加(「フコシル化」)を指す。そのような方法により産生される抗体およびそれらの組成物も、提供される。
【0243】
一部の実施形態では、Fc領域(またはドメイン)に結合している複合N-グリコシド結合型糖鎖のフコシル化が、低減される。本明細書で使用される場合、「複合N-グリコシド結合型糖鎖」は、典型的にはアスパラギン297(Kabatの番号による)に結合されるが、複合N-グリコシド結合型糖鎖が他のアスパラギン残基に連結されることもある。「複合N-グリコシド結合型糖鎖」は、マンノースのみがコア構造の非還元末端に組み込まれている高マンノース型の糖鎖が除外されるが、1)コア構造の非還元末端側にガラクトース-N-アセチルグルコサミン(「gal-GlcNAc」とも呼ばれる)の1つまたは複数の枝があり、Gal-GlcNAcの非還元末端側に、必要に応じて、シアル酸、バイセクティングN-アセチルグルコサミン、もしくはこれらに類するものがある、複合型、または2)コア構造の非還元末端側に、高マンノースN-グリコシド結合型糖鎖と複合N-グリコシド結合型糖鎖との両方の枝がある、ハイブリッド型を含む。
【0244】
一部の実施形態では、「複合N-グリコシド結合型糖鎖」は、コア構造の非還元末端側に、ガラクトース-N-アセチルグルコサミン(「gal-GlcNAc」とも呼ばれる)の枝が全くないか、または1つもしく複数あり、Gal-GlcNAcの非還元末端側に、必要に応じて、シアル酸、バイセクティングN-アセチルグルコサミンまたはこれらに類するものなどの構造がさらにある、複合型を含む。
【0245】
本方法によれば、典型的にはごくわずかな量のフコースしか複合N-グリコシド結合型糖鎖に組み込まれない。例えば、様々な実施形態では、組成物中、抗体の約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、または約1%未満が、フコースによるコアフコシル化を有する。一部の実施形態では、組成物中、抗体の実質的にいずれも(すなわち、約0.5%未満)、フコースによるコアフコシル化を有さない。一部の実施形態では、組成物中、抗体の約40%より多く、約50%より多く、約60%より多く、約70%より多く、約80%より多く、約90%より多く、約91%より多く、約92%より多く、約93%より多く、約94%より多く、約95%より多く、約96%より多く、約97%より多く、約98%より多く、また約99%より多くが、フコシル化されていない。
【0246】
一部の実施形態では、N-グリコシド結合型炭水化物鎖の実質的にいずれも(すなわち、約0.5%未満)フコース残基を含有しない抗体が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、抗体の重鎖の少なくとも1つまたは2つがフコシル化されていない抗体が、本明細書で提供される。
【0247】
上記のように、様々な哺乳動物宿主発現ベクター系を、抗体を発現させるために利用することができる。一部の実施形態では、培養培地にフコースが追加補充されない。一部の実施形態では、有効量のフコースアナログが、培養培地に添加される。この文脈での「有効量」は、抗体の複合N-グリコシド結合型糖鎖へのフコースの組込みを、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%減少させるのに十分である、アナログの量を指す。一部の実施形態では、本方法により産生された抗体は、フコースアナログの非存在下で培養された宿主細胞から産生された抗体と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%非コアフコシル化(例えば、コアフコシル化が欠如している)タンパク質を含む。
【0248】
フコースが糖鎖の還元末端におけるN-アセチルグルコサミンに結合していない糖鎖の、フコースが糖鎖の還元末端におけるN-アセチルグルコサミンに結合している糖鎖に対する含有量(例えば、比)は、例えば、実施例で説明するように、決定することができる。他の方法としては、ヒドラジン分解または酵素消化(例えば、Biochemical Experimentation Methods 23: Method for Studying Glycoprotein Sugar Chain (Japan Scientific Societies Press), edited by Reiko Takahashi (1989)を参照されたい)、放出された糖鎖の蛍光標識または放射性同位体標識および次いで標識された糖鎖のクロマトグラフィーによる分離が挙げられる。また、放出された糖鎖の組成を、HPAEC-PAD法(例えば、J. Liq Chromatogr. 6:1557 (1983)を参照されたい)により鎖を解析することによって決定することができる。(一般に、米国特許出願公開第2004/0110282号を参照されたい)。
【0249】
III.組成物
一部の態様では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体(例えば、Siglec-8に結合する抗体)のいずれかを含む組成物(例えば、医薬組成物)も、本明細書で提供される。一部の態様では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体を含む組成物であって、抗体が、Fc領域と、Fc領域に連結されたN-グリコシド結合型炭水化物鎖とを含み、N-グリコシド結合型炭水化物鎖の約50%未満がフコース残基を含有する、組成物が本明細書で提供される。一部の実施形態では、抗体は、Fc領域と、Fc領域に連結されたN-グリコシド結合型炭水化物鎖とを含み、N-グリコシド結合型炭水化物鎖の約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、または約15%未満が、フコース残基を含有する。一部の態様では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体を含む組成物であって、抗体が、Fc領域と、Fc領域に連結されたN-グリコシド結合型炭水化物鎖とを含み、N-グリコシド結合型炭水化物鎖の実質的にいずれもフコース残基を含有しない、組成物が本明細書で提供される。
【0250】
治療用製剤は、所望の程度の純度を有する活性成分と必要に応じた薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤とを混合することにより、保管用に調製される(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Ed., Lippincott Williams & Wiklins, Pub., Gennaro Ed., Philadelphia, Pa. 2000)。許容される担体、賦形剤または安定剤は、用いられる投薬量および濃度でレシピエントにとって非毒性であり、これらには、緩衝液、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE、ピロ亜硫酸ナトリウムを含む、抗酸化剤、保存剤、等張剤、安定剤、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);キレート剤、例えばEDTAならびに/または非イオン性表面活性剤が含まれる。
【0251】
緩衝液は、特に、安定性がpH依存性である場合、治療有効性を最適化する範囲内にpHを制御するために使用することができる。緩衝液は、約50mM~約250mMの範囲の濃度で存在し得る。本開示での使用に好適な緩衝化剤には、有機酸と無機酸の両方、およびそれらの塩が含まれる。例えば、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酢酸塩。加えて、緩衝液は、ヒスチジンおよびトリメチルアミン塩、例えばTrisから構成されることもある。
【0252】
保存剤は、微生物の増殖を防止するために添加することができ、通常は約0.2%~1.0%(w/v)の範囲で存在する。本開示での使用に好適な保存剤としては、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;ハロゲン化ベンザルコニウム(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、塩化ベンゼトニウム;チメロサール、フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール、3-ペンタノール、およびm-クレゾールが挙げられる。
【0253】
「安定剤」として知られていることもある張度剤(tonicity agent)は、組成物中の液体の張度を調整または維持するために存在し得る。タンパク質および抗体などの大きい荷電生体分子とともに使用される場合、それらは、アミノ酸側鎖の荷電基と相互作用し、それによって分子間相互作用および分子内相互作用の可能性を低下させることができるため、「安定剤」と呼ばれることが多い。張度剤は、他の成分の相対量を考慮して、約0.1重量%~約25重量%の間または約1~約5重量%の間の任意の量で存在し得る。一部の実施形態では、張度剤は、多価糖アルコール、三価またはそれより高い価数の糖アルコール、例えば、グリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールを含む。
【0254】
追加の賦形剤には、次のうちの1つまたは複数としての機能を果たすことができる作用物質が含まれる:(1)増量剤、(2)溶解度向上剤、(3)安定剤、および(4)変性または容器壁への付着を防止する作用物質。そのような賦形剤としては、多価糖アルコール(上記に列挙されている);アミノ酸、例えば、アラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リシン、オルニチン、ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニンなど;有機糖または糖アルコール、例えば、スクロース、ラクトース、ラクチトール、トレハロース、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース(myoinisitose)、ミオイノシトール(myoinisitol)、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えば、イノシトール)、ポリエチレングリコール;硫黄含有還元剤、例えば、尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モノチオグリセロールおよびチオ硫酸ナトリウム;低分子量タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチンまたは他の免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;単糖類(例えば、キシロース、マンノース、フルクトース、グルコース);二糖類(例えば、ラクトース、マルトース、スクロース);三糖類、例えば、ラフィノース;ならびに多糖類、例えば、デキストリンまたはデキストランが挙げられる。
【0255】
非イオン性表面活性剤または界面活性物質(「湿潤剤」としても公知)は、治療剤の可溶化を助けるためばかりでなく、治療用タンパク質を撹拌により誘導される凝集から保護するためにも存在することがあり、これらによって、活性治療用タンパク質または抗体の変性を引き起こすことなく製剤をせん断表面応力に曝露することも可能になる。非イオン性表面活性剤は、約0.05mg/ml~約1.0mg/mlまたは約0.07mg/ml~約0.2mg/mlの範囲で存在する。一部の実施形態では、非イオン性表面活性剤は、約0.001%~約0.1%w/vまたは約0.01%~約0.1%w/vまたは約0.01%~約0.025%w/vの範囲で存在する。
【0256】
好適な非イオン性表面活性剤としては、ポリソルベート(20、40、60、65、80など)、ポロキサマー(polyoxamer)(184、188など)、PLURONIC(登録商標)ポリオール、TRITON(登録商標)、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(登録商標)-20、TWEEN(登録商標)-80など)、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油10、50および60、モノステアリン酸グリセロール、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースが挙げられる。使用することができるアニオン性界面活性物質としては、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウムおよびスルホン酸ジオクチルナトリウムが挙げられる。カチオン性界面活性物質としては、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムが挙げられる。
【0257】
製剤をin vivo投与に使用するためには、製剤は、無菌でなければならない。製剤を、滅菌濾過膜による濾過によって無菌にすることができる。本明細書における治療用組成物は、無菌アクセスポートを有する容器、例えば、静脈内溶液バッグ、または皮下注射針により穴を開けることができるストッパーを有するバイアルに、一般に入れられる。
【0258】
投与経路は、公知の、受入れられている方法、例えば、単回もしくは複数回のボーラス、または好適な様式での長期間にわたる注入、例えば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、病巣内もしくは関節内経路による注射もしくは注入、局所投与、吸入、または持続放出もしくは延長放出手段による方法に従う。一部の実施形態では、本開示の組成物または抗体は、3カ月またはそれを超える月数にわたって月1回、静脈内注入により投与される。
【0259】
本明細書における製剤は、処置されることになる特定の適応症のために活性化合物、好ましくは、互いに有害に作用しない補完的活性を有するものを、必要に応じて1つより多く含有することもできる。そのような活性化合物は、意図された目的に有効である量で組み合わせて適切に存在する。
【0260】
IV.製造物品またはキット
別の態様では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)を含む製造物品またはキットが、提供される。製造物品またはキットは、本開示の方法における抗体の使用のための指示をさらに含むことができる。ある特定の実施形態では、個体は、ヒトである。
【0261】
製造物品またはキットは、容器をさらに含むことができる。好適な容器としては、例えば、瓶、バイアル(例えば、二室式バイアル)、シリンジ(例えば、一室または二室シリンジ)および試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器により製剤が保持される。
【0262】
製造物品またはキットは、容器上にあるかまたは容器に付随し、製剤の再構成および/または使用に関する指示を示すことができる、ラベルまたは添付文書をさらに含むことができる。ラベルまたは添付文書は、製剤が、個体における本開示の疾患または障害の処置および/または予防のための皮下、静脈内または他の投与方式に有用であること、またはそのような方式のために意図されていることを、さらに示すことができる。製剤を保持する容器は、単回使用バイアルであることもあり、または再構成された製剤の反復投与を可能にする複数回使用バイアルであることもある。製造物品またはキットは、好適な希釈剤を含む第二の容器をさらに含むことができる。製造物品またはキットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および使用のための指示を伴う添付文書を含む、商業上の、治療上の、および使用者の観点から望ましい他の材料を、さらに含むことができる。
【0263】
特定の実施形態では、本開示は、単回用量投与単位のためのキットを提供する。そのようなキットは、一室式充填済みシリンジまたは多室式充填済みシリンジの両方を含む、治療用抗体の水性製剤の容器を含む。例示的な充填済みシリンジは、Vetter GmbH、Ravensburg、Germanyから入手可能である。
【0264】
別の実施形態では、オートインジェクターデバイスでの投与のための本明細書に記載の製剤を含む製造物品またはキットが、本明細書で提供される。オートインジェクターは、作動させると患者または管理者による追加の必要な行動なしにその内容物を送達することになる注射デバイスであると説明され得る。これらは、送達速度が一定でなければならず、送達時間がしばらくかかる場合の、治療用製剤の自己投薬に特に適している。
【0265】
別の態様では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)を含む製造物品またはキットが提供される。製造物品またはキットは、本開示の方法における抗体の使用のための指示をさらに含むことができる。
【0266】
本明細書に記載の態様および実施形態が、例示を目的としたものに過ぎないこと、ならびにそれらを考慮して様々な修飾または変更が当業者に示唆されることになり、そのような修飾または変更が本願の趣旨および権限内に含まれ、添付の特許請求の範囲に含まれることになることは、理解されよう。
【実施例】
【0267】
本開示は、以下の実施例を参照することにより、さらに十分に理解されることになる。しかし、これらの実施例を、本発明の範囲を限定するもの見なすべきではない。本明細書に記載する実施例および実施形態が、例示を目的としたものに過ぎないこと、およびそれらを考慮して様々な修飾または変更が当業者に示唆されることになり、そのような修飾形態または変更形態が本願の趣旨および権限内に含まれ、添付の特許請求の範囲に含まれることになることは、理解されよう。
【0268】
(実施例1:好酸球性胃炎および/または好酸球性胃腸炎を有する患者における抗Siglec-8処置の安全性および耐容性を評価するための第2相研究からの結果)
本実施例は、ヒト化、非フコシル化IgG1モノクローナル抗Siglec-8抗体(HEKA)を使用する、好酸球性胃炎(EG)および/または好酸球性胃腸炎(EGE)を有する患者における第2相試験処置からの結果を記載する。具体的には、本研究は、EGおよび/またはEGEを有する患者における抗Siglec-8抗体の安全性および耐容性を評価した。
【0269】
EGおよび/またはEGEは、稀なタイプの好酸球性胃腸障害を表し、胃の層への好酸球の班状もしくはびまん性浸潤に起因する(EG)、または胃および小腸の層への好酸球の班状もしくはびまん性浸潤に起因する(EGE)、慢性炎症を特徴とする(Prussin, C. (2014) Gastroenterol. Clin. North. Am. 43:317-327;Reed, C. et al. (2015) Dig. Liver Dis. 47:197-201;Zhang, M. and Li, Y. (2017) J. Gastroenterol. Hepatol. 32:64-72)。診断は、胃および十二指腸からの生検標本における、好酸球増多の他の原因が一切ない、組織好酸球の増加と併せて、臨床像(胃腸の症状)に基づいて行う。胃腸の症状は、活性化好酸球およびことによると肥満細胞からの炎症性メディエーターの放出に起因すると考えられており、胃腸管における好酸球浸潤物の層および/または位置によって変わり得る。症状としては、一般に、悪心、嘔吐、腹痛、下痢、腹部膨満、早期満腹感、および体重減少が挙げられる(Alhmoud, T. et al. (2016) Dig. Dis. Sci. 61:2585-2592;Lopez-Medina, G. et al. (2015) Case Rep. Gastrointest. Med. 2015:1-5;Mansoor, E. et al. (2017) Clin. Gastroenterol. Hepatol. 15:1733-1741;Reed, C. et al. (2015) Dig. Liver Dis. 47:197-201)。EGおよびEGEの罹患率は、年齢1~64歳の患者について、それぞれ6.3/100,000および8.4/100,000であると推定される(Jensen, E. et al. (2016) J. Pediatr. Gastroenterol. Nutr. 62:36-42)。EGの全罹患率は、5.1人/100,000人であると推定される(Mansoor, E. et al. (2017) Clin. Gastroenterol. Hepatol. 15:1733-1741)。
【0270】
FDAにより承認されたEGおよび/またはEGEの処置はない。現行の治療および疾患管理は、プロトンポンプ阻害剤、抗ヒスタミン薬、制限食/成分栄養剤、全身性または経口副腎皮質ステロイド薬、ならびに免疫調節生物製剤の時折の適応外使用を含む。プロトンポンプ阻害剤は、EGおよび/またはEGEを有する患者にはほとんどまたは全く利益がないが、好酸球性食道炎を有する患者にはある程度の利益を認めることができる(Katz, P. et al. (2013) Am. J. Gastroenterol. 108:308-328)。制限食/成分栄養剤は、長期的処置のために持続可能なものとは考えられておらず、そのため、症状が継続していても栄養を供給するためにさらに使用される。全身性または経口副腎皮質ステロイド薬は、症状緩和をもたらすことができるが、それらの非常に多くの副作用のため、長期的処置の解決策にはならない。
【0271】
Siglec-8は、限定的な組織分布を有し、好酸球の表面、肥満細胞の表面、およびより低レベルで好塩基球上に選択的に発現される。Siglec-8への抗Siglec-8抗体の結合は、肥満細胞活性化を阻害するシグナルを誘導し、好酸球のアポトーシスをもたらすことができる。エフェクター細胞(例えば、ナチュラルキラー細胞)の存在下でのSiglec-8への抗Siglec-8抗体の結合は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)により循環好酸球を枯渇させる。理論に拘束されることを望まないが、この活性プロファイルは、これらの細胞型が一因となる疾患、例えば、好酸球性胃炎(EG)および/または好酸球性胃腸炎(EGE)では、臨床上の利益をもたらすことができると考えられる。
【0272】
研究設計
この研究は、無作為化、二重盲検、プラセボ対照研究であった。研究に登録した患者は、EGおよび/またはEGEの中等度から重度の症状を示した。すべての患者は、患者報告転帰(PRO)質問票で、3週間のPRO収集のうちの少なくとも2週間の間に、腹痛、下痢および/または悪心のいずれかについて報告して、≧3の週平均スコア(0~10の尺度で)報告した。各資格認定週(qualifying week)に最低4つの質問票に記入した。
【0273】
さらに、すべての患者には、プロトンポンプ阻害剤(PPI)、全身性もしくは局所副腎皮質ステロイド薬、および/または治療食をとりわけ含み得る、EG/EGE症状についての標準的治療処置が失敗したか、あるいはそのような標準的治療処置により適切に制御されない疾患症状があった。
【0274】
加えて、各患者は、食道、胃、十二指腸内視鏡検査(EGD)によって、スクリーニング期間中に行ったEGDからの、胃好酸球増多の任意の他の原因(例えば、寄生生物もしくは他の感染または悪性疾患)が一切ない、胃粘膜の好酸球増多(5つのHPFにおいて≧30好酸球/HPF)および/または十二指腸粘膜の好酸球増多(3つのHPFにおいて≧30好酸球/HPF)により定義して、EGおよび/またはEGEに罹患していることが確認された。より詳しくは、ClinicalTrials.gov識別子NCT03496571を参照されたい。
【0275】
患者65名を3つのアームに登録した。第1のアームの患者22名は、抗Siglec-8抗体(非フコシル化IgG1抗体HEKA)を次の用量で受容した:第1の用量について0.3mg/kg、第2、第3および第4の用量について1.0mg/kg(「低用量」)。第2のアームの患者22名は、抗Siglec-8抗体を次の用量で受容した:第1の用量について0.3mg/kg、第2の用量について1.0mg/kg、第3および第4の用量について3.0mg/kg(「高用量」)。第3のアームの患者は、プラセボを受容した。すべての用量を毎月、提供した。
【0276】
主要評価項目は、処置またはプラセボを受ける前および受けた後のGI生検試料で観察されたHPF当りの好酸球の変化のパーセンテージであった。好酸球数の平均変化パーセントは、処置14週目での計数とベースラインでの計数を比較することにより算出した。
【0277】
副次評価項目は、処置に対するレスポンダーのパーセンテージおよびPRO質問票により報告された症状の変化(両方とも13~14週目とベースラインを比較)、ならびに併存する好酸球性食道炎(EoE)の探索的評価を含んだ。PRO質問票により報告された症状は、腹痛、悪心、下痢、嘔吐、食事を終える前の満腹感、食欲喪失、腹部痙攣および腹部膨満を含んだ。これら8症状の各々を0~10の尺度で測定した(可能性のある合計ポイントは80である)。この質問票は、EG/EGEの最も有意な症状を捕らえた。処置レスポンダーを、組織生検好酸球数の>75%低減、および13~14週目のPRO質問票からの総合症状スコア(TSS)の>30%の低下と定義した。これらの評価項目を、(1)組織好酸球枯渇、(2)症状改善、および(3)これらの効果が同じ個体で発生することを示すように設計した。
【0278】
結果
この研究を完了し、この研究は、事前に指定したすべての主要および副次評価項目を満たした。
【0279】
処置アームの患者についての平均ベースラインGI好酸球数は、78であり、プラセボアームの患者についての平均ベースラインGI好酸球数は、75であった。処置アームの患者についての平均ベースラインTSSは、34であり、プラセボアームの患者についての平均ベースラインTSSは、30であった。
【0280】
図1は、抗Siglec-8抗体で処置したすべての群が主要評価項目を満たしたことを示す。ベースラインから13~14週目までの両方の処置群についての好酸球数の平均低減は95%であり、p値は<0.0001であった。これは、高用量アームからの患者で観察された97%低減、および低用量アームからの患者で観察された95%低減を含む。対照的に、プラセボ群は、好酸球数の平均10%増加を示すことが観察された。重要なこととして、抗Siglec-8抗体を受けた患者39名のうちの37名(95%)は、<30/HPFの胃および十二指腸好酸球数を有した。
【0281】
図2は、抗Siglec-8抗体で処置したすべての群がTSS副次評価項目も満たしたことを示す。ベースラインから13~14週目までの両方の処置群についてのTSSの平均低減は54%であり、p値は0.0012であった。これは、高用量アームからの患者で観察された58%低減、および低用量アームからの患者で観察された49%低減を含む。対照的に、プラセボ群は、TSSの平均24%低減しか示さないことが観察された。重要なこととして、症状の統計的に有意な改善が、初回注入後1日目に観察され、研究を通して維持された。
【0282】
抗Siglec-8抗体を受けた患者のすべての症状にわたって改善が観察された。
図3は、高用量アームにおける患者からのPRO質問票における各症状についてのベースラインから処置終了までのTSSの減少パーセンテージを示す。
【0283】
図4は、抗Siglec-8抗体で処置したすべての群がレスポンダー副次評価項目も満たしたことを示す。抗Siglec-8抗体で処置したすべて患者のうちのレスポンダーのパーセンテージは69%であり、p値は0.0008であった。これは、高用量アームからの患者で観察された70%のレスポンダー、および低用量アームからの患者で観察された68%のレスポンダーを含む。対照的に、プラセボアームでは5%しかレスポンダーでなかった。
【0284】
有意な好酸球低減が、EoEを有する患者でも観察された。
図5に示されているように、抗Siglec-8抗体で処置したEoE患者14名のうちの13名(93%)は、プラセボ群における11%と比較して、処置の14週目にHPF当り<5の好酸球を示した。加えて、抗Siglec-8処置は、嚥下障害の大幅な改善をもたらした(
図6)。これらの結果は、抗Siglec-8処置によるEoEの組織学的な改善と症状の改善の両方を実証し、したがって、この適応症のための抗Siglec-8抗体処置の使用についての強力な概念実証となる。
【0285】
安全性
少なくとも1つの、処置により生じた有害事象(AE)が、プラセボアームでの82%と比較して、抗Siglec-8抗体処置を受けた患者の91%で見られた(
図7)。抗Siglec-8抗体処置は、概して耐容性良好であった。IRRは、プラセボアームでの23%と比較して、抗Siglec-8抗体を受けた患者の61%で観察された。IRRの95%は、軽度から中等度(例えば、顔面紅潮、熱感、頭痛、悪心、めまい)であった。1つの薬物関連重篤AEは、IRRであったが、患者は24時間以内に回復し、さらなる続発症はなかった。他の有意なAEは、観察されなかった。
【0286】
(実施例2:好酸球性胃炎および/または好酸球性胃腸炎を有する患者における抗Siglec-8処置の安全性および耐容性を評価するための第2相、多施設、非盲検、拡張研究)
第2相研究からの最大登録に基づいて、患者おおよそ60名が、この拡張研究に登録する。第2相研究を完了した患者には、非盲検方式で抗Siglec-8抗体を受ける選択肢がある。
【0287】
1mg/kgの抗Siglec-8抗体(非フコシル化IgG1抗体HEKA)を初回注入のために投与し、続いて、その後4週間ごとに3mg/kgの用量を投与する。患者は、28(±3)日ごとに投与される抗Siglec-8抗体の最大8回の注入を受ける。
【0288】
AK002の初回注入の前、注入の12~24時間前に80mgの経口プレドニゾンを投与し、注入の約1時間前にソルメドロール(100mg IV)、セチリジン(10mg経口)およびアセトアミノフェン(975~1000mg経口)を投与する。
【0289】
この進行中の拡張研究では、副腎皮質ステロイド薬を、初回抗Siglec-8抗体用量(上記の通り)の各々の12~24時間前に投与した。これまでに、IRRは、患者58名において観察されていない。
配列
別段の断り書きがない限り、すべてのポリペプチド配列をN末端からC末端に向かって提示する。別段の断り書きがない限り、すべての核酸配列を5’から3’に向かって提示する。
マウス2E2重鎖可変ドメインのアミノ酸配列
【化4】
2E2 RHA重鎖可変ドメインのアミノ酸配列
【化5】
2E2 RHB重鎖可変ドメインのアミノ酸配列
【化6】
2E2 RHC重鎖可変ドメインのアミノ酸配列
【化7】
2E2 RHD重鎖可変ドメインのアミノ酸配列
【化8】
2E2 RHE重鎖可変ドメインのアミノ酸配列
【化9】
2E2 RHF重鎖可変ドメインのアミノ酸配列
【化10】
2E2 RHG重鎖可変ドメインのアミノ酸配列
【化11】
2E2 RHA2重鎖可変ドメインのアミノ酸配列
【化12】
2E2 RHB2重鎖可変ドメインのアミノ酸配列
【化13】
2E2 RHE S-G変異体重鎖可変ドメインのアミノ酸配列
【化14】
2E2 RHE E-D重鎖可変ドメインのアミノ酸配列
【化15】
2E2 RHE Y-V重鎖可変ドメインのアミノ酸配列
【化16】
2E2 RHEトリプル変異体重鎖可変ドメインのアミノ酸配列
【化17】
マウス2E2軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列
QIILTQSPAIMSASPGEKVSITCSATSSVSYMHWFQQKPGTSPKLWIYSTSNLASGVPVRFSGSGSGTSYSLTISRMEAEDAATYYCQQRSSYPFTFGSGTKLEIK(配列番号15)
2E2 RKA軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCSATSSVSYMHWFQQKPGQAPRLLIYSTSNLASGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSSYPFTFGPGTKLDIK(配列番号16)
2E2 RKB軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列
EIILTQSPATLSLSPGERATLSCSATSSVSYMHWFQQKPGQAPRLWIYSTSNLASGVPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSSYPFTFGPGTKLDIK(配列番号17)
2E2 RKC軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列
EIILTQSPATLSLSPGERATLSCSATSSVSYMHWFQQKPGQAPRLLIYSTSNLASGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSSYPFTFGPGTKLDIK(配列番号18)
2E2 RKD軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCSATSSVSYMHWFQQKPGQAPRLWIYSTSNLASGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSSYPFTFGPGTKLDIK(配列番号19)
2E2 RKE軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCSATSSVSYMHWFQQKPGQAPRLLIYSTSNLASGVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSSYPFTFGPGTKLDIK(配列番号20)
2E2 RKF軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCSATSSVSYMHWFQQKPGQAPRLLIYSTSNLASGIPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSSYPFTFGPGTKLDIK(配列番号21)
2E2 RKG軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCSATSSVSYMHWYQQKPGQAPRLLIYSTSNLASGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSSYPFTFGPGTKLDIK(配列番号22)
2E2 RKA F-Y変異体軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCSATSSVSYMHWFQQKPGQAPRLLIYSTSNLASGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSSYPYTFGPGTKLDIK(配列番号23)
2E2 RKF F-Y変異体軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCSATSSVSYMHWFQQKPGQAPRLLIYSTSNLASGIPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSSYPYTFGPGTKLDIK(配列番号24)
HEKA重鎖およびHEKF重鎖のアミノ酸配列
【化18】
【化19】
HEKA軽鎖のアミノ酸配列
【化20】
HEKF軽鎖のアミノ酸配列
【化21】
IgG1重鎖定常領域のアミノ酸配列
【化22】
IgG4重鎖定常領域のアミノ酸配列
【化23】
Igカッパ軽鎖定常領域のアミノ酸配列
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号80)
マウス2C4および2E2 IgG1重鎖のアミノ酸配列
【化24】
マウス2C4カッパ軽鎖のアミノ酸配列
【化25】
マウス2E2カッパ軽鎖のアミノ酸配列
【化26】
キメラ2C4および2E2 IgG1重鎖のアミノ酸配列
【化27】
【化28】
キメラ2C4カッパ軽鎖のアミノ酸配列
【化29】
キメラ2E2カッパ軽鎖のアミノ酸配列
【化30】
HEKA IgG4重鎖のアミノ酸配列(IgG4は、S228P変異を含有する)
【化31】
マウス1C3重鎖可変ドメインのアミノ酸配列(下線で示した残基は、Chothiaの番号付けによるCDR H1およびH2を構成する)
【化32】
マウス1H10重鎖可変ドメインのアミノ酸配列(下線で示した残基は、Chothiaの番号付けによるCDR H1およびH2を構成する)
【化33】
マウス4F11重鎖可変ドメインのアミノ酸配列(下線で示した残基は、Chothiaの番号付けによるCDR H1およびH2を構成する)
【化34】
マウス1C3軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列
QIVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCSASSSVSYMHWYQQKSGTSPKRWIYDTSKLAYGVPARFSGSGSGTSYSLTISSMEAEDAATYYCQQWSSNPPTFGGGTKLEIK(配列番号109)
マウス1H10軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列
DIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDITNYLNWYQQKPDGTVKLLIYFTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPWTFGGGTKLEIK(配列番号110)
マウス4F11軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列
QIVLTQSPAIVSASPGEKVTMTCSASSSVSYMYWYQQRPGSSPRLLIYDTSSLASGVPVRFSGSGSGTSYSLTISRIESEDAANYYCQQWNSDPYTFGGGTKLEIK(配列番号111)
【配列表】
【国際調査報告】