(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-03
(54)【発明の名称】ツル状ロボット気管挿管のデバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 16/04 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
A61M16/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506640
(86)(22)【出願日】2020-07-29
(85)【翻訳文提出日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 US2020043942
(87)【国際公開番号】W WO2021025911
(87)【国際公開日】2021-02-11
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505088684
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(71)【出願人】
【識別番号】592116475
【氏名又は名称】ザ・ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・リーランド・スタンフォード・ジュニア・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(72)【発明者】
【氏名】ホークス、エリオット ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ハガティ、デビッド エイ
(72)【発明者】
【氏名】ドローバー、デビッド アール
(57)【要約】
自動的かつ自律的に、気管に挿管可能で、人工呼吸が導通し得る管腔を形成可能な、外翻するツル状ロボット挿管デバイス。当該デバイスは、マウスピースに取り付けられた、外翻する一次ツル状ロボットと、一次ツル状ロボットに付随する、外翻する小径の挿管ツル状ロボットと、を備える。一次ツル状ロボットが、完全作動時に、患者の因喉頭の後ろに伸長するような形状及びサイズを有すると共に、挿管ツル状ロボットが、完全作動時に、一次ツル状ロボットから患者の気管へと伸長するような形状及びサイズを有する。
【選択図】
図1E
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツル状(vine)ロボット気管挿管デバイスであって、
マウスピースに取り付けられた、外翻する(everting)一次ツル状ロボットと、
前記一次外翻ツル状ロボットに付随する、外翻する小径の挿管ツル状ロボットと、
を備え、
前記一次ツル状ロボットが、完全作動時に、患者の因喉頭の後ろに伸長するような形状及びサイズを有すると共に、前記挿管外翻ツル状ロボットが、完全作動時に、前記一次ツル状ロボットから前記患者の気管へと伸長するような形状及びサイズを有し、このことにより前記デバイスによって管腔が前記マウスピースから前記患者の気管へと提供される、
ツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【請求項2】
前記一次ツル状ロボットの直径が、前記口腔と中咽頭を満たしつつ、前記下顎を持ち上げ前下方に突出させるように設定される、
請求項1のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【請求項3】
前記挿管ツル状ロボットが、前記管腔を前記気管内に配置し方向付けるように構成された、予め湾曲された区間を備える、
請求項1のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【請求項4】
前記挿管ツル状ロボットが、前記一次ツル状ロボットの外表面上で運ばれる、
請求項3のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【請求項5】
前記挿管ツル状ロボットが、管腔のサイズを、呼吸チューブがそれを介して通れるように定める、
請求項4のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【請求項6】
前記マウスピースが、前記一次ツル状ロボットの膨張を可能にするためのアクセスポートを定める、
請求項4のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【請求項7】
前記挿管ツル状ロボットが、前記マウスピースを通って伸長する、
請求項6のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【請求項8】
前記挿管ツル状ロボットが、前記一次ツル状ロボットと一体的に形成されると共に、伸長時に、前記一次ツル状ロボットからの枝を形成するように構成される、
請求項3のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【請求項9】
前記マウスピースが、単一の圧力源から、前記一次ツル状ロボット及び前記挿管ツル状ロボットの両方を膨張可能にするためのアクセスポートを定める、
請求項8のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【請求項10】
前記管腔が、伸長時に、前記一次ツル状ロボット及び前記挿管ツル状ロボットの両方によって定められる、
請求項8のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【請求項11】
前記一次ツル状ロボットが、伸長時に、あらかじめ定められた非直線形状を有する、
請求項1のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【請求項12】
前記あらかじめ定められた非直線形状が、前記下顎を突出させ、前記喉頭蓋を持ち上げ、前記気管を露出させるための圧力点を生成するように構成される、
請求項11のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【請求項13】
前記挿管ツル状ロボットの遠位端が、柔軟な自己伸長型の素材を備える、
請求項1のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【請求項14】
前記柔軟な自己伸長型の素材がニチノールである、
請求項13のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【請求項15】
患者の挿管の方法であって、
外翻する一次ツル状ロボット及び挿管ツル状ロボットに取り付けられたマウスピースを、前記一次ツル状ロボット及び挿管ツル状ロボットの両方が非作動の位置にある状態で、前記患者の口に挿入することと、
前記一次ツル状ロボット内に流体圧をかけて、これを徐々に外翻させ前記患者の前記因喉頭の後ろに伸長させることと、
前記挿管ツル状ロボットを前記患者の前記気管内に伸長させ、管腔を前記マウスピースから前記気管へと提供するために、流体圧をかけることと、
前記管腔を通して前記気管内へ空気又は酸素を提供することと、
を含む、
方法。
【請求項16】
前記提供することが、前記挿管ツル状ロボットを介して呼吸チューブを通すことと、前記呼吸チューブを介して前記空気又は酸素を供給することと、を含む、
請求項15の方法。
【請求項17】
前記提供する前の位置に前記呼吸チューブを残しつつ、前記マウスピース、一次ツル状ロボット、及び、前記挿管ツル状ロボットを取り除くことを含む、
請求項16の方法。
【請求項18】
前記提供することが、前記一次ツル状ロボット及び前記挿管ツル状ロボットの両方によって定められる前記管腔を介して前記空気又は酸素を通すことを含む、
請求項16の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張及び関連する出願の引用)
本出願は、米国特許法第119条、及び、全ての適用可能な法令若しくは条約に基づき、2019年8月2日に出願された先の仮出願番号62/882,239の優先権を主張する。
【0002】
(政府の権益についてのステートメント)
この発明は、米国科学財団によって与えられた補助金番号1637446による政府の支援の下で成された。当該政府は本発明について一定の権利を有する。
【0003】
(分野)
本発明の分野は、医療デバイスを含み、とりわけ、挿管デバイスと、ロボティクスと、を含む。
【背景技術】
【0004】
2019年7月18日に公開されたホークスらの、特許文献1は、生長ロボットを公開している。当該生長ロボットは、薄肉で中空の加圧された柔軟なボディを有し、その先端からボディ内に格納された新しい壁材を外翻することによってボディを伸長すると共に、ボディの対向する側面に沿った壁材の相対長を能動的に制御することによってボディの形状を制御する。ボディの対向する側面に沿った当該壁材の相対長は、本体の長さに沿って備え付けられた収縮する人工筋肉を用いることで、湾曲する内側に面する側面の壁材の長さを短くすることで制御され得る。湾曲する外側に面する側面の壁材の長さを伸長すること、壁材の収縮を開放すること、又は、内圧によってボディが伸長されるように壁材を能動的に軟化させること、によってボディの対向する側面に沿った当該壁材の相対長を制御することもまた可能である。湾曲する外側の壁材が長くなることを許容しながら、湾曲する内側に面する側面の壁材の長さを能動的に抑制することで、ボディの対向する側面に沿った当該壁材の相対長を制御することもまた可能である。
【0005】
ホークスらによる生長ロボット技術の進歩は、先端の伸長を有し、穴を掘ること、及び、洗浄のための流体放出を含む軟質なロボットのデバイスにおいて提供される。そのような軟質なロボットは、植物の根に類似した方法で、砂や土に穴を掘ることが可能である。ロボットは、それを地中で生長可能にし、砂及び土を流動化させる液体を先端から放出しつつ、外翻によって先端側に伸長する。その進歩は、2019年9月13日に出願されたPCT/US2019/50998と、ホークスらによる公開論文である非特許文献1に開示されている。
【0006】
救急医療技士(Emergency Medical Technicians)(EMTs)は、様々な理由から、救急の場面では気管挿管を50%強しか成功しない。病室で実現される高レベルの成功を達成するためには、膨大なコストで広範囲にわたる訓練が必要である。そのため、看護師、医療補助員、又は、EMTを麻酔医レベルに訓練すること無く、重要なケアを効果的に提供することをいかに保証するか、という深刻な医療ジレンマが見受けられる。本発明は、広範囲な医療訓練がより少ない病院レベルの成功を提供し、救急救命士や他の人員の成功率の向上が期待し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0217908号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Soft Robotic Burrowing Device with Tip-Extension and Granular Fluidization
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
好適な実施形態は、自動的かつ自律的に、気管に挿管可能で、人工呼吸が導通し得る管腔を形成可能な、外翻するツル状(vine)ロボット挿管のデバイスを提供する。当該デバイスは、マウスピースに取り付けられた、外翻する(everting)一次ツル状ロボットと、一次ツル状ロボットに付随する、外翻する小径の挿管ツル状ロボットと、を備える。一次ツル状ロボットが、完全作動時に、患者の因喉頭の後ろに伸長するような形状及びサイズを有すると共に、挿管外翻ツル状ロボットが、完全作動時に、一次ツル状ロボットから患者の気管へと伸長するような形状及びサイズを有する。
【0010】
患者に挿管するための方法が提供される。外翻する一次ツル状ロボット及び挿管ツル状ロボットに取り付けられたマウスピースが、一次ツル状ロボット及び挿管ツル状ロボットが非作動の位置にある状態で、患者の口に挿入される。これを徐々に外翻させ患者の因喉頭の後ろに伸長させるために、一次ツル状ロボット内に流体圧がかけられる。挿管ツル状ロボットを患者の気管内に伸長させ、管腔をマウスピースから気管へと提供するために、流体圧がかけられる。管腔を通して気管内へ空気又は酸素を提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下の図面に示された例示的な実施形態に基づいて本発明がより詳細に以下で説明される。
【0012】
【
図1A】
図1Aは、好適な実施形態の、非作動状態でのツル状ロボット挿管のデバイスの概要図である。
【
図1B】
図1Bは、部分的な作動状態での、
図1Aのツル状ロボット挿管のデバイスを示す図である。
【
図1C】
図1Cは、部分的な作動状態での、
図1Aのツル状ロボット挿管のデバイスを示す図である。
【
図1D】
図1Dは、それを介して呼吸チューブが通る管腔を提供する、
図1Aの挿管ツル状ロボットの作動を示す図である。
【
図1E】
図1Eは、
図1Dに示された挿管ツル状ロボットの伸長によって生成された管腔を介する呼吸チューブの挿入を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、好適な実施形態の、部分的な作動状態、及び、完全作動状態でのツル状ロボット挿管のデバイスの概要図である。
【
図2B】
図2Bは、好適な実施形態の、部分的な作動状態、及び、完全作動状態でのツル状ロボット挿管のデバイスの概要図である。
【
図2C】
図2Cは、好適な実施形態の、部分的な作動状態、及び、完全作動状態でのツル状ロボット挿管のデバイスの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好適な実施形態のツル状(vine)ロボット挿管のデバイスは、一次外翻(everting)ボディ、挿管ボディ、及び、調整された圧力リザーバからこれらボディへ流体/圧力を伝達可能にするアクセスポートを有するマウスピースを備え、好ましくはこれらからなる。一次外翻ボディは、膨張すると、咽頭下に生長し、挿管ボディを舌と喉頭蓋を越えて運ぶ。一次膨張の後、喉頭蓋を越えて気管内へ生長するために、挿管ボディが膨張される。このボディは、人工呼吸を開始するための半硬質呼吸チューブを通す通路として機能し得る。全長は、例えば、患者のサイズ、年齢、又は、測定された身体的特徴によって異なる生理機能にマッチするように予め決定され得る。好適な実施形態は、院内感染や他の問題を引き起こす洗浄や再利用に関する問題を回避するような、安価で使い捨てができるものである。
【0014】
ここに、図面に関連して、本発明の好適な実施形態が説明され得る。図面は、当技術分野の一般的な知識及び以下の説明を参酌して当業者に理解されるであろう、概略的な表現を含む場合がある。強調するために図面において特徴を誇張する場合があり、特徴は縮尺通りでない場合がある。
【0015】
好適な実施形態のツル状ロボット挿管デバイス10の挿管処置中の漸進的な状態を
図1A-1Eに示す。
図1Aは、初期状態及び非作動状態を示し、この状態において、成形されたマウスピース12が患者の口14に挿入される。マウスピースは、一次ツル状ロボット16を保持し、外翻を介して一次ツル状ロボット16を生長させるための、一次ツル状ロボット16への流体/圧力の伝達を可能にするアクセスポート18を含む。挿管ツル状ロボット20は、一次ツル状ロボット16の外面で運ばれ、それ単独の作動及び外翻のための流体/圧力へのアクセスを可能にするために、マウスピース10を通って伸長する。挿管ツル状ロボット20の大部分は、
図1Aにおいて、一次ツル状ロボット16が、その部材の大部分がその中心に向かって内側に戻ってそれ自身の上で裏返っているときに完全に引っ込んだ状態にあるように、一次ツル状ロボット16内に収められている。一般に、一次ツル状ロボット及び挿管ツル状ロボット双方の直径及び長さは、挿管される患者の生理的なタイプ、又は、測定された身体的特性(例えば、年齢、性別)に従ったり、喉構造の物理的測定に従ったりするなどして、予め定められ得る。実際には、施術者は、利用可能なツル状ロボット挿管デバイスのうちから選択することができ、生理機能に基づいて選択された好適なサイズを使用し得る。一次ツル状ロボット16及び挿管ツル状ロボット20の材料については、生体適合性のプラスチックが好ましい。本体が加圧によって外側に膨らむ代わりに長くなるように、剛性は半径方向の剛性よりも低い。マウスピースとの結合は、膨張を考慮しても、現在の医療技術、例えばルアーロックと互換性があり得る。デバイスは、好適には、単回の使用のために滅菌及び包装され、包装及びデバイスには医師による適切な使用を保証するためのマーキングを含む場合がある。
【0016】
マウスピース12は、好適には、生体適合性のプラスチック又は硬化ゴム化合物を形成し、人間の顔および口の一般的な解剖学的構造にマッチするように成形され、舌を押し下げるために口の中に挿入するための突出部と、口の中にデバイスを保持し、標準「ゼロ」点の基準を設定するために歯をはめ込み可能な凹みを備えており、標準「ゼロ」点の基準からの挿管ツル状ロボット20の伸長を決定可能である。好適な材料は、医療グレードのシリコーン、ポリウレタン、またはポリエチレンを含む。マウスピースは、ツル状ロボットに関して上述したように、解剖学的な特性に従って大きさが決められる。マウスピース12は、作動を可能にする機械コンポーネント(例えば、ボタン)と、使用済みか否かを示すインジケータを収容し得る。剛性は、膨張によって達成される。好適な実施形態におけるマウスピースは、圧力リザーバ、挿管を開始するための作動機構、及び、2つのツル状ロボットを作動及び制御するための機械的及び電気的な要素と接続され得る、及び/又は、これらを含み得る。そのハウジングはまた通路を含み、この通路を通過して、半剛性の呼吸チューブは二次ボディを通って気管へ下る。その制御は、光、超音波、磁気、又は、他のフィードバックを含み得る。
【0017】
一次ツル状ロボット16は、顎を前に突き出させて気管をさらに露出させつつ、より小さい挿管ツル状ロボット20を因喉頭の後方に送り込む、より大きい一次ツル状ロボットである。一次ツル状ロボット16の直径は、口腔と中咽頭を満たしつつ、下顎を持ち上げて前方及び下方に突き出すように設定されている。一次ツル状ロボット16をゆっくりと膨張及び反転させるのに十分な圧力により、流体が因喉頭の後方に達するまで、流体、例えば空気がポート18を通して供給される。その地点に到達すると、より小さい挿管ツル状ロボット20は、マウスピースを介して伸長するその近位端から、流体圧によって作動される。一次ツル状ロボット16は、あらかじめ定められた非直線形状(伸長時)に成形され得ると共に、下顎を突出させ、喉頭蓋を持ち上げ、気管を露出させるための特定の圧力点をもたらすための特定の位置に部材を有し得る。特定の部分において材料を成形し、固さを作り出すための方法は、ホークスらによる米国特許出願公開第2019/0217908号明細書に開示されている。
【0018】
挿管ツル状ロボット20は、一次ツル状ロボットの先端から生長し、前庭ヒダを越えて気管に到達する、管腔を生成するツル状ロボットである。管腔の生成によって、挿管ツル状ロボットは、通路のための開口管腔を提供すると共に、外翻の完了後にその近位の開口部から遠位の開口部まで開口管腔を提供するように、開口している、又は、切り裂き可能若しくは貫通可能な仮にシールされた遠位端を有する遠位にて終端する。遠位端は、開口されていてもよく、例えば、孔のあいたシールを含んでいてもよい。別の選択肢は、呼吸チューブが破いて貫き通すことが可能な弾力性の遠位端である。このタイプの遠位端は、いつ挿管ツル状ロボットの遠位端から呼吸チューブが貫き出るかについて、施術者にフィードバックを提供する。挿管ツル状ロボット20は、好適には、声帯が部分的に閉じている状況で気管にアクセスするために、セルジンガー型の態様で作動するように設計される。ツル状ロボットは、それらの本体の直径よりも小さい開口部を通過可能であるように示されている。適切な柔軟なサイズであれば、挿管ツル状ロボット20は、開口部のサイズにかかわらず、部分的に閉じた声帯を通過でき、硬化換気チューブと声帯との間の相対運動を取り除くことにより、この管腔をより大きいチューブが通過し得る。挿管ツル状ロボット20はまた、例えば、生長する間に、半硬化チューブを通して、それ自身を硬化又は引っ張ることで、人工呼吸の通路を生成するような方法で設計される場合がある。挿管ボディの開口端に硬化チューブを貼り付けることにより、挿管ボディが外翻するように、膨張が引っ張る力として作用する。このことが、硬化チューブを自動的に送り出すことを可能にする。他の選択肢として、ツル状ロボットの本体の基礎構造に、生体適合性を有する自己硬化性の材料を導入して、身体内でデバイスを硬化させて、自ら硬質な管腔を形成することを可能にすることが挙げられる。1個の挿管ツル状ロボット20が図示されているが、一次ツル状ロボット20は、複数の挿管ボディそれぞれの多数の潜在的な設定と同じくデバイスの堅牢性を高めることが意図された、複数の挿管ボディ(例えば、制御型の挿管ロボットと非制御型/受動型の単純な管腔)を運ぶことが可能である。
【0019】
図1Bは、作動状態にある一次ツル状ロボット16を示す。この段階は、次の2つのサブステップとして開始される:まず一次ツル状ロボット16が膨張し、マウスピース12から離れて、患者の喉の方向へ生長する。
図1Cは、一次ツル状ロボット16が因喉頭へと完全に伸長した状態を示す。この時点で、挿管ツル状ロボット20は、膨張及び生長するべき場所に位置する。挿管ツル状ロボット20は、平均的な解剖学的な構造を近似するように予め形成され得る。
【0020】
図1Dは、挿管ツル状ロボット20の気管への生長を示す。挿管ツル状ロボット20が生長するにつれ、予め定義された形状が好適に生成されて、端部が気管に向かって前方に方向付けられる。この挿管ツル状ロボット20は、湾曲部22を1個又は2個出現するするように予め形成され得る(
図1D及び
図1Eにおいて2個が示されている)。湾曲部の出現は、予め定義された形状を提供する。ホークスらの米国特許出願公開第2019/0217908号明細書と、本出願の背景で議論されたように、湾曲は異なる方法で提供され得る。異なる方法には、挿管ツル状ロボット20の壁材の相対的な長さを異なる側面で制御することが含まれる。挿管ボディの開口遠位端24は、その中を半硬化呼吸チューブが通過可能な管腔を生成することを可能にする。
【0021】
図1Eは、第1にマウスピース12を通り、かつ、第2に挿管ツル状ロボット20の伸長によって設けられた管腔を通る、呼吸チューブ26の通路を示す。この通路により、呼吸チューブが容易に管腔を通過して患者の気管に入り得る。この時点で、デバイス10は患者から取り外され得ると共に、人工呼吸が開始され得る。チューブの代わりの別の選択肢としては、呼吸チューブの代わりに使用され得るであろうPEEP(positive-end expiatory pressure、呼気終末陽圧換気)を実装するための弁を含むことである。使用される場合は、呼気中にデバイスそれ自体が崩壊しないように、十分な圧力が維持されていることを確保することが重要である。呼吸チューブは、追加的なコンポーネントとステップを加える。しかし、これにより簡単で信頼性の高い挿管が保証される。またこれにより、呼吸サイクルをサポートする代わりに、配達するための設計だけをすればよいので、挿管ツル状ロボットデバイスのコストを削減し得る。
【0022】
図2A-2Cは、好適な別の実施形態のツル状ロボット挿管デバイス30を示す。
図1A-1Eに示された共通の構成には、共通の参照番号が使用される。動作は、
図1A-1Eのデバイス10と同様である。デバイス30では、挿管ツル状ロボット32が、一次ツル状ロボット34の側壁から伸長する枝として、一次ツル状ロボット34と一体的に形成されている。挿管ツル状ロボット32は、
図1Eのように、予め形成された曲線部36を含み、それによって定義される管腔をエアチューブが通過できるような調整を補助する。呼吸チューブが使用され得る。他の選択肢として、挿管ツル状ロボット及び一次ツル状ロボット34には、呼吸サイクル全体の間にわたって呼吸管腔を維持するために、遠位の開口部および数カ所に、柔軟な材料、自己拡張性の材料、例えばニチノールが組み込まれている。膨張は、挿入の間、自己拡張性の材料の力を凌駕し、そして、自己拡張性の材料が開口部を維持する。挿管ツル状ロボット32が一次ツル状ロボット34の枝であることにより、ベンチレータが展開のためにそのツルを単純に加圧し、その後に、可能な最小数のステップで換気を継続できるように、それは同一の圧力源及び管腔を介して作動され得る。好適には、
図2Cに示すように、一次ツル状ロボット34は、わずかに食道内に伸長し得るような長さを有する。これは、デバイス30を安定にすること、及び、喉頭マスク気道(laryngeal mask airway)(LMA)と同様に誤嚥を防止するためのシールを生成することの両方に役立つ。
【0023】
本発明の特定の実施形態が図示及び説明されてきたが、他の修正、置換、及び、代替が当業者には明らかであることが理解されなくてはならない。添付の特許請求の範囲から決定されるべき本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、そのような修正、置換、及び、代替が行われ得る。
【0024】
本発明の様々な構成が、添付の特許請求の範囲に示されている。
【0025】
(付記)
(付記1)
ツル状(vine)ロボット気管挿管デバイスであって、
マウスピースに取り付けられた、外翻する(everting)一次ツル状ロボットと、
前記一次外翻ツル状ロボットに付随する、外翻する小径の挿管ツル状ロボットと、
を備え、
前記一次ツル状ロボットが、完全作動時に、患者の因喉頭の後ろに伸長するような形状及びサイズを有すると共に、前記挿管外翻ツル状ロボットが、完全作動時に、前記一次ツル状ロボットから前記患者の気管へと伸長するような形状及びサイズを有し、このことにより前記デバイスによって管腔が前記マウスピースから前記患者の気管へと提供される、
ツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【0026】
(付記2)
前記一次ツル状ロボットの直径が、前記口腔と中咽頭を満たしつつ、前記下顎を持ち上げ前下方に突出させるように設定される、
付記1のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【0027】
(付記3)
前記挿管ツル状ロボットが、前記管腔を前記気管内に配置し方向付けるように構成された、予め湾曲された区間を備える、
付記1のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【0028】
(付記4)
前記挿管ツル状ロボットが、前記一次ツル状ロボットの外表面上で運ばれる、
付記3のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【0029】
(付記5)
前記挿管ツル状ロボットが、管腔のサイズを、呼吸チューブがそれを介して通れるように定める、
付記4のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【0030】
(付記6)
前記マウスピースが、前記一次ツル状ロボットの膨張を可能にするためのアクセスポートを定める、
付記4のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【0031】
(付記7)
前記挿管ツル状ロボットが、前記マウスピースを通って伸長する、
付記6のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【0032】
(付記8)
前記挿管ツル状ロボットが、前記一次ツル状ロボットと一体的に形成されると共に、伸長時に、前記一次ツル状ロボットからの枝を形成するように構成される、
付記3のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【0033】
(付記9)
前記マウスピースが、単一の圧力源から、前記一次ツル状ロボット及び前記挿管ツル状ロボットの両方を膨張可能にするためのアクセスポートを定める、
付記8のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【0034】
(付記10)
前記管腔が、伸長時に、前記一次ツル状ロボット及び前記挿管ツル状ロボットの両方によって定められる、
付記8のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【0035】
(付記11)
前記一次ツル状ロボットが、伸長時に、あらかじめ定められた非直線形状を有する、
付記1のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【0036】
(付記12)
前記あらかじめ定められた非直線形状が、前記下顎を突出させ、前記喉頭蓋を持ち上げ、前記気管を露出させるための圧力点を生成するように構成される、
付記11のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【0037】
(付記13)
前記挿管ツル状ロボットの遠位端が、柔軟な自己伸長型の素材を備える、
付記1のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【0038】
(付記14)
前記柔軟な自己伸長型の素材がニチノールである、
付記13のツル状ロボット気管挿管のデバイス。
【0039】
(付記15)
患者の挿管の方法であって、
外翻する一次ツル状ロボット及び挿管ツル状ロボットに取り付けられたマウスピースを、前記一次ツル状ロボット及び挿管ツル状ロボットの両方が非作動の位置にある状態で、前記患者の口に挿入することと、
前記一次ツル状ロボット内に流体圧をかけて、これを徐々に外翻させ前記患者の前記因喉頭の後ろに伸長させることと、
前記挿管ツル状ロボットを前記患者の前記気管内に伸長させ、管腔を前記マウスピースから前記気管へと提供するために、流体圧をかけることと、
前記管腔を通して前記気管内へ空気又は酸素を提供することと、
を含む、
方法。
【0040】
(付記16)
前記提供することが、前記挿管ツル状ロボットを介して呼吸チューブを通すことと、前記呼吸チューブを介して前記空気又は酸素を供給することと、を含む、
付記15の方法。
【0041】
(付記17)
前記提供する前の位置に前記呼吸チューブを残しつつ、前記マウスピース、一次ツル状ロボット、及び、前記挿管ツル状ロボットを取り除くことを含む、
付記16の方法。
【0042】
(付記18)
前記提供することが、前記一次ツル状ロボット及び前記挿管ツル状ロボットの両方によって定められる前記管腔を介して前記空気又は酸素を通すことを含む、
付記16の方法。
【国際調査報告】