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特表2022-542480金属粒子およびその電解分散液による調製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-03
(54)【発明の名称】金属粒子およびその電解分散液による調製方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/14 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
B22F9/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506651
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(85)【翻訳文提出日】2022-03-21
(86)【国際出願番号】 IB2020000640
(87)【国際公開番号】W WO2021019303
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】62/881,031
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522042108
【氏名又は名称】モナストローヴ、ミコラ
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】モナストローヴ、ミコラ
【テーマコード(参考)】
4K017
【Fターム(参考)】
4K017AA02
4K017AA06
4K017BA01
4K017BA04
4K017BA06
4K017BA10
4K017BB13
4K017CA07
4K017CA08
4K017EF04
(57)【要約】
【要約】
【解決手段】 一態様では、複数の金属元素を循環流体及び2つの電極を含むプラズマ反応器に加える工程と、電極間の少なくとも1つの放電パルスによって生成されるプラズマを用いて金属元素を蒸発させて金属蒸気を形成する工程と、及び金属蒸気を凝縮して金属粒子を形成する工程と、を含む、金属粒子の作製方法が開示される。いくつかの実施形態では、金属粒子は、金属酸化物粒子を含む。いくつかの実施形態では、金属粒子は、医薬組成物又は栄養補助食品の一部として有用である。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子の作製方法であって、
複数の金属元素を、2つの電極を有し、循環流体を含むプラズマ反応器に加える工程と、
前記電極間の少なくとも1つの放電パルスによって生成されるプラズマを用いて前記金属元素を蒸発させて金属蒸気を形成する工程と、及び
前記金属蒸気を凝縮して金属粒子を形成する工程と、
を含む、作製方法。
【請求項2】
請求項1記載の金属粒子の作製方法であって、さらに
前記金属粒子を前記プラズマ反応器に結合された沈殿槽に輸送する工程と、
前記金属粒子を記沈殿槽内で沈降させる工程と、
前記沈殿槽から前記沈殿物を除去する工程と、
前記沈殿物を昇華する工程と、
前記沈殿物を乾燥する工程と、および
前記沈殿物を粉砕する工程と、
を含む、作製方法。
【請求項3】
請求項2記載の金属粒子の作製方法において、前記金属粒子は、前記循環流体によって前記沈殿槽に運ばれる、作製方法。
【請求項4】
請求項1記載の金属粒子の製造方法において、前記金属元素が、鉄含有元素、アルミニウム含有元素、チタン含有元素、およびタングステン含有元素、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、作製方法。
【請求項5】
請求項1記載の金属粒子の作製方法において、前記循環流体が、水、過酸化水素、またはそれらの組み合わせからなる、作成方法。
【請求項6】
請求項1記載の金属粒子の作製方法において、前記金属粒子が2nm~60μmの間のサイズを有する、作製方法。
【請求項7】
請求項1記載の金属粒子の作製方法において、前記金属粒子が2nm~30μmの間のサイズを有する、作製方法。
【請求項8】
請求項1記載の金属粒子の作製方法において、前記金属粒子が2nm~1μmの間のサイズを有する、作製方法。
【請求項9】
請求項1記載の金属粒子の作製方法において、前記金属粒子が金属酸化物粒子を含む、作製方法。
【請求項10】
請求項1記載の金属粒子の作製方法において、前記金属粒子が酸化鉄粒子を含む、作製方法。
【請求項11】
請求項10記載の金属粒子の作製方法において、前記酸化鉄粒子がマイクロ波を吸収する、作製方法。
【請求項12】
請求項1記載の金属粒子の作製方法において、前記金属粒子がアルミナ粒子を含む、作製方法。
【請求項13】
請求項11~12のいずれかに記載の金属粒子を用いて液体試料から金属のイオンを抽出する方法であって、
前記金属粒子と前記液体試料とを混合する工程と、
前記金属粒子と前記イオンとを反応させる工程と、
前記反応した金属粒子を凝集させてスラリーを形成する工程と、および
前記スラリーを濾過する工程と、
を含む、方法。
【請求項14】
請求項13記載の液体試料からの金属のイオンを抽出する方法において、前記スラリーの濾過は、メッシュサイズが0.1μm~25μmの間のフィルターを用いて行う、方法。
【請求項15】
請求項13記載の液体試料からの金属のイオンを抽出する方法において、前記液体試料からのイオンの抽出度が80%~100%の間である、方法。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法に従って製造された金属粒子。
【請求項17】
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法で製造された1またはそれ以上の金属粒子を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年7月31日に出願された米国仮出願シリアル番号62/881,031の優先権を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
サブミクロンおよびナノメートルサイズの粒子は、生物学的および化学的な適合性だけでなく、強い吸収、散乱、磁気モーメントなどのユニークな特性により、多くのアプリケーションで大きな関心を集めている。サブミクロンおよびナノメートルサイズの粒子の組成、構造、およびサイズは、その特性に影響を与える重要な特性である。サブミクロンおよびナノメートルサイズの粒子の調製方法は、その組成、構造およびサイズを決定するため、技術的な応用のための重要な課題である。
【0003】
サブミクロンやナノメートルサイズの粒子を調製するためには、一般的にトップダウンアプローチとボトムアップアプローチが用いられる。トップダウンアプローチでは、バルク材を出発材料として、破砕によりサイズを小さくする。これは、通常、破砕と粉砕によって行われる。この方法は、汎用性、簡便性、低コストという長所がある。しかし、この方法では通常、不純物や欠陥を含む多分散の粒子が得られ、その最小サイズは約0.8μmである。一方、ボトムアップ方式は、自発的に有用な構造に組み立てられる小さなビルディングブロックから物体を作る方法である。このアプローチでは、より小さな構造体を作ることができ、テーラーメイドが容易になる。しかし、この方法で作製されたサブミクロンやナノメートルサイズの粒子は、しばしば複雑で高価な手順を必要とし、再現やスケールアップが困難な場合がある。
【0004】
そのため、サブミクロンやナノメートルサイズの粒子を調製するためのより良い方法が必要とされる。
【0005】
いくつかの実施形態において、金属粒子の製造方法が開示される。これらの実施形態において、本方法は、複数の金属元素を、循環流体及び2つの電極を含むプラズマ反応器に加える工程と、電極間の少なくとも1つの放電パルスによって生成されるプラズマを用いて金属元素を蒸発させて金属蒸気を形成する工程と、及び金属蒸気を凝縮して金属粒子を形成する工程と、を含むことができる。いくつかの実施形態において、本方法は、金属粒子をプラズマ反応器に結合された沈殿槽に輸送する工程と、金属粒子を沈殿槽に沈降する工程と、沈殿槽から沈殿物を除去する工程と、沈殿物を昇華させる工程と、沈殿物を乾燥する工程と、及び沈殿物を粉砕する工程と、を更に含むことができる。
【0006】
これらの実施形態等において、金属粒子は、循環流体によって沈殿槽に輸送され得る。
【0007】
いくつかの実施形態では、金属元素は、鉄含有元素、アルミニウム含有元素、チタン含有元素、及びタングステン含有元素、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択することができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、循環流体は、水、過酸化水素、またはそれらの組み合わせから構成され得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、金属粒子は、2nm~60μmの間、または2nm~30μmの間、または2nm~1μmの間のサイズを有することができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、金属粒子は、金属酸化物粒子を含むことができる。
【0011】
いくつかの実施形態において、金属粒子は、酸化鉄粒子を含むことができる。これらの実施形態において、酸化鉄粒子は、マイクロ波を吸収することができる。
【0012】
いくつかの実施形態において、金属粒子は、アルミナ粒子を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、上記の金属粒子を用いて液体試料から金属のイオンを抽出する方法が開示される。これらの実施形態において、この方法は、金属粒子を液体サンプルと混合する工程と、金属粒子をイオンと反応させる工程と、反応した金属粒子を凝固させてスラリーを形成する工程と、及びスラリーを濾過する工程と、含むことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、スラリーの濾過は、0.1μm~25μmの間のメッシュサイズを有するフィルタを用いて行われる。
【0015】
いくつかの実施形態では、液体試料からのイオンの抽出の程度は、80%~100%の間である。
【0016】
いくつかの実施形態では、金属粒子は、経口もしくは静脈内投与のための医薬組成物、または飲料を含み得るがこれらに限定されない栄養補助食品の一部である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本開示は、以下の図を参照して説明されるが、これらの図は、例示の目的でのみ提示され、限定することを意図していない。
図1図1Aは、本開示の態様に従った、電解液分散(EED)システムを使用した金属粒子の調製のための例示的な実施形態における様々な工程を示すフローチャートである。
図2図2は、本開示の態様に従ったプラズマ反応器の概略図である。
図3図3は、本開示の態様による、発電機、プラズマ反応器、沈殿槽、循環ポンプ、及び制御システムを含むEEDシステムの概略図である。
図4図4は、本開示の態様による、中央処理装置(CPU)、インターフェース、通信ポート、記憶装置、コントローラ、リードオンリーメモリ(ROM)、およびランダムアクセスメモリ(RAM)を含むEEDシステムの一実施形態の制御システムの概略図である。
図5図5は、本開示の態様に従った、金属元素の電解分散のための実験室設置を示す画像である。
図6A図6Aは、本開示の態様による、液体中のTi及びAlの分散のためのEEDプラズマ反応器の上面図を示す画像である。
図6B図6Bは、本開示の態様に従った、TiC、Ti、及びAlを含むEEC粒子を描写する画像である(スケールバー、90μm)。
図7A図7Aは、本開示の態様に従った、Feチップを用いた酸化鉄粒子の合成のためのEEDプラズマ反応器の上面図を示す画像である。
図7B図7Bは、本開示の実施形態による酸化鉄EED粒子の凝集体を示す透過型電子顕微鏡(TEM)明視野画像である(スケールバー、100nm)。
図7C図7Cは、本開示の実施形態による、直径約20nm~約50nmの一次粒子を有する酸化鉄EED粒子の凝集体を描写するTEM明視野画像である(スケールバー、50nm)。
図7D図7Dは、本開示の実施形態による、直径約7nm~約8nmの一次粒子を有する酸化鉄EED粒子の凝集体を描写する走査型電子顕微鏡(SEM)画像である(スケールバー、100nm)。
図8図8は、本開示の態様に従った酸化鉄EED粒子の密度及び粒子径を示す表である。
図9図9は、本開示の態様による、マイクロ波加熱前の酸化鉄EED粒子(暗い下線)およびマイクロ波加熱後(細い上線)のX線回折計(XRD)図を示す複数のグラフである。
図10図10は、本開示の態様による、マイクロ波加熱前の酸化鉄EED粒子のヒステリシス曲線(暗線)及びマイクロ波加熱後のヒステリシス曲線(破線)を示す複数のグラフである。
図11図11は、本開示の態様に従った、室温における酸化鉄EED粒子、Fe(比較実施例)、及びFe(比較実施例)の磁気値を提示する表である。
図12A図12Aは、本開示の態様に従って、2.45GHzのマイクロ波オーブンで加熱された酸化鉄EED粒子(EED粉末)、ガラス結晶化技術によって合成されたTi置換バリウムヘキサフェライト粉末(比較実施例)、及びMagsilica(登録商標)(Evonik)(比較実施例)の時間(t[s])にわたる加熱曲線(Δθ、[K])を提示する複数のグラフである。
図12B図12Bは、本開示の態様による、酸化鉄EED粒子(EED粉末)、ガラス結晶化技術によって合成されたTi置換バリウムヘキサフェライト粉末(比較実施例)、及びMagsilica(登録商標)(Evonik)(比較実施例)の時間(t[s])にわたる加熱率(Δθ/Δt、[K])を提示する複数のグラフである。
図13図13は、本開示の態様に従った結晶性アルミナEED粒子を描写する画像である(スケールバー、2μm)。
図14図14は、本開示の態様に従った非晶質アルミナEED粒子を描写する画像である(スケールバー、200nm)。
図15図15は、本開示の態様に従った、酸化鉄EED粒子を用いたガルバニックドレインの液体試料からの重金属イオンの抽出からの結果を提示する表である。
図16図16は、本開示の態様に従った、非晶質酸化アルミニウムEED粒子を用いた電気めっき製造からの汚染水の浄化からの結果を提示する表である。
図17A図17Aは、本開示の態様に係るCo EED粒子の質量分布のヒストグラムである。
図17B図17Bは、本開示の態様に係る硬質許容EED粉末の粒子の質量分布のヒストグラムである。
図17C図17Cは、本開示の態様に係るNi EED粉末の粒子の質量分布のヒストグラムである。
図18A図18Aは、本開示の態様に係るタングステンカーバイド合金からなる軍事製品の写真である。
図18B図18Bは、本開示の態様に従って図18Aに開示された軍用製品から製造されたEED粉末の写真であり、および
図18C図18Cは、本開示の態様に従った、図18Bに開示された粉末のTEM画像である(スケールバー、20μm)。
図19図19は、本開示の一実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
明確にするために、以下の議論は、そうすることが便利または適切である場合には、特定の詳細を省略しながら、本出願人の教示の実施形態の様々な側面を説明することが理解されるだろう。例えば、代替の実施形態における同様または類似の特徴の議論は、いくらか省略されることがある。よく知られたアイデア又は概念も、簡潔さのために、あまり詳細に論じないことがある。当業者は、本出願人の教示のいくつかの実施形態が、すべての実装において具体的に説明された詳細のうちの特定のものを必要としないかもしれないことを認識するだろうが、これらは、実施形態の完全な理解を提供するためにのみ本明細書に記載される。同様に、記載された実施形態は、本開示の範囲から逸脱することなく、一般的な一般知識に従って変更または変形可能であり得ることが明らかだろう。以下の実施形態の詳細な説明は、いかなる方法でも、本出願人の教示の範囲を限定するものと見なされてはならない。
【0019】
本明細書では、様々な用語を当該技術分野における一般的な意味と一致させて使用する。以下の用語は、明確にするために、以下に定義される。
【0020】
本書で使用する「約」という用語は、文脈上そうでない場合を除き、数値の周りに最大で10%のばらつきがあることを示す。
【0021】
本開示は、粉末冶金に関し、水溶液中の多価酸化鉄のナノスケール及び超微粉を製造する方法に関するものである。その技術的成果は、技術的プロセスの自動化、生産の作業条件および環境条件の改善、最終製品のコストとしてのエネルギーコストの削減、ならびに大量一括生産の可能性が達成されることである。ナノ分散多価酸化鉄粉の製造は、ナノ、石油、化学、電子産業だけでなく、医療、エネルギー、生物、農業など、幅広い用途を見出すことができる。
【0022】
さらに、プロセスを少し調整することで、金属粒子の球状や形態的な特性を変えることができ、炭水化物(カルボキシマルトースなど)でコーティングしやすいように、金属粒子の表面特性を変えることができる。EEDで製造された鉄粒子は、Vifor Pharma社のFERINJECT(登録商標)と同様に、ヒトや動物の腸壁を通して投与することができるため、経口投与製品の方が鉄剤よりも効く可能性があり、ヒトにおける鉄剤の必要性を排除できる可能性がある。このように、鉄は消化管から血流に吸収される可能性がある。また、Fe3+のEED鉄は、新しいコーティング技術を可能にする形状や表面特性を持つ特殊な鉄ナノ粒子のコーティングを可能にすることで、IRON INFUSIONを改良することができるかもしれない。
【0023】
以下により詳細に議論するように、いくつかの実施形態において、サブミクロン及びナノメートルサイズの粒子は、以下:(i)2つの電極、循環流体、及びプラズマ反応器に材料を装填する装填口を含むプラズマ反応器、(ii)プラズマ反応器に放電を提供するために電極に接続された発電機、(iii)製造された粒子が沈降する沈降槽、及び(iv)流体を循環させるためにプラズマ反応器及び沈降槽に接続されたポンプを含む電気侵食分散(EED)システムを用いて作製される。また、EEDシステムは、循環する流体がプラズマ反応器から沈殿槽に製造された粒子を輸送するように設計されても良い。サブミクロン及びナノメートルサイズの粒子、例えば、サブミクロン及びナノメートルサイズの金属酸化物粒子は、EEDシステムを用いてバルク金属材料から作製することができる。特定の理論に限定されることなく、いくつかの実施形態では、バルク金属材料は、パルス放電によって生成されたプラズマにより、プラズマ反応器内で比較的高い温度に加熱される。この結果、バルク材料が蒸発し、その後、プラズマ反応器の低温領域で微小液滴に凝縮される。酸素を含む媒体(例えば、水)中で、凝縮した液滴は、酸素によって酸化され、金属酸化物粒子を形成することができる。特定の実施形態では、酸素は、水の分解に起因するプラズマによって生成される。短時間の放電による非平衡条件下で、組成、酸化状態、およびサイズが異なる金属粒子および金属酸化物粒子を作製することが可能である。
【0024】
場合によっては、製造された粒子の化学量論は、電極材料の化学量論と同様に、原料の特性(すなわち、組成、切り屑、削り屑、顆粒、不純物など)および循環流体の特性(すなわち、組成、温度、流速など)に依存する。上記の要因を変化させ、放電のパラメータ(電圧、放電周波数、パルスの形状など)を制御することで、作製した粒子の組成、粒径(数ナノメートルから数ミクロン)、形状(球状、表面が高度に発達したものなど)、相(非晶質、ガラス状、結晶性など)などの特性を決定することが可能である。循環液(水、蒸留水、灯油など)の種類や組成を適当な添加量で変えることで、純金属、酸化物、炭化物、窒化物を合成する可能性を提供できる。本明細書に開示された方法により、独特の特性(例えば、耐火性、硬度、延性、脆性、放射能、化学活性、磁気特性、および吸着能力)を有する材料の製造に適した粒子を作製することができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、原料は、顆粒、削り屑、規則的な形状の粒子、又は不規則な形状の粒子の形態である。原料は、鉄、鋳鉄、または鋼のうちの1つまたはそれ以上とすることができる。他の実施形態では、原料は、鉄鉱石である。鉄鉱石の例は、特に限定されず、マグネタイト、ヘマタイト、ゲータイト、リモナイト、またはシデライトのうちの1つまたはそれ以上を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、循環流体は、少なくとも20℃、または少なくとも25℃、または少なくとも30℃、または少なくとも40℃、または少なくとも50℃、または少なくとも60℃、または少なくとも70℃、または少なくとも80℃、または少なくとも90℃の温度を有することが可能である。いくつかの実施形態では、循環流体は、粒子の作製中にプラズマ反応器内を循環することができる。いくつかの実施形態では、循環流体は、粒子の製造の間、循環を停止することができる。いくつかの実施形態では、循環流体は、約0.01リットル/分と約60リットル/分の間、又は約0.1リットル/分~約40リットル/分の間、又は約1リットル/分~約20リットル/分の間、又は約2リットル/分~約10リットル/分の間、又は約2リットル/分~約5リットル/分の間、又は約2リットル/分~約3リットル/分の間などの流速を有することができる。いくつかの実施形態では、循環流体は、少なくとも0.01リットル/分、または少なくとも0.1リットル/分、または少なくとも1リットル/分、または少なくとも2リットル/分、または少なくとも3リットル/分、または少なくとも5リットル/分、または少なくとも10リットル/分、または少なくとも20リットル/分、または少なくとも40リットル/分、または少なくとも60リットル/分の流量を有することが可能である。
【0027】
いくつかの実施形態では、作製されたEED粒子は、約2nm~約60μmのサイズ、または約2nm~約30μmのサイズ、または約2nm~約15μmのサイズ、または約2nm~約10μmのサイズ、または約2nm~約5μmのサイズ、または約2nm~約1μmのサイズ、または約2nm~約0.5μm、または約2nm~約0.1μm、または約2nm~約0.2μm、または約2nm~約0.05μm、または約2nm~約100nm、約2nm~約200nm、または約2nm~約300nm、または約2nm~約400nm、または約2nm~約500nmの大きさである。特定の実施形態では、薬用鉄注入準備粒子の場合、Fe3+粒子径は、典型的には、約60nm~約180nmである。いくつかの実施形態では、作製された粒子中の不純物は、出発材料中のものと同じである。他の実施形態では、作製された粒子中の不純物は、出発材料中とは異なる。
【0028】
電気泳動分散法(EED)による金属粒子の作製にはいくつかの利点がある。例えば、製造された粒子は、比較的純粋で、単分散であり、異なるサイズ(すなわち、ミクロンサイズ、サブミクロンサイズ、およびナノメートルサイズ)であり、異なる形状(すなわち、球状または高度に発達した表面および高転位密度)、異なる相(すなわち、非晶質、ガラス性および結晶性)であり、独特の特性(例えば、磁気特性、化学活性吸着剤および凝集剤)であることが可能である。さらに、EEDプロセスは環境に優しく(すなわち、排水口は必要ないが、必要に応じて使用することができ、ガスやほこりを排出しない)、比エネルギーが低く(すなわち、約1kgの粒子の製造に約1.5~3kW)、装置がコンパクトで、容易にスケールアップすることが可能である。
【0029】
EED金属微粒子およびその酸化物は、様々な用途に使用することができる。例えば、EED粒子は、液体サンプルの精製や3D印刷の添加剤として使用することができる。EED印刷では、金属粒子の特性を変えることで、3D印刷プロセスを簡略化し、印刷された金属オブジェクトに引張強度を加えることができる。例えば、ニッケルEED粒子および粒子酸化物は、触媒、コーティング、ポリマー、繊維、電池、磁器、顔料、航空機部品の製造、電子、光学、医療機器、および一般的に異なる用途における白金の代替に使用することが可能である。一例として、銅EED粒子および粒子酸化物は、航空、生物学、および冶金において、抗菌および殺菌化合物として、ならびに電子および光学デバイスにおいて、使用することができる。例えば、鉄EED粒子および粒子酸化物は、水の浄化、磁石、フェライト、コーティング、ポリマーおよび冶金粉末の製造、医薬および生物学における医薬組成物またはサプリメント、メモリ記憶デバイス、および強化剤または充填剤などの添加物として使用することができる。例えば、アルミニウムEED粒子および粒子酸化物は、水の浄化のために、および宝石、光学レンズ、研削ペースト、ロケット燃料の製造のために使用することができる。チタンEED粒子および粒子酸化物は、抗菌剤、殺菌剤、紫外線安定剤、添加剤、高強度コーティング、顔料の製造、および冶金用粉末として使用することができる。例えば、亜鉛EED粒子および粒子酸化物は、抗菌性および殺菌性化合物として、ならびにポリマー、繊維、コーティング、水素燃料電池、太陽電池、および冶金用粉末の製造に使用することができる。例えば、タングステンEED粒子および粒子酸化物は、耐摩耗性コーティング、切削および穿孔工具、装甲ピアスコア、高電流スイッチ用接点、および冶金粉末の製造に使用することができる。例として、モリブデンEED粒子および粒子酸化物は、触媒として、およびコーティング、ポリマー、腐食防止剤、および冶金粉末の製造に使用することができる。例えば、銀のEED粒子および粒子酸化物は、抗菌物質、触媒、および添加剤として、およびコーティング航空機部品に使用することができる。金EED粒子および粒子酸化物は、例えば、エレクトロニクス、医療、航空、および宝飾品、ならびに触媒および添加剤として使用することが可能である。白金EED粒子および粒子状酸化物は、例えば、エレクトロニクス、医療、航空、水素燃料電池、精密機械製品の製造、および添加剤として使用することが可能である。
【0030】
いくつかの実施形態では、EED粒子は、鉄、酸化鉄、または水酸化鉄のうちの1またはそれ以上、または前記組成物のうちの1またはそれ以上の組み合わせで形成される。鉄の例は特に限定されず、鉄単独、またはクロム、銅、モリブデン、亜鉛、コバルト、ニッケル、カドミウム、マンガン、ヒ素、スズ、鉛、アルミニウム、セシウム、およびストロンチウムの1またはそれ以上との化合物もしくは合金としての鉄が含まれる。また、鉄としては、フェリコキシハイドロオキシド等の第二鉄を含んでも良い。酸化鉄としては、Fe3+、Fe2+、Fe+O+OH、Fe3+OH、及びFeO、FeO、Fe、Fe、Fe、Fe、Fe2532、Fe1319などの鉄(II)酸化物、及びFe、α-Fe(α相)、β-Fe(β相)、γ-Fe(γ相)またはε-Fe(ε相)などがあげられる。水酸化鉄の例としては、水酸化鉄(II)(Fe(OH))および水酸化鉄(III)(Fe(OH))、水酸化鉄(III)、オキシ水酸化鉄の水和物(オキシ水酸化鉄)およびそれらの組合せが挙げられる。
【0031】
これらの実施形態において、酸化鉄EED粒子は、液体試料からの金属及び重金属のイオンの抽出に有効である。これらの金属は、例えば、限定されないが、鉄、クロム、銅、モリブデン、亜鉛、コバルト、ニッケル、カドミウム、マンガン、ヒ素、スズ、及び鉛を含む。他の実施形態では、アルミナEED粒子が作製される。これらの実施形態において、アルミナEED粒子は、液体試料から金属及び重金属のイオンを抽出するのに有効である。これらの金属は、例えば、限定されないが、鉄、クロム、銅、モリブデン、亜鉛、コバルト、ニッケル、カドミウム、マンガン、ヒ素、スズ、鉛、アルミニウム、バリウム、セシウム、及びストロンチウムを含む。
【0032】
液体試料からの金属や重金属のイオンの抽出は、EED粒子からなる乾燥粉末または未乾燥粉末を液体試料に混合することにより行うことができる。一例として、EED粒子は、酸化鉄EED粒子、アルミナEED粒子、またはそれらの組み合わせとすることができる。その後、混合物は、所定時間、停滞させるか、手動で混合するか、またはシェーカー、ソニケーター、磁気スターバー、ボルテックス、またはこれらの任意の組み合わせを使用して混合することができる。予め定義された期間は、約2分~約240分の間、又は約2分~約180分の間、又は約2分~約120分の間、又は約2分~約60分の間、又は約2分~約30分の間、又は約2分~約15分の間、又は約2分~約8分の間、又は約2分~約4分の間であることが可能である。EED粒子がイオンと反応した後、反応した金属粒子は凝固してスラリーを形成することができる。次に、スラリーをフィルターに通過させることができる。フィルターは、約0.05μm~約100μmの間、または約0.05μm~約50μmの間、または約0.1μm~約25μmの間、または約0.5μm~約15μmの間、約1μm~約10μmの間、約100nm~約500nm、約100nm~約200nm、約100nm~約300nm、または約100nm~約400nmのメッシュサイズを持っていることができる。いくつかの実施形態では、フィルターは、約0.05μm、または約0.1μm、または約0.5μm、または約1μm、または約10μm、または約15μm、または約25μm、または約50μm、または約100μmのメッシュ径を有することが可能である。液体試料からのイオンの抽出度は、約50%~約100%の間、または約60%~約100%の間、または約70%~約100%の間、または約80%~約100%の間、または約90%~約100%の間、または約95%~約100%の間、または約99%~約100%の間、または約99.5%~約100%の間でありえる。いくつかの実施形態では、液体試料からのイオンの抽出の程度は、少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも99%であり得る。
【0033】
いくつかの実施形態において、EED粒子は、電磁気的特性を有し、マイクロ波を吸収することができる。これらの実施形態において、作製されたEED粒子は、市販の粒子と同様の値またはそれ以上の値でマイクロ波を吸収する。一例として、本明細書に開示されるいくつかの酸化鉄EED粒子は、ヘキサフェライト粉末と同程度、及び酸化鉄Magsilica(登録商標)粉末より大きいマイクロ波吸収値を可能にする。高周波電磁場を伴う用途(例えば、衛星テレビ、携帯電話、WLAN技術、交通および航空監視用レーダー、マイクロ波加熱、乾燥、焼結、さらには自動車および医療用途など)は、生体系への電磁波曝露を減らし、機器および装置の安全かつ確実な操作(例えば、無線信号漏れの防止)を保証するために、ここに開示する酸化鉄EED粒子などの低コストの吸収材料が必要である。また、本明細書に開示された酸化鉄EED粒子は、マイクロ波誘導硬化接合用複合材料または磁気的に柔らかい複合材料の作製に使用することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、EED粒子は、他の用途を有する。例として、粒子は、医薬組成物中の不活性成分、医薬組成物中の活性成分(任意に、GI管または所望のような他の吸収部位における正確な送達を可能にするために炭水化物コーティングを有する)、栄養補助食品の不活性成分、栄養補助食品の活性成分(例えば、金属が人間または動物によって摂取された場合に栄養上の利点を有する場合)、吸着材料、吸収材料、作物生産用のミネラル補助食品として、粉末冶金用原料(セラミックス用または金属合金用のいずれであっても)、冶金用途の核剤、化学用途の核剤、工業用触媒(例えば、Al粒子を単独または他の触媒と組み合わせて、自動車の推進など輸送または定置用途の水素製造または改質用の1つまたはそれ以上として使用することができる。ボート、船舶、飛行機、ロケット、列車、トラックなど)、実験室触媒として、別個の触媒のための支持粒子または基質粒子として、医薬組成物の防腐剤または酸化防止剤または安定剤として、または栄養補助食品中の防腐剤または酸化防止剤または安定剤として使用することができる。いくつかの実施形態では、EED粒子は、先の用途のいずれにも使用可能な複合体の一部として形成される。例えば、一実施形態では、EED粒子は、グルコン酸第二鉄ナトリウム、第二鉄炭水化物複合体、第二鉄スクロース複合体、第二鉄マルトース複合体、第二鉄カルボキシマルトース複合体、第二鉄デキストロース複合体等の1つまたはそれ以上に使用又は含有される。さらに他の実施形態では、EED粒子は、任意のアミノ酸との複合体として形成される。さらに他の有利な実施形態では、EED粒子は動物飼料に含めるのに有用であり、これにより、同じカロリーの飼料摂取量が他の方法で動物の食事に提供される場合でも、より迅速な成長および体重増加を可能にする。このような動物は、限定されず、家畜および野生動物を含み、馬、ロバ、牛、ゼブ、バリ牛、ヤク、水牛、ガイヤール、羊、ヤギ、トナカイ、バクトリアンキャメル、アラビアンキャメル、ラマ、アルパカ、豚、ウサギ、モルモット、鶏(鶏、鴨、ガチョウ、七面鳥等)、犬、猫、鳥等の1つまたはそれ以上を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、特に、独特の粒子組成、微細構造形態、表面積及び形態的特性、並びに粒子サイズの組み合わせが、ヒト又は動物における吸収を増加させ、それによって有益な効果をもたらすと考えられる。特に、例として、本開示の鉄EED粒子は、栄養補助食品または医薬組成物の一部として、ヒトにおける吸収を増加させると考えられる。理論に束縛されることを望まないが、本開示の鉄EED粒子は、胃腸管を通じて吸収される医薬組成物としての使用を可能にする吸収の増加を有すると考えられる。
【0036】
図2~4と同様に1図のフローチャートを参照すると、本教示の1またはそれ以上の実施形態によるミクロン、サブミクロン、及びナノメートルサイズの粒子の作製方法において、有機流体、無機流体、又はそれらの組み合わせなどの循環流体の存在下で200、1またはそれ以上の金属元素をプラズマ反応器に添加することが可能である。一例として、無機流体は、水、過酸化水素、又はそれらの組み合わせとすることができる。循環流体は、1つまたはそれ以上の電解質、単糖類、二糖類、多糖類、またはそれらの任意の組み合わせなどの他の要素も含むことができる。一例として、電解質は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化リチウム、塩化第二鉄、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カリウム、硝酸銀、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、硫酸銅、またはこれらの任意のイオン、またはこれらの任意の組合せであり得る。一例として、単糖は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。実施例として、二糖類は、マルトース、スクロース、ラクトース、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。例として、多糖類は、セルロース、キトサン、ペクチン、デンプン、グリコーゲン、またはそれらの任意の組み合わせとし得る。いくつかの実施形態において、粒子を作製するために使用される金属元素は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ポスト遷移金属、またはメタロイド、またはそれらの任意の組み合わせを含む。そのような金属のいくつかの例には、限定されないが、鉄、アルミニウム、ニッケル、コバルト、タングステン、銅、亜鉛、鉛、モリブデン、タンタル、錫、バナジウム、クロム、チタン、ニオブ、ケイ素、及びジルコニウムが含まれる。
【0037】
より具体的には、プラズマ反応器200は、プラズマ反応器に材料を装填するように設計された入口210、2つの電極(陰極/陽極)216/218、及びプラズマ反応器に放電を加えるように設計された入口からなる上部202、及び流体(図示せず)を循環させるためのチャネル212を含む。また、プラズマ反応器は、1つまたはそれ以上の壁204と、循環流体を圧送するためのメッシュ底部208と、流体を循環させるためのチャネル214とを含む底部206とを含む。プラズマ反応器は、粒子が作製される空洞空間220を画定する。
【0038】
図3には、電気泳動分散(EED)システム300を模式的に示す。いくつかの実施形態では、EEDシステムは、プラズマ反応器200に加えて、発電機302、沈殿槽304、循環ポンプ306、および制御システム308を含む。プラズマ反応器200内に配置された金属元素は、電極216と218から少なくとも1つの放電パルスによってプラズマが生成されると、蒸発して金属蒸気を形成する。この金属蒸気を凝縮して金属粒子を生成し、生成した金属粒子を沈殿槽304に輸送して沈殿させる。その後、沈殿槽から沈殿物を取り出し、昇華、乾燥、粉砕を行う。
【0039】
上述したように、電解液分散(EED)システム300は、1つまたはそれ以上の制御システムによって制御可能な複数の機能要素を含む。実施例として、図4には、制御システム308の例示的な実装が概略的に描かれており、これは、システムの1つまたはそれ以上の要素の動作を制御するための中央処理装置(CPU)400を含む。制御システムはまた、インターフェース402、システムの様々な構成要素と通信するための通信ポート404、メモリ装置406、コントローラ408、ランダムアクセスメモリ(RAM)412、および読み取り専用メモリ(ROM)410を含む。実施例として、粒子の製造のための命令は、ROM410、または、RAM412、または他のメモリ装置406に格納することができ、プロセッサは、制御システム308の制御下でシステムの様々な機能ユニットの動作を制御するためにそれらの命令にアクセスできる。例えば、命令は、プラズマ反応器に発生する各電気パルスの持続時間と電力、およびプラズマ反応器を通過する循環流体の速度を提供することができる。
【0040】
ナノ分散多価酸化鉄粉の製造は、ナノ、石油、化学、電子産業だけでなく、医学、エネルギー、生物学、農業など幅広い用途を見出すことができる。
【0041】
一実施形態では、EEDプロセスは、原料を反応チャンバーに装填することによって開始される。反応チャンバーは、誘電体または材料で作られる。誘電体材料は、電気的絶縁性、熱的絶縁性、または電気的および熱的絶縁性の両方とすることができる。運転中、冷却され再利用された水が反応室に送られる。運転中、パルス発生器は、反応室内に存在する原料の層に直接接触する1つまたはそれ以上の電極を通して電流放電を送る。
【0042】
原料は、誘電体材料でできた反応器内の穴あき仕切り板に装填される。装填された原料の層で移動放電の光学的な特定分布密度を確保するために、反応室内を冷却された再生清澄水を圧力下で連続的に循環させる。これにより、仕切りの上に浮いている「擬似沸騰層」が形成され、局所的な溶融帯につながる可能性のある局所的なプラズマ放電の形成が防止される。特定の実施形態では、1つまたはそれ以上の電極がプラズマ反応器内の原料に接触する。ある実施形態では、原料が顆粒の形態である場合など、原料の「流動化」層を実現するために、リサイクルされた冷却清澄水の圧力下での循環が使用される。原料層における放電接点の量は、EEDプロセスの開始時および段階的溶解の全体を通じて、ほぼ同じレベルを維持する。さらに、電極によって印加される電流の周波数は500~800Hz、パルス状の電流の振幅値は8~20kA以内、電圧は100~800Vとする。これらの各値は一例であり、分散原料および得られる製品の要求範囲に応じて変化させることが可能である。
【0043】
負荷された原料の層における移動する放電の分布の最適な比密度を確保することは、EEDプラズマ反応器内の圧力下で冷却された清澄な水の連続循環によって達成される。いくつかの実施形態では、供給原料の層における放電接点の総数が、反応器の装填開始時および緩やかな電気侵食溶解の全過程の両方で、ほぼ同じレベルに維持される。
【0044】
ここで図19を参照すると、EED装置1901および関連する構成要素の一実施形態が示される。電気パルス発生器1902は、電圧、繰り返し率、デューティサイクル、放電電流安定化、パルス形状のうちの1つ以上を含む制御されたパラメータで電気パルスを発生させる。EEDプラズマ反応器1903は、鉄、鋼、鋳鉄からの顆粒(チップ、ショットなど)を電気分解分散するプロセスを実行する場所である。バンカー1904は、EEDプラズマ反応器1903に投入されるチップ、ショット、ペレット等の原料を貯蔵するものである。振動フィーダは、EEDプラズマ反応器1903への原料のドーズ供給を制御1905する。1つまたはそれ以上の沈殿槽1906は、マグネタイトなどの生成物質の水懸濁液を沈降させ、また、作動流体の清澄化および冷却を行う。1907a、1907b、および1907cとして描かれた1つまたはそれ以上の電気バルブは、作動流体およびマグネタイトなどの生成物質の1つまたはそれ以上を含む沈殿槽容量ペーストから定期的にアンロードするプロセスを自動化する。循環ポンプ1908は、顆粒の制御された流動化層と閉じた円内の水の連続循環を作るように作動流体を循環させる。作動流体は、最初にEEDプラズマ反応器1903を通り、続いて1つまたはそれ以上の沈殿槽1906を通り、最後に電気値1907a、1907b、1907cの1つまたはそれ以上を通り、ポンプ1908とプラズマ反応器1903に戻る前に循環する。電流トランスCT1及びCT2はそれぞれ、パルス発生器1902が発生する放電パルスの平均積算電流強度に関する情報を取得するようになる。この情報は、振動フィーダの動作を制御し、リアクター負荷分散顆粒を所定レベルに維持し、顆粒が処理されるにつれてその体積が減少するようにするために役立つ。変流器CT2は、瞬時パルス電流に関する情報を取り出すようになっており、この情報は、第1のソフトウェアコントローラ1909によって、振動フィーダ1905の動作を制御し、リアクトル負荷原料の所定のレベルを維持し、その体積は、顆粒が処理されるにつれて減少するようになっている。さらに、ソフトウェアコントローラ1910は、周波数変換器1911を介して動作することにより、循環ポンプ1908を制御する。
【0045】
第1のソフトウェアコントローラ1909及び第2のソフトウェアコントローラ1910によって得られる、装置の時間及び動作モードに関する累積情報に基づいて、タイマ1912が制御される。タイマー1912は、電気駆動により1つまたはそれ以上のバルブ1907a、1907b、または1907cを定期的に開き、沈殿槽から沈殿したマグネタイトペーストを放出する。周波数変換器1911は、循環ポンプ1908の供給網の周波数が滑らかに変化するように設計されており、その結果、その圧力-流量特性の変化も滑らかに発生する。これは、顆粒の「擬似沸騰」または顆粒の「流動化」層を許容し、それによって顆粒の局所的な溶融の形成を回避する。タイマー1912は、バルブ1907a、1907b、または1907cの1つまたはそれ以上の遠隔開放を制御して、沈降タンク1906からの沈降した磁鉄鉱ペーストまたは他の生成物の放出を制御する。
【0046】
また、出願人は、電気マイクロ放電のプラズマチャネルに存在する条件を特徴づけた。これらのプラズマチャネルにおいて、温度は約1×10℃~約1.5×10℃であり、顆粒間の火花接触ゾーンにおける電気エネルギー量は約1J以下である。最大20kAのパルス放電電流で水中に鋼(鋳鉄、鉄)顆粒または削りくずを分散する間の体積エレクトロスパーク処理の結果として、約2~約3nmの粒子サイズを有するマグネタイト粉末は、得られたものである。理論に縛られることを望まないが、本出願人は、パルス放電の対応するパラメータを用いれば、原子レベルまでの最小の粒子がEED法により得られると信じている。
【0047】
粒子の大きさは、放電の1つまたはそれ以上の持続時間、放電のエネルギー、分散性パラメータの物理的パラメータ、寸法および形態、分散性材料の組成、沸点および熱容量などの作動流体の熱力学的特性、ならびに反応器内の作動流体の移動の水力特性によって決定される。
【0048】
いくつかの実施形態では、各粒子の形成あたりの比エネルギー消費量を制御し、それによって形成される粒子のサイズを制御し、分散液の比密度を維持する。これは、パルス発生器の積分放電電流を安定させ、放電パルスの予め決められた繰り返し速度を選択し、顆粒間の放電の持続時間を短縮することによって達成される。理論に縛られることを望まないが、顆粒の体積におけるプラズマチャネルの出現と移動の激しく確率的な性質と、顆粒間の多数の火花接触とを考えると、この問題の解決に重要な役割を果たすのは、循環ポンプの圧力-流れ特性の流体力学的な調節である。
【0049】
一実施形態では、移行する放電鎖の数は、プラズマ反応器の負荷の程度に依存する。したがって、これは、プラズマリアクタの負荷を調整することによって制御することができる。プラズマ反応器が原料の最大容量まで負荷されると、移行する放電鎖の数も最大となる。しかし、電食の代わりに局所的な溶融が起こるほど負荷が高くならないようにする必要がある。
【0050】
一実施形態では、2チャンネルモードの動作制御が提供される。これにより、生成されたマグネタイトの分散を安定させるための柔軟な制御系が提供される。特に、第1のソフトウェアコントローラ及び第2のソフトウェアコントローラを本明細書に記載のように使用する場合、これは、原料の層の位置圧縮中に発生し得るピーク電流負荷を制御する。これは、原料の分散を増加させ、したがって、装置の動作寿命を増加させる。
【0051】
実施例
本発明は、その特定の好ましい実施形態を参照してかなり詳細に説明されてきたが、他のバージョンも可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および範囲は、本明細書内に含まれる説明および好ましいバージョンに限定されるべきではない。本発明の様々な態様は、以下の非限定的な実施例を参照して説明される。
【0052】
素材
鉄片と電極は構造用炭素鋼を使用した。
【0053】
多価酸化鉄は,炭素鋼(St3(DSTU 2651-94/GOST 380-94),A568M(ASTM International)、または1.0116(DIN EN 10025))から作製した.
【0054】
EED粒子の作製には、水道水を使用した。
【0055】
EED粒子の加熱挙動を解析するための標準物質として、MagSilica(登録商標)とTi置換バリウムヘキサフェライト粉末を使用した。MagSilica(登録商標)は、コアにFe、シェルにSiOを含むナノスケールの酸化物粉末である。この粉末は、ガラスやプラスチックなどの材料を接着するための接着剤に使用される。Ti置換バリウムヘキサフェライト粉末は、マイクロ波領域での電磁波シールド材の製造や、高周波電界に対応した接合・剥離のために開発された粉末である。
【0056】
金属微粒子の電着分散加工のための実験設備
金属粒子は、EED(Electroerosion Dispersion)実験装置を用いて作製した(図5)。EED装置は、パルス発生器1、タンク2、沈殿槽3、およびポンプ4で構成される。
【0057】
EEDの設置面積は約5mから約7mだった。パルス発生器1は、プラズマ反応器2内に広い範囲の周波数と電圧(すなわち、約100Hz~約500Hz、約10Hz~約1000Hz、約100V~約500V、または約10V~約800V)で放電を発生させた。プラズマ反応器2と沈殿槽3の両方がポンプ4で接続された。EEDの設置には、約1kgの粒子を生成するために低いエネルギー強度(すなわち、約1.5kW~約3kW)が必要であった。合成速度は約1kg/h~約2kg/hであった。しかし、プラズマ反応器の容積を約20Lにすることで、EED設備の生産性を約5kg/hまで上げることができた。EEDプロセスは、環境的に許容できるものであり、電子剤、ガス、微粒子の放出はない。EED法では、約10K/mmまでの温度勾配が可能であった。金属蒸気やマイクロドロップレットは、コールドゾーンでほぼ即座に(τ≒10?6秒)凝固した。このような条件で粒子を作製すると、結晶格子の変形、高転位密度、結晶粒の高い表面積や比表面積など、ユニークな粒子特性を持つ粒子が得られる。
【0058】
特徴
EED粒子の密度を測定した。具体的には、まず、EED粒子を真空デシケーター内で、AccuPyc II 1340装置(米国、ノークロスのMicromeritics Instrument Corporationにより販売)を用いてアルゴンによるガスピクノメトリーにより乾燥し、次に、Balance MC 210 P装置(ドイツ、ゲッティンゲンのSratorius AGにより販売)を用いて高精度の質量測定により分析を行った。
【0059】
EED粒子の粒度分布を測定した。具体的には、まず、EED粒子を二重蒸留水で試料濃度0.15mg/mLに希釈し、Sonorex Digital 10P装置(ドイツベルリンのBandelin electronic GmbH & Co.KGにより販売)を用いてバスソニケーター内で35kHzで3分間超音波処理して粒子を脱凝集、分散させた。次に、EED粒子を、Malvern Zetasizer 3000 HS装置(英国、マルバーンのMalvern Instruments Inc.)を使用して、動的光散乱法により分析した。各サンプルは3回測定され、統計的に評価された。
【0060】
EED粒子の一次粒子、凝集体、凝集塊のサイズと形態は、Tecnai 20S(米国、ヒルスボロのFEI Companyにより販売)を用いた透過電子顕微鏡(TEM)およびHitachi S-4800(カナダ、ミシスーガのHitachi Ltdにより販売)を用いた走査電子顕微鏡(SEM)で測定した.
【0061】
EED粒子の相分析を実施した。具体的には、Siemens/Bruker D-5000 X線回折装置(XRD)システム(米国、BillericaのBruker Corporationにより販売)を用い、オプションでスピナー(phi)回転を備えたシータ/シータ垂直ゴニオメータシステム(ブラッグブレンターノ構成)およびCu-kα放射(λ=1.540598Å)により位相分析を実施した。測定は室温で行い、測定パターンをJCPDS(Joint Committee on Powder Diffraction Standards)のデータカード(International Centre for Diffraction Data,PDF-2 2018)と比較して相の同定を行った。
【0062】
EED粒子中のFe2+量を決定するためにセリメトリーおよびセリメトリー滴定を実施した。具体的には,Ce4+がFe2+を酸化してFe3+とする酸化還元滴定を行い、その電気化学的電位をモニタした。実験デザインは、Pt指示電極とカロメル参照電極から構成された。分析用試料を調製するために、300mgのEED粒子を100mLの8.5MHClとともに、95℃、N通電下で2時間加熱し、完全に溶解させた。数分間冷却した後,40%HClO20mLと2回蒸留したガスフリー水100mLを試料に添加した。滴定液は0.1MCe(SOの標準溶液を用いた。
【0063】
EED粒子の磁化を測定した。具体的には、振動試料型磁力計(VSM)293904C装置(米国トレントンのプリンストンインスツルメンツ社製印)を用いて、室温で質量約40mgの粉末試料を用いて、印加磁場強度H=±1.15x10A/mの範囲で測定を行った。測定した曲線m(H)は、式(I)と式(II)によりM(H)に変換した。
【化1】
ここで、Mは磁化、mは測定された磁気モーメント、mは試料の質量、ρは試料の密度であり、
【化2】
ここで、Hは試料中の磁場強度、Hは印加磁場強度、Nは減磁係数である。
【0064】
調製した各試料の減磁率Nは、点H=におけるヒステリシスループM(H)の傾きtanαにより、式(III)で反復して決定した。
【化3】
【0065】
磁気パラメータ、特に飽和磁化(M)、保磁力()と残留磁化(M)は、補正されたヒステリシスループM(H)から推論された。Jは磁気分極Jがゼロのときの保磁力を表す指標である。
【0066】
合成したEED粒子のマイクロ波吸収量を測定した。具体的には,シリカガラス製るつぼ(内径20mm)に同じ質量(1g)を詰め、IRセンサーOptrisCT(登録商標)(ドイツ、ベルリンのOptris GmbHにより販売)を備えた2.45GHzの特殊電子レンジAFKP(登録商標)MW17.3(ドイツ、ハンブルグのAFK Deutschland GmbHにより販売)内でサンプルの加熱曲線(Δθ(t))の計測を実施した。温度による変化(酸化など)を判断するため、3回測定を反復した。
【実施例1】
【0067】
Tic/Ti/Al EED微粒子の作製
Tic/Ti/Al粒子は、電解液分散(EED)を用いて製造された(図6A~B)。具体的には、アルミニウムとチタンのバルク材を液体中にEEDで分散させ(図6A)、液体をプラズマ反応器に通して常に送り込み、プラズマ反応器は2つの電極とプラズマで構成されていた。得られたEED粒子は、ミクロンおよびサブミクロンの範囲の直径を有した(図6B)。
【実施例2】
【0068】
酸化鉄EED粒子の作製
酸化鉄粒子は、EED(Electroerosion Dispersion)を用いて作製した(図7A~D)。具体的には、金属鉄チップをEEDにより水中に分散させた。このとき、水はプラズマ反応器に常時通され、プラズマ反応器は2つの電極とプラズマとで構成される(図7A)。粒子は、沈殿槽に運ばれ、そこで沈殿処理が進行した。沈殿槽から沈殿物を取り出して昇華させ、真空または空気中で乾燥させ、最後に短時間粉砕した。得られたEED粒子は、凝集体を形成し(図7B)、直径約20nm~約50nmの一次粒子を有し(図7C)、直径約7nm~約8nmの粒子を有した(図7D)。
【実施例3】
【0069】
酸化鉄EED粒子の密度と大きさ
酸化鉄EED粒子の密度と粒径を測定した(図8)。マイクロ波加熱前(5.347±0.015g/cm)と加熱後(5.393±0.036g/cm)のEED粒子の密度は、マグネタイトの理論密度(ρth=5.175g/cm)とほぼ同じか若干大きくなっている。これは、合成した酸化鉄EED粒子が理論密度7.874g/cmのFeや理論密度5.88g/cmのFeO等の重相をさらに含むことが以下に述べる相分析により明らかにされる。測定された粒子径は、D10,3=3.6μmからD90,3=11.8μmまでの範囲であり、指標は体積加重値のパーセンテージを特徴づけるものである。測定された粒子径は、合成された一次粒子の大きさよりも、粒子凝集体や凝集塊の大きさを反映している部分がある。
【実施例4】
【0070】
酸化鉄EED粒子の位相解析
酸化鉄EED粒子の相分析を行った(図9)。図9に示した2つの図は、マイクロ波加熱前(下の暗線)とマイクロ波加熱後(上の明線)のEED粒子のX線回折分析による結果を示す。いずれのEED粒子も主相はマグネタイト(Fe)であった。第2相は金属鉄(Fe)であり、その割合は少ない。もう一つの検出された相は、ウスタイト(FeO)であった。これは、図8に示され、上述した密度の測定値からの結論とよく相関する。さらに、これらの結果は、EEDプロセス中に発生した鉄蒸気およびマイクロドロップレットの固化が速すぎたこと、および酸素の生成が十分でなかったため、還元条件が発生したことを示すものである。また、水中放電で合成した他の酸化鉄粒子でも、同様の相組成と粒子径が得られる。
【実施例5】
【0071】
酸化鉄EED微粒子の磁気特性
酸化鉄EED粒子の磁気特性を解析した(図10図11)。
【0072】
図10に、酸化鉄EED粒子の2つのヒステリシス曲線を示す。曲線は、マイクロ波加熱前(暗線)と加熱後(細い破線)の補正ヒステリシス曲線である。EED粒子は磁気特性(飽和磁化Ms=301.0kA/m、飽和分極JS=378.2mT)を示すことがわかる。いずれのヒステリシス曲線も、Feを主相とするEED粒子の軟磁性挙動を示す。さらに、マイクロ波アニュレーション時の空気雰囲気下での加熱の影響も観察された。FeとFeOを含む酸化鉄粒子は、マイクロ波加熱によりこれらの相が酸化され、飽和磁化(M)が減少し、保磁力()が増加することが予想された。
【0073】
図11には、酸化鉄EED粒子、Fe、Feの室温での磁性値を示す。酸化鉄EED粒子の飽和磁化(M)は、Feの既知の磁化値よりも大きいが、ナノスケールのFe粒子の磁化値よりも小さいことがわかる。ここで、強磁性/フェリ磁性材料の磁気特性は、材料のサイズに依存すると考えられ、酸化鉄EED粒子は、図9に印されるように、ある量の金属鉄粒子を含むと考えられる。
【0074】
金属ナノ粒子、例えばFeの磁化(M)は、その金属酸化物に比べて大きい。しかし、バリア膜のない金属粒子は空気中で安定しないため、容易に酸化され、磁化が変化・消失してしまう。これが、酸化鉄EED粒子のマイクロ波加熱後の(M)低下と()増加の理由である。
【0075】
酸化鉄EED粒子中の質量に関するFe2+の含有量を電量滴定により測定したところ、53.83±1.23wt.%であった。この値は、マグネタイト中の理論的なFe2+分である24.12wt.%より大きい。また、この結果は、粒子内に他の鉄相が存在することを意味する。分析の過程で、EED粒子が酸溶液に溶解することにより、Fe2+部分が増加した。酸媒体中、Nフロー下では、FeはFe2+に酸化され、HはHに還元される。FeOの割合をゼロと仮定すると、酸化鉄EED粒子の約30wt.%がFeであると決定できる。
【0076】
マイクロ波加熱後の酸化鉄EED粒子のFe2+量は43.51±1.11wt.%に過ぎなかった。この部分は、マイクロ波加熱前のEED粒子の値よりも少ない。これは、マイクロ波加熱中にFeが酸化され、10wt%程度のFe2+が生成されたことを示す。これは、X線の結果やヒステリシス曲線の変化と一致する。
【0077】
磁気挙動の測定、Fe2+含有量の測定、相分析、TEM解析の結果、酸化鉄EED粒子がマイクロ波を吸収することが証明された。
【実施例6】
【0078】
酸化鉄EED微粒子の加熱挙動
酸化鉄EED粒子の加熱挙動を解析した(図12A及び図12B)。図12A及び図12Bに示す図は、合成された酸化鉄EED粒子(EED粉末)の加熱挙動を、Ti置換バリウムヘキサフェライト粉末及び市販の酸化鉄粉末Magsilica(登録商標)(Evonik Industries AG Essen/Germany)と比較して示すものである。2.45 GHzのマイクロ波領域で加熱曲線(Δθ(t))とそれに対応する加熱速度(Δθ/Δt(t))により、熱挙動を測定した。酸化鉄EED粒子(EED粉末)の加熱挙動の測定は、3回繰り返した(1st回繰り返し測定「EED粉末、1回繰り返し測定」、2nd回繰り返し測定「EED粉末、2回反復測定」、および3rd回反復測定「EED粉末、3回反復測定」)。
【0079】
酸化鉄EED粒子の加熱曲線(Δθ(t))は、最初のマイクロ波処理で変化したが、その後はほぼ一定である。この理由は、金属相であるFeが酸化によりわずかに変化したためであり、このことは、磁化値の測定(図10および11)およびセリウム滴定により確認された。酸化鉄EED粒子は、作製が簡単で安価であることから、Ti置換バリウムヘキサフェライト粉末および酸化鉄粉末マグシリカ(登録商標)と比較された。酸化鉄EED粒子の時間依存性発熱量(Δθ(t))および発熱速度(Δθ/Δt(t))はTi置換バリウムヘキサフェライト粉末の値とほぼ同じだったが,市販のマグシリカ(登録商標)粉末の発熱量および発熱速度より大きいことがわかった.酸化鉄EED粒子の加熱開始時の加熱速度(Δθ/Δt)の計算値は、約K/s40である。これは、Ti置換バリウムヘキサフェライト粉末の加熱速度の2/3である。
【実施例7】
【0080】
結晶性アルミナEED微粒子の作製
電気泳動分散法(EED)を用いて、結晶性アルミナ粒子を作製した(図13)。具体的には、アルミニウムバルク材料をEEDにより液体中に分散させ、液体をプラズマ反応器内に常時送液し、プラズマ反応器を2つの電極とプラズマで構成した。得られたEED粒子は、直径が約1μmであった。
【実施例8】
【0081】
アモルファスアルミナEED微粒子の作製
アモルファスアルミナ(Al)粒子は、電解液分散法(EED)を用いて作製した(図14)。具体的には、アルミニウムバルク材料をEEDにより液体中に分散させ、液体をプラズマ反応器内に常時送液し、プラズマ反応器を2つの電極とプラズマで構成した。得られたEED粒子は、比表面積(S)が137m/gであり、気孔率(Rpor)が24A(チルダ)であった。
【実施例9】
【0082】
酸化鉄EED粒子を用いた液体試料の処理
液体試料を酸化鉄EED粒子で処理した(図15)。酸化鉄EED粒子を凝集剤として用いてガルバニックドレイン水性試料から金属・重金属のイオンを抽出した。具体的には、不純物1gあたり6~7gを消費する酸化鉄EED粒子の乾燥粉末を液体試料に添加し、8~10分間攪拌した。凝集が終了した後、得られたスラリーをメッシュサイズ10μmのセルフクリーニングフィルター(例えばAMIAD)に通した。処理後のガルバニックドレイン水性サンプルの品質は、水質汚染防止法の要件に対応するものであった。
【実施例10】
【0083】
酸化アルミニウムEED粒子を用いた液体試料の処理
液体試料を酸化アルミニウムEED粒子で処理した(図16)。酸化アルミニウムEED粒子を凝集剤として用いて、廃水試料から金属・重金属のイオンを抽出した。
【実施例11】
【0084】
コバルト、ニッケル、硬質合金のEED粒子の作製
EED法により、コバルト、ニッケル、硬質合金粒子を作製した(図17A~C)。図17A~Cに示したヒストグラムは、コバルト、ニッケル、および硬質合金EED粒子の質量分布を示す。
【実施例12】
【0085】
EEDによる炭化タングステン合金のリサイクル
炭化タングステン合金をEEDでリサイクルした(図18A~C)。この合金は軍需品から得られたもので、EEDを用いて粒子に変化させた。図18Bは、得られたタングステン粒子からなるEED粉末を示し、図18Cは、得られたEED粉末のTEM画像を示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図18A
図18B
図18C
図19
【国際調査報告】