(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-03
(54)【発明の名称】新規な受動Qスイッチレーザ
(51)【国際特許分類】
H01S 3/113 20060101AFI20220926BHJP
H01S 3/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H01S3/113
H01S3/00 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521046
(86)(22)【出願日】2021-09-06
(85)【翻訳文提出日】2022-04-06
(86)【国際出願番号】 IB2021058089
(87)【国際公開番号】W WO2022053924
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519267990
【氏名又は名称】トライアイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】シャリボ,ヨニ
(72)【発明者】
【氏名】クハツェヴィチ,スタニスラブ
(72)【発明者】
【氏名】バカル,アヴラハム
(72)【発明者】
【氏名】カパチ,オメル
(72)【発明者】
【氏名】レヴィ,ウリエル
(72)【発明者】
【氏名】ダナン,アリエル
【テーマコード(参考)】
5F172
【Fターム(参考)】
5F172AE03
5F172AE09
5F172AF02
5F172AL08
5F172DD03
5F172EE02
5F172EE13
5F172NN13
5F172NQ53
5F172NS04
5F172NS18
5F172ZZ04
(57)【要約】
受動Qスイッチレーザ、および、当該受動Qスイッチレーザを備えた短波赤外(SWIR)電気光学システム。受動Qスイッチレーザは、誘導放出断面積σSEを有するゲイン媒体(GM)と、GMのσSEの3倍未満の吸収断面積(σa)を有する可飽和アブソーバ(SA)と、GMとSAとが内部に配置されており、かつ、高反射率ミラーおよび出力カプラを有する光共振器と、を備えていてよい。高反射率ミラーおよび出力カプラのうちの少なくとも一方は、湾曲ミラーを含んでいる。湾曲ミラーは、SA内におけるレーザモードの有効断面積(ASA)が、ポンプのレイリー長の範囲内におけるレーザモードの断面積(AGM)よりも小さくなるように、光共振器内へと光を導く。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受動Qスイッチレーザであって、
誘導放出断面積σ
SEを有するゲイン媒体(GM)と、
上記GMのσ
SEの3倍未満の吸収断面積(σ
a)を有する可飽和アブソーバ(SA)と、
上記GMと上記SAとが内部に配置されており、かつ、高反射率ミラーおよび出力カプラを有する光共振器と、を備えており、
上記高反射率ミラーおよび上記出力カプラのうちの少なくとも一方は、湾曲ミラーを含んでおり、
上記湾曲ミラーは、上記SA内におけるレーザモードの有効断面積(A
SA)が、ポンプのレイリー長の範囲内におけるレーザモードの断面積(A
GM)よりも小さくなるように、光を上記光共振器内へと導く、受動Qスイッチレーザ。
【請求項2】
上記GMは、ネオジムドープイットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)から成り、
上記SAは、コバルトドープYAG(Co
2+:YAG)から成る、請求項1に記載の受動Qスイッチレーザ。
【請求項3】
上記GMは、ネオジムドープイットリウムオルトバナジン酸塩(YVO
4)から成り、
上記SAは、3価バナジウムドープイットリウムアルミニウムガーネット(V
3+:YAG)から成る、請求項1に記載の受動Qスイッチレーザ。
【請求項4】
上記GMは、ネオジムドープイットリウムオルトバナジン酸塩(YVO
4)から成り、
上記SAは、コバルトドープYAG(Co
2+:YAG)から成る、請求項1に記載の受動Qスイッチレーザ。
【請求項5】
上記高反射率ミラーおよび上記出力カプラは、上記GMと上記SAとにリジッド接続されており、
上記受動Qスイッチレーザは、モノリシックマイクロチップ受動Qスイッチレーザである、請求項1に記載の受動Qスイッチレーザ。
【請求項6】
上記高反射率ミラーは、凹ミラーである、請求項1に記載の受動Qスイッチレーザ。
【請求項7】
上記高反射率ミラーと上記出力カプラとの両方が、凹ミラーである、請求項1に記載の受動Qスイッチレーザ。
【請求項8】
凹状の上記高反射率ミラーおよび凹状の上記出力カプラの曲率は、最高エネルギー密度が上記光共振器の中央60%の範囲内に含まれるように設定されている、請求項7に記載の受動Qスイッチレーザ。
【請求項9】
上記SAの直径は、上記GMの直径よりも小さく、
上記SAは、上記光共振器から熱を放出するための別の物質によって取り囲まれている、請求項1に記載の受動Qスイッチレーザ。
【請求項10】
少なくとも1つのエンドポンピング光源と、
上記エンドポンピング光源の光を上記光共振器内において集束させるための光学系と、をさらに備えている、請求項1に記載の受動Qスイッチレーザ。
【請求項11】
上記GMおよび上記SAは、多結晶物質である、請求項1に記載の受動Qスイッチレーザ。
【請求項12】
上記GMの吸収領域内における熱の蓄積を防止するために、上記GMおよび上記SAに加えて、アンドープYAGをさらに含んでいる、請求項1に記載の受動Qスイッチレーザ。
【請求項13】
上記GMおよび上記SAは、ネオジムと少なくとも1つの他の材料とによってドープされた結晶性物質の単一ピース上に実装されている、請求項1に記載の受動Qスイッチレーザ。
【請求項14】
上記受動Qスイッチレーザは、上記出力カプラを通じて、1,300nm~1,500nmの波長範囲内の光を出射する、請求項1に記載の受動Qスイッチレーザ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の受動Qスイッチレーザを備えた短波赤外(SWIR)電気光学システムであって、
少なくとも1つの被照射物体からのレーザ照射の反射を検出するために、上記受動Qスイッチレーザの波長に感応するSWIRフォトディテクタアレイをさらに備えている、SWIR電気光学システム。
【請求項16】
請求項1から14のいずれか1項に記載の受動Qスイッチレーザを備えた短波赤外(SWIR)電気光学システムであって、
上記受動Qスイッチレーザの波長に感応する飛行時間(ToF)SWIRセンサと、
上記ToFSWIRセンサと上記受動Qスイッチレーザとの動作を同期させるコントローラと、
上記SWIR電気光学システムの視野内における少なくとも1つの物体との距離を決定するために、上記ToFSWIRセンサによる、上記受動Qスイッチレーザのレーザ照射の反射についての検出結果を処理するプロセッサと、をさらに備えている、SWIR電気光学システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願]
本出願は、(i)2020年9月8日に出願された米国仮特許出願No.63/075,426、(ii)2020年11月11日に出願された米国仮特許出願No.63/112,416、および、(iii)2021年6月22日に出願された米国仮特許出願No.63/213,419の優先権を主張する。これらの出願は全て、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[分野]
本開示は、受動Qスイッチレーザおよびその動作方法および製造方法に関する。特に、本開示は、セラミック結晶性物質(セラミック結晶性材料)を含む受動Qスイッチレーザに関する。
【0003】
[背景]
電磁スペクトルにおける短波赤外(short-wave infrared,SWIR)の部分において動作するレーザは、特に、低い生産コストが要求される場合には、大量生産が困難となりうる。それゆえ、当技術分野では、低コストでの大量生産が可能な受動QスイッチSWIRレーザが必要とされている。
【0004】
従来のアプローチ、伝統的なアプローチ、および提案されていたアプローチのさらなる制限および欠点は、図面を参照して本出願の残余部分に記載されている本出願における主題とこれらのアプローチとの比較を通じて、当業者にとって明らかになるであろう。
【0005】
本開示を理解し、当該開示がどのように実施されうるかを認識するために、非限定的な実施例として、添付の図面を参照して各実施形態を説明する。説明の簡略化および明瞭化のために、各図に示されている各要素は必ずしもスケール通りに描かれていないことが理解されるであろう。例えば、一部の要素の寸法は、明瞭化のために、他の要素に対して誇張されている場合がある。さらに、適切であると考えられる場合、参照番号は、対応または類似する要素を示すために、各図面において繰り返されてよい。
【0006】
[概要]
様々な実施形態において、受動Qスイッチレーザが提供されている。当該受動Qスイッチレーザは、誘導放出断面積σSEを有するゲイン媒体(利得媒体)(gain medium,GM)と、上記GMのσSEの3倍未満の吸収断面積(σa)を有する可飽和アブソーバ(saturable absorber,SA)と、上記GMと上記SAとが内部に配置されており、かつ、高反射率ミラーおよび出力カプラを有する光共振器と、を備えており、上記高反射率ミラーおよび上記出力カプラのうちの少なくとも一方は、湾曲ミラーを含んでおり、上記湾曲ミラーは、上記SA内におけるレーザモードの有効断面積(ASA)が、ポンプのレイリー長の範囲内におけるレーザモードの断面積(AGM)よりも小さくなるように、光を上記光共振器内へと導く。
【0007】
一部の実施形態では、上記GMは、ネオジムドープイットリウムアルミニウムガーネット(ネオジムによってドープされたイットリウムアルミニウムガーネット)(Nd:YAG)から成り、上記SAは、コバルトドープYAG(コバルトによってドープされたYAG)(Co2+:YAG)から成る。
【0008】
一部の実施形態では、上記GMは、ネオジムドープイットリウムオルトバナジン酸塩(ネオジムによってドープされたイットリウムオルトバナジン酸塩)(YVO4)から成り、上記SAは、3価バナジウムドープイットリウムアルミニウムガーネット(3価バナジウムによってドープされたイットリウムアルミニウムガーネット)から成る。
【0009】
一部の実施形態では、上記GMは、ネオジムドープイットリウムオルトバナジン酸塩(YVO4)から成り、上記SAは、コバルトドープYAG(Co2+:YAG)から成る。
【0010】
一部の実施形態では、上記高反射率ミラーおよび上記出力カプラは、上記GMと上記SAとにリジッド接続(堅固に接続)されており、上記受動Qスイッチレーザは、モノリシックマイクロチップ受動Qスイッチレーザである。
【0011】
一部の実施形態では、上記高反射率ミラーは、凹ミラー(凹面ミラー,凹状ミラー)である。
【0012】
一部の実施形態では、上記高反射率ミラーおよび上記出力カプラの両方が、凹ミラーである。
【0013】
一部の実施形態では、凹状の上記高反射率ミラーおよび凹状の上記出力カプラの曲率は、最高エネルギー密度が上記光共振器の中央60%の範囲内に含まれるように設定されている。
【0014】
一部の実施形態では、上記SAの直径は、上記GMの直径よりも小さく、上記SAは、上記光共振器から熱を放出するための別の物質によって取り囲まれている。
【0015】
一部の実施形態では、上記受動Qスイッチレーザは、少なくとも1つのエンドポンピング光源と、上記エンドポンピング光源の光を上記光共振器内において集束させるための光学系と、をさらに備えている。
【0016】
一部の実施形態では、上記GMおよび上記SAは、多結晶物質である。
【0017】
一部の実施形態では、上記受動Qスイッチレーザは、上記GMの吸収領域内における熱の蓄積を防止するために、上記GMおよび上記SAに加えて、アンドープYAG(ドープされていないYAG)をさらに含んでいる。
【0018】
一部の実施形態では、上記GMおよび上記SAは、ネオジムと少なくとも1つの他の材料とによってドープされた結晶性物質の単一ピース(単一部品)上に実装されている。
【0019】
一部の実施形態では、上記受動Qスイッチレーザは、上記出力カプラを通じて、1,300nm~1,500nmの波長範囲内の光を出射する。
【0020】
一部の実施形態では、SWIR電気光学システムが開示されている。当該SWIR電気光学システムは、上述の各パラグラフの内の任意の1つに係る受動Qスイッチレーザを含んでおり、少なくとも1つの被照射物体からのレーザ照射の反射を検出するために、上記レーザの波長に感応するSWIRフォトディテクタアレイ(SWIR光検出器アレイ)をさらに含んでいる。
【0021】
一部の実施形態では、SWIR電気光学システムが開示されている。当該SWIR電気光学システムは、上述の各パラグラフの内の任意の1つに係る受動Qスイッチレーザを含んでおり、上記受動Qスイッチレーザの波長に感応する飛行時間(ToF)SWIRセンサと、上記ToFSWIRセンサと上記受動Qスイッチレーザとの動作を同期させるコントローラと、上記SWIR電気光学システムの視野内における少なくとも1つの物体との距離を決定するために、上記ToFSWIRセンサによる、上記受動Qスイッチレーザのレーザ照射の反射についての検出結果を処理するプロセッサと、をさらに含んでいる。
【0022】
[図面の簡単な説明]
本開示を理解し当該開示がどのように実施されうるかを認識するために、添付の図面を参照して、本開示の主題の例に係る実施形態を、非限定的な例として説明する。
【0023】
図1は、短波赤外(SWIR)光学システムの一例を示す概略的な機能ブロック図である;
図2A、
図2B、および
図2Cは、受動Qスイッチレーザの例を示す概略的な機能ブロック図である;
図3は、SWIR光学システムの例示的な実施形態を示す概略的な機能図である;
図4は、SWIR光学システムの別の例示的な実施形態を示す概略的な機能図である;
図5Aは、SWIR光学システムの例を示す概略的な機能ブロック図である;
図5Bは、SWIR光学システムの例を示す概略的な機能ブロック図である;
図6Aは、受動Qスイッチレーザのための部品を製造する方法の例を示すフローチャートである;
図6Bおよび
図6Cは、上述の方法の実行に関する複数の概念的なタイムラインを含む;
図7A~
図7Cは、受動Qスイッチレーザの例を示す概略的な機能ブロック図である;
図8A~
図8Cは、少なくとも1つの凹ミラーを含む受動Qスイッチレーザの例を示す概略的な機能ブロック図である;
図9Aは、エンドポンプ式受動Qスイッチレーザを備えた電気光学システムの例を示す概略的な機能ブロック図である;
図9Bは、サイドポンプ式受動Qスイッチレーザを備えた電気光学システムの例を示す概略的な機能ブロック図である;
図10Aおよび
図10Bは、電気光学システムの例を示す概略的な機能ブロック図である;
図11は、GM増幅器の分解斜視投影図を示す;
図12は、別のGM増幅器の分解斜視投影図を示す;
図13は、増幅レーザ照射源を示す;
図14は、別の増幅レーザ照射源を示す。
【0024】
説明の簡略化および明瞭化のために、図に示されている各要素は必ずしもスケール通りに描かれていないことが理解されるであろう。例えば、一部の要素の寸法は、明瞭化のために、他の要素に対して誇張されている場合がある。さらに、適切であると考えられる場合、参照番号は、対応または類似する要素を示すために、各図面において繰り返されてよい。
【0025】
[詳細な説明]
以下の詳細な説明では、本開示についての十分な理解を提供するために、多数の特定の詳細部が開示されている。但し、本開示はこれらの特定の詳細が無くとも実施されうることが、当業者によって理解されるであろう。他の例では、本開示を不明瞭にせぬよう、周知の方法、手順、およびコンポーネントについては詳細に説明されていない。
【0026】
開示されている図面および説明において、同一の参照番号は、異なる実施形態または構成に共通するコンポーネントを示す。
【0027】
別段の定めが無き限り、以下の議論から明らかである通り、明細書の全体に亘って、「処理する(processing)」、「計算する(calculating)」、「演算する(computing)」、「決定する(determining)」、「生成する(generating)」、「セットする(setting)」、「設定する(configuring)」、「選択する(selecting)」、「定義する(defining)」などの用語(ターム)を利用する議論は、データを操作する、および/または、当該データを他のデータへと変換する、コンピュータの動作および/またはプロセスを含むことが理解される。そして、当該データは、例えば電子量などの物理量として表され、および/または、当該データは、物理オブジェクトを表すことが理解される。
【0028】
「コンピュータ(computer)」、「プロセッサ(processor)」、および「コントローラ(controller)」という用語は、非限定的な例として、パーソナルコンピュータ、サーバ、コンピューティングシステム、通信デバイス、プロセッサ(例:デジタル信号プロセッサ(digital signal processor,DSP))、マイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array,FPGA)、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit,ASIC)など)、任意の他の電子コンピューティングデバイス、および/または、それらの任意の組合せを含む、データ処理能力を有する任意の種類の電子デバイスをカバーしていると広範に解釈されるべきである。
【0029】
本明細書の教示に係る動作は、所望の目的のために特別に設定されたコンピュータによって実行されてもよいし、あるいは、コンピュータ可読記憶媒体に格納されたコンピュータプログラムによって所望の目的のために特別に設定された汎用コンピュータによって実行されてもよい。
【0030】
本明細書において使用されている通り、「例えば(for example)」、「など(such)」、「例として(for instance)」というフレーズおよびそれらの変形語は、本明細書において開示されている主題についての非限定的な実施形態を説明している。本明細書において、「ある場合(one case)」、「一部の場合(some cases)」、「他の場合(other case)」、またはそれらの変形語への言及は、(1つ以上の)実施形態に関連して説明されている特定の構成、構造、または特性が、本明細書において開示されている主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味している。このため、「ある場合」、「一部の場合」、「他の場合」というフレーズまたはそれらの変形語の出現は、必ずしも同じ(1つ以上の)実施形態を指しているわけではない。
【0031】
明瞭化のために、個別の実施形態の文脈において説明されている、本明細書において開示されている主題についての特定の構成は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔化のために、単一の実施形態の文脈において説明されている、本明細書において開示されている主題の様々な構成は、個別に提供されてもよいし、あるいは、任意の適切なサブコンビネーション(副次的な組み合わせ)として提供されてもよい。
【0032】
本開示の主題についての実施形態では、図示されている1つ以上のステージ(段階)は、異なる順序によって実行されてよく、および/または、当該ステージの1つ以上のグループが同時に実行されてもよい。その逆も然りである。各図は、本開示の主題についての実施形態に係るシステムアーキテクチャの一般的な模式図を示す。本明細書において定義および説明されている通り、図中の各モジュールは、機能を実行するソフトウェア、ハードウェア、および/またはファームウェアの任意の組み合わせによって構成されてよい。図中の各モジュールは、1つの位置に集中的に配置されていてもよいし、あるいは、2つ以上の位置に分散して配置されていてもよい。
【0033】
本明細書における方法へのいかなる言及も、(i)当該方法を実行できるシステムに準用されるべきであり、かつ、(ii)コンピュータによって一旦実行されると、当該方法を実行する結果を生じさせる命令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体にも準用されるべきである。
【0034】
本明細書におけるシステムへのいかなる言及も、(i)当該システムによって実行されうる方法に準用されるべきであり、かつ、(ii)当該システムによって実行されうる命令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体にも準用されるべきである。
【0035】
本明細書における非一時的なコンピュータ可読媒体へのいかなる言及も、(i)当該非一時的なコンピュータ可読媒体に格納された命令を実行できるシステムに準用されるべきであり、かつ、(ii)当該非一時的なコンピュータ可読媒体に格納された命令を読み取るコンピュータによって実行されうる方法にも準用されるべきである。
【0036】
図1は、開示されている主題の例に係る、短波赤外(SWIR)光学システム100の例を示す概略的な機能ブロック図である。SWIRスペクトルの部分であると考慮されている波長の範囲について、科学的なコンセンサスは無いことに留意されたい。但し、本開示の目的に応じて、SWIRスペクトルは、可視スペクトルの波長よりも長い波長の電磁放射を含み、少なくとも1,300nmから1,500nmまでのスペクトル範囲を含む。
図1に示されているSWIR光学システム100は、受動Qスイッチレーザ200を少なくとも含む。但し、当該SWIR光学システムは、(外部物体から反射されたレーザの光を検出するための)対応するセンサ、(検出結果を処理するための)プロセッサ、(レーザの活性を制御するための、例えばレーザの動作と同期させるための)コントローラなどの追加のコンポーネントを含んでいてもよい。そのような一部の例については、(例えば、
図5A、
図5B、および
図10に関して)以下においてさらに詳しく論じられている。
【0037】
上述のスペクトル範囲(1.3~1.5μm)における大量のレーザを必要としていた唯一の産業は、光学的データ記憶のためのエレクトロニクス産業である。これにより、ダイオードレーザのコストは、デバイス当たりかつワット当たりにおいて、数ドルにまで低下した。しかしながら、これらのレーザは、自動車産業などの他の産業には適していない。他の産業は、厳しい環境条件において利用されるであろう、かなり大きいピークパワーとビーム輝度とを有するレーザを必要としている。
【0038】
受動Qスイッチレーザ200は、結晶性GM210と、結晶性SA220と、上述の結晶性物質が閉じ込められる光キャビティ230と、を少なくとも含んでいる。これにより、レーザ光ビームを発生させるように、GM内を伝搬する光を強めることができる。光キャビティ230は、「光共振器」および「共振キャビティ」という用語によっても知られている。当該光キャビティは、高反射率ミラー240(「ハイリフレクタ」とも称される)と出力カプラ250とを含んでいる。以下では、異なるタイプの結晶性物質についての複数の独特かつ新規な組み合わせが説明されている。また、SWIRスペクトル範囲に応じてリーズナブルに価格設定されたレーザの大量生産を可能とする、レーザの様々な製造技術を使用することも説明されている。本明細書では、開示の簡潔化のために、受動Qスイッチレーザに関して当技術分野において一般に既知である一般的な詳細部は提供されていない。但し、当該一般的な詳細部は、多種多様な供給源によって容易に入手可能である。当該技術分野において既知である通り、レーザのSAは、当該レーザのQスイッチとして機能する。「結晶性物質(crystalline material)」という用語は、単結晶形態または多結晶形態のいずれかにある任意の物質(材料)を広範に含む。
【0039】
接続された結晶性GM210および結晶性SA220の寸法は、特定の受動Qスイッチレーザ200が設計される目的に依存しうる。非限定的な例では、上述の組合せの長さは、5~15ミリメートルである。非限定的な例では、上述の組合せの長さは、2~40ミリメートルである。非限定的な例では、(例えば、円筒の場合)上述の組合せの直径は、2~5ミリメートルである。非限定的な例では、(例えば、円筒の場合)上述の組合せの直径は、0.5~10ミリメートルである。
【0040】
受動Qスイッチレーザ200は、SA結晶性物質(SA crystalline material,SAC)にリジッド接続された、GM結晶性物質(GM crystalline material,GMC)を含んでいる。リジッド結合(接続)は、接着剤、拡散結合、複合結晶結合、一方を他方の上に成長させることなど、当技術分野において既知である各方法のいずれか1つによって実施されてよい。但し、以下に説明する通り、セラミック形態の結晶性物質をリジッド接続することは、単純かつ安価な手段を用いて実現されうる。GM結晶性物質およびSA結晶性物質は、互いに直接的にリジッド接続されてよい。但し、任意に、GM結晶性物質とSA結晶性物質とは、中間物体(例:別の結晶)を介して互いにリジッド接続されてもよいことに留意されたい。一部の実施形態では、(i)結晶性物質の単一ピースの異なる部分を、異なるドーパント(例:SA結晶性材料およびGM結晶性材料に関して以下に述べるドーパント)によってドープすることによって、または、(ii)結晶性物質の単一ピースを共ドープし、かつ、当該結晶性物質の同じ体積を2つのドーパントによってドープすることによって(例:セラミックYAGは、N3+およびV3+によって共ドープされる)、GMとSAとの両方が結晶性物質の単一ピース上に実装されてよい。任意に、例えば、液相エピタキシー(Liquid Phase Epitaxy,LPE)を用いて、単結晶可飽和吸収基板上にGMを成長させてもよい。個別のGM結晶性物質およびSA結晶性物質は、以下の開示において広範に議論されることに留意されたい。2つのドーパントによってドープされたセラミック結晶性物質の単一ピースは、以下の実施形態のいずれにおいても準用して使用されてよい。
【0041】
図2A、
図2B、および
図2Cは、開示されている主題の実施例に係る、受動Qスイッチレーザ200の例を図示する概略的な機能ブロック図である。
図2Aでは、共通の結晶性物質262(GMおよびSAの両方として作用する)の2つの部分に、2つのドーパントが設けられている。一方、
図2Bでは、共通の結晶性物質264の共通の体積(図示の例では、共通の結晶の全体)に、2つのドーパントが交互に設けられている。任意に、GMおよびSAは、ネオジムと少なくとも1つの他の材料とによってドープされた結晶性物質の単一ピース上に実装されてもよい。任意に(例えば、
図2Cに示されている通り)、光カプラ250および高反射率ミラー240の一方または両方は、複数の結晶性物質のうちの1つ(例えば、GMまたはSA、あるいは、それらの両方を組み合わせた結晶)に直接的に接着されてもよい。
【0042】
SA結晶性物質およびGM結晶性物質のうちの少なくとも一方は、セラミック結晶性物質、すなわち、セラミック形態(例:多結晶形態)にある関連する結晶性物質(例:ドープされたイットリウムアルミニウムガーネット、YAG、ドープされたバナジウム)である。セラミック形態にある一方の結晶性物質を有すること、特に両方の結晶性物質を有することは、より低いコストでのより多数の生産を可能にする。例えば、低速かつ制限されたプロセスによって個別の単結晶物質を成長させる代わりに、粉末の焼結(すなわち、粉末を成形し、かつ、場合によっては当該粉末を加熱して、固体塊を形成する)、低温焼結、真空焼結などによって、多結晶材料を製造してもよい。上述の結晶性物質の一方(SA結晶性物質またはGM結晶性物質)を、他方の上に焼結させてもよい。これにより、研磨、拡散結合、または表面活性化結合などの、複雑かつコストの高いプロセスの必要性を排除できる。任意に、GM結晶性物質およびSA結晶性物質のうちの少なくとも一方は、多結晶である。任意に、GM結晶性物質およびSA結晶性物質の両方は、多結晶である。
【0043】
GM結晶性物質およびSA結晶性物質を製造することができる結晶性物質の組合せについて参照する。当該組合せは、以下を含みうる。
【0044】
a.GM結晶性物質は、セラミックネオジムドープイットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)である。そして、SA結晶性物質は、(a)セラミック3価バナジウムドープイットリウムアルミニウムガーネット(V
3+:YAG)、または、(b)セラミックコバルトドープ結晶性物質のいずれかである。任意に、セラミックコバルトドープ結晶性物質は、2価のセラミックコバルトドープ結晶性物質であってもよい。これらの代替例では、Nd:YAGと、上述のグループから選択されるSA結晶性物質との両方が、セラミック形態にある。コバルトドープ結晶性物質は、コバルトによってドープされた結晶性物質である。例は、コバルトドープスピネル(Co:スピネル、すなわち、Co
2+:MgAl
2O
4)、コバルトドープセレン化亜鉛(Co
2+:ZnSe)、コバルトドープYAG(Co
2+:YAG)を含む。必須ではないが、このオプションにおける高反射率ミラーおよびSAは、GMとSAとに任意にリジッド接続されてよい。これにより、受動Qスイッチレーザは、(例えば、
図3および
図5に例示されている通り)モノリシックマイクロチップ受動Qスイッチレーザとなる。
【0045】
b.GM結晶性物質は、セラミックネオジムドープイットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)である。そして、SA結晶性物質は、(a)3価バナジウムドープイットリウムアルミニウムガーネット(V3+:YAG)と、(b)コバルトドープ結晶性物質と、からなるドープセラミック材料のグループから選択される非セラミックSA結晶性物質である。任意に、コバルトドープ結晶性物質は、2価コバルトドープ結晶性物質であってもよい。この場合、高反射率ミラー240および出力カプラ250は、GM210とSA220とにリジッド接続される。これにより、受動Qスイッチレーザ200は、モノリシックマイクロチップ受動Qスイッチレーザとなる。
【0046】
c.GM結晶性物質は、セラミックネオジムドープ希土類元素結晶性物質である。そして、SA結晶性物質は、(a)3価バナジウムドープイットリウムアルミニウムガーネット(V3+:YAG)と、(b)コバルトドープ結晶性物質と、からなるドープ結晶性物質のグループから選択されるセラミック結晶性物質である。任意に、コバルトドープ結晶性物質は、2価コバルトドープ結晶性物質であってもよい。必須ではないが、任意に、このオプションにおける高反射率ミラー240および出力カプラ250は、GM210とSA220とにリジッド接続されてよい。この場合、受動Qスイッチレーザ200は、モノリシックマイクロチップ受動Qスイッチレーザとなる。
【0047】
複数の実施形態のいずれか1つにおいて、ドープされる結晶性物質は、2つ以上のドーパントによってドープされてもよいことに留意されたい。例えば、SA結晶性物質は、(i)上述の通り開示された主ドーパント(メインドーパント)と、(ii)(例:かなり少量の)少なくとも1つの他のドーピング材料と、によってドープされてもよい。ネオジムドープ希土類元素結晶性物質は、(i)その単位格子(単位胞,ユニットセル)が希土類元素(15のランタニド元素のみながらず、スカンジウムおよびイットリウムを含む、明確に規定された15の化学元素のグループのうちの1つ)を含むとともに、(ii)当該単位格子の一部における希土類元素を置換するネオジム(例:3重イオン化ネオジム)によってドープされた、結晶性物質である。本開示において使用されうるネオジムドープ希土類元素結晶性物質についての非限定的な複数の例は、以下の通りである。
【0048】
a.希土類元素がネオジム(Nd)である、以下に挙示する各物質;
(i)Nd:YAG(上述の通り)、(ii)ネオジムドープタングステン酸イットリウムカリウム(Nd:KYW)、(iii)ネオジムドープイットリウムリチウムフルオリド(Nd:YLF)、(iv)ネオジムドープイットリウムオルトバナジン酸塩(YVO4)。
【0049】
b.希土類元素がガドリニウム(Gd)である、以下に挙示する各物質;
(i)ネオジムドープガドリニウムオルトバナジン酸塩(Nd:GdVO4)、(ii)ネオジムドープガドリニウムガリウムガーネット(Nd:KGW)、(iii)ネオジムドープカリウムガドリニウムタングステン酸塩(Nd:KGW)。
【0050】
c.希土類元素がスカンジウムである、ネオジムドープホウ酸塩ランタンスカンジウム(Nd:LSB)。
【0051】
d.他のネオジムドープ希土類元素結晶性物質が使用されてもよい。この場合、希土類元素は、イットリウム、ガドリニウム、スカンジウム、または他の任意の希土類元素であってよい。
【0052】
以下の議論は、GM結晶性物質およびSA結晶性物質の任意の組み合わせに適用される。
【0053】
任意に、GM結晶性物質は、SA結晶性物質に直接的にリジッド接続されている。あるいは、GM結晶性物質とSA結晶性物質とは、間接的に接続されていてもよい。例えば、SA結晶性物質とGM結晶性物質とのそれぞれは、(i)1つ以上の中間結晶性物質のグループを介して接続されている、および/または、(ii)関連する波長に対して透明な(透過性を有している)1つ以上の他の固体物質を介して接続されている。任意に、SA結晶性物質およびGM結晶性物質の一方または両方は、関連する波長に対して透明である。
【0054】
任意に、SA結晶性物質は、コバルトドープスピネル(Co Co2+:MgAl2O4)であってよい。任意に、SA結晶性物質は、コバルトドープYAG(Co:YAG)であってよい。任意に、このことは、同一のYAGに対してコバルトおよびネオジム(Nd)を共ドープすることを可能とする。任意に、SA結晶性物質は、コバルトドープセレン化亜鉛(Co2+:ZnSe)であってもよい。任意に、GM結晶性物質は、セラミックコバルトドープ結晶性物質であってもよい。
【0055】
任意に、SAの初期透過率(T0)は、75%~90%である。任意に、SAの当該初期透過率は、78%~82%である。
【0056】
レーザによって放出される波長は、当該レーザの構成に使用される材料に依存し、特にGM結晶性物質およびSA結晶性物質の材料とドーパントとに依存する。出力波長の複数の例は、1,300nm~1,500nmの領域における波長を含む。複数のより具体的な実施例は、(i)1.32μmまたは約1.32μm(例:1.32μm±3nm)、(ii)1.34μmまたは約1.34μm(例:1.34μm±3nm)、(iii)1.44μmまたは約1.44μm(例:1.44μm±3nm)を含む。これらの光周波数範囲のうちの1つ以上に感応する対応する撮像装置(イメージャ)は、(例えば、
図5に例示されている通り)SWIR光学システム100内に含まれうる。
【0057】
図3および
図4は、本開示の主題の例に係るSWIR光学システム100を示す概略的な機能図である。これらの図に示される通り、レーザ200は、上述の各コンポーネントに加えて、下記の追加のコンポーネント(但し、これらに限定されない)を含んでいてもよい:
a.レーザのためのポンプとして機能する、フラッシュランプ274またはレーザーダイオード272などの光源。上述の例を参照すると、光源は、ポンプとして機能しうる。
【0058】
b.上記光源(例:272)からの光を、レーザ200の光軸上に集束させるための集束光学系282(例:レンズ)。
【0059】
c.光キャビティ230を出た後のレーザビーム290を操作するためのディヒューザ(拡散器)または他の光学系284。
【0060】
任意に、SWIR光学システム100は、より広い視野(Field of view,FOV)へとレーザを拡げる(展開する)ための光学系を含んでもよい。これにより、FOV内における眼の安全性についての問題を改善できる。任意に、受動Qスイッチレーザ200は、ダイオードポンプ式固体レーザ(diode pumped solid state laser,DPSSL)である。
【0061】
任意に、受動Qスイッチレーザ200は、(i)少なくとも1つのダイオードポンプ光源272と、(ii)当該ポンプ光源272の光を光学共振器内において集束させるための光学系282と、を含んでいる。任意に、光源272は、(エンドポンプとして)光軸上に配置されている。任意に、光源272は、高反射率ミラー240またはSA210にリジッド接続されてもよい。この場合、光源272は、モノリシックマイクロチップ受動Qスイッチレーザの一部となる。任意に、レーザの光源は、1つ以上の垂直キャビティ面発光レーザ(vertical-cavity-surface-emitting laser,VCSEL)アレイを含んでいてもよい。任意に、受動Qスイッチレーザ200は、(i)少なくとも1つのVCSELアレイと、(ii)当該VCSELアレイの光を光共振器内において集束させるための光学系と、を含んでいる。光源(例:レーザポンプ)によって出射される波長は、レーザに使用される結晶性物質および/またはドーパントに依存しうる。ポンプによって出射されうる複数の例示的なポンピング波長は、(i)808nmまたは約808nm、(ii)869nmまたは約869nm、(iii)約900nmおよびそれ以上の値(nm)を含んでいる。
【0062】
図5Aは、本開示の主題の他の例に係るSWIR光学システム100を示す概略的な機能ブロック図である。上述の通り、SWIR光学システム100は、追加のコンポーネント、例えば、(i)(外部物体によって反射されたレーザの光を感知するための)対応するセンサ120、(ii)(感知結果を処理するための)プロセッサ140、(iii)(レーザの動作を制御するための、例えばレーザの動作と同期させるための)コントローラ130、のうちの1つ以上のコンポーネントを含んでいてよい。そのような複数の例について、以下でさらに詳しく論じられている。任意に、SWIR光学システム100は、レーザの波長に感応するSWIRフォトディテクタアレイ126を含んでいてもよい。このように、SWIR光学システムは、アクティブSWIRカメラ、SWIR飛行時間(time-of-flight,ToF)センサ、SWIR光検出測距(light detection and ranging,LIDAR)センサなどとして機能しうる。任意に、SWIR光学システム100は、レーザの波長に感応するToFSWIRセンサを含んでいてよい。任意に、フォトディテクタアレイは、レーザ200によって出射されるSWIR周波数に感応するCMOSベースのフォトディテクタアレイであってよい。当該フォトディテクタアレイは、例えば、イスラエルのテルアビブに所在のTriEye LTD.によって設計および製造されたCMOSベースのフォトディテクタアレイである。
【0063】
任意に、SWIR光学システム100は、SWIRフォトディテクタアレイ126(または、SWIR光学システム100の任意の他の光感応センサ)から得られた検出データを処理するためのプロセッサ140を含んでいてもよい。一例として、プロセッサ140は、検出情報を処理して、SWIR光学システム100の視野(FOV)におけるSWIR画像を提供し、当該FOV内の物体を検出してよい。任意に、SWIR光学システム100は、(i)レーザの波長に感応する飛行時間(ToF)SWIRセンサ(例:センサ120)と、(ii)SWIR光学システム100の視野内における少なくとも1つの物体910との距離を検出するために、ToFSWIRセンサと受動QスイッチSWIRレーザとの動作を同期させるように動作可能なコントローラと、を含んでいてもよい。任意に、SWIR光学システム100は、コントローラ130を含んでいてもよい。コントローラ130は、(i)Qスイッチレーザ200における動作の1つ以上の態様、または、(ii)フォトディテクタアレイ126(例:焦点平面アレイ(focal plane array,FPA))などのシステムの他のコンポーネントを、制御するように動作可能である。例えば、コントローラ130によって制御されうるレーザの複数のパラメータのうちの一部は、タイミング、持続時間、強度、合焦(焦点合わせ)などを含んでいる。必須ではないが、コントローラ130は、フォトディテクタアレイの検出結果に基づいて、レーザ200の動作を制御してよい(直接的に制御してもよいし、あるいは、プロセッサ140による処理に基づいて制御してもよい)。任意に、コントローラ130は、レーザ200の活性化パラメータに影響を及ぼすために、レーザポンプまたは他のタイプの光源を制御するように動作可能であってもよい。任意に、コントローラ130は、パルス反復率(パルス反復レート)を動的に変化させるように動作可能であってもよい。任意に、コントローラ130は、例えば、視野の特定領域における信号対ノイズ比(Signal to Noise Ratio,SNR)を改善するために、光整形光学系の動的な変更を制御するように動作可能であってもよい。任意に、コントローラ130は、パルスエネルギーおよび/または持続時間を動的に変化させるために、(例えば、ポンピングレーザの焦点合わせを変化させるなどの、他の受動的Qスイッチレーザにおいて可能な方法と同じ方法によって)照明モジュールを制御するように動作可能であってもよい。
【0064】
任意に、SWIR光学システム100は、レーザの温度、または、当該システムの1つ以上のコンポーネント(例:ポンプダイオード)の温度を、全般的に制御するための温度制御(例:受動温度制御、能動温度制御)を含んでいてもよい。当該温度制御は、例えば、熱電クーラ(thermoelectric cooler,TEC)、ファン、ヒートシンク、ポンプダイオード下の抵抗ヒータを含みうる。
【0065】
レーザの出力は、当該レーザの設計に応じた利用態様に依存しうる。例えば、レーザ出力は、1W~5Wであってよい。例えば、レーザ出力は、5W~15Wであってもよい。例えば、レーザ出力は、15W~50Wであってもよい。例えば、レーザ出力は、50W~200Wであってもよい。例えば、レーザ出力は、200Wより高くてもよい。
【0066】
図5Bは、本開示の主題のさらに他の実施例に係る、さらに別のSWIR光学系100を示す概略的な機能ブロック図である。
図5Bに例示されている通り、システム200は、レーザ200の出力光信号を増幅するためのレーザ増幅器(レーザアンプ)310を含んでいてよい。増幅器310は、専用のダイオード320によって、または任意の他の適切な光源を使用して、ポンピングされうる。レーザアンプ310は、(図示されている通り)独立した増幅ユニット300として実装されてもよいし、(例えば、レーザ200にリジッド接続されるように)レーザ200の一部として実装されてもよいし、あるいは、任意の他のシステムの一部として実装されてもよいことに留意されたい。レーザ増幅器310は、図示されていなくとも、電気光学システム200の他の構成(例:サイドポンピングを使用する構成)によって実装されうることにも留意されたい。
【0067】
SWIR-Qスイッチレーザ200は、パルスレーザである。SWIR-Qスイッチレーザ200は、当該レーザが設計される用途に応じて、異なる周波数(繰返し率)、異なるパルスエネルギー、および異なるパルス持続時間を有しうる。例えば、レーザの繰返し率は、10Hz~50Hzであってよい。例えば、レーザの繰返し率は、50Hz~150Hzであってもよい。例えば、レーザのパルスエネルギーは、0.1mJ~1mJであってもよい。例えば、レーザのパルスエネルギーは、1mJ~2mJであってもよい。例えば、レーザのパルスエネルギーは、2mJ~5mJであってもよい。例えば、レーザのパルスエネルギーは、5mJより高くてもよい。例えば、レーザのパルス持続時間は、10ns~100nsであってよい。例えば、レーザのパルス持続時間は、0.1μs~100μsであってよい。例えば、レーザのパルス持続時間は、100μs~1msであってもよい。また、例えば、レーザのサイズは、当該レーザのコンポーネントのサイズに応じて変化しうる。例えば、レーザの寸法は、X1×X2×X3であってよい。これらの寸法(X1、X2、およびX3)のそれぞれは、10mm~100mm、20~200mmなどである。出力カップリングミラーは、平坦であってもよいし、湾曲していてもよいし、わずかに湾曲していてもよい。
【0068】
任意に、GMの吸収領域内に熱が蓄積することを防止するために、SWIR光学システム100は、GMおよびSAに加えて、アンドープYAGをさらに含んでいてもよい。任意に、アンドープYAGは、GMおよびSAを取り囲むシリンダ(円筒)(例:同心シリンダ)として形成されていてよい。
【0069】
SWIR光学システム100は、上述の各コンポーネントに加えて、追加のコンポーネントを含んでいてもよいことに留意されたい。複数の非限定的な例が、以下に提供されている。任意に、SWIR光学システム100は、GMおよびSAの少なくとも一方を露光(bleach)するために使用される別のレーザを含んでいてよい。任意に、SWIR光学システムは、受動Qスイッチレーザ200によってパルスが生成される時間(時刻,時点)を測定するように動作可能な内部感光性ディテクタ(例:1つ以上のフォトダイオード)を含んでいてよい。プロセッサは、システム100の視野内における物体からのレーザ光の反射を検出するフォトディテクタアレイ(あるいは他の種類のカメラまたはセンサ)に対して、内部感光性ディテクタから得られたタイミング情報に基づいてトリガ信号を供給するように動作可能である。
図5Bには、このような内部感光ディテクタが例示されている(図示されている例では「パルス検出フォトダイオード」と表記されている)。
【0070】
図6Aは、本開示の主題の例に係る方法600の例を示すフローチャートである。方法600は、受動Qスイッチレーザのための部品(パーツ)を製造する方法である。当該受動Qスイッチレーザは、例えば上述の受動Qスイッチレーザ200であるが、これに限定されない。上述の各図面に関して記載された各例を参照すると、受動Qスイッチレーザは、レーザ200であってよい。レーザ200またはそのコンポーネントに関して説明した任意の変形例は、その部品が方法600によって製造される受動Qスイッチレーザに対して、または、その対応するコンポーネントに対して適用することもできることに留意されたい。その逆についても同様である。
【0071】
方法600は、少なくとも1つの第1粉末を第1モールド内に挿入するステージ610から始まる。方法600において、第1粉末は、第1結晶性物質を生じさせるために、後に処理される。第1結晶性物質は、受動QスイッチレーザにおけるGMまたはSAのいずれか一方としての役割を果たす。一部の実施形態では、レーザのGMが、(例:焼結によって)最初に作成される。そして、先行して作成されたGMの上に、(例:焼結によって)SAが後に作成される。他の実施形態では、レーザのSAが最初に作成される。そして、先行して作成されたSAの上に、GMが後に作成される。さらに他の実施形態では、SAとGMとは、互いに独立して作成される。そして、SAとGMとは、単一の剛体を形成するように結合(カップリング)される。結合工程は、加熱工程の一部として、焼結工程の一部として、または後の工程の一部として実行されうる。
【0072】
方法600のステージ620は、少なくとも1つの第1粉末とは異なる、少なくとも1つの第2粉末を、第2モールドに挿入することを含む。方法600において、少なくとも1つの第2粉末は、第2結晶性材料を生じさせるために、後に処理される。(SAおよびGMの一方が第1結晶性物質から成り、他方の機能部が第2結晶性物質から成るように)第2結晶性物質は、受動QスイッチレーザのGMまたはSAのいずれか一方としての役割を果たす。
【0073】
第2モールドは、第1モールドと異なっていてもよい。あるいは、第2モールドは、第1モールドと同一であってもよい。この場合、例えば、少なくとも1つの第2粉末は、(i)少なくとも1つの第1粉末の上に(または、第1未焼結体(第1グリーン体)がすでに作成されている場合には、当該第1未焼結体の上に)挿入されてもよいし、(ii)当該第1粉末のそばに挿入されてもよいし、あるいは、(iii)当該第1粉末の周辺などに挿入されてもよい。(実施される場合)少なくとも1つの第1粉末と同一のモールド内へ、少なくとも1つの第2粉末を挿入する工程は、(i)少なくとも1つの第1粉末を第1未焼結体へと処理する前に実行されてもよいし、(ii)少なくとも1つの第1粉末を第1未焼結体へと処理する後に実行されてもよいし、あるいは、(iii)少なくとも1つの第1粉末を第1未焼結体へと処理する期間内に実行されてもよい。
【0074】
第1粉末および/または第2粉末は、(i)粉砕YAG(または、スピネル、MgAl2O4、ZnSeなどの他の上述の各物質のいずれか)と、(ii)ドーピング材料(例:N3+、V3+、Co)と、を含みうる。第1粉末および/または第2粉末は、(i)YAG(または、スピネル、MgAl2O4、ZnSeなどの他の上述の各物質のいずれか)が製造される材料と、(ii)ドーピング材料(例:N3+、V3+、Co)と、を含みうる。
【0075】
ステージ630は、ステージ610の後に実行される。ステージ630は、第1モールド内において少なくとも1つの第1粉末を圧縮して、第1未焼結体を生成する工程を含む。ステージ620は、ステージ640の後に実行される。ステージ620は、第2モールド内において少なくとも1つの第2粉末を圧縮して、第2未焼結体を生成する工程を含む。ステージ610・620において、少なくとも1つの第1粉末と少なくとも1つの第2粉末とが同一のモールド内に挿入される場合、ステージ630・640における各粉末の圧縮は同時に実行されてよい(例えば、少なくとも1つの第2粉末を押圧し、次いで、少なくとも1つの第1粉末をモールドに対して圧縮する)。但し、このことは必須ではない。例えば、任意に、ステージ620は(従って、ステージ640も)、ステージ630における圧縮後に実行されてもよい。
【0076】
ステージ650は、第1未焼結体を加熱して、第1結晶性物質を生成する工程を含む。ステージ660は、第2未焼結体を加熱して、第2結晶性物質を生成する工程を含む。異なる実施形態では、第1結晶の加熱は、(i)ステージ630・650のそれぞれの前に実行されてもよいし、(ii)ステージ630・650のそれぞれと部分的に同時に実行されてもよいし、あるいは、(iii)ステージ630・650のそれぞれの後に実行されてもよい。
【0077】
任意に、ステージ650における第1未焼結体の加熱は、ステージ640(かつ、場合によってはステージ620)における、少なくとも1つの第2粉末の圧縮に先行する(かつ、場合によっては、当該第2粉末の挿入にも先行する)。第1未焼結体および第2未焼結体は、(例えば、異なる時間において、異なる温度によって、異なる持続時間に亘って)個別に加熱されてよい。加熱時またはその他の期間において、第1未焼結体と第2未焼結体とが互いに接続されているか否かによらず、第1未焼結体と第2未焼結体とは共に加熱されてよい(例:同じオーブン内において)。第1未焼結体と第2未焼結体とは、異なる加熱レジーム(加熱方式)に供されてもよい。第1未焼結体と第2未焼結体とは、複数の加熱レジームの他の部分において個別に加熱されている期間において、部分的な共加熱を共有しうる。例えば、第1未焼結体および第2未焼結体の一方または両方は、他の未焼結体とは個別に加熱されてもよい。次いで、2つの未焼結体は、(例えば、結合後に)共に加熱されてもよい。但し、このことは必須ではない。任意に、第1未焼結体を加熱する工程および第2未焼結体を加熱する工程は、単一のオーブン内において当該第1未焼結体および当該第2未焼結体を同時に加熱する工程を含む。任意に、ステージ670における結合は、単一のオーブン内における両方の未焼結体を同時加熱した結果であることに留意されたい。任意に、ステージ670における結合は、両方の未焼結体が互いに物理的に接続された後に、当該未焼結体を共焼結することによって行われることに留意されたい。
【0078】
方法600におけるステージ670は、第1結晶性物質に第2結晶性物質を結合する工程を含む。この結合は、当技術分野において既知である任意の結合方法によって実行されてよい。当該結合方法の一部についての非限定的な例は、受動Qスイッチレーザ200に関して上述されている。結合は、複数のサブステージを有しうる。当該サブステージの一部は、異なる実施形態において、様々な方法によって、ステージ630、640、650、および660の内の様々なステージと相互に関連しうることに留意されたい。この結合により、GMとSAとの両方を含む単一の硬質結晶体が得られる。
【0079】
方法600は、結晶の製造(特に、互いに結合された多結晶物質についてのセラミックまたは非セラミックの多結晶化合物の製造)に使用される追加のステージを含みうることに留意されたい。複数の非限定的な例は、粉末調製、バインダバーンアウト、高密度化、アニール、研磨(下記の通り、必要であれば)などを含む。
【0080】
方法600における受動QスイッチレーザのGM(上述の通り、第1結晶性物質または第2結晶性物質のいずれかであってよい)は、ネオジムドープ結晶性物質である。方法600における受動QスイッチレーザのSA(上述の通り、第1結晶性物質または第2結晶性物質のいずれかであってよい)は、(a)ネオジムドープ結晶性物質と、(b)3価バナジウムドープイットリウムアルミニウムガーネット(V3+:YAG)およびコバルトドープ結晶性物質から成るドープ結晶性物質のグループから選択されるドープ結晶性物質と、から成る結晶性物質のグループから選択される。GMおよびSAの少なくとも一方は、セラミック結晶性物質である。任意に、GMとSAとの両方は、セラミック結晶性物質である。任意に、GMおよびSAのうちの少なくとも一方は、多結晶物質である。任意に、GMとSAとの両方は、多結晶物質である。
【0081】
製造プロセスにおける追加のステージは、方法600における異なるステージ間に位置しうる。特に、焼結プロセスにおける第2物質の結合に先立ち、第1物質を研磨する工程は、少なくとも一部の実施形態では必要とされない。
【0082】
方法600においてGM結晶性物質およびSA結晶性物質を製造することができる結晶性物質の組合せを参照すると、当該組合せは、以下を含みうる。
【0083】
a.GM結晶性物質は、セラミックネオジムドープイットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)である。そして、SA結晶性物質は、(a)セラミック3価バナジウムドープイットリウムアルミニウムガーネット(V3+:YAG)、または、(b)セラミックコバルトドープ結晶性物質のいずれかである。この代替例では、(i)Nd:YAGと、(ii)上述のグループから選択されるSA結晶性材料と、の両方がセラミック形態にある。コバルトドープ結晶性物質は、コバルトによってドープされた結晶性物質である。その例は、コバルトドープスピネル(Co:スピネル、またはCo2+:MgAl2O4)、コバルトドープセレン化亜鉛(Co2+:ZnSe)を含む。必須ではないが、このオプションにおける高反射率ミラーおよびSAは、GMとSAとにリジッド接続されていてもよい。これにより、受動Qスイッチレーザは、モノリシックマイクロチップ受動Qスイッチレーザとなる。
【0084】
b.GM結晶性物質は、セラミックネオジムドープイットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)である。そして、SA結晶性物質は、(a)3価バナジウムドープイットリウムアルミニウムガーネット(V3+:YAG)と、(b)コバルトドープ結晶性物質と、から成るドープセラミック物質のグループから選択される非セラミックSA結晶性物質である。この場合、高反射率ミラーおよびSAは、GMとSAとにリジッド接続される。これにより、受動Qスイッチレーザは、モノリシックマイクロチップ受動Qスイッチレーザとなる。
【0085】
c.GM結晶性物質は、セラミックネオジムドープ希土類元素結晶性物質である。そして、SA結晶性物質は、(a)3価バナジウムドープイットリウムアルミニウムガーネット(V3+:YAG)と、(b)コバルトドープ結晶性物質と、から成るドープ結晶性物質のグループから選択されるセラミック結晶性物質である。必須ではないが、このオプションにおける高反射率ミラーおよびSAは、GMとSAとにリジッド接続されてよい。この場合、受動Qスイッチレーザは、モノリシックマイクロチップ受動Qスイッチレーザとなる。
【0086】
方法600の全体を参照すると、任意に、SA結晶性物質およびGM結晶性物質の一方または両方は、関連する波長(例:SWIR放射)に対して透明であることに留意されたい。任意に、1つ以上の中間接続結晶性物質が存在する場合には、当該中間接続結晶性物質も当該波長に対して透明であることに留意されたい。
【0087】
図6Bおよび
図6Cは、本開示の主題の例に係る方法600の実行に関する複数の概念的なタイムラインを含む。図面を簡略化するために、SAは少なくとも1つの第1粉末に対する処理の結果物であり、かつ、GMは少なくとも1つの第2粉末に対する処理の結果物であるものとする。上述の通り、これらの立場は逆であってもよい。
【0088】
図7A~
図7Cは、本開示の主題の例に係る受動Qスイッチレーザ700の例を示す概略的な機能ブロック図である。必須ではないが、レーザ700は、上述したレーザ200の任意の適切な変形例として随意に実施されてよい。レーザ700は、電気光学システム800の一部であってよい。必須ではないが、電気光学システム800は、上述の電気光学システム100の任意の適切な変形例として随意に実施されてよい。
【0089】
レーザ700は、誘導放出断面積(σSEと表記)によって特徴付けられるGM710を含む。また、レーザ700は、吸光断面積(σaと表記)によって特徴付けられるSA720を含む。GM710とSA720との複数の組合せにおいて、σaは、(i)σSEよりも小さいか、または、(ii)σSEよりも有意に大きくない。例えば、σa<3・σSEである。例えば、GM710がネオジムドープイットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)から成り、かつ、SA720がコバルトドープYAG(Co2+:YAG)から成る場合がある。この場合、GM710に蓄積されたポンプエネルギーの大部分は、SA720を飽和させるために使用され、増幅のためのエネルギーのほんのわずかな部分しか残らない。アブソーバを飽和させるために必要なエネルギー量を減少させるために、レーザ700は、専用のジオメトリ(幾何学的形状)を有する光共振器を含む。このことについては、以下にてより詳細に論じる。提案したジオメトリによれば、アブソーバを飽和させるために、蓄積エネルギーのわずかな部分しか要求されないので、高効率をもたらし、それゆえ高出力エネルギーをもたらす。
【0090】
光共振器(当該共振器の内部には、GM710およびSA720が配置されている)は、高反射率ミラー730および出力カプラ740を含む。HR(high reflectivity)ミラー730およびOC(output coupler)740のうちの少なくとも1つは、湾曲ミラーを含む。これにより、光共振器におけるミラーの組み合わせは、SA内におけるレーザモードの有効断面積(ASAと表記)を、ポンプビームのレイリー長の範囲内におけるレーザモードの断面積(AGMと表記)よりも小さくする光を、光共振器の内部へと導くことができる。SA720は比較的狭いので、モードの直径は、SA内において少しは変化しうるが、それほど大きくは変化しないことに留意されたい。それゆえ、計算を簡単にするために、単一の有効直径は、SA内におけるモードの複数の直径についての小範囲を代表してよい(有効直径は、複数の直径についての小範囲に含まれている。通常では、当該有効直径は、SA720に沿ったモードの平均直径に近い)。
【0091】
図中において、レーザモードは750と表記されており、被ポンピング体積(被ポンピング空間)は760と表記されている。被ポンピング体積のウエスト(くびれ部,胴部)は、762と表記されている。SA内におけるレーザモードの断面積がSA720の全体に亘り一定ではない場合、ASAは、SA720の全体を通じてのレーザモードの平均有効断面積を表しうる。同様に、レーザモードの断面積がポンプのレイリー長の全体に亘り一定でない場合には、AGMは、ポンプのレイリー長の範囲内におけるレーザモードの平均断面積を表しうる。レーザビームのレイリー長(またはレイリー範囲)とは、ビーム半径がルート2(2の平方根)という比率だけ増加した位置における、(伝播方向における)ビームウエストからの距離である(例えば円形ビームの場合、モード面積はこの位置において2倍に増加する)。なお、ASAとAGMとが共に(例えば、cm2単位によって測定される)幾何学的面積であることに対し、σaとσSEとは、GM710およびSA720の材料の特性であることに留意されたい。σaおよびσSEも、面積の単位(例:cm2単位)によって表されることにも留意されたい。
【0092】
凹ミラーを使用すると、GM710における単位面積当たりのエネルギー密度に対して、SA720における単位面積当たりに、より大きなエネルギー密度を集束(集中)させることができる。これにより、アブソーバを飽和させるために必要とされる蓄積エネルギーはわずかな部分のみとなりうる。その結果、高効率をもたらし、従って、高出力エネルギーをもたらす。
【0093】
エネルギーの集束は、GMおよびSAに対して選択される材料、所望のレーザ出力パワーなどの種々の考慮すべき事項に応じて、異なる程度まで実行されてよい。例えば、(HRミラー730およびOC740のうちの)1つ以上の凹ミラーの半径は、σ
SEとA
GMとの比率が、σ
aとA
SAとの比率に対して、少なくとも3倍小さくなるように選択されてよい。すなわち、
【数1】
であってよい。他の比率が選択されてもよい。例えば、光共振器のジオメトリは、
【数2】
であるように設定されていてもよいし、
【数3】
であるように設定されていてもよいし、
【数4】
であるように設定されていてもよいし、
【数5】
であるように設定されていてもよいし、
【数6】
であるように設定されていてもよいし、または、
【数7】
であるように設定されていてもよい。
【0094】
上述の通り、任意に、GM710はネオジムドープイットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)から成り、かつ、SA720はコバルトドープYAG(Co2+:YAG)から成る場合がある。但し、GM710またはSA720のいずれかに対して、他の物質が使用されてもよい。非限定的な例として、受動Qスイッチレーザ200のGMおよびSAに関して上述した各物質の内の任意の物質が、GM710およびSA720に対してそれぞれ使用されてよい。必須ではないが、GM710およびSA720は、様々なドーパントを有する同じタイプの結晶(例:YAG、スピネル、セレン化亜鉛)上に実装されてよい。
【0095】
例えば、受動Qスイッチレーザ200について上述した通り、任意に、受動Qスイッチレーザ700は、マイクロチップレーザであってよい(準用)。任意に、高反射率ミラー730および出力カプラ740は、GM710とSA720とにリジッド接続されてよい。この場合、受動Qスイッチレーザは、モノリシックマイクロチップ受動Qスイッチレーザとなる。但し、これらのコンポーネントは、必ずしも互いに直接的に接続されなくともよいことに留意されたい。例えば、アンドープYAG(または任意の他の適切な結晶)は、(i)高反射率ミラー730とGM710との間、(ii)GM710とSA720との間、および/または、(iii)SA720と出力カプラ740との間に、配置されてよい。このような構成の例は、
図7C、
図8B、および
図8Cに提供されている。
【0096】
HRミラー730および/または出力カプラ740のいずれか一方は、凹ミラー(またはその光学的等価物)であってよい。当該凹ミラーは、球状凹ミラーまたは別のタイプの凹ミラーであってよい。任意に、高反射率ミラー730と出力カプラ740との両方は、凹ミラー(または光学的に等価な構成)である。このような実施形態は、本開示の主題の例に従って、
図8A、
図8B、および
図8Cに示されている。異なる目的に応じて、HRミラー730およびOC740の両方を湾曲させてもよい。例えば、レーザのモードを整形するために、HRミラー730およびOC740の両方を湾曲させてもよい。例えば、ミラーコーティングなどの光学表面から(例:出力カプラ740から)離間した位置において最高エネルギー強度を維持するために、HRミラー730とOC740との両方を湾曲させてもよい。これにより、SA720内において発生する熱によるOCの損傷を防止できる。
図8Bには、このような変形例が示されている。任意に、最高エネルギー密度が光学共振器の中央60%の範囲内に含まれるように、凹状のHRミラー730の曲率および凹状のOC740の曲率が設定されてよい。言い換えれば、次の通りである。最も離れた2つの点(1つの点はHRミラー上の点であり、もう1つの点はOC上の点である)間の距離をDと表記する。この場合、HRミラー730と最高エネルギー密度の位置との距離は、0.2Dより大きい。この場合、OCカプラと最高エネルギー密度の位置との距離も、0.2Dより大きい。
【0097】
図7Bの例を参照する。任意に、SA720の直径は、GM710の直径よりも小さくてもよい。これにより、光学共振器から熱を放出するために、SA720を別の物質(例:アンドープYAG)によって取り囲むことができる。但し、(SA720の直径が、GM710の直径より小さくない場合であっても)レーザ700からの熱除去を改善するために、GM710、SA720、またはその両方を、アンドープYAG(あるいは、別のタイプの結晶または他の物質)により覆ってもよいことに留意されたい。言い換えると、GMの吸収領域内に熱が蓄積することを防止するために、レーザ700は、GMおよびSAに加えて、アンドープYAG(または、上述の各材料の任意の適切な結晶などの他の適切な材料)を任意に含んでいてもよい。例えば、アンドープYAG(または他の任意の適切な物質)は、GMおよびSAを取り囲むシリンダとして成形されていてもよい。
【0098】
レーザ700は、エンドポンプ式レーザであってもよいし、サイドポンプ式レーザであってもよいことに留意されたい。
図9Aおよび
図9Bはそれぞれ、開示されている主題の例に係る、エンドポンプ式Qスイッチレーザ700(
図9A)を有する電気光学システム800と、サイドポンプ式Qスイッチレーザ700(
図9B)を有する電気光学システム800の例を示す概略的な機能ブロック図である。任意に、レーザ700は、(i)少なくとも1つのエンドポンピング光源772と、(i)ダイオードポンプ光源の光を光共振器内において集束させるための光学系782と、を含んでいてよい。任意に、レーザ700は、(i)少なくとも1つのサイドポンプ光源774と、(ii)適切な光学系784(例:ディヒューザ)と、を含んでいてもよい。ポンピング光源の例は、ダイオードまたは垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)アレイを含むが、これらに限定されない。
図9Aの各コンポーネントは、
図3の対応する各コンポーネントと同様であってよい(準用)。そして、
図9Bの各コンポーネントは、
図4の対応する各コンポーネントと同様であってもよい(準用)。開示を簡潔化にするため、議論については繰り返さない。
【0099】
上述した通り、レーザ200について議論した任意の変形例を、レーザ700に準用することもできる。例えば、受動Qスイッチレーザ700は、多結晶性物質であるGMおよびSAを含んでいてよい。任意に、GM710およびSA720は、ネオジムと少なくとも1つの他の材料とによってドープされた結晶性物質の単一ピース上に実装されてもよい。任意に、受動Qスイッチレーザ700は、出力カプラを通じて、1,300nm~1,500nmの波長範囲内の光を出射する。任意に、Qスイッチレーザ700は、出力カプラを通じて、(a)1.32μm±3nm、(b)1.34μm±3nm、および、(c)1.44μm±3nmからなる中心周波数のグループから選択される中心周波数の波長範囲内の光を出射しうる。任意に、SA720の初期透過率(T0)は、75%~90%である。任意に、SA7209の初期透過率(T0)は、78%~82%である。
【0100】
図10Aおよび
図10Bは、本開示の主題の例に係る、電気光学システム800の例を示す概略的な機能ブロック図である。電気光学システム800を参照すると、システム900は、レーザ700に加えて、少なくとも1つの被照射物体からのレーザ照射の反射を検出するために、レーザの波長に感応するSWIRフォトディテクタアレイを含んでいてもよい。任意に、システム800は、(i)レーザの波長に感応するToFSWIRセンサと、(ii)ToFSWIRセンサと受動Qスイッチレーザとの動作を同期させるように動作可能なコントローラと、(iii)SWIR電気光学システムの視野内における少なくとも1つの物体との距離を決定するために、ToFSWIRセンサによる、受動Qスイッチレーザのレーザ照射の反射についての検出結果を処理するように動作可能なプロセッサと、を含んでいてもよい。
【0101】
図10Bは、開示されている主題の例に係る、短波赤外(SWIR)光学システム800の例を示す概略的な機能ブロック図である。
図5Bに示される通り、システム800は、レーザ700の出力光信号を増幅するためのレーザ増幅器510を含んでいてよい。増幅器510は、専用のダイオード520によって、または任意の他の適切な光源を使用してポンピングされてよい。レーザ増幅器510は、(図示されている通り)独立した増幅ユニット500として実装されてもよいし、(例えば、レーザ700にリジッド接続された)レーザ700の一部として実装されてもよいし、あるいは、任意の他のシステムの一部として実装されてもよいことに留意されたい。レーザ増幅器510は、図示されていなくとも、電気光学システム800の他の構成(例:サイドポンピングを使用する構成)によって実装されうることにも留意されたい。
図10Aの各コンポーネントは、
図5Aの対応する各コンポーネントと同様であってよい(準用)。そして、
図10Bの各コンポーネントは、
図4Bの対応する各コンポーネントと同様であってもよい(準用)。開示を簡潔化するため、議論については繰り返さない。
【0102】
上述の受動Qスイッチレーザ700の任意の変形例は、例えば、上述の方法600を実施することによって製造されうることに留意されたい(準用)。製造された受動Qスイッチレーザに対して、受動Qスイッチレーザ700についての上述の各特性を付与するために、方法600は、適切なステージを含みうる。例えば、製造された受動Qスイッチレーザに対して、上述の物理的特性(例:誘導放出断面積(σSE)、吸収断面積(σa)、SA内におけるレーザモードの有効断面積)を付与するように、方法600が適合化されていてもよい。
【0103】
図11および
図12は、開示されている主題の例に係る、GM増幅器1200の分解斜視投影図である。上述の各図面に関して述べた例を参照すると、GM増幅器1200は、システム100の(あるいは、一体化されていれば、受動Qスイッチレーザ200の)レーザ増幅器310としての役割を果たしうることに留意されたい。上述の各図面に関して述べた例を参照すると、GM増幅器1200は、システム800の(あるいは、一体化されていれば、受動Qスイッチレーザ700の)レーザ増幅器510としての役割を果たしうることに留意されたい。但し、任意の適切なタイプのレーザ増幅器が、レーザ増幅器310および/または510として実装されてよい。GM増幅器1200は、任意の適切なシードレーザ(1300と表記されている)によって露光(feed)されうる。当該シードレーザは、例えば、受動Qスイッチレーザ200および受動Qスイッチレーザ700の任意の変形例であるが、これらに限定されない。
【0104】
GM増幅器1200は、平坦なネオジムドープイットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)結晶1210を少なくとも含む。結晶1210は、5ミリメートル未満の平均厚さを有する(例:約1mm、さらなる例が以下に提供されている)。その一方、結晶1210の他の複数の寸法のうちの少なくとも1つは、より長い(例:少なくとも5倍長い)。場合によっては、直交する寸法の両方が、結晶1210の平均厚さに比べて少なくとも5倍長い。
【0105】
平坦Nd:YAG結晶(平坦なNd:YAG結晶)1210は、以下のa~dを少なくとも含んでいる。
【0106】
a.上面1212。当該上面を通じて、第1周波数(「ポンプ周波数」とも称される)を有するポンプ光は、(例えば、任意のポンプ光源1240から)平坦Nd:YAG結晶1210に入射する。
【0107】
b.上面1212に対向する底面1214。
【0108】
c.第1側面1222。当該第1側面を通じて、第2周波数を有する入射レーザ光が、(例えば、任意のシードレーザ310から)平坦Nd:YAG結晶に入射する。
【0109】
d.第2側面1224。第2周波数を有する出射レーザ光は、平坦Nd:YAG結晶の複数の異なる側面によって反射された後に、当該第2側面を通じて、当該平坦Nd:YAG結晶から出射される。ポンプ光を用いて増幅された後には、出射レーザ光のパワーは、入射レーザ光のパワーよりも少なくとも4倍強い。より強い増幅レベル、例えば、少なくとも5倍、少なくとも7倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍などが使用されてもよい。
【0110】
平坦Nd:YAG結晶は、上述の各表面に加えて、追加の側面を含んでもよい。平坦Nd:YAG結晶の表面の一部または全部(第1側面および第2側面の一方または両方を任意に含む)は、平坦であってもよいし、あるいは、ほぼ(実質的に)平坦であってもよい。但し、このことは必須ではない。湾曲した表面が使用されてもよい。光は、平坦Nd:YAG結晶内において、第1側面および第2の側面の一方または両方によって内部反射されてよい。但し、このことは必須ではない。光は、平坦Nd:YAG結晶内において、第1側面および第2側面以外の1つ以上の表面によって内部反射されてもよい。但し、このことは必須ではない。第1側面と第2側面とは、互いに平行であってもよい。但し、このことは必須ではない。「上(top)」および「底(bottom)」という用語は、対向する側面を識別するために使用される任意的な用語であることに留意されたい。これらの表面は、本開示の異なる実施形態において、異なる方位(向き,方向)に配置されうる。(例えば、図示されている通り)上面は、底面と平行であってよい。但し、このことは必須ではない。第1側面は、少なくとも1つの辺(エッジ)を、上面および/または底面と共有していてもよい。但し、このことは必須ではない。さらに、第2側面は、少なくとも1つの辺を、上面および/または底面と共有していてもよい。但し、このことは必須ではない。簡潔化のために明示的に述べられていなくとも、上述の任意の実施形態についての任意の組合せが実施されうることに留意されたい。
【0111】
出射レーザ光として出射される前に、平坦Nd:YAG結晶1210内において光が内部反射される回数は、ドープ結晶内を通過する光路距離と指数関数的に相関する、GM増幅器1200のゲインに影響を及ぼす。任意に、出射レーザ光として出射されるまでの入射レーザ光の光路は、少なくとも10回の内部反射1292を含む。異なる数の内部反射(例:10~15回、15~20回、20~25回、25~35回、またはさらに多い回数)も実現されうる。任意に、出射レーザ光として出射されるまでの入射レーザ光の光路は、平坦Nd:YAG結晶の平均厚さよりも、少なくとも50倍長い。光路と平均厚さとの間における異なる比率(例:50~100、100~200、または200を超える値)も実現されうる。
【0112】
平坦Nd:YAG結晶は、特定の周波数を増幅するために使用されてよい。ポンプ光は、1つ以上のポンプ周波数(またはポンプ周波数範囲)を有していてよい。例えば、ポンプ周波数は、750ナノメートル(nm)~850nmであってよい。例えば、ポンプ周波数は、780nm~830nmであってもよい。例えば、ポンプ周波数は、800nm~850nmであってもよい。例えば、ポンプ周波数は、800nm~820nmであってもよい。例えば、ポンプ周波数は、808nm±2nmであってもよい。但し、他の周波数範囲も実現されうる。ポンプ光は、レーザ光(例:垂直キャビティ面発光レーザ、または任意の他のタイプのレーザ)、発光ダイオード(light emitting diode,LED)光、または任意の他の適切な光源の光であってよい。
【0113】
出射レーザ光は、1つ以上の出射周波数(または出射周波数範囲)を有していてよい。例えば、出射周波数は、1,300nm~1,400nmであってよい。例えば、出射周波数は、1,310nm~1,370nmであってもよい。例えば、出射周波数は、1,330nm~1,350nmであってもよい。例えば、出射周波数は、1,340nm±2nmであってもよい。
【0114】
第2レーザ周波数(「入射レーザ周波数」とも称される)は、出射レーザ周波数と同じ周波数であってよい。例えば、第2光周波数は、1,300nm~1,400nmであってよい。例えば、第2光周波数は、1,310nm~1,370nmであってもよい。例えば、第2光周波数は、1,330nm~1,350nmであってもよい。例えば、第2光周波数は、1,340nm±2nmであってもよい。
【0115】
上面1212は、(i)第1寸法(例:奥行き(length))と、(ii)当該第1寸法に直交する第2寸法(例:幅)とを有する。第1寸法は、平坦Nd:YAG結晶の平均厚さに比べて、少なくとも5倍長い。例えば、平坦Nd:YAG結晶の厚さが1mmである場合、第1寸法は、5mm以上の任意の長さ(例:5mm、10mm、5~15mm、15~25mmなど)であってよい。平均厚さは、0.5mm未満、0.5~1mm、1~1.5mm、1.5~2mm、2~5mmなど、用途に応じて変化しうる。平坦Nd:YAG結晶の長さは、第1寸法に沿ったその最大の測定値である。任意に、第1寸法に沿った平均長さは、平坦Nd:YAG結晶の平均厚さに比べて、少なくとも倍長くてもよい。
【0116】
任意に、平坦Nd:YAG結晶1210は、プリズムである。任意に、平坦Nd:YAG結晶1210は、直角プリズム(right prism)である。任意に、平坦Nd:YAG結晶1210は、直角矩形プリズムである。平坦Nd:YAG結晶1210の上述の表面のうちの1つ以上は、ファセット(刻面)であってもよい。
図7の例において、平坦Nd:YAG結晶1210の厚さは、ほぼ定数であり、「H」と表記されている。
図7の例において、平坦Nd:YAG結晶1210内における内部反射は、第1側面1222および第2側面1224のみによって反射される。但し、このことは必須ではない。光は、出射レーザ光として出射される前に、平坦Nd:YAG結晶1210の任意の表面によって内部反射されてもよい。
【0117】
GM増幅器1200は、平坦Nd:YAG結晶1210に加えて、任意的なポンプ光源1220を含んでいてもよい。当該任意的なポンプ光源は、第1周波数を少なくとも有するポンプ光を出射する。任意的なポンプ光源1220は、適切なタイプの光源(例:LED、垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL)、他のタイプのレーザなど)として実装されてよい。
【0118】
ポンプ光源としてVCSELを使用すること(このことは、本開示における平坦Nd:YAG結晶1210の新規な幾何学的フォーマットにより実現可能となる)は、従来技術の解決策と比較した場合に、(i)結晶増幅器のコストを低減するとともに、(ii)より容易かつ大量の製造を促進するために利用されうることに留意されたい。
【0119】
ポンプ光が大型の上面に供給される本開示の新規なジオメトリは、光源が面積当たりに比較的低い輝度を有しうることを意味する。
【0120】
任意に、GM増幅器1200は、低デューティサイクル(例:3%未満、3%~5%、5%~10%)において動作させられる。これにより、GM増幅器1200を冷却する(クールダウンさせる)ことができる(このことは、GM増幅器1200の相対的な薄さによって促進される)。任意に、GM増幅器1200は、平坦Nd:YAG結晶1210またはGM増幅器1200の任意の他の部分を冷却するための、冷却モジュール1260を含んでいてよい。当該冷却モジュールは、能動冷却モジュールであってもよいし、あるいは、ヒートシンクに接続されうる受動冷却モジュールであってもよい。任意に、冷却モジュール1260の表面は、平坦Nd:YAG結晶1210の対応する表面(図示の例における底面1214、または当該結晶の任意の他の表面)に接触していてよい。また、平坦Nd:YAG結晶1210の相対的な薄さは、比較的高いドーピング濃度(例:1%を超える値、1~2%、2~3%)での結晶のドーピングを可能とする。
【0121】
任意に、GM増幅器1200は、随意的な数10通りの異なる照射モードを伴うマルチモードによって活性化される、サイドポンプ式GM増幅器であってもよい。
【0122】
全体としてGM増幅器1200を参照すると、(i)セラミックNd:YAG結晶と、(ii)当該結晶の内部における光の多重経路(有効経路を延長している)との組み合わせによって、GM増幅器1200におけるより優れた引き出し効率が達成されうる。
【0123】
任意に、平坦Nd:YAG結晶内におけるネオジムのドーピング濃度は、4%未満である。任意に、平坦Nd:YAG結晶内におけるネオジムのドーピング濃度は、1%~2%である。任意に、第1周波数と第2周波数と出射光周波数との内の、少なくとも1つの周波数に応じて、上面は反射防止コーティングによって被覆されている。
【0124】
任意に、第1周波数と第2周波数と出射光周波数との内の、少なくとも2つの周波数に応じて、上面は反射防止コーティングによって被覆される。任意に、第1周波数と第2周波数と出射光周波数との内の、少なくとも1つの周波数に応じて、第1側面および第2側面のうちの少なくとも一方は、反射防止コーティングによって被覆されている。
【0125】
任意に、第1周波数と第2周波数と出射光周波数との内の、少なくとも2つの周波数に応じて、第1側面および第2側面のうちの少なくとも一方は、反射防止コーティングによって被覆されている。任意に、平坦Nd:YAG結晶1210の増幅自然放出(amplified spontaneous emission,ASE)周波数(例:1,064nm)に応じて、第1側面および第2側面のうちの少なくとも一方は、反射防止コーティングによってさらに被覆されている。
【0126】
任意に、第1側面を通じて平坦Nd:YAG結晶に入射した光は、第2側面を通じて出射される前に、その光路の少なくとも80%に沿って出射される。
【0127】
図13および
図14は、GM増幅器1200およびシードレーザ1310を含む、増幅レーザ照射源1300を示す。任意に、シードレーザは、第1側面を通じて平坦Nd:YAG結晶に入射する光を出射する、Nd:YAGベースのレーザであってもよい。任意に、上述の各レーザのいずれか(例:受動Qスイッチレーザ200および700)が、シードレーザ1310として使用されてよい。
【0128】
任意に、平坦Nd:YAG結晶1210は、YAG結晶(または、当該結晶の少なくとも1つ以上の部分)が、(i)ネオジムによってドープされ、かつ、(ii)付加的な材料によってさらにドープされた、共ドープ結晶であってよい。付加的な材料は、YAG結晶をドーピングする場合、平坦Nd:YAG結晶1210の少なくとも1つのASE周波数における光を抑制する材料であってよい。例えば、1,064nmでの発光を抑制するために、クロム(Cr)、特にクロムイオン(例:Cr4+)が使用されてよい。クロムによって平坦Nd:YAG結晶1210をさらにドーピングすることにより、増幅器の収率が増加しうる。他の材料(例:Co3+)が使用されてもよい。
【0129】
複数の側面の内の一部または全てが上面に対して垂直でない実施形態を参照すると、側面と上面(および/または底面)との間の角度が選択されうることに留意されたい。当該角度は、ASEの影響を低減する。そして、当該角度の程度まで、ASEが平坦Nd:YAG結晶1210内において増幅されるであろう。
【0130】
本開示についての特定の構成が本明細書において例示および説明されているが、多くの修正、置換、変更、および均等物が当業者によって想起されるであろう。従って、添付の特許請求の範囲は、本開示の真の精神の範囲内に含まれる全ての修正および変更をカバーすることを意図していることを理解されたい。
【0131】
上述の実施形態は、例として挙示されており、その様々な構成およびこれらの構成の組み合わせは変更および修正されうることが理解されるであろう。
【0132】
様々な実施形態が例示および説明されているが、当該開示によって本開示を限定する意図はないことが理解されるであろう。むしろ、添付の特許請求の範囲において規定されている通り、本開示の範囲内に含まれる全ての修正および代替的な構成をカバーすることが意図されている。
【0133】
本開示の譲受人および/またはイスラエルのテルアビブに所在のTriEye LTD.によって公開された全ての特許出願、ホワイトペーパー(白書)、および他の公に入手可能なデータは、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【
図1】SWIR光学システムの一例を示す概略的な機能ブロック図である。
【
図2A】受動Qスイッチレーザの例を示す概略的な機能ブロック図である。
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図2B】受動Qスイッチレーザの例を示す概略的な機能ブロック図である。
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図2C】受動Qスイッチレーザの例を示す概略的な機能ブロック図である。
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図3】SWIR光学システムの例示的な実施形態を示す概略的な機能図である。
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図4】SWIR光学システムの例示的な実施形態を示す概略的な機能図である。
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図5A】SWIR光学システムの例を示す概略的な機能ブロック図である。
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図5B】SWIR光学システムの例を示す概略的な機能ブロック図である。
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図6A】受動Qスイッチレーザのための部品を製造する方法の例を示すフローチャートである。
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図6B】上述の方法の実行に関する複数の概念的なタイムラインを含む。
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図6C】上述の方法の実行に関する複数の概念的なタイムラインを含む。
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図7A】受動Qスイッチレーザの例を示す概略的な機能ブロック図である。
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図7B】受動Qスイッチレーザの例を示す概略的な機能ブロック図である。
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図7C】受動Qスイッチレーザの例を示す概略的な機能ブロック図である。
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図8A】少なくとも1つの凹ミラーを含む受動Qスイッチレーザの例を示す概略的な機能ブロック図である。
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図8B】少なくとも1つの凹ミラーを含む受動Qスイッチレーザの例を示す概略的な機能ブロック図である。
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図8C】少なくとも1つの凹ミラーを含む受動Qスイッチレーザの例を示す概略的な機能ブロック図である。
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図9A】エンドポンプ式受動Qスイッチレーザを備えた電気光学システムの例を示す概略的な機能ブロック図である。
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図9B】サイドポンプ式受動Qスイッチレーザを備えた電気光学システムの例を示す概略的な機能ブロック図である。
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図10A】電気光学システムの例を示す概略的な機能ブロック図である。
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図10B】電気光学システムの例を示す概略的な機能ブロック図である。
【国際調査報告】