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特表2022-542497エンドレスフィラメントから成る不織布と不織布スパンボンド
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  • 特表-エンドレスフィラメントから成る不織布と不織布スパンボンド 図1a)
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-04
(54)【発明の名称】エンドレスフィラメントから成る不織布と不織布スパンボンド
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/16 20060101AFI20220927BHJP
   D01F 8/00 20060101ALI20220927BHJP
   D04H 3/147 20120101ALI20220927BHJP
   D04H 3/018 20120101ALI20220927BHJP
【FI】
D04H3/16
D01F8/00
D04H3/147
D04H3/018
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560393
(86)(22)【出願日】2020-07-14
(85)【翻訳文提出日】2021-10-12
(86)【国際出願番号】 EP2020069906
(87)【国際公開番号】W WO2021018574
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】19189237.1
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505313830
【氏名又は名称】ライフェンホイザー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシャフト・マシイネンファブリーク
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーグナー・トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ゾンマー・ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ボール・パトリック
(72)【発明者】
【氏名】レスナー・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ゴイス・ハンス-ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】リンケ・ゲーロルト
【テーマコード(参考)】
4L041
4L047
【Fターム(参考)】
4L041AA07
4L041BA02
4L041BA22
4L041BA23
4L041BA59
4L041BD11
4L047AA27
4L047AB03
4L047AB07
4L047AB09
4L047BA09
4L047BB09
4L047EA06
(57)【要約】
本発明は、エンドレスフィラメント、特にクリンプされたエンドレスフィラメントから成るスパンボンド不織布に関し、フィラメントが二成分フィラメントまたは多成分フィラメントとして形成され、偏心したコア/シース構造を有することを特徴とする。フィラメントのシースが、フィラメント断面において、フィラメント円周の少なくとも20%にわたって、一定の厚さdを有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドレスフィラメント(2)、特にクリンプされたエンドレスフィラメント(2)から成るスパンボンド不織布(1)であって、フィラメント(2)が二成分フィラメントまたは多成分フィラメントとして形成され、偏心したコア/シース構造を有し、フィラメント(2)のシース(3)が、フィラメント断面において、フィラメント円周の少なくとも20%、特に少なくとも25%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%、非常に好ましくは少なくとも40%にわたって、一定の厚さdまたは実質的に一定の厚さdを有していることを特徴とする、前記スパンボンド不織布。
【請求項2】
フィラメント(2)のコア(4)が、フィラメント(2)のフィラメント断面の面積の50%超、特に55%超、好ましくは60%超、より好ましくは65%超、非常に好ましくは70%超を占める、請求項1~3のいずれか一つに記載のスパンボンド不織布。
【請求項3】
フィラメント(2)のコア(4)が、フィラメント断面で見たときに円形セグメントの形状に形成されており、その円周に関して、少なくとも1つの特に円弧状の円周部(5)または実質的に円弧状の円周部(5)と、少なくとも1つの特に直線状の円周部または実質的に直線状の円周部(6)とを有することを特徴とする請求項1または2に記載のスパンボンド不織布。
【請求項4】
コア(4)の円弧状の円周部(5)が、コア(4)の円周の50%超、特に55%超、好ましくは60%超、さらに好ましくは65%超を占めることを特徴とする、請求項3に記載のスパンボンド不織布。
【請求項5】
フィラメント(2)のシース(3)が-フィラメント断面で見た場合-一定の厚さdを有するシース領域の外側に円形セグメントの形状で形成されており、この円形セグメント(7)が、その円周に関して、少なくとも1つの、特に円弧状または実質的に円弧状の円周部(8)、および、少なくとも1つの特に直線状または質的に直線状の円周部(9)を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1つに記載のスパンボンド不織布。
【請求項6】
フィラメント(2)のシース(3)が、-フィラメント断面で見た場合-フィラメント円周の45%超、特に50%超、好ましくは55%超、さらに好ましくは60%超にわたって、一定の厚さdまたは実質的に一定の厚さdを有する、請求項1~5のいずれか1つに記載のスパンボンド不織布。
【請求項7】
一定または実質的に一定の厚さdの領域におけるシース(3)の厚さが、フィラメント直径Dまたは最大フィラメント直径Dの10%未満、特に8%未満、好ましくは7%未満であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1つに記載のスパンボンド不織布。
【請求項8】
一定または実質的に一定の厚さdの領域におけるシース(3)の厚さが、0.1~5μm、特に0.1~4μm、好ましくは0.1~3μm、好ましくは0.1~2μm、非常に好ましくは0.1~0.9μmである、請求項1~7のいずれか1つに記載のスパンボンド不織布。
【請求項9】
コア(4)の質量とシース(3)の質量の比が、90:10~50:50、好ましくは90:10~60:40、より好ましくは85:15~70:30である、請求項1~8のいずれか1つに記載のスパンボンド不織布。
【請求項10】
シース(3)の表面の重心とコア(4)の表面の重心間の距離aが、フィラメント直径Dまたは最大フィラメント直径Dの5%~45%、特に6%~40%、好ましくは6%~36%である、請求項1~9のいずれか1つに記載のスパンボンド不織布。
【請求項11】
コア:シースの質量比が85:15~70:30の場合、重心間の距離aがフィラメント直径Dまたは最大フィラメント直径Dの5%~45%、および/または、コア:シースの質量比が70:30~60:40の場合、重心間の距離aがフィラメント直径Dまたは最大フィラメント直径Dの12%~40%、および/または、コア:シースの質量比が60:40~45:55の場合、重心間の距離aがフィラメント直径Dまたは最大フィラメント直径Dの18%~36%である、請求項10に記載のスパンボンド不織布。
【請求項12】
フィラメント(2)のコア(4)および/またはシース(3)が、少なくとも1種のポリオレフィンから成るか、または本質的に少なくとも1種のポリオレフィンから構成されるものであり、特にフィラメント(2)のコア(4)およびシース(3)の両方が、少なくとも1種のポリオレフィンから成るか、または本質的にポリオレフィンから構成されるものであり、好ましくはシース(3)がポリエチレンから成るか、または本質的にポリエチレンから構成されるものであり、好ましくはコア(4)がポリプロピレンから成るか、または本質的にポリプロピレンから構成されるものである、請求項1~11のいずれか1つに記載のスパンボンド不織布。
【請求項13】
フィラメント(2)のコア(4)および/またはシース(3)が、少なくとも1種類のポリエステルおよび/またはコポリエステルから成るか、または本質的に構成されるものであり、特にコア(4)がポリエステルから成るか、または本質的に構成されるものであり、好ましくはシース(3)がコポリエステルから成るか、または本質的に構成されるものであることを特徴とする請求項1~12のいずれか1つに記載のスパンボンド不織布。
【請求項14】
フィラメントの繊度(Titer)が1.5~2.5デニール(den)、特に1.7~2.3デニール、好ましくは1.8~2.2デニールである、請求項1~13のいずれか1つに記載のスパンボンド不織布。
【請求項15】
不織布(1)が、フィラメント間に結合部位または結合点を有する熱的に予備固結化されたおよび/または熱的に最終固結化された不織布(1)であることを特徴とする請求項1~14のいずれか1つに記載のスパンボンド不織布。
【請求項16】
エンドレスフィラメント(2)、特にクリンプされたエンドレスフィラメント(2)からの成るスパンボンド不織布(1)を製造するための装置であって、少なくとも1つの紡糸口(10)が存在し、その装置または紡糸口(10)は、偏心したコア/シース構造を有する多成分フィラメントまたは二成分フィラメントを製造することができるように構成され、ここで、フィラメント(2)のシース(3)が、フィラメント断面において、フィラメント円周の少なくとも20%、特に少なくとも25%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%、非常に好ましくは少なくとも40%にわたって、一定の厚さdまたは実質的に一定の厚さdを有し、フィラメント(2)は、堆積装置、特に堆積スクリーンベルト(20)上に堆積されることができる、装置。
【請求項17】
装置が、フィラメント(2)を冷却するための冷却装置(11)を備えるとともに、フィラメント(2)を伸長するための隣接する延伸装置(16)を備え、好ましくは延伸装置(16)に隣接する少なくとも1つのディフューザー(19)を備える、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
冷却装置(11)と延伸装置(16)からなるユニットが閉じたユニットとして形成されており、冷却装置(11)における冷却空気の供給とは別に、外部からさらなる空気の供給が行われない、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
少なくとも1つの熱予備固結装置が設けられており、それによって、堆積装置または堆積スクリーンベルト(20)上に堆積されたフィラメント(2)の不織布ウェブ(1)を熱的に予備固結化することができる、請求項16~18のいずれか1つに記載の装置。
【請求項20】
前記熱予備固結装置は、熱風予備固結装置として設計されていることを特徴とする、請求項19に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドレスフィラメントから成る不織布のスパンボンド、特にクリンプ(捲縮)されたエンドレスフィラメントから成る不織布に関し、フィラメントは二成分フィラメントとして、または多成分フィラメントとして設計されている。本発明はさらに、エンドレスフィラメント、特にクリンプされたエンドレスフィラメントからスパンボンド不織布を製造するための装置に関する。エンドレスフィラメントおよびエンドレスフィラメントが熱可塑性材料でできていることは、本発明の範囲内である。エンドレスフィラメントは準無限長のため、長さが10mmから60mmとはるかに短いステープル繊維とは相違する。
【背景技術】
【0002】
多くの技術応用のために、いわゆるハイロフト不織布を製造することが望まれる。これらは比較的太く、同時に比較的柔らかい不織布である。しかし、不織布の製造は一般的に十分な強度と耐摩耗性を同時に備えている必要があるため、問題なく製造できるわけではない。この点に関して、課題には矛盾がある。より高い強度または耐摩耗性を設定することは、通常、不織布の厚さおよび柔らかさを犠牲にすることになる。逆に、厚さを大きくし柔らかさが高い状態を維持すると、通常は強度と耐摩耗性が低い不織布となる。これまでのところ、既知の満足な解決策はほとんどない。-熱い不織布は、通常、クリンプ(捲縮、縮れ)または線維/フィラメントのクリンプの助けを借りて製造される。特に、この目的のためには、サイドバイサイド構成の二成分フィラメントまたは偏心したまたは非対称的なコアシース構造(芯/鞘構造)を有する二成分フィラメントが使用される。しかし、クリンピング線維で作られた以前から知られている不織布の多くは、比較的高い欠陥率を特徴とする。特に、不要な凝集体が不織布に認められ、均一性に悪影響を及ぼす。この点でも、改善の必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、最適な厚さと最適な柔らかさを有し、同時に十分な強度または引張強度と十分な摩耗耐性を有する不織布を特定するという技術的課題に基づいている。また、不織布はできるだけ欠損のないものとし、特に、凝集体をできるだけ含まないものとする。本発明はまた、このような不織布を製造するための装置を提供するという技術的課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
当該技術的課題を解決するために、本発明は、エンドレスフィラメント(2)、特にクリンプ、または、クリンプされたエンドレスフィラメント(2)から成るスパンボンド不織布(1)であって、二成分フィラメントとして、または多成分フィラメントとして形成され、かつ、偏心したコア/シース構造(芯/鞘構造)を有し、フィラメント(2)のシース(3)が、フィラメント断面において、フィラメント円周の少なくとも20%、特に少なくとも25%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%、非常に好ましくは少なくとも40%にわたって、一定の厚さdまたは実質的に一定の厚さdを有しているスパンボンド不織布(1)を提案する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の範囲内において、フィラメントのシースの厚さは平均厚さまたは平均シース厚さであり、具体的にはフィラメントに関連した平均シース厚さである。シースの厚さまたはシースの厚さは、走査型電子顕微鏡を用いて簡便に測定する。さらに、熱的な予備固結化(preconsolidation)または固結化(solidation)と関連しない、シース厚さまたは平均シース厚さは、したがって、特に結合点または結合点の一部ではないフィラメントまたはフィラメント断面で測定されることは、本発明の範囲内である。言い換えれば、シース厚さはフィラメント上、または結合点または結合点の外側のフィラメント断面で測定される。
【0006】
さらに、本発明の範囲内において、不織布材料のエンドレスフィラメント(連続フィラメント、無端フィラメント)が熱可塑性材料からなるか、または本質的にそれから構成される。クリンプされたエンドレスフィラメントは、特に本発明の文脈において、クリンプされたフィラメントがそれぞれ、その長さの1センチあたり、少なくとも1.5、好ましくは少なくとも2、好ましくは少なくとも2.5、および非常に好ましくは少なくとも3ループを有するクリンプを有することを意味する。本発明の好ましい実施態様は、本発明によるスパンボンド不織布のエンドレスフィラメントが、その長さの1センチあたり1.8~3.2、特に、2~3ループのクリンプを有することを特徴とする。特に、日本規格JIS L-1015-1981に準拠して、フィラメントの長さ1cmあたりのクリンプループまたはクリンプアーク(ループ)の数は、フィラメントの未伸展長を基準として、プレテンション2mg/den in(1/10mm)でクリンプを数えることにより測定される。クリンプループ数の測定には感度0.05mmを用いる。測定は、ドイツ、TexTechno社の「Favimat」デバイスを用いて簡便に行うことができる。このために、Favimat“-Geraet der Firma TexTechno, Deutschland. Dazu wird auf die Veroeffentlichung “Automatic Crimp Measurement on Staple Fibres”, Denkendorf Kolloquium”, “Textile Mess- und Prueftechnik”, 9.11.99, Dr. Ulrich Moerschel(特に4ページ、図4)を参照されたい。この目的のために、フィラメント(またはフィラメント試料)は、さらなる固結化の前に、フィラメントボールとして堆積または堆積ベルトから取り出され、測定される。
【0007】
本発明によれば、スパンボンド不織布には、偏心したコア-シース構造を有する二成分フィラメントまたは多成分フィラメントが使用される。本発明の範囲内において、フィラメントのシースがコアを完全に取り囲んでいる。さらに、本発明の範囲内において、シースの材料またはプラスチックが、フィラメントのコアの材料またはプラスチックよりも低い融点を有する。
【0008】
本発明は、本発明によるスパンボンド不織布では、大きな厚さと高い柔らかさ、それにもかかわらず、十分な強度と摩耗耐性が問題なく達成できるという知見に基づいている。本発明の文脈において、強度とは、特に機械方向(MD)における不織布の強度を意味する。本発明による不織布では、厚さを著しく減少させることなく、完全に十分な強度を達成することができる。本発明はさらに、本発明によるフィラメントの断面構造のために、最適なクリンプを達成することができ、かつ何よりも、パラメータを変化させることによって容易に調節することができ、それによって所望の厚さおよび所望の柔らかさが達成され、同時にフィラメント円周全体を包囲するシース材料を熱的な予備固結化に効果的に使用することができるという知見に基づいている。この熱的な予備固結化の間に、フィラメントの低融解シース材料の助けを借りてフィラメント間に結合点が作られ、その結果本発明に従ったフィラメント特性を有する本発明に従った最適な強度と摩耗抵抗を有することになり、それにもかかわらず、十分な厚さと柔らかさは維持される。また、本発明による不織布は、驚くほど欠陥が無く形成することができ、何よりも、大部分に破壊的な凝集体が無いことを強調すべきである。その結果、非常に均質な繊維層または不織層を得ることができる。
【0009】
本発明による不織布は、0.5mmを超える厚さ、特に0.55mmを超える厚さ、および好ましくは0.6mmを超える厚さを有することが好ましい。本発明による不織布は機械方向(MD)の強度が20N/5cm超、特に25N/5cm超であることが本発明の範囲内である。上記の厚さおよび強度値は、特に、10~50g/mの基準重量、好ましくは15~40g/mの基準重量、および好ましくは18~35g/mの基準重量に当てはまる不織布に適用される。
【0010】
また、本発明の範囲内において、フィラメントのコアが、フィラメント断面積の40%超、特に50%超、好ましくは60%超、好ましくは65%超、および非常に好ましくは70%超を占める。本発明の一実施形態によれば、フィラメントのコアは、フィラメントのフィラメント断面の面積の75%超を占める。
【0011】
フィラメント断面で見たフィラメントのコアは、円形のセグメントの形で形成され、好ましくは少なくとも1つ、特に円弧状の円周断面、またはその円周(周囲)に関して実質的に円弧状の円周断面を有することが好ましい。フィラメント断面で見たフィラメントのコアは、さらに少なくとも1つ、特に線状または実質的に線状の円周断面を有することが好ましい。本発明の特に好ましい実施形態によれば、フィラメント断面で見るフィラメントのコアは、円弧状または実質的に円弧状の円周断面と、それに直接隣接する線状または実質的に線状の円周断面とからなる。本発明の実証済みの実施形態においては、円弧状または実質的に円弧状の円周断面がコアの円周のうち40%を超え、特に50%を超え、好ましくは60%を超え、好ましくは65%を超えることを特徴とする。
【0012】
好ましい実施形態は、フィラメント断面に見られるフィラメントのシース、-一定または実質的に一定の厚さを有するシース領域外-が、円形セグメント(環状部分)の形状、または実質的に円形セグメントの形状で形成されることを特徴とする。この場合、この円形セグメントは、有利には少なくとも1つ、特に円弧状または実質的に円弧状、円周断面を有し、好ましくはその円周に関して少なくとも1つ、特に線状または実質的に線状の円周断面を有している。円形セグメントのシース部分は、円弧状または実質的に円弧状の円周部と、線状または実質的に線状の円円周部からなることが好ましい。これは、便宜的に直接隣接する部分である。
【0013】
本発明の範囲内において、フィラメント断面から見たフィラメントのシースは、特にフィラメント円周の45%超、50%超、好ましくは55%超、好ましくは60%超の一定の厚さまたは実質的に一定の厚さを有する。本発明の好ましい実施形態によれば、その一定の厚さまたは実質的に一定の厚さの領域におけるシースの厚さは、フィラメント直径または最大フィラメント直径の10%未満であり、特に8%未満、好ましくは7%未満および好ましくは3%未満である。その一定または実質的に一定の厚さの領域におけるシースの厚さは、フィラメント直径または最大フィラメント直径の少なくとも0.5%、特に少なくとも1%および好ましくは少なくとも1.2%である。-好ましくは、フィラメントを製造するための紡糸口は、まだ引き出されていない状態で紡糸口を残したフィラメントが、上記または下記で規定された相対厚さ値または厚さ%を有するように、選択するか、または設定することが好ましい。しかしながら、これらの相対的な厚さの値が、完成したスパンボンド不織布中のフィラメントのシースにも当てはまることも、本発明の範囲内である。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、完成されたスパンボンド不織布中のその一定または実質的に一定の厚さの領域におけるシースの厚さは、0.05~5μmであり、特に0.1~4μm、好ましくは0.1~3μm、好ましくは0.1~2μm、非常に好ましくは0.15~1.5μm、および特に好ましくは0.1~0.9μmである。
【0015】
本発明によるスパンボンド不織布のフィラメント中のコアの質量とシースの質量の比は90:10~40:60、好ましくは90:10~60:40、および好ましくは85:15~70:30であることが好ましい。-本発明の特に好ましい実施形態は、フィラメント断面において、シースの重心からのコアの重心の重心間の距離がフィラメント直径または最大フィラメント直径の5%~38%、特に6%~36%および好ましくは6%~34%、7%~33%であることを特徴とする。さらに、本発明の非常に好ましい実施形態は、フィラメント断面において、コア:シースの質量比が85:15~70:30の場合、重心間の距離aがフィラメント直径または最大フィラメント直径の5%~36%であることを特徴とする。コア:シースの質量比が70:30~60:40の場合、重心間の距離aがフィラメント直径Dまたは最大フィラメント直径Dの12%~40%であることが好ましい。コア:シース質量比が60:40aは18~36%、特にフィラメント直径または最大フィラメント直径の20~31%の間で好ま~45:55の場合、コアとシースの中心体間の距離しい。
【0016】
本発明の特に好ましい実施形態は、フィラメントのコアおよび/またはシースが少なくとも1つのポリオレフィンから成るか、または本質的にそれから構成される点で特徴付けられる。コアおよび/またはシースが、例えば「本質的に」プラスチックから構成されるという事実は、特に本発明の範囲内で、このプラスチックに加えて、コアおよび/またはシースにも添加剤が存在することを意味する。「本質的に」は、本発明によれば、コアおよび/またはシースが、少なくとも90質量%、好ましくは少なくとも95質量%、そして好ましくは少なくとも97質量%の各プラスチックを含むことを意味する。-本発明の好ましい実施形態によれば、フィラメントのコアおよびシースの両方は、それぞれ少なくとも1つのポリオレフィン、特にポリオレフィン、または本質的には少なくとも1つのポリオレフィン、特に本質的にはポリオレフィンから構成される。本発明の特に好ましい実施形態においては、フィラメントのシースがポリエチレンから成るか、または本質的にポリエチレンから構成され、フィラメントのコアがポリプロピレンから成るか、または本質的にポリプロピレンから構成されることを特徴とする。-フィラメントのシースは、フィラメントのコアと比較して、低融点物質またはプラスチックから成るか、または本質的に構成されていることは、本発明の範囲内であるとすでに述べた。-原則として、前記ポリオレフィンのコポリマーは、単独でコア中および/またはシース中、または少なくとも1つのホモポリオレフィンとの混合物中のいずれかで、本発明の文脈においても使用することができる。ホモポリオレフィンの混合物は、コアおよび/またはシースにも用いることができる。他のプラスチックとのブレンドも可能である。
【0017】
本発明において、ポリプロピレンを使用するか、またはポリプロピレンをコアに使用する場合は、溶融流量(メルトフローレート)が25g/10分超、特に40g/10分超、好ましくは50g/10分超、好ましくは55g/10分超、そして非常に好ましくは60g/10分超のポリプロピレンであるのがよい。溶融流量(MFR)は、特にASTM D1238-13(条件B、2.16kg、230℃)に従って測定される。本発明において、ポリエチレンが成分として、特にシースの成分として使用される場合、それは、溶融流量が35g/10分未満、特に25g/10分未満、好ましくは20g/10分未満のポリエチレンである。ポリエチレンについては、特にASTM D1238-13に従って190℃/2.16kgで溶融流量が測定される。
【0018】
本発明の1つの実施形態においては、フィラメントのコアおよび/またはシースが少なくとも1つのポリエステルおよび/または少なくとも1つのコポリエステルから成るか、または本質的に構成されることを特徴とする。好ましい実施形態においては、フィラメントのコアが少なくとも1つのポリエステル、特にポリエステルから成るか、または本質的にそれから構成され、シースが好ましくはコア成分よりも低い融点を有する少なくとも1つのポリエステルおよび/またはコポリエステルから成るか、または本質的にそれから構成されることを特徴とする。また、コアが少なくとも1つのポリエステルおよび/または少なくとも1つのコポリエステルからなるか、または本質的に構成され、シースが少なくとも1つのポリオレフィンからなるか、または本質的に構成されることもできる。-ポリエステルコポリマーとしてはポリエチレンテレフタレート(PET)が特に適しており、ポリエステルコポリマーとしてはPETコポリマー(Co‐PET)が特に適している。しかし、これらポリエステルとしては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)またはポリラクチド(PLA)またはこれらのコポリマーも用いることができる。さらに、本発明の範囲内においては、ポリマーまたはポリマーの混合物またはブレンドを、フィラメントのコアおよび/またはシースにも使用することができる。本発明において実証された実施形態においては、フィラメントのコアおよび/またはシースが、群「ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー、特に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレンコポリマー、ポリエステル、ポリエステル-コポリマー、特にポリエチレンテレフタレート(PET)、PETコポリマー、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、PBTコポリマー、ポリラクチド(PLA)、PLAコポリマー」からの少なくとも1つのプラスチックから成るか、それらから本質的に構成されることを特徴とし、前記ポリマーの混合物またはブレンドもコアおよび/またはシースに使用することができる。本発明の好ましい実施形態は、フィラメントのコアが、群「ポリプロピレン、ポリプロピレンコポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PETコポリマー、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、PBTコポリマー、ポリラクチド(PLA)、PLAコポリマー」からの少なくとも1つのプラスチックから成るか、それらから本質的に構成されることを特徴とする。
【0019】
本発明のスパンボンド不織布に使用されるフィラメントの繊度(titer)が1~12デニール(den)の間であることは、本発明の範囲内である。好ましい実施態様によれば、フィラメントの繊度(titer)は、1.0~2.5デニール(den)、特に1.5~2.2デニール、好ましくは1.8~2.2デニールである。この繊度またはこのフィラメント直径は、本発明による技術的課題を解決する観点から、特に有用であることがわかった。
【0020】
十分に実証された実施形態においては、本発明によるスパンボンド不織布が、フィラメント間の熱結合点または熱結合点を有する熱的に予備固結化および/または熱的に最終固結化された不織布である点で特徴付けられる。非常に好ましい実施形態によれば、本発明によるスパンボンド不織布は、熱風および/または熱結合不織布で熱的に予め固結化された不織布である。不織布の熱的な予備固結化は、原理的には、圧縮圧延化することによっても行うことができる。また、不織布の熱的な予備固結化または固結化をカレンダーの助けを借りて行われることも、本発明の範囲内である。-本発明は、フィラメントの断面の本発明の設計により、スパンボンド不織布の最適な予備固結化または熱的な予備固結化が可能であり、それにもかかわらず十分なクリンプが可能であり、したがって、不織布の所望の厚さを維持することができるという知見に基づいている。この点において、十分なクリンプ、その結果としての十分な厚さと不織布の最適な固結化との間の最適な妥協が可能である。クリンプは、フィラメントの断面パラメータを変化させることによって、標的化された様式で設定することができ、クリンプが大きすぎることがなく、所望の厚さを正確にかつ機能的に作成することができ、さらに、不織布の効果的な予備固結化を容易に行うことができる。
【0021】
技術的課題を解決するために、本発明はまた、特にクリンプされたエンドレスフィラメントからスパンボンド不織布を製造する装置であって、少なくとも1つの紡糸口(10)が存在し、その装置または紡糸口(10)は、偏心したコア/シース構造を有する多成分フィラメントまたは二成分フィラメントが製造されることができるようにされ、フィラメント(2)のシース(3)が、フィラメント断面において、フィラメント円周の少なくとも20%、特に少なくとも25%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%、非常に好ましくは少なくとも40%にわたって、一定の厚さdまたは実質的に一定の厚さdを有し、フィラメント(2)は、堆積装置、特に堆積スクリーンベルト(20)上に堆積されることができるように設定されている。本発明の範囲内において当該装置がスパンボンド装置である。装置には、フィラメントを冷却するための冷却装置と、それに接続してフィラメントを伸ばすための延伸装置を備えていることが好ましい。さらに、装置は、延伸装置に接続された少なくとも1つのディフューザー(拡散装置)を備えていることが好ましい。-本発明の特に好ましい実施形態は、冷却装置および延伸装置からなるユニットが閉じたユニットとして設計され、冷却装置内の冷却空気の供給とは別に、外部からこのユニット内にさらなる空気が供給されないという点で特徴付けられる。
【0022】
本発明の範囲内においてフィラメントが堆積装置上または堆積スクリーンベルト上に堆積された後、繊維堆積物または不織ウエブの熱的な予備固結を行うことができる。この目的のために、本発明の好ましい実施態様によれば、少なくとも1つの熱予備固結装置が提供される。本発明の好ましい実施態様は、少なくとも1つの熱予備固結装置が、熱風予備固結装置として設計される点で特徴付けられる。熱予備固結装置は、熱風ナイフおよび/または少なくとも1つの熱風オーブンを有利に備えている。本発明の別の実施形態によれば、熱予備固結化または固結化は、加圧ローラまたは圧縮ローラで行うこともでき、かつ/または少なくとも1つのカレンダーを予備固結化または固結化に用いることができる。本発明による装置の好ましい実施形態によれば、堆積した不織布ウエブの熱予備固結化は、まず少なくとも1つの熱風ナイフ、特に熱風ナイフを用いて行われ、次いで、さらに熱予備固結化が少なくとも1つの熱風オーブン、特に熱風オーブンを用いて行われる。本発明の好ましい実施態様においては、スパンボンド不織布が熱風により予備固結化のみされ、かつ/または、熱風により最終固結化のみされることを特徴とする。-本発明は、本発明によるフィラメント断面において、一方ではフィラメントの全周が熱的な予備固結化に利用可能であり、他方では熱的な予備固結化または熱的な予備固結化の程度は、パラメータの標的選択、特にシースの厚さに選択によって増加させることができるという知見に基づき、予備固結化または熱的な予備固結化の程度は、一方では、不織布の最適な固結化が達成され、他方で、不織布の所望の厚さを維持するためにフィラメントのクリンプがあまり損なわれないようにすることができる。本発明の範囲内においては、特に、本発明によるフィラメント断面のために、特に厚さ、柔らかさおよび強度に関して、不織布特性の非常に簡単で標的化された設定が可能である。何よりも、本発明においては、クリンプは何の問題もなく調整することができ、したがって制御することができる。
【0023】
本発明による不織布は、一方では最適な厚さと柔らかさによって、他方では満足な強度または摩耗抵抗によって特徴付けられる。フィラメントのクリンピングは、本発明によるフィラメントの立体配置のために、所望の限界内に容易に保つことができ、その結果、本発明による開示の結果得られるのは制御可能なクリンプである。設定が容易である最適な強度と摩耗耐性で、ほとんど欠陥のない不織布を得ることができ、これは何よりも、本質的に破壊的な凝集体が存在しない。要約すると、本発明の範囲内では、不織布の強度特性と厚さまたは柔らかさ特性との間の最適な妥協を達成することができ、この妥協は、驚くほど均一なフィラメント体積を伴う簡単な方法で達成することができると言うことができる。
【0024】
本発明は、1つの例示的な実施形態のみを示す図を参照して、以下により詳細に説明される。それは模式図で示される:
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、エンドレスフィラメントの断面図である。a)従来の偏心したコアシース構造とb)本発明による偏心したコアシース構造を示す。
図2図2は、本発明によるエンドレスフィラメントの断面図を示す。
図3図3は、本発明によるエンドレスフィラメントのコアおよびシースの重心間の距離aが、シースの一定の厚さdの領域のエンドレスフィラメントのシースの厚さdに依存することを模式的に示す。
図4図4は、本発明によるスパンボンド不織布を製造するための本発明による装置の垂直断面図を示す。
【0026】
図1は、従来の偏心したコアシース構造を有するエンドレスフィラメント2の断面図(図1a)と、本発明による偏心したコアシース構造有するエンドレスフィラメント2の断面図(図1b)の比較を示す。どちらの場合も、フィラメントはシース3に熱可塑性成分の第1の成分と、コア4に熱可塑性でできた第2の成分との二成分フィラメントである。シース3中の成分は、コア4中の成分よりも融点が低い。図1bおよび図2は、また例示的な実施形態における本発明によるスパンボンド不織布1のためのエンドレスフィラメント2においては、フィラメント2のシース3が、フィラメント断面において、フィラメント円周の50%超にわたって一定の厚さdを有することが好ましいことを示している。好ましくは、例示的な実施形態では、フィラメント2のコア4は、フィラメント2のフィラメント断面の面積の65%超を占める。
【0027】
好ましい例示的な実施形態では、本発明によるフィラメント2のコア4が-フィラメント断面で見た場合-、円形のセグメントの形状で設計されている。例示的な実施形態において、コア4は、その円周に関して円弧状の円周断面5および線状の円周断面6を有する。実際には、例示的な実施形態では、コア4の円弧状円周断面は、コア4の円周の65%超を占める。例示的な実施形態においては、フィラメント断面で見た場合のフィラメント2のシース3は、一定の厚さdを有するシース領域の外側において円形のセグメントの形状で設計されている。シース3のこの円形のセグメント7は、その円周に関して、好ましい例示的な実施形態において、円弧状の円周断面8および線状の円周断面9を有している。
【0028】
好ましくは、その一定の厚さの領域におけるシース3の厚さdまたは平均の厚さdは、好ましくはフィラメント直径Dの1%~8%、特に2%~10%である。例示的な実施形態において、その一定の厚さの領域におけるシース3の厚さdは、0、2~3μmであってもよい。
【0029】
図2は、本発明によるエンドレスフィラメント2のシース3の重心からコア4の重心間の距離aを示す。コア4およびシース3の重心間のこの距離は、本発明によるエンドレスフィラメント2におけるコアおよびシース材料の所定の質量または面積比に対して、偏心したコアシース配置を有する従来のエンドレスフィラメント2よりも原則的に大きい。本発明によるフィラメント2のシース3の重心からのコア4の重心間の距離aは、好ましくはフィラメント直径Dまたは最大フィラメント直径Dの5~40%である。-図3は、本発明の好ましい実施態様において、本発明によるエンドレスフィラメント2のシース3の一定の厚さdに対するコア4の面積とシース3の中心間の距離の依存性を模式的に示す。
コア4の面積割合が75%、67%、50%の場合の依存性が示されている。シース3の距離aと一定のシース厚さdは、それぞれマイクロメートル単位で与えられる。ここに記載の本発明による下にあるエンドレスフィラメント2は、18μmのフィラメント直径Dを有する。
【0030】
以下の表は、コア:シースの面積比(75:25、67:33および50:50)の異なるフィラメント直径Dが18μmのエンドレスフィラメント2について、コア4とシース3の重心間の距離を示したものである。表の左側は、偏心したコアシース構成(本発明によるeC/Sフィラメント)を有する本発明によるエンドレスフィラメントについて、一定のシース厚dが1μmの場合についてのこれらの距離を示す。テーブルの右側には、従来の偏心したコアシース構成(従来のeC/Sフィラメント)を有するエンドレスフィラメント2について、コア4と外面との間の最小距離の点におけるシース厚さd’が1μmの場合の距離が示されている。中心体の距離aは、絶対値でμm、フィラメント直径Dに対する相対値(%)で示している。
【0031】
【表1】
【0032】
表から明らかなとおり、同じフィラメント直径Dを有し同じコア:シース面積比の場合の重心間の距離は、いずれも本発明によるコアシース構造を有するエンドレスフィラメント2の方が、従来のコアシース構造を有するエンドレスフィラメント2の場合よりも有意に大きいことが分かる。コア4の領域の重心とシース3の重心との間の距離を維持することは、特に重要な本発明の本質的特徴である。重心間の距離は、2つの材料からのクリンピング力(圧着力)が作用するレバーアームの代表であり、したがってクリンピングの程度に必須の因子である。
【0033】
好ましくは、例示的な実施形態では、本発明によるフィラメント2のコア4はポリプロピレンからなり、フィラメント2のシース3はポリエチレンからなる。これは、本発明の範囲内で非常によく証明されている特に好ましい実施形態である。本発明によれば、シース3の熱可塑性材料の融点は、本発明に係るエンドレスフィラメント2のコア4の熱可塑性材料の融点よりも低いことが、基本的に発明の範囲内である。
【0034】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明によるスパンボンド不織布1のエンドレスフィラメント2は、1.5~2.5デニール、好ましくは1.5~2.2デニール、好ましくは1.8~2.2デニールの繊度を有する。この繊度自体が技術的課題を解決する点で特に有用であることが証明されている。-また、本発明によるスパンボンド不織1は、熱的にあらかじめ固結されたスパンボンド不織布であり、特にエンドレスフィラメント2間の熱結合点または結合点を有するものであることも、本発明の範囲内である。特に好ましい実施態様によれば、本発明によるスパンボンド不織布1は、熱風によって熱的に予備固結化されたスパンボンド不織布1である。このようなスパンボンド不織布1は、技術的課題の解決の点で非常に有用であることが証明されている。
【0035】
図4は、本発明によるスパンボンド不織布1を製造するための本発明による装置を示し、この不織布1は、特にクリンプされたエンドレスフィラメント2からなる。スパンボンド装置は、エンドレスフィラメント2を紡糸するための紡糸口10または紡糸口金を含む。紡糸口10または装置は、エンドレスフィラメント2が、偏心コア-シース構成を有する多成分フィラメントまたは二成分フィラメントとして、すなわち、好ましくは、フィラメント断面において、シース3がフィラメント円周の少なくとも50%にわたって一定の厚さdを有するエンドレスフィラメント2として製造されるように設計されている。
【0036】
好ましくは、例示的な実施形態では、紡糸されたエンドレスフィラメント2は冷却チャンバ12を有する冷却装置11に導入される。適切な例示的な実施形態では、他方の上に1つ配置された空気供給キャビン13、14は、冷却チャンバ12の対向する2つの側面に配置されている。異なる温度の空気が、他方の上に配置された空気供給キャビン13、14から冷却チャンバ12に適宜に導入される。
【0037】
好ましい実施形態および図4による実施形態によれば、モノマー吸引装置15が、紡糸口10と冷却装置11との間に配置される。このモノマー吸引装置15では、紡糸工程中に発生する妨害ガスを装置から除去することができる。これらのガスは、例えば、単量体、オリゴマーまたは分解生成物および類似物質であり得る。
【0038】
冷却装置11のフィラメント流動方向の下流側において、エンドレスフィラメント2を伸長するための伸長装置16が設けられている。好ましい例示的な実施形態では、延伸装置16は、冷却装置11を延伸装置16の延伸シャフト18に接続する中間チャネル17を有する。特に好ましい実施形態および例示的な実施形態によれば、冷却装置11および延伸装置16からのユニットまたは冷却装置11、中間チャネル17および延伸シャフト18からのユニットは、閉鎖ユニットとして設計され、冷却装置11内の冷却空気の供給とは別に、外部からこのユニット内へのさらなる空気供給はない。
【0039】
好ましい例示的な実施形態では、エンドレスフィラメント2が誘導されるディフューザー19が、フィラメント流動方向に延伸装置16に隣接する。ディフューザー19を通過した後、好ましくは、例示的な実施形態において、堆積スクリーンベルト20として設計された堆積装置上に、エンドレスフィラメント2が堆積する。堆積スクリーンベルト20が好ましく、例示的な実施形態では、無限に回転する堆積スクリーンベルト20として設計されている。これは空気透過性を有するように設計されており、その結果、スクリーンベルト20を通して下から吸引することが可能となる。
【0040】
好ましい実施形態および例示的な実施形態によれば、ディフューザー19または、堆積スクリーンベルト20の直上に配置されたディフューザー19は、2つの対向するディフューザー壁を有し、2つの下位のディフューザー壁セクション21、22が提供され、これらはディフューザー19の中心面Mに対して非対称に設計されていることが好ましい。例示的な実施形態において、入口側ディフューザー壁セクション21は、出口側ディフューザー壁セクション22よりも拡散器19の中心面Mとともにより小さい角度βを形成する。この好ましい実施形態は、本発明の文脈において特に重要であり、特に技術的課題の解決に関してそれが特に有効であることが証明されている。入口側および出口側という用語は、ここでは、堆積スクリーンベルト20の走行方向、または不織布ウエブの搬送方向に関係する。
【0041】
本発明の好ましい実施形態によれば、ディフューザー19の流入端23には、対向する2つのディフューザー壁の一方に配置された対向する2つの二次空気注入口ギャップ24、25が各々配置されている。排出口側の二次空気入口ギャップ25を通るよりも低い二次空気容積流量が、堆積スクリーンベルト20の搬送方向に関して、入口側の二次空気入口ギャップ24を通って導入することが好ましい。この実施形態は、本発明の文脈においても特に重要である。
【0042】
好ましい例示的な実施形態では、吸引装置が少なくとも1つ存在し、この吸引装置によって、フィラメント2の堆積領域26の主吸引領域27において堆積スクリーンベルト20を通して空気またはプロセス空気を吸引することができる。堆積スクリーンベルト20の下方の主吸引領域27は、堆積スクリーンベルト20の入口領域、および堆積スクリーンベルト20の出口領域において、各々、吸引仕切り28によって区切られている。好ましくは、例示的な実施形態では、第2の吸引領域29は、主吸引領域27の下流で、堆積スクリーンベルト20の搬送方向に接続されており、この領域では、堆積スクリーンベルト20を通して空気またはプロセス空気を吸引することができる。第2吸引領域29の堆積スクリーンベルト20を通るプロセス空気の吸引速度vは、主吸引領域27の吸引速度vよりも低いことが好ましい。
【0043】
特に好ましい実施形態は、堆積スクリーンベルト20に面する吸引仕切り28の端部が、10~250mm、特に25~200mm、好ましくは28~150mm、好ましくは29~140mm、および非常に好ましくは30~120mmの堆積スクリーンベルト20に対して垂直距離Aを有する点で特徴付けられる。さらに好ましい実施形態によれば、堆積スクリーンベルト20に面するこの吸引仕切り28の領域において、堆積スクリーンベルト20に面する吸引仕切り28の上記端部を構成するスポイラー部30として設計された仕切りセクションが接続される。本発明の範囲内において、堆積スクリーンベルト20に面するこのスポイラー部30の末端は、残りの関連する吸引仕切り28の想像上の延長線から、垂直距離Aの少なくとも80%に相当する水平距離Cを有する。距離AとCは図には示されていない。-好ましい実施形態-図4に示す-によれば、吸引仕切り28は隔壁部分を有し、これは吸引仕切り28の残りの部分から角度をつけられ、スクリーンベルト側のスポイラー部分30として設計されている。例示的な実施形態では、このスポイラー部30は、主吸引領域27の出口側吸引仕切り28上に設けられる。本発明の証明された実施形態によれば、スポイラー部30は、スクリーンベルト20に面するさらなる反対の吸引仕切り28の仕切り壁部分よりも、スクリーンベルト表面に対して垂直方向を向いた垂直線に対してより角度がある。堆積スクリーンベルト20に面したさらに反対側の吸引仕切り28の対応する角度または屈曲した仕切り壁部分の投影部よりも、スポイラー部30は、堆積スクリーンベルト表面上へのその投影部の長さが大きい。スクリーンベルト側の端に関して、スポイラー部30は、堆積スクリーンベルト20に面するさらなる反対側の吸引仕切り28の仕切りセクションの端よりも、堆積スクリーンベルト20からより大きな距離にあることが好ましい。スポイラー部30を有する実施形態は、主吸引領域27から、堆積スクリーンベルト20の搬送方向に続く領域、特に第2吸引領域29への吸引速度の次の領域への非常に連続的な移行を保証する。スポイラー部30の配置によって、吸引速度の均一で連続的な定常的な減少を達成することができる。このようにして、例えば、主吸引領域27と第2吸引領域29との間の遷移領域における逆流効果(いわゆる吹き返し効果)による吸引速度の急激な変化によって生じる可能性がある、本発明の不織ウエブまたはスパンボンド不織布1の欠陥は、大部分回避することができる。したがって、スポイラー部30を有する実施形態は、本発明の技術的課題の解決に寄与する非常に好ましい実施形態である。
【0044】
好ましい例示的な実施形態では、不織ウエブの熱固結化のための少なくとも1つの熱予備固結装置が、堆積領域26の下流の不織ウエブの搬送方向に設けられる。熱予備固結装置は、第2吸引領域29に、またはその上に配置されることが望ましい。特に好ましい実施形態によれば、熱予備固結装置は熱風と共に作動し、主吸引領域27の下流に接続されているこの熱予備固結装置が熱風ナイフ31であることが特に好ましい。熱予備固結装置により、不織ウエブのフィラメント2間の接着点を簡単な方法で実現できる。全周を走る本発明のエンドレスフィラメント2のシース3は、熱結合点を形成するために非常に効果的に使用することができる。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも2つの熱予備固結装置が不織ウエブの予備固結化のために設けられる。不織布ウエブの搬送方向における第1の熱予備固結装置は、熱風ナイフ31であることが好ましく、好ましくは熱風炉32の形態の第2の熱予備固結装置が、この熱風ナイフ31の下流で、堆積スクリーンベルト20の搬送方向に接続するとよい。本発明の範囲内において、熱風炉32の領域においても堆積スクリーンベルト20を通して空気が吸引される。さらに、本発明の範囲内においては、堆積スクリーンベルト20によって吸引された空気の吸引速度が、主吸引領域27から、堆積スクリーンベルト20の搬送方向において、さらなる吸引領域に向かって減少する。
【0046】
図4は、紡糸口10、すなわち紡糸バーを有する本発明によるスパンボンド装置を示す。本発明によるスパンボンド装置が、2ビームシステムまたはマルチビームシステムの範囲で使用できることも、本発明の範囲内である。一実施形態によれば、本発明による複数スパンボンド装置は、ここでは順々に使用することができる。
図1a)】
図1b)】
図2
図3
図4
【国際調査報告】