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特表2022-542560線維芽細胞を標的とする多価作用物質、および使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-05
(54)【発明の名称】線維芽細胞を標的とする多価作用物質、および使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/54 20170101AFI20220928BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220928BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 41/00 20200101ALI20220928BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20220928BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20220928BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220928BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220928BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20220928BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
A61K47/54
A61P43/00 105
A61P35/00
A61K45/00
A61K41/00
A61K47/60
A61K47/64
A61K47/34
A61K47/42
A61K47/65
A61P43/00 111
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K31/7105
A61K31/713
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504111
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(85)【翻訳文提出日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 US2020043141
(87)【国際公開番号】W WO2021016392
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】62/877,039
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/910,764
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/933,655
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598063203
【氏名又は名称】パーデュー・リサーチ・ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】PURDUE RESEARCH FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ロウ フィリップ スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】シュリニヴァーサラオ マドゥリ
(72)【発明者】
【氏名】ムッカマーラ ラメシュ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA16
4C076AA19
4C076AA22
4C076AA29
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB14
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB22
4C076CC26
4C076CC27
4C076CC29
4C076EE23
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA11
4C084AA12
4C084AA17
4C084AA27
4C084MA05
4C084MA13
4C084MA16
4C084MA17
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA24
4C084MA28
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA44
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA10
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC202
4C084ZC412
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA16
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA24
4C086MA28
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA44
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA57
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA10
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC41
(57)【要約】
がんおよび他の線維性疾患における線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)陽性がん関連線維芽細胞(CAF)および活性化筋線維芽細胞の造影のための検出可能な作用物質および治療のための治療用物質などの、リガンドを標的とする多価活性作用物質が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造(Q-LQ)m-Y-LX-Xを有する化合物であって、
各Q-LQが、前記化合物のアームであり;
mが、前記化合物における(Q-LQ)アームの数であり;
mが、整数2、3、4、5、または6であり;
Qが、標的細胞上の線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合するリガンドであり;
LQがスペーサーであり、前記スペーサーが、(i)QをYに接続させ、かつ、(ii)前記標的細胞上の複数の隣接するFAPに前記化合物のアームが到達するための長さを提供し;
Yが、前記化合物の複数のアームが接続しているマルチポイントテンプレートであり;
LXが、XをYに接続させるスペーサーであり;かつ
Xが活性作用物質である、
前記化合物。
【請求項2】
Xが、検出可能な作用物質を含み、前記検出可能な作用物質が蛍光色素または放射線造影剤である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Xが治療用物質を含み、前記治療用物質が、光線力学的治療用物質、放射線治療剤、化学療法剤、抗線維化物質、抗がん剤、または前記のもののうちの2つもしくはそれ以上の組み合わせである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
Xが、放射線治療剤である治療用物質を含む、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
Qが、構造:
を有し、
ここで、
R1、R1 'が、同一であるかまたは異なり、かつ、-H、アルキル、アリール、ニトリル、-COOH、-B(OH)2、SO3H、およびPO3Hからなる群より独立して選択され;
R2、R2 'が、同一であるかまたは異なり、かつ、H、ハロ、ジハロ、アルキル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より独立して選択され;
R3が、H、CH3、アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールであり;かつ
R4が、H、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、ジハロ、ジアルキル、またはジアリールである、
請求項1記載の化合物。
【請求項6】
R2またはR2 'がジハロである、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
R2またはR2 'がジフルオロである、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
R3が-CH3である、請求項5記載の化合物。
【請求項9】
R3が-Hである、請求項5記載の化合物。
【請求項10】
R4がハロである、請求項5記載の化合物。
【請求項11】
ヘテロ環(
)が、
からなる群より選択される、請求項5記載の化合物。
【請求項12】
1つまたは複数のQがWと置き換えられ、各Wが独立して溶解性向上剤または薬物動態/薬力学(PK/PD)調節物質であり、かつ、2つまたはそれ以上のWが存在する場合にWが同一であってもよいかまたは異なっていてもよい、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項13】
LQが、オリゴエチレングリコール、ポリエチレングリコール、アルキル鎖、ペプチドグリカン、オリゴペプチド、またはポリペプチドを含む、請求項1~12のいずれか一項記載の化合物。
【請求項14】
LQがオリゴエチレングリコールまたはポリエチレングリコールを含む、請求項1~12のいずれか一項記載の化合物。
【請求項15】
LQがオリゴペプチドまたはポリペプチドを含む、請求項1~12のいずれか一項記載の化合物。
【請求項16】
LQがペプチドグリカンを含む、請求項1~12のいずれか一項記載の化合物。
【請求項17】
前記オリゴペプチドが、剛直であり、かつオリゴプロリンまたはオリゴピペリジンを含む、請求項15記載の化合物。
【請求項18】
LQが、15~200オングストロームの長さを有するスペーサーである、請求項1~12のいずれか一項記載の化合物。
【請求項19】
Yが、Xと2つのQの間の構造:
を含み、ここで、XおよびQが結合点である、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項20】
Yが、***と2つの**の間の構造:
を含み、ここで、**がYとLQの間の結合点を表し、かつ***がYとLXの間の結合点を表す、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項21】
Yが、Xと3つのQの間の構造または***と4つの**の間の構造:
を含み、ここで、XおよびQが結合点であり、**がYとLQの間の結合点を表し、かつ***がYとLXの間の結合点を表す、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項22】
Yが、2つのQとXの間の構造または2つの**と***の間の構造:
であるトリス(2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール)系テンプレートを含み、ここで、XおよびQが結合点であり、**がYとLQの間の結合点を表し、かつ***がYとLXの間の結合点を表す、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項23】
Yが、以下の構造:
のうちの1つを含み、ここで、**がYとLQの間の結合点を表し、かつ***がYとLXの間の結合点を表す、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項24】
Yが、以下の構造:
を含み、ここで、**がYとLQの間の結合点を表し、かつ***がYとLXの間の結合点を表す、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項25】
以下の構造:
を含む、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項26】
Yが三酸系テンプレートを含む、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項27】
Yがオリゴリシン系テンプレートを含む、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項28】
Yがトレブラーホスホロアミダイトテンプレートを含む、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項29】
Yがオリゴヒドロキシプロリノール系テンプレートを含む、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項30】
Yが、以下の構造:
を含み、ここで、**がYとLQの間の結合点を表し、かつ***がYとLXの間の結合点を表す、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項31】
(Q-LQ)m-Yが、以下の構造:
を含み、ここで、n=1~32かつm=2~6であり、かつ、Qが同一であってもよいかまたは異なっていてもよい、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項32】
LXが、以下の構造:
を含み、ここで、***がYとLXの間の結合点を表し、かつ****がXとLXの間の結合点を表す、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項33】
LXが、YとXの間の以下の構造:
のうちの1つを含み、ここで、n=0~10であり、かつXおよびYが結合点である、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項34】
LXが、以下の構造:
のうちの1つを含み、ここで、n=0~10であり、***がYとLXの間の結合点を表し、かつ****がXとLXの間の結合点を表す、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項35】
LXが、YとXの間の以下の構造:
のうちの1つを含み、ここで、n=1~32であり、かつXおよびYが結合点である、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項36】
LXが、以下の構造:
のうちの1つを含み、ここで、n=1~32であり、***がYとLXの間の結合点を表し、かつ****がXとLXの間の結合点を表す、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項37】
LXが、YおよびXを除いた以下の構造:
のうちの1つを含み、ここで、n=0~10であり、p=1~32であり、かつXおよびYが結合点である、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項38】
LXが、以下の構造:
のうちのいずれかを含み、ここで、n=0~10であり、p=1~32であり、***がYとLXの間の結合点を表し、かつ****がXとLXの間の結合点を表す、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項39】
LXが、YおよびXを除いた以下の構造:
のうちの1つを含み、ここで、n=1~32であり、p=1~32であり、かつXおよびYが結合点である、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項40】
LXが、以下の構造:
のうちの1つを含み、ここで、n=1~32であり、p=1~32であり、***がYとLXの間の結合点を表し、かつ****がXとLXの間の結合点を表す、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項41】
LXが、YおよびXを除いた以下の構造:
のうちの1つを含み、ここで、Wが、溶解性向上剤、PK/PD調節物質、または前記のもののいずれかもしくは両方のうちの2つもしくはそれ以上の組み合わせを含み、かつXおよびYが結合点である、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項42】
LXが、以下の構造:
のうちの1つを含み、ここで、Wが、溶解性向上剤、PK/PD調節物質、または前記のもののいずれかもしくは両方のうちの2つもしくはそれ以上の組み合わせを含み、かつ、***がYとLXの間の結合点を表しかつ****がXとLXの間の結合点を表す、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項43】
LXが、YおよびXを除いた以下の構造:
のうちの1つを含み、ここで、Wが、溶解性向上剤、PK/PD調節物質、または前記のもののいずれかもしくは両方のうちの2つもしくはそれ以上の組み合わせを含み、かつXおよびYが結合点である、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項44】
LXが、以下の構造:
のうちの1つを含み、ここで、Wが、溶解性向上剤、PK/PD調節物質、または前記のもののいずれかもしくは両方のうちの2つもしくはそれ以上の組み合わせを含み、かつ、***がYとLXの間の結合点を表しかつ****がXとLXの間の結合点を表す、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項45】
LXがオリゴエチレングリコールまたはポリエチレングリコールを含む、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項46】
LXがオリゴペプチドまたはポリペプチドを含む、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項47】
LXがペプチドグリカンを含む、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項48】
前記オリゴペプチドが、剛直であり、かつオリゴプロリンまたはオリゴピペリジンを含む、請求項46記載の化合物。
【請求項49】
Xが、400~1,000nmの範囲内の励起波長または発光波長を有する蛍光色素を含む、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項50】
Xが、650~850nmの範囲内の励起波長または発光波長を有する近赤外色素である蛍光色素を含む、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項51】
Xが、
からなる群より選択される構造を有するキレート基を含む、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項52】
Xが、
からなる群より選択される構造を有するキレート基を含む、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項53】
Xが、99mTc、111In、18F、68Ga、124I、125I、および131Iからなる群より選択される放射線造影剤に結合している、請求項51記載の化合物。
【請求項54】
Xが、99mTc、111In、18F、68Ga、124I、125I、および131Iからなる群より選択される放射線造影剤に結合している、請求項52記載の化合物。
【請求項55】
Xが、32P、89Sr、90Y、117mSn、131I、153Sm、169Er、177Lu、186Re、188Re、149Tb、211At、212Bi、213Bi、および225Acからなる群より選択される放射線治療剤に結合している、請求項51記載の化合物。
【請求項56】
Xが、32P、89Sr、90Y、117mSn、131I、153Sm、169Er、177Lu、186Re、188Re、149Tb、211At、212Bi、213Bi、および225Acからなる群より選択される放射線治療剤に結合している、請求項52記載の化合物。
【請求項57】
Xが、化学療法剤、有糸分裂阻害剤、DNAアルキル化剤、タンパク質合成阻害物質、代謝拮抗物質、および抗腫瘍抗生物質からなる群より選択される治療用物質を含む、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項58】
Xが、抗体、抗体フラグメント、毒素、siRNA、miRNA、shRNA、および標的タンパク質分解誘導キメラ(PROTAC)からなる群より選択される治療用物質を含む、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項59】
Xが、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)アイソフォームの阻害物質、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)アイソフォームの阻害物質、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)アイソフォームの阻害物質、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)の阻害物質、rho関連キナーゼ(ROCK)の阻害物質、接着斑キナーゼ(FAK)の阻害物質、SMADの阻害物質、および形質転換増殖因子β(TGFβ)受容体の阻害物質からなる群より選択される治療用物質を含む、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項60】
Xが、NF-κB(活性化B細胞の核内因子κ-軽鎖-エンハンサー)の阻害物質を含む、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項61】
すべてのQが同一である、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項62】
すべてのQが異なる、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項63】
以下の構造:
を有する、化合物。
【請求項64】
以下の構造:
を有する、化合物。
【請求項65】
以下の構造:
を有する、化合物。
【請求項66】
以下の構造:
を有する、化合物。
【請求項67】
以下の構造:
を有する、化合物。
【請求項68】
請求項1~67のいずれか一項記載の化合物および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項69】
がん関連線維芽細胞(CAF)または線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現細胞の近傍に活性作用物質を送達する方法であって、
前記方法が、請求項1記載の化合物をCAFまたはFAP発現細胞に投与する工程を含み、その結果、前記化合物が前記CAFまたはFAP発現細胞内に少なくとも24時間保持される、前記方法。
【請求項70】
対象における腫瘍または線維性組織の存在を検出する方法であって、
前記方法が、
(i)前記対象に請求項1記載の化合物を投与する工程、
(ii)前記対象内で前記化合物を検出する(例えば、光学的にまたは放射測定的に)工程、および
(iii)前記化合物の局在化に基づいて前記対象における腫瘍または線維化組織を同定する工程
を含み、その結果、前記対象において腫瘍または線維化組織の存在が検出される、前記方法。
【請求項71】
対象における腫瘍または線維性組織を治療する方法であって、
前記方法が、治療有効量の請求項1記載の化合物を前記対象に投与する工程を含み、その結果、前記対象が腫瘍または線維化組織に対して治療される、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、全体として参照により本明細書にすべて組み入れられる、2019年7月22日に出願の米国仮特許出願第62/877,039号、2019年10月4日に出願の米国仮特許出願第62/910,764号、および2019年11月11日に出願の米国仮特許出願第62/933,655号の優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本願は、リガンドと、がん関連線維芽細胞(CAF)を含む線維芽細胞を標的とする活性作用物質(例えば、治療用物質および造影剤)との多価化合物に関する。多価化合物の内部移行および滞留時間が腫瘍および他の患部において向上される。
【背景技術】
【0003】
背景
腫瘍微小環境(TME)、つまり腫瘍の周囲の環境(例えば、周囲の血管、免疫細胞、線維芽細胞、細胞外マトリクスなど)はがんの発生に役割を果たし得る。TMEの構成要素(例えば、重大な意味を持つ構成要素)のうちの1つはがん関連線維芽細胞(CAF)である。様々なサイトカイン、増殖因子、およびコラーゲンの分泌を通じて、CAFは腫瘍の生存、増殖、および転移を補助し得る。腫瘍またはCAF関連疾患を治療することに対する新規なアプローチの必要性に対処するために、CAFおよび/またはその表面上にあるターゲットを標的とする多価化合物が本明細書において提示される。
【0004】
CAFはそれらの細胞表面上に線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)を過剰発現し得、これは、がんの治療のための薬物およびがんの検出のための造影剤を送達するために、用いられ得る。FAPはプロリン-アミノ酸ペプチド結合を切断するII型膜結合型セリンプロテアーゼである。FAPを標的とした薬物および造影剤ががんおよび他の線維性疾患向けに最近になって報告されてきた。FAPリガンドを標的とした薬物および造影剤は公知であるが、それらの有用性は患部でのそれらの内部移行の悪さおよび滞留時間の短さによって限定的である。疾患部位での内部移行が増加しかつ滞留時間がより長い、FAPリガンドを標的とする薬物および造影剤を開発する必要性が依然として存在している。
【発明の概要】
【0005】
概要
構造(Q-LQ)m-Y-LX-Xを有する多価化合物(またはコンジュゲート)が提供され、
ここで、
各Q-LQは多価化合物のアームであり;
mは、多価化合物における(Q-LQ)アームの数であり、かつ整数2、3、4、5、または6であり;
Qは、標的細胞上の線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合するリガンドであり;
LQはスペーサーであり、スペーサーは、(i)QをYに接続させ、かつ、(ii)標的細胞上の複数の隣接するFAPに多価化合物のアームが到達するための長さを提供し;
Yは、多価化合物の複数のアームが接続しているマルチポイントテンプレートであり;
LXは、XをYに接続させるスペーサーであり;かつ
Xは活性作用物質である。
【0006】
多価化合物は、構造:
を有し得る。
【0007】
多価化合物は、構造:
を有し得る。
【0008】
多価化合物および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物も提供される。
【0009】
CAFまたはFAP発現細胞の近傍に活性作用物質を提供する方法がさらに提供される。方法はCAFまたはFAP発現細胞に化合物を投与する工程を含み、かつ化合物はCAFまたはFAP発現細胞内またはその表面上に少なくとも24時間保持される。
【0010】
CAFまたはFAP発現細胞の近傍に活性作用物質を提供する方法がまたさらに提供される。方法は、複数のCAFまたはFAP発現細胞を含むかまたは含むことが疑われる対象に化合物を投与する工程を含み、ここで、化合物はCAFまたはFAP発現細胞内に少なくとも24時間保持される。
【0011】
対象における腫瘍または線維化組織を検出する方法も提供される。本方法は、(i)その必要がある対象に化合物を投与する工程、(ii)対象内で化合物を検出する(例えば、光学的にまたは放射測定的に)工程、および(iii)化合物の局在化に基づいて対象における腫瘍または線維化組織を同定する工程を含む。
【0012】
対象における腫瘍または線維化組織を治療する方法も提供される。方法は治療有効量の化合物を対象に投与する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】2つの同一のペプチド鎖で構成される2.6Å分解能結晶構造(PDBコード:1z68)に基づく線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の二量体空間充填モデルである。
図2図1に示される結晶構造由来モデルに基づいた、FAPの活性部位の深さである。
図3】活性作用物質(例えば、治療または造影剤)の送達のための(Q-LQ)2マルチポイントテンプレートの例示的な合成である。
図4A】活性作用物質Xによる官能基付与前のtert-ブチルオキシカルボニル(Boc)保護(Q-LQ)2-Y-LX-Bocマルチポイントテンプレートの例示的な合成である。
図4B】Boc脱保護およびローダミンカップリング後のローダミン系活性作用物質であるローダミン化合物の合成である。
図5-1】活性作用物質としてのS0456系色素を有する多価コンジュゲートの例示的な合成である。
図5-2】活性作用物質としてのS0456系色素を有する多価コンジュゲートの例示的な合成である。
図6-1】多価コンジュゲート6bの液体クロマトグラフィー・質量分析(LC-MS)図形を示す。
図6-2】多価コンジュゲート6bの液体クロマトグラフィー・質量分析(LC-MS)図形を示す。
図6-3】多価コンジュゲート6bの液体クロマトグラフィー・質量分析(LC-MS)図形を示す。
図7-1】多価コンジュゲートの液体クロマトグラフィー・質量分析(LC-MS)図形を示す。
図7-2】多価コンジュゲートの液体クロマトグラフィー・質量分析(LC-MS)図形を示す。
図7-3】多価コンジュゲートの液体クロマトグラフィー・質量分析(LC-MS)図形を示す。
図8図8A~Dは、共焦点顕微鏡を用いた(Q-LQ)1-Y-LX-X「モノFAP」および(Q-LQ)2-Y-LX-X「デュアルFAP」多価化合物についての結合研究を示す。1時間および8時間後に取得した読取値は、37℃で1時間培養した後ではモノFAPおよびデュアルFAP化合物の両方で細胞における有意な保持を示す。8時間の培養後では、デュアルFAP化合物は細胞内で明確に視認可能なままであったが、モノFAP化合物は同等の条件下では検出能が大幅に低下していた。
図9図9A~Cは、24時間および48時間の培養後の共焦点顕微鏡を用いたモノFAPおよびデュアルFAP多価化合物についての結合研究を表す。デュアルFAPコンジュゲートは最大で48時間まで細胞内に保持された。
図10図10A~Bは、12.5および25nM濃度での非FAP HT1080細胞に対するデュアルFAP多価化合物の結合研究を表しており、デュアルFAP化合物の結合がFAP特異的であることを示している。
図11図11A~Dは、多価化合物6bの投与の18時間、24時間、および48時間後におけるKB腫瘍担持マウスに対する多価化合物6bのインビボ造影を示す。
図12図12A~Cは、多価コンジュゲート6bの投与の72時間、96時間、および114時間後におけるKB腫瘍担持マウスに対する多価化合物6bのインビボ造影を示す。
図13図13A~Bは、注射の114時間後におけるデュアルFAP多価化合物6bの生体内分布を表す。
図14図14A~Bは、検出可能な多価化合物と100倍過剰の非標識多価化合物との間でのマウスにおける競合実験を示す。過剰の非標識化合物の非存在下(ターゲティング)では、検出可能な化合物の取り込みは過剰の非標識色素の存在下(競合)よりも有意に多かった。これらのデータは腫瘍への取り込みがFAP介在性であることを示している。ターゲティングおよび競合対象の両方が腎臓において生体蓄積を示した。
図15図15A~Gは、KB腫瘍を担持するマウスにおける48時間の期間にわたるモノFAP多価化合物の経時的研究を示す。左のマウスにはモノFAP化合物のみを与えた一方で、右のマウスには100倍過剰の非標識FAPリガンドで前処理した。前処理したマウスにおいて検出可能なシグナルがないことは、コンジュゲートのFAP介在的保持を示した。
図16図16A~Dは、検出可能なS0456活性作用物質を担持するデュアルFAPおよびモノFAP多価化合物間の比較を示す。デュアルFAP化合物は48時間より長く保持された一方で、モノFAPコンジュゲートは注射の48時間後ではほぼ検出不可能であった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
定義
便宜上、さらなる説明の前に、明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲において採用したいくつかの用語をここにまとめる。これらの定義は本開示の残りの部分に照らして読まれかつ当業者によってなされるように理解されたい。特に定義した場合を除いて、本明細書において用いられる技術用語および科学用語はすべて当業者によって通常解釈されるものと同じ意味を有する。
【0015】
いくつかの用語および表現は下でおよび明細書の全体を通じて定義される。
【0016】
本明細書において用いられる冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は冠詞の文法上の目的語の1つまたは複数(即ち、少なくとも1つ)を指す。例を挙げると、「要素(an element)」は1つの要素または1つより多い要素を意味する。
【0017】
明細書においておよび特許請求の範囲においては、ここで用いられるように「および/または」という表現は、そのように繋がった要素の「いずれかまたは両方」、即ち、場合によっては繋がって存在し、別の場合では離れて存在する要素を意味すると理解されたい。「および/または」を用いて列挙された複数の要素は同様に、即ち、そのように繋がった要素の「1つまたは複数」と解釈されたい。「および/または」節によって具体的に特定された要素以外の他の要素が、具体的に特定された要素に関連しているかどうかに関わらず、任意で存在してもよい。よって、非限定的な例としては、「含む」などのオープンエンドの表現と組み合わせて用いられた場合、「Aおよび/またはB」への言及はAのみを指すか(任意でB以外の要素を含む);またはBのみを指すか(任意でA以外の要素を含む);またはさらにAおよびBの両方(任意で他の要素を含む);などを指し得る。
【0018】
明細書および特許請求の範囲においては、ここで用いられるように「または」は、上に規定する「および/または」と同じ意味を有すると理解されたい。例えば、リスト中の項目を分ける場合、「または」または「および/または」は包括的である、即ち、多数のまたはリストの要素のうちの少なくとも1つを含むが、1つより多くのものも含み、任意で、付加的なリストされていない要素も含むと解釈されるものとする。対照的なことが明確に示されている語、例えば「~のうちの1つのみ」または「~のうちの厳密に1つ」または特許請求の範囲において用いられる場合は「~からなる」のみが、多数のまたはリストの要素のうちの厳密に1つが含まれることを指している。概して、本明細書において用いられる「または」という語は「どちらか」、「~のうちの1つ」、「~のうちの1つのみ」または「~のうちの厳密に1つ」などの排他的な語が先行する場合にのみ排他的な選択肢(すなわち「一方または他方であるが両方ではない」)を示すと解釈されるものとする。特許請求の範囲において用いられる場合、「~から実質的になる」は特許法の分野で用いられるその通常の意味を有するものとする。
【0019】
明細書および特許請求の範囲においては、ここで用いられるように1つまたは複数の要素のリストに関連する「少なくとも1つ」という表現は、要素のリストにおけるいずれか1つまたは複数の要素より選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されたいが、必ずしも要素のリストのうちの特にリストした全ての要素のうちの少なくとも1つを含むものではなく、要素のリストにおける要素の任意の組み合わせを除外するものではない。この規定はまた「少なくとも1つ」という表現が指す要素のリスト内で具体的に特定される要素以外の要素が、具体的に特定された要素に関連しているかどうかに関わらず、任意で存在してもよいことを許容する。よって、非限定的な例としては、「AおよびBの少なくとも1つ」(または同様に「AまたはBの少なくとも1つ」または同様に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、任意で1つより多いAを含む少なくとも1つのAが存在し、Bが存在しない(任意でB以外の要素を含む)こと;または任意で1つより多いBを含む少なくとも1つのBが存在し、Aが存在しない(任意でA以外の要素を含む)こと;または、さらに、任意で1つより多いAを含む少なくとも1つのAが存在し、任意で1つより多いBを含む少なくとも1つのBが存在する(任意で他の要素を含む)こと;などを指し得る。
【0020】
2つ以上の工程または行為を含む本明細書においてクレームした任意の方法において、対照的なことが明確に示されている場合を除いて、方法の工程または行為の順序は、方法の工程または行為が記載された順序に必ずしも限定されないということも理解されたい。
【0021】
特許請求の範囲において、ならびに明細書において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「保有する(carrying)」、「有する(having)」「含有する(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」、「~から構成される(composed of)」などの移行句はいずれもオープンエンドである、即ち、~を非限定的に含む、を意味すると理解されたい。
【0022】
本明細書において用いられるように、「投与する」という用語は本明細書において記載の化合物および組成物を宿主動物に導入する、経口(po)、静脈内(iv)、筋肉内(im)、皮下(sc)、経皮、吸入、頬側、眼、舌下、膣、直腸などを非限定的に含むあらゆる手段を含む。本明細書において記載の化合物および組成物は従来の非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント、および/またはベヒクルを含有する単位剤形および/または製剤中で投与されてもよい。
【0023】
特に記載しない限り、「約」という用語は、パーセンテージの場合は、プラスまたはマイナス10%、単位値の場合はプラスまたはマイナス1.0単位の範囲の値を指し、例えば、約1.0は0.9~1.1の範囲の値を指す。
【0024】
本明細書において用いられるように、「投与する」という用語は概して、本明細書において記載の化合物を宿主対象に導入する、経口、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、吸入、頬側、眼、舌下、膣、直腸などの投与経路を非限定的に含むありとあらゆる手段を指す。本明細書において記載の化合物は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体、アジュバント、希釈剤、賦形剤、および/またはベヒクル、およびそれらの組み合わせを含有する単位剤形ならびに/または組成物中で投与されてもよい。
【0025】
塩としての本開示の化合物の投与が適切なことがある。許容される塩の例はアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウムもしくはリチウム)またはアルカリ土類金属(例えば、カルシウム)の塩を非限定的に含むが、しかしながら、治療される対象に投与された際に概して非毒性でありかつ効果的である任意の塩が許容される。同様に、「薬学的に許容される塩」とは薬剤に用いられることがある対イオンを有する塩を指す。そのような塩は、(1)親化合物の遊離塩基と、塩酸、臭化水素酸、硝酸、リン酸、硫酸、過塩素酸などの無機酸との、または酢酸、シュウ酸、(D)もしくは(L)リンゴ酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸またはマロン酸などの有機酸との反応により取得し得る酸付加塩;または(2)親化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、またはアルミニウムイオンと置き換えられるか、またはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメタミン、N-メチルグルカミンなどの有機塩基と配位した際に形成される塩を非限定的に含むことがある。薬学的に許容される塩は当業者に周知であり、任意のそのような薬学的に許容される塩が本明細書において記載の態様に関連して企図されることがある。
【0026】
許容される塩は、十分に酸性の化合物を好適な塩基と反応させて生理学的に許容される陰イオンを与えることを(非限定的に)含む、当技術分野で公知の標準的な手順を用いて得られることがある。好適な酸付加塩は非毒性塩を形成する酸から形成される。説明例は、非限定的ではあるが、酢酸、アスパラギン酸、安息香酸、ベシル酸、重炭酸/炭酸、重硫酸/硫酸、ホウ酸、カンシル酸、クエン酸、エジシル酸、エシル酸、ギ酸、フマル酸、グルセプト酸、グルコン酸、グルクロン酸、ヘキサフルオロリン酸、ヒベンズ酸、塩酸/塩化物、臭化水素酸/臭化物、ヨウ化水素酸/ヨウ化物、イセチオン酸、乳酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、メシル酸、メチル硫酸、ナフチル酸、2-ナプシル酸、ニコチン酸、硝酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸/リン酸水素/リン酸二水素、サッカリン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、トシル酸およびトリフルオロ酢酸の塩を含む。本明細書において記載の化合物の好適な塩基塩は非毒性塩を形成する塩基から形成される。説明例は、非限定的ではあるが、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオラミン、グリシン、リジン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミンおよび亜鉛の塩を含む。酸および塩基の半塩、例えば、半硫酸塩および半カルシウム塩が形成されることがある。
【0027】
「アルキル」という用語は炭素原子の直鎖(即ち、非分岐)、分岐鎖、もしくは環状配列、またはそれらの任意の組み合わせを意味する。本明細書において用いられるアルキルは一価、二価、三価、または四価のラジカルを含む。一価の炭化水素ラジカルの例はメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロブチルなどの基、または同族体および異性体(例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなど)を非限定的に含む。二価ラジカルの例は、非限定的な例として、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、シクロプロピレンなどを含む。三価および四価のアルキルは、置換時に三級または四級炭素接合を形成する三置換および四置換炭素ラジカルを含む。アルキルは任意の原子数に限定されず、特に明記しない限り、単一の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子、4個の炭素原子、5個の炭素原子、6個の炭素原子、またはそれ以上を含んでもよい。アルキルは、例えば、C1~C10の範囲内で規定されてもよく、これは炭素原子がアルキル基に1~10個含まれることを示す。アルキルは任意の配向の6個の炭素原子を含むC1~C6として規定されてもよい(例えば、n-ヘキシル、シクロヘキシルなど)。アルキルは複数の繰り返しサブユニットを含んでもよい(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)。アルキルはC1~C10アルキル、C1~C9アルキル、C1~C8アルキル、C1~C7アルキル、C1~C6アルキル、C1~C5アルキル、C1~C4アルキル、C1~C3アルキル、C1~C2アルキル、またはC1アルキルであり得る。本明細書において特に記載されない限り、アルキル基は、例えば、オキソ、ハロゲン、アミノ、ニトリル、ニトロ、ヒドロキシル、ハロアルキル、アルコキシ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールなどで置換されていてもよい。アルキルはオキソ、ハロゲン、-CN、-CF3、-OH、-OMe、-NH2、または-NO2で置換されていてもよい。アルキルはオキソ、ハロゲン、-CN、-CF3、-OH、または-OMeで置換されていてもよい。アルキルはハロゲンで置換されていてもよい。
【0028】
「アルケニル」という用語は炭素原子の直鎖(即ち、非分岐)、分岐鎖、もしくは環状配列、またはそれらの任意の組み合わせを意味し、ここで少なくとも1つの結合は不飽和であり、それによって二重結合が形成されている。基は二重結合のまわりでシスまたはトランス配座のいずれかになっていてもよく、両方の異性体を含むと理解されたい。例はエテニル(-CH=CH2)、1-プロペニル(-CH2CH=CH2)、イソプロペニル[-C(CH3)=CH2]、ブテニル、1,3-ブタジエニルなどを非限定的に含む。本明細書において出現する場合は常に、「C2~C6アルケニル」などの数値範囲はアルケニル基が2個の炭素原子、3個の炭素原子、4個の炭素原子、5個の炭素原子または6個の炭素原子からなっていてもよいことを意味しているが、本定義は数値範囲が指定されていない「アルケニル」という用語の出現も対象にしている。アルケニルはC2~C10アルケニル、C2~C9アルケニル、C2~C8アルケニル、C2~C7アルケニル、C2~C6アルケニル、C2~C5アルケニル、C2~C4アルケニル、C2~C3アルケニルまたはC2アルケニルであり得る。本明細書において特に記載のない限り、アルケニル基は、例えば、オキソ、ハロゲン、アミノ、ニトリル、ニトロ、ヒドロキシル、ハロアルキル、アルコキシ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールなどで置換されていてもよい。アルケニルはオキソ、ハロゲン、-CN、-CF3、-OH、-OMe、-NH2、または-NO2で置換されていてもよい。アルケニルはオキソ、ハロゲン、-CN、-CF3、-OH、または-OMeで置換されていてもよい。アルケニルはハロゲンで置換されていてもよい。
【0029】
「アルキニル」は、1つまたは複数の炭素-炭素三重結合を有する、置換されていてもよい直鎖または置換されていてもよい分枝鎖炭化水素モノラジカルを指す。例はエチニル、2-プロピニル、2-ブチニル、1,3-ブタジイニルなどを非限定的に含む。本明細書において出現する場合は常に、「C2~C6アルキニル」などの数値範囲はアルキニル基が2個の炭素原子、3個の炭素原子、4個の炭素原子、5個の炭素原子または6個の炭素原子からなっていてもよいことを意味しているが、本定義は数値範囲が指定されていない「アルキニル」という用語の出現も対象にしている。アルキニルはC2~C10アルキニル、C2~C9アルキニル、C2~C8アルキニル、C2~C7アルキニル、C2~C6アルキニル、C2~C5アルキニル、C2~C4アルキニル、C2~C3アルキニル、またはC2アルキニルであり得る。本明細書において特に記載されない限り、アルキニル基は、例えば、オキソ、ハロゲン、アミノ、ニトリル、ニトロ、ヒドロキシル、ハロアルキル、アルコキシ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールなどで置換されていてもよい。アルキニルはオキソ、ハロゲン、-CN、-CF3、-OH、-OMe、-NH2、または-NO2で置換されていてもよい。アルキニルはオキソ、ハロゲン、-CN、-CF3、-OH、または-OMeで置換されていてもよい。アルキニルはハロゲンで置換されていてもよい。
【0030】
「アミノアルキル」は、1つまたは複数のアミンによって置換された、上に規定したアルキルラジカルを指す。アルキルは1個のアミンで置換され得る。アルキルは1、2、または3個のアミンで置換され得る。ヒドロキシアルキルは、例えば、アミノメチル、アミノエチル、アミノプロピル、アミノブチル、またはアミノペンチルを含む。ヒドロキシアルキルはアミノメチルであり得る。
【0031】
「アリール」は、水素、6~30個の炭素原子および少なくとも1個の芳香環を含む炭化水素環系に由来するラジカルを指す。アリールラジカルは単環式、二環式、三環式または四環式の環系であってもよく、これは縮合(シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル環と縮合した場合、アリールは芳香環原子を通じて結合する)または架橋環系を含んでもよい。アリールは6~10員アリールであり得る。アリールは6員アリールであり得る。アリールラジカルはアントリレン、ナフチレン、フェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、フルオランテン、フルオレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、フェナレン、フェナントレン、プレイアデン、ピレン、およびトリフェニレンの炭化水素環系に由来するアリールラジカルを非限定的に含む。アリールはフェニルであり得る。本明細書において特に記載されていない限り、アリールは、例えば、ハロゲン、アミノ、ニトリル、ニトロ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アルコキシ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールなどで置換されていてもよい。アリールはハロゲン、メチル、エチル、-CN、-CF3、-OH、-OMe、-NH2、または-NO2で置換されていてもよい。アリールはハロゲン、メチル、エチル、-CN、-CF3、-OH、または-OMeで置換されていてもよい。アリールはハロゲンで置換されていてもよい。
【0032】
「シクロアルキル」は安定な部分的にまたは完全に飽和した単環式または多環式の炭素環式環を指し、これは縮合(アリールまたはヘテロアリール環と縮合した場合、シクロアルキルは非芳香環原子を通じて結合する)または架橋環系を含んでもよい。代表的なシクロアルキルは3~15個の炭素原子(C3~C15シクロアルキル)、3~10個の炭素原子(C3~C10シクロアルキル)、3~8個の炭素原子(C3~C8シクロアルキル)、3~6個の炭素原子(C3~C6シクロアルキル)、3~5個の炭素原子(C3~C5シクロアルキル)、または3~4個の炭素原子(C3~C4シクロアルキル)を有するシクロアルキルを非限定的に含む。シクロアルキルは3~6員シクロアルキルであり得る。シクロアルキルは5~6員シクロアルキルであり得る。単環式シクロアルキルは、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルを含む。多環式シクロアルキルまたは炭素環は、例えば、アダマンチル、ノルボルニル、デカリニル、ビシクロ[3.3.0]オクタン、ビシクロ[4.3.0]ノナン、シス-デカリン、トランス-デカリン、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2] オクタン、ビシクロ[3.2.2]ノナン、およびビシクロ[3.3.2]デカン、および7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタニルを含む。部分的に飽和したシクロアルキルは、例えば、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、およびシクロオクテニルを含む。部分的に飽和した二環式シクロアルキルのいくつかの例は、非限定的な例として、テトラヒドロナフタレン、ジヒドロナフタレン、インダン、インデン、およびジヒドロアントラセンを含む。本明細書において特に記載されない限り、シクロアルキルは、例えば、オキソ、ハロゲン、アミノ、ニトリル、ニトロ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アルコキシ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールなどで置換されていてもよい。シクロアルキルはオキソ、ハロゲン、メチル、エチル、-CN、-CF3、-OH、-OMe、-NH2、または-NO2で置換されていてもよい。シクロアルキルはオキソ、ハロゲン、メチル、エチル、-CN、-CF3、-OH、または-OMeで置換されていてもよい。シクロアルキルはハロゲンで置換されていてもよい。
【0033】
「ハロアルキル」は、1つまたは複数のハロゲン原子によって置換された、上に規定したアルキルラジカルを指す。アルキルは1、2、または3個のハロゲン原子で置換され得る。アルキルは1、2、3、4、5、または6個のハロゲンで置換され得る。ハロアルキルは、例えば、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、トリクロロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,2-ジフルオロエチル、3-ブロモ-2-フルオロプロピル、1,2-ジブロモエチルなどを含む。ハロアルキルはトリフルオロメチルであり得る。二価アルキルは-CF2-、-CCl2-などのジェミナルジハロゲン置換を形成する2個のハロゲンで置換され得る。
【0034】
「ハロ」または「ハロゲン」はブロモ、クロロ、フルオロまたはヨードを指す。ハロゲンはフルオロまたはクロロであり得る。ハロゲンはフルオロであり得る。
【0035】
「ヘテロアルキル」は、アルキルの1つまたは複数の骨格原子が炭素以外の原子、例えば、酸素、窒素(例えば、-NH-、-N(アルキル)-)、硫黄、またはそれらの組み合わせより選択されるアルキル基を指す。ヘテロアルキルはヘテロアルキルの炭素原子にて分子の残りの部分に結合し得る。ヘテロアルキルはC1~C6ヘテロアルキルであり得、ここでヘテロアルキルは1~5個の炭素原子と、炭素以外の1つまたは複数の原子、例えば、酸素、窒素、硫黄、またはそれらの組み合わせから構成される。炭素原子またはヘテロ原子は酸化されていてもよい(例えば、-C(O)OCH2-、-CH2S(O)2NHCH2-、-NHC(O)NHCH2、-CH2NHC(O)CH2)。そのようなヘテロアルキルのさらなる例は、例えば、-CH2OCH3、-CH2CH2OCH3、-CH2CH2OCH2CH2OCH3、または-CH(CH3)OCH3である。本明細書において特に記載されない限り、ヘテロアルキルは、例えば、オキソ、ハロゲン、アミノ、ニトリル、ニトロ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アルコキシ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールなどで置換されていてもよい。ヘテロアルキルはオキソ、ハロゲン、メチル、エチル、-CN、-CF3、-OH、-OMe、-NH2、または-NO2で置換されていてもよい。ヘテロアルキルはオキソ、ハロゲン、メチル、エチル、-CN、-CF3、-OH、または-OMeで置換されていてもよい。ヘテロアルキルはハロゲンで置換されていてもよい。
【0036】
「ヘテロアリール」は、水素原子、1~13個の炭素原子、窒素、酸素、リンおよび硫黄からなる群より選択される1~6個のヘテロ原子、ならびに少なくとも1個の芳香環を含む、5~14員環系ラジカルを指す。ヘテロアリールラジカルは単環式、二環式、三環式または四環式環系であってもよく、これは縮合(シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル環と縮合した場合、ヘテロアリールは芳香環原子を通じて結合する)または架橋環系を含んでもよく;ヘテロアリールラジカル中の窒素、炭素または硫黄原子は酸化されていてもよく;窒素原子は四級化されていてもよい。ヘテロアリールは5~10員ヘテロアリールであり得る。ヘテロアリールは5~6員ヘテロアリールであり得る。例はアゼピニル、アクリジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾインドリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾ[b][1,4]ジオキセピニル、1,4-ベンゾジオキサニル、ベンゾナフトフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキシニル、ベンゾピラニル、ベンゾピラノニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラノニル、ベンゾチエニル(ベンゾチオフェニル)、ベンゾトリアゾリル、ベンゾ[4,6]イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、フラニル、フラノニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリル、インダゾリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、イソキノリル、インドリジニル、イソキサゾリル、ナフチリジニル、オキサジアゾリル、2-オキソアゼピニル、オキサゾリル、オキシラニル、 1-オキシドピリジニル、1-オキシドピリミジニル、1-オキシドピラジニル、1-オキシドピリダジニル、1-フェニル-1H-ピロリル、フェナジニル、 フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピロリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、キヌクリジニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニル、およびチオフェニル(即ち、チエニル)を非限定的に含む。本明細書において特に記載されない限り、ヘテロアリールは、例えば、ハロゲン、アミノ、ニトリル、ニトロ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アルコキシ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールなどで置換されていてもよい。ヘテロアリールはハロゲン、メチル、エチル、-CN、-CF3、-OH、-OMe、-NH2、または-NO2で置換されていてもよい。ヘテロアリールはハロゲン、メチル、エチル、-CN、-CF3、-OH、または-OMeで置換されていてもよい。ヘテロアリールはハロゲンで置換されていてもよい。
【0037】
「ヘテロシクロアルキル」は2~23個の炭素原子と窒素、酸素、リンおよび硫黄からなる群より選択される1~8個のヘテロ原子とを含む安定した3~24員の部分的にまたは完全に飽和した環状ラジカルを指す。ヘテロシクロアルキルは窒素および酸素より選択される1つまたは2つのヘテロ原子を含み得る。明細書において特に記載のない場合は、ヘテロシクロアルキルラジカルは単環式、二環式、三環式または四環式環系であってもよく、これは縮合(アリールまたはヘテロアリール環と縮合した場合、ヘテロシクロアルキルは非芳香環原子を通じて結合する)または架橋環系を含んでもよく;ヘテロシクロアルキルラジカル中の窒素、炭素または硫黄原子は酸化されていてもよく;窒素原子は四級化されていてもよい。代表的なヘテロシクロアルキルは2~15個の炭素原子(C2~C15ヘテロシクロアルキル)、2~10個の炭素原子(C2~C10ヘテロシクロアルキル)、2~8個の炭素原子(C2~C8ヘテロシクロアルキル)、2~6個の炭素原子(C2~C6ヘテロシクロアルキル)、2~5個の炭素原子(C2~C5ヘテロシクロアルキル)、または2~4個の炭素原子(C2~C4ヘテロシクロアルキル)を有するヘテロシクロアルキルを非限定的に含む。ヘテロシクロアルキルは3~6員ヘテロシクロアルキルであり得る。シクロアルキルは5~6員ヘテロシクロアルキルであり得る。そのようなヘテロシクロアルキルラジカルの例はアジリジニル、アゼチジニル、ジオキソラニル、チエニル[1,3]ジチアニル、デカヒドロイソキノリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、オキサゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、キヌクリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロフリル、トリチアニル、テトラヒドロピラニル、チオモルホリニル、チアモルホリニル、1-オキソ-チオモルホリニル、1,1-ジオキソ-チオモルホリニル、1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-1-イル、3-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-1-イル、メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イル、および2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イルを非限定的に含む。ヘテロシクロアルキルという用語は、単糖、二糖およびオリゴ糖を非限定的に含む、炭水化物のすべての環形態も含む。ヘテロシクロアルキル中の炭素原子の数に言及する場合、ヘテロシクロアルキル中の炭素原子の数は、ヘテロシクロアルキル(即ち、ヘテロシクロアルキル環の骨格原子)を構成する原子の総数(ヘテロ原子を含む)と同じではないと理解される。本明細書において特に記載されない限り、ヘテロシクロアルキルは、例えば、オキソ、ハロゲン、アミノ、ニトリル、ニトロ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アルコキシ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールなどで置換されていてもよい。ヘテロシクロアルキルはオキソ、ハロゲン、メチル、エチル、-CN、-CF3、-OH、-OMe、-NH2、または-NO2で置換されていてもよい。ヘテロシクロアルキルはオキソ、ハロゲン、メチル、エチル、-CN、-CF3、-OH、または-OMeで置換されていてもよい。ヘテロシクロアルキルはハロゲンで置換されていてもよい。
【0038】
「治療有効量」または「有効量」は、単回用量として、または所望の効果を生じるのに効果的である一連の用量の一部として、対象(例えば、ヒトなどの哺乳類)に投与される化合物の量を指す。有効量は治療効果を生じるのに必要な量であり得る。有効量は画像または他の検出可能な読取値を生じるのに必要な量であり得る。有効量は、体積、質量単位での体積、体積単位での体積、質量、体積単位での質量、濃度、放射活性(例えば、キュリー、ラド、ベクレル)、または当技術分野で公知の任意の他の測定基準で測定され得る。
【0039】
「治療用物質」は所望の生理学的応答を生じることが可能な任意の実体を含む。治療用物質は抗線維化薬、抗がん剤、化学療法薬、放射線治療薬などを含んでもよい。
【0040】
対象(例えば、ヒトなどの哺乳類)の「治療」は対象の自然経過を変更しようとして用いられる任意のタイプの介入を含む。治療は病的事象の開始または病因物質との接触後の薬学的組成物の投与を含み得、状態の安定化(例えば、状態が悪化しない、例えば、がんが転移しないなど)または状態の緩和(例えば、腫瘍の大きさの縮小、がんの寛解、自己免疫疾患の症状の消失など)を含む。他の態様では、治療は予防的治療(例えば、個体が本明細書において記載の状態を患うことが疑われる場合での本明細書において記載の組成物の投与)も含む。
【0041】
本明細書において用いられるように、「対象」、「個体」および「患者」は互換的に用いられる。いずれの用語も本明細書において開示の化合物の投与に医療の専門家が必要とされることを示唆していない。これらの用語はいずれも哺乳類を指す。哺乳類はヒトであり得る。
【0042】
「多価コンジュゲート」、「コンジュゲート」、「多価化合物」、および「化合物」という用語は、特に記載しない限り、互換的に用いられてもよい。
【0043】
多価化合物
本開示は、マルチポイントテンプレートに接合した2つまたはそれ以上のFAP結合リガンド(「標的リガンド」または「Q」とも呼ばれる)を含む多価化合物に関する。2つまたはそれ以上のFAP結合リガンドは活性形態のFAPの2つの二量体鎖と結合するように構成され得る。二量体FAPの活性化は複合体全体の内部移行をもたらし得る。1つまたは複数のFAP結合リガンドを含むことに加えて、マルチポイントテンプレートは活性作用物質(「X」)でさらに官能基付与され得る。活性作用物質は、細胞外空間に配置された場合よりも、FAP発現細胞内でより有利に利用され得る。代替的な態様では、化合物は内部移行されず、細胞外空間に配置されたままになる。多価化合物は1つまたは複数のスペーサーをさらに含み得る。スペーサーは、例えば、FAP結合リガンドおよび/または活性作用物質を所望の配座または空間的配置に配向させることがある。スペーサーと、スペーサーが結合したFAP結合リガンドまたは活性作用物質とは「アーム」と呼ばれ得る。多価化合物は複数のFAP結合アームまたは活性作用物質アームを有し得る。多価化合物は2、3、4、5、または6つの、Qアームとも呼ばれる、FAP結合アームを有し得る。FAP結合リガンドQをマルチポイントテンプレートに接続させるスペーサーは本明細書ではQスペーサーと呼ばれることがある。別の態様では、多価化合物は、本明細書においてXアームと呼ばれる場合がある、スペーサーを介してマルチポイントテンプレートに連結した1つまたは複数の活性作用物質(「X」)を含み得、ここでスペーサー自体はXスペーサーと呼ばれることがある。1、2、3、またはそれ以上のXアームが多価化合物内に配置され得る。
【0044】
FAP結合リガンドであるQは1マイクロモル(μM)または1μM超の親和性(例えば、KD、EC50)で線維芽細胞活性化タンパク質(例えば、線維芽細胞活性化タンパク質α)に結合する任意の作用物質であり得る。親和性が大きい/高いほど、解離定数(KD)または最大半量応答を与える有効濃度(EC50)が低くなることに注意されたい。FAP結合リガンドは10μMまたはそれ未満(例えば、5μM、2μM、1μM、500ナノモル(nM)、200nM、100nM、50nM、20nM、10nM、5nM、1nM、500ピコモル(pM)、200pM、100pMなど)のKDまたはEC50を有してもよい。FAP結合リガンドは1pMもしくは1pM超(例えば、2pM、5pM、10pM、20pM、50pM、100pM、200pM、500pM、1nM、2nM、5nM、10nM、20nM、50nM、100nM、200nM、500nM、1μM、2μM、5μMなど)のKDまたはEC50を有してもよい。1つ目のFAP結合リガンドの結合は、続く(例えば、2つ目、3つ目など)FAP結合リガンドの結合を容易にし得る。2つまたはそれ以上のFAP結合リガンドの結合は協同的であり得る。1つ目のFAP結合リガンドの結合は局所的に有効濃度を増加し得る。2つまたはそれ以上のFAP結合リガンドがFAP二量体の2本の鎖に結合し得る。3つまたはそれ以上のFAP結合リガンドがFAP三量体の2本の鎖に結合し得る。4つまたはそれ以上のFAP結合リガンドがFAP四量体の4本の鎖に結合し得る。1つのFAP結合リガンドのみが標的FAPに結合し得る。
【0045】
FAP結合リガンドであるQはFAPと会合する任意の物質であり得る。非限定的な例としては、Qは分子(例えば、小分子、高分子、テザー分子)、アミノ酸(例えば、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、官能基付与されたアミノ酸)、ペプチド(例えば、ポリペプチド、天然ペプチド、非天然ペプチド、直鎖ペプチド、環状ペプチドなど)、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。Qはピロリジン誘導体を含み得る。Qはシアノピロリジン誘導体であり得る。Qはフルオロピロリジン誘導体であり得る。Qはジェミナルジフルオロ化ピロリジンを含み得る。
【0046】
Qは、構造:
を有し得、ここで、各R1およびR1'は独立して水素、アルキル、アリール、-CN、-COOH、-B(OH)2、SO3H、またはPO3Hであり;各R2およびR2'は独立して水素、ハロゲン、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;R3は水素、アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールであり;本開示全体を通して「環A」とも呼ばれる
は、3~10員ヘテロ環または5~10員ヘテロアリールであり、ここで、各ヘテロ環またはヘテロアリールは1つまたは複数のN原子を含み得、R4で置換されており;かつR4は水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールである。
【0047】
各R2およびR2'は独立して水素、ハロゲン、またはアルキルであり得る。各R2およびR2'は独立して水素、ハロゲン、またはアルキルであり得る。各R2およびR2'は独立して水素またはハロゲンであり得る。2つのR2または2つのR2'基が水素、ハロゲン、アルキル、またはハロアルキルであり得る。2つのR2または2つのR2'基が水素、ハロゲン、またはアルキルであり得る。2つのR2または2つのR2'基が水素であり得る。2つのR2または2つのR2'基がハロゲンであり得る。2つのR2または2つのR2'基がアルキルであり得る。各R2およびR2'は独立して水素、フッ素、または塩素であり得る。各R2およびR2'は独立して水素、フッ素、または塩素であり得る。各R2およびR2'は独立して水素またはフッ素であり得る。各R2およびR2'は独立してフッ素または塩素であり得る。2つのR2基または2つのR2'基が水素、フッ素、または塩素であり得る。2つのR2基が水素であり得る。2つのR2基がフッ素であり得る。2つのR2基が塩素であり得る。2つのR2'基が水素であり得る。2つのR2'基がフッ素であり得る。2つのR2'基が塩素であり得る。
【0048】
各R1およびR1'は独立して水素、アルキル、アリール、-CN、-COOH、-B(OH)2、SO3H、またはPO3Hであり得る。各R1およびR1'は独立して水素、アルキル、アリール、-CN、-COOH、または-B(OH)2であり得る。各R1およびR1'は独立して水素、アルキル、-CN、または-B(OH)2であり得る。各R1およびR1'は独立して水素、-CN、または-B(OH)2であり得る。R1は水素であり得、R1'は-CNまたは-B(OH)2であり得る。R1は水素であり得、R1'は-B(OH)2であり得る。R1は水素であり得、R1'は-CNであり得る。R1'は(S)立体化学配置であり得る。R1'は(R)立体化学配置であり得る。
【0049】
R3は水素、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールであり得る。R3は水素、アルキル、アルケニルまたはアリールであり得る。R3は水素、アルキル、またはアルケニルであり得る。R3は水素またはアルキルであり得る。R3は水素またはCH3であり得る。R3はCH3であり得る。R3は(S)立体化学配置であり得る。R3は(R)立体化学配置であり得る。R3は水素であり得る。
【0050】
(「環A」)は、3~10員ヘテロ環または5~10員ヘテロアリールであり得、ここで、各ヘテロ環またはヘテロアリールは1つまたは複数のN原子を含有し得、R4で置換されていてもよい。環Aは置換されていてもよい5~10員ヘテロアリールであり得る。環Aは置換されていてもよい単環式5または6員ヘテロアリールであり得る。環Aは置換されていてもよい二環式9または10員ヘテロアリールであり得る。環Aは置換されていてもよいピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、キノリニル、ナフチリジニル、ピリドピアジニル、ピリドピリミジニル、テトラヒドロキノリニル、ジヒドロナフチリジニル、ジヒドロピリドピラジニル、ジヒドロピリドピリミジニル、トリアゾロピリジニル、ピラゾロピリジニル、ピロロピリジニル、イミダゾピリジニル、インダゾリル、インドリル、イソインドリル、オキサゾロピリジニル、チアジアゾロピリジニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、またはチアジアゾリルであり得る。環Aはピリジニル、キノリニル、ナフチリジニル、ピリドピラジニル、ピリドピリミジニル、テトラヒドロキノリニル、ジヒドロナフチリジニル、ジヒドロピリドピラジニル、ジヒドロピリドピリミジニル、トリアゾロピリジニル、ピラゾロピリジニル、ピロロピリジニル、イミダゾピリジニル、オキサゾロピリジニル、チアジアゾロピリジニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、またはチアゾリルであり得る。環Aは、以下の群のラジカル:
より選択され得る。
【0051】
環Aは、置換されていてもよいピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、キノリニル、ナフチリジニル(例えば、1,8-ナフチリジニル、1,7-ナフチリジニル、1,6-ナフチリジニル、1,5-ナフチリジニル)、ピロロピリジニル、ピラゾロピリジニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、またはイミダゾリルであり得る。環Aは、置換されていてもよいピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、またはイミダゾリルであり得る。環Aは、置換されていてもよいピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、またはピリダジニルである。環Aは置換されていてもよいピリジニルまたはピリミジニルである。環Aは置換されていてもよいピリミジニルであり得る。環Aは置換されていてもよいピリジニルであり得る。
【0052】
R4は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アリール、またはヘテロアリールであり得る。R4は、水素、ハロゲン、またはアルキルであり得る。R4はハロゲンであり得る。R4は、H、F、Cl、Br、I、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、CF3、CHF2、またはCH2Fであり得る。R4はH、F、Cl、Br、CH3、またはCF3であり得る。R4はCl、CH3、またはCF3であり得る。R4はClまたはCH3であり得る。R4はClまたはCF3であり得る。R4はCH3またはCF3であり得る。R4はClであり得る。
【0053】
環Aはクロロピリジンであり得る。環Aは2-クロロピリジンであり得る。環Aは3-クロロピリジンであり得る。環Aは4-クロロピリジンであり得る。環Aは5-クロロピリジンであり得る。環Aは6-クロロピリジンであり得る。
【0054】
Qは表1のうちの1つまたは複数の構造を含み得る。
【0055】
(表1)FAP標的リガンドQ
【0056】
多価コンジュゲートは各Qごとに同じFAP結合リガンドを有し得る。各Qは異なるFAP結合リガンドである。多価化合物は2つの同一のFAP結合リガンド(Q1)および1つまたは複数の追加のFAP結合リガンド(Q2)を有し得る。2つのQリガンドは互いの立体異性体または位置異性体であり得る。各Qは同じスペーサーLQを有し得る。各Qは異なるスペーサー(例えば、LQ1、LQ2など)を有し得る。2つまたはそれのQが同じスペーサーLQ1を有し得る一方で、1つまたは複数の追加のQは異なるスペーサーLQ2を有し得る。
【0057】
1つまたは複数のQがWで置き換えられ得るが、但し2つまたはそれ以上のQはWではない。1つまたは複数のQがWで置き換えられ得るが、但し2つのQはFAP結合リガンドである。Wは溶解性向上剤またはPK/PD調節物質を含み得る。Wはポリエチレングリコール(PEG)、糖、ペプチド、またはペプチドグリカンを含み得る。Wは、より良好な溶解性およびPK/PD特性を達成するために、PEG、糖、ペプチド、またはペプチドグリカンを含み得る。Wは1つまたは複数の単糖、二糖、ペプチド、ペプチドグリカン、および/または血清アルブミンを含み得る。Wは1つまたは複数のPEG、ペプチド、ペプチドグリカン、または血清アルブミンを含み得る。Wは糖を含まなくてもよい。Wは単糖、二糖、または多糖を含まなくてもよい。Wはグリカンを含まなくてもよい。Wはグリコシル化アミノ酸を含み得る。Wはグリコシル化システインを含み得る。Wは遊離カルボン酸を含み得る。WはPEGを含み得る。
【0058】
スペーサー「L」は任意の安定した原子配列を含み得る。スペーサーは1つまたは複数のL'を含む。各L'は、独立して、アミド、エステル、尿素、カーボネート、カルバメート、ジスルフィド、アミノ酸、アミン、エーテル、アルキル、アルケン、アルキン、ヘテロアルキル(例えば、ポリエチレングリコール)、シクロアルキル(cycloakyl)、アリール、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、炭水化物、グリカン、ペプチドグリカン、ポリペプチド、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。任意のスペーサーは以下の単位のうちのいずれか1つまたは複数を含み得る:アミド、エステル、尿素、カーボネート、カルバメート、ジスルフィド、アミノ酸、アミン、エーテル、アルキル、アルケン、アルキン、ヘテロアルキル(例えば、PEG)、シクロアルキル(cycloakyl)、アリール、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、炭水化物、グリカン、ペプチドグリカン、ポリペプチド、またはそれらの任意の組み合わせ。スペーサーLまたはL'は溶解性度向上剤またはPK/PD調節物質Wを含み得る。スペーサーはグリコシル化アミノ酸を含み得る。スペーサーは1つまたは複数の単糖、二糖、多糖、グリカン、またはペプチドグリカンを含み得る。スペーサーは放出可能な部分(例えば、ジスルフィド結合、エステル、またはインビボで切断され得る他の部分)を含み得る。スペーサーはエチレン(例えば、ポリエチレン)、エチレングリコール(例えば、PEG)、エタノールアミン、エチレンジアミンなど(例えば、プロピレングリコール、プロパノールアミン、プロピレンジアミン)の1つまたは複数の単位を含み得る。スペーサーはオリゴエチレン、PEG、アルキル鎖、オリゴペプチド、ポリペプチド、剛直な官能基、ペプチドグリカン、オリゴプロリン、オリゴピペリジン、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。スペーサーはオリゴエチレングリコールまたはPEGを含み得る。スペーサーはオリゴエチレングリコールを含み得る。スペーサーはPEGを含み得る。スペーサーはオリゴペプチドまたはポリペプチドを含み得る。スペーサーはオリゴペプチドを含み得る。スペーサーはポリペプチドを含み得る。スペーサーはペプチドグリカンを含み得る。スペーサーはグリカンを含まなくてもよい。スペーサーは糖を含まなくてもよい。剛直な官能基はオリゴプロリンまたはオリゴピペリジンであり得る。剛直な官能基はオリゴプロリンであり得る。剛直な官能基はオリゴピペリジンであり得る。剛直な官能基はオリゴフェニルであり得る。剛直な官能基はオリゴアルキンであり得る。オリゴプロリンまたはオリゴピペリジンは約2~最大で約50まで(端の値を含む)、約2~約40、約2~約30、約2~約20、約2~約15、約2~約10、または約2~約6個の繰り返し単位(例えば、プロリンまたはピペリジン)を有し得る。
【0059】
スペーサー(例えば、LQまたはLX)は、以下の単位:
のうちの1つもしくは複数またはそれらの任意の組み合わせを含み得、ここで、pは0~約20の整数であり、nは1~約32の整数である。スペーサーは、構造:
を含み得る。Q-スペーサーは表2に記載の1つまたは複数の構造を含み得る。
【0060】
(表2)Q-スペーサー
【0061】
スペーサー(例えば、LXまたはLQ)は5オングストローム(Å)、10Å、15Å、20Å、50Å、100Å、200Å、300Å、またはそれ以上の長さを有し得る。スペーサーは300Å、200Å、100Å、50Å、20Å、15Å、10Å、5Å、またはそれ未満の長さを有し得る。以下のリストにおいて、範囲は上限および下限を含むと理解されたい(例えば、1~3は1、2、および3を含む)。スペーサーは約10~約300Å、約10~約200Å、約10~約100Å、約10~約50Å、約15~約300Å、約15~約200Å、約15~約150Å、約15~約100Å、約20~約300Å、約20~約200Å、約20~約100Åの長さを有し得る。スペーサー(例えば、LQまたはLX)は約10~約300Å、約10~約200Å、または約10~約100Åの長さを有し得る。スペーサー(例えば、LQまたはLX)は約15~約300Å、約15~約200Å、または約15~約100Åの長さを有し得る。スペーサー(例えば、LQまたはLX)は約20~約300Å、約20~約200Å、または約20~約100Åの長さを有し得る。スペーサー(例えば、LQまたはLX)は約15~約200Åの長さを有し得る。
【0062】
スペーサーは2つまたはそれ以上の単位(例えば、活性作用物質、標的リガンド、マルチポイントテンプレート)を特定の配向または距離で配向させ得る。例えば、スペーサーは標的リガンドおよび活性作用物質を特定の距離だけ離間させ得るか、またはスペーサーは標的リガンドおよび活性作用物質を特定の空間配置もしくは配座で配向させ得る。スペーサーは2つの標的リガンドを特定の距離だけ離間させ得るか、またはスペーサーは2つの標的リガンドを特定の空間配置もしくは配座で配向させ得る。スペーサーは標的リガンドまたは活性作用物質をマルチポイントテンプレートから特定の距離だけ離間させ得るか、またはスペーサーは標的リガンドまたは活性作用物質をマルチポイントテンプレートと関係して特定の空間配置もしくは配座で配向させ得る。スペーサーは柔軟な要素および剛直な要素の組み合わせを含有し得る(例えば、ポリペプチドスペーサー、ポリエステルスペーサー、オリゴピペリジンスペーサー、オリゴプロリンスペーサー)。スペーサーはまた配座的な制約を含み得る。スペーサーは実質的に直線状であり得る(例えば、ポリアルキンまたはポリフェニルスペーサー)。スペーサーは特定の形状(例えば、C型、V型、L型、S型、らせん状)を有し得る。
【0063】
スペーサーは空間の付与のほかにも有用な機能を提供し得る。例えば、スペーサーは多価化合物またはその一部のある特定の特性を調節し得る(例えば、増加させる、減少させる、向上させる、軽減する、最適化する)。例えば、スペーサーは物理化学的、薬理学的、薬力学的、薬物動態学的、生物物理学的、生物学的、物理的、または商業的特性を調節し得る。スペーサーは、リガンド-薬物化合物のリンカーの3つ目の位置がリンカー中のシステインの遊離-COOHである三価リンカーを含み得る。-COOH基を用いてPEG化合物、糖、ペプチド、ペプチドグリカン、または血清アルブミンを(例えば、本明細書において記載の位置Wに)結合させ得る。リンカーはPEG化合物、ペプチド、ペプチドグリカン、または血清アルブミンを含み得る。スペーサーは糖を含まなくてもよい。スペーサーは血漿タンパク質結合、膜透過性、溶解性、親油性、極性表面積、総表面積、大きさ、質量、非共有結合(例えば、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス相互作用)、イオン化(例えば、酸性度、塩基性度)、代謝、接合、排出、保持、またはそれらの任意の組み合わせを調節することがある。スペーサーは1つまたは複数の要素(例えば、透過性、親油性、またはタンパク質結合)を調節することによって滞留時間または内部移行を向上させることがある。スペーサーは所望の効果を付与する1つまたは複数の基を含み得る。例えば、スペーサーは細胞への能動輸送を容易にするための基質を含み得る。スペーサーは血漿タンパク質結合を向上させることによって排出を低減させ得る。スペーサーは1つもしくは複数の糖部分または1つもしくは複数のタンパク質もしくはタンパク質フラグメント(即ち、ペプチド、ポリペプチド)を含み得る。スペーサーは1つまたは複数の炭水化物部分(例えば、脂質、脂肪酸)を含み得る。スペーサーはグリコシル化され得る(例えば、1つまたは複数の単糖、二糖、多糖、グリカン、またはグリコーゲンを含有する)。スペーサーはグリコシル化アミノ酸を含み得る。
【0064】
スペーサーLXは表3に示すような二価ラジカルを含み得、ここで、「Y」および「X」はそれぞれマルチポイントテンプレートおよび活性作用物質への結合を示す。
【0065】
(表3)X-スペーサー
構造中、nおよびpは0~最大で100までを含む整数であり、Wは1つまたは複数の単糖、二糖、ペプチド、ペプチドグリカン、溶解性向上剤、PK/PD調節物質、またはそれらの組み合わせを含み、かつ、XおよびYはXおよびYへの接続を表すためにのみ示されており;XおよびYはLXの一部ではないと理解されたい。
【0066】
Wは、1つまたは複数の単糖、二糖、オリゴ糖、多糖、ペプチド、ペプチドグリカン、血清アルブミン、溶解性向上剤、PK/PD調節物質、またはそれらの組み合わせを含み得る。Wは薬理学的、薬物動態学的、薬力学的、または物理化学的特性を調節し得る。Wは内部移行を容易にし得る。Wは水溶性を改善し得る。Wは血漿タンパク質結合を増加させ得る。Wは化合物の排出、排除、代謝、安定性(例えば、酵素安定性、血漿安定性)、分布、毒性、またはそれらの組み合わせを調節(例えば、低減)し得る。
【0067】
Wにおいて見られるような単糖はその直鎖状および環状形態間の平衡状態で存在し得る。単糖は直鎖状であり得る。単糖は環状であり得る。単糖はD異性体として存在し得る。単糖はL異性体として存在し得る。非限定的な例として、Wは以下より選択される1つまたは複数の単糖を含み得る:リボース、ガラクトース、マンノース、グルコースフルクトース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルムラミン酸またはそれらの誘導体(例えば、環状もしくは直鎖形態、メチル化誘導体、アセチル化誘導体、リン酸化誘導体、アミノ化誘導体、酸化または還元誘導体、DもしくはL異性体、同位体、立体異性体、位置異性体、互変異性体、またはそれらの組み合わせ)。
【0068】
W内に配置されることがある二糖、オリゴ糖、または多糖はO-結合、N-結合、C-結合、またはそれらの組み合わせを含有し得る。二糖、オリゴ糖、または多糖はα-またはβ-配向のいずれかでグリコシド結合を含有し得る。Wはオリゴ糖、多糖、またはグリカン(例えば、糖タンパク質、糖ペプチド、糖脂質、グリコーゲン、プロテオグリカン、ペプチドグリカンなど)を含み得る。
【0069】
Wはアミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を含み得る。アミノ酸は天然アミノ酸(例えば、アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gln)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リジン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、およびバリン(Val))であり得る。代替的には、アミノ酸は非天然または修飾アミノ酸であり得る。Wはアミノ酸(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸)の側鎖に共有結合した糖または糖誘導体を含み得る。
【0070】
Wは、
などのグリコシル化アミノ酸を含み得る。ペプチドまたはポリペプチドは天然および/または非天然の複数のアミノ酸を含み得る。ペプチド(またはペプチドグリカン)は約2~約20個のアミノ酸を有し得る。アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質(例えば、W内に配置されるか、またはWを構成するものなど)は化合物の1つまたは複数の特性を向上させる薬理学的または物理化学的効果を有し得る(例えば、溶解性、大きさ、透過性、タンパク質結合、標的結合、排出、代謝、毒性、分布、半減期、および/または作用期間を調節すること)。Wは薬物動態調節物質であり得る。薬物動態調節物質はタンパク質結合を調節(例えば、増強)し得るペプチドまたはタンパク質であり得る。薬物動態調節物質は血漿タンパク質結合を向上し得る。薬物動態調節物質は排除、排出、または代謝の速度を低下させる。薬物動態調節物質は化合物の作用の持続時間を増加させ得る。
【0071】
スペーサーLQまたはLXは、対応する標的リガンドQまたは活性作用物質Xとともに、Qアーム、Xアーム、または集合的に「アーム」と呼ばれることがある。3、4、5、6、7、8、9つ、またはそれ以上のアームを有する多価化合物が提供される。多価化合物は2つのQアームおよび1つのXアームを有し得る。多価化合物は3つのQアームおよび1つのXアームを有し得る。多価化合物は4つのQアームおよび1つのXアームを有し得る。多価化合物は6つのQアームおよび1つのXアームを有し得る。多価化合物は2つのQアームおよび2つのXアームを有し得る。QはWに置き換えられ得るが、但し2つまたはそれ以上のQがWになることはない(例えば、1つのQがWになり、2つのQがFAP結合リガンドになる)。
【0072】
本明細書において記載されるように、2~6つのQアームおよび1つまたは複数のXアームはマルチポイントテンプレートとも呼ばれる接合部「Y」で繋がっている。マルチポイントテンプレートは官能基付与(例えば、QアームおよびXアームにより)されていてもよい分子構造である。そのようなマルチポイントテンプレートは、非限定的な例として、1つまたは複数のアミン、アミド、アルコール、エステル、酸、アルキン、アジド、トリアゾール、ヘテロ環、ボロン酸、ハロゲン化物、求電子試薬、求核試薬、または接合に参加する追加の官能基(例えば、アミド結合、エステル合成、クリック化学、鈴木、根岸、バックワルド、チャン-ラム、ウルマン、または2つの基を結合させるための他の関連する化学変換を介して)を含み得る。マルチポイントテンプレートは複数のアミンを含有し得る。マルチポイントテンプレートは複数のアミドを含有する。マルチポイントテンプレートは複数のエーテルを含有し得る。マルチポイントテンプレートYは三酸系テンプレート、オリゴリジン系テンプレート、トレブラーホスホロアミダイトテンプレート、オリゴヒドロキシプロリノール系テンプレート、トリス(2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール)系テンプレート、クエン酸系テンプレート、(2-(3,5-ジエチニルベンズアミド)エチル)カルバミン酸tert-ブチルテンプレート、またはN-(2-アミノエチル)-3,5-ジ(1H-1,2,3-トリアゾール-5-イル)ベンズアミドテンプレートを含み得る。マルチポイントテンプレートYは三酸系テンプレート、オリゴリジン系テンプレート、トレブラーホスホロアミダイトテンプレート、またはオリゴヒドロキシプロリノール系テンプレートを含み得る。マルチポイントテンプレートYはトリス(2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール)系テンプレートを含み得る。マルチポイントテンプレートYは表4に記載の構造を含み得る。
【0073】
(表4)マルチポイントテンプレート
構造中、**はYとLQの間の結合を表し、かつ***はYとLXの間の結合を表す。
【0074】
マルチポイントテンプレートYは二酸系テンプレートを含み得る。マルチポイントテンプレートYは三酸系テンプレートを含み得る。マルチポイントテンプレートYは四酸系テンプレートを含み得る。マルチポイントテンプレートYはオリゴリジン系テンプレートを含み得る。マルチポイントテンプレートYはトレブラーホスホロアミダイトテンプレートを含み得る。マルチポイントテンプレートYはオリゴヒドロキシプロリノール系テンプレートを含み得る。マルチポイントテンプレートは各Qアームに異なるQを含有し得る。マルチポイントテンプレートは2つまたはそれ以上の同じQを対応する2つまたはそれ以上のQアームにおよび少なくとも1つの追加の(即ち、異なる)Qを対応する少なくとも1つのQアームに含有し得る。マルチポイントテンプレートQはPEG部分を含むQスペーサーを介して2つのQに接続される。マルチポイントテンプレートは三価であり得る。マルチポイントテンプレートは四価であり得る。マルチポイントテンプレートは五価であり得る。マルチポイントテンプレートは六価であり得る。マルチポイントテンプレートまたはそれに結合したスペーサーはインビボで切断され得る放出可能な部分(例えば、ジスルフィド結合、エステル)を含み得る。
【0075】
活性作用物質
本明細書全体を通じて記載されているように、多価化合物は様々な異なる活性作用物質(「X」)を含有し得る。例えば、Xは、検出可能な作用物質(例えば、蛍光色素、近赤外(NIR)色素、放射線造影剤、キレート剤)、または治療用物質(例えば、薬物、光線力学治療用物質、放射線治療剤、化学療法剤、抗線維化物質、抗がん剤、キレート剤)であり得る。Xは腫瘍の検出または治療に有用な任意の実体(例えば、検出可能な作用物質または治療用物質)であり得る。Xは腫瘍の検出および治療の両方に効果的であり得る。Xは線維化組織を検出するかまたは治療するために利用し得る。Xは線維芽細胞活性化タンパク質(「FAP」)を発現する任意の細胞(例えば、線維芽細胞またはCAF)を治療するかまたは検出するために用い得る。Xは検出可能な作用物質であり得る。Xは治療用物質であり得る。Xは蛍光色素または放射線造影剤であり得る。Xは光線力学的治療用物質であり得る。Xは放射線治療剤であり得る。Xは細胞外マトリクス成分(例えば、コラーゲン、エラスチン、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン(例えば、パーレカン)、および糖タンパク質)を合成するかまたは輸送する線維芽細胞の能力を低下または無効化し得る。Xはがん細胞、がん関連線維芽細胞(CAF)、腫瘍微小環境因子(例えば、増殖因子(例えば、血管内皮増殖因子(VEGF))、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、インスリン様増殖因子1および2(IGF1およびIGF2)、形質転換増殖因子-β(TGF-β)、表皮増殖因子(EGF)、ヘパリン結合性EGF様増殖因子(HB-EGF)、および腫瘍壊死因子(TNF))、ホルモン、シグナル伝達分子、血管新生刺激剤、リシルオキシダーゼ(LOX)、コラーゲン、エラスチン、グリコサミノグリカン、糖タンパク質、またはプロテオグリカン(例えば、パーレカン))に対して効果的であり得る。
【0076】
活性作用物質は蛍光色素であり得る。Xは励起および/または発光波長が200~1,000nm、200~800nm、300~1,000nm、300~800nm、400~1,000nm、400~800nm、500~1,000nm、または500~800nmの範囲内の蛍光色素であり得る。Xは励起および/または発光波長が200~1,000nmの範囲内の蛍光色素であり得る。Xは励起波長または発光波長が400~1,000nmの範囲内の蛍光色素であり得る。Xは励起波長または発光波長が400~800nmの範囲内の蛍光色素であり得る。Xは励起波長または発光波長が500~800nmの範囲内の蛍光色素であり得る。Xは励起波長または発光波長が500~700nmの範囲内の蛍光色素であり得る。Xは励起波長または発光波長が650~1050nmの範囲内の蛍光色素であり得る。Xは励起波長または発光波長が650~850nmの範囲内の蛍光色素であり得る。Xは励起波長または発光波長が650~750nmの範囲内の蛍光色素であり得る。Xは励起波長または発光波長が可視光範囲内(例えば、約400~約800nm、または約380~約740nm)の蛍光色素であり得る。Xは励起波長または発光波長が近赤外(「NIR」)領域(例えば、約750~約1,400nm)の蛍光色素であり得る。
【0077】
コンジュゲートは近赤外線(NIR)色素または放射線造影剤などの検出可能な作用物質を含み得る。本教示に係る検出可能な作用物質として用いられることがある代表的な化合物は色素(例えば、ローダミン色素、シアニン色素、フルオレセイン色素など)、陽電子放射断層撮影(PET)造影剤、放射性標識剤などを非限定的に含む。ローダミン色素の代表例はローダミンB、ローダミン6G、ローダミン123などを非限定的に含む。Xはローダミン色素であり得る。シアニン色素の例はCy2、Cy3、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、Cy7.5、スルホ-Cy3、スルホ-Cy5、およびスルホ-Cy7を非限定的に含む。フルオレセイン色素の例はフルオレセイン、フルオレセインマレイミド(FM)、5-アミノ-フルオレセイン、6-アミノ-フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フルオレセインアミダイト(FAM)、エオシン、カルセイン、メルブロミン、エリスロシン、NHS-フルオレセイン、ローズベンガル、DyLight Fluor、オレゴングリーン、トウキョウグリーン、シンガポールグリーン、フィラデルフィアグリーン、ヨードシアニングリーンなどを非限定的に含む。Xはシアニンまたはフルオレセイン色素であり得る。XはフルオレセインマレイミドまたはFITCであり得る。
【0078】
用い得る代表的な近赤外色素はAlexa Fluor(登録商標)680、Cy(登録商標)5.5、DyLight(登録商標)680、IRDye(登録商標)680LT、Alexa Fluor(登録商標)750、Cy(登録商標)7、DyLight(登録商標)750、IRDye(登録商標)750、DyLight(登録商標)800、IRDye(登録商標)800CW、Alexa Fluor(登録商標)790、CF(登録商標)680、CF(登録商標)680R、CF(登録商標)750、CF(登録商標)770、CF(登録商標)790、CF(登録商標)800、LS288、IR800、SP054、S0121、KODAK、IRD28、S2076、S0456、およびそれらの誘導体を非限定的に含む。Xは近赤外色素であり得る。XはS0456であり得る。
【0079】
活性作用物質はキレート剤であり得る。キレート剤は金属またはイオンを結合し得る任意の作用物質であり得る。キレート剤は複数のアミンを含み得る。キレート剤は環状であり得、3つまたはそれ以上のアミンを含有し得る。キレート剤はDOTA、NOTA、NOTP、PCTA、DATAM、TRAP、DFO、THP、HBED、DEDPA、TACN、TACN-TM、NODASA、NOTPME、PrP9、TACD、H3NOKA、TACN-meHP、TACN-HP、TACN-TX、TACN-HB、TACN-TM-Bn、p-NO2-Bn-NOTA、p-NO2-Bn-Oxo、p-NO2-Bn-DOTA、およびp-NO2-Bn-PCTAからなる群より選択され得る。XはDOTAであり得る。XはNOTAであり得る。XはNOTPであり得る。XはPCTAであり得る。XはTACNであり得る。
【0080】
Xは放射性同位元素を含み得る。Xは放射性同位元素に結合したキレート剤(例えば、キレート化を通じてなどの任意の好適な様式で)を含み得る。放射性同位元素は腫瘍または線維化組織の検出(例えば、PETを介して)に有用であり得る。放射性同位元素は腫瘍または線維化組織の治療(例えば、放射線療法)に有用であり得る。\Xは99mTc、111In、67Ga、105Rh、123I、147Nd、151Pm、153Sm、159Gd、161Tb、171Er、186Re、188Re、または201Tlを含み得る(例えば、これらに結合したキレート剤を含有し得る)。Xは99mTcもしくは111In、またはそれらのキレート化複合体(例えば、NOTA、DOTAなど)を含み得る。Xは99mTcを含み得る。Xは111Inを含み得る。Xは18F、68Ga、またはそれらのキレート化複合体(例えば、NOTA、DOTAなど)を含み得る。Xは18Fを含み得る。Xは68Gaを含み得る。Xは99mTc、111In、18F、68Ga、124I、125I、および131Iからなる群より選択される放射線造影剤に結合し得る(例えば、キレート化を通じてなどの任意の好適な様式で)。
【0081】
Xはがんの治療のための金属または金属-キレート化剤複合体を含み得る。Xはヒ素、アンチモン、ビスマス、金、ルテチウム、バナジウム、鉄、ロジウム、チタン、ガリウム、もしくは白金、またはキレート剤と錯化した前述のいずれかの金属の組み合わせを含み得る。Xはヒ素キレート化錯体を含み得る。Xはビスマスキレート化錯体を含み得る。Xはロジウムキレート化錯体を含み得る。Xはガリウムキレート化錯体を含み得る。Xは白金キレート化錯体を含み得る。前述の金属の任意の同位体をXにおいて利用し得る。Xは放射性核種療法に有用であり得る。Xは32P、89Sr、90Y、117mSn、131I、153Sm、169Er、177Lu、186Re、188Re、149Tb、211At、212Bi、213Bi、および225Acからなる群より選択される放射線治療剤を含み得る。Xは放射線治療剤90Y、177Lu、もしくは225Ac、またはそれらのキレート化錯体(例えば、NOTA、DOTA等によってキレート化されたもの)を含み得る。Xは90Yを含み得る。Xは177Luである放射線治療剤を含み得る。Xは225Acを含み得る。
【0082】
活性作用物質はまた様々な形態の治療薬であり得る。例えば、Xは抗がんまたは抗線維化物質であり得る。Xは有糸分裂阻害剤、DNAアルキル化剤、タンパク質合成阻害物質、代謝拮抗物質、および抗腫瘍抗生物質より選択される治療用物質であり得る。Xは有糸分裂阻害剤であり得る。有糸分裂阻害剤の非限定的な例はパクリタキセル、ドセタキセル、エリブリン、またはエストラムスチンを含む。XはDNAアルキル化剤であり得る。非限定的な例としては、Xはシクロホスファミド、シスプラチン、またはカルボプラチンより選択されるDNAアルキル化剤であってもよい。Xはタンパク質合成阻害物質であり得る。非限定的な例として、Xは以下より選択されるタンパク質合成阻害物質であり得る:リファマイシン、リネゾリド、アミノグリコシド、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、およびそれらの誘導体。Xは代謝拮抗物質であり得る。Xにおいて用い得るものなどの代謝拮抗物質のいくつかの例は5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、カペシタビン、シタラビン、チオグアニン、およびそれらの誘導体または類似体を非限定的に含む。Xは抗腫瘍抗生物質であり得る。抗腫瘍抗生物質の非限定的な例はテトラサイクリン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、およびそれらの誘導体または類似体を含む。
【0083】
Xは抗体、抗体フラグメント、毒素、siRNA、miRNA、shRNA、および標的タンパク質分解誘導キメラ(PROTAC)を含み得る。Xは低分子干渉RNA(「siRNA」)を含み得る。XはマイクロRNA(「miRNA」)を含み得る。Xは低分子ヘアピン型RNA(「shRNA」)を含み得る。
【0084】
Xは線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)アイソフォームの阻害物質、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)アイソフォームの阻害物質、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)アイソフォームの阻害物質、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)アイソフォームの阻害物質、Rho関連プロテインキナーゼ(ROCK)の阻害物質、接着斑キナーゼ(FAK)アイソフォームの阻害物質、SMADアイソフォームの調節物質、インターフェロン遺伝子(STING)アイソフォームの刺激因子の調節物質、toll様受容体(TLR)アイソフォーム(例えば、TLR7)の阻害物質、ツブリシンアイソフォーム(例えば、ツブリシンB)、形質転換増殖因子β(TGFβ)受容体の阻害物質、β-カテニン/Wnt経路の調節物質、および活性化B細胞の核内因子κ-軽鎖-エンハンサー(NF-κB)の阻害物質より選択される治療用物質を含み得る。
【0085】
Xは線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)アイソフォームの阻害物質、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)アイソフォームの阻害物質、および血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)アイソフォームの阻害物質より選択される治療用物質を含み得る。XはFGFRの阻害物質を含み得る。FGFRの阻害物質の非限定的な例はポナチニブ、ドビチニブ、ロガラチニブ、またはそれらの類似体を含む。XはPDGFRの阻害物質を含み得る。PDGFR阻害物質の非限定的な例はソラフェニブ、イマチニブ(およびメシル酸イマチニブ)、スニチニブ、ポナチニブ、アキシトリニブ、ニンテダニブ、またはそれらの類似体を含む。XはVEGFRの阻害物質を含み得る。VEGFRの阻害物質の例はレゴラフェニブ、ソラフェニブ、およびスニチニブを非限定的に含む。
【0086】
Xはホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)アイソフォームの阻害物質、ROCKの阻害物質、FAKアイソフォームの阻害物質、SMADおよび/またはTGF-βアイソフォームの調節物質、およびSTINGアイソフォームの調節物質より選択される治療用物質を含み得る。
【0087】
XはPI3Kアイソフォームの阻害物質である治療用物質を含み得る。XはROCKの阻害物質である治療用物質を含み得る。XはROCK1阻害物質を含み得る。XはROCK2阻害物質を含み得る。XはFAK阻害物質を含み得る。FAK阻害物質の非限定的な例はデファクチニブ、ニチジン、マシチニブ、およびコンテルチニブを含む。
【0088】
XはSMADおよび/またはTGF-βの阻害物質を含み得る。非限定的な例として、SMADおよび/またはTGF-βの阻害物質はSRI-011381、カルトゲニン、ピルフェニドン、(E)-SIS3、またはアシアチコシドであってもよい。Xは表5のSMADおよび/またはTGF-β阻害物質、またはそれらのラジカルを含み得る。
【0089】
(表5)SMADおよび/またはTGF-βの阻害物質
【0090】
XはSTING経路の阻害物質を含み得る。STING経路阻害物質の例はオマベロキソロン(RTA 408)、GSK690693、カルボニルシアニド3-クロロフェニルヒドラゾン、C-178、およびC-176を非限定的に含む。Xは表6のSTING阻害物質またはそのラジカルを含み得る。
【0091】
(表6)STING経路の阻害物質
【0092】
XはTLRアイソフォーム(例えば、TLR7)、ツブリシンアイソフォーム(例えば、ツブリシンB)の調節物質(例えば、活性化物質、アゴニスト、阻害物質、アンタゴニスト)、TGFβ受容体の阻害物質、β-カテニン/Wnt経路の調節物質、およびNF-κBの阻害物質より選択される治療用物質を含み得る。XはTLRアゴニストを含み得る。XはTLR7の活性化物質を含み得る。Xは表7より選択されるTLR調節物質またはそのラジカルを含み得る。
【0093】
(表7)TLRアゴニスト
【0094】
XはツブリシンBを含み得る。XはツブリシンBのラジカルまたはその誘導体を含み得る。XはWnt/β-カテニンシグナル伝達経路の阻害物質またはそのラジカルを含み得る。Wnt/β-カテニン阻害物質の非限定的な例はIWR-1、IWP-2、パモ酸ピルビニウム、サリノマイシン、アダビビント(adavivint)、およびオウゴニンを含む。
【0095】
XはNF-κBの阻害物質またはそのラジカルを含み得る。Xは表8の構造またはそのラジカルを含み得る。
【0096】
(表8)NF-κBの阻害物質
【0097】
開示の化合物または化合物は表9の構造を有し得る。
【0098】
(表9)化合物例
【0099】
開示の化合物は以下の構造:
のうちの1つを有し得る。化合物は、以下の構造:
を有する。
【0100】
化合物は、以下の構造:
を有する。
【0101】
化合物は、以下の構造:
を有する。
【0102】
治療の方法
化合物は疾患を検出するかまたは治療するのに効果的であり得る。例えば、キレート剤Xがガンマ線放出放射性核種に結合した(例えば、キレート化を通じてなどの任意の好適な様式で)化合物は腫瘍を検出するのに効果的であり得る。同様に、キレート剤Xがストロンチウム-89またはラジウム-223金属に結合した化合物は腫瘍を治療するのに効果的であり得る。化合物は非腫瘍性の疾患、障害、または状態を治療するかまたは検出することにも効果的であり得る。化合物は、線維症、特発性肺線維症(IPF)、慢性腎臓病、皮膚線維症、線維性肝疾患、心筋線維症、がん、メラノーマ、結腸直腸がん、膵臓がん、乳がん、肉腫、食道がん、シャーガス病心筋症(CCC)、肺がん、頭頸部がん、原発不明のがん(CUP)、甲状腺髄様がん(MTC)、胸腺がん、神経内分泌腫瘍(NET)、小腸がん、前立腺がん、またはそれらの組み合わせを治療するのに効果的である。化合物は線維症、特発性肺線維症(IPF)、慢性腎臓病、皮膚線維症、線維性肝疾患、心臓線維症、またはそれらの組み合わせを治療するのに効果的である。化合物は線維症を治療するのに効果的である。化合物は特発性肺線維症(IPF)、皮膚線維症、線維性肝疾患、心臓線維症、またはそれらの組み合わせを治療するのに効果的である。化合物は、がん、メラノーマ、結腸直腸がん、膵臓がん、乳がん、肉腫、食道がん、CCC、肺がん、頭頸部がん、CUP、MTC、胸腺がん、NET、小腸がん、前立腺がん、またはそれらの組み合わせを治療するのに効果的である。化合物はがんを治療するのに効果的である。化合物はメラノーマを治療するのに効果的である。化合物は結腸直腸がんを治療するのに効果的である。化合物は膵臓がんを治療するのに効果的である。化合物は乳がんを治療するのに効果的である。化合物は食道がんを治療するのに効果的である。化合物は頭頸部がんを治療するのに効果的である。化合物は肺がんを治療するのに効果的である。化合物は小腸がんを治療するのに効果的である。化合物は前立腺がんを治療するのに効果的である。化合物はCCCを治療するのに効果的である。化合物はCUPを治療するのに効果的である。化合物はMTCを治療するのに効果的である。化合物はNETを治療するのに効果的である。化合物は肉腫を治療するのに効果的である。化合物は腫瘍を治療するのに効果的である。化合物はCAFに関連した腫瘍を治療するのに効果的である。化合物はFAPを過剰発現する腫瘍を治療するのに効果的である。化合物はCAFに関連した疾患を治療するのに効果的である。化合物はFAPの過剰発現に関連した疾患を治療するのに効果的である。化合物は線維芽細胞の過剰発現、過剰増殖、または他の異常な機能を特徴とする疾患を治療するのに効果的である。化合物は筋線維芽細胞または活性化線維芽細胞におけるFAPの過剰発現に関連する線維性疾患を治療するのに効果的である。
【0103】
化合物はこれまで治療に不応性または抵抗性であった疾患または障害(例えば、がんまたは線維化状態)を治療するのに効果的である。
【0104】
いくつかの態様では、化合物は内部移行され得る。化合物はFAP二量体の2つの鎖を結合する。FAPの二量体化は触媒活性を促進し得、一価のFabではなく抗FAP抗体が、FAPに結合した後、FAP陽性細胞に内部移行する。本明細書におけるある特定の場合では、2つまたはそれ以上のFAP結合リガンドを含有する、リガンドを標的とした作用物質(例えば、所望のスペーサー長および所望の物理化学的特性を有する)を用いて、それに結合した薬物および/または造影剤の内部移行を誘導するかまたは向上し得る。FAP二量体を結合することは化合物の内部移行を促進し得る。化合物は内部移行後ではより効果的になる。化合物は1、2、3、4、6、8、12、18、24、36、48時間、またはそれ以上保持され得る。化合物は1、2、3、4、6、8、12、18、24、36、48時間、またはそれ以上検出可能であり得る。デュアルFAP化合物はモノFAPまたはFAP抗体よりもゆっくりと排除または排泄され得る。多価化合物は疾患を診断する際に用い得る。疾患はがんであり得る。疾患は線維性疾患または障害であり得る。多価化合物を用いて疾患(例えば、がん)の原因を同定し得る。化合物は放射性ペイロードを細胞(例えば、線維芽細胞またはCAF)の内部に送達し得る。化合物は近赤外色素を細胞(例えば、線維芽細胞またはCAF)の内部に送達し得る。化合物は蛍光色素を細胞(例えば、線維芽細胞またはCAF)の内部に送達し得る。化合物は抗がん治療薬を細胞(例えば、線維芽細胞またはCAF)の内部に送達し得る。
【0105】
CAFまたはFAP発現細胞の近傍に活性作用物質を提供する方法も提供される。方法はCAFまたはFAPを発現する細胞に化合物を投与する工程を含む。化合物はCAFまたはFAP発現細胞内に少なくとも24時間保持される。
【0106】
CAFまたはFAP発現細胞の近傍に活性作用物質を提供する別の方法も提供される。方法は複数のCAFまたはFAP発現細胞を有するかまたは有することが疑われる対象に化合物を投与する工程を含む。化合物はCAFまたはFAP発現細胞内に少なくとも24時間保持され得る。「細胞内」とは化合物が細胞の内側または細胞の膜上に保持され得ることであり得る。
【0107】
対象における腫瘍または線維化組織を検出する方法も提供される。方法は(i)腫瘍または線維化組織を有する疑いのある対象に化合物を投与する工程、(ii)対象内で化合物を検出する(例えば、光学的または放射測定的に)工程、および(iii)化合物の局在化に基づいて対象における腫瘍または線維化組織を同定する工程を含む。
【0108】
対象における腫瘍または線維化組織の治療のための方法も提供される。方法は治療有効量の上記化合物を個体に投与する工程を含む。
【0109】
薬学的組成物、投与経路、および投薬
薬学的組成物も提供される。態様では、薬学的組成物は化合物および薬学的に許容される担体を含む。別の態様では、薬学的組成物は、複数の化合物と、薬学的に許容される担体とを含む。さらに別の態様では、薬学的組成物は、化合物のプロドラッグ単独または本明細書に記載の1つもしくは複数の他の化合物もしくはそのプロドラッグとのさらなる組み合わせ、および薬学的に許容される担体を含む。
【0110】
薬学的組成物は化合物以外の少なくとも1つの追加の薬学的に活性な作用物質をさらに含み得る。少なくとも1つの追加の薬学的に活性な作用物質は、例えば、虚血再灌流傷害の治療に有用な作用物質であり得る。
【0111】
薬学的組成物は1つまたは複数の化合物を薬学的に許容される担体および、任意で、1つまたは複数の追加の薬学的に活性な作用物質と組み合わせることによって調製し得る。
【0112】
上記のように、「有効量」とは所望の生物学的効果を達成するのに十分な任意の量を指す。本明細書において提供される教示と組み合わせて、様々な活性化合物ならびに効力、相対的バイオアベイラビリティ、患者の体重、有害な副作用の重篤度および投与様式などの重要な要因の中から選択することによって、実質的な望ましくない毒性を引き起こさないが特定の対象を治療するために効果的である、効果的な予防的または治療的治療レジメンを計画し得る。任意の特定の用途に有効な量は治療される疾患もしくは状態、投与される特定の化合物、対象の大きさ、または疾患もしくは状態の重症度などの要因に応じて異なり得る。当業者であれば、過度の実験を必要とすることなく、特定の化合物および/または他の治療用物質の有効量を実験により決定し得る。極量、即ち、何らかの医学的判断による最も高い安全用量を用い得る。化合物の適切な全身レベルを達成するために1日あたり複数回の用量が企図される。適切な全身レベルは、例えば、患者の薬物のピークまたは持続的血漿レベルの測定によって決定し得る。「用量」および「投与量」は本明細書において互換的に用いられる。
【0113】
概して、化合物の1日の経口用量は、ヒト対象の場合、約0.01ミリグラム/kg/日~1000ミリグラム/kg/日である。1日あたり1回または複数回の投与では、0.5~50ミリグラム/kgの範囲内の経口用量が治療結果をもたらし得る。投与量は、投与様式に応じて、局所または全身の所望の薬物レベルを達成するために適切に調整し得る。例えば、静脈内投与は1日あたり1桁から数桁低い用量まで異なり得る。対象における応答がそのような用量では不十分である場合、患者の耐性が許す範囲でよりさらに高い用量(または別のより局所的な送達経路による効果的なより高い用量)を採用し得る。化合物の適切な全身レベルを達成するために1日あたり複数回の用量が企図される。
【0114】
本明細書において記載の任意の化合物について、治療的に有効な量はまず動物モデルから決定し得る。治療的に有効な用量はまた、ヒトで試験された化合物について、および他の関連する活性作用物質などの同様の薬理学的活性を示すことが公知である化合物についてのヒトデータから決定し得る。非経口投与にはより高い用量が必要になる場合がある。適用される用量は投与される化合物の相対的な生物学的利用能および効力に基づいて調整し得る。上に記載の方法および他の方法に基づいて最大の効力を達成するように用量を調整することは当技術分野において周知であり、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0115】
臨床使用には、任意の化合物が1日あたり対象の体重1kgあたり0.2~2,000ミリグラム(mg)に等しいかまたは相当する量で投与され得る。化合物は1日あたり対象の体重1kgあたり2~2,000mgのコンジュゲートに等しいかまたは相当する量で投与され得る。化合物は1日あたり対象の体重1kgあたり20~2,000mgのコンジュゲートに等しいかまたは相当する量で投与され得る。化合物は1日あたり対象の体重1kgあたり50~2,000mgのコンジュゲートに等しいかまたは相当する量で投与され得る。化合物は1日あたり対象の体重1kgあたり100~2,000mgの化合物に等しいかまたは相当する量で投与され得る。化合物は1日あたり対象の体重1kgあたり200~2,000mgのコンジュゲートに等しいかまたは相当する量で投与され得る。化合物そのものではなく化合物の前駆体またはプロドラッグを投与する場合には、上記の量の化合物に相当する、即ちそれを送達するのに十分な量で投与される。
【0116】
前記化合物の製剤は治療的に有効な量でヒト対象に投与され得る。典型的な用量範囲は1日あたり約0.01マイクログラム/kg~約2mg/kg体重である。投与される薬物の投与量は、障害の種類および程度、特定の対象の全身の健康状態、投与される具体的なコンジュゲート、化合物を製剤化するために用いられる賦形剤、およびその投与経路などの変数に応じて異なる可能性がある。通常の実験を用いて任意の特定の化合物の用量および投与頻度を最適化してもよい。
【0117】
前記化合物は、約0.001マイクログラム/kg~約500mg超/kgの範囲波長の濃度で投与され得る。例えば、濃度は、0.001マイクログラム/kg、0.01マイクログラム/kg、0.05マイクログラム/kg、0.1マイクログラム/kg、0.5マイクログラム/kg、1.0マイクログラム/kg、10.0マイクログラム/kg、50.0マイクログラム/kg、100.0マイクログラム/kg、500マイクログラム/kg、1.0mg/kg、5.0mg/kg、10.0mg/kg、15.0mg/kg、20.0mg/kg、25.0mg/kg、30.0mg/kg、35.0mg/kg、40.0mg/kg、45.0mg/kg、50.0mg/kg、60.0mg/kg、70.0mg/kg、80.0mg/kg、90.0mg/kg、100.0mg/kg、150.0mg/kg、200.0mg/kg、250.0mg/kg、300.0mg/kg、350.0mg/kg、400.0mg/kg、450.0mg/kg~約500.0mg超/kgまたはそれらの任意の増分値であり得る。これらの値および範囲の間のすべての値および範囲が包含されることが意味されていると理解されたい。
【0118】
前記化合物は約0.2ミリグラム/kg/日~約100mg超/kg/日の範囲内の投与量で投与され得る。例えば、投与量は、0.2mg/kg/日~100mg/kg/日、0.2mg/kg/日~50mg/kg/日、0.2mg/kg/日~25mg/kg/日、0.2mg/kg/日~10mg/kg/日、0.2mg/kg/日~7.5mg/kg/日、0.2mg/kg/日~5mg/kg/日、0.25mg/kg/日~100mg/kg/日、0.25mg/kg/日~50mg/kg/日、0.25mg/kg/日~25mg/kg/日、0.25mg/kg/日~10mg/kg/日、0.25mg/kg/日~7.5mg/kg/日、0.25mg/kg/日~5mg/kg/日、0.5mg/kg/日~50mg/kg/日、0.5mg/kg/日~25mg/kg/日、0.5mg/kg/日~20mg/kg/日、0.5mg/kg/日~15mg/kg/day、0.5mg/kg/日~10mg/kg/日、0.5mg/kg/日~7.5mg/kg/日、0.5mg/kg/日~5mg/kg/日、0.75mg/kg/日~50mg/kg/日、0.75mg/kg/日~25mg/kg/日、0.75mg/kg/日~20mg/kg/日、0.75mg/kg/日~15mg/kg/日、0.75mg/kg/日~10mg/kg/日、0.75mg/kg/日~7.5mg/kg/日、0.75mg/kg/日~5mg/kg/日、1.0mg/kg/日~50mg/kg/日、1.0mg/kg/日~25mg/kg/日、1.0mg/kg/日~20mg/kg/日、1.0mg/kg/日~15mg/kg/日、1.0mg/kg/日~10mg/kg/日、1.0mg/kg/日~7.5mg/kg/day、1.0mg/kg/日~5mg/kg/日、2mg/kg/日~50mg/kg/日、2mg/kg/日~25mg/kg/日、2mg/kg/日~20mg/kg/日、2mg/kg/日~15mg/kg/日、2mg/kg/日~10mg/kg/日、2mg/kg/日~7.5mg/kg/日、または2mg/kg/日~5mg/kg/日であってもよい。
【0119】
前記化合物は約0.25ミリグラム/kg/日~約25mg/kg/日の範囲内の投与量で投与され得る。例えば、投与量は、0.25mg/kg/日、0.5mg/kg/日、0.75mg/kg/日、1.0mg/kg/日、1.25mg/kg/日、1.5mg/kg/日、1.75mg/kg/日、2.0mg/kg/日、2.25mg/kg/日、2.5mg/kg/日、2.75mg/kg/日、3.0mg/kg/日、3.25mg/kg/日、3.5mg/kg/日、3.75mg/kg/日、4.0mg/kg/日、4.25mg/kg/日、4.5mg/kg/日、4.75mg/kg/日、5mg/kg/日、5.5mg/kg/日、6.0mg/kg/日、6.5mg/kg/日、7.0mg/kg/日、7.5mg/kg/日、8.0mg/kg/日、8.5mg/kg/日、9.0mg/kg/日、9.5mg/kg/日、10mg/kg/日、11mg/kg/日、12mg/kg/日、13mg/kg/日、14mg/kg/日、15mg/kg/日、16mg/kg/日、17mg/kg/日、18mg/kg/日、19mg/kg/日、20mg/kg/日、21mg/kg/日、22mg/kg/日、23mg/kg/日、24mg/kg/日、25mg/kg/日、26mg/kg/日、27mg/kg/日、28mg/kg/日、29mg/kg/日、30mg/kg/日、31mg/kg/日、32mg/kg/日、33mg/kg/日、34mg/kg/日、35mg/kg/日、36mg/kg/日、37mg/kg/日、38mg/kg/日、39mg/kg/日、40mg/kg/日、41mg/kg/日、42mg/kg/日、43mg/kg/日、44mg/kg/日、45mg/kg/日、46mg/kg/日、47mg/kg/日、48mg/kg/日、49mg/kg/日、または50mg/kg/日であってもよい。
【0120】
前記化合物は0.01マイクロモル~500マイクロモル以上の範囲の濃度で投与され得る。例えば、用量は、0.01マイクロモル、0.02マイクロモル、0.05マイクロモル、0.1マイクロモル、0.15マイクロモル、0.2マイクロモル、0.5マイクロモル、0.7マイクロモル、1.0マイクロモル、3.0マイクロモル、5.0マイクロモル、7.0マイクロモル、10.0マイクロモル、15.0マイクロモル、20.0マイクロモル、25.0マイクロモル、30.0マイクロモル、35.0マイクロモル、40.0マイクロモル、45.0マイクロモル、50.0マイクロモル、60.0マイクロモル、70.0マイクロモル、80.0マイクロモル、90.0マイクロモル、100.0マイクロモル、150.0マイクロモル、200.0マイクロモル、250.0マイクロモル、300.0マイクロモル、350.0マイクロモル、400.0マイクロモル、450.0マイクロモル~約500.0マイクロモル超またはそれらの任意の増分値であり得る。これらの値および範囲の間にあるすべての値および範囲が包含されることが意味されていると理解されたい。
【0121】
前記化合物は0.10マイクログラム/mL~500.0マイクログラム/mLの範囲の濃度で投与され得る。例えば、濃度は、0.10マイクログラム/mL、0.50マイクログラム/mL、1マイクログラム/mL、2.0マイクログラム/mL、5.0マイクログラム/mL、10.0マイクログラム/mL、20マイクログラム/mL、25マイクログラム/mL、30マイクログラム/mL、35マイクログラム/mL、40マイクログラム/mL、45マイクログラム/mL、50マイクログラム/mL、60.0マイクログラム/mL、70.0マイクログラム/mL、80.0マイクログラム/mL、90.0マイクログラム/mL、100.0マイクログラム/mL、150.0マイクログラム/mL、200.0マイクログラム/mL、250.0 g/mL、250.0マイクログラム/mL、300.0マイクログラム/mL、350.0マイクログラム/mL、400.0マイクログラム/mL、450.0マイクログラム/mL~約500.0マイクログラム超/mLまたはそれらの任意の増分値であり得る。これらの値および範囲の間にあるすべての値および範囲が包含されることが意味されていると理解されたい。
【0122】
前記製剤は薬学的に許容される溶液で投与され得、これは、通常は、薬学的に許容される濃度の塩、緩衝剤、防腐剤、適合性担体、アジュバント、および任意で他の治療成分を含有し得る。
【0123】
治療法における使用に関して、有効量の化合物は、化合物を所望の表面に送達する任意の様式によって対象に投与され得る。薬学的組成物を投与することは当業者に公知の任意の手段によって達成されてもよい。投与経路は静脈内、筋肉内、腹腔内、膀胱内(膀胱)、経口、皮下、直接的注入(例えば、腫瘍または膿瘍へ)、粘膜(例えば、眼への局所的な)、吸入、および局所を非限定的に含む。
【0124】
静脈内および他の非経口投与経路には、化合物は凍結乾燥調製物として、リポソーム挿入またはリポソームカプセル化活性化合物の凍結乾燥調製物として、水性懸濁液中の脂質複合体として、または塩複合体として製剤化され得る。凍結乾燥製剤は、概して、投与の直前に好適な水溶液、例えば、滅菌水または生理食塩水中で再構成される。
【0125】
経口投与向けに、化合物は活性化合物を当技術分野で周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることによって容易に製剤化し得る。そのような担体は、治療される対象による経口摂取向けに、化合物を錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化することを可能にする。経口使用向けの薬学的調製物は固体賦形剤として取得され得、任意で、得られた混合物を摩砕し、必要に応じて好適な助剤を加えた後に顆粒の混合物を処理して、錠剤または糖衣錠コアが得られる。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、バレイショデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などである。必要に応じて、架橋PVP、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤を添加し得る。任意で、経口製剤はまた、内部の酸性条件を中和するための生理食塩水または緩衝液、例えば、EDTA中で製剤化され得るか、またはいかなる担体も用いずに投与されてもよい。
【0126】
前記化合物の経口剤形も企図される。誘導体の経口送達が効果的となるように化合物を化学的に修飾し得る。概して、企図される化学修飾は化合物自体への少なくとも1つの部分の結合であり、ここで前記部分は(a)酸加水分解の阻害および(b)胃または腸からの血流への取り込みを可能にする。化合物の全体的な安定性の増加および体内での循環時間の増加も望ましい。そのような部分の例はPEG、エチレングリコールおよびプロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびポリプロリンを含む。Abuchowski and Davis, "Soluble Polymer-Enzyme Adducts", In: Enzymes as Drugs, Hocenberg and Roberts, eds., Wiley-Interscience, New York, N.Y., pp. 367-383 (1981); Newmark et al., J Appl Biochem 4:185-9 (1982)。用い得る他のポリマーはポリ-1,3-ジオキソランおよびポリ-1,3,6-チオキソカン(tioxocane)である。上に示すように、薬学的用途にはPEG部分が好適である。
【0127】
化合物の放出場所は胃、小腸(十二指腸、空腸、または回腸)、または大腸であり得る。当業者であれば、胃では溶解しないが十二指腸内または腸の他の場所で物質を放出する入手可能な製剤を有している。放出は、化合物の保護によるか、または胃環境を超えて、例えば、腸内における化合物の放出によってのいずれかで、胃環境に対する有害な影響を回避し得る。
【0128】
胃に対する十分な耐性を確実にするためには、少なくともpH5.0までは不浸透性であるコーティングが不可欠になる。腸溶コーティングとして用いられる、より一般的な不活性成分の例は酢酸トリメリット酸セルロース(CAT)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、HPMCP50、HPMCP55、ポリ酢酸フタル酸ビニル(PVAP)、オイドラギットL30D、アクアテリック、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、オイドラギットL、オイドラギットS、およびシェラックである。これらのコーティングは混合フィルムとして用い得る。
【0129】
コーティングまたはコーティングの混合物は胃から保護されることを意図していない錠剤にも用い得る。これらのコーティングは糖コーティング、または錠剤を飲み込みやすくするコーティングを含み得る。カプセルは乾燥治療薬(例えば、粉末)の送達のためのハードシェル(ゼラチンなど)からなり得;液体形態にはソフトゼラチンシェルを用いてもよい。カシェ剤のシェル材料は厚いデンプンまたは他の食用紙であり得る。丸剤、トローチ、成形された錠剤、または錠剤の粉砕物には、湿塊化(moist massing)技術を用い得る。
【0130】
前記治療用物質は約1mmの粒子サイズの顆粒またはペレット形態の微細な多粒子として製剤に含まれ得る。カプセル投与用の材料の製剤はまた粉末として、軽く圧縮されたプラグ、またはさらには錠剤としてであり得る。治療製剤は圧縮によっても調製され得る。
【0131】
着色剤および香味剤が含まれ得る。例えば、化合物は製剤化され(リポソームまたはミクロスフェアカプセル化によってなど)、次いで着色剤および香味剤を含有する冷蔵飲料などの飲食可能製品内にさらに含有され得る。
【0132】
不活性材料で治療用物質を希釈し得るかまたはその量を増加させ得る。これらの希釈剤は炭水化物、特にマンニトール、α-ラクトース、無水ラクトース、セルロース、スクロース、加工デキストランおよびデンプンを含み得る。三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムを含むある特定の無機塩も充填剤として用い得る。いくつかの市販の希釈剤はFast-Flo、Emdex、STA-Rx 1500、EmcompressおよびAvicellである。
【0133】
個体剤形の治療用物質の製剤に崩壊剤が含まれてもよい。崩壊剤として用いられる材料は、デンプンに基づく市販の崩壊剤であるExplotabを含む、デンプンを非限定的に含む。デンプングリコール酸ナトリウム、アンバーライト、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ウルトラアミロペクチン(ultramylopectin)、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジピール、酸性カルボキシメチルセルロース、天然スポンジおよびベントナイトをいずれも用い得る。崩壊剤の別の形態は不溶性カチオン交換樹脂である。粉末ガムは崩壊剤としておよび結合剤として用い得、これらは寒天、カラヤまたはトラガカントなどの粉末ガムを含み得る。アルギン酸およびそのナトリウム塩も崩壊剤として有用である。
【0134】
結合剤は治療用物質を一緒に保持して硬い錠剤を形成するために用い得、アカシア、トラガカント、デンプンおよびゼラチンなどの天然物からの材料を含む。その他はMC、エチルセルロース(EC)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)を含む。PVPおよびHPMCはいずれも治療用物質を造粒するためにアルコール溶液中で用い得る。
【0135】
製剤化プロセス中の粘着を防止するために減摩剤を治療用物質の製剤に含み得る。潤滑剤を治療用物質と型の壁面との間の層として用い得、これらはそのマグネシウムおよびカルシウム塩を含むステアリン酸、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、流動パラフィン、植物油およびワックスを非限定的に含み得る。ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、様々な分子量のPEG、カルボワックス4000および6000などの可溶性潤滑剤も用い得る。
【0136】
製剤化時の薬物の流動特性を改善しかつ圧縮時の再編成を補助し得る流動促進剤を添加し得る。流動促進剤はデンプン、タルク、焼成シリカ、および水和珪アルミン酸塩を含み得る。
【0137】
水性環境への治療用物質の溶解を補助するために湿潤剤として界面活性剤を添加し得る。界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、およびスルホン酸ジオクチルナトリウムなどの陰イオン性洗浄剤を含み得る。用い得る陽イオン性洗浄剤は塩化ベンザルコニウムおよび塩化ベンゼトニウムを含む。界面活性剤として製剤に含まれ得る可能な非イオン性洗浄剤はラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、50および60、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート40、60、65および80、ショ糖脂肪酸エステル、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースを含む。これらの界面活性剤は化合物または誘導体の製剤中に単独でまたは異なる比率の混合物としてのいずれかで存在し得る。
【0138】
経口的に用い得る薬学的調製物はゼラチンからなるプッシュフィットカプセルや、ゼラチンとグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤とからなる軟質の密封カプセルを含む。プッシュフィットカプセルはラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および任意で安定剤と混合させた活性成分を含有し得る。ソフトカプセルでは、活性化合物は脂肪油、流動パラフィン、または液体PEGなどの好適な液体に溶解または懸濁させ得る。さらに、安定剤を添加し得る。経口投与向けに製剤化されたミクロスフェアも用い得る。そのようなミクロスフェアは当技術分野で明確に規定されている。経口投与向けのすべての製剤がそのような投与に好適な投与量であるのがよい。
【0139】
口腔内投与には、組成物は従来の様式で製剤化された錠剤またはトローチの形態を取り得る。
【0140】
局所投与には、化合物は当技術分野で周知のように溶液、ゲル、軟膏、クリーム、懸濁液などとして製剤化し得る。全身製剤は注射、例えば、皮下、静脈内、筋肉内、髄腔内または腹腔内注射による投与向けに設計されたものや、経皮、経粘膜、経口または肺投与向けに設計されたものを含む。
【0141】
吸入による投与には、化合物は、好適な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の好適なガスを用いた、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー体裁の形で都合よく送達され得る。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は計量された量を送達するためのバルブを備えることによって決定し得る。例えば、吸入器または吹送器における使用のためのゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物とラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末基剤との粉末混合物を含有して製剤化されてもよい。
【0142】
前記化合物は、それらを全身的に送達することが望ましい場合、注射による、例えば、ボーラス注射または持続点滴による非経口投与向けに製剤化され得る。注射用製剤は防腐剤を加えた単位剤形で、例えば、アンプルでまたは複数回投与容器で提供し得る。組成物は油性または水性ベヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの形態を取り得、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの配合剤を含有し得る。
【0143】
化合物は血流に、筋肉に、または内臓に直接投与し得る。そのような非経口投与に好適な経路は静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、硬膜外、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、腫瘍内、筋肉内および皮下送達を含む。非経口投与に好適な手段は有針(マイクロニードルを含む)注射器、無針注射器、および輸液技術を含む。
【0144】
非経口製剤は塩、炭水化物および緩衝剤(pH3~9などの)などの担体または賦形剤を含有し得る水溶液であり得るが、いくつかの用途には、滅菌非水性溶液として、または滅菌パイロジェンフリー水などの好適なベヒクルとともに用いられる乾燥形態として、より好適に製剤化されることがある。別の態様では、本明細書において記載の液体製剤のいずれかを本明細書において記載の化合物の非経口投与向けに適合させ得る。例えば無菌条件下での凍結乾燥による、無菌条件下での非経口製剤の調製は、当業者に周知の標準的な薬学的技術を用いて容易に達成し得る。非経口製剤における化合物の溶解性は溶解性向上剤の配合など適切な製剤化技術の使用により増加させ得る。
【0145】
非経口投与向けの薬学的製剤は水溶性形態の活性化合物の水溶液を含む。加えて、活性化合物の懸濁液は適切な油性注射用懸濁液として調製され得る。好適な親油性溶媒またはベヒクルはゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームを含む。水性注射用懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの、懸濁液の粘度を増加させる物質を含有し得る。任意で、懸濁液は、高濃度溶液の調製を可能にするために、化合物の溶解性を増加させる好適な安定剤または作用物質も含有し得る。
【0146】
非経口投与用の製剤は即時および/または調節放出向けに製剤化され得る。活性作用物質(即ち、化合物)は徐放性製剤(例えば、持続放出(slow-release)ポリマーを含む組成物中の)で投与し得る。活性作用物質は、インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤などの、急速放出から化合物を保護する担体を用いて調製され得る。生分解性の生体適合性ポリマーを用い得る(例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸、およびポリ乳酸・ポリグリコール酸共重合体(PGLA))。そのような製剤の調製のための方法は概して当業者に公知である。別の態様では、本教示に係る化合物または前記化合物を含む組成物は、適切な場合は、連続的に投与し得る。
【0147】
代替的には、活性化合物は、使用前では、好適なベヒクル、例えば、無菌パイロジェンフリー水との構成用に粉末形態であり得る。
【0148】
前記化合物はまた、例えば、カカオバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含有する、坐剤または保持浣腸剤などの直腸または膣用組成物で製剤化され得る。
【0149】
上に記載の製剤に加えて、化合物はまた持効性調製物として製剤化され得る。そのような長時間作用型製剤は、好適な高分子もしくは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂を用いて、または難溶性誘導体として、例えば、難溶性塩として製剤化され得る。
【0150】
前記薬学的組成物は好適な固相もしくはゲル相担体または賦形剤も含み得る。そのような担体または賦形剤の例は炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびPEGなどのポリマーを非限定的に含む。
【0151】
好適な液体または固体の薬学的調製物形態は、例えば、吸入用の水溶液もしくは生理食塩水であるか、マイクロカプセル化されたか、カプセル化されたか、微細な金粒子にコーティングされたか、リポソームに含有された、霧状にされたか、エアロゾルであるか、皮膚に埋め込むためのペレットであるか、または鋭利なものに乾燥させて皮膚に擦り付けるものである。薬学的組成物は顆粒、粉末、錠剤、コーティング錠、(マイクロ)カプセル、坐剤、シロップ、エマルジョン、懸濁液、クリーム、液滴、または活性化合物を長く放出させる調製物も含み、それらの調製では賦形剤および添加剤および/または助剤、例えば、崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、潤滑剤、香味剤、甘味剤もしくは可溶化剤が上に記載のように慣習的に用いられる。薬学的組成物は様々な薬物送達システムにおける使用に好適である。薬物送達のための方法の端的な検討には、Langer, R., Science 249:1527-33 (1990)を参照されたい。
【0152】
前記化合物および、任意で、他の治療薬はそのまま(ニート)または薬学的に許容される塩の形態で投与され得る。医薬に用いられる場合、塩は薬学的に許容されるのがよいが、薬学的に許容されない塩は、その薬学的に許容される塩を調整するために都合よく用いられ得る。そのような塩は以下の酸から調製されるものを非限定的に含む:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン-2-スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸。また、そのような塩は、カルボン酸基のナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩などのアルカリ金属またはアルカリ土類塩として調製され得る。
【0153】
好適な緩衝剤は酢酸および塩(1~2%w/v);クエン酸および塩(1~3%w/v);ホウ酸および塩(0.5~2.5%w/v);ならびにリン酸および塩(0.8~2%w/v)を含む。好適な防腐剤は塩化ベンザルコニウム(0.003~0.03%w/v);クロロブタノール(0.3~0.9%w/v);パラベン(0.01~0.25%w/v)およびチメロサール(0.004~0.02%w/v)を含む。
【0154】
薬学的組成物は、薬学的に許容される担体に含まれた有効量の化合物と、任意で、治療用物質とを含有する。「薬学的に許容される担体」という用語はヒトまたは他の脊椎動物への投与に好適な1つまたは複数の適合性のある固体もしくは液体の充填剤、希釈剤またはカプセル化物質を意味する。「担体」という用語は、適用を容易にするために活性成分が組み合わされる、天然または合成の有機または無機成分を表す。薬学的組成物の構成要素はまた、所望の薬学的効果を実質的に損なうであろう相互作用がないような様式で、化合物と、および互いと混ぜ合わせ得る。
【0155】
限定されないが特に化合物を含む、前記治療用物質は粒子で提供し得る。本明細書において用いられる粒子は、本明細書において記載の化合物または他の治療用物質から全体的にまたは部分的に構成され得るナノ粒子またはマイクロ粒子(またはより大きな粒子)を意味する。粒子は、腸溶コーティングを非限定的に含むコーティングに囲まれたコア内に治療用物質を含有し得る。治療用物質はまた粒子全体に分散され得る。治療用物質はまた粒子に吸着され得る。粒子はゼロ次放出、一次放出、二次放出、遅延放出、持続放出(sustained release)、即時放出、およびそれらの任意の組み合わせなどを含む、任意の次数の放出動態のものであり得る。粒子は、治療用物質に加えて、侵食性、非侵食性、生分解性、または非生分解性の材料またはそれらの組み合わせを非限定的に含む薬学および医学の技術分野で日常的に用いられる材料のいずれかを含み得る。粒子は溶液または半固体状態の化合物を含有するマイクロカプセルであり得る。粒子は事実上あらゆる形状であり得る。
【0156】
非生分解性および生分解性両方の高分子材料を、治療用物質を送達するための粒子の製造に用い得る。そのような高分子は天然または合成高分子であり得る。高分子は放出が望まれる期間に基づいて選択される。特に関心のある生体接着性高分子はSawhney et al., Macromolecules 26:581-587 (1993)に記載の生体侵食性ヒドロゲルを含み、その教示は本明細書に組み入れられる。これらはポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルテン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギネート、キトサン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、およびポリ(アクリル酸オクタデシル)を含む。
【0157】
前記治療用物質は制御放出システムに含有され得る。「制御放出」という用語は、製剤からの薬物放出の様式およびプロファイルが制御された任意の薬物含有製剤を指すことを意図している。これは即時および非即時放出製剤を指し、非即時放出製剤は持続放出および遅延放出製剤を非限定的に含む。「持続放出」(「長期放出」とも呼ばれる)という用語は、長期間にわたる薬物の漸進的な放出を提供し、かつ長期間にわたって薬物の実質的に一定の血中濃度をもたらし得る薬物製剤を指すためのその従来の意味で用いられる。「遅延放出」という用語は製剤の投与とそこからの薬物の放出との間に時間的な遅延がある薬物製剤を指すためのその従来の意味で用いられる。「遅延放出」は長期間にわたる薬物の漸進的な放出を含んでも含まなくてもよく、よって「持続放出」であってもなくてもよい。
【0158】
長期持続放出インプラントの使用は慢性状態の治療に特に好適であり得る。本明細書において用いられる「長期」放出は、インプラントが少なくとも7日間、最大で30~60日間まで、治療レベルの活性成分を送達するように構築および調整されていることを意味する。長期持続放出インプラントは当業者には周知であり、上に記載の放出システムのいくつかを含む。
【0159】
本明細書において記載の組成物および方法に対する他の好適な変更および適応が当業者に公知の情報に鑑みて本明細書に含まれる開示の記載から容易に明らかになること、ならびに開示またはその任意の態様の範囲から逸脱することなく行われてもよいことは、関連する技術分野における当業者によって理解されるであろう。
【実施例
【0160】
実施例1:LXが樹脂結合スペーサーである式(Q-LQ)2-Y-LXの事前に官能基付与されたデュアルFAPコンジュゲートについての合成
代表的な合成スキームは図3に概説しており、樹脂結合性多価コンジュゲート中間体の合成が示されている。図3のコンジュゲート中間体を合成するために、無水DMFと、N,N-ビス(N'-Fmoc-3-アミノプロピル)グリシンカリウムヘミ硫酸塩(1当量)と、ヘキサフルオロリン酸1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシド(HATU)(2.5当量)と、無水N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(5当量)との溶液をエチレンジアミン樹脂と合わせ、アルゴン雰囲気下で6時間撹拌した。カップリングミックスを樹脂から洗い流し、樹脂結合Fmoc保護グリシン誘導体を得た。樹脂を無水DMFとピペリジンまたはピペラジンとの溶液に再懸濁させ、過剰のDMFで洗浄した。次いで樹脂を無水DMFと、CO2H-PEGn-NHFmoc(2当量)と、HATU(2.5当量)と、無水DIPEA(5当量)との溶液と混合し、室温で6時間撹拌した。前述のように、カップリング溶液を溶媒で洗浄し、Fmoc基をピペリジンの溶液で除去した。室温で6時間撹拌しながら、樹脂、FAPリガンド(2当量)、HATU(2.5当量)、無水DIPEA(5当量)、および無水DMFを合わせることによって図3に示すFAPリガンドのカルボキシ末端に脱保護したアミンを結合させた。最後のカップリング工程後に樹脂を過剰の溶媒(DMF)で洗浄して残留するカップリング試薬を除去した。
【0161】
実施例2:デュアルFAPローダミン色素コンジュゲート5bの合成
図4Aおよび図4Bに記載のように、2つのFAP標的リガンドQを含む多価コンジュゲート(または化合物)を合成した。置換ピリジンから出発して、QAなどのFAP標的リガンドを7工程で合成した。実施例1に記載のものと同様の条件を用いてFAPリガンドをNHS PEGアジド部位に結合させた。FAPリガンド、NHS PEGアジド,無水DIPEA、およびDCMを合わせ、室温で2時間撹拌した。所望の生成物が66%の収率で単離された。次いで、FAPアジド中間体、(2-(3,5-ジエチニルベンズアミド)エチル)カルバミン酸tert-ブチル、CuI、無水DIPEAを無水DMF中で合わせることによってFAPアジドをジアルキンコアに結合させた。溶液を55℃まで12時間加熱して、所望のBoc保護中間体が60%の収率で得られた。Boc保護中間体(例えば、4aまたは4b)をトリフルオロ酢酸(TFA)とDCMとの混合物で処理し、室温で2時間撹拌して、Boc基の切断が生じた。最後に、脱保護した中間体にNHS-ローダミン、DCM、およびDIPEAを加え、化合物5aまたは5bを得た。
【0162】
実施例3.デュアルFAP近赤外S0456色素コンジュゲート6bの合成
実施例2および図4Aからの中間体4aおよび4bを化合物6aおよび6bの合成における出発物質として用いた。中間体4bをまずTFAとDCMとの溶液と合わせ、室温で2時間撹拌することによって4bをBoc脱保護した。次いで所望のBoc脱保護4b中間体を、前述のものと同様の条件を用いて、3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸、HATU、DIPEA、およびDCMと合わせた。続いてカップリング反応の生成物をDMSO溶液中でK2CO3およびCI-S0456で処理し、室温で4~5時間撹拌して化合物6bを得た。同様の条件を用いて化合物6aを合成した。
【0163】
実施例4.デュアルFAP多価コンジュゲートの合成
実施例1~3に記載したのと同様のプロセスを用いて、下記および表9のものなどの様々な化合物を合成する。
【0164】
実施例5.モノFAPおよびデュアルFAP標的リガンドについての結合研究
この実施例では、HT1080-FAP細胞を4ウェル共焦点プレートに37℃で12時間播種した。細胞増殖培地を除去し、細胞をPBS中の1%FBSにおいて3.0nM(最低)~25nM(最高)の範囲の濃度のFAP-リガンドコンジュゲートとともに培養した。37℃で1時間の培養後、PBSを細胞増殖培地と交換し、細胞を37℃で8時間~48時間培養した。細胞をPBS中の冷1%FBSで洗浄した(3×300uL)。画像は、共焦点顕微鏡を用いて1時間および8時間時点(図7)、ならびに24時間および48時間時点(図8)で取得した。デュアルFAP標的コンジュゲートは、コンジュゲートによる処理後最大で48時間まで細胞内で保持されたが、モノFAP標的コンジュゲートは24時間後までに消失した。
【0165】
実施例6.非FAP HT1080細胞に対するデュアルFAP標的コンジュゲートの結合研究
FAPを発現していないHT1080細胞を用いてデュアルFAPターゲティングコンジュゲートの結合を研究した。図9に示されるように、デュアルFAP標的コンジュゲートの結合はFAP特異的であり、より高い濃度(25nM)のコンジュゲートを用いてもコンジュゲートは非FAP発現HT1080細胞には結合しなかった。図9は、12.5nMまたは25nMのいずれでも、デュアルFAPリガンドの検出可能な保持がないことを示している。
【0166】
実施例7.KB腫瘍担持マウスに対するデュアルFAPコンジュゲート6bのインビボ造影
KB細胞はRPMI(10%FBS、1%ペニシリンストレプトマイシンを補充)増殖培地で培養した。400万個のKB細胞/マウスを無胸腺雌ヌードマウスの右肩に埋め込み(皮下注射)、腫瘍サイズが250~300mm3に達するまで維持した。上に示す構造を有するデュアルFAPターゲティングコンジュゲート6bを1回の注射あたり5ナノモルになるように調製し、PBSの100μL溶液に希釈した。尾静脈注射を介してコンジュゲート6bをKB細胞担持マウスに注射した。マウスの画像は745/810nm(励起/発光)で様々な時点で取得した。図10はKB担持マウスに対するデュアルFAPコンジュゲート6bを用いた経時的造影研究を示す。図11はデュアルFAP標的S0456がKB腫瘍において最大で4日間まで保持されたことを示す。注射の114時間後のデュアルFAP標的S0456の生体内分布を図12に示し、左側に全身画像があり、右側では画像化されたリガンドにより腎臓が覆われている。
【0167】
実施例8.KB腫瘍担持マウスに対するデュアルFAP化合物7bのインビボ評価
実施例7に記載のものと同様の方法を用いて、KB腫瘍担持マウスにおいて化合物7bを評価する。この実施例では、7bは99mTc-DOTA-7bであり、ここでDOTA部分が99mTcをキレート化する。1日目にマウスを実施例7に記載のようにコンジュゲート6bで処理し、腫瘍の大きさを画像化する。5日目およびその後4日ごとに3サイクルの期間にわたりマウスを99mTc-DOTA-7bで処理する。17日目に再び化合物6bを前述のように投与し、腫瘍サイズの変化を査定する。治療前と治療後の画像を撮影し、腫瘍サイズの縮小における99mTc-DOTA-7bの効果を評価する。
【0168】
実施例9
本明細書において開示の化合物(例えば、上に示すもの)は、各化合物の造影および治療効果を決定するために、実施例7および8に記載の方法と一致する方法を用いて評価される。スペーサーの長さ、活性作用物質、およびFAPリガンドは各試験の検出能および治療効果に基づいて最適化される。
【0169】
実施例10.造影色素を含むデュアルFAP標的コンジュゲートと比較した、造影色素を含まない過剰量の遊離FAPリガンドを用いた競合実験
この実施例では、図13に示すように、各パネルの左マウスに、造影色素S0456を接合したデュアルFAP標的リガンドを注射し、各パネルの右マウスをデュアルFAP標的コンジュゲートに対する競合として遊離FAPリガンドで処理した。各パネルにおける右側のマウスに、100倍過剰の500ナノモル競合リガンド(即ち、S0456色素を含まない遊離FAPリガンド)の後、S0456色素を含む5ナノモルデュアルFAPコンジュゲートを順次注射した。画像は注射の6時間後に上に記載のように取得される。競合マウスでは腫瘍部位での蛍光強度が標的マウス(高強度)に比べて低いことが観察され、これはデュアルFAP標的リガンドがFAP特異的であることを示した。
【0170】
実施例11.異なる時点での一価リガンド画像
無胸腺雌ヌードマウスに腫瘍サイズが約250~300mm3に達するまでKB腫瘍細胞を移植した。745nm/810nmの抽出/発光にて画像データを取得した。図14では、各パネルにおいて、左側のマウスは造影色素S0456を接合したモノFAP標的リガンドを注射することによってターゲティングされ、右側のマウスは遊離FAPリガンドで処理した。各パネルの右側のマウスに、100倍過剰の500ナノモル競合リガンド(即ち、S0456色素を含まないFAPリガンド)の後、S0456色素を含む5ナノモルモノFAPコンジュゲートを順次注射した。画像は注射後の異なる時点で上に記載のように取得される。競合マウスでは腫瘍部位で観察される蛍光が標的マウス(高強度)と比較して全く無く、これはモノFAPコンジュゲートが高度にFAP特異的であることを示した。図15において、24時間および48時間後の時点におけるモノFAPおよびデュアルFAP標的コンジュゲートの比較は、デュアルFAPコンジュゲートが48時間を超えて保持されたのに対し、モノFAPコンジュゲートは両方の時点で検出能がはるかに低く、48時間後までに検出能の閾値に近づいていたことを示した。
【0171】
参照による援用
本明細書において引用する特許、特許出願公報、論文、書物および他の刊行物はすべて参照により本明細書に組み入れられる。
【0172】
等価物
当業者であれば本明細書において記載される開示の様々な態様の等価物を多く認識するか、または通常の実験を行うのみで確認することができるであろう。そのような等価物は添付の特許請求の範囲に包含される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】