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特表2022-542568分析物測定システムで使用されるバイオセンサの汚染の決定
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-05
(54)【発明の名称】分析物測定システムで使用されるバイオセンサの汚染の決定
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/26 20060101AFI20220928BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G01N27/26 391Z
G01N27/416 338
G01N27/416 336C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504314
(86)(22)【出願日】2019-07-24
(85)【翻訳文提出日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 US2019043212
(87)【国際公開番号】W WO2021015755
(87)【国際公開日】2021-01-28
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519442612
【氏名又は名称】ライフスキャン アイピー ホールディングス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】マッコル デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】マクラエ アラン
(72)【発明者】
【氏名】マクフィー ギャヴィン
(72)【発明者】
【氏名】マッキントッシュ ステファン
(72)【発明者】
【氏名】モリス デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ワット ジョアンヌ
(57)【要約】
バイオセンサの汚染の存在を決定するための方法では、バイオセンサを試験測定器に装填し、試料をバイオセンサに適用する。第一及び第二の所定試験電圧を、それぞれ第一及び第二の所定時間間隔にわたって、電気化学セルの離間した電極間に印加する。第一及び第二の電流値をそれぞれ第一及び第二の所定時間間隔の間に測定する。測定された第一及び第二の電流値に基づいて、基準値を決定する。基準値のうちの1つ以上に基づいて、汚染の決定を行う。この決定に基づいて、分析物濃度の報告を抑制する。
【選択図】図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオセンサの汚染の存在を決定するための方法であって、
前記バイオセンサを試験測定器に装填し、試料を前記バイオセンサに適用するステップであって、前記バイオセンサは一対の離間した電極によって規定される電気化学セルを有する、ステップと、
前記電気化学セルの離間した前記電極間に第一の所定電圧を第一の所定時間間隔にわたって印加し、離間した前記電極間に第二の所定電圧を前記第一の所定時間間隔の後の第二の所定時間間隔にわたって印加するステップと、
前記第一の所定時間間隔の間に第一の電流値を測定するステップと、
前記第一の所定時間間隔の間に前記第一の電流値の合計に基づいて、第一の基準値を決定するステップと、
前記第二の所定時間間隔の間に第二の電流値を測定するステップと、
前記第二の所定時間間隔の間に測定されたピーク電流値に基づいて第二の基準値と、前記第二の所定時間間隔の間に前記ピーク電流値の後に測定された電流値の変化率に基づいて第三の基準値とを決定するステップと、
前記第一~第三の基準値のうちの1つ以上に基づいて、前記バイオセンサが汚染されているかどうかを決定するステップと、
前記第一~第三の基準値のうちの前記1つ以上に基づいて、前記バイオセンサが汚染されていると決定されると、分析物濃度の報告を抑制するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記バイオセンサが汚染されていることを決定するステップは、前記第一~第三の基準値の全てに基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一の基準値は、前記第一の所定電圧を印加してから約0.2秒~約0.75秒の間の前記第一の電流値の合計を含み、前記バイオセンサが汚染されていることを決定するステップは、前記第一の基準値が約6.5μAより大きいことに基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第二の基準値は、前記第二の所定時間間隔の間に測定された前記ピーク電流値が約12.5μA未満であることに基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ピーク電流値は、前記第二の所定電圧を印加した後、約0.05秒後に測定される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第三の基準値が、前記第二の所定電圧を印加してから約0.1秒後に測定された電流値と前記第二の所定時間間隔の間に測定された前記ピーク電流値との差からなり、前記バイオセンサが汚染されていることを決定するステップは、前記第三の基準値が約-3.5μA~0μAの間であることに基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第一の所定時間間隔の間に測定された最高電流値と最低電流値との間の差の大きさに基づいて第四の基準値を決定するステップをさらに含み、前記バイオセンサが汚染されていることを決定するステップは、さらに前記第四の基準値に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第四の基準値が、前記第一の所定電圧を印加してから約0.2秒~約0.75秒の間に測定された前記最高電流値と前記最低電流値との間の差の大きさを含み、前記バイオセンサが汚染されていることを決定するステップは、測定された前記第二の基準値が約0.57μAより大きいことに基づく、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第一の所定時間間隔の間に測定された最小電流値に基づいて第五の基準値を決定するステップをさらに含み、前記バイオセンサが汚染されていることを決定するステップは、さらに前記第五の基準値に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第五の基準値が、前記第一の所定電圧を印加してから約0.2秒~約0.75秒の間の前記電流値の最小を含み、前記バイオセンサが汚染されていることを決定するステップは、前記第五の基準値が約0μAより大きいことに基づく、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第二の電流値及び第三の所定時間間隔に測定された第三の電流値に基づいて前記分析物濃度を計算するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記分析物濃度を計算するステップは、
【数1】
の形の方程式を用いることを含み、式中、
basicは、前記分析物濃度で、
は、前記第三の所定時間間隔の間の前記第三の電流値の合計で、
は、前記第二の所定時間間隔の間の前記第二の電流値の合計で、
【数2】
で、
a、b、p及びzgrは、所定の係数である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
電圧源と、
ユーザインタフェースと、
コントローラと、
を備える、バイオセンサの汚染の存在を決定するための試験測定機であって、
前記コントローラが、
前記電圧源で、電気化学セルの離間した電極間に第一の所定電圧を第一の所定時間間隔にわたって印加するステップと、
前記第一の所定時間間隔の間に第一の電流値を測定するステップと、
前記第一の所定時間間隔の間に前記第一の電流値の合計に基づいて、第一の基準値を決定するステップと、
離間した前記電極間に第二の所定電圧を第一の所定時間間隔の後の第二の所定時間間隔の間に印加するステップと、
前記第二の所定時間間隔の間に第二の電流値を測定するステップと、
前記第二の所定時間間隔の間に測定されたピーク電流値に基づいて第二の基準値と、前記第二の所定時間間隔の間に前記ピーク電流値の後に測定された電流値の変化率に基づいて第三の基準値とを決定するステップと、
前記第一~第三の基準値のうちの前記1つ以上に基づいて、前記バイオセンサが汚染されているかどうかをユーザインタフェースに表示するステップと、
を行うように構成される、試験測定器。
【請求項14】
前記試験測定器が、前記第二の電流値及び第三の電流値に基づいて分析物濃度を計算するステップを行うようにさらに構成される、請求項13に記載の試験測定器。
【請求項15】
前記分析物濃度を計算するステップは、
【数3】
の形の方程式を用いることを含み、式中、
basicは、前記分析物濃度で、
は、第三の所定時間間隔の間の前記第三の電流値の合計で、
は、前記第二の所定時間間隔に間の前記第二の電流値の合計で、
【数4】
で、
a、b、p及びzgrは、所定の係数である、請求項14に記載の試験測定器。
【請求項16】
前記バイオセンサが汚染されていることを決定するステップは、前記第一~第三の基準値の全てに基づく、請求項13に記載の試験測定器。
【請求項17】
前記第一の基準値は、前記第一の所定電圧を印加してから約0.2秒~約0.75秒の間の前記第一の電流値の合計を含み、前記バイオセンサが汚染されていることを決定するステップは、前記第一の基準値が約6.5μAより大きいことに基づく、請求項13に記載の試験測定器。
【請求項18】
前記第二の基準値は、前記第二の所定時間間隔の間に測定された前記ピーク電流値が約12.5μA未満であることに基づく、請求項13に記載の試験測定器。
【請求項19】
前記第三の基準値が、前記第二の所定電圧を印加してから約0.1秒後に測定された電流値と前記第二の所定時間間隔の間に測定された前記ピーク電流値との差からなり、前記バイオセンサが汚染されていることを決定するステップは、前記第三の基準値が約-3.5μAと0μAの間であることに基づく、請求項13に記載の試験測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、一般に、分析物測定システムに関し、より具体的には、汚染を決定するための方法、例えば、分析物測定システムで使用されるバイオセンサの水分汚染に関する。
【背景技術】
【0002】
生理的流体、例えば血液又は血液由来製品中の分析物の検出は、今日の社会にとってますます重要となってきている。分析物検出アッセイは、臨床検査室での試験、家庭での試験などを含む様々な用途で利用されており、このような試験の結果は、様々な疾患状態における定期的な診断及び管理において重要な役割を果たしている。注目されている分析項目には、とりわけ、糖尿病管理のためのグルコースと、コレステロールとが含まれる。分析物検出の重要性の高まりに対応して、臨床用及び家庭用の両方に使用する様々な検査プロトコル及び装置が開発されてきた。
【0003】
液体試料の分析物検出のために採用される方法の1つは、電気化学的方法である。このような方法では、血液試料のような水性液体試料をバイオセンサ上に堆積し、2つの電極、例えば対向電極及び作用電極を含む電気化学セルの試料受容チャンバに充填する。分析物は、酸化還元試薬と反応させ、分析物濃度に応じた量の酸化性(または還元性)物質を形成させる。次いで、酸化性(又は還元性)物質の存在量を電気化学的に推定し、沈殿した試料に存在する分析物の量と関連付ける。
【0004】
例えば、LifeScan Inc.製の血糖値測定システムの一つで、One-Touch Verio(以下、Verio)として販売されているものは、全体的に著しく優れた性能と精度を示している。
【0005】
しかしながら、どのような分析物測定システムも、様々なモードの非効率及び/又は誤差の影響を受けやすい場合がある。例えば、分析物測定システムに使用されるバイオセンサ、例えば、使い捨ての試験片は、血糖値試験など患者が自分で行う血液試験のために保管する際に、汚染又は損傷を受ける可能性がある。残念なことに、試験片が汚染又は損傷していると、分析物濃度の測定値で誤りが生じたり、あるいは予想以上に高くなったりする可能性がある。このような誤った測定値は、被験体に誤った量の薬を投与するように誤って導き、潜在的に破滅的な結果をもたらす可能性がある。したがって、分析物の測定結果を報告する前に、バイオセンサにクリティカルな量の汚染又は損傷が実際に生じたかどうかを判断することが急務となっている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明の特徴を理解することができるように、詳細な説明は、特定の実施形態を参照することによって得ることができ、そのいくつかは添付の図面に示されている。しかしながら、図面は、特定の実施形態のみを例示しているに過ぎず、したがって、開示された主題の範囲は他の実施形態も包含しているので、その範囲を限定すると見なされるべきではないことに留意されたい。図面は、必ずしも一定の縮尺ではなく、選択された実施形態を示すものであり、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。図面において、同様の数字は、様々な図面の全体で同様のパーツを示すために使用されている。
【0007】
図1】本明細書に記載される態様による、試験測定器及びバイオセンサ(試験片)を含む分析物測定システムの透視図である。
図2図1の試験測定器に配置された回路基板の上面図であり、本明細書に記載される態様に従った様々な部品を示す。
図3A図1及び図2の分析物測定システムで使用するのに適した組み立てられた試験片の透視図である。
図3B図3Aの試験片の分解透視図である。
図3C図3A及び図3Bの試験片の近位部分の拡大透視図である。
図3D図3A図3Cの試験片の底面図である。
図3E図3A図3Dの試験片の側面立面図である。
図3F図3A図3Eの試験片の上面図である。
図3G図3A図3Fの試験片の近位部分の部分側面立面図である。
図4図3A図3Fに示した試験片のような試験片の部分と電気的にインターフェースする試験測定器を示す簡略化された概略図である。
図5A】試験片に適用される試料中の分析物を決定するために、所定時間間隔で試験片の作用電極及び対向電極に図4の試験測定器によって印加される試験波形の一例を示す。
図5B】公称試験片について、図5Aの波形に基づいて経時的に測定された電流を示す。
図5C】試験片中の分析物濃度を決定するための方法を表すフローチャートである。
図6A図5Aの波形の一部に基づいて、時間の経過に伴う公称試験片と汚染された試験片との間で測定された電流値を示すグラフ比較を示している。
図6B】本明細書に記載の態様による、試験片中の汚染の存在を決定するための方法を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の詳細な説明は、図面を参照しながら読まれるべきものであり、異なる図面における同様の要素には同一の番号が付けられている。図面は、必ずしも一定の縮尺ではなく、選択された実施形態を示すものであり、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。詳細な説明は、本発明の原理を例として説明するもので、限定するためではない。この説明により、当業者による本発明の実施及び使用が明確に可能になり、本発明のいくつかの実施形態、適用例、変形例、代替例、及び使用が記述され、その中には、本発明を実施する最良の形態であると現時点において考えられるものも含まれる。
【0009】
本明細書で使用する場合、任意の数値又はその範囲についての「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の一部又は集合が、本明細書で述べる意図された目的に沿って機能することを可能とする適切な寸法公差を示す。さらに、本明細書で使用される場合、用語「患者」、「宿主」、「ユーザ」、及び「被験体」は、任意のヒト又は動物の被験体を指し、システム又は方法をヒトで使用することに限定する意図はないが、ヒトの患者に対象技術を使用することは、好ましい実施形態を表すものである。
【0010】
本開示は、部分的に、使い捨て試験片などのバイオセンサを用いて、適用された試料の分析物濃度を決定するための試験の実施前にバイオセンサが汚染又は損傷しているかどうかを決定するための技術に関する。これらの技術は、水分による汚染に加えて、極端な温度(例えば、通常の室温よりかなり高い温度)、過度の光、高レベルの湿度などに曝露された試験片に適用できる。不適切な保管に起因し得るそのような汚染または曝露は、試験片電極上に特定の量のメディエータの変換、例えば、フェロシアン化カリウムからフェロシアン化カリウムへの変換を招く可能性がある。一例では、水分で汚染された血糖試験片は、予想よりも誤って高い結果、実際の血糖値よりも高い約80mg/dL(またはそれ以上)の結果を導く可能性もある。このような場合、この予想よりも高い測定値は、患者に誤った高用量のインスリンを投与することにつながり、患者の健康に深刻な影響を与えることになり得る。
【0011】
逆に、少量の水分が試験片を汚染し、試験片が依然として許容可能な精度範囲内の結果を与える可能性がある場合、試験結果を患者に表示する必要がある。したがって、未知のレベルの水分が試験片を汚染したと決定するだけの簡単な方法では、予想よりも高い結果を排除するだけの問題は解決されず、血糖値試験のコストが増加して患者の転帰が減少する。加えて、新しい試験測定器又は追加の物理試験片を必要とする技術は、以前に展開されたユニットと互換性がなく、コストも増加する。さらに、汚染を決定するための試験片の試験は、その試験自体が分析物測定を実行するための試験片の使用を損傷または妨害しなかった場合にのみ有効である。
【0012】
前述のVerioシステムは非常に良好な全体的性能を有するが、しかしながら、試験で示されたのは、バイオセンサが、試験片の不適切な保管の結果として起こり得る汚染などの汚染に対して完全に不浸透性ではないことである。このような汚染には、水分による汚染、または他の外部の原因や刺激(温度、光、湿度)による汚染が含まれることもある。汚染の影響を低減する方法を見つける試みにおいて、保管及び環境条件に基づいて汚染によって誤った結果を生成する試験片についてユーザに警告するための技術を本明細書で提供する。したがって、バイオセンサが汚染されているかどうかを決定する方法の様々な側面を本明細書で提示する。本技術の一例では、分析物の測定を汚染の決定と同時に行うことができ、その結果、バイオセンサが汚染または損傷していると見なされない場合、試験結果を患者に公開(表示)することができる。また、試験片が汚染されていると見なされる場合、試験結果を抑制して、不適切な投薬につながる可能性のある、予想よりも高い分析物の読み取り値を患者に与えないようにすることができる。
【0013】
一般に述べられ、少なくとも1つの実施形態によれば、バイオセンサの汚染を決定するための方法が提供される。バイオセンサは試験測定器に装填され、試料がバイオセンサに適用される。電気化学セルの離間した電極間に第一の所定電圧を第一の所定時間間隔にわたって印加し、第一の所定時間間隔後の第二の所定時間間隔中に離間した電極間に第二の所定電圧を印加する。第一の電流値は、第一の所定時間間隔の間に測定される。第一の基準値は、第一の所定時間間隔の間の第一の電流値の合計に基づいて決定される。第二の電流値は、第二の所定時間間隔の間に測定される。第二の基準値は、第二の所定時間間隔の間に測定されたピーク電流値に基づいて決定される。第三の基準値は、第二の時間間隔の間のピーク電流値の後に測定された電流値の変化率に基づいて決定される。バイオセンサが汚染されているかどうかの決定は、第一~第三の基準値のうちの1つ以上に基づいて決定することができる。分析物濃度の報告は、バイオセンサが汚染されていると決定された場合に抑制される。別の実施形態では、上述した方法のステップを実行する試験測定器が提示される。
【0014】
上記の実施形態は、単なる例示であることを意図している。他の実施形態も開示された主題の範囲内にあることは、以下の議論から容易に明らかであろう。
【0015】
次に、具体的な作業例を、図1図6に関して説明する。
【0016】
図1は、携帯型試験測定器10及びバイオセンサを含む糖尿病管理システムを示し、バイオセンサは、血糖の検出用に構成された使い捨て試験片62の形態で提供されている。以下の議論の目的で、携帯型試験測定器は、分析物測定管理ユニット、グルコース測定器、測定器、及び/又は測定器ユニットとして全体的に同義的に言及される。この図では示されていないが、少なくとも1つの実施形態では、携帯型試験測定器は、インスリン送達装置、追加分析物検査装置、及び薬物送達装置と組み合わされてもよい。携帯型試験測定器は、ケーブルを介して、あるいは、例えばGSM(登録商標)、CDMA、Bluetooth(登録商標)、WiFiなどの適切な無線技術を介して遠隔コンピュータ又は遠隔サーバに接続されてもよい。このような分析物測定システムは、2014年4月29日に発行され、「Analyte measurement technique and system」と題する米国特許第8,709,232号と、2012年1月26日に公開された「System and Method for Measuring an Analyte in the Sample」と題する国際公開第2012/012341号に、より詳細に説明されており、そのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
図1を引き続き参照すると、携帯型試験測定器10は、対面する表面上に配置された複数のユーザインタフェースボタン(16、18、20)を有するハウジング11によって規定されている。ディスプレイ14は、バイオセンサ(試験片62)を受け入れるように構成された試験片ポート開口部22に加えて提供される。ユーザインタフェースボタン(16、18、20)は、データの入力、メニューのナビゲーション、及びコマンドの実行を可能にするように構成されてもよい。携帯型試験測定器10のユーザインタフェースボタンの構成及び機能は、一例を意図しており、修正及び変形が可能であることは容易に理解されるであろう。この特定の実施形態によれば、ユーザインタフェースボタン18は、二方向トグルスイッチの形態であってもよい。データには、分析物濃度を代表する値、及び/又は個人の日常生活に関連する情報を含んでもよい。日常生活に関する情報には、個人の食事量、服薬状況、健康診断の受診状況、健康状態、及び運動レベルを含んでもよい。
【0018】
図2に示され、簡略化された概略的な形式で示されているように、携帯型試験測定器10の電子部品は、図1のハウジング11の内部に含まれる回路基板34の上面に配置されている。この実施形態では、これらの電子部品は、試験片ポートコネクタ23、オペアンプ回路35、マイクロコントローラ38、ディスプレイコネクタ14a、不揮発性メモリ40、クロック42、及び第一の無線モジュール46を含む。回路基板34の対向する下面において、電子部品は、電池コネクタ(図示せず)及びデータポート13を含んでもよい。様々な電子部品の相対的な位置は変化させることができ、本明細書で説明する構成は例示的なものであることが理解されるであろう。
【0019】
マイクロコントローラ38は、試験片ポート開口部23(図1)と位置合わせされた試験片ポートコネクタ22、オペアンプ回路35、第一の無線モジュール46、ディスプレイ14、不揮発性メモリ40、クロック42、少なくとも1つの電池(図示せず)、データポート13、及びユーザインタフェースボタン(16、18、及び20)に電気的に接続されてもよい。
【0020】
オペアンプ回路35は、ポテンショスタット機能及び電流測定機能の一部を提供するように構成された2つ以上のオペアンプを含んでもよい。ポテンショスタット機能は、試験片の少なくとも2つの電極間の試験電圧の印加を指すことがある。電流機能は、印加された試験電圧から生じる試験電流の測定を指すことがある。電流測定は、電流電圧変換器を用いて実行されてもよい。マイクロコントローラ38は、例えば、Texas Instrument(TI)社製MSP430のような混合信号マイクロプロセッサ(MSP)の形態であってもよい。MSP430は、ポテンショスタット機能及び電流測定機能の一部も実行するように構成されてもよい。さらに、430は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリを含んでもよい。別の実施形態では、電子部品の多くは、特定用途向け集積回路(ASIC)の形態でマイクロコントローラと一体化されてもよい。
【0021】
試験片ポートコネクタ22は、試験片62への電気的接続を形成するように構成されてもよい。ディスプレイコネクタ14aは、ディスプレイ14に取り付けるように構成されてもよい。この説明の目的で、ディスプレイ14は、測定されたグルコースレベルを報告するために、またインタフェースボタン16、18、20を使用してライフスタイル関連情報の入力を容易にするために、液晶ディスプレイの形態であってもよい。ディスプレイ14は、オプションとして、バックライトを含んでもよい。データポート13は、接続リードに取り付けられた適切なコネクタを受け入れることができ、それによって、試験測定器10をパーソナルコンピュータ(図示せず)などの外部装置にリンクさせることができる。この説明の目的で、データポート13は、例えば、シリアル、USB、又はパラレルポートなどのデータの伝送を可能にする任意のポートであってよい。データポート13は、携帯型試験測定器10のハウジング11を介してアクセスすることができる。クロック42は、ユーザが位置する地理的地域に関連する現在の時刻を保持し、また、時間を測定するために、構成されてもよく、これは、以下で詳述するとおりである。試験測定器は、例えば、少なくとも1つの含まれる電池(図示せず)のような電源に電気的に接続されるように構成されてもよい。
【0022】
図3A図3Gは、本明細書に記載される方法及びシステムと共に使用するのに適した試験片62の様々な図を示している。例示的な実施形態では、試験片62は、図3Aに示すように、遠位端80から対向する近位端82まで延び、横方向の縁56、58を有する細長い本体によって規定されている。図3Bに示すように、試験片62は、また、第一の電極層66、第二の電極層64、及び試験片62の遠位端80において2つの電極層64、66の間に挟まれたスペーサ60を含む。第一の電極層66は、第一の電極66、第一の接続トラック76、及び第一の接触パッド67を含んでもよく、第一の接続トラック76は、図3B及び図3Cに示すように、第一の電極66を第一の接触パッド67と電気的に接続させる。なお、第一の電極66は、図3A及び図3Bで示すように、試薬層72の直下にある第一の電極層66の部分である。同様に、第二の電極層64は、第二の電極64、第二の接続トラック78、及び第二の接触パッド63を含んでもよく、第二の接続トラック78は、図3A図3Cに示すように、第二の電極64を第二の接触パッド63と電気的に接続させる。なお、第二の電極64は、図3B及び図3Cに最もよく示すように、試薬層72の上方に配置された第二の電極層64の部分である。
【0023】
図3B~3Eに示すように、試料受容チャンバ61(例えば、電気化学セル)は、第一の電極66、第二の電極64、及び試験片62の遠位端80に近接したスペーサ60によって規定される。第一の電極66及び第二の電極64は、図3Gに示すように、試料受容チャンバ61の底部及び頂部をそれぞれ規定してもよい。スペーサ60のカットアウト領域68は、図3Gに示すように、試料受容チャンバ61の側壁を規定してもよい。一態様において、試料受容チャンバ61は、図3A図3Cに示すように、試料入口及び/又は通気口を提供するポート70を含んでもよい。例えば、ポート70の一方は、流体試料の浸入を可能にし、他方のポート70は、空気の排出を可能にすることができる。
【0024】
例示的な実施形態では、試料受容チャンバ61は、小さな容積を有していてもよい。例えば、チャンバ61は、約0.1マイクロリットル~約5マイクロリットル、約0.2マイクロリットル~約3マイクロリットル、又は、好ましくは約0.3マイクロリットル~約1マイクロリットルの範囲の容積を有してもよい。小さな試料体積を提供するために、カットアウト68は、約0.01cm~約0.2cm、約0.02cm~約0.15cm、又は、好ましくは、約0.03cm~約0.08cmの範囲の面積を有していてもよい。さらに、第一の電極66及び第二の電極64は、約1マイクロメートル~約500マイクロメートルの範囲、好ましくは約10マイクロメートル~約400マイクロメートルの範囲、より好ましくは約40マイクロメートル~約200マイクロメートルの範囲で間隔を空けて配置されてもよい。また、電極の間隔が比較的近いと、酸化還元サイクルの発生が可能になり得、ここで、第一の電極66で生成され酸化されたメディエータは、第二の電極64に拡散して還元され、その後、第一の電極66に拡散して再び酸化されることが可能である。当業者は、電極の様々なそのような体積、面積、及び/又は間隔が、本開示の精神及び範囲内であることを理解するであろう。
【0025】
一実施形態において、第一の電極66及び第二の電極64は、それぞれ電極層を含んでもよい。電極層は、金、パラジウム、炭素、銀、白金、酸化スズ、イリジウム、インジウム、又はそれらの組み合わせ(例えば、インジウムドープ酸化スズ)などの材料から形成される導電材料を含んでもよい。さらに、電極層は、スパッタリング、無電解メッキ、又はスクリーン印刷プロセスによって絶縁シート(図示せず)上に導電材料を配置することによって形成されてもよい。1つの例示的な実施形態において、第一の電極66及び第二の電極64は、それぞれ、スパッタリングされたパラジウム及びスパッタリングされた金から作られた電極層を含んでもよい。スペーサ60として採用され得る適切な材料は、例えば、プラスチック(例えば、PET、PETG、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン)、シリコン、セラミック、ガラス、接着剤、及びこれらの組み合わせなどの様々な絶縁材料を含む。
【0026】
一実施形態では、スペーサ60は、ポリエステルシートの対向する面にコーティングされた両面接着剤の形態であってよく、接着剤は、感圧又は熱活性化されてもよい。第一の電極層66、第二の電極層64、及び/又はスペーサ60のための様々な他の材料が、本開示の精神及び範囲内にあることを、出願人は注記する。
【0027】
第一の電極66又は第二の電極64のいずれかが、少なくとも1つの印加試験電圧の大きさ及び/又は極性に応じて、作用電極の機能を果たすことができる。作用電極は、還元されたメディエータ濃度に比例する限界試験電流を測定してもよい。例えば、電流を制限する種が還元されたメディエータ(例えば、フェロシアン化カリウム)である場合、試験電圧が第二の電極64に関して酸化還元メディエータ電位よりも十分に大きい限り、第一の電極66で酸化されてもよい。この状況では、第一の電極66が作用電極の機能を果たし、第二の電極64が対向/参照電極の機能を果たす。対向/参照電極を単に参照電極又は対向電極と呼んでもよいことを出願人は注記する。限界酸化は、還元されたメディエータの全てが作用電極の表面で枯渇したときに生じ、測定された酸化電流がバルク溶液から作用電極表面に向かって拡散する還元されたメディエータのフラックスに比例するようになる。本明細書で使用する「バルク溶液」という用語は、還元されたメディエータが枯渇領域内に位置しない、作用電極から十分に離れた溶液の部分を意味する。試験片62について特に断らない限り、試験測定器10によって印加される全ての電位は、以下、第二の電極64に対して記載されることに留意されたい。
【0028】
同様に、試験電圧が酸化還元メディエータ電位より十分に小さい場合、還元されたメディエータが、制限電流として第二の電極64で酸化されることもある。そのような状況では、第二の電極64は作用電極の機能を果たし、第一の電極66は対向/参照電極の機能を果たす。
【0029】
最初に、分析は、ポート70の1つを介して試料受容チャンバ61に流体試料の量を導入することを含んでもよい。一態様では、ポート70及び/又は試料受容チャンバ61は、毛細管現象によって流体試料が試料受容チャンバ61を充填するように構成されてもよい。第一の電極66及び/又は第二の電極64は、試料受容チャンバ61の毛細管現象を促進するために、親水性試薬でコーティングされてもよい。例えば、2-メルカプトエタンスルホン酸のような親水性部位を有するチオール誘導体化試薬を、第一の電極及び/又は第二の電極にコーティングしてもよい。
【0030】
上記試験片62の分析において、試薬層72は、PQQ補酵素に基づくグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)とフェリシアン化物を含むことができる。別の実施形態では、PQQ補酵素に基づく酵素GDHを、FAD補酵素に基づく酵素GDHに置き換えることができる。血液又はコントロール溶液が試料反応チャンバ61に投薬されると、グルコースはGDH(ox)により酸化され、そのプロセスで、以下の化学変化T.1に示すように、GDH(ox)をGDH(red)に変換させる。なお、GDH(ox)はGDHの酸化状態を意味し、GDH(red)はGDHの還元状態を意味する。
【0031】
T.1 D-グルコース+GDH(ox) → グルコン酸+GDH(red)
【0032】
次に、GDH(red)は、以下の化学変化T.2に示すように、フェリシアン化物(すなわち、酸化されたメディエータ又はFe(CN) 3-、例えばフェリシアン化カリウム)によって、活性な酸化状態に再生される。GDH(ox)を再生するプロセスでは、T.2に示すような反応からフェロシアン化物(すなわち、還元されたメディエータ又はFe(CN) 4-、例えば、フェロシアン化カリウム)が生成される。
【0033】
T.2 GDH(red)+2Fe(CN) 3-→GDH(ox)+2Fe(CN) 4-
【0034】
図4は、試験片62の第一の接触パッド67a、67b及び第二の接触パッド63と連動する試験測定器10を示す簡略化された概略図を提供する。第二の接触パッド63は、図3Bに図示すように、U字型ノッチ65を介して試験測定器10との電気的接続を確立するために使用されてもよい。一実施形態において、試験測定器10は、図4に概略的に示すように、第二の電極コネクタ101、第一の電極コネクタ(102a、102b)、試験電圧ユニット106、電流測定ユニット107、プロセッサ212、メモリユニット210、及び視覚ディスプレイ202を含んでもよい。第一の接触パッド67は、67a及び67bと付された2つのプロングを含んでもよい。一つの例示的な実施形態において、第一の電極コネクタ102a及び102bは、それぞれ別々にプロング67a及び67bに接続する。第二の電極コネクタ101は、第二の接触パッド63に接続してもよい。試験測定器10は、プロング67aと67bとの間の抵抗又は電気的導通を測定して、試験片62が試験測定器10に電気的に接続されているかどうかを決定してもよい。
【0035】
一実施形態では、試験測定器10は、第一の接触パッド67と第二の接触パッド63との間に試験電圧及び/又は電流を印加してもよい。試験測定器10は、試験片62が挿入されたことを認識すると、試験測定器10をオンにして、流体検出モードを開始させる。一実施形態では、流体検出モードは、試験測定器10に、第一の電極66と第二の電極64との間に約1マイクロアンペアの定電流を印加させる。試験片62は最初乾燥しているので、試験測定器10は比較的大きな電圧を測定する。投薬プロセス中に流体試料が第一の電極66と第二の電極64との間のギャップを埋めるとき、試験測定器10は、試験測定器10に自動的にグルコース試験を開始させる所定の閾値以下である測定電圧の減少を測定することになる。
【0036】
図5A~5Cを参照しながら、試験片62及び試験測定器10を使用して、分析物濃度を決定するための方法を、以下に説明する。概要として、まず、試験電圧の印加と電流値の測定について説明し、その後、分析物濃度測定について説明する。
【0037】
まず、試験片への電圧の印加に関して、実施例の試験測定器10及び実施例の試験片62を参照する。試験測定器10は電子回路を含んでもよく、電子回路は、試験片62に複数の電圧を印加し、試験片62の試験チャンバ内の電気化学反応から生じる電流過渡出力を測定するために使用できる。試験測定器10は、また、本明細書に開示されるような流体試料中の分析物濃度を決定する方法のための命令セットを有する信号プロセッサを含んでもよい。一実施形態では、分析物は、血糖である。
【0038】
試験電圧の印加の議論を続けると、図5Aは、所定時間間隔で試験片62に印加される複数の試験電圧からなる例示的な波形を示している。この波形による複数の試験電圧は、第一の時間間隔tにわたって印加される第一の試験電圧E1、第二の時間間隔tにわたって印加される第二の試験電圧E2、及び第三の時間間隔tにわたって印加される第三の試験電圧E3を含む。第三の電圧E3は、第二の試験電圧E2に対して、起電力の大きさ、極性、又はその両方の組み合わせにおいて異なっていてもよい。好ましい実施形態及び図示のように、E3は、E2と同じ大きさであり得るが、極性は反対であり得る。グルコース試験時間間隔tは、グルコース試験を行うための時間量(ただし、必ずしもグルコース試験に関連する全ての計算を行う必要はない)を表す。グルコース試験時間間隔tは、約1.1秒~約5秒の範囲であってよい。さらに、図5Aに示すように、第二の試験電圧E2は、一定(DC)試験電圧成分と、短い時間間隔に印加される重畳交番(AC)、又は交番振動試験電圧成分とを含んでもよい。より具体的には、重畳交番又は振動試験電圧成分は、第二の時間間隔の開始時にtcapによって示される時間間隔にわたって印加されてもよい。
【0039】
いずれかの時間間隔の間に測定される複数の試験電流値は、1マイクロ秒当たり約1回の測定から100ミリ秒当たり約1回の測定の範囲内の頻度で、好ましくは約10ミリ秒で実行されてもよい。連続して3つの試験電圧を使用する実施形態を説明しているが、グルコース試験は、異なる数の開回路及び試験電圧を含んでもよい。例えば、代替の実施形態として、グルコース試験は、第一の時間間隔に開回路、第二の時間間隔に第二の試験電圧、及び第三の時間間隔に第三の試験電圧を含んでもよい。「第一」、「第二」、及び「第三」の参照は便宜上選択されており、試験電圧が印加される順序を必ずしも反映していないことに留意されたい。例えば、一実施形態は、第三の試験電圧は、第一及び第二の試験電圧が印加される前に、印加され得る電位波形を有し得る。
【0040】
図5Cは、図5Aの波形及び図5Bに示すように測定された電流に基づいて、試験片中の分析物濃度を決定するための方法500を表すフローチャートである。例示的なステップ510において、グルコースアッセイは、試験片62を試験測定器10に挿入し、試験片62上に試料を堆積させることによって開始される。例示的なステップ520において、試験測定器10は、第一の時間間隔t(例えば、図5Aにおいて1秒)にわたって、第一の電極66と第二の電極64との間に第一の試験電圧E1(例えば、図5Aにおいておよそ20mV)を印加してもよい。第一の時間間隔tは、約0.1秒~約3秒の範囲であってよく、好ましくは約0.2秒~約2秒の範囲であり、最も好ましくは約0.3秒~約1.1秒の範囲である。
【0041】
第一の時間間隔tは、試料受容チャンバ61が試料で完全に充填され、また試薬層72が少なくとも部分的に溶解又は溶媒和するように、十分に長くてもよい。一態様では、第一の試験電圧E1は、比較的少量の還元電流又は酸化電流が測定されるように、メディエータの酸化還元電位に比較的近い値であってよい。図5Bは、第二の時間間隔t及び第三の時間間隔tと比較して、第一の時間間隔tの間に、比較的少量の電流が観察されることを示す。例えば、メディエータとしてフェリシアン化カリウム及び/又はフェロシアン化カリウムを使用する場合、図5Aにおける第一の試験電圧E1は、約1mV~約100mVの範囲、好ましくは約5mV~約50mVの範囲、及び最も好ましくは約10mV~約30mVの範囲であってよい。好ましい実施形態では、印加電圧は正の値として与えられているが、負の領域における同じ電圧も、特許請求される本発明の意図する目的を達成するために利用され得る。この時間間隔の間、第一の電流出力は、ステップ530において、この時間間隔にわたって、電流値を収集するためにプロセッサによってサンプリングされ得る。
【0042】
例示的なステップ540において、第一の試験電圧E1を印加し(ステップ520)、出力をサンプリングした後(ステップ530)、試験測定器10は、第二の時間間隔t(例えば、図5Aにおいて約3秒)にわたって、第一の電極66と第二の電極64の間に、第二の試験電圧E2(例えば、図5Aにおいて約3ミリボルト)を印加する。第二の試験電圧E2は、第一の試験電圧E1とは異なる値であってよく、限界酸化電流が第二の電極64で測定されるように、メディエータ酸化還元電位に対して十分に負であってよい。例えば、メディエータとしてフェリシアン化カリウム及び/又はフェロシアン化カリウムを使用する場合、第二の試験電圧E2は、約0mV~約600mVの範囲、好ましくは約100mV~約600mVの範囲であり得、また、より好ましくは約300mVである。
【0043】
第二の時間間隔tは、還元されたメディエータ(例えば、フェロシアン化カリウム)の生成速度を限界酸化電流の大きさに基づいて監視し得るように、十分に長いことが好ましい。還元されたメディエータは、試薬層72との酵素反応によって生成される。第二の時間間隔tの間に、限界量の還元されたメディエータが第二の電極64で酸化され、限界量ではない酸化されたメディエータが第一の電極66で還元されて、第一の電極66と第二の電極64との間に濃度勾配が形成される。
【0044】
例示的な実施形態において、第二の時間間隔tは、また、十分な量のフェリシアン化カリウムが第二の電極64に拡散され得るように、あるいは第一の電極上の試薬から拡散され得るように、十分に長いことが好ましい。十分な量のフェリシアン化カリウムが第二の電極64で必要とされるが、それは、第三の試験電圧E3の間に、第一の電極66でフェリシアン化カリウムを酸化させるための制限電流が測定できるようにするためである。第二の時間間隔tは、約60秒未満で、好ましくは、約1.1秒~約10秒の範囲で、より好ましくは、約2秒~約5秒の範囲であってよい。同様に、図5Aにおいてtcapとして示される時間間隔も、ある時間の範囲にわたって持続してよいが、1つの例示的な実施形態では、その持続時間は約20ミリ秒である。1つの例示的な実施形態では、重畳交番試験電圧成分は、第二の試験電圧E2の印加後、約0.3秒~約0.4秒後に印加され、約±50mVの振幅で約109Hzの周波数を有する正弦波を誘発する。この時間間隔の間、第二の電流出力は、ステップ550において、この時間間隔にわたる電流値を収集するためにプロセッサによってサンプリングされてもよい。
【0045】
図5Bは、第二の時間間隔tの開始後に電流ipbが比較的小さく、その後、第二の時間間隔tの間に、酸化電流の絶対値が漸増していることを示す。小さなピークipbは、第一の電圧E1から第二の電圧E2に遷移後の内因性又は外因性還元剤の酸化により発生し、第二の時間間隔tの間に、酸化電流の絶対値の漸増をもたらす。小さなピークipbは、本明細書で電圧変化線TLとして引用される第一の電圧E1から第二の電圧E2への変化の後で、還元されたメディエータの初期枯渇のために発生する。その後、試薬層72によるフェロシアン化カリウムの生成によって生じる小さなピークipbの後で、酸化電流の緩やかな絶対減少が発生し、続いて、フェロシアン化カリウムは、第二の電極64に拡散する。
【0046】
例示的なステップ560において、第二の試験電圧E2を印加し(ステップ540)、出力をサンプリングした後(ステップ550)、試験測定器10は、第一の電極66と第二の電極64との間に第三の試験電圧E3(例えば、図5Aでは約-300ミリボルト)を、第三の時間間隔t(例えば、図5Aでは1秒)にわたって印加する。第三の試験電圧E3は、限界酸化電流が第一の電極66で測定されるように、メディエータ酸化還元電位の十分に正の値であってよい。例えば、メディエータとしてフェリシアン化カリウム及び/又はフェロシアン化カリウムを使用する場合、第三の試験電圧E3は、約0mV~約-600mVの範囲、好ましくは約-100mV~約-600mVの範囲であってもよく、より好ましくは約-300mVである。
【0047】
第三の試験電圧E3を印加した後、ステップ570において、第三の時間間隔tに、電流値が測定される。第三の時間間隔tは、酸化電流の大きさに基づいて、第一の電極66付近の還元されたメディエータ(例えば、フェロシアン化カリウム)の拡散を監視するために、十分に長くてよい。第三の時間間隔tの間に、限界量の還元されたメディエータが第一の電極66で酸化され、限界量ではない酸化されたメディエータが第二の電極64で還元される。第三の時間間隔tは、約0.1秒~約5秒の範囲で、好ましくは約0.3秒~約3秒の範囲で、より好ましくは約0.5秒~約2秒の範囲であってもよい。
【0048】
図5Bは、公称試験片について、第三の時間間隔tの開始時にピークipcが比較的大きく、その後、ほぼ定常状態の電流iss値まで減少していることを示す。一実施形態では、第二の試験電圧E2は第一の極性を有してもよく、第三の試験電圧E3は第一の極性とは反対の第二の極性を有してもよい。別の実施形態では、第二の試験電圧E2は、メディエータ酸化還元電位の十分に負であってもよく、第三の試験電圧E3は、メディエータ酸化還元電位の十分に正であってもよい。第三の試験電圧E3は、第二の試験電圧E2の直後に印加されてもよい。しかしながら、当業者であれば、第二及び第三の試験電圧の大きさ及び極性は、分析物濃度が決定される方法に応じて選択され得ることを理解するであろう。
【0049】
次に、本明細書に記載される実施形態について、図5Cのステップ580に規定されるように、グルコース濃度決定について説明する。図5A及び図5Bは、試験片過渡期におけるイベントのシーケンスを示す。試験シーケンスの開始の約1.1秒後(及び第二の電圧E2の印加により第二の電極を作用電極とした直後)、試薬がまだ第一の電極に到達しておらず、電流がおそらく血漿中の干渉性還元剤に起因するときに(メディエータの不在時に)、後で干渉を補正するために、電流測定が行われる。約1.4秒~約4秒の間に、(少なくとも第二の電圧E2が印加されるこの時間間隔の後半において)メディエータと酸化されたメディエータが第二の電極に拡散できるようになったときに、第一のグルコース比例電流iが測定される。第三の電圧E3の印加により第一の電極を作用電極とした直後に、2つの単一点測定(本実施形態によれば約4.1秒及び約5秒において)及び1つの積算測定iが行われる。この具体的な実施形態に従って1.1秒、4.1秒及び5秒で、それぞれサンプリングされた測定値は、干渉する還元剤からの付加電流(i2corr)に対してiを補正するために使用される。iとiの比は、ヘマトクリットの干渉効果についてi2corrを補正するために使用される。
【0050】
一実施形態では、次いで、以下の式
【数1】
が、グルコース濃度を決定するために使用される。式中、Gbasicは、分析物濃度で、
は、第三の時間間隔の間の第三の電流値の合計で、
は、第二の時間間隔における第二の電流値の合計で、
【数2】
で、
a、b、p及びzgrは、所定の係数である。
【0051】
一つの具体例では、
【数3】
である。
【0052】
別の例では、異なる試験片ケミストリーを使用してもよく、その場合、電流の評価に現れる時間は、上記の一般的な関係に従って変更される。印加波形及び試験片の分析物濃度の決定に関連する追加の詳細は、参照により本明細書に以前に組み込まれた米国特許第8,709,232号及び国際公開番号第2012/012341号に提供されている。
【0053】
前述のように、図6Aは、図5Aの波形に基づく電流と時間との関係の拡大部分図を詳述している。この図において、図5Bの電流応答は、水分で汚染された試験片の電流応答と比較した、公称(非汚染)試験片(図1の試験片62など)について再現される。この図に明確に示されているように、電流過渡の一部にわたって、公称試験片と異常/欠陥試験片との間で多くの特性異常が存在する。より具体的には、汚染試験片は、(所定の第一の時間間隔の間の)約0秒~1秒の間に示される複数のスパイク電流過渡を含む。さらに、汚染試験片は、試験シーケンスの開始後約1秒で、第二の時間間隔の開始時の試験電圧の印加後に減少したピーク値ipbを示す。
【0054】
特定の理論に限定されるものではないが、水分汚染の物理的メカニズムは、(保管条件又は他の原因による)水分の導入が、試験片の試薬層中のフェリシアン化カリウムのフェロシアン化カリウムへの変換を引き起こすことであると思われる。このような場合、試薬層はフェロシアン化カリウムの濃度が高くなり、分析物濃度測定時に第一の電極面及び第二の電極面の両方で拡散して消費される可能性がある。したがって、分析物信号が増幅され、試験片が汚染されたとき、予想以上に高いグルコース測定値をもたらすことになる。
【0055】
後段で説明する実験によって検証されるように、試験波形の第一及び第二の時間間隔には、汚染(水分)効果に起因する多くの離散的で識別可能な異常が存在する。これらの効果は、図6Aに比較できるように図示されている。この汚染は、試験片に対する物理的変化及び化学的変化の両方によって特徴付けられることがある。例えば、物理的変化は、汚染又は損傷前はメディエータの均一な層でコーティングされた電極を含んでいた試験片が、今や、変換されていないメディエータの粗い層又は不整合な層として有効に現れることがあるので生じる。このような場合、血液試料が試験片に適用されるとき、試験片のこの層の不整合なために、第一の時間間隔で観察されるような過渡電流が生じることがある。
【0056】
さらに、試験片は、化学変化も経験することがある。これらの化学的変化は、変換されたメディエータの全体的な量に起因するもので、印加電圧、より具体的には第二の試験電圧に対する試験片の期待電流応答において、具体的で認識可能な変化をもたらす可能性がある。汚染試験片又は損傷試験片に対する物理的及び化学的変化の両方の組合せを一般的な用語で説明してきたが、汚染を決定する技術は、この議論のいかなる特定の側面によっても制限されない。
【0057】
公称試験片の期待電流応答と汚染試験片によって示される電流応答との間の知覚可能な差異の結果として、図6Aに従って便宜上A~Eとラベル付けされた多数の基準値が、分析物測定を目的として、試験片が携帯型試験測定器に挿入される際に付されるかもしれない。一実施形態によれば、異常電流応答の特定の側面(基準値A、B及びCとして描かれる)の識別は、汚染試験片の存在を決定するのに十分であり得ると決定された。
【0058】
一実施形態によれば、基準値Aは、第一の時間間隔、例えば0.20~0.75秒の間に、測定された電流値の合計値である。上述のように、汚染試験片は、メディエータ層が物理的に整合性を失うことに起因して、第一の時間間隔において、より大きな電流応答をもたらす物理的変化を示す。したがって、第一の時間間隔における電流値の合計は、汚染による試験片に対するこれらの物理的変化の大きさを示し、基準値Aとして機能する。一つの具体例において、汚染された試験片は、6.5mAより大きい量の0.20~0.75秒の間の電流値の和を示す。
【0059】
上述のように、汚染試験片は、汚染によって引き起こされる試験片の化学的変化のために、1.0秒におけるより小さなピーク電流ibcを示す。そのような汚染は、ピーク電流の逸脱をもたらす。一つの具体例において、第二の時間間隔の間の測定ピーク電流値ipbが12.5μAより小さい場合、汚染と一致する化学変化が示され、このピーク値は基準値Bを示す。
【0060】
さらに、化学変化は、ピーク電流に続く測定電流の負の変化率を遅くすることにもつながる。このように、ピークが1.05秒にある場合、1.10秒と1.05秒との間の値の差は、この変化率の指標であり、本明細書では基準値Cと呼ぶ。したがって、試験片は、さらに、基準値Cが1.10秒における電流値と1.05秒における電流値との差であると特徴付けられることができる。一つの具体例において、この差は、0~-3.5μAの間であってもよい。別の例では、この差を2つの値の時間差(例えば、1.10秒-1.05秒=0.05秒)で割って、電流の時間変化率を与えてもよい。図6Bを参照して、基準値B及びCは、ステップ660で決定され得る。
【0061】
一実施形態では、基準値B及びCは、例えば図6Bのステップ670において、試験片の汚染を決定するために、基準値Aと共に使用され得る。試験片が汚染されていると決定すると、図6のステップ670において、測定器は、試験片の汚染を示すメッセージを表示又はアナウンスしてもよい。有利なことに、試験片の汚染の決定は、試験測定器のユーザへの教育を可能にする。情報は、ユーザに提供されることがあり、その情報は、試験片を提供された密閉容器の中で、過度の熱又は光から離して保管する必要性も含み、試験片の適切な保管についてユーザを教育する。
【0062】
一実施形態では、上述のフラグを用いて特定の試験片の汚染を決定すると、試験測定システムは、汚染されたバイオセンサからの試験結果を無効にすることができ、新しいバイオセンサが試験のために装填されるべきである。そして、新しいバイオセンサが汚染に関連する波形特性を示さない場合、試験測定システムは、試験結果を患者に告知することができる。別の実施形態では、バイオセンサが上述の技術によって決定されたように汚染されていなかった場合にのみ、インスリンの自動送達が患者に行われ得る。
【0063】
別の実施形態では、さらなる改良により、汚染試験片は、公称試験片よりも第一の間隔の間に広い範囲の電流値を有すると特徴付けられるという観察が利用される。具体的には、範囲は、第一の時間間隔において、汚染試験片において示される過渡電流の最大の電流値と最小の電流値との間の差として定義される。したがって、基準値Dは、第一の時間間隔における最大の電流値と最小の電流値との間の差として定義される。一つの具体例において、汚染試験片については、この差の範囲、すなわち、基準値Dは0.57μAより大きく、公称試験片については、この範囲は0.57μA未満である。
【0064】
追加の実施形態において、別の改良は、汚染試験片が試験中の測定器内の試験片の移動と一致する電流を示すかどうかをチェックすることによって、偽陽性汚染の決定を排除する。例えば、試験中の試験片に対する指の動きは、試験プロセス中に何らかの電流の逸脱を引き起こす可能性がある。したがって、第一の時間間隔における電流の最小値が0μAより大きい基準値Eが定義されてもよい。図6Bを参照すると、基準値A、D及びEは、ステップ640で決定することができる。
【0065】
基準値A~Eの定義が与えられると、フラグのセット(Flag~Flag)は、分析物測定システムの目的で、公称試験片(図5B及び図6A)と異常試験片(図6A)との間の知覚可能で代表的な差に基づくように、定義されてもよい。フラグのそれぞれは、真又は偽のいずれかであり得るブールフラグであり、各フラグA~Eは、それぞれの基準値A~Eを、それぞれの目標値A~Eによって定義されるそれぞれの範囲又は値と比較することに基づくものである。
【0066】
Flagは、第一の時間間隔の一部、例えば、0.20~0.75秒の間における合計値として定義される基準値Aが目標値Aより大きい場合、TRUEである。この具体例における目標値Aは、6.5μAである。しかしながら、5~10μAの範囲の目標値Aは、十分な有効性を提供することが確認された。
【0067】
Flagは、第二の時間間隔の間における測定ピーク電流値ipbとして定義される基準値Bが、目標値B程度より小さい場合、TRUEである。この具体例における目標値Bは、12.5μAである。しかしながら、12~12.5μAの範囲の目標値Bは、異常試験片を識別する目的で、十分な有効性を提供することが確認された。
【0068】
Flagは、測定されたピーク電流値ipb(例えば1.05秒における)と1.10秒における電流値との間の電流値の差として定義される基準値Cが0と目標値Cとの間にある場合、TRUEである。目標値Cは、この具体例で、-3.5μAである。しかしながら、約0~-4.5μAの範囲の目標値Cは、汚染試験片を識別する目的で、十分な有効性を提供することが確認された。
【0069】
Flagは、第一の時間間隔における最大の電流値と最小の電流値との差として定義される基準値Dが、目標値D程度より大きい場合、TRUEである。約0.4~0.65mAの範囲の目標値Dは、適切な有効性を提供すると確認された。この具体例によれば、目標値Dは、0.57μAである。
【0070】
最後に、Flagは、第一の時間間隔における最小過渡電流として定義される基準値Eは、目標値Eよりも大きい場合、例えば、この具体例のように、約0mAよりも大きい場合、TRUEである。
【0071】
一実施形態では、試験片の汚染又は損傷の決定は、Flag~Flagの1つ以上が、例えば、Flag、Flag及びFlagのみが、真と評価されるときに行われ得る。別の実施形態では、試験片の汚染又は損傷の決定は、Flag~Flagのすべてが真と評価されるときに行われ得る。例えば、FlagA、D及びEは、上述した汚染による物理的変化を表すと見なすことができ、FlagB及びCは、上述した汚染による化学的変化を表すと見なすことができる。このような場合、各グループからの少なくとも1つのフラグの組み合わせ、すなわち、FlagA、D及びEのうちの1つとFlagB及びCのうちの1つとを用いて、試験片に対する物理的変化及び化学的変化の組み合わせにより汚染を決定することができる。
【0072】
さらに注目すべきは、FlagA、D及びEは、FlagB及びCよりも試験シーケンスにおいて早く発生し、したがって、指からの血液充填問題、又は試験中の試験片の移動/ナッジングによる偽陽性の影響をより受けやすい場合があり得る。利点として、本技術はこのような偽陽性を排除するために各グループのフラグを組み合わせることができ、この偽陽性のために汚染されていない試験片が無駄になることはない。さらに、上述の範囲における目標値A~Eの選択は、有利なことに、できるだけ多くの偽陽性を避けながら、できるだけ多くの真陽性を捕らえるという所望の結果との間のバランスを提供する。
【0073】
予期せぬことに、意図的に水分にさらされた試験片の試験中に、図6Aに関して上述した過渡電流値を含む出力波形に様々な逸脱が発生する。例えば、充填率の変動に起因するピペットとは対照的に指先からの試料の適用に基づいて経験され得るいくつかの潜在的変動がある一方で、上述のように試薬層における物理的特性の変化に起因する図5Bの公称電流応答からの電流応答の実証的変化が観察されることもある。
【0074】
上述した技術に対する信頼性を検証するために、92個の汚染された試験片に対して試験を行った。試験片が汚染されていると決定されたのは、試験片が乾燥剤を含む容器に保管されており、その乾燥剤を検査したところ、水分を含んでいることが判明したためである。試験測定器を使用して試験片に電圧を印加し、その出力電流を本明細書で説明するように取り込んだ。まず、取り込んだ電流に試験誤差を検出するための従来の技術を適用し、汚染された試験片のうち合計39個を、充填などの他の要因に関連する誤差があるものとして特定した。フラグA、B、C、D、及びEを組み合わせて、取り込んだ過渡電流に本技術を適用したところ、92個の汚染された試験片すべてが、上述した基準値に基づいて適切に識別された。
【0075】
本発明を特定の変形例及び例示的な図面に関して説明してきたが、当業者は、本発明が説明された変形例又は図面に限定されないことを認識するであろう。加えて、上述の方法及びステップが特定のイベントが特定の順序で生じることを示す場合には、当業者は、特定のステップの順序が変更され得ることも、そのような変更が本発明の変形例によるものであることも認識するであろう。さらに、ステップの特定のものは、上述のような順序で行われるだけでなく、可能な場合には並行したプロセスで同時に行われ得る。したがって、本開示の精神の範囲内にあるか、あるいは特許請求の範囲に見出される本発明と等価である本発明の変形例が存在する限り、本特許は、それらの変形例も網羅することが意図される。
【0076】
特許請求の範囲が複数の要素に関して「の少なくとも1つ」という語句を引用する範囲において、これは列挙された要素のうちの少なくとも1つ以上を意味することを意図し、各要素のうちの少なくとも1つに限定されない。例えば、「要素A、要素B、及び要素Cのうちの少なくとも1つ」は、要素Aのみ、もしくは要素Bのみ、もしくは要素Cのみ、又はそれらの任意の組み合わせを指すことを意図する。「要素A、要素B、及び要素Cのうちの少なくとも1つ」は、要素Aの少なくとも1つ、要素Bの少なくとも1つ、及び要素Cの少なくとも1つに限定することを意図しない。
【0077】
本明細書は、実施例を用いて、最良の形態を含めて本発明を開示し、また任意の当業者が任意の装置又はシステムの作製及び使用も、任意の取り入れられた方法の実行も含めて本発明を実施できるようにするものである。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定められ、当業者が想起する他の例を含み得るそのような他の例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の文言と実質に異ならない等価な構造要素を含む場合には、本特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【0078】
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することを目的としたものにすぎず、限定することを意図したものではない。本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a、an)」及び「その(the)」は、文脈により別段の明示がない限り、複数形も含むことを意図する。「備える(comprise)」(並びに「comprises」及び「comprising」のような備える(comprise)の任意の語形)、「有する(have)」(並びに「has」及び「having」のような有する(have)の任意の語形)、「含む(include)」(並びに「includes」及び「including」のような含む(include)の任意の語形)、及び「含有する(contain)」(並びに「contains」及び「containing」のような含有する(contain)の任意の語形という用語は、オープンエンドの接続動詞であるものとさらに理解される。その結果、1つ以上のステップ又は要素を「備える」、「有する」、「含む」又は「含有する」方法又は装置は、それらの1つ以上のステップ又は要素を保持するが、それらの1つ以上のステップ又は要素を保持することに限定されない。同様に、1つ以上の特徴を「備える」、「有する」、「含む」又は「含有する」方法のステップ又は装置の要素は、それらの1つ以上の特徴を保持するが、それらの1つ以上の特徴を保持することに限定されない。さらに、特定の方法で構成される装置又は構造は、少なくともその方法で構成されるが、列挙されていない方法で構成されてもよい。
【0079】
以下の特許請求の範囲の全てのミーンズプラスファンクション又はステッププラスファンクションの要素の対応する構造体、材料、行為、及び等価物は、存在する場合には、具体的に特許請求された他の特許請求要素との組み合わせにおいて機能を行うための任意の構造、材料、又は行為を含むことを意図する。本明細書に記載された説明は、例示及び説明の目的で提示されているが、網羅的であることも、あるいは開示された形態に限定されることも意図していない。当業者には、本開示の範囲及び精神から逸脱することなく、多くの修正例及び変形例が明らかであろう。実施形態を選択して、説明したが、それは、本明細書に記載の1つ以上の態様の原理及び実際の応用例を最も良く説明し、他の当業者が企図された特定の使用に適した様々な修正を伴う様々な実施形態について本明細書に記載された1つ以上の態様を理解できるようにするためである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
【国際調査報告】