(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-05
(54)【発明の名称】面内方向磁場集中のための磁束コンセントレータ
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20220928BHJP
G01R 33/07 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G01R33/02 V
G01R33/07
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504501
(86)(22)【出願日】2020-07-20
(85)【翻訳文提出日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 US2020042731
(87)【国際公開番号】W WO2021016162
(87)【国際公開日】2021-01-28
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【氏名又は名称】佐藤 仁
(71)【出願人】
【識別番号】390020248
【氏名又は名称】日本テキサス・インスツルメンツ合同会社
(72)【発明者】
【氏名】美藤 成
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン スタッセン クック
(72)【発明者】
【氏名】ドック ウォン リー
(72)【発明者】
【氏名】キース ライヤン グリーン
(72)【発明者】
【氏名】リッキー アラン ジャクソン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム デヴィッド フレンチ
【テーマコード(参考)】
2G017
【Fターム(参考)】
2G017AA01
2G017AB09
2G017AC07
2G017AD53
(57)【要約】
構造(100)が、或る表面を含む基板(110)を含む。構造(100)はまた、基板(110)内及び基板(110)の表面の下に配置される水平型ホールセンサ(120)を含む。構造(100)は更に、基板(110)の表面の上に配置されるパターン化された磁気コンセントレータ(130)と、磁気コンセントレータ(130)の上に配置される保護オーバーコート層(140)とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造であって、
表面を含む基板と、
前記基板内及び前記基板の前記表面の下に配置される水平型ホールセンサと、
前記基板の前記表面の上に配置されるパターン化された磁気コンセントレータと、
前記磁気コンセントレータの上に配置される保護オーバーコート層と、
を含む、構造。
【請求項2】
請求項1に記載の構造であって、前記パターン化された磁気コンセントレータが、複数の磁気層を含む、構造。
【請求項3】
請求項2に記載の構造であって、前記複数の磁気層が、Ni、Co、Fe、NiFe、CoNiFe、CoTaZr、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される組成を含み、前記複数の磁気層が、AlN、Al
2O
3、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される組成を含む絶縁層を介して互いから隔離される、構造。
【請求項4】
請求項2に記載の構造であって、前記パターン化された磁気コンセントレータが、前記複数の磁気層の下に配置される導電性金属層を更に含み、前記導電性金属層が、Ti、W、Cu、及びそれらの組み合わせから成る群から選択された組成を含む、構造。
【請求項5】
請求項2に記載の構造であって、前記パターン化された磁気コンセントレータが、前記複数の磁気層を少なくとも部分的に覆う外側層を更に含み、前記外側層が、Ti、SiN、SiO
2、SiON、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される組成を含む、構造。
【請求項6】
請求項1に記載の構造であって、前記パターン化された磁気コンセントレータが、非円形、矩形、楕円形、楔形、正方形、ひし形、X形状、星形、十字形、三角形、六角形、八角形、及びそれらの組み合わせから成る群から選択された形状を含む、構造。
【請求項7】
請求項1に記載の構造であって、前記基板内及び前記基板の前記表面の下に配置される垂直型ホールセンサを更に含み、前記パターン化された磁気コンセントレータが、前記パターン化された磁気コンセントレータの内側部分にギャップを含み、前記垂直型ホールセンサが前記ギャップの下に配置され、前記水平型ホールセンサが、前記パターン化された磁気コンセントレータの、それぞれ、外縁部分の下に配置される複数のホールセンサを含む、構造。
【請求項8】
構造を形成する方法であって、前記方法が、
表面を含む基板を形成することと、
水平型ホールセンサを前記基板内及び前記基板の前記表面の下に配置することと、
前記基板の前記表面の上に磁気コンセントレータを形成することと、
前記磁気コンセントレータの上に保護オーバーコート層を形成することと、
を含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記磁気コンセントレータを形成することが、電気めっき、スパッタリング、噴霧、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される堆積プロセスを含む、方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法であって、前記磁気コンセントレータを形成することが、前記堆積された磁気コンセントレータをパターニング及びエッチングすることによって、パターン化された磁気コンセントレータを形成することを含む、方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法であって、前記磁気コンセントレータが複数の磁気層を含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記複数の磁気層が、Ni、Co、Fe、NiFe、CoNiFe、CoTaZr、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される組成を含み、前記複数の磁気層が、AlN、Al
2O
3、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される組成を含む絶縁層を介して互いから隔離される、方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、前記磁気コンセントレータが、前記複数の磁気層の下に配置される導電性金属層を更に含み、前記導電性金属層が、Ti、W、Cu、及びそれらの組み合わせから成る群から選択された組成を含む、方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法であって、前記磁気コンセントレータが、前記複数の磁気層を少なくとも部分的に覆う外側層を更に含み、前記外側層が、Ti、SiN、SiO
2、SiON、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される組成を含む、方法。
【請求項15】
請求項10に記載の方法であって、前記パターン化された磁気コンセントレータが、円形、非円形、矩形、楕円形、楔形、正方形、ひし形、X形状、星形、十字形、三角形、六角形、八角形、及びそれらの組み合わせから成る群から選択された形状を含む、方法。
【請求項16】
請求項10に記載の方法であって、前記基板内及び前記基板の前記表面の下に垂直型ホールセンサを配置することを更に含み、前記パターン化された磁気コンセントレータが、前記パターン化された磁気コンセントレータの内側部分にギャップを含み、前記垂直型ホールセンサが前記ギャップの下に配置され、前記水平型ホールセンサが、前記パターン化された磁気コンセントレータの、それぞれ、外縁部分の下に配置される複数のホールセンサを含む、方法。
【請求項17】
方法であって、
実質的に水平な磁場をパターン化された磁気コンセントレータに印加することであって、前記パターン化された磁気コンセントレータが、前記実質的に水平な磁場を実質的に垂直な磁場に変換し、前記パターン化された磁気コンセントレータが、保護オーバーコート層の下及び基板の表面の上に配置され、前記実質的に垂直な磁場が、前記基板の前記基板内及び前記基板の前記表面の下に配置される2つの水平型ホールセンサに印加されることと、
前記2つの水平型ホールセンサを用いて前記実質的に垂直な磁場を感知することと、
を含む、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記パターン化された磁気コンセントレータが、前記実質的に水平な磁場を2~20の範囲の係数で増幅し、それによって前記実質的に垂直な磁場を提供する、方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、前記パターン化された磁気コンセントレータが複数の磁気層を含む、方法。
【請求項20】
請求項17に記載の方法であって、前記パターン化された磁気コンセントレータが、円形、非円形、矩形、楕円形、楔形、正方形、ひし形、X形状、星形、十字形、三角形、六角形、八角形、及びそれらの組み合わせから成る群から選択された形状を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
2次元(2D)速度及び方向センサは、水平及び垂直ホールセンサ両方を用いる。ホールセンサは、磁場の大きさを測定するために用いられる。その出力電圧は、それを通る磁場強度に正比例する。ホールセンサは、近接感知、位置決め、速度検出、及び電流感知応用例に用いられ得る。2Dパルスエンコーダもまた、水平ホールセンサを用いるが、磁気コンセントレータディスクのピックアンドプレースなど、パッケージレベルの堆積を介して形成される感度強化された磁気コンセントレータを備えている。ピックアンドプレース方法は、ウェハ処理とは別に形成された磁気コンセントレータディスクを有し、磁気コンセントレータディスクは、その後、別個の位置からピックアップされ、ウェハに移送され、最終的にウェハ上に堆積される必要があるため、磁気コンセントレータパターニングの能力は阻害される。更に、用いられるパッケージレベルの磁気コンセントレータ堆積方法により、ホールセンサと磁気コンセントレータとの分離距離が大きくなり、ホールセンサ近傍の磁場強度が低下する。また、磁気コンセントレータのパッケージレベルの堆積は、全体的なコストを上昇させる。
【発明の概要】
【0002】
少なくとも1つの例において、或る構造が、表面を含む基板を含む。この構造はまた、基板内及び基板の表面の下に配置される水平型ホールセンサを含む。この構造は更に、基板の表面の上に配置されるパターン化された磁気コンセントレータと、磁気コンセントレータの上に配置される保護オーバーコート層とを含む。
【0003】
別の例において、或る構造を形成する方法が、表面を含む基板を形成することと、水平型ホールセンサを基板内及び基板の表面の下に配置することと、基板の表面の上に磁気コンセントレータを形成することと、磁気コンセントレータの上に保護オーバーコート層を形成することとを含む。
【0004】
更に別の例において、或る方法が、パターン化された磁気コンセントレータに実質的に水平な磁場を印加することを含み、パターン化された磁気コンセントレータは、実質的に水平な磁場を実質的に垂直な磁場に変換する。パターン化された磁気コンセントレータは、保護オーバーコート層の下及び基板の表面の上に配置される。実質的に垂直な磁場は、基板内及び基板の表面の下に配置される、2つの水平型ホールセンサに印加される。この方法は更に、2つの水平型ホールセンサを用いて、実質的に垂直な磁場を感知することを含む。
【0005】
種々の例の詳細な説明のため、ここで、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】基板と、ホールセンサと、磁気コンセントレータと、保護オーバーコート層とを含む構造の断面概略側面図である。
【0007】
【
図2】基板と、ホールセンサと、レベル間誘電体酸化物層と、任意の応力補償層(例えば、SiN)と、磁気コンセントレータと、保護オーバーコート層とを含む構造の断面概略側面図である。
【0008】
【
図3】磁場入力が水平(X)方向に印加された、十字形状の磁気コンセントレータを含む構造の上面図である。保護オーバーコート層は示されていない。
【0009】
【
図4】磁場入力が対角(x-y)方向に印加された、十字形状の磁気コンセントレータを含む構造の上面図である。保護オーバーコート層は示されていない。
【0010】
【
図5A】楕円形の磁気コンセントレータを含む構造の上面図である。保護オーバーコート層は示されていない。
【
図5B】
図5Aに示された構造の上面図であり、重ね合わされたホールセンサと共に、構造内のホールセンサのx-y位置を図示する。
【0011】
【
図6A】楔形状の磁気コンセントレータを含む構造の上面図である。保護オーバーコート層は示されていない。
【
図6B】
図6Aに示された構造の上面図であり、重ね合わされたホールセンサと共に、構造内のホールセンサのx-y位置を図示する。
【0012】
【
図7A】円形の磁気コンセントレータを含む構造の上面図である。保護オーバーコート層は示されていない。
【
図7B】
図7Aに示された構造の上面図であり、重ね合わされたホールセンサと共に、構造内のホールセンサのx-y位置を示す図である。
【0013】
【
図8A】十字形状の磁気コンセントレータを含む構造の上面図である。保護オーバーコート層は示されていない。
【
図8B】
図8Aに示された構造の上面図であり、重ね合わされたホールセンサと共に、構造内のホールセンサのx-y位置を図示する。
【0014】
【
図9A】「X」形状の磁気コンセントレータを含む構造の上面図である。保護オーバーコート層は示されていない。
【
図9B】
図9Aに示された構造の上面図であり、重ね合わされたホールセンサと共に、構造内のホールセンサのx-y位置を図示する。
【0015】
【
図10】ギャップを介して各端部から離間された矩形形状の付加的な磁気コンセントレータと共に、十字形状の磁気コンセントレータを含む構造の上面図である。保護オーバーコート層は示されていない。
【0016】
【
図11】基板と、ホールセンサと、ギャップを有する磁気コンセントレータと、保護オーバーコート層とを含む構造の断面概略側面図である。
【0017】
【
図12】楕円形の磁気コンセントレータを含む構造の上面図であり、重ね合わせたクワッドホールセンサ構成と共に、その構造内のホールセンサのx-y位置を図示する。保護オーバーコート層は示されていない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この説明の一態様は、磁気コンセントレータと少なくとも1つの水平ホールセンサとの組み合わせを用いて、ホールセンサの感度を増加させることである。ホールセンサは、磁場の大きさを測定するために用いられるデバイスである。その出力電圧は、それを通る磁場強度に正比例する。ホールセンサは、近接感知、位置決め、速度検出、方向検出、回転検出、及び電流感知応用例に用いられる。ホールセンサは、磁気スイッチにおいて又は回転スイッチ又はシフタにおいて用いることができ、ホールセンサは、スイッチ又はシフタの方向又は回転の変化を測定する。
【0019】
水平ホールセンサは、水平方向の長手軸を有し、この長手軸は、同じく水平方向に延在する基板の平坦な上面に対して平行である。同様に、垂直ホールセンサは、垂直の長手軸を有し、長手軸は、基板の平坦な上部水平面に対して直角である。水平ホールセンサは垂直磁場を測定し、逆に垂直ホールセンサは水平磁場を測定する。「水平」及び「垂直」という用語の使用は、地面のみを参照して限定されるものとして解釈されるべきではなく、構造の要素に関して解釈されるべきである。例えば、
図1の構造は例えば90°回転されてもよい。この回転をしても、水平ホールセンサ120は、依然として「水平ホールセンサ」とみなされ、依然として垂直磁場を測定する。「頂部」、「底部」、「上」、及び「下」などの他の用語も同様に解釈されるべきである。
【0020】
一例において、
図1は、基板110と、ホールセンサ120と、レベル間誘電体酸化物層125と、磁気コンセントレータ130と、保護オーバーコート層140とを含む構造100の断面概略側面図を示す。基板110は、Si、ガラス、セラミックなどを含み得る。基板の表面の下には、2つの隔離された水平ホールセンサ120がある。ホールセンサ120は、磁場を測定できるように、回路(図示せず)に電気的に接続される。回路は、基板110上(例えば、レベル間誘電体酸化物層125内)に集積されてもよいし、離れた位置(例えば、別の基板上)に配置されてもよい。
【0021】
ウェハ処理の間、保護オーバーコート層140が形成される前でありホールセンサ120が基板110内に配置された後、基板110の上側表面上に形成されたレベル間誘電体酸化物125の上側表面上に、磁気コンセントレータ130が(例えば、電気めっき、スパッタリング、又は噴霧などの堆積プロセスによって)形成される。あるいは、磁気コンセントレータ130は、レベル間誘電体酸化物層125の上側表面上に堆積され得る任意の応力補償層232(SiNなど、
図2を参照)上に(上記プロセスの任意のものを用いて)形成されてもよい。
【0022】
磁気コンセントレータは、磁気材料の単一層のみ、又は、例えば
図2で示されるように、磁気材料の複数層を含み得る。
図2は、多層磁気コンセントレータ230を含む構造200の断面概略側面図を示す。磁気コンセントレータ230は、(例えば、330nmの厚さの)NiFeパーマロイ膜などの複数の磁気層236を含む。底部NiFe磁気層236は、電気めっきプロセスにおいて電極として働くことができるTi又は他の金属(例えば、60nmの厚さ)を含む層234の上側表面上に堆積される。Ti層234は、レベル間誘電体酸化物層225(任意の厚さ)の上側表面上に堆積されるか、又は存在する場合には、任意の応力補償層232(例えば、100nmの厚さ)に堆積される。NiFe磁気層236のそれぞれの上には、AlN又はAl
2O
3などの誘電体材料又は高抵抗率絶縁体材料(例えば、10nmの厚さ)を含む絶縁層238がある。ダイを完成させるために、保護オーバーコート層240が磁気コンセントレータ230上に堆積される。オーバーコート層240の堆積に先立って、磁気コンセントレータ230がパターン化される。
【0023】
この例では複数の磁気層が用いられる。これは、とりわけ、一層厚くそのため一層強いコンセントレータ材料が実現されるためである。また、一層厚い磁気コンセントレータは、一層高い飽和閾値も提供する。複数層の磁気材料を提供することによって、多層磁気コンセントレータは、一層厚くされ、そのため、磁気コンセントレータ内の磁場の飽和を防止する。飽和閾値が高いと、磁気コンセントレータは、相当に高い磁場入力に耐えることが可能になり、従って、一層高い磁場出力をもたらすことが可能となる。磁気コンセントレータが飽和すると、基板及びホールセンサを含む構造は、非線形となり、機能を停止する。従って、磁気コンセントレータ内の飽和を防止することが非常に望ましい。
【0024】
重要なことに、磁気コンセントレータは、ウェハレベルの処理の間に形成される。このウェハレベルの堆積プロセスは(ピックアンドプレース堆積と比較して)、磁気コンセントレータの精密なパターニングを用いることを可能にする。磁気コンセントレータのパターニングは、x-y方向の磁気コンセントレータの任意の形状を可能にし、それによって磁場増強の制御における柔軟性が達成される。具体的には、磁気コンセントレータは、保護オーバーコート層240とレベル間誘電体酸化物層225(又は存在する場合には、任意選択の応力補償層232)との間に位置する。レベル間誘電体酸化物層225は、ホールセンサ及び関連する集積回路のための金属配路を含む。
【0025】
一実装において、保護オーバーコート層240は、SiON又は他の誘電体材料の層(例えば、2.8μmの厚さ)であるが、他の厚さを代替で用いることができる。保護オーバーコート層240の上ではなく、この位置(すなわち、保護オーバーコート層240の下)にコンセントレータを配置することで、磁気コンセントレータとホールセンサとの間の距離を減少させることによって、磁気コンセントレータの有効性が増大する。
【0026】
また、
図2に示すように、磁気コンセントレータ230は、例えば、Ti又は他のポリマー(例えば、135ナノメートルの厚さ)の外側層239を含み得る。Ti外側層239は、複数のNiFe磁気層236を囲む保護層として機能する。Ti外側層239は、例えば、パッケージング又は他の製造工程の間の機械的損傷から複数のNiFe磁気層236を保護する。Ti外側層239は、下にあるTi層234と同様に、特に、複数のNiFe磁気層236の側部に向かって、パターン化される。マスクは、TiをNiFe層からいくらかの距離だけ離れて延在し得る。
【0027】
上述のように、Ti層234は、底部NiFe磁気層236と、下にある任意のSiN応力補償層232との間に配置され得る。Ti層234は、複数のNiFe磁気層の堆積のための電気めっきプロセスにおける電極として働き得る。また、Ti層234は、NiFeの堆積(例えば、電気めっき又はスパッタリング)プロセスの間、下にある応力補償層232への磁気NiFe材料の拡散を阻止する。従って、Ti層234は、ホールセンサの動作(及び場合によっては形成)に悪影響を及ぼし得る、NiFeのSiN内への拡散を防止する。任意のSiN応力補償層232は、磁気コンセントレータ230の堆積の間ウェハ上に誘起され得る機械的応力を補償する。電気めっきの代わりに、スパッタリングを用いてNiFe及びAlN層を堆積させ、続いてウェットエッチングを行い、NiFe層をパターン化してもよい。積層コアに対するウェットエッチングは、
図2に示す階段状側壁をもたらす。あるいは、ドライエッチングを用いてもよい。
【0028】
磁気コンセントレータのパターニングを行うために、NiFe磁気層の形成における電気めっきプロセスの間に、フォトレジストが用いられて、基板のある領域上のNiFeの堆積を防止する。電気めっきに続いてフォトレジストのストリッピングが行われ、これにより磁気コンセントレータがパターニングされる。磁気コンセントレータのパターン化は、後述するような種々の形状を有する磁気コンセントレータの形成をもたらす。
【0029】
一例において、
図5Aは、基板510と楕円形の磁気コンセントレータ530とを含む構造500の上面図を示す。
図5Bは、
図5Aに示される構造500の上面図であり、重ね合わされたホールセンサ520と共に、構造内のホールセンサ520のx-y位置を図示する。磁気コンセントレータ530は、例えば、1~2μmの範囲の厚さ/深さを有し得る。基板は、0.7mm~2mmの範囲の幅、及び60~800μmの範囲の深さ/厚さを有し得る。ホールセンサ520は、1~3μmの範囲の厚さ(すなわち、ホールウェルの深さ)を有し得、基板頂部表面から3~5μmの距離だけ離間され得る。保護オーバーコート層(図示せず)は、任意の厚さを有し得る。
【0030】
一例において、
図6Aは、基板610と楔形状の磁気コンセントレータ630とを含む構造600の上面図を示す。
図6Bは、
図6Aに示される構造600の上面図であり、重ね合わされたホールセンサ620と共に、構造内のホールセンサ620のx-y位置を図示する。
【0031】
一例において、
図7Aは、基板710と円形の磁気コンセントレータ730とを含む構造700の上面図を示す。
図7Bは、
図7Aに示される構造700の上面図であり、重ね合わされたホールセンサ720と共に、構造内のホールセンサ720のx-y位置を図示する。
【0032】
一例において、
図8Aは、基板810と十字形状の磁気コンセントレータ830とを含む構造800の上面図を示す。
図8Bは、
図8Aに示される構造800の上面図であり、重ね合わされたホールセンサ820と共に、構造内のホールセンサ820のx-y位置を図示する。
【0033】
一例において、
図9Aは、基板910と「X」形状の磁気コンセントレータ930とを含む構造900の上面図を示す。
図9Bは、
図9Aに示される構造900の上面図であり、重ね合わされたホールセンサ920と共に、構造内のホールセンサ920のx-y位置を図示する。
【0034】
こういった磁気コンセントレータの種々のパターン化された形状は、ホールセンサの領域近傍の磁場を増強/増幅することによって、一層高い構造感度を可能にする。異なる磁気コンセントレータの形状は、ホールセンサの近くに出力を集中させながら異なる磁場出力を提供することによって磁場を強化する。下の表1は、1mTを印加した水平磁束による種々の例示の形状(例えば、矩形、楕円形など)の磁気コンセントレータから出力される最大磁場を示す。例えば、楕円形の磁気コンセントレータに1mTの水平磁束を印加すると、磁場出力は最大8.5mTに増幅され得る。
表1 磁気コンセントレータの形状に依存する磁場増強/増幅
【0035】
ホールセンサは、磁気コンセントレータ(
図5B、
図6B、
図7B、
図8B、及び
図9Bを参照)の各端部の下に配置される。任意の数のホールセンサが考えられ得る。しかしながら、1D磁場測定は、1つ又はそれ以上のホールセンサを用いて成されてもよい。ホール電圧は、磁場方向の変化と共に極性が変化するため、単一のホールセンサを用いて磁場の方向を決定することができる。2D磁場測定は、2つ又はそれ以上のホールセンサを用いて成され得る。3D磁場測定は、4つ又はそれ以上のホールセンサを用いて成され得る。
【0036】
再度
図1を参照すると、側部から水平に磁場(B)が印加されると、磁気コンセントレータ130は磁場を集中させる。この集中は、磁気コンセントレータの端部で起こるため、磁場は、曲がり得、水平から垂直方向への変換が生じ得る。この変換に伴い、水平に印加された磁場(B)は、いったん磁場が基板に入ると、ループして垂直の磁場に曲がる。換言すれば、平面内(x-y)双方向入力磁場が、平面外(z)双方向出力磁場に変換される。水平ホールセンサ120は、z方向の磁場のそれらの測定値を最大化するために、垂直磁場内に配置される。重要なことは、この構成では、構造内で垂直ホールセンサ(側部から水平に印加される磁場を測定するもの)が必要とされない。
【0037】
簡単にするために、
図3~
図10及び
図12は、保護オーバーコート層を図示していない。
【0038】
一例において、
図3は、基板310と十字形状の磁気コンセントレータ330とを含む構造300の上面図を示し、磁場入力が水平(X)方向に印加される。x方向にlmTの磁場が印加されると、z方向に14mTの最大出力がもたらされる。この構造で、磁場の14倍までの感度向上/増幅が達成され得る。
【0039】
一例において、
図4は、基板410と十字形状の磁気コンセントレータ430とを含む構造400の上面図を示し、磁場入力が対角(x-y)方向に印加される。x-y方向にlmTの磁場が印加されると、z方向の10mTの最大出力がもたらされる。この構造で、磁場の10倍までの感度向上/増幅が達成され得る。
【0040】
ホールセンサは、上面図で矩形形状として図に示されているが、十字などの他の形状であってもよい。また、単一のホールセンサのいずれも、代替として、ホールセンサのアレイ(すなわち、2つ又はそれ以上)で置き換えてもよい。アレイ(集合体)は、特定のアレイにおいて2つ又は4つのセンサを互いに相互接続することによって作られる。アレイの目的は、オフセットと抵抗を減らすことである。オフセットは、センサ精度に悪影響を及ぼす。また、抵抗は、熱ノイズを導入し、電圧ヘッドルームを設定する。一例において、
図12は、基板1210と楕円形の磁気コンセントレータ1230とを含む構造1200の上面図を、構造内のホールセンサのx-y位置を示す重ね合わせたクワッドホールセンサ構成と共に示す。具体的には、4つのホールセンサ(すなわち、クワッド)のアレイ1220が、各磁気コンセントレータの端部の下に配置される。
【0041】
一例において、
図10は、基板1010と十字形状の磁気コンセントレータ1030とを含む構造1000の上面図を、例えば、ギャップ1060を介して各端部から離間された矩形形状の、付加的な磁気コンセントレータ1031と共に示す。付加的な磁気コンセントレータを用いることで、磁場出力の付加的な増加がもたらされる。ホールセンサは、上記の例のいずれかのように、メイン/中央磁気コンセントレータの端部の下に配置され得、任意選択で、ギャップの下及び/又は付加的な磁気コンセントレータの下に提供され得る。
【0042】
一例において、
図11は、基板1110と、水平ホールセンサ1120と、ギャップ1160を有する矩形形状の磁気コンセントレータ1130と、保護オーバーコート層1140とを含む、構造1100の断面概略側面図を示す。ギャップ1160の下のホールセンサ1121は、それが水平磁場1108内に配置されるので、垂直ホールセンサである。他の例において、垂直ホールセンサは、異なる磁場効果を測定及び提供するために、水平ホールセンサで置き換えてもよい。しかしながら、上記の例のいずれにおいても、水平ホールセンサのみを用いることで、較正の点でホールセンサを互いに整合させる必要性がなくなる一方、水平ホールセンサと垂直ホールセンサの両方を用いることは較正を必要とし、それにより、ウェハ製造及びパッケージングのための著しい複雑さ及び時間が付加される。
【0043】
図1に関して、少なくとも一例において、或る構造が、表面を含む基板を含む。この構造は、また、基板内及び基板の表面の下に配置される水平型ホールセンサを含む。この構造は、基板の表面の上に配置されるパターン化された磁気コンセントレータと、磁気コンセントレータの上に配置される保護オーバーコート層とを更に含む。
【0044】
パターン化された磁気コンセントレータは、複数の磁気層を含み得る。複数の磁気層は、Ni、Co、Fe、NiFe、CoNiFe、CoTaZr、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される組成を含み得る。複数の磁気層は、AlN、Al2O3(又は他の誘電体材料又は高抵抗率絶縁体材料)、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される組成を含む絶縁層を介して互いから分離され得る。
【0045】
パターン化された磁気コンセントレータは、複数の磁気層の下に配置される導電性金属層を更に含み得る。導電性金属層は、Ti、W、Cu、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される組成を含み得る。
【0046】
パターン化された磁気コンセントレータは、複数の磁気層を少なくとも部分的に覆う外側層を更に含み得る。外側層は、Ti、SiN、SiO2、SiON、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される組成を含み得る。
【0047】
パターン化された磁気コンセントレータは、非円形、矩形、楕円形、楔形、正方形、ひし形、X形状、星形、十字形状、三角形、六角形、八角形、及びそれらの組み合わせから成る群から選択された形状を含み得る。
【0048】
一例において、この構造は、基板内及び基板の表面の下に配置される垂直型ホールセンサを更に含み得る。パターン化された磁気コンセントレータは、パターン化された磁気コンセントレータの内側部分にギャップを含む。垂直型ホールセンサは、ギャップの下に配置される。水平型ホールセンサは、パターン化された磁気コンセントレータのそれぞれ外縁部分の下に配置される複数のホールセンサを含む。
【0049】
図2を参照すると、別の例において、或る構造を形成する方法が、表面を含む基板を形成することと、水平型ホールセンサを基板内及び基板の表面の下に配置することと、基板の表面の上に磁気コンセントレータを形成することと、磁気コンセントレータの上に保護オーバーコート層を形成することとを含む。磁気コンセントレータの形成は、電気めっき、スパッタリング、噴霧、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される堆積プロセスを含み得る。磁気コンセントレータの形成は、堆積された磁気コンセントレータをパターニング及びエッチングすることによって、パターン化された磁気コンセントレータを形成することを含み得る。
【0050】
磁気コンセントレータは、複数の磁気層を含み得る。複数の磁気層は、Ni、Co、Fe、NiFe、CoNiFe、CoTaZr、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される組成を含み得る。複数の磁気層は、AlN、Al2O3(又は他の誘電体材料又は高抵抗率絶縁体材料)、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される組成を含む絶縁層を介して互いから分離され得る。
【0051】
磁気コンセントレータは、複数の磁気層の下に配置される導電性金属層を更に含み得る。導電性金属層は、Ti、W、Cu、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される組成を含み得る。
【0052】
磁気コンセントレータは、複数の磁気層を少なくとも部分的に覆う外側層を更に含み得る。外側層は、Ti、SiN、SiO2、SiON、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される組成を含み得る。
【0053】
パターン化された磁気コンセントレータは、円形、非円形、矩形、楕円形、楔形、正方形、ひし形、X形状、星形、十字形、三角形、六角形、八角形、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される形状を含み得る。
【0054】
一例において、或る構造を形成する方法が、基板内及び基板の表面の下に垂直型ホールセンサを配置することを更に含み得る。パターン化された磁気コンセントレータは、パターン化された磁気コンセントレータの内側部分にギャップを含む。垂直型ホールセンサは、ギャップの下に配置される。水平型ホールセンサは、パターン化された磁気コンセントレータのそれぞれ外縁部分の下に配置される複数のホールセンサを含む。
【0055】
図3に関して、更に別の例において、或る方法が、実質的に水平な磁場をパターン化された磁気コンセントレータに印加することを含み、パターン化された磁気コンセントレータは、実質的に水平な磁場を実質的に垂直な磁場に変換する。パターン化された磁気コンセントレータは、保護オーバーコート層の下及び基板の表面の上に配置される。実質的に垂直な磁場は、基板内及び基板の表面の下に配置される2つの水平型ホールセンサに印加される。この方法は、2つの水平型ホールセンサを用いて、実質的に垂直な磁場を感知することも含む。パターン化された磁気コンセントレータは、複数の磁気層を含み得る。
【0056】
パターン化された磁気コンセントレータを用いることで、構造の動作の間、水平磁場から垂直磁場への変換における信号の増幅が可能となる。磁気コンセントレータは、実質的に水平方向の磁場を、(パターン化された磁気コンセントレータの形状に応じて)2~20の範囲の係数だけ増幅し、それによって実質的に垂直な磁場を提供し得る。幾つかの形状は2未満の変換係数を生成することがあり、これもまた有用であることが証明されている。
【0057】
パターン化された磁気コンセントレータは、円形、非円形、矩形、楕円形、楔形、正方形、ひし形、X形状、星形、十字形、三角形、六角形、八角形、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される形状を含み得る。
【0058】
上述の例で説明したように、基板表面上に配置される磁気コンセントレータが、水平方向の磁束を垂直方向の磁束に変換する。これにより、水平ホールセンサを用いた水平方向(平面内)の磁束測定が可能になる。また、磁気コンセントレータを或る種の形状にパターン化することにより、磁場集中をホールセンサ領域の近くで高めることができる。
【0059】
4つの端子及び矩形形状がホールセンサにとって典型的であるが、他の数の端子及び/又は形状を有するホールセンサが本明細書において企図され得ることに留意されたい。一例は、8端子八角形である。
【0060】
本明細書では、「結合する」という語が、間接的又は直接的な有線又は無線接続のいずれかを意味する。そのため、第1のデバイスが第2のデバイスに結合する場合、その接続は、直接的接続を介するもの、或いは、他のデバイス及び接続を介した間接的接続を介するものであり得る。「に基づく」とは「少なくとも部分的に基づく」ことを意味する。従って、XがYに基づく場合、Xは、Y及び任意の数の他の要因の関数であり得る。
【0061】
本発明の特許請求の範囲内で、説明した例示の実施例に改変が成され得、他の実施例が可能である。
【国際調査報告】