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特表2022-542572ホログラフィック光学素子と共に使用するポリマーコーティング層
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-05
(54)【発明の名称】ホログラフィック光学素子と共に使用するポリマーコーティング層
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/023 20190101AFI20220928BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20220928BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220928BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
B32B7/023
B32B7/12
B32B27/00 C
G02B5/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504518
(86)(22)【出願日】2020-07-24
(85)【翻訳文提出日】2022-03-17
(86)【国際出願番号】 US2020043357
(87)【国際公開番号】W WO2021021584
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】62/879,123
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503316891
【氏名又は名称】ソルティア・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】コーラン,フランソワ・アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ハルデマン,スティーブン・ブイ
【テーマコード(参考)】
2H249
4F100
【Fターム(参考)】
2H249CA10
2H249CA22
2H249CA28
4F100AG00A
4F100AG00E
4F100AJ04C
4F100AK01B
4F100AK03C
4F100AK21C
4F100AK23C
4F100AK25C
4F100AK51C
4F100AK68C
4F100AK70C
4F100AL05C
4F100AL09C
4F100AR00D
4F100AT00A
4F100AT00E
4F100BA05
4F100BA07
4F100CA07B
4F100CA13B
4F100CA16C
4F100CA23B
4F100CB00C
4F100JB16B
4F100JN18C
4F100JN18D
4F100YY00C
4F100YY00D
(57)【要約】
ホログラフィック光学素子(HOE)を含有する前面ガラス、ウィンドウまたは他の板ガラスなどの積層体に組み込まれた場合に、優れた特性を示し、望ましい光学特性を提供する結合層および構造体が開示される。結合層は、HOEフィルムと、任意選択で付加的なポリマー層と連結して積層体中で使用される場合、HOEフィルムの特性を維持し、損ねることはない。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリマー層、低屈折率化合物を含む結合層、およびポリマー体積ホログラムを提供するステップと、第1のポリマー層、結合層およびポリマー体積ホログラムを組み立てて組立体を形成するステップと、少なくとも第1の基板を提供するステップであって、第1の基板が第1のポリマー層に隣接する、ステップと、組立体と少なくとも第1の基板とを積層して積層構造体を形成するステップとを含み、ポリマー体積ホログラムの光調節特性が、積層および結合層との低屈折率化合物平衡化の後に、少なくとも1つの波長域における組立て前のポリマーホログラムの元の光調節特性の大きさの70%超であるように、積層構造体が、ポリマー体積ホログラム内に分配された低屈折率化合物レベルを有する、製造方法。
【請求項2】
初期のポリマー体積ホログラムが、低屈折率化合物を含有しない、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
初期のポリマー体積ホログラムが、少なくとも1つの低屈折率化合物を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
1つまたは複数の付加的なポリマー層をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
ポリマー体積ホログラムが、第2の基板上に配置される、請求項1から4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
第2の基板をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
結合層中の低屈折率化合物が、ポリマー体積ホログラム中の低屈折率化合物とは異なる、請求項3から6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
結合層に隣接するポリマーフィルムをさらに含み、ポリマーフィルムが、第1のポリマー層と結合層の間に配置される、請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
結合層が、ポリマー体積ホログラム中の低屈折率化合物の濃度の-25から+25重量パーセントの範囲内の濃度の低屈折率化合物を含む、請求項3から8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
結合層が、積層構造体の0超から50重量パーセント未満の範囲内の低屈折率化合物の総量を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
結合層が、ポリウレタン、ポリ(ビニルブチラール)などのポリ(ビニルアセタール)、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、セルロースエステル、ポリオレフィンエラストマー、アクリル樹脂、ポリシロキサンおよびイオノマーから選択されるポリマーもしくはエラストマーまたはポリマーもしくはエラストマーのブレンドを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
結合層中の低屈折率化合物が、ポリマー体積ホログラム中の低屈折率化合物の屈折率の-0.1から+0.1の範囲内の屈折率を有するように選択される、請求項3から11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
ポリマーフィルムが、結合層および/またはポリマー体積ホログラムからポリマー層への低屈折率化合物の移動を防止する、請求項8から12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
結合層が、接着促進剤をさらに含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
少なくとも一部のポリマー層が:テーパー状の中間層、音響調節消音特性、もしくは電磁スペクトルの一部を選択的に遮断する要素の少なくとも1つを有するか、またはポリマー層が、以下の:染料、着色剤、顔料、粒子、赤外線もしくは太陽光吸収剤の少なくとも1つを含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
低屈折率化合物が、少なくとも2つの異なる低屈折率化合物を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
ポリマー体積ホログラムが、パターン化または非パターン化感光性ポリマーフィルムを含み、ポリマー体積ホログラムが、組立てステップの前に低屈折率化合物を含まない、請求項1に記載の製造方法。
【請求項18】
第1のポリマー層、低屈折率化合物を含む結合層、ポリマー体積ホログラム、および第2のポリマー層を提供するステップと、第1のポリマー層、結合層、ポリマー体積ホログラムおよび第2のポリマー層を組み立てて組立体を形成するステップであって、ポリマー体積ホログラムが結合層と第2のポリマー層の間にある、ステップと、少なくとも第1の基板を提供するステップと、組立体と少なくとも第1の基板とを積層して積層構造体を形成するステップとを含み、ポリマー体積ホログラムの光調節特性が、積層および結合層との低屈折率化合物平衡化の後に、少なくとも1つの波長域における組立て前のポリマーホログラムの元の光調節特性の大きさの70%超であるように、積層構造体が、ポリマー体積ホログラム内に分配された低屈折率化合物レベルを有する、製造方法。
【請求項19】
積層および結合層との低屈折率化合物の平衡化の後のポリマー体積ホログラムの光調節特性が、少なくとも1つの波長域における組立て前のポリマーホログラムの元の光調節特性の大きさの100%超である、請求項1から18のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載の製造方法により作製される積層構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、概して、ホログラフィック光学素子をカプセル化および保護するために使用されるポリマーコーティングまたは結合層などの層、ならびにこれらの中間層を含む積層体に関する。より詳細には、本発明は、概して、ポリマーコーティングまたは結合層、ならびにポリマーコーティングまたは結合層およびホログラフィック光学素子を含む少なくとも1つの層を含む積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]一般に、多重層ガラスパネルは、中間層もしくは多層中間層または2枚のガラス板の間に挟まれた中間層で構成される積層体を含む。一部の用途では、積層体は、1枚のみのガラス板または他の剛性基板を含んでもよい。積層多重層ガラスパネルは、一般的に、建築用ウィンドウの用途に、運搬車両に(自動車、トラック、列車、ボート、飛行機を含む)、および太陽光発電ソーラーパネルに利用される。最初の2つの用途に使用される多重層ガラスパネルは、一般的に積層安全ガラスと呼ばれる。典型的には、積層安全ガラスにおける中間層の主要な機能は、ガラスに加えられた衝撃または力からもたらされるエネルギーを吸収すること、力が加えられた場合でさえも結合されたガラスの層を保持すること、かつガラスが破損した場合、ガラスが鋭い破片に飛散することを防止することである。これらの安全上の利点に加えて、中間層は、付加的に、より高い防音等級を積層ガラスに付与し、UVおよびIRの透過を低減し、および/または関連するウィンドウの美感を向上させることができる。
【0003】
[0003]典型的には、積層ガラス用途における使用を目的とする中間層は、一般に、ポリ(ビニルアセタール)などのポリマー樹脂と、1つまたは複数の可塑剤とを混合し、混合物を当業者に公知の任意の適用可能なプロセスまたは方法により溶融加工して中間層とすることにより製造される。形成された後、これらの中間層、または多層中間層は、典型的には多重層ガラスパネルにおける後での使用の前に、保管用にロールに巻き付けられる。コーティングまたは結合層は、同じ手法で、または当技術分野で公知の混合方法および機器を使用して、材料を一緒に混合し、次に結合層またはコーティングを被覆するかまたは形成することにより製造され得る。
【0004】
[0004]中間層は、当技術分野で公知の様々な技術を使用して、多重層ガラスパネルに組み込まれ得る。例えば、少なくとも1つの中間層は、2枚の基板の間に配置され得て、過剰の中間層は端から切り取られて、それにより組立体が作り出され得る。多重中間層が2枚の基板の内またはその間に配置され、それにより外部ガラスパネルおよび多重の内部ポリマー中間層を有する多重層スタックが作り出されることは珍しいことではない。いったん形成されると、これらのスタックは、典型的には、ニップローラ、減圧バッグ、減圧リング、または別の好適な脱気機構によるなどの当業者に公知の適用可能なプロセスまたは方法により、大部分の界面空気を除去するように処理される。加えて、中間層は、当業者に公知の任意の方法により、基板に部分的に圧着され得る。最後のステップでは、脱気操作中に生成される界面結合は、典型的には高温および/または高圧の積層プロセスによりさらに持続的なものとなり、その一部はオートクレーブ処理などの当業者に公知のプロセスであるが、それに限定されない。
【0005】
[0005]他の実施形態では、コーティングまたは結合層などのより薄い層は、単独または他の層との組合せで使用されてもよい。コーティングまたは結合層は、保護層などの基板層を他の層に結合するための接着剤として使用されてもよい。多様な異なる材料が積層安全ガラスにおける基板層として使用され得るが、ポリエチレンテレフタレート(PET)が、積層ガラスにおけるプラスチック層としての使用に公知である。他の材料は、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、セルロースエステル、ポリエステルなどを含む。基板層は、その片側または両側に接着剤が塗布されてもよい。接着剤の厚さの変動およびポリマー中間層などのより厚い層の使用からの光学的ひずみを減少させるために、コーティングまたは結合層などのより薄い層を使用することが望ましい場合がある。さらに、接着剤のより薄い層は、プラスチック層が特定のガラス積層体中の曲面ガラスの輪郭により密接に沿い、積層プロセス中のプラスチック層または接着層の折れ曲がりまたはしわを減少させるかまたは取り除き、同様にプラスチックシートのうねりまたはアップルソース効果(applesauce effect)の低減または除去、およびしわの低減または除去を可能にする。積層体中の空気除去という問題点を補助するために、コーティングまたは結合層は、その上にエンボス加工されるかまたは表面インプリントされ得て、空気が積層体から流れ出すのを可能にする。
【0006】
[0006]ヘッドアップディスプレイ(HUD)などの付加的な機能性を必要とする、前面ガラスなどのより高性能の積層体が出現している。ポリマー層は、それらが組み込まれているガラス積層体の光学特性の妨げとなってはならない。付加的な材料は、必要とされる付加的な機能性を提供すると考えられている。
【0007】
[0007]材料、工作機械、およびパターニングにおける最近の開発は、ホログラフィが目新しい製品から高度技術用途へと推移することを可能にしている。そのような可能な用途の1つは、自動車用HUD技術を可能にする角度選択性反射素子としてのホログラフィック素子またはホログラフィック光学素子(HOE)の使用である。ホログラフィは、今、固定ディスプレイ、自動車用HUD用途、およびユーザヘッドマウント眼鏡/ディスプレイなどの用途に提案されているホログラフィック素子の使用を伴い、最近の十年間にますます急速に進展している。これらの場合の全てにおいて、所望の光学効果を生み出すために必要とされるホログラフィック素子構造体のタイプおよびパターンの理解と共に、合理的な装置設定が想定されてきた。しかしながら、ほとんどの場合、これらの技術はいまだ規模増減の初期段階にあり、組織は使用適合性基準を満たす試作品を製造することに取組んでいる。
【0008】
[0008]初期段階の開発努力のそのような例の1つは、自動車用ヘッドアップディスプレイ用途におけるホログラフィックの使用である。ダッシュ取付けプロジェクターからの光を反射する、前面ガラスまたは風防ガラスに埋め込まれたHOEを使用するホログラフィック技術の使用が提案されてきた。埋込型HOEは、非常に狭い設定の角度からの光を反射し、一方、大部分の他の角度からの光の通過を可能にするように設計され;その結果、得られたのはイン-ダッシュプロジェクター系からの入射光を反射し、一方、全ての他の角度からの光の通過を妨げない前面ガラス系である。これは、運転手が、同時に、車外で起こっていることを見て、同様にダッシュから投影された情報画像を認知することを可能にする。
【0009】
[0009]この分野における初期の導入者は、角度標的化された投射光を反射し、一方、他の角度での光をフィルム透過させる能力を維持する、両方の能力を実証することが可能な試作HOEフィルムを首尾よく設計し、製造した。しかしながら、完成された風防ガラスにこれらのフィルムを組み込む場合、所望の光学特性を維持するには著しく困難な課題がある。最終的な積層ガラス構成体へのHOEフィルムの積層が、HOEにより反射される光の質および強度に影響を及ぼす、意図しない材料変化を常にもたらす。より詳細には、市販の中間層とHOEフィルムを結合する場合の多くは、処理可能性および/または機能性に関して欠陥をもたらす。
【0010】
[0010]上記のHOE障害の大多数は、風防ガラスなどの最終部品を作製するために使用される材料およびプロセスにつながる場合がある。PVBおよびポリウレタン(TPU)中間層などの従来的な中間層フィルムに直接に、または共にHOEを積層する試みは、典型的には50~90%程度の反射応答の強度における著しい低減をもたらすが、他の低減も可能である。浸透性が制限された剛性表板でキャッピングすることにより、ポリマー中間層からHOEを分離または保護することは、応答の強度を保持する助けとなるが、費用との関連があり、また反射応答の質を低下させるレベル(反射される大きさの変化)で、HOEフィルムのしわおよび斑紋をもたらすという意図しない結果もあり得る。積層の質はまた、ベーク試験および/またはHOEの外縁辺りに閉じ込められた目視できる空気により明白となるように、剛性ポリマー基板キャップ層の添加で低下され得る。
【0011】
[0011]市販のHOEフィルムは様々な材料で構成されている。ほとんどの場合、これらのフィルムは、剛性基板上に被覆された、特に配合された弾性感光性ポリマーフィルムを含む。最終的な反射フィルムでは、HOEは、弾性感光性ポリマーフィルム内に低および高屈折率を有する慎重に設計された区域を作り出す化学反応を推し進めるために、高輝度光(1つまたは多重のレーザなど)を使用することにより、所望の光学効果のためにパターン化される。低屈折率化合物(LRIC)(または複数のLRIC)はまた、感光性ポリマー層に組み込まれることが多く、パターン化構造体内の屈折率差を増加させ、HOE応答の強度を高める。
【0012】
[0012]LRICは、典型的には、ほとんどのポリマーフィルム中で移動しやすい、典型的には少なくとも部分的に混和性の短鎖分子である。そのようなLRICを含有するHOEの、LRICを持たないポリマーフィルムに対する積層は、典型的には、これらのLRIC部分を積層フィルム内に送り込む濃度勾配を作り出し、これは、典型的にはHOE反射強度における許容されない低減をもたらす。初期のHOEおよび隣接するカプセル化層の両方における最終濃度レベルは、主として、(1)各層におけるLRICの相対的溶解度、および(2)各層の相対的厚さに依存する。温度、接触の程度、および時間もまた、最終濃度レベルの決定に役割を果たす可能性がある。
【0013】
[0013]典型的にはガラス積層に使用される、例えばPVBまたはTPUのようなカプセル化フィルム、コーティングまたは層におけるLRICの混和性は、元のHOEフィルムから出て隣接するフィルムまたは層に入るこれらのLRICの正味の移動をもたらす。この損失は、HOEフィルム内の屈折率勾配を低減し、より低い反射強度という結果をもたらす。剛性結晶または高度に整列した表板を用いたHOEフィルムのキャッピングがLRIC移動を防止し、この問題を軽減する一方、そのようなキャッピングは、これまでに記載された、費用、HOEフィルムのしわおよび気泡形成の傾向などの他の問題点をもたらすことが多いことが示されてきた。しわ、気泡形成、およびHOEフィルムからのLRICの許容されない損失を防止するHOEフィルムカプセル化系に対する明白な必要性がある。
【0014】
[0014]したがって、従来のガラス積層体に期待される所望の性能を提供することができ、そして一方、同時に費用を最小限に抑え、積層体に組み込まれたHOE(またはHOEフィルム)の光学的および物理的特性を損なうことがない、積層体におけるカプセル化フィルムとしての使用のためのコーティングまたは結合層に対する必要性がある。
【発明の概要】
【0015】
[0015]本発明は、概して、ホログラフィック光学素子(HOE)を含有する前面ガラス、ウィンドウまたは他の板ガラスなどの積層体に組み込まれた場合に、優れた特性を示し、望ましい特性を提供する結合層および構造体に関する。結合層は、HOEフィルムと、任意選択で付加的なポリマー層と連結して積層体中で使用される場合、HOEフィルムの特性を維持し、損ねることはない。
【0016】
[0016]本発明の実施形態は、以下の図に関連して本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】[0017]2つの中間層の間にカプセル化されたHOEフィルムを含有するガラス積層体の実施形態の断面図を示す図である。
図2】[0018]2つの中間層の間にカプセル化されたHOEフィルムを含有し、HOEフィルムと中間層の間に接着または結合層を有するガラス積層体の別の実施形態の断面図を示す図である。
図3】[0019]2つの中間層の間にカプセル化されたホログラフィック素子およびホログラフィック素子基板を示す、HOEフィルムを含有するガラス積層体の別の実施形態の別の断面図を示す図である。
図4】[0020]2つの中間層の間にカプセル化されたホログラフィック素子およびホログラフィック素子基板を示し、保護素子基板および保護素子結合層がHOEフィルムに隣接する、HOEフィルムを含有するガラス積層体の別の実施形態の断面図を示す図である。
図5】[0021]2つの中間層の間にカプセル化されたホログラフィック素子およびホログラフィック素子基板を示し、保護素子基板がHOEフィルムに隣接する2つの保護素子結合層によりカプセル化された、HOEフィルムを含有するガラス積層体の別の実施形態の断面図を示す図である。
図6】[0022]1つの中間層と、HOEフィルムに隣接する、2つの保護素子結合層によりカプセル化された保護素子基板との間にカプセル化されたホログラフィック素子およびホログラフィック素子基板を示す、HOEフィルムを含有するガラス積層体の別の実施形態の断面図を示す図である。
図7】[0023]コーティングまたは結合層により保護されたホログラフィック素子およびホログラフィック素子基板を示す、1つのみのガラスまたは剛性層を有し、HOEフィルムを含有するガラス積層体の別の実施形態の断面図を表す。
図8】[0024]HOEフィルムに隣接する、2つの保護素子結合層によりカプセル化された保護素子基板により保護されたホログラフィック素子およびホログラフィック素子基板を示す、1つのみのガラスまたは剛性層を有し、HOEフィルムを含有するガラス積層体の別の実施形態の断面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[0025]本発明は、概して、ホログラフィック光学素子(HOE)を含有する前面ガラス、ウィンドウまたは他の板ガラスなどの積層体に組み込まれた場合に、優れた特性を示し、望ましい光学特性を提供する結合層および構造体に関する。結合層は、HOEフィルムと、任意選択で付加的なポリマー層と連結して積層体中で使用される場合、HOEフィルムの特性を維持し、損ねることはない。より詳細には、本発明は、概して、LRICを含むコーティングまたは結合層、および少なくとも1つのHOEフィルムを含む積層体における結合層の使用に関する。本発明は、加えて、ポリマー層または中間層と、HOEフィルムとを含む多層中間層またはシートに関し、ポリマー層とHOEフィルムは直接接触し、多層中間層は積層体に組み込まれ得る。以下でさらに詳述されるように、コーティングおよび結合層は、HOEフィルムと共に使用され、同様にそこに組み込まれるHOEフィルムを有する積層体を形成し得るように配合され、選択される。本明細書に記載のコーティングおよび結合層は、そのような積層体に求められる所望の光学特性を維持しながら、望ましい特性を積層体に提供することができる。
【0019】
[0026]コーティングおよび結合層は、1つまたは複数のLRICと共に首尾よく配合され得て、そのためHOEフィルムは、最終的な分配レベルがHOE有効性を維持する(すなわち、HOEの有効性および強度が著しく低減されることはない)ように、結合層および任意選択の中間層と組み合わされ得ることが発見された。結合層中の1つまたは複数のLRICは、HOE中のLRICと同じでもまたは異なってもよい。加えて、これらの結合層の化学的および物理的な性質は修正され、特性をさらに向上させることができる。
【0020】
[0027]本明細書で使用される場合、用語「中間層」は、少なくとも1つの剛性基板と共に使用して多重層パネルを形成するのに好適であり得る単層または多重層のポリマーシートを指す。用語「単一シート」および「一体式」の中間層は、1枚の単一シートから形成される中間層を指し、一方、用語「多重層」および「多層」の中間層は、共押出、組立て、積層されるか、またはそうでない場合は互いに組み合わされた2枚以上のシートを有する中間層を指す。本明細書で使用される場合、「結合層」は、少なくとも2つの他の層を一緒に結合した中間層中の層またはシートを指す。結合層は、コーティングであってもよく、用語「コーティング」および「結合層」は、本明細書において互換的に使用されてもよい。結合層は、概して、ポリマー層または中間層よりかなり薄い。
【0021】
[0028]用語「多層中間層」は、少なくとも2つのポリマー層を含むポリマー中間層を指す。以下でさらに論じられるように、多重層は、別々に押出された層、共押出された層、または別々に押出された層と共押出された層の任意の組合せであってもよい。したがって、多層化中間層は、例えば、一緒に組み合わされた2つ以上の単層中間層(「複数層中間層」);一緒に共押出された2つ以上の層(「共押出された中間層」);一緒に組み合わされた2つ以上の共押出された中間層;少なくとも1つの単層中間層と少なくとも1つの共押出された中間層の組合せ;および少なくとも1つの複数層中間層と少なくとも1つの共押出された中間層の組合せを含み得る。
【0022】
[0029]本明細書で使用される場合、ホログラフィック光学素子(HOE)は、ホログラフィック素子基板と称される少なくとも1つの基板と、体積ホログラムまたはポリマー体積ホログラムなどのホログラフィック素子またはフィルムとを含むホログラフィック構成を指す。ホログラフィック光学素子およびホログラフィック素子という用語は、互換的に使用されてもよい。HOEフィルムは、ホログラフィック技術を使用して光が媒体を通る進み方を変化させ、典型的には半透明の、特定の設定の角度で光を反射させ、他の角度では光を反射させない鏡状面を作り出すポリマーフィルムである。
【0023】
[0030]結合層は単独で使用されてもよく、またはHOEフィルムなどの別のフィルムと共に、HOEフィルムに被覆、接着、保護などの機能的支持を提供するカプセル化層として使用されてもよい。所望の用途および特性に応じて、1つ超のカプセル化層およびフィルムが使用されてもよい。例えば、2つの中間層が、HOEフィルムをカプセル化するために(両側に)使用されてもよい。実施形態では、1つの結合層はLRICを含んでもよく、一方、第2の結合層はLRICを含まない従来の結合層であってもよい。他の実施形態では、両方(または全て)の結合層がLRICを含んでもよい。
【0024】
[0031]上記のように、コーティングまたは結合層は、多くの用途に有用な風防ガラスまたは他の積層ガラスパネルなどの多層中間層および積層体を形成するために、任意選択のポリマー層と共に使用され得る。様々な実施形態では、これらのポリマー層は、エチレン酢酸ビニル、熱可塑性ポリウレタン、イオノマー、ポリ(ビニルアセタール)、およびこれらの混合物などの熱可塑性樹脂から形成され得る。ポリマー層の様々な配置形態およびタイプは以下に詳細に記載される。
【0025】
[0032]HOEと組み合わせたある特定のポリマー結合層の使用は、ガラス積層体に有益な特性をもたらし得る。HOE層が含まれている場合、層および構造の組合せに応じて、可塑剤がHOE層にまたはHOE層から分配または移行し、HOE層の層厚さおよび特性を変化させ得るため、一定の特別に配合されたタイプの中間層が好ましい場合がある。可塑剤配分もまた、ポリマー層の特性を変化させ得る。
【0026】
[0033]概して、結合層(および任意選択のポリマー層)は、層の総重量に基づいて、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、または少なくとも99重量パーセントの1つまたは複数の熱可塑性樹脂を含み得る。付加的にまたは代替的に、層は、層の総重量に基づいて、99以下、95以下、90以下、80以下、70以下、60以下、または50重量パーセント以下の1つまたは複数の熱可塑性樹脂を含み得るが、所望により他の量が使用されてもよい。そのような層を製造するために使用され得る層および熱可塑性樹脂のタイプは、以下でさらに記載される。
【0027】
[0034]様々な実施形態では、結合層およびHOE層は、互いに直接接触し得るかまたは別の層を通して互いに隣接し非直接的に配置され得る。1つまたは複数の実施形態では、少なくとも1つのポリマー層および少なくとも1つのHOE層は、中間層または積層体を形成する場合、互いに直接接触する。そのような実施形態では、結合層およびHOE層は、望ましくは互いに直接的に結合するが、この結合を強化するために接着剤が利用されてもよい。一般に、この結合は層が互いに対して積み重ねられ、多層中間層が全ての層のガラス転移温度を超えて加熱される場合に形成される結合であり得る。これは、例えば、互いに対して層を積み重ね、熱および/もしくは圧力を使用することにより、または層を共押出することにより、または両方の組合せで起こり得る。
【0028】
[0035]様々な実施形態では、本明細書に記載の任意選択のポリマー層は、互いに直接接触して配置された少なくとも2つのポリマー層(例えば、単層または共押出された多重層)を含み得る。多層化中間層に3つ以上の層が利用される場合、一部の層はスキン層と称され得て、1つまたは複数の層はコア層と称されてもよい。本明細書で使用される場合、「スキン層」は、一般に中間層の外側の層を指し、「1つまたは複数のコア層」は、一般にスキン層の間に配置された1つまたは複数の内側の層を指す。コア層の少なくとも1つの面は、スキン層の少なくとも1つの面と直接接触し得るか、または結合層、コーティングもしくは接着剤を通してスキン層と非直接接触してもよい。
【0029】
[0036]多層中間層の実施形態における例示的な層配置形態は:スキン/コア/スキン、スキン/コア、スキン/コア/コア/スキン、およびスキン/コア/コア/コア/スキンを含み、当業者に公知のように、同様に他の実施形態が可能である。
【0030】
[0037]図1は、多層中間層16を形成する、HOEフィルム層12および2つのポリマー層14を含む例示的な積層体10を表す。図1に示されるように、完全中間層構造体16は、ガラスなどの2つの剛性基板18の間に介在する。
【0031】
[0038]図2は、多層中間層16を形成する、HOE層12、2つのポリマー層14、および2つの結合層20を含む例示的な積層体10を表す。図2に示されるように、中間層16は、ガラスなどの2つの剛性基板18の間に介在する。
【0032】
[0039]本明細書に記載の多層中間層はまた、3つ超の層(例えば、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、または10以上までの個別の層)を有し得る。様々な実施形態では、多層中間層構造体は、2、3、4、またはこれら以上のポリマー層を含有することができ、それらの2つ以上は、HOE層と、または他のタイプの層と互いに直接接触し得る。層は様々な厚さを有し得て、それは層が使用されている中間層または積層体のタイプにより主として決定され、所望の厚さのいずれかであり得る。
【0033】
[0040]様々な実施形態では、任意の層または中間層の厚さ、または規格は、所望の特性および用途に応じて、少なくとも約0.5ミル、少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60ミル以上であり得る。ミリメートルでは、ポリマー層または中間層の厚さは、少なくとも約0.025、少なくとも約0.05、少なくとも約0.075、少なくとも約0.10、少なくとも約0.125、少なくとも約0.150、少なくとも約0.175、少なくとも約0.20、少なくとも約0.225、少なくとも約0.25、少なくとも約0.38、少なくとも約0.51、少なくとも約0.64、少なくとも約0.76、少なくとも約0.89、少なくとも約1.02、少なくとも約1.15、少なくとも約1.28、少なくとも約1.52mm以上であり得る。
【0034】
[0041]本明細書に記載の結合層および任意選択のポリマー層は、少なくとも1つの可塑剤をさらに含み得る。ポリマー層を形成する熱可塑性樹脂の特定の組成に応じて、可塑剤は、樹脂45.3kg(100ポンド)に対して(phr)少なくとも0.45kg(1ポンド)、少なくとも0.91kg(2ポンド)、少なくとも1.36kg(3ポンド)、少なくとも1.81kg(4ポンド)、少なくとも2.27kg(5ポンド)、少なくとも4.54kg(10ポンド)、少なくとも6.80kg(15ポンド)、少なくとも9.07kg(20ポンド)、少なくとも11.3kg(25ポンド)、少なくとも13.6kg(30ポンド)、少なくとも15.9kg(35ポンド)、少なくとも18.1kg(40ポンド)、少なくとも20.4kg(45ポンド)、少なくとも22.7kg(50ポンド)、少なくとも24.9kg(55ポンド)、少なくとも27.2kg(60ポンド)以上の量で存在し得る。実施形態では、可塑剤の量は、120以下、110以下、105以下、100以下、95以下、90以下、85以下、7以下、70以下、65以下、60以下、55以下、50以下、45以下、または40phr以下であり得るが、特定の材料および所望の特性に応じて他の量が使用されてもよい。
【0035】
[0042]様々な実施形態では、結合層および任意選択の中間層は、層の重量に基づいて、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも13、少なくとも15、少なくとも18、または少なくとも20重量パーセント以上の少なくとも1つの可塑剤を含有することができる。付加的にまたは代替的に、ポリマーは、ポリマー層の重量に基づいて、100まで、80まで、70まで、60まで、50まで、40まで、30まで、25まで、または20重量パーセントまでの少なくとも1つの可塑剤を含有することができる。
【0036】
[0043]結合層およびポリマー層に有用な低屈折率化合物または可塑剤は、低屈折率を有し、HOEフィルム層中の材料などの他の材料と適合し得る可塑剤を含む。低屈折率化合物は本明細書で可塑剤と呼ばれることが多いが、屈折率を調節する補助となり「可塑剤」と呼ばれ得ない、低屈折率を有する他の化合物もまた使用されてもよい。例は、フルオロウレタン(またはフッ素化ウレタン)およびフッ素化エステルなどのLRICを含むが、これらに限定されない。フルオロウレタンは、例えばイソシアネートをフッ素化アルコールと反応させることにより得ることができる。有用なLRICの例は、米国特許第8,999,608 B2号に開示されるフルオロウレタンであり得て、その開示は本明細書に参照により組み込まれる。実施形態では、LRICは、約1.45未満、または約1.40未満、または約1.35未満、または約1.30未満、または約1.25未満の屈折率を有する。実施形態では、可能な限り低い屈折率を有するLRICが望まれる。
【0037】
[0044]一部の実施形態では、ポリマー中間層およびポリマー体積ホログラムは、層間の可塑剤分配が同様であり、コーティングまたは結合層の中の可塑剤の量が、ポリマー体積ホログラム中の可塑剤の濃度の-25から+25重量パーセントの範囲内の量であるような、類似した物性を有する。実施形態では、ポリマー中間層は、元のポリマー体積ホログラム中の可塑剤の濃度の-15から+15重量パーセント、または-10から+10重量パーセント、-5から+5重量パーセントの範囲内の可塑剤の濃度を含む。
【0038】
[0045]コーティングまたは結合層およびポリマー体積ホログラムが、層間の可塑剤分配が異なるような異なる物性を有する他の実施形態では、ポリマー中間層中の可塑剤の量は、元のポリマー体積ホログラム中の可塑剤の総量より少なくてもまたは多くてもよく、層間の相対的な可塑剤分配の理解を通して決定されるべきである。一部の実施形態では、ポリマー中間層中の可塑剤の量は、ポリマー体積ホログラム中の可塑剤の濃度の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または少なくとも90重量パーセントの量である。他の実施形態では、ポリマー中間層中の可塑剤は、ポリマー体積ホログラム中の可塑剤の濃度の少なくとも101%、110%、120%、130%、140%、150%、200%、300%、400%または少なくとも500重量パーセント以上の量である。
【0039】
[0046]大部分の実施形態では、コーティングまたは結合層は、完全にカプセル化されたポリマー体積ホログラム中の可塑剤レベルが、元の積層されずまたはカプセル化されないポリマー体積ホログラム中に存在する開始レベルの可塑剤の少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%となるように、可塑剤の取り込みを最小化するように配合される。
【0040】
[0047]実施形態では、コーティングまたは結合層は、可塑剤または可塑剤ブレンドが、元のポリマー体積ホログラム中の可塑剤または可塑剤ブレンドの屈折率の-0.1から+0.1の範囲内の屈折率を有するように選択される可塑剤または可塑剤ブレンドを含む。実施形態では、可塑剤または可塑剤ブレンドは、元のポリマー体積ホログラム中の可塑剤または可塑剤ブレンドの屈折率の-0.05から+0.05の範囲内、または-0.02から+0.02の範囲内の屈折率を有するように選択される。
【0041】
[0048]可塑剤の使用が、最終部品の所望の特性に悪影響を及ぼすことがなく、またはポリマー層およびHOEを組み込む積層体もしくは他のデバイスの最終特性が所望の性能範囲を外れる原因となることがない限り、付加的な可塑剤が、詳細にはコーティングまたは結合層中でHOEと隣接せずまたは接触せず、コーティングまたは結合層中で使用されてもよい。可塑剤は、当技術分野で公知の任意のものであり得る。可塑剤は、モノマーまたはポリマー構造のいずれかであり得る。様々な実施形態では、可塑剤は、30個以下、25個以下、20個以下、15個以下、12個以下、または10個以下の炭素原子および少なくとも6個の炭素原子の炭化水素セグメントを有する化合物であり得る。これらの中間層における使用のための好適な従来の可塑剤は、例えば、とりわけ多塩基酸または多価アルコールのエステルを含む。好適な可塑剤は、例えば、トリエチレングリコールジ-(2-エチルヘキサノエート)(「3GEH」)、トリエチレングリコールジ-(2-エチルブチレート)、トリエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ヘキシルシクロヘキシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ヘプチルノニルアジペート、ジブチルセバケート、ブチルリシノレエート、ヒマシ油、ジブトキシエチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、トリオクチルホスフェート、ヤシ油脂肪酸のトリエチルグリコールエステル、ポリエチレンオキシドロジン誘導体のフェニルエーテル、油変性セバシン酸アルキド樹脂、トリクレシルホスフェート、およびこれらの混合物を含む。特定の実施形態では、可塑剤は3GEHである。
【0042】
[0049]加えて、高屈折率の可塑剤などの他の可塑剤もまた、特にHOEと隣接または接触しない層において、単独または別の可塑剤との組合せのいずれかで使用されてもよい。本明細書で使用される場合、用語「高屈折率の可塑剤」は、少なくとも1.460の屈折率を有する可塑剤を指す。高屈折率の可塑剤は、1つまたは複数の層の屈折率を増加または減少させることができ、むら、ヘイズ、および/または透明度を含む中間層の光学特性を改善し得る。実施形態では、使用に好適な高RI可塑剤は、上記のように測定して、少なくとも1.460、少なくとも1.470、少なくとも1.480、少なくとも1.490、少なくとも1.500、少なくとも1.510、少なくとも1.520および/または1.600以下、1.575以下、もしくは1.550以下の屈折率を有し得る。
【0043】
[0050]コーティングまたは結合層が高RI可塑剤を含む場合、可塑剤は、層中に単独で存在することができ、または1つもしくは複数の付加的な可塑剤とブレンドされ得る。高屈折率の可塑剤のタイプまたはクラスの例は、ポリアジペート(1.460~1.485のRI);エポキシ化ダイズ油などのエポキシド(1.460~1.480のRI);フタレートおよびテレフタレート(1.480~1.540のRI);ベンゾエートおよびトルエート(1.480~1.550のRI);ならびに他の特殊な可塑剤(1.490~1.520のRI)を含み得るが、これらに限定されない。好適なRI可塑剤の特定の例は、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエート、ポリプロピレングリコールジベンゾエート、イソデシルベンゾエート、2-エチルヘキシルベンゾエート、ジエチレングリコールベンゾエート、ブトキシエチルベンゾエート、ブトキシエチオキシエチルベンゾエート、ブトキシエトキシエトキシエチルベンゾエート、プロピレングリコールジベンゾエート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジベンゾエート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールベンゾエートイソブチレート、1,3-ブタンジオールジベンゾエート、ジエチレングリコールジ-o-トルエート、トリエチレングリコールジ-o-トルエート、ジプロピレングリコールジ-o-トルエート、1,2-オクチルジベンゾエート、トリ-2-エチルヘキシルトリメリテート、ジ-2-エチルヘキシルテレフタレート、ビス-フェノールAビス(2-エチルヘキサオネート)、ジ-(ブトキシエチル)テレフタレート、ジ-(ブトキシエチオキシエチル)テレフタレート、およびこれらの混合物を含み得るが、これらに限定されない。実施形態では、高RI可塑剤は、ジプロピレングリコールジベンゾエートおよびトリプロピレングリコールジベンゾエート、および/または2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジベンゾエートから選択され得る。様々な実施形態では、可塑剤は、以下のうちの少なくとも1つ:ベンゾエート、フタレート、ホスフェート、アリーレン-ビス(ジアリールホスフェート)、およびイソフタレートから選択され得る。
【0044】
[0051]他の有用な可塑剤は、トリフェニルホスフェート、トリクレシルホスフェート、クレシルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、トリエチルシトレート、トリ-n-ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチル-トリ-n-ブチルシトレート、およびアセチル-トリ-n-(2-エチルヘキシル)シトレートを含む。
【0045】
[0052]可塑剤の混合物もまた使用され得る。例えば、1つまたは複数のLRICと1つまたは複数の従来の可塑剤の混合物が使用され得る。代替的に、2つ以上のLRICが単独で、または他の従来のものではない可塑剤と共に使用され得る。
【0046】
[0053]コーティングまたは結合層、同様に付加的なポリマー層を形成するために使用され得る熱可塑性樹脂のタイプは、以下でさらに詳細に記載される。
EVA層
[0054]様々な実施形態では、本明細書に記載の1つまたは複数のコーティングまたは結合層は、エチレン酢酸ビニル(「EVA」)樹脂を含むか、エチレン酢酸ビニルから本質的になるか、またはエチレン酢酸ビニルからなり得る。そのような実施形態では、層はまた、「EVA層」と称される場合がある。これらの材料は、例えば、EVALAYER EV070C透明EVAフィルム(Interlayer Solutionsから)として、およびVISTASOLAR(登録商標)520.68フィルム(TPI All Seasons Co.,LTDから)として、同様に他の供給元から市販されている。
【0047】
[0055]少なくとも1つの層がEVAを含む実施形態では、層は少なくとも1つのLRICを含み得る。EVA層はまた、その特性および存在する場合は他の層に応じて、所望により他の可塑剤を含有してもよい。可塑剤の量は、任意のLRICを含み、これまでに開示されたものと同じ範囲であってもよい。
【0048】
[0056]様々なレベルの酢酸ビニルコモノマーを有するEVAが、所望の特性に応じて使用され得る。特定の実施形態では、EVAは、少なくとも70、少なくとも80、または少なくとも90および/または99以下、98以下、または95重量パーセント以下の酢酸ビニル含有量を含む。他の実施形態では、酢酸ビニル含有量は、所望の用途および特性に応じて様々な量が使用されてもよいが、少なくとも約10、もしくは少なくとも約15、もしくは少なくとも約20、もしくは少なくとも約25以上および/または約45以下、約40以下、約35以下、または約20~約40もしくは約25~約35重量パーセントなどの70重量パーセント未満であり得る。
【0049】
[0057]様々な実施形態では、EVAは、実施形態では、シラン添加剤、過酸化物添加剤、補助活性剤、UV遮断剤、および/または抗酸化剤を含有し得る配合EVAを含み得る。代替的に、EVAは、過酸化物添加剤などの、配合EVAに含有される上に列挙した成分の1つまたは複数が欠如している「無配合」EVAを含み得る(その場合、EVAはもはや熱反応性ではない)。様々な実施形態では、EVAはマレエート化され得る。
【0050】
[0058]EVA層は、単独でまたは本明細書に記載の他のポリマー層、コーティングもしくは結合層と連結して使用され、ポリビニルブチラール(「PVB」)層などのポリ(ビニルアセタール)層を含む他のタイプの層を含み得る様々なタイプの多層中間層を製造することができる。例示的な多層中間層の実施形態は:EVA/HOE/EVA、PVB/EVA/HOE/EVA/PVB、PVB/HOE/EVA、およびPVB/HOE/EVA/PVBを含むが、これらに限定されない。
【0051】
[0059]理論に束縛されることは望まないが、EVA層は、ポリ(ビニルアセタール)層とHOE層またはフィルムの間の結合層としても機能することができ、これら2つの層の間の結合を強化することができると考えられる。そのような実施形態では、EVA層は、ポリ(ビニルアセタール)層とHOE層の間に少なくとも部分的に介在することができる。他の実施形態では、EVAは、結合層ではなく個別層であり得る。
【0052】
[0060]EVA層および1つまたは複数の他のポリマー層を含有する多層中間層は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して製造され得る。例えば、各層が当技術分野で公知の技術を使用して別々に形成され、次に一緒に積層されてもよい。代替的に、EVA層および別のポリマー層を含有する多層中間層は、共押出を介して製造されてもよい。
【0053】
[0061]EVAの架橋特性のために、EVA層を形成する場合に、EVAを完全に架橋することを回避することが一般に望ましい。典型的には、部分的に架橋されたEVAは、他のポリマー層とさらに共押出されて、多層中間層を形成することができる。したがって、EVAを完全には架橋しない押出温度を利用することが望ましい場合がある。
熱可塑性ポリウレタン層
[0062]様々な実施形態では、本明細書に記載のコーティングまたは結合層は、熱可塑性ポリウレタン(「TPU」)樹脂を含むか、熱可塑性ポリウレタンから本質的になるか、または熱可塑性ポリウレタンからなり得る。そのような実施形態では、ポリマー層はまた、「TPU層」と称される場合がある。一例は、製品A4700NAT(Covestro LLCから市販-特殊フィルム(以前はDeerfield Urethane))である。様々な実施形態では、TPUは、脂肪族イソシアネート-ポリエーテルまたはポリエステルウレタンを含み得る。加えて、特定の実施形態では、TPUはまた、熱およびUV光に暴露された場合、TPUに付加的な安定性をもたらすために、UV安定剤および抗酸化剤、同様に他の添加剤を含むこともできる。
【0054】
[0063]コーティングまたは結合層がTPUを含む実施形態では、層は少なくとも1つのLRICを含み得る。TPU層はまた、その特性および存在する場合は他の層に応じて、所望により他の可塑剤を含有してもよい。可塑剤の量は、任意のLRICを含み、これまでに開示されたものと同じ範囲であってもよい。
【0055】
[0064]TPU層は、本明細書に記載のHOE層および他のポリマー層と連結して使用され、ポリ(ビニルアセタール)またはPVB層も含み得る様々なタイプの多層中間層を製造することができる。例示的な多層中間層の実施形態は:TPU/HOE/TPU、PVB/TPU/HOE/TPU/PVB、PVB/HOE/TPUおよびPVB/HOE/TPU/PVBを含むが、これらに限定されない。
【0056】
[0065]理論に束縛されることは望まないが、TPU層はまた、ポリ(ビニルアセタール)層と、HOEなどの様々な材料の他の層同様にフィルムとの間の結合層としても機能することができ、これら2つの層の間の結合を強化することができると考えられる。そのような実施形態では、TPU層は、ポリ(ビニルアセタール)とHOE層またはフィルムとの間に少なくとも部分的に介在することができる。他の実施形態では、TPUは、結合層ではなく個別層であり得る。
【0057】
[0066]TPU層および別のポリマー層を含有する多層中間層は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して製造され得る。例えば、各層が当技術分野で公知の技術を使用して別々に形成され、次に一緒に積層されてもよい。代替的に、TPU層および別のポリマー層を含有する多層中間層は、共押出を介して製造されてもよい。
イオノマー層
[0067]様々な実施形態では、本明細書に記載のコーティングまたは結合層は、イオノマー樹脂を含むか、イオノマー樹脂から本質的になるか、またはイオノマー樹脂からなり得る。そのような実施形態では、コーティングまたは結合層はまた、「イオノマー層」と称される場合がある。
【0058】
[0068]一般に、イオノマー樹脂は、部分的に中和された酸-エチレンコポリマーを含み得る。さらに、イオノマー樹脂は、ポリマーの総重量に基づいて、例えば、0.1~30重量パーセント、1~25重量パーセント、または5~20重量パーセントの範囲の酸官能基を有し得る。1つまたは複数の実施形態では、イオノマー樹脂は、少なくとも0.1、少なくとも1、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15重量パーセントおよび/または30重量パーセント以下、25以下、または20重量パーセント以下の1つまたは複数のアクリル酸からの酸官能基を有し得る。そのようなアクリル酸は、例えば、アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、モノメチルマレイン酸、およびこれらの混合物を含み得る。
【0059】
[0069]さらに、様々な実施形態では、エチレンコポリマーは、アクリレート、メタクリレート、およびこれらの組合せからなる群から選択され得る。そのような実施形態では、メタクリレートは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、酢酸ビニル、およびこれらの混合物を含み得る。イオノマー樹脂は、さらに米国特許第8,399,097号および米国特許第8,399,098号に記載され、その開示はその全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0060】
[0070]コーティングまたは結合層がイオノマーを含む実施形態では、層は少なくとも1つのLRICを含み得る。イオノマー層はまた、その特性および存在する場合は他の層に応じて、所望により他の可塑剤を含有してもよい。可塑剤の量は、任意のLRICを含み、これまでに開示されたものと同じ範囲であってもよい。
【0061】
[0071]イオノマー層は、本明細書に記載の他のコーティングまたは結合層、同様に他のポリマー層およびHOE層と連結して使用され、ポリ(ビニルアセタール)層も含み得る様々なタイプの多層中間層が製造され得る。例示的な多層中間層の実施形態は:イオノマー/HOE/イオノマー、PVB/イオノマー/HOE/イオノマー/PVB、PVB/HOE/イオノマーおよびPVB/HOE/イオノマー/PVBを含むが、これらに限定されない。
【0062】
[0072]イオノマー層および別のコーティングまたは結合層を含有する多層中間層は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して製造され得る。例えば、各層が当技術分野で公知の技術を使用して別々に形成され、次に一緒に積層されてもよい。代替的に、イオノマー層および別のポリマー層を含有する多層中間層は、共押出を介して製造されてもよい。
ポリ(ビニルアセタール)層
[0073]様々な実施形態では、本明細書に記載のコーティングまたは結合層は、ポリビニルブチラールなどのポリ(ビニルアセタール)樹脂を含むか、ポリ(ビニルアセタール)樹脂から本質的になるか、またはポリ(ビニルアセタール)樹脂からなり得る。ポリ(ビニルアセタール)層は、本明細書に記載の他のコーティング、結合層またはポリマー層と連結して使用され、様々なタイプの多層中間層が製造され得る。例示的な多層中間層の実施形態は:PVB/接着性コーティング(または結合層)/HOE/接着性コーティング(または結合層)/PVB、PVB/他のポリマー/HOE/他のポリマー/PVB、PVB/HOE/他のポリマー、PVB/HOE/PVBおよびPVB/HOE/他のポリマー/PVBを含むが、これらに限定されない。
【0063】
[0074]ポリ(ビニルアセタール)樹脂は、例えば、米国特許第2,282,057号および同第2,282,026号、同様にWade、B. 2016、Vinyl Acetal Polymers、Encyclopedia of Polymer Science and Technology.1~22頁(オンライン、著作権2016年 John Wiley & Sons,Inc.)に記載されるものなどの公知の方法に基づき、触媒の存在下で、1つまたは複数のアルデヒドを用いたポリ(ビニルアルコール)のアセタール化により製造され形成され得る。
【0064】
[0075]ポリ(ビニルアセタール)樹脂は、典型的には、残留するヒドロキシル含有量、エステル含有量、およびアセタール含有量を有する。本明細書で使用される場合、残留ヒドロキシル含有量(PVOHとして算出)は、ポリマー鎖上に残存するヒドロキシル基を有する部分の重量パーセントを指す。例えば、ポリ(ビニルアセタール)は、ポリ(酢酸ビニル)をPVOHに加水分解し、次にPVOHと、ブチルアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどのアルデヒド、望ましくはブチルアルデヒトとを反応させ、繰返しビニルブチラール単位を有するポリマーを作製することにより製造され得る。ポリ(酢酸ビニル)の加水分解のプロセスでは、典型的には、アセテート側鎖基の全てがヒドロキシル基に変換されるわけではない。例えば、ブチルアルデヒドとの反応は、典型的には、PVOH上の全てのヒドロキシル基のアセタール基への変換をもたらすわけではない。したがって、任意の完成したポリビニルブチラールには、典型的には、ポリマー鎖上の側鎖基としてのアセテート基(酢酸ビニル基として)などの残留エステル基および残留ヒドロキシル基(ビニルヒドロキシル基として)、ならびにアセタール(例えば、ブチラール)基(ビニルアセタール基として)が存在するであろう。本明細書で使用される場合、残留ヒドロキシル含有量は、ASTM 1396に従って重量パーセント基準で測定される。
【0065】
[0076]様々な実施形態では、ポリ(ビニルアセタール)樹脂は、本明細書で互換的に「PVB」とも呼ばれるポリビニルブチラール樹脂を含む。ポリビニルブチラール構造の例が使用されて、重量百分率が、関連するペンダント基と結合する部分的単位にどのように基づくかをさらに説明する:
【0066】
【化1】
【0067】
[0077]上記構造のポリビニルブチラールを考えると、ブチラールまたはアセタール含有量はポリマー中の単位Aの重量百分率に基づき、OH含有量はポリマー中の単位B(ポリビニルOH部分またはPVOH)の重量百分率に基づき、アセテートまたはエステル含有量はポリマー中の単位Cの重量百分率に基づく。
【0068】
[0078]ポリ(ビニルアセタール)樹脂のヒドロキシル基含有量は特に限定されないが、好適な量は、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、または少なくとも17であり、それぞれの場合に35重量パーセント以上までのPVOHである。一部の実施形態では、ポリ(ビニルアセタール)は、15重量パーセント未満、または14未満、13未満、12未満、11未満、10未満、9未満、または8重量パーセント未満の残留ヒドロキシル含有量を有し得る。一般に、より低いヒドロキシル重量百分率を有するポリ(ビニルアセタール)樹脂は、より多くの可塑剤を吸収し、より効率的に可塑剤を吸収する能力がある。
【0069】
[0079]ポリ(ビニルアセタール)樹脂はまた、例えばアセテートのようなポリビニルエステルとして算出して、20重量パーセント以下、17重量パーセント以下、15重量パーセント以下、13重量パーセント以下、11重量パーセント以下、9重量パーセント以下、7重量パーセント以下、5重量パーセント以下、または4重量パーセント以下の残留エステル基も含み得て、残りはブチルアルデヒドアセタールなどのアセタールであるが、任意選択で、例えば2-エチルヘキサナール基のような他のアセタール基も少量含む(米国特許第5,137,954号を参照のこと)。残留ヒドロキシル基測定と同様に、残留エステル基の重量パーセント(すなわち、残留アセテート含有量)は、ペンダントアセテート基を含む、アセテート基と結合しているポリマー骨格中の部分に基づく。
【0070】
[0080]本発明で使用されるポリ(ビニルアセタール)樹脂はまた、少なくとも50、少なくとも5、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、または少なくとも90重量パーセント以上のアセタール含有量を有し得る。付加的にまたは代替的に、アセタール含有量は、94まで、93まで、92まで、91まで、90まで、89まで、88まで、86まで、85まで、84まで、83まで、82まで、80まで、78まで、77まで、75まで、70まで、または65重量パーセントまでであり得る。
【0071】
[0081]ポリ(ビニルアセタール)樹脂中のアセタール基は、ビニルプロピニル基またはビニルブチラール基を含み得る。1つまたは複数の実施形態では、アセタール基はビニルプロピニル基を含む。一部の実施形態では、ポリ(ビニルアセタール)樹脂は、任意のアルデヒドの残留分を含み得て、一部の実施形態では、少なくとも1つのC~Cアルデヒドの残留分を含み得る。好適なC~Cアルデヒドの例は、例えば、n-ブチルアルデヒド、i-ブチルアルデヒド、2-メチルバレルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、2-エチルヘキシルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、およびこれらの組合せを含み得る。本明細書に記載の層および中間層に利用される1つまたは複数のポリ(ビニルアセタール)樹脂は、樹脂のアルデヒド残留分の総重量に基づいて、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、または少なくとも70重量パーセント以上の少なくとも1つのC~Cアルデヒドの残留分を含み得る。代替的に、または付加的に、ポリ(ビニルアセタール)樹脂は、99以下、90以下、85以下、80以下、75以下、70以下、または65重量パーセント以下の少なくとも1つのC~Cアルデヒドを含み得る。C~Cアルデヒドは、上に列挙した群から選択されてもよく、またはn-ブチルアルデヒド、i-ブチルアルデヒド、2-エチルヘキシルアルデヒド、およびこれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0072】
[0082]ポリ(ビニルアセタール)樹脂の重量平均分子量は、特に限定されない。ポリ(ビニルアセタール)樹脂は、少なくとも20,000、少なくとも30,000、少なくとも40,000、少なくとも50,000、少なくとも60,000、または少なくとも70,000の重量平均分子量(M)を有し得て、実質的に300,000ダルトンまでが好適であるが、場合によってはより高い分子量が使用されてもよいが、特に上限値はなく、それぞれの場合に、当業者に公知のように、テトラヒドロフラン中で、CottsおよびOuanoの低角レーザ光散乱(SEC/LALLS)法を使用して、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定される。
【0073】
[0083]ポリ(ビニルアセタール)層および1つまたは複数の他のポリマー層を含有する多層中間層は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して製造され得る。例えば、各層が当技術分野で公知の技術を使用して別々に形成され、次に一緒に積層されてもよい。代替的に、ポリ(ビニルアセタール)層および1つまたは複数の他のポリマー層を含有する多層中間層は、共押出を介して製造されてもよい。
【0074】
[0084]様々な実施形態では、HOE層は、音響調節中間層などの他のポリマー層と共に使用され得る。音響調節性能などの1組の望ましい特性を示すポリマーは、衝撃抵抗性または強度などの他の望ましい特性が欠如することが多い。したがって、望ましい特性の組合せを達成するために、望ましい音響調節性能を示すポリ(ビニルアセタール)層ならびに衝撃強度および抵抗性をもたらす1つまたは複数の他のポリマー層を含有する多層化中間層が製造され得る。1つまたは複数の実施形態では、音響調節中間層は、少なくとも-30、少なくとも-25、少なくとも-20、少なくとも-15、少なくとも-10、少なくとも-5、もしくは少なくとも0℃および/または40未満、30未満、25未満、20未満、15未満、10未満もしくは5℃未満のTgを有するポリ(ビニルアセタール)層を含有し得る。
【0075】
[0085]さらに、様々な実施形態では、このポリ(ビニルアセタール)樹脂またはポリ(ビニルアセタール)層は、例えば同等のポリ(ビニルn-ブチラール)樹脂層と比較して、改善された損失正接などの音響調節特性の向上を示し得る。損失正接は、動的機械的熱分析(DMTA)により測定された、被検物のパスカルにおける損失弾性率(G”)とパスカルにおける貯蔵弾性率(G’)との比である。DMTAは、剪断モード下で1Hzの振動周波数、3℃/分の温度掃引速度を用いて実施される。ガラス転移温度におけるG”/G’曲線のピーク値が損失正接値である。より高い損失正接値は、より高い減衰性を示し、より良好な消音特性、または音響調節性能と解釈することができる。
【0076】
[0086]その上、様々な実施形態では、ポリ(ビニルアセタール)樹脂またはポリ(ビニルアセタール)層は、少なくとも0.10、少なくとも0.15、少なくとも0.17、少なくとも0.20、少なくとも0.25、少なくとも0.27、少なくとも0.30、少なくとも0.33、または少なくとも0.35の減衰損失係数、または損失係数を示し得る。損失率は、ISO規格16940に記載の機械インピーダンス計測方法により測定される。損失係数を測定するために、ポリマー試料は、それぞれ2.3mmの厚さを有する2枚の透明ガラスの間に積層され、幅25mmおよび長さ300mmを有するように作製される。次に、Bruel and Kjar(Narum、オランダ)から市販されている加振機を使用して、積層試料を中央点で励振して、インピーダンスヘッドを使用して、棒材を励振して振動させるのに必要な力および振動速度を測定する。得られた伝達関数を、National Instrumentデータ収集および分析システムに記録し、半値幅法を使用して第1の振動モードにおける損失係数を算出する。
【0077】
[0087]一部の実施形態に基づいて、ポリ(ビニルアセタール)樹脂またはポリ(ビニルアセタール)層は、例えば、中間層を通過する時の音響透過の低減(すなわち、音響透過損失)により表されるように、望ましい音響調節特性を示し得る。一部の実施形態では、音響調節中間層は、20℃でASTM E90に準拠して測定されて、少なくとも34、少なくとも34.5、少なくとも35、少なくとも35.5、少なくとも36、少なくとも36.5、または少なくとも37dBの、コインシデンス周波数における音響透過損失を示し得る。そのような音響透過試験中、中間層は2枚の2.3mm透明ガラスの間に積層され、3,150Hzの基準周波数で試験が実行される。
【0078】
[0088]様々な実施形態では、本明細書に記載のコーティングまたは結合層に加えて、本明細書に記載の1つまたは複数のポリマーは、結合層であり得る。結合層は、EVA、TPU、イオノマー、ポリ酢酸ビニル、エチレンビニルアルコール、およびこれらの組合せからなる群から選択される熱可塑性樹脂を含むか、熱可塑性樹脂から本質的になるか、または熱可塑性樹脂からなり得る。
【0079】
[0089]結合層およびHOE層を含有する多層中間層は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して製造され得る。例えば、各層が当技術分野で公知の技術を使用して別々に形成され、次に一緒に積層されてもよい。代替的に、結合層およびHOE層を含有する多層中間層はまた、例えば、押出コーティング、浸漬コーティング、溶液コーティング、ブレード、パドル、エア-ナイフ、印刷、粉体コーティング、吹付けコーティング、およびこれらの組合せを含む任意の好適な方法に基づいて製造され得る。
【0080】
[0090]付加的な接着性コーティングまたは接着促進剤が、本明細書に記載のHOE層と連結して使用され、所望により、多層中間層におけるHOE層と様々な他の層の間の結合を強化することができる。そのような実施形態では、接着性コーティングは、中間層とHOE層の間に少なくとも部分的に介在、および/または位置することができる。実施形態では、接着促進剤は、シラン接着促進剤であり得る。
中間層を製造する方法
[0091]本発明の様々な実施形態に基づく中間層は、中間層を製造する当業者に公知の任意の好適なプロセスにより、その製造方法に限定されることなく作製され得る。例えば、結合層、ポリマー層または中間層は、押出または共押出により形成され得ることが企図される。押出プロセスでは、既に記載した1つまたは複数の熱可塑性樹脂、可塑剤、および、任意選択で、1つまたは複数の添加剤が予混合され、押出装置に供給され得る。押出装置は、押出シートを作り出すために、熱可塑性組成物に特定の形状を付与するように構成される。昇温における押出シートは、次に冷却されて、ポリマーシートを形成することができる。いったんシートが冷却され固定されると、その後の保管、輸送、および/または中間層としての使用のために、切断されロールにされてもよい。
【0081】
[0092]共押出は、ポリマー材料の多重層が同時に押出されるプロセスである。一般に、このタイプの押出は、2つ以上の押出機を利用して、安定した容積スループットの、異なる粘度または他の特性の様々な熱可塑性溶融物を、共押出ダイを通して溶融し送達して、所望の最終形態にする。共押出プロセスにおいて押出ダイを出ていく多重ポリマー層の厚さは、一般に、押出ダイを通る溶融物の相対速度の調節により、かつそれぞれの溶融された熱可塑性樹脂材料を処理する個々の押出機の大きさにより制御され得る。
【0082】
[0093]押出プロセスは、材料および用途に応じて、当業者に公知の温度で起こり得る。本明細書に記載の結合層、ポリマー層および中間層は、任意の好適な方法に基づいて製造され得る。得られた樹脂組成物は、溶液流延、圧縮成形、射出成形、溶融押出、メルトブロー、およびこれらの組合せを含むが、これらに限定されない任意の好適な方法に基づいてシートまたは層に形成され得る。層または中間層が2つ以上の層またはシートを含む多層中間層である場合、そのような多層中間層はまた、例えば、共押出、吹込フィルム、メルトブロー、浸漬コーティング、溶液コーティング、ブレード、パドル、エア-ナイフ、印刷、粉体コーティング、吹付けコーティング、およびこれらの組合せを含む任意の好適な方法に基づき製造され得る。
【0083】
[0094]代替的に、中間層のそれぞれの結合層および/またはポリマー層は、別々にシートに形成または押出され得て、シートは積み重ねられて所望の順序の積層構造体を形成し、次に熱および圧力下で圧縮されて多層中間層を形成し得る。本発明の様々な実施形態では、結合層、ポリマー層または中間層は押出または共押出により形成され得る。押出プロセスでは、1つまたは複数の熱可塑性ポリマー、可塑剤、および任意選択で少なくとも1つの添加剤は予混合され、押出装置に供給され得て、層または中間層は溶融されダイから押出され、それにより押出シートを提供し得る。代替的に、1つまたは複数の層は、購入されるかまたは当技術分野で公知のプロセスを使用して別々に製造されてもよい。
【0084】
[0095]他の添加剤が、最終製品の性能を向上させ、中間層に特定の付加的な特性を付与するために、積層体または中間層を形成するために使用される上記の層のいずれか1つに組み込まれてもよい。そのような添加剤は、当業者に公知の他の添加剤の中でも、接着調整剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料、安定剤(例えば、紫外線安定剤)、抗酸化剤、難燃剤、IR吸収剤または遮断剤(例えば、酸化スズインジウム、酸化スズアンチモン、六ホウ化ランタン(LaB)および酸化タングステンセシウム)、加工助剤、流動向上添加剤、滑沢剤、耐衝撃性調節剤、成核剤、熱安定剤、UV吸収剤、分散剤、界面活性剤、キレート剤、カップリング剤、接着剤、プライマー、補強添加剤、および充填剤を含むが、これらに限定されない。
【0085】
[0096]液体、粉末、またはペレットの形態における添加剤が使用されることが多く、押出機装置に到着する前かまたは押出機装置内の熱可塑性樹脂と組み合わせて、熱可塑性樹脂または可塑剤に混合され得る。これらの添加剤は、組成物に、さらには得られた中間層に組み込まれ、多重層ガラスパネル製品における中間層の特定の特性およびその性能を向上させる。
HOE層を含む積層体
[0097]これまでに記載された結合層および中間層は、改善された特性を有し得て、HOEフィルムなどの特定のフィルムと共に有用である。少なくとも1つのLRICを含む結合層は、カプセル化などの当技術分野で公知のプロセスを通して、HOEフィルムと組み合わされ得る。実施形態では、HOEフィルムは、少なくとも1つのLRICを含む結合層(および任意選択の中間層)を、片側に(HOEフィルムのHOE側など)または両側に有してもよい。他の実施形態では、HOEフィルムは、少なくとも1つのLRICを含む結合層を、HOEフィルムのHOE側に、かつ別の結合層をHOEフィルムの基板側に有してもよい。
【0086】
[0098]付加的な中間層、多重層中間層、および/またはこれまでに記載された機能特性を有する中間層などの、他の組合せの層が可能であり、使用されてもよい。
特性および最終用途
[0099]形成された構造体は、1つまたは複数の剛性基板を含む積層体またはパネルなどの多くの用途に使用され得る。2つのガラス基板の間に積層された中間層を含むガラスパネルなどの、本明細書に記載のHOEフィルム、結合層および中間層で作製されたパネルは、良好な光学的透明度を有し得る。ガラス基板の間に積層された結合層および中間層の透明度は、多層中間層を含有するシートガラスパネルを通して透過されない光の数量化であるヘイズ値を測定することにより決定され得る。パーセントヘイズは、以下の技術に従って測定され得る。ヘイズ量を測定する器具、ヘイズメーター、Model D25は、Hunter Associates(Reston、Va.)から入手可能であり、ASTM D1003-61(1977年に再承認)-手順Aに準拠して、2度の観察角で光源Cを使用して使用され得る。前面ガラスなどの様々な実施形態では、本明細書に記載の中間層は、ASTM D1003-61に準拠して測定して、10未満、9未満、8未満、7未満、6未満、5未満、4未満、3未満、2未満、1.5未満、1未満、0.75未満、または0.5パーセント未満のヘイズを示し得る。他の実施形態では、光学特性はそれほど重要でない場合があり、またはより低い透明度が所望される場合、より高いヘイズレベルが望ましく、または許容され得る場合がある。
【0087】
[00100]光学性能を決定するために使用される別のパラメータは、透明性、またはパーセント視感透過率(%Tvis)であり、HunterLab UltraScan XEなどの分光光度計を使用して、ASTM D1003、手順Bに準拠して、2°の観察角で光源Cを使用して測定される。本明細書で提供される値は、それぞれ2.3mmの厚さを有する2枚の透明ガラス(ペンシルベニアのPittsburgh Glass Worksから市販)の間に積層されたポリマー試料を分析することにより得られた。高視感透過率が望ましい一部の実施形態では、本発明の樹脂組成物、層、および中間層は、少なくとも50、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも81、少なくとも82、少なくとも83、少なくとも84、少なくとも85、少なくとも85.5、少なくとも86、少なくとも86.5、少なくとも87、少なくとも87.5、少なくとも88、または少なくとも90パーセント以上のパーセント視感透過率を有し得る。より低い視感透過率が所望される用途に関しては、パーセント視感透過率は、50パーセント未満であってもよい。
【0088】
[00101]黄色度指数(「YI」)は、光学品質の別の基準である。ポリマーシートの黄色度指数は、2枚の2.3mmの透明ガラスの間に30ゲージ(30ミルまたは0.76mm)のシート試料を積層(およびオートクレーブ処理)することにより、HunterLab UltraScan XEを使用して、ASTM方法E313(以前のD-1925)(光源C、2°の観察角)に準拠して、可視スペクトル中の分光光度法光透過率から測定される。様々な実施形態では、中間層は、ASTM E313に準拠して、20未満、18未満、16未満、14未満、12未満、10未満、8未満、6未満、5未満、4未満、3未満、2未満、1.5、1.0未満、0.75未満、0.5未満、0.4未満、または0.3未満の黄色度指数を示し得る。
【0089】
[00102]本発明の実施形態に基づくHOEフィルム、結合層および任意選択の中間層を含む構造体は、剛性基板などの少なくとも1つの基板を含む多重層パネルまたは積層体に利用され得る。本明細書で使用される場合、「剛性」は、一般に他の層に対する相対的なものである。任意の好適な剛性基板が使用されてもよく、一部の実施形態では、ガラス、ポリカーボネート、二軸配向性PET、コポリエステル、アクリル、ポリアミド、三酢酸セルロース、およびこれらの組合せからなる群から選択されてもよい。剛性基板がポリマー材料を含む場合、ポリマー材料は、硬質被覆表層を含んでも、または含まなくてもよい。一部の実施形態では、多層パネルまたは積層体は、樹脂中間層がそれらの間に配置された1対の剛性基板を含む。他の実施形態では、多重層パネルは、剛性基板と、それらの間にHOE層を含み、必要な場合は結合層、接着性コーティングおよび/または接着促進剤を任意選択で含む中間層とを含む。
【0090】
[00103]様々な実施形態では、本発明の結合層および中間層を含有する構造体は、典型的にはHOEフィルム、結合層および中間層が2枚の基板の間に配置された1対のガラス基板のような2枚の基板を含む多重層パネルに最も一般的に利用される。上述のもの以外の多数の構成体が、本発明の中間層を用いて作製され得ることを当業者が容易に認識するように、多重層パネルのこれらの例は、決して限定することを意図するものではない。
【0091】
[00104]本明細書に記載の結合層またはコーティングおよび任意選択のポリマー中間層を含む構成体は、当技術分野で公知の技術を使用して、ガラス間に積層され得る。典型的なガラス積層プロセスは、以下の:(1)1枚または2枚の基板(例えば、ガラス)ならびに中間層、結合層およびHOEフィルムの組立てのステップと;(2)IR放射または対流手段を介して組立体を短時間加熱するステップと;(3)第1の脱気のために、組立体を加圧ニップロール内に通過させるステップと;(4)約50℃~約120℃などの適切な温度で、組立体を2回目に加熱して、組立体に中間層の端部を密封するのに十分な仮接着を行うステップと;(5)組立体を第2の加圧ニップロール内に通過させて、中間層の端部をさらに密封して、さらなる操作を可能にするステップと;(6)80~150℃の間の温度および15psig~200psigの間の圧力などの適切な温度および圧力で約30~90分間、組立体をオートクレーブ処理するステップと、を含む。中間層-ガラス界面の脱気(ステップ2~5)における使用のための、当技術分野で公知の、商業的に実施されている他の手段は、空気を除去するために減圧が利用される減圧バッグおよび減圧リングのプロセスを含む。代替の積層プロセスは、最初に組立体を脱気し、その後、十分に高い温度および減圧で積層を完成する減圧積層機の使用を含む。
【0092】
[00105]上述の本発明の好ましい形態は、例示としてのみに使用されるべきであり、本発明の範囲を解釈するために限定的な意味で使用されるべきではない。上に明示された、例示的な実施形態に対する修正は、本発明の趣旨から逸脱することなく、当業者により容易に行われ得る。本発明は、それらの実施形態の以下の実施例によりさらに例証され得るが、これらの実施例は、単に例示の目的のために含まれ、特に別段の記載がない限り、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことは理解されるであろう。
【実施例
【0093】
[00106]以下に記載される配置形態を有する様々な積層体は、(様々な厚さを有し、異なる可塑剤の種類および量を伴うPVB、TPU、EVA、イオノマーおよび他のものなどの異なる材料の)別々のフィルムおよび結合層を、HOEフィルムまたは層と共に手積み成形法を介して層にすることにより製造することができる。コーティングまたは結合層は、有機溶媒を含有する溶液に接着性材料(例えば、PVB樹脂)を溶解するか、または接着性材料の水溶液を形成し、その溶液にロール-ツー-ロールスロットダイプロセスを施し、続いて炉中で有機溶媒または水を蒸発させることによるなどの任意の公知の産業プロセスを使用して適用され得る。代替的に、材料は、他のコーティングまたは溶着技術により、単独で、懸濁液として、または当業者に公知の別の材料に溶解するかのいずれかで適用されてもよい。HOEフィルムは、ホログラフィック技術を使用して光が媒体を通る進み方を変化させ、共につながった一連の連続的光学素子から構成され、特定の設定の角度で光を反射させ(一方、他の角度では光を反射させない)鏡状面を作り出す単一素子ポリマーフィルムである。コーティングまたは結合層および保護基板、HOEフィルムならびに任意選択のポリマー層で形成される構造体は、次に、それぞれ2.3mmの厚さを有するガラスシートなどの2枚の焼きなましガラスシートの間に積層される。積層プロセスは、減圧積層機を利用して、全ての試料を積層し、これは:(1)所定の順序における基板、中間層、およびHOEフィルムの組立て、ならびに減圧バッグに入れるステップと;(2)室温で20分間、続いて105℃で追加の60分間減圧するステップと;(3)減圧バッグから試料を取り出し、125℃および13バールで40分間という固定条件でオートクレーブ処理するステップと、を含む。さらに以下に記載されるように、この積層技術を使用して、複数の試料を製造することができる。
【0094】
[00107]ガラス/PVB/HOE/PVB/ガラスの構成を有する対照積層体は、従来の可塑剤(3GEH可塑剤など)と共に配合されたPVBなどの2層のポリマー中間層と、2枚のPVB層の間にカプセル化されたHOEフィルムとを使用して製造することができる。次に、減圧バッグ脱気プロセス、続いて当技術分野で公知の標準的オートクレーブ積層プロセスで、積層スタックを積層する。完成された構成は、最初にプログラムされた波長に近いピーク反射を有する作動体積ホログラムを含む。ホログラムのシグナル強度は、体積ホログラム層と、ホログラフィック素子または体積ホログラムをカプセル化するPVB層との全厚さにわたる再分布後の、HOE層におけるLRIC可塑剤の濃度低下に起因して低減される。
【0095】
[00108]以下に記載される構成を有する積層体例はまた、コーティングまたは結合層、HOEフィルムおよび任意選択のポリマー層を使用し、以下に示す1枚または2枚の剛性基板の間にこの構造体を積層する同じ手法で製造することができる。
【0096】
対照例
[00109]図3は、結合層またはコーティングおよび保護基板を伴わず、2つの中間層の間にカプセル化されたホログラフィック素子およびホログラフィック素子基板を示し、HOEフィルムを含有するガラス積層体の対照実施形態を表す。図3に示されるように、中間層2および8は、HOEフィルム(ホログラフィック素子6およびホログラフィック素子基板7からなる)をカプセル化して多層構造体を形成し、全多層構造体は、ガラスなどの2つの剛性基板1と9の間に介在する。
【0097】
実施例1
[00110]図4は、2つの中間層の間にカプセル化されたホログラフィック素子およびホログラフィック素子基板を示し、保護素子基板および保護素子結合層がHOEフィルムに隣接する、HOEフィルムを含有するガラス積層体の一実施形態の断面図を表す。図4に示されるように、保護結合層5は、ホログラフィック素子6に隣接して位置し、保護基板4は結合層5および中間層2に隣接する。中間層2および8は、HOEフィルム(ホログラフィック素子6およびホログラフィック素子基板7からなる)、結合層5および保護基板4をカプセル化して多層構造体を形成し、全多層構造体は、ガラスなどの2つの剛性基板1と9の間に介在する。
【0098】
[00111]図4に示される実施形態では、中間層は、PVB、TPU、EVA、イオノマーまたは上述の任意のポリマーなどの任意のポリマーフィルムであり得る。保護結合層5は、片側がホログラフィック素子6に、他の側が保護基板4に隣接しかつ直接接触する。結合層は、HOEフィルム(またはホログラフィック素子6)と、PVB、TPU、EVA、イオノマーまたは当技術分野で公知の他のポリマーなどの保護基板4との間に必要な接着性をもたらす任意の材料であり得る。結合層5は、(ビス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチル)(2,2,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジイル)ビスカルバメート(フッ化LRIC可塑剤)可塑剤などのLRICを含む。接着促進剤はまた、所望ならば、層間の接着性を改善するために使用されてもよい。保護基板4は、可塑剤(または他の材料)が中間層からホログラフィック素子へ移動することを防止し、かつホログラフィック素子6中のLRICおよび他の材料がホログラフィック素子から出て移動し、したがってHOEフィルムの有効性を低減させることを防止する障壁または保護層を提供する。保護基板4は、PET、PEN、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、セルロースエステル、ポリエステルなどのこれまでに記載された任意の材料であり得る。保護基板は、ホログラフィック素子基板7と同じ材料であってもよく、または異なってもよい。
【0099】
実施例2
[00112]図5は、2つの中間層の間にカプセル化されたホログラフィック素子およびホログラフィック素子基板を示し、保護素子基板がHOEフィルムに隣接する2つの保護素子結合層によりカプセル化された、HOEフィルムを含有するガラス積層体の別の実施形態の断面図を表す。図5に示されるように、保護結合層5は、ホログラフィック素子6に隣接して位置し、保護基板4は結合層5に隣接する。第2の結合層3は、保護基板4と中間層2の間に隣接する。中間層2および8は、HOEフィルム(ホログラフィック素子6およびホログラフィック素子基板7からなる)、結合層3および5ならびに保護基板4をカプセル化して多層構造体を形成し、全多層構造体は、ガラスなどの2つの剛性基板1と9の間に介在する。
【0100】
[00113]図5に示される実施形態では、ポリマー中間層2および8は、PVB、TPU、EVA、イオノマーまたは上述の任意のポリマーなどの任意のポリマーフィルムであり得る。保護結合層5は、片側がホログラフィック素子6に、他の側が保護基板4に隣接しかつ直接接触する。結合層5は、HOEフィルム(またはホログラフィック素子6)と、PVB、TPU、EVA、イオノマーまたは当技術分野で公知の他のポリマーなどの保護基板4との間に必要な接着性をもたらす任意の材料であり得る。結合層は、フッ化LRIC可塑剤などのLRICを含む。接着促進剤はまた、所望ならば、層間の接着性を改善するために使用されてもよい。保護基板4は、可塑剤(または他の材料)が中間層からホログラフィック素子へ移動することを防止し、かつホログラフィック素子6中のLRICおよび他の材料がホログラフィック素子から出て移動し、したがってHOEフィルムの有効性を低減させることを防止する障壁または保護層を提供する。保護結合層3は、保護結合層5と同じであってもよく、または異なってもよい。加えて、保護結合層3は、保護基板4に隣接し、ホログラフィック素子6への望まれない可塑剤移動を防止するため、異なるかまたは付加的な可塑剤を含んでもよい。保護基板4は、PET、PEN、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、セルロースエステル、ポリエステルなどのこれまでに記載された任意の材料であり得る。保護基板は、ホログラフィック素子基板7と同じ材料であってもよく、または異なってもよい。
【0101】
実施例3
[00114]図6は、1つの中間層と、HOEフィルムに隣接する、2つの保護素子結合層によりカプセル化された保護素子基板との間にカプセル化されたホログラフィック素子およびホログラフィック素子基板を示す、HOEフィルムを含有するガラス積層体の別の実施形態の断面図を表す。図6に示されるように、保護結合層5は、ホログラフィック素子6に隣接して位置し、保護基板4は結合層5に隣接する。第2の結合層3は、保護基板4に隣接する。中間層8は、ホログラフィック素子基板7に隣接する。結合層3および中間層8は、HOEフィルム(ホログラフィック素子6およびホログラフィック素子基板7からなる)、結合層5および保護基板4をカプセル化して多層構造体を形成し、全多層構造体は、ガラスなどの2つの剛性基板1と9の間に介在する。
【0102】
[00115]図6に示される実施形態では、中間層8は、PVB、TPU、EVA、イオノマーまたは上述の任意のポリマーなどの任意のポリマーフィルムであり得る。保護結合層5は、片側がホログラフィック素子6に、他の側が保護基板4に隣接しかつ直接接触する。結合層5は、HOEフィルム(またはホログラフィック素子6)と、PVB、TPU、EVA、イオノマーまたは当技術分野で公知の他のポリマーなどの保護基板4との間に必要な接着性をもたらす任意の材料であり得る。結合層は、フッ化LRIC可塑剤などのLRICを含む。接着促進剤はまた、所望ならば、層間の接着性を改善するために使用されてもよい。保護基板4は、可塑剤(または他の材料)が中間層からホログラフィック素子へ移動することを防止し、かつホログラフィック素子6中のLRICおよび他の材料がホログラフィック素子から出て移動し、したがってHOEフィルムの有効性を低減させることを防止する障壁または保護層を提供する。保護結合層3は、保護結合層5と同じであってもよく、または異なってもよい。加えて、保護結合層3は、保護基板4に隣接し、ホログラフィック素子6への望まれない可塑剤移動を防止するため、異なるかまたは付加的な可塑剤を含んでもよい。保護基板4は、PET、PEN、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、セルロースエステル、ポリエステルなどのこれまでに記載された任意の材料であり得る。保護基板は、ホログラフィック素子基板7と同じ材料であってもよく、または異なってもよい。
【0103】
実施例4
[00116]図7は、コーティングまたは結合層により保護されたホログラフィック素子およびホログラフィック素子基板を示す、1つのみのガラスまたは剛性層を有し、HOEフィルムを含有するガラス積層体の別の実施形態の断面図を表す。図7に示されるように、保護結合層5は、HOEフィルム(ホログラフィック素子6およびホログラフィック素子基板7を含む)に隣接して位置する。結合層5およびHOEフィルムは、ガラスなどの剛性基板1に結合する多層構造体を形成する。図7の多層構造体は、次に、第2の剛性基板に結合されるか、または所望により別の器具に結合されて、別の用途に使用され得る。
【0104】
[00117]図7に示される実施形態では、保護結合層5は、片側がホログラフィック素子6に、他の側が剛性基板1に隣接しかつ直接接触する。結合層5は、HOEフィルム(またはホログラフィック素子6)と、PVB、TPU、EVA、イオノマーまたは当技術分野で公知の他のポリマーなどの剛性基板1との間に必要な接着性をもたらす任意の材料であり得る。結合層5は、フッ化LRIC可塑剤などのLRICを含む。接着促進剤はまた、所望ならば、層間の接着性を改善するために使用されてもよい。
【0105】
実施例5
[00118]図8は、HOEフィルムに隣接する、2つの保護素子結合層によりカプセル化された保護素子基板により保護された、ホログラフィック素子およびホログラフィック素子基板を示す、1つのみのガラスまたは剛性層を有し、HOEフィルムを含有するガラス積層体の別の実施形態の断面図を表す。図8に示されるように、保護結合層5は、ホログラフィック素子6に隣接して位置し、保護基板4は結合層5に隣接する。第2の結合層3は、保護基板4に隣接する。結合層3および5、保護基板4およびHOEフィルムは、ガラスなどの剛性基板1に結合する多層構造体を形成する。図8の多層構造体は、次に、第2の剛性基板に結合されるか、または所望により別の器具に結合されて、別の用途に使用され得る。
【0106】
[00119]図8に示される実施形態では、保護結合層5は、片側がホログラフィック素子6に隣接しかつ直接接触し、保護基板4は、結合層5に隣接する。第2の結合層3は、保護基板4に隣接する。結合層5は、HOEフィルム(またはホログラフィック素子6)と、PVB、TPU、EVA、イオノマーまたは当技術分野で公知の他のポリマーなどの剛性基板1との間に必要な接着性をもたらす任意の材料であり得る。結合層5は、フッ化LRIC可塑剤などのLRICを含む。保護結合層3は、保護結合層5と同じであってもよく、または異なってもよい。加えて、保護結合層3は、保護基板4に隣接し、ホログラフィック素子6への望まれない可塑剤移動を防止するため、異なるかまたは付加的な可塑剤を含んでもよい。保護基板4は、PET、PEN、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、セルロースエステル、ポリエステルなどのこれまでに記載された任意の材料であり得る。保護基板は、ホログラフィック素子基板7と同じ材料であってもよく、または異なってもよい。接着促進剤はまた、所望ならば、層間の接着性を改善するために使用されてもよい。
【0107】
[00120]LRIC可塑剤を上述の結合層に組み込むことは、シグナル強度が維持され得るHOEフィルムを有する積層体を提供する。LRICと従来の可塑剤のブレンドを使用する場合、シグナル強度はわずかに低減されるが、結合層に3GEHなどの従来の可塑剤のみが使用された積層体より良好である。
【0108】
[00121]フッ化LRICを含有しない結合層で製造された構成体は、実際上、反射シグナル強度における著しい低減を通して観察される、著しく低いホログラフィック効率を示す。コーティングまたは結合層への(および任意選択でポリマー層への)、フッ化LRICなどのLRICの組込みは、概して、シグナル強度を維持することを可能にする。この効果は、十分なフッ化LRICを結合層に組み込み濃度勾配を防止することにより達成され、組み込まない場合には元のHOEフィルムから出て、結合層またはコーティングに入るフッ化LRICの移動をもたらす。この効果は、異なる化学組成のLRICにも起こり;結合層における濃度レベルが、HOEフィルムから結合層へのLRICの拡散を防止するような方法で設計される限り、HOEにおける屈折率勾配が維持されたLRICであり得る。
【0109】
[00122]配合の変更により、HOE積層後の結果の改善をもたらすこともできる。低レベルの3GEH可塑剤を有する構成体を製造することは、3GEHなどの従来の可塑剤を含有するのみの結合層またはコーティングを有する構成体より、HOE強度損失の減少をもたらし得る。PVBの化学的性質に対する変更もまた、同様の改善をもたらし得る。しかしながら、多くのポリマー層では、配合変更は、分配の改善の助けとなり得るが、HOEからLRICを含有しない結合層へのLRIC損失を完全に防止することは疑わしい。しかしながら、化学的中間層配合に対する改善は、LRICの添加と組み合わせた場合に特に効果的であることが発見された。
【0110】
[00123]結合層およびHOEフィルム中に存在するLRICが、化学的に同様であり、屈折率においてかなり適合する限り、HOE中に存在するLRICとは異なるLRICを用いて結合層を配合することにより、同様の改善を達成できることもまた期待される。異なる化学構造を有するLRICを使用して同じ効果を達成することができるが、HOEフィルム内の所望の格子間隔および屈折率を維持する分配比を達成するために、慎重に選択する必要がある。
【0111】
[00124]一部のHOEフィルムは、LRICを使用せずに作り出され、代わりにポリマー格子の屈折率に依存して、ホログラフィック効果に到達する。そのような場合、LRICを有する結合層を利用して、そのようなHOEフィルムに屈折率調節剤を供給して、格子位相間の屈折率差を増加させることが可能である。そのような手法は、ホログラム全般の有効性を増加させる。
【0112】
[00125]これらのLRICが、積層時に結合層に配合される(すなわち、LRICは、結合層からHOEフィルムへ移動する)ことを理解した上で、LRICを用いないホログラフィック感光性ポリマーフィルムを設計することにより、HOEフィルム製造プロセスを単純化することも可能である。これにより、結合層は、効果的にLRIC送達系となる。そのような場合、積層後のLRIC平衡化に続いて所望のレベルに変化するように設計された初期寸法を有する縞を作り出すために、HOEパターニングシステムが修正されなければならないであろうことが予期される。
定義
[00126]以下は、定義された用語の排他的リストであると意図していないことを理解されたい。例えば、文脈中で定義された用語の使用を伴う場合など、上記の記載において他の定義が与えられてもよい。
【0113】
[00127]本明細書で使用される場合、用語「a」、「an」、および「the」は、1つまたは複数を意味する。
[00128]本明細書で使用される場合、用語「および/または」は、2つ以上の項目の列挙に使用される場合、列挙された項目のいずれか1つを単独で利用し得るか、または列挙された項目の2つ以上の任意の組合せを利用し得ることを意味する。例えば、ある組成物が、成分A、B、および/またはCを含有すると記載された場合、該組成物は、Aのみ;Bのみ;Cのみ;AとBの組合せ;AとCの組合せ、BとCの組合せ;またはA、B、およびCの組合せを含有し得る。
【0114】
[00129]本明細書で使用される場合、用語「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」、および「含む(comprise)」は、該用語の前に記載された主語から、該用語の後に記載された1つまたは複数の要素に移行するために使用される非限定的な移行用語であり、移行用語の後に列挙された要素または複数の要素は、主語を構成する必ずしも単一の要素とは限らない。本明細書で使用される場合、用語「有している(having)」、「有する(has)」、および「有する(have)」は、上に挙げた「含んでいる」、「含む」、および「含む」と同じ非限定的な意味を有する。本明細書で使用される場合、用語「含んでいる(including)」、「含む(include)」、および「含んだ(included)」は、上に挙げた「含んでいる」、「含む」、および「含む」と同じ非限定的な意味を有する。
【0115】
[00130]本明細書で使用される場合、用語「約」は、記載された値の10パーセント内の値を指す。本記載は、数値範囲を使用して、本発明に関連する特定のパラメータを定量化する。数値範囲が提供された場合、そのような範囲は、範囲の下限値を記載するのみのクレーム限定と同様に、範囲の上限値を記載するのみのクレーム限定に対する文字通りの裏付けを提供すると解釈されるべきであることを理解されたい。例えば、開示された10~100という数値範囲は、「10より大きい」(上限を伴わない)と記載するクレーム、および「100未満」(下限を伴わない)と記載するクレームに対する文字通りの裏付けを提供する。
【0116】
[00131]特定の実施形態では、多重ポリマー層または基板層は、積層構造体を生成する製造方法で使用され得る。そのような場合、ポリマーまたは基板層は、第1または第2のポリマーまたは基板層と記載され得る。本明細書で使用される場合、用語「第1の」、「第2の」などは、様々な要素を記載するために使用されるが、そのような要素は、必ずしもこれらの用語により限定されるべきではない。これらの用語は、ある要素を別の要素から区別するために使用されるだけであり、必ずしも特定の順序または特定の要素さえも含意するわけではない。例えば、ある要素は本記載において「第1の」要素と考えられ、かつクレーム中で相反することなく「第2の」要素と考えられ得る。本記載内および各独立クレームに関して、一貫性は維持されるが、そのような用語体系が、必ずしもそれらの間で一貫していることを意図するものではない。
【0117】
[00132]ホログラフィック光学素子をカプセル化するために使用される様々な結合層および任意選択のポリマー中間層ならびにこれらの結合層を含む積層体の例は、以下を含むが、これらに限定されない。当業者は、様々な組合せおよび特性が所望により変更され得ることを理解するであろう。
【0118】
[00133]結合層は、ポリマー体積ホログラムをカプセル化するために使用され得るが、結合層は、元のポリマー体積ホログラム中の可塑剤の濃度の-25から25重量パーセントの範囲内の可塑剤の総量を含む。実施形態では、結合層は、元のポリマー体積ホログラム中の可塑剤の濃度の-15から15重量パーセント、または-10から10重量パーセント、-5から5重量パーセントの範囲内の可塑剤の総量を含む。
【0119】
[00134]実施形態では、結合層は、ポリウレタン、ポリ(ビニルブチラール)などのポリ(ビニルアセタール)、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、およびイオノマーから選択されるポリマーもしくはエラストマーまたはポリマーもしくはエラストマーのブレンドを含む。
【0120】
[00135]実施形態では、結合層は、ポリマー体積ホログラム中の可塑剤または可塑剤ブレンドと同じである可塑剤または可塑剤ブレンドを含む。他の実施形態では、結合層は、ポリマー体積ホログラム中の可塑剤または可塑剤ブレンドとは異なる少なくとも1つの可塑剤または可塑剤ブレンドを含む。
【0121】
[00136]実施形態では、結合層は、可塑剤または可塑剤ブレンドが、元のポリマー体積ホログラム中の可塑剤または可塑剤ブレンドの屈折率の-0.1から+0.1の範囲内の屈折率を有するように選択される可塑剤または可塑剤ブレンドを含む。実施形態では、可塑剤または可塑剤ブレンドは、元のポリマー体積ホログラム中の可塑剤または可塑剤ブレンドの屈折率の-0.05から+0.05の範囲内、または-0.02から+0.02の範囲内の屈折率を有するように選択される。
【0122】
[00137]実施形態では、多層構成体は、結合層、任意選択のポリマー中間層およびポリマー体積ホログラムを含み、結合層は、ポリマー体積ホログラムと直接接触する。他の実施形態では、多層構成体は第2の結合層を含む。結合層は、上述のポリマーのいずれかを含んでもよい。他の実施形態では、ポリマー中間層もまた含まれ、ポリマー中間層は、ポリマー中間層と結合層の間にある保護基板に隣接する。
【0123】
[00138]実施形態では、ポリマー中間層は、完全にカプセル化されたポリマー体積ホログラム中の可塑剤レベルが、開始レベルの可塑剤の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%となるように、可塑剤の取り込みを最小化するように選択される。
【0124】
[00139]実施形態では、ポリマーフィルムは、0.05mm~1.5mm、0.1mm~0.8mm、または0.2mm~0.4mmの範囲の厚さを有する。
[00140]実施形態では、コーティングまたは結合層は、少なくとも約5マイクロメートル(ミクロン)、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、または少なくとも50マイクロメートル(ミクロン)以上の厚さを有する。所望の特性および使用される材料に応じて、他の厚さが使用されてもよい。
【0125】
[00141]実施形態では、結合層は、接着促進剤をさらに含む。実施形態では、接着促進剤は、シラン接着促進剤を含む。実施形態では、接着促進剤は、結合層に組み込まれる。
[00142]実施形態では、ポリマー中間層もまた含まれ、ポリマー中間層は、音響調節遮音特徴、一定もしくは可変の角度のくさび形、染料、粒子、赤外線もしくは太陽光の吸収剤、または電磁スペクトルの一部を選択的に遮断する層などの付加的な機能性を有する。
【0126】
[00143]実施形態では、第1および第2のポリマー中間層が含まれ、一部の実施形態では、ポリマー中間層は同じである。他の実施形態では、第1および第2のポリマー中間層は異なる。実施形態では、少なくとも1つの第1および第2のポリマー中間層は、多重層中間層である。
【0127】
[00144]実施形態では、2つ以上の結合層が使用される。結合層は、同じでもまたは異なってもよい。
[00145]実施形態では、積層体は、第1のポリマー層とポリマー体積ホログラムの間に配置された結合層をさらに含む。実施形態では、積層体は、第2のポリマー層とポリマー体積ホログラムの間に配置された結合層をさらに含む。実施形態では、積層体は、第1のポリマー層とポリマー体積ホログラム、および第2のポリマー層とポリマー体積ホログラムの両方の間に配置された結合層をさらに含む。
【0128】
[00146]実施形態では、結合層は、ポリマー体積ホログラムをカプセル化するために使用され、ポリマー体積ホログラムの光調節特性が、積層およびポリマー中間層との低屈折率化合物平衡化の後に、少なくとも1つの波長域における元の光調節特性の大きさの70%超、好ましくは80%超、最も好ましくは90%超であるように、結合層は、ポリマー体積ホログラムフィルムとの積層における使用のための、ある濃度の低屈折率化合物を含む。
【0129】
[00147]実施形態では、構造体は、ポリマー体積ホログラムと、ポリマー体積ホログラムをカプセル化するために使用される結合層とを含み、結合層は、ある濃度の低屈折率化合物を含み、ポリマー体積ホログラムの光調節特性は、積層および結合層との低屈折率化合物平衡化の後に、少なくとも1つの波長域における元の光調節特性の大きさの70%超である。
【0130】
[00148]実施形態では、構造体は、低屈折率化合物を持たないポリマー体積ホログラムと、ポリマー体積ホログラムをカプセル化するために使用される結合層とを含み、結合層は、ある濃度の低屈折率可塑剤を含み、ポリマー体積ホログラムの光調節特性は、積層および結合層との低屈折率化合物平衡化の後に、少なくとも1つの波長域における元の光調節特性の大きさの70%超である。実施形態では、ポリマー体積ホログラムの光調節特性は、積層および結合層との低屈折率化合物平衡化の後に、少なくとも1つの波長域における元の光調節特性の大きさの80%超、90%超、100%超、200%超、300%超、400%超、500%超、600%超、700%超、800%超、900%超、または1000%超である。
【0131】
[00149]実施形態では、構造体は、ポリマー体積ホログラムと、ポリマー体積ホログラムに隣接する結合層とを含み、結合層は、ポリマー体積ホログラム中の低屈折率化合物の濃度の-25から+25重量パーセントの範囲内の濃度の低屈折率化合物を含む。
【0132】
[00150]実施形態では、結合層は、構造体の0から50重量パーセントの範囲内の可塑剤の総量を含む。実施形態では、結合層は、ポリウレタン、ポリ(ビニルブチラール)などのポリ(ビニルアセタール)、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、セルロースエステル、ポリオレフィンエラストマー、アクリル樹脂、ポリシロキサンおよびイオノマーから選択されるポリマーもしくはエラストマーまたはポリマーもしくはエラストマーのブレンドを含む。
【0133】
[00151]実施形態では、結合層は、ポリマー体積ホログラム中の低屈折率化合物の屈折率の-0.1から+0.1の範囲内の屈折率を有するように選択される少なくとも1つの低屈折率化合物を含む。
【0134】
[00152]実施形態では、結合層は、ポリマー体積ホログラムと直接接触する。実施形態では、多層中間層は、ポリマー中間層をさらに含み、ポリマー中間層は、ポリマー中間層と結合層の間にある保護基板に隣接する。実施形態では、ポリマー中間層は、低屈折率化合物を含み、結合層は、ポリマー中間層中の低屈折率化合物が、ポリマー中間層からポリマー体積ホログラムへ、ポリマー体積ホログラムからポリマー中間層へ、またはポリマー中間層からポリマー体積ホログラムへ、およびポリマー体積ホログラムからポリマー中間層への両方で移動することを可能にする。実施形態では、ポリマー中間層は、ポリマー体積ホログラム中の低屈折率化合物レベルが、ポリマー体積ホログラムフィルム内に元々含有された低屈折率化合物の開始レベルの少なくとも50%であるように選択される。
【0135】
[00153]実施形態では、多層中間層は第2の結合層を含む。実施形態では、多層中間層は第2のポリマー中間層を含み、第1および第2のポリマー中間層の少なくとも1つが多層ポリマー中間層である。
【0136】
[00154]実施形態では、結合層は、結合層およびポリマー体積ホログラムを含有する完全積層構造体の適切な機能化に、50%超の低屈折率化合物を組み込む。
[00155]実施形態では、ポリマー中間層およびポリマー体積ホログラムを含有する完全積層構造体の適切な機能化を達成するために、50%超、好ましくは75%超、好ましくは90%超のレベルで屈折率修正可塑剤を含有する中間層との積層における使用のための、ポリマー体積ホログラムフィルムの作製用に設計され、屈折率修正可塑剤または可塑剤ブレンドを用いずに作製された非パターン化感光性ポリマーフィルムが存在する。
【0137】
[00156]実施形態では、ポリマー中間層およびポリマー体積ホログラムを含有する完全積層構造体の適切な機能化を達成するために、50%超、好ましくは75%超、好ましくは90%超のレベルで屈折率修正可塑剤を含有する中間層との積層における使用のための、屈折率修正可塑剤または可塑剤ブレンドを用いないパターン化ポリマー体積ホログラムフィルムが存在する。
【0138】
[00157]実施形態では、ポリマー体積ホログラムは、パターン化または非パターン化感光性ポリマーフィルムを含み、ポリマー体積ホログラムは、製造時に可塑剤を含まない。
[00158]実施形態では、格子は、積層後の可塑剤の再平衡化に続き、所望の光学応答を達成するようにパターン化される。実施形態では、格子の光調節効率は、積層後の可塑剤の再平衡化に続き、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも500%、または少なくとも1000%増加する。
【0139】
[00159]実施形態では、製造方法は、ポリマー体積ホログラムフィルム内の1組の屈折率格子の作製を含み、格子のパターンは、積層および低屈折率化合物の平衡化後のみに所望のパターンを達成するように設計される。
【0140】
[00160]実施形態では、基板は、ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリル、ポリエステル、ポリアミドまたは三酢酸セルロースを含む。
[00161]実施形態では、積層体は、少なくとも1つの基板および本明細書に記載の多層中間層のいずれかを含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】