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特表2022-542649CCDC157遺伝子及びその変異遺伝子の分子マーカーとしての男性不妊症診断への使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-06
(54)【発明の名称】CCDC157遺伝子及びその変異遺伝子の分子マーカーとしての男性不妊症診断への使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20220929BHJP
   C12Q 1/6883 20180101ALI20220929BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12Q1/6883 Z
G01N33/50 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500775
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(85)【翻訳文提出日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 CN2021095087
(87)【国際公開番号】W WO2022007512
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】202010646475.3
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】席 咏▲梅▼
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ 慧▲梅▼
(72)【発明者】
【氏名】李 晨
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 小杭
(72)【発明者】
【氏名】李 景平
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 峰彬
(72)【発明者】
【氏名】梁 忠炎
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 敬根
(72)【発明者】
【氏名】苑 ▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】候 佳汝
(72)【発明者】
【氏名】朱 ▲シン▼▲海▼
(72)【発明者】
【氏名】▲デン▼ 寰
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045DA13
2G045DA14
2G045DA36
2G045FB02
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX01
(57)【要約】
【課題】
CCDC157遺伝子およびその変異遺伝子を分子マーカーとしての、男性不妊症疾患診断への使用を提供する。
【解決手段】
実験によれば、CCDC157-MIF515変異遺伝子/タンパク質は、男性不妊、精子発生障害、精子機能障害、精子数減少、精子運動能力低下、精子形態異常、精子頭部奇形などの原因となる。CCDC157-MIF515変異遺伝子/タンパク質は男性不妊症を診断する標的遺伝子とすることができる。同時に、NOA患者やSCOA患者は、CCDC157遺伝子/タンパク質のCCDC157発現レベルは著しく低下しており、CCDC157タンパク質の運動性および/または発現量を向上することによって、男性不妊症を予防および/または治療することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CCDC157-MIF515変異遺伝子であって、
前記CCDC157-MIF515変異遺伝子は、CCDC157遺伝子の第3エクソンでヘテロ接合性変異が発生してなるものであり、そのヌクレオチド配列がCCDC157遺伝子の配列の15488~15489位のGCが欠失し、且つ15507~15527位の塩基が欠失したものであるか、またはそのアミノ酸配列がCCDC157ポリペプチドの387位のアミノ酸RがQで置換され、且つ388~424位のアミノ酸が配列番号11に示すアミノ酸配列で置換され、最後に425位のアミノ酸Wがターミネータに変異したものである、ことを特徴とするCCDC157-MIF515変異遺伝子。
【請求項2】
請求項1に記載のCCDC157-MIF515変異遺伝子の分子マーカーとしての、男性不妊症診断用試薬キットの製造への使用。
【請求項3】
前記診断用試薬キットは、CCDC157タンパク質、またはCCDC157DNAやRNAの配列を検出するためのプライマーを含む、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
男性不妊症診断用試薬キットであって、
前記試薬キットは配列番号1に示すヌクレオチド配列、または配列番号2に示すアミノ酸配列を検出するための試薬と、判断基準が記載されたキャリアとを含み、
前記判断基準は、受検者の精子中にCCDC157-MIF515変異遺伝子/タンパク質が存在していれば、前記受験者が不妊症患者または疑似患者である、と判断され、
前記CCDC157-MIF515変異遺伝子は、CCDC157遺伝子の第3エクソンでヘテロ接合性変異が発生してなるものであり、そのヌクレオチド配列がCCDC157遺伝子の配列の15488~15489位のGCが欠失し、且つ15507~15527位の塩基が欠失したものであるか、またはそのアミノ酸配列がCCDC157ポリペプチドの387位のアミノ酸RがQで置換され、且つ388~424位のアミノ酸が配列番号11に示すアミノ酸配列で置換され、最後に425位のアミノ酸Wがターミネータに変異したものである、ことを特徴とする男性不妊症診断用試薬キット。
【請求項5】
前記試薬は3つのプライマー対を含み、前記プライマーのヌクレオチド配列は配列番号3~配列番号8に示すとおりである、請求項4に記載の試薬キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学分野に属し、さらに具体的には遺伝子変異の診断の分野に属し、具体的にはCCDC157の変異したヌクレオチド配列またはアミノ酸配列による男性不妊症診断用試薬キットに関する。
【背景技術】
【0002】
全世界のおよそ15%の夫婦は不妊症・不育症という問題があって、そのうち、男性の要素が50%を占め、しかも年ごとに増える傾向を見せており、男性不妊症は個人、家庭および社会に大きな負担をもたらしている。男性不妊症の病因は色々あって、生殖系解剖構造および機能の要素、感染要素、内分泌・免疫要素、遺伝要素、精神・心理要素などが含まれる。遺伝子異常による睾丸の造精機能障害は男性不妊症の約10%~15%を占めており、臨床上、主に乏精子症・精子無力症・奇形精子症(OAT症候群)または無精子症(azoospermia)で現れる。乏精子症・精子無力症および無精子症の患者は、一部が生殖補助医療(ART)を通じて自分の後世を得ることができるものの、遺伝子異常による男性不妊症または精子異常は、ARTが採用される場合、垂直伝播が発生する可能であるので、次世代の生殖健康に影響をもたらす。
【0003】
現在、男性生殖能力を判断するために良く使われる方法は依然として、精液のルーチン分析(精子の数、生存能力、活動率と形態などを含む)と血清ホルモンレベル分析を結合したものであるが、これによっての生殖状態を予測することは、効果が非常に限られている。臨床上、およそ30%の男性不妊症患者のルーチン精液分析結果は正常であるか、正常に近く、ルーチン精液分析は最も基本的な精子の質を反映するだけで、精子の他の特徴と精子の機能を反映することはできないので、男性不妊症の新しい生物分子マーカーを特定して、従来の精液ルーチン分析を補助することが必要である。
【0004】
CCDC157タンパク質は、コイルドコイルドメインを持つ(CCDC)タンパク質ファミリーに属し、複数の種中に保守され、哺乳動物の睾丸中において高発現している。CCDC157は、輸送キャリアとゴルジ体との融合における重要な因子として報道されているだけですが、その生物学的機能及び関連な分子メカニズムはまだ不明である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、CCDC157遺伝子の第3エクソンで新しい変異が発生してなるCCDC157-MIF515変異遺伝子/タンパク質であって、そのヌクレオチド配列がCCDC157遺伝子の配列の15488~15489位のGCが欠失し、且つ15507~15527位の塩基が欠失したものであるか、またはそのアミノ酸配列がCCDC157ポリペプチドの387位のアミノ酸RがQで置換され、且つ388~424位のアミノ酸が配列番号11に示すアミノ酸配列で置換され、最後に425位のアミノ酸Wがターミネータに変異したものであるCCDC157-MIF515変異遺伝子/タンパク質を提供することを目的とする。また、本発明はCCDC157-MIF515変異遺伝子/タンパク質のバイオマーカーとしての、男性不妊症診断用試薬キットの製造への使用を開示し、既存の男性不妊症診断用試薬キットに対する新しいバイオマーカーと男性不妊症治療用新しい標的を提供する。
【0006】
本発明は、配列番号1に示すヌクレオチド配列、または配列番号2に示すアミノ酸配列を検出するための試薬を含む、男性不妊症診断用試薬キットをさらに提供する。
【0007】
好ましくは、前記試薬は3つのプライマー対を含み、前記プライマーのヌクレオチド配列は配列番号3~配列番号8に示すとおりである。
【0008】
好ましくは、前記男性不妊症診断用試薬キットは判断基準が記載されたキャリアをさらに含み、前記判断基準は、受検者の精子中にCCDC157-MIF515変異遺伝子/タンパク質が存在していれば、前記受験者が不妊症患者または疑似患者である、と判断するもの、であってもよい。
【0009】
本発明はCCDC157遺伝子/タンパク質の検出試薬の男性不妊症診断用試薬キットの製造への使用をさらに提供する。
【0010】
さらに、前記検出試薬は、CCDC157タンパク質、またはCCDC157DNAや、mRNAや、RNAの配列を検出し、またはCCDC157を標的化するためのmiRNAを含む。
【0011】
本発明はCCDC157遺伝子/タンパク質の薬剤の標的としての製品製造中への使用をさらに提供し、前記製品の機能は、以下A1)~A9)の少なくとも一つを含む。
A1)男性不妊症の予防、A2)男性不妊症の治療、A3)精子機能障害の治療、A4)精子成熟の促進、A5)精子運動性の向上、A6)精子数の増加、A7)精子形態異常の復元、A8)精子頭部構造の復元、A9)男性生殖能力の向上。
【0012】
実験によれば、CCDC157-MIF515変異遺伝子/タンパク質を含有することは、精子数減少、精子運動性の低下、精子異常形態の原因となる。よって、CCDC157-MIF515変異遺伝子/タンパク質が生じるか否かをチェクすることによって、男性不妊症を診断することができる。本発明は重要な適用価値がある。同時に、NOA患者やSCOA患者は、CCDC157遺伝子/タンパク質のCCDC157発現レベルが著しく低下しており、CCDC157タンパク質の運動性および/または発現量を向上することによって、男性不妊症を予防および/または治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以下、図面と実施例に結合して、本発明をさらに説明する。
図1図1は選別されたCCDC157-MIF515変異を含有する患者の状況である。(A)当該患者のCCDC157配列解析であり、上の矢印はDNA配列に現れる異常部位を示し、下の矢印はCCDC157-MIF515変異によりアミノ酸配列に早めに現れる終止コドンの部位を示す。(B)当該患者の精子濃度分析及び正常であるコントロール群との比較(p=0.0009)ある。(C)当該患者の総活力活動と正常であるコントロールとの比較(p=0.047)である。(D)当該患者の精子のうちの前向きに運動精子と正常であるコントロールとの比較(p=0.043)である。(E)当該患者の正常精子の百分比と正常であるコントロールの正常精子の百分比(p=0.0002)である。(F)当該患者精子の精子写真である。
図2図2はCCDC157変異を持つマウスの作製図である。そのうち、(A)は遺伝子ノックアウト策略であり、野生型C57BL/6N系統のマウスは、4号エクソンと9号エクソンの付近に両方向gRNAがデザインされ、図の中に識別用プライマーの位置を表記している。(B)はPCRでF1世代マウスのCCDC157遺伝子を同定しており、野生型はP1をプライマーとする場合はバンドを増幅できず、CCDC157変異の対立遺伝子をもつ方がこのシステム中に444bp大きさのバンドを増幅できた。(C)は配列解析結果を分析したものであり、CCDC157遺伝子のノックアウトは、4985bpの欠失と11bpの挿入を引き起こす。(D)はCCDC157タンパク質のフレーム図であり、当該CCDC157変異対立遺伝子は84位のロイシンの後にて終止される。(E)はPCRでF2世代マウスのCCDC157遺伝子を同定しており、野生型はP1をプライマーとする場合はバンドを増幅できず、P2をプライマーとする場合は904dp大きさのバンドを増幅できた。(F)はF2世代マウスの外観である。(G)Western Blotでマウス睾丸組織タンパク質抽出液中のCCDC157タンパク質の発現状況を同定しており、-/-はCCDC157遺伝子のノックアウト・ホモ接合体マウスであり、+/+は野生型マウスである。
図3図3はCCDC157遺伝子のノックアウト・ホモ接合体マウスと野生型マウスとの雄の生殖系の比較図である。そのうち、(A)は解剖された成年雄マウスの生殖腺である。(B)はマウスの睾丸重量の分析結果(P=0.4804)である。(C)はマウスの副睾丸重量の分析結果(P=0.0019)である。(D)はマウスの精嚢重量の分析結果(P=0.0031)である。(E)はマウスの副睾丸尾部の精子数量分析結果(P=0.0006)である。(F)はマウスの運動精子が占める百分比分析結果(P<0.0001)である。(G)はマウスの光学顕微鏡写真である。(H)は奇形精子が占める百分比である(P=6.13784E-11)。-/-はCCDC157遺伝子のノックアウト・ホモ接合体マウスであり、+/+は野生型マウスである。
図4図4はCCDC157遺伝子のノックアウト・ホモ接合体マウスと野生型マウスの副睾丸尾部における精子の比較図である。そのうち、(A,B)はHE染色のマウス副睾丸尾部図であって、Aは野生型マウスであり、BはCCDC157ノックアウトマウスであり、A中の矢印は典型的な正常精子の頭部形態を指し、B中の矢印は異常精子の頭部構造を指す。(C)は低倍率顕微鏡下での副睾丸尾部における精子の電子顕微鏡図であり、CCDC157変異マウスの副睾丸中の精子数量は野生マウスに比べて著しく少ない。(D)はマウスの精子鞭毛中間部位の電子顕微鏡図である。(E)はマウスの精子鞭毛メイン部位の電子顕微鏡図である。(F)はマウス精子中間部位糸粒体の電子顕微鏡図である。(G)はマウスの精子頭部の電子顕微鏡図であり、CCDC157変異マウスの精子頭部には、細胞質残留、先体・核分離、不規則な細胞核などの異常が見られ。-/-はCCDC157遺伝子のノックアウト・ホモ接合体マウスであり、+/+は野生型マウスである。
図5図5はCCDC157遺伝子ノックアウト・ホモ接合体マウスと野生型マウスの精細管における精子発生段階の比較図である。(A)はTEM図であり、変異体の円形精子5-8の形態は野生型と明らかな差異がないものの、延長精子13は野生型と明らかに異なり、円形と異常形態の細胞核が現れていた。(B)はHE染色図であり、精細管VIII-XII期中、VIII期において、CCDC157変異体中の多くの延長形精子は精細管内腔中に放出できず(矢印)、且つ変異体XI-XII中には多くの異常形態の精子細胞核があった(短い矢印)。-/-はCCDC157遺伝子のノックアウト・ホモ接合体マウスであり、+/+は野生型マウスである。
図6図6はCCDC157が非閉塞性無精子症(NOA)患者における転写群分析結果である。そのうち、2例は閉塞性無精子症であって、その精子発生が正常(NS, normal spermatogenesis)であり、2例は精子発育障害患者(MA, mature arrest)であり、他の2例患者は睾丸生検組織にはsertoli細胞だけが発見された(SCOS, sertoli-cells only syndrome)。非閉塞性無精子症(NOA)患者はCCDC157発現が低下する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、CCDC157の新変異部位(MIF515変異)、即ち変異遺伝子/タンパク質の分子マーカーとしての、男性不妊症診断への使用を提供するが、当該MIF515変異は配列番号1に示すヌクレオチド配列中に発生し、または当該MIF515変異は配列番号2に示すポリペプチドのアミノ酸配列中に発生する。また、CCDC157-MIF515変異部位を分子マーカーとして男性不妊症診断用試薬キットの製造への使用を開示し、既存の男性不妊症診断用試薬キットに対する新しい分子マーカーと治療の標的を提供する。
【0015】
それと同時に、本発明はCCDC157遺伝子/タンパク質の用途も提供しており、CCDC157遺伝子/タンパク質は分子マーカーとして男性不妊症診断用試薬キットを製造すると同時に、薬剤の標的として、男性不妊症の予防、男性不妊症の治療、精子機能障害の治療、精子の成熟の促進、精子の運動性の向上、精子数の増加、精子頭部構造の復元、精子の形態異常の復元、男性生殖能力の向上の中、一種または複数種の機能を具備する製品を製造することができる。
【0016】
以下、具体的な実施形態を通じて、図面を結合して、本発明についてさらに詳しく説明することにするが、説明された実施例はただ本発明の一部の実施例に過ぎず、全部の実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をせずに、獲得したすべての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0017】
以下実施例中の実験方法は、特別の説明がない限り、いずれも通常の方法であり、以下実施例中に使用される実験材料は、特別の説明がない限り、いずれも通常の生化学試薬店から買えるものである。
【0018】
以下実施例中に使用される動物試験はいずれも浙江大学動物実験センターにより飼育・繁殖され、且つ実験中に水と食物は自由に獲得することができる。
【0019】
実施例1 精子無力症患者のうちにCCDC157-MIF515変異遺伝子を持つ患者のスクリーニングおよびそれらの精液に対する分析
【0020】
1)本研究は浙江大学医学院附属産婦人科医院論理委員会の許可を得ており、かつ患者のインフォームド・コンセントを得ている。浙江大学医学院附属産婦人科医院において、精子無力症患者の精液を50例収集し、且つ生殖系の器質性疾患患者、未治療の内分泌疾患患者、及び二年内の薬剤濫用またはアルコール濫用、染色体異常、AZF異常、潜在精巣、または耳下腺炎などの既知の病因による精液異常患者を排除する。
【0021】
精子無力症患者が手淫により精液を取り、TIANamp Micro DNA Kitを利用して患者精液のDNAを取出する(説明書の第6項、「微量組織中からゲノムDNAを抽出」に応じてする)。
【0022】
CCDC157の2つの保守機能構造域--SMC構造域(即ちMIF515部位)に対して3つのプライマー対をデザインするが、具体的には以下のとおりである。
h CCDC157-F-1 :5'-GAACCTGCCCTCGTCCTTAG-3' (配列番号3)
h CCDC157-R-1 :5'-ATCACAGTGTCACCACCGGA-3' (配列番号4)
h CCDC157-F-2 :5'-AGGTGTAGACACATGGCAGC-3' (配列番号5)
h CCDC157-R-2 :5'-AAAGGTGAGTCAACCCCCAC-3' (配列番号6)
h CCDC157-F-3: 5'-TACCCTTCCACGCATGTGAC-3' (配列番号7)
h CCDC157-R-3: 5'-GGCTTTAACACCCTTGCTGC-3' (配列番号8)
【0023】
患者のゲノムDNAをテンプレートとし、PCR反応を通じて、CCDC157遺伝子のSMC構造域(即ちMIF515部位)を増幅し、配列解析を行う。配列解析結果が生じた後、配列比較を行い、CCDC157-MIF515変異遺伝子を持つ患者をスクリーニングする。
【0024】
結果として、CCDC157-MIF515変異遺伝子を持つ患者(1-4 patient)を1例スクリーニングした。該患者は、CCDC157-MIF515変異は配列番号1に示す中部に塩基欠失が現れ、即ち、CCDC157遺伝子配列の15488~15489位のGCが欠失し、且つ15507~15527位のGCAGGTGCAGCAGCTGGAGGA(配列番号9)欠失し、またはそのアミノ酸配列がCCDC157ポリペプチドの387位のアミノ酸がRからQに変異され、且つ388~424位のアミノ酸RAAAERQVQQLEEQVQQLEAQVQLLVGRLEGAGQQVC(配列番号10)がGGSGEAGAAVGGAGAAVGGSAGGRWPAGLLGQHGAG(配列番号11)で置換され、最後に425位のアミノ酸Wがターミネータに変異し、当該遺伝子が早めに終止される(図1A)。
【0025】
2)当該患者の精子状況を分析する。3-5日間禁欲した後、精液を収集し、37℃にて30分間液化してから、CACSを利用して、精液の体積、濃度、精子形態、運動性および生存率を測定した。
【0026】
結果として、CCDC157-MIF515変異遺伝子を持つ患者は、精子濃度、運動精子の百分比、前向き運動精子の百分比および正常形態精子の比例はいずれも低下していた(患者の精子状況分析を2回施し、平均値を取っている)(図1B図1E)。
【0027】
実施例2、CCDC157遺伝子ノックアウトマウスの獲得
【0028】
1)CRISPR/Cas9技術を利用し、CRISPRオンラインウェブサイト(http://crispr.mit.edu)を通じて、CCDC157遺伝子(NCBIデータベースにおける番号は216516である)に対する2つのsgRNA配列をデザインするが、デザイン策略は図2Aのとおりであり、gRNA1(配列番号12):CTCTGAGAGCGGCCTATGGTGGG;gRNA2(配列番号13):GGGAGGATCCATCCAACCTAGGG(2つのgRNAはいずれもマッチング遺伝子のアンチセンス鎖である)である。合成、アニーリングの後、Cas9タンパク質を発現するpX458キャリアに連結される。
【0029】
2)pX458キャリアを胚性幹細胞に転入させ、フロースクリーニングを経て、培養皿に入れて24時間培養する。培養が終わるとモノクローンピッキングおよび遺伝子タイプ同定を行う。
【0030】
3)事前にホルモン処理を通じて過排卵したC57BL/6N雌マウスと野生型雄マウスを交尾させて、大量の胚盤葉細胞(同時に結紮した雄マウスとC57BL/6N雌マウスを交尾させて偽妊娠雌マウスを得る)を獲得し、得られた胞胚に、上のステップにて選ばれた遺伝子修飾付き胚性幹細胞を注入し、短い時間の体外培養を経て、胞胚を偽妊娠マウスの子宮中に移植して、F0世代遺伝子変異マウスを獲得する。
【0031】
4)PCR法でF0世代マウスの遺伝子タイプを同定するが、同定システムは25μlであり、具体的には以下のとおりである。
DEPC 水 14.5 μl
DNA 0.5 μl
10 ×Buffer 2.5 μl
2.5 mM dNTP Mix 4.0 μl
Primer-F/R 1.5 μl/1.5 μl
rTaq 0.5 μl
【0032】
反応条件:95℃下で3分間の前変性、サイクル数1;95℃にて30秒間の変性、30秒間のアニーリングし、72℃下で1min/1000dpでの伸長、サイクル数33;72℃下で10分間の伸長、サイクル数1;12℃。プライマーの配列は以下のとおりである。
CCDC157P-F1: 5'-GCTCTGCCTCCTTCTGAGTTAG-3' (配列番号14)
CCDC157 P-R1: 5'-GTTTGTCTTCTGACCACACTCC-3' (配列番号15)
CCDC157 P-F2: 5'-CTCGTCTCAATAAACATGTGGG-3' (配列番号16)
CCDC157 P-R2: 5'- CCACCTTTGTCTTTAGGTCACA-3' (配列番号17)
【0033】
野生型マウスは、CCDC157P-F1/R1 (P1)をプライマーとした場合が、バンドの増幅ができず、CCDC157P-F2/R2 (P2) をプライマーとした場合が、904bp大きさのバンドの増幅ができた。CCDC157ノックアウトマウスは、P1をプライマーとした場合が、444bpの大きさのバンドの増幅ができ、P2をプライマーとした場合が、バンドがなかった。これによって、CCDC157ノックアウト対立遺伝子付きF1マウスを特定することができる。P1をプライマーとして増幅した産物に対して配列解析を行った結果からわかるように、CCDC157遺伝子のノックアウトは4985bp欠失と11bp挿入(図2C)を引き起こした。CCDC157タンパク質のフレーム図は図2Dのとおりであるが、当該CCDC157変異対立遺伝子は84位のロイシンの後にて終止されていた。
【0034】
5)CCDC157ノックアウトのヘテロ接合体F1マウスを相互交尾させて、CCDC157ノックアウトのホモ接合体F2マウス(以下CCDC157-/-マウスと略称)と野生型マウス(以下CCDC157+/+マウスと略称)を獲得する。
6)Western blotで受検マウスのCCDC157タンパク質の発現を分析する。具体的には:受検マウスの睾丸組織を解剖・収集し、細胞分解液(50mM Tris.HCl pH8.0, 150mM NaCl, 1% IGEPAL CA-630, 0.5% Sodium Deoxycholate, 0.1% SDS,プロテアーゼ阻害剤)を利用して、氷上で研磨した後、氷上に30分間放置し、その後4℃、13000rpm下で、30分間遠心分離し、上清液を吸い取り、BCA法でタンパク質濃度を測定する。タンパク質40μgを取って2×Lading Bufferに入れ、95℃にて5分間変性させ、遠心分離の後10% SDS-PAGEゲール上にサンプルを乗せて、PVDFフィルム(ImmobilonP,Millipore,Billerica,MA)上に移す。5%の脱脂粉乳(TBST がTween20を0.01%含有)で1時間ブロッキングし、一次抗体[ウサギマルチクローン抗CCDC157抗体(希釈比例1:100、GeneTeX社、製品番号:GTX45090)またマウスモノクローン抗β-tubulin抗体(希釈比例1:2000)]を入れて、4℃下で一晩中培養し、TBSTでフイルムを3回洗い、1回10分間とする。二次抗体を入れて、室温にて1時間培養し、TBSTでフイルムを3回洗い、1回10分間とする。ECL試薬キット(37071,Pierce,Thermo Fisher Scientific)を使用して、現像、露出する。
【0035】
結果として、CCDC157+/+マウスにはCCDC157タンパク質大きさのバンドがあった;CCDC157-/-マウスにはCCDC157タンパク質大きさのバンドがない(図2G)ため、CCDC157遺伝子がノックアウトされていることが分かった。
【0036】
実施例3 CCDC157遺伝子ノックアウトによる雄マウスの不妊症
【0037】
1)CCDC157-/-マウスとCCDC157+/+マウスの成長発育状況を観察且つ統計する。その結果、CCDC157-/-マウスとCCDC157+/+マウスの生存率、外形(図2Fのとおり)および総体的な行為上、差異がなかった。雄CCDC157-/-マウスは全く不妊であったが、雌CCDC157-/-マウスの生殖能力は影響を受けなかった。上記結果は、CCDC157遺伝子ノックアウトマウスは雄性不妊の原因となることを表明する。
【0038】
2)3匹の雄CCDC157-/-マウスを取り、数匹の雌野生型マウスと3カ月間交尾させる。交尾期間雌野生型マウスの生殖道に精液栓が形成されていないかを観察する。その結果、雌野生型マウスの生殖道に精液栓が形成されるため、交尾が正常であることが分かった。しかしながら、次世代は生まれなかった。
上記結果は、CCDC157遺伝子ノックアウトは受精過程に影響があるということを表明する。
【0039】
3)CCDC157-/-マウスの生殖腺を観察する。具体的には、8-12週齢まで成長した野生型マウス、およびCCDC157遺伝子ノックアウトマウスを取り、首を切って殺す。アルコール綿ボールでマウスの腹部の毛を拭き、剥離ハサミで腹部から切開し、ピンセットでマウスの生殖腺を挟み取り、睾丸、副睾丸および精嚢を分離して、測量し、重量を量る。
【0040】
その結果、図3A~図3Dのとおり、雄CCDC157-/-マウスと雄CCDC157+/+マウスの生殖腺は構造上、著しい差異がなかった。CCDC157-/-マウスの睾丸の大きさおよび重量は野生型マウスと著しい差異がないが、CCDC157-/-マウスの副睾丸と精嚢の大きさは野生型マウスに比べて著しく低下されていた。
【0041】
4)CASA試験を通じて、精子の運動性と数量を測定する。具体的には、マウスの副睾丸をCASA緩衝液中に入れて、副睾丸を切り開き、37℃、5%のCO2培養器の中で培養し、それぞれ5分間、60分間、90分間、120分間培養してから精子を取って、精子の運動性状況を分析する。
【0042】
精子カウント:マウスの副睾丸をCASA緩衝液中に入れて、副睾丸を切り開き(切る回数をメモし、毎度の切る回数と大きさが均一であることを保証する)、37℃で、30分間にわたって精子が泳ぎ出ると、40μmのフィルターを通過させる。10倍に希釈して均一に混ぜる。10μLをBioradセルカウンティングスライド上に滴下する。顕微鏡写真を撮り、Image Jで個々の視界内の細胞数を分析する。計算板の厚み、撮影視界大きさの計算式および精子希釈倍数と総体積によって、対応する精子数を算出する。
【0043】
そのうち、CASA緩衝液の処方:120mM NaCl,4.8mM KCl ,1.2mM MgSO2, 1 mM CaCl2, 1.2mM KH2PO4, 21mM DL-乳酸ナトリウム(Na-dl-lactate), 5 mM ブドウ糖,25mM NaHCO3,0.25mMピルビン酸ナトリウム(Na-pyruvate),0.4ug/mLフェノールレッド(Phenol red),3mg/mLウシ血清アルブミン(BSA V)。
【0044】
結果として、CCDC157+/+マウスに比べて、CCDC157-/-マウスは、副睾丸尾部の精子数、及び運動性のある精子が占める百分比は著しく低下していた(図3E図3F)。
【0045】
5)光学顕微鏡の下で精子の形態を観察する。具体的には、副睾丸を引き裂き、ハサミで数回切ってから、軽く弾き、室温または37℃下で5分間放置して精子が泳ぎ出るのを待ってから、使い捨てピペットで上清液を吸い取り、100μm細胞スクリーンでろ過する。5μLの上記懸濁液を取って、D-ポリリジンでコーティングしたスライドの一端に滴下する。ジャックとスライドを30°角に成すようにし、精液の前方に置き、後ろに少し移動させて、精液の液滴と接触すると、液滴がジャック下縁に沿って散らばるが、散らばる精液線を動かして、等速でジャックを引き、ジャックがスライドに触れないようにして、精液の塗抹標本を形成し、光学顕微鏡で精液の形態と奇形の百分比を観察する。
【0046】
結果として、CCDC157-/-マウスの精子頭部は大部が奇形であって、円形のがあり、不規則形態のもあった(図3G)。しかし、精子の尾部は、外観に明らかな異常がないように見え、長さも正常であった(図3G)。CCDC157+/+マウスに比べて、CCDC157-/-マウスは、副睾丸尾部の精子奇形の百分比が著しく高くなった(図3H)。
【0047】
実施例4 CCDC157遺伝子ノックアウトは精子形態異常の原因となる
【0048】
1)成年受検マウスの副睾丸を解剖するが、受検マウスは8~12週齢の雄CCDC157+/+マウスと雄CCDC157-/-マウスである。パラフィン切片(固定-脱水-組織の透明化-パラフィン浸漬-包埋-スライシング-スプレッディング-パッチング)を作製し、HE染色(脱ろう-復水-ヘマトキシリン染料溶液で染色-水洗-塩酸アルコールで色分解-洗い流し-エオシン染料溶液で染色-脱水-透明化-シーリング)を通じて、受検マウスの副睾丸を分析する。
【0049】
その結果、野生型マウスに比べて、CCDC157ノックアウトマウスは、副睾丸尾部の精子量が著しく少なく、拡大して見ると多くの頭部奇形の精子が見られた。
【0050】
2)透過電子顕微鏡技術でマウス副睾丸尾部における精子の構造を分析する。
具体的には、サンプルを2.5%グルタルアルデヒド溶液(0.1M pH 7.2のPBSで希釈)中にて4℃下で一晩中固定する。固定液を吸い取り、0.1M でpH 7.2のPBSでサンプルを三回洗浄し、毎回15分間とする。1%のオスミウム酸溶液でサンプルを1~2時間固定し、固定液を除去し、0.1M,pH 7.2のPBSでサンプルを三回洗浄し、毎回15分間とする。勾配エタノールによって下記のとおり脱水を行う。勾配濃度(30%,50%,70%,80%,90%および95%を含む)のエタノール溶液でサンプルに対する脱水処理を行い、各濃度グレードで15分間処理し、さらに100%のエタノールで20分間処理し、最後に純アセトンで20分間処理する。勾配包埋剤による浸透を下記のとおり行う。(1)包埋剤とアセトンの混合液(V/V=1/1)でサンプルを1時間処理し、(2)包埋剤とアセトンの混合液(V/V=3/1)でサンプルを3時間処理し、(3)純包埋剤でサンプルを一晩中浸透:この段階ではサンプルを乾燥した新しい試験管に移し入れるが、この新しい試験管中には純包埋剤を入れる。浸透処理済みのサンプルを0.5mLのエッペンドルフ試験管中に分注して包埋し、70℃にて一晩中加熱する。サンプルの方向を定め、超薄切片機でサンプルを切断して、サンプルを銅ネット上に置く。酢酸ウラニル(VI)で染色し、電子顕微鏡で観察する。
【0051】
その結果、数量から見れば、CCDC157+/+マウスに比べて、CCDC157-/-マウスは、精子数が少ない(図4A、B)。CCDC157-/-マウスの精子尾部は、中間部位、メイン部位および糸粒体の構造は影響を受けない(図4D図4F)。但し、精子の頭部は明らかに奇形となっており、細胞核の不規則、先体の構造異常、先体・核分離、細胞質残留などの表現型が見られた(図4G)。
【0052】
実施例5 CCDC157遺伝子ノックアウトは精子分化に影響があるが、精子の早期発育には影響がない
【0053】
1)成年受検マウスの睾丸を解剖するが、受検マウスは8~12週齢の雄CCDC157+/+マウスと雄CCDC157-/-マウスである。電子顕微鏡でマウスの睾丸組織を分析する。具体的な操作は実施例2と同じである。
【0054】
2)成年受検マウスの睾丸を解剖するが、受検マウスは8~12週齢の雄CCDC157+/+マウスと雄CCDC157-/-マウスである。HE染色分析でマウスの睾丸組織を分析する。具体的な操作は実施例2と同じである。
【0055】
その結果、CCDC157-/-マウス精子の減数分裂後の円形精子は第1段階~第9段階では正常であったが(図5A)、精子細胞の第13段階はすでに異常であった。したがって、異常は精子細胞発育の第9段階~第12段階の間に発生した。睾丸精細管のHE染色分析から見れば、CCDC157変異体中の一部の伸長精子の放出も異常であり、精細管第8期には、多くの伸長形精子が精細管内腔中に放出できない(図5Bの矢印)。以上結果は、マウスのCCDC157欠失は精子の早期発育に影響がないが、精子の分化に影響があるということを表明する。上記結果からわかるように、CCDC157-MIF515変異部位は分子マーカーとして男性不妊症診断に使用できる。
【0056】
実施例6 非閉塞性無精子症(NOA)患者はCCDC157発現が低下する
【0057】
本研究は浙江大学医学院附属産婦人科医院論理委員会の許可を獲得しており、かつ患者のインフォームド・コンセントを得ている。浙江大学医学院附属産婦人科医院の睾丸穿刺生検術センターにおいて、ヒト睾丸組織を収集した。無精子症患者の睾丸組織を6例収集した。そのうち、2例は閉塞性無精子症(OA)であり、精子の発生が正常であった(NS, normal spermatogenesis)。また、2例は精子発育障害患者((MA, mature arrest)であり、他の2例は、患者の睾丸生検組織にはsertoli細胞だけが発見された(SCOS, sertoli-cells only syndrome)。睾丸組織のRNAを取出し、具体的には、睾丸組織をPBSで洗浄した後、RNase free EP管中に入れて、個々のサンプルに適量のTriozol(50-100mgサンプルに1ml Trizolを入れる)(Sigma)を入れて、室温にてサンプルを砕いて均一に混ぜる。4℃,12000 rpmで10分間遠心分離を行い、上清液を新しいRNase free EP管に移し、溶解されていない組織を捨てる。室温にて5分間保持して、核タンパク質複合物が十分解離されるようにする。最初に入れたTrizolの量に応じて、適量のクロロホルム(1ml Trizolあたりに0.2mlクロロホルムを入れる)を入れて、手で15秒間激しく揺れ振り、室温にて2-3分間静置する。4℃,12000 rpmで、15分間遠心分離をして、サンプルを分層した。注意しながら上層の水相を吸い取って新しいEP管中に入れ(上層水相を80%ぐらい吸い取れば良い)、中間相や下層の赤い有機層を吸い取らないようにする。初期Trizolの量に応じて適量の100%イソプロパノールを入れ(1mlTrizolあたりに0.5 mlイソプロパノールを入れ)て、室温にて10分間静置する。4℃,12000 rpmで10分間遠心分離をし、上清液を捨てて、管底部の白色のRNA沈殿物を残す。75%のエタノール(DEPC-H2Oで調製、1ml Trizolあたりに1ml 75%エタノールを入れる)を入れて、数回転倒振とうし、4℃,7500 rpmで5分間遠心分離をして、液体相を捨てる。この段階を1回繰り返すことができる。蓋を開き、室温にて静置して、RNAを沈殿して乾燥させる。適量のRNase-free水を入れて、吹き・吸い操作を数回行い、再びRNAを溶解させる。
RNAサンプルを華大に送ってトランスクリプトームの配列解析を行う。
【0058】
その結果、図6のとおり、CCDC157発現レベルはNOA患者とSCOS患者中において、著しく低下しており、OSBP2などの一部の脂質代謝関連因子の発現レベルも、NOA患者とSCOS患者中において著しく低下した。これからわかるように、CCDC157遺伝子/タンパク質の発現は男性不妊症に対して重要な影響があり、CCDC157遺伝子/タンパク質の運動性及び/又は発現量を向上することによって、男性不妊症を予防および/または治療できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2022542649000001.app
【国際調査報告】