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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-06
(54)【発明の名称】性機能不全を処置するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/44 20060101AFI20220929BHJP
   A61P 15/10 20060101ALI20220929BHJP
   A61P 15/12 20060101ALI20220929BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A61K31/44
A61P15/10
A61P15/12
A61P15/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022503790
(86)(22)【出願日】2020-08-03
(85)【翻訳文提出日】2022-02-08
(86)【国際出願番号】 US2020044745
(87)【国際公開番号】W WO2021026071
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】62/883,295
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522023613
【氏名又は名称】カタリスト ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】イヤドゥライ, スタンリー
(72)【発明者】
【氏名】ミラー, スティーブン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA27
4C086MA34
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA81
(57)【要約】
本開示は、女性または男性の性機能不全を処置する方法であって、ここで本方法は、女性または男性の被験体に、有効量の3,4-ジアミノピリジンまたはその薬学的に受容可能な塩を経口投与することを包含する方法に関する。例えば、性機能不全を処置する必要性のある被験体において性機能不全を処置する方法であって、前記方法は、前記被験体に、有効量の3,4-ジアミノピリジンリン酸塩を経口投与することを包含する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
性機能不全を処置する必要性のある被験体において性機能不全を処置する方法であって、前記方法は、前記被験体に、有効量の3,4-ジアミノピリジンリン酸塩を経口投与することを包含する方法。
【請求項2】
前記性機能不全は、女性の性的関心/興奮障害、女性オルガスム障害、他の女性性機能不全、男性の性欲低下障害、射精遅延、勃起障害、および他の男性性機能不全からなる群より選択される障害である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被験体は、女性である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記女性オルガスム障害は、無オルガスム症である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記無オルガスム症は、状況性無オルガスム症、原発性無オルガスム症、および続発性無オルガスム症からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記被験体は、男性である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記男性性機能不全は、原発性性機能不全である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記男性性機能不全は、続発性性機能不全である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記続発性性機能不全は、勃起障害である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記続発性性機能不全は、自律神経機能不全、心臓関連状態、または血流に影響を及ぼす医薬品によって引きおこされる、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記性機能不全は、自律神経機能不全によって引きおこされる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記自律神経機能不全は、糖尿病、多発性硬化症、パーキンソン病、脳または脊髄腫瘍、脳卒中、側頭葉てんかん、自己免疫疾患、またはアルコール依存症によって引きおこされる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記自律神経機能不全は、糖尿病性自律神経ニューロパチーである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
性欲を増大させる必要性のある被験体において性欲を増大させる方法であって、前記方法は、前記被験体に、有効量の3,4-ジアミノピリジンリン酸塩を経口投与することを包含する方法。
【請求項15】
オルガスムを得る能力を増大させる必要性のある被験体においてオルガスムを得る能力を増大させる方法であって、前記方法は、前記被験体に、有効量の3,4-ジアミノピリジンリン酸塩を経口投与することを包含する方法。
【請求項16】
性的満足度を増大させる必要性のある被験体において性的満足度を増大させる方法であって、前記方法は、前記被験体に、有効量の3,4-ジアミノピリジンリン酸塩を経口投与することを包含する方法。
【請求項17】
前記被験体は、女性被験体である、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記女性被験体は、閉経前、閉経周辺期、閉経期または閉経後の女性である、請求項3または17に記載の方法。
【請求項19】
前記被験体は、男性被験体である、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記有効量の3,4-ジアミノピリジンリン酸塩は、経口投与に適した薬学的製剤において投与される、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記薬学的製剤は、固体、半固体または液体の経口製剤である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記固体経口製剤は、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、およびカプセル剤からなる群より選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記有効量の3,4-ジアミノピリジンリン酸塩は、1日に少なくとも1回投与される、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
3,4-ジアミノピリジンリン酸塩の前記有効量は、単回用量として投与される約9.5mg~約56.9mgである、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記有効量は、1日あたり1回またはこれより多くの単回用量において投与される3,4-ジアミノピリジンリン酸塩の約28.5mg~約189.8mgの範囲に及ぶ合計1日用量において提供される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記合計1日用量は、1日あたり1回またはこれより多くの単回用量において約28.5mg~約151.8mgの3,4-ジアミノピリジンの範囲に及ぶ、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記合計1日用量は、1日あたり1回、2回、3回、4回、または5回の単回用量において投与される、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記合計1日用量は、1日あたり3回または4回の単回用量において投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記単回用量は、3,4-ジアミノピリジンリン酸塩を含む1錠もしくはこれより多くの割線入り錠剤またはその部分として提供される、請求項24~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記割線入り錠剤は、約18.98mgの3,4-ジアミノピリジンリン酸塩を含む、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
性機能不全は、通常の性行為の任意のステージの間に個人(男性または女性)またはカップルが経験する困難である。性機能不全は、例えば、欲求、肉体的快楽、興奮、および/またはオルガスムに達する能力に影響を及ぼし得る。Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,第5版(DSM-5)によれば、性機能不全は、個人が最低6ヶ月間にわたって極度の苦痛および対人場面の緊張感を感じることを必要とする。この機能不全の原因は、生物学的状態、器質的状態、心理的状態、および/または社会的状態のような種々の状態に由来し得る。
【0002】
女性性機能不全は、全世界で生殖可能年齢の女性のうちの41%に影響を及ぼしており、非常に蔓延した医学的問題になっている(McCool-Myers, M.,ら, BMC Women’s Health 18(108):1-15(2018))。多くの生物学的、心理的、および社会的要因が、女性性機能不全の蔓延に役割を果たしている。男性性機能不全は、一般的であることが長く公知であり、正常な男性性機能の知識および性機能不全の原因は、よりよく理解されるようになってきている。損なわれた性機能(例えば、性欲、興奮、オルガスムおよび性的疼痛に伴う問題)は、個人のまたは対人関係の高レベルの苦痛を引きおこす。
【0003】
3,4-ジアミノピリジン(アミファンプリジンまたは3,4-DAPとしても公知)は、多くの希少筋疾患(例えば、先天性筋無力症候群およびランバート-イートン筋無力症症候群(LEMS))の処置において薬物として使用されてきたカリウムチャネル遮断薬である。3,4-ジアミノピリジン遊離塩基形態は、商品名Ruzurgi(登録商標)の下で販売されており、これは小児患者におけるLEMSを処置するために承認されている。3,4-ジアミノピリジンのリン酸塩は、商品名Firdapse(登録商標)の下で販売されており、成人におけるLEMSを処置するために承認されている。
女性および男性両方の性機能不全のための処置であって、欲求および性的満足度を高め、このような処置の必要性のある女性または男性の被験体の性生活全般を改善する処置のニーズがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】McCool-Myers, M.,ら, BMC Women’s Health 18(108):1-15(2018)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
簡単な要旨
本開示は、性機能不全の処置における3,4-ジアミノピリジンおよびその薬学的に受容可能な塩の使用に関する。具体的には、本開示は、女性性機能不全または男性性機能不全を処置する方法であって、ここでこの方法は、女性性機能不全または男性性機能不全を処置する必要性のある女性または男性の被験体に、有効量の3,4-ジアミノピリジンまたはその薬学的に受容可能な塩を経口投与することを包含する方法に関する。
【0006】
1つの局面において、本開示は、性機能不全を処置する必要性のある被験体において性機能不全を処置する方法を提供する。上記方法は、上記処置の必要性のある被験体に、有効量の3,4-ジアミノピリジンまたはその薬学的に受容可能な塩を経口投与することを包含する。この局面のいくつかの実施形態において、上記方法は、上記処置の必要性のある被験体に、有効量の3,4-ジアミノピリジンリン酸塩を経口投与することを包含する。
【0007】
いくつかの実施形態において、上記性機能不全は、女性の性的関心/興奮障害、女性オルガスム障害、他の女性性機能不全、男性の性欲低下障害、射精遅延、勃起障害、および他の男性性機能不全からなる群より選択される障害である。
【0008】
別の局面において、本開示は、性欲を増大させる必要性のある被験体において性欲を増大させる方法であって、上記方法は、上記被験体に、有効量の3,4-ジアミノピリジンまたはその薬学的に受容可能な塩を経口投与することを包含する方法を提供する。この局面のいくつかの実施形態において、上記方法は、上記処置の必要性のある被験体に、有効量の3,4-ジアミノピリジンリン酸塩を経口投与することを包含する。
【0009】
別の局面において、本開示は、オルガスムを得る能力を増大させる必要性のある被験体においてオルガスムを得る能力を増大させる方法であって、上記方法は、上記被験体に、有効量の3,4-ジアミノピリジンまたはその薬学的に受容可能な塩を経口投与することを包含する方法を提供する。この局面のいくつかの実施形態において、3,4-ジアミノピリジンリン酸塩が投与される。
【0010】
別の局面において、本開示は、性的満足度を増大させる必要性のある被験体において性的満足度を増大させる方法であって、上記方法は、上記被験体に、有効量の3,4-ジアミノピリジンまたはその薬学的に受容可能な塩を経口投与することを包含する方法を提供する。いくつかの実施形態において、3,4-ジアミノピリジンリン酸塩が投与される。
【0011】
いくつかの実施形態において、上記被験体は、女性被験体である。いくつかの実施形態において、上記被験体は、男性被験体である。
【0012】
本開示のさらなる実施形態および利点は、部分的に、以下の説明の中で示され、その説明から生まれるか、または本開示の実施によって学習され得る。本開示の実施形態および利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘される要素および組み合わせによって、実現および獲得される。
【0013】
前述の要旨および以下の詳細な説明はともに、例示でありかつ説明であるに過ぎず、特許請求される発明を限定するものではないことが理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
本明細書で提供される見出しは、全体として本明細書への言及によって規定され得る本開示の種々の局面の限定ではない。本明細書で使用される用語法は、特定の局面を記載する目的に過ぎず、限定であることが意図されないことも理解されるべきである。なぜなら本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるからである。
【0015】
定義
便宜上、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲において使用されるいくつかの用語および語句の意味は、以下に提供される。別段述べられなければ、または文脈から示唆されなければ、以下の用語および語句は、以下で提供される意味を含む。定義は、特定の実施形態を記載するのを助けるために提供され、特許請求される技術を限定することは意図されない。なぜならその技術の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定されるからである。別段定義されなければ、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、この技術が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。当該分野での用語の使用法と、本明細書で提供されるその定義との間に明らかな矛盾があれば、本明細書内で提供される定義が優先するものとする。
【0016】
冠詞「a」、「an」および「the」は、その冠詞の文法上の対象の1または1より多く(すなわち、少なくとも1)を指すために本明細書で使用される。例示として、「要素(an element)」は、1つの要素または1より多くの要素を意味する。
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「約(about)」とは、別段示されなければ、特定される値の±10%を意味する。
【0018】
ある数字または一連の数字の前にある用語「少なくとも(at least)」は、文脈から明らかなように、その用語「少なくとも」に隣り合う数字、および論理的に含まれ得る全ての後ろに続く数字または整数を含むことが理解される。少なくともが一連の数字または範囲の前に存在する場合、「少なくとも」は、その一連のものまたは範囲の中の数字の各々を修飾し得ることが理解される。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「含む、包含する(comprises)」、「含む、包含する(comprising)」、「有する(having)、「含む、包含する(including)」、「含む、含有する(containing)」などは、「が挙げられるが、これらに限定されない(including, but not limited to)」を意味する、制限のない用語である。本明細書で開示される所定の実施形態がある特定の要素を「含む」範囲まで、本開示がまた、それら要素「から本質的になる(consisting essentially of)」実施形態およびそれら要素「からなる(consisting of)」実施形態を具体的に企図し、開示することは理解されるべきである。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「から本質的になる(consists essentially of)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」などは、半閉鎖系の用語として解釈されるべきであり、ある実施形態の基本的かつ新規な特性に実質的に影響をおよぼす他の成分を含まないことを意味する。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「からなる(consists of)」、「からなる(consisting of)」などは、閉鎖系の用語として解釈されるべきであり、その結果、要素の特定のセット「からなる」実施形態は、その実施形態の中で特定されないいかなる要素も、工程も、成分をも排除する。
【0022】
用語「処置する(treat)」、「処置する(treating)」および「処置(treatment)」とは、傷害、疾患、または状態の処置または改善における成功の任意の兆候(症状の減少;寛解;縮小、またはその傷害、疾患、もしくは状態を患者にとってより耐えられるものにすること;変性もしくは衰弱の速度を遅くすること;または患者の身体的もしくは精神的な健康を改善することのような任意の客観的または主観的パラメーターが挙げられる)を指す。症状の処置または改善は、客観的または主観パラメーター(身体検査、神経精神医学的検査、または精神医学的評価の結果を含む)に基づき得る。
【0023】
薬物または薬理学的に活性な薬剤の「有効(effective)」量または「治療上有効な量(therapeutically effective amount)」とは、非毒性であるが、所望の効果を提供するために十分なその薬物または薬剤の量を意味する。「有効」である量は、その個体の年齢および全身的な状態、単数または複数の特定の活性薬剤などに応じて、被験体間で変動する。従って、正確な「有効量」を特定することは、常に可能であるわけではない。しかし、任意の個々の症例において適切な「有効」量は、慣用的な実験を使用して当業者によって決定され得る。
【0024】
用語「薬学的に受容可能な塩(pharmaceutically acceptable salt)」とは、薬学的に受容可能な無機酸および有機酸から調製される塩をいう。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「性機能不全(sexual dysfunction)」とは、以下が挙げられるが、これらに限定されない任意の女性または男性の性機能不全をいう:性欲、興奮、オルガスム、もしくは満足度の障害、または早漏(これらのうちのいずれかまたは全ては、例えば、心因性の、生物学的な(血管原性、内分泌関連、閉経、および神経学的障害が挙げられる)、または医薬品誘発性の機構(疼痛または性的倒錯は除く)に起因し得る)。上記性機能不全は、例えば、女性の性的関心/興奮障害、女性オルガスム障害、他の女性性機能不全、男性の性欲低下障害、射精遅延、勃起障害、および他の男性性機能不全からなる群より選択される障害であり得る。
【0026】
用語「女性の性的関心/興奮障害(female sexual interest/arousal disorder)」または「FSIAD」とは、性的関心/興奮の欠如または著しい低減によって特徴付けられる障害をいう。女性は、その診断を受けるためには、以下の6つの症状のうちの3つを有しなければならない:性行為への関心の欠如もしくは低減;性的な思考もしくは想像の欠如もしくは低減;性行為を始めることの欠如もしくは低減、およびパートナーが始めようと試みることを代表的には受け入れないこと;ほとんど全てもしくは全ての性的経験における性的興奮または快楽の欠如もしくは低減;任意の内的もしくは外的な性的きっかけに応じた性的関心/興奮の欠如もしくは低減;ならびに全てのもしくはほとんど全ての性的経験における性行為中の性器へのもしくは非性器への感覚の欠如もしくは低減。これらの症状は、臨床上重大な苦痛を引きおこし、最低6ヶ月間持続していなければならない。上記障害は、重篤度レベルによって特定され、生涯の、対 後天性、全般性 対 状況性へとサブタイプに分けられる。FSIADは、DSM-IVからの女性の性欲低下障害と女性の興奮障害の組み合わせたものである。
【0027】
用語「女性オルガスム障害(female orgasmic disorder)」とは、オルガスムの重大な変化(例えば、オルガスムの強さの低減、遅れ、低頻度、または欠如)によって特徴付けられる障害をいう。その症状は、少なくとも6ヶ月間持続しなければならず、他の身体的、精神的または人間関係の問題に関連してはならない。原因は1つも特定されていないが、女性オルガスム障害は、人間関係の問題、ストレス、うつ病、不安、医薬品および慢性の医学的状態と関連付けられている。
【0028】
用語「オルガスム(orgasm)」(「性的絶頂(sexual climax)」としても公知)とは、性的快楽によって特徴づけられる骨盤領域における律動的筋収縮を生じる、性的反応周期の間に蓄積された性的興奮の突然の放出をいう。オルガスムは、男性および女性が経験し、それらは不随意神経系または自律神経系によって制御される。それらはしばしば、他の不随意行為(身体の多数の領域における筋痙攣、全般的多幸感および頻繁には、身体の動きおよび発声が挙げられる)と関連する。
【0029】
用語「オルガスムを得る能力(orgasmic ability)」とは、被験体がオルガスムを経験する傾向をいう。
【0030】
用語「オルガスムを得る能力を増大させる(increasing orgasmic ability)」とは、被験体がオルガスムを経験する傾向を増大させることをいう。
【0031】
用語「性的満足度(sexual satisfaction)」とは、性の健康の重要な指標であり、関係満足度と強く関連する。性的満足度は、関係の質(例えば、愛情、義務(commitment)、および安定性)の指標と明確に関連する。例えば、女性の性的満足度は、因子分析によって裏付けられる、5つの領域:満足、意思疎通、相性、関係の心配事、および個人的な心配事から構成される性的満足度および性的苦痛を測定するために設計された30項目の自己報告調査票である女性用性的満足度スケール(Sexual Satisfaction Scale for Women)(SSS-W)によって測定され得る。例えば、Meston,ら, J. Sex Med. 2(1):66-81(2005)を参照のこと。
【0032】
用語「他の女性性機能不全(other female sexual dysfunction)」とは、物質/医薬品誘発性性機能不全、または特定不能の性機能不全をいう。
【0033】
用語「物質/医薬品誘発性性機能不全(substance/medication-induced sexual dysfunction)」とは、アルコール誘発性または薬物誘発性の性的問題をいう。
【0034】
用語「特定不能の性機能不全(unspecified sexual dysfunction)」とは、被験体が同時にいくつかの性的障害に由来する症状を示す性機能不全をいう。症状は、他の性機能不全において見出されるもののうちのいくつかまたは全てを含む。
【0035】
用語「原発性性機能不全(primary sexual dysfunction)」とは、性的反応に影響を及ぼす神経学的変化の直接的結果である性機能不全をいう。
【0036】
用語「続発性性機能不全(secondary sexual dysfunction)」とは、生殖器系への神経経路に直接的に関わっていない症状(例えば、膀胱および腸の問題、疲労、痙縮、筋力低下、身体または手の振戦、注意および集中力の低下、ならびに非生殖器系の感覚の変化)に由来する性機能不全をいう。
【0037】
用語「男性の性欲低下障害(male hypoactive sexual desire disorder)」または「MHSDD」とは、性的なもしくは性欲を刺激する思考、想像、および性行為の欲求の不足が持続しているまたは繰り返していることによって特徴付けられる障害をいう。これらの症状は、最低6ヶ月間持続していなければならず、それらは、臨床上重大な苦痛を引きおこしていなければならない。
【0038】
用語「射精遅延(delayed ejaculation)」または「DE」とは、適切な欲求、興奮、および刺激があるにもかかわらず、オルガスムに達することが持続して困難であるかまたは達することができないことをいう。上記障害と診断されるためには、患者は、2つの症状のうちの1つを提示しなければならない:少なくとも6ヶ月間、機会のうちの75~100%で射精が遅れるまたはその頻度が少ないかのいずれか。上記障害は、生涯または後天性、および全般性または状況性として特定され得る。最も一般には、その用語は、男性が、勃起に達しかつ維持できるとはいえ、彼のパートナーとともにオルガスムに達することができない状態をいう。代表的には、DEを提示する男性は、自慰行為または睡眠の間に射精できる。
【0039】
用語「勃起障害(erectile disorder)」は、「勃起機能不全(erectile dysfunction)」、「インポテンス(impotence)」または「ED」としても公知であり、性交または他の満足できる性行為のために十分な硬さの勃起を得られないまたは維持できないことをいう。ときおり勃起が萎えることは通常のことであるが、EDを有する男性は、慢性的な問題を有する。男性の勃起障害の診断は、性行為中のそのときの75%~100%で3つの症状のうちの少なくとも1つを現す:1)男性は、性行為中に苦労して勃起に達する;または2)男性は、性行為を終えるまで苦労して勃起を維持する;または3)勃起の硬さが顕著に減少する。その診断は、約6ヶ月間にわたるこれらの症状の持続を必要とする。性行為中に勃起することができない。5部分からなる問診票(国際勃起機能指数(International Index of Erectile Function)(IIEF-5)としても公知)は、症状を評価し、機能不全の重篤度を決定するのを助ける。症状は、状況的であり得る。これは、症状が特定の状況においてまたは特定のパートナーとのみ起こることを意味する。症状はまた、全般性であり得る。これは、状況または関わっているパートナーにかかわらず、症状がいつも起こることを意味する。自尊心が低い、自信がない、および性的関係を恐れることは、しばしば、勃起機能不全の経験に付随している。EDは、原発性EDまたは続発性EDであり得る。
【0040】
用語「原発性ED(primary ED)」または「原発性勃起障害(primary erectile disorder)」とは、男性が一度も勃起に達することができていない場合に起こる障害をいう。
【0041】
用語「続発性ED(secondary ED)」または「続発性勃起障害(secondary erectile disorder)」とは、勃起を維持することができた長期間の後に、後年になって発生する障害をいう。続発性EDの最も一般的な原因のうちのいくつかとしては、以下が挙げられる:心理的苦痛(例えば、身体イメージの問題または性行為に関する不安;関係の問題;血管障害(心臓の健康問題に起因するものが挙げられる);神経学的損傷(これはしばしば、糖尿病に起因する);前立腺障害;および喫煙誘発性アテローム性硬化症(これは、動脈を詰まらせる)。勃起を得るまたは持続させることに伴う周期的な困難は、代表的であり、しばしばストレスに起因する。ときおりEDを経験するのみである男性は、EDまたは関連する医学的状態と診断される可能性は低い。多くの健康問題が、神経を損傷するかまたは血管を狭くすることによって勃起機能不全を引きおこし得る。血管が狭くなると、陰茎を血液で充満させることがより困難になる。いくつかの一般的原因としては、以下が挙げられる:心血管性疾患、アテローム性硬化症、高血圧、糖尿病、脊髄損傷、外科手術に起因する神経損傷、ならびに前立腺炎および他の前立腺障害。いくつかの精神衛生上の状態(不安障害およびうつ病が挙げられる)もまた、一定の役割を果たし得る。一部の男性では、ある特定の薬物(抗うつ剤および血圧の医薬品が挙げられる)が、勃起に達するかまたは持続させることをより困難にしていることが見出されている。
【0042】
用語「自律神経機能不全(autonomic dysfunction)」(「自律神経失調症(dysautonomia)」または「自律神経性ニューロパチー(autonomic neuropathy)」としても公知)とは、自律神経系(ANS)が適切に機能しない状態をいう。これは、心臓、膀胱、腸、汗腺、瞳孔、平滑筋、および血管の機能に影響を及ぼし得る。自律神経失調症には多くの原因があり、そのうちの全てが神経障害性として分類され得るわけではない。
【0043】
用語「他の男性性機能不全(other male sexual dysfunction)」とは、物質/医薬品誘発性性機能不全、または特定不能の性機能不全をいう。
【0044】
用語「無オルガスム症(anorgasmia)」とは、個人が、適切な刺激があるにもかかわらずオルガスムに達することができない性機能不全をいう。
【0045】
用語「原発性無オルガスム症(primary anorgasmia)」とは、個人がオルガスムを一度も経験したことがない状態をいう。
【0046】
用語「続発性無オルガスム症(secondary anorgasmia)」とは、オルガスムを得る能力の喪失または過去の強さのオルガスムに達する能力の喪失をいう。
【0047】
用語「状況性無オルガスム症(situational anorgasmia)」とは、個人が一部の状況によってはオルガスムを得るが、他の場合にはそうでないこともある状態をいう。例えば、上記個人は、あるタイプの刺激からオルガスムを得ることもあるが、別のタイプの刺激からはそうでないこともあり、あるパートナーではオルガスムに達することもあるが、別のパートナーではそうでないこともある。
【0048】
用語「閉経前の(pre-menopausal)」とは、閉経周辺期または閉経期にあるという症状がない女性をいう。閉経前の女性は、未だ月経があり得(それらが規則的であろうと、不規則であろうと)、彼女の生殖年齢にあると考えられる。いくらかのホルモン変化が起こっている可能性があるが、身体に、注目に値するほどの変化はない。
【0049】
用語「閉経周辺期(perimenopause)」とは、女性が、閉経の症状(例えば、月経周期の変化、ホットフラッシュ、睡眠障害、または気分変動)を経験し始める時期をいう。閉経周辺期は、閉経の8~10年前に始まり得、このとき、卵巣は徐々により少ないエストロゲンを生成するようになる。それは通常、女性が40歳代になると始まるが、30歳代でも始まり得る。閉経周辺期は、卵巣が卵子を放出するのを停止する時点である閉経に至るまで継続する。閉経周辺期の最後の1~2年間で、エストロゲンの低下が加速する。この段階では、多くの女性が更年期症状を経験し得る。閉経周辺期の女性は、この時期の間にも月経周期をなお有しているので、妊娠することが可能である。
【0050】
用語「閉経期の(menopausal)」とは、もはや月経周期を有しない時点にいる女性をいう。この段階では、卵巣は卵子の放出およびそれらのエストロゲンの大部分の生成を停止している。閉経は、女性が12ヶ月間連続して月経がない状態を経た場合に、診断される。
【0051】
用語「閉経後の(post-menopausal)」とは、閉経後の、すなわち、女性が12ヶ月間連続して月経がない期間を経験した後の女性をいう。閉経後には、更年期症状(例えば、ホットフラッシュ)が、多くの女性に関しては楽になり得る。
【0052】
用語「糖尿病性ニューロパチー(diabetic neuropathy)」とは、1型および2型糖尿病の重篤かつ共通の合併症をいう。それは、長期間の高血糖レベルによって引きおこされるあるタイプの神経損傷である。
【0053】
「女性性機能指数(Female Sexual Functioning Index)」または「FSFI」とは、女性性機能を評価するために設計された19項目の自己報告調査票である。それは6個の領域を含む:欲求(2項目)、興奮(4項目)、潤滑(4項目)、オルガスム、満足度、および疼痛(各3項目)。
【0054】
「簡易男性性機能調査票(Brief Male Sexual Function Inventory)」または「BSFI」とは、下部尿路の状態に関する症状に鑑みて男性性機能不全を評価するのを助けるために設計された自己報告調査票である。元々の研究は、患者に彼の過去1ヶ月間の経験を思い出すように勧め、その前にこの表示がある:「性衝動を、性的経験(自慰行為または性交)をしたい、性行為をすることについて思いを巡らせるまたは性行為がないことに起因して欲求不満を感じることを含めてもよい感覚と定義しましょう」。BSFIは、以下の表1に記載されるように、5つの機能領域に分けられる11項目からなる:
【表1】
【0055】
「国際勃起機能指数」または「IIEF」は、15の質問および5つの機能領域からなる自己報告調査票である。これは、対照のある臨床試験において処置の有効性を決定するにあたって使用するために開発された。IIEFは、広い範囲の病因のEDを有する患者において真の処置効果または処置効果の欠如を検出することに関して高い感度および特異度を有する。スコア0~5が、男性性機能の4つの主要な領域:勃起機能、オルガスムを得る機能、性欲、および性交の満足度を調べる15の質問の各々に与えられている。(Urology 49:822-830(1997)において)Rosen,R.らは、IIEFを、一連の、性機能を有する111名の男性および109名の年齢を合わせた正常ボランティアにおいて検査した研究を記載する。表2に示される以下の平均スコアが、記録された。
【表2】
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「微粒子化(micronization)」とは、固体物質の粒子の平均直径を低減するプロセスをいう。微粒子化の旧来技術は、機械的手段(例えば、ミリング(milling)およびグラインディング(grinding))に焦点を合わせている。最新の技術は、超臨界流体の特性を利用し、溶解の原理を巧みに扱う。微粒子化という用語は通常、マイクロメートル範囲への平均粒径の低減をいうが、ナノメートルスケールへのさらなる低減のことをいってもよい。
【0057】
本開示の方法
性機能の障害(例えば、性欲、興奮、オルガスムおよび性的疼痛に伴う問題)は、その状態に苦しめられている個人(男性または女性)またはカップルのクオリティー・オブ・ライフに重大な影響を有し得る。
【0058】
1つの局面において、本開示は、性機能不全を処置する必要性のある被験体において性機能不全を処置する方法であって、この方法は、上記被験体に、有効量の3,4-ジアミノピリジンまたはその薬学的に受容可能な塩を経口投与することを包含する方法を提供する。上記被験体が経験する性機能不全は、任意の女性または男性の性機能不全(性欲、興奮、オルガスム、もしくは満足度における障害、または早漏が挙げられるが、これらに限定されず、そのうちのいずれかまたは全ては、例えば、心因性の、生物学的な(血管原性、内分泌関連、閉経、および神経学的障害が挙げられる)、または医薬品誘発性の機構(疼痛または性的倒錯は除く)に起因し得る)であり得る。
【0059】
いくつかの局面において、上記性機能不全は、女性の性的関心/興奮障害、女性オルガスム障害、他の女性性機能不全、男性の性欲低下障害、射精遅延、勃起障害、および他の男性性機能不全からなる群より選択される障害である。
【0060】
いくつかの局面において、上記被験体は、女性被験体である。いくつかの実施形態において、上記被験体は、成人女性被験体である。
【0061】
いくつかの実施形態において、上記性機能不全は、女性の性的関心/興奮障害である。
【0062】
いくつかの実施形態において、上記性機能不全は、女性オルガスム障害である。いくつかの実施形態において、上記女性オルガスム障害は、無オルガスム症である。いくつかの実施形態において、上記無オルガスム症は、状況性無オルガスム症、原発性無オルガスム症、または続発性無オルガスム症である。
【0063】
いくつかの実施形態において、上記性機能不全は、他の女性性機能不全である。いくつかの実施形態において、上記他の女性性機能不全は、物質/医薬品誘発性性機能不全である。いくつかの実施形態において、上記他の女性性機能不全は、特定不能の性機能不全である。
【0064】
いくつかの局面において、上記被験体は、男性被験体である。ある実施形態において、上記被験体は、成人男性被験体である。
【0065】
いくつかの実施形態において、上記性機能不全は、男性の性欲低下障害である。
【0066】
いくつかの実施形態において、上記性機能不全は、射精遅延である。
【0067】
いくつかの実施形態において、上記性機能不全は、勃起障害(ED)である。
【0068】
上記男性性機能不全は、原発性性機能不全または続発性性機能不全であり得る。いくつかの実施形態において、上記男性性機能不全は、原発性性機能不全である。いくつかの実施形態において、上記男性性機能不全は、続発性性機能不全である。
【0069】
ある特定の実施形態において、上記続発性性機能不全は、続発性勃起障害である。いくつかの実施形態において、上記続発性性機能不全(例えば、ED)は、自律神経機能不全、心臓関連状態、または血流に影響を及ぼす医薬品によって引きおこされる。いくつかの実施形態において、上記性機能不全は、自律神経機能不全によって引きおこされる。自律神経機能不全は、例えば、糖尿病、多発性硬化症、パーキンソン病、脳および脊髄腫瘍、脳卒中、側頭葉てんかん、自己免疫疾患、またはアルコール依存症によって引きおこされ得る。いくつかの実施形態において、上記自律神経機能不全は、糖尿病性自律神経ニューロパチーである。
【0070】
いくつかの実施形態において、上記性機能不全は、他の男性性機能不全である。いくつかの実施形態において、上記他の男性性機能不全は、物質/医薬品誘発性性機能不全である。他の実施形態において、上記他の男性性機能不全は、特定不能の性機能不全である。
【0071】
性機能不全に苦しむ被験体が、3,4-ジアミノピリジンリン酸塩(3,4-DAPP)の毎日の経口投与後に、彼らの性機能における全体的な改善を経験していることが驚くべきことに見い出された。例えば、いくつかの実施形態において、3,4-DAPPの有効な1日用量の4週間クールの前および後に女性性機能指数(FSFI)を提供した被験体は、性欲の増大、オルガスムを得る能力の増大、および性的満足度の増大を報告する。有効な1日用量は、本明細書中の他の箇所で考察される。
【0072】
一つの局面において、本開示は、性欲を増大させる必要性のある被験体において性欲を増大させる方法であって、上記方法は、上記被験体に、有効量の3,4-ジアミノピリジンまたはその薬学的に受容可能な塩を経口投与することを包含する方法を提供する。この局面のある特定の実施形態において、3,4-ジアミノピリジン遊離塩基が投与される。他の実施形態において、3,4-ジアミノピリジンリン酸塩が投与される。さらに他の実施形態において、3,4-ジアミノピリジンの塩酸塩が使用され得る。
【0073】
別の局面において、本開示は、オルガスムを得る能力を増大させる必要性のある被験体においてオルガスムを得る能力を増大させる方法であって、上記方法は、上記被験体に、有効量の3,4-ジアミノピリジンまたはその薬学的に受容可能な塩を経口投与することを包含する方法を提供する。この局面のある特定の実施形態において、3,4-ジアミノピリジン遊離塩基が投与される。他の実施形態において、3,4-ジアミノピリジンリン酸塩が投与される。さらに他の実施形態において、3,4-ジアミノピリジンの塩酸塩が使用され得る。
【0074】
別の局面において、本開示は、性的満足度を増大させる必要性のある被験体において性的満足度を増大させる方法であって、上記方法は、上記被験体に、有効量の3,4-ジアミノピリジンまたはその薬学的に受容可能な塩を経口投与することを包含する方法を提供する。女性の性的満足度が、例えば、上記のSSS-WまたはFSFIによって測定され得る。この局面のある特定の実施形態において、3,4-ジアミノピリジン遊離塩基が投与される。他の実施形態において、3,4-ジアミノピリジンリン酸塩が投与される。さらに他の実施形態において、3,4-ジアミノピリジンの塩酸塩が使用され得る。
【0075】
本方法における3,4-ジアミノピリジンおよびその塩の治療有効性は、臨床医によって、例えば、適切な自己報告調査票または問診票を使用することによって決定され得る。いくつかの実施形態において、女性被験体において本方法における3,4-ジアミノピリジンまたはその薬学的に受容可能なものの治療有効性は、女性における性機能を測定するために設計された女性性機能指数(FSFI)によって評価され得る。例えば、Rosenら, Journal of Sex and Marital Therapy 26:191-208(2000)を参照のこと。
【0076】
いくつかの実施形態において、男性被験体において本方法における3,4-ジアミノピリジンまたはその薬学的に受容可能なものの治療有効性は、例えば、Mykletunら, BJU International 97:316-323(2005)によって記載される簡易男性性機能調査票(BSFI)によって評価され得る。いくつかの実施形態において、男性の性の健康問診票(Male Sexual Health Questionnaire)(MSHQ)は、下部尿路の泌尿生殖器症状および性機能不全を有する高齢の男性における性機能および満足度を評価するために使用され得る。例えば、Rosenら, Urology 64(4):777-782(2004)を参照のこと。いくつかの実施形態において、男性被験体において本方法における3,4-ジアミノピリジンまたはその薬学的に受容可能なものの治療有効性は、例えば、Rosenら, Urology 49:822-830(1997)によって記載される15問の国際勃起機能指数(IIEF)によって評価され得る。
【0077】
ある特定の局面において、上記被験体は、女性被験体である。いくつかの実施形態において、上記被験体は、成人女性被験体である。いくつかの実施形態において、上記女性被験体は、閉経前、閉経周辺期、閉経期、または閉経後の女性である。
【0078】
ある特定の実施形態において、上記女性被験体は、閉経前の女性である。
【0079】
ある特定の実施形態において、上記女性被験体は、閉経周辺期の女性である。
【0080】
ある特定の実施形態において、上記女性被験体は、閉経期の女性である。
【0081】
ある特定の実施形態において、上記女性被験体は、閉経後の女性である。
【0082】
ある特定の局面において、上記被験体は、男性被験体である。いくつかの実施形態において、上記被験体は、成人男性被験体である。
【0083】
いくつかの実施形態において、3,4-ジアミノピリジンは、リン酸塩として投与される。いくつかの実施形態において、3,4-ジアミノピリジンは、酒石酸塩として投与される。いくつかの実施形態において、3,4-ジアミノピリジンは、遊離塩基として投与される。
【0084】
薬学的製剤
いくつかの実施形態において、3,4-ジアミノピリジンまたはその薬学的に受容可能な塩の有効量は、経口投与に適した薬学的製剤において提供されるおよび/または投与される。
【0085】
いくつかの実施形態において、上記経口製剤は、固体、半固体および液体の経口製剤からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、上記経口製剤は、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤、またはカプセル剤である。適切な液体の製剤としては、例えば、水性懸濁物、液剤、エリキシル剤、およびシロップ剤が挙げられる。適切な半固体の製剤としては、例えば、経口ゲルが挙げられる。
【0086】
経口投与される薬学的製剤は、当該分野で公知の従来の賦形剤を含み得、従来の方法によって調製され得る。本開示の経口投与される薬学的製剤は、1またはこれより多くの薬学的に受容可能な賦形剤を含み得る。適切な賦形剤としては、以下が挙げられる:充填剤(例えば、サッカリド(例えば、ラクトースもしくはスクロース、マンニトール、サッカリンナトリウムもしくはソルビトール)、炭酸マグネシウム、セルロース調製物および/またはリン酸カルシウム(例えば、リン酸三カルシウムもしくはリン酸水素カルシウム))、ならびに結合剤(例えば、でんぷん糊(例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプンを使用する)、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン)。望ましい場合、崩壊剤が添加され得る(例えば、上述のデンプン、ならびにカルボキシメチル-デンプン、架橋ポリビニルピロリドン、アガー、またはアルギン酸もしくはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)およびデンプングリコール酸ナトリウムも同様)。適切な賦形剤としてはまた、薬学的に口に合う調製物を提供するために、流動調節剤および滑沢剤(例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸もしくはその塩(例えば、ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウム)、および/またはポリエチレングリコール);甘味剤(例えば、フルクトース、アスパルテームもしくはサッカリン);矯味矯臭剤(例えば、ペパーミント、冬緑油、またはサクランボ);着色剤;ならびに保存剤が挙げられる。さらに、染料または顔料が、錠剤または糖衣錠コーティングに、例えば、区別のために、または活性化合物用量の組み合わせを特徴づけるために、添加され得る。適切な薬学的賦形剤の他の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences pp. 1447-1676(Alfonso R. Gennaro編, 第19版. 1995)(本明細書に参考として援用される)に記載される。1つの実施形態において、上記賦形剤は、製薬グレードのものである。
【0087】
いくつかの実施形態において、3,4-ジアミノピリジンまたはその塩は、上記経口製剤を調製する前に微粒子化され得る。当該分野で公知の方法は、3,4-ジアミノピリジンまたはその塩の微粒子化のために使用され得る。例えば、粒度を低減するために摩擦に基づく旧来の微粒子化技術が使用され得る(例えば、ミリング、バッシング(bashing)およびグラインディング)。代表的な産業用ミルは、通常は鋼球を含む円筒状の金属ドラムから構成される。上記ドラムが回転するにつれて、内部にある上記球は、固体粒子と衝突し、従って、それらをより小さな直径になるように押しつぶす。グラインディングの場合、上記固体粒子は、上記デバイスのグラインディングユニットが、上記固体の粒子を間に捕捉しつつ互いに擦れ合うときに形成される。押しつぶしおよび切断のような方法もまた、粒径を小さくするために使用され得る。押しつぶしは、ハンマー様のツールを使用して、上記固体をより小さな粒子へと衝撃によって壊す。切断は、鋭い刃を使用して、粗い固体片をより小さな片へと切断する。さらに、微粒子化プロセスにおいて超臨界流体を使用する最新の微粒子化方法が使用され得る。これらの方法は、超臨界流体を使用して、過飽和の状態を誘導し、これは、個々の粒子の沈殿をもたらす。適切な技術としては、RESSプロセス(超臨界溶体急速膨張法(Rapid Expansion of Supercritical Solutions))、SAS法(超臨界逆溶媒(Supercritical Anti-Solvent))およびPGSS法(ガス飽和溶液からの粒子(Particles from Gas Saturated Solutions))が挙げられる。これらの最新技術は、上記プロセスのより大きな調整可能性(tuneability)を可能にする。相対的圧力および温度、溶質濃度、ならびに逆溶媒 対 溶媒比のようなパラメーターは、所望の粒度を得るように調節するために変動され得る。超臨界流体法は、粒径、粒度分布および形態の一貫性について、より精細な制御をもらたらす。
【0088】
いくつかの実施形態において、本開示の経口製剤における使用に適した微粒子化3,4-ジアミノピリジンまたはその塩は、上記粒子のうちの90%またはそれより多くが、20ミクロンまたはこれより小さい(すなわち、≦20μm)の粒度を有する組成物である。いくつかの実施形態において、本開示の薬学的経口製剤は、微粒子化3,4-ジアミノピリジンリン酸塩を含む。いくつかの実施形態において、上記微粒子化3,4-ジアミノピリジンリン酸塩の粒子のうちの90%またはこれより多くが、20ミクロンもしくはこれより小さい粒度を有する。
【0089】
3,4-ジアミノピリジンおよびその塩は、当該分野で公知の任意の適切な方法によって調製され得る。遊離塩基は、例えば、Millipore Sigma(前のSigma-Aldrich)から市販されている。3,4-ジアミノピリジン遊離塩基の錠剤製剤は、Jacobus Pharmaceutical Company, Inc.によって商標Ruzurgi(登録商標)の下で販売されている。そのリン酸塩の錠剤製剤は、Catalyst Pharmaceuticals, Inc.によって商標Firdapse(登録商標))の下で販売されている。
【0090】
投与量および投与
いくつかの局面において、3,4-ジアミノピリジンまたはその薬学的に受容可能な塩の有効量は、上記被験体に、1日に少なくとも1回投与される。
【0091】
いくつかの局面において、3,4-ジアミノピリジンは、遊離塩基として投与される。この局面のいくつかの実施形態において、3,4-ジアミノピリジン遊離塩基の有効量は、単回用量として投与される約5mg~約30mgである。いくつかの実施形態において、3,4-ジアミノピリジン遊離塩基の有効量は、1日あたり1回またはこれより多くの単回用量において投与される、約15mg~約100mgの範囲に及ぶ合計1日用量において提供される。いくつかの実施形態において、3,4-ジアミノピリジン遊離塩基の合計1日用量は、1日あたり1回またはこれより多くの単回用量において投与される約15mg~約80mgの範囲に及ぶ。いくつかの実施形態において、3,4-ジアミノピリジン遊離塩基の合計1日用量は、1日あたり1回、2回、3回、4回、または5回の単回用量で投与される。ある実施形態において、3,4-ジアミノピリジン遊離塩基の合計1日用量は、1日あたり3回または4回の単回用量において投与される。いくつかの実施形態において、3,4-ジアミノピリジン遊離塩基の単回用量は、1錠もしくはこれより多くの割線入り錠剤またはその部分として提供される。いくつかの実施形態において、上記割線入り錠剤は、約10mgの3,4-ジアミノピリジン遊離塩基を含む。
【0092】
いくつかの局面において、3,4-ジアミノピリジンは、薬学的に受容可能な塩として投与される。
【0093】
ある特定の局面において、3,4-ジアミノピリジンの有効量は、リン酸塩として、1日に少なくとも1回投与される。
【0094】
いくつかの実施形態において、3,4-ジアミノピリジンリン酸塩の有効量は、単回用量として投与される約9.5mg~約56.9mgである。いくつかの実施形態において、上記有効量は、1日あたり1回またはこれより多くの単回用量において投与される約28.5mg~約189.8mgの3,4-ジアミノピリジンリン酸塩の範囲に及ぶ合計1日用量において提供される。いくつかの実施形態において、3,4-ジアミノピリジンリン酸塩の合計1日用量は、1日あたり1回またはこれより多くの単回用量において投与される約28.5mg~約151.8mgの範囲に及ぶ。ある実施形態において,3,4-ジアミノピリジンリン酸塩の合計1日用量は、1日あたり1回、2回、3回、4回、または5回の単回用量で投与される。いくつかの実施形態において、3,4-ジアミノピリジンリン酸塩の合計1日用量は、1日あたり3回または4回の単回用量において投与される。
【0095】
ある特定の実施形態において、上記単回用量は、3,4-ジアミノピリジンリン酸塩を含む1錠もしくはこれより多くの割線入り錠剤またはその部分として提供される。いくつかの実施形態において、上記割線入り錠剤は、約18.98mgの3,4-ジアミノピリジンリン酸塩を含む。
【実施例
【0096】
実施例
本明細書で記載される処置方法はここで、以下の実施例を参照してさらに詳細に記載される。これら実施例は、例証目的で提供されるに過ぎず、本明細書で記載される実施形態は、これらの実施例に限定されると決して解釈されるべきではない。むしろ、その実施形態は、本明細書で提供される教示の結果として明らかになる任意のおよび全てのバリエーションを包含すると解釈されるべきである。
【0097】
実施例1
女性被験体は、FSFI問診票を使用して過去4週間の彼女の性機能を自己報告した(「処置前FSFI」)。処置前FSFIによれば、1)上記被験体は、ときおり(そのときの約半分)性欲または関心を感じ、彼女の性欲または関心のレベルを低いと評価した、2)上記被験体は、数回(そのときの半数未満)性的興奮を感じ、性的興奮のレベルを低いと評価した、3)上記被験体は、性行為または性交中に性的に興奮した状態になることについて自信が非常に低かったまたは自信がなかった;4)上記被験体は、性行為または性交中に彼女の興奮状態に満足したことが一度もまたはほとんどなかった、5)上記被験体は、性行為または性交中に濡れたことがほとんどなく、性行為または性交を終えるまで彼女の濡れた状態をほとんどまたは一度も維持したことがなかった、6)上記被験体が、濡れた状態になり、性行為または性交を終えるまで彼女の濡れた状態を維持することは非常に困難であった、7)上記被験体は、性的刺激または性交があった際に、オルガスムに達したことがほとんどないまたは一度もなかった、8)性行為または性交を行った際に上記被験体がオルガスムに達することは、極めて困難または不可能であった、9)上記被験体は、性行為または性交中の彼女のオルガスムに達する能力、性行為中の彼女と彼女のパートナーとの間の感情的親密さの量、彼女と彼女のパートナーとの性的関係性、および彼女の性生活全般に非常に不満であった。
【0098】
次いで、上記被験体は、80mgの3,4-ジアミノピリジンリン酸塩の合計1日用量を4週間、経口で自己投与した。各日の最後の用量を、およそ午後5:30に自己投与した。彼女の性行為のタイミングは、あるとすれば、晩であった。
【0099】
その4週間の処置期間の後、上記被験体は、FSFI問診票を使用して過去4週間の彼女の性機能を自己報告した(「処置後FSFI」)。処置後FSFIによれば、1)上記被験体は、性欲または関心をほぼ常にまたは常に感じ、彼女の性欲または関心のレベルを中程度と評価した、2)上記被験体は、性的興奮をほぼ常にまたは常に感じ、性的興奮のレベルを高いと評価した、3)上記被験体は、性行為または性交中に性的に興奮した状態になることについて非常に大きな自信があった;4)上記被験体は、たいていの場合(そのときの半数を超える)性行為または性交中に彼女の興奮状態に満足であった、5)上記被験体は、性行為または性交中にたいていの場合(そのときの半数を超える)濡れた状態になり、性行為または性交を終えるまで彼女の濡れた状態もたいていの場合に維持した、6)上記被験体が濡れた状態になり、性行為または性交を終えるまで彼女の濡れた状態を維持することは、わずかに困難であった、7)上記被験体はたいていの場合、性的刺激または性交があった際に、オルガスムに達した、8)上記被験体が性行為または性交を行った際にオルガスムに達することは、困難ではなかった、9)上記被験体は、性行為または性交中に彼女のオルガスムに達する能力、性行為中の彼女と彼女のパートナーとの間の感情的親密さの量、彼女と彼女のパートナーとの性的関係性、および彼女の性生活全般に非常に満足であった。
【0100】
上記被験体は、彼女のパートナーとより良好な感情的経験を感じ、彼女は、上記で記載されるように処置されている間により自信がついた。上記被験体はまた、オルガスムに達するまでの時間が、3,4-ジアミノピリジンリン酸塩を摂取した後により短くなることを報告した。
【0101】
実施例2
女性被験体は、FSFI問診票を使用して過去4週間の彼女の性機能を自己報告した(「処置前FSFI」)。処置前FSFIによれば、1)上記被験体は、ときおり(そのときの約半分)性欲または関心を感じ、彼女の性欲または関心のレベルを中程度と評価した、2)上記被験体は、ときおり(そのときの約半分)性的興奮を感じ、性的興奮のレベルを中程度と評価した、3)上記被験体は、性行為または性交中に性的に興奮した状態になることについて中程度に自信があった;4)上記被験体は、たいていの場合(そのときの半数よりも多い)性行為または性交中に彼女の興奮状態に満足した、5)上記被験体は、性行為または性交中にときおり濡れた状態になり、ときおり、性行為または性交を終えるまで彼女の濡れた状態を維持した、6)上記被験体が濡れた状態になることはわずかに困難であり、性行為または性交を終えるまで彼女の濡れた状態を維持することは困難ではなかった、7)上記被験体は、性的刺激または性交があった際に、ほぼ常にまたは常にオルガスムに達した、8)上記被験体が性行為または性交を行った際にオルガスムに達することは、困難ではなかったまたは不可能ではなかった、9)上記被験体は、性行為または性交中の彼女のオルガスムに達する能力、および性行為中の彼女と彼女のパートナーとの間の感情的親密さの量に中程度に満足であった、ならびに10)上記被験体は、彼女と彼女のパートナーとの性的関係性、および彼女の性生活全般に、ほぼ等しく満足でも不満足でもあった。
【0102】
次いで、上記被験体は、60mgの3,4-ジアミノピリジンリン酸塩の合計1日用量を4週間、経口で自己投与した。各日の最後の用量を、およそ午後6時に自己投与した。彼女の性行為のタイミングは、あるとすれば、晩の8~9時であった。
【0103】
その4週間の処置期間の後、上記被験体は、FSFI問診票を使用して過去4週間の彼女の性機能を自己報告した(「処置後FSFI」)。処置後FSFIによれば、1)上記被験体は、性欲または関心をほぼ常にまたは常に感じ、彼女の性欲または関心のレベルを非常に高いと評価した、2)上記被験体は、たいていの場合(そのときの半数よりも多い)性的興奮を感じ、性的興奮のレベルを非常に高いと評価した、3)上記被験体は、性行為または性交中に性的に興奮した状態になることについて非常に大きな自信があった;4)上記被験体は、性行為または性交中に彼女の興奮状態にほぼ常にまたは常に満足した、5)上記被験体は、性行為または性交中にほぼ常にまたは常に濡れた状態になり、性行為または性交を終えるまで彼女の濡れた状態をほとんどまたは一度も維持しなかった、6)上記被験体が濡れた状態になり、性行為または性交を終えるまで彼女の濡れた状態を維持することは、困難ではなかった、7)上記被験体は、性的刺激または性交があった際に、ほぼ常にまたは常にオルガスムに達した、8)上記被験体が性行為または性交を行った際にオルガスムに達することは、困難ではなかった、9)上記被験体は、性行為または性交中に彼女のオルガスムに達する能力に非常に満足した、ならびに10)上記被験体は、性行為中の彼女と彼女のパートナーとの間の感情的親密さの量、彼女と彼女のパートナーとの性的関係性、および彼女の性生活全般に非常に満足であった。
【0104】
上記被験体は、彼女のパートナーとより良好な感情的経験を彼女が感じ、彼女は、上記で記載されるように処置されている間により自信がついたことを報告した。上記被験体はまた、オルガスムに達するまでの時間が、3,4-ジアミノピリジンリン酸塩を摂取した後により短くなることを報告した。
【0105】
実施例3
女性被験体は、FSFI問診票を使用して過去4週間の彼女の性機能を自己報告した(「処置前FSFI」)。処置前FSFIによれば、1)上記被験体は、ときおり(そのときの約半分)性欲または関心を感じ、彼女の性欲または関心のレベルを中程度と評価した、2)上記被験体は、たいていの場合(そのときの半数よりも多く)性的興奮を感じ、性的興奮のレベルを中程度と評価した、3)上記被験体は、性行為または性交中に性的に興奮した状態になることについて大きな自信があった;4)上記被験体は、ときおり(そのときの約半分)性行為または性交中に彼女の興奮状態に満足した、5)上記被験体は、性行為または性交中にときおり濡れた状態になり、ときおり、性行為または性交を終えるまで彼女の濡れた状態を維持した、6)上記被験体が濡れた状態になることはわずかに困難であり、性行為または性交を終えるまで彼女の濡れた状態を維持することはわずかに困難であった、7)上記被験体は、性的刺激または性交があった際に、ほぼ常にまたは常にオルガスムに達した、8)上記被験体が性行為または性交を行った際にオルガスムに達することは、わずかに困難であった、9)上記被験体は、性行為または性交中の彼女のオルガスムに達する能力に中程度に不満足であり、性行為中の彼女と彼女のパートナーとの間の感情的親密さの量には非常に満足であった、ならびに10)上記被験体は、彼女と彼女のパートナーとの性的関係性、および彼女の性生活全般には中程度に満足であった。
【0106】
次いで、上記被験体は、40mgの3,4-ジアミノピリジンリン酸塩の合計1日用量を4週間、経口で自己投与した。各日の最後の用量を、およそ午後11時に自己投与した(5mg)。彼女の性行為のタイミングは、あるとすれば、午前、午後、および夜であった。
【0107】
その4週間の処置期間の後、上記被験体は、FSFI問診票を使用して過去4週間の彼女の性機能を自己報告した(「処置後FSFI」)。処置後FSFIによれば、1)上記被験体は、性欲または関心をほぼ常にまたは常に感じ、彼女の性欲または関心のレベルを非常に高いと評価した、2)上記被験体は、性的興奮をほぼ常にまたは常に感じ、性的興奮のレベルを非常に高いと評価した、3)上記被験体は、性行為または性交中に性的に興奮した状態になることについて非常に大きな自信があった;4)上記被験体は、性行為または性交中に彼女の興奮状態にほぼ常にまたは常に満足した、5)上記被験体は、性行為または性交中にほぼ常にまたは常に濡れた状態になり、性行為または性交を終えるまで彼女の濡れた状態をほぼ常にまたは常に維持した、6)上記被験体が濡れた状態になり、性行為または性交を終えるまで彼女の濡れた状態を維持することは、困難ではなかった、7)上記被験体は、性的刺激または性交があった際に、ほぼ常にまたは常にオルガスムに達した、8)上記被験体が性行為または性交を行った際にオルガスムに達することは、困難ではなかった、9)上記被験体は、性行為または性交中に彼女のオルガスムに達する能力に非常に満足した、ならびに10)上記被験体は、性行為中の彼女と彼女のパートナーとの間の感情的親密さの量、彼女と彼女のパートナーとの性的関係性、および彼女の性生活全般に非常に満足であった。
【0108】
上記被験体は、3,4-ジアミノピリジンリン酸塩を摂取した後に彼女が何度もオルガスムを経験したこと、そのようなことは3,4-ジアミノピリジンリン酸塩を摂取する前に彼女が経験したことがなかったことを報告した。
【0109】
実施例4
70歳齢の男性被験体は、IIEF問診票を使用して過去4週間の彼の性機能を自己報告した(「処置前IIEF」)。上記被験体の処置前IIEFから、以下が明らかになった:1)上記被験体は、性行為中に数回(そのときの半数未満)勃起を得ることができた(スコア2)、2)上記被験体が性的刺激によって勃起した際に、その勃起は、挿入するために十分硬かったことはほとんどまたは一度もなかった(スコア1)、3)上記被験体は、性交しようと試みた際に、彼のパートナーに数回(そのときの半数未満)挿入する(入れる)ことができた(スコア2);4)性交中に、上記被験体は、彼が彼のパートナーに挿入した後、勃起を維持することがほとんどまたは一度もできなかった(スコア1)、5)性交中に、上記被験体が性交を終えるまで彼の勃起を維持することは極めて困難であった(スコア1)、6)上記被験体は、性交を3~4回試みた(スコア2)、7)上記被験体が性交を試みた際に、彼が満足することはほとんどまたは一度もなかった(スコア1)、8)性交は、上記被験体にとってあまり悦びがあるものではなかった(スコア2)、9)上記被験体に性的刺激または性交があった際に、彼は数回(そのときの半数未満)射精した(スコア2)、10)上記被験体に性的刺激または性交があった際に、彼は、オルガスムまたは絶頂の感覚が数回(そのときの半数未満)あった(スコア2);11)上記被験体は、性欲をときおり(そのときの約半分)感じた(スコア3);12)彼の性欲のレベルは、低かった(スコア2);13)上記被験体は、彼の性生活全般に中程度に不満足であった(スコア2);14)上記被験体は、彼と彼のパートナーとの性的関係性に中程度に不満足であった(スコア2);および15)上記被験体が勃起を得て維持することができるという自信は、非常に低かった(スコア1)。
【0110】
次いで、上記被験体は、60mg(15mgを4回)の3,4-ジアミノピリジンリン酸塩の合計1日用量を4週間、経口で自己投与した。各日の最後の用量を、およそ午後8:30に自己投与した。彼の性行為のタイミングは、あるとすれば、およそ午前11:30(午前11時の投与後)またはおよそ午後4時であった。
【0111】
その4週間の処置期間の後、上記被験体は、IIEF問診票を使用して過去4週間の彼の性機能を自己報告した(「処置後IIEF」)。処置後IIEFによれば、1)上記被験体は、性行為中にたいてい(そのときの半数より多い)、勃起を得ることができた(スコア4)、2)上記被験体が性的刺激により勃起した際には、その勃起は、たいていの場合(そのときの半数より多い)、挿入するために十分硬かった(スコア4)、3)上記被験体は、性交しようと試みた際に、彼のパートナーにたいていの場合(そのときの半数より多い)、挿入する(入れる)ことができた(スコア4);4)性交中に、上記被験体は、彼が彼のパートナーに挿入した後、勃起を維持することがときおり(そのときの約半分)できた(スコア3)、5)性交中に、上記被験体が性交を終えるまで彼の勃起を維持することはわずかに困難であった(スコア4)、6)上記被験体は、性交を5~6回試みた(スコア3)、7)上記被験体が性交を試みた際に、それはたいていの場合(そのときの半数より多い)、彼にとって満足のいくものであった(スコア4)、8)性交は、上記被験体にとって非常に悦びがあった(スコア4)、9)上記被験体に性的刺激または性交があった際に、彼は、たいていの場合(そのときの半数より多い)、射精した(スコア4)、10)上記被験体に性的刺激または性交があった際に、彼は、オルガスムまたは絶頂の感覚がたいていの場合(そのときの半数より多い)あった(スコア4);11)上記被験体は、性欲をほぼ常にまたは常に感じた(スコア5);12)彼の性欲のレベルは高かった(スコア4);13)上記被験体は、彼の性生活全般に中程度に満足であった(スコア4);14)上記被験体は、彼と彼のパートナーとの性的関係性に中程度に満足であった(スコア4);および15)上記被験体が勃起を得て維持することができるという自信は、高かった(スコア4)。
【0112】
上記被験体はまた、3,4-ジアミノピリジンリン酸塩を摂取した後に、彼の性的行為の実行全般がよりよくなり、彼がより興奮することを報告した。
【0113】
5つの機能領域(勃起機能、オルガスムを得る機能、性欲、性交満足度および全般的満足度)における上記被験体の処置前IIEFスコアおよび処置後IIEFスコアを、以下の表3に提供する。表3中の結果は、3,4-ジアミノピリジンリン酸塩での処置が、上記被験体の男性性機能の5つの領域全てを改善したことを明らかに示す。各機能領域の上記処置後スコアは、正常ボランティアのコントロール群に関して上記の表2で示したものに類似である。
【表3】
【0114】
実施例5
65歳齢の男性被験体は、IIEF問診票を使用して過去4週間の彼の性機能を自己報告した(「処置前IIEF」)。上記被験体の処置前IIEFから、以下が明らかになった:1)上記被験体は、性行為中に数回(そのときの半数未満)勃起を得ることができた(スコア2)、2)上記被験体が性的刺激によって勃起した際に、その勃起は、挿入するために十分硬かったことはほとんどまたは一度もなかった(スコア1)、3)上記被験体は、性交しようと試みた際に、彼のパートナーに数回(そのときの半数未満)挿入する(入れる)ことができた(スコア2);4)性交中に、上記被験体は、彼が彼のパートナーに挿入した後、勃起を維持することがほとんどまたは一度もできなかった(スコア1)、5)性交中に、上記被験体が性交を終えるまで彼の勃起を維持することは極めて困難であった(スコア1)、6)上記被験体は、性交を3~4回試みた(スコア2)、7)上記被験体が性交を試みた際に、彼が満足することはほとんどまたは一度もなかった(スコア1)、8)性交は、上記被験体にとってあまり悦びがあるものではなかった(スコア2)、9)上記被験体に性的刺激または性交があった際に、彼は数回(そのときの半数未満)射精した(スコア2)、10)上記被験体に性的刺激または性交があった際に、彼は、オルガスムまたは絶頂の感覚が数回(そのときの半数未満)あった(スコア2);11)上記被験体は、性欲をときおり(そのときの約半分)感じた(スコア3);12)彼の性欲のレベルは、低かった(スコア2);13)上記被験体は、彼の性生活全般に中程度に不満足であった(スコア2);14)上記被験体は、彼と彼のパートナーとの性的関係性に中程度に不満足であった(スコア2);および15)上記被験体が勃起を得て維持することができるという自信は、非常に低かった(スコア1)。
【0115】
次いで、上記被験体は、80mg(20mgを4回)の3,4-ジアミノピリジンリン酸塩の合計1日用量を4週間、経口で自己投与した。各日の最後の用量を、およそ午後6:30に自己投与した。彼の性行為のタイミングは、あるとすれば、およそ午後7:30であった。
【0116】
その4週間の処置期間の後、上記被験体は、IIEF問診票を使用して過去4週間の彼の性機能を自己報告した(「処置後IIEF」)。処置後IIEFによれば、1)上記被験体は、性行為中にたいてい(そのときの半数より多い)、勃起を得ることができた(スコア4)、2)上記被験体が性的刺激により勃起した際には、その勃起は、たいていの場合(そのときの半数より多い)、挿入するために十分硬かった(スコア4)、3)上記被験体は、性交しようと試みた際に、彼のパートナーにたいていの場合(そのときの半数より多い)、挿入する(入れる)ことができた(スコア4);4)性交中に、上記被験体は、彼が彼のパートナーに挿入した後、勃起を維持することがときおり(そのときの約半分)できた(スコア3)、5)性交中に、上記被験体が性交を終えるまで彼の勃起を維持することはわずかに困難であった(スコア4)、6)上記被験体は、性交を5~6回試みた(スコア3)、7)上記被験体が性交を試みた際に、それはたいていの場合(そのときの半数より多い)、彼にとって満足のいくものであった(スコア4)、8)性交は、上記被験体にとって非常に悦びがあった(スコア4)、9)上記被験体に性的刺激または性交があった際に、彼は、たいていの場合(そのときの半数より多い)、射精した(スコア4)、10)上記被験体に性的刺激または性交があった際に、彼は、オルガスムまたは絶頂の感覚がたいていの場合(そのときの半数より多い)あった(スコア4);11)上記被験体は、性欲をほぼ常にまたは常に感じた(スコア5);12)彼の性欲のレベルは高かった(スコア4);13)上記被験体は、彼の性生活全般に中程度に満足であった(スコア4);14)上記被験体は、彼と彼のパートナーとの性的関係性に中程度に満足であった(スコア4);および15)上記被験体が勃起を得て維持することができるという自信は、高かった(スコア4)。
【0117】
上記被験体はまた、3,4-ジアミノピリジンリン酸塩を摂取した後に、彼の性的行為の実行全般がよりよくなったことを報告した。
【0118】
5つの機能領域(勃起機能、オルガスムを得る機能、性欲、性交満足度および全般的満足度)における上記被験体の処置前IIEFスコアおよび処置後IIEFスコアは、70歳齢の男性被験体に関して表3で提供したものに同一であった。
【0119】
今や本開示は十分に説明されているので、本発明の範囲にもその任意の実施形態にも影響を及ぼすことなく、条件、製剤、および他のパラメーターの広くかつ均等な範囲内で本開示が実施され得ることは、当業者によって理解される。
【0120】
本開示の他の実施形態は、本明細書を斟酌し、本明細書で開示される発明を実施することから当業者に明らかである。本明細書は、例示として考慮されるに過ぎず、本発明の真の範囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【0121】
本明細書で引用される全ての特許、特許出願、および刊行物は、それらの全体において本明細書に参考として完全に援用される。
【国際調査報告】