(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-06
(54)【発明の名称】セロトニン作動薬及び5-HT1A受容体アンタゴニスト
(51)【国際特許分類】
C07D 417/12 20060101AFI20220929BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220929BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20220929BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20220929BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220929BHJP
A61K 31/4525 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C07D417/12 CSP
A61K45/00
A61K31/496
A61P15/00
A61P43/00 121
A61K31/4525
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506390
(86)(22)【出願日】2020-07-29
(85)【翻訳文提出日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 EP2020071410
(87)【国際公開番号】W WO2021018967
(87)【国際公開日】2021-02-04
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522040285
【氏名又は名称】アトラス・ファーマシューティカルス・ベーフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マーセル・ダーフィット・ヴァルディンガー
(72)【発明者】
【氏名】ベレンド・オリフィエル
【テーマコード(参考)】
4C063
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
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4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、早漏の防止及び/又は処置における使用のための、少なくとも1つのセロトニン作動薬、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物と組み合わせた、5-HT1A受容体アンタゴニスト、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物であって、前記少なくとも1つのセロトニン作動薬、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物と別々に、逐次的に、又は同時に、投与される前記5-HT1A受容体アンタゴニスト、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
早漏の防止及び/又は処置における使用のための、少なくとも1つのセロトニン作動薬又はその塩と組み合わせた、以下の式Iの化合物:
【化1】
(式中、
- R
1は、ハロゲン、メチル、メトキシ、ヒドロキシル、トリフルオロメチル、又はシアノであり、
- mは1又は2であり、
- R
2は水素又は塩素であり、
- Aは、フェニル基で置換されてもよい、2~6個のC原子を含有するアルキレン鎖を表し、
- Bは、メチレン、エチレン、カルボニル、スルフィニル、スルホニル、又はイオウである)
又はその塩であって、式Iの化合物が、少なくとも1つのセロトニン作動薬と別々に、逐次的に、又は同時に投与される、少なくとも1つのセロトニン作動薬又はその塩と組み合わせた式Iの化合物又はその塩。
【請求項2】
式Iの化合物が
【化2】
又はその塩である、請求項1に規定の使用のための少なくとも1つのセロトニン作動薬と組み合わせた式Iの化合物。
【請求項3】
射精までの潜時を増加させるための、請求項1又は2に規定の使用のための少なくとも1つのセロトニン作動薬と組み合わせた式Iの化合物。
【請求項4】
- 前記少なくとも1つの式Iの化合物が、性行為の0.5~1.5時間前の間に本質的に放出され;及び/又は
- 前記少なくとも1つのセロトニン作動薬が、性行為の0.5~1.5時間前の間に本質的に放出され;
好ましくは、少なくとも1つの式Iの化合物及び/又は少なくとも1つのセロトニン作動薬のピーク効果が部分的に重なる、請求項1~3のいずれか一項に規定の使用のための少なくとも1つのセロトニン作動薬と組み合わせた式Iの化合物。
【請求項5】
式Iの化合物及び/又は少なくとも1つのセロトニン作動薬が、好ましくは1つ又は複数の薬学的に許容される担体、添加剤、又は希釈剤を更に含む、式Iの化合物及び/又は少なくとも1つのセロトニン作動薬を含む組成物として提供される、請求項1~4のいずれか一項に規定の使用のための少なくとも1つのセロトニン作動薬と組み合わせた式Iの化合物。
【請求項6】
式Iの化合物及び/又は少なくとも1つのセロトニン作動薬が、式Iの化合物を含む組成物及び/又は少なくとも1つのセロトニン作動薬を含む組成物を含むパーツのキットとして提供され、好ましくは、前記組成物の1つ又は複数が1つ又は複数の薬学的に許容される担体、添加剤、又は希釈剤を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に規定の使用のための少なくとも1つのセロトニン作動薬と組み合わせた式Iの化合物。
【請求項7】
少なくとも1つの式Iの化合物及び/又は少なくとも1つのセロトニン作動薬が経口及び/又は舌下投与される、請求項1~6のいずれか一項に規定の使用のための少なくとも1つのセロトニン作動薬と組み合わせた式Iの化合物。
【請求項8】
少なくとも1つのセロトニン作動薬が、セロトニン受容体アゴニスト又はアンタゴニスト、セロトニン再取込み阻害剤、選択的セロトニン及びノルアドレナリン再取込み阻害剤、並びにセロトニン放出剤からなる群から選択される少なくとも1つ、2つ、又は3つであり、好ましくは、前記セロトニン作動薬が、選択的セロトニン再取込み阻害剤であり、より好ましくは、シタロプラム、エシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、ダポキセチン、インダルピン、ジメリジン、アラプロクラート、セントプロパジン、セリクラミン(JO-1017)、フェモキセチン(マレキシル;FG-4963)、イホキセチン(CGP-15210)、オミロキセチン、パヌラミン(WY-26002)、ピランダミン(AY-23713)、及びセプロキセチン((S)-ノルフロオキセチン)からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に規定の使用のための少なくとも1つのセロトニン作動薬と組み合わせた式Iの化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、早漏(PE)の処置に関する。
【背景技術】
【0002】
選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)は、過去に早漏(PE)の処置のために提案されていた。PEへの効果が現れる前に、数週間の慢性処置が必要である。理想的には、性交の直前に服用することができ、かつオンデマンドで(すなわち、すぐに又は数時間内に)機能する薬物が用いられるべきである。
【0003】
ダポキセチン(SSRI)はPEにおける「オンデマンド」使用として導入されているが、既存のデータは、ダポキセチンの「オンデマンド」性を支持していない。これは、ダポキセチンの望ましくない副作用により引き起こされ得る、その製品の高い中断率によって裏付けられているように思われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Serefogluら、Sexual medicine. 2(2):41~59頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PEについての新しい薬物療法、特にPEについての「オンデマンド」薬物療法を提供することが本開示の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、早漏(PE)の防止及び/又は処置における、少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニスト、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物と組み合わせた、少なくとも1つのセロトニン作動薬、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物の使用であって、前記少なくとも1つのセロトニン作動薬、又はその前駆体若しくは代謝産物が、前記少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニストと別々に、逐次的に、又は同時に投与される、使用を提供する。好ましくは、少なくとも1つのセロトニン作動薬、又はその前駆体若しくは代謝産物は少なくとも1つのSSRIであり、少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニストはDU125530である。
【0007】
本発明者らは、セロトニン作動薬と5-HT1A受容体アンタゴニストの併用投与が驚くべきことに、作用の速やかな発現で(最初の)射精までの潜時を増加させ、したがって、早漏についての「オンデマンド」薬物療法を提供することを見出した。
【0008】
この文書及びそれの特許請求の範囲において、動詞「含むこと(to comprise)」及びそれの活用形は、その語の後の項目が含まれるが、具体的に言及されていない項目が排除されないことを意味するように、それの非限定的な意味で用いられる。加えて、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」による要素への参照は、文脈が、その要素の1つ及び1つのみがあることを明らかに必要としない限り、その要素の1つより多くが存在する可能性を排除しない。したがって、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、通常、「少なくとも1つの(at least one)」を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】媒体(Vh+Vh)、SSRI パロキセチン(5mg/kg: Px+Vh)、5-HT1A受容体アンタゴニスト WAY100,635(0.3mg/kg)とパロキセチン(5mg/kg)の組合せ(WAY+Px)、及びDU125530(20mg/kg)とパロキセチン(5mg/kg)の組合せ(Du+Px)での処置の効果を示す図である。
【
図2】DU125530の合成経路を示す図である。
【
図3】発情期中の雌ラットと接触する30分間における性的に訓練されたラットの射精潜伏(秒)への5-HT1A受容体アンタゴニストDU125530とSSRIの組合せの、予想される用量反応曲線を示す図である。
図3において、水平軸上の文字A~Dは、増加性SSRI濃度を示し、射精潜時は垂直軸上に示されている。濃度A、B、C、及びDは、それぞれ、およそ1mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、30mg/kgに対応する。
図3のレジェンドにおける略語P.O.はper osであり、経口投与を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、射精潜時を遅らせるための、特に早漏(PE)の防止及び/又は処置のための方法における使用のための、少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニスト、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物と組み合わせた、少なくとも1つのセロトニン作動薬、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物であって、前記少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニストと別々に、逐次的に、又は同時に、それを必要としている対象へ投与される、少なくとも1つのセロトニン作動薬、又はその前駆体若しくは代謝産物に関する。好ましくは、少なくとも1つのセロトニン作動薬は少なくとも1つのSSRIであり、少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニストはDU125530である。
【0011】
早い射精又は早発射精(ejaculatio praecox)とも呼ばれる早漏(premature ejaculation)(PE)は、雄性対象が、性行為を開始後比較的にすぐに、かつ比較的小さな刺激で、オルガスムを経験し、精液を射出するときに起こる。本開示の関連において、「早すぎる(premature)」とは、挿入後長くても1分(とりわけ、Serefogluら、Sexual medicine. 2(2):41~59頁により)、又は性交の開始から15秒以内(The International Classification of Diseases (ICD-10)により)として定義される。或いは及び/又は更に、2014年にInternational Society for Sexual Medicineにより作成された根拠に基づいた判定基準による早漏は、挿入後1分以内でかつその人が射精したいと思う前に射精する人による、6カ月より長い期間生じ、かつ(ほとんど)毎回(又は90%の場合において)起こり、及び人にとってかなりの苦悩を引き起こす、性に関係のない精神疾患の結果ではなく、与えられた人間関係における、又は薬物療法により引き起こされる問題として定義され得る。これらの因子は、いかなる診断試験を通してでもなく、男性対象と話すことにより同定することができる。早漏(PE)はまた、コントロールなしで、及び/又は挿入を開始した後長くても15秒以内、若しくは長くても1分以内、2分以内、若しくは3分以内に射精することとして定義することができる(2007 ICD-10による)。
【0012】
好ましい実施形態において、本開示は、(ヒト)雄性における射精までの(潜伏)時間を増加させることを目指す。
【0013】
本開示の関連において、セロトニン作動薬は、身体においてセロトニンの効果を改変する化合物、及び/又はセロトニン作動系との相互作用を介して、例えば、セロトニン神経伝達を刺激又は遮断することにより、効果を生じる化合物である。種々の型のセロトニン作動薬が用いられ得、それには以下が挙げられる:
セロトニン再取込み阻害剤;
セロトニン-ノルエピネフリン再取込み阻害剤(SNRI);
セロトニン受容体アゴニスト若しくはアンタゴニスト;
セロトニン放出剤;及び/又は
作用機構においてSSRI成分を生じる任意の作用物質(例えば、トラマドール)。
【0014】
本開示の関連において、SSRIは、身体においてセロトニンの効果を改変する化合物、及び/又はセロトニン作動系との相互作用を介して、セロトニン神経伝達を刺激することによりセロトニンの効果を生じる化合物である。
【0015】
本開示において、セロトニン再取込み阻害剤(SRI)が好ましい。SRIは、例えば、セロトニントランスポーター(SERT)の作用を遮断することにより、神経伝達物質セロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT))の再取込み阻害剤として働く化合物である。これは、次に、セロトニンの細胞外濃度の増加、及び、そのために、セロトニン作動性神経伝達の増加をもたらす。
【0016】
特に好ましいのは、選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)である。SSRIは、(大)うつ病性障害及び不安障害の処置における抗うつ薬としても用いられる化合物群である。うつ、不安、及び射精におけるSSRIの作用の正確な機構は知られていない。SSRIは、神経伝達物質セロトニンの細胞外レベルを、それのシナプス前細胞への再吸収(再取込み)を制限することにより増加させ、シナプス後受容体と結合するために利用可能なシナプス間隙中のセロトニンのレベルを増加させると考えられている。それらは、他のモノアミントランスポーターに対する様々な程度の選択性を有し得、純粋なSSRIは、ノルエピネフリン及びドーパミントランスポーターに対して弱い親和性のみを有する。SSRIの適切な例には、シタロプラム、エシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、ダポキセチン、インダルピン、ジメリジン、アラプロクラート、セントプロパジン、セリクラミン (JO-1017)、フェモキセチン(マレキシル;FG-4963)、イホキセチン(CGP-15210)、オミロキセチン、パヌラミン(WY-26002)、ピランダミン(AY-23713)、セプロキセチン((S)-ノルフロオキセチン)が挙げられる。
【0017】
SNRIは、セロトニン及びノルエピネフリンの再取込みを阻害する。適切な例には、アトモキセチン、デスベンラファキシン、デュロキセチン、レボミルナシプラン、ミルナシプラン、シブトラミン、トラマドール、及び/又はベンラファキシンが挙げられる。
【0018】
本開示によるセロトニン作動薬はまた、クロリミプラミンであり得る。セロトニン作動薬、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物は、好ましくは、血液循環中にセロトニン作動薬の短時間の高いピークがある製剤において、例えば、経口剤又は舌下剤、例えば、担体としてシクロデキストリンとの錠剤又は舌下剤の形をとって、与えられる。好ましくは、セロトニン作動薬はSSRIである。セロトニン作動薬の適切な投与経路の別の例は、頬粘膜に、粘膜に、又は鼻腔内である。製剤中のセロトニン作動薬、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物の用量は、0.1~10mgの間、好ましくは2~8mgの間であり得る。本開示は、処置される対象におけるセロトニン作動薬の血漿レベルの一時的増加(短時間のピーク)を目指す。用語「短時間の」とは、血漿中セロトニン作動薬レベルが投与後2~4時間以内又は3~5時間以内にベースラインレベルへ戻るようなセロトニン作動薬の適用を指す。
【0019】
上で記載されているように、本開示は、少なくとも1つのセロトニン作動薬、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物を、少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニスト、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物と組み合わせる。好ましくは、少なくとも1つのセロトニン作動薬は少なくとも1つのSSRIであり、少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニストはDU125530である。5-HT1A受容体(又はセロトニン1A受容体)は、神経伝達物質セロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン、5-HT)を結合するセロトニン受容体(5-HT受容体)のサブタイプである。それは、抑制性神経伝達を媒介するGiタンパク質と共役したGタンパク質共役型受容体(GPCR)である。5-HT1A受容体タンパク質は、HTR1A遺伝子によってコードされる。5-HT1A受容体アンタゴニストは、5-HT1A受容体を、アゴニストのようにそれを活性化するよりむしろ、それと結合し及び/又はそれを遮断することにより生物学的応答を遮断又は阻害する一種の受容体リガンド又は化合物である。5-HT1A受容体アンタゴニストの適切な例には、アルプレノロール、AV-965、BMY-7,378、シアノピンドロール、シプロヘプタジン、ドタリジン、フロプロピオン、GR-46,611、ヨードシアノピンドロール、イサモルタン、レコゾタン、メフウェイ、メチオテピン、MPPF、NAD-299、NAN-190、ネビボロール、オキシプレノロール、ピンドビンド、ピンドロール、プロプラノロール、リスペリドン、ロバルゾタン、SB-649,915、SDZ-216,525、スピペロン、スピラミド、スピロキサトリン、UH-301、WAY100,635、及びWAY-100,135が挙げられる。
【0020】
上記で言及された5-HT1A受容体アンタゴニストの大部分は、5-HT1A受容体アンタゴニズムの次に追加の薬理学的機構を有し、妨害性副作用を示す場合が多い。5-HT1A受容体アンタゴニストは、セロトニン作動性非5-HT1A受容体及び/若しくは非セロトニン作動性受容体を刺激若しくは遮断し得、5-HT1A受容体において偏ったアゴニスト効果を生じ得、又はシナプス前性に若しくはシナプス後性に位置する5-HT1A受容体において異なるアンタゴニスト/アゴニスト効果を生じ得る。更に、いくつかの5-HT1A受容体アンタゴニストは、部分的5-HT1A受容体アゴニスト効果を生じ、望まない副作用をもたらし得る、アンタゴニスト性/アゴニスト性エナンチオマーのラセミ混合物である。
【0021】
多くの5-HT1A受容体アンタゴニストは主に、5-HT1A受容体アンタゴニスト効果より別の機構を理由に、他の目的、例えば、心疾患に用いられる。そのような5-HT1A受容体アンタゴニストは、例えば、低下した若しくは不規則な心拍数及び/又は低下した血圧をもたらす可能性がある、β遮断薬であり得る。いくつかの5-HT1A受容体アンタゴニストは、統合失調症等のある特定の精神障害に用いられ、望まないドーパミン作動性副作用をもたらすドーパミン作動性機構を有する。5-HT1A受容体アンタゴニストは、血液脳関門の透過性が低く、それらの有効性を減少させ得る。
【0022】
本開示による5-HT1A受容体アンタゴニストは、好ましくは、以下の式I:
【0023】
【0024】
(式中、
- R1は、ハロゲン、メチル、メトキシ、ヒドロキシル、トリフルオロメチル、又はシアノ、好ましくは塩素であり;
- mは1又は2、好ましくは1であり;
- R2は水素又は塩素、好ましくは水素であり;
- Aは、フェニル基で置換されてもよい、2~6個のC原子を含有する、好ましくは3個のC原子を含有するアルキレン鎖を表し、
- Bは、メチレン、エチレン、カルボニル、スルフィニル、スルホニル、又はイオウ、好ましくはスルホニルである)
により特徴づけられる。
【0025】
本開示によるような、少なくとも1つのセロトニン作動薬(例えば、SSRI)又はその塩と組み合わせた式Iの化合物又はその塩は、早漏の防止及び/又は処置に用いることができ、式Iの化合物は好ましくは、少なくとも1つのセロトニン作動薬と別々に、逐次的に、又は同時に投与される。
【0026】
驚くべきことに、本開示によるような、式Iの化合物と少なくとも1つのセロトニン作動薬(好ましくはSSRI)の組合せは、射精潜時を顕著に増加させる。
【0027】
特に好ましい5-HT1A受容体アンタゴニストはDU125530である。少なくとも1つのSSRIと組み合わせたDU125530は、射精潜時を更に増加させる。加えて、DU125530と少なくとも1つのSSRIの組合せで射精潜時を更に増加させる技術的効果は、うつ病を処置するために必要とされるSSRIの用量と比較して、低下させたSSRIの用量で得ることができる。低下させたSSRIの用量は、副作用の発生率の低下及びこれらの副作用の症状の重症度がより低いことと関連している。
【0028】
DU125530は、以下の式II:
【0029】
【0030】
を有する化合物として、並びに/又はMF C23H26ClN3O5S及び/若しくはMW 491.99を有するCAS[161611-99-0]として、特徴づけることができる。
【0031】
セロトニン作動薬及び/又は5-HT1A受容体アンタゴニストへの、特に治療的使用に関しての言及は、その薬学的に許容される塩も包含すると理解される。好ましくは、セロトニン作動薬はSSRIであり、5-HT1A受容体アンタゴニストはDU125530である。用語「薬学的に許容される塩」は、当業者によく知られているように、薬学的に許容される無毒の、無機塩基又は酸及び有機塩基又は酸を含む、塩基又は酸から調製される塩又はエステルを指す。多くの適切な無機及び有機塩基は当技術分野において知られている。
【0032】
本開示の範囲はまた、所望の活性を保持するセロトニン作動薬及び/又は5-HT1A受容体アンタゴニストの誘導体にも広がる。出発材料と実質的に同じ活性を保持し、又はより好ましくは、向上した活性を示す誘導体が、当技術分野においてよく知られている医薬品化学の標準原理に従って作製され得る。そのような誘導体は、それらが、治療的に有効であるのに十分な活性を保持する限り、出発材料より低い程度の活性を示してもよい。誘導体は、例えば、溶解性の向上、毒性の低下、取込みの増強等の、薬学的活性物質において望ましい他の性質における向上を示す場合がある。好ましくは、少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニストと組み合わされた少なくとも1つのセロトニン作動薬は、1つ又は複数の薬学的に許容される担体、添加剤、又は希釈剤を更に含む薬学的組成物として製剤化される。好ましくは、少なくとも1つのセロトニン作動薬は少なくとも1つのSSRIであり、少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニストはDU125530である。
【0033】
少なくとも1つのセロトニン作動薬、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物及び少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニスト、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物についての投与経路は、好ましくは、非侵襲性(例えば、経口)である。好ましくは、少なくとも1つのセロトニン作動薬は少なくとも1つのSSRIであり、少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニストはDU125530である。典型的には、投与は、経口、舌下、若しくは吸入によるものであり、又はクリームを用いて投与される。
【0034】
単位用量あたりの少なくとも1つのセロトニン作動薬及び/又は少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニストについての量は、その活性化合物の性質及びその意図された投与計画によって変化し得る。好ましくは、少なくとも1つのセロトニン作動薬は少なくとも1つのSSRIであり、少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニストはDU125530である。一般的に、単位用量あたり0.01mgから5000mgまでの範囲内、好ましくは、0.01~4000mg、0.1~3000mg、1~2500、1~1000、10~100、1~10、1~5mgであり得る有効量が用いられるべきである。
【0035】
本開示に適用されるような異なる化合物は、以下のスケジュール:
- 少なくとも1つのセロトニン作動薬、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物が、性行為の0.5~1.5時間前の間に本質的に放出される;及び/又は
- 5-HT1A受容体アンタゴニスト、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物が、性行為の0.5~1.5時間前の間に本質的に放出される
に従って血流中に放出されることが好ましい。
好ましくは、少なくとも1つのセロトニン作動薬は少なくとも1つのSSRIであり、少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニストはDU125530である。
【0036】
同時に又は代替として、投薬は、少なくとも1つのセロトニン作動薬(又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物)及び/又は5-HT1A受容体アンタゴニスト、若しくはその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物のピーク効果が部分的に重なるようにする。好ましくは、少なくとも1つのセロトニン作動薬は少なくとも1つのSSRIであり、少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニストはDU125530である。
【0037】
好ましくは、本開示による早漏の防止及び/又は処置における使用のための少なくとも1つのセロトニン作動薬、若しくはその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物、及び/又は少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニスト、若しくはその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物は、性行為の24時間前から1分前の間、例えば、20時間前から1分前までの間、15時間前から1分前までの間、10時間前から1分前までの間、8時間前から1分前までの間、6時間前から1分前までの間、4時間前から1分前までの間、120分前から1分前までの間、例えば、60分前から1分前までの間、40分前から1分前までの間、30分前から1分前までの間、20分前から1分前までの間、15分前から1分前までの間、10分前から1分前までの間、5分前から1分前までの間、3分前から1分前までの間に雄性対象に投与され、前記セロトニン作動薬、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物は好ましくはSSRI、例えばパロキセチンであり、前記5-HT1A受容体アンタゴニスト、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物は好ましくはDU125530である。
【0038】
好ましくは、本開示による早漏の防止及び/又は処置における使用のための少なくとも1つのセロトニン作動薬、若しくはその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物、及び/又は少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニスト、若しくはその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物の、少なくとも1つのセロトニン作動薬、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物は、前記少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニスト、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物を対象に投与する10時間前から1分前の間に、例えば、前記少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニスト、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物を投与する8時間前から10分前の間、6時間前から30分前の間、5時間前から1時間前の間、又は4時間前から2時間前の間に、雄性対象に投与される。少なくとも1つのセロトニン作動薬、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物は、性行為の4時間前から10分前の間に投与することができ、5-HT1A受容体アンタゴニスト、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物が、性行為の10分前から1分前の間に投与することができ、前記セロトニン作動薬、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物は好ましくはSSRI、例えばパロキセチンであり、前記5-HT1A受容体アンタゴニスト、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物は好ましくはDU125530である。
【0039】
好ましくは、本開示による早漏の防止及び/又は処置における使用のための少なくとも1つのセロトニン作動薬、若しくはその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物、及び/又は少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニスト、若しくはその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物の、少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニスト、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物は、前記少なくとも1つのセロトニン作動薬、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物を対象に投与する10時間前から1分前の間に、例えば、前記少なくとも1つのセロトニン作動薬、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物を投与する8時間前から10分前の間、6時間前から30分前の間、5時間前から1時間前の間、又は4時間前から2時間前の間に、雄性対象に投与される。少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニスト、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物は、性行為の4時間前から10分前の間に投与することができ、一方、前記セロトニン作動薬、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物が、性行為の10分前から1分前の間に投与することができ、前記セロトニン作動薬、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物は好ましくはSSRI、例えばパロキセチンであり、前記5-HT1A受容体アンタゴニストは好ましくはDU125530である。
【0040】
好ましくは、早漏の防止及び/又は処置における使用のための少なくとも1つのセロトニン作動薬、若しくはその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物、及び/又は少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニスト、若しくはその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物は、早漏以外のいかなる他の状態、障害、又は疾患の防止及び/又は処置における使用のためでもない。
【0041】
好ましくは、本開示による早漏の防止及び/又は処置における使用のための少なくとも1つのセロトニン作動薬、若しくはその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物、及び/又は少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニスト、若しくはその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物は、毎日、毎週、隔週に、毎月、12時間ごとに、8時間ごとに、1日2回、1日3回、又は1日4回等の定期的には投与されない。好ましくは、前記セロトニン作動薬、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物は好ましくはSSRI、例えばパロキセチンであり、前記5-HT1A受容体アンタゴニスト、又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物は好ましくはDU125530である。
【0042】
好ましい実施形態において、本開示に従って用いられる場合の少なくとも1つのセロトニン作動薬(又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物)及び/又は少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニスト、若しくはその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物は、その列挙された化合物を含む単一の組成物、例えば、錠剤として提供される。好ましくは、少なくとも1つのセロトニン作動薬は少なくとも1つのSSRIであり、少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニストはDU125530である。
【0043】
この組成物は、1つ又は複数の薬学的に許容される担体、添加剤、又は希釈剤を更に含み得る。
【0044】
代替の実施形態において、本開示に従って用いられる場合の少なくとも1つのセロトニン作動薬(又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物)及び/又は少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニスト、若しくはその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物は、別々の組成物、例えば、少なくとも1つのセロトニン作動薬(又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物)を含む組成物及び/又は少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニスト、若しくはその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物を含む組成物を含むパーツの組合せ又はキットとして提供される。好ましくは、少なくとも1つのセロトニン作動薬は少なくとも1つのSSRIであり、少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニストはDU125530である。これらの別々の組成物は、1つ又は複数の薬学的に許容される担体、添加剤、又は希釈剤を更に含み得る。
【0045】
本開示の関連における、好ましくは少なくとも1つのセロトニン作動薬が少なくとも1つのSSRIであり、かつ少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニストがDU125530である、少なくとも1つのセロトニン作動薬(又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物)及び/又は少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニスト、若しくはその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物についての適切な剤形には、持続放出性及び遅延放出性製剤を含む、固体剤形、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、分散性顆粒剤、カシェ剤、及び坐剤が挙げられるが、それらに限定されない。散剤及び錠剤は、一般的に、約5%から約70%までの活性成分を含む。固体担体及び添加剤は当技術分野において一般的に知られており、それには、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース等が挙げられる。錠剤、散剤、カシェ剤、及びカプセル剤は全て、経口投与のための適切な剤形である。
【0046】
好ましくは少なくとも1つのセロトニン作動薬が少なくとも1つのSSRIであり、かつ少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニストがDU125530である、少なくとも1つのセロトニン作動薬(又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物)及び/又は少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニスト、若しくはその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物についての適切な液体剤形には、液剤、懸濁剤、及び乳剤が挙げられる。液状調製物は、静脈内、脳内、腹腔内、非経口、又は筋肉内の注射又は注入により投与され得る。無菌注射用製剤は、無毒の薬学的に許容される希釈剤又は溶媒中に活性物質の無菌液剤又は懸濁剤を含み得る。液体剤形にはまた、鼻腔内、頬側、又は舌下の投与のための液剤又はスプレー剤が挙げられる。吸入に適したエアゾール調製物には、液剤及び散剤形状の固体が挙げられ得、それらが、薬学的に許容される担体、例えば不活性圧縮ガスと組み合わせられ得る。
【0047】
少なくとも1つのセロトニン作動薬(又はその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物)及び/又は少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニスト、若しくはその誘導体、前駆体、若しくは代謝産物についての経皮投与のための剤形、例えば、クリーム剤、ローション剤、油剤、エアゾール剤、及び/又は乳剤もまた包含される。好ましくは、少なくとも1つのセロトニン作動薬が少なくとも1つのSSRIであり、少なくとも1つの5-HT1A受容体アンタゴニストがDU125530である。これらの剤形は、当技術分野において一般的に知られている、マトリックス又はリザーバタイプの経皮パッチに含まれ得る。
【0048】
薬学的調製物の用量は、薬学的製剤の標準手順に従って、便利には、単位剤形で調製され得る。
【0049】
本開示において、「誘導体」は、参照化合物と、少なくとも1個の原子(及び/又は化学結合)及び/又は少なくとも1つの官能基が異なる化合物として見られ得る。その違いはまた、少なくとも2個、3個、若しくは4個の原子(及び/又は化学結合)及び/又は少なくとも2個、3個、若しくは4個の官能基においてでもあり得る。本開示において、用語「前駆体」は、例えば宿主の代謝により、参照化合物へ変換される化合物を指す。本開示において、用語「代謝産物」は、宿主の代謝の作用によって、参照化合物から生じる化合物を指す。
【実施例1】
【0050】
本発明者らは、ヒト男性の性行動へのSSRI効果を予測する雄ラットにおける性行動のモデルを開発した(Bijlsmaら 2014; Olivierら 2006; 2017)。この雄ラット性行動モデルにおいて、慢性投与においてのみSSRIは性行動を阻害し、それにより、ヒト男性におけるSSRI効果を模倣及びモデル化する。
【0051】
本発明者らは、5-HT1A受容体アンタゴニストを急性SSRI用量に急性的に加えることが、雄の性行動の即時の阻害をもたらすことを見出した。最初に、プロトタイプの5-HT1A受容体アンタゴニストである、WAY100,635を用いたが、この化合物は好ましくはヒトにおいて用いられない。
【0052】
本発明者らは、5-HT1A受容体アンタゴニストをSSRIに加えることが、抗うつ活性の作用の発生を加速し得ると考えた。インビトロ及びインビボで選択的5-HT1A受容体アンタゴニスト活性を有する一つの化合物、DU125530を選択した(Mosら、1997)。この化合物はいくつかの動物モデルにおいて試験され、優れて信頼できる5-HT1A受容体アンタゴニスト活性を示したが、それ自体には生物活性がなかった(いわゆるサイレントアンタゴニスト)(Joordensら 1997)。健康なヒトボランティアにおけるポジトロン放出断層撮影研究において(Rabinerら 2002)、1日あたり10~40mgの用量範囲が、忍容性が良く、副作用が最小であり、最後の投与後2時間目において0~72%の用量依存性の5-HT1A受容体占有率を示した。占有率は、DU125530の血漿レベルと高度に相関した。
【0053】
上記で言及されたラットモデルにおいて、急性的に与えられたパロキセチン(SSRI、5mg/kg)と組み合わせてのDU125530(20mg/kg)の急性投与は、雄ラット性行動を強く阻害した。プロトタイプ5-HT
1A受容体アンタゴニストWAY100,635は、匹敵する阻害を発揮する (自社データ)ため、本発明者らは、セロトニントランスポーターの遮断と組み合わた5-HT
1A受容体の遮断が、急性雄性行動阻害効果を、特に射精過程へ、生じると考える(
図1参照)。
【0054】
所見: 5-HT1A受容体を遮断する薬物(DU125530のような)の、SSRI等のセロトニン作動性化合物との組合せは、射精を含む雄ラット性行動の迅速な阻害をもたらす。この所見は、ヒト早漏の「オンデマンド」処置のためのこの組合せの適用を強く支持する。
【0055】
材料及び方法
1グラムのDU125530をSYNCOM(RUG(University of Groningen)のZernike Campusにおける(医薬品)化学会社)に注文した。その合成経路は
図2に示され、当業者により再現することができる。その化合物は、パロキセチンと組み合わされた場合、安全で、薬理学的活性があることが見出され、単独で投与された場合は効果を生じなかった(いわゆる「サイレント」アンタゴニスト)。
【0056】
雄ラットは、それらが安定な性行為の実行(30分間(標準試験時間)あたり平均2回の射精)を得るまで性的に訓練された。試験の30分前、動物は腹腔内に注射され、その後、雄は、性行為を受容可能である雌と30分間、アクセスした。訓練された研究者は、公開されかつ認められた方法(Chanら 2010)に従って雄の性行動をスコア化した。
【0057】
結果
図1は、媒体(Vh+Vh)、SSRI パロキセチン(5mg/kg: Px+Vh)、5-HT
1A受容体アンタゴニスト WAY100,635(0.3mg/kg)とパロキセチン(5mg/kg)の組合せ(WAY+Px)、及びDU125530(20mg/kg)とパロキセチン(5mg/kg)の組合せ(Du+Px)での処置の効果を示す。別個の実験において、2つの5-HT
1A受容体アンタゴニスト WAY100,625(最高1mg/kgまでの用量において、IP)及びDU125530(最高20mg/kgまでの用量において)は、性行動へ行動的効果を生じず(本明細書では未呈示)、両方の化合物がサイレントアンタゴニストであることを示した。
【実施例2】
【0058】
本発明者らは、SSRIと共のDU125530の雄ラットへの投与が、雄ラットの射精潜時を増加させると予想する。加えて、射精潜時のその増加は、DU125530なしのSSRI投与と比較して、SSRIのより低い用量を必要とする。したがって、DU125530の添加は、射精潜時についての用量反応曲線を左へシフトする。これは、
図3に描かれ、発情期中の雌ラットと接触する30分間における性的に訓練されたラットの射精潜伏(秒)への5-HT1A受容体アンタゴニストDU125530とSSRIの組合せの、予想される用量反応曲線を示している。
図3において、水平軸上の文字A~Dは、増加性SSRI濃度を示し、射精潜時は垂直軸上に示されている。濃度A、B、C、及びDは、それぞれ、およそ1mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、30mg/kgに対応する。
図3の説明文における略語P.O.はper osであり、経口投与を意味する。これらのデータが、DU125530をSSRIへ加えることが、射精潜時を増加させるのに必要とされるSSRIのより低い用量をもたらすことを示唆している。これは、より低いSSRI用量におけるSSRIの副作用が低減されるため、有利である。
【実施例3】
【0059】
雄ラットを用いた研究において、10種の異なる5-HT1A受容体アンタゴニストを、性行為の直前に、5種の異なるセロトニン作動薬と共に投与する。各群内において、各雄ラットに、5-HT1A受容体アンタゴニストと共に、シタロプラム、フルオキセチン、イホキセチン(CGP-15210)、パロキセチン、及びジメリジンから選択される異なるセロトニン作動薬を投与する。最初の射精までの時間を測定し、5-HT1A受容体アンタゴニスト及びセロトニン作動薬の投与なしの特定の雄ラットについての最初の射精までの平均時間で割り算する。生じた、最初の射精までの時間の平均増加は、下記のtable(表1)に示されている。
【0060】
【0061】
【国際調査報告】