(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-06
(54)【発明の名称】カンジダ属に対する抗体およびその使用法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/569 20060101AFI20220929BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220929BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20220929BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220929BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220929BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220929BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220929BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220929BHJP
C12N 5/12 20060101ALI20220929BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20220929BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220929BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20220929BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220929BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220929BHJP
C07K 16/14 20060101ALN20220929BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220929BHJP
C12N 15/85 20060101ALN20220929BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
G01N33/569 A
C07K16/46
C07K16/00
C07K19/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/12
A61P31/10
A61K39/395 R
A61K39/395 D
A61K39/00 G
A61K39/00 K
A61P43/00 121
A61K45/00
C07K16/14 ZNA
C12N15/13
C12N15/85 Z
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506413
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(85)【翻訳文提出日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 US2020043908
(87)【国際公開番号】W WO2021021830
(87)【国際公開日】2021-02-04
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510319971
【氏名又は名称】ジ アドミニストレイターズ オブ ザ チューレン エデュケイショナル ファンド
【氏名又は名称原語表記】THE ADMINISTRATORS OF THE TULANE EDUCATIONAL FUND
(71)【出願人】
【識別番号】520061826
【氏名又は名称】ザ ボード オブ スーパーバイザーズ オブ ルイジアナ ステート ユニバーシティ アンド アグリカルチュラル アンド メカニカル カレッジ
(71)【出願人】
【識別番号】522293881
【氏名又は名称】スタディウス バイオファーマ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン ラッセル ビー.
(72)【発明者】
【氏名】シン ホン
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン ジェームズ イー.
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA26X
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
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4B065CA45
4C084AA19
4C084NA05
4C084NA11
4C084NA12
4C084ZB351
4C084ZB352
4C084ZC751
4C085AA03
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BA49
4C085BB11
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB42
4C085BB43
4C085CC02
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG10
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA29
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、カンジダ属に結合しかつそれを中和する抗体および該抗体の使用のための方法を対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、対象においてカンジダ属(Candida)感染症を検出する方法:
(a)該対象由来の試料を抗体または抗体断片と接触させる工程であって、該抗体または抗体断片が、クローンと対での(clone-paired)重鎖CDR配列および軽鎖CDR配列を含み、該重鎖CDR配列が表3より選択されかつ該軽鎖CDR配列が表4より選択される、該工程;ならびに
(b)該試料中のカンジダ抗原への該抗体または抗体断片の結合によって、該試料中のカンジダ属を検出する工程。
【請求項2】
前記試料が体液である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記試料が、血液、痰、涙、唾液、粘液もしくは血清、精液、子宮頸部もしくは膣分泌物、羊水、胎盤組織、尿、滲出液、漏出液、組織擦過物、または糞便である、請求項1~2のいずれか一項記載の方法。
【請求項4】
検出が、ELISA、RIA、ラテラルフローアッセイ、またはウエスタンブロットを含む、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
工程(a)および(b)を再度実施し、かつ最初のアッセイと比較してカンジダ抗原レベルの変化を判定する工程をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記抗体または抗体断片が、表1より選択されるクローンと対での配列による軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされる、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
前記抗体または抗体断片が、表1より選択されるクローンと対での配列に対して少なくとも70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされる、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記抗体または抗体断片が、表1より選択されるクローンと対での配列に対して少なくとも95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされる、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記抗体または抗体断片が、表2のクローンと対での配列より選択される軽鎖可変配列および重鎖可変配列を含む、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記抗体または抗体断片が、表2のクローンと対での配列に対して70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含む、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記抗体または抗体断片が、表2のクローンと対での配列に対して95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含む、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記抗体断片が、組換えscFv(単鎖断片可変)抗体、Fab断片、F(ab’)
2断片、またはFv断片である、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
カンジダ属に感染した対象を治療するか、またはカンジダ属の病気に罹る危険性がある対象の感染の可能性を低減させる方法であって、該方法が、抗体または抗体断片を該対象に送達する工程を含み、該抗体または抗体断片が、クローンと対での重鎖CDR配列および軽鎖CDR配列を含み、該重鎖CDR配列が表3より選択されかつ該軽鎖CDR配列が表4より選択される、該方法。
【請求項14】
前記抗体または抗体断片が、表1より選択されるクローンと対での配列による軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされる、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記抗体または抗体断片が、表1より選択されるクローンと対での配列に対して少なくとも70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされる、請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記抗体または抗体断片が、表1より選択されるクローンと対での配列に対して少なくとも95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされる、請求項13記載の方法。
【請求項17】
前記抗体または抗体断片が、表2のクローンと対での配列より選択される軽鎖可変配列および重鎖可変配列を含む、請求項13記載の方法。
【請求項18】
前記抗体または抗体断片が、表2より選択されるクローンと対での配列に対して70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖可変配列および重鎖可変配列を含む、請求項13記載の方法。
【請求項19】
前記抗体または抗体断片が、表2のクローンと対での配列に対して95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含む、請求項13記載の方法。
【請求項20】
前記抗体断片が、組換えscFv(単鎖断片可変)抗体、Fab断片、F(ab’)
2断片、またはFv断片である、請求項13~19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
前記抗体が、IgG、または組換えIgG抗体もしくは抗体断片であり、該組換えIgG抗体または抗体断片が、
FcR相互作用を変化させる(排除するもしくは増強する)ような、半減期を延長させるような、および/または治療効果を増大させるような、LALA、N297、GASD/ALIE、YTE、またはLS変異など変異導入されたFc部分、あるいは
グリカンの酵素的もしくは化学的付加もしくは除去、または規定のグリコシル化パターンを用いて操作された細胞株における発現など、FcR相互作用を変化させる(排除するまたは増強する)ようにグリカン修飾されている、変異導入されたFc部分
を含む、請求項13~20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
前記抗体がキメラ抗体または二重特異性抗体である、請求項13~19のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
感染より前にまたは感染の後に、前記抗体または抗体断片が投与される、請求項13~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
前記対象が、妊娠中の女性、性的に活発な女性、または不妊治療を受けている女性である、請求項13~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
送達する工程が、抗体または抗体断片の投与、あるいは該抗体または抗体断片をコードするRNAもしくはDNA配列またはベクターを用いる遺伝子送達を含む、請求項13~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
クローンと対での重鎖CDR配列および軽鎖CDR配列を含み、該重鎖CDR配列が表3より選択されかつ該軽鎖CDR配列が表4より選択される、モノクローナル抗体またはその断片。
【請求項27】
前記抗体または抗体断片が、表1より選択されるクローンと対での配列による軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされる、請求項26記載のモノクローナル抗体。
【請求項28】
前記抗体または抗体断片が、表1より選択されるクローンと対での配列に対して少なくとも70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされる、請求項26記載のモノクローナル抗体。
【請求項29】
前記抗体または抗体断片が、表1より選択されるクローンと対での配列に対して少なくとも95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされる、請求項26記載のモノクローナル抗体。
【請求項30】
前記抗体または抗体断片が、表2のクローンと対での配列より選択される軽鎖可変配列および重鎖可変配列を含む、請求項26記載のモノクローナル抗体。
【請求項31】
前記抗体または抗体断片が、表2より選択されるクローンと対での配列に対して95%の同一性を有する軽鎖可変配列および重鎖可変配列を含む、請求項26記載のモノクローナル抗体。
【請求項32】
前記抗体断片が、組換えscFv(単鎖断片可変)抗体、Fab断片、F(ab’)
2断片、またはFv断片である、請求項26~31のいずれか一項記載のモノクローナル抗体。
【請求項33】
キメラ抗体または二重特異性抗体である、請求項26~31のいずれか一項記載のモノクローナル抗体。
【請求項34】
前記抗体が、IgG、または組換えIgG抗体もしくは抗体断片であり、該組換えIgG抗体または抗体断片が、
FcR相互作用を変化させる(排除するもしくは増強する)ような、半減期を延長させるような、および/または治療効果を増大させるような、LALA、N297、GASD/ALIE、YTE、またはLS変異など変異導入されたFc部分、あるいは
グリカンの酵素的もしくは化学的付加もしくは除去、または規定のグリコシル化パターンを用いて操作された細胞株における発現など、FcR相互作用を変化させる(排除するまたは増強する)ようにグリカン修飾されている、変異導入されたFc部分
を含む、請求項26~33のいずれか一項記載のモノクローナル抗体。
【請求項35】
前記抗体または抗体断片が、細胞透過性ペプチドをさらに含み、かつ/またはイントラボディである、請求項26~34のいずれか一項記載のモノクローナル抗体。
【請求項36】
抗体または抗体断片をコードするハイブリドーマまたは操作された細胞であって、該抗体または抗体断片が、クローンと対での重鎖CDR配列および軽鎖CDR配列を含み、該重鎖CDR配列が表3より選択されかつ該軽鎖CDR配列が表4より選択される、該ハイブリドーマまたは操作された細胞。
【請求項37】
前記抗体または抗体断片が、表1より選択されるクローンと対での配列による軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされる、請求項36記載のハイブリドーマまたは操作された細胞。
【請求項38】
前記抗体または抗体断片が、表1より選択されるクローンと対での配列に対して少なくとも70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされる、請求項36記載のハイブリドーマまたは操作された細胞。
【請求項39】
前記抗体または抗体断片が、表1より選択されるクローンと対での配列に対して少なくとも95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされる、請求項36記載のハイブリドーマまたは操作された細胞。
【請求項40】
前記抗体または抗体断片が、表2のクローンと対での配列より選択される軽鎖可変配列および重鎖可変配列を含む、請求項36記載のハイブリドーマまたは操作された細胞。
【請求項41】
前記抗体または抗体断片が、表2のクローンと対での可変配列に対して少なくとも70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコードされる、請求項36記載のハイブリドーマまたは操作された細胞。
【請求項42】
前記抗体または抗体断片が、表2のクローンと対での配列に対して95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含む、請求項36記載のハイブリドーマまたは操作された細胞。
【請求項43】
前記抗体断片が、組換えscFv(単鎖断片可変)抗体、Fab断片、F(ab’)
2断片、またはFv断片である、請求項36~42のいずれか一項記載のハイブリドーマまたは操作された細胞。
【請求項44】
前記抗体がキメラ抗体または二重特異性抗体である、請求項36~43のいずれか一項記載のハイブリドーマまたは操作された細胞。
【請求項45】
前記抗体が、IgG、または組換えIgG抗体もしくは抗体断片であり、該組換えIgG抗体または抗体断片が、
FcR相互作用を変化させる(排除するもしくは増強する)ような、半減期を延長させるような、および/または治療効果を増大させるような、LALA、N297、GASD/ALIE、YTE、またはLS変異など変異導入されたFc部分、あるいは
グリカンの酵素的もしくは化学的付加もしくは除去、または規定のグリコシル化パターンを用いて操作された細胞株における発現など、FcR相互作用を変化させる(排除するまたは増強する)ようにグリカン修飾されている、変異導入されたFc部分
を含む、請求項36~43のいずれか一項記載のハイブリドーマまたは操作された細胞。
【請求項46】
前記抗体または抗体断片が、細胞透過性ペプチドをさらに含み、かつ/またはイントラボディである、請求項36~45のいずれか一項記載のハイブリドーマまたは操作された細胞。
【請求項47】
1種類または複数種類の抗体または抗体断片を含むワクチン製剤であって、該抗体または抗体断片が、クローンと対での重鎖CDR配列および軽鎖CDR配列を含み、該重鎖CDR配列が表3より選択されかつ該軽鎖CDR配列が表4より選択される、該ワクチン製剤。
【請求項48】
前記抗体または抗体断片が、表1より選択されるクローンと対での配列による軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされる、請求項47記載のワクチン製剤。
【請求項49】
前記抗体または抗体断片が、表1より選択されるクローンと対での配列に対して少なくとも70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされる、請求項47記載のワクチン製剤。
【請求項50】
前記抗体または抗体断片が、表1より選択されるクローンと対での配列に対して少なくとも95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされる、請求項47記載のワクチン製剤。
【請求項51】
前記抗体または抗体断片が、表2のクローンと対での配列より選択される軽鎖可変配列および重鎖可変配列を含む、請求項47記載のワクチン製剤。
【請求項52】
前記抗体または抗体断片が、表2より選択されるクローンと対での配列に対して95%の同一性を有する軽鎖可変配列および重鎖可変配列を含む、請求項47記載のワクチン製剤。
【請求項53】
前記抗体断片のうちの少なくとも1つが、組換えscFv(単鎖断片可変)抗体、Fab断片、F(ab’)
2断片、またはFv断片である、請求項47~52のいずれか一項記載のワクチン製剤。
【請求項54】
前記抗体のうちの少なくとも1つがキメラ抗体または二重特異性抗体である、請求項47~52のいずれか一項記載のワクチン製剤。
【請求項55】
前記抗体が、IgG、または組換えIgG抗体もしくは抗体断片であり、該組換えIgG抗体または抗体断片が、
FcR相互作用を変化させる(排除するもしくは増強する)ような、半減期を延長させるような、および/または治療効果を増大させるような、LALA、N297、GASD/ALIE、YTE、またはLS変異など変異導入されたFc部分、あるいは
グリカンの酵素的もしくは化学的付加もしくは除去、または規定のグリコシル化パターンを用いて操作された細胞株における発現など、FcR相互作用を変化させる(排除するまたは増強する)ようにグリカン修飾されている、変異導入されたFc部分
を含む、請求項47~54のいずれか一項記載のワクチン製剤。
【請求項56】
前記抗体または抗体断片のうちの少なくとも1つが、細胞透過性ペプチドをさらに含み、かつ/またはイントラボディである、請求項47~55のいずれか一項記載のワクチン製剤。
【請求項57】
請求項26~34のいずれか一項記載の第1の抗体または抗体断片をコードする1種類または複数種類の発現ベクターを含む、ワクチン製剤。
【請求項58】
前記発現ベクターがシンドビスウイルスまたはVEEベクターである、請求項57記載のワクチン製剤。
【請求項59】
前記ワクチンが、針注射による、ジェット注射による、またはエレクトロポレーションによる送達のために製剤化されている、請求項57~58のいずれか一項記載のワクチン製剤。
【請求項60】
第2の抗体または抗体断片、例えば、請求項26~34のいずれか一項記載の別個の抗体または抗体断片をコードする1種類または複数種類の発現ベクターをさらに含む、請求項57記載のワクチン製剤。
【請求項61】
カンジダ属に感染した妊娠中の対象またはカンジダ属の感染の危険性がある妊娠中の対象の胎盤および/または胎児の健康を保護する方法であって、該方法が、抗体または抗体断片を該対象に送達する工程を含み、該抗体または抗体断片が、クローンと対での重鎖CDR配列および軽鎖CDR配列を含み、該重鎖CDR配列が表3より選択されかつ該軽鎖CDR配列が表4より選択される、該方法。
【請求項62】
前記抗体または抗体断片が、表1より選択されるクローンと対での配列による軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされる、請求項61記載の方法。
【請求項63】
前記抗体または抗体断片が、表1より選択されるクローンと対での配列に対して少なくとも70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされる、請求項61記載の方法。
【請求項64】
前記抗体または抗体断片が、表1より選択されるクローンと対での配列に対して少なくとも95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされる、請求項61記載の方法。
【請求項65】
前記抗体または抗体断片が、表2のクローンと対での配列より選択される軽鎖可変配列および重鎖可変配列を含む、請求項61記載の方法。
【請求項66】
前記抗体または抗体断片が、表2のクローンと対での配列に対して70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含む、請求項61記載の方法。
【請求項67】
前記抗体または抗体断片が、表2のクローンと対での配列に対して95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含む、請求項61記載の方法。
【請求項68】
前記抗体断片が、組換えscFv(単鎖断片可変)抗体、Fab断片、F(ab’)
2断片、またはFv断片である、請求項61~67のいずれか一項記載の方法。
【請求項69】
前記抗体が、IgG、または組換えIgG抗体もしくは抗体断片であり、該組換えIgG抗体または抗体断片が、
FcR相互作用を変化させる(排除するもしくは増強する)ような、半減期を延長させるような、および/または治療効果を増大させるような、LALA、N297、GASD/ALIE、YTE、またはLS変異など変異導入されたFc部分、あるいは
グリカンの酵素的もしくは化学的付加もしくは除去、または規定のグリコシル化パターンを用いて操作された細胞株における発現など、FcR相互作用を変化させる(排除するまたは増強する)ようにグリカン修飾されている、変異導入されたFc部分
を含む、請求項61~68のいずれか一項記載の方法。
【請求項70】
前記抗体がキメラ抗体または二重特異性抗体である、請求項61~67のいずれか一項記載の方法。
【請求項71】
感染より前にまたは感染の後に、前記抗体または抗体断片が投与される、請求項61~70のいずれか一項記載の方法。
【請求項72】
前記対象が、妊娠中の女性、性的に活発な女性、または不妊治療を受けている女性である、請求項61~71のいずれか一項記載の方法。
【請求項73】
送達する工程が、抗体または抗体断片の投与、あるいは該抗体または抗体断片をコードするRNAもしくはDNA配列またはベクターを用いる遺伝子送達を含む、請求項61~72のいずれか一項記載の方法。
【請求項74】
前記抗体または抗体断片が、未治療の対照と比較して前記胎盤のサイズを増大させる、請求項61記載の方法。
【請求項75】
前記抗体または抗体断片が、未治療の対照と比較して前記胎児の真菌の負荷および/または病態を低減させる、請求項61記載の方法。
【請求項76】
以下の工程を含む、カンジダ抗原の抗原完全性、コンフォメーションの適正さ、および/または配列の適正さを判定する方法:
(a)該抗原を含む試料を第1の抗体または抗体断片と接触させる工程であって、該抗体または抗体断片が、クローンと対での重鎖CDR配列および軽鎖CDR配列を含み、該重鎖CDR配列が表3より選択されかつ該軽鎖CDR配列が表4より選択される、該工程;ならびに
(b)該抗原への該第1の抗体または抗体断片の検出可能な結合によって、該抗原の抗原完全性、コンフォメーションの適正さ、および/または配列の適正さを判定する工程。
【請求項77】
前記試料が、組換えで産生された抗原を含む、請求項76記載の方法。
【請求項78】
前記試料がワクチン製剤またはワクチン産生バッチを含む、請求項76記載の方法。
【請求項79】
検出が、ELISA、RIA、ウエスタンブロット、表面プラスモン共鳴法もしくはバイオレイヤー干渉法を使用するバイオセンサー、またはフローサイトメトリー染色を含む、請求項76~78のいずれか一項記載の方法。
【請求項80】
前記抗体または抗体断片が、表1より選択されるクローンと対での配列による軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされる、請求項76~79のいずれか一項記載の方法。
【請求項81】
前記抗体または抗体断片が、表1より選択されるクローンと対での配列に対して少なくとも70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされる、請求項76~79のいずれか一項記載の方法。
【請求項82】
前記抗体または抗体断片が、表1より選択されるクローンと対での配列に対して少なくとも95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされる、請求項76~79のいずれか一項記載の方法。
【請求項83】
前記抗体または抗体断片が、表2のクローンと対での配列より選択される軽鎖可変配列および重鎖可変配列を含む、請求項76~79のいずれか一項記載の方法。
【請求項84】
前記第1の抗体または抗体断片が、表2のクローンと対での配列に対して70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含む、請求項76~79のいずれか一項記載の方法。
【請求項85】
前記第1の抗体または抗体断片が、表2のクローンと対での配列に対して95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含む、請求項76~79のいずれか一項記載の方法。
【請求項86】
前記第1の抗体断片が、組換えscFv(単鎖断片可変)抗体、Fab断片、F(ab’)
2断片、またはFv断片である、請求項76~85のいずれか一項記載の方法。
【請求項87】
工程(a)および(b)を再度実施して、経時的に前記抗原の抗原安定性を判定する工程をさらに含む、請求項76~86のいずれか一項記載の方法。
【請求項88】
以下の工程をさらに含む、請求項76~87のいずれか一項記載の方法:
(c)前記抗原を含む試料を第2の抗体または抗体断片と接触させる工程であって、該抗体または抗体断片が、クローンと対での重鎖CDR配列および軽鎖CDR配列を含み、該重鎖CDR配列が表3より選択されかつ該軽鎖CDR配列が表4より選択される、該工程;ならびに
(d)該抗原への該第2の抗体または抗体断片の検出可能な結合によって、該抗原の抗原完全性を決定する工程。
【請求項89】
前記抗体または抗体断片が、表1より選択されるクローンと対での配列による軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされる、請求項88記載の方法。
【請求項90】
前記抗体または抗体断片が、表1より選択されるクローンと対での配列に対して少なくとも70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされる、請求項88記載の方法。
【請求項91】
前記抗体または抗体断片が、表1より選択されるクローンと対での配列に対して少なくとも95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされる、請求項88記載の方法。
【請求項92】
前記抗体または抗体断片が、表2のクローンと対での配列より選択される軽鎖可変配列および重鎖可変配列を含む、請求項88記載の方法。
【請求項93】
前記第1の抗体または抗体断片が、表2のクローンと対での配列に対して70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含む、請求項88記載の方法。
【請求項94】
前記第1の抗体または抗体断片が、表2のクローンと対での配列に対して95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含む、請求項88記載の方法。
【請求項95】
前記第2の抗体断片が、組換えscFv(単鎖断片可変)抗体、Fab断片、F(ab’)
2断片、またはFv断片である、請求項88記載の方法。
【請求項96】
工程(c)および(d)を再度実施して、経時的に前記抗原の抗原安定性を判定する工程をさらに含む、請求項88記載の方法。
【請求項97】
請求項26~35のいずれか一項記載の抗体またはその断片と、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項98】
少なくとも1つのさらなる治療用物質をさらに含む、請求項97記載の薬学的組成物。
【請求項99】
前記治療用物質が毒素、放射標識、siRNA、小分子、またはサイトカインである、請求項98記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、両方とも2019年7月29日に出願された米国特許仮出願第62/879,894号および同第62/879,912号に対する優先権の恩恵を主張し、両出願の内容全体は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
1.本開示の分野
本発明は、全体として、医薬、感染性疾患、および免疫学の分野に関する。より詳細には、本開示は、カンジダ属(Candida)の種に結合するヒト抗体および播種性カンジダ症を有する対象の治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
2.背景
侵襲性真菌感染症の最も一般的な原因は、カンジダ属のメンバーである(Kim and Sudbery, 2011)。播種性カンジダ症はすべての院内血流感染症のうちの第3位にランク付けされ、抗真菌療法にもかかわらず、罹患した患者の少なくとも40%がこの疾患で死亡すると考えられ、これは、いかなる他の全身性真菌症よりも多い症例死亡数の原因である。1年につき播種性カンジダ症の60,000~70,000症例が米国単独で生じ、関連する医療費は20~40億ドル/年であると推定される。ヒト病原体である、多数の種のカンジダ属が存在し、最も医学的に関連するものは、同定された最も一般的な種であるC.アルビカンス(C. albicans)(約60%);C.グラブラタ(C. glabrata)(約15~20%);血管カテーテルを有する入院患者で主に見つかるC.パラプローシス(約10~20%);がん(白血病)の患者および骨髄移植を受けた患者で見つかることが多い、C.トロピカリス(C. tropicalis)(約6~12%);C.ギリエルモンジィ(C. guilliermondi)(<5%);C.ルシタニエ(C. lusitaniae)(<5%);およびHIV陽性の患者で主として見つかる、C.デュブリニエンシス(C. dubliniensis)である。
【0004】
非アルビカンス種によって引き起こされる感染症の高い発生率、および抗真菌薬抵抗性の出現について懸念が高まっている。非アルビカンス種の中で、C.トロピカリスおよびC.パラプローシスは両方とも一般にアゾールに対して感受性であるが、C.トロピカリスは、C.アルビカンスよりも、Fluconazole(商標)に対して感受性が低い。C.グラブラタは、抗真菌剤、特にFluconazole(商標)に対して、本質的により抵抗性である。C.クルセイ(C. krusei)はFluconazole(商標)に対して本質的に抵抗性であり、この種によって引き起こされる感染症は、以前のFluconazole(商標)予防法および好中球減少症に強く関連する(T Turner and Butler, 2014)。さらに、最近同定された新興多剤耐性系統であるC.アウリス(C. auris)の報告された感染症の発生率は、急速に高まっていると考えられる(Chowdhary et al., 2013)。特に、実質臓器移植後の侵襲性真菌症も重大な問題であり、移植のタイプに応じて最大で40%までの発生率、ならびに臓器および真菌のタイプに応じて25%から95%の罹患率および死亡率である(LowおよびRotstein, 2011)。
【0005】
播種性カンジダ症に関連する高い死亡率および健康管理システムに対する著しい負担を考慮すると、現在の抗真菌療法を補うかまたは該療法に取って代わる新しいアプローチが必要とされる。1つのアプローチは、カンジダ属感染症を治療するかまたは予防するための抗体の使用である。この可能性は、C.アルビカンスに対する抗体が播種性カンジダ症に対する宿主防御に寄与することを示すいくつかの方面の証拠:B細胞枯渇マウスがカンジダ属に対する感受性の増大を示し、免疫グロブリン(IVIG)療法が肝移植におけるカンジダ症の低い発生率に関連する(Casadevall et al., 2002)ことによって支持される。
【0006】
エフングマブ(Efungumab)(Mycograb(商標))と呼ばれるヒト組換え単鎖抗体断片(SCFV)が、播種性カンジダ症に対する免疫療法として開発されていた(Karwa and Wargo, 2009)。このSCFVは、カンジダ属由来の熱ショックタンパク質HSP70に結合し、アムホテリシンBの有効性を高めた。この薬物は、製造上の問題が理由で規制当局の承認を2回拒否され、遊離シスチン残基が除去された改変バージョンが試験された。アムホテリシンB活性の増強が検出されたが、非特異的であることが分かった(Richie et al., 2012)。エフングマブのさらなる開発は断念された。ごく最近、カンジダ属の細胞壁タンパク質であるHyr1に対する、および他の未同定の細胞壁タンパク質に対するいくつかのヒトモノクローナル抗体が単離され、記載された(Rudkin et al., 2018)。これらの抗体は、播種性カンジダ症のマウスモデルにおいて受動移入後に保護するが、これらは、オプソニン作用によって機能し、Cアルビカンスの食作用を増強する。この作用様式は、マクロファージまたは好中球機能が損なわれている可能性がある免疫抑制または免疫無防備状態患者において治療剤としてこれらの抗体を使用する際に欠点である可能性があり、さらに、C.アルビカンスは、Pra1の機能を通じてC.アルビカンスの補体媒介性接着および取り込みを低減させるためのメカニズムを有する(Luo et al., 2010)。
【0007】
抗体の役割についてのさらなる証拠は、カンジダ属感染症から保護するための糖ポリペプチドベースのワクチンの開発に関する研究から生じる。例えば、C.アルビカンスの細胞壁タンパク質で見出された6種類の推定上のT細胞ペプチドが保護的β-1,2-マンノトリオース[β-(Man)3]グリカンエピトープにコンジュゲートされて、糖ポリペプチドコンジュゲートが作製された(Xin et al., 2008)。括弧内に表示される、ペプチドが由来する6種類のタンパク質は、以下を含めた細胞壁関連タンパク質である:フルクトース二リン酸アルドラーゼ(Fba)(YGKDVKDLDYAQE;SEQ ID NO:40);メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸ホモシステインメチルトランスフェラーゼ(MET6)(PRIGGQRELKKITE;SEQ ID NO:38)、さらに4種類の他のタンパク質(Xin et al., 2008)。この研究の意図は、T細胞エピトープとしてペプチドを使用し、糖ポリペプチドコンジュゲートのグリカン部分に対する防御的抗体応答を促進することであった。したがって、免疫化プロトコールは、細胞性免疫(CMI)応答ではなく抗体を偏重するように設計され、抗体は、様々なコンジュゲートのグリカン部分とペプチド部分の両方に対して生成された。マウスの生存および低い腎臓真菌負荷量によって証明されるように、β-(Man)3-Fbaおよびβ-(Man)3-Methコンジュゲートを含めた糖コンジュゲートのうちの3種類が、真菌を用いた血行性攻撃誘発からの保護を誘導した。さらに、FbaおよびMet6ペプチドに対して生成されたマウスモノクローナル抗体は、単独で、受動移入後に同様にマウスを保護した(Xin et al., 2008)。
【0008】
多くのカンジダ属タンパク質が病原性因子として同定されており(Mayer, Wilson, and Hube, 2014)、これらには、ムーンライティングタンパク質であるフルクトース二リン酸アルドラーゼ(Fba)および5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸ホモシステインメチルトランスフェラーゼ(Met6)が含まれる(Gancedo et al., 2016; Medrano-Diaz, et al., 2018)。これらの代謝酵素は、通常は細胞内に位置するが、未知のメカニズムによって分泌もされ、真菌の細胞壁に結合し、ここで病原性因子として働く。ムーンライティングタンパク質は、プラスミノーゲン、フィブロネクチン、細胞外基質タンパク質、または補体結合のインヒビターの結合を含めた様々なメカニズムを通じて病原性因子として機能するか、または宿主細胞に結合して炎症反応を動員する接着分子として働く。したがって、これらの病原性因子は、宿主防御メカニズムを侵攻し、これを逃れる能力を病原性カンジダ属の種に与える(Henderson and Martin, 2011)。
【0009】
米国特許第6,309,642号、同第6,391,587号、および同第6,403,090号、ならびに米国特許出願公開第2003/0072775号は、ホスホルマンナ(phosphormanna)エピトープを模倣するペプチドまたはペプチドミモトープをコードするポリヌクレオチドに基づくワクチンを開示し、MAb B6.1を含めて、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)の感染症に対する受動免疫化のためのマウスモノクローナル抗体を開示している。
【発明の概要】
【0010】
概要
したがって、本発明によれば、対象においてカンジダ属感染症を検出する方法が提供される。複数の態様では、方法は、(a)該対象由来の試料を、それぞれ表3および4のクローンと対での(clone-paired)重鎖および軽鎖CDR配列を有する抗体もしくは抗体断片と接触させる工程;(b)該試料中のカンジダ抗原への該抗体もしくは抗体断片の結合によって、該試料中のカンジダ属を検出する工程、またはこれらの組み合わせを含む。試料は体液、例えば、血液、痰、涙、唾液、粘液もしくは血清、精液、子宮頸部もしくは膣分泌物、羊水、胎盤組織、尿、滲出液、漏出液、組織擦過物、または糞便であり得る。検出は、ELISA、RIA、ラテラルフローアッセイ、またはウエスタンブロットを含むことができる。方法は、工程(a)および(b)を再度実施し、かつ最初のアッセイと比較してカンジダ抗原レベルの変化を判定する工程をさらに含むことができる。カンジダ属は、限定されないが、C.アルビカンス、C.グラブラタ、C.トロピカリス、またはC.アウリスを含めた任意の病原性カンジダ属の種であり得る。
【0011】
複数の態様では、抗体または抗体断片は、表1に記載されるクローンと対での可変配列のいずれかによってコードされ得る。抗体または抗体断片は、表1に記載される配列に対して少なくとも70%の同一性を有する可変配列によってコードされ得る。ある特定の態様では、抗体または抗体断片は、表1に記載されるクローンと対での可変配列に対して約70%、約80%、または約90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコードされる。抗体または抗体断片は、表1に記載されるクローンと対での配列に対して約95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコードされ得る。複数の態様では、抗体または抗体断片は、表2のクローンと対での配列による軽鎖および重鎖可変配列を含む。抗体または抗体断片は、表2に記載される配列に対して少なくとも70%の同一性を有する可変配列を含む。ある特定の態様では、抗体または抗体断片は、表2のクローンと対での配列に対して約70%、約80%、または約90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含むことができる。抗体または抗体断片は、表2のクローンと対での配列に対して約95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含むことができるか、または表2のクローンと対での配列による軽鎖および重鎖可変配列を含むことができる。抗体断片は、組換えscFv(単鎖断片可変)抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、またはFv断片であり得る。
【0012】
別の態様では、カンジダ属に感染した対象を治療するか、またはカンジダ属の病気に罹る危険性がある対象の感染の可能性を低減させる方法であって、それぞれ表3および4のクローンと対での重鎖および軽鎖CDR配列を有する抗体または抗体断片を該対象に送達する工程を含む、方法が提供される。抗体または抗体断片は、表3および4に記載される配列に対して少なくとも70%の同一性を有するクローンと対でのCDRを有することができる。ある特定の態様では、抗体または抗体断片は、表3および4の配列に対して約70%、約80%、または約90%同一であるクローンと対でのCDRを有する。抗体または抗体断片は、表1に記載されるクローンと対での可変配列によってコードされ得る。抗体または抗体断片は、表1に記載される配列に対して少なくとも70%の同一性を有する可変配列によってコードされ得る。ある特定の態様では、抗体または抗体断片は、表1に記載されるクローンと対での可変配列に対して約70%、約80%、または約90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコードされる。抗体または抗体断片は、表1に記載されるクローンと対での配列に対して約95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコードされ得る。複数の態様では、抗体または抗体断片は、表2のクローンと対での配列による軽鎖および重鎖可変配列を含む。抗体または抗体断片は、表2に記載される配列に対して少なくとも70%の同一性を有する可変配列を含むことができる。ある特定の態様では、抗体または抗体断片は、表2のクローンと対での配列に対して約70%、約80%、または約90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含むことができる。抗体または抗体断片は、表2のクローンと対での配列に対して約95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含むことができるか、または表2のクローンと対での配列による軽鎖および重鎖可変配列を含むことができる。カンジダ属は、限定されないが、C.アルビカンス、C.グラブラタ、C.トロピカリス、またはC.アウリスを含めた任意の病原性カンジダ属の種であり得る。
【0013】
抗体断片は、組換えscFv(単鎖断片可変)抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、またはFv断片であり得る。抗体はキメラ抗体または二重特異性抗体であり得る。抗体は、IgG、または組換えIgG抗体もしくは抗体断片であり得、該組換えIgG抗体または抗体断片は、FcR相互作用を変化させる(排除するもしくは増強する)ように、半減期を延長させるように、および/または治療効果を増大させるように、LALA、N297、GASD/ALIE、YTE、またはLS変異など変異導入されたFc部分を含むか、あるいはグリカンの酵素的もしくは化学的付加もしくは除去、または規定のグリコシル化パターンを用いて操作された細胞株における発現など、FcR相互作用を変化させる(排除するまたは増強する)ようにグリカン修飾されているFc部分を含む。抗体または抗体断片は細胞透過性ペプチドをさらに含むことができる。抗体または抗体断片はイントラボディであり得る。
【0014】
抗体または抗体断片は、感染より前にまたは感染の後に投与することができる。対象は、妊娠中の女性、性的に活発な女性、または不妊治療を受けている女性であり得る。送達することは、抗体または抗体断片の投与、あるいは該抗体または抗体断片をコードするRNAもしくはDNA配列またはベクターを用いる遺伝子送達を含むことができる。
【0015】
さらに別の態様では、モノクローナル抗体が提供され、抗体または抗体断片は、それぞれ表3および4のクローンと対での重鎖および軽鎖CDR配列を特徴とする。抗体または抗体断片は、表3および4に記載される配列に対して少なくとも70%の同一性を有するクローンと対でのCDRを有することができる。ある特定の態様では、抗体または抗体断片は、表3および4の配列に対して約70%、約80%、または約90%同一であるクローンと対でのCDRを有する。抗体または抗体断片は、表1に記載されるクローンと対での可変配列によってコードされ得る。抗体または抗体断片は、表1に記載される配列に対して少なくとも70%の同一性を有する可変配列によってコードされ得る。ある特定の態様では、抗体または抗体断片は、表1に記載されるクローンと対での可変配列に対して約70%、約80%、または約90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコードされる。抗体または抗体断片は、表1に記載されるクローンと対での配列に対して約95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコードされ得る。複数の態様では、抗体または抗体断片は、表2のクローンと対での配列による軽鎖および重鎖可変配列を含む。抗体または抗体断片は、表2に記載される配列に対して少なくとも70%の同一性を有する可変配列を含むことができる。ある特定の態様では、抗体または抗体断片は、表2のクローンと対での配列に対して約70%、約80%、または約90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含むことができる。抗体または抗体断片は、表2のクローンと対での配列に対して約95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含むことができるか、または表2のクローンと対での配列による軽鎖および重鎖可変配列を含むことができる。カンジダ属は、限定されないが、C.アルビカンス、C.グラブラタ、C.トロピカリス、またはC.アウリスを含めた任意の病原性カンジダ属の種であり得る。
【0016】
抗体断片は、組換えscFv(単鎖断片可変)抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、またはFv断片であり得る。抗体はキメラ抗体または二重特異性抗体であり得る。抗体は、IgG、または、組換えIgG抗体もしくは抗体断片であり得、該組換えIgG抗体または抗体断片は、FcR相互作用を変化させる(排除するもしくは増強する)ように、半減期を延長させるように、および/または治療効果を増大させるように、LALA、N297、GASD/ALIE、YTE、またはLS変異など変異導入されたFc部分を含むか、あるいはグリカンの酵素的もしくは化学的付加もしくは除去、または規定のグリコシル化パターンを用いて操作された細胞株における発現などFcR相互作用を変化させる(排除するまたは増強する)ようにグリカン修飾されているFc部分を含む。抗体または抗体断片は細胞透過性ペプチドをさらに含むことができる。抗体または抗体断片はイントラボディであり得る。
【0017】
なおさらに別の態様では、抗体または抗体断片をコードするハイブリドーマまたは操作された細胞が提供され、抗体または抗体断片は、それぞれ表3および4のクローンと対での重鎖および軽鎖CDR配列を特徴とする。抗体または抗体断片は、表3および4に記載される配列に対して少なくとも70%の同一性を有するクローンと対でのCDRを有することができる。ある特定の態様では、抗体または抗体断片は、表3および4の配列に対して約70%、約80%、または約90%同一であるクローンと対でのCDRを有する。抗体または抗体断片は、表1に記載されるクローンと対での可変配列によってコードされ得る。抗体または抗体断片は、表1に記載される配列に対して少なくとも70%の同一性を有する可変配列によってコードされ得る。ある特定の態様では、抗体または抗体断片は、表1に記載されるクローンと対での可変配列に対して約70%、約80%、または約90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコードされる。抗体または抗体断片は、表1に記載されるクローンと対での配列に対して約95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコードされ得る。複数の態様では、抗体または抗体断片は、表2のクローンと対での配列による軽鎖および重鎖可変配列を含むことができる。抗体または抗体断片は、表2に記載される配列に対して少なくとも70%の同一性を有する可変配列を含むことができる。ある特定の態様では、抗体または抗体断片は、表2のクローンと対での配列に対して約70%、約80%、または約90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含むことができる。抗体または抗体断片は、表2のクローンと対での配列に対して約95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含むことができ、該軽鎖および重鎖可変配列を含んでもよいか、または表2のクローンと対での配列による軽鎖および重鎖可変配列を含むことができる。
【0018】
抗体断片は、組換えscFv(単鎖断片可変)抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、またはFv断片であり得る。抗体はキメラ抗体または二重特異性抗体であり得る。抗体は、IgG、または組換えIgG抗体もしくは抗体断片であり得、該組換えIgG抗体または抗体断片は、FcR相互作用を変化させる(排除するもしくは増強する)ように、半減期を延長させるように、および/または治療効果を増大させるように、LALA、N297、GASD/ALIE、YTE、またはLS変異など変異導入されたFc部分を含むか、あるいはグリカンの酵素的もしくは化学的付加もしくは除去、または規定のグリコシル化パターンを用いて操作された細胞株における発現など、FcR相互作用を変化させる(排除するまたは増強する)ようにグリカン修飾されているFc部分を含む。抗体または抗体断片は細胞透過性ペプチドをさらに含むことができる。抗体または抗体断片はイントラボディであり得る。
【0019】
さらなる態様では、それぞれ表3および4のクローンと対での重鎖および軽鎖CDR配列を特徴とする1種類または複数種類の抗体または抗体断片を含むワクチン製剤が提供される。抗体または抗体断片は、表3および4に記載される配列に対して少なくとも70%の同一性を有するクローンと対でのCDRを有することができる。ある特定の態様では、抗体または抗体断片は、表3および4の配列に対して約70%、約80%、または約90%同一であるクローンと対でのCDRを有する。抗体または抗体断片は、表1に記載されるクローンと対での可変配列によってコードされ得る。抗体または抗体断片は、表1に記載される配列に対して少なくとも70%の同一性を有する可変配列によってコードされ得る。ある特定の態様では、抗体または抗体断片は、表1に記載されるクローンと対での可変配列に対して約70%、約80%、または約90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコードされる。抗体または抗体断片は、表1に記載されるクローンと対での配列に対して約95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコードされ得る。複数の態様では、抗体または抗体断片は、表2のクローンと対での配列による軽鎖および重鎖可変配列を含むことができる。抗体または抗体断片は、表2に記載される配列に対して少なくとも70%の同一性を有する可変配列を含むことができる。ある特定の態様では、抗体または抗体断片は、表2のクローンと対での配列に対して約70%、約80%、または約90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含むことができる。抗体または抗体断片は、表2のクローンと対での配列に対して約95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含むことができ、該軽鎖および重鎖可変配列を含んでもよいか、または表2のクローンと対での配列による軽鎖および重鎖可変配列を含むことができる。
【0020】
抗体断片は、組換えscFv(単鎖断片可変)抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、またはFv断片であり得る。抗体はキメラ抗体または二重特異性抗体であり得る。抗体は、IgGまたは組換えIgG抗体もしくは抗体断片であり得、該組換えIgG抗体または抗体断片は、FcR相互作用を変化させる(排除するもしくは増強する)ように、半減期を延長させるように、および/または治療効果を増大させるように、LALA、N297、GASD/ALIE、YTE、またはLS変異など変異導入されたFc部分を含むか、あるいはグリカンの酵素的もしくは化学的付加もしくは除去、または規定のグリコシル化パターンを用いて操作された細胞株における発現など、FcR相互作用を変化させる(排除するまたは増強する)ようにグリカン修飾されているFc部分を含む。抗体または抗体断片は細胞透過性ペプチドをさらに含むことができる。抗体または抗体断片はイントラボディであり得る。
【0021】
なお別の態様では、本明細書において記載される第1の抗体または抗体断片をコードする1種類または複数種類の発現ベクターを含むワクチン製剤が提供される。発現ベクターは、シンドビスウイルスまたはVEEベクターであり得る。ワクチンは、針注射による、ジェット注射による、またはエレクトロポレーションによる送達のために製剤化することができる。ワクチンは、第2の抗体または抗体断片、例えば、本明細書において記載される別個の抗体または抗体断片をコードする1種類または複数種類の発現ベクターをさらに含むことができる。
【0022】
さらに、追加的な態様は、カンジダ属に感染した妊娠中の対象またはカンジダ属の感染の危険性がある妊娠中の対象の胎盤および/または胎児の健康を保護する方法であって、それぞれ表3および4のクローンと対での重鎖および軽鎖CDR配列を有する抗体または抗体断片を該対象に送達する工程を含む、方法を含む。抗体または抗体断片は、表3および4に記載される配列に対して少なくとも70%の同一性を有するクローンと対でのCDRを有することができる。ある特定の態様では、抗体または抗体断片は、表3および4の配列に対して約70%、約80%、または約90%同一であるクローンと対でのCDRを有する。抗体または抗体断片は、表1に記載されるクローンと対での可変配列によってコードされ得る。抗体または抗体断片は、表1に記載される配列に対して少なくとも70%の同一性を有する可変配列によってコードされ得る。ある特定の態様では、抗体または抗体断片は、表1に記載されるクローンと対での可変配列に対して約70%、約80%、または約90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコードされる。抗体または抗体断片は、表1に記載されるクローンと対での配列に対して約95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコードされ得る。複数の態様では、抗体または抗体断片は、表2のクローンと対での配列による軽鎖および重鎖可変配列を含むことができる。抗体または抗体断片は、表2に記載される配列に対して少なくとも70%の同一性を有する可変配列を含むことができる。ある特定の態様では、抗体または抗体断片は、表2のクローンと対での配列に対して約70%、約80%、または約90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含むことができる。抗体または抗体断片は、表2のクローンと対での配列に対して約95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含むことができ、該軽鎖および重鎖可変配列を含んでもよいか、または表2のクローンと対での配列による軽鎖および重鎖可変配列を含むことができる。カンジダ属は、限定されないが、C.アルビカンス、C.グラブラタ、C.トロピカリス、またはC.アウリスを含めた任意の病原性カンジダ属の種であり得る。
【0023】
抗体断片は、組換えscFv(単鎖断片可変)抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、またはFv断片であり得る。抗体はキメラ抗体または二重特異性抗体であり得る。抗体は、IgGまたは組換えIgG抗体もしくは抗体断片であり得、該組換えIgG抗体または抗体断片は、FcR相互作用を変化させる(排除するもしくは増強する)ように、半減期を延長させるように、および/または治療効果を増大させるように、LALA、N297、GASD/ALIE、YTE、またはLS変異など変異導入されたFc部分を含むか、あるいはグリカンの酵素的もしくは化学的付加もしくは除去、または規定のグリコシル化パターンを用いて操作された細胞株における発現など、FcR相互作用を変化させる(排除するまたは増強する)ようにグリカン修飾されているFc部分を含む。抗体または抗体断片は細胞透過性ペプチドをさらに含むことができる。抗体または抗体断片はイントラボディであり得る。
【0024】
抗体または抗体断片は、感染より前にまたは感染の後に投与することができる。対象は、妊娠中の女性、性的に活発な女性、または不妊治療を受けている女性であり得る。送達することは、抗体または抗体断片の投与、あるいは該抗体または抗体断片をコードするRNAもしくはDNA配列またはベクターを用いる遺伝子送達を含むことができる。抗体または抗体断片は、未治療の対照と比較して胎盤のサイズを増大させることができるか、または未治療の対照と比較して胎児の真菌の負荷および/もしくは病態を低減させることができる。
【0025】
別の態様は、カンジダ抗原の抗原的完全性、コンフォメーションの適正さ、および/または配列の適正さを判定する方法であって、(a)該抗原を含む試料を第1のそれぞれ表3および4のクローンと対での重鎖および軽鎖CDR配列を有する抗体または抗体断片と接触させる工程;ならびに(b)該抗原への該第1の抗体または抗体断片の検出可能な結合によって、該抗原の抗原的完全性、コンフォメーションの適正さ、および/または配列の適正さを判定する工程を含む、方法を含む。試料は、組換えで産生された抗原、またはワクチン製剤もしくはワクチン産生バッチを含むことができる。検出は、ELISA、RIA、ウエスタンブロット、表面プラスモン共鳴法もしくはバイオレイヤー干渉法を使用するバイオセンサー、またはフローサイトメトリー染色を含むことができる。方法は、工程(a)および(b)を再度実施して、経時的に抗原の抗原安定性を判定する工程をさらに含むことができる。カンジダ属は、限定されないが、C.アルビカンス、C.グラブラタ、C.トロピカリス、またはC.アウリスを含めた任意の病原性カンジダ属の種であり得る。
【0026】
第1の抗体または抗体断片は、表1に記載されるクローンと対での可変配列によってコードされ得る。抗体または抗体断片は、表1に記載される配列に対して少なくとも70%の同一性を有する可変配列によってコードされ得る。ある特定の態様では、抗体または抗体断片は、表1に記載されるクローンと対での可変配列に対して約70%、約80%、または約90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコードされる。抗体または抗体断片は、表1に記載されるクローンと対での配列に対して約95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコードされ得る。複数の態様では、抗体または抗体断片は、表2のクローンと対での配列による軽鎖および重鎖可変配列を含むことができる。抗体または抗体断片は、表2に記載される配列に対して少なくとも70%の同一性を有する可変配列を含むことができる。ある特定の態様では、抗体または抗体断片は、表2のクローンと対での配列に対して約70%、約80%、または約90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含むことができる。抗体または抗体断片は、表2のクローンと対での配列に対して約95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含むことができ、該軽鎖および重鎖可変配列を含んでもよいか、または表2のクローンと対での配列による軽鎖および重鎖可変配列を含むことができる。第1の抗体断片は、組換えscFv(単鎖断片可変)抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、またはFv断片であり得る。
【0027】
方法は、(c)前記抗原を含む試料を第2のそれぞれ表3および4のクローンと対での重鎖および軽鎖CDR配列を有する抗体または抗体断片と接触させる工程;ならびに(d)前記抗原への該第2の抗体または抗体断片の検出可能な結合によって、前記抗原の抗原的完全性を決定する工程をさらに含むことができる。検出は、ELISA、RIA、ウエスタンブロット、表面プラスモン共鳴法もしくはバイオレイヤー干渉法を使用するバイオセンサー、またはフローサイトメトリー染色を含むことができる。方法は、工程(c)および(d)を再度実施して、経時的に抗原の抗原安定性を判定する工程をさらに含むことができる。
【0028】
第2の抗体または抗体断片は、表1に記載されるクローンと対での可変配列によってコードされ得る。抗体または抗体断片は、表1に記載される配列に対して少なくとも70%の同一性を有する可変配列によってコードされ得る。ある特定の態様では、抗体または抗体断片は、表1に記載されるクローンと対での可変配列に対して約70%、約80%、または約90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコードされる。抗体または抗体断片は、表1に記載されるクローンと対での配列に対して約95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコードされ得る。複数の態様では、抗体または抗体断片は、表2のクローンと対での配列による軽鎖および重鎖可変配列を含むことができる。抗体または抗体断片は、表2に記載される配列に対して少なくとも70%の同一性を有する可変配列を含むことができる。ある特定の態様では、抗体または抗体断片は、表2のクローンと対での配列に対して約70%、約80%、または約90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含むことができる。抗体または抗体断片は、表2のクローンと対での配列に対して約95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含むことができ、該軽鎖および重鎖可変配列を含んでもよいか、または表2のクローンと対での配列による軽鎖および重鎖可変配列を含むことができる。第2の抗体断片は、組換えscFv(単鎖断片可変)抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、またはFv断片であり得る。
【0029】
さらに、モノクローナル抗体またはその断片が提供され、抗体または抗体断片はクローンと対での重鎖および軽鎖CDR配列を含み、重鎖CDR配列は表3より選択され、かつ軽鎖CDR配列は表4より選択され、かつ抗体またはその断片は、
図10、
図11、
図12、および
図13からなる群より選択されるリボン図に描写される赤色またはオレンジ色のリボンからの少なくとも5アミノ酸を含むそのVLおよび/またはVHパラトープを介して、その同種抗原に特異的に結合する。
【0030】
抗体または抗体断片は、表1より選択されるクローンと対での配列による軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされ得るか、表1より選択されるクローンと対での配列に対して少なくとも70%、80%、もしくは90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされ得るか、または表1より選択されるクローンと対での配列に対して少なくとも95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変ヌクレオチド配列によってコードされ得る。抗体または抗体断片は、表2のクローンと対での配列より選択される軽鎖可変配列および重鎖可変配列を含むことができるか、表2より選択されるクローンと対での配列に対して少なくとも70%、80%、もしくは90%の同一性を有する軽鎖可変配列および重鎖可変配列を含むことができるか、または表2より選択されるクローンと対での配列に対して95%の同一性を有する軽鎖可変配列および重鎖可変配列を含むことができる。
【0031】
抗体断片は、組換えscFv(単鎖断片可変)抗体、Fab断片、
またはFv断片であり得る。抗体はキメラ抗体または二重特異性抗体であり得る。抗体は、IgGであり得るか、または変異導入されたFc部分を含む組換えIgG抗体もしくは抗体断片であり得る。変異導入されたFc部分は、FcR相互作用を変化させる、排除する、もしくは増強することができるか;半減期を延長させることができるか;治療効果を増大させることができるか;またはそれらの組み合わせを行うことができる。変異導入されたFc部分は、LALA変異、N297変異、GASD/ALIE変異、YTE変異、またはLS変異を含むことができる。変異導入されたFc部分はグリカン修飾され得る。グリカン修飾は、FcR相互作用を変化させる、排除する、または増強することができる。グリカン修飾は、グリカンの酵素的もしくは化学的付加または除去、または規定のグリコシル化パターンを用いて操作された細胞株における発現を含むことができる。抗体または抗体断片は、細胞透過性ペプチドをさらに含むことができ、かつ/またはイントラボディである。
【0032】
特許請求の範囲および/または明細書において用語「含む(comprising)」とともに使用される場合の単語「1つの(a)」または「1つの(an)」の使用は「1つ」を意味することができるが、これはまた、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1つより多い」の意味とも矛盾がない。単語「約」は、およそ、大まかに、だいたい、または~の辺り(in the region of)を意味するように本明細書において使用される。用語「約」が数値範囲とともに使用される場合、これは、記載される数値の上下の境界を拡張することによって、その範囲を変更する。用語「約」は、定められた数のプラスまたはマイナス5%を意味することができる。
【0033】
本明細書において記載される任意の方法または組成物は、本明細書において記載される任意の他の方法または組成物に関して実施され得る。本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかとなると考えられる。しかし、詳細な説明および特定例は本開示の特定の態様を示すが、この詳細な説明から、本開示の趣旨および範囲の様々な変更および改変が当業者に明らかとなると考えられるので、例示のためにのみ与えられることを理解されたい。
【0034】
本特許または出願ファイルは、カラーで製作された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公開のコピーは、請求と必要な手数料の支払いの際に当局によって提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
以下の図面は本明細書の一部を形成し、本発明のある特定の局面をさらに実証するために含まれる。本開示は、本明細書において提供される特定の態様の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面のうちの1つまたは複数を参照することにより、より良く理解することができる。
【
図1】10人の異なるヒトドナー(L70.S、L10.S、L56.S、C22-1、C06-1、C07-3、C14-2、L57.S、C-14-1、S-079)由来の血清試料について、ペプチドFba(SEQ ID NO:40)またはMet6(SEQ ID NO:38)または緩衝液でコーティングされたウェルに結合する抗体のELISAのデータを示す。陽性対照は、1.10C(抗Met6;SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:13)ならびに1.11D(抗Fba;SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11)を含んでいた。
【
図2】MET6ペプチドとの1.10Cの反応および結合親和性を決定するためにインヒビターとして合成MET6ペプチド(SEQ ID NO:38)を使用した、抗体1.10C(抗MET6;SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:13)についてのELISAの阻害データを示す。各点は3回の測定の平均であり、示されるデータは4回の独立の実験の典型的な実験に由来する。
【
図3】Fbaペプチドとの1.11Dの反応および結合親和性を決定するためにインヒビターとして合成Fbaペプチド(SEQ ID NO:40)を使用した、抗体1.11D(抗Fba;SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11)についてのELISAの阻害データを示す。各点は、3回の測定の平均であり、示されるデータは4回の独立の実験の典型的な実験に由来する。
【
図4】バイオレイヤー干渉法によって決定した場合の、同種ビオチン化ペプチド(MET6-ビオチン、SEQ ID NO:39;Fba-ビオチン、SEQ ID NO:41)への結合についての、抗体1.10C(右パネル)および1.11D(左パネル)の動的親和定数の決定を示す。
【
図5】バイオレイヤー干渉法によって決定した、同種ビオチン化ペプチド(MET6-ビオチン、SEQ ID NO:39;Fba-ビオチン、SEQ ID NO:41)への結合についての、抗体1.10C(右パネル)および1.11D(左パネル)の定常状態親和定数の決定を示す。
【
図6】バイオレイヤー干渉法を用いて、抗体1.11D(抗Fba;SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11)が、C.アルビカンス(上部)およびC.アウリス(下部)の両方由来の全長組換えFbaタンパク質に特異的に結合することを実証する。抗体1.10C(抗MET6;SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:13)を陰性対照として使用した。
【
図7】バイオレイヤー干渉法を用いて、抗体1.10C(抗MET6;SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:13)が、両C.アルビカンス由来の全長組換えMET6タンパク質に特異的に結合することを実証する。抗体1.11D(抗Fba;SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11)を陰性対照として使用した。
【
図8】MAb 1.10C(抗MET6;SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:13)ならびに1.11D(抗Fba;SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11)の受動移入による送達が、C.アルビカンスによる死亡に対して保護をもたらすことを実証する。致死用量のC.アルビカンス3153A細胞を用いた血行性攻撃誘発より4時間前に、いずれかの抗体を単独でまたは組み合わせてC57B/L6マウスに腹腔内投与した。Fluconazole(商標)(FLC)を陽性対照として使用し、リン酸緩衝食塩水(DPBS)を陰性対照として使用した。
【
図9】MAb 1.10C(抗MET6;SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:13)ならびに1.11D(抗Fba;SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11)を含むカクテルの受動移入による送達がC.アウリスによる死亡に対して保護をもたらすことを実証する。致死用量のC.アウリス細胞を用いた血行性攻撃誘発より4時間前に、いずれかの抗体を単独でまたは組み合わせてA/Jマウスに腹腔内投与した。Fluconazole(商標)(FLC)を陽性対照として使用し、リン酸緩衝食塩水(DPBS)を陰性対照として使用した。
【
図10】Met6抗体2B10についてのタンパク質モデリング。
【
図11】Met6抗体2B10についてのタンパク質モデリング。
【
図12】Fba抗体2B10についてのタンパク質モデリング。
【
図13】Fba抗体2B10についてのタンパク質モデリング。
【発明を実施するための形態】
【0036】
例示的態様の説明
上述したように、本開示は、カンジダ属に結合しかつそれを中和する抗体およびその使用のための方法に関する。
【0037】
本開示のこれらおよび他の局面を以下に詳細に記載する。
【0038】
1つまたは複数の好ましい態様の詳細な説明が本明細書に提供される。しかし、本発明を様々な形態で具体化することができることを理解されたい。したがって、本明細書において開示される特定の詳細は、限定として解釈されるべきではなく、むしろ特許請求の範囲の根拠として、および任意の妥当な様式で本発明を用いるために当業者に教示するための代表的な根拠として解釈されるべきである。
【0039】
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈において別段明記しない限り複数の意味を含む。
【0040】
「例えば」、「などの」、「を含めて」などのフレーズのいずれかが本明細書において使用される場合はいつでも、特に明確に記載されない限り、フレーズ「および非限定的に」が続くと理解される。同様に、「一例」、「例示的な」などは、非限定的であると理解される。
【0041】
用語「実質的に」は、意図された目的に悪影響を与えない記述語からの逸脱を可能にする。記述用語は、単語「実質的に」が明確に記載されていない場合でさえも、用語「実質的に」によって修飾されると理解される。
【0042】
用語「含む(comprising)」および「含む(including)」および「有する(having)」および「含む(involving)」(ならびに同様に、「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「有する(has)」、および「含む(involves)」)などは互換的に使用され、同じ意味を有する。特に、これらの用語のそれぞれは、「含む(comprising)」の一般的な米国特許法の定義と一致して定義され、したがって、「少なくとも以下の」を意味するオープン用語であると解釈され、また、さらなる特色、制限、局面などを排除しないと解釈される。したがって、例えば、「工程a、b、およびcを含む(involving)プロセス」は、プロセスが少なくとも工程a、b、およびcを含む(includes)ことを意味する。用語「1つの(a)」または「1つの(an)」が使用される場合はいつでも、文脈上そのような解釈が無意味でない限り、「1つまたは複数」が理解される。
【0043】
本明細書において互換的に使用される場合、「対象」、「個体」、または「患者」は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを指すことができる。ある特定の態様では、「対象」、「個体」、または「患者」は爬虫類を指す。哺乳動物には、限定されないが、マウス、類人猿、ヒト、家畜、競技用動物、およびペットが含まれる。用語「ペット」には、イヌ、ネコ、モルモット、マウス、ラット、ウサギ、フェレット、ヘビ、カメ、トカゲ、トリなどが含まれる。家畜という用語には、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ブタ、ウシ、ロバ、ラマ、アルパカ、シチメンチョウなどが含まれる。
【0044】
用語「試料」または「生体試料」は、対象から単離された組織、細胞、および生体液、ならびに対象内に存在する組織、細胞、および流体を指すことができる。したがって、用語「試料」または「生体試料」の用法の中には、血液、および血清、血漿、またはリンパを含めて、血液の画分または成分が含まれる。「試料」または「生体試料」は、痰、涙、唾液、粘液もしくは血清、精液、子宮頸部もしくは膣分泌物、羊水、胎盤組織、尿、滲出液、漏出液、組織擦過物、または糞便をさらに含むことができる。
【0045】
I.カンジダ属およびカンジダ症
A.カンジダ属の種
カンジダ属は酵母の属であり、世界的に真菌感染症の最も一般的な原因である。多くの種は、ヒトを含めた宿主の無害な共生生物または内部共生体であるが、粘膜バリアが破壊されるか、または免疫系が損なわれる場合、これは、侵攻し、日和見感染として公知である疾患を引き起こす可能性がある。カンジダ・アルビカンスは、ヒトおよび他の動物において、最も一般的に単離される種であり、感染症(カンジダ症または鵞口瘡)を引き起こす可能性がある。ワイン醸造では、カンジダ属のいくつかの種はワインを害する可能性がある。
【0046】
哺乳動物宿主中のC.アルビカンスを含めて多くの種が腸管内菌叢で見つかるが、昆虫宿主において内部共生体として生息しているものもいる。特に免疫系が害された(免疫無防備状態)の患者において、血流および主要臓器の全身感染症(カンジダ血症または侵襲性カンジダ症)に、米国において年間90,000人を超える人々が冒される。
【0047】
抗生物質は、胃腸の(GI)カンジダ属の異常増殖およびGI粘膜への侵入を含めて、酵母(真菌)感染症を促進する。女性のほうが生殖器の酵母感染症により罹りやすいが、男性も感染する可能性がある。抗生物質の長期使用などのある特定の要因は、男性と女性の両方について危険性を高める。糖尿病または免疫無防備状態の人々、例えばHIVに感染したものは、酵母感染症により罹りやすい。
【0048】
研究室で増殖させた場合は、属は大きな丸い白色またはクリーム色のコロニーとして現れ、これは室温において寒天プレート上で酵母臭を発する。C.アルビカンスはグルコースおよびマルトースを発酵させて酸およびガスにし、ショ糖を発酵させて酸にし、ラクトースは発酵させず、これは、C.アルビカンスを他の属の種と区別するのに役立つ。
【0049】
最近の分子系統学的研究は、カンジダ属は極端に多系統的である(天然の群を形成しない遠縁種を包含する)ことを示す。安価な分子的方法の出現前は、感染した患者から単離された酵母は、他のカンジダ属の種への関連性の明らかな証拠なしで、カンジダ属と呼ばれることが多かった。例えば、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、カンジダ・ギリエルモンジィ(Candida guilliermondii)、およびカンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaniae)は、明らかに誤分類されており、一旦系統学的再構成が完了すれば、他の属に入れられることになる。
【0050】
カンジダ属のいくつかの種は、ポリペプチドのアミノ酸配列へのそれらの核遺伝子の翻訳において、非標準的な遺伝コードを使用する。この代替コードを保有する種の間の遺伝コードの違いは、コドンCUG(通常はアミノ酸ロイシンをコードする)が酵母によって異なるアミノ酸、セリンとして翻訳されることである。これらの種におけるCUGコドンの代替翻訳は、セリン-tRNA(ser-tRNACAG)の核酸配列が理由であり、この核酸配列は、アンチコドンの5'の33位に位置するグアノシンを有する。すべての他のtRNAでは、この位置は、通常はピリミジン(しばしばウリジン)が占める。この遺伝コードの変更は、原核生物と真核生物の両方において、センスコドンの再割り当てをともなう、細胞質mRNAにおける唯一のそのような公知の変化である。この遺伝コードは、生物の環境へのより迅速な適応のためのメカニズムであり得るだけでなく、種分化を助長した遺伝的バリアを生成することによって、カンジダ属の進化において重要な役割を果たし得る。
【0051】
カンジダ属は、健康な成人の皮膚に少数でほぼ普遍的に存在し、C.アルビカンスは、気道、胃腸菅、および女性の生殖道の粘膜の正常な菌叢の一部である。他の組織と比較した皮膚の乾燥は真菌の増殖を防止するが、損傷した皮膚または間擦性領域の皮膚は、迅速な増殖により適している。
【0052】
C.アルビカンスを含めて、いくつかの種の異常増殖は、表在性、例えば、中咽頭カンジダ症(鵞口瘡)または外陰部カンジダ症(膣カンジダ症)および亀頭炎を引き起こす可能性がある包皮下カンジダ症から全身性、例えば、真菌血症および侵襲性カンジダ症に及ぶ感染症を引き起こす可能性がある。口腔カンジダ症は高齢の義歯使用者で一般的である。他の健康な個体では、これらの感染症は、局所的または全身性抗真菌医薬(一般に、ミコナゾールまたはクロトリマゾールのような一般市販薬の抗真菌治療薬)で治癒させることができる。衰弱したもしくは免疫無防備状態の患者では、または静脈内に(血流中に)導入された場合、カンジダ症は、膿瘍、血栓性静脈炎、心内膜炎、または眼もしくは他の臓器の感染症をもたらす全身性疾患になる可能性がある。典型的には、比較的重度の好中球減少症(低好中球)が、カンジダ属が皮膚の防御を通り抜け、より深い組織で疾患を引き起こすための必要条件であり、そのような場合では、感染皮膚部位の機械的破壊が、典型的には、より深い組織の真菌侵襲の要因である。
【0053】
カンジダ属の種の中で、ヒト菌叢の通常の構成成分、すなわち、皮膚ならびに胃腸菅および尿生殖器菅の共生生物であるC.アルビカンスは、カンジダ血流感染症(カンジダ血症)の大部分に関与する。さらに、C.グラブラタおよびC.ルゴサ(C. rugosa)によって引き起こされる感染症の発生率の増加があり、これは、現在使用されているアゾール系の抗真菌薬に感受性が低いためである可能性がある。他の医学的に重要な種には、C.パラプローシス、C.トロピカリス、C.アウリス、およびC.デュブリニエンシスが含まれる。C.オレオフィラ(C. oleophila)などのカンジダ属の種は、果物において生物農薬として使用されている。
【0054】
B.カンジダ症
カンジダ症は、任意の種類のカンジダ属(酵母のうちの一種類)による真菌感染症である。カンジダ属が口を冒す場合、カンジダ症は一般に鵞口瘡と呼ばれる。徴候および症状には、舌または口および咽喉の他の領域の白色の斑点が含まれる。他の症状には痛みおよび嚥下の問題が含まれ得る。カンジダ属が膣を冒す場合、カンジダ症は一般に酵母感染症と呼ばれる。徴候および症状には、生殖器のそう痒感、灼熱感、および時には膣からの白色の「カッテージチーズ様の」分泌物が含まれる。陰茎の酵母感染症はあまり一般的でなく、典型的には痒い発疹を呈する。非常にまれに、酵母感染症は侵襲性になり、体の他の部分に伝播する可能性がある。これは、関与する部分に応じて他の症状とともに発熱をもたらす可能性がある。
【0055】
20種類より多いカンジダ属が感染症を引き起こす可能性があり、カンジダ・アルビカンスが最も一般的である。口の感染症は、生後1ヶ月未満の子供、高齢者、および免疫系が弱いもので最も一般的である。弱い免疫系をもたらす条件には、HIV/AIDS、臓器移植後に使用される薬物適用、糖尿病、およびコルチコステロイドの使用が含まれる。他の危険性には、義歯および抗生物質療法後が含まれる。膣感染症は妊娠中、免疫系が弱いものにおいて、抗生物質使用後に、より一般的に生じる。侵襲性カンジダ症の危険性がある個体には、低出生時体重の赤ん坊、手術から回復中の人々、集中治療室に入れられた人々、およびその他の点で免疫系が損なわれたものが含まれる。
【0056】
口の感染症を予防するための試みには、免疫機能が低下したものにおけるクロルヘキシジン口腔洗浄薬の使用、および吸入ステロイドの使用後に口を洗うことが含まれる。頻繁な膣感染症を有するものの間でさえ、予防または治療のいずれかのためのプロバイオティクスを支持する証拠はほとんどない。口の感染症のために、局所的クロトリマゾールまたはニスタチンによる治療が通常有効である。これらが機能しない場合、口または静脈内によって、フルコナゾール、イトラコナゾール、またはアムホテリシンBを使用することができる。クロトリマゾールを含めて、いくつかの局所的抗真菌医薬を膣感染症に使用することができる。広範な疾患を有するものにおいて、カスポファンギンまたはミカファンギンなどのエキノキャンディンが使用されている。別の方法として、数週間の静脈内アムホテリシンBを使用することができる。非常に危険性が高いある特定の群において、抗真菌医薬を予防的に使用することができる。
【0057】
口の感染症は生後1ヶ月未満の赤ん坊の約6%で生じる。がんに対する化学療法を受けているものの約20%、およびAIDSを有するものの20%も本疾患を発症する。女性の約4分の3は、人生のある時点で少なくとも1つの酵母感染症を有する。危険因子を有するものを除いて、広範な疾患はまれである。
【0058】
カンジダ症の徴候および症状は、冒された領域によって変動する。大抵のカンジダ性感染症は、発赤、そう痒感、および不快感などの最小限の合併症しかもたらさないが、合併症は、ある特定の集団において未治療のまま放置した場合、重度であるか、またはさらに致死的であり得る。健康な(免疫適格性の)人は、カンジダ症は、通常、皮膚、手指の爪もしくは足指の爪(爪真菌症)、または粘膜、例えば、口腔および咽頭(鵞口瘡)、食道、ならびに生殖器(膣、陰茎など)の局在型感染症であり、健康な個体においてあまり一般的でないが、胃腸管、尿路、および気道は、カンジダ属感染症の部位である。
【0059】
免疫無防備状態の個体では、食道のカンジダ属感染症は健康な個体よりもより頻繁に生じ、全身性になる可能性がより高く、はるかに深刻な状態、すなわちカンジダ血症と呼ばれる真菌血症を引き起こす。食道カンジダ症の症状には、嚥下困難、有痛性嚥下、腹痛、悪心、および嘔吐が含まれる。
【0060】
鵞口瘡は、一般に乳児で見られる。鵞口瘡は、数週間より長く続くかない限り、乳児において異常であるとみなされない。
【0061】
膣または外陰部の感染症は、重度のそう痒感、灼熱感、痛み、刺激、および白っぽいまたは白っぽい灰色のカッテージチーズ様の分泌物を引き起こす可能性がある。男性の生殖器の感染症(亀頭炎鵞口瘡(balanitis thrush))の症状には、陰茎頭部周囲の赤色の皮膚、陰茎頭部の腫脹、刺激状態、そう痒、および痛み、包皮下の塊だらけの濃い分泌物、不快な臭気、包皮を収縮させることが困難であること(包茎)、および排尿時または性行為中の疼痛が含まれる。
【0062】
健康な個体における胃腸カンジダ症の一般的な症状は、肛門のそう痒感、げっぷ、腹部膨満感、消化障害、悪心、下痢、ガス、腸の痙攣、嘔吐、および胃潰瘍である。肛門周囲のカンジダ症は肛門のそう痒感を引き起こす可能性があり、病変部は、外見が紅斑性、丘疹状、または潰瘍性である可能性があり、これは、性行為でうつる疾患であるとはみなされない。腸管におけるカンジダ属の異常な増殖はディスバイオシスにつながり得る。まだ明らかでないが、この変化は、過敏性腸症候群および他の胃腸疾患として一般に説明される症状の源であり得る。
【0063】
カンジダ属酵母は、一般に、健康なヒトに存在し、人体の口腔および腸の正常な菌叢の一部であることが多く、特に皮膚上にいるが、その増殖は、ヒト免疫系によって、および他の微生物、例えば、人体の同じ部位を占める細菌の競合によって通常制限される。カンジダ属は、特に皮膚上で、増殖に水分を必要とする。例えば、濡れた水着の長期間の着用は危険因子であると考えられる。極端な場合では、皮膚または粘膜の表在感染は血流中に進入し、全身性カンジダ属感染症を引き起こす可能性がある。
【0064】
カンジダ症の危険性を高める因子には、HIV/AIDS、単核球症、がん治療、ステロイド、ストレス、抗生物質の使用、糖尿病、および栄養素欠乏が含まれる。ホルモン補充療法および不妊症治療も素因であり得る。抗生物質による治療は、口腔および腸の菌叢中の資源に対する酵母の天然の競合相手を排除することにつながる可能性があり、それによって、状態の重症度を高める。弱まっているかもしくは未発達の免疫系または代謝疾病は、カンジダ症の重要な素因である。免疫系が弱まっている人々のほぼ15%が、カンジダ属の種によって引き起こされる全身性疾病を発症する。単純炭水化物が多い食事は、口腔カンジダ症の割合に影響を及ぼすことが分かっている。
【0065】
C.アルビカンスは、明らかに健康な女性、すなわち、感染症の症状をほとんどまたは全く経験していない女性の19%の膣から単離された。洗浄剤もしくは潅注液の外部使用または内部撹乱(ホルモンもしくは生理的)は、乳酸菌、例えば乳酸桿菌(lactobacilli)からなる正常な膣菌叢を乱し、カンジダ細胞の異常増殖をもたらし、感染症の症状、例えば局部的炎症を引き起こし得る。妊娠および経口避妊薬の使用は、危険因子として報告されている。糖尿病および抗生物質の使用も酵母感染症の割合の増加と関連がある。
【0066】
陰茎のカンジダ症では、原因には、感染した個体との性交、低免疫、抗生物質、および糖尿病が含まれる。男性の生殖器の酵母感染症はあまり一般的でないが、感染したパートナーとの性交を介した直接接触から引き起こされる陰茎の酵母感染症は珍しくない。
【0067】
膣カンジダ症の症状はより一般的な細菌性膣症の中にも存在し、好気性膣炎は明瞭であり、鑑別診断において排除されるべきである。2002年の研究では、酵母感染症を自己治療している女性の33%しか実際はそのような感染症を有していなかったが、大抵は細菌性膣症または混合型感染症のいずれかを有していた。
【0068】
酵母感染症の診断は、顕微鏡検査または培養のいずれかを介して行われる。光学顕微鏡による同定については、患部の擦過物またはスワブを顕微鏡スライド上に設置する。次いで1滴の10%水酸化カリウム(KOH)溶液を検体に加える。KOHは皮膚細胞を溶解するが、カンジダ属細胞をインタクトなまま残し、これにより、多くのカンジダ属種に特有である仮性菌糸および出芽酵母細胞の可視化が可能になる。
【0069】
培養方法については、無菌のスワブを感染した皮膚表面にこすりつける。次いで、スワブを培養培地上に画線する。培養を37℃(98.6°F)で数日間インキュベートして、酵母または細菌のコロニーを発達させる。コロニーの特性(例えば、形態および色)によって、疾患症状を引き起こす生物の初期診断が可能になり得る。
【0070】
呼吸器、胃腸、および食道カンジダ症は、診断するために内視鏡検査を必要とする。胃腸カンジダ症については、真菌の培養のために、十二指腸から3~5ミリリットルの流体試料を得ることが必要である。胃腸カンジダ症の診断は、1ミリリットルあたり1,000を超えるコロニー形成単位を含む培養に基づく。カンジダ症は、以下の種類に分けることができる。
粘膜のカンジダ症
口腔カンジダ症(鵞口瘡、中咽頭カンジダ症)
・偽膜性カンジダ症
・紅斑性カンジダ症
・過形成性カンジダ症
・義歯関連口内炎-カンジダ属生物が症例の約90%に関与する。
・口角口唇炎-カンジダ属の種が症例の約20%に関与し、C.アルビカンスと黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の混合感染が症例の約60%に関与する。
・正中菱形舌炎
カンジダ性外陰膣炎(膣酵母感染症)
カンジダ性亀頭炎-ほぼ、包皮が切り取られていない男性でのみ生じる、陰茎亀頭の感染症
食道カンジダ症(カンジダ性食道炎)
胃腸カンジダ症
呼吸器カンジダ症
皮膚カンジダ症
カンジダ性毛包炎
カンジダ性間擦疹
カンジダ性爪囲炎
肛門周囲のカンジダ症。肛門そう痒症として現れる可能性がある。
カンジダ疹
慢性粘膜皮膚カンジダ症
先天性皮膚カンジダ症
おむつカンジダ症:子供のおむつ部分の感染症
カンジダ性指間びらん症
カンジダ属によって引き起こされるカンジダ性爪真菌症(爪感染症)
全身性カンジダ症
敗血症につながり得る真菌血症の形態である、カンジダ血症
侵襲性カンジダ症(播種性カンジダ症)-カンジダ属による臓器感染症
慢性全身性カンジダ症(肝脾カンジダ症)-場合によっては好中球減少症からの回復中に発生する。
抗生物質カンジダ症(医原性カンジダ症)
【0071】
免疫系を支持し、単純炭水化物が多くない食事は、口腔および腸の菌叢の健康的なバランスに寄与する。酵母感染症は糖尿病と関連するが、血糖制御のレベルは危険性に影響を及ぼさない可能性がある。綿の下着の着用は、長期間にわたって濡れた衣服を着用しないことに加えて、皮膚および膣の酵母感染症の発症の危険性を低減させるのに役立つ可能性がある。
【0072】
口腔衛生は、免疫系が弱まっている場合に、口腔カンジダ症を予防するのに役立つ可能性がある。がん治療を受けている人々にとって、クロルヘキシジン口腔洗浄薬は、鵞口瘡を予防するかまたは低減させることができる。吸入コルチコステロイドを使用する人々は、吸入器を使用した後に水または口腔洗浄薬で口をすすぐことによって、口腔カンジダ症の発生の危険性を低減させることができる。
【0073】
再発性酵母感染症を経験する女性については、口腔または膣内のプロバイオティクスがさらなる感染症を予防するのに役立つという限られた証拠がある。これには、丸剤としてかまたはヨーグルトとしてかのいずれか含まれる。
【0074】
カンジダ症は抗真菌医薬で治療され、抗真菌医薬には、クロトリマゾール、ニスタチン、フルコナゾール、ボリコナゾール、アムホテリシンB、およびエキノキャンディンが含まれる。静脈内フルコナゾールまたは静脈内エキノキャンディン、例えばカスポファンギンは、免疫無防備状態または重病の個体を治療するために一般に使用される。
【0075】
カンジダ症の管理に関する臨床診療ガイドラインの2016年の改訂は、様々なカンジダ属の種、抗真菌薬物抵抗性の形態、免疫状態、ならびに感染の局在および重症度を含む、カンジダ属感染症に関する多数の特定の治療レジメンを収載する。免疫適格性個体の胃腸カンジダ症は、2~3週間の1日あたり100~200mgのフルコナゾールで治療される。
【0076】
口および咽頭のカンジダ症は抗真菌医薬で治療される。口腔カンジダ症は、通常、局所治療に応答し、そうでなければ、口腔感染症に対して全身性抗真菌医薬が必要とされ得る。皮下脂肪のカンジダ性皮膚感染症(カンジダ性間擦疹)は、典型的には、局所的抗真菌治療薬(例えば、ニスタチンまたはミコナゾール)によく応答する。口を経由する抗真菌薬による全身性治療は、重症例のために、または局所的療法による治療が不成功である場合のためにとっておかれる。カンジダ食道炎は、経口的または静脈内治療することができ、重度のまたはアゾール抵抗性の食道カンジダ症のために、アムホテリシンBによる治療が必要になり得る。
【0077】
膣酵母感染症は、典型的には局所的抗真菌剤で治療される。1回用量のフルコナゾールは、膣酵母感染症の治療において90%有効である。重度の非再発症例については、数用量のフルコナゾールが推奨される。局部治療は、膣坐剤または薬用潅注液を含むことができる。他の種類の酵母感染症は、異なる投薬を必要とする。ゲンチアナバイオレットは、母乳栄養の赤ん坊の鵞口瘡に使用することができる。C.アルビカンスはフルコナゾールに対して抵抗性を発達させることができ、これは、再発性口腔感染症に対してフルコナゾールの複数のクールで治療されることが多いHIV/AIDSを有するものにおいて、よりいっそう問題となる。
【0078】
妊娠中の膣酵母感染症については、使用可能な安全性データのために、局所的イミダゾールまたはトリアゾール抗真菌薬が最適な療法と考えられる。これらの局所製剤の全身的吸収は最小限であり、経胎性移行の危険性をほとんどもたらさない。妊娠中の膣酵母感染症では、局所的アゾール抗真菌薬による治療は、より短い継続期間ではなく、7日間が推奨される。活動性感染症に対して、プロバイオティクスからの恩恵は見出されていない。
【0079】
全身性カンジダ症は、カンジダ属酵母が血流に進入する場合に生じ、中枢神経系、腎臓、肝臓、骨、筋肉、関節、脾臓、または眼を含めた他の臓器に伝播する(播種性カンジダ症になる)可能性がある。治療は、典型的には、経口または静脈内抗真菌医薬からなる。血液のカンジダ属感染症では、静脈内フルコナゾールまたはエキノキャンディン、例えばカスポファンギンを使用することができる。アムホテリシンBは別の選択肢である。
【0080】
II.モノクローナル抗体およびその生成
本明細書において使用する場合、「抗体」または「抗原結合ポリペプチド」は、抗原を特異的に認識し、これに結合するポリペプチドまたはポリペプチド複合体を指すことができる。抗体は、全抗体および任意の抗原結合断片またはそれらの単鎖であり得る。例えば、「抗体」は、抗原への結合の生物活性を有する免疫グロブリン分子の少なくとも一部を含む分子を含む、任意のタンパク質またはペプチドを含むことができる。非限定例は、重鎖もしくは軽鎖の相補性決定領域(CDR)またはそれらのリガンド結合部分、重鎖または軽鎖可変領域、重鎖または軽鎖定常領域、フレームワーク(FR)領域、あるいはそれらの任意の部分、あるいは結合タンパク質の少なくとも一部である。本明細書において使用する場合、用語「抗体」は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原に特異的に結合する(抗原と免疫反応する)抗原結合部位を含む分子を指すことができる。「特異的に結合する」または「免疫反応する」は、抗体が望ましい抗原の1つまたは複数の抗原決定基と反応し、かつ他のポリペプチドと反応しないことを意味する。
【0081】
本明細書において使用する場合、用語「抗体断片」または「抗原結合断片」は、抗体の一部、例えば、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFvなどである。構造にかかわらず、抗体断片は、インタクトな抗体によって認識されるのと同じ抗原と結合する。用語「抗体断片」は、アプタマー、ミニボディ、およびダイアボディを含むことができる。用語「抗体断片」は、特定の抗原に結合して複合体を形成することによって抗体のように働く、任意の合成または遺伝子操作タンパク質を含むこともできる。本明細書において記載される、抗体、抗原結合ポリペプチド、バリアント、または誘導体には、限定されないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体、単鎖抗体、エピトープ結合断片、例えば、Fab、Fab’およびF(ab’)2、Fd、Fv、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、dAb(ドメイン抗体)、ミニボディ、ジスルフィド結合したFv(sdFv)、VLドメインまたはVHドメインのいずれかを含む断片、Fab発現ライブラリーによって生成される断片、ならびに抗イディオタイプ(抗Id)抗体が含まれる。
【0082】
「単鎖可変断片」または「scFv」は、免疫グロブリンの重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質を指すことができる。単鎖Fv(「scFv」)ポリペプチド分子は共有結合したVH:VLヘテロ二量体であり、これは、ペプチドをコードするリンカーによって連結しているVHをコードする遺伝子およびVLをコードする遺伝子を含む遺伝子融合体から発現され得る。Huston et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 85(16):5879-5883 (1988)を参照されたい。いくつかの局面では、該領域は10~約25アミノ酸の短いリンカーペプチドで結合している。リンカーは、可動性のためのグリシン、および溶解度のためのセリンまたはスレオニンに富んでいる可能性があり、VHのN末端をVLのC末端と接続するかまたはその逆に接続することができる。このタンパク質は、定常領域の除去およびリンカーの導入にもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。天然にアグリゲートしているが化学的に分離された、抗体V領域由来の軽および重ポリペプチド鎖を、抗原結合部位の構造と実質的に類似している3次元構造にフォールドすると考えられるscFv分子に変換するために、化学構造を識別するためのいくつかの方法が記載されている。例えば、それぞれが参照によりその全体が組み入れられる、米国特許第5,091,513号;同第5,892,019号;同第5,132,405号;および同第4,946,778号を参照されたい。
【0083】
本発明の局面は、単離されたモノクローナル抗体を提供する。細胞および核酸、例えばDNAまたはRNAに関して本明細書において使用する場合、用語「単離された」は、それぞれ、巨大分子の天然源に存在する他のDNAまたはRNAから分離された分子を指すことができる。用語「単離された」は、組換えDNA法によって生成される場合に細胞性物質、ウイルス性物質、もしくは培養培地が、または化学的に合成される場合に化学的前駆物質もしくは他の化学物質が実質的にない、核酸またはペプチドを指すこともできる。例えば、「単離された核酸」は、断片として天然に存在せず、天然状態で見出されない核酸断片を含むことができる。「単離された」は、他の細胞タンパク質または組織から単離された細胞またはポリペプチドを指すこともできる。単離されたポリペプチドは、精製されたポリペプチドと組換えポリペプチドの両方を含むことができる。例えば、「単離された抗体」は、その天然環境の成分から分離されたおよび/または回収されたものであり得る。その天然環境の混入成分は、抗体についての診断的または治療的使用を妨げると考えられる物質であり、混入成分には、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質が含まれ得る。特定の態様では、抗体は、(1)ローリー法によって決定される場合に抗体の95重量%超、最も詳細には99重量%超まで、および;(2)スピニングカップシーケネーター(spinning cup sequenator)の使用によって、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分である程度まで;または(3)クマシーブルーもしくは銀染色を使用する還元もしくは非還元条件下のSDS-PAGEによって均一になるまで、精製される。抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないと考えられるので、単離された抗体には、組換え細胞内のインサイチューの抗体が含まれる。しかし、通常は、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程によって調製されると考えられる。
【0084】
基本的な4鎖抗体単位は、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖から構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。IgM抗体は、J鎖と呼ばれるさらなるポリペプチドとともに5つの基本的なヘテロ四量体単位からなり、したがって、10個の抗原結合部位を含むが、分泌型IgA抗体は、重合して、J鎖とともに2~5個の基本的な4鎖単位を含む多価集合体を形成することができる。IgGの場合には、4鎖単位は、一般に約150,000ダルトンである。各L鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によってH鎖に連結しているが、2つのH鎖は、H鎖のアイソタイプに応じて、1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに連結している。各HおよびL鎖は規則的間隔の鎖内ジスルフィド結合も有する。各H鎖は、N末端に可変領域(VH)を、続いてαおよびγ鎖のそれぞれについて3つの定常ドメイン(CH)を、ならびにμおよびアイソタイプについて4つのCHドメインを有する。各L鎖は、N末端に可変領域(VL)を、続いてその他方の末端に定常ドメイン(CL)を有する。VLはVHと整列しており、CLは重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖可変領域と重鎖可変領域の間に境界面を形成すると考えられている。VHとVLの対形成は、単一抗原結合部位を一緒に形成する。異なるクラスの抗体の構造および性状について、例えば、Basic and Clinical Immunology, 8th edition, Daniel P. Stites, Abba I. Terr and Tristram G. Parslow (eds.), Appleton & Lange, Norwalk, Conn., 1994, page 71, and Chapter 6を参照されたい。
【0085】
任意の脊椎動物種由来のL鎖は、その定常ドメイン(CL)のアミノ酸配列に基づいて、カッパおよびラムダと呼ばれる2つの明らかに別個の種類のうちの1つに割り当られ得る。その重鎖(CH)の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは異なるクラスまたはアイソタイプに割り当てられ得る。免疫グロブリンの5つクラス:それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる重鎖を有するIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在する。それらγおよびαクラスは、CH配列および機能の比較的小さな違いに基づいてサブクラスにさらに分けられ、ヒトは、以下のサブクラスを発現する:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2。
【0086】
用語「可変」は、Vドメインのある特定のセグメントが、抗体間で配列が広範囲に異なることを指すことができる。Vドメインは抗原結合を媒介し、その特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を提供する。しかし、可変性は、可変領域の110アミノ酸のスパン全体にわたって均等に分布していない。代わりに、V領域は、それぞれ9~12アミノ酸長である「超可変領域」と呼ばれる極端な可変性のより短い領域によって分離された、15~30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる、比較的不変のストレッチからなる。ネイティブな重鎖および軽鎖の可変領域は、大部分がβシート構造をとり、3つの超可変領域によって接続されている、4つのFRをそれぞれ含み、該超可変領域は、βシート構造を接続し、ある場合にはβシート構造の一部を形成する、ループを形成する。各鎖の超可変領域はFRによって極めて近接して一緒に保持され、他の鎖からの超可変領域とともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)を参照されたい)。定常ドメインは、抗原への抗体の結合に直接的に関与していないが、様々なエフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、抗体依存性好中球食作用(ADNP)、および抗体依存性補体沈着(ADCD)における抗体の関与を示す。
【0087】
本明細書において使用する場合、用語「超可変領域」は、抗原結合に関与する、抗体のアミノ酸残基を指すことができる。超可変領域は、一般に、「相補性決定領域」または「CDR」からのアミノ酸残基、例えば、Kabatの番号付けシステム;Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)に従って番号付けした場合に、VLのだいたい約残基24~34(L1)、50~56(L2)、およびVHの89~97(L3)、ならびにだいたい約31~35(H1)、50~65(H2)、および95~102(H3);ならびに/または「高頻度可変ループ」からのそれらの残基(例えば、Chothiaの番号付けシステム;Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)に従って番号付けした場合に、VLの残基24~34(L1)、50~56(L2)、および89~97(L3)、ならびにVHの26~32(H1)、52~56(H2)、および95~101(H3);ならびに/または「高頻度可変ループ」/CDRからのそれらの残基(例えば、IMGTの番号付けシステム;Lefranc et al., Nucl. Acids Res. 27:209-212 (1999)、Ruiz et al., Nucl. Acids Res. 28:219-221 (2000)に従って番号付けした場合に、VLの残基27~38(L1)、56~65(L2)、および105~120(L3)、ならびにVHの27~38(H1)、56~65(H2)、および105~120(H3)を含む。任意で、抗体は、AHo; Honneger, A. and Plunkthun, A., J. Mol. Biol. 309:657-670 (2001)に従って番号付けした場合に、以下の箇所:VLの28、36(L1)、63、74~75(L2)、および123(L3)、ならびにVsubHの28、36(H1)、63、74~75(H2)、および123(H3)のうちの1つまたは複数に対称的な挿入を有する。
【0088】
「生殖細胞系列核酸残基」は、定常または可変領域をコードする生殖細胞系列遺伝子中に天然に存在する核酸残基を意味する。「生殖細胞系列遺伝子」は、生殖細胞(すなわち、卵子または精子になる運命にある細胞)で見出されるDNAである。「生殖細胞系列変異」は、生殖細胞または単細胞ステージの接合体で生じた、特定のDNAにおける遺伝性の変化を指し、子孫に伝えられる場合に、そのような変異が体のすべての細胞に組み込まれる。生殖細胞系列変異は、単一の体細胞中で獲得される体細胞変異とは対照的である。ある場合には、可変領域をコードする生殖細胞系列DNA配列中のヌクレオチドは、変異導入され(すなわち、体細胞変異)、かつ異なるヌクレオチドで置き換えられる。
【0089】
本明細書において使用する場合、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指すことができ、すなわち、少量で存在し得る、あり得る天然に存在する変異を除いては、集団を構成する個々の抗体は同一である。モノクローナル抗体は非常に特異的であり、単一部位に対して向けられる。さらに、様々な決定基(エピトープ)に対して向けられる様々な抗体を含むポリクローナル抗体調製物と対照的に、各モノクローナル抗体は抗原の単一決定基に対して向けられる。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体が混入しないで合成することができるという点において有利である。修飾語句「モノクローナル」は、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきでない。例えば、本発明に有用なモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature, 256:495 (1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ方法論によって調製することができ、または抗原特異的B細胞、感染もしくは免疫化に応答する抗原特異的形質芽球の単一細胞選抜、またはバルク選抜された抗原特異的コレクション中の単一細胞からの連結した重鎖もしくは軽鎖の捕獲後に、細菌細胞、真核動物細胞もしくは植物細胞において組換えDNA法を使用して作製することができる(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)。「モノクローナル抗体」は例えばClackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)に記載されている技法を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0090】
完全ヒト抗体は、CDRを含めた軽鎖と重鎖の両方全配列がヒト遺伝子から生じる抗体分子である。ヒトモノクローナル抗体は、例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozbor et al., Immunol Today 4: 72, 1983を参照されたい);およびヒトモノクローナル抗体を生成するためのEBVハイブリドーマ技法(Cole et al. In: MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96, 1985を参照されたい)を使用することによって、調製することができる。ヒトモノクローナル抗体は、ヒトハイブリドーマを使用することによって(Cote et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 80: 2026-2030, 1983を参照されたい)、またはインビトロで、エプスタイン・バーウイルスでヒトB細胞を形質転換することによって(Cole et al., In: MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96, 1985を参照されたい)、使用可能であり、産生することができる。
【0091】
さらに、ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含めて、他の技法によっても生成することができる(Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol, 227:381, 1991; Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581, 1991を参照されたい)。同様に、ヒト抗体は、内在性の免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に不活化されたトランスジェニック動物、例えばマウスにヒト免疫グロブリン座位を導入することによって、作製することができる。攻撃誘発の際に、ヒト抗体の産生が観察され、これは、遺伝子再編成、アセンブリー、および抗体レパートリーを含めたすべての点で、ヒトで見られるものと酷似している。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号、ならびにMarks et al., Bio/Technology 10, 779-783 (1992); Lonberg et al., Nature 368 856-859 (1994); Morrison, Nature 368, 812-13 (1994); Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-51 (1996); Neuberger, Nature Biotechnology 14, 826 (1996);およびLonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13 65-93 (1995)に記載されている。
【0092】
ヒト抗体は、動物の内在性抗体ではなく完全ヒト抗体を抗原による攻撃誘発に応答して産生するように改変されているトランスジェニック非ヒト動物を使用して産生することができる(PCT公報WO94/02602および米国特許第6,673,986号を参照されたい)。非ヒト宿主において重および軽免疫グロブリン鎖をコードする内在性遺伝子が無能力にされており、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードする活性座位が宿主のゲノム中に挿入される。ヒト遺伝子は、例えば、必須のヒトDNAセグメントを含む酵母人工染色体を使用して、組み込まれる。次いで、改変の全補完物(complement)よりも少ないものを含む中間のトランスジェニック動物を異種交配させることによって、すべての望ましい改変を提供する動物が後代として得られる。そのような非ヒト動物の好ましい態様はマウスであり、PCT公開WO 96/33735およびWO 96/34096に開示されているように、Xenomouse(商標)と呼ばれる。この動物は、完全にヒト免疫グロブリンを分泌するB細胞を産生する。抗体は、例えば、ポリクローナル抗体の調製物として、関心対象の免疫原による免疫化後に、該動物から、あるいは該動物に由来する不死化されたB細胞、例えば、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマから、直接的に得ることができる。さらに、ヒト可変領域を有する免疫グロブリンをコードする遺伝子を回収し、発現させて、抗体を直接的に得ることができるか、またさらに改変して、例えば、単鎖Fv(scFv)分子などの抗体の類似体を得ることができる。さらに、Creative BioLabs(Shirley, NY)などの会社は、本明細書において記載されるものと類似した技術を使用して、選択された抗原に対して向けられるヒト抗体を提供することに従事することができる。
【0093】
A.一般的方法
カンジダ属に結合するモノクローナル抗体はいくつかの用途を有すると考えられる。これらには、カンジダ属感染症の検出および診断で使用するための、ならびにカンジダ属感染症を治療するための診断キットの生成が含まれる。これらの文脈において、そのような抗体を診断用物質または治療用物質と関連付けること、それらを競合的アッセイにおいて捕獲剤または競合相手として使用すること、またはさらなる作用物質が加えられることなく、それらを個々に使用することができる。以下でさらに述べるように、抗体は変異導入または改変されることができる。抗体を調製しかつ特徴決定するための方法は、当技術分野において周知である(例えば、Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988;米国特許第4,196,265号を参照されたい)。
【0094】
モノクローナル抗体(MAb)を生成するための方法は、一般に、ポリクローナル抗体の調製について記載されるのと同じように開始する。これらの方法の両方のための第1の工程は、妥当な宿主の免疫化、あるいは以前の自然感染または認可されたかもしくは実験用のワクチンによるワクチン接種によって免疫のある対象の同定である。当技術分野において周知であるように、免疫化のための所与の組成物は、その免疫原性が変動し得る。したがって、ペプチドまたはポリペプチドの免疫原を担体に結合させることによって達成することができるように、宿主の免疫系をブーストすることが必要であることが多い。例示的かつ好ましい担体は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)およびウシ血清アルブミン(BSA)である。オボアルブミン、マウス血清アルブミン、またはウサギ血清アルブミンなどの他のアルブミンも担体として使用することができる。ポリペプチドを担体タンパク質にコンジュゲートするための手段は当技術分野において周知であり、該手段には、グルタルアルデヒド、m-マレイミドベンコイル(maleimidobencoyl)-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、カルボジイミド(carbodiimyde)、およびビス-ビアゾール化ベンジジンが含まれる。同様に当技術分野において周知であるように、特定の免疫原組成物の免疫原性は、アジュバントとして公知である免疫応答の非特異的刺激物質の使用によって、増強することができる。動物における例示的かつ好ましいアジュバントには、完全フロイントアジュバント(死滅結核菌を含む、免疫応答の非特異的刺激物質)、不完全フロインドアジュバント、および水酸化アルミニウムアジュバントが含まれ、ヒトでは、ミョウバン、CpG、MFP59、および免疫賦活性分子の組み合わせ(「アジュバントシステム」、例えば、AS01またはAS03)が含まれる。ナノ粒子ワクチン、または物理的送達システム(例えば、脂質ナノ粒子もしくは金バイオリスティックビーズ上)においてDNAもしくはRNA遺伝子として送達される、および針、遺伝子銃、経皮的エレクトロポレーションデバイスを用いて送達される、遺伝子にコードされる抗原を含めて、カンジダ属特異的B細胞を誘導するための接種のさらなる実験形態を行うことができる。抗原遺伝子は、複製可能なまたは複製欠損のウイルスベクター、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、またはαウイルスレプリコン、あるいはウイルス様粒子にコードされるものとしても運ぶことができる。
【0095】
天然の病原体に対するヒト抗体の場合には、適切なアプローチは、病原体に曝露された対象、例えば、疾患に罹ったと診断された対象を、あるいは病原体に対して防御免疫を生じさせるために、または実験用ワクチンの安全性もしくは有効性を試験するためにワクチン接種した対象を同定することである。循環抗病原体抗体を検出することができ、次いで、抗体陽性対象由来の、抗体をコードするかまたは産生するB細胞を得ることができる。
【0096】
ポリクローナル抗体の産生で使用される免疫原組成物の量は、免疫原の性質および免疫化のために使用される動物によって変動する。免疫原を投与するために様々な経路を使用することができる(皮下、筋肉内、皮内、静脈内、および腹腔内)。ポリクローナル抗体の産生は、免疫化された動物の血液を免疫化後の様々な時点でサンプリングすることによって、モニターすることができる。第2に、ブースター注射も与えることができる。ブーストおよび力価測定のプロセスは、適切な力価が達成されるまで繰り返される。望ましいレベルの免疫原性が得られると、免疫化された動物から採血することができ、血清を単離し保存することができ、かつ/または動物を使用してMAbを生成することができる。
【0097】
免疫化後に、MAb生成プロトコールで使用するために、抗体を産生することができる体細胞、特にBリンパ球(B細胞)が選択される。これらの細胞は、生検された脾臓、リンパ節、扁桃腺もしくはアデノイド、骨髄穿刺液もしくは生検、肺もしくはGI管のような粘膜臓器からの組織生検から、または循環血から得ることができる。次いで、免疫化された動物または免疫のあるヒト由来の抗体産生Bリンパ球を不死の骨髄腫細胞の細胞、一般に、免疫化された動物と同じ種のもの、またはヒトもしくはヒト/マウスキメラ細胞と融合する。ハイブリドーマ生成融合手順における使用に適する骨髄腫細胞株は、好ましくは非抗体産生であり、高い融合効率、および次いで、望ましい融合細胞(ハイブリドーマ)のみの増殖を支持するある特定の選択培地で増殖できなくする酵素欠乏を有する。当業者に公知であるように、いくつかの骨髄腫細胞のうちのいずれか1つを使用することができる(Goding, pp. 65-66, 1986; Campbell, pp. 75-83, 1984)。HMMA2.5細胞またはMFP-2細胞は、そのような細胞の特に有用な例である。
【0098】
抗体産生脾臓またはリンパ節細胞と骨髄腫細胞のハイブリッドを生成するための方法は、通常、体細胞を骨髄腫細胞と2:1の比率で混合することを含むが、比率は、細胞膜の融合を促進する1種類の作用物質または複数類の作用物質(化学的または電気的)の存在下で、それぞれ約20:1~約1:1まで変動し得る。ある場合には、初期工程としての、エプスタイン・バーウイルス(EBV)を用いたヒトB細胞の形質転換は、B細胞のサイズを増大させ、比較的大きなサイズの骨髄腫細胞との融合を増強する。EBVによる形質転換効率は、形質転換培地中でCpGおよびChk2インヒビター薬物を使用することによって増強される。あるいは、さらなる可溶性因子、例えば、IL-21およびTNFスーパーファミリーのII型メンバーであるヒトB細胞活性化因子(BAFF)を含む培地中で、CD40リガンド(CD154)を発現するトランスフェクトされた細胞株と共培養することによって、ヒトB細胞を活性化することができる。センダイウイルスを使用する融合方法は、Kohler and Milstein (1975; 1976)によって記載されており、ポリエチレングリコール(PEG)、例えば37%(v/v)PEGを使用するものは、Gefter et al. (1977)によって記載されている。電気的に誘導される融合方法の使用も妥当であり(Goding, pp. 71-74, 1986)、より良い効率のためのプロセスが存在する(Yu et al., 2008)。融合手順は、通常、約1×10-6~1×10-8の低頻度で生存可能なハイブリッドを生成するが、最適化された手順を用いると、200分の1に近い融合効率を達成することができる(Yu et al., 2008)。しかし、融合の比較的低い効率は、選択培地中で培養することによって、注入された親細胞(特に、通常は無限に分裂し続ける、注入された骨髄腫細胞)から生存可能な融合したハイブリッドが分化するので、問題をもたらさない。選択培地は、一般に、組織培養培地中でヌクレオチドのデノボ合成を遮断する作用物質を含むものである。例示的かつ好ましい作用物質は、アミノプテリン、メトトレキサート、およびアザセリンである。アミノプテリンおよびメトトレキサートは、プリンとピリミジンの両方のデノボ合成を遮断するが、アザセリンはプリン合成のみを遮断する。アミノプテリンまたはメトトレキサートが使用される場合は、培地は、ヌクレオチドの供給源としてヒポキサンチンおよびチミジンが補充される(HAT培地)。アザセリンが使用される場合は、培地はヒポキサンチンが補充される。B細胞源がEBV形質転換ヒトB細胞株である場合、骨髄腫と融合しなかったEBV形質転換株を排除するために、ウアバインが添加される。
【0099】
好ましい選択培地はHATまたはウアバインを含むHATである。ヌクレオチドサルベージ経路を働かせることができる細胞のみが、HAT培地中で生存することができる。骨髄腫細胞はサルベージ経路の重要な酵素、例えば、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)に欠損があり、この細胞は生存することができない。B細胞はこの経路を作動させることができるが、この細胞は培養中の生存期間が限られており、一般に、約2週間以内に死ぬ。したがって、選択培地中で生存することができる唯一の細胞は、骨髄腫とB細胞から形成されたハイブリッドである。融合に使用されるB細胞の供給源が、本明細書のように、EBV形質転換B細胞の株である場合、EBV形質転換B細胞が薬物死滅に感受性であるので、ウアバインをハイブリッドの薬物選択のために使用することもできるが、使用される骨髄腫パートナーは、ウアバイン抵抗性であるように選択される。
【0100】
培養は、特定のハイブリドーマが選択されるハイブリドーマの集団をもたらす。典型的には、ハイブリドーマの選択は、マイクロタイタープレートにおける単一クローンの希釈によって細胞を培養し、続いて、(約2~3週間後に)個々のクローンの上清を望ましい反応性について試験することによって行われる。アッセイは、高感度で、簡単で、かつ迅速であるべきであり、例えば、ラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ、細胞傷害性アッセイ、プラークアッセイ、ドット免疫結合アッセイなどである。次いで、選択したハイブリドーマを段階希釈するかまたはフローサイトメトリー選抜によって単一細胞選別し、個々の抗体産生細胞株にクローン化し、次いでこのクローンを無限に増殖させて、mAbを提供することができる。2つの基本的な方法で、MAb産生のために細胞株を活用することができる。ハイブリドーマの試料を動物(例えば、マウス)に(多くの場合、腹膜腔に)注射することができる。任意で、注射より前に、炭化水素、特に、プリスタン(テトラメチルペンタデカン)などの油で動物を準備刺激する。この方法でヒトハイブリドーマが使用される場合、腫瘍拒絶を防止するために、免疫無防備状態マウス、SCIDマウスに注射することが最適である。注射された動物は、融合細胞ハイブリッドによって産生される特定のモノクローナル抗体を分泌する腫瘍を発生する。次いで動物の体液、例えば、血清または腹水をタップして、高濃度でmAbを提供することができる。個々の細胞株をインビトロで培養することもでき、ここで、mAbが培養培地中に自然に分泌され、そこから、mAbを高濃度で容易に得ることができる。あるいは、ヒトハイブリドーマ細胞株をインビトロで使用して、細胞上清中に免疫グロブリンを産生することができる。細胞株を無血清培地での増殖に適合させて、高純度のヒトモノクローナル免疫グロブリンを回収する能力を最適化することができる。
【0101】
望ましい場合、濾過、遠心分離、および様々なクロマトグラフィー方法、例えば、FPLCまたはアフィニティークロマトグラフィーを使用して、いずれかの手段によって産生されたmAbをさらに精製することができる。本開示のモノクローナル抗体の断片は、酵素、例えば、ペプシンまたはパパインによる消化を含む方法によって、および/または化学的還元によるジスルフィド結合の切断によって、精製されたモノクローナル抗体から得ることができる。あるいは、本発明によって包含されるモノクローナル抗体断片は、自動ペピチド合成機を使用して合成することができる。
【0102】
例えば、分子クローニングアプローチを使用して、モノクローナル抗体を生成することができる。常磁性ビーズ選択またはフローサイトメトリー選抜を使用して、関心対象の抗原で標識された単一B細胞を物理的に選抜することができ、次いで、単一細胞からRNAを単離することができ、RT-PCRによって抗体遺伝子を増幅することができる。あるいは、抗原特異的なバルク選抜された細胞集団を微小胞に分離することができ、重鎖および軽鎖増幅産物の物理的結合、または小胞からの重鎖および軽鎖遺伝子の共通のバーコーディングを使用して、マッチした重鎖および軽鎖可変遺伝子を単一細胞から回収することができる。マッチした重鎖および軽鎖遺伝子は単一細胞を形成し、RT-PCRプライマーおよび細胞あたり1種類のバーコードで転写産物に印をつけるためのバーコードを有する細胞透過性ナノ粒子で細胞を処理することによって、抗原特異的B細胞の集団から得ることもできる。抗体可変遺伝子はまた、ハイブリドーマ株のRNA抽出により単離することができ、抗体遺伝子をRT-PCRによって得ることができ、免疫グロブリン発現ベクターにクローニングすることができる。あるいは、コンビナトリアル免疫グロブリンファージミドライブラリーを細胞株から単離されたRNAから調製し、真菌抗原を使用してパニングすることによって、妥当な抗体を発現するファージミドを選択する。従来のハイブリドーマ技法と比較したこのアプローチの利点は、単一ラウンドで、およそ104倍多くの抗体を産生し、スクリーニングすることができること、およびH鎖とL鎖の組み合わせによって新しい特異性が生じ、これによって、妥当な抗体を発見する機会がさらに増えることである。
【0103】
参照により本明細書に組み入れられる、本発明に有用な抗体の産生を教示する他の米国特許には、コンビナトリアルアプローチを使用したキメラ抗体の産生を記載する米国特許第5,565,332号;組換え免疫グロブリン調製物を記載する米国特許第4,816,567号;および抗体治療用物質コンジュゲートを記載する米国特許第4,867,973号が含まれる。
【0104】
B.本開示の抗体
本開示による抗体は、第1の例では、その結合特異性を特徴とし得る。本明細書において使用する場合、用語「免疫学的結合」、および「免疫学的結合性状」は、免疫グロブリン分子と免疫グロブリンが特異的である抗原との間に生じるタイプの非共有結合相互作用を指すことができる。免疫学的結合相互作用の強度または親和性は、相互作用平衡結合定数(KD)の観点から表すことができ、小さいKDほど大きな親和性を示す。当業者は、当業者に周知の技法を使用して所与の抗体の結合特異性/親和性を評価することによって、そのような抗体が本特許請求の範囲の範囲に入るかどうかを判定することができる。例えば、所与の抗体が結合するエピトープは、抗原分子内に位置する3個またはそれ以上(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個)のアミノ酸の単一の連続的配列を含むことができる(例えば、ドメイン中の直鎖状エピトープ)。あるいは、エピトープは、抗原分子内に位置する複数の非連続的アミノ酸(またはアミノ酸配列)を含むことができる(例えば、立体構造エピトープ)。本明細書において使用する場合、用語「エピトープ」は、免疫グロブリン、scFv、またはT細胞受容体に特異的に結合することができる任意のタンパク質決定基含むことができる。可変領域は、抗体が抗原上のエピトープを選択的に認識し、該エピトープに特異的に結合することを可能にする。例えば、抗体のVLドメインおよびVHドメイン、または相補性決定領域(CDR)のサブセットは組み合わさって、3次元の抗原結合部位を規定する可変領域を形成する。この4要素からなる抗体構造は、Yの各アームの末端に存在する抗原結合部位を形成する。エピトープの決定基は、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面グルーピングからなり、通常、特定の3次元構造特性および特定の荷電特性を有する。例えば、抗体は、ポリペプチドのN末端またはC末端ペプチドに対して産生させられ得る。より具体的には、抗原結合部位は、VHおよびVL鎖のそれぞれの3つのCDR(すなわち、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3)によって規定される。
【0105】
当業者に公知である様々な技法を使用して、抗体がポリペプチドまたはタンパク質内の「1つまたは複数のアミノ酸と相互作用する」かどうかを判定することができる。例示的な技法とは、例えば、常用のクロスブロッキングアッセイ、例えば、Antibodies, Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y.)に記載されているものが含まれる。クロスブロッキングは、様々な結合アッセイ、例えば、ELISA、バイオレイヤー干渉法、または表面プラスモン共鳴法で測定することができる。他の方法は、アラニンスキャニング変異分析、ペプチドブロット分析(Reineke (2004) Methods Mol. Biol. 248: 443-63)、ペプチド切断分析、単一粒子再構築、cryoEM、または断層撮影を使用する高分解能度電子顕微鏡技法、結晶学的研究、およびNMR分析が含まれる。さらに、抗原のエピトープ切除、エピトープ抽出、および化学修飾などの方法を用いることができる(Tomer (2000) Prot. Sci. 9: 487-496)。抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定するために使用することができる別の方法は、質量分析で検出される水素/重水素交換である。一般論として、水素/重水素交換方法は、関心対象のタンパク質を重水素標識し、続いて、重水素標識されたタンパク質に抗体を結合させることを含む。次に、タンパク質/抗体複合体を水に移し、抗体複合体によって保護されているアミノ酸内の交換可能なプロトンが、境界面の一部ではないアミノ酸内の交換可能なプロトンよりも遅い速度で、重水素から水素への逆交換を受ける。その結果、タンパク質/抗体境界面の一部を形成するアミノ酸は重水素を保持することができ、したがって、境界面に含まれていないアミノ酸と比較して、比較的高い質量を示す。抗体が解離した後、標的タンパク質をプロテアーゼ切断および質量分析に供し、それによって、抗体が相互作用する特定のアミノ酸に対応する重水素標識された残基を明らかにする。例えば、Ehring (1999) Analytical Biochemistry 267: 252-259; Engen and Smith (2001) Anal. Chem. 73: 256A-265Aを参照されたい。抗体がカンジダ属を中和する場合、高濃度の抗体の存在下で、インビトロまたは動物モデルでカンジダ属を増殖させることによって、抗体エスケープ変異型バリアント生物を単離することができる。抗体によって標的にされる抗原をコードするカンジダ属遺伝子の配列分析は、抗体エスケープを与える変異を明らかにし、これは、エピトープ中の残基、またはエピトープの構造にアロステリックに影響を及ぼす残基を示す。
【0106】
用語「エピトープ」は、Bおよび/またはT細胞が応答する抗原上の部位を指すことができる。B細胞エピトープは、連続的アミノ酸またはタンパク質の3次元フォールディングによって並べられる非連続的アミノ酸の両方から形成され得る。連続的アミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には変性溶媒への暴露の際に保持されるが、3次元フォールディングによって形成されるエピトープは、典型的には変性溶媒による処理の際に失われる。エピトープは、典型的には、少なくとも3個、より一般的には少なくとも5個または8個~10個のアミノ酸をユニークな空間コンフォメーションで含む。
【0107】
抗原構造ベースの抗体プロファイリング(ASAP)としても公知である修飾補助プロファイリング(MAP)は、化学的にまたは酵素的に修飾された抗原表面に対する各抗体の結合プロファイルの類似性に従って、同じ抗原に対して向けられる多数のモノクローナル抗体(mAb)をカテゴリー化する方法である(参照によりその全体が本明細書に具体的に組み入れられるUS 2004/0101920を参照されたい)。各カテゴリーは、別のカテゴリーによって表されるエピトープと明確に異なるかまたは部分的に重複するかのいずれかのユニークなエピトープを反映し得る。この技術は、遺伝的に同一の抗体の迅速なフィルタリングを可能にし、その結果、特徴決定は、遺伝的に別個の抗体に焦点を当てることができる。ハイブリドーマスクリーニングに適用する場合に、MAPは、望ましい特性を有するmAbを産生するまれなハイブリドーマクローンの同定を容易にすることができる。MAPは、異なるエピトープに結合する抗体の群に本開示の抗体を分類するために使用することができる。
【0108】
本開示は、同じエピトープまたは該エピトープの一部に結合することができる抗体を含む。その上、本開示は、標的またはその断片への結合について本明細書において記載される特定の例示的な抗体のいずれかと競合する抗体も含む。当技術分野において公知である常用の方法を使用することによって、抗体が参照抗体と同じエピトープに結合するかどうか、または抗体が結合について参照抗体と競合するかどうかを容易に判定することができる。例えば、試験抗体が参照と同じエピトープに結合するかどうかを判定するために、参照抗体を飽和条件下で標的に結合させる。次に、試験抗体が標的分子に結合する能力を評価する。参照抗体との飽和結合後に試験抗体が標的分子に結合することができる場合は、試験抗体が参照抗体と異なるエピトープに結合すると結論することができる。これに反して、参照抗体との飽和結合後に試験抗体が標的分子に結合することができない場合は、試験抗体は参照抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合することができる。
【0109】
抗体が結合について参照抗カンジダ抗体と競合するかどうかを判定するために、上記の結合方法論を以下の2つの方向で行う。第1の方向では、参照抗体を飽和条件下でカンジダ抗原に結合させ、続いて、カンジダ抗原への試験抗体の結合を評価する。第2の方向では、試験抗体を飽和条件下でカンジダ抗原分子に結合させ、続いて、カンジダ抗原への参照抗体の結合を評価する。両方の方向で、第1の(飽和)抗体のみがカンジダ抗原に結合することができる場合は、カンジダ抗原への結合について試験抗体と参照抗体が競合すると結論される。当業者が認識するように、結合について参照抗体と競合する抗体は必ずしも参照抗体と同一のエピトープに結合するとは限らない可能性があるが、重複するかまたは隣接するエピトープに結合することによって、参照抗体の結合を立体的に遮断することができる。
【0110】
2種類の抗体は、それぞれが、抗原への他方の結合を競合的に阻害する(遮断する)場合、同じまたは重複するエピトープに結合する。すなわち、競合的結合アッセイで測定した場合に、1、5、10、20、または100倍過剰の一方の抗体は、少なくとも50%、好ましくは75%、90%、またはさらに99%他方の結合を阻害する(例えば、Junghans et al., Cancer Res. 1990 50:1495-1502を参照されたい)。あるいは、2種類の抗体は、一方の抗体の結合を低減させるかまたは排除する抗原中の本質的にすべてのアミノ酸変異が、他方の結合を低減させるまたは排除する場合、同じエピトープを有する。2種類の抗体は、一方の抗体の結合を低減させるかまたは排除するいくつかのアミノ酸変異が、他方の結合を低減させるかまたは排除する場合、重複するエピトープを有する。
【0111】
次いで、試験抗体の結合の観察される欠如が、参照抗体と同じエピトープへの結合によるものかかどうか、または立体的遮断(もしくは別の現象)が観察される結合の欠如に関与するかどうかを確かめるために、さらなる常用の実験(例えば、ペプチド変異および結合分析)を行うことができる。この種類の実験は、ELISA、RIA、表面プラスモン共鳴法、フローサイトメトリー、または当技術分野において使用可能な任意の他の定量的もしくは定性的な抗体結合アッセイを使用して行うことができる。EMまたは結晶分析法を用いる構造研究も、結合について競合する2種類の抗体が同じエピトープを認識するかどうかを実証することができる。
【0112】
別の局面では、それぞれ表3および4に例示されるような重鎖および軽鎖由来のクローンと対でのCDRを有するモノクローナル抗体が提供される。モノクローナル抗体は、表3および4に記載される配列に対して少なくとも70%の同一性を有するクローンと対でのCDRを有することができる。ある特定の態様では、抗体または抗体断片は、表3および4の配列に対して約70%、約80%、または約90%同一である。そのような抗体は、本明細書において記載される方法を使用して、実験セクションにおいて以下に記載されるクローンによって、産生することができる。
【0113】
別の局面では、抗体は、さらなる「フレームワーク」領域を含むその可変配列を特徴とし得る。これらは、完全な可変領域をコードするかまたは示す表1および2で提供される。さらに、抗体配列は、任意で、以下でより詳細に記載される方法を使用することで、これらの配列と異なる可能性がある。例えば、核酸配列は、(a)可変領域が、軽鎖および重鎖の定常ドメインから分離され得る、(b)核酸が上に述べるものと異なる可能性があるが、それがコードする残基に影響を及ぼさない、(c)核酸が上に述べるものと所与のパーセンテージだけ異なる可能性があり、例えば、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の相同性である、(d)約50℃~約70℃の温度で約0.02M~約0.15M NaClによってもたらされるような低塩および/もしくは高温度条件で例示される高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする能力により、核酸が上に述べるものと異なる可能性がある、(e)アミノ酸が所与のパーセンテージだけ上に述べるものと異なる可能性があり、例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の相同性である、または(f)保存的置換(以下に記載される)を許容することにより、アミノ酸が上に述べるものと異なる可能性がある、という点において上に述べるものと異なる可能性がある。前述のそれぞれは、表1に記載される核酸配列および表2のアミノ酸配列に適用される。
【0114】
本開示の局面は、本明細書において記載される抗カンジダ抗体または抗体断片のアミノ酸またはヌクレオチド配列に対して特定のパーセンテージの同一性または類似性を有する抗体を特色とする。例えば、抗体は、本明細書において記載される抗カンジダ抗体または抗体断片のうちのいずれか1つの特定の領域または完全長と比較した場合に、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の同一性を有することができる。ポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列を比較する場合、2つの配列は、以下に記載のように、最大一致について整列させた場合に2つの配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸の配列が同じである場合、「同一」であると言われる。2つの配列間の比較は、典型的には、比較ウィンドウにわたって配列を比較して、配列類似性の局部的領域を同定および比較することによって行われる。本明細書において使用する場合、「比較ウィンドウ」は、2つの配列を最適に整列させた後に、配列が同数の連続的な位置の参照配列と比較することができる、少なくとも約20個、通常、30~約75個、40~約50個の連続的な位置のセグメントを指す。
【0115】
比較のための配列の最適なアライメントは、バイオインフォマティクスソフトウェアのLasergeneスイート(DNASTAR, Inc., Madison, Wis.)のMegalignプログラムを使用して、デフォルトパラメーターを使用して行うことができる。このプログラムは、以下の参照文献に記載されているいくつかのアライメントスキームを具現化する:Dayhoff, M. O. (1978) A model of evolutionary change in proteins--Matrices for detecting distant relationships. In Dayhoff, M. O. (ed.) Atlas of Protein Sequence and Structure, National Biomedical Research Foundation, Washington D.C. Vol. 5, Suppl. 3, pp. 345-358; Hein J. (1990) Unified Approach to Alignment and Phylogeny pp. 626-645 Methods in Enzymology vol. 183, Academic Press, Inc., San Diego, Calif.; Higgins, D. G. and Sharp, P. M. (1989) CABIOS 5:151-153; Myers, E. W. and Muller W. (1988) CABIOS 4:11-17; Robinson, E. D. (1971) Comb. Theor 11:105; Santou, N. Nes, M. (1987) Mol. Biol. Evol. 4:406-425; Sneath, P. H. A. and Sokal, R. R. (1973) Numerical Taxonomy--the Principles and Practice of Numerical Taxonomy, Freeman Press, San Francisco, Calif.; Wilbur, W. J. and Lipman, D. J. (1983) Proc. Natl. Acad., Sci. USA 80:726-730。
【0116】
あるいは、比較のための配列の最適なアライメントは、Smith and Waterman (1981) Add. APL. Math 2:482の局部的同一性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48:443の同一性アライメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipman (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 2444の類似性検索法によって、コンピュータによるこれらのアルゴリズムの実行(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group (GCG), 575 Science Dr., Madison, Wis.のGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、およびTFASTA)によって、または目視検査によって行うことができる。
【0117】
配列同一性および配列類似性パーセントを決定するのに適したアルゴリズムの一特定例はBLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれ、Altschul et al. (1977) Nucl. Acids Res. 25:3389-3402およびAltschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410に記載されている。BLASTおよびBLAST 2.0を、例えば、本明細書において記載されるパラメーターを用いて使用して、本開示のポリヌクレオチドおよびポリペプチドについての配列同一性パーセントを決定することができる。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センターを通じて、公的に使用可能である。抗体配列の再編成された性質および可変長の各遺伝子は、単一抗体配列に対して複数ラウンドのBLAST検索を必要とする。さらに、様々な遺伝子の手動アセンブリーは困難であり、エラーを起こしやすい。配列分析ツールIgBLAST(ncbi.nlm.nih.gov/igblast/のワールドワイドウェブ)は、生殖細胞系列V、D、およびJ遺伝子へのマッチ、再編成接合部の詳細、Ig Vドメインのフレームワーク領域および相補性決定領域の描写を明らかにする。IgBLASTは、ヌクレオチドまたはタンパク質配列を分析することができ、バッチで配列を処理することができ、最もよくマッチする生殖細胞系列V遺伝子を得るために、生殖細胞系列遺伝子データベースおよび他の配列データベースに対する検索を同時に可能にする。
【0118】
例示的一例では、累積スコアは、ヌクレオチド配列に対して、パラメーターM(1対のマッチする残基に対するリワードスコア;常に>0)およびN(ミスマッチの残基に対するペナルティスコア;常に<0)を使用して、計算することができる。各方向のワードヒットの延長は、累積アライメントスコアがその最大達成値から数量Xだけ低下する;1つもしくは複数の負のスコア化残基アライメントの蓄積により、累積スコアが0もしくはそれ未満になるか;またはいずれかの配列の末端に到達する場合に、停止される。BLASTアルゴリズムのパラメーターW、T、およびXは、アライメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルトとして、ワード長(W) 11および期待値(E) 10ならびにBLOSUM62スコア行列 50(Henikoff and Henikoff (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915を参照されたい)アライメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=-4、および両鎖の比較を使用する。
【0119】
アミノ酸配列については、スコア行列を使用して、累積スコアを計算することができる。各方向のワードヒットの延長は、累積アライメントスコアがその最大達成値から数量Xだけ低下する場合;1つもしくは複数の負のスコア化残基アライメントの蓄積により、累積スコアが0もしくはそれ未満になる場合;またはいずれかの配列の末端に到達する場合に、停止される。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T、およびXは、アライメントの感度および速度を決定する。
【0120】
1つのアプローチでは、「配列同一性のパーセンテージ」は、少なくとも20の位置の比較のウィンドウにわたって2つの最適に整列された配列を比較することによって決定され、比較ウィンドウ中のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の部分は、2つの配列の最適なアライメントのために、参照配列(これは、付加または欠失を含まない)と比較して、20パーセントもしくはそれ未満、通常5~15パーセント、または10~12パーセントの付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含むことができる。パーセンテージは、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列に存在する位置の数を決定してマッチした位置の数を得て、マッチした位置の数を参照配列中の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割って、その結果に100を掛けて、配列同一性のパーセンテージを得ることによって、計算される。
【0121】
以下に記載される抗体およびその抗原結合断片のいずれかの「誘導体」は、抗原に免疫特異的に結合するが、「親」(または野生型)分子と比較して1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上のアミノ酸置換、付加、欠失、または修飾を含む抗体またはその抗原結合断片を指すことができる。そのようなアミノ酸置換または付加は、天然に存在する(すなわち、DNAにコードされる)または天然に存在しないアミノ酸残基を導入することができる。用語「誘導体」は、例えば、増強されたまたは害されたエフェクターまたは結合特性を示すバリアントFc領域を有する、例えば抗体などを形成するように、変化させられたCH1、ヒンジ、CH2、CH3、またはCH4領域を有する、バリアントを包含する。用語「誘導体」は、非アミノ酸修飾、例えば、グリコシル化(例えば、マンノース、2-N-アセチルグルコサミン、ガラクトース、フコース、グルコース、シアル酸、5-N-アセチルノイラミン酸、5-グリコールノイラミン酸などの含量が変化している)、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解性切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への連結などがされ得るアミノ酸をさらに包含する。いくつかの態様では、変化させられた炭水化物修飾は、以下のうちの1つまたは複数をモジュレートする:抗体の可溶化、抗体の細胞内輸送および分泌の容易化、抗体アセンブリーの促進、コンフォメーションの完全性、および抗体媒介性エフェクター機能。特定の態様では、変化させられた炭水化物修飾は、炭水化物修飾を欠く抗体と比較して、抗体媒介性エフェクター機能を増強する。抗体媒介性エフェクター機能の変化につながる炭水化物修飾は当技術分野において周知である(例えば、Shields, R. L. et al. (2002) “Lack Of Fucose On Human IgG N-Linked Oligosaccharide Improves Binding To Human Fcgamma RIII And Antibody-Dependent Cellular Toxicity,” J. Biol. Chem. 277(30): 26733-26740; Davies J. et al. (2001) “Expression Of GnTIII In A Recombinant Anti-CD20 CHO Production Cell Line: Expression Of Antibodies With Altered Glycoforms Leads To An Increase In ADCC Through Higher Affinity For FC Gamma RIII,” Biotechnology & Bioengineering 74(4): 288-294を参照されたい)。炭水化物含量を変化させる方法は 当業者に公知であり、例えば、Wallick, S. C. et al. (1988) “Glycosylation Of A VH Residue Of A Monoclonal Antibody Against Alpha (1----6) Dextran Increases Its Affinity For Antigen,” J. Exp. Med. 168(3): 1099-1109; Tao, M. H. et al. (1989) “Studies Of Aglycosylated Chimeric Mouse-Human IgG. Role Of Carbohydrate In The Structure And Effector Functions Mediated By The Human IgG Constant Region,” J. Immunol. 143(8): 2595-2601; Routledge, E. G. et al. (1995) “The Effect Of Aglycosylation On The Immunogenicity Of A Humanized Therapeutic CD3 Monoclonal Antibody,” Transplantation 60(8):847-53; Elliott, S. et al. (2003) “Enhancement Of Therapeutic Protein In Vivo Activities Through Glycoengineering,” Nature Biotechnol. 21:414-21; Shields, R. L. et al. (2002) “Lack Of Fucose On Human IgG N-Linked Oligosaccharide Improves Binding To Human Fcgamma RIII And Antibody-Dependent Cellular Toxicity,” J. Biol. Chem. 277(30): 26733-26740)を参照されたい。
【0122】
誘導体抗体または抗体断片は、ビーズベースもしくは細胞ベースのアッセイまたは動物モデルにおけるインビボ研究によって測定した場合に、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、抗体依存性好中球食作用(ADNP)、または抗体依存性補体沈着(ADCD)の機能において好ましいレベルの活性を与えるために、操作された配列またはグリコシル化状態を用いて生成することができる。
【0123】
誘導体抗体または抗体断片は、限定されないが、特異的な化学的切断、アセチル化、製剤化、ツニカマイシンの代謝的合成などを含めて、当業者に公知である技法を使用して、化学修飾によって修飾することができる。一態様では、抗体誘導体は、親抗体と類似したまたは同一の機能を持つと考えられる。別の態様では、抗体誘導体は、親抗体と比較して活性の変化を示すと考えられる。例えば、誘導体抗体(またはその断片)は、親抗体と比べて、そのエピトープにより堅固に結合することができるか、またはタンパク質分解に対してより抵抗性である。
【0124】
C.抗体配列の操作
様々な態様では、発現の向上、交差反応性の向上、またはオフターゲット結合の減少などの様々な理由で、同定された抗体の配列を操作することを選択することができる。改変抗体は、標準的な分子生物学的手法による発現またはポリペプチドの化学合成を含めて、当業者に公知である任意の技法によって、作製することができる。組換発現のための方法は、本文書の他の個所で扱われる。以下は、抗体操作のための関連する目標技法の一般的説明である。
【0125】
ハイブリドーマを培養して、次いで細胞を溶解し、全RNAを抽出することができる。ランダムヘキサマーをRTとともに使用して、RNAのcDNAコピーを生成し、次いで、全ヒト可変遺伝子配列を増幅することが期待されるPCRプライマーのマルチプレックス混合物を使用して、PCRを行うことができる。PCR産物をpGEM-T Easyベクターにクローニングし、次いで、標準的なベクタープライマーを使用して、自動DNAシークエンシングによって、シークエンスすることができる。結合および中和のアッセイは、ハイブリドーマ上清から収集され、プロテインGカラムを使用してFPLCによって精製された抗体を使用して、行うことができる。
【0126】
本開示の抗体は、本明細書において記載される任意の単鎖抗体をコードするDNAセグメントを含むベクター(本明細書において「発現ベクター」とも称される)によって発現させることができる。これらには、ベクター、リポソーム、ネイキッドDNA、アジュバント補助DNA、遺伝子銃、カテーテルなどが含まれ得る。ベクターには、ターゲティング部分(例えば、細胞表面受容体に対するリガンド)および核酸結合部分(例えば、ポリリジン)を有する、WO 93/64701に記載されているような化学的コンジュゲート、ウイルスベクター(例えば、DNAまたはRNAウイルスベクター)、標的部分(例えば、標的細胞に対して特異的な抗体)および核酸結合部分(例えば、プロタミン)を含む融合タンパク質である、PCT/US 95/02140(WO 95/22618)に記載されているような融合タンパク質、プラスミド、ファージなどが含まれる。ベクターは染色体性、非染色体性、または合成であり得る。
【0127】
ベクターには、ウイルスベクター、融合タンパク質および化学的コンジュゲートが含まれ得る。レトロウイルスベクターには、モロニーマウス白血病ウイルスが含まれる。DNAウイルスベクターが好ましい。これらのベクターには、ポックスベクター、例えば、オルソポックスまたはトリポックスベクター、ヘルペスウイルスベクター、例えば、単純ヘルペスIウイルス(HSV)ベクター(Geller. et al., J. Neurochem, 64:487 (1995); Lim et al., in DNA Cloning: Mammalian Systems, D. Glover, Ed. (Oxford Univ. Press, Oxford England) (1995); Geller et al., Proc Natl. Acad. Sci. USA 90:7603 (1993); Geller et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 87: 1149 (1990)を参照されたい、アデノウイルスベクター(LeGal LaSalle et al., Science, 259:988 (1993); Davidson et al., Nat. Genet. 3:219 (1993); Yang et al., J. Virol. 69:2004 (1995)を参照されたい、およびアデノ随伴ウイルスベクター(Kaplitt et al., Nat. Genet. 8: 148 (1994)を参照されたい、が含まれる。
【0128】
ポックスウイルスベクターは細胞の細胞質中に遺伝子を導入する。トリポックスウイルスベクターは、核酸の短期発現のみをもたらす。アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、および単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターは、核酸を神経細胞に導入するのに好ましい。アデノウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(約4か月)よりも短時間の発現(約2か月)をもたらし、次にこれは、HSVベクターより短い。選択される特定のベクターは、標的細胞および治療される状態に依存する。導入は、標準的な技法、例えば、感染、トランスフェクション、形質導入、または形質転換によるものであり得る。遺伝子移入の様式の例には、例えば、ネイキッドDNA、CaP04沈殿、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、細胞マイクロインジェクション、およびウイルスベクターが含まれる。
【0129】
これらのベクターは、様々な方法で使用することができる大量の抗体を発現させるために使用することができる。例えば、試料中のカンジダ属の存在を検出するためである。抗体は、カンジダ活性に結合し、これを乱そうとするために使用することもできる。
【0130】
組換えの完全長IgG抗体は、重鎖および軽鎖のFv DNAをクローニングベクターからIgGプラスミドベクターにサブクローニングし、これを293(例えば、Freestyle)細胞またはCHO細胞にトランスフェクトすることによって、生成することができ、抗体は、293またはCHO細胞の上清から収集および精製することができる。他の妥当な宿主細胞システムには、細菌、例えば大腸菌(E. coli)、昆虫細胞(S2、Sf9、Sf29、High Five)、植物細胞(例えば、ヒト様グリカンについての操作を有するかもしくは有さない、タバコ)、藻類、または様々な非ヒトトランスジェニック状況、例えば、マウス、ラット、ヤギ、もしくはウシが含まれる。
【0131】
引き続く抗体精製と宿主の免疫化の両方のために、抗体をコードする核酸の発現を本発明に従って実施することもできる。抗体コード配列は、RNA、例えば、ネイティブRNAまたは修飾されたRNAであり得る。修飾されたRNAは、例えば、mRNAに増大した安定性および低免疫原性を与え、治療的に重要なタンパク質の発現を容易にする、ある特定の化学修飾を含むことができる。例えば、N1-メチル-プソイドウリジン(N1mΨ)は、翻訳能力の観点から、いくつかの他のヌクレオシド修飾およびそれらの組み合わせより性能がすぐれている。翻訳の免疫性/eIF2αリン酸化依存的阻害を止めることに加えて、組み込まれたN1mΨヌクレオチドは、リボソームの停止およびmRNA上の密度を増大させることによって、翻訳プロセスの動態を著しく変化させる。修飾mRNAのリボソームローディング(ribosome loading)の増大は、同じmRNAのリボソームリサイクリングまたはデノボリボソーム動員のいずれかを優遇することによって、リボソームを開始に対してより許容的にする。そのような修飾は、RNAの接種後にインビボで抗体発現を増強するために使用することができる。RNAは、ネイティブであろうと修飾されていようと、ネイキッドRNAとして、または脂質ナノ粒子などの送達ビヒクル中で、送達することができる。
【0132】
あるいは、抗体をコードするDNAを同じ目的のために用いることができる。DNAは、それが設計される宿主細胞おいて活性なプロモーターを含む発現カセット中に含まれる。発現カセットは、好都合なことに、複製可能なベクター、例えば、従来のプラスミドまたはミニベクター中に含まれる。ベクターには、ウイルスベクター、例えば、ポックスウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルスが含まれ、レンチウイルスを使用することができる。抗体遺伝子をコードするレプリコン、例えばαウイルスレプリコンはVEEウイルスに基づき、またはシンドビスウイルスも用いられ、用いられ得る。そのようなベクターの送達は、筋肉内、皮下、もしくは皮内経路を通した針によって、またはインビボ発現が望まれる場合は経皮的エレクトロポレーションによって、行うことができる。
【0133】
最終的なcGMP製造プロセスと同じ宿主細胞および細胞培養プロセスで産生される抗体を迅速に使用できることは、プロセス開発プログラムの継続期間を低減することができる。Lonzaは、CHO細胞において少量(最大で50gまで)の抗体を迅速に産生するために、CDACF培地中で増殖するプールした形質移入体を使用する包括的な方法を開発した。本当の一過的システムよりもわずかに遅いが、利点には、より高い生成物濃度ならびに産生細胞株と同じ宿主およびプロセスの使用が含まれる。使い捨てのバイオリアクターでモデル抗体を発現するGS-CHOプールの増殖および産生能の例:流加様式で操縦される使い捨てのバッグバイオリアクター培養(5Lの作業容量)において、2g/Lの採取抗体濃度がトランスフェクションから9週以内に達成された。
【0134】
抗体分子は、例えば、mAbのタンパク質分解性切断によって生成される断片(例えば、F(ab’)、F(ab’)2)、または例えば、組換え手段を介して生成可能な単鎖免疫グロブリンを含むと考えられる。F(ab’)抗体の誘導体は一価であるが、F(ab’)2抗体の誘導体は二価である。一態様では、そのような断片は互いに、または他の抗体断片もしくは受容体リガンドと結合して、「キメラ」結合分子を形成することができる。重要なことに、そのようなキメラ分子は、同じ分子の異なるエピトープに結合することができる置換基を含むことができる。
【0135】
関連した態様では、抗体は、開示される抗体の誘導体、例えば、開示される抗体中のものと同一のCDR配列を含む抗体(例えば、キメラまたはCDRグラフト化抗体)である。あるいは、抗体分子中に保存的変更を導入するなど、改変を加えることができる。そのような変更を加える場合、アミノ酸のヒドロパシー指数が考慮され得る。タンパク質に相互作用的生物機能を与える際のヒドロパシーアミノ酸指数の重要性は、当技術分野において一般に理解されている(Kyte and Doolittle, 1982)。アミノ酸の相対的ヒドロパシー特性が、得られるタンパク質の二次構造に寄与し、次にこれが、タンパク質と他の分子、例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとの相互作用を規定することが認められている。
【0136】
同様のアミノ酸の置換は、親水性に基づいて効果的に行うことができる。参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,554,101号は、その隣接するアミノ酸の親水性によって支配されるタンパク質の最大局部平均親水性が、タンパク質の生物学的性状と相関することを記載する。米国特許第4,554,101号で詳しく述べられるように、以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:塩基性アミノ酸:アルギニン(+3.0)、リジン(+3.0)、およびヒスチジン(-0.5);酸性アミノ酸:アスパルテート(+3.0±1)、グルタメート(+3.0±1)、アスパラギン(+0.2)、およびグルタミン(+0.2);親水性、非イオン性のアミノ酸:セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、およびスレオニン(-0.4)、含硫アミノ酸:システイン(-1.0)およびメチオニン(-1.3);疎水性、非芳香族アミノ酸:バリン(-1.5)、ロイシン(-1.8)、イソロイシン(-1.8)、プロリン(-0.5±1)、アラニン(-0.5)、およびグリシン(0);疎水性、芳香族アミノ酸:トリプトファン(-3.4)、フェニルアラニン(-2.5)、およびチロシン(-2.3)。
【0137】
例えば、あるアミノ酸を類似した親水性を有する別のものと置換することができ、これは、生物学的または免疫学的に改変されたタンパク質を生成することができる。そのような変更では、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のものが特に好ましく、±0.5以内のものがさらにより特段に好ましい。
【0138】
上で概要を述べたように、アミノ酸置換は、一般に、アミノ酸の側鎖置換基の相対的な類似性、例えば、その疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。前述の様々な特性を考慮に入れる例示的な置換は当業者に周知であり、置換には以下が含まれる:アルギニンとリジン;グルタメートとアスパルテート;セリンとスレオニン;グルタミンとアスパラギン;およびバリンとロイシンとイソロイシン。
【0139】
本開示は、アイソタイプ修飾も対象とする。異なるアイソタイプを有するようにFc領域を修飾することによって、異なる機能性を得ることができる。例えば、IgG1への変更は抗体依存性細胞傷害を増加することができ、クラスAへの転換は組織分布を向上させることができ、クラスMへの転換は結合価を向上させることができる。
【0140】
代替的にまたはさらに、アミノ酸修飾とIL-23p19結合分子のFc領域のC1q結合および/または補体依存性細胞傷害(CDC)機能を変化させる1つまたは複数のさらなるアミノ酸修飾とを組み合わせることは、有用であり得る。特に興味深い結合ポリペプチドは、C1qに結合し、補体依存性細胞傷害を呈するものであり得る。既存のC1q結合活性を有し、任意で、CDCを媒介する能力をさらに有するポリペプチドを、これらの活性の一方または両方が増強されるように修飾することができる。C1qを変化させるおよび/またはその補体依存性細胞傷害機能を改変するアミノ酸修飾は、例えば、参照により本明細書に組み入れられるWO/0042072に記載されている。
【0141】
例えば、C1q結合および/またはFcγR結合を改変し、それによって、CDC活性および/またはADCC活性を変えることによって、エフェクター機能が変化した抗体のFc領域を設計することができる。「エフェクター機能」は、(例えば、対象において)生物活性を活性化するまたは減少させるのに関与する。エフェクター機能の例には、限定されないが、以下が含まれる:C1q結合;補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面レセプター(例えば、B細胞受容体;BCR)のダウンレギュレーションなど。そのようなエフェクター機能は、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と結合することを必要とする可能性があり、様々なアッセイ(例えば、Fc結合アッセイ、ADCCアッセイ、CDCアッセイなど)を使用して評価され得る。
【0142】
例えば、向上したC1q結合および向上したFcγRIII結合を有する(例えば、向上したADCC活性および向上したCDC活性の両方を有する)抗体のバリアントFc領域を生成することができる。あるいは、エフェクター機能を低減させるかまたは取り除くことが望まれる場合、CDC活性の低減および/またはADCC活性の低減について、バリアントFc領域を操作することができる。他の態様では、これらの活性のうちの1つのみを増大させることができ、任意で、他の活性を低減させることもできる(例えば、ADCC活性が向上したがCDC活性が低減した、およびその逆のFc領域バリアントを生成するために)。
【0143】
FcRn結合。新生児型Fc受容体(FcRn)とのその相互作用を変化させ、その薬物動態性状を向上させるために、Fc変異を導入および操作することもできる。FcRnへの結合が向上したヒトFcバリアントのコレクションが記載されている(Shields et al., (2001). High resolution mapping of the binding site on human IgG1 for FcγRI, FcγRII, FcγRIII, and FcRn and design of IgG1 variants with improved binding to the FcγR, (J. Biol. Chem. 276:6591-6604)。アラニンスキャニング変異誘発、ランダム変異誘発、および新生児型Fc受容体(FcRn)への結合および/またはインビボ挙動を評価するためのスクリーニングを含めた技法を通じてアミノ酸修飾を生成することができることを含めて、半減期の延長をもたらすことができるいくつかの方法が公知である(Kuo and Aveson, (2011))。コンピュータによるストラテジー、それに続く変異誘発も、アミノ変異のうちの1つを選択して変異導入するために使用することができる。
【0144】
したがって、本開示は、FcRnへの結合が最適化された、抗原結合タンパク質のバリアントを提供する。特定の態様では、抗原結合タンパク質の前記バリアントは、前記抗原結合タンパク質のFc領域中に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、該修飾は、前記親ポリペプチドと比較して、Fc領域の226、227、228、230、231、233、234、239、241、243、246、250、252、256、259、264、265、267、269、270、276、284、285、288、289、290、291、292、294、297、298、299、301、302、303、305、307、308、309、311、315、317、320、322、325、327、330、332、334、335、338、340、342、343、345、347、350、352、354、355、356、359、360、361、362、369、370、371、375、378、380、382、384、385、386、387、389、390、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、403、404、408、411、412、414、415、416、418、419、420、421、422、424、426、428、433、434、438、439、440、443、444、445、446、および447からなる群より選択され、Fc領域のアミノ酸の番号付けは、KabatのEUインデックスのものである。本開示のさらなる局面では、修飾はM252Y/S254T/T256Eである。
【0145】
さらに、FcRn-結合ポリペプチドを分子中に導入することか、または分子をFcRn結合親和性が保存されているが他のFc受容体に対する親和性が大きく低減した抗体と融合する、もしくは抗体のFcRn結合ドメインと融合することのいずれかによって、半減期が改変された生理的に活性な分子を得るための方法を様々な刊行物が記載しており、例えば、Kontermann (2009)を参照されたい。
【0146】
誘導体化抗体は、哺乳動物、特にヒトにおいて親抗体の半減期(例えば、血清半減期)を変化させるために使用することができる。そのような変化は、15日間を超える、好ましくは20日間を超える、25日間を超える、30日間を超える、35日間を超える、40日間を超える、45日間を超える、2か月間を超える、3か月間を超える、4か月間を超える、または5か月を超える半減期をもたらし得る。哺乳動物、好ましくはヒトにおける本開示の抗体またはその断片の半減期の延長は、哺乳動物において該抗体または抗体断片のより高い血清力価をもたらし、それにより、該抗体もしくは抗体断片の投与の頻度を低減させる、および/または投与される該抗体もしくは抗体断片の濃度を低減させる。インビボ半減期が延長した抗体またはその断片は、当業者に公知である技法によって生成することができる。例えば、インビボ半減期が延長した抗体またはその断片は、FcドメインとFcRn受容体の間の相互作用に関与するとして同定されたアミノ酸残基を修飾(例えば、置換、欠失、または付加)することにより生成することができる。
【0147】
Beltramello et al. (2010)は、デングウイルス感染症を増強するその傾向が理由で、CH2ドメインの位置1.3および1.2(Cドメインに対するIMGTのユニークな番号付けによる)のロイシン残基がアラニン残基で置換されたものを生成することによる、中和mAbの改変を以前に報告した。「LALA」変異としても公知であるこの改変は、Hessell et al. (2007)によって記載されているように、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIaへの抗体結合を消失させる。バリアントおよび未改変組換えmAbは、それらが4種類のデングウイルス血清型による感染症を中和するおよび増強する能力について比較された。LALAバリアントは未改変mAbと同じ中和活性を保持していたが、増強活性を完全に欠いていた。この性質のLALA変異は、本開示の抗体で使用することもできる。
【0148】
グリコシル化の変化。本開示の特定の態様は、シアル酸、ガラクトース、またはフコースを含まない実質的に均一なグリカンを含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。複数の態様では、モノクローナル抗体は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、これらの両方は、それぞれ重鎖または軽鎖定常領域に結合することができる。前述の実質的に均一なグリカンは、重鎖定常領域に共有結合することができる。
【0149】
本開示の別の態様は、新しいFcグリコシル化パターンを有するmAbを含む。単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、GNGNまたはG1/G2グリコフォームによって代表される実質的に均質な組成物中に存在する。Fcグリコシル化は、治療用mAbの抗ウイルスおよび抗がん性状において重要な役割を果たす。これは、フコースを含まない抗HIV mAbの抗レンチウイルス細胞性ウイルス阻害の増大をインビトロで示す、最近の研究と一致している。
【0150】
GNGNまたはG1/G2グリコフォームによって代表される実質的に均質な組成物を含む単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、実質的に均一なGNGNグリコフォームを有さず、G0、G1F、G2F、GNF、GNGNF、またはGNGNFX含有グリコフォームを有する同じ抗体と比較して、FcγRIおよびFcγRIIIに対する結合親和性の増大を示す。本開示の一態様では、抗体は、1×10-8Mまたはそれ未満のKdでFcγRIから解離し、1×10-7Mまたはそれ未満のKdでFcγRIIIから解離する。
【0151】
Fc領域のグリコシル化は、典型的にはN結合型またはO結合型のいずれかである。N結合型は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。O結合型グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへの糖のN-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンも使用することができる。アスパラギン側鎖ペプチド配列への炭水化物部分の酵素的結合に対する認識配列は、アスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-スレオニンであり、Xはプロリンを除いた任意のアミノ酸である。したがって、ポリペプチドにおけるこれらのペプチド配列のいずれかの在存は、グリコシル化部位を生成することができる。
【0152】
グリコシル化パターンは、例えば、ポリペプチド中に見出される1つもしくは複数のグリコシル化部位を欠失させること、および/またはポリペプチド中に存在しない1つもしくは複数のグリコシル化部位を付加することによって、変化させることができる。抗体のFc領域へのグリコシル化部位の付加は、上記のトリペプチド配列のうちの1つまたは複数を含むようにアミノ酸配列を変化させることによって、都合よく達成される(N結合型グリコシル化部位に関する)。例示的なグリコシル化バリアントは、重鎖の残基Asn 297のアミノ酸置換を有する。変化は、元のポリペプチドの配列に対する、1つもしくは複数のセリンもしくはスレオニン残基の付加によって、または1つもしくは複数のセリンもしくはスレオニン残基による置換によって行うこともできる(O結合型グリコシル化部位に関する)。さらに、Asn 297のAlaへの変更は、グリコシル化部位のうちの1つを除去することができる。
【0153】
ある特定の態様では、抗体は、β(1,4)-N‐アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnT III)を発現する細胞で発現され、その結果、GnT IIIがIL-23p19抗体にGlcNAcを付加する。そのような方式で抗体を産生するための方法は、WO/9954342、WO/03011878、特許公報20030003097A1、およびUmana et al., Nature Biotechnology, 17:176-180, February 1999で提供される。Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)などのゲノム編集技術を使用して、グリコシル化などのある特定の翻訳後修飾を増強するまたは低減させるまたは排除するように、細胞株を変化させることができる。例えば、CRISPR技術を使用して、組換えモノクローナル抗体を発現するために使用される293またはCHO細胞において、グリコシル化酵素をコードする遺伝子を排除することができる。
【0154】
モノクローナル抗体タンパク質配列の不利な点の排除。ヒトB細胞から得られた抗体可変遺伝子配列を、その製造性および安全性を増強するように操作することができる。タンパク質配列の不利な点は、以下を含む部位と関連する配列モチーフを検索することによって、明らかにすることができる:
1)不対Cys残基、
2)N結合型グリコシル化、
3)Asn脱アミド、
4)Asp異性化、
5)SYEトランケーション、
6)Met酸化、
7)Trp酸化、
8)N末端グルタメート、
9)インテグリン結合、
10)CD11c/CD18結合、または
11)断片化。
そのようなモチーフは、組換え抗体をコードするcDNAの合成遺伝子を変化させることによって、排除することができる。
【0155】
治療用抗体の開発の分野におけるタンパク質操作の試みにより、ある特定の配列または残基が溶解度の違いと関連することがはっきりと明らかされる(Fernandez-Escamilla et al., Nature Biotech., 22 (10), 1302-1306, 2004; Chennamsetty et al., PNAS, 106 (29), 11937-11942, 2009; Voynov et al., Biocon. Chem., 21 (2), 385-392, 2010)。文献中の溶解度を変化させる変異からの証拠によって、アスパラギン酸、グルタミン酸、およびセリンなどのいくつかの親水性残基は、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、リジン、およびアルギニンなどの他の親水性残基よりも有利にタンパク質の溶解度に有意に寄与することが示される。
【0156】
安定性。生物物理学的性状の増強のために抗体を操作することができる。昇温を使用して、抗体をアンフォールドして、平均の見かけ上の融解温度を使用して相対的安定性を決定することができる。示差走査熱量測定(DSC)は、温度の関数として分子の熱容量Cp(1度あたりの、分子を温めるのに必要とされる熱)を測定する。DSCを使用して、抗体の熱安定性を研究することができる。mAbに対するDSCデータは特に興味深く、なぜならば、これがmAb構造内の個々のドメインのアンフォールディングを時には分解し、(Fab、CH2、およびCH3ドメインのアンフォールディングから)サーモグラム中に最大で3つまでのピークを生成するからである。典型的には、Fabドメインのアンフォールディングは最も強いピークを生じる。Fc部分のDSCプロファイルおよび相対的安定性は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4サブクラスについて特徴的な違いを示す(Garber and Demarest, Biochem. Biophys. Res. Commun. 355, 751-757, 2007)。CD分光計で行われる円二色性(CD)を使用して平均融解温度を決定することもできる。遠紫外線CDスペクトルは、0.5nmの増分で200~260nmの範囲で、抗体について測定される。最終的なスペクトルは、20回の蓄積の平均として決定することができる。残基楕円率の値は、バックグラウンド除去後に計算することができる。抗体(0.1mg/mL)の熱によるアンフォールディングは、25~95℃の235nmおよび1℃/分の加熱速度でモニターすることができる。動的光散乱法(DLS)を使用して、凝集の傾向について評価することができる。DLSは、タンパク質を含めて、様々な粒子のサイズを特徴決定するために使用される。システムが、サイズが分散されない場合、粒子の平均有効直径を決定することができる。この測定は、粒子コアのサイズ、表面構造のサイズ、および粒子濃度に依存する。DLSは粒子による散乱光強度のゆらぎを本質的に測定するので、粒子の拡散係数を決定することができる。市販のDLA機器のDLSソフトウェアは、異なる直径の粒子集団を表示する。安定性研究は、好都合にはDLSを使用して都合よく行うことができる。試料のDLS測定は、粒子の流体力学的半径が増加するかどうかを判定することにより、粒子が経時的に、または温度変動とともに凝集するかどうかを示すことができる。粒子が凝集する場合、半径がより大きい粒子のより大きな集団を見ることができる。温度に依存した安定性は、温度をインサイチューで制御することにより分析することができる。キャピラリー電気泳動(CE)技法は、抗体安定性の特色を決定するための実証済みの方法論を含む。iCEアプローチを使用して、タンパク質のpIの変化をもたらし得る、タンパク質に対する脱アミド、C末端リジン、シアリル化、酸化、グリコシル化、および任意の他の変化により、抗体タンパク質の電荷バリアントを分解することができる。Protein Simple Maurice機器を使用して、毛細管カラム(cIEF)におけるハイスループットな自由溶液等電点電気泳動(IEF)によって、発現した抗体タンパク質のそれぞれを評価することができる。等電点(pI)に集束する分子のリアルタイムモニタリングのために、全カラム紫外線吸収検出を30秒ごとに行うことができる。このアプローチは、従来のゲルIEFの高分解能とカラムベースの分離で見出される定量化および自動化の利点とを組み合わせ、同時に可動化工程の必要性を排除する。本技法は、発現した抗体についての同一性、純度、および不均一性プロファイルの再現性のある定量的分析をもたらす。結果は、吸光度および自然蛍光検出様式の両方を用いて、0.7μg/mLに至るまでの検出の感度で、抗体に関する電荷の不均一性および分子サイズを同定する。
【0157】
溶解度。抗体配列の固有の溶解度スコアを決定することができる。固有の溶解度スコアは、CamSol Intrinsic(Sormanni et al., J Mol Biol 427, 478-490, 2015)を使用して計算することができる。scFvなどの各抗体断片のHCDR3中の残基95~102(Kabatの番号付け)のアミノ酸配列は、溶解度スコアを計算するためのオンラインプログラムを介して評価することができる。実験技法を使用して溶解度を決定することもできる。溶液が飽和になり、溶解限度に達するまで、溶液へ凍結乾燥タンパク質を添加すること、または適切な分子量カットオフを有するマイクロ濃縮器中で限外濾過によって濃縮することを含めて、様々な技法が存在する。最も複雑でない方法は非晶質沈殿の誘導であり、これは硫酸アンモニウムを使用するタンパク質沈殿をともなう方法を使用して、タンパク質の溶解度を測定する(Trevino et al., J Mol Biol, 366: 449-460, 2007)。硫酸アンモニウム沈殿は、相対的溶解度値に関して急速かつ正確な情報をもたらす。硫酸アンモニウム沈殿は、はっきりした水相および固相を有する沈殿溶液を生じさせ、比較的少量のタンパク質を必要とする。硫酸アンモニウムよる非晶質沈殿の誘導の誘導を使用して行われる溶解度測定も様々なpH値で容易に行うことができる。タンパク質の溶解度は非常にpH依存的であり、pHは溶解度に影響を及ぼす最も重要な外性因子と考えられる。
【0158】
自己反応性。一般に、自己反応性クローンは、負の選択によって個体発生中に排除されるべきであると考えられるが、自己反応性性状を有する多くの天然に存在するヒト抗体が成人の成熟レパートリーで持続し、自己反応性が病原体に対する多くの抗体の抗病原体機能を増強することがきることが明らかになってきている。初期のB細胞発生中の抗体におけるHCDR3ループが多くの場合正電荷に富み、自己反応性パターンを示すことが注目されてきている(Wardemann et al., Science 301, 1374-1377, 2003)。顕微鏡(接着性HeLaまたはHEp-2上皮細胞を使用する)およびフローサイトメトリー細胞表面染色(懸濁Jurkat T細胞および293Sヒト胎児由来腎臓細胞を使用する)において、ヒト起源細胞への結合のレベルを評価することによって、自己反応性について所与の抗体を試験することができる。自己反応性は、組織アレイへの結合の評価を使用して調査することもできる。
【0159】
好ましい残基(「ヒトらしさ(Human Likeness)」)。多くの最近の研究において、供血者からのヒトB細胞のB細胞レパートリーのディープシーケンシングが大規模に行われている。ヒト抗体レパートリーのかなりの部分についての配列情報は、健康なヒトで一般的である抗体配列の特色の統計学的評価を容易にする。ヒト組換え抗体可変遺伝子参照データベース抗体配列の特色についての知識を用いて、抗体配列の「ヒトらしさ」(HL)の位置特異的な程度を推定することができる。HLは、治療用抗体またはワクチンとしての抗体のような臨床的使用における抗体の開発に有用であることが示されている。目標は、抗体薬物の有効性の著しい低下につながると考えられ、または深刻な健康上の影響を誘導し得る有害作用および抗抗体免疫応答を低減させるために、抗体のヒトらしさを高めることである。全体で約4億配列の、3人の健康なヒト供血者の組み合わされた抗体レパートリーの抗体特性を評価し、抗体の超可変領域に焦点を当てた新しい「相対的ヒトらしさ」(rHL)スコアを生成することができる。rHLスコアによって、ヒト配列(正のスコア)と非ヒト配列(負のスコア)を容易に区別することが可能になる。抗体を操作して、ヒトレパートリーで一般的でない残基を排除することができる。
【0160】
D.単鎖抗体
単鎖可変断片(scFv)は、短い(通常、セリン、グリシン)リンカーで互いに連結している、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域の融合体である。このキメラ分子は、定常領域の除去およびリンカーペプチドの導入にもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。この改変では、通常、特異性は未変化のままである。これらの分子は、単一ペプチドとして抗原結合ドメインを発現させるのに非常に都合のよいファージディスプレイを容易にするために、歴史的に作製された。あるいは、scFvは、ハイブリドーマまたはB細胞に由来するサブクローニングされた重鎖および軽鎖から直接的に作製することができる。単鎖可変断片は、完全な抗体分子で見出される定常Fc領域を欠き、それにより、抗体を精製するために使用される共通の結合部位(例えば、プロテインA/G)を欠く。これらの断片は、プロテインLがカッパ軽鎖の可変領域と相互作用するので、プロテインLを使用して精製/固定化され得ることが多い。
【0161】
可動性リンカーは、一般に、ヘリックスおよびターン促進アミノ酸残基、例えば、アラニン、セリンおよびグリシンからなる。しかし、他の残基も同様に機能し得る。Tang et al. (1996)は、単鎖抗体(scFv)に合わせたリンカーをタンパク質リンカーライブラリーから迅速に選択するの手段として、ファージディスプレイを使用した。可変性組成物の18アミノ酸ポリペプチドをコードするセグメントによって重鎖および軽鎖可変ドメインに対する遺伝子が連結されているランダムリンカーライブラリーを構築した。scFvレパートリー(約5×106個の異なるメンバー)を繊維状ファージ上に提示させ、ハプテンとの親和性選択に供した。選択されたバリアントの集団は結合活性の有意な増大を示したが、かなりの配列多様性を保持していた。1054個の個々のバリアントのスクリーニングにより、その後に、可溶性形態で効率的に産生される、触媒的に活性なscFvが得られた。配列分析により、選択されたテザーの唯一の共通の特色として、VHのC末端から2残基後のリンカー中に保存されたプロリン、ならびに他の位置の多数のアルギニンおよびプロリンが明らかになった。
【0162】
本開示の組換え抗体は、受容体の二量体化または多量体化を可能にする配列または部分を含むこともできる。そのような配列にはIgAに由来するものが含まれ、これは、J鎖とともに多量体の形成を可能にする。別の多量体化ドメインはGal4二量体化ドメインである。他の態様では、ビオチン/アビジンなどの作用物質で鎖を修飾することができ、これは、2種類の抗体の組み合わせを可能にする。
【0163】
別の態様では、単鎖抗体は、非ペプチドリンカーまたは化学単位を使用して受容体の軽鎖と重鎖を結合することによって、生成することができる。一般に、軽鎖および重鎖は、別個の細胞で産生され、精製され、続いて、妥当な方式で互いに連結される(すなわち、妥当な化学的架橋を介して重鎖のN末端が軽鎖のC末端に結合される)。
【0164】
クロスリンク試薬、例えば、安定化およびコンジュゲート作用物質が、2つの異なる分子の官能基をつなぐ分子架橋を形成するため使用される。しかし、同じ類似体の二量体もしくは多量体または異なる類似体からなるヘテロマー複合体を作製することができる。段階的な様式で2つの異なる化合物を連結するために、望まれないホモポリマー形成を排除するヘテロ二官能性クロスリンカーを使用することができる。
【0165】
例示的なヘテロ二官能性クロスリンカーは2つの反応基を含み、一方は一級アミン基(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド)と反応し、他方はチオール基(例えば、ピリジルジスルフィド、マレイミド、ハロゲン)と反応する。一級アミン反応基を通じて、クロスリンカーは、1つのタンパク質(例えば、選択された抗体または断片)のリジン残基と反応することができ、チオール反応基を通じて、第1のタンパク質に既につながれているクロスリンカーは、他のタンパク質(例えば、選択的作用物質)のシステイン残基(遊離スルフヒドリル基)と反応する。
【0166】
複数の態様では、合理的な血中安定性を有するクロスリンカーを用いることができる。ターゲティングおよび治療的/予防作用物質をコンジュゲートするために首尾よく用いることができる多数の種類のジスルフィド結合含有リンカーが公知である。立体障害を受けているジスルフィド結合を含むリンカーは、より大きな安定性をインビボで与え、作用部位に到達するより前にターゲティングペプチドを放出するのを防止することが判明し得る。したがって、これらのリンカーは、連結作用物質の1つの群である。
【0167】
別のクロスリンク試薬はSMPTであり、これは、隣接するベンゼン環およびメチル基によって「立体障害を受けている」ジスルフィド結合を含む二官能性クロスリンカーである。ジスルフィド結合の立体障害は、組織および血液中に存在し得るグルタチオンなどのチオラートアニオンの攻撃から結合を保護する機能を果たし、それによって、標的部位への結合した作用物質の送達より前にコンジュゲートのデカップリングを防止するのに役立つと考えられる。
【0168】
SMPTクロスリンク試薬は、多くの他の公知のクロスリンク試薬と同様に、官能基、例えば、システインのSH、または一級アミン(例えば、リジンのεアミノ基)をクロスリンクする能力を与える。別の種類のクロスリンカーは、スルホスクシンイミジル-2-(p-アジドサリチルアミド)エチル-1,3’-ジチオプロピオネートなどの、切断可能なジスルフィド結合を含むヘテロ二官能性光反応性フェニルアジドを含む。N-ヒドロキシ-スクシンイミジル基は一級アミノ基と反応し、フェニルアジドは(光分解の際に)任意のアミノ酸残基と非選択的に反応する。
【0169】
障害を受けているクロスリンカーに加えて、障害を受けていないリンカーも本明細書に従って用いることができる。保護されたジスルフィドを含むことも生成することも考えらない他の有用なクロスリンカーには、SATA、SPDP、および2-イミノチオラン(Wawrzynczak & Thorpe, 1987)が含まれる。そのようなクロスリンカーの使用は当技術分野において十分理解されている。別の態様は、可動性リンカーの使用を含む。
【0170】
米国特許第4,680,338号は、リガンドとアミン含有ポリマーおよび/またはタンパク質とのコンジュゲートを生成するのに、特に、キレート作用物質、薬物、酵素、検出可能な標識などとの抗体コンジュゲートを形成するのに有用な二官能性リンカーを記載している。米国特許第5,141,648号および同第5,563,250号は、様々な穏やかな条件下で切断可能な不安定な結合を含む、切断可能なコンジュゲートを開示している。このリンカーは、関心対象の作用物質がリンカーに直接結合することができ、切断により、活性作用物質の放出がもたらされるという点において特に有用である。特定の用途は、タンパク質、例えば、抗体または薬物への遊離アミノ基または遊離スルフヒドリル基の付加を含む。
【0171】
米国特許第5,856,456号は、ポリペプチド構成成分を接続して融合タンパク質、例えば単鎖抗体を作製するために使用するためのペプチドリンカーを提供する。リンカーは最大で約50アミノ酸までの長さであり、荷電アミノ酸(好ましくは、アルギニンまたはリジン)とそれに続くプロリンの少なくとも1つの存在を含み、より大きな安定性および凝集の低減を特徴とする。米国特許第5,880,270号は、様々な免疫診断技法および分離技法に有用なアミノオキシ含有リンカーを開示している。
【0172】
E.多重特異性抗体
ある特定の態様では、本開示の抗体は二重特異性または多特異性である。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する抗体である。例示的な二重特異性抗体は、単一抗原の2つの異なるエピトープに結合することができる。他のそのような抗体は、第1の抗原結合部位を第2の抗原に対する結合部位と組み合わせることができる。あるいは、細胞防御メカニズムを感染細胞に集中させ、局在化させるために、抗病原体アームを、白血球のトリガー分子、例えば、T細胞受容体分子(例えば、CD3)、またはIgGに対するFc受容体(FcγR)、例えば、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、およびFcγRIII(CD16)に結合するアームと組み合わせることができる。二重特異性抗体は、細胞傷害性作用物質を感染細胞に局在化させるために使用することもできる。これらの抗体は、病原体結合アームおよび細胞傷害性作用物質(例えば、サポリン、抗インターフェロン-α、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキサート、または放射性同位体ハプテン)に結合するアームを持つ。二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)として調製することができる。WO 96/16673は二重特異性抗ErbB2/抗FcγRIII抗体を記載しており、米国特許第5,837,234号は二重特異性抗ErbB2/抗FcγRI抗体を開示している。二重特異性抗ErbB2/Fcα抗体はWO98/02463に示される。米国特許第5,821,337は二重特異性抗ErbB2/抗CD3抗体を教示する。
【0173】
二重特異性抗体を作製するための方法は当技術分野において公知である。完全長二重特異性抗体の従来の産生は2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の共発現に基づき、2つの鎖は異なる特異性を有する(Millstein et al., Nature, 305:537-539 (1983))。免疫グロブリン重鎖および軽鎖のランダムな組み合わせ(assortment)のために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子の混合物を産生する可能性があり、そのうちの1つのみが適正な二重特異性構造を有する。アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常行われる適正な分子の精製はかなり厄介であり、産物収量は低い。類似した手順は、WO 93/08829およびTraunecker et al., EMBO J., 10:3655-3659 (1991)に開示されている。
【0174】
異なるアプローチによれば、望ましい結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変領域が免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。好ましくは、融合は、ヒンジの少なくとも一部、CH2、およびCH3領域を含むIg重鎖定常ドメインとである。融合体のうちの少なくとも1つに存在する、鎖の結合に必要な部位を含む第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖の融合体、および望ましい場合は免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、別々の発現ベクター中に挿入され、適切な宿主細胞にコトランスフェクトされる。これは、構築で使用される3つのポリペプチド鎖の等しくない比が望ましい二重特異性抗体の最適な収量をもたらす態様において、3つのポリペプチド断片の相互の比率の調整により大きな柔軟性を提供する。コード配列は、少なくとも2つのポリペプチド鎖の等しい比の発現が高い収量をもたらす場合に、または該比が鎖の望ましい組み合わせに有意に影響しない場合に、2つまたは3つすべてのポリペプチド鎖について、単一発現ベクター中に挿入することができる。
【0175】
このアプローチの特定の態様では、二重特異性抗体は、一方のアーム中の第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖と他方のアーム中のハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)とから構成される。この非対称的構造は、二重特異性分子の半分だけの免疫グロブリン軽鎖の存在により容易な分離方法がもたらされるので、免疫グロブリン鎖の望まれない組み合わせからの望ましい二重特異性化合物の分離を容易にすることが見出された。このアプローチはWO 94/04690に開示されている。二重特異性抗体の生成のさらなる詳細については、例えば、Suresh et al., Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照されたい。
【0176】
米国特許第5,731,168号に記載されている別のアプローチによれば、組換え細胞の培養から回収されるヘテロ二量体のパーセンテージを最大にするように、1対の抗体分子間の境界面を操作することができる。好ましい境界面はCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1の抗体分子の境界面の1つまたは複数の小さなアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)と置き換えられる。大きなアミノ酸側鎖をより小さなもの、(例えば、アラニンまたはスレオニン)と置き換えることにより、大きな側鎖と同一または類似のサイズの代償的「空洞」が第2の抗体分子の境界面に生成される。これは、ホモ二量体などの他の望まれない最終産物と比べてヘテロ二量体の収量を高めるためのメカニズムを提供する。
【0177】
二重特異性抗体には、架橋結合した抗体または「ヘテロコンジュゲート」抗体が含まれる。例えば、ヘテロコンジュゲートの抗体のうちの一方は結合することができ、他方はビオチンに結合することができる。そのような抗体は、例えば、免疫系細胞を望まれない細胞にターゲティングするために(米国特許第4,676,980号)、およびHIV感染症の治療のために(WO 91/00360、WO 92/200373、およびEP 03089)提唱されている。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の都合のよいクロスリンク方法を使用して作製することができる。適切なクロスリンク剤は当技術分野において周知であり、いくつかのクロスリンク技法とともに米国特許第4,676,980号に開示されている。
【0178】
抗体断片から二重特異性抗体を生成するための技法も文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を使用して調製することができる。Brennan et al., Science, 229: 81 (1985)は、インタクトな抗体がタンパク質分解的に切断されて、F(ab')2断片が生成される手順を記載している。これらの断片は、近接しているジチオールを安定化し、分子間ジスルフィド形成を防止するために、ジチオール錯体化作用物質、すなわち亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元される。次いで、生成されたFab'断片がチオニトロ安息香酸(TNB)誘導体に変換される。次いで、Fab'-TNB誘導体のうちの1つが、メルカプトエチルアミンで還元することによりFab'-チオールに再変換され、これが等モル量の他のFab'-TNB誘導体と混合されて、二重特異性抗体が形成される。生成された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための作用物質として使用することができる。
【0179】
大腸菌由来のFab'-SH断片の直接回収を容易にする技法が存在し、このFab'-SH断片を化学的に結合させて、二重特異性抗体を形成することがきる。Shalaby et al., J. Exp. Med., 175: 217-225 (1992)は、ヒト化二重特異性抗体F(ab')2分子の産生を記載している。各Fab'断片が大腸菌から別々に分泌され、インビトロで定方向の化学結合に供されて、二重特異性抗体が形成される。こうして形成された二重特異性抗体は、ErbB2受容体を過剰発現する細胞および正常なヒトT細胞に結合することができ、ならびにヒト乳房腫瘍標的に対してヒト細胞傷害性リンパ球の溶解活性を誘発することができた。
【0180】
二重特異性抗体断片を組換え細胞培養物から直接的に作製および単離するための様々な技法も記載されている(Merchant et al., Nat. Biotechnol. 16, 677-681 (1998) doi:10.1038/nbt0798-677pmid:9661204)。例えば、ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体が産生された(Kostelny et al., J. Immunol., 148(5):1547-1553, 1992)。FosおよびJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドが遺伝子融合によって2つの異なる抗体のFab'部分に連結された。抗体ホモ二量体がヒンジ領域で還元されて、単量体が形成され、次いで再酸化されて、抗体ヘテロ二量体が形成された。抗体ホモ二量体の産生のためにこの方法を用いることもできる。Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)によって記載される「ダイアボディ」技術により、二重特異性抗体断片を作製するための代替メカニズムが提供された。断片は、同じ鎖の2つのドメイン間で対形成を可能にするには短すぎるリンカーによってVLに接続されたVHを含む。したがって、1つの断片のVHおよびVLドメインが別の断片の相補的なVLおよびVHドメインと対形成させられ、それによって、2つの抗原結合部位が形成される。単鎖Fv(sFv)二量体の使用によって二重特異性抗体断片を作製するための別のストラテジーの報告されている。Gruber et al., J. Immunol., 152:5368 (1994)を参照されたい。
【0181】
特定の態様では、二重特異性または多重特異性抗体は、DOCK-AND-LOCK(商標)(DNL(商標))複合体として形成され得る(例えば、米国特許第7,521,056号;同第7,527,787号;同第7,534,866号;同第7,550,143号、および同第7,666,400号を参照されたい。これらのそれぞれの実施例は、参照により本明細書に組み入れられる)。一般に、この技法は、cAMP依存的プロテインキナーゼ(PKA)調節(R)サブユニットの二量体化およびドッキングドメイン(DDD)配列と様々なAKAPタンパク質のいずれかに由来するアンカードメイン(AD)配列との間で生じる特異的かつ高親和性の結合相互作用を巧みに用いる(Baillie et al., FEBS Letters. 2005; 579: 3264; Wong and Scott, Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 2004; 5: 959)。DDDおよびADペプチドは、任意のタンパク質、ペプチド、または他の分子に結合することができる。DDD配列が自発的に二量体化し、AD配列に結合するので、この技法は、DDDまたはAD配列に結合することができる任意の選択された分子間の複合体の形成を可能にする。
【0182】
2超の結合価を有する抗体も生成することができる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる(Tutt et al., J. Immunol. 147: 60, 1991; Xu et al., Science, 358(6359):85-90, 2017)。多価抗体は、抗体が結合する抗原を発現する細胞によって、二価抗体よりも速く内部移行(および/または異化)され得る。本開示の抗体は、3つまたはそれ以上の抗原結合部位を有する多価抗体(例えば、四価抗体)でもよく、これは、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組換発現によって、容易に産生することができる。多価抗体は、二量体化ドメインおよび3つまたはそれ以上の抗原結合部位を含むことができる。好ましい二量体化ドメインは、Fc領域もしくはヒンジ領域を含む(または、Fc領域もしくはヒンジ領域からなる)。このシナリオでは、抗体は、Fc領域およびFc領域に対してアミノ末端にある3つまたはそれ以上の抗原結合部位を含むと考えられる。本明細書の好ましい多価抗体は、3つ~約8つであるが、好ましくは4つの抗原結合部位を含む(または、該部位からなる)。多価抗体は、少なくとも1つのポリペプチド鎖(好ましくは、2つのポリペプチド鎖)を含み、ポリペプチド鎖は2つまたはそれ以上の可変領域をを含む。例えば、ポリペプチド鎖はVD1-(X1)n-VD2-(X2)n-Fcを含むことができ、式中、VD1は第1の可変領域であり、VD2は第2の可変領域であり、FcはFc領域の1つのポリペプチド鎖であり、X1およびX2はアミノ酸またはポリペプチドを表し、nは0または1である。例えば、ポリペプチド鎖は、以下を含むことができる:VH-CH1-可動性リンカー-VH-CH1-Fc領域鎖;またはVH-CH1-VH-CH1-Fc領域鎖。本明細書の多価抗体は、好ましくは、少なくとも2つの(好ましくは4つの)軽鎖可変領域ポリペプチドをさらに含む。本明細書の多価抗体は、例えば、約2つ~約8つの軽鎖可変領域ポリペプチドを含むことができる。軽鎖可変領域ポリペプチドは軽鎖可変領域を含み、任意で、CLドメインをさらに含む。
【0183】
電荷修飾は多重特異性抗体において特に有用であり、この場合、Fab分子中のアミノ酸置換が、マッチしない重鎖との軽鎖の誤対合(ベンス-ジョーンズ型副産物)の低減をもたらし、該誤対合は、その結合アームのうちの1つ(または、2つより多い抗原結合Fab分子を含む分子の場合は複数)においてVH/VL交換を有するFabベースの二重/多重特異性抗原結合分子の産生で生じ得る(その全体が参照により本明細書に組み入れられるPCT公開第WO 2015/150447号、特にその実施例も参照されたい)。
【0184】
したがって、特定の態様では、治療用物質に含まれる抗体は、
(a)第1の抗原に特異的に結合する第1のFab分子、
(b)第2の抗原に特異的に結合する第2のFab分子であって、Fab軽鎖およびFab重鎖の可変ドメインVLおよびVHが互いに置き換えられている、第2のFab分子
を含み、
ここで、第1の抗原が活性化T細胞抗原であり、第2の抗原が標的細胞抗原であるか、または第1の抗原が標的細胞抗原でありかつ第2の抗原が活性化T細胞抗原であり;かつ
i) a)の下の第1のFab分子の定常ドメインCLでは、位置124のアミノ酸は、正に荷電したアミノ酸によって置換され(Kabatによる番号付け)、a)の下の第1のFab分子の定常ドメインCH1では、位置147のアミノ酸もしくは位置213のアミノ酸は、負に荷電したアミノ酸によって置換される(Kabat EUインデックスによる番号付け)か;または
ii) b)の下の第2のFab分子の定常ドメインCLでは、位置124のアミノ酸は、正に荷電したアミノ酸によって置換され(Kabatによる番号付け)、b)の下の第2のFab分子の定常ドメインCH1では、位置147のアミノ酸もしくは位置213のアミノ酸は、負に荷電したアミノ酸によって置換される(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0185】
ある特定の態様では、抗体はi)およびii)の下で言及された両方の修飾を含まない。複数の態様では、第2のFab分子の定常ドメインCLおよびCH1は互いに置き換えられない(すなわち、未交換のままである)。
【0186】
抗体の別の態様では、a)の下の第1のFab分子の定常ドメインCLでは、位置124のアミノ酸は、リジン(K)、アルギニン(R)、またはヒスチジン(H)によって独立に置換され(Kabatによる番号付け)(好ましい一態様では、独立に、リジン(K)またはアルギニン(R)による)、a)の下の第1のFab分子の定常ドメインCH1では、位置147のアミノ酸または位置213のアミノ酸は、グルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)によって独立に置換される(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0187】
さらなる態様では、a)の下の第1のFab分子の定常ドメインCLでは、位置124のアミノ酸は、リジン(K)、アルギニン(R)、またはヒスチジン(H)によって独立に置換され(Kabatによる番号付け)、a)の下の第1のFab分子の定常ドメインCH1では、位置147のアミノ酸は、グルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)によって独立に置換される(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0188】
特定の態様では、a)の下の第1のFab分子の定常ドメインCLでは、位置124のアミノ酸は、リジン(K)、アルギニン(R)、またはヒスチジン(H)によって独立に置換され(Kabatによる番号付け)(好ましい一態様では、独立に、リジン(K)またはアルギニン(R)による)、位置123のアミノ酸は、リジン(K)、アルギニン(R)、またはヒスチジン(H)によって独立に置換され(Kabatによる番号付け)(好ましい一態様では、独立に、リジン(K)またはアルギニン(R)による)、a)の下の第1のFab分子の定常ドメインCH1では、位置147のアミノ酸は、グルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)によって独立に置換され(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸は、グルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)によって独立に置換される(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0189】
より特定の態様では、a)の下の第1のFab分子の定常ドメインCLでは、位置124のアミノ酸はリジン(K)によって置換され(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸はリジン(K)またはアルギニン(R)によって置換され(Kabatによる番号付け)、a)の下の第1のFab分子の定常ドメインCH1では、位置147のアミノ酸は、グルタミン酸(E)によって置換され(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸は、グルタミン酸(E)によって置換される(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0190】
さらにより特定の態様では、a)の下の第1のFab分子の定常ドメインCLでは、位置124のアミノ酸は、リジン(K)によって置換され(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸はアルギニン(R)によって置換され(Kabatによる番号付け)、a)の下の第1のFab分子の定常ドメインCH1では、位置147のアミノ酸はグルタミン酸(E)によって置換され(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸はグルタミン酸(E)によって置換される(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0191】
F.キメラ抗原受容体
人工T細胞受容体(キメラT細胞受容体、キメラ免疫受容体、キメラ抗原受容体(CAR)としても公知)は操作された受容体であり、これは、免疫エフェクター細胞に恣意的な特異性をグラフトする。典型的には、これらの受容体は、モノクローナル抗体の特異性をT細胞にグラフトするために使用され、それらのコード配列の移行はレトロウイルスベクターによって容易になる。このようにして、多数の標的特異的T細胞を養子細胞移入のために生成することができる。このアプローチの第I相臨床研究は有効性を示す。
【0192】
これらの分子の最も一般的な形態は、CD3-ζの膜貫通およびエンドドメインに融合している、モノクローナル抗体に由来する単鎖可変断片(scFv)の融合体である。そのような分子は、その標的のscFvによる認識に応答してζシグナルを伝達する。そのようなコンストラクトの例は14g2a-ζであり、これは、ハイブリドーマ14g2a(これは、ジシアロガングリオシドGD2を認識する)に由来するscFvの融合体である。T細胞がこの分子を発現する場合に(通常、オンコレトロウイルスベクター形質導入によって達成される)、これは、GD2を発現する標的細胞(例えば、神経芽腫細胞)を認識し、死滅させる。悪性B細胞を標的にするために、研究者らは、B系列分子、すなわちCD19に対して特異的なキメラ免疫受容体を使用して、T細胞の特異性を再指示した。
【0193】
免疫グロブリン重鎖および軽鎖の可変性部分が可動性リンカーによって融合されて、scFvが形成される。シグナルペプチドがこのscFvの前にあり、新生タンパク質を小胞体に向け、続いて表面発現させる(これは切断される)。可動性スペーサーにより、scFvを異なる方向に方向づけることが可能になり、これにより、抗原結合が可能になる。膜貫通ドメインは、細胞内に突出し、望ましいシグナルを伝えるシグナリングエンドドメインの元の分子に通常由来する、典型的な疎水性αヘリックスである。
【0194】
I型タンパク質は、実際に、間にある膜貫通αヘリックスによって連結している2つのタンパク質ドメインである。膜貫通ドメインが貫通する細胞膜脂質二重層は、外部部分(エクトドメイン)から内側部分(エンドドメイン)を離すように働く。あるタンパク質由来のエクトドメインを別のタンパク質のエンドドメインに結合することによって、前者の認識を後者のシグナルに結びつける分子がもたらされることはそれほど驚くべきことではない。
【0195】
エクトドメイン。シグナルペプチドは新生タンパク質を小胞体に向かわせる。これは、受容体がグリコシル化され、細胞膜に係留されることになる場合、必須である。任意の真核性シグナルペプチド配列が通常うまく機能する。一般に、アミノ末端の大抵の成分に天然に結合しているシグナルペプチドが使用される(例えば、軽鎖-リンカー-重鎖の方向のscFvでは、軽鎖のネイティブなシグナルが使用される。
【0196】
抗原認識ドメインは通常scFvである。しかし、多くの代替物が存在する。ネイティブなT細胞受容体(TCR)αおよびβ単鎖由来の抗原認識ドメインは、単純なエクトドメイン(例えば、HIV感染細胞を認識するためのCD4エクトドメイン)およびより新奇な認識成分、例えば、連結されたサイトカイン(サイトカイン受容体を有する細胞の認識につながる)を有するとして記載されている。実際に高親和性で所与の標的に結合するほぼすべてのものを抗原認識領域として使用することができる。
【0197】
スペーサー領域は、抗原結合ドメインを膜貫通ドメインに連結する。これは、抗原結合ドメインが様々な方向に向いて抗原認識を容易にすることを可能にするのに十分なほど可動性であるべきである。最も単純な形態はIgG1のヒンジ領域である。代替物には、免疫グロブリンのCH2CH3領域およびCD3の一部が含まれる。大抵のscFvベースのコンストラクトについて、IgG1ヒンジで十分である。しかし、最良のスペーサーは、経験的に決定されなければならないことが多い。
【0198】
膜貫通ドメイン。膜貫通ドメインは膜にまたがる疎水性αヘリックスである。一般に、エンドドメインの最も膜の近位にある成分由来の膜貫通ドメインが使用される。興味深いことに、CD3-ζ膜貫通ドメインを使用して、ネイティブなCD3-ζ膜貫通荷電アスパラギン酸残基の存在に依存している因子であるネイティブなTCR中への人工TCRの組み込みをもたらすことができる。様々な膜貫通ドメインが様々な受容体安定性をもたらす。CD28膜貫通ドメインはりっぱに発現した安定な受容体をもたらす。
【0199】
エンドドメイン。これは受容体の「機能を果たす端部(business-end)」である。抗原認識後、受容体はクラスター化し、シグナルが細胞に伝えられる。最も一般に使用されるエンドドメイン成分は、3つのITAMを含むCD3-ζである。これは、抗原が結合した後に、活性化シグナルをT細胞に伝える。CD3-ζは、十分に能力のある活性化シグナルをもたらすことができず、さらなる共刺激性シグナリングが必要とされる。
【0200】
「第1世代」CARは、典型的には、内在性TCRからのシグナルの一次伝達物質であるCD3ξ鎖由来の細胞内ドメインを有していた。「第2世代」CARは、T細胞へのさらなるシグナルをもたらすために、様々な共刺激タンパク質受容体(例えば、CD28、41BB、ICOS)由来の細胞内シグナリングドメインをCARの細胞質尾部に加えた。前臨床研究によって、第2世代のCAR設計はT細胞の抗腫瘍活性を向上させることが示された。より最近では、「第3世代」CARは、さらに効力を増大させるために、CD3z-CD28-41BBまたはCD3z-CD28-OX40など、複数のシグナリングドメインを組み合わせる。
【0201】
G.ADC
抗体薬物コンジュゲートまたはADCは、感染性疾患を有する人々の治療のための標的療法として設計された、新しいクラスの非常に強力な生物薬学的薬物である。ADCは、不安定な結合を有する安定な化学リンカーを介して、生物学的に活性な細胞傷害性/抗病原体ペイロードまたは薬物に連結している抗体(完全なmAbまたは抗体断片、例えば単鎖可変断片、すなわちscFv)から構成される複合分子である。抗体薬物コンジュゲートは、バイオコンジュゲートおよびイムノコンジュゲートの例である。
【0202】
モノクローナル抗体のユニークなターゲティング能と細胞傷害性薬物のがん死滅能力を組み合わせることによって、抗体-薬物コンジュゲートは、健康な組織と疾患組織の間の高感度な識別を可能にする。これは、従来の全身的なアプローチと対照的に、抗体-薬物コンジュゲートは感染細胞を標的にし、攻撃し、その結果、健康な細胞があまり激しく影響を受けないことを意味する。
【0203】
ADCベースの抗腫瘍療法の開発では、抗がん薬物(例えば、細胞毒素または細胞毒)が、ある特定の細胞マーカー(例えば、理想的には、感染細胞中または該細胞上でのみ見出されるタンパク質)を特異的に標的にする抗体に結合される。抗体は、これらのタンパク質を体内で追跡して捕らえ、がん細胞の表面に自身を結合させる。抗体と標的タンパク質(抗原)の間の生化学反応は腫瘍細胞においてシグナルを誘発し、次いで、腫瘍細胞が、細胞毒とともに抗体を吸収かまたは内部移行させる。ADCが内部移行した後、細胞傷害性薬物が放出され、これが、細胞を死滅させるかまたは病原体の複製を害する。このターゲティングにより、理想的には、薬物は、他の作用物質に比べて、副作用が低く、かつ広い治療域を与える。
【0204】
抗体と細胞傷害性/抗病原体作用物質の安定な連結は、ADCの極めて重要な局面である。リンカーは、ジスルフィド、ヒドラゾン、もしくはペプチド(切断可能)、またはチオエーテル(切断不可能)を含めた化学モチーフに基づき、標的細胞に対する細胞傷害性作用物質の分布および送達を制御する。切断可能型および切断不可能型のリンカーは、前臨床および臨床試験において、安全であることが証明されている。ブレンツキシマブベドチンは、合成抗新生物作用物質である、強力かつ非常に有毒な抗微小管作用物質のモノメチルオーリスタチンE、すなわちMMAEをヒト特異的CD30陽性悪性細胞に送達する、酵素感受性の切断可能なリンカーを含む。その高い毒性のために、チューブリンの重合を遮断することによって細胞分裂を阻害するMMAEは、単一作用物質の化学療法薬として使用することができない。しかし、抗CD30モノクローナル抗体(腫瘍壊死因子またはTNF受容体の細胞膜タンパク質のcAC10)に連結しているMMAEの組み合わせは、細胞外液で安定であること、カテプシンによって切断可能であること、および療法にとって安全であることが判明した。他の承認されたADCであるトラスツズマブエムタンシンは、安定な切断不可能なリンカーによって結合した、微小管形成インヒビターのメルタンシン(DM-1)とマイタンシンの誘導体と抗体トラスツズマブ(Herceptin(登録商標)/Genentech/Roche)の組み合わせである。
【0205】
より良好でかつより安定なリンカーが使用できることによって、化学結合の機能が変化した。切断可能または切断不可能なリンカーの種類は、細胞傷害性(抗がん)薬物に特定の性状を与える。例えば、切断不可能なリンカーは薬物を細胞内に保つ。その結果、抗体全体、リンカー、および細胞傷害性作用物質が標的がん細胞に進入し、ここで、抗体はアミノ酸のレベルまで分解される。生じた複合体-アミノ酸、リンカー、および細胞傷害性作用物質-は、そのとき活性薬物になる。対照的に、切断可能なリンカーは宿主細胞中で酵素によって触媒され、ここで、細胞傷害性作用物質を放出する。
【0206】
現在開発中の別の種類の切断可能なリンカーは、細胞傷害性/抗病原体薬物と切断部位の間に余分な分子を加える。このリンカー技術によって、研究者らが、切断動態を変えることを心配することがなく、より可動性のADCを作製することが可能になる。研究者らは、ペプチド中のアミノ酸をシークエンシングする方法であるエドマン分解に基づくペプチド切断の新しい方法も開発している。ADCの開発の将来の方向性には、安定性および治療指数をさらに向上させるための部位特異的コンジュゲーション(TDC)ならびにα放散性イムノコンジュゲートならびに抗体コンジュゲート化ナノ粒子の開発も含まれる。
【0207】
H.BiTES
二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)は、抗がん薬としての使用について研究されている人工二重特異性モノクローナル抗体のクラスである。これは、感染細胞に対して宿主の免疫系、より具体的にはT細胞の細胞障害活性を指示する。BiTEはMicromet AGの登録商標である。
【0208】
BiTEは、約55キロダルトンの単一ペプチド鎖に、異なる抗体の2つの単鎖可変断片(scFv)または4つの異なる遺伝子由来のアミノ酸配列を含む融合タンパク質である。scFvのうちの一方はCD3受容体を介してT細胞に結合し、他方は特異的分子を介して感染細胞に結合する。
【0209】
他の二重特異性抗体と同様に、かつ通常のモノクローナル抗体と異なって、BiTEはT細胞と標的細胞の間に連結を形成する。これは、MHC Iまたは共刺激性分子の存在とは無関係に、パーフォリンおよびグランザイムのようなタンパク質を産生することによって、感染細胞に対する細胞傷害性/抗病原体活性をT細胞に発揮させる。これらのタンパク質は、感染細胞に進入し、細胞のアポトーシスを惹起する。この作用は、感染細胞に対するT細胞の攻撃の間の生理的プロセスを模倣する。
【0210】
I.イントラボディ
特定の態様では、抗体は、細胞内側での作用に適した組換え抗体であり、そのような抗体は「イントラボディ」として公知である。この抗体は、様々なメカニズムによって、例えば、細胞内タンパク質輸送を変化させること、酵素機能を妨げること、およびタンパク質-タンパク質またはタンパク質-DNA相互作用を遮断することによって、標的機能を妨げることができる。いろいろな点で、その構造は、上述した単鎖および単一ドメイン抗体の構造を模倣するかまたは該構造に匹敵する。実際に、単一転写産物/単鎖は、標的細胞中で細胞内発現を可能にし、また細胞膜を横断したタンパク質移行をより実行可能にする重要な特色である。しかし、さらなる特色が必要とされる。
【0211】
イントラボディ治療剤の実行に影響を与える2つの主な問題点は、細胞/組織ターゲティングを含めた送達、および安定性である。送達に関して、組織指向的送達、細胞型特異的プロモーターの使用、ウイルスベースの送達、および細胞透過性/膜移行(translocating)ペプチドの使用などの様々なアプローチが用いられている。安定性に関して、アプローチは、一般に、ファージディスプレイをともない、配列成熟化またはコンセンサス配列の開発を含むことができる方法を含めた力ずくでのスクリーニングか、または例えば、安定化配列(例えば、Fc領域、シャペロンタンパク質配列、ロイシンジッパー)の挿入およびジスルフィド置換/修飾などのより指向的改変のいずれかに対するものである。
【0212】
イントラボディが必要とし得るさらなる特色は、細胞内ターゲティングのためのシグナルである。イントラボディ(または他のタンパク質)を細胞内領域、例えば、細胞質、核、ミトコンドリア、およびERにターゲティングするためのベクターは設計されており、市販されている(Invitrogen Corp.;Persic et al., 1997)。
【0213】
細胞に進入する能力のおかげで、イントラボディは他の種類の抗体が達成することができないさらなる用途を有する。本抗体の場合には、生細胞においてMUC1細胞質ドメインと相互作用する能力が、MUC1 CDと関連する機能、例えば、シグナリング機能(他の分子への結合)またはオリゴマー形成を妨げることができる。特に、そのような抗体は、MUC1の二量体形成を阻害するために使用することができる。
【0214】
J.精製
ある特定の態様では、本開示の抗体は精製され得る。本明細書において使用する場合、用語「精製された」は、他の成分から単離可能である組成物を指すことができ、タンパク質はその天然に入手可能な状態と比較して任意の程度まで精製されている。したがって、精製されたタンパク質は、それが天然に存在し得る環境を含まないタンパク質も指す。用語「実質的に精製された」が使用される場合、この指定は、タンパク質またはペプチドが、組成物の主要成分を形成する、例えば、組成物中のタンパク質の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、またはそれ以上を構成する組成物を指すことができる。
【0215】
タンパク質精製技法は当業者に周知である。これらの技法は、あるレベルにおける、ポリペプチドおよび非ポリペプチド画分への細胞環境の粗製分画を含む。他のタンパク質からポリペプチドを分離したら、クロマトグラフィー技法および電気泳動的技法を使用して関心対象のポリペプチドをさらに精製して、部分的もしくは完全な精製(または均一になるまでの精製)を達成することができる。純粋なペプチドの調製に特に適している分析方法は、イオン交換クロマトグラフィー、排除クロマトグラフィー;ポリアクリルアミドゲル電気泳動;等電点電気泳動である。タンパク質精製のための他の方法には、硫酸アンモニウム、PEG、抗体などを用いた、または熱変性、それに続く遠心分離による沈殿;ゲル濾過、逆相、ヒドロキシルアパタイト、およびアフィニティークロマトグラフィー;ならびにそのような技法と他の技法の組み合わせが含まれる。
【0216】
本開示の抗体の精製では、原核または真核発現システムでポリペプチドを発現させ、変性条件を使用してタンパク質を抽出することが望ましい可能性がある。ポリペプチドは、ポリペプチドのタグ化部分に結合するアフィニティーカラムを使用して、他の細胞成分から精製することができる。当技術分野において一般に公知であるように、様々な精製工程を行う順序を変更することができると、またはある特定の工程を省略し、実質的に精製されたタンパク質またはペプチドの調製のための適切な方法を依然としてもたらすことができると考えられる。
【0217】
一般に、完全な抗体は、抗体のFc部分に結合する作用物質(すなわち、プロテインA)を用いて分画される。あるいは、抗原を使用して、妥当な抗体を同時に精製および選択することができる。そのような方法は、カラム、フィルター、またはビーズなどの支持体に結合した選択作用物質を用いることが多い。抗体が支持体に結合し、混入物が除去され(例えば、洗い流され)、条件(塩、熱など)を適用することにより抗体が放出される。
【0218】
本開示に照らして、タンパク質またはペプチドの精製の程度を定量化するための様々な方法が当業者に公知になるであろう。これらには、例えば、活性画分の比活性を決定すること、またはSDS/PAGE分析によって画分内のポリペプチドの量を評価することが含まれる。画分の純度を評価するための別の方法は、画分の比活性を計算すること、それを最初の抽出物の比活性と比較すること、およびこのようにして純度を計算することである。活性の量を表すために使用される実際の単位は、当然ながら、精製に続いて選択された特定のアッセイ技法、および発現したタンパク質またはペプチドが検出可能な活性を示すかどうかに依存すると考えられる。
【0219】
ポリペプチドの移動は、SDS/PAGEの異なる条件で、時には著しく変動し得ることが公知である(Capaldi et al., 1977)。したがって、異なる電気泳動条件下で、精製されたまたは部分的に精製された発現産物の見かけ上の分子量が変動し得ることが認識されるであろう。
【0220】
III.カンジダ属感染症の能動/受動免疫化および治療/予防
A.製剤
本開示は、抗カンジダ抗体およびそれを生成するための抗原を含む薬学的組成物を提供する。そのような組成物は、予防的または治療的有効量の抗体もしくはその断片またはペプチド免疫原、および薬学的に許容される担体を含む。本明細書において使用する場合、用語「薬学的に許容される担体」は、薬学的投与に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含むことができる。特定の態様では、用語「薬学的に許容される」は、動物、より詳細にはヒトにおける使用に関して、連邦または州政府の規制当局によって承認されている、または米国薬局方もしくは他の一般に認識される薬局方に列挙されていることを意味することができる。用語「担体」は、治療剤が加えられる希釈剤、賦形剤、またはビヒクルを指すことができる。適切な担体は、本分野の標準的な参照テキストであるRemington's Pharmaceutical Sciencesの最新版に記載されており、これは、参照により本明細書に組み入れられる。そのような薬学的担体は、石油、動物、野菜、または合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油などを含めて、水および油などの無菌の液体であり得る。水は、薬学的組成物が静脈内に投与される場合、特定の担体である。食塩溶液ならびに水性デキストロースおよびグリセロール溶液も、特に注射用溶液剤のために、液体担体として用いることができる。他の適切な薬学的賦形剤には、限定されないが、デンプン、グルコース、ラクトース、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。
【0221】
前記組成物は、望ましい場合、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含むことができる。これらの組成物は、溶液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末剤、持続性放出製剤などの形態をとることができる。経口製剤は、標準的な担体、例えば、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含むことができる。適切な薬学的作用物質の例は、「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。そのような組成物は、患者へのふさわしい投与のための形態を提供するために、予防的または治療的有効量の抗体またはその断片を、好ましくは精製された形態で、適切な量の担体とともに含むと考えられる。製剤は投与様式に適するべきであり、投与様式は、経口、静脈内、動脈内、頬内、鼻腔内、噴霧化、気管支吸入、直腸内、膣、局所的、または機械的人工呼吸による送達であり得る。本発明の薬学的組成物は、意図された投与経路に適合するように製剤化される。
【0222】
B.投与
投与経路の例には、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(すなわち、局所的)、経粘膜的、および直腸内投与が含まれる。非経口、皮内、または皮下投与のための溶液剤または懸濁剤は、以下の成分を含むことができる:無菌の希釈剤、例えば、注射用水、食塩溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート作用物質、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝剤、例えば、酢酸、クエン酸またはリン酸、および浸透圧の調整のための剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、酸または塩基、例えば、塩酸または水酸化ナトリウムで調整することができる。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチックでできた、アンプル、使い捨てのシリンジ、または多回投与バイアル中に封入することができる。
【0223】
注射用使用に適した薬学的組成物には、無菌の水性液剤(水溶性の場合)または分散剤および無菌の注射用溶液剤または分散剤の即時調製のための無菌の粉末剤が含まれ得る。静脈内投与については、適切な担体には、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF, Parsippany, N.J.)、またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が含まれる。複数の態様では、組成物は無菌であり、容易に注射できる程度に流動性である。組成物は製造および貯蔵条件下で安定であり得、細菌および真菌などの微生物汚染作用から保護され得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液状ポリエチレングリコールなど)ならびにこれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散剤の場合は必要とされる粒径の維持によって、および表面活性剤の使用によって、ふさわしい流動性を維持することができる。微生物作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合で、組成物中に等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを含むことが好ましいと考えられる。注射用組成物の持続性吸収は、吸収を遅延させる剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に含めることによって、もたらすことができる。
【0224】
無菌の注射用溶液剤は、上記で列挙した成分のうちの1つまたはそれらの組み合わせとともに、必要量の活性化合物を妥当な溶媒中に組み入れ、必要に応じて、続いて濾過滅菌することによって、調製することができる。一般に、分散剤は、基本的分散媒および上記で列挙したものからの必要とされる他の成分を含む無菌のビヒクル中に活性化合物を組み入れることによって、調製される。無菌の注射用溶液剤の調製のための無菌の粉末剤の場合には、調製方法は、以前に滅菌濾過したそれらの溶液から活性成分+任意のさらなる望ましい成分の粉末をもたらす、真空乾燥および凍結乾燥である。
【0225】
経口組成物は、一般に、不活性な希釈剤または食用担体を含む。これらは、ゼラチンカプセル中に封入することができるか、または錠剤中に圧縮することができる。経口の治療的投与の目的で、活性化合物は、賦形剤とともに組み入れ、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤の形態で使用することができる。経口組成物は、口腔洗浄薬として使用するために、流体担体を使用して調製することもでき、流体担体中の化合物は経口的に投与され、口の中でごろごろさせられ、吐き出されるかまたは飲み込まれる。薬学的に適合する結合剤および/またはアジュバント材料を組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分または類似した性質の化合物のいずれかを含むことができる:結合剤、例えば、微結晶セルロース、トラガカントゴム、もしくはゼラチン;賦形剤、例えば、デンプンもしくはラクトース、崩壊剤、例えば、アルギン酸、Primogel、もしくはコーンスターチ;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムもしくはSterotes;流動促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えば、ショ糖もしくはサッカリン;または着香剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香料。
【0226】
吸入による投与については、化合物は、適切な噴射剤、例えば、二酸化炭素などのガスを含む加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーから、エアゾールスプレーの形態で送達される。
【0227】
全身投与はまた、経粘膜的または経皮的手段によるものでもよい。
【0228】
経粘膜的または経皮的投与については、浸透されるバリアに適した浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は一般に当技術分野において公知であり、これには、例えば、経粘膜的投与については、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜的投与は、鼻腔用スプレーまたは坐剤を使用して達成することができる。経皮的投与については、活性化合物は、一般に当技術分野において公知であるように、軟膏剤、膏薬、ゲル剤、またはクリーム剤に製剤化される。
【0229】
化合物は、坐剤(例えば、従来の坐剤基剤、例えば、ココアバターおよび他のグリセリドを有する)または直腸送達のための停留浣腸の形態で調製することもできる。
【0230】
一態様では、活性化合物は、埋植体およびマイクロカプセル化送達システムを含めた制御放出製剤など、体からの迅速な排除から化合物を保護すると考えられる担体を用いて調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性の生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤を調製するための方法は、当業者に明らかであろう。材料は、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から市販品として入手することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染細胞にターゲティングされるリポソームを含む)も薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているように、当業者に公知である方法に従って、調製することができる。
【0231】
投与の容易さおよび投薬量の均一性の理由で、投薬単位剤形で経口または非経口組成物を製剤化することは特に有利である。本明細書において使用する場合、投薬単位剤形は、治療される対象に対する単位投薬量として適する、物理的に分離した単位を指し、各単位は、必要とされる薬学的担体とともに望ましい治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含む。本発明の投薬単位剤形についての仕様は、活性化合物のユニークな特性および達成されるべき特定の治療効果、ならびに個体の治療のためにそのような活性化合物を配合する分野に固有の制限よって決まり、かつこれらに直接的に依存する。
【0232】
活性ワクチンも想定され、この場合、開示するものと同様の抗体が、カンジダ属感染症の危険性がある対象においてインビボ産生される。そのようなワクチンは、非経口投与のために製剤化することができ、例えば、皮内、静脈内、筋肉内、皮下、またはさらに腹腔内経路を介した注射のために製剤化することができる。皮内および筋肉内経路による投与が使用可能である。あるいは、ワクチンは、局所的経路によって、例えば、ネブライザーによる点鼻、吸入によって、または直腸内もしくは膣送達を介して、粘膜に直接的に投与することができる。薬学的に許容される塩には、酸性塩、および例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石、マンデル酸などのような有機酸を用いて形成されるものが含まれる。遊離カルボキシル基を用いて形成される塩はまた、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基に由来し得る。
【0233】
人工獲得受動免疫として公知である抗体の受動移入は、一般に、静脈内または筋肉内注射の使用をともなう。抗体の形態は、静脈内(IVIG)または筋肉内(IG)使用のためのプールされたヒト免疫グロブリンとしての、免疫化されたドナーまたは疾患から回復したドナー由来の高力価のヒトIVIGまたはIGとしての、およびモノクローナル抗体(MAb)としての、ヒトまたは動物の血漿または血清であり得る。そのような免疫は、一般に、短期間しか続かず、かつ過敏症反応、および血清病、特に非ヒト起源のγグロブリンに由来するものに対する危険性もある。しかし、受動免疫は即時の保護をもたらす。抗体は、注射に適した、すなわち、無菌かつ注射可能な担体中に製剤化される。
【0234】
一般に、本開示の組成物の成分は、例えば、活性剤の量を示す密封された容器、例えばアンプルまたはサシェット中に凍結乾燥粉末剤または水を含まない濃縮製剤として、単位剤形で、別々にかまたは一緒に混合されてかのいずれかで供給される。組成物が注入によって投与される場合、これを、無菌の薬学的グレードの水または食塩水を含む注入ボトルを用いて、分注することができる。組成物が注射によって投与される場合、投与より前に成分を混合することができるように、注射用無菌水または食塩水のアンプルを提供することができる。
【0235】
本開示の組成物は、中性形態または塩形態として製剤化することができる。薬学的に許容される塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなどのアニオンを用いて形成されるもの、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものなどのカチオンを用いて形成されるものが含まれる。
【0236】
C.MSC送達アプローチ
間葉系幹細胞(MSC)は、がんおよび自己免疫疾患を含めた様々な状態に対する遺伝子療法ベクターとして現在活用されている、ユニークな多分化能前駆細胞である。MSCは、主に、同種異系MSC移植中の抗炎症性性状について公知であるが、MSCが、ある特定の設定下で実際に適応免疫を促進することができるという証拠がある。MSCは、骨髄、脂肪組織、胎盤、および臍帯血を含めた多種多様の組織で同定されている。脂肪組織は、MSCの最も豊富な公知の供給源のうちの1つである。
【0237】
MSCは、様々な臨床および前臨床設定において、同種異系宿主中に首尾よく移植されている。これらのドナーMSCは、主要組織適合抗原複合体(MHC)がマッチしないドナー由来の細胞または組織の移植後に発症し得る移植片対宿主病(GvHD)の阻害を含めて、免疫寛容を促進することが多い。MSCの移入後のGvHDの症状の軽減は、TおよびB細胞増殖の直接的なMSCによる阻害、ナチュラルキラー細胞の細胞傷害性を休止させること、および樹状細胞(DC)の成熟によるものであった。少なくとも1つの研究が、移植された同種異系MSCに対する抗体の産生を報告した。それにもかかわらず、GvHDを予防する能力は、外来抗原を発現するMSCが、MSCによって発現される外来抗原のみに対して免疫応答を選択的に誘導し、ドナーMSCに対しては特に誘導しない点で、細胞ワクチン接種の間、他の細胞型(すなわち、DC)と比べて利点を有し得ることも示唆する。
【0238】
MSCは、腫瘍微小環境に向かうその生得的な傾向が理由で、抗がん治療剤のための送達ビヒクルとして研究されている。MSCはまた、IFNαまたはIFNγの発現を通じて腫瘍原性細胞のアポトーシスを促進するために使用されている。さらに、MSCは、最近、腫瘍発生および転移の予防および阻害について探索された。他の研究によって、不死化MSCは腫瘍原性になり得るので、これが使用について実際に安全であるかどうかを判定するために、注意深く研究されなければならないことが示された。移植された一次非不死化MSCは、インビボで最大で数日間しか存続しない。
【0239】
ワクチンは、効率的かつ費用対効果が大きい感染性疾患予防手段であることが多い。ワクチンは、ある壊滅的疾患、すなわち天然痘を根絶する際に変革的能力を実証し、一方で、以前は広範な罹患率および死亡率を引き起こした、ジフテリア、ポリオ、および麻疹を含めた他の疾患を制御する能力を提供した。しかし、従来のワクチンアプローチは、これまでに、HIV、結核、マラリア、ならびにデング熱、ヘルペス、およびさらに感冒を含めた多くの他の疾患からの保護を提供することができなかった。なぜ従来のワクチンアプローチがこれらの疾患について成功しなかったかの理由は、複雑であり、多様である。例えば、HIVは、機能的なプロウイルスゲノムを宿主細胞のDNA中に組み込み、それによって、潜在または残存を確立する。一旦潜在/残存が確立されれば、非常に活性な抗レトロウイルス療法を用いても、HIVを根絶することはできない。
【0240】
より新しい代替の免疫化アプローチは、DNAワクチンと細胞ワクチンの両方を含む。DNAワクチンは、局部細胞(すなわち、筋細胞)がインサイチューでワクチン抗原を産生することを可能にする、抗原をコードするプラスミドによるワクチン接種の組織部位における細胞のトランスフェクションをともなう。細胞ワクチンは、ワクチン抗原を発現するかまたは提示する、プレパルスしたかまたはトランスフェクトした宿主抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、DC)の直接移入を使用する。これらのアプローチの利点は、ワクチン抗原がインビボで産生され、免疫学的処理に容易に使用可能であることである。成功した前臨床試験に関する多数の報告にもかかわらず、そのようなアプローチの両方は障害にぶつかった。ヒトにおけるDNAワクチン接種の研究によって不十分な有効性が示され、これは、マウスとヒトの生得的な違いと関連付けられた。DCワクチン接種ストラテジーは、治療的がんワクチン接種について限られた臨床的成功しか示さず、かつ個々に合わせる必要があるので生産費用が高い。
【0241】
ここで、本発明者らは、カンジダ属を特異的に標的にする抗体をエピソームで発現する免疫防御性一次間充織幹細胞(IP-MSC)の使用、ならびにIP-MSCの調製および使用の方法を想定する。IP-MSCは、抗原結合ポリペプチド(例えば、完全な抗体、単鎖可変抗体断片(ScFV)、FabまたはF(ab’)2抗体断片、ダイアボディ、トリボディなど)をコードする1種類または複数種類のエピソームベクターでトランスフェクトされる。任意で、IP-MSCは、1種類または複数種類の他の免疫調節性ポリペプチド、例えばサイトカイン、例えばインターロイキン(例えば、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-9、およびIL-12)、インターフェロン(例えば、IFNα、IFNβ、またはIFNω)などをさらに発現することができ、これらは、真菌を中和するための抗原結合ポリペプチドの有効性を増強することができる。各免疫反応性ポリペプチドは、真菌によって産生される抗原に対して特異的な中和抗体(例えば、曝露された対象由来のネイティブな抗体)由来の、または該中和抗体の抗原結合領域のアミノ酸配列を含む。各抗原結合領域ペプチドは、病原体または毒素に特異的に結合し、病原体または毒素を中和するように、配置および配向される。
【0242】
いくつかの態様では、IP-MSCは、例えば、1、2、3、4、5、もしくは6種類の免疫反応性ポリペプチドを、または最大で約10、20、30、40、50、60、70、80、90、もしくは100種類までの免疫反応性ポリペプチドを発現し、これらは、病原体を特異的に標的にする。例えば、各免疫反応性ポリペプチドは、病原性生物由来のタンパク質またはその断片を特異的に標的にし、これらに結合することができる。
【0243】
IP-MSCは、病原体による感染に対して受動免疫を引きこす、または該感染を治療するのに有用である。IP-MSCは、病原体によって引き起こされる感染性疾患を治療または予防するための薬学的組成物として使用するために、薬学的に許容される担体(例えば、緩衝液、例えば、リン酸緩衝食塩水、または生存可能なトランスフェクトされた一次MSCを維持するのに適した任意の他の緩衝物質)中で提供することができる。いくつかの態様では、IP-MSCは骨髄由来のMSCを含むが、いくつかの他の態様では、IP-MSCは脂肪MSC細胞、胎盤MSC細胞、または臍帯血MSC細胞を含む。
【0244】
本明細書において記載されるIP-MSCは、少なくとも部分的には、真菌に対する一時的な受動的保護に特に有用であり、なぜならば、一次MSCが、一般に、免疫系によって標的にされない低免疫原性細胞であるからである。したがって、IP-MSCは、治療される対象に許容され、免疫反応性ポリペプチドが発現され、産生され、放出されて、対象が曝露されたかまたは曝露され得るカンジダ属に結合しかつ該カンジダ属を阻害するのに十分な時間にわたって細胞が生存することを可能にする。さらに、一次MSCは、一般に、体内での存続期間が限られており、したがって、MSCによる治療の望ましくない長期の副作用(例えば、発がん性)を改善させ、この副作用は、不死化MSCに関する問題点であり得る。
【0245】
本発明者らは、多コピー、非感染性、非組み込みの環状エピソームを用い、これは、複数の(数百でさえも)細菌、ウイルス、真菌、または寄生体のタンパク質またはタンパク質トキソイドに対して保護的な完全ヒト単鎖抗体断片、完全長IgG、または他の免疫反応性ポリペプチドを同時に発現するために使用される。いくつかの態様では、エピソームは、エプスタイン-バーウイルス(EBV)の核抗原1発現カセット(EBNA1)に由来する成分およびOriP複製開始点に基づく。これらは、好ましくは、ウイルスが複製またはアセンブルされないように、使用されるEBVの唯一の成分である。このシステムは、間葉系幹細胞において、安定な染色体外の残存および長期の異所的遺伝子発現をもたらす。本明細書において記載される方法では、ScFVまたは他の免疫反応性ポリペプチドは、保護的な量で、効果的にMSCで発現され、MSCから分泌される。この技術は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第9,101,597号に詳細に記載されている。EBVベースのエピソームがヒト細胞において非常に大きなヒトゲノムDNA断片(>300kb)を導入し、維持する能力は、本明細書において記載される方法の別の重要な利点である。この特色は、細菌で複製することができ、大規模精製、hMSC中へのトランスフェクション、およびエピソームプラスミドとしての複製に適しているベクター中への数十の発現エレメントのクローニングを可能にする。免疫反応性ポリペプチド(例えば、ScFV)の標的発現レベルは、各免疫反応性ポリペプチドについて約10pg/細胞/日であり、好ましくは、5pg/細胞/日の発現レベルである。各免疫反応性ポリペプチドについて10pg/細胞/日の生産性を有する約1×1011MSCを用いた注入は、75Kgの成人の循環における15mg/mLレベルと同等である、1日あたり約1グラムの可溶性ポリペプチドを生成し、これは適切な治療的投薬量レベルである。各種類の免疫調節性分子の発現を駆動するために、プロモーターおよび他の調節エレメントが使用される。
【0246】
文献におけるいくつかの報告は、MSCにおいてよく特徴決定されたプロモーターからの発現の非古典的パターンを示す。ヒトサイトメガロウイルスの主要な最初期遺伝子プロモーター(CMV-MIE)は、公知の最も強いプロモーターのうちの1つであり、1リットルあたりマルチグラムの組換えタンパク質薬物を産生する安定な哺乳動物細胞株の主要な要素である。しかし、CMV-MIEはMSCにおいて転写が比較的不十分である。対照的に、EF1A、UBC、およびCAGGプロモーターは、MSCにおいて実証された高レベルの発現を有し、明白な徴候またはプロモーターのサイレンシングがない。本明細書において記載される方法で用いられるエピソームベクターは、任意のそのようなプロモーターを含むことができる。大腸菌におけるプラスミドの拡大のために、抗生物質選択マーカーを有さない発現ベクターも提供される。エピソームプラスミドの複製の性質は、抗生物質耐性遺伝子のオープンリーディングフレームを破壊する制限酵素によるその直鎖化を起こらないようにする。したがって、遺伝的再編成が抗生物質耐性遺伝子の発現をもたらすと考えられ、これが、特定の場合に、ヒトにおいて望ましくない抗生物質抵抗性媒介性副作用を生じさせ得ることが想像できる。このシナリオは、必要であれば、または望ましい場合、大腸菌系統におけるプラスミドの増殖(growth)および増殖(propagation)のために、抗生物質耐性遺伝子を代謝的選択マーカーに代えることによって、避けることができる。
【0247】
ベクター中の調節エレメントは、関心対象の各免疫調節性分子の望ましい分泌レベルおよび血清レベルに対応するように用いられる。完全長抗体、ScFV、または他の免疫反応性ポリペプチドの発現は、強力なプロモーター(例えば、CMV、EF1A、CAGGなど)から恩恵を受けて、MSCの投与後1日未満内に治療的血清レベルを達成する。他の免疫調節性分子、例えばサイトカインは、MSCによって、低レベルかつ一過的に発現および分泌されることが多い。発現の本質的に異なるレベルおよびタイミングで必要とされる柔軟性に対応するために、そのような遺伝子は、低基本プロモーター(すなわち、TK)から、またはTetオン/オフプロモーターからの制御された誘導を通じて駆動される。Tetプロモーターシステムは、アンヒドロテトラサイクリンなどの無害の抗生物質類似体の使用から恩恵を受け、これは、テトラサイクリンより2 log低い濃度でTetプロモーターを活性化し、腸の菌叢の異常調節をもたらさず、ポリケタイド抗生物質に対する抵抗性をもたらさず、かつ抗生物質活性を示さない。アンヒドロテトラサイクリンは水に十分に溶解し、飲料中で投与して、トランスフェクトされたMSCにおいて選択された遺伝子の活性化を増強することができる。人体におけるテトラサイクリンの最初の分解産物であるアンヒドロテトラサイクリンの潜在的な毒性は、Tetオン/オフプロモーターシステムを同様に活性化するFDAで承認されたテトラサイクリン類似体であるドキシサイクリンなどの他の類似体の投与によって回避することができる。このシステムは、好ましくは、強力なアポトーシス促進性遺伝子(例えば、Bax)の誘導性発現を堅固に調節して、有害な副作用の際に、または望ましい治療的エンドポイントが達成された場合に、トランスフェクトされたMSCの標的アポトーシスを惹起することによるフェイルセイフ「キルスイッチ」の設計で用いられる。Tet-オンシステムの最近の進歩は、プロモーターリーキネスのより増強された抑制および元のTetシステムよりも最大で100倍低い濃度でのDoxに対する応答性をもたらした(Tet-On Advanced(商標)、Tet-On 3G(商標))。トランスフェクトされたMSCにおいてベクター安定性を維持するために、薬物選択マーカーは使用されない。EBVベースのベクターは、細胞周期あたり90~92%の割合で娘細胞中で複製され、保持されることが公知である。
【0248】
エピソームは複製するウイルスを産生せず、これらが発現される細胞はいかなる有意な量のMHC分子も産生しないので、エピソームは、個体においてプラットフォームのその後の使用を妨げると考えられる、ベクター由来の免疫をもたらさない。これは、エプスタイン-バーウイルス(EBV)核抗原1発現カセットに由来する成分に対する、およびMSCバックグラウンド(HLAタイピング)に対する免疫応答を検出するための高感度アッセイ(抗体ELISAおよびT細胞ベースのアッセイ)を設計することによって、確かめることができる。宿主細胞の染色体へのEBVの組み込み率を研究するため(FISH、サザンブロット、qPCR)、およびベクターの一過的な複製性質を測定するために、遺伝子的研究が行われる。EBVベクターは、選択マーカーの非存在下で細胞周期あたり約90~92%の複製を保持することが報告されている。複製率の低下は、宿主システムからのベクターのクリアランスに寄与する。注射されたMSCのコンパートメント化は、エステル化の際に脂質二重層をもはや通過せず、かつ非常に蛍光性になる細胞膜透過性色素(緑色CMFDA、オレンジCMTMR)が予めロードされた蛍光標識細胞を追跡することによって、非ヒト霊長類(NHP)で評価される。そのような測定は、新しく調製された組織切片(リンパ節、肝臓、脾臓、筋肉、脳、膵臓、腎臓、腸、心臓、肺、眼、雄および雌の生殖織)で、または全身スキャニングを通じて行われる。ベクター配列および対応する転写産物の分析用のDNAおよびRNAの単離のために、さらなる組織切片が処理される。各免疫反応性ポリペプチド、サイトカイン、およびシャットオフ転写産物に対して特異的なオリゴの設計によって、全組織における個々の遺伝子発現の評価が可能になる。いくつかのプロモーターは、いくつかの組織において他の組織よりも活発に転写され、注射後の末梢組織へのMSCの優先的な局在およびMSCの滞留(residency)と組換え遺伝子の対応する転写活性の両方の評価を必要とする。この目的のために、2つの人工の「バーコード」核酸タグを含むことができ、一方はTetオン/オフ駆動性RNA転写物に特異的であり、他方はエピソームベクターDNAに特異的である。これらのタグは、NHPおよびヒトのゲノムおよびトランスクリプトームバックグラウンドの中で非常にユニークな配列の迅速な同定を可能にする。
【0249】
MSCは大規模エレクトロポレーションに適しており、最大で90%までの効率を有する。MaxCyte, Inc.(Gaithersburg, Md.)は、無菌の閉鎖トランスフェクション環境における極端に大量の一過的トランスフェクションのために特に設計された、設置面積が小さく、使用し易い機器である、MAXCYTE(登録商標)VLX(商標)大規模トランスフェクションシステムを販売している。フローエレクトロポレーション技術を使用して、MAXCYTE(登録商標)VLX(商標)大規模トランスフェクションシステムは、無菌の閉鎖トランスフェクション環境において高い細胞生存率およびトランスフェクション効率で、最大で約2×1011個までの細胞を約30分未満でトランスフェクトすることができる。cGMPに準拠したこのシステムは、実験台からcGMPパイロットおよび商業的製造まで、組換えタンパク質の迅速な産生に有用である。MSCは、大規模な細胞培養環境において、既知組成(CD)培地中で増殖させることができる。バイオプロセシング操作の最近の進歩は、多能性特性および遺伝的安定性の保持を消失することなくMSCの大規模拡大を支持するCD調合物の迅速な開発もたらした。脂肪由来のMSCは、脂肪吸引手順から容易に獲得することができ、平均的な手順で約1×108個のMSCが得られ、したがって、バンキング(banking)前のエクスビボでの拡大に十分な細胞数(およそ25回のダブリング、>3×1015細胞)を提供し、残りの生存期間およびダブリング数(およそ25回)は、注入から数週間にわたってインビボで治療的分子の発現および送達を持続するのに十分である。MSCは、一般に、48~72時間の範囲のダブリング速度を示し、したがって、50~75日間の範囲のインビボでの生存期間を提供する。注入されたMSCのターンオーバー速度は、導入遺伝子産物の循環レベルを測定することによって、ならびにqPCRによる、ヒトの血液、鼻吸引液、および尿中のEBV配列の検出によって、評価することができる。望ましい治療タイムスパンの後のMSCの本質的に完全な排除は、発現ベクター中に築かれたアポトーシス促進性遺伝子の制御された誘導性発現を介して自己破壊を誘導することによって、達成することができる。NHPにおける注射後の循環MSC由来の免疫反応性ポリペプチドまたは他の免疫調節物質のレベルおよびベクター誘導性自己免疫またはGVHD応答も評価することができる。ヒトでは、肝損傷(ALT、AST)、肝臓(ALB、BIL、GGT、ALPなど)、および腎機能マーカー(BUN、CRE、尿素、電解質など)のバイオマーカーなどの、自己免疫性または同種異系免疫応答と関連するさらなるマーカーを測定することができる。
【0250】
リンパ球造血系系列抗原の発現の欠如によって、MSCが造血細胞、内皮細胞、内皮前駆細胞、単球、B細胞、および赤芽球から区別される。一次MSCは不死ではなく、したがって、一次細胞についての約50回の分裂の「ヘイフリックの限界」に供される。それにもかかわらず、拡大の能力は非常に高く、1細胞が最大約1015個の娘細胞を産生することができる。さらに、MSCはバッチ間変動が低い。何百万の危険な状態にある個体を迅速に保護することができる細胞バンクサイズは、多数のスクリーニング前のドナー脂肪組織由来MSCをプールすることによって生成することができ:1×108細胞/ドナーで100ドナー×エクスビボで25世代=約3×1017細胞;約1×1011細胞/注入=約300万用量である。治療的MSCバンクの生成に以下の2つのアプローチを使用することができる。(1)単離、拡大、試験、バンキング、それに続く、トランスフェクション、回収、および投与;ならびに(2)単離、拡大、試験、トランスフェクション、バンキングして解凍および短時間の回復の際にすぐに投与ができる細胞を生成すること。
【0251】
特徴決定のために、無菌性、マイコプラズマ、インビトロおよびインビボでの外来性作用物質試験、レトロウイルス試験、細胞同一性、電子顕微鏡、およびいくつかの特異的ウイルスPCRアッセイについて、マスター細胞バンクを試験することができる(FDAは、1993年および1997年の指針書で14回要求し、そのリストはさらにいくつかの推奨されるウイルス、主にポリオーマウイルスが増やされている)。一次培養条件において血清の初期使用の可能性があるため、ウシウイルスの9CFRパネルに対して試験を行うことができる。通常の操作の間に細胞がブタの生成物と接触する場合、同様に、ブタウイルスについての試験が好ましくは行われる。
【0252】
組織修復のためにMSCを使用することの制限のうちの1つは、細胞が、エクスビボでの拡大および細胞が由来する人への再注射後に、臓器で永続的にコロニー形成することができないことであった。MSCは、MHCとマッチした個体に注射されたかまたはマッチしない個体に注射されたかにかかわらず、限られた期間(例えば、数週間または数か月)の間循環する。成人MSCの普遍的遺伝子送達プラットフォームの開発におけるこの特定の欠点は、本明細書において記載される方法では利点である。トランスフェクトされたMSCで発現する各導入遺伝子の薬物動態(PK)プロファイルは、開発された各操作された送達ベクタープラットフォームについて、NHPで評価することができる。1単回用量PK研究が、望ましくは、カニクイザルで行われ、トランスフェクトされたMSCがIV投与される。そのような研究では、2匹の雄サルおよび2匹の雌サルのそれぞれが、高用量(約1011細胞)、中用量(約108細胞)、および低用量(約105細胞)のMSCを静脈内(i.v.)投与される。評価されるエンドポイントには以下が含まれる:ケージサイド観察、体重、定性的摂食量、眼科学、心電図、臨床病理学(例えば、血液学、化学、凝固、尿検査);免疫学(例えば、免疫グロブリンおよび末梢白血球、例えば、B細胞、T細胞、および単球);免疫原性;肉眼所見(例えば、剖検および選択された臓器の重量);組織病理学;組織結合;ならびに薬物動態。各組換え抗体の血清中濃度は、1、3、6、12、24、36、48、および63日目に、抗体特異的な捕獲および検出(HRP標識された抗id)試薬を用いる適格なサンドイッチ型ELISAを使用して、9週間にわたってモニターすることができる。PK分析は、WINNONLINソフトウェア(Pharsight Corp.)を使用して、非コンパートメント方法によって行うことができる。各抗体に対する薬物動態パラメーターは、最大血清中濃度(Cmax)、用量標準化血清中濃度(Cmax/D)、0時間から無限大までの濃度-時間曲線下面積(AUC0-∞)、用量標準化した0時間から無限大までの濃度-時間曲線下面積(AUC0-∞/D)、全身クリアランス(CL)、定常状態での分布容積(Vss)、終末相の間の見かけ上の分布容積(Vz)、終末排除相半減期(t1/2,term)、および平均滞留時間(MRT)として表すことができる。注射されたMSCの末梢循環およびコンパートメント化は、新しく調製された組織切片で、または全身スキャニングを通じて、上記のように、細胞膜透過性CMFDAまたはCMTMR色素が予めロードされた蛍光標識細胞を追跡することによって、NHPで評価することができる。ベクターDNA配列および転写産物は、上記で概要を述べたように、qPCRによってモニターすることができる。
【0253】
インビボでMSCに対して拒絶がないことを概説する広範な多くの文献が存在する。それにもかかわらず、この現象は、同種および異種のDNAベクターで改変された同系MSCの複数の注射、それに続く同種異系応答の免疫学的プロファイリングを用いて、NHPで評価することができる。例えば、NHPの1つの群にLASV抗体を発現するエピソームベクターでトランスフェクトされた同系MSCのボーラスを注射し、別の群にインフルエンザ抗体を発現する類似したベクターをトランスフェクトされた同系MSCのボーラスを注射することができる。MSCプラットフォームに対する、およびベクターの成分に対する免疫応答は、77日間にわたって週に1回評価することができ、その間、任意の免疫学的応答が検出可能であるはずである。ドキシサイクリンまたは他のテトラサイクリン類似体の投与によるシャットオフメカニズムの活性化後のNHPにおける安全性および免疫原性を、類似した方式で評価することができる。ドキシサイクリンレジメンを適用した後、ベクター成分およびMSC送達プラットフォームに対する有害な免疫学的応答を、最初に、最初の2週間は1日2回、次いで、さらなる77日間は週に1回などの類似した方式で評価することができる。上昇した血清中乳酸脱水素酵素(LDH)およびカスパーゼならびに循環MSC中のホスファチジルセリン(PS)など、アポトーシス細胞死のさらなるマーカーを確立されたアッセイによって追跡することができる。ベクターおよびMSCに対する免疫学的応答がこの77日の期間後に検出不可能である場合、NHPに同種MSCを再注射することができ、一方の群は同種ベクターでトランスフェクトされたMSCが再注射され、他方の群は異種DNAベクターが与えられることになる。同種および異種のベクターは、同じバックグラウンドを有するが、異なる組換え抗体レパートリーを有すると考えられる。このアプローチは、組換え抗体レパートリーに関係なく、MSCおよび発現DNAベクターに対する免疫原性を実証することができる。MSCプラットフォームに対する免疫反応の評価のための77日間のタイムラインは、この時間枠にわたって10mg/Kgで投与された組換え抗体のピーク血清レベルの平均5000倍の低減を示す、カニクイザルにおけるヒト抗体を用いた多回投与毒物動態的研究に基づいて選択される。そのような研究では、いくつかのNHPは、最初の投与後だいたい50~60日で抗ヒト抗体応答を発生し得るが、いくつかの動物は異種IgGに対して検出可能な体液性応答を決して発生しない可能性がある。
【0254】
望ましくは、MSCは、コールドチェーン輸送の排除を可能にする、試料容量が増大し、細胞モニタリング技術を有する、遺伝子改変MSCのウォームチェーン(37℃)輸送を可能にするデバイス、例えばMicroQ Technologiesのデバイスで輸送することができる。これらのデバイスは、約24~約168時間まで厳密な暖かい温度を維持し、それによって、世界中のどこにでもすぐに使用できる治療剤を配置するのに十分な時間を可能にする。カプセル化された細胞の貯蔵および輸送のためのさらなる能力を導入することができ、必要に応じて、ガス交換を支持することができるカプセルを調製することができる。カプセル化から投与までの経過時間は、IP-MSCの代謝変化、細胞増殖速度、生存率の変化、および性能に影響を与える任意のさらなる生成物の変化の原因となると考えられる。
【0255】
D.ADCC
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)は、免疫エフェクター細胞による抗体でコーティングされた標的細胞の溶解につながる免疫メカニズムである。標的細胞は、Fc領域を含む抗体またはその断片が、一般にFc領域に対してN末端にあるタンパク質部分を介して特異的に結合する細胞であり得る。増大/低減した抗体依存性媒介性細胞傷害(ADCC)を有する抗体は、当業者に公知である任意の適切な方法によって決定されるような、増大/低減したADCCを有する抗体を含むことができる。
【0256】
本明細書において使用する場合、用語「増大/低減したADCC」は、上記のADCCのメカニズムによって、標的細胞を取り囲む環境中で、所与の抗体濃度で、所与の時間内に溶解される標的細胞の数の増大/低減、またはADCCのメカニズムによって、所与の時間内で、所与の標的細胞の数の溶解を達成するのに必要とされる、標的細胞を取り囲む環境中の抗体濃度の低減または/増大を意味することができる。ADCCの増大/低減は、同じ標準的な産生、精製、製剤、および貯蔵方法(これらは、当業者に公知である)を使用するが、操作されていない同じ種類の宿主細胞によって産生される同じ抗体によって媒介されるADCCとの比較である。例えば、本明細書において記載される方法によって、グリコシル化のパターンが変化するように(例えば、グリコシルトランスフェラーゼ、GnTIII、または他のグリコシルトランスフェラーゼを発現するように)操作された宿主細胞によって産生される抗体によって媒介されるADCCの増大は、同じ種類の操作されていない宿主細胞によって産生される同じ抗体によって媒介されるADCCとの比較である。
【0257】
E.CDC
補体依存性細胞傷害(CDC)は補体系の機能である。これは、免疫系の抗体または細胞の関与なしで、膜に損傷を与えることによって病原体を死滅させる、免疫系のプロセスである。3つの主なプロセスがある。3つすべてが1種類または複数種類の膜攻撃複合体(MAC)を病原体に挿入し、致命的なコロイド浸透圧膨張、すなわち、CDCを引き起こす。これは、抗体または抗体断片が抗真菌効果を有するメカニズムのうちの1つである。
【0258】
IV.抗体コンジュゲート
本開示の抗体を少なくとも1つの作用物質に連結させて、抗体コンジュゲートを形成することができる。診断用物質または治療用物質としての抗体分子の有効性を高めるために、少なくとも1つの望ましい分子または部分と連結または共有結合または複合体化させることは、一般に行われている。そのような分子または部分には、限定されないが、少なくとも1つのエフェクターまたはレポーター分子が含まれ得る。エフェクター分子は、望ましい活性、例えば細胞障害活性を有する分子を含む。抗体に結合させたことがあるエフェクター分子の非限定例には、毒素、抗腫瘍作用物質、治療的酵素、放射性核種、抗ウイルス作用物質、キレート作用物質、サイトカイン、増殖因子、およびオリゴまたはポリヌクレオチドが含まれる。対照的に、レポーター分子は、アッセイを使用して検出することができるいかなる部分でもよい。抗体にコンジュゲートさせたことがあるレポーター分子の非限定例には、酵素、放射標識、ハプテン、蛍光標識、燐光分子、化学発光分子、発色団、光親和性分子、着色粒子またはリガンド、例えばビオチンが含まれる。
【0259】
抗体コンジュゲートは、一般に、診断剤としての使用に好ましい。抗体診断は、一般に、2つのクラス、すなわち、インビトロ診断、例えば、様々なイムノアッセイで使用するためのもの、および、一般に「抗体指向性イメージング(antibody-directed imaging)」として公知である多くのインビボ診断プロトコールで使用するためのものに入る。多くの妥当なイメージング剤は、抗体へのその結合のための方法と同様に、当技術分野において公知である(例えば、米国特許第5,021,236号、同第4,938,948号、および同第4,472,509号を参照されたい)。使用されるイメージング部分は、常磁性イオン、放射性同位体、蛍光色素、NMR検出可能な物質、およびX線イメージング剤であり得る。
【0260】
常磁性イオンの場合には、例として、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、および/またはエルビウム(III)などのイオンの名を挙げることができ、ガドリニウムが特に好ましい。X線イメージングなどの他の状況で有用なイオンには、限定されないが、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、特にビスマス(III)が含まれる。
【0261】
治療的および/または診断的適用のための放射性同位体の場合には、アスタチン211、14炭素、51クロム、36塩素、57コバルト、58コバルト、銅67、152Eu、ガリウム67、3水素、ヨウ素123、ヨウ素125、ヨウ素131、インジウム111、59鉄、32リン、レニウム186、レニウム188、75セレン、35硫黄、テクネチウム(technicium)99m、および/またはイットリウム90の名を挙げることができる。125Iは、ある特定の態様で使用するために好ましいことが多く、テクネチウム99mおよび/またはインジウム111も、これらの低エネルギーおよび長期の検出に対する適合性が理由で、好ましいことが多い。放射性標識された本開示のモノクローナル抗体は、当技術分野において周知の方法に従って、生成することができる。例えば、モノクローナル抗体は、ヨウ化ナトリウムおよび/またはヨウ化カリウムならびに化学的酸化剤、例えば次亜塩素酸ナトリウム、または酵素的酸化剤、例えばラクトペルオキシダーゼと接触させることにより、ヨウ素化することができる。本開示によるモノクローナル抗体は、リガンド交換プロセスによって、例えば、第一スズ溶液で過テクネチウム酸(pertechnate)を還元し、還元されたテクネチウムをSephadexカラム上でキレート化し、抗体をこのカラムにアプライすることによって、テクネチウム99mで標識することができる。あるいは、例えば、過テクネチウム酸、SNCl2などの還元剤、フタル酸ナトリウム-カリウム溶液などの緩衝溶液、および抗体をインキュベートすることによって、直接標識技法を使用することができる。金属イオンとして存在する放射性同位体を抗体に結合させるために使用されることが多い中間官能基は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。
【0262】
コンジュゲートとして使用するための蛍光標識の非限定例には、Alexa 350、Alexa 430、AMCA、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665、BODIPY-FL、BODIPY-R6G、BODIPY-TMR、BODIPY-TRX、Cascade Blue、Cy3、Cy5、6-FAM、フルオレセインイソチオシアネート、HEX、6-JOE、Oregon Green 488、Oregon Green 500、Oregon Green 514、Pacific Blue、REG、ローダミングリーン、ローダミンレッド、レノグラフィン、ROX、TAMRA、TET、テトラメチルローダミン、および/またはテキサスレッドが含まれる。
【0263】
本開示による抗体のさらなる種類は、インビトロでの使用が主として意図されるものであり、この場合、抗体が二次結合リガンドに、および/または発色基質に接触する際に着色生成物を生成する酵素(酵素タグ)に連結している。適切な酵素の例には、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼ、(西洋ワサビ)水素ペルオキシダーゼ、またはグルコースオキシダーゼが含まれる。好ましい二次結合リガンドは、ビオチンおよびアビジンおよびストレプトアビジン化合物である。そのような標識の使用は当業者に周知であり、例えば、米国特許第3,817,837号、同第3,850,752号、同第3,939,350号、同第3,996,345号、同第4,277,437号、同第4,275,149号、および同第4,366,241に記載されている。
【0264】
抗体への分子の部位特異的結合のさらに別の公知の方法は、抗体とハプテンベースのアフィニティ標識との反応を含む。本質的に、ハプテンベースのアフィニティ標識は抗原結合部位のアミノ酸と反応し、それによって、この部位を破壊し、特定の抗原反応を遮断する。しかし、これは、抗体コンジュゲートによる抗原結合の消失をもたらすので、有利でない可能性がある。
【0265】
アジド基を含む分子も、低強度の紫外線によって生成される反応性ニトレン中間体を通じてタンパク質への共有結合を形成するために使用することができる(Potter and Haley, 1983)。特に、プリンヌクレオチドの2-および8-アジド類似体は、粗製の細胞抽出物においてヌクレオチド結合タンパク質を同定するための部位特異的光プローブとして使用されている(Owens & Haley, 1987; Atherton et al., 1985)。2-および8-アジドヌクレオチドは、精製されたタンパク質のヌクレオチド結合ドメインをマップするためにも使用されており(Khatoon et al., 1989; King et al., 1989; Dholakia et al., 1989)、抗体結合作用物質として使用することができる。
【0266】
抗体のそのコンジュゲート部分への結合またはコンジュゲーションについてのいくつかの方法が当技術分野において公知である。いくつかの結合方法は、例えば、抗体に結合した有機キレート作用物質、例えば、ジエチレントリアミン五酢酸無水物(DTPA);エチレントリアミンテトラ酢酸;N-クロロ-p-トルエンスルホンアミド;および/またはテトラクロロ-3α-6α-ジフェニルグリコウリル(diphenylglycouril)-3を用いる、金属キレート錯体の使用を含む(米国特許第4,472,509号および同第4,938,948号)。モノクローナル抗体は、カップリング作用物質、例えば、グルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸の存在下で酵素と反応することもできる。フルオレセインマーカーとのコンジュゲートは、これらのカップリング作用物質の存在下で、またはイソチオシアネートと反応させることによって、調製される。米国特許第4,938,948号では、乳房腫瘍のイメージングがモノクローナル抗体を使用して達成され、検出可能なイメージング部分が、メチル-p-ヒドロキシベンズイミデートまたはN-スクシンイミジル-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのリンカーを使用して抗体に結合している。
【0267】
他の態様では、抗体結合部位を変化させない反応条件を使用して免疫グロブリンのFc領域にスルフヒドリル基を選択的に導入することによる免疫グロブリンの誘導体化も有用である。この方法論に従って生成される抗体コンジュゲートは、向上した寿命、特異性、および感度を示すことが開示されている(参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,196,066号)。レポーターまたはエフェクター分子がFc領域の炭水化物残基にコンジュゲートしている、エフェクターまたはレポーター分子の部位特異的結合も文献(O’Shannessy et al., 1987)に開示されている。このアプローチは、現在臨床評価中である診断的および治療的に有望な抗体を生成することが報告されている。
【0268】
V.免疫検出方法
なおさらなる態様では、本開示は、結合、精製、除去、定量化、およびそうでなければ一般にカンジダ属およびその関連する抗原を検出するための免疫検出方法に関する。そのような方法は従来の意味で適用することができるが、別の使用は、ワクチンおよび他のカンジダ属ストックの品質管理およびモニタリングにあり、本開示による抗体を使用して、ウイルス中の抗原の量または完全性(すなわち、長期安定性)を評価することができる。あるいは、本方法を使用して、妥当な/望ましい反応性プロファイルについて様々な抗体をスクリーニングすることができる。
【0269】
他の免疫検出方法には、対象においてカンジダ属の存在を決定するための特定のアッセイが含まれる。多種多様のアッセイ形式を使用することができるが、特に、対象から得られる流体、例えば、唾液、血液、血漿、痰、精液、または尿においてカンジダ属を検出するために使用されると考えられるものを使用することができる。特に、精液は、カンジダ属を検出するための実行可能な試料として実証されている(Purpura et al., 2016; Mansuy et al., 2016; Barzon et al., 2016; Gornet et al., 2016; Duffy et al., 2009; CDC, 2016; Halfon et al., 2010; Elder et al. 2005)。アッセイは、好都合なことに、家庭用妊娠検査と類似しているラテラルフローアッセイ(以下を参照されたい)を含めて、非健康管理(家庭)使用のためにフォーマットすることができる。これらのアッセイは、家族の一員の対象が使用することを可能にする妥当な試薬および指示書を有するキットの形態でパッケージ化することができる。
【0270】
いくつかの免疫検出方法には、いくつか挙げると、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫放射線アッセイ、フルオロイムノアッセイ、化学発光アッセイ、生物発光アッセイ、およびウエスタンブロットが含まれる。特に、試料中の特定の寄生体エピトープに対するカンジダ抗体の検出および定量化のための競合的アッセイも提供される。様々な有用な免疫検出の工程方法は、例えば、Doolittle and Ben-Zeev (1999), Gulbis and Galand (1993)、De Jager et al. (1993)、およびNakamura et al. (1987)などの科学文献に記載されている。一般に、免疫結合方法は、カンジダ属を含む疑いがある試料を得ること、および場合次第で、免疫複合体の形成を可能にするのに有効な条件下で、本開示に従って該試料を第1の抗体接触させることを含む。
【0271】
これらの方法は、カンジダ属または関連した抗原を試料から精製するための方法を含む。抗体は、好ましくは、カラムマトリックスの形態などの固体支持体に連結され、カンジダ属または抗原成分を含む疑いがある試料が、固定化された抗体にアプライされる。望まれない成分がカラムから洗い落とされてされ、カンジダ抗原は固定化された抗体と免疫複合体化したままにされ、次いで、これは、カラムから生物または抗原を取り出すことにより収集される。
【0272】
免疫結合方法は、試料中のカンジダ属または関連した成分の量を検出および定量するための方法、ならびに結合プロセスの間に形成される任意の免疫複合体の検出および定量化も含む。ここで、カンジダ属またはその抗原を含む疑いがある試料を得て、該試料をカンジダ属またはその成分に結合する抗体と接触させ、続いて特定の条件下で形成された免疫複合体の量を検出および定量する。抗原検出の観点から、分析される生体試料はカンジダ属またはカンジダ抗原を含む疑いがある任意の試料、例えば、組織切片または検体、ホモジナイズされた組織抽出物、血液および血清を含めた生体液、または分泌物、例えば、糞便もしくは尿であり得る。
【0273】
有効な条件下で、免疫複合体(一次免疫複合体)の形成を可能にするのに十分である期間にわたって、選択された生体試料を抗体と接触させることは、一般に、抗体組成物を試料に単に加え、抗体が存在するカンジダ属または抗原と免疫複合体を形成する、すなわち存在するカンジダ属または抗原に結合するのに十分なほど長い期間にわたって混合物をインキュベートことである。この期間の後、一般に、試料-抗体組成物、例えば、組織切片、ELISAプレート、ドットブロットまたはウエスタンブロットを洗浄して、任意の非特異的に結合した抗体種を除去し、これによって、一次免疫複合体内に特異的に結合した抗体のみを検出することが可能になる。
【0274】
一般に、免疫複合体形成の検出は当技術分野において周知であり、多数のアプローチの適用を通じて達成することができる。これらの方法は、一般に、標識またはマーカー、例えば、放射性タグ、蛍光性タグ、生物学的タグ、および酵素的タグのいずれかの検出に基づく。そのような標識の使用に関する特許には、米国特許第3,817,837号、同第3,850,752号、同第3,939,350号、同第3,996,345号、同第4,277,437号、同第4,275,149、および同第4,366,241号が含まれる。当然ながら、当技術分野において公知であるように、二次結合リガンド、例えば第2の抗体、および/またはビオチン/アビジンリガンド結合機構を使用して、さらなる利点を見出すことができる。
【0275】
検出で用いられる抗体それ自体を検出可能な標識に連結させることができ、次いで、この標識を単に検出し、それによって、組成物中の一次免疫複合体の量を決定することが可能になる。あるいは、一次免疫複合体内で結合する第1の抗体を、抗体に対して結合親和性を有する第2の結合リガンドによって検出することができる。これらの場合、第2の結合リガンドを検出可能な標識に連結させることができる。第2の結合リガンドそれ自体が抗体であること多く、したがって、これは「二次」抗体と呼ぶことができる。一次免疫複合体は、有効な条件下で、二次免疫複合体の形成を可能にするのに十分である期間にわたって、標識された二次結合リガンドまたは抗体と接触させる。次いで、一般に、二次免疫複合体を洗浄して、任意の非特異的に結合した標識された二次抗体またはリガンドを除去し、次いで、二次免疫複合体中の残りの標識を検出する。
【0276】
さらなる方法は、2工程アプローチによる一次免疫複合体の検出が含まれる。上記のように、二次免疫複合体を形成するために、第2の結合リガンド、例えば、抗体に結合親和性を有する抗体が使用される。洗浄後、再度、有効な条件下で、免疫複合体(三次免疫複合体)の形成を可能にするのに十分である期間にわたって、二次免疫複合体を第2の抗体に対して結合親和性を有する第3の結合リガンドまたは抗体と接触させる。第3のリガンドまたは抗体は検出可能な標識に連結され、これによって、こうして形成された三次免疫複合体の検出が可能になる。このシステムは、望ましい場合、シグナル増幅を提供することができる。
【0277】
免疫検出の1つの方法は2つの異なる抗体を使用する。第1のビオチン化抗体を使用して、標的抗原を検出し、次いで、第2の抗体を使用して、複合体化ビオチンに結合したビオチンを検出する。この方法では、試験される試料を第1の工程の抗体を含む溶液中で最初にインキュベートする。標的抗原が存在する場合、抗体の一部は抗原に結合して、ビオチン化抗体/抗原複合体を形成する。次いで、抗体/抗原複合体を、ストレプトアビジン(または、アビジン)、ビオチン化DNA、および/または相補的ビオチン化DNAの連続的な溶液中でインキュベートし、各工程が抗体/抗原複合体にさらなるビオチン部位を加えることにより、増幅する。増幅工程は、適切なレベルの増幅が達成するまで繰り返し、この時点で、ビオチンに対する第2の工程の抗体を含む溶液中で試料をインキュベートする。この第2の工程の抗体は、色素原基質を使用する組織酵素学によって抗体/抗原複合体の存在を検出するために使用することができる酵素で標識される。適切な増幅で、肉眼で見えるコンジュゲートを生成することができる。
【0278】
免疫検出の別の公知の方法は、イムノPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)方法論を巧みに用いる。このPCR方法は、ビオチン化DNAとのインキュベーションまではCantor方法と類似しているが、複数ラウンドのストレプトアビジンおよびビオチン化DNAのインキュベーションを使用する代わりに、DNA/ビオチン/ストレプトアビジン/抗体複合体を、抗体を放出する低pHまたは高塩緩衝液で洗い流す。次いで、得られた洗浄液を使用して、妥当な対照を用いて、適切なプライマーでPCR反応を行う。少なくとも理論的には、PCRの非常に高い増幅能および特異性を用いて、単一抗原分子を検出することが可能である。
【0279】
A.ELISA
イムノアッセイは、その最も単純かつ直接的な意味で、結合アッセイである。ある特定の好ましいイムノアッセイは、当技術分野において公知である様々な種類の酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)およびラジオイムノアッセイ(RIA)である。組織切片を使用する免疫組織化学的検出も特に有用である。しかし、検出はそのような技法に限定されず、ウエスタンブロッティング、ドットブロッティング、FACS分析なども使用することができることが、容易に認識されるであろう。
【0280】
1つの例示的なELISAでは、本開示の抗体を、ポリスチレンマイクロタイタープレート中のウェルなどの、タンパク質親和性を示す選択された表面上に固定化する。次いで、カンジダ属またはカンジダ抗原を含む疑いがある試験組成物をウェルに加える。結合させ、洗浄して非特異的に結合した免疫複合体を除去した後、結合した抗原を検出することができる。検出は、検出可能な標識に連結している別の抗カンジダ抗体を加えることによって達成することができる。この種類のELISAは、単純な「サンドイッチELISA」である。検出は、第2の抗カンジダ抗体を加え、続いて、第2の抗体に対して結合親和性を有する第3の抗体を加えることによって、達成することもでき、該第3の抗体は検出可能な標識に連結している。
【0281】
別の例示的なELISAでは、カンジダ属またはカンジダ抗原を含む疑いがある試料をウェル表面上に固定化し、次いで、本開示の抗カンジダ抗体と接触させる。結合させ、洗浄して非特異的に結合した免疫複合体を除去した後、結合した抗カンジダ抗体を検出する。最初の抗カンジダ抗体が検出可能な標識に連結している場合は、免疫複合体を直接的に検出することができる。この場合もまた、免疫複合体は、第1の抗カンジダ抗体に対して結合親和性を有する第2の抗体を使用して検出することができ、該第2の抗体検出可能な標識に連結している。
【0282】
用いられる形態に関係なく、ELISAは、コーティング、インキュベーション、および結合、非特異的に結合した種を除去するための洗浄、ならびに結合した免疫複合体の検出などのある特定の共通の特色を有する。これらは、以下に記載される。
【0283】
抗原または抗体のいずれかでのプレートのコーティングでは、一般に、抗原または抗体の溶液とともにプレートのウェルを一晩または特定の期間のいずれかにわたってインキュベートする。次いで、プレートのウェルを洗浄して、不完全に吸着した物資を除去する。次いで、ウェルの残りの使用可能ないかなる表面も試験抗血清に関して抗原的に中性である非特異的タンパク質で「コーティング」する。これらには、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼインまたは粉乳溶液が含まれる。コーティングによって、固定化表面上の非特異的吸着部位のブロッキングが可能になり、それにより表面上への抗血清の非特異的結合によって引き起こされるバックグラウンドが低減する。
【0284】
ELISAでは、直接的な手順よりはむしろ二次または三次検出手段を使用することが、おそらくより慣例的である。したがって、ウェルへタンパク質または抗体を結合させ、非反応性物質でコーティングしてバックグラウンドを低減させ、洗浄して未結合物質を除去した後、免疫複合体(抗原/抗体)形成を可能にするのに有効な条件下で、試験される生体試料と固定化表面を接触させる。次いで、免疫複合体の検出は、標識された二次結合リガンドまたは抗体、および標識された三次抗体または第3の結合リガンドとコンジュゲートした二次結合リガンドまたは抗体を必要とする。
【0285】
「免疫複合体(抗原/抗体)形成を可能にするのに有効な条件下」は、BSA、ウシγグロブリン(BGG)、またはリン酸緩衝食塩水(PBS)/Tweenなどの溶液で抗原および/または抗体を希釈することを好ましくは含む条件を意味する。これらの添加作用物質は、非特異的バックグラウンドの低減を支援する傾向がある。
【0286】
「適切な」条件は、インキュベーションが、有効な結合を可能にするのに十分な温度または期間であることも意味する。インキュベーション工程は、典型的には、約1時間~2から4時間程度であり、好ましくは25℃~27℃ほどの温度であり、約4℃程度で一晩であってもよい。
【0287】
ELISAのすべてのインキュベーション工程の後、非複合体化物質を除去するために接触した表面を洗浄する。好ましい洗浄手順は、PBS/Tweenまたはホウ酸緩衝液などの溶液で洗浄することを含む。試験試料と元々結合していた材料との間の特定の免疫複合体の形成、および引き続く洗浄の後、微量の免疫複合体の存在さえも決定することができる。
【0288】
検出手段を提供するために、第2または第3の抗体は、検出を可能にするために、結合した標識を有する。好ましくは、これは、妥当な発色基質とともにインキュベートする際に発色を引き起こすと考えられる酵素。したがって、例えば、さらなる免疫複合体形成の発生を優遇する期間およびその条件下(例えば、PBS-TweenなどのPBS含有溶液における室温で2時間のインキュベーション)で第1および第2の免疫複合体をウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、または水素ペルオキシダーゼコンジュゲート化抗体と接触させるかまたはインキュベーすることが望まれると考えられる。
【0289】
標識された抗体とのインキュベーション後かつ、未結合物質を除去するための洗浄の後に、例えば、発色基質、例えば、尿素、またはブロモクレゾールパープル、または2,2'-アジノ-ジ-(3-エチル-ベンゾチアゾリン-6-スルホン酸(ABTS)、または酵素標識としてのペルオキシダーゼの場合にはH2O2とのインキュベーションによって、標識の量を定量化する。定量化は、次いで、例えば可視スペクトル分光光度計を使用して、生成された色の程度を測定することによって、達成される。
【0290】
別の態様では、本開示は競合的型式の使用を対象とする。これは、試料中のカンジダ抗体の検出で特に有用である。競合ベースのアッセイでは、未知の量の分析物または抗体は、公知の量の標識された抗体または分析物に取って代わるその能力によって決定される。したがって、シグナルの定量化可能な消失は、試料中の未知の抗体または分析物の量の指標である。
【0291】
ここで、本発明者は、試料中のカンジダ抗体の量を決定するために、標識されたカンジダモノクローナル抗体の使用を提唱する。基本的な型式は、(検出可能な標識に連結している)公知の量のカンジダモノクローナル抗体をカンジダ抗原または粒子と接触させることを含む。カンジダ抗原または生物は、好ましくは、支持体に結合している。標識されたモノクローナル抗体が支持体に結合した後に、試料を加え、試料中の任意の非標識抗体が標識されたモノクローナル抗体と競合する、したがって該モノクローナル抗体に取って代わることを可能にする条件下で、インキュベートする。消失した標識または残存標識のいずれかを測定することによって(およびそれを結合標識の元の量から引くことによって)、どのくらいの非標識抗体が支持体に結合しているかを決定することができ、それにより、どのくらいの抗体が試料中に存在していたかを決定することができる。
【0292】
B.ウエスタンブロット
ウエスタンブロット(あるいは、タンパク質イムノブロット)は、組織ホモジネートまたは抽出物の所与の試料中の特定のタンパク質を検出するために使用される分析技法である。これは、ゲル電気泳動を使用して、ポリペプチドの長さ(変性条件)によって、またはタンパク質の3D構造(ネイティブ/非変性条件)によって、ネイティブまたは変性タンパク質を分離する。次いで、タンパク質を膜(典型的には、ニトロセルロースまたはPVDF)に転写し、ここで、標的タンパク質に特異的な抗体を使用して、タンパク質をプローブ(検出)する。
【0293】
試料は、組織全体から、または細胞培養物から得ることができる。大抵の場合、固体組織を(大きな試料体積の場合)ブレンダーを使用して、(小さな体積の場合)ホモジナイザーを使用して、または超音波処理によって、最初に機械的に破壊する。上記の機械的方法のうちの1つによって細胞を壊し開けることもできる。しかし、環境試料もタンパク質の供給源である可能性があり、したがって、ウエスタンブロッティングが細胞研究のみに制限されないことに留意されたい。細胞の溶解を助長するために、およびタンパク質を可溶化するために、種々雑多な界面活性剤、塩、および緩衝液を用いることができる。プロテアーゼおよびホスファターゼインヒビターは、自身の酵素による試料の消化を防止するために加えられることが多い。組織調製は、タンパク質変性を避けるために、低温で行われることが多い。
【0294】
試料のタンパク質は、ゲル電気泳動を使用して分離される。タンパク質の分離は、等電点(pI)、分子量、電荷、またはこれらの因子の組み合わせによるものあり得る。分離の性質は、試料の処理およびゲルの性質に依存する。これは、タンパク質を決定するのに非常に有用な方法である。単一試料由来のタンパク質を2次元に展開する2次元(2D)ゲルを使用することもできる。タンパク質は、第1の次元で等電点(タンパク質が中性の正味電荷を有するpH)に従って、第2の次元で分子量に従って分離される。
【0295】
タンパク質を抗体検出に使用可能にするために、タンパク質をゲル内からニトロセルロースまたはポリビニリデンジフルオリド(PVDF)でできた膜上に移動させる。膜をゲルの上に置き、その上に濾紙の束を置く。束全体を緩衝溶液に入れ、緩衝溶液は、毛細管作用によって紙を上に移動し、緩衝溶液とともにタンパク質が運ばれる。タンパク質を転写するための別の方法はエレクトロブロッティングと呼ばれ、タンパク質をゲルからPVDFまたはニトロセルロース膜に引き寄せるために電流を使用する。タンパク質は、ゲル内で有していた構成を維持しながら、ゲル内から膜上に移動する。このブロッティングプロセスの結果として、タンパク質は、検出のための薄い表面層に曝露される(以下を参照されたい)。両方の種類の膜は、それらの非特異的タンパク質結合性状(すなわち、すべてのタンパク質が十分に等しく結合する)が理由で、選択される。タンパク質結合は膜とタンパク質の間の疎水性相互作用および荷電相互作用に基づく。ニトロセルロース膜はPVDFより安いがはるかに脆弱であり、プロービングの繰り返しにあまり耐えられない。ゲルから膜へのタンパク質の転写の均一性および全体的な有効性は、クーマシーブリリアントブルーまたはポンソーS色素で膜を染色することによって、確認することができる。一旦転写されれば、タンパク質は、標識された一次抗体を使用して、または非標識の一次抗体、それに続く一次抗体のFc領域に結合する標識されたプロテインAまたは二次標識された抗体を使用する間接的検出を使用して、検出される。
【0296】
C.ラテラルフローアッセイ
ラテラルフローイムノクロマトグラフィーアッセイとしても公知であるラテラルフローアッセイは、専用の高価な装置の必要なく、試料(マトリックス)中の標的分析物の存在(または非存在)を検出することを目的とする単純なデバイスであるが、読み取り装置によって支持される、多くの研究室ベースの適用が存在する。典型的には、これらの試験は、家庭での検査、ポイントオブケア検査、または研究室での使用のいずれかのための低リソース医療診断として使用される。広く普及した周知の適用は家庭用妊娠検査である。
【0297】
この技術は、一連の毛細管ベッド、例えば、多孔性紙または焼結ポリマーの小片に基づく。これらの要素のそれぞれは、流体(例えば、尿)を自発的に輸送する能力を有する。最初の要素(試料パッド)はスポンジとして働き、過剰量の試料流体を保持する。一旦浸漬されれば、流体は、第2の要素(コンジュゲートパッド)に移動し、ここには、標的分子(例えば、抗原)と粒子の表面に固定化されたその化学的パートナー(例えば、抗体)との間の最適化された化学反応を保証するためのすべてを含む塩-糖マトリックス中にいわゆるコンジュゲート、すなわち、乾燥型式の生物活性粒子(以下を参照されたい)が製造者によって保存されている。試料流体は塩-糖マトリックスを溶解するが、これは、粒子も溶解し、1回の組み合わされた輸送作用で、試料とコンジュゲートが、多孔性構造体を通って流れる間に混ざる。このようにして、分析物は、第3の毛細管ベッドを通ってさらに移動する間に、粒子に結合する。この材料は、製造者によって第3の分子が固定化されている1つまたは複数の領域(ストライプと呼ばれることが多い)を有する。これらのストリップに到達する時点まで、分析物は粒子上に結合しており、第3の「捕獲」分子がこの複合体に結合する。しばらくして、ますます多くの流体がストライプを通過すると、粒子が蓄積し、ストライプ領域が変色する。典型的には、以下の少なくとも2つのストライプが存在する:1つ(対照)は、任意の粒子を捕獲し、それによって、反応条件および技術がうまく機能したことを示し、2つ目は、特異的捕獲分子を含み、分析物分子が固定化された粒子のみを捕獲する。これらの反応ゾーンを通過後、流体は、廃棄物容器として単に働く最後の多孔性材料、すなわちウィック(wick)に入る。ラテラルフロー試験は、競合的アッセイまたはサンドイッチアッセイのいずれかとして作動させることができる。ラテラルフローアッセイは米国特許第6,485,982号に開示されている。
【0298】
D.免疫組織化学
本開示の抗体は、免疫組織化学(IHC)による研究のために調製された新鮮凍結パラフィン包埋組織ブロックおよび/またはホルマリン固定パラフィン包埋組織ブロックの両方とともに使用することもできる。これらの粒子検体から組織ブロックを調製する方法は、様々な予後因子の以前のIHC研究で首尾よく使用されており、当業者に周知である(Brown et al., 1990; Abbondanzo et al., 1990; Allred et al., 1990)。
【0299】
手短に言えば、凍結切片は、小さなプラスチックカプセル中のリン酸緩衝食塩水(PBS)中で50ngの凍結した「粉砕した」組織を室温で再水和し;遠心分離によって、粒子をペレット化し;それを粘性の包埋媒体(OCT)中に再懸濁し;カプセルを反転し、および/もしくは遠心分離によって再びペレットし;-70℃イソペンタン中で急速凍結し;プラスチックカプセルを切断し、および/もしくは組織の凍結した円筒物を取り出し;クリオスタットミクロトームチャック上に組織円筒物を固定し;ならびに/またはカプセルから25~50個の連続切片を切断することによって、調製することができる。あるいは、凍結した組織試料全体を連続切片の切断に使用することができる。
【0300】
永久切片は、プラスチック製微量遠心チューブ中の50mgの試料の再水和;ペレット化;10%ホルマリン中で再懸濁して4時間の固定すること;洗浄/ペレット化;温かい2.5%寒天中に再懸濁すること;ペレット化;氷水中で冷却して寒天を硬化すること;チューブから組織/寒天ブロックを取り出すこと;ブロックをパラフィンに浸透させるおよび/もしくは包埋すること;ならびに/または最大で50個までの連続永久切片を切断することを含む類似した方法によって、調製することができる。この場合もまた、組織試料全体を代わりに用いることができる。
【0301】
E.免疫検出キット
なおさらなる態様では、本開示は、上記の免疫検出方法とともに使用するための免疫検出キットに関する。カンジダ属またはカンジダ抗原を検出するために抗体を使用することができるので、キットに抗体を含めることができる。したがって、免疫検出キットは、適切な容器手段中に、カンジダ属またはカンジダ抗原に結合する第1の抗体および任意で免疫検出試薬を含むと考えられる。
【0302】
ある特定の態様では、カンジダ抗体をカラムマトリックスおよび/またはマイクロタイタープレートのウェルなどの固体支持体に予め結合させることができる。キットの免疫検出試薬は、所与の抗体と会合または連結している検出可能な標識を含めて、様々な形態のうちのいずれか1つをとることができる。二次結合リガンドと会合しているかまたは結合している検出可能な標識も使用することができる。例示的な二次リガンドは、第1の抗体に対して結合親和性を有する二次抗体である。
【0303】
本キットで使用するためのさらなる適切な免疫検出試薬には、第1の抗体に対して結合親和性を有する二次抗体を、第2の抗体に対して結合親和性を有する第3の抗体とともに含む2成分試薬が含まれ、第3の抗体は検出可能な標識に連結している。上記のように、いくつかの例示的な標識は当技術分野において公知であり、すべてのそのような標識を本開示と関連して用いることができる。
【0304】
キットは、検出アッセイのための検量線を作成ために使用することができるように、標識されているかまたは非標識かにかかわらず、カンジダ属またはカンジダ抗原の適切に等分された組成物をさらに含むことができる。キットは、完全にコンジュゲートされた形態か、中間の形態か、またはキットの使用者によってコンジュゲートされる別々の部分としてかのいずれかで、抗体-標識コンジュゲートを含むことができる。キットの成分は、水性媒体中にかまたは凍結乾燥形態かのいずれかでパッケージ化することができる。
【0305】
キットの容器手段は、一般に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジまたは他の容器手段を含み、その中に抗体を入れることができるか、または好ましくは、適切に等分することができる。本開示のキットは、典型的には、商業用販売のために、抗体、抗原、および任意の他の試薬容器を緊密に閉じ込めた状態で含むための手段も含む。そのような容器は、望ましいバイアルが保持される射出成形またはブロー成形された容器を含むことができる。
【0306】
F.ワクチンおよび抗原の品質管理アッセイ
本開示は、試料中の真菌抗原の抗原的完全性(例えば、抗原が適切なまたは天然の抗原性または免疫原性構造を示す能力)を評価するのに使用するための、本明細書において記載される抗体および抗体断片の使用を対象とする。ワクチンのような生物学的医薬品は、通常は分子的に特徴決定することができないという点において、化学薬物とは異なり;抗体はかなり複雑な大分子であり、調製ごとに広く変動する可能性がある。これらは、人生の始まりにいる子供を含めて、健康な個体にも投与されるので、これらが、害を及ぼすことなく、命に関わる疾患を予防または治療するのに効果的であることを確実にするために、その品質に強い重点を置かなければならない。
【0307】
ワクチンの産生および流通のグローバル化の高まりは、公衆衛生上の懸念をより良く管理するための新しい可能性を開いたが、様々な供給源にわたって調達されたワクチンの同等性および互換性についての問題も引き起こした。したがって、出発材料、産生および品質管理試験の国際標準化、ならびにこれらの生成物が製造され、使用される方法に冠する規制監督に対する高い期待の設定は、継続した成功の基礎となっている。しかし、これは、絶えず変化が続く分野のままであり、該分野の継続的な技術的進歩は、最も古い公衆衛生に対する脅威、ならびに新しい脅威-いくつか例を挙げると、マラリア、新型インフルエンザ、およびHIV-に対して強力な新しい武器を開発することを約束するが、生成物が達成可能な最高基準の品質を引き続き満たすということを確実にするために、製造者、規制当局、およびより広い医学界に大きなプレッシャーもかける。
【0308】
このように、任意の供給源から、または製造プロセスの間の任意の時点で、抗原またはワクチンを得ることができる。したがって、品質管理プロセスは、真菌抗原に対する本明細書において開示される抗体または断片の結合を同定するイムノアッセイのための試料を調製することから始まる。そのようなイムノアッセイは本文書の他の個所で開示され、これらのいずれも、抗原の構造的/抗原的完全性を評価するために使用することができる。許容される量の抗原的に正しくかつインタクトな抗原を含む試料を発見するための基準は、規制当局によって確立され得る。
【0309】
抗原完全性が評価される別の重要な態様は、有効期間を決定しかつ貯蔵安定性を判定することにある。ワクチンを含めて、大抵の医薬は、経時的に悪化し得る。したがって、経時的に、ワクチンなどの抗原が分解または不安定化して、その結果、対象に投与される場合にもはや抗原性でない、および/または免疫応答を生じさせることができない程度かどうかを判定することは重要である。この場合もまた、許容される量の抗原的にインタクトな抗原を含む試料を発見するための基準は、規制当局によって確立され得る。
【0310】
ある特定の態様では、真菌抗原は1種類より多い保護的エピトープを含み得る。これらの場合、1種類より多い抗体、例えば、2、3、4、5種類、またはさらにそれ以上の抗体の結合を見るアッセイを用いることが有用であることが分かり得る。これらの抗体は、密接に関連しているエピトープに結合し、その結果、互いに隣接するか、またはさらに重複する。これに反して、真菌抗原は、抗原の本質的に異なる部分由来の別個のエピトープを示し得る。複数のエピトープの完全性を調べることにより、抗原の全体的な完全性、したがって、防御免疫応答を生じさせる能力のより完全な像を決定することができる。
【0311】
本開示に記載される抗体およびその断片は、保護的カンジダ抗体の存在を検出することによってワクチン接種手順の有効性をモニタリングするためのキットで使用することもできる。本開示に記載される、抗体、抗体断片、またはそれらのバリアントおよび誘導体は、望ましい免疫原性を有するワクチン製造をモニタリングするためのキットで使用することもできる。
【実施例】
【0312】
VI.実施例
以下の実施例は、好ましい態様を実証するために含まれる。以下の実施例に開示されている技法は、態様の実施において十分に機能するために本発明者が発見した技法を示し、したがって、その実施のための好ましい様式を構成すると考えることができることを当業者は理解されたい。しかし、当業者は、本発明に照らして、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなしに、開示される特定の態様において多くの変更を行うことができ、同様または類似の結果を依然として得ることができることを認識するべきである。
【0313】
実施例1-ヒト血清試料におけるFBAおよびMET6ペプチドに対する抗体の存在、ならびにヒトモノクローナル抗体の分子クローニング
材料および方法
ELISAスクリーニング。90分間室温で96ウェルアッセイプレートのウェルをFba(SEQ ID NO:40)またはMET6(SEQ ID NO:38)ペプチドでコーティングした。ペプチドを100mM炭酸水素ナトリウムpH9.6で1μg/mlに希釈した。次いで、プレートを洗浄し、0.5% Tween 20(商標)、4%乳清タンパク質、および10%ウシ胎仔血清を含むPBS(リン酸緩衝食塩水、pH7.4)(ブロッキング緩衝液)中で30分間ブロッキングした。血清を熱失活させ、ブロッキング緩衝液で希釈し、1:100希釈で試験した。ペプチドでコーティングしたか、またはしなかったウェル中で、100μlの各血清試料を90分間室温でインキュベートした。MAb 1.11D(抗Fba;SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11)ならびに1.10C(抗MET6;SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:13)を陽性対照として使用した。ウェルをPBS+0.5% Tween 20(商標)で洗浄し、ブロッキング緩衝液に入れたHRPコンジュゲート化ヤギ抗ヒトIgG(Jackson Immunoresearch)の1:2000希釈物とともに60分間インキュベートした。ウェルをPBS+0.5% Tween 20(商標)で洗浄し、TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)-H2O2で発色させた。1Mリン酸で反応を停止させ、450nmの吸光度として色を読み取った。
【0314】
メモリーB細胞の刺激およびヒトMAbの分子クローニング。CD2+、CD14+、およびCD16+非B細胞のPBMCを枯渇させ、次いで、免疫磁気ビーズを使用してCD27+B細胞をポジティブ選択することによって、メモリーB細胞を精製した(Robinson et al., 2016)。MS40Lフィーダー細胞、イスコフ改変ダルベッコ培地、10% FCS、CpG, IL-2、およびIL-21を含むマルチプルウェルプレートのウェル中でメモリーB細胞を培養した。MS40Lは、マウス間質細胞株、MS5に由来し、ヒトCD40Lを発現するように操作されている(Luo et al., 2009)。MS40L細胞は、確固たるメモリーB細胞増殖を支持する。B細胞を低細胞密度で播種して、各ウェルにおいてB細胞のほとんどクローナルな刺激を達成した。2週目に、カンジダペプチドと反応するIgG抗体について、ELISAによって培養液をスクリーニングした。抗体陽性のウェルの細胞を採取し、グアニジン溶解緩衝液(Ambion RNAqueous isolation Kit)に保存した。次に、B細胞から精製したRNAを逆転写して、cDNAを作製した(Tiller et al., 2008)。次いで、ネステッドPCRを行って、重鎖および軽鎖の可変領域を増幅し、次いで、これを記載されるように(Robinson et al., 2016)重鎖および軽鎖発現ベクター中に挿入した。次いで、重鎖および軽鎖ベクターのマッチした対を293T細胞にトランスフェクトした。48時間後に、ペプチド結合抗体について培養上清を試験した。生成物がクローニングしたVHおよびVL遺伝子であることを確実にするために、同じB細胞培養物由来の重および軽遺伝子の複数クローンを用いたクロストランスフェクションを行った。Mabを作製するHCおよびLCプラスミドの決定的な対が一旦同定されると、HCおよびLC遺伝子をシークエンスし、293T細胞の一過的にトランスフェクトした培養物における小規模の抗体産生を使用して、MAbのインビトロでのさらに特徴決定を可能にするために、精製されたMAbを産生した(Costin et al, 2013; Robinson et al., 2016)。
【0315】
結果および考察
Fba(SEQ ID NO:40)またはMET6(SEQ ID NO:38)ペプチドに結合する抗体の存在について、10種類のヒト血清試料を試験した。
図1に示すように、試料のいくつかはFbaペプチド(SEQ ID NO:40)に対する抗体の存在について陽性であったが、いくつかは両方のペプチドに対する抗体について陽性であることが分かり、これは、抗ペプチド抗体がヒトに存在するFbaペプチド(SEQ ID NO:40)またはMET6ペプチド(SEQ ID NO:38)を認識することを実証するものである。
【0316】
実施例2-競合ELISAによる、FBAおよびMET6ペプチドへのヒトモノクローナル抗体の特異的結合の実証
材料および方法
抗体産生および精製。1.10C(抗MET6;SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:13)または1.11D(抗Fba;SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11)のいずれかの重鎖および軽鎖を発現するプラスミド(または二重発現プラスミド)のマッチした対をFreestyle(商標)293細胞に一過的にトランスフェクトした。製造業者の指示(Thermo Fisher Scientific)に従って、細胞をFreestyle(商標)培地中で、8%CO2において30℃でインキュベートした。BLITZ干渉計(ForteBio)で抗ヒトバイオレイヤー干渉法チップ(ForteBio)を使用して、免疫グロブリンの産生をモニターした。抗体産生がプラトーに達したら、6,000gで10分間の遠心分離によって細胞上清を採取し、続いて、これを濾過滅菌した。Fast FlowプロテインG(GE Life Sciences)アフィニティークロマトグラフィーによって、IgGを精製した。ペリスタルティックポンプを使用して、Fast FlowプロテインGセファロースの1mlのカラムに清澄化した上清をアプライし、2~3回カラムを通して再循環させた。次いで、カラムを10倍容量のPBSで洗浄し、0.1Mグリシン緩衝液、pH2.0を用いて、結合したIgGをカラムから溶出した。1/10容量の1M Tris緩衝液pH8.0を加えることにより、溶出画分を中和した。次いで、溶出されたタンパク質を遠心限外濾過膜(30~50,00 MWCO;Amicon)を使用しておよそ1mg/mlのタンパク質濃度に濃縮し、PBSに対して透析し、濾過滅菌し、4℃で保存した。
【0317】
ELISA。手短に言えば、Fba(SEQ ID NO:40)またはMET6ペプチド(SEQ ID NO:38)をコーティング緩衝液に溶解し(4μg/ml)、この溶液を使用して、96ウェルELISAプレートをコーティングした(100μl、室温で1時間および4℃で一晩)。ウェルをPBSで2回洗浄し、1%ウシ血清アルブミン/PBS、200μlでブロッキングした)。抗体1.10C(抗MET6;SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:13)または1.11D(抗Fba;SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11)を200μg/ml~3.125μg/mlの濃度でPBS+1% BSAに溶解された同種のペプチドFba(SEQ ID NO:40)またはMET6(SEQ ID NO:38)ペプチド(インヒビター)と混合した。各濃度の得られた溶液をFbaでコーティングしたまたはMET6でコーティングしたマイクロタイターウェルに3連で加え、37℃で2時間インキュベートした。ウェルをPBS+0.5% Tween 20(商標)で3回、PBSで1回洗浄し、マウス抗ヒトIgG HRP(Sigma, A5420)(PBS+0.5% Tween 20(商標)に1:3,000希釈した)100μlを加え、37℃で1時間インキュベートした。ウェルをPBSTで3回洗浄し、続いて、100μlの基質溶液(25mlの0.05Mリン酸-クエン酸緩衝液pH5.0、200μlのO-フェニレンジアミン50mg/ml水溶液、Sigma、および10μlの30% H2O2)を加えた。10~20分間発色させて、100μlの2M H2SO4を加えて停止させ、これを492nmで読み取った(マイクロタイタープレートリーダー、モデル450;Bio-Rad, Richmond, Calif.)。インヒビターなしで抗体を含むウェルと比較して、阻害パーセントを計算した。
【0318】
結果および考察
図2と
図3の両方に示すように、添加した遊離ペプチドは、1.10C(抗MET6;SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:13)ならびに1.11D(抗Fba;SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11)の結合について、結合ペプチドと競合した。これらの結果は、それらの同種のペプチドに対する抗体の結合が特異的であることを実証する。
【0319】
実施例3-バイオレイヤー干渉法(BLI)による、1.10Cおよび1.11Dの同種のペプチドに対するそれらの結合親和性の決定
材料および方法
バイオレイヤー干渉法。結合実験は、Octet HTXにおいて25℃で行った。ストレプトアビジン(SA)アッセイ緩衝液(0.1% BSA、0.02% Tween-20を含むPBS(pH7.4))中でバイオセンサーを水和させ、アッセイ緩衝液中の0.01μg/mLのビオチン化ペプチド(Fba-ビオチン、seq ID 41;Met6-ビオチン、seq ID 39)をストレプトアビジン(SA)バイオセンサーにロードした。ロードされたセンサーを同種のIgG(実施例2で上記のように精製した;開始300nM、1:3希釈、7点)の段階希釈物に15分間浸し、その結果、結合が平衡状態に達した。一価(1:1)結合モデルを使用して、動力学定数を計算した。定常-定常分析も使用して、以下のモデル式:
Req=Rmax*C/(C+kD)
を使用して同種のペプチドに結合する抗体の親和性を推定した。式中、Reqは会合中の890~895秒の間の平均応答レベルであり、Rmaxは予想される最大応答レベルであり、kDは親和性であり、Cは抗体濃度である。
【0320】
結果および考察
動的測定(
図4)は、ヒト抗体1.11D(抗Fba;SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11)は、Fbaペプチド(Fba-ビオチン、SEQ ID NO:41)への結合についておよそ5.8×10
-8のkDを有するが、ヒト抗体1.10C(抗MET6;SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:13)は、MET6ペプチド(MET6-ビオチン、SEQ ID NO:39)への結合についておよそ1.8×10
-7のkDを有することを示す。定常状態測定(
図5)は、Fbaペプチド(Fba-ビオチン、SEQ ID NO:41)に結合する1.11D(抗Fba;SEQ ID NO:10および11)についておよそ7.7×10
-8のkD、およびMET6ペプチド(MET6-ビオチン、SEQ ID NO:39)に結合する1.10C(抗MET6;SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:13)についておよそ3.1×10
-7のkDを明らかにした。
【0321】
実施例4-バイオレイヤー干渉法による、完全長組換えタンパク質MET6およびFBAへの1.10Cおよび1.11Dの結合の実証
材料および方法
C.アルビカンスおよびC.アウリスの完全長組換えFbaおよびMET6の生成。Fbaに対するcDNAを記載されるように(Li et al., 2013)生成し、ベクターpRSET A(Invitrogen)を使用してクローニングした。この誘導性発現ベクターは、6個のヒスチジン(6-His)のアミノ末端タグを有する組換え部分を生成する。6-Hisでタグされた組換えタンパク質の発現のために特別に設計された大腸菌系統であるNiCo21(DE3)タンパク質産生系統(New England Biolabs)を得られた発現ベクターで形質転換した。C.アルビカンス由来のMET6遺伝子配列 (NCBI参照配列:XM_713126.2)を化学合成し(Genscript)、pRSET Aにサブクローニングした。
【0322】
完全長組換えFbaまたはMET6を含む細菌上清の産生。37℃において250RPMで振盪しながらSOB中で増殖させた、pRSET A MET6またはpRSET A Fbaのいずれかで形質転換されたNiCo21(DE3)細胞のSOB(2% w/vトリプトン、0.5% w/v酵母抽出物、10mM NaCl、2.5mM KCl、10mM MgCl2、H2O2中の10mM MgSO4)中で調製した一晩培養物を、37℃において250RPMで振盪しながら0.1のO.D.に希釈した。培養物が0.4~0.6の間のO.D.に達したら、イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)を100μMまで加え、培養物をさらに12時間インキュベートした。次いで、6,000×gで100分間の遠心分離によって細菌細胞を採取した。吸引により培養上清を捨て、細胞ペレットをCellLytic B(商標)(Sigma)(1ml/25mlの元の細菌培養物)に再懸濁した。抽出懸濁液を穏やかに混合しながら室温で15分間インキュベートした。抽出後、懸濁液を16,000×gで10分間遠心分離して、不溶性物質をペレット化する。上清を慎重に取り出し、分割し、使用するまで-20℃で凍結した。
【0323】
FbaのBLI分析。完全長のC.アルビカンスおよびC.アウリスFbaタンパク質に対する、精製されたヒトモノクローナル抗体(HuMAb)の検出可能な結合は、ForteBio BLITz機器(ソフトウェア:BLITz Pro 1.2)を使用して達成した。開始する前に、Anti-Penta-Hisセンサー(HisK sensor; ForteBio)を動態緩衝液(PBS+0.1% BSA+0.02% Tween20)中で水和させた。動態緩衝液におけるベースライン工程の後、動態緩衝液で1:1希釈した粗製の細菌発現上清を使用して、完全長のHisでタグされたFbaタンパク質(C.アルビカンスまたはC.アウリス)をセンサーチップにロードした。動態緩衝液を使用して、二次ベースライン工程を行った。次いで、動態緩衝液を含むPBS中の精製されたHuMAb 1.11D(実施例2で上記のように調製した;抗Fba;SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11)(濃度=100ug/mL)を含む溶液に浸された、ロードされたチップを用いて、会合工程を行い;シグナルの正の増加が抗体結合を示す。最後に、解離工程のために、チップを動態緩衝液に戻した。His-Fbaローディング工程を省略して(非形質転換細菌の上清のみを使用して)、陰性対照を実施して、HuMAb 1.11D(抗Fba;SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11)がHisKセンサーを単に認識しないこと、ならびにチップにロードした種が細菌上清に由来しないことを示した。さらに、同じ濃度(100μg/mL)のHuMAb 1.10C(抗MET6;SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:13)を会合工程の陰性対照として使用して、Fbaがロードされたチップに対する1.11D抗体の結合特異性を示した。
【0324】
MET6 BLI分析。完全長のC.アルビカンスMet6タンパク質(NCBI参照配列:XM_713126.2)に対する、精製されたヒトモノクローナル抗体(HuMAb)の検出可能な結合は、ForteBio BLITz機器(ソフトウェア:BLITz Pro 1.2)を使用して達成した。開始する前に、抗Penta-Hisセンサー(HisKセンサー;ForteBio)を動態緩衝液[PBS+0.1% BSA+0.02% Tween20]中で水和させた。動態緩衝液におけるベースライン工程の後、動態緩衝液で1:1希釈した粗製の細菌発現上清を使用して、完全長のHisでタグされたMet6タンパク質(C.アルビカンス)をセンサーチップにロードした。動態緩衝液を使用して、二次ベースライン工程を行った。次いで、動態緩衝液を含むDPBS中の精製されたHuMAb 1.10C(抗MET6;SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:13)(濃度=100ug/mL)を含む溶液に浸された、ロードされたチップを用いて、会合工程を行い;シグナルの正の増大が抗体結合を示す。最後に、解離工程のために、チップを動態緩衝液に戻した。陰性対照を実施して、ローディング工程のHis-Met6を省略して(非形質転換細菌の上清のみを使用して)、HuMAb 1.10C(抗MET6;SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:13)がHisKセンサーを単に認識しないこと、ならびにチップにロードした種が細菌上清に由来しないことを示した。さらに、同じ濃度(100μg/mL)のHuMAb 1.11D(抗Fba;SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11)を会合工程の陰性対照として使用して、Met6がロードされたチップに対する1.10C抗体の特異性を示した。
【0325】
結果および考察
結果は、ヒト抗体1.10C(抗MET6;SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:13ならびに1.11D(抗Fba;SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11)は、それぞれ、C.アルビカンス由来のネイティブな組換えMET6およびFbaタンパク質に特異的に結合すること(
図6、上部および
図7)および1.11D(抗Fba;SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11)は、C.アルビカンスのペプチドと比較してC.アウリスのペプチドの相同性が低減しているにもかかわらず(表6)、C.アウリス由来の組換えFbaにも結合する(
図7)ことを示す。さらに、結果は、Fba(Fba、SEQ ID NO:40)およびMET6(MET6、SEQ ID NO:38)のペプチドエピトープがネイティブなタンパク質において抗体結合に使用可能であることを実証する。
【0326】
実施例5-播種性カンジダ症のマウス致死モデルにおけるヒトモノクローナル抗体の有効性評価
材料および方法
カンジダ属系統。アゾール抵抗性(Erg11 Y132F)の南米系統である、C.アルビカンスSC5314(ATCC)およびC.アウリスAR-0386(CDC)をグルコース-酵母抽出物-ペプトンブロス中で37℃で定常期酵母細胞として増殖させ、洗浄し、ダルベッコPBS(DPBS;Sigma)中に妥当な細胞濃度(C.アルビカンス、5×106/ml;C.アウリス、1×109/ml)に懸濁し、記載されるようにマウスを静脈内(i.v.)感染させるために使用した(Han and Cutler, 1995; Han et al., 2000)。
【0327】
マウス系統。近交系マウス系統C57BL/6またはA/J(NCI Animal Production Program or Harlan)(雌;5~7週齢)を使用した。ニューオーリンズのLouisiana Health Sciences Centerの動物実験委員会(Institutional Animal Care & Use committee)(IACUC)の規則によって承認されたプロトコールに従って、マウスを維持し、取り扱った。
【0328】
真菌の攻撃誘発、および保護の評価。6~8週齢のC57BL/6マウスまたはA/J)をこれらの研究で使用した。3匹のマウスの群を無菌のケージ中で一緒に飼育し、これらのマウスに無菌の食物および水を自由に与えた。0日目に、C.アルビカンス3153A細胞(0.1mlのDPBS中に5×105CFU)またはC.アウリス(0.1mlのDPBS中に1×108CFU)での静脈内攻撃誘発の4時間より前に、最大で0.5mlまでの精製されたモノクローナル抗体(実施例2で上記のように調製した)の単回注射によってマウスの群(抗体ごとに1つの群)に腹腔内注射した。35日間(C.アルビカンス)または40日間(C.アウリス)動物の生存をモニターすることによって、保護を評価した。瀕死状態の発生について、マウスをモニターし、瀕死状態は、気力が低下していること、食物または水に無関心であること、および指での調査(probing)に反応しないことと定義される。マウスが瀕死であるとみなされた時点で、マウスを屠殺した。比較のために、1つの群にDPBSを与え、一方で、別の群に抗真菌薬物Fuconazole(商標)を与えた。生存を評価し、対照と比較した。
【0329】
結果および考察
結果は、C57B/L6マウスの播種性カンジダ症モデルにおいて、抗ペプチド抗体1.10Cおよび1.11DがC.アルビカンスによる死亡からマウスを保護することを実証し(
図8)、単回用量の1.10Cは、標準的ケアの抗真菌Fluconazole(商標)よりも良好な保護をもたらした。さらに、1.11Dは、明らかな用量応答(
図8)を実証し、両方抗体を含むカクテルは、完全な保護をもたらした。A/J好中球減少性マウスの播種性カンジダ症モデルにおけるC.アウリスの場合には、個々の抗体を単独で使用して、保護が限られていること観察されたが、両方の抗体を含むカクテルは該マウスの保護を増強した(
図9)。
【0330】
実施例6-MET6に対するパラトープマッピング
Kelley et al., Nature Protocols 10, 845-858 (2015)によるタンパク質モデリング、予測、および分析のためのPhyre2ウェブポータルに従って、Met6抗体2B10対してタンパク質モデリングを行った(
図10~11)。
【0331】
2B10 VH(可変領域重鎖)アミノ酸配列:
2B10 VHの3Dモデル(
図10)について、以下のリンクで情報を検索することができる。
2B10 VL(可変領域軽鎖)アミノ酸配列:
2B10 VLの3Dモデル(
図11)について、以下のリンクで情報を検索することができる。
パラトーム(Paratome)-抗原結合領域同定(ABR)
Met6ペプチドに対して特異的なマウスmAb 2B10C1。2B1011Cのヒトバージョンは1.10Cである。
2B1011C V配列:
【0332】
実施例7-FBAに対するパラトープマッピング
Kelley et al., Nature Protocols 10, 845-858 (2015)によるタンパク質モデリング、予測、および分析のためのPhyre2ウェブポータルに従って、Fba抗体2B10に対してタンパク質モデリングを行った(
図12~13)。
【0333】
2D5 VH(可変領域重鎖)アミノ酸配列:
2D5 VHの3Dモデル(
図12)について、以下のリンクで情報を検索することができる。
2D5 VL(可変領域軽鎖)アミノ酸配列:
2D5 VLの3Dモデル(
図13)について、以下のリンクで情報を検索することができる。
パラトーム-抗原結合領域同定(ABR)
Fbaペプチドに対して特異的なマウスmAb 2D5F7。2D5F7のヒトバージョンは1.11Dである。
【0334】
実施例8-抗体結合動態
25℃でForteBio BLITz Bi-layer干渉計を使用して結合実験を行った。アッセイ緩衝液(0.1% BSA、0.02% Tween-20を含むPBS(pH7.4))中でストレプトアビジン(SA)バイオセンサーを水和させ、アッセイ緩衝液中の0.01μg/mLのビオチン化ペプチド(Fba-ビオチンまたはMet6-ビオチン)をストレプトアビジン(SA)バイオセンサーにロードした。ロードされたセンサーを同種のIgGの段階希釈物に浸した。
【0335】
抗体産生のために、1.10C(抗Met6)または1.11D(抗Fba)のいずれかの重鎖および軽鎖を発現するプラスミドのマッチした対をFreestyle(商標)293細胞に一過的にトランスフェクトし、Fast FlowプロテインG(GE Life Sciences)アフィニティークロマトグラフィーによって、分泌されたIgGを精製した。
【0336】
25℃でForteBio BLITz Bi-layer干渉計を使用して結合実験を行った。アッセイ緩衝液(0.1% BSA、0.02% Tween-20を含むPBS(pH7.4))中でストレプトアビジン(SA)バイオセンサーを水和させ、アッセイ緩衝液中の0.01μg/mLのビオチン化ペプチド(Fba-ビオチンまたはMet6-ビオチン)をストレプトアビジン(SA)バイオセンサーにロードした。ロードされたセンサーを同種のIgGの段階希釈物に浸した。
【0337】
抗体産生のために、ヒト抗Met6または抗Fba抗体のいずれかの重鎖および軽鎖を発現するプラスミドのマッチした対をFreestylea 293細胞に一過的にトランスフェクトし、Fast FlowプロテインG(GE Life Sciences)アフィニティークロマトグラフィーによって、分泌されたIgGを精製した。表8に示した結果は、抗体が1×107またはそれ以上の結合親和性(kD)でその同種のペプチドに結合することを実証する。
【0338】
【0339】
【0340】
【0341】
【0342】
【0343】
【0344】
(表7)ヒト病原体であるカンジダ属の種間のFBAおよびMET6ペプチド配列の相同性
【0345】
(表8)HuMAbカンジダ抗体についてのBLITz動態データの概要(Autoimmune Technologies)
【0346】
本明細書において開示および主張される組成物および方法のすべては、本発明に照らして、必要以上の実験をしないで作製および実施することができる。本開示の組成物および方法は好ましい態様の観点から記載されているが、本開示の概念、趣旨、および範囲から逸脱することなく、本明細書において記載される組成物および方法へ、ならびに該方法の工程または一連の工程に変形形態を適用することができることは、当業者に明らかであろう。より具体的には、化学的にも生理的にも関連したある特定の作用物質を本明細書において記載される作用物質の代わりに用いることができ、同時に同じまたは類似した結果が達成されることは明らかであろう。当業者に明らかなそのような類似した代用物および改変のすべては、添付の特許請求の範囲によって示される本開示の趣旨、範囲、および概念内であるとみなされる。
【0347】
VII.参照文献
以下の参照文献は、本明細書において記載されるものを補足する例示的な手順または他の詳細を提供する範囲で、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
【配列表】
【国際調査報告】