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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-06
(54)【発明の名称】流体導管の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/14 20060101AFI20220929BHJP
   B21D 22/16 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B21D22/14 Z
B21D22/16 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506722
(86)(22)【出願日】2020-08-03
(85)【翻訳文提出日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 GB2020051861
(87)【国際公開番号】W WO2021019260
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】1911021.2
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522043149
【氏名又は名称】サブシー 7 リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUBSEA 7 LIMITED
【住所又は居所原語表記】40 Brighton Road, Sutton, Surrey SM2 5BN, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウエスト, トレヴァー
【テーマコード(参考)】
4E137
【Fターム(参考)】
4E137AA02
4E137BA02
4E137BB01
4E137BB03
4E137CA06
4E137CA24
4E137DA01
4E137DA04
4E137DA10
4E137DA11
4E137EA18
4E137GA11
4E137GB20
(57)【要約】
金属管状体と流体連通する少なくとも1つの筒状金属金具を備えた流体導管の製造方法。この流体導管は、海底アンビリカルに組み込まれることが多い。金具は、スピニング作業においてワークピースを冷間成形することにより形成される。ワークピース材料の初期降伏強度は管状体材料の降伏強度より低い。本発明は、管状体材料の降伏強度を評価し、スピニング作業により増大したワークピース材料の降伏強度を評価し、金具を管状体に溶接する前に、増大したワークピース材料の降伏強度を管状体材料の降伏強度と比較することにより、この管状体材料の降伏強度とワークピース材料の初期降伏強度との不一致を補正または低減するものである。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属管状体と流体連通する少なくとも1つの筒状金属金具を備え、前記金具と前記管状体とが相互に適合する等級の材料からなる流体導管の製造方法であって、
スピニング作業においてワークピースを冷間成形して前記金具を形成すること、
前記ワークピースから前記金具を形成するスピニング作業により前記ワークピースの材料の降伏強度を増大させること、および
前記金具を管状体に溶接することを含み、
前記ワークピースの材料の初期降伏強度は前記管状体の材料の降伏強度より低い、流体導管の製造方法。
【請求項2】
前記金具と前記管状体の材料は同じ等級である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ワークピースの材料の再結晶温度よりも低く周囲温度より高い温度で前記ワークピースを冷間成形することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記金具を前記管状体に溶接する前に、前記金具をアニーリングまたは応力緩和することを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記スピニング作業において前記ワークピースを冷間成形する前に、前記ワークピースを鍛造品として提供することを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記スピニング作業において前記ワークピースを冷間成形する前に、前記ワークピースを板状体または中空の棒状体として提供することを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
スピニングマンドレルの周囲に前記ワークピースを冷間成形することを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
スピニング成形工具を用いて前記ワークピースを冷間成形することを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記管状体の材料の降伏強度と、前記ワークピースの材料の初期降伏強度との不一致を補正または低減することを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記管状体の材料の降伏強度を評価すること、および
前記スピニング作業により増大した前記ワークピースの材料の降伏強度を評価することを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記金具を前記管状体に溶接する前に、前記増大したワークピースの材料の降伏強度を前記管状体の材料の降伏強度と比較することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記金具を前記管状体に溶接する前に、適用規格に従って前記金具の材料を再認定することを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
ASTM A815に従って前記金具の材料を再認定することを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
海底アンビリカルの組み立て時に、前記流体導管を前記アンビリカルに組み込むことを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記管状体および前記金具の金属は、鋼材、二相、スーパー二相またはインコネルなどの合金鋼、二相ステンレス鋼、スーパー二相ステンレス鋼、加工硬化性鋼材、および加工硬化性合金鋼からなる群より選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
金属管状体に溶接されて相互に流体連通する少なくとも1つの筒状の冷間スピニングされた金属金具を備え、前記金具と前記管状体とが相互に適合する等級の材料からなる、海底流体導管。
【請求項17】
前記金具と前記管状体の材料は同じ等級である、請求項16に記載の流体導管。
【請求項18】
前記金具と前記管状体の材料は、実質的に同一の降伏強度を有する、請求項16または17に記載の流体導管。
【請求項19】
前記管状体の内径は、最大で2インチ(50.8mm)であり、前記管状体の長さは、少なくとも100メートルである、請求項16~18のいずれかに記載の流体導管。
【請求項20】
前記管状体および前記金具の金属は、鋼材、二相、スーパー二相またはインコネルなどの合金鋼、二相ステンレス鋼、スーパー二相ステンレス鋼、加工硬化性鋼材、および加工硬化性合金鋼からなる群より選択される、請求項16~19のいずれかに記載の流体導管。
【請求項21】
請求項16~20のいずれかに記載の流体導管を少なくとも1つ備えた、海底アンビリカル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属金具を複数の金属管状体に組み込むことに関し、具体的には、例えば、海底石油ガス産業のアンビリカルに使用され得る、金具と管状体とを備えた流体導管の製造に関する。このような用途において、発明者らは、特に、適用規格が、金具と管状体の両方が同じ材料等級であることを要件としている場合に、管状体に溶接される金具の機械特性を改質することが有効であることを見出した。
【背景技術】
【0002】
海底アンビリカルは、海面と海床上の海底設備との間または互いに離間した海底位置に設置された複数の設備の間に延びる細長体からなる。電力と制御信号に加え、一体型アンビリカルは、バルブの油圧制御用オイル、流量保証用の水和物阻害剤および他の化学物質、デッドオイルまたはメタノールといった除去流体などの流体を供給する。典型的な一体型アンビリカルは、例えば、光ファイバーを介したデータ通信も提供する。
【0003】
国際公開第2011/045582号は、アンビリカルを例示している。国際公開第2018/052311号は、アンビリカルのスチール流体ラインを腐食から保護するための改良を開示している。国際公開第2016/061235号は、アンビリカルの金属チューブを炭素繊維複合体で補強することを提案している。国際公開第2018/148718号では、チューブを広げることによって当該チューブの溶接領域を補強している。米国出願公開公報第2015/361728号は、回転動作により海底パイプの接合部を冷間成形する方法を開示しており、一方、国際公開第2015/200325号は、中空の円筒予備成形体をフローフォーミング加工することによりチューブを製造する方法を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1は、従来の一体型海底アンビリカル10の断面を示す。アンビリカル10は、筒状のポリマー外装体14内に横断スペーサ構造体12で結束された複数のケーブルと流体導管とを含む細長い機能要素の束を備える。この概略図では示されていないが、外装体には、内側シース、外側シース、および、これらシースの間に配置される1つ以上の鋼線アーマー層が含まれ得る。
【0005】
電力ケーブル16は、パワーコアとしても知られており、典型的には、アンビリカル10に沿って三相AC電力を高電圧で供給する。アンビリカル10の機能要素は、さらに、複数の電気信号ケーブル18と、1本の光ファイバーケーブル20と、複数のスチールまたはカーボン製のワイヤ、ロープまたは棒材などの補強要素22とを含む。
【0006】
アンビリカル10の流体導管は、流体コアまたは流体ラインとしても知られており、圧力下で供給流体を輸送する細長いパイプまたはチューブ24からなる。チューブ24は、カーボンスチール製であってもよいが、より一般的には、二相またはスーパー二相ステンレス鋼などの耐食合金製である。チューブ24の内径は小さく、典型的には2インチ(50.8mm)未満であるが、長さは数十から数百メートルになり得る。
【0007】
流体導管は、図2および図3に例示されるような、スチールチューブ24に連続溶接されて流体連通する筒状のスチール金具26も備えている。このような金具26は、導管の端部接続、および、導管長さに沿った1つ以上の中間位置に必要とされ得る。図2および図3に示されるこのような中間金具26の例として、内径および/または外径および/または壁厚が異なるチューブ24間において流体連通を可能にするトランジションピースが挙げられる。金具26は、中央長手方向軸28に対して回転対称であり、幅狭端部分26Bに対向する幅広端部分26Aを備える。周方向の円錐台形の段差またはショルダー部30は、端部分26Aと端部分26Bとの境界を規定し、両者間の直径変化に対応する。
【0008】
図3は、周方向の突合せ溶接32により流体導管の大径チューブ24Aに取り付けられた金具26の幅広端部分26Aと、同様の溶接32により流体導管の小径チューブ24Bに取り付けられた金具26の幅狭端部分26Bとを示しており、これらはすべて中央長手方向軸28上に一列に並んでいる。このため、大径チューブ24A、金具26および小径チューブ24Bは連続的に配置され、互いに流体連通する。
【0009】
従来、アンビリカルの流体導管に使用される金具は、鍛造により製造される。ASTM(米国試験材料協会)規格のA815仕様などの規格は、このような金具を同じ材料等級の管状体に溶接することを要件とする。しかし、鍛造処理により、金具の機械特性が、その金具が溶接される管状体よりも劣ってしまう。
【0010】
この点において、発明者らは、アンビリカルを束状に設計することにより、加工管状体の製造者によって保証される降伏強度値が向上することに着目した。しかし、同様の特性は、このような管状体に溶接される対応する金具の製造者によって保証されていない。
【0011】
具体的に、管状体の製造者は、同じ材料等級に対して業界が基準とする規格要求最小降伏強度(SMYS)よりも大きいSMYSを保証する。SMYSは、永続的な塑性変形を引き起こす最小応力の目安となる。他の製造者が製造する同じ材料等級の金具のSMYSは、対応する管状体のSMYSよりも約100Mpa低くなる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題に対する従来の解決策として、鍛造金具の過剰性能化および管状体の全壁厚を増厚して金具の低降伏強度を補完することが挙げられる。このアプローチでは、アンビリカルの流体導管が不必要に嵩高くなり高コストになる。
【0013】
こうした背景のもと、本発明は、金属管状体と流体連通する少なくとも1つの筒状金属金具を備えた流体導管の製造方法を提供する。この流体導管は、海底アンビリカルの組み立て時に当該アンビリカルに組み込まれることが多い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明を文脈に照らして説明するため、添付図面の図1図3を参照する。
図1】海底アンビリカルの概略断面図である。
図2図1に示すアンビリカルの流体導管に用いる金具の概略側面図である。
図3】導管のパイプ間に溶接された金具の概略側面図である。
【0015】
本発明をより理解しやくするために、一例として、残りの添付図面も参照する。
図4】本発明の方法を説明するフロー図である。
図5a】金具に冷間成形される筒状ワークピースの概略側面図である。
図5b】マンドレルを包囲する図5aのワークピースを示す概略断面側面図である。
図5c図5bに対応するが、スピニング作業時にマンドレルの周囲で冷間成形されるワークピースを示す。
図5d図5bに対応するが、スピニング作業時にマンドレルの周囲で冷間成形されるワークピースを示す。
図6a】スピニング作業において、初期形状が円盤状または板状であるワークピースがマンドレルの周囲に冷間成形されるのを示す一連の概略断面側面図である。
図6b】スピニング作業において、初期形状が円盤状または板状であるワークピースがマンドレルの周囲に冷間成形されるのを示す一連の概略断面側面図である。
図6c】スピニング作業において、初期形状が円盤状または板状であるワークピースがマンドレルの周囲に冷間成形されるのを示す一連の概略断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の方法は、スピニング作業においてワークピースを冷間成形して金具を形成すること、前記ワークピースから前記金具を形成するスピニング作業により前記ワークピースの材料の降伏強度を増大させること、および、前記金具を管状体に溶接することを含み、前記ワークピースの材料の初期降伏強度は管状体の材料の降伏強度より低い。このため、前記金具と前記管状体の材料は互いに溶接適合性があり、例えば、同じ等級である。
【0017】
延性を高めるために、冷間成形を行う際、前記ワークピースを、周囲温度より高いが前記ワークピースの材料の再結晶温度より低い温度に加熱してもよい。前記金具も、前記管状体に溶接される前に、例えば、アニーリングまたは応力緩和により加熱処理してもよい。
【0018】
前記ワークピースは、スピニング作業で冷間成形される前に、鍛造またはそれ以外の加工により、例えば、板状または棒状に成形されてもよい。
【0019】
前記ワークピースは、好ましくは、スピニング成形工具を用いて、スピニングマンドレルの周囲に冷間成形されることが好適である。
【0020】
ある意味、本発明の原理は、管状体の材料の降伏強度と、ワークピースの材料の初期降伏強度との不一致を補正または低減することであると表現できる。この場合、当該方法は、管状体の材料の降伏強度を評価すること、および、スピニング作業により増大したワークピースの材料の降伏強度を評価することを含み得る。その後、前記金具を前記管状体に溶接する前に、前記増大したワークピースの材料の降伏強度と、前記管状体の材料の降伏強度とが比較され得る。
【0021】
前記金具の材料は、前記金具を前記管状体に溶接する前に、ASTM A815、ASTM A815/A815M-18または他の現行の改訂版などの適用規格に従って再認定され得る。
【0022】
本発明の概念は、金属管状体に溶接されて相互に流体連通する少なくとも1つの筒状の冷間スピニングされた金属金具を備えた海底流体導管であって、前記金具と前記管状体とが相互に適合する等級の材料で構成される、海底流体導管を包含する。本発明の概念は、本発明の少なくとも1つの流体導管を備えた海底アンビリカルも包含する。
【0023】
前記金具の材料と前記管状体の材料は、実質的に同一の降伏強度であってもよい。前記管状体は非常に細長く、例えば、内径は最大2インチ(50.8mm)、長さは少なくとも100メートルであってもよい。
【0024】
このため、本発明は、金具のスピニングを含む補強工程を加えることにより不要な材料を減らすという有益なアプローチをとるものである。スピニングには、金具の特定の機械特性、特に、その降伏強度を改良するという利点がある。
【0025】
本発明の好ましい実施形態は、金属スピニング技術を使って二相またはスーパー二相ステンレス鋼材料等級の機械特性を向上させる。二相またはスーパー二相等級の冶金により、スピニングプロセスからの冷間加工が実現可能かつ有益なものとなる。このため、本発明は、熱間鍛造プロセスの代わりに冷間加工を含む金具製造技術を提案する。
【0026】
二相鋼は、オーステナイト鋼とフェライト鋼との混合体からなる二相微細構造を有する。二相鋼の降伏強度の向上により、薄肉部の形成および大幅な軽量化が可能になる。スーパー二相鋼にもこれら便益があるが、クロムとモリブデンの含有率が高いため、耐食性が増大してしまう。
【0027】
スピニング作業時に金属を冷間成形することにより、加工硬化効果を達成することが有利である。材料の加工温度の上昇に伴い加工硬化は低減するため、熱間スピニングは好ましくない。しかし、材料を引き裂くことなく、ワークピースの温度を少し上昇させて所望の塑性および延性を達成することが望ましいと考えられる。冷間成形後の状態を評価するのに、その後、溶液アニーリング熱処理も必要になる場合がある。しかし、ワークピースの整形プロセスは未だ冷間成形作業として見なされ管理される。
【0028】
様々なスピニング工具を用いることができ、例えば、ワークピースとの摩擦を低減するためにベアリングに搭載される半球形の硬化鋼ローラが例示される。
【0029】
本発明は、自動化され得る繰り返し可能なプロセスに適しており、プロセス変数の制御および保証品質の達成を確実にするものであり、これによりバッチおよびバッチテストの要件が定義される。
【0030】
本発明では、板状材料または孔のある鍛造棒状の材料を筒状にスピニングして加工硬化することにより、材料の歩留りおよび引張特性を改良することができる。このようなスピニングされるアイテムは、例えば、壁厚および/または直径が異なるチューブ間のトランジションピースなどの制御管状体金具を規定する。
【0031】
本発明の実施形態は、金属管状体と金属金具との強度の不一致を補正または低減するための方法を実現する。当該方法は、前記管状体のSMYSおよび材料等級を評価する工程と、前記管状体と適合性のある材料等級の金具のベース材料を提供する工程と、前記ベース材料を予備成形して初期ピースを得る工程と、前記初期ピースを冷間スピニングして、前記金具材料の特性を改良または向上させながら前記金具を再整形する工程と、国内または国際規格に従って前記金具材料を再認定する工程と、前記管状体に前記金具を溶接する工程とを含む。
【0032】
前記管状体および前記金具の金属は、鋼材、二相、スーパー二相またはインコネルなどの合金鋼、二相ステンレス鋼、スーパー二相ステンレス鋼、加工硬化性鋼材、および加工硬化性合金鋼からなる群より選択され得る。
【0033】
前記初期ピースは、例えば、板状体または中空の棒状体であってもよい。前記初期ピースは、好ましくは鍛造により加工されることが多い。
【0034】
要するに、本発明は、金属管状体と流体連通する少なくとも1つの筒状金属金具を備えた流体導管の製造方法を提供する。この流体導管は、特に海底アンビリカルに組み込まれることが多く、これが技術的課題の原因であるため、本発明の概念に該当する。
【0035】
前記金具は、スピニング作業において、ワークピースを冷間成形することにより形成される。ワークピース材料の初期降伏強度は、管状体材料の降伏強度より低い。本発明は、管状体材料の降伏強度を評価し、スピニング作業により増大したワークピース材料の降伏強度を評価し、金具を管状体に溶接する前に、増大したワークピース材料の降伏強度を管状体材料の降伏強度と比較することにより、この管状体材料の降伏強度とワークピース材料の初期降伏強度との不一致を補正または低減するものである。
【0036】
次に図4を参照されたい。このフロー図は、本発明の方法が、管状体のSMYSおよび材料等級を評価するステップ34と、前記管状体の等級と適合可能な等級の材料のワークピースを提供するステップ36とからなる予備工程を含むことを示している。
【0037】
この点において、前記管状体と前記ワークピースの材料等級の適合性は、これら等級が、必要な技術応用で用いられる集合体を組み立てる際に一方の材料の構成要素を他方の材料の構成要素に溶接することが承認されることを要件とする。例えば、適合性は、海底アンビリカルで用いられるようなフェライト鋼、フェライト鋼/オーステナイト鋼およびマルテンサイト系ステンレス鋼からなる加工パイプ金具に適用される、上述のASTM A815などの業界基準によって決定され得る。
【0038】
このような場合、適合性は、材料等級が同じか、または少なくとも実質的に同じであることを要件にする場合がある。これは、アンビリカルで用いられる流体導管と同様、海底石油ガス産業で用いられる流体導管を製造する場合に認められている。しかし、広義では、適用規格が、当該技術応用の構成要素を互いに溶接する適合性があると見なす限り、適合性は材料等級が異なることを必ずしも排除するわけではない。
【0039】
ステップ36においてワークピースの好適な材料等級が選択されると、ステップ38において、ワークピースは冷間スピニングによって整形され、所望の筒状金具に形成される。
【0040】
ステップ36とステップ38の間に、ワークピースをステップ40の予備処理の任意の中間工程に供して、冷間スピニング用のワークピースを用意してもよい。例えば、円筒形の丸棒を長手方向に孔のあるチューブ状のワークピースを形成したり、または、平板を切断して、初期形状が円盤状であるワークピースを形成したりすることが可能である。
【0041】
中間予備処理ステップ40において、ワークピースの機械特性を確認してもよい。もし必要であれば、冷間スピニングが促進されるよう改質してもよい。これは、例えば、ワークピースの柔軟性および延性が改良されるようワークピースを加熱することによって行われ得るが、このとき、冷間成形ドメインから逸脱する温度まで加熱しない。この点において、金属の再結晶温度より高い温度で当該金属の塑性変形を引き起こす熱間加工または熱間成形とは対照的に、冷間加工または冷間成形は、金属の再結晶温度より低い温度で当該金属の塑性変形を引き起こす。鋼材の再結晶温度は、典型的には400℃~700℃の間であるが、ステンレス鋼はより高い傾向にある。
【0042】
ステップ38において、ワークピースは冷間スピニングされて金具に形成されるため、ワークピースの材料は加工硬化する。よって、ワークピースの機械特性は、その初期状態から変化する。得られた機械特性は、ステップ42において認定される。金具が所期の目的に好適である、例えば、加工硬化により、材料の降伏強度が、金具の壁厚の有益な減少を補完する程度まで増大したことが確認される。ステップ42の金具の認定の前に、冷間成形された材料の特性を調整するために、アニーリングや他の熱処理、例えば、応力緩和などの追加の処理工程が場合により必要となる。
【0043】
最後に、一旦認定されると、ステップ44において、金具は管状体に溶接される。
【0044】
図5a~図5dおよび図6a~図6cは、スピニング作業において、図2および図3に示される金具26が、ワークピースからどのようにして冷間成形され得るかを例示している。図5aにおいて、ワークピースは、好ましくは、原則的に、押し出し成形などの他の公知の技術によって筒状に形成され得る孔のある丸棒のチューブ46である。一方、図6aにおいて、ワークピース48は、平板から切断される初期形状が円盤状のものである。
【0045】
図5bは、その中央空洞に挿入された内部マンドレル50を包囲しているチューブ46を示す。マンドレル50はチューブよりも長いため、チューブ46の両開口端から長手方向に突出している。
【0046】
マンドレル50の周方向に段差を有する外面は、金具26の対応する段差形状を反映し、金具26の内部輪郭を決定する。このため、マンドレル50は、中央長手方向軸28に対して回転対称であり、幅狭端部分50Bに対向する幅広端部分50Aを含む。周方向の円錐台形の段差またはショルダー部52は、マンドレル50の端部分50Aと50Bとの境界を規定し、両者間の直径変化に対応する。マンドレル50の幅広端部分50Aは、包囲しているチューブ46の内側に収まる密接スライディングまたは締り嵌めである。
【0047】
マンドレル50の平滑な外面により、金具26の内側に、対応する平滑な内面が形成されることが有利である。これにより、金具26を通る流体の流れが促進され、使用中の金具26の内部における固形物の堆積が低減される。
【0048】
図5cおよび図5dは、スピニング作業時にマンドレル50の周囲に冷間成形されるチューブ46を示す。いずれの場合も、成形工具54を半径方向内側に向かってチューブ46の外側に対して押圧させた状態で中央長手方向軸28に平行な長手方向に進行させながら、マンドレル50およびチューブ46は、中央長手方向軸28回りに一緒にスピニングされる。このように、チューブ46の壁は、成形工具54とマンドレル50との間で徐々に圧縮および冷間成形され、その過程で半径方向に薄くなる。
【0049】
図5cは、スピニング作業の第1段階であって、成形工具54が、チューブ46をマンドレル50の幅狭端部分50Bに対して半径方向内側に向かって押圧するのに伴い、金具26の幅狭端部分26Bが形成される段階を示している。一方、図5dは、スピニング作業の第2段階であって、成形工具54が、チューブ46をマンドレル50の幅広端部分50Aに対して半径方向内側に向かって押圧するのに伴い、金具26の幅広端部分26Aが形成される段階を示している。
【0050】
原則的に、スピニング作業のどちらの段階にも同じ成形工具54を使うことができる。しかし、別の可能性を示すため、図5cおよび図5dでは、各段階で異なる成形工具54が使われる場合を示している。
【0051】
図5cに示される成形工具54は、中央長手方向軸28に直交して交差するスピン軸56回りに回転する。ここで示す成形工具54は、スピン軸56に対して回転対称であり、マンドレル50に向かってテーパー(先細り)する円錐台形ヘッド58を含む。ヘッド58のテーパー角度は、金具26のショルダー部30の傾斜を決定するため、実質的に一致する。
【0052】
一方、図5dに示される成形工具54は、中央長手方向軸28に平行なスピン軸56回りに回転する。ここで示す成形工具54は、スピン軸56に対して回転対称である扁球形状のローラ60を含む。
【0053】
図5cおよび図5dからわかるように、圧縮されて半径方向に薄くなったチューブ46の壁は、長手方向に延びてマンドレル50に沿って伸張し、最終的に、チューブ46は金具26の所望の長さを超える長さになる。その後、金具26の余分な長さを切断し、金具26の端部に表面仕上げおよび面取りを施して、図3に示すようなチューブ24Aと24Bとに溶接される金具26を得る。
【0054】
最後に、図6a~図6cを参照する。これらの図は、初期形状が円盤状であるワークピース48から金具26を冷間スピニングする方法を示す。図6a~図6cも、ワークピース48に圧力をかけて、成形工具54とマンドレル50との間に挟持されたワークピース48に金具26の最終的な形状を付与する成形工具54を示す。
【0055】
図6aは、中央長手方向軸28に直交する平面において、マンドレル50の幅狭端部に固定され、かつ、中央長手方向軸28に対して回転対称である、初期形状が平坦な円盤形状のワークピース48を示す。また、ワークピース48は、中央長手方向軸28回りにマンドレル50と一緒にスピンする。スピニング作業時に、成形工具54は、図6aに示されるワークピース48の平面初期状態から、図6bに示される円錐台形状に形状変化した中間状態を経て、図6cに示されるマンドレル50の形状に実質的に適合する筒状状態まで、マンドレル50に対しかつそれに沿ってワークピース48を折り畳み変形する。
【0056】
図6bは、スピニング作業の第1段階であって、成形工具54が、ワークピース48をマンドレル50の幅狭端部分50Bに対して半径方向内側に向かって押圧するのに伴い、金具26の幅狭端部分26Bが形成される段階を示している。一方、図6cは、スピニング作業の第2段階であって、成形工具54が、ワークピース48をマンドレル50の幅広端部分50Aに対して半径方向内側に向かって押圧するのに伴い、金具26の幅広端部分26Aが形成される段階を示している。
【0057】
図6a~図6cに例示される成形工具54は、図5dに示すものと同じである。このため、成形工具54は、スピン軸56に対して回転対称である扁球形状のローラ60を含む。しかし、この場合、スピン軸56は、ローラ60が接触するワークピース48の一部に対して略平行に保たれるため、ワークピース48がマンドレル50に対して折り畳み変形するのに伴い、スピニング作業時に旋回する。
【0058】
ワークピース48が完全に形成されると、マンドレル50の幅狭端部を包囲するワークピース48の閉口端を切断して、図2に示すような開口端を有する金具26を形成する。
【0059】
すべての実施形態において、成形工具54のスピン軸56は、スピニング作業時にワークピースが回転する中央長手方向軸28と同一平面上にあることが好適である。
【0060】
本発明の概念の範囲内で様々な変形が可能である。例えば、スピニング時に、ワークピースを、内部雄型マンドレルの周囲を半径方向内側に向かって押圧する代わりに、外部雌型金型の内部で半径方向外側に向かって押圧することによって、形成することが可能である。
【0061】
本発明で用いられる成形工具は、スピン軸回りに回転して摩擦を低減することが好ましいが、原則的に、成形工具は回転しないため、好適に潤滑され回転するワークピースと摺接され得る。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6a
図6b
図6c
【手続補正書】
【提出日】2022-04-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属管状体と流体連通する少なくとも1つの筒状金属金具を備え、前記金具と前記管状体とが相互に溶接されるのに適合する等級の材料からなる流体導管の製造方法であって、
スピニング作業においてワークピースを冷間成形して前記金具を形成すること、
前記ワークピースから前記金具を形成するスピニング作業により前記ワークピースの材料の降伏強度を増大させること、および
前記金具を管状体に溶接することを含み、
前記ワークピースの材料の初期降伏強度は前記管状体の材料の降伏強度より低い、流体導管の製造方法。
【請求項2】
前記金具と前記管状体の材料は同じ等級である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ワークピースの材料の再結晶温度よりも低く周囲温度より高い温度で前記ワークピースを冷間成形することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記金具を前記管状体に溶接する前に、前記金具をアニーリングまたは応力緩和することを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記スピニング作業において前記ワークピースを冷間成形する前に、前記ワークピースを鍛造品として提供することを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記スピニング作業において前記ワークピースを冷間成形する前に、前記ワークピースを板状体または中空の棒状体として提供することを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
スピニングマンドレルの周囲に前記ワークピースを冷間成形することを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
スピニング成形工具を用いて前記ワークピースを冷間成形することを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記管状体の材料の降伏強度と、前記ワークピースの材料の初期降伏強度との不一致を補正または低減することを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記管状体の材料の降伏強度を評価すること、および
前記スピニング作業により増大した前記ワークピースの材料の降伏強度を評価することを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記金具を前記管状体に溶接する前に、前記増大したワークピースの材料の降伏強度を前記管状体の材料の降伏強度と比較することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記金具を前記管状体に溶接する前に、適用規格に従って前記金具の材料を再認定することを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
ASTM A815に従って前記金具の材料を再認定することを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
海底アンビリカルの組み立て時に、前記流体導管を前記アンビリカルに組み込むことを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記管状体および前記金具の金属は、鋼材、二相、スーパー二相またはインコネルなどの合金鋼、二相ステンレス鋼、スーパー二相ステンレス鋼、加工硬化性鋼材、および加工硬化性合金鋼からなる群より選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【国際調査報告】