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特表2022-542707SMAヒートポンプ/冷凍システムで熱出力と温度デルタとを最大化するシステム及びその方法
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  • 特表-SMAヒートポンプ/冷凍システムで熱出力と温度デルタとを最大化するシステム及びその方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-06
(54)【発明の名称】SMAヒートポンプ/冷凍システムで熱出力と温度デルタとを最大化するシステム及びその方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 23/00 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
F25B23/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506734
(86)(22)【出願日】2020-08-01
(85)【翻訳文提出日】2022-02-28
(86)【国際出願番号】 EP2020071745
(87)【国際公開番号】W WO2021023680
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】1911073.3
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516357166
【氏名又は名称】エクサジン リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EXERGYN LIMITED
【住所又は居所原語表記】DCU Cleantech Innovation Campus,Old Finglas Road,Glasnevin,Dublin 11, IRELAND
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケビン オトゥール
(72)【発明者】
【氏名】ケイス ワーレン
(57)【要約】
【課題】改善したヒートポンプシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】ヒートポンプシステムは、形状記憶合金(SMA)または負熱膨張材(NTE)または熱弾性体からなるコアであって、第1コアは、熱を吸収してエネルギーを蓄積するようにハウジングの内部に配されており、入力された第1流体が出力されると正味の冷却効果をもたらす構成であって、前記第1コアを活性化温度にて状態変化させるために前記第1流体を第1温度で入口から受け入れるように前記ハウジングが構成されており、前記ハウジングの内部に配された前記第1コアに応力を加えることで相変化を起こさせて、熱/エネルギーを放出するデバイスを有し、第2温度の第2流体または前記第1温度の前記第1流体が前記第1コアに入力されることで、加熱された前記第1コアからのエネルギー/熱が伝達されて加熱される構成であり、前記第2コアが前記第1コアにカスケード接続される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状記憶合金(SMA)または負熱膨張材(NTE)または熱弾性体からなるコアであって、前記コアは第1コアと第2コアとを有し、前記第1コアは、熱を吸収してエネルギーを蓄積するようにハウジングの内部に配されており、入力された第1流体が出力されると正味の冷却効果をもたらす構成であって、前記第1コアを活性化温度にて状態変化させるために前記第1流体を第1温度で入口から受け入れるように前記ハウジングが構成されており、前記ハウジングの内部に配された前記第1コアに応力を加えることで相変化を起こさせて、熱/エネルギーを放出するデバイスを有し、第2温度の第2流体または前記第1温度の前記第1流体が前記第1コアに入力されることで、加熱された前記第1コアからのエネルギー/熱が伝達されて加熱される構成であり、前記第2コアが前記第1コアにカスケード接続される、ヒートポンプシステム。
【請求項2】
前記第2コアが前記第1コアと直列に配されており、加熱サイクル中に温度上昇をもたらす構成である、請求項1に記載のヒートポンプシステム。
【請求項3】
前記第2コアが前記第1コアと直列に配されており、冷却サイクル中に温度降下をもたらす構成である、請求項1に記載のヒートポンプシステム。
【請求項4】
前記コアを1つのみで用いたときよりも流体出力におけるより大きな温度上昇をもたらすように前記第2コアの活性化温度が前記第1コアと比較してより高い構成である、請求項1または2に記載のヒートポンプシステム。
【請求項5】
前記コアを1つのみで用いたときよりも流体出力におけるより大きな温度降下をもたらすように前記第2コアの活性化温度が前記第1コアと比較してより低い構成である、請求項1または3に記載のヒートポンプシステム。
【請求項6】
前記第2流体は三次回路流体を含んでいる、請求項1~5のいずれか一項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項7】
前記第1コアが状態変化することで前記第2流体の温度上昇をもたらすように前記第2コアが状態変化して前記第2流体が温度上昇する構成である、請求項1~6のいずれか一項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項8】
前記コアは第3コアを有し、前記第3コアが前記第1コアと前記第2コアとにカスケード接続される、請求項1~7のいずれか一項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項9】
形状記憶合金(SMA)または負熱膨張材(NTE)または熱弾性体からなるコアであって、前記コアは第1コアと第2コアとを有し、前記第1コアは、熱を吸収してエネルギーを蓄積するようにハウジングの内部に配されており、入力された第2流体または第1流体が出力されると正味の冷却効果をもたらす構成であって、前記第1コアを活性化温度にて状態変化させるために前記第1流体を第1温度で入口から受け入れるように前記ハウジングが構成されており、前記第2コアは、前記第1コアからの冷却された流体に反応して状態変化するように前記第1コアにカスケード接続されており、前記第2コアが前記第1コアと比較してより低い活性化温度を有する、冷却システム。
【請求項10】
前記第2コアが前記第1コアと直列に配されており、冷却サイクル中に温度降下をもたらす構成である、請求項9に記載の冷却システム。
【請求項11】
前記コアを1つのみで用いたときよりも流体出力におけるより大きな温度降下をもたらすように前記第2コアの活性化温度が前記第1コアと比較してより低い構成である、請求項9または10に記載の冷却システム。
【請求項12】
前記第2流体は三次回路流体を含んでいる、請求項9~11のいずれか一項に記載の冷却システム。
【請求項13】
前記第1コアが状態変化することで前記第2流体の温度上昇をもたらすように前記第2コアが状態変化して前記第2流体が温度上昇する構成である、請求項9~12のいずれか一項に記載の冷却システム。
【請求項14】
前記コアは第3コアを有し、前記第3コアが前記第1コアと前記第2コアとにカスケード接続される、請求項9~13のいずれか一項に記載の冷却システム。
【請求項15】
形状記憶合金(SMA)または負熱膨張材(NTE)または熱弾性体からなるコアのうちの第1コアを、熱を吸収してエネルギーを蓄積するようにハウジングの内部に配することで、入力された第1流体が出力されると正味の冷却効果をもたらすようにするステップと、
前記第1コアを活性化温度にて状態変化させるために前記第1流体を第1温度で入口から受け入れるように前記ハウジングを構成するステップと、
前記ハウジングの内部に配された前記第1コアに応力を加えることで相変化を起こさせて、熱/エネルギーを放出するようにデバイスを構成するステップと、
第2温度の第2流体または前記第1温度の前記第1流体を、前記第1コアに入力することで、加熱された前記第1コアからのエネルギー/熱を、前記第2流体または前記第1流体に伝達させるステップと、
前記第1コアからの加熱された流体に反応して状態変化するように構成された前記コアのうちの第2コアを、前記第1コアにカスケード接続するステップと、を有する加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒートポンプに関する。特に、本開示は、空調システムなどの加熱システムおよび/または冷却システムのためのヒートポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプ(“HP”)技術は、暖房、換気および空調(“HVAC”)用途において、商業的に支持を得ている。それらは、エネルギーの節約および排出低減を提供
でき、典型的には、建物や自動車用途などでの加熱および冷却システムのために設けられている。
【0003】
ヒートポンプにはいくつかの種類がある。ほとんどの既存の技術は、膨張/圧縮サイクルで冷媒を利用しており、多くのヒートポンプは、熱源、一例として、空気熱源ヒートポンプまたは地中熱源ヒートポンプなどに分類される。ヒートポンプで使用される基本的な技術についても同様である。空気熱源ヒートポンプは、低温での性能が制限される(-18℃では、CoPは、(カルノーによって)1近くになる傾向にある。そのため、電気抵抗加熱がより効果的であり、より高い動作温度では、CoPは4に達し得る)。地中熱源ヒートポンプは、より安定した入口温度になるが、従来技術は成績係数(“CoP”)によって制限される。
【0004】
世界的に、建物での加熱および冷却の脱炭素化をする必要がある。加熱は、一般に、炭素ベースの燃料を燃焼するので、大気中に炭素が放出される。冷却および空調は、より暖かい気候では主要な電気負荷になり得る。ヒートポンプは、潜在的に、単一のパッケージから加熱および冷却を提供し得る。ヒートポンプが再生可能な電力を使用する場合において、ヒートポンプは、ゼロ・エミッション技術になり得る。従来のヒートポンプ技術は、一般に、地球温暖化の可能性が高い冷媒を用いており、高い毒性を有し得るので、望ましいことではない。ファンおよびポンプは、邪魔となり得るノイズを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のHP技術は、3~4のCoPを有する。CoPを増加させることによって、電力消費が低減され得るので、これにより、再生可能でない電力が使用される場合の炭素排出が低減される。さらに、従来のHP技術は、周囲の空気温度によって影響を受けるCoPを有し得るので、それは望ましいことではない。米国特許出願公開第20160084544号(Radermacherら)には、SMA材料チューブを使用するヒートポンプシステムが開示されており、それは、未知の材料の他のチューブまたはロッドで満たされて体積を占めており、したがって、デッドサーマルマスを除去してシステムの効率を高めるのに有用である。しかしながら、この構成は、熱効率が悪く、均一に膨張および/または収縮せず、生成されるCoP値が乏しいという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、成績係数(CoP)を大幅に改善したヒートポンプシステムを提供することを目的とする。また、改良された冷却システムを提供することを目的とする。
【0007】
特許請求の範囲で述べられているとおり、本発明に係るヒートポンプシステムは、形状記憶合金(SMA)または負熱膨張材(NTE)または熱弾性体からなるコアであって、前記コアは第1コアと第2コアとを有し、前記第1コアは、熱を吸収してエネルギーを蓄積するようにハウジングの内部に配されており、入力された第1流体が出力されると正味の冷却効果をもたらす構成であって、前記第1コアを活性化温度にて状態変化させるために前記第1流体を第1温度で入口から受け入れるように前記ハウジングが構成されており、前記ハウジングの内部に配された前記第1コアに応力を加えることで相変化を起こさせて、熱/エネルギーを放出するデバイスを有し、第2温度の第2流体または前記第1温度の前記第1流体が前記第1コアに入力されることで、加熱された前記第1コアからのエネルギー/熱が伝達されて加熱される構成であり、前記第2コアが前記第1コアにカスケード接続される。
【0008】
本構成によって、ハウジングの内部に配されており、第1温度で入力された第1流体に応じて熱を吸収し、および/またはエネルギーを蓄積するように適合した形状記憶合金(SMA)または負熱膨張材(NTE)または熱弾性体からなるコアを備えるヒートポンプシステムが提供される。これにより、第1流体がコアを出ると正味の冷却効果がモータらされる。エネルギーは、必要とされる用途に応じて、すぐに、または所望の頻度で蓄積または放出することができる。
【0009】
前記ハウジングは、入口を経由して第1温度の第1流体を受け取って、第1コアの状態を変化させるように構成される。前記デバイスは、ハウジングの内部に配された第1コアに対して応力を加えることで相変化を起こさせて、熱/エネルギーを放出するように構成される。これにより、コアの温度を増加させる。次いで、第2温度の第2流体(特定の場合では、継続して第1温度の第1流体)がコアに入力され、加熱されたコアからのエネルギー/熱が流体内に伝達される。これにより、流体がコアを出ると正味の加熱効果がモータらされる。形状記憶合金(SMA)または負熱膨張材(NTE)または熱弾性体からなる第2コアは前記第1コアにカスケード接続されており、第1コアを出る流体温度に応じて状態を変化させるように構成される。次いで、応力サイクルが第2コアで繰り返され、第2流体が第2コアを出ると、さらなる正味の加熱効果(すなわち、温度の増加)となる。
【0010】
冷却システムまたは冷凍システムにおいて、より低い温度低下を達成するために、カスケード接続された第2コアは、第1コアよりも低い活性化温度を示すことができる。サイクルの焦点は、コアが流体からエネルギーを吸収する吸熱の応力解放成分にある。第1コアにより流体の流れの温度低下となり、次いで、それは、より低い活性化温度を有する第2コアに入り、サイクルの半分の冷却の間に出力流体のさらなる温度低下となる。
【0011】
前記コアは、ニッケルチタン合金または派生物NiTiXもしくはNiTiXY(XおよびYは、三元合金元素/四元合金元素)、NiMnGa、CuAlZnなど任意の好適な弾性熱量材料を有することができる。
【0012】
本発明に係るヒートポンプによれば、従来技術のヒートポンプシステムよりも実質的に高い温度デルタ(デルタT)を示すことができる。本発明によれば、SMA/ソリッドステートのヒートポンプにおける熱出力の増加およびシステム効率/CoPの増加に寄与する。
【0013】
ここで、SMAヒートポンプ/冷凍サイクルは、逆ブレイトンおよび逆スターリングサイクルのハイブリッドとみなすことができる。より高いデルタTで、それは逆ブレイトンサイクルに近く、より低いデルタTで、それは逆スターリングに近い。したがって、逆スターリングがより効率的なサイクルであるため、できる限りこのサイクルに近いようにヒートポンプを動作させることが最良である。カスケードシステムを採用し、2つ以上のコアを直列接続することによって、各々のフェーズを形成するのに必要とされるデルタTが低減される。これは、システムがその挙動でより逆スターリングに近いことを意味する。より大きいデルタTの場合よりも、流体を加熱するためにSMAで利用可能なエネルギーが大きいということにより、エクセルギー効率もより高い。
【0014】
一実施形態として、前記第2コアは、前記第1コアと直列に配されており、加熱サイクル中に温度上昇をもたらす。
【0015】
一実施形態として、前記第2コアは、前記第1コアと直列に配されており、冷却サイクル中に温度低下をもたらす。
【0016】
一実施形態として、前記第2コアは、前記第1コアと比較してより高い活性化温度を有する。
【0017】
一実施形態として、前記第2流体は、3次回路流体を含む。
【0018】
一実施形態として、印加される前記応力は、圧縮応力である。
【0019】
一実施形態として、前記第1コアが状態変化することで前記第2流体の温度上昇をもたらすように前記第2コアが状態変化して前記第2流体が温度上昇する。
【0020】
一実施形態として、形状記憶合金(SMA)または負熱膨張材(NTE)または熱弾性体からなるコアであって、前記コアは第3コアを有し、前記第3コアが前記第1コアと前記第2コアとにカスケード接続される。ヒートポンプ/冷却システムは、任意の数のコアを積層して、または、任意の数のコアをカスケード接続させて、動作させることができる。
【0021】
本発明に係る冷却システムは、形状記憶合金(SMA)または負熱膨張材(NTE)または熱弾性体からなるコアであって、前記コアは第1コアと第2コアとを有し、前記第1コアは、熱を吸収してエネルギーを蓄積するようにハウジングの内部に配されており、入力された第2流体または第1流体が出力されると正味の冷却効果をもたらす構成であって、前記第1コアを活性化温度にて状態変化させるために前記第1流体を第1温度で入口から受け入れるように前記ハウジングが構成されており、前記第2コアは、前記第1コアからの冷却された流体に反応して状態変化するように前記第1コアにカスケード接続されており、前記第2コアが前記第1コアと比較してより低い活性化温度を有する。
【0022】
本発明に係る加熱方法は、形状記憶合金(SMA)または負熱膨張材(NTE)または熱弾性体からなるコアのうちの第1コアを、熱を吸収してエネルギーを蓄積するようにハウジングの内部に配することで、入力された第1流体が出力されると正味の冷却効果をもたらすようにするステップと、前記第1コアを活性化温度にて状態変化させるために前記第1流体を第1温度で入口から受け入れるように前記ハウジングを構成するステップと、前記ハウジングの内部に配された前記第1コアに応力を加えることで相変化を起こさせて、熱/エネルギーを放出するようにデバイスを構成するステップと、第2温度の第2流体または前記第1温度の前記第1流体を、前記第1コアに入力することで、加熱された前記第1コアからのエネルギー/熱を、前記第2流体または前記第1流体に伝達させるステップと、前記第1コアからの加熱された流体に反応して状態変化するように構成された前記コアのうちの第2コアを、前記第1コアにカスケード接続するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るヒートポンプによれば、従来技術のヒートポンプシステムよりも実質的に高い温度デルタ(デルタT)を示すことができる。本発明によれば、SMA/ソリッドステートのヒートポンプにおける熱出力の増加およびシステム効率/CoPの増加に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は形状記憶合金(SMA)または負熱膨張材(NTE)または熱弾性体からなる複数のコアから構成されるヒートポンプシステムを示す図である。
図2図2はヒートポンプの動作における異なる状態を示すワークフロー図である。
図3図3はSMAの第1コアとSMAの第2コアとのカスケード接続を示す一実施形態の図である。
図4図4は第1コアと第2コアとの間にタンク回路または相当のデバイスを直列配置した状態を示す図である。
図5図5はカスケードフォーメーションで相互作用する2つのコアの本発明に係る動作のための理想サイクルをT-sアウトラインにて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のより明確な理解のために、本発明における一例としての実施形態について、図面を参照して、以下に詳しく説明する。本発明は、形状記憶合金(SMA)または負熱膨張材(NTE)または熱弾性体からなる材料における、相変態からの潜熱を利用する新規なヒートポンプサイクルに関する。以下、本発明の好ましい実施形態として、SMAの実施を記載しており、負の熱膨張材料(NTE)または弾性熱量材料の実施においても同様に適用される。
【0026】
本発明は、コアを画定するために、複数のエレメントまたは複数のワイヤで構成されたSMAを近接配置して用いることができる。SMAの材料は、マルテンサイトとオーステナイトの2つの結晶状態になることができ、一方の相から他方の相へと可逆的に変態することができる。SMAにおけるオーステナイトからマルテンサイトへの変態は発熱を伴う。SMAにおけるマルテンサイトからオーステナイトへの変態は吸熱を伴う。相転移が起こる温度は、SMAの材料に対する応力の印加によって操作することができる。
【0027】
形状記憶合金(SMA)は、一度変形しても加熱時に変形前の形状に戻る形状記憶効果を示す合金である。この材料は、液圧、気圧、およびモータを基礎としたシステムなど従来のアクチュエータよりも軽量な固体状態の代替物である。
【0028】
本発明は、複数の形状記憶合金(SMAs)または複数の負熱膨張材(NTE)または熱弾性体からなる材料のいずれかを用いることが可能なヒートポンプシステムおよびその方法に関する。一実施形態として、特に、SMA材料で構成されたSMAシステムを用いることができる。一例として、コアを画定するために、複数のエレメント(もしくは複数のエレメント群)または複数のワイヤが、近接配置されている。別の例では、ロッド、ブロック、リボン、細片またはプレート、3Dプリントされたエレメントなどのうちの1つ以上でコアを画定することができ、いずれにおいても、軸方向または横方向の圧縮、圧縮および自然負荷、ねじり応力を受けることでコアとして機能することができる。
【0029】
ヒートポンプには、2つのフェーズ、すなわち、熱吸収フェーズおよび熱放出フェーズがある。マシンサイクルは、完全な熱吸収フェーズ(吸熱)および完全な熱放出フェーズ(発熱)として定義される。
【0030】
熱吸収フェーズは、材料に印加される応力を、SMA材料内への熱の伝達を許容可能な、サイクル動作で使用されるより低い適切な値に設定する。その結果、オーステナイト開始(As)とオーステナイト終了(Af)の活性化温度が、流体の流れの入力温度よりも低い値に設定される。熱勾配が存在することで、熱伝導および熱対流によってSMA内に熱伝達することが可能になる。一度、材料が完全にまたは部分的にオーステナイトに変態すると(つまり、SMA材料の温度がAfよりも高くなると)、熱吸収フェーズが完了する。
【0031】
オーステナイト系SMA材料に対する応力を増加させた後、熱放出フェーズが始まる。これにより、マルテンサイトに戻る逆変態のために、マルテンサイト開始(Ms)およびマルテンサイト終了(Mf)の活性化温度が上昇する。一度、Msの値が入力流体の流れの温度よりも上に上昇すると、逆変態が始まる。それは、Mfも流体の流れの温度よりも高くなったときにのみ完了する。次いで、潜熱が、SMA材料によって流体の流れに放出され、その温度を高くする。熱の放出が起こる速度は、熱勾配や流速や乱流などの流体の流れの様々な熱力学的条件の関数である。
【0032】
単一の流体温度入力をシステムで用いることができ、熱放出フェーズからのより温かい流体を加熱対象へ向けつつ、熱吸収フェーズからのより冷たい流体の流れを流体源に戻すように、一連のバルブをチャンバの出力で用いることができる。複数の流体温度入力を用いることもできる。
【0033】
図1は、SMA駆動システムとして知られている構成を組み込んだヒートポンプシステムではあるが、逆の操作をしており、Exergyn Limitedが出願し未公開のPCT特許出願第PCT/EP2019/052300号を参照し本明細書に組み込まれている。図1に示すように、低圧アキュムレータ1は、マルテンサイト状態のSMAコア2aまたは束に印加される。AsとAfよりも高い温度のSMAコア2aを収容したチャンバ内に流体が入力されると、SMA材料が熱を吸収することが可能になる。図2はSMTの動作における異なる状態を示すワークフロー図である。ワイヤに対して印加される低い圧力(つまり、低い応力)の結果、オーステナイト開始温度(As)とオーステナイト終了温度(Af)の両方が比例して低下し、マルテンサイトからオーステナイトへの変態がより低い入力流体温度で容易に達成できる。図2に示すように、コア内の複数のSMAワイヤは、Af点まで加熱される。Afは、ワイヤの最大収縮の点として設定され、部分的なまたは完全なマルテンサイトからオーステナイトへの変態を表している。
【0034】
図3は、一実施形態として、図1のコア2aに代えてカスケード接続された第1のSMAコア10と第2のSMAコア11を示している。本発明の好ましい実施形態として、ハウジング内に配されて、第1温度で入力された第1流体に応じて熱を吸収しエネルギーを蓄積するようにした形状記憶合金(SMA)または負熱膨張材(NTE)または熱弾性体からなる第1コア10を有するヒートポンプシステムが提供できる。入口を経由して第1温度の第1流体を受け取って、SMAまたはNTEまたは熱弾性体からなる第1コア10を状態変化させるように前記ハウジングが構成される。ハウジング内の、MAまたはNTEまたは熱弾性体からなる第1コア10に応力を印加して、第2温度の第2流体に応じてコア10の状態を変化させるようにデバイス(図示せず)が構成される。コアに応力を印加するように構成された、液圧回路や気圧回路、電気機械若しくはネジ山などのデバイスが配されることで、コアへの応力付与がもたらせられる。形状記憶合金(SMA)または負熱膨張材(NTE)または熱弾性体からなる第2コアは第1コア10にカスケード接続されており、第2流体温度に応じて状態を変化させるように前記第2コアが構成される。
【0035】
ヒートポンプ/冷却器/冷凍システム内の2つ以上のソリッドステート/SMAコア10とソリッドステート/SMA11のカスケードは、ヒートポンプシステムの効率を増加させるため、加熱中の温度上昇または冷却/冷凍中の温度低下の増加を可能にする(全体としてのシステムの「デルタT」またはdTとみなされる)。SMA混成体は、異なる活性化温度を有するように構成されて、直列で協働する第1コアと第2コアとが選択される。
【0036】
一例として、ヒートポンプは、吸熱サイクル中に、設定された「低い」温度で入口流体にさらされると、オーステナイトに相変化/変態可能な混成体がコア10として選択される構成である。オーステナイト終了温度と流体入口温度との差は最小化されるべきである。
【0037】
一度、SMAが完全にオーステナイトに変態すると、コア10は、「低-中」温度の流体にさらされる。一実施形態として、熱のキャリアとしてヒートポンプ内を継続的に循環する3次回路を用いることができる。次いで、負荷または応力がSMAコア10に印加され、SMAの活性化温度を3次流体温度の活性化温度よりも高い温度にシフトさせ、熱を放出し、「中-高」温度の3次流体を生成する。好ましい実施形態として、負荷または応力は、圧縮応力、または圧縮+横方向の応力もしくは圧縮+ねじり応力である。圧縮負荷は、材料の疲労寿命を長くして、より完全な相変態をもたらし、顕著な高効率をもたらすため、引張負荷よりも好ましい。コアに応力を印加するように構成された、液圧回路や気圧回路、電気機械若しくはネジ山などのデバイスが配されることで、コアへの応力付与がもたらせられる。
【0038】
コア11は、コア10と比較してより高い活性化温度のSMA混成体または材料が選択され、そして、入口流体ではなくて3次回路流体を用いてオーステナイトに変換されること以外は、コア10と同じ原理で動作する。冷却システムにおける活性化温度はより低い温度である。オーステナイト終了温度と入口での3次回路流体との差は最小化されるべきであるという観点から、上述の条件と同じ条件が適用される。
【0039】
図4は、第1コアと第2コアとの間に直列に配されているタンク回路または同様のデバイス12を示す図である。タンク回路12は、サイクルの効率に役立つバッファとして間接的な接続をもたらす。コアを直接的に接続する構成ではないことで、コアを異なるタイミング間隔で動作させことが可能になる。また、コア11に入る前の流体の温度を均質にする利点もある。バッファタンクがないときは、コア11内に入る初期の入力流体温度は、流体とSMA/NTEコアとの間の初期のより大きい温度勾配によって、より高い温度になる可能性がある。コア10内の温度が均一になると、コア11に入る出口流体の温度はより低くなる。このことは、挙動に影響を与えることができる。
【0040】
図5はカスケードフォーメーションで相互作用する2つのコア(本実施形態は、SMA混成体コア)の動作のための理想サイクルをT-sアウトラインにて示す図である。3次回路は、Th1/Tc1として示される。
【0041】
コア内の熱伝達率は、SMAからのエネルギーまたはSMAへのエネルギーの迅速な伝達を可能にすることが望ましく、流体入口温度とオーステナイト終了温度との最小温度差が確保される。これは、適度な時間で達成することができ、第1コア形状および第2コア形状を最適化することによって最大化することができる。一例として、3Dプリントされたコア形状を用いて、または従来の形状(ロッド、チューブなど)や従来にはない多角形状を用いることで、それぞれのSMAコアを作製可能である。
【0042】
カスケード数やコアの量は制限されないが、システムをカスケードで動作させるために必要とされるエネルギー入力と、達成される恩恵とのバランスは、コストと性能との両方の観点から求められる。
【0043】
本明細書に記載されているヒートポンプシステムおよびその方法は、多くの用途が挙げられ、加熱(空間加熱、熱ボイラーシステムまたは熱水システム)、冷却(空調水冷装置、プロセス冷却)、(建物または自動車用途)での可逆的な加熱および冷却や冷凍(家庭用および商用/小売用)極低温冷却に適用可能である。ヒートポンプシステムおよびその方法は、任意の加熱システムまたは冷却システムに効果的に適用可能である。
【0044】
本明細書において、「備え、備える、構成される、構成されている」という語句またはその任意の変形、ならびに「含み、含む、含まれる、含んでいるという語句またはその任意の変形は、相互に置き換え可能であり、可能な限り広い解釈が与えられるべきである。
【0045】
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、構成や詳細について種々変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】