IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 致晶科技(北京)有限公司の特許一覧 ▶ 北京理工大学の特許一覧

特表2022-542724複合発光材料、その製造方法及びその使用
<>
  • 特表-複合発光材料、その製造方法及びその使用 図1
  • 特表-複合発光材料、その製造方法及びその使用 図2
  • 特表-複合発光材料、その製造方法及びその使用 図3
  • 特表-複合発光材料、その製造方法及びその使用 図4
  • 特表-複合発光材料、その製造方法及びその使用 図5
  • 特表-複合発光材料、その製造方法及びその使用 図6
  • 特表-複合発光材料、その製造方法及びその使用 図7
  • 特表-複合発光材料、その製造方法及びその使用 図8
  • 特表-複合発光材料、その製造方法及びその使用 図9
  • 特表-複合発光材料、その製造方法及びその使用 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】複合発光材料、その製造方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/66 20060101AFI20220930BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20220930BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20220930BHJP
   C09K 11/00 20060101ALI20220930BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20220930BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20220930BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
C09K11/66 ZNM
C09K11/08 G
C09K11/02 Z
C09K11/08 A
C09K11/00 A
H01L33/50
H05B33/14 Z
H05B33/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526559
(86)(22)【出願日】2019-08-02
(85)【翻訳文提出日】2021-05-14
(86)【国際出願番号】 CN2019098997
(87)【国際公開番号】W WO2020244046
(87)【国際公開日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】201910480980.2
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520392672
【氏名又は名称】致晶科技(北京)有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHIJING NANOTECH CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】Room 01,Floor 8,Building 683,Quater 2 No.5 South Zhongguancun Street,Haidian District,Beijing 100081,CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】514112868
【氏名又は名称】北京理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】リー, フェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン, ハイジォン
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ジンジン
【テーマコード(参考)】
3K107
4H001
5F142
【Fターム(参考)】
3K107AA05
3K107BB01
3K107BB03
3K107CC21
3K107CC31
3K107CC45
3K107DD53
3K107DD54
3K107DD57
3K107DD96
3K107DD98
3K107FF13
3K107FF14
3K107GG26
3K107GG28
4H001CA02
4H001CC08
4H001CC13
4H001CF01
4H001XA03
4H001XA11
4H001XA19
4H001XA37
4H001XA53
4H001XA55
4H001XA82
5F142DA15
5F142DA22
5F142DA35
5F142DA64
5F142DA73
5F142GA11
(57)【要約】
【課題】 本発明は、ペロブスカイトナノ材料とマトリックスとを含み、前記ペロブスカイトナノ材料がγ-CsPbI及び添加元素Mを含み、前記添加元素MがLi、Na、K、Rbから選択される少なくとも1種であることを特徴とする複合発光材料、その製造方法及びその使用を提供する。
【解決手段】ペロブスカイトナノ材料とマトリックスとを含み、
前記ペロブスカイトナノ材料はγ-CsPbIと添加元素Mとを含み、
前記添加元素Mは、Li、Na、K、Rbから選択される少なくとも1種であることを特徴とする複合発光材料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペロブスカイトナノ材料とマトリックスとを含み、
前記ペロブスカイトナノ材料はγ-CsPbIと添加元素Mとを含み、
前記添加元素Mは、Li、Na、K、Rbから選択される少なくとも1種であることを特徴とする複合発光材料。
【請求項2】
前記ペロブスカイトナノ材料はコア-シェル構造であり、
コアがγ-CsPbIであり、
表面が添加元素Mを含むことを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項3】
前記ペロブスカイトナノ材料はコア-シェル構造であり、
コアがγ-CsPbIであり、
表面が、MPbX、MPbXのうちの少なくとも1種を含み、なかでも、Mが、Li、Na、K、Rbから選択される少なくとも1種であり、Xが、ハロゲン元素から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項4】
前記ペロブスカイトナノ材料はコア-シェル構造であり、
コアがγ-CsPbIであり、
表面がRbPbIであることを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項5】
前記複合発光材料が赤色発光材料であることを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項6】
前記複合発光材料の発光ピークが600~680nmであることを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項7】
前記複合発光材料の発光ピークが620~635nmであることを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項8】
前記ペロブスカイトナノ材料中に、γ-CsPbIと添加元素Mとのモル比が1:0.01~10であることを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項9】
前記ペロブスカイトナノ材料中に、γ-CsPbIと添加元素Mとのモル比が1:0.5~2であることを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項10】
前記ペロブスカイトナノ材料中のγ-CsPbIのモルホロジーが、γ-CsPbI量子ドット、γ-CsPbIナノシート、γ-CsPbIナノワイヤーから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項11】
前記ペロブスカイトナノ材料は、少なくとも1つの寸法におけるサイズが2~50nmであることを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項12】
前記ペロブスカイトナノ材料中のγ-CsPbIがγ-CsPbI量子ドット粒子であり、
前記γ-CsPbI量子ドット粒子の平均粒子径が14nmであることを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項13】
前記マトリックスが重合体であることを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項14】
前記重合体が、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、酢酸セルロース、シアノセルロース、ポリスルフォン、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項13に記載の複合発光材料。
【請求項15】
前記ペロブスカイトナノ材料と前記マトリックスとの質量比が1:1~100であることを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項16】
前記複合発光材料は添加剤をさらに含み、前記添加剤が前記マトリックス中に分散されており、
前記添加剤が、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、臭化第1スズ、ヨウ化第1スズ、臭化カドミウム、ヨウ化カドミウムから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項17】
前記マトリックスと添加剤との質量比が1:0.001~0.5であることを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項18】
前記ペロブスカイトナノ材料は、表面配位子をさらに含み、前記表面配位子がγ-CsPbIの表面に形成され、
前記表面配位子は、有機酸、有機酸ハロゲン化物、C~C24有機アミン、C~C24有機アミンのハロゲン化物のうちの少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項19】
γ-CsPbIと前記表面配位子との質量比が1:0.001~1であることを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項20】
前記複合発光材料が複合発光薄膜であり、
前記複合発光薄膜の厚さが0.001~5mmであることを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項21】
(1)マトリックス、ペロブスカイト前駆体、及び添加元素Mを含有する前駆体溶液を得る工程と、
(2)前記前駆体溶液を成形し、前記変性ペロブスカイトナノ材料を得る工程と、
を含むことを特徴とする請求項1~20のいずれか1項に記載の複合発光材料の製造方法。
【請求項22】
工程(1)において、前記マトリックスが重合体であり、
前記重合体が、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、酢酸セルロース、シアノセルロース、ポリスルフォン、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項21に記載の複合発光材料の製造方法。
【請求項23】
工程(1)において、前記前駆体溶液中に溶媒をさらに含有し、
前記溶媒が、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項21に記載の複合発光材料の製造方法。
【請求項24】
前記添加元素Mは、添加元素M含有化合物に由来し、
前記添加元素M含有化合物が、LiCl、NaCl、KCl、RbCl、LiBr、NaBr、KBr、RbBr、LiI、NaI、KI、RbI、LiCO、NaCO、KCO、RbCO、Li金属有機物、Na金属有機物、K金属有機物、Rb金属有機物から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項21に記載の複合発光材料の製造方法。
【請求項25】
工程(1)は、
(s11)マトリックスを含有する溶液(1)を得る工程と、
(s12)CsI、PbI、添加元素Mを含有する溶液(2)を得る工程と、
(s13)溶液(1)と溶液(2)とを混合し、前記前駆体溶液を得る工程と、
を含むことを特徴とする請求項21に記載の複合発光材料の製造方法。
【請求項26】
前記溶液(2)中に、PbIと(CsI+M)とのモル比が1:0.1~3であり、
CsIとMとのモル比が1:0.01~10であり、
溶媒:(PbI+CsI+M)の質量比が1:0.001~3であることを特徴とする請求項25に記載の複合発光材料の製造方法。
【請求項27】
前記溶液(1)中に、マトリックスと溶媒との質量比が1:1~100であることを特徴とする請求項25に記載の複合発光材料の製造方法。
【請求項28】
溶液(1)と溶液(2)との質量比が1:0.02~5であることを特徴とする請求項25に記載の複合発光材料の製造方法。
【請求項29】
前記溶液(1)中には添加剤をさらに含み、前記添加剤が、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、臭化第1スズ、ヨウ化第1スズ、臭化カドミウム、ヨウ化カドミウムから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項25に記載の複合発光材料の製造方法。
【請求項30】
前記マトリックスと添加剤との質量比が1:0.001~0.5であることを特徴とする請求項29に記載の複合発光材料の製造方法。
【請求項31】
前記溶液(2)中には表面配位子をさらに含有し、
前記表面配位子は、有機酸、有機酸ハロゲン化物、C~C24有機アミン、C~C24有機アミンのハロゲン化物のうちの少なくとも1種を含有し、
前記表面配位子は、工程(s12)において添加されることを特徴とする請求項25に記載の複合発光材料の製造方法。
【請求項32】
前記前駆体溶液中に、(PbI+CsI+M)と表面配位子との質量比が1:0.001~5であることを特徴とする請求項31に記載の複合発光材料の製造方法。
【請求項33】
工程(2)において、前記成形は、
前記前駆体溶液をテンプレートに移転し、成形して前記変性ペロブスカイトナノ材料を得る工程を含むことを特徴とする請求項21に記載の複合発光材料の製造方法。
【請求項34】
工程(2)において、前記成形は乾燥を含み、
前記乾燥の条件は、温度80~180℃、時間0.1~48hを含むことを特徴とする請求項33に記載の複合発光材料の製造方法。
【請求項35】
前記乾燥の条件は、圧力0.01~0.lMPaをさらに含むことを特徴とする請求項33に記載の複合発光材料の製造方法。
【請求項36】
請求項1~20のいずれか1項に記載の複合発光材料と、請求項21~35のいずれか1項に記載の複合発光材料の製造方法により製造される複合発光材料のうちの少なくとも1つとを含有することを特徴とする半導体デバイス。
【請求項37】
前記半導体デバイスは、エレクトロルミネッセンスデバイス、フォトルミネッセンスデバイス、太陽電池、表示デバイス、センサ、圧電デバイス、非線形光学デバイスを含むことを特徴とする請求項36に記載の半導体デバイス。
【請求項38】
請求項1~20のいずれか1項に記載の複合発光材料と、請求項21~35のいずれか1項に記載の複合発光材料の製造方法により製造される複合発光材料のうちの少なくとも1つとを含むことを特徴とするフレキシブルデバイス。
【請求項39】
前記フレキシブルデバイスは、基材、金属陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び金属陰極を含み、
前記基材は、請求項1~20のいずれか1項に記載の複合発光材料と、請求項21~35のいずれか1項に記載の複合発光材料の製造方法により製造される複合発光材料のうちの少なくとも1つと、を含むことを特徴とする請求項38に記載のフレキシブルデバイス。
【請求項40】
積層した緑色発光薄膜と赤色発光薄膜とを含み、
請求項1~20のいずれか1項に記載の複合発光材料と、請求項21~35のいずれか1項に記載の複合発光材料の製造方法により製造される複合発光材料のうちの少なくとも1つとを含むことを特徴とする二色複合発光材料。
【請求項41】
前記赤色発光薄膜が、ポリメタクリル酸メチル/RbI被覆/不活性化γ-CsPbI量子ドット複合薄膜であることを特徴とする請求項40に記載の二色複合発光材料。
【請求項42】
前記緑色発光薄膜が、ポリフッ化ビニリデン/CHNHPbBr量子ドット複合薄膜であることを特徴とする請求項40に記載の二色複合発光材料。
【請求項43】
請求項40~42のいずれか1項に記載の二色複合発光材料のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とするLCDディスプレイ。
【請求項44】
青色チップ駆動モジュール、青色チップ放熱モジュール及び二色複合発光材料を含み、
前記二色複合発光材料は、請求項40~42のいずれか1項に記載の二色複合発光材料のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とするフォトルミネッセンスデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合発光材料に関し、材料分野に属する。
【背景技術】
【0002】
ペロブスカイト材料の構造式は、一般的にABX(式中、Aは、K、Na、Rb、Cs及び小分子有機カチオン等であってもよく、Bは、Pb2+、Sn2+、Ti4+、Cr3+、Bi3+等の複数種の元素であってもよく、Xは、O2-、Cl、Br、I、S2-等のアニオンからなってもよい)である。ペロブスカイト構造の材料は、吸光性、電気的触媒性等のように非常に多くの独特な物理化学性質を持ち、化学、物理の分野で広く用いられている。ハロゲン化ペロブスカイトは、Xがハロゲン(Cl、Br、I)アニオンであるペロブスカイト構造化合物であり、なかでも、Aは小分子有機カチオンであってもよいし、無機金属カチオンであってもよく、それぞれ有機-無機ハイブリッドハロゲン化ペロブスカイト及び全無機ハロゲン化ペロブスカイトと称される。
【0003】
ハロゲン化ペロブスカイトの結晶構造は、1つのB金属原子と6つのX原子とで構成される1つの八面体構造であり、A原子は、8つの八面体が二つごとに1つのX原子を共有して形成した立方体構造の中心に嵌め込められている。
【0004】
ハロゲン化ペロブスカイト材料は、独特な光電半導体特性を持ち、適切なバンドギャップ、高いキャリア移動度、非常に強い欠陥許容性、低い点欠陥率、低い粒界再結合率及び表面再結合率、ならびにs-p反結合に起因する大きな吸光係数を有する。これら独特な光学及び半導体特性により、ハロゲン化ペロブスカイト材料は、太陽電池における光電変換材料の理想的な選択となっている。
【0005】
前世紀九十年代、Mitziの研究チームは初めて有機-無機ハイブリッドペロブスカイト材料の光電性能を研究し、それが良好な電子移動能力を持ち、太陽電池に適用する潜在的価値があることを見出した。2009年、Kojima研究グループは、初めてCHHNPbX(X=Cl,Br,I)を感光性材料として色素増感太陽電池を製造し、その光電変換効率は3.8%に達している。ペロブスカイト材料の光電分野での研究が急増してきた。現在、アメリカの国立再生可能エネルギー研究所(NREL)により認証されたペロブスカイトフォトルミネッセンスデバイスの効率が22.1%に着実に上がった。
【0006】
ペロブスカイト太陽電池の研究が盛んになっていることにより、ABXハロゲン化鉛ペロブスカイト量子ドット(以下、ペロブスカイト量子ドットと称する)発光材料も急速に発展してきた。産業化途中のII-VI族量子ドットと比べて、ペロブスカイト量子ドットは、コストが低く、製造プロセスが簡単で、材料の毒性が低いなどの特徴を有する。同時に、ペロブスカイト量子ドットの発光性能がII-VI族量子ドットに相当し、ひいてはそれ以上であり、発光スペクトルが可視光波長全域をカバーし(410~700nm)、蛍光量子収率が高く(>90%)、狭帯域発光ピークを有する(半値幅20~50nm)。
【0007】
しかし、ペロブスカイト材料結晶構造のイオン性、配位子間のプロトン交換反応、ハロゲンイオンの強いイオン移動能力及び低い結晶形成能により、ペロブスカイト量子ドットの安定性が悪くなっている。ペロブスカイト量子ドットの光学性能を低下可能な外部要因には、主にHO、O、光及び熱がある。結晶構造のイオン性により、ペロブスカイト量子ドットは、極性溶媒、特に環境におけるHOにより分解されて光学性能を失いやすい。OとHOの組み合わせにより、ペロブスカイト量子ドットの分解が加速すると同時に、消光剤として、ペロブスカイト量子ドットの光学性能を低下させる。紫外線は、ペロブスカイト量子ドットに励起放射を発生させ、励起子の非発光再結合過程において生じた熱効果により、HO及びOとペロブスカイト量子ドットとの反応過程が加速し、同時に、励起子熱消光を発生させ、ペロブスカイト量子ドットの光学性能が低下してしまう。
【0008】
ペロブスカイト量子ドットの安定性が悪いという問題に対して、重合体で被覆されたペロブスカイト量子ドット複合材料の製造は、高い安定性のペロブスカイト量子ドットを実現する有効な方法である。Yuhua Wangの研究グループは、予め合成したCsPbX量子ドットを重合体Ergoと混合し、CsPbX/Ergo複合薄膜を製造した。該薄膜は、CsPbI量子ドットの空気及び水中における安定性を5hから25h以上に延長することができる。
【0009】
A. Paul Alivisatosの研究グループは、異なるモルホロジーのペロブスカイトナノ結晶を合成し、それらをそれぞれポリメタクリル酸ラウリル(PLMA)、ポリスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)及びポリスチレン(PS)に埋め込み、ペロブスカイト量子ドットの安定性が飛躍的に向上し、かつペロブスカイトナノワイヤーの複合薄膜の偏光発光性能を確保した。
【0010】
Dwight S. Seferosの研究グループは、ペロブスカイト量子ドットをメタクリル酸メチル(MMA)で被覆し、該ペロブスカイト量子ドット/MMA複合薄膜の安定性が30日間以上に達することが可能となった。しかしながら、予め合成したペロブスカイト量子ドットに基づく重合体複合薄膜は、通常、蛍光量子収率が高くないという問題が存在する。CsPbX/Ergo複合薄膜の蛍光収率が43%のみであり、ペロブスカイト量子ドット/MMA複合薄膜の蛍光量子収率がなおさらペロブスカイト量子ドット溶液の100%から複合材料の56%に低下した。
【0011】
これは、ペロブスカイト量子ドットの合成に煩雑な精製工程、例えば反応過程における大量の有機溶媒及び長鎖配位子の除去工程が必要とされ、この過程はペロブスカイトナノ材料の発光性能に不利な影響を及ぼすからである。また、分離精製後のペロブスカイト量子ドットは、その被覆マトリックスへの分散にも影響を及ぼし、凝集により量子ドットの蛍光量子収率が急劇に低下してしまい、かつ、得られた複合材料の光透過率が低くなり、デバイスの性能に影響を及ぼす。ペロブスカイト量子ドットの安定性を向上させながら優れた発光性能を兼ね備えさせるために、研究者は、ペロブスカイト量子ドット/重合体複合発光薄膜をインサイチュ(in-situ)で製造する方法を開発した。
【0012】
Yajie Dongの研究グループは、膨潤-脱膨潤の方法を用いて5種類の異なる重合体マトリックスのペロブスカイト量子ドット/重合体複合薄膜をインサイチュで製造し、その中、MAPbBr/PS複合薄膜の蛍光量子収率が最高で48%に達し、かつ水中で60日放置しても分解しない。Jiuyang Zhangの研究グループは、沈殿法によりCsPbBr量子ドットを製造する過程において重合体を添加し、CsPbBr/ポリメタクリル酸メチル、CsPbBr/ポリメタクリル酸ブチル及びCsPbBr/ポリスチレン複合材料をインサイチュで製造し、CsPbBr/ポリメタクリル酸メチルの蛍光量子効率が62.4%であった。しかし、従来のペロブスカイト量子ドット/重合体複合発光薄膜のインサイチュ製造についての研究は、主に緑色発光薄膜が重点であり、赤色発光のペロブスカイト量子ドット複合発光薄膜の蛍光量子収率及び安定性がいずれも低く、使用要求を満足できない。
【0013】
従来、ペロブスカイト量子ドットに基づく赤色発光材料は、主にCHNHPbI(MAPbI)、NHCHNHPbI(FAPbI)及びCsPbIであり、それらのバルク材料のバンドギャップが1.73eV未満である。これらの材料を量子ドットに製造した後、量子閉じ込め効果によりバンドギャップが増大するが、従来得られた全ヨウ素化物ペロブスカイト量子ドットの発光波長が依然として650nm超えであるものが一般的であり、表示などの分野への使用が制限されている。そのバンドギャップをさらに増大し、発光波長を620~630nm間に青方偏移しようとすれば、Br等を用いてドーピングする必要がある。ドーパントイオンの導入により、材料の構造安定性が低下し、長時間使用後にハロゲンと混合したペロブスカイト量子ドットは、相分離が発生し、量子ドットの発光ピークを変化させ、表示性能が劣化してしまう。従って、全ヨウ素化物ペロブスカイト量子ドットのバンドギャップを調節するための新規な方法を求める必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、γ-CsPbI/重合体複合発光材料をインサイチュで製造する過程において、生成したγ-CsPbI量子ドットの表面を被覆することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
被覆後の量子ドットは、バンド構造及び誘電率が変化し、そのバンドギャップが大きくなり、発光ピークが青色偏移する。製造パラメータを最適化することにより、発光ピークが610~680nmの間にあり、半値幅が32nm未満、蛍光量子収率が80%超え、安定性の高い複合発光薄膜を得ることができ、従来の赤色光全ヨウ素化物CsPbIペロブスカイト量子ドットがバックライト表示等の光電子デバイスに適用しにくい問題を解決できた。
【0016】
本発明の一態様によれば、被覆/不活性化した後に量子ドットバンド構造及び誘電率が変化し、バンドギャップが大きくなり、発光ピークが青色偏移する複合発光材料を提供する。
【0017】
前記複合発光材料は、ペロブスカイトナノ材料及びマトリックスを含み、
前記ペロブスカイトナノ材料がγ-CsPbI及び添加元素Mを含み、
前記添加元素Mが、Li、Na、K、Rbから選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0018】
任意選択として、前記複合発光材料は、複合発光薄膜、複合発光バルク材又は複合発光シート材である。前記複合発光材料が、任意の所望の形状に加工して成形することができる。
【0019】
任意選択として、前記ペロブスカイトナノ材料が前記マトリックス中に分散される。
【0020】
任意選択として、前記ペロブスカイトナノ材料はコア-シェル構造であり、
コアがγ-CsPbIであり、
表面が添加元素Mを含む。
【0021】
任意選択として、前記ペロブスカイトナノ材料はコア-シェル構造であり、
コアがγ-CsPbIであり、
表面がMPbX、MPbXのうちの少なくとも1種を含み、なかでも、MがLi、Na、K、Rbから選択される少なくとも1種であり、Xがハロゲン元素から選択される少なくとも1種である。
【0022】
任意選択として、前記ペロブスカイトナノ材料はコア-シェル構造であり、
コアがγ-CsPbIであり、
表面がRbPbIである。
【0023】
任意選択として、前記複合発光材料が赤色発光材料である。
【0024】
任意選択として、前記複合発光材料の発光ピークが600~680nmである。
任意選択として、前記複合発光材料の発光ピークが620~635nmである。
【0025】
任意選択として、前記ペロブスカイトナノ材料中に、γ-CsPbIと添加元素Mとのモル比が1:0.01~10である。
任意選択として、前記ペロブスカイトナノ材料中に、γ-CsPbIと添加元素Mとのモル比が1:0.2~0.5である。
【0026】
任意選択として、前記ペロブスカイトナノ材料中のγ-CsPbIのモルホロジーが、γ-CsPbI量子ドット、γ-CsPbIナノシート、γ-CsPbIナノワイヤーから選択される少なくとも1種である。
【0027】
任意選択として、前記ペロブスカイトナノ材料は、少なくとも1つの寸法におけるサイズが2~50nmである。
【0028】
任意選択として、前記ペロブスカイトナノ材料中のγ-CsPbIがγ-CsPbI量子ドット粒子である。
【0029】
前記γ-CsPbI量子ドット粒子の平均粒子径が14nmである。
【0030】
任意選択として、前記マトリックスが重合体である。
【0031】
任意選択として、前記重合体が、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、酢酸セルロース、シアノセルロース、ポリスルフォン、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルから選択される少なくとも1種である。
【0032】
任意選択として、前記ペロブスカイトナノ材料と前記マトリックスとの質量比が1:1~100である。
【0033】
任意選択として、前記マトリックスとペロブスカイトナノ材料との質量比が1:1~30である。
【0034】
任意選択として、前記複合発光材料は添加剤をさらに含み、前記添加剤が前記マトリックス中に分散されており、
前記添加剤が、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、臭化第1スズ、ヨウ化第1スズ、臭化カドミウム、ヨウ化カドミウムから選択される少なくとも1種である。
【0035】
任意選択として、前記マトリックスと添加剤との質量比が1:0.001~0.5である。
【0036】
任意選択として、前記ペロブスカイトナノ材料は表面配位子をさらに含み、前記表面配位子がγ-CsPbIの表面に形成され、
前記表面配位子が、有機酸、有機酸ハロゲン化物、C~C24有機アミン、C~C24有機アミンのハロゲン化物のうちの少なくとも1種を含有する。
【0037】
任意選択として、PbI+CsI+Mの合計質量と前記表面配位子との質量比が1:0.001~1である。
【0038】
任意選択として、前記複合発光材料が複合発光薄膜であり、
前記複合発光薄膜の厚さが0.001~5mmである。
【0039】
具体的に、γ-CsPbIペロブスカイトナノ材料がγ-CsPbIペロブスカイト量子ドットであり、前記γ-CsPbI量子ドットは、少なくとも1つの寸法におけるサイズが20nm以下である。
前記γ-CsPbI量子ドットがコアを有し、前記コアの構造式がCsPbI(式中、Pb及びIは配位八面体構造を構成し、Csが前記八面体構造の隙間に形成された直交構造相に充填される)である。γ-CsPbIの結晶構造において、その結合角α=β=γ=90°、結合長a=8.312~8.912Å、b=8.815~8.745Å、c=12.494~12.824Åである。これにより、比較的良い発光性能を有するγ-CsPbI量子ドットを得ることができる。
【0040】
本発明のもう1つの態様によれば、上記複合発光材料の製造方法を提供する。
前記複合発光材料の製造方法は、
(1)マトリックス、ペロブスカイト前駆体、添加元素M含有化合物を含有する前駆体溶液を得る工程と、
(2)前記前駆体溶液を成形し、前記変性ペロブスカイトナノ材料を得る工程と、
を含むことを特徴とする。
【0041】
任意選択として、工程(1)において、前記マトリックスが重合体であり、
前記重合体が、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、酢酸セルロース、シアノセルロース、ポリスルフォン、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルから選択される少なくとも1種である。
【0042】
任意選択として、工程(1)において、前記前駆体溶液中に溶媒をさらに含有し、
前記溶媒が、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドから選択される少なくとも1種である。
【0043】
任意選択として、前記添加元素Mが、添加元素M含有化合物に由来し、
前記添加元素M含有化合物が、LiCl、NaCl、KCl、RbCl、LiBr、NaBr、KBr、RbBr、LiI、NaI、KI、RbI、LiCO、NaCO、KCO、RbCO、Li金属有機物、Na金属有機物、K金属有機物、Rb金属有機物から選択される少なくとも1種である。
【0044】
任意選択として、工程(1)は、
(s11)マトリックスを含有する溶液(1)を得る工程と、
(s12)CsI、PbI、添加元素Mを含有する溶液(2)を得る工程と、
(s13)溶液(1)と溶液(2)とを混合して前記前駆体溶液を得る工程と、を含む。
【0045】
任意選択として、前記溶液(2)中に、PbIと(CsI+M)とのモル比が1:0.1~3であり、
CsIとMとのモル比が1:0.01~10であり、
溶媒:(PbI+CsI+M)の質量比が1:0.001~3である。
【0046】
任意選択として、前記溶液(1)中に、マトリックスと溶媒との質量比が1:1~100である。
【0047】
任意選択として、溶液(1)と溶液(2)との質量比が1:0.02~5である。
【0048】
任意選択として、前記溶液(1)中に、マトリックスと溶媒との質量比が1:1、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:12、1:15、1:20、1:30、1:40、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90、1:100及びいずれか2つの比の間の範囲内である。
【0049】
任意選択として、溶液(2)中に、PbIと(CsI+M)とのモル比が1:0.1、1:0.4、1:0.5、1:0.6、1:0.75、1:0.9、1:1、1:1.1、1:1.5、1:2、1:3及びいずれか2つの比の間の範囲内である。
【0050】
任意選択として、溶媒(2)と(PbI+CsI+M)との質量比が1:0.001、1:0.01、1:0.03、1:0.045、1:0.05、1:0.1、1:0.2、1:0.8、1:0.9、1:1、1:3及びいずれか2つの比の間の範囲内である。
【0051】
任意選択として、工程(s13)において、溶液(1)と溶液(2)との質量比が1:0.02、1:0.1、1:0.5、1:0.6、1:0.8、1:1、1:2、1:3、1:5及びいずれか2つの比の間の範囲内である。
【0052】
任意選択として、前記溶液(1)中には添加剤をさらに含み、前記添加剤が、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、臭化第1スズ、ヨウ化第1スズ、臭化カドミウム、ヨウ化カドミウムから選択される少なくとも1種である。
任意選択として、前記マトリックスと添加剤との質量比が1:0.001~0.5である。
【0053】
任意選択として、前記溶液(1)中に、マトリックスと添加剤との質量比が1:0.001、1:0.003、1:0.01、1:0.015、1:0.4、1:0.5及びいずれか2つの比の間の範囲内である。
【0054】
任意選択として、前記前駆体溶液中に表面配位子をさらに含有し、
前記表面配位子が、有機酸、有機酸ハロゲン化物、C~C24有機アミン、C~C24有機アミンのハロゲン化物のうちの少なくとも1種を含有し、
前記表面配位子が工程(s12)において添加される。
【0055】
任意選択として、前記前駆体溶液中に、(PbI+CsI+M)と表面配位子との質量比が1:0.001~5である。
【0056】
任意選択として、前記溶液(2)中に、(PbI+CsI+M)と表面配位子との質量比が1:0.001、1:0.015、1;0.01、1:0.02、1:0.1、1:0.6、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5及びいずれか2つの比の間の範囲内である。
【0057】
任意選択として、工程(2)において、前記成形は、
前記前駆体溶液をテンプレートに移転し、成形して前記複合発光材料を得る工程、を含む。
【0058】
任意選択として、前記移転は、スピンコート法、ディップコーティング法、エレクトロスピニング法、溶液沈降法、スプレー法、ナイフコーティング法、キャスティング法のうちの少なくとも1種を含む。
【0059】
任意選択として、
工程(2)において、前記成形は乾燥を含み、
前記乾燥の条件は、温度80~180℃、時間0.1~48hを含む。
【0060】
任意選択として、前記乾燥の条件は、圧力0.01~0.lMPaをさらに含む。
【0061】
任意選択として、前記乾燥の圧力の上限が0.02Mpa、0.03Mpa、0.04Mpa、0.05Mpa、0.06Mpa、0.07Mpa、0.08Mpa、0.09Mpa又は0.1Mpaから選択され、下限が0.01Mpa、0.02Mpa、0.03Mpa、0.04Mpa、0.05Mpa、0.06Mpa、0.07Mpa、0.08Mpa又は0.09Mpaから選択される。
【0062】
任意選択として、前記乾燥の温度の上限が90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃又は180℃から選択され、下限が80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃又は170℃から選択される。
【0063】
任意選択として、前記乾燥の時間の上限が1h、2h、3h、4h、5h、6h、8h、10h、15h、24h、28h、32h、35h、40h又は48hから選択され、下限が0.1h、0.5h、1h、2h、3h、4h、5h、6h、8h、10h、15h、24h、28h、32h、35h又は40hから選択される。
【0064】
具体的に、前記変性ペロブスカイトナノ材料の製造方法は、下記の工程を含むことを特徴とする。
【0065】
(1)マトリックス重合体材料の溶媒への溶解。
有機溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)のうちの少なくとも1種を含む。マトリックスは、有機重合体で構成され、重合体がポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体(PVDF-TrFE)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、酢酸セルロース(CA)、シアノセルロース(CNA)、ポリスルフォン(PSF)、芳香族ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)の少なくとも1つであってもよい。マトリックスと有機溶媒との質量比が1:(1~50)である。マトリックス材料と有機溶媒とを混合し、マトリックス材料が有機溶媒に完全に溶解して清澄透明な溶液を形成するまで機械的撹拌する。
【0066】
重合体マトリックスは、γ-CsPbI量子ドット/重合体複合発光材料中に、主に3つの作用を果たす。第一、重合体マトリックスは、γ-CsPbI量子ドットをインサイチュで生成する過程においてγ-CsPbI量子ドットのサイズに対して制限作用を有する。重合体マトリックスの存在により、生成したγ-CsPbI量子ドット同士が隔てられ、大きい粒子となるように成長し続けることができない。最終的に、γ-CsPbI量子ドットの粒子サイズが20nm以下に制限される。第二、重合体マトリックスは、γ-CsPbI量子ドットの相転移に対して制限作用を有する。γ-CsPbI量子ドット/重合体複合薄膜が製造温度から室温に降温した時、CsPbI量子ドットは、γ相から自発的にδ相へ転移する傾向がある。しかし、γ相からδ相へ転移する過程において、CsPbIの単位胞の体積が増大する。このとき、重合体がγ-CsPbI量子ドットに与える空間は増加せず、γ-CsPbI量子ドットのδ-CsPbIへの転換を制限することによって、室温時の重合体複合薄膜におけるCsPbIが依然としてγ相である。第三、重合体マトリックスは、CsPbI量子ドットとHO、Oとの接触を遮断することができ、CsPbI量子ドットが分解して光学活性を失うことが難しくなり、γ-CsPbI量子ドット/重合体複合薄膜の安定性が増強する。
【0067】
溶液(1)の製造過程では高速撹拌器を用いて分散を行う。これにより、溶液(1)の均一性及び分散性をさらに向上させ、さらに複合材料の効果を向上させることができる。溶液(1)は、次の工程により製造可能である。マトリックス及び添加剤を有機溶媒に溶解し、マトリックスと有機溶媒との質量比が1:(1~30)であり、マトリックスと添加剤との質量比が1:(0.01~0.5)であり、12h機械的撹拌混合し、マトリックスと添加剤とを有機溶媒に完全に溶解させ、清澄透明な溶液を得、溶液(1)とする。
【0068】
(2)溶液(2)の取得
該工程において、PbI、CsI及び添加元素Mを有機溶媒に溶解し、溶液(2)を得る。有機溶媒(2)は、DMF、DMSO、TMP、TEP、NMP、DMAcから選択される少なくとも1種を含み、かつ、有機溶媒(2)と有機溶媒(1)とを混和する。なお、「混和」という用語は、特に有機溶媒(1)と有機溶媒(2)とを混合する時に、混合溶液に分層現象が起こらないことを指す。これにより、溶液(1)及び溶液(2)を混合させて均一な有機溶媒系を形成することができ、つまり、溶液(1)及び溶液(2)に溶解したPbI、CsI、添加元素M、表面配位子、重合体マトリックス、添加剤等の原料成分の有機溶媒(1)及び有機溶媒(2)における溶解度に明らかな差がなく、マクロ的及びマイクロ的構造においていずれも相分離が発生しない。なかでも、PbIと(CsI+M)とのモル比が1:(0.1~3)であってもよく、有機溶媒(2)と(PbI+CsI+M)との質量比が1:(0.001~1)であってもよい。
【0069】
該方法を利用して得られた複合発光材料の性能をさらに向上させるために、溶液には有機配位子が添加される。表面配位子が有機酸、長鎖有機アミン又はそれらのハロゲン化物である。具体的に、有機酸は、炭素数3以上の飽和アルキル酸又は不飽和アルキル酸を含んでもよく、長鎖有機アミンが炭素数4~24のアルキルアミン又は芳香族アミンであってもよく、前記有機酸又は有機アミンのハロゲン化物が前記有機酸又は有機アミンに対応するハロゲン化物である。前駆体溶液中に、PbI+CsI+Mと有機配位子との質量比が1:(0.001~1)である。
【0070】
有機配位子の添加により、生成したγ-CsPbI量子ドットの表面の欠陥を除去して、非発光再結合を減少させ、γ-CsPbI量子ドットの蛍光量子収率を増加させることができる。また、有機配位子とγ-CsPbI量子ドットの異なる結晶面との結合エネルギーが異なるため、γ-CsPbIの成長方向を制御し、さらに、生成するγ-CsPbIのモルホロジー(量子ドット、ナノシート、ナノワイヤー)を制御する目的を達成することができる。
【0071】
該方法を利用して得られた複合発光材料の性能をさらに向上させるために、溶液には添加剤をさらに添加することができる。添加剤は、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、臭化第1スズ、ヨウ化第1スズ、臭化カドミウム、ヨウ化カドミウムの少なくとも1種を含み、マトリックスと添加剤との質量比が1:(0.001~0.5)であってもよい。
【0072】
添加剤の添加により、γ-CsPbI量子ドットの核生成速度を低下させ、生成するγ-CsPbI量子ドットのサイズをより均一にし、さらにより半値幅の狭いγ-CsPbI量子ドット/重合体複合薄膜を得ることができる。次に、添加剤は、γ-CsPbIの生成過程において融剤として機能し、γ-CsPbIの生成温度を175℃から80℃に低下させ、重合体薄膜の加工難度を低減する。(この部分添加剤が依然としてあってもよく、添加後に発光ピークの位置が移動しないが、半値幅がさらに狭くなり、発光強度及び発光効率がいずれも向上する。)
【0073】
得られたγ-CsPbI量子ドットのバンドギャップを制御するために、原料には被覆剤が添加される。被覆剤は、アルカリ金属のハロゲン化物(LiX、NaX、KX、RbX,ただし、X=Cl、Br、I)、アルカリ金属の炭酸塩(LiCO、NaCO、KCO、RbCO)及びLi金属有機物、Na金属有機物、K金属有機物、Rb金属有機物を含む。被覆剤におけるカチオンの半径が小さく、PbIと反応して生成した生成物の寛容性因子が0.8未満であり、ペロブスカイト構造の材料を生成できないので、被覆剤カチオンは、CsPbI量子ドットにドーピングしてドープ量子ドットを生成することができず、CsPbI量子ドットの表面を被覆して不活性化することしかできず、CsPbI量子ドットの量子閉じ込め効果及び誘電閉じ込め効果が大きくなり、最後にCsPbI量子ドットのバンドギャップが大きくなり、発光ピークが青色偏移する。また、CsPbI量子ドットの表面が無機材料で被覆され、CsPbI量子ドットの安定性をさらに増強させ、該重合体複合薄膜の実際応用を促進することができる。
【0074】
(3)前駆体溶液の形成
本発明の実施例によれば、該工程において、溶液(1)と溶液(2)とを混合し、前駆体溶液を得る。具体的に、溶液(1)と溶液(2)との質量比が1:(0.02~5)であり、2h機械的撹拌し、前駆体溶液を得る。
【0075】
(4)移転
該工程において、均一に混合した前駆体溶液を適切な方法でテンプレートに移転し、異なる形状の複合材料の形成が容易となる。なかでも、テンプレートは、特定の形状を有する金型又は基材であってもよい。テンプレートの詳細について、当業者は、実際の応用に応じて複合発光材料の形状への具体的な要求を設計することができる。具体的に、前駆体溶液を基材又は金型に移転する方法は、スピンコート法、ディップコーティング法、エレクトロスピニング法、溶液沈降法、スプレー法、ナイフコーティング法又はキャスティング法を含んでもよい。これにより、薄膜等の形状を有する複合発光材料を簡単に得ることができる。
【0076】
(5)乾燥
該工程において、前駆体溶液を有する前記テンプレートを乾燥させ、前記複合発光材料を得ることが容易となる。具体的に、前駆体溶液が付着したテンプレートを真空乾燥機に放置し、一定の条件で前駆体溶液における有機溶媒を除去することにより、該有機溶媒系の揮発条件を制御して前記マトリックスの結晶、添加剤の分布、γ-CsPbI量子ドット粒子の核生成及び成長を制御することにより、複合材料の性能を向上させることができる。例えば、本発明の具体的な実施例によれば、真空乾燥機中の気圧が0.01~0.lMPa間であってもよく、温度が80~180℃間であってもよく、0.1~48h乾燥処理し、得られたγ-CsPbI量子ドット粒子に基づく複合材料の厚さを0.001~5mmにすることができる。異なる乾燥温度で、異なる粒子径分布のγ-CsPbI量子ドットを得ることができ、これにより、得られたγ-CsPbI量子ドット/重合体複合発光薄膜の発光波長を、600~680nmをカバーするよう制御することができる。
【0077】
本発明のもう1つの態様によれば、半導体デバイスを提供する。
【0078】
前記半導体デバイスは、上記した複合発光材料、及び上記した複合発光材料の製造方法により製造される複合発光材料のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0079】
任意選択として、前記半導体デバイスは、エレクトロルミネッセンスデバイス、フォトルミネッセンスデバイス、太陽電池、表示デバイス、センサデバイス、圧電デバイス、非線形光学デバイスを含む。
【0080】
本発明のもう1つの態様によれば、フレキシブルデバイスを提供する。
【0081】
前記フレキシブルデバイスは、上記した複合発光材料、及び上記した複合発光材料の製造方法により製造される複合発光材料のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0082】
任意選択として、前記フレキシブルデバイスは、基材、金属陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び金属陰極を含む。
【0083】
前記基材は、上記した複合発光材料、及び上記した複合発光材料の製造方法により製造される複合発光材料のうちの少なくとも1つを含む。
【0084】
本発明のもう1つの態様によれば、二色複合発光材料を提供する。
【0085】
前記二色複合発光材料は、積層した緑色発光薄膜と赤色発光薄膜とを含み、
前記赤色発光薄膜は、上記した複合発光材料、及び上記した複合発光材料の製造方法により製造される複合発光材料のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0086】
任意選択として、前記赤色発光薄膜がRbPbI被覆γ-CsPbI量子ドット/ポリメタクリル酸メチル複合薄膜である。
【0087】
任意選択として、前記緑色発光薄膜がCHNHPbBr量子ドット/ポリフッ化ビニリデン複合薄膜である。
【0088】
本発明のもう1つの態様によれば、LCDディスプレイを提供する。
前記LCDディスプレイは、上記した二色複合発光材料のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【0089】
本発明のもう1つの態様によれば、フォトルミネッセンスデバイスを提供する。
前記フォトルミネッセンスデバイスは、青色チップ駆動モジュール、青色チップ放熱モジュール及び二色複合発光材料を含み、
前記二色複合発光材料が、上記した二色複合発光材料から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0090】
本発明は、下記有益な効果を奏することができる。
1)本発明が提供する被覆/不活性化後の量子ドットバンド構造及び誘電率が変化し、そのバンドギャップを増大させ、発光ピークが青色偏移する。製造パラメータを最適化することにより、発光ピークが600~680nmの間にあり、半値幅が32nm未満、蛍光量子収率が80%を超えて安定性が高い複合発光薄膜を得ることができ、従来の赤色光全ヨウ素化物CsPbIペロブスカイト量子ドットがバックライト表示等の光電子デバイスに適用しにくい問題を解決した。
2)本発明が提供するCsPbI量子ドットの表面が無機材料で被覆され、CsPbI量子ドットの安定性をさらに増強させ、該重合体複合薄膜の実際の応用を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
図1図1は実施例1で製造したγ-CsPbI/RbPbIコア-シェル構造の量子ドット/重合体複合発光薄膜の蛍光発光スペクトルである。
図2図2は実施例1で製造したγ-CsPbI/RbPbIコア-シェル構造の量子ドット/重合体複合発光薄膜のXRDスペクトル図である。
図3図3は実施例2で製造したγ-CsPbI/RbPbIコア-シェル構造の量子ドット/重合体複合発光薄膜の蛍光発光スペクトルである。
図4図4は実施例2で製造したγ-CsPbI/RbPbIコア-シェル構造の量子ドット/重合体複合発光薄膜のXRDスペクトル図である。
図5図5は実施例3で製造したγ-CsPbI/RbPbIコア-シェル構造の量子ドット/重合体複合発光薄膜の蛍光発光スペクトルである。
図6図6は実施例3で製造したγ-CsPbI/RbPbIコア-シェル構造の量子ドット/重合体複合発光薄膜のXRDスペクトル図である。
図7図7は本発明の実施例によるフレキシブル性エレクトロルミネッセンスデバイスの構造概略図である。
図8図8は本発明の実施例による二色発光複合薄膜の構造概略図である。
図9図9は本発明の実施例によるLCD表示デバイスバックライトモジュールの構造概略図である。
図10図10は本発明の実施例によるフォトルミネッセンスデバイスの構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
以下、実施例を参照しながら本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限られない。
特に説明がない限り、本発明の実施例における原料はいずれも市販から購入される。
本発明の実施例において、解析方法は以下の通りである。
PANalytical X’Pert3粉末回折装置を用いてXRD解析を行う。
Varian Cary 5分光光度計を用いて透過光スペクトル解析を行う。
FLSP920蛍光分光計を用いて蛍光発光スペクトル解析を行う。
【0093】
実施例1
(1)重合体を有機溶媒に溶解し、重合体:有機溶媒質量比=1:3に制御し、添加剤ZnClを添加し、重合体とZnClとの質量比を1:0.01にし、6h以上機械的撹拌し、重合体を有機溶媒に完全に溶解させて清澄透明な溶液を得、この溶液を溶液(1)とした。前記重合体がポリメタクリル酸メチル(PMMA)であり、前記有機溶媒がN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)である。
(2)PbI粉末、CsI粉末、RbI粉末を混合し、モル比をPbI:(CsI+RbI)=1:1、CsI:RbI=1:1に制御した。有機溶媒を添加し、質量比を有機溶媒:(PbI+CsI+RbI)=1:0.045に制御した。さらに有機配位子である臭化オクチルアミンを添加し、(PbI+CsI+RbI)と有機配位子との質量比を1:0.15に制御した。混合した後に6h機械的撹拌し、清澄透明な溶液を得、この溶液を溶液(2)とした。該工程において、前記有機溶媒がN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)である。
(3)工程(1)に記載の溶液(1)と工程(2)に記載の溶液(2)とを混合し、質量比を溶液(1):溶液(2)=1:0.5に制御し、24h機械的撹拌して、均一に混合した前駆体溶液を得た。
(4)上記工程(3)に記載の前駆体溶液をスピンコート法で透明ガラスシートに移転し、前駆体溶液を均一に分布させた。スピンコート装置の回転速度を1500回転数/分に制御して30秒スピンコートすることにより、前駆体溶液の透明ガラスシート上における厚さを約0.05mmにした。次いで、前駆体溶液を塗布した透明ガラスシートを真空乾燥機中に放置し、真空乾燥機の気圧を0.1MPa、温度を50℃にして、10min放置し、有機溶媒を除去した。さらに、溶媒を除去したガラスシートを真空乾燥機から取り出し、130℃のホットプレート上に30min放置し、γ-CsPbI量子ドットがまずPMMAマトリックス中でインサイチュで生成し、CsIが全て消耗した後、RbIがさらにPbIと反応してRbPbIを生成してγ-CsPbIを被覆し、γ-CsPbI/RbPbIコア-シェル構造の量子ドット/PMMA複合薄膜を得た。試料1とマークした。図1は、試料1の蛍光発光スペクトルであり、発光ピークが621nm、半値幅が32nm、蛍光量子収率が87%である。図2は試料1のXRD図であり、13.3°に現れたピークがRbPbIの回折ピークであり、その他のピークがγ-CsPbIの回折ピークである。
【0094】
実施例2
その他の工程が実施例1と同様であり、ただし、以下の点で異なる。溶液(1)中に、重合体と有機溶媒との質量比を1:30に制御し、溶液(2)中に、有機溶媒:(PbI+CsI+RbI)の質量比=1:1、CsIとRbIとのモル比を1:0.2に制御した。機械的撹拌により溶液を均一に混合し、真空乾燥機で溶媒を除去した後に110℃のホットプレート上に30min放置し、γ-CsPbI/RbPbIコア-シェル構造の量子ドット/PMMA複合薄膜を得、試料2とマークした。図3は、試料2の蛍光発光スペクトル、発光ピークが647nm、半値幅が31nm、蛍光量子収率が92%である。図4は、試料2のXRD図であり、13.3°に現れたピークがRbPbIの回折ピークであり、その他のピークがγ-CsPbIの回折ピークである。
【0095】
実施例3
その他の工程が実施例1と同様であり、ただし、以下の点で異なる。重合体と有機溶媒との質量比を1:10に制御し、添加剤CdIを添加し、重合体と添加剤との質量比を1:0.05に制御し、溶液(2)中に、有機溶媒:(PbI+CsI+RbI)の質量比=1:3、CsIとRbIとのモル比が1:0.01となるように制御した。機械的撹拌により溶液を均一に混合し、真空乾燥機で溶媒を除去した後に150℃のホットプレート上に30min放置し、γ-CsPbI/RbPbIコア-シェル構造の量子ドット/PMMA複合薄膜を得、試料3とマークした。図5は、試料3の蛍光発光スペクトルであり、発光ピークが678nm、半値幅が34nm、蛍光量子収率が78%である。図6は試料3のXRD図であり、13.3°に現れたピークがRbPbIの回折ピークであり、その他のピークがγ-CsPbIの回折ピークである。
【0096】
実施例4
その他の工程が実施例1と同様であり、ただし、以下の点で異なる。溶液(1)中に、重合体がポリアクリロニトリル(PAN)であり、有機溶媒がジメチルスルホキシド(DMSO)であり、重合体:有機溶媒質量比が1:6であり、添加剤ZnIを添加し、質量比を重合体:ZnI=1:0.5に制御し、6h以上機械的撹拌して清澄透明な溶液を得た。溶液(2)中に、有機溶媒がジメチルスルホキシド(DMSO)であり、PbI:(CsI+LiCO)のモル比を1:0.5、CsIとLiCOとのモル比を1:0.005に制御し、有機溶媒:(PbI+CsI+LiCO)の質量比を1:0.001に制御した。前駆体溶液中に、溶液(1):溶液(2)の質量比を1:1に制御した。前駆体溶液をディップコーティング法により透明ガラスシート上に移転し、前駆体溶液の透明ガラスシート上に厚さが0.2mmとなるように制御し、真空乾燥機における気圧を0.01MPa、温度を30℃に制御し、1h真空乾燥した。さらに、溶媒を除去したガラスシートを真空乾燥機から取り出し、130℃のホットプレート上に20min放置し、γ-CsPbI/LiPbIコア-シェル構造の量子ドット/PAN複合薄膜を得た。
【0097】
実施例5
その他の工程が実施例4と同様であり、ただし、以下の点で異なる。有機溶媒:(PbI+CsI+LiCO)の質量比を1:0.1、CsIとLiCOとのモル比を1:0.1に制御した。機械的撹拌により溶液を均一に混合し、真空乾燥機で溶媒を除去した後に150℃のホットプレート上に10min放置し、γ-CsPbI/LiPbIコア-シェル構造の量子ドット/PAN複合薄膜を得た。
【0098】
実施例6
その他の工程が実施例1と同様であり、ただし、以下の点で異なる。溶液(1)中に、重合体がポリ塩化ビニリデン(PVDF)であり、有機溶媒がトリメチルホスフェート(TMP)であり、重合体:有機溶媒の質量比を1:15に制御した。溶液(2)中に、有機溶媒がトリメチルホスフェート(TMP)であり、有機溶媒と(PbI+CsI+NaBr)との質量比を1:0.2、PbIと(CsI+NaBr)とのモル比を1:0.1、CsIとNaBrとのモル比を1:0.001に制御した。溶液(1)と溶液(2)とを質量比1:0.02で均一に混合して撹拌した。前駆体溶液を溶液沈降法によりガラスシャーレ中に移転し、前駆体溶液のガラスシャーレにおける厚さを5mm、真空乾燥機における気圧を0.05MPa、温度を110℃に制御し、10h乾燥してγ-CsPbI/NaPbBr0.12.9コア-シェル構造の量子ドット/PVDF複合薄膜を得た。
【0099】
実施例7
その他の工程が実施例1と同様であり、ただし、以下の点で異なる。溶液(1)中に、重合体ポリメタクリル酸メチル(PMMA)とN,N-ジメチルホルムアミドとの質量比を1:10にし、さらに添加剤CdBrを添加して、重合体マトリックスと添加剤との質量比を1:0.01に制御し、6h以上機械的撹拌混合し、清澄透明な溶液を得た。溶液(2)中に、有機溶媒がN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)であり、有機溶媒と(PbI+CsI+RbBr)との質量比を1:0.9、PbIとCsIとのモル比を1:3、CsIとRbBrとのモル比を1:5に制御した。前駆体溶液中に、溶液(1):溶液(2)の質量比を1:3に制御し、18h機械的撹拌して、清澄透明な前駆体溶液を得た。前駆体溶液を沈降してガラスシャーレ中に移転し、前駆体溶液のガラスシャーレにおける厚さを3mm、真空乾燥機における気圧を0.05MPa、温度を150℃に制御し、8h乾燥して、γ-CsPbI/RbPbBrコア-シェル構造の量子ドット/PVDF複合薄膜を得た。
【0100】
実施例8
その他の工程が実施例7と同様であり、ただし、以下の点で異なる。溶液(1)中に、重合体と有機溶媒との質量比を1:4に制御し、添加剤CdIを添加し、重合体と添加剤CdIとの質量比を1:0.01に制御した。6h以上機械的撹拌し、清澄透明な溶液を得た。溶液(2)中に、PbIと(CsI+RbCl)とのモル比を1:0.5、CsIとRbClとのモル比を1:10、溶媒と(PbI+CsI+RbCl)との質量比を1:0.01に制御し、6h以上機械的撹拌し、清澄透明な溶液を得た。前駆体溶液中に、溶液(1)と溶液(2)との質量比を1:0.1に制御し、12h機械的撹拌した。前駆体溶液をエレクトロスピニング法により透明なPETシート上に移転し、前駆体溶液の透明PETシート上における厚さを2mm、真空乾燥機の気圧を0.07MPa、温度を40℃に制御し、15min乾燥して有機溶媒を除去した。溶媒を除去したガラスシートを真空乾燥機から取り出し、80℃のホットプレート上に1h放置し、CsPbI量子ドットをPMMAマトリックスにおいてインサイチュで生成し、γ-CsPbI/RbPbClコア-シェル構造の量子ドット/PMMA複合薄膜を得た。
【0101】
実施例9
その他の工程が実施例8と同様であり、ただし、以下の点で異なる。溶液(1)中に、重合体をポリスルフォン(PSF)にし、添加剤をZnBrにし、重合体と添加剤との質量比を1:0.003にした。溶液(2)中に、有機溶媒と(PbI+CsI+RbCl)との質量比を1:0.03にした。前駆体溶液を移転する時に、前駆体溶液の透明PETシート上における厚さを0.5mmに制御した。透明PETシート上に付着したγ-CsPbI/RbPbIコア-シェル構造の量子ドット/PSF複合薄膜を得た。
【0102】
実施例10
その他の工程が実施例1と同様であり、ただし、以下の点で異なる。溶媒(1)中に、重合体をポリ塩化ビニリデン(PVDF)にし、有機溶媒をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)にした。重合体:有機溶媒の質量比を1:15にした。溶媒(2)中に、有機溶媒をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)にし、有機溶媒と(PbI+CsI+N-フェニルグリシンカリウム塩)との質量比を1:0.1、PbI:(CsI+N-フェニルグリシンカリウム塩)のモル比を1:0.6、CsIとN-フェニルグリシンカリウム塩とのモル比を1:2にした。前駆体溶液中に、溶液(1)と溶液(2)との質量比を1:0.1に制御した。前駆体溶液をスプレー法により透明ポリカーボネート(PC)シート上に移転し、前駆体溶液の透明ポリカーボネート(PC)シート上の厚さを1mm、真空乾燥機の気圧を0.02MPa、温度を20℃に制御し、30min乾燥して溶媒を除去した。溶媒を除去したガラスシートを真空乾燥機から取り出し、100℃のホットプレート上に1h放置し、透明ポリカーボネート(PC)シート上に付着したγ-CsPbI/KPbIコア-シェル構造の量子ドット/PVDF複合薄膜を得た。
【0103】
実施例11
その他の工程が実施例1と同様であり、ただし、以下の点で異なる。溶液(1)中に、重合体と有機溶媒との質量比を1:7にし、前記重合体は、質量比が1:1のポリメタクリル酸メチル(PMMA)とポリアクリロニトリル(PAN)との混合物である。さらに添加剤SnIを添加し、マトリックスと添加剤との質量比を1:0.4にし、6h以上機械的撹拌し、清澄透明な溶液を得た。溶液(2)中に、溶媒と(PbI+CsI)との質量比を1:0.8にし、さらにヨウ化オクチルアミンを配位子として添加し、(PbI+CsI+RbI)とヨウ化オクチルアミンとの質量比を1:0.1にし、6h以上機械的撹拌し、清澄透明な溶液を得た。溶液(1)と溶液(2)との質量比を1:2に制御し、18h機械的撹拌し、均一に混合した前駆体溶液を得た。前駆体溶液をスプレー法により透明ポリカーボネート(PC)シート上に移転し、均一な分布を実現し、前駆体溶液の透明ポリカーボネート(PC)シート上の厚さを0.004mmに制御し、その後、前駆体溶液を塗布した透明ポリカーボネート(PC)シートを真空乾燥機中に放置し、真空乾燥機中の気圧を0.1MPa、温度を50℃にし、20min乾燥して有機溶媒を除去し、透明ポリカーボネート(PC)シート上に付着したγ-CsPbI/RbPbIコア-シェル構造の量子ドット/PMMA/PAN複合薄膜を得た。
【0104】
実施例12
その他の工程が実施例1と同様であり、ただし、以下の点で異なる。溶液(1)中に、使用される添加剤がSnBrであり、重合体マトリックスとSnBrとの質量比を1:0.01にした。溶液(2)中に、PbI:CsIのモル比を1:0.4に制御し、表面配位子がペンタン酸であり、(PbI+CsI+RbI)とペンタン酸との質量比を1:0.001にした。前駆体溶液中に、溶液(1)と溶液(2)との質量比を1:2に制御し、24h以上機械的撹拌した。前駆体溶液をキャスティング法により透明シリカゲルシート上に移転し、前駆体溶液の透明シリカゲルシート上における厚さを1mmに制御し、真空乾燥機中の気圧を0.03MPa、温度を100℃にし、48h乾燥し、透明シリカゲルシート上に付着したγ-CsPbI/RbPbIコア-シェル構造の量子ドット/PMMA複合薄膜を得た。
【0105】
実施例13
その他の工程が実施例12と同様であり、ただし、以下の点で異なる。溶液(1)中に、重合体がポリ塩化ビニリデン(PVDF)であり、有機溶媒とポリ塩化ビニリデン(PVDF)との質量比を1:7にし、添加剤をZnIにし、マトリックスとZnIとの質量比を1:0.015にした。溶液(2)中に、PbIと(CsI+RbBr)とのモル比を1:1.1、CsIとRbBrとのモル比を1:10にし、添加する表面配位子を3,5-ジメチルアニリンにし、(PbI+CsI+RbBr)と3,5-ジメチルアニリンとの質量比を1:0.1にした。溶液(1)と溶液(2)との質量比を1:1に制御した。透明シリカゲルシート上に付着したγ-CsPbI/RbPbBrコア-シェル構造の量子ドット/PVDF複合薄膜を得た。
【0106】
実施例14
その他の工程が実施例1と同様であり、ただし、以下の点で異なる。溶液(1)中に、添加剤SnIを添加し、マトリックスPMMAとSnIとの質量比を1:0.4にした。溶液(2)中に、PbIと(CsI+LiCl)とのモル比を1:0.9、CsIとLiClとのモル比を1:0.005にし、さらに表面配位子であるヨウ化ドデシルアミンを添加し、(PbI+CsI+LiCl)とヨウ化ドデシルアミンとの質量比を1:1にした。塗布した後に放置するホットプレートの温度を120℃、加熱時間を40minにし、γ-CsPbI/LiPbClコア-シェル構造の量子ドット/PMMA複合薄膜を得た。
【0107】
実施例15
その他の工程が実施例1と同様であり、ただし、以下の点で異なる。溶液(1)中に、重合体マトリックスと有機溶媒との質量比を1:10にし、重合体がポリカーボネート(PC)であり、有機溶媒がN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)である。溶媒(2)中に添加される表面配位子が酢酸及びドデシルアミンであり、酢酸とドデシルアミンとの質量比を1:3、(PbI+CsI+RbI)と表面配位子との質量比を1:0.02、CsIとRbIとのモル比を1:8にした。前駆体溶液中に、溶液(1)と溶液(2)との質量比を1:0.8にした。ホットプレートの加熱温度を120℃に制御し、30min乾燥させ、γ-CsPbI-RbIヘテロ接合構造の量子ドット/PC複合薄膜を得た。
【0108】
実施例16
その他の工程が実施例1と同様であり、ただし、以下の点で異なる。溶液(1)中の重合体マトリックスがポリスチレン(PS)であり、マトリックスと有機溶媒との質量比を1:20にし、有機溶媒がN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)である。溶液(2)中に添加される表面配位子が臭化オクチルアミンであり、(PbI+CsI+KBr)と表面配位子である臭化オクチルアミンとの質量比を1:0.6にし、CsIとKBrとのモル比を1:10にした。前駆体溶液中に、溶液(1)と溶液(2)との質量比を1:0.6にした。前駆体溶液をスピンコート法により透明石英ガラスシート上に移転し、前駆体溶液の透明石英ガラスシート上における厚さを1mm、真空乾燥機中の気圧を0.1MPa、温度を130℃に制御し、72h乾燥させ、γ-CsPbI-KPbBrヘテロ接合構造の量子ドット/PS複合材料を得た。
【0109】
実施例17
その他の工程が実施例1と同様であり、ただし、以下の点で異なる。溶液(1)中に、重合体と有機溶媒との質量比を1:10に制御し、重合体がポリ塩化ビニリデン(PVDF)、有機溶媒がジメチルアセトアミド(DMAc)である。溶液(2)中に、PbI:CsIのモル比を1:2に制御し、有機溶媒をジメチルアセトアミド(DMAc)にし、有機溶媒と(PbI+CsI+RbI)との質量比を1:1.5にし、有機配位子をペンタン酸及び3-ビニルエチルアミンにし、ペンタン酸と3-ビニルエチルアミンとの質量比を1:5にし、(PbI+CsI)と有機配位子との質量比を1:0.01にした。前駆体溶液をスピンコート法によりITOガラス上に移転し、前駆体溶液のITOガラス上における厚さを0.1mm、真空乾燥機中の気圧を0.02MPa、温度を40℃に制御し、15min乾燥させ、有機溶媒を除去した。有機溶媒を除去したITOガラスシートを130℃のホットプレート上に放置して45minべークし、棒状のγ-CsPbI/RbPbIコア-シェル構造の量子ドット/PVDF複合材料を得た。
【0110】
実施例18
本発明における半導体デバイスがフレキシブルデバイスであってもよく、構造概略図が図7に示すとおりであり、上記複合発光材料が薄膜であって、そのままエレクトロルミネッセンスデバイスにおけるフレキシブル性透明基材の形成に用いられてもよい。該フレキシブルデバイス中にはさらにエレクトロルミネッセンス材料で構成される発光層を有してもよく、γ-CsPbI量子ドット粒子のフォトルミネッセンス性質とエレクトロルミネッセンスの発光とを組み合わせることにより、該フレキシブルデバイスの発光性能をさらに向上させることができる。当業者であれば、上記フレキシブルデバイス中にはそのデバイス性能を実現するための構造、例えば図9に示す金属陰極、金属陽極、電子輸送層、正孔輸送層等をさらに有してもよいと理解され得、ここではその説明を省略する。
【0111】
実施例19
実施例5で製造したγ-CsPbI/LiPbIコア-シェル構造の量子ドット/PAN複合薄膜を基礎にし、高色域の白色光LED発光材料を製造し、具体的な工程は以下の通りである。
(1)CHNHPbBr量子ドット/PVDF緑色発光複合薄膜材料の製造
第1溶液中に、重合体:有機溶媒の質量比=1:5であり、重合体がポリフッ化ビニリデン(PVDF)であり、有機溶媒がN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)である。12h機械的撹拌して、清澄透明な溶液を得た。第2溶液中にPbBrとCHNHBrとのモル比を1:1、有機溶媒:PbBrの質量比を1:0.01にし、有機溶媒がN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)である。12h機械的撹拌し、清澄透明な溶液を得た。第1溶液と第2溶液との質量比を1:0.2に制御し、24h機械的撹拌し、均一に混合した前駆体溶液を得た。
(2)上記工程(1)に記載の前駆体溶液をスピンコート方法により透明なPET薄膜上に移転し、前駆体溶液の透明PET薄膜上における厚さを0.5mmに制御し、その後、前駆体溶液が付着したPET透明薄膜を真空乾燥機中に放置し、真空乾燥機の気圧を0.1MPa、温度を30℃にし、48h乾燥させ、CHNHPbBr量子ドット/PVDF緑色発光複合薄膜を得た。
(3)製造したCHNHPbBr量子ドット/PVDF緑色発光複合薄膜と、実施例5で製造したγ-CsPbI/LiPbIコア-シェル構造の量子ドット/PAN複合薄膜とを組み合わせ、白色光LEDデバイス構造中に適用し、高色域の白色光LEDデバイスを得、図8は前記二色発光薄膜の構造概略図である。
本実施例で使用するCHNHPbBr量子ドット/PVDF緑色発光複合薄膜材料は、公開番号WO2016180364A1であって、発明の名称が「ペロブスカイト/ポリマー複合発光材料、製造方法及び用途」である発明に公開された方法により合成して得てもよいし、北京理工大学により提供されてもよい。
【0112】
実施例20
実施例5で製造したγ-CsPbI/LiPbIコア-シェル構造の量子ドット/PAN複合薄膜を基礎にし、高色域の白色光LED発光材料を製造し、具体的な工程は以下の通りである。
製造したγ-CsPbI/LiPbIコア-シェル構造の量子ドット/PAN複合薄膜側に有機接着剤を塗布し、実施例19の工程(2)で製造したCHNHPbBr量子ドット/PVDF複合薄膜のCHNHPbBr量子ドット薄膜側と貼り合わせ、50℃で1h乾燥させ、接着剤を硬化させ、赤色光及び緑色光二色発光性複合材料を得た。
【0113】
実施例21
その他の工程が実施例19と同様であり、ただし、以下の点で異なる。CHNHPbBr量子ドット/PVDF複合薄膜のPETマトリックス側が接着剤と貼り付け、乾燥後に赤色光及び緑色光二色発光性複合材料を得た。
【0114】
実施例22
実施例5で製造したγ-CsPbI/LiPbIコア-シェル構造の量子ドット/PAN複合薄膜複合材料を基礎にし、高色域の白色光LED発光材料を製造し、具体的な工程は以下の通りである。
実施例19の工程(1)で製造した前駆体溶液をスピンコート方法により、製造したγ-CsPbI/LiPbIコア-シェル構造の量子ドット/PAN複合薄膜の量子ドット膜側に塗布し、その後、CHNHPbBr量子ドット/PVDF複合薄膜前駆体溶液が付着したCsPbI量子ドット/PMMA複合材料薄膜を真空乾燥機中に放置し、真空乾燥機の気圧を0.1MPa、温度を30℃にし、48h乾燥させ、赤色光及び緑色光二色発光性複合材料を得た。
【0115】
実施例23
その他の工程が実施例22と同様であり、ただし、以下の点で異なる。γ-CsPbI/LiPbIコア-シェル構造の量子ドット/PAN複合量子ドット膜側にポリカーボネート(PC)有機溶液を塗布し、前記溶液の有機溶媒がN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)であり、有機溶媒とポリカーボネート(PC)との質量比を1:0.8にした。ポリカーボネート(PC)有機溶液を塗布したγ-CsPbI/LiPbIコア-シェル構造の量子ドット/PAN複合量子ドット膜を真空乾燥機中に放置し、真空乾燥機の気圧を0.1MPa、温度を30℃にし、48h乾燥させ、ポリカーボネート(PC)薄膜で遮蔽されるCsPbI量子ドット/PMMA複合材料量子ドット膜を得た。さらに、実施例19の工程(1)で製造した前駆体溶液をスピンコート方法により、製造したγ-CsPbI/LiPbIコア-シェル構造の量子ドット/PAN複合量子ドット膜のポリカーボネート(PC)遮蔽膜側に塗布し、その後、CHNHPbBr量子ドット/PVDF複合薄膜前駆体溶液が付着したCsPbI量子ドット/PMMA複合材料薄膜を真空乾燥機中に放置し、真空乾燥機の気圧を0.1MPa、温度を30℃にし、48h乾燥させ、赤色光及び緑色光二色発光性複合材料を得た。
【0116】
実施例24
上記複合発光材料は、さらにLCD表示デバイスに適用可能である。具体的に、図9及び10を参照する。まず、γ-CsPbI量子ドット/重合体複合赤色光薄膜とペロブスカイト量子ドット/重合体複合緑色光薄膜とを組み合わせて、二色(赤色光及び緑色光)発光薄膜を製造した。さらに、該二色発光薄膜をLCDバックライトモジュールの多層膜構造の間に挿入してもよいし、上記複合発光材料をLCDバックライトモジュールにおける導光板、拡散膜又はプリズム膜の上表面又は下表面上に直接に塗布してもよく、これにより、青色光LEDを光源とした高色域LCDバックライトモジュールを実現することができる。
【0117】
実施例25
実施例5で製造したγ-CsPbI/LiPbIコア-シェル構造の量子ドット/PAN複合量子ドット膜を基礎にし、液晶ディスプレイ(LCD)用の高色域のバックライト源を製造し、42インチのLCDを例として、具体的な工程は以下の通りである。
(1)42インチのCsPbI量子ドット/PMMA複合発光薄膜の製造
実施例5の実験方案に従い所望の質量の前駆体溶液を調製し、ナイフコーティング装置で上記前駆体溶液を、対応するサイズのガラス基材上に均一に移転し、前駆体溶液の厚さを0.2mmに制御し、その後、前駆体溶液を含有するガラス板を真空乾燥機中に放置し、0.05MPa、150℃で6h乾燥させ、取り出して使用に備える。次いで、膜移転技術を用いて、製造したCsPbI量子ドット/PMMA複合発光薄膜をLCDバックライトモジュールにおける導光板、拡散膜又はプリズム膜上に移転し、プロセスを簡略化するために、上記前駆体溶液をナイフコーティング装置によりLCDバックライトモジュールの導光板、拡散膜又はプリズム膜上に直接に移転し、さらに同様な条件で乾燥させ、一体化した発光層を形成することもできる。
(2)42インチのCsPbI量子ドット/PMMA発光層の製造
実施例5の実験方案に従い前駆体溶液を調製し、ナイフコーティング装置を用いて上記前駆体溶液を基材上に均一に移転し、ここで、使用する基材はガラス板又はLCDバックライトモジュールの導光板、拡散膜、プリズム膜を含み、前駆体溶液の厚さを0.1mmに制御し、真空乾燥機中に放置し、0.05MPa、150℃で6h乾燥させ、取り出して高発光効率のCsPbI量子ドット/PMMA赤色発光複合薄膜を得た。
(3)LCDバックライトモジュールの組み立て
工程(1)及び(2)で得られた発光膜をLCDバックライトモジュール中に挿入し、LCDバックライトモジュールの光源を青色光光源で置き換えてもよい。青色光光源は、導光板を透過した後にさらに赤色発光層及び緑色発光層を通過し、最後に赤緑青の三原色複合の白色光を得た。
【0118】
実施例26
本実施例は、ペロブスカイト/重合体複合発光材料を基礎にし、圧電デバイスを製造し、具体的な工程は以下の通りである。
(1)実施例8の実験方案に従い前駆体溶液を調製し、その後、上記前駆体溶液を基材上に均一に塗布し、ここで使用する基材は、ITO導電ガラス又は表面金/銀メッキのPET、PCフレキシブル性重合体基材を含む。前駆体溶液の厚さを0.5mmに制御し、真空乾燥機中に放置し、0.05MPa、150℃で6h乾燥させ、取り出して高発光効率のγ-CsPbI/RbPbClコア-シェル構造の量子ドット/PMMA赤色発光複合薄膜を得た。
(2)製造したγ-CsPbI/RbPbClコア-シェル構造の量子ドット/PMMA赤色発光複合薄膜表面上に金電極又は銀電極をメッキし、その後、電極上方に保護層を1層塗布し、簡易な圧電デバイスプロトタイプを得、導線により複合薄膜に基づく圧電デバイスの両極をオシロスコープに接続する。
(3)製造した複合薄膜に基づく圧電デバイスに周期的作用力を印加し、オシロスコープにおいて周期的パルス圧電信号を観察することができる。
【0119】
実施例27
実施例5で製造したγ-CsPbI/LiPbIコア-シェル構造の量子ドット/PAN複合薄膜を基礎にし、太陽エネルギー集光装置を製造し、400平方センチメートルの集光装置を例として、具体的な工程は以下の通りである。
(1)400平方センチメートルのγ-CsPbI/LiPbIコア-シェル構造の量子ドット/PAN複合薄膜の製造
実施例5の実験方案に従い所望の質量の前駆体溶液を調製し、ナイフコーティング装置を用いて上記前駆体溶液を、対応するサイズのガラス基材上に均一に移転し、ガラス基材の厚さを2mmにし、長、幅をいずれも20cmにした。前駆体溶液の厚さを0.2mmに制御し、その後、前駆体溶液を含有するガラス板を真空乾燥機中に放置し、0.05MPa、150℃で6h乾燥させ、取り出して使用に備える。
(2)集光装置の製造
工程(1)においてγ-CsPbI/LiPbIコア-シェル構造の量子ドット/PAN複合薄膜を塗布したガラス板を蒸着装置中に放置し、ガラス板の3つの側面にアルミニウムを蒸着し、蒸着したアルミニウム膜の厚さが2μmである。アルミニウムを蒸着したガラス板を取り出し、ストリップ状ポリシリコン太陽電池板を、ガラス板のアルミニウムを蒸着していない側面に組み立てた。太陽電池板の回路を導通し、太陽エネルギー集光装置を製造した。
【0120】
以上は、本発明の幾つかの実施例に過ぎず、本発明を何らの形で制限するものではなく、本発明は、好適な実施例で上記のように説明しているが、本発明を制限するためではなく、当業者であれば、本発明の技術的方案の範囲を逸脱しない限り、上記説明した技術内容を用いて行った幾つかの変更又は修飾はいずれも等価実施例に同等し、いずれも技術的方案の範囲内に属する。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2021-05-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペロブスカイトナノ材料とマトリックスとを含み、
前記ペロブスカイトナノ材料はγ-CsPbIと添加元素Mとを含み、
前記添加元素Mは、Li、Na、K、Rbから選択される少なくとも1種であることを特徴とする複合発光材料。
【請求項2】
前記ペロブスカイトナノ材料はコア-シェル構造であり、
コアがγ-CsPbIであり、
表面が添加元素Mを含むことを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項3】
前記ペロブスカイトナノ材料はコア-シェル構造であり、
コアがγ-CsPbIであり、
表面が、MPbX、MPbXのうちの少なくとも1種を含み、その中、Mが、Li、Na、K、Rbから選択される少なくとも1種であり、Xが、ハロゲン元素から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項4】
前記ペロブスカイトナノ材料はコア-シェル構造であり、
コアがγ-CsPbIであり、
表面がRbPbIであることを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項5】
前記複合発光材料の発光ピークが600~680nmであることを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項6】
前記ペロブスカイトナノ材料中に、γ-CsPbIと添加元素Mとのモル比が1:0.01~10であることを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項7】
前記ペロブスカイトナノ材料中に、γ-CsPbIと添加元素Mとのモル比が1:0.5~2であることを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項8】
前記マトリックスが重合体であり、前記重合体が、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、酢酸セルロース、シアノセルロース、ポリスルフォン、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項に記載の複合発光材料。
【請求項9】
前記ペロブスカイトナノ材料と前記マトリックスとの質量比が1:1~100であることを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項10】
前記複合発光材料は添加剤をさらに含み、前記添加剤が前記マトリックス中に分散されており、
前記添加剤が、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、臭化第1スズ、ヨウ化第1スズ、臭化カドミウム、ヨウ化カドミウムから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項11】
前記マトリックスと添加剤との質量比が1:0.001~0.5であることを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項12】
前記ペロブスカイトナノ材料は、表面配位子をさらに含み、前記表面配位子がγ-CsPbIの表面に形成され、
前記表面配位子は、有機酸、有機酸ハロゲン化物、C~C24有機アミン、C~C24有機アミンのハロゲン化物のうちの少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項13】
γ-CsPbIと前記表面配位子との質量比が1:0.001~1であることを特徴とする請求項1に記載の複合発光材料。
【請求項14】
(1)マトリックス、ペロブスカイト前駆体、及び添加元素Mを含有する前駆体溶液を得る工程と、
(2)前記前駆体溶液を成形し、前記変性ペロブスカイトナノ材料を得る工程と、
を含むことを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の複合発光材料の製造方法。
【請求項15】
前記添加元素Mは、添加元素M含有化合物に由来し、
前記添加元素M含有化合物が、LiCl、NaCl、KCl、RbCl、LiBr、NaBr、KBr、RbBr、LiI、NaI、KI、RbI、LiCO、NaCO、KCO、RbCO、Li金属有機物、Na金属有機物、K金属有機物、Rb金属有機物から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項14に記載の複合発光材料の製造方法。
【請求項16】
工程(1)は、
(s11)マトリックスを含有する溶液(1)を得る工程と、
(s12)CsI、PbI、添加元素Mを含有する溶液(2)を得る工程と、
(s13)溶液(1)と溶液(2)とを混合し、前記前駆体溶液を得る工程と、
を含むことを特徴とする請求項14に記載の複合発光材料の製造方法。
【請求項17】
前記溶液(1)中には添加剤をさらに含み、前記添加剤が、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、臭化第1スズ、ヨウ化第1スズ、臭化カドミウム、ヨウ化カドミウムから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項16に記載の複合発光材料の製造方法。
【請求項18】
前記溶液(2)中には表面配位子をさらに含有し、
前記表面配位子は、有機酸、有機酸ハロゲン化物、C~C24有機アミン、C~C24有機アミンのハロゲン化物のうちの少なくとも1種を含有し、
前記表面配位子は、工程(s12)において添加されることを特徴とする請求項16に記載の複合発光材料の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0098
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0098】
実施例6
その他の工程が実施例1と同様であり、ただし、以下の点で異なる。溶液(1)中に、重合体がポリフッ化ビニリデン(PVDF)であり、有機溶媒がトリメチルホスフェート(TMP)であり、重合体:有機溶媒の質量比を1:15に制御した。溶液(2)中に、有機溶媒がトリメチルホスフェート(TMP)であり、有機溶媒と(PbI+CsI+NaBr)との質量比を1:0.2、PbIと(CsI+NaBr)とのモル比を1:0.1、CsIとNaBrとのモル比を1:0.001に制御した。溶液(1)と溶液(2)とを質量比1:0.02で均一に混合して撹拌した。前駆体溶液を溶液沈降法によりガラスシャーレ中に移転し、前駆体溶液のガラスシャーレにおける厚さを5mm、真空乾燥機における気圧を0.05MPa、温度を110℃に制御し、10h乾燥してγ-CsPbI/NaPbBr0.12.9コア-シェル構造の量子ドット/PVDF複合薄膜を得た。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0102
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0102】
実施例10
その他の工程が実施例1と同様であり、ただし、以下の点で異なる。溶(1)中に、重合体をポリフッ化ビニリデン(PVDF)にし、有機溶媒をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)にした。重合体:有機溶媒の質量比を1:15にした。溶(2)中に、有機溶媒をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)にし、有機溶媒と(PbI+CsI+N-フェニルグリシンカリウム塩)との質量比を1:0.1、PbI:(CsI+N-フェニルグリシンカリウム塩)のモル比を1:0.6、CsIとN-フェニルグリシンカリウム塩とのモル比を1:2にした。前駆体溶液中に、溶液(1)と溶液(2)との質量比を1:0.1に制御した。前駆体溶液をスプレー法により透明ポリカーボネート(PC)シート上に移転し、前駆体溶液の透明ポリカーボネート(PC)シート上の厚さを1mm、真空乾燥機の気圧を0.02MPa、温度を20℃に制御し、30min乾燥して溶媒を除去した。溶媒を除去したガラスシートを真空乾燥機から取り出し、100℃のホットプレート上に1h放置し、透明ポリカーボネート(PC)シート上に付着したγ-CsPbI/KPbIコア-シェル構造の量子ドット/PVDF複合薄膜を得た。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0105
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0105】
実施例13
その他の工程が実施例12と同様であり、ただし、以下の点で異なる。溶液(1)中に、重合体がポリフッ化ビニリデン(PVDF)であり、有機溶媒とポリフッ化ビニリデン(PVDF)との質量比を1:7にし、添加剤をZnIにし、マトリックスとZnIとの質量比を1:0.015にした。溶液(2)中に、PbIと(CsI+RbBr)とのモル比を1:1.1、CsIとRbBrとのモル比を1:10にし、添加する表面配位子を3,5-ジメチルアニリンにし、(PbI+CsI+RbBr)と3,5-ジメチルアニリンとの質量比を1:0.1にした。溶液(1)と溶液(2)との質量比を1:1に制御した。透明シリカゲルシート上に付着したγ-CsPbI/RbPbBrコア-シェル構造の量子ドット/PVDF複合薄膜を得た。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0107
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0107】
実施例15
その他の工程が実施例1と同様であり、ただし、以下の点で異なる。溶液(1)中に、重合体マトリックスと有機溶媒との質量比を1:10にし、重合体がポリカーボネート(PC)であり、有機溶媒がN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)である。溶(2)中に添加される表面配位子が酢酸及びドデシルアミンであり、酢酸とドデシルアミンとの質量比を1:3、(PbI+CsI+RbI)と表面配位子との質量比を1:0.02、CsIとRbIとのモル比を1:8にした。前駆体溶液中に、溶液(1)と溶液(2)との質量比を1:0.8にした。ホットプレートの加熱温度を120℃に制御し、30min乾燥させ、γ-CsPbI-RbIヘテロ接合構造の量子ドット/PC複合薄膜を得た。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0109
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0109】
実施例17
その他の工程が実施例1と同様であり、ただし、以下の点で異なる。溶液(1)中に、重合体と有機溶媒との質量比を1:10に制御し、重合体がポリフッ化ビニリデン(PVDF)、有機溶媒がジメチルアセトアミド(DMAc)である。溶液(2)中に、PbI:CsIのモル比を1:2に制御し、有機溶媒をジメチルアセトアミド(DMAc)にし、有機溶媒と(PbI+CsI+RbI)との質量比を1:1.5にし、有機配位子をペンタン酸及び3-ビニルエチルアミンにし、ペンタン酸と3-ビニルエチルアミンとの質量比を1:5にし、(PbI+CsI)と有機配位子との質量比を1:0.01にした。前駆体溶液をスピンコート法によりITOガラス上に移転し、前駆体溶液のITOガラス上における厚さを0.1mm、真空乾燥機中の気圧を0.02MPa、温度を40℃に制御し、15min乾燥させ、有機溶媒を除去した。有機溶媒を除去したITOガラスシートを130℃のホットプレート上に放置して45minべークし、棒状のγ-CsPbI/RbPbIコア-シェル構造の量子ドット/PVDF複合材料を得た。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0112
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0112】
実施例20
実施例5で製造したγ-CsPbI/LiPbIコア-シェル構造の量子ドット/PAN複合薄膜を基礎にし、高色域の白色光LED発光材料を製造し、具体的な工程は以下の通りである。
製造したγ-CsPbI/LiPbIコア-シェル構造の量子ドット/PAN複合薄膜側に有機接着剤を塗布し、実施例19の工程(2)で製造したCHNHPbBr量子ドット/PVDF複合薄膜と貼り合わせ、50℃で1h乾燥させ、接着剤を硬化させ、赤色光及び緑色光二色発光性複合材料を得た。
【国際調査報告】