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特表2022-542735多点取水口の水頭損失係数及び分岐管流量の配分を計算する方法
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  • 特表-多点取水口の水頭損失係数及び分岐管流量の配分を計算する方法 図1
  • 特表-多点取水口の水頭損失係数及び分岐管流量の配分を計算する方法 図2
  • 特表-多点取水口の水頭損失係数及び分岐管流量の配分を計算する方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】多点取水口の水頭損失係数及び分岐管流量の配分を計算する方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/20 20200101AFI20220930BHJP
   G06F 30/28 20200101ALI20220930BHJP
   E02B 1/00 20060101ALI20220930BHJP
   G06F 113/08 20200101ALN20220930BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F30/28
E02B1/00 Z
G06F113:08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556781
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(85)【翻訳文提出日】2021-09-21
(86)【国際出願番号】 CN2021081858
(87)【国際公開番号】W WO2021253902
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】202010558405.2
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520414480
【氏名又は名称】中国長江三峡集団有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】518142258
【氏名又は名称】中国水利水電科学研究院
【氏名又は名称原語表記】China Institute of Water Resources and Hydropower Research
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】戴 会超
(72)【発明者】
【氏名】王 浩
(72)【発明者】
【氏名】段 亜飛
(72)【発明者】
【氏名】紀 平
(72)【発明者】
【氏名】趙 懿▲ジュン▼
(72)【発明者】
【氏名】蒋 定国
(72)【発明者】
【氏名】趙 汗青
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA03
5B146DC05
5B146DJ03
5B146DJ11
(57)【要約】
本発明は、多点取水口の水頭損失係数及び分岐管流量の配分を計算する方法に関し、多点取水口の構造と寸法情報を入力して確定するステップと、水頭損失係数を確定するステップと、合流口における水頭損失係数の形式を確定するステップと、試算流量を予測または調整するステップと、各分岐管における水頭損失係数を試算するステップと、2本の経路で計算される水頭損失を比較するステップと、全体計算を行うステップとを含む。本発明は2方向流の水頭損失係数の反復計算を利用して各分岐管の流量に対する調整および水頭損失係数の反復計算を行って最終的に水頭損失と流量配分比率を比較的正確に算出することができ、モデルを専門に構築してシミュレーションを行うことを必要とせず、比較的精確な水頭損失と流量配分比率が得られ、設計経費と時間を大幅に節約し、非常に優れた技術的解決手段である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多点取水口の水頭損失係数及び分岐管流量の配分を計算する方法であって、前記方法で計算された多点取水口施設は、水底や海底基礎に埋設された母管を含み、前記母管に複数の合流口が設置され、各前記合流口に分岐管がそれぞれ垂直に接続され、各分岐管の先端に水中に浸る吸水ヘッドが設置され、前記方法は、
ステップ1:多点取水口の母管の横断面積A、各分岐管の形状、分岐管の長さlと分岐管の横断面積A(iは上流から下流に並ぶ分岐管の番号であり、i=1、2……、nである)、および分岐管と母管との合流口の平滑半径r、各分岐管の間隔L、流動レイノルズ数Re、管材のラフネス高さを含む、多点取水口の構造と寸法情報とを入力して確定するステップ1と、
ステップ2:管路抵抗係数を確定し、つまり、水力学計算マニュアル、管材のラフネス高さとレイノルズ数に基づいて、吸水ヘッドの局部抵抗係数Kinと、母管及び分岐管の沿路摩擦抵抗係数Kとを明確にするステップ2と、
ステップ3:合流口における水頭損失係数の形式を確定し、つまり、分岐管と母管の形状、過流面積比及び合流角と平滑半径に基づいて、以下のGardel式により合流管水頭損失係数K→cの計算形式を確定し、ここで、i番目の合流口の損失係数はi番目の分岐管の分岐管合流損失係数Ki、b→cと、上流母管からi番目の合流口を流れた貫通流損失係数Ki、t→cを含み、Gardel式が以下のとおりであり、
【数1】
式中、Kt→cは母管貫通流の損失係数であり、Kb→cは分岐管合流損失係数であり、下付き文字bは分岐管合流を代表し、下付き文字tは上流母管合流を代表し、下付き文字cは母管下流を代表し、θは分岐管と母管上流の夾角であり、T字合流時にθ=π/2であり、無次元数Rは支流と下流主流の流量比であり、Rは分岐管と母管の面積比であり、平滑角度の合流状況を考慮し、rは分岐管と母管との合流口の平滑半径である、ステップ3と、
ステップ4:試算流量を予測または調整し、つまり、i=2から、経験または従来資料に基づいて分岐管iの試算無次元流量Q’と当該分岐管iの上流累積流量
【数2】
を予測し、または試算結果に基づいて分岐管iの試算流量Q’と当該分岐管iの上流累積流量
【数3】
を調整し、ここで、iは2~nの間の値である、ステップ4と、
ステップ5:分岐管iの下流の合流口における水頭損失
【数4】
を計算し、つまり、試算された分岐管流量Q’と上流累積流量
【数5】
に基づいて、それぞれ二本の流路から合流口の水頭損失
【数6】
を計算し、
第1流路が上流貫通流路PΣi-1であり、
【数7】
式中、
【数8】
は母管の中のi番目のT字合流口の下流のi(丸付きi)点で1番目の分岐管pからi-1番目の分岐管pi-1までの総合流の、母管の上流から下流i(丸付きi)点まで貫通する試算水頭損失であり、Ki-1’は位置i-1の試算水頭損失であり、Ki-1~i、fは母管の位置i-1から位置iまでの沿路摩擦抵抗損失であり、
第2流路が分岐管の流入流路pであり、
【数9】
式中、
【数10】
は母管の中のi番目のT字合流口の下流のi(丸付きi)点でi番目の分岐管から水流経路pに合流する試算水頭損失であり、Ki,inはi番目の吸水ヘッドの局所抵抗係数であり、Ki,fはi番目の分岐管の沿路摩擦抵抗係数である、ステップ5と、
ステップ6:2本の流路で計算された水頭損失を比較し、つまり、分岐管流量Q’の調整及び番号iの分岐管の水頭損失
【数11】
の試算を行うごとに、すなわち、2本の流路PΣi-1とpで計算された水頭損失を比較するごとに、等しいかどうかを判断し、予想された流量精度要件に基づいて等しいと判断されたしきい値errorを設定してもよく、
【数12】
が「はい」であれば次の分岐管に入り、「いいえ」であればステップ4に戻り、試算流量を調整し、i=2からi=nまで、すなわち最下流合流口の計算が完了するまでこのように反復計算を繰り返す、ステップ6と、
ステップ7:全体計算を行い、つまり、最下流母管位置nまで計算する時、すなわちi=nである時、ここでの複合管損失係数Kを得て、すると、取水システムの全体水頭損失係数Kと全体水頭損失係数ΔHはそれぞれ以下のとおりであり、
【数13】
式中、U=Q/Aは最下流母管の平均流速であり、gは重力加速度である、ステップ7と、
を含むことを特徴とする多点取水口の水頭損失係数及び分岐管流量の配分を計算する方法。
【請求項2】
前記母管の沿路直径が異なる場合に、上記ステップにおける水頭損失Kを修正し、
correct=Korigin(A/A
式中、Adは下流母管面積であり、Auは上流母管面積であり、Koriginは未修正の水頭損失であり、Kcorrectは修正後の水頭損失である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多点取水口の水頭損失係数及び分岐管流量の配分を計算する方法に関し、管路ライン水力学計算方法であり、沿岸工業がオフショア多点取水方式を採用する時、取水口の水頭損失と各分岐管の流入流量を迅速に計算する方法である。
【背景技術】
【0002】
直列多点式取水口とは、環境における水が直列に配置された複数の吸水分岐管を介して順次に母管に合流して用水側の取水施設に入ることを指し、主に取水量が大きく、沿岸の浜質の条件が悪く、岸が緩やかで、低水位の時に水の境界が海から遠く離れ、あるいは水質に対する要求が高い状況に用いられ、火、原子力発電所などの沿岸工業に最も常用される床式オフショア取水型の一つである。取水口の水頭損失を明確にすることは取水工程設計の基礎であり、多点取水口は、管路構造と内部の流動状態が複雑であるので、取水口全体の水頭損失係数を確定することは困難で、実際の応用では直接的な参考値がない。また、連続合流管路の水頭損失が累積するため、多点取水口の各分岐管の流入は不均一である。各分岐管の流入流量を明確にすることは、取水口の構造強度と流入流速設計、および管路の目詰まり防止、キャビテーション防止、生物ローリングによる損失防止などの方面に重要である。現在、多点取水口の水頭損失係数と流量配分の確定はまだ明確なマニュアル或いは規範的参考がなく、工程実践中に一般的にスケールモデル試験を展開して予測し、必要な時間とコストが比較的高く、初期設計段階で実現することが非常に困難である。そのため、多点取水口の水頭損失及び流量配分を迅速に計算する有効な方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術における問題を克服するために、本発明は多点取水口の水頭損失係数及び分岐管流量配分を計算する方法を提供する。前記方法は連続複合管流中の水流保存原理、任意の両断面間の水頭損失が各流路で等しくかつ総機械エネルギー損失が最小である原理を利用し、合流管流の水頭損失と流量配分の関係と合わせて、直列多点取水口の水頭損失係数及び分岐管流量配分の反復計算方法を提供し、沿岸工業取水の多点取水口設計を指導するために根拠を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は以下のように達成される。多点取水口の水頭損失係数及び分岐管流量の配分を計算する方法であって、前記方法で計算された多点取水口施設は、水底や海底基礎に埋設された母管を含み、前記母管に複数の合流口が設置され、各前記合流口に分岐管がそれぞれ垂直に接続され、各分岐管の先端に水中に浸る吸水ヘッドが設置され、前記方法は、
ステップ1:多点取水口の母管の横断面積A、各分岐管の形状、分岐管の長さliと分岐管の横断面積Ai(iは上流から下流に並ぶ分岐管の番号であり、i=1、2……、nである)、および分岐管と母管との合流口の平滑半径r、各分岐管の間隔L、流動レイノルズ数Re、管材のラフネス高さを含む、多点取水口の構造と寸法情報とを入力して確定するステップ1と、
ステップ2:管路抵抗係数を確定し、つまり、水力学計算マニュアル、管材のラフネス高さとレイノルズ数に基づいて、吸水ヘッドの局部抵抗係数Kinと、母管及び分岐管の沿路摩擦抵抗係数Kfとを明確にするステップ2と、
ステップ3:合流口における水頭損失係数の形式を確定し、つまり、分岐管と母管の形状、過流面積比及び合流角と平滑半径に基づいて、以下のGardel式により合流管水頭損失係数K→cの計算形式を確定し、ここで、i番目の合流口の損失係数はi番目の分岐管の分岐管合流損失係数Ki,b→cと、上流母管からi番目の合流口を流れた貫通流損失係数Ki,t→cを含み、Gardel式が以下のとおりであり、
【数1】
t→cは母管貫通流の損失係数であり、Kb→cは分岐管合流損失係数であり、下付き文字bは分岐管合流を代表し、下付き文字tは上流母管合流を代表し、下付き文字cは母管下流を代表し、θは分岐管と母管上流の夾角であり、T字合流時にθ=π/2であり、無次元数Rは支流と下流主流の流量比であり、Rは分岐管と母管の面積比であり、平滑角度の合流状況を考慮し、rは分岐管と母管との合流口の平滑半径である、ステップ3と、
ステップ4:試算流量を予測または調整し、つまり、i=2から、経験または従来資料に基づいて分岐管iの試算無次元流量Q1’と当該分岐管iの上流累積流量
【数2】
を予測し、または試算結果に基づいて分岐管iの試算流量Qi’と当該分岐管iの上流累積流量
【数3】
を調整し、ここで、iは2~nの間の値である、ステップ4と、
ステップ5:分岐管iの下流の合流口における水頭損失
【数4】
を計算し、つまり、試算された分岐管流量Qi’と上流累積流量
【数5】
に基づいて、それぞれ二本の流路から合流口の水頭損失
【数6】
を計算し、
第1流路が上流貫通流路PΣi-1であり、
【数7】
式中、
【数8】
は母管の中のi番目のT字合流口の下流のi(丸付きi)点で1番目の分岐管pからi-1番目の分岐管pi-1までの総合流の、母管の上流から下流i(丸付きi)点まで貫通する試算水頭損失であり、Ki-1’は位置i-1の試算水頭損失であり、Ki-1~i、fは母管の位置i-1から位置iまでの沿路摩擦抵抗損失であり、
第2流路が分岐管の流入流路pであり、
【数9】
式中、
【数10】
は母管の中のi番目のT字合流口の下流 のi(丸付きi)点でi番目の分岐管から水流経路piに合流する試算水頭損失であり、Ki,inはi番目の吸水ヘッドの局所抵抗係数であり、Ki,fはi番目の分岐管の沿路摩擦抵抗係数である、ステップ5と、
ステップ6:2本の流路で計算された水頭損失を比較し、つまり、分岐管流量Qi’の調整及び番号iの分岐管の水頭損失
【数11】
の試算を行うごとに、すなわち、2本の流路PΣi-1とpで計算された水頭損失を比較するごとに、等しいかどうかを判断し、予想された流量精度要件に基づいて等しいと判断されたしきい値errorを設定してもよく、
【数12】
が「はい」であれば次の分岐管に入り、「いいえ」であればステップ4に戻り、試算流量を調整し、i=2からi=nまで、すなわち最下流合流口の計算が完了するまでこのように反復計算を繰り返す、ステップ6と、
ステップ7:全体計算を行い、つまり、最下流母管位置n(丸付きn)まで計算する時、すなわちi=nである時、ここでの複合管損失係数Knを得て、すると、取水システムの全体水頭損失係数Kと全体水頭損失係数ΔHはそれぞれ以下のとおりであり、
【数13】
式中、U=Q/Aは最下流母管の平均流速であり、gは重力加速度である、ステップ7と、を含む。
【0005】
さらに、前記母管の沿路直径が異なる場合に、上記ステップにおける水頭損失Kを修正し、K=Korigin(A/A
式中、Adは下流母管面積であり、Auは上流母管面積であり、Koriginは未修正の水頭損失である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。本発明は2方向流の水頭損失係数の反復計算を利用して各分岐管の流量に対する調整および水頭損失係数の反復計算を行って最終的に水頭損失と流量配分比率を比較的正確に算出することができ、モデルを専門に構築してシミュレーションを行うことを必要とせず、比較的精確な水頭損失と流量配分比率が得られ、設計経費と時間を大幅に節約し、非常に優れた技術的解決手段である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
以下、図面と実施例に合わせて本発明をさらに説明する。
【0008】
図1】本発明の実施例1による本発明の前記方法を応用した直列多点取水口の構造及び番号、流路、水頭損失分布の模式図。
図2】本発明の実施例1による方法の演算フロー図。
図3】本発明の実施例1の応用例である、ある発電所の3点取水口の模式図。
図4】本発明の実施例1の応用例である、3本の流路pと3箇所の水頭損失係数の計算過程の模式図。
図5】本発明の実施例1における6ツの点位置モデル試験のモデル寸法構造の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施例1:
本実施例は、多点取水口の水頭損失係数及び分岐管流量の配分を計算する方法であり、前記方法で計算された多点取水口施設は、水底や海底基礎に埋設された母管001を含み、前記母管に複数の合流口002が設置され(一般的にT字合流口である)、各前記合流口に分岐管003がそれぞれ垂直に接続され、各分岐管の先端に水中に浸る吸水ヘッド004が設置され、図1に示すとおりである。図1では、多点取水口を4つ簡単化しており、母管の横断面積Aが沿路に等しいことを例とする。実際には取水口はより多く、例えば6個、7個などとすることができ、もちろん2個、3個のように少ない数も含まれる。複数の取水口を設ける目的は分散して取水することである。
【0010】
本実施例で述べた方法の具体的な演算過程と原理は以下の通りであり、演算の流れは図2の通りである。
【0011】
まず、多点取水口の構造情報を確定し、つまり、多点取水口の母管の横断面積A(沿路に変化し、または沿路に等しくしてもよい)、各分岐管の形状、長さlと横断面積A、各分岐管の間隔L、流動レイノルズ数Re、管材のラフネス高さを含む、多点取水口の構造情報を入力する。母管の沿路面積が等しくなければ、各セグメントの下流母管面積Aと上流母管面積Aを確定し、両者の比二乗を計算し、後期に水頭損失係数を標準化し、すなわち
【数14】
である。
【0012】
単独構造の局部抵抗と沿路抵抗係数を確定し、つまり、水力学計算マニュアル、管材のラフネス高さとレイノルズ数に基づいて、吸水ヘッドの局部抵抗係数Kinと、母管及び分岐管の沿路摩擦抵抗係数Kとを明確にする。
【0013】
分岐管と母管の横断面積比及び形状タイプに基づいて、T字合流口の水頭損失係数Ki,b→cとKi,t→cを確定する。一般的には、分岐管/母管の面積比、分岐管/母管の流量比および臨界間隔によって決定される。応用の実践では、確定された多点取水口システムの場合、管路の分岐管/母管の面積比、間隔等のパラメータは、確定された定数であり、したがって、Ki,b→cとKi,t→cの値は、流量比の関数に過ぎない。T字合流口の損失係数はKi,b→cとKi,t→cである。反復計算を繰り返し、分岐管の無次元数の流入流量Q’とQ’を仮定し、この仮定に基づいて、流路pおよび流路pから位置2(丸付き2)に到達する水頭損失係数
【数15】
をそれぞれ算出する。一般的に、pの計算は以下の部分を含む。
【数16】
の計算は以下の部分を含む。
【数17】
【0014】
その後、2本の経路から計算された損失係数が等しいかどうかつまり
【数18】
であるかどうか、または両者の差が設定された収束閾値
【数19】
を満たすかどうかを判断し、ここで、errorは収束閾値であり、とりうる値は0.01Qである。等しくないかまたは差が設定閾値より大きい場合、流量配分を調整し、等価基準が満たされるまで
【数20】

【数21】
を再計算し、位置2における損失係数を算出する。勾配降下法を用いて流量分配を調整することができる。
【0015】
上記の計算手順にしたがって、前のステップによって管路番号に沿った増分計算を継続し、i-1位置までの損失係数Ki-1’と、想定される分岐管iの流量によって位置水頭損失係数を算出し、つまり、流路PΣi-1(分岐管1、2、……、i-1合流後)の到達位置における水頭損失係数
【数22】
を計算し、同時に流路p(分岐管iから進入)の到達位置における損失係数
【数23】
を算出する。
ここで、
【数24】
【数25】

【数26】
との比較が、設定された収束基準を満たさない場合、管iの流れQ’を、収束基準が満たされるまで再仮定し、この時、位置i(丸付きi)における損失係数K’を得る。
1)最下流母管位置n(丸付きn)、すなわちi=nまで計算する場合、ここでの複合管損失係数Kが得られる。
2)取水システム全体の水頭損失係数と全体の水頭損失をそれぞれ、
【数27】
式中、U=(Q/A)=最下流母管の平均流速である。
【0016】
直列に配置された多点取水口は連続合流管と見なすことができ、一つの母管断面が沿路不変の連続合流管の場合、水流の段階的な流入に伴い、母管の総流速は徐々に上昇するが、静圧は徐々に低下し、短複合管の場合、下流側に向かって沿路減少する静圧は下流側の分岐管の流量を増加させる。最終的に近端分岐管の合流流量が大きく、末端分岐管の合流流量が小さい現象が現れる。
【0017】
直列多点取水口の流量配分と総損失係数を求め、核心は明確な制約関数K( )の形式即ち局所水頭損失と沿路損失の表現形式である。制約式における水頭損失係数の確定方法は以下のとおりである。
【0018】
inは吸水ヘッドから分岐管への水流の局部水頭損失係数であり、その一般式は以下のとおりである:
i,in=ξ
ここで、ξは吸水ヘッド入口の局部抵抗係数である。一般的に、多点取水口の吸水ヘッドの形状や寸法は一致し、その局部水頭損失係数ξは同じであり、吸水ヘッドの構造寸法形式に基づいて局部抵抗係数表 (トップキャップ付き入水口+テーパセグメント)によって一定値に選択することができる。
【0019】
は、一般的に以下の式で表される、沿路水頭損失係数を特徴づける。
分岐管:Ki,f=λ(l/d
母管:Ki-1~i,f=λ(Li-1~i/D)
λは管路の沿路摩擦抵抗係数であり、レイノルズ数Reとライザ管の相対粗さΔと関係があり、それがある流れ状態に基づいて経験式を採用して計算することができ、
=(Qt→c+Qb→c)/Q
である。
【0020】
実際の工程では各分岐管の間隔Li-1~iは一般に3~5D程度であり、この時、合流の局部水頭損失は母管の沿路損失より絶対的な支配を占めている。隣接するライザー管間の母管セグメントの沿路水頭損失は完全にΔhi,→cによりカバーすることができ、したがって母管沿路水頭損失は無視することができ、
【数28】
である。
【0021】
→cは、合流部における支流の流入損失および母管貫通流の損失係数を特徴とする。合流口の局所水頭損失係数は、流量比、面積比および平滑半径rなどと密に関連し、すなわちKi→c=function(RAi、RQi、r)であるため、制約式functionは非線形形式である。実際の応用では、RAiとrの両方が確定されているので、fは単にRQiの関数である。
【0022】
上流封口(Q=0)の多点取水口の1番目の分岐管に対して、合流口の局部損失係数はK1,b→c=function(RA1,RQ1=1,r)と表現することができる。しかし、多くの場合、このような折曲げ合流管路の水頭損失係数は必要な補正を行う必要がある。
【0023】
応用例:
ある発電所は海底の陰の形の3点取水口を採用して冷却する。取水口システムの構成を図3に示す。図4には、この取水システム構造の各演算が満たす意味を示す。ここで、合流口1(丸付き1)は特殊なT字合流口に簡略化することができる。この取水口は設計の初めにその3つの分岐管の流入流量配分及び全体水頭損失係数を推定する必要がある。取水ライザー管の吸水ヘッド(入水口)の局部抵抗係数は0.25と仮定し、管路の摩擦抵抗係数は0.015と推定される。この多点取水管は短複合管に属し、多くの場合、摩擦抵抗係数損失を無視することができ、本計算例に一般性を持たせるため、この例を考慮する。図3から分かるように、各分岐管間の間隔は等しく、間隔は母管径Dの約3倍であり、各分岐管の長さは管径の7倍であり、従来の管路合流と研究結果から判別したように、このような構造は分岐管間の隣接領域の干渉を無視することができ、先人による試験の適合曲線またはGardel式を用いて単一合流口の水頭損失係数を計算することができる。図3における寸法表記単位はセンチメートルである。
【0024】
本例では母管面積Aが一定であり、各分岐管面積、長さl、ピッチLはいずれも等しい(i=1,2,3)ので、
Ai=(d/D)=0.25
i,in=0.25
i,f=f(l/d)=0.015×7/1=0.105
i-1~i,f=f(Li-1~i/D)=0.015×6/2=0.045
である。
【0025】
具体的な計算過程は以下のとおりである。
ステップ1:図4の流量配分を参照して、流量配分比率をQ’=0.28、Q’=0.32、Q’=0.4と最初に推定する。T字合流水頭損失係数Gardel式によると、合流口水頭損失係数は分岐管/母管面積比と分岐管/母管の流量比の関数である。
【数29】
T字合流水頭損失係数のGardel式によると、合流水頭損失係数も分岐管/母管の面積比と分岐管/母管の流量比の関数である。
【数30】
ステップ2:流路pから位置2(丸付き2)までの総損失係数
【数31】
(位置2(丸付き2)における流速に対応)を計算する。
【数32】
ステップ3:流路pから位置2(丸付き2)までの総水頭損失係数を計算する。
【数33】
ステップ4:2種の計算方法で取得された
【数34】
値の差を比較し、
【数35】
であり、一定の誤差が存在する。
流量配分比率をQ’=0.285、Q’=0.315、Q’=0.4と再調整する。流路
【数36】
となり、
【数37】
を求め、また、流路径
【数38】
となり、
【数39】
を求める。
この場合、2本の流路計算の損失係数はほぼ等しいと考えられるので、Q’=0.285、Q’=0.315、
【数40】
と確定する。
ステップ5:位置3(丸付き3)の水頭損失係数を引き続き計算する。まず、経路p1+2から位置3(丸付き3)までの水頭損失係数を算出する。前記計算に基づいて、
【数41】
となり、且つ推定されたQ’=0.4とT字合流水頭損失係数Gardel式により、推定する。
【数42】
従って、経路p1+2から位置3(丸付き3)に到達する総水頭損失係数は以下のとおりである:
【数43】
ステップ6:経路pから位置3(丸付き3)までの総水頭損失係数を計算する。Gardel式により、
【数44】
従って、流路p3から位置3(丸付き3)までの総水頭損失係数は以下のとおりである。
【数45】
ステップ7:二つの計算方法で獲得した
【数46】
値を比較する。
【数47】
となり、すなわち、流路p3で計算される水頭損失係数が大きすぎるため、小さな流量Q’=0.38に再調整し(Q’とQ’を調整することを必要としない)、ステップ5、ステップ6を繰り返す。2つの経路の
【数48】
を、それぞれ1.65および1.66と算出する。両者は等しいと考えられ、正確な
【数49】
が得られる。
ステップ8:次の位置を引き続き計算し、方法は前と同様である。本例では、3つのライザーしかなく、すなわち位置3(丸付き3)が最下流母管位置である。取水システムの総水頭損失係数は以下のとおりである。
【数50】
ステップ9:前記計算は既に取水システムの総水頭損失係数と各分岐管流量配分割合を取得し、設計により資料を入力すると、総水頭損失と分岐管の絶対流量を計算することができる。
【数51】
ここまでに最下流母管の流速Uと、総水頭損失ΔHと3つの分岐管Q、Q、Qの流量を算出し、計算過程は終了する。
【0026】
シミュレーション実験:
本実施例は図5に示す円形分岐管6点取水口の実験モデルを用いて前記方法の流量配分と水頭損失係数を計算し、本実施例の方法の正確性を検証する。図5に示されている寸法単位はミリメートルである。
(1)母管頂部に連続して等間隔に6個の円形吸水ライザー管を配置し、吸水ライザー管の上端は水没式キノコ頭式吸水ヘッドであり、環境水は側方から吸水ヘッドに流入し、ライザー管に入った後順に母管に流入し、モデルの具体的な寸法は図5に示す。
(2)吸水ヘッドの入口水頭損失係数:6つの吸水ヘッドの形状寸法が一致するため、その局部水頭損失係数は同じである。試験測定値に基づいて、利用されている吸水ヘッドの局部抵抗係数は
【数52】
(横方向進水0.5+円形テーパ管0.074)である。
【数53】
(3)ライザー管の沿路摩擦抵抗損失係数:Colobrook-White式を用いて、Δi、Reによって沿路摩擦抵抗損失係数λを計算し、モデル管の絶対粗さεの値は2.0μmを取り、分岐管ラフネス高さΔi=ε/d=2×10-5を取る。沿路損失を計算する際に、吸引ヘッドのテーパセクションの下流ldの長さの遷移セグメントを無視し、すなわち、有効摩擦抵抗距離はli=l-d=0.3mである。
【数54】
分岐管間隔L=3Dであるので、母管沿路損失を無視でき、
【数55】
である。
(4)合流口損失係数:本試験の6つの連続合流口は、その間隔が均等に6倍の分岐管径であり、先人の研究によると、合流による大部分の局部水損がこの間隔内に発生し、すなわち各合流口間の相互影響が小さい。
合流エネルギー損失係数K→c~Rは最適化された二次関数パターンの式を採用する。
【数56】
(5)本試験では、合流口1の上流側が閉鎖し(すなわちQ=0)、かつ突出している水詰まり領域が存在する(工事現場での管路シールド構造の終わりには、通常、施工空間の一部が残っている)。この合流口の局部損失係数はR=1の合流と類似しているが、水溜まり領域の逆流の影響により、ここの局部水頭損失係数は専門的に計算する必要がある。
(6)
【数57】
を等式に代入し、K1,b→c=5.542を求める。
(7)分岐管数と流量配分及び総損失係数との関係推定:
本実施例が提案する反復計算法によれば、異なる分岐管数量の多点取水口流量配分及び全体水頭損失係数を求めることができる。反復ステップは、コンピュータプログラミング最適化反復を使用して達成される。
Q=25.11L/sの場合、測定したK=16.43から、n=1~6個の分岐管の流量と水頭損失係数を算出する。表1に示すように、表2から明らかなように、本実施例に係る方法は、異なる管路数の水頭損失配分及び流量配分を正確に計算することができる。
表1 各分岐管の流量配分およびその合流口の下流の水頭損失係数、試験結果の比較
【表1】
【0027】
実施例2:
本実施例は実施例1の改良であり、実施例1の母管に関する改良である。本実施例で述べた母管直径は沿路に等しいが、母管直径が沿路に変化するとき、損失係数Kを修正することができる。
correct=Korigin(A/A
ここで、Aは下流母管の面積であり、Aは上流母管の面積であり、Koriginは未修正の水頭損失であり、Kcorrectは修正後の水頭損失である。
【0028】
最後に説明すべきこととして、以上は本発明の技術的解決手段を説明するためのものにすぎず、限定するものではなく、3点取水口形式、キノコ頭吸水ヘッド、合流水流水頭損失係数のGardel式を参照して本発明を詳しく説明したが、当業者には理解されるように、本発明の技術的解決手段の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の技術的解決手段(例えば、異なる水吸収ヘッドタイプ、異なる数の水吸収ライザー管、異なる合流水流水頭損失係数の式など)に対して修正または均等な置換を行うことができる。
【0029】
(付記)
(付記1)
多点取水口の水頭損失係数及び分岐管流量の配分を計算する方法であって、前記方法で計算された多点取水口施設は、水底や海底基礎に埋設された母管を含み、前記母管に複数の合流口が設置され、各前記合流口に分岐管がそれぞれ垂直に接続され、各分岐管の先端に水中に浸る吸水ヘッドが設置され、前記方法は、
ステップ1:多点取水口の母管の横断面積A、各分岐管の形状、分岐管の長さlと分岐管の横断面積A(iは上流から下流に並ぶ分岐管の番号であり、i=1、2……、nである)、および分岐管と母管との合流口の平滑半径r、各分岐管の間隔L、流動レイノルズ数Re、管材のラフネス高さを含む、多点取水口の構造と寸法情報とを入力して確定するステップ1と、
ステップ2:管路抵抗係数を確定し、つまり、水力学計算マニュアル、管材のラフネス高さとレイノルズ数に基づいて、吸水ヘッドの局部抵抗係数Kinと、母管及び分岐管の沿路摩擦抵抗係数Kとを明確にするステップ2と、
ステップ3:合流口における水頭損失係数の形式を確定し、つまり、分岐管と母管の形状、過流面積比及び合流角と平滑半径に基づいて、以下のGardel式により合流管水頭損失係数K→cの計算形式を確定し、ここで、i番目の合流口の損失係数はi番目の分岐管の分岐管合流損失係数Ki、b→cと、上流母管からi番目の合流口を流れた貫通流損失係数Ki、t→cを含み、Gardel式が以下のとおりであり、
【数58】
式中、Kt→cは母管貫通流の損失係数であり、Kb→cは分岐管合流損失係数であり、下付き文字bは分岐管合流を代表し、下付き文字tは上流母管合流を代表し、下付き文字cは母管下流を代表し、θは分岐管と母管上流の夾角であり、T字合流時にθ=π/2であり、無次元数Rは支流と下流主流の流量比であり、Rは分岐管と母管の面積比であり、平滑角度の合流状況を考慮し、rは分岐管と母管との合流口の平滑半径である、ステップ3と、
ステップ4:試算流量を予測または調整し、つまり、i=2から、経験または従来資料に基づいて分岐管iの試算無次元流量Q’と当該分岐管iの上流累積流量
【数59】
を予測し、または試算結果に基づいて分岐管iの試算流量Q’と当該分岐管iの上流累積流量
【数60】
を調整し、ここで、iは2~nの間の値である、ステップ4と、
ステップ5:分岐管iの下流の合流口における水頭損失
【数61】
を計算し、つまり、試算された分岐管流量Q’と上流累積流量
【数62】
に基づいて、それぞれ二本の流路から合流口の水頭損失
【数63】
を計算し、
第1流路が上流貫通流路PΣi-1であり、
【数64】
式中、
【数65】
は母管の中のi番目のT字合流口の下流のi(丸付きi)点で1番目の分岐管pからi-1番目の分岐管pi-1までの総合流の、母管の上流から下流i(丸付きi)点まで貫通する試算水頭損失であり、Ki-1’は位置i-1の試算水頭損失であり、Ki-1~i、fは母管の位置i-1から位置iまでの沿路摩擦抵抗損失であり、
第2流路が分岐管の流入流路pであり、
【数66】
式中、
【数67】
は母管の中のi番目のT字合流口の下流のi(丸付きi)点でi番目の分岐管から水流経路pに合流する試算水頭損失であり、Ki,inはi番目の吸水ヘッドの局所抵抗係数であり、Ki,fはi番目の分岐管の沿路摩擦抵抗係数である、ステップ5と、
ステップ6:2本の流路で計算された水頭損失を比較し、つまり、分岐管流量Q’の調整及び番号iの分岐管の水頭損失
【数68】
の試算を行うごとに、すなわち、2本の流路PΣi-1とpで計算された水頭損失を比較するごとに、等しいかどうかを判断し、予想された流量精度要件に基づいて等しいと判断されたしきい値errorを設定してもよく、
【数69】
が「はい」であれば次の分岐管に入り、「いいえ」であればステップ4に戻り、試算流量を調整し、i=2からi=nまで、すなわち最下流合流口の計算が完了するまでこのように反復計算を繰り返す、ステップ6と、
ステップ7:全体計算を行い、つまり、最下流母管位置nまで計算する時、すなわちi=nである時、ここでの複合管損失係数Kを得て、すると、取水システムの全体水頭損失係数Kと全体水頭損失係数ΔHはそれぞれ以下のとおりであり、
【数70】
式中、U=Q/Aは最下流母管の平均流速であり、gは重力加速度である、ステップ7と、
を含むことを特徴とする多点取水口の水頭損失係数及び分岐管流量の配分を計算する方法。
【0030】
(付記2)
前記母管の沿路直径が異なる場合に、上記ステップにおける水頭損失Kを修正し、
correct=Korigin(A/A
式中、Adは下流母管面積であり、Auは上流母管面積であり、Koriginは未修正の水頭損失であり、Kcorrectは修正後の水頭損失である、
ことを特徴とする付記1に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】