(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】樹状細胞ベースの癌ワクチン及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/00 20060101AFI20220930BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20220930BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20220930BHJP
A61K 35/33 20150101ALI20220930BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20220930BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220930BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
C12N5/00
C12N15/09 Z
A61K39/00 H
A61K35/33
A61K35/15 Z
A61P37/04
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570798
(86)(22)【出願日】2019-05-27
(85)【翻訳文提出日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2019020891
(87)【国際公開番号】W WO2020240658
(87)【国際公開日】2020-12-03
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521518172
【氏名又は名称】錦高キャピタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 貞俊
(72)【発明者】
【氏名】大薗 美千代
(72)【発明者】
【氏名】石川 太
(72)【発明者】
【氏名】魚住 利樹
(72)【発明者】
【氏名】岡 恵理子
(72)【発明者】
【氏名】村田 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】楊 ▲フイ▼瑜
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB06
4B065AC20
4B065BA08
4B065CA45
4C085AA03
4C085BB01
4C085CC03
4C085DD23
4C085DD63
4C085EE01
4C085GG01
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB65
4C087CA04
4C087MA16
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB26
(57)【要約】
本発明は、樹状細胞ベースの癌ワクチンを調製するために、組換え細胞および融合細胞を調製する方法に関する。ここで、組換え細胞および融合細胞は、癌細胞のDNAを含む。本発明はまた、腫瘍細胞のゲノムDNAを含む融合細胞、ヒト樹状細胞と線維芽細胞を融合する方法、融合細胞を含む医薬組成物、および癌患者に有効量の融合細胞の投与を含む癌を予防する方法に向けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを含む組換え細胞を調製する方法であって、
(a)哺乳動物の結合組織から線維芽細胞を提供することと、
(b)哺乳動物の腫瘍組織から癌細胞のゲノムDNAを抽出、ここで、ゲノムDNAは、少なくとも癌に1つ特異的な抗原をコード、哺乳動物の腫瘍組織は新たに単離される物ではないこと、かつ、
(c)癌細胞のゲノムDNAを線維芽細胞に形質転換することを特徴とする組換え細胞を調製する方法。
【請求項2】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
結合組織が皮膚組織である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記哺乳動物からの腫瘍組織が新たに単離される物ではない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記哺乳動物からの腫瘍組織がパラフィンブロックに埋め込まれている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記皮膚組織が皮膚生検輸送および洗浄培地によって維持および洗浄される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記線維芽細胞が皮膚生検培養培地中で維持および培養され、皮膚生検培養培地が哺乳動物からの血漿を含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
哺乳動物由来の樹状細胞の集団、および、請求項1の組換え細胞の集団に細胞融合を促進する条件を含む、樹状細胞および組換え細胞を融合する方法。
【請求項9】
前記樹状細胞および組換え細胞が哺乳動物に対して自己由来である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞融合が電気融合によって達成される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
組換え細胞は癌細胞のゲノムDNAを含み、癌細胞のゲノムDNAは少なくとも癌に1つ特異的な抗原をコード、ゲノムDNAはパラフィンブロックに埋め込まれた腫瘍組織から単離され、前記組換え細胞は、哺乳動物の皮膚組織からの線維芽細胞であり、癌細胞および線維芽細胞は、哺乳動物に対して自己由来である、組換え細胞。
【請求項12】
前記組換え細胞が請求項1に記載の方法によって調製される、請求項11に記載の組換え細胞。
【請求項13】
融合により得られる融合細胞、
(a)樹状細胞と
(b)請求項1または請求項11に記載された組換え細胞と、
ここで、前記樹状細胞および組換え細胞は哺乳動物に対して自己由来であり、前記融合細胞は少なくとも癌に1つ特異的な抗原を含み、CD83、CD1α、CD40、CD86、CD54、CD80、またはMHC class IIを含む、融合細胞。
【請求項14】
前記融合細胞が請求項10に記載の方法によって調製される、請求項13に記載の融合細胞。
【請求項15】
請求項13に記載した融合細胞および有効量のアジュバントまたは担体を含む医薬組成物。
【請求項16】
さらに、体液免疫応答、細胞傷害性T細胞応答、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される免疫応答を刺激する分子を含む、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記分子がサイトカインである、請求項16に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹状細胞および腫瘍細胞または前癌細胞に由来するゲノムDNAを含む線維芽細胞で形成される融合細胞を含むワクチンを癌患者に投与することにより癌を治療および予防する方法に関するものと樹状細胞と繊維芽細胞で形成する融合細胞である。
【背景技術】
【0002】
ワクチンを含む免疫療法組成物は、ヘルスケア産業が疾患の予防および治療のために利用できる最も費用対効果の高い手段の1つである。しかし、病原体、癌、遺伝的欠陥、その他の免疫系の障害によって引き起こされるものを含み、様々な疾患に対して、安全で効果的な免疫療法戦略とアジュバントを開発することが依然として緊急の必要性が残っている。癌や、ウイルス性疾患や細胞内病原体による疾患を含む多くの感染症の治療には、細胞を介した(細胞性)免疫反応を誘発する免疫療法を提供することが望ましいが、多くのワクチンは主にまたは完全に体液性免疫の誘発に向けられている。実際、多くのサブユニットワクチン、および多くの死滅または弱毒化病原体ワクチンの欠点は、強い体液性免疫応答を刺激するように見えるが、防御細胞性免疫を誘発できないことである。
【0003】
癌は、主に、所与の正常組織に由来する異常細胞の数の増加、これらの異常細胞による隣接組織の浸潤、および局所リンパ節および遠隔部位への悪性細胞のリンパまたは血液媒介性の広がりを特徴とする(転移)。臨床データや分子生物学的研究によると、がんは多段階のプロセスであり、最初は小さな前新生物の変化から始まり、ある条件の下で新生物に進行する可能性がある。したがって、この多段階プロセスの進行中に、前癌細胞は、前癌細胞を正常細胞から区別する少なくとも1つの対立遺伝子を蓄積した。このような遺伝子の違いは、腫瘍特異的な抗原の発現、正常な細胞タンパク質の過剰発現、および/または正常および/または腫瘍特定的な抗原の細胞内分布の変化をもたらす。特定の例では、これらの変化により、変化した細胞表面タンパク質や、一般的に細胞表面に輸送されない正常なタンパク質が細胞表面の発現をもたらす可能性がある。
【0004】
免疫細胞活性および抗腫瘍効果を誘導する能力に関して、同じ抗原を標的とするワクチンプラットフォームを比較する多数の免疫療法研究が報告されている。
【0005】
強力な抗原提示細胞である樹状細胞は、近年、がん免疫療法のアジュバントとして利用されている。Gongらは、腫瘍細胞と融合した樹状細胞をマウスに接種することで、抗腫瘍免疫が誘導されることを報告した(Gong et al., 1997, Supra)。また、樹状細胞と腫瘍細胞の融合による臨床応用の成功も報告されている(Kugler et al., 2000, Nat Med 6,332-336)。B細胞や樹状細胞と腫瘍細胞の融合は、動物モデルで抗腫瘍免疫応答を誘発することが以前に実証されている。特に、腫瘍細胞と抗原提示細胞のハイブリッドによる免疫は、さまざまな齧歯類モデルで防御免疫をもたらすことが示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Gong et al., 1997, Supra
【非特許文献2】Kugler et al., 2000, Nat Med 6,332-336
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、癌細胞のゲノムDNAを抽出するために生きている腫瘍組織または細胞を入手および培養することは困難であり、費用がかかる。現状、癌に苦しむ患者の治療に費用対効果の高いがんワクチンを開発することは、未だにアンメットニーズである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、前記有効量の融合細胞を必要とする哺乳動物に投与することを含み、癌を予防する方法に関する。ここで、融合細胞は、樹状細胞と線維芽細胞を融合することにより形成され、線維芽細胞は、少なくとも1つ癌に特異的な抗原を表示する。線維芽細胞は癌細胞のゲノムDNAを含有する。いくつかの実施形態において、ゲノムDNAは、癌細胞またはパラフィン包埋腫瘍組織から単離される。樹状細胞と線維芽細胞は哺乳類に対して自己由来である。
【0009】
本発明の方法は、哺乳動物に対する体液性免疫応答または細胞傷害性T細胞免疫応答を刺激する分子を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、この分子はサイトカインまたはインターロイキンである。
【0010】
哺乳動物は癌に罹患する。癌には次が含まれるが、これらに限定されない。腎細胞癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨形成性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫癌、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄質癌、気管支原性癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病;慢性白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、および重鎖疾患。
【0011】
本開示も、樹状細胞の集団および線維芽細胞の集団に細胞融合を促進する条件を含み、ヒト樹状細胞および線維芽細胞を融合する方法に向けられる。ここで、線維芽細胞が、がん細胞のゲノムDNAを含み、ゲノムDNAが、少なくとも1つがんに特異的な抗原をコードする。線維芽細胞は樹状細胞に対して自己由来である。いくつかの実施形態において、細胞融合は、電気融合によって達成される。
【0012】
本開示はまた、樹状細胞および線維芽細胞を含む融合細胞にも向けられている。ここで、融合細胞は、腫瘍細胞のゲノムDNAを含み、腫瘍細胞のゲノムDNAは、少なくとも1つ癌に特異的な抗原をコードする。
【0013】
本開示はまた、本発明の融合細胞および免疫学的に有効量のアジュバントまたは担体を含む医薬組成物を含む。いくつかの実施形態では、この方法は、さらに、体液免疫応答および/または細胞傷害性T細胞応答からなる群から選択される免疫応答を刺激する分子を含む。いくつかの実施形態では、分子はサイトカインまたはインターロイキンである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、腫瘍サンプルから抽出されたゲノムDNAを含む線維芽細胞を調製するためのプロセスを示す概略図である。
【
図2A】
図2Aは、スライドおよび腫瘍組織のヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色の結果を示す一連の画像である。
【
図2B】
図2Bは、スライドおよび腫瘍組織のヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色の結果を示す一連の画像である。
【
図3】
図3は、初代培養における線維芽細胞の細胞形態を示す画像である。
【
図4】
図4は、0~9日目の初代培養における線維芽細胞の細胞増殖を示す概略図である。
【
図5】
図5は、0~13日目の初代培養における線維芽細胞の細胞形態を示す一連の画像である。
【
図6】
図6は、異なるサンプルからのmRNA発現を示すヒートマップである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、有効量の融合細胞を哺乳動物に投与することにより癌の予防に関する方法である。ここで、融合細胞は樹状細胞と線維芽細胞を融合することによって形成され、線維芽細胞は、少なくとも1つ癌に特異的な抗原を示す。線維芽細胞にはがん細胞のゲノムDNAが含まれている。
【0016】
樹状細胞
樹状細胞(DC)は、血液や骨髄、または脾臓、リンパ節、扁桃腺、腸のパイエル板や骨髄などの二次リンパ器官から当技術分野で知られている方法で分離または生成することができる。好ましい実施形態では、樹状細胞は、最終的に分化した樹状細胞である。ある実施形態では、樹状細胞はヒト血液単球から分化する。特定の実施形態において、樹状細胞は、本発明の融合細胞が投与される対象に対して自己由来である。代替の実施形態では、樹状細胞は、本発明の融合細胞が投与される対象に対して同種異系である。
【0017】
供給源から得られた免疫細胞は、典型的には、主に分化及び成熟の様々な段階の再循環するリンパ球とマクロファージを含む。樹状細胞調製物は、標準的な技術によって濃縮することができる(例えばCurrent Protocols in Immunology, 7.32.1-7.32.16, John Wiley and Sons, Inc., 1997を参照)。一つの実施形態では、例えば、樹状細胞は、T細胞および付着細胞の減耗、それに続く密度勾配遠心分離によって濃縮され得る。樹状細胞は、オプションで蛍光標識された細胞を選別、またはanti-CD83mAb磁気ビーズを使用することによって、さらに精製ができる。
【0018】
あるいは、高収量の比較的均質な樹状細胞集団は、血液サンプルまたは骨髄に存在する樹状細胞前駆細胞を顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)およびインターロイキン4(IL-4)などのサイトカインで処理することにより得られる。このような条件下では、単球は細胞増殖なしに樹状細胞に分化する。さらに、TNFαなどであるがこれに限定されない薬剤で処理することにより樹状細胞の最終分化を刺激する。
【0019】
樹状細胞は、標準的な方法に従って血液単球から得られる(例えばSallusto et al., 1994,J.Exp.Med.179:1109-1118を参照)。健康な献血者からの白血球は、Ficoll-Paque密度勾配遠心分離とプラスチック接着を使用した白血球アフェレーシスパックまたはバフィーコートにより収集される。成熟樹状細胞が望まれる場合、以下のプロトコルを使用し樹状細胞を培養できる。細胞を37℃で4時間にプラスチック皿に付着させる。非付着細胞を除去、付着した単球を0.1μg/mL顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子及び0.05μg/mLのIL-4を含む培地で7日間培養する。樹状細胞を調製するために、腫瘍壊死因子-αを5日目に添加、細胞を7日目に収集する。
【0020】
樹状細胞は細胞表面マーカーCD83を発現する。さらに、そのような細胞は、細胞表面マーカーCD1α、CD40、CD86、CD54、およびCD80と同様に、高レベルのMHCクラスII分子を特徴的に発現するが、CD14の発現を失う。他の細胞表面マーカーには、特徴的に、T細胞マーカーCD2およびCD5、B細胞マーカーCD7および骨髄細胞マーカーCD13、CD32(FcγRII)、CD33、CD36、およびCD63、ならびに多数の白血球関連抗原が含まれる。
【0021】
必要に応じて、形態学的観察や免疫化学的染色などの標準的な手法を使用、樹状細胞の存在を確認できる。例えば、樹状細胞の純度は、上記の特徴的な細胞表面マーカー、例えば、CD83、HLA-ABC、HLA-DR、CD1α、CD40、および/またはCD54の1つまたは複数に対する蛍光色素標識抗体を使用するフローサイトメトリーにより評価できる。この手法は、未成熟樹状細胞に存在するCD14に対する蛍光色素標識抗体を使用、成熟分化樹状細胞と未成熟樹状細胞の区別にも使用できる。
【0022】
線維芽細胞
本発明の線維芽細胞は、前癌細胞を区別する少なくとも1つの対立遺伝子を有する任意の線維芽細胞であり得る。線維芽細胞は、線維芽細胞、マクロファージ、および癌患者からの脂肪細胞などの様々な供給源から単離できるが、これらに限定されない。線維芽細胞はまた、融合細胞を調製するために使用される樹状細胞の供給源に応じて、患者の自己由来、同種移植または同種由来である初代細胞培養からのものであってもよい。
【0023】
線維芽細胞の供給源は、予防される癌によって選択される。好ましくは、線維芽細胞は、治療されている患者に対して自己由来である。標的細胞に少なくとも特異的な1つの抗原を含む細胞であれば、どのような線維芽細胞でも使用可能である。樹状細胞が患者に対して同種異系である一実施形態では、線維芽細胞は、治療される哺乳動物と同じクラスIMHCハプロタイプである少なくとも1つのMHCI対立遺伝子を有していてもよい。樹状細胞が患者に対して自己由来である別の実施形態において、線維芽細胞は、治療を受ける哺乳動物に対して同種異系または自己由来のものであってもよい。
【0024】
一実施形態では、本発明の線維芽細胞は、融合細胞の受容者となる哺乳動物から外科的に除去される皮膚組織から単離される。使用する前に、固体の前癌組織または凝集した前癌細胞を、標準的な技術によって、好ましくは機械的に、単一の細胞懸濁液に分散させるべきである。コラゲナーゼおよびDNAseなどの酵素もまた、癌細胞を分散させるために使用され得るが、これらに限定されない。一実施形態では、本発明の線維芽細胞は、初代細胞培養物、すなわち、身体から得られた元の細胞の培養物から得られる。好ましい一実施形態では、線維芽細胞は、哺乳動物からの血漿で培養された。
【0025】
採取した線維芽細胞の量は、樹状細胞と融合して本発明のワクチンに充分な融合細胞を調製するのに十分な量であるべきである。一実施形態では、5×107の線維芽細胞が、融合細胞の形成のための出発物質として使用される。一実施形態では、約1×106から1×109の線維芽細胞が、融合細胞の形成に使用される。別の実施形態では、5×107から2×108の線維芽細胞が使用される。さらに別の実施形態では、1×107から1×1010の線維芽細胞が使用される。融合細胞の調製のために他の量の線維芽細胞の使用は、本発明の範囲内である。
【0026】
癌細胞の抗原性を有する抗原を含む線維芽細胞は、当技術分野で知られている任意の方法で同定および単離することができる。例えば、線維芽細胞は、形態学、酵素アッセイまたは増殖アッセイによって識別できる(
図3~5を参照)。目的の抗原の特徴が知られている場合、線維芽細胞はまた、当技術分野で知られている任意の生化学的または免疫学的方法によって同定または単離することができる。例えば、線維芽細胞は、外科手術、内視鏡検査、他の生検技術、アフィニティークロマトグラフィー、および蛍光活性化セルソーティングによって単離することができる。
【0027】
線維芽細胞のクローンまたは均質または精製された集団を使用する必要はない。混合物中の相当数の細胞が標的とされる抗原を含むという条件で、細胞の混合物を使用することができる。特定の実施形態では、線維芽細胞および/または樹状細胞が精製される。
【0028】
腫瘍細胞またはパラフィン包埋腫瘍組織からのゲノムDNAで形質転換された線維芽細胞
線維芽細胞は、腫瘍細胞または抗原提示細胞を有する前癌細胞、またはパラフィン包埋腫瘍組織から抽出されたゲノムDNAを含んでいた。ゲノムDNAは、技術者に知られている任意な方法により、異なる供給源から得ることができる。ゲノムDNAは、技術者に知られている任意な方法により、非樹状細胞にトランスフェクトまたはマイクロインジェクションできる。
【0029】
ゲノムDNAは、腫瘍組織または癌細胞のゲノムDNAを含む任意の腫瘍サンプルから単離または抽出できる。腫瘍組織またはサンプルは、生きている組織/サンプルまたはパラフィンブロックに埋め込まれた組織標本の可能性がある。一つ実施形態では、ゲノムDNAは、パラフィン包埋腫瘍組織から抽出できる。本発明において、ゲノムDNAは、パラフィンブロックに埋め込まれたサンプルから得ることができる。したがって、ゲノムDNAをより簡単かつ費用効果の高い方法で取得できる。
【0030】
本発明の方法において、融合細胞を生成するための皮膚組織からの線維芽細胞は、ゲノムDNAを形質転換またはマイクロインジェクションできる必要があり、且つ樹状細胞と融合できる必要がある。技術者に知られている任意な方法を使用、皮膚組織からの線維芽細胞が本発明の方法に適しているかどうかを決定できる。一面では、皮膚組織からの線維芽細胞は、ゲノムDNAでトランスフェクトまたはマイクロインジェクションできる。別の面において、皮膚組織からの線維芽細胞は、樹状細胞と融合できる。
【0031】
特定の実施形態では、皮膚組織からの細胞は、治療される対象の種とは異なる種に由来する。あるいは、線維芽細胞は、治療される対象の種と同じ種に由来する。特定の実施形態において、線維芽細胞は、治療される対象に対して異種である。他の実施形態では、線維芽細胞は、治療される対象に対して自己由来である。特定の実施形態において、線維芽細胞は、細胞培養において維持および/または増殖される。
【0032】
技術者に知られている任意な方法を使用し、腫瘍、癌、または前癌病変の細胞からゲノムDNAを抽出できる。ゲノムDNAを単離するための例示的な方法は、当技術分野でよく知られている。ゲノムDNAは、技術者に知られている任意な方法を使用し線維芽細胞に導入できる。特定の実施形態において、ゲノムDNAは、線維芽細胞にトランスフェクトされる。より具体的な実施形態では、ゲノムDNAは、リポフェクションを使用し線維芽細胞にトランスフェクトされる。
【0033】
線維芽細胞に導入されるゲノムDNAの最適量は、技術者に周知の標準的な技術によって決定することができる。特定の実施形態において、皮膚組織からの線維芽細胞ごとに導入されるゲノムDNAの量は、少なくとも腫瘍細胞または前癌細胞の1ゲノムに相当、少なくとも腫瘍細胞または前癌細胞の10-1ゲノムに相当、少なくとも腫瘍細胞または前癌細胞の10-2ゲノムに相当、少なくとも腫瘍細胞または前癌細胞の10-3ゲノムに相当、少なくとも腫瘍細胞または前癌細胞の10-4ゲノムに相当、少なくとも腫瘍細胞または前癌細胞の10-5ゲノムに相当、少なくとも腫瘍細胞または前癌細胞の10-6ゲノムに相当、または少なくとも腫瘍細胞または前癌細胞の10-7ゲノムに相当する。
【0034】
特定の実施形態において、ゲノムDNAは、マイクロインジェクションを使用して線維芽細胞に導入される。特定の実施形態において、ゲノムDNAのフラグメントは、ゲノムDNAの増殖のためにベクターにパッケージ化される。このようなベクターには、バクテリオファージ、コスミド、またはYACが含まれるが、これらに限定されない。技術者に知られている任意な方法を使用し、ゲノムDNAをパッケージングおよび増殖させることができる。
【0035】
ゲノムDNAが皮膚組織由来の線維芽細胞に導入されると、線維芽細胞は、1つまたは複数の抗原を発現し、これらの抗原は、ゲノムDNAが単離される腫瘍細胞、新生物細胞、または前癌細胞に発現される。本発明の特定の実施形態において、線維芽細胞は、腫瘍または前癌病変の抗原性を示す分子が1つ以上を含む。特定の実施形態では、抗原は、腫瘍または前癌病変を有する対象者の他の組織よりも、腫瘍または前癌病変において少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、または100倍高いレベルで発現している。
【0036】
図1に示すように、よく知られた標準的な技術によって、皮膚組織からの線維芽細胞などの線維芽細胞が得られる。この線維芽細胞に核酸、好ましくはDNAを形質転換する。癌細胞のゲノムDNAなどのDNAは、パラフィンブロックに埋め込まれた腫瘍組織から抽出される。その後、DNAを導入した線維芽細胞をマイトマイシンなどの抗生物質で処理し、癌細胞の増殖を抑制してもよい。この線維芽細胞は、続いて詳細に説明する樹状細胞との融合に用いることができる。
【0037】
線維芽細胞および樹状細胞の融合
本開示はまた、樹状細胞と皮膚組織からの線維芽細胞との融合細胞を含む。融合細胞は腫瘍細胞のゲノムDNAを含み、腫瘍細胞のゲノムDNAは少なくとも癌に1つ特異的な抗原をコードする。
【0038】
本開示も、樹状細胞の集団および線維芽細胞の集団に細胞融合を促進する条件を含み、ヒト樹状細胞および線維芽細胞を融合する方法に向けられる。
【0039】
線維芽細胞は、以下のように樹状細胞に融合させることができる。細胞は、癌の予防に哺乳動物への注射に適した融合細胞の混合物をもたらすという条件で、当技術分野の任意な細胞融合技術に従って滅菌洗浄および融合される。好ましくは、電気融合が使用される。電気融合技術は当技術分野で周知である(Stuhler and Walden, 1994, Cancer Immunol. Immunother. 39: 342-345; see Chang et al. (eds.), Guide to Electroporation and Electrofusion. Academic Press, San Diego, 1992を参照)。
【0040】
好ましい実施形態では、以下のプロトコルが使用される。最初のステップで、約5×107の前癌性非樹状細胞と5×107の樹状細胞を0.3Mグルコースに懸濁、電気融合キュベットに移す。細胞サンプルを100V/cmで5~10秒間パルスすることにより、サンプルを誘電泳動で整列させて細胞間コンジュゲートを形成する。必要に応じて、エレクトロポレーションキュベットの1つ側面に誘電性ワックスを一滴塗布して電界を「不均一化」し、細胞を最高の電界強度の領域に向けることにより、位置合わせを最適化できる。2番目のステップで、融合パルスが適用される。電気融合には様々なパラメータを使用できる。例えば、一つの実施形態で、融合パルスは、単一パルスから三重パルスまでであり得る。別の実施形態で、電気融合は、約25μFで500から1500V/cm、好ましくは1200V/cmを使用して達成される。
【0041】
好ましい実施形態では、以下のプロトコルが使用される。最初のステップで、非樹状細胞を100μg/mLのマイトマイシンCで10時間処理、細胞の増殖を防ぐ。その後、非樹状細胞をPBSで洗浄、0.05%トリプシン-EDTAで処理する。次に、非樹状細胞と樹状細胞を混合、洗浄、PBSで遠心分離する。次に、沈殿した細胞に0.5mLの50%ポリエチレングリコール(PEG)を加え、37℃に温めた後、正確に1分間インキュベートする。さらに、沈殿した細胞に無血清RPMI-1640培地7mLを加え、37℃に温めてPEGを希釈する。必要に応じて、8mLの10%FCS含有のRPMI-1640培地を希釈のために添加する。最後に、遠心分離によってPEGを除去、沈殿した細胞を、rh GM-CSF(10ng/mL)、rh IL-4(10ng/mL)、およびrhTNF-α(10ng/mL)を添加した2%不活化自己血漿添加のAIM-V培地に懸濁する。
【0042】
好ましい実施形態では、線維芽細胞は、本発明の融合細胞が投与される患者に対して自己由来である。別の好ましい実施形態では、樹状細胞は、本発明の融合細胞が投与される患者に対して自己由来である。さらにより好ましい実施形態において、前癌性非樹状細胞および樹状細胞の両方は、本発明の融合細胞が投与される患者に対して自己由来である。
【0043】
別の実施形態では、樹状細胞および皮膚組織からの細胞は、上記のように融合される。続いて、融合細胞は、CTLおよび/または体液性免疫応答を刺激する分子をコードする遺伝物質を形質転換またはトランスフェクトされる。好ましい実施形態では、遺伝物質は、IL-12をコードするmRNAである。好ましいトランスフェクション方法には、カチオン性ポリマーの存在下でのエレクトロポレーションまたは形質転換またはトランスフェクションが含まれる。
【0044】
線維芽細胞および樹状細胞集団内の融合細胞形成の程度は、当技術分野で知られているいくつかの診断技術によって決定できる。一つ実施形態では、例えば、ハイブリッドは、樹状細胞および線維芽細胞をそれぞれ赤および緑の細胞内蛍光色素で標識、両方の色の発光を検出することを特徴とする。
【0045】
免疫細胞活性化分子
本発明は、樹状細胞および皮膚組織からの線維芽細胞を融合した融合細胞を含む組成物を提供する。特定の実施形態において、本発明の組成物は、細胞傷害性T細胞(CTL)応答および/または体液性応答を刺激或いは誘導できるサイトカインまたは他の分子をさらに含む。好ましい実施形態では、CTL刺激分子は、IL-4、IL-12、IL-15、またはIL-18である。
【0046】
標的癌
本発明の融合細胞を使用し予防および治療できる癌腫と発癌性疾患、ならびにそれらの癌腫と発癌性疾患の発症につながる前癌性病変には、以下が含まれる。ただしこれらに限定されない:ヒト肉腫および癌腫、例えば、腎細胞癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨形成性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫癌、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄質癌、気管支原性癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫。白血病、例えば、急性リンパ性白血病および急性骨髄性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性および赤白血病)、慢性白血病(慢性骨髄性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病と非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、および重鎖疾患。
【0047】
医薬品の調製および投与方法
本開示も、開示された融合細胞を含む医薬組成物に向けられる。
本発明の組成物製剤は、投与される融合細胞の有効な免疫量を含む。本発明の医薬組成物の融合細胞は、樹状細胞や普遍的な抗原提示細胞などの抗原提示細胞と、皮膚組織からの細胞を融合することによって形成できる。ここで、皮膚組織からの細胞は、癌細胞、前癌病変の細胞、またはパラフィン包埋腫瘍組織から抽出されたゲノムDNAか、cDNAまたはcDNAライブラリーは癌細胞、前癌病変の細胞、またはパラフィン包埋腫瘍組織に由来する物を含む。特定の実施形態において、本発明の融合細胞は、治療または予防される癌に1つ以上の特異的な抗原を発現する。
【0048】
適切な融合細胞の調製物は、好ましくは液体溶液である注射可能な製剤を含む。
【0049】
医薬組成物は、注射可能な液体溶液または懸濁液で調製できる。医薬組成物は、任意に適切な適用様式、例えば、i.d.、i.v.、i.p.、i.m.、鼻腔内、経口、皮下など、および任意に適切な伝達装置で投与できる。特定の実施形態において、医薬組成物は、静脈内、皮下、皮内、または筋肉内投与用に製剤化されている。経口および鼻腔内投与を含み、他の投与様式に適した医薬組成物も調製できる。
【0050】
医薬組成物は、即時放出または持続放出製剤に製剤できる。さらに、医薬組成物は、免疫原の捕捉および微粒子との同時投与により全身性または局所的な粘膜免疫の誘導に調製できる。そのような伝達システムは、本領域の一般技術者によって容易に決定される。
【0051】
医薬組成物はまた、適切な投薬単位形態で製剤される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、体重1kgあたり約0.5μgから約1mgのタウペプチド免疫原構築物を含む。医薬組成物の有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか動物であるか、投与される他の薬物、および処置が予防的であるか治療的であるかを含み、多くの異なる要因に応じて変化する。通常、患者はヒトですが、トランスジェニック哺乳動物を含む非ヒト哺乳動物も治療できる。複数回投与で伝達される場合、医薬組成物は、投与単位形態ごとに適切な量に都合よく分割できる。投与される投与量は、治療分野でよく知られているように、対象の年齢、体重、および一般的な健康状態に依存する。
【0052】
さらに、必要に応じて、組成物調製物はまた、湿潤剤や乳化剤、pH緩衝剤、および/または組成物の有効性を高める化合物などの少量の補助物質を含み得る。補助物質の有効性は、融合細胞に対する抗体の誘導を測定することにより決定できる。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、ミョウバンゲル、リン酸アルミニウム、或いは油中水型エマルジョンを含むミネラル塩などのアジュバントまたは担体を含む。
【0053】
組成物が投与される哺乳動物は、好ましくはヒトであるが、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、家禽(例えば、ニワトリ)、ヤギ、ネコ、イヌ、ハムスター、マウス、ラットを含み、これらに限定されない非ヒト動物でもあり得る。
【0054】
特定の実施形態
(1)組換え細胞を調製する方法が以下のステップを含む:
(a)哺乳動物の結合組織から線維芽細胞を提供する。
(b)哺乳動物の腫瘍組織から癌細胞のゲノムDNAを抽出する。ここで、ゲノムDNAは、少なくとも癌に1つ特異的な抗原をコード、哺乳動物の腫瘍組織は新たに単離される物ではない。加えて
(c)癌細胞のゲノムDNAを線維芽細胞に形質転換する。
(2)(1)に記載した方法により、ここでの哺乳動物がヒトである。
(3)(1)に記載した方法により、ここでの結合組織が皮膚組織である。
(4)(1)に記載した方法により、ここでの哺乳動物からの腫瘍組織が新たに単離される物ではない。
(5)(1)に記載した方法により、ここでの哺乳動物由来の腫瘍組織がパラフィンブロックに埋め込まれている。
(6)(3)に記載した方法により、ここでの皮膚組織が皮膚生検輸送および洗浄溶液に
よって維持と洗浄される。
(7)(1)に記載した方法により、ここでの線維芽細胞が皮膚生検培養培地中で維持と
培養され、皮膚生検培養培地が哺乳動物からの血漿を含む。
(8)樹状細胞および組換え細胞を融合する方法は、哺乳動物由来の樹状細胞の集団
および(1)の組換え細胞の集団に細胞融合を促進する条件を含む。
(9)(8)に記載した方法により、ここでの樹状細胞および組換え細胞が哺乳動物に
対して自己由来である。
(10)(8)に記載した方法により、ここでの細胞融合が電気融合によって達成される。
(11)組換え細胞は癌細胞のゲノムDNAを含み、癌細胞のゲノムDNAは少なくとも癌に1つ特異的な抗原をコード、ゲノムDNAはパラフィンブロックに埋め込まれた腫瘍組織から単離される。ここで組換え細胞は、哺乳動物の皮膚組織からの線維芽細胞であり、癌細胞および線維芽細胞は、哺乳動物に対して自己由来である。
(12)(11)に記載した組換え細胞は、組換え細胞が(1)の方法によって調製される。
(13)融合細胞は融合によって得られる:
(a)樹状細胞 と
(b)(1)または(11)に記載した組換え細胞
ここで、樹状細胞および組換え細胞は哺乳動物に対して自己由来であり、融合細胞は少なくとも癌に1つ特異的な抗原を含み、融合細胞はCD83, CD1α, CD40, CD86, CD54, CD80またはMHC class IIを含む。
(14)(13)に記載した融合細胞は、(10)に記載の方法によって調製される。
(15)医薬組成物は(13)に記載した融合細胞および有効量のアジュバントまたは
担体を含む。
(16)(15)に記載した医薬組成物は、さらに、体液免疫応答、細胞傷害性T細胞応答、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される免疫応答を刺激する分子を含む。(17)(16)に記載した医薬組成物には、その分子がサイトカインである。
【実施例1】
【0055】
ゲノムDNAを含む線維芽細胞の調製
皮膚生検輸送と洗浄培地及び皮膚生検培養培地の調製
「皮膚生検輸送と洗浄培地」および「皮膚生検培養培地」の両方が調製される。皮膚生検培養培地はパーソナライズされる。
【0056】
皮膚生検輸送と洗浄培地は以下の成分を含む:RPMI1640、ウシ胎児血清、ペニシリンストレプトマイシン、およびゲンタマイシン溶液。
【0057】
皮膚生検培養培地は以下の成分を含む:HFDM-1(+)、哺乳動物からの血漿、ペニシリンストレプトマイシン。哺乳類からの血漿は患者に自家である。
【0058】
線維芽細胞の調製
線維芽細胞は皮膚組織から得られた。皮膚組織は、融合細胞の調製に使用される樹状細胞の供給源に応じて、患者にとって自家、同系、または同種異系であり得る。皮膚組織は、皮膚生検輸送および洗浄培地によって維持および洗浄された。皮膚組織はホモジナイザーによって均質化された。線維芽細胞は、皮膚生検培養培地で維持および培養された。線維芽細胞は、Miltenyi biotec(注文番号:130-101-540)のWhole Skin Dissociation Kit(ヒト)を使用して分散させる。
【0059】
線維芽細胞を調製する方法は以下のステップを含む
(a)皮膚組織を取得する。
(b)皮膚生検輸送および洗浄培地で皮膚組織を維持および洗浄する。
(c)ホモジナイザーによって皮膚組織を均質化し、線維芽細胞を取得する。
(d)皮膚生検培養培地で線維芽細胞を培養する。
(e)皮膚生検培養培地で線維芽細胞を継代培養する。
(f)線維芽細胞を採取または凍結する。
【0060】
酵素分散法による真皮線維芽細胞の初代培養プロトコル
1.線維芽細胞酵素分散法
【0061】
【0062】
皮膚組織採取容器の準備:25mLの輸送培地を皮膚組織採取容器に分注、提携医療機関に出荷する。
【0063】
保管、収集した皮膚生検組織を受け取る:受容試験(輸送培地の無菌試験)。
【0064】
【0065】
線維芽細胞培養操作:
(1)酵素分散専用容器(Cチューブ)で酵素液を調製する。
(2)1mLの組織洗浄液を25mLのチューブに分注する。クリニックから受け取った皮膚生検を洗う。
(3)皮膚生検をCチューブに移し、蓋をしっかりと閉める。37℃、5%CO2インキュベーターでの酵素反応処理(3時間から一晩)(3時間反応の場合、皮膚生検を4つに分ける)。
【0066】
2.線維芽細胞初代培養T25フラスコにまく。
【0067】
【0068】
【0069】
初代培養操作:
(1)14.5mLの培地を15mLのチューブに注ぐ。
(2)酵素分散容器(Cチューブ)をインキュベーターの15mLチューブから取り出す。
500μLの培地を加え、蓋をしっかりと閉める。
(3)CチューブをgentleMACS(自動組織破壊クラッシャー)に設定、プログラムを開始する。
(4)プログラム終了後、2mLの培地を加える。70μmメッシュフィルターで15mLチューブに収集する。
(5)もう一度2mLの培地を加え、遠心分離(フラッシュ)する。70μmメッシュフィルターで15mLチューブに収集する。
(6)十分に攪拌した後、30μLの細胞溶液を採取、計算用1.5mLチューブと混合する。血球計算盤にロードする。
(7)位相差顕微鏡で細胞数を数える。
(8)遠心分離(1200rpm、5分)。
(9)上清を吸引した後、10mLの培地に懸濁、T25フラスコに移す。
(10)37℃、5%CO2インキュベーターで培養する。
【0070】
3.線維芽細胞T25フラスコからT225フラスコへの継代。
【0071】
【0072】
線維芽細胞継代の調製:
培地、PBS、トリプシンEDTAを室温に戻す。
【0073】
継代操作:
(1)培養上清10mLをT225cm2フラスコに移す。
(2)5mL PBSを加えて除去、2mLトリプシンEDTAを加え、室温で1分間処理してから、除去する。
(3)30mLの培地をT225cm2フラスコにピペットで入れる。
(4)フラスコをはじいて剥がし、5mLの培地を加えます。一部を15mLチューブに入れる。
(5)染色せずに、オートセルカウンターで細胞数を数える。
(6)細胞溶液全体をT225cm2フラスコに移す。
(7)37℃、5%CO2インキュベーターでインキュベートする。
【0074】
4.線維芽細胞T225フラスコを凍結した。
【0075】
【0076】
線維芽細胞凍結の準備:
【0077】
培地、PBS、トリプシンEDTAを室温に戻す。また、血清チューブの凍結管理バーコードラベルを発行する。
【0078】
凍結操作:
(1)培養上清を吸引する。
(2)15mLのPBSを加えてから取り除き、次に5mLのトリプシンEDTAを加えた。 室温で1分間保持する。
(3)3フラスコを裏返して剥がし、11mLの培地を加える。50mLチューブに移す。
(4)1mLを検体保存チューブに移し、-20℃で保存する。
(5)染色せずに、オートセルカウンターで細胞数を数える。
(6)凍結保存細胞濃度1x106 cell/mL。
(7)遠心分離(1200rpm、5分)。
(8)必要な数の血清チューブを準備、バーコードラベルを貼り付け、細胞数を入力する。
(9)上清を吸引した後、1mLの凍結細胞保存液で懸濁、溶液を計算する。必要な量まで一時停止する。
(10)血清チューブに注ぎ、バイセルに入れます。
(11)-80℃の冷凍庫で凍結します。
【0079】
図3~5は、0~13日目の初代培養における線維芽細胞の細胞形態、および0~9日目の初代培養における線維芽細胞の増殖速度を示している。
【0080】
ゲノムDNAの単離
パラフィンブロックに埋め込まれた腫瘍組織は、腫瘍サンプルとして医療機関から入手された。腫瘍サンプルはヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色され、腫瘍組織の抗原性を確認するために医師によって決定された。パラフィンブロックはキシレンで脱ロウされた。腫瘍組織をフェノールとエタノールで処理、腫瘍組織のゲノムDNAを抽出および沈殿させた。ゲノムDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して増幅、-20℃で保存した。
【0081】
ゲノムDNAを調製する方法が以下のステップを含む:
(a)パラフィンブロックに埋め込まれた腫瘍組織を取得
(b)パラフィンブロックをヘマトキシリン・エオシン(H&E)で染色、腫瘍組織の抗原性を確認
(c)キシレンによるパラフィンブロックの脱ロウ
(d)フェノールとエタノールによる腫瘍組織のゲノムDNAの抽出と沈殿
(e)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用してゲノムDNAを増幅
(f)ゲノムDNAを-20℃で保存
【0082】
図2は、スライドと腫瘍組織のヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色の結果を示している。
【0083】
以下の表7は、癌患者からのゲノムDNAサンプルのO.D.260/280検出結果を示す。
【0084】
【0085】
腫瘍細胞のゲノムDNAを含む線維芽細胞の調製
皮膚組織は、癌患者から得られた。皮膚組織を皮膚生検輸送と洗浄培地で洗浄、超音波処理を使用して破壊して皮膚線維芽細胞を得た。皮膚線維芽細胞を皮膚生検培養培地で数時間継代培養した。線維芽細胞は、リポフェクションによってパラフィンブロックに埋め込まれた腫瘍組織から得られたゲノムDNAで形質転換された。形質転換された線維芽細胞をトランスフェクション培地で培養、マイトマイシンで処理して癌細胞の増殖を阻害した。
【0086】
がん抗原(線維芽細胞+癌ゲノム核酸)を産生するためのプロトコル。
【0087】
1.トランスフェクションのための線維芽細胞の播種
【0088】
【0089】
(1)9mLの培地を15mLのチューブにピペットで入れる。
(2)凍結した細胞を37℃で速やかに溶解、細胞溶液を15mLチューブに移す。
(3)染色されていない状態で、自動セルカウンターで細胞数を数える。
(4)遠心分離(1200rpm、5分、RT)。
(5)上清を捨て、0.1x106細胞/mLと計算された培地量で懸濁する。
(6)6ウェルプレートに各2mLを接種する。(0.2x106細胞/2mL/ウェル)
(7)37℃、5%CO2インキュベーターでインキュベートする。
【0090】
2.トランスフェクション操作
【0091】
【0092】
(1)125μLのオプチ培地を1.5mLチューブ(L1、T1)にピペットで入れる。
(2)7.5μLのリポフェクタミン3000を1.5mLチューブ(L1)にピペットで入れる。
(3)4.0μLのP3000試薬を1.5mLチューブ(T1)に注ぐ。
(4)2μgのDNAを1.5 mLチューブ(T1)に加える。
(5)総量1.5mLチューブ(L1)を1.5mLチューブ(T1)に加える。10分間放置する。
(6)細胞板に異常がないかを観察する。
(7)培養上清を捨て、2mLの10%FBS-optiMEMを加える。
(8)静置後、各抗原である線維芽細胞に全量1.5mLチューブ(T1)を加える。
【0093】
3.マイトマイシン治療(癌細胞の増殖阻害)
【0094】
【0095】
(1)細胞板に異常がないかを観察する。
(2)培養上清を取り除き、1mLの10%FBS-RPMIを加える。
(3)マイトマイシン200μL(500μg/mL)(処理濃度100μg/mL)を加える。
(4)37℃、5%CO2インキュベーターで少なくとも10時間に処理する。
【0096】
4.がん抗原細胞の収集および凍結
【0097】
【0098】
(1)7mL10%FBS-RPMIを15mLチューブに分注する。
(2)細胞板に異常がないかを観察する。
(3)培養上清を回収、1mLのPBSで洗浄した後に細胞を回収する。1mLの0.05%トリプシンEDTAを追加、37℃で5分間放置する。
(4)細胞を剥がし、15mLチューブに回収する。
(5)遠心分離(1200rpm、5分、RT)。
(6)上清を捨て、2mLのPBSで懸濁する。
(7)位相差顕微鏡で視覚的にカウント(トリパン2倍希釈)した後に、細胞数を計算する。
(8)遠心分離(1200rpm、5分、RT)。
(9)上清を捨て、1000μLの凍結細胞保存液に懸濁、クライオチューブに加える。分注してバイセルに入れ、-80℃で凍結する。
【0099】
線維芽細胞はがん細胞のゲノムDNAを含み、ゲノムDNAは少なくともがんに1つ特異的な抗原をコードする。結果を確認するために、以下の分析方法を用いる。
【0100】
リポフェクションによって線維芽細胞に導入された遺伝子のマイクロアレイによるmRNA発現の分析。ランダムプライマーによるゲノムDNAおよび増幅されたゲノムは、リポフェクションによって線維芽細胞にトランスフェクトされます。核酸を導入し、マイクロアレイ(単色法)によりRNA発現解析を行った。
【0101】
【0102】
操作の概要:
-線維芽細胞の播種
-トランスフェクション
-トランスフェクションサンプルの収集と冷凍(-80℃)
-RNA抽出
-マイクロアレイ発現解析
【0103】
マイクロアレイ分析概要:
-分析業者:タカラバイオ株式会社
-名前:Agilent Expression Array Analysis
-ラベリング方法:単色法
-CHIPタイプ:対象人種
-アレイ名:SurePrint G3 Human GE v38x60K Microarray
-デザインID:72363
【0104】
「シャム」は、DNAを使用せずに導入処理のみを行った線維芽細胞のサンプルである。「BlockPCR」は、肺がんの病理標本から抽出したDNAをテンプレートとしてPCR増幅して導入した線維芽細胞のサンプルである。解析結果は、偽転写物(有効判定0)とBlockPCR転写物(有効判定2)の遺伝子発現の違いを示している。t検定の有意差は95%、またその以上が記載されている(257件の結果)。遺伝子の記号と説明を選択的に以下に示す。
【0105】
【0106】
「BlockDNA」は、パラフィンブロック内の肺癌病理学的標本から抽出されたDNAを導入した線維芽細胞のサンプルである。解析結果は、偽転写物(有効判定0)とBlockDNA転写物(有効判定2)の遺伝子発現の違いを示している。t検定の有意差は95%、またその以上が記載されている(410件の結果)。遺伝子の記号と説明を選択的に以下に示す。
【0107】
【0108】
「SlidePCR」は、肺がんの病理生検から抽出されたDNAをPCRで増幅して導入した線維芽細胞からのサンプルである。解析結果は、偽転写物(有効判定0)とSlidePCR転写物(有効判定2)の遺伝子発現の違いを示している。t検定の有意差は95%、またその以上が記載されている(59件の結果)。遺伝子の記号と説明を選択的に以下に示す。
【0109】
【0110】
「CelllineDNA」は、細胞株から抽出したDNAを導入した線維芽細胞のサンプルである。解析結果は、偽転写物(有効判定0)と細胞株DNA転写物(有効判定2)の遺伝子発現の違いを示している。t検定有意差は95%、またその以上が記載されている(108件)。遺伝子の記号と説明を選択的に以下に示す。
【0111】
【0112】
図6は、さまざまなサンプルからのmRNA発現のヒートマップを示している。系統樹は変異の差が大きい上位1000個の遺伝子から作成された。
【0113】
【国際調査報告】