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特表2022-542750アイトラッキング撮像における迷光抑制
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】アイトラッキング撮像における迷光抑制
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/00 20210101AFI20220930BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20220930BHJP
   G02B 1/115 20150101ALI20220930BHJP
【FI】
G03B17/00 Q
G02B27/02 Z
G02B1/115
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572292
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(85)【翻訳文提出日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 US2020043714
(87)【国際公開番号】W WO2021025887
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】16/534,861
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515046968
【氏名又は名称】メタ プラットフォームズ テクノロジーズ, リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】META PLATFORMS TECHNOLOGIES, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110002974
【氏名又は名称】弁理士法人World IP
(72)【発明者】
【氏名】ハツィリアス, カロル コンスタンティン
(72)【発明者】
【氏名】チャン, チー
(72)【発明者】
【氏名】リャオ, クリストファー ユアン-ティン
(72)【発明者】
【氏名】シャーマ, ロビン
(72)【発明者】
【氏名】アウダーカーク, アンドリュー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレーフ, グレゴリー オレゴビッチ
【テーマコード(参考)】
2H199
2K009
【Fターム(参考)】
2H199CA04
2H199CA23
2H199CA24
2H199CA25
2H199CA67
2H199CA69
2H199CA70
2H199CA92
2H199CA96
2K009CC03
2K009CC06
(57)【要約】
本開示は、迷赤外光を抑制するように構成された光学システムとニアアイ光学要素(110)とを含む。赤外照明器(126、237)が、アイトラッキングのために狭帯域赤外照明光でアイボックスエリアを照明する。コンバイナ層(240)が、ユーザの眼の反射される反射された赤外光を受光し、反射された赤外光を、ユーザの眼のアイトラッキング画像をキャプチャするように構成されたカメラ(108)に向ける。反射防止(AR)コーティング(723)が、迷光を生成するフレネル反射を低減するためにベース湾曲上に配設され得る。ゴースト抑制構成要素(533)が、カメラ(108)に入射するようになる迷光を低減するために赤外照明器とペアにされ得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイトラッキングのために狭帯域赤外照明光をアイボックスエリアに向けるように構成された赤外照明器と、
ユーザの眼のアイトラッキング画像をキャプチャするように構成されたカメラと、
前記ユーザの前記眼から反射する前記狭帯域赤外照明光の反射された赤外光を受光し、前記アイトラッキング画像を生成するために前記反射された赤外光を前記カメラに向けるように構成されたコンバイナ層と、
ベース湾曲上に配設された反射防止(AR)コーティングであって、前記ARコーティングの透過スペクトルが、第1の入射角(AOI)範囲にわたる可視光についての極めて高い透過率と、第2のAOI範囲にわたる狭帯域の赤外光についての極めて高い透過率とについて調整され、前記狭帯域の赤外光が前記狭帯域赤外照明光に対応する、反射防止(AR)コーティングと
を備えた、光学システム。
【請求項2】
前記可視光についての前記第1のAOI範囲が±40度超であり、前記狭帯域赤外照明光についての前記第2のAOI範囲が±40度超であり、好ましくは、前記ARコーティングの前記透過スペクトルが、前記第1のAOIにわたる前記可視光の90%超を透過し、前記ARコーティングの前記透過スペクトルが、前記第2のAOIにわたる前記狭帯域の赤外光の95%超を透過する、請求項1に記載の光学システム。
【請求項3】
第2のARコーティングが前記コンバイナ層の裏面上に配設され、好ましくは、前記狭帯域赤外照明光が800nmを上回る、請求項1または2に記載の光学システム。
【請求項4】
前記コンバイナ層を通って伝搬し、次いで前記ベース湾曲を通って伝搬するディスプレイ光を提供するように構成されたディスプレイ層であって、好ましくは、前記ベース湾曲が、前記光学システムのユーザのためにディスプレイ光中に含まれる仮想画像を集束させるように構成された、ディスプレイ層
をさらに備えた、請求項1から3のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項5】
前記ARコーティングが、
複数の二酸化チタン副層と、
複数の二酸化ケイ素副層と
を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項6】
前記ARコーティングが、
複数の酸化ハフニウム副層と、
複数のフッ化マグネシウム副層と
を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項7】
赤外光源であって、前記赤外光源の出力アパーチャから赤外照明光を放出するように構成された、赤外光源と、
前記赤外光源の前記出力アパーチャの上に配設されたビーム整形オプティックであって、前記ビーム整形オプティックが、前記赤外照明光をアイボックスエリアに向けるように構成された、ビーム整形オプティックと、
透明材料と、
前記赤外照明光が、前記赤外照明光を画像化するように構成されたアイトラッキングカメラに入射した迷赤外照明光になるのを抑制するように構成されたゴースト抑制構成要素と
を備える、ニアアイ光学要素。
【請求項8】
前記ビーム整形オプティックが、高い屈折率を有する高屈折率材料から形成されたレンズ湾曲を含み、好ましくは、前記高い屈折率が3よりも大きい、請求項7に記載のニアアイ光学要素。
【請求項9】
前記ゴースト抑制構成要素が、前記レンズ湾曲と前記透明材料との間に配設された反射防止(AR)コーティングを含み、好ましくは、前記ゴースト抑制構成要素が、前記ARコーティングの上に配設されたマイクロルーバーアレイフィルムを含み、前記マイクロルーバーアレイフィルムが、設計された入射角外の前記マイクロルーバーアレイフィルムに入射する前記赤外照明光を吸収するように構成されている、請求項8に記載のニアアイ光学要素。
【請求項10】
ゴースト抑制要素が、前記レンズ湾曲の上に配設されたマイクロルーバーアレイを含む、請求項8に記載のニアアイ光学要素。
【請求項11】
前記ビーム整形オプティックが、前記赤外照明光を前記アイボックスエリアに向けるように構成された回折光学要素を含む、請求項7から10のいずれか一項に記載のニアアイ光学要素。
【請求項12】
前記ゴースト抑制構成要素が、前記赤外光源に隣接するオブスキュレーション要素を含み、前記オブスキュレーション要素が、前記赤外光源の前記出力アパーチャと前記アイトラッキングカメラとの間に配設されている、請求項7から11のいずれか一項に記載のニアアイ光学要素。
【請求項13】
アイトラッキングのために狭帯域赤外照明光をアイボックスエリアに向けるように構成された複数の赤外照明器を含む照明層であって、前記赤外照明器が、赤外光源と、ビーム整形オプティックと、前記ビーム整形オプティックの上に配設された第1の反射防止(AR)コーティングとを含む、照明層と、
ユーザの眼から反射する前記狭帯域赤外照明光の反射された赤外光を受光し、アイトラッキング画像を生成するために前記反射された赤外光をカメラに向けるように構成されたコンバイナ層と、
ベース湾曲を有する透明層であって、第2のARコーティングが前記ベース湾曲上に配設された、透明層と
を備える、ニアアイ光学要素。
【請求項14】
前記照明層が、前記透明層と前記コンバイナ層との間に配設されている、請求項13に記載のニアアイ光学要素。
【請求項15】
前記第1のARコーティングが、±40度入射角(AOI)にわたる可視光についての90%超の透過率と、±40度AOIにわたる狭帯域の赤外光についての95%の透過率とについて調整され、前記狭帯域の赤外光が前記狭帯域赤外照明光に対応する、請求項13または14に記載のニアアイ光学要素。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
いくつかの光学システムは、ユーザの眼の画像をキャプチャすることから恩恵を受け得る。たとえば、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)は、ユーザの閲覧エクスペリエンスを向上させ得るアイトラッキング機能を実施し得る。アイトラッキングは、いくつかの場合には、ユーザの眼を照明することと、次いで、照明された眼の画像をキャプチャすることとによって補助され得る。しかしながら、様々なコンテキストが、画像を分析するのに十分なコントラストを含む眼の画像をキャプチャすることに対する課題を生じ得る。特に、迷光は光学システムを通って伝搬し、カメラによって受光され、それにより、所望の撮像光学経路に沿って伝搬する光について背景雑音を増加させ得る。
【発明の概要】
【0002】
本発明の第1の態様によれば、光学システムが提供され、光学システムは、アイトラッキングのために狭帯域赤外照明光をアイボックスエリアに向けるように構成された赤外照明器と、ユーザの眼のアイトラッキング画像をキャプチャするように構成されたカメラと、ユーザの眼から反射する狭帯域赤外照明光の反射された赤外光を受光し、アイトラッキング画像を生成するために反射された赤外光をカメラに向けるように構成されたコンバイナ層と、ベース湾曲上に配設された反射防止(AR)コーティングであって、ARコーティングの透過スペクトルが、第1の入射角(AOI)範囲にわたる可視光についての極めて高い透過率と、第2のAOI範囲にわたる狭帯域の赤外光についての極めて高い透過率とについて調整され、狭帯域の赤外光が狭帯域赤外照明光に対応する、反射防止(AR)コーティングとを備える。
【0003】
可視光についての第1のAOI範囲は±40度超であり得る。狭帯域赤外照明光についての第2のAOI範囲は±40度超であり得る。
【0004】
ARコーティングの透過スペクトルは、第1のAOIにわたる可視光の90%超を透過し得る。ARコーティングの透過スペクトルは、第2のAOIにわたる狭帯域の赤外光の95%超を透過し得る。
【0005】
第2のARコーティングはコンバイナ層の裏面上に配設され得る。
【0006】
狭帯域赤外照明光は800nmを上回り得る。
【0007】
光学システムは、コンバイナ層を通って伝搬し、次いでベース湾曲を通って伝搬するディスプレイ光を提供するように構成されたディスプレイ層をさらに備え得る。
【0008】
ベース湾曲は、光学システムのユーザのためにディスプレイ光中に含まれる仮想画像を集束させるように構成され得る。
【0009】
ARコーティングは、複数の二酸化チタン副層を含み得る。追加または代替として、ARコーティングは、複数の二酸化ケイ素副層を含み得る。
【0010】
ARコーティングは、複数の酸化ハフニウム副層を含み得る。追加または代替として、ARコーティングは、複数のフッ化マグネシウム副層を含み得る。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、ニアアイ光学要素が提供され、ニアアイ光学要素は、赤外光源であって、赤外光源の出力アパーチャから赤外照明光を放出するように構成された、赤外光源と、赤外光源の出力アパーチャの上に配設されたビーム整形オプティック(beam shaping optic)であって、ビーム整形オプティックが、赤外照明光をアイボックスエリアに向けるように構成された、ビーム整形オプティックと、透明材料と、赤外照明光が、赤外照明光を画像化するように構成されたアイトラッキングカメラに入射した迷赤外照明光になるのを抑制するように構成されたゴースト抑制構成要素とを備える。
【0012】
ビーム整形オプティックは、高い屈折率(high refractive index)を有する高屈折率材料(high-index material)から形成されたレンズ湾曲を含み得る。
【0013】
高い屈折率は3よりも大きいことがある。
【0014】
ゴースト抑制構成要素は、レンズ湾曲と透明材料との間に配設された反射防止(AR)コーティングを含み得る。
【0015】
ゴースト抑制構成要素は、ARコーティングの上に配設されたマイクロルーバーアレイフィルムを含み得る。マイクロルーバーアレイフィルムは、設計された入射角外のマイクロルーバーアレイフィルムに入射する赤外照明光を吸収するように構成され得る。
【0016】
ゴースト抑制要素は、レンズ湾曲の上に配設されたマイクロルーバーアレイを含み得る。
【0017】
ビーム整形オプティックは、赤外照明光をアイボックスエリアに向けるように構成された回折光学要素を含み得る。
【0018】
ゴースト抑制構成要素は、赤外光源に隣接するオブスキュレーション要素(obscuration element)を含み得る。オブスキュレーション要素は、赤外光源の出力アパーチャとアイトラッキングカメラとの間に配設され得る。
【0019】
本発明の第3の態様によれば、ニアアイ光学要素が提供され、ニアアイ光学要素は、アイトラッキングのために狭帯域赤外照明光をアイボックスエリアに向けるように構成された複数の赤外照明器を含む照明層であって、赤外照明器が、赤外光源と、ビーム整形オプティックと、ビーム整形オプティックの上に配設された第1の反射防止(AR)コーティングとを含む、照明層と、ユーザの眼から反射する狭帯域赤外照明光の反射された赤外光を受光し、アイトラッキング画像を生成するために反射された赤外光をカメラに向けるように構成されたコンバイナ層と、ベース湾曲を有する透明層であって、第2のARコーティングがベース湾曲上に配設された、透明層とを備える。
【0020】
照明層は、透明層とコンバイナ層との間に配設され得る。
【0021】
第1のARコーティングは、±40度入射角(AOI)にわたる可視光についての90%超の透過率について調整され得る。追加または代替として、第1のARコーティングは、±40度AOIにわたる狭帯域の赤外光についての95%超の透過率について調整され得、狭帯域の赤外光は狭帯域赤外照明光に対応する。
【0022】
非限定的なおよび非網羅的な実施形態が以下の図を参照しながら説明され、同様の参照番号は、別段に規定されていない限り様々な図全体にわたって同様の部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の態様による、例示的なHMDを示す図である。
図2】透明層と、照明層と、コンバイナ層と、ディスプレイ層とを含む例示的なニアアイ光学要素の平面図である。
図3】本開示の態様による、例示的な照明層を通した眼の正面図である。
図4】赤外光源を示す図である。
図5】本開示の態様による、例示的な赤外照明器を示す図である。
図6】本開示の態様による、例示的なマイクロルーバーアレイを示す図である。
図7】本開示の態様による、ベース湾曲上に配設されたARコーティングと、随意の1/4波長板(QWP:quarter-waveplate)と、直線偏光子とを含む例示的な光学システムを示す図である。
図8】本開示の態様による、撮像光学経路を示す例示的な光学システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
アイトラッキングのための光学システムの実施形態が本明細書で説明される。以下の説明では、実施形態の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載される。しかしながら、本明細書で説明される技法が、具体的な詳細のうちの1つまたは複数なしに、または他の方法、構成要素、材料などを用いて実践され得ることを、当業者は認識されよう。他の事例では、いくつかの態様を不明瞭にすることを回避するために、よく知られている構造、材料、または動作は、詳細に示されないか、または説明されない。
【0025】
本明細書全体にわたる、「一実施形態(one embodiment)」または「一実施形態(an embodiment)」への言及は、その実施形態に関して説明される特定の特徴、構造、または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる様々な箇所における「一実施形態では(in one embodiment)」または「一実施形態では(in an embodiment)」という句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性が、1つまたは複数の実施形態において任意の好適な様式で組み合わせられ得る。
【0026】
本開示で説明されるアイトラッキング画像において迷光を抑制するためのシステムおよびデバイスは、ゴースト抑制構成要素を赤外照明器に組み込むことと、光学システムの戦略的表面上に反射防止コーティングを含めることとを含む。アイトラッキングモジュールは、赤外光で眼を照明するための赤外照明器と、眼を撮像するためのアイトラッキングカメラとを含み得る。いくつかのアイトラッキングモジュールでは、赤外光の撮像経路は、カメラに入射するようになる前に様々な光学構成要素および表面に遭遇する。したがって、赤外撮像光の一部分が、異なる表面に遭遇したときに反射されるとき、迷光が生成され得る。この迷光は、次いで、光学システム内を伝搬し、最終的に、アイトラッキングカメラに入射するようになり、ゴースト画像を生成し得る。
【0027】
いくつかの場合には、赤外照明光が光学界面(optical interface)に遭遇したとき、赤外照明光の15%が反射により失われる。赤外照明光が複数の光学界面に遭遇したとき、反射損失が増し、赤外撮像光の極めて大きい部分が失われ、反射光は、光雑音としてアイトラッキングカメラに入射するようになり得る迷光である。したがって、本開示の実施形態では、ARコーティングおよび他のゴースト抑制構成要素は、赤外撮像光の透過率を増加させ、迷光を抑制するために戦略的に配置され得る。本開示におけるARコーティングは、入射角(AOI)が広い範囲を含むときでも、可視光と赤外光の両方の極めて高い割合を透過するように特別に調整され得る。従来のARコーティングは、概して、ほぼ垂直な入射角における可視光のために設計され、広いAOI範囲にわたる可視光と赤外光とを通すように設計されない。本開示の光学システムは、ヘッドマウントディスプレイのコンテキストにおいて、可視シーン光および/または可視ディスプレイ光を通すための光学システムの要件により可視光と赤外光との透過率から恩恵を受け得る。これらおよび他の実施形態は、図1図8に関してより詳細に説明される。
【0028】
図1は、本開示の態様による、例示的なHMD100を示す。HMD100の図示の例は、フレーム102と、テンプルアーム104Aおよび104Bと、ニアアイ光学要素110Aおよび110Bとを含むように示されている。アイトラッキングカメラ108Aおよび108Bは、それぞれ、テンプルアーム104Aおよび104Bに結合されるように示されている。図1は、ニアアイ光学要素110Aの一例の分解図をも示す。ニアアイ光学要素110Aは、光学的透明層120Aと、照明層130Aと、光コンバイナ層140Aと、ディスプレイ層150Aとを含むように示されている。照明層130Aは、複数のフィールド内光源(in-field light source)126を含むように示されている。フィールド内光源126は、たとえば、アイトラッキング目的のために赤外照明光を放出するように構成され得る。ディスプレイ層150Aは、仮想画像をHMD100のユーザの眼に向けるように構成された導波路158を含み得る。
【0029】
図1に示されているように、フレーム102は、HMD100をユーザの頭部に固定するためにテンプルアーム104Aおよび104Bに結合される。例示的なHMD100はまた、フレーム102ならびに/またはテンプルアーム104Aおよび104Bに組み込まれたサポートハードウェアを含み得る。HMD100のハードウェアは、処理論理と、データを送信および受信するためのワイヤードおよび/またはワイヤレスデータインターフェースと、グラフィックプロセッサと、データおよびコンピュータ実行可能命令を記憶するための1つまたは複数のメモリとのいずれかを含み得る。一例では、HMD100は、ワイヤード電力を受信するように構成され得、および/または1つまたは複数のバッテリーによって電力供給されるように構成され得る。さらに、HMD100は、ビデオデータを含むワイヤードおよび/またはワイヤレスデータを受信するように構成され得る。
【0030】
図1は、フレーム102に取り付けられるように構成されたニアアイ光学要素110Aおよび110Bを示す。いくつかの例では、ニアアイ光学要素110Aおよび110Bは、拡張現実または複合現実を円滑にするためにユーザに透明に見え得、したがって、ユーザは、ディスプレイ層150Aを介して自身の(1つまたは複数の)眼に向けられたディスプレイ光をも受光しながら、環境からの可視シーン光を観察することができる。さらなる例では、ニアアイ光学要素110Aおよび110Bの一部または全部は、仮想現実ヘッドセットに組み込まれ得、ニアアイ光学要素110Aおよび110Bの透明性質は、ユーザが、仮想現実ヘッドセットに組み込まれた電子ディスプレイ(たとえば、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、マイクロLEDディスプレイなど)を観察することを可能にする。
【0031】
図1に示されているように、照明層130Aは、複数のフィールド内光源126を含む。各フィールド内光源126は、透明基板上に配設され得、ニアアイ光学要素110Aの眼側(eyeward side)109のほうへ光を放出するように構成され得る。本開示のいくつかの態様では、フィールド内光源126は、近赤外光(たとえば、700nm~1.4μm)を放出するように構成される。各フィールド内光源126は、マイクロ発光ダイオード(マイクロLED)、端面放射型LED、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)ダイオード、またはスーパールミネッセントダイオード(SLED)であり得る。
【0032】
従来のアイトラッキングソリューションは、レンズのリム/周辺の周りに配設された光源を提供し得る。しかしながら、眼の視野内に光源を置くことは、HMD100の装着者の眼を撮像するために配置されたアイトラッキングカメラ108Aなどのカメラによって撮像され得る鏡面または「グリント」反射の算出にとって有利であり得る。
【0033】
フィールド内光源126がニアアイ光学要素110Aに小さいオクルージョンをもたらし得るが、フィールド内光源126、ならびにフィールド内光源126の対応するルーティングは、HMD100の装着者に知覚不可能であるかまたは有意でない程度に小さくなり得る。さらに、フィールド内光源126からのオクルージョンは、人間の眼によって焦束不可能(unfocusable)である程度に眼に近く置かれ、したがって、フィールド内光源126が気付かれないか、または取るに足らないものになるのを助けることになる。いくつかの実施形態では、各フィールド内光源126は、約200×200ミクロンよりも小さいフットプリント(またはサイズ)を有する。
【0034】
上述のように、照明層130Aのフィールド内光源126は、ユーザの眼を照明するためにニアアイ光学要素110Aの眼側109のほうへ赤外照明光を放出するように構成され得る。ニアアイ光学要素110Aは光コンバイナ層140Aを含むように示されており、光コンバイナ層140Aはニアアイ光学要素110Aの照明層130Aと裏面111との間に配設される。いくつかの態様では、光コンバイナ140Aは、ユーザの眼によって反射される反射された赤外光を受光し、反射された赤外光をアイトラッキングカメラ108Aのほうへ向けるように構成される。いくつかの例では、アイトラッキングカメラ108Aは、受光された反射された赤外光に基づいてユーザの眼を撮像するように構成された赤外線カメラである。いくつかの態様では、光コンバイナ140Aは、ニアアイ光学要素110Aの裏面111に入射したシーン光191などの可視光に対して透過である。いくつかの例では、光コンバイナ140Aは、体積ホログラムとして構成され得、および/または反射された赤外光をアイトラッキングカメラ108Aのほうへ向けるための1つまたは複数のブラッグ格子を含み得る。いくつかの例では、光コンバイナは、他の偏光配向(polarization orientation)を通しながら入射光の特定の偏光配向を回折する偏光選択的ホログラム(別名、偏光体積ホログラム(polarized volume hologram))を含む。
【0035】
ディスプレイ層150Aは、HMD100の設計に応じて1つまたは複数の他の光学要素を含み得る。たとえば、ディスプレイ層150Aは、電子ディスプレイによって生成されたディスプレイ光をユーザの眼に向けるための導波路158を含み得る。いくつかの実装形態では、電子ディスプレイの少なくとも一部分は、HMD100のフレーム102中に含まれる。電子ディスプレイは、ディスプレイ光を生成するための、LCD、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、マイクロLEDディスプレイ、ピコプロジェクタ、または液晶オンシリコン(LCOS)ディスプレイを含み得る。
【0036】
光学的透明層120Aは、ニアアイ光学要素110Aの照明層130Aと眼側109との間に配設されているように示されている。光学的透明層120Aは、照明層130Aによって放出された赤外光を受光し、ユーザの眼を照明するために赤外光を通し得る。上述のように、光学的透明層120Aはまた、環境から受光されたシーン光191、および/またはディスプレイ層150Aから受光されたディスプレイ光などの可視光に対して透明であり得る。いくつかの例では、光学的透明層120Aは、光(たとえば、ディスプレイ光および/またはシーン光)をユーザの眼に集束させるための湾曲を有する。したがって、光学的透明層120Aは、いくつかの例では、レンズと呼ばれることがある。いくつかの態様では、光学的透明層120Aは、ユーザの仕様に対応する厚さおよび/または湾曲を有する。言い換えれば、光学的透明層120Aは処方レンズであり得る。しかしながら、他の例では、光学的透明層120Aは非処方レンズであり得る。
【0037】
図2は、透明層220と、照明層230と、コンバイナ層240と、ディスプレイ層250とを含む例示的なニアアイ光学要素210の平面図である。複数の赤外照明器237が、眼206を照明するために赤外照明光239をアイボックスエリア207に放出する。図2は、赤外照明器237A~237Eを示す。異なる赤外照明器237は、眼206に対する赤外照明器の位置に応じた異なる角度において赤外照明光239を眼206に向け得る。たとえば、赤外照明器237Aおよび237Eは、垂線により近い角度において赤外照明光239を眼206に向ける赤外照明器237Cと比較して、より急な角度において赤外照明光を眼206に向けるビームフォーミング要素を含み得る。上記で説明されたように、赤外照明器237はVCSELまたはSLEDであり得、したがって、赤外照明光239は狭帯域赤外照明光(たとえば、1~10nmの線幅)であり得る。
【0038】
眼206は、(図2に示されていない)反射された赤外光として、赤外照明光239の少なくとも一部分を反射して要素210に戻し、反射された赤外光は、コンバイナ層240に遭遇する前に層220および230を通って伝搬する。コンバイナ層240は、反射された赤外光を受光し、アイトラッキング画像を生成するために反射された赤外光をカメラ108に向けるように構成される。一例として、図7は、光学経路760(2)に沿って伝搬する反射された赤外光がコンバイナ層740によってカメラ108Aに向け直されていることを示す。
【0039】
図2に戻ると、カメラ108Aは、眼206のアイトラッキング画像をキャプチャするように構成される。カメラ108は、赤外照明器によって放出された赤外照明光239の波長を通し、他の光がカメラ108Aの画像センサーに入射するようになるのを阻止するための赤外バンドパスフィルタを含み得る。カメラ108Aは、相補型金属酸化物半導体(CMOS)画像センサーを含み得る。
【0040】
図2は、ユーザが外部環境のシーンを観察することができるように、外部環境からのシーン光191(可視光)が、ディスプレイ層250とコンバイナ層240と照明層230と透明層220とを通って伝搬して、眼206に入射するようになり得ることを示す。図2は、ディスプレイ層250が眼206に仮想画像を提示するためにディスプレイ光293を生成するかまたは向け直し得ることを示す。ディスプレイ光293は可視光であり、コンバイナ層240と照明層230と透明層220とを通って伝搬して眼206に達する。
【0041】
透明層220は、眼側109に最も近い表面であるベース湾曲221を含み得る。ベース湾曲221は、ユーザの眼のためにディスプレイ光293中に含まれる仮想画像を集束させるように構成され得る。ベース湾曲221は、サブトラクティブ法(subtractive process)を使用して透明層220の屈折性材料222において形成され得る。屈折性材料222は、いくつかの実施形態では、およそ1.5の屈折率を有し得る。照明層230は、赤外照明器237をカプセル化し得る透明材料232を含み得る。透明材料232と屈折性材料222とは、可視光(たとえば、400nm~700nm)と近赤外光(たとえば、700nm~1.4μm)とを透過するように構成される。
【0042】
図3は、本開示の態様による、例示的な照明層330を通した眼206の正面図を示す。図示の実施形態では、照明層330は、21個の赤外照明器(337A~337U)を含む。図示の例では、赤外照明器337A~337Hは、赤外照明器337の「内側リング」と見なされ得、赤外照明器337I~337Uは、赤外照明器337の「外側リング」と見なされる。したがって、赤外照明器337I~337Uは、内側リングにおける赤外照明器337A~337H(たとえば、0~22度)よりも急な角度(たとえば、14~25度)において赤外照明器337I~337Uの赤外照明光を眼206に向け得る。
【0043】
図4は、赤外光源484を示す。光源484は、赤外光源484の出力アパーチャ476から赤外照明光を放出するように構成される。ビーム整形要素481は、出力アパーチャ476の上に配設され、基板482を通して赤外照明光をアイボックスエリア(たとえば、アイボックスエリア207)に向けるように構成される。基板482は、透明材料232の一例であり得る。しかしながら、ビーム整形要素481は屈折性材料487から形成され、屈折性材料487と基板482との間の界面483が、放出された赤外照明光の一部分が反射してビーム整形要素481の屈折性材料487に戻されることを引き起こし得る。これらの反射の結果として、赤外照明光485は、設計された方向に向けられないことがあり、赤外照明光の一部のかなりの量が、ビーム整形要素481の側部から出ることさえある(たとえば、光477Aおよび477B)。所望の方向に向けられない赤外照明光は、最終的にアイトラッキングカメラに入射するようになり、したがって、雑音フロアを上げ、アイトラッキング画像のコントラストを減少させ得る迷光である。
【0044】
図5は、本開示の態様による、赤外照明器237/337として利用され得る例示的な赤外照明器537を示す。図5に示されている例示的な赤外照明器537は、出力アパーチャ536を有する赤外光源531と出力アパーチャ536の上に配設されたビーム整形オプティック535とを含む。ビーム整形オプティック535は、赤外照明光539を、アイボックスエリア(たとえば、アイボックスエリア207)に向けるように構成される。図5の図示の実施形態では、反射防止(AR)コーティング533は、迷赤外照明光がカメラ108に入射するようになることを防ぐかまたは抑制するように構成されたゴースト抑制構成要素として、レンズ湾曲534の上に配設される。レンズ湾曲534は、ビーム整形オプティック535の屈折性材料によって形成され得る。ARコーティング533は、基板532と屈折性材料538との間の界面において発生することになる赤外照明光539の反射を著しく低減する。ARコーティングがない場合、反射は、ほぼ垂直な入射角(AOI)についておよそ15%であり得、AOIが増加するにつれて増加する。基板532は透明材料である。屈折性材料538は、3よりも大きい屈折率を有する高屈折率材料であり得る。一実施形態では、屈折性材料538は、ヒ化ガリウム(GaAs)を含み、およそ3.5の屈折率を有する。いくつかの実施形態では、ビーム整形オプティック535は、幅がおよそ30ミクロンである。
【0045】
一実施形態では、ARコーティング533は、930nmから950nmの間の波長を有する赤外光について96%またはより良い透過率を提供する、一窒化ケイ素(SiN)の単一の層である。一実施形態では、ARコーティング533は、±26度の入射角(AOI)範囲にわたる930~950nmの近赤外光について99.5%の透過率を可能にする複数の副層を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、図示された屈折ビーム整形オプティック535は、赤外照明光539をアイボックスエリアに向けるように構成された回折光学要素によって置き換えられるか、または回折光学要素を含む。一実施形態では、オブスキュレーション要素543が、赤外光源531に隣接して配設される。オブスキュレーション要素543は、迷光がカメラに(少なくとも直接)達することを阻止するために、赤外光源531の出力アパーチャ536とアイトラッキングカメラ108との間に配設され得る。オブスキュレーション要素543は、たとえば、光を吸収するための黒くされたコーティングを有する壁を含み得る。
【0047】
図6は、本開示の態様による、ARコーティング533の上方に配設された例示的なマイクロルーバーアレイ635を示す。マイクロルーバーアレイフィルム635は、設計された入射角内の開口536を出る光639を通すように機能するが、設計された入射角を超えた光(たとえば、光線683および685)は、マイクロルーバーアレイ635によって吸収されることになる。したがって、マイクロルーバーアレイ635の、光を通すための設計された入射角は、内反射がない場合に材料232および222を出ることになる光線639Aと光線639Bとの間のAOIに制約され得る。いくつかの実施形態では、マイクロルーバーアレイ635は、赤外照明器537中に含まれるARコーティング533がない場合、ゴースト抑制要素としてレンズ湾曲534の上方に配設され得る。
【0048】
図7は、本開示の態様による、例示的な透明層720のベース湾曲721上に配設されたARコーティング723を含む例示的な光学システム700を示す。図7では、赤外照明器237Aは、光学経路760(1)に沿って狭帯域赤外照明光をアイボックスエリア207に向けるように構成される。
【0049】
交差761は、ARコーティング723が含まれなかった場合、赤外照明器237Aによって放出された赤外照明光が、空気と透明層720の屈折性材料722との間の界面に遭遇することになることを示す。ARコーティング723がない場合、赤外照明光の少なくとも5%が交差761において失われる(反射される)ことになり、AOIが増加するにつれて透過率は減少することになる。しかしながら、ARコーティング723は、赤外照明光の反射を著しく低減し、それにより、迷光に寄与するフレネル反射を抑制する。反射された赤外光は、眼206から反射され、光学経路760(2)に沿って伝搬する狭帯域赤外照明光である。交差762は、ARコーティング723が含まれなかった場合、反射された赤外光が、空気と透明層720の屈折性材料722との間の界面に遭遇することになることを示す。ここで再び、ARコーティング723がない場合、反射された赤外光の少なくともさらなる5%が、反射により失われることになる。また、ベース湾曲721上に配設されたARコーティング723がある場合、反射からの迷光は抑制され、(眼206の画像を含む)反射された赤外光の強度は、より高い強度において維持される。
【0050】
透明層720と照明層730とを通って伝搬する反射された赤外光の部分は、コンバイナ層740によって、光学経路760(3)に沿ってアイトラッキング画像を生成するためのカメラ108に向けられる。交差763は、ARコーティング723が含まれなかった場合、反射された赤外光が、空気と透明層720の屈折性材料722との間の第3の界面に遭遇することになることを示す。しかしながら、ARコーティング723は、光学経路760(3)に沿って伝搬する反射された赤外光の極めて高い透過率を可能にすることによって、ゴースト画像に寄与することになる反射を低減し、反射された赤外光を維持する。図7は、交差763においてARコーティング723を通って伝搬する反射された赤外光の部分が光学経路760(4)に沿ってカメラ108Aに進むことを示す。図7は、例示的な光学システム700がコンバイナ層740の裏面111上に配設された第2のARコーティング725を随意に含み得ることを示す。
【0051】
とりわけ、光学経路760(3)に沿って伝搬する反射された赤外光は、比較的急な角度においてARコーティング723に入射するようになる。たとえば、反射された赤外光は、50度、60度、さらには70度の入射角においてARコーティング723に入射するようになり得る。したがって、ARコーティング723は、AOI範囲にわたって狭帯域の赤外光について極めて高い透過率を有し、狭帯域の赤外光は、赤外照明器237によって放出された狭帯域赤外照明光の波長に対応する。ARコーティング723はまた、交差761および762において示されているように、垂直なおよびほぼ垂直なAOIにわたって赤外光の極めて高い透過率を有しなければならない。図7はまた、シーン光191とディスプレイ光293とからの可視光波長がARコーティング723を通ってアイボックスエリア207に伝搬することになり、したがって、ARコーティング723が理想的には可視光の極めて高い透過率を有することになることを示す。しかしながら、従来のARコーティングは、極めて高い透過率が広いAOIにわたって可視光スペクトルと近赤外スペクトルの両方において必要とされるとき、不十分な性能を有する。たとえば、従来のARコーティングは、500nm(可視波長)について±70度のAOI範囲についてたいてい極めて高い透過率を提供し得るが、940nmの透過率(近赤外波長)は、AOIが60度以上に近づくにつれて、著しく損なわれ得る。
【0052】
従来のARコーティングは、概して、ほぼ垂直な入射角において入射する可視光について調整される。対照的に、ARコーティング723は、好ましくは、有意なAOI範囲における可視光の極めて高い透過率に加えて、広いAOI範囲における極めて高い赤外透過率について調整されることになる。「極めて高い透過率」は、本開示では、90%超として定義される。
【0053】
ARコーティング723のいくつかの実施形態では、可視光についての有意なAOI範囲は±40度超であり、狭帯域赤外照明光について広いAOI範囲は±40度超である。ARコーティング723の透過スペクトルは、±40度AOIにわたる可視光の90%超を透過し得、ARコーティング723の透過スペクトルは、±40度AOIにわたる狭帯域の赤外光の95%超を透過し得る。別の実施形態では、ARコーティング723の透過スペクトルは、±70度AOIにわたる可視光の90%超を透過し、ARコーティング723の透過スペクトルは、±70度AOIにわたる狭帯域の赤外光の95%超を透過する。
【0054】
例示的な多層ARコーティングが、二酸化チタン(TiO)副層と二酸化ケイ素(SiO)副層とを含み得る。別の例示的な多層ARコーティングは、酸化ハフニウム副層(HfO)とフッ化マグネシウム(MgF)副層とを含み得る。ARコーティング723は、有意なAOI範囲にわたる可視光についての極めて高い透過率と、広いAOI範囲にわたる狭帯域の赤外光(937nm~950nm)についての極めて高い透過率とについて調整され得る。ARコーティングは、詳細には、たとえば、940nm光を放出するVCSELまたはSLED赤外照明器237と対応する狭帯域赤外照明光の極めて高い透過率について調整され得る。他の実施形態では、狭帯域の赤外光は、異なる波長を有し得る。ARコーティングの透過スペクトルは、極めて高い透過率が90%の透過率として定義されるとき、可視光と狭帯域の赤外光(たとえば、700nm~937nm)との間の波長を有するギャップ光(gap-light)の少なくとも一部分の極めて高い透過率未満について調整され得る。本開示のいくつかの実施形態では、「極めて高い透過率」は、95%の透過率またはより良い透過率である。
【0055】
図8は、本開示の態様による、撮像光学経路860を示す例示的な光学システム800を示す。図8は、狭帯域赤外照明光をアイボックスエリア207のほうへ放出する赤外照明器237Eを示す。光路881は、図5に関して説明されたゴースト抑制構成要素のうちの1つまたは複数を赤外照明器237Eに組み込むことによって抑制され得る潜在的迷光路を示す。光路881は、迷光が屈折ビーム整形オプティックの側部を出て、次いで、照明層730を出て、カメラ108に入射するようになる前に、内部全反射(TIR)によって透明材料232によって閉じ込められることを表し得る。
【0056】
光路882は、図5に関して説明されたゴースト抑制構成要素のうちの1つまたは複数を赤外照明器237Eに組み込むことによって抑制され得る別の潜在的迷光路を示す。光路882は、屈折性材料(たとえば、538)のレンズ湾曲(たとえば、534)から反射し、次いで、光路882に沿って出て、カメラ108Aに入射するようになるまで、屈折性材料538内で反射し続ける赤外照明光によってとられ得る。レンズ湾曲534の上にARコーティング533および/またはマイクロルーバーアレイフィルム635を含むことによって、たとえば、レンズ湾曲からの赤外照明光の初期反射は抑制され、したがって、赤外照明光のより多くは、意図された方向においてビーム整形オプティックを出る。
【0057】
光路883は、本開示で説明されるように、例示的なARコーティングを組み込むことによって抑制され得る潜在的迷光路を示す。光路883は、赤外照明器237Eを出た後にベース湾曲721に遭遇する赤外照明光を表し得る。しかしながら、ベース湾曲721の上にARコーティング723を含むことによって、屈折性材料722と空気との間の界面から生成される迷光は、反射を減少させることによって抑制され得る。
【0058】
光路884は、本開示で説明されるように、例示的なARコーティングを組み込むことによって抑制され得る別の潜在的迷光路を示す。光路884は、反射された赤外光として眼207から反射し、次いでベース湾曲721に遭遇する、赤外照明光を表し得る。しかしながら、ベース湾曲721の上にARコーティング723を含むことによって、屈折性材料722と空気との間の界面から生成される迷光は、反射を減少させることによって抑制され得る。
【0059】
光路885は、本開示で説明されるように、例示的なARコーティングを組み込むことによって抑制され得るまた別の潜在的迷光路を示す。光路885は、反射された赤外光として眼207から反射し、次いでコンバイナ層740と別の層との間の界面に遭遇する、赤外照明光を表し得る。しかしながら、コンバイナ層740の裏面111上に配設されたARコーティング725を随意に含むことによって、コンバイナ層740と別の層との間の界面から生成される迷光は、反射を減少させることによって抑制され得る。
【0060】
図8は、本開示の態様に従って特定の特徴を追加することにより、撮像光学経路860に沿った2つ以上の交差における迷光抑制が可能になることを示す。また、撮像光学経路860に沿って伝搬する赤外光の透過率を増加させることによって迷光を抑制することがまた、赤外アイトラッキング画像を生成する赤外光の強度を保持するのを支援する。したがって、本開示の実施形態は、迷光を抑制することと、所望の赤外撮像光の強度を増加させることの両方を行い、カメラ108によってキャプチャされたアイトラッキング画像におけるコントラストを高め得る。したがって、ゴースト画像の低減と画像コントラストの増加は、眼の位置を決定するためにアイトラッキング分析を支援する、眼の瞳孔、虹彩、および他の部分のより効率的な識別を可能にし得る。
【0061】
実施形態は、人工現実システムを含むか、または人工現実システムに関連して実装され得る。人工現実は、ユーザへの提示の前に何らかの様式で調節された形式の現実であり、これは、たとえば、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、複合現実(MR)、ハイブリッド現実、あるいはそれらの何らかの組合せおよび/または派生物を含み得る。人工現実コンテンツは、完全に生成されたコンテンツ、またはキャプチャされた(たとえば、現実世界の)コンテンツと組み合わせられた生成されたコンテンツを含み得る。人工現実コンテンツは、ビデオ、オーディオ、触覚フィードバック、またはそれらの何らかの組合せを含み得、それらのいずれも、単一のチャネルまたは複数のチャネルにおいて提示され得る(観察者に3次元効果をもたらすステレオビデオなど)。さらに、いくつかの実施形態では、人工現実は、たとえば、人工現実におけるコンテンツを作り出すために使用される、および/または人工現実において別様に使用される(たとえば、人工現実におけるアクティビティを実施する)アプリケーション、製品、アクセサリ、サービス、またはそれらの何らかの組合せにも関連し得る。人工現実コンテンツを提供する人工現実システムは、ホストコンピュータシステムに接続されたヘッドマウントディスプレイ(HMD)、スタンドアロンHMD、モバイルデバイスまたはコンピューティングシステム、あるいは、1人または複数の観察者に人工現実コンテンツを提供することが可能な任意の他のハードウェアプラットフォームを含む、様々なプラットフォーム上に実装され得る。
【0062】
要約書において説明されることを含む、図示の実施形態の上記の説明は、網羅的であること、または本発明を開示される正確な形態に限定することは意図されない。特定の実施形態および例が、説明の目的で本明細書で説明されるが、当業者が認識するように、様々な変更が本発明の範囲内で可能である。
【0063】
これらの変更は、上記の詳細な説明に照らして行われ得る。以下の特許請求の範囲において使用される用語は、本発明を、本明細書において開示される特定の実施形態に限定すると解釈されるべきでない。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって完全に決定されるべきであり、特許請求の範囲は、特許請求の範囲の解釈の確立された教義に従って解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】