(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】配置の向きを制御可能な頭蓋内閉塞器具および方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20220930BHJP
【FI】
A61B17/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021574225
(86)(22)【出願日】2020-05-31
(85)【翻訳文提出日】2022-02-08
(86)【国際出願番号】 US2020035489
(87)【国際公開番号】W WO2020251788
(87)【国際公開日】2020-12-17
(32)【優先日】2020-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US2020/035017
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521545097
【氏名又は名称】ウォルツマン,ダニエル,エズラ
【氏名又は名称原語表記】WALZMAN, Daniel, Ezra
【住所又は居所原語表記】11 Trinity Court Bergenfield, NJ 07621 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォルツマン,ダニエル,エズラ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD03
4C160DD53
4C160DD54
4C160DD62
4C160DD70
(57)【要約】
【課題】気孔率に差のあるステントのような頭蓋内閉塞器具を、血流を多くしたい部分または少なくしたい部分(それぞれ例えば分枝血管や動脈瘤)に対して正しい向きに配置する方法および器具であって、特に頭蓋内や他の曲がりくねった脈管内の動脈瘤の治療に用いられる器具を提供する。
【解決手段】ハブと、角のある形状のルーメンを有するデリバリーカテーテルを備え、該ルーメンは、パッケージングカテーテルのプッシャーワイヤーを拘束し、これによりステントの向きを、その気孔率の最も低い部分が動脈瘤に隣接し、気孔率の最も高い部分が分枝血管や他の血管への血流を確保する向きに配置する、血管内器具、及びその使用方法によりこれを解決する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内器具であって、
(a)近位端と、遠位端と、角のある形状のルーメンと、を備えるデリバリーカテーテルを有し、該デリバリーカテーテルは以下の操作が可能であり、
(i)対象の動脈瘤に向かって血管内を移動させること
(ii)前記動脈瘤の近傍で停止させ、前記血管から引き抜くこと
(b)パッケージングカテーテルと、
近位端および遠位端を有するプッシャーワイヤーと、
前記プッシャーワイヤーの遠位端に取り外し可能に設置された、気孔率に差のある(differentially porous)閉塞器具と、を有し、
(c)デリバリーカテーテルポートとパッケージングカテーテルポートとを備えるハブを有し、
前記パッケージングカテーテルポートは、少なくとも2種類の配置角度で前記プッシャーワイヤーの遠位端を受け入れ可能であり、
(d)前記プッシャーワイヤーは、前記角のある形状のルーメン内に前記閉塞器具をスライドさせて通すことができ、
前記プッシャーワイヤーは、前記プッシャーワイヤーの遠位端が前記血管を通って前記動脈瘤に移動する間、前記デリバリーカテーテルに対する相対的な配置角度を維持し、
(e)前記パッケージングカテーテルはさらに、前記プッシャーワイヤーの遠位端を、前記デリバリーカテーテル内において前記閉塞器具に想定される配置角度に回転させることができ、
また、前記デリバリーカテーテルが引き抜かれている間、その想定配置角度を維持することができる、
血管内器具。
【請求項2】
前記気孔率に差のある閉塞器具がステントであることを特徴とする請求項1に記載の血管内器具。
【請求項3】
前記ハブに「12時」マーカーが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の血管内器具。
【請求項4】
前記デリバリーカテーテルはその遠位端に放射線不透過性マーカーを有していることを特徴とする請求項1に記載の血管内器具。
【請求項5】
前記パッケージングカテーテルは、前記プッシャーワイヤーの遠位端に放射線不透過性マーカーを有していることを特徴とする請求項1に記載の血管内器具。
【請求項6】
前記プッシャーワイヤーの形状は、前記デリバリーカテーテルの前記ルーメンと合同の、角のある形状であることを特徴とする請求項1に記載の血管内器具。
【請求項7】
前記プッシャーワイヤーの形状は、前記デリバリーカテーテルの前記ルーメンと合同の、角のある形状であることを特徴とする請求項1に記載の血管内器具。
【請求項8】
前記閉塞器具は分枝ステントであることを特徴とする請求項1に記載の血管内器具。
【請求項9】
請求項1に記載の血管内器具の使用方法であって、
(a)前記デリバリーカテーテルを体内に挿入する工程と、
(b)前記デリバリーカテーテルの近位端を、該デリバリーカテーテルの遠位端が前記動脈瘤に近接するまで押し込む工程と、
(c)前記閉塞器具であるステントの前記動脈瘤に対する向きが最適化されるよう、前記ハブのパッケージングカテーテルポートに対する前記パッケージングカテーテルの配置角度を設定する工程と、
(d)前記パッケージングカテーテルを前記ハブのパッケージングカテーテルポートに差し込む工程と、
(e)前記ハブを前記デリバリーカテーテルの近位端に取り付ける工程と、
(f)前記ステントが前記動脈瘤に近接するまで、前記プッシャーワイヤーを押し込む工程と、
(g)前記デリバリーカテーテルを引き抜く工程と、
(h)前記気孔率に差のある閉塞器具を展開する工程と、
(i)前記プッシャーワイヤーを引き抜く工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
血管内器具であって、
(a)近位端と、遠位端と、角のある形状のルーメンと、を備えるデリバリーカテーテルを有し、該デリバリーカテーテルは以下の操作が可能であり、
(i)対象の動脈瘤に向かって血管内を移動させること
(ii)前記動脈瘤の近傍で停止させること
(iii)前記血管から引き抜くこと
(b)パッケージングカテーテルと、
近位端および遠位端を有するプッシャーハイポチューブと、
前記プッシャーハイポチューブの遠位端に取り外し可能に設置された、気孔率に差のある(differentially porous)閉塞器具と、を有し、
(c)デリバリーカテーテルポートとパッケージングカテーテルポートとを備えるハブを有し、
前記パッケージングカテーテルポートは、少なくとも2種類の配置角度で前記プッシャーハイポチューブの遠位端を受け入れ可能であり、
(d)前記プッシャーハイポチューブは、前記角のある形状のルーメン内に前記閉塞器具をスライドさせて通すことができ、
前記プッシャーハイポチューブは、前記プッシャーハイポチューブの遠位端が前記血管を通って前記動脈瘤に移動する間、前記デリバリーカテーテルに対する相対的な配置角度を維持し、
(e)前記パッケージングカテーテルはさらに、前記プッシャーハイポチューブの遠位端を、前記デリバリーカテーテル内において前記閉塞器具に想定される配置角度に回転させることができ、
また、前記デリバリーカテーテルが引き抜かれている間、その想定配置角度を維持することができる、
血管内器具。
【請求項11】
前記ハイポチューブはこれに流体を通すことができ、これにより逆流(flow reversal)による脳のサンプ効果が抑えられる一方、外頸動脈流に勝る逆流(retrograde flow)が十分に維持され、また、血管形成術又はステント留置術の間、病変部を横切る逆流(retrograde flow)が維持されることを特徴とする、請求項10に記載の血管内器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2016年11月2日に出願された米国特許出願第15/341,820号「分流カバードステント」(現、米国特許第9,775,730号,2017年10月3日発行)に基づく優先権を主張する一部継続出願であり、2018年12月9日に出願された米国特許出願第16/214,130号「ケープ付きステント」の一部継続出願、2017年11月22日に出願された米国特許出願第15/732,544号、2019年12月6日に出願された米国仮特許出願第62/921,378号、2016年12月5日に出願された米国仮特許出願第62/497,851号に基づく優先権を主張する一部継続出願である。これらの内容のその全体を参照により援用する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、不健康な血管内の動脈瘤や瘻孔の治療に使用される医療用具に関し、特に、頭蓋内等の曲がりくねった血管系に用いられる、分流型、カバード、ケープ付、開窓型、分枝型、その他の気孔率が一定でないステントを含む血管内器具に関する。
【0003】
従来の技術では、動脈瘤の治療には多数の器具が使用される。そのうちの一つは気孔率に差のある(differentially porous)ステントであり、非対称の編組やコイルを備えることで血流の少ない部分や多い部分を任意に作り出すことを可能にしている。開窓型や分枝型の器具は、大動脈やその分枝血管、その他の太く蛇行の少ない血管に有効である。先行技術は、頭蓋内やその他の曲がりくねった血管系や遠位の血管系への理論上の適用については開示しているが、これらの器具の径方向の向きを任意の向きに確実に配置する器具や方法については説明していない。頭蓋内やその他の曲がりくねった血管系の制約により、これまでこれら器具をこれら領域で使用することは困難であった。
【0004】
米国特許第9,775,730号(Walzman)に開示されるカバードステント器具は、曲がりくねった血管系に安全かつ効率的に搬送及び配置することができ、血流を動脈瘤や瘻孔、破裂血管から効果的にそらす一方、治療対象の部位より遠位の健常組織に血液を送り、動脈瘤内や瘻孔内に鬱血や塞栓を生じさせる。
【0005】
米国特許出願公開第2019/0151072号(Walzman)は、重ね合わせることができる自由端と一つの取付点を有するカバーを備え、既存のカバードステントよりも対象の血管に良好に適合するケープ付ステントが開示されている。
【0006】
米国特許第8,398,701号(Berezら)には、マイクロカテーテルに装着可能な血管閉塞器具が開示されている。この閉塞器具には、周囲の組織への血流を維持しつつ、血管内の血流を動脈瘤などの病変部から離すように修正するための、非対称の編組または密度に差のある格子、及び、対応する/反対の可変密度の気孔率を有するものもある。Berezは、この器具の柔軟性は脳内の動脈瘤の治療に特に適していると述べている。Berezは、同じセグメントのシリンダーの長さ方向における一方のカバー率が他方よりも低いものを含む実施形態を説明している。例えば、気孔率の低い(すなわちカバー率の高い)範囲は、動脈瘤内の淀みとその後の血栓症のため動脈瘤を覆うように配置すべきである。この器具のより気孔率の高い他方の側は、十分な血流を維持し、分枝や遠位の組織への血流を妨げないよう、血管の一方の側に配置されるか、又は分枝を覆うべきである。しかし、Berezらはこのような器具の径方向の向きを任意の最適な向きにして安定的にかつ確実に配置する方法については考慮しておらず、またそのような器具は存在しない。
【0007】
極端に言えば、血管内器具に開窓を備えることで気孔率を高め、分枝血管の分岐点の血流を一切妨げないようにしてもよい。これは、極端な例では、反対側の側面やその近くを完全に覆うカバーと組み合わせて、対象の動脈瘤や瘻孔への血流を完全に遮断してもよい。
【0008】
一般的な血管の難点は、エンドグラフトに外在する動脈瘤嚢内の血流が持続することである。実際、これはステントグラフトを用いた血管内動脈瘤修復(EVAR)後の最も一般的な合併症である。このようなエンドリークは種々の方法で改善することができる。例えば、Walzmanの米国特許出願第15/732,147号および15/732,365号には、エンドリークを防ぐためにハイドロゲルを用いることが示されている。
【0009】
先行技術では、一部の嚢状動脈瘤に血液が流れ込むのを防ぐために行われる低侵襲技術として、血管内コイルリングが紹介されている。この治療法によれば、コイルが動脈瘤の塞栓(凝固)を誘発することで動脈瘤に血液が流れ込むことが阻害され、その結果、破裂とこれに続くクモ膜下出血が防止される。しかし、血管内コイリングは、血栓塞栓症、脳塞栓症、動脈瘤穿孔、親動脈閉塞、コイルの移動、動脈解離などの術後合併症を引き起こすおそれがある。先行技術には、ステントアシストコイリングも開示されている。このステントアシストコイリングにはステント留置に関する同じ欠点もあり、親動脈にステントを留置するには、ステント内の血栓による狭窄のリスクを低減するために、抗血小板薬を長期にわたって使用する必要がある。
【0010】
動脈瘤や瘻孔には、カバードステントによる治療が理想的なものがある。カバードステントは、瘻孔の穴や動脈瘤の頸部を最も直接的に覆って血管壁を再建することができ、血流を親血管の正常な経路に直ちに誘導する。しかし、現在米国において使用可能なカバー付きニューロステントは存在しない。米国食品医薬品局(FDA)は、このようなカバー付きニューロステントを試験・検査したが、「FDA承認」を得たものはない。これはFDAが、既存の治療法の選択肢に対する利点が、この器具が使用されたときの潜在的なリスクを上回っていないと判断していることを意味している。また、脾動脈瘤や肺動静脈瘻など、身体の他の部位の極度に曲がりくねった構造の組織に有効なカバードステントは今のところ存在しない。
【0011】
カバー付きニューロステントの重要な用途として、瘻孔の治療、特に海綿静脈洞と頸動脈系の間の連絡異常である頚動脈海綿洞瘻(CCF)の治療が考えられる。
【0012】
動脈瘤の他の治療法としては、動脈瘤の頸部にクリップを装着する頭蓋内動脈瘤の外科的クリッピングがある。この治療法には、開放手術と脳の物理的な処置が必要になる等の欠点がある。時には外科的なバイパス手術も検討されるが、一般的にはさらに高い重症化率と死亡率を伴う。
【0013】
さらに、先行技術には、親動脈に沿って動脈瘤の頸部にメッシュ状のステント又はステントに似た構造体を配置することにより、動脈瘤から血流をそらす分流器具の使用例が開示されている。これらの器具を用いることで、動脈瘤の内部に血栓を形成することができる。しかし、分流器具の設置により増加した技術的合併症が発生するおそれがある。
【0014】
また、これらは血流を完全には遮断しないため、一般には瘻孔や血管破裂の治療には有効ではない。同様に、頭蓋内動脈の医原性破裂に対する有効な血管温存療法は今のところ存在しない。現在の治療法では、典型的には、出血を止めるためにコイルや液体塞栓剤で破裂した動脈を塞ぐ必要があるが、通常はその動脈領域の虚血性傷害により重大な病状を伴う。さらに、これらの器具で動脈瘤を治療した場合、動脈瘤は時間の経過(ラグ期間)とともに血栓化し、すぐには治らない。これはラグ期間中に動脈瘤が破裂するリスクを患者に与える。これは短期間中の再破裂率が高い動脈瘤を治療する際に特に問題となる。さらに、現行の分流ステント(flow-diverting stents)を使用した場合、多数の分枝血管が器具と交差することがあり、その結果、これら分枝血管の分岐点で狭窄が生じたり、時には閉塞や損傷を引き起こしたりすることもある。
【0015】
選択された血管内動脈瘤や瘻孔を直ちに治癒させるために血管インターベンションが可能な血管内器具が必要とされているが、現行技術が有する難点や欠点を改善しなければならない。より具体的には、曲がりくねった構造の組織内の急なカーブでもキンクすることなく、自由に動き、曲がることができるカバードステントが必要とされている。
【0016】
カバードステントの多くは、合金などの半剛性材料でステントの「骨格」や「フレーム」のシリンダーを作り、そのフレームに不浸透性の「カバー」を取り付けている。従来の技術では、このような装着物は、前述のカバーとフレームに一定間隔で、ステントのカバー全体に拡散して配置されており、結果的に器具の柔軟性を著しく制限していた。
【0017】
現行の全ての分流ステントは、カバー率と気孔率のパターンが全体として比較的均一である。しかし、円周方向の位置によって気孔率に差のある器具をうまく配置するための信頼できる手段は開発されていない。
【0018】
脳神経血管処置(及びその他の曲がりくねった構造の組織)において任意の位置のカバー率および気孔率の理想的な比率を実現し、所望の位置へ血液を流すために、このような気孔率に差のある器具を正確に位置決めすることを可能にする器具や方法は知られていない。大きな血管(例えば大動脈)とは異なり、頭蓋内やその他の曲がりくねった循環組織に挿入された器具は、ハブ側の端部を手で回転させても頭蓋側の端部を回転させる効果に乏しい。
【0019】
そのため、高密度のカバーとこれに応じた低い気孔率(極端な例では完全な不透水性)の領域が任意の側に配置される一方で、低密度のカバーとこれに応じた高い気孔率(及び/又は極端な例では全くカバーのない開窓)が任意の側に配置されるように、適切な向きで再現可能に配置/到達させることができる器具が求められている。また、遠位の曲がりくねった血管には、分枝したカバー付分流器具が必要とされている。現在、このような器具は脳神経血管処置には使用できず、その他の曲がりくねった血管構造にも同様に使用できない。なぜなら、このような器具を任意の向きで確実かつ正確に配置する装置、システム、及び方法が存在しないからである。
【0020】
したがって、このような装置を配置した場合、配置時の最終的な向きはランダムになる。例えば、先ほどのケースでは、理想とは全く逆のことが起こり得る。すなわち、開窓部分が最終的に動脈瘤に重なり、病変部への血流が増加する一方で、高密度の被覆部分が結果的に正常な分枝血管の分岐点に重なることで当該分岐点への血流が不足し、その後の虚血性傷害を引き起こすおそれがある。
【0021】
また、本発明の開窓型器具の極端な例を使用して、開窓器具をその開窓部が分枝の分岐点に重なるように配置し、その開窓から他の器具を分枝内に配置することで、生体内で分枝器具を構築することもできる。2つ目の器具は、最初の遠位の分枝/血管を覆わずに開窓部分にわずかに重なるように、近位の直径をわずかに大きくしてもよい。同様に、すべての開窓部が実際の分枝に対して適切な相対距離と向きにあることを条件に、複数の開窓部を通る複数の分枝を含む器具を構築してもよい。
【0022】
このコンセプトは、Ruizによって米国特許第6,261,273号「分枝血管用のアクセスシステム(及び)使用方法」において明確に説明されている。しかしRuizは、生体内における指向性のシースやカテーテルの作り方については開示しているが、移植については開示していない。Ruizの装置は、残念ながらBerezの装置と同様に、カテーテルをその近位のハブから全長にわたって容易かつ正確に回転させることができる近距離の直線的な構造の組織において容易に機能させることができるものである。
【0023】
カテーテルが期待通りに反応しない曲がりくねった及び/又は長い血管構造における位置決めにおいて回転は有効ではない。これは、一般に搬送のために圧着されたステント器具が、典型的にはデリバリーワイヤー及び/又はハイポチューブを使用して、特定の配置でデリバリーカテーテル内を進むときに困難をもたらす。そのステントは、予測できない配置や向きでデリバリーカテーテルから出てくる。
【0024】
さらに、頭蓋骨やその他の曲がりくねった血管系の分枝部にY字型の分流ステントを配置したり組み立てたりすることは、これまで現実的ではなかった。これらステントの気孔率が比較的低いときは、これらが分枝血管を横切ることで逆にその分枝血管への血流に悪影響を与えてしまうという困難性がある。また、このような器具は穴の広さが十分ではないため、追加のワイヤーやマイクロカテーテル、及び/又はステントとともにこれを横切ることはできない。このような構造の組織において有効に配置または組み立てることのできる、Y字型、分岐型、及びその他の分枝型ステント器具が求められている。さらに、そのような分枝を安全かつ正確に展開し、開窓部をわずかにかつ確実に重ねるためには、そのようなステント器具の近位端をより正確に到達させる新規の装置および方法が必要である。
【0025】
このように、頭蓋内や脳外の曲がりくねった構造の組織に使用することができ、その器具の高気孔率および低気孔率の領域を、1又は複数の分枝血管および少なくとも一つの動脈瘤または瘻孔に対してそれぞれ意図した通りに配置することができる、カバー付き又は部分的なカバー付きのニューロステントが求められている。また、同様のカバー付き又は部分的なカバー付きの分枝器具も求められている。本発明は、これら未達成のニーズを満たすものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は、中実のワイヤーではなくハイポチューブが狭窄部を横切り、これを、血管形成バルーンやステントを搬送するレールとして用いる実施形態を開示する。このようなハイポチューブはこれに流体を通すことができる。これにより、逆流(flow reversal)による脳のサンプ効果が抑えられる一方、外頸動脈からのあらゆる流れに勝る逆流(retrograde flow)が十分に維持され、また、血管形成術およびステント留置術の間、病変部を横断する逆流(retrograde flow)が維持される。これにより遠位頭蓋内塞栓のリスクが最小化される。
【0027】
本発明はまた、血流を多く又は少なくしたい範囲に対して(例えば、分岐血管と動脈瘤のそれぞれに対して)、気孔率に差のあるステント等の頭蓋内閉塞器具を正しく配向する方法および装置に関する。本発明は、特に、頭蓋内やその他の曲がりくねった血管系における動脈瘤および瘻孔、並びに血管狭窄、その他の病理の治療に好適に用いることができる。
【0028】
いくつかの要因により、そのような所望の向きを実現することには困難性がある。デリバリーカテーテルのルーメン(そこからステントが展開され得る)は、典型的には円形である。ステントそれ自体は通常、設置中に前述のルーメン内で予測不能に回転する。また、カテーテルが曲がりくねった構造の組織内を進むにつれ、カテーテル自体がねじれて予測不能に回転することがある。そのため、器具を望んだ径方向の向きで配置できるかどうかは時の運であり、期待とは反対の否定的な結果を招くこともある。以下の装置および手順はこの困難性を克服するために開示されている。
【0029】
気孔率に差のあるステントや、又はそのような編組型、メッシュ型、又は織物型の治療器具は、所望の流れ又は閉塞の程度に合わせて向きが決められる。
【0030】
ステントは、自由に浮動するカバーをオプションとして備える。この浮動カバーの設計は、曲がりくねった構造の組織への挿入に最適化されている。その独創的な構造要素の中には、一端にある単一の周方向取付点(1nmの小ささ)、重なり合う周方向板部、及び、重なり合う幾何学的板部がある。
【0031】
開示された器具は、これをアンシースのまま、血流が位置決めに影響を与える可能性を最小限に抑えるべく、薬理的手段により、又は一時的にバルーンを膨らませたバルーンガイドカテーテルを通した搬送、その他の手段により、血流停止下において設置されてもよい。
【0032】
さらに他の実施形態では、前記カバーは、前記フレームの所定部分を完全には包囲しなくてもよく、したがって、ステントは周方向に沿ってその一部にカバーされた部分を有し、その部位の周方向における異なる側にはカバーされていない部分を有してもよい。これは、例えば親血管と同じ部分から分岐する分枝血管など、瘻孔や動脈瘤径部の反対側の分枝血管の分岐点を保全できる場合がある。
【0033】
本発明はさらに、ステントの近位端をより正確に配置する装置および方法を開示しており、これにより、第1のステントの開窓部が分岐点に配置されたときに、第2のステントを、その近位端が第1のステントの開窓部の周囲とわずかに重なるように正確に配置することで、2つのステント間の漏れを防ぐとともに、第2ステントの近位端による主血管の不要な閉塞を防ぐことができる。
【0034】
ステントの近位端のより正確な「配置」は、本明細書に記載された独自の装置および方法によって達成することができる。本明細書では、インナー「アンシース」ハイポチューブ又はワイヤーについて説明しているが、このハイポチューブ又はワイヤーは、その遠位端に、ステント上に折り返される逆円錐形の「ウィング(wings)」を有する。ステントは、アウターハイポチューブの遠位端に取り付けることができる。インナーハイポチューブ又はワイヤーは、アウターハイポチューブの内部を通り、そのウィングはアウターハイポチューブの遠位端とそこに取り付けられたステントの上に折り返されるように延び、ステントを拘束する。ステントは通常、自己拡張型ステントである。ステントが所望の位置に配置されると、アウターハイポチューブはその位置が保持され、インナーハイポチューブ又はワイヤーが前進する。インナーハイポチューブ又はワイヤーが前進すると、そのウィングも前進し、近位から遠位に向かってステントの拘束を解除する。これにより、近位のステントが最初に拘束から解放され、配置のために展開される。近位部の配置が最適でない場合は、インナーハイポチューブを再び引き戻すことにより、再シースすることができる。これによりステントの位置が変更され、配置を再開することができる。
【0035】
本発明の実施形態では、中実のワイヤーではなくハイポチューブが狭窄部を横切り、これを、血管形成バルーン及びステントを搬送するレールとして用いる。このようなハイポチューブはまた、その中に流体を通すことができる。これにより、逆流による脳のサンプ効果(sump effect)が抑えられる一方、外頸動脈からのあらゆる流れに勝る逆流が十分に維持され、また、血管形成術およびステント留置術の間、病変部を横断する逆流が維持される。これにより遠位頭蓋内塞栓のリスクが最小化される。
【0036】
また、いくつかの実施形態では、血管形成バルーン及び/又はそのデリバリーカテーテルを介した潅注が可能である。さらに、いくつかの実施形態では、血管形成バルーンカテーテル及び/又はワイヤー若しくはハイポチューブに装着された追加的なバルーン、又は別個のバルーンを外科手術の各所において頸動脈を遠位に閉塞することに使用し、遠位塞栓を防止しつつ、脳からの血流のスンピング(sumping)を最小化する。これにより、バルーンの収縮中および収縮後において、逆流が適用される時間を短くすることができる。
【0037】
さらに、いくつかの実施形態では、一連の血管形成バルーン及び/又はステント、及びこれらのデリバリーカテーテルが、互いに先行のものに重ねて順次搬送される。これにより器具交換の必要回数が最小化され、施術時間が短縮されるとともに、器具交換に伴うリスクが抑えられる。
【0038】
本発明はまた、上述の分岐型ステントの実施形態を開示するものである。
【0039】
追加の実施形態はY字型のステントを含んでいる。このY字型ステントの第1のステントは、気孔率が高められ、分枝血管の分岐点を覆うより大きな穴を有し、第2のステントは、その分枝血管の分岐点を覆うより大きな穴を通過し、一次ステントが配置された主血管を横切る部分の気孔率が高められている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1Aは、カテーテル内腔の断面形状を示す三角形の管腔1を有する円筒形状のデリバリーカテーテル330の透視図である。
【0041】
図1Bは、近位端1及び遠位端2を有し、円筒形状のシースなし(不図示)のデリバリーカテーテルルーメン3の実施形態を示しており、遠位端の孔2が対象の動脈瘤2000の近くに配置されるように血管1000を通っている。
【0042】
図1Cはデリバリーカテーテルルーメン3の断面図である。デリバリーカテーテルルーメン3は、角ABCを有する三角形のルーメンを有している。このルーメンに挿通されるプッシャーワイヤー300は、その角がC-A-Bにずらされて挿通される。これは、気孔率に差がある閉塞器具(不図示)を所望の回転角度で配置すべく、これを120°回転させた向きで搬送するためである。
【0043】
【
図2】
図2には、ステントパッケージングカテーテル30(患者の体外)の近位端10及び遠位端20と、デリバリーカテーテルルーメン3に取り付けられたハブ700と、内部に挿通されるプッシャーワイヤー300が表示された、パッケージングカテーテルのハブポート701と、さらに、プッシャーワイヤー300(デリバリーカテーテルルーメン3に沿ってこれを通るように続く破線)が示されており、プッシャーワイヤー300は、その遠位端303が、対象の動脈瘤2000近傍のステント301に着脱可能に取り付けられており、また、ハブポート701内に配置されたステントパッケージングカテーテル30の遠位端20と、デリバリーカテーテルルーメン3(近位端の三角形の孔1と、対象の動脈瘤2000近傍にある遠位端の三角形の孔2とともに配向されている)と、血管壁1000内に設置されたデリバリーカテーテルルーメン3と、が示されている。
【0044】
【
図3】
図3には、デリバリーカテーテルルーメン3(
図2参照)が抜去された後の血管壁1000内の、プッシャーワイヤー300と、プッシャーワイヤーの遠位端303に配置されたステント301と、が示されている
【0045】
【
図4】
図4は三角形のデリバリーカテーテルルーメン3の内観図である。デリバリーカテーテルルーメン3の内側は、遠位辺44(44の背後にある斜辺の遠位辺55及び66は
図5に示されている)に対応する近位辺4,5,6により構成されている。面444は、近位辺4から始まり遠位辺44で終わるカテーテル側の全長を示している。他の実施形態(不図示)では、長方形や星形などの他の規則的な形状を採用してもよい。
【0046】
【
図5】
図5には、
図4(又は120°回転させた
図4)のデリバリーカテーテルの内側の隣接面555が示されている。面555は、近位辺5から始まり、遠位辺55で終わる(55の背後にある斜辺の遠位辺44及び66は破線で示されている)。面555はさらに放射線不透過性の向き決め補助マーカー5550を含む。
【0047】
【
図6】
図6は、プッシャーワイヤー300の遠位端303にその近位端が取り付けられたステント301を示している。ステント301は三角形の形状を有しており、遠位端3010と、端面303の三角形の辺、すなわち辺部334,355,366を有している。ステント301の遠位端3010には三角形の辺部3550が示されており、点線は三角形の他の2つの辺部3440及び3660を示している。三角形の辺部355は、長さが辺部3550で終端する平面を構成する。その平面上には放射線不透過性のマーカー55500が設けられている。
【0048】
【
図7】
図7A及び
図7Bは、相対的な位置関係を有する放射線不透明性マーカーを有するデリバリーカテーテルルーメン3の形状を示している。
【0049】
【
図8】
図8は、プッシャーワイヤーの形状の一つを示してる。
【0050】
【
図9】
図9は、パッケージングカテーテルを示している。
【0051】
【
図10】
図10は、パッケージングカテーテルの他の選択肢を示している。
【0052】
【0053】
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明の装置の実施形態およびその変形例について上記図面を参照して説明する。
【0055】
図1Aには、三角形状のルーメン1を有する円筒形状のデリバリーカテーテル330の透視図が示されている。本発明は、三角形、正方形、その他長方形、星形、六角形などの直線的なルーメンを有する円筒形状のデリバリーカテーテルを開示する。この直線状のルーメンは、ルーメン1に対して異なる固定相対角度で挿入されるように形成された、同形状のプッシャーワイヤーをサポート(second)できるよう設計されている。
【0056】
図1Bには、円筒形状のシースを除く(図示しない)デリバリーカテーテルルーメン3の実施形態が示されている。デリバリーカテーテルルーメン3は、近位端1と遠位端2とを有し、遠位端の孔2が対象の動脈瘤2000の近くに位置するよう血管1000を通っている。デリバリーカテーテルルーメン3は、遠位端2が対象の動脈瘤2000に接近して停止するまで血管1000内に挿入される。ルーメン1の直線構造により、デリバリーカテーテルルーメン3は、対象の動脈瘤2000に最も近い一辺を有することに関して、設定された向きを有する。
【0057】
図1Cには、角A-B-Cを有する三角形の管腔を備えるデリバリーカテーテルルーメン3の断面図が示されている。プッシャーワイヤー300はそこに角がC-A-Bとなるように角度をずらして挿入される。これは、気孔率に差のある閉塞器具(図示せず)を所望の回転角度で配置すべく、これを120°の角度で搬送するためである。本発明は、デリバリーカテーテルルーメン3に対するプッシャーワイヤーの相対的な向きを固定することにより、患者の体外でプッシャーワイヤーの向きを固定できることを教示している。対象の動脈瘤2000に対するデリバリーカテーテルルーメン3の向きを、プッシャーワイヤー300の挿入前に確定させることにより、本発明の器具の実施者は、プッシャーワイヤー300を患者の体内で回転させることなく、プッシャーワイヤー300が動脈瘤2000に対して適切な向きになるようにこれを挿入することができる。本発明は、幾何学的に非円形の内腔と、これにマッチするプッシャーワイヤー又はハイポチューブとを有するという基本構想を含む。これによりユーザーは、デリバリーカテーテル内や血管内において器具が望まない回転をすることを防ぐことができる。本発明はまた、ハブのマーカーと、これに対応するデリバリーカテーテル先端の径方向マーカーとを利用することにより、予測可能な径方向の向きでの搬送を可能とする。デリバリーカテーテルを頭蓋内やこれに似た曲がりくねった構造の組織に配置した後で、その先端の配置角度をイメージングすれば、ハブマーカー及び対象の病変部に対するねじれの程度を測定することができる。そして、ステント器具が対象の血管に所望の向きで搬送されるよう、ハブマーカーに対してこれを適切な向きで挿入する。例えば、ハブマーカーが12時の位置にあり、先端マーカーが4時の位置にある場合、ハブの12時の位置にどのような気孔率の部位が挿入されても、カテーテル先端においてそれが一貫して4時の位置に搬送されることを知った上で器具/ステントを挿入することができる。同様に、ステント器具を予め、これと同様の幾何学的形状であり、12時マーカー(又はこれと同様のマーカー)を有するパッケージングカテーテルに、その12時の周方向位置に対して様々な配置角度で装填することができる。そして、望ましい向きに応じて、適切な事前装填器具を選択して利用することができる。あるいは、これらの器具を同じ向きで予め装填し、デリバリーカテーテルとそのハブに対してパッケージングカテーテルを様々な角度に回転させることで、ステント器具をパッケージングカテーテルからデリバリーカテーテルに移す際にこれを所望の向きにすることもできる。従来の技術においてよく知られているように、パッケージングカテーテルは、通常、デリバリーワイヤー又はデリバリーハイポチューブよりも短い。ステントは、パッケージングカテーテル内のデリバリーワイヤー又はハイポチューブに予め装着される。ステント器具の移送は、パッケージングカテーテルとデリバリーカテーテルとをデリバリーカテーテルのハブ内で接続し、パッケージングカテーテルの後部から延びているワイヤー/ハイポチューブの後部を送出/押し込むことにより実現される。通常はプッシャーワイヤー/ハイポチューブの大半が入るまで、少なくともステントが完全にデリバリーカテーテルに入るまで、ワイヤー/ハイポチューブはこれに装着されたステントとともに送り出される。パッケージングカテーテルは、ハイポチューブ/ワイヤーの残りの部分から取り除かれ、オペレータは、ステントがデリバリーカテーテルの末端に到達するまで、ハイポチューブ/ワイヤーを押し続ける。その後、ステントを押し出すことにより、又はデリバリーカテーテルを後退させてステントをアンシースすることにより、若しくはこれらを組み合わせることにより、ステントが展開される。また、好ましい形態では、プッシャーワイヤー/ハイポチューブ、パッケージングカテーテル、及びデリバリーカテーテルが対応する幾何学的形状を有し、パッケージングカテーテル及びデリバリーカテーテル(ハブを除く)の内部寸法を同様の内部寸法とする。ワイヤー/ハイポチューブは、これらにぴったりとフィットしつつ、これらの中でスライドできるよう、ロック・イン・キー(lock-in-key)方式でこれらに嵌合される。これによりワイヤー/ハイポチューブは、カテーテル内を回転することなく前進する。例えばその一実施形態では、プッシャーワイヤー/ハイポチューブの断面外形が三角形であり、これがパッケージングカテーテル及びデリバリーカテーテルの三角形の内腔に嵌合する。
【0058】
次に、
図2を参照する。
図2には、ステントパッケージングカテーテル30(患者の体外)の近位端10及び遠位端20と、デリバリーカテーテルルーメン3に取り付けられたハブ700と、内部に挿通されるプッシャーワイヤー300が表示された、パッケージングカテーテルのハブポート701と、さらに、プッシャーワイヤー300(デリバリーカテーテルルーメン3に沿ってこれを通るように続く破線)が示されており、プッシャーワイヤー300は、その遠位端303が、対象の動脈瘤2000近傍のステント301に着脱可能に取り付けられており、また、ハブポート701内に配置されたステントパッケージングカテーテル30の遠位端20と、デリバリーカテーテルルーメン3(近位端の三角形の孔1、及び対象の動脈瘤2000の近傍にある遠位端の三角形の孔2とともに配向される)と、血管壁1000内に設置されたデリバリーカテーテルルーメン3と、が示されている。
【0059】
パッケージングカテーテル30は、ハブ700のポート701に接続される。このとき、パッケージングカテーテル30は、ステント301とプッシャーワイヤー300が所望の向きに配置されるよう、つまりステント301の最小気孔率の面が対象の動脈瘤2000側に十分に向けられるように接続される。
【0060】
次に
図3を参照する。
図3には、デリバリーカテーテルルーメン3(
図2参照)が除かれた後の血管壁1000内の、プッシャーワイヤー300と、プッシャーワイヤー303の遠位側に配置されたステント301とが示されている。ステント301が動脈瘤2000に隣接配置されると、ステント301が作動し、ステント301がその通気性のない面を動脈瘤2000に接するように展開される。一方、三角形に延びるステント301の他の二面は多孔質であり、血流を促す。また、本発明はハブ上に設けられた一つの「12時」マーカーと、カテーテルの遠位端に設けられた一つの放射線不透過性「12」時マーカーとを開示している。
【0061】
次に
図4を参照する。
図4は三角形のデリバリーカテーテルルーメン3の内観図である。デリバリーカテーテルルーメン3の内側は、遠位辺44(44の背後にある斜辺の遠位辺55及び66は
図5に示されている)に対応する近位辺4,5,6により構成されている。面444は、近位辺4から始まり遠位辺44で終わるカテーテルの側面の全長を示している。
【0062】
デリバリーカテーテルルーメン3の管腔の向きは、明確に識別可能とすべきである。
図4は、近位端に辺4,5,6、側面444の遠位端に辺44を有する三角形の形状を示している。他の実施形態(図示せず)では、長方形や星形など他の規則的な形状を採用してもよい。
【0063】
次に
図5を参照する。
図5には、
図4(又は120°回転させた
図4)のデリバリーカテーテルの内側の隣接面555が示されている。隣接面555は、近位辺5から始まり、遠位辺55で終わる(55の背後にある斜辺の遠位辺44及び66は破線で示されている)。隣接面555はさらに放射線不透過性の向き決め補助マーカー5550を含む。
図5は、
図4の回転後のイメージであり、近位端の辺5と遠位端の辺55で終端する隣接面555を示している。隣接面555上の放射線不透過性マーカー5550により、ユーザーは、デリバリーカテーテルルーメン3の一辺の相対的な向きを把握することができる。プッシャーワイヤー300及びステント301が動脈瘤2000の近傍に至ったときにこれらが適切に並べられ又は配向されるよう、パッケージングカテーテル30は、この情報に基づき、ハブポート701に対して適切な向きに設定される。
【0064】
次に
図6を参照する。
図6には、プッシャーワイヤー300の遠位端303に取り付けられたステント301と、ステント301の近位端とが示されている。ステント301は、遠位端3010及び近位端303の平面上の三角形の辺部、具体的には辺部334,355,366を有する三角形の形状である。ステント301の遠位端3010には三角形の辺部3550が示されており、点線は三角形の他の2つの辺部3440及び3660を示している。三角形の辺部355は、長さが辺部3550で終端する平面を構成する。その平面上には放射線不透過性のマーカー55500が設けられている。
【0065】
(第1の方法)
カテーテルの近位側ハブに「12時」マーカーがあるデリバリーカテーテルを使用する。12時マーカーは、ハブとデリバリーカテーテルの先端に設けられてもよい(例えばカテーテル先端の放射線不透過性マーカー)。ユーザーは、プッシャーワイヤーに取り付けられた気孔率に差のあるステント又は閉塞器具を有するステントパッケージングカテーテルをその中に挿入する。テストの後、ユーザーは、ハブにおいてパッケージングカテーテルを所望の目盛りに回転させる。
【0066】
目盛りはハブ上の任意の方向を指すようにハブのどこに表示されてもよいが、これを12時目盛り又は12時マーカーと呼ぶことは、アナログ時計の文字盤に慣れている者にマーカーに対する相対的な位置を説明するのに便利である。例えば、ハブを「3時」、「6時」、「9時」に回転させるようユーザーに指示すれば、それぞれ直感的に1/4回転、1/2回転、3/4回転とイメージさせることができ、その他の「時」によりこれら90°の基準間のおおよその位置(例えば、2時、5時、11時)をイメージさせることができる。同様の効果は、「北」マーカーを基準として、東、南、西などの用語(または東南東や北西などの中間位置)を利用することでも得られるが、「12時」が好ましい基準である。重要なのは用語ではなく、デリバリーカテーテルに対する相対的な向きを360°の範囲において手動で回転させることができることである。
【0067】
遠位マーカーを有するパッケージングカテーテルを使用し、テストステント、又は最終ステントを、デリバリーカテーテルの12時マーカーに対して特定の向きで前進させる。ステント(又はその他のマーク付き血管内器具)は、最後は通常ほぼ同じ、しかし予測不能な向きに配置される。デリバリーカテーテルとパッケージングカテーテルのマーカーの位置が一貫して並べられることを確認するためにこの工程を繰り返してもよい。次に、デリバリーカテーテル先端のマーカーに対するテストステント/器具のマーカーをイメージングし、所望の向きを実現するために、デリバリーカテーテルにステントをどの向き(例えば「時計」の何「時」か)に装着するかを決定する。又は、「12時」マーカーに対して予め所望の向きでデリバリーカテーテルに装填されたステントを使ってもよい。
【0068】
必要であれば、テスト器具を取り除いて恒久的な器具を挿入および展開する前に、追加のテストステント/器具を予想された向きに一時的に挿入してイメージングし、向きを確認してもよい。
【0069】
例えば、テストの結果、開窓部が「7時」方向に配置されたことが示しされており、これは対象の分枝血管に対して時計回りに90°ずれているとする。この場合、開窓部が対象の分枝血管の近傍に正しく向けられるよう、ステントパッケージングカテーテルを「4時」の方向に再配置する。
【0070】
カテーテルの先端の向きをイメージングしたら、同様に配置されたハブマーカーに対して適切な向きに装填されたステントを展開する。繰り返すが、必要であれば、放射線不透過性マーカーが追加された「テスト」器具/ステントを回収可能に配置して向きを確認することができる。
【0071】
(第2の方法)
上述の第1の方法の工程およびマーカーを用い、さらに、独特の幾何学的断面形状の内腔がその全体に渡って形成されたデリバリーカテーテルを使用する第2の方法を開示する。一般的な実施形態では、デリバリーカテーテルの外面は、循環血管内を進みやすくするため、慣習的に円筒形状であり十分に丸みを帯びている。丸みを帯びていない内腔は、ステントパッケージングカテーテルやワイヤーを配置するときの回転を最小限に抑え、向きの予測可能性を高める。
【0072】
添付の図面は、例として三角形の管腔を示している。この代わりに、正方形、六角形、八角形、五角形、「家」のシルエット、星形などの形状も使用できる。星形は、例えば6つの頂点の「ダビデの星」や他の幾何学的形状など、どのような形でもよいが、管腔全体を通して一つの形状を使用する。
【0073】
さらなる実施形態では、パッケージングカテーテルは、デリバリーカテーテルの管腔の形状に応じて形成されてもよい。この対応関係は、例えば、添付の
図1A及び1Bに示されている。この実施形態では、パッケージングカテーテルとデリバリーワイヤ/ハイポチューブとがぴったりと合う形状を有することで互いに回転できないようになっているが、互いに前後への移動ができる程度には隙間が設けられている。この実施形態では、デリバリーカテーテルの向きとこれに挿通されたステント/器具の向きとが同じになるように維持することで、予測可能かつ正確に所望の適切な向きへの配置を実現している。
【0074】
ここでも、同じ向きを示す「12時」マーカーをハブとカテーテルの先端とに配置することができる(カテーテル先端のマーカーは放射線不透過性である)。そのため、カテーテル先端の向きをイメージングし、同様に配置されたハブマーカーに対して適切な向きに装着されたステントを使用することができる。繰り返すが、必要であれば、追加の放射線不透過性のマーカーを有する「テスト」器具/ステントを回収可能に配置して向きを確認してもよい。頭蓋内やこれに似た曲がりくねった構造の組織にカテーテルを送出し、その先端マーカーの向きが十分にイメージングされたら、先端マーカーの向きと、ハブマーカーからのその回転方向のずれを用いることで、回収可能な任意のテストステント器具を必要とせず、配置角度を決定することができる。
【0075】
(共通の方法)
上記の器具および方法のいずれかを用いて、分岐血管の分岐点に開窓部を正確に配置することができる。その後、その開窓部を通してワイヤーを分枝血管に進め、以下のいずれかを行う。
(a)バルーンを膨張させることができる器具/ステントをワイヤーに沿って搬送し、その近位端が最初のステント/器具の開窓部に最小限度重なるように配置する。さらに、必要に応じて、分枝部分には、分枝血管内に延びる部分に対して開窓部側がやや大きくなるようなテーパーが設けられてもよい。
(b)第2のデリバリーカテーテル(又は最初のデリバリーカテーテルを再使用してもよい)を分枝血管に搬送し(ワイヤーは任意に取り外してよい)、そのデリバリーカテーテルを通して通常は自己拡張型である追加の分枝ステントを搬送する。繰り返すが、分枝部分には、分枝血管内に延びる部分に対して開窓部側がやや大きくなるようなテーパーが設けられてもよい。
【0076】
搬送方法(b)は、しかしながら、近位側ステントを正確に設置することが難しい。特に、「織られた」又は「編まれた」ステントは、その設置時に、著しく、また予測不能に(デリバリーカテーテルに圧着されたときの長さと比較して)短縮する。
【0077】
別の選択肢は、そのようなステントのための新しい搬送器具である。この実施形態においてそれは、フィルターチップTAVR(transcatheter aortic valve replacement)カテーテルの「ウィング付きインナーカテーテル」に似た器具/カテーテルに装着される。言い換えると、Walzmanの特許(米国特許第1,030,724,262号)で説明されている「中央管」及び「中央管の遠位端に接続され、中央管の遠位端から近位端に向かって延びる保持構造」のことである。「ウィング」はデリバリーカテーテルの角のあるルーメン1を通って案内されつつ、向きを正しく固定する。ステントに取り付けられた単一または複数の外部ワイヤーを有し、好ましい実施形態において理想的にはこれらはステントの近位端および遠位端に取り付けられ(これは「オーバー・ザ・ワイヤー型」であってもよいが、「ラピッド・エクスチェンジ型」とする方が望ましい)、最初のステントが展開されその開窓部が分枝血管の分岐点に重ねられると、第2のワイヤーが開窓部を通って分枝血管に入り、第2のステント/器具がワイヤーに沿って所望の位置へと進む。第2のステント/器具は、上述の保持構造に拘束された状態で搬送され、そのステントの中央管の外側に取り付けられた少なくとも一つの第2ワイヤーか、又はそのステントに取り付けられたアウターチューブを有している。ステントが取り付けられたワイヤー(又はその代わりのアウターカテーテル)は、「ウィング付きインナーカテーテル」が前進する間、所定の位置に保持され、近位端側からステントを露出/アンシースする。
【0078】
本発明はまた、分岐型ステントのためのアンシース装置を開示する。より具体的には、本発明は、近位側から先にアンシースする装置を開示する。上述の例では、ステントがワイヤーによって取り付けられている場合、ワイヤーはステントを膨張させることができる。ステントがアウターカテーテル(これはインナーカテーテルの外側にあるが、ステントの内側にある。ウィングはステントの外側にある)に取り付けられている場合、ステントの近位端を切り離す前にその全体がアンシースされるのを待つ必要がある。あるいは、ステントの近位側の円周がアウターカテーテルに取り付けられており、さらに、ステントの遠位部分に少なくとも1つの追加ワイヤーが取り付けられているか、又は、アウターカテーテルのそのステントの遠位部分に追加のアタッチメントを有する場合は、ステントの近位部分をアンシースするときに近位側を切り離し、開窓部が僅かに重なる適切な向きと位置を確保しつつ、主血管を大きく覆わないようにして、ステントの全体が展開された後にステントの遠位側を切り離すことができる。
【0079】
ステントは、「アウターカテーテル」の遠位にのみ取り付けることが適当である。このシステムを前進させるには、アウターカテーテルを押してこれに取り付けられたステントを引っ張り、インナーカテーテルのウィング部分を押す(これによりインナーカテーテルの全体が一体として押される)。そして、ステントが適切な位置に配置されたら、アウターカテーテル(及びこれに取り付けられたステント)の位置を保ったまま、インナーカテーテルを前進させることで、第2のステントをアンシースすることができる。これには自己拡張型ステントを用いてまずステントの近位側をアンシースする。ステントの近位側はアンシースされるにつれて自動的に展開される。位置がずれた場合、インナーカテーテルを引き戻してステントの近位側を再シースすることができる。そしてステントを再度アンシースする前にこれを再配置することができる。
【0080】
また、「編まれた」又は「織られた」ステントを使用する場合、これらは完全に展開されるまでに時間がかかり、その予測も困難であるため、ステントの近位端に(及び他の部分にも任意に)ニチノール・ワイヤー・リングを設け、ステントの最大直径のより迅速な展開/自己拡張を促してもよい。また、必要であれば、スムーズな再シースを可能にするために、同様の長手方向のワイヤーを取り付けてもよい。複数のリングをステント器具に沿って間隔を空けて追加してもよい。
【0081】
好ましい方法を以下の工程を通してより具体的に説明する。以下の工程では、プッシャーワイヤーの形状が、デリバリーカテーテルの角のある形状のルーメンと合同の形状(例えば三角形のプッシャーワイヤーと三角形のルーメン)である装置の実施形態を用いる。
(a)デリバリーカテーテルを体内に挿入し、
(b)デリバリーカテーテルの遠位端が対象の動脈瘤の近傍に至るまで、デリバリーカテーテルの近位端をデリバリーワイヤーに沿って押し込み、
(c)デリバリーワイヤーを引き抜き、
(d)対象の動脈瘤に対する遠位端径方向マーカーの配置角度をイメージングし、
(e)対象の動脈瘤に対するステントの配置角度が最適になるように、ハブの12時マーカーに対するパッケージングカテーテルの向きを設定し、
(f)パッケージングカテーテルをハブに挿入し、
(g)ステントが完全にデリバリーカテーテル内に入るようにプッシャーワイヤーを押し、
(h)パッケージングカテーテルを取り除き、
(i)ステントが対象の動脈瘤の近傍に至るまでプッシャーワイヤーを押し、
(j)気孔率に差のある閉塞器具の主要部を展開し、
(k)器具の向きが期待通りであることを確認するためにイメージングを繰り返し、
(l)気孔率に差のある閉塞器具の残りを完全に展開し、
(m)プッシャーワイヤー及びデリバリーカテーテルを引き抜く。
【0082】
(分岐型またはV字型ステント)
前述の手順を用いて、マーカーを参照しながら、2つのステントから「Y字型」のステントを体内で組み立てることができる。
【0083】
本発明では、自己拡張型の部品を採用してもよい。
【0084】
本発明では、バルーン拡張部材を採用してもよい。
【0085】
本発明は、任意に放射線不透過性の部品および/または放射線不透過性のマーカーを含んでもよい。これらは、ステントの端部や、カバーの範囲の端部や縁部を見定めるのに特に有意である。放射線不透過性材料およびマーカーは、より多くの場所に、時には全体に渡って設けられてもよい。
【0086】
本発明は、分岐したステント要素を有することができる。
【0087】
本発明のステント要素は、その全体を再シース可能であってもよい。
【0088】
本発明のステント要素は、部分的に再シース可能であってもよい。
【0089】
本発明のすべてのステント要素は、取り外し可能であってもよい。
【0090】
当業者には、上記各実施形態はあくまで例として記載されていることが理解されるものと考える。ここに開示された原理および特徴は、特許請求する本開示の範囲および思想から逸脱することなく、多様かつ数多の実施形態に採用され得る。上述の実施形態は、本開示の範囲を例証するものであるが、本開示の範囲を制限するものではない。
【国際調査報告】