(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】電磁推進に基づく宇宙発射システム及び方法
(51)【国際特許分類】
F41B 6/00 20060101AFI20220930BHJP
B64G 5/00 20060101ALI20220930BHJP
B64G 1/00 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
F41B6/00
B64G5/00
B64G1/00 A
B64G1/00 200
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577441
(86)(22)【出願日】2020-04-22
(85)【翻訳文提出日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 CN2020086022
(87)【国際公開番号】W WO2021012729
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】201910671431.3
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521565442
【氏名又は名称】中国人民解放軍海軍工程大学
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】馬偉明
(72)【発明者】
【氏名】張育興
(72)【発明者】
【氏名】張明元
(72)【発明者】
【氏名】張向明
(72)【発明者】
【氏名】李衛超
(72)【発明者】
【氏名】龍▲しん▼林
(72)【発明者】
【氏名】▲どん▼晨
(57)【要約】
【課題】
【解決手段】 本発明は、電磁推進に基づく宇宙発射システム及び方法に関し、宇宙発射システムは、エネルギー貯蔵サブシステム(1)と、エネルギー変換サブシステム(2)と、リニアモーターサブシステム(3)と、制御保守サブシステム(4)とを備える。宇宙発射システムは電気エネルギーを電磁力に変換し、電磁力によってロケットを推進し、ロケットを電磁発射軌道に沿って特定の速度に加速し、ロケットの発射を実現する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁推進に基づく宇宙発射システムであって、
ロケットを推進する時に、貯蔵されているエネルギーをエネルギー変換サブシステム(2)に輸送するために使用されるエネルギー貯蔵サブシステム(1)と、
エネルギー貯蔵サブシステムにより輸送されたエネルギーを交流電流に変換してリニアモーターサブシステム(3)に出力するために使用されるエネルギー変換サブシステム(2)と、
エネルギー変換サブシステム(2)により出力された交流電流を受信して、電磁力を生成し、特定の距離内で特定の速度に加速するようにロケットを推進するために使用されるリニアモーターサブシステム(3)と、
エネルギー貯蔵サブシステム(1)、エネルギー変換サブシステム(2)及びリニアモーターサブシステム(3)それぞれに異なる制御コマンドを送信し、エネルギー貯蔵サブシステム(1)、エネルギー変換サブシステム(2)及びリニアモーターサブシステム(3)が所定のプログラムに従って実行するように制御するために使用される制御保守サブシステム(4)と
を備えることを特徴とする電磁推進に基づく宇宙発射システム。
【請求項2】
前記エネルギー貯蔵サブシステム(1)はさらに、ロケットを推進する間に、送電システムからエネルギーを吸収してエネルギーを貯蔵するために使用される、ことを特徴とする請求項1に記載の電磁推進に基づく宇宙発射システム。
【請求項3】
前記エネルギー貯蔵サブシステム(1)はn×m個の相互に独立した電源モジュールを備え、nがリニアモーターの数であり、mが各リニアモーターの相数である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁推進に基づく宇宙発射システム。
【請求項4】
各電源モジュールがpグループの電源ユニットに分けられ、各グループの電源ユニットはそれぞれエネルギー変換サブシステムにおける1つのインバータの対応するインバータユニットに接続される、ことを特徴とする請求項3に記載の電磁推進に基づく宇宙発射システム。
【請求項5】
前記各グループの電源ユニットは、電池パックアレイと、充電キャビネットとを備え、前記充電キャビネットは、送電システムと電池パックアレイとの間に接続された充電インタフェースである、ことを特徴とする請求項4に記載の電磁推進に基づく宇宙発射システム。
【請求項6】
前記各グループの電源ユニットはエネルギー貯蔵スイッチキャビネットをさらに備え、エネルギー貯蔵スイッチキャビネットが電池パックアレイとインバータユニットとの間に接続される、ことを特徴とする請求項5に記載の電磁推進に基づく宇宙発射システム。
【請求項7】
前記エネルギー変換サブシステム(2)はn×m個の相互に独立したインバータを備え、各インバータが1台のリニアモーターの1相に送電し、nがリニアモーターの数であり、mが各リニアモーターの相数である、ことを特徴とする請求項1に記載の電磁推進に基づく宇宙発射システム。
【請求項8】
前記各インバータはk個のインバータキャビネットで並列接続されることにより構成され、各インバータキャビネットはp個のインバータユニットでカスケード接続されることにより構成される、ことを特徴とする請求項7に記載の電磁推進に基づく宇宙発射システム。
【請求項9】
前記リニアモーターサブシステム(3)は、n台のリニアモーターと、ロケットアダプタとを備え、各リニアモーターは固定子及び固定子に取り付けられた可動子を備え、前記ロケットアダプタはそれぞれn台のリニアモーターの可動子に接続される、ことを特徴とする請求項1に記載の電磁推進に基づく宇宙発射システム。
【請求項10】
前記n台のリニアモーターの固定子はロケットアダプタの円周方向に沿って均一に配置される、ことを特徴とする請求項9に記載の電磁推進に基づく宇宙発射システム。
【請求項11】
前記n台のリニアモーターの固定子はロケットアダプタの径方向に沿って均一に配置され、nが偶数である、ことを特徴とする請求項9に記載の電磁推進に基づく宇宙発射システム。
【請求項12】
前記リニアモーターの固定子と水平面との間の角度が0~90度である、ことを特徴とする請求項9~11のいずれか1項に記載の電磁推進に基づく宇宙発射システム。
【請求項13】
リニアモーターの固定子がセグメント化の方式で送電される、ことを特徴とする請求項9~11のいずれか1項に記載の電磁推進に基づく宇宙発射システム。
【請求項14】
前記制御保守サブシステム(4)は、最上層制御機器と、エネルギー貯蔵制御機器と、エネルギー変換制御機器と、リニアモーター制御機器とを備え、前記最上層制御機器、エネルギー貯蔵制御機器、エネルギー変換制御機器、リニアモーター制御機器の間が制御リングネットワークの方式で接続され、
前記最上層制御機器は、人間とコンピュータの相互作用の制御インタフェースを提供し、エネルギー貯蔵制御機器、エネルギー変換制御機器及びリニアモーター制御機器それぞれに制御コマンドを送信するために使用され、
前記エネルギー貯蔵制御機器は、受信された制御コマンドに基づいて、エネルギー貯蔵サブシステムの充放電の制御を実現するために使用され、
前記エネルギー変換制御機器は、受信された制御コマンドに基づいて、エネルギー変換サブシステムのエネルギー変換の制御を実現するために使用され、
前記リニアモーター制御機器は、受信された制御コマンドに基づいて、リニアモーターサブシステムにおけるリニアモーターの可動子の運動のリアルタイムな制御、固定子のセグメント化送電の制御を実現するために使用される、ことを特徴とする請求項1に記載の電磁推進に基づく宇宙発射システム。
【請求項15】
前記制御保守サブシステム(4)は、エネルギー貯蔵監視機器と、エネルギー変換監視機器と、リニアモーター監視機器と、管理保守機器とをさらに備え、前記エネルギー貯蔵監視機器、エネルギー変換監視機器、リニアモーター監視機器及び管理保守機器の間が相互に健康リングネットワークの方式で接続され、
前記エネルギー貯蔵監視機器は、エネルギー貯蔵サブシステムの作業データを収集して管理保守機器にアップロードするために使用され、
前記エネルギー変換監視機器は、エネルギー変換サブシステムの作業データを収集して管理保守機器にアップロードするために使用され、
前記リニアモーター監視機器は、リニアモーターサブシステムの作業データを収集して管理保守機器にアップロードするために使用され、
前記管理保守機器は、受信されたデータに基づいて、エネルギー貯蔵サブシステム、エネルギー変換サブシステム及びリニアモーターサブシステムの健康状態及び情報を分析、表示、記憶及び照会し、保守テスト機能を提供するために使用される、ことを特徴とする請求項1に記載の電磁推進に基づく宇宙発射システム。
【請求項16】
電磁推進に基づく宇宙発射方法であって、電気エネルギーを電磁力に変換し、電磁力によってロケットを推進し、ロケットを電磁発射軌道に沿って特定の速度に加速し、ロケットの発射を実現する、ことを特徴とする電磁推進に基づく宇宙発射方法。
【請求項17】
直流電気エネルギーを利用して交流電流に変換しリニアモーターに供給し、次にリニアモーターによって電気エネルギーを電磁力に変換し、電磁力によってロケットを推進する、ことを特徴とする請求項16に記載の電磁推進に基づく宇宙発射方法。
【請求項18】
複数のリニアモーターはロケットアダプタによってロケットを推進する、ことを特徴とする請求項16に記載の電磁推進に基づく宇宙発射方法。
【請求項19】
リニアモーターサブシステムによって電気エネルギーを電磁力に変換し、前記リニアモーターサブシステムは、n台のリニアモーターと、ロケットアダプタとを備え、各リニアモーターは固定子及び固定子に取り付けられた可動子を備え、n台のリニアモーターの固定子が前記電磁発射軌道を形成し、前記ロケットアダプタはそれぞれn台のリニアモーターの可動子に接続され、前記ロケットがロケットアダプタに取り付けられ、前記n台のリニアモーターの固定子がロケットアダプタの円周方向に沿って均一に配置され、又は前記n台のリニアモーターの固定子がロケットアダプタの径方向に沿って均一に配置され、nが偶数である、ことを特徴とする請求項16~18のいずれか1項に記載の電磁推進に基づく宇宙発射方法。
【請求項20】
リニアモーターの固定子と水平面との間の角度が0~90度である、ことを特徴とする請求項19に記載の電磁推進に基づく宇宙発射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁力で物体を推進する宇宙発射システムの技術分野に属し、具体的には、電磁推進に基づく宇宙発射システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、技術レベルの進歩に伴って、衛星の性能指標や応用範囲が大幅に向上し、特に200キログラム以下の小型衛星は商用リモートセンシング、地球観測、モノのインターネット、衛星通信等の分野で広く応用されている。将来の宇宙経済は、地球軌道上に緊密に配置された衛星のコンステレーションを基礎とし、天網地網の「天地一体化」のシームレスな接続を実現し、人間社会のインテリジェントな発展に情報感知から情報交換までの強固な基盤を提供する。欧米等の先進国は宇宙経済を活発に発展させており、強力な国々は次々と宇宙産業を展開している。統計によると、現在世界で公開されている小型衛星の発射需要が数万に達し、これには、公開されていないコンステレーションネットワーキング計画及びコンステレーション補充衛星の数がまだ含まれていない。
【0003】
大きな衛星発射需要に直面して、既存の衛星発射技術は、効率的で、経済的なサービスを提供しにくく、発射数及び周期を確保できず、衛星技術の大規模の応用を深刻に妨げている。1957年にソビエト連邦が世界初の人工地球衛星を発射して以来、すべての衛星発射はロケットの推力だけで衛星を必要な空間軌道に発射する方式を採用しており、ロケットの推力は化学燃料を燃焼する時に噴射したウェイクから得られる。このような従来の衛星発射方式は、以下の欠点を有する。1、ロケットをロケット発射台で点火する必要があり、発射後に発射台を保守しなければならないため、ロケット発射の準備及び保守時間が長く、高頻度の迅速な発射が実現しにくい。2、電子情報技術の進歩に伴って、衛星コストが低くなっているが、ロケット発射のコストが長期間高いままである。3、従来のロケット発射方式は、大荷重、高軌道を設計目標とし、搭載される衛星は発射条件にしか適応できず、発射機会が限られ、発射の柔軟性が非常に不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は電磁推進に基づく宇宙発射システム及び方法を提供することにあり、該電磁発射システムは、以下の従来のロケット発射の3つの問題を解決する。1、従来のロケット発射が高頻度で連続的に発射できない問題を解決する。2、一回のロケット発射のコストが従来のロケット発射よりも約1桁低い。3、従来の衛星発射の機会が限られ、発射の柔軟性が不十分であるという問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明で採用される技術案は以下のとおりであり、電磁推進に基づく宇宙発射システムであって、エネルギー貯蔵サブシステムと、エネルギー変換サブシステムと、リニアモーターサブシステムと、制御保守サブシステムとを備える。
【0006】
エネルギー貯蔵サブシステムは、ロケットを推進する時に、貯蔵されているエネルギーをエネルギー変換サブシステムに輸送するために使用される。
【0007】
エネルギー変換サブシステムは、エネルギー貯蔵サブシステムにより輸送されたエネルギーを交流電流に変換してリニアモーターサブシステムに出力するために使用される。
【0008】
リニアモーターサブシステムは、エネルギー変換サブシステムにより出力された交流電流を受信して、電磁力を生成し、特定の距離内で特定の速度に加速するようにロケットを推進するために使用される。
【0009】
制御保守サブシステムは、エネルギー貯蔵サブシステム、エネルギー変換サブシステム及びリニアモーターサブシステムそれぞれに異なる制御コマンドを送信し、エネルギー貯蔵サブシステム、エネルギー変換サブシステム及びリニアモーターサブシステムが所定のプログラムに従って実行するように制御するために使用される。
【0010】
さらに、前記エネルギー貯蔵サブシステムはさらに、ロケットを推進する間に、送電システムからエネルギーを吸収してエネルギーを貯蔵するために使用される。
【0011】
さらに、前記エネルギー貯蔵サブシステムはn×m個の相互に独立した電源モジュールを備え、nがリニアモーターの数であり、mが各リニアモーターの相数である。
【0012】
さらに、各電源モジュールがpグループの電源ユニットに分けられ、各グループの電源ユニットはそれぞれエネルギー変換サブシステムにおける1つのインバータの対応するインバータユニットに接続される。
【0013】
さらに、前記各グループの電源ユニットは、電池パックアレイと、充電キャビネットとを備え、前記充電キャビネットは、送電システムと電池パックアレイとの間に接続された充電インタフェースである。
【0014】
さらに、前記各グループの電源ユニットはエネルギー貯蔵スイッチキャビネットをさらに備え、エネルギー貯蔵スイッチキャビネットが電池パックアレイとインバータユニットとの間に接続される。
【0015】
さらに、前記エネルギー変換サブシステムはn×m個の相互に独立したインバータを備え、各インバータが1台のリニアモーターの1相に送電し、nがリニアモーターの数であり、mが各リニアモーターの相数である。
【0016】
さらに、前記各インバータはk個のインバータキャビネットで並列接続されることにより構成され、各インバータキャビネットはp個のインバータユニットでカスケード接続されることにより構成される。
【0017】
さらに、前記リニアモーターサブシステムは、n台のリニアモーターと、ロケットアダプタとを備え、各リニアモーターは固定子及び固定子に取り付けられた可動子を備え、前記ロケットアダプタはそれぞれn台のリニアモーターの可動子に接続される。
【0018】
さらに、前記n台のリニアモーターの固定子はロケットアダプタの円周方向に沿って均一に配置される。
【0019】
さらに、前記n台のリニアモーターの固定子はロケットアダプタの径方向に沿って均一に配置され、nが偶数である。
【0020】
さらに、前記リニアモーターの固定子と水平面との間の角度が0~90度である。
【0021】
さらに、リニアモーターの固定子がセグメント化の方式で送電される。
【0022】
さらに、前記制御保守サブシステムは、最上層制御機器と、エネルギー貯蔵制御機器と、エネルギー変換制御機器と、リニアモーター制御機器とを備え、前記最上層制御機器、エネルギー貯蔵制御機器、エネルギー変換制御機器、リニアモーター制御機器の間が制御リングネットワークの方式で接続される。
【0023】
前記最上層制御機器は、人間とコンピュータの相互作用の制御インタフェースを提供し、エネルギー貯蔵制御機器、エネルギー変換制御機器及びリニアモーター制御機器それぞれに制御コマンドを送信するために使用される。
【0024】
前記エネルギー貯蔵制御機器は、受信された制御コマンドに基づいて、エネルギー貯蔵サブシステムの充放電の制御を実現するために使用される。
【0025】
前記エネルギー変換制御機器は、受信された制御コマンドに基づいて、エネルギー変換サブシステムのエネルギー変換の制御を実現するために使用される。
【0026】
前記リニアモーター制御機器は、受信された制御コマンドに基づいて、リニアモーターサブシステムにおけるリニアモーターの可動子の運動のリアルタイムな制御、固定子のセグメント化送電の制御を実現するために使用される。
【0027】
さらに、前記制御保守サブシステムは、エネルギー貯蔵監視機器と、エネルギー変換監視機器と、リニアモーター監視機器と、管理保守機器とをさらに備え、前記エネルギー貯蔵監視機器、エネルギー変換監視機器、リニアモーター監視機器及び管理保守機器の間が相互に健康リングネットワークの方式で接続される。
【0028】
前記エネルギー貯蔵監視機器は、エネルギー貯蔵サブシステムの作業データを収集して管理保守機器にアップロードするために使用される。
【0029】
前記エネルギー変換監視機器は、エネルギー変換サブシステムの作業データを収集して管理保守機器にアップロードするために使用される。
【0030】
前記リニアモーター監視機器は、リニアモーターサブシステムの作業データを収集して管理保守機器にアップロードするために使用される。
【0031】
前記管理保守機器は、受信されたデータに基づいて、エネルギー貯蔵サブシステム、エネルギー変換サブシステム及びリニアモーターサブシステムの健康状態及び情報を分析、表示、記憶及び照会し、保守テスト機能を提供するために使用される。
【0032】
電磁推進に基づく宇宙発射方法であって、プロセスは、電気エネルギーを電磁力に変換し、電磁力によってロケットを推進し、ロケットを電磁発射軌道に沿って特定の速度に加速し、ロケットの発射を実現することである。
【0033】
さらに、直流電気エネルギーを利用して交流電流に変換しリニアモーターに供給し、次にリニアモーターによって電気エネルギーを電磁力に変換し、電磁力によってロケットを推進する。
【0034】
さらに、複数のリニアモーターはロケットアダプタによってロケットを推進する。
【0035】
さらに、リニアモーターサブシステムによって電気エネルギーを電磁力に変換し、前記リニアモーターサブシステムは、n台のリニアモーターと、ロケットアダプタとを備え、各リニアモーターは固定子及び固定子に取り付けられた可動子を備え、n台のリニアモーターの固定子が前記電磁発射軌道を形成し、前記ロケットアダプタはそれぞれn台のリニアモーターの可動子に接続され、前記ロケットがロケットアダプタに取り付けられ、前記n台のリニアモーターの固定子がロケットアダプタの円周方向に沿って対称的に配置され、又は前記n台のリニアモーターの固定子がロケットアダプタの径方向に沿って対称的に配置され、nが偶数である。
【0036】
よりさらに、前記リニアモーターの固定子と水平面との間の角度が0~90度である。
【発明の効果】
【0037】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0038】
(1)、電磁発射システムが電磁力を生成してロケットを推進するというコールド発射方式を採用し、すなわち、ロケットが発射台を離れる前に点火せず、空中に発射した後点火することにより、発射台への損傷をゼロにして、発射台の回復時間を数百秒に増加することができ、発射荷重の伝達時間を考慮しても、連続発射の時間間隔を1時間以内に短縮することができ、1つの発射ウィンドウ期間内にロケットを複数回で発射するという目的を達成することができ、ロケットを高頻度で連続的に発射するという難題を解決する。
【0039】
(2)、電磁発射システムによってロケット点火の前にロケットを数マッハまで予め加速するため、従来のロケットに比べて、ロケットの第1ステージの部分をキャンセルし、ロケットの燃料を大幅に節約して、ロケットの重量を軽減し、ロケットの構造を簡略化し、ロケットのコストを大幅に低減させる。
【0040】
(3)、電磁発射システムを採用して衛星を発射すると、リニアモーターの電磁力が連続的に調整可能であるため、衛星の実際のニーズに応じて、大型、中型、小型の異なるロケットにマッチングすることができ、より広い発射時間及び軌道要求に適することができ、発射方式は柔軟的で便利である。
【0041】
(4)、冗長設計の方法を採用することにより、電磁発射システム全体は冗長能力を有し、そのうちの一部の機器が故障した時に本回の発射タスクを完了できることを確保できるため、電磁発射システムが故障する場合にロケットの発射が失敗するリスクを大幅に低減させ、信頼性の問題を解決する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図2】本発明のエネルギー貯蔵サブシステム及びエネルギー変換サブシステムの模式図である。
【
図3】
図2におけるブロックA内の単一の電源モジュール及び単一のインバータの模式図である。
【
図4】本発明の円周方向に沿って対称的に配置されたリニアモーターサブシステムの模式図である。
【
図5】本発明の径方向に沿って対称的に配置されたリニアモーターサブシステムの模式図である。
【
図6】本発明の制御保守サブシステムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照しながら本発明の具体的な実施形態を更に説明する。これらの実施形態の説明は本発明を理解するのを助けるためのものに過ぎず、本発明を限定するものではないことを説明する必要がある。また、以下で説明された本発明の各実施形態に係る技術的特徴は互いに矛盾しない限り相互に組み合わせることができる。
【0044】
図1に示すように、本発明は電磁推進に基づく宇宙発射システムを提供し、エネルギー貯蔵サブシステム1と、エネルギー変換サブシステム2と、リニアモーターサブシステム3と、制御保守サブシステム4とを備え、4つの間の関係は主にエネルギーの流れと情報の流れに分けられ、その中で、エネルギーの流れの方向は、毎回発射する前に、送電システムは電気エネルギーをエネルギー貯蔵サブシステム1に供給して貯蔵し、発射する時に、エネルギー貯蔵サブシステム1は電気エネルギーをエネルギー変換サブシステム2に供給し、エネルギー変換サブシステム2は変調された後の電気エネルギーをリニアモーターサブシステム3に供給することである。情報の流れの方向は、制御保守サブシステム4は冗長分散型産業用イーサネットネットワークを介して他の3つのサブシステムに接続され、エネルギーの流れを制御する各装置は所定のプログラムに従って実行し、且つ他の3つのサブシステム及び自体の健康状態をリアルタイムに判断することができることである。各サブシステムの機能は具体的に以下のとおりである。
【0045】
エネルギー貯蔵サブシステム1は、制御コマンドに基づいて、ロケットを推進する間に、送電システムからエネルギーを吸収してエネルギーを長期間貯蔵すること、及び受信された制御コマンドに基づいて、ロケットを推進する時に、貯蔵されているエネルギーをエネルギー変換サブシステム2に輸送することに使用される。
【0046】
エネルギー変換サブシステム2は、制御コマンドに基づいて、エネルギー貯蔵サブシステム1により輸送されたエネルギーを、必要な可変周波数及び可変電圧の交流電流に変換してリニアモーターサブシステム3に出力するために使用される。
【0047】
リニアモーターサブシステム3は、制御コマンドに基づいて、エネルギー変換サブシステム2により出力された交流電流を受信して、電磁力を生成し、特定の距離内で所定の速度に加速するようにロケットを推進するために使用される。
【0048】
制御保守サブシステム4は、エネルギー貯蔵サブシステム1、エネルギー変換サブシステム2及びリニアモーターサブシステム3それぞれに異なる制御コマンドを送信し、エネルギー貯蔵サブシステム1、エネルギー変換サブシステム2及びリニアモーターサブシステム3が所定のプログラムに従って実行するように制御するために使用される。制御保守サブシステム4は、他の3つのサブシステムとネットワークを介して接続され、主に、操作者とシステム装置のマン-マシンインタフェースを提供し、各サブシステムが所定のプロセスに従って作業を完了するように制御し、且つ各サブシステム機器の状態を監視して管理する。
【0049】
上記技術案では、
図2、
図3に示すように、エネルギー貯蔵サブシステム1のエネルギー貯蔵素子は、高安全性で大容量の放電リチウム電池の技術案を採用しており、具体的には、n×m個の相互に独立した電源モジュールを備え、nがリニアモーターの数であり、mが各リニアモーターの相数であり、n及びmはいずれも1以上の整数であり、各電源モジュールは独立して1台のリニアモーターの1相に送電する。各電源モジュールがさらにpグループの電源ユニットに分けられ、各グループの電源ユニットはそれぞれエネルギー変換サブシステムにおける1つのインバータの対応する複数のインバータユニット(すなわち、以下のk個のインバータキャビネットの対応する並列接続されたインバータユニット)に接続され、pが1以上の整数である。各グループの電源ユニットは、電池パックアレイと、充電キャビネットと、エネルギー貯蔵スイッチキャビネットとを備え、電池パックアレイは、複数枚のリチウム電池で直列接続、並列接続されることにより構成され、前記充電キャビネットは、充電インタフェースが送電網と電池パックアレイとの間に接続され、前記エネルギー貯蔵スイッチキャビネットが電池パックアレイとインバータユニットとの間に接続される。ロケットを推進する間に、送電システムは充電キャビネットを介してエネルギー貯蔵サブシステムに小さいパワーで充電し、ロケットを推進する時に、エネルギー貯蔵サブシステムはエネルギー変換サブシステムを介してリニアモーターに大きいパワーの電気エネルギーを提供する。
【0050】
上記技術案では、
図2、
図3に示すように、エネルギー変換サブシステム2は集中型インバータの配置の技術案が採用されており、具体的にはn×m個の相互に独立したインバータを備え、nがリニアモーターの数であり、mが各リニアモーターの相数であり、各インバータが1台のリニアモーターの1相に送電し、各インバータはk台のインバータキャビネットで並列接続されることにより構成され、各インバータキャビネットはp個のインバータユニットでカスケード接続されることにより構成され、すなわち、直流側のk台のインバータキャビネットの対応するインバータユニットの間が並列接続され、交流側の1台のインバータキャビネットのインバータユニットの間がカスケード接続された後、その出力端子は他のインバータキャビネットの出力端子と共に並列接続される。例えば、直流側(すなわち、入力端)には、第1台のインバータキャビネットの一番目のインバータユニット、第2台のインバータキャビネットの一番目のインバータユニット…第k台のインバータキャビネットの一番目のインバータユニットの間が並列接続され、…、第1台のインバータキャビネットのp番目のインバータユニット、第2台のインバータキャビネットのp番目のインバータユニット…第k台のインバータキャビネットのp番目のインバータユニットの間が並列接続される。交流側(すなわち、出力端子)には、第1台のインバータキャビネットの一番目のインバータユニット…p番目のインバータユニットの間がカスケード接続され、…、第k台のインバータキャビネットの一番目のインバータユニット…p番目のインバータユニットの間がカスケード接続され、第1台のインバータキャビネットの出力端子…第k台のインバータキャビネットの出力端子の間が並列接続される。単一のインバータユニットは、q個のパワートランジスタで並列接続されることにより形成されたHブリッジ式の構造であり、n、m、k、p及びqが1以上の整数である。エネルギー変換サブシステムは、容量がギガボルトアンペアレベルであり、現在のパワーエレクトロニクスデバイスのシングルチューブの性能が限られるため、カスケード接続及び並列接続の方式によってのみ実現できる。本案の実例で採用されるパワーデバイスはIGBTであるが、
図3に示されるトポロジー技術案は同様に他のタイプのパワーデバイスに適用できる。
【0051】
上記技術案では、リニアモーターサブシステム3はn台のm相のリニアモーターと、ロケットアダプタとを備え、ロケットアダプタはリニアモーターの可動子とロケットのインタフェースであり、異なる型番のロケットをマッチングしてリニアモーターの電磁力を伝達するために使用される。各リニアモーターは固定子(一次)及び固定子に取り付けられる可動子(二次)を備え、前記ロケットアダプタはそれぞれn台のリニアモーターの可動子に接続され、ロケットがロケットアダプタに取り付けられ、n台のリニアモーターの固定子が電磁発射軌道を形成し、
図4に示すように、前記n台のリニアモーターの固定子はロケットアダプタの円周方向に沿って均一に配置され、nが1以上の整数であり、さらに、n台のリニアモーターの固定子はロケットアダプタの円周方向に沿って均一で対称的に配置され、又は、
図5に示すように、前記n台のリニアモーターの固定子はロケットアダプタの径方向に沿って均一に配置され、さらに、n台のリニアモーターの固定子はロケットアダプタの径方向に沿って均一で対称的に配置され、nが偶数である。リニアモーターの固定子の長さが設定値であり、約数キロメートルであり、従って、リニアモーターの固定子がセグメント化の方式で送電され、リニアモーターの固定子と水平面との間の角度が0~90度であり、好ましくは30度、60度又は90度であり、
図4、
図5は90度を示す。システムが動作する時に、エネルギー変換サブシステムによってモーターの固定子に周波数及び電圧可変の交流電流を輸送し、モーターの可動子に電磁力を生成し、ロケットアダプタを駆動して電磁発射軌道に沿ってロケットを推進し、それを数マッハの速度に加速する。
【0052】
上記技術案では、
図6に示すように、制御保守サブシステム4は、最上層制御機器4-1と、エネルギー貯蔵制御機器4-2と、エネルギー変換制御機器4-3と、リニアモーター制御機器4-4と、エネルギー貯蔵監視機器4-5と、エネルギー変換監視機器4-6と、リニアモーター監視機器4-7と、管理保守機器4-8とを備え、最上層制御機器4-1、エネルギー貯蔵制御機器4-2、エネルギー変換制御機器4-3、リニアモーター制御機器4-4の間が制御リングネットワークの方式で接続され、エネルギー貯蔵監視機器4-5、エネルギー変換監視機器4-6、リニアモーター監視機器4-7及び管理保守機器4-8の間が相互に健康リングネットワークの方式で接続され、最上層制御機器4-1はさらに管理保守機器4-8に個別に接続される。さらに、指摘する必要がある点として、特定の機器を1つの機器として組み合わせることができ、例えば、エネルギー貯蔵監視機器及びエネルギー変換監視機器は機能が単一で、計算負荷が小さく、通常、1つの機器として組み合わせることができ、同様な状況は本案の保護範囲内に含まれるべきである。
【0053】
最上層制御機器4-1及び管理保守機器4-8は、産業用コンピュータ、強化コンピュータ、PC104等のハードウェアの技術案を採用し、各サブシステム制御機器及び監視機器は、DSP、FPGA、PLC、PC104等のハードウェアの技術案を採用し、制御リングネットワーク、健康リングネットワーク、最上層制御機器及び管理保守機器は個別に接続されて工業イーサネットを採用し、各サブシステムの制御機器及び監視機器はバス、シリアルポート、信号線等を介して対応するサブシステムに接続される。
【0054】
最上層制御機器4-1は、人間とコンピュータの相互作用の制御インタフェースを提供し、エネルギー貯蔵制御機器4-2、エネルギー変換制御機器4-3及びリニアモーター制御機器4-4それぞれに制御コマンドを送信し、様々なコマンドの受信、処理、送信を実現し、各サブシステムが所定のプロセスに従って作業を完了するように制御し、インターロック機能を有し、誤操作を防止することができる。エネルギー貯蔵制御機器4-2は、受信された制御コマンドに基づいて、エネルギー貯蔵サブシステムの充放電の制御を実現するために使用される。エネルギー変換制御機器4-3は、受信された制御コマンドに基づいて、エネルギー変換サブシステムのエネルギー変換の制御を実現するために使用される。リニアモーター制御機器4-4は、受信された制御コマンドに基づいて、リニアモーターサブシステムにおけるリニアモーターの可動子の運動のリアルタイムな制御、固定子のセグメント化送電の制御を実現するために使用される。エネルギー貯蔵監視機器4-5は、エネルギー貯蔵サブシステムの作業データ(電池電圧、温度等のデータを含む)を収集して管理保守機器にアップロードするために使用される。エネルギー変換監視機器4-6は、エネルギー変換サブシステムの作業データ(電流、電圧、温度等のデータを含む)を収集して管理保守機器にアップロードするために使用される。リニアモーター監視機器4-7は、リニアモーターサブシステムの作業データ(温度、可動子の位置等のデータを含む)を収集して管理保守機器にアップロードするために使用される。管理保守機器4-8は、受信されたデータに基づいて、各サブシステム(エネルギー貯蔵サブシステム、エネルギー変換サブシステム及びリニアモーターサブシステム)の健康状態及び情報機能を分析、表示、記憶及び照会し、保守テスト機能を提供して、装置の健康管理等の機能を実現するために使用される。
【0055】
上記宇宙発射システムに基づき、本発明は、電磁推進に基づく宇宙発射方法をさらに提供し、プロセスは、上記宇宙発射システムを採用して電気エネルギーを電磁力に変換し、電磁力によってロケットを推進し、ロケットを電磁発射軌道に沿って数マッハまで加速し、ロケットの発射を実現し、それにより現在の従来のロケットの一次エンジンを取り替えることである。
【0056】
本明細書で詳細に説明されていない内容は当業者の周知の従来技術に属する。
【国際調査報告】