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特表2022-542784Z選択的オレフィンメタセシス触媒の新合成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】Z選択的オレフィンメタセシス触媒の新合成
(51)【国際特許分類】
   C07F 15/00 20060101AFI20220930BHJP
   C07C 69/533 20060101ALI20220930BHJP
   C07C 67/475 20060101ALI20220930BHJP
   C07C 233/09 20060101ALI20220930BHJP
   C07C 231/12 20060101ALI20220930BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220930BHJP
【FI】
C07F15/00 A
C07C69/533
C07C67/475
C07C233/09 B
C07C231/12
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577614
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(85)【翻訳文提出日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 US2020040954
(87)【国際公開番号】W WO2021011221
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】62/875,156
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399129696
【氏名又は名称】カリフォルニア・インスティテュート・オブ・テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】CALIFORNIA INSTITUTE OF TECHNOLOGY
(71)【出願人】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D-63457 Hanau,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・シュ
(72)【発明者】
【氏名】アダム・エム・ジョンズ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・エイチ・グラブス
(72)【発明者】
【氏名】エイドリアン・イー・サムキアン
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
4H050
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC48
4H006AC53
4H006BA23
4H006BA47
4H006BJ50
4H006BV34
4H006KA31
4H039CA29
4H039CL60
4H050AA01
4H050AA02
4H050AA03
4H050AB40
4H050WB11
4H050WB13
(57)【要約】
本開示は、メタセシス反応での使用に有用なルテニウム化合物を調製する方法、そのような方法から生じる生成物化合物、及びオレフィンのメタセシスにおける触媒としてのそのような生成物化合物の使用に関する。特に、方法は、一般式(C)の中間体の使用を利用して、一般式(B)のC-Hが金属化された立体障害ルテニウム化合物を得る。開示された方法を使用することで、一般式(B)の化合物は、より高い収率で生成され、より高い触媒活性/選択性を示し、以前に知られている方法からアクセス可能なものよりも多くのヒンダード触媒を生じる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(III)又は(XIII)の化合物を調製する方法であって
、前記方法は、式(II)若しくは(XII)の化合物それぞれ、又はその幾何異性体を、式Z-H(式中、Z-HはC(R18)(R19)(R20)COOHである)のカルボン酸と接触させることを含み、前記接触は、式(IV)若しくは(XIV)の化合物それぞれ、又はその幾何異性体の形成をもたらし:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
式中、
、R、R、R、R、R、R、R、及びRは、独立して、水素、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールオキシ、若しくはニトロ基であり、又はこれらを含み;
及び/又はRとR若しくはRとR若しくはRとR若しくはRとR若しくはRとR若しくはRとR若しくはRとRのうちの1つ以上が、それらが結合している炭素と一緒になって、少なくとも1つの任意選択で置換された5~7員環構造を形成し;Xは、-O-、-S-、又は-N(R10A)-であり;
10及びR10Aは、独立して、任意選択で置換された直鎖、分岐鎖、環式、二環式、若しくは多環式のC3~24アルキル、任意選択で置換されたアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリールであり、又はこれらを含み;
11、R12、R13、及びR14は、独立して、水素、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択的で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールであり、又はこれらを含み;及び/又は
11、R12、R13、及びR14のうちの1つ以上のペアは、独立して、任意選択で、一緒に連結されて、環式又は多環式の構造を形成し;
【化5】
は、任意選択の二重結合の存在を指しており;mは、0、1、2、3、又は4であり;
15は、独立して、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールオキシ、ハロ、シアノ、ニトロであり、又はこれらを含み、又はR15の任意の2つが連結して、環式構造を形成してもよく;
Yは、独立して、ルテニウム中心に配位子として配位した塩基性アニオンであり、又はこれらを含み;
16及びR17は、独立して、水素、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたヘテロアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリールオキシであり、又はこれらを含み;
Zは、任意選択で式C(R18)(R19)(R20)C(=O)Oのカルボキシレートであり;
式中、R18、R19、及びR20は、独立して、水素、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアリール、若しくは任意選択で置換されたヘテロアリールであり、又はこれらを含み、但し、R18、R19、及びR20の全てが水素であることはなく;及び/又は
18、R19、及びR20のうちの2つ若しくは3つが一緒に連結されて、環式若しくは多環式の構造を形成し;
Lは、ドナー配位子、任意選択で中性電子ドナー配位子、任意選択で中性電子ドナー溶媒、又はR17に連結された電子ドナー配位子である、
方法。
【請求項2】
式(I)若しくは(XI)の化合物、又はその幾何異性体を、式[M][Y]の塩と接触させることを更に含み、前記アニオンYは、少なくとも実施形態1に記載されているY配位子に対応し、前記接触は、式(II)若しくは(XII)の化合物それぞれ、又はその幾何異性体の形成をもたらし:
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
式中、X及びXは、独立して、クロロ、ブロモ、又はヨードであり、Mは、アルカリ金属カチオン、アンモニウムカチオン、又は他の窒素系カチオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(III)若しくは(XIII)の化合物、又はその幾何異性体を、二座配位子として前記ルテニウムに配位することができるトリフルオロアセテート、ナイトレート、ニトリット、オキサレート、ホスフェート、サルファイト、若しくはスルホネート、又は強酸(H-Q)の他のアニオンと反応させて、式(IV)若しくは(XIV)の化合物それぞれ、又はその幾何異性体を形成することを更に含み:
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
式中、Qは、二座配位子として前記ルテニウムに配位することができる、配位したトリフルオロアセテート、ナイトレート、ニトリット、オキサレート、ホスフェート、サルファイト、スルホネート、又は強酸(H-Q)の他のアニオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式(I)又は(XI)の化合物を、式[M][Y]の塩と接触させ、それにより、式(II)又は(XII)の化合物それぞれの形成をもたらす工程と、式(II)又は(XII)の化合物それぞれを、式Z-Hのカルボン酸と接触させ、それにより式(III)又は(XIII)の化合物の形成をもたらす次の工程とを、式
(II)又は(XII)の化合物それぞれを単離することなく行う、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
及びRが、任意選択で置換されたC1~6アルキル、好ましくは分岐鎖C3~6アルキル、分岐鎖C4~6アルキル、又はフェニルであり、R、R、及びRが、独立して、水素又は任意選択で置換されたC1~6アルキルである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
、R、及び任意選択でRが、独立して、C1~6アルキル、好ましくは分岐鎖C3~6アルキル、分岐鎖C4~6アルキル、又はフェニルである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
【化14】
であり;
式中、R21は、ハロゲン、任意選択で置換されたC1~12アルキル、任意選択で置換されたC2~12アルケニル、任意選択で置換されたC1~12アルコキシ、任意選択で置換されたC6~24-アリール、任意選択で置換されたC3~24-ヘテロアリール、又はニトロであり;及び
nは、独立して、各出現において、0~4である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
【化15】
である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記Xが、-O-である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
10及び/又はR10Aが、置換若しくは非置換フェニル、又は直鎖、分岐鎖、環式、二環式、若しくは多環式C3~24アルキルである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
【化16】
が、任意選択でアルキル置換されたアダマンチル部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
(a)式(II)の化合物が、式(II-A)の化合物であり、式(III)の化合物が、式(III-A)の化合物であり:
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
(b)式(XII)の化合物が、式(XII-A)の化合物であり、式(XIII)の化合物が、式(XIII-A)の化合物である:
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
(a)式(I)の化合物が、式(I-A)の化合物であり:
【化25】
【化26】
又は
(b)式(XI)の化合物が、式(XI-A)の化合物である:
【化27】
【化28】
、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
(a)式(IV)の化合物が、式(IV-A)の化合物であり:
【化29】
【化30】
及び
(b)式(XIV)の化合物が、式(XIV-A)の化合物である:
【化31】
【化32】
請求項3に記載の方法。
【請求項15】
式(XX-A)、(XX-B)、(XX-C)、又は(XX-D)のルテニウム化合物であって:
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
式中、
、R、R、R、R、R、R、R、及びRは、独立して、水素、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールオキシ、若しくはニトロ基であり;
及び/又はRとR若しくはRとR若しくはRとR若しくはRとR若しくはRとRのうちの1つ以上が、それらが結合している炭素と一緒になって、少なくとも1つの任意選択で置換された5~7員環構造を形成し;
は、-O-、-S-、又は-N(R10A)-であり;
10及びR10Aは、任意選択で置換された直鎖、分岐鎖、環式、二環式、若しくは多環式のC3~24アルキル、任意選択で置換されたアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリールであり;
11、R12、R13、及びR14は、独立して、水素、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択的で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールであり;及び/又は
11、R12、R13、及びR14のうちの1つ以上のペアは、独立して、任意選択で、一緒に連結されて、環式又は多環式の構造を形成し;
【化37】
は、任意選択の二重結合の存在を指しており;mは、0、1、2、3、又は4であり;
15は、独立して、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールオキシ、ハロ、シアノ、ニトロであり、又はR15の任意の2つを連結して、環式構造を形成してもよく;
16及びR17は、独立して、水素、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたヘテロアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリールオキシであり;Gは、独立して:(a)クロロ、ブロモ、若しくはヨード、又はこれらの組み合わせ;(b)ルテニウム中心に配位子として配位した塩基性アニオンであって、各塩基性アニオンは、水酸化物、C1~12アルコキシド、アミデートアニオン、置換若しくは非置換フェノキシド、置換若しくは非置換ピロレート、置換若しくは非置換インドレート、置換又は非置換イソインドレート、又は置換若しくは非置換イミダゾレートを含む、塩基性アニオン、であり;
Lは、中性電子ドナー配位子、任意選択で中性電子ドナー溶媒、又はR17に連結された電子ドナー配位子であり、但し:
Gが、クロロ、ブロモ、若しくはヨード、又はこれらの組み合わせであるとき、
(i)R及びRは、独立して、任意選択で置換されたC4~12、C5~12、C6~12、C7~12、若しくはC8~12アルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリールオキシであり、及び/又はRとR若しくはRとR若しくはRとR若しくはRとRのうちの1つ以上は、それらが結合されている炭素と一緒になって、少なくとも1つの任意選択で置換された5~7員環構造を形成する;
(ii)R及びRは、独立して、任意選択で置換された分岐鎖C4~12、C5~12、C6~12、C7~12、若しくはC8~12アルキルである;又は
(iii)R10もR10Aも、イソプロピル又は任意選択で置換されたフェニルではない、
ルテニウム化合物。
【請求項16】
式(Y-A)、(Y-B)、(Y-C)、又は(Y-D)のルテニウム化合物であって:
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
式中、R、R、R、R、R、R、R、R、及びRは、独立して、水素、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールオキシ、若しくはニトロ基であり;
及び/又はRとR若しくはRとR若しくはRとR若しくはRとR若しくはRとRのうちの1つ以上が、それらが結合している炭素と一緒になって、少なくとも1つの任意選択で置換された5~7員環構造を形成し;
は、-O-、-S-、又は-N(R10A)-であり;
10及びR10Aは、任意選択で置換された直鎖、分岐鎖、環式、二環式、若しくは多環式のC3~24アルキル、任意選択で置換されたアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリールであり;
11、R12、R13、及びR14は、独立して、水素、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択的で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールであり;
及び/又はR11、R12、R13、及びR14のうちの1つ以上のペアは、独立して、任意選択で、一緒に連結されて、環式又は多環式の構造を形成し;
【化42】
は、任意選択の二重結合の存在を指しており;
mは、0、1、2、3、又は4であり;
15は、独立して、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールオキシ、ハロ、シアノ、ニトロであり、又はR15の任意の2つを連結して、環式構造を形成してもよく;
Jは、独立して、
(a)X又はYについて本明細書の他の箇所に記載されているものなどの単座配位子、
例えば、少なくともその2,6位で置換されたフェノキシド;
(b)カルボキシレート[任意選択で式C(R18)(R19)(R20)C(=O)Oのカルボキシレート(式中、R18、R19、及びR20は、独立して、水素、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリールであり、但し、R18、R19、及びR20の全てが水素であることはなく、及び/又はR18、R19、及びR20のうちの2つ又は3つが一緒に連結されて、環式又は多環式構造を形成する)];又は
(c)二座配位子として前記ルテニウムに配位することができる、トリフルオロアセテート、ナイトレート、ニトリット、オキサレート、ホスフェート、サルファイト、スルホネート、又は強酸(H-Q)の他のアニオンであり;
16及びR17は、独立して、水素、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたヘテロアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリールオキシであり;
Lは、中性電子ドナー配位子、任意選択で中性電子ドナー溶媒、又はR17に連結された電子ドナー配位子であり;
但し、Jが、前記置換フェノキシド、式C(R18)(R19)(R20)C(=O)Oの前記カルボキシレート、又は、二座配位子として前記ルテニウムに配位することができる、前記トリフルオロアセテート、前記ナイトレート、前記ニトリット、前記オキサレート、前記ホスフェート、前記サルファイト、前記スルホネート、又は強酸(H-Q)の前記他のアニオンであるとき、
(i)R及びRは、独立して、任意選択で置換されたC4~12アルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリールオキシであり、及び/又はRとR若しくはRとR若しくはRとR若しくはRとRのうちの1つ以上は、それらが結合している炭素と一緒になって、少なくとも1つの任意選択で置換された5~7員環構造を形成する;又は
(ii)R10は、任意選択で置換された直鎖、分岐鎖、環式、二環式、若しくは多環式C4-12アルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリールオキシである、
ルテニウム化合物。
【請求項17】
少なくとも1つのアルケン、アルキン、又はエンインを、請求項16に記載のルテニウム化合物と接触させることを含む方法であって、前記接触が:
(a)2つの異なるアルケン、すなわちアルケン、アルキン、及び/又はエンインの交差メタセシス(CM);
(b)シクロアルケン環の形成をもたらすジエンの閉環メタセシス(RCM);
(c)2つのオレフィンのホモ二量体化;
(d)オリゴマー及び/又はポリマーの形成をもたらす非環式ジエンメタセシス(ADMET);
(e)非環式ジエンをもたらす開環交差メタセシス(ROCM);(f)ポリマーをもたらすシクロアルケンの開環メタセシス重合(ROMP);又は
(g)オレフィンのE/Z異性体混合物の、前記混合物のE-オレフィン含有量を増加させる、エテノリシス、
を含むメタセシス反応をもたらす、
方法。
【請求項18】
前記メタセシス反応の生成物が、主にZ異性体オレフィンである、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月17日に出願された米国特許出願第62/875,156号の優先権を主張し、その内容は、全ての目的のために参照により本明細書に完全に組み込まれる。
政府の権利
【0002】
本発明は、国立衛生研究所によって授与された補助金番号GM031332及び全米科学財団によって授与された補助金番号CHE1502616の下で政府の支援を受けてなされた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本開示は、好ましくは、立体障害ルテニウム触媒を調製するための、Zオレフィンの優先的形成をもたらすメタセシス反応において使用するためのメタセシス反応において有用なルテニウム化合物を調製する方法と、係る方法から生じる化合物と、オレフィンのメタセシスにおける触媒としての係る化合物の使用と、に関する。これらの化合物は、触媒反応、有機合成、高分子化学の分野において、並びにファインケミカル及び医薬品の製造などの産業用途で使用することができる。
【背景技術】
【0004】
オレフィンメタセシスは、炭素-炭素二重結合形成のための非常に価値のある合成方法である。ルテニウムメタセシス触媒による技術によって、開環メタセシス重合(ROMP)、開環交差メタセシス(ROCM)、交差メタセシス(CM)、閉環メタセシス(RCM)、及び非環式ジエンメタセシス(ADMET)を含む広範な用途で用いるいくつかの反応プラットフォームが可能になった。これらの用途のほとんどで、内部オレフィンが反応生成物として形成される。
【0005】
内部オレフィンは、現代の薬物、農薬、及び機能性材料における重要な構成単位であり、複雑な標的合成のための便利なハンドルである。一般にE又はZと定義される内部オレフィンの立体配置は、分子の全体的な立体配置を決定し、それはそれらの物理的、化学的、及び生物学的特性に影響を及ぼす。E/Zオレフィン混合物の分離と関連する一般的な難しさを考えると、正確な立体配置の制御による内部オレフィンの選択的構築は、特に廃棄物を最小限に抑え、合成を合理化するという観点から、実験室研究から工業生産まで様々な用途で非常に望ましい。
【0006】
従来のオレフィンメタセシス触媒では、一般に、ZオレフィンとEオレフィンとの混合物が得られた。多くの場合、E-オレフィンが主要生成物である。生成物が熱力学的平衡に起因する場合、2つの異性体間のエネルギー差により約5:1~約9:1のE:Z比となる。
【0007】
グラッブスのグループは、ある特定のタイプの炭素キレート化N-ヘテロ環式カルベン(NHC)配位子を組み込むと、高度にZ選択的なオレフィンメタセシスを触媒するグラッブスのZ選択的ルテニウムオレフィンメタセシス触媒が生成されることを2011年に報告しており(Endo,K.;Grubbs,R.H.Chelated Ruthenium Catalysts for Z-Selective Olefin Metathesis J.Am.Chem.Soc.2011,133,8525-8527)、例えば、Ru-1及びRu-2(図1)である。
【化1】
【0008】
炭素キレート化NHC配位子を使用したグラッブスのZ選択的ルテニウムオレフィンメタセシス触媒の合成は、NHC配位子の分子内C-H結合活性化に依存していた。これは、適切なZ選択性を達成するために必要なキレート化を形成するための重要な工程であり、したがって合成全体の重要な工程であった。
【0009】
これを達成するために、グラッブスのグループは、ルテニウムジクロリド前駆体とピバル酸銀との間のアニオン配位子置換を伴う方法を開発してジピバレート化合物を形成させた(Endo,K.;Grubbs,R.H.Chelated Ruthenium Catalysts for Z-Selective Olefin Metathesis J.Am.Chem.Soc.2011,133,8525-8527)。次いで、生成されたジピバル酸ルテニウムは、同時にC-H結合の活性化を受けて、重要なRu-C結合、並びに所望のキレート化を形成した。しかしながら、特に商業規模では、ピバル酸銀の使用は極めて高価であった。更に、この方法は、NHC上に小さなメシチル基(Ar=Mes)を有するRu-1などの化合物の合成には有効であったが、銀によって誘発される分解に起因して、多くの場合、より効率的で選択的な触媒である、より嵩高いペンダントを有する化合物、例えば、より大きな2,6-ジイソプロピルフェニル基(Ar=Dipp)を有するRu-2などを調製するためには使用できなかった。2013年には、グラッブスのグループは、ピバル酸銀の代わりにピバル酸ナトリウムを使用する改良方法を報告し、これにより、Ru-2とその関連触媒を利用できるようになった(Rosebrugh,L.E.;Herbert,M.B.;Marx,V.M.;Keitz,B.K.;Grubbs,R.H.Highly Active Ruthenium Metathesis Catalysts Exhibiting Unprecedented Activity and Z-Selectivity J.Am.Chem.Soc.2013,135,1276-1279)。米国特許第9,586,981号も参照されたい。しかしながら、この改良された方法は、特に、工業規模のスケールアップのために、多量の高価な試薬(ピバル酸ナトリウム、10当量)及び無視できない時間を要する反応条件(40℃で4日間)を依然として必要とした。より重要なことに、全体的な収率は低く(20~30%)、必然的に触媒生成のコストは増加し、このタイプの重要なZ選択的オレフィンメタセシス触媒の商業的適用を大幅に遅延させた。更に、立体障害のあるRu前駆体上に対して立体的に制約のあるピバレートを導入する際の極端な難しさから、更に改善された触媒活性を有する可能性のある、Dippよりも大きいArを有するNHCを有するZ選択的触媒の合成は、これまで成功しなかった(図2A図2B)。
【0010】
したがって、効率的で、高収率で、スケールアップが容易であるグラッブスのZ選択的ルテニウムオレフィンメタセシス触媒の合成のための手順、特に、キレート化を形成するためのC-H結合活性化工程が、直ちに求められている。本開示は、従来技術におけるこれらの欠点のいくつかに対処する。
発明の概要
【0011】
第1の必要性を満たすために、本発明者らは、グラッブスのZ選択的ルテニウムオレフィンメタセシス触媒の新規の合成を発見した。特に、C-H結合の活性化は、既存の手順と比較して、より安価な試薬(例えば、カリウムtert-ブトキシド/リチウムピロレート及びピバル酸)を使用することによって、より高い収率で達成された。例えば、図3を参照されたい。
【0012】
本開示は、一般式(C)の化合物、特に、立体障害化合物
【化2】
又はそれらの立体異性体を調製する方法に関し、当該方法は、対応する一般式(B)の化合物をカルボン酸と反応させて、一般式(C)の化合物を形成する工程を含む一連の工程を含み、二座アニオン性配位子はカルボキシレートである。一般式(B)の化合物は、一般的な対応式(A)のジハロ化合物を、ハロ配位子を置換して単座配位子としてルテニウム中心に配位することができるアニオン性塩基と反応させて、任意選択的に単離される中間体を形成することによって、形成され得る。その後の反応を用いて、他の二座アニオン性配位子、例えばナイトレートなどでカルボキシレート配位子を置き換えることができる。NHC(N-ヘテロ環式カルベン)として記載される部分の各々、芳香族ペンダント、立体障害基、塩基、二座アニオン性配位子、ハロ、カルベン、及び配位子を、本明細書で記載する。
【0013】
この一般的な文脈内で、ある特定の実施形態は、式(III)又は(XIII)の化合物を調製する方法を含み、当該方法は、式(II)又は(XII)の化合物それぞれ、又はそれらの幾何異性体を、式Z-Hのカルボン酸と接触させることを含み、当該接触は、式(III)又は(XIII)の化合物それぞれの形成、又はそれらの幾何異性体の形成をもたらし:
【化3】
可変部分R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、及びmは、これらの構造上の様々な置換基及び任意選択の置換基を定義する。Yは、独立して、ルテニウム中心に配位子として配位した塩基性アニオンである。Zは、配位子としてルテニウム中心に配位した、任意選択で置換されたカルボキシレートアニオン、好ましくは第三級カルボキシレートアニオンである。Lは、ドナー配位子である。Xは、ルテニウム中心に配位子として作用することができるヘテロ原子である。これらの可変部分の各々は、本明細書の他の場所でより明確に定義される。
【0014】
他の実施形態は、式(I)若しくは(XI)の化合物、又はその幾何異性体を、式[M][Y]の塩と接触させることを含む方法を含み、当該接触は、式(II)若しくは(XII)の化合物それぞれ、又はその幾何異性体の形成をもたらし:
【化4】
式中、
及びXは、独立して、ハロ(例えば、クロロ、ブロモ、又はヨード)であり、
は、本明細書に記載のモノカチオン等価カチオンである。
【0015】
この実施形態のいくつかの態様では、当該方法は、独立して行ってもよく、又は式(II)から(III)への又は式(XII)から(XIII)への化合物の変換を伴う前述の方法と共に行ってもよい。
【0016】
態様又は実施形態では、Mは、アルカリ金属カチオン、アンモニウムカチオン、又は他の窒素系カチオンの観点から定義されるが、選択肢としては他のカチオン(例えば、二価又は三価カチオン)も考慮される。
【0017】
更に他の実施形態は、式(III)若しくは(XIII)の化合物、又はその幾何異性体を、二座配位子としてルテニウムに配位することができるトリフルオロアセテート、ナイトレート、ニトリット、オキサレート、ホスフェート、サルファイト、若しくはスルホネート、又は強酸(H-Q)の他のアニオンと反応させて、式(IV)若しくは(XIV)の化合物それぞれ、又はその幾何異性体を形成することを含む方法を含み:
【化5】
式中、Qは、二座配位子としてルテニウムに配位することができる、配位したトリフルオロアセテート、ナイトレート、ニトリット、オキサレート、ホスフェート、サルファイト、スルホネート、又は強酸(H-Q)の他のアニオンである。典型的には、これらのアニオンは、二座配位子としてルテニウムに配位される。ナイトレートは、係る錯体の反応性に基づいて好ましいと思われる。これらのアニオンのアンモニウム塩は、これらのアニオンの好適な種類であると思われる。特に、硝酸アンモニウムは、この文脈で良好に機能する。
【0018】
この実施形態のいくつかの態様では、当該方法は、独立して行ってもよく、又は式(I)から(II)への、式(II)から(III)への、若しくは式(XI)から(XII)への、式(XII)から(XIII)への化合物の変換を伴う前述の方法と共に行ってもよい。一緒に行う場合、当該方法は、式(II)又は(XII)の化合物を単離することなく実施し得る。
【0019】
これらの先の実施形態の様々な態様は、方法に必要とされる構造を定義するいくつかの可変部分に関する特定のオプションを記載する態様を含む。これらとしては、以下を記載する態様が挙げられる:
【0020】
(a)積極的な列挙及び除外の両方の観点で、嵩高いアルキル置換基及び任意選択で置換された縮合環系を含む芳香族ペンダント上の特定の有利な置換基パターン、及び
【0021】
(b)R10(及び/又はR10A)及び/又は立体障害基を含む置換基のいくつかに関する選好が、直鎖、分岐鎖、又は環式、又は多環式アルキルを含むこと。いくつかの態様では、イソプロピルは、R10及び/又はR10Aの定義から除外される。
【0022】
更に他の実施形態は、式(XX-A)、(XX-B)、(XX-C)、又は(XX-D)のルテニウム化合物を含む、本明細書に記載の方法からアクセス可能なルテニウム化合物を含み:
【化6】
式中、可変部分R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、及びmは、これらの構造上の様々な置換基及び任意選択の置換基を定義する。Gには、ルテニウム中心に配位子として配位したX、X、及びYとも関連のある可変部分が含まれる。Lは、ドナー配位子である。Xは、ルテニウム中心に配位子として作用することができるヘテロ原子である。これらの可変部分の各々は、本明細書の他の場所でより明確に定義される。これらの化合物には、Gの定義に関してそれらの以前に知られていないもの、並びに、主として、しかし排他的ではないが、それらの配位子の嵩のために以前はアクセス不可能で、未知であったそれらの化合物が含まれる。
【0023】
更に他の実施形態は、式(Y-A)、(Y-B)、(Y-C)、又は(Y-D)のルテニウム化合物を含む、本明細書に記載の方法からアクセス可能なそれらのルテニウム化合物を含み:
【化7】
式中、可変部分R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、及びmは、これらの構造上の様々な置換基及び任意選択の置換基を定義する。Jとしては、ルテニウム中心に配位子として配位したX、X、Y、Q、及びZにも関連する可変部分が挙げられるが、これらに限定されない。Lは、ドナー配位子である。Xは、ルテニウム中心に配位子として作用することができるヘテロ原子である。これらの可変部分の各々は、本明細書の他の場所でより明確に定義される。これらの化合物には、Jの定義に関してそれらの以前に知られていないもの、並びに、主として、しかし排他的ではないが、それらの配位子の嵩のために以前はアクセス不可能で、未知であったそれらの化合物が含まれる。
【0024】
更に他の実施形態は、メタセシス反応における触媒として本明細書に記載の化合物のいずれかの使用を含む。いくつかのそのような実施形態では、方法は、少なくとも1つのアルケン、アルキン、又はエンインを、本明細書に記載のルテニウム化合物のいずれかと接触させることを含み、当該接触は、例えば、以下のメタセシスをもたらす:すなわち、
【0025】
(a)2つの異なるアルケン、すなわちアルケン、アルキン、及び/又はエンインの交差メタセシス(CM)、
【0026】
(b)シクロアルケン環の形成をもたらすジエンの閉環メタセシス(RCM)、
【0027】
(c)2つのオレフィンのホモ二量体化、
【0028】
(d)オリゴマー及び/又はポリマーの形成をもたらす非環式ジエンメタセシス(ADMET)、
【0029】
(e)非環式ジエンをもたらす開環交差メタセシス(ROCM)、
【0030】
(f)ポリマーをもたらすシクロアルケンの開環メタセシス重合(ROMP)、又は
【0031】
(g)オレフィンのE/Z異性体混合物の、この混合物のE-オレフィンオレフィン含有量を増加させる、エテノリシス。
【0032】
ある特定の好ましい実施形態(例えば、(a)~(f))では、触媒は、メタセシス反応(複数可)の有利な生成物が主にZ異性体オレフィンであることを提供する。(g)の場合、有利な反応物はZ異性体である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本出願は、添付の図面と併せて読むと更に理解される。主題を例示するために、主題の例示的な実施形態を図面に示す。しかしながら、本開示の主題は、開示される特定の方法、デバイス、及び系に限定されない。加えて、図面は必ずしも縮尺どおりに描かれていない。図面において、
【0034】
図1A】Z選択的オレフィンメタセシス及び市販のグラッブスのZ触媒に関する一般的なスキームを示す。
図1B】有利なZ選択的メタセシス経路をもたらす立体相互作用の1つの可能な表示を記載している。
【0035】
図2A】大きなNHCにとって特に厄介なカルボキシレートアニオンとの直接のアニオン交換を介して触媒を形成する従来技術の試みを示す。より嵩高いAr基では反応は遅く、収率が低かった(すなわち、Ar≧Dipp)。Ar=Mesであるとき、NaOPiv及びAgOPivの両方が高収率をもたらした。Ar=Dippであるとき、NaOPivは、20%の収率(10当量、4日、40℃)をもたらし、AgOPivは分解をもたらした(図2Bを参照されたい)。Ar>Dippである場合、生成物はアクセス不能であった。
図2B】大きなNHCにとって特に厄介なカルボキシレートアニオンとの直接のアニオン交換を介して触媒を形成する従来技術の試みを示す。より嵩高いAr基では反応は遅く、収率が低かった(すなわち、Ar≧Dipp)。Ar=Mesであるとき、NaOPiv及びAgOPivの両方が高収率をもたらした。Ar=Dippであるとき、NaOPivは、20%の収率(10当量、4日、40℃)をもたらし、AgOPivは分解をもたらした(図2Bを参照されたい)。Ar>Dippである場合、生成物はアクセス不能であった。
【0036】
図3】本開示の例示を示す。
【0037】
図4A】本開示の様々な一般的/例示的な方法工程を示す。
図4B】本開示の様々な一般的/例示的な方法工程を示す。
図4C】本開示の様々な一般的/例示的な方法工程を示す。
【0038】
図5】粗Ru-4の代表的なH-NMRスペクトルである。
【0039】
図6】Ru-5の代表的なH-NMRスペクトルである。
【0040】
図7】Ru-7の代表的なH-NMRスペクトルを示す。
【0041】
図8】Ru-8の代表的なH-NMRスペクトルである。
【0042】
図9】Ru-12の代表的なH-NMRスペクトルである。
【0043】
図10】生物活性化合物におけるかつ構成単位としての(Z)-α,β-不飽和アミドの例を提供する。
【0044】
図11】(Z)-α,β-不飽和アミドを構築するための従来技術における方法及び制限を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本開示は、ピバレート及び他のカルボキシレートの導入における、並びに関連のC-H結合活性化工程における困難を克服する、グラッブスのZ選択的ルテニウムオレフィンメタセシス触媒を含むルテニウム触媒を調製するための方法に関する。以前は、ピバル酸ルテニウム中間体は直接的なハライド-ピバレートアニオン交換によって合成されていたが、これは立体的に制約のあるNHC配位子を用いると厄介であることが判明した。本明細書では、一態様では、ハロゲン化ルテニウム前駆体の使用を含み、強塩基と反応してルテニウム塩基錯体を生成し、次いでピバル酸で処理されてルテニウムビス-ピバレートが得られ、同時にC-Hが活性化される新しいアプローチを記載する。塩基を適切に選択すると、立体的に制約のあるNHC(例えば、Arは少なくともDippと同じくらい立体的に困難である)の存在下でも、第1の工程は、穏やかな条件下でスムーズに進行し高収率であることが示された。ルテニウム塩基錯体とピバル酸との間の酸-塩基クエンチングは、第2の工程のための強力な熱力学的駆動力を提供し、それを高収率で発生させた。高い全体的な収率に加えて、この新しいアプローチは、安価な試薬(例えば、塩基としてカリウムtert-ブトキシド及びリチウムピロレート(下記を参照されたい)、並びにピバル酸)及び産業的に用い易い反応条件(例えば、ほぼ室温)の使用を更に特徴としている。1つの代表的な例として、以前のアプローチでは、Ru-3(市販のRu-2への前駆体)を20~30%の収率でしか生成できなかったが、この新しいアプローチでは、試薬として安価なリチウムピロレート及びピバル酸を使用することによって、同一の二塩化ルテニウム出発物質から約70%の収率で得られた。加えて、これらの方法は、Dippよりも大きいArを備えているNHCを有するZ選択的ルテニウムオレフィンメタセシス触媒へのアクセスを更に提供する。これらのより立体的に制約のある配位子に基づく触媒は、本明細書に記載されているように、ある特定の用途における既存のZ選択的オレフィンメタセシス触媒と比較して、独特で、かつより選択的な触媒活性を提供する(図3図4A/Bを参照されたい)。
【0046】
本明細書の他の箇所に記載されているように、本開示は、一般式(C)の化合物、特に、立体障害化合物
【化8】
又はそれらの立体異性体若しくは幾何異性体を調製する方法に関し、当該方法は、対応する一般式(B)の化合物をカルボン酸と反応させて、一般式(C)の化合物を形成する工程を含む一連の工程を含み、二座アニオン性配位子はカルボキシレートである。一般式(B)の化合物は、一般的な対応式(A)のジハロ化合物を、ハロ配位子を置換して単座配位子としてルテニウム中心に配位することができるアニオン性塩基と反応させて、任意選択的に単離される中間体を形成することによって、形成され得る。その後の反応を用いて、他の二座アニオン性配位子、例えばナイトレートなどでカルボキシレート配位子を置き換えることができる。
【0047】
この一般的な文脈内で、本開示の方法及び化合物について提示される共通の記述子セットが存在する。
【0048】
例えば、一般式(A)として上記した化合物は、式(I)又は(XI)の化合物としてより具体的に記載される:
【化9】
【0049】
例えば、一般式(B)として上記した化合物は、式(II)又は(XII)の化合物としてより具体的に記載される:
【化10】
【0050】
例えば、一般式(B)として上記した化合物は、式(III)、(XIII)、(IV)、及び(XIV)の化合物としてより具体的に記載される。
【化11】
【0051】
これらの文脈の各々内で、ハロはX及びXによって表すことができ、アニオン性塩基はYによって表すことができ、カルボキシレート配位子はZによって表すことができ、他の二座アニオン性配位子はQによって表すことができ、いわゆるNHCは、の構造を含み、
【化12】
芳香族ペンダントは、構造
【化13】
を含み、
立体障害基は、構造
【化14】
を含み、及びルテニウム
カルベン/配位子は、構造
【化15】
及び
【化16】
を含む。
【0052】
したがって、いくつかの実施形態は、式(III)又は(XIII)の化合物を調製する方法を含み、各方法は、式(II)又は(XII)それぞれの化合物、又はその幾何異性体を、式Z-Hのカルボン酸と接触させることを含み、当該接触は、式(IV)又は(XIV)の化合物それぞれ又はその幾何異性体の形成をもたらす。
【0053】
したがって、いくつかの実施形態は、式(II)又は(XII)の化合物を調製する方法を含み、各方法は、式(I)又は(XI)の化合物、又はその幾何異性体を、式[M][Y]の塩と接触させることを含み、当該接触は、式(II)又は(XII)の化合物それぞれの形成をもたらす。
【0054】
したがって、いくつかの他の実施形態は、式(IV)又は(XIV)の化合物を調製する方法を含み、各方法は、式(III)若しくは(XIII)の化合物、又はその幾何異性体を、二座配位子としてルテニウムに配位することができるトリフルオロアセテート、ナイトレート、ニトリット、オキサレート、ホスフェート、サルファイト、若しくはスルホネート、又は強酸(H-Q)の他のアニオンと反応させて、式(IV)若しくは(XIV)の化合物それぞれ、又はその幾何異性体を形成することを含む。
【0055】
これらの遷移に影響を与えるのに有用な条件(時間、温度、溶媒、及び非酸化環境の性質)は、そのような化学反応の分野の当業者によって通常考慮されるものと一致するが、完全を期すために、これらは本明細書の他の箇所に記載されている。
【0056】
本明細書に記載の構造は、一般に、1つの幾何学的配置又は立体化学で表されるが、本明細書及び特許請求の範囲は、これらの立体化学に限定されることを意図しておらず、化合物自体は別の異性体として表され得る。
【0057】
これらの方法内では、置換基R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10(及びR10A)、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、m、X、X、X、L、Y、Z、及びQの各々は、ほとんどの場合、以下のように定義される:
【0058】
、R、R、R、R、R、R、R、及びRは、独立して、水素、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールオキシ、若しくはニトロ基であり、又はこれらを含み;及び/又はRとR若しくはRとR若しくはRとR若しくはRとR若しくはRとR若しくはRとR若しくはRとRのうちの1つ以上が、それらが結合している炭素と一緒になって、少なくとも1つの任意選択で置換された5~7員環構造を形成し;
【0059】
11、R12、R13、及びR14は、独立して、水素、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールであり、又はこれらを含み;及び/又はR11、R12、R13、及びR14のうちの1つ以上のペアは、独立して、任意選択で、一緒に連結されて、環式又は多環式の構造を形成し;
【0060】
15は、独立して、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールオキシ、ハロ、シアノ、ニトロであり、又はこれらを含み、又はR15のうちの任意の2つが連結して、環式構造(例えば、連結されたアルキレン又はエーテルを含む)を形成してもよく;
【0061】
mは、0、1、2、3、又は4であり;
【0062】
16及びR17は、独立して、水素、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたヘテロアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリールオキシであり、又はこれらを含み;
【0063】
及びXは、独立して、クロロ、ブロモ、又はヨードであり、
【0064】
は、-O-、-S-、又は-N(R10A)-であり;
【0065】
10及びR10Aは、独立して、任意選択で置換された直鎖、分岐鎖、環式、若しくは多環式アルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールであり、又はこれらを含み;
【0066】
【化17】
は、任意選択の二重結合の存在を指しており;
【0067】
Lは、ドナー配位子、任意選択で中性電子ドナー配位子、任意選択で中性電子ドナー溶媒、又はR17に連結された電子ドナー配位子であり;
【0068】
mは、0、1、2、3、又は4であり;
【0069】
15は、独立して、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールオキシ、ハロ、シアノ、ニトロであり、又はこれらを含み、又はR15の任意の2つが連結して、環式構造(例えば、連結されたアルキレン又はエーテルを含む)を形成してもよく;
【0070】
Yは、独立して、ルテニウム中心に配位子として配位した塩基性アニオンであり、又はこれらを含み;
【0071】
[M][Y]は、Yの塩であり、式中、Mは、モノカチオン等価カチオンであり、好ましくは、必須ではないが、アルカリ金属、任意選択で置換されたアンモニウム、又はピリジニウムカチオンである。
【0072】
Zは、任意選択で式C(R18)(R19)(R20)C(=O)Oのカルボキシレートであり;
【0073】
18、R19、及びR20は、独立して、水素、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアリール、若しくは任意選択で置換されたヘテロアリールであり、又はそれらを含み、但し、R18、R19、及びR20の全てが水素であることはなく;及び/又はR18、R19、及びR20のうちの2つ若しくは3つが一緒に連結されて、環式若しくは多環式構造を形成し;
【0074】
Qは、二座配位子としてルテニウムに配位することができるトリフルオロアセテート、ナイトレート、ニトリット、オキサレート、ホスフェート、サルファイト、スルホネート、又は強酸(H-Q)の他のアニオンである。好ましい実施形態では、Qは、そのアンモニウム、NH 、塩として送達される。
【0075】
これらの定義の追加の態様はまた、本明細書の他の箇所でも提供され、例えば、追加の置換基(「Fn」に関して記載したものを含む)、除外/但し書き、及び例示的な構造も提供する。
【0076】
例えば、NHC(N-ヘテロ環式カルベン)及びそこからの芳香族ペンダントの場合、開示が必ずしもこれらの構造に限定されないことは理解すべきであるが、追加の実施形態はまた、例えば、NHC環が1つ以上のR15置換基で任意選択で置換された6員環であるこれらの化合物も包含する。
【0077】
また、NHCコア及びそれに関連する記述子の表現:
【化18】
は、環が、独立して及び代替的に、単結合又は二重結合(
【化19】
によって明示した)を含有する構造を少なくとも含む。(R15の文脈内で、その違いは、以下のR15基の様々な潜在的な位置及び分布によって現れ:
【化20】
式中、R15は、R15Aとして再定義されて(非水素置換基の不存在がHであることを反映するためだけでも)、Hの追加の存在を含む。
【0078】
例えば、芳香族ペンダントの場合、RとR又はRとR又はRとR又はRとRが、それらが結合している炭素と一緒になって、少なくとも1つの任意選択で置換された5~7員環構造(例えば、芳香族ペンダント基に縮合した、任意選択で置換されたアリール、ヘテロアリール、環式アルキレン、環式アルケニレン、又はヘテロ環式部分)を形成するという実施形態を含む、
【化21】
としての記載並びにR、R、R、R、及びRに関する列挙された記載に加えて、ある特定の実施形態では、芳香族ペンダントは、それ自体、式(I)、(XI)、(II)、(XII)、(III)、(XIII)、(IV)、及び(XIV)に示したフェニル基に縮合されるか、又はフェニル基を置換するヘテロアリール部分である。
【0079】
例えば、立体障害基の文脈では、NHCに対するペンダント、場合によっては、ルテニウム中心に結合されたペンダントは、本明細書の他の箇所に記載されている「Fn」との呼称によって包含される任意選択の追加の官能基に加えて、構造
【化22】
によって提示されることがあり、R11、R12、R13、及びR14の任意の2つ以上が連結して、環式又は多環式構造を形成することができるという記載は、この基が、任意選択で置換されたアダマンタンに加えて、他の任意選択で置換された二環式又は多環式構造、例えば、任意選択でアルキル置換されたビシクロペンタン、ビシクロヘキサン、ビシクロヘプタン、及びビシクロオクタン又は嵩高い芳香族構造:例えば、
【化23】
を含むことができるという事実を指している。
【0080】
例えば、構造
【化24】
によって記載されるルテニウムカルボン/配位子はまた、6員炭素環式アリール基が、任意選択で置換されたヘテロアリール基、例えば、限定するものではないが、ピリジンによって置き換えられる実施形態も包含する。この記載によって企図されるヘテロアリール基のより完全な非限定的なリストは、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0081】
L、R16、及びR17の定義の完全な文脈内で、これらの用語を包含する構造は、X、R、R、R、R、及びR10の観点から定義された構造の属(genera)を表し、かつ包含することを理解すべきである。属は種の構造よりも広いという範囲内で、他の種には、2つの群間の違いを包含する構造が含まれ、例えば、L、R16、及びR17部分を包含するその属内には含まれるが、X、R、R、R、R、及びR10部分によって包含されるその種には含まれない化合物である。例えば、ある特定の実施形態では、これらのカルベンは、独立して、フィッシャー型カルベン(R16又はR17は、任意選択で置換されたアルコキシ、アリールオキシ、又はヘテロアリールオキシペンダントを含む)、並びにより活性な「シュロック型」同族体を含む。他の実施形態では、化合物は、単座配位子Lが存在しない、又はアルキル若しくはエーテル結合によってカルベン基に連結されたヘテロ環式部分によって置き換えられている構造を含み得る。
【0082】
例えば、Lは、中性電子ドナー配位子、任意選択で中性電子ドナー溶媒、又はR17に連結された電子ドナー配位子の観点から定義される。本開示の化合物の文脈には、Lが存在しない化合物及び構造も含まれ、すなわち、この基は、カルベンペンダントによって提供されることも、別個に存在することもなく、ルテニウム中心は更に配位的に不飽和である。存在する場合、Lは、本明細書の他の箇所に記載されている中性電子ドナー配位子のうちのいずれか1つ以上を含み得る。
【0083】
本開示全体を通して、Yは、独立して、ルテニウム中心に配位子として配位した塩基性アニオンとして記載され(配位子として関連付けられたとき)、又は塩[M][Y]の観点から定義するとき、アニオンYとして記載される。ある特定の特性評価では、Yは、ルテニウムカルベンを分解しない比較的弱い求核性と見なすことができるが、(本明細書の他の箇所に記載のように)対応するRu中心からハロゲン化物を置き換えるのに十分に求核性であり、カルボン酸によってプロトン化されるのに十分に塩基性であると見なすことができる。これらの反応性の特定のパラメータは、本明細書の他の箇所に記載されている。好ましい実施形態では、[M][Y]は、カリウムtert-ブトキシド又はリチウムピロレートであるが、他の係る塩基性塩も、この目的に有用である。
【0084】
いくつかの実施形態では、Yは、独立して、水酸化物、C1~12アルコキシド、アミデートアニオン、置換若しくは非置換フェノキシド、置換若しくは非置換ピロレート、置換若しくは非置換インドレート、置換若しくは非置換イソインドレート、又は置換若しくは非置換イミダゾレートである。これらのカテゴリーのいくつかの好ましい典型例は、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0085】
本開示の全体を通して、Zは、カルボキシレートであり、Z-Hは、対応するカルボン酸である。本開示では、Zは、一般に、式C(R18)(R19)(R20)COOHの観点から記載され、式中、R18、R19、及びR20は、本明細書の他の箇所で提供される。好ましい実施形態では、Zは、少なくとも第二級炭素基のカルボキシレートである。嵩高い第三級カルボキシレートが好ましいと思われる。これらのカルボキシレートの代表的な典型例は、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0086】
いくつかの実施形態では、カルボン酸との接触は、対応するカルボキシレート、好ましくはアルカリ金属カルボキシレートの追加の使用を伴う。
【0087】
更に他の実施形態は、式(XX-A)、(XX-B)、(XX-C)、又は(XX-D)のルテニウム化合物を含む、本明細書に記載の方法からアクセス可能なルテニウム化合物を含み:
【化25】
式中、可変部分R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、及びmは、これらの用語について前に記載した、又は他の箇所で記載した記載内容と一致している。Gには、ルテニウム中心に配位子として配位したX、X、及びYとも関連のある可変部分が含まれる。これらの化合物には、Gの定義に関してそれらの以前に知られていないもの、並びに、主として、しかし排他的ではないが、それらの配位子の嵩のために以前はアクセス不可能で、未知であったそれらの化合物が含まれる。
【0088】
更に他の実施形態は、式(Y-A)、(Y-B)、(Y-C)、又は(Y-D)のルテニウム化合物を含む、本明細書に記載の方法からアクセス可能なそれらのルテニウム化合物を含み:
【化26】
式中、可変部分R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、及びmは、これらの用語に関する前の記載と一致している。Jとしては、ルテニウム中心に配位子として配位したX、X、Y、Q、及びZにも関連するそれらの可変部分が挙げられるが、これらに限定されない。これらの化合物には、Jの定義に関してそれらの以前に知られていないもの、並びに、主として、しかし排他的ではないが、それらの配位子の嵩のために以前はアクセス不可能で、未知であったそれらの化合物が含まれる。
【0089】
更に他の実施形態は、メタセシス反応における触媒として本明細書に記載の化合物のいずれかの使用を含む。いくつかのそのような実施形態では、方法は、少なくとも1つのアルケン、アルキン、又はエンインを、本明細書に記載のルテニウム化合物のいずれかと接触させることを含み、当該接触は、例えば、以下のメタセシスをもたらす:すなわち、
【0090】
(a)2つの異なるアルケン、すなわちアルケン、アルキン、及び/又はエンインの交差メタセシス(CM)、例えば:
【化27】
【0091】
(b)シクロアルケン環の形成をもたらすジエンの閉環メタセシス(RCM)、例えば、
【化28】
【0092】
(c)2つのオレフィンのホモ二量体化、例えば:
【化29】
【0093】
(d)例えば、オリゴマー及び/又はポリマーの形成につながる非環式ジエンメタセシス(ADMET)、例えば、
【化30】
【0094】
(e)非環式ジエンをもたらす開環交差メタセシス(ROCM)、
【化31】
【0095】
(f)ポリマーをもたらすシクロアルケンの開環メタセシス重合(ROMP)、例えば、
【化32】
又は
【0096】
(g)オレフィンのE/Z異性体混合物の、この混合物のE-オレフィン含有量を増加させる、エテノリシス、例えば、
【化33】
【0097】
この最後に述べた方法に関しては、ホーナー・ワズワース・エモンズ反応及びオレフィン交差メタセシスなどの、二置換E-オレフィンを調製するための多くの方法が存在している。これらの反応は、非常に信頼性が高く実用的であることが証明されているが、望ましくないZ異性体を、クロマトグラフィー又は蒸留によって分離するのは多くの場合難しい。本開示において、本明細書に記載のルテニウム化合物の使用は、Z異性体の選択的エテノリシスを通じて、E/Z混合物から実質的に純粋な、又は少なくとも実質的に濃縮されたE-オレフィンを提供するのに有用である。本発明のオレフィンメタセシス触媒と従来のオレフィンメタセシス触媒の使用の違いは、単に立体的なものだけではなく、すなわち、(a)Z選択的エテノリシスが、ZからEへの異性化反応ではなく、その代わりとして、Zオレフィンを優先的に末端オレフィン(Eオレフィンではない)に変換し、Eオレフィンを優先的にそのまま残し、(b)これらのよりヒンダードな触媒は、>95%(又は更に>98%)でE-異性体を与えることができ、これは触媒による速度論的制御によるものである。従来のZからEへの異性化では、ほとんどの場合5:1~10:1のE/Z混合物が得られ、これは、2つの異性体間の固有の熱力学的差によって決定される。
【0098】
ある特定の好ましい実施形態(例えば、(a)~(f))では、触媒は、メタセシス反応(複数可)の有利な生成物が主にZ異性体オレフィンであることを示す。(g)の場合、有利な反応物はZ異性体であり、混合物からそれが優先的に除去されることになる。
【0099】
用語
【0100】
本開示は、添付の図及び実施例に関してなされた以下の記載を参照することによって、より容易に理解することができ、これらは全て、本開示の一部を形成する。本開示は、本明細書に記載又は示した特定の製品、方法、条件、又はパラメータに限定されるものではなく、本明細書で使用した用語は、例示として特定の実施形態を記載するためのものであり、いずれの特許請求される開示も限定することを意図したものではないことを理解されたい。同様に、特に明記しない限り、考えられる作用機構又は作用様式又は改善の理由に関するいずれの記載も、単に例示的であることを意図するものであり、本明細書に開示されるいずれの発明も、いずれのそのような提案された作用機構又は作用様式又は改善の理由の正確さ又は不正確さによっても拘束されるべきではない。本明細書全体を通して、記載が、組成物と、当該組成物を作製及び使用する方法とを指すことは認識される。すなわち、本開示が、組成物又は組成物を作製若しくは使用する方法と関連する特徴又は実施形態を記載又は特許請求する場合、そのような記載又は特許請求の範囲は、これらの特徴又は実施形態をこれらの文脈の各々における実施形態(すなわち、組成物、作製方法、及び使用方法)に拡張することが意図されることが理解される。
【0101】
本開示では、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数の参照を含み、特定の数値への言及は、文脈が明確にそうではないことを示していない限り、少なくともその特定の値を含む。したがって、例えば、「材料」への言及は、当業者に知られているそのような材料及びその均等物のうちの少なくとも1つに対する言及である、などである。
【0102】
記述子「約」の使用によって、値が近似値として表される場合、特定の値は別の実施形態を形成することが理解されるであろう。一般に、「約」という用語の使用は、開示された主題によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値を示し、その機能に基づいて、それが使用される特定の文脈で解釈されるべきである。当業者は、これを通常の手順の問題として解釈することができるであろう。場合によっては、特定の値に使用される有効数字の数は、「約」という語の程度を決定する1つの非限定的な方法であり得る。他の場合では、一連の値で使用されるグラデーションを使用して、各値について「約」という用語に利用可能な意図された範囲を決定することができる。存在する場合、全ての範囲は終点を含み、かつ組み合わせ可能である。すなわち、範囲として述べられた値への言及は、その範囲内の全ての値を含む。
【0103】
明確にするために別個の実施形態の文脈で本明細書に記載されている本開示のある特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供し得ることは理解される。すなわち、明らかに不適合又は具体的に除外されない限り、各個々の実施形態は、任意の他の実施形態(複数可)と組み合わせ可能であると見なされ、そのような組み合わせは、別の実施形態であると考えられる。逆に、単一の実施形態の文脈において簡潔に記載される開示の様々な特徴は、別々に又は任意の副次的な組み合わせで提供することも可能である。特許請求の範囲が、いずれの任意選択の要素も除外するように作成され得ることには更に留意されたい。そのため、この記載は、請求項の要素の列挙に関連した「唯一」、「のみ」などの排他的な用語の使用、又は「否定的な」限定の使用のための先行する根拠として役立つように意図されている。最後に、一実施形態は、一連の工程の一部として又はより一般的な構造の一部として記載することができるが、各当該工程は、それ自体で独立した実施形態とみなすこともでき、他のものと組み合わせることもできる。
【0104】
移行句「含む(comprising)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」、及び「からなる(consisting)」は、それらの一般的に特許専門用語において認められた意味を暗示することを意図しており、すなわち、(i)「含む(including)」、「含有する(containing)」、又は「によって特徴付けられる」と同義である「含む(comprising)」は、包括的又は非限定的であり、追加の、引用されていない要素又は方法の工程を除外せず;(ii)「からなる(consisting of)」は、特許請求の範囲で指定されていない任意の要素、工程、又は配合成分を除外し、(iii)「から本質的になる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲を、指定された材料又は工程、並びに特許請求された発明の「基本的かつ新規の特性(複数可)に具体的に影響を及ぼさない材料又は工程」に限定する。「含む(comprising)(又はその同義語)」という語句に関して記載される実施形態もまた、実施形態として、「からなる」及び「から本質的になる」という観点から独立して記載されるものも提供する。「から本質的になる」という観点から提供されるそれらの実施形態では、基本的かつ新規の特性(複数可)は、列挙されたものに相当する条件下での、方法(又はそのような方法で使用される系)の容易な操作性(facile operability)である。
【0105】
リストが提示される場合、特に明記しない限り、そのリストの各々の個々の要素、及びそのリストの全ての組み合わせは、別個の実施形態であることを理解されたい。例えば、「A、B、又はC」として提示される実施形態のリストは、実施形態、「A」、「B」、「C」、「A若しくはB」、「A若しくはC」、「B若しくはC」、又は「A、B、若しくはC」を含むものとして解釈されるべきである。
【0106】
本明細書全体を通して、関連技術の当業者によって理解されるように、単語にはそれらの通常の意味が付与されるべきである。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本明細書で開示される任意の発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じである。本明細書に記載されたものと類似又は同等であるいずれの方法及び材料も、開示される本発明の実施又は試験において使用することができるが、代表的な例示的な方法及び材料を本明細書に記載する。
【0107】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、直鎖、分岐鎖、環式、二環式、又は多環式の飽和炭化水素基(及び「アルキル」の言及は、一般に、これらの各々を別個の実施形態として包含する)を指し、必須ではないが典型的には、1~約24個の炭素原子、好ましくは1~約12個の炭素原子を含有し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシルなど、並びにシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどを指す。分岐鎖アルキルへの言及は、例えば、2-プロピル(イソプロピル)、s-ブチル、t-ブチル、及びイソブチル、2-ペンチル、3-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、ネオペンチル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、4ヘキシル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、4ヘプチルなどを含む。二環式又は多環式アルカンとしては、例えば、ビシクロペンタン、ビシクロヘキサン、ビシクロヘプタン、ビシクロオクタン、及びアダマンタンが挙げられる。「アルキル」への言及はまた、これらの鎖長の各々を別個の実施形態として包含する。
「直鎖、分岐鎖、環式、二環式、又は多環式のC3~24アルキル」」への言及はまた、最大24個の炭素のそれぞれのアルキルタイプを提供するのに必要な最小数の炭素を有するアルキル(例えば、分岐鎖C3~24アルキル、環式C3~24アルキル、二環式C6~24アルキル、又は多環式C6~24アルキル)として解釈されることも意図している。概して、ここでも必須ではないが、本明細書のアルキル基は、1~約12個の炭素原子を含有する。「アルキル」という用語の別個のサブセットの実施形態として包含される「低級アルキル」という用語は、1~6個の炭素原子のアルキル基を意図している。「シクロアルキル」という特定の用語はまた、「アルキル」という用語の別個のサブセットの実施形態としても包含され、典型的には、3~8個、好ましくは6個又は7個の炭素原子を有する環式アルキル基を意図している。「置換アルキル」という用語は、本明細書の他の箇所に記載されているように1個以上の置換基で置換されたアルキル基を指し、「ヘテロ原子含有アルキル」及び「ヘテロアルキル」という用語は、炭素鎖内の少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子と置き換わっているアルキル基を指している。後者の例としては、アルキルエーテル、アルキルポリエーテル(ポリグリコールを含む)、アルキルチオールエーテル、及び第二級又は第三級アルキルアミンが挙げられる。一般に、特にそうでないことが明示されていない場合、「アルキル」及び「低級アルキル」という用語は、直鎖、分岐鎖、環式、非置換、置換及び/又はヘテロ原子含有のアルキル及び低級アルキルをそれぞれ含む。
【0108】
「アルキレン」という用語は、本明細書で使用される場合、二官能性の直鎖、分岐鎖、又は環式のアルキル基を指し、「アルキル」は、上記で定義されるとおりである。
【0109】
「アルケニル」という用語は、本明細書で使用される場合、2~約24個の炭素原子で、少なくとも1つの二重結合を含有する直鎖、分岐鎖、又は環式の炭化水素基を指し、例えば、エテニル、n-プロペニル、イソプロペニル、n-ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、エイコセニル、テトラコセニルなどを指す。本明細書の好ましいアルケニル基は、2~12個の炭素原子を含有する。「アルケニル」という用語の別個のサブセットの実施形態として包含される「低級アルケニル」という用語は、2~6個の炭素原子のアルケニル基を意図し、「アルケニル」という用語の別個のサブセットの実施形態として包含される「シクロアルケニル」という特定の用語は、好ましくは5~8個の炭素原子を有する環式アルケニル基を意図している。「置換アルケニル」という用語は、1つ以上の置換基で置換されたアルケニル基を指し、「ヘテロ原子含有アルケニル」及び「ヘテロアルケニル」という用語は、炭素鎖内の少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子と置き換わっているアルケニル基を指している。後者の例としては、アルケニルエーテル、アルケニルポリエーテル(ポリグリコールを含む)、アルケニルチオールエーテル、及び第二級又は第三級アルケニルアミンが挙げられる。特にそうでないことが示されていない限り、「アルケニル」及び「低級アルケニル」という用語は、直鎖、分岐鎖、環式、非置換、置換及び/又はヘテロ原子含有アルケニル及び低級アルケニル基をそれぞれ含む。
【0110】
「アルケニレン」という用語は、本明細書で使用される場合、二官能性の直鎖、分岐鎖、又は環式のアルケニル基を指し、「アルケニル」は、上記で定義されるとおりである。
【0111】
「アルキニル」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの三重結合を含有し、2~約24個の炭素原子の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を指し、例えば、エチニル、n-プロピニルなどを指す。本明細書の好ましいアルキニル基は、2~12個の炭素原子を含有する。「低級アルキニル」との用語は、2~6個の炭素原子を含むアルキニル基を意図している。「置換アルキニル」という用語は、1つ以上の置換基で置換されたアルキニル基を指し、「ヘテロ原子含有アルキニル」及び「ヘテロアルキニル」という用語は、炭素鎖内の少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子と置き換わっているアルキニル基を指している。特に示されていない限り、「アルキニル」及び「低級アルキニル」という用語は、直鎖、分岐鎖、非置換、置換及び/又はヘテロ原子含有アルキニル及び低級アルキニル基をそれぞれ含む。
【0112】
「アルコキシ」との用語は、本明細書で使用される場合、単一の末端エーテル結合を介して結合したアルキル基を意図している。すなわち、「アルコキシ」基は、-O-アルキルとして表すことができ、アルキルは、上記で定義されるとおりである。「低級アルコキシ」基は、上記したように1~6個の炭素原子を含有するアルコキシ基を意図している。同様に、「アルケニルオキシ」及び「低級アルケニルオキシ」は、それぞれ、単一の末端エーテル結合を介して結合したアルケニル基及び低級アルケニル基を指し、「アルキニルオキシ」及び「低級アルキニルオキシ」は、それぞれ、単一の末端エーテル結合を介して結合した上記のアルキニル基及び低級アルキニル基を指す。
【0113】
「芳香族」という用語は、芳香族性に関するヒュッケル4n+2則を満たす環部分を指し、アリール(すなわち、炭素環式)及びヘテロアリール(ヘテロ芳香族とも称される)構造の両方、例えば、アリール、アラルキル、アルカリル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、又はアルク-ヘテロアリール部分を含む。
【0114】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、特に断りのない限り、一緒に縮合されている、直接に結合されている、又は間接的に(異なる芳香環がメチレン又はエチレン部分などの共通の基に結合されるように)結合されている単一の芳香環又は複数の芳香環を含有する芳香族置換基又は構造を指している。特に変更がない限り、「アリール」という用語は、炭素環式構造を指す。好ましいアリール基は、6~24個の炭素原子を含有し、特に好ましいアリール基は、6~14個の炭素原子を含有する。例示的な「アリール」基は、1つの芳香環又は2つの縮合又は結合した芳香環を含み、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルアミン、ベンゾフェノンなどを含む。以下で更に詳細に記載されるように、「置換アリール」は、1つ以上の置換基で置換されたアリール部分を指し、「ヘテロ原子含有アリール」及び「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子と置き換わったアリール置換基を指す。
【0115】
「アリールオキシ」という用語は、本明細書で使用される場合、単一の末端エーテル結合を介して結合したアリール基を指し、「アリール」は、上記で定義されるとおりである。「アリールオキシ」基は、-O-アリールとして表すことができ、アリールは、上記で定義されるとおりである。好ましいアリールオキシ基は、6~24個の炭素原子を含有し、特に好ましいアリールオキシ基は、6~14個の炭素原子を含有する。アリールオキシ基の例としては、限定されないが、フェノキシ、o-ハロ-フェノキシ、m-ハロ-フェノキシ、p-ハロ-フェノキシ、o-メトキシ-フェノキシ、m-メトキシ-フェノキシ、p-メトキシ-フェノキシ、2,4-ジメトキシ-フェノキシ、3,4,5-トリメトキシ-フェノキシなどが挙げられる。
【0116】
「アルカリル」という用語は、アルキル置換基を有するアリール基を指し、「アラルキル」という用語は、アリール置換基を有するアルキレン基を指し、「アリール」及び「アルキル」は、上記で定義されるとおりである。このように、アルカリル及びアラルキルは、それぞれ、置換されたアリール及びアルキルの1つのタイプを表す。好ましいアルカリル基及びアラルキル基は、7~25個の炭素原子を含有し、特に好ましいアルカリル基及びアラルキル基は、7~17個の炭素原子を含有する。アルカリル基としては、例えば、p-メチルフェニル、2,4-ジメチルフェニル、p-シクロヘキシルフェニル、2,7-ジメチルナフチル、7-シクロオクチルナフチル、3-エチル-シクロペンタ-1,4-ジエンなどが挙げられる。アラルキル基の例としては、限定されないが、ベンジル、2-フェニル-エチル、3-フェニル-プロピル、4-フェニル-ブチル、5-フェニル-ペンチル、4-フェニルシクロヘキシル、4-ベンジルシクロヘキシル、4-フェニルシクロヘキシルメチル、4-ベンジルシクロヘキシルメチルなどが挙げられる。「アルカリルオキシ」及び「アラルキルオキシ」という用語は、式-ORの置換基を指し、Rは、それぞれ、定義したばかりのアルカリル又はアラルキルである。
【0117】
「アシル」という用語は、式-(CO)-アルキル、-(CO)-アリール又は-(CO)-アラルキルを有する置換基を指し、「アシルオキシ」という用語は、式-O(CO)-アルキル、-O(CO)-アリール又は-O(CO)-アラルキルを有する置換基を指し、「アルキル」、「アリール」及び「アラルキル」は、上で定義したとおりである。
【0118】
「環式」及び「環」という用語は、脂環式基又は芳香族基を指し、置換されていても置換されていなくてもよく、及び/又はヘテロ原子を含有していても含有していなくてもよく、単環式、二環式、又は多環式であってもよい。「脂環式」という用語は、芳香族環式部分とは対照的に、脂肪族環式部分を指すための従来の意味で使用され、単環式、二環式、又は多環式であってもよい。「非環式」という用語は、二重結合が環構造内に含有されていても、又は含有されていなくともよい構造を指している。
【0119】
「ハロ」、「ハロゲン化物」及び「ハロゲン」という用語は、クロロ、ブロモ、フルオロ又はヨード置換基を指すための通常の意味で使用される。
【0120】
「ヘテロ原子含有」という用語は、1個以上の炭素原子が、炭素以外の原子、例えば、窒素、酸素、硫黄、リン又はケイ素、典型的には、窒素、酸素又は硫黄と置き換えられている炭化水素分子を指している。同様に、「ヘテロアルキル」という用語は、ヘテロ原子含有であるアルキル置換基を指し、「ヘテロ環式」という用語は、ヘテロ原子含有である環式置換基を指し、「ヘテロアリール」及び「ヘテロ芳香族」という用語は、それぞれ、芳香族環構造内に少なくとも1つのヘテロ原子を含有する「アリール」及び「芳香族」置換基を指している。「ヘテロ環式」の基又は化合物は、芳香族であっても芳香族でなくてもよく、更に「ヘテロ環式物質」は、「アリール」という用語に関して上記に記載するように、単環式、二環式、又は多環式であってもよいことに留意されたい。
【0121】
「ヘテロ環式」などの用語は、ヘテロ芳香族環(ヘテロアリールとしても知られる)及びヘテロシクロアルキル環(ヘテロ脂環式基としても知られる)の両方を指し、各ヘテロ環式環は、その環系中に4~10個の原子を含有し、かつその環(複数可)中に1~4個のヘテロ原子(例えば、O、N、S、及びSi)を含有し、但し、環は、2つの隣接するO又はS原子を含有していない。非芳香族ヘテロ環式基(ヘテロシクロアルキルとしても知られる)は、それらの環系に3個のみの原子を有する基を含むが、芳香族ヘテロ環式基は、本明細書の他の箇所に記載されている芳香族特性を有するために、それらの環系に少なくとも5個の原子を有していなければならない。ヘテロ環式基はまた、ベンゾ-及びピリジニル-縮合環系も含み得る。アジリジニル及びアゼチジニルは、それぞれ3員及び4員ヘテロ環式基の例である。
【0122】
ヘテロアリール置換基の非限定的な例としては、任意選択で置換されたフラニル、任意選択で置換されたピリジル、任意選択で置換されたピラジニル、任意選択で置換されたピリミジニル、任意選択で置換されたピリダジニル、任意選択で置換されたチオフェニル(チエニル)、任意選択で置換されたピロリル、任意選択で置換されたイミダゾリル、任意選択で置換されたチアゾリル、任意選択で置換されたオキサゾリル、任意選択で置換されたピラゾリル、任意選択で置換されたイソチアゾリル、任意選択で置換された1,2,3-トリアゾリル、任意選択で置換された1,2,4-トリアゾリル、任意選択で置換された1,3,4-トリアゾリル、任意選択で置換されたテトラゾリル、任意選択で置換された1,2,3-チアジアゾリル、任意選択で置換された1,2,3-オキサジアゾリル、任意選択で置換された1,3,4-チアジアゾリル、任意選択で置換された1,3,4-オキサジアゾリル、任意選択で置換されたインドリル、任意選択で置換されたインドリニル、任意選択で置換されたキノリル、任意選択で置換されたテトラヒドロキノリル、任意選択で置換された1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリル、任意選択で置換されたシンノリニル、任意選択で置換されたキノキサリニル、任意選択で置換されたキナゾリニル、任意選択で置換されたフタラジニル、任意選択で置換された1,8-ナフチリジニル、任意選択で置換された1,4-ベンゾジオキサニル、任意選択で置換されたクマリン、任意選択で置換されたジヒドロクマリン、任意選択で置換された1,5-ナフチリジニル、任意選択で置換されたベンゾフリル、任意選択で置換された2,3-ジヒドロベンゾフリル、任意選択で置換された1,2-ベンズイソキサゾリル、任意選択で置換されたベンゾチエニル、任意選択で置換されたベンゾオキサゾリル、任意選択で置換されたベンゾチアゾリル、任意選択で置換されたプリニル、任意選択で置換されたベンズイミダゾリル、任意選択で置換されたベンゾトリアゾリル、任意選択で置換されたチオキサンチニル、任意選択で置換されたカルバゾリル、任意選択で置換されたカルボリニル、任意選択で置換されたアクリジニル、任意選択で置換されたピロリジジニル、又は任意選択で置換されたキノリジジニルが挙げられる。
【0123】
ヘテロ原子含有脂環式置換基の例としては、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、オキサゾリジノニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チオキサニル、ピペラジニル、アジリジニル、アゼチジニル、オキシラニル、オキセタニル、チイラニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、1,2,3,6-テトラヒドロピリジニル、ピロリン-2-イル、ピロリン-3-イル、インドリニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、及びジチオラニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
「置換アルキル」、「置換アリール」などの「置換(置換された)」とは、上述の定義のいくつかにおいて暗示しているように、アルキル、アリール又は他の部分において、炭素(又は他の)原子に結合した少なくとも1個の水素原子が、1つ以上の非水素置換基で置き換えられていることを意図している。そのような置換基の例としては、限定するものではないが、ハロ、C~C24アルコキシ、C~C24アルケニルオキシ、C~C24アリールオキシ、C~C24アラルキルオキシ、C~C24アルカリルオキシ、アシル(C~C25アルキルカルボニル(-CO-C~C24アルキル)及びC~C25アリールカルボニル(-CO-C~C24アリール)を含む)、アシルオキシ(-O-アシル、例えば、C~C25アルキルカルボニルオキシ(-O-CO-C~C24アルキル)及びC~C25アリールカルボニルオキシ(-O-CO-C~C24アリール))、C~C25アルコキシカルボニル((CO)-O-C~C24アルキル)、C~C25アリールオキシカルボニル(-(CO)-O-C~C24アリール)、シアノ(-C≡N)、シアナト(-O-C=N)、チオシアナト(-S-C=N)、又はニトロ(-NO)を含む「Fn」と本明細書で称される官能基が挙げられる。
【0125】
「Fn」という用語はまた、炭化水素部分C~C24アルキル(好ましくはC1~12アルキル、より好ましくはC1~6アルキル)、C1~12アルキレン、より好ましくはC1~6アルキレン)、C2~24アルケニル(好ましくはC2~12アルケニル、より好ましくはC2~6アルケニル)、C2~24アルケニレン(好ましくはC2~12アルケニレン、より好ましくはC2~6アルケニレン)、C2~24アルキニル(好ましくはC2~12アルキニル、より好ましくはC2~6アルキニル)、C6~24アリール(好ましくはC6~12アリール)、C6~24アリーレン(好ましくはC6~12アリーレン)、C7~24アルカリル(好ましくはC6~12アリールを含む)、及びC~C24アラルキル(好ましくはC6~12アリールを含む)も含む。これらの置換構造内で、「アルキル」、「アルキレン」、「アルケニル」、「アルケニレン」、「アルキニル」、「アルキニレン」、「アルコキシ」、「芳香族」、「アリール」、「アリールオキシ」、「アルカリル」、及び「アラルキル」部分は、任意選択でフッ素化又は過フッ素化されている。
【0126】
この文脈内で、「Fn」としては、アダマンチル、クロロ、フルオロ、分岐鎖又は環式C3~12アルキル、部分的又は完全にフッ素化されたアルキル(例えば、-CF)C1~6アルキレン、部分的又は完全にフッ素化されたアルカリル(例えば、4-フェニル-CF)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
「官能基化アルキル」、「官能基化オレフィン」、「官能基化環式オレフィン」などにおけるような「官能基化」とは、アルキル、オレフィン、環式オレフィン又は他の部分において、炭素(又は他の)原子に結合した少なくとも1個の水素原子が、本明細書に記載したかつ上記したものなどの1つ以上の官能基と置き換わっていることを意図している。「官能基」という用語は、本明細書に記載の使用に好適である任意の官能性分子種を含むことを意図している。
【0128】
加えて、上述の官能基は、特定の基が許容される場合には、1個以上の更なる置換基で、又は1個以上のヒドロカルビル部分(上記に具体的に列挙されるものなど)で、更に置換されていてもよい。同様に、上記した炭化水素部分は、1つ以上の官能基又は追加の炭化水素部分、例えば本明細書で具体的に列挙されるもので、更に置換され得る。
【0129】
「中性電子ドナー配位子」は、その閉殻電子構成において金属中心から除去されると、中性電荷を有する、すなわち、ルイス塩基である任意の配位子である。独立した実施形態では、中性電子ドナーは、ホスフィン、スルホン化ホスフィン、ホスファイト、ホスフィナイト、ホスホナイト、アルシン、スチビン、エーテル、アミン、アミド、イミン、スルホキシド、カルボキシル、カルボニル、ニトロシル、窒素を含有するヘテロ環(例えば、ピリジン)、硫黄を含有するヘテロ環(例えば、チオフェン)、酸素を含有するヘテロ環(例えば、テトラヒドロフラン)、又はこれらの混合を含有するヘテロ環(例えば、オキサゾリン)、又はチオエーテルを含む。いくつかの実施形態では、Lは、ホスフィン、スルホン化ホスフィン、ホスファイト、ホスフィナイト、ホスホナイト、アルシン、スチビン、エーテル(環式エーテルを含む)、アミン、アミド、イミン、スルホキシド、カルボキシル、ニトロシル、ピリジン、置換ピリジン、イミダゾール、置換イミダゾール、ピラジン、置換ピラジン、又はチオエーテルである。例示的な配位子は、三置換ホスフィンである。他の例は、本明細書の他の箇所で引用されている。
【0130】
「任意選択の」又は「任意選択で」は、その後に記載される状況が起こってもよく起こらなくてもよいことを意味し、そのため、その記載は、その状況が起こる事例と、その状況が起こらない事例とを含む。例えば、「任意選択で置換された」という語句は、非水素置換基が、所与の原子上に存在していても存在していなくてもよいことを意味しており、そのため、この記載は、非水素置換基が存在する個別の実施形態と、非水素置換基が存在しない個別の実施形態とを含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、Lは、窒素、硫黄、酸素、又はこれらの混合を含有するヘテロ環である。Lに適切な窒素含有ヘテロ環の例としては、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、ピロール、2H-ピロール、3H-ピロール、ピラゾール、2H-イミダゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、インドール、3H-インドール、1H-イソインドール、シクロペンタ(b)ピリジン、インダゾール、キノリン、ビスキノリン、イソキノリン、ビスイソキノリン、シンノリン、キナゾリン、ナフチリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ピラゾリジン、キヌクリジン、イミダゾリジン、ピコリルイミン、プリン、ベンズイミダゾール、及びビスイミダゾールが挙げられる。更に、窒素含有ヘテロ環は、任意選択で置換され得る。
【0132】
Lに適切な硫黄含有ヘテロ環の例としては、チオフェン、1,2-ジチオール、1,3-ジチオール、チエピン、ベンゾ(b)チオフェン、ベンゾ(c)チオフェン、チオナフテン、ジベンゾチオフェン、2H-チオピラン、4H-チオピラン、及びチオアントレンが挙げられる。
【0133】
Lに適切な酸素含有ヘテロ環の例としては、2H-ピラン、4H-ピラン、2-ピロン、4-ピロン、1,2-ジオキシン、1,3-ジオキシン、オキセピン、フラン、2H-1-ベンゾピラン、クマリン、クマロン、クロメン、クロマン-4-オン、イソクロメン-1-オン、イソクロメン-3-オン、キサンテン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、及びジベンゾフランが挙げられる。
【0134】
Lに適切な混合ヘテロ環の例としては、イソキサゾール、オキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3,4-オキサトリアゾール、1,2,3,5-オキサトリアゾール、3H-1,2,3-ジオキサゾール、3H-1,2-オキサチオール、1,3-オキサチオール、4H-1,2-オキサジン、2H-1,3-オキサジン、1,4-オキサジン、1,2,5-オキサチアジン、o-イソオキサジン、フェノキサジン、フェノチアジン、ピラノ[3,4-b]ピロール、インドキサジン、ベンゾオキサゾール、アントラニル、及びモルホリンが挙げられる。
【0135】
以下の実施形態は、これまでの記載を置き換える又は破棄するのではなく、補完することを意図している。したがって、以下の実施形態は開示全体を代表するものであるが、本明細書に記載の特定の例に限定されるものではない。
【0136】
実施形態1.本開示は、一般式(C)の化合物、特に、立体障害化合物を調製する方法に関し、
【化34】
当該方法は、対応する一般式(B)の化合物をカルボン酸と反応させて、一般式(C)の化合物を形成する工程を含む一連の工程を含み、二座アニオン性配位子はカルボキシレートである。一般式(B)の化合物は、一般的な対応式(A)のジハロ化合物を、ハロ配位子を置換して単座配位子としてルテニウム中心に配位することができるアニオン性塩基と反応させて、任意選択的に単離される中間体を形成することによって、形成され得る。その後の反応を用いて、カルボン酸配位子を他の二座アニオン性配位子で置き換えることができる。各方法工程は、個別に本開示の独立した態様と見なされる。代替的又は追加的に、一緒に考慮される場合、2つ以上の方法工程は、本開示の別個の態様と見なされる。これらの一般式(A)及び(B)において表される一般的な記述子の各々は、本明細書の他の箇所に記載されており、これらの記載の任意の組み合わせから生じる各々全ての構造は、組成物及び方法工程の両方に関して、本開示の独立した態様と見なされる。
【0137】
この一般的な文脈内で、この実施形態のある特定の態様は、式(III)又は(XIII)の化合物を調製する方法を含み、当該方法は、式(II)若しくは(XII)の化合物それぞれ、又はその幾何異性体を、式Z-H(式中、Z-HはC(R18)(R19)(R20)COOHである)のカルボン酸と接触させることを含み、当該接触は、式(IV)又は(XIV)の化合物それぞれ、又はその幾何異性体の形成をもたらし:
【化35】
式中、
【0138】
、R、R、R、R、R、R、R、及びRは、独立して、水素、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールオキシ、若しくはニトロ基であり、又はこれらを含み;
【0139】
及び/又はRとR若しくはRとR若しくはRとR若しくはRとR若しくはRとR若しくはRとR若しくはRとRのうちの1つ以上が、それらが結合している炭素と一緒になって、少なくとも1つの任意選択で置換された5~7員環構造を形成し;
【0140】
は、-O-、-S-、又は-N(R10A)-であり;
【0141】
10及びR10Aは、独立して、任意選択で置換された直鎖、分岐鎖、環式、若しくは多環式のアルキル、任意選択で置換されたアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリールであり、又はこれらを含み;
【0142】
11、R12、R13、及びR14は、独立して、水素、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択的で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールであり、又はこれらを含み;及び/又は
【0143】
11、R12、R13、及びR14のうちの1つ以上のペアは、独立して、任意選択で、一緒に連結されて、環式又は多環式の構造を形成し;
【0144】
【化36】
は、任意選択の二重結合の存在を指しており;
【0145】
mは、0、1、2、3、又は4であり;
【0146】
15は、独立して、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールオキシ、ハロ、シアノ、ニトロであり、又はこれらを含み、又はR15の任意の2つが連結して、環式構造(例えば、連結されたアルキレン又はエーテルを含む)を形成してもよく;
【0147】
Yは、独立して、ルテニウム中心に配位子として配位した塩基性アニオンであり、又はこれらを含み;
【0148】
16及びR17は、独立して、水素、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたヘテロアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリールオキシであり、又はこれらを含み;
【0149】
Zは、任意選択で式C(R18)(R19)(R20)C(=O)Oのカルボキシレートであり;
【0150】
式中、R18、R19、及びR20は、独立して、水素、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアリール、若しくは任意選択で置換されたヘテロアリールであり、又はこれらを含み、但し、R18、R19、及びR20の全てが水素であることはなく;及び/又は
【0151】
18、R19、及びR20のうちの2つ若しくは3つが一緒に連結されて、環式若しくは多環式の構造を形成し;
【0152】
Lは、ドナー配位子、任意選択で中性電子ドナー配位子、任意選択で中性電子ドナー溶媒、又はR17に連結された電子ドナー配位子である。
【0153】
本実施形態において提示されるように、また本明細書の他の箇所に記載した他の態様及び実施形態に関して本開示全体を通して提示されるように、ある特定の態様では、ルテニウム化合物が、特定のNHC(N-ヘテロ環式カルベン)及びそれからの芳香族ペンダントに関して提示されるが、当該開示は必ずしもこれらの構造に限定されるものではなく、例えば、NHC環が1つ以上のR15置換基で任意選択で置換された6員環であるような化合物も包含することを理解されたい。
【0154】
全体を通して使用される場合、NHCコア及びその関連する記述子の表現:
【化37】
は、環が、独立して及び代替的に、単結合又は二重結合を含有する構造を少なくとも含む。(R15の文脈内で、その違いは、以下のR15基の様々な潜在的な位置及び分布によって現れる:
【化38】
これらの特定の位置がそのように表されるとき、R15は、R15と同じオプションを含むが、R15AがHであり得るという追加のオプションも含むR15Aとして再定義され(非水素置換基の不存在がHであることを反映するためだけでも)、R15Aの任意の2つが連結されて環式構造を形成し得ることも含む。これらの部分の構造の各々は、互いに独立していると考えられ、それらの定義は、これらの構造の全てを含むこれらの構造のうちのいずれか1つ以上を含み得るか、又はこれらの独立した構造のうちの1つ以上が除外され得る群に関して定義され得る。
【0155】
これらの定義の非限定的な典型例としては、以下が挙げられる:
【化39】
【0156】
本実施形態において提示されるように、また本明細書の他の箇所に記載した他の態様及び実施形態に関して本開示全体を通して提示されるように、ある特定の態様では、R15及びR15Aは、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたヘテロアリール、若しくは任意選択で置換されたヘテロアリールオキシを独立して含むという観点からしばしば記載され、又は、R15及びR15Aの任意の2つは連結されて環式構造を形成することもある。しかしながら、R15及びR15Aの定義は、必ずしもこれらの官能基に限定されるわけではなく、また、追加的又は代替的に、例えば、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、ニトロ、及びトリフルオロメタンを含む、本明細書の他の箇所で「Fn」として明示される官能基のうちの1つ以上であり得ることを理解すべきである。
【0157】
本実施形態において提示されるように、また本明細書の他の箇所に記載した他の態様及び実施形態に関して本開示全体を通して提示されるように、ある特定の態様では、ルテニウム化合物は、NHCからの任意選択で置換されたアリール基ペンダントに関して提示されるが、当該開示は、必ずしもこれらの構造に限定されるものではなく、また、例えば、芳香族ペンダントは、任意選択で置換されたヘテロアリール基、並びに図示のアリール基を含むこれらの化合物を包含することも理解されたい。代表的なヘテロアリール基は、本開示の他の箇所に記載されている。
【0158】
追加的又は代替的に、本明細書で使用される場合、芳香族ペンダントの文脈において、R、R、R、R、及びRの定義は、RとR若しくはRとR若しくはRとR若しくはRとRが、それらが結合している炭素と一緒になって、少なくとも1つの任意選択で置換された5~7員環構造を形成することを規定している。そのような任意選択で置換された5~7員環構造としては、例えば、芳香族ペンダント基に縮合された、任意選択で置換されたアリール、ヘテロアリール、環式アルキレン、環式アルケニレン、又はヘテロ環式(例えば、融合メチレン、エチレン、又はプロピレングリコール)部分が挙げられる。
【0159】
本実施形態において提示されるように、また本明細書の他の箇所に記載した他の態様及び実施形態に関して本開示全体を通して提示されるように、ある特定の態様では、R、R、R、R、R、R、R、R、及びRは、しばしば、独立して、水素、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル(任意選択でフッ素化又は過フッ素化された、例えば、-CFを含む)、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意で置換されたアリール、任意で置換されたアリールオキシ、任意で置換されたヘテロアリール、任意で置換されたヘテロアリールオキシ、又はニトロ基として記載される。しかしながら、これらの可変部分の定義は、必ずしもこれらの官能基に限定されるわけではなく、また、追加的又は代替的に、例えば、シアノ及びヒドロキシを含む、本明細書の他の箇所で「Fn」として明示された官能基のうちの1つ以上であり得る。
【0160】
本実施形態において提示されるように、また本明細書の他の箇所に記載した他の態様及び実施形態に関して本開示全体を通して提示されるように、ある特定の態様では、場合によってはルテニウム中心に結合されたNHCに対する立体障害基ペンダントは、時には、以下の構造:
【化40】
(式中、R11、R12、R13、及びR14は、本明細書において、独立して、水素、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールとしてしばしば定義される)によって提示される。しかしながら、R11、R12、R13、及びR14の定義は、必ずしもこれらの官能基に限定されるわけではなく、また、追加的又は代替的に、例えば、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、及びトリフルオロメタンを含む、本明細書の他の箇所で「Fn」として明示された官能基のうちの1つ以上であり得る。
【0161】
11、R12、R13、及びR14はまた、上記のように定義され、及び/又はR11、R12、R13、及びR14のうちの1つ以上のペアは、独立して、任意選択で一緒に連結されて、環式又は多環式の構造を形成する。破線で結合しているR12及びR14は、1つの可能な連結を表すことから、限定と見なすべきではない。ここでも、R11、R12、R13、及びR14のうちの任意の2つ以上が連結して、環式又は多環式の構造を形成することができる。本開示は、これらのオプションに由来する1つの可能な構造としてアダマンタンを特徴とするが、他の任意選択で置換された二環式又は多環式構造も本方法において有用である。例えば、任意選択でアルキル置換されたビシクロペンタン、ビシクロヘキサン、ビシクロヘプタン、及びビシクロオクタンは、ルテニウムメタセシス触媒の文脈におけるそのような化合物の文脈で使用されることが知られており、各々が、この部分の定義の範囲内であると考えられる。この文脈内の非限定的な典型例は、以下を含む:
【化41】
【0162】
あるいは、R11、R12、R13、及びR14の定義は、芳香族構造(例えば、R11及びR12は、芳香族基の一部を形成する)を包含することもでき、例えば:
【化42】
【0163】
本実施形態において提示されるように、また本明細書の他の箇所に記載した他の態様及び実施形態に関して本開示全体を通して提示されるように、ある特定の態様では、ルテニウム化合物は、次の任意選択で置換されたカルベン構造によって提示される:
【化43】
しかしながら、当該開示は、必ずしもこれらのアリール構造に限定されるものではなく、例えば、6員炭素環式芳香族基が、任意選択で置換されたヘテロアリール基によって置き換えられるそれらの化合物も包含することを理解するべきである。代表的なヘテロアリール基は、本開示の他の箇所に記載されている。この文脈内で、ルテニウムカルベンは、以下の構造を含み得る:
【化44】
【化45】
【0164】
追加的又は代替的に、R、R、R、及びRの定義は、RとR又はRとR又はRとRが、それらが結合している炭素と一緒になって、少なくとも1つの任意選択で置換された5~7員環構造を形成することを規定している。とはいえ、X、R、R、R、R、及びR10の観点から定義されたカルベン構造は、指定されたフェニル(又はピリジニル)基において、例えば、縮合され任意選択で置換されたアリール、ヘテロアリール、環式アルキレン、環式アルケニレン、又はヘテロ環の部分を含む。この記載に含まれる例示的な非限定的構造としては、例えば、任意選択で置換されたキノリン、(ジ)ベンゾフラン、(ジ)ベンゾチオフェン、(ジ)ベンゾピロール、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラヒドロナフタレン、ジヒドロナフタレン、クロマン、ベンゾジオキシン、ジヒドロベンゾジオキシン、インデン、ジヒドロイン、ベンゾジオキソール、ジヒドロベンゾフラン、及びジヒドロイソベンゾフランが挙げられる。
【0165】
本実施形態でも提示されるように、また本明細書の他の箇所に記載した他の態様及び実施形態に関して本開示全体を通して提示されるように、ある特定の態様では、ルテニウムカルベンは、以下の両方によって提示される:
【化46】
L、R16、及びR17の定義の完全な文脈内で、これらの用語を包含する構造は、X、R、R、R、R、及びR10の観点から定義された構造の属を表し、包含することを理解すべきである。属は種の構造よりも広いという範囲内で、他の種には、2つの群間の違いを包含する構造が含まれ、例えば、L、R16、及びR17部分を包含するその属内には含まれるが、X、R、R、R、R、及びR10部分によって包含されるその種には含まれない化合物である。これらの化合物には、ルテニウムカルベン部分がフィッシャー型カルベテ(R16又はR17は任意選択で置換されたアルコキシ、アリールオキシ、又はヘテロアリールオキシペンダントを含む)を含むか、又は単座配位子Lが存在しない構造、若しくはアルキルあるいはエーテル結合によってカルベン基に連結されたヘテロ環式部分によって置き換えられている構造を含む、化合物が含まれる、例えば:
【化47】
これらの構造は、本開示に関して限定するものとして見なされるものではなく、定義によって包含されるより大きな範囲の例を示すものである。
【0166】
本実施形態でも提示されるように、また本明細書に記載の各化合物に関して本開示全体を通して提示されるように、様々な態様において、Lは、中性電子ドナー配位子、任意選択で中性電子ドナー溶媒又はR17に連結された電子ドナー配位子の観点から定義される。本開示の化合物の文脈には、Lが存在しない化合物及び構造も含まれ、すなわち、この基は、カルベンペンダントによって提供されることも、別個に存在することもなく、ルテニウム中心は更に配位的に不飽和であり、例えば、それらの場合、他の部分の立体的嵩高さが、ルテニウム中心へのLの包接(inclusion)を妨げる。存在する場合、Lは、本明細書の他の箇所に記載されている中性電子ドナー配位子のうちのいずれか1つ以上を含み得る。いくつかの態様/実施形態では、Lは、任意選択で置換されたヘテロアリール(例えば、ピリジン、イミダゾール、又はピラジン;他のヘテロアリールオプションは、本明細書の他の箇所に記載されている)、ホスフィン(アルキル、アリール、及び混合アルキル/アリールホスフィンを含む)、ニトリル、エーテル(環式エーテルを含む)、チオエーテル、アミン、一酸化炭素、ケトン(例えば、アセトン)、アミド、スルホキシド、尿素、チオ尿素、及びN-ヘテロ環式カルベン配位子である。Lは、場合によっては、これらの化合物を必要とする反応で使用される溶媒から生じる可能性があるため、Lの定義は、これらの溶媒も含む。
【0167】
また、本明細書に記載の化合物の各々について、これらの態様において及び本開示全体を通して提示するように、Xを、-O-、-S-、又は-N(R10A)の観点から定義する。そのように規定される各場合において、Xの定義は、-O-、-S-、若しくは-N(R10A)の観点から個別に、又はこの群の一部として、定義されることを理解するべきである。Xが-O-であるそれらの態様/実施形態は、合成の単純さのためだけであるとしても、好ましいように思われる。
【0168】
また、本明細書に記載の化合物の各々について、これらの態様において及び本開示全体を通して提示されるように、R10及びR10Aは、しばしば、独立して、置換アルキル、任意選択で置換されたアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリールの観点から記載される。しかしながら、疑義を避けるために、R10及びR10Aはまた、任意選択で置換されたC1~24アルキル(好ましくはC1~12アルキル、より好ましくはC1~6アルキル)、例えば、直鎖、分岐鎖、環式、及び多環式のアルキル、例えば、アダマンチル又は他の二環式炭化水素、任意選択で置換されたC2~24アルケニル(好ましくはC2~12アルケニル、より好ましくはC2~6アルケニル)、任意選択で置換されたC2~24アルキニル(好ましくはC2~12アルキニル、より好ましくはC2~6アルキニル)、任意選択で置換されたC6~24アリール(好ましくはCアリール)、及び任意選択で置換された5~12員ヘテロアリール(好ましくは5又は6員ヘテロアリール)を含むようにより広範に定義することもできる。これらの構造は、任意選択でフッ素化又は過フッ素化してもよく、又はそうでなければ、本明細書に記載されるように1つ以上の「Fn」置換基で置換してもよい。
【0169】
更に、本明細書に記載の構造は、一般に、例えば:
【化48】
として表されるが、本記載及び特許請求の範囲は、これらの立体化学に限定されることを意図するものではなく、当該化合物それら自体は、代替の幾何異性体、例えば:
【化49】
として存在してもよく、本記載は、結合との整合性がある限り、全てのそのような幾何異性体/立体異性体を包含する。
【0170】
本明細書に記載の化合物の各々について、これらの態様において及び本開示全体を通して提示されるように、特に式(II)、(II-A)、(XII)、及び(XII-A)の化合物に関連して、Yは、独立して、ルテニウム中心に配位子として配位した塩基性アニオンとして記載される。この特性評価のある特定の態様では、Yは、比較的弱い求核性と見なすことができるが、(本明細書の他の箇所に記載のように)対応するRu中心からハロゲン化物を置き換えるのに十分に求核性であり、カルボン酸によってプロトン化されるのに十分に塩基性であると見なすことができる。代替的又は追加的に、これらの塩基の共役酸に関するpKa範囲は、好ましくは、HO中で10~19の範囲である。例えば、Yがtert-ブトキシド又はピロレートである場合、pKa(tert-ブタノール)=17であり、pKa(ピロール)=17.5である。これにより、カルボン酸(pKa4~5)と反応するのに十分に塩基性であるが、Ruカルベン触媒を分解するほど塩基性すぎることはない。
【0171】
代替的又は追加的には、Yは、独立して、水酸化物、C1~12アルコキシド、アミデートアニオン、置換若しくは非置換フェノキシド、置換若しくは非置換ピロレート、置換若しくは非置換インドレート、置換若しくは非置換イソインドレート、又は置換若しくは非置換イミダゾレートであり得る。ある特定の態様では、Yは、アルコキシド、アミデートアニオン、フェノキシド、置換若しくは非置換ピロレート、置換若しくは非置換インドレート、置換若しくは非置換イソインドレート、又は置換若しくは非置換イミダゾレートである。Yは、これらのタイプのアニオンのうちのいずれか1つ以上の観点から定義してもよく、及び/又はオプションのリストは、1つ以上のタイプを除外してもよい。いくつかの態様では、C1~12アルコキシドとしては、直鎖、分岐鎖、又は環式のアルキルアルコキシド、例えば、メトキシド、エトキシド、n-プロポキシド、イソプロポキシド、sec-ブトキシド、tert-ブトキシド、2-ペントオキシド、3-ペントオキシド、tert-ヘキサオキシド、シクロペンタオキシド、シクロヘキサオキシド(cyclohexoxide)、及び(1s,4s)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-オキシドが挙げられる。tert-ブトキシドが、本明細書において例示される。いくつかの態様では、アミデートアニオンとしては、ビス(アルキル/シリル)アミド(例えば、ジイソプロピルアミド、ビス(トリメチルシリル)アミド)、及びアルキル/アリールスルホンアミドアニオン、例えば、メチルスルホンアミドアニオン(MeSONH pKa=17.5)又はフェニルスルホンアミドアニオンが挙げられる。いくつかの態様では、置換フェノキシドは、2,6-ジメチルフェノキシド又は2,6-ジイソプロピルフェノキシド)などの、2,6位で置換されたフェノキシドを含む、ヒンダードフェノキシドである。
【0172】
本明細書に記載の化合物の各々について、これらの態様において及び本開示全体を通して提示されるように、特に式(III)、(III-A)、(XIII)、及び(XIII-A)の化合物に関連して、Zはカルボキシレートであり、Z-Hは対応するカルボン酸である。本開示において、Zは、一般に、式C(R18)(R19)(R20)COOHによって記載され、式中、R18、R19、及びR20は、独立して、水素、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリールであり、但し、R18、R19、及びR20の全てが水素であることはなく、及び/又はR18、R19、及びR20のうちの2つ又は3つが一緒に連結されて、環式又は多環式構造を形成する。好ましい態様及び実施形態では、Zは、少なくとも第二級炭素基、好ましくは第三級炭素基のカルボキシレートである。より嵩高いカルボキシレートは、本明細書に記載の方法において好ましいと考えられ、ピバル酸は、ピバレートのカルボン酸源の供給源として本明細書で例示されている。これらの実施形態の他の態様では、本明細書に記載のある特定の化合物、構造、及び方法としては、イソプロピルカルボキシレート、sec-ブチルカルボキシレート、tert-ブチルカルボキシレート、2-ペンチルカルボキシレート、3-ペンチルカルボキシレート、tert-ペンチルカルボキシレート、tert-ヘキシルカルボキシレート、シクロペンチルカルボキシレート、シクロヘキシルカルボキシレート、(1s,3s)-アダマンタン-1-カルボキシレート、(1s,4s)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボキシレート、及び1-メチルシクロヘキサン-1-カルボキシレートがZであるもの、Zに含まれるもの、が挙げられる。
【化50】
【0173】
本実施形態のいくつかの態様では、カルボン酸(carboxylic)との接触は、対応するカルボキシレート、好ましくはアルカリ金属カルボキシレートの追加の使用を伴う。
【0174】
本実施形態では、当該方法は、式(II)又は(XII)の化合物を、式Z-Hのカルボン酸と接触させると記載されており、前記接触させることが、式(III)又は(XIII)の化合物それぞれの形成をもたらす。本明細書に記載のように、「接触させること」という用語は、配合成分が互いに反応することを可能にする様式で、配合成分を一緒にする行為を表すことを意図している。代替語は、式(II)又は(XII)の化合物を、式Z-Hのカルボン酸と反応させることを含むことができ、当該反応は、式(III)又は(XIII)の化合物それぞれの形成をもたらす。当該実施例は、本明細書に記載された方法を操作するために、有機金属化学一般及びルテニウムメタセシス触媒の当業者に十分な教示を与える。当該発明のための典型的な反応は、1分以上(数分)から1日以上(数日)まで変化し得る時間で、-20℃から60℃まで変化し得る範囲における1つ以上の温度で、配合成分を反応させることを含む。当該反応は、好ましくは、空気への曝露を回避するために、例えば、シュレンク又はグローブボックス技法を使用して、不活性(例えば、アルゴン又は窒素)雰囲気下で、行われる。当技術分野で典型的に使用されるそれらの溶媒は、本発明で有用であり、アルカン(例えば、シクロヘキサン、ヘキサン(複数可)、ヘプタン(複数可)、ペンタン(複数可)、石油エーテル)、脂肪族塩素化溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素)、アルキルエステル(例えば、酢酸エチル)、脂肪族ニトリル(例えば、アセトニトリル)、アミド(例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、NMP)、ヘキサメチルホスホルアミド、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、1,2-ジメトキシ-エタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチル-テトラヒドロフラン)、アルコール(例えば、C1~12アルカノール、エチレングリコール)、ケトン(例えば、アセトン)、任意選択で置換された芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、フルオロベンゼン、クロロベンゼン、キシレン、ペンタフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン)、ヘテロ芳香族溶媒(例えば、ピリジン)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、ニトロメタン、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0175】
実施形態2.式(I)若しくは(XI)の化合物、又はその幾何異性体を、式[M][Y]の塩と接触させることを更に含み、当該アニオンYは、少なくとも実施形態1に記載されているY配位子に対応し、当該接触は、式(II)若しくは(XII)の化合物それぞれ、又はその幾何異性体の形成をもたらし:
【化51】
【0176】
式中、
及びXは、独立して、クロロ、ブロモ、又はヨードであり;
は、モノカチオン等価カチオン、例えば、アルカリ金属カチオン、アンモニウムカチオン、又は他の窒素系カチオンである、又は、任意選択で、本明細書に記載の他のカチオン(例えば、二価及び三価カチオン)であり得る、若しくはそれらを含み得る、実施形態1の方法。
【0177】
本実施形態の他の態様では、当該方法は独立して行うことができ、すなわち、実施形態1と共に行わなくともよい。
【0178】
本実施形態のある特定の態様において、及び本明細書の他の箇所に記載されている化合物及び方法において、ジクロロ化合物を作製することが単純で費用対効果が高いという理由だけでも、X及びXの両方にクロロが好ましい。
【0179】
また、本実施形態のある特定の態様において、Yアニオンは、式(II)、(II-A)、(XII)、及び(XII-A)の化合物である、実施形態1に記載のYリガンドに対応し、それらの開示は、本明細書に組み込まれる。同様に、これらの構造について実施形態1に記載されている、NHC、芳香族ペンダント、立体障害基、カルベン及び配位子の一般的な構造に関連する記載はまた、式(I)、(I-A)、(XI)、及び(XI-A)の対応する化合物にも適用される。また、実施形態1に記載されている反応条件もまた、時間、温度、溶媒、及び酸化に対する保護に関して、ここでも適用可能である。
【0180】
本実施形態の態様では、Mは、アルカリ金属カチオン、アンモニウムカチオン、又は他の窒素系カチオンなどのモノカチオン等価カチオンの観点から定義される。この文脈内で、これらの態様のある特定の場合、Li、Na、K、Rb、Cs、任意選択でアルキル化/アリール化されたアンモニウム、又は任意選択で置換されたピリジニウムカチオンが有用である。所与のYアニオンを含む特有なMカチオンに関する特定の選択は、対応ペアの特定の性質よりも、供給源の利便性の方により依存する。Li、Na、Kは好ましいカチオンである。本明細書のいくつかの態様では、[M][Y]は、カリウムtert-ブトキシド及びリチウムピロレートの使用を含む。他の態様では、本実施形態に記載される反応は、クリプタンド及びクラウンエーテルなどのカチオン金属イオン封鎖剤の非存在下又は存在下で行うことができる。
【0181】
本実施形態のいくつかの態様では、Mモノカチオン等価カチオンの定義は、必ずしも本実施形態及び本開示全体で提示されているもの(すなわち、アルカリ金属カチオン、アンモニウムカチオン、又は他の窒素系カチオン)に限定されず、それらの代わりに、他のカチオンを使用してもよい。他の態様では、Mモノカチオン等価カチオンはまた、他の金属カチオン、例えば、他の関連する配位子の有無にかかわらず、Ag、Cu、Cu2+、Zn2+、Mg2+、及びAl3+を含み得る。「モノカチオン等価カチオン」という用語は、1/2(Zn2+)(Yにおけるように、単一アニオンY、例えば、1/2Zn2+に対抗するのに十分な電荷の存在を指している。
【0182】
実施形態3.式(III)若しくは(XIII)の化合物、又はその幾何異性体を、二座配位子としてルテニウムに配位することができるトリフルオロアセテート、ナイトレート、ニトリット、オキサレート、ホスフェート、サルファイト、若しくはスルホネート、又は強酸(H-Q)の他のアニオンと反応させて、式(IV)若しくは(XIV)の化合物それぞれ、又はその幾何異性体を形成することを更に含み:
【化52】
式中、Qは、二座配位子としてルテニウムに配位することができる、配位したトリフルオロアセテート、ナイトレート、ニトリット、オキサレート、ホスフェート、サルファイト、スルホネート、又は強酸(H-Q)の他のアニオンである、実施形態1又は2の方法。典型的には、これらのアニオンは、二座配位子としてルテニウムに配位される。ナイトレートは、そのような錯体の反応性に基づいて好ましいと思われる。これらのアニオンのアンモニウム塩は、これらのアニオンの好適な種類であると思われる。特に、硝酸アンモニウムは、この文脈で良好に機能する。
【0183】
本実施形態の他の態様では、当該方法は独立して行うことができ、すなわち、実施形態1及び/又は2と共に行わなくともよい。
【0184】
本実施形態では、先行の実施形態におけるように、実施形態1に記載されている、NHC、芳香族ペンダント、立体障害基、カルベン及び配位子の一般的な構造に関連する記載はまた、式(III)、(III-A)、(XIII)、及び(XIII-A)の対応する化合物にも適用される。また、実施形態1に記載されている反応条件もまた、時間、温度、溶媒、及び酸化に対する保護に関して、ここでも適用可能である。
【0185】
実施形態4.式(I)又は(XI)の化合物を、式[M][Y]の塩と接触させ、それにより、式(II)又は(XII)の化合物それぞれの形成をもたらす工程と、式(II)又は(XII)の化合物それぞれを、式Z-Hのカルボン酸と接触させ、それにより式(III)又は(XIII)の化合物の形成をもたらす次の工程とを、式(II)又は(XII)の化合物それぞれを単離することなく行う、実施形態2又は3の方法。
【0186】
実施形態5.R及びRが、任意選択で置換されたC1~6アルキル、好ましくは分岐鎖C3~6アルキル、分岐鎖C4~6アルキル、又はフェニルであり、R、R、及びRが、独立して、水素又は任意選択で置換されたC1~6アルキル、好ましくは分岐鎖C3~6アルキルである、実施形態1~4のいずれか一つの方法。他の態様では、R、R、R、R及びRの定義のうちの1つ以上が、これらの用語の一般的な定義から除外される。
【0187】
実施形態6.R、R、及び任意選択でRが、独立して、C1~6アルキル、好ましくは分岐鎖C3~6アルキル、分岐鎖C4~6アルキル、又はフェニルである、実施形態1~4のいずれか一つの方法。本実施形態のある特定の態様では、R及びRはHである。他の態様では、R、R、R、R及びRの定義のうちの1つ以上は、これらの用語の一般的な定義から除外される。
【0188】
実施形態7.芳香族ペンダント:
【化53】
であり;
式中、R21は、ハロゲン、任意選択で置換されたC1~12アルキル、任意選択で置換されたC2~12アルケニル、任意選択で置換されたC1~12アルコキシ、任意選択で置換されたC6~24-アリール、任意選択で置換されたC3~24-ヘテロアリール、又はニトロであり;及び
nは、独立して、各出現において、0~4である、実施形態1~4のいずれか一つの方法。
【0189】
実施形態8.芳香族ペンダント:
【化54】
である、実施形態1~4のいずれか一つの方法。
【0190】
実施形態9.Xが、-O-である、実施形態1~8のいずれか一つの方法。
【0191】
実施形態10.R10及び/又はR10Aが、置換若しくは非置換フェニル、又は分岐鎖C3~24アルキル、環式C3~24アルキル、二環式C6~24アルキル、又は多環式C6~24アルキル、例えば、イソプロピル、tert-ブチル、又はアダマンチルである、実施形態1~9のいずれか一つの方法。本実施形態の他の態様では、置換若しくは非置換フェニル又は分岐鎖C3~6アルキルは、例えば、イソプロピルは、R10及び/又はR10Aの定義から除外される。
【0192】
実施形態11.立体障害基:
【化55】
が、任意選択的にアルキル置換されたアダマンチル部分を含む、実施形態1~10のいずれか一つの方法。
【0193】
実施形態12.
(a)式(II)の化合物は、式(II-A)の化合物であり、式(III)の化合物は、式(III-A)の化合物であり:
【化56】
及び
(b)式(XII)の化合物は、式(XII-A)の化合物であり、式(XIII)の化合物は、式(XIII-A)の化合物である:
【化57】
、実施形態1~11のいずれか一つの方法。
【0194】
本実施形態のいくつかの態様では、芳香族部分は、R及びRの位置におけるより大きな置換基(例えば、5個以上の炭素を有する分岐鎖アルキル;アリール又はヘテロアリール)の存在によって、又は縮合C5~7環系の存在のいずれかによって、Dipp(2,6-ジイソプロピルフェニル、すなわち、R=R=イソプロピル)よりも立体的により嵩高い。
【0195】
実施形態13.
(a)式(I)の化合物は、式(I-A)の化合物であり:
【化58】
、又は
(b)式(XI)の化合物は、式(XI-A)の化合物である:
【化59】
、実施形態2~12のいずれか一つの方法。
【0196】
本実施形態のいくつかの態様では、芳香族部分は、R及びRの位置におけるより大きな置換基(例えば、5個以上の炭素を有する分岐鎖アルキル;アリール又はヘテロアリール)の存在によって、又は縮合C5~7環系の存在のいずれかによって、Dipp(2,6-ジイソプロピルフェニル、すなわち、R=R=イソプロピル)よりも立体的により嵩高い。
【0197】
実施形態14.
【0198】
(a)式(IV)の化合物は、式(IV-A)の化合物であり:
【化60】
【0199】
(b)式(XIV)の化合物は、式(XIV-A)の化合物である:
【化61】
、実施形態3~13のいずれか一つの方法。
【0200】
本実施形態のいくつかの態様では、芳香族部分は、R及びRの位置におけるより大きな置換基(例えば、5個以上の炭素を有する分岐鎖アルキル;アリール又はヘテロアリール)の存在によって、又は縮合C5~7環系の存在のいずれかにによって、Dipp(2,6-ジイソプロピルフェニル、すなわち、R=R=イソプロピル)よりも立体的により嵩高い。
【0201】
実施形態15.式(XX-A)、(XX-B)、(XX-C)、又は(XX-D)のルテニウム化合物であって:
【化62】
式中、
【0202】
、R、R、R、R、R、R、R、及びRは、独立して、水素、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールオキシ、若しくはニトロ基であり;
【0203】
及び/又はRとR若しくはRとR若しくはRとR若しくはRとR若しくはRとRのうちの1つ以上が、それらが結合している炭素と一緒になって、少なくとも1つの任意選択で置換された5~7員環構造を形成し;
【0204】
は、-O-、-S-、又は-N(R10A)-であり;
【0205】
10及びR10Aは、任意選択で置換された直鎖、分岐鎖、環式、二環式、若しくは多環式のC3~24アルキル、任意選択で置換されたアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリールであり;
【0206】
11、R12、R13、及びR14は、独立して、水素、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択的で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールであり;及び/又は
【0207】
11、R12、R13、及びR14のうちの1つ以上のペアは、独立して、任意選択で、一緒に連結されて、環式又は多環式の構造を形成し;
【0208】
【化63】
は、任意選択の二重結合の存在を指しており;
【0209】
mは、0、1、2、3、又は4であり;
【0210】
15は、独立して、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールオキシ、ハロ、シアノ、ニトロであり、又はR15の任意の2つを連結して、環式構造(例えば、連結されたアルキレン又はエーテルを含む)を形成してもよく;
【0211】
16及びR17は、独立して、水素、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたヘテロアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリールオキシであり;Gは、独立して:
【0212】
(a)クロロ、ブロモ、若しくはヨード、又はこれらの組み合わせ;
【0213】
(b)ルテニウム中心に配位子として配位した塩基性アニオンであって、各塩基性アニオンは、水酸化物、C1~12アルコキシド、アミデートアニオン、置換若しくは非置換フェノキシド、置換若しくは非置換ピロレート、置換若しくは非置換インドレート、置換又は非置換イソインドレート、又は置換若しくは非置換イミダゾレートを含む、塩基性アニオン、であり;
【0214】
Lは、中性電子ドナー配位子、任意選択で中性電子ドナー溶媒、又はR17に連結された電子ドナー配位子である、
ルテニウム化合物。
【0215】
本実施形態のいくつかの態様では、以下の条件を適用する:
Gが、クロロ、ブロモ、若しくはヨード、又はそれらの組み合わせであるとき、R及びRは、独立して、任意選択で置換されたC4~12、C5~12、C6~12、C7~12、若しくはC8~12アルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリールオキシであり、及び/又はRとR若しくはRとR若しくはRとR若しくはRとRのうちの1つ以上は、それらが結合している炭素と一緒になって、少なくとも1つの任意選択で置換された5~7員環構造を形成する。
【0216】
本実施形態の他の態様では、Gが、クロロ、ブロモ、若しくはヨード、又はこれらの組み合わせであるとき、R及びRは、独立して、任意選択で置換された分岐鎖C4~12、C5~12、C6~12、C7~12、又はC8~12アルキルである。
【0217】
本実施形態の他の態様では、Gが、クロロ、ブロモ、若しくはヨード、又はこれらの組み合わせであるとき、R10もR10Aも、イソプロピル又は任意選択で置換されたフェニルではない。
【0218】
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R10A、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、G、L、及びmに関して本実施形態に記載した定義は、必ずしもこれらの組成を限定することを意図していない。例えば、ここでのGの定義は、先の実施形態におけるX、X、及びYに関連した態様、定義、及び記載を含む。より一般的には、本実施形態のある特定の態様では、先の実施形態のいずれかに記載したようなNHC、芳香族ペンダント、立体障害基、カルベン、及び配位子の一般的な構造に関連した記載はまた、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R10A、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、G、L、及びmのある特定の定義について提示した特定の除外を含む、式(XX-A)、(XX-B)、(XX-C)、及び(XX-D)の対応する化合物にも適用される。
【0219】
実施形態16.式(Y-A)、(Y-B)、(Y-C)、又は(Y-D)のルテニウム化合物であって:
【化64】
式中、
【0220】
、R、R、R、R、R、R、R、及びRは、独立して、水素、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールオキシ、若しくはニトロ基であり;
【0221】
及び/又はRとR若しくはRとR若しくはRとR若しくはRとR若しくはRとRのうちの1つ以上が、それらが結合している炭素と一緒になって、少なくとも1つの任意選択で置換された5~7員環構造を形成し;
【0222】
は、-O-、-S-、又は-N(R10A)-であり;
【0223】
10及びR10Aは、任意選択で置換された直鎖、分岐鎖、環式、二環式、若しくは多環式のC3~24アルキル、任意選択で置換されたアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリールであり;
【0224】
11、R12、R13、及びR14は、独立して、水素、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択的で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールであり;及び/又は
【0225】
11、R12、R13、及びR14のうちの1つ以上のペアは、独立して、任意選択で、一緒に連結されて、環式又は多環式の構造を形成し;
【0226】
【化65】
は、任意選択の二重結合の存在を指しており;
【0227】
mは、0、1、2、3、又は4であり;
【0228】
15は、独立して、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールオキシ、ハロ、シアノ、ニトロであり、又はR15の任意の2つを連結して、環式構造(例えば、連結されたアルキレン又はエーテルを含む)を形成してもよく;
【0229】
Jは、独立して、
【0230】
(a)X又はYについて本明細書の他の箇所に記載されているものなどの単座配位子、例えば、少なくともその2,6位で置換されたフェノキシド;
【0231】
(b)カルボキシレート[任意選択で式C(R18)(R19)(R20)C(=O)Oのカルボキシレート(式中、R18、R19、及びR20は、独立して、水素、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリールであり、但し、R18、R19、及びR20の全てが水素であることはなく、及び/又はR18、R19、及びR20のうちの2つ又は3つが一緒に連結されて、環式又は多環式構造を形成する)];又は
【0232】
(c)二座配位子としてルテニウムに配位することができる、トリフルオロアセテート、ナイトレート、ニトリット、オキサレート、ホスフェート、サルファイト、スルホネート、又は強酸(H-Q)の他のアニオンであり;
【0233】
16及びR17は、独立して、水素、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアリールオキシ、任意選択で置換されたヘテロアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリールオキシであり;
【0234】
Lは、中性電子ドナー配位子、任意選択で中性電子ドナー溶媒、又はR17に連結された電子ドナー配位子である、
ルテニウム化合物。
【0235】
本実施形態のいくつかの態様では、以下の条件が適用される:すなわち、Jが、置換フェノキシドであり、式C(R18)(R19)(R20)C(=O)Oのカルボキシレート、又は、二座配位子としてルテニウムに配位することができるトリフルオロアセテート、ナイトレート、ニトリット、オキサレート、ホスフェート、サルファイト、若しくはスルホネート、又は強酸(H-Q)の他のアニオンであるとき、芳香族ペンダントは、Dipp(2,6-ジイソプロピルフェニル)よりも嵩高く、例えば、そのとき、R及びRは、独立して、任意選択で置換されたC4~12アルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリールオキシであり、及び/又はRとR若しくはRとR若しくはRとR若しくはRとRのうちの1つ以上は、それらが結合している炭素と一緒になって、少なくとも1つの任意選択で置換された5~7員環構造を形成する。
【0236】
本実施形態のいくつかの態様では、以下の条件が適用される:すなわち、Jが、置換フェノキシドであり、式C(R18)(R19)(R20)C(=O)Oのカルボキシレート、又は、二座配位子としてルテニウムに配位することができるトリフルオロアセテート、ナイトレート、ニトリット、オキサレート、ホスフェート、サルファイト、スルホネート、又は強酸(H-Q)の他のアニオンであるとき、R10は、イソプロピルより嵩高く、例えば、任意選択で置換されたC4~12アルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリールオキシである。
【0237】
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R10A、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、J、L、及びmに関して本実施形態に記載した定義は、必ずしもこれらの組成を限定することを意図していない。例えば、ここでのJの定義はまた、先の実施形態におけるX、Y、Q、及びZに関連した態様、定義、及び記載も含む。より一般的には、本実施形態のある特定の態様では、先の実施形態のいずれかに記載したようなNHC、芳香族ペンダント、立体障害基、カルベン、及び配位子の一般的な構造に関連した記載はまた、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R10A、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、Q、及びZのある特定の定義について提示した特定の除外を含む、式(Y-A)、(Y-B)、(Y-C)、及び(Y-D)の対応する化合物にも適用される。
【0238】
本実施形態のいくつかの例示的な態様は、本明細書の記載に基づいて、ArはDippよりも嵩高い芳香族ペンダントであること、又はR10は任意選択で置換された芳香族基であることを含む。
【化66】
【0239】
実施形態17.少なくとも1つのアルケン、アルキン、又はエンインを、実施形態15又は16のルテニウム化合物、又は1~14の実施形態のいずれか1つの方法によって調製されたルテニウム化合物と接触させることを含む方法であって、当該接触が:
【0240】
(a)2つの異なるアルケン、すなわちアルケン、アルキン、及び/又はエンインの交差メタセシス(CM)、
【0241】
(b)シクロアルケン環の形成をもたらすジエンの閉環メタセシス(RCM)、
【0242】
(c)2つのオレフィンのホモ二量体化、
【0243】
(d)オリゴマー及び/又はポリマーの形成をもたらす非環式ジエンメタセシス(ADMET)、
【0244】
(e)非環式ジエンをもたらす開環交差メタセシス(ROCM)、
【0245】
(f)ポリマーをもたらすシクロアルケンの開環メタセシス重合(ROMP)、又は
【0246】
(g)オレフィンのE/Z異性体混合物の、この混合物のE-オレフィン含有量を増加させる、エテノリシス、
を含む反応をもたらす、方法。
【0247】
各反応プロセスは、本実施形態に記載されたルテニウム化合物に関して独立して表すとき、独立して列挙されているかのように、本明細書の他の箇所に記載されている本実施形態の独立した態様である。
【0248】
本実施形態のある特定の態様では、特に、(a)~(f)に記載された反応に関連する場合、対応する反応の生成物は、主にZ異性体オレフィンである。例えば、反応の生成物が、E及びZ異性体の混合物である場合、又はそれを含む場合、Z異性体含有量は、E/Z異性体混合物の50モル%を超える。本実施形態の独立した態様では、Z異性体含有量は、E/Z異性体混合物の55モル%以上、60モル%以上、65モル%以上、70モル%以上、75モル%以上、80モル%以上、85モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、97モル%以上、98モル%以上、99モル%以上、又は実質的に100モル%である。
【0249】
(g)に記載のエテノリシスに関連する場合、このプロセスに関連する反応は、混合物からのZオレフィンの優先的な反応及び除去を提供する。本実施形態のある特定の独立した態様では、接触は、残りのE/Zオレフィン混合物中のEオレフィンの最終的な割合が少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.8%、又は実質的に純粋なEオレフィン(すなわち、Zオレフィンは、混合物から完全に除去されている)であるように、Zオレフィンの優先的な除去をもたらす。
【0250】
本明細書に記載の触媒は、Z異性体生成物を提供する変換をもたらす能力についてユニークであると考えられているが、メタセシス反応及びそれらを行うための条件は、これらのグラッブス型触媒については良く知られている。当業者は、これらの反応を行うことができ、過度の実験を伴うことなく、方法での使用におけるこれらのルテニウム化合物の利点を認識することができよう。例えば、Montgomeryらによる”Recent Advancements in Stereoselective Olefin Metathesis Using Ruthenium Catalysts,”Catalysts,2017,7(3),87を参照されたい。
【実施例
【0251】
以下の実施例を、本開示内で記載される概念のいくつかを説明するために提供する。各実施例は、組成物、調製方法、及び使用の具体的な個々の実施形態を提供すると考えられるが、いずれの実施例も、本明細書に記載のより一般的な実施形態を限定するものと考えるべきではない。
【0252】
以下の実施例では、使用される数字(例えば、量、温度など)について正確さを確保するための努力が成されたが、ある程度の実験誤差及び偏差も考慮すべきである。別途記載のない限り、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧又は大気圧付近である。
【0253】
実施例1:一般情報
【0254】
特に明記しない限り、全ての反応は、標準的なシュレンクライン技術を使用して不活性雰囲気(例えば、窒素又はアルゴン)下、乾燥ガラス容器中で、又は窒素雰囲気下、グローブボックス内で、実施した。化学物質は、商業的供給源から入手し、当技術分野の標準的な慣行で精製した。標準的なNMR分光法実験は、Varian Mercury(H,300MHz)分光計、Varian Inova 400MHz分光計、AutoXプローブを備えたVarian 500MHz分光計、又はTriaxプローブを備えたVarian 600MHz分光計で行った。化学シフトは、残留溶媒ピークを内部標準として用いることによって、MeSiから低磁場側にppmで記録されている。MestReNovaソフトウェアを用い、スペクトルを分析し、加工した。
【0255】
以下の反応(本記載及び図に示されている様々な実施形態に表されるとおり)は、-20℃~40℃で変化する温度で、不活性雰囲気(窒素又はアルゴン)下で実施した。反応時間は、組成物の性質に部分的に応じて、又は場合によっては単に便宜のために、数分~数時間で変わる。以下で記載されるいくつかの代表的な実施例は、これらの手順は、当業者によって理解されるように、改変することができるが、限定ではなく例示と考えるべきである。
【0256】
実施例2:Zオレフィンメタセシス触媒Ru-5の調製:
それ自体がZ選択的オレフィンメタセシス触媒であり、またRu-1のための前駆体でもあるRu-5を、以下のスキームに従って調製した:
【化67】
【0257】
第1の反応では、二塩化ルテニウムをカリウムtert-ブトキシドの2つのバッチで処理することによって、アニオン配位子交換が完全な変換に到達し、ルテニウムビス-tert-ブチルオキシド(Ru-4)が83%の収率で得られた。第2の反応では、Ru-4を-20℃でピバル酸によって処理すると、一時的なルテニウムビスピバレート種が問題なく形成され、室温に温めるとスムーズにC-Hが活性化され、Ru-5が、純度>98%、収率74%で得られた。
【0258】
より具体的には、KO-tert-Bu(1.5ミリモル、3当量、168mg)を、20mLバイアルにおいて、ベンゼン(8mL)中の出発二塩化ルテニウム(0.5ミリモル、1.0当量、322mg)溶液へ一度に添加した。その懸濁液を室温で5時間撹拌し、セライトのショートパッドを通して濾過し、KO-tert-Bu(0.75ミリモル、1.5当量、84mg)で投入されている別の20mLバイアルに入れた。得られた懸濁液を、更に一晩撹拌し、次いで真空で濃縮した。残留物をペンタン(8mL)に溶解し、セライトのショートパッドを通過させ、真空で濃縮して、Ru-4(約90~95%の純度)を褐色の固体(300mg、83%の収率)として得た。Ru-4の代表的なH-NMRスペクトルを図5に示す。
【0259】
次に、8mLのバイアルに、THF(2mL、溶液A)中のRu-4の一部(72mg、0.1ミリモル、1.0当量)を投入した。4mLのバイアルにTHF(1.5mL、溶液B)中のPivOH(21.4mg、0.21ミリモル、2.1当量)を投入した。両方のバイアルをグローブボックスフリーザー(-20℃)中に15分間置いた。溶液Bを3mLシリンジを使用して溶液Aにすばやく移し、得られた混合物をフリーザーに戻し、撹拌せずに1.5時間静置した。次に、混合物を取り出し、室温で15分間撹拌した後、真空で濃縮した。残留物をショートセライトカラムに移し、ペンタン(3.5mL)でフラッシュして、褐色がかった色のバンドを取り除き、次いでベンゼン(7mL)でフラッシュして、生成物を紫色の溶液として得た。溶媒を除去するとRu-5(純度>97%)が紫色の固体として得られた(50mg、収率74%)。Ru-5の代表的なH-NMRスペクトルを図6に示す。
【0260】
実施例3:実施例2に記載した手順はまた、高速開始配位子を有する新しいタイプのZ選択的オレフィンメタセシス触媒の合成にも適用した。
【化68】
【化69】
【化70】
【0261】
対応する第1世代のグラッブスのルテニウムオレフィンメタセシス触媒から出発し、Ru-7は、4つの工程で、純度>99%で全収率43%で合成し、Ru-8は、5つの工程で、純度>99%で全収率30%で合成する。新しいアプローチによると、重要なピバレート交換及びC-H結合活性化の工程は、2つの工程で64%の収率でスムーズに行われる。第1の反応では、二塩化ルテニウム前駆体を3当量のカリウムtert-ブトキシドで処理した後、アニオン交換が全変換に到達し、ルテニウムビス-tert-ブチルオキシド(Ru-6)が95%の収率で得られた。第2の反応では、Ru-6を、-20℃でピバル酸で処理すると、精製後に収率67%でRu-7が生成した。室温でTHF中の12当量のNHNOでRu-7を更に処理すると、Ru-8が収率70%で得られた。重要な工程に関する詳細な手順は、実施例3に記載されているものと同様である。Ru-7及びRu-8の代表的なH-NMRスペクトルを、図7及び図8それぞれに示した。
【0262】
実施例4:
【化71】
【0263】
この手順はまた、Ru-10の合成を大幅に改善するために使用することもでき、Ru-10それ自体がZ選択的オレフィンメタセシス触媒であり、また市販のRu-2のための前駆体でもある。第1の反応では、二塩化ルテニウム前駆体を、THF中の3.5当量のリチウムピロレートで室温で処理することによって、アニオン交換が完全変換に達し、収率82%でルテニラウムビスピロレート(Ru-9)が生成した。第2の反応では、Ru-9を室温でピバル酸で処理すると、収率85%でRu-10が形成した。このシーケンスの全収率は70%であり、従来の経路よりも有意に高い。詳細な実験手順は、実施例1に記載したものと同様である。リチウムピロレートは、次の手順で調製した:すなわち、オーブンで乾燥させたフラスコに撹拌子及びゴム製隔膜(rubber septum)を取り付け、Ar下で循環させた。このフラスコに、乾燥ヘキサン(6mL)及びピロール(248mg、2.7ミリモル、1.0当量)を隔膜を通して添加した。その溶液をドライアイス/アセトン浴で-78℃に冷却し、n-BuLi(1.5mL、ヘキサン中2.45M、3.6ミリモル、0.98当量)を滴下した。その反応を15分間撹拌し、冷浴を取り除いた。更に4時間撹拌した後、溶液をグローブボックス内のガラス遠心チューブに移し、ペンタン(10mL)を添加した。そのチューブを遠心分離機にかけ、上清を除去した。このすすぎを更に3回繰り返し、高真空を使用して残留溶媒を除去すると、>90%収率でオフホワイト色の粉末が得られた。
【0264】
実施例5:
【化72】
【0265】
この手順はまた、市販のRu-2よりも大きいNHC配位子を有するZ選択的オレフィンメタセシス触媒であるRu-12を合成するためにも使用した。第1の反応では、二塩化ルテニウム前駆体を、ベンゼン中の3.0当量のカリウムtert-ブトキシドで室温で処理することによって、アニオン交換が完全変換に達し、収率80%でルテニウムビス-tert-ブトキシド(Ru-11)が生成した。第2の反応では、Ru-11を-20℃でピバル酸で処理すると、収率80%でRu-12が形成した。詳細な実験手順は、実施例2に記載したものと同様である。Ru-12の代表的なH-NMRスペクトルを図9に示す。
【0266】
実施例6:
【化73】
【0267】
この手順はまた、市販のRu-2よりも大きいNHC配位子を有する別のZ選択的オレフィンメタセシス触媒であるRu-14を合成するためにも使用することもできる。第1の反応では、二塩化ルテニウム前駆体を、THF中の3.5当量のリチウムピロレートで室温で処理することによって、アニオン交換が完全変換に達し、収率90%でルテニラウムビスピロレート(Ru-13)が生成した。第2の反応では、ベンゼン中でRu-13を室温でピバル酸で処理すると、収率70%でRu-14が形成した。詳細な実験手順は、実施例2に記載したものと同様である。リチウムピロレートは、好ましくは、実施例4に記載の手順に従って調製する。
【0268】
実施例7:ジクロロ化合物からの選択された化合物のワンポット合成
【化74】
【0269】
開示される方法はまた、本明細書で表される反応のためのワンポット手順も含む。場合によっては、出発物質又は中間体の完全な変換を確実にするために、対応するアルカリ金属カルボキシレートも必要であることに留意されたい。
【0270】
上記のスキームに表されているように、このワンポット手順を、上記の条件下でRu-5を調製するために適用した。Ru-5は、H-NMRによって測定すると収率66%で形成され、47%の収率で単離された。
【0271】
KO-tert-Bu(0.3ミリモル、3.0当量、30.4mg)を、4mLバイアルにおいて、ベンゼン(1.4mL)中の出発二塩化ルテニウム(0.1ミリモル、1.0当量、64.3mg)溶液に添加した。その懸濁液を室温で7.5時間撹拌し、次にセライトのショートパッドを通して濾過し、NaOPiv(0.2ミリモル、2.0当量、24.8mg)を予め投入しておいた20mLバイアルに入れた。1.5mLのTHFを使用して、セライトパッドを洗浄し、それをベンゼン濾液と組み合わせた(溶液A)。別の4mLのバイアルにTHF中のPivOH(25mg、0.25ミリモル、2.5当量)を投入した(1.5mL、溶液B)。両方のバイアルをグローブボックスフリーザー(-20℃)中に5分間置いた。溶液Bを3mLシリンジを使用して溶液Aにすばやく移し、得られた混合物をフリーザーに戻し、撹拌せずに1.5時間静置した。次いで、その混合物を取り出し、室温で一晩撹拌した後、真空で濃縮した。残留物をショートセライトパッド上に移した。セライトパッドをペンタン(3mL)及びMeOH(1.25mL)でフラッシュして、褐色がかったバンド及び次いでベンゼン(4.5mL)を除去して、生成物を紫色の溶液として得た。溶媒を除去するとRu-5が紫色の固体として得られた(31.4mg、収率47%)。
【0272】
実施例8:メタセシス反応
【0273】
実施例8.1:既存の触媒と比較した、ある特定の官能基に対するこれらの触媒の許容性及びR10位の立体バルクの効果を、一連の実験で示す。代表的な触媒(Ru-5)は、tert-ブチルアクリレートと1-ドデセンとの交差メタセシスを効率的に触媒することが示された。その生成物は、2時間以内に>50:1のZ:E選択性で収率53%で生成され、最終的には40:1のZ:E選択性で収率で80%で生成される。非常に対照的に、本開示に記載した触媒より前の最良の既存の触媒(Ru-2)は、26時間の反応後に、46%の収率でしか生成物を生成できなかった。
【化75】
【0274】
実施例8.2:第2の一連の実験では、代表的な触媒(Ru-7)が、N-ベンジルアクリルアミドと1-ドデセンとの交差メタセシスを効率的に触媒することを示した。生成物は、16時間で、>96:4のZ:E選択性で収率78%で生成した。本開示に記載した触媒より前の最良の既存の触媒(Ru-2)は、二日後の反応後に、40%の収率でしか生成物を生成できなかった。
【化76】
【0275】
実施例8.3:本発明者らは、新しいアプローチによって作製された新しいルテニウム触媒のいくつかが、既存のZ選択的オレフィンメタセシス触媒と比較して、選択性及び反応性の両方において触媒活性の増加を更に示したことを発見した。例えば、他の一般的な代替アプローチは、一般に、高度な合成中間体、高価な出発物質、又は過酷な反応条件の使用を必要とするため(例えば、図11)、安価なアクリルアミドと通常の末端オレフィンとのZ選択的交差メタセシスは、(Z)-α,β-不飽和アミド(生物活性分子及び構成単位における一般的なモチーフ、図10を参照されたい)を構築するための非常に望ましいアプローチを代表している。一連の制御された実験によって、本発明者らは、本明細書に開示される方法によって合成が可能であるRu-12が、市販の触媒Ru-2と比較して、交差メタセシスに対して有意により高い反応性及びより高い選択性を示すことを確認した。
【表1】
【0276】
本開示で引用又は記載されている各特許、特許出願、及び刊行物は、参照により、各々完全に、全ての目的のために、又は少なくとも引用若しくは参照した目的のために若しくは文脈において、本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】