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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】基体への物質の沈着方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/04 20060101AFI20220930BHJP
   A61M 37/00 20060101ALI20220930BHJP
   B05B 5/03 20060101ALI20220930BHJP
   B05B 5/08 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
B05D1/04 Z
A61M37/00
B05B5/03
B05B5/08 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577909
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2020068124
(87)【国際公開番号】W WO2021001281
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】19315050.5
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521567251
【氏名又は名称】デーベーヴェー テクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】510133975
【氏名又は名称】ユーシーエル ビジネス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正則
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(74)【代理人】
【識別番号】110003362
【氏名又は名称】弁理士法人i.PARTNERS特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベリ,ナエル
(72)【発明者】
【氏名】ダーウィッシ,サラ
(72)【発明者】
【氏名】ユエット,マキシム
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤシンジ,スワン
(72)【発明者】
【氏名】ウォイチック,アダム
【テーマコード(参考)】
4C267
4D075
4F034
【Fターム(参考)】
4C267AA72
4C267BB02
4C267BB23
4C267BB42
4C267CC01
4C267CC05
4C267GG12
4C267GG16
4C267HH08
4D075AA02
4D075AA09
4D075AA83
4D075AA84
4D075AA87
4D075CA22
4D075DA06
4D075DB01
4D075DB48
4D075EB07
4F034AA10
4F034BA14
4F034BB04
4F034BB07
4F034BB12
4F034BB16
4F034DA26
(57)【要約】
【課題】選択的に物品を反転可能な技術を提供する。
【解決手段】本実施形態は、出口部(2)有する伝導性の噴霧ノズル(1)から距離を置いて基体(6)を設け、物質を含む液体組成物を噴霧ノズル(1)に供給し、噴霧ノズル(1)の出口部(2)から流出する液体組成物の周りに圧縮ガスを供給し、噴霧ノズル(1)の出口部(2)の下流に電界を供給することによって、噴霧ノズル(1)の出口部(2)と基体(6)との間で液体組成物から帯電した液滴を生成し、生成した液滴を基体(6)上に収集する、基体(6)上に物質を沈着する方法に関する。本実施形態はまた、この方法を実施するための設備に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体(6)上に物質を沈着させる方法であって、
出口部(2)を有する伝導性の噴霧ノズル(1)から距離を置いて前記基体(6)を設けるステップと、
前記物質を含む液体組成物を前記噴霧ノズル(1)に供給するステップと、
前記噴霧ノズル(1)の出口部(2)から流出する液体組成物の周囲に圧縮ガスを供給し、前記噴霧ノズル(1)の出口部(2)の下流に電界を設けることによって、前記噴霧ノズル(1)の出口部(2)と前記基体(6)との間の液体組成物から帯電した液滴を生成するステップと、
生成された液滴を基体(6)上に集めるステップと
を備え、
内部に前記噴霧ノズル(1)が配置されたチャンバ(3)内に前記圧縮ガスが供給され、前記液体組成物と前記圧縮ガスとが、伝導性のエジェクタ(5)の吐出口(4)を通じてチャンバ(3)から流出する
方法。
【請求項2】
前記物質が、ペプチドまたはタンパク質、好ましくはアレルゲン、最も好ましくはピーナッツ、ミルク、卵、クルミ、カシューナッツ、ピーカンナッツ、ピスタチオ、およびヘーゼルナッツのアレルゲンから選択される
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記液体組成物が0.1μS/m~3S/m、好ましくは1mS/m~20mS/mの伝導性を有する
請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記液体組成物を少なくとも1mL/h、好ましくは少なくとも1.5mL/hの流量で前記噴霧ノズル(1)に供給する
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記液体組成物の周囲の圧縮ガスが、大気圧よりも0.1~2バール、好ましくは0.3~1バール高い圧力である
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記噴霧ノズル(1)の出口部(2)と前記吐出口(4)との間の第1領域に第1の大きさを有する電界を印加、および/または、前記吐出口(4)と前記基体(6)との間の第2領域に第2の大きさを有する電界を印加し、
前記第1の大きさが好ましくは0.1~10MV/m、より好ましくは0.5~5MV/m、および/または、前記第2の大きさが好ましくは0.02~1MV/m、より好ましくは0.1~0.5MV/m、および/または、好ましくは、前記第1の大きさが前記第2の大きさより大きい
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記基体(6)上に液滴を集めた後、乾燥ステップを含まない
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
パッチ、好ましくは治療用パッチを製作するための
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
基体(6)上に物質を沈着させる設備であって、
吐出口(4)を有する伝導性のエジェクタ(5)を含むチャンバ(3)と、
前記チャンバ(3)内に配置され、出口部(2)を有する伝導性の噴霧ノズル(1)と、
前記基体(6)を前記噴霧ノズル(1)から離れた、前記チャンバ(3)の外側に配置するための支持体と、
沈着すべき物質を含む液体組成物を前記噴霧ノズル(1)に供給する液体供給ライン(9)と、
前記チャンバ(3)に圧縮ガスを供給するガス注入口(10)と、
前記チャンバ(3)内および/または該チャンバ(3)と前記基体(6)との間に電界を発生させる機器と
を備える設備。
【請求項10】
前記電界を発生させる機器が、前記チャンバ(3)内および該チャンバ(3)と前記基体(6)との間の両方で電界を発生させるように構成されている
請求項9記載の設備。
【請求項11】
前記基体(6)をグランドに接続するための接点を更に備え、
前記噴霧ノズル(1)及び前記エジェクタ(5)の各々が高圧電源に接続される
請求項9または10記載の設備。
【請求項12】
前記噴霧ノズルの出口部(2)が、50~500μm、好ましくは100~450μm、より好ましくは150~400μmの内径Dを有する
請求項9~請求項11のいずれか一項に記載の設備。
【請求項13】
前記吐出口(4)が、50~800μm、好ましくは100~600μm、より好ましくは150~500μmの内径Dを有する
請求項9~請求項12のいずれか一項に記載の設備。
【請求項14】
前記噴霧ノズル(1)の出口部(2)と前記吐出口(4)との間の距離Hが、50~550μm、好ましくは70~250μm、より好ましくは80~180μmである
請求項9~請求項13のいずれか一項に記載の設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体上に物質を沈着させる方法、特に、パッチなどの基体上にタンパク質のような生物学的物質を沈着させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パッチによる薬物の皮膚への適用は、人や動物の健康において多くの用途がある。実際に、有効成分を皮膚に移す効率的な診断検査や治療法の開発を可能にする。
【0003】
皮膚に物質を局所的に塗布する方法は、注射など他の投与方法と比較して、汚染のリスクがない、痛みがない、取扱いが簡単、患者が自ら薬物を投与できるなど、多くの利点がある。
【0004】
下記特許文献1には、物質の皮膚への適用を意図したパッチの製造方法として、パッチが伝導性支持体を含み、電気流体力学的噴霧(「エレクトロスプレー」技術としても知られている)によってパッチの支持体上に物質の液剤を沈着する方法が開示されている。
【0005】
この方法は、多くの状況で満足のいく結果をもたらしているが、特に液剤が比較的高い伝導性を持つ場合、この方法で達成できる流量は、依然として制限されたままである。
【0006】
残念ながら、パッチに沈着する治療や診断用の物質の中には、このような伝導性が比較的高い液剤(例えば、生理的血清ベースの製剤)で提供しなければならないものがある。
【0007】
他の産業分野では、キャピラリーラインから出た第1流体の周囲を第2流体が流れることにより、第1流体の液滴を生成する「フローフォーカシング」技術が利用されている。このフローフォーカシング技術に関する文献の例としては、以下の下記非特許文献1~4がある。
【0008】
フローフォーカシングとエレクトロスプレーの技術比較は、以下の非特許文献5で行われている。
【0009】
エレクトロスプレーとフローフォーカシング技術の原理を組み合わせたもので、しばしばエレクトロ-フローフォーカシングと呼ばれるものは、以下の特許文献2及び非特許文献6,7により提案されている。
【0010】
物質を基体上に沈着させる方法は、工業的な製造環境に適用させるために、基体上の物質を瞬時に乾燥させなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2009/095591号
【特許文献2】欧州特許出願公開1,479,446号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ガス流体の定常液体マイクロスレッドおよびマイクロサイズ単分散スプレーの生成,Ganan-Calvo,Physical Review Letters 80,285-288,1998
【非特許文献2】毛細管流集束による完全単分散マイクロバブル,Ganan-Calvo等,Physical Review Letters 87,274501,2001
【非特許文献3】液体微粒化の強化:フローフォーカシングからフローブラーリングへ,Ganan-Calvo,Applied Physics Letters 86,214101,2005
【非特許文献4】粘性単相および多相媒体の空気力学的支援ジェット加工,Arumuganathar等,Soft Matter,3:605-612,2007
【非特許文献5】キャピラリーコーンジェット物理学の改訂:エレクトロスプレーとフローフォーカシング,Ganan-Calvo他、Physical Review E 79,066305,2009
【非特許文献6】エレクトロスプレーとフローフォーカシングの組み合わせ,Ganan-Calvo他、J.Fluid Mech.,556,421-445,2006
【非特許文献7】エレクトロ-フローフォーカシング:高伝導性低粘度限界,Ganan-Calvo,Physical Review Letters 98,134503,2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
現在、特に物質が伝導性の比較的高い液剤で提供される場合、沈着の精度および品質を損なうことなく、改善された収量を有する基体上(特にパッチ上、またはパッチを作るための基体上)における物質沈着方法の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の実施形態における第1の目的は、出口部を有する伝導性の噴霧ノズルから距離を置いて基体を設け、物質を含む液体組成物を前記噴霧ノズルに供給し、前記噴霧ノズルの出口部から流出する液体組成物の周囲に圧縮ガスを供給し、前記噴霧ノズルの出口部の下流に電界を供給することによって、前記噴霧ノズルの出口部と前記基体との間の液体組成物から帯電した液滴を生成し、生成された液滴を前記基体上に集めることを含む基体上に物質を沈着させる方法を提供することにある。
【0015】
幾つかの実施形態では、物質は、ペプチドまたはタンパク質、好ましくはアレルゲン、最も好ましくはピーナッツ、ミルク、卵、クルミ、カシューナッツ、ピーカンナッツ、ピスタチオ、およびヘーゼルナッツのアレルゲンから選択されるものである。
【0016】
幾つかの実施形態では、液体組成物は、0.1μS/m~3S/m、好ましくは1mS/m~20mS/mの伝導性を有する。
【0017】
幾つかの実施形態では、液体組成物は、少なくとも1mL/h、好ましくは少なくとも1.5mL/hの流量で噴霧ノズルに供給される。
【0018】
幾つかの実施形態において、液体組成物の周囲の圧縮ガスは、大気圧よりも0.1~2バール、好ましくは0.3~1バール高い圧力である。
【0019】
幾つかの実施形態では、噴霧ノズルはチャンバ内に配置され、圧縮ガスはチャンバに供給され、そして液体組成物と圧縮ガスは、伝導性のエジェクタの吐出口を通じてチャンバから流出する。
【0020】
幾つかの実施形態では、噴霧ノズルの出口部と吐出口との間の第1領域において、第1の大きさをもつ電界が印加され、および/または、吐出口と基体との間の第2領域において、第2の大きさをもつ電界が印加され、第1の大きさは、好ましくは0.1~10MV/m、より好ましくは0.5~5MV/m、および/または、第2の大きさは、好ましくは0.02~1MV/m、より好ましくは0.1~0.5MV/m、および/または、好ましくは、第1の大きさは第2の大きさより大きい。
【0021】
幾つかの実施形態において、本方法は、基体上に液滴を収集した後、いかなる乾燥ステップも含まない。
【0022】
幾つかの実施形態において、本方法は、パッチ、好ましくは治療用パッチを作製するためのものである。
【0023】
本発明の実施形態はまた、吐出口を有する伝導性のエジェクタを含むチャンバと、前記チャンバ内に配置され、出口部を有する伝導性の噴霧ノズルと、基体を前記噴霧ノズルから距離を置いて、前記チャンバの外側に配置するための支持体と、前記噴霧ノズルに被沈着物質を含む液体組成物を供給する液体供給ラインと、前記チャンバに圧縮ガスを供給するガス注入口と、前記チャンバ内および/または該チャンバと前記基体との間に電界を発生させる機器とを備える基体上に物質を沈着させるための設備に関する。
【0024】
幾つかの実施形態では、電界を発生させる機器は、チャンバ内およびチャンバと基体との間の両方に電界を発生させるように構成される。
【0025】
幾つかの実施形態では、噴霧ノズルおよびエジェクタの各々は、高圧電源に接続され、設備は、さらに基体をグランドに接続する接点を有する。
【0026】
幾つかの実施形態において、噴霧ノズルの出口部は、50~500μm、好ましくは100~450μm、より好ましくは150~400μmの内径Dを有する。
【0027】
幾つかの実施形態において、エジェクタの吐出口は、50~800μm、好ましくは100~600μm、より好ましくは150~500μmの内径Dを有する。
【0028】
幾つかの実施形態では、噴霧ノズルの出口部とエジェクタの吐出口との間の距離Hは、50~550μm、好ましくは60~400μm、より好ましくは80~250μmでよい。
【0029】
本発明は、上記で特定された必要性に対処することを可能にする。特に本発明は、物質が比較的高い伝導性をもつ液剤で提供される場合、沈着の精度及び品質を損なうことなく、改善された収量を有する基体上(特にパッチ上、またはパッチの製造のための)に物質を沈着させる方法を提供する。
【0030】
これは、エレクトロ・フローフォーカシング技術を用いて液体組成物の液滴を生成し、それを基体に導くことで実現される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本実施形態に係る方法を実施する設備の一例を模式的に示す図である。
図2図1に示される設備の細部を模式的に示す図である。
【0032】
次に、以下の説明において、本発明を限定することなく、より詳細に説明する。
【0033】
液体組成物
本実施形態に従って沈着(堆積)させる物質は、特に、任意の医薬、化粧品、ワクチン、および/または診断物質であってよい。
【0034】
「物質」とは、一つの分子もしくは超分子集合体、または異なる分子もしくは超分子集合体の混合物を意味する。
【0035】
物質は生物学的性質のものであってよく、特に、オリゴペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質、特に抗原性のオリゴペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質、ホルモン、サイトカイン、免疫グロブリン、アレルゲン、成長因子、栄養因子、保湿化合物またはビタミン、または化学活性成分であってもよいし、それらを含んでいてもよい。好ましい物質は、食物アレルゲンまたはヒトの自己免疫疾患に関与するヒトタンパク質から選択される免疫反応性オリゴペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質のうちの1つ以上からなるものである。最も好ましい物質は、ピーナッツ、牛乳、卵、クルミ、カシューナッツ、ピーカンナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツのアレルゲンから選択された食物アレルゲンである。
【0036】
また、非限定的に、ニコチン、カフェイン、モルヒネ、ヒドロモルフォンHCI、フェンタニル、アポモルフィンHCI、スコポラミン、クロルフェニラミン、イミキモド、ジフェンヒドラマイド、リドカイン、イソトレチノイン、ケトプロフェン、ジクロフェナク、リュープロライド、フィナステリド等を含む1つ以上の薬物又は有効成分であってもよく、または含んでもよい。
【0037】
沈着される物質は、液体組成物で提供される。液体組成物は、水性溶媒および/または有機溶媒からなる。水性溶媒と有機溶媒の混合物も可能である。
【0038】
物質は、好ましくは液体組成物中に溶解される。
【0039】
有機溶媒としては、アルコール類が好ましく、特にエタノールが好ましい。
【0040】
水性溶媒としては、脱イオン水または緩衝水溶液が好ましい。組成物のpHは、例えば、クエン酸、水酸化ナトリウム、トリスおよび/またはヒスチジンを用いて調整してもよい。
【0041】
基体上における液体組成物の蒸発作用を促進するために、また物質が許すならば、水性溶媒に有機溶媒、特にアルコール(例えばエタノール)を添加することが有利である。幾つかの実施形態において、液体組成物は、それにより0.1~20%(総量)、好ましくは0.5~10%(総量)の有機溶媒、好ましくはアルコール、より好ましくはエタノールを含む水性溶液である。タンパク質の種類によっては、かかる有機溶媒と相容れない場合があるため、このような溶媒の使用は任意である。
【0042】
液体組成物は、0.01~20重量%、好ましくは0.05~10重量%、より好ましくは0.1~0.5重量%の総濃度で対象物質を含んでもよい。
【0043】
対象物質を溶液中で安定化させるために、液体組成物は、酸、塩基、塩、および/またはそれら混合物の形態の電解質を含んでもよい。これらの添加物は、あるpHで溶液を緩衝してもよく、その濃度は、溶液が一定のイオン強度を示すようになる。これらの電解質の性質とその濃度によって、溶液は結果として電気伝導率を持つことになる。
【0044】
液体組成物の電気伝導率は、0.1μS/m~3S/m、好ましくは100μS/m~50mS/m、より好ましくは1000μS/m~20mS/mとしてもよい。電気伝導率の可能な範囲の例としては、0.1~0.3μS/m、0.3~1μS/m、1~3μS/m、3~10μS/m、10~30μS/m、30~100μS/m、100~300μS/m、300~1000μS/m、1~3mS/m、3~10mS/m、10~30mS/m、30~100mS/m、100~300mS/m、300~1000mS/m、及び1~3S/mの範囲が挙げられる。
【0045】
電気伝導率は、伝導率プローブにより測定してもよい。
【0046】
液体組成物は、アニオン性、カチオン性、双性イオン性および/または非イオン性であってよい界面活性剤などの1つまたは複数の添加剤を含んでいてもよい。好ましい界面活性剤は、エトキシル化脂肪アルコールのような非イオン性界面活性剤である。
【0047】
液体組成物中の界面活性剤の量は、特に0.01~5重量%、好ましくは0.02~1重量%、より好ましくは0.05~0.5重量%の範囲であってよい。
【0048】
基体およびパッチ
本発明によれば、目的の物質は基体上に沈着される。
【0049】
物質は、一旦基体上に沈着されると(そして任意に乾燥ステップの後)、好ましくはほぼ乾燥した形態であり、より好ましくは微粒子の形態である。
【0050】
基体は、好ましくは、原則的に平面または平坦またはフィルム状であり、二つの面からなることが好ましい。幾つかの実施形態では、基体は、チャンバ、またはリザーバを形成する窪みを含んでいてもよい。
【0051】
基体は、剛性又は半剛性であってもよい。基体は、その上に物質を沈着させる前に、個々のパッチとして形成されてもよい。したがって、基体は、例えば、円形、正方形、長方形または楕円形の形状を有してもよい。
【0052】
他の実施形態では、基体はプレート状、または帯状、例えばロールとして提供される。物質は基体上に沈着され、基体はその後、パッチを提供するために形づくられた断片に切断される。
【0053】
基体は、好ましくは、少なくとも1つの伝導性部分が含まれる。本実施形態において、「伝導」または「伝導性」とは、「電気伝導」または「電気伝導性」を意味する。伝導性部分は、基体の一方の面上にあってもよく、バルクにあってもよい。また、伝導性部分は、基体上または基体中に設けられた伝導層であってもよい。
【0054】
基体は、特に、例えばポリマー(複数でもよい)、ドープされたポリマー(複数でもよい)、伝導性材料でコーティングされたポリマー(複数でもよい)、織物および/または生体材料(複数でもよい)などの異なる生体適合性材料を含むか、またはこれらから構成されていてもよい。
【0055】
基体は、特に、噴霧ノズルに面して配置される少なくとも1つの伝導面を含んでいてもよい。好ましい基体は、このように、少なくとも一つの面を伝導層で覆った絶縁層、例えば絶縁ポリマー(フィルム、繊維など)層を含む、またはそれから構成される。
【0056】
基体に使用される(特に伝導層を供給するための)伝導性材料は、無機性(例えば金属)または有機性(例えば、炭素、グラファイトまたは酸化物(複数でもよい)からなる)であってもよい。金属は、好ましくは、金、銀、白金、チタンまたはアルミニウムである。伝導層(複数でもよい)は、有利には、2~40nm、好ましくは5~20nm、最も好ましくは約10nmの厚さを有する。
【0057】
グラファイトからなる伝導層の場合、基体へのグラファイトの沈着は、事前に行ってもよく、基体に物質を沈着する直前にライン上で行ってもよい。グラファイトの沈着は、中性または帯電したエアロゾルを投射する方法で行われてもよく、グラファイト溶液槽にフィルムを通過させて含浸させる方法で行われてもよい。
【0058】
物質の沈着前に基体上に伝導層を形成することは、金属化または酸化物沈着によっても達成可能である。酸化物は、好ましくは、錫をドープした酸化インジウム(ITO)である。
【0059】
また、沈着-基体界面の密着性を高めるため、あるいは伝導部分そのものを沈着するために、プラズマ処理を行うこともある。
【0060】
したがって、幾つかの実施形態において、本実施形態に係る方法は、例えば、低圧または大気圧でのプラズマ処理および/または金属化および/または酸化物の沈着および/またはグラファイトの沈着によって基体を改質する1つ以上の予備ステップを含んでいる。
【0061】
幾つかの実施形態において基体は、伝導性の金またはチタン層で覆われたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであってもよい。それは、例えばポリエチレン(PE)/エチレン酢酸ビニル(EVA)泡沫のような絶縁性の二重接着クラウンをさらに含んでもよい。
【0062】
基体は、特に、徐々に巻き取られるロール形状のストリップであってもよい。ストリップは、有利には、
-伝導層からなる、または伝導性フィルム(例えば、金でコーティングされたPET)の形をした支持フィルムと、
-伝導性フィルムに付着した、一定間隔の孔を含む発泡フィルムであって、伝導層または発泡フィルムに覆われていない部分の各々が、目的の物質の沈着領域を形成している発泡フィルムと
を備える。
【0063】
好ましくは、支持フィルムは、発泡フィルムよりも幅が広い。好ましくは、発泡体で囲まれた各沈着領域は、支持フィルムの伝導面の全体と電気的に接触している。
【0064】
基体上に物質を沈着させた後、基体または基体から形成されたパッチは、有利には、物質沈着物が外部環境から保護されるようにパッケージされる。したがって、パッチは、その表面に剥離可能なフィルムを備え、物質の沈着物を覆い、任意に、沈着した物質を含んでいない基体の一部も覆うようにしてもよい。
【0065】
本実施形態に係る方法により、任意のタイプのパッチ、すなわち、対象物質と接触させるために対象者の皮膚領域に適用され得る任意のデバイスを作製することが可能となる。これには、受動的、促進的または機械的拡散を備えたパッチ、粘着パッチ、包帯、絆創膏、キュプールおよび経皮性パッチが含まれる。
【0066】
絆創膏は、適切な支持体上に、1つ以上の対象物質および任意に1つ以上の希釈剤、エモリエント剤および接着剤を含む、粘着剤またはコーティングを含む、またはそれらから構成される。粘着剤は、皮膚温度で軟化し、皮膚に付着するようなものであってよい。それらは、任意に切り取られるように、可変サイズのシートとして形成されてもよい。これらは、粘着包帯の上に貼り付けられ、穴あき材料で覆われてもよい。
【0067】
薬用絆創膏は、皮膚の小さな病変部に貼って局所作用させるもので、物質を塗布した絆創膏を貼り付けた粘着性包帯を含むか、またはそれから構成されている。
【0068】
粘着パッチは、物質を含む粘着剤が置かれたプラスチック・ディスクを備えた粘着性包帯を含む、またはそれから構成されていてもよい。粘着剤は、アラビアゴムまたはゼラチンおよび水のような成分をさらに含んでもよい。
【0069】
受動的、促進的または機械的拡散を伴うパッチは、通常、物質が沈着される支持体と、任意に細胞透過処理を促進するためのデバイス(電気パルス、超音波、マイクロニードルなどの適用による)とを含んでいる。
【0070】
好ましくは、パッチはドライパッチであり、より好ましくは閉塞タイプ、さらに好ましくは国際公開第02/071950号の文献に記載されているような静電パッチである。
【0071】
本実施形態に従って製造されたパッチは、特に、医薬、化粧品、ワクチンおよび/または診断的用途に使用してもよい。このパッチは、例えば、沈着物質に対する身体の感受性を検出するために、または身体に沈着物質の治療量を供給するために、皮膚に適用されることを意図することが好ましい。
【0072】
本実施形態に従って製造されたパッチは、動物または人を対象、好ましくは人である対象者に適合させてもよい。
【0073】
包装内のパッチの保存を確実にし、特に沈着物質の有効成分の変質を避け、微生物学的な品質を保持するために、パッチは、例えば、低温殺菌やイオン化などの追加処理が行える。
【0074】
幾つかの実施形態では、パッチの周辺部は、皮膚と接触して、物質を含む密閉された凝縮室を形成するように構成されている。
【0075】
エレクトロ・フローフォーカシングによる物質沈着の一般原則
本実施形態に係る方法は、エレクトロ・フローフォーカシング技術を用いて、液体組成物を基体に噴霧することにより、基体上に物質を沈着させることを含む。
【0076】
図1図2には、エレクトロ-フローフォーカシング沈着を行うことが可能な設備を示している。この設備は、チャンバ3内における伝導性の噴霧ノズル1から構成されている。チャンバ3には、ガス注入口10を介して圧縮ガスが供給される。噴霧ノズル1は、液体供給ライン9に接続されるか、または直接形成される。
【0077】
噴霧ノズル1は、液体組成物が噴霧ノズルから出る出口部2を備えている。チャンバ3は、チャンバ3の底部を構成するプレート状の伝導性のエジェクタ5を備えている。エジェクタ5には、噴霧ノズル1の出口部2に面して吐出口4が設けられている。
【0078】
基体6は、チャンバ3の外側で、吐出口4(および噴霧ノズル1)に対向して配置されている。
【0079】
液体組成物は、噴霧ノズルの出口部2から流出し、好ましくは液体コーン7を形成し、これが液滴に細分化される。液滴の形成は、チャンバ3から吐出口4を通って圧縮ガスが流れることによって、および/またはエレクトロスプレー工程における液滴形成の原因となる静電反発力の作用によって達成される。チャンバ3とチャンバ3の外部環境との間の圧力勾配により、圧縮ガスは、ガスのフローストリームとして、吐出口4を通してチャンバ3から押し出される。ガス流体は液体コーン7を取り囲み、その周囲に空気力学的なシースを形成する(図1の矢印で示されているように)。液体コーン7は、噴霧ノズルの出口部2とエジェクタ上部との間のチャンバ3内、吐出口4の(好ましくは円筒形の)容積の内部で生じ得る複雑な工程で液滴を形成する。
【0080】
さらに、液滴は後述するように電界によって帯電され、静電反発力が生じる。
【0081】
このようにして、液滴のエアロゾル8が、吐出口4と基体6との間に形成される。
【0082】
幾つかの実施形態において、設備は、同じ基体6上または異なるそれぞれの基体6上の複数の沈着領域に液体組成物を同時に噴霧するために、上述のようなチャンバ3を複数備えてもよい。これらのチャンバ3は、例えば、一列又は複数列に整列させてもよい。チャンバ3の数は、例えば、2~10個であってよい。より好ましくは、チャンバ3および特にその噴霧ノズル1は、絶縁支持体に取り付けられる。
【0083】
チャンバ
噴霧ノズルの出口部2は、好ましくは、円形の内面形状を有していてもよい。出口部2に至るノズル内の空洞の内形は、例えば、その長さに沿って同じ内径を有する円筒状であってもよく、空洞の長さに沿って内径が大きくなる円錐状であってもよい。
【0084】
噴霧ノズルの出口部2は、例えば50~500μm、好ましくは100~450μm、より好ましくは150~400μm、最も好ましくは200~300μmでもよい内径Dを有する。なお、噴霧ノズルの出口部2が非円形状を有する場合には、直径とは、液体流の主方向と直交する平面における内部通路の最大寸法を意味する。
【0085】
液体組成物をタンクから噴霧ノズル1に、制御された液体流量で供給するためにポンプ装置を使用してもよい。幾つかの実施形態では、シリンジポンプをポンプ装置として使用してもよい。
【0086】
液体組成物は、例えば、-20℃の冷蔵場所に保管されてもよい。液体組成物は、4~60℃の間の温度、好ましくは常温(すなわち、典型的には20℃~25℃)で噴霧ノズル1まで運ばれてもよい。
【0087】
液体流量は、液滴のサイズを制御し、そして沈着後または沈着中に溶媒の蒸発を許容するために調整されてもよい。
【0088】
噴霧ノズル1(または各噴霧ノズル1)への流量は、例えば、0.01~100mL/h、好ましくは0.1~50mL/h、より好ましくは0.5~20mL/h、さらに好ましくは1~10mL/h、最も好ましくは1.5~8mL/hであってよい。可能な流量の範囲は、0.5~1mL/h、1~1.5mL/h、1.5~2mL/h、2~3mL/h、3~5mL/h、5~10mL/h、10~20mL/h、および20~50mL/hを含む。
【0089】
1つのポンプ装置を複数の噴霧ノズル1に接続することができ、あるいは、異なる個々のポンプ装置を異なるそれぞれの噴霧ノズル1に接続してもよい。
【0090】
エジェクタ5の吐出口4は、好ましくは、円形状を有していてもよい。吐出口4は、50~800μm、好ましくは100~600μm、より好ましくは150~500μm、最も好ましくは200~500μmであってよい内径Dを有している。なお、吐出口4が非円形状を有する場合、直径とは、液体流の主方向に直交する平面における内部通路の最大寸法を意味する。
【0091】
噴霧ノズルの出口部2とエジェクタの吐出口4との間の距離Hは、50~550μm、好ましくは60~400μm、より好ましくは70~250μm、最も好ましくは80~180μmであってよい。この距離は、噴霧ノズル1の底部からエジェクタ5の上面までの距離として測定される。
【0092】
比H/Dは、例えば、0.2~1.5、好ましくは0.3~1.2、より好ましくは0.75~1であってもよい。
【0093】
エジェクタの吐出口4と基体との間の距離hは、10~120mm、好ましくは20~100mm、より好ましくは30~80mmであってもよい。この距離は、エジェクタ5の底面から基体6の上面までの距離として測定される。
【0094】
圧縮ガス
本実施形態に係る方法で使用される圧縮ガスは、例えば、空気、窒素、亜酸化窒素、二酸化炭素、アルゴンなどの不活性ガス、またはこれらの混合物であってもよい。安全上の理由から好ましいガスは、空気または窒素のいずれかである。
【0095】
ガスの供給源は、例えば、ガス注入口10に接続された加圧ガスボトルであってよい。あるいは、ガス注入口10に圧縮ガスを供給するために、ガス圧縮機を使用してもよい。
【0096】
チャンバ3への、およびエジェクタ5を通る圧縮ガスの流れは、圧力または流量によって制御することができる。
【0097】
従って、チャンバ3内の圧力は、例えば、大気圧よりも0.05~5バール、好ましくは0.1~2バール、より好ましくは0.3~1バール高い範囲であってもよい。
【0098】
チャンバ3への(または吐出口4からの)ガス流量は、例えば、0.02~10Ln/min、好ましくは0.05~5Ln/min、より好ましくは0.1~1Ln/minの範囲であってよい。
【0099】
圧縮ガスの噴射の制御は、例えば、圧力および流量の設定値のいずれかを使用して制御できる質量流量制御システムに接続されたレギュレータを使用することで実施してもよい。
【0100】
電界
液体組成物は、チャンバ3内および/またはチャンバ3と基体6との間に発生する電界に晒される。好ましくは、電界は、チャンバ3内およびチャンバ3と基体6との間の両方に発生する。
【0101】
電界は、好ましくは、時間的に一定である。
【0102】
チャンバ3内の第1領域(すなわち、噴霧ノズル1とエジェクタ3との間)で液体組成物が受ける電界の大きさは、チャンバ3の外側の第2領域(すなわち、エジェクタ3と基体6との間)で液体組成物が受ける電界の大きさより大きいことが好ましい。
【0103】
第1領域において液体組成物が受ける電界の大きさは、ほぼ一様であることが好ましい。
【0104】
液体組成物が第2領域で受ける電界の大きさは、ほぼ一様であることが好ましい。
【0105】
液体組成物が第1領域で受ける電界の大きさは、例えば、0.1~10MV/m、好ましくは0.5~5MV/m、より好ましくは1~2.5MV/mであってよい。
【0106】
液体組成物が第2領域で受ける電界の大きさは、例えば、0.02~1MV/m、好ましくは0.1~0.5MV/m、より好ましくは0.1~0.2MV/mであってもよい。
【0107】
第1領域の電界は、液滴の生成に寄与し、また、この領域に形成される任意の液滴が確実に帯電するように寄与される。
【0108】
第2領域の電界は、液滴を基体上または基体上の所望の沈着ゾーンに向け、集中させるのに有用である。
【0109】
第1領域に電界を発生させるために、噴霧ノズル1は伝導性材料、好ましくはステンレス鋼などの金属(または任意の生体適合性伝導性材料)で作られ、エジェクタ5は伝導性材料、好ましくは金属で作られる(一方、チャンバ3の他の壁は好ましくは絶縁される)。
【0110】
噴霧ノズル1は、第1の高圧電源に接続することで分極化してもよく、エジェクタ5も第2の高圧電源に接続することで分極化してもよい。
【0111】
第1の高電圧供給と第2の高電圧供給は、異なるものであってもよく、分圧の設定が施された同一の高電圧供給であってもよい。また、高電圧電源は、直流発電機であってもよい。
【0112】
噴霧ノズル1とエジェクタ5とは、互いに電気的に絶縁されている。従って、それらは各々の電極を形成している。
【0113】
噴霧ノズル1とエジェクタ5の間の電圧差により、第1領域に電界が発生する。距離hに応じて、この電圧差は、例えば、50V~1000V、好ましくは100V~800V、より好ましくは100V~600Vとしてもよい。
【0114】
基体6は、好ましくは、上述したように伝導部分を備えている。そして、この伝導部分を、接地された1つ以上の金属導体に接続することにより、接地されていてもよい。
【0115】
あるいは、基体6は、別の高圧電源に接続(1つまたは複数の金属導体を介して接続)することによって分極化することができる。
【0116】
あるいは、基体6に隣接している、例えば接触している対電極を使用してもよく、この対電極は、高圧電源に接続することによって、接地されるか、または分極化してもよい。例えば、基体6は、それ自体が接地されているか、または高圧電源に接続することによって分極化されている支持体上に配置されてもよい。
【0117】
エジェクタ5と基体6または基体6に隣接する対電極との間の電圧差により、第2領域に電界が発生する。
【0118】
この電圧差は、1~20kV、好ましくは2~15kV、より好ましくは3~10kV、さらに好ましくは4~7kVであってよい。
【0119】
幾つかの実施形態において、シールド電極は、基体6の上面、またはエジェクタ5と基体6との間に配置されてもよい。このシールド電極は、例えばリング状であってもよく、エアロゾル8が基体6に到達できるように1つ以上の開口を備えたプレートであってもよい。このシールド電極は、高圧電源に接続することにより分極化してもよく、グランドに接続してもよい。
【0120】
シールド電極は、伝導部分と絶縁部分とを備えてもよい。また、シールド電極は、組成物の噴霧方向に対して垂直に、好ましくはエジェクタ5から1~50mmの間の距離に配置されてもよい。シールド電極は、シールド電極と帯電した液滴との間に制御された静電反発力を発生させることにより、基体上の物質沈着の直径をよりよく制御することが可能になる。したがって、沈着物の直径は、シールド電極に印加される電位に依存することになる。
【0121】
本実施形態で使用する高圧電源は、例えば、-5~+5mAの直流電流を供給し、-30~+30kVの直流電圧を印加するように適合させてもよい。
【0122】
物質の沈着
本実施形態に従って生成されたエアロゾルは、好ましくは1~50μm、好ましくは2~20μm、より好ましくは5~15μm、最も好ましくは8~12μmの中央値分布径(Dn50)を有する液滴からなる(位相ドップラー流速計PDAによって測定される)。
【0123】
対象物質は、基体6上の少なくとも1つの沈着領域に沈着される。この沈着領域は、好ましくは円盤状である。それは、1~100mm、好ましくは2~50mm、より好ましくは5~45mm、最も好ましくは10~40mmの直径を有してもよい。沈着領域が円盤状でない形状を有する場合、直径は、沈着領域の最大寸法を意味する。
【0124】
また、基体6の沈着領域に電界線を集中させ、沈着領域を区切るために、基体6に絶縁カラー(粘着性絶縁カラー等)を設けてもよい。
【0125】
好ましくは、液体組成物の液滴中に存在する溶媒は、本実施形態に係る方法が実施される場合にほぼ蒸発する。この蒸発は、大体はまたは完全に沈着ステップ自体の間に行ってもよく、その場合、乾燥ステップは不要である。
【0126】
沈着ステップ中の蒸発を促進するために、基体6を加熱してもよい。例えば、基体6は、20~80℃、好ましくは25~70℃、より好ましくは30~60℃、最も好ましくは35~55℃の温度にされてもよい。加熱は、例えば、抵抗器によって電気的に加熱された金属片(例えば、ステンレス鋼またはアルミニウム)などの加熱された支持体上に基体6を配置することで行われてもよい。温度は、例えば、耐熱温度検出器によって調節してもよい。
【0127】
あるいは、沈着ステップの後に乾燥ステップを設けてもよい。乾燥ステップは、対流による加熱、照射による加熱(例えば、紫外線または赤外線による)、凍結乾燥、または乾燥ガスの循環のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0128】
実施例
以下の実施例は、本発明を限定することなく説明するものである。
【0129】
実施例1:パッチへの乳タンパク質300μgの沈着
図1及び図2に示す装置を用いてパッチを製造した。
【0130】
ノズル1の内径Dは300μmであり、エジェクタ5における吐出口4の直径Dは400μmである。ノズルの出口部2とエジェクタの吐出口4との間の距離Hは80μmである。
【0131】
このパッチは、薄い伝導性チタン層(10nm)で覆われたポリエチレン・テレフタレート(PET)フィルムの支持体6と、PET/EVAフォームの二重接着絶縁クラウンとから構成されている。
【0132】
液体はノズル1から出る一方、気体と液体の混合物はエジェクタの吐出口4を通過する。ノズルの出口部2と吐出口4とは共に円形の内面形状を有している。
【0133】
ノズルとエジェクタとの間の容積からなるチャンバ3は、NOまたはNまたはNO/Nの50/50混合ガスによって大気圧よりも0.7バール高い圧力で加圧されており、このガスは0.7Ln/minの流量で吐出口を通って流れる。
【0134】
沈着物形成用の基体は、対電極の役割も果たし、吐出口から45mmの距離hで配置され、そしてグランドに接続されている。
【0135】
ノズル1とエジェクタ5とは電圧源に接続され、ノズル1は6.2kV(電界E1=2.5MV/m)に、エジェクタ5は6kV(電界E2=0.13MV/m)に分極化されており、ノズル・エジェクタ電圧差は200Vである。
【0136】
電気伝導度の高い液剤を3mL/hの流量でノズルに供給した。その液剤は、2.5g/Lの濃度の乳タンパク質と、0.5g/Lの濃度の非イオン界面活性剤としてのBrij O2とを含む水性製剤であり、pH7.2、電気伝導度27000μS/m、表面張力38mN/mである。50℃に設定した基体ヒータを用いて、これらの条件下で150秒間噴霧すると、直径24mmの基体上に乳タンパク質を含む円形の乾燥沈着物が形成された。
【0137】
実施例2:別の幾何学的パラメータのセットを使用したパッチへの300μgの乳タンパク質の沈着
この例では、ノズル1の内径Dは200μmであり、吐出口4の直径Dは200μmである。また、ノズルとエジェクタとの間の距離Hは200μmである。
【0138】
チャンバ3内はNOまたはN、あるいはNO/N混合ガスにより大気圧よりも0.7バール高い圧力で加圧され、このガスはエジェクタ・オリフィスを0.3Ln/minの流量で流れている。
【0139】
対電極(基体)は、吐出口4から70mmの距離hに配置され、グランドに接続されている。
【0140】
ノズルとエジェクタは電圧源に接続され、ノズルは6.4kV(電界E1=2MV/m)に、エジェクタは6kV(E2=0.13MV/m)に分極化されており、ノズル-エジェクタ電圧差は400Vである。液剤は実施例1で使用したものと同じである。液体流量は3mL/hで、噴霧時間は150秒である。
【0141】
これらの条件により、50℃に加熱された基体上に直径24mmで300μgの乳タンパク質を含む円形の乾燥沈着が形成された。
【0142】
上記特許文献1に基づくエレクトロスプレー沈着技術で同じ組成物を使用した場合、スプレーの安定した操作が可能な最大流量は1mL/hであり、スプレー工程は同じ量の活性成分でパッチを作成するために手間取ることを意味し、したがって高電気伝導度の液体での使用におけるエレクトロスプレー沈着技術の限界が実証されたことになった。
【0143】
実施例3:パッチへの250μgのピーナッツタンパク質の沈着
この例では、ノズル1の内径Dは200μmであり、吐出口4の直径Dは200μmである。また、ノズルと吐出口との間の距離Hは200μmである。
【0144】
チャンバ3は、NOまたはNまたはNO/N混合ガスによって大気圧よりも0.7バール高い圧力で加圧され、このガスは0.35Ln/minの流量でエジェクタ・オリフィスを通って流れる。
対電極(基体)は吐出口4から70mmの距離hに配置され、グランドに接続されている。
【0145】
ノズルとエジェクタは電圧源に接続され、ノズルは6.4kV(電界E1=2MV/m)に、エジェクタは6kV(電界E2=0.13MV/m)に分極化されており、ノズル-エジェクタ間の電圧差は400Vである。
【0146】
ノズルには液剤が3mL/hの流量で供給される。液剤は、4g/Lの濃度のピーナッツタンパク質と、1g/Lの濃度の非イオン性界面活性剤としてのBrij O2と、10重量%のエタノールとを含有する。この液剤は、pH7.6、電気伝導度7000μS/m、及び表面張力38mN/mである。50℃に設定した基体ヒータを用い、これらの条件で90秒間噴霧したところ、ピーナッツタンパク質を含む円形の乾燥沈着物が、直径24mmの基体上に形成された。
【0147】
ちなみに、上記特許文献1に基づくエレクトロスプレー沈着技術を使用した場合、可能な最大液体流量は1.6mL/hである。
【0148】
実施例4:パッチへの生理食塩水の沈着
1g/Lの濃度のD-Mannitol(1,2,3,4,5,6-Hexanehexol)を含む生理食塩水(0.9% 塩化ナトリウム)の水性製剤を使用して白色沈殿物を模倣した。電気伝導度は1.2S/mである。ノズル1の内径Dは200μmであり、吐出口4の直径Dは200μmである。ノズルとエジェクタとの間の距離Hは200μmである。
【0149】
チャンバ3内はNOまたはNまたはNO/N混合ガスにより大気圧よりも0.7バール高い圧力で加圧され、このガスはエジェクタ・オリフィスを0.35Ln/minの流量で流れる。
【0150】
対電極(基体)は、吐出口4から70mmの距離hに配置され、グランドに接続されている。
【0151】
ノズルとエジェクタは電圧源に接続され、ノズルは6.4kV(電界E1=2MV/m)に、エジェクタは6kV(E2=0.13MV/m)に分極化されており、ノズル-エジェクタ間の電圧差は400Vである。その場合、液体は乳剤の約100倍以上の伝導性を持ち、基体加熱50℃で直径24mmの乾燥沈着物を得た結果と同じであった。
【0152】
上記特許文献1に基づくエレクトロスプレー沈着技術で同じ組成物を使用すると、放電の存在により工程の安定動作が妨げられ、パッチを生成することは不可能である。
【0153】
以下の表は、様々な実施例で使用した、装置と液体組成物とのパラメータをまとめたものである。
【0154】
【表1】
図1
図2
【国際調査報告】