(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】非ラセミシクロヘキセンを合成する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/293 20060101AFI20220930BHJP
C07C 69/78 20060101ALI20220930BHJP
C07C 69/616 20060101ALI20220930BHJP
C07C 69/753 20060101ALI20220930BHJP
C07C 69/76 20060101ALI20220930BHJP
C07C 69/24 20060101ALI20220930BHJP
C07C 201/12 20060101ALI20220930BHJP
C07C 205/06 20060101ALI20220930BHJP
B01J 31/22 20060101ALI20220930BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220930BHJP
【FI】
C07C67/293
C07C69/78
C07C69/616
C07C69/753 Z
C07C69/76 A
C07C69/24
C07C201/12
C07C205/06
B01J31/22 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022500772
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(85)【翻訳文提出日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 US2020040856
(87)【国際公開番号】W WO2021007141
(87)【国際公開日】2021-01-14
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500586141
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】508032284
【氏名又は名称】カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レイスマン,サラ
(72)【発明者】
【氏名】ロンボラ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ラッド,キャロリン,エル.
(72)【発明者】
【氏名】マクローリン,マーティン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ツント,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ゲッツ,ローランド
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC40A
4G169BC40B
4G169BC42B
4G169BC43B
4G169BC44A
4G169BC44B
4G169BE01A
4G169BE10A
4G169BE10B
4G169BE16A
4G169BE16B
4G169BE22A
4G169BE22B
4G169BE33A
4G169BE33B
4G169BE34A
4G169BE34B
4G169BE36A
4G169BE36B
4G169BE37A
4G169BE37B
4G169BE38A
4G169BE38B
4G169CB38
4G169CB65
4H006AA02
4H006AC28
4H006BA08
4H006BA47
4H006BB11
4H006BB12
4H006BB15
4H006BB21
4H006BB25
4H006BJ20
4H006BJ30
4H006BJ50
4H006BR10
4H039CA40
4H039CH10
(57)【要約】
本発明は、式(I)の非ラセミシクロヘキセン化合物を合成する方法であって、式(II)の化合物と式(III)の化合物(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びYは、明細書で定義されている意味を有する)の、少なくとも1つのm価金属カチオンMm+(式中、金属Mは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム15(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、ガリウム(Ga)及びインジウム(In)から選択され、mは、1、2又は3の整数である)、及び式(IV)(式中、R10a、R10b、R10c、R10d、R10a’、R10b’、R10c’、R10d’、Z及びZ’は、明細書で定義されている意味を有する)のキラル配位子を含む触媒の存在下でのディールス・アルダー反応による、方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(式中、
R
1は、C
1~C
8-アルキル、C
3~C
12-シクロアルキル、非置換又は置換C
6~C
20-アリール及び非置換又は置換C
3~C
20-ヘテロアリールから選択され、
R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8及びR
9は、水素、C
1~C
8-アルキル、C
3~C
6-シクロアルキル、非置換若しくは置換C
6~C
20-アリール及び非置換若しくは置換C
3~C
20-ヘテロアリールからそれぞれ独立して選択され、又はR
5及びR
8は、それらがつながる炭素原子の間において、-O-、-CH
2-及び-CH
2-CH
2-から選択される架橋部分を一緒に形成し、
YはOC(O)R
Aであり、R
Aは、C
1~C
8-アルキル、C
3~C
12-シクロアルキル、非置換又は置換C
6~C
20-アリール、C
6~C
20-アリール-C
1~C
4-アルキル、ジ(C
6~C
20-アリール)-C
1~C
4-アルキル、非置換又は置換C
3~C
20-ヘテロアリール、C
1~C
8-アルコキシ、C
3~C
6-シクロアルキルオキシ、C
6~C
20-アリールオキシ及びNR
BR
B’から選択され、R
B及びR
B’は、水素、C
1~C
8-アルキル及びC
3~C
12-シクロアルキルから独立して選択される)の非ラセミシクロヘキセン化合物を合成する方法であって、
式(II)
【化2】
(式中、R
1、R
2、R
3及びYは、式(I)におけるものと同一の意味を有する)の化合物と、式III
【化3】
(式中、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8及びR
9は、式(I)におけるものと同一の意味を有する)の化合物を、少なくとも1つのm価金属カチオンM
m+(式中、金属Mは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、ガリウム(Ga)及びインジウム(In)から選択され、mは、1、2又は3の整数である)、及び式(IV)
【化4】
(式中、R
10a、R
10b、R
10c、R
10d、R
10a’、R
10b’、R
10c’及びR
10d’は、水素、C
1~C
8-アルキル、C
3~C
6-シクロアルキル、非置換若しくは置換C
6~C
20-アリール、C
6~C
20-アリール-C
1~C
4-アルキル及び非置換若しくは置換C
3~C
20-ヘテロアリールからそれぞれ独立して選択され、又はR
10a、R
10b、R
10c及びR
10dの2つ以上及び/若しくはR
10a’、R
10b’、R
10c’及びR
10d’の2つ以上は、C
3~C
6-シクロアルキル、C
6~C
20-アリール及びC
3~C
20-ヘテロアリールから選択される非置換若しくは置換環を一緒に形成し、
但し、R
10a、R
10b、R
10c及びR
10dの少なくとも1つ、並びにR
10a’、R
10b’、R
10c’及びR
10d’の少なくとも1つが水素ではないことを条件とし、
R
11a、R
11b及びR
11cは、水素、ハロゲン、シアノ、C
1~C
8-アルキル、C
1~C
4-ハロアルキル、C
3~C
6-シクロアルキル、非置換又は置換C
6~C
20-アリール、非置換又は置換C
3~C
20-ヘテロアリール、C
1~C
8-アルコキシ、C
3~C
6-シクロアルキルオキシ、C
6~C
20-アリールオキシ、C(O)-O-C
1~C
6-アルキル及びO-C(O)-C
1~C
6-アルキルからそれぞれ独立して選択され、
Z及びZ’は同一であり、又は異なり、-O-、-O-CH
2-又は
【化5】
から選択され、R
Cは、C
1~C
8-アルキル、C
3~C
8-シクロアルキル、C
1~C
8-ハロアルキル及び非置換又は置換C
6~C
13アリールから選択される)のキラル配位子を含む触媒の存在下で反応させるステップを含む、方法。
【請求項2】
式(I)及び(II)において、R
1が、C
1~C
4-アルキルであり、R
2及びR
3が、いずれも水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(I)及び(II)において、R
1がメチルであり、R
2及びR
3が、いずれも水素である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
式(I)及び(III)において、R
6が、C
1~C
4-アルキルであり、R
4、R
5、R
7、R
8及びR
9が、それぞれ水素である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
式(I)及び(III)において、R
6がメチルであり、R
4、R
5、R
7、R
8及びR
9が、それぞれ水素である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
式(I)及び(II)において、YがOC(O)R
Aであり、R
Aが、C
6~C
20-アリール及びジ(C
6~C
20-アリール)-C
1~C
4-アルキルから選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
式(I)及び(II)において、YがOC(O)R
Aであり、R
Aが、フェニル及びジフェニルメチルから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
金属Mが、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)及びイッテルビウム(Yb)から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
金属Mが、イットリウム(Y)又はイッテルビウム(Yb)である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
金属Mがイットリウム(Y)である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
金属Mがイッテルビウム(Yb)である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
触媒が、少なくとも1つのn価アニオンA
n-(式中、nが、1、2又は3の整数である)をさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
触媒が、式[M
m+]
n[A
n-]
m(V)(式中、M
m+が、m価金属カチオンM
m+であり、mが、1、2又は3の整数であり、金属Mが、請求項1、8及び9のいずれか一項に記載のものと同一の意味を有し、A
n-が、n価アニオンであり、nが、1、2又は3の整数である)の金属塩と、式(IV)のキラル配位子を反応させることにより得られる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
n価アニオンA
n-が、ハロゲン化物、テトラフルオロボレート(BF
4
-)、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート([{3,5-(CF
3)
2C
6H
3}
4B]
-)、ペルクロレート(ClO
4
-)、ヘキサフルオロホスフェート(PF
6
-)、六フッ化アンチモン(SbF
6
-)、ニトレート(NO
3
-)、式R
12SO
3
-(式中、R
12は、C
1~C
4-アルキル、C
1~C
4-ハロアルキル及び非置換又は置換C
6~C
20-アリールから選択される)のスルホネートアニオン、式R
13COO
-(式中、R
13は、水素、C
1~C
8-アルキル、C
3~C
12-シクロアルキル、C
1~C
8-ハロアルキル及び非置換又は置換C
6~C
20-アリールから選択される)のカルボキシレートイオン、スルフェート(SO
4
2-)及び式(R
14SO
2)
2N
-(式中、R
14は、C
1~C
4-アルキル、C
1~C
4-ハロアルキル及び非置換又は置換C
6~C
20-アリールから選択される)のビス(スルホニル)イミドアニオンから独立して選択される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
n価アニオンA
n-が、ハロゲン化物、及び式R
12SO
3
-(式中、R
12が、C
1~C
4-アルキル及びC
1~C
4-ハロアルキルから選択される)のスルホネートアニオンから選択される、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
n価アニオンA
n-が、トリフレート(トリフルオロメタンスルホネート)である、請求項12から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
式(IV)において、R
10a及びR
10a’が、C
1~C
8-アルキル、C
3~C
6-シクロアルキル、非置換又は置換C
6~C
20-アリール及び非置換又は置換C
3~C
20-ヘテロアリールから独立して選択され、R
10b、R
10c、R
10d、R
10b’、R
10c’及びR
10d’が、それぞれ水素である、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
式(IV)において、R
10b及びR
10b’が、C
1~C
8-アルキル、C
3~C
6-シクロアルキル、非置換又は置換C
6~C
20-アリール及び非置換又は置換C
3~C
20-ヘテロアリールから独立して選択され、R
10a、R
10c、R
10d、R
10a’、R
10c’及びR
10d’が、それぞれ水素である、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
式(IV)において、Z及びZ’が同一であり、
【化6】
から選択され、R
10a、R
10b、R
10c、R
10d、R
10a’、R
10b’、R
10c’及びR
10d’が、水素又は非置換若しくは置換C
6~C
20-アリールからそれぞれ独立して選択される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
式(IV)において、Z及びZ’が同一であり、
【化7】
から選択され、R
10a、R
10b、R
10c、R
10d、R
10a’、R
10b’、R
10c’及びR
10d’が、水素又はフェニルからそれぞれ独立して選択される、請求項1から16、及び19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
式(IV)において、Z及びZ’が同一であり、
【化8】
から選択され、R
Cが、非置換又は置換C
6~C
13アリールから選択される、請求項1から16、19及び20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
式(IV)において、R
11a、R
11b及びR
11cが、それぞれ水素である、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
式(IV)において、R
11a及びR
11cが、いずれも水素であり、R
11bがハロゲンである、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
式(IV)において、R
11a及びR
11cが、いずれも水素であり、R
11bが塩素である、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
式(IV)において、R
10a及びR
10a’が、いずれもフェニルであり、R
10b、R
10c、R
10d、R
10b’、R
10c’、R
10d’、R
11a、R
11b及びR
11cが、それぞれ水素である、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
反応が、有機溶媒中で実施される、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
有機溶媒が、炭化水素、エーテル、ニトリル、エステル、ケトン及びそれらの任意の組合せから選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
有機溶媒が、炭化水素から選択される、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
有機溶媒が、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素及びそれらの任意の組合せから選択される炭化水素である、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
有機溶媒が、芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素及びそれらの任意の組合せから選択される炭化水素である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
有機溶媒が、ハロゲン化脂肪族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素及びそれらの任意の組合せから選択される炭化水素である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
反応が、-20℃から50℃の範囲の温度にて実施される、請求項1から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
式(I)の非ラセミシクロヘキセン化合物が、式(VI)
【化9】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8及びR
9は、式(I)におけるものと同一の意味を有する)の非ラセミシクロヘキセノール化合物にさらに変換される、請求項1から32のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)の非ラセミシクロヘキセン化合物を合成する方法であって、式(II)の化合物(本明細書では「ジエノフィル」とも呼ばれる)と、式(III)の化合物(本明細書では「ジエン」とも呼ばれる)の、キラル触媒の存在下でのディールス・アルダー反応による
【0002】
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びYは、以下で指し示されている意味を有する)、方法に関する。
【背景技術】
【0003】
YがO-X(X=例えばアシル)であり、R1が、アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘタリールである式(I)のキラルシクロヘキセン誘導体は、シクロヘキセノール、例えば、リモネン-4-オール(本明細書では「1-イソプロペニル-4-メチル-シクロヘキサ-3-エン-1-オール」又は「p-メンタ-1,8-ジエン-4-オール」とも呼ばれる)の化学合成に有用な中間体である。リモネン-4-オール及び関連したシクロヘキセノールは次に、テルペン化合物の化学合成に中間体として使用される。一部の文脈では、式(I)の非ラセミ化合物を利用することが望ましいが、その理由は、これらにより、非ラセミシクロヘキセノール(例えばリモネン-4-オール)が利用できるようになるためである。
【0004】
Reyesら(Journal of Organic Chemistry、1990年、55、1024~1034頁)は、アキラルなルイス酸触媒(ZnCl2、BF3・Et2O)を使用することによる、キャプトデイティブオレフィン(captodative olefin)1-アセチルビニルアレーンカルボキシレート、CH2=C(COCH3)OCOAr、Ar=C6H4pNO2、α-ナフチル及びβ-ナフチル(ジエノフィル1a~c)と、イソプレン(ジエン2)の位置選択的ディールス・アルダー環化付加について記載しており、パラ付加体が主な異性体である。生じた付加体の混合物の比を判定するために、それらを、混合物のエステル開裂により対応するアルコールに変換すること、及びガスクロマトグラフィー(GLC)により対応するアルコールの比率を計算することが必要であった。ジエノフィル1aの1-置換ジエン、すなわち1-アセトキシブタジエン(3)、1-メトキシブタジエン(4)、及び1-(メトキシカルボニル)-1,3-ブタジエン(6)、並びに1,3-二置換ブタジエン1-メトキシ-3-[(トリメチルシリル)オキシ]ブタジエン)(5)への環化付加は、やはり高度に位置選択的であり、オルト異性体は、観察された付加体のみであったと報告されている。さらに、Reyesらは、1,4-ジアセトキシブタジエン(7)を含むこれらのジエンすべてについて記載しており、エンド立体異性体を高い比率(>80%)で得た。
【0005】
Andradeら(Synthetic Communications、1992年、22、1603~1609頁)は、1-アセチル-4-メチル-3-シクロヘキセン-1-オール(7)を前駆体として使用することによる、ラセミリモネン-4-オール(「p-メンタ-1,8-ジエン-4-オール(1)」とも呼ばれる)の合成について記載している。まず、アキラルなルイス酸で触媒した、3-p-ニトロベンゾイルオキシ-3-ブテン-2-オン(8)とイソプレン(9)の環化付加により、高い位置選択性を有するパラ付加体(10)が得られた。1-アセチル-4-メチル-3-シクロヘキセン-1-オール(7)は、K2CO3及びメタノールを使用したパラ付加体(10)のエステルの開裂により調製し、次いで臭化メチルトリフェニルホスホニウム及びn-ブチルリチウムから生成された試薬でウィッティヒ反応を施して、リモネン-4-オール(1)を得た。
【0006】
Ochoaら(Tetrahedron 55(1999年)14535~14546頁)は、3-p-ニトロベンゾイルオキシ-3-ブテン-2-オンを、置換ジエンとのディールス・アルダー反応でケテン等価物として使用した、γ-ヒドロキシシクロヘキセノンの位置選択的合成について記載している。
【0007】
Aguilarら(Tetrahedron Letters、第28巻、第8号、865~868頁、1987年)は、ルイス酸触媒を使用することによる、「キャプトデイティブ」ジエノフィル1-アセチルビニルアレーンカルボキシレートの、1-及び2-置換ジエンへのディールス・アルダー付加は、高度に位置選択的と見出されたことについて記載している。しかし、Reyesら、Andradeら、Ochoaら及びAguilarらで記載されている方法では、式(I)の非ラセミ化合物の利用が可能にならず、非ラセミシクロヘキセノール、例えば詳細にはリモネン-4-オールの効率的合成を可能にすることもできない。
【0008】
Rickerbyら(Chemistry A European Journal、2007年、13、3354~3368頁)は、錯体[Ru(シクロペンタジエン)(R,R-BIPHOP-F)(アセトン)][SbF6]を触媒として使用することによる、あるジエン(シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン)と、あるα,β-不飽和ケトン(メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ジビニルケトン、α-ブロモビニルメチルケトン及びα-クロロビニルメチルケトン)との間における不斉ディールス・アルダー反応について記載している。環化付加生成物を、収率50~90%及び96%ee(鏡像異性体過剰率)までの鏡像選択性で得た。
【0009】
Evansら(Journal of the American Chemical Society、1999年、121、7582~7594頁)は、ビス(オキサゾリン)銅錯体、詳細には[Cu((S,S)-tert-ブチル-box)](SbF6)2又は[Cu((S,S)-tert-ブチル-box)](OTf)2により触媒される、3-プロペノイル-2-オキサゾリジノン(2)と、一連の置換ジエンの間におけるディールス・アルダー反応について記載しており、60~95%収率及び60~97%eeで環化付加生成物が得られた。
【0010】
しかし、RickerbyらもEvansらも、YがO-X(X=例えばアシル)である式Iの非ラセミ化合物の合成を取り上げていない。さらに、YがH又はハロゲンである、報告されている式Iの非ラセミ化合物の、Y=O-X(X=例えばアシル)又はY=O-Hへの変換は、容易に達成可能と予想されない。したがって、これらの方法では、いずれも非ラセミシクロヘキセノールの合成が可能にならない。
【0011】
Ishihara及びNakano(Journal of the American Chemical Society、2005年、127、10504~10505頁)は、キラルアミン触媒を使用することによる、環状及び非環状ジエン、例えばシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、5-(ベンジルオキシメチル)シクロペンタジエン(BMCP)、2,3-ジメチルブタジエン及びイソプレンと、α-置換アクロレインの鏡像選択的ディールス・アルダー反応について記載している。しかし、この方法は、R1がHである、すなわち、ジエノフィルがアルデヒド官能基を含有する式(I)の化合物の合成にしか適用されない。R1がHである鏡像富化された式(I)の化合物は、例えばグリニャール付加、続いて酸化を伴う手間のかかる複数ステップの手順を経由して、R1がHとは異なる、例えばアルキル、シクロアルキル、アリール又はヘタリールである鏡像富化された式(I)の化合物にしか変換され得ない。したがって、この方法では、非ラセミシクロヘキセノール、例えば詳細にはリモネン-4-オールの実用的な一般的合成が可能にならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的の1つは、式(II)及び(III)の対応する化合物から開始して、非ラセミシクロヘキセノール、例えば詳細にはリモネン-4-オールに容易に変換できる、式(I)(式中、YはO-X(X=例えばアシル)であり、R1は、アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘタリールである)の非ラセミシクロヘキセン化合物を合成するための効率的方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、式(II)及び(III)の対応する化合物から開始して、式(I)(式中、YはO-X(X=例えばアシル)であり、R1は、アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘタリールである)の非ラセミシクロヘキセン化合物を合成する方法であって、安全、簡潔、経済的且つ商業的に実現可能な方法を提供することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、式(II)及び(III)の対応する化合物から開始して、鏡像異性体過剰率が高く、収率が損なわれない式(I)(式中、YはO-X(X=例えばアシル)であり、R1は、アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘタリールである)の非ラセミシクロヘキセン化合物を合成する方法を提供することである。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、式(II)及び(III)の対応する化合物から開始して、鏡像異性体過剰率が少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%の式(I)(式中、YはO-X(X=例えばアシル)であり、R1は、アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘタリールである)の非ラセミシクロヘキセン化合物を合成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これらの目的は、式(I)
【0017】
【化2】
(式中、
R
1は、C
1~C
8-アルキル、C
3~C
12-シクロアルキル、非置換又は置換C
6~C
20-アリール及び非置換又は置換C
3~C
20-ヘテロアリールから選択され、
R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8及びR
9は、水素、C
1~C
8-アルキル、C
3~C
6-シクロアルキル、非置換若しくは置換C
6~C
20-アリール及び非置換若しくは置換C
3~C
20-ヘテロアリールからそれぞれ独立して選択され、又はR
5及びR
8は、それらがつながる炭素原子の間において、-O-、-CH
2-及び-CH
2-CH
2-から選択される架橋部分を一緒に形成し、
YはOC(O)R
Aであり、R
Aは、C
1~C
8-アルキル、C
3~C
12-シクロアルキル、非置換又は置換C
6~C
20-アリール、C
6~C
20-アリール-C
1~C
4-アルキル、ジ(C
6~C
20-アリール)-C
1~C
4-アルキル、非置換又は置換C
3~C
20-ヘテロアリール、C
1~C
8-アルコキシ、C
3~C
6-シクロアルキルオキシ、C
6~C
20-アリールオキシ及びNR
BR
B’から選択され、R
B及びR
B’は、水素、C
1~C
8-アルキル及びC
3~C
12-シクロアルキルから独立して選択される)の非ラセミシクロヘキセン化合物を合成する方法であって、式(II)
【0018】
【化3】
(式中、R
1、R
2、R
3及びYは、式(I)におけるものと同一の意味を有する)の化合物と、式III
【0019】
【化4】
(式中、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8及びR
9は、式(I)におけるものと同一の意味を有する)の化合物を、少なくとも1つのm価金属カチオンM
m+(式中、金属Mは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、ガリウム(Ga)及びインジウム(In)から選択され、mは、1、2又は3の整数である)、及び式(IV)
【0020】
【化5】
(式中、R
10a、R
10b、R
10c、R
10d、R
10a’、R
10b’、R
10c’及びR
10d’は、水素、C
1~C
8-アルキル、C
3~C
6-シクロアルキル、非置換若しくは置換C
6~C
20-アリール、C
6~C
20-アリール-C
1~C
4-アルキル及び非置換若しくは置換C
3~C
20-ヘテロアリールからそれぞれ独立して選択され、又は、R
10a、R
10b、R
10c及びR
10dの2つ以上及び/若しくはR
10a’、R
10b’、R
10c’及びR
10d’の2つ以上は、C
3~C
6-シクロアルキル、C
6~C
20-アリール及びC
3~C
20-ヘテロアリールから選択される非置換若しくは置換環を一緒に形成し、
但し、R
10a、R
10b、R
10c及びR
10dの少なくとも1つ、並びにR
10a’、R
10b’、R
10c’及びR
10d’の少なくとも1つが水素ではないことを条件とし、
R
11a、R
11b及びR
11cは、水素、ハロゲン、シアノ、C
1~C
8-アルキル、C
1~C
4-ハロアルキル、C
3~C
6-シクロアルキル、非置換又は置換C
6~C
20-アリール、非置換又は置換C
3~C
20-ヘテロアリール、C
1~C
8-アルコキシ、C
3~C
6-シクロアルキルオキシ、C
6~C
20-アリールオキシ、C(O)-O-C
1~C
6-アルキル及びO-C(O)-C
1~C
6-アルキルからそれぞれ独立して選択され、
Z及びZ’は同一であり、又は異なり、-O-、-O-CH
2-又は
【0021】
【化6】
から選択され、R
Cは、C
1~C
8-アルキル、C
3~C
8-シクロアルキル、C
1~C
8-ハロアルキル及び非置換又は置換C
6~C
13アリールから選択される)のキラル配位子を含む触媒の存在下で反応させるステップを含む、方法により、部分的に、又は全体的に達成される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
式(I)の望ましい非ラセミシクロヘキセン化合物は、特定のキラル触媒の存在下で、対応するジエノフィル(II)とジエン(III)との間におけるディールス・アルダー環化付加により有利に調製できることを意外にも見出した。本発明の方法は、式(I)の望ましい非ラセミシクロヘキセン化合物が、高い鏡像異性体過剰率で、収率を損なわずに得られるという利点も有する。環化付加反応は、安全且つ安価な出発材料、及び低い反応温度の使用を伴い、これにより、本発明の方法が商業的に実現可能になる。さらに、本発明の方法により調製される非ラセミシクロヘキセン化合物(I)は、非ラセミシクロヘキセノール、例えば詳細にはリモネン-4-オールに容易に変換され得る。
【0023】
本発明のさらなる実施形態は、特許請求の範囲、明細書及び実施例から明白になる。本発明の主題の上述、また、以下でさらに例証される特徴は、本発明の範囲から逸脱せずに、詳細な各ケースにおいて示されている組合せだけでなく、他の組合せでも適用され得ることは理解されるべきである。
【0024】
式(I)の非ラセミシクロヘキセン化合物は、式(I)の鏡像異性的に富化された化合物とも呼ばれる。本発明の目的に関して、この用語は等価であり、2つの鏡像異性体の比は、少なくとも1.5:1、好ましくは3:1、より好ましくは4:1、とりわけ好ましくは10:1、最も好ましくは少なくとも20:1であることを意味する。
【0025】
好ましくは、式(I)の非ラセミシクロヘキセン化合物は、S-異性体、例えば鏡像異性体過剰率(ee)が好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、詳細には少なくとも95%、例えば少なくとも97%のS-異性体である。
【0026】
別の好ましい実施形態では、式(I)の非ラセミシクロヘキセン化合物は、R-異性体、例えば鏡像異性体過剰率(ee)が好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、詳細には少なくとも95%、例えば少なくとも97%のR-異性体である。
【0027】
略語「ee」は、鏡像異性体過剰率を記載するために、本明細書で使用される。「鏡像異性体過剰率」という用語は、式(I)のシクロヘキセン化合物の非ラセミ混合物における相対量の鏡像異性体を記載するために、本明細書で使用される。式(I)の非ラセミシクロヘキセン化合物の鏡像異性体過剰率(ee)は、通例の方法によって、例えば旋光を判定することによって、又は、例としてキラルカラムを使用した超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)若しくはガスクロマトグラフィー(GC)による、キラル相でのクロマトグラフィーによって、判定できる。
【0028】
本明細書で使用されている「ハロゲン」という用語は、各ケースにおいて、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素、好ましくはフッ素又は塩素を表す。
【0029】
本明細書で使用されている「ハロゲン化物」という用語は、各ケースにおいて、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン又はヨウ化物イオン、好ましくはフッ化物イオン又は塩化物イオンを表す。
【0030】
本明細書で使用されている置換基の定義で述べられている有機部分、すなわちR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10a、R10b、R10c、R10d、R10a’、R10b’、R10c’、R10d’、R11a、R11b、R11c、R12、R13、R14、RA、RB、RB’、RC、RD、RD’、RE及びRE’は、ハロゲン又はハロゲン化物という用語のように、個別の基のメンバーの個別の列挙に対する集合語である。すべての炭化水素鎖、すなわちすべてのアルキルは、直鎖又は分岐であってよく、接頭辞Cn~Cmは、各ケースにおいて、基において考えられる炭素原子数を表す。
【0031】
本明細書で使用されている「アルキル」という用語は、分岐又は非分岐飽和炭化水素基、例えば、C1~C4-アルキル(C6~C20-アリール-C1~C4-アルキル及びジ(C6~C20-アリール)-C1~C4-アルキルのC1~C4-アルキル部分を含む)又はC1~C6-アルキル(C(O)-O-C1~C6-アルキル及びO-C(O)-C1~C6-アルキルのC1~C6-アルキル部分を含む)、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル(-CH(CH3)2)、n-ブチル、sec-ブチル(-CH(CH3)-C2H5)、イソブチル(-CH2-CH(CH3)2)、tert-ブチル(-C(CH3)3)、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、n-ヘプチル、n-オクチル又は2-エチルヘキシルを指す。
【0032】
本明細書で使用されている「シクロアルキル」という用語は、単環式又は多環式飽和炭化水素基、例えばC3~C6-シクロアルキル(C3~C6-シクロアルキルオキシのC3~C6-シクロアルキル部分を含む)、C3~C8-シクロアルキル又はC3~C12-シクロアルキルを指す。単環式シクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル及びシクロドデシルを含む。多環式シクロアルキル基は、縮合シクロアルキル基、又はスピロシクロアルキル基であり得る。多環式シクロアルキルの例は、アダマンチル(1-アダマンチル及び2-アダマンチルの両方を含む)、ノルボルニル(1-ノルボルニル、2-ノルボルニル及び7-ノルボルニルを含む)及びデカリニル(1-デカリニル、2-デカリニル及び3-デカリニルを含む)を含む。
【0033】
本明細書で使用されている「ハロアルキル」という用語は、直鎖又は分岐アルキル基であって、これらの基における水素原子の一部又はすべてが、上述のハロゲン原子により置き換えられていてよいもの、例えばC1~C4-ハロアルキル又はC1~C8-ハロアルキル、例としてクロロメチル、ブロモメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロフルオロメチル、ジクロロフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、1-クロロエチル、1-ブロモエチル、1-フルオロエチル、2-フルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-クロロ-2-フルオロエチル、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル、2,2-ジクロロ-2-フルオロエチル、2,2,2-トリクロロエチル及びペンタフルオロエチルを指す。
【0034】
本明細書で使用されている「アルコキシ」という用語は、アルキル基における任意の結合で、酸素連結を介して結合した直鎖又は分岐アルキル基、例えばC1~C8-アルコキシを指す。例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ又はイソブトキシを含む。
【0035】
本明細書で使用されている「アリール」という用語は、少なくとも1つの芳香族環(例えば、フェニル又はビフェニル)又は少なくとも1つの環が芳香族である複数の縮合環を有する芳香族炭素環式基(例えば、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、ナフチル、アントリル又はフェナントリルを)指し、そのそれぞれは、非置換であっても置換されていてもよく、例えば非置換若しくは置換C6~C13アリール又は非置換若しくは置換C6~C20-アリール(C6~C20-アリール-C1~C4-アルキル、ジ(C6~C20-アリール)-C1~C4-アルキル又はC6~C20-アリールオキシのC6~C20-アリール部分を含む)であり得る。
【0036】
本明細書で使用されている「ヘテロアリール」という用語は、典型的には、1個以上のヘテロ原子を含む環部分において5から10個の原子を含有する単環式又は二環式ヘテロ芳香族環)を指し、そのそれぞれは、非置換であっても置換されていてもよく、例えば本明細書で非置換又は置換C3~C20-ヘテロアリールと特定されている基であり得る。ヘテロアリール基は、N、O、S、S(O)及びS(O)2から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有する。これは、例えば、1、2、3又は4個、例えば1又は2個のヘテロ原子を含有し得る。ヘテロアリール基の例は、インドリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、フラニル、チエニル、ピラゾリジニル、ピロリル、テトラゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、キノリル及びイソキノリルを含む。
【0037】
出発材料として使用される、式(II)の化合物、すなわちジエノフィル、及び式(III)の化合物、すなわちジエンは、市販されている、又は公知の方法に従って調製できる。例えば、ジエノフィル(II)は、J. Tamariz、P. Vogel、P. Helv. Chim. Acta 1981年、64、2928~2930頁に記載されている手順により調製され得る。ジエン(III)を合成する方法は、例えばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第20巻、H. M. Weitz、P. E. Loser、「Isoprene」、Wiley、2012年、83頁で記載されている。
【0038】
本発明による方法の利点は、式(I)、(II)及び(III)の化合物において、置換基がそれぞれ独立して、以下のように、より好ましくは組み合わせて、定義される場合、特に明らかになる:
R1は、C1~C4-アルキル、詳細にはメチルであり、
R2は水素であり、
R3は水素であり、
R4は水素であり、
R5は水素であり、
R6は、水素又はC1~C4-アルキル、より好ましくはC1~C4-アルキル、詳細にはメチルであり、
R7は、C1~C4-アルキル又は水素、より好ましくはメチル又は水素、詳細には水素であり、
R8は水素であり、
R9は水素であり、又は
R5及びR8は、それらがつながる炭素原子の間において、架橋部分-CH2-CH2-を一緒に形成し、
YはOC(O)RAであり、RAは、C1~C8-アルキル、C3~C12-シクロアルキル、非置換又は置換C6~C20-アリール及びジ(C6~C20-アリール)-C1~C4-アルキルから、より好ましくはC1~C8-アルキル、C3~C12-シクロアルキル、C6~C20-アリール及びジ(C6~C20-アリール)-C1~C4-アルキルから、より一層好ましくはC6~C20-アリール及びジ(C6~C20-アリール)-C1~C4-アルキルから、詳細にはフェニル及びジフェニルメチルから選択される。
【0039】
特に好ましい実施形態は、式I
(式中、
R1及びR6は、いずれもC1~C4-アルキルであり、
R2、R3、R4、R5、R7、R8及びR9はそれぞれ水素であり、
YはOC(O)RAであり、RAは、C6~C20-アリール及びジ(C6~C20-アリール)-C1~C4-アルキルから選択される)の非ラセミシクロヘキセン化合物を合成する方法に関する。
【0040】
とりわけ好ましい実施形態は、式I
(式中、
R1及びR6は、いずれもメチルであり、
R2、R3、R4、R5、R7、R8及びR9はそれぞれ水素であり、
YはOC(O)RAであり、RAは、フェニル又はジフェニルメチルである)の非ラセミシクロヘキセン化合物を合成する方法に関する。
【0041】
そのような化合物は、以下で示されている式(I-1)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエート、及び式(I-2)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテート
【0042】
【0043】
別の特に好ましい実施形態は、式I
(式中、
R1及びR6は、いずれもC1~C4-アルキルであり、
R2、R3、R4、R5、R7、R8及びR9はそれぞれ水素であり、
YはOC(O)RAであり、RAは、C1~C8-アルキル及びC3~C12-シクロアルキルから選択される)の非ラセミシクロヘキセン化合物を合成する方法に関する。
【0044】
とりわけ好ましい実施形態は、式I
(式中、
R1及びR6は、いずれもメチルであり、
R2、R3、R4、R5、R7、R8及びR9はそれぞれ水素であり、
YはOC(O)RAであり、RAは、1-アダマンチル、メチル又はtert-ブチルである)の非ラセミシクロヘキセン化合物を合成する方法に関する。
【0045】
そのような化合物は、以下で示されている式(I-3)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルアダマンタン-2-カルボキシレート、式(I-4)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルアセテート、及び式(I-5)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルトリメチルアセテート
【0046】
【0047】
別の特に好ましい実施形態は、式I
(式中、
R1、R6及びR7は、それぞれC1~C4-アルキルであり、
R2、R3、R4、R5、R8及びR9はそれぞれ水素であり、
YはOC(O)RAであり、RAは、C6~C20-アリール及びジ(C6~C20-アリール)-C1~C4-アルキルから選択される)の非ラセミシクロヘキセン化合物を合成する方法に関する。
【0048】
とりわけ好ましい実施形態は、式I
(式中、
R1、R6及びR7は、それぞれメチルであり、
R2、R3、R4、R5、R8及びR9はそれぞれ水素であり、
YはOC(O)RAであり、RAは、フェニル又はジフェニルメチルである)の非ラセミシクロヘキセン化合物を合成する方法に関する。
【0049】
そのような化合物は、以下に示されている式(I-6)の1-アセチル-3,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエート、及び式(I-7)の1-アセチル-3,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテート
【0050】
【0051】
別の特に好ましい実施形態は、式I
(式中、
R1は、C1~C4-アルキルであり、
R2、R3、R4、R6、R7及びR9はそれぞれ水素であり、
R5及びR8は、それらがつながる炭素原子の間において、架橋部分-CH2-CH2-を一緒に形成し、
YはOC(O)RAであり、RAは、C6~C20-アリール、ジ(C6~C20-アリール)-C1~C4-アルキル及びC3~C12-シクロアルキルから選択される)の非ラセミシクロヘキセン化合物を合成する方法に関する。
【0052】
とりわけ好ましい実施形態は、式I
(式中、
R1はメチルであり、
R2、R3、R4、R6、R7及びR9はそれぞれ水素であり、
R5及びR8は、それらがつながる炭素原子の間において、架橋部分-CH2-CH2-を一緒に形成し
YはOC(O)RAであり、RAは、フェニル、ジフェニルメチル又は1-アダマンチルである)の非ラセミシクロヘキセン化合物を合成する方法に関する。
【0053】
そのような化合物は、以下に示されている式(I-8)の2-アセチルビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2-イルベンゾエート、式(I-9)の2-アセチルビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2-イル2,2-ジフェニルアセテート、及び式(I-10)の2-アセチルビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2-イルアダマンタン-2-カルボキシレート
【0054】
【0055】
別の特に好ましい実施形態は、式I
(式中、
R1、R6及びR7は、それぞれC1~C4-アルキルであり、
R2、R3、R4、R5、R8及びR9はそれぞれ水素であり、
YはOC(O)RAであり、RAは、C6~C20-アリール、好ましくはC10~C14-アリールから選択される)の非ラセミシクロヘキセン化合物を合成する方法に関する。
【0056】
とりわけ好ましい実施形態は、式I
(式中、
R1、R6及びR7は、それぞれメチルであり、
R2、R3、R4、R5、R8及びR9はそれぞれ水素であり、
YはOC(O)RAであり、RAは、1-ナフチル又は2-ナフチルである)の非ラセミシクロヘキセン化合物を合成する方法に関する。
【0057】
そのような化合物は、以下に示されている式(I-11)の1-アセチル-3,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル1-ナフトエート、及び式(I-12)の1-アセチル-3,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2-ナフトエート
【0058】
【0059】
別の特に好ましい実施形態は、式I
(式中、
R1及びR6は、いずれもC1~C4-アルキルであり、
R2、R3、R4、R5、R7、R8及びR9はそれぞれ水素であり、
YはOC(O)RAであり、RAは、C6~C20-アリール、好ましくはC10~C14-アリールから選択される)の非ラセミシクロヘキセン化合物を合成する方法に関する。
【0060】
とりわけ好ましい実施形態は、式I
(式中、
R1及びR6は、いずれもメチルであり、
R2、R3、R4、R5、R7、R8及びR9はそれぞれ水素であり、
YはOC(O)RAであり、RAは、1-ナフチル又は2-ナフチルである)の非ラセミシクロヘキセン化合物を合成する方法に関する。
【0061】
そのような化合物は、以下に示されている式(I-13)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル1-ナフトエート、及び式(I-14)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2-ナフトエート
【0062】
【0063】
別の特に好ましい実施形態は、式I
(式中、
R1及びR6は、いずれもC1~C4-アルキルであり、
R2、R3、R4、R5、R7、R8及びR9はそれぞれ水素であり、
YはOC(O)RAであり、RAは、置換C6~C20-アリール、好ましくは置換C6~C10-アリールから選択される)の非ラセミシクロヘキセン化合物を合成する方法に関する。
【0064】
とりわけ好ましい実施形態は、式I
(式中、
R1及びR6は、いずれもメチルであり、
R2、R3、R4、R5、R7、R8及びR9はそれぞれ水素であり、
YはOC(O)RAであり、RAは、2-ブロモフェニル、4-tert-ブチルフェニル又は4-ニトロフェニルである)の非ラセミシクロヘキセン化合物を合成する方法に関する。
【0065】
そのような化合物は、以下に示されている式(I-15)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2-ブロモベンゾエート、式(I-16)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル4-(tert-ブチル)ベンゾエート、及び式(I-17)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル4-ニトロベンゾエート
【0066】
【0067】
式(I)及び(II)の化合物の別の特に好ましい実施形態では、R1は、C1~C4-アルキルであり、R2及びR3は、いずれも水素である。
【0068】
式(I)及び(II)の化合物のさらに別の特に好ましい実施形態では、R1はメチルであり、R2及びR3は、いずれも水素である。
【0069】
式(I)及び(III)の化合物のさらに別の特に好ましい実施形態では、R6は、C1~C4-アルキルであり、R4、R5、R7、R8及びR9は、それぞれ水素である。
【0070】
式(I)及び(III)の化合物のさらに別の特に好ましい実施形態では、R6はメチルであり、R4、R5、R7、R8及びR9は、それぞれ水素である。
【0071】
式(I)及び(II)の化合物のさらに別の特に好ましい実施形態では、YはOC(O)RAであり、RAは、C1~C8-アルキル、C3~C12-シクロアルキル、非置換又は置換C6~C20-アリール及びジ(C6~C20-アリール)-C1~C4-アルキルから、より好ましくはC1~C8-アルキル、C3~C12-シクロアルキル、C6~C20-アリール及びジ(C6~C20-アリール)-C1~C4-アルキルから、より一層好ましくはC3~C12-シクロアルキル、C6~C20-アリール及びジ(C6~C20-アリール)-C1~C4-アルキルから、詳細にはC6~C20-アリール及びジ(C6~C20-アリール)-C1~C4-アルキルから選択される。
【0072】
式(I)及び(II)の化合物のさらに別の特に好ましい実施形態では、YはOC(O)RAであり、RAは、フェニル、ジフェニルメチル、1-アダマンチル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-ブロモフェニル、4-tert-ブチルフェニル、4-ニトロフェニル、メチル及びtert-ブチルから選択され、より好ましくはフェニル、ジフェニルメチル、1-アダマンチル、メチル及びtert-ブチルから選択され、より一層好ましくはフェニル、ジフェニルメチル及び1-アダマンチルから選択され、詳細にはフェニル及びジフェニルメチルから選択される。
【0073】
別の特に好ましい実施形態は、式I
(式中、
R1は、C1~C4-アルキルであり
R6及びR7は、水素若しくはC1~C4-アルキルであり、
R2、R3、R4、R5、R8及びR9はそれぞれ水素であり、又は
R2、R3、R4及びR9は、それぞれ水素であり、R5及びR8は、それらがつながる炭素原子の間において、架橋部分-CH2-CH2-を一緒に形成し、
YはOC(O)RAであり、RAは、C1~C8-アルキル、C3~C12-シクロアルキル、非置換又は置換C6~C20-アリール及びジ(C6~C20-アリール)-C1~C4-アルキルから選択される)の非ラセミシクロヘキセン化合物を合成する方法に関する。
【0074】
とりわけ好ましい実施形態は、式I
(式中、
R1はメチルであり、
R6及びR7は、水素若しくはメチルであり、
R2、R3、R4、R5、R8及びR9はそれぞれ水素であり、又は
R2、R3、R4及びR9は、それぞれ水素であり、R5及びR8は、それらがつながる炭素原子の間において、架橋部分-CH2-CH2-を一緒に形成し、
YはOC(O)RAであり、RAは、フェニル、ジフェニルメチル、1-アダマンチル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-ブロモフェニル、4-tert-ブチルフェニル、4-ニトロフェニル、メチル及びtert-ブチルから選択される)の非ラセミシクロヘキセン化合物を合成する方法に関する。
【0075】
別の好ましい実施形態では、式(I)の非ラセミシクロヘキセン化合物は、式((S)-I-1)
【0076】
【化14】
の(S)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエート、
式((S)-I-2)
【0077】
【化15】
の(S)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテート、
式((S)-I-3)
【0078】
【化16】
の(S)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルアダマンタン-2-カルボキシレート、
式((S)-I-4)
【0079】
【化17】
の(S)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルアセテート、及び
式((S)-I-5)
【0080】
【化18】
の(S)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルトリメチルアセテートから選択される。
【0081】
別の実施形態では、式(I)の非ラセミシクロヘキセン化合物は、式((S)-I-1)の(S)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエート、式((S)-I-2)の(S)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテート、式((S)-I-3)の(S)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルアダマンタン-2-カルボキシレート、式((S)-I-4)の(S)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルアセテート、及び式((S)-I-5)の(S)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルトリメチルアセテートから選択され、各ケースにおいて、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、詳細には少なくとも95%、例えば少なくとも97%の鏡像異性体過剰率(ee)を有する。
【0082】
さらに別の好ましい実施形態では、式(I)の非ラセミシクロヘキセン化合物は、式((R)-I-1)
【0083】
【化19】
の(R)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエート、
式((R)-I-2)
【0084】
【化20】
の(R)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテート、
式((R)-I-3)
【0085】
【化21】
の(R)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルアダマンタン-2-カルボキシレート、
式((R)-I-4)
【0086】
【化22】
の(R)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルアセテート、及び
式((R)-I-5)
【0087】
【化23】
の(R)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルトリメチルアセテートから選択される。
【0088】
別の実施形態では、式(I)の非ラセミシクロヘキセン化合物は、式((R)-I-1)の(R)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエート、式((R)-I-2)の(R)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテート、式((R)-I-3)の(R)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルアダマンタン-2-カルボキシレート、式((R)-I-4)の(R)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルアセテート、及び式((R)-I-5)の(R)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルトリメチルアセテートから選択され、各ケースにおいて、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、詳細には少なくとも95%、例えば少なくとも97%の鏡像異性体過剰率(ee)を有する。
【0089】
好ましい実施形態では、式(II)の化合物における置換基R1、R2、R3及びYは、以下の意味を有する:
R1はメチルであり、
R2及びR3は、いずれも水素であり、
YはOC(O)RAであり、RAは、フェニル、ジフェニルメチル、1-アダマンチル、メチル及びtert-ブチルから選択される。
【0090】
とりわけ好ましい実施形態では、式(II)の化合物における置換基R1、R2、R3及びYは、以下の意味を有する:
R1はメチルであり、
R2及びR3は、いずれも水素であり、
YはOC(O)RAであり、RAは、フェニル、ジフェニルメチル及び1-アダマンチルから選択される。
【0091】
そのような化合物は、式(II-1)の3-オキソブタ-1-エン-2-イルベンゾエート、式(II-2)の3-オキソブタ-1-エン-2-イル2,2-ジフェニルアセテート、及び式(II-3)のオキソブタ-1-エン-2-イルアダマンタン-2-カルボキシレート
【0092】
【0093】
別のとりわけ好ましい実施形態では、式(II)の化合物における置換基R1、R2、R3及びYは、以下の意味を有する:
R1はメチルであり、
R2及びR3は、いずれも水素であり、
YはOC(O)RAであり、RAは、1-ナフチル、2-ナフチル、tert-ブチル、2-ブロモフェニル、4-tert-ブチルフェニル及び4-ニトロフェニルから選択される。
【0094】
そのような化合物は、式(II-4)の3-オキソブタ-1-エン-2-イル1-ナフトエート、式(II-5)の3-オキソブタ-1-エン-2-イル2-ナフトエート、式(II-6)の(1-メチレン-2-オキソ-プロピル)2,2-ジフェニルアセテート、式(II-7)の(1-メチレン-2-オキソ-プロピル)2-ブロモベンゾエート、式(II-8)の(1-メチレン-2-オキソ-プロピル)4-tert-ブチルベンゾエート、及び式(II-9)の3-オキソブタ-1-エン-2-イル4-ニトロベンゾエート
【0095】
【0096】
別のとりわけ好ましい実施形態では、式(II)の化合物における置換基R1、R2、R3及びYは、以下の意味を有する:
R1は、C1~C4-アルキルであり、
R2及びR3は、いずれも水素であり、
YはOC(O)RAであり、RAは、C1~C8-アルキル、C3~C12-シクロアルキル、非置換又は置換C6~C20-アリール及びジ(C6~C20-アリール)-C1~C4-アルキルから選択される。
【0097】
別のとりわけ好ましい実施形態では、式(II)の化合物における置換基R1、R2、R3及びYは、以下の意味を有する:
R1はメチルであり、
R2及びR3は、いずれも水素であり、
YはOC(O)RAであり、RAは、フェニル、ジフェニルメチル、1-アダマンチル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-ブロモフェニル、4-tert-ブチルフェニル、4-ニトロフェニル、メチル及びtert-ブチルから選択される。
【0098】
特に好ましい実施形態では、式(III)の化合物における置換基R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、以下の意味を有する:
R4、R5、R8及びR9はそれぞれ水素であり、
R6は、水素若しくはメチルであり、
R7は、水素若しくはメチルであり、又は
R5及びR8は、それらがつながる炭素原子の間において、架橋部分-CH2-CH2-を一緒に形成する。
【0099】
とりわけ好ましい実施形態では、式(III)の化合物における置換基R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、以下の意味を有する:
R4、R5、R7、R8及びR9はそれぞれ水素であり、
R6はメチルである。
【0100】
そのような化合物は、式(III-1)
【0101】
【化26】
の2-メチル-1,3-ブタジエン(一般名イソプレンでも公知)に相当する。
【0102】
別のとりわけ好ましい実施形態では、式(III)の化合物における置換基R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、以下の意味を有する:
R4、R5、R8及びR9はそれぞれ水素であり、
R6及びR7は、いずれもメチルである。
【0103】
そのような化合物は、式(III-2)
【0104】
【化27】
の2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンに相当する。
【0105】
別のとりわけ好ましい実施形態では、式(III)の化合物における置換基R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、以下の意味を有する:
R4、R6、R7及びR9はそれぞれ水素であり、
R5及びR8は、それらがつながる炭素原子の間において、架橋部分-CH2-CH2-を一緒に形成する。
【0106】
そのような化合物は、式(III-3)
【0107】
【化28】
の1,3-シクロヘキサジエンに相当する。
【0108】
式(II)の化合物は、式(III)の化合物と本質的に等モル量で反応させることができ、又は、化合物(II)若しくは(III)の1つがわずかに過剰量で使用される。好ましい実施形態では、式(II)の化合物と、式(III)の化合物とのモル比は、1:1から1:40、より好ましくは1:2から1:30、より一層好ましくは1:5から1:20、詳細には1:10から1:20である。一実施形態では、式(III)の未反応の化合物は、粗反応混合物から好ましくは精留により回収され、リサイクルされる。
【0109】
本発明の方法は、本明細書で以上に描写されている少なくとも1つのm価金属カチオンMm+(式中、金属Mは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、ガリウム(Ga)及びインジウム(In)から選択され、mは、1、2又は3の整数である)、及び式(IV)のキラル配位子を含む触媒の存在下で実施される。
【0110】
好ましくは、m価金属カチオンMm+における金属Mは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)から、より一層好ましくはスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)及びイッテルビウム(Yb)から、さらにより好ましくはイットリウム(Y)及びイッテルビウム(Yb)から選択され、詳細にはイッテルビウム(Yb)である。別の特に好ましい実施形態では、m価金属カチオンMm+における金属Mは、イットリウム(Y)である。
【0111】
別の好ましい実施形態では、mは、2又は3、詳細には3の整数である。したがって、m価金属カチオンMm+は、好ましくはM2+又はM3+、詳細にはM3+である。
【0112】
さらに別の好ましい実施形態では、m価金属カチオンMm+における金属M及びmは、以下の意味を有する:
Mは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)から、より一層好ましくはスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)及びイッテルビウム(Yb)から、さらにより好ましくはイットリウム(Y)及びイッテルビウム(Yb)から選択され、詳細にはイッテルビウム(Yb)であり、
mは、2又は3、詳細には3の整数である。
【0113】
さらに別の特に好ましい実施形態では、m価金属カチオンMm+における金属M及びmは、以下の意味を有する:
Mはイットリウム(Y)であり、
mは、2又は3、詳細には3の整数である。
【0114】
とりわけ好ましい実施形態では、m価金属カチオンMm+は、Sc3+、Y3+、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd3+、Pm3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+、Yb3+及びLu3+から、より一層好ましくはSc3+、Y3+、Tb3+及びYb3+から、さらにより好ましくはY3+及びYb3+から選択され、詳細にはYb3+である。別の特に好ましい実施形態では、m価金属カチオンMm+はY3+である。
【0115】
別の好ましい実施形態では、触媒は、少なくとも1つのn価アニオンAn-(式中、nは、1、2又は3の整数、詳細には1である)をさらに含む。より好ましくは、触媒は、1、2又は3つのn価アニオンAn-(式中、nは、1、2又は3の整数である)、より一層好ましくは1、2又は3つのn価アニオンAn-(式中、nは、1の整数である(すなわちA-))をさらに含む。触媒が、2又は3つのn価アニオンAn-を含むケースでは、アニオンは同一であっても異なっていてもよい。
【0116】
好ましい実施形態では、n価アニオンAn-は、ハロゲン化物、テトラフルオロボレート(BF4
-)、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート([{3,5-(CF3)2C6H3}4B]-)、ペルクロレート(ClO4
-)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6
-)、六フッ化アンチモン(SbF6
-)、ニトレート(NO3
-)、式R12SO3
-(式中、R12は、C1~C4-アルキル、C1~C4-ハロアルキル及び非置換又は置換C6~C20-アリールから選択される)のスルホネートアニオン、式R13COO-(式中、R13は、水素、C1~C8-アルキル、C3~C12-シクロアルキル、C1~C8-ハロアルキル及び非置換又は置換C6~C20-アリールから選択される)のカルボキシレートイオン、スルフェート(SO4
2-)及び式(R14SO2)2N-(式中、R14は、C1~C4-アルキル、C1~C4-ハロアルキル及び非置換又は置換C6~C20-アリールから選択される)のビス(スルホニル)イミドアニオンから独立して選択される。
【0117】
ハロゲン化物の例は、フッ化物、塩化物、臭化物又はヨウ化物、好ましくはフッ化物又は塩化物、詳細には塩化物を含む。
【0118】
式R12SO3
-(式中、R12は、C1~C4-アルキルから選択される)のスルホネートアニオンの例は、メシレート(メタンスルホネート)、エシレート(エタンスルホネート)、n-プロピルスルホネート、イソプロピルスルホネート、n-ブチルスルホネート、イソブチルスルホネート、sec-ブチルスルホネート及びtert-ブチルスルホネートを含む。
【0119】
式R12SO3
-(式中、R12は、C1~C4-ハロアルキルから選択される)のスルホネートアニオンの例は、トリフレート(トリフルオロメタンスルホネート)、トリクロロメタンスルホネート及び1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン-スルホネートを含む。
【0120】
式R12SO3
-(式中、R12は、非置換又は置換C6~C20-アリールから選択される)のスルホネートアニオンの例は、トシレート(p-トルエンスルホネート)、ベシレート(ベンゼンスルホネート)、2-ナフチルスルホネート及びノシレートを含む。
【0121】
R12の好ましい置換基は、メチル、トリフルオロメチル及びp-トリル、より好ましくはトリフルオロメチルから選択される。したがって、式R12SO3
-のスルホネートアニオンは、好ましくはメシレート、トリフレート及びトシレートから選択され、詳細にはトリフレートである。
【0122】
式R13COO-(式中、R13は、C1~C8-アルキルから選択される)のカルボキシレートイオンの例は、ホルメート、アセテート、プロピオネート、ブチレート、ペンタノエート、ヘキサノエート、ヘプタノエート及びオクタノエートを含む。
【0123】
式R13COO-(式中、R13は、C3~C12-シクロアルキルから選択される)のカルボキシレートイオンの例は、シクロヘキサノエート及びシクロプロピルノエートを含む。
【0124】
式R13COO-(式中、R13は、C1~C8-ハロアルキルから選択される)のカルボキシレートイオンの例は、トリフルオロアセテート、クロロアセテート及び2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペントエートを含む。
【0125】
式R13COO-(式中、R13は、非置換又は置換C6~C20-アリールから選択される)のカルボキシレートイオンの例は、ベンゾエート、クロロベンゾエート、o-トルエート、p-トルエート、1-ナフトエート及び2-ナフトエートを含む。
【0126】
R13に対する好ましい置換基は、メチル及びフェニル、詳細にはメチルから選択される。したがって、式R13COO-のカルボキシレートイオンは、好ましくはアセテート及びベンゾエートから選択され、詳細にはアセテートである。
【0127】
式(R14SO2)2N-(式中、R14は、C1~C4-アルキル(詳細にはメチル又はエチル)から選択される)のビス(スルホニル)イミドアニオンの例は、N-メチルスルホニルメタンスルホンアミド及びN-エチルスルホニルエタンスルホンアミドを含む。
【0128】
式(R14SO2)2N-(式中、R14は、C1~C4-ハロアルキル(詳細にはトリフルオロメチル)から選択される)のビス(スルホニル)イミドアニオンの例は、ビストリフルイミド(ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド)を含む。
【0129】
式(R14SO2)2N-(式中、R14は、非置換又は置換C6~C20-アリール(詳細にはp-トリル)から選択される)のビス(スルホニル)イミドアニオンの例は、ビス(4-メチルベンゼン)スルホンイミドを含む。
【0130】
R14に対する好ましい置換基は、トリフルオロメチル及びp-トリル、詳細にはトリフルオロメチルから選択される。したがって、式(R14SO2)2N-のビス(スルホニル)イミドアニオンは、好ましくはビストリフルイミド(ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド)及びビス(4-メチルベンゼン)スルホンイミド、詳細にはビストリフルイミド(ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド)である。
【0131】
特に好ましい実施形態では、n価アニオンAn-は、ハロゲン化物及び式R12SO3
-(式中、R12は、C1~C4-アルキル及びC1~C4-ハロアルキルから選択される)のスルホネートアニオンから、より好ましくは塩化物、メシレート(メタンスルホネート)及びトリフレート(トリフルオロメタンスルホネート)から選択され、詳細にはトリフレート(トリフルオロメタンスルホネート)である。別の特に好ましい実施形態では、n価アニオンAn-は、ハロゲン化物から選択され、詳細には塩化物である。
【0132】
別のとりわけ好ましい実施形態では、式[Mm+]n[An-]m(V)の金属塩は、塩化スカンジウム(III)、塩化イットリウム(III)、塩化ランタン(III)、塩化セリウム(III)、塩化プラセオジム(III)、塩化ネオジム(III)、塩化プロメチウム(III)、塩化サマリウム(III)、塩化ユーロピウム(III)、塩化ガドリニウム(III)、塩化テルビウム(III)、塩化ジスプロシウム(III)、塩化ホルミウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ツリウム(III)、塩化イッテルビウム(III)、塩化ルテチウム(III)、スカンジウム(III)トリフレート、イットリウム(III)トリフレート、ランタン(III)トリフレート、セリウム(III)トリフレート、プラセオジム(III)トリフレート、ネオジム(III)トリフレート、プロメチウム(III)トリフレート、サマリウム(III)トリフレート、ユーロピウム(III)トリフレート、ガドリニウム(III)トリフレート、テルビウム(III)トリフレート、ジスプロシウム(III)トリフレート、ホルミウム(III)トリフレート、エルビウム(III)トリフレート、ツリウム(III)トリフレート、イッテルビウム(III)トリフレート及びルテチウム(III)トリフレート、より好ましくはスカンジウム(III)トリフレート、テルビウム(III)トリフレート、イットリウム(III)トリフレート及びイッテルビウム(III)トリフレート、より一層好ましくはイットリウム(III)トリフレート及びイッテルビウム(III)トリフレートから選択され、詳細にはイッテルビウム(III)トリフレートである。別のとりわけ好ましい実施形態では、式[Mm+]n[An-]m(V)の金属塩は、塩化イットリウム(III)又は塩化イッテルビウム(III)である。一実施形態では、式[Mm+]n[An-]m(V)の金属塩は、塩化イットリウム(III)である。別の実施形態では、式[Mm+]n[An-]m(V)の金属塩は、塩化イッテルビウム(III)である。
【0133】
前述の金属塩は、市販されている、又は当業界で公知の方法により調製できる。
【0134】
式[Mm+]n[An-]m(V)の金属塩と式(II)の化合物とのモル比は、幅広く変動し得、使用される反応物及び反応条件によって決まるが、一般的に1:5から1:10000、好ましくは1:10から1:1000、より好ましくは1:10から1:200である。
【0135】
本明細書で記載されている式(IV)のキラル配位子のそれぞれは、S異性体であってもR異性体であってもよい。好ましい実施形態では、これはS異性体である。別の好ましい実施形態では、これはR異性体である。さらに、S異性体及びR異性体の非ラセミ混合物を使用してよい。この点に関して、本明細書で使用されている「非ラセミ混合物」という用語は、S-又はR-異性体の1つは、もう一方の異性体の量より多い量で混合物に含有されることを意味する。好ましくは、2つの異性体の比は、少なくとも1.5:1、好ましくは少なくとも3:1、より好ましくは少なくとも10:1、とりわけ好ましくは少なくとも50:1、最も好ましくは少なくとも100:1である。
【0136】
式(IV)のキラル配位子の好ましい実施形態では、R10a及びR10a’は、C1~C8-アルキル、C3~C6-シクロアルキル、非置換又は置換C6~C20-アリール、C6~C20-アリール-C1~C4-アルキル及び非置換又は置換C3~C20-ヘテロアリールから独立して選択され、R10b、R10c、R10d、R10b’、R10c’及びR10d’は、それぞれ水素である。別の好ましい実施形態では、R10a及びR10a’は同一であり、C1~C8-アルキル、C3~C6-シクロアルキル、非置換又は置換C6~C20-アリール、C6~C20-アリール-C1~C4-アルキル及び非置換又は置換C3~C20-ヘテロアリールから選択され、R10b、R10c、R10d、R10b’、R10c’及びR10d’は、それぞれ水素である。
【0137】
式(IV)のキラル配位子の別の好ましい実施形態では、R10b及びR10b’は、C1~C8-アルキル、C3~C6-シクロアルキル、非置換又は置換C6~C20-アリール、C6~C20-アリール-C1~C4-アルキル及び非置換又は置換C3~C20-ヘテロアリールから独立して選択され、R10a、R10c、R10d、R10a’、R10c’及びR10d’は、それぞれ水素である。別の好ましい実施形態では、R10b及びR10b’は同一であり、C1~C8-アルキル、C3~C6-シクロアルキル、非置換又は置換C6~C20-アリール、C6~C20-アリール-C1~C4-アルキル及び非置換又は置換C3~C20-ヘテロアリールから選択され、R10b、R10c、R10d、R10b’、R10c’及びR10d’は、それぞれ水素である。
【0138】
別の好ましい実施形態では、R10a及びR10a’は同一であり、R10b及びR10b’は同一であり、R10c及びR10c’は同一であり、R10d及びR10d’は同一であり、R10a/R10a’、R10b/R10b’、R10c/R10c及びR10d/R10d’のそれぞれは、水素、C1~C8-アルキル、C3~C6-シクロアルキル、非置換又は置換C6~C20-アリール、C6~C20-アリール-C1~C4-アルキル及び非置換又は置換C3~C20-ヘテロアリールから独立して選択されるが、但し、R10a/R10a’、R10b/R10b’、R10c/R10c及びR10d/R10dの少なくとも1対が水素ではなく、R10a/R10a’、R10b/R10b’、R10c/R10c及びR10d/R10dの少なくとも1対が水素であることを条件とする。
【0139】
式(IV)のキラル配位子の別の好ましい実施形態では、R11a、R11b及びR11cは、それぞれ水素である。
【0140】
式(IV)のキラル配位子の別の好ましい実施形態では、R11a及びR11cは、いずれも水素であり、R11bは、ハロゲン、シアノ、C1~C8-アルキル、C1~C4-ハロアルキル及びC1~C8-アルコキシから、より好ましくはハロゲン、C1~C8-アルキル及びC1~C8-アルコキシから選択される。式(IV)のキラル配位子のとりわけ好ましい実施形態では、R11a及びR11cは、いずれも水素であり、R11bは、塩素、シアノ、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、トリフルオロメチル及びメトキシから、より一層好ましくは塩素、メチル及びメトキシから選択される。
【0141】
式(IV)のキラル配位子の別の好ましい実施形態では、Z及びZ’は同一であり、-O-、-O-CH2-又は
【0142】
【化29】
から選択され、R
Cは、C
1~C
8-アルキル、C
3~C
8-シクロアルキル、C
1~C
8-ハロアルキル及び非置換又は置換C
6~C
13アリールから選択される。
【0143】
より好ましくは、式(IV)のキラル配位子におけるZ及びZ’は同一であり、-O-及び
【0144】
【化30】
から選択され、R
Cは、非置換又は置換C
6~C
13アリールから選択される。より一層好ましくは、式(IV)のキラル配位子におけるZ及びZ’は同一であり、-O-及び
【0145】
【化31】
から選択され、R
Cは、非置換C
6~C
13アリールから選択される。より一層好ましくは、式(IV)のキラル配位子におけるZ及びZ’は同一であり、-O-及び
【0146】
【化32】
から選択され、R
Cは1-ナフチルである。さらにより好ましくは、式(IV)のキラル配位子におけるZ及びZ’は、いずれも-O-である。
【0147】
式(IV)のキラル配位子の別の好ましい実施形態では、Z及びZ’は同一であり、
【0148】
【化33】
から選択され、R
10a、R
10b、R
10c、R
10d、R
10a’、R
10b’、R
10c’及びR
10d’は、水素又は非置換若しくは置換C
6~C
20-アリールからそれぞれ独立して選択される。
【0149】
式(IV)のキラル配位子の別の好ましい実施形態では、Z及びZ’は同一であり、
【0150】
【化34】
から選択され、R
Cは、非置換又は置換C
6~C
13アリールから選択される。
【0151】
式(IV)のキラル配位子の別の好ましい実施形態では、Z及びZ’は同一であり、
【0152】
【化35】
から選択され、R
10a、R
10b、R
10c、R
10d、R
10a’、R
10b’、R
10c’及びR
10d’は、水素又は非置換若しくは置換C
6-アリールからそれぞれ独立して選択される。
【0153】
式(IV)のキラル配位子の別の好ましい実施形態では、Z及びZ’は同一であり、
【0154】
【化36】
から選択され、R
10a、R
10b、R
10c、R
10d、R
10a’、R
10b’、R
10c’及びR
10d’は、水素又はフェニルからそれぞれ独立して選択される。
【0155】
式(IV)のキラル配位子の別の好ましい実施形態では、Z及びZ’は同一であり、
【0156】
【化37】
から選択され、R
Cは1-ナフチルである。
【0157】
式(IV)のキラル配位子の別の好ましい実施形態では、Z及びZ’は同一であり、
【0158】
【化38】
から選択され、R
11bはハロゲンである。
【0159】
式(IV)のキラル配位子の別の好ましい実施形態では、Z及びZ’は同一であり、
【0160】
【0161】
式(IV)のキラル配位子の別の好ましい実施形態では、R11a及びR11cは、いずれも水素であり、R11bは、ハロゲン、詳細には塩素である。
【0162】
式(IV)のキラル配位子の別の好ましい実施形態では、R11a及びR11cは、いずれも水素であり、R11bは塩素である。
【0163】
式(IV)のキラル配位子の別の好ましい実施形態では、R10a及びR10a’は、いずれもフェニルであり、R10b、R10c、R10d、R10b’、R10c’、R10d’、R11a、R11b及びR11cは、それぞれ水素である。
【0164】
式(IV)のキラル配位子の別の好ましい実施形態では、R10b及びR10b’は、いずれもフェニルであり、R10a、R10c、R10d、R10a’、R10c’、R10d’、R11a、R11b及びR11cは、それぞれ水素である。
【0165】
式(IV)のキラル配位子の別の好ましい実施形態では、R10a、R10a’、R10d及びR10d’は同一であり、C1~C8-アルキル、C3~C6-シクロアルキル、非置換又は置換C6~C20-アリール、C6~C20-アリール-C1~C4-アルキル及び非置換又は置換C3~C20-ヘテロアリールから選択され、R10b、R10c、R10b’及びR10c’は、それぞれ水素である。
【0166】
式(IV)のキラル配位子の別の好ましい実施形態では、R10b、R10b’、R10c及びR10c’は同一であり、C1~C8-アルキル、C3~C6-シクロアルキル、非置換又は置換C6~C20-アリール、C6~C20-アリール-C1~C4-アルキル及び非置換又は置換C3~C20-ヘテロアリールから選択され、R10a、R10d、R10a’及びR10d’は、それぞれ水素である。
【0167】
式(IV)のキラル配位子のさらに好ましい実施形態は、以下の通りである:
式(IVa)
【0168】
【化40】
(式中、R
11bは、水素、ハロゲン、C
1~C
8-アルキル及びC
1~C
8-アルコキシから、好ましくは水素、塩素、メチル及びメトキシから選択される)のキラル配位子。
式(IVb)
【0169】
【化41】
(式中、R
D、R
E、R
D’及びR
E’は、C
1~C
4-アルキル及びC
1~C
4-アルコキシから、好ましくはメチル又はメトキシからそれぞれ独立して選択される)のキラル配位子。式(IVb)の配位子のとりわけ好ましい実施形態では、R
D、R
E、R
D’及びR
E’は、それぞれC
1~C
4-アルキル、詳細にはメチルである。式(IVb)の配位子の別のとりわけ好ましい実施形態では、R
D、R
E、R
D’及びR
E’は、それぞれC
1~C
4-アルコキシ、詳細にはメトキシである。そのような化合物は、本明細書で以下に示されている式(IV-4)及び(IV-5)のキラル配位子に相当する。
式(IVc)
【0170】
【化42】
(式中、R
11bは、水素、ハロゲン、C
1~C
8-アルキル及びC
1~C
8-アルコキシから(好ましくは水素、塩素、メチル及びメトキシから)選択され、X及びX’は、O及びSからそれぞれ独立して選択される)のキラル配位子。
式(IVd)
【0171】
【0172】
(式中、R11bは、水素又はハロゲン(詳細には塩素)から選択され、RCは、いずれも、非置換又は置換C6~C13アリール(好ましくは1-ナフチル)から選択される)のキラル配位子。
【0173】
本発明の方法に使用される式(IV)のさらなる好ましいキラル配位子は、本明細書で以下に示されている式(IV-1)から(IV-15)のキラル配位子から選択される:
式(IV-1)
【0174】
【化44】
のキラル配位子、すなわち式(IV-1)の2,6-ビス((S)-4-フェニル-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)ピリジン、
式(IV-2)
【0175】
【化45】
のキラル配位子、すなわち式(IV-2)の2,6-ビス((S)-4-(4-ブロモフェニル)-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)ピリジン、
式(IV-3)
【0176】
【化46】
のキラル配位子、すなわち式(IV-3)の2,6-ビス((S)-4-(4-メトキシフェニル)-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)ピリジン、
式(IV-4)
【0177】
【化47】
のキラル配位子、すなわち式(IV-4)の2,6-ビス((S)-4-(3,5-ジメチルフェニル)-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)ピリジン、
式(IV-5)
【0178】
【化48】
のキラル配位子、すなわち式(IV-5)の2,6-ビス((S)-4-(3,5-ジメトキシフェニル)-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)ピリジン、
式(IV-6)
【0179】
【化49】
のキラル配位子、すなわち式(IV-6)の2,6-ビス((S)-4-メシチル-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)ピリジン、
式(IV-7)
【0180】
【化50】
のキラル配位子、すなわち式(IV-7)の2,6-ビス((S)-4-(ナフタレン-1-イル)-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)ピリジン、
式(IV-8)
【0181】
【化51】
のキラル配位子、すなわち式(IV-8)の2,6-ビス((S)-4-(6-メトキシナフタレン-2-イル)-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)ピリジン、
式(IV-9)
【0182】
【化52】
のキラル配位子、すなわち式(IV-9)の((4S,4'S,5S,5'S)-ピリジン-2,6-ジイルビス(4,5-ジフェニル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2,1-ジイル))ビス(ナフタレン-1-イルメタノン)、
式(IV-10)
【0183】
【化53】
のキラル配位子、すなわち式(IV-10)の2,6-ビス((S)-4,5-ジヒドロ-4-フェネチルオキサゾール-2-イル)ピリジン、
式(IV-11)
【0184】
【化54】
のキラル配位子、すなわち式(IV-11)の(4R,5R)-2-[6-[(4S,5S)-4,5-ジフェニル-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル]-2-ピリジル]-4,5-ジフェニル-4,5-ジヒドロオキサゾール、
式(IV-12)
【0185】
【化55】
のキラル配位子、すなわち式(IV-12)の((4S,4'S,5S,5'S)-(4-クロロピリジン-2,6-ジイル)ビス(4,5-ジフェニル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2,1-ジイル))ビス(ナフタレン-1-イルメタノン)、
式(IV-13)
【0186】
【化56】
のキラル配位子、すなわち式(IV-13)の(4S)-4-イソプロピル-2-[6-[(4S)-4-イソプロピル-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル]-2-ピリジル]-4,5-ジヒドロオキサゾール、
式(IV-14)
【0187】
【化57】
のキラル配位子、すなわち式(IV-14)の(3aR,8bS)-2-[6-[(3aR,8bS)-4,8b-ジヒドロ-3aH-インデノ[1,2-d]オキサゾール-2-イル]-2-ピリジル]-4,8b-ジヒドロ-3aH-インデノ[1,2-d]オキサゾール、及び
式(IV-15)
【0188】
【化58】
のキラル配位子、すなわち式(IV-15)の(4S)-4-ベンジル-2-[6-[(4S)-4-ベンジル-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル]-2-ピリジル]-4,5-ジヒドロオキサゾール。
【0189】
特に好ましい実施形態では、式(IV)のキラル配位子は、式(IV-1)の2,6-ビス((S)-4-フェニル-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)ピリジン、及び式(IV-9)の((4S,4'S,5S,5'S)-ピリジン-2,6-ジイルビス(4,5-ジフェニル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2,1-ジイル))ビス(ナフタレン-1-イルメタノン)から選択される。式(IV-1)の2,6-ビス((S)-4-フェニル-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)ピリジンが、最も好ましい。
【0190】
別の特に好ましい実施形態では、式(IV)のキラル配位子は、式(IV-1’)の2,6-ビス((R)-4-フェニル-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)ピリジン、及び式(IV-9’)の((4R,4'R,5R,5'R)-ピリジン-2,6-ジイルビス(4,5-ジフェニル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2,1-ジイル))ビス(ナフタレン-1-イルメタノン)
【0191】
【化59】
から選択される。式(IV-1’)の2,6-ビス((R)-4-フェニル-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)ピリジンは、最も好ましい。
【0192】
本発明の方法に使用される式(IV)のキラル配位子は、JP-A Hei 2-36181又はDesimoniら(Chem. Rev.、2003年、103、3119~3154頁)から一般的に公知であり、市販されている、且つ/又は公知の方法で調製できる。
【0193】
さらに、式(IV-1)の2,6-ビス((S)-4-フェニル-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)ピリジンは、Schaus、S. E.ら(Org Lett、2000年、2、1001~1004頁)から公知である。
【0194】
式(IV-2)の2,6-ビス((S)-4-(4-ブロモフェニル)-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)ピリジン、式(IV-6)の2,6-ビス((S)-4-メシチル-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)ピリジン、式(IV-8)の2,6-ビス((S)-4-(6-メトキシナフタレン-2-イル)-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)ピリジンは、ジメチルピリジン-2,6-ビス(カルビミデート(carbimidate))及び(S)-2-アミノ-2-(4-ブロモフェニル)エタン-1-オール、(S)-2-アミノ-2-メシチルエタン-1-オール、又は(S)-2-アミノ-2-(6-メトキシナフタレン-2-イル)エタン-1-オールから、Shemet, A.ら(Org. Lett、2017年、19、5527頁)に記載されている一般的手順に従って、それぞれ合成した。
【0195】
式(IV-3)の2,6-ビス((S)-4-(4-メトキシフェニル)-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)ピリジン、及び式(IV-5)の2,6-ビス((S)-4-(3,5-ジメトキシフェニル)-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)ピリジンは、いずれも前述の参考文献、すなわちShemet, A.ら(Org. Lett、2017年、19、5527頁)から公知である。
【0196】
式(IV-4)の2,6-ビス((S)-4-(3,5-ジメチルフェニル)-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)ピリジンは、Lovinger, G. J.ら(J. Am. Chem. Soc.、2017年、139、17293~17296頁)から公知である。
【0197】
式(IV-7)の2,6-ビス((S)-4-(ナフタレン-1-イル)-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)ピリジンは、Zhou, Z.ら(Tet. Lett. 2012年、53、4518~4521頁)から公知である。
【0198】
式(IV-9)の((4S,4'S,5S,5'S)-ピリジン-2,6-ジイルビス(4,5-ジフェニル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2,1-ジイル))ビス(ナフタレン-1-イルメタノン)は、Bhor, S.ら(Org. Lett. 2005年、7(16)、3393~3396頁)から公知である。
【0199】
式(IV-10)の2,6-ビス((S)-4,5-ジヒドロ-4-フェネチルオキサゾール-2-イル)ピリジンは、Lou, Sら(Org. Synth、2010年、87、310~316頁)から公知である。
【0200】
式(IV-11)、(IV-13)、(IV-14)及び(IV-15)のキラル配位子は、Tse, Man Kin、Bhor, Santosh、Klawonn, Markus、Anilkumar, Gopinathan、Jiao, Haijun、Doebler, Christian、Spannenberg, Anke、Maegerlein, Wolfgang、Hugl, Herbert及びBeller, Matthias(2006年)Chemistry - A European Journal、12(7)、1855~1874頁から公知である。
【0201】
式(IV-12)の((4S,4'S,5S,5'S)-(4-クロロピリジン-2,6-ジイル)ビス(4,5-ジフェニル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2,1-ジイル))ビス(ナフタレン-1-イルメタノン)は、実施例でより詳細に記載されているBhor及び共同研究者の手順(Bhor, S.ら、Org. Lett. 2005年、7(16)、3393~3396頁参照)を適合させることにより調製できる。
【0202】
式(IV)のキラル配位子と式(II)の化合物とのモル比は、幅広く変動し得、使用される反応物及び反応条件によって決まるが、一般的に1:5から1:10000、好ましくは1:10から1:1000、より好ましくは1:10から1:200である。
【0203】
好ましくは、本発明の方法に使用される触媒は、式[Mm+]n[An-]m(V)(式中、Mm+は、m価金属カチオンMm+であり、mは、1、2又は3の整数であり、金属Mは、本明細書で以上に記載されているものと同一の意味を有し、An-は、n価アニオンであり、nは、1、2又は3の整数である)の金属塩と、式(IV)のキラル配位子を反応させることにより得られる。触媒は、ハロゲン化アルミニウムと光学活性ピリジン化合物(1)を反応させることにより得られる不斉錯体の合成について、US2011/034718に記載されているものと同様の方法により調製され得る。例えば、式[Mm+]n[An-]m(V)の金属塩と式(IV)のキラル配位子の反応は、通常、有機溶媒の存在下で実行される。触媒の調製に使用され得る好適な有機溶媒は、好ましくは、式(II)の化合物と式(III)の化合物の反応について、本明細書で以下に記載されているものと同一であり、例えば、ハロゲン化芳香族炭化水素、例としてジクロロメタン、1,2-ジクロロメタン及びクロロホルム、並びに芳香族炭化水素溶媒、例としてベンゼン、トルエン及びキシレン、並びにハロゲン化芳香族炭化水素、例としてクロロベンゼン及びジクロロベンゼンを含む。式[Mm+]n[An-]m(V)の金属塩とキラル配位子(IV)の反応は、好ましくは水なしで実行する。好ましい実施形態では、反応は、不活性ガス、好ましくはアルゴン及び窒素から選択される不活性ガス雰囲気下で実施する。最も好ましくは、不活性ガスは窒素である。反応温度は、通常、-20℃から50℃の範囲である。反応時間は、通常、0.5から6時間である。したがって、触媒を含む混合物が得られ、得られた混合物は、式(II)の化合物と式(III)の化合物の反応に直接使用され得、又は触媒は、最初に、例えば濃縮により混合物から単離される。好ましい実施形態では、触媒を含む得られた混合物は、式(II)の化合物と式(III)の化合物の反応に直接使用される。
【0204】
触媒と式(II)の化合物とのモル比は、幅広く変動し得、調製に使用される式[Mm+]n[An-]m(V)の金属塩、及びキラル配位子(IV)の性質、並びに用いられる反応条件によって決まるが、一般的に1:5から1:10000、好ましくは1:10から1:1000、より好ましくは1:10から1:200である。
【0205】
好ましい実施形態で、本発明の方法が事実上実行される。
【0206】
別の好ましい実施形態では、式(II)の化合物と式(III)の化合物の反応は、有機溶媒中で実施される。別の好ましい実施形態では、本発明の方法は、実質的に無水(好ましくは無水)の有機溶媒で実施する。本明細書で使用されている「実質的に無水」という用語は、反応混合物において、無水有機溶媒が一般的に好ましいが、例えば市販の溶媒で見出されることが多い微量の水は容認できることを意味する。原材料の消費が増加するおそれがあるので、多量の水は避けるべきである。
【0207】
本発明の方法に使用される有機溶媒は、使用される反応物及び反応条件に応じて多彩な溶媒から選択され得る。
【0208】
好ましい実施形態では、有機溶媒は、炭化水素、エーテル、ニトリル、エステル、ケトン及びそれらの任意の組合せから選択される。
【0209】
「炭化水素」という用語は、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素及びそれらの任意の組合せを含む。
【0210】
脂肪族炭化水素は、直鎖及び分岐鎖脂肪族炭化水素を含む。
【0211】
本発明に使用され得る直鎖脂肪族炭化水素は、5から15個の炭素原子、好ましくは5から10個の炭素原子を有するものである。直鎖脂肪族炭化水素の例は、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン又はそれらの任意の組合せ、好ましくはn-ヘプタンを含む。
【0212】
本発明における使用に好適な分岐鎖脂肪族炭化水素は、4から15個の炭素原子、好ましくは5から12個の炭素原子、より好ましくは7から12個の炭素原子、より一層好ましくは8から11個の炭素原子を有するものである。好適な分岐鎖脂肪族炭化水素の例は、2,3-ジメチルブタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,4-ジメチルヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン、2,2,4-トリメチルヘキサン、2,3,4-トリメチルヘキサン、3,3,4-トリメチルヘキサン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、2,3-ジメチルヘプタン、3,4-ジメチルペンタン、2-エチルオクタン、2,3-ジメチルオクタン、2-メチルノナン、3,4-ジメチルノナン、3-メチルデカン、2-メチルウンデカン、2-メチルドデカン、2,2,4 トリメチルドデカン及びそれらの任意の組合せを含む。
【0213】
好適な脂環式炭化水素の例は、飽和又は不飽和脂環式炭化水素、例えばシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロオクテン、1,5-シクロオクタジエンを含む。5から10個の炭素原子を有する飽和脂環式炭化水素が好ましい。シクロヘキサンが特に好ましい。
【0214】
好適な芳香族炭化水素の例は、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、2-プロピルベンゼン(クメン)、2-イソプロピルトルエン(o-シメン)、3-イソプロピルトルエン(m-シメン)、4-イソプロピルトルエン(p-シメン)、1,3,5-トリメチルベンゼン(メシチレン)などを含む。トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン(メシチレン)及びそれらの任意の組合せが好ましい。芳香族炭化水素のうちとりわけ好ましいのは、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、1,3,5-トリメチルベンゼン(メシチレン)及びそれらの任意の組合せであり、トルエンが最も好ましい。
【0215】
好適なハロゲン化脂肪族炭化水素の例は、ジクロロメタン(塩化メチレン)、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1,1,2-テトラクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン、トリクロロエチレンなどを含む。ジクロロメタンが好ましい。
【0216】
好適なハロゲン化芳香族炭化水素の例は、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、α,α,α-トリフルオロトルエン(ベンゾトリフルオリド)などを含む。クロロベンゼンが好ましい。
【0217】
好適なエーテルの例は、非環状、環状又は芳香族エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、n-ブチルメチルエーテル、イソブチルメチルエーテル、sec-ブチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、2,5-ジメチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アニソールなどを含む。
【0218】
好適なニトリルの例は、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどを含む。
【0219】
好適なエステルの例は、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチルなどを含む。
【0220】
好適なケトンの例は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロプロピルメチルケトンなどを含む。
【0221】
好ましい実施形態では、有機溶媒は、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素、エーテル、ニトリル、エステル、ケトン及びそれらの任意の組合せから選択される。
【0222】
別の好ましい実施形態では、有機溶媒は、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素、非環状エーテル、環状エーテル、芳香族エーテル、ニトリル、エステル、ケトン及びそれらの任意の組合せから選択される。
【0223】
さらに別の好ましい実施形態では、有機溶媒は、芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素、非環状エーテル、環状エーテル、芳香族エーテル、ニトリル、エステル、ケトン及びそれらの任意の組合せから選択される。
【0224】
さらに別の好ましい実施形態では、有機溶媒は、炭化水素から選択される。炭化水素は、原則として脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素及びハロゲン化芳香族炭化水素から選択され得る。より好ましくは、有機溶媒は、芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素及びそれらの任意の組合せから選択される炭化水素である。より一層好ましくは、有機溶媒は、ハロゲン化脂肪族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素及びそれらの任意の組合せから選択される炭化水素である。特に好ましい実施形態では、有機溶媒は、芳香族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素及びそれらの任意の組合せから選択される炭化水素である。別の特に好ましい実施形態では、有機溶媒は、ハロゲン化芳香族炭化水素から選択される炭化水素である。別の特に好ましい実施形態では、有機溶媒は、ハロゲン化脂肪族炭化水素から選択される炭化水素である。
【0225】
別のとりわけ好ましい実施形態では、有機溶媒は、n-ヘプタン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン(メシチレン)、ジクロロメタン、クロロベンゼン及びそれらの任意の組合せから選択される炭化水素である。
【0226】
さらに別のとりわけ好ましい実施形態では、有機溶媒は、n-ヘプタン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン(メシチレン)及びそれらの任意の組合せから選択される炭化水素である。
【0227】
さらに別のとりわけ好ましい実施形態では、有機溶媒は、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン及び1,3,5-トリメチルベンゼン(メシチレン)から選択される炭化水素である。
【0228】
さらに別のとりわけ好ましい実施形態では、有機溶媒は、ジクロロメタン、クロロベンゼン及びそれらの組合せから選択される炭化水素である。
【0229】
さらに別のとりわけ好ましい実施形態では、有機溶媒は、クロロベンゼンである。
【0230】
さらに別のとりわけ好ましい実施形態では、有機溶媒は、ジクロロメタンである。
【0231】
有機溶媒と式(II)の化合物とのモル比は、幅広く変動し得、使用される反応物及び反応条件によって決まるが、一般的に0.01:1から100:1、好ましくは0.01:1から40:1、より好ましくは0.01:1から10:1、より一層好ましくは0.01:1から2:1、さらにより好ましくは0.01:1から0.5:1である。別の好ましい実施形態では、有機溶媒は、他の試薬を溶解するのに十分な量で使用される。
【0232】
式(II)の化合物と式(III)の化合物の反応は、不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。好ましくは、不活性ガスは、アルゴン及び窒素から選択される。最も好ましくは、不活性ガスは窒素である。
【0233】
別の好ましい実施形態では、式(II)の化合物と式(III)の化合物の反応は、活性化された分子ふるい、より好ましくは、3から5オングストローム(Å)の細孔サイズを有する活性化された分子ふるいの存在下で実施する。例えば、活性化された3Å、4Å又は5Å分子ふるいが使用され得、活性化された3Å分子ふるいが好ましい。3Å、4Å又は5Å分子ふるいは、ビーズ化又は粉末化される。活性化された分子ふるいの好適な材料は、例えば、金属アルミノシリケート、例えば混合されたアルミノケイ酸ナトリウム-カリウムを含む。そのような分子ふるいは、市販されている。
【0234】
本発明の方法は、大気圧下又はわずかに昇圧又は減圧下で実行され得る。典型的には、大気圧が用いられる。別の実施形態では、本発明の方法は、昇圧下で、好ましくは1から5bar、より好ましくは1から2barの範囲で実施する。
【0235】
本発明の方法に使用される温度は、幅広く変動し得、多彩な要因、例えば、使用される有機溶媒によって決まる。大気圧(1bar)下で、本発明の方法は、一般的に、-40℃から120℃、好ましくは-20℃から80℃、より好ましくは-20℃から50℃、より一層好ましくは0℃から50℃の範囲の温度にて実施する。
【0236】
反応時間は、広い範囲で変動し得、多彩な要因、例えば、使用される温度、圧力又は試薬及び補助物質によって決まる。典型的な反応時間は、3から72時間、好ましくは6から48時間、より好ましくは4から12時間の範囲である。
【0237】
式(I)の式の非ラセミシクロヘキセン化合物は、従来の方法を用いることにより、例えば抽出、詳細には塩基性又は中性水性媒体での抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー(すなわちシリカゲル、アルミナ)、分取HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、分取SFC(超臨界流体クロマトグラフィー)、再結晶化などにより、最終反応混合物から単離され得る。
【0238】
好ましい実施形態では、式(I)の非ラセミシクロヘキセン化合物は、式(VI)
【0239】
【化60】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8及びR
9は、式(I)におけるものと同一の意味を有する)の非ラセミシクロヘキセノール化合物にさらに変換される。
【0240】
例えば、式(I)の非ラセミシクロヘキセン化合物の、式(VI)の非ラセミシクロヘキセノール化合物への変換は、当業界で公知の方法に従って、例えばエステル基Y=OC(O)RAのヒドロキシル基-OHへの開裂、続いてケトン基をアルケン基に変換するウィッティヒ、又は他のタイプのオレフィン化反応により、行われ得る。エステル開裂及びウィッティヒ反応は、当業者に公知の方法に従って、例えばAndradeら(Synthetic Communications、1992年、22、1603~1609頁)に記載されている方法と同様に実行され得る。好ましくは、ウィッティヒ反応は、臭化メチルトリフェニルホスホニウム、n-ブチルリチウムのような強塩基及びテトラヒドロフランのような有機溶媒を用いることにより達成される。エステル基Y=OC(O)RAのヒドロキシル基-OHへの開裂は、塩基(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムメトキシド又はカリウムメトキシド)、及び、任意選択で共溶媒として水を含むメタノール又はエタノールのような有機溶媒を使用することにより行われ得る。別の実施形態では、エステル開裂は、ウィッティヒ又は他のオレフィン化反応の完了後、例えば、ウィッティヒ反応から得られた反応混合物の後処理(例えば塩基を前記反応混合物に添加することによる)中に行われる。エステル開裂反応の例は、エステル交換、鹸化及び加水分解を含む。オレフィン化反応は、C=O二重結合が、C=CH2二重結合で置き換えられる任意の反応を含む。
【0241】
とりわけ好ましい実施形態では、式(VI)
【0242】
【化61】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8及びR
9は、式(I)におけるものと同一の意味を有する)の非ラセミシクロヘキセノール化合物を合成する方法であって:
(i)本明細書で記載されている式(I)の非ラセミシクロヘキセン化合物を調製するステップ、
(ii)式(I)の非ラセミシクロヘキセン化合物に、エステル開裂を施して、式(VII)
【0243】
【化62】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8及びR
9は、式(I)におけるものと同一の意味を有する)の非ラセミシクロヘキセノール化合物を得るステップ、及び
(iii)式(VII)の非ラセミシクロヘキセノール化合物に、ウィッティヒ反応を施して、式(VI)の非ラセミシクロヘキセノール化合物を得るステップを含む、方法が提供される。
【0244】
別のとりわけ好ましい実施形態では、式(VI)
【0245】
【化63】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8及びR
9は、式(I)におけるものと同一の意味を有する)の非ラセミシクロヘキセノール化合物を合成する方法であって:
(i)本明細書で記載されている式(I)の非ラセミシクロヘキセン化合物を調製するステップ、
(ii)式(I)の非ラセミシクロヘキセン化合物に、ウィッティヒ反応を施して、式(VIII)
【0246】
【化64】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びYは、式(I)におけるものと同一の意味を有する)の非ラセミシクロヘキセン化合物を得るステップ、及び
(iii)式(VIII)の非ラセミシクロヘキセン化合物に、エステル開裂を施して、式(VI)の非ラセミシクロヘキセノール化合物を得るステップを含む、方法が提供される。
【0247】
特に好ましい実施形態は、式(VI)
(式中、R1及びR6は、いずれもメチルであり、
R2、R3、R4、R5、R7、R8及びR9は、それぞれ水素である)の非ラセミシクロヘキセノール化合物を合成する方法に関する。
【0248】
そのような化合物は、式(VI-1)
【0249】
【化65】
の非ラセミリモネン-4-オールに相当する。
【0250】
とりわけ好ましい実施形態では、式(VI)の非ラセミシクロヘキセノール化合物は、式((R)-VI-1)
【0251】
【化66】
の(R)-リモネン-4-オールである、
又は、別のとりわけ好ましい実施形態では、式((S)-VI-1)
【0252】
【化67】
の(S)-リモネン-4-オールである。
【0253】
式(VI-1)の非ラセミリモネン-4-オールを合成する方法のステップ(i)における出発材料として特に有用な式(I)の非ラセミシクロヘキセン化合物は、
R1及びR6が、いずれもメチルであり、
R2、R3、R4、R5、R7、R8及びR9がそれぞれ水素であり、
YがOC(O)RAであり、RAが、フェニル又はジフェニルメチルであるものである。
【0254】
そのような化合物は、本明細書で以上に記載されている、式(I-1)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエート、及び式(I-2)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテートに相当する。
【0255】
式((R)-I-1)、((R)-I-2)、((R)-I-3)、((R)-I-4)及び((R)-I-5)の化合物、詳細には式((R)-I-1)の(R)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエート、及び式((R)-I-2)の(R)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテートは、式((R)-VI-1)の(R)-リモネン-4-オールを合成する方法のステップ(i)における出発材料として有用である。
【0256】
したがって、本発明の別の実施形態は、式((R)-I-1)、((R)-I-2)、((R)-I-3)、((R)-I-4)及び((R)-I-5)の化合物、詳細には式((R)-I-1)の(R)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエート、及び式((R)-I-2)の(R)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテートのいずれかの、式((R)-VI-1)の(R)-リモネン-4-オールを合成するための出発材料としての使用を対象とする。
【0257】
式((S)-I-1)、((S)-I-2)、((S)-I-3)、((S)-I-4)及び((S)-I-5)の化合物、詳細には式((S)-I-1)の(S)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエート、及び式((S)-I-2)の(S)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテートは、式((S)-VI-1)の(S)-リモネン-4-オールを合成する方法のステップ(i)における出発材料として有用である。
【0258】
本発明のさらに別の実施形態は、式((S)-I-1)、((S)-I-2)、((S)-I-3)、((S)-I-4)及び((S)-I-5)の化合物、詳細には式((S)-I-1)の(S)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエート、及び式((S)-I-2)の(S)-1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテートのいずれかの、式((S)-VI-1)の(S)-リモネン-4-オールを合成するための出発材料としての使用を対象とする。
【0259】
本発明は、以下の実施例により例証され、それらに又はそれらにより限定されない。
【0260】
[実施例]
以下の化学用語及び定義は、別途指し示されていない限り、通常の意味を有する。例えば、「Yb(OTf)3」は、イッテルビウム(III)トリフレートを指し、「Y(OTf)3」は、イットリウム(III)トリフレートを指し、「Sc(OTf)2」は、スカンジウム(II)トリフレートを指し、「La(OTf)3」は、ランタン(III)トリフレートを指し、「Ce(OTf)3」は、セリウム(III)トリフレートを指し、「Pr(OTf)3」は、プラセオジム(III)トリフレートを指し、「Nd(OTf)3」は、ネオジム(III)トリフレートを指し、「Sm(OTf)3」は、サマリウム(III)トリフレートを指し、「Eu(OTf)3」は、ユーロピウム(III)トリフレートを指し、「Gd(OTf)3」は、ガドリニウム(III)トリフレートを指し、「Tb(OTf)3」は、テルビウム(III)トリフレートを指し、「Dy(OTf)3」は、ジスプロシウム(III)トリフレートを指し、「Ho(OTf)3」は、ホルミウム(III)トリフレートを指し、「Er(OTf)3」は、エルビウム(III)トリフレートを指し、「Tm(OTf)3」は、ツリウム(III)トリフレートを指し、「Lu(OTf)3」は、ルテチウム(III)トリフレートを指し、「H2O」は水を指し、「THF」は、テトラヒドロフランを指し、「MeCN」は、アセトニトリルを指し、「Et2O」は、ジエチルエーテルを指し、「EtOAc」は、酢酸エチルを指し、「MeOH」は、メタノールを指し、「iPrOH」又は「IPA」のいずれも、イソプロパノールを指し、「CH2Cl2」又は「DCM」のいずれも、ジクロロメタンを指し、「PhH」はベンゼンを指し、「PhMe」はトルエンを指し、「PhCl」は、クロロベンゼンを指し、「DCE」は、1,2-ジクロロエタンを指し、「Et3N」又は「NEt3」のいずれも、トリエチルアミンを指し、「i-Pr2NH」は、ジイソプロピルアミンを指し、「DIPEA」は、N,N-ジイソプロピルエチルアミンを指し、「Pyr」はピリジンを指し、「Ph」はフェニルを指し、「CH(Ph)2」は、ジフェニルメチルを指し、「Me」はメチルを指し、「Et」はエチルを指し、「Ad」は、1-アダマンチルを指し、「Bz」は、ベンゾイルを指し、「BzCl」は、塩化ベンゾイルを指し、「Ph2CHCO2Cl」は、塩化ジフェニルアセチルを指し、「1-Nap」は、「1-ナフチル」を指し、「2-Nap」は、「2-ナフチル」を指し、「NaBArF」は、ナトリウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートを指し、「N(n-Bu)4Br」は、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミドを指し、「tBu」は、「tert-ブチル」を指し、「o-Br-Ph」は、「2-ブロモフェニル」を指し、「p-tBu-Ph」は、「4-tert-ブチルフェニル」を指し、「p-NO2-Ph」は、「4-ニトロフェニル」を指し、「MS」は分子ふるいを指し、「3Å MS」は、3Å分子ふるいを指し、「equiv.」は、当量を指し、「mmol」は、ミリモルを指し、「g」は、グラムを指し、「mg」は、ミリグラムを指し、「min」は、分を指し、「h」は、時間を指し、「l」又は「L」は、をリットル指し、「ml」又は「mL」は、ミリリットルを指し、「dr」は、ジアステレオマー比を指し、「ee」は、鏡像異性体過剰率を指し、「rr」は、位置異性体比を指し、「1H-NMR」は、プロトン核磁気共鳴を指し、「13C-NMR」は、炭素-13核磁気共鳴を指し、「SFC」は、超臨界流体クロマトグラフィーを指し、「HPLC」は、高速液体クロマトグラフィーを指し、「HRMS」は、高分解能質量分析を指し、「TCL」は、薄層クロマトグラフィーを指す。
【0261】
材料及び方法:
特に定めのない限り、反応は、標準的なSchlenk技術を利用して、乾燥させたばかりの溶媒で行った。ガラス器具は、120℃にて最低4時間オーブン乾燥させた、又はBunsenバーナーを高真空下で利用して火炎乾燥させた。THF、DCM、MeCN、PhH及びPhMeは、活性アルミナカラムを通過させることにより乾燥させた。ピリジンビスイミダゾリン(PyBim)配位子は、Bhor及び共同研究者により報告されている手順(Bhor, S.ら、Org. Lett.2005年、7(16)、3393~3396頁参照)を使用して合成した。MeOH(HPLCグレード)は、Fisher Scientificから購入した。1,4-ジオキサン、無水≧99.9%は、Millipore Sigmaから購入した。DCE、Et3N、i-Pr2NH、DIPEA、Pyr及び2,6-ルチジンは、使用前に、水素化カルシウムから蒸留し、N2又はAr下での保存した。商用の試薬は、商用供給源から供給されたまま直接使用し、特に指定がない限りさらに精製しなかった。すべての反応は、EMD/Merckシリカゲル60 F254プレコーティングプレート(0.25mm)を使用した薄層クロマトグラフィーによりモニターし、UV(254nm)及びKMnO4、p-アニスアルデヒド、ヨウ素又はCAM染色により視覚化した。フラッシュカラムクロマトグラフィーは、Silicycleから購入したシリカゲル(SiliaFlash(登録商標)P60、粒径40~63ミクロン[230から400メッシュ])を使用して、Still及び共著者により記載されているように行った(Still, W. C.ら、J. Org. Chem.1978年、43(14)、2923~2925頁参照)。1H及び13C NMRスペクトルは、Prodigy Cryoprobeを備えたBruker Advance III HD(それぞれ400MHz及び101MHzで)、又はVarian Inova 500(それぞれ500MHz及び126MHz)で記録し、内部CDCl3(1H、δ=7.26)、CDCl3(13C、δ=77.16)に対して報告した。1H NMR スペクトルに対するデータは、以下のように報告されている:化学シフト(δppm)(多重度、カップリング定数(Hz)、積分)。多重度及び修飾語の略語は、以下の通りである:s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、p=五重線、hept=七重線、m=多重線。IRスペクトルは、Perkin Elmer Paragon 1000分光計で記録し、吸収周波数(cm-1)で報告されている。分析キラルSFCは、Chiralcel OD-Hカラム(4.6mm×25cm)を用いたMettler SFC超臨界CO2分析クロマトグラフィーシステム(CO2=1450psi、カラム温度=40℃)で行った。分取及び分析キラルHPLCは、Chiralpak IHカラム(4.6mm×25cm、Daicel Chemical Industries, Ltd.)を用いたS3 Agilent 1100 Series HPLCで行った。HRMSは、エレクトロスプレーイオン化(ESI)様式でAgilent G1978Aマルチモードソースを用いたAgilent 6200 Series TOFを使用して得た。化合物[M]の分子式は、括弧内の観察されたイオンのフラグメントと、例えば[M+H]+で示される。塩化ベンゾイル、塩化ジフェニルアセチル、イッテルビウム(III)トリフレート、式(IV-1)の2,6-ビス[(4S)-4-フェニル-2-オキサゾリニル]ピリジン、及び式(IV-10)の2,6-ビス((S)-4,5-ジヒドロ-4-フェネチルオキサゾール-2-イル)ピリジンは、Sigma-Aldrichから購入し、入手したままで使用した。イソプレンは、Sigma-Aldrichから購入し、使用する前に蒸留した。ジアセチルは、TCI Americaから購入し、入手したままで使用した。イットリウム(III)トリフレート、ランタン(III)トリフレート、セリウム(III)トリフレート、プラセオジム(III)トリフレート、ネオジム(III)トリフレート、ユーロピウム(III)トリフレート、ガドリニウム(III)トリフレート、テルビウム(III)トリフレート、ジスプロシウム(III)トリフレート、ホルミウム(III)トリフレート、エルビウム(III)トリフレート及びルテチウム(III)トリフレートは、Strem Chemicals, Inc.から購入し、入手したままで使用した。スカンジウム(III)トリフレート、サマリウム(III)トリフレート及びイッテルビウム(III)トリフレートは、Sigma-Aldrichから購入し、入手したままで使用した。トリエチルアミンは、使用する前に、水素化カルシウム上で蒸留した。ジクロロメタン、トルエン、テトラヒドロフラン、メチル-tert-ブチルエーテル及びジエチルエーテルは、Fisher Scientificから購入し、活性アルミナカラムを通過させることにより乾燥させた。1,2-ジクロロエタン、テトラクロロメタン、トリクロロエチレン、アセトニトリル、1,4-ジオキサン、2,5-ジメチルテトラヒドロフラン(シス及びトランスの混合物)、シクロペンチル-メチルエーテル及びジイソプロピルエーテルは、Sigma-Aldrichから購入した。ジュウテリオクロロホルムは、Cambridge Isotope Laboratoriesから購入した。3Å分子ふるいは、Sigma-Aldrichから購入し、使用する前に、減圧(100mTorr)にて火炎下で20分加熱することにより活性化させた。
【0262】
式(II)の化合物の調製:
式IIの化合物に対する一般的手順A(以下のスキームAも参照されたい):磁気撹拌棒を備えた乾燥丸底フラスコに、ジアセチル(IX)(1.0equiv.)、トリエチルアミン(1.2equiv.)及び乾燥ジクロロメタンを入れた。この溶液に、N2下で求電子剤(1.0equiv.)を0℃にて添加した。反応をゆっくり23℃に温め、TLCによりモニターした。完了したら、ヘキサン(35mL)を添加し、反応混合物は、砂のプラグを通して濾過した。生じた溶液を減圧下で濃縮し、残渣にシリカゲルクロマトグラフィーを施した。
【0263】
【0264】
式(II-1)の3-オキソブタ-1-エン-2-イルベンゾエートの調製:
【0265】
【化69】
式(II-1)の3-オキソブタ-1-エン-2-イルベンゾエートは、ジアセチル(IX)(2.62mL、30.0mmol、1.0equiv.)、トリエチルアミン(5.02mL、36.0mmol、1.2equiv.)、塩化ベンゾイル(3.48mL、30.0mmol、1.0equiv)及び乾燥ジクロロメタン(35mL)から、一般的手順Aに従って調製した。生じた溶液を減圧下で濃縮し、残渣にシリカゲルクロマトグラフィー(1:20 EtOAc:ヘキサン→1:10 EtOAc:ヘキサン)を施して、式(II-1)の3-オキソブタ-1-エン-2-イルベンゾエート(2.38g、12.5mmol、42%)を黄色油状物として得、これは、-20℃にて保存すると固化した。分光分析データは、以前に報告されている値(Tamariz, J.、Vogel, P. Helv. Chim. Acta 1981年、64(1)、188~197頁参照)に一致した。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 8.12 (dt, J = 7.0, 1.4 Hz, 2H), 7.74 - 7.56 (m, 1H), 7.56 - 7.40 (m, 2H), 6.04 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 5.74 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 2.42 (s, 3H).
【0266】
式(II-2)の3-オキソブタ-1-エン-2-イル2,2-ジフェニルアセテートの調製:
【0267】
【化70】
式(II-2)の3-オキソブタ-1-エン-2-イル2,2-ジフェニルアセテートは、ジアセチル(IX)(2.19mL、25.0mmol、1.0equiv.)、トリエチルアミン(4.18mL、30.0mmol、1.2equiv.)、塩化ジフェニルアセチル(2.90mL、25.0mmol、1.0equiv)及び乾燥ジクロロメタン(35mL)から、一般的手順Aに従って調製した。生じた溶液を減圧下で濃縮し、残渣にシリカゲルクロマトグラフィー(1:20 EtOAc:ヘキサン→1:10 EtOAc:ヘキサン)を施して、式(II-2)の3-オキソブタ-1-エン-2-イル2,2-ジフェニルアセテート(3.1g、12.7mmol、74%)を白色固体として得た。分光分析データは、以前に報告されている値(Dominguez, D.、Cava, M. P. Tetrahedron Lett. 1982年、23(52)、5513~5516頁参照)に一致した。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.25 - 7.50 (m, 10H), 5.93 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 5.57 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 5.22 (s, 2H), 2.28 (s, 6H).
13C NMR (101 MHz, CDCl
3) δ 191.54, 170.58, 151.67, 137.88, 128.78, 128.70, 127.53, 113.93, 56.60, 25.48.
【0268】
式(II-3)の3-オキソブタ-1-エン-2-イル(3r,5r,7r)-アダマンタン-1-カルボキシレートの調製:
【0269】
【化71】
式(II-3)の3-オキソブタ-1-エン-2-イル(3r,5r,7r)-アダマンタン-1-カルボキシレートは、ジアセチル(IX)(1.32mL、15.0mmol、1.0equiv.)、トリエチルアミン(2.51mL、18.0mmol、1.2equiv.)、1-アダマンタンカルボニルクロリド(2.98g、15mmol、1.0equiv)及び乾燥ジクロロメタン(20mL)から、23℃にて30hで一般的手順Aに従って調製した。生じた溶液を減圧下で濃縮し、残渣にシリカゲルクロマトグラフィー(1:20 EtOAc:ヘキサン→1:10 EtOAc:ヘキサン)を施して、式(II-3)の3-オキソブタ-1-エン-2-イル(3r,5r,7r)-アダマンタン-1-カルボキシレート(816mg、3.29mmol、22%)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 5.90 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 5.54 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 2.34 (s, 3H), 2.06 (q, J = 3.0 Hz, 3H), 2.01 (d, J = 2.9 Hz, 6H), 1.75 (dt, J = 4.5, 2.9 Hz, 6H).
【0270】
式(II-4)の3-オキソブタ-1-エン-2-イル1-ナフトエートの調製:
【0271】
【化72】
式(II-4)の3-オキソブタ-1-エン-2-イル1-ナフトエートは、ジアセチル(IX)(1.32mL、15.0mmol、1.0equiv.)、トリエチルアミン(2.51mL、18.0mmol、1.2equiv.)、1-ナフトイルクロリド(2.26mL、15.0mmol、1.0equiv)及び乾燥ジクロロメタン(18mL)から、一般的手順Aに従って調製した。生じた溶液を減圧下で濃縮し、残渣にシリカゲルクロマトグラフィー(1:20 EtOAc:ヘキサン→1:10 EtOAc:ヘキサン)を施して、式(II-4)の3-オキソブタ-1-エン-2-イル1-ナフトエート(1.54g、6.4mmol、43%)を得た。分光分析データは、以前に報告されている値(Tamariz, J.、Vogel, P. Helv. Chim. Acta 1981年、64(1)、188~197頁参照)に一致した。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 8.94 (dq, J = 8.7, 0.8 Hz, 1H), 8.39 (dd, J = 7.3, 1.3 Hz, 1H), 8.09 (ddt, J = 8.2, 1.3, 0.6 Hz, 1H), 7.91 (ddt, J = 8.2, 1.3, 0.6 Hz, 1H), 7.64 (ddd, J = 8.6, 6.8, 1.4 Hz, 1H), 7.60 - 7.51 (m, 2H), 6.09 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 5.81 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 2.47 (s, 3H).
【0272】
式(II-5)の3-オキソブタ-1-エン-2-イル2-ナフトエートの調製:
【0273】
【化73】
式(II-5)の3-オキソブタ-1-エン-2-イル2-ナフトエートは、ジアセチル(IX)(1.32mL、15.0mmol、1.0equiv.)、トリエチルアミン(2.51mL、18.0mmol、1.2equiv.)、2-ナフトイルクロリド(2.26mL、15.0mmol、1.0equiv)及び乾燥ジクロロメタン(18mL)から、一般的手順Aに従って調製した。生じた溶液を減圧下で濃縮し、残渣にシリカゲルクロマトグラフィー(1:20 EtOAc:ヘキサン→1:10 EtOAc:ヘキサン)を施して、式(II-5)の3-オキソブタ-1-エン-2-イル2-ナフトエート(1.54g、6.4mmol、43%)を得た。分光分析データは、以前に報告されている値(Tamariz, J.、Vogel, P. Helv. Chim. Acta 1981年、64(1)、188~197頁参照)に一致した。
【0274】
式(II-10)の3-オキソブタ-1-エン-2-イル4-ニトロベンゾエートの調製:
【0275】
【化74】
式(II-10)の3-オキソブタ-1-エン-2-イル4-ニトロベンゾエートは、ジアセチル(IX)(1.30mL、15.0mmol、1.0equiv)、トリエチルアミン(2.5mL、18.0mmol、1.2equiv)、4-ニトロベンゾイルクロリド(2.78g、15.0mmol、1.0equiv)及び乾燥ジクロロメタン(20mL)から、一般的手順Aに従って調製した。生じた溶液を減圧下で濃縮し、残渣にシリカゲルクロマトグラフィー(1:2 EtOAc/ヘキサン)を施して、式(II-10)の3-オキソブタ-1-エン-2-イル4-ニトロベンゾエート(2.16g、9.2mmol、61%)を白色固体として得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 8.35 - 8.32 (m, 2H), 8.31 - 8.27 (m, 2H), 6.10 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 5.85 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 2.45 (s, 3H).
【0276】
式(IV)のキラル配位子の調製:
式(IV-9)の((4S,4'S,5S,5'S)-ピリジン-2,6-ジイルビス(4,5-ジフェニル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2,1-ジイル))ビス(ナフタレン-1-イルメタノン)の調製:
式(IV-9)のキラル配位子は、以下のスキームに例証され、本明細書で以後より詳細に記載されているように、Bhor及び共同研究者の手順(Bhor, S.ら、Org. Lett.2005年、7(16)、3393~3396頁参照)に従って調製した。
【0277】
【化75】
手順:50ml圧力管に式(X-1)のジメチルピリジン-2,6-ジカルボキシイミデート(483mg、2.50mmol、1.0equiv)、式(XI)の(S,S)-1,2-ジフェニルエタン-1,2-ジアミン(1.11g、5.25mmol、2.1equiv)及び乾燥ジクロロメタン(50ml)を入れた。生じた混合物を還流温度にて2日間撹拌した後で、水(20ml)を添加し、相を分離した。水相を、ジクロロメタン(20ml×2)で抽出した。合わせた有機層を、MgSO
4で乾燥し、溶媒を真空で除去して、薄黄色固体を得、これを、結晶化(酢酸エチル)により精製して、式(XII-1)の2-[(4S,5S)-4,5-ジフェニル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル]-6-[(4R,5R)-4,5-ジフェニル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル]ピリジンを白色固体(1.04g、2.00mmol、80%)として得た。分光分析データは、以前に報告されている値(Bhor, S.ら、Org. Lett.2005年、7(16)、3393~3396頁参照)に一致した。撹拌棒を備えた、オーブン乾燥させた250mL丸底フラスコに、式(XII-1)の2-[(4S,5S)-4,5-ジフェニル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル]-6-[(4R,5R)-4,5-ジフェニル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル]ピリジン(1.58g、3.04mmol、1.0equiv)、4-ジメチルアミノピリジン(1.11g、9.12mmol、3.0equiv)及び乾燥ジクロロメタン(63.1mL)を入れた。生じた混合物を0℃に冷却し、シリンジを経由して、1-ナフトイルクロリド(1.01mL、6.69mmol、2.20equiv)をニート(neat)で添加した。氷浴を次いで除去し、反応混合物を室温にて5時間撹拌した。溶媒を真空で除去し、残渣を飽和NH
4Cl(50ml)と酢酸エチル(50ml)との間で分配し、水相を酢酸エチル(50mL×2)で再度抽出した。合わせた有機層を(MgSO
4で)乾燥し、溶媒を真空で除去した。残渣を結晶化して(酢酸エチル/ヘキサン)、式(IV-9)の((4S,4'S,5S,5'S)-ピリジン-2,6-ジイルビス(4,5-ジフェニル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2,1-ジイル))ビス(ナフタレン-1-イルメタノン)を白色固体(2.46g、2.97mmol、98%)として得た。分光分析データは、以前に報告されている値(Bhor, S.ら、Org. Lett.2005年、7(16)、3393~3396頁参照)に一致した。
【0278】
式(IV-12)の((4S,4'S,5S,5'S)-(4-クロロピリジン-2,6-ジイル)ビス(4,5-ジフェニル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2,1-ジイル))ビス(ナフタレン-1-イルメタノン)の調製:
式(IV-12)のキラル配位子の合成は、以下のスキームに例証され、本明細書で以後より詳細に記載されているように、Bhor及び共著者(Bhor, S.ら、Org. Lett.2005年、7(16)、3393~3396頁参照)の手順から採用した。
【0279】
【化76】
手順:15ml圧力管に、式(X-2)のジメチル4-クロロピリジン-2,6-ジカルボキシイミデート(150mg、0.659mmol、1.0equiv)、式(XI)の(S,S)-1,2-ジフェニルエタン-1,2-ジアミン(294mg、1.38mmol、2.1equiv)及び乾燥ジクロロメタン(4ml)を入れた。生じた混合物を還流温度にて2日間撹拌した後で、水(20ml)を添加し、相を分離した。水相を、ジクロロメタン(20ml×2)で抽出した。合わせた有機層を、MgSO
4で乾燥し、溶媒を真空で除去して、薄黄色固体を得、これを、さらなる精製をせずに次のステップで直接使用した。撹拌棒を備えた、オーブン乾燥させた25mL丸底フラスコに、式(XII-2)の4-クロロ-2-[(4S,5S)-4,5-ジフェニル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル]-6-[(4R,5R)-4,5-ジフェニル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル]ピリジン(111mg、0.2mmol、1.0equiv)、4-ジメチルアミノピリジン(73.3mg、0.6mmol、3.0equiv)及び乾燥ジクロロメタン(8mL)を入れた。生じた混合物を0℃に冷却し、マイクロシリンジを経由して、1-ナフトイルクロリド(66.3mL、0.44mmol、2.20equiv)をニートで添加した。氷浴を次いで除去し、反応混合物を室温にて5時間撹拌した。溶媒を真空で除去し、残渣を飽和NH
4Cl(50ml)と酢酸エチル(50ml)との間で分配し、水相を酢酸エチル(50mL×2)で再度抽出した。合わせた有機層を(MgSO
4で)乾燥し、溶媒を真空で除去した。残渣を結晶化して(酢酸エチル/ヘキサン)、式(IV-12)の((4S,4'S,5S,5'S)-(4-クロロピリジン-2,6-ジイル)ビス(4,5-ジフェニル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2,1-ジイル))ビス(ナフタレン-1-イルメタノン)を白色固体(128mg、0.149mmol、74%)として得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ 7.84 - 6.92 (m, 36H), 5.49 (bs, 2H), 5.20 (bs, 2H).
【0280】
実施例1:Yb3+又はY3+、及びキラル配位子としての式(IV-1)の2,6-ビス[(4S)-4-フェニル-2-オキサゾリニル]ピリジン又は式(IV-10)の2,6-ビス((S)-4,5-ジヒドロ-4-フェネチルオキサゾール-2-イル)ピリジンを含む触媒を用いた、式(I-1)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエート、及び式(I-2)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテートの調製
実施例1.1:式(II-1)の3-オキソブタ-1-エン-2-イルベンゾエートの調製
乾燥ジクロロメタン(35mL)中のジアセチル(2.19mL、25.0mmol、1.0equiv.)及びトリエチルアミン(4.18mL、30.0mmol、1.2equiv.)の溶液に、N2下で塩化ベンゾイルを0℃にて添加した。反応を23℃にゆっくり温めた。14h後、ヘキサン(35mL)を添加し、反応混合物は、砂のプラグを通して濾過した。生じた溶液を減圧下で濃縮し、残渣にシリカゲルクロマトグラフィー(1:20 EtOAc:ヘキサン→1:10 EtOAc:ヘキサン)を施して、式(II-1)の3-オキソブタ-1-エン-2-イルベンゾエート(2.21g、11.6mmol、46%)を黄色油状物として得、これを-20℃にて保存すると固化した。分光分析データは、以前に報告されている値(Tamariz, J.、Vogel, P. Helv. Chim. Acta 1981年、64(1)、188~197頁参照)に一致した。
【0281】
実施例1.2:式(II-2)の3-オキソブタ-1-エン-2-イル2,2-ジフェニルアセテートの調製
乾燥ジクロロメタン(20mL)中のジアセチル(1.32mL、15.0mmol、1.0equiv.)及びトリエチルアミン(2.51mL、18.0mmol、1.2equiv.)の溶液に、N2下で工業用塩化ジフェニルアセチル(3.46g、15.0mmol、1.0equiv.)を23℃にて添加した。24h後、ヘキサン(20mL)を添加し、反応混合物は、1:1 ジクロロメタン:ヘキサンで溶出する砂のプラグを通して濾過した。生じた溶液を減圧下で濃縮し、残渣にシリカゲルクロマトグラフィー(1:20 EtOAc:ヘキサン→1:10 EtOAc:ヘキサン→1:5 EtOAc:ヘキサン)を施して、式(II-2)の3-オキソブタ-1-エン-2-イル2,2-ジフェニルアセテート(3.55g、12.7mmol、85%)を淡黄色固体として得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ = 7.33 (m, 10H), 5.92 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 5.58 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 5.22 (s, 1H), 5.28 (s, 3H).
【0282】
実施例1.3から1.7:様々な量の式(III-1)の2-メチル-1,3-ブタジエン(本明細書で以後「イソプレン」と呼ばれる)、金属カチオンとしてのYb3+又はY3+、及びキラル配位子としての式(IV-1)の2,6-ビス[(4S)-4-フェニル-2-オキサゾリニル]ピリジン又は式(IV-10)の2,6-ビス((S)-4,5-ジヒドロ-4-フェネチルオキサゾール-2-イル)ピリジンを使用することによる、式(I-1)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエート、及び式(I-2)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテートの調製
式(I-1)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエート、及び式(I-2)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテートを、以下のスキーム1に示され、以下の一般的手順でより詳細に記載されているように調製した。
【0283】
【化77】
実施例1.3から1.7の一般的手順:イットリウム(III)トリフレート又はイッテルビウム(III)トリフレート(0.05mmol、0.10equiv.)を、N
2で満たしたグローブボックス内の、オーブン乾燥させた1-ドラムバイアルに添加し、テフロンで裏打ちされたキャップで蓋をした。反応容器を次いでグローブボックスから取り出し、撹拌子、活性化された3Å分子ふるい(35mg)、及び有機溶媒、すなわち乾燥ジクロロメタン中の配位子の溶液(1.0mL、0.06M)を続いて加えた。混合物を23℃にて3h撹拌し、次いで式(III-1)のジエン、すなわちイソプレン(2.5mmol又は5.0mmol、5.0equiv.又は10.0equiv.)、続いてそれぞれのジエノフィル、すなわち式(II-1)の3-オキソブタ-1-エン-2-イルベンゾエート又は式(II-2)の3-オキソブタ-1-エン-2-イル2,2-ジフェニルアセテート(0.50mmol、1.0equiv.)を添加した。反応混合物に次いで蓋をし、絶縁テープで封止した。23℃にて42h撹拌した後で、反応混合物は、ジクロロメタンで溶出するシリカゲルプラグを通して濾過した。生じた溶液を次いで濃縮し、ジメチルスルホンを、
1H NMRに対する内部標準として残渣に添加した。全体の残渣をCDCl
3に溶解し、変換率/収率を
1H NMR分光法により判定した。
式(I-1)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエート:
1H NMR (300 MHz, CDCl
3): δ = 8.02 (m, 2H), 7.58 (m, 1H), 7.46 (m, 2H), 5.34 (br s, 1H), 2.65 (m, 1H), 2.40 (m, 2H), 2.19 (s, 3H), 2.01 (m, 2H), 1.71 (s, 3H).
式(I-2)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテート:
1H NMR (300 MHz, CDCl
3): δ = 7.32 (m, 10H), 5.23 (br s, 1H), 5.04 (s, 1H), 2.46 (m, 1H), 2.30 (m, 1H), 2.14 (m, 1H), 2.00 (s, 3H), 1.81 (m, 3H), 1.59 (br s, 3H).
【0284】
NMR試料を、次いでEMD/Merck シリカゲル 60 F254プレコーティングプレート(0.25mm)に載せ、1:5 EtOAc:ヘキサンで溶出する分取薄層クロマトグラフィーを施した。単離した望ましい生成物に、鏡像異性体過剰率(ee)を判定するためのSFC分析を施した。
【0285】
SFC分析は、Chiralcel AD-H又はICカラム(4.6mm×25cm)を用いたMettler SFC超臨界CO2分析クロマトグラフィーシステム(CO2=1450psi、カラム温度=40℃)を使用して行った。
式(I-1)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエート:Chiralcel ICカラム、2.5mL/min、7%iPrOH/CO2、tminor=11.3min、tmajor=12.3min。
式(I-2)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテート:Chiralcel AD-Hカラム、2.5mL/min、7%iPrOH/CO2、tmajor=11.2min、tminor=13.3min。
【0286】
結果は、以下の表Iで要約されている:
【0287】
【0288】
実施例2:様々な有機溶媒を使用することによる、式(I-1)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエートの調製
式(I-1)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエートを、以下のスキーム2に示されているように調製した。すべてのケースにおいてイッテルビウム(III)トリフレートを使用すること、温度を35℃とすること、及び表IIで列挙されている様々な有機溶媒(すなわちジクロロメタン及びさらなる有機溶媒)を使用することを除いて、実施例1.3から1.7の一般的手順を使用した。
【0289】
【0290】
結果は、以下の表IIで要約されている:
【0291】
【0292】
実施例3:様々な金属塩を使用することによる、式(I-1)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエートの調製
式(I-1)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエートを、以下のスキーム3に示されているように調製した。温度を35℃とすること、及び表IIIで列挙されている様々な金属塩(すなわちイッテルビウム(III)トリフレート及びさらなる金属塩)を使用することを除いて、実施例1.3から1.7の一般的手順を使用した。
【0293】
【0294】
結果は、以下の表IIIで要約されている:
【0295】
【0296】
実施例4:様々なキラル配位子を使用することによる、式(I-1)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエート、式(I-2)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテート、及び式(I-3)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルアダマンタン-2-カルボキシレートの調製
式(I-1)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエート、式(I-2)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテート、及び式(I-3)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルアダマンタン-2-カルボキシレートを、以下のスキーム4に示されているように調製した。様々なキラル配位子、すなわち式(IV-1)の2,6-ビス((S)-4-フェニル-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)ピリジン、式(IV-2)の2,6-ビス((S)-4-(4-ブロモフェニル)-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)ピリジン、及び式(IV-9)の((4S,4'S,5S,5'S)-ピリジン-2,6-ジイルビス(4,5-ジフェニル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2,1-ジイル))ビス(ナフタレン-1-イルメタノン)を以下の表IVで示されているように使用することを除いて、実施例1.3から1.7の一般的手順を使用した。さらに式(II-3)のオキソブタ-1-エン-2-イルアダマンタン-2-カルボキシレートを、式(II)の追加のジエノフィルとして使用した。
【0297】
【0298】
結果は、以下の表IVで要約されている:
【0299】
【0300】
実施例5:様々な温度を使用することによる、式(I-1)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエートの調製
式(I-1)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエートを、以下のスキーム5に示されているように調製した。温度を以下の表Vに示されているように変動させることを除いて、実施例1.3から1.7の一般的手順を使用した。
【0301】
【0302】
結果は、以下の表Vで要約されている:
【0303】
【0304】
実施例6:式(III-2)の2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンをジエンとして使用することによる、式(I-6)の1-アセチル-3,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエート、及び式(I-7)の1-アセチル-3,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテートの調製
式(I-6)の1-アセチル-3,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエート、及び式(I-7)の1-アセチル-3,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテートを、以下のスキーム6に示されているように調製した。式(III-2)の2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンをジエンとして使用することを除いて、実施例1.3から1.7の一般的手順を使用した(以下の表VIも参照されたい)。
【0305】
【0306】
結果は、以下の表VIで要約されている:
【0307】
【0308】
実施例7:式(III-3)の1,3-シクロヘキサジエンをジエンとして使用することによる、式(I-8)の2-アセチルビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2-イルベンゾエート、式(I-9)の2-アセチルビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2-イル2,2-ジフェニルアセテート、及び式(I-10)の2-アセチルビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2-イルアダマンタン-2-カルボキシレートの調製
式(I-8)の2-アセチルビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2-イルベンゾエート、式(I-9)の2-アセチルビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2-イル2,2-ジフェニルアセテート、及び式(I-10)の2-アセチルビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2-イルアダマンタン-2-カルボキシレートを、以下のスキーム7に示されているように調製した。式(III-3)の1,3-シクロヘキサジエンをジエンとして使用することを除いて、実施例1.3から1.7の一般的手順を使用した。さらに、式(II-3)のオキソブタ-1-エン-2-イルアダマンタン-2-カルボキシレートを式(II)の追加のジエノフィルとして使用した。
【0309】
【0310】
結果は以下のように要約されている:
【0311】
【0312】
実施例8:式(I-1)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエート、及び式(I-2)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテートの調製
実施例8.1から8.8の一般的手順:金属塩(0.05mmol、0.10equiv.)を、N2で満たしたグローブボックス内の、オーブン乾燥させた1-ドラムバイアルに添加し、テフロンで裏打ちされたキャップで蓋をした。反応容器を、次いでグローブボックスから取り出し、撹拌子及び乾燥有機溶媒中のキラル配位子(IV)の溶液(1.0mL、0.06M)を続いて加えた。混合物を23℃にて3h撹拌し、次いで式(III-1)のジエン、すなわちイソプレン(2.5mmol又は5.0mmol、5.0equiv.又は10.0equiv.)、続いてそれぞれのジエノフィル、すなわち式(II-1)の3-オキソブタ-1-エン-2-イルベンゾエート又は式(II-2)の3-オキソブタ-1-エン-2-イル2,2-ジフェニルアセテート(0.50mmol、1.0equiv.)を添加した。反応混合物に次いで蓋をし、絶縁テープで封止した。23℃にて42h撹拌した後で、反応混合物は、ジクロロメタンで溶出するシリカゲルプラグを通して濾過した。生じた溶液を次いで濃縮し、ジメチルスルホンを、1H NMRに対する内部標準として残渣に添加した。全体の残渣をCDCl3に溶解し、変換率/収率を1H NMR分光法により判定した。NMR試料を、次いでEMD/Merckシリカゲル60 F254プレコーティングプレート10(0.25 mm)に載せ、1:5 EtOAc:ヘキサンで溶出する分取薄層クロマトグラフィーを施した。単離した望ましい生成物に、鏡像異性体過剰率(ee)を判定するためのSFC分析を施した。SFC分析は、Chiralcel AD-H又はICカラム(4.6mm×25cm)を用いたMettler SFC超臨界CO2分析クロマトグラフィー15システム(CO2=1450psi、カラム温度=40℃)を使用して行った。式(I-1)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエート:Chiralcel ICカラム、2.5mL/min、7%iPrOH/CO2、tminor=11.3min、tmajor=12.3min。式(I-2)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテート:Chiralcel AD-Hカラム、2.5mL/min、7%iPrOH/CO2、tminor=11.2min、tmajor=13.3min。
【0313】
【0314】
結果は、以下の表VIIで要約されている:
【0315】
【0316】
実施例9:式(III-2)の2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンをジエンとして使用することによる、式(I-7)の1-アセチル-3,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテート、式(I-11)の1-アセチル-3,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル1-ナフトエート、及び式(I-12)の1-アセチル-3,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2-ナフトエートの調製
式(I-7)の1-アセチル-3,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテート、式(I-11)の1-アセチル-3,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル1-ナフトエート、及び式(I-12)の1-アセチル-3,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2-ナフトエートを、以下のスキーム9に示されているように調製した。式(III-2)の2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンをジエンとして使用することを除いて、実施例8.1から8.8の一般的手順を使用した(以下の表VIIIも参照されたい)。
【0317】
【0318】
結果は、以下の表VIIIで要約されている:
【0319】
【0320】
SFC分析は、Chiralcel AD-H又はICカラム(4.6mm×25cm)を用いたMettler SFC超臨界CO2分析クロマトグラフィー15システム(CO2=1450psi、カラム温度=40℃)を使用して行った。
式(I-11)の1-アセチル-3,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル1-ナフトエート:Chiralcel ICカラム、2.5mL/min、15%iPrOH/CO2、tminor=9.8min、tmajor=10.5min。式(I-12)の1-アセチル-3,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2-ナフトエート:Chiralcel ICカラム、2.5mL/min、15%iPrOH/CO2、tminor=10.4min、tmajor=12.0min。
1-アセチル-3,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル1-ナフトエート(I-11):
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.94 - 8.70 (m, 1H), 8.16 (dd, J = 7.3, 1.3 Hz, 1H), 8.05 (dt, J = 8.2, 1.1 Hz, 1H), 7.95 - 7.83 (m, 1H), 7.67 - 7.43 (m, 3H), 2.72 (d, J = 17.9 Hz, 1H), 2.50 - 2.33 (m, 2H), 2.27 (d, J = 0.4 Hz, 3H), 2.25 - 2.15 (m, 1H), 2.13 - 1.89 (m, 2H), 1.74 - 1.68 (m, 6H).
1-アセチル-3,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2-ナフトエート(I-12):
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.65 - 8.52 (m, 1H), 8.08 - 7.94 (m, 2H), 7.91 - 7.84 (m, 2H), 7.69 - 7.44 (m, 2H), 2.70 (d, J = 17.9 Hz, 1H), 2.49 - 2.29 (m, 2H), 2.23 (s, 3H), 2.29-2.14 (m, 1H), 2.09 - 1.81 (m, 2H), 1.68 (s, 6H).
【0321】
実施例10:式(I-2)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテートの調製
式(I-2)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテートを、以下のスキーム10に示されているように調製した。一部の実施例で、ジエノフィルの添加後に添加剤を添加することを除いて、実施例8.1から8.8の一般的手順を使用した(以下の表IXも参照されたい)。
【0322】
【0323】
結果は、以下の表IXで要約されている:
【0324】
【0325】
実施例11:式(I-13)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル1-ナフトエート、及び式(I-14)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2-ナフトエートの調製
式(I-13)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル1-ナフトエート、及び式(I-14)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2-ナフトエートを、以下のスキーム11に示されているように調製した。配位子の前に活性化された3Å分子ふるい(35 mg)を添加することを除いて、実施例8.1から8.8の一般的手順を使用した(以下の表Xも参照されたい)。
【0326】
【0327】
結果は、以下の表Xで要約されている:
【0328】
【0329】
SFC分析は、Chiralcel AD-H又はICカラム(4.6mm×25cm)を用いたMettler SFC超臨界CO2分析クロマトグラフィー15システム(CO2=1450psi、カラム温度=40℃)を使用して行った。
式(I-13)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル1-ナフトエート:Chiralcel ICカラム、2.5mL/min、20%iPrOH/CO2、tminor=6.7min、tmajor=7.2min。式(I-14)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2-ナフトエート:Chiralcel ICカラム、3.0mL/min、15%iPrOH/CO2。
【0330】
実施例12:
式(I-5)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルピバレート、式(I-15)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2-ブロモベンゾエート、式(I-16)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル4-(tert-ブチル)ベンゾエート、式(I-17)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル4-ニトロベンゾエート、式(I-13)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル1-ナフトエート、及び式(I-14)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2-ナフトエートの調製
式(I-5)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルピバレート、式(I-15)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2-ブロモベンゾエート、式(I-16)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル4-(tert-ブチル)ベンゾエート、式(I-17)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル4-ニトロベンゾエート、式(I-13)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル1-ナフトエート、及び式(I-14)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2-ナフトエートを、以下のスキーム12に示されているように調製した。実施例8.1から8.8の一般的手順を使用した。
【0331】
【化89】
結果は、以下に要約されている通りである:
【0332】
【0333】
SFC分析は、Chiralcel AD-H又はICカラム(4.6mm×25cm)を用いたMettler SFC超臨界CO2分析クロマトグラフィー15システム(CO2=1450psi、カラム温度=40℃)を使用して行った。
式(I-5)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルピバレート:Chiralcel AD-Hカラム、2.5mL/min、4%iPrOH/CO2、tminor=3.0min、tmajor=3.4min、式(I-15)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2-ブロモベンゾエート:Chiralcel ICカラム、3.0mL/min、15%iPrOH/CO2、式(I-16)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル4-(tert-ブチル)ベンゾエート:Chiralcel ICカラム、2.5mL/min、10%iPrOH/CO2、tminor=9.4min、tmajor=10.7min、式(I-17)の1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル4-ニトロベンゾエート:Chiralcel ICカラム、3.0mL/min、15%iPrOH/CO2、tminor=9.3min、tmajor=10.1min。
1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルピバレート(I-5):
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 5.47 (s, 1H), 2.51 (d, J = 18.2 Hz, 1H), 2.40 (s, 1H), 2.28 (d, J = 18.1 Hz, 1H), 2.24 - 2.16 (m, 1H), 2.13 (s, 3H), 2.04 (d, J = 11.0 Hz, 1H), 2.01 - 1.90 (m, 1H), 1.68 (s, 3H), 1.21 (s, 9H).
1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2-ブロモベンゾエート(I-15):
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.80 - 7.72 (m, 1H), 7.72 - 7.63 (m, 1H), 7.42 - 7.30 (m, 2H), 5.35 (dp, J = 4.7, 1.5 Hz, 1H), 2.73 - 2.63 (m, 1H), 2.48 (d, J = 18.4 Hz, 1H), 2.44 - 2.35 (m, 1H), 2.26 (s, 3H), 2.23 - 2.14 (m, 1H), 2.07 - 1.93 (m, 2H), 1.74 - 1.69 (m, 3H).
1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル4-(tert-ブチル)ベンゾエート(I-16):
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.05 (s, 2H), 7.94 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 5.59 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 2.62 (d, J = 18.4 Hz, 1H), 2.30 (t, J = 16.0 Hz, 1H), 2.18 (s, 3H), 2.16 - 1.90 (m, 4H), 1.69 (s, 3H), 1.34 (dd, J = 3.9, 1.5 Hz, 9H).
1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル4-ニトロベンゾエート(I-17):
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.31 - 8.26 (m, 2H), 8.21 - 8.15 (m, 2H), 5.47 (s, 1H), 2.67 (d, J = 18.1 Hz, 1H), 2.50 (s, 1H), 2.43 - 2.36 (m, 1H), 2.22 (s, 3H), 2.16 - 1.92 (m, 3H), 1.71 (d, J = 1.6 Hz, 3H).
1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル1-ナフトエート(I-13):
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.85 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 8.17 (dd, J = 7.3, 1.3 Hz, 1H), 8.05 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.90 (dt, J = 8.0, 1.0 Hz, 1H), 7.57 - 7.46 (m, 3H), 5.42 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 2.70 (d, J = 18.2 Hz, 1H), 2.55 (d, J = 18.3 Hz, 1H), 2.43 (ddd, J = 13.5, 5.3, 2.5 Hz, 1H), 2.27 (s, 3H), 2.21 (d, J = 14.2 Hz, 1H), 2.12 - 1.95 (m, 2H), 1.76 (s, 3H).
1-アセチル-4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2-ナフトエート(I-14):
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.61 - 8.55 (m, 1H), 8.02 (dd, J = 8.6, 1.7 Hz, 1H), 8.00 - 7.95 (m, 1H), 7.94 - 7.86 (m, 2H), 7.59 (dddd, J = 25.8, 8.1, 6.9, 1.3 Hz, 2H), 5.39 (tt, J = 3.6, 1.6 Hz, 1H), 2.73 - 2.65 (m, 1H), 2.53 (d, J = 17.9 Hz, 1H), 2.42 (ddt, J = 10.4, 5.1, 2.6 Hz, 1H), 2.23 (s, 3H), 2.17 (s, 1H), 2.09 - 1.99 (m, 2H), 1.73 (t, J = 1.7 Hz, 3H).
【0334】
実施例13:1-アセチル-3,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエート(I-1)、及び式(I-2)の1-アセチル-3,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル2,2-ジフェニルアセテートの調製
1-アセチル-3,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イルベンゾエート(I-1)、及び式(I-2)の1-アセチル-3,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル 2,2-ジフェニルアセテートを、以下のスキーム13に示されているように調製した。ジエンの量を変動させることを除いて、実施例8.1から8.8の一般的手順を使用した(以下の表XIを参照されたい)。
【0335】
【0336】
【国際調査報告】