(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】イヌCTLA-4に対するイヌ化抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20220930BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220930BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220930BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220930BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220930BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220930BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220930BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 N
A61P37/04
A61P35/00
A61P31/00
A61P43/00 105
A61P43/00 171
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502248
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(85)【翻訳文提出日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 EP2020069923
(87)【国際公開番号】W WO2021009187
(87)【国際公開日】2021-01-21
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】510000976
【氏名又は名称】インターベット インターナショナル ベー. フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】モージー,モハマド
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ユアンチョン
(72)【発明者】
【氏名】ターピー,イアン
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085AA16
4C085AA38
4C085CC23
4C085DD62
4C085DD86
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、イヌCTLA-4に対して特異的な配列及び高い結合親和性を有する、イヌCTLA-4に対するイヌ化マウス抗体を提供する。本発明は、さらに、イヌCTLA-4.5に対するイヌ化マウス抗体のためのイヌCTLA-4のエピトープも提供する。本発明は、さらに、イヌ及び他のコンパニオンアニマルにおける癌の治療におけるこれらの抗体の使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)に結合し、そして、イヌCTLA-4とイヌCD80の結合をブロックするか、イヌCTLA-4とイヌCD86の結合をブロックするか、又は、イヌCTLA-4とイヌCD80の結合及びイヌCTLA-4とイヌCD86の結合の両方をブロックする、単離された哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントであって、
ここで、該抗体は、6つの相補性決定領域(CDR)のセットを含み、そのうちの3つは、軽鎖CDR〔CDR軽1(CDRL1)、CDR軽2(CDRL2)及びCDR軽3(CDRL3)〕であり;そして、そのうちの3つは、重鎖CDR〔CDR重1(CDRH1)、CDR重2(CDRH2)及びCDR重3(CDRH3)〕であり;
ここで、6つのCDRのセットは、(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)及び(vi)からなるセットの群から選択され;
ここで、セット(i)の場合、
CDRL1は、配列番号92、配列番号92の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス4を含む配列番号92の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRL2は、配列番号94、配列番号94の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号94の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRL3は、配列番号96、配列番号96の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号96の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRH1は、配列番号86、配列番号86の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号86の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRH2は、配列番号88、配列番号88の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス2Aを含む配列番号88の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;及び、
CDRH3は、配列番号90、配列番号90の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス7を含む配列番号90の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
ここで、セット(ii)の場合、
CDRL1は、配列番号104、配列番号104の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号104の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRL2は、配列番号106、配列番号106の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号106の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRL3は、配列番号108、配列番号108の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号108の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRH1は、配列番号98、配列番号98の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号98の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRH2は、配列番号100、配列番号100の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス4を含む配列番号100の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;及び、
CDRH3は、配列番号102、配列番号102の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス9を含む配列番号102の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
ここで、セット(iii)の場合、
CDRL1は、配列番号117、配列番号117の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス4を含む配列番号117の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRL2は、配列番号94、配列番号94の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号94の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRL3は、配列番号96、配列番号96の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号96の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRH1は、配列番号86、配列番号86の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号86の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRH2は、配列番号88、配列番号88の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス2Aを含む配列番号88の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;及び、
CDRH3は、配列番号113、配列番号113の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス7を含む配列番号113の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
ここで、セット(iv)の場合、
CDRL1は、配列番号119、配列番号119の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス4を含む配列番号119の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRL2は、配列番号122、配列番号122の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号122の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRL3は、配列番号96、配列番号96の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号96の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRH1は、配列番号86、配列番号86の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号86の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRH2は、配列番号88、配列番号88の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス2Aを含む配列番号88の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;及び、
CDRH3は、配列番号115、配列番号115の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス7を含む配列番号115の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
ここで、セット(v)の場合、
CDRL1は、配列番号118、配列番号118の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス4を含む配列番号118の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRL2は、配列番号121、配列番号121の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号121の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRL3は、配列番号96、配列番号96の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号96の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRH1は、配列番号109、配列番号109の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号109の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRH2は、配列番号111、配列番号111の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス2Aを含む配列番号111の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;及び、
CDRH3は、配列番号114、配列番号114の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス7を含む配列番号114の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;並びに、
ここで、セット(vi)の場合、
CDRL1は、配列番号120、配列番号120の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス2を含む配列番号120の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRL2は、配列番号123、配列番号123の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号123の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRL3は、配列番号124、配列番号124の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号124の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRH1は、配列番号110、配列番号110の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号110の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRH2は、配列番号112、配列番号112の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス2Aを含む配列番号112の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;及び、
CDRH3は、配列番号116、配列番号116の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス12を含む配列番号116の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
前記単離された哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
(a) CDRL1は、配列番号92、配列番号92の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス4を含む配列番号92の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(b) CDRL2は、配列番号94、配列番号94の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号94の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(c) CDRL3は、配列番号96、配列番号96の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号96の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(d) CDRH1は、配列番号86、配列番号86の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号86の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(e) CDRH2は、配列番号88、配列番号88の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス2Aを含む配列番号88の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;及び、
(f) CDRH3は、配列番号90、配列番号90の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス7を含む配列番号90の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
請求項1に記載の単離された哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
(a) CDRL1は、配列番号104、配列番号104の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号104の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(b) CDRL2は、配列番号106、配列番号106の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号106の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(c) CDRL3は、配列番号108、配列番号108の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号108の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(d) CDRH1は、配列番号98、配列番号98の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号98の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(e) CDRH2は、配列番号100、配列番号100の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス4を含む配列番号100の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;及び、
(f) CDRH3は、配列番号102、配列番号102の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス9を含む配列番号102の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
請求項1に記載の単離された哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
(a) CDRL1は、配列番号117、配列番号117の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス4を含む配列番号117の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(b) CDRL2は、配列番号94、配列番号94の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号94の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(c) CDRL3は、配列番号96、配列番号96の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号96の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(d) CDRH1は、配列番号86、配列番号86の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号86の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(e) CDRH2は、配列番号88、配列番号88の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス2Aを含む配列番号88の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む:及び、
(f) CDRH3は、配列番号113、配列番号113の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス7を含む配列番号113の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
請求項1に記載の単離された哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
(a) CDRL1は、配列番号119、配列番号119の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス4を含む配列番号119の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(b) CDRL2は、配列番号122、配列番号122の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号122の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(c) CDRL3は、配列番号96、配列番号96の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号96の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(d) CDRH1は、配列番号86、配列番号86の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号86の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(e) CDRH2は、配列番号88、配列番号88の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス2Aを含む配列番号88の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;及び、
(f) CDRH3は、配列番号115、配列番号115の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス7を含む配列番号115の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
請求項1に記載の単離された哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
(a) CDRL1は、配列番号118、配列番号118の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス4を含む配列番号118の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(b) CDRL2は、配列番号121、配列番号121の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号121の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(c) CDRL3は、配列番号96、配列番号96の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号96の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(d) CDRH1は、配列番号109、配列番号109の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号109の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(e) CDRH2は、配列番号111、配列番号111の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス2Aを含む配列番号111の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;及び、
(f) CDRH3は、配列番号114、配列番号114の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス7を含む配列番号114の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
請求項1に記載の単離された哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
(a) CDRL1は、配列番号120、配列番号120の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス2を含む配列番号120の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(b) CDRL2は、配列番号123、配列番号123の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号123の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(c) CDRL3は、配列番号124、配列番号124の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号124の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(d) CDRH1は、配列番号110、配列番号110の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号110の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(e) CDRH2は、配列番号112、配列番号112の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス2Aを含む配列番号112の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;及び、
(f) CDRH3は、配列番号116、配列番号116の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス12を含む配列番号116の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
請求項1に記載の単離された哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
前記哺乳動物抗体がマウス抗体である、請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載の単離された哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
イヌ化抗体又はそのイヌ化抗原結合フラグメントである、請求項1、2、3、4、5、6若しくは7に記載の単離された哺乳動物抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は請求項8に記載のマウス抗体。
【請求項10】
配列番号128、配列番号129、配列番号130及び配列番号131からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むヒンジ領域を含む、請求項9に記載のイヌ化抗体又はそのイヌ化抗原結合フラグメント。
【請求項11】
イヌ化抗体又はそのイヌ化抗原結合フラグメントである、請求項2に記載の単離された哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
配列番号62、配列番号64及び配列番号66からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖、配列番号74、配列番号76及び配列番号78からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む改変された重鎖、又は、配列番号50、配列番号52及び配列番号54からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖、又は、前記重鎖若しくは前記改変された重鎖と前記軽鎖との組み合わせを含む、請求項11に記載のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項13】
配列番号61、配列番号63及び配列番号65からなる群から選択されるヌクレオチド酸配列によってコード化される重鎖、配列番号73、配列番号75及び配列番号77からなる群から選択されるヌクレオチド酸配列によってコード化される改変された重鎖、及び、配列番号49、配列番号51及び配列番号53からなる群から選択されるヌクレオチド酸配列によってコード化される軽鎖、又は、前記重鎖若しくは前記改変された重鎖と前記軽鎖との組み合わせを含む、請求項12に記載のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項14】
配列番号66のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項12に記載のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項15】
配列番号78のアミノ酸配列を含む改変された重鎖を含む、請求項12に記載のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項16】
配列番号52のアミノ酸配列を含む軽鎖をさらに含む、請求項14又は15に記載のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項17】
配列番号54のアミノ酸配列を含む軽鎖をさらに含む、請求項14又は15に記載のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項18】
イヌ化抗体又はそのイヌ化抗原結合フラグメントである、請求項3に記載の単離された哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項19】
配列番号68、配列番号70及び配列番号72からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖、配列番号80、配列番号82及び配列番号84からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む改変された重鎖、及び、配列番号56、配列番号58及び配列番号60からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖、又は、前記重鎖若しくは前記改変された重鎖と前記軽鎖との組み合わせを含む、請求項18に記載のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項20】
配列番号67、配列番号69及び配列番号71からなる群から選択されるヌクレオチド酸配列によってコード化される重鎖、配列番号79、配列番号81及び配列番号83からなる群から選択されるヌクレオチド酸配列によってコード化される改変された重鎖、及び、配列番号55、配列番号57及び配列番号59からなる群から選択されるヌクレオチド酸配列によってコード化される軽鎖、又は、前記重鎖若しくは前記改変された重鎖と前記軽鎖との組み合わせを含む、請求項19に記載のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項21】
配列番号72のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項19に記載のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項22】
配列番号84のアミノ酸配列を含む改変された重鎖を含む、請求項19に記載のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項23】
配列番号58のアミノ酸配列を含む軽鎖をさらに含む、請求項21又は22に記載のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項24】
配列番号60のアミノ酸配列を含む軽鎖をさらに含む、請求項21又は22に記載のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項25】
前記イヌ化抗体又はその抗原結合フラグメントが、以下の特性:
(i) 1×10
-5M~1×10
-12Mの解離定数(Kd)でイヌCTLA-4に結合する;
(ii) 1×10
2M
-1s
-1~1×10
7M
-1s
-1のオン速度(k
on)でイヌCTLA-4に結合する;
(iii) 1×10
-3s
-1~1×10
-8s
-1のオフ速度(k
off)でイヌCTLA-4に結合する;
(iv) イヌCTLA-4のイヌCD80への結合をブロックする;及び、
(v) イヌCTLA-4のイヌCD86への結合をブロックする;
のうちの1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ全てを示す、請求項9~24のいずれか1項に記載のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項26】
イヌCTLA-4との結合について請求項9~25のいずれか1項と交差競合するイヌ化モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントであって、ここで、イヌ化モノクローナル抗体及びその抗原結合フラグメントは、イヌCTLA-4に結合し、そして、イヌCTLA-4のイヌCD80及び/又はイヌCD86への結合をブロックする、前記イヌ化モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項27】
前記イヌ化抗体が、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135、配列番号136及び配列番号137からなる群から選択されるいずれか1以上のアミノ酸配列に結合する、請求項9~26のいずれか1項に記載のイヌ化抗体。
【請求項28】
配列番号134、配列番号135及び配列番号136からなる群から選択されるいずれか1以上のアミノ酸配列に結合する、請求項27に記載のイヌ化抗体。
【請求項29】
配列番号134及び配列番号136のアミノ酸配列に結合する、請求項28記載のイヌ化抗体。
【請求項30】
配列番号135にさらに結合する、請求項29に記載のイヌ化抗体。
【請求項31】
請求項9~30のいずれか1項に記載のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメントの重鎖をコード化する、単離された核酸。
【請求項32】
請求項9~30のいずれか1項に記載のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖をコード化する、単離された核酸。
【請求項33】
請求項31及び/又は請求項32に記載の単離された核酸を含む、発現ベクター。
【請求項34】
請求項33に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項35】
請求項9~30のいずれか1項に記載のイヌ化抗体及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項36】
免疫細胞の活性を増大させる方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の請求項35に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項37】
前記方法が、
(i) 癌を治療するために;
(ii) 感染症又は感染性疾患を治療するために;
(iii) ワクチンアジュバントとして;又は、
(iv) それらの任意の組み合わせのために;
使用される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
配列番号132及び配列番号133からなる群から選択されるアミノ酸配列と90%以上同一であり、して、請求項9~26のイヌ化抗体のいずれか1つに結合する5~25のアミノ酸残基を含む、単離されたペプチド。
【請求項39】
前記アミノ酸配列が、配列番号134、配列番号135及び配列番号136からなる群から選択されるアミノ酸配列と90%以上同一である、請求項38に記載の単離されたペプチド。
【請求項40】
前記アミノ酸配列が、配列番号134、配列番号135及び配列番号136からなる群から選択されるアミノ酸配列と同一である、請求項39に記載の単離されたペプチド。
【請求項41】
請求項40に記載のペプチドを含む、融合タンパク質。
【請求項42】
非イヌ哺乳動物IgGのFc領域をさらに含む、請求項41に記載の融合タンパク質。
【請求項43】
請求項38、39若しくは40に記載の単離されたペプチド又は請求項41若しくは請求項42に記載の融合タンパク質又はそれらの任意の組み合わせをコード化する、単離された核酸。
【請求項44】
請求項43に記載の単離された核酸を含む、発現ベクター。
【請求項45】
請求項44に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、35 U.S.C. § 119(e)に基づいて、2019年7月15日に出願された米国仮特許出願第62/874,287号、2019年10月25日に出願された、米国仮特許出願第62/926,047号及び2020年7月7日に出願された米国仮特許出願第63/048,873号の優先権を主張するものであり、米国仮特許出願第62/926,047号及び米国仮特許出願第63/048,873号の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、共刺激又は共阻害シグナル伝達経路に関与するタンパク質(これは、CTLA-4を包含する)に対する抗体に関する。より特定的には、本発明は、さらに、特定の配列を有し且つイヌCTLA-4に対する高い結合親和性を有している、イヌCTLA-4に対するイヌ化抗体に関する。本発明は、さらに、イヌの癌の治療における本発明の抗体の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
免疫応答の開始又は終了は、多くの種類の免疫細胞(特に、Tリンパ球及び抗原提示細胞(APC))の表面で発現する一連のタンパク質の間の複雑な相互作用によって活性化されるシグナル伝達経路を介して媒介される。共刺激シグナル伝達経路は、免疫応答の発生をもたらし、そして、最も重要にはT細胞の表面のCD28とAPCの表面のB7.1(CD80としても知られている)及びB7.2(CD86としても知られている)ファミリーメンバーとの相互作用を介して媒介されることが示されている。B7.1及びB7.2は、同様の機能を果たすと考えられている。
【0004】
対照的に、共阻害経路は、免疫応答の阻害又は終結をもたらし、そして、T細胞上の細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)とAPC上のCD80/CD86タンパク質の間の相互作用を介して媒介されることが示されている。さらなる共阻害シグナル伝達経路は、T細胞上のプログラム細胞死受容体1(PD-1)とAPC上のプログラム細胞死受容体リガンド1又は2(PD-L1/PD-L2)タンパク質の間の相互作用を介して媒介されることが示されている。さらに、PD-L1とCD80の間の相互作用も、T細胞内に阻害シグナルをもたらす可能性があることも示されている。
【0005】
CD80及びCD86は、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーである[Sharpe and Freeman,Nature Reviews,2:116-126(2002)]。CD80は、活性化B細胞、活性化T細胞、並びに、マクロファージ及び樹状細胞で発現する[Swanson and Hall,Eur J.Immunol.,23:295-298(1993);Razi-Wolfe et al.,PNAS,89:4210-4214(1992)]。CD86は、樹状細胞、ランゲルハンス細胞及びB細胞で構成的に発現する。さらに、CD86は、単球で発現し、そして、IFN-γ刺激後にアップレギュレーションされる[Larsen et al.,Immunol.,152:5208-5219(1994);Inaba,J.Exp.Med.180:1849-1860(1994)]。
【0006】
CD80及びCD86は、CD28とCTLA-4に結合して、異なる機能的結果をもたらす[Linsley et al.,PNAS,87:5031-5035(1990); Linsley et al.,J.Exp. Med.,173:721-730(1991);Azuma et al.,Nature 366:76-79 (1993);Freeman et al.,Science 262:909-912(1993)]。CD80及びCD86のCTLA-4への結合は、CD80/CD86のCD28への結合よりも極めて高い親和性を示す[van der Merwe,J.Exp.Med.185:393-402(1997)]。
【0007】
CD28は、Igスーパーファミリーのメンバーであるホモ二量体糖タンパク質である[Aruffo and Seed,PNAS,84:8573-8577 (1987)]。成熟タンパク質は、カウンター受容体結合に不可欠なヘキサペプチドモチーフMYPPPYを含む134アミノ酸残基からなる単一の細胞外可変ドメインを有している[Riley and June,Blood,105:13-21(2005)]。CD28の41アミノ酸の細胞質ドメインは、活性化時にリン酸化され得る4つのチロシン残基を含む[Sharpe and Freeman,Nat.Rev.Immunol.,2:116-126(2002)]。CD28は、CD4+T細胞の大部分とCD8+T細胞の約50%で発現する[Gross et al.,J.Immunol.,149:380-388(1992);Riley and June,Blood,105:13-21(2005)]。T細胞受容体(TCR)ライゲーション後、CD28に結合しているB7.1/B7.2は、重要な共刺激シグナルをT細胞に提供して、T細胞の活性化とそれに続く免疫応答の発生を可能にする[Reiser et al.,PNAS,89:271-275(1992);Jenkins et al.,J.Immunol.,147:2461-2466(1991)]。CD28シグナルの非存在下では、T細胞はアポトーシスを起こすか又は無反応状態になることが示されている[Jenkins et al.,J.Exp.Med.165:302-319(1987);Jenkins et al.,PNAS,84:5409-5413(1987);Schwartz,Science,248:1349-1356 (1990)]。CD28-B7.1/B7.2結合は、活性化に必要なTCRライゲーションの閾値レベル(例えば、抗原-MHC複合体の量)を変化させ、ナイーブ細胞を刺激するのに必要な時間を短縮し、T細胞応答の大きさを高めることができる[Soskic et al.,Advances in Immunology,124:96-123(2014)]。
【0008】
CTLA-4(CD152)も、Igスーパーファミリーのメンバーであり、そして、単一の細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン及び短い細胞質尾部からなる[Swanson,Immunology;1010:169-177(2000)]。さらに、CTLA-4は、CD28と約30%のアミノ酸同一性を共有している。CTLA-4は、ナイーブT細胞では構成的に発現しないが、CD28ライゲーションとT細胞活性化の直後に急速にアップレギュレーションされ、最初のT細胞活性化後約48~96時間でCTLA-4の発現レベルがピークになる[Alegre et al.,J.Immunol.,157:4762-4770(1996);Freeman et al.,J.Immunol.,149:3795-3801(1992)]。CTLA-4は、CD28よりも極めて高い親和性でB7.1及びB7.2の両方に結合する[van der Merwe et al.,J.Exp.Med., 185:393-402 (1997)]。しかしながら、CD28結合B7.1又はB7.2の刺激効果とは対照的に、CTLA-4は、免疫応答のダウンモジュレーションに不可欠な抑制性受容体として機能する[Walnus et al.,Immunity,1:405-413(1994); Walnus,J.Exp.Med.,183:2541-2550(1996);Krummel and Allison,J.Exp.Med.,183:2533-2540(1996)]。CTLA-4がその免疫抑制機能を媒介する機序は、CD28とCD80/CD86の間の相互作用の競合的阻害剤として作用する能力に関連している[「Swanson,Immunology,1010:169-177 (2000)」において概説されている]。免疫ダウンレギュレーションにおけるCTLA-4の重要な役割は、CTLA-4欠損マウスで実証されており、そのCTLA-4欠損マウスは、複数の臓器へのT細胞浸潤を特徴とするリンパ増殖性疾患の発症により3~5週齢で死亡する[Tivol et al.,Immunity,3:541-5417(1995);Waterhouse et al.,Science,270:985-988(1995)]。CTLA-4ノックアウトの結果は、CTLA-4/CD80/CD86トリプルノックアウトマウスでは疾患がないことによって示されるように、CD28とそのリガンドであるCD80及びCD86との相互作用に依存することも実証された[Mandelbrot et al.,J.Exp.Med.,189:435-440(1999)]。このことは、CTLA-4IgをCTLA-4ノックアウトマウスに繰り返し投与することによってもたらされるリンパ増殖に対する保護によっても確認されている[Tivol et al.,J Immunol.,158:5091-5094(1997)]。
【0009】
さらに、CTLA-4の効果を抗体でブロックすると、インビトロ及びインビボでのT細胞応答が増強され、抗腫瘍免疫応答が増大することが示されている[Leach et al.,Science,271:1734-1736 (1996)]。これらの知見に基づいて、癌を治療するための治療モダリティを提供するために、モノクローナル抗体のようなCTLA-4ブロッカーの開発が行われた[Hodi et al.,PNAS,100(8):4712-4717(2003);Phan GQ et al.,PNAS,100(14):8372-8377(2003);Attia,Journal of Clinical Oncology,23(25):6043-6053(2005);Comin-Anduix et al.,Journal of Translational Medicine,6:22-22(2008); WO2000037504A2;U.S.8,017,114B2; WO2010097597A1;WO2012120125A1;及び、Boutros et al.,Nat Rev Clin Oncol.,13(8):473-486(2016)]。
【0010】
PD-1は、免疫調節受容体のCD28/CTLA-4ファミリーのメンバーである。PD-1は、さらに、Igスーパーファミリーのメンバーでもあり、そして、そのリガンドに結合する細胞外可変ドメイン及びシグナル伝達分子に結合する細胞質尾部を含む[「Zak et al.,Cell Structure,25:1163-1174(2017)」において概説されている]。PD-1の細胞質尾部は、2つのチロシンベースのシグナル伝達モチーフを含む[Zhang et al., Immunity 20:337-347 (2004)]。PD-1の発現は、刺激されていないT細胞、B細胞又は骨髄細胞では見られない。しかしながら、PD-1の発現は、活性化後にこれらの細胞でアップレギュレーションされる[Chemnitz et al.,J.Immunol.,173:945-954(2004); Petrvas et al.,J.Exp.Med.,203:2281-2292(2006)]。PD-1は、CTLA-4と最も密接に関連しており、約24%のアミノ酸同一性を共有している[Jin et al.,Current Topics in Microbiology and Immunology,350:17-37(2010)]。PD-1は、APCの表面において発現するPD-L1及びPD-L2に結合すると、T細胞の活性化を低減させる。これらのリガンドのいずれかがPD-1に結合すると、T細胞受容体(TCR)を介した抗原シグナル伝達が負に調節される。今日まで、PD-L1とPD-L2のみがPD-1に対するリガンドとして機能することがわかっている。CTLA-4の場合と同様に、PD-1ライゲーションは負の免疫調節シグナルを伝達するように見える。PD-L1又はPD-L2によるPD-1のライゲーションは、TCRを介した増殖及びサイトカイン産生の阻害をもたらす[Jin et al.,Current Topics in Microbiology and Immunology,350:17-37(2010)]。CTLA-4欠損動物とは対照的に、PD-1欠損マウスは、生涯のかなり後のほうで死亡し、そして、自己免疫の兆候を示すが、観察された影響の重症度は、CTLA-4欠損動物が示すほど深刻ではない[Nishimura et al., Immunity, 11(2):141-151 (1999); Nishimura et al., Science, 291(5502):319-322 (2001)]。PD-1シグナル伝達経路は現在集中的に研究されているが、これまでの研究は、PD-L1/PD-L2/PD-1相互作用が、TCR刺激の下流のシグナルを減少させ、そのことが、サイトカイン分泌の低減及びT細胞増殖の機能障害及びT細胞による細胞毒性分子の産生の低減をもたらすので、一部の免疫応答の負の調節に関与していることを示唆している[Freeman et al.,J.Exp.Med.,192(7):1027-1034(2000)]。
【0011】
PD-L1(CD274)は、1型膜タンパク質であり、そして、IgV様細胞外ドメイン及びIgC様細胞外ドメイン、疎水性膜貫通ドメイン並びにシグナル伝達特性が不明な30アミノ酸からなる短い細胞質尾部からなる。PD-L1は、B7ファミリーのメンバーとして認識されており、B7ファミリーのメンバーと約20%のアミノ酸同一性を共有している。PD-L1は、活性化T細胞、B細胞及び骨髄細胞で見られる受容体PD-1に結合する。PD-L1は、共刺激分子CD80にも結合するが、CD86には結合しない[Butte et al., Immunology, 45 (13):3567-3572 (2008)]。CD80のPD-L1に対する親和性は、CD28及びCTLA-4に対する親和性の中間である。関連分子PD-L2は、CD80又はCD86のいずれにも親和性を有さないが、受容体としてPD-1を共有している。PD-L1がT細胞上のその受容体PD-1に結合すると、TCRが介在するIL-2産生とT細胞増殖を阻害するシグナルが送達される。PD-1に結合するPD-L1は、ナイーブT細胞への抗原提示中にリガンド誘導性のTCRダウンモジュレーションにも寄与する。さらに、PD-L1がT細胞上のCD80に結合すると、T細胞のアポトーシスが起こる。T細胞活性化の阻害剤としてのPD-1及びPD-L1の役割は、多くの研究で実証されている。これらの知見に基づいて、癌及び感染症を治療するための治療モダリティを提供するために、モノクローナル抗体のようなPD-1及びPD-L1ブロッカーの開発が行われた。
【0012】
イヌPD-1、PD-L1及びCTLA-4の結合と活性をブロックするヒト化モノクローナル抗体が開発され、現在、いくつかの異なるタイプの癌のうちの1つと診断されたヒト対象の治療において使用することが可能である。同様に、イヌPD-1及びPDL1の結合と活性をブロックするイヌ化モノクローナル抗体も報告されている[U.S.9,944,704B2、U.S.10,106,607B2及びU.S.2018/0237535A1;これらの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる]。しかしながら、これまで、イヌCTLA-4の結合と活性をブロックするイヌ化モノクローナル抗体は報告されていない。
【0013】
本明細書中における参考文献の引用は、いずれも、そのような参考文献が本出願に対する「先行技術」として利用可能であることを承認するものと解釈されるべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO2000037504A2
【特許文献2】U.S.8,017,114B2
【特許文献3】WO2010097597A1
【特許文献4】WO2012120125A1
【特許文献5】U.S.9,944,704B2
【特許文献6】U.S.10,106,607B2
【特許文献7】U.S.2018/0237535A1
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Sharpe and Freeman, Nature Reviews,2:116-126(2002)
【非特許文献2】Swanson and Hall,Eur J.Immunol.,23:295-298(1993)
【非特許文献3】Razi-Wolfe et al.,PNAS,89:4210-4214(1992)
【非特許文献4】Larsen et al.,Immunol.,152:5208-5219(1994)
【非特許文献5】Inaba,J.Exp.Med.180:1849-1860 (1994)
【非特許文献6】Linsley et al.,PNAS,87:5031-5035 (1990)
【非特許文献7】Linsley et al.,J.Exp.Med., 173:721-730(1991)
【非特許文献8】Azuma et al.,Nature 366:76-79(1993)
【非特許文献9】Freeman et al.,Science 262:909-912(1993)
【非特許文献10】van der Merwe,J.Exp.Med.185:393-402(1997)
【非特許文献11】Aruffo and Seed,PNAS,84:8573-8577(1987)
【非特許文献12】Riley and June,Blood,105:13-21(2005)
【非特許文献13】Sharpe and Freeman,Nat.Rev. Immunol.,2:116-126 (2002)
【非特許文献14】Gross et al.,J.Immunol.,149:380-388(1992)
【非特許文献15】Riley and June,Blood,105:13-21(2005)
【非特許文献16】Reiser et al.,PNAS,89:271-275(1992)
【非特許文献17】Jenkins et al., J. Immunol., 147:2461-2466 (1991)
【非特許文献18】Jenkins et al., J. Exp. Med. 165:302-319 (1987)
【非特許文献19】Jenkins et al., PNAS, 84:5409-5413 (1987)
【非特許文献20】Schwartz, Science, 248:1349-1356 (1990)
【非特許文献21】Soskic et al., Advances in Immunology, 124:96-123 (2014)
【非特許文献22】Swanson, Immunology; 1010:169-177 (2000)
【非特許文献23】Alegre et al., J. Immunol., 157:4762-4770 (1996)
【非特許文献24】Freeman et al., J. Immunol., 149:3795-3801 (1992)
【非特許文献25】van der Merwe et al., J. Exp. Med., 185:393-402 (1997)
【非特許文献26】Walnus et al., Immunity, 1:405-413 (1994)
【非特許文献27】Walnus, J. Exp. Med., 183:2541-2550 (1996)
【非特許文献28】Krummel and Allison, J. Exp. Med., 183:2533-2540 (1996)
【非特許文献29】Swanson, Immunology, 1010:169-177 (2000)
【非特許文献30】Tivol et al., Immunity, 3:541-5417 (1995)
【非特許文献31】Waterhouse et al., Science, 270:985-988 (1995)
【非特許文献32】Mandelbrot et al., J. Exp. Med., 189:435-440 (1999)
【非特許文献33】Tivol et al., J Immunol., 158:5091-5094 (1997)
【非特許文献34】Leach et al., Science, 271:1734-1736 (1996)
【非特許文献35】Hodi et al., PNAS, 100(8):4712-4717 (2003)
【非特許文献36】Phan GQ et al., PNAS,100(14):8372-8377 (2003)
【非特許文献37】Attia, Journal of Clinical Oncology, 23(25):6043-6053 (2005)
【非特許文献38】Comin-Anduix et al., Journal of Translational Medicine, 6:22-22 (2008)
【非特許文献39】Boutros et al., Nat Rev Clin Oncol., 13(8):473-486 (2016)
【非特許文献40】Zak et al., Cell Structure, 25:1163-1174 (2017)
【非特許文献41】Zhang et al., Immunity 20:337-347 (2004)
【非特許文献42】Chemnitz et al., J. Immunol., 173:945-954 (2004)
【非特許文献43】Petrvas et al., J. Exp. Med., 203:2281-2292 (2006)
【非特許文献44】Jin et al., Current Topics in Microbiology and Immunology, 350:17-37 (2010)
【非特許文献45】Jin et al., Current Topics in Microbiology and Immunology, 350:17-37 (2010)
【非特許文献46】Nishimura et al., Immunity, 11(2):141-151 (1999)
【非特許文献47】Nishimura et al., Science, 291(5502):319-322 (2001)
【非特許文献48】Freeman et al., J. Exp. Med., 192 (7):1027-1034 (2000)
【非特許文献49】Butte et al., Immunology, 45 (13):3567-3572 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、イヌCTLA-4に結合する抗イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)抗体に関する。特定の実施形態では、イヌCTLA-4に対する抗体は、イヌCTLA-4に特異的に結合する。より特定の実施形態では、イヌCTLA-4に対する抗体は、さらに、イヌCTLA-4とイヌCD80との結合をブロックする能力も有している。別の特定の実施形態では、イヌCTLA-4に対する抗体は、さらに、イヌCTLA-4とイヌCD86との結合をブロックする能力も有している。さらに別の特定の実施形態では、イヌCTLA-4に対する抗体は、イヌCTLA-4とイヌCD80との結合をブロックすること及びイヌCTLA-4とイヌCD86との結合をブロックすることの両方の能力を有している。
【0017】
さらに、本発明は、これらの抗体によって構成される相補性決定領域(CDR)、及び、イヌ化抗イヌCTLA-4抗体を形成させるためのイヌフレーム内のこれらのCDRの組合せ(例えば、マウス抗イヌCTLA-4抗体から得られる)に関する。本発明は、さらに、癌のような症状の治療におけるそのような抗体の使用に関する。
【0018】
従って、本発明は、6つの例示されたマウス抗イヌCTLA-4抗体に由来するCDRの独特なセットを提供する。6つの例示されたマウス抗イヌCTLA-4抗体は、CDRの独特なセット、即ち、3つの軽鎖CDR〔CDR軽1(CDRL1)、CDR軽2(CDRL2)及びCDR軽3(CDRL3)〕及び3つの重鎖CDR〔CDR重1(CDRH1)、CDR重2(CDRH2)及びCDR重3(CDRH3)〕を有している。以下で詳述されているように、CDRの各グループ内には実質的な配列相同性が存在し、ある程度の重複性さえ存在している(例えば、下記表1内のVL CDR-3のセットを参照されたい)。従って、本発明は、6つの例示されたマウス抗イヌCTLA-4抗体に由来する6つのCDRのアミノ酸配列を提供するだけではなく、さらに、これらのCDRの保存的に修飾された変異体、並びに、同じカノニカル構造を含む(例えば、共有している)及び/又はイヌCTLA-4のエピトープによって構成されるイヌCTLA-4の1以上(例えば、1、2、3、4又はそれ以上)のアミノ酸残基に結合する変異体も提供する。
【0019】
本発明の一態様は、イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質(CTLA-4)に結合する哺乳動物抗体を提供する。特定の実施形態では、本発明の哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、マウス抗体である。好ましい実施形態では、本発明の哺乳動物抗体(これは、本発明のマウス抗体を包含する)又はその抗原結合フラグメントは、イヌ化抗体又はそのイヌ化抗原結合フラグメントである。
【0020】
特定の実施形態では、哺乳動物抗体は、イヌCTLA-4に特異的に結合する。より特定の実施形態では、イヌCTLA-4に対する哺乳動物抗体は、さらに、イヌCTLA-4とイヌCD80との結合をブロックする能力を有している。別の特定の実施形態では、イヌCTLA-4に対する哺乳動物抗体は、さらに、イヌCTLA-4とイヌCD86との結合をブロックする能力を有している。さらに別の特定の実施形態では、イヌCTLA-4に対する哺乳動物抗体は、イヌCTLA-4とイヌCD80との結合をブロックすること及びイヌCTLA-4とイヌCD86との結合をブロックすることの両方の能力を有している。
【0021】
特定の実施形態では、イヌCTLA-4に結合する哺乳動物抗体は、単離された抗体である。本発明は、さらに、イヌCTLA-4に結合するこれらの哺乳動物抗体の抗原結合フラグメントを提供する。特定の実施形態では、抗体は、3つの軽鎖相補性決定領域(CDR)〔CDR軽1(CDRL1)、CDR軽2(CDRL2)及びCDR軽3(CDRL3)〕及び3つの重鎖CDR〔CDR重1(CDRH1)、CDR重2(CDRH2)及びCDR重3(CDRH3)〕を含む。
【0022】
特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号90のアミノ酸配列、配列番号90のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス7を含む配列番号90の変異体を含むCDRH3を含む。より特定的な実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号88のアミノ酸配列、配列番号88のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス2Aを含む配列番号88の変異体を含むCDRH2をさらに含む。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、同様に、配列番号86のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号86のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス1を含む配列番号86の変異体を含むCDRH1をさらに含む。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、同様に、配列番号96のアミノ酸配列、配列番号96のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス1を含む配列番号96の変異体を含むCDRL3をさらに含む。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号94のアミノ酸配列、配列番号94のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス1を含む配列番号94の変異体を含むCDRL2をさらに含む。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、同様に、配列番号92のアミノ酸配列、配列番号92のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス4を含む配列番号92の変異体を含むCDRL1をさらに含む。
【0023】
代替え的な実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号102のアミノ酸配列、配列番号102のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス9を含む配列番号102の変異体を含むCDRH3を含む。より特定的な実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号100のアミノ酸配列、配列番号100のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス4を含む配列番号100の変異体を含むCDRH2をさらに含む。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、同様に、配列番号98のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号98のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス1を含む配列番号98の変異体を含むCDRH1をさらに含む。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、同様に、配列番号108のアミノ酸配列、配列番号108のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス1を含む配列番号108の変異体を含むCDRL3をさらに含む。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、同様に、配列番号106のアミノ酸配列、配列番号106のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス1を含む配列番号106の変異体を含むCDRL2をさらに含む。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、同様に、配列番号104のアミノ酸配列、配列番号104のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス1を含む配列番号104の変異体を含むCDRL1をさらに含む。
【0024】
別の代替え的な実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号113のアミノ酸配列、配列番号113のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス7を含む配列番号113の変異体を含むCDRH3を含む。より特定的な実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号88のアミノ酸配列、配列番号88のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス2Aを含む配列番号88の変異体を含むCDRH2をさらに含む。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、同様に、配列番号86のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号86のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス1を含む配列番号86の変異体を含むCDRH1をさらに含む。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、同様に、配列番号96のアミノ酸配列、配列番号96のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス1を含む配列番号96の変異体を含むCDRL3をさらに含む。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、同様に、配列番号94のアミノ酸配列、配列番号94のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス1を含む配列番号94の変異体を含むCDRL2をさらに含む。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、同様に、配列番号117のアミノ酸配列、配列番号117のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス4を含む配列番号117の変異体を含むCDRL1をさらに含む。
【0025】
さらに別の代替え的な実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号115のアミノ酸配列、配列番号115のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス7を含む配列番号115の変異体を含むCDRH3を含む。より特定的な実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号88のアミノ酸配列、配列番号88のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス2Aを含む配列番号88の変異体を含むCDRH2をさらに含む。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、同様に、配列番号86のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号86のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス1を含む配列番号86の変異体を含むCDRH1をさらに含む。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、同様に、配列番号96のアミノ酸配列、配列番号96のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス1を含む配列番号96の変異体を含むCDRL3をさらに含む。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、同様に、配列番号122のアミノ酸配列、配列番号122のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス1を含む配列番号122の変異体を含むCDRL2をさらに含む。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、同様に、配列番号119のアミノ酸配列、配列番号119のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス4を含む配列番号119の変異体を含むCDRL1をさらに含む。
【0026】
さらに別の代替え的な実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号114のアミノ酸配列、配列番号114のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス7を含む配列番号114の変異体を含むCDRH3を含む。より特定的な実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号111のアミノ酸配列、配列番号111のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス2Aを含む配列番号111の変異体を含むCDRH2をさらに含む。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、同様に、配列番号109のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号109のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス1を含む配列番号109の変異体を含むCDRH1をさらに含む。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、同様に、配列番号96のアミノ酸配列、配列番号96のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス1を含む配列番号96の変異体を含むCDRL3をさらに含む。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、同様に、配列番号121のアミノ酸配列、配列番号121のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス1を含む配列番号121の変異体を含むCDRL2をさらに含む。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、同様に、配列番号118のアミノ酸配列、配列番号118のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス4を含む配列番号118の変異体を含むCDRL1をさらに含む。
【0027】
さらに別の代替え的な実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号116のアミノ酸配列、配列番号116のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス12を含む配列番号116の変異体を含むCDRH3を含む。より特定的な実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号112のアミノ酸配列、配列番号112のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス2Aを含む配列番号112の変異体を含むCDRH2をさらに含む。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、同様に、配列番号110のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号110のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス1を含む配列番号110の変異体を含むCDRH1をさらに含む。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、同様に、配列番号124のアミノ酸配列、配列番号124のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス1を含む配列番号124の変異体を含むCDRL3をさらに含む。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、同様に、配列番号123のアミノ酸配列、配列番号123のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス1を含む配列番号123の変異体を含むCDRL2をさらに含む。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、同様に、配列番号120のアミノ酸配列、配列番号120のアミノ酸配列の保存的に修飾された変異体又はカノニカル構造クラス2を含む配列番号120の変異体を含むCDRL1をさらに含む。
【0028】
上記で示されているように、イヌCTLA-4に対するイヌ化抗体又はそのイヌ化抗原結合フラグメントは、本発明の重要な態様であり、そして、本発明は、そのような全ての哺乳動物抗体のイヌ化哺乳動物抗体(これは、イヌ化マウス抗体を包含する)を提供する。従って、本発明は、さらに、イヌIgG重鎖及びイヌカッパ又はラムダ軽鎖を含むCTLA-4に特異的に結合する、単離されたイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。このタイプの特定の実施形態では、イヌカッパ又はラムダ軽鎖は、3つの軽鎖相補性決定領域(CDR)〔CDR軽1(CDRL1)、CDR軽2(CDRL2)及びCDR軽3(CDRL3)〕を含み;そして、イヌIgG重鎖は、マウス抗イヌCTLA-4抗体から得られる3つの重鎖CDR〔CDR重1(CDRH1)、CDR重2(CDRH2)及びCDR重3(CDRH3)〕を含む。本発明のイヌ化抗体及びその抗原結合フラグメントの特定の実施形態は、イヌCTLA-4に結合する、及び/又は、イヌCTLA-4のイヌCD80及び/又はイヌCD86への結合をブロックする。
【0029】
本発明のイヌ化抗体又はそのイヌ化抗原結合フラグメントは、配列番号128のアミノ酸配列を含むヒンジ領域を含むIgGDを含むことができる。関連する実施形態では、ヒンジ領域は、配列番号129のアミノ酸配列を含む。さらに別の関連する実施形態では、ヒンジ領域は、配列番号130のアミノ酸配列を含む。さらに別の関連する実施形態では、ヒンジ領域は、配列番号131のアミノ酸配列を含む。
【0030】
代替的な実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号62のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。このタイプの特定の実施形態では、重鎖は、配列番号61のヌクレオチド配列によってコード化される。別の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号64のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。このタイプの特定の実施形態では、重鎖は、配列番号63のヌクレオチド配列によってコード化される。さらに別の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号66のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。このタイプの特定の実施形態では、重鎖は、配列番号65のヌクレオチド配列によってコード化される。より特定の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号50のアミノ酸配列を含む軽鎖をさらに含む。このタイプの特定の実施形態では、軽鎖は、配列番号49のヌクレオチド配列によってコード化される。別の特定の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号52のアミノ酸配列を含む軽鎖をさらに含む。このタイプの特定の実施形態では、軽鎖は、配列番号51のヌクレオチド配列によってコード化される。さらに別の特定の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号54のアミノ酸配列を含む軽鎖をさらに含む。このタイプの特定の実施形態では、軽鎖は、配列番号53のヌクレオチド配列によってコード化される。
【0031】
代替え的な実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号74のアミノ酸配列を含む修飾された重鎖を含む。このタイプの特定の実施形態では、修飾された重鎖は、配列番号73のヌクレオチド配列によってコード化される。別の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号76のアミノ酸配列を含む修飾された重鎖を含む。このタイプの特定の実施形態では、修飾された重鎖は、配列番号75のヌクレオチド配列によってコード化される。さらに別の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号78のアミノ酸配列を含む修飾された重鎖を含む。このタイプの特定の実施形態では、修飾された重鎖は、配列番号77のヌクレオチド配列によってコード化される。さらに特定の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号50のアミノ酸配列を含む軽鎖をさらに含む。このタイプの特定の実施形態では、軽鎖は、配列番号49のヌクレオチド配列によってコード化される。別の特定の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号52のアミノ酸配列を含む軽鎖をさらに含む。このタイプの特定の実施形態では、軽鎖は、配列番号51のヌクレオチド配列によってコード化される。さらに別の特定の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号54のアミノ酸配列を含む軽鎖をさらに含む。このタイプの特定の実施形態では、軽鎖は、配列番号53のヌクレオチド配列によってコード化される。
【0032】
特定の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号66のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号52のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。別の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号66のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号54のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0033】
代替え的な実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号78のアミノ酸配列を含む修飾された重鎖及び配列番号52のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。別の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号78のアミノ酸配列を含む修飾された重鎖及び配列番号54のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0034】
別の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号68のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。このタイプの特定の実施形態では、重鎖は、配列番号67のヌクレオチド配列によってコード化される。別の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号70のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。このタイプの特定の実施形態では、重鎖は、配列番号69のヌクレオチド配列によってコード化される。さらに別の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号72のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。このタイプの特定の実施形態では、重鎖は、配列番号71のヌクレオチド配列によってコード化される。より特定の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号56のアミノ酸配列を含む軽鎖をさらに含む。このタイプの特定の実施形態では、軽鎖は、配列番号55のヌクレオチド配列によってコード化される。別の特定の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号58のアミノ酸配列を含む軽鎖をさらに含む。このタイプの特定の実施形態では、軽鎖は、配列番号57のヌクレオチド配列によってコード化される。さらに別の特定の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号60のアミノ酸配列を含む軽鎖をさらに含む。このタイプの特定の実施形態では、軽鎖は、配列番号59のヌクレオチド配列によってコード化される。
【0035】
代替え的な実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号80のアミノ酸配列を含む修飾された重鎖を含む。このタイプの特定の実施形態では、修飾された重鎖は、配列番号79のヌクレオチド配列によってコード化される。別の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号82のアミノ酸配列を含む修飾された重鎖を含む。このタイプの特定の実施形態では、修飾された重鎖は、配列番号81のヌクレオチド配列によってコード化される。さらに別の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号84のアミノ酸配列を含む修飾された重鎖を含む。このタイプの特定の実施形態では、修飾された重鎖は、配列番号83のヌクレオチド配列によってコード化される。さらに特定の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号56のアミノ酸配列を含む軽鎖をさらに含む。このタイプの特定の実施形態では、軽鎖は、配列番号55のヌクレオチド配列によってコード化される。別の特定の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号58のアミノ酸配列を含む軽鎖をさらに含む。このタイプの特定の実施形態では、軽鎖は、配列番号57のヌクレオチド配列によってコード化される。さらに別の特定の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号60のアミノ酸配列を含む軽鎖をさらに含む。このタイプの特定の実施形態では、軽鎖は、配列番号59のヌクレオチド配列によってコード化される。
【0036】
特定の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号72のアミノ酸配列を含む修飾された重鎖及び配列番号58のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。別の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号72のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号60のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0037】
代替え的な実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号84のアミノ酸配列を含む修飾された重鎖及び配列番号58のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。別の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号84のアミノ酸配列を含む修飾された重鎖及び配列番号60のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0038】
本発明は、さらに、1×10-12M未満(例えば、5×10-13M以下)の解離定数(Kd)でイヌCTLA-4に結合する哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。別の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、1×10-5M~1×10-12Mの解離定数でイヌCTLA-4に結合する。より特定的な実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、1×10-7M~1×10-11Mの解離定数でイヌCTLA-4に結合する。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、1×10-8M~1×10-11Mの解離定数でイヌCTLA-4に結合する。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、1×10-8M~1×10-10Mの解離定数でイヌCTLA-4に結合する。
【0039】
本発明は、さらに、1×107M-1s-1より大きいオン速度(kon)でイヌCTLA-4に結合する哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。別の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、1×102M-1s-1~1×107M-1s-1のオン速度でイヌCTLA-4に結合する。より特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、1×103M-1s-1~1×106M-1s-1のオン速度でイヌCTLA-4に結合する。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、1×103M-1s-1~1×105M-1s-1のオン速度でイヌCTLA-4に結合する。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、1×104M-1s-1~1×105M-1s-1のオン速度でイヌCTLA-4に結合する。
【0040】
本発明は、さらに、1×10-7s-1よりも遅いオフ速度(koff)でイヌCTLA-4に結合する哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。別の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、1×10-3s-1~1×10-8s-1のオフ速度でイヌCTLA-4に結合する。より特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、1×10-4s-1~1×10-7s-1のオフ速度でイヌCTLA-4に結合する。一層さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントは、1×10-5s-1~1×10-7s-1のオフ速度でイヌCTLA-4に結合する。
【0041】
特定の実施形態では、本発明の哺乳動物抗体(これは、キメラ抗体を包含する)は、イヌCD80及び/又はイヌCD86とイヌCTLA-4との結合をブロックする。より特定の実施形態では、抗体は、1×10-8M~1×10-9M又はさらに低い濃度の最小EC50でイヌCD80及び/又はイヌCD86とイヌCTLA-4との結合をブロックする。一層さらに特定の実施形態では、EC50は、5×10-9M~5×10-13Mである。一層さらに特定の実施形態では、EC50は、5×10-9M~5×10-11Mである。従って、特定の実施形態では、本発明の抗体は、1つ、2つ、3つ、4つ又はこれら全ての特性、即ち、イヌCTLA-4との前記解離定数、イヌCTLA-4との結合に関する前記オン速度、抗イヌCTLA-4結合複合体からの解離に関する前記オフ速度、又は、動物対象における癌の効果的な治療を示すことができる。
【0042】
本発明は、さらに、本明細書中に開示されている哺乳動物抗体と交差競合する、イヌ化哺乳動物抗体及び抗原結合フラグメントを提供する。特定の実施形態では、イヌ化哺乳動物抗体は、45A9の6つのCDRを含む抗体と交差競合する[下記表1を参照されたい]。関連する実施形態では、イヌ化哺乳動物抗体は、27G12の6つのCDRを含む抗体と交差競合する[下記表1を参照されたい]。さらに別の関連する実施形態では、イヌ化哺乳動物抗体は、22A11の6つのCDRを含む抗体と交差競合する[下記表1を参照されたい]。さらに別の関連する実施形態では、イヌ化哺乳動物抗体は、110E3の6つのCDRを含む抗体と交差競合する[下記表1を参照されたい]。特定の実施形態では、イヌ化哺乳動物抗体は、12B3の6つのCDRを含む抗体と交差競合する[下記表1及び表3を参照されたい]。別の特定の実施形態では、イヌ化哺乳動物抗体は、39A11の6つのCDRを含む抗体と交差競合する[下記表1及び3を参照されたい]。特定の実施形態では、アッセイは、標準的な結合アッセイである。そのような一実施形態では、標準的な結合アッセイは、BIACore(登録商標)を用いて実施される。別のそのような実施形態では、標準的な結合アッセイは、ELISAを用いて実施される。さらに別のそのような実施形態では、標準的な結合アッセイは、フローサイトメトリーによって実施される。
【0043】
上記で示されているように、前記抗体(及びその抗原結合フラグメント)を包含する本発明の抗体(及びその抗原結合フラグメント)は、モノクローナル抗体(及びその抗原結合フラグメント)、哺乳動物抗体(及びその抗原結合フラグメント)、例えば、マウス(murine)(マウス(mouse))抗体(及びその抗原結合フラグメント)、イヌ化抗体(及びその抗原結合フラグメント)、例えば、イヌ化マウス抗体(及びその抗原結合フラグメント)であることができる。特定の実施形態では、抗体(及びその抗原結合フラグメント)は、単離される。
【0044】
好ましい実施形態では、本発明のイヌ化抗体又はその抗原性フラグメントは、イヌCTLA-4のアミノ酸配列のエピトープに結合する。特定の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号138のアミノ酸配列の位置T35、R38、T51、T53、Y90、K93、Y98及びY102におけるアミノ酸残基のうちの1つ以上と相互作用する。別の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号138のアミノ酸配列の位置35T、R38、S42、K93及びY102におけるアミノ酸残基のうちの1つ以上と相互作用する。
【0045】
本発明は、さらに、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135、配列番号136及び配列番号137のアミノ酸配列の1以上のエピトープ又はその部分に結合するイヌ化抗体を提供する。特定の実施形態では、本発明のイヌ化抗体又はその抗原性フラグメントは、配列番号132のアミノ酸配列によって構成されるエピトープ又はその一部分に結合する。このタイプのより特定の実施形態では、エピトープ又はその一部分は、配列番号134のアミノ酸配列によって構成されている。このタイプの別の実施形態では、エピトープ又はその一部分は、配列番号135のアミノ酸配列によって構成されている。特定の実施形態では、エピトープ又はその一部分は、配列番号133のアミノ酸配列によって構成されている。このタイプのより特定の実施形態では、エピトープ又はその一部分は、配列番号136のアミノ酸配列によって構成されている。関連する実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号134及び/又は配列番号136及び/又は配列番号135のアミノ酸配列によって構成される1以上のエピトープ又はその部分に結合する。
【0046】
本発明は、さらに、本発明のイヌ化抗体の軽鎖のうちのいずれか1つをコード化する核酸(これは、単離された及び/又は組換えられた核酸を包含する)を提供する。同様に、本発明は、本発明のイヌ化抗体の重鎖のうちのいずれか1つをコード化する単離された核酸(これは、単離された及び/又は組換えられた核酸を包含する)を提供する。
【0047】
本発明は、さらに、本発明の核酸(これは、単離された核酸を包含する)のうちの1以上を含む発現ベクターを提供する。本発明は、さらに、本発明の1以上の発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0048】
特定の実施形態では、抗体は、組換え抗体又はその抗原結合フラグメントである。関連する実施形態では、可変重鎖ドメイン及び可変軽鎖ドメインは、可動性リンカーで連結され、単鎖抗体を形成している。特定の実施形態では、抗体又は抗原結合フラグメントは、Fabフラグメントである。別の実施形態では、抗体又は抗原結合フラグメントはFab’フラグメントである。さらに別の実施形態では、抗体又は抗原結合フラグメントは、(Fab’)2フラグメントである。さらに別の実施形態では、抗体又は抗原結合フラグメントはダイアボディである。特定の実施形態では、抗体又は抗原結合フラグメントは、ドメイン抗体である。特定の実施形態では、抗体又は抗原結合フラグメントは、単一ドメイン抗体である。
【0049】
特定の実施形態では、イヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体又は抗原結合フラグメントは、癌の治療を受けている動物対象(例えば、イヌ)においてCTLA-4に結合する。より特定の実施形態では、本発明のイヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体又は抗原結合フラグメントの投与は、治療されている動物対象(例えば、イヌ)における癌の1つ以上の兆候を改善するのに役立つ。
【0050】
本発明は、さらに、イヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体又はその部分をコード化する単離された核酸を提供する。関連する実施形態では、そのような抗体又は抗原結合フラグメントは、イヌ対象の癌を治療するための薬剤の調製に使用することができる。代替え的に又は組み合わせて、本発明は、診断的使用のための本発明の抗体又は抗体フラグメントのいずれかの使用を提供する。さらに追加の実施形態では、本明細書中に開示されているイヌ化抗体又は抗原結合フラグメントのいずれかを含むキットが提供される。
【0051】
本発明は、さらに、本発明のイヌ化抗体に結合し、5~25のアミノ酸残基を含み且つ配列番号132のアミノ酸配列と90%以上同一である、単離されたペプチドを提供する。特定の実施形態では、単離されたペプチドは、配列番号132のアミノ酸配列と同一である。より特定的な実施形態では、単離されたペプチドは、10~20個のアミノ酸残基を含む。関連する実施形態では、単離されたペプチドは、本発明のイヌ化抗体に結合し、5~25のアミノ酸残基を含み、且つ、配列番号133のアミノ酸配列と90%以上同一である。特定の実施形態では、単離されたペプチドは、配列番号133のアミノ酸配列と同一である。このタイプのより特定の実施形態では、単離されたペプチドは、10~20個のアミノ酸残基を含む。
【0052】
さらに別の実施形態では、本発明のイヌ化抗体に結合する単離されたペプチドは、配列番号134のアミノ酸配列と90%以上同一であるアミノ酸配列を含む。さらに別の実施形態では、単離されたペプチドは、配列番号134のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、本発明のイヌ化抗体に結合する単離されたペプチドは、配列番号135のアミノ酸配列と90%以上同一であるアミノ酸配列を含む。さらに別の実施形態では、単離されたペプチドは、配列番号135のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、本発明のイヌ化抗体に結合する単離されたペプチドは、配列番号136のアミノ酸配列と90%以上同一であるアミノ酸配列を含む。さらに別の実施形態では、単離されたペプチドは、配列番号136のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。
【0053】
本発明は、さらに、本発明のイヌ化抗体に結合するそのような単離されたペプチドを含む融合タンパク質を提供する。本発明は、さらに、上記ペプチドのいずれかを含む融合タンパク質を提供する。特定の実施形態では、融合タンパク質は、そのような抗原性ペプチド及び非イヌ哺乳動物IgG抗体のFc領域を含む。より特定の実施形態では、融合タンパク質は、非イヌ哺乳動物IgG抗体のFc領域を含む。特定の実施形態では、非イヌ哺乳動物IgG抗体は、マウスIgGである。代替え的な実施形態では、非イヌ哺乳動物IgG抗体は、ヒトIgGである。別の実施形態では、非イヌ哺乳動物IgG抗体は、ウマIgGである。さらに別の実施形態では、非イヌ哺乳動物IgG抗体は、ブタIgGである。さらに別の実施形態では、非イヌ哺乳動物IgG抗体は、ウシIgGである。
【0054】
特定の実施形態では、非イヌ哺乳動物IgG抗体は、IgG1である。別の実施形態では、非イヌ哺乳動物IgG抗体は、IgG2aである。さらに別の実施形態では、非イヌ哺乳動物IgG抗体は、IgG3である。さらに別の実施形態では、非イヌ哺乳動物IgG抗体は、IgG4である。別の実施形態では、融合タンパク質は、上記抗原性ペプチドのいずれか及びマルトース結合タンパク質を含む。さらに別の実施形態では、融合タンパク質は、上記抗原性ペプチドのいずれか及びベータ-ガラクトシダーゼを含む。さらに別の実施形態では、融合タンパク質は、上記抗原性ペプチドのいずれか及びグルタチオンS-トランスフェラーゼを含む。さらに別の実施形態では、融合タンパク質は、上記抗原性ペプチドのいずれか及びチオレドキシンを含む。さらに別の実施形態では、融合タンパク質は、上記抗原性ペプチドのいずれか及びGro ELを含む。さらに別の実施形態では、融合タンパク質は、上記抗原性ペプチドのいずれか及びNusAを含む。
【0055】
本発明は、さらに、本発明の1以上の単離された免疫原性及び/又は抗原性のペプチド及び/又は融合タンパク質をコード化する核酸(これは、単離された及び/又は組換えられた核酸を包含する)を提供する。本発明は、さらに、そのような単離された核酸を含む発現ベクター、及び、本発明の1以上の発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0056】
医薬組成物は、さらに、イヌCTLA-4からの抗原性ペプチド(これは、単離された抗原性ペプチドを包含する)、本発明のイヌCTLA-4からの抗原性ペプチドを含む融合タンパク質、本発明の抗原性フラグメント及び/若しくは融合タンパク質をコード化する核酸(これは、単離された核酸を包含する)、そのような核酸を含む発現ベクター、又は、それらの任意の組み合わせ、並びに、薬学的に許容される担体若しくは希釈剤を含むことができる。さらに、本発明は、本発明の抗イヌCTLA-4抗体(これは、イヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体を包含する)又はその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を包含する。そのような医薬組成物は、癌、感染症若しくは感染性疾患を治療するために使用することが可能であり、ワクチンアジュバントとして使用することが可能であり、及び/又は、免疫細胞の活性を増加させる方法において使用することが可能であり、ここで、該方法は、それを必要とする対象に治療有効量の医薬組成物を投与することを含む。
【0057】
特定の実施形態では、そのような医薬組成物は、さらに、抗イヌPD-1抗体(これは、イヌ化マウス抗イヌPD-1抗体を包含する)又はその抗原結合フラグメントを含む。より特定の実施形態では、抗イヌPD-1抗体は、イヌ化マウス抗イヌPD-1抗体又はイヌ化マウス抗イヌPD-1抗体の抗原結合フラグメントである。
【0058】
関連する実施形態では、そのような医薬組成物は、さらに、抗イヌPD-L1抗体(これは、イヌ化マウス抗イヌPD-L1抗体を包含する)又はその抗原結合フラグメントを含む。特定の実施形態では、抗イヌPD-L1抗体は、イヌ化マウス抗イヌPD-1抗体又はイヌ化マウス抗イヌPD-1抗体の抗原結合フラグメントである。
【0059】
従って、本発明は、以下のもののうちの1、2、3又はそれ以上を含む医薬組成物を提供する:抗イヌPD-L1抗体、抗イヌPD-1抗体、抗イヌCTLA-4抗体、抗イヌPD-L1抗体の抗原結合フラグメント、抗イヌPD-1抗体の抗原結合フラグメント、又は、抗イヌCTLA-4抗体の抗原結合フラグメント。特定の実施形態では、そのような抗イヌタンパク質(即ち、抗イヌPD-L1、PD-1又はCTLA-4)抗体又はその抗原結合フラグメントは、マウス抗イヌタンパク質抗体である。別の実施形態では、そのような抗イヌタンパク質抗体又はその抗原結合フラグメントは、イヌ化抗イヌタンパク質抗体である。より特定の実施形態では、抗イヌタンパク質抗体又はその抗原結合フラグメントは、イヌ化マウス抗イヌタンパク質抗体である。
【0060】
さらに、本発明は、免疫細胞の活性を増大させる方法を提供し、ここで、該方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の本発明の医薬組成物を投与することを含む。特定の実施形態では、該方法は、癌の治療において使用される。別の実施形態では、該方法は、感染症又は感染性疾患の治療において使用される。さらに別の実施形態では、本発明のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメントは、ワクチンアジュバントとして使用される。特定の実施形態では、イヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物は、イヌ化マウス抗イヌPD-1抗体若しくはその抗原結合フラグメント及び/又はイヌ化マウス抗イヌPD-L1抗体若しくはその抗原結合フラグメントの前に、後で又は同時に、投与することができる。
【0061】
本発明のこれらの態様及び別の態様は、以下の「図面の簡単な説明」及び「詳細な説明」を参照することによって、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】
図1は、6種類の抗体とイヌCTLA-4(cCTLA-4)との結合活性を示している。従って、
図1は、cCTLA-4に対する抗体の結合活性を実証するELISAにおいてイヌCTLA-4に添加された個々のイヌCTLA-4抗体の量をng/mL(Ab Log)でプロットしたものを表している。イヌCTLA-4に対する個々の抗体は、27G12、110E3、12B3、45A9、39A11及び22A11として示されている。
【
図2】
図2は、イヌCD86とCTLA-4の相互作用をブロックする抗体を示している。図は、イヌCTLA-4のCD86への結合を妨害するためにcCTLA-4に添加された個々のイヌCTLA-4抗体の量をng/mL(Ab Log)でプロットしたものを表している。イヌCTLA-4に対する個々の抗体は、39A11、27G12、45A9、12B3、110E3及び22A11として示されている。図に示されているように、抗体は、イヌのCD86とCTLA-4の相互作用をブロックすることが可能である。
【
図3】
図3は、イヌCD80とCTLA-4の相互作用をブロックする抗体を示している。図は、イヌCTLA-4のCD80への結合を妨害するためにcCTLA-4に添加された個々のイヌCTLA-4抗体の量をng/mL(Ab Log)でプロットしたものを表している。イヌCTLA-4に対する個々の抗体は、39A11、27G12、45A9、12B3、110E3及び22A11として示されている。図に示されているように、抗体は、イヌのCD80とCTLA-4の相互作用もブロックすることが可能である。
【
図4】
図4A-
図4Gは、イヌCTLA-4を発現するCHO細胞に結合する抗体を示している。
図4AはIso対照であり、
図4Bは39A11であり、
図4Cは27G12であり、
図4Dは12B3であり、
図4Eは45A9であり、
図4Fは110E3であり、そして、
図4Gは22A11である。図に示されているように、抗体は、cCTLA-4を発現するCHO細胞に結合することが可能である。
【
図5】
図5は、コンカナバリンA(CoA)の存在下でイヌPBMC細胞を活性化させてIFNγを生成させる、25μg/mL、50μg/mL又は100μg/mL(Ab)で添加された個々のイヌCTLA-4抗体の3つの減少濃度を定量化する棒グラフを示している。試験された抗体は横軸にあり、CTLA-4モノクローナル抗体(xCTLA-4 mAb)と表示されている。図に示されているように、抗体は、イヌPBMC細胞を活性化させてIFNγを産生させることが可能である。
【
図6】
図6は、親抗体と同じイヌCTLA-4との反応性を有するCTLA-4モノクローナル抗体(xCTLA-4; Ab Log ng/mL)の量をプロットしたものを示している。ELISAの結果は、12B3と39A11の両方が首尾よくイヌ化されたことを示している。イヌ化c12B3L3H2及びL3H3は、親12B3と同様のcCTLA-4との反応性を有しており、そして、イヌ化c39A11L3H3は、親39A11と同様のcCTLA-4との反応性を有している。
【
図7】
図7A-
図7Bは、c12B3(
図7A)及びc39A11(
図7B)に関するcCTLA-4上の結合エピトープを示している。イヌCTLA-4タンパク質の2つの領域が表されており、そして、その2つの領域は、それぞれ、配列番号132及び配列番号133のアミノ酸配列を有している(下記表8を参照されたい)。両方の抗体は、配列番号136のアミノ酸配列(これは、MYPPPYモチーフ(配列番号137)を含む)及び配列番号134のアミノ酸配列に結合する。c12B3は、さらに、配列番号135のアミノ酸配列にも結合する。
【発明を実施するための形態】
【0063】
略語
本発明の詳細な説明及び実施例を通して、以下の略語が使用される。
【表1】
【0064】
定義
本発明をより容易に理解することができるように、特定の技術用語及び科学用語を以下で明確に定義する。本明細書中の別の箇所で明確に定義されていない限り、本明細書中で使用されている他の全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味を有する。
【0065】
添付されている「特許請求の範囲」を包含する本明細書中で使用されている場合、「a」、「an」及び「the」のような単語の単数形は、文脈によって別途明瞭に示されていない限り、それらの対応する複数の言及を包含する。
【0066】
「CTLA-4」は、免疫チェックポイントとして機能して、免疫応答をダウンレギュレートするタンパク質受容体である、CD152(分化抗原群152)としても知られている「細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4」の略語である。イヌCTLA-4のアミノ酸配列は、配列番号126である。本発明は、さらに、イヌCTLA-4に対するイヌ化マウス抗体を提供する。
【0067】
細胞又は受容体に適用される「活性化」は、文脈によって又は明示的に別途示されていない限り、リガンドによる細胞又は受容体の活性化又は処置を意味する。「活性化」は、内部機構によって調節される細胞活性化並びに外部要因又は環境因子によって調節される細胞活性化を意味することができる。
【0068】
「リガンド」は、天然リガンド及び合成リガンド、例えば、サイトカイン、サイトカイン変異体、類似体、突然変異タンパク質及び抗体由来の結合化合物を包含する。「リガンド」は、さらに、小分子、例えば、サイトカインのペプチドミメティック及び抗体のペプチドミメティックも包含する。
【0069】
分子の「活性」は、以下のものについて表すか又は示すことができる:リガンド若しくは受容体への当該分子の結合、触媒活性;遺伝子発現又は細胞のシグナル伝達、分化若しくは成熟を刺激する能力;抗原活性、他の分子の活性の調節など。分子の「活性」は、さらに、以下のものについても示すことができる:細胞間相互作用(例えば、接着)を調節する若しくは維持することにおける活性、又は、細胞の構造(例えば、細胞膜又は細胞骨格)を維持することにおける活性。「活性」は、さらに、以下のものも意味することができる:比活性、例えば、[触媒活性]/[mgタンパク質]又は[免疫学的活性]/[mgタンパク質]、生物学的区画内の濃度など。「活性」は、先天性免疫系又は適応免疫系の成分の調節も示すことができる。
【0070】
「投与」及び「処置(treatment)」は、動物(例えば、イヌ対象)、細胞、組織、器官又は生体液に適用される場合、動物(例えば、イヌ対象)、細胞、組織、器官又は生体液への外因性医薬、治療薬、診断薬又は組成物の接触を示している。細胞の処置は、細胞への試薬の接触及び体液への試薬の接触(ここで、体液が細胞と接触する)を包含する。
【0071】
「投与」及び「処置」は、さらに、試薬、診断薬、結合化合物による、又は、別の細胞による、例えば細胞のインビトロ処置及びエクスビボ処置も意味する。
【0072】
用語「対象(subject)」は、任意の生物を包含し、好ましくは、動物包含し、より好ましくは、哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ又はヒト)包含し、最も好ましくは、イヌを包含する。
【0073】
「処置する(treat)」又は「処置すること(treating)」は、治療薬(例えば、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントのいずれかを含む組成物)を、その治療薬が治療活性を有する1以上の疾患兆候を有している又は疾患に罹患していることが疑われる例えばイヌ対象又は患者に、内部に又は外部から投与することを意味する。
【0074】
典型的には、治療薬は、臨床的に測定可能な程度に兆候(類)の後退を誘導する又は兆候(類)の進行を阻止することによって、処置される対象又は集団におけるそのような1以上の疾患兆候を軽減する及び/又は改善するのに有効な量で投与される。特定の疾患兆候を軽減するのに有効な治療薬の量(「治療有効量」とも称される)は、患者(例えば、イヌ)の疾患の症状、年齢及び体重、並びに、対象において所望の応答を引き出す当該医薬組成物の能力などの因子に応じて異なり得る。疾患兆候が軽減又は改善されたかどうかは、その兆候の重症度又は進行状態を評価するために獣医師又は別の熟達した医療提供者によって典型的に使用される任意の臨床測定によって評価することができる。本発明(例えば、処置方法又は製造品)の実施形態は、全ての対象における標的疾患兆候(類)を軽減させることにおいて有効であるとは限らないかもしれないが、当技術分野で既知の任意の統計的検定(例えば、スチューデントt検定、カイ二乗検定、マン-ホイットニーのU検定、クラスカル-ウォリス検定(H検定)、ヨンキー-タプストラ検定及びウィルコクソン検定)によって決定される、統計的に有意の数の対象における標的疾患兆候(類)を軽減するはずである。
【0075】
「処置」は、ヒト対象、獣医学対象(例えば、イヌ)又は研究用対象に適用される場合、治療的処置並びに研究用途及び診断用途を示している。「処置」は、ヒト対象、獣医学対象(例えば、イヌ)若しくは研究用対象、又は、細胞、組織若しくは器官に適用される場合、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントを、例えばイヌ若しくは他の動物対象、細胞、組織、生理学的区画又は生理学的流体に接触させることを包含する。
【0076】
本明細書中で使用されている場合、用語「イヌ」は、別途示されていない限り、全ての家庭イヌ、イエイヌ(Canis lupus familiaris)又はイヌ科イヌ属(Canis familiaris)を包含する。
【0077】
本明細書中で使用されている場合、用語「ネコ」は、ネコ科(Felidae)の任意のメンバーを示している。この科のメンバーとしては、野生、動物園及び家庭内のメンバー、例えば、イエネコ、純血種及び又は雑種のコンパニオンネコ、ショーキャット、実験用ネコ、クローンネコ、並びに、野生ネコ又は野良ネコを含む。
【0078】
本明細書中で使用されている場合、用語「イヌフレーム」は、本明細書中でCDR残基として定義されている超可変領域残基以外のイヌ抗体の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を示している。イヌ化抗体に関連して、実施形態の大部分において、天然イヌCDRのアミノ酸配列は、両方の鎖内において、対応する異種CDR(例えば、マウス抗体由来のCDR)で置き換えられている。場合により、イヌ抗体の重鎖及び/又は軽鎖は、例えば、以下で例示されているように、イヌ抗体内の異種CDRの立体配座を保存するため及び/又はFc機能を改変するために、いくつかの異種非CDR残基を含有することができる。
【0079】
イヌCTLA-4は、配列番号126のアミノ酸配列(これは、シグナル配列を包含する)を含むことが分かっている。特定の実施形態では、イヌCTLA-4は、配列番号125のヌクレオチド配列を含む核酸によってコード化される。イヌCTLA-4配列は、例えば非保存領域内に保存された変異を有していることによって異なり得るが、イヌCTLA-4は、配列番号126のアミノ酸配列によって構成されるイヌCTLA-4と実質的に同じ生物学的機能を有している。
【0080】
本明細書中で使用されている場合、例えば抗体のアミノ酸配列内における、別のアミノ酸残基による「アミノ酸残基の置換」は、別のアミノ酸残基で「アミノ酸残基を置き換える」と同等であり、そして、アミノ酸配列内の特定の位置の特定のアミノ酸残基が異なるアミノ酸残基によって置き換えられている(又は、置換されている)ことを意味する。そのような置換は、特に設計することが可能であり、即ち、例えば、組換えDNA技術によってアミノ酸配列の特定の位置でアラニンをセリンで意図的に置き換えることができる。あるいは、抗体の特定のアミノ酸残基又は一連のアミノ酸残基を、より自然な選択プロセスを通して、例えば、細胞によって産生された抗体がその抗原の所与の領域(例えば、エピトープ又はその部分を含む領域)に結合する結合する能力に基づいて、及び/又は、抗体が置換しているCDRと同じカノニカル構造を保持する特定のCDRを含有するように、1以上のアミノ酸残基によって置き換えることができる。そのような置換/置き換えは、「変異」CDR及び/又は変異抗体をもたらすことができる。
【0081】
共刺激シグナル伝達経路は免疫応答の発生をもたらし、そして、T細胞の表面のCD28とCD80(B7.1としても知られている)及びCD86(B7.2としても知られている)の相互作用によって媒介されることが示されている。CTLA-4は、CD28よりも極めて高い親和性でCD80とCD86の両方に結合し、それによって、免疫応答のダウンモジュレーションに不可欠な抑制性受容体として機能する。実際、CTLA-4がその免疫抑制機能を媒介するメカニズムは、CD28とCD80及びCD86との相互作用の競合的阻害剤として作用する能力に関連している。従って、本発明は、イヌCD80及びイヌCD86のCTLA-4への結合をブロックし、それにより、イヌCD28のイヌCD80及びCD86への結合による共刺激シグナル伝達を可能にする、モノクローナル抗体の産生及び特徴付けについて記載する。従って、これらの抗体は、本明細書中に開示されているコンパニオンアニマルにおける癌、並びに、別の疾患の治療において有用性を有している。
【0082】
特定のイヌCTLA-4アミノ酸配列は、一般に、シグナル配列を除いて、配列番号126のアミノ酸配列を含むイヌCTLA-4と少なくとも90%同一である。特定の場合において、イヌCTLA-4は、シグナル配列を除いて、配列番号126のアミノ酸配列を含むイヌCTLA-4と少なくとも95%、又は、さらに、少なくとも96%、97%、98%若しくは99%同一であることができる。特定の実施形態では、イヌCTLA-4アミノ酸配列は、シグナル配列を除いて、配列番号126のアミノ酸配列を含むイヌCTLA-4と10以下のアミノ酸の相違を示す。特定の実施形態では、イヌCTLA-4アミノ酸配列は、シグナル配列を除いて、配列番号126のアミノ酸配列を含むイヌCTLA-4と、5以下のアミノ酸、又は、さらに、4以下、3以下、2以下若しくは1以下のアミノ酸の相違を示し得る。パーセント同一性は、本明細書中で以下に記載されているようにして確認することができる。
【0083】
用語「免疫応答」は、例えば、癌細胞、病原体に感染した細胞若しくは組織又は侵入する病原体への選択的損傷、それらの破壊又はそれらの哺乳動物身体(例えば、イヌ身体)からの除去をもたらす、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球及び前記細胞又は肝臓によって産生される可溶性高分子(例えば、抗体、サイトカイン及び補体)の作用を示している。
【0084】
抗イヌCTLA-4抗体
本発明は、イヌCTLA-4に結合する単離された抗体(特に、マウス抗イヌCTLA-4抗体及びそのイヌ化抗体)又はその抗原結合フラグメント及びそのような抗体又はそのフラグメントの使用を提供する。特定の実施形態では、マウス抗イヌCTLA-4抗体に由来するマウス抗イヌCTLA-4 CDRが提供され、ここで、それらは、イヌCTLA-4に結合すること及びイヌCTLA-4のそのリガンド(イヌCD86又はCD80)の一方又は両方への結合をブロックすることの両方が示されている。これらのCDRは、イヌ抗体の改変されたイヌフレームに挿入して、イヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体を生成させることができる。
【0085】
本明細書中で使用されている場合、「抗イヌCTLA-4抗体」は、イヌCTLA-4に対して(例えば、マウス又はウサギなどの哺乳動物において)惹起されて、イヌCTLA-4に特異的に結合する抗体を示している。「イヌCTLA-4に特異的に結合する」抗体、及び、特に、イヌCTLA-4に特異的に結合する抗体、又は、「イヌCTLA-4のアミノ酸配列を含有するポリペプチドに特異的に結合する」抗体は、他のイヌ抗原と比較してイヌCTLA-4への優先的な結合を示す抗体であるが、この結合は、絶対的な結合特異性を必要としない。抗イヌCTLA-4抗体は、その結合がイヌタンパク質に限定されるサンプルの中のイヌCTLA-4の存在を決定する場合、又は、それがイヌサンプル中の他の分子の活性を過度に妨げることなく(例えば、診断状況における偽陽性又は治療状況での副作用などの望ましくない結果を生じさせることなく)イヌCTLA-4の活性を変化させることができる場合、イヌCTLA-4に「特異的」と見なされる。抗イヌCTLA-4抗体に必要な特異性の程度は、その抗体の意図される用途に依存してよく、いずれにせよ、意図される目的のための使用への適切性によって定義される。意図される方法の抗体又は抗体の抗原結合部位に由来する結合性化合物は、その抗原又はその変異体若しくは突然変異タンパク質に、他の任意のイヌ抗原との親和性と比較して、少なくとも2倍大きい、好ましくは少なくとも10倍大きい、さらに好ましくは少なくとも20倍大きい、最も好ましくは少なくとも100倍大きい親和性で結合する。
【0086】
本明細書中で使用されている場合、抗体は、イヌCTLA-4のアミノ酸配列の一部を含むポリペプチドには結合するが、イヌCTLA-4の配列のその部分を欠いている別のイヌタンパク質には結合しない場合、所与の抗原配列(この場合、イヌCTLA-4のアミノ酸配列の一部)を含むポリペプチドに特異的に結合すると言われる。例えば、イヌCTLA-4を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体は、イヌCTLA-4のFLAG(登録商標)タグ付き形態には結合し得るが、別のFLAG(登録商標)タグ付きイヌタンパク質には結合しない。抗体又は抗体の抗原結合部位に由来する結合性化合物は、それがそのイヌ抗原又はその変異体若しくは突然変異タンパク質に対して、試験されている他のイヌ抗原に対するその親和性と比較して、少なくとも10倍大きい、さらに好ましくは少なくとも20倍大きい、一層さらに好ましくは少なくとも100倍大きい親和性を有している場合、そのイヌ抗原又はその変異体若しくは突然変異タンパク質に「特異的に」結合する。
【0087】
本明細書中で使用されている場合、用語「抗体」は、所望の生物学的活性を示す任意の形態の抗体を示す。従って、それは最も広い意味で使用され、そして、特に、限定するものではないが、モノクローナル抗体(これは、完全長モノクローナル抗体を包含する)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、イヌ化抗体(canonized antibody)、完全イヌ抗体、キメラ抗体及びラクダ化単一ドメイン抗体を包含する。「親抗体」は、意図される用途のための抗体の修飾(例えば,イヌの治療用抗体としての使用のための抗体のイヌ化)に先立つ、抗原への免疫系の暴露によって得られる抗体である。
【0088】
本明細書中で使用されている場合、別途示されていない限り、「抗体フラグメント」又は「抗原結合フラグメント」は、抗体の抗原結合フラグメント、即ち、完全長抗体によって結合される抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体フラグメント(例えば、1以上のCDR領域を保持するフラグメント)を示す。抗原結合フラグメントの例としては、限定するものではないが、以下のものを含む:Fab、Fab’、F(ab’)2及びFvフラグメント;ダイアボディ;線状抗体;一本鎖抗体分子、例えば、sc-Fv;ナノボディ、及び、抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体。
【0089】
「Fabフラグメント」は、1本の軽鎖並びに1本の重鎖のCH1領域及び可変領域からなる。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。「Fabフラグメント」は、抗体のパパイン切断の産物であり得る。
【0090】
「結晶性フラグメント」(「Fc」)領域は、抗体のCH3及びCH2ドメインを含む2つの重鎖フラグメントを含む。2つの重鎖フラグメントは、2以上のジスルフィド結合によって及びCH3ドメインの疎水性相互作用によって結び付けられている。
【0091】
「Fab’フラグメント」は、1本の軽鎖、並びに、VHドメインとCH1ドメインを含み且つさらにCH1ドメインとCH2ドメインとの間の領域も含む1本の重鎖の一部分又はフラグメントを含み、それによって、2つのFab’フラグメントの2本の重鎖の間に鎖間ジスルフィド結合が形成されてF(ab’)2分子を形成することができる。
【0092】
「F(ab’)2フラグメント」は、2本の軽鎖、並びに、CH1ドメインとCH2ドメインとの間の定常領域の一部分を含む2本の重鎖を含み、それによって、2本の重鎖間で鎖間ジスルフィド結合が形成される。F(ab’)2フラグメントは、従って、2本の重鎖の間のジスルフィド結合によって結び付けられている2つのFab’フラグメントからなる。「F(ab’)2フラグメント」は、抗体のペプシン切断の産物であり得る。
【0093】
「Fv領域」は、重鎖及び軽鎖の両方に由来する可変領域を含むが、定常領域を欠いている。
【0094】
用語「一本鎖Fv抗体」又は「scFv抗体」は、抗体のVHドメイン及びVLドメインを含む抗体フラグメントを示しており、ここで、これらのドメインは1本のポリペプチド鎖内に存在している。一般に、Fvポリペプチドは、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にするVHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む[以下のものを参照されたい: Pluckthun, THE PHARMACOLOGY OF MONOCLONALANTIBODIES, vol. 113 Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994); WO88/01649;並びに、U.S.4,946,778、及び、U.S.5,260,203]。
【0095】
本明細書中で使用されている場合、イヌCTLA-4のその結合相手(リガンド)(例えば、イヌCD80又はイヌCD86)への結合を「ブロックする」又は「ブロックしている」又は「結合をブロックしている」抗イヌCTLA-4抗体又はその抗原結合フラグメントは、標準的な結合アッセイ(例えば、BIACore(登録商標)、ELISA、又は、フローサイトメトリー)で確認されるイヌCTLA-4のイヌCD86及び/又はイヌCD80への結合を(部分的に又は完全に)ブロックする抗イヌCTLA-4抗体又はその抗原結合フラグメントである。そのような「ブロックしている」は、ELISAに基づくブロックアッセイを使用して、以下の実施例4において例示されている。
【0096】
本明細書中で使用されている場合、用語「カノニカル構造」は、抗体の重鎖及び軽鎖の超可変領域の各々が、それらが存在するフレームワーク内で取ることができる局所立体配座を示している。各々の超可変領域に関して、少数のカノニカル構造(一般に、1又は2などの簡単な整数で表される)が存在し、それらは、対応する超可変領域のアミノ酸配列(特に、対応する抗イヌCTLA-4可変ドメインに対するそのフレームワークのアミノ酸配列に照らして)から高い精度で予測することができる。これらのカノニカル構造は、所与のCDRのアミノ酸配列の修飾がその抗原結合相手に結合する能力の保持をもたらすか又は喪失をもたらすかに関して決定的であり得る[以下のものを参照されたい: Chothia and Lesk, Canonical Structures for the hypervariable regions of immunoglobulins, J. Mol. Biol. 196:901-917(1987); Chothia et al., Conformation of immunoglobulin hypervaribale regions, Nature, 34:877-883(1989);及び、Al-Lazikani et al., Standard Conformations for the canonical structures of immunoglobulins, J. Mol. Biol. 273:927-948 (1997)]。
【0097】
「ドメイン抗体」は、重鎖の可変領域又は軽鎖の可変領域のみを含む免疫学的に機能性の免疫グロブリンフラグメントである。いくつかの例では、2以上のVH領域がペプチドリンカーで共有結合的に連結されて、二価ドメイン抗体を生成する。二価ドメイン抗体の2つのVH領域は、同じ抗原又は異なる抗原を標的とすることができる。
【0098】
「二価抗体」は、2つの抗原結合部位を含む。いくつかの例では、その2つの結合部位は、同じ抗原特異性を有している。しかしながら、二価抗体は二重特異性であることができる(下記を参照されたい)。
【0099】
特定の実施形態では、本明細書中のモノクローナル抗体は、ラクダ化単一ドメイン抗体も包含する。[以下のものを参照されたい:例えば、Muyldermans et al.,Trends Biochem.Sci.26:230(2001);Reichmann et al.,J.Immunol.Methods 231:25(1999);WO94/04678;WO94/25591;U.S.6,005,079]。一実施形態では、本発明は、単一ドメイン抗体が形成されるように修飾された2つのVHドメインを含有する単一ドメイン抗体を提供する。
【0100】
本明細書中で使用されている場合、用語「ダイアボディ」は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体フラグメントを示しており、フラグメントは、同じポリペプチド鎖内に軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH-VL、又は、VL-VH)。同じ鎖上の2つのドメインの間で対合を可能とするには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対合することを強いられて、2つの抗原結合部位を生成する。[以下のものを参照されたい:EP0404097B1;WO93/11161;及び、Holliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)]。遺伝子操作された抗体変異体の総説については[概して、以下のものを参照されたい:Holliger and Hudson Nat.Biotechnol.23:1126-1136(2005)]。
【0101】
典型的には、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、そのイヌCTLA-4結合活性がモルベースで表される場合、その活性の少なくとも10%(その親抗体と比較した場合)を保持している。好ましくは、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、親抗体としてのイヌCTLA-4結合親和性の少なくとも20%、50%、70%、80%、90%、95%又は100%又はそれ以上を保持している。さらにまた、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、その生物学的活性を実質的に変化させない保存的アミノ酸置換又は非保存的アミノ酸置換(抗体の「保存的変異体」又は「機能保存的変異体」とも称される)を含有することができることも意図されている。
【0102】
「単離された抗体」は、精製状態を示しており、そして、そのような文脈では、当該分子が、別の生物学的分子(例えば、核酸、タンパク質、脂質、炭水化物)又は別の物質(例えば、細胞デブリ及び増殖培地)を実質的に含んでいないことを意味する。一般に、用語「単離された」は、そのような物質又は水、緩衝剤若しくは塩が本明細書中に記載されている結合性化合物の実験的使用又は治療的使用を実質的に妨げる量で存在していない限り、そのような物質が完全に存在しないこと、又は、水、緩衝剤若しくは塩が存在しないことを示すことは意図してしない。
【0103】
本明細書中で使用されている場合、「キメラ抗体」は、第一抗体に由来する可変ドメイン及び第二抗体に由来する定常ドメインを有している抗体であり、ここで、第一抗体と第二抗体は、異なる種に由来する。[U.S.4,816,567;及び、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984)]。典型的には、可変ドメインは、齧歯動物などの実験動物に由来する抗体(「親抗体」)から得られ、及び、定常ドメイン配列は、生じるキメラ抗体がそれぞれヒト対象及びイヌ対象において親(例えば、齧歯動物)抗体よりも有害な免疫応答を引き起こす可能性がより低くなるように、動物対象抗体から得られる。
【0104】
本明細書中で使用されている場合、用語「イヌ化抗体」は、イヌ抗体及び非イヌ(例えば、マウス)抗体の両方に由来する配列を含む抗体の形態を示している。一般に、イヌ化抗体は、超可変ループの全て又は実質的に全てが非イヌ免疫グロブリンのものに対応する(例えば、以下で例示されている6つのマウス抗イヌCTLA-4 CDRを含む)、少なくとも1つ以上、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含有し、そして、フレームワーク(FR)領域の全て又は実質的に全て(及び、典型的には、残りのフレームの全て又は実質的に全て)は、イヌ免疫グロブリン配列のものである。本明細書中で例示されているように、イヌ化抗体は、イヌフレーム又は改変されたイヌフレームと共に、マウス抗イヌCTLA-4抗体に由来する3つの重鎖CDR及び3つの軽鎖CDRの両方を含む。改変されたイヌフレームは、例えば、イヌCTLA-4へのその結合を増大させるために、並びに/又は、イヌCTLA-4のイヌCD86及び/若しくはイヌCD80への結合をブロックするその能力を増大させるために、イヌ化抗体の有効性をさらに最適化する、本明細書中で例示されている1以上のアミノ酸変化を含む。
【0105】
用語「完全イヌ抗体」は、イヌ免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体を示している。完全イヌ抗体は、マウス体内において、マウス細胞において又はマウス細胞由来のハイブリドーマにおいて生成された場合、マウス糖鎖を含有し得る。同様に、「マウス抗体」は、マウス免疫グロブリン配列のみを含む抗体を示している。あるいは、完全イヌ抗体は、ラット体内において、ラット細胞において又はラット細胞由来のハイブリドーマにおいて生成された場合、ラット糖鎖を含有し得る。同様に、「ラット抗体」は、ラット免疫グロブリン配列のみを含む抗体を示している。
【0106】
イヌIgGには4種の既知のIgG重鎖サブタイプが存在し、それらはIgG-A、IgG-B、IgG-C及びIgG-Dと称される。2種の既知の軽鎖サブタイプは、ラムダ及びカッパと称される。
【0107】
各軽鎖/重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。従って、一般に、完全な抗体は、2つの結合部位を有している。二機能性抗体又は二重特異性抗体における場合を除いて、2つの結合部位は一般に同一である。
【0108】
典型的には、重鎖と軽鎖の両方の可変ドメインは、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)内に位置している、相補性決定領域(CDR)とも称される3つの超可変領域を含む。CDRは、通常、フレームワーク領域によって整列され、それによって、特定のエピトープへの結合が可能になる。一般に、N末端からC末端まで、軽鎖変ドメイン及び重鎖可変ドメインは、いずれも、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、一般に、以下の定義に従う:Sequences of Proteins of Immunological Interest,Kabat,et al.;National Institutes of Health,Bethesda,Md.;5th ed.;NIH Publ.No.91-3242(1991);Kabat,Adv.Prot.Chem.32:1-75(1978);Kabat,et al.,J.Biol.Chem.252:6609-6616(1977);Chothia,et al.,J.Mol.Biol.196:901-917(1987);又は、Chothia,et al.,Nature 342:878-883(1989)]。
【0109】
本明細書中で使用されている場合、用語「超可変領域」は、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を示している。超可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」(即ち、軽鎖可変ドメイン内のCDRL1、CDRL2及びCDRL3、並びに、重鎖可変ドメイン内のCDRH1、CDRH2及びCDRH3)に由来するアミノ酸残基を含む。[配列によって抗体のCDR領域を定義している「Kabat et al. Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)」を参照されたい; さらにまた、構造によって抗体のCDR領域を定義している「Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196: 901-917 (1987)」も参照されたい]。本明細書中で使用されている場合、用語「フレームワーク」又は「FR」残基は、CDR残基として本明細書中で定義されている超可変領域残基以外の可変ドメイン残基を示している。
【0110】
本発明の特定の実施形態では、イヌ免疫細胞の結合及び活性化に加えて、CTLA-4に対するイヌ抗体又はイヌ化抗体は、最適には2つの下記属性を有している:
1. 抗体依存性細胞障害作用(ADCC)及び補体依存性細胞障害作用(CDC)のようなエフェクター機能の欠如;及び、
2. プロテインAクロマトグラフィーに基づくもののような業界標準技術を用いて大規模で容易に精製される。
【0111】
天然に存在するイヌIgGイソタイプはいずれも、両方の基準は満たさない。例えば、IgG-Bは、プロテインAを使用して精製することが可能であるが、高いレベルのADCC活性を有している。他方、IgG-Aは、プロテインAに弱く結合するが、同様に、ADCC活性を示す。さらに、IgG-CもIgG-DもプロテインAカラムで精製できないが、IgG-DはADCC活性を示さない。(IgG-Cは、かなりのADCC活性を示す)。本発明がこれらの問題に対処する1つの方法は、ADCCのようなエフェクター機能を欠いており且つ業界標準のプロテインAクロマトグラフィーを使用して容易に精製することが可能な、CTLA-4に対して特異的な改変されたイヌIgG-B抗体を提供することによる。
【0112】
本発明の代替え的な実施形態では、CTLA-4に対して特異的なイヌIgG-B又はIgG-C抗体は、ADCCのようなエフェクター機能を除去するように/実質的に低減させるように意図的に改変されておらず、従って、ADCCのようなエフェクター機能を保持している。
【0113】
「相同性」は、最適に整列させた場合の2つのポリヌクレオチド配列間又は2つのポリペプチド配列間の配列類似性を示している。比較される2つの配列の両方におけるある位置が同じ塩基又はアミノ酸モノマーサブユニットによって占有されている場合、例えば、2つのDNA分子の各々におけるある位置がアデニンによって占有されている場合、これらの分子はその位置において相同である。相同性のパーセントは、2つの配列によって共有される相同な位置の数を、比較した位置の総数で除して100を乗じたものである。例えば、2つの配列を最適に整列させた場合に2つの配列中の10の位置のうち6の位置が一致するか又は相同である場合、その2つの配列は60%相同である。一般に、そのような比較は、2つの配列を最大の相同性パーセントが得られるように整列させた場合に行われる。
【0114】
「単離された核酸分子」は、単離されたポリヌクレオチドが自然界で見出されるポリヌクレオチドの全部又は一部分と結合していない、又は、自然界では連結されていないポリヌクレオチドに連結されている、ゲノム、mRNA、cDNA若しくは合成起源のDNA又はRNA又はそれらの何らかの組合せを意味する。本開示のために、特定のヌクレオチド配列「を含む核酸分子」は無傷の染色体を包含しないことは、理解されるべきである。指定された核酸配列「を含む」単離された核酸分子は、指定された配列に加えて、10個まで又はさらには20個まで又はそれ以上の他のタンパク質又はその部分若しくはフラグメントについてのコード配列を含むことができ、又は、記載されている核酸配列のコード領域の発現を制御する作動可能に連結された調節配列を含むことができ、及び/又は、ベクター配列を含むことができる。
【0115】
語句「制御配列」は、特定の宿主生物において作動可能に連結されたコード配列を発現させるのに必要なDNA配列を示している。原核生物に適切な制御配列には、例えば、プロモーターが含まれ、場合により、オペレーター配列及びリボソーム結合部位が含まれる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを使用することが知られている。
【0116】
核酸は、別の核酸配列と機能的関係に置かれている場合、「作動可能に連結」されている。例えば、プレ配列又は分泌リーダーに関するDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、ポリペプチドについてのDNAに作動可能に連結されている;プロモーター又はエンハンサーは、それがコード配列の転写に影響を及ぼす場合、そのコード配列に作動可能に連結されている;又は、リボソーム結合部位は、それが翻訳を促進するように位置付けられている場合、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、「作動可能に連結された」は、連結されているDNA配列が隣接していること、及び、分泌リーダーの場合は、隣接しており且つ読み取り相内にあること、を意味する。しかしながら、エンハンサーは隣接している必要はない。連結は、好都合な制限部位でのライゲーションによって達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来の慣例に従って合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーを使用する。
【0117】
本明細書中で使用されている場合、「細胞」、「細胞株」及び「細胞培養物」という表現は交換可能に使用され、そして、全てのそのような呼称は、子孫を包含する。従って、語句「形質転換体」及び「形質転換細胞」は、一次対象細胞及び継代の数を考慮せずにそれに由来する培養物を包含する。さらにまた、意図的な又は偶発的な突然変異に起因して、必ずしも全ての子孫が正確に同じDNA内容物を有さないことも理解される。最初に形質転換された細胞においてスクリーニングされたのと同じ機能又は生物学的活性を有する突然変異体子孫は包含される。異なる呼称が意図される場合は、それは、その文脈から明らかになる。
【0118】
本明細書中で使用されている場合、「生殖細胞系配列」は、再構成されていない免疫グロブリンDNA配列の配列を示している。再構成されていない免疫グロブリン配列の任意の適切な供給源を使用することができる。ヒト生殖細胞系配列は、例えば、アメリカ国立衛生研究所の関節炎及び筋骨格系/皮膚疾患国立研究機構(National Institute of Arthritis and Musculoskeletal and Skin Diseases of the United States National Institutes of Health)のウエブサイト上のJOINSOLVER(登録商標)生殖細胞系データベースから、入手することができる。マウス生殖細胞系配列は、例えば、Giudicelli et al.[Nucleic Acids Res. 33:D256-D261 (2005)]に記載されているようにして入手することができる。
【0119】
マウス抗イヌCTLA-4及びイヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体の特性
本発明は、単離されたマウス抗イヌCTLA-4抗体及びそのイヌ化抗体、疾患の治療(例えば、イヌにおける癌の治療)における抗体又はその抗原結合フラグメントの使用方法を提供する。イヌにおいては、A、B、C及びDと称される4つのIgG重鎖が存在する。これらの重鎖は、IgGA、IgGB、IgGC及びIgGDと称される、イヌIgGの4つの異なるサブクラスを表す。2つの重鎖のそれぞれは、1つの可変ドメイン(VH)と、CH-1、CH-2及びCH-3と称される3つの定常ドメインからなる。CH-1ドメインは、「ヒンジ」又は代替え的に「ヒンジ領域」と称されるアミノ酸配列を介してCH-2ドメインに連結されている。
【0120】
これら4つの重鎖のDNA配列及びアミノ酸配列は、Tang et al.[Vet. Immunol. Immunopathol. 80: 259-270 (2001)]によって初めて同定された。これらの重鎖についてのアミノ酸配列及びDNA配列は、GenBankデータベースからも入手可能である。例えば、IgGA重鎖のアミノ酸配列は、受託番号AAL35301.1を有し、IgGBは、受託番号AAL35302.1を有し、IgGCは、受託番号AAL35303.1を有し、そして、IgGDは、受託番号(AAL35304.1)を有している。イヌ抗体は、さらに、2種類の軽鎖、カッパ及びラムダも含む。これらの軽鎖のDNA配列及びアミノ酸配列も、GenBankデータベースから入手することができる。例えば、カッパ軽鎖のアミノ酸配列は、受託番号ABY57289.1を有し、そして、ラムダ軽鎖は、受託番号ABY55569.1を有している。
【0121】
本発明では、4つのイヌIgG Fcフラグメントの各々についてのアミノ酸配列は、Tang et al.(上掲)によって決定されたCH1及びCH2ドメインの同定された境界に基づいている。イヌCTLA-4に結合するイヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体としては、限定するものではないが、以下のものなどがある: マウス抗イヌCTLA-4 CDRと一緒にイヌIgG-A、IgG-B、IgG-C及びIgG-D重鎖及び/又はイヌカッパ軽鎖を含む抗体。従って、本発明は、イヌCTLA-4に結合し、イヌCTLA-4のイヌCD86及び/又はイヌCD80への結合をブロックする、単離されたマウス抗イヌCTLA-4及び/又はイヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0122】
本発明は、さらに、対応する軽鎖と組み合わせてイヌ化抗体を作製することが可能な完全長イヌ重鎖を提供する。従って、本発明は、さらに、イヌ化マウス抗イヌ抗原抗体(これは、単離されたイヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体を包含する)及び疾患の処置(例えば、イヌの癌の処置)における抗体又はその抗原結合フラグメントの使用方法を提供する。
【0123】
本発明は、さらに、イヌ結晶性フラグメント領域(cFc領域)が1以上のエフェクター機能を増大させる、低減させる又は除去するように遺伝子操作されているcFc領域を含むイヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体を提供する。本発明の一態様においては、遺伝子操作されたcFcは、1以上のエフェクター機能を低減させるか又は除去する。本発明の別の態様においては、遺伝子操作されたcFcは、1以上のエフェクター機能を増大させる。特定の実施形態では、遺伝子操作されたcFc領域は、遺伝子操作されたイヌIgGB Fc領域である。別のそのような実施形態では、遺伝子操作されたcFc領域は、遺伝子操作されたイヌIgGC Fc領域である。特定の実施形態では、エフェクター機能は抗体依存性細胞障害作用(ADCC)であり、これが、増大、低減又は除去される。別の実施形態では、エフェクター機能は補体依存性細胞障害作用(CDC)であり、これが、増大、低減又は除去される。さらに別の実施形態では、cFc領域は、ADCC及びCDCの両方を増大させる、低減させる又は除去するように遺伝子操作されている。
【0124】
エフェクター機能を欠いているイヌIgGの変異体を生成させるために、多数の突然変異体イヌIgGB重鎖を作製した。これらの変異体は、重鎖アミノ酸配列のFc部分内に以下の単一の又は複合の置換のうちの1以上を含み得る:P4A、D31A、N63A、G64P、T65A、A93G、及び、P95A。変異体重鎖(即ち、そのようなアミノ酸置換を含む重鎖)を発現プラスミドにクローン化し、軽鎖をコード化する遺伝子を含有するプラスミドと共にHEK293細胞にトランスフェクトした。HEK293細胞から発現され、精製された無傷抗体を、免疫エフェクター機能の媒介に関するそれらの潜在能を調べるために、FcγRI及びC1qへの結合について評価した。[U.S.10,106,607B2を参照されたい。その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる]。
【0125】
本発明は、さらに、その天然のIgGDヒンジ領域の代わりに、下記ヒンジ領域を含む、改変イヌIgGDを提供する。
【表2】
【0126】
あるいは、IgGDヒンジ領域は、セリン残基をプロリン残基で置き換えることによって遺伝子改変することができ、即ち、配列番号131のPKESTCKCIPPCPVPES(天然に存在するセリン残基を置換するプロリン残基(P)は、太字で下線が付けられている)。そのような改変は、fabアーム交換を欠いているイヌIgGDをもたらすことができる。改変されたイヌIgGDは、組換えDNA技術の標準的な方法を使用して構築することができる[例えば、Maniatis et al.,Molecular Cloning, A Laboratory Manual (1982)]。これらの変異体を構築するために、イヌIgGDのアミノ酸配列をコード化する核酸を、改変されたIgGDをコード化するように改変することができる。次いで、その改変された核酸配列をタンパク質発現のために発現プラスミドにクローン化する。
【0127】
イヌCTLA-4に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントは、本明細書中で記載されているマウス抗イヌ抗体の相補性決定領域(CDR)のうちの3、4、5又は6を含有することができる。3、4、5又は6のCDRは、以下で提供されているCDR配列から独立して選択され得る。さらなる実施形態では、イヌCTLA-4に結合する単離された抗体又はその抗原結合フラグメントは、マウス軽鎖CDR-1、CDR-2及び/又はCDR-3を含むイヌ抗体カッパ軽鎖又はラムダ軽鎖、並びに、マウス重鎖CDR-1、CDR-2及び/又はCDR-3を含むイヌ抗体重鎖IgGを含む。
【0128】
別の実施形態では、本発明は、イヌCTLA-4に特異的に結合し、且つ、
それぞれ、VLCDR-1、VLCDR-2及びVLCDR-3についての配列番号92、94及び96のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を含む3つのCDRの所与のセットを含むイヌ抗体カッパ又はラムダ軽鎖、及び、それぞれ、VHCDR-1、VHCDR-2及びVHCDR-3についての配列番号86、88及び90のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を含む3つのCDRの所与のセットを含むイヌ抗体重鎖IgG;又は、
それぞれ、VLCDR-1、VLCDR-2及びVLCDR-3についての配列番号104、106及び108のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を含む3つのCDRの所与のセットを含むイヌ抗体カッパ又はラムダ軽鎖、及び、それぞれ、VHCDR-1、VHCDR-2及びVHCDR-3についての配列番号98、100及び102のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を含む異なるCDRの所与のセットを含むイヌ抗体重鎖IgG;又は、
それぞれ、VLCDR-1、VLCDR-2及びVLCDR-3についての配列番号117、94及び96のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を含む3つのCDRの所与のセットを含むイヌ抗体カッパ又はラムダ軽鎖、及び、それぞれ、VHCDR-1、VHCDR-2及びVHCDR-3についての配列番号86、88及び113のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を含む異なるCDRの所与のセットを含むイヌ抗体重鎖IgG;又は、
それぞれ、VLCDR-1、VLCDR-2及びVLCDR-3についての配列番号119、122及び96のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を含む3つのCDRの所与のセットを含むイヌ抗体カッパ又はラムダ軽鎖、及び、それぞれ、VHCDR-1、VHCDR-2及びVHCDR-3についての配列番号86、88及び115のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を含む異なるCDRの所与のセットを含むイヌ抗体重鎖IgG;を有しながら、同時に、好ましい結合特性及び機能特性を依然として示す、抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。別の実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、0、1、2、3、4又は5の保存的又は非保存的なアミノ酸置換を有する3つの軽鎖CDRと3つの重鎖CDRの前記セットのうちの1以上を有するカッパ又はラムダ軽鎖とIgG重鎖配列の組合せを含んでいながら、同時に、好ましい結合特性及び機能特性を依然として示すイヌフレームを含む。
【0129】
配列同一性は、2つの配列を最適に整列させた場合に2つのポリペプチドのアミノ酸が等しい位置において同一である程度を示している。本明細書中で使用されている場合、1つのアミノ酸配列は、2番目のアミノ酸配列に対して、その両方の配列のアミノ酸残基が同一である場合、100%「同一」である。従って、あるアミノ酸配列は、2番目のアミノ酸配列に対して、その2つのアミノ酸配列のアミノ酸残基のうちの50%が同一である場合、50%「同一」である。配列の比較は、所与のタンパク質(例えば、比較されるポリペプチドの一部分又はタンパク質)に含まれるアミノ酸残基の連続するブロックにわたって実施される。特定の実施形態では、2つのアミノ酸配列の間の対応性を異なるように変化させ得る選択された欠失又は挿入を考慮に入れる。
【0130】
配列類似性は、同一の残基及び生化学的に関連する非同一のアミノ酸を包含する。類似した特性を共有し、交換可能であり得る生化学的に関連するアミノ酸が考察される。
【0131】
「保存的に修飾された変異体」又は「保存的置換」は、タンパク質中のアミノ酸を類似した性質(例えば、電荷、側鎖サイズ、疎水性/親水性、骨格立体配座及び剛性など)を有する他のアミノ酸で置換することを示しており、その結果、変更は、多くの場合、そのタンパク質の生物学的活性を変えることなくなされ得る。当業者は、一般に、ポリペプチドの非必須領域内の1つのアミノ酸置換は生物学的活性を実質的に改変しないことを認識する[例えば、「Watson et al.,Molecular Biology of the Gene,The Benjamin/Cummings Pub. Co.,p.224(4th Ed.;1987)」を参照されたい]。加えて、構造的に又は機能的に類似しているアミノ酸の置換は、生物学的活性を破壊する可能性がより低い。例示的な保存的置換が、すぐ下の表Aに示されている。
【表3】
【0132】
本発明の抗体の機能保存的変異体も、本発明によって企図される。「機能保存的変異体」は、本明細書中で使用されている場合、抗原親和性及び/又は特異性のような所望の特性を変えることなく1以上のアミノ酸残基が変更されている抗体又はフラグメントを示している。そのような変異体は、限定するものではないが、特定のアミノ酸が上記表Aの保存的アミノ酸置換のような類似特性を有するアミノ酸で置き換えられているものを包含する。
【0133】
核酸
本発明は、さらに、本明細書中で開示されているマウス抗イヌCTLA-4及び/又はイヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体及びその抗原結合フラグメントの免疫グロブリン鎖をコード化する核酸を包含する(例えば、以下の「実施例」を参照されたい)。
【0134】
さらにまた、BLASTアルゴリズムによって比較を実施した場合に本明細書中で提供されているイヌ化抗体のアミノ酸配列と少なくとも約70%同一、好ましくは、少なくとも約80%同一、さらに好ましくは、少なくとも約90%同一、及び、最も好ましくは、少なくとも約95%同一(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、100%)であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリンポリペプチドをコード化する核酸も本発明に包含され、ここで、アルゴリズムのパラメータは、それぞれの参照配列の全長にわたってそれぞれの配列の間で最大の一致を与えるように選択される。本発明は、さらに、BLASTアルゴリズムで比較を実施した場合に参照アミノ酸配列のいずれかと少なくとも約70%類似、好ましくは、少なくとも約80%類似、さらに好ましくは、少なくとも約90%類似、及び、最も好ましくは、少なくとも約95%類似(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、100%)しているアミノ酸配列を含む免疫グロブリンポリペプチドをコード化する核酸も提供し、ここで、アルゴリズムのパラメータは、それぞれの参照配列の全長にわたってそれぞれの配列の間で最大の一致を与えるように選択され、同様に本発明に包含される。
【0135】
本明細書中で使用されている場合、ヌクレオチド及びアミノ酸配列の同一性パーセントは、アラインメントのデフォルトパラメータ及び同一性についてのデフォルトパラメータを用いて、C,MacVector(MacVector, Inc. Cary, NC 27519)、Vector NTI(Informax, Inc. MD)、Oxford Molecular Group PLC(1996)及びClustal Wアルゴリズムを使用して確認することができる。これらの市販されているプログラムは、さらに、同じ又は類似のデフォルトパラメータを用いて配列類似性を確認するためにも使用することができる。あるいは、例えば、デフォルトパラメータを用いたGCG(Genetics Computer Group, Program Manual for the GCG Package, Version 7, Madison, Wisconsin)パイルアッププログラムを使用して、デフォルトフィルター条件下でAdvanced Blast検索を用いることも可能である。
【0136】
以下の参考文献は、配列解析のためにしばしば使用されるBLASTアルゴリズムに関するものである:BLAST ALGORITHMS:Altschul,S.F.,et al.,J.Mol.Biol.215:403-410 (1990);Gish, W., et al.,Nature Genet.3:266-272 (1993);Madden,T.L., et al.,Meth.Enzymol.266:131-141(1996); Altschul,S.F., et al., Nucleic Acids Res. 25:3389-3402 (1997); Zhang, J., et al.,Genome Res. 7:649-656 (1997);Wootton, J.C., et al., Comput. Chem. 17:149-163 (1993); Hancock, J.M. et al., Comput.Appl. Biosci. 10:67-70 (1994); ALIGNMENT SCORING SYSTEMS: Dayhoff, M.O., et al., “A model of evolutionary change in proteins.” in Atlas of Protein Sequence and Structure, vol. 5, suppl. 3. M.O. Dayhoff (ed.), pp. 345-352, (1978); Natl. Biomed. Res. Found., Washington, DC; Schwartz, R.M., et al., “Matrices for detecting distant relationships.” in Atlas of Protein Sequence and Structure, vol. 5, suppl. 3.“ (1978), M.O. Dayhoff (ed.), pp. 353-358 (1978), Natl. Biomed. Res. Found., Washington, DC; Altschul, S.F., J. Mol. Biol. 219:555-565 (1991); States, D.J., et al., Methods 3:66-70(1991); Henikoff, S., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915-10919 (1992); Altschul, S.F., et al., J. Mol. Evol. 36:290-300 (1993); ALIGNMENT STATISTICS: Karlin, S., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268 (1990); Karlin, S., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877 (1993); Dembo, A., et al., Ann. Prob. 22:2022-2039 (1994);及び、 Altschul, S.F. “Evaluating the statistical significance of multiple distinct local alignments.” in Theoretical and Computational Methods in Genome Research (S. Suhai, ed.), pp. 1-14, Plenum, New York (1997)。
【0137】
本発明は、さらに、本発明の核酸を含む発現ベクターも提供し、ここで、核酸は、宿主細胞をベクターでトランスフェクトしたときに宿主細胞によって認識される制御配列に作動可能に連結されている。さらにまた、本発明の発現ベクターを含む宿主細胞、及び、本明細書中で開示されている抗体又はその抗原結合フラグメントを作製する方法も提供され、ここで、該方法は、抗体又は抗原結合フラグメントをコード化する発現ベクターを保有する宿主細胞を培地内で培養すること、及び、抗原又はその抗原結合フラグメントを宿主細胞又は培地から単離することを含む。
【0138】
イヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体は、当分野で既知の方法によって組換え技術で作製することができる。本明細書中で開示されている抗体又はフラグメントの発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は、当分野でよく知られており、そして、アメリカ培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株を包含する。これらには、とりわけ、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO、SP2細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、3T3細胞、HEK-293細胞及び多くの他の細胞株が包含される。哺乳動物宿主細胞としては、ヒト、マウス、ラット、イヌ、サル、ブタ、ヤギ、ウシ、ウマ及びハムスターの細胞を含む。特に好ましい細胞株は、どの細胞株が高い発現レベルを有しているかを確認することによって選択される。使用し得る他の細胞株は、昆虫細胞株、例えば、Sf9細胞、両生類細胞、細菌細胞、植物細胞及び真菌細胞である。重鎖又はその抗原結合部分若しくはフラグメント、軽鎖及び/又はその抗原結合フラグメントをコード化する組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入する場合、その宿主細胞において抗体の発現を可能にするのに充分な期間、又は、さらに好ましくは、その宿主細胞がその中で増殖する培地の中に抗体の分泌を可能にするのに充分な期間、宿主細胞を培養することによって抗体が産生される。
【0139】
抗体は、標準的なタンパク質精製方法を用いて、その培地から回収することができる。さらに、産生細胞株からの本発明の抗体(又は、それに由来する他の成分)の発現は、多くの既知技術を用いて増強することができる。例えば、グルタミンシンテターゼ遺伝子発現系(GS系)は、特定の条件下で発現を増強するための一般的なアプローチである。GS系は、欧州特許第0216846号、欧州特許第0256055号及び欧州特許第0323997号並びに欧州特許出願第89303964.4号に関連して全体的に又は部分的に考察される。
【0140】
一般に、特定の細胞株又はトランスジェニック動物において産生される糖タンパク質は、その細胞株又はトランスジェニック動物で産生される糖タンパク質に特徴的なグリコシル化パターンを有する。従って、抗体の特定のグリコシル化パターンは、その抗体を産生させるのに使用される特定の細胞株又はトランスジェニック動物に依存する。しかしながら、本明細書中において提供されている核酸分子によってコード化される又は本明細書において提供されているアミノ酸配列を含む全ての抗体は、その抗体が有し得るグリコシル化パターンに関係なく本発明を構成する。同様に、特定の実施形態では、非フコシル化N-グリカンのみを含むグリコシル化パターンを有する抗体は、これらの抗体が典型的にはインビトロ及びインビボの両方でそれらのフコシル化対応物よりも強力な効力を発揮することが示されているので、有利であり得る[例えば、以下のものを参照されたい:Shinkawa et al.,J.Biol.Chem.278:3466-3473(2003);米国特許第6,946,292号及び米国特許第7,214,775号]。
【0141】
本発明は、さらに、本明細書中で開示されているマウス抗イヌCTLA-4抗体の抗体フラグメントを包含する。抗体フラグメントには、例えばペプシンによるIgGの酵素的切断によって生成され得る、F(ab)2フラグメントが包含される。Fabフラグメントは、例えばジチオトレイトール又はメルカプトエチルアミンでF(ab)2を還元することによって生成させることができる。Fabフラグメントは、ジスルフィド架橋によってVH-CH1鎖に付加されたVL-CL鎖である。F(ab)2フラグメントは、2つのジスルフィド架橋によって付加された2つのFabフラグメントである。F(ab)2分子のFab部分は、その間にジスルフィド架橋が位置するFc領域の一部分を含む。FVフラグメントは、VL領域又はVH領域である。
【0142】
一実施形態では、抗体又は抗原結合フラグメントは、重鎖定常領域、例えば、イヌ定常領域、例えば、IgGA、IgGB、IgGC及びIgGDイヌ重鎖定常領域又はその変異体を含む。別の実施形態では、抗体又は抗原結合フラグメントは、軽鎖定常領域、例えば、イヌ軽鎖定常領域、例えば、ラムダ又はカッパイヌ軽鎖領域又はその変異体を含む。例として、及び、限定するものではないが、イヌ重鎖定常領域は、IgG-Bに由来することができ、そして、イヌ軽鎖定常領域は、カッパに由来することができる。
【0143】
抗体工学
本発明のイヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体は、例えば、その抗体の特性を改善するために、親(即ち、イヌ)モノクローナル抗体の可変ドメイン内のイヌフレームワーク及び/又はイヌフレーム残基への修飾を含むように操作することができる。
【0144】
エピトープ結合及び結合親和性
本発明は、さらに、本明細書中で開示されているマウス抗イヌCTLA-4抗体と同じイヌCTLA-4のエピトープのアミノ酸残基に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。特定の実施形態では、マウス抗イヌCTLA-4抗体又はその抗原結合フラグメントは、さらに、イヌCTLA-4のイヌCD86及び/又はCD80への結合を阻害/ブロックすることができる。関連する実施形態では、イヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体又はその抗原結合フラグメントも、イヌCTLA-4のイヌCD86及び/又はCD80への結合を阻害/ブロックすることができる。
【0145】
実験的及び診断的用途
本発明のマウス抗イヌCTLA-4及び/又はイヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体又はその抗原結合フラグメントは、さらに、イヌCTLA-4タンパク質に関する診断アッセイにおいて、例えば、癌と連動した及び/又は関連したその発現の検出において有用であり得る。
【0146】
例えば、そのような方法は、以下の段階を含む:
(a) 基質(例えば、マイクロタイタープレートウェルの表面、例えば、プラスチック製プレートの表面)を、マウス抗イヌCTLA-4抗体又はその抗原結合フラグメントでコーティングする段階;
(b) イヌCTLA-4の存在について試験されるサンプルを基質に適用する段階;
(c) そのプレートを洗浄して、サンプル中の未結合の物質を除去する段階;
(d) CTLA-4抗原に対しても特異的である検出可能な標識化抗体(例えば、酵素結合抗体)を適用する段階;
(e) 基質を洗浄して、結合していない標識化抗体を除去する段階;
(f) 標識化抗体が酵素結合している場合、酵素によって蛍光シグナルに変換される化学物質を適用する段階;及び、
(g) 標識化抗体の存在を検出する段階。
【0147】
さらなる実施形態では、標識化抗体は、ABTS[例えば、2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンズチアゾリン-6-スルホン酸)]又は3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)と反応して検出可能な色の変化を生じるペルオキシダーゼで標識されている。あるいは、標識化抗体は、シンチラントの存在下でシンチレーションカウンターによって検出することができる検出可能な放射性同位元素(例えば、3H)で標識されている。本発明のマウス抗イヌCTLA-4抗体は、ウエスタンブロット手順又はイムノプロテインブロット手順で使用することができる。
【0148】
そのような手順は、本発明の一部を形成し、そして、例えば、以下を含む:
(i) 結合したイヌCTLA-4又はそのフラグメントの存在について試験される膜又は別の固体基質を、本発明のイヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体又はその抗原結合フラグメントと接触させる。そのような膜は、非変性PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)ゲル又はSDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)ゲルの中のイヌCTLA-4の存在が試験されるタンパク質が(例えば、ゲル中で電気泳動分離された後で)移されたニトロセルロース又はビニル系[例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)]膜の形態であることができる。膜にイヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体又はその抗原結合フラグメントを接触させる前に、膜を、場合により、その膜上の非特異的タンパク質結合部位が結合するように例えば無脂乾燥乳などでブロックする;
(ii) 未結合のイヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体又はその抗原結合フラグメント及び他の未結合物質を除去するために、膜を1回以上洗浄すること;及び
(iii) 結合したイヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体又はその抗原結合フラグメントを検出すること。
【0149】
結合した抗体又は抗原結合フラグメントの検出は、その抗体又は抗原結合フラグメントを検出可能に標識された二次抗体(抗免疫グロブリン抗体)と結合させ、次いで、その二次抗体の存在を検出することによって行うことができる。
【0150】
本明細書中で開示されているマウス抗イヌCTLA-4抗体、イヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体及び/又はその抗原結合フラグメントは、さらに、免疫組織化学に使用することができる。そのような方法は、本発明の一部を形成し、そして、例えば、以下を含む:(1)イヌCTLA-4の存在について試験される細胞を、例えば、本発明のマウス抗イヌCTLA-4抗体又はその抗原結合フラグメントと接触させること;及び、(2)その細胞の表面上又は内部の抗体又はフラグメントを検出すること。抗体又は抗原結合フラグメント自体が検出可能に標識されている場合は、それは、直接検出することが可能である。あるいは、抗体又は抗原結合フラグメントに、検出可能に標識された二次抗体を結合させることができ、それを検出する。
【0151】
イメージング技術としては、SPECTイメージング(単一光子放射型コンピュータ断層撮影)又はPETイメージング(ポジトロン放射型断層撮影)を含む。標識としては、例えば、以下のものを含む:例えばSPECTイメージングと組み合わせた、ヨウ素-123(123I)及びテクネチウム-99m(99mTc)、又は、例えばPETイメージングと組み合わせた、11C、13N、15O若しくは18F、又は、インジウム-111[例えば、「Gordon et al., International Rev. Neurobiol. 67:385-440 (2005)」を参照されたい]。
【0152】
交差ブロッキング抗体
さらに、本発明の抗イヌCTLA-4抗体又はその抗原結合フラグメントには、以下のものも包含される:本明細書中で論じられている抗体及びフラグメントが結合するイヌCTLA-4と同じエピトープに結合する任意の抗体又はその抗原結合フラグメント、並びに、イヌCTLA-4結合について本明細書中で論じられている抗体若しくはフラグメントを(部分的に又は完全に)交差ブロックする又はイヌCTLA-4結合について本明細書中で論じられている抗体若しくはフラグメントによって(部分的に又は完全に)交差ブロックされる任意の抗体若しくは抗原結合フラグメント;並びに、それらの任意の変異体。
【0153】
本明細書中で論じられている交差ブロッキング抗体及びその抗原結合フラグメントは、標準的な結合アッセイ(例えば、BIACore(登録商標)、以下で例示されているELISA、又は、フローサイトメトリー)において、本明細書中で開示されている抗体(以下の実施例5において提供されているCDRに基づく)(即ち、45A9、27G12、22A11、110E3;及び、より特定的には、12B3及び/又は39A11)と交差競合するそれらの能力に基づいて確認することができる。例えば、標準的なELISAアッセイを使用することが可能であり、ここで、アッセイでは、組換えイヌCTLA-4タンパク質をプレート上に固定化し、当該抗体のうちの1つを蛍光標識し、そして、標識化抗体の結合と競合する非標識化抗体の能力を評価する。追加的に又は代替的に、BIAcore(登録商標)分析を使用して、抗体が交差競合するその能力を評価することが可能である。例えば、27G12、45A9、110E3及び/又は22A11;並びに、さらに特定的には、12B3及び/又は39A11のイヌCTLA-4への結合を阻害する被験抗体の能力は、被験抗体が、イヌCTLA-4への結合について27G12、45A9、110E3及び/若しくは22A11並びに/又は12B3及び/若しくは39A11と競合することができること、従って、場合によっては、27G12、45A9、110E3及び/若しくは22A11並びに/又は12B3及び/若しくは39A11と同じイヌCTLA-4上のエピトープに結合することができることを示している。上記で記載したように、本発明の抗イヌCTLA-4抗体又はフラグメントのいずれかと同じエピトープに結合する抗体及びフラグメントも本発明の一部を形成する。
【0154】
医薬組成物及び投与
イヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体又はその抗原結合フラグメントの医薬組成物又は滅菌組成物を調製するために、それを医薬的に許容される担体又は賦形剤と混合させることができる。[例えば、以下のものを参照されたい:Remington’s Pharmaceutical Sciences and U.S. Pharmacopeia: National Formulary, Mack Publishing Company, Easton, PA (1984)]。
【0155】
治療薬及び診断薬の製剤は、例えば凍結乾燥粉末、スラリー、水溶液又は懸濁液の形態にある許容される担体、賦形剤又は安定化剤と混合させることによって調製することができる[例えば、以下のものを参照されたい:Hardman, et al.(2001) Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,McGraw-Hill,New York,NY; Gennaro(2000) Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott,Williams, and Wilkins,New York,NY;Avis,et al. (eds.) (1993) Pharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medications, Marcel Dekker,NY;Lieberman,et al. (eds.) (1990) Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Marcel Dekker,NY;Lieberman, et al. (eds.) (1990) Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems,Marcel Dekker,NY;Weiner and Kotkoskie(2000) Excipient Toxicity and Safety,Marcel Dekker,Inc.,New York,NY]。一実施形態では、本発明の抗CTLA-4抗体を酢酸ナトリウム溶液(pH5~6)の中で適切な濃度に希釈し、そして、張度のためにNaCl又はスクロースを添加する。安定性を高めるために、ポリソルベート20又はポリソルベート80などの付加的な作用物質を添加することができる。
【0156】
単独で又は別の作用物質と組み合わせて投与される抗体組成物の毒性及び治療効果は、例えばLD50(母集団の50%に致死的な用量)及びED50(母集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するための細胞培養物又は実験動物における標準的な薬学手順によって確認することができる。毒性作用と治療効果の間の用量比が治療指数(LD50/ED50)である。特定の態様においては、高い治療指数を示す抗体が望ましい。これらの細胞培養アッセイ及び動物試験から得られるデータは、イヌにおける使用のための投与量範囲を設定するのに使用することができる。そのような化合物の投与量は、好ましくは、殆ど又は全く毒性を伴わないED50を包含する循環濃度の範囲内にある。投与量は、使用される投与形態及び投与経路に応じてこの範囲内で変化し得る。
【0157】
投与の方法はさまざまであり得る。適切な投与経路としては、以下の経路を含む:経口、直腸、経粘膜、腸、非経口;筋肉内、皮下、皮内、髄内、髄腔内、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻内、眼内、吸入、吹送、局所、皮膚、経皮又は動脈内。特定の実施形態では、イヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体又はその抗原結合フラグメントは、注射のような侵襲的経路によって投与することができる。本発明のさらなる実施形態では、イヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体若しくはその抗原結合フラグメント又はその医薬組成物は、静脈内、皮下、筋肉内、動脈内に、又は、吸入、エアロゾル送達によって投与される。非侵襲的経路(例えば、経口的に;例えば、丸剤、カプセル剤又は錠剤中で)による投与も本発明の範囲内である。
【0158】
組成物は、当技術分野で知られている医療機器を用いて投与することができる。例えば、本発明の医薬組成物は、皮下注射針(これは、例えば、プレフィルドシリンジ又は自己注射器を包含する)による注射によって投与することができる。本明細書中で開示されている医薬組成物は、さらに、無針皮下注射装置(例えば、米国特許:第6,620,135号;第6,096,002号;第5,399,163号;第5,383,851号;第5,312,335号;第5,064,413号;第4,941,880号;第4,790,824号又は第4,596,556号に開示されている装置)を用いて投与することもできる。
【0159】
本明細書中で開示されている医薬組成物は、注入によって投与することもできる。医薬組成物を投与するためのよく知られているインプラント及びモジュールの例としては、以下のものを含む:米国特許第4,487,603号、これは、薬剤を制御された速度で投与するための移植可能なマイクロ注入ポンプを開示している;米国特許第4,447,233号、これは、薬剤を正確な注入速度で送達するための薬剤注入ポンプを開示している;米国特許第4,447,224号、これは、持続的な薬剤送達のための可変流量の移植可能な注入装置を開示している;米国特許第4,439,196号、これは、マルチチャンバー区画を有する浸透圧薬物送達システムを開示している。多くの他のそのようなインプラント、送達システム及びモジュールは、当業者にはよく知られている。
【0160】
あるいは、例えば、多くの場合、デポー製剤又は持続放出製剤で、免疫病理学によって特徴付けられる病原体誘発性病変又は関節炎の関節の内部に抗体を直接注入することによって、マウス抗イヌCTLA-4抗体又はイヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体を全身的にではなく局所的に投与することができる。さらに、例えば、免疫病理学によって特徴付けられる病原体誘発性病変又は関節炎の関節を標的とする標的化薬物送達システムで、例えば、組織特異的抗体で被覆されたリポソームに入れて抗体を投与することができる。リポソームは、罹患組織を標的とし、罹患組織によって選択的に取り込まれる。
【0161】
投与レジメンは、治療用抗体の血清又は組織代謝回転速度、兆候のレベル、治療用抗体の免疫原性及び生物学的マトリックス中の標的細胞の接近可能性を包含するいくつかの因子に依存する。好ましくは、投与レジメンは、同時に望ましくない副作用を最小限に抑えながら、標的疾患部位において改善をもたらすのに充分な治療用抗体を送達する。従って、送達される生物学的製剤の量は、一部には特定の治療用抗体及び処置される状態の重症度に依存する。治療用抗体の適切な用量の選択における指針を入手することが可能である[例えば、以下のものを参照されたい:Wawrzynczak Antibody Therapy,Bios Scientific Pub.Ltd,Oxfordshire,UK(1996);Kresina (ed.) Monoclonal Antibodies, Cytokines and Arthritis,Marcel Dekker,New York,NY(1991);Bach (ed.) Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases,Marcel Dekker,New York,NY(1993);Baert,et al.New Engl.J.Med.348:601-608(2003);Milgrom et al.New Engl.J.Med.341:1966-1973(1999);Slamon et al.New Engl.J.Med.344:783-792(2001);Beniaminovitz et al.New Engl.J.Med.342:613-619(2000);Ghosh et al.New Engl.J.Med.348:24-32(2003);Lipsky et al.New Engl.J.Med.343:1594-1602(2000)]。
【0162】
適切な用量の決定は、獣医によって、例えば処置に影響を及ぼすことが当分野で既知である又は推測されるパラメータ又は因子を使用して行われる。一般に、投与は、最適用量よりいくぶん低い量から開始し、その後、負の副作用と比較して所望の又は最適の効果が達成されるまで少しずつ増量する。重要な診断基準としては、腫瘍サイズなどの兆候の診断基準を含む。
【0163】
本明細書中で開示されている抗体又はその抗原結合フラグメントは、連続注入によって提供され得るか、又は、例えば、1日1回、週に1~7回、週1回、隔週に1回、月1回、隔月に1回、3ヶ月に1回、半年に1回、年1回などで投与される用量によって提供され得る。用量は、例えば、静脈内、皮下、局所、経口、鼻腔、直腸、筋肉内、脳内、脊髄内に、又は、吸入によって提供され得る。1週間の総用量は、一般に、少なくとも0.05μg/kg体重であり、より一般的には、少なくとも0.2μg/kg、0.5μg/kg、1μg/kg、10μg/kg、100μg/kg、0.25mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/mL、10mg/kg、25mg/kg、50mg/kg又はそれ以上である[例えば、以下のものを参照されたい:Yang,et al.New Engl.J.Med.349:427-434 (2003);Herold,et al.New Engl. J.Med.346:1692-1698(2002);Liu,et al. J. Neurol.Neurosurg.Psych.67:451-456 (1999);Portielji,et al.Cancer Immunol.Immunother.52:133-144(2003)]。用量は、さらにまた、対象の血清中におけるイヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体のあらかじめ定められた目標濃度(例えば、0.1、0.3、1、3、10、30、100、300μg/mL又はそれ以上)を達成するように提供され得る。別の実施形態では、本発明のイヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体は、週1回、隔週に1回、「4週間に1回」、月1回、隔月に1回又は3ヶ月に1回に基づいて、10、20、50、80、100、200、500、1000又は2500mg/対象で、皮下投与又は静脈内投与される。
【0164】
抗イヌCTLA-4 mAbによって認識される抗原性ペプチド(例えば、CTLA-4からのエピトープ又はその一部を含むペプチド)も、イヌCTLA-4のイヌCD80及び/又はCD86への結合をブロックする抗体を誘発させるためのワクチンとして使用することができる。そのようなワクチンは、癌のような疾患に対する治療ワクチンとして有用であり得る。これらの抗原性ペプチドをワクチンとして使用するために、これらのペプチドの免疫原性を増大させ、ペプチド特異的抗体を誘発させるために、これらのペプチドの1以上を化学的に又は組換えDNA技術の技術を介して別の担体タンパク質に結合させることができる。ペプチドを担体タンパク質に結合させるための技術は、当業者に知られている。ペプチドワクチンは、IM、S/C、経口、スプレー又は卵内(in ovo)経路で動物にワクチン接種するために使用することができる。ペプチドワクチンは、細菌、ウイルス、酵母又はバキュロウイルスウイルスシステムから発現されるサブユニットタンパク質として使用することができる。あるいは、そのようなペプチドワクチンは、当業者に知られている方法によって実施することが可能なペプチドワクチンを発現する種々のウイルス又は細菌ベクターを投与した後で送達することができる。ペプチドワクチンは、1-1000μgの用量で投与することができ、そして、場合により、アジュバント及び許容可能な医薬用担体を含むことができる。
【0165】
本明細書中で使用されている場合、「阻害する」又は「処置する」又は「処置」は、障害に関連する兆候の発現の先送り及び/又はそのような障害の兆候の重症度の軽減を包含する。これらの用語は、さらに、既存の制御されていない又は望ましくない兆候を改善すること、付加的な兆候を予防すること及びそのような兆候の基礎となる原因を改善又は予防することを包含する。従って、これらの用語は、障害、疾患若しくは兆候を有している又はそのような障害、疾患若しくは兆候を発現する可能性を有している脊椎動物対象に有益な結果が与えられていることを意味する。
【0166】
本明細書中で使用されている場合、用語「治療有効量」、「治療有効用量」及び「有効量」は、単独で又は付加的な治療薬と組み合わせて、細胞、組織又は対象に投与された場合に、疾患若しくは症状の1以上の兆候における又はそのような疾患若しくは症状の進行における測定可能な改善を生じさせるのに有効な、本発明のイヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体又はその抗原結合フラグメントの量を示している。治療有効用量は、さらに、兆候の少なくとも部分的な改善、例えば、関連する医学的状態の処置、治癒、予防若しくは改善又はそのような症状の処置、治癒、予防若しくは改善の速度の増大をもたらすのに充分な結合化合物の量を示している。単独で投与される個々の活性成分に対して適用される場合、治療有効用量は、その成分単独を示している。組合せに対して適用される場合、治療有効用量は、組み合わせて、連続的に又は同時に投与されるかどうかにかかわらず、治療効果をもたらす有効成分の合計量を示している。治療薬の有効量は、診断基準又はパラメータの少なくとも10%、通常は少なくとも20%、好ましくは少なくとも約30%、さらに好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%の改善をもたらす。有効量は、さらにまた、疾患の重症度を評価するのに主観的基準を用いる場合は、主観的基準の改善ももたらすことができる。
【0167】
他の併用療法
先に記載したように、本発明のイヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体若しくはその抗原結合フラグメント及び/又は抗原性ペプチドは、1種類以上の別の治療薬(例えば、次の段落で論じられている阻害薬)及び/又はイヌ化マウス抗イヌPD-1抗体[例えば、U.S.9,944,704B2及びU.S.10,106,107B2を参照されたい、これらの両方の内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる]及び/又はイヌ化マウス抗イヌPD-L1抗体[例えば、U.S.20180237535A1を参照されたい、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる]と同時投与することができる。抗体(類)は、薬剤に(免疫複合体として)連結させることができ、及び/又は、薬剤又は別の抗体とは別に投与することができる。後者(別々の投与)の場合、抗体は、薬剤の前に、後で若しくは同時に投与することが可能であり、又は、別の既知療法と同時投与することができる。
【0168】
キット
さらに、1種類以上の成分(これは、限定するものではないが、CTLA-4に特異的に結合する、本明細書で論じられている抗体又は抗原結合フラグメント(例えば、イヌ化マウス抗イヌCTLA-4抗体又はその抗原結合フラグメント)を包含する)を、1種類以上の付加的な成分(これは、イヌ化マウス抗イヌPD-1抗体及び/又はイヌ化マウス抗イヌPD-L1抗体を包含する)と一緒に含むキットが提供される。直前に記載されている結合組成物は、純粋な組成物として又は医薬的に許容される担体と組み合わせて、医薬組成物に製剤することができる。
【0169】
一実施形態では、キットは、本発明の結合組成物(例えば、イヌ化マウス抗イヌCTLA-4又はその医薬組成物)を1つの容器(例えば、ガラス製又はプラスチック製の滅菌バイアル)の中に含み、イヌ化マウス抗イヌPD-1抗体及び/若しくはイヌ化マウス抗イヌPD-L1抗体又はそれらの医薬組成物を別の容器(例えば、ガラス製又はプラスチック製の滅菌バイアル)の中に含む。
【0170】
キットが対象への非経口投与用の医薬組成物を含む場合、そのキットは、そのような投与を実施するための装置も含むことができる。例えば、キットは、上記で論じた1以上の皮下注射用針又は他の注射装置を含むことができる。キットは、さらに、そのキットの中の医薬組成物及び投与形態に関する情報を含む添付文書も含むことができる。一般に、そのような情報は、ペットの飼い主及び獣医が同封されている医薬組成物及び投与形態を有効かつ安全に使用するのに役立つ。例えば、本発明の組合せに関する以下の情報が添付文書中で提供され得る:薬物動態学、薬力学、臨床試験、効力パラメータ、適応症及び用法、禁忌、警告、注意、有害反応、過量、適切な投与量及び投与、供給方法、適切な保存条件、参考文献、製造業者/配給業者情報、及び、特許情報。
【0171】
便宜上、本明細書中で開示されている抗体又は特定の結合物質は、キット中で、即ち、診断又は検出アッセイを実施するための指示書と共に所定量の試薬の包装された組合せで提供され得る。抗体(類)が酵素で標識されている場合、キットは、基質及び当該酵素が必要とする補因子(例えば、検出可能な発色団又は発蛍光団を提供する基質前駆体)を含有する。加えて、他の添加物、例えば、安定化剤、緩衝液(例えば、ブロック緩衝液又は溶解緩衝液)なども含まれる。さまざまな試薬の相対的な量は、アッセイの感受性を実質的に最適化する試薬の溶液中の濃度を提供するように広範囲に変えることができる。特に、試薬は、溶解した際に適切な濃度を有する試薬溶液を提供する賦形剤を含有する、通常は凍結乾燥された、乾燥粉末として提供され得る。
【実施例】
【0172】
実施例
実施例1
イヌCTLA-4に対するマウスモノクローナル抗体及び対応するマウス-イヌキメラ抗体の生成
マウスモノクローナル抗体は、免疫原としてイヌCTLA-4(cCTLA-4)組換えタンパク質を用いたマウスハイブリドーマ技術を使用して生成させた。陽性ハイブリドーマクローンは、cCTLA-4との抗体反応性並びにELISA及びFACSアッセイによるイヌCD86又はCD80とcCTLA-4との相互作用のブロック(ブロック活性)に基づいて選択した。選択されたハイブリドーマクローンは、VH及びVL配列の抗体フラグメントに関してcDNA末端の迅速増幅(RACE)によって配列決定した。選択された6つのモノクローナル抗体は、それぞれ、12B3、27G12、39A11、45A9、110E3及び22A11として示されている。その6つの抗体のアミノ酸配列は、重鎖可変領域については、それぞれ、配列番号2、4、6、8、10及び12であり、そして、軽鎖可変領域については、それぞれ、配列番号14、16、18、20、22及び24である。CDRは、以下に提供されている配列の中で下線が引かれている[下記の表1も参照されたい]。上記で確認されたアミノ酸配列をコード化する対応するヌクレオチド配列は、重鎖可変領域については、それぞれ、配列番号1、3、5、7、9及び11として記載されており、そして、軽鎖可変領域については、それぞれ、配列番号13、15、17、19、21及び23として記載されている。重鎖可変領域のヌクレオチド配列を、改変されたイヌ定常重鎖(CH1-ヒンジ-CH2-CH3)のヌクレオチド配列にそれぞれ融合させて、配列番号25、27、29、31、33及び35と称されるキメラマウス-イヌ重鎖ヌクレオチド配列を生成させた。可変領域は太字で示されている。軽鎖可変領域のヌクレオチド配列を、イヌ定常カッパ軽鎖ドメインのヌクレオチド配列にそれぞれ融合させて、配列番号37、39、41、43、45及び47と称されるキメラマウス-イヌ軽鎖ヌクレオチド配列を生成させた。可変領域は太字で示されている。キメラマウス-イヌ重鎖ヌクレオチド配列によってコード化されるアミノ酸配列は、配列番号26、28、30、32、34及び36と称された。キメラマウス-イヌ軽鎖ヌクレオチド配列によってコード化されるアミノ酸配列は、配列番号38、40、42、44、46及び48と称された。可変領域は太字であり、CDRは下線が引かれている。キメラヒト-イヌ重鎖及び軽鎖を、標準的な分子生物学技術を使用して別々の発現プラスミドにクローン化した。重鎖及び軽鎖遺伝子を含むプラスミドをHEK293細胞にトランスフェクトし、発現した抗体をプロテインAを使用してHEK293細胞上清から精製した。
【0173】
実施例2
マウスCDRのアミノ酸配列
マウス抗イヌCTLA-4モノクローナル抗体のCDRが、以下の表1記載されている。
【表4】
【0174】
6つの抗体のそれぞれの6つのCDRの個々のカノニカル構造の割り当てが、以下の表2に示されている。
【表5】
【0175】
実施例3
キメラ抗体のイヌCTLA-4との反応性
キメラ抗体は、通常、その親マウス抗体と同じ反応性を有している。6つの抗体のcCTLA-4との反応性を確認するために、マウス-イヌキメラ抗体を作成し、以下のようにELISAによってcCTLA-4との反応性について試験した。
【0176】
1. イムノプレートに200ng/ウェルのcCTLA-4をコーティングし、そのプレートを4℃で一晩インキュベートした;
2. プレートを0.05%Tween 20(PBST)を含むPBSで3回洗浄した;
3. プレートを、室温で45~60分間、PBS中の0.5%BSAでブロッキングした;
4. プレートをPBSTで3回洗浄した;
5. 希釈プレートの各列又は行で、抗体を3倍に希釈した;
6. 希釈した抗体をプレートの各列又は行に移し、そのプレートを室温で45~60分間インキュベートした;
7. プレートをPBSTで3回洗浄した;
8. プレートの各ウェルに、1:2000希釈の西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗イヌIgG Fcを添加し、そのプレートを室温で45~60分間インキュベートした;
9. プレートをPBSTで3回洗浄した;
10. プレートの各ウェルにTMB基質を添加し、そのプレートを室温で10~15分間インキュベートして、発色させた;
11. 各ウェルに100μLの1.5Mリン酸を加えて反応を停止させた;
12. プレートを540nmの参照波長を用いて450nmで読み取った。
【0177】
ELISAの結果は、キメラ抗体がcCTLA-4に結合することができることを示している[
図1を参照されたい]。
【0178】
実施例4
イヌCD86又はCD80とイヌCTLA-4との相互作用に対するキメラ抗体のブロッキング活性
キメラ抗体のブロッキング活性を調べるために、ELISAベースのブロッキングアッセイを以下のように実施した:
1. イムノプレートに200ng/ウェルのcCTLA-4をコーティングし、そのプレートを4℃で一晩インキュベートする;
2. プレートを、0.05%Tween 20(PBST)を含むPBSで3回洗浄する;
3. プレートを、室温で45~60分間、PBS中の0.5%BSAでブロッキングする;
4. プレートをPBSTで3回洗浄する;
5. 希釈プレートの各列又は行で、抗体を3倍に希釈し、次いで、100ng/ウェルのビオチン化CD86又はCD80を添加した。次に、抗体と混合させた;
6. 混合物をイムノプレートの各列又は行に移し、そのプレートを室温で45~60分間インキュベートした;
7. プレートをPBSTで3回洗浄した;
8. プレートの各ウェルに、1:2000希釈の西洋ワサビペルオキシダーゼがコンジュゲートしたストレプトアビジンを添加し、そのプレートを室温で45~60分間インキュベートした;
9. プレートをPBSTで3回洗浄した;
10. プレートの各ウェルにTMB基質を添加し、そのプレートを室温で10~15分間インキュベートして、発色させた;
11. 各ウェルに100μLの1.5Mリン酸を加えて反応を停止させた;
12. プレートを540nmの参照波長を用いて450nmで読み取った。
【0179】
キメラ抗体は、cCTLA-4とCD86との相互作用[
図2]及びCD80との相互作用[
図3]をブロックすることが分かった。
【0180】
実施例5
CHO-cCTLA-4に対するキメラ抗体の結合活性を試験するためのめのFACSアッセイ
cCTLA-4を安定的に発現するCHO-K1細胞株を作製した。その細胞を使用して、FACSフローアッセイにおいて抗体の結合活性及びブロッキング活性について試験した。キメラ抗体のcCTLA-4結合活性を試験するために、FACSアッセイを以下のように実施した:
1. T-75フラスコ内の培地で、CHO-K1-cCTLA-4細胞を増殖させた。その細胞は、細胞のコンフルエンシーが90%に達したときに継代させた;
培地:F12K(Gibco、カタログ番号21127-022)、10%FBS(Gibco、カタログ番号10099-141)、及び、4μg/mLピューロマイシン(Gibco、カタログ番号A1113803);
2. トリプシン-EDTA溶液で細胞を分離し、その細胞を培地に再懸濁させ、95%以上の生存率で生存細胞をカウントした;
3. 細胞をスピンダウンし、上清を吸引し、次いで、その細胞をFACS緩衝液(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号BDB554656)に再懸濁させて、1×107細胞/mLとした;
4. 100μLの細胞に抗体を加え、穏やかに振盪しながら室温で30分間インキュベートした;
5. 細胞を3×250μLのFACS緩衝液で洗浄し、そして、その細胞を100μLのFACS緩衝液に再懸濁させた;
6. 細胞を、FITCがコンジュゲートした抗イヌIgGで染色し、穏やかに振盪しながら室温で30分間インキュベートした;
7. 細胞を3×250μLのFACS緩衝液で洗浄し、その細胞を500μLのFACS緩衝液に再懸濁させた;
8. フローサイトメトリーで10,000個の細胞を読み取った。
【0181】
FACSの結果は、キメラ抗体がCHO-cCTLA-4細胞に結合することができることを示している[
図4A-
図4Gを参照されたい]。
【0182】
実施例6
キメラ抗体によって活性化されるイヌPBMCのインターフェロンガンマ(IFNγ)の生成
イヌ末梢血単核細胞の分離
1. EDTA又はナトリウムヘパリン管に約20mLの全血を採取した;
2. 血液を50mL容ポリスチレン管に移し、HBSS(Thermo Fisher Scientificカタログ番号21022CM)で50:50に希釈した;
3. 15mLのFicoll-PlaquePlusを4×50mL SepMateTM管(STEMCELL Technologies、カタログ番号15460)に添加した。次いで、約10mLの50:50に希釈した血液を、ゆっくりとFicollを含む各SepMateTM管の側面に添加した;
4. 管を1200×gで20分間遠心分離した;
5. 勾配界面から細胞を回収し、その細胞を50mL容ポリプロピレン管に移した。40~45mLのマークまでHBSSを添加し、そして、細胞を800×gで10分間遠心分離した;
6. 上清を廃棄し、細胞を40~45mL HBSSに再懸濁させ、そして、管を再度800×gで10分間遠心分離した;
7. 上清を廃棄し、そして、各管からの細胞を2mLのイヌリンパ球培地(RPMI培地、Lonza、カタログ番号12-167Q)で再懸濁させた。細胞を、同じ動物からプールした;
8. 細胞懸濁液の少量アリコートを取り、0.04%トリパンブルーと混合させ、細胞数をカウントした;
9. 細胞懸濁液は、使用するまで2-7℃で保存したが、使用する24時間前からは2~7℃で保存しなかった。
【0183】
イヌ末梢血単核細胞に関する細胞増殖アッセイ
1. 抗体をイヌリンパ球培地内で希釈して、最終濃度を40μg/mLとし(調製は160μg/mL)、そして、0.2μmシリンジフィルターを使用して滅菌した。抗体を滅菌希釈プレートで2倍希釈し、置いておいた;
2. 細胞をイヌリンパ球培地内で2.5×106細胞/mLに希釈し、96ウェル組織培養プレート全体のウェルあたり100μLを分注した;
3. Con Aをイヌリンパ球培地内で希釈して、最終濃度を250ng/mLとし(調製は1000ng/mL)、0.2μmシリンジフィルターを使用して滅菌し、そして、50μLを全てのウェルに加えた。(細胞のみ対照用の8つのウェルの1つ列及び細胞+mAbのみ対照用のウェルには、Con Aを加えなかった);
4. ウェルあたり100μLのイヌリンパ球培地を、細胞のみのウェルに添加し、そして、50μLの培地をCon A対照ウェル(mAb処理なしのCon A+細胞)を含む列に添加した;
5. 50μLの希釈mAbを複製ウェルに添加した;
6. プレートを、加湿インキュベーター内で、36±2℃、4.0-6.0%CO2で、68~124時間インキュベートした。
【0184】
IFNγELISA
1. 68~124時間のインキュベーション後、プレートを800×gで10分間遠心分離した;
2. 各ウェル及びプール複製から上清を収集した。これらのサンプルは、後で使用するために-50℃以下で凍結することができるか、又は、すぐに試験することができる;
3. 必要に応じて上清サンプルを適切に希釈し、Canine IFN-γQuantikineELISAキット[R&DSystems カタログ番号CAIF00]の指示に従ってIFN-γELISAを実施した。
【0185】
結果は、12B3を包含する選択された抗体が、イヌT細胞を活性化してIFNγを産生させることができることを示している[以下の
図5を参照されたい]。
【0186】
実施例7
イヌ化抗cCTLA-4モノクローナル抗体12B3及び39A11の構築
cCTLA-4に対するそれらの強い結合親和性並びにcCTLA-4とそのリガンドCD86及びCD80に対するそれらのブロッキング活性により、マウス抗体12B3及び39A11が最初のイヌ化抗体の作製用に選択された。イヌ化のプロセスを実行するために、イヌIgGの重鎖及び軽鎖をコード化するDNA配列を決定した。イヌ重鎖及び軽鎖のDNA配列及びタンパク質配列は、当技術分野で知られており、NCBI遺伝子及びタンパク質データベースを検索することによって得ることができる。イヌIgGの4つの既知IgGサブタイプがあり、それらはIgGA、IgGB、IgGC及びIgGDと称される。ヒトIgG1と同様に、イヌIgGBは、強力なエフェクター機能を有している。IgGBのエフェクター機能をノックアウトするために、改変IgGBを構築し(IgGBm)、天然のADCC及びCDC機能を除去した[U.S.10,106,107B2を参照されたい、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる]。イヌ抗体には、カッパ及びラムダと称される2種類の軽鎖が存在する。特定のアプローチに拘束されるものではないが、さまざまな組み合わせで混合させてイヌ化抗イヌCTLA-4mAbを産生させることできるイヌ化重鎖及び軽鎖を産生させる全プロセスは、以下のプロトコルを包含し得る:
(i) 選択された抗体のH鎖とL鎖のCDRを特定した。CDRのアミノ酸配列を適切なDNA配列に逆翻訳させた;
(ii) イヌIgGのH鎖及びL鎖(例えば、IgGBの重鎖及び軽カッパ鎖)に対する適切なDNA配列を特定した;
(iii) 上記配列のイヌIgGH鎖及びL鎖DNAの内因性CDRをコード化するDNA配列を特定した;
(iv) 内因性のイヌH鎖及びL鎖CDRをコード化するDNA配列を、選択された抗体のCDRをコード化するDNA配列で置き換えた。さらにまた、場合により、いくつかのイヌフレームワークアミノ酸残基をコード化するDNAを、選択された抗体フレームワーク領域からの選択されたアミノ酸残基をコード化するDNAに置き換えた;
(v) 段階(iv)からのDNAを合成し、そして、それを適切な発現プラスミドにクローン化した;
(vi) 合成されたプラスミドをHEK293細胞にトランスフェクトした;
(vii) 発現されたイヌ化抗体をHEK293上清から精製した;
(viii) 精製されたイヌ化抗体をイヌCTLA-4への結合について試験した。
【0187】
12B3及び39A11のCDRのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列が、以下の表3に記載されている。
【表6】
【0188】
イヌ化軽鎖及び重鎖配列のセットを構築した。それらの配列識別番号は、以下の表4-6に記載されている。
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【0189】
本発明は、上記表中に列挙された各抗体のイヌ化重鎖及び軽鎖の組み合わせによって形成された12B3及び39A11のイヌ化された抗体を提供し;そのような抗体は、cCTLA-4との特に緊密な結合を示す。
図6に示されているように、ELISAの結果は、12B3と39A11の両方が首尾よくイヌ化されたことを示している。イヌ化c12B3L3H2及びL3H3は、親12B3と同様のcCTLA-4との反応性を有しており;イヌ化c39A11L3H3は、親39A11と同様のcCTLA-4との反応性を有している。12B3と39A11のキメラは、それらの親抗体を表している。
【表11】
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
実施例8
イヌ化抗cCTLA-4モノクローナル抗体12B3及び39A11のエピトープマッピング
抗体とそれらの同種タンパク質抗原との相互作用は、抗体の特定アミノ酸(パラトープ)と標的抗原の特定アミノ酸(エピトープ)との結合を通して媒介される。エピトープは、免疫グロブリンによる特異的反応を生じさせる抗原決定基である。エピトープは、抗原の表面の一群のアミノ酸からなる。関心対象のタンパク質は、異なる抗体によって認識されるいくつかのエピトープを含有し得る。抗体によって認識されるエピトープは、線状エピトープ又は配座エピトープとして分類される。線状エピトープは、タンパク質中のアミノ酸の一続きの連続配列によって形成され、一方、配座エピトープは一次アミノ酸配列中の不連続な(例えば、遠く離れた)アミノ酸で構成されるが、三次元タンパク質フォールディング後に一緒になる。
【0195】
エピトープマッピングは、抗体の標的抗原上で抗体によって認識されるアミノ酸配列(即ち、エピトープ)を特定するプロセスを示している。標的抗原上でモノクローナル抗体(mAb)によって認識されるエピトープの特定は、重要な適用を有する。例えば、新しい治療薬、診断薬及びワクチンの開発に役立ち得る。エピトープマッピングは、さらに、最適化された治療用mAbの選択にも役立ち、それらの作用機構を解明するのを助けることができる。イヌCTLA-4に関するエピトープ情報は、さらに、固有のエピトープを解明し、ワクチンの防御効果又は病原性効果を定義することもできる。エピトープの特定は、さらに、特定されたペプチドエピトープの担体タンパク質又は別の免疫刺激剤への化学的又は遺伝的結合に基づくサブユニットワクチンの開発につながる可能性がある。
【0196】
エピトープマッピングは、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を使用して実施することができ、そして、エピトープの推測される性質(即ち、線状対配座)に応じて、エピトープ特定のためにいくつかの方法が用いられる。線状エピトープをマッピングすることはより直接的であり、比較的実施しやすい。この目的のために、線状エピトープマッピングのための商業サービスは、多くの場合、ペプチドスキャニングを用いる。この場合、標的タンパク質の短いペプチド配列のオーバーラップするセットを化学的に合成し、関心対象の抗体に結合するそれらの能力に関して試験する。この戦略は、迅速で高スループットであり、比較的安価に実施される。他方、不連続エピトープのマッピングは技術的により難易度が高く、そして、より専門的な技術、例えば、モノクローナル抗体をその標的タンパク質と一緒にX線共結晶構造解析すること、水素-重水素(H/D)交換、酵素消化と組み合わせた質量分析法、並びに、当業者に知られているいくつかの別の方法などを必要とする。
【0197】
質量分析を使用するイヌCTLA-4受容体アルファエピトープのマッピング:
イヌCTLA-4上のイヌ化12B3(12B3L2H3によって例示されている)及び39A11(39A11L3H3によって例示されている)のエピトープを特定するために、cCTLA-4/c12B3L2H3及びcCTLA-4/c39A11L2H3の複合体のそれぞれを重水素化架橋剤と一緒にインキュベートし、多酵素的切断に付した。架橋ペプチドを濃縮した後、サンプルを高分解能質量分析(nLC-LTQ-Orbitrap MS)で分析し、生成されたデータをXQuest及びStavroxソフトウェアを使用して解析した。
【0198】
分析は、c12B3L2H3が配列番号138のアミノ酸配列を含むcCTLA-4の位置35、38、51、53、90、93、98及び102のアミノ酸残基と相互作用することを示しており(
図7A);c39A11L2H3が配列番号138のアミノ酸配列を含むcCTLA-4の位置35、38、42、93及び102のアミノ酸残基と相互作用することを示している(
図7B)。イヌCTLA-4タンパク質の2つの特定の領域が、
図7A及び
図7Bに示されている:それぞれ、配列番号132及び配列番号133のアミノ酸配列(以下の表8を参照されたい)。特に、両方の抗体は、cCTLA-4上のMYPPPYモチーフ(配列番号137)を含む配列番号134及び配列番号136に結合する。MYPPPYモチーフは、CD80及びCD86とのループ結合を形成し、これは、種を超えたCTLA-4に関する保存モチーフである。c12B3は、さらに、配列番号135のアミノ酸配列を含むイヌCTLA-4上の1つのさらなる領域にも結合するようにみえる。実施例4の結果と組み合わせると、エピトープマッピングの結果は、c12B3及びc39A11の両方が、イヌCTLA-4とそのリガンドCD80及びCD86との相互作用をブロックする能力を有する機能的抗体であることをさらに裏付ける。さらに、配列番号134及び配列番号136のエピトープに結合するイヌ化抗体も、本発明の一部である。
【表12】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-03-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)に結合し、そして、イヌCTLA-4とイヌCD80の結合をブロックするか、イヌCTLA-4とイヌCD86の結合をブロックするか、又は、イヌCTLA-4とイヌCD80の結合及びイヌCTLA-4とイヌCD86の結合の両方をブロックする、単離された哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメントであって、
ここで、該抗体は、6つの相補性決定領域(CDR)のセットを含み、そのうちの3つは、軽鎖CDR〔CDR軽1(CDRL1)、CDR軽2(CDRL2)及びCDR軽3(CDRL3)〕であり;そして、そのうちの3つは、重鎖CDR〔CDR重1(CDRH1)、CDR重2(CDRH2)及びCDR重3(CDRH3)〕であり;
ここで、6つのCDRのセットは、(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)及び(vi)からなるセットの群から選択され;
ここで、セット(i)の場合、
CDRL1は、配列番号92、配列番号92の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス4を含む配列番号92の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRL2は、配列番号94、配列番号94の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号94の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRL3は、配列番号96、配列番号96の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号96の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRH1は、配列番号86、配列番号86の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号86の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRH2は、配列番号88、配列番号88の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス2Aを含む配列番号88の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;及び、
CDRH3は、配列番号90、配列番号90の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス7を含む配列番号90の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
ここで、セット(ii)の場合、
CDRL1は、配列番号104、配列番号104の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号104の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRL2は、配列番号106、配列番号106の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号106の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRL3は、配列番号108、配列番号108の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号108の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRH1は、配列番号98、配列番号98の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号98の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRH2は、配列番号100、配列番号100の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス4を含む配列番号100の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;及び、
CDRH3は、配列番号102、配列番号102の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス9を含む配列番号102の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
ここで、セット(iii)の場合、
CDRL1は、配列番号117、配列番号117の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス4を含む配列番号117の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRL2は、配列番号94、配列番号94の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号94の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRL3は、配列番号96、配列番号96の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号96の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRH1は、配列番号86、配列番号86の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号86の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRH2は、配列番号88、配列番号88の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス2Aを含む配列番号88の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;及び、
CDRH3は、配列番号113、配列番号113の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス7を含む配列番号113の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
ここで、セット(iv)の場合、
CDRL1は、配列番号119、配列番号119の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス4を含む配列番号119の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRL2は、配列番号122、配列番号122の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号122の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRL3は、配列番号96、配列番号96の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号96の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRH1は、配列番号86、配列番号86の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号86の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRH2は、配列番号88、配列番号88の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス2Aを含む配列番号88の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;及び、
CDRH3は、配列番号115、配列番号115の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス7を含む配列番号115の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
ここで、セット(v)の場合、
CDRL1は、配列番号118、配列番号118の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス4を含む配列番号118の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRL2は、配列番号121、配列番号121の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号121の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRL3は、配列番号96、配列番号96の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号96の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRH1は、配列番号109、配列番号109の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号109の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRH2は、配列番号111、配列番号111の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス2Aを含む配列番号111の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;及び、
CDRH3は、配列番号114、配列番号114の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス7を含む配列番号114の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;並びに、
ここで、セット(vi)の場合、
CDRL1は、配列番号120、配列番号120の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス2を含む配列番号120の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRL2は、配列番号123、配列番号123の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号123の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRL3は、配列番号124、配列番号124の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号124の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRH1は、配列番号110、配列番号110の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号110の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
CDRH2は、配列番号112、配列番号112の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス2Aを含む配列番号112の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;及び、
CDRH3は、配列番号116、配列番号116の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス12を含む配列番号116の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
前記単離された哺乳動物抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
イヌ化抗体又はそのイヌ化抗原結合フラグメントである、請求項1に記載の単離された哺乳動物抗体若しくはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
配列番号128、配列番号129、配列番号130及び配列番号131からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むヒンジ領域を含む、請求項2に記載のイヌ化抗体又はそのイヌ化抗原結合フラグメント。
【請求項4】
(a) CDRL1は、配列番号92、配列番号92の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス4を含む配列番号92の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(b) CDRL2は、配列番号94、配列番号94の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号94の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(c) CDRL3は、配列番号96、配列番号96の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号96の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(d) CDRH1は、配列番号86、配列番号86の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号86の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(e) CDRH2は、配列番号88、配列番号88の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス2Aを含む配列番号88の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;及び、
(f) CDRH3は、配列番号90、配列番号90の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス7を含む配列番号90の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
請求項2又は3に記載のイヌ化抗体又はそのイヌ化抗原結合フラグメント。
【請求項5】
配列番号62、配列番号64及び配列番号66からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖、又は、
配列番号74、配列番号76及び配列番号78からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む改変された重鎖、又は、
配列番号50、配列番号52及び配列番号54からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖、又は、
前記重鎖若しくは前記改変された重鎖と前記軽鎖との組み合わせを含む、請求項4に記載のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
配列番号66のアミノ酸配列を含む重鎖又は配列番号78のアミノ酸配列を含む改変された重鎖を含む、請求項5に記載のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
配列番号52のアミノ酸配列又は配列番号54のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項6に記載のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
(a) CDRL1は、配列番号104、配列番号104の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号104の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(b) CDRL2は、配列番号106、配列番号106の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号106の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(c) CDRL3は、配列番号108、配列番号108の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号108の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(d) CDRH1は、配列番号98、配列番号98の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス1を含む配列番号98の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(e) CDRH2は、配列番号100、配列番号100の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス4を含む配列番号100の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;及び、
(f) CDRH3は、配列番号102、配列番号102の保存的に修飾された変異体及びカノニカル構造クラス9を含む配列番号102の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
請求項2又は3に記載のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
配列番号68、配列番号70及び配列番号72からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖、又は、
配列番号80、配列番号82及び配列番号84からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む改変された重鎖、又は、
配列番号56、配列番号58及び配列番号60からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖、又は、
前記重鎖若しくは前記改変された重鎖と前記軽鎖との組み合わせを含む、請求項8に記載のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
配列番号72のアミノ酸配列を含む重鎖、又は、配列番号84のアミノ酸配列を含む改変された重鎖、を含む、請求項9に記載のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
配列番号58のアミノ酸配列又は配列番号60のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項10に記載のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
前記イヌ化抗体又はその抗原結合フラグメントが、以下の特性:
(i) 1×10
-5M~1×10
-12Mの解離定数(Kd)でイヌCTLA-4に結合する;
(ii) 1×10
2M
-1s
-1~1×10
7M
-1s
-1のオン速度(kon)でイヌCTLA-4に結合する;
(iii) 1×10
-3s
-1~1×10
-8s
-1のオフ速度(koff)でイヌCTLA-4に結合する;
(iv) イヌCTLA-4のイヌCD80への結合をブロックする;及び、
(v) イヌCTLA-4のイヌCD86への結合をブロックする;
のうちの1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ全てを示す、請求項2~11のいずれか1項に記載のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項13】
前記イヌ化抗体又はその抗原結合フラグメントが、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135、配列番号136及び配列番号137からなる群から選択されるいずれか1以上のアミノ酸配列に結合する、請求項2~12のいずれか1項に記載のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項14】
請求項2~13のいずれか1項に記載のイヌ化抗体又はその抗原結合フラグメント及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項15】
免疫細胞の活性を増大させる方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の請求項14に記載の医薬組成物を投与することを含み、前記方法が、
(i) 癌を治療するために;
(ii) 感染症又は感染性疾患を治療するために;
(iii) ワクチンアジュバントとして;又は、
(iv) それらの任意の組み合わせのために;
使用される、方法。
【国際調査報告】