(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】逆浸透膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 69/10 20060101AFI20220930BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20220930BHJP
B01D 63/10 20060101ALI20220930BHJP
B01D 67/00 20060101ALI20220930BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20220930BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20220930BHJP
B01D 71/48 20060101ALI20220930BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
B01D69/10
B01D61/02
B01D63/10
B01D67/00
B01D69/02
B01D69/12
B01D71/48
B01D71/68
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502308
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(85)【翻訳文提出日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 KR2020011114
(87)【国際公開番号】W WO2021054626
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】10-2019-0114818
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500254664
【氏名又は名称】トーレ アドバンスト マテリアルズ コリア インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】リー ダ ウォン
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006HA61
4D006JA05A
4D006JA06A
4D006JA19A
4D006JA25Z
4D006MA03
4D006MA09
4D006MA31
4D006MA40
4D006MB03
4D006MC22
4D006MC29
4D006MC39
4D006MC48
4D006MC54
4D006MC56X
4D006MC62
4D006NA41
4D006NA49
4D006NA63
4D006NA64
4D006PA01
4D006PB03
(57)【要約】
本発明は、逆浸透膜及びその製造方法に関し、より詳しくは、従来の逆浸透膜に比べて同等の流量を維持すると共に分離膜内の層間結合に優れるため、逆洗浄時に膜内の耐久性減少を最小化して洗浄効果を増進させ、高圧膜の寿命を延長し、累積処理水量を極大化し、維持管理費用も節減し得る高耐久性逆浸透膜及びその製造方法に関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性支持体、高分子支持層及び親水性選択層が順次に積層された逆浸透膜において、
前記多孔性支持体は、イソフタル酸(IPA)を0.1~7mol%含む酸成分とジオール成分をエステル化反応させて製造されたエステル化合物が重縮合されたコポリエステル繊維を含み、
前記多孔性支持体と高分子支持層の間の接着力は、20~1,100gf/mm
2であることを特徴とする、逆浸透膜。
【請求項2】
前記多孔性支持体と高分子支持層の間の接着力は、500~1,100gf/mm
2であることを特徴とする、請求項1に記載の逆浸透膜。
【請求項3】
前記逆浸透膜は、下記関係式1及び2を全て満足することを特徴とする、請求項2に記載の逆浸透膜。
関係式1
150<B-A<600
関係式2
0.5<B/A<8
なお、前記関係式1及び2において、Aは、多孔性支持体と高分子支持層の間の接着力を示し、Bは、高分子支持層と親水性選択層の間の接着力を示す。
【請求項4】
前記高分子支持層は、下記化学式1で表示されるポリスルホン系高分子化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の逆浸透膜。
【化1】
なお、前記化学式1において、R
1及びR
2は、それぞれ独立的に、-H又はC1~C5のアルキル基であり、nは、10~1,130を満足する有理数である。
【請求項5】
前記高分子支持層は、30~90μmの厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の逆浸透膜。
【請求項6】
高分子支持層形成組成物及び溶媒を含む高分子溶液を準備する第1段階;
前記高分子溶液を多孔性支持体の一面又は両面にキャスティング(casting)して高分子支持層を形成する第2段階;
前記高分子支持層が形成された多孔性支持体を乾燥する第3段階;及び
前記高分子支持層の一面に親水性選択層を形成する第4段階;を含み、
前記多孔性支持体は、イソフタル酸(IPA)を0.1~7mol%含む酸成分とジオール成分をエステル化反応させて製造されたエステル化合物が重縮合されたコポリエステル繊維を含み、
前記多孔性支持体と高分子支持層の間の接着力は、20~1,100gf/mm
2であることを特徴とする、逆浸透膜の製造方法。
【請求項7】
前記高分子支持層形成組成物は、下記化学式1で表示されるポリスルホン系高分子化合物を含むことを特徴とする、請求項6に記載の逆浸透膜の製造方法。
【化1】
なお、前記化学式1において、R
1及びR
2は、それぞれ独立的に、-H又はC1~C5のアルキル基であり、nは、10~1,130を満足する有理数である。
【請求項8】
前記高分子支持層は、30~90μmの厚さで形成することを特徴とする、請求項6に記載の逆浸透膜の製造方法。
【請求項9】
前記第3段階の乾燥は、110~170℃の温度で1~5分間行うことを特徴とする、請求項6に記載の逆浸透膜の製造方法。
【請求項10】
請求項1~請求項5のうちいずれか一項に記載の逆浸透膜を含む逆浸透膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透膜及びその製造方法に係り、より詳しくは、従来の逆浸透膜に比べて同等の流量を維持すると共に分離膜内の層間結合に優れるため、逆洗浄時に膜内の耐久性の減少を最小化して洗浄効果を増進させ、高圧膜の寿命を延長し、累積処理水量を極大化し、維持管理費用も節減し得る高耐久性の逆浸透膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全世界的に、膜濾過市場が急速に増大すると同時に膜濾過技術が発展することによって数多くの膜製造社及び膜工法社が登場しており、これに対する研究も増加しているのが実情である。このような膜濾過工程は、MF(精密濾過、microfiltration)、UF(限外濾過、ultrafiltration)のように低圧(low pressure)で運転される低圧膜濾過工程と、NF(ナノ濾過、nanofiltration)、RO(逆浸透、reverse osmosis)のように高圧(high pressure)で運転される高圧膜濾過工程と、に区分され得、最近では、高圧膜濾過工程に対する関心が急速に増加している。
【0003】
一方、膜濾過工程に用いられる分離膜は、その使用によって有機ファウリング(organic fouling)、無機ファウリング(inorganic fouling)、粒子ファウリング(particular fouling)、バイオファウリング(bio-fouling)などの現象が発生してその性能は持続的に減少する。したがって、膜濾過工程の稼動時間によって減少した分離膜の透過性能を初期状態に回復させるために化学薬品を通じた化学洗浄(CIP、cleaning in place)が行われる。膜の汚染は、可逆的膜汚染と非可逆的膜汚染に区分され、可逆的膜汚染には、浸透逆洗浄のような物理洗浄、非可逆的膜汚染には、化学洗浄が行われる。
【0004】
従来の逆浸透膜は、浸透工程あるいは浸透逆洗浄工程の運営中に高分子支持層の剥離が頻繁であり、高分子支持層の剥離は、活性層の剥離を加速化する現象を発生させることがあり、これによって、逆浸透膜の塩排除率及び透過流量が低下して膜の寿命が低下する問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するために案出されたものであって、本発明の逆浸透膜は、従来の逆浸透膜に比べて同等の流量を維持すると共に分離膜内の層間結合に優れるため、逆洗浄時に膜内の耐久性の減少を最小化して洗浄効果を増進させ、高圧膜の寿命を延長し、累積処理水量を極大化し、維持管理費用も節減し得る逆浸透膜及びその製造方法を提供することに目的がある。
【0006】
また、本発明は、本発明による逆浸透膜を含むことによって、浸透逆洗浄後にも塩排除率、透過流量及び優れた耐久性を有する逆浸透膜モジュールを提供することに他の目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の逆浸透膜は、多孔性支持体、高分子支持層及び親水性選択層が順次に積層される。
【0008】
本発明の好ましい一実施例において、多孔性支持体は、イソフタル酸(IPA)を0.1~7mol%含む酸性分とジオール成分をエステル化反応させて製造されたエステル化合物が重縮合されたコポリエステル繊維を含むことができる。
【0009】
本発明の好ましい一実施例において、多孔性支持体と高分子支持層の間の接着力は、20~1,100gf/mm2であってもよい。
【0010】
本発明の好ましい一実施例において、多孔性支持体と高分子支持層の間の接着力は、500~1,100gf/mm2であってもよい。
【0011】
本発明の好ましい一実施例において、本発明の逆浸透膜は、下記関係式1及び2を全て満足することができる。
【0012】
(関係式1)
150<B-A<600
【0013】
(関係式2)
0.5<B/A<8
【0014】
前記関係式1及び2において、Aは、多孔性支持体と高分子支持層の間の接着力を示し、Bは、高分子支持層と親水性選択層の間の接着力を示す。
【0015】
本発明の好ましい一実施例において、高分子支持層は、ポリスルホン系高分子化合物、ポリアミド系高分子化合物、ポリイミド系高分子化合物、ポリエステル系高分子化合物、オレフィン系高分子化合物、ポリビニリデンフルオライド及びポリアクリロニトリルのうち選択された1種以上を含むことができる。
【0016】
本発明の好ましい一実施例において、高分子支持層は、下記化学式1で表示されるポリスルホン系高分子化合物を含むことができる。
【0017】
【0018】
前記化学式1において、R1及びR2は、それぞれ独立的に、-H又はC1~C5のアルキル基であり、nは、10~1,130を満足する有理数である。
【0019】
本発明の好ましい一実施例において、高分子支持層は、30~90μmの厚さを有することができる。
【0020】
本発明の好ましい一実施例において、親水性選択層は、ポリアミド系高分子化合物、ポリピペラジン系高分子化合物、ポリフェニレンジアミン系高分子化合物、ポリクロロフェニレンジアミン系高分子化合物及びポリベンジジン系高分子化合物のうち選択された1種以上を含むことができる。
【0021】
本発明の好ましい一実施例において、多孔性支持体は、ファブリックであってもよい。
【0022】
本発明の好ましい一実施例において、多孔性支持体は、2cc/cm2・sec以上の空気透過量、1~600μmの平均気孔の孔径を有することができる。
【0023】
本発明の好ましい一実施例において、多孔性支持体は、20~150μmの厚さを有することができる。
【0024】
本発明の好ましい一実施例において、親水性選択層は、0.1~1μmの厚さを有することができる。
【0025】
一方、本発明の逆浸透膜の製造方法は、高分子支持層形成組成物及び溶媒を含む高分子溶液を準備する第1段階、前記高分子溶液を多孔性支持体の一面又は両面にキャスティング(casting)して高分子支持層を形成する第2段階、前記高分子支持層が形成された多孔性支持体を乾燥する第3段階及び前記高分子支持層の一面に親水性選択層を形成する第4段階を含むことができる。
【0026】
本発明の好ましい一実施例において、本発明の逆浸透膜の製造方法の多孔性支持体は、イソフタル酸(IPA)を0.1~7mol%含む酸成分とジオール成分をエステル化反応させて製造されたエステル化合物が重縮合されたコポリエステル繊維を含むことができる。
【0027】
本発明の好ましい一実施例において、本発明の逆浸透膜の製造方法の多孔性支持体と高分子支持層の間の接着力は、20~1,100gf/mm2であってもよい。
【0028】
本発明の好ましい一実施例において、本発明の逆浸透膜の製造方法の高分子溶液は、全体重量%のうち高分子支持層形成組成物を15~20重量%で含むことができる。
【0029】
本発明の好ましい一実施例において、本発明の逆浸透膜の製造方法の高分子支持層形成組成物は、ポリスルホン系高分子化合物、ポリアミド系高分子化合物、ポリイミド系高分子化合物、ポリエステル系高分子化合物、オレフィン系高分子化合物、ポリビニリデンフルオライド及びポリアクリロニトリルのうち選択された1種以上を含むことができる。
【0030】
本発明の好ましい一実施例において、本発明の逆浸透膜の製造方法の高分子支持層形成組成物は、下記化学式1で表示されるポリスルホン系高分子化合物を含むことができる。
【0031】
【0032】
前記化学式1において、R1及びR2は、それぞれ独立的に、-H又はC1~C5のアルキル基であり、nは、10~1,130を満足する有理数である。
【0033】
本発明の好ましい一実施例において、本発明の逆浸透膜の製造方法の溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びジメチルアセトアミド(DMAc)のうち選択された1種以上を含むことができる。
【0034】
本発明の好ましい一実施例において、本発明の逆浸透膜の製造方法の高分子支持層は、30~90μmの厚さで形成することができる。
【0035】
本発明の好ましい一実施例において、本発明の逆浸透膜の製造方法の親水性選択層は、多孔性支持体層の一面に多官能性アミン含有溶液を塗布し、ハロゲン化合物含有溶液を界面重合させて多孔性支持体層の一面に形成することができる。
【0036】
本発明の好ましい一実施例において、本発明の逆浸透膜の製造方法の親水性選択層は、多官能性アミン含有溶液と多官能性ハロゲン化合物含有溶液を界面重合させて形成されたポリアミド系高分子化合物を含むことができる。
【0037】
本発明の好ましい一実施例において、本発明の逆浸透膜の製造方法の多官能性アミンは、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、脂肪族1級ジアミン、シクロ脂肪族1級ジアミン及びシクロ脂肪族2級アミンのうち1種以上を含むことができる。
【0038】
本発明の好ましい一実施例において、本発明の逆浸透膜の製造方法の多官能性ハロゲン化合物は、トリメゾイルクロリド、イソフタロイルクロリド及びテレフタロイルクロリドのうち1種以上を含むことができる。
【0039】
本発明の好ましい一実施例において、本発明の逆浸透膜の製造方法の3段階の乾燥は、110~170℃の温度で1~5分間行うことができる。
【0040】
更に、本発明の逆浸透膜モジュールは、本発明の逆浸透膜を含む。
【発明の効果】
【0041】
本発明の逆浸透膜及びその製造方法は、既存の逆浸透膜に比べて同等の流量を維持すると共に分離膜内の層間結合に優れるため、浸透逆洗浄時に高分子支持層が剥離する現象を防止し、優れた膜耐久性及び寿命を有する逆浸透膜を具現することができる。
【0042】
また、本発明の逆浸透膜及びその製造方法は、塩排除率の減少値が低いだけでなく、透過流量の増加率が少ない。
【0043】
また、本発明の逆浸透膜を含む逆浸透膜モジュールは、累積処理水量が極大化されて維持管理費用が最小化され得る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明の一実施例による逆浸透膜を示した図である。
【
図2】実施例1によって製造された逆浸透膜の断面SEM写真である。
【
図3】本発明の一実施例による逆浸透膜モジュールに対する分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施例に対して本発明が属する技術分野において通常の知識を有した者が容易に実施できるように詳しく説明する。本発明は、多様な相異なっている形態で具現され得、ここで説明する実施例によって限定されない。本発明を明確に説明するために、図面において説明と関係ない部分は省略し、明細書全体にわたって同一又は類似の構成要素に対しては同一の参照符号を付与する。
【0046】
従来の逆浸透膜は、浸透工程あるいは浸透逆洗浄工程の運営中に高分子支持層の剥離が頻繁であり、これによって、高分子支持層上に形成される親水性選択層も剥離されて逆浸透膜の性能が顕著に低下する問題点を引き起こす。
【0047】
上述した問題点を解決するために、本発明の逆浸透膜は、多孔性支持体と高分子支持層の間に一定範囲の接着力を有するので、優れた結合力を有すると同時に透過流量の低下を最小化し得る。
【0048】
本発明において「接着力」とは、二つの媒体間の粘りつく力を意味する。例えば、本発明に記載した逆浸透膜の多孔性支持体と高分子支持層間の互いに粘りつく力を「接着力」と言う。
【0049】
上記接着力は、テクスチャーアナライザ(Texture Analyzer)を用いて逆浸透膜をラミネーション(lamination)する方法により測定した。具体的に、逆浸透膜をテープ及びPETフィルムに付着した後、PETフィルムを一定の速度で180度方向に引き上げて分離膜がラミネーション(lamination)されるときの距離による力を測定することができる。
【0050】
本発明の逆浸透膜は、多孔性支持体、高分子支持層及び親水性選択層が順次に積層される。
【0051】
具体的に、
図1を参照して説明すると、本発明の逆浸透膜100は、多孔性支持体110、高分子支持層120及び親水性選択層130が順次に積層された構造を有する。
【0052】
まず、本発明の多孔性支持体110は、通常的に逆浸透膜の支持体としての役目をするものであれば、特に制限されないが、好ましくは、ファブリック、より好ましくは、不織布であってもよい。
【0053】
具体的に、ファブリックは、織物、編物又は不織布を意味し、織物は、縦糸と横糸で製織されることによって縦横の方向性があり、編物は、編成方法によって具体的な方向性は変わることができるが広い意味では縦横のうちいずれかの一つの方向への方向性を有することができる。また、不織布は、織物又は編物とは異なり縦横の方向性がない。
【0054】
もし、ファブリックが織物である場合、縦・横糸を形成する繊維の種類、繊度、縦横糸の密度、織物の組織などを調節して目的とする多孔性支持体110の気孔率、孔径、強度、透過性などの物性を調節することができる。
【0055】
また、ファブリックが編物である場合、編物に含まれる繊維の種類、繊度、編物の組織、ゲージ、カットなどを調節して目的とする多孔性支持体110の気孔率、孔径、強度、透過性などの物性を調節することができる。
【0056】
また、ファブリックが不織布である場合、不織布に含まれる繊維の種類、繊度、繊維長、坪量、密度などを調節して目的とする多孔性支持体110の気孔率、孔径、強度、透過性などの物性を調節することができる。
【0057】
一方、本発明の多孔性支持体110の材質は、通常的に逆浸透膜の多孔性支持体としての役目を行うことができ、本発明の多孔性支持体は、イソフタル酸(IPA)を0.1~7mol%、好ましくは、0.1~4.5mol%、より好ましくは、0.2~1.0mol%を含む酸成分とジオール成分をエステル化反応させて製造されたエステル化合物が重縮合されたコポリエステル繊維を含むことができる。このとき、イソフタル酸を酸成分に7mol%を超過して含むと、流量低下の原因となり得る。
【0058】
一方、多孔性支持体の酸成分は、イソフタル酸外にもカルボン酸を含むことができ、カルボン酸は、炭素数6~14の芳香族多価カルボン酸及び炭素数2~16の脂肪族多価カルボン酸のうち選択された1種以上を含むことができる。
【0059】
本発明の炭素数6~14の芳香族多価カルボン酸は、テレフタル酸、ジメチルテレフタレート及びジメチルイソフタレートのうち選択された1種以上を含むことができ、本発明の炭素数2~16の脂肪族多価カルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、クエン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸及びヘキサデカン酸のうち選択された1種以上を含むことができる。
【0060】
また、多孔性支持体のジオール成分は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、プロピレングリコール、トリメチルグリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘプタメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ウンデカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール及びトリデカメチレングリコールのうち選択された1種以上を含むことができる。
【0061】
さらに、本発明の多孔性支持体110は、気孔率及び親水性度によって膜の物性が調節され得る。これに対する非制限的例として、本発明の多孔性支持体110は、2cc/cm2・sec以上の空気透過量を有することができ、好ましくは、2~20cc/cm2・secの空気透過量を有することができ、多孔性支持体110の平均気孔の孔径は、1~600μmであってもよく、好ましくは、5~300μmであってもよい。もし、多孔性支持体110の空気透過量及び平均気孔の孔径条件を満足する場合、水の円滑な流入及び水透過性を高めることができる。
【0062】
上記多孔性支持体110は、太い繊維と細い繊維を用いた異面層の二重構造を基本とした多層構造体の不織布からなっていてもよい。また、多孔性支持体110は、融点が異なる重合体からなり、高融点重合体の周辺に上記高融点重合体の融点より5~140℃低い融点を有する低融点重合体を配置した多孔性支持体110であってもよい。
【0063】
また、多孔性支持体110の厚さは、20~150μm、好ましくは、50~120μm、より好ましくは、70~110μmであってもよく、もし、厚さが20μm未満であると、全体膜の強度が低下し得、150μmを超過すると、流量低下の原因となり得る。
【0064】
次に、本発明の高分子支持層120は、一般的な微細多孔性支持層であり、その種類は特に限定されないが、一般的に透過水が透過できる程度に十分なサイズである必要があり、その上に形成された超薄膜の架橋を妨害するほどに大きくてはならない。このとき、多孔性支持層の孔径は、1~500nmが好ましく、500nmを超過すると、薄膜形成後に超薄膜がその孔径内に陥没するため、要求される平坦なシート構造を達成しにくい。
【0065】
本発明の高分子支持層120は、ポリスルホン系高分子化合物、ポリアミド系高分子化合物、ポリイミド系高分子化合物、ポリエステル系高分子化合物、オレフィン系高分子化合物、ポリビニリデンフルオライド及びポリアクリロニトリルのうち選択された1種以上を含むことができ、好ましくは、ポリスルホン系高分子化合物を含むことができ、より好ましくは、下記化学式1で表示されるポリスルホン系高分子化合物を含むことができる。
【0066】
【0067】
上記化学式1において、R1及びR2は、それぞれ独立的に、-H又はC1~C5のアルキル基、好ましくは、C1~C3のアルキル基である。
【0068】
また、上記化学式1において、nは、10~1,130を満足する有理数であり、好ましくは、140~340を満足する有理数である。
【0069】
また、本発明の高分子支持層120は、30~90μmの厚さ、好ましくは、35~60μmの厚さ、より好ましくは、55~60μmの厚さを有することができ、もし、厚さが30μm未満であると、高分子支持層120と多孔性支持体110の間の結合力が目的とするレベルで発現されないため、逆洗浄後に高分子支持層120が多孔性支持体110から剥離され得、90μmの厚さを超過すると、逆浸透膜の透過流量が低下し得る。
【0070】
最後に、本発明の親水性選択層130は、通常的に、逆浸透膜の親水性選択層として用いられ得る素材であれば、制限なしに用いることができるが、好ましくは、ポリアミド系高分子化合物、ポリピペラジン系高分子化合物、ポリフェニレンジアミン系高分子化合物、ポリクロロフェニレンジアミン系高分子化合物及びポリベンジジン系高分子化合物のうち選択された少なくともいずれか一つを含むことができ、より好ましくは、ポリアミド系高分子化合物を含むことができる。
【0071】
また、本発明の親水性選択層130は、0.1~1μmの厚さ、好ましくは、0.1~0.5μmの厚さを有することができ、もし、厚さが0.1μm未満であると、塩排除能力が低下し得、1μmを超過すると、逆浸透膜の透過流量が低下し得る。
【0072】
一方、本発明の逆浸透膜は、多孔性支持体と高分子支持層の間の接着力が20~1,100gf/mm2、好ましくは、500~1,100gf/mm2、より好ましくは、800~900gf/mm2、さらに好ましくは、840~900gf/mm2であってもよく、もし、上記接着力の範囲を脱することになると、塩排除率減少値及び透過流量増加率が上昇し、耐久性が低下する問題があり得る。
【0073】
また、本発明の逆浸透膜は、高分子支持層と親水性選択層の間の接着力が500~1,600gf/mm2、好ましくは、800~1,500gf/mm2、より好ましくは、1,100~1,400gf/mm2、さらに好ましくは、1,200~1,350gf/mm2であってもよく、もし、上記接着力の範囲を脱することになると、塩排除率減少値及び透過流量増加率が上昇し、耐久性が低下する問題があり得る。
【0074】
また、本発明の逆浸透膜は、下記関係式1及び2を全て満足することができる。
【0075】
(関係式1)
150<B-A<600、好ましくは、250<B-A<550、より好ましくは、300<B-A<500、さらに好ましくは、350<B-A<450、最も好ましくは、375<B-A<425
【0076】
(関係式2)
0.5<B/A<8、好ましくは、1.0<B/A<4、より好ましくは、1.1<B/A<2、さらに好ましくは、1.3<B/A<1.6、最も好ましくは、1.4<B/A<1.56
【0077】
上記関係式1及び2において、Aは、多孔性支持体と高分子支持層の間の接着力を示し、Bは、高分子支持層と親水性選択層の間の接着力を示す。
【0078】
もし、上記関係式1及び2を全て満足しない場合、塩排除率減少値が高く、透過流量増加率が増加する問題があり得る。
【0079】
さらに、本発明の逆浸透膜は、3barの圧力で逆洗浄された後、25℃の温度及び225psiの圧力で2,000ppmの塩化ナトリウム水溶液に対して下記条件(a)及び(b)を満足することができ、これを通じて、本発明の逆浸透膜が優れた耐久性を有することが確認できる。
【0080】
(a)10%以下の塩除去率変化率
【0081】
(b)15%以下の透過流量変化率
【0082】
一方、本発明は、上記言及した逆浸透膜を含む逆浸透膜モジュールを含む。
【0083】
本発明の逆浸透膜モジュールの構成は、当業界で通常的に用いられる逆浸透モジュールの構成を採用することができ、これに対する非制限的な例として、逆浸透膜は、流路形成を目的とするスペーサとともに多孔性透過水流出管にスパイラル型に巻取され得、巻取された膜の両端に巻取された分離膜の形状安定性のためにエンドキャップを含むことができる。
【0084】
図3は、本発明の一実施例による逆浸透膜モジュールの分解斜視図である。
【0085】
圧力ケースのサイズと形状は、逆浸透膜モジュールが収容可能な範囲内で制限され得ないが、好ましくは、複数個のフィルタ集合体がスパイラル型に巻取されるので、その形状は、円柱であってもよい。ただし、圧力ケースの形状がこれに限定されるものではない。圧力ケースの材質は、当業界で通常的に逆浸透膜モジュールに用いられる圧力ケース材質である場合、制限なしに用いられ得る。
【0086】
図3を参照すると、逆浸透分離膜モジュール1000は、流出管1400を中心として複数個のフィルタ集合体がスパイラル型に巻取されて含まれるが、上記逆浸透膜モジュールの断面直径は、流出管の直径、浸透膜集合体の個数、厚さなどによって変わることができる。
【0087】
流出管1400は、複数個のホールが形成されており、流出管1400を通じて流れる流体がホールを通じてフィルタ集合体の逆浸透膜1100内部に流入することになる。具体的に、濃度が互いに異なる二つの溶液A、Bのうち、A溶液は、圧力ケースの内部及びフィルタ集合体の逆浸透膜1100の外部に流れることなり、B溶液は、流出管1400からホールを通じてフィルタ集合体の逆浸透膜1100の内部に流入することになる。これを通じて、フィルタ集合体の逆浸透膜1100の内部と外部に互いに異なる濃度を有した二つの溶液(A、B)が位置することになり、これによって、浸透圧が発生、作用するようになる。ただし、上記A、Bの二つの溶液は、
図3に示したように、互いに同じ方向に注入され得るが、これは一つの例示であって、これとは異なり、目的に応じて、A、Bの二つの溶液がそれぞれ他の方向に注入され得る。
【0088】
逆浸透膜モジュールは、複数個のフィルタ集合体の間に外部スペーサ1300及び逆浸透膜の間に内部スペーサ1200を含むことができる。外部スペーサ1300及び内部スペーサ1200は、流入水流路であって、互いに異なるフィルタ集合体の間を流れる流体、例えば、A溶液が円滑に流れる流路を形成し得る。
【0089】
スペーサとエンドキャップの素材、形状、サイズは、当業界で逆浸透膜モジュールに通常的に用いられるスペーサとエンドキャップの構成を採用することができるので、これに対する具体的な説明は省略する。上記のように巻取された逆浸透膜は、外部ケースにハウジングされ得、上記外部ケースの材質、サイズ、形状も当業界で通常的に逆浸透モジュールに用いられる外部ケースの材質、サイズ、形状であってもよい。また、上記のように巻取された逆浸透膜は、外部ケースではない繊維補強プラスチック(FRP、fiber reinforced plastics)を用いてラッピングされ得る。
【0090】
さらに、本発明の逆浸透膜の製造方法は、第1段階~第4段階を含む。
【0091】
まず、本発明の逆浸透膜の製造方法の第1段階は、高分子支持層形成組成物及び溶媒を含む高分子溶液を準備することができる。
【0092】
このとき、高分子溶液は、全体重量%のうち高分子支持層形成組成物を15~20重量%、好ましくは、17~20重量%、より好ましくは、17.1~17.8重量%、さらに好ましくは、17.2~17.4重量%で含むことができ、もし、15重量%未満である場合、逆洗浄後に逆浸透膜の高分子支持層が剥離され得、20重量%を超過する場合、逆浸透膜の透過流量及び塩排除率が低下し得るなど、本発明の目的を達成しにくい。
【0093】
また、本発明の高分子支持層形成組成物は、ポリスルホン系高分子化合物、ポリアミド系高分子化合物、ポリイミド系高分子化合物、ポリエステル系高分子化合物、オレフィン系高分子化合物、ポリビニリデンフルオライド及びポリアクリロニトリルのうち選択された1種以上を含むことができ、好ましくは、ポリスルホン系高分子化合物を含むことができ、より好ましくは、下記化学式1で表示されるポリスルホン系高分子化合物を含むことができる。
【0094】
【0095】
上記化学式1において、R1及びR2は、それぞれ独立的に、-H又はC1~C5のアルキル基、好ましくは、C1~C3のアルキル基である。
【0096】
また、上記化学式1において、nは、10~1,130を満足する有理数であり、好ましくは、130~340を満足する有理数である。
【0097】
また、本発明の溶媒は、高分子支持層形成組成物を溶解させ得る溶媒であれば、制限なしに用いることができるが、好ましくは、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びジメチルアセトアミド(DMAc)のうち選択された1種以上を含むことができ、より好ましくは、ジメチルホルムアミド(DMF)を含むことができる。
【0098】
また、本発明の溶媒は、高分子溶液の全体重量%のうち80~85重量%、好ましくは、80~83重量%、より好ましくは、82.2~83重量%、さらに好ましくは、82.6~83重量%で含むことができ、もし、溶媒が80重量%未満で含まれると、高分子溶液の粘度が過度に増加して製膜が難しく、85重量%を超過すると、逆浸透膜の強度が低下するか高分子溶液の粘度が非常に低いため製膜が難しい。
【0099】
また、高分子支持層形成組成物及び溶媒を混合して高分子溶液を製造するとき、溶媒の温度は、20~90℃であってもよく、もし、溶媒の温度が20℃未満である場合、高分子支持層形成組成物が溶解されず、90℃を超過する場合、高分子溶液の粘度が低くなって目的とする厚さの高分子支持層の形成が難しい。
【0100】
次に、本発明の逆浸透膜の製造方法の第2段階は、第1段階で準備した高分子溶液を多孔性支持体の一面又は両面、好ましくは、一面にキャスティング(casting)して高分子支持層を形成することができる。
【0101】
第2段階の高分子支持層を形成する方法は、当業界で高分子支持層の形成時に用いられる通常的な高分子溶液の処理方法であれば、制限なしに用いることができ、高分子溶液をキャスティングする方法は、スロットコーティングなど当技術分野で知られているコーティング法が適用され得る。高分子溶液を多孔性支持体にキャスティングした後、高分子溶液に含まれた溶媒を除去して高分子支持層を形成することができ、溶媒の除去方法は、溶媒と非溶媒を置換させる相転移(phase inversion)法を用いることができ、具体的に、非溶媒は、水、エタノール及びメタノールのうち選択された少なくともいずれか一つであってもよいが、溶媒の成分によって変わることができる。
【0102】
また、高分子溶液に含まれた溶媒を除去して多孔性支持体の一面又は両面に高分子支持層を形成し、逆浸透膜の透過流量及び塩排除率を低下させないと共に高分子支持層の優れた耐久性を具現するために形成された高分子支持層の厚さは、30~90μmの厚さ、好ましくは、35~60μmの厚さ、より好ましくは、55~60μmであってもよく、もし、厚さが30μm未満であると、高分子支持層と多孔性支持体の間の結合力が目的とするレベルで発現されないため、逆洗浄後に高分子支持層が多孔性支持体から剥離され得、90μmの厚さを超過すると、逆浸透膜の透過流量が低下し得る。
【0103】
第2段階の多孔性支持体は、通常的に、逆浸透膜の支持体としての役目をするものであれば、特別な制限はないが、好ましくは、ファブリック、より好ましくは、不織布であってもよい。
【0104】
また、第2段階の多孔性支持体の材質は、通常的に、逆浸透膜の多孔性支持体としての役目を行うことができ、本発明の多孔性支持体は、イソフタル酸(IPA)を0.1~7mol%、好ましくは、0.1~4.5mol%、より好ましくは、0.2~1.0mol%を含む酸成分とジオール成分をエステル化反応させて製造されたエステル化合物が重縮合されたコポリエステル繊維を含むことができる。このとき、イソフタル酸を酸成分に7mol%を超過して含むと、流量低下の原因となり得る。
【0105】
さらに、第2段階の多孔性支持体は、気孔率及び親水性度によって膜の物性が調節され得る。これに対する非制限的例として、本発明の多孔性支持体110は、2cc/cm2・sec以上の空気透過量を有することができ、好ましくは、2~20cc/cm2・secの空気透過量を有することができ、多孔性支持体の平均気孔の孔径は、1~600μmであってもよく、好ましくは、5~300μmであってもよい。もし、多孔性支持体の空気透過量及び平均気孔の孔径条件を満足する場合、水の円滑な流入及び水透過性を高めることができる。
【0106】
また、第2段階の多孔性支持体は、太い繊維と細い繊維を用いた異面層の二重構造を基本とした多層構造体の不織布からなっていてもよい。また、多孔性支持体は、融点が異なる重合体からなり、高融点重合体の周辺に上記高融点重合体の融点より5~140℃低い融点を有する低融点重合体を配置した多孔性支持体であってもよい。
【0107】
次に、本発明の逆浸透膜の製造方法の第3段階は、高分子支持層が形成された多孔性支持体を乾燥することができる。
【0108】
このとき、乾燥は、110~170℃、好ましくは、120~150℃、より好ましくは、120~135℃の温度で、1~5分、好ましくは、2~4分間行うことができ、もし、温度が110℃未満であると、接着力に問題があり得、170℃を超過すると、水透過度に問題があり得る。
【0109】
最後に、本発明の逆浸透膜の製造方法の第4段階は、第2段階で形成した高分子支持層の一面に親水性選択層を形成することができる。
【0110】
具体的に、親水性選択層は、当業界で通常的に逆浸透膜の親水性選択層として用いられ得る素材であれば、制限なしに用いることができるが、好ましくは、ポリアミド系高分子化合物、ポリピペラジン系高分子化合物、ポリフェニレンジアミン系高分子化合物、ポリクロロフェニレンジアミン系高分子化合物及びポリベンジジン高分子化合物のうち選択された1種以上を含むことができ、より好ましくは、ポリアミド系高分子化合物を含むことができる。
【0111】
親水性選択層を形成する方法は、選択される親水性選択層に含まれる物質の種類によって相違してもよいが、その方法は、物質の種類による通常的な親水性選択層の形成方法によることができる。
【0112】
一例として、親水性選択層は、多孔性支持体層の一面に多官能性アミン含有溶液を塗布し、ハロゲン化合物含有溶液を界面重合させて多孔性支持体層の一面に形成することができる。
【0113】
具体的な一例として、親水性選択層は、多官能性アミン含有溶液と多官能性ハロゲン化合物含有溶液を界面重合させて形成されたポリアミド系高分子化合物を含むことができる。
【0114】
具体的に、一面又は両面に高分子支持層が形成された多孔性支持体を多官能性アミン含有溶液に浸漬した後、多官能性ハロゲン化合物含有溶液に浸漬して界面重合させてポリアミド系高分子化合物を含む親水性選択層を形成することができる。
【0115】
多官能性アミンは、単量体当たり2~3個のアミン官能基を有する物質であって、1級アミン又は2級アミンを含むポリアミンであってもよい。このとき、ポリアミンとしては、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、オルトフェニルジアミン及び置換体として芳香族1級ジアミンが用いられ得、また他の例として、脂肪族1級ジアミン、シクロヘキセンジアミンのようなシクロ脂肪族1級ジアミン、ピペラジンのようなシクロ脂肪族2級アミン、芳香族2級アミンなどが用いられ得る。より好ましくは、多官能性アミンのうちメタフェニレンジアミンを用いることができ、このとき、濃度は、メタフェニレンジアミンを0.5~10重量%で含む水溶液形態が好ましく、より好ましくは、メタフェニレンジアミンが1~4重量%、さらに好ましくは、1.5~2.5重量%含まれ得、これを通じて、より向上した透過流量を発現し得るという利点がある。
【0116】
また、一面又は両面に高分子支持層が形成された多孔性支持体を多官能性アミン含有溶液に浸漬するとき、浸漬時間は、0.1~10分、より好ましくは、0.5~1分であってもよい。
【0117】
また、多官能性ハロゲン化合物は、好ましくは、多官能性アシルハライドを含むことができ、より好ましくは、トリメゾイルクロリド、イソプタロイルクロリド、5-メトキシ-1,3-イソフタロイルクロリド及びテレフタロイルクロリドのうち選択された少なくとも1種以上を含むことができる。
【0118】
多官能性アシルハライドは、脂肪族炭化水素溶媒に0.01~2重量%で溶解され得、このとき、脂肪族炭化水素溶媒は、炭素数5~12個であるn-アルカンと炭素数8個である飽和又は不飽和炭化水素の構造異性体を混合使用するか、炭素数5~7個の環炭化水素を用いることができる。好ましくは、多官能アシルハライド含有溶液は、脂肪族炭化水素溶媒に多官能性アシルハライドが0.01~2重量%、より好ましくは、0.05~0.3重量%で解され得る。
【0119】
このとき、界面重合は、多官能性ハロゲン化合物含有溶液に浸漬した一面又は両面に高分子支持層が形成された多孔性支持体を多官能性ハロゲン化合物含有溶液に0.1~10分、より好ましくは、0.5~1分間浸漬して行われ得る。
【0120】
一方、本発明の逆浸透膜の製造方法の第3段階を通じて形成された親水性選択層の厚さは、0.1~1μm、好ましくは、0.1~0.5μmの厚さであってもよく、もし、厚さが0.1μm未満であると、塩除去能力が低下し得、1μmを超過すると、逆浸透膜の透過流量が低下し得る。
【0121】
さらに、本発明の逆浸透膜の製造方法を通じて製造された逆浸透膜は、多孔性支持体と高分子支持層の間の接着力が20~1,100gf/mm2、好ましくは、500~1,100gf/mm2、より好ましくは、800~900gf/mm2、さらに好ましくは、840~900gf/mm2であってもよく、もし、上記接着力の範囲を脱することになると、塩排除率減少値及び透過流量増加率が上昇し、耐久性が低下する問題があり得る。
【0122】
また、本発明の逆浸透膜の製造方法を通じて製造された逆浸透膜は、高分子支持層と親水性選択層の間の接着力が500~1,600gf/mm2、好ましくは、800~1,500gf/mm2、より好ましくは、1,100~1,400gf/mm2、さらに好ましくは、1,200~1,350gf/mm2であってもよく、もし、上記接着力の範囲を脱することになると、塩排除率減少値及び透過流量増加率が上昇し、耐久性が低下する問題があり得る。
【0123】
また、本発明の逆浸透膜の製造方法を通じて製造された逆浸透膜は、下記関係式1及び2を全て満足することができる。
【0124】
(関係式1)
150<B-A<600、好ましくは、250<B-A<550、より好ましくは、300<B-A<500、さらに好ましくは、350<B-A<450、最も好ましくは、375<B-A<425
【0125】
(関係式2)
0.5<B/A<8、好ましくは、1.0<B/A<4、より好ましくは、1.1<B/A<2、さらに好ましくは、1.3<B/A<1.6、最も好ましくは、1.4<B/A<1.56
【0126】
上記関係式1及び2において、Aは、多孔性支持体と高分子支持層の間の接着力を示し、Bは、高分子支持層と親水性選択層の間の接着力を示す。
【0127】
もし、上記関係式1及び2を全て満足しない場合、塩排除率減少値が高く、透過流量増加率が増加する問題があり得る。
【0128】
以上で、本発明に対して具現例を中心として説明したが、これは例示に過ぎず、本発明の具現例を限定するものではない。本発明の実施例が属する分野において通常の知識を有した者であれば、本発明の本質的な特性を脱しない範囲で以上に例示されない様々な変形と応用が可能であることが分かる。例えば、本発明の具現例に具体的に示した各構成要素は、変形して実施することができる。そして、このような変形と応用に関係した差異点は、添付した請求の範囲で規定する本発明の範囲に含まれるものと解釈しなければならない。
【0129】
<比較例1:逆浸透膜の製造>
【0130】
(1)下記化学式1-1で表示されるポリスルホン系高分子化合物及び溶媒であるジメチルホルムアミド(DMF)を混合して高分子溶液を製造した。
【0131】
このとき、高分子溶液は、全体重量%のうち、下記化学式1-1で表示されるポリスルホン系高分子化合物17.3重量%、ジメチルホルムアミド(DMF)82.7重量%で混合して製造した。
【0132】
【0133】
上記化学式1-1において、R1及びR2は、メチル基であり、nは、235である。
【0134】
(2)多孔性支持体として不織布(ポリエステル系合成繊維、厚さ:90μm)を準備し、準備した不織布の一面に製造した高分子溶液を25℃の温度で3分間キャスティング(casting)し、平均厚さ57.5μmで高分子支持層を形成した。
【0135】
(3)高分子支持層が形成された多孔性支持体を、メタフェニレンジアミンを2.0重量%含有する水溶液に1分間浸漬し、圧着方法で表面の水を除去した後、0.1重量%のトリメゾイルクロリドを0.1重量%含有する有機溶液に1分間浸漬して界面重合させた。その後、常温(25℃)で1分30秒間自然乾燥させて、高分子支持層の一面に平均厚さ0.3μmで、ポリアミド系高分子化合物で構成された親水性選択層を形成した。
【0136】
(4)その後、未反応残余物を除去するために、親水性選択層及び高分子支持層が形成された多孔性支持体を、炭酸ナトリウムを0.2重量%含有する溶液に2時間の間浸漬して逆浸透膜を製造した。
【0137】
<比較例2~12:逆浸透膜の製造>
【0138】
比較例1と同一の方法で逆浸透膜を製造した。ただし、高分子溶液を製造するとき、下記表1に記載したように、上記化学式1-1で表示されるポリスルホン系高分子化合物及び溶媒であるジメチルホルムアミド(DMF)の混合割合を異にした。
【0139】
また、下記表1に記載したように、形成された高分子支持層の厚さを異にして逆浸透膜を製造した。
【0140】
<実施例1:逆浸透膜の製造>
【0141】
(1)下記化学式1-1で表示されるポリスルホン系高分子化合物及び溶媒であるジメチルホルムアミド(DMF)を混合して高分子溶液を製造した。
【0142】
このとき、高分子溶液は、全体重量%のうち、下記化学式1-1で表示されるポリスルホン系高分子化合物17.3重量%、ジメチルホルムアミド(DMF)82.7重量%で混合して製造した。
【0143】
【0144】
上記化学式1-1において、R1及びR2は、メチル基であり、nは、235である。
【0145】
(2)多孔性支持体としてイソフタル酸(IPA)を0.3mol%のイソフタル酸(IPA)を含む不織布(ポリエステル系合成繊維、厚さ:90μm)を準備し、準備した不織布の一面に製造した高分子溶液を25℃の温度で3分間キャスティング(casting)して平均厚さ57.5μmで高分子支持層を形成した。
【0146】
(3)高分子支持層が形成された多孔性支持体を130℃の温度で2分間乾燥した。
【0147】
(4)乾燥後、高分子支持層が形成された多孔性支持体をメタフェニレンジアミンを2.0重量%含有する水溶液に1分間浸漬し、圧着方法で表面の水を除去した後、トリメゾイルクロリドを0.1重量%含有する有機溶液に1分間浸漬して界面重合させた。その後、常温(25℃)で1分30秒間自然乾燥させて高分子支持層の一面に平均厚さ0.3μmで、ポリアミド系高分子化合物で構成された親水性選択層を形成した。
【0148】
(5)その後、未反応残余物を除去するために、親水性選択層及び高分子支持層が形成された多孔性支持体を、炭酸ナトリウムを0.2重量%含有する溶液に2時間の間浸漬して逆浸透膜を製造した。
【0149】
<実施例2:逆浸透膜の製造>
【0150】
実施例1と同一の方法で逆浸透膜を製造した。ただし、(3)段階の乾燥は、150℃の温度で2分間行って逆浸透膜を製造した。
【0151】
<実施例3:逆浸透膜の製造>
【0152】
実施例1と同一の方法で逆浸透膜を製造した。ただし、多孔性支持体としてイソフタル酸(IPA)を0.3mol%のイソフタル酸(IPA)を含む不織布ではなく、2.0mol%のイソフタル酸(IPA)を含む不織布(ポリエステル系合成繊維、厚さ:90μm)を用いて逆浸透膜を製造した。
【0153】
<実施例4:逆浸透膜の製造>
【0154】
実施例1と同一の方法で逆浸透膜を製造した。ただし、実施例1で製造された多孔性支持体ではなく、0.3mol%のイソフタル酸(IPA)を含む不織布ではなく、4.0mol%のイソフタル酸(IPA)を含む不織布(ポリエステル系合成繊維、厚さ:90μm)を用いて逆浸透膜を製造した。
【0155】
<実施例5:逆浸透膜の製造>
【0156】
実施例1と同一の方法で逆浸透膜を製造した。ただし、実施例1で製造された多孔性支持体ではなく、0.3mol%のイソフタル酸(IPA)を含む不織布ではなく、6.0mol%のイソフタル酸(IPA)を含む不織布(ポリエステル系合成繊維、厚さ:90μm)を用いて逆浸透膜を製造した。
【0157】
<実験例1>
【0158】
実施例1~5及び比較例1~12で製造された逆浸透膜の剥離安定性を評価するために、逆浸透膜の初期性能を評価する前に接着力評価を進行し、下記表1及び表3に示した。
【0159】
接着力は、テクスチャーアナライザ(Texture Analyzer)を用いて逆浸透膜をラミネーション(lamination)する方法により測定した。具体的に、逆浸透膜をテープ及びPETフィルムに付着した後、PETフィルムを一定の速度で180度方向に引き上げて分離膜がラミネーション(lamination)されるときの距離による力を測定した。
【0160】
<実験例2>
【0161】
実施例1~5及び比較例1~12で製造された逆浸透膜の初期性能を評価した後、逆浸透膜の剥離安定性を評価するために、逆浸透膜の逆洗浄後の性能を評価し、下記表2及び表4に示した。
【0162】
逆浸透膜の初期性能評価は、逆浸透膜の親水性選択層上に2,000ppmの塩化ナトリウム水溶液(25℃、225psi)を投入して逆浸透膜の反対面で生産された水の流量を測定した後、単位面積及び単位圧力当たり流量で換算した。
【0163】
塩排除率は、生産水のイオン伝導度値(TDS:Total Dissolved Solids)を測定し、下記計算式1を通じて求めた。
【0164】
(計算式1)
塩排除率(%)={1-(生産水の伝導度値/原水の伝導度値)}×100
【0165】
また、逆浸透膜の逆洗浄後の性能評価は、3bar(43.5psi)の圧力で20分間運転した後、流量及び塩排除率を再測定した。
【0166】
【0167】
【0168】
上記表1及び表2を参照すると、高分子支持層の厚さが低い比較例8~12は、逆洗浄後の塩排除率が顕著に減少し、透過流量が顕著に増加することから、逆洗浄するとき、高分子支持層が剥離されたと判断される。
【0169】
また、比較例1~7で製造された逆浸透膜のうち、比較例1で製造された逆浸透膜が塩排除率減少値が最も低く、透過流量増加率が最も少ないことが確認できた。
【0170】
【0171】
【0172】
上記表1~4を参照すると、実施例1は、比較例1より塩排除率減少値及び透過流量増加率が低いことから、高分子支持層の剥離安定性が顕著に優れると判断される。
【0173】
また、実施例1~5で製造された逆浸透膜のうち、実施例1で製造された逆浸透膜が、塩排除率減少値が最も低く、透過流量増加率が最も少ないことが確認できた。
【0174】
<実験例3>
【0175】
最も優れた効果を示す実施例1で製造された逆浸透膜の断面SEMイメージ撮影を実施した。
【0176】
図2は、実施例1で製造された逆浸透膜の断面SEMイメージであり、
図2を参照すると、高分子支持層が多孔性支持層の上部表面及び内部にわたって形成されていることが確認でき、これを通じて、多孔性支持体との結合力が優れると判断され、高分子支持層が平坦に形成されて高分子支持層の剥離安定性に優れるため、耐久性が向上した逆浸透膜を具現し得ると判断される。
【0177】
本発明の単純な変形や変更は、この分野の通常の知識を有した者により容易に実施され得、このような変形や変更は、全て本発明の領域に含まれ得る。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明は、逆浸透膜及びその製造方法に関するもので、より詳しくは、従来の逆浸透膜に比べて同等の流量を維持すると共に分離膜内の層間結合に優れるため、逆洗浄時に膜内の耐久性減少を最小化して洗浄効果を増進させ、高圧膜の寿命を延長し、累積処理水量を極大化し、維持管理費用も節減し得る高耐久性の逆浸透膜及びその製造方法に関する。
【国際調査報告】