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特表2022-542813リチウムイオン電池の正極材料及びその製造方法、リチウムイオン電池
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  • 特表-リチウムイオン電池の正極材料及びその製造方法、リチウムイオン電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池の正極材料及びその製造方法、リチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20220930BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20220930BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502401
(86)(22)【出願日】2020-07-08
(85)【翻訳文提出日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 CN2020100946
(87)【国際公開番号】W WO2021008423
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】201910637198.7
(32)【優先日】2019-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】易宗▲魏▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼靖▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】曹文玉
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA08
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050DA02
5H050DA09
5H050EA02
5H050FA12
5H050GA02
5H050GA06
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA10
5H050HA14
(57)【要約】
リチウムイオン電池の正極材料及びその製造方法、リチウムイオン電池が提供され、該正極材料は、花弁状のラメラユニットを含む球形構造を有する三元材料粒子を含み、上記花弁状のラメラユニットは、上記花弁状のラメラユニットのラメラの厚さが150~300nmである条件と、ラメラの厚さ方向に垂直な表面の面積が60000~300000nmである条件とのうち少なくとも1つを満たす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三元材料粒子を含むリチウムイオン電池の正極材料であって、前記三元材料粒子は球形構造を有し、前記球形構造は花弁状のラメラユニットを含み、
前記花弁状のラメラユニットは、
前記花弁状のラメラユニットのラメラの厚さが150~300nmである条件と、
ラメラの厚さ方向に垂直な表面の面積が60000~300000nmである条件とのうち少なくとも1つを満たす、正極材料。
【請求項2】
前記三元材料粒子のD10は2000~2300nmである条件と、
前記三元材料粒子のD90は5000~6000nmである条件と、
前記三元材料粒子のD50は3000~4000nmである条件と、
前記三元材料粒子の比表面積は50000~70000cm/gである条件と
のうち少なくとも1つを満たす、請求項1に記載の正極材料。
【請求項3】
前記三元材料粒子は、三元活性成分と、成形剤とを含み、
前記三元活性成分は、化学式がLiNiCoMn1-x-yであり、
1/3<x<0.9、かつ、0.08<y<0.4を満たす物質を含む、請求項1又は2に記載の正極材料。
【請求項4】
前記成形剤は、融点が650~750℃の合金を含み、
前記合金はリチウムイオン電池の正極材料の前駆体と共晶することはなく、1000℃以下で揮発性でない、請求項3に記載の正極材料。
【請求項5】
前記合金は、モリブデン合金、タングステン合金、スカンジウム合金、ニオブ合金及びジスプロシウム合金のうちの1種又は複数種である、請求項4に記載の正極材料。
【請求項6】
前記三元材料粒子の総重量を基準として、前記三元活性成分の含有量は98.5~99.5重量%であり、前記成形剤の含有量は0.5~1.5重量%である、請求項3~5のいずれか一項に記載の正極材料。
【請求項7】
リチウムイオン電池の正極材料を製造する方法であって、
リチウムイオン電池の正極材料の前駆体、リチウム源及び成形剤を混合し、焼成処理を行って、正極材料を得るステップを含み、
正極材料は、花弁状のラメラユニットを含む球形構造を有する三元材料粒子を含み、
前記花弁状のラメラユニットは、
前記花弁状のラメラユニットのラメラの厚さが150~300nmである条件と、
ラメラの厚さ方向に垂直な表面の面積が60000~300000nmである条件とのうち少なくとも1つを満たす、方法。
【請求項8】
純酸素雰囲気で、温度が880~940℃の条件下で、前記焼成処理を14~18時間行う、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記成形剤は、融点が650~750℃の合金を含み、
前記合金は、リチウムイオン電池の正極材料の前駆体と共晶することはなく、1000℃以下で揮発性でない、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記合金は、モリブデン合金、タングステン合金、スカンジウム合金、ニオブ合金及びジスプロシウム合金のうちの1種又は複数種である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
スラリーを噴霧造粒し、150~180℃の条件下で6~10時間乾燥させて、前記リチウムイオン電池の正極材料の前駆体を得るステップをさらに含み、
前記スラリーは、Ni、Mn及びCoを含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記スラリーは、
Niイオンを含む溶液、Mnイオンを含む溶液、及びCoイオンを含む溶液を添加剤と混合して反応させて、前記スラリーを得るステップ(1)、又は、
前記Niイオンを含む溶液、前記Mnイオンを含む溶液、及び前記Coイオンを含む溶液を前記添加剤と混合して反応させ、さらにドープ溶液を添加して、前記スラリーを得るステップ(2)により調製され、
前記ドープ溶液は、Mgイオン及びTiイオンのうち少なくとも1つを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記スラリーのpH値は10~10.5である、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記混合の温度は40~60℃であり、前記混合の時間は14~20時間である、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記Niイオンを含む溶液、前記Mnイオンを含む溶液、及び前記Coイオンを含む溶液のそれぞれNi、Mn及びCoのモル比は1:(0.3~1):(0.3~1)である、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記添加剤は、アンモニア水を含む錯化剤と、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムのうち少なくとも1種を含む沈殿剤とを含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記リチウムイオン電池の正極材料の前駆体、前記リチウム源、及び前記成形剤のモル比が1:(1~1.15):(0.005~0.015)である条件と、
前記リチウム源が、水酸化リチウム一水和物、炭酸リチウム、硝酸リチウム及び酢酸リチウムのうちの1種又は複数種を含む条件と、
前記成形剤の粒径が50~500nmである条件と、
前記リチウムイオン電池の正極材料の前駆体の粒径が3000~4000nmである条件とのうち少なくとも1つを満たす、請求項7~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~6のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池の正極材料を含む、リチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウムイオン電池の分野に関し、具体的には、リチウムイオン電池の正極材料及びその製造方法、リチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の市場の急速な拡張に伴い、三元材料の高い比容量の点での利点のため、三元正極材料の需要量がますます増大している。現在、一般的な三元材料の一般的な粒子形態は、大きな単結晶型、二次球形である。異なる形態は、異なる性能特徴を有し、材料の使用シナリオに応じて、最適な特定の形態の三元材料を選択することができる。現在、三元材料製造のプロセス方法は、主に高温固相法であり、現在、市場での多くのメーカーは、主に動力電池の製造に用いられる大きな単結晶型及び二次球形の三元材料を製造する。
【0003】
しかしながら、単結晶型及び二次球形の三元材料は、大電流充放電及びハイレート充放電プロセスに適用できず、上記条件下で、初回の充放電効率が低く、レート特性が低く、比容量が小さく、低温の影響を受けやすいという問題を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、従来の三元材料がリチウムイオン電池の大電流充放電及びハイレート放電のプロセスにおける電気化学的性質が低いという問題を解消するために、リチウムイオン電池の正極材料及びその製造方法、リチウムイオン電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本開示の第1態様に係るリチウムイオン電池の正極材料は、花弁状のラメラユニットを含む球形構造を有する三元材料粒子を含み、花弁状のラメラユニットは、前記花弁状のラメラユニットのラメラの厚さが150~300nmである条件と、ラメラの厚さ方向に垂直な表面の面積が60000~300000nmである条件とのうち少なくとも1つを満たす。
【0006】
本開示のいくつかの実施例において、該正極材料は、前記三元材料粒子のD10が2000~2300nmである条件と、前記三元材料粒子のD90が5000~6000nmである条件と、前記三元材料粒子のD50が3000~4000nmである条件と、比表面積が50000~70000cm/gである条件とのうち少なくとも1つを満たす。
【0007】
本開示のいくつかの実施例において、前記三元材料粒子は、化学式がLiNiCoMn1-x-yの物質を含む三元活性成分と、成形剤とを含み、ここで、1/3<x<0.9、0.08<y<0.4である。
【0008】
本開示のいくつかの実施例において、前記成形剤は、融点が650~750℃の合金を含み、前記合金は、リチウムイオン電池の正極材料の前駆体と共晶することはなく、1000℃以下で揮発性でない。
【0009】
本開示のいくつかの実施例において、前記合金は、モリブデン合金、タングステン合金、スカンジウム合金、ニオブ合金及びジスプロシウム合金のうちの1種又は複数種である。
【0010】
本開示のいくつかの実施例において、前記三元材料粒子の総重量を基準として、前記三元活性成分の含有量は98.5~99.5重量%であり、前記成形剤の含有量は0.5~1.5重量%である。
【0011】
本開示の第2態様に係るリチウムイオン電池の正極材料を製造する方法は、リチウムイオン電池の正極材料の前駆体、リチウム源及び成形剤を混合し、焼成処理を行って、前記正極材料を得るステップを含み、該正極材料は、花弁状のラメラユニットを含む球形構造を有する三元材料粒子を含み、前記花弁状のラメラユニットは、前記花弁状のラメラユニットのラメラの厚さが150~300nmである条件と、ラメラの厚さ方向に垂直な表面の面積が60000~300000nmである条件とのうち少なくとも1つを満たす。
【0012】
なお、本明細書に用いられる説明方式「…条件とのうち少なくとも1つを満たす」とは、列挙された条件のうちの任意の1つ、任意の2つ、任意の3つ又は全ての条件を満たしてもよいことを指し、「前記花弁状のラメラユニットは、前記花弁状のラメラユニットのラメラの厚さが150~300nmである条件と、ラメラの厚さ方向に垂直な表面の面積が60000~300000nmである条件とのうち少なくとも1つを満たす」を例とし、花弁状のラメラユニットは、ラメラの厚さが150~300nmである条件のみを満たしてもよく、ラメラの厚さ方向に垂直な表面の面積が60000~300000nmである条件のみを満たしてもよく、ラメラの厚さが150~300nmである条件と、ラメラの厚さ方向に垂直な表面の面積が60000~300000nmである条件とを同時に満たしてもよい。本明細書における他の類似する説明の意味は、いずれもこれと同じであり、以下では説明を省略する。
【0013】
本開示のいくつかの実施例において、純酸素雰囲気で、温度が880~940℃の条件下で、前記焼成処理を14~20時間行う。
【0014】
本開示のいくつかの実施例において、前記成形剤は、融点が650~750℃の合金を含み、前記合金は、前記リチウムイオン電池の正極材料の前駆体と共晶することはなく、1000℃以下で揮発性でない。
【0015】
本開示のいくつかの実施例において、前記合金は、モリブデン合金、タングステン合金、スカンジウム合金、ニオブ合金及びジスプロシウム合金のうちの1種又は複数種である。
【0016】
本開示の実施例において、該方法は、スラリーを噴霧造粒し、150~180℃の条件下で6~10時間乾燥させて、前記リチウムイオン電池の正極材料の前駆体を得るステップをさらに含み、前記スラリーは、Ni、Mn及びCoを含む。
【0017】
本開示のいくつかの実施例において、前記スラリーは、Niイオンを含む溶液、Mnイオンを含む溶液、及びCoイオンを含む溶液を添加剤と混合して反応させて、前記スラリーを得るステップ(1)、又は、Niイオンを含む溶液、Mnイオンを含む溶液、及びCoイオンを含む溶液を添加剤と混合して反応させ、さらにドープ溶液を添加して、前記スラリーを得るステップ(2)により調製され、前記ドープ溶液は、Mgイオン及びTiイオンのうち少なくとも1つを含む。
【0018】
本開示のいくつかの実施例において、前記スラリーのpH値は10~10.5である。
【0019】
本開示のいくつかの実施例において、前記混合の温度は40~60℃であり、前記混合の時間は14~20時間である。
【0020】
本開示のいくつかの実施例において、Ni、Mn及びCoで計算すると、前記Niイオンを含む溶液、前記Mnイオンを含む溶液、及び前記Coイオンを含む溶液の使用量のモル比は1:(0.3~1):(0.3~1)である。
【0021】
本開示のいくつかの実施例において、前記添加剤は、アンモニア水を含む錯化剤と、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムのうち少なくとも1種を含む沈殿剤とを含む。
【0022】
本開示のいくつかの実施例において、該方法は、前記前駆体、前記リチウム源、及び前記成形剤の使用量のモル比が1:(1~1.15):(0.005~0.015)である条件と、前記リチウム源が、水酸化リチウム一水和物、炭酸リチウム、硝酸リチウム及び酢酸リチウムのうちの1種又は複数種を含む条件と、前記成形剤の粒径が50~500nmである条件と、前記前駆体の粒径が3000~4000nmである条件とのうち少なくとも1つを満たす。
【0023】
本開示の第3態様に係るリチウムイオン電池は、本開示の第1態様に係るリチウムイオン電池の正極材料を含む。
【発明の効果】
【0024】
上記技術的解決手段により、本開示の正極材料は、花弁状のラメラユニットを有し、粒度分布範囲が狭く、比表面積が高いため、優れたレート特性、初回の充放電効率及び比容量を有し、特に大電流充放電、ハイレート放電のシナリオ及び他の特別なシナリオに適用される。
【0025】
本開示の他の特徴及び利点については、具体的な実施形態において詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図面は、本開示のさらなる理解を提供し、明細書の一部を構成するものであり、以下の具体的な実施形態と共に本開示を説明するものであるが、本開示を限定するものではない。
【0027】
図1】本開示の実施例1で製造されたリチウムイオン電池の正極材料のSEM図(拡大倍率が50K倍である)である。
図2】本開示の実施例1で製造されたリチウムイオン電池の正極材料のSEM図(拡大倍率が10K倍である)である。
図3】本開示の実施例1で製造されたリチウムイオン電池の正極材料のSEM図(拡大倍率が3K倍である)である。
図4】本開示の比較例1で製造されたリチウムイオン電池の正極材料のSEM図(拡大倍率が50K倍である)である。
図5】本開示の比較例1で製造されたリチウムイオン電池の正極材料のSEM図(拡大倍率が10K倍である)である。
図6】本開示の比較例1で製造されたリチウムイオン電池の正極材料のSEM図(拡大倍率が3K倍である)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら本開示の具体的な実施形態を詳細に説明する。ここで説明される具体的な実施形態は、本開示を説明し解釈するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【0029】
本開示の第1態様に係るリチウムイオン電池の正極材料は、花弁状のラメラユニットを含む球形構造を有する三元材料粒子を含み、花弁状のラメラユニットのラメラの厚さは、150~300nm(具体的には、例えば、150nm、160nm、170nm、180nm、190nm、200nm、210nm、220nm、230nm、240nm、250nm、260nm、270nm、280nm、290nm、300nmなど)であってもよく、ラメラの厚さ方向に垂直な表面の面積は、60000~300000nm(具体的には、例えば、60000nm、80000nm、100000nm、150000nm、200000nm、250000nm、300000nmなど)であってもよい。本開示における正極材料は、花弁状のラメラユニットを有するため、正極材料の010結晶面の露出面が広くなり、すなわち花弁状のラメラユニットのラメラの厚さ方向の結晶面がより多く露出し、正極材料のレート特性、初回の充放電効率及び比容量を効果的に向上させることができ、特に大電流充放電、ハイレート放電のシナリオ及び他の特別なシナリオに適用される。
【0030】
本開示のいくつかの実施例において、三元材料粒子のD10は、2000~2300nm(具体的には、例えば、2000nm、2050nm、2100nm、2150nm、2200nm、2250nm、2300nmなど)であってもよく、三元材料粒子のD90は、5000~6000nm(具体的には、例えば、5000nm、5100nm、5200nm、5300nm、5400nm、5500nm、5600nm、5700nm、5800nm、5900nm、6000nmなど)であってもよく、三元材料粒子のD50は、3000~4000nm(具体的には、例えば、3000nm、3100nm、3200nm、3300nm、3400nm、3500nm、3600nm、3700nm、3800nm、3900nm、4000nmなど)であってもよく、比表面積は、50000~70000cm/g(具体的には、例えば、50000cm/g、55000cm/g、60000cm/g、65000cm/g、70000cm/gなど)であってもよい。いくつかの具体的な実施例において、三元材料粒子のD10は、2200~2300nmであってもよく、三元材料粒子のD90は5200~5800nmであってもよく、三元材料粒子のD50は3500~4500nmであってもよく、比表面積は50000~750000cm/gであってもよい。D10は、粒子の累積分布が10%である粒径を指し、すなわち、この粒径より小さい粒子の体積含有量が全ての粒子の10%を占めることを指す。D90は、粒子の累積分布が90%である粒径を指し、すなわち、この粒径より小さい粒子の体積含有量が全ての粒子の90%を占めることを指す。D50は、サンプルの累積粒度分布のパーセントが50%に達する場合に対応する粒径を指し、この粒径より大きい粒子が50%を占め、この粒径より小さい粒子も50%を占めることを示す。上記範囲内で、本開示における正極材料は、より優れたレート特性、初回の充放電効率及び比容量を有することができる。
【0031】
本開示のいくつかの実施例において、三元材料粒子は、三元活性成分及び成形剤を含んでもよい。三元活性成分は、化学式がLiNiCoMn1-x-yの物質を含んでもよく、ここで、1/3<x<0.9、0.05<y<0.4である。本開示のいくつかの実施例に係る成形剤は、合金を含んでもよく、合金は、融点が650~750℃(具体的には、例えば、650℃、660℃、670℃、680℃、690℃、700℃、710℃、720℃、730℃、740℃、750℃など)であってもよく、リチウムイオン電池の正極材料の前駆体と共晶することはなく、1000℃以下で揮発しない。いくつかの具体的な実施例において、合金は、モリブデン合金、タングステン合金、スカンジウム合金、ニオブ合金及びジスプロシウム合金のうちの1種又は複数種であってもよく、具体的には、モリブデン合金であってもよく、モリブデン合金は、モリブデンをベースとして他の元素を添加して形成された 非鉄合金であり、モリブデン合金に添加された主な合金元素は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タングステン及び希土類元素である。
【0032】
本開示のいくつかの実施例において、三元活性成分の含有量は広い範囲内で変化してもよく、いくつかの具体的な実施例において、三元材料粒子の総重量を基準として、三元活性成分の含有量は、98.5~99.5重量%(具体的には、例えば、98.5重量%、98.6重量%、98.7重量%、98.8重量%、98.9重量%、99重量%、99.1重量%、99.2重量%、99.3重量%、99.4重量%、99.5重量%など)であってもよく、成形剤の含有量は、0.5~1.5重量%(具体的には、例えば、0.5重量%、0.8重量%、1重量%、1.2重量%、1.5重量%など)であってもよい。他の具体的な実施例において、三元材料粒子の総重量を基準として、三元活性成分の含有量は98.5~99重量%であってもよく、成形剤の含有量は0.5~1重量%であってもよい。含有量が上記範囲内にあると、三元活性成分と成形剤の割合が適切であり、構造がより優れた花弁状のラメラユニットを有し、正極材料のレート特性、初回の充放電効率及び比容量をさらに向上させることにより、大電流充放電、ハイレート放電のシナリオ及び他の特別なシナリオでもより優れた電気化学的性能を有する。
【0033】
本開示の第2態様に係るリチウムイオン電池の正極材料を製造する方法は、リチウムイオン電池の正極材料の前駆体、リチウム源及び成形剤を混合し、焼成処理を行って正極材料を得るステップを含み、該正極材料は、花弁状のラメラユニットを含む球形構造を有する三元材料粒子を含み、花弁状のラメラユニットのラメラの厚さは、150~300nm(具体的には、例えば、150nm、160nm、170nm、180nm、190nm、200nm、210nm、220nm、230nm、240nm、250nm、260nm、270nm、280nm、290nm、300nmなど)であってもよく、ラメラの厚さ方向に垂直な表面の面積は、60000~300000nm(具体的には、例えば、60000nm、80000nm、100000nm、150000nm、200000nm、250000nm、300000nmなど)であってもよい。本開示の方法で、花弁状のラメラユニットを有する正極材料を製造することができ、該正極材料のレート特性、初回の充放電効率及び比容量が高く、特に大電流充放電、ハイレート放電のシナリオ及び他の特別なシナリオに適用される。
【0034】
本開示のいくつかの実施例において、リチウムイオン電池の正極材料の前駆体、リチウム源及び成形剤を混合することは、当業者が一般的に用いる方法を用いてもよく、例えば、機械的混合の方法を用いてもよく、撹拌速度は必要に応じて選択してもよく、例えば、200~600回転/min(具体的には、例えば、200回転/min、300回転/min、400回転/min、500回転/min、600回転/minなど)である。
【0035】
本開示のいくつかの実施例において、純酸素雰囲気で、温度が880~940℃(具体的には、例えば、880℃、890℃、900℃、910℃、920℃、930℃、940℃など)の条件下で、焼成処理を14~20時間(具体的には、例えば、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間など)行ってもよい。いくつかの具体的な実施例において、温度が920~940℃の条件下で、焼成処理を18~20時間行い、焼成処理は、当業者が一般的に用いる装置、例えば管状炉で行われてもよい。上記条件下で焼成処理した後、正極材料がより安定した構造及びより優れた表面形態を有し、正極材料の電気化学的性能をさらに向上させることができる。
【0036】
本開示のいくつかの実施例において、成形剤は、合金を含んでもよく、合金の融点は650~750℃であってもよく、リチウムイオン電池の正極材料の前駆体と共晶することはなく、1000℃以下で揮発せず、例えば、950~1000℃で揮発しない。合金は、モリブデン合金、タングステン合金、スカンジウム合金、ニオブ合金及びジスプロシウム合金のうちの1種又は複数種であってもよく、具体的には、モリブデン合金であってもよい。製造プロセスにおいて、成形剤は、前駆体の表面に薄膜を形成することができ、前駆体の形態に対して成形、保護の作用を有することにより、製造された正極材料が優れた花弁状のラメラユニットを有し、リチウムイオン電池の正極材料の電気化学的性能をさらに向上させることができる。
【0037】
本開示のいくつかの実施例において、リチウムイオン電池の正極材料の前駆体は、ニッケルコバルトマンガン三元材料の前駆体のような当業者が一般的に用いるものであってもよく、前駆体を製造する方法は、具体的に限定されず、当業者が一般的に用いるものであってもよい。いくつかの具体的な実施例において、該リチウムイオン電池の正極材料を製造する方法は、スラリーを噴霧造粒し、150~180℃(具体的には、例えば、150℃、160℃、170℃、180℃など)の条件下で6~10時間(具体的には、例えば、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間など)乾燥させて、リチウムイオン電池の正極材料の前駆体を得るステップをさらに含んでもよく、スラリーは、Ni、Mn及びCoを含んでもよい。噴霧造粒は、当業者が一般的に用いる装置、例えば、噴霧造粒機、超音波霧化機で行われてもよく、いくつかの具体的な実施例において、超音波霧化機で噴霧造粒処理を行い、超音波霧化機の発振周波数は、5000~10000MHz(具体的には、例えば、5000MHz、6000MHz、7000MHz、8000MHz、9000MHz、10000MHなど)であってもよく、具体的には、窒素ガス又は不活性ガスをキャリアガスとして、霧化された粒子を乾燥機又はオーブン内に導入して乾燥処理を行い、乾燥の温度は、具体的に限定されず、実際の必要に応じて選択してもよい。
【0038】
本開示のいくつかの実施例において、Niイオンを含む溶液、Mnイオンを含む溶液、及びCoイオンを含む溶液を添加剤と混合して、スラリーを得てもよい。Niイオンを含む溶液、Mnイオンを含む溶液、及びCoイオンを含む溶液は、それぞれ、Ni塩、Mn塩及びCo塩を溶媒に溶解することにより調製されてもよく、例えば、NiCl・6HO、MnCl・4HO及びCoCl・6HOをそれぞれ脱イオン水のような溶媒に溶解して、Niイオンを含む溶液、Mnイオンを含む溶液、及びCoイオンを含む溶液を調製してもよい。Niイオンを含む溶液、Mnイオンを含む溶液、及びCoイオンを含む溶液を添加剤と混合する具体的な方式は、限定されず、各成分を均一に混合することができればよい。いくつかの具体的な実施例において、蠕動ポンプを用いて、Niイオンを含む溶液、Mnイオンを含む溶液、Coイオンを含む溶液、及び添加剤の供給量を制御してもよい。
【0039】
具体的な実施形態において、Niイオンを含む溶液、Mnイオンを含む溶液、及びCoイオンを含む溶液を添加剤と混合して反応させ、さらにドープ溶液を添加して、スラリーを得てもよい。製造されたリチウムイオン電池の正極材料の電気化学的性能をさらに向上させる。ドープ溶液は、Mgイオン及びTiイオンのうち少なくとも1種を含んでもよく、例えば、ドープ溶液は、MgCl溶液及びTiCl溶液のうち少なくとも1種であってもよい。ドープ溶液を添加する方式は、限定されず、例えば、混合して反応した後の溶液にドープ溶液を段階的に滴下し、撹拌して各成分を均一に混合してもよく、ドープ溶液の添加量は、必要に応じて選択してもよく、例えば、Ni、Mn、Co及びドープ元素の総重量を基準として、ドープ元素の含有量は、0.1~0.3重量%(具体的には、例えば、0.1重量%、0.15重量%、0.2重量%、0.25重量%、0.3重量%など)であってもよい。なお、本明細書における「Mgイオン及び/又はTiイオン」と、「Mgイオン及びTiイオンのうち少なくとも1種」とは互換的に使用してもよく、他の類似する説明の意味はこれと同じであり、以下では説明を省略する。
【0040】
本開示のいくつかの実施例において、スラリーのpH値、混合の温度及び時間は、大きな範囲内で変化してもよく、例えば、スラリーのpH値は、10~10.5(具体的には、例えば、10、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5など)であってもよく、混合の温度は、40~60℃(40℃、45℃、50℃、55℃、60℃など)であってもよく、時間は14~20時間(具体的には、例えば、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間など)であってもよく、いくつかの具体的な実施例において、スラリーのpH値は10.1~10.4であってもよく、混合の温度は40~50℃であってもよく、時間は18~20時間であってもよい。上記条件範囲内に、反応成分を十分に反応させ、特定の形態の構造を有する正極材料を形成することにより、製造されたリチウムイオン電池の正極材料の電気化学的性能をさらに向上させることができる。
【0041】
本開示のいくつかの実施例において、Ni、Mn及びCoで計算すると、Niイオンを含む溶液、Mnイオンを含む溶液、及びCoイオンを含む溶液の使用量のモル比は1:(0.3~1):(0.3~1)であってもよく、具体的には、例えば、1:0.3:0.3、1:0.5:0.3、1:0.8:0.3、1:1:0.3、1:0.3:0.5、1:0.3:0.8、1:0.3:1などであってもよく、上記割合の範囲内でNi、Mn及びCoの割合が適切な正極材料を製造することができる。
【0042】
具体的な実施形態において、本開示は、リチウムイオン電池の正極材料を共沈法で製造する。添加剤は、錯化剤及び沈殿剤を含んでもよく、錯化剤及び沈殿剤は、当業者によく知られている。例えば、錯化剤は、アンモニア水であってもよく、沈殿剤は、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムのうち少なくとも1種を含んでもよい。
【0043】
本開示のいくつかの実施例において、リチウムイオン電池の正極材料の前駆体、リチウム源と成形剤の使用量のモル比は、1:(1~1.15):(0.005~0.015)であってもよく、具体的には1:(1.1~1.15):(0.01~0.015)であってもよく、例えば、1:1.1:0.01、1:1.12:0.01、1:1.15:0.01、1:1.1:0.012、1:1.1:0.015などであってもよい。リチウム源は、ナノスケールの水酸化リチウム及び電池グレードの水酸化リチウムのうち少なくとも1種であってもよく、リチウム源のタイプは、当業者が一般的に用いるものであってもよく、具体的には、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム及び酢酸リチウムのうちの1種又は複数種であってもよく、成形剤の粒径は、50~500nm(具体的には、例えば、50nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nmなど)であってもよく、リチウムイオン電池の正極材料の前駆体の粒径は、3000~4000nm(具体的には、例えば、3000nm、3100nm、3200nm、3300nm、3400nm、3500nm、3600nm、3700nm、3800nm、3900nm、4000nmなど)であってもよい。上記範囲内に、レート特性がより優れ、初回の充放電効率がより高く、比容量がより大きい正極材料を製造することができる。
【0044】
具体的な実施形態において、被覆材料を用いて正極材料に対して表面被覆処理を行ってもよく、被覆材料は、正極材料の使用中に高温でガスが発生するという問題を回避するために、ZrO、Al、TiO及びCのうちの1種又は複数種から選択してもよい。被覆処理は、NOBメカノフュージョンで行われてもよく、具体的な操作パラメータは、実際の必要に応じて選択してもよく、例えば、材料をメカノフュージョンで10~40min(具体的には、例えば、10min、15min、20min、25min、30min、35min、40minなど)撹拌して融合し、撹拌融合による生成物を収集し、200~400℃(具体的には、例えば、200℃、250℃、300℃、350℃、400℃など)の条件下で3~10h(具体的には、例えば、3h、4h、5h、6h、7h、8h、9h、10hなど)熱処理し、熱処理後の生成物を乾燥させて、生成物の水分を1000ppm以下に低下させ、最終的な生成物を得る。被覆材料の使用量は、広い範囲内で変化してもよく、具体的には、正極材料の総重量を基準として、被覆材料の使用量は、0.05~0.3重量%(具体的には、例えば、0.05重量%、0.1重量%、0.15重量%、0.2重量%、0.25重量%、0.3重量%など)であってもよく、被覆材料の粒子の平均粒径は、50~500nm(具体的には、例えば、50nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nmなど)であってもよい。
【0045】
本開示の第3態様に係るリチウムイオン電池は、本開示の第1態様に係るリチウムイオン電池の正極材料を含む。本開示におけるリチウムイオン電池は、優れたレート特性、初回の充放電効率及び比容量を有し、特に大電流充放電、ハイレート放電のシナリオ及び他の特別なシナリオに適用される。
【0046】
本開示のリチウムイオン電池は、正極、負極、セパレータ及び電解液をさらに含み、正極は、本開示に係る正極材料を含み、負極、セパレータ及び電解液は、当業者によく知られているものであり、ここで説明を省略し、当業者が一般的に用いる方法でリチウムイオン電池を製造してもよい。リチウムイオン電池の具体的な形態も限定されず、例えば、ソフトパック電池、ボタン電池であってもよい。
【0047】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示は、これによって何ら限定されない。
【0048】
それぞれNiCl・6HO、MnCl・4HO、CoCl・6HOを脱イオン水に溶解して、2mol/Lの溶液を調製し、使用に備え、NaOHを脱イオン水に溶解して、4mol/Lの沈殿剤を調製し、使用に備え、4mol/Lのアンモニア水を調製し、錯化剤として使用に備え、0.2mol/LのMgCl溶液、TiCl溶液を調製し、ドープ溶液として使用に備える。
【実施例1】
【0049】
共沈反応を開始させ、まず、脱イオン水にアンモニア水を錯化剤として添加し、次に、蠕動ポンプにより反応材料液及び沈殿剤を添加し、沈殿剤は4mol/Lの水酸化ナトリウム溶液である。NiCl、MnCl、CoCl溶液の流量を3:1:1の添加速度で制御し、調整弁及び流量計に通過させた後、反応釜に入らせて、溶液を撹拌混合して反応させる。沈殿剤と錯化剤の使用量を制御することにより、溶液のpHを10.5にし、撹拌温度を40℃の恒温に制御する。2h撹拌した後、1hごとに20mLのドープ溶液を反応液に滴下し、合計で6回滴下し、最終的にドープ元素の添加量は0.2重量%であり、合計で14h撹拌して反応させる。
【0050】
撹拌して反応させた後、溶液に対して超音波霧化機により霧化造粒処理を行い、超音波霧化機の発振周波数は10000MHzであり、窒素ガスをキャリアガスとして霧化された液滴を乾燥機に導入して150℃で7h乾燥させ、吐出口の粉末を収集して、ドープ元素を含む[NiCoMn]OH水酸化物を得て、ガス破砕した後に前駆体を得る。
【0051】
モル比が1:0.4:0.01の前駆体、炭酸リチウムとモリブデン合金(融点が650~750℃である)を高速混合機で均一に混合した後、管状炉に入れ、純酸素雰囲気で、880℃で8h高温焼成する。一回焼成後の材料をガス破砕し、篩にかけることにより粒子を分散させ、そのリチウム化割合を検出し、リチウム化割合がLi/M=1.05に達するために、さらに添加する必要がある炭酸リチウムを計算する。材料を均一に混合した後に管状炉に入れ、純酸素雰囲気で、940℃で6h高温焼成し、2回目のガス破砕を行って粒子を分散させる。
【0052】
ガス破砕後の生成物に対してNOBメカノフュージョンで表面被覆処理を行い、被覆剤は、ナノスケールのZrOを選択し、添加量が0.3%wtであり、メカノフュージョンで15min撹拌して融合した後、生成物を収集し、300℃で5h熱処理する。生成物をオーブンで脱水し、105℃で5h乾燥させることにより、粉体の水分を1000ppm以下に減少させて、正極材料を得る。
【実施例2】
【0053】
共沈反応を開始させ、まず、脱イオン水にアンモニア水を錯化剤として添加し、次に、蠕動ポンプにより反応材料液及び沈殿剤を添加し、沈殿剤は4mol/Lの水酸化ナトリウム溶液である。NiCl、MnCl、CoCl溶液の流量を3:1:1の添加速度で制御し、調整弁及び流量計に通過させた後、反応釜に入らせて、溶液を撹拌混合して反応させる。沈殿剤と錯化剤の使用量を制御することにより、溶液のpHを10.5にし、撹拌温度を60℃の恒温に制御する。2h撹拌した後、2hごとに20mLのドープ溶液を反応液に滴下し、合計で6回滴下し、最終的にドープ元素の添加量は0.2重量%であり、合計で14h撹拌して反応させる。
【0054】
撹拌して反応させた後、溶液に対して超音波霧化機により霧化造粒処理を行い、超音波霧化機の発振周波数は10000MHzであり、窒素ガスをキャリアガスとして霧化された液滴を乾燥機に導入して160℃で6h乾燥させ、吐出口の粉末を収集して、ドープ元素を含む[NiCoMn]OH水酸化物を得て、ガス破砕した後に前駆体を得る。
【0055】
モル比が1:0.4:0.01の前駆体、炭酸リチウム、及びモリブデン合金を高速混合機で均一に混合した後、管状炉に入れ、純酸素雰囲気で、880℃で8h高温焼成する。一回焼成後の材料をガス破砕し、篩にかけることにより粒子を分散させ、そのリチウム化割合を検出し、リチウム化割合がLi/M=1.05に達するために、さらに添加する必要がある炭酸リチウムを計算する。材料を均一に混合した後に管状炉に入れ、純酸素雰囲気で、940℃で6h高温焼成し、2回目のガス破砕を行って粒子を分散させる。
【0056】
ガス破砕後の生成物に対してNOBメカノフュージョンで表面被覆処理を行い、被覆剤は、ナノスケールのZrOを選択し、添加量が0.3%wtであり、メカノフュージョンで15min撹拌して融合した後、生成物を収集し、300℃で5h熱処理する。生成物をオーブンで脱水し、105℃で5h乾燥させることにより、粉体の水分を1000ppm以下に減少させて、正極材料を得る。
【実施例3】
【0057】
実施例1と同じ方法で前駆体を製造するが、モル比が1:0.4:0.01の前駆体、炭酸リチウム、及びタングステン合金(融点が910~940℃である)を高速混合機で均一に混合した後、管状炉に入れ、純酸素雰囲気で、940℃で14h高温焼成することのみで相違する。
【実施例4】
【0058】
実施例1と同じ方法で前駆体を製造するが、モル比が1:0.4:0.005の前駆体、炭酸リチウム、及びモリブデン合金を高速混合機で均一に混合した後、管状炉に入れ、純酸素雰囲気で、880℃で8h高温焼成し、一回焼成後の材料をガス破砕し、篩にかけ、そのリチウム化割合を検出し、リチウム化割合がLi/M=1.05に達するために、さらに添加する必要がある炭酸リチウムを計算する。材料を均一に混合した後に管状炉に入れ、純酸素雰囲気で、940℃で6h高温焼成し、2回目のガス破砕を行うことのみで相違する。
【実施例5】
【0059】
実施例1と同じ方法を採用して正極材料を製造するが、溶液のpHを7.5にし、撹拌温度を30℃の恒温に制御し、合計で20h撹拌して反応させることのみで相違する。
<比較例1>
【0060】
実施例1と同じ方法で前駆体を製造するが、モル比が1:0.4の前駆体及び炭酸リチウムを高速混合機で均一に混合した後、管状炉に入れ、純酸素雰囲気で、880℃で8h高温焼成し、一回焼成後の材料をガス破砕し、篩にかけることにより粒子を分散させ、そのリチウム化割合を検出し、リチウム化割合がLi/M=1.05に達するために、さらに添加する必要がある炭酸リチウムを計算する。材料を均一に混合した後に管状炉に入れ、純酸素雰囲気で、940℃で6h高温焼成し、2回目のガス破砕を行って粒子を分散させて、正極材料を得ることのみで相違する。
<比較例2>
【0061】
酸素雰囲気で、モル比が1:0.53の三元前駆体(市販、華友コバルト業製、バッチ法NCM60/20/20_Y622D-H)及び炭酸リチウムを混合し、純酸素雰囲気で920℃で14h焼結する。焼結生成物をガス破砕し、ガス破砕後の生成物に対してNOBメカノフュージョンで表面被覆処理を行い、被覆剤は、ナノスケールのZrOを選択し、添加量が0.3重量%であり、メカノフュージョンで15min撹拌して融合した後、生成物を収集し、300℃で5h熱処理する。生成物をオーブンで脱水し、105℃で5h乾燥させることにより、粉体の水分を1000ppm以下に減少させて、正極材料を得る。
<試験例>
(1)SEM試験
【0062】
日本電子株式会社で製造された型番がJSM-7800の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて正極材料粉末の顕微鏡的形態を観察し、走査電圧が5KVであり、拡大倍率が3K×、10K×、50K×を選択する。粉末サンプルを導電性接着テープに接着し、金スプレー処理を行い、試験を行う前にサンプルを真空オーブンで乾燥して保存する。実施例1で得られた正極材料の異なる拡大倍率のSEM図をそれぞれ図1図3に示し、比較例1で得られた正極材料の異なる拡大倍率のSEM図をそれぞれ図4図6に示し、図1図3図4図6とを比較して分かるように、本開示の実施例で製造された正極材料は、明らかな花弁状のラメラユニットを有する球形構造を有し、比較例で得られた正極材料は花弁状のラメラユニットを有さない。
(2)比表面積試験
【0063】
貝士▲徳▼儀器科技有限公司で製造された型番が3H-3000PS2の比表面積・孔隙分析装置を用い、BET多点法で正極材料粉末の比表面積を測定する。
(3)マルバーン粒度試験
【0064】
Mastersizer 3000を用いて正極材料の粒度分布を試験する。
(4)電池の製造及び電気化学的性能の試験
【0065】
質量比100:3:3で活物質(すなわち正極材料)、導電剤(0.5CNT+0.5GN)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を一定量の1-メチル-2-ピロリドン(NMP)に添加して均一に混合し、110℃で真空乾燥させた後にペレットにプレスして正極とし、金属リチウムシートを負極とし、Celgard 2300微多孔膜をセパレータとし、1mol/LのLiPF/炭酸エチレン(EC)+炭酸ジメチル(DMC)(体積比1:1)を電解液とし、グローブボックス内でR2016ボタン式電池に組み立て、新威3008電池試験システムで充放電サイクル試験を行い、試験条件は、25℃の室温である。試験結果を表1及び表2に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
上記データから分かるように、本開示の実施例に係る正極材料を用いる電池の初回の充放電効率、比容量及びレート特性は、比較例に係る正極材料を用いる電池に比べて、いずれも明らかに向上し、本開示に係る正極材料がレート特性、初回の充放電効率及び比容量を効果的に向上させることができることを示す。比較例2と実施例を比較して分かるように、本開示に係る方法で、適切なラメラの厚さ及び面積を有する花弁状のラメラユニットを有する正極材料を効果的に製造することができ、比較例2に係る方法で、材料が製造プロセスにおいて凝集し、花弁状のラメラユニットを有する正極材料を効果的に製造することができず、得られた正極材料のレート特性、初回の充放電効率及び比容量も実施例で製造された正極材料より明らかに低い。
【0069】
以上、図面を参照しながら本開示の好ましい実施形態を詳細に説明したが、本開示は、上記実施形態の具体的な内容に限定されるものではなく、本開示の技術的思想の範囲内に、本開示の技術手段に対して複数の簡単な変更を行うことができ、これらの簡単な変更は、いずれも本開示の保護範囲に属する。
【0070】
なお、上記具体的な実施形態に説明された各具体的な技術的特徴は、矛盾しない場合に、いずれの適当な方式によって組み合わせることができ、不要な重複を回避するために、本開示は、可能なあらゆる組み合わせ方式を別途に説明しない。
【0071】
また、本開示の様々な実施形態は、任意に組み合わせることができ、本開示の構想から逸脱しない限り、本開示に開示されている内容に属すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】