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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】カルボキシ末端ジエンゴム
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/22 20060101AFI20220930BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
C08C19/22
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502520
(86)(22)【出願日】2020-07-14
(85)【翻訳文提出日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2020069846
(87)【国際公開番号】W WO2021009154
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】19186585.6
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516112462
【氏名又は名称】アランセオ・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト・シュタインハウザー
【テーマコード(参考)】
3D131
4J100
【Fターム(参考)】
3D131AA03
3D131BA04
3D131BA05
3D131BA18
3D131BC02
3D131BC19
3D131BC33
4J100AB02Q
4J100AS02P
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA09
4J100DA25
4J100HA31
4J100HA35
4J100HA37
4J100HA61
4J100HC28
4J100HC38
4J100HC63
4J100HE14
4J100JA29
(57)【要約】
本発明は、カルボキシ末端ジエンゴム、それらの製造及び使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
(式中、
前記「ポリマー」は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含み;
、Rは、同一或いは異なっていて、そして飽和又は不飽和の有機基(1個又は複数のヘテロ原子を含んでもよい)を表し;そして
、Rは、同一或いは異なっていて、そして飽和又は不飽和で、二価の有機基(C及びHに加えて、1個又は複数のヘテロ原子を含んでもよい)を表す)で表されるカルボキシ末端ポリマー。
【請求項2】
前記「ポリマー」が、
- ジエンをホモ重合若しくは共重合させるか;又は
- ジエンをビニル芳香族モノマーと共重合させる;
ことにより得ることが可能である、請求項1に記載のカルボキシ末端ポリマー。
【請求項3】
前記「ポリマー」が、
- 1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-ブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、若しくは1,3-ヘキサジエンをホモ重合若しくは共重合させるか;又は
- (i)1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、及び/又は1,3-ヘキサジエンを、
(ii)スチレン、o-、m-、及び/又はp-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、及び/又はジビニルナフタレン
と共重合させる;
ことにより得ることが可能である、請求項2に記載のカルボキシ末端ポリマー。
【請求項4】
前記「ポリマー」が、1,3-ブタジエンをスチレンと;又はイソプレンをスチレンと;好ましくは1,3-ブタジエンをスチレンと共重合させることにより得ることが可能である、請求項3に記載のカルボキシ末端ポリマー。
【請求項5】
、Rが、同一或いは異なっていて、そして飽和又は不飽和の有機基(相互に独立して、O、N、S、及びSiからなる群より選択される1個又は複数のヘテロ原子を含んでもよい)を表し;好ましくは-CHであり;そして
、Rが、同一或いは異なっていて、そして飽和又は不飽和で、二価の有機基(C及びHに加えて、相互に独立して、O、N、S、及びSiからなる群より選択される1個又は複数のヘテロ原子を含んでもよい)を表し;好ましくは、Rが-CH-CH-を意味し、そしてRが、-CH-CHC2k+1-(ここで、kは、8~16の整数である);-CHCH((CH1~5Si(OC~C-アルキル));-CH=CC~C-アルキル-、及び-(CH2~4-から選択され;より好ましくは、Rが-CH-CH-を意味し、そしてRが、-CH-CHC1223-、-CHCH(CHCHCHSi(OCH)、-CH=CCH-、及び-CHCH-CH-から選択される、
請求項1~4のいずれかに記載のカルボキシ末端ポリマー。
【請求項6】
- Rが、以下のものからなる群より選択され;
(i)飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C-アルキレン-;
(ii)飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C-ヘテロアルキレン-;及び
(iii)非置換、単置換、又は多置換の、6~14員のアリーレン;
及び/又は
- Rが、以下のものからなる群より選択され;
(i)飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C24-アルキル;又は
(ii)飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C24-ヘテロアルキル;
(iii)非置換、単置換、又は多置換の、6~24員のアリール(ここで、前記6~24員のアリールは、場合によっては、それぞれの場合において、飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C-アルキレン-又は-C~C-ヘテロアルキレン-を介して結合されている);
(iv)非置換、単置換、又は多置換の、5~24員のヘテロアリール(ここで、前記5~24員のヘテロアリールは、場合によっては、それぞれの場合において、飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C-アルキレン-又は-C~C-ヘテロアルキレン-を介して結合されている);
(v)飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、3~24員のシクロアルキル(ここで、前記3~24員のシクロアルキルは、場合によっては、それぞれの場合において、飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C-アルキレン-又は-C~C-ヘテロアルキレン-を介して結合されている);並びに
(vi)飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、3~24員のヘテロシクロアルキル(ここで、前記3~24員のヘテロシクロアルキルは、場合によっては、それぞれの場合において、飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C-アルキレン-又は-C~C-ヘテロアルキレン-を介して結合されている);
及び/又は
- Rが、以下のものからなる群より選択され;
(i)飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C24-アルキル;
(ii)飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C24-ヘテロアルキル;
(iii)非置換、単置換、又は多置換の、6~24員のアリール(ここで、前記6~24員のアリールは、場合によっては、それぞれの場合において、飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C-アルキレン-又は-C~C-ヘテロアルキレン-を介して結合されている);
(iv)非置換、単置換、又は多置換の、5~24員のヘテロアリール(ここで、前記5~24員のヘテロアリールは、場合によっては、それぞれの場合において、飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C-アルキレン-又は-C~C-ヘテロアルキレン-を介して結合されている);
(v)飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、3~24員のシクロアルキル(ここで、前記3~24員のシクロアルキルは、場合によっては、それぞれの場合において、飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C-アルキレン-又は-C~C-ヘテロアルキレン-を介して結合されている);並びに
(vi)飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、3~24員のヘテロシクロアルキル(ここで、前記3~24員のヘテロシクロアルキルは、場合によっては、それぞれの場合において、飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C-アルキレン-又は-C~C-ヘテロアルキレン-を介して結合されている);
及び/又は
- Rが、以下のものからなる群より選択される;
(i)飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C-アルキレン-;
(ii)飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C-ヘテロアルキレン-;及び
(iii)非置換、単置換、又は多置換の、6~14員のアリーレン;
ここで、「単置換、又は多置換の」という用語は、それぞれの場合において、独立して、-F、-Cl、-Br、-I、-CN、=O、-CF、-CFH、-CFH、-CFCl、-CFCl、飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C18-アルキル、及び飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C18-ヘテロアルキル、から相互に独立して選択される1個又は複数の置換基を用いて置換されていることを意味している、
請求項1~4のいずれかに記載のカルボキシ末端ポリマー。
【請求項7】
- Rが、(i)飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C-アルキレン-;若しくは(ii)飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C-アルキレンであるか;及び/又は
- Rが、(i)飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C-アルキル;若しくは(ii)飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C-アルキルであるか;及び/又は
- Rが、(i)飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C-アルキル;若しくは(ii)飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C-アルキルであるか;及び/又は
- Rが、(i)飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C-アルキレン-;若しくは(ii)飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C-アルキレン-であるが;
ここで、それぞれの場合において、「単置換、又は多置換の」という用語は、以下のものから相互に独立して選択される、1個又は複数の置換基を用いて置換されていることを意味している;
-F、-Cl、-Br、-I、-CN、-CF、-CFH、-CFH、-CFCl、-CFCl
飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C18-アルキル、及び
飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C18-ヘテロアルキル、
請求項6に記載のカルボキシ末端ポリマー。
【請求項8】
- 前記「ポリマー」が、1,3-ブタジエンをスチレンと共重合させることによって得ることが可能であり;
- Rが、飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C-アルキレン-、好ましくは、CHCH-であり;
- Rが、飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C-アルキル、好ましくはCHであり;
- Rが、飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C-アルキル、好ましくはCHであり;そして
- Rが、飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C-アルキレン-であり、好ましくは、Rが、-CH-CHC2k+1-(ここで、kは、8~16の整数である);-CHCH((CH1~5Si(OC~C-アルキル));-CH=CC~C-アルキル-、及び-(CH2~4-から選択され;より好ましくは、Rが、-CH-CHC1223-、-CHCH(CHCHCHSi(OCH)、-CH=CCH-、及び-CHCH-CH-から選択されるが;
ここで、それぞれの場合において、「単置換、又は多置換の」という用語は、飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C18-アルキル、及び飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C18-ヘテロアルキルから相互に独立して選択される;好ましくは飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C18-アルキル、又は飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C-アルキル-Si(O-C~C-アルキル)から選択される、1個又は複数の置換基で置換されていることを意味している、
請求項1~7のいずれかに記載のカルボキシ末端ポリマー。
【請求項9】
一般式(II)で表されるカルボキシレートとして存在する、
【化2】
[式中、
「ポリマー」、R、R、R、及びRが、請求項1~8のいずれかにおいて定義されたものであり;
nが、1~4の整数であり;そして
Mが、原子価1~4の金属又は半金属、好ましくはLi、Na、K、Mg、Ca、Zn、Fe、Co、Ni、Al、Nd、Ti、Sn、Si、Zr、V、Mo、又はWである]
請求項1~8のいずれかに記載のカルボキシ末端ポリマー。
【請求項10】
一般式(I)で表されるカルボキシ末端ポリマー、
【化3】
又は、一般式(II)で表されるカルボキシレート、
【化4】
を調製するための方法であって、
前記方法が、
(a)少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む「ポリマー」を備える工程;
(b)一般式(III)の環状尿素誘導体を備える工程、
【化5】
(c)一般式(IV)の環状カルボン酸無水物を備える工程、
【化6】
(d)第一の官能化剤としての前記一般式(III)の環状尿素誘導体を、前記「ポリマー」に付加させて、官能化されたポリマー中間体を形成させる工程;及び
(e)第二の官能化剤としての前記一般式(IV)の環状カルボン酸無水物を、前記官能化されたポリマー中間体に続けて付加させて、一般式(I)で表される前記カルボキシ末端ポリマー、又は一般式(II)で表される前記カルボキシレートを形成させる工程、
を含むが、
ここで、「ポリマー」、n、M、R、R、R、及びRが、請求項1~9のいずれかで定義されたものである、
方法。
【請求項11】
工程(a)が、
- 溶液アニオン重合、又は
- 配位触媒を使用した重合(前記配位触媒は、好ましくは、チーグラー・ナッタ触媒又は一金属触媒系である)
によって実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程(a)が、
- 溶媒(前記溶媒は、好ましくは、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、n-ヘキサン、及びそれらの混合物からなる群より選択される);及び/又は
- 開始剤(好ましくは、n-ブチルリチウム又はsec-ブチルリチウムである)、
の存在下に実施される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
工程(a)が、10分から8時間まで、好ましくは20分から4時間までの時間で実施される、請求項10~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
(f)前記一般式(III)の環状尿素誘導体を付加させる前、途中、又は後でのカップリング剤(前記カップリング剤は、以下のものからなる群より選択するのが好ましい:四塩化ケイ素、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、四塩化スズ、ジブチルスズジクロリド、テトラアルコキシシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、及び1,2,4-トリス(クロロメチル)ベンゼン);及び/又は
(g)前記一般式(III)の環状尿素誘導体及び前記一般式(IV)の環状カルボン酸無水物を添加した後での抗酸化剤(前記抗酸化剤は、以下のものからなる群より選択するのが好ましい:立体障害フェノール、芳香族アミン、ホスファイト、及びチオエーテル);及び/又は
(h)エクステンダー油(前記エクステンダー油は、以下のものからなる群より選択するのが好ましい:TDAE(処理残留芳香族抽出物)オイル、MES(軽度抽出溶媒和物)オイル、RAE(残留芳香族抽出物)オイル、TRAE(処理残留芳香族抽出物)オイル、ナフテン系オイル及び重質ナフテン系オイル);及び/又は
(i)充填剤(好ましくはカーボンブラック又はシリカ);及び/又は
(j)ゴム及び/又はゴム添加剤;
を添加する、さらなる工程(単一又は複数)を含む、請求項10~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
- 一般式(I)で表されるカルボキシ末端ポリマー
【化7】
又は
- 式(II)で表されるカルボキシレート
【化8】
を調製するための、
- 第一の官能化剤としての、一般式(III)の環状尿素誘導体
【化9】
及び、
- それに続けての、第二の官能化剤としての、一般式(IV)の環状カルボン酸無水物
【化10】
の連続使用(ここで、それぞれの場合において、「ポリマー」、n、M、R、R、R、及びRが、請求項1~9のいずれかで定義されたものである)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシ末端ジエンゴム、それらの製造及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤトレッドの重要な性質は、乾時及び湿時の表面に対する良好な密着性、低い転がり抵抗性、及び高い摩耗抵抗性である。転がり抵抗性及び摩耗抵抗性を低下させることなく、同時にタイヤの滑り抵抗性を改良することは極めて困難である。転がり抵抗性が低いことは、燃料消費量を下げるためには重要であり、また摩耗抵抗性が高いことが、走行距離を長引かせるための決定的要因である。
【0003】
タイヤトレッドの湿時スリップ抵抗性及び転がり抵抗性は、コンパウンド物の製造において使用されたゴムの動的な機械的性質に大きく依存する。高い温度(60℃~100℃)で高い反発弾性を有するゴムが、転がり抵抗性を低減させる目的で、トレッドで使用される。その一方で、低い温度(0~23℃)で高い減衰率を有する、すなわち0℃~23℃の範囲で低い反発弾性を有するゴムが、濡れ時におけるグリップ性を改良するには有利である。この混み入った要求プロファイルに適合させるために、各種のゴムのコンパウンド物が、トレッドにおいて使用されている。通常は、比較的に高いガラス転移温度を有する1種又は複数のゴムたとえば、スチレン-ブタジエンゴムと、比較的に低いガラス転移温度を有する1種又は複数のゴムたとえば、高い1,4-cis含量を有するポリブタジエン、又は低いスチレン及びビニル含量を有するスチレン-ブタジエンゴム、又は平均的な1,4-cis含量と低いビニル含量とを有する溶液法で製造されたポリブタジエンとの混合物が使用される。
【0004】
低転がり抵抗性のタイヤトレッドの製造においては、不飽和なアニオン重合させた溶液法ゴム、たとえば溶液法ポリブタジエン、及び溶液法スチレン-ブタジエンゴムが、それらに相当するエマルション法ゴムよりも利点を有している。そのような利点としては、ビニル含量、並びにそれに伴うガラス転移温度及び分子の枝分れの制御性が挙げられる。実用面においては、このことが、タイヤにおける湿時スリップ抵抗性と転がり抵抗性との間の関係に、特に有利となる。エネルギーの散逸、従ってタイヤトレッドにおける転がり抵抗性に対する顕著な寄与が、遊離のポリマー鎖の末端から、及びタイヤトレッドコンパウンド物において使用される充填剤(ほとんどの場合、シリカ及び/又はカーボンブラック)により形成される充填剤ネットワークの可逆的な構築及び破壊からもたらされる。
【0005】
ポリマー鎖の末端及び/又はポリマー鎖の開始点に官能基を導入することによって、充填剤の表面に対する、これらポリマー鎖の末端又は開始点の物理的又は化学的結合が可能となる。このことが、それらの移動度を制限し、その結果、トレッド上での動応力でのエネルギーの散逸が抑制される。それと同時に、それらの官能基が、充填剤のタイヤトレッド内での分散性の改良を可能とし、それによって、充填剤のネットワークを弱め、その結果、転がり抵抗性をさらに低下させることが可能となる。
【0006】
この目的のための、ジエンゴムの末端を変性させるための各種の方法が、開発されてきた。たとえば、(特許文献1)には、官能化剤としての4,4’-ビス(ジメチル-アミノ)-ベンゾフェノン又はN-メチルカプロラクタムの使用が記載されている。エチレンオキシド及びN-ビニルピロリドンを使用することもまた、(特許文献2)から公知である。数多くのその他の可能な官能化剤が、(特許文献3)に列記されている。
【0007】
官能性のアニオン重合開始剤の手段により、ポリマー鎖の開始点に官能基を導入するための方法は、たとえば以下の特許に記載されている:(特許文献4)、及び(特許文献5)(保護されたヒドロキシル基を有する開始剤)、(特許文献6)(チオエーテルを含む開始剤)、並びに(特許文献7)、(特許文献8)、及び(特許文献9)(重合開始剤としての第二級アミンのアルカリアミド)。
【0008】
具体的には、ケイ素の上に、合計して少なくとも2個のハロゲン、及び/又はアルコキシ、及び/又はアリールオキシ置換基を有するシラン及びシクロシロキサンが、ジエンゴムの末端基を官能化するには良く適しているが、その理由は、Si原子の上にあると述べた置換基の一つが、急速な置換反応で、アニオン重合のジエンポリマー鎖の末端により容易に置換さされることが可能であり、そして上で述べたSi上のさらなる1個又は複数の置換基が、官能基として利用可能であり、それが、適切であるならば加水分解の後で、そのタイヤトレッドコンパウンド物の充填剤と相互作用することが可能であるからである。そのようなシランの例は、以下の特許に見出すことができる:(特許文献10)、(特許文献11)、(特許文献12)、及び(特許文献13)。
【0009】
一般的に、これらのシランは、Si原子に直接結合するか、又はスペーサーを介してSiに結合された官能基を有しており、それらは、ゴムコンパウンド物の中のシリカ充填剤の表面と相互作用することができる。これらの官能基は通常、Siに直接結合されたアルコキシ基若しくはハロゲンであるか、又はスペーサーを介してSiに結合された第三級アミノ置換基である。これらのシランの欠点は、加工及び貯蔵の間に、シラン1分子あたり数個のアニオン重合ポリマー鎖の末端と反応し、相互作用成分が消失し、そして、Si-O-Si結合の形成下にカップリングすることが起こりうることである。これらのシランの手段によってカルボキシ基を導入することは、記述されていない。
【0010】
極性の強い二座配位子としてのカルボキシ基は、ゴム混合物の中においてシリカ充填剤の表面と特に良好な相互作用を発揮することができる。溶液法で製造されたジエンゴムのポリマー鎖に沿ってカルボキシ基を導入するための方法は公知であり、たとえば、以下の特許に記載されている:(特許文献14)、(特許文献15)、(特許文献16)、(特許文献17)。それらの方法は、たとえば、長い反応時間が必要である、極めて不十分な官能化剤の転化が起きる、そしてポリマー鎖の変化で、たとえば枝分かれのような副反応が起きるなど、いくつかの欠点を有している。それに加えて、これらの方法では、ポリマー鎖の末端の特に効果的な官能化が達成できない。
【0011】
アニオン重合ポリマー鎖の末端をCOと反応させることによって、ジエンゴムの鎖の末端にカルボキシ基を導入することは、たとえば、(特許文献18)にも記載されている。この方法の欠点は、ポリマー溶液を、ガス状のCOと接触させなければならないことであって、これは、粘度が高く、そのため混合が不十分となるために、困難である。それに加えて、COの炭素原子のところで、2個以上のポリマー鎖の末端が反応するために、カップリング反応を制御することが困難となる。カルブアニオン重合ポリマー鎖の末端の環状無水物との反応もまた、カルボキシ基を導入するには適していないが、その理由は、この場合もまた、環状無水物1分子あたり、2個以上の鎖の末端が反応するために、カップリング反応が優勢となるためである。このカップリングは、最初に、カルブアニオン重合ポリマー鎖の末端をエチレンオキシド又はプロピレンオキシドと反応させ、次いで今やアルコキシドされたポリマー鎖の末端を、環状無水物と反応させる、順次反応によって回避することが可能である(特許文献19)。しかしながら、この場合でもまた、その欠点は、ガス状で毒性の強いエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを、高粘度のゴム溶液に添加しなければならない点にある。それに加えて、アルコキシド化された鎖の末端と、環状無水物との反応では、エステル結合が形成されるが、その結合は、加水分解されやすく、加工の際及び後の使用の際に開裂される可能性がある。
【0012】
(特許文献20)には、シララクトンを使用することによってカップリング反応を回避することによる、ジエンゴムにカルボキシ末端基を導入するための方法が記載されている。ジエンゴムを、カップリングフリーでカルボキシ末端化させるための、さらなる方法は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0 180 141A1号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0 864 606A1号明細書
【特許文献3】米国特許第4,417,029号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0 513 217A1号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0 675 140A1号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2008/0308204A1号明細書
【特許文献7】米国特許第5,792,820号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第0 590 490A1号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第0 594 107A1号明細書
【特許文献10】米国特許第3,244,664号明細書
【特許文献11】米国特許第4,185,042号明細書
【特許文献12】欧州特許出願公開第0 778 311A1号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2005/0203251A1号明細書
【特許文献14】独国特許出願公開第26 531 44A1号明細書
【特許文献15】欧州特許出願公開第1 000 971A1号明細書
【特許文献16】欧州特許出願公開第1 050 545A1号明細書
【特許文献17】国際公開第2009/034001A1号パンフレット
【特許文献18】米国特許第3,242,129号明細書
【特許文献19】米国特許第4,465,809号明細書
【特許文献20】国際公開第2014/173706A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、カルボキシ末端ジエンゴム、及び現行技術の欠点を有さず、特に、入手しやすい、官能化のための原料の容易な使用を可能とする、それらを製造するための方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題を解決する目的で、ポリマー鎖の末端に、式(I)に見られるように、2個のアミド基、すなわち-C(=O)NR-R-NR-C(=O)-R-を介して結合されたカルボキシ基を有する、末端基を官能化されたジエンゴムが提案されている。
【化1】
式中、
、Rは、同一或いは異なっていて、そして飽和又は不飽和の有機基(それらには1個又は複数の、好ましくは相互に独立して、O、N、S、又はSiから選択されるヘテロ原子が含まれてもよい)を表し;そして
、Rは、同一或いは異なっていて、そして飽和又は不飽和の二価の有機基(それらには、C及びHに加えて、1個又は複数の、好ましくは相互に独立して、O、N、S、又はSiから選択されるヘテロ原子が含まれていてよい)を表す。
【0016】
本発明による、末端基を官能化されたジエンゴムは、式(II)で表されるカルボキシレートとして存在させるのが好ましい:
【化2】
式中、
、Rは、同一或いは異なっていて、そして飽和又は不飽和の有機基(それらには1個又は複数の、好ましくは相互に独立して、O、N、S、又はSiから選択されるヘテロ原子が含まれてもよい)を表し;
、Rは、同一或いは異なっていて、そして飽和又は不飽和の二価の有機基(それらには、C及びHに加えて、1個又は複数の、好ましくは相互に独立して、O、N、S、又はSiから選択されるヘテロ原子が含まれていてよい)を表し;
nは、1~4の整数であり;そして
Mは、原子価1~4の金属又は半金属、好ましくはLi、Na、K、Mg、Ca、Zn、Fe、Co、Ni、Al、Nd、Ti、Sn、Si、Zr、V、Mo、又はWである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好ましい実施態様においては、
及びRが、互いに独立して、以下のものからなる群より選択され:
(i)飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C-アルキレン-;
(ii)飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C-ヘテロアルキレン-;及び
(iii)非置換、単置換、又は多置換の、6~14員のアリーレン;
及び/又は
及びRが、互いに独立して、以下のものからなる群より選択され:
(i)飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C24-アルキル;
(ii)飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C24-ヘテロアルキル;
(iii)非置換、単置換、又は多置換の、6~24員のアリール(ここで、前記6~24員のアリールは、場合によっては、それぞれの場合において、飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C-アルキレン-又は-C~C-ヘテロアルキレン-を介して結合されている);
(iv)非置換、単置換、又は多置換の、5~24員のヘテロアリール(ここで、前記5~24員のヘテロアリールは、場合によっては、それぞれの場合において、飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C-アルキレン-又は-C~C-ヘテロアルキレン-を介して結合されている);
(v)飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、3~24員のシクロアルキル(ここで、前記3~24員のシクロアルキルは、場合によっては、それぞれの場合において、飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C-アルキレン-又は-C~C-ヘテロアルキレン-を介して結合されている);並びに
(vi)飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、3~24員のヘテロシクロアルキル(ここで、前記3~24員のヘテロシクロアルキルは、場合によっては、それぞれの場合において、飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C-アルキレン-又は-C~C-ヘテロアルキレン-を介して結合されている);
ここで、「単置換、又は多置換の」という用語は、それぞれの場合において、独立して、-F、-Cl、-Br、-I、-CN、=O、-CF、-CFH、-CFH、-CFCl、-CFCl、飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C18-アルキル、及び飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C18-ヘテロアルキル、から相互に独立して選択される1個又は複数の置換基を用いて置換されていることを意味している。
【0018】
他の好ましい実施態様においては、
が、(i)飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C-アルキレン-;好ましくは(ii)飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C-アルキレン-であるか;及び/又は
及びRが、互いに独立して、(i)飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C-アルキル;好ましくは(ii)飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C-アルキルであるか;及び/又は
が、(i)飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C-アルキレン-;好ましくは(ii)飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C-アルキレン-である;
ここで、それぞれの場合において、「単置換、又は多置換の」という用語は、以下のものから相互に独立して選択される、1個又は複数の置換基を用いて置換されていることを意味している;
-F、-Cl、-Br、-I、-CN、-CF、-CFH、-CFH、-CFCl、-CFCl
飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C18-アルキル、及び
飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C18-ヘテロアルキル。
【0019】
好ましくは、「単置換、又は多置換の」という用語は、上述の好ましい実施態様の文脈においては、以下のものから相互に独立して選択される1個又は複数の置換基を用いて置換されていることを意味している:
飽和で、非置換の、-C~C18-アルキル、及び
-C~C-アルキル-Si(O-C~C-アルキル)(ここで、それぞれの場合において、-C~C-アルキルは、飽和で、非置換である)。
【0020】
本発明によるカルボキシ末端ポリマーの特に好ましい実施態様においては、
- Rが、飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C-アルキレン-であり;及び/又は
- Rが、飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C-アルキルであり;及び/又は
- Rが、飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C-アルキルであり;及び/又は
- Rが、飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C-アルキレン-である;
ここで、それぞれの場合において、「単置換、又は多置換の」という用語は、飽和又は不飽和で、非置換の、C~C18-アルキル、及び飽和又は不飽和で、非置換の、C~C18-ヘテロアルキルから相互に独立して選択される、1個又は複数の置換基を用いて置換されていることを意味している。
【0021】
以下の定義が、適用される。
【0022】
「ポリマー」という用語は、本明細書で使用するとき、式(I)及び(II)に記載の化合物の中に含まれる、同じ名称の残分に相当する。
【0023】
「飽和又は不飽和のアルキル(alkyl,saturated or unsaturated)」という用語には、本明細書で使用するとき、飽和アルキル、さらには不飽和アルキルたとえばアルケニル、アルキニルなどが包含される。「アルキル」という用語は、本明細書で使用するとき、不飽和の部位を有さない、第一級、第二級、又は第三級で、直鎖状又は分岐状の炭化水素を意味している。例としては、以下のものが挙げられる:メチル、エチル、1-プロピル(n-プロピル)、2-プロピル(iPr)、1-ブチル、2-メチル-1-プロピル(i-Bu)、2-ブチル(s-Bu)、2-ジメチル-2-プロピル(t-Bu)、1-ペンチル(n-ペンチル)、2-ペンチル、3-ペンチル、2-メチル-2-ブチル、3-メチル-2-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-1-ブチル、1-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3-メチル-3-ペンチル、2-メチル-3-ペンチル、2,3-ジメチル-2-ブチル、及び3,3-ジメチル-2-ブチル。「アルケニル」という用語は、本明細書で使用するとき、少なくとも1個の(通常で1~3個、好ましくは1個)の不飽和部位、すなわち、炭素-炭素、sp2二重結合を有する一級、第二級、又は第三級で、直鎖状又は分岐状の炭化水素を意味している。例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:エチレン又はビニル(-CH=CH)、アリル(-CHCH=CH)、及び5-ヘキセニル(-CHCHCHCHCH=CH)。その二重結合は、cis又はtransの立体配置をとっていてよい。「アルキニル」という用語は、本明細書で使用するとき、少なくとも1個(通常で1~3個、好ましくは1個)の不飽和部位、すなわち、炭素-炭素、sp三重結合を有する一級、第二級、第三級、直鎖状又は分岐状の炭化水素を意味している。例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない::エチニル(-C≡CH)、及び1-プロピニル(プロパルギル、-CHC≡CH)。
【0024】
「飽和又は不飽和のアルキレン(alkylene,saturated or unsaturated)」という用語には、本明細書で使用するとき、飽和アルキレン、さらには不飽和アルキレン、たとえば、アルケニレン、アルキニレン、アルケニニレン(alkenynylene)などが包含される。「アルキレン」という用語は、本明細書で使用するとき、親アルカンの同一又は2個の異なった炭素原子から、2個の水素原子を取り去ることによって得られる、2個の一価のラジカル中心を有する、飽和で、直鎖状又は分岐状鎖の炭化水素基を意味している。典型的なアルキレン基としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:メチレン(-CH-)、1,2-エチル(-CHCH-)、1,3-プロピル(-CHCHCH-)、1,4-ブチル(-CHCHCHCH-)など。「アルケニレン」という用語は、本明細書で使用するとき、少なくとも1個(通常で1~3個、好ましくは1個)の不飽和部位、すなわち炭素-炭素、sp2二重結合を有し、そして親アルケンの同一又は2個の異なった炭素原子から、2個の水素原子を取り去ることによって得られる、2個の一価のラジカル中心を有する、直鎖状又は分岐状鎖の炭化水素基を意味している。「アルキニレン」という用語は、本明細書で使用するとき、少なくとも1個(通常で1~3個、好ましくは1個)の不飽和部位、すなわち炭素-炭素、sp三重結合を有し、そして親アルキンの同一又は2個の異なった炭素原子から、2個の水素原子を取り去ることによって得られる、2個の一価のラジカル中心を有する、直鎖状又は分岐状鎖の炭化水素基を意味している。
【0025】
「飽和又は不飽和のヘテロアルキル(heteroalkyl,saturated or unsaturated)」という用語には、本明細書で使用するとき、飽和ヘテロアルキル、さらには不飽和ヘテロアルキルたとえば、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアルケニニル(heteroalkenynyl)などが包含される。「ヘテロアルキル」という用語は、本明細書で使用するとき、1個又は複数(通常1個、2個又は3個)の炭素原子が、ヘテロ原子、すなわち、酸素、窒素、硫黄、又はケイ素原子によって置換されている、直鎖状又は分岐状鎖のアルキルを意味しているが、ただし、前記鎖には、2個の隣接するO原子又は2個の隣接するS原子が含まれてはならない。このことは、前記アルキルの1個又は複数の-CHを、-NHで置換することが可能である、及び/又は、前記アルキルの1個又は複数の-CH-を、-NH-、-O-、-S-、又は-Si-で置換することが可能であるということを意味している。前記鎖の中のS原子を、場合によっては、1個又は2個の酸素原子を用いて酸化して、それぞれスルホキシド及びスルホンを得ることも可能である。さらには、本発明のベンゾフラン誘導体の中のヘテロアルキル基では、いずれかの炭素原子又はヘテロ原子にオキソ基又はチオ基を含ませて、安定な化合物とすることも可能である。ヘテロアルキル基の例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:アルコール、アルキルエーテル(たとえば、-メトキシ、-エトキシ、-ブトキシ、・・・)、第一級、第二級、及び第三級アルキルアミン、アミド、ケトン、エステル、アルキルスルフィド、及びアルキルスルホン。「ヘテロアルケニル」という用語は、その中で1個又は複数(通常1個、2個又は3個)の炭素原子が、酸素、窒素又は硫黄原子によって置換された、直鎖状又は分岐状鎖のアルケニルを意味しているが、ただし、前記鎖には、2個の隣接するO原子又は2個の隣接するS原子が含まれてはならない。したがって、「ヘテロアルケニル」という用語には、イミン、-O-アルケニル、-NH-アルケニル、-N(アルケニル)、-N(アルキル)(アルケニル)、及び-S-アルケニルが含まれる。「ヘテロアルキニル」という用語は、本明細書で使用するとき、その中で1個又は複数(通常1個、2個又は3個)の炭素原子が、酸素、窒素又は硫黄原子によって置換された、直鎖状又は分岐状鎖のアルキニルを意味しているが、ただし、前記鎖には、2個の隣接するO原子又は2個の隣接するS原子が含まれてはならない。したがって、「ヘテロアルキニル」という用語には、-シアノ、-O-アルキニル、-NH-アルキニル、-N(アルキニル)、-N(アルキル)(アルキニル)、-N(アルケニル)(アルキニル)、及び-S-アルキニルが含まれる。
【0026】
「飽和又は不飽和のヘテロアルキレン(heteroalkylene,saturated or unsaturated)」という用語には、本明細書で使用するとき、飽和ヘテロアルキレン、さらには不飽和ヘテロアルキレン、たとえばヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレン、ヘテロアルケニニレン(heteroalkenynylene)などが包含される。「ヘテロアルキレン」という用語は、本明細書で使用するとき、1個又は複数(通常1個、2個又は3個)の炭素原子が、ヘテロ原子、すなわち、酸素、窒素、又は硫黄原子によって置換されている、直鎖状又は分岐状鎖のアルキレンを意味しているが、ただし、前記鎖には、2個の隣接するO原子又は2個の隣接するS原子が含まれてはならない。「ヘテロアルケニレン」という用語は、本明細書で使用するとき、その中で1個又は複数(通常1個、2個又は3個)の炭素原子が、酸素、窒素又は硫黄原子によって置換された、直鎖状又は分岐状鎖のアルケニレンを意味しているが、ただし、前記鎖には、2個の隣接するO原子又は2個の隣接するS原子が含まれてはならない。「ヘテロアルキニレン」という用語は、本明細書で使用するとき、その中で1個又は複数(通常1個、2個又は3個)の炭素原子が、酸素、窒素又は硫黄原子によって置換された、直鎖状又は分岐状鎖のアルキニレンを意味しているが、ただし、前記鎖には、2個の隣接するO原子又は2個の隣接するS原子が含まれてはならない。
【0027】
「飽和又は不飽和のシクロアルキル(cycloalkyl,saturated or unsaturated)」という用語には、本明細書で使用するとき、飽和シクロアルキル、さらには不飽和シクロアルキルたとえばシクロアルケニル、シクロアルキニルなどが包含される。「シクロアルキル」という用語は、本明細書で使用し、特に断らないとき、飽和環状炭化水素基、たとえばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ノルボルニル、フェンキル、デカリニル、アダマンチルなどを意味している。「シクロアルケニル」という用語は、本明細書で使用するとき、少なくとも1個(通常で1~3個、好ましくは1個)の不飽和部位、すなわち炭素-炭素、sp2二重結合を有する、非芳香族の環状炭化水素基を意味している。例としては、シクロペンテニル及びシクロヘキセニルが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。その二重結合は、cis又はtransの立体配置をとっていてよい。「シクロアルキニル」という用語は、本明細書で使用するとき、少なくとも1個(通常で1~3個、好ましくは1個)の不飽和部位、すなわち炭素-炭素、sp三重結合を有する、非芳香族の環状炭化水素基を意味している。一つの例が、シクロヘプチ-1-インである。ヘテロシクロアルキル環を含むシクロアルキル環の縮合系は、そのコア構造に結合された環とは無関係に、ヘテロシクロアルキルと見なされる。アリール環を含むシクロアルキル環の縮合系は、そのコア構造に結合された環とは無関係に、アリールと見なされる。ヘテロアリール環を含むシクロアルキル環の縮合系は、そのコア構造に結合された環とは無関係に、ヘテロアリールと見なされる。
【0028】
「飽和又は不飽和のヘテロシクロアルキル(heterocycloalkyl、saturated or unsaturated)」という用語には、本明細書で使用するとき、環のメンバーとして、少なくとも1個のヘテロ原子、すなわちN、O、又はSを含む、飽和ヘテロシクロアルキル、さらには不飽和非芳香族ヘテロシクロアルキルが包含される。「ヘテロシクロアルキル」という用語は、本明細書で使用し、特に断らないとき、その中で1個又は複数(通常1個、2個又は3個)の炭素原子が、酸素、窒素又は硫黄原子によって置換された「シクロアルキル」を意味しているが、ただし、前記鎖には、2個の隣接するO原子又は2個の隣接するS原子が含まれてはならない。「ヘテロシクロアルケニル」という用語は、本明細書で使用し、特に断らないとき、その中で1個又は複数(通常1個、2個又は3個)の炭素原子が、酸素、窒素又は硫黄原子によって置換された「シクロアルケニル」を意味しているが、ただし、前記鎖には、2個の隣接するO原子又は2個の隣接するS原子が含まれてはならない。「ヘテロシクロアルキニル」という用語は、本明細書で使用し、特に断らないとき、その中で1個又は複数(通常1個、2個又は3個)の炭素原子が、酸素、窒素又は硫黄原子によって置換された「シクロアルキニル」を意味しているが、ただし、前記鎖には、2個の隣接するO原子又は2個の隣接するS原子が含まれてはならない。飽和及び不飽和のヘテロシクロアルキルの例としは、以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:アゼパン、1,4-オキサゼパン、アゼタン、アゼチジン、アジリジン、アゾカン、ジアゼパン、ジオキサン、ジオキソラン、ジチアン、ジチオラン、イミダゾリジン、イソチアゾリジン、イソオキサリジン、モルホリン、オキサゾリジン、オキセパン、オキセタン、オキシラン、ピペラジン、ピペリジン、ピラゾリジン、ピロリジン、キヌクリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、チアゾリジン、チエタン、チイラン、チオラン、チオモルホリン、インドリン、ジヒドロベンゾフラン、ジヒドロベンゾチオフェン、1,1-ジオキソチアシクロヘキサン、2-アザスピロ[3.3]ヘプタン、2-オキサスピロ[3.3]ヘプタン、7-アザスピロ[3.5]ノナン、8-アザビシクロ-[3.2.1]オクタン、9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン、ヘキサヒドロ-1H-ピロリジン、ヘキサヒドロシクロ-ペンタ[c]ピロール、オクタヒドロシクロペンタ[c]ピロール、及びオクタヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン。本発明の意味合いのさらなるヘテロシクロアルキルは、以下の文献に記載されている:Paquette,Leo A.,「Principles of Modern Heterocyclic Chemistry」(W.A.Benjamin,New York,1968)、特にその第1、3、4、6、7、及び9章;「The Chemistry of Heterocyclic Comounds,A series of Monographs」(John Wiley&Sons,New York,1950~現在)、特に第13、14、16、19、及び28巻;Katritzky,Alan R.,Rees,C.W.,and Scriven,E.,「Comprehensive Heterocyclic Chemistry」(Pergamon Press,1996);並びに、J.Am.Chem.Soc.,(1960),82:5566。そのヘテロシクロアルキルが、環のメンバーとして、窒素を含んでいない場合には、それは、典型的には、炭素を介して結合されている。そのヘテロシクロアルキルが、環のメンバーとして、窒素を含んでいる場合には、それは、窒素又は炭素を介して結合されることができる。シクロアルキル環を含むヘテロシクロアルキル環の縮合系は、そのコア構造に結合された環とは無関係に、ヘテロシクロアルキルと見なされる。アリール環を含むヘテロシクロアルキル環の縮合系は、そのコア構造に結合された環とは無関係に、ヘテロシクロアルキルと見なされる。ヘテロアリール環を含むヘテロシクロアルキル環の縮合系は、そのコア構造に結合された環とは無関係に、ヘテロアリールと見なされる。
【0029】
「アリール」という用語は、本明細書で使用するとき、芳香族炭化水素を意味している。典型的なアリール基としては、単環、又はベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルなどから誘導される基を相互に縮合させた二環又は三環が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。シクロアルキル環を含むアリール環の縮合系は、そのコア構造に結合された環とは無関係に、アリールと見なされる。ヘテロシクロアルキル環を含むアリール環の縮合系は、そのコア構造に結合された環とは無関係に、ヘテロシクロアルキルと見なされる。したがって、インドリン、ジヒドロベンゾフラン、ジヒドロベンゾチオフェンなどは、本発明においては、ヘテロシクロアルキルと見なされる。ヘテロアリール環を含むアリール環の縮合系は、そのコア構造に結合された環とは無関係に、ヘテロアリールと見なされる。
【0030】
「アリーレン」という用語は、本明細書で使用するとき、アレーンから、2個の環炭素原子から水素原子を取り去ることにより誘導される二価の基を意味している。同意語が、アレーンジイル基である。アリーレンの例としては、フェニレン及びベンゼン-1,2-ジイルが挙げられるが、それらに限定される訳ではない。
【0031】
「ヘテロアリール」という用語は、本明細書で使用するとき、芳香族環構造の環のメンバーとして、少なくとも1個のヘテロ原子、すなわち、N、O、又はSを含む芳香族環構造を意味している。ヘテロアリールの例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:ベンゾイミダゾール、ベンズイソオキサゾール、ベンゾアゾール、ベンゾジオキソールベンゾフラン、ベンゾチアジアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチオフェン、カルバゾール、シノリン、ジベンゾフラン、フラン、フラザン、イミダゾール、イミダゾピリジン、インダゾール、インドール、インドリジン、イソベンゾフラン、イソインドール、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、オキシインドール、フタラジン、プリン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、キナゾリン、キノリン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアジン、トリアゾール、及び[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピリミジン。
【0032】
「ヘテロアリーレン」という用語は、本明細書で使用するとき、ヘテロアレーンから、2個の環炭素原子から水素原子を取り去ることにより誘導される二価の基を意味している。
【0033】
本発明による、末端基を官能化されたジエンゴムは、共役ジエンをホモ重合及び共重合させるか、共役ジエンをビニル芳香族モノマーと共重合させ、次いで適切な官能化剤と反応させることによって、調製するか又は得ることができる。
【0034】
好ましい共役ジエンは、以下のものである:1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-ブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン、ミルセン、オシメン、及び/又はファルネセン。1,3-ブタジエン及び/又はイソプレンが、特に好ましい。
【0035】
ビニル芳香族コモノマーとしては、たとえば、スチレン、o-、m-、及び/又はp-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、及び/又はジビニルナフタレンを使用することができる。スチレンが特に好ましい。
【0036】
特に好ましい実施態様においては、本発明によるカルボキシ末端ポリマーが、1,3-ブタジエンをスチレンと共重合させることにより得ることが可能な、「ポリマー」を含む。
【0037】
これらのポリマーは、好ましくは、溶液アニオン重合によるか、又は配位触媒を使用した重合によって調製するか又は得ることができる。この文脈における配位触媒は、Ziegler-Natta触媒、又は一金属触媒系である。好適な配位触媒は、Ni、Co、Ti、Zr、Nd、V、Cr、Mo、W、又はFeをベースとするものである。
【0038】
溶液アニオン重合のための開始剤は、たとえば以下のような、アルカリ金属又はアルカリ土類金属をベースとするものである:メチルリチウム、エチルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、ペンチルリチウム、n-ヘキシルリチウム、シクロヘキシルリチウム、オクチルリチウム、デシル-リチウム、2-(6-リチオ-n-ヘキソキシ)テトラヒドロピラン、3-(tert-ブチルジメチルシロキシ)-1-プロピルリチウム、フェニルリチウム、4-ブチル-フェニルリチウム、1-ナフチルリチウム、p-トルイルリチウム、並びに以下のものから誘導されるアリルリチウム化合物:第三級N-アリルアミンたとえば、[1-(ジメチルアミノ)-2-プロペニル]リチウム、[1-[ビス(フェニル-メチル)アミノ]-2-プロペニル]リチウム、[1-(ジフェニルアミノ)-2-プロペニル]リチウム、[1-(1-ピロリジニル)-2-プロペニル]リチウム、第二級アミンのリチウムアミドたとえば、リチウムピロリジド、リチウムピペリジン、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウム1-メチルイミダゾリジド、リチウム1-メチルピペラジド、リチウムモルホリド、リチウムジシクロヘキシルアミド、リチウムジベンジルアミド、リチウムジフェニルアミド。これらのアリルリチウム化合物及びこれらのリチウムアミドは、有機リチウム化合物と、それぞれの三級N-アリルアミン、又はそれぞれの二級アミンとを反応させることによって、インサイチューで調製することもできる。二官能及び多官能有機リチウム化合物、たとえば、1,4-ジリチオブタン、ジリチウムピペラジドも使用することができる。n-ブチルリチウム及びsec-ブチルリチウムを使用するのが好ましい。
【0039】
それに加えて、たとえば以下のような、ポリマーの微細構造のために使用することが可能な、周知のランダム化剤及び調節剤を使用することができる:ジエチルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールジ-tert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-tert-ブチルエーテル、2-(2-エトキシエトキシ)-2-メチル-プロパン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチルテトラヒドロフルフリルエーテル、ヘキシルテトラヒドロフルフリルエーテル、2,2-ビス(2-テトラヒドロフリル)プロパン、ジオキサン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-エチレンジアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、1,2-ジピペリジノエタン、1,2-ジピロリジノエタン、1,2-ジモルホリノエタン、並びにアルコール、フェノール、カルボン酸、スルホン酸のカリウム及びナトリウム塩。
【0040】
そのような溶液重合は周知であって、たとえば以下の文献に記載されている::I.Franta,「Elastomers and Rubber Compounding Materials」,Elsevier,1989,p.113~131;Houben-Weyl,「Methoden der Organischen Chemie」,Thieme Verlag,Stuttgart,1961,volumeXIV/1,p.645~673又はvolumeE20(1987),p.114~134、p.134~153;同様に、Comprehensive Polymer Science,Vol.4,Part II(Pergamon Press Ltd.,Oxford,1989),p.53~108。
【0041】
好ましいジエンホモポリマー及びジエンコポリマーの製造は、溶媒中で実施するのが好ましい。重合のための好ましい溶媒としては、以下のような不活性な非プロトン性溶媒が挙げられる:たとえば脂肪族炭化水素、たとえば各種異性体のブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、及びシクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、若しくは1,4-ジメチルシクロヘキサン、若しくはアルケンたとえば1-ブテン、又は芳香族炭化水素たとえば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼン、又はプロピルベンゼン。これらの溶媒は、個別に使用しても、組み合わせて使用してもよい。好ましい溶媒は、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、及びn-ヘキサンである。極性溶媒と混合することもまた可能である。
【0042】
本発明のプロセスにおける溶媒の量は、使用したモノマーの全体量100gを規準にして、通常100~1000gの範囲、好ましくは200~700gの範囲である。しかしながら、溶媒を存在させずに、使用したモノマーを重合させることも可能である。
【0043】
重合は、最初にモノマー及び溶媒を導入し、次いで開始剤又は触媒を添加することによって重合を開始させることにより、実施することができる。フィードプロセスで重合させることも可能であるが、その場合、モノマー及び溶媒を添加することによって、重合反応器を充填させ、開始剤又は触媒を導入するか、又はモノマー及び溶媒と共に添加する。たとえば、反応器中への溶媒の導入、開始剤又は触媒の添加、次いでモノマーの添加のような、各種の変法が可能である。さらには、連続モードで重合を実施することも可能である。すべての場合において、重合の途中又は最後にさらなるモノマー及び溶媒を添加することも可能である。
【0044】
重合時間は、数分間~数時間と変化させることができる。通常は10分から8時間まで、好ましくは20分から4時間までの時間で重合を実施する。常圧での実施、或いは高圧(1~10bar)での実施のいずれも可能である。
【0045】
驚くべきことには、1)1種又は複数の環状尿素誘導体、そして2)1種又は複数の官能化剤としての環状カルボン酸無水物を、連続して添加することによって、現行技術の欠点を有さないカルボキシ末端ポリマーを製造することができることが見出された。
【0046】
その環状尿素誘導体は、式(III)の化合物である:
【化3】
式中、
は、飽和又は不飽和で、二価の有機基(それには、C及びHに加えて、好ましくは相互に独立して、1個又は複数の、O、N、S、又はSiから選択されるヘテロ原子を含んでいてよい)であり;そして
、Rは、同一或いは異なっていて、そして飽和又は不飽和の有機基(それらには1個又は複数の、好ましくは相互に独立して、O、N、S、又はSiから選択されるヘテロ原子が含まれてもよい)を表すが;
ここで、好ましくは、
が、-C-、-C-、又は-C-アルキレン-基であり;そして
、Rが、同一或いは異なっていて、そして-(C~C24)-アルキル、-(C~C24)-シクロアルキル、-(C~C24)-アリール、-(C~C24)-アルクアリール、又は-(C~C24)-アラルキル基であるが、それが1個又は複数の、好ましくは相互に独立して、O、N、S、又はSiから選択されるヘテロ原子を含んでいてよい。
【0047】
が、-CH-CH-であり、及び/又はR及びRの両方が-CHであるのが、好ましい。
【0048】
式(III)の化合物の好ましい例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:
1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(1)、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン(2)、1-メチル-3-フェニル-2-イミダゾリジノン(3)、1,3-ジフェニル-2-イミダゾリジノン(4)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(3)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(3)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(3)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(3)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(3)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(4)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(4)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(3)、3-ジエテニル-2-イミダゾリジノン(5)、1,3,4-トリメチル-2-イミダゾリジノン(6)、1,3-ビス(トリメチルシリル)-2-イミダゾリジノン(7)、1,3-ジヒドロ-1,3-ジメチル-2H-イミダゾl-2-オン(8)、テトラヒドロ-1,3-ジメチル-2(1H)-ピリミジノン(9)、テトラヒドロ-1-メチル-3-フェニル-2(1H)-ピリミジノン(10)、テトラヒドロ-1,3,5-トリメチル-2(1H)-ピリミジノン(11)、テトラヒドロ-3,5-ジメチル-4H-1,3,5-オキサジアジン-4-オン(12)、テトラヒドロ-1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリアジン-2(1H)-オン(13)、ヘキサヒドロ-1,3-ジメチル-2H-1,3-ジアゼピン-2-オン(14):
【化4】
【0049】
式(III)の化合物の特に好ましい例が、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(1)である:
【化5】
【0050】
環状カルボン酸無水物は、式(IV)の化合物である:
【化6】
式中、
は、飽和又は不飽和で、二価の有機基であって、それには、C及びHに加えて、好ましくは相互に独立して、1個又は複数の、O、N、S、又はSiから選択されるヘテロ原子を含んでいてよい。
【0051】
が、-CH-CHC2k+1-(ここで、kは、8~16の整数である);-CHCH((CH1~5Si(OC~C-アルキル));-CH=CC~C-アルキル-、又は-(CH2~4-であるのが好ましい。
【0052】
式(IV)の化合物の好ましい例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:
マロン酸無水物(15)、3-メチル-2,4-オキセタンジオン(16)、コハク酸無水物(17)、メチルコハク酸無水物(18)、2,3-ジメチルコハク酸無水物(19)、テトラプロペニルコハク酸無水物(20)、イソオクタデシルコハク酸無水物(21)、3-(トリメトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(22)、3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(23)、イタコン酸無水物(24)、マレイン酸無水物(25)、シトラコン酸無水物(26)、ジメチルマレイン酸無水物(27)、フタル酸無水物(28)、グルタル酸無水物(29)、3-メチルグルタル酸無水物(30)、3,3-ジメチルグルタル酸無水物(31)、3-tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]グルタル酸無水物(32)、3-オキソグルタル酸無水物(33)、ジグリコール酸無水物(34)、2,2’-チオジグリコール酸無水物(35)、4-メチル-2,6-モルホリン-ジオン(36)、1H-2-ベンゾピラン-1,3(4H)-ジオン(37)、無水ナフタル酸(38)、アジピン酸無水物(39)、ピメリン酸無水物(40):
【化7A】
【化7B】
【0053】
式(IV)の化合物の特に好ましい例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:テトラプロペニルコハク酸無水物(20)、3-(トリメトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(22)、シトラコン酸無水物(26)、グルタル酸無水物(29):
【化8】
【0054】
本発明による、末端基を官能化されたジエンゴムは、ジエンのアニオン重合からの反応性ポリマー鎖の末端を、最初は環状尿素誘導体と、次いで環状カルボン酸無水物と、そして場合によってはそれに続けて、そのようにして得られたカルボキシレート末端基にプロトン付加させて、カルボキシ末端基にする、逐次反応によって、調製できることが見出された。
【0055】
本発明によるカルボキシ末端ポリマーの特に好ましい実施態様においては、
- 「ポリマー」は、1,3-ブタジエンをスチレンと共重合させることによって得ることが可能であり;
- Rが、飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C-アルキレン-であり;
- Rが、飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C-アルキルであり;
- Rが、飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C-アルキルであり;そして
- Rが、飽和又は不飽和で、非置換、単置換、又は多置換の、-C~C-アルキレン-であるが;
ここで、それぞれの場合において、「単置換、又は多置換の」という用語は、飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C18-アルキル、及び飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C18-ヘテロアルキルから相互に独立して選択される;好ましくは飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C18-アルキル、又は飽和又は不飽和で、非置換の、-C~C-アルキル-Si(O-C~C-アルキル)から選択される、1個又は複数の置換基で置換されていることを意味している。
【0056】
本発明によるカルボキシ末端ポリマーの特に好ましい実施態様においては、
- 「ポリマー」は、1,3-ブタジエンをスチレンと共重合させることによって得ることが可能であり;
- Rが、-CHCH-であり;
- Rが、-CHであり;
- Rが、-CHであり;そして
- Rが、-CH-CHC2k+1-(ここで、kは、8~16の整数である);-CHCH((CH1~5Si(OC~C-アルキル));-CH=CC~C-アルキル-、又は-(CH2~4-である。
【0057】
本発明によるカルボキシ末端ポリマーの特に好ましい実施態様においては、
- 「ポリマー」は、1,3-ブタジエンをスチレンと共重合させることによって得ることが可能であり;
- Rが、-CHCH-であり;
- Rが、-CHであり;
- Rが、-CHであり;そして
- Rが、-CH-CHC1223-、-CHCH(CHCHCHSi(OCH)、-CH=CCH-、又は-CHCH-CH-である。
【0058】
本発明のまた別の態様は、本明細書で説明した式(I)又は(II)の末端基を有する、本発明の末端基-官能化されたジエンゴムを調製するために、官能化剤として、最初に環状尿素誘導体、次いで環状カルボン酸無水物を連続的に使用することに関する。
【0059】
本発明による末端基官能化ポリマーは、10,000~2,000,000g/mol、好ましくは100,000~1,000,000g/molの平均分子量(数平均、M△n)と、-110℃~+20℃、好ましくは-110℃~0℃のガラス転移温度と、10~200、好ましくは30~150ムーニー単位のムーニー粘度[ML 1+4(100℃)]とを有しているのが好ましい。
【0060】
本発明のまた別の態様は、本発明の末端基を官能化されたポリマーを調製するためのプロセスであって、そこでは、純物質、溶液、又は懸濁液としての、1種又は複数の式(III)の化合物を、最初に、反応性のポリマー鎖末端を有するポリマーに添加する。重合が完了した後で添加を実施するのが好ましいが、モノマーが完全に転化するより前に実施してもよい。式(III)の化合物と反応性のポリマー鎖末端を有するポリマーとの反応は、重合のために通常使用される温度で起こさせるのが好ましい。式(III)の化合物を反応性のポリマー鎖末端と反応させるための反応時間は、数分~数時間の範囲としてもよい。
【0061】
これらの化合物の量を選択して、全部の反応性のポリマー鎖末端を、式(III)の化合物と反応するようにすることもできるし、或いはこれらの化合物を、不足量で使用することもできる。使用する式(III)の化合物の量は、広い範囲をカバーすることができる。好適な量は、重合のために使用した開始剤又は触媒の量を基準にして、0.3~2モル当量の範囲、特に好ましくは0.6~1.5モル当量の範囲である。
【0062】
それに続く工程で、次いで式(IV)の化合物を、純物質、溶液又は懸濁液として、式(III)の化合物を添加することにより先行する工程で得られたポリマーに添加する。式(IV)の化合物の反応を、重合のために通常使用される温度で起こすのが好ましい。式(IV)の化合物の反応のための反応時間は、数分~数時間の範囲とするのがよい。
【0063】
使用する式(IV)の化合物の量は、広い範囲をカバーすることができる。好適な量は、使用した式(III)の化合物の量を基準にして、0.3~2モル当量の範囲、特に好ましくは0.6~1.5モル当量の範囲である。
【0064】
反応性のポリマー鎖末端との反応のために、式(III)及び式(IV)の化合物に加えて、ジエンのアニオン重合で典型的なカップリング剤を使用することもできる。そのようなカップリング剤の例としては以下のものが挙げられる:四塩化ケイ素、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、四塩化スズ、ジブチルスズジクロリド、テトラアルコキシシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、及び1,2,4-トリス(クロロメチル)ベンゼン。そのようなカップリング剤は、式(III)の化合物よりも、前、同時、又は後に添加してよい。
【0065】
式(III)及び式(IV)の化合物、並びに場合によってはカップリング剤を添加した後に、本発明によるカルボキシル末端ポリマーの処理作業の前又は途中で、通常の抗酸化剤たとえば、立体障害フェノール、芳香族アミン、ホスファイト、チオエーテルなどを添加するのが好ましい。さらには、ジエンゴムのために通常使用されるエクステンダー油、たとえばTDAE(処理残留芳香族抽出物)オイル、MES(軽度抽出溶媒和物)オイル、RAE(残留芳香族抽出物)オイル、TRAE(処理残留芳香族抽出物)オイル、ナフテン系オイル、及び重質ナフテン系オイルを添加することもできる。充填剤たとえば、カーボンブラック及びシリカ、ゴム及びゴム助剤を添加することもまた可能である。
【0066】
重合プロセスから、通常の方法、たとえば蒸留、スチームストリッピング、又は、必要であればより高い温度で真空とすることにより、溶媒を除去することができる。
【0067】
発明のさらなる態様は、加硫可能なゴム組成物を製造するための、本発明による、末端基を官能化されたポリマーの使用である。
【0068】
それらの加硫可能なゴム組成物が、他のゴム、充填剤、ゴム用薬品、加工助剤、及び伸展油を含んでいるのが好ましい。
【0069】
さらなるゴムとしては、たとえば、天然ゴム及び合成ゴムが挙げられる。それらを存在させるのなら、それらの量は、混合物中の全ポリマー量を基準にして、通常0.5~95重量%の範囲、好ましくは10~80重量%の範囲である。この場合もまた、添加される追加のゴムの量は、本発明が目的とする用途に依存する。そのような合成ゴムの例としては、以下のものが挙げられる:BR(ポリブタジエン)、アクリル酸アルキルエステルコポリマー、IR(ポリイソプレン)、E-SBR(乳化重合によって製造したスチレン-ブタジエンコポリマー)、S-SBR(溶液重合によって製造したスチレン-ブタジエンコポリマー)、IIR(イソブチレン-イソプレンコポリマー)、NBR(ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー)、HNBR(部分水素化又は完全水素化NBRゴム)、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー)、及びこれらのゴムの混合物。天然ゴム、-60℃よりも高いガラス温度を有するE-SBR及びS-SBR、Ni、Co、Ti、又はNdをベースとする触媒を用いて製造された、高いcis含量(>90%)を有するポリブタジエンゴム、最高80%までのビニル含量を有するポリブタジエンゴム、及びそれらの混合物が、自動車のタイヤの製造では、特に興味深い。
【0070】
ゴム工業において使用される公知のすべての充填剤を、本発明によるゴム組成物のための充填剤と考えてよい。それらには、活性充填剤及び不活性充填剤の両方が含まれる。
【0071】
例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:
- 高分散シリカ、たとえばケイ酸塩の溶液を沈降させるか、又はハロゲン化ケイ素を火炎加水分解させて製造し、5~1000m/g、好ましくは20~400m/g(BET表面積)の比表面積と、10~400nmの一次粒径とを有するもの。シリカは、他の金属酸化物たとえば、Al、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、Tiの酸化物との混合酸化物として存在させてもよい;
- 合成ケイ酸塩、たとえばケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルカリ土類金属塩、たとえば、ケイ酸マグネシウム又はケイ酸カルシウムで、BET表面積が20~400m/g、一次粒子直径が10~400nmのもの;
- 天然のケイ酸塩、たとえばカオリン、モンモリロナイト、及びその他の天然産のシリカ;
- ガラス繊維及びガラス繊維製品(マット、ストランド)、又はミクロスフェア;
- 金属酸化物たとえば、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム;
- 金属炭酸塩たとえば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛;
- 金属水酸化物たとえば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム;
- 金属硫酸塩たとえば、硫酸カルシウム、硫酸バリウム;
- カーボンブラック:使用されるカーボンブラックは、火炎煤法、チャンネル法、ファーネス法、ガス煤法、加熱法、アセチレン煤法、又はアーク法によって製造されたものであって、それらのBET表面積が9~200m/gであり、例を挙げれば、SAF-、ISAF-LS-、ISAF-HM-、ISAF-LM-、ISAF-HS-、CF-、SCF-、HAF-LS-、HAF-、HAF-HS-、FF-HS-、SPF-、XCF-、FEF-LS-、FEF-、FEF-HS-、GPF-HS-、GPF-、APF-、SRF-LS-、SRF-LM-、SRF-HS-、SRF-HM-、及びMT-カーボンブラック、又はASTMに従って下記のように分類されるカーボンブラック:N110-、N219-、N220-、N231-、N234-、N242-、N294-、N326-、N327-、N330-、N332-、N339-、N347-、N351-、N356、N358、N375、N472、N539、N550、N568、N650、N660、N754、N762、N765、N774、N787、及びN990カーボンブラックである;
- ゴムゲル、特にBR、E-SBR及び/又はポリクロロプレンをベースとした、5~1000nmの粒径を有するもの。
【0072】
高分散シリカ及び/又はカーボンブラックが、充填剤として好ましい。
【0073】
これらの充填剤は、単独で使用しても、或いは混合物の形で使用してもよい。特に好ましい形態においては、そのゴム組成物に、充填剤として、軽質充填剤たとえば高分散シリカとカーボンブラックとの混合物が含まれるが、軽質充填剤対カーボンブラックの混合比は、重量部で、(0.01:1)から(50:1)まで、好ましくは(0.05:1)から(20:1)までである。
【0074】
充填剤は、100重量部のゴムを基準にして、10~500重量部の範囲の量で使用される。20~200重量部の範囲の量が好ましい。
【0075】
本発明のさらなる実施態様においては、そのゴム組成物にはさらに、たとえば以下のような役割を果たすゴム助剤がさらに含まれる:ゴム組成物の加工性能を改良、ゴム組成物の架橋に寄与、本発明に相当するゴム組成物から製造された加硫物の、それらの特定の目的のための物理的性質を改良、ゴムと充填剤との間の相互作用を改良、又はゴムの充填剤に対する結合性に寄与。
【0076】
ゴム助剤としては、以下のものが挙げられる:架橋剤、たとえば硫黄又は硫黄供与化合物、さらには反応促進剤、抗酸化剤、熱安定剤、光安定剤、オゾン安定剤、加工助剤、可塑剤、粘着付与剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、エクステンダー、有機酸、シラン、加硫遅延剤、金属酸化物、エクステンダー油たとえば、DAE(留出芳香族抽出物)オイル、TDAE(処理残留芳香族抽出物)オイル、MES(軽度抽出溶媒和物)オイル、RAE(残留芳香族抽出物)オイル、TRAE(処理残留芳香族抽出物)オイル、ナフテン系オイル、及び重質ナフテン系オイル、さらには活性剤。
【0077】
ゴム添加剤の合計量は、全てのゴム100重量部を基準にして、1~300重量部の範囲である。5~150重量部の範囲のゴム助剤量を使用するのが、好ましい。
【0078】
加硫可能なゴム組成物は、一段プロセス又は多段プロセスで製造することができるが、2~3段の混合ステージが好ましい。たとえば、硫黄及び加硫促進剤は、ローラー上での別々の混合ステージで添加することが可能であり、30℃~90℃の温度範囲が好ましい。硫黄及び加硫促進剤は、最終の混合ステージで添加するのが好ましい。
【0079】
加硫可能なゴム組成物を製造するのに好適なアグリゲートの例としては、ローラー、ニーダー、インターナルミキサー、又は混合押出機が挙げられる。
【0080】
本発明のまた別の態様は、加硫可能なゴム組成物を調製するための、本明細書に記載された、式(I)又は(II)の末端基を有する末端基-官能化ポリマーの使用に関する。
【0081】
本発明のまた別の態様は、以下のものを含む加硫可能なゴム組成物に関する:a)本明細書に記載された、式(I)又は(II)の末端基を有する末端基-官能化ポリマー;場合によってはさらに、b)安定剤、エクステンダー油、充填剤、ゴム、及び/又はさらなるゴム助剤。
【0082】
本発明のさらなる態様は、ゴム加硫物の製造のため、特にはタイヤの製造のため、特には、高い湿時スリップ抵抗性及び摩耗抵抗性と共に特に低い転がり抵抗性を示すタイヤトレッドのための本発明による加硫可能なゴム組成物の使用である。
【0083】
本発明による加硫可能なゴム組成物はさらに、成形物品の製造のため、たとえばケーブルシース、ホース、伝動ベルト、コンベア用ベルト、ロールライニング、靴底、シールリング、及び制震要素の製造のためにも好適である。
【0084】
本発明また別の態様は、上述の使用によって得ることが可能な、すなわち加硫を含めて、本発明による加硫可能なゴム組成物から調製される成形物品、特にタイヤに関する。
【0085】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであるが、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0086】
スチレン-ブタジエンゴムの、数平均分子量のMn、多分散性のMw/Mn、及び結合度(degree of coupling)は、GPCを使用して求めた(PS較正)。
【0087】
ムーニー粘度のML(1+4)100℃は、DIN 52523/52524に従って測定した。
【0088】
ビニル含量及びスチレン含量は、ゴムフィルムについてのFTIR分光法により求めた。
【0089】
ガラス転移温度のTgは、DSCを使用し、20K/分の加熱速度での第二加熱曲線から求めた。
【0090】
損失係数のtanδは、0℃で測定し、60℃でのtanδで、温度依存性の動的機械的性質を求めた。この目的のためには、Gabo製のEplexor装置(Eplexor 500N)を使用した。その測定は、DIN 53513に従い、Aresストリップについて、10Hz、-100℃~100℃の温度範囲で実施した。この目的のためには、Eplexor 500Nを使用した。歪み依存性の動的機械的性質を測定するために、ΔGを、0.5%歪みでのずり弾性率と、15%歪みでのずり弾性率との差として測定し、さらには最大損失係数tanδmaxを測定した。これらの測定は、DIN 53513-1990に従い、円筒状試験片(20×6mm)について、温度60℃で2mmの圧縮、測定振動数10Hz、歪み範囲0.1%~40%でのMTSエラストマー試験システムで求めた。
【0091】
反発弾性は、DIN 53512に従い、60℃で求めた。
【0092】
スチレン-ブタジエンコポリマー
例1:官能化されていないスチレン-ブタジエンコポリマーの合成(比較例)
不活性にした20Lの反応器に、8.5kgのヘキサン、6.1mmolの2,2-ビス(2-テトラヒドロフリル)-プロパン、及び11.1mmolのn-ブチルリチウム(ヘキサン中23重量%の溶液として)を充填し、加熱して41℃とした。次いで加熱回路を閉じ、1185gの1,3-ブタジエンと315gのスチレンとを同時に添加した。
【0093】
撹拌下に40分間かけて重合させたが、その間に、反応器の内容物は、66℃のピーク温度に達した。次いで、11.1mmolのn-オクタノールを添加させて、アニオン重合ポリマー鎖の末端を停止させた。そのゴム溶液を排出させ、3gのIrganox(登録商標)1520(2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール)を添加することにより安定化させ、スチームストリッピングによって溶媒を除去した。真空乾燥オーブン中、65℃で16時間かけて、そのゴム塊状物(rubber crumbs)を乾燥させた。
【0094】
その乾燥させたゴム塊状物について、数平均分子量Mn、分子量分布Mw/Mn、結合度(すべて、PS較正を用いたGPC測定による)、ムーニー粘度ML1+4@100℃、ビニル含量及びスチレン含量(FTIR測定による、単位:重量%、全ポリマー基準)、さらにはガラス転移温度Tg(DSC測定による)を求めた。それらの数値を表1に示す。
【0095】
例2:1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンとの反応によるスチレン-ブタジエンコポリマーの官能化(比較例)
その手順は例1と同様であった。しかしながら、n-オクタノールに代えて、n-ブチルリチウムと等モル量の官能化剤の1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(1)を添加し、次いでその反応器の内容物をさらに5分間撹拌した。次いで、そのゴム溶液を排出させ、3gのIrganox(登録商標)1520(2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール)を添加することにより安定化させ、スチームストリッピングによって溶媒を除去した。真空乾燥オーブン中、65℃で16時間かけて、そのゴム塊状物(rubber crumbs)を乾燥させた。
【0096】
例3:シトラコン酸無水物との反応によるスチレン-ブタジエンコポリマーの官能化(比較例)
その手順は例2と同様であった。官能化剤としては、n-ブチル-リチウムと等モル量のシトラコン酸無水物(26)を添加した。
【0097】
例4:1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン及びシトラコン酸無水物を用いた逐次反応による、スチレン-ブタジエンコポリマーの官能化(本発明実施例)
その手順は例2と同様であった。官能化のために、最初に、n-ブチル-リチウムと等モル量の1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(1)を添加した。それを5分間撹拌してから、n-ブチルリチウムと等モル量のシトラコン酸無水物(26)を添加した。
【0098】
例5:テトラプロペニルコハク酸無水物との反応によるスチレン-ブタジエンコポリマーの官能化(比較例)
その手順は例2と同様であった。官能化剤として、n-ブチルリチウムと等モル量のテトラプロペニルコハク酸無水物(20)を添加した。
【0099】
例6:1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン及びテトラプロペニルコハク酸無水物を用いた逐次反応による、スチレン-ブタジエンコポリマーの官能化(本発明実施例)
その手順は例2と同様であった。官能化のために、最初に、n-ブチル-リチウムと等モル量の1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(1)を添加した。それを5分間撹拌してから、n-ブチルリチウムと等モル量のテトラプロペニルコハク酸無水物(20)を添加した。
【0100】
例7:グルタル酸無水物との反応によるスチレン-ブタジエンコポリマーの官能化(比較例)
その手順は例2と同様であった。n-ブチル-リチウムと等モル量のグルタル酸無水物(29)を官能化剤として添加した。
【0101】
例8:1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン及びグルタル酸無水物を用いた逐次反応による、スチレン-ブタジエンコポリマーの官能化(本発明実施例)
その手順は例2と同様であった。官能化のために、最初に、n-ブチル-リチウムと等モル量の1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(1)を添加した。それを5分間撹拌してから、n-ブチルリチウムと等モル量のグルタル酸無水物(29)を添加した。
【0102】
例9:3-(トリメトキシシリル)プロピルコハク酸無水物との反応による、スチレン-ブタジエンコポリマーの官能化(比較例)
その手順は例2と同様であった。官能化剤として、n-ブチルリチウムと等モル量の3-(トリメトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(22)を添加した。
【0103】
例10:1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン及び3-(トリメトキシシリル)プロピルコハク酸無水物を用いた逐次反応による、スチレン-ブタジエンコポリマーの官能化(本発明実施例)
その手順は例2と同様であった。官能化のために、最初に、n-ブチル-リチウムと等モル量の1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(1)を添加した。それを5分間撹拌してから、n-ブチルリチウムと等モル量の3-(トリメトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(22)を添加した。
【0104】
例1~10からのスチレン-ブタジエンコポリマーのポリマーの性質を表1にまとめた。表1は、本発明により、式(III)及び(IV)に従う2種の官能化剤を連続添加することにより調製した、例4、6、8、及び10のカルボキシ末端ポリマーが、式(III)に従う官能化剤を前もって添加することなく、式(IV)に従う官能化剤を添加することによって調製した、例3、5、7、及び9のポリマーと比較して、十分に低い結合度を有していることを示している。比較例1及び2のポリマーと同程度の分子量、多分散性、及び結合レベルでは、本発明に従った例4、6、8、及び10のカルボキシ末端ポリマーは、顕著に高いムーニー粘度を示している。このことは、非希釈状態(ムーニー測定関連)では、カルボキシ末端基又はカルボキシレート末端基を介してのカルボキシ末端ポリマーで会合が形成されることにより説明できるが、これは、希釈された溶液(GPC測定関連)では、もはや有効ではない。
【0105】
ゴムコンパウンド物
例1~10のスチレン-ブタジエンコポリマーを含むタイヤトレッドゴムコンパウンド物を製造した。それらの成分を表2にまとめた。それらの成分(硫黄及び加硫促進剤は含まない)を、1.5Lのニーダー中で混合した。成分の硫黄及び加硫促進剤は、ローラー上、40℃で混合した。混合物の調製における個々の工程を、表3にまとめた。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
そのゴムコンパウンド物を、160℃で20分かけて加硫させた。相当する加硫物11~20の物理的性質を、表4にまとめた。コンパウンド成分として官能化されていないスチレン-ブタジエンコポリマーを用いた、比較例11からの加硫したゴムコンパウンド物の加硫物の性質に、指数100を与えた。表4において100を越える数値はすべて、それぞれの試験した性能における、それに相当する改良パーセントを示している。
【0110】
【表4】
【0111】
60℃での反発弾性、温度依存性の動的機械的測定からの60℃での損失係数tanδ、さらにはtanδ最大値、並びに歪み依存性の動的機械的測定からの低歪みと高歪みとの間の弾性率の差G’が、タイヤにおける転がり抵抗性の指標である。0℃での損失係数tanδは、タイヤの湿時スリップ抵抗性の指標である。
【0112】
表4からわかるように、官能化されたジエンゴムを含む加硫物はすべて、濡れ時におけるグリップ性の指標及び転がり抵抗性の指標で、改良された数値を特徴としている。本発明実施例の14、16、18、及び20からの加硫物は、環状無水物と反応させただけのスチレン-ブタジエンゴムを使用した、相当する例13、15、17、及び19からの加硫物よりも、良好な性質を有している。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
(式中、前記ポリマーはジエンゴムであって、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含み、そして前記ポリマーは、1種又は複数のジエンの重合を含む重合反応によって得ることが可能であり;
、Rは、同一或いは異なっていて、そして飽和又は不飽和の有機基(O、N、S、及びSiからなる群より選択される1個又は複数のヘテロ原子を含んでもよい)を表し;そして
、Rは、同一或いは異なっていて、そして飽和又は不飽和の二価の有機基(C及びHに加えて、1個又は複数の、O、N、S、及びSiからなる群より選択されるヘテロ原子を含んでもよい)を表し;
そして、
前記1種又は複数のジエンは、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエンから選択される)で表されるカルボキシ末端ポリマー。
【請求項2】
前記ポリマーが、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-ブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン、若しくはそれらの組合せのホモ重合若しくは共重合;又は、(i)1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン若しくはそれらの組合せと、(ii)スチレン、o-、m-、及び/又はp-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン若しくはそれらの組合せとの共重合;によって得ることが可能である、請求項1に記載のカルボキシ末端ポリマー。
【請求項3】
前記ポリマーが、1,3-ブタジエンとスチレン、又はイソプレンとスチレンの共重合によって得ることが可能である、請求項1に記載のカルボキシ末端ポリマー。
【請求項4】
- Rが、以下のものからなる群より選択され;
(i)-C ~C -アルキレン-(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている);
(ii)-C ~C -ヘテロアルキレン-(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている)
(iii)6~14員のアリーレン(非置換、単置換、又は多置換されている);
- R が、以下のものからなる群より選択され;
(i)-C ~C 24 -アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている);又は
(ii)-C ~C 24 -ヘテロアルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている);
(iii)6~24員のアリール(非置換、単置換、又は多置換されている)、ここで前記6~24員のアリールは、場合によっては、-C ~C -アルキレン-又は-C ~C -ヘテロアルキレン-(それぞれの場合において、飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている)を介して結合されている;
(iv)5~24員のヘテロアリール(非置換、単置換、又は多置換されている)、ここで前記5~24員のヘテロアリールは、場合によっては、-C ~C -アルキレン-又は-C ~C -ヘテロアルキレン-(それぞれの場合において、飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている)を介して結合されている;
(v)3~24員のシクロアルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている)、ここで、前記3~24員のシクロアルキルは、場合によっては、-C ~C -アルキレン-又は-C ~C -ヘテロアルキレン-(それぞれの場合において、飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている)を介して結合されている;そして
(vi)3~24員のヘテロシクロアルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている)、ここで、前記3~24員のヘテロシクロアルキルは、場合によっては、-C ~C -アルキレン-又は-C ~C -ヘテロアルキレン-(それぞれの場合において、飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている)を介して結合されている;そして
- R が、以下のものからなる群より選択され;
(i)-C ~C 24 -アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている);
(ii)-C ~C 24 -ヘテロアルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている);
(iii)6~24員のアリール(非置換、単置換、又は多置換されている)、ここで前記6~24員のアリールは、場合によっては、-C ~C -アルキレン-又は-C ~C -ヘテロアルキレン-(それぞれの場合において、飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている)を介して結合されている;
(iv)5~24員のヘテロアリール(非置換、単置換、又は多置換されている)、ここで前記5~24員のヘテロアリールは、場合によっては、-C ~C -アルキレン-又は-C ~C -ヘテロアルキレン-(それぞれの場合において、飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている)を介して結合されている;
(v)3~24員のシクロアルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている)、ここで、前記3~24員のシクロアルキルは、場合によっては、-C ~C -アルキレン-又は-C ~C -ヘテロアルキレン-(それぞれの場合において、飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている)を介して結合されている;そして
(vi)3~24員のヘテロシクロアルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている)、ここで、前記3~24員のヘテロシクロアルキルは、場合によっては、-C ~C -アルキレン-又は-C ~C -ヘテロアルキレン-(それぞれの場合において、飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている)を介して結合されている;そして
- Rが、以下のものからなる群より選択され;
(i)-C ~C -アルキレン-(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている);
(ii)-C ~C -ヘテロアルキレン-(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている);及び
(iii)6~14員のアリーレン(非置換、単置換、又は多置換されている);
ここで、「単置換、又は多置換された」という用語は、「単置換された」の場合には1個の置換基で、或いは「多置換された」の場合には2個以上の置換基で置換されていることを意味しており、そしてここで前記置換基は、-F、-Cl、-Br、-I、-CN、=O、-CF 、-CF H、-CFH 、-CF Cl、-CFCl 、-C ~C 18 -アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)、及び-C ~C 18 -ヘテロアルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)からなる群より選択される、
請求項1に記載のカルボキシ末端ポリマー。
【請求項5】
- R が、-C ~C -アルキレン-(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)であり;
- R が、-C ~C -アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)であり;
- R が、-C ~C -アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)であり;そして
- R が、-C ~C -アルキレン-(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている);
ここで、「単置換、又は多置換された」という用語は、「単置換された」の場合には1個の置換基で、或いは「多置換された」の場合には2個以上の置換基で置換されていることを意味しており、そしてここで前記置換基は、-F、-Cl、-Br、-I、-CN、-CF 、-CF H、-CFH 、-CF Cl、-CFCl 、-C ~C 18 -アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)、及び-C ~C 18 -ヘテロアルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)からなる群より選択される、
請求項1に記載のカルボキシ末端ポリマー。
【請求項6】
- R が、-C ~C -アルキレン-(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)であり;
- R が、-C ~C -アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)であり;
- R が、-C ~C -アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)であり;そして
- R が、-C ~C -アルキレン-(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている);
ここで、「単置換、又は多置換された」という用語は、「単置換された」の場合には1個の置換基で、或いは「多置換された」の場合には2個以上の置換基で置換されていることを意味しており、そしてここで前記置換基は、独立して、飽和で非置換の-C ~C 18 -アルキル、又は-C ~C -アルキル-Si(O-C ~C -アルキル) (ここで、それぞれの場合において、前記-C ~C -アルキルは、飽和又は不飽和である)からなる群より選択される、
請求項1に記載のカルボキシ末端ポリマー。
【請求項7】
前記ポリマーが、1,3-ブタジエンとスチレンとの共重合によって得ることが可能であり、ここで、
- Rが、-C~C-アルキレン-(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)であり;
- Rが、-C~C-アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)であり;
- Rが、-C~C-アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)であり;そして
- Rが、-C~C-アルキレン-(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている);
ここで、「単置換、又は多置換された」という用語は、「単置換された」の場合には1個の置換基で、或いは「多置換された」の場合には2個以上の置換基で置換されていることを意味しており、そしてここで前記置換基は、-C ~C 18 -アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)、及び-C ~C -アルキル-Si(O-C ~C -アルキル) (飽和又は不飽和であり、そして非置換である)からなる群より選択される、
請求項1に記載のカルボキシ末端ポリマー。
【請求項8】
- 前記ポリマーが、1,3-ブタジエンをスチレンと共重合させることによって得ることが可能であり;
- Rが、-C~C-アルキレン(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)であり;
- Rが、-C~C-アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)であり;
- Rが、-C~C-アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)であり;そして
- Rが、-CH-CHC2K+1-(ここで、kは、8~16の整数である)、-CHCH((CH1~5Si(OC~C-アルキル)-、-CH=C(C~C-アルキル)-、及び-(CH2~4-から選択される;
請求項1に記載のカルボキシ末端ポリマー。
【請求項9】
一般式(II)で表されるカルボキシレートとして存在する、
【化2】
(式中、
ポリマー、R、R、R、及びRは、請求項1において定義されたものであり;
nは、1~4の整数であり;そして
Mは、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Fe、Co、Ni、Al、Nd、Ti、Sn、Si、Zr、V、Mo、又はWから選択される、原子価1~4の金属又は半金属である
請求項1に記載のカルボキシ末端ポリマー。
【請求項10】
一般式(I)で表されるカルボキシ末端ポリマー、
【化3】
又は一般式(II)
【化4】
を調製するための方法であって、
前記方法が、
(a)少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含むポリマーを備える工程;
(b)一般式(III)の環状尿素誘導体を備える工程、
【化5】
(c)一般式(IV)の環状カルボン酸無水物を備える工程、
【化6】
(d)第一の官能化剤としての前記一般式(III)の環状尿素誘導体を、前記ポリマーに付加させて、官能化されたポリマー中間体を形成させる工程;及び
(e)第二の官能化剤としての前記一般式(IV)の環状カルボン酸無水物を、前記官能化されたポリマー中間体に続けて付加させて、一般式(I)又は(II)で表される前記カルボキシ末端ポリマーを形成させる工程、
[式中、前記ポリマーはジエンゴムであって、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含み、そして前記ポリマーは、1種又は複数のジエンの重合を含む重合反応によって得ることが可能であり;
、R は、同一或いは異なっていて、そして飽和又は不飽和の有機基(O、N、S、及びSiからなる群より選択される1個又は複数のヘテロ原子を含んでもよい)を表し;そして
、R は、同一或いは異なっていて、そして飽和又は不飽和の二価の有機基(C及びHに加えて、1個又は複数の、O、N、S、及びSiからなる群より選択されるヘテロ原子が含まれてよい)を表し;
そして
前記1種又は複数のジエンは、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエンから選択される]
を含む、方法。
【請求項11】
前記ポリマーが、
(i)1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン、及びそれらの組合せを、
(ii)スチレン、o-、m-、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びそれらの組合せと、
共重合させることによって得ることが可能な、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマーが、1,3-ブタジエンとスチレンを共重合させるか、又はイソプレンとスチレンとを共重合させることによって得ることが可能である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
- R が、以下のものからなる群より選択され;
(i)-C ~C -アルキレン-(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている);
(ii)-C ~C -ヘテロアルキレン-(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている);及び
(iii)6~14員のアリーレン(非置換、単置換、又は多置換されている);
- R が、以下のものからなる群より選択され;
(i)-C ~C 24 -アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている);又は
(ii)-C ~C 24 -ヘテロアルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている);
(iii)6~24員のアリール(非置換、単置換、又は多置換されている)、ここで前記6~24員のアリールは、場合によっては、-C ~C -アルキレン-又は-C ~C -ヘテロアルキレン-(それぞれの場合において、飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている)を介して結合されている;
(iv)5~24員のヘテロアリール(非置換、単置換、又は多置換されている)、ここで前記5~24員のヘテロアリールは、場合によっては、-C ~C -アルキレン-又は-C ~C -ヘテロアルキレン-(それぞれの場合において、飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている)を介して結合されている;
(v)3~24員のシクロアルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている)、ここで、前記3~24員のシクロアルキルは、場合によっては、-C ~C -アルキレン-又は-C ~C -ヘテロアルキレン-(それぞれの場合において、飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている)を介して結合されている;そして
(vi)3~24員のヘテロシクロアルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている)、ここで、前記3~24員のヘテロシクロアルキルは、場合によっては、-C ~C -アルキレン-又は-C ~C -ヘテロアルキレン-(それぞれの場合において、飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている)を介して結合されている;そして
- R が、以下のものからなる群より選択され;
(i)-C ~C 24 -アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている);
(ii)-C ~C 24 -ヘテロアルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている);
(iii)6~24員のアリール(非置換、単置換、又は多置換されている)、ここで前記6~24員のアリールは、場合によっては、-C ~C -アルキレン-又は-C ~C -ヘテロアルキレン-(それぞれの場合において、飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている)を介して結合されている;
(iv)5~24員のヘテロアリール(非置換、単置換、又は多置換されている)、ここで前記5~24員のヘテロアリールは、場合によっては、-C ~C -アルキレン-又は-C ~C -ヘテロアルキレン-(それぞれの場合において、飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている)を介して結合されている;
(v)3~24員のシクロアルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている)、ここで、前記3~24員のシクロアルキルは、場合によっては、-C ~C -アルキレン-又は-C ~C -ヘテロアルキレン-(それぞれの場合において、飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている)を介して結合されている;そして
(vi)3~24員のヘテロシクロアルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている)、ここで、前記3~24員のヘテロシクロアルキルは、場合によっては、-C ~C -アルキレン-又は-C ~C -ヘテロアルキレン-(それぞれの場合において、飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている)を介して結合されている;そして
- R が、以下のものからなる群より選択され;
(i)-C ~C -アルキレン-(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている);
(ii)-C ~C -ヘテロアルキレン-(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている);及び
(iii)6~14員のアリーレン(非置換、単置換、又は多置換されている);
ここで、「単置換、又は多置換された」という用語は、「単置換された」の場合には1個の置換基で、そして「多置換された」の場合には1個以上の置換基で置換されていることを意味しており、そしてここで前記置換基は、-F、-Cl、-Br、-I、-CN、=O、-CF 、-CF H、-CFH 、-CF Cl、-CFCl 、-C ~C 18 -アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)、及び-C ~C 18 -ヘテロアルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)からなる群より選択される、
請求項10に記載の方法。
【請求項14】
- R が、(i)-C ~C -アルキレン-(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)であり;
- R が、(i)-C ~C -アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)であり;
- R が、(i)-C ~C -アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)であり;
- R が、(i)-C ~C -アルキレン-(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている);
ここで、「単置換、又は多置換された」という用語は、「単置換された」の場合には1個の置換基で、或いは「多置換された」の場合には2個以上の置換基で置換されていることを意味しており、そしてここで前記置換基は、-F、-Cl、-Br、-I、-CN、=O、-CF 、-CF H、-CFH 、-CF Cl、-CFCl 、-C ~C 18 -アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)、及び-C ~C 18 -ヘテロアルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)からなる群より独立して選択される、
請求項10に記載の方法。
【請求項15】
- R が、-C ~C -アルキレン-(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)であり;
- R が、-C ~C -アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)であり;
- R が、-C ~C -アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)であり;そして
- R が、-C ~C -アルキレン-(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている);
ここで、「単置換、又は多置換された」という用語は、「単置換された」の場合には1個の置換基で、或いは「多置換された」の場合には2個以上の置換基で置換されていることを意味しており、そしてここで前記置換基は、独立して、飽和で非置換の-C ~C 18 -アルキル、又は-C ~C -アルキル-Si(O-C ~C -アルキル) (ここで、それぞれの場合において、前記-C ~C -アルキルは、飽和又は不飽和である)からなる群より選択される、
請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマーが、1,3-ブタジエンをスチレンと共重合させることによって得ることが可能であり;
- R が、-C ~C -アルキレン-(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)であり;
- R が、-C ~C -アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)であり;
- R が、-C ~C -アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)であり;そして
- R が、-C ~C -アルキレン-(飽和又は不飽和であり、そして非置換、単置換、又は多置換されている);
ここで、「単置換、又は多置換された」という用語は、「単置換された」の場合には1個の置換基で、或いは「多置換された」の場合には2個以上の置換基で置換されていることを意味しており、そしてここで前記置換基は、-C ~C 18 -アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)、及び-C ~C -アルキル-Si(O-C ~C -アルキル) (飽和又は不飽和であり、そして非置換である)からなる群より独立して選択される、
請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマーが、1,3-ブタジエンをスチレンと共重合させることによって得ることが可能であり;R が、-C ~C -アルキレン-(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)であり;R が、-C ~C -アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)であり;R が、-C ~C -アルキル(飽和又は不飽和であり、そして非置換である)であり;そしてR が、-CH -CHC 2K+1 -(ここで、kは、8~16の整数である)、-CH CH((CH 1~5 Si(OC ~C -アルキル) -、-CH=C(C ~C -アルキル)-、及び-(CH 2~4 -から選択される;
請求項10に記載の方法。
【請求項18】
一般式(II)
【化7】
(式中、
ポリマー、R 、R 、R 、及びR は、請求項1において定義されたものであり;
nは、1~4の整数であり;
Mは、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Fe、Co、Ni、Al、Nd、Ti、Sn、Si、Zr、V、Mo、又はWから選択される、原子価1~4の金属又は半金属である)で表されるカルボキシレートとして存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
工程(a)が、溶液アニオン重合、又は配位触媒を使用した重合により実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
工程(a)が、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、n-ヘキサン、及びそれらの混合物からなる群より選択される溶媒;並びに開始剤の存在下に実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項21】
工程(a)が、10分~8時間の間に実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項22】
(f)前記一般式(III)の環状尿素誘導体を付加させる前、途中、又は後でのカップリング剤(前記カップリング剤は、以下のものからなる群より選択される:四塩化ケイ素、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、四塩化スズ、ジブチルスズジクロリド、テトラアルコキシシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、及び1,2,4-トリス(クロロメチル)ベンゼン);及び/又は
(g)前記一般式(III)の環状尿素誘導体及び前記一般式(IV)の環状カルボン酸無水物を添加した後での抗酸化剤(前記抗酸化剤は、以下のものからなる群より選択される:立体障害フェノール、芳香族アミン、ホスファイト、及びチオエーテル);及び/又は
(h)エクステンダー油(前記エクステンダー油は、以下のものからなる群より選択される:TDAE(処理残留芳香族抽出物)オイル、MES(軽度抽出溶媒和物)オイル、RAE(残留芳香族抽出物)オイル、TRAE(処理残留芳香族抽出物)オイル、ナフテン系オイル及び重質ナフテン系オイル);及び/又は
(i)カーボンブラック又はシリカから選択される充填剤;並びに/又は
(j)ゴム及び/又はゴム添加剤;
を添加する、さらなる工程(単一又は複数)を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項23】
成形物品であって、請求項1に記載のカルボキシ末端ポリマーを含む加硫可能な組成物を加硫することにより調製された、成形物品。
【請求項24】
タイヤであって、請求項1に記載のカルボキシ末端ポリマーを含む加硫可能な組成物を加硫することにより調製された、タイヤ。
【国際調査報告】