(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】光学フィルム用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20220930BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20220930BHJP
C08K 5/3467 20060101ALI20220930BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220930BHJP
B32B 15/095 20060101ALI20220930BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
G02B5/22
C08L75/04
C08K5/3467
C08J5/18 CFF
B32B15/095
B32B27/18 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502871
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(85)【翻訳文提出日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 US2020040940
(87)【国際公開番号】W WO2021015942
(87)【国際公開日】2021-01-28
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521518057
【氏名又は名称】エスヴェーエム ルクセンブルク
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】ガリカ ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
2H148
4F071
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4J002
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本開示は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)などの熱可塑性ポリマーから作製した組成物、積層体、フィルム、及び/又は複合材料に関する。フィルムは、可視光の透過を可能にし、UV光を反射又は吸収可能にする材料から作製した、1つ以上の光学層を有する。光学フィルムは、ベンゾトリアゾールファミリー又はトリアジンファミリーの第1のUV吸収体と、光安定剤と、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン、又はベンジリデンマロネートからなる群から選択される第2のUV吸収体と、を含む、1種以上のTPU樹脂から作製される。第2のUV吸収体は、TPU樹脂と組み合わされて塩基性樹脂中に存在することができる。光学フィルムは、約380nm~約400nmの範囲の波長を有する光の少なくとも99%を遮断可能であり、2.5以下のYI値を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムであって、
ベンゾトリアゾールファミリー又はトリアジンファミリーからなる群から選択される第1のUV吸収体と、
光安定剤と、
ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン、又はベンジリデンマロネートからなる群から選択される第2のUV吸収体と
を含む、1種以上の熱可塑性ポリウレタン(TPU)樹脂を含む、光学フィルム。
【請求項2】
前記TPU樹脂のうちの少なくとも1つが、脂肪族TPU樹脂を約95質量%~約99.99質量%の量で含む、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記第1のUV吸収体が、前記TPU樹脂中に約0.1~約1質量%の量で存在する、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記光安定剤がアミン光安定剤(HALS)である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記光安定剤が、反応質量のビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートにより作製される、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記フィルムの厚さが約0.127mm(5ミル)~約1.27mm(50ミル)である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記フィルムの厚さが約0.381mm(15ミル)~約0.762mm(30ミル)である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記第1及び第2のUV吸収体の組み合わせが、約0.1~約3質量%の量で存在する、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記第2のUV吸収体が、約0.01~約2質量%の量で存在する、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項10】
前記フィルムが、約380nm~約410nmの範囲の波長を有する光の少なくとも約95%を遮断可能である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項11】
前記フィルムのYI値が約4.5以下である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項12】
前記フィルムのYI値が約2.0以下である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項13】
前記フィルムが、約380nm~約400nmの範囲の波長を有する光の約99.5%以上を遮断可能であり、前記フィルムのYI値が約2.0未満である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項14】
前記フィルムが、約400nmの波長を有する光の99.5%以上を遮断可能である、請求項1に記載の光学フィルム。
14.前記第2のUV吸収体が、塩基性樹脂中の濃縮物として、前記1種以上のTPU樹脂と組み合わされ、前記1種以上のTPU樹脂と前記塩基性樹脂の比が、約20:1~約3:1の範囲である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項15】
前記第2のUV吸収体が、塩基性樹脂中の濃縮物として、前記1種以上のTPU樹脂に添加され、前記塩基性樹脂中の濃縮物の充填割合が、約0.5%~約10%の範囲である、請求項1に記載の光学フィルム。
15.濃縮物としての前記第2のUV吸収体の充填割合が、塩基性樹脂中で約0.5質量%であり、前記フィルムの厚さが、0.762mm(30ミル)以下である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項16】
前記第2のUV吸収体の濃度負荷が約8.5PPHであり、前記フィルムの厚さが0.381mm(15ミル)以下である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項17】
光学フィルムであって、
ベンゾトリアゾールファミリー又はトリアジンファミリーからなる群から選択される第1のUV吸収体、及び
光安定剤
を含む熱可塑性ポリウレタン(TPU)樹脂と、
ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン、又はベンジリデンマロネートからなる群から選択される第2のUV吸収体を含む塩基性樹脂と、
を含む、光学フィルム。
【請求項18】
前記塩基性樹脂が熱可塑性ポリウレタン(TPU)樹脂を含む、請求項17に記載の光学フィルム。
【請求項19】
前記TPU樹脂と前記塩基性樹脂の比が、約20:1~約3:1である、請求項17に記載の光学フィルム。
【請求項20】
前記TPU樹脂と前記塩基性樹脂の比が、約10:1~約7:1である、請求項17に記載の光学フィルム。
【請求項21】
前記第2のUV吸収体が濃縮物として前記塩基性樹脂に添加され、前記塩基性樹脂中の濃縮物の充填割合が、約0.5%~約10%の範囲である、請求項17に記載の光学フィルム。
【請求項22】
複合材料であって、
ガラスの第1の層と、
ガラスの第2の層と、
前記ガラスの第1の層と前記ガラスの第2の層との間のフィルムと
を含み、前記フィルムが、ベンゾトリアゾールファミリー又はトリアジンファミリーからなる群から選択される第1のUV吸収体と、光安定剤と、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン、又はベンジリデンマロネートからなる群から選択される第2のUV吸収体とを含む1種以上の樹脂から作製される、複合材料。
【請求項23】
前記樹脂のうちの少なくとも1つが熱可塑性ポリウレタン(TPU)樹脂を含み、前記TPU樹脂が、少なくとも前記第1のUV吸収体と、前記光安定剤とを含む、請求項22に記載の複合材料。
【請求項24】
前記TPU樹脂が、脂肪族TPU樹脂を約95質量%~約99.99質量%の量で含む、請求項23に記載の複合材料。
【請求項25】
前記第1のUV吸収体が、前記TPU樹脂中に約0.1~約1質量%の量で存在する、請求項23に記載の複合材料。
【請求項26】
前記フィルムの厚さが約0.127mm(5ミル)~約1.27mm(50ミル)である、請求項22に記載の複合材料。
【請求項27】
前記第2のUV吸収体が塩基性樹脂中に存在する、請求項22に記載の複合材料。
【請求項28】
前記塩基性樹脂が第2のTPU樹脂を含む、請求項27に記載の複合材料。
【請求項29】
前記TPU樹脂と前記塩基性樹脂の比が、約20:1~約3:1である、請求項27に記載の複合材料。
【請求項30】
前記TPU樹脂と前記塩基性樹脂の比が、約10:1~約7:1である、請求項27に記載の複合材料。
【請求項31】
前記第2のUV吸収体が濃縮物として前記塩基性樹脂に添加され、前記塩基性樹脂中の濃縮物の充填割合が、約0.5%~約10%の範囲である、請求項27に記載の複合材料。
【請求項32】
請求項22に記載の組成物を含む、車両の窓。
【請求項33】
光学フィルムを押し出すための樹脂を作製するための方法であって、
a)TPU、ベンゾトリアゾールファミリー又はトリアジンファミリーの第1のUV吸収体、及び光安定剤を有する第1の樹脂組成物と、b)第2の樹脂と組み合わされた第2のUV吸収体を含有する濃縮物とを組み合わせることにより、混合物を調製する工程と、
前記第1及び第2の樹脂の前記混合物を溶融して押し出す工程と、
前記第1及び第2の樹脂を含有する前記混合物を、ダイを通して供給して光学フィルムを作る工程と
を含む、方法。
【請求項34】
前記第2の樹脂中での前記第2のUV吸収体の充填濃度が、約10PPHである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記濃縮物がTinuvin 326を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記組み合わせることが、少なくとも7%の前記第2の樹脂を、前記第1の樹脂にドライブレンドすることを含む、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月19日に出願された米国仮出願番号第62/876171号の利益を主張し、その開示全体があらゆる目的のために、参照により本明細書に組み込まれている。
本開示の分野は、可視光に対して実質的に透過性でありながら、UV照射を遮断する、1つ以上の光学材料又は層を有する、組成物、複合材料、積層体、及び/又はフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
可視光に対して高い光透過性を有するフィルム及び積層体が、多数の用途で望ましい。例えば、高い光透過性を有するフィルムは、車両のフロントガラス及びサンルーフ、食品の包装、光学ディスク装置、住宅及び商業用窓などで用いられる。
【0003】
太陽光の照射は、太陽からの輻射(電磁)エネルギーである。太陽光の照射は、地球に対する光及び熱、並びに、光合成のためのエネルギーを提供する。この輻射エネルギーは、環境、及びその生息動物の代謝に必要である。太陽光の輻射スペクトルは、波長帯により定義される異なる輻射領域に分けられる。一般に、人間の目は、約400nm~700nmの範囲の波長を有する可視光を感知することができる。不可視光は、約700nm~1mの波長を有する赤外線光線、及び、約10nm~400nmの波長を有する紫外線光線を含む。
様々な輻射領域の太陽スペクトルは、環境及び人間に異なる影響をもたらす可能性がある。少量のUV光は人間に有益である可能性があるが、UV放射線への曝露が長くなると、ヒトの皮膚に損傷を与え、急性及び慢性的な健康問題をもたらす可能性がある。同様に、UV光への曝露が長くなることはまた、室内装飾材料及び家具などの物品にも損傷を与えるか、又は変色させる可能性がある。
故に、太陽光の照射は、窓を通して、建物又は自動車に自然光をもたらす一方で、UV放射線からの不必要な影響もまたもたらす。UV放射線は、空間のインテリア内の物体に対して、直接的な有害性及び損傷を引き起こす。そのため、可視光を透過しながらUV光を遮断する機能性窓が、電気の負担を低減し、中の全ての物体及びユーザを保護するために、建物及び自動車には不可欠である。
【0004】
ポリマー中間層を備える、積層されたガラス窓が、安全性の懸念、及び改善されたエネルギー効率のために一般的に用いられており、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂シートが、最も一般的なガラス積層体となっている。従来の自動車、又は建築用ガラス窓、又は窓構造物は多くの場合、2つの剛性ガラス又はプラスチックシートで典型的には作製された積層体、及び、可塑化ポリビニルブチラール(PVB)の中間層を含む。PVBシートは一般に、ガラスが破壊されるときに、所定位置で鋭利なガラス断片を保持することができるために用いられる。故に、PVB積層安全性ガラスは、建築物及び自動車の窓、ショーケース、並びに、ヒトの相互影響が非常に関与する他の場所にて幅広く適用されている。
光学フィルタは、異なる波長の光を選択的に透過する、かつ/又は遮断する装置である。光学特性フィルタは、周波数応答により完全に説明され、これは、入力信号の各周波数の構成成分の大きさ及び位相が、どのようにフィルタにより修正されるかについて明確にする。光学層又はフィルタは、PVBシート内、又は間に配置され、積層窓を通過するUV光を遮断することができる。
しかし、PVB層は、ガラス窓などの積層体において、特定の欠点を有する。例えば、多量の湿気が、使用中にPVB層に吸収される可能性がある。この湿気は最終的に、積層体の破損を引き起こすか、又は、窓を通過する可視光の質を低下させる可能性がある。更に、PVBは一般に、高いモジュラス及び低い引張強度を有し、これは、窓及び自動車のフロントガラスなどの用途にて、ガラス窓の性能に負の影響を及ぼす可能性がある。更に、PVB中間層は、フィルム層の間にて縁にて流出し、十分な間隔を生み出して、「縁の光沢」と呼ばれる、非常に色味がかった真珠光沢を生み出し得る。縁の光沢は、この種のガラス積層体においては、望ましい特徴ではない。
それ故、UV照射の悪影響からの保護を依然としてもたらし、依然として、競合市場において低い材料コストを支えるのに十分な薄さでありながら、より耐久性があり、湿気の透過及び/又は流出を受けにくい、車両及び建物窓用のフィルム、複合材料、又は積層体などの、光学層を備える改善された組成物が必要とされる。
【発明の概要】
【0005】
以下のことは、特許請求した主題のいくつかの態様の基本的理解をもたらすための、特許請求した主題の簡略化した要約を提示する。この要約は、特許請求した主題の広範な概観ではない。この要約は、特許請求した主題の鍵となる、又は決定的な構成要素を同定するものでもなく、特許請求した主題の範囲を描写するものでもないことが意図されるべきである。要約の唯一の目的は、後で提示するより詳細な説明を導くためのものとしての、簡略化した形態における特許請求した主題のいくつかの構想を提示することである。
【0006】
本開示は、熱可塑性ポリマー、好ましくは熱可塑性ポリウレタン(TPU)から作製した、フィルム、組成物、積層体、及び/又は複合材料に関する。フィルムは、可視光の透過を可能にし、UV光を反射又は吸収する材料から作製した、1つ以上の光学材料及び/又は層を有する。特定の実施形態では、本開示は、1つ以上の樹脂であって、そのうちの少なくとも1つが脂肪族熱可塑性ポリウレタン(TPU)樹脂である、樹脂から作製した組成物に関する。他の実施形態では、本開示は、TPU、及びTPUの中の光学材料を含む、窓ガラスなどのガラス複合材料に関する。
本発明のフィルム及び組成物は、TPU層内への湿気の吸収を受けにくく、より耐久性のある光学組成物をもたらし、当該光学組成物を通過する可視光の質を改善する。TPUは、プラスチックにTPUがエッチングされることを可能にする、望ましい特性もまた有する。更に、本開示のTPU組成物は、フィルム層の間の縁における流出を受けにくく、これにより、縁の光沢が低下する。
TPU層は、可視光に対して十分な透過性をもたらし、ガラス、ポリカーボネート、アクリル、セルロースアセテートブチレート、又は、層が接触し得る他の表面に対して好適な接着力を示す材料から選択されるのが好ましい。特定の実施形態では、TPU層は、雨、ひょう、風、ほこり、及び他の汚染物質などの、TPU層の表面と接触する空気微粒子の運動エネルギーを実質的に吸収し消散させるのに十分な貯蔵弾性率を有するのが好ましい。同時に、TPU材料は、実質的な引き裂き耐性及び磨耗耐性を有し、これにより、フィルムを有害な環境条件から保護するのが好ましい。
【0007】
本発明の一態様では、脂肪族熱可塑性ポリウレタン(TPU)樹脂組成物から作製した光学フィルムを提供する。樹脂組成物は、脂肪族熱可塑性ポリウレタン(TPU)樹脂と、ベンゾトリアゾールファミリー又はトリアジンファミリーからなる群から選択される第1のUV吸収体と、光安定剤と、第2のUV吸収体と、を含む。第2のUV吸収体は、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン、又はベンジリデンマロネートからなる群から選択されるのが好ましい。
特定の実施形態では、TPU樹脂は、約95質量%~約99.99質量%の量で存在する。第1のUV吸収体は、約0.1質量%~約1.0質量%の量で、TPU樹脂の中に存在する。第2のUS吸収体は、約0.01質量%~約2.0質量%の量で存在する。好ましい実施形態では、第1及び第2のUV吸収体は、約0.1質量%~約3質量%の複合量で存在する。
特定の実施形態では、第2のUV吸収体は、ベンゾトリアゾール型吸収剤、又はベンゾフェノン型吸収剤からなる群から選択される。
特定の実施形態では、光安定剤は、アミン光安定剤(HALS又はNOR-HALS)を含む。例示的実施形態では、光安定剤は、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートと、メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートを混合することにより作製することができる。複数の実施形態では、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、及びメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートは、3:1の比率で混合される。
特定の実施形態では、第2のUV吸収体は、塩基性樹脂中の濃縮物として、1種以上のTPU樹脂と組み合わされ、TPU樹脂と塩基性樹脂の比は、約20:1~約3:1の範囲である。塩基性樹脂中の濃縮物の充填割合は、約0.5%~約10%の範囲である。一例示的実施形態では、濃縮物としての、第2のUV吸収体の充填割合は、塩基性樹脂中で約0.5質量%であり、フィルムの厚さは、0.762mm(30ミル)以下である。別の例示的実施形態では、第2のUV吸収体の濃度負荷は約8.5PPHであり、フィルムの厚さは0.381mm(15ミル)以下である。
【0008】
本発明の光学フィルムは、約100nm~約410ナノメートル、好ましくは約380~約410ナノメートルの範囲の波長を有する光の、少なくとも約95%を遮断することができるのが好ましい。例示的実施形態では、光学フィルムは、約380nm~約400nmの範囲の波長を有する光の約99.9%超、又は、約400nmの波長を有する光の少なくとも99%を遮断することが可能である。
特定の実施形態では、光学フィルムは、約3.0以下、好ましくは約2.5以下の黄色度指数(YI値)を有する。特定の実施形態では、YI値は2.0未満である。
特定の実施形態では、フィルムの厚さ、及び第2のUV吸収体の濃度が最適化される。一実施形態では、濃縮物としての第2のUV吸収体の充填割合は、塩基性樹脂中で約0.5質量%であり、フィルムの厚さは、0.762mm(30ミル)以下である。他の実施形態では、第2のUV吸収体の濃度負荷は約8.5PPHであり、フィルムの厚さは0.381mm(15ミル)以下である。
【0009】
本発明の別の態様では、組成物は、ベンゾトリアゾールファミリー又はトリアジンファミリーからなる群から選択される第1のUV吸収体を含む脂肪族熱可塑性ポリウレタン(TPU)と、光安定剤と、を含む。組成物は、第2のUV吸収体を含む塩基性樹脂を更に含む。第2のUV吸収体は、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン、又はベンジリデンマロネートからなる群から選択されるのが好ましい。
特定の実施形態では、塩基性樹脂は、第2のTPU樹脂を含む。TPU樹脂と、第2のUV吸収体を含む塩基性樹脂の比は、約20:1~約3:1、好ましくは約10:1~約7:1の範囲である。塩基性樹脂中の濃縮物の充填割合は、約0.5%~約10%の範囲である。一例示的実施形態では、濃縮物としての、第2のUV吸収体の充填割合は、塩基性樹脂中で約0.5質量%であり、フィルムの厚さは、0.762mm(30ミル)以下である。別の例示的実施形態では、第2のUV吸収体の濃度負荷は約8.5PPHであり、フィルムの厚さは0.381mm(15ミル)以下である。
【0010】
別の態様では、本開示は、ガラスの第1の層と、ガラスの第2の層と、当該ガラスの第1の層と当該ガラスの第2の層との間のフィルムと、を含む複合材料に関する。フィルムは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)樹脂組成物、ベンゾトリアゾールファミリー又はトリアジンファミリーからの第1のUV吸収体、光安定剤、及び第2のUV吸収体から作製される。
特定の実施形態では、第2のUV吸収体は、塩基性樹脂中で濃縮物としてのTPU樹脂と組み合わされ、TPU樹脂と、第2のUV吸収体濃縮物を含む塩基性樹脂の比は、約20:1~約3:1の範囲である。塩基性樹脂中の濃縮物の充填割合は、約0.5%~約10%の範囲である。一例示的実施形態では、濃縮物としての、第2のUV吸収体の充填割合は、塩基性樹脂中で約0.5質量%であり、フィルムの厚さは、0.762mm(30ミル)以下である。別の例示的実施形態では、第2のUV吸収体の濃度負荷は約8.5PPHであり、フィルムの厚さは0.381mm(15ミル)以下である。
【0011】
本発明の複合材料は、約100nm~約410ナノメートル、好ましくは約380~約410ナノメートルの範囲の波長を有する光の、少なくとも約95%を遮断することができるのが好ましい。例示的実施形態では、複合材料は、約380nm~約400nmの範囲の波長を有する光の約99.9%超、又は、約400nmの波長を有する光の少なくとも99%を遮断することが可能である。
【0012】
別の態様では、本開示は、光学フィルムの製造方法に関する。方法は、a)TPU、ベンゾトリアゾールファミリー又はトリアジンファミリーの第1のUV吸収体、及び光安定剤を有する第1の樹脂組成物と、b)第2の樹脂と組み合わせた第2のUV吸収体を含有する濃縮物と、を組み合わせることにより、混合物を調製することと、第1及び第2の樹脂の混合物を溶融して押し出すことと、第1及び第2の樹脂を含有する混合物を、ダイを通して供給して光学フィルムを作製することと、を含む。
特定の実施形態では、第2の樹脂中での第2のUV吸収体の充填濃度は、約10PPHである。代表的実施形態において、濃縮物はTinubin 326を含む。
特定の実施形態では、組み合わせることは、少なくとも7%の第2の樹脂を、第1の樹脂にドライブレンドすることを含む。
【0013】
前述の一般的な説明、及び以下の詳細の説明の両方は、単に例示的かつ説明のためのものであり、本開示を制限するものではないことと理解されるべきである。本開示の更なる特徴が、以下に続く説明である程度説明されるか、又は、本開示を実践することで教示されることができる。
添付図面は、本明細書の一部に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、本開示のいくつかの実施形態を表し、明細書と共に、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の光学フィルムのうちの1つを含む、複合ガラスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書及び添付図面は、例示的実施形態を表して、限定を行うものとして理解されてはならず、特許請求の範囲が、等価物を含む、本開示の範囲を規定する。様々な機械的、組成的、構造的、及び操作的な変化を、等価物を含む、本明細書及び特許請求の範囲から逸脱することなく、生み出すことができる。場合によっては、周知の構造及び技術は、本開示を不明瞭にしないように、詳細に図示又は記述されていない。2つ以上の図における同様の番号は、同一又は類似の要素を表す。更に、一実施形態を参照して詳細に記述される要素、及びその関連する態様は、実用的である場合はいつでも、具体的に図示又は説明されていない他の実施形態に含まれ得る。例えば、要素が一実施形態を参照して詳細に説明され、第2の実施形態を参照して説明されていない場合、当該要素はそれでも、第2の実施形態に含まれているものとして特許請求することができる。更に、本明細書での説明は、例示の目的のためだけのものであり、システム又は図示した構成要素の実際の形状、サイズ、又は寸法を必ずしも反映していない。
本明細書、及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」、並びに、任意の単語の任意の単数での使用は、ある指示対象に明示的に、かつ明確な限定されない限り、複数への言及を含むことに注意されたい。本明細書で使用する場合、用語「を含む」、及びその文法上の異形は、非限定であることを意図し、一覧における項目の引用が、当該一覧における項目に置換又は追加可能な他の同様の項目を排除しないようにする。
【0016】
本光学フィルムは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)樹脂組成物から作製される。TPU樹脂組成物は、第1のUV吸収体、光安定剤、及び第2のUV吸収体を含む。そのようなTPU樹脂組成物から作製したフィルムは、UV吸収体の組み合わせによりもたらされる、望ましい光学特性を有する。
本開示に従ったTPU樹脂組成物は、十分な透明性をもたらす、脂肪族ポリエーテル系TPUを含むことができ、当該フィルムが接触し得るガラス、ポリカーボネート、アクリル、セルロースアセテートブチレート、又は他の表面への好適な接着力を示し得る。複数の実施形態では、好適なTPU樹脂は、ポリエーテル系であることができ、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、ポリエーテルポリオール、及びブタンジオールから作製することができる。複数の実施形態では、TPU樹脂は、Lubrizolにより販売されているEstane AG-8451樹脂であることができる。複数の実施形態では、TPU樹脂は樹脂組成物中に、約95~約99.99質量%、特定の実施形態では、約98~約99.99質量%、他の実施形態では、約99.5%~約99.99%の量で存在することができる。
本開示に従ったTPU樹脂組成物は、第1のUV吸収体もまた含む。複数の実施形態では、第1のUV吸収体は、TPU樹脂組成物中に、約0.1~約1質量%、複数の実施形態では、約0.3~約0.5質量%の量で存在することができる。
【0017】
特定の実施形態では、第1のUV吸収体は、ベンゾトリアゾールファミリーの化合物から作製した、任意の好適なUV吸収体であることができる。ベンゾトリアゾール型UV吸収体の非限定例としては、以下の式の化合物が挙げられ、
【化1】
式中、R
9、R
10、及びR
11は個別に、水素、式C
aH
bN
cO
dS
e[式中、a、b、c、d、及びeは、0~30である。]、及びハロゲンから選択される。第1のUV吸収体として使用可能なベンゾトリアゾール型UV吸収体の非限定例としては、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1,1-ジメチルプロピル)-フェノール;フェノール、2,2’-メチレン-ビス(6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチル-ブチル));2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール;2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン;2-[2-ヒドロキシ-3,5-ジ(1,1-ジメチルベンジル)フェニル];2-(5-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-2Hベンゾトリアゾール;2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール;2,4-ジ-tert-ブチル-6-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール;2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール;3-(2H-ベンゾトリアゾリル)-5-(1,1-ジ-メチルエチル)-4-ヒドロキシ-ベンゼンプロパン酸オクチルエステル;メチル3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート;2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール;メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート/PEG 300の反応生成物;2-(2’-ヒドロキシ-5’-(2-ヒドロキシエチル))-ベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール;2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-(オクチルオキシ)フェノール;又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。他の実施形態では、第1のUV吸収体は、ベンゾフェノンファミリーのものであってよい。第1のUV吸収体として使用可能なベンゾフェノン型UV吸収体の非限定例としては、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン;2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン;2-ヒドロキシ-4-n-(オクチルオキシ)ベンゾフェノン;2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン;2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン;スルイソベンゾン;2-ヒドロキシ-4-n-オクチルベンゾフェノン;2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン;2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン;2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン;2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン;及びこれらの組み合わせが挙げられる。
他の実施形態では、第1のUV吸収体は、トリアジンファミリーのものであってよい。第1のUV吸収体として使用可能なトリアジン型UV吸収体の非限定例としては、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノールが挙げられる。
他の実施形態では、第1のUV吸収体は、ベンジリデンマロネートファミリーのものであってよい。第1のUV吸収体として使用可能なベンジリデンマロネート型UV吸収体の非限定的実施例としては、プロパン二酸[(4-メトキシフェニル)-メチレン]-ジメチルエステルが挙げられる。
第1のUV吸収体として使用可能なベンゾフェノン型UV吸収体の他の非限定例としては、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン;2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン;2-ヒドロキシ-4-n-(オクチルオキシ)ベンゾフェノン;2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン;2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン;スルイソベンゾン;2-ヒドロキシ-4-n-オクチルベンゾフェノン;2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン;2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン;2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン;2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン;及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0018】
本開示に従ったTPU樹脂組成物は、光安定剤もまた含む。好適な光安定剤は主に、UV放射線への曝露により引き起こされる光酸化の悪影響から、光学フィルムのポリマーを保護する。複数の実施形態では、光安定剤は、低度から中度の加熱に対する熱安定剤として作用する、第2の機能を果たし得る。複数の実施形態では、本開示に従った樹脂組成物の光安定剤は、約0.1~約1質量%、複数の実施形態では、約0.1~約0.2質量%の量で含まれることができる。
特定の実施形態では、好適な光安定剤は、テトラメチルピペリジンの誘導体であることができる。複数の実施形態では、光安定剤は、任意の好適なヒンダードアミン光安定剤(HALS又はNOR-HALS)であることができる。特定の実施形態では、光安定剤は、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートを、メチル-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートと組み合わせることにより作製することができる。
本開示の樹脂組成物において有用な光安定剤の非限定例としては、ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート;ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-2-n-ブチル-2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート;プロパン二酸、[(4-メトキシフェニル)-メチレン]-ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)エステル;4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールを含む10質量%のジメチルサクシネートポリマー、及び、N,N”’-[1,2-エタンジイルビス[[[4,6-ビス[ブチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル]イミノ]-3,1-プロパンジイル]]ビス[N’N”-ジブチル-N’N”-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)]-l、又はこれらの組み合わせが挙げられる。複数の実施形態では、光安定剤は、Double Bond Chemical Ind. Co., Ltd.により販売されている、メチル-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートと組み合わせたビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、即ち、Chisorb 292、Everlight Chemicalにより販売されているEversorb 93、Rianion Corpにより販売されているRIASORB UV-292、Rianlon Corp.により販売されているThasorb UV-292、SABOにより販売されているSabostab UV 65、Western Reserve Chemicalにより販売されているWestco UV-292、Performance Solutions, Inc.により販売されているUV-292/UV-292HP、及び、Jiangsu Forpi Chemicals Co., Ltdにより販売されているFENTASTAB 292、又はこれらの任意の組み合わせである。
【0019】
本開示に従ったTPU樹脂組成物は、TPU樹脂と組み合わせたときに、光安定剤及び第1のUV吸収体が、樹脂組成物から作製したフィルムに、特定の光学特性の組み合わせを付与する、第2のUV吸収体もまた含み、即ち、得られたフィルムは、約10~約410nm、好ましくは約380nm~約410nmの範囲の波長を有する光の約95%を遮断可能である。特定の実施形態では、フィルムは、約380nm~約400nmの範囲の波長を有する光の99.9%超を遮断可能であり、3.0以下、好ましくは2.5以下の黄色度指数(YI値)を有する。他の実施形態では、フィルムは、約400nmの波長を有する光の99%以上を遮断可能である。
複数の実施形態では、第2のUV吸収体は、約0.001質量%~約2.0質量%の量で存在し、複数の実施形態では、第2のUV吸収体は、約0.5質量%~約1.0質量%の量で樹脂組成物中に存在する。
特定の実施形態では、第2のUV吸収体は、前述の光学特性の組み合わせを付与する、ベンゾトリアゾールファミリー、ベンゾフェノンファミリー、トリアジンファミリー、又はベンジリデンマロネートファミリーの、任意の好適なUV吸収体、例えば、第1のUV吸収体に関する上記の化合物一覧であることができる。第2のUV吸収体として使用するのに好適なベンゾトリアゾール型UV吸収体の非限定例としては、以下の式の化合物が挙げられ、
【化2】
式中、R
9、R
10、及びR
11は個別に、水素、式C
aH
bN
cO
dS
e[式中、a、b、c、d、及びeは、0~30である。]、及びハロゲンから選択され、R
9、R
10、又はR
11のうちの少なくとも1つはハロゲンである。複数の実施形態では、第2のUV吸収体は、フェノール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルである。
【0020】
樹脂組成物は、1種以上のTPU樹脂、第1のUV吸収体、及び光安定剤を含む組成物を調製することにより調製することができる。組成物を、同一又は異なるTPU樹脂を含む塩基性樹脂中に第2のUV吸収体を含有する濃縮物と組み合わせる。複数の実施形態では、塩基性樹脂及び濃縮物をドライブレンドする。複数の実施形態では、TPU樹脂と塩基性樹脂の比は、約20:1~約3:1、好ましくは約10:1~約7:1である。第2のUV吸収体は濃縮物中に、約9.5質量%の量で存在することができる。
【0021】
光学フィルムは、約0.127mm(5ミル)~0.127mm(50ミル)の厚さを有するのが好ましい。一実施形態では、第2のUV吸収体の濃度は約0.8質量%であり、フィルムの厚さは、0.381mm(15ミル)以下である。別の実施形態では、第2のUV吸収体の濃度は約0.5質量%であり、フィルムの厚さは、0.635mm(25ミル)以下である。
例示的実施形態では、本開示に従った光学フィルムは、約0.0254mm(1ミル)~約1.27mm(50ミル)、複数の実施形態では、約0.381mm(15ミル)~約0.762mm(30ミル)の範囲の厚さ;約300nm~約500nm、好ましくは約350nm~400nmのUVカットオフ;400nmの波長において、0.5%~10%以下の光透過率、複数の実施形態では、400nmの波長において、約1%~5%以下の光透過率;及び、2.5以下、好ましくは2.0以下のYI(ASTM E313)値を有することができる。
【0022】
本光学フィルムは、1軸スクリューキャストフィルム押出プロセス、又は、当業者の範囲内の、任意の他の好適な押出プロセスにより調製することができる。複数の実施形態では、プロセスは、第2のUV吸収体を含有する濃縮物を、上述した塩基性樹脂とドライブレンドして混合物をもたらすことにより開始する。塩基性樹脂と濃縮物との混合物を次に、押出機により溶融して混合する。溶融した樹脂組成物を次にフィルタにかけ、ダイシステムに供給する。得られる溶融ポリマーの均質なブレンドを次に、平坦なダイシステムを通して移動させ、最終のフラットフィルム形状に適合させる。ダイから出る際に、溶融ウェブが冷却ユニットに入り、ここでは、溶融ウェブが、水冷冷却ロール、又は、当業者により知られている任意の好適な冷却メカニズムを用いて冷却される。フィルムを次に下流に供給し、ここでは、縁がトリミングされ得、フィルムをシャフトの上で巻き上げ、材料のロールを作製する。
【実施例】
【0023】
以下の成分の1軸押出により、光学フィルムを調製する:反応質量のビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート(BASFにより販売されているTinuvin 292、CAS番号1065336-91-5に等しい)により作製した光安定剤、並びに、第1のUV吸収体としての2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1,1-ジメチルプロピル)-フェノール(BASFにより販売されているTinuvin 328、CAS番号25973-55-1に等しい)を含有するTPU樹脂(Lubrizolにより販売されているAG-8451)。このフィルムは0.762mm(30ミル)厚であり、下表1に対照フィルムとして識別する。
5つの追加のフィルム(フィルム1~5)を、反応質量のビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート(BASFにより販売されているTinuvin 292、CAS番号1065336-91-5に等しい)により作製した光安定剤、並びに、第1のUV吸収体としての2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1,1-ジメチルプロピル)-フェノール(BASFにより販売されているTinuvin 328、CAS番号25973-55-1に等しい)を含有するTPU樹脂(Lubrizolにより販売されているAG-8451)、及び、0.5%の第2のUV吸収体からの、加熱したBrabender高剪断ミキサーで調製した溶融ブレンド配合物を圧縮成形することにより調製した。フィルム1~5のそれぞれに存在する添加したUV吸収体を、下表1で識別する。
【0024】
【0025】
Tinuvin 326を含有する濃縮物を添加することで、約400nmのUVカットオフを有する光学フィルムを実現することができることを、表1は示す。本明細書で使用する場合、UVカットオフとは一般に、典型的には有機分子により吸収され熱に変換されるUV光の実質的に全てが、UV吸収体により遮断される波長を意味する。添加したTinuvin 326により、400nmで遮断された光の割合は、代替の添加物を有するフィルムよりも大きい。Tinuvin 360で処理したフィルムは、他のフィルムよりも400に近いUVカットオフを有するものの、YI値は、フィルム2が高いUVカットオフ及び光遮断割合を有するにもかかわらず、フィルム2のYI値よりも驚くほど大きい。対照フィルムよりも、フィルム1~5のYI値が高いことは、フィルム1~5の実験室調製用のBrabender高剪断ミキサーを用いる加工により実現される。これに対し、対照フィルムは、商用の1軸押出により作製し、プロセスに寄与した熱酸化の影響が少ないことを示した。
【0026】
別の例示的な実施形態では、光学フィルムを、以下の成分から調製した:反応質量のビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート(BASFにより販売されているTinuvin 292、CAS番号1065336-91-5に等しい)により作製した光安定剤、並びに、第1のUV吸収体としての2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1,1-ジメチルプロピル)-フェノール(BASFにより販売されているTinuvin 328、CAS番号25973-55-1に等しい)を含有する塩基性TPU樹脂(Lubrizolにより販売されているAG-8451)、並びに、9.5%の、第2のUV吸収体であるフェノール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1,1-ジメチルエチル)-4-メチル(BASFにより販売されているTinuvin 326に等しい、CAS番号3896-11-5、Lubrizolにより販売されているAG-8451のTPU樹脂中にブレンド)。
0.381mm(15ミル)の厚さを有する、3つの異なるフィルム(1~3)を、異なる充填量のTinuvin 326濃縮物を用いて調製した。3つのフィルムの特性を、表2で以下に含める。Tinuvin 326濃縮物を樹脂組成物に添加することで、より薄いフィルムを作製するときでさえも、2.0を下回るYI値を有する所望の透過性を維持しながら、400nmにおけるUV光の大部分を依然として遮断することが示されている。
【0027】
【0028】
ここで、
図1を参照すると、本開示に従った複合材料10は、ガラス12、14の第1及び第2の層と、当該ガラスの第1の層と当該ガラスの第2の層との間にあるフィルム16と、を含む。フィルム16は、上述の組成物のいずれかを含むことができる。特定の実施形態では、複合材料を含む窓が提供される。フィルム16は、赤外線領域で特定の波長を有する光線を反射するために、互いに向き合っているガラス基材の少なくとも2つのシートの間に積層されることができる。
ガラス層12、14は、イメージセンサ、コンピュータ及びモバイル装置用の電子表示スクリーン、食品梱包、光学ディスク装置、装具などでの使用に好適な種類の、任意の透明、又は超透明なガラスを含むことができる。例としては、PPG透明ガラス、Solarphire.RTMガラス、又はPPG Starphire.RTMガラスが挙げられる。窓に太陽光が照射されるときに、ガラス層12では、IR光からのより少ないエネルギーが吸収され、外側の層からのより多くのエネルギーが反射して戻り、窓から出て行くため、透明ガラスが好ましい。透明ガラスよりもIR光からのより少ないエネルギーを吸収し、その高い透過性により、より多くの光が反射可能となるため、超透明ガラスがより好ましい。
もちろん、層12、14として使用可能し、光学シートに剛性及び強度を付与することができる、他の実質的に透明な材料が存在する。これらの代替材料としては、例えば、アクリル、ポリエチレンテレフタラート(PET)、又はポリカーボネートなどのポリマー材料が挙げられる。ガラス窓構成要素は、実質的に平坦であるか、又はいくつかの屈曲を有することができる。ガラス窓構成要素は、様々な表面トポグラフィーを備える、ドーム、円錐、又は他の構成、及び断面などの、様々な形状で提供することができる。本発明は、任意の特定のガラス窓構成要素材料又は構造の使用に限定されることを必ずしも意図するものではない。
【0029】
本明細書で具体的に記載する製品及び方法は、非限定的な例示的実施形態であることを、当業者は理解するであろう。例示的な一実施形態に関連して例示又は説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。様々な代替物及び修正が、本開示を逸脱することなく当業者により考案されることが可能である。故に、本開示は、このような全ての代替物、修正、及び分散を包含することを意味する。同様に、当業者は、上述した実施形態に基づく、本開示の更なる特徴及び利点を理解するであろう。故に、本開示は、添付の特許請求の範囲により示されるものを除き、具体的に図示及び説明されてきたものにより限定されない。
ここで、本明細書で言及される、あらゆる発行特許、公開特許出願、及び非特許公報は、あたかも、各個別の発行特許、公開特許出願、又は非特許公報が具体的かつ個別に、参照により組み込まれるように示されるかと同程度に、それら全体があらゆる目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。
本開示の複数の実施形態を図面で示してきたものの、本開示は、当該技術が可能とし、明細書が同様に読み込まれる範囲での広範囲のものとして意図されるため、本開示がそれらに限定されることを意図するものではない。故に、上記説明は、限定をするものとしてみなされてはならず、単に、本明細書にて開示する実施形態の例示として理解されるべきである。故に、実施形態の範囲は、所与の実施例によってではなく、添付の特許請求の範囲、及びその法的等価物により決定されるべきである。
本明細書で具体的に記載し、添付図面に示す装置及び方法は、非限定的な例示的実施形態であることを、当業者は理解するであろう。例示的な一実施形態に関連して例示又は説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。様々な代替物及び修正が、本開示を逸脱することなく当業者により考案されることが可能である。故に、本開示は、このような全ての代替物、修正、及び分散を包含することを意味する。同様に、当業者は、上述した実施形態に基づく、本開示の更なる特徴及び利点を理解するであろう。故に、本開示は、添付の特許請求の範囲により示されるものを除き、具体的に図示及び説明されてきたものにより限定されない。
【国際調査報告】