(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】割り出し可能な切削インサート
(51)【国際特許分類】
B23C 5/20 20060101AFI20220930BHJP
B23C 5/06 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
B23C5/20
B23C5/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022503415
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(85)【翻訳文提出日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2020067570
(87)【国際公開番号】W WO2021013453
(87)【国際公開日】2021-01-28
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506297474
【氏名又は名称】ヴァルター アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ユング, アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
3C022
【Fターム(参考)】
3C022HH01
3C022LL01
(57)【要約】
本発明は、肩削りフライス加工工具(1)の工具本体(2)のインサート座(3)に取り付けるための割り出し可能な切削インサート(4)であって、切削インサート(4)が、概して、三角形の上面(5)と、三角形の底面(6)と、上面(5)と底面(6)との間に延在する3つの周面(7)とによって画定されており、切削インサート(4)の各側面では、3つの周面のうちの個々の1つが、三角形の上面(5)の縁に沿って、かつ三角形の底面(6)の縁に沿って延在し、切削インサート(4)が、上面(5)および底面(6)の各々に、3つの切削コーナ(8)、3つの主切削エッジ(9)、および3つの副切削エッジ(10)を備え、切削コーナ(8)の各々が、主切削エッジ(9)と副切削エッジ(10)とを接続しており、切削コーナ(8)の各々、主切削エッジ(9)の各々、および副切削エッジ(10)の各々が、上面(5)または底面(6)と周面(7)のうちの1つとの交差部に設けられており、周面(7)の各々が平坦接触面(15)を備え、平坦接触面が、上面(5)の主切削エッジ(9)および底面(6)の主切削エッジ(9)によって画定されている、割り出し可能な切削インサート(4)に関する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肩削りフライス加工工具(1)の工具本体(2)のインサート座(3)に取り付けるための割り出し可能な切削インサート(4)であって、
前記切削インサート(4)が、概して、
三角形の上面(5)と、
三角形の底面(6)と、
前記上面(5)と前記底面(6)との間に延在する3つの周面(7)と
によって画定されており、
前記切削インサート(4)の各側面では、前記3つの周面(7)のうちの個々の1つが、前記三角形の上面(5)の縁に沿って、かつ前記三角形の底面(6)の縁に沿って延在し、
前記切削インサート(4)が、
前記上面(5)および前記底面の各々に、3つの切削コーナ(8)、3つの主切削エッジ(9)、および3つの副切削エッジ(10)を備え、
前記切削コーナ(8)の各々が、前記主切削エッジ(9)と前記副切削エッジ(10)とを接続しており、
前記切削コーナ(8)の各々、前記主切削エッジ(9)の各々、および前記副切削エッジ(10)の各々が、前記上面(5)または前記底面(6)と前記周面(7)のうちの1つとの交差部に設けられている、割り出し可能な切削インサート(4)であって、
前記周面(7)の各々が平坦接触面(15)を備え、前記平坦接触面(15)が、前記上面(5)の前記主切削エッジ(9)および前記底面(6)の前記主切削エッジ(9)によって画定されていることを特徴とする割り出し可能な切削インサート(4)。
【請求項2】
前記切削インサート(4)が、前記上面(5)と前記底面(6)との中間に位置する中間平面を備え、
前記切削インサート(4)が、前記上面(5)および前記底面(6)の各々に3つの移行エッジ(16)を備え、前記移行エッジ(16)が、前記上面(5)または前記底面(6)と前記周面(7)のうちの1つとの交差部に設けられており、
前記移行エッジ(16)の各々が、前記主切削エッジ(9)と前記副切削エッジ(10)とを接続しており、
前記主切削エッジ(9)および前記移行エッジ(16)が前記中間平面上に延びたときに、前記移行エッジ(16)の各々が、前記移行エッジ(16)が接続された前記主切削エッジ(9)と角度を成し、
前記中間平面上に延びたときに、前記主切削エッジ(9)の各々が直線状であり、全長を有し、前記全長が、前記主切削エッジ(9)が接続された前記切削コーナ(8)と、前記主切削エッジ(9)が接続された前記移行エッジ(16)との間であり、
前記接触面(15)の各々が、前記主切削エッジ(9)の前記全長の少なくとも2/3に沿って延在し、前記主切削エッジ(9)が、前記上面(5)および前記底面(6)のそれぞれの前記接触面(15)を画定している、
請求項1に記載の割り出し可能な切削インサート(4)。
【請求項3】
前記接触面(15)の各々が、前記主切削エッジ(9)の前記全長の全体に沿って延在する、請求項2に記載の割り出し可能な切削インサート(4)。
【請求項4】
前記上面(5)および前記底面(6)が共通の回転対称軸を有し、前記周面(7)の各々が2つの副逃げ面(18)を備え、前記2つの副逃げ面(18)のうちの第1の副逃げ面(18)が、前記副切削エッジ(10)で前記上面(5)と交差し、前記2つの副逃げ面(18)のうちの第2の副逃げ面(18)が、前記副切削エッジ(10)で前記底面(6)と交差し、前記副切削エッジ(10)から始まる前記副逃げ面(18)の各々が、前記回転対称軸に向かって傾斜している、請求項1から3のいずれか一項に記載の割り出し可能な切削インサート(4)。
【請求項5】
前記副逃げ面(18)の各々が、前記副切削エッジ(10)から中間平面まで延在し、前記中間平面が、前記上面(5)と前記底面(6)との中間に位置する、請求項4に記載の割り出し可能な切削インサート(4)。
【請求項6】
前記上面(5)が平坦上部支持面(11)を備え、前記底面(6)が平坦底部支持面(11)を備え、
前記上面(5)の前記副切削エッジ(10)の各々が、前記副切削エッジ(10)の全長にわたって前記上部支持面(11)を越えて突出しており、前記底面(6)の前記副切削エッジ(10)の各々が、前記副切削エッジ(10)の全長にわたって前記底部支持面を越えて突出しており、
前記上面(5)の前記主切削エッジ(9)の各々が、少なくとも部分的に前記上部支持面(11)を越えて突出しており、
前記上面(5)の前記主切削エッジ(9)の前記各々が、隣接する前記切削コーナ(8)から前記上部支持面(11)に向かって傾斜しており、前記隣接する切削コーナ(8)が、前記主切削エッジ(9)と前記副切削エッジ(10)とを接続しており、
前記底面(6)の前記主切削エッジ(9)の各々が、少なくとも部分的に前記底部支持面(11)を越えて突出しており、
前記底面(11)の前記主切削エッジ(9)の前記各々が、前記隣接する切削コーナ(8)から前記底部支持面(11)に向かって傾斜しており、前記隣接する切削コーナ(8)が、前記主切削エッジ(9)と前記副切削エッジ(10)とを接続している、
請求項1から5のいずれか一項に記載の割り出し可能な切削インサート(4)。
【請求項7】
前記上面(5)および前記底面(6)がそれぞれ、主チップ面(13)および副チップ面(12)を備え、前記主切削エッジ(9)の各々が前記主チップ面(13)を画定しており、前記副切削エッジ(10)の各々が前記副チップ面(12)を画定しており、前記主チップ面(13)の各々および前記副チップ面(12)の各々が、それぞれ前記上部支持面(11)および前記底部支持面(11)に対して0°から45°の範囲の角度を成しており、前記主チップ面(13)の各々が、前記主切削エッジ(9)に向かう方向に隆起しており、前記副チップ面(12)の各々が、前記副切削エッジ(10)に向かう方向に隆起している、請求項6に記載の割り出し可能な切削インサート(4)。
【請求項8】
前記副切削エッジ(10)の各々が、前記上部支持面(11)に平行である、請求項1から7のいずれか一項に記載の割り出し可能な切削インサート(4)。
【請求項9】
前記切削コーナ(8)によって接続された前記主切削エッジ(9)および前記副切削エッジ(10)の各対が、前記上部支持面(11)に平行な平面に延びたときに、85°から95°の範囲の角度を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の割り出し可能な切削インサート(4)。
【請求項10】
前記主切削エッジ(9)の各々が同一の全長を有し、前記副切削エッジ(10)の各々が同一の全長を有し、前記主切削エッジ(9)の前記全長が、前記副切削エッジ(10)の前記全長の少なくとも2倍である、請求項1から9のいずれか一項に記載の割り出し可能な切削インサート(4)。
【請求項11】
工具本体(2)を備える肩削りフライス加工工具(1)であって、前記工具本体(2)が、複数のインサート座(3)と、前記インサート座(3)に取り付けられた、請求項1から10のいずれか一項に記載の複数の割り出し可能な切削インサート(4)とを備える、肩削りフライス加工工具(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肩削りフライス加工工具の工具本体のインサート座に取り付けるための割り出し可能な切削インサート(indexable cutting insert)であって、切削インサートが、概して、三角形の上面と、三角形の底面と、上面と底面との間に延在する3つの周面とによって画定されており、切削インサートの各側面では、3つの周面のうちの個々の1つが、三角形の上面の縁に沿って、かつ三角形の底面の縁に沿って延在し、切削インサートが、上面および底面の各々に、3つの切削コーナ、3つの主切削エッジ、および3つの副切削エッジを備え、切削コーナの各々が、主切削エッジと副切削エッジとを接続しており、切削コーナの各々、主切削エッジの各々、および副切削エッジの各々が、上面または底面と周面のうちの1つとの交差部に設けられている、割り出し可能な切削インサートに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの機械部品は、壁面に対して所定の角度で配置される肩部を形成するために金属ワークピースの機械加工を必要とする設計を有する。いわゆる肩削りフライス加工(shoulder milling)では、様々なタイプの割り出し可能な切削インサート、例えば、上述のタイプの三角形の両面切削インサートが知られている。一部のそのような既知の切削インサートの問題は、厳しい公差に適合する機械部品を製造することが困難であり得ることである。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、上述の問題を軽減し、厳しい公差に適合する機械部品を製造する能力が改善された割り出し可能な切削インサートを提供することである。
【0004】
上述の目的は、請求項1に記載の発明により達成される。
【0005】
本発明の第1の態様によれば、上記の目的のうちの少なくとも1つは、肩削りフライス加工工具の工具本体のインサート座に取り付けるための割り出し可能な切削インサートであって、切削インサートが、概して、三角形の上面と、三角形の底面と、上面と底面との間に延在する3つの周面とによって画定されており、切削インサートの各側面では、3つの周面のうちの個々の1つが、三角形の上面の縁に沿って、かつ三角形の底面の縁に沿って延在し、切削インサートが、上面および底面の各々に、3つの切削コーナ、3つの主切削エッジ、および3つの副切削エッジを備え、切削コーナの各々が、主切削エッジと副切削エッジとを接続しており、切削コーナの各々、主切削エッジの各々、および副切削エッジの各々が、上面または底面と周面のうちの1つとの交差部に設けられており、周面の各々が平坦接触面を備え、平坦接触面が、上面の主切削エッジおよび底面の主切削エッジによって画定されている、割り出し可能な切削インサートによって対処される。
【0006】
本発明は、三角形の割り出し可能な切削インサートを提供し、割り出し可能な切削インサートは、6組の切削エッジを有する。切削インサートの割り出しおよび反転後、6組の切削エッジは順々に使用可能であり、全体の工具寿命は、1組の切削エッジを有する切削インサートの寿命の6倍になっている。各組の切削エッジは、壁面をフライス加工するための主切削エッジと、底面をフライス加工するための副切削エッジと、ワークピースの壁面と底面との間の角をフライス加工してワークピースに肩部を設けるための切削コーナとを備える。切削コーナは、主切削エッジと副切削エッジとを接続している。
【0007】
切削インサートの各側面の本発明の平坦接触面であって、上面の主切削エッジおよび底面の主切削エッジによってそれぞれ画定された平坦接触面のおかげで、割り出し可能な切削インサートは、インサート座にしっかりと保持され得、切削インサートと切削工具本体との安定した接続が提供され得る。別の利点は、インサート座における切削インサートの取り付け位置の向上した精度である。したがって、切削インサートが振動を起こしにくいこと、および正確な位置決めにより、機械部品はより厳しい公差で製造され得る。
【0008】
好適には、本発明の接触面は、切削インサートの他の設計条件と干渉せず、その結果、本発明の切削インサートは、向上した位置精度および安定性をさらに提供する
【0009】
側面の各々と上面との交差部には、単一の主切削エッジと、単一の副切削エッジと、2つの切削コーナとが設けられる。同様に、側面の各々と底面との交差部には、単一の主切削エッジと、単一の副切削エッジと、2つの切削コーナとが設けられる。
【0010】
本発明の一実施形態では、上面の部分と底面の部分とは略平行である。さらに、切削インサートは、上面と底面との中間に位置する中間平面を備える。中間平面は、互いに平行な、上面および底面の部分に平行に延びる。
【0011】
一実施形態では、接触面の各々は、中間平面に対して垂直である。したがって、この実施形態では、切削インサートは、主切削エッジに関して、負の切削インサートである。
【0012】
一実施形態では、副切削エッジの各々は直線状である。
【0013】
本発明の一実施形態では、切削インサートは、上面と底面との中間に位置する中間平面を備え、切削インサートは、上面および底面の各々に3つの移行エッジを備え、移行エッジは、上面または底面と周面のうちの1つとの交差部に設けられ、移行エッジの各々は、主切削エッジと副切削エッジとを接続し、主切削エッジおよび移行エッジが中間平面上に延びたとき、移行エッジの各々は、移行エッジが接続された主切削エッジと角度を成し、中間平面上に延びたとき、主切削エッジの各々は直線状であり、全長を有し、全長は、主切削エッジが接続された切削コーナと、主切削エッジが接続された移行エッジとの間であり、接触面の各々は、主切削エッジの全長の少なくとも2/3に沿って延在し、主切削エッジは、上面および底面のそれぞれの接触面を画定する。
【0014】
一実施形態では、接触面の各々は、主切削エッジの全長の少なくとも2/3に沿って延在し、主切削エッジは、それぞれの接触面を画定する。一実施形態では、接触面の各々は、主切削エッジの全長の全体に沿って延在する。接触面が主切削エッジに沿って延在する距離を増大させることにより、平坦接触面の面積が増大する。
【0015】
本発明の一実施形態では、平坦接触面の各々は、上面の主切削エッジと別の周面の副切削エッジとを接続する切削コーナから、底面の主切削エッジと別の周面の副切削エッジとを接続する切削コーナまで延在する。この設計は、上面の切削コーナから底面の切削コーナまでの斜め方向の平坦接触面の各々の最大面積をもたらす。
【0016】
本発明の一実施形態では、第1の周方向において、接触面の各々は、第1の移行面によって少なくとも部分的に画定され、第2の周方向において、第2の移行面によって少なくとも部分的に画定される。移行面は、周面の一部である。各移行エッジは、第1の移行面と上面との交差部、または第2の移行面と底面との交差部に設けられる。移行面の各々は、接触面と副切削エッジの副逃げ面とを接続する。
【0017】
一実施形態では、中間平面における周方向の接触面の範囲は、主切削エッジの各々に沿った接触面の範囲よりも小さい。
【0018】
本発明の一実施形態では、上面および底面は共通の回転対称軸を有し、周面の各々は2つの副逃げ面を備え、2つの副逃げ面のうちの第1の副逃げ面は、副切削エッジで上面と交差し、2つの副逃げ面のうちの第2の副逃げ面は、副切削エッジで底面と交差し、副切削エッジから始まる副逃げ面の各々は、回転対称軸に向かって傾斜する。言い換えれば、副逃げ面の各々は、副切削エッジから中間平面に向かうその範囲において、回転対称軸に向かって内側に傾斜する。したがって、副逃げ面を通り、回転対称軸を含む断面で見られたとき、副切削エッジに近い副逃げ面上の任意の点は、中間平面に近い副逃げ面上の任意の点よりも回転対称軸から遠くに離れている。
【0019】
この実施形態によれば、切削インサートは、副切削エッジの各々に関して正である。副切削エッジにおける正のインサートは、この実施形態による少なくとも1つの割り出し可能な切削インサートを備えた工具本体を備える切削工具による傾斜プランジ加工を可能にする。さらに、傾斜した副逃げ面は、切削インサートとワークピースとの衝突を回避し、同時に平坦接触面の面積を最大化する。
【0020】
本発明の一実施形態では、副逃げ面の各々は平面である。
【0021】
本発明の一実施形態では、三角形の上面および三角形の底面の各々は、3回対称性を有する。ただし、一実施形態では、上面および底面は、底面の切削コーナの角度位置に対する上面の切削コーナの角度位置が互いに対してねじれるように設けられる。さらに、この実施形態では、上面および底面は、共通の回転対称軸を有する。上面および底面の切削コーナのねじれた配置は、副切削エッジに関して正の切削インサートを提供することを可能にする。
【0022】
本発明の一実施形態では、副逃げ面の各々は、副切削エッジから中間平面まで延在し、中間平面は、上面と底面との中間に位置する。それぞれの副切削エッジから中間平面までの副逃げ面の範囲は、副切削エッジの逃げを改善する。一実施形態では、副逃げ面の各々は、中間平面で終端する。
【0023】
本発明の一実施形態では、上面は平坦上部支持面を備え、底面は平坦底部支持面を備える。周面の平坦接触面に加えて上面および底面に平坦支持面を設けることにより、工具本体のインサート座に取り付けられたときの切削インサートの機械的位置決め安定性および/または位置決め精度が高まる。
【0024】
一実施形態では、上面の副切削エッジの各々は、副切削エッジの全長にわたって上部支持面を越えて突出し、底面の副切削エッジの各々は、副切削エッジの全長にわたって底部支持面を越えて突出し、上面の主切削エッジの各々は、少なくとも部分的に上部支持面を越えて突出し、上面の主切削エッジの各々は、隣接する切削コーナから上部支持面に向かって傾斜し、隣接する切削コーナは、主切削エッジと副切削エッジとを接続し、底面の主切削エッジの各々は、少なくとも部分的に底部支持面を越えて突出し、底面の主切削エッジの各々は、隣接する切削コーナから底部支持面に向かって傾斜し、隣接する切削コーナは、主切削エッジと副切削エッジとを接続する。言い換えれば、副切削エッジは、その範囲全体にわたって、それぞれの上面または底面よりも高くされ、各主切削エッジの少なくとも一部は、それぞれの上面または底面よりも高くされる。切削エッジをそれぞれの支持面を越えるように配置することにより、上面および底面の平坦支持面の面積が増大する。
【0025】
本開示の一実施形態では、上部支持面と底部支持面とは平行である。
【0026】
本発明の一実施形態では、主切削エッジの各々は、少なくとも部分的にそれぞれの平坦支持面よりも高くされ、主切削エッジとそれぞれの平坦支持面、すなわち上部支持面または底部支持面とは、5°から15°の範囲または8°から12°の範囲の角度を成す。角度は、それぞれの接触面に対して垂直な平面で、言い換えれば、切削エッジとそれぞれの支持面法線に対して垂直な線との間で測定される。
【0027】
上部支持面または底部支持面に対して角度を成す主切削エッジは、主切削エッジが正の有効軸方向角度を提供するように工具本体に切削インサートを取り付けることを可能にする。
【0028】
本発明の一実施形態では、上面および底面はそれぞれ、主チップ面および副チップ面を備え、主切削エッジの各々は主チップ面を画定し、副切削エッジの各々は副チップ面を画定し、主チップ面の各々および副チップ面の各々は、それぞれの支持面、すなわち上部支持面または底部支持面に対して0°から45°の範囲の角度を成し、主チップ面の各々は、主切削エッジに向かう方向に隆起し、副チップ面の各々は、副切削エッジに向かう方向に隆起する。チップ面のこの設計は、チップ面を画定するそれぞれの切削エッジの楔角を増大させることによって切削エッジを強化する。
【0029】
本発明の一実施形態では、副チップ面の各々とそれぞれの上部支持面または底部支持面との間の角度は一定である。
【0030】
本発明の一実施形態では、主チップ面の各々とそれぞれの上部支持面または底部支持面との間の角度は、主切削エッジに沿って増減する。一実施形態では、主チップ面とそれぞれの支持面、すなわち上部支持面または底部支持面との間の角度は、主切削エッジに沿って一定である。
【0031】
副チップ面がそれぞれの支持面に対して傾斜しているか、または副チップ面がそれぞれの支持面に平行であり、副逃げ面が副切削エッジから回転対称軸に向かって傾斜している実施形態では、副逃げ面の傾斜は、正の設計を有する副切削エッジを提供する。
【0032】
本発明の一実施形態では、副切削エッジの各々は、上部支持面に平行である。
【0033】
本発明の一実施形態では、切削コーナによって接続された主切削エッジおよび副切削エッジの各対は、上部支持面に平行な平面に延びたとき、85°から95°または89°から91°の範囲の角度を含む。特許請求される範囲内の角度は、ほぼ垂直であると考えられる。この実施形態による切削インサートを見たら、オペレータは、切削インサートが、ワークピースの壁面と底面との間に90°の角度を設ける肩削りフライス加工に適していることに気付くであろう。
【0034】
一実施形態では、本発明による三角形の切削インサートは、主切削エッジおよび副切削エッジを有し、主切削エッジの各々は同一の長さを有し、副切削エッジの各々は同一の長さを有し、主切削エッジの長さは副切削エッジの長さの少なくとも2倍である。一実施形態では、主切削エッジの長さは、副切削エッジの長さの少なくとも3倍または少なくとも4倍である。主切削エッジおよび副切削エッジが同一の長さまたはほぼ同一の長さを有する切削インサートと比較すると、同じ切削深さを設けるために必要な材料はより少ない。
【0035】
上記の目的のうちの少なくとも1つは、工具本体を備える肩削りフライス加工工具であって、工具本体が、複数のインサート座と、上記で述べられたような実施形態のいずれか1つによる複数の割り出し可能な切削インサートとを含み、切削インサートがインサート座に取り付けられている、肩削りフライス加工工具によって解決される。
【0036】
本開示のさらなる利点、特徴、および用途は、以下の実施形態の説明および添付の図面から明らかになるであろう。本開示の実施形態の前述の説明および以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読まれるとき、より良く理解される。図示された実施形態は、図示されたまさにその配置および手段に限定されないことを理解されたい。別段の指示がない限り、異なる図面における同じ参照番号は、同じまたは対応する部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の一実施形態による割り出し可能な切削インサートを備える肩削りフライス加工工具の側面図である。
【
図2】
図1の割り出し可能な切削インサートの上面図である。
【
図3】
図1および
図2の割り出し可能な切削インサートの側面図である。
【
図4】
図3の側面図と比較されたときに30°回転されている
図1から
図3の割り出し可能な切削インサートの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1の肩削りフライス加工工具は、ワークピース(図示せず)に肩部をフライス加工するために設計されており、肩部は、ワークピースに機械加工される壁面と底面との間の90°の角度を有する。
【0039】
肩削りフライス加工工具1は、工具本体2を備え、工具本体は、複数のインサート座3と、動作時には、インサート座3に取り付けられた複数の割り出し可能な切削インサート4とを含む。
図1では、単一の割り出し可能な切削インサート4のみがインサート座3に示されており、残りのインサート座3は切削インサート4なしで示されている。
【0040】
切削インサート4の各々は、三角形の基本形状を有する。切削インサート4は、切削インサート4の底面図が
図2の上面図と同じになるように、同一の上面5および底面6を有する。以下の上面5に関して説明される各特徴は、一方で底面6に関しても説明され得る。
【0041】
上面5および底面6は、それぞれ3回対称性を有する。しかしながら、上面5および底面6によって画定された三角形は、上部三角形の角の角度位置が底部三角形の角の角度位置と異なるように互いにねじれている。三角形の上面5と三角形の底面6とは、3つの周面7によって接続されている。周面7の各々は、上面5の単一の側面に沿って、かつ底面6の単一の側面に沿って延在する。
【0042】
上面5および底面6の各々は、3組の切削エッジを備え、各組の切削エッジは、主切削エッジ9、副切削エッジ10、および主切削エッジ9と副切削エッジ10とを接続する切削コーナ8によって形成される。したがって、切削インサート4は、合わせて6組の切削エッジを有する。切削コーナ8および切削エッジ9、10の各々は、上面5または底面6のいずれかと3つの周面7のうちの1つとの交差部に設けられる。
【0043】
上面5は、平坦上部支持面11を備え、副切削エッジ10の各々は、その範囲全体にわたって、平坦支持面11によって画定された高さよりも高くされている。切削コーナ8が、高くされた副切削エッジ10と主切削エッジ9とを接続していることにより、主切削エッジ9は、少なくとも部分的に平坦支持面11よりも高くされている。しかしながら、主切削エッジ9は、切削コーナ8から始まり、完全に上部支持面11より下の高さまで下降する。この主切削エッジ9の傾斜は、正の有効軸方向角度でインサート4を工具本体2に取り付けることを可能にする。
【0044】
高くされる幾何学的形状により、副切削エッジ10の各々は、同様に平坦支持面11によって画定された高さよりも高くされた副チップ面12を備える。主切削エッジ9の各々は、平坦支持面11によって画定された高さよりも部分的に高くされた主チップ面13を備える。主切削エッジ9および副切削エッジ10が正の楔角を有するように、主チップ面13および副チップ面12は支持面11に対して傾斜している。
【0045】
切削インサート4が
図1の工具本体2のインサート座3に取り付けられると、切削コーナ8および切削エッジ9、10を備える1組の切削エッジが有効になる。有効な副切削エッジ10は、工具本体2の回転軸14に対して垂直である。回転軸および副切削エッジ10に平行であり、かつこれらを含む平面に延びたとき、切削コーナ8によって有効な副切削エッジ10に接続された有効な主切削エッジ9は、有効な副切削エッジ10に対して垂直である。
【0046】
図3の側面図のビュー方向は、上面および底面の主切削エッジ9のそれぞれに対して垂直である。周面7の各々は、いくつかの表面部分を有する。
【0047】
各周面7において、中央には単一の平坦接触面15が設けられている。平坦接触面15の各々は、上面5の主切削エッジ9および底面6の主切削エッジ9によって画定されている。さらに、斜め方向の平坦接触面15の各々は、上面5の切削コーナ8から底面6の切削コーナ8まで延在する。
【0048】
図3の側面図から、コーナ8および切削エッジ9、10を備える第1の組の切削エッジの各主切削エッジ9が、移行エッジ16によって「隣」の組の副切削エッジ10に接続されていることは明らかである。したがって、上面5および底面6の各々は、3つの移行エッジ16を備える。移行エッジ16は、その一端で主切削エッジ9を終端させる。中間平面に延びたとき、移行エッジ16は、主切削エッジ9と角度を成す。
【0049】
副切削エッジ10および主切削エッジ9が支持面11によって画定された高さよりも少なくとも部分的に高くされているため、同じ周面7で主切削エッジ9と隣の副切削エッジ10とを接続する移行エッジ16は、支持面11より下の高さから副切削エッジ10によって画定された高さまで隆起する。
【0050】
接触面15は、上面5および底面6の両方の支持面11に対して垂直である。したがって、接触面15は、上面と底面との中間に位置する中間平面に対して垂直である。接触面15は、主切削エッジ9の逃げ面を形成する。その結果、
図1から
図4の切削インサートは、主切削エッジ9に関して負の切削インサートになっている。
【0051】
中間平面では、接触面15の各々は、接触面15を画定する主切削エッジ9の位置の、主切削エッジ9に沿った接触面15の長さよりも小さい周方向範囲を有する。
【0052】
接触面15は、軸周方向(longitudinal,circumferential direction)のその両側では、移行表面部分17によって、副切削エッジ10に関連する副逃げ面18から分離されている。副逃げ面18の各々は、それぞれの副切削エッジ10から始まり、切削インサート4が副切削エッジ10に関して正のインサートになるようにその範囲において中間平面に向かって傾斜している。
【0053】
主切削エッジ9の各々は同一の全長を有し、副切削エッジ10の各々は同一の全長を有する。中間平面に延びたとき、主切削エッジの各々の全長は、副切削エッジ10の各々の全長の約5倍である。したがって、三角形に内接する円は、三角形の各辺に1回だけ接する。選択された幾何学的形状により、内接円は、主切削エッジ9で辺の各々に接する。
【0054】
図1から
図4の実施形態では、主切削エッジ9および副切削エッジ10の各々は直線状である。
【0055】
上記された切削インサート4の複雑な幾何学的形状は、主切削エッジ9で負であり、副切削エッジ10で正である切削インサート4を提供する。選択された幾何学的形状は、周面7の接触面15の大きな面積を可能にし、工具本体2のインサート座3に取り付けられたときのインサート4の位置決め安定性を向上させる。さらに、切削エッジ9、10および切削コーナ8を支持面11の高さよりも高くすることによって、支持面11の面積がさらに増大し、これにより、インサート座3に取り付けられたときのインサート4の位置決め安定性がさらに向上する。
【0056】
一実施形態に関連して説明された特徴は、当業者によって容易に理解され得るように、他の実施形態でも使用され得ることに留意されたい。
【0057】
本開示は、図面を参照して詳細に説明されてきたが、説明は一例にすぎず、特許請求の範囲によって規定される保護の範囲を限定するとは考えられない。
【0058】
特許請求の範囲において、「を備える」という語は他の要素またはステップを排除せず、不定冠詞「a」は複数を排除しない。いくつかの特徴が異なる請求項で特許請求されているという単なる事実は、それらの組み合わせを排除しない。特許請求の範囲における参照番号は、保護の範囲を限定するとは考えられない。
【符号の説明】
【0059】
1 肩削りフライス加工工具
2 工具本体
3 インサート座
4 切削インサート
5 三角形の上面
6 三角形の底面
7 周面
8 切削コーナ
9 主切削エッジ
10 副切削エッジ
11 平坦支持面
12 副チップ面
13 主チップ面
14 回転軸
15 平坦接触面
16 移行エッジ
17 移行表面部分
18 副逃げ面
【国際調査報告】