(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】組換えエンドペプチダーゼを含む酵素組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/57 20060101AFI20220930BHJP
C12N 9/52 20060101ALI20220930BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20220930BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220930BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220930BHJP
A23L 33/18 20160101ALI20220930BHJP
A61K 38/48 20060101ALI20220930BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20220930BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
C12N15/57
C12N9/52 ZNA
C12P21/00 C
C12N15/63 Z
C12N1/21
A23L33/18
A61K38/48
A61P1/00
A61P37/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022503449
(86)(22)【出願日】2020-07-08
(85)【翻訳文提出日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2020069297
(87)【国際公開番号】W WO2021013553
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】102019000012942
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522021848
【氏名又は名称】ネミシス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タラベラ,アンナ
(72)【発明者】
【氏名】カレンジ,ジャコモ
(72)【発明者】
【氏名】シグルタ,アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】カヴァレッティ,リンダ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B050
4B064
4B065
4C084
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB10
4B018MD49
4B018MD90
4B018ME07
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4B050CC07
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4B050EE01
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4C084AA02
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4C084CA04
4C084DC02
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZA66
4C084ZB07
(57)【要約】
本発明は、グルテナーゼ活性を有する少なくとも1つの組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼを含む、ヒトの使用に適した酵素調製物の、高収率で得られる製造方法に関する。本発明はさらに、目的の組換えエンドペプチダーゼを発現するための組換え発現ベクター、及び前記ベクターを含むS.lividans宿主細胞に関する。さらに本発明は、前記方法によって得られる酵素調製物、その調合物、及びその臨床用途に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルテナーゼ活性を有する少なくとも1つの組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼを含む酵素調製物の製造方法であって、
組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼが、好ましくはその成熟型であり、好ましくは以下からなる群から選択され:配列番号1を含む配列のエンドペプチダーゼ40(E40);E40の生物活性断片;天然由来のE40の対立遺伝子変異体;及び、配列番号1に対して少なくとも60%、70%、80%、90%又は95%の同一性を有する配列のエンドペプチダーゼ、
以下の工程を順番に含む方法:
a)組換えStreptomyces lividans宿主細胞、好ましくはTK24株を、発酵条件下の培養液中で培養する工程であって、
組換え宿主細胞が、少なくとも1つの組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼの異種発現のための組換え発現ベクターを含み、
組換え発現ベクターが、組換え宿主細胞における少なくとも1つの組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼの発現を指示できる調節配列に作動可能に連結した、少なくとも1つの組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼをコードするポリヌクレオチドを含み、
培養液が、少なくとも30%(wt/vol)のスクロースを含む工程;
b)少なくとも1つの組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼを含む培養液の上清を回収する工程;及び、
c)上清から、少なくとも1つの組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼを含む酵素調製物を精製する工程であって、
精製酵素調製物が、好ましくは、配列番号1を含む、又は配列番号1からなる配列のE40の成熟型を含み、より好ましくは、配列番号2を含む、又は配列番号2からなる配列のヒスチジンタグ付きE40を含み、
酵素調製物が、好ましくは、粉末形態である工程。
【請求項2】
発酵条件が、組換え宿主細胞を28℃から30℃の間、好ましくは約30℃の温度で培養することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程b)において、発酵条件下の培養が、少なくとも48時間、好ましくは少なくとも72時間行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
組換え発現ベクターが、配列番号1を含む配列のE40をコードするポリヌクレオチド、好ましくは配列番号3又は配列番号4からなる配列のE40をコードするポリヌクレオチドを含み、
ポリヌクレオチドが、配列番号5もしくは配列番号6の配列のもの、又は配列番号5もしくは配列番号6に対して少なくとも60%、70%、80%、90%もしくは95%の同一性を有する配列のものであり、より好ましくは、ポリヌクレオチドが、配列番号2を含む配列のヒスチジンタグ付きE40をコードする配列番号6の配列のものであり、
より好ましくは、培養液の上清から精製された酵素調製物が、ヒスチジンタグ付きE40の成熟型を含み、
成熟型が、配列番号2の配列を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
組換え発現ベクターが、組換えpIJ86であり、好ましくは組換え発現ベクターが配列番号8の配列のものである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法によって得られる酵素調製物。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法のステップc)で回収された培養液の上清から単離された、又は請求項5の酵素調製物から単離された、グルテナーゼ活性を有する単離された組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼであって、好ましくは、以下からなる群から選択される単離された組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼ:配列番号1を含む配列のエンドペプチダーゼ40(E40);E40の生物活性断片;天然由来のE40の対立遺伝子変異体;及び、配列番号1に対して少なくとも60%、70%、80%、90%又は95%の同一性を有する配列のエンドペプチダーゼ。
【請求項8】
配列番号5又は配列番号6を含む配列を有するポリペプチドを含む組換えpIJ86発現ベクター、好ましくは、配列番号8の配列を有する組換えpIJ86発現ベクター。
【請求項9】
請求項8に記載の組換え発現ベクターを含む、好ましくはTK24株の組換えStreptomyces lividans宿主細胞、好ましくは、DSM 33207株の組換えStreptomyces lividans宿主細胞。
【請求項10】
請求項6に記載の酵素調製物、又は請求項7に記載の単離された組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼをタンパク質分解活性成分として含む調合物であって、
好ましくは、調合物が、食品もしくは食品サプリメント、又は医薬製剤であり、
より好ましくは、調合物が、食品サプリメント、又は請求項6に記載の酵素調製物もしくは請求項7に記載の単離された組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼと接触させた小麦粉である、調合物。
【請求項11】
セリアック病もしくはセリアック病に関連する障害、又は非セリアックグルテン過敏症の治療及び/又は予防において使用するための、請求項6に記載の酵素調製物、又は請求項7に記載の単離された組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼ、又は請求項10に記載の調合物であって、
好ましくは、配列番号6の配列のグリアジンペプチドに対する不耐性を伴う任意の障害の治療及び/又は予防において使用するための、あるいは、ナッツ及び/又はピーナッツに対するアレルギーもしくは不耐性の治療及び/又は予防において使用するための、酵素調製物、又は単離された組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼ、又は調合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
セリアック病(CD)は、グルテンが引き金となる慢性自己免疫性腸疾患である(1;非特許文献1)。グルテンは、小麦、ライ麦、大麦に含まれるグリアジン及びグルテニンからなる不溶性タンパク質の不均質な混合物である(2;非特許文献2)。グルテンタンパク質は、消化管のヒトプロテアーゼにはほとんどアクセスできないため、プロリン/グルタミンを多く含む大きなペプチドが小腸に達し、CD患者の体液性及びT細胞媒介適応免疫反応の引き金となることがある。
【0002】
現在までに、消化管内消化に耐性のあるいくつかのT細胞刺激ペプチドが、グリアジンタンパク質及びグルテニンタンパク質のいずれかで同定されている。これらのうち、配列LQLQPFPQPQLPYPQPQLPYPQPQLPYPQPQPF(配列番号:12)を有するα-グリアジン由来の33-merペプチドが、CDの患者において免疫原性のエピトープの複数のコピーを有するため、現在最も免疫原性の高いペプチドと考えられている(5;非特許文献3)。
【0003】
生涯にわたる厳格なグルテンフリー食(GFD)の順守が、現在のCD患者に対する治療法である(6;非特許文献4)。しかし、グルテンを完全に避けることは現実的に不可能であり、新しい治療法が集中的に研究され(7;非特許文献5)、消化管環境中のグルテンやグルテンの毒性断片を消化できる「グルテナーゼ」と呼ばれる新しい酵素の開発に至った。
【0004】
特許文献1は、本発明者らが好酸性放線菌Actinoallomurus A8において特定した新規グルテナーゼ群、すなわちグルテナーゼ活性を有するエンドペプチダーゼを開示している。前記Actinoallomurusエンドペプチダーゼは、グルテンペプチドを非毒性ペプチドに分解する際に非常に迅速かつ効率的であり、胃及び腸環境の全pH範囲において活性であり(酵素活性はpH3~6の範囲で見られ、最適はpH5である)、さらに消化管内酵素による分解に耐性を示す。
【0005】
このため、これらの新規なActinoallomurusエンドペプチダーゼは、CD及びCD関連疾患の治療及び/又は予防での使用に非常に適している。特許文献1に開示された前記Actinoallomurusエンドペプチダーゼのうち、エンドペプチダーゼ40(E40)が特に注目されていると認められる。E40の天然タンパク質は398個のアミノ酸残基からなり(配列番号:3参照)、セリンカルボキシルペプチダーゼS53ファミリーに属し、156、160及び329位にそれぞれアスパラギン酸、グルタミン酸及びセリンによって触媒三残基が形成されている。
【0006】
N末端のシグナルペプチドはsignalP 4.1サーバー解析により27位と28位の間に同定されており、成熟型は74位から始まると予測され、予測通り32.5kDaの成熟酵素が得られる結果となった。天然E40の成熟型は、配列番号1のポリペプチドである。
【0007】
グルテナーゼ活性を有する前記Actinoallomurusエンドペプチダーゼ、特に配列番号1を含む、又は配列番号1からなる配列のE40を効率的かつ安価に製造する方法の開発に強い関心が持たれている。
【0008】
以下、E40は、配列番号1を含む配列のエンドペプチダーゼ(すなわち、配列番号1からなる配列のエンドペプチダーゼ、又は配列番号1を含む配列を有するその誘導体)を特定するために用いられる。E40の典型的な誘導体はタグ付きE40、例えば配列番号2を含む、又は配列番号2からなる配列を有するエンドペプチダーゼである。
【0009】
組換えDNA(rDNA)技術は、目的のポリペプチドを、比較的安価な方法で、制御してスケーラブルに生産するための非常に強力な技術基盤を提供するものである。組換えタンパク質は今日、大腸菌、出芽酵母、昆虫、ハムスター、及び哺乳類の細胞で得られる。
【0010】
しかし、大量の組換えタンパク質の生産を改善することが求められている。さらに、タンパク質がヒトの使用のために生産されるとき、例えば、食品サプリメントとして、及び/又はヒトの病気の予防及び/又は治療における医薬品として使用するために満たされるべき非常に厳しい要件がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Abadie,V.,Sollid,L.M.,Barreiro,L.B.,Jabri,B.Integration of genetic and immunological insights into a model of celiac disease pathogenesis.Annu Rev Immunol.29,493-525(2011).
【非特許文献2】Wieser,H.Chemistry of gluten proteins.Food Microbiol.24,115-9(2007).
【非特許文献3】Shan,L.,Molberg,O.,Parrot,I.,Hausch,F.,Filiz,F.,Gray,G.M.,Sollid,L.M.,Khosla,C.Structural basis for gluten intolerance in celiac sprue.Science 297,2275-2279(2002).
【非特許文献4】Kupper,C.Dietary guidelines and implementation for celiac disease.Gastroenterology 128,S121-7(2005).
【非特許文献5】Ribeiro,M.,Nunes,F.M.,Rodriguez-Quijano,M.,Carrillo,J.M.,Branlard,G.,Igrejas,G.Next-generation therapies for celiac disease:The gluten-targeted approaches.Trends in Food Science and Technology,5,56-71(2018).
【発明の概要】
【0013】
したがって、本発明は、WO2013/083338に開示されたActinoallomurusエンドペプチダーゼの少なくとも1つを組換えタンパク質として含む酵素調製物の効率的かつ安価な改善された製造方法を提供することを目的とする。前記酵素調製物はヒトの使用に適し、必要に応じて、さらに適切な調合物とする。
【0014】
放線菌は、ヒトの食物用途のタンパク質の安全な供給源と見なされている。ストレプトマイセス種から供給される食品酵素の2つの例は、フルクトースシロップの生産に使用されるグルコースイソメラーゼ(12)と、加工肉や魚肉製品、乳製品、及び焼成食品などの最終製品の食感や全体の品質を向上させる特性のために食品業界で使用されるS.mobaraensis由来の広く利用されているトランスグルタミナーゼ(13)である。
【0015】
本発明者らは、Streptomyces lividansが、本発明の改善された方法に採用するのに特に有利な宿主細胞であることを見いだした。
【0016】
したがって、本発明は、S.lividans宿主細胞における、グルテナーゼ活性を有する少なくとも1つの組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼを含む酵素調製物の製造方法を提供する。当該方法は、目的の組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼを発現する前記宿主細胞を発酵条件下で培養する段階と、その後の産生した組換えエンドペプチダーゼを含む宿主細胞の培養液の上清を回収する段階を特徴とする。好ましくは、前記回収の段階の後に、前記上清から、目的のグルテナーゼ活性を有する組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼを含む最終酵素調製物を精製する段階が続く。
【0017】
S.lividans細胞は、前記細胞で発現させた組換えタンパク質を直接分泌し、培養液中に放出することができるため、組換えタンパク質の産生に効率の良い宿主細胞であることが知られている。しかし、S.lividansでは、様々なタンパク質が非常に様々な収率で得られ、この結果は予測不可能である(12)。さらに、S.lividans細胞は二次代謝産物、特に抗生物質を大量に産生するため(12)、S.lividansを生理的消化酵素の補充を目的とした酵素調製物の製造に適切な細胞工場として確立する可能性を危うくする。
【0018】
本発明の方法は、目的とする組換えグルテナーゼを多量に含む酵素調製物を得る。驚くべきことに、発酵条件下で宿主細胞を培養したにもかかわらず、本発明の方法によって得られた酵素調製物は、食品、食品サプリメント又は医薬製剤中のヒト摂取に対して規制上許容できないであろうS.lividansから放出される潜在的な有害二次代謝産物(例えば抗生物質など)を実質的に含まない。本発明の方法によって得られた酵素調製物はヒトの使用に適している(必要に応じて、さらに適切なその調合物とする)。
【0019】
[発明の簡単な説明]
本発明は、グルテナーゼ活性を有する少なくとも1つの組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼを含む酵素調製物の製造方法に関し、組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼを発現し得るS.lividans宿主細胞のバッチを、少なくとも30%(wt/vol)のスクロースを含む培養液で、発酵条件下で培養し、次に宿主細胞培養物の上清から酵素調製物を回収及び精製することを特徴とする。
【0020】
酵素調製物は、本発明の方法によって高収率で得られ、抗生物質を実質的に含まないため、ヒトの使用に適している。抗生物質を「実質的に含まない」という用語は、微生物学的及び定量的HPLCアッセイのいずれにおいても、酵素調製物中に抗生物質が検出されないことを意味する。
【0021】
本発明はさらに、前記方法によって得られた前記酵素調製物、ヒトの使用に適した前記酵素調製物の調合物、目的の組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼをコードする核酸を有する組換え発現ベクター、及び前記組換え発現ベクターを含み前記組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼを安定して発現するS.lividans宿主細胞に関する。
【0022】
さらに本発明は、本発明の酵素調製物及びその調合物の臨床用途にも関する。好ましくは、グルテナーゼ活性を有する少なくとも1つの目的のActinoallomurusエンドペプチダーゼは、配列番号1を含む配列を有する、E40又はその誘導体である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】天然E40を含むActinoallomurus A8培養物の上清画分の活性。A:様々なpH値における基質sucAlaAlaProPhe-AMC(sucAAPF-AMC)に対する相対活性(最適値-100%活性-はpH5)。B:37℃、pH3で2時間インキュベートした後のグリアジン消化。ゲルはクマシーブリリアントブルーR250で染色した;レーン1:グリアジン単独、レーン2:グリアジン+E40含有上清画分。
【
図2】E40コーディング遺伝子搭載ベクターpIJ86(pIJ86/e40組換え発現ベクター)のマップ。
【
図3】S.lividans TK24/plJ86/e40の液中発酵により、フラスコスケールで得られた(パネルA~C)、又は15Lバイオリアクターの後、精製して得られた(パネルD~E)組換えE40(配列番号:2)。A:産生性S.lividans TK24/plJ86/E40(E40、実線)から様々な発酵時間(発酵時間:◆72、▲96、●168、■192)に採取した上清サンプルのpH5での基質sucAAPF-AMCに対する活性と、pIJ86-空対照株(ctr、破線)から採取した上清サンプルの非活性の比較。活性は、時間(X軸)で生じた相対蛍光単位(rfu、Y軸)で示す。B:発酵168時間のE40上清サンプルが示す様々なpHでの相対活性(%):最適(100%活性)はpH5である。C:168時間E40上清サンプルのpH5でのザイモグラフィ。パネルAと同じ基質を用い、UV光下で可視化した。D:15L発酵から精製した組換えE40を含む酵素調製物のプロファイル。レーン1:クマシーで染色した組換えE40を含む最終酵素調製物(矢印が組換えE40を示す)。レーン2:Cと同様のザイモグラフィ。レーン3:37℃、pH5で2時間消化した後のゼラチン加水分解のバンド。ゼラチン基質のクマシー染色後に可視化した。E:精製した酵素調製物中の組換えE40の様々なpH値(2~8)での相対活性(%)。基質suc-Ala-Ala-Pro-Phe-pNAで評価した。
【
図4】組換えE40の活性は、消化プロテアーゼであるペプシン(P)の存在下又は非存在下、pH4、4.5、5(パネルA~C)、及びトリプシン(T)の存在下又は非存在下、pH6、7(パネルD~E、E’)において評価した。E40酵素単独(〇で囲われた1の線)、酵素とP(〇で囲われた2の線)、酵素とT(〇で囲われた4の線)、及びP又はT単独(それぞれ、〇で囲われた3、〇で囲われた5の線)を含む酵素調製物のサンプルに、基質を添加して反応を開始した。各反応条件は二重試験で行い、エラーバーは標準偏差を表す。パネルE’はEの拡大図である。X軸:インキュベーション時間(分)、Y軸:410nmで読み取った吸光度の単位。(R
2値は、E40単独では0.9948,0.9976,0.9978,0.9639,0.9994。E40+P/TではpH4、4.5、5、6及び7で、それぞれ、0.993,0.9975,0.9982:0.9661,0.9994)であった。
【
図5】33-merペプチドを組換えE40で消化した際のLC/MSプロファイル(pH5、37℃、E40の33-merペプチドに対するモル比は1:48)。A:完全なペプチド単独(三重荷電イオン[(M
+3H
+)
3+=1304.68]);a=14.75;1304.63。B-E:E40活性による33-mer切断の時間経過。b=13.07,1010.27;c=14.84,1304.46;d=14.99,1304.50;e=15.13,1304.14;f=7.80,842.11;g=8.02,842.34;h=8.24,842.36;i=11.62,244.16;l=11.84,1086.38;m=12.38,745.13;n=13.17,956.23;o=7.52,842.38;p=11.59,1086.51;q=12.12,745.22;r=6.66,842.37;s=11.45,1086.48;t=11.93,745.23.消化中に形成されたペプチド断片を矢印で示す。F:最終的に残存じたペプチドから推定されるE40切断部位の模式的可視化。
【
図6】組換えE40とインキュベートしたグリアジンの様々なインキュベーション時間(最大240分)におけるHPLC分析。0時点では、グリアジンはω-、α-、γ-グリアジンの疎水性に応じて溶出する。
【
図7A】A:5名の異なるセリアック病患者の空腸生検から得たグリアジン反応性T細胞株におけるE40処理グリアジンの認識(サンプルA~H)。陽性対照:未処理のグリアジン消化物(サンプルIとL)及びフィトヘムアグルチニン(PHA)。各パネルは、各T細胞株について3回行われたものからの代表的実験である。B:E40で消化した後の、6倍体コムギから精製したグリアジンのヒト腸管T細胞に対する免疫賦活活性(表1に規定した条件において、E40単独(サンプルA~B)、又は消化管プロテアーゼ存在下のE40(サンプルC~H)で処理したグリアジン消化物に対するT細胞応答のパーセントを、E40未処理のグリアジン消化物(サンプルI)を基準に算出して示す。)グリアジンの酵素消化物をtTG処理により脱アミド化し、腸管T細胞への刺激性を評価した。T細胞の活性化は、IFN-γ産生の測定によって決定した。すべてのグリアジン消化物は、50及び100μg/mlで評価した。データは、5名の異なるCD患者由来のT細胞株の反応の平均である。統計的な有意性を評価するために、独立スチューデントt検定を使用した。
*=p<0.05
【
図7B】A:5名の異なるセリアック病患者の空腸生検から得たグリアジン反応性T細胞株におけるE40処理グリアジンの認識(サンプルA~H)。陽性対照:未処理のグリアジン消化物(サンプルIとL)及びフィトヘムアグルチニン(PHA)。各パネルは、各T細胞株について3回行われたものからの代表的実験である。B:E40で消化した後の、6倍体コムギから精製したグリアジンのヒト腸管T細胞に対する免疫賦活活性(表1に規定した条件において、E40単独(サンプルA~B)、又は消化管プロテアーゼ存在下のE40(サンプルC~H)で処理したグリアジン消化物に対するT細胞応答のパーセントを、E40未処理のグリアジン消化物(サンプルI)を基準に算出して示す。)グリアジンの酵素消化物をtTG処理により脱アミド化し、腸管T細胞への刺激性を評価した。T細胞の活性化は、IFN-γ産生の測定によって決定した。すべてのグリアジン消化物は、50及び100μg/mlで評価した。データは、5名の異なるCD患者由来のT細胞株の反応の平均である。統計的な有意性を評価するために、独立スチューデントt検定を使用した。
*=p<0.05
【
図8】組換えE40を含む酵素調製物のSDS-PAGE。番号を付したバンドは切断し、プロテオーム解析した。
【
図9A】A:組換えE40によるピーナッツタンパク質の分解を示すSDS-PAGE。B:120分までの様々なインキュベーション時間で組換えE40とインキュベートした(酵素:基質=1:20、e:s)ピーナッツタンパク質のHPLC分析;各時点で未処理サンプルのHPLCを上部パネルに、E40処理サンプルのHPLCを下部パネルに示す。
【
図9B】A:組換えE40によるピーナッツタンパク質の分解を示すSDS-PAGE。B:120分までの様々なインキュベーション時間で組換えE40とインキュベートした(酵素:基質=1:20、e:s)ピーナッツタンパク質のHPLC分析;各時点で未処理サンプルのHPLCを上部パネルに、E40処理サンプルのHPLCを下部パネルに示す。
【
図10】スクロースの存在下/非存在下におけるS.lividansのE40産生。スクロース無添加(◆、Suc0)、又は17%(■、Suc17)もしくは34%スクロース添加(▲、Suc34)の培養液Pで増殖させたS.lividans TK24/plJ86/E40培養物の上清で評価したタンパク質分解活性。サンプルは様々な発酵時間で採取する(A:120h;B:144h;C:168h)。活性は、時間(分、X軸)内に生成された相対蛍光単位(rfu、Y軸)として示す。
【
図11】Pichia pastorisのE40産生。E40発現誘導から50時間又は96時間後の組換えP.pastoris培養物の上清で評価したタンパク質分解活性。活性は、時間(X軸;分)内の吸光度(Y軸;ミリ吸光度単位、mau)の増加として示す。AとC:それぞれpH6でスクロースなし又は34%スクロースありで増殖させた培養液からのサンプル;BとD:それぞれpH7でスクロースなし又は34%スクロースありで増殖させた培養液からのサンプル。
【
図12】大腸菌のE40産生。E40を発現するように形質転換した大腸菌細胞から得られた粗抽出物において評価したタンパク質分解活性。本発明に従って増殖させたS.lividans TK24/plJ86/E40培養物の上清のタンパク質分解活性を、比較のためにグラフで報告する。活性は、時間(分、X軸)内に生成された相対蛍光単位(rfu、Y軸)として示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[発明の詳細な説明]
本発明は、グルテナーゼ活性を有する少なくとも1つの組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼの成熟型を含む酵素調製物を製造する方法であって、以下を順番に含む方法に関する:組換えStreptomyces lividans宿主細胞、好ましくはTK24株を、発酵条件下の培養液中で培養すること(前記組換え宿主細胞は、少なくとも1つの組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼの異種発現のための組換え発現ベクターを含む。前記組換え発現ベクターは、前記組換え宿主細胞における前記少なくとも1つの組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼの発現を指示できる調節配列に作動可能に連結した、前記少なくとも1つの組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼをコードするポリヌクレオチドを含む。);培養液の上清を回収し、前記上清から、少なくとも1つの組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼの成熟型を含む酵素調製物を精製すること。
【0025】
本発明の方法によって得られる酵素調製物中の少なくとも1つの組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼは、好ましくは以下からなる群から選択される:配列番号1を含む配列のエンドペプチダーゼ40(E40);E40の生物活性断片;天然由来のE40の対立遺伝子変異体;及び、配列番号1に対して少なくとも60%、70%、80%、90%又は95%の同一性を有する配列のエンドペプチダーゼ。
【0026】
本明細書で使用される「酵素(又は酵素の)調製物」という用語は、本発明の方法の最後に得られる、グルテナーゼ活性を有する少なくとも1つの組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼを含む(に富む)生成物を指す。前記生成物は、他の成分をさらに含む組成物であってもよい。
【0027】
「生物活性断片」という用語は、特定のグルテナーゼ活性を維持する本発明のエンドペプチダーゼの部分を指す。
【0028】
本発明によるエンドペプチダーゼの「生物活性断片」は、例えば、以下の通り同定できる:配列番号3又は4のエンドペプチダーゼ断片をコードするポリヌクレオチド(例えば、配列番号5又は6のポリヌクレオチドのポリヌクレオチド部分)を単離する;コードされたエンドペプチダーゼ断片を発現させ(例えば、in vitroでの組換え発現による)、前記エンドペプチダーゼ断片がエンドペプチダーゼと同じグルテナーゼ活性を有するかを適切なアッセイによって確認する。適切なアッセイは例えば本実施例で開示した任意の酵素活性アッセイである。
【0029】
また本発明の方法は、遺伝暗号の縮重のために配列番号5又は6の配列のポリヌクレオチドによってコードされるのと同じエンドペプチダーゼをコードする、核酸配列の配列番号5又は6とは異なる配列を有するポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターをS.lividans宿主細胞内に導入することによって、グルテナーゼ活性を有する少なくとも1つの組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼを含む酵素調製物を得ることを含む。
【0030】
本発明の方法によって得られるエンドペプチダーゼは、エンドペプチダーゼの生物活性に必須ではないアミノ酸残基の変化を含む配列を有することができる。「生物学的活性」とは、本明細書では、配列番号3の配列の天然Actinoallomurusエンドペプチダーゼの天然又は通常の機能であり、例えば、グルテンタンパク質を分解する能力である。
【0031】
本発明の方法は、配列番号1に対して少なくとも60%、70%、80%、90%又は95%の同一性を有する配列の少なくとも1つの組換えエンドペプチダーゼを含む酵素調製物を得ることを含む。ヌクレオチド又はアミノ酸配列に言及する場合の「同一性」及び「相同性」という用語は、本明細書では同じ意味で用いられ、2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド配列が、比較する特定の領域において残基ごとに同一又は相同である度合いを示す。
【0032】
配列比較及び同一性又は相同性のパーセントは、当技術分野で公知の任意の適切なソフトウェアプログラムを用いて決定することができる。例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel F.M.et al.,“Commercially Available Software”,Current Protocols in Molecular,1987,Supplement 30,Section 7.7.18,Table 7.7.1)に記載のものである。
【0033】
好ましいプログラムとしては、GCG Pileup program、FASTA(Pearson R.and Lipman D.J.“Improved Tools for Biological Sequence Analysis”Proc.Natl.,Acad.Sci.USA,1988,85,2444-2448)、及びBLAST(Altschul S.F.,Gish W.,Miller W.,Myers E.W.,Lipman D.J.“Basic local alignment search tool”J.Mol.Biol.,1990,215,403-410)を挙げることができる。
【0034】
「対立遺伝子変異体」という用語は、同じ染色体遺伝子座を占める遺伝子の2つ以上の変化した形態のいずれかを意味する。対立遺伝子変異は突然変異によって自然に発生し、集団内で表現型多型をもたらすことがある。遺伝子の変異は、サイレント(コードされたポリペプチドに変化がない)の場合もあれば、アミノ酸配列が変化したポリペプチドをコードする場合もある。対立遺伝子変異体という用語は、遺伝子の対立遺伝子変異体によってコードされるタンパク質も指す。
【0035】
本発明の方法によって得られる酵素調製物の少なくとも1つのエンドペプチダーゼは、別のポリペプチド、例えばタグと作動的に融合することもできる。好ましくは、本発明の方法によって得られる酵素調製物の少なくとも1つのエンドペプチダーゼはタグ付きエンドペプチダーゼ、より好ましくはヒスチジンタグ付きエンドペプチダーゼ、最も好ましくはタンパク質のC末端にタグが付いた、配列番号2を含む、又は配列番号2からなる配列のエンドペプチダーゼなどである。
【0036】
本発明の方法によって得られる酵素調製物の少なくとも1つのActinoallomurusエンドペプチダーゼは、ストレプトマイセス宿主細胞が発現したエンドペプチダーゼをプロセシングし、培養液中に成熟型で分泌することができるため、成熟型であることが注記される。例えば、天然E40は配列番号3を有し、その成熟型は配列番号1を有する。
【0037】
本発明の方法に従ってS.lividans宿主細胞で産生される組換えエンドペプチダーゼとして、全コード配列(配列番号:3)を宿主細胞に導入したにもかかわらず、E40は、配列番号1を含む、又は配列番号1からなる配列の成熟E40として培養液中に分泌される。
【0038】
本発明の酵素調製物は、前記少なくとも1つの組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼに富むことが好ましく、より好ましくは、酵素調製物は、少なくとも1つの組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼ以外のエンドペプチダーゼを含まない。例えば、酵素調製物は、S.lividans由来のエンドペプチダーゼを含まないことが好ましい。
【0039】
S.lividans宿主細胞は、発酵条件下で、適切な培養液中で培養される。「発酵条件」とは、細胞株が増殖し、目的化合物(組換えエンドペプチダーゼ)を産生するのに適した宿主細胞株の培養条件(培養液組成、撹拌パラメータ、通気、及び温度)を意味する。
【0040】
特に、本発明の方法の発酵条件の培養液は、非動物由来の適切な栄養素、炭素源、窒素源及び無機塩を含み、少なくとも30%(wt/vol)のスクロース(すなわち、培養液100ml当たり少なくとも30gのスクロース)、好ましくは約34%のスクロース(wt/vol)を含むことを特徴とする。
【0041】
本発明による発酵条件は、したがって、少なくとも30%(wt/vol)のスクロースを含む適切な培養液中で組換え宿主細胞を培養することを含む。組換え宿主細胞の発酵は、25℃から30℃、好ましくは28℃から30℃、より好ましくは約30℃の温度で行われる。発酵は、好ましくは、培養液のpHが7超となるまで、及び/又は培養液中のグルコースが完全に消費されるまで、及び/又は培養液中に分泌された組換えタンパク質が、本明細書の実施例5に記載のように測定した上清1mL当たり8au/分より大きい活性を有するまで継続される。好ましくは、発酵は、次に続く精製のために培養液の上清を回収する前に、少なくとも48時間、好ましくは少なくとも72時間継続される。
【0042】
好ましくは、培養液は、さらに酵母エキス及び大豆ペプトンを含む。本発明の方法に用いられる特に好ましい培養液は、スクロース(約340g/L)、グルコース(約20g/L)、酵母エキス(約3g/L)、大豆ペプトン(約5g/L)、麦芽エキス(約3g/L)を含み、pHが約6.7の培養液Pである。
【0043】
好ましくは、本発明の方法は、組換え宿主細胞を発酵条件下で培養する工程の前に、グルコース、酵母エキス及び大豆ペプトンを含む第1培養液中で組換えS.lividans宿主細胞の胞子懸濁液を約30℃で3~7日間、好ましくは約4日間培養する第1工程を含む。より好ましくは、前記第1培養液は、グルコース(約20g/L)、酵母エキス(約5g/L)、大豆ペプトン(約10g/L)、NaCl(約1g/L)を含む、pHが約6.7の培養液Vである。
【0044】
好ましくは、組換え宿主細胞の選択のための培養液に適切な量の抗生物質を添加、好ましくはアプラマイシンを添加、より好ましくは50mg/Lを添加する。任意に、前記抗生物質は、宿主細胞を培養する第1段階の培養液にのみ添加し、発酵工程の培養液には添加しない。
【0045】
宿主細胞は、実験室又は工業用発酵槽で、小規模又は大規模な発酵により培養することができる。
【0046】
組換えエンドペプチダーゼは、培養液中に分泌されるため、培養液から直接回収することができる。組換えエンドペプチダーゼを含む培養液の上清は、例えば収集した培養液をさらに遠心分離するなどの当技術分野で公知の方法によって回収することができる。
【0047】
上清の回収に加え、本発明の方法は、好ましくは、前記上清から酵素調製物を精製する1以上の工程を含む。培養液は、例えば、微生物体を分離するために濾過し、次に、いくつかの手順(例えば、限外濾過、減圧下濃縮、塩析、有機溶媒による沈殿、透析、ゲル濾過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、焦点電気泳動、及び凍結乾燥)の1つ以上の手段により濾液を処理し、組換えエンドペプチダーゼを回収することができる。
【0048】
好ましくは、本発明の方法の精製工程は、回収された上清からアフィニティクロマトグラフィーによって酵素調製物を精製する工程を少なくとも含む;より好ましくは、限外濾過の工程も含む;最も好ましくは、培養液の上清からの酵素調製物の精製は、以下の工程を連続して含む:上清を濾過すること(好ましくはペーパーフィルターを通して、及び/又は孔径公称値1.0μm~0.3μmのカプセルフィルターを通して、目的の組換えエンドペプチダーゼを含む清澄化液を得る);限外濾過によって清澄化液を濃縮すること;限外濾過した清澄化液のアフィニティクロマトグラフィー、好ましくは固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(IMAC)によって酵素調製物を精製し、目的の組換えエンドペプチダーゼを含む(に富む)最終酵素調製物を得ること。
【0049】
好ましい実施形態では、精製はさらに以下を含む:アフィニティクロマトグラフィー溶出画分の色素除去(好ましくはDEAE陰イオン交換クロマトグラフィーによる)、色素除去したサンプルの濃縮及び脱塩(好ましくは限外濾過による)により、目的の組換えエンドペプチダーゼを含む(に富む)最終酵素調製物を得ること。
【0050】
本発明による組換えエンドペプチダーゼの好ましい製造方法の代表的な例を、後述する実施例2~4及び15に示す。
【0051】
好ましくは、目的のエンドペプチダーゼを発現させるために宿主細胞に導入される組換え発現ベクターは、配列番号1の配列のE40又はその誘導体をコードするポリヌクレオチドを含む。好ましくは、ポリヌクレオチドは配列番号5又は配列番号6(それぞれ、配列番号3からなる配列を有するE40、又は配列番号4からなる配列を有するC末端ヒスチジンタグ付きE40をコードする)の配列のものである。またポリヌクレオチドは、配列番号5又は配列番号6に対して少なくとも60%、70%、80%、90%又は95%の同一性を有する配列のものであってもよい。
【0052】
前記発現ベクターを含む組換えS.lividans宿主細胞は、目的とするエンドペプチダーゼを産生し、その成熟型を培養液中に分泌することができる。例えば、配列番号3の配列のE40の成熟型は、配列番号1の配列のエンドペプチダーゼであり、配列番号4のヒスチジンタグ付きE40の成熟型は、配列番号2の配列のエンドペプチダーゼである。
【0053】
本発明の方法によるヒスチジンタグ付きエンドペプチダーゼ、例えばヒスチジンタグ付きE40を含む酵素調製物の製造は、特に興味深い。したがって、好ましい実施形態においては、本発明は、組換え発現ベクターが、配列番号2を含む配列のヒスチジンタグ付きE40をコードするポリヌクレオチド(好ましくは、ポリヌクレオチドが配列番号6の配列のもの)を含み、培養液の上清から精製した酵素調製物が、配列番号4の配列のヒスチジンタグ付きE40の成熟型を含む、請求項1に係る方法に関する。
【0054】
好ましくは、本発明の方法で使用される組換え発現ベクターは、組換えpIJ86発現ベクターである。したがって、本発明は、配列番号5又は配列番号6を含む配列を有するポリペプチドを含む組換えpIJ86発現ベクターにも関し、好ましくは、配列番号8の配列を有する組換えpIJ86発現ベクターに関する。
【0055】
さらに本発明は、前記組換え発現ベクターを含む、組換えS.lividans宿主細胞、好ましくはTK24株に関し、より好ましくは、前記宿主細胞は、本発明に従った本明細書に記載の通りに得られ、ブダペスト条約の規定に基づいて、ライプニッツ研究所ドイツ微生物細胞培養コレクション(DSMZ)(Inhoffenstrasse 7B 38124、ドイツ、ブラウンシュワイク)に2019年7月17日に寄託されたDSM 33207株に関する。
【0056】
また、本発明は、本発明の方法によって得られる、グルテナーゼ活性を有する少なくとも1つの組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼの成熟型を含む酵素調製物に関する。
【0057】
好ましい実施形態では、酵素調製物は粉末状である。
好ましい実施形態では、酵素調製物に含まれる組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼは、培養液の上清から、又は培養液を精製した後に得られた酵素調製物から単離されたものである。次に本発明は、本発明の方法において組換えS.lividans宿主細胞の培養液から回収された上清から、又は本発明の方法に従って精製工程後に得られた最終酵素調製物から得られた、単離された組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼにも関する。
【0058】
好ましくは、単離された組換えActinoallomurusは、以下からなる群から選択される:配列番号1を含む配列の組換えエンドペプチダーゼ40(E40);E40の生物活性断片;天然由来のE40の対立遺伝子変異体;及び、配列番号1に対して少なくとも60%、70%、80%、90%又は95%の同一性を有する配列のエンドペプチダーゼ。より好ましくは、それは、配列番号1又は2からなる配列のエンドペプチダーゼであるか、又は配列番号1又は2に対して少なくとも60%、70%、80%、90%、又は95%の同一性を有する配列のエンドペプチダーゼである。
【0059】
任意に、本発明の方法によって得られた酵素調製物は、精製後に、それを必要とする対象に直接経口投与することができる。好ましくは、酵素調製物又は単離された組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼは、ヒトの使用に適した医薬製剤に処方される。
【0060】
したがって、本発明は、本発明の方法によって得られた酵素調製物又は単離された組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼをタンパク質分解活性成分として含む医薬製剤にも関する。
【0061】
好ましい医薬製剤は、その意図された投与経路に適合するものであり、本発明によれば、好ましくは、経口投与である。したがって、本発明の医薬製剤は、好ましくは、経口医薬製剤である。本発明による医薬製剤は、例えば溶液、エマルション等の液状製剤、又は錠剤、カプセル、半固体又は粉末等の固形製剤を作り出すために、適切な成分で調製することができる。本発明の酵素調製物の医薬製剤は、特に食材との混和に適したものを含め、様々な方法で投与することができる。
【0062】
医薬製剤中に存在するグルテナーゼ活性を有する組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼは、摂取前又は摂取中に活性化することができ、例えば適切なカプセル化によって、活性化のタイミングを制御するように処理することができる。
【0063】
本発明による適切な医薬製剤を調製するために、照射もしくは温度調節に基づくもの、又はそれらの組み合わせを含む、当該技術分野で知られている化学物質又は生物学的物質の安定化のための任意の方法を使用することができる。
【0064】
本発明の医薬製剤は、より好ましくは、胃液中に有効成分を放出するように製剤化される。この種の製剤は、例えば本発明の酵素調製物を、それを必要とする対象の胃内で放出することにより、適切な場所で最適な活性を提供することができる。
【0065】
また、本発明は、本発明の方法により得られた酵素調製物又は単離された組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼをタンパク質分解活性成分として含有する食品又は食品サプリメントを含む。
【0066】
また、本発明の方法によって得られた酵素調製物又は単離された組換えエンドペプチダーゼは、本発明の分野に関する他の先行文献(WO2011/077359、WO2003/068170、WO2005107786)に記載の通り、食品添加物として調合し、調製、供給及び販売することが可能である。
【0067】
一例として、本発明の食品サプリメントは、食品成分と容易に混合することができる顆粒状の酵素コーティング又はアンコーティング製品であってもよい。あるいは、本発明の食品サプリメントはプレミックス成分を形成することができる。あるいは、本発明の食品サプリメントは、安定化液体、水性又は油性スラリーであってもよい。
【0068】
本発明の医薬組成物又は食品サプリメントは、本発明の酵素組成物のエンドプロテアーゼが、上部消化管の内腔で放出又は活性化され、エンドプロテアーゼが胃及び膵臓の酵素を補完して摂取されたグルテンを解毒し、有害ペプチドが腸細胞層を通過するのを防ぐために、食事前、食事の直前、食事中、又は食事の直後に提供することが可能である。
【0069】
酵素調製物は、食品として調合することもできる。好ましい実施形態では、前記食品は、グルテンを分解することができる、前記酵素調製物又は前記単離された組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼと接触させた小麦粉である。
【0070】
あるいは、本発明の酵素調製物及び単離された組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼは、食品及び/又は飲料用のタンパク質加水分解物の製造にも使用することができる。
【0071】
好ましくは、本発明の酵素調製物、単離された組換えActinoallomurusエンドペプチダーゼ、医薬製剤、食品又は食品サプリメントは、セリアック病もしくはセリアック病に関連する障害、又は非セリアックグルテン過敏症、好ましくは配列番号6の配列のグリアジンペプチドに対する不耐性を伴う任意の障害の治療及び/又は予防において使用される。
【0072】
セリアック病に関連する疾患としては、以下が挙げられる:脂肪便症、疱疹状皮膚炎、セリアック病粘膜損傷、セリアック病粘膜損傷に起因する疾患(鉄欠乏性貧血、骨粗鬆症、1型糖尿病、自己免疫性甲状腺炎、及び腸疾患関連T細胞リンパ腫など)。
【0073】
さらに、グルテナーゼ活性を有するActinoallomurusエンドペプチダーゼは、ナッツ及び/又はピーナッツに対するアレルギー及び/又は不耐性を予防及び/又は治療することも可能である。したがって、本発明は、さらに前記用途に関する。
【0074】
セリアック病、セリアック病に関連する障害、非セリアックグルテン過敏症、及びナッツ及び/又はピーナッツに対するアレルギー又は不耐性からなる群から選択される障害は、したがって、任意に本発明の医薬製剤、食品又は食品サプリメントとして調合された、有効量の酵素調製物、又は単離されたActinoallomurusエンドペプチダーゼを、それを必要としている対象に投与することにより、より好ましくは経口投与により予防及び/又は治療することが可能である。
【0075】
したがって、さらに本発明は、セリアック病、セリアック病に関連する障害、非セリアックグルテン過敏症、及びナッツ及び/又はピーナッツに対するアレルギー又は不耐性からなる群から選択される障害を、それを必要とする対象に、本発明の酵素調製物もしくは本発明の単離Actinoallomurusエンドペプチダーゼ、又は本発明の医薬製剤、食品もしくは食品サプリメントの有効量を投与することにより治療及び/又は予防する方法に関する。
【0076】
治療する患者や状態、及び投与経路に応じて、活性の量は、1日当たり体重1kg当たり組換えエンドペプチダーゼの0.01mg~0.5mg(例えば、平均的なヒトでは20mg/日程度)に相当する量とすることができる。
【0077】
患者におけるグルテナーゼの典型的な用量は、少なくとも約1mg/成人、一般的には、少なくとも約10mg、そして好ましくは少なくとも約50mgである。通常、約5g未満、一般的には、約1g未満、そして好ましくは約500mg未満となる。投与量は、小児用製剤として適切に調整される。小児の場合、有効量はより低いであろう。例えば、少なくとも約0.1mg、又は0.5mgである。当業者であれば、用量レベルは、特定の酵素、重症度、及び副作用に対する対象の感受性の関数として変化し得ることを容易に理解するであろう。
【実施例】
【0078】
実施例で使用した試薬
放線菌Actinoallomurus A8株は、「Fondazione Istituto Insubrico di Ricerca per la Vita」所蔵のものを使用した。N-スクシニル-Ala-Pro-Phe p-ニトロアニリド(suc-Ala-Pro-Phe-pNA)、及びN-スクシニル-Ala-Pro-Phe-7-アミノメチルクマリン(suc-Ala-Pro-Phe-AMC)は、Bachem(ブーベンドルフ、スイス)からのものである;ペプシン、トリプシン、ナリジクス酸、及びアプラミシンは、Sigma-Aldrich(ミラノ、イタリア)からのものである;マンニトールは、Carlo Erba(Cornairedo、イタリア)からのものである;大豆粉は、Cargill(パドバ、イタリア)からのものである;寒天と大豆ペプトンは、Conda(マドリッド、スペイン)からのものである;スクロースとグルコースは、VWR(ルーバン、ベルギー)からのものである;酵母とモルト抽出物は、それぞれBD(フランクリンレイクス、NJ、USA)とCostantino(ファヴリア、TO、イタリア)からのものである;33-mer a-グリアジンペプチドは、Biotem(アプユー、フランス)が合成したものである;菌株S.lividans TK24及び発現ベクターpIJ86は、John Innes Center(ノリッジ、UK)からのものである、出芽酵母型株X4004-3A(アクセッション番号:KR348914)は、L.Pollegioni教授から提供されたものである。
【0079】
実施例1:天然E40の活性
WO2013/083338に記載の通り、土壌から単離したActinoallomurus A8培養物の上清画分から、配列番号3の配列の天然E40を精製した(天然E40)。天然E40は、pH3~6の環境条件で顕著なグルテナーゼ活性を示し、最適はpH5である(
図1、パネルA)。この条件下では、グリアジンタンパク質は完全に消化される(
図1、パネルB)。
【0080】
実施例2:pIJ86発現ベクターでのE40コーディング遺伝子のクローニング、及びS.lividans TK24宿主細胞への導入
ヒスチジンタグ付きE40をコードする配列番号6の配列のポリヌクレオチドを、Phusion High Fidelityポリメラーゼ(Thermo Scientific,ローダノ、MI、Italy)と0.5μMのオリゴヌクレオチドプライマー(配列番号:9及び10)を用いて、Actinoallomurus A8 ゲノムDNAから増幅させ、ポリヌクレオチド配列の5’及び3’末端に、BclI及びHindIII制限サイトを導入し、エンドペプチダーゼのC-末端に1つのグリシンと6つのヒスチジン残基を導入した。
【0081】
PCRサイクル条件は以下の通りである:98℃で3分、次いで98℃で10秒、67℃で20秒、72℃で50秒を10サイクル、98℃で10秒、72℃で70秒を20サイクル、最終伸長は72℃で5分である。PCR産物(配列番号:11)をアガロースゲルから精製し、HindIII及びBclIで消化し、HindIII及びBamHIで消化したpIJ86空ベクター(配列番号:7)中にライゲートして配列番号8の配列の組換えベクターpIJ86/e40を生成した(
図2)。
【0082】
組換えベクターにPCRで生じた変異がないことを、DNAシークエンスで評価した。強力なermE構成的プロモーターの制御下で、配列番号6の配列のe40を有するpIJ86/e40ベクターを、大腸菌ET12567/pUZ8002の形質転換に使用した。大腸菌ET12567をドナー、S.lividans TK24(17)をレシピエントとして用いて、Flettら(14)に従ってコンジュゲーションを行い、こうしてE40コーディング遺伝子を有する組換えS.lividans TK24宿主細胞(T24/pIJ86/e40宿主細胞)を得た。
【0083】
この接合混合物(mating mixture)を10mM MgCl2を含む複数のマンニトール大豆粉寒天プレート(マンニトール8g/L、大豆粉8g/L、寒天8g/L、MS)に広げ、28℃でインキュベートした。16~20時間後、50μg/mlナリジクス酸と30μg/mlアプラマイシンを含む蒸留水1mlを各プレート表面に加え、ガラス棒を用いて広げ、さらに28℃で接合完了体のコロニーが出現するまでインキュベートした。
【0084】
接合完了体を、ナリジクス酸とアプラマイシンを含むMS寒天培地に繰り返しプレーティングした。Kieserら(15)に従って調製した最終胞子懸濁液を20%グリセロール中に-80℃で保存した。
【0085】
実施例3:組換えS.lividans TK24によるE40の発現
実施例2の組換えS.lividans TK24/plJ86/e40宿主細胞を、アプラマイシン50mg/Lを加えた培養液V(上記定義通り)20mlを含む三角フラスコ(50ml)に接種し、30℃で、回転シェーカー(200rpm)でインキュベートした。5日間培養した後、アプラマイシン50mg/Lを添加した培養液P(上記の定義通り)100mlを含む1本の三角フラスコ(500ml)に培養物を接種し、同じ条件で8日間培養した。
【0086】
あるいは、15Lスケールの発酵のために、培養液Vで増殖させた5日間の培養物を、まず、培養液Vを100ml含む500mlの三角フラスコ3本に接種し、同じ条件でインキュベートした。次に、72時間後、フラスコ培養物を収集し、プールして、アプラマイシン50mg/Lを加えた培養液Pを15L含む発酵槽(Biostat Cplus、Sartorius Stedim、ゲッティンゲン、ドイツ)に接種するために使用した。
【0087】
発酵は30℃で450rpmの攪拌条件下で行い、11000gで6分間遠心分離後に得られた培養物の上清の酵素活性を測定することにより、組換えE40の産生を経時的にモニターした。発酵は94時間後、酵素活性が上清1ml当たり1430Uに達した時点で停止した(ここで用いた酵素活性アッセイについては実施例5を参照)。
【0088】
実施例4:S.lividans TK24/plJ86/e40培養液の上清からの酵素調製物の精製
収集した実施例3のS.lividans TK24/plJ86/e40培養物を4120gで90分間遠心分離し、回収した上清を集めて、Rapida A紙(Enrico Bruno、トリノ、イタリア)で濾過し、さらにポリエーテルスルホン オプティキャップカプセル(孔径公称値:1.0μm及び0.5μm)(Merck、ヴィモドローネ、イタリア)で2回清澄化した。
【0089】
次に、清澄化液をPellicon 3 Ultracel TFFセルロースカセット(カットオフMW公称値:10kD)を用いた限外濾過システム(TFF1)で10倍に濃縮し、0.5M NaCl及び50mM Na2HPO4 pH7.2に添加した。Ni Sepharose(商標)6 Fast Flow樹脂(GE Healthcare、ミラノ、イタリア)を用いた固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(IMAC)により酵素を精製した。
【0090】
IMACカラムを5体積のリン酸緩衝液(pH8.0)で平衡化し、5体積の250mMイミダゾール、50mMリン酸緩衝液(pH8.0)で溶出を行い、溶出画分(330ml)をギ酸でpH6.3に調整してDEAEアニオン交換クロマトグラフィー(GE Healthcare)で色素除去を行った。色素除去したサンプルは限外濾過システム(TFF2、Pellicon、カットオフMW公称値:10kD)により濃縮及び脱塩を行った。凍結乾燥前に、晶析プロセスを改善するために、サンプルにマンニトール及びトレハロース(それぞれ15及び5mg/ml)を添加した(16)。
【0091】
精製サンプルのタンパク質含量は6%(BCAアッセイで測定)、41000U/タンパク質(mg)、培養物の上清のタンパク質約8mg/mlに相当した。
【0092】
精製プロセスの効率性は、組換えE40が約40kDaのメインバンドに移動するSDS-PAGEによって示された(
図3、パネルD、レーン1、矢印)。40kDaのSDS-PAGEバンドのN末端配列解析から、組換えE40の予測される成熟型を確認した。
【0093】
実施例5:酵素調製物の酵素活性
酵素活性アッセイは、Infinite 200 PROプレートリーダー(Tecan、メンネドルフ、CH)を用いて、96ウェルマイクロタイタープレート(透明、平底)中で行った。濃度範囲10~50nMのE40を含むサンプル20マイクロリットルを37℃で5分間プレインキュベートし、次いで、クエン酸リン酸緩衝液(0.1M クエン酸、0.2M リン酸水素二ナトリウム、pH5)中の220μM suc-Ala-Ala-Pro-Phe-pNA 180μlに添加した。サンプルは37℃で20分間インキュベートした。pNAは410nmで検出し、5分間隔で読み取った。
【0094】
酵素活性は、時間内の吸光度の直線的な増加によって決定する。1活性単位(AU)は、1分間に任意の1吸光単位(aau)を放出できる酵素の量と定義され、「1分間に生成する任意の吸光単位」(aau/m)として測定する:
【0095】
【0096】
通常、5~15’間隔で計算する(それぞれ、T1=5分、及びT2=15分)。
【0097】
E40の産生量を正しく評価するため、全てのサンプルは、時間とともに吸光度が直線的に増加するように希釈する必要がある。現行で使用するE40産生株からの上清サンプルは1:40で希釈している。
E40の産生量は、上清のAU/mLとして表示される。
【0098】
下流のプロセスの全工程で得られたサンプルには同じE40定量化を使用し、液体サンプル又は固体サンプルについてはそれぞれAU/mL又はAU/mgで表示する。
【0099】
1Unit(U)は、1分間に1μmoleのpNAを放出する酵素量と定義される。本発明の評価条件:1μmole当りのau pNA=0.006;1U=AU/0.006。サンプル活性は、1ml当りの酵素単位(上清サンプルの場合)又は固形物1mg当りの酵素単位(組換えE40を含む最終粉末酵素調製物の場合)として表示した。
【0100】
最適pHは、0.2Mクエン酸アンモニウムでpH2に、又はクエン酸リン酸緩衝液でpH3~8に調製した同じ基質をそれぞれ用いて決定した。
【0101】
ザイモグラフィ解析のために、E40を含むサンプルをTetra-cell Mini-PROTEAN system(Bio-Rad、ミラノ、イタリア)を用いて、100Vで非還元SDS-PAGE(12% ポリアクリルアミド)にかけた。ゲルはクエン酸-リン酸/リン酸緩衝液(pH5.0)で2回洗浄し、次いで、100μMのsuc-Ala-Ala-Pro-Phe-AMCを含む同じ緩衝液でインキュベートした。E40の活性はUV光で露光したゲル中で可視化した。
【0102】
またE40のタンパク質分解活性は、ゼラチンを基質として用いて評価した。電気泳動後、ゲルをクエン酸リン酸緩衝液pH5.0で洗浄し、そして同じ緩衝液で10分間平衡化したザイモグラム10%ゼラチンゲル(Bio-rad)に重ね合わせた。重ね合わせた2つのゲルを37℃で2時間インキュベートした後、ゼラチンゲルをクマシーブリリアントR250で染色した。ゼラチン消化は、ゲル脱塩後、PAゲルからザイモグラムゲルに拡散したプロテアーゼのタンパク質分解作用により、明確な溶解バンドとして可視化された。
【0103】
実施例3のフラスコで増殖させた培養物の上清の酵素活性のモニタリングにより、8日間の発酵まで、組換えE40の安定的かつ継続的な産生が示された(
図3、パネルA)。天然E40と同様に、組換えE40もpH3~6の範囲で活性があり、pH5が最適であった(
図3、パネルB)。pH5で行ったザイモグラフィ分析により、培養物の上清中、組換えE40が唯一の活性タンパク質であることが示された(
図3、パネルC)。
【0104】
また、組換えE40は、実施例4で得られた精製した酵素調製物において、発色基質suc-Ala-Ala-Pro-Phe-AMC(
図3、パネルD、レーン2)に対しても、またゼラチンなどの一般的なタンパク質基質(
図3、パネルD、レーン3)に対しても、活性のある唯一のタンパク質である。すなわち、最終の精製した酵素調製物では、組換えE40以外のあらゆるエンドプロテアーゼの存在が除外されている。
【0105】
組換えE40酵素調製物を含む精製した酵素調製物の様々なpH値における活性を、基質suc-Ala-Ala-Pro-Phe-pNAを用いて、pH範囲2~8で評価した(
図3、パネルE)。その結果、pH5で最大の活性を示し、pH3で有意な残存活性(約40%)が維持された。これらの結果より、食後の胃の環境において1時間以上pHが3を超えたとき、最適な作用が予測される(8、9)。
【0106】
興味深いことに、組換えE40はpH6でも有意に活性を維持しており(約50%)、食後、pHが6以下である十二指腸の領域で長時間作用することも示唆された(9)。概して、これらの結果は、E40の天然型と組換え型が完全に類似していることを裏付けている。本発明による方法によって実施例4で得られた組換えE40を含む精製した酵素調製物は、実際、Actinoallomurus株から単離された天然E40と同等の化学的/物理的性質及び生物活性を有する。
【0107】
実施例6:組換えE40は消化プロテアーゼに耐性を示す。
本発明の方法で得られた組換えE40の、胃(ペプシン)及び十二指腸(トリプシン)消化プロテアーゼのタンパク質分解活性に対する耐性を、suc-Ala-Ala-Pro-Phe-pNAを基質として用いてさらに評価した(
図4)。
【0108】
E40酵素の水溶液[単独、又はペプシン及び/又はトリプシンと組み合わせたもの(0.2mg/ml E40、0.1mg/ml ペプシン又はトリプシン)]を、ペプシンはpH4、4.5、及び5、トリプシンはpH6及び7で、suc-Ala-Ala-Pro-Phe-pNAを含むクエン酸-リン酸緩衝液で希釈した。反応混合物の最終濃度:基質200μM、pH4~5でのインキュベーションのE40 1~4nM、pH6又は7でのインキュベーションのE40 それぞれ4nMと7nM(E40濃度は最適pHに応じて調整した)。消化プロテアーゼ対E40は、1:2(w/w)の比率を維持した。
【0109】
反応(96ウェルの平底マイクロタイタープレートに200μl量)は、37℃で110分間持続した。10分ごとに吸光度を測定し、酵素活性を測定した。E40を含まないペプシン及びトリプシンは、同じ方法で処理し、参照対照として同じ条件で試験した。各分析は二重に実施した。
【0110】
注目すべきことは、ペプシン(
図4、パネルA~C)及びトリプシン(
図4、パネルD~E、E’)のいずれも、発色基質を加水分解しないことである。特に、E40切断活性は、ペプシン/トリプシン添加、又は酸性pHの影響を受けなかった。それに対し、ペプシン存在下では、わずかに強化されたE40活性が観察された(
図4、パネルA~C)。おそらく、ペプシンによるE40触媒部位の暴露が原因である。概して、これらの発見により、生理的条件下での、ヒトの主要な消化プロテアーゼに対するE40の耐性が確認された。
【0111】
実施例7:E40による免疫優性33-merグリアジンペプチドの消化
33-merグリアジンペプチドの分解を、組換えE40による消化前(
図5、パネルA)及び消化後(
図5、パネルB~E)について、LC-MS/MSによりモニターした。消化はU底96ウェルマイクロタイタープレートで行った。33-merをクエン酸リン酸緩衝液(pH5)で5mg/mlに希釈し、同じ緩衝液で希釈した組換えE40を含む酵素調製物と混合し(酵素対基質のモル比1:48)、37℃にてインキュベートした。0分、15分、30分、及び60分の時点でアリコート(10μl)を採取し、3分間煮沸して反応を停止させた後、LC-MS/MSで分析した。
【0112】
サンプルは、UV検出器及びLTQ-XLイオントラップ質量分析計(Thermo Fisher Scientific、サンノゼ、CA)の両方と連結したHPLCシステムAccela Instrument(Thermo Fisher Scientific)により分析した。注目すべきことに、インキュベーションを開始するとすぐに33-merのわずかな加水分解が観察された(
図5、パネルB、0分)。天然33-merペプチドのシグナルはわずか15分後に完全に消滅した(
図5、パネルC)。
【0113】
より具体的には、MS/MSスペクトル解析は、E40活性が33merの免疫毒性配列をすべて分解したことを示した。E40の切断部位はグリアジンのF-P残基とQ-L残基の間に現れ、T細胞刺激能を持たない短いペプチドを導き出す(
図5、F)(3)。この発見は、E40をさらに希釈した濃度(1:96、モル比)でも観察され、その場合、33-merの完全な分解には30分かかった(図示していない)。
【0114】
実施例8:E40による全グリアジンの消化
全グリアジンタンパク質中の有害ペプチドを加水分解するE40の能力を、HPLC分析によって評価した(
図6)。グリアジンは、Mamoneら(4)に従って、Triticum aestivum(サジッタリオ栽培品種)の全粒粉から抽出した。グリアジン(1mg)を、1mlの0.1M酢酸アンモニウム(pH4)に溶解し、37℃で、E40酵素と共に(酵素:基質、1:20)、様々な時間(0、15、30、60、120、240分)インキュベートした。
【0115】
酵素的加水分解は、サンプルを5分間煮沸することで停止した。サンプルを凍結乾燥し、さらなる化学分析まで-40℃で保存した。
【0116】
SDS-PAGEはTetra-cell Mini-PROTEAN system(Bio-Rad、ミラノ、イタリア)を用いて実施した。消化したグリアジンサンプルをLaemmli(レムリ)緩衝液(0.125M Tris-HCl pH6.8、5%SDS、20%グリセロール、0.02%ブロモフェノールブルー)に溶解し、プレキャスト12%アクリルアミドゲル(Bio-Rad)にロードした。電気泳動は、レムリ緩衝液中で、β-メルカプトエタノールを省いて、非還元条件下で実施した。
【0117】
タンパク質のバンドはシルバーブルー(クマシーブリリアントブルー G-250)で可視化し、LABScanスキャナー(Amersham Bioscience/GE Healthcare、ウプサラ、スウェーデン)を用いてデジタル化した。RP-HPLCは、HP1100 Agilent Technology モジュラーシステム(Palo Alto、CA、USA)を用いたRP-HPLCで実施した。消化したグリアジンサンプルを、0.1%TFAに懸濁し、C18カラム(Aeris PEPTIDE、3.6μm、250×2.10mm i.d.、Phenomenex、トランス、CA、USA)で分離した。
【0118】
溶離液Aは、0.1%TFA(v/v)のMilli-Q水、溶離液Bは、0.1%TFA(v/v)のアセトニトリルとした。カラムを5%のBで平衡化し、0.2mL/分の流速で90分かけて5~70%のBの線形勾配を適用し、ペプチドを分離した。クロマトグラフ分離は、恒温カラムホルダーを用いて37℃で行った。カラム溶出液を、UV-Vis検出器を用いて220nmと280nmでモニターした。
【0119】
全グリアジンが複合混合物であるため、組換えE40を含む酵素調製物(1:48、モル比)を用いた消化は、240分のインキュベーションまで延長した(
図6、パネルB~G)。未消化のグリアジンサンプルを参照対照とした(
図6、パネルA)。
【0120】
予想通り、α-、β-、及びγ-グリアジンのピークは、30分後に著しく下がり(
図6、パネルC)、E40消化の60分~120分の間に消失した(
図6、パネルD及びE)ので、クロマトグラフプロファイルは大幅に変化した。180分と240分の消化物のプロファイル(
図6、パネルFとG)は類似しており、さらなる分解は生じないことを示す。
【0121】
実施例9:体液性及びT細胞性グルテンエピトープのE40タンパク質分解
次に、組換えE40酵素活性が、i)グルテンタンパク質のG12抗体結合能、及びii)IFN-γ放出によって測定されるT細胞媒介免疫応答の刺激、を効果的に中和するかを評価した。この目的のために、グリアジンタンパク質を1mlの0.1M酢酸アンモニウムに懸濁し、E40単独、又はE40と消化管プロテアーゼであるペプシン及びトリプシン/キモトリプシンをコインキュベートして、様々なpH及び時間で消化した。表1に詳細を示す。
【0122】
【0123】
すべての酵素を1:20(酵素:タンパク質)の比率(w/w)で添加し、表示されたpHとインキュベーション時間で、37℃でインキュベートした。E40/ペプシン/キモトリプシン消化グリアジンを、上記の通りtTGase(Sigma Aldrich)で脱アミド化した(4)。簡単に説明すると、グリアジン酵素消化物(500μg/ml)を、1mmol/L CaCl2を含むPBS中で、37℃で2時間、2UのモルモットtTG(T-5398、Sigma、セントルイス、MO、USA)と共にインキュベートした。
【0124】
小麦の免疫学的可能性に対するE40消化の影響を推定するため、サンプルA~Lのグルテン含有量を、QPQLPY配列に特異的なモノクローナル抗体によって測定した(Elisa-G12)(10)。
【0125】
未処理のグリアジンサンプル(サンプルI及びL)と比較して、E40消化サンプル(サンプルA~H)は、グルテン含量が20ppmをはるかに下回り、大幅な減少を示した(表2)。
【0126】
【0127】
T細胞応答を活性化するグリアジン調製物の能力を評価するために、tTG処理によって脱アミド化した様々なグリアジン酵素消化物(
図7A及び7BのサンプルA~L)を、CD患者の腸生検から以前に確立したCD4+ T細胞系で評価した(11)(表3)。
【0128】
【0129】
簡単に説明すると、腸管単核細胞を、照射した自家末梢血単核細胞(PBMC)と6倍体コムギから抽出した脱アミド化ペプシン-チモトリプシン消化グリアジンで刺激した。増殖したT細胞は、異種照射したPBMCとPHA、及び増殖因子としてのIL-2で繰り返し刺激することにより培養を継続した。TCLのペプチド特異性は、免疫原性グルテンペプチドのパネルに対する反応性を試験することによって評価され、ペプチド認識の大きなレパトアが明らかになった。
【0130】
機能評価では、グリアジン酵素消化物(サンプルA~L、表1及び
図7A、B)に対するTCLの免疫反応を、IFN-γ産生の検出により評価した。T細胞(3×10
4)を、U底96ウェルプレート中の200μLの完全培地(5%ヒト血清及びペニシリン-ストレプトマイシン抗生物質を添加したX-Vivo15;試薬はすべてLonza-BioWhittaker(ベルビエ、ベルギー)から供給された)中で、照射した自家EBVトランスフォーム、Bリンパ芽球様細胞株(B-LCL、1×10
5)とコインキュベートした。
【0131】
48時間培養後、細胞上清(50μL)を回収し、IFN-γを測定した。各抗原調製物は、各T細胞株について重複して評価され、少なくとも3つの独立した実験において、評価された。IFN-γは、Mabtech(Nacka Strand、スウェーデン)から購入したビオチン結合した精製抗IFN-γ抗体を用いて、古典的なサンドイッチELISAによって測定した。このアッセイの感度は32pg/mlであった。
【0132】
予想された通り、ペプシン-キモトリプシン/トリプシン消化グリアジンに暴露すると、全てのT細胞株が高いレベルのIFN-を産生した(表1のサンプルI及びL、
図7A及び
図7B)。反対に、実験したすべての実験条件において、E40消化グリアジンに曝露したT細胞では、検出可能なIFN-産生は測定されなかった(表1のサンプルA~H、
図7A及び
図7B)。
【0133】
実施例10:グルテンベースの食品(パン)のin vitro消化
患者のグルテン摂取を止めるための経口サプリメントとしてのE40酵素の有効性を評価するため、in vitro経口胃消化モデルを適用した。パン(T.aestivum)の消化工程は、口腔内咀嚼及び胃の消化酵素の存在を含む生理学的条件をシミュレートして実施された。
【0134】
消化時間は、胃の区画における消化粥の平均通過時間に従って選択した。E40酵素調製物は、シミュレートした胃の段階の開始時に添加した。T細胞エピトープと毒性ペプチドの破壊は、モノクローナル抗体(競争的Elisa-R5)を用いて、メーカー及びAOACのガイドラインに従って試験した。
【0135】
E40未処理のサンプルと比較して、E40を含む消化されたパンのサンプルは、グルテン含量が20ppm未満をはるかに下回り、大幅な減少を示した(表4)。
【0136】
【0137】
実施例11:組換えE40とインキュベートしたピーナッツタンパク質のin vitro消化(1:20、e:s)。
組換えE40の存在下でインキュベートしたピーナッツタンパク質の分解を、SDS-PAGE及びHPLC分析によって評価した。結果を
図9に示す(A:SDS-PAGE;B:HPLC分析)。
【0138】
実施例12-組換えE40のプロテオーム解析
本発明の方法に従ってS.lividansで得られた酵素調製物の詳細なプロテオーム解析も行った。酵素調製物のサンプルをSDS-PAGEにかけ(
図8)、その後、レーンを切り出し、トリプシンで消化し、そのペプチド混合物をLS-MS/MSで分析した。Proteome Discoverer softwareを用いてマススペクトルを処理し、各ゲルのバンド内のタンパク質を同定した(表5)。
【0139】
【0140】
プロテオミクス解析により、組換えE40タンパク質は約45kDaのメインバンドに移動することが確認された(
図8、バンド4)。SDS-PAGEでは、強度は低いが、さらなるバンドの存在も明らかになった。これらのバンドは、精製過程で完全に除去されなかったStreptomyces lividansタンパク質に割り当てられた。これらの混入物の一部はプロテアーゼであるが、いずれもグルテナーゼの性質を有していないので、組換えE40が最終酵素調製物中のグルテンに対して活性を持つ唯一のタンパク質であることが確認された。
【0141】
実施例13:発酵及び下流のプロセス工程における、酵素調製物粉末の微生物学的アッセイ
周知のように、S.lividans TK24は、特に発酵条件下で増殖させた場合、アクチノロージン(ACT)、ウンデシルプロジギオシン(UDP)、及びカルシウム依存性抗生物質(CDA)を産生する可能性がある。次に、臨床検査標準協会(CLSI)により標準化された微量液体希釈法のアッセイを使用して、本発明の方法によって得られた酵素調製物からのサンプル中の抗生物質の存在を評価した。抗菌活性は、抗生物質耐性を示さないことが知られている下記の試験用微生物(試験用mo)に対して試験した:黄色ブドウ球菌 ATCC6538(グラム+の代表例);大腸菌 L47(Lepetitコレクション;グラム-の代表例);Candida albicans L145(Lepetitコレクション;酵母の代表例)。
【0142】
滅菌済み96ウェルマイクロプレートに被検サンプルを2倍連続希釈し、次いで、それぞれの培養液に試験用moを接種した(最終量:100μl/ウェル)。各測定は3連で行った。その後、接種したマイクロプレートを、大腸菌(E.coli)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、及びC.albicansについて、それぞれ18時間、20時間、24時間、35℃でインキュベートした。「抗菌」濃度が不明のサンプルの抗菌活性は、終点、すなわち試験菌株の増殖を阻害する最高希釈度として測定した。それは、拡大鏡を活用してマイクロプレートを目視検査することによって決定した。
【0143】
アッセイ対照標準化合物を使用した:シプロフロキサシン(G+とG-に対する活性);ダプトマイシン(Gram+のみ);アムホテリシンB(C.albicansのみ)。さらに、発酵プロセスで使用するためアプラマイシン(G+とG-)と、ニッケル樹脂からのE40の溶出に使用できるイミダゾールも試験した。
【0144】
標準化合物は、0.35mM~250mMの濃度範囲で使用したイミダゾールを除き、128~0.125μg/mlの濃度範囲で試験した。MIC(最小阻止濃度)で表したこれらの抗菌活性を下記表6に示す。
【0145】
【0146】
次に、3つのE40酵素調製物粉末バッチ(F30、F34、及びF35)の活性を検証した。分析した3つのバッチはすべて、試験した最高濃度(サンプル希釈度1:4、粉末最終濃度2.5mg/mlに相当)では抗菌活性を示さず、酵素調製物中に抗生物質は存在しないことが示された。接種していない培養液(つまり、試験用moを含まない)中のE40粉末サンプルを含む対照ウェルでは、微生物の増殖は見られなかった。
【0147】
本発明による15LスケールのS.lividans TK24/pIJ86/e40の発酵を行って得られたサンプルの抗菌活性を、その後の精製工程を経てさらに試験した(表7~9)。
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
収集(HV)培養物の上清(17664g、30分間の遠心分離により得られた)は、大腸菌及びC.albicansに対してわずかな活性を示した。これは、その既知の活性パターンから予想されるように、UDP(ウンデシルプロジギオシン)の存在と関連している可能性がある。IMAC溶出液のE1及びDEAEフロースルーが示した抗カンジダ活性は、確実にイミダゾールによるものである。IMAC溶出液の大腸菌に対する低い活性は、なお残留するUDPの存在によると思われる。
【0152】
最終的な透析濾過したTFF2サンプルは、検出可能な抗菌活性がないという結果となった。アプラマイシンに関しては、産生培地に50μg/ml添加し、そのMIC結果は黄色ブドウ球菌と大腸菌の両方に対して8μg/mlであったが、培養物の収集時にはその存在は強調されていない。これは、おそらく酵素の作用による分解及び/又は変質によるものである。
【0153】
実施例14:E40酵素調製物及び下流の中間体中の二次代謝産物の存在試験
安全性評価のために、S.lividans TK24が産生する二次代謝産物の探索が極めて重要である。そのため、発酵上清及び製剤中の同定可能な分子を投与する必要がある。定量を目的として、ACT、UDP、ダプトマイシン(DAP、CDAクラスに属する)の存在を評価する最適な手法としてHPLC/MSが選択された。固相(SPE)技術による抗生物質の抽出は、Diaion HP-20(スチレン-ジビニルベンゼン)樹脂を使用して適用され、より優れた定量分析が可能となった。
【0154】
Diaion HP-20は、通常、二次代謝産物、色素などの低分子を幅広い極性範囲で抽出するために使用される。典型的には、樹脂を水溶液と1:20(v/v)の比率で2時間接触させた後、カラムに移し、洗浄し、水中メタノールの増加勾配で溶出する。溶出した抽出液は乾燥し、その後、HPLC/MSで分析する。低分子化合物及び代謝物により適したカラム(Phenomenex Luna C18、5μm、2.1x250mm)を使用した。
【0155】
E1(50%メタノール)、E2(100%メタノール)、及びE3(メタノール/イソプロパノール 90:10)画分を回収する。E1とE2にはダプトマイシンが溶出され、一方、E2とE3にはウンデシルプロジギオシン(UDP)が溶出される。ダプトマイシンの回収は定量であるが、UDPは樹脂、フィルター、及び膜に強固に結合する傾向があるため、回収は一部分(20~25%)であった。
【0156】
アプラマイシンはHP-20に結合しないため、アプラマイシンには、別の抽出方法を適用した。NH4型の弱陽イオン樹脂アンバーライトIRC50を試験し、1回のカラム通過工程で、アプラマイシンが定量的に結合することが示された。その後、0.1M水酸化アンモニウムで溶出することにより、完全に回収した。
【0157】
Luna C18 HPLCカラムを初期設定として抽出サンプルに使用し、B相の勾配は30分間で5から90%、流速を1.0ml/分とした。
50mgの粉末のE40酵素調製物(バッチF-30、F-34、F-35)を用いた最終試験を完了し、以下の結果を得た(表10)。
【0158】
【0159】
これらのデータから、3つのE40酵素調製物バッチ粉末のいずれにも、分析した抗生物質が測定可能な量では見つからないことが確認された。
【0160】
この方法論を適用して、発酵培養とその後の下流の精製工程における同じ抗生物質の検出をモニターした。F-46と名付けた発酵培養物をこの目的のために設定した。発酵培養物は、本発明の方法の好ましい実施形態に従って、以下の精製工程を経た:
【0161】
1.HV-上清サンプルを回収するための遠心分離(17664g、30’)
2.清澄化(オプティキャップPESカプセル;公称サイズ:1.0及び0.5ミクロン)
3.TFF1濃縮(10kDカットオフ再生セルロースカセットを使用)
4.IMAC Niベースのアフィニティクロマトグラフィー
5.DEAE樹脂を用いたイオン交換による色素除去
6.TFF2濃縮及び透析濾過(10kDカットオフ)
7.賦形剤添加後、凍結乾燥し、最終粉末を得る。
【0162】
各工程のサンプルをHPLC-MSで分析し、分子量で上記の抗生物質を調査した。少量を注入した(12.5μl)。UDPのみが測定可能な量で検出された。他のものの痕跡は検出されなかった。
【0163】
ウンデシルプロジギオシン(UDP)については、各工程での濃度をHPLC-MSで定量した(表11)。予想通り、UDPは下流工程でうまく除去されている。
【0164】
【0165】
結論として、本発明による方法によって得られた、E40を含む酵素調製物粉末は、測定可能な量の抗生物質を含まない。
【0166】
実施例15
本発明に従って、新たに2つの15Lの発酵を行った。約42時間インキュベートしたフラスコ内の種培養から開始した。F47及びF48と名付けた2つの培養物を、発酵条件下での99時間及び94時間後にそれぞれ収集した。収集した培養物を遠心分離(Beckmann J-2-21;ローター JA-10;10000rpm/17700g;15分)と、紙による濾過にかけ、その後、上清を3段階(1μm濾過から開始し、0.3μm濾過まで)でミクロ濾過(清澄化工程)した。
【0167】
次いで、清澄化液の限外濾過(TFF1)を行い、続いて限外濾過透過液のIMAC-ニッケルアフィニティクロマトグラフィーを、上記のNi Sepharose 6 FastFlow(GE Healthcare)樹脂を用いて実施した。その後、任意の工程のDEAE陰イオン交換色素除去クロマトグラフィーを行い、以下の工程を続けた:IMACからの溶出画分をギ酸でpH6.3に調整し、20mMギ酸アンモニウム(pH6.3)で平衡化したDEAE Sepharose CL-6Bカラムに移し、重量分析により回収した。少量用の限外濾過システム(TFF2-透析濾過)を設定し(限界MW公称値:10kD)、DEAEからの溶出画分を限外濾過し、次に、ギ酸アンモニウム10mM(pH6.3)で調製した脱塩溶液を分注し、残存したイミダゾールを除去した。
【0168】
溶液が濁り、遠心分離して沈殿を廃棄する必要がある場合がある。除去された固体は組換えE40を含まない。これは、この工程で溶液をさらに希釈しておくことで回避できる。得られた最終的なTFF2溶液に、AU当り8マイクログラムの総量の糖に相当する3:1のマンニトール及びトレハロース溶液を添加し、凍結乾燥した。
【0169】
最終的な粉末の収量は1437mgであった。最終粉末のサンプルを20%EtOH水溶液に10mg/mlで溶解し、酵素活性とタンパク質含有量を確認した後、SDS-pageにかけた。
BCA総タンパク質含有量アッセイでは、最終粉末のバッチで約14%(添加した糖類を除くと100%)である。
E40の産生量は、上清で約25mg/L(発酵量約20mg/L)である。
【0170】
上記調製物の微生物学的活性を、5mg/mlの高濃度(dH20中10mg/mlの原液)で、及び2倍連続希釈後に試験した。F47/F48(生成した粉末)の活性を表12に示す:分析した試験用moのいずれに対しても、試験した最高濃度では活性を示さなかった。
【0171】
【0172】
この結果から、最終的なE40調製物には、検出可能な抗生物質が含まれないことが確認された。
【0173】
実施例16
実施例2の組換えS.lividans TK24/plJ86/e40宿主細胞を、アプラマイシン50mg/Lを添加した培養液V(上記)を100ml含む三角フラスコ(500ml)内に接種し、30℃、200rpmで、回転シェーカー上でインキュベートした。4日間培養後、この培養物を用いて、スクロースを340g/L(suc 34)もしくは170g/L(suc 17)含む、又はスクロースを含まない(suc 0)上記の培養液Pを100ml含む3つの三角フラスコ(500ml)にそれぞれ接種した。
【0174】
すべてのフラスコにアプラマイシン50mg/Lを添加し、回転シェーカーで、200rpm、30℃で、最大7日間インキュベートした。E40の産生は、16,000gで6分間の遠心分離により得られた培養物の上清の酵素活性を測定することにより、120時間の発酵後に1日1回モニターした。
【0175】
試験の直前にアッセイ緩衝液で1:81に希釈した上清サンプルのタンパク質分解活性を、クエン酸0.1M-リン酸0.2M反応緩衝液(pH5)中の蛍光基質suc-Ala-Ala-Pro-Phe-AMC(Bachem L-1465;200μM)に対して、マイクロタイターウェルで評価した(総反応量200μL中にサンプル20μL)。インキュベーションは37℃で30分間行った。放出されたAMCは、Fusionマイクロプレートリーダー(Perkin Elmer Italia SpA、モンツァ、イタリア)を用いて、励起波長360nm、及び発光波長460nmで測定した。タンパク質分解活性は、0~15分の間隔で経時的に生成される相対蛍光単位の直線的な増加(rfu/分)として決定した。結果を
図10に示す。
【0176】
E40の産生への重大な影響は、
図10のパネルA~Cに示すように、発酵に使用した培養液中のスクロースの存在によってもたらされる。タンパク質分解活性は、34%のスクロースを含む培養液Pで増殖させた培養物について明らかであるが、一方、スクロースを含まない培養液では実質的に存在しない。17%のスクロースの存在下では、168時間の発酵後でさえ低い活性が示される。各サンプルについて結果を表13に報告する(相対蛍光単位は、インキュベーション間隔0~15分における1mL上清による1分当たり(rfu/分/mL)で表す)。
【0177】
【0178】
実施例17
出芽酵母(S.cerevisiae)型株X4004-3AをE40の異種発現のための宿主として使用した。プロ酵素をコードする配列の有無が相違する2つの異なる合成E40遺伝子を設計した。両方の遺伝子において、E40の天然の分泌シグナル配列が、改変されたα-因子プレプロリーダー配列に置換された(20)。
【0179】
さらに、両方の合成遺伝子において、コドン最適化ツールのソフトウェアを使用して、コドン使用頻度を出芽酵母のものに準じて最適化した。また両遺伝子とも、XbaI及びHindIII制限部位に対応する配列を追加した。得られた遺伝子[一方は不活性前駆体をコードし(proE40、配列番号:13)、もう一方は成熟酵素をコードする(matE40、配列番号:14)]は、誘導型pEMBL及び構成型pVT-U発現プラスミドのいずれかにクローン化した。両者とも出芽酵母の栄養要求性選択のためにURA3遺伝子を有しており(19、21)、エレクトロポレーション法によってElectroMAX DH10B大腸菌細胞に導入された。
【0180】
形質転換体は、アンピシリン含有LB寒天培地プレート(100μg/mL)で、37℃で一晩インキュベートして選択した。コンストラクトの正しさはシークエンシングで確認した。形質転換体は、アンピシリン含有LB寒天培地プレート(100μg/mL)で、37℃で一晩インキュベートして選択した。pEMBL/E40及びpVT-U/E40プラスミドは、酢酸リチウム法(Elble、1992)を使用して、宿主の出芽酵母株X4004-3Aに転移した。細胞を選択プレート(ウリジンを欠く培地)上にプレーティングし、30℃で5~6日間インキュベートした。
【0181】
E40遺伝子を含む出芽酵母クローンからの単一コロニーを選択プレートから選び、100mlの最小培地(0.68%酵母窒素塩基、YNB、2%グルコース、50mg/Lのアミノ酸L-Lys-L-Met-L-Trp、67mMリン酸カリウム、pH6.0)に接種した(30℃、3日間)。
【0182】
アリコートの細胞を取り出し、OD600nm=0.25から開始する500mLフラスコ内の最小培地の最終体積50mLに接種した。OD600nmが0.5の値になるまで培養を行い(6時間)、次に8mLを72mLの発現培地(pVT-U/E40プラスミドの場合は、10g/L酵母エキス、20g/Lペプトン、2%グルコース、又は、pEMBL/E40誘導型発現プラスミドの場合は、2%ガラクトース)を含む500mLフラスコ内に接種した(10日間)。タンパク質発現試験では、細胞は30℃で増殖させて、様々な時間に収集した。
【0183】
組換えE40の発現は、合成基質suc-Ala-Ala-Pro-Phe-pNAを使用する活性評価によって培養物の上清で確認した。pH5、37℃でのインキュベーションの経過中、410nmの吸光度を追跡した。酵素活性は、1ml当り1分間の吸光度単位(au)で表した。最大活性はプラスミドpVT-U/matE40で形質転換し、6日間増殖させた細胞の上清で検出された:0.9au/分/mLの値が示された。
【0184】
4つのコンストラクトで形質転換した出芽酵母の並行した発酵試験を行ったところ、同様の発現レベル(0.73 ΔAbs min-1mL-1)となった。これらの結果に基づいて、様々な時間に採取したプラスミドpVT-U/matE40及びpEMBL/matE40で形質転換した細胞の上清についてウェスタンブロット分析を行った。
【0185】
ウェスタンブロット分析は、pEMBL-matE40プラスミドを使用した場合、増殖6日後にタンパク質が発現し、pVT-U/matE40プラスミドでは、3日後にタンパク質の発現が認められたことを示した。
【0186】
このように、出芽酵母は組換えE40の産生株として使用することができる。しかし、得られた組換えE40の発現量はあまり多くない(上清1ml当たり1mg未満のE40)ため、現在、この産生システムは工業的利用には適していない。
【0187】
結論として、本発明の方法に従って組換えE40をS.lividans宿主細胞で発現させると、活性のあるE40が分泌される。天然Actinoallomurus A8型のすべての化学的物理的特性及び生物学的特性(例えば、食後の胃のpHにおける安定性及び活性;ペプシン消化に対する耐性;Pro-Glnに富む33-merペプチド(配列番号:12)などのα-グリアジンの最も免疫原性の高いペプチド、及び全グリアジンタンパク質の広範囲に及ぶ分解における高い効率性)は、組換えグルテナーゼによって維持される。
【0188】
このように、本発明の方法によって得られる酵素調製物は、大量の活性のある組換えE40を提供し、さらにそれは抗生物質を実質的に含まない。したがって、ヒトの利用に適し、好ましくは、医薬製剤又は食品サプリメント等の適切な調合物とされた後、使用に適するものである。
【0189】
実施例18
酵母Pichia pastorisにおける分泌を成功させるために、天然の成熟型(matE40、配列番号:14)のE40をコードする合成遺伝子を、発現ベクターにクローン化した。これは、メタノール誘導発現のためのAOX1プロモーター変異体(mutS)と、出芽酵母由来のα-接合因子のGlu-Ala(EAEA)反復を含まないプレプロ配列(培養液中の分泌を誘導するためのもの)を有する。また、選択マーカーとしてゼオシン耐性遺伝子もベクター内に存在した。
【0190】
発現ベクターへの目的遺伝子の正しい導入は、制限パターン解析により確認し、遺伝子配列の信頼性はシークエンシングにより確認した(LGC Genomics、ベルリン、ドイツ)。
【0191】
約1μg/μLの濃度で精製したプラスミドを用いて、muts及びmuts-PDI(タンパク質ジスルフィドイソメラーゼの過剰産生)P.pastoris株への形質転換を行った。後者はタンパク質の正しい折り畳みを促進する。株ごとに数個のコロニー(E40発現ベクターを有する2 muts及び2 muts-PDI株、並びにそれぞれのmuts及びmuts-PDI模倣株(mock strain))を選び、複合培養液を満たした96深ウェルプレートの単一ウェルに接種した。産生性評価は、メタノール誘導可能な条件下で、4つの異なる条件により行った:
【0192】
- 複合培養液(pH6.0)
- スクロース添加(最終濃度34%)複合培養液(pH6.0)
- 複合培養液(pH7.0)
- スクロース添加(最終濃度34%)複合培養液(pH7.0)
【0193】
バイオマスを生成する初期増殖段階の後、規定された濃度のメタノールを含む最適化された液体混合物を添加することで発現を誘導した。この時、標準物質として精製E40を含む対照サンプルを、最終濃度200g/mLで模倣株を含むいくつかのウェルに加えた。規定された時点で、さらにメタノールによる誘導を行った。
【0194】
サンプリングは、メタノール誘導時点から50時間後及び96時間後(工程終了)に行った。遠心分離後に得られた上清サンプルは、すぐに20%EtOHを含むように調整した。50時間後のサンプルは、直接検査した96時間後のサンプルと共に活性評価に供するために冷凍保存した。
【0195】
上清は不希釈のまま活性評価に供した。一方、E40標準物質を加えた模倣株の上清の対照サンプルは、活性測定を行う前にアッセイ緩衝液で1:20に希釈した。
【0196】
クエン酸0.1M-リン酸0.2M反応緩衝液(pH5)中の発色基質suc-Ala-Ala-Pro-Phe-pNA(Bachem L-1400;200μM)を用いて、マイクロタイタープレートで活性を評価した(総反応量200μL中に、サンプル20μL)。インキュベーションは37℃で30分間行った。タンパク質分解活性は、時間内の吸光度(波長410nmで読み取り)の直線的な増加として決定し、1分当たりのミリ吸光単位(mau/分)で表した。結果を
図11に示す。
【0197】
対照サンプル(
図11の50CTR及び96CTR)は、すべての条件及びバックグラウンドにおいて著しいタンパク質分解活性を示す(E40濃度が8.3mg/Lの試験サンプルについて、5.3~6.0ミリ吸光単位/分)。一方、E40濃度が≦0.1mg/Lに相当する他の培養物のいずれの上清サンプルでも吸光度は増加しない(<0.07mau/分)。結果を表14に報告する。
【0198】
【0199】
実施例19
大腸菌BL21 Star(DE3)宿主細胞を、WO2013/083338に報告された通り、E40配列を有する組換えpET28b発現プラスミドで形質転換した。0.2μMイソプロピルβ-D-チオガラクトシド(Sigma)の添加により、形質転換細胞によるE40の産生を誘導し、所望のタンパク質の発現を得た(WO2013/083338の
図4参照)。
【0200】
WO2013/083338に記載されているリゾチーム活性に基づく、自然の溶解のためのInvitrogenプロトコルに従って、組換えE40を発現する大腸菌培養物50mLを溶解に供した。50mLの培養物からの全ペレットを8mLの溶解緩衝液に再懸濁した。基質 スクシニル-Ala-Ala-Pro-Phe-AMCに対するタンパク質分解活性(酢酸アンモニウム緩衝液50mM、pH;37℃)について、溶解後に得られた粗抽出物を試験した。
【0201】
活性は、E40産生大腸菌培養物1mLが1分間に産生するrfuとして表され、
図12に報告する。大腸菌で産生されたE40の活性は、本発明による条件下でS.lividansで産生されたE40について得られたものと比較して、非常に低い(S.lividansでの「>5300rfu/分/mL」と比較して、大腸菌では「54rfu/分/mL」である;
図12を参照)。
【0202】
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