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  • 特表-時計構成要素を結合するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】時計構成要素を結合するための方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 15/14 20060101AFI20220930BHJP
   G04B 17/34 20060101ALI20220930BHJP
   G04B 17/06 20060101ALI20220930BHJP
   G04B 19/10 20060101ALI20220930BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20220930BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220930BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
G04B15/14 A
G04B17/34
G04B17/06 Z
G04B19/10 B
C09D201/00
C09J201/00
C09D5/00 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022503515
(86)(22)【出願日】2020-06-09
(85)【翻訳文提出日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2020065984
(87)【国際公開番号】W WO2021037408
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】19194407.3
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ユオー-マルシャン,シルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェラルド,エム・マルコ
【テーマコード(参考)】
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
4J038BA181
4J038HA566
4J038PB06
4J040BA151
4J040DF001
4J040EC001
4J040EF001
4J040HD03
4J040NA05
(57)【要約】
【課題】時計構成要素を結合するための方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、互いに結合されるべき第1および/または第2の時計構成要素に接着剤を塗布すること、ならびに、局所化された接合領域内にプライマ組成物を吹き付けることにより結合されるべき第1および第2の構成要素のうちの少なくとも一方の上に接着層を堆積させ、それに続いてプライマ組成物を固化させることを含む、時計構成要素を結合するための方法に関する。接着層は、接着剤が接着層と同じ1つまたは複数の構成要素に塗布されるのであれば、接着剤の塗布に先立って堆積される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
そのうちの少なくとも一方がエピラムで被覆される時計構成要素を結合するための方法であって、
- 互いに結合されるべき第1および/または第2の時計構成要素に接着剤を塗布すること、
- 前記第1または第2の構成要素の局所化された接合領域内にプライマ組成物を吹き付けることにより、結合されるべき前記第1および第2の構成要素のうちの少なくとも一方の上に接着層を堆積させること、ならびに、
- 前記プライマ組成物を固化させること
を含む、方法。
【請求項2】
前記接着層の前記堆積の後に、前記プライマ組成物の前記固化が続くことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接着剤の前記塗布の後に、前記プライマ組成物の前記固化が続くことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記接着層は、前記接着剤が前記接着層と同じ構成要素に塗布されるのであれば、前記接着剤の前記塗布に先立って堆積されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記プライマ組成物は、前記接着層が形成されるべき前記第1および/または第2の構成要素に対してその向きを変えるために多軸ロボット・アーム上で移動することができるように取り付けられたスプレー・ノズルを使用して吹き付けられることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記プライマ組成物は、スプレー・ノズルを使用して最上部から最下部まで実質的に垂直に吹き付けられ、前記接着層が形成されるべき前記第1および/または第2の構成要素は、前記スプレー・ノズルに対してその向きを変えるために多軸ロボット・アーム上で移動することができるように取り付けられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記プライマ組成物は、放射線硬化性材料を含み、前記プライマ組成物層は、放射線への暴露によって固化されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記プライマ組成物は、熱硬化性材料を含み、前記プライマ組成物層は、熱処理によって固化されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
互いに結合されるべき前記第1および第2の時計構成要素のうちの少なくとも一方は、エピラムで被覆されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記接着層は、エピラムで被覆された前記時計構成要素上に堆積されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記接着剤は、セラックを含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記接着剤は、セラックを含み、前記接着層は、セラックおよびエピラムの両方に対して化学的かつ/または物理的な親和性を有することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記接着剤は、接着剤スプレー・ノズルによって塗布され、前記スプレー・ノズルは、
i.前記接着剤が塗布されなければならない前記第1および/もしくは第2の構成要素に対してその向きを変えるために多軸ロボット・アーム上で移動することができるように取り付けられ、または、
ii.最上部から最下部まで基本的に垂直に配向され、接着剤が塗布されなければならない前記第1および/もしくは第2の構成要素は、前記接着剤スプレー・ノズルに対してその向きを変えるために多軸ロボット・アーム上で移動することができるように取り付けられる
ことを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記接着層は、ポリマー・ベースのもの、例えばポリウレタン・ベースのものであることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記プライマ組成物は、単一の流体で構成されるか、または現場で混合される2成分組成物であることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の結合方法を使用して互いに接続されることが可能な第1および第2の構成要素を備える、時計構成要素の一体形組立体。
【請求項17】
前記第1および第2の構成要素の接合領域を接続する接合部を備えることを特徴とする、請求項16に記載の時計構成要素の一体形組立体。
【請求項18】
前記接合部は、接着剤の層、および接着層、具体的にはプライマ組成物層によって形成されることを特徴とする、請求項17に記載の時計構成要素の一体形組立体。
【請求項19】
- 前記第1の時計構成要素は、脱進機レバーであり、前記第2の時計構成要素は、レバーつめ石であり、
- 前記第1の時計構成要素は、テンプ輪スタッドであり、前記第2の時計構成要素は、ひげぜんまいであり、
- 前記時計構成要素は、車受であり、前記第2の時計構成要素は、テン真であり、
- 前記第1の時計構成要素は、インデックス・ブロックであり、前記第2の時計構成要素は、文字板である
ことを特徴とする、請求項16から18のいずれか一項に記載の時計構成要素の一体形組立体。
【請求項20】
請求項16から19のいずれか一項に記載の時計構成要素の一体形組立体を備える時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計学分野に関し、より詳細には、時計構成要素の一体形組立体を形成するように時計構成要素を結合するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
時計学分野では、一部の時計構成要素が、接着剤(塗布時には液体接着剤)によって互いに組み付けられ得る。
【0003】
例えば、機械式腕時計のレバー脱進機では、つめ石(または「つめ」、通常ルビーで作られる)が、典型的にはアルコール溶媒中に溶解されたセラックを使用する結合により、アンクル(pallet-lever)に取り付けられる。セラックは、天然の熱溶解樹脂であり、すなわち、セラックは、その融解温度(T)を上回る温度においては蜂蜜様であり、その融解温度(T)を下回るまたはそのガラス転移温度(T)を下回る温度においては固体である。アンクルの製造プロセスによっては、つめ石の機械的強度が不十分であるか、または、滴の美観が仕様を超えるので、結合ステップの成果は、要求に適合しない場合がある。どちらの場合でも、不適合の原因は、表面張力の問題であることが多い。
【0004】
セラックは、東南アジアの森林にいる雌のカイガラムシによって分泌される。セラックの組成は、カイガラムシの食べ物および収穫期に大きく依存する。収穫された物質は、精製されかつ加工されるが、得られる純度および組成は、決して保証されない。したがって、この天然産物に対して一貫した性能水準を経時的に保証することは、不可能ではないにしても、非常に難しい。
【0005】
他方では、工業プロセスは、アンクル本体の清潔さ、したがって不変の表面張力を保証するには、堅調さが不十分である。粒子、水分吸着、または他の物質などの、様々な物理的または化学的な汚染物質が存在する可能性があり、それらの全てが、セラックが堆積されたときの表面の反応に影響を及ぼす。
【0006】
つめ石は、必要に応じて、エピラム(epilame)で完全にまたは部分的に被覆される。エピラムは、1つの方向または別の方向における物質の表面張力を変化させる製品である。エピラムは、通常、目に見えない疎水性かつ疎油性の分子層の形態で存在し、潤滑剤またはその成分が拡散するのを防ぐために堆積される。エピラムは、潤滑剤を所定の位置に保持するために、潤滑剤を付着させるか、または、潤滑剤を特定の領域内に保持するために、潤滑剤をはじく。表面張力は、エピラム被覆によって制御されるはずである。しかし、エピラム被覆プロセス中、構成要素清掃作業は、汚れをもたらす可能性のある製造ステップ後に通常行われることが認められた。そのような清掃は、エピラムの効果を少なくとも部分的に低下させる可能性があり、結果として、つめ石結合を犠牲にして表面特性が変動することになる。反対に、高抵抗エピラムが使用され得る。しかし、それらは、セラックによる表面の濡れと相いれない表面張力をもたらす。そのような場合、セラックはエピラム被覆表面から逃げる傾向があるので、つめは結合され得ない。
【0007】
結合によって組み立てられる時計構成要素の別の例は、テンプ輪に見ることができ、より具体的には、そのスタッド上に結合されるひげぜんまいに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2016/203063
【特許文献2】EP1172714
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1つの目的は、結合のために時計構成要素を準備する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの態様は、互いに結合されるべき第1および/または第2の時計構成要素に接着剤を塗布すること、ならびに、結合されるべき第1および第2の構成要素のそれぞれの面の一部分上の局所化された接合領域内/接合領域上にプライマ組成物を吹き付けることによりこれらの第1および第2の構成要素のうちの少なくとも一方の上に接着層を堆積させる(接着プライマを整える)ことを含む、時計構成要素を結合するための方法に関する。したがって、接着剤は、接着剤の層が形成されるように塗布される。次いで、この接着剤の塗布、またはこの接着剤の層の堆積の後に、プライマ組成物の固化が続く。接合領域は結合領域と呼ばれ得ることが、留意されるべきである。接着層は、接着剤が1つまたは複数の同じ構成要素に接着層として塗布される場合には、接着剤の塗布に先立って堆積され、また必要に応じて、第1および第2の時計構成要素を互いに接触させるのに先立って堆積される。
【0011】
本発明は、具体的には、吹付けにより接着層を堆積させることを提案する。これは、例えば、Aerosol Jet technology(Optomecの商標)により、または任意の他のデジタル印刷技術により、達成され得る。これらの技術は、現在、流体材料が体積および位置の両方の観点から高精度で堆積されることを可能にする。それらは、特許出願WO2016/203063およびEP1172714に示されるように、時計構成要素に適合し得る。本発明は、具体的には、結合のために時計構成要素を準備する際にこの堆積技術の精度の可能性を利用する。デジタル印刷された接着層を使用することにより、構成要素には、接着剤に適合された表面張力を有する、正確に区切られた結合領域が与えられる。これは、使用される接着剤による濡れが可能ではないかまたはわずかにしか可能ではない、より抵抗性のあるエピラムの使用を可能にする。
【0012】
流体プライマ組成物は、接着層が形成されるべき第1および/または第2の構成要素に対してその向きを変えるために、多軸ロボット・アーム上で移動することができるように取り付けられたスプレー・ノズルを使用して吹き付けられることが好ましい。あるいは、プライマ組成物は、スプレー・ノズルを使用して最上部から最下部まで実質的に垂直に吹き付けられてもよく、そのような場合、接着層が形成されるべき第1および/第2の構成要素は、スプレー・ノズルに対してその向きを変えるために、多軸ロボット・アーム上で移動することができるように取り付けられる。この第2の可能性は、スプレーが垂直であり続けることができ、それにより接着層の正確な境界画定を促進することができるという利点を有する。
【0013】
プライマ組成物は、放射線硬化性材料(紫外線および/または電子線放射による放射線硬化性材料)を含むことができ、そのような場合、プライマ組成物層は、放射線への暴露によって固化される。
【0014】
プライマ組成物は、熱硬化性材料をさらに含むことができ、その場合、プライマ組成物層は、熱処理によって固化される。
【0015】
プライマ組成物は、溶媒中に溶解されたまたは懸濁したプライマ組成物を含むインキの形態であってよい。プライマ組成物はまた、揮発性溶媒の代わりに反応性希釈剤を含むポリマー樹脂(無機充填材を含むまたは含まない)の形態であってよい。
【0016】
本発明の1つの実施形態によれば、互いに結合されるべき第1および第2の時計構成要素のうちの少なくとも一方は、エピラムで被覆される。接着層は、エピラムで被覆された時計構成要素上に形成され得る。
【0017】
接着剤は、セラックを含み得る。あるいは、接着剤は、エポキシ接着剤を含み得る。
【0018】
1つの特定の実施形態によれば、そのうちの一方がエピラムで被覆される時計構成要素は、セラックを含む接着剤を使用して互いに結合される。そのような場合、接着層は、セラックおよびエピラムの両方に対して化学的かつ/または物理的な親和性を有することが好ましい。2つの時計構成要素がエピラムで被覆されてもよいことが、留意されるべきである。
【0019】
接着剤は接着層と同じ技術を使用して塗布され得ることが、留意されるべきである。より具体的には、接着剤は、接着剤スプレー・ノズルによって塗布されてよく、スプレー・ノズルは、
- 接着剤が塗布されなければならない第1および/もしくは第2の構成要素に対してその向きを変えるために多軸ロボット・アーム上で移動することができるように取り付けられ、または、
- 最上部から最下部まで基本的に垂直に配向され、接着剤が塗布されなければならない第1および/もしくは第2の構成要素は、接着剤スプレー・ノズルに対してその向きを変えるために多軸ロボット・アーム上で移動することができるように取り付けられる。
【0020】
本発明により様々な時計構成要素が互いに結合され得ることが分かる。例えば、
- 第1の時計構成要素は、脱進機レバー(escapement lever)であってよく、第2の時計構成要素は、レバーつめ石(lever pallet-stone)であってよく、
- 第1の時計構成要素は、テンプ輪スタッドであってよく、第2の時計構成要素は、ひげぜんまいであってよく、
- 第1の時計構成要素は、車受(wheel plate)であってよく、第2の時計構成要素は、テン真(staff)、例えば金属テン真であってよく、
- 第1の時計構成要素は、インデックス・ブロックであってよく、第2の時計構成要素は、文字板であってよい。
【0021】
結合され得る構成要素のリストは、包括的なものではない。本発明は、結合により(アンクルとそのつめ石の場合のように)すでに互いに取り付けられている時計構成要素の結合を向上させるために使用され得る。しかし、本発明は、他の手段により(例えば、締付けまたはリベット締めにより)現在取り付けられている時計構成要素の結合を可能にするのに役立ち得る。金属(例えば、鋼鉄)テン真上の(その薄さ、および/またはケイ素などの脆弱な材料で作られているという事実により)脆弱な設計を有する可動板について、特に言及がなされ得る。これらの時計構成要素の結合は、リベット締めもしくは動作時の駆動による可動板の変形または破損を防止するかあるいは少なくとも軽減するとともに、可動板およびそのテン真に応力が印加されたときにそれらの間の結合力を保証する。
【0022】
接着層は、ポリマー・ベースのものであってよく、例えばポリウレタン・ベース、アクリル酸ベース、またはエポキシド・ベースのものであってよい。貴金属の場合、チオール類を含むいくつかの製品が使用され得ることが、留意されるべきである。当業者は時計構成要素および接着剤のそれぞれの性質に従ってプライマ組成物を選択することになることが、理解される。ポリマー・ベースのプライマ組成物の場合、(不可逆的な)交差結合を受けるポリマーが好ましいことが、留意されるべきである。しかし、接着剤に関しては、特定の構成要素を結合するのに熱硬化性接着剤が好ましいが、他の場合では、熱可塑性接着剤が好ましい。
【0023】
本発明の様々な態様は、時計構成要素の結合を向上させること、汚れの影響を軽減すること、より抵抗性のあるエピラムを使用すること、および/または滴の品質基準(位置、量)を配慮しながら接着剤の塗布を促進することを可能にする。
【0024】
本発明のさらなる態様は、そのような結合方法により互いに接続されることが可能な第1および第2の構成要素を含む時計構成要素の一体形組立体に関する。
他の実施形態によれば、
- 一体形組立体は、第1および第2の構成要素の接合領域を接続する接合部を備え、
- 接合部は、接着剤の層および接着層、具体的にはプライマ組成物層によって形成され、
- 第1の時計構成要素は、脱進機レバーであり、第2の時計構成要素は、レバーつめ石であり、
- 第1の時計構成要素は、テンプ輪スタッドであり、第2の時計構成要素は、ひげぜんまいであり、
- 第1の時計構成要素は、車受であり、第2の時計構成要素は、テン真であり、また、
- 第1の時計構成要素は、インデックス・ブロックであり、第2の時計構成要素は、文字板である。
【0025】
本発明の別の態様は、そのような時計構成要素の一体形組立体を備える時計に関する。
【0026】
本発明の他の特徴および特性は、例示の目的のために以下に提示されるいくつかの有利な実施形態の詳細な説明を添付の図面を参照しながら読めば、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による結合方法の第1の実施形態の略図である。
図2】本発明による結合方法の第2の実施形態の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1および図2は、本発明による結合方法の実施形態を概略的に示す。上述のように、本発明による方法は、つめ石12、14を機械式腕時計の脱進機10のアンクル16に結合するために使用され得る。図は、スイス・レバー脱進機10を示す。スイス・レバー脱進機10は、典型的には急冷された研磨鋼鉄で作られる、がんぎ車18を備える。アンクル16は、がんぎ車をテンプ輪(図は、小ローラ20、大ローラ22、およびテン真24を示す)に接続し、かつ、テンプ輪およびひげぜんまい組立体によって課せられる速度において2つの位置間で切り替わることができる。がんぎ車18は、交互運動するたびにアンクル16に衝撃を与え、アンクル16は、テンプ輪の振動を維持するように、その衝撃をテンプ輪に伝える。つめ石12、14は、典型的には、その硬さおよび低摩擦係数のためにルビーで作られ、かつ、セラック・ベースの接着剤によりアンクル16に結合される。
【0029】
つめ石12、14は、必要に応じて完全にまたは部分的にエピラムで被覆される。本発明により、つめ石12、14上の結合領域は、表面がセラックによって濡れることを十分に可能にするように表面張力を調整する接着層を使用して、セラックの塗布に先立って準備され得るので、高抵抗性のエピラムを使用することが可能になる。接着層は、構成要素上に直接デジタル印刷する方法によるプライマ組成物の塗布によって形成される。具体的には、接着層は、インク26の形態をしたプライマ組成物を吹き付けることによって堆積され得る。インクの量、および各液滴の位置は、制御ユニット28(例えば、マイクロプロセッサ、またはコンピュータなど)によって精密に制御される。制御ユニット28は、具体的には、インク・スプレー・ノズルに対する構成要素の位置および向きを調整する。印刷媒体に対してスプレー・ノズル30を配向および位置決めする可能性は、参照番号32により概略的に示されている。
【0030】
印刷がなされる構成要素は、印刷中に静止状態を維持することができる。そのような場合、プライマ組成物は、構成要素すなわち図示された事例ではつめ石12もしくは14またはアンクル16に対してその向きを変えるために例えば多軸ロボット・アーム上で移動することができるように取り付けられたスプレー・ノズル30を使用して吹き付けられる。しかし、スプレー・ノズル30は、印刷中に最上部から最下部まで垂直に向けられたままでいることが好ましく、そのような場合、構成要素は、スプレー・ノズル30に対してその向きを変えるために、例えば多軸ロボット・アーム上で移動することができるように取り付けられる。
【0031】
第1の代替的な実施形態によれば、構成要素の表面上での堆積後、プライマ組成物は固化される。第2の代替的な実施形態によれば、プライマ組成物は、互いに結合されるべき第1および/または第2の時計構成要素上への接着剤の塗布後に固化される。これら2つの代替的な実施形態において、接着層は、接着層と同じ構成要素に接着剤が塗布されるのであれば、接着剤の塗布に先立って堆積され得ることが、留意されるべきである。プライマ組成物のそのような固化は、互いに結合される時計構成要素の強力な接着を確実とするのに貢献する。
【0032】
これらの代替的な実施形態の両方において、固化は、プライマ組成物の特性に応じて、例えば放射線硬化性材料の場合にはUV放射線にもしくは電子線により、熱硬化性材料の場合には熱処理により、レーザ焼結により、または単純に溶媒の蒸発により、行われる。そのような蒸発は、自然なもの、または強制されたものであってよいことが、留意されるべきである。硬化法は、例えば硬化を速めるために、複数のこれらの可能性を組み合わせることができる。
【0033】
つめ石12、14に加えて、接着層はまた、アンクル16に塗布され得る。接着層の組成物は、2つのタイプの構成要素上の接着剤が十分に強力であるならば、つめ石12、14に塗布されるものと同じであってよい。あるいは、アンクル16上およびつめ石12、14上で異なる接着層が使用されてもよい。したがって、このような関係において、これらのつめ石12、14およびアンクル16は、時計構成要素の一体形組立体を形成する。
【0034】
図1は、プライマ組成物が単一の流体から構成される実施形態を概略的に示すが、図2は、プライマ組成物が現場で混合される2成分組成物である事例を示す。そのような事例では、2種類の反応性流体26aおよび26bが、時計構成要素上の結合領域において一緒にされる。
【0035】
本発明のさらなる態様は、そのような方法によって互いに接続されることが可能な第1および第2の構成要素を備える時計構成要素の一体形組立体に関する。そのような一体形組立体は、第1および第2の構成要素の接合領域を接続する接合部を備える。この接合部は、接着剤の層および接着層、具体的にはプライマ組成物層によって形成される。この一体形組立体において、
- 第1の時計構成要素は、脱進機レバーであり、第2の時計構成要素は、レバーつめ石であり、
- 第1の時計構成要素は、テンプ輪スタッドであり、第2の時計構成要素は、ひげぜんまいであり、
- 第1の時計構成要素は、車受であり、第2の時計構成要素は、テン真であり、
- 第1の時計構成要素は、インデックス・ブロックであり、第2の時計構成要素は、文字板である。
【0036】
本発明の別の態様は、そのような時計構成要素の一体形組立体を備える時計に関する。
【0037】
特定の実施形態が詳細に説明されてきたが、当業者は、上記のことに対する様々な修正形態および代替形態が本発明のこの開示の一般的教示に照らして開発され得ることを知るであろう。結果として、本明細書において説明された特定の配置および/または方法は、単に例示の目的のために意図されたものであり、添付の特許請求の範囲に記載の範囲によって定められる本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
図1
図2
【国際調査報告】