(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】Liリッチカソード材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/58 20100101AFI20220930BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
H01M4/58
C01G53/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022503856
(86)(22)【出願日】2019-07-19
(85)【翻訳文提出日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 TR2019050597
(87)【国際公開番号】W WO2021015679
(87)【国際公開日】2021-01-28
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519180459
【氏名又は名称】エンウェア エネルジ テクノロジレリ アー エス
【氏名又は名称原語表記】ENWAIR ENERJI TEKNOLOJILERI A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】ネスィハン ユカ
(72)【発明者】
【氏名】ブスラ セティン
(72)【発明者】
【氏名】オメール スアット タスカン
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD02
4G048AE05
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA01
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA10
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本発明は、リチウムイオン電池用の均質な形態のドーパント元素を含有する、リチウムリッチ複合酸化物カソード材料の製造方法に関する。本発明の目的は、リチウムイオン電池用のリチウムリッチ層状酸化物構造カソード材料の製造方法を提供することである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池用の均質な形態を有するドーパント元素を備えるカソード材料の製造方法であって、
式(I)中において、
1<α<1.5
0.4<β<0.7
0.01<z<0.06
0.1<x<0.3
0.05<y<0.2
Li
αMn
β-zNi
x-yCo
yAl
z 式(I)
の条件を提供し、
リチウム金属塩、マンガン金属塩、ニッケル金属塩、コバルト金属塩およびアルミニウム金属塩を蒸留水で溶解および混合するステップと、
1つ以上のリチウム金属塩酢酸リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、塩化リチウム塩類、1つ以上のマンガン金属塩酢酸マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、塩化マンガン塩類、1つ以上のニッケル金属塩酢酸ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル塩類、1つ以上のコバルト金属塩酢酸コバルト、硫酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト塩類、1つ以上のアルミニウム金属塩、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム塩類を、混合物に添加するステップと、
前記混合物を80~85℃で300~1000rpmのマグネチックスターラーにおいて3~10時間攪拌することによって、前記混合物のゲル化をもたらすステップと、
得られたゲル構造体を、140~350℃のアッシュオーブンで8~20時間乾燥させるステップと、
前記アッシュオーブンで乾燥させた前記ゲル構造体を、400~1000℃で15~30時間の第1の熱処理工程に供するステップと、
前記第1の熱処理工程で得られた前記混合物を、スプレーノズルに通すことによって噴霧沈殿させるステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記混合物を蒸留水で溶解した後に、クエン酸、アジピン酸、酒石酸、エチレングリコール、EDTA、グルコース、スクロース、ゼラチン、グリセリンなどの1つ以上の錯化合物を、錯化比が1:2になるように、前記混合物に添加するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物をゲル化するステップの前に、20%水酸化アンモニウム(NH
4OH)緩衝液を、前記混合物のpHが7~10になるように、前記混合物に添加するステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の熱処理工程から得られた前記ゲル構造体を、400~1000℃で15~30時間の第2の熱処理工程に供することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第2の熱処理工程から得られた前記ゲル構造体を、400~1000℃で15~30時間の第3の熱処理工程に供することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の熱処理工程または第3の熱処理工程から得られた前記混合物を、スプレーノズルに少なくとも1回通過させることによって、噴霧沈殿させるステップを含む、請求項4または5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用の均質な形態のドーパント元素を含有するリチウムリッチ複合酸化物カソード材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、実質的に、正極、負極、2つの電極間のイオン移動を可能にする電解質および電極を互いに分離するセパレータからなる。リチウムイオン電池の動作原理は、充電/放電時に正極と負極との間でリチウムイオンが移動することに基づく。負極では還元が発生し、一方、正極では酸化が発生する。充電時に正極の結晶構造から分離したリチウムイオンは、電解質によってセパレータを通過することによって、負極において化合物を形成する。放電時にはその逆のプロセスが起こる。
【0003】
遷移金属酸化物をリチウムイオン電池内のカソード材料に用いることによって、結晶構造内におけるリチウムイオンの自由伝播が可能となる。LiCoO2(LCO)およびLiMn2O4(LMO)などの遷移金属酸化物を用いたLixMO2構造を有する高電圧カソード材料の開発によって、商業ベースで使用され得る容量を有する電池が登場している。α-NaFeO2層状構造を有すると、LiCoO2は、高サイクル寿命、高容量であり、合成も容易な材料である。しかしながら、この材料は、他の電極材料よりも低い安定性、過充電の場合における効率の低下、長期充電サイクル後の急激な容量減少などの欠点を有する。
【0004】
均質な形態を有するドーパント元素を含有するリチウムリッチ複合酸化物カソード材料を製造する方法について、当業者の間では様々な研究がなされている。
【0005】
特許文献1の先端技術には、リチウム電池カソード材料の作製の結果として、化学式がLiNixMnyCozO2である方法が記載されている。
【0006】
特許文献2の先端技術には、ニッケルリチウム電池の三重材料を安定的に熱処理することによって、三重リチウム電池(ニッケル、コバルト、マンガン)を作製する方法が記載されている。
【0007】
特許文献3の先端技術には、アルミナ(Al2O3)コーティングニッケル、コバルト、マンガン、酸化物カソード材料およびリチウムイオン電池の作製方法が記載されている。
【0008】
しかしながら、これらの文献を検討すると、リチウムイオン電池の充電時または放電時にリチウムイオンが連続的に移動することによる基本構造の劣化を防ぎ、同時に物質移動を促進するための研究が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中国特許第107804879号明細書
【特許文献2】中国特許第108417829号明細書
【特許文献3】中国特許第108598467号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、リチウムイオン電池用のリチウムリッチ層状酸化物構造カソード材料の製造方法を提供することである。
【0011】
本発明の目的は、リチウムイオン電池用のリチウムリッチ層状酸化物構造カソード材料の製造方法を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、カソード材料の製造方法の、
リチウム金属塩、マンガン金属塩、ニッケル金属塩、コバルト金属塩、アルミニウム金属塩を蒸留水で、化学量論比で溶解および混合するステップと、
リチウム金属塩酢酸リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、1つ以上の塩化リチウム塩類、マンガン金属塩酢酸マンガン、1つ以上の硫酸マンガン、硝酸マンガン、塩化マンガン塩類、ニッケル金属塩酢酸ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、1つ以上の塩化ニッケル塩類、1つ以上のコバルト金属塩酢酸コバルト、硫酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト塩類、1つ以上のアルミニウム金属塩、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム塩類を、混合物に添加するステップと、
クエン酸、アジピン酸、酒石酸、エチレングリコール、EDTA、グルコース、スクロース、ゼラチン、グリセリンなどの1つ以上の複合助剤化合物を、複合助剤比1:2で混合物に添加するステップと、
20%水酸化アンモニウム(NH4OH)緩衝液を、pH値7~10で混合物に添加するステップと、
混合物を80~85℃で300~1000rpmのマグネチックスターラーにおいて3~10時間攪拌することによって、混合物のゲル化をもたらすステップと、
得られたゲル構造体を、140~350℃のアッシュオーブンで8~20時間乾燥させるステップと、
アッシュオーブンで乾燥させたゲル構造体を、400~1000℃で15~30時間の第1の熱処理工程に供するステップと、
構造体を、400~1000℃で15~30時間の第2の熱処理工程に供するステップと、
構造体を、400~1000℃で15~30時間の第3の熱処理工程に供するステップと、
第1の熱処理工程から得られた混合物を、第2の熱処理工程および第3の熱処理工程の前および/または後に、少なくとも1回、スプレーノズルに通して噴霧沈殿させるステップと、
を含む。
【0013】
本発明は、噴霧沈殿によってリチウムリッチカソード材料を合成することによって、所望の形態を提供する。
【0014】
リチウムリッチ正極活物質の一般式は、
LiαMnβ-zNix-yCoyAlz 式(I)
1<α<1.5 0.4<β<0.7 0.01<z<0.06 0.1<x<0.3 0.05<y<0.2
である。
【0015】
LiαMnβ-zNix-yCoyAlzカソード材料の合成には、ゾル・ゲル法を用いる。最初に、ニッケル塩、マンガン塩、コバルト塩およびリチウム塩を化学量論比で混合した後、アルミニウム塩を加える。錯化剤としてクエン酸を加え、水酸化アンモニウムの緩衝液でpHを調整する。ヒーター付きマグネチックスターラーにおいて、85℃で溶液ゲル化をもたらす。得られたゲル構造体を、アッシュオーブン内で、140~350℃で8~20時間、第1に乾燥させる。
【0016】
合成の間に活物質内の金属が凝集するため、熱処理が健全でなく、所望の性能ではない。400℃~1000℃で15~30時間の熱処理から得られた材料を噴霧沈殿に供し、リチウムイオンカソード材料について理想的な形態を得る。噴霧沈殿は、第2の熱処理の前および/または後に材料に適用され得る。
【0017】
第1および第2の熱処理後、正極活物質をスプレーノズルに通して噴霧沈殿させる。このようにして、凝集ビーズは、互いに分離され、第3の熱処理後に得られるより均質でより結晶性の高い活物質の構造を提供し、LiαMnβ-zNix-yCoyAlzカソード材料を合成する。
【0018】
80%の正極活物質と10%のPVDFと10%とのブラックカーボンの混合物をアルミニウムベースにコーティングし、真空加熱システムで乾燥させる。カソード電極を作製した後、それらは、リチウムに対してEC/DEC(重量比1:1)内において1MのLiPF6電解質を使用することによっておよびCelgard(ポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン膜)をボタン電池として使用することによって、製造される。
【国際調査報告】