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▶ コロンバス・マッキノン・インダストリアル・プロダクツ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】巻上機
(51)【国際特許分類】
   B66D 3/14 20060101AFI20220930BHJP
【FI】
B66D3/14 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022503927
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(85)【翻訳文提出日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 DE2020100101
(87)【国際公開番号】W WO2021013286
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】102019120036.9
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522025145
【氏名又は名称】コロンバス・マッキノン・インダストリアル・プロダクツ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】シュトルック・デトレフ
(72)【発明者】
【氏名】シュネーベック・ヴォルフラム
(57)【要約】
本発明は、巻上機、特にレバーホイスト(1)に関する。巻上機は、ハウジング(2)と駆動装置(12)とロードブレーキ(16)と安全ブレーキ(30)とを備え、ハウジング内(2)内に、ロードチェンホイール(17)と、ロードチェンホイール(17)を伝動装置(18)を介して駆動する出力シャフト(20)とが回動自在に支承されている。ロードチェンホイール(17)を介して、ロードチェン(10)が運動可能である。安全ブレーキ(30)は、駆動シャフト(20)の回転数が高すぎると、非常制動を及ぼす。安全ブレーキ(30)は、掛止歯(33)を有する掛止ディスク(32)と、制御カム(35)を有する制御ディスク(34)と、安全フック(36)とを具備する。掛止ディスク(32)と制御ディスク(34)とは、互いに対して限定的に回動可能である。回動は、回動路制限部(47)によって制限されている。安全フック(36)は、揺動自在に配置されていて、前端(55)に爪輪郭(56)を有し、後端(60)に接触輪郭(61)を有する。接触輪郭(61)は、ばね要素(44)の作用を受けて制御ディスク(34)に当接する。所定の回転数を超えると、安全フック(36)の接触輪郭(61)が、制御ディスク(34)から持ち上がる。爪輪郭(56)は、掛止ディスク(32)に対して回動し、掛止ディスク(32)の掛止歯(33)に、動きを止めるように係合する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻上機、特にレバーホイスト(1)であって、
ハウジング(2)と駆動装置(12)とロードブレーキ(16)と安全ブレーキ(30、31)とを備え、ハウジング内(2)内に、ロードチェンホイール(17)と、ロードチェンホイール(17)を伝動装置(18)を介して駆動する出力シャフト(20)とが回動自在に支承されていて、ロードチェンホイール(17)を介して、ロードチェン(10)が運動可能である、巻上機において、
安全ブレーキ(30、31)は、掛止歯(33)を有する掛止ディスク(32)と、制御カム(35)を有する制御ディスク(34)と、安全フック(36)とを具備し、掛止ディスク(32)と制御ディスク(34)とは、互いに対して回動自在であり、回動は、回動路制限部(47)によって制限されていて、安全フック(36)は、揺動自在に配置されていて、前端(55)に爪輪郭(56)を有し、後端(60)に接触輪郭(61)を有し、接触輪郭(61)は、ばね要素(44)の作用を受けて制御ディスク(34)に当接し、爪輪郭(56)は、掛止ディスク(32)の掛止歯(33)に、動きを止めるように係合可能である
ことを特徴とする、巻上機。
【請求項2】
回動路制限部(47)は、少なくとも1つの湾曲軌道(48)と少なくとも1つのストッパボディ(50)とを有し、ストッパボディ(50)は、湾曲軌道(48)に沿って変位可能であることを特徴とする、請求項1に記載の巻上機。
【請求項3】
湾曲軌道(48)は、制御ディスク(34)又は掛止ディスクに設けられた長孔(49)又は溝によって形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の巻上機。
【請求項4】
ストッパボディ(50)は、ピンであることを特徴とする、請求項2又は3に記載の巻上機。
【請求項5】
掛止ディスク(32)と制御ディスク(34)との間に係止要素(52)が組み込まれていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の巻上機。
【請求項6】
複数の掛止歯(33)が、掛止ディスク(32)の周に均一に分配して配置されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の巻上機。
【請求項7】
複数の制御カム(35)が、制御ディスク(34)の周に均一に分配されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の巻上機。
【請求項8】
制御ディスク(34)は、内歯列(37)を設けた中央の管片(38)を有し、管片(38)に、掛止ディスク(32)が、中央の軸受部分(39)でもって位置決めされているとともに固定要素(40、41)によって位置固定されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の巻上機。
【請求項9】
掛止ディスク(32)及び制御ディスク(34)の初期位置で、掛止歯(33)の背面側の外側輪郭が、制御ディスク(34)の外側輪郭と整合することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の巻上機。
【請求項10】
安全フック(36)は、ハウジング(2)内に組込み可能な側板(5、6)に支承されていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の巻上機。
【請求項11】
掛止ディスク(32)及び制御ディスク(34)を初期位置へ戻すためのロック解除装置(63)が設けられていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の巻上機。
【請求項12】
掛止ディスク(32)及び制御ディスク(34)が初期位置へ回動することを阻止する戻り止め(67)が設けられていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の巻上機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の巻上機、特にレバーホイストに関する。
【背景技術】
【0002】
巻上機、特にレバーホイストは、通常、吊上手段又は引張手段として、丸鋼チェンを使用し、荷の上下動及び引張に用いられる。上下動は、手動装置、圧縮空気又は電動モータによって生成され得る。本発明は、特に、手動のレバーホイストに関する。
【0003】
独国特許発明第4105050号明細書において、レバー操作式の巻上機が知られていて、これは、ホイスト又はチェンホイストとも称される。巻上機は、上側の取付要素として支持フックと、下側の当接要素としてロードフックとを有する。上側の取付要素と下側の当接要素とは、ハウジングを介して間接に互いに結合されている。当接要素は、引張手段としてのロードチェンを介して、引張手段ドライブに結合されている。引張手段ドライブは、巻上機のハウジング内に位置する。ハンドレバーの揺動によって、引張手段ドライブは、ハウジング内で回転させられる。そのために、レバーアームは、伝動装置に係合し、一方、伝動装置は、引張手段ドライブに結合されている。このようにして、物体を移動する又は引きずることが可能である。
【0004】
引張伝動ドライブは、切替可能なラチェット機構を有する駆動装置の他に、ロードブレーキとロードチェンホイールと伝動装置とを有し、伝動装置は、遊星歯車装置として構成されることが多い。ハンドレバーとラチェット機構のラチェットホイールとは、駆動シャフトの一端に装着されている。駆動シャフトは、ロードブレーキとロードチェンホイールとを貫通する。駆動シャフトの他端には、伝動装置が位置し、この場合、伝動装置は、トルク伝達式にロードチェンホイールに結合されている。
【0005】
ロードブレーキは、外周に凹所又は歯を設けたラチェットホイールディスクと、ラチェットホイールディスクの両側に位置する2つの摩擦要素、大抵は摩擦ディスク又は摩擦ライニングと、ハウジングに枢支された2つの爪とから構成されている。爪は、掛止フックばねの作用を受けてラチェットホイールディスクに押し付けられる。2つの摩擦要素は、一方ではラチェットホイールディスクに、他方ではシャフトに取り付けられたワッシャ又はラチェットホイールに摩擦接続式に結合される。ラチェットホイールは、駆動シャフトの移動用ねじ山上で軸方向に変位可能である。
【0006】
ロードブレーキには、ラチェットホイールが停止しているとき、巻上機によって支持された荷を、その都度の高さ又は位置で保持するという役割がある。この場合、ラチェットホイールは、ラチェットホイールディスクとこれに組み込まれた摩擦要素とを介してワッシャに押し付けられている。爪は、ラチェットホイールディスクの周面側の空所に位置する。ラチェットホイールが上げ方向に回動されると、爪は、ラチェットホイールが停止するまで、ラチェットホイールディスクの歯の上をスライドする。次いで、爪は、再びラチェットホイールディスクの空所に係止する。荷が下げられるとき、ラチェットホイールは、反対方向に回動され、これにより、ラチェットホイールは、駆動シャフトの移動用ねじ山上で軸方向にスライドし、ラチェットホイールディスクの摩擦要素とワッシャとの摩擦接続式の接触が解消される。荷は、回動し続けるシャフトが軸方向遊びを再び補償するまで、下がってよい。
【0007】
極端な例外的な状況では、特にロープを張設する、又は揺れ動く荷を吊り上げて保持するとき、駆動装置又は駆動シャフトの高い加速度及び過度に高い回転数が生じ得、標準型のロードブレーキではもはや作用しない。というのも、爪が、その慣性に基づいて、もはやラチェットホイールディスクの空所に係合できないからである。このような例外的な状況は、極めてまれではあるが、例えば、電線路において高所で作業を行うときに生じ得る。この場合、ロードチェンががたつくおそれがある。またそのような状況は、引っ掛かって動かなくなったロードチェンにおいて下げるときに生じ得る。ロードブレーキの掛止フックが、例えば腐食又は凍結などの異常事態によって、自由に作動できないときにも、そのような例外的な状況が生じ得る。
【0008】
欧州特許第0279144号明細書において、被駆動シャフト用の安全ブレーキが従来技術に数えられている。この安全ブレーキは、制動ディスクと、起動ばねによって押付可能な回転ローラ用のカムディスクとを有し、カムディスクは、シャフトの回転数が高すぎるとき、シャフト上に配置された歯付きリングへの爪の係止を惹起する。
【0009】
欧州特許出願公開第3395746号明細書において、ロードブレーキに対して付加的に、遠心要素の遠心力を速度制限に利用する、安全ブレーキの形態の別の安全装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許発明第4105050号明細書
【特許文献2】欧州特許第0279144号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第3395746号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術から出発して、本発明の基礎をなす課題は、駆動シャフトの許容されない回転数の増加が防止されている、安全技術的にかつ運転技術的に改善された巻上機、特にレバーホイストを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴部に記載の巻上機において解決される。
【0013】
本発明に係る巻上機の有利な発展形及び形態は、従属請求項の対象である。
【0014】
巻上機、特にレバーホイストは、ハウジングを備え、ハウジング内に、ロードチェンホイールと、ロードチェンホイールを伝動装置を介して駆動する出力シャフトとが回動自在に支承されている。さらに、駆動装置と、ロードブレーキと、安全ブレーキとが設けられている。ロードチェンホイールを介して、ロードチェンが運動可能である。
【0015】
安全ブレーキは、掛止歯を有する掛止ディスクと、制御カムを有する制御ディスクと、安全フックとを具備する。本発明によれば、掛止ディスクと制御ディスクとは、互いに対して回動可能であり、回動は、回動路制限部によって制限されている。安全フックは、揺動自在に配置されている。安全フックは、二腕式であって、前端に爪輪郭を有し、後端に接触輪郭を有する。安全フックは、掛止ディスク及び制御ディスクに対応して配置されていて、接触輪郭は、ばね要素の作用を受けて制御ディスクに、特に制御ディスクの外側輪郭に当接し、制御ディスクが回動するときこれに沿ってスライドする。爪輪郭は、掛止ディスクの掛止歯に、動きを止めるように係合可能である。このことは、安全フックが、巻上機の通常運転時、接触輪郭でもって、制御ディスク上をガイドされ、爪輪郭が、掛止ディスクに係合しないことを意味する。設定された回転数を超えたときに起動されると、安全フックの接触輪郭は、制御ディスク又は制御ディスクの制御カムから持ち上がり、安全フックの爪輪郭が、掛止ディスクの掛止歯に係合する。これにより、掛止ディスクが停止される一方、同軸に掛止ディスクの後方に配置された制御ディスクは、回動路制限部の所定の回動路に沿って、回動路が利用されて、掛止ディスクと制御ディスクが相互にブロックするまで、引き続き回動する。
【0016】
これにより、駆動シャフトと巻上機との間に形状接続式の結合が確立される。非常制動が行われる。ロードチェンホイールの空転又はロードチェンのがたつきが防止される。交差して位置する間、制御ディスクは、安全フックを、能動的に掛止ディスクの凹所又は掛止歯に押し付ける。掛止姿勢では、制御ディスクは、掛止フックの戻し回動も阻止するので、安全ブレーキがロックされている。
【0017】
本発明の一態様では、回動路制限部が、少なくとも1つの湾曲軌道と少なくとも1つのストッパボディとを有し、ストッパボディは、湾曲軌道に沿って変位可能である、ことが想定される。終了姿勢では、つまり掛止ディスクと制御ディスクとの間の回動路が利用された後では、ストッパボディは、湾曲軌道の端部に、動きを止めるように当接する。
【0018】
湾曲軌道は、好適には、長孔によって形成されている。特に、長孔は、制御ディスクに形成されている。長孔は、好ましくは、制御ディスクの中心点を中心とする半径を有する円弧状に形成されている。特に有利には、複数の長孔が、一部分円上で互いにずらして制御ディスクに設けられている。湾曲軌道が溝に形成されていてもよい。溝は、制御ディスクに、また掛止ディスクにも設けられてよい。
【0019】
ストッパボディは、好ましくはピンである。1つ又は複数のストッパピンは、好適には、掛止ディスクに固定されていて、掛止ディスクに対して、制御ディスクの方へ突出し、その際、ストッパピンは、長孔に係合する。
【0020】
別の一形態によれば、掛止ディスクと制御ディスクとの間に係止要素が組み込まれている、ことが想定される。係止要素は、掛止ディスクと制御ディスクとを、初期位置に又は終了位置に固定する。好適には、係止要素は、玉によって形成されている。係止要素は、収容部に保持されていて、係止面と相互作用する。有利な一形態では、収容部が、制御ディスクに形成されていて、係止面が、掛止ディスクに形成されている、ことが想定される。
【0021】
有利には、複数の掛止歯が、掛止ディスクの周に均一に分配して配置されている。同様に、複数の制御カムが、制御ディスクの周に均一に分配して設けられている。制御カムは、特に制御ディスク自体の輪郭によって形成されている。そのために、制御ディスクは、好ましくは、丸み付けられた外側輪郭を有する三角形に形成されている。
【0022】
制御ディスクは、内歯列を設けた中央の管片を有する。内歯列でもって、制御ディスクは、外歯列を設けた、駆動シャフトの長手方向部分に装着されている。中央の管片に、掛止ディスクが、中央の軸受部分でもって位置決めされている。固定要素によって、掛止ディスクは、管片上に確保されている。
【0023】
有利で実用的な一形態では、掛止ディスク及び制御ディスクの初期位置で、掛止歯の背面側の外側輪郭が、制御ディスクの外側輪郭と整合する、ことが想定される。制御ディスクは、掛止ディスクの当接平面を覆う。
【0024】
安全ブレーキの安全フックは、ハウジング内に組込み可能な側板において、揺動自在にピンに支承されている。ばね要素は、好適には、ねじりコイルばねである。
【0025】
任意選択的に、掛止ディスクと制御ディスクとの間に緩衝要素が組み付けられてよく、これにより、非常制動のときに制動作用が緩衝される。
【0026】
安全ブレーキが起動すると、掛止ディスクは、ブロックされた終了位置に位置する。ロックを解除するには、掛止ディスクと制御ディスクとを再び互いに整合するように整列させる必要がある。そのために、掛止ディスク及び制御ディスクを初期位置へ戻すためのロック解除装置が設けられている。ロック解除装置は、好適には、掛止スライダを有し、掛止スライダは、掛止ディスクをブロックする一方、駆動シャフトに結合された制御ディスクは、往復方向(時計回り方向)に、両方のディスクが再び初期位置で互いに整合するように整列されるまで回動されるように、構成されている。
【0027】
多くの用途では、起動又は非常制動後の再始動を防止する必要があり得る。そのために、戻り止めが設けられていて、戻り止めは、初期位置への掛止ディスク及び制御ディスクの戻り回動を阻止する。これにより、安全ブレーキは、動きが止められた状態で保持される。戻り止めの一実施形態では、締付ローラが、掛止ディスクの凹所に位置決めされている、ことが想定される。締付ローラは、初期位置への掛止ディスク及び制御ディスクの戻りが阻止されるように配置及び設計されている。
【0028】
この形態において、例えば手で引き抜かれるときに安全ブレーキの不意の起動が生じ得ないようにするために、シャーピンによって初期位置が確保される。回転数及びトルクに関する特定の閾値を超えてから、シャーピンがせん断し、安全ブレーキが非常制動を実行する。
【0029】
本発明に係る巻上機は、様々な用途に使用できる。巻上機は、荷が揺れ動くあらゆる用途で、例えば電線路工事で、また人の固定に使用されてもよい。
【0030】
巻上機は、コンパクトで軽量に構成されている。安全ブレーキを介する追加の安全機能は、少数の部品で実現される。機構には、能動的な動きが要求されるので、ばねの消失、ロードブレーキの爪の固着などによって、安全ブレーキが起動される。安全ブレーキは、自動的にロックを行う。これにより、安全フックは、たとえ荷が揺れ動き続けても常に係合を維持する。
【0031】
以下、本発明を、図面に基づき詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】レバーホイストの形態の本発明に係る巻上機を縦断面図で示す。
図2】レバーホイストの構成部材を分解図で示す。
図3】レバーホイストの一部の側面図を示す。
図4】レバーホイストの安全ブレーキを斜視図で示す。
図5】安全ブレーキの掛止ディスクと制御ディスクとを斜視図で示す。
図6】安全ブレーキの構成部材を分解して相互に離間した状態で示す。
図7図5を上から見た図である。
図8図7のA-A線に沿った断面図である。
図9図7のB-B線に沿った断面図である。
図10図5を下から見た図である。
図11】通常の状態のロードブレーキ及び安全ブレーキの領域を見た、開いたレバーホイストを示す。
図12】問題となる状態の図11に対応する図である。
図13】第1の動作状態のレバーホイストの安全ブレーキを見た図である。
図14】第2の動作状態の安全ブレーキを示す。
図15】第3の動作状態の安全ブレーキを示す。
図16】第4の動作状態の安全ブレーキを示す。
図17】掛止ディスク及び制御ディスクを初期位置へ戻すためのロック解除動作で安全ブレーキを示す。
図18】戻り止めを有する安全ブレーキの第2の実施形態を示す。
図19】戻り止めを有する安全ブレーキの第2の実施形態を示す。
図20】戻り止めを有する安全ブレーキの第2の実施形態を示す。
図21】戻り止めを有する安全ブレーキの第2の実施形態を示す。
図22】戻り止めを有する安全ブレーキの第2の実施形態を示す。
図23】戻り止めを有する安全ブレーキの第2の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1及び図2は、手動式のレバーホイスト1の形態の本発明に係る巻上機を示す。レバーホイスト1の構成部材は、ハウジング2であり、ハウジング2は、複数のハウジング部分3、4と側板5、6とスペーサ枠7とから構成されている。レバーホイスト1は、上側の取付要素としての支持フック8と、下側の当接要素としてのロードフック9とを有する。支持フック8とロードフック9とは、ハウジング2を介して互いに間接に結合されている。ロードフック9は、ロードチェン10の一端に取り付けられている。ロードチェン10の他端には、チェンエンドブロック11が設けられている。引張手段ドライブを介して、ロードチェン10を動かせる。引張手段ドライブは、主に、ハンドレバー13とラチットホイール14と切替可能なラチェット機構15とを有する駆動装置12と、ロードブレーキ16と、ロードチェンホイール17と、伝動装置18とを具備する。ラチェット機構15のハンドレバー13及びラチェットホイール14は、駆動シャフト20の一端19に装着されている。駆動シャフト20は、ロードブレーキ16とロードチェンホイール17とを貫通する。駆動シャフト20の他端21には、伝動装置18が位置する。伝動装置18は、ロードチェンホイール17に、トルク伝達式に結合されている。ハンドホイール22が、駆動シャフト20上でラチェットホイール14を軸方向に変位するのに用いられ、これにより、レバーホイスト1のフリーホイール機構23が作動させられる。
【0034】
ロードブレーキ16は、外周に歯を設けたラチェットホイールディスク24を有する。両側で、ラチェットホイールディスク24に、摩擦ライニングの形態の摩擦要素25が設けられている。さらに、ロードブレーキ16は、ハウジング2内で側板6に揺動自在に支承された2つの爪26を有する。爪26は、ラチェットばね27の作用を受けてラチェットホイールディスク24に押し付けられる。さらに、ロードブレーキ16には、ワッシャ28が付属する。ワッシャ28上にラチェットホイールディスク24が支承されている。ラチェットホイール14は、駆動シャフト20の移動用ねじ山29上で軸方向に変位可能である。図3は、ラチェットホイール14、ハンドレバー13及びハンドホイール22が取り外されたレバーホイスト1を示す。
【0035】
ロードブレーキ16には、ラチェットホイール14が停止しているとき、レバーホイスト1によって支持された荷を保持するという役割がある。この場合、ラチェットホイール14は、ラチェットホイールディスク24と、これに組み込まれた摩擦要素25とを介してワッシャ28に押し付けられている。爪26は、ラチェットホイールディスク24の周面側の空所に位置する。ラチェットホイール14が上げ方向に回動されると、爪26は、ラチェットホイール14が停止するまで、ラチェットホイールディスク24の歯の上をスライドする。次いで、爪26は、再びラチェットホイールディスク24の空所に係止する。荷を下げるとき、ラチェットホイール14は、反対方向に回動され、これにより、ラチェットホイール14は、駆動シャフト20の移動用ねじ山29上で軸方向にスライドし、ラチェットホイールディスク24の摩擦要素25とワッシャ28との摩擦接続式の接触が解消される。次いで、荷は、回動し続ける駆動シャフト20が軸方向遊びを再び補償するまで、下げてよい。
【0036】
標準型のロードブレーキ16に対して付加的に、レバーホイスト1は、安全ブレーキ30、31を有する。安全ブレーキ30、31には、ロードブレーキ16が慣性に起因してもはや作用しなくなるような、駆動シャフト20の高い回転数が生じ得る極端な状況において、非常制動を行うという役割がある。
【0037】
安全ブレーキ30及びその機能形態を、図4から図17を参照して説明する。安全ブレーキ31の第2の実施形態を、図18から図23を参照して説明する。相互に対応する構成部材又は構成部材コンポーネントには、同一の参照符号が付されている。安全ブレーキ30、31は、ロードチェンホイール17の方向に、同軸に、ロードブレーキ16の下方に又は後方に配置されている。
【0038】
安全ブレーキ30、31は、掛止歯33を有する掛止ディスク32と、制御カム35を有する制御ディスク34と、安全フック36とを具備する。掛止ディスク32の周に、複数の、実施例では3つの掛止歯33が、均一に分配して配置されている。制御ディスク34は、周に、丸み付けて構成された制御カム35を有し、三角形に形成されている。制御ディスク34は、内歯列37を設けた中央の管片38を有し、管片38上に、掛止ディスク32が、中央の軸受部分39でもって位置決めされていて、固定要素40、41によって位置固定されている。管片38と内歯列37とを介して、制御ディスク34は、そして制御ディスク34と共に掛止ディスク32が、駆動シャフト20の、外歯列42を設けたねじ山部分43上に保持されている。
【0039】
安全フック36は、レバーホイスト1の側板5に揺動自在に配置されている。ねじりコイルばねの形態のばね要素44が組み込まれて、安全フック36は、側板5に設けられたピン45に支承されていて、固定リング46によって確保されている。ピン45に安全フック36が、安全フック36の長さ範囲の中央で支承されているので、安全フック36は、シーソーのように支承されている。
【0040】
掛止ディスク32と制御ディスク34とは、互いに対して回動可能である。掛止ディスク32と制御ディスク34との互いに対する回動は、回動路制限部47によって制限されている。回動路制限部47は、湾曲軌道48を有し、湾曲軌道48は、制御ディスク34に設けられた円弧部分状の長孔49に形成されている。湾曲軌道48に沿って、ピンの形態のストッパボディ50が変位可能である。3つの長孔49が一部分円上で均一にずらして制御ディスク34に配置されていることが、看取される。相応に、3つのピンが、ストッパボディ50として、掛止ディスク32の取付開口51に組み込まれている。ストッパボディ50は、掛止ディスク32に対して、制御ディスク34の方へ突出し、長孔49に係合する。ここに図示された実施例では、回動路制限部47は、制御ディスク34に対する掛止ディスク32の45°の回動を可能にする。
【0041】
掛止ディスク32と制御ディスク34との間に、鋼球の形態の係止要素52が組み込まれている。係止要素52は、掛止ディスク32と制御ディスク34とを、初期位置又は回動後の終了位置で固定する。係止要素52は、制御ディスク34に設けられた収容部53に保持されていて、掛止ディスク32に設けられた部分球状の係止面54に接触し、対向受けが形成されるように、かつ運動を抑制するように係止面54と相互作用する。
【0042】
安全フック36は、前端55に、爪輪郭56を有する。爪輪郭56は、端面側の安全フランク58を有する、尖端に形成された安全歯57を具備する。安全フランク58は、構造的に、掛止ディスク32の掛止歯33の前側の掛止フランク59に適合されている。
【0043】
後端60で、安全フック36に、接触輪郭61が形成されている。そのために、安全フック36の後端60は、丸み付けて構成されている。接触輪郭61でもって、安全フック36は、ねじりコイルばねの作用を受けて、制御ディスク34の外側輪郭に当接する。ばね要素44は、爪輪郭56が通常動作では掛止ディスク32の外周の外側に位置するように働く。通常動作では、安全フック36は、後側の接触輪郭61でもって、制御ディスク34に沿ってスライドする。前側の爪輪郭56は、持ち上がっている。
【0044】
過剰に高い特定の回転数を超えると、安全フック36の接触輪郭61は、慣性質量及び作用する加速力に基づいて、制御ディスク34又は制御カム35から持ち上がる。安全フック36は、揺動し、ピン35を中心に掛止ディスク32内へ回動する。安全フック36の爪輪郭56は、掛止ディスク32の掛止歯33に係合し、そこで安全フランク58でもって、掛止フランク59に当接する。これにより、掛止ディスク32が停止される一方、同軸にその後方に配置された制御ディスク34は、回動路制限部47の所定の回動路に沿って引き続き回動する。回動は、ストッパボディ50が回動方向に位置する長孔49の端部62に当接するまで行われる。そうすると、掛止ディスク32と制御ディスク34とは、互いに対してブロックされる。このようにして、駆動シャフト20とレバーホイスト1との形状接続式の結合が確立される。ロードチェンホイール17の更なる回動及びロードチェン10のがたつきが阻止される。
【0045】
図11は、ロードブレーキ16及び安全ブレーキ30の通常の状態を示す。爪26は、ラチェットホイールディスク24に係合し、荷を保持する。
【0046】
図12は、問題となる状態を示す。ロードブレーキ16の爪26は、自由に作動しない。爪26は、ラチェットホイールディスク24に係合しない。荷を保持できない。ロードチェン10のがたつきを伴う、レバーホイスト1の引張方向とは逆方向の危険を伴う回動数超過が生じるおそれがある。
【0047】
図13及び図14は、それぞれ安全ブレーキ30を通常の状態又は初期位置で示す。掛止ディスク32と制御ディスク34とは、整合していて、掛止歯33の背面側の外側輪郭が、制御ディスク32の外側輪郭と一致する。安全フック36の接触輪郭61は、ねじりコイルばねのばね力によって、制御ディスク34の外側輪郭に押し付けられ、制御カム35に沿ってスライドする。接触輪郭61は、制御ディスク34の上死点(図13)及び制御ディスク34の下死点(図14)の両方で制御カム35上に位置する。制御ディスク34及び掛止ディスク32の回動中、安全フック36の前側の爪輪郭56は、掛止ディスク32及び掛止ディスク32の掛止歯33の作用範囲から外へ持ち上がっている。
【0048】
駆動シャフト20及び駆動シャフト20と共に安全ブレーキ30の加速度が増加するにつれ、つまり、例えば荷の落下に起因して回転数が過剰に増加すると、安全フック36の接触輪郭61が、外方へ加速され、制御ディスク34から持ち上がる。爪輪郭56の前側の安全歯57が、掛止ディスク32に係合し(図15参照)、端面側の安全フランク58でもってブロックされるように、掛止歯33の掛止フランク59に当接する(図16参照)。安全フック36が進入すると、制御ディスク34は、荷重によって駆動されて反時計回り方向(矢印P1)に45°引き続き回動し、その際、ラチェットホイール14をロックする。この効果は、倍力式に、つまり接触輪郭61が反対側で制御ディスク34によってより強く持ち上がるほど、安全フック36は、より深く進入する。
【0049】
安全ブレーキ30のブロックを解除し、制御ディスク34と掛止ディスク32とを再び整合した初期状態へとセットするために、ロック解除装置63が設けられている。ロック解除装置63は、ロック解除装置63を作動させるスライダ64と、引張ばね65の作用を受けるブロックボディ66とを有する。スライダ64の作動によって(矢印P2)、スライダ64は、ブロックボディ66を介して、掛止ディスク32をブロックし、掛止ディスク32を固く保持するので、掛止ディスク32は、回動が阻止されている一方、制御ディスク34は、ハンドホイール22又はハンドレバー13を介して往復方向(時計回り方向)(矢印P3)に作動させられる。このようにして、掛止ディスク32と制御ディスク34とは、互いに対して変位され、整合した初期位置へもたらされる。
【0050】
図18から図23は、安全ブレーキ31の第2の実施形態を示す。この安全ブレーキ31は、前述したように、掛止歯33を有する掛止ディスク32と、掛止カム35を有する制御ディスク34と、図18から図23には示されていない安全フックとを具備する。安全フックは、前述の説明に相応する。安全ブレーキ31の回動路制限及び機能についても同様である。
【0051】
この安全ブレーキ31では、戻り止め67が設けられている。戻り止め67は、安全ブレーキ31が起動された後、つまりブロックされた状態にあるとき、初期位置への掛止ディスク32及び制御ディスク34の回動を阻止する。戻り止め67は、掛止ディスク32に、一部分円上にずらして配置された複数の凹所68を有する。そこに、締付ローラ69が収容されている。ポケット状の凹所68の背壁70は、斜めに延在するので、凹所68は、反時計回り方向に先細りになっている。これにより、締付ローラ69を介して、掛止ディスク32と制御ディスク34との間にくさび作用が生じるので、戻り止め67は、掛止ディスク32と制御ディスク34との相対的な回動を摩擦接続式に阻止する。
【0052】
さらに、特に図19の描画において、シャーピン71が安全ブレーキ31に組み込まれていることが看取される。シャーピン71は、掛止ディスク32に設けられた取付開口72を通じて、制御ディスク34に設けられた取付開口73に取り付けられている。シャーピン71は、例えば手で引き抜かれるときの安全ブレーキ31の不意の起動を防止する。シャーピン71は、安全ブレーキ31を、初期位置に確保する。安全ブレーキ31がブロックされた状態で特定の閾値を超えるとようやくシャーピン71は、せん断され、安全ブレーキ31が、非常制動を及ぼせる。
【符号の説明】
【0053】
1 レバーホイスト
2 ハウジング
3 ハウジング部分
4 ハウジング部分
5 側板
6 側板
7 スペーサ枠
8 支持フック
9 ロードフック
10 ロードチェン
11 チェンエンドブロック
12 駆動装置
13 ハンドレバー
14 ラチェットホイール
15 ラチェット機構
16 ロードブレーキ
17 ロードチェンホイール
18 伝動装置
19 20の端部
20 駆動シャフト
21 20の端部
22 ハンドホイール
23 フリーホイール機構
24 掛止ディスク
25 摩擦要素
26 爪
27 ラチェットばね
28 ワッシャ
29 移動用ねじ山
30 安全ブレーキ
31 安全ブレーキ
32 掛止ディスク
33 掛止歯
34 制御ディスク
35 制御カム
36 安全フック
37 内歯列
38 管片
39 軸受部分
40 固定要素
41 固定要素
42 外歯列
43 ねじ山部分
44 ばね要素
45 ピン
46 固定リング
47 回動路制限部
48 湾曲軌道
49 長孔
50 ストッパボディ
51 取付開口
52 係止要素
53 収容部
54 係止面
55 36の前端
56 爪輪郭
57 安全歯
58 安全フランク
59 遮断フランク
60 36の後端
61 接触輪郭
62 49の端部
63 ロック解除装置
64 スライダ
65 引張ばね
66 ブロックボディ
67 戻り止め
68 凹所
69 締付ローラ
70 背壁
71 シャーピン
72 取付開口
73 取付開口
P1 矢印
P2 矢印
P3 矢印
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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図22
図23
【国際調査報告】