(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】ロボットの誘導システムと協働可能な基準マーカを形成するスプリントデバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 34/20 20160101AFI20220930BHJP
A61B 34/30 20160101ALI20220930BHJP
A61C 19/04 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
A61B34/20
A61B34/30
A61C19/04 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504141
(86)(22)【出願日】2020-07-23
(85)【翻訳文提出日】2022-03-17
(86)【国際出願番号】 IB2020056977
(87)【国際公開番号】W WO2021014408
(87)【国際公開日】2021-01-28
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518432274
【氏名又は名称】ネオシス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モーゼス,アロン
(72)【発明者】
【氏名】リービー,ウダイ
(72)【発明者】
【氏名】サルセド,ジュアン
(72)【発明者】
【氏名】フィッティパルディ,マウロ
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052NN15
(57)【要約】
ロボットの誘導システムと協働可能なスプリントデバイス(100)が提供される。いくつかの態様では、スプリント本体(200)は、開口部を画定する柔軟なハウジング(104)内に配置された第1の対象物(102)に固定的に結合される。スプリント本体は、対向する側面(204、206)を有する横方向に延在する中間部分(202)と、そこから延在し、第1の対象物の周りに延在し、第1の対象物に固定された第1の安定化部分(208)および第2の安定化部分(210)とを含む。いくつかの態様では、スプリント本体は、スプリント本体に結合された第1の部分(302)と、スプリント本体から離れるように延在し、開口部の周りで柔軟なハウジングと係合して柔軟なハウジングを第1の対象物から離れるように後退させ、維持し、第1の対象物が開口部を通ってアクセス可能であるようにする第2の部分(304)とを有するリトラクタ(300)、および/またはスプリント本体と係合され、スプリント本体と協働して、柔軟なハウジング内で第1の対象物から第2の対象物(106)を分離するスペーサ(400)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの誘導システムと協働可能なスプリントデバイスであって、
開口部を画定する柔軟なハウジング内に配置された第1の対象物に固定的に結合されるように構成されたスプリント本体と、
スプリント本体に結合された第1の部分、およびスプリント本体から離れるように延在する第2の部分を有するリトラクタであって、柔軟なハウジングを第1の対象物から離れるように後退させ、維持し、第1の対象物が開口部を通ってアクセス可能であるように、第2の部分は、開口部の周りで柔軟なハウジングと係合するように構成される、リトラクタと、
を備える、スプリントデバイス。
【請求項2】
スプリント本体が、対向する側面を有する横方向に延在する中間部分と、中間部分の対向する側面から延在する第1の安定化部分および第2の安定化部分とを含み、中間部分ならびに第1の安定化部分および第2の安定化部分は、第1の対象物の周りに延在し、第1の対象物に取り付けられるように構成される、請求項1に記載のスプリントデバイス。
【請求項3】
スプリント本体の中間部分と係合するスペーサを備え、スペーサは、柔軟なハウジング内で第1の対象物から第2の対象物を分離するために中間部分と協働するように構成される、請求項2に記載のスプリントデバイス。
【請求項4】
リトラクタまたはスペーサが、スプリント本体に移動可能に結合されている、請求項3に記載のスプリントデバイス。
【請求項5】
リトラクタとスプリント本体との間に動作可能に係合された第1のラチェット機構を備え、第1のラチェット機構は、柔軟なハウジングを第1の対象物から可変的に後退させるように構成されている、請求項4に記載のスプリントデバイス。
【請求項6】
スペーサとスプリント本体の中間部分との間に動作可能に係合された第2のラチェット機構を備え、第2のラチェット機構は、柔軟なハウジング内で第1の対象物から第2の対象物を可変的に分離するように構成されている、請求項4に記載のスプリントデバイス。
【請求項7】
ロボットの誘導システムと協働可能なスプリントデバイスであって、
開口部を画定する柔軟なハウジング内に配置された第1の対象物に固定的に結合されるように構成されたスプリント本体と、
スプリント本体と係合されたスペーサであって、柔軟なハウジング内で第1の対象物から第2の対象物を分離するためにスプリント本体と協働するように構成されたスペーサと、
を備える、スプリントデバイス。
【請求項8】
スプリント本体に結合された第1の部分と、スプリント本体から離れるように延在する第2の部分とを有するリトラクタを備え、柔軟なハウジングを対象物から離れるように後退させ、維持し、第1の対象物が開口部を通ってアクセス可能であるように、第2の部分は、開口部の周りで柔軟なハウジングと係合するように構成される、請求項7に記載のスプリントデバイス。
【請求項9】
スプリント本体が、対向する側面を有する横方向に延在する中間部分と、中間部分の対向する側面から延在する第1の安定化部分および第2の安定化部分とを含み、中間部分ならびに第1の安定化部分および第2の安定化部分は、対象物の周りに延在し、対象物に取り付けられるように構成され、スペーサがスプリント本体の中間部分に係合される、請求項7に記載のスプリントデバイス。
【請求項10】
リトラクタまたはスペーサが、スプリント本体に移動可能に結合されている、請求項8に記載のスプリントデバイス。
【請求項11】
リトラクタとスプリント本体との間に動作可能に係合された第1のラチェット機構を備え、第1のラチェット機構は、柔軟なハウジングを第1の対象物から可変的に後退させるように構成されている、請求項10に記載のスプリントデバイス。
【請求項12】
スペーサとスプリント本体の中間部分との間に動作可能に係合された第2のラチェット機構を備え、第2のラチェット機構は、柔軟なハウジング内で第1の対象物から第2の対象物を可変的に分離するように配置されている、請求項10に記載のスプリントデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、手術用ロボットおよび関連する誘導システムに関し、より詳細には、ロボットの誘導システムと協働可能な基準マーカを形成するスプリントデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットシステムは、外科用途においてますます実現されている。そのようなロボットは、外科用ロボットによって実現される外科用器具を誘導するために使用される誘導システムに関連付けられることが多い。誘導システムはまた、患者データの収集および/または分析に関与し、外科的処置を計画することによって、あるいは外科的処置を行うように外科的処置器具を誘導するための事前計画データに依存することによって、外科手術事前計画プロセスに関与するように構成され得る。
【0003】
特定の外科的処置では、いくつかの外科用ロボットシステムは、外科用ロボットを誘導するために患者の身体に関連付けられた固定された基準点に依存する。すなわち、いくつかのそのような外科用ロボットシステムは、事前計画中であろうと、または実際の外科的処置自体中であろうと、処置中の患者の動きまたは動作に対処するか、あるいは補完するように、患者の身体に対する基準フレームを定義する。この基準点はまた、手術用ロボットシステムと患者の身体との間(すなわち、事前計画と実際の外科的処置との間の期間)の複数の係合/係合解除が、手術用ロボットまたはそれに関連する誘導システムによって実現される基準フレームを変更しないように、反復可能でなければならない。
【0004】
特定の例では、外科用ロボットのための誘導システムによって実現される基準点(またはその基準点を定義するための誘導システムと患者との間の接続)は、例えば、光学モダリティ、機械的モダリティ、音響モダリティ、または他の適当かつ適切な追跡/誘導モダリティ、またはそれらの任意の組み合わせによって達成され得る。特に歯科手術用途で使用されるいくつかのモダリティでは、基準点(すなわち、「基準マーカ」)を形成するための1つの機械的モダリティは、例えば、関心のある対象物(例えば、患者の頭/歯)に剛性要素を取り付ける/固定することによって達成され得る。そのような剛性要素は、場合によっては、スプリント(例えば、
図1、
図2A、および
図2Bを参照されたい)と呼ばれることがあり、スプリントを含むことができる。
【0005】
いくつかの例では、そのような外科的処置はまた、柔軟なハウジングの縁部を分離するためにセパレータに依存し、縁部は開口部(例えば、外科的切開または創傷)を画定し、あるいは柔軟なハウジング(例えば、器官および組織)内の下にある対象物を後退させるためにリトラクタに依存し、その結果、柔軟なハウジング内の関心のある対象物が開口部を介してアクセスされ得るようにする。外科的処置に応じて、異なるサイズおよび形状のセパレータまたはリトラクタが利用され得る(例えば、
図3Aおよび
図3Bを参照されたい)。いくつかの外科的処置では、開口部を通して柔軟なハウジング内の関心のある対象物にアクセスするために、1つ、2つ、3つ、4つなどのセパレータまたはリトラクタを有することが望ましい可能性がある。
【0006】
典型的には、セパレータまたはリトラクタは、基準マーカ(例えば、スプリント)から離れて設けられる。したがって、ロボット誘導のための基準マーカのアクセス可能性は、セパレータまたはリトラクタの物理的障害によって妨げられる可能性がある。さらに、様々なセパレータおよびリトラクタは、患者の身体と共に基準マーカを形成した後に、およびロボット誘導の前にのみ位置決めを必要とする可能性があるので、外科的ワークフローは非効率的となる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、従来技術のデバイスのこれらおよび他の制限に対処する、ロボットの誘導システムと協働可能な基準マーカを形成するスプリントデバイスに対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記および他の必要性は、1つの特定の態様では、例えば歯科手術のために、ロボットの誘導システムと協働可能なスプリントデバイスを提供する本開示の態様によって満たされる。そのようなデバイスは、開口部を画定する柔軟なハウジング内に配置された第1の対象物に固定的に結合されるように構成されたスプリント本体を備えることができる。第1の部分を有するリトラクタは、スプリント本体に結合され、第2の部分は、スプリント本体から離れるように延在し、第2の部分は、柔軟なハウジングを第1の対象物から離れるように後退させ、維持し、第1の対象物が開口部を通ってアクセス可能であるように、開口部の周りで柔軟なハウジングと係合するように構成される。
【0009】
本開示の別の態様は、例えば歯科手術のために、ロボットの誘導システムと協働可能なスプリントデバイスを提供する。そのようなデバイスは、開口部を画定する柔軟なハウジング内に配置された第1の対象物に固定的に結合されるように構成されたスプリント本体を備えることができる。スペーサは、スプリント本体と係合され、スペーサは、柔軟なハウジング内で第1の対象物から第2の対象物を分離するためにスプリント本体と協働するように構成される。
【0010】
したがって、限定しないが、本開示は以下の例示的な実施形態を含む。
【0011】
例示的な実施形態1:ロボットの誘導システムと協働可能なスプリントデバイスであって、そのデバイスは、開口部を画定する柔軟なハウジング内に配置された第1の対象物に固定的に結合されるように構成されたスプリント本体と、スプリント本体に結合された第1の部分、およびスプリント本体から離れるように延在する第2の部分を有するリトラクタであって、柔軟なハウジングを第1の対象物から離れるように後退させ、維持し、第1の対象物が開口部を通ってアクセス可能であるように、第2の部分は、開口部の周りで柔軟なハウジングと係合するように構成される、リトラクタとを備える。
【0012】
例示的な実施形態2:上述の実施形態または上述の実施形態の任意の組み合わせのスプリントデバイスであって、スプリント本体が、対向する側面を有する横方向に延在する中間部分と、中間部分の対向する側面から延在する第1の安定化部分および第2の安定化部分とを含み、中間部分ならびに第1の安定化部分および第2の安定化部分は、第1の対象物の周りに延在し、第1の対象物に取り付けられるように構成される。
【0013】
例示的な実施形態3:上述の実施形態または上述の実施形態の任意の組み合わせのスプリントデバイスであって、スプリントデバイスが、スプリント本体の中間部分と係合するスペーサを備え、スペーサは、柔軟なハウジング内で第1の対象物から第2の対象物を分離するために中間部分と協働するように構成される。
【0014】
例示的な実施形態4:上述の実施形態または上述の実施形態の任意の組み合わせのスプリントデバイスであって、リトラクタまたはスペーサがスプリント本体に移動可能に結合されている。
【0015】
例示的な実施形態5:上述の実施形態または上述の実施形態の任意の組み合わせのスプリントデバイスであって、スプリントデバイスは、リトラクタとスプリント本体との間に動作可能に係合された第1のラチェット機構を備え、第1のラチェット機構は、柔軟なハウジングを第1の対象物から可変的に後退させるように構成されている。
【0016】
例示的な実施形態6:上述の実施形態または上述の実施形態の任意の組み合わせのスプリントデバイスであって、スプリントデバイスは、スペーサとスプリント本体の中間部分との間に動作可能に係合された第2のラチェット機構を備え、第2のラチェット機構は、柔軟なハウジング内で第1の対象物から第2の対象物を可変的に分離するように構成されている。
【0017】
例示的な実施形態7:ロボットの誘導システムと協働可能なスプリントデバイスであって、そのデバイスは、開口部を画定する柔軟なハウジング内に配置された第1の対象物に固定的に結合されるように構成されたスプリント本体と、スプリント本体と係合されたスペーサとを備え、スペーサは、柔軟なハウジング内で第1の対象物から第2の対象物を分離するためにスプリント本体と協働するように構成される。
【0018】
例示的な実施形態8:上述の実施形態または上述の実施形態の任意の組み合わせのスプリントデバイスであって、スプリントデバイスは、スプリント本体に結合された第1の部分と、スプリント本体から離れるように延在する第2の部分とを有するリトラクタを備え、柔軟なハウジングを第1の対象物から離れるように後退させ、維持し、第1の対象物が開口部を通ってアクセス可能であるように、第2の部分は、開口部の周りで柔軟なハウジングと係合するように構成される。
【0019】
例示的な実施形態9:上述の実施形態または上述の実施形態の任意の組み合わせのスプリントデバイスであって、スプリント本体が、対向する側面を有する横方向に延在する中間部分と、中間部分の対向する側面から延在する第1の安定化部分および第2の安定化部分とを含み、中間部分ならびに第1の安定化部分および第2の安定化部分は、対象物の周りに延在し、対象物に取り付けられるように構成され、スペーサが、スプリント本体の中間部分と係合される。
【0020】
例示的な実施形態10:上述の実施形態または上述の実施形態の任意の組み合わせのスプリントデバイスであって、リトラクタまたはスペーサがスプリント本体に移動可能に結合されている。
【0021】
例示的な実施形態11:上述の実施形態または上述の実施形態の任意の組み合わせのスプリントデバイスであって、スプリントデバイスは、リトラクタとスプリント本体との間に動作可能に係合された第1のラチェット機構を備え、第1のラチェット機構は、柔軟なハウジングを対象物から可変的に後退させるように構成されている。
【0022】
例示的な実施形態12:上述の実施形態または上述の実施形態の任意の組み合わせのスプリントデバイスであって、スプリントデバイスは、スペーサとスプリント本体の中間部分との間に動作可能に係合された第2のラチェット機構を備え、第2のラチェット機構は、柔軟なハウジング内で第1の対象物から第2の対象物を可変的に分離するように構成されている。
【0023】
本開示のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下に簡単に説明される添付の図面と共に以下の詳細な説明を読むことから明らかになろう。本開示は、本開示の中に示される2つ、3つ、4つまたはそれ以上の特徴または要素の任意の組み合わせを含み、それは、そのような特徴または要素が本明細書の特定の実施形態の説明において明示的に組み合わされるか、あるいは列挙されているかどうかにかかわらない。本開示は、その開示の文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、その態様および実施形態のいずれかにおいて、本開示の任意の分離可能な特徴または要素が、意図される、すなわち組み合わせることができると見なされるべきであるように、全体的に読まれることが意図される。
【0024】
本明細書の概要は、本開示の基本的な理解を提供するために、いくつかの例示的な態様を要約する目的でのみ提供されていることが理解されよう。したがって、上述の例示的な態様は単なる例であり、決して本開示の範囲または趣旨を狭めると解釈されるべきではないことが理解されよう。本開示の範囲は、本明細書に要約されたものに加えて、いくつかが以下でさらに説明される多くの潜在的な態様を包含することが理解されよう。さらに、本明細書に開示されたそのような態様の他の態様および利点は、記載された態様の原理を例として示す添付の図面と併せて以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0025】
かくして一般的な用語で本開示を説明したが、ここで、必ずしも縮尺通りに描かれていない添付の図面に参照がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】歯科手術用の外科用ロボットのための誘導システムのための基準マーカおよび/または追跡マーカを提供するように、患者の口の代表的なモデルと係合された従来技術のスプリントデバイスの概略図である。
【
図2A】歯科手術用の外科用ロボットのための誘導システムのための基準マーカおよび/または追跡マーカを提供するように、患者の口の代表的なモデルと係合された従来技術のスプリントデバイスの概略図である。
【
図2B】患者の口の代表的なモデルから係合解除された従来技術のスプリントデバイスの概略図である。
【
図3A】膝の手術用の従来技術のリトラクタを示す図である。
【
図3B】歯科手術用の従来技術のリトラクタを示す図である。
【
図4】本開示の一態様による、ロボット用の誘導システムと協働するための基準マーカおよび/または追跡マーカを形成し、第1の対象物がハウジングによって画定された開口部を通してアクセス可能であるように、柔軟なハウジングを第1の対象物から可変的に後退させ、柔軟なハウジング内で第1の対象物から第2の対象物可変的に分離させるスプリントデバイスの概略正面図である。
【
図5】本開示の一態様による、開口部を画定し、柔軟なハウジング内に配置された第1の対象物および第2の対象物を有する例示的な柔軟なハウジングを示す概略図である。
【
図6】本開示の一態様による、ロボット用の誘導システムのための基準マーカおよび/または追跡マーカを形成するスプリントデバイスと、第1の対象物が柔軟なハウジングによって画定された開口部を通してアクセス可能であるように、柔軟なハウジングを第1の対象物から可変的に後退させるため、および柔軟なハウジング内で第1の対象物から第2の対象物を可変的に分離するための結合デバイスの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示は、本開示のすべてではないが、いくつかの態様が示されている添付の図面を参照して、以下により完全に説明される。実際に、本開示は多くの異なる形態で実現されてもよく、本明細書に記載された態様に限定されると解釈するべきではなく、むしろ、これらの態様は、この開示が適用可能な法的要件を満たすように提供される。同様の符号は、全体を通して同様の要素を指す。
【0028】
本開示の特定の態様は、例えば
図4に示すように、例えば歯科手術のために、外科用ロボットの誘導システムと協働可能なスプリントデバイス100を提供する。しかしながら、当業者であれば、可変リトラクタおよび/またはスペーサを用いて、基準マーカおよび/または追跡マーカ、あるいは外科用ロボットシステムのための基準フレームを形成するものとして本明細書に開示されるスプリントデバイスの概念は、例えば整形外科的処置(例えば、膝の手術)、ENT手術、および神経外科的処置など、歯科手術を含まない他の外科的プロセスへの応用可能性を見出すことができることを理解するであろう。したがって、本明細書に提示される本開示の態様は、開示された概念の応用可能性の単なる例であり、決して限定することを意図するものではない。
【0029】
そのようなスプリントデバイス100は、例えば、開口部を画定する柔軟なハウジング104内に配置された第1の対象物102に固定的に結合されるように配置されたスプリント本体200を備えることができる。本明細書で使用される場合、「開口部を画定する柔軟なハウジング」は、動作可能に移動可能で可変のアパーチャを画定する柔軟な(すなわち、可撓性の、可動性の)ハウジングを指し、開口部/アパーチャが開位置に拡張するように柔軟なハウジングが動作可能に移動すると、開口部/アパーチャがハウジング内の内部チャンバにアクセスできるようにする。例えば、
図5に示すように、例えば、開口部/アパーチャを画定する柔軟なハウジングは、患者の口、または口が開位置にある場合に、開口部/アパーチャを通してアクセス可能であり得るハウジング内に歯/歯茎/顎を有する患者の口のモデルを含むことができる。別の例では、開口部/アパーチャを画定する柔軟なハウジングは、切開が行われる患者の身体またはその一部を含むことができ、下にある組織、骨、筋肉などは、切開部が開位置、例えば膝の伸延にあるとき、開口部/アパーチャを通してアクセス可能である。本明細書で企図されるように、スプリントデバイスはまた、開口部を画定する任意のタイプの非外科的に柔軟なハウジングで利用され得る。
【0030】
同様に、本明細書で使用される「対象物」は、スプリント本体200をそれに結合させることができる柔軟なハウジング内の物理的構造を指す。いくつかの例では、柔軟なハウジング104内に配置された対象物を可変的に分離することが望ましい場合がある。そのような場合、第1の対象物102は、開口部を通る、柔軟なハウジング内に配置された別の対象物および/または第1の対象物および/または第2の対象物へのアクセスを容易にするために、第2の対象物106から可変的に分離され得る。例えば、
図5に示すように、第1の対象物は、下顎の歯を含み、第2の対象物は、上顎の歯を含む。この例では、舌および/または下顎の歯および/または上顎の歯のうちの1つ以上などの第3の対象物は、口元開口部を通してアクセスされ得る。別の例では、第1の対象物は、切開の下にある組織、骨、筋肉などを含むことができ、第2の対象物は、他の組織、骨、筋肉などを含むことができる。
【0031】
再び
図4を参照すると、スプリント本体200は、例えば、対向する側面204、206を有する、横方向に延在する中間部分202と、中間部分の対向する側面から延在する第1の安定化部分208および第2の安定化部分210とを備えることができる。これにより、中間部分202ならびに第1および第2の安定化部分は協働して、中に長手方向に延びるU字チャネル212を画定するスプリント本体を形成する。いくつかの態様では、第1の安定化部分および第2の安定化部分は、互いに概ね対向し、横方向に離間されるように中間部分と係合される。このように、第1の安定化部分の内面214および第2の安定化部分の内面216は、互いに概ね対向し、かつ横方向に離間されており、中間部分と協働してU字チャネルを画定する。U字チャネルは、一般に、例えば柔軟なハウジング内に配置された対象物(例えば、患者の口/歯/顎)に固定的に結合または取り付けるために適切または望ましい、例えば上向き「U」字型のチャネルまたは反転された下向き「U」字型のチャネルの形態であることができる。例えば、反転された「U」字型チャネルは、第1の対象物102(例えば、患者の下顎または下歯)に固定的に結合されることができ、一方「U」字型チャネルは、第2の対象物106(例えば、患者の上顎または上顎の歯)に固定的に結合されることができる。
【0032】
U字チャネル212は、例えば、第1の対象物102上に(例えば、患者の口の中の1つの歯、または複数の歯の上、または顎の一部に沿って)長手方向に延びることができる。本開示のいくつかの態様では、スプリント本体200を含むスプリントデバイス100は、従来技術のスプリントデバイスに関連するのと同様の機能を実行するように協働することができる。より具体的には、U字チャネルは、例えば患者の1本の歯/複数の歯または顎などの対象物との係合および接着を容易にするために、その中に接着材料を受け取るようにさらに構成され得る。このようにして、スプリント本体200は、第1の対象物102または第2の対象物106などの対象物に固定的に結合され得る。
【0033】
いくつかの態様では、リトラクタ300は、スプリント本体200に結合されるか、あるいは係合されることができ、特定の態様では、リトラクタは、スプリント本体から外向きに、およびU字チャネル212から外向きに延在するようにさらに構成され得る。リトラクタは、スプリント本体に結合された、あるいは係合された第1の部分302と、スプリント本体から離れるように延在する第2の部分304とを備えることができる。このように、スプリント本体が、柔軟なハウジング104内に配置された第1の対象物102に固定的に結合されると、それによって画定される開口部の周りで柔軟なハウジングと係合するように配置され得、リトラクタの第1または第2の部分は、柔軟なハウジングを第1の対象物から後退させ、維持し、および第1の対象物が開口部を通してアクセス可能であるようになる。
【0034】
リトラクタ300は、リトラクタが開口部の周りで柔軟なハウジングと係合すると、自己保持することができる(すなわち、保持される必要がない)湾曲した、フック状の、または傾斜したブレードを備えることができる。リトラクタは、リトラクタが係合される柔軟なハウジングのタイプに応じて変化し得るサイズまたは形状を備えることができる。例えば、リトラクタは、
図3Aに示すようなホルマンリトラクタを備えることができる。
【0035】
いくつかの態様では、スプリントデバイス100はまた、スプリント本体200の中間部分202と係合するスペーサ400を備える。スペーサは、柔軟なハウジング104内で第2の対象物106を第1の対象物102から分離するために中間部分と協働するように配置され得る。スペーサは、スプリント本体の中間部分と係合可能な第1の部分402と、第2の対象物と係合可能な対向する第2の部分404(
図6)とを備えることができる。対向する側面406、408は、第1の部分と第2の部分との間に延在することができる。したがって、スプリント本体が柔軟なハウジング104内に配置された第1の対象物に固定的に結合されると、スペーサの第1の部分は中間部分と協働するように配置され、スペーサの対向する第2の部分は、柔軟なハウジング内で第1の対象物から第2の対象物を分離するように、第2の対象物と係合するように配置される。このように、スペーサは、スプリントデバイスが利用される用途に応じて、リトラクタ300の代わりに、またはそれに加えて設けられ得る。
【0036】
スペーサ400は、柔軟なハウジング104、および/または柔軟なハウジング内に配置された第1の対象物102と第2の対象物106との間の分離を提供するためにスペーサが係合される対象物のタイプに応じて変化し得るサイズまたは形状を備えることができる。スペーサの形状は、第2の対象物と快適に係合するために、柔軟なハウジングおよび/またはスペーサが係合する対象物に対応するものであり得る。例えば、スペーサは、
図3Bに示すように、バイトブロックを備えることができる。いくつかの他の態様では、例えば、スペーサ400は、患者の下顎を上顎から快適に分離することができる形状を備えることができる。より具体的には、例えば、
図6に示すように、スペーサの対向する側面406、408(
図6には図示せず)は、スペーサの第1の部分および対向する第2の部分が後部410で収束するようにテーパ状であることができる。したがって、スペーサの前部412の高さは、後部の高さよりも高い可能性がある。
【0037】
いくつかの態様では、リトラクタ300および/またはスペーサ400は、スプリント本体200に移動可能に結合され得る。スプリントデバイス100がリトラクタおよびスペーサの両方を含む場合、リトラクタおよびスペーサの一方または両方は、スプリント本体に移動可能に結合され得る。そうでなければ、リトラクタおよび/またはスペーサは、リトラクタまたはスペーサがスプリント本体と係合すると固定位置にあるように、スプリント本体に固定的に結合され得る。本明細書で使用される場合、移動可能に結合されることは、リトラクタおよび/またはスペーサがスプリント本体に対して可変的に位置決め可能であるように、可変的に位置決めされることとして定義される。
【0038】
リトラクタ300は、リトラクタがスプリント本体に固定的に結合されるか、または移動可能に結合されることを可能にする結合デバイスを使用して、スプリント本体200に結合され得る。固定結合のために、結合機構は、スプリント本体に対して単一の位置にリトラクタを固定するための接着剤、ねじなどを含むことができる。移動可能な結合のために、結合デバイスは、リトラクタをスプリント本体に対して1つ以上の位置に可変的に固定するためのラチェット機構、クランク機構などを備えることができる。
【0039】
例えば、
図4に示すように、リトラクタ300は、第1のラチェット機構306を使用して、スプリント本体200に移動可能に結合される。より具体的には、第1のラチェット機構は、リトラクタの第1の部分302に配置された爪308を備えることができる。爪は、スプリント本体、例えば第1の安定化部分208または第2の安定化部分210上に配置された1つ以上の歯218と係合するように構成され得る。1つ以上の歯は、均一であるが非対称であってもよく、各歯は、一方の縁部に中程度の傾斜を有し、他方の縁部にはるかに急な傾斜を有する。リトラクタが下方に(すなわち、前方向に)移動されると、爪は、歯の緩やかに傾斜した縁部を容易に上方に越えて摺動することができる。引張ばねなどのバイアシング機構310が、リトラクタおよびスプリント本体の両方に結合され得る。したがって、バイアシング機構は、リトラクタが下方に移動されるとき、その初期位置から延伸することができ、その結果、引張力は、爪が各歯の先端を通過するときに、爪を各歯の間に形成されるような窪みの中に押し込むことができる。リトラクタが上方に(すなわち、後方向に)移動されると、爪は反対の方向(後方)に移動し、その結果、爪が出合う第1の歯の急傾斜した縁部を捉え、それによって歯に対して爪を係止し、その方向のさらなる動きを防止する。
【0040】
このようにして、リトラクタ300が下方に移動されて、柔軟なハウジング104を第1の対象物102から可変的に後退させて、第1の対象物がハウジングによって画定された開口部を通してアクセス可能であるようにすることができる。リトラクタが遠くに移動するにつれて、柔軟なハウジングは、開口部の周りで第1の対象物からより後退させられる。しかしながら、当業者は、リトラクタが他の方法でスプリント本体に移動可能に結合され得ることを理解するであろう。
【0041】
スペーサ400は、スペーサが固定的に結合されるか、または移動可能に結合されることを可能にする結合デバイスを使用して、スプリント本体200に結合され得る。固定結合のために、結合機構は、スプリント本体に対して単一の位置にスペーサを固定するための接着剤、ねじなどを含むことができる。移動可能な結合のために、結合デバイスは、スペーサをスプリント本体に対して1つ以上の位置に可変的に固定するためのラチェット機構、クランク機構などを備えることができる。
【0042】
例えば、
図6に示すように、スペーサ400は、第2のラチェット機構414を使用して、スプリント本体200に移動可能に結合される。より具体的には、第2のラチェット機構は、スペーサ機構の第1の部分402に配置された爪416を備えることができる。爪は、スプリント本体の横方向に延在する中間部分202に配置された1つ以上の歯220と係合するように構成され得る。1つ以上の歯220は、均一であるが非対称であってもよく、各歯は、一方の縁部に中程度の傾斜を有し、他方の縁部にはるかに急な傾斜を有する。スペーサが開口部を画定する柔軟なハウジングの後部に向かって(例えば、歯の中程度の傾斜に対して前方向に)移動すると、爪は歯の中程度に傾斜した縁部を容易に上方に越えて摺動することができる可能性がある。引張ばねなどのバイアシング機構418が、スペーサとスプリント本体の両方に結合され得る。例えば、
図6に示すように、2つの引張ばねが存在することができ、各々がスペーサの対向する側面406、408に配置され、スペーサの安定化部分208、210まで延在する。
【0043】
したがって、バイアシング機構418は、スペーサ400が後方に移動されるとき、その初期位置から延伸することができ、その結果、引張力は、爪が各歯の先端を通過するにつれて、爪を各歯220の間に形成される窪みの中に押し込むことができる。スペーサが開口部を画定する柔軟なハウジングの前面に向かって(例えば、歯の適度な傾斜に対して後方向に)移動されると、爪は、それが出合う第1の歯の急傾斜した縁部を捉え、それによって歯に対してそれを係止し、その方向のさらなる動きを防止する。このようにして、スペーサが後方に移動されて、柔軟なハウジング104内で第2の対象物106を第1の対象物102から可変的に分離することができる。スペーサが横方向に延在する中間部分202に対してより後方へ移動されるにつれて、第2の対象物は第1の対象物からより分離される。しかしながら、当業者は、スペーサが他の方法でスプリント本体に移動可能に結合され得ることを理解するであろう。
【0044】
いくつかの態様では、スプリント本体200、リトラクタ300、および/またはスペーサ400は、外科用ロボットのための誘導システムに関連する追跡部分(または追跡アームまたは他の追跡設備)と係合するための取り付け点222、312、420をそれぞれ備えることができる(すなわち、例えば、基準マーカまたはスプリントデバイス100自体の光学追跡のための取り付け点に反射マーカがマウントされることができ、または取り付け点は、基準点または「基準マーカ」の機械的追跡のために機械的接続を形成するための固定部位を含むことができ、または取り付け点は、そうではなく基準マーカの任意の他の適切な追跡構成に関連する適切な要素を受け入れるように構成され得る)。例えば、リトラクタの第1または第2の部分302、304は、例えば、リトラクタの第1または第2の部分に恒久的に取り付けられ、光学式追跡デバイス(すなわち、光学追跡マーカ)によって追跡可能であるように構成された1つ以上のマーカなどの特定の追跡デバイスのための固定マウンティング部位として機能するように構成され、あるいは配置される。
【0045】
例えば、
図4に示すように、リトラクタ300の第2の部分304は、特定の追跡デバイスが取り付けられ得るように、あるいは1つ以上のマーカが恒久的に固定され得るように、取り付け点312を備える。
図4はまた、スプリント本体200上の取り付け点222の例示的な場所を示し、特定の追跡デバイスがそれに取り付けられることができ、あるいは1つ以上のマーカがそれに恒久的に固定され得るようになる。例えば、取り付け点は、横方向に延在する中間部分202に設けられ得る。
図4はさらに、スペーサ400上の取り付け点420の例示的な場所を示し、特定の追跡デバイスがそれに取り付けられることができ、あるいは1つ以上のマーカがそれに恒久的に固定され得るようになる。例えば、取り付け点は、前部412に設けられ得る。
【0046】
本明細書に記載された本発明の多くの修正および他の実施形態は、前述の説明および関連する図面に示された教示の利益を享受する、これらの開示された実施形態が関連する当業者に思い浮かぶことであろう。例えば、スプリントデバイス100は、基準マーカとして機能することができる一方で、柔軟なハウジングによって画定された開口部を通るロボット誘導に備えて、柔軟なハウジング104を柔軟なハウジング内に配置された対象物102、206から同時に後退させ、および/または分離し、および/または柔軟なハウジング内の2つ以上の対象物を分離する。このように、スプリントデバイスと相互作用するための器具のレジストレーションおよび較正は、スプリントデバイスが対象物および/または柔軟なハウジングと係合した後に達成することができ、次いで、基準マーカを使用するロボット誘導は、様々なセパレータおよびリトラクタを再位置決めすることなく開始することができる。なぜなら、基準マーカおよび関心のある対象物がスプリントデバイスに対して既にアクセス可能であり得るので。このようにして、例えば、ワークフローのステップを減らすことができる。
【0047】
したがって、本発明の実施形態は開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、修正形態および他の実施形態は本発明の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。さらに、前述の説明および関連する図面は、要素および/または機能の特定の例の組み合わせの文脈で、例示的な実施形態を説明しているが、しかし要素および/または機能の異なる組み合わせが、開示の範囲から逸脱することなく、代替形態によって提供され得ることを理解すべきである。これに関して、例えば、明確に上述したもの以外の要素および/または機能の異なる組み合わせもやはり開示の範囲内で企図される。本明細書では特定の用語を使用しているが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用され、限定する目的で使用されるのではない。
【0048】
第1、第2などの用語は、様々なステップまたは計算を説明するために本明細書で使用され得るが、これらのステップまたは計算はこれらの用語によって限定されるべきではないことを理解すべきである。これらの用語は、1つの動作または計算を別の動作または計算と区別するためにのみ使用される。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の計算は第2の計算と呼ばれることができ、同様に、第2のステップは第1のステップと呼ばれ得る。本明細書で使用される場合、用語「および/または」および「/」記号は、1つ以上の関連する列挙された項目の任意の組み合わせ、およびすべての組み合わせを含む。
【0049】
本明細書で使用されるとき、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も含むことが意図されている。本明細書で使用される場合、「備える」、「備えている」、「含む」および/または「含んでいる」という用語は、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素および/または構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではないことをさらに理解されたい。したがって、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものであり、限定することを意図するものではない。
【国際調査報告】