(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】AMLの処置のためのポリペプチド
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220930BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220930BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220930BHJP
C07K 14/74 20060101ALI20220930BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220930BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220930BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220930BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220930BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220930BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20220930BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20220930BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220930BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220930BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20220930BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20220930BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220930BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20220930BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220930BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220930BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220930BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20220930BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20220930BHJP
【FI】
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12P21/08
C07K14/74
C07K19/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C12Q1/02
C07K16/28
C12N15/12
A61K38/02
A61K31/7088
A61K48/00
A61K35/12
A61K35/76
A61P35/02
A61K39/395 D
A61K39/395 N
G01N33/68
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504157
(86)(22)【出願日】2020-07-23
(85)【翻訳文提出日】2022-03-18
(86)【国際出願番号】 EP2020070809
(87)【国際公開番号】W WO2021013932
(87)【国際公開日】2021-01-28
(32)【優先日】2019-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512113803
【氏名又は名称】ドイチェス クレブスフォルシュンクスツェントルム
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デレクルーズ,ヘンリ-ジャッケス
(72)【発明者】
【氏名】イレッカ,マルタ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァスマー,ギヨーム
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B064
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA34
2G045DA37
2G045FB03
4B063QA01
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4H045AA11
4H045BA41
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA24
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、(i)急性骨髄性白血病(AML)細胞の少なくとも1つの表面マーカーに結合する結合ペプチド、及び(ii)少なくとも1つのT細胞エピトープを含む免疫原性ペプチドを含むポリペプチド、並びにそれに関連する手段及び方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)急性骨髄性白血病(AML)細胞の少なくとも1つの表面マーカーに結合する結合ペプチド、及び
(ii)少なくとも1つのT細胞エピトープを含む免疫原性ペプチド
を含むポリペプチド。
【請求項2】
前記AML細胞が、(i)骨髄芽球、(ii)前骨髄球、(iii)骨髄球、又は(iv)(i)~(iii)のいずれか1つの前駆体である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記AML細胞が、主要組織適合性複合体II(MHC-II)を発現するか、又はMHC-IIを発現するように誘導可能である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
AML細胞の前記表面マーカーが、好ましくは、CD371、PRAME、CD123、CD138、及びTIM-3からなるリストから、好ましくはCD371、PRAME、及びCD123から、より好ましくはCD371及びPRAMEから選択されるポリペプチドである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記結合ペプチドが抗体である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記結合ペプチドが一本鎖抗体である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記免疫原性ペプチドが、前記対象に一般的に感染するか、若しくはそれに対して前記対象がワクチン接種されている感染性因子、好ましくはウイルスのタンパク質、又は腫瘍抗原のタンパク質に含まれる少なくとも1つのT細胞エピトープを含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記感染性因子が、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ムンプスウイルス、水痘ウイルス、インフルエンザウイルス、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、ロタウイルス、パピローマウイルス、ジフテリア菌、破傷風菌、百日咳菌、インフルエンザ菌、肺炎球菌、髄膜炎菌から選択され、好ましくはEBVである、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記感染性因子が潜伏感染を確立する感染性因子であり、好ましくはEBV又はパピローマウイルスであり、前記T細胞エピトープがその潜伏遺伝子産物のエピトープである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記免疫原性ペプチドがMHC-IIペプチドを含み、好ましくは本質的にMHC-IIペプチドからなる、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項11】
前記ポリペプチドが、配列番号12のアミノ酸配列、好ましくは配列番号13の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる配列番号12のアミノ酸配列を含み、好ましくはそれから本質的になり、より好ましくはそれからなり;又は配列番号14のアミノ酸配列、好ましくは配列番号15の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる配列番号14のアミノ酸配列を含み、好ましくはそれから本質的になり、より好ましくはそれからなり;又は配列番号20のアミノ酸配列、好ましくは配列番号21の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる配列番号20のアミノ酸配列を含み、好ましくはそれから本質的になり、より好ましくはそれからなり;又は配列番号22のアミノ酸配列、好ましくは配列番号23の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる配列番号22のアミノ酸配列を含み、好ましくはそれから本質的になり、より好ましくはそれからなる、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項12】
請求項1に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項12に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項14】
請求項1に記載のポリペプチドを含む宿主細胞。
【請求項15】
AML特異的T細胞を刺激する方法であって、
(a)AML細胞を請求項1に記載のポリペプチドと接触させること、
(b)(a)のAML細胞をT細胞と接触させること、及び
(c)それによってAML特異的T細胞を刺激すること
を含む方法。
【請求項16】
前記AML特異的T細胞が細胞傷害性T細胞であり、好ましくはCD4+細胞傷害性T細胞である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
急性骨髄性白血病(AML)の処置のためのポリペプチドを同定する方法であって、
(a)前記AMLの細胞(AML細胞)の表面マーカーに結合する結合ペプチドを用意すること、
(b)前記AML細胞により発現される少なくとも1つのHLA-IIサブタイプを決定すること、並びに
(c)(a)及び(b)の結果に基づき、AMLの処置のためのポリペプチドを同定すること
を含む方法。
【請求項18】
急性骨髄性白血病(AML)の処置のためのポリペプチドを産生する方法であって、
(A)請求項17に記載の方法によるAMLの処置のためのポリペプチドを同定すること、及び
(B)AMLの処置のためのポリペプチドを産生すること
を含む方法。
【請求項19】
急性骨髄性白血病(AML)に罹患していることが知られているか又は疑われる対象におけるAMLを処置する方法であって、
前記対象を、AMLの処置のためのポリペプチド、好ましくは請求項1に記載のポリペプチドと接触させ、それによってAMLを処置すること
を含む方法。
【請求項20】
医薬における使用のための、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項12に記載のポリヌクレオチド、請求項13に記載のベクター、及び/又は請求項14に記載の宿主細胞。
【請求項21】
AMLの処置における使用のための、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項12に記載のポリヌクレオチド、請求項13に記載のベクター、及び/又は請求項14に記載の宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(i)急性骨髄性白血病(AML)細胞の少なくとも1つの表面マーカーに結合する結合ペプチド、及び(ii)少なくとも1つのT細胞エピトープを含む免疫原性ペプチドを含むポリペプチド、並びにそれに関連する手段及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
急性骨髄性白血病(AML)は、血液細胞の骨髄系の細胞が増殖し、血液及び/又は骨髄中に蓄積する異質な群のがんである。AMLの症状は当技術分野で知られており、特に典型的な白血病の症状が含まれる。AMLの分類法は当技術分野で知られており、例えば、AMLのWHO 2008分類及びフランス-アメリカ-イギリス(FAB)分類がある。
【0003】
免疫化によって、対象の免疫系は、抗原に対して強化される。特に、適応免疫系、すなわち、潜在的な病原体を認識し、記憶し、対処する能力を個人の免疫系に付与する免疫系の部分は、医学的に強い関心を集めてきた(Kaech et al. (2002), Nature Reviews Immunology 2(4):251-62; Pulendran and Ahmed (2006), Cell 124(4):849-63)。一方では、ワクチン接種において、そうでなければ死に至る可能性のある疾患に対する免疫を付与するために、広範囲に利用されてきた。また、腫瘍抗原の認識を通じてがん細胞を排除するために使用され、様々な成功を収めてきた。一方、適応免疫系の減衰は、アレルギー、喘息、自己免疫疾患など、強い免疫応答が不適切な疾患において注目される。
【0004】
免疫系におけるB細胞の主要な役割は、その活性化に際して抗原特異的抗体を産生することである。活性化には、B細胞表面のB細胞レセプター(BCR)がその同族抗原に結合することが必要である。このBCRの活性化によりB細胞が活性化され、成熟とクローン増殖が起こり、その後、このようにして産生された細胞の一部が、前記抗原に特異的な抗体を産生する形質細胞となる。
【0005】
適応免疫系におけるもう一つの重要な分岐はエピトープ特異的T細胞である。ヒトにおいては、これらの細胞はその表面にT細胞レセプターを有し、その認識ドメインは抗原ペプチド(T細胞エピトープ)と主要組織適合性複合体(MHC)タンパク質との所定の複合体に特異的である。T細胞レセプターが同族の相互作用に従事すると、T細胞は活性化され、増殖し、免疫応答においてその促進性又は抑制性の仕事を行う。
【0006】
MHC分子には2つの型がある。MHCクラスIはあらゆるヒト細胞の表面に発現しており、細胞の細胞質に存在するタンパク質に由来するペプチドを基本的にはランダムに提示する。したがって、MHC分子は細胞のタンパク質レパートリーの連続的な概観を提供することができ、例えば細胞のウイルス感染や発がんの際に、正常でないタンパク質発現を認識させることができる。MHCクラスI分子-ペプチド複合体を認識するためには、T細胞レセプターは補助レセプター(co-receptor)としてCD8表面タンパク質を必要とする。このことから、CD8補助レセプターを発現するT細胞のサブクラスが存在し、CD8+ T細胞と名づけられた。唯一(exclusive)ではないが、その主な機能は、細胞内における病原性プロセス(例えば、ウイルス感染)の可能性を示すペプチドを提示する体細胞を排除することであり、このことから、細胞傷害性T細胞とも呼ばれる。
【0007】
MHCクラスIIはプロフェッショナルな抗原提示細胞(APC)において本質的に発現する。これらにおいては、主にエンドサイトーシスによってAPCに摂取されたタンパク質に由来するペプチドが提示される。MHCクラスIIの認識には補助レセプターCD4が必要であり、それはCD4+ T細胞の表面にのみ発現している。ヘルパーT細胞とも呼ばれるこれらのT細胞の主な役割は、CD8+ T細胞、マクロファージ、及びB細胞の活性化である。したがって、適切なエピトープがAPCに送達されると、MHCクラスIIを介してこれらのエピトープがヘルパーT細胞に提示され、今度はこれらのT細胞が活性化されることにより、免疫系の他方の分枝の活性化が導かれる。しかしながら、細胞傷害性CD4+ T細胞は、例えばウイルスに対する、免疫の重要な介在因子として同定されている。
【発明の概要】
【0008】
したがって、AMLの免疫療法のための信頼できる手段を提供する必要性が、当技術分野にはある。特に、上記で論じた通りの先行技術の欠点を少なくとも部分的に回避する手段及び方法を提供する必要性がある。
【0009】
この課題は、独立項に記載の特徴を含むポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、及び方法により解決される。単独で、又はいずれかの任意の組み合わせで実現され得る好ましい実施形態が、従属項に列記される。
【0010】
したがって、本発明は、
(i)急性骨髄性白血病(AML)細胞の少なくとも1つの表面マーカーに結合する結合ペプチド、及び
(ii)少なくとも1つのT細胞エピトープを含む免疫原性ペプチド
を含むポリペプチドに関する。
【0011】
以下で使用される場合、用語「有する(have)」、「含む(comprise)」若しくは「含む(include)」、又はその任意の文法上の変化形は排他的でないように使用されることがある。したがって、これらの用語は、この文脈で記載される主体(entity)の中に、これらの用語により導入される特徴の他に、さらなる特徴が存在しない状況、及び、1以上のさらなる特徴が存在する状況の両方を指すことができる。一例として、表現「AはBを有する」、「AはBを含む(comprise)」及び「AはBを含む(include)」は、Bの他に、Aに他の要素が存在しない状況(すなわち、Aが、もっぱら及び排他的にBからなる状況)、並びに、Bの他に、主体Aに1以上のさらなる要素(例えば、要素C、要素C及び要素D、又はさらに多くの要素)が存在する状況のどちらも指すことができる。
【0012】
さらに、以下で使用される用語「好ましくは」、「より好ましくは」、「最も好ましくは」、「特に」、「より特に」、「具体的に」、「より具体的には」又は類似の用語は、さらなる可能性を制限することなく、任意選択の特徴とともに使用される。したがって、これらの用語によって導入される特徴は任意選択の特徴であり、いかなる方法で特許請求の範囲を制限することも意図しない。本発明は、当業者には認識されるように、代わりとなる特徴を使用することによって実施することができる。同様に、「一実施形態において」又は同様の表現によって導入される特徴は、任意選択の特徴を意図しており、発明のさらなる実施形態についていかなる制限もなく、本発明の範囲についていかなる制限もなく、また、本発明の他の任意選択の特徴若しくは任意でない特徴と同様の方法で導入される特徴を組み合わせる可能性についていかなる制限もない。
【0013】
本明細書中で使用される場合、用語「標準条件」は、特に記載がない場合、IUPAC標準周囲温度及び圧力(SATP)条件、すなわち、好ましくは25℃の温度及び100kPaの絶対圧力に関する。また、好ましくは、標準条件はpH7を含む。さらに、用語「約」は、特に指定がない場合、関連分野で一般に認められている技術的な正確さを有する表示値に関し、好ましくは表示値±20%、より好ましくは±10%、最も好ましくは±5%に関する。さらに、用語「本質的に」は、示された結果又は使用に影響を及ぼす逸脱がないことを示す。すなわち、可能性のある逸脱によって、示された結果が±20%以上、より好ましくは±10%、最も好ましくは±5%以上逸脱することはない。したがって、「から本質的になる」は、特定された成分を含むが、不純物として存在する物質、成分を提供するために使用されるプロセスの結果として存在する避けられない物質、及び、本発明の技術的効果を達成すること以外の目的で添加された成分以外の他の成分を含まないことを意味する。例えば、句「から本質的になる」を用いて定義された組成物は、任意の既知の許容可能な添加剤、賦形剤、希釈剤、担体等を包含する。好ましくは、一組の成分から本質的になる組成物は、不特定の成分(複数可)を5重量%未満、より好ましくは3重量%未満、さらにより好ましくは1%未満、最も好ましくは0.1重量%未満含む。核酸配列の文脈において、用語「本質的に同一」は、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%の同一性%の値を示す。理解される通り、本質的に同一という用語は100%の同一性を含む。上記の用語は、必要な変更を加えて、用語「本質的に相補的」に適用される。
【0014】
本明細書中で用いる場合、用語「ポリペプチド」とは、本明細書中に以下で特定される通りの、少なくとも1つの結合ペプチド及び少なくとも1つの免疫原性ペプチドを含む、任意の化学的分子に関する。結合ペプチドと免疫原性ペプチドとの間の化学的連結は、必ずしもペプチド結合である必要はないことが理解されるはずである。本発明では、結合ペプチドと免疫原性ペプチドとの間の化学的結合がエステル結合、ジスルフィド結合、又は当業者に公知のいずれかの他の好適な共有的化学結合であることも想定される。免疫原性ペプチドが結合ペプチドからは無視できる程度までしか解離しないであろう程に低い解離定数を有する非共有結合もまた想定される。好ましくは、該非共有結合に関する解離定数は、10-5mol/L未満(Strep-Tag:Strep-Tactin結合を用いる場合の通り)、10-6mol/L未満(Strep-TagII:Strep-Tactin結合を用いる場合の通り)、10-8mol/L未満、10-10mol/L未満、又は10-12mol/L未満(ストレプトアビジン:ビオチン結合を用いる場合の通り)である。解離定数を決定する方法は、当業者に周知であり、例えば、分光学的滴定法(spectroscopic titration method)、表面プラズモン共鳴測定、平衡透析などが挙げられる。好ましくは、結合ペプチドと免疫原性ペプチドとの間の化学的連結は、ペプチド結合であり、すなわち、ポリペプチドは、本発明の結合ペプチド及び免疫原性ペプチドを含むか又はそれらからなる融合ポリペプチドである。好ましくは、ポリペプチドは、抗原提示を阻害することが知られる1種以上のペプチド配列を含まない。さらに、好ましくは、ポリペプチドは、遺伝物質、すなわち、ポリヌクレオチドを含まない。好ましくは、ポリペプチドは、本明細書中に記載される通りの構成成分から本質的になり、より好ましくは、ポリペプチドは、本明細書中に記載される通りの構成成分からなる。
【0015】
好ましくは、ポリペプチドは、抗体の重鎖(HC)と免疫原性ペプチドとの融合ポリペプチドである。したがって、好ましくは、ポリペプチドは、抗CD123抗体の重鎖の配列を含み、好ましくは配列番号10のアミノ酸配列を含み、より好ましくは、融合ポリペプチドは、好ましくは配列番号13の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる、配列番号12のアミノ酸配列を含み、好ましくはそれから本質的になり、より好ましくはそれからなり;あるいは、好ましくは配列番号15の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる、配列番号14のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれから本質的になる、より好ましくはそれからなる。当業者によって理解されるように、前述のポリペプチドは、好ましくは配列番号8のアミノ酸配列を含む、抗CD123抗体の軽鎖(LC)と会合することが好ましい。また好ましくは、ポリペプチドは抗CLL1抗体の重鎖の配列を含み、好ましくは配列番号18のアミノ酸配列を含み;より好ましくは、融合ポリペプチドは、好ましくは配列番号21の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる、配列番号20のアミノ酸配列を含み、好ましくはそれから本質的になり、より好ましくはそれからなり;あるいは、好ましくは配列番号23の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる、配列番号22のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれから本質的になる、より好ましくはそれからなる。当業者によって理解されるように、前述のポリペプチドは、好ましくは配列番号16のアミノ酸配列を含む、抗CLL1抗体の軽鎖(LC)と会合することが好ましい。
【0016】
好ましい実施形態では、ポリペプチドは、配列番号24のアミノ酸配列を含む抗体重鎖の可変ドメイン(VH)、及び/又は配列番号25のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖の可変ドメイン(VL)を含む。さらなる好ましい実施形態では、ポリペプチドは、配列番号26のアミノ酸配列、好ましくは配列番号27の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる配列番号26のアミノ酸配列を含む抗CD123抗体の重鎖(HC)の配列を含む。さらなる好ましい実施形態では、ポリペプチドは、配列番号28のアミノ酸配列、好ましくは配列番号29の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる配列番号28のアミノ酸配列を含む抗CD123抗体の軽鎖(LC)の配列を含む。当業者によって理解されるように、好ましい実施形態において、前述のHCを含む前述のポリペプチドは、好ましくは抗CD123抗体のLC、特に配列番号28のアミノ酸配列を含む前述のLCと会合している。また、当業者によって理解されるように、好ましい実施形態において、前述のLCを含む前述のポリペプチドは、好ましくは抗CD123抗体のHC、特に配列番号26のアミノ酸配列を含む前述のHCと会合している。したがって、好ましい実施形態において、前述のポリペプチドは、CD123結合活性、好ましくはヒトCD123結合活性を有する。
【0017】
さらに好ましい実施形態では、ポリペプチドは、配列番号30のアミノ酸配列を含む抗体重鎖の可変ドメイン(VH)、及び/又は配列番号31のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖の可変ドメイン(VL)を含む。さらなる好ましい実施形態では、ポリペプチドは、配列番号32のアミノ酸配列、好ましくは配列番号33の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる配列番号32のアミノ酸配列を含む抗CLL1抗体の重鎖(HC)の配列を含む。さらなる好ましい実施形態では、ポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸配列、好ましくは配列番号35の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる配列番号34のアミノ酸配列を含む抗CLL1抗体の軽鎖(LC)の配列を含む。当業者によって理解されるように、好ましい実施形態において、前述のHCを含む前述のポリペプチドは、好ましくは抗CLL1抗体のLC、特に配列番号34のアミノ酸配列を含む前述のLCと会合している。また、当業者によって理解されるように、好ましい実施形態において、前述のLCを含む前述のポリペプチドは、好ましくは抗CLL1抗体のHC、特に配列番号32のアミノ酸配列を含む前述のHCと会合している。したがって、好ましい実施形態において、前述のポリペプチドは、CLL1結合活性、好ましくはヒトCLL1結合活性を有する。
【0018】
好ましい実施形態では、ポリペプチドは、配列番号36のアミノ酸配列を含む抗体重鎖の可変ドメイン(VH)、及び/又は配列番号37のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖の可変ドメイン(VL)を含む。さらなる好ましい実施形態では、ポリペプチドは、配列番号38のアミノ酸配列、好ましくは配列番号39の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる配列番号38のアミノ酸配列を含む抗FRベータ抗体の重鎖(HC)の配列を含む。さらなる好ましい実施形態では、ポリペプチドは、配列番号40のアミノ酸配列、好ましくは配列番号41の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる配列番号40のアミノ酸配列を含む抗FRベータ抗体の軽鎖(LC)の配列を含む。当業者によって理解されるように、好ましい実施形態において、前述のHCを含む前述のポリペプチドは、好ましくは抗FRベータ抗体のLC、特に配列番号40のアミノ酸配列を含む前述のLCと会合している。また、当業者によって理解されるように、好ましい実施形態において、前述のLCを含む前述のポリペプチドは、好ましくは抗FRベータ抗体のHC、特に配列番号38のアミノ酸配列を含む前述のHCと会合している。したがって、好ましい実施形態において、前述のポリペプチドは、FRベータ結合活性、好ましくはヒトFRベータ結合活性を有する。
【0019】
好ましい実施形態において、融合ポリペプチドは、好ましくは配列番号49の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる、配列番号48のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれから本質的になる、より好ましくはそれからなる;又は好ましくは配列番号51の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる、配列番号50のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれから本質的になる、より好ましくはそれからなる;又は、好ましくは配列番号53の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる、配列番号52のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれから本質的になる、より好ましくはそれからなる。当業者によって理解されるように、前述の融合ポリペプチドは、好ましくは配列番号28のアミノ酸配列を含む、抗CLL1抗体の軽鎖(LC)と会合していることが好ましい。
【0020】
好ましい実施形態において、融合ポリペプチドは、好ましくは配列番号55の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる、配列番号54のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれから本質的になる、より好ましくはそれからなる;又は好ましくは配列番号57の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる、配列番号56のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれから本質的になる、より好ましくはそれからなる;又は、好ましくは配列番号59の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる、配列番号58のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれから本質的になる、より好ましくはそれからなる。当業者によって理解されるように、前述の融合ポリペプチドは、好ましくは配列番号34のアミノ酸配列を含む、抗CLL1抗体の軽鎖(LC)と会合していることが好ましい。
【0021】
好ましい実施形態において、融合ポリペプチドは、好ましくは配列番号61の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる、配列番号60のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれから本質的になる、より好ましくはそれからなる;又は好ましくは配列番号63の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる、配列番号62のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれから本質的になる、より好ましくはそれからなる;又は、好ましくは配列番号65の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる、配列番号64のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれから本質的になる、より好ましくはそれからなる。当業者によって理解されるように、前述の融合ポリペプチドは、好ましくは配列番号40のアミノ酸配列を含む、抗CLL1抗体の軽鎖(LC)と会合していることが好ましい。
【0022】
好ましくは、ポリペプチドは、(i)AML細胞の表面マーカーに結合する、(ii)AML細胞の表面上のMHC-II分子の文脈で免疫原性ポリペプチドの提示を引き起こす、及び(iii)前記免疫原性ペプチドを認識する同族T細胞の活性化を誘導する、の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは全ての活性を有している。好ましくは、前記T細胞は細胞傷害性T細胞であり、より好ましくはCD4+細胞傷害性T細胞である。好ましくは、ポリペプチドという用語は、それらが本明細書において上記で特定されるような活性(1又は複数)を有するという条件で、ポリペプチド変異体を含む。
【0023】
本明細書中で用いる場合、用語「ポリペプチド変異体(バリアント)」とは、示される活性を有するが示されるポリペプチド又は融合ポリペプチドとは一次構造が異なる、本明細書中のどこかで特定される通りの少なくとも1種のポリペプチド又は融合ポリペプチドを含む、いずれかの化学的分子に関する。つまり、ポリペプチド変異体は、好ましくは、示される活性を有するムテインである。好ましくは、ポリペプチド変異体は、上記で特定される通りのポリペプチド中に含められる、100~2000個、より好ましくは200~1800個、さらにより好ましくは300~1600個、又は最も好ましくは500~1500個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するペプチドを含む。さらに、上述のポリペプチドのさらなるポリペプチド変異体もまた包含される。そのようなポリペプチド変異体は、特定ポリペプチドと少なくとも本質的に同じ生物学的活性を有する。さらに、本発明に従って参照される通りのポリペプチド変異体が、少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失及び/又は付加により異なっているアミノ酸配列を有するであろうことが理解されるはずであり、このとき、該変異体のアミノ酸配列は依然として、特定される通りの程度まで、特定のポリペプチドのアミノ酸配列と同一である。2種類のアミノ酸配列間の同一性の程度は、当技術分野で周知のアルゴリズムにより決定することができる。好ましくは、同一性の程度は、比較ウインドウにわたって2種類の最適にアライメントされた配列を比較することにより決定され、このとき、比較ウインドウ中のアミノ酸配列の断片が、最適なアライメントのために比較される配列と比較して、付加又は欠失(例えば、ギャップ又はオーバーハング)を含む場合がある。パーセンテージは、両方の配列中に同一のアミノ酸残基が存在する位置の数を、好ましくはポリペプチドの全長にわたって、決定することにより、マッチする位置の数を取得し、比較ウインドウ中の位置の総数でマッチする位置の数を除算し、その結果に100を乗算して配列同一性のパーセンテージを得ることにより算出される。比較のための配列の最適なアライメントは、Smith and Waterman (1981)の局所相同性アルゴリズムにより、Needleman and Wunsch (1970)の相同性アライメントアルゴリズムにより、Pearson and Lipman (1988)の類似性検索方法により、これらのアルゴリズムのコンピュータ実装により(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group (GCG), 575 Science Dr., Madison, WI中のGAP、BESTFIT、BLAST、PASTA、及びTFASTA)、又は目視検査により、実行することができる。2種類の配列が比較のために特定されていると仮定すると、GAP及びBESTFITが、それらの最適なアライメント、つまり、同一性の程度を決定するために好ましく用いられる。好ましくは、ギャップウェイト(gap weight)に関して5.00及びギャップウェイトレングス(gap weight length)に関して0.30のデフォルト値が用いられる。本明細書中で言及されるポリペプチド変異体は、対立遺伝子変異体又はいずれかの他の生物種特有のホモログ、パラログ、若しくはオルソログであり得る。さらに、本明細書中で言及されるポリペプチド変異体は、特定のポリペプチドの断片、又は上述のタイプのポリペプチド変異体を、それらの断片及び/又は変異体が本明細書中で言及される通りの生物学的活性(1種類又は複数種類)を有する限り、含む。そのような断片は、例えば、ポリペプチドの分解産物又はスプライスバリアントであるか、又はそれらに由来し得る。さらに、リン酸化、グリコシル化、ユビキチン化、SUMO化、若しくはミリスチル化などの翻訳後修飾により、非天然アミノ酸を含めることにより、かつ/又はペプチドミメティクスであることにより、異なっている変異体が含まれる。
【0024】
好ましくは、ポリペプチド又は融合ポリペプチドは、検出可能なタグをさらに含む。用語「検出可能なタグ」とは、本発明のポリペプチドに付加されるか又は導入されるアミノ酸の伸長部(stretch)を意味する。好ましくは、タグは、本発明のポリペプチドのC末端又はN末端に付加されるであろう。アミノ酸の伸長部は、該タグを特異的に認識する抗体による融合ポリペプチドの検出を可能にするか、又はキレート剤などの機能的コンホメーションの形成を可能にするか、又は蛍光による可視化を可能にするであろう。好ましいタグは、Mycタグ、FLAGタグ、6-Hisタグ、HAタグ、GSTタグ又はGFPタグである。これらのタグは、すべて当技術分野で周知である。好ましくは、上記で特定される通りのタグ、より好ましくはMycタグ、FLAGタグ、6-Hisタグ、HAタグ、GSTタグ又はGFPタグは、本明細書中で言及される通りの免疫原性ペプチドでない。
【0025】
「急性骨髄性白血病」及び「AML」という用語は、当業者には、広い意味で血液細胞の骨髄系の細胞の不適切な増殖に関係すると理解されている。AMLの症状は、当技術分野で知られており、特に典型的な白血病の症状を含む。好ましくは、AMLは、本明細書の以下に特定されるようなAML細胞が対象において急速に増殖し、血液及び/又は骨髄に蓄積する白血病である。AMLの分類法は当技術分野で知られており、例えば、AMLのWHO 2008分類及びフランス-アメリカ-イギリス(FAB)分類が挙げられる。好ましくは、これらの分類の1つに含まれる任意のAMLタイプは、本明細書で言及されるAMLである。より好ましくは、AMLは、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、又は急性単球性白血病であり、さらに好ましくはAMLは急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、又は急性骨髄単球性白血病である。
【0026】
本明細書で使用される用語「AML細胞」は、AMLに罹患した対象において不適切に増殖している、広義の血液細胞の骨髄系の細胞、及びそれに由来する細胞株に関するものであり、したがって、好ましくは、AML細胞は、がん細胞である。好ましくは、AML細胞は、骨髄系、好ましくは骨髄芽球、単球、巨核球、又は赤血球系の白血病細胞であり、好ましくは骨髄芽球系の白血病細胞である。より好ましくは、AML細胞は、(i)骨髄芽球、(ii)前骨髄球、(iii)骨髄球、又は(iv)(i)~(iii)のいずれか1つの前駆体である。好ましくは、AML細胞は主要組織適合性複合体II(MHC-II)を発現するか、又はMHC-IIを発現するように誘導可能である。したがって、AML細胞は好ましくは、その自然状態及び/又はMHC-II発現誘導剤、特にIFNγでの処理後に、検出可能な量のMHC-IIをその表面に有する。
【0027】
本明細書で使用する「表面マーカー」という用語は、AML細胞の表面上、すなわちその細胞膜の外側上に少なくとも部分的に存在する任意の分子に関する。表面マーカーは、高分子であり、好ましくは少なくとも1kDa、より好ましくは少なくとも10kDaの分子量を有し、好ましくはポリペプチド(糖タンパク質などの修飾ポリペプチドを含む)であり、多糖であり、又は当業者が適切と考える他の任意の高分子である。好ましくは、表面マーカーは、結合ポリペプチドによって認識可能な少なくとも1つのエピトープを含み、すなわち、好ましくは、AML細胞の外部に露出している。好ましくは、表面マーカーは細胞によって内在化(インターナライゼーション)される;好ましくは、前記内在化はターンオーバー内在化によって媒介され、好ましくはAML細胞の表面上の表面マーカーの半減期が多くとも2d、より好ましくは多くとも1d、さらに好ましくは多くとも12時間、なおより好ましくは多くとも6時間である。また好ましくは、表面マーカーの内在化は誘導可能で、好ましくは結合ペプチドが前記表面マーカーに結合することにより誘導可能である。好ましくは、表面マーカーは本質的に特異的であり、より好ましくは骨髄系の細胞に特異的であり;より好ましくは、表面マーカーはAML細胞に特異的であり;したがって、好ましくは、表面マーカーは非AML細胞の表面に、前記AML細胞の表面よりも少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍、最も好ましくは少なくとも25倍低い量で発現される。好ましくは、AML細胞の表面マーカーは、好ましくは、CD371(例えばアイソフォームX6、Genbankアクセッション番号XP_006719099.1)、PRAME(Genbankアクセッション番号CAG30435.1)、CD123(例えばアイソフォーム1、Genbankアクセッション番号NP_002174.1)、CD138(Genbankアクセッション番号NP_002988.4)、TIM-3(Genbankアクセッション番号AFO66593.1)、CD34、CD38、CD25、CD32及びCD96からなるリストより選択されるポリペプチドであり、CD371、PRAME及びCD123からが好ましく、CD371及びPRAMEからがより好ましい。好ましい実施形態では、AML細胞の表面マーカーは、CD371、CD123、及びFRベータ(FR-β)(FOLR2、例えばGenbankアクセッション番号NP_001107006.1)からなるリストより選択される。当業者が理解するように、表面メーカーは、様々なアイソフォーム、例えばスプライスバリアント、グリコシル化バリアント等で存在し得る。従って、上記Genbankアクセッション番号の表示は例示的なものであり、他のアイソフォームを排除するものではない。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「結合ペプチド」は、本明細書の他の箇所で特定されるAML細胞の少なくとも1つの表面マーカーに結合し、AML細胞によるその結合ペプチドの内在化(インターナライゼーション)を可能にする親和性を有する任意のペプチドに関連する。好ましくは、前記結合ペプチドの前記表面マーカーへの結合の解離定数は、10-5mol/l未満、10-6mol/l未満、10-7mol/l未満、10-8mol/l未満、又は10-9mol/l未満である。好ましくは、前記結合ペプチドは抗体である。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、IgA、IgD、IgE、IgG、又はIgMのいずれかのクラスの可溶性免疫グロブリンに関する。表面マーカーに対する抗体は、例えば、精製タンパク質又はそれに由来する適切な断片を抗原として用いて、周知の方法によって調製することができる。好ましくは、本発明の抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体である。また抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体、霊長類化抗体若しくはキメラ化抗体、又はそれらの断片であってもよい。より好ましくは、抗体は、一本鎖抗体又はナノボディであり、より好ましくは一本鎖抗体である。また、本発明の抗体として、二重特異性抗体、合成抗体、Fab、Fv若しくはscFv断片等の抗体断片、あるいはこれらのいずれかの化学修飾誘導体も含まれる。好ましくは、本発明の抗体は、本明細書で規定する表面マーカーに特異的に結合する(すなわち、他のポリペプチド又はペプチドと交差反応しない)ものとする。特異的結合は、種々の周知の技術によって試験することができる。抗体又はその断片は、例えば、Harlow and Lane "Antibodies, A Laboratory Manual", CSH Press, Cold Spring Harbor, 1988に記載されている方法を用いることにより得ることができる。モノクローナル抗体は、Kohler and Milstein (1975), Nature 256, 495及びGalfre (1981), Meth. Enzymol. 73, 3に当初記載された技術によって調製することができ、これは、マウス骨髄腫細胞と免疫化哺乳動物由来の脾臓細胞との融合を含む。
【0030】
好ましくは、結合ペプチドは免疫原性ペプチドとアミノ酸配列が連続している、すなわち、結合ペプチドと免疫原性ペプチドは融合ポリペプチドを形成している。また好ましくは、結合ペプチドは、重鎖(HC)及び軽鎖(LC)を含む抗体である。好ましくは、結合ペプチドは、抗CD123抗体の重鎖の配列を含み、好ましくは配列番号10のアミノ酸配列を含み;かつ抗CD123抗体の軽鎖(LC)の配列を含み、好ましくは配列番号8のアミノ酸配列を含む。また、好ましくは、結合ペプチドは、抗CLL1抗体の重鎖の配列を含み、好ましくは配列番号18のアミノ酸配列を含み;かつ抗CLL1抗体の軽鎖(LC)の配列を含み、好ましくは配列番号16のアミノ酸配列を含む。
【0031】
用語「免疫原性ペプチド」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つのT細胞エピトープを含むペプチドに関する。T細胞エピトープは、当業者に公知である通り、ポリペプチド中に含まれるアミノ酸の連続的な配列であり、主要組織適合性複合体(MHC)クラスI又はクラスII分子に結合して任意の有核細胞(MHC-I)又は本質的にプロフェッショナル抗原提示細胞(MHC-II)の表面に提示されることができる。当業者は、MHC-I又はMHC-II上に提示される免疫原性ペプチドを予測する方法(Nielsen et al., (2004), Bioinformatics, 20 (9), 1388-1397), Bordner (2010), PLoS ONE 5(12): e14383)及び特定のペプチドの結合性を評価する方法(例えば、Bernardeau et al., (2011), J Immunol Methods, 371(1-2):97-105)を知っている。また、T細胞エピトープは、公共データベース中で、例えば、www.iedb.orgの下に利用可能な免疫エピトープデータベースから、入手可能である。好ましくは、T細胞エピトープは、MHC-IIエピトープである。好ましくは、T細胞エピトープは、対象が通常感染している、又は対象がワクチン接種を受けている感染性因子、好ましくはウイルス、のタンパク質に含まれるエピトープ;あるいは腫瘍抗原のエピトープである。好ましくは、T細胞エピトープは、少なくとも前記感染性因子に対するワクチンに含まれるエピトープである。好ましくは、T細胞エピトープは、ヘルペスウイルス、特にエプスタイン-バーウイルス(EBV)及びサイトメガロウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ムンプスウイルス、水痘ウイルス、インフルエンザウイルス、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、ロタウイルス、パピローマウイルス、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、破傷風菌(Clostridium tetanii)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎球菌(Pneumococcus spec.)、髄膜炎菌(Meningococcus spec.)から選択される感染性因子のタンパク質に含まれるエピトープであり、より好ましくは、EBVのタンパク質に含まれるエピトープである。好ましくは、感染性因子は潜伏感染を確立する感染性因子であり、好ましくはEBV又はパピローマウイルスであり、T細胞エピトープはその潜伏遺伝子産物のエピトープである。好ましくは、免疫原性ペプチドは、MHC-IIペプチドを含み、好ましくはMHC-IIペプチドから本質的になり、より好ましくはMHC-IIペプチドからなり、場合により、N末端及び/又はC末端のリンカーペプチドを含み、ここで前記リンカーペプチド(1若しくは複数)は、好ましくは最大20、より好ましくは最大10、なおより好ましくは最大5アミノ酸の独立して選択された長さを有する。好ましくは、免疫原性ペプチドは、エプスタイン-バーウイルス(EBV)の潜伏遺伝子からの少なくとも1つのT細胞エピトープ、好ましくは少なくとも1つのMHC-IIエピトープを含む。また好ましくは、免疫原性ペプチドは、EBNA-1、EBNA-LP、EBNA-2、EBNA-3A、EBNA-3B、EBNA-3C、LMP-1、LMP-2A、又はBZLF1からの少なくとも1つのT細胞エピトープを含む。好ましくは、AML細胞の表面上のMHC-IIの少なくとも1種は、HLA-DRB1*1301(Genbankアクセッション番号LC257799.1)であり、前記免疫原性ペプチドはEBNA1-1C3(配列番号7)、EBNA3B-B9(配列番号2)、又はBZLF1-3H11(配列番号1)であるか;又はAML細胞の表面上のMHC-IIはHLA-DRB1*1101(Genbankアクセッション番号AB829528.1)であり、前記免疫原性ペプチドはEBNA1-3G2(配列番号3)、EBNA3B-3F7(配列番号4);EBNA3C-1B2/3H10(配列番号5)であり;又はAML細胞の表面上のMHC-IIはHLA-DRB1*11(Genbankアクセッション番号AY375861.1)であり、前記免疫原性ペプチドはEBNA1-3E10(配列番号6)である。好ましい実施形態では、免疫原性ペプチドは、配列番号1~7及び42~47からなるリストから選択される。好ましい実施形態では、AML細胞の表面上の少なくとも1種類のMHC-IIはHLA-DRB1*1301であり、免疫原性ペプチドはgp350 1D6.(配列番号42)である。さらなる好ましい実施形態では、免疫原性ペプチドはEBNA2 pEp(配列番号43)であるか、又はEBV株B95.8からのEBNA1(配列番号44)、又は例えば配列番号45、46若しくは47に示すようにEBV株B95.8からのEBNA3Cの断片である。
【0032】
有利なことに、本発明の根底にある研究において、本明細書に記載の構築物は、細胞傷害性T細胞応答、特に対象におけるAML細胞に対するCD4+細胞傷害性T細胞応答を誘導し、従ってAML処置を補助するのに好適であることが見出された。
【0033】
上記で行なわれた定義は、下記に準用される。以下でさらに行われる追加の定義及び説明もまた、本明細書中に記載されるすべての実施形態に準用される。
【0034】
本発明はさらに、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0035】
用語「ポリヌクレオチド」とは、本明細書で使用される場合、本明細書中のどこかで特定される通りのポリペプチドである活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチドに関する。上述された活性を測定するための好適なアッセイが、後述の実施例に記載される。上述の生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、本明細書に従って取得されており;つまり、ポリヌクレオチドは、好ましくは、配列番号12、14、20又は22に示される通りのアミノ酸配列を有するポリペプチドをそれぞれコードする、配列番号13、15、21又は23に示される核酸配列を含む。
【0036】
本明細書中で用いる場合、ポリヌクレオチドとの用語は、好ましくは、具体的に示されるポリヌクレオチドの変異体を含む。より好ましくは、ポリヌクレオチドとの用語は、示される特定のポリヌクレオチドに関する。しかしながら、特定のアミノ酸配列を有するポリペプチドはまた、遺伝的コードの縮重に起因して、多様なポリヌクレオチドによってもコードされ得ることが理解されるはずである。当業者は、特定のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを選択する方法を知っており、該ポリヌクレオチドを発現させるために用いられる生物のコドン使用頻度に従って、ポリヌクレオチド中で用いられるコドンを最適化する方法も知っている。つまり、用語「ポリヌクレオチド変異体」とは、本明細書中で用いる場合、配列が、少なくとも1つのヌクレオチド置換、付加及び/又は欠失により上述の特定の核酸配列から誘導することができることを特徴とする核酸配列を含む、本明細書中で関連するポリヌクレオチドの変異体に関し、このとき、ポリヌクレオチド変異体は、特定のポリヌクレオチドに関して特定される通りの活性を有するであろうし、すなわち、本発明に係るポリペプチドをコードするであろう。さらに、本発明に従って言及される通りのポリヌクレオチド変異体は、少なくとも1つのヌクレオチド置換、欠失及び/又は付加に起因して異なる核酸配列を有するであろうことが理解されるはずである。好ましくは、該ポリヌクレオチド変異体は、特定のポリヌクレオチドのオルソログ、パラログ又は他のホモログである。好ましくはまた、該ポリヌクレオチド変異体は、特定のポリヌクレオチドの天然に存在する対立遺伝子である。ポリヌクレオチド変異体はまた、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、上述の特定のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることが可能な核酸配列を含むポリヌクレオチドも包含する。これらのストリンジェント条件は当業者には公知であり、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1-6.3.6の中に見出すことができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい例は、約45℃での6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(=SSC)中のハイブリダイゼーション条件、及びそれに続く50~65℃での0.2×SSC、0.1%SDS中での1回以上の洗浄ステップである。これらのハイブリダイゼーション条件は、核酸の種類に応じて、かつ、例えば有機溶媒が存在する場合には、温度及びバッファーの濃度に関して、異なることを当業者は知っている。例えば、「標準的なハイブリダイゼーション条件」下では、温度は、0.1×~5×SSC(pH7.2)の濃度を有する水性バッファー中で、42℃~58℃の間で核酸の種類に応じて異なる。上述のバッファー中に有機溶媒が存在する場合(例えば、50%ホルムアミド)、標準条件下での温度は、約42℃である。DNA:DNAハイブリッドのためのハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、例えば、0.1×SSC及び20℃~45℃、好ましくは30℃~45℃である。DNA:RNAハイブリッドのためのハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、例えば、0.1×SSC及び30℃~55℃、好ましくは45℃~55℃である。上述のハイブリダイゼーション温度は、例えば、約100bp(=塩基対)長及び50%のG+C含量を有する核酸に関して、ホルムアミドの非存在下で、決定することができる。上記の教科書などの教科書、又は以下の教科書を参照することにより、必要とされるハイブリダイゼーション条件を決定する方法を、当業者は知っている:Sambrook et al., “Molecular Cloning”, Cold Spring Harbor Laboratory, 1989;Hames and Higgins (Ed.) 1985, “Nucleic Acids Hybridization: A Practical Approach”, IRL Press at Oxford University Press, Oxford;Brown (Ed.) 1991, “Essential Molecular Biology: A Practical Approach”, IRL Press at Oxford University Press, Oxford。あるいは、ポリヌクレオチド変異体は、混合オリゴヌクレオチドプライマーに基づくDNAの増幅などPCRに基づく技術により、すなわち、本発明のポリペプチドの保存されたドメインに対する縮重プライマーを用いて、取得可能である。ポリペプチドの保存されたドメインは、本発明のポリヌクレオチドの核酸配列又はポリペプチドのアミノ酸配列と、他の生物の配列との配列比較により、特定することができる。鋳型として、細菌、真菌、植物由来若しくは、好ましくは、動物由来のDNA又はcDNAを用いることができる。さらに、変異体としては、具体的に示される核酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である核酸配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。さらに、具体的に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドもまた包含される。同一性%値は、好ましくは、アミノ酸又は核酸配列領域全体にわたって算出される。様々なアルゴリズムに基づく一連のプログラムが、異なる配列を比較するために当業者に利用可能である。この文脈では、Needleman and Wunsch又はSmith and Watermanのアルゴリズムは、特に信頼性の高い結果をもたらす。配列アライメントを行なうために、プログラムPileUp(J. Mol. Evolution., 25, 351-360, 1987, Higgins et al., CABIOS, 5 1989: 151-153)又はプログラムGap及びBestFit(Needleman and Wunsch(J. Mol. Biol. 48; 443-453 (1970))及びSmith and Waterman(Adv. Appl. Math. 2; 482-489 (1981))、これらは、GCGソフトウェアパケットの一部分である(Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711 (1991))が用いられるはずである。パーセント単位の上記配列同一性値(%)は、好ましくは、以下の設定を用いて配列領域全体にわたってプログラムGAPを用いて、決定されるはずである:ギャップウェイト:50、レングスウェイト:3、平均マッチ:10.000及び平均ミスマッチ:0.000(別途特定されない限り、配列アライメントのための標準的設定として常に用いられるであろう)。
【0037】
具体的に示される核酸配列のうちのいずれかの断片を含むポリヌクレオチドはまた、コードされるポリペプチドが特定される通りの活性(1種類又は複数種類)を有することを条件として、本発明の変異体ポリヌクレオチドとしても包含される。つまり、断片は、特定される通りの活性を依然として有するポリペプチドを依然としてコードするであろう。したがって、コードされるポリペプチドは、前記生物学的活性を賦与する、本発明のポリペプチドのドメインを含むか又はそれらからなることができる。本明細書中で意味する通りの断片は、好ましくは、特定の核酸配列のうちのいずれか1種の少なくとも150個、少なくとも200個、少なくとも500個若しくは少なくとも1000個の連続するヌクレオチドを含むか、又は特定のアミノ酸配列のうちのいずれか1種の少なくとも200個、少なくとも300個、少なくとも500個、少なくとも800個、少なくとも1000個若しくは少なくとも1500個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列をコードする。
【0038】
本発明のポリヌクレオチドは、上述の核酸配列からなるか、該核酸配列から本質的になるか、又は該核酸配列を含むかのいずれかである。つまり、本発明のポリヌクレオチドは、さらなる核酸配列をさらに含むことができる。具体的には、本発明のポリヌクレオチドは融合タンパク質をコードすることができ、このとき、該融合タンパク質の1つのパートナーは、上記の核酸配列によりコードされるポリペプチドである。そのような融合タンパク質は、発現をモニタリングするための追加的な部分のポリペプチドとして、いわゆる「タグ」を含むことができ、タグは、検出可能マーカーとして、又は精製目的のための補助的手段として機能し得る。異なる目的のためのタグが当技術分野で周知であり、かつ本明細書中のどこかに説明される。
【0039】
本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは、単離されたポリヌクレオチドとして(すなわち、その天然の文脈から単離されて)、又は遺伝的に改変された形態で、提供されるであろう。ポリヌクレオチドは、好ましくは、cDNAなどのDNAであるか、又はRNAである。この用語は、一本鎖ポリヌクレオチド並びに二本鎖ポリヌクレオチドを包含する。さらに、好ましくは、グリコシル化若しくはメチル化ポリヌクレオチドなどの天然に存在する修飾型ポリヌクレオチド又はビオチン化ポリヌクレオチドなどの人工的に修飾されたものを含む、化学的に修飾されたポリヌクレオチドもまた含まれる。
【0040】
本発明はまた、本発明に係るポリヌクレオチドを含むベクターに関する。
【0041】
用語「ベクター」は、好ましくは、当業者に適当であると考えられる任意のタイプのベクター、例えばファージ、プラスミド、ウイルス又はレトロウイルスベクター並びに細菌又は酵母人工染色体などの人工染色体を包含する。さらに、この用語はまた、ゲノムDNAへの標的化構築物のランダム又は部位特異的インテグレーション(組み込み)を可能にする標的化構築物にも関する。そのような標的構築物は、好ましくは、下記で詳細に記載される通り、相同又は非相同(heterologous)組み換えのいずれかのために十分な長さのDNAを含む。本発明のポリヌクレオチドを包含するベクターは、好ましくは、宿主中での伝播(propagation)及び/又は選択のための選択可能マーカーをさらに含む。ベクターは、当技術分野で周知の種々の技術により宿主細胞中に組み込むことができる。例えば、プラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈殿物若しくは塩化ルビジウム沈殿物などの沈殿物中に、又は荷電脂質を含む複合体中に、又はフラーレンなどの炭素系クラスター中へと導入することができる。あるいは、プラスミドベクターは、熱ショック又はエレクトロポレーション技術により導入することができる。好ましい実施形態では、ベクターは、細菌ベクターである。また好ましくは、ベクターは、真核生物ベクターである。
【0042】
より好ましくは、本発明のベクター中では、ポリヌクレオチドは、原核細胞若しくは真核細胞又はそれらの単離された画分中での発現を可能にする発現制御配列に機能的に連結されている。該ポリヌクレオチドの発現は、好ましくは翻訳可能なmRNAへの、ポリヌクレオチドの転写を含む。真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞中での発現を確実にする調節エレメントは、当技術分野で周知である。それらは、好ましくは、転写の開始を確実にする調節配列、及び、任意により、転写の終結及び転写産物の安定化を確実にするポリAシグナルを含む。追加の調節エレメントとしては、転写並びに翻訳エンハンサーが挙げられる。原核宿主細胞中での発現を可能にする考えられる調節エレメントは、例えば、大腸菌中のlac、trp、又はtacプロモーターを含み、真核宿主細胞中での発現を可能にする調節エレメントの例は、酵母でのAOX1若しくはGAL1プロモーター又は哺乳動物及び他の動物細胞中のCMV、SV40、RSVプロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMVエンハンサー、SV40エンハンサー若しくはグロビンイントロンである。さらに、誘導性発現制御配列を、本発明により包含される発現ベクター中で用いることができる。そのような誘導性ベクターは、熱ショック若しくは他の環境因子により誘導可能なtet又はlacオペレーター配列(1種類又は複数種類)を含むことができる。好適な発現制御配列は、当技術分野で周知である。転写の開始を担うエレメント以外には、そのような調節エレメントはまた、SV40-ポリA部位又はtk-ポリA部位などの、ポリヌクレオチドの下流の転写終結シグナルも含むことができる。この文脈では、好適な発現ベクターは当技術分野で公知であり、例えば、Okayama-Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia社)、pBluescript(Stratagene社)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(Invitrogene社)又はpSPORT1(GIBCO BRL社)などである。当業者に周知である方法を、組み換えウイルスベクターを構築するために用いることができ;例えば、Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N.Y.及びAusubel, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. (1994)に記載される技術を参照されたい。
【0043】
本発明はまた、本発明に係るポリペプチド、本発明に係るポリヌクレオチド、及び/又は本発明に係るベクターを含む宿主細胞にも関する。
【0044】
本明細書中で用いる場合、用語「宿主細胞」とは、本発明のポリヌクレオチド及び/又はベクターを受け入れ、かつ好ましくは維持することが可能であるいずれかの細胞に関する。より好ましくは、宿主細胞は、前記ポリヌクレオチド及び/又はベクター上にコードされる本発明のポリペプチドを発現することが可能である。好ましくは、細胞は、細菌細胞、より好ましくは当技術分野で公知の一般的な実験用細菌株の細胞、最も好ましくはエシェリキア属の菌株、特に大腸菌株である。また好ましくは、宿主細胞は、真核細胞、好ましくは酵母細胞、例えば、パン酵母の菌株の細胞であるか、又は動物細胞である。より好ましくは、宿主細胞は、昆虫細胞又は哺乳動物細胞、特にヒト、マウス又はラット細胞である。またさらに好ましくは、宿主細胞はヒト細胞である。好ましくは、宿主細胞は、本明細書の上で特定したようなAML細胞である。
【0045】
本発明はまた、医薬での使用のための、本発明に係るポリぺプチド、本発明に係るポリヌクレオチド、及び/又は本発明に係るベクターにも関する。本発明はまた、AMLの処置での使用のための、本発明に係るポリぺプチド、本発明に係るポリヌクレオチド、及び/又は本発明に係るベクターに関する。
【0046】
本発明はさらに、AML特異的T細胞を刺激する方法であって、
(a)AML細胞を、本発明のポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド及び/又は本発明のベクターと接触させること、
(b)(a)のAML細胞をT細胞と接触させること、及び
(c)それによってAML特異的T細胞を刺激すること
を含む方法に関する。
【0047】
AML特異的T細胞の刺激のための方法は、好ましくはin vitroの方法である。しかしながら、in vivoで、例えば本明細書の以下で特定されるようなAMLの処置方法の一部としてin vivoで実施してもよい。さらに、この方法は、以上に明記したステップに加えてステップを含み得る。例えば、さらなるステップは、ステップ(a)について、例えば対象由来のサンプル中の、AML細胞のサンプルを用意するステップ、又はステップ(b)の後のT細胞のインキュベーション及び拡張ステップに関する。さらに、前記ステップの1つ以上が自動化装置によって実施されてもよい。また、単一ステップ又は方法全体を反復してもよい。
【0048】
本発明の方法の文脈で使用される「接触」という用語は、当業者によって理解される。好ましくは、この用語は、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、又は宿主細胞を、対象又は好ましくは細胞、例えばAML細胞と物理的に接触させること、すなわち前述の構成要素が相互作用することを可能にすることに関連する。
【0049】
当業者には理解されるように、AML特異的T細胞を刺激するための方法の文脈では、結合ペプチドは、好ましくは、本明細書で上で特定したようなAML細胞に特異的である。また、当業者は、好ましくは、生成されたAML特異的T細胞が細胞傷害性T細胞であり、好ましくはCD4+細胞傷害性T細胞であることを理解する。好ましくは、前記AML特異的T細胞は、本発明のポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド、及び/又は本発明のベクターと接触したAML細胞に対して特異的である。
【0050】
本発明はまた、急性骨髄性白血病(AML)の処置のためのポリペプチドを同定する方法であって、
(a)前記AMLの細胞(AML細胞)の表面マーカーに結合する結合ペプチドを用意すること、
(b)前記AML細胞により発現される少なくとも1つのHLA-IIサブタイプを決定すること、並びに
(c)(a)及び(b)の結果に基づき、AMLの処置のためのポリペプチドを同定すること
を含む方法に関する。
【0051】
ポリペプチドの同定方法は、好ましくはin vitro法である。さらに、上記で明示的に言及したステップに加えて、ステップを含んでいてもよい。そして、前記ステップの1つ以上は、自動化装置によって実行されてもよい。
【0052】
「表面マーカーに対する抗体を用意する(providing)」という用語は、本明細書では、適切な抗体へのアクセスを提供する任意の態様に関連する広い意味で使用される。したがって、上記の文脈における用意は、抗体の物理的生産であってもよく、それをコードするポリヌクレオチドの用意であってもよく、あるいは、データベースにおける、場合によりそのアミノ酸配列又はそれをコードする核酸配列を含む、適切な抗体のin silico同定であってさえもよい。
【0053】
本明細書で使用されるように、「前記AML細胞により発現される少なくとも1つのHLA-IIサブタイプを決定する」という用語は、少なくとも1つのAML細胞の表面上に存在する少なくとも1つのHLA-IIサブタイプを同定することに関連する。好ましくは、HLA-IIサブタイプは、サンプルに含まれる少なくとも1種類のAML細胞から同定される。したがって、サンプルが2種類以上のAML細胞を含む場合、1種類のAML細胞上の1つのHLA-IIサブタイプが同定されれば、本方法にとって十分である。HLA-IIサブタイプを同定する方法は当技術分野で知られており、免疫学的方法、すなわちサブタイプ特異的抗体を用いた決定が挙げられる。HLA-IIサブタイプは、より好ましくはコード遺伝子、又はより好ましくはコードRNAの配列決定、例えばcDNA配列決定によって同定される。
【0054】
本明細書で使用する「サンプル」という用語は、体液、好ましくは、血液、血漿、血清、唾液又は尿からのサンプル、あるいは、例えば、生検によって、細胞、組織又は器官、特に心臓に由来するサンプルを意味する。より好ましくは、サンプルは、血液サンプル、骨髄サンプル、又は血液若しくは骨髄に由来するサンプルである。好ましくは、サンプルはAML細胞を含む、又はAML細胞を含むことが疑われる。前述の異なる種類の生物学的サンプルを得るための技術は、当技術分野において周知である。例えば、血液サンプルは、採血によって得ることができる。サンプルは、好ましくは、本発明の方法に使用される前に前処理されてもよい。以下により詳細に説明するように、前処理は、AML細胞を他のサンプル構成要素から放出又は分離するために必要な処理、サンプル中に含まれる細胞からポリヌクレオチドを放出するために必要な処理、又は当業者によって適切と考えられる他の前処理を含み得る。前述したような前処理を施したサンプルも、本発明に従って使用される「サンプル」という用語に含まれる。
【0055】
AMLの処置のためのポリペプチドは、先のステップ(a)及び(b)の結果に基づいて同定される。したがって、好ましくは、ポリペプチドは、(i)それが目的のAML細胞に結合し、好ましくは、本明細書で上で特定したように内在化(インターナライゼーション)される場合;及び(ii)それが目的のAML細胞のHLA-IIサブタイプによって、好ましくは効率的に、提示される免疫原性ペプチドを含む場合、適切であると同定される。特定のHLA-IIサブタイプによるペプチドの提示を予測するための適切なツールは、当業者に利用可能である;さらに、所定のHLA-IIサブタイプによる提示に適したペプチドは、一般にアクセスできるデータベース、例えば、www.iedb.orgで見つけることができる。
【0056】
処置のためのポリペプチドの同定方法は、さらなるステップを含んでいてもよい。例えば、ステップ(b)の前、好ましくは、ステップ(a)の前に、AML細胞のサンプル、好ましくは、対象のサンプルを用意するステップを含んでもよい。また、同定するステップの後に、ステップ(c)で同定されたポリペプチドを物理的に生産するステップを含んでもよい。さらに、ポリペプチドは、例えば、医薬組成物として製剤化されてもよい。
【0057】
用語「対象」は、生物にとって外来の分子に対する免疫応答を生成する能力を有する後生生物に関する。好ましくは、対象は、動物、より好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトである。好ましくは、対象は、AMLに罹患していることが知られているか、又は疑われている。
【0058】
上記にしたがって、本発明はまた、急性骨髄性白血病(AML)の処置のためのポリペプチドを産生する方法であって、
(A)本発明の方法によりAMLの処置のためのポリペプチドを同定すること、及び
(B)AMLの処置のためのポリペプチドを産生すること
を含む方法に関する。
【0059】
本発明はまた、急性骨髄性白血病(AML)に罹患していることが知られているか又は疑われる対象におけるAMLを処置する方法であって、前記対象を、AMLの処置のためのポリペプチド、好ましくは本発明に係るポリペプチドと接触させ、それによってAMLを処置することを含む方法に関する。
【0060】
用語「処置すること」及び「処置」とは、本明細書中で言及される疾患若しくは障害又はそれに付随する症状の、有意な程度までの改善を意味する。本明細書中で用いる場合、該処置することには、本明細書中で言及される疾患又は障害に関する健康状態の完全な回復もまた含まれる。本明細書中でこの用語が用いられる場合、処置することとは、処置対象のすべての対象で有効でなくてよいことが理解されるはずである。しかしながら、この用語は、好ましくは、本明細書中で言及される疾患又は障害に罹患した対象のうちの統計学的に有意な一部分を成功裏に処置できることを必要とするであろう。一部分が統計学的に有意であるか否かは、様々な周知の統計的評価ツール、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントのt検定、マン-ホイットニー検定等を用いて、当業者によりさらなる面倒なく決定されることができる。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%である。p値は、好ましくは、0.1、0.05、0.01、0.005、又は0.0001である。好ましくは、処置は、所与のコホート又は集団の対象のうちの少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%に対して有効であろう。処置方法は、さらなる処置ステップを含んでいてもよく、これらは、特定されたステップに先行しても後続してもよく、又は同時に投与(施行)されてもよい。適切な追加の処置は、例えば、化学療法、放射線療法、手術、又は追加の免疫療法であり得る。
【0061】
本発明はまた、急性骨髄性白血病(AML)の処置のためのポリペプチドを同定するための、好ましくはAMLの処置のためのポリペプチドを同定する方法により同定するための、急性骨髄性白血病(AML)を患う対象のサンプルの使用に関する。
【0062】
上記に鑑みて、以下の実施形態が、特に企図される:
1. (i)急性骨髄性白血病(AML)細胞の少なくとも1つの表面マーカーに結合する結合ペプチド、及び
(ii)少なくとも1つのT細胞エピトープを含む免疫原性ペプチド
を含むポリペプチド。
2. 前記AML細胞が、骨髄系列、好ましくは骨髄芽球系列、単球系列、巨核球系列、又は赤血球系列、好ましくは骨髄芽球系列の白血病細胞である、実施形態1に記載のポリペプチド。
3. 前記AML細胞が、(i)骨髄芽球、(ii)前骨髄球、(iii)骨髄球、又は(iv)(i)~(iii)のいずれか1つの前駆体である、実施形態1又は2に記載のポリペプチド。
4. 前記AML細胞が主要組織適合性複合体II(MHC-II)を発現するか、又はMHC-IIを発現するように誘導可能である、実施形態1~3のいずれか1つに記載のポリペプチド。
5. AML細胞の前記表面マーカーが、好ましくは、CD371、PRAME、CD123、CD138、及びTIM-3からなるリストから、好ましくはCD371、PRAME、及びCD123から選択され、より好ましくはCD371及びPRAMEから、また好ましくはCD371、CD123及びFR-ベータからなるリストからも選択されるポリペプチドである、実施形態1~4のいずれか1つに記載のポリペプチド。
6. 前記結合ペプチドが抗体である、実施形態1~5のいずれか1つに記載のポリペプチド。
7. 前記結合ペプチドが一本鎖抗体である、実施形態1~6のいずれか1つに記載のポリペプチド。
8. 前記免疫原性ペプチドが、前記対象に一般的に感染するか、若しくはそれに対して前記対象がワクチン接種されている感染性因子、好ましくはウイルスのタンパク質、又は腫瘍抗原のタンパク質に含まれる少なくとも1つのT細胞エピトープを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載のポリペプチド。
9. 前記T細胞エピトープが、前記感染性因子に対する少なくともワクチンに含まれるエピトープである、実施形態8に記載のポリペプチド。
10. 前記感染性因子が、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ムンプスウイルス、水痘ウイルス、インフルエンザウイルス、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、ロタウイルス、パピローマウイルス、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、破傷風菌(Clostridium tetanii)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎球菌(Pneumococcus spec.)、髄膜炎菌(Meningococcus spec.)から選択され、好ましくはEBVである、実施形態8又は9に記載のポリペプチド。
11. 前記感染性因子が潜伏感染を確立する感染性因子であり、好ましくはEBV又はパピローマウイルスであり、前記T細胞エピトープがその潜伏遺伝子産物のエピトープである、実施形態1~10のいずれか1つに記載のポリペプチド。
12. 前記免疫原性ペプチドがMHC-IIペプチドを含み、好ましくは本質的にMHC-IIペプチドからなる、実施形態1~11のいずれか1つに記載のポリペプチド。
13. 免疫原性ペプチドが、エプスタイン-バーウイルス(EBV)の潜伏遺伝子由来の少なくとも1つのT細胞エピトープを含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載のポリペプチド。
14. 免疫原性ペプチドが、EBNA-1、EBNA-LP、EBNA-2、EBNA-3A、EBNA-3B、EBNA-3C、LMP-1、LMP-2A、又はBZLF1からの少なくとも1つのT細胞エピトープを含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載のポリペプチド。
15. 前記MHC-IIがHLA-DRB1*1301であり、前記免疫原性ペプチドがEBNA1-1C3、EBNA3B-B9若しくはBZLF1-3H11であり;又は前記MHC-IIがHLA-DRB1*1101であり、前記免疫原性ペプチドがEBNA1-3G2、EBNA3B-3F7; EBNA3C-1B2若しくはEBNA3C-3H10であり;又は前記MHC-IIがHLA-DRB1*11であり、前記免疫原性ペプチドがEBNA1-3E10である、実施形態1~14のいずれか1つに記載のポリペプチド。
16. 前記ポリペプチドが、配列番号12のアミノ酸配列、好ましくは配列番号13の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる配列番号12のアミノ酸配列を含み、好ましくはそれから本質的になり、より好ましくはそれからなり;又は配列番号14のアミノ酸配列、好ましくは配列番号15の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる配列番号14のアミノ酸配列を含み、好ましくはそれから本質的になり、より好ましくはそれからなり;又は配列番号20のアミノ酸配列、好ましくは配列番号21の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる配列番号20のアミノ酸配列を含み、好ましくはそれから本質的になり、より好ましくはそれからなり;又は配列番号22のアミノ酸配列、好ましくは配列番号23の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる配列番号22のアミノ酸配列を含み、好ましくはそれから本質的になり、より好ましくはそれからなる、実施形態1~15のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0063】
17. 実施形態1~16のいずれか1つに記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
18. 実施形態17に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
19. 実施形態1~16のいずれか1つに記載のポリペプチド、実施形態17に記載のポリヌクレオチド、及び/又は実施形態18に記載のベクターを含む宿主細胞。
20. 医薬における使用のための、実施形態1~16のいずれか1つに記載のポリペプチド、実施形態17に記載のポリヌクレオチド、実施形態18に記載のベクター、及び/又は実施形態19に記載の宿主細胞。
21. AMLの処置における使用のための、実施形態1~16のいずれか1つに記載のポリペプチド、実施形態17に記載のポリヌクレオチド、実施形態18に記載のベクター、及び/又は実施形態19に記載の宿主細胞。
【0064】
22. AML特異的T細胞を刺激する方法であって、
(a)AML細胞を実施形態1~16のいずれか1つに記載のポリペプチド、実施形態17に記載のポリヌクレオチド、実施形態18に記載のベクター、及び/又は実施形態19に記載の宿主細胞と接触させること、
(b)(a)のAML細胞をT細胞と接触させること、並びに
(c)それによってAML特異的T細胞を刺激すること
を含む方法。
23. 前記AML特異的T細胞が細胞傷害性T細胞であり、好ましくはCD4+細胞傷害性T細胞である、実施形態22に記載の方法。
24. 急性骨髄性白血病(AML)の処置のためのポリペプチドを同定する方法であって、
(a)前記AMLの細胞(AML細胞)の表面マーカーに結合する結合ペプチドを用意すること、
(b)前記AML細胞により発現される少なくとも1つのHLA-IIサブタイプを決定すること、並びに
(c)(a)及び(b)の結果に基づき、AMLの処置のためのポリペプチドを同定すること
を含む方法。
25. 急性骨髄性白血病(AML)の処置のためのポリペプチドを産生する方法であって、
(A)実施形態24に記載の方法によるAMLの処置のためのポリペプチドを同定すること、及び
(B)AMLの処置のためのポリペプチドを産生すること
を含む方法。
26. 急性骨髄性白血病(AML)に罹患していることが知られているか又は疑われる対象におけるAMLを処置する方法であって、
前記対象を、AMLの処置のためのポリペプチド、好ましくは実施形態1~16のいずれか1つに記載のポリペプチドと接触させ、それによってAMLを処置すること
を含む方法。
27. 好ましくは実施形態24に記載の方法による、急性骨髄性白血病(AML)の処置のためのポリペプチドを同定するための、AMLに罹患している対象のサンプルの使用。
【0065】
本明細書において引用される全ての参照文献は、それらの開示内容全体及び本明細書において具体的に言及される開示内容に関して、参照により本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1A】(A)実験のワークフローを示す図である。一部の細胞株を、凡例に示されるように、T細胞アッセイの前に、インターフェロンガンマで追加的に処理した。LCLは陽性対照として役割を果たすEBV陽性細胞であり、T細胞単独及びペプチドに曝露されていない細胞は陰性対照として役割を果たした。この抗原に特異的なT細胞を有する種々のEBVペプチドに曝露されたAML細胞株の共培養後のインターフェロン分泌を棒グラフに示す。
【
図1B】(B)~(D)EBVエピトープBZLF1-3H11(B)、EBNA1-3G2(C)又はEBNA3C-3H10(D)に曝露後に複数のAML細胞株を用いて行ったインターフェロンガンマ放出アッセイの結果を示す図である。一部の細胞株を、凡例に示されるように、T細胞アッセイの前に、インターフェロンガンマで追加的に処理した。LCLは陽性対照として役割を果たすEBV陽性細胞であり、T細胞単独及びペプチドに曝露されていない細胞は陰性対照として役割を果たした。この抗原に特異的なT細胞を有する種々のEBVペプチドに曝露されたAML細胞株の共培養後のインターフェロン分泌を棒グラフに示す。
【
図1C】(B)~(D)EBVエピトープBZLF1-3H11(B)、EBNA1-3G2(C)又はEBNA3C-3H10(D)に曝露後に複数のAML細胞株を用いて行ったインターフェロンガンマ放出アッセイの結果を示す図である。一部の細胞株を、凡例に示されるように、T細胞アッセイの前に、インターフェロンガンマで追加的に処理した。LCLは陽性対照として役割を果たすEBV陽性細胞であり、T細胞単独及びペプチドに曝露されていない細胞は陰性対照として役割を果たした。この抗原に特異的なT細胞を有する種々のEBVペプチドに曝露されたAML細胞株の共培養後のインターフェロン分泌を棒グラフに示す。
【
図1D】(B)~(D)EBVエピトープBZLF1-3H11(B)、EBNA1-3G2(C)又はEBNA3C-3H10(D)に曝露後に複数のAML細胞株を用いて行ったインターフェロンガンマ放出アッセイの結果を示す図である。一部の細胞株を、凡例に示されるように、T細胞アッセイの前に、インターフェロンガンマで追加的に処理した。LCLは陽性対照として役割を果たすEBV陽性細胞であり、T細胞単独及びペプチドに曝露されていない細胞は陰性対照として役割を果たした。この抗原に特異的なT細胞を有する種々のEBVペプチドに曝露されたAML細胞株の共培養後のインターフェロン分泌を棒グラフに示す。
【
図2】AML細胞株KG-1の表面におけるHLAクラスIIの発現を示すグラフである。種々の対照抗体が示される。
【
図3】種々のAML細胞株の表面におけるCLL-1の発現をFACSにより決定したことを示すグラフである。
【
図4A】CLL-1(左)及びCD123(右)に対する異なるAgAbが、非修飾抗体と同様にそれらの標的に結合することができたことを示すグラフである。結合を試験するために使用したAML細胞株は、KG-1(A)、MonoMac-6(B)、及びNomo-1(C);非染色;非染色対照;アイソタイプ:アイソタイプ対照;wt:野生型抗体(すなわち、免疫原性ペプチドなし)、3G2:EBNA1-3G2、3H10: EBNA3C-3H10、3H11: BZLF1-3H11であった。
【
図4B】CLL-1(左)及びCD123(右)に対する異なるAgAbが、非修飾抗体と同様にそれらの標的に結合することができたことを示すグラフである。結合を試験するために使用したAML細胞株は、KG-1(A)、MonoMac-6(B)、及びNomo-1(C);非染色;非染色対照;アイソタイプ:アイソタイプ対照;wt:野生型抗体(すなわち、免疫原性ペプチドなし)、3G2:EBNA1-3G2、3H10: EBNA3C-3H10、3H11: BZLF1-3H11であった。
【
図4C】CLL-1(左)及びCD123(右)に対する異なるAgAbが、非修飾抗体と同様にそれらの標的に結合することができたことを示すグラフである。結合を試験するために使用したAML細胞株は、KG-1(A)、MonoMac-6(B)、及びNomo-1(C);非染色;非染色対照;アイソタイプ:アイソタイプ対照;wt:野生型抗体(すなわち、免疫原性ペプチドなし)、3G2:EBNA1-3G2、3H10: EBNA3C-3H10、3H11: BZLF1-3H11であった。
【
図5】CLL-1又はCD123に特異的であり、示されたEBVエピトープ(BZLF1 3H10、EBNA1 3G2)を有する種々の量のAgAbに曝露させた後に、KG-1 AML細胞株を用いて行われたインターフェロンガンマ放出アッセイの結果を示すグラフである(上段パネル)。抗原性部分を欠く天然抗体は陰性対照(WT)として役割を果たした。下段パネルは、ペプチド3G2又は3H10のみに曝露させたAML KG-1細胞に対して行われたT細胞アッセイの結果を示す。
【
図6】CLL-1又はCD123に特異的であり、示されたEBVエピトープ(BZLF1-3H10、EBNA1-3G2)を有する種々の量のAgAbに曝露させた後に、MonoMac 6 AML細胞株を用いて行われたインターフェロンガンマ放出アッセイの結果を示すグラフである(上段パネル)。抗原性部分を欠く天然抗体は陰性対照(WT)として役割を果たした。下段パネルは、ペプチド3G2又は3H10のみに曝露させたAML MonoMac 6細胞に対して行われたT細胞アッセイの結果を示す。
【
図7A】A)CLL-1、CD123又はFR-ベータに特異的であり、示されたEBVエピトープ(gp350 1D6)を有する種々の量(5.10
4個の標的細胞あたり100ng~0.1ng)のIgG2a AgAbに曝露させた後に、MV4-11 AML細胞株を用いて行われたインターフェロンガンマ放出アッセイの結果を示すグラフである。抗原性部分を欠く天然抗体は陰性対照(天然-100ngのみ)として役割を果たした。また、種々の量のエピトープを用いて、AgAb刺激の優位性を実証した。5.10
4個の標的細胞あたり10
5個のエフェクターCD4
+T細胞を用いた(E:T比=2:1)。
【
図7B】B)CLL-1、CD123又はFR-ベータに特異的であり、示されたEBVエピトープ(gp350 1D6)を有する種々の量(5.10
4標的細胞あたり100ng~0.1ng)のIgG2a AgAbに曝露させた後に、MV4-11 AML細胞株を用いて行われたグランザイムB放出アッセイの結果を示すグラフである。抗原性部分を欠く天然抗体は陰性対照(天然-100ngのみ)として役割を果たした。また、種々の量のエピトープを用いて、AgAb刺激の優位性を実証した。5.10
4個の標的細胞あたり10
5個のエフェクターCD4
+T細胞を用いた(E:T比=2:1)。
【
図8】A)CLL-1、CD123又はFR-ベータに特異的であり、示されたEBVエピトープ(EBNA3C 3H10)を有する、5.10
4個の標的細胞あたり10ngのIgG2a AgAbに曝露させた後に、Mutz-3 AML細胞株を用いて行われたインターフェロンガンマ放出アッセイの結果を示すグラフである。抗原性部分を欠く天然抗体は陰性対照(天然)として役割を果たした。5.10
4個の標的細胞あたり10
5個のエフェクターCD4
+T細胞を用いた(E:T比=2:1)。B)CLL-1、CD123又はFR-βに特異的であり、示されたEBVエピトープ(EBNA3C 3H10)を有する、5.10
4個の標的細胞あたり10ngのIgG2a AgAbに曝露させた後に、Mutz-3 AML細胞株を用いて行われたグランザイムB放出アッセイの結果を示すグラフである。抗原性部分を欠く天然抗体は陰性対照(天然)として役割を果たした。5.10
4個の標的細胞あたり10
5個のエフェクターCD4
+T細胞を用いた(E:T比=2:1)。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下の実施例は、単に発明を例示するに過ぎない。これらは、何であれ発明の範囲を制限するものと解釈してはならない。
【0068】
[実施例1]
AML細胞株上の表面マーカーの発現
示されるAML細胞株をHLA-DR、CD123、CD138、CD371、TIM-3、PRAMEに特異的な抗体を用いて染色し、FACSにより分析した。一部の細胞株を、HLA-DR特異的抗体を用いて染色する前に、インターフェロンガンマで刺激した。非特異的染色を除外するために、アイソタイプ対照を陰性対照として用いた(表1)。
【0069】
さらに、AML細胞株をHLA-DRに特異的な抗体を用いて染色し、FACSにより分析した。例を
図2に示す。一部の細胞株を、HLA-DR特異的抗体を用いて染色する前に、インターフェロンガンマで刺激した。非特異的染色を除外するために、アイソタイプ対照及び非染色試料を陰性対照として使用した。
【0070】
さらに(
図3)、AML細胞株をCLL-1に特異的な抗体を用いて染色し、FACSにより分析した。非特異的染色を除外するために、アイソタイプ対照及び非染色試料を陰性対照として使用した。
【0071】
表1は、急性骨髄性白血病の患者から樹立された6細胞株の表面におけるHLAクラスII分子HLA-DR及び複数の細胞マーカー(CD123、CD138、CD371、TIM-3、PRAME)の発現を示す。
【0072】
【0073】
【0074】
[実施例2]
AML細胞株のHLAハプロタイプにマッチするエピトープの決定
HLAサブタイプに結合するEBVペプチドを文献(cf. Yu et al. (2015), Blood 125(10):1601; Adhikary et al (2006), JEM 203(4):995; Mautner et al. (2004), J. Immunol. 34:2500)から取得した。AML細胞株によって発現されるHLAサブタイプは、文献から又は配列決定から決定された。この情報は、AML細胞株と、それらが提示することが期待されるEBVペプチドとのマッチングを可能にした。
【0075】
【0076】
[実施例3]
AML細胞によるペプチドの提示
以前にウイルスに感染したヒトから単離されたEBVペプチドに特異的なヒトT細胞を、インターロイキン2とともにこれらのペプチドを用いて数週間刺激した。AML細胞株を、増加させた濃度のペプチド(実施例2)に1日間曝露し、次に、十分に洗浄し、それらが曝露されたペプチドに特異的な予め活性化されたT細胞と混合した。1日後、これらの培養物の上清中のインターフェロンガンマ放出を、特異的抗体を用いたELISAにより定量した(
図1)。
【0077】
[実施例4]
抗体-免疫原性ペプチド融合ポリペプチド(AgAb)の結合
AML細胞株を、CLL-1又はCD123に特異的なAgAbを用いてFACSにより染色した。非特異的染色を除外するため、陰性対照としてアイソタイプ対照を用いた。AgAbを生成するために使用された抗体を対照として使用した(
図4)。
【0078】
[実施例5]
T細胞の活性化
以前にウイルスに感染したヒトから分離されたEBVペプチドに特異的なヒトT細胞を、インターロイキン2とともにこれらのペプチドを用いて数週間刺激した。AML細胞株を、増加させた濃度のペプチド又は同ペプチドを含有するAgAbに1日間曝露し、次に、十分に洗浄し、AgAbに含まれるペプチドに特異的な予め活性化されたT細胞、又はそれらが曝露されたペプチド単独と混合した。1日後、これらの培養物の上清中のインターフェロンガンマ放出を、特異的抗体を用いたELISAにより定量した。抗原性部分を欠く天然抗体は陰性対照(WT)として役割を果たした(
図5)。
【0079】
さらに(
図6)、以前にウイルスに感染したヒトから単離されたEBVペプチドに特異的なヒトT細胞を、インターロイキン2とともにこれらのペプチドを用いて数週間刺激した。AML細胞株を、増加させた濃度のペプチド又は同ペプチドを含有するAgAbに1日間曝露し、次に、十分に洗浄し、AgAbに含まれるペプチドに特異的な予め活性化されたT細胞、又はそれらが曝露されたペプチド単独と混合した。1日後、これらの培養物の上清中のインターフェロンガンマ放出を、特異的抗体を用いたELISAにより定量した。抗原性部分を欠く天然抗体は陰性対照として役割を果たした。
【0080】
実施例3~5はIgG1サブタイプ構築物を用いて行われたが、以下の実施例6及び7はIgG2aサブタイプを用いて行われた。
【0081】
[実施例6]
AML細胞株MV4-11による活性化
実施例5の進行と同様に、MV4-11 AML細胞を、示された構築物を用いたT細胞活性化アッセイ(TCA)において使用し、T細胞活性化のパラメータとしてインターフェロン-ガンマ分泌(
図7A)又はグランザイムB産生(
図7B)を決定した。
【0082】
[実施例7]
実施例5の進行と同様に、Mutz-3 AML細胞を、示された構築物を用いたT細胞活性化アッセイ(TCA)において使用し、T細胞活性化のパラメータとしてインターフェロン-ガンマ分泌(
図8A)又はグランザイムB産生(
図8B)を決定した。
【0083】
文献:
Adhikary et al (2006), JEM 203(4):995
Bernardeau et al., (2011), J Immunol Methods, 371(1-2):97-105
Bordner (2010), PLoS ONE 5(12): e14383
Galfre (1981), Meth. Enzymol. 73, 3,
Kaech et al. (2002), Nature Reviews Immunology 2(4):251-62
Kohler and Milstein (1975), Nature 256, 495
Mautner et al. (2004), J. Immunol. 34:2500
Nielsen et al., (2004), Bioinformatics, 20 (9), 1388-1397
Pulendran and Ahmed (2006), Cell 124(4):849-63
Yu et al. (2015), Blood 125(10):1601
【配列表】
【国際調査報告】