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特表2022-542870連続繊維強化複合部品を製造するための製造方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】連続繊維強化複合部品を製造するための製造方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   B29C 69/02 20060101AFI20220930BHJP
   B64C 1/00 20060101ALI20220930BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20220930BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20220930BHJP
   B29C 64/40 20170101ALI20220930BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20220930BHJP
【FI】
B29C69/02
B64C1/00 B
B29C70/06
B29C64/118
B29C64/40
B29C64/386
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504236
(86)(22)【出願日】2020-07-23
(85)【翻訳文提出日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 EP2020070815
(87)【国際公開番号】W WO2021013935
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】19380014.1
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503195311
【氏名又は名称】エアバス・ディフェンス・アンド・スペース・ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】517203822
【氏名又は名称】フンダシオ エウレカト
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】メツナー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】マフオンツェ,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】クレシエンティ,マルク
【テーマコード(参考)】
4F205
4F213
【Fターム(参考)】
4F205AC05
4F205AD16
4F205AG03
4F205HA14
4F205HA17
4F205HA35
4F205HB01
4F205HF24
4F205HT26
4F213AC05
4F213AD16
4F213AG03
4F213AH28
4F213AH31
4F213WA16
4F213WA25
4F213WA43
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL24
4F213WL62
4F213WL85
4F213WL96
(57)【要約】
工具とプロセスのコストを低く抑えながら、完全に荷重に適合した3D繊維強化を備えた複合材料部品を実現するために、本発明は、連続繊維補強材(14)を備えた複合材料(12)で作られた部品(10)を製造するための製造方法であって、下記a)~c)のステップを含む方法を提供する:
a)第1のポリマー材料(22)から作られた少なくとも1つの第1の部分と、第2のポリマー材料(26)から作られた少なくとも1つの第2の部分(24)とを有する、管状キャビティ(18)付きのボディ(16)を提供する。
b)樹脂と連続繊維(28)を管状キャビティ(18)に導入する。
c)第2のポリマー材料(26)の少なくとも一部を除去する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続繊維強化材(14)を備えた複合材料(12)で作られた部品(10)を製造するための、下記a)~c)のステップを含む製造方法。
a) 管状キャビティ(18)を有するボディ(16)であって、第1のポリマー材料(22)から作られた少なくとも1つの第1の部分と、第2のポリマー材料(26)から作られた少なくとも1つの第2の部分(24)とを有するものを提供する。
b) 樹脂と連続繊維(28)を管状キャビティ(18)に導入する。
c) 第2のポリマー材料(26)を少なくとも部分的に除去する。
ここで、ステップa)は下記a1)を含む。
a1) 溶媒に可溶な材料から第2のポリマー材料(26)を選択し、溶媒に不溶のポリマー材料から第1のポリマー材料(22)を選択する。
ここで、ステップc)は、下記c1)を含む。
c1) 第2のポリマー材料を溶媒に溶解する。
【請求項2】
ステップa)は下記のステップa2)~a11)の少なくとも1つまたは複数のものを含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
a2) ボディ(16)の付加層製造。
a3) 管状キャビティ(18)の開放端(32)を画する第1の部分(20)を備えたボディ(16)を設計する。
a4) 管状キャビティ(18)の湾曲部を画する第1の部分(20)を備えたボディ(16)を設計する。
a5) 連続繊維補強材(14)の接合領域(40)を画する第1の部分(20)を備えたボディ(16)を設計する。
a6) 管状キャビティ(18)の中間セクションを画する少なくとも1つの第2の部分(24)を備えたボディ(16)を設計する。
a7) 管状キャビティ(18)の直線セクションを画する少なくとも1つの第2の部分(24)を備えたボディ(16)を設計する。
a8) より多くの量の第2の材料と、より少ない量の第1の材料とを備えたボディ(16)を設計する。
a9) 複数の第1の部分(20)が、互いに間隔を置いて配置され、少なくとも1つの第2の部分(24)によって接続されているボディ(16)を設計する。
a10) 少なくとも1つの管状キャビティ(18)が、順次、少なくとも1つの第1の部分(20)と、少なくとも1つの第2の部分(24)とを通り抜けるようにボディ(16)を設計する。
a11) 金属部材(44)が、管状キャビティ(18)の開放端(30、32)と整列する開口部(46)を有するように、金属部材(44)をボディ(16)に追加および/または接続する。
【請求項3】
ステップb)は下記ステップb1)~b9)の少なくとも1つまたは複数のものを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
b1) 液体状態の樹脂と連続繊維束(36)とを同時に導入する。
b2) 前記少なくとも1つの管状キャビティ(18)内に連続繊維束(36)を導入する。この管状キャビティ(18)は、連続繊維(28)に、圧力差を加える加圧流体または樹脂によって粘性抗力を加える。
b3) 前記少なくとも1つの管状キャビティ(18)内に連続繊維束(36)を導入する。この管状キャビティ(18)は、連続繊維(28)の束に機械的押し付け力を及ぼす。
b4) 樹脂と連続繊維(28)とを順次導入する。特に、最初に連続繊維(28)を導入し、続いて液体状態の樹脂を導入する。
b5) 強化繊維、特に炭素繊維および/または炭素繊維束(36)を導入する。
b6) 機能性繊維、特にガラス繊維および/またはセラミック繊維を導入する。
b7) 少なくとも1つの、熱ゲージおよび/またはひずみゲージを形成するためのガラス繊維を導入する。
b8) 少なくとも1つのアクチュエータを形成するためのセラミックファイバーを導入する。
b9) 樹脂と連続繊維(28)とを管状キャビティ(18)に導入した後に、樹脂を硬化させる。
【請求項4】
ステップc)は下記ステップc2)~c4)の少なくとも1つまたは複数のものを含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
c2) 少なくとも第1の部分(24)を除去する。
c3) ボディ(16)から第2の材料(26)をすべて除去する。
c4) 第1の部分(20)が互いに離れるように、第1の部分(20)の少なくとも2つを接続しているボディの1つまたは複数の接続セクションを除去する。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の製造方法によって取得可能な複合材料部品。
【請求項6】
補強繊維トラス構造として形成された、請求項5に記載の複合材料部品。
【請求項7】
複合材料(12)と連続繊維強化材(14)で作られた部品(10)を製造するための製造システムであって、
第1の材料からの少なくとも第1の部分(20)、及び、第2の材料からの第2の部分(24)を有し、ここで、第2の材料は溶媒に可溶で、第1の材料は前記溶媒に不溶であり、第1および第2の部分(20、24)を通過する少なくとも1つの管状キャビティ(18)を有するボディを付加製造するための付加製造デバイスと、
樹脂及び連続繊維(28)を少なくとも1つの管状キャビティ(18)に導入するための樹脂及び繊維の導入デバイスと、
第2の材料を前記溶媒に溶解するための溶解デバイスとを備える製造システム。
【請求項8】
請求項1から4のいずれかに記載の方法によって得られた部品、および/または、請求項7に記載の製造システムおよび/または複合材料を使用して得られた部品、および/または、請求項5または6に記載の複合材料部品を含む、輸送機または輸送船、特に有人または無人の航空機または宇宙船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続繊維強化材を備えた複合材料で作られた部品を製造するための製造方法に関する。さらに、本発明は、連続繊維強化材を備えた複合材料で作られた部品を製造するための製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
3D強化複合構造は、都市型航空交通の機体(urban air vehicles)、衛星、HAPS(High Altitude Pseudo Satellite)、NGWS(Next Generation Weapon System)/FCAS(Future Combat Air System)、ドローンまたは他の輸送体(carrier)といった機体・船体(vehicles)および航空機における将来のすべての構造的用途にますます関連するようになっている。特に、荷重に適応した3D強化複合構造は、荷重がかかる軽量構造の一般的な実現手段である。
【0003】
3D強化複合構造を実現するための1つの可能な形態は、特に小規模生産に使用可能な、強化複合部品をまるごと複合3D印刷(composite 3D printing;複合3Dプリント)することである。より大規模な量産のためには、熱曲げおよびオーバーモールドによる製造が、製造ツールへのより大きな投資を行うことで使用できる。
【0004】
EP3 231 592 A1は、ボディおよびその内部に1つまたは複数の連続繊維束を有する複合材料から作製された部品を製造するための方法であって、下記のステップを含むことを特徴とするものに関する。
a)1つまたは複数の管状キャビティ(空洞)を内部に含むボディを得る。この管状キャビティは、ボディの外面に配置されて入口オリフィスを含む第1の端部と、第1の端部の反対側にある第2の端部との間に延びる。
b)液体状態の樹脂と連続繊維束を、少なくとも1つの管状キャビティの内部へと、その入口オリフィスから導入する。
c)樹脂が固化してボディに接着するまで硬化させて、連続繊維束を固定する。
EP 3 231 592 A1は、複合材料で作られた部品を製造するためのシステムと、得られた複合材料で作られた部品にも関連している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、より低い製造ツールコストおよび製造工程コストでもって、より軽量の荷重に適合した3D強化複合材料部品を製造することを可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明は、独立請求項にしたがう製造方法、製造システム、およびそれによって得られる複合材料部品を提供する。有利な実施形態は、従属請求項の主題をなす。
【0007】
一態様によれば、本発明は、連続繊維強化を備えた複合材料で作られた部品を製造するための製造方法であって、下記のステップを含むものを提供する。
a) 管状キャビティを有するボディであって、第1のポリマー材料から作られた少なくとも1つの第1の部分と、第2のポリマー材料から作られた少なくとも1つの第2の部分とを有するものを提供する。
b) 樹脂と連続繊維を管状キャビティに導入する。
c) 第2のポリマー材料を少なくとも部分的に除去する。
【0008】
ステップa)は下記a1)を含む。
a1) 溶媒に可溶な材料から第2のポリマー材料を選択し、前記溶媒に不溶性のポリマー材料から第1のポリマー材料を選択する。
【0009】
ステップc)は下記を含む。
c1) 第2の材料を溶媒に溶解する。
【0010】
好ましくは、ステップc)は、下記を含む。
c2) 少なくとも第2の部分を除去する。
【0011】
好ましくは、ステップc)は、下記を含む。
c3) ボディから第2の材料をすべて除去する。
【0012】
好ましくは、ステップa)は、下記を含む。
a2) ボディの付加層の製造。
【0013】
好ましくは、ステップa)は、下記を含む。
a3) キャビティの開口部を画する(取り囲んで範囲・輪郭を決める)第1の部分を備えたボディを設計する。
【0014】
好ましくは、ステップa)は、下記を含む。
a4) キャビティの湾曲部(曲率を有する部分)を画する第1の部分を備えたボディを設計する。
【0015】
好ましくは、ステップa)は、下記を含む。
a5) 連続繊維補強材の接合領域を画する第1の部分を備えたボディを設計する。
【0016】
好ましくは、ステップa)は、下記を含む。
a6) 管状キャビティの中間セクションを画する少なくとも1つの第2の部分を備えたボディを設計する。
【0017】
好ましくは、ステップa)は、下記を含む。
a7) 管状キャビティの直線セクションを画する少なくとも1つの第2の部分を備えたボディを設計する。
【0018】
好ましくは、ステップa)は、下記を含む。
a8) 第2材料の量が多く、第1材料の量が少ないボディを設計する。
【0019】
好ましくは、ボディの少なくとも60重量%、特に70重量%~95重量%は、第2の材料から作られる。
【0020】
好ましくは、ステップa)は、下記を含む。
a9) いくつかの第1の部分が互いに間隔を置いて配置され、少なくとも1つの第2の部分によって接続されているボディを設計する。
【0021】
好ましくは、ステップa)は、下記を含む。
a10) 少なくとも1つの管状キャビティが、順次、少なくとも1つの第1の部分と、少なくとも1つの第2の部分とを通り抜けるようにボディを設計する。
【0022】
好ましくは、ステップa)は、下記を含む。
a11) 金属部材が管状キャビティの開放端と整列する開口部を有するように、金属部材をボディに追加および/または接続する。
【0023】
好ましくは、ステップb)は、下記を含む。
b1) 液体状態の樹脂と連続繊維束とを同時に導入する。
【0024】
好ましくは、ステップb)は、下記を含む。
b2) 前記少なくとも1つの管状キャビティ内に連続繊維束を導入する。管状キャビティは、圧力差を加える、加圧流体または樹脂によって連続繊維に粘性抗力を及ぼす。
【0025】
好ましくは、ステップb)は、下記を含む。
b3) 連続繊維の束に機械的押し付け力を及ぼす前記少なくとも1つの管状キャビティ内に連続繊維束を導入する。
【0026】
好ましくは、ステップb)は、下記を含む。
b4) 樹脂と連続繊維とを順次導入する。特には、最初に連続繊維を導入し、続いて液体状態の樹脂を導入する。
【0027】
好ましくは、ステップb)は、下記を含む。
b5) 強化繊維、特に炭素繊維および/または炭素繊維束を導入する。
【0028】
好ましくは、ステップb)は、下記を含む。
b6) 機能性繊維を導入する。特には、ガラス繊維および/またはセラミック繊維を導入する。
【0029】
好ましくは、ステップb)は、下記を含む。
b7) 少なくとも1つの熱ゲージおよび/またはひずみゲージを形成するためのガラス繊維を導入する。
【0030】
好ましくは、ステップb)は、下記を含む。
b8) 少なくとも1つのアクチュエータを形成するためのセラミックファイバーを導入する。特には、圧電特性を有する繊維構造を形成するためのセラミック束を導入することにより、1つまたは複数の圧電アクチュエータを繊維構造内に形成することができる。
【0031】
好ましくは、ステップb)は、下記を含む。
b9)樹脂と連続繊維を管状キャビティに導入した後、樹脂を硬化させる。
【0032】
さらなる態様によれば、本発明は、先行する実施形態のいずれかによる製造方法によって得られる複合材料部品を提供する。
【0033】
好ましくは、複合材料部分は、補強繊維トラス構造として形成される。
【0034】
別の態様によれば、本発明は、連続繊維強化を備えた複合材料で作られた部品を製造するための製造システムであって、
溶媒に不溶性である第1の材料からの少なくとも第1の部分、及び、溶媒に可溶である第2の材料からの第2の部分を有し、少なくとも1つの管状キャビティが第1及び第2の部分を通り抜けるボディを付加製造するための付加製造デバイスと、
樹脂と連続繊維とを少なくとも1つの管状キャビティに導入するための樹脂および繊維導入デバイスと、
第2の材料を溶媒に溶解するための溶解デバイスと、を備えるものを提供する。
【0035】
別の態様によれば、本発明は、前述の実施形態のいずれかによる方法によって得られた、及び/または、本発明のさらなる態様の製造システムおよび/または上記の複合材料部品を用いて得られた部品を含む、輸送機(transport carriers)または輸送船・乗物(vehicles)、特には有人または無人の航空機または人工衛星を提供する。
【0036】
本発明は、材料科学の分野、特に3D強化複合構造の製造に関する。本発明の実施形態によって得られるそのような構造の好ましい使用は、輸送機(transport carriers)および輸送船(vehicles)および航空機、例えば都市型航空交通の機体(urban air vehicles)、人人工衛星、HAPS(High Altitude Pseudo Satellite)、NGWS(Next Generation Weapon System)/FCAS(Future Combat Air System)、ドローンにおける構造的用途である。より一般的には、本発明によって取得可能な部品は、搭載される軽量構造のベースとして使用される。
【0037】
本発明の実施形態は、特に、引用により本明細書に組み込まれるEP3 231 592 A1に開示および記載されているような連続繊維注入プロセスを使用する。本発明の実施形態は、軽量部品の欠落した構造単位であって従来は製造可能でなかったフル3Dの(完全に3次元的な)繊維強化材を提供する。
【0038】
本発明の実施形態は、3D印刷された可溶性製造ツールによってフル3Dの繊維強化ポリマー複合材料を製造するための方法に関する。
【0039】
連続繊維注入プロセスは、3D負荷に適合した強化複合部品を、製造ツールへの少ない投資でもって低い製造コストで製造できるという利点を有する。繊維がポリマーボディの管状キャビティに高圧で注入されるため、ボディには、これらの圧力に耐えることができるポリマー構造が必要である。本発明により、そのような連続繊維注入プロセスによって得られる部品の重量を減らすことが可能である。
【0040】
本発明の好ましい実施形態は、下記の利点の少なくとも1つ、いくつか、またはすべてを有する:
・クリープ、温度/媒体、疲労などに対する最高の耐性を含む高性能ポリマーと比較して、最大約50倍高い比強度/弾性率の炭素繊維UD(一方向)補強材を提供することが可能である。
・構造物の荷重はフル3Dに配向される(フル3D繊維配向機能を備えた技術が必要である)。
・耐荷重補強材のほかに、機能性繊維を組み込んで統合することができる(熱/ひずみゲージとしてのガラス繊維、アクチュエータとしてのセラミック繊維など)。
・本発明の好ましい実施形態は、低いポリマー比(ポリマーの割合:質量基準)を有するが、実現可能な最小の製造ツールおよび加工コストを伴う理想的なフル3D配向強化繊維を有する複合構造を提供する。
・本製造方法は、ポリマー比が低いか、または中程度であるシリーズにとって理想的である。
【0041】
製造システムの好ましい実施形態は、特には、フル3D複合構造を製造するための技術的手段を含む。
【0042】
好ましい実施形態によれば、繊維強化材、ポリマー部品材料、及び、可溶性補助/支持材料の幾何学的設計・構成が提供される。
【0043】
幾何学的設計・構成は、例えば、スライサーソフトウェアを介して、プロセスパス(Gコード)に転送される。
【0044】
第1の材料は、特にはポリマー部品材料(例えばPEEK)である。第2の材料は、特には、溶解可能なサポート材料(例えば3dGence ESM-10)である。
【0045】
好ましくは、液体樹脂および強化/機能性繊維が提供される。
【0046】
好ましくは、少なくとも1つの部分のポリマー材料および1つの可溶性材料を処理することができるALM(Additive Layer Manufacturing;付加層製造、積層造形)マシンが使用される。このようなALMの例としては、FLM(Filament Layer Manufacturing(Fused filament fabrication; FFF);溶融フィラメント製造)プリンター(市販)、改良型HSSマシン(HSS=High Speed Sintering;高速焼結、たとえば、適合インクによるIR活性化を伴うバインダー噴射)、または、マルチ材料リコータを備えた適合SLS(SLS=Selective Laser Sintering;選択的レーザー焼結、特に2種類の材料で実現可能、例としてはAerosint社から入手可能なAerosintリコータ)マシンがある。
【0047】
製造システムの実施形態は、繊維差込機(Fibre injection machine; CFIP)を含み、結局は、熱硬化性樹脂の場合に、オーブンをさらに含む。CFIPマシンの例は、引用により本明細書に組み込まれるEP3 231 592 A1に示され、説明されている。
【0048】
製造システムの実施形態は、支持材料を溶解するための溶媒をさらに提供する。
【0049】
製造方法の好ましい実施形態は、下記のステップを含む:
1)繊維強化材、ポリマー部品材料(第1の材料の例)、および、周囲の補助/支持材料(第2の材料の例)を幾何学的に設計・構成する。
2)従来のスライサーソフトウェア(例えば、Simpli-fy3d、Cura、Slic3r、…)を用いてプロセスパスを生成する。
3)オープンキャビティとして、特には管状キャビティとして、一体に組み込まれた繊維経路を備える、第1および第2の材料を1つのステップで印刷する。
4)必要ならば、サブトラクティブプロセス(溶剤、サンドブラスト加工、ドリリングなど)でもって表面洗浄を行う。
5)CFIPのプロセスおよびデバイスに従って、乾燥繊維及び液体樹脂を注入する。例えば、EP 3 231 592A1に記載され示されているとおりに注入する。
6)必要ならば、オーブン中にて、繊維強化材中の熱硬化性樹脂を硬化させる。
7)サブトラクティブ技術および/または溶媒(酸、水など)でもって第2の材料を溶解させる。
8)必要ならば、ファイバーの端を切断する、および/または、サンドブラスト加工、フライス盤、研削、溶剤などで表面を洗浄する、といった仕上げプロセスを行う。
【0050】
好ましい実施形態によれば、局所ポリマーと、荷重配向された「裸」(むき出し)の繊維強化材とを備えたフル3D強化部品が実現される。
【0051】
本発明の好ましい実施形態は、添付の図面を参照して、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】連続繊維強化材を使用した複合材料で作られた部品を製造するための方法のフローチャート。
図2図1の製造方法の第1段階で得られたボディの斜視図。
図3図2のボディの斜視図。
図4図2のボディの側面図。
図5図1の方法にて任意選択で使用される金属部材の平面図。
図6図5の金属部材の斜視図。
図7図5の金属部材が取り付けられた図2のボディの斜視図。
図8図7のボディおよび金属部材の配置のさらなる斜視図。
図9】連続繊維がボディ内に注入された製造方法のさらなるステップの後の図7と同様の図である。
図10】ボディ、金属部材、およびボディに注入された連続繊維を備えた図9の配置の別の斜視図である。
図11】オプションの金属部材を用いて図1の方法で製造された部品の斜視図。
図12図11の一部のさらなる斜視図。
図13図11の一部の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、連続繊維強化材14を備えた複合材料12からなる部品10を製造するための製造方法のフローチャートである。このような方法によって得られた、または得られうる、そのような部品10の例は、図11~13に示されている。
【0054】
この方法は、第1のステップS1を含む。
S1 ボディ16(図2~4を参照)を提供する。ボディ16は、管状キャビティ18と、第1のポリマー材料22から作られた少なくとも1つの第1の部分20、及び、第2のポリマー材料26から作られた少なくとも1つの第2の部分24とを備えるものである。
【0055】
さらに、図1の製造方法は、第2のステップS2を含む。
S2 樹脂及び連続繊維28(図9~10を参照)を、ボディ16の管状キャビティ18に導入する。
【0056】
さらに、図1の製造方法は、第3のステップS3を含む。
S3 少なくとも1つの第2の部分24を除去する。
【0057】
好ましい実施形態にて、第1のステップS1は、内部に管状キャビティ18を含む1つまたはいくつかのツール部品を製造することを含む。好ましくは、第2のポリマー材料26は、特定の溶媒に可溶である可溶性ポリマーであり、一方、第1のポリマー材料22は、特定の溶媒に可溶ではない不溶性ポリマーである。最も好ましくは、ボディ16は、不溶性および可溶性ポリマー22、26を用いた付加層製造(積層造形)によって作製される。
【0058】
ボディ16の製造のために、ステップS1は、第1のサブステップS1aを含む:
S1a 繊維強化材14の幾何学的設計を行う。すなわち、製造される部品に存在することとなる第1のポリマー材料22と、専ら、部品10の製造のための周囲の補助材料または支持材料として使用されてステップS3で除去される第2のポリマー材料26の幾何学的設計とについての幾何学的設計を行う。
【0059】
例えば、設計は、CADソフトウェアでもって行われる。
【0060】
第1のサブステップS1aにて、ボディ16は、好ましくは、次のように設計される。すなわち、各管状キャビティ18が、第1の開放端30から第2の開放端32まで、ボディ16を貫くように設計される。
【0061】
好ましい実施形態において、第1の部分20は、次のように設計される。すなわち、繊維束36の形態で第2のステップS2にて注入される連続繊維28が、湾曲(曲率)を形成する領域、および/または、部品10の接合領域40に、第1の部分20が存在するように設計される。接合領域40にて、異なる繊維束36が互いに近接している。示されている実施形態において、部品10は、連続繊維束36によって形成されたトラスストラットと、接合領域によって形成されたトラスノードとを備えた複合トラス構造42である。
【0062】
少なくとも1つの第2の部分24は、ボディ16の他のすべての領域に存在する。特に、少なくとも1つの第2の部分24は、その中間セクションおよび/またはその直線セクションにて管状キャビティ18の壁を形成する。
【0063】
最も好ましくは、管状キャビティ18は、続いて、第1の部分20および第2の部分24を通過する。好ましい実施形態において、管状キャビティ18の第1および第2の開放端30、32の少なくとも1つは、第1の部分20によって形成される。
【0064】
図1に戻ると、製造方法の第1のステップS1は、さらに第2のサブステップS1bを含む。
S1b 付加層製造機(ALMマシン-図示せず)を使用して、ボディ16を製造する。
【0065】
特に、第2のサブステップS1bは、Simplify3d Cura、Slic3r、・・といった従来のスライサーソフトウェアを用いたプロセスパス(process path)の生成を含む。特に、第1のサブステップS1aによって得られた設計は、付加層製造機(ALMマシン)で読み取りおよび処理ができる、機械読み取り可能な形に変換される。
【0066】
ALMマシンとして、第1および第2のポリマー材料22、26を加工することができる任意のALMマシン(3Dプリンターとも呼ばれる)を使用することができる。第1および第2のポリマー材料22、26は、必要に応じて選択することができる。好ましい実施形態において、これらの材料22、26は、第1のポリマー材料22が溶媒に溶解せず、第2の材料26が溶媒に溶解するように選択される。例えば、第2のポリマー材料26は、印刷中に3D構造を支持するための可溶性補助材料として、市場で入手可能であって、後で除去することができる材料である。一例は3dGenceESM-10である。第1のポリマー材料22は、印刷することができ、第2のポリマー材料26を除去するために使用される溶媒に溶解しないポリマー材料である。一例は、PEEKである。さらなる例としては、PE、PP、ABS、PETG、…がある。
【0067】
ALMマシンの例は、FLM(Fused Layer Manufacturing)プリンター(市場で入手可能)、HSマシンまたはSLS(Selective Laser Sintering)マシンである。
【0068】
第2のサブステップS1bの結果の一例を、図2から4に示す。この例に示すボディ16は、第1の開放端30および第2の開放端32を有する管状キャビティ18と、これら開放端30、32の間の複雑な経路とを有する。ここで、第1のポリマー材料22で作られた第1の部分20は、第2の開放端32、接合点または接合領域40、および/または、管状キャビティ18の湾曲セクションを形成するために存在する。示されていない実施形態では、追加の第1の部分20も、第1の開放端30を形成することができる。図2から4に示す実施形態において、第1の開放端30は、第2の部分24内に備えられる。すなわち、互いに離間して配置された数個の第1の部分20を取り囲んで接続する第2の部分24内に備えられる。
【0069】
ボディの設計の1つの目的は、強化繊維に対するポリマーの比率が非常に低い部品を実現することである。したがって、第3のステップで除去される、補助材料としてのみ使用される第2の材料26は、好ましくは、ボディ16内の主要な(優勢な)材料である。例えば、ボディの重量あたりに、60重量%から、特には70重量%から、95重量%が第2の材料26から作られ、残りだけが第1の材料から作られる。したがって、部品10は、ボディ16のポリマー材料の5~40%のみを含むであろう。
【0070】
ボディ16は、図11~13に示される部品10を製造するためのツールとして使用される。第2の部分24は、連続繊維28を注入するための管状キャビティ18をなす型枠として機能する。
【0071】
示される実施形態では、第3の材料を、例えば金属材料を、さらに加えることが可能である。金属部材44の例を図5および6に示す。金属部材44は、一方の側で、ボディ16の一端に相補的であり、特に第2の部分24の一端に相補的である形態を有する。金属部材44は、第1の開放端30と整列されうる開口部を有する。金属部材44は、管状キャビティ18の第1の開放端30を有する、ボディ16の端部に取り付けることができる。
【0072】
一例によれば、金属部材44は、次のような開口46を画する突出部分48を有する。すなわち、この開口46は、管状キャビティ18の第1の開放端30を画している、第2の部分24の凹部50と噛み合わされうる。
【0073】
したがって、図1に戻って参照すると、第1のステップS1は、任意選択で、追加のサブステップを有することができる。
S1c 金属部材44を製造する、および
S1d ボディ16と金属部材44とを、事前に相互に組み付ける。
【0074】
第3のサブステップS1cにおいて、金属部材16は、例えば、機械加工または他の製造技術によって製造されうる。
【0075】
第4のサブステップS1dの1つの好ましい実施形態において、事前の組み付けは、一致する管状キャビティ18との間で行われる。すなわち、開口部46は、管状キャビティ18の第1の開放端部30と整列している。組み立ては、異なる技術によって行うことができる。例えば、金属部材44とボディ16とは、突出部分48と凹部50との間の積極的な噛み合わせによって互いに取り付けることができる。製造工具52の異なる部分同士、例えば、ボディ16と金属部材44とは、例えば接着または接合によって、互いに接続されるのでもありうる。
【0076】
好ましくは、製造ツール52は、図7~8に示されるように、ボディ16と、金属部材44といった、さらなる部材との取り合わせによって形成される。
【0077】
第1のステップS1における第4のサブステップS1dの後、第2のステップS2が実施される。第2のステップS2では、これが、連続繊維注入プロセス(CFIP)が、例えば、これについてEP3 231 592 A1に記載されているように実施される。好ましくは、繊維束36は、液体樹脂と一緒に管状キャビティ18に注入される。このプロセスは、EP 3231 592 A1から一般に知られており、本明細書でさらに説明されない。特に、炭素繊維は熱硬化性樹脂とともに注入される。次に、繊維束36は、管状キャビティ18の経路によって形成される。すなわち、繊維束36は、管状キャビティ18の複雑な経路の形態をとる。次に、繊維束36と一緒に注入される樹脂は、繊維束36の形態が樹脂によって固定されるように硬化される。
【0078】
したがって、製造ツール52は、繊維強化構造を形成するための型枠として使用される。
【0079】
複合トラス構造42内の荷重が、必要に応じて配向されるように、型枠・形状を選択することができる。
【0080】
好ましい実施形態によれば、耐荷重補強は、炭素繊維束を組み込みうることでの炭素繊維の使用による耐荷重補強するだけでなく、機能性繊維も組み込むことができる。したがって、管状キャビティ18の少なくとも1つに、熱ゲージおよび/またはひずみゲージを形成するために使用できるガラス繊維、または、アクチュエータを形成するために使用できるセラミック繊維などの機能性繊維が導入される。
【0081】
第2のステップS2は、樹脂の硬化をも含みうる。硬化を実現するために、導入された繊維束36並びに樹脂を備えた製造ツール52を、熱硬化性樹脂を硬化させるためのオーブン(図示せず)に入れることができる。第2のステップS2の後、図9および10に示される構造が得られる。
【0082】
図9および10は、導入された繊維束36を含む製造ツール52を示す。次に、この製造ツール52は、第2のポリマー材料26を、溶解することによって除去するために、溶媒を備えた浴(図示せず)に入れられる。このような浴は、第2の材料26を溶解するための溶解装置の例である。
【0083】
したがって、特定の溶媒を使用する、第2のポリマー材料26の溶解は、第3のステップS3の1つの好ましい実施形態である。第3のステップS3は、サブトラクティブ技術などの、第2の材料を除去するための他の技術をも含み得る。特に、第2のポリマー材料26は、半導体部品の製造で知られているような犠牲材料と同様に取り扱われうる。
【0084】
第2の材料26を除去した後、図11~13に示すように、部品10が実現される。この特定の実施形態において、部品10は、第1のポリマー材料22が接合領域40および/または湾曲(曲率)領域を形成する複合トラス構造42として形成される。ここで、繊維束36が、樹脂によって固定され、トラス支柱として機能する。
【0085】
図11~13から分かるように、金属部材44は、複合トラス構造42を他の構成要素に固定するための固定手段として使用することができる。
【0086】
特に、図1の製造方法で実現された部品10は、航空機または宇宙船の軽量構造部品に、例えば有人または無人の、航空機または衛星またはその他の機体・船体の軽量構造部品に使用することができる。
【0087】
工具およびプロセスのコストが低く、フルに荷重に適合した3D繊維強化材を備えた複合材料部品(10)を実現するために、本発明は、連続繊維強化材(14)を用いて、複合材料(12)からなる部品(10)を製造するための製造方法であって、下記のステップを含むものを提供する。
a)管状キャビティ(18)を有するボディ(16)であって、第1のポリマー材料(22)から作られた少なくとも1つの第1の部分(20)と、第2のポリマー材料(26)から作られた少なくとも1つの第2の部分(24)とを有するものを提供する。
b)樹脂と連続繊維(28)を管状キャビティ(18)に導入する。
c)第2のポリマー材料(26)の少なくとも一部を除去する。
【符号の説明】
【0088】
10 部品
12 複合材料
14 連続繊維強化
16 ボディ
18 管状キャビティ
20 第1の部分
22 第1のポリマー材料
24 第2の部分
26 第2のポリマー材料
28 連続繊維
30 第1の開口端
32 第2の開口端
36 繊維束
40 接合領域
42 複合トラス構造
44 金属部材
46 開口
48 突出部分
50 凹部
52 製造ツール(例:ボディ16および金属部材44)
S1 第1及び第2の材料からそれぞれ作られた、第1及び第2の部分を有するボディを提供する。
S1a 繊維強化材と第1及び第2の部分とについての幾何学的設計を行う。
S1b 付加製造による積層(additive layer manufacturing)を用いてボディを製造する。
S1c 金属部材を製造する。
S1d ボディの異なる部分同士、またはボディと別の部材とを相互に事前に組みける。
S2 樹脂及び連続繊維をボディの管状キャビティに導入する。
S3 少なくとも第2の部分を除去する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】