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特表2022-542873形状記憶合金制御素子を具備する平衡圧力2ゾーン流体弁
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  • 特表-形状記憶合金制御素子を具備する平衡圧力2ゾーン流体弁 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】形状記憶合金制御素子を具備する平衡圧力2ゾーン流体弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/70 20060101AFI20220930BHJP
【FI】
F16K31/70 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504243
(86)(22)【出願日】2020-07-21
(85)【翻訳文提出日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 EP2020070559
(87)【国際公開番号】W WO2021013836
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】102019000012552
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511020829
【氏名又は名称】サエス・ゲッターズ・エッセ・ピ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・チトロ
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ・アラックア
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ・マッティア・フランチェスキーニス
【テーマコード(参考)】
3H057
【Fターム(参考)】
3H057AA03
3H057BB06
3H057CC05
3H057DD13
3H057EE01
3H057FA22
3H057FA24
3H057FC01
3H057FD19
3H057HH03
3H057HH04
3H057HH18
(57)【要約】
本発明は、第1の実施態様において、プランジャ(16)を移動させるための形状記憶合金ワイヤ(15)の作動時に変形可能要素(14)の変形によって弁(10)の制御が達成される、形状記憶合金制御要素を具備する平衡圧力2ゾーン流体弁(10)に関し、第2の実施態様において、流体の流れを制御するための当該弁の利用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形可能要素(14;24;34;44)によって密閉された開口部によって分離された第1のゾーン(I)と第2のゾーン(II)とを備えている流体弁(10;20;30;40)において、
前記第1のゾーン(I)には、固定面(17;27;37;47)に固定されている形状記憶合金ワイヤ(15;25;35;45)であって、前記変形可能要素(14;24;34;44)の第1の表面に直接又はピストン(36′;35;45)を介して作用する前記形状記憶合金ワイヤ(15;25;35;45)が設けられており、
前記第2のゾーン(II)には、少なくとも2つのポート(11,12;21,22;31,32;41,42,42′)と、変形可能要素(14;24;34;44)の前記第1の表面とは反対側の第2の表面に接続されているプランジャ(16,26,36,46)であって、前記ポートのうち一のポート(12;22,32;42,42′)を閉じるように構成されている前記プランジャ(16,26,36,46)とが設けられており、
バイパスチャネル(13;23;33;43)が、前記第1のゾーン(I)に位置決めされている第1の端部開口部(131;231;331;431)と前記第2のゾーン(II)に位置決めされている第2の端部開口部(132;232;332;432)とを介して、前記第1のゾーン(I)を前記第2のゾーン(II)に永続的に接続していることを特徴とする流体弁(10;20;30;40)。
【請求項2】
前記形状記憶合金ワイヤ(15;25)が、V字状に構成されており、V字状構成の中央部又は端部において、前記変形可能要素(14;24)の前記第1の表面に直接接続されていることを特徴とする請求項1に記載の流体弁(10;20)。
【請求項3】
前記形状記憶合金ワイヤ(35;45)が、V字状構成で配置されており、
前記V字状構成では、前記形状記憶合金ワイヤ(35;45)の中央部が、前記変形可能要素(34;44)の前記第1の表面に対して略垂直に前記固定面(37;47)を貫通して延在しているピストン(36′;46′)の第1の端部に係合しており、前記ピストン(36′;46′)の第2の端部が、前記変形可能要素(34;44)に接続されており、前記ピストン(36′;46′)の第1の端部が、その第1の端部は変形可能要素(34;44)に関して固定面(37;47)の反対側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の流体弁(30;40)。
【請求項4】
前記変形可能要素が、蛇腹部(44)又は膜(14;24;34)、好ましくは波状の膜とされることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の流体弁(10;20;30;40)。
【請求項5】
前記変形可能要素(14;24;34;44)が、金属から作られていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の流体弁(10;20;30;40)。
【請求項6】
前記バイパスチャネル(13;23;33;43)の断面積と前記ポート(11,12;21,22;31,32;41,42,42′)の断面積との比が、0,1~1とされることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の流体弁(10;20;30;40)。
【請求項7】
前記形状記憶合金ワイヤ(15;25;35;45)の直径が、25μm~500μmとされることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の流体弁(10;20;30;40)。
【請求項8】
流体の流れを制御するための請求項1~7のいずれか一項に記載の流体弁の利用であって、前記流体の流れが、水、油、又は冷媒液とされることを特徴とする利用。
【請求項9】
前記流体弁が、蒸発弁又は凝縮弁であることを特徴とする請求項8に記載の利用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1の実施態様における本発明は、形状記憶合金(SMA)制御要素を具備する流体弁に関する。
【背景技術】
【0002】
形状記憶合金ワイヤを利用するアクチュエータアセンブリ及びアクチュエータシステムは、古くから当該技術分野において知られており、近年の開発によって、例えば稠密性や統合の容易性のような本質的な利点を十分に活用可能とするために信頼性及び堅牢性が改善されていることに起因して、益々普及している。例えば、特許文献1は、緊急用アクチュエータを有しているロック装置に関し、特許文献2は、多飲料水の自動販売機に設置されている弁の動作システムを開示しており、特許文献3は、動作温度の範囲を拡大させたアクチュエータを開示しており、特許文献4は、家庭用電化製品の動作要素を開示している。
【0003】
これら装置すべてにおいて、形状記憶合金(SMA)の特徴が、より具体的には、2つの相、すなわち比較的低温で安定しているいわゆるマルテンサイト相と比較的高温で安定しているオーステナイト相との間における構造転移によって特徴づけられているSMAの材料特性が利用されている。形状記憶合金は、4つの温度Mf,Ms,As,Afによって特徴づけられている。ここで、温度Mfは、形状記憶合金が完全にマルテンサイト相に遷移する温度、すなわち形状記憶合金がマルテンサイト構造を有する温度である。温度Afは、形状記憶合金が完全にオーステナイト相に遷移する温度、すなわち形状記憶合金がオーステナイト構造を有する温度である。温度Ms及び温度Asは、2つの方向において転移が開示される温度である。
【0004】
形状記憶合金から作られているワイヤ、いわゆるSMAワイヤは、温度が温度Mf以下から温度Af以上に変化した場合に、又はその逆に変化した場合に、当該ワイヤの形状を変化させるように記憶されている。SMAワイヤの加工及び記憶は、非特許文献1に例示されるように、当該技術分野では広く知られた手段である。
【0005】
また、SMAワイヤは、オーステナイト開始温度As以上の温度において短縮開始し、オーステナイト最終温度Af以上の温度で加熱された場合において加熱すると最終長さに到達することが知られている。形状記憶合金ワイヤの短縮は、一般に、電流通過による加熱(ジュール効果)によって制御されるが、アクチュエータの内部において1つ以上の要素を変位させるために利用される。
【0006】
SMAワイヤの利用分野のうち最も興味深い利用分野のうち一の利用分野は、特許文献5に例示されるような流体弁の弁ポートの制御である。特許文献5は、開閉ステムを移動させるためのダイヤフラムに作用するSMAワイヤを開示している。より近年の流体弁の発展形態は、特許文献6及び特許文献7に開示されている。特許文献6及び特許文献7の両方が、異なる弁ゾーンの間における適切な液密分離(fluid-tight isolation)によって、弁ポートの開口又は切替から発生する圧力平衡の問題の処置を開示している。
【0007】
特許文献8は、流路を拡幅すると共に非圧力平衡を低減するための一連のオリフィスを具備する、完全に分離された2つのゾーン/サイドの弁システムを開示している。
【0008】
上述のように、SMA作動弁における最も困難な課題のうち一の課題は、弁が状態変化した場合に圧力遷移を管理することである。圧力遷移を管理することができなければ、弁プランジャを押し引きする力が(弁ポートの位置に依存して)発生し、ひいては特に比例弁の出力流量が制御不能になる可能性があるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2016/156283号
【特許文献2】欧州特許第2615951号明細書
【特許文献3】欧州特許第2171183号明細書
【特許文献4】国際公開第2015/150377号
【特許文献5】米国特許第4068820号明細書
【特許文献6】欧州特許第2239486号明細書
【特許文献7】欧州特許第3078890号明細書
【特許文献8】米国特許出願第2012/0151913号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】“Shape Memory Alloy Shape Training Tutorial”, “ME559 - Smart Materials and Structures”, 2004年秋
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、このような技術的課題に対する従来とは異なる改良された解決手段を提供することである。本願発明は、変形可能要素によって密閉された開口部によって分離された第1のゾーンと第2のゾーンとを備えており、第1のゾーンには、固定面に固定されている形状記憶合金ワイヤであって、変形可能要素の第1の表面に直接又はピストンを介して作用する形状記憶合金ワイヤが設けられており、第2のゾーンには、少なくとも2つのポートと、変形可能要素の第1の表面とは反対側の第2の表面に接続されているプランジャであって、ポートのうち一のポートを閉じるように構成されているプランジャとが設けられており、バイパスチャネルが、第1のゾーンを第2のゾーンに接続している。
【0012】
本発明について、添付図面を参照しつつさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明における流体弁の第1の実施例の概略的な断面図である。
図2】本発明における流体弁の第2の実施例の概略的な断面図である。
図3】本発明における流体弁の第3の実施例の概略的な断面図である。
図4】本発明における流体弁の第4の実施例の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
理解を容易にするために、図示の様々な部品の寸法及び寸法比が、特に形状記憶合金ワイヤの直径が、非排他的に変更されている場合がある。また、例えば形状記憶合金ワイヤの圧着部や電気接点のような、本発明を理解するために必要ではない幾つかの要素も図面から省略されている。
【0015】
図1は、第1の実施例における弁10の断面図である。弁10は、2つのポート11,12を有している弁ケースを備えている。ポート12は、変形可能要素14に接続されているプランジャ16の末端部161によって閉塞可能とされる。変形可能要素14は、変形可能要素14の変形を通じてプランジャ16を駆動する。プランジャ16がポート12と接触している場合に、弁が閉じられ、プランジャ16が上昇した場合に、弁が開き、最初に部分的に開き、その後にプランジャ16がポート12から完全に離隔するように移動すると全開する。プランジャ16を正確に位置決めすることによって、比例弁の制御が可能となる。
【0016】
プランジャ16の垂直方向における位置決めは、固定面17と変形可能要素14との間にV字状に接続されている形状記憶合金ワイヤ15、すなわち、形状記憶合金ワイヤ15の両端が固定面17に固定されていると共に形状記憶合金ワイヤ15の中央部分が変形可能要素14に接続されている形状記憶合金ワイヤ15によって制御される。
【0017】
変形可能要素14の位置は、2つの弁ゾーン、すなわち、変形可能要素14の上方の第1の弁ゾーン(I)と、変形可能要素14の下方の第2の弁ゾーン(II)とを規定している。第1の弁ゾーン(I)は、固定面17、SMAワイヤ15、及び変形可能要素14の上面から構成されており、第2の弁ゾーン(II)は、2つの弁ポート11,12、プランジャ16、及び変形可能要素14の下面から構成されている。好ましくは、プランジャ16の位置は、プランジャ16に取り付けられている磁石19と、固定面17に取り付けられているホール効果センサ18とによって検出される(プランジャの位置フィードバックは、比例弁制御において最も重要な特徴である)。
【0018】
弁10の動作の最中における圧力を平衡させるために、バイパスチャネル13が2つの弁ゾーンを接続しており、バイパスチャネル13は、頂部ゾーンIに通じる第1の開口部131と、下部ゾーンIIに通じる第2の開口部132とを有している。バイパスチャネル13を設けることによって、差圧が確実に解消される。より具体的には、弁ゾーンIと弁ゾーンIIとの間において圧力が確実に且つ急速に平衡状態となる。
【0019】
図1に表わす弁にバイパスチャネルが設けられていない場合には、SMAワイヤ15の動作の際にプランジャ16が上昇し、ポート12が開くので、その結果として、弁ゾーンIIの圧力が変化する。このような圧力変化は、弁の大きさ及び流量に依存するが、激しくなる場合がある。例えば、ポート12が出口として利用され、弁を開くことによって弁ゾーンIIの圧力が低下する場合には、結果として、SMAワイヤ15による引張力に抗する拮抗力が発生する。しかしながら、プランジャ16を所望の位置に持ち上げ続けるためには、より大きな力をSMAワイヤ15に作用させる必要があり、又は、一定の力を作用させた場合には、プランジャ16の下降によって不慮の弁流量の減少が発生し、最も深刻なケースでは不慮の弁閉鎖を招くという欠点がある。
【0020】
バイパスチャネル13の内部に又はバイパスチャネル13の開口部131,132のうち一の開口部の対応部分に遮断要素が設けられていないことに留意することが肝心である。このような構成により、弁ゾーンIと弁ゾーンIIとの間における圧力差を自動的に相殺することができるからである。
【0021】
図2は、本発明における弁20の第2の実施例を表わす概略的な断面図である。図2では、SMAワイヤ25は、固定面27と変形可能要素24の上面の中心点との間に接続されており、変形可能要素24は、開口部を閉じることによって、上側ゾーンIと下側ゾーンIIとを分離している。
【0022】
当該本実施例では、固定面27に取り付けられたホール効果センサ28を介して、変形可能要素24の下面に固定されたプランジャ26の位置を適切にフィードバックするように、磁石29が変形可能要素24に取り付けられている。プランジャの位置フィードバックは、比例弁制御において最も重要な特徴である。
【0023】
図2は、常閉弁(normally closed valve)を表わす。すなわち、SMAワイヤ25は作動しておらず、プランジャ26の末端部261が、好ましくはリングガスケット220を利用して弁ポート22を封止しているので、2つのポート21,22の間における流体の流れを防止している。このようなガスケット220は、任意選択とされ、例えば図1に表わす実施例のようにポート22と末端部261とが“完全に”寸法的に整合するならば、省略することができることに留意すべきである。幾つかの場合では、要素220は、例えば較正されたオリフィスのような流量制御機能を具備しない要素とされる。バイパスチャネル23は、第1弁ゾーンに第1の開口部231を有すると共に、第2弁ゾーンに第2の開口部232を有しているので、弁20の動作時に圧力平衡を確保することができる。
【0024】
図3は、本発明における弁30の第3の実施例の概略的な断面図である。当該実施例は、当該弁が常開弁であるようにSMAワイヤが変形可能要素に作用する態様を除いて、第1の実施例に非常に類似している。実際には、SMAワイヤ35は、先端が静止面37に接続されたV字形状の構成を依然として有しているが、変形可能要素34の上面に対して略垂直に固定面37を貫通して延在しているピストン36′の第1の端部が、V字形状の中央部に接触しており、ピストン36′の第2の端部は、変形可能要素34の上面に接続されており、ピストン36′の第1の端部は、変形可能要素34に関して固定面37の反対側の面に(すなわち、図3では変形可能要素34の上方に)配置されている。SMAワイヤ35の動作(すなわち短縮)によって、ピストン36′の降下を通じて変形可能要素34が変形され、プランジャ36の降下によって、プランジャ36の末端部分361でポート32が閉じられ、プランジャ36の行程の終わりに弁30が閉じられる。
【0025】
最初の2つの実施例と同様に、2つの端部開口部331,332を具備するバイパスチャネル33は、プランジャ36及び弁ポート31,32を含む弁ゾーンIIと、SMAワイヤ35及びピストン36′を含む弁ゾーンIとを連通させている。また、ホール効果センサ38及び磁石39によって、プランジャ位置のフィードバック、ひいては弁の比例制御を実現している。
【0026】
図4は、本発明における弁40の第4の実施例を表わす概略的な断面図である。第4の実施例は、第4の実施例が弁ハウジングの両側に形成された3つのポート41,42,42′を有している点と、第4の実施例が弁を2つのゾーンI,IIに分割する変形可能要素としての蛇腹部44を備えている点において、第3の実施例の弁30とは相違する。牽引又は引張によって曲率を変化させる膜(図1図3に表わす変形可能要素)とは異なり、牽引又は引張によって、蛇腹部44がゾーンIIにおいて垂直に伸張する。
【0027】
第3の実施例と同様に、固定面47に取り付けられたV字状のSMAワイヤ45は、変形可能要素44の上面に対して略垂直に固定面47を貫通して延在しているピストン46′の頂部と係合している。ピストン46′の底部は、変形可能要素44の上面に接続され、プランジャ46の頂部は、変形可能要素44に関して固定面47の反対側に配置されている。この場合、変形可能要素の水平配置を概念的に維持するために、変形可能要素の上面及び下面は、蛇腹部44の基部の上面及び下面とみなされることに留意すべきである。
【0028】
蛇腹部44の下面には、弁の側壁に形成された弁ポートを閉じるように水平に延在しているプランジャ46が固定されている。図示の実施例では、プランジャ46を垂直方向に位置決めすることによって、弁ポート42,42′のうち一方の弁ポートをポート41と選択的且つ交互に連通させることできるので、弁40は、一種の三方弁になっている。
【0029】
プランジャ46の垂直方向位置は、SMAワイヤ45の動作状態又は非動作状態によって決定される。蛇腹部を使用する利点は、SMAワイヤ45が動作停止されると(加熱されなくなると)、蛇腹部が、自身の構造に起因して、バネのように復帰/付勢力を発生させることである。
【0030】
開口部431,432を具備するバイパス43は、SMAワイヤ45の作動時に、すなわち弁ポート42,42′の切替時にゾーンIとゾーンIIとの間における圧力平衡を確保する。また、この場合には、固定面47に取り付けられたホール効果センサ48と、端子461に取り付けられた磁石49とによって、比例制御のためにプランジャ46の位置をフィードバックすることができる。このような構成は、ミキサー弁の場合に特に有効である。
【0031】
本発明における弁は、様々な変形例として実施可能であるが、特に幾つかの変形例については、説明した図面を参照して既に説明済である。
- SMAワイヤの構成:最も有用な構成のうち、単一のSMAワイヤが、好ましくは一方の端部が固定面に固定されると共に他方の端部が変形可能要素に固定された直線状の形態で利用される。代替的には、SMAワイヤは、両端部が固定面に固定されると共に中央部が変形可能要素に固定/接続された、いわゆるV/U字状の構成で利用される。
- 弁のタイプ:弁自体は、単純なオン/オフ弁又は比例弁とされる。
- 弁ポート:弁は,入口及び出口に対応する2つの弁ポートを具備する単純な2方向弁であっても良いが(図1図3)、さもなければ、3方向弁(図4)を形成するために3つのポート又はより多くのポートを具備する一層複雑な構成を有していても良い。
- 変形可能要素:本発明は、特定のタイプの変形可能要素に限定される訳ではないが、蛇腹部や膜、特に波状の膜が望ましい。
- 変形可能要素の材料:好ましい材質は柔軟な金属であるが、プラスチックやシリコンも使用可能である。
- 位置フィードバック:ホール効果センサ及び磁石の利用が望ましいが、例えばSMA抵抗制御やピストン及びプランジャのような他の手段であっても良い。幾つかの場合には、これら2つの要素は、1つの要素に組み込まれており、膜の場合には、この共通する要素の中央部分が、膜の曲率を変更するために変形可能要素に拘束されている。
- バイパスチャネル:バイパスチャネルの断面積と弁ポートの断面積との好ましい比率は、0.1~1とされる。これにより、弁全体の流量に対して最良のバイパスの平衡流量を確保することができる。
【0032】
本発明における流体弁での利用に適した形状記憶合金としては、例えば、Hf、Nb、Pt、Cuの中から元素を付加的に選択するか否かに関わらず、ニチノール(登録商標)のようなNI-TI基の合金が挙げられる。最も有用なのは、SMAワイヤは、直径25μm~500μmで構成されている。
【0033】
上述の実施例については、その構造及び動作を説明するために利用した例示的な図面を具体的に参照して説明したが、言うまでも無く、弁はどのような向きでも動作可能であり、すなわち360°回転させることができる。従って、弁の実際の向きに従って、“上側”、“下側”、“上方”、及び“下方”等の相対的な位置関係を示す用語は、関連する用語に置き換えられる。
【0034】
本発明は、第2の実施態様では、形状記憶合金ワイヤによって流体の流れを制御するための上述の弁の利用に関する。
【0035】
本発明における弁は、任意の適切な流れの制御に適用可能であるが、当該弁は、例えば水、油、冷媒液(例えば、いわゆるR410a)のような流体、又は、より一般的には、蒸発/凝縮弁において自身の状態を変化させることができるすべての流体に適用された場合に、特に優位である。SMAワイヤがゾーンIに常駐している際には、蒸発/凝縮ゾーンがゾーンIIに限定されるからである。
【符号の説明】
【0036】
10 弁
11 ポート
12 ポート
13 バイパスチャネル
14 変形可能要素
15 SMAワイヤ
16 プランジャ
17 固定面
18 ホール効果センサ
19 磁石
20 弁
21 ポート
22 ポート
23 バイパスチャネル
24 変形可能要素
25 SMAワイヤ
26 プランジャ
27 固定面
28 ホール効果センサ
29 磁石
30 弁
31 ポート
32 ポート
33 バイパスチャネル
34 変形可能要素
35 SMAワイヤ
36 プランジャ
36′ ピストン
37 固定面
38 ホール効果センサ
39 磁石
40 弁
41 弁ポート
42 弁ポート
42′ 弁ポート
43 バイパスチャネル
44 蛇腹部(変形可能要素)
45 SMAワイヤ
46 プランジャ
47 固定面
48 ホール効果センサ
49 磁石
131 第1の開口部
132 第2の開口部
161 (プランジャ16の)末端部
261 (プランジャ26の)末端部
331 端部開口部
332 端部開口部
361 (プランジャ36の)末端部分
461 (プランジャ46の)末端部分
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】